第028回国会 予算委員会 第9号
昭和三十三年二月二十日(木曜日)
    午前十一時四十八分開議
 出席委員
   委員長 江崎 真澄君
   理事 今井  耕君 理事 川崎 秀二君
   理事 重政 誠之君 理事 田中 久雄君
   理事 橋本 龍伍君 理事 川俣 清音君
   理事 柳田 秀一君
      小川 半次君    大橋 武夫君
      上林山榮吉君    小坂善太郎君
      坂田 道太君    周東 英雄君
      須磨彌吉郎君    永山 忠則君
      楢橋  渡君    野澤 清人君
      野田 卯一君    古井 喜實君
      南  好雄君    宮澤 胤勇君
      八木 一郎君    山崎  巖君
      山本 勝市君    山本 猛夫君
      井手 以誠君    井堀 繁雄君
      今澄  勇君    岡  良一君
      小松  幹君    河野  密君
      島上善五郎君    門司  亮君
      森 三樹二君
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  岸  信介君
        大 蔵 大 臣 一萬田尚登君
        文 部 大 臣 松永  東君
        厚 生 大 臣 堀木 鎌三君
        国 務 大 臣 郡  祐一君
 出席政府委員
        内閣官房長官  愛知 揆一君
        法制局長官   林  修三君
        大蔵事務官
        (主計局長)  石原 周夫君
        文部事務官
        (初等中等教育
        局長)     内藤誉三郎君
        文部事務官
        (管理局長)  小林 行雄君
 委員外の出席者
        専  門  員 岡林 清英君
    ―――――――――――――
二月二十日
 委員北澤直吉君、小牧次生君、松本七郎君及び
 森島守人君辞任につき、その補欠として小坂善
 太郎君、成田知巳君、勝間田清一君及び辻原弘
 市君が議長の指名で委員に選任された。
同 日
 委員勝間田清一君及び辻原弘市君辞任につき、
 その補欠として岡良一君及び松前重義君が議長
 の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 昭和三十三年度一般会計予算
 昭和三十三年度特別会計予算
 昭和三十三年度政府関係機関予算
     ――――◇―――――
○江崎委員長 これより会議を開きます。
 先般委員長に御一任願っておりました公述人の選定につきましては、次の通り決定いたしましたので、この際御報告申し上げます。
 二十四日の公述人、八幡製鉄株式会社常務取締役藤井丙午君、立教大学教授藤田武夫君、早稲田大学教授時子山常三郎君、東京銀行常務取締役伊原隆君、二十五日公述人、全国販売農業協同組合連合会会長石井英之助君、早稲田大学教授平田富太郎君、東京大学教授今野源八郎君、元陸軍中将遠藤三郎君、以上であります。
    ―――――――――――――
○江崎委員長 昭和三十三年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算、以上三案を議題といたします。
 先日留保されておりました門司君の総括質疑を続行いたします。門司亮君。
○門司委員 この前の委員会で保留をいたしておりました部分について、当局にお尋ねをいたしたいと思います。
 まず最初に文部大臣にお伺いをしたいと思うのでございます。学校教育に対します保護者の負担が非常にたくさんあることは、大体大臣も御承知の通りだと思います。今日の地方財政が、国民の税外負担というような形で辛うじて地方の自治行政に対する行政水準を保っておることは、大臣の方がよく御存じだと私は思います。その中で最も大きな国民の税外負担と思われるものは、やはり教育行政に関するものが非常に多いようであります。これをかりに現在の状態で、私どもの手元にあるごく大ざっぱな資料を見て参りましても、公費以外の負担として、PTAの負担額あるいは学校でそのほかのいろいろのものを徴収いたしております金の総額というのは、大体見積って百五十億内外ではないかということが、あらゆる統計から見て想像にかたくないのであります。私の手元にあるもので、詳しく計算したものでございますが、大体私はそのくらいの負担になっておると思う。これだけの国民の税外負担がなければ、今日の教育水準が保てないということになりますと、文部行政というものははなはだ怪しいものが私は出てくると思う。この形は必ずしもいい形ではございませんで、教育全体に及ぼします影響として、負担能力の強いところは教育行政水準も高まるかと思いますが、負担能力の弱いところはどうしてもやはり教育の行政水準というものは低下せざるを得ない形になっている。従って教育行政に不均衡が非常にできていると思う。これを是正することを一体文部省で現在考えられておるかどうか、その点についての文部大臣のはっきりした御答弁をこの際わずらわしておきたいと思います。
○松永国務大臣 門司委員の御指摘になりました点は、文部当局といたしましても常々非常に憂慮しているところなんであります。御指摘になりましたPTAや父兄負担も何とか軽減せねばならぬと存じまして、三十三年度予算にもその点はまあ理想通りにはいきませんけれども、多少でも頭を出して、そしてその軽減をはかろうと努力しておるのであります。さらにまた御指摘になりましたような、いわゆる再建団体の各都道府県におきましては、これはやはり教育行政の負担が非常に大きな問題でございまして、それも御承知のような地方交付金や何やらの問題とにらみ合せて、三十三年度以降は相当軽減されていくというふうに考えております。なおこの問題については、終始地方負担の軽減をはかろうというふうに努力を続けていくつもりであります。御了承おきを願いたいと思います。
○門司委員 次に関連した問題としてお聞きをしておきたいと思いますことは、このPTAの負担は負担として別な角度で考えておりますが、いわゆる不正常教育を解消することのために二つ三つの特別法が出ております。これは文部省は御存じだと思います。従ってこの法律に基いて一体どういう計画が不正常教育解消のためになされておるか。これは単に私は言葉だけで申し上げるわけじゃございませんで、いわゆる特別法が二つ三つできているはずであります。この法律に基いて政府は当然義務づけられた不正常教育の解消というものをなさなければならない立場にあると私は思う。従ってこの法律に基く不正常教育解消のために、どういう予算とどういう処置がとられておるか、この際明らかにしておいていただきたいと思います。
○松永国務大臣 不正常授業の解消のために、いろいろ三十三年度の予算要求もいたしておるのであります。まず第一に危険校舎の問題が大きな問題でありますが、これは昭和二十九年度現在の百二十七万坪を五ヵ年計画で解消する方針のもとに、逐年補助金及び起債による措置を講じまして、昭和三十三年度は補助予算が二十億五千万円、この内訳といたしましては義務制に十五万坪、それから高等学校が一万七千坪分と、これに見合っていくところの起債の措置を行なったので、漸次計画通りそのほとんどすべての改築を完了する、こういう予定でおります。なおその後危険化しました校舎などにつきましては、新しい調査に基いて今後引き続いて改築促進の方策を進める所存でございます。
 小学校の不正常授業につきましては昭和三十一年度現在の不足五十三万坪を逐年補助金及び起債等によりまして解消することとしまして、三十三年度は七億三千万円の補助予算と、これに見合う起債の措置を行なっておりますので、この不足坪数の大体八〇%程度は解消されるというふうに予定いたしております。なお小学校の児童数は三十三年度を頂点といたしまして、一般的にその後漸減の方向をたどるものであるとともに、一方では集団住宅の建設、人口の都市集中、産業の発展等によりまして、局地的には児童増加もありますので、これらのことにつきましては、今後事態の推移に応じて善処していきたいというふうに考えております。中学校の校舎につきましては、三十三年度の不足五十万坪を逐年補助金及び起債等によって解消する方針のもとに、三十三年度には補助予算十億八千万円と、これに見合う起債の措置を講じてありますので、この不足は三六%程度は解消するものであります。なお中学校の生徒数は、三十三年度から一時漸減いたしますので、この面からも校舎の不足状況はさらに緩和されますが、三十五年度から三十七年度にわたる生徒の急増問題とも合せまして、いろいろそのときそのときに即応するように、具体的な整備計画を検討していきたいと存じておるような次第でございます。以上御了承おきを願いたいと思います。
○門司委員 大臣のせっかくの答弁ですが、予算を見てみますと、三十三年度の予算は三十二年度の予算よりも、実際の数字を当ってみますと、不足建物といいますか、いわゆる小中学校の不足の学校、二部教授あるいは詰め込み学校等の問題を解消するための費用は、私の調べた範囲では昨年より大体二億円余り減っているように数字が出て参りますが、今の大臣の答弁とちょっと食い違うように考えます。大臣の答弁間違いございませんか。
○松永国務大臣 これは間違いないのです。それは中学の方で減るのがあります。小学校の方でふえるのがありますけれども、私はそろばんはわかりませんが、何でも専門家のそろばんによりますとこれでいいのだそうです。そういうふうに私は承わっております。
○門司委員 これでいいのだというのはちょっとどうかと思いますが、予算の数字をずっと検討してみますと、どうも今の大臣の御答弁で、小学校の方はなるほど一億七千九百万円ばかりふえておりますが、中学校の方で三億九千四百万円滅っておる。差引きいたしますとやはり二億一千五百万円だけは減っているようであります。さらに危険校舎の方が二千八百万円ばかりふえておるといえばふえておる数字が出てきております。従ってこれを裏を返して坪数の不足数から申し上げて参りますと、やはりそう簡単には、今の大臣の御答弁のようなことでは法律に基く責任を政府が完全に果して、これでいいんだというお話でございましたが、これは私は納得がいきません。しかしその数字をここで争っておりましてもなんだと思いますので数字は申し上げませんが、今の大臣の御答弁では、法律に基いた責任を政府が完全に果しておるということは言えないと思います。
 それからもう一つ次に財政の面で聞いておきたいと思いますことは、御承知のように学校の建物に対します問題として、一番大きな問題はどこにあるかというと、やはり建築費の問題であります。建築費の問題についてこの前もちょっと私触れておきましたが、大臣がおいでになりませんので御答弁を得ておりませんが、御承知のように中小学校の校舎の建築単価というものが昨年より三%下げられております。このことはやはり従来でも文部省の考えております木造で一坪当り二万八千円あるいは鉄筋で五万七千九百円、鉄骨で四万四千二百円というような数字は、実際の数字に見合わなかったことは大臣も御承知だと思う。これをまた三%下げるということについて、文部省は一体これを承認されておるかどうか。文部省は一体こういうことで学校ができるとお考えになっておるかどうかということであります。この点について明確にしておいていただきませんと、これらの問題はやはり地方財政にしわ寄せになって参ります。国はこういう単価の補助金しかくれない、残りの分は財政計画に乗らない分をやはり地方が負担しておるというのが今日の実情であります。従ってこの補助単価というものを文部省はほんとうに承認して、これでできるという確信のもとにお出しになっておるかどうか、この点をもう一度聞いておきたいと思います。
○小林(行)政府委員 学校建築の補助単価につきましては、これは御承知だと思いますが、官庁営繕審議会の答申によって例年決定しておるわけでございます。ただいまお話の木造二万八千円、それから鉄筋五万七千九百円、これは現在のたとえば鉄鋼の値下り等から見まして、必ずしも不適当とは考えておりません。ただこの単価につきましては将来の経済事情の変化に応じて、またそれに伴って考えるべきものというふうに考えております。
○門司委員 今のような必ずしも不適当と考えていないというような答弁では困りますが、これはやはり地方の自治体がさっき申し上げましたように負担しなければならない。地方の自治体は建てなければなりませんから、帳面の上ではそれでよろしいかと思いますが、実際はやはり地方負担が非常に大きな圧迫を受ける。こういうことを考えて参りますと――今必ずしもというような言葉を使われましたので、文部省もやや不適当だということを認めておいでになると思いますが、認めておいでになるとするならば、やはりこれを直すという努力をしてもらいたい。この際文部省の意見をもう一度はっきり聞いておきたいと思いますが、文部省はこれでやれるという確信があるのかないのか。
○小林(行)政府委員 地方の実情によって必ずしも建築の工事単価はきまっておりません。現状におきましてはこの程度で支障なくやれるものと考えております。
○門司委員 今事務当局でありますか、支障なくやれるというお言葉でありますので、やれなかったらその分はあなたの方で負担しますか。やれなかったら負担するという確信がありますか。よけい出しますか。地方で違いますからおのおの違ってくることはわかっている。しかし今のようなお話であるとするならば、もう一度聞いておかなければならぬが、足りなかったら文部省が負担するということがこの際はっきり言えるなら地方は安心してやれる。
○小林(行)政府委員 従来も地方によって建築の補助単価は多少差がございますので、その地方に応じまして考えるということにいたしております。地方の実情からどうしても一応のこの基準単価で工事ができない場合には考慮することにいたします。
○門司委員 考慮されるという言葉でございますので、一応この問題はおいておきたいと思いますが、もう一つこの問題についてはっきりお聞きしておきたいと思いますことは、さっき申しましたような不正常教育の解消についての文部省の大体の計画とめどはどういうことになっておるか、その計画性だけを一つお伺いさせていただきたいと思います。
○松永国務大臣 不正常教育を解消するために大体基準を、いつも申しております通り一学級五十人以内というふうにやろうと思いまして、それでいずれこれは法律をあらためて提出いたしまして、皆さんの御協賛を得たいというふうに考えております。まあ一ぺんにはなかなか五十人以内というわけには参りませんけれども、しかし大体その程度に持っていくように、そうして三十三年度は多いところでも五十三人をこすことのないようにしたいということを念願としてやっていきたいというふうに考えております。
○門司委員 今この法律を出してというお言葉でございましたが、大体その法律はいつごろお出しになる予定でございますか。
○内藤政府委員 ただいま来週中には出せるようにいたしたいと考えております。
    〔「大臣から答弁」と呼ぶ者あり〕
○江崎委員長 政治的な意味もあるから大臣から御答弁を願いたい、こういう意味ですから、お繰り返し願います。
○松永国務大臣 今政府委員から答弁いたしましたように、来週中には右申し上げた法案を提出する、こういうことであります。
○門司委員 それからもう一つ具体的に教育関係で地方財政の住民負担になっております問題で、しかも法律による処置からいいますと、当然解決をしていかなければならない問題があるのであります。それは数はそうたくさんはないと思いますが、全国で一万四、五千ないし二万ぐらいの数字だと思いますが、学校給食法ができて、そうしてこれによって文部省の通達あるいは自治庁から出ておりまする通達を見ましても、これらに従事する諸君は全部地方の職員として扱えというような通達が出ておることを大臣も御承知の通りだと私は思うのです。ところが現在までこれの身分がはっきりいたしておりません。実態を申し上げて参りますと、給料がPTAの給食部の負担になっておるものがある、あるいは中には給食費の中からそれを何とか捻出しておるものがある、あるいは地方の失対事業の中からこれを救済しておる事実がある、こういうことで、大事な子供の食糧をあずかる給食関係の諸君の身分というものがきわめて不安定である。従ってこれらに対しましてはやはり身分をはっきりさせて、そうして健康保険なりあるいはその他の社会保険に入れて、健康診断その他等を十分に行えるようにして、給食の問題に支障ないようにすることも私は考えられるべきだと思う。少くともこれは法律もできておる。文部省も通達を出しておれば、自治庁も通達を出して、そうして地方の職員としてこれを取り扱えという通達を出しておりますが、実際は今申し上げましたような幾つかのごまかしの方法でこれが今日まかなわれておる。従ってこれらの問題についても当然財政処置を伴って参りますので、住民負担の関係からいうと、ぜひこれを一般職員として採用をし、一般職員としての取扱いができるようにすることがこういう法律の建前上正しいと思うのだが、この点について大臣の御意見をお伺いしたいと思います。
○松永国務大臣 門司委員の御指摘のようなことを私は実際各地方々々に実地視察をいたしまして承知しております。従ってそういうことが今後根絶されるように、そうして地方負担を軽減し、明朗な給食が行われていくように努めたいというふうに今後も一生懸命にやるつもりです。どうぞ御了承おきを願います。
○門司委員 大臣のお言葉のあげ足をとるようでありますが、一生懸命でやるつもりのことは、これは気持のものでよくわかります。しかし気持だけではこの問題は解決しないのです。法律ができておりましても、その法律に基いて、文部省も自治庁も通達を出している。こうしろといってするからには裏づけになる財政措置がなければできないのです。ところが今日の教育予算の中にはそういうものは考えられていないらしい。何かのはっきりした処置をとっていたしませんと、さっき申し上げましたように、どうしもこれが失対事業を食ったり、あるいは父兄の税外負担の最も大きなものになっている。同時に事業自体から見ましてもきわめて不健全である。(「勤労奉仕だ」と呼ぶ者あり)それは勤労奉仕という言葉もありますが、こういうものを一つ心がけるというだけでなくて、やはり具体的にはっきり御答弁願って、こういう処置をするということになりませんと、なかなか解決できないわけであります。どういう財政処置をおとりになるのか、この点を明確にしておいていただきたいと思います。
○小林(行)政府委員 学校給食の調理従事員の身分につきましては、先ほど大臣からお答えになりましたように、その財源措置の問題でございまして、昨年度におきまして交付税交付金の単位費用の算定基準に入れて措置をしてもらったわけでございます。ただそれが現在でも多少低い点がございますので、本年度におきましてはその額を上げてもらうよう、また経費の費目も賃金から職員給与の方に上げてもらうように自治庁にお願いをしておるわけであります。これができますと、こういったPTA等の負担から出されるということはかなり軽減されるものと思っております。
○門司委員 今の文部省の意見はお聞きの通りですが、自治庁の長官はどうなんですか。あなたの方も通達を出しているのです。だから責任がないわけではありませんが、どういう財政処置をしていますか。
○郡国務大臣 通牒を出しまして、当該学校の職員の扱いをいたしますように順次改めて参る。また御承知のように三十二年度の交付税の単位費用のうちに見込みましたが、さらに三十三年度にはでき得る限りその額を増額いたしまして、順次改善できるようにして参りたいと思っております。
○門司委員 そうすると、地方の自治体ではこれを職員として取り扱う、それについての財源処置は政府がするということに解釈してよろしゅうございますか。
○郡国務大臣 すでに通牒を出しまして職員にいたすように事実指導をいたしておりまするから、私は交付税で三十二年度よりは三十三年度は、でき得ますならば一人当りを倍額くらいのところまでは見ることにいたしまして、従いまして交付税の面で、それで十分であるかどうかという点を別にしましても、交付税の面ではでき得る限り改善をいたしまして、通牒の趣旨が達成できるようにいたしたいと思っております。
○門司委員 これはただ通牒だけでとおっしゃいますけれども、もし必要があるなら私の手元で調べております各地の給食に従事しております諸君の大体の給与その他を申し上げてもよろしゅうございます。この数字はあなたの方も知っておいでになると思いますから申しませんが、今のような交付税の単位費用として織り込んでおるからというようなことで問題の解決がつくものじゃございませんよ。政府はほんとうに解決をしようとするなら、職員費の中にこれを十分見るという考え方を持ちませんと、今のように地方公務員の給与改訂について自治庁がやかましいことを言っているならば当然望みがなくなると思う。今給与法の問題については自治庁はやかましいことばかり言っているでしょう、地方団体の給与は多過ぎるから減らせと一生懸命やつている。これは全国に約二万人いると思いますが、これを加えろということになりますと、何か国がはっきりした財政処置をするということをここで言明していただかぬと、地方でできるはずだとおっしゃっても、これはできない相談です。ですから地方の正式の職員にして、期末手当その他も十分手当ができる、こういうことをやってもよろしいということをもう一回言ってもらいたいと思うが、どうですか。
○郡国務大臣 ただいまの段階では、門司さんがむしろ御指摘になりましたように、私の方でもこれの扱いについては地方々々でこの扱いでは困るというのがあるのです。あなたもあまりお触れになりませんでしから私も触れませんが、具体的な問題が事実地方々々で起っております。従いまして、これは将来漸次改善をしなければなりませんし、その方針を文部省と十分相談いたしてきめてはおりますけれども、ただいまの財源措置としてはこれで万全とは決して申しません。申しませんけれども、交付税の中の単位費用をでき得る限り多く見るというような方法で、この三十三年度の通達を十分生かしていけるようにして参りたいと思っております。さらにこれを改善いたしますことは十分関係省と相談いたしたいと思います。
○門司委員 ちょっとくどいようですが、それでは少くともことしからはこれを正規の職員として採用することに差しつかえはない、給与の高いとか安いとかということは別にいたしまして、職員の身分だけは切りかえることに差しつかえがないというように大体私は解釈していいと思うのだが、それでよろしゅうございますか。
○郡国務大臣 身分の点になりますと、府県の扱いでございますけれども、私どもは今申しましたような事柄自身が重要な施設でございますから、府県ともよく相談いたしまして御趣旨に沿えるような工合にできるだけ考えていきたいと思っております。
○門司委員 その次に文部大臣に聞いておきたいと思いますことは、文部省が四月から実施されると言われております道徳教育の問題であります。これは通達によって文部省はおやりになることだと思いますが、そう考えてよろしゅうございますか。
○松永国務大臣 さようでございます。通達でやっていく、こういうふうに考えております。
○門司委員 通達でやるということになりますと、具体的にもう一言聞いておきたいと思いますことは、新聞その他を見ますと、大体一週間に一時間くらいこの教科を入れたいというような御意思のように承わるのでありますが、大体一週間に一時間くらい道徳教育を中に入れられるという御意思でございますか。
○松永国務大臣 ホーム・ルームの時間でやっていきたいというふうに考えております。ですから大体一週間に一ぺん、一時間くらいになる、そう御承知を願いたいと思います。
○門司委員 一週間に一時間くらいのホーム・ルームの時間でやられる、いわゆる社会科の中でやっていこうというようなお考えだと思います。そこでまず最初に聞いておきたいと思いますことは、これは社会科というものでなくて一つの科目のようにわれわれには考えられるのであります。また当然そうなると思いますが、そう考えてよろしゅうございますか。
○松永国務大臣 お説の通りでございます。
○門司委員 科目のようになるということになって参りますと、いろいろ法律的の問題がここに生まれてくると私は思います。まず最初に問題が出て参りますのは、国と地方との関連性において出てくる通達によって地方の行政が支配できるかどうかという一つの問題であります。国家行政組織法の十三条等の規定を見て参りますと、国あるいは主管省が地方の自治体に干渉できるもの、いわゆる通達その他において仕事のできる範囲は、少くとも国家公務員あるいは地方自治体に対しましては国からの委任事務というような、国の仕事を地方に団体委任として課せられているもの等については通達によって指図ができると思いますけれども、今日の教育の課程においてそういうことができるかどうかということには、法律的に私は非常に大きな疑問があると思います。御承知のように地方自治法の百八十条の八の教育委員会の権限と職務の条項を読んでみますと、教育課程については教育委員会がこれを掌握することになっております。従って文部省が一片の通達で地方の自治体に対するこういう行政上の干渉ができるかどうか、私は干渉という言葉を使っても差しつかえないと思いますが、この点の法律的な解釈を、一つ明らかにしておいていただきたいと思います。
○松永国務大臣 今仰せになりました教育課程の内容等につきましては、文部大臣の職責でありますから、やはり文部大臣の通牒においてやることができるというふうに考えております。ただしかしこの問題については、多少の疑問もありますのであらためて法律を改正してもらうというふうに、今準備を進めておるわけであります。
○門司委員 今準備を進めておいでになるということでありますが、そうなりますと、やはり非常に大きな問題だと思う。この前教育委員会法が変えられて、地方教育何とかという法律に変ったのでありますが、そのときと同じような問題で、私は大きな問題になりはしないかと思う。それは御承知のように、今日の義務教育の課程というものは、地方の自治体の固有の事務だと私は思う。この地方の自治体の固有の事務に対して、国がこれを指図ができるようにするということは、自治の行政上から見て参りましても、確かに破壊にひとしい。従って今日の憲法並びに教育基本法の建前から参りますと、やはり地方の教育について国がこれを干渉するというような態度は、私は避けることが正しいのではないかというふうに考えておりますが、この点について教育基本法との関連性をどういうふうにお考えになるか、教育基本法の前段は、私はここで時間もないから申し上げる必要もないと思いますが、憲法の趣旨に基いて、こういう教育を行うのだということがはっきり書いてある。今日の憲法の教育に対します条項、その他あるいは地方自治に関します八章以下の問題等を見て参りましても、これはやはり地方の自治体の固有の事務として取り扱うべきものであるということが考えられるのでありますが、これについての大臣のお考えを一応お聞きしておきたいと思います。
○松永国務大臣 仰せの通り、教育行政はやはり地方固有の事務でもございますが、しかし一面において、文部大臣の責任として援助、指導、勧告することができることになっております。従って通達を出しまして、そうしてその課程内容についてその善処方を促すことはできると考えております。しかしながら、あらためて申し上げますが、ただ通達を出しましたからといって、その都道府県を拘束する力を持っておるのではないということだけは御了承願いたいと思います。
○門司委員 もとより法律の内容は、助言をし、あるいはその他のサゼスチョンをすることについて差しつかえはないかと思います。しかし通達であって、しかもこれが受け入れられるか受け入れられないかわからないという今の大臣のお言葉でございましたが、これは非常に大きな問題だと私は思います。少くとも教育委員会は教育課程をきめることのできる一つの委員会で、独自の立場にこれが立っております。一体国がこういう課程をやったらどうかということについては、私は非常に大きな問題があると思う。このことについてはもう少し私は大臣のはっきりした御答弁を得る必要があると思います。こういうことは簡単にできるとお考えになっているかどうかということを、もう一応大臣からお聞きする必要があるかと思いますが、その点を一つ具体的に言って下さい。これはこういうことなんです。あなたも御承知だと思いますが、学校教育法の十八条を見て参りますと、教育に関する問題がここへずっと書いてありまして、いわゆる教科というものが書いてあります。これを受けた施行規則の二十四条には、さらにそれを具体化した条項が書いてありますが、この中にはそういう科目はないのであります。従って今日の学校教育法の建前から見て参りましても、新たな一科を設けるというようなことは、これは通達ではできないと私は思う。もしこれが通達でできるということになりますと、この学校教育法との関連性を一体どうお考えになるか、伺いたい。
○内藤政府委員 ただいまお尋ねになりました学校教育法との関連でございますが、御指摘の通り、学校教育法第十八条には、小学校の目的が列記されております。この目的の範囲内で御指摘になりました施行規則の二十四条ができているわけです。この二十四条には、お話のように道徳という時間はございません。従って私どもとしては、今後学校教育法施行規則の改正を行うことが一つでございます。同時に二十五条には、教育課程の基準は、学習指導要領によるのでありますから、教育課程の基本的なものは指導要領が根拠になるわけでございます。この限りは文部大臣の権限でございますので、いずれなるべく早い機会に指導要領の改正を行いたい。この指導要領ができますのが、大体八月に各教科の新指導要領ができる予定になっております。それまでの間をどうするかという問題になると思います。この問題は一応教育課程審議会でただいま各教科についての検討が進められておりますので、その大体の方向というものは近く三月までには答申をいただくわけでございます。ですからこの指導要領の改正の趣旨に沿って、四月から具体的に実施の方向を示すということは、これは差しつかえないのではなかろうかと考えております。
○門司委員 内藤さん、そんなことを言いますけれども、これは非常に大きな問題なんですよ。答申案が出るはずだからといって先に出したのでは、答申なんか要らないと思うのです。政府がこういう答申を出せといって命令するのですか。これは政府の今日までの諮問機関だけではございませんが、政府が一応腹をきめておいて、その委員会に聞いて、その通り答申させてくる、政府が先回りしてこういうものがやれるのだということになると、これは何のための委員会だかわからないでしょう。そんなばかげたやり方がありますか。政府が先にきめておいて、こう答申してくるであろうから、今からこうやっておいても差しつかえないのだというようなばかげたことなら、答申案なんというものは要りはしません。今の御答弁はおかしいじゃないか。ほんとうにそうなるとお考えなんですか。
○内藤政府委員 ただいまのことにつきましては、すでに十一月に教育課程審議会は、道徳のために一時間の時間を特設するという中間発表をしておるのでございます。具体的にその教科のどういうような学年別の目標なり、その扱いについての具体的な研究が、教材等調査研究会でただいま検討されておりますので、大体四月に間に合うということになっておりますので、私どももその答申が出次第地方に流したい、こういう意味でございます。
○門司委員 これはあまり政治的過ぎやしませんか。政府はなかなか国民の要望したことはようやらないが、政府の都合のいいことは答申の出ないうちに既成事実を作っておこうというものの考え方は、あまりいいものの考え方ではございません。もしそういうことが平気でそこらで行われるということになりますと、ゆゆしい問題ができると思う。だからほんとうに文部省がそういうことをお考えになっておるとするならば、やはり答申案が出てからでも間に合うのじゃないですか。そうして準備がまだできていないでしょう。あなたは今これは指導要領でやれるとおっしゃいますが、やれるにいたしましても、法律の改正は何らかの形で行わなければなりますまい。同時に地方の今日の教育委員会というものは、教育長に対してはなるほど文部大臣の承認を得ることになっておりますが、しかしこの教育長は事務処理をする一つの機関である。教育課程その他を決定する機関はやはり教育委員会である。この教育委員会は文部大臣に拘束される必要はないのであります。その教育委員会が教育課程として取捨選択する権限を持っておるものを、ただ指導要領だけでこれが行えるというようなことができるかどうか、これは文部大臣も少し考えてもらわなければならぬと思います。明らかに地方の固有の事務として、しかも大臣の方がよく御存じだと思いますが、例の教育委員会につきましては、他の特別の公務員と同じようにリコールがやはりできることになっております。あくまでもこれは地方自治体の独自の立場においてこれをきめておる。そうして独自の権限において教育課程というものを定めることができるようにちゃんと書いてあります。学校教育法の中にも書いてあれば、自治法の中にも同じようなことが書いてある。法律はダブっておるのであります。両方に書いてある。この地方の自治体固有の事務であるということが明確にわかっておることについても、ただ指導要領だけでこれがやれるのだというお考えだとすれば、これは地方の自治行政というものをやはり国自身が法律で曲げていくという形に私はなると思う。だから私どもの考え方としては、単に指導要領だけが変ったからといってこれを押しつけるわけにはいかない。さっき大臣も押しつけるのじゃないから、受け入れるかどうかわからぬというお話でございましたが、この問題については一つ政府も考えてもらいたい。私はこの際もう一ぺん大臣の御答弁を要求いたしますが、事態はそういうことなんです。従ってまだ答申案も十分できておらない、確定しておらないその前に、こうなるであろうからということ、さらに指導要領もまだはっきりしておらない。さらに法律もできておらないその前に、四月一日からこれを行うのだというようなことを文部省が発表して、そうして地方自治体に、いかにもこれが妥当性を持つかのような考え方を持たせるということ自身のものの考え方が、地方の自主性を大きく阻害する政府の考え方だと思う。これに対する文部大臣の御答弁を一つこの際わずらわしておきたいと思います。
○松永国務大臣 御指摘になりました点は、審議会の議もまだ全部結了いたしていないのに、あんまり早まったじゃないかという御意見のようでありますが、しかしいいことは善は急げで早くやった方がよろしい。要するに道徳教育の強化は絶対必要であるというふうに私どもは考えておりますので、それで今まで申し上げたような取り計らいをしたような次第であります。しかしながらそれは先ほども申し上げた通り、拘束力を持つものではありません。都道府県における教育委員会でそれを採用せられればけっこうであります。要するにまだこれから先に法律を作りまして、あなた方の御協賛を仰いで、そうしてほんとうの道徳教育をやりたいというふうに考えている次第であります。
○門司委員 道徳教育がいいか悪いかということをここで議論する必要はないと思いますが、法律的の問題としてもう一つ聞いておきたいことは、今日の教員に対する免許法の関係であります。教員に対する免許法の関係の中にはこういう科目はございません。従って科目にないのでありますから、私は道徳教育を教える教員がいないと思うのでそういたしますと、指導要領でできるとおっしゃっても、資格のない先生が教えるということになると、これまた実に厄介な問題ができると思う。まず教員を養成してからいかないとこの問題の解決がつかないと法律的に私は見るのですが、この関係はどうなっておりましょうか。
○内藤政府委員 道徳教育につきましては、担任の先生に道徳教育の指導をお願いする、こういう考え方でおりますので、ただいまのところ免許法の改正は用意いたしておりません。
○門司委員 担任の先生とはだれが担任するのです。科目というものがちゃんと教員の資格条件の中には法律できめられているでしょう。現に道徳を含む科目の担任の先生がおりますか。社会科の中だとあなたはおっしゃるかもしれないが、社会科の中というのは、現在の免許証の中には書いてないのです。そういう科目は事実上教えていないのです。単位はとっていない。だから道徳教育をやる資格のあるものは日本中に一人もない。それを法律を改正しないでやれるのだということになると実に妙なものじゃありませんか。
○内藤政府委員 現在生活指導なり特別教育活動の中で道徳教育を行なっておるのであります。小学校については御承知の通り学級担任でございますので、学級担任の先生に道徳教育をしていただく。中学校の場合は原則として教科担任でございます。しかしながらその教科担任でありながらクラスの担任はおるわけでございます。これがホーム・ルームや特別教育活動で指導をいたしておるのであります。ですから道徳教育につきましては、この担任の先生にお願いをするつもりでおります。
○門司委員 どうも私はそういうことだけでは承服はできないと思います。これは免許法の四条、五条のずっと関連を見て参りますと、科目にないのですから、社会科の先生がそういうことを知っているはずだということだけで、これを文部省が政府の施策として取り入れて、そうして一時間の時間をさいてこのことをやれということについては私は無理だと思う。絶対にできない相談だと思う。少くとも子供に教えます教科については、こういう教員免許法という法律があってそうしてそれに合格した者でなければその教育ができないような仕組みになっておるはずである。あなたはその中に含まれているというが、そういうことがどこに含まれておるか。道徳教育というものは、読んでごらんなさい、あなたの方が詳しいでしょう、私がここで法律を読んでもいいが、どこにそういうものが出てくるか、どこにも出てこない。それをただ単にホーム・ルームの中でやればいいのだということになると、大臣は一つの科目としてやるとおっしゃるから、当然科目としての問題が解決しない限りは、これを行うことは私は法律上できないはずだと考えて答弁を要求したのです。
○内藤政府委員 この点につきましては、私どもは従来の教科とは考えておりません。特に道徳教育は、普通の教科が知的理解なり態度を養成するのと違いまして、道徳的な心情に訴えて実践をしなければ意味がないのでありまして、この実践を伴うという点につきましては一般の教科とは違う特別の教科であり、特別の時間である、かように考えておるのであります。こういう点から私どもは免許法の改正をしないでやっていきたい、かように考えております。
○門司委員 これはそうなりますと、ますます不可解になる。特別なものだというならば、やはり特別な教育を受けるなり、特別な施設で免許証を与えておかないことにはできない相談です。あなたが何と言われても教員の免許法から考えますと、科目の中、教科の中にない、従って担任の先生がおるはずがない。それを、そういうことでおやりになるということは、明らかに法律上の解釈からいきますと、これはできない相談だと思う。
 それで私は、この機会に総理大臣に聞いておきたいと思いますが、日本の従来の教育方針であった教育勅語はなくなりまして、新しい教育の方針は教育基本法にゆだねられておると思います。教育基本法の前段には明らかに一条の前の前書きがありまして、日本国憲法の趣旨に基いて平和的であって民主的の教育を行うのだ、こういう前書きがしてあるはずであります。従って今の教育課程は、この教育基本法にのっとって私はできたものだと考えております。この点について総理大臣はどうお考えになるか。今日の教育課程というものは、この教育基本法の趣旨にのっとってできたものだと私は解釈いたしておりますが、大臣はその通りお考えになるかどうか。
○岸国務大臣 教育基本法の一条の趣旨は、今の前文を受けまして、教育の目的というものを明らかにしており、それは人格の完成であり、平和的な国家及び社会の形成者として必要なあらゆる素質を養成し、心身の健全な国民を育成するということでありまして、私はその具体的な内容を固定的にきめておるものではなしに、精神がそこにあるわけでありますから、従って社会のいろいろな事情や文化の発達その他あらゆる面から、教科の内容等については最も適切妥当なものを弾力的に考えていくべきものである、かように考えております。
○門司委員 重ねてお聞きをいたしておきますが、今大臣からも御答弁がございましたように、この教育基本法の前段には、「われらは、さきに日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない。ここに、日本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示して、新しい日本の教育の基本を確立するため、この法律を制定する。」と前文に書いてあります。そして第一条に教育の目的として、「教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたっとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。」こう書いてある。従ってこの教育基本法の内容は、あげて第一番に書いてあります「教育は、人格の完成をめざし、」という点にあります。従って今日の教育基本法から出て参りました教育関係の幾つかの法律は、すべてこの教育基本法の一条に基いてできておると思うのであります。人格の完全なる完成を期するということになりますと、この意味はいろいろ解釈の方法はあるでございましょうが、ごく具体的に申し上げれば、人としてよき市民になれということに結論できると私は思う。教育の基本方針がそこにあって、今日の教育に対します法律はたくさんできておりますが、その課程に従って教育を行なっておりますこと、すべてが大体これで足りているのではないか。この上にもう一つ道徳教育が必要であるというようなことは、この教育基本法の中からはどこからも考えられない。ことに道徳は御承知のように、そのときどきにいろいろ変るものであります。これを一つの政府が、ことに政党政府であります政府が、道徳の内容、道徳のあり方というようなものをもし通達によっても示唆するというようなことがあるとすると、この教育基本法にもとると思う。従って総理大臣にも一応お聞きしておきたいと思いますことは、それなら現在の教育に関するすべての法律は、この教育基本法の第一条にもとるものである、不完全であるというように総理大臣はお考えになっているかどうか。
○岸国務大臣 もちろん日本の教育の各種の制度、法制その他のものは、教育基本法の今お読みになりました趣旨を実現するためにできているものだと私は思います。しかし実際これを実行してみて、具体的のことになりますと、やはり弾力性がある。今のものがそういう趣旨で制定されておるということについては、何らの異論を持ちませんが、それならそれで、その一字一句すべてのものが、将来にわたって変更できないのかといえば、私はそうじゃないと思う。教育の課程の内容につきましても、これは意見はありましょう。道徳科を設ける必要があるかないかという意見はあると思います。しかしながらいろいろな教育の実情から見、社会の情勢から見て、われわれはそういう科目を設ける必要ありと見れば、これが改正なりあるいは運用において、従来の何を是正していくということは、決して憲法並びに教育基本法の趣旨に反するものだとは私は考えません。
○門司委員 重ねて文部大臣にお聞きしておきたいと思います。今総理は教育基本法に反しないというお考えのように御答弁を伺いましたが、それ以上私はここで議論する時間もございませんので申し上げません。ただこの道徳教育を通達としてやられるということは、さっき申し上げましたように、通達は、地方の固有の事務であって、しかも教育委員会いとう独立の機関に対しては拘束力を持たぬものであるということは私ははっきりしていると思う。同時にこの法律に書いてある指導、助言とはその趣きを異にしていると思う。それからもう一つの問題は、従ってこれをぜひ実施しようとするなら、やはり教育のすべての法律の改正が行われなければ、こういうものはやれない相談だと私は考えておる。文部大臣は、今私が幾つか申し上げました、たとえば教員の免許に関する法律であるとか、あるいは学校教育に関する法律であるとかいうようなものをすべて改正しなくても、これはやれるのだとお考えであるかどうかということを、重ねて文部大臣に聞いておきたいと思います。
○松永国務大臣 門司委員の重ねての御質問でございますが、私どもの研究するところによりますと、道徳教育には法律の改正は必要としない、こういうふうに考えております。すなわち学校教育法によりまして、文部大臣が定めることに差しつかえはないというふうに私どもは考えておるのであります。御了承おきを願いたいと思います。
○門司委員 その大臣の解釈には、私どもそのまま納得するわけにいきません。これは先ほどから申し上げておりますように、地方の教育委員会というのは国の機関でもなければ何でもないのであります。地方の固有の事務である教育を、地方の住民の意思によって――これは前の教育委員会法が改正されまして、公選がなくなりましたが、少くとも公選された地方の首長の発案によって議会の承認を得ております。従って間接的にはやはり地方住民の公選とそう変らない性格を持っておると私は思う。教育委員会に対して、法律の改正をしないで政府がこれに指図をするというようなことは、私は今日の自治法の建前から申し上げますと実際上の干渉である、これは許されないことだと思います。しかしこれ以上私は議論はいたしません。
 そこで時間もございませんので、次にこの前残っておりました厚生大臣に一言聞いておきたいと思いますが、厚生省が考えております国民皆保険の問題と地方財政との関係であります。今日、私ども地方の町村を見て参りますと、時間もございませんから多くを申し上げません、結論だけを申し上げて参りますると、今日地方財政の赤字の中で、ことに町村における赤字の相当の部分、はっきり申し上げますと、一般財源からこの国民健康保険に繰り入れているためにできております赤字というのは、私は百七、八十億に上りはしないかと考えます。従って国民皆保険をなさろうとするなら、これらの赤字の問題をまず解消して、そうしてその上で行なっていただきませんと、赤字の上にまた赤字を重ねるようなことになりますと、なるほど社会保障の一環としての国民皆保険ということは、口当りも耳ざわりも非常にいいのでありますが、実質的には地方の非常に大きな財政負担となって、完全なこの事業の遂行ができないというような羽目に陥りはしないかということを現状から見て私は考えるのでありますが、これに対して厚生大臣はどうお考えになっておりますか。
○堀木国務大臣 お答えいたします。御質問の趣旨は全く同感でありまして、私どもは国民皆保険を推進するにつきましては、地方財政との調整ということが一番大切な基礎的な条件の一つである、こう考えまして、三十三年度予算編成に当りましても、その点を解決いたしたいという考え方で、御承知の通りに事務費を一人当り八十五円から九十円に上げましたこと、療養給付費に対しまして二割を保証して、五分の調整交付金を出すようにいたしましたのも、御説の趣旨に従っていたしましたような次第でございます。
○江崎委員長 門司君、どうでしょう。だいぶ時間が超過いたしましたので、どうぞ結論へお入り願います。
○門司委員 今予算に出ておりますこと、それから補助金をふやされて、それからさらに何か補助金と違う五%のものを出すというようなことは、これはそうなっております。しかしこれだけで、今申し上げましたような非常に大きな数字が解消されるとは考えられないのであります。国民保険の会計は、少くとも御承知のように特別の会計になっております。従って、これを今からそうするのだということでなくて、私が聞いておりますのは、今残っております赤字をどう解消するかということです。これを解消しておきませんと、赤字の上にまた赤字が出てくるということになると、これは困るのであります。国民皆保険をされて、そうして地方の自治体に負担をかけられないというこれから先の処置ではありません、現在の赤字を何とか解決しておきませんと、地方の財政にはやはりこれがガンになって参ります。従って今の赤字をどう解消されるか、国庫でこれを全部見られるつもりがあるのかないのかということをはっきりと聞いておきたいと思います。
○堀木国務大臣 過去の赤字の原因を調べてみますと、いろいろございます。今あなたとしては百七、八十億円と言われるのでありますが大体二十七年度から三十一年度まで地方財政の一般会計から今言われました保護特別会計に繰り入れましたものは約百十億あります。しかしその内容は実は簡単でないのでございまして、一つは事務費が実情に沿わなかった。事務費の負担につきまして国の支給するものが実情に沿わなかったという分もございます。それから療養給付の関係におきまして医療費が予定よりよけいかさんだ。あるいはもう一つは当然収納すべき収納率が悪かった。その後医療内容の向上に伴っていわゆる保険税、保険料等がそれに伴って引き上げにくいという状況にあったというふうな問題。さらに現実的な問題では、現金自身が運用上困って支払いが延びておるというふうな各般の事情がございます。すでに御承知の通り、そのうちで一番大きな問題は、事務費が大きくかさんでおって、事務費が予算で査定いたしましたよりも実際に給与、待遇が改善されたという分もありますので、これはもう三十二年度は大体この通りになる、本年度はとんとんになると思いますが、今申し上げました百十億の内容にはいろいろな問題があります。もう一つ、端的には、国保自身が特別会計で負担すべきでない保険業務、保健婦の活動に伴う経費及び直営診療所の建設事業だとか、そういうふうなものがございますので、まず私どもとしてはそれらの点につきましては自治庁とよく打ち合せて、自治庁の御方針に従いまして考慮しなければなりませんが、赤字と一口にいって国がしりぬぐいをすべきものではない。一般会計で持つべきものもあるし、またその他今申し上げました各般の事情がございますので、それらによって自治庁と緊密な連係をとって処理して参りたい、こう考えているような次第でございます。
○門司委員 自治庁の大臣に聞いておきますが、私は地方財政の観点からいうと、この赤字は少くとも国民皆保険に向う前になくしておきませんと、やはり国民皆保険というものがうまくいかないという考え方を持っておるのであります。従って地方財政の今日の赤字の一つの大きな原因であり、累積されたこの数字というものは、何らかの形で国民皆保険の前にこれを解消する必要がある。そうしなければ満足にこの保険の運用はできないというように考えられますが、この点について今厚生大臣の御答弁はお聞きの通りであります。自治庁と相談して、こうおっしゃるのですが、自治庁はこれをどうお考えになっておりますか。
○郡国務大臣 国民皆保険を可及的に完全に全面に実施いたしますることは非常に望ましいことであります。ところが御承知の通り過去数年にわたって赤字が累積いたしております。しかし一応過去の赤字につきましては、それぞれ再建債等によりまして地方財政全体として処理をいたしておる。そうするとかりに三十一年度の決算をとってみますと――三十二年度は出て参りませんが、三十一年度で四十一億の赤字が出る。そのうちに一般会計から繰り入れまして補てんいたしましたのが三十三億、特別会計自身の原因が八億、そういたしますと私はこの問題は一つは保険税そのものの徴収のやり方を考えなければいかぬと思っております。それから事務費の点について順次改善されておりますが、これを充足いたさなければならぬ。貧弱町村における給付費と保険税との較差とかいろいろ指摘すべき点はございますが、赤字そのものといたしましては、私は累積いたしましたすべてのものを考えておりましては、解決する問題でもございませんし、地方財政全体として一般会計に赤字が出ましたものを、一応それぞれ再建の方途を講じておりますから、今後における特別会計自身が欠陥を起しませんような方途を十分に講じますならば、私はこの会計を健全にしていくことは可能だと思っております。
○江崎委員長 これにて総括質疑は全部終了いたしました。
    ―――――――――――――
○江崎委員長 この際分科会主査よりそれぞれ分科会における審査の報告を求めることといたします。
 第一分科会主査田中久雄君。
○田中(久)委員 第一分科会の審査の経過並びに結果について御報告いたします。
 本分科会の審査事項は、予算三案中皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、経済企画庁を除いた総理府、法務省、外務省及び大蔵省所管の分並びに他の分科会の所管以外の事項でありまして、二月十三日より十七日までの間、慎重審査いたしました。
 審査の順序は、まず各省各庁当局よりそれぞれ所管予算の説明を聴取し、続いて質疑を行いましたが、これらの詳細は会議録でごらんを願うこととし、ここでは質疑応答のうち二、三の点を御報告するにとどめます。
 まず外務省関係の質疑といたしましては、韓国及び北鮮との外交問題が取り上げられ、日韓会談の再開は抑留者の釈放完了を前提とするのか、会談の議題は何と何か、また三十八度線以北は北鮮政府の支配下にあるという現実から見て、朝鮮全体の問題を韓国政府だけと話し合うのは無意味ではないか、さらに抑留者のうち北鮮への帰国希望者は、人道的見地からもその希望をかなえてやるべきだ、また北鮮との貿易は英国、西独でさえ通商使節団を派遣しているのに、隣国たる日本では韓国への気がねのあまり全く無策のまま放置されておるが、これでいいのか、等々の質疑が行われました。これに対する政府の答弁は、日韓会談の再開は、抑留者の相互釈放が完了しなければ自然おくれることになろう、会談の議題としては、一、いわゆる平和ラインの問題、二、対日請求権の問題、三、船舶返還の問題、四、在日朝鮮人の国籍処遇の問題等が予定されておる。また朝鮮には事実上韓国政府の支配の及ばない地域があるのは認めざるを得ないが、国連の決議においても韓国政府こそ朝鮮における自由選挙に重きを置く唯一の合法政府であるとされており、日本としてもこの決議に従って交渉するわけだ。建前としては将来の統一を期待しながら全朝鮮の問題として話し合いをするのだが、事の性質上それが不可能な問題は、それぞれ話し合いのときにきめていくより仕方がない。また北鮮との貿易や、抑留者の北鮮への送還については、日韓関係が微妙な段階にある現在、明言することを差し控えたいとのことでありました。
 次に、武器輸出の問題として、サウジ・アラビアから武器の購入を申し込まれておるようだが、昨今中近東の情勢から見ても、平和国家としての立場からも、この問題は慎重に取り扱うべきではないか。またこれは石油採掘の問題と関係があるように聞いておるがどうかとの質問がありました。これに対する答弁は、中近東は戦略物資輸出の禁止区域ではない。しかし日本としては局地的にも紛争の起ることを好んでいないから、いやしくも緊張の度を増すような輸出は差し控えるべきであろう。またサウジ・アラビア側から石油採掘の利権の代償として特定の物資の購入を申し入れてきたという事実はないというのでありました。
 次に、防衛庁関係の予算について、会計検査院の報告によって見ても、防衛庁関係の工事ないしは物品調達に不当事項がはなはだ多いが、これは契約方式が大部分随意契約となっておるためではないか。しかも予決令――予算、決算及び会計令の規定にもかかわらず二社以上からの見積書を取っていない場合が多い。また潜水艦を初め艦船建造が当初の計画より著しくおくれておるのはいかなる理由に基くのか。さらに鋼材等の価格の値上りが艦船の価格にはね返ることはないか、との質疑が行われましたが、これに対する答弁は、艦船建造等が随意契約によっているのは、予決令にある契約の性質または目的が競争を許さない場合に該当しているからだ。しかし随意契約によっても、従来とも価格の引き下げには努力している。見積書も今後はできるだけ二社以上から徴するつもりである。艦船建造がおくれているのは、一つには戦後十年のブランクと艦船の性能が著しく高度化したためであり、さらには装備等に米国からの供与による部分が多く、しかもその供与がなかなかはかどらなかったためでもある。また鋼材等の値上りに対しては、潜水艦のごとくその建造に長期を要するものの契約には、清算条項を入れて材料関係について上下一〇%までの価格変動を認めているということでありました。
 最後に分科会の討論採決は本委員会に譲ることに決定いたしました。
 以上御報告いたします。
    ―――――――――――――
○江崎委員長 第二分科会主査山本勝市君。
○山本(勝)委員 第二分科会の報告をいたしますが、だいぶ長い用意がございますけれども、簡単にということですから、少し端折って、要点だけ申し上げます。
 第二分科会における審議の経過並びに結果について御報告いたします。
 本分科会は、昭和三十三年度総予算案中、文部省所管、厚生省所管及び労働省所管に関するものでありまして、去る十三日より十七日まで四日間、慎重審議いたしました。
 十三日は厚生省所管、十四日は労働省所管、十五日は文部省所管に関する提案理由の説明を聴取し、引き続き質疑応答を行なったのでありますが、これらの詳細につきましては会議録に譲ることといたしまして、ここではそのおもなる問題点のみを御報告いたします。
 第一は厚生省所管に関するものであります。まず国民健康保険の問題でありますが、その一つは、国民皆保険及び国民保険の最終年次の目標、または年次計画はどう見込んでおるのか、さらに三十三年度の重点をどこに置くのかという質問であります。
 次に政府管掌健康保険についての黒字となった原因及び今後の財政の見通しはどうか。医療保障から取り残されている、零細事業場の労働者の吸収にいかなる努力をするのかとの質疑であります。
 また医療報酬八・五%引き上げ、それに伴う合理化の問題につきましては、医療報酬八・五%引き上げの根拠は何か。厚生省案を固執するのかとの質疑があったのであります。
 次に国民年金に関しまして、三十二年度の調査内容、三十三年度の方針及び年金の構想いかんとの質疑がありました。
 第二に、労働省所管につきまして申し上げます。職業訓練法施行に伴い、来年度予算においてどの程度の労働者を対象としているか。申込み数が非常に増加しているので、さらに努力はできないか。不完全雇用、失対事業関係労働者を、別ワクにして訓練を行えないかという質問がありました。
 また完全失業者及び失業対策事業における労働者に対する、政府の方針がただされました。
 また今回設置される労働協会には、官僚の姥捨山にしないよう、またその協会の思想傾向その他について質問がありました。
 第三は、文部省所管に関するものであります。すし詰め学級の解消に必要な教員数、学級数の不足及びそれに対していかなる対策があるか。また不正常授業及び危険校舎の改築等、公立文教施設について、いかなる対策をもって臨むかとの質疑がございました。
 なお質疑応答で明らかにされました一、二の点は、校長の管理職手当、道徳教育その他についてであります。
 詳細は速記録によってお願いいたします。質疑終了後、本分科会における討論採決は、本委員会に譲ることに決した次第であります。
 以上をもって第二分科会の報告を終ります。
○江崎委員 残余の報告は後刻に譲ることといたします。
 午後二時より再開することといたしまして、暫時休憩いたします。
    午後一時七分休憩
     ――――◇―――――
    〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕