第028回国会 予算委員会 第16号
昭和三十三年三月三日(月曜日)
    午前十時三十五分開議
 出席委員
   委員長 江崎 真澄君
   理事 今井  耕君 理事 川崎 秀二君
   理事 重政 誠之君 理事 田中 久雄君
   理事 橋本 龍伍君 理事 川俣 清音君
   理事 柳田 秀一君
      阿左美廣治君    小川 半次君
      大橋 武夫君    太田 正孝君
      北澤 直吉君    河本 敏夫君
      纐纈 彌三君    坂田 道太君
      櫻内 義雄君    周東 英雄君
      須磨彌吉郎君    高瀬  傳君
      中曽根康弘君    永山 忠則君
      灘尾 弘吉君    楢橋  渡君
      野田 卯一君    福永 一臣君
      船田  中君    古井 喜實君
      牧野 良三君    松浦周太郎君
      南  好雄君    宮澤 胤勇君
      八木 一郎君   山口喜久一郎君
      山崎  巖君    山本 勝市君
      山本 猛夫君    井手 以誠君
      井堀 繁雄君    今澄  勇君
      岡田 春夫君    北山 愛郎君
      小平  忠君    小松  幹君
      河野  密君    島上善五郎君
      田原 春次君    辻原 弘市君
      成田 知巳君    西村 榮一君
      古屋 貞雄君    門司  亮君
      森 三樹二君
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  岸  信介君
        法 務 大 臣 唐澤 俊樹君
        外 務 大 臣 藤山愛一郎君
        大 蔵 大 臣 一萬田尚登君
        文 部 大 臣 松永  東君
        厚 生 大 臣 堀木 鎌三君
        農 林 大 臣 赤城 宗徳君
        通商産業大臣  前尾繁三郎君
        運 輸 大 臣 中村三之丞君
        郵 政 大 臣 田中 角榮君
        労 働 大 臣 石田 博英君
        建 設 大 臣 根本龍太郎君
        国 務 大 臣 石井光次郎君
        国 務 大 臣 河野 一郎君
        国 務 大 臣 郡  祐一君
        国 務 大 臣 正力松太郎君
        国 務 大 臣 津島 壽一君
 出席政府委員
        内閣官房長官  愛知 揆一君
        法制局長官   林  修三君
        外務事務官
        (条約局長)  高橋 通敏君
        大蔵事務官
        (主計局長)  石原 周夫君
 委員外の出席者
        会計検査院長  加藤  進君
        専  門  員 岡林 清英君
    ―――――――――――――
三月三日
 委員上林山榮吉君、櫻内義雄君、須磨彌吉郎君、
 野澤清人君及び福永一臣君辞任につき、その補
 欠として阿左美廣治君、植木庚子郎君、纐纈彌
 三君、灘尾弘吉君及び高瀬傳君が議長の指名で
 委員に選任された。
同日
 委員阿左美廣治君、纐纈彌三君、高瀬傳君及び
 灘尾弘吉君辞任につき、その補欠として上林山
 榮吉君、須磨彌吉郎君、福永一臣君及び北村徳
 太郎君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 昭和三十三年度一般会計予算
 昭和三十三年度特別会計予算
 昭和三十三年度政府関係機関予算
     ――――◇―――――
○江崎委員長 これより会議を開きます。
 昭和三十三年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算、以上三案を議題といたします。質疑を続行いたします。柳田秀一君。
○柳田委員 われわれ社会党はすでに多数の同志を立てまして、三十三年度予算案を中心として、与党と野党の政策の対立点を明らかにいたしました。おそらく国民諸君は、われわれのこの論戦の過程を通じて、われわれ社会党の主張により多くの共鳴を得たことと思うのでありますけれども、なおまだ明確になっておらぬ点も多少ありますので、私は最後の締めくくりの意味で質問したいと思います。
 私ずっとこの委員会の質問を聞いておりますと、どうも閣僚諸公が、ただ何かあげ足をとられぬためにきゅうきゅうとした答弁をしておる。やはり国会を通じて国民の前に政府の施策を堂々と自信を持って明らかにする気魄が欠けておると思う、私の診断するところでは、(笑声)中には答弁恐怖症にかかっておられるような方も私は見受けるのです。しかし、きょうは、まあいわば落ち穂拾いみたいな質問ですから、どうか一つ閣僚諸公も安心なさって、自信を持って堂々とお答え願いたいと思います。
 今度の予算案は、戦後最悪の予算だとか、精神分裂予算だとかいわれますが、この予算編成の手順が非常によかったか、それともわれながらやはりこれは少しあまりよくなかった。どう思われますか。一つ、岸総理、結論だけで簡単でけっこうですから。
○岸国務大臣 予算編成の手続とか予算編成のことにつきましては、私は今回が総理大臣として最初の責任を持って編成をいたしたものであります。従いましてなれない点もあったと思いますし、その道程におけるいろいろなことに対しましても、いろいろと私自身も反省すべき点があると思います。そういう意味で編成の方法等については従来もいろいろな論議があるわけでありますが、将来についてはまたなお私としては改めたいと思うことはあるのであります。
○柳田委員 今度の予算編成ぐらい閣議でもめた、というと語弊がありますけれども、ぶつぶつ沸いた例はちょっと知らぬのです。ここに一月十一日の朝日新聞がありますが、「予算原案閣議でも強い不満事例あげ蔵相をなじる」藤山外務大臣「大蔵省は一体各省の仕事の内容を知った上で予算の査定にあたっているのかどうか疑問に思う。たとえば国連の分担金は条約で決められたものであるのに、大蔵省の一存で勝手にこれにメスを入れるようなことは国際的義務に反する。大蔵省は日航の人事問題まで干渉していた」。藤山外務大臣、藤山さん、今私が読み上げたことに対してあなたはどう思いますか。
○藤山国務大臣 予算の審議の過程におきまして、いろいろ外務大臣としても不満を持ったことはたくさんございます。従いましてわれわれは率直に外務省予算の成立のためにできるだけのことを申して、そうして大蔵省にも協力を求めたわけであります。
○柳田委員 「大蔵省が各省の細かい点までクチバシを入れすぎるのは困ったことだ。」これは石田労働大臣の言、石田労働大臣、これはどうですか。
○石田国務大臣 その通りの言葉を申し上げたわけではございませんが、予算編成の結果というものを見てみますと、あるいはその執行の面を見てみますと、われわれの方にまかせてもらうべき性質のことについての御発言が多かったというようなことは、私は考えております。しかしそれも今外務大臣の御答弁の通り、予算編成の過程においていろいろのことを申しますし、私どもといたしましては、労働省にたくさん予算を獲得をいたしまして、できるだけの仕事をしたいというふうに思いますので、そのテクニックとしていろいろのことは申しました。
○柳田委員 「大蔵省は出しゃばり過ぎる。これではまるで大蔵大臣が総理も同然といった感じで、政党内閣としてもおかしい。」「全く同感である。」「おかしい」と言ったのは田中郵政大臣、「同感である。」と言ったのは根本建設大臣。どちらからも聞きたい。
○田中国務大臣 お答えいたします。予算は御承知の通り大蔵事務当局が事務的に立案をいたしますが、内閣の閣僚は連帯して責任を負い、予算は内閣が編成するのでありますから、各閣僚は十分意見を述べて、理想的な予算を作るように、こういう意味の発言をしたのであります。
○根本国務大臣 お答え申し上げます。政党内閣でございますから、党の政策を十分に反映するということが政党内閣の建前である。それが第一次査定に当りまして、そういう点が欠けておる点がないかということで申し上げたのでありますが、その後の折衝の過程において、十分これが是正されましたので、それでけっこうだと思います。
○柳田委員 「制度改正はよいが、法律改正なしに予算措置でやるのは大蔵省の越権行為である。」これは堀木厚生大臣。
○堀木国務大臣 予算編成の過程において、われわれは自分のあずかっております政策を推進しようとする熱情は傾けなければならぬと思うのであります。その熱情の傾くところ、いろいろな言葉が起るといういうことは当然のことであります。どうぞ御了承願います。
○柳田委員 「大蔵省は予算要求に大ナタを振い、各省が泣きついて来ると優越感を感じている。これが大蔵官僚の生態である。」これは河野経企長官。
○河野国務大臣 今お話しになりました点は各大臣から申されましたように、予算の編成に当りましては、いろいろな場合にいろいろなことを申しておりますから、おそらくそのときにそういうことを言ったのだろうと思います。
○柳田委員 私がこのようにして各大臣をここへ引っぱり出したのは、ほかでもないのです。実はこの予算委員会で――すぐに予算の内容に入りますが、いまだかつて予算案編成までの手順であるとか、それに対する政党と内閣との関係であるとか、こういうようなことに対して掘り下げた論議はないわけなんです。私も昨年川崎委員とともに、欧米各国の予算制度を調査に行かしていただきました。また長く予算委員会の理事もやっておりますので、この際、今度のような戦後最悪の予算を編成したことを一つの反省のかてとして、契機として、一つ与野党共通の広場として考えてみたい、こういう意味で実は冒頭から各大臣に御出頭願ったようなわけであります。
 そこでまず第一に予算編成の時期について考えてみたい。われわれ本国会冒頭に、わが党の池田禎治君が予算編成のおくれた理由を緊急質問いたしました。財政法によって、予算は前年の十二月中に出すことを常例とする。それは総理もおっしゃっておった。それならば総理に私はお尋ねしますが、自民党の内閣が続いてからずっとこの方十二月中に出たことはありますか。一ぺんもございません。あなたの御返事を待つまでもない。一月の終りに出すのが常例になっておる。常例というのは、たまには何らかの突発事故があるとか、政変があるとか、いろいろなことで一月に延びるのはやむを得ない。しかし何もなしにこの内閣は昨年の夏以来健全に――健全かどうか知らぬが、ともかくも形式上は育っておる。それが一月の終りでなければ出ないというのは、これはやはり常例ではない。それはどこに原因があるか、この点も考えてみなければならぬと思う。そこで出発点は、予算決算会計令に書いてある。各省からは予算要求は八月三十一日までに大蔵省に出さなければならぬ。ところが昨年の八月に出てきたのは、宮内庁と行政管理庁と会計検査院くらいなんです。実際にそろったのは九月に入ってからです。スタートがおくれて、ゴールもおくれておる。こういうことではいつになっても弊は改まらないと思う。今度の予算編成の過程を見ましても、基本方針が一致したのが十二月十日、基本方針閣議決定が十二月二十日、大蔵省原案決定が一月八日、第二次査定が一月十六日、最終閣議決定が一月二十日、そうして一月の終りに国会提出。国会法で通常国会は十二月中に開かれる。それを受けて財政法も、十二月中に出せ。あの膨大な予算書をわれわれはふろしきに包んで、それぞれ自宅に持って帰るなり何なりして、そうしてお正月を迎えて、その間にそれを十分熟読して、お正月あけに国会を再開するならば、冒頭から予算委員会をやったならば、何も好んで政府や与党の理事が野党に三拝九拝して、三月三日に上げてくれ、いつ上げてくれ、そんなことを泣きつく必要は一つもない。わずか財政規模が一億か二億の市町村の予算ですら、予算書を配られてから、議案熟読といって一週間ぐらい休んで勉強する。この膨大な予算書を配っておいて、朝提案理由を説明して、その日の昼から審議を始めてくれといったって、これは審議できるわけはないじゃないか。これでは私は国政をゆだねられた国民に対して相済まぬと思う。これは政府も真剣になって、財政法の精神を守って早く出すことが必要だと思う。そうしてお互いにやはり予算審議という重大な国政審議権を有効に使うことが、私は今後必要だと思うのですが、総理はこれに対して相当かたい決意をもって今後そうしたいと思われますか、どうですか。
○岸国務大臣 お話の通り、財政法の規定は十二月中に出すことを常例とするということでありますが、これは御承知の通り、法律的な義務にはなっておらないわけであります。従来の慣行は、今柳田委員の言われるような慣行になっておるというのは事実であります。これをなるべく早く出して、そうして内容的に十分の検討と準備をもって審議に当るようにするということは、これは望ましいことであると私も考えます。ただ従来の実情から見ましても、また各省のやっております仕事の上から申しましても、また今日の国際情勢の変遷する状況から申しましても、今の財政法の規定のようにこれを実際に実現するということにつきましては、私なかなか困難があると思います。しかしなるべくそういう趣旨に従うように努力するということは、私としても望ましいことであると思います。
○柳田委員 次にそこで考えなければならぬのは、予算編成過程における内閣と政党の関係なんです。今日政党内閣として責任政治を内閣にやらせておるわけですが、この関係が私はまだ少し不明確じゃないかと思います。今回のように非常に予算審議の過程でもたもたもめたということは、政党が自分の政党からできた内閣に責任を持って予算を編成させている、それに対する政党の分野と内閣の分野のお互い双方の責任観念の区別がはっきりしておらぬところが根本の原因だと思う。それで、大体予算が編成されて、それから予算原案が出てくる。それに政党が干渉することは、これは私は憲法違反だと思う。私も多くの財政学者に聞いてみましたが、今回のように政党が予算編成の原案そのものまで修正を加えることは、これは内閣の予算編成権に対する憲法違反だと言っている学者が多いのです。これは違反だと断定するわけにはいきませんが、少くとも違反の疑い濃厚だと言っている学者が多いのです。この根本原因も、政党が自分の責任分野がはっきりわかっていないことが原因だと思う。そこで考えて参りますと、それならば内閣というものも内閣の責任分野がわかっていない、鳩山内閣ができたときに、行政の簡素化ということを言いました。そして各省に設けている委員会、調査会、審議会というような諮問機関は、これを法律に基くものも、あるいは法律に基かざるものも閣議決定のものも漸次整理するのだ、こう言っておった。それはかけ声だけだった。ここに資料がありますが、そういう声を出した昭和三十年には、法律に基くもの、法律に基かないもの、一切がっさいで内閣に二百二十六の調査会、審議会があったわけです。従ってこれが減っているはずですが、三十三年現在では二百五十一にふえているわけです。ことにこのふえ方は、岸内閣、あなたが内閣を編成されてから非常に急激にふえております。そうして各省別にどこが一番ふえているかといいますと、まず総理府、厚生省、農林省、通産省、運輸省、こういうところが非常にふえております。これはどういうことかというと、政党の政策の貧困なんです。本来政党が自分たちの責任内閣を作らせた以上は、政策こそは幾ら干渉してもよろしい。干渉でなしに、政策こそは自分のところできめて、内閣にやらせるのが政党内閣だ。ところがその政策が貧困だから、政党から生まれた内閣の中に審議会を設ける、やあ何々をやるのだといって、形式的には民主主義という形態のかくれみので、そこで責任のがれをやっている。これはある意味においては政党の自殺行為なんです。ほんとうは政党が立案をして、内閣にこれをやれと命じて、内閣はそれに対してその通りやったらいいのです。それが政党責任内閣なんです。内閣は各界、学識経験者その他の意見を聞く必要はない。学識経験者とか、あるいは各界の意見は政党が聞いたらいい。これが政党内閣だ。官僚内閣はそうはいかぬから、こういうふうな審議会を作ってもよろしい。超然内閣ならこういうものを作ってもよろしい。政党というものは政調会というものが厳存している以上は、そういうことは政調会が立案して、そこで内閣に命じてやったらいい。こういうことが不明確な結果、憲法のはっきり規定している予算の編成権に対してごぞごそ干渉する。政党がまるで大蔵省の役目をしている。だから自由党の政調会のことを夜の大蔵省だという。大体、夜の大統領、夜の大蔵省、夜というまくら言葉がつくもので、あまり名誉なものはありませんよ。私のこの見解に対して、岸総理、どうですか。
○岸国務大臣 予算編成と政党との関係につきましては、予算を編成するということの責任は内閣が持っておるわけであります。そうしてこれにどういう政策を盛るかということは、政党政治であります限り、政党の重要政策というものをこれに盛るという建前にすべきものであると思います。しかし私もこの予算編成の過程において、いろいろの点について将来の反省の資料があるということを最初に申し上げましたが、たとえば従来行われておる第一次査定というようなものが、ごく形式的な査定が行われ、一切の新規要求を切ってやるというふうな、これもまた従来の大体の慣行でありましたけれども、そういうところに私は非常な誤まりがあると思う。やはりそこに政党として責任を持つ重大政策だけは盛り込むということをやらなければならぬと思います。そういう点において、今の政党が政策、しこうして具体的な行政にはもちろん政党としてタッチすべきものでありませんから、政府が責任を持ってやるというあたりの責任を明確にするという意味におきましても、十分将来の問題としては考えて参りたい、かように思っております。
○柳田委員 今岸総理も問題の核心に触れられたわけですが、確かに予算編成の過程が間違っておる。大蔵省の方は、今各省大臣が不満をぶちまけたように、何でもかでも切ったらいい、切ったらいい。全然自分がまるで各省の上にいるような感じを持っている。これは河野さんが大蔵省の主計局を内閣に持っていこうと言われた理由もわかると思うのですが、先ほど申したように、政党と内閣の関係が明確になっておらなければ、大蔵省の主計局だけ内閣に持っていっても同じことです。その点をはっきりしてもらわなければならぬ。しかし大蔵省が何でもかでも査定する。大蔵省の各省配置の主計官のごときは、各省の局長をあごで使っている。自分の財産を切って分けてやるように思っているらしい。そこにわずかに大蔵省の官僚の優越感があるのかもしれぬが、そこにも問題がある。しかしながら問題はそんなところじゃない。それは枝葉末節の問題で、やはり党が重要政策をきめたならば、その重要政策には緩急の序列をつけて、そうして大体の予算のワクをきめて、それを大蔵省に事務的に作業させる。この順序が間違っておるわけです。こういうようにしてくる、そうして緩急の序列をつけるならば、それは当然政党が責任を持つのですから、あとでぶすぶす言うことはない。そこで一たん予算の編成権を内閣にゆだねた以上は、政党は干渉すべきものではない。その結果が自分たちに不満なら、そのときこそ、国会においては審議権というものがあるのですから、国会の審議権を通じてこれは修正したらよろしい。修正する権利は当然われわれにある。それが国会審議権だ。予算編成権まで政党が入ってはいかぬと思う。欧米各国の例を見て参りましたが、予算編成過程で政党が干渉するようなところはどこもございません。またその修正でも、アメリカを除く以外ほとんど増額修正は認めておりません。私も増額修正は認むべきでないと思う。予算編成権を内閣にゆだねた以上は、増額修正は認めるべきでない。もしもどうしても増額する必要があるならば、そのときこそ党が党の政策を立てて、そうして内閣にこれを命じて次の機会に増額の追加予算を組ましたらいい。そうしてやはり党と内閣の関係をもっと明確にしなければ、今日のようなこういう予算編成をしたならば、いつまでたっても私はこの弊はおさまらぬと思う。私も自分の貴重な質問時間をこれにさくのはどうかと思いましたけれども、この機会にこれはお互いに与野党共通の広場として、しかも内閣ともども真剣に考えなければならぬ問題だと思うので、冒頭にこれだけはぜひとも総理にも、また与党の諸君にも、これは野党もそうなんですが、お互いともどもに――岸内閣が今度のような戦後最悪の予算を作られたことが、幸か不幸か今後予算編成がスムーズにいくならば、これはまあまあ一つの思わざる副産物とでも言わなければならぬので、そういう意味で申したわけであります。これは御答弁は要りません。
 ただこの際私は言っておきたいのは、やはり今度の予算編成過程で問題になったのは総理の態度だと思う。吉田さんの株ががぜん上ってきたというのは、憲法調査会に書簡を出されたときと、今度の予算編成で岸総理の統率力が非常になかった。大蔵大臣はかわいそうに閣内では一人ぼっちで、党内でもだれも助けてやらぬ。そのときに岸さんがもう少しバック・アップしてやらなければかわいそうじゃないか。吉田さんはあのときはさすがにしっかりしておったじゃないか。こんなところで逆比例的に吉田さんの株が上ってきたのですが、この点については岸さんは相当に批判を受けていると思う。あなたは昨年外遊前でしたか、あとでしたか、箱根で記者会見でこう言っておる。予算規模は、本年度、三十二年度がむしろふくらみ過ぎて、来年度も本年並みにすれば、今の日本経済の実態から見て相当積極的な予算と言える、予算編成に当っては総花主義でなく、重点主義でいく、これは岸内閣の政治力をテストすることにもなると考えておる、こうあなたは言っておられる。ことしのこの予算は、わが党の各議員からつきましたように、私はこまかい数字まで入りませんが、ちょっと触れてみただけでも、国民所得に対する一般会計の率から見ても、三十二年度が一三・七、本年は一五・五、しかも生産の伸びが、昨年は七・九%、本年は二・三%、これらを見ても本年の予算はふくらみ過ぎていることがわかる。実質は一千億増だと言いましたけれども、実質一千億増の中に、おとといも大蔵大臣、あなたも苦笑いされたが、二百六十何億の復活予算が、編成技術だとかいってからくりのある手を使われた。あるいは三十三年度予算を先食いして三十二年度補正で組まれた、あるいは四百三十六億のたな上げで、半分ほどはひもつきになっておる。これは実質一千億じゃございません。実質は二千億にもなっておる。これはふくらみ過ぎなんです。そうなってくると、これはまさに岸内閣の政治力をテストするようなことになると考える。あなたはいみじくも言われましたが、ちょうど逆にいっておるように思うのですが、これはいかがですか。
○岸国務大臣 先ほど来予算編成の問題に関しましては、私自身相当に将来に向って反省すべきことがあるということを申し上げました。しかし、今おあげになりますように、この予算は戦後最悪の予算だというような御批評でありますけれども、私どもが責任を持って、その予算の内容については十分の確信を持ってわれわれの重要政策を織り込んで、しかも一般経済界の動向というものとにらみ合して、私は内容的には決して今の御批判が当らないものだと考えております。(拍手)
○柳田委員 当る当らぬは、近く行われる選挙で国民が批判してくれると思いますから、私はここでは深くは言いません。私は岸さんも岸さんなら、大蔵大臣も大蔵大臣だと思うのです。これくい、自分の構想が次から次へと政党から横やりを入れられて、あなたとしては、表面は、りっぱな予算を組みましたと速記録に載っておりますが、あなたの内心は、ひどい目に合ったと思っておられるでしょう。私はちょうどニュースを見ましたが、予算の最終閣議が決定して、あなたが夜おそく大蔵大臣の部屋に帰られた。あなたの深刻な顔というものはなかった。ああいうときには、やはり人間の感情というものは自然出るのです。戦後非常にけっこうな予算を組んだと思ったら、ニュース・マンには、あなたも政治家だから、にこにこ笑いをして入るものなんですが、苦笑いをするどころか、苦虫をつぶしたような顔をして、倉皇として、カメラ・マンに会ってもニュース・マンに会っても、フラッシュを逃げるようにしてあなたは大臣室に入った。そこにあなたのほんとうの感情が現われておると思うのです。水谷君も本会議で、ソーニークロフトの例をとって、ソーニークロフトは、邦貨に直して五百億円の増額でも、断固自分の職をけってまで戦った、あなたは何だ、こういうことを水谷議員も追及いたしましたが、私は何もソーニークロフトの例をとるまでもないと思うのです。ここに橋本君がおりますが、橋本君がかって厚生大臣のときに、遺家族援護法の問題のときに、何だこんなものはと、憤然として自分の職をけったことがあるのです。私はこの橋本君というのは、ちょっと見ると顔は柔和ですけれども、なかなか骨はすわっておると思う。あなたは最近答弁はだんだん上手になった、というよりは、答弁ではあまりしっぽを出さなくなりました。しかし私は、国会で答弁がうまいから大政治家とは言いませんよ。答弁技術がうまいのが大政治家ならば、岸総理大臣のごときは世界第一の政治家と思う。(笑声)しかし、世間はそうは信用しない。政治家に必要なものは、何といっても識見なんです。識見から信念が生まれてくる。そうして重要な地位に立ったならば、信念がおのずと責任感となって行動に現われる。私はあなたの大蔵大臣としての識見には敬意を表します。りっぱな大蔵大臣だと思う。識見はりっぱだと思うが、識見があっても、信念がない。信念がないから責任感のある行動が現われてこない。私は先日、何げなしに新聞の広告を見たときに、「日本」という雑誌にこういうことが書いてある。「かっての法皇、今は腰抜け大臣」、横に「一萬田尚登」と書いてある。(笑声)私は何ぼ売らんかな主義の広告だといっても、これはひどいと思った。私は予算委員会であなたにがみがみ言いますが、こうして長年、顔をつき合わして同じ委員会におりますと、そこに党派を越えて親近の情が沸いてきますよ。(笑声)あなたが腰抜け大臣と言われたら、私も決して快しとしない。しかし、そう言われるのも、あなたに信念がないからだ。一つあなたはもう少し信念を持ってもらわなければ困る。答弁が上手になっただけでは、政治家として――私はあなたに対して率直に、一つの友情を持って苦言を呈しておるのです。別に答弁は要りませんが、大蔵大臣として、何か一言……。
○一萬田国務大臣 いろいろお話を承わりまして、非常にありがたく思っております。しかしながら、一国の大蔵大臣が公けに、かりにも信念がないかのように言われることは、これは影響するところが大きい。そういう意味において、自然ここで私の考えを申し述べる必要があると思います。それはどういうことかといえば、これは具体的な問題でありますが、今度の予算編成につきましては、御承知のように歳入は非常に多い。非常に歳入が多い場合におきまして、しかも日本の経済を考えますときに、できるだけ歳出はやはり押えていく、そうして経済に刺激を与えることを避ける必要がある、これが基本方針であります。ところが、一国の政治をやる以上は、従来の経過からして、ここに当然増という歳出をどうしても組まなくちゃならぬ。やはり人口もふえる、いろいろな社会生活の上から新しい政策も、どうしてもある程度組まなくちゃならぬ。こういう意味におきまして、どういう程度の歳出を必要とするか、言いかえれば、経済に刺激を与えることはできるだけ避けつつ、しかもそのときにおける国家の財政需要をどういう程度に押えるかということが問題であります。従いまして、御承知のように三つの柱を立てた。そうしてこれを大体私は遂行いたしたつもりであります。信念がないとかあるとかということは、具体的な事柄について一つ御批判を願いたいと思うのでありまして、今日この予算が、だんだんと世間に理解を深めつつあることを、私は喜んでおるわけであります。(笑声)
○柳田委員 次に外交問題に入ります。先日わが党の西村委員から、沖縄の問題でありますが、岸さんに、昨年あなたの渡米の際のアイゼンハワー大統領との共同声明を引用して、沖縄住民の福祉の増進、経済的、文化的交流を促進するために、具体的にどういう手をお打ちになったか、年月と交渉のいきさつをお示し願いたい、こういうような質問をいたしましたら、あなたはこういう答弁をしておられる。先ほど申しましたように、昨年の大統領との会談においても、有力筋との会談においても、さらに九月に藤山外務大臣渡米の際にも、この問題を提示して向うに話しておる、その後朝海大使を通じて同様な問題に関して話をしておる、こういう答弁をされておるのです。そうしてこのときは、まだ例の成田君の賠償問題に関する質問がないときで、藤山さんもそれほどノイローゼになっておられぬのかもしらぬが、藤山さんがわざわざ、関連して答弁したいと申し出られて、こういうふうに言っておられる。今西村さんの御指摘になりましたような点はロバートソン次官補と会談を続けておる、こういうふうに答弁しておられる。ところが、これはその後、東京新聞の十一日ですか、ワシントンの坂井特派員からこういうような特電がきておるのです。衆議院予算委員会で社会党の西村議員の質問に答えて、岸首相が「現在在米大使館を通じてアメリカが沖縄に対する正しい認識を持つよう交渉を進めている」といっておるのは事実に沿わない。記者(坂井)が調べたところでは、日本側は岸首相及び藤山外相の当地訪問の際、沖縄の問題にちょっと触れただけで、その後正しい認識を持つよう交渉を進めているような事実はない。朝海大使がロバートソン国務次官補と今年会見したのは一月三十一日午後五時から約三十分で、その内容は金属食器を初め洋がさの骨、体温計、合板、マグロその他に対する輸出制限措置に関して日本の事情を話し、米政府の最善の考慮を要望したのであって、沖縄の話など一言も話されていない。下田公使は十日の記者会見で沖縄の問題につき日本政府から米政府に意思表示をするような訓令を何も受けていない、こういうふうに語っており、沖縄の弁務官を軍人から文官にかえることを米政府に要望するようなことは米国の内政上の問題に介入することになると語り、朝海大使またはその代理として下田公使が米政府首脳と沖縄行政権返還の交渉を那覇市長選挙後に行なったかどうかという問いに対しては否定的な答えをした。こういうふうに言っている。あなた方は現にやっております、それをわざわざ念を押して藤山さんも現にやっておりますといっている。ところが現にやっておらぬ、そういう事実はないと言っているのです。これはいかがですか。
○岸国務大臣 御承知の通り、沖縄の問題に関しましては、日本のこの問題に関する要望、すなわち施政権の返還やそれに対するいろいろな考え方というものが、アメリカは現在その意見に同調をしない状況にあるのであります。この根本は、私は沖縄に対して日本の国民の考えていることに対するアメリカの認識がまだ十分にいっておらぬというところにその一番大きな原因があると思うのであります。従いまして今お話のように、具体的に朝海大使を通じてこれを要求するとかどうとか、あるいは武官を文官にしろというような交渉をしておるわけではありませんけれども、沖縄の問題に関して一般的に日本の考え方、そこから発生するところの諸問題に関連してアメリカ側のこれに対する認識を深め、注意を喚起することは、われわれはあらゆる方法を通じて努力をいたしておるということを申し上げたのであります。
○柳田委員 このたびムーア中将はおそらく瀬長市長、兼次市長の問題で詰め腹を切らされたのでしょう、交代させられました。そうしてブース中将というのを後任に、占領地でもないのに大統領が上院の承認を受けて任命するという――アメリカ憲法にも違反するような沖縄の高等弁務官に武官を充てているという点を西村委員から追及したわけです。これに対してはあなたも決してこれは好ましいとは思っていない、こう言っている。ところがムーア中将からブース中将になるまでに二十日間のブランクがあったのです。その間に藤山外務大臣は、国会でも問題になっておる――確かにこれはアメリカの内政上の問題であるけれども、沖縄は日本の潜在主権のあるところでもあり、住民はあなたが国会で答弁されたように武官政治よりも文官政治を望んでいる。住民は一日も早く日本復帰を願っておるが、それがかなわないまでも、文官政治を望んでおる。ことに最近の沖縄問題に関しても、武官政治の結果は必ずしも芳ばしくない。一つ文官にかえたらどうか――後任の交代するのは、こんな好機はありません。こんなときにあなたはのほほんとしておられたのですか。一ぺんでもそういうような国会のこの国民の意思を通じてアメリカ政府に交渉されましたかどうか。交渉されたならその年月日と向う側の答えを一応伺いたい。
○藤山国務大臣 沖縄の施政権の問題につきましては、御承知のように日本政府としてあらゆる機会にアリカメ側に対して日本の考え方を申し、またそういう意味において要求しなければならぬわけであります。従いまして総理の行かれたときもそうだと思いますが、私が行きましたときにもアメリカ側にそのことを伝え、かつまた朝海大使等には十分われわれの考え方を浸透さしておると思っております。従って大使は常時そういう問題についてアメリカ側と会談する際に、特定の問題を持って参りました場合でも、そういう問題を話した後に沖縄の問題その他についていろいろ話し合いをしていることは事実であります。そういう意味におきまして、われわれもまた日本におきます世論の動向なり、あるいは沖縄におきます事実なりというものに対して、できるだけアップ・ツー・デートのニュースを朝海大使のところに送っておることも事実でありまして、そういうことも含みながら全体の動きとしてアメリカにおきますわが公館が活動いたしておることは信じて疑いません。
○柳田委員 私はいつやられましたか、それに対しては向う側の返答はどうだったかということを聞いている。ちょうどこういう更迭の機会、ムーアがやめるときこそ千載一遇の好機だから、国会でこういう論議があった、一つ考えて見てくれぬか、何も内政に干渉するわけでもないが、日本の潜在主権のあるところだし、このくらいのところはわれわれも率直に無遠慮に申し上げるが、どうか一つ考えてくれ、こういうふうにあなたは言われたか言われなかったか。言われたとするならいつ言われたか、それに対しては向うがどう返答したか、こういうことなんです。言われなかったなら言われなかったで、それから話は進みませんから、言われなかったかどうか、言われたらどう返答したか、それを私は聞いている。
○藤山国務大臣 ただいま申しましたように、われわれとしては国会の論議なりあるいは言論界の様子なりあるいは日本に起っていますそういう問題に対する事象を常時朝海大使のところに言うております。従って朝海大使はいろいろな問題でアメリカ側と接触するときに、そういう問題について話をしておるわけでありまして、特定の場合においてそういう問題を申したということはありませんけれども、朝海大使はよくわれわれの意図をくんで常時そういう問題について話をしておるはずであります。
○柳田委員 私が言ったのは、あなたが東京のマッカーサー大使を通じて交渉したか、それともアメリカの朝海大使に訓令を発してそれを交渉せしめたかと聞いている。おそらくあなたはやっておらぬから、何とかほかのことを言っているのでしょう。やっていないことは明瞭になりました。重ねて問いません。
 岸さんという人は非常に要領のいい人で、そのときそのときで非常にうまいことを言われることにおいては天才だと思うのですが、去年の四月二十五日丸の内プレス・クラブで外人の記者クラブの会見のときに、英語で次のような演説をやった。「東洋には遠慮とか控え目な態度を美徳とする考えがあるが、日米関係に関する限り、私はこの美徳を乗り越えて日本の立場及びその国民の希望を米首脳者に率直に述べたいと思っている。この遠慮を捨てることは真の友人の間のみに可能なことであり、われわれの友人たる米国国民はこれをむしろ歓迎してくれるであろう。」ところが何も言っちゃいない。これこそ美徳のよろめきだ。何にも言っていない。
 そこで日ソ交渉をお尋ねしますが、先般の政府の考えは、領土で譲らなければ平和条約の締結交渉には応じない、こういうことですが、そうすると、一つ前提条件がある。領土で譲らなけれ交渉には応じない。そうすると、実際に事務的段階としてはどういうことをやるのですか。事前に何らかの方法でその条件が満たされるかどうかを確認して、その上で交渉に入られるのですか。交渉に入ってから、その交渉の過程においてそれを確認される方向に持っていかれるのですか。その点は非常に大事だと思いますから、明瞭にお答え願いたいと思います。
○岸国務大臣 日ソの領土問題に関する見解は根本的に違っておりまして、これはわれわれが過去において長い間努力をしたにかかわらず、一致することができなかった問題であります。これはやはり日ソの共同宣言によって国交を正常化し、そうして日ソ間におけるところのいろいろな具体的問題を友好的に解決していって、それを積み重ねて、日ソ間のほんとうの友好関係や信頼関係ができてこなければ、領土問題というものは、従来の経緯から見ましても、私は解決はむずかしいと思います。そういう考えのもとに、あるいは漁業条約の折衝におきまして、あるいはまた通商貿易の関係を進めることにおいて、あるいは両国の友好的な関係を――わが国民的要望である領土に関する考え方を、ソ連をして十分に認識せしめるにあらざれば、私はなかなか解決することはむずかしいと思います。そういう考えのもとに、一つ一ついろいろな問題を友好的に解決し、これを積み重ねていくところの努力をいたして参っておるわけであります。そういうことを積んでいく必要がある。かように考えております。
○柳田委員 私のお尋ねしたのは、領土だけは厳然として譲れない、だから、領土を向うが譲らなければ交渉には応じられないというその表現は、そういう条件を何らかの方法で確認することができなければ、もう平和条約の締結交渉自体をやらないのか、あるいは平和交渉をやりながらそれを確認していくのか、そういう段階を聞いておるのです。
○岸国務大臣 現在の段階におきましては、私はまだソ連が日本のわれわれの国民的要望に対して耳を傾けるという態度を示しておらないと思うのです。従いまして現在の状況においては、特に耳を傾けるという、従来の声明をくつがえすような意見の発表があれば、私はこれに応じて交渉に入るということを考えていいと思いますが、そういう状況に現在の段階はないと思います。従って入ることができないという考えであります。
○柳田委員 明確になりましたことは、今の段階では平和条約を結ぶ段階ではない、今のような状態では平和条約を結ぶ意思もない、こういうふうに了解してよろしゅうございますね。―それではそういうふうに了解しました。悲しいことであります。
 三月一日から東京で韓国との全面会談をやるんだといっておりましたが、まだもたもたしておりますが、かりにこの問題が解決したとして―両国の間に解決することが望ましいのですが、現在朝鮮は南北両朝鮮に分れておりますが、北鮮の方をほっておいて、韓国だけを承認する御意思がありますか。それは朝鮮の統一を待ってから、朝鮮一本として承認される考えか、二つに分れておっても韓国だけを承認するというお考えですか。その点はっきりして下さい。
○岸国務大臣 これは従来日韓の間の長い交渉の過程を通じまして、私はこの間に、両国の間の正当な交渉が円滑に妥結されるならば、当然韓国を承認すべきものであると思います。
○柳田委員 われわれは、今朝鮮が三十八度線で分れておるのに、その一方を承認することは他日に悔いを残す、やはり朝鮮民族自身の公正な選挙によって統一朝鮮ができるまでは、承認を見合わすべきだと思いますが、岸総理はそういうふうに明言されたのですから、これは並行線ですから…。
 先般ヴェトナム賠償でも問題になったのは、どうも政府は賠償を急ぎ過ぎるきらいがある。何か賠償には生産財賠償があるので、賠償と大資本、あるいはそういう独占企業体のその間のマージンまで、これは国家が背負って払うんですから、それとの関連があるやに国民は非常な不安を持っておる。インドネシアは今日非常な政情不安ですが、こういう政情不安のときにでも、賠償はびしびし払っていかれますか。賠償の締結はできましたが、これは種種の問題もありましょうが、少し見合わすというお考えはありませんかどうか
○岸国務大臣 私は、賠償問題全体に何か急ぎ過ぎる、それに何か裏があるんじゃないかというふうな意図の御質問であったと思いますが、決してそうじゃないので、日本がアジアの一国として、アジアの諸国との間に戦争に関連しての、われわれがいろいろな地方に与えておる国民感情なり、あるいは戦時中に受けたところの損害というものに対しては、一日も早く日本が、日本の国力の許す限り早く解決して、これと正常な国交関係を開き、互いに友好関係を進めていくということは、アジアの一国として私は当然やらなければならぬことであって、今までおくれておることが、いろいろな理由があったわけでありますけれども、むしろ遺憾なことである、かように考えておるわけであります。インドネシアの問題につきましては、インドネシアの最近の国情に対しましては、私どももインドネシアのために非常に遺憾に考えておるのでありますが、しかしこの問題は、私どもの見通しでは、インドネシアの中央政府の力によって、これらの問題が解決されるということを望んでおるのでありまして、そういう見地から、私どもがインドネシアとの間に調印いたしましたところの賠償協定並びに平和条約というものは、できるだけ早く批准をして、そうして正常な国交関係を開いて、両国の親善、繁栄に資したい、かように考えております。
○柳田委員 私は昨年欧米を回りましたが、特にヨーロッパに行きますと、日本の実情に案外うといのに驚くわけであります。藤山さんは昨年九月に、英政府の賓客としてロンドンに行かれたのですが、イギリスは、私の受けた感じでは、われわれの接触する上層の方においてはそう対日感情は悪くありませんが、やはり民衆の中に飛び込みますと、必ずしも対日感情はよくない。もう一つは、これは戦争ということもあるでしょう、あるいは紡績とか船舶とか、イギリスの産業と日本の産業との競争という点もありましょう、またいわゆるイギリスのジョンブル的な尊大な態度ということもありましょうが、私は日本を知らぬと思う。これは何もイギリスだけでなく、ヨーロッパの通弊だと思う。日本を知らない。外務省は日本を紹介し、宣伝し、日本の実情を正しく認識さすために、今日どういう手を打っておられますか。その点、簡単でけっこうですが、承わりたい。
○藤山国務大臣 御説のように、日本の実情を十分紹介し、知らせることは必要でありまして、それがただいまお話のような日本に対する感情というものを正しく導いていくということにもなろうかと思います。外務省といたしましては、極力そういう面を充実して参らなければならぬのでありまして、現在におきましても、映画あるいは文書、雑誌その他の方法をもちまして、広く一般民衆にも浸透するように努力をいたしておるわけであります。本年度の予算におきましても、一億三千万円ほど増加をしていただきまして、カイロでありますとか、あるいはニューデリーでありますとか、東南アジア方面のインフォーメーション・センターを作ることにいたしておりますが、そういう意味で今後とも努力をいたして参りまして、新しい日本を十分に紹介して参りたい、こう考えております。
○柳田委員 ところが私は昨年、偶然イギリスの小学校の教科書を手に入れてびっくりした。一九五六年のインプレッションです。イギリスの教科書ですから、私もつまびらにしませんが、民間で編集して国が検定するのじゃないかと思うが、これは地理の教科書ですが、その中に日本はランド・オブ・ザ・ライジング・サンというから、日出ずる国というのですが、これを見て憤慨するやら、ばかくさいやら、これじゃとても対英感情はよくならぬ。ここへ出てきておるこの風俗なんというのは、これは明治初年のものなんです。それから中には富士山と、それから船の絵がかいてある。そうしてこの漁師は家がない。一年中船に住んでいる。これは広東のあのデルタ地帯の蛋民族のことなんです。こういうような間違いをやっている。それから子供は五才になったら一人前のおとなになるというので、元服の絵がかいてある。これは昔の十五才でしょうが、英語でフィフスと書いてある。こういうふうに間違えている。ア・ボーイズ・オヴ・フィフス・バースデー、それからヒー・フィールズ・クワイト・ア・マンと書いてある。これはチンプンカンプンです。おもしろいのは人力車に乗っている、この車夫のことも書いてあります。それからジャップという言葉が書いてある。しかし内容は決して日本を悪くは言っておりません。日本人は親切だとか、かなりほめて書いています。こんなものがイギリスの一九五六年の教科書に書いてある。これでは対英感情はよくならぬ。軽べつされて、日本に電車があるかという質問を食らうのは当然だと思いますが、一つ総理見て下さい。
 これは、私は外務大臣に要望しております。お答えは要りませんが、もう少しやはり在外公館―イギリキの在外公館だけでなしに、各国の在外公館でどういうふうに日本を紹介しているか、特に教科書は大事ですから、調べて外務省に報告させるようにしなければいけない。おそらくこれに類するようなものがずいぶんあると思います。御参考までに見ておいて下さい。
 一昨日、私のところの河野委員から、核兵器の禁止問題をお尋ねいたしました。岸さんの答弁はこうです。憲法上、条約上議論はある、世界における軍事科学の発達に伴う核兵器の変革ということもある、そこで核兵器を持たないとか、持たせないということは、これは日本国民の国民感情であり、いかなる人が政府の首班に立つとも、この国民の信念を貫くことこそ日本国民の胸の中からの信念にこたえるものであり、一時的のものであってはならない、また米軍の核兵器の持ち込みも、法律上条約上の根拠はないが、日米共同声明に基く委員会の運営に基いて処理することであり、日本国民の感情をも考慮して、両国の友好と理解の上に立っておる限り、日本の意思に反して一方的に持ち込むことはない、これは表現の内容じゃありませんが、要約するとあなたの思想とあなたのお考えというものは、大体こういうふうに集約されると思いますが、これは間違いありませんか、どうですか。
○岸国務大臣 私の考えは、大体今柳田委員のおっしゃる通りであります。
○柳田委員 岸さんは、昨年五月でしたか、参議院の内閣委員会で、核兵器と憲法関係に対してこういうふうに統一解釈をやっておられます。その前にはだいぶもたつかれまして、そうしてちょっと参議院ももめて、そうして閣内で統一見解としてこういうふうに言っている。日本の憲法によって核兵器は自衛のワク内で持つことに制約されておる、核兵器は発達途上にあるから、将来いろいろなものが出るかもわからない、核兵器という名前があるからといって、それを持つことは何でも憲法違反になるとは限らない、自衛力の範囲内なら原子力を用いても差しつかえない、こういうふうに統一解釈を発表された、これも間違いありませんね。
○岸国務大臣 そうです。
○柳田委員 ここに問題になるのは、自衛力の範囲内なら原子力を用いても差しつかえないとおっしゃっておりますが、原子力基本法には、原子力というものは平和にしか使えないとなっておる。だから、こういう点にも法律違反があるが、しかしきょうはこの点はつきません。このように原子力基本法には平和利用に限ると書いてある。これは国会でも決議しております。従ってこれには問題がありますが、きょうはつきません。
    〔委員長退席、重政委員長代理着席〕
 あなたは昨年インドに行かれまして、ネール首相との間にこういう共同声明を出されておる。これは外務省からもらった資料ですが、日本・インド共同コミユニケ、この共同コミユニケの六に「両国首相は、これ等の核および熱核実験爆発の即時中止を痛切に訴えるものである。両国首相は、関係大国がこれら実験の究極的な廃止とあらゆる種類の核および熱核兵器の禁止に関する取極に達するであろうとの希望を表明する。」
 問題は、ここにはあらゆる種類の核兵器となっております。そうなると、あなたは核兵器というものは将来これは原子力の発達、軍事科学の発達によって、あるいはどういうふうに発達するかもわからない、そうすると、自衛の中に用い得る核兵器もあるかもしれないし、あるいはわからないから、ただ単に核兵器だからといって憲法違反だと言うのは当らない、自衛の範囲内なら、あるいは将来原子力を用いても差しつかえない、こう言っておられます。ところがインドのネール首相との間の共同コミユニケには、あらゆる種類の核兵器、とこうなっておる。これは、あなたの国会の答弁と矛盾しませんか。これはネールさんに調子を合せたのですか。
○岸国務大臣 私は、今おあげになりました憲法解釈の問題は、憲法解釈の法律のなにといたして、参議院で政府の統一の見解を発表いたしております。しかしその際にも私は、日本の自衛隊を核兵器をもって装備する意思はないということを――これは、憲法上やってならぬことは、いかなる政府といえどもやってならぬことは当然であります。しかし憲法上ででき得ることであっても、望ましくない、これはよくないということは、私は政策的に私が政治家として政権を担当しておる限りにおいて、それはやらないと言うことはやはりちっとも差しつかえないことであって、そういう意味で参議院でもお答えをしておるわけであります。従いまして、その両方の間には、私は少しも矛盾を感じないのであります。矛盾はないのであります。
○柳田委員 あなたは方々に行かれました。ビルマ、インド、パキスタン、セイロン、タイ、台湾、ここで共同声明を出しておられます。それを見ると、ビルマ、インド、セイロンというような諸国においては、バンドン会議における十原則の確認、あるいは原水爆の核爆発実験は全人類の将来のために即時停止すべきことが表明されておる、こういうことです。これら中立主義の国々では、あなたは民族の独立だとか、あるいは植民地主義反対とか、核兵器の禁止というようなことを主張する。そういうバンドン精神の賛美者です。今言ったバンドン精神を確認するような共同声明を出しておる。ところが今度はSEATOの加盟国である。パキスタンに行かれると、ちょっと調子が変ってくる。パキスタンとの共同声盟では、「熱核実験爆発の即時中止」のかわりに「大量殺戮兵器の製造、実験および使用を含めすべての軍備の制限および管理」こういうふうになっております。ところが今度は第七艦隊が原水爆を積んで遊よくしておるところの台湾に行くと、こういうことに全然触れられていないのです。あなたが言われるように、原水爆、そういうものを持たない、持たせないということは日本民族の悲願であり、これは単に思いつきではない。だれが首班になろうとも、これは日本民族の国民的熱情だ、こう言われるならば、また私はその通りだと思うのです。この原水爆、こういうような核兵器を日本民族は今後持たない、また日本にいる米軍にも絶対持たせないということが、私は原水爆の悲惨な目に人類で初めてあった日本人の氷のような冷たい理性とともに火のような熱情だと思うのです。ところがあなたはこういうように国会で答弁しながら、方々に行って、ところどころで共同声明で調子が変っているのです。もとより共同声明というものは、その国々と共同声明をやるのですから、その国の実情によって違ってくることはわかりますが、あなたが核兵器について、そういうような国民感情をほんとうに受け取るならば、台湾に行こうと、パキスタンに行こうと、ビルマに行こうと、セイロンに行こうと、この一点だけこそは、岸総理は行くところ行くところ、核兵器に対してはきぜんたる態度をとっておるということが、日本人はどこへ行ってもこれでなければ困るというきぜんたる態度をとることが、日本が世界をリードして、このような科学の進歩が人間を破滅に導くようなことを阻止するあなたの何よりの実行なんです、行動なんです。ところが台湾では何も言っていない。これは一体どういうことなんですか。
○岸国務大臣 私が回りました国々の実情が違っておることは柳田委員も御承知の通りで、共同声明は両国の首相の意見の一致した点を声明するものであることも御承知の通りであります。私は至るところに行きまして、日本の核兵器に対する、また原水爆実験禁止に関する――国連でもわれわれが主張いたしておりますので、その考えはどこの国に行っても述べております。それに共鳴した国においては
 そのことが一緒の共同声明に載っておりますが、おれの方の実情からいって、その考え方は自分の国としては共同声明にも載せるわけにいかないし、自分としても賛成できないと言っておるところもあるし、趣旨としては賛成しておるけれども、自分の国情としては共同声明に載せることは適当でないというようなところでは、これは共同声明の精神がそういう精神のものであり、また私がたずねた期間というものは、各国国において非常に短かい期間でありますので、両国の首相の間に意見が一致したことが盛り上げられておるわけであります。話したことは、まだ向う側の立場だけで要求をされたこともありますけれども、これでわれわれが認めないものは入れないということになっておるわけであります。
○柳田委員 次に、核兵器の持ち込みの問題を聞いてみましょう。先般二月十四日ですか、衆議院外務委員会で、外務大臣は、例の昭和三十年ですか、五月三十一日、重光・アリソン会談で、日本の同意なくして、承認なくして核兵器は日本に持ち込まない、こういう会談をしておるのです。これに対する法律的、政治的、道徳的の効力についてお尋ねしたわけですが、これについて一つ質問してみましょう。三十年の重光・アリソン会談というもの、すなわち日本の承諾なくして核兵器を米軍は絶対日本に持って参りません、これはどうなんですか。藤山さん、法律的の効果はありますか、両国を拘束する法律的の効果はありますか。
○藤山国務大臣 重光さんとアリソン氏との間の話し合いにつきましては、特に法律的効果があるとは考えられませんけれども、それは大いに尊重されるべきものだとは存じます。
○柳田委員 そうすると法律的効果はない。しかし大いに尊重されるということは、政治的だとか道徳的効果はある。だから両国を拘束する法律的効果はないが、政治的道徳的の効果はある、こういうように了解してよろしゅうございますか、外務大臣。
○藤山国務大臣 ただいまお話のように、重光さんとアリソン氏との会談もさようであると同時に、われわれは日本人の熱意をもってやって参ります意味において、道徳的なそういうような意味の効果は大いにアメリカに与えていかなければならぬと、こういうように考えております。
○柳田委員 あなたは言葉が非常に多いのです。要するに法律的効果はないが、政治的道徳的効果はある。私も実はそう考えるのですよ。われわれはそう考えるから、そういうような法律的効果のないものでは国民は納得いかぬから、条約なりあるいは協定なり交換公文なり共同声明なり、そういうものを一つ出したらどうかといつでも絶えず言っておるのですが、法律的効果はないが、道徳上、政治上の効果はある、これは常識だと思うのです。そういう意味に解していいですね。どうですか。
○藤山国務大臣 今私の申しました答弁が足りなかったのならば、お話のように道徳的、政治的効果があるということであります。
○柳田委員 ところが実際はそうじゃないのです。ここに二十二国会における、昭和三十年七月六日、衆議院の外務委員会の速記録がありますが、たんねんに読みましたからいつでも原文のまま言えますが、これを要約いたしますと、当時の条約局長下田武三君はこう言っておる。国際的約束は必ずしも文書によらない、法律的に拘束するものは必ずしも文書によらない、これは国際法の通説である、口頭の約束もある、本件は法律的、政治的、道義的拘束力のあるインターナショナル・コミットメントだ、こう言っておるのですが、これは全然政府間の答弁が食い違っておるがどうですか。これは重大なんですよ。外務大臣、どうですか。
○藤山国務大臣 政府委員に答弁させます。
○高橋政府委員 お答え申し上げます。その点につきましては、重光・アリソンの協定と申しますか、話し合いは、条約とか協定とか交換公文とか、書いたものではございませんので、その意味におきます法的拘束力ということはないというふうにわれわれは考えております。しかしその前の、前言でございますが、その前の意味は、そのような書いたものとしての法的拘束力というのでなく、政治的と申しますか、道義的と申しますか、そのような拘束力があるということを強調したものであろうと考えております。
○柳田委員 そうじゃないのです。よろしいか、あなたの言われるのは、条約とか交換公文とか協定とか、そういう意味においての法律的の拘束力はない。今条約局長はそう言われた。そういう意味である。それならほかの意味が何かありますか。そういう意味において条件付なんです。条約とか交換公文とか、あるいは協定とかいう意味においては、法律的拘束力はない、あなたはそう答弁された。そうではないのです。当時の下田条約局長は、国際約束というものは必ずしも文書によらない、法律的に拘束するものは、必ずしも文書によらないのが国際法の通説だというのです。口頭の約束もあるというのです。それでこれは口頭だということはわかっておるのです。だからわれわれはしつこく何か文書にしろと言っているのです。だから法律的、政治的道義的の拘束力がある、口頭だけれどもあると言うのです。法律的に拘束力があるという以上は拘束力がある。そういうようなインターナショナル・コミットメントだ。あなたの言うのは文書とかそういうものにおけるところの拘束力、私は文書における拘束力を言っておるのじゃない。要するに問題は最後の結論なんです。文書によろうが何によろうが、拘束力はあると言うのです。下田さんは文書によろうが何によろうが拘束力はある、口頭によろうと拘束力があるというのが国際法の通念だと言っているのです。これに対してはどうなんですか。
○高橋政府委員 先ほどの私のお答えでございますが、あるいは十分意を尽していなかったかと思います。当時の下田条約局長の発言は、法律的ということも言っておりますが、むしろ私といたしましては、道義的とか政治的の方が強いと申しますか、前の法律的拘束力はないというふうに私は感じております。
○柳田委員 それでは速記録を読みます。われわれはあなたのように、しつこく何回言ったかわからない。穗積委員と森島委員と戸叶委員と、与党の並木委員も言っておるのだ。しつこくしつこくあなたのように言っておるのだ。これはあなたの今言われたようにわれわれ社会党が言っておる。しかし、どうしてもそうじゃないのです。私が言ったように、これは法律的拘束力があります――はっきり言いましょうか。さらに大使が更迭しても、すなわちアリソン大使からマッカーサー大使になっても、本国の内閣がかわっても、本国というのはアメリカの内閣が民主党から共和党にかわっても、政府の同一性の見地からこれは有効だ、そこまで言い切った。そして重光さんもそのときに、条約局長が国際間における約束は文書によっても口頭によっても、拘束力があるという趣旨の説明は同感だ、こう言っておる。そして、私だけではない、次の内閣も拘束力があると言っておる。それはおかしいといって、しつこくしつこく問うておるのです。ところが政府の答弁は今言ったようなことです。あなた方の同じようにわれわれは言ったのですよ。だからこれは鳩山内閣時代と岸内閣時代と全然違うじゃないですか。国民のこのような大事な問題、核兵器を日本に持ち込む問題に対して、前内閣と現内閣と、同じ自由民主党の内閣が、こういうふうに違ったらどうするのですか。こんな大事なことはもう一度、これは藤山外務大臣、政治的な問題でありますから、どう思いますか。
○藤山国務大臣 私としては今まで申し上げたことで尽きていると思います。
○柳田委員 尽きていない。それで私は最初に言ったのです。こんな大事な問題ですよ。日本に原子爆弾を持ってくるか、あるいは持ってきたか、国民はもう非常に疑惑を持っておるのです。ところが、(「解釈の違いだ」と呼ぶ者あり)これは解釈の違いじゃない。この解釈が問題なのです。違っているのは、政府同士が違っているのです。これははっきりして下さいよ。これは重光さんが言ったことは間違いですか。下田条約局長が言ったことは間違いですか。あなた方の言っているのが正しいのですか。どうなんです。これは二者択一ですよ。これは条約局長が正しいなら、前の局長は間違っておるのだ。
○高橋政府委員 どうも私の御答弁が十分でないと思いましたので、いろいろお疑いがあると思いますが、私ら事務当局といたしましては、やはり法的拘束力というものはないものであって、これは政治的、道義的なものであろうというふうに感じております。ただし、同じようなそういう拘束力があとあとになってますます強められるかどうかというような問題は、これは政治的な問題でありますが、法律的に言いますれば、ないと思います。
    〔重政委員長代理退席、委員長着席〕
○柳田委員 実はわれわれもそう思ってしつこく問うております。しかしこれはがんとしてそうだと言う。そうなってくると、これは内閣で違っておる。そうすると、あなた方がかわったら、また次の内閣がやはり鳩山内閣の通りと言われるかもわからない。これは前の内閣と全然違うのですよ。そうするとあなた方の内閣がかわったときには、いやあれはやはり重光さん、下田さんの言った線が正しいと言われるかもわからない。これではわれわれは安心して内閣にまかせられない。現に下田さんは現在ワシントンにおられます。一つ呼んでみて聞いたらどうですか。この速記録を一ぺん読んでごらんなさい。しつこくしつこく言っても、道義的でなしに法律的に拘束力があると言っておる。――あなたは答弁はよろしい。政府委員は答弁を強要することはない。委員は国会法、憲法によって、国権に基いて質問しておるのです。政府委員というものは、大臣の政治的の答弁にさらに事務的に、法律的に何らかの補足をする場合にやるわけであって、今条約局長が言っておるから、あなたはやることはない。あなたは強要することはない。
 だから私は質問を続けます。そこで、こういうふうに前内閣と現内閣とこのような重大な問題で食い違いがきておる。総理、この問題はどうしますか。
○岸国務大臣 法律解釈の問題があるようですが、私は政治的に考えてみて、今柳田さんは非常に御心配になっておるようだけれども、結果的に言うと、何も御心配することは要らない。かりにこのなには拘束力がないのだというた場合に、それでもって核兵器を持ち込むだろうというような結論になるなら、これは非常に御心配になることがあると思う。しかし私は、国際間の拘束力というものは政治的、道義的な、ことに日米の関係のような場合においてはそれは非常に重大なものであって、決して形式的に法律解釈が、法律的の責任が、拘束力があるかないかということでなしに、むしろ政治的、道義的の拘束力というものに非常な重要性があると思う。従って結果的において御心配のようなことは、前の内閣では持ち込まなかったが今度は勝手に持ち込めるのだというような国民的不安は何らない、かように考えております。
○柳田委員 私はそういうことを聞いておるのではない。それはあなたが最初言われたように友好と理解の上に立つ。そうではなしに、前内閣は、これは口頭であろうが、いやしくも一国の大使がコミットしたものだ、そういうコミットメントでこれは両国を法律的に拘束する力があるのだ。大使が更迭しようと、本国の内閣がかわろうと、内閣同一性の見地から有効だ、こうまで重光さんや下田さんは言っておるのです。それをあなた方が一片のここの答弁で取り消したところで、それは済まぬと思うのです。あなた方は、また内閣がかわったら、また次が変ってくる。国会の速記録に載ったところの――こういうような速記録というものはそのような権威のないものじゃないと思う。これはやはり内閣で答弁した以上は、内閣でずっと続くものだと思う。そう簡単なものではないと思う。だから将来、現実にはどうなろうが、そんなことを問うておるのではない。やはり国会は法律を審議するところで、法理論を問うておるのじゃない。そういう問題はどうですか。全然違うじゃないですか。
○岸国務大臣 私は、条約でもないし、交換公文とか協定とかいうものでないのですから、そういう意味の拘束力はないことは言うを待たないのでありますが、やはり国際間の一つの約束であり、ちゃんと権限を持った人の間に約束されたことは、ただその人が地位をかわろうが、その拘束力というものは残る。そういう意味の拘束力はある。いわゆる条約や協定やあるいは交換公文によるところの拘束力、そういう拘束力をかりに法的といえば、そういう意味においては法的の拘束力はないという解釈になりましょうが、それが拘束力が何らかの意味において拘束力があるというなら、一つの法的拘束力である。拘束力というものは一時的なものではなしに、それが続くのだという趣旨においては、私は、間違いないのであって、そういう点においては御心配のようなことはさらにないであろう、かように考えております。
○柳田委員 私が問うておるのは、重光さん、下田さん時代には――前段を問うておるのです。われわれは文書にしろと言った。ところが国際約束は必ずしも文書によらぬのが国際法の通説になっておると言って――道義的、政治的拘束力があるという、これはわかりました。法律的に両国を拘束すると言い切った。これならけっこうなことだが、われわれは安心できない。ところがあなたの方は拘束しない、われわれも拘束しないと思うのだが、しかし、前内閣がここまではっきり言い切っている限りにおいては何らかの根拠があるのではないか。これに対してどうなんですか。どうもこれは宙に浮いておると私は思う。
○岸国務大臣 法律的の――条約であれば御承知の通り国会の批准をもって承認を受けるというような手続によっての一つの形式的効力が発生するわけでありますが、しかし下田君が言ったのは、国際法の一般理論として、そういう文書にしなくともやはり両国を拘束する力を持っておる取りきめというものはあるのだということを申したのであろうと思います。なお法律的の解釈につきましては、法制局長官をして、これをさらに補って一応御説明を申し上げることにします。
○林(修)政府委員 私からその点お答えいたしますが、下田前条約局長が申しましたのは、おそらく国際間の取りきめの一般的な議論として申したと思います。国際的な取りきめは、必ずしも文書によらずして口頭のものでも、お互いに拘束力を持つものはあり得ると思います。しかし御承知のように、文書によらざるものは、たとえば両国がこれをそれぞれの国内手続によって承認し、あるいはさらに批准をするというような手続はとれません。とれない意味においては、そういう条約的あるいは協定的な拘束力を持たないという意味において、今外務大臣やあるいは現条約局長は法律的な拘束力はないと言われたと思います。しかし、両政府の代表者がお互いに言葉を取りかわし、お互いにこうしようと言った意味の拘束力は残ると思います。これを道徳的と申しますか、法律的と申しますかは言葉の使い方の問題だと私は思うのでございまして、条約のような法律的な拘束力はない。これは私間違いないと思います。しかし両国の当事者を拘束しているという意味においては私は拘束力がある、かように思うわけであります。
○柳田委員 この速記録をもう一ぺん詳しく読んで下さい。これは非常に大事なことですから、都合によっては下田君に一つ帰ってもらわなければならぬ、アリソンなりマッカーサーなりを一ぺんたずねてみて、政府の統一した見解を次の機会に発表してもらわぬと、これは前内閣の言ったことをあなた方が打ち消した、こういう結果になるのですが、大事なことですから、これは一つどうぞ。
 日中貿易の問題をお尋ねしようと思ったのですが、これは田中稔男君が質問しますから譲りましょう。
 河野さんに一つお尋ねしますが――これは河野さんより通産大臣かな。最近の輸入原材料の在庫状態と、それの食いつぶしの状態はどうなっていますか。
○前尾国務大臣 輸入原材料につきまましては食いつぶしをいたしておりません。大体におきまして正常在庫以上にありまして、三月末も正常在庫以上に残っております。
○柳田委員 そこでこの三十三年度の経済計画の大綱についてお尋ねしますが、まず前提として、昨年の八月の末に政府は三十二年度、三十三年度の経済見通しを立てられました。当時は国際収支は約四億七千万ドルの赤字をバックにしておったと思うのです。その当時すでに約二億ドルの国際収支の黒を大体見込まれた。これは見込まれたというか、努力目標として見込まれた。それから現在は、この間の説明によりますと、三十二年度は一億三千万ドルくらいの赤字でどうにか年度を越しそうだ、こういうふうに言っておられる。この一億三千万ドルの赤字も分析すればおそらく昨年の四月から九月までの上半期の赤字残だと思う。十月からは貿易は黒字に転換しましたから、また現在もそういう状態が続いているのですから、これは昨年の上半期の赤字残だと思う。それから米国の景気の低迷だとか、あるいは西欧諸国の調整の継続だとか、後進国地域の経済の悪化、こういうような海外経済事情に対する見方というものも昨年の八月と本年の一月ではそう変っておらぬと思うのです。そういうような前提に立って考えてみるのに、ようやく経済総合計画の効果が見え始めた昨年の八月に黒字を二億ドル見込まれたのに、海外収支が黒字になっておる今日も大体一億五千万ドル、むしろ減っておる。これは特需が五千万ドルほど減っておりますから、特需が五千万ドル減ればどっちも一億五千万ドル、ちょうど対になるわけですが、そういうように非常に日本の事情は変っておる。海外の事情はそう見方が変っていないはずだのにくしくもそこが一致しておるのはどういうわけですか。これは一つ経企長官にお尋ねしたい。
○河野国務大臣 御承知の通り国内の物価の傾向等が輸出に非常に資するようになりまして、そういう関係で輸出は割合に伸びておりまして、今お話のような結果になっておるわけであります。
○柳田委員 何だかさっぱりわかりゃしない。去年よりも輸出がうんと伸びている。それじゃ黒字もふえなければならぬのに、逆に減っておるのはどうなのですか。あなたは輸出はだんだん伸びましたと言うが、それは私も言った通りですよ。
○河野国務大臣 御承知の通り上半期におきまして輸出入のバランスが、輸入が非常に多くありまして輸出が少かったわけであります。それが順次下期において是正されてきておる、こういうことであります。
○柳田委員 輸入の方は下期に是正されて十月から黒字になった、だからまだ黒字にならぬ前の去年の八月に見込まれたときにすでに二億ドルの黒字を努力目標として掲げられた、そうして一月三十一日のこの経済大綱を発表されたときに、輸出の方は輸入よりも上回って黒字になっておる。全然基礎が違う。基礎が違うのに国際収支は依然として昨年八月に立てられた二億ドル、今年は特需が五千万ドル減って一億五千万ドル、同じようになっているがどうか。あなたの説から言うと昨年八月に一億五千万ドルないし二億ドルの努力目標ならば、この一月三十一日には当然それを上回った努力目標が出てくるのでなければならぬが、それはどうかと聞いている。
○河野国務大臣 われわれが昨年の八月に計画を立てまして、予想いたしました通りにうまくいっておると思います。
○柳田委員 あなたはなかなか政治力はありますけれども、どうも経企長官に値するほど数字の点はあまり詳しくないようですね。
 それじゃ昨年の下半期からずっと輸入減になって参りましたね。この輸入減の原因は大体あなたは何と見ますか。
○河野国務大臣 上期に相当輸入原材料がありましたし、それが下期には、御承知の通り一般の国内の設備その他の点が押えられてきましたので、これらの消費の面が減っております。それで従ってそれらが影響いたしいまして、下期には輸入が減っておるわけであります。その結果下期に輸出が予定通りにいっておりますから、そこにそういう数字的な結論が出ております。
○柳田委員 そうすると、結局、結論は縮小生産、縮小均衡になった、こういうことですか。
○河野国務大臣 これは数字で御承知の通り縮小ではございません。大体われわれが計画を立てました通りに、二十八億以上のものが結論として出ようということは、決して縮小でないことは、数字が明瞭に示す通りであります。
○柳田委員 それはそうです。鉱工業生産の伸びは、三十二年度は二五四・五、これが二六五・九と計画を見ておられるのだし、それにしても鉱工業生産の伸び率は、三十一年から三十二年は九・八%だった。それが今度は、三十二年から三十三年に対しては四・五%ですね。そういうように、鉱工業生産の伸び率も昨年から比べたら鈍化しておる。そこへ持ってきて今通産大臣の答弁のように、在庫は食いつぶしていないというようですね。むしろ原材料の在庫量は正常以上だというのですね。在庫は食いつぶしていない。そういうような状態で、この経済計画を見ると輸入の方は昨年の三十二億二千万ドルから微増して、三十二億四千万ドルだ。これは過大見積りじゃないかと思うが、どうですか。
○河野国務大臣 大体三十一億五千万ドルの輸出目標を達成いたしますためには、国内消費その他と勘案いたしまして、その程度の輸入は必要であろう。特に輸入について考慮しておりますことは、なるべく輸入は少い方がけっこうでございますけれども、これを押え過ぎることによりまして、国内物価がその影響で上るということは考慮いたさなければなりませんので、適当なところに押えておるわけであります。
○柳田委員 大体そんな御答弁になると思っておったのです。本来なら為替管理制度があるのですから、私は去年のような外貨の危機がそう簡単には来るはずはないと思う。あなた方は設備投資をやっておるときに輸入を減らしたらインフレになる、こうおっしゃるのですが、為替管理制度をやっておるのに、外貨の危機は来るはずがない。私はここで指摘したいのは、なぜこのように昨年外貨危機が来たか。これはやはり輸入の増大です。その輸入の増大というものは、あなたが今おっしゃったように、これは単なる設備投資やそんなものじゃないと思う。大企業、大法人の脱税のためだと思う。思惑輸入をやっておるのです。その証拠は、はっきりと、本年の在庫は一つも食いつぶしていない、むしろ正常以上の在庫があるということ、それから見ても明らかです。前の通産大臣の新国策か何かで読みましたが、どうも景気がよくなってくると、大法人、大企業が思惑輸入をやって、輸入をどんどんやるから困るというのです。これは合法的な脱税なんです。必要以上の輸入をして、ある意味においては、脱税しておるのです。ここに私は問題があると思うのです。思惑輸入をやっていることは、今日食いつぶしが少いこと、これからもはっきりすると私は思うのです。だから私はこの際徹底的に在庫調査をやって、そうしてこの食いつぶしの調査も各企業、各法人を通じてやって、それから逆算してその分に税金をかけて一つ合法的な是正をどんどんやる必要があると思うのですが、これはどうですか。
○一萬田国務大臣 今後あります在庫が、いわゆる国際収支を改善する輸入の減少に役立つわけであります。今大企業の持っておる在庫を調べて、そしてこれに税金をかけるというふうな考えは今のところ持っておりません。
○柳田委員 先般資料を要求いたしましたが、これはパルプ、電力、工業、商業、鉄鋼業、紡績、銀行、肥料、そういうような大産業の一流どころの法人の各種減免の特別措置の状況を調べてみたのです。これを見ると、これはおそらく電力会社だと思うのですが、課税総所得を一〇〇といたしますと、いろいろなもの全部取られてしまって課税所得は二五・三%になっている。これはおそらく、Eと書いてあるから電力会社でしょう。その証拠には渇水準備金というのがあるから……。その二五・三%にそれだけのものが減ってきた。それに対して税率をかけるのでしょう。だから総所得に対して実効税率はほんのわずかなんです。東京電力のごときは課税総所得が三十一億六千四百万円、そしてそれに対していろいろないわゆる特別措置があるわけです。渇水準備金だとか、貸し倒れ準備金だとか、退職給与引当金だとか、そうして差引課税総所得はどれほどになるかというと、三十一億六千四百万円が八億三千六百万円に下ってしまった。それに対して税率をかけて税金はどれだけになったかというと三億三千三百万円、だから三十一億の課税所得に実際払った税金は三億だ。だから実効税率は一〇%だ。大法人はこのように優遇されているのです。これはここにはっきり示されておる。またこの渇水準備金でも、それなら過去五ヵ年間電力会社なら電力会社が、一つの渇水のために、どれだけ水力以上に火力を使ったか。それにどれだけ金を使ったか。それで実際に五年間に石炭で電力を起したその経費を調べてみると、これはきっと差が出ますよ。その差は当然国家に召し上げるべきだ。それをほったらかしておく。大資本、大企業に対してはこういう処置をやっておいて、そうして今度の法人税でも一律二%天引きでしょう。われわれはそうじゃなしに、そういうところはもっと上げろ、そして下の方をもっと下げろというのです。ここがあなた方と私たちと違うところです。あなた方は蓄積資本の必要を説かれるでしょう。蓄積資本の必要もここまでやる必要はないのです。これはいかに大法人が優遇されておるか、この資料を見たら明らかにわかる。これは主税局がいやがってなかなか出さなかった。それをついに委員長の判こをもらって出さした。どうしても主税局は出さない。そこへ持ってきてさらに思惑輸入をやる。思惑輸入をやるものだから、それが日本の外貨危機になって、外貨危機になったら金融の引き締めをやられた。金融の引き締めをやられたら、中小企業はばたばたと黒字倒産になった。だから大企業、大法人の犠牲を国民はみな受けているのです。こういう不況のときこそ所得の再配分を行えということは、経済学の原則ですよ。どうですか。もっと大幅の減税をやる必要はありませんか、大蔵大臣。
○一萬田国務大臣 大企業に対して、特に税法上優遇しておるとは考えておりません。ただ日本の経済の再建途上におきまして、政策上の見地から税法上の特別措置を講じておる点が多々あるのであります。これにつきましては私どもとしてはできるだけ早い機会に整理をしたい、かように考えて、ずいぶん従来とも整理をいたしております。本年度におきましても、やはり百数十億に上る税の減収が起るだろう、かように考えておるのでありますが、その点については今後とも、その目的を達成した以上は、すみやかに整理をいたすつもりでおります。なおまた現在やっております特別措置におきましても、運用上におきまして大企業に特別の利益を与えないように、たとえば今回の、大企業等が特に設備を拡大をして経済の行き過ぎを生じたというような観点に立ちます場合においては、特別措置であります償却に対します特別な扱い、これについて適用業種をできるだけ少くし、従来五十三種ぐらいありましたのを四十種に落しておるというような、こういうふうな運用上の手心を十分加えて遺憾なきを期しておるのでありまして、御質問の趣旨は十分心得ておる次第であります。
○柳田委員 それではもう一ぺん話は国際収支に返りますが、実は私は日本の国際収支の目標の達成のかぎは、輸出面より輸入面だと思うのです。昨年の国際収支も、とんとんになると、宇田大臣はとんとんと言われましたが、ついにとんとんにならずじまいで幽明境を異にしてしまって、まことにお気の毒でしたが、それだけでは済まないのです。ことしは一億五千万ドルくらいになっておると言われるが、私はこの輸出努力目標の三十一億五千万ドルは必ずしも容易でないと思う。先ほど申しましたように、これに書いてあるように、海外経済事情から見ても、また年間の伸び率は、輸出の伸び率は一〇%以上に見ておられますが、相当無理しておられるようです。大体外国のやつを四・五%か何かと見て、日本のやつを一〇%、相当無理をしておると思いますが、三十億ドルの線がようようじゃないか。こういうのが私は通説ではないかと思う。大蔵省はおそらくその見解だろうと思いますが、多少通産省の方が強気のようですが、問題は、この黒字一億五千万ドルを達成するかぎは、むしろ輸出よりも私は輸入だと思うのです。下半期から国際収支も黒になったということは、何も輸出が伸びたわけではない。輸入が減っただけなんです。輸入が減ったということは、何と言ってあなた方が否定しても従来思惑輸入をやった一つの証拠です。在庫は一つも食いつぶしていないという証拠がはっきりある。だから問題は輸入なのです。そう見てくると、先ほど申し述べましたように、今年一億五千万ドルの黒字を達成するためには、輸出を何としてもやらなければなりません。やらなければならぬが、周囲の国際情勢から見て、私は決してこれはなまやさしいことではない、あるいはひょっとしたらむずかしいのではないかと思う。そうすると輸入の方をうんと押えなければならぬ。まだまだ押えてもいいのです。押えてもこれだけ在庫があるから……。それを昨年よりもまだ微増の三十二億四千万ドルになることは過大ではないかと思う。やはり国際収支の見通しを立てられた以上は、これはちゃらんぽらんのものであっては何にもならない。来年においてはっきり数字に現われるのですから、あなたの政治力はともかく、あなたの大臣としての識見というものはそこで出るように思うのです。あなたが隠れた政治力を発揮しても、河野は経企長官としては落第だということは、はっきり来年の国際収支に答案が出るのです。だからそういう意味において私は、今度はこの一億五千万ドルというものは非常に腰だめ的な、何か根拠の薄弱なもののような気がするのです。もう一つ、あなたから絶対に言いませんから私をして言わしめるならば、昨年外貨危機のときにIMFから一億二千五百万ドル借りて、それから例の問題になったワシントン輸出入銀行から一億一千五百万ドル借りて、二億四千万ドル返しますね。こういう短期の借款が海外にあるのです。そうすると来年返すためには、どうしても二億ドルくらいの黒字にしておかないと工合が悪い。そこから逆算して、一億五千万ドルから二億ドルの努力目標を立てて、それを柱にしてきて、今度は輸入は何ぼだ、輸出は何ぼだ。それを柱にして生産の伸びは何だ、雇用は何だ、これは全然逆なんです。本来経済計画を立てるためには、一番の基本になるのは総人口なんです。総人口から生産年令人口になって、そして労働力人口を出す。労働力人口は、御承知のように生産年令人口に労働力率というのをかける。そして雇用者総数が出る。それからもろもろが出てくる。あなたはその逆の方からやっておる。表面上こう書いておるけれども、これは逆の方からやっておられる。これは絶対そうであっても、そうでないとあなたは言われるから答弁は求めませんよ、あなたは絶対に柳田さんが言った通りだと言いはせぬから……。これだけ私が言うておけば、国民諸君には明らかになりますから、われわれ社会党の立場は明らかにしておきますが、あなた方の国際収支というのは、そういう短期借款から逆算しておる、砂上に楼閣を描いたようなものですから、おそらくこの達成はむずかしいだろうということを警告しておきます。昨年も和田さんなり私どもの委員、川崎さんも問題にせられました。ここで国際収支の見通しについて懇々と警告した、日銀からも警告した。その当時の池田さんはがんとして聞かない、宇田さんもがんとして聞かない。結局はどうですか。事実上どちらの答弁も落第である。野党のったことが正しかったということになる。おそらく来年もわれわれの言っておることが正しい。あなた方はいつもはったりばかり言っておることが、この数字を見てもすぐわかる。
○河野国務大臣 非常に名論を拝聴いたしましたが、これは各方面一致した御意見でございまして、この計画を立てるにも、今柳田さんのおっしゃったようにしてやることが常道でございまして、政府といたしましても、あなたのおっしゃったような数字をはじいたわけでございます。ただ輸出が三十一億五千万ドル達成が困難であるということは、これはたびたび申し上げております通りに、なかなか容易なことではないと思いますが、一応政府としてはこの目標達成のためにあらゆる努力をいたして参るということにいたしておりますし、また輸入の数字につきましてもこれを甘過ぎる、思惑があり過ぎる、私は思惑はないとは決して申しておらないのであります。上期においては多少のそういうものもあったようにも思いますけれども、いずれにいたしましても、現在の国内にありまする原材料、これらを基礎にして三十三年度の計算をいたしますと、一応輸入三十二億四千万ドルに対し三十一億五千万ドルの輸出ということにして参ることは可能であろう。またこの程度の数字を目標にしてやることが、一応安定して経済の成長をはかることに一番適切であろうという結論に立っておるのであります。
 今対米借款のお話がございましたが、これはむろんわが国といたしましても、約束は約束通り返すことは必要でございますから、これはやらなければならぬことは当然であります。しかし、しからばこれを返すことが絶対に先決であって、国内の経済の混乱を犠牲にしてでもやるかと申しますれば、決してそうじゃない。これはアメリカの方に十分了解を求めて、もしそういう国内の経済の安定的成長を期するために、必要があればさらに了解を求めてでも、これは延期してもらってもいいのじゃないかと私は思うのでありまして、これを返すために決して国内経済を――それを柱にして数字をはじいたというようなことは絶対いたしておりませんということを、ここに重ねて御了解願いたいと思います。
○柳田委員 会計検査院長来ておられますね。――先般わが党の横路君から特に内閣の公安調査庁そのほか防衛庁、外務省、警察庁等で報償費を使っておる、その行方を問題にいたしました。それで結局会計検査院にはその決算書が来ておると思いますが、それはことしの予算額で見ますと、大体十四億ほどあるのですが、それは国会が要求いたしましたら、会計検査院はその決算明細書は国会にお出し願えますね。その点一つ会計検査院長から……。
○加藤会計検査院長 書類の提出につきましては、先般も申し上げたと存じますが、証拠書類は各庁にとどめておりますので、検査院から、またとりまして提出することはすぐにはできませんので、各省の方からおとり願った方がよろしかろうというようなことを前に申し上げましたが、その通りであります。
○柳田委員 それは私も存じております。たとえば共産党を破防法容疑団体だとか、あるいは朝鮮人その他を容疑団体だというような内閣公安調査庁長官の不穏当なえらい勇ましい言辞もありましたが、特に依頼してレポをとらす、情報を収集させる。中には一件十万円以上も払っておりまして、そういうものはすべて今の制度では一応これは会計検査院にはあるはずだと思うのです。ただ問題によっては、法令によると証拠書類はすべて会計検査院には原本で出さなければならぬということになっている。ただし原本で出すことができない場合には、写しを経理官の何らかの認定によって出すこともできるというふうに私たちは了解しております。それは計算証明規則というものがあって、そういうふうに了解しておりますが、少くとも会計検査院に、たとえば公安調査庁なら公安調査庁、防衛庁なら防衛庁、あるいは警察庁なら警察庁で、こういうような情報収集のためにこれだけの金額を払ったとか――だれに払ったとまでは聞きますまい。こういうような情報収集のためにかくかくの金額を払ったというような、そういう内容じゃなくて、アマウント、そういうものはわれわれが要求したならば、会計検査院は当然国会に提出されますね。その点一つ伺いたい。
○加藤会計検査院長 お話申し上げております通りに、個別の証憑書類は計算証明規則によりましてその庁に保存しておき、実地検査の際検査官の要求によりまして出すことになっておりますので、この書類は各庁に残っております。各個別には書類は残っておりますが、これは検査院はまとめておりませんので、各庁の方で出す方が便利だろう、われわれの方からまたあらためて取りましてということは、これは今原本が、というようなお話もございましたが、これは各庁にございますから、私どもの方で今これを取りまとめますことは困難であるということを申し上げた次第であります。
○柳田委員 それでは一つ官房長官に要求します。公安調査庁、防衛庁、それから警察庁等で、思想関係あるいは対破防法容疑団体関係において出された報償費を全部国会に提出されることを要求しますが、官房長官どうですか、それは認められますね。
○愛知政府委員 お答えいたします。これは御審議の便宜をはかるためになるべく政府側といたしましても御協力を申し上げたいと思いますが、報償費というようなものの性質上、これは適当な範囲内ということに御了承願いたいと思います。
○柳田委員 今の官房長官のそういう御解釈の法律的根拠を言っていただきたい。
○愛知政府委員 お答えいたします。資料の御要求につきましては、院議あるいは委員会の御決議というようなもののあります場合と、しからざる場合とでいろいろとまた取扱いも違うかと思います。
○柳田委員 それじゃ、決算委員会は決算委員会できめて、決算委員長から提出を要求しておりますが、それに対してはまだ出ておりません。これはどういう理由ですか。これは会計検査院に出したのでありますが、それは計算証明規則の十一条によって出せないと会計検査院は言っておる。ところが会計検査院の院長はきょうはそうは言わず、各庁からとってくれ、こう言う。――それは会計検査院長から言って下さい。院長にお尋ねします。
○加藤会計検査院長 決算委員長からそういう御照会があったそうでありますが、そのときにはこちらからは出せないということを御返答申し上げております。
○柳田委員 会計検査院長、その出せない法律的根拠は何ですか。
○加藤会計検査院長 ただいまの計算証明規則におきましては、証憑書類は各庁にとめておきまして、実地検査の際にこれを閲覧いたしまして検査をいたすことになっておりますので、これを検査院より提出いたしますには、さらに規則を変えまして、各省より取りまとめましてその上で出すようなことになりますので、これは非常に困難であろうという事情にございます。
○柳田委員 われわれは何も証憑書類を出せと言っているんじゃない。何にどれだけ使ったか出せと言っている。これは当然会計検査院の検査の対象でしょう。何にどれを使ったか、アマウントを出せというのです。証憑書類の現物を出せというのじゃないのです。それを決算委員会に出せないというのはどういうわけですか。
○加藤会計検査院長 これは各庁にあります証憑に基きまして、どこに幾ら払ったかということを記録にとり、それを集計いたしましたり、手続、順序を経ました上で出さなければならぬ。これには非常な日数も要するだろうから困難だということを申し上げております。
○柳田委員 出すには日数を要するというただ単なる時間の問題だけですか、日数をかけても出せないというのですか、どちらですか。出すには出すが日数を要するので御猶予を願いたいというのか、出せないというのか、どちらですか。
○加藤会計検査院長 これは非常な日数をかけますれば出せるかもしれませんが……。
○江崎委員長 出せるか出せぬかということをはっきりあなたがお答えになった方がいい。
○柳田委員 日数をかければ出せると了解してよろしいか。日数をかけても出せないのですか。どちらなんです。
○加藤会計検査院長 これは中には出せないものもあると思いますが……。
○柳田委員 証憑書類そのものを出せというのじゃなしに、何にどれを使ったかというのです。しかもだれだれに渡したというのじゃなしに、どういう費目にどういうものを使ったか、たとえば思想調査費に何ぼ使ったかアマウントを出せというのです。それが出せないということはないでしょう。あなたが出せないと言うのなら法律的根拠をここではっきりおっしゃい。
○加藤会計検査院長 これはどうしても出せと言われるなら、御要求によって出せる範囲では出します。
○柳田委員 それならこれは何ですか。あなたの方の会計検査院事務総長池田直が、「事実内容を明らかにすることができる明細資料は提出いたしがたいから御了承願いたい」と言っている。これは何です。これは「決算委員長坂本泰良殿」となっている。
○加藤会計検査院長 今伺いましたのは、明細書は出せないということを申し上げております。
○柳田委員 それではさらに要求をしておきます、もう一度会計検査院長ここで聞いておいて下さい。公安調査庁、防衛庁、警察庁において破防法容疑団体あるいは思想団体に対して、対思想の報償費として使ったものの金額、さらにそれのできるだけ詳しい内訳を一つなるべく至急に本院に提出されたいと思いますが、これは会計検査院長、できますか。
○加藤会計検査院長 お答え申し上げます。委員会の正式の要求がありますれば可能な範囲においては出せると思います。
○柳田委員 正式な要求があれば可能な限り出す、そこで、われわれが非常にしつこくこういう資料を要求するそのよって立つところを一つ私は明らかにしたいと思うのです。これは国会法百四条に、「各議院又は各議院の委員会から審査又は調査のため、内閣、官公署その他に対し、必要な報告文は記録の提出を求めたときは、その求めに応じなければならない。」こうなっておるわけです。これが帝国憲法の議院法とどこが違うか。その当時の議院法七十四条では「各議院ヨリ審査ノ為二政府二向テ必要ナル報告文ハ文書ヲ求ムルトキハ政府ハ秘密二渉ルモノヲ除ク外其ノ求ニ應スヘシ」となっている。ところが、この秘密という認定はどこがするかというと、政府がやる。議院は干渉がきかない。政府が一方的に秘密でございますといったら議院には出さないのです。ところが、今度の国会法百四条の提案理由の説明はどうなっておるかというと、昭和二十一年十二月十九日の帝国議会衆議院国会法案の委員会で読み上げた提案理由はこうなんです。「本條は現行議院法第七十四條及び新憲法第六十二條に對應する條文でありまして、「内閣、官公署その他」と申しますのは、これは會社及び個人も含んでおるわけであります。またたとえ秘密な書類といえどもその提出を求めることができるのでありまして、その秘密な書類を審査する場合には、秘密会を開けば足りることであります。秘密なるが故にこの提出を拒絶することはできないものと解しております。」これは委員長よく聞いておいて下さい。従って今われわれはこれを要求しますから、どうぞこの国会法百四条の趣旨に従って委員長において善処されんことを要望しておきます。
○江崎委員長 柳田君に申し上げますが、先般横路君からも同様の御要求がありましたときに、本委員会における資料の要求は委員長に一任をされております。そこで、理事会において御協議をして決定をする、こういうことにしておりますので御了承を願います。
○柳田委員 それでは、三月の下旬に政府から補正予算が出て参りますから、そのころもう一度予算委員会を開きます。従って、会計検査院もこんなものはそれまでに出せるでありましょうから、あなたの方も責任をもってお出しなさいよ。大体三月の二十四、五日か五、六日ごろにまた予算委員会を開きます。そういう打ち合せになっている。それまでに会計検査院、出せますかどうですか。
○加藤会計検査院長 先ほど申し上げた通りでございます。
    〔「何を言っているんだ」「新しい質問じゃないか」と呼び、その他発言する者多し〕
○柳田委員 私が言っておるのは、三月の下旬、大体二十五、六日ごろに予算委員会を開くから、そのときまでに出してもらえるかというのです。あなたの方はなるたけ出せるものは出すというのですが、それまでに出せますね。
○加藤会計検査院長 正式の御要求がありますれば、そのころまでに出せるものは出したいと思います。
○柳田委員 まあそれでいいでしょう。
 次に一つ総理大臣及び外務大臣にお尋ねします。先般発令された大公使の異動でありますが、これは内閣のおやりになることでありますから、われわれは行政権に干渉しようとは毛頭思っておりません。ただこれに関連してこういうことになっておる。愛知用水公団総裁浜口雄彦君はオーストラリア大使になった。オーストラリア大使の鈴木九萬君がイタリア大使になった。イタリア大使の太田一郎君がイランの大使になった。そうすると愛知用水公団があいたものだから、その後任には農地開発機械公団理事長の成田努君を持っていった。そうすると農地開発機械公団の理事長があいたものだから、そのあとがまには小林正基君というのを持っていった。こういうことになっておる。ここで問題になるのは、愛知用水公団にしても農地開発機械公団にしても、これは農林省の所管だ。聞いてみると、赤城農林大臣は全然これは事前に相談を受けておらぬという。だから閣議でもぷんぷん怒ったらしい。それを河野さんがまあまあまあということでなだめたらしいということになっておる。ところが、私はこれ浜口さんから順々にいったが、実際は逆なんで、これはほんとうのことをいうと、まず小林正基さんというものを一つどこぞの公団かどこかへ出そう。こういうことは、小林さんというのは今度神奈川県の第一区から立候補を予定の人で、辞退を言うけれども、私は出ると言ってがんとしてなかなか聞かない。だから何とかして小林正基君をどこぞの地位につけぬことには藤山さんが危ない。そうしてそこで河野さんと岸さんとが大いに知恵をしぼって、小林さんを農地開発機械公団の理事長にしたらどうだというので、いやいやながら持っていった。だから赤城さんにも何にも相談しなかった。ところが小林さんを農地開発機械公団の理事長に持っていったものだから、今度は成田さんをどこぞへほっぽり出さなければならぬというので、成田さんは農地開発機械公団の理事長だから、どこかへ栄転させなければならぬから愛知用水公団の総裁に持っていこうというので、愛知用水公団の総裁へ持っていった。そうすると浜口さんがじゃまになった。浜口さん、君、一つオーストラリアに行かんかと言って、オーストラリアの大使に持っていった。そうすると、オーストラリアの大使に持っていったから、鈴木九萬君がどこぞへ行かんならぬから、イタリアへ行ってくれ。そうすると今度はイタリアの大使の太田一郎君がじゃまになるから、太田君、君、イランへ行ってくれ。かわいそうに太田君はいらんいらんと言っておったが、(笑声)太田君こそかわいそうに――これは元外務次官ですよ。外務次官で、しかもイタリアの大使であったものをイランにほっぽり出した、こうなってくると、この根本はどこかというと、小林正基というものを農地開発機械公団の理事長に据えるために、ぐるぐるとこういうたらい回しが行われた。この原因は何かというと神奈川県第一区なんだ。神奈川県第一区は定員四名、そのうち社会党が飛鳥田君、門司君、松尾さんと三名持っておる。保守党は一人米田君だけなんだ。これはなかなか社会党が強いところで、自民党は二人はなかなか無理らしいところだ。そこで米田君のおるところへもっていって――小林さんというのは前の横浜の警察庁の警察本部長で、そして弁護士をやっていて、この前の選挙ではわずか二千票の差で落ちた。すれすれで落ちた。これが出たら藤山さんは、今までのようによろめいた答弁をやっていたら、とても出られっこない。こういうことで小林をどこかへほっぽり出せというので、農地開発機械公団に持っていた。こういうように天下の公事を私のような人事でやっている。これでは官紀の粛正は絶対にできませんよ。今日外務省の官紀はゆるんでおりますよ。この前のヴェトナムの問題でも、あれがあれだけもめたということは、外務省の局長クラスの官紀がゆるんでいるからです。自分が一生懸命勉強するよりも、暮夜ひそかに権勢の門をたたいた方が出世が早いというので勉強しておらぬから、あんな不手ぎわをやるのです。これではだれもまじめにやりませんよ。それはキャリアの問題もありましょう、あるいは経済人から持っていく問題もありましょうが、それだけでなしに、ひとり藤山さんかわいさに、それをあげたいために、それに関連するこういうような一連の人事をやっておって官紀の粛正ができますか。総理大臣の御答弁を求めたい。
○岸国務大臣 柳田委員のお話の根拠は、おそらく新聞記事を唯一の根拠にされての御立論だと思います。私はいやしくも海外におけるところの、日本を代表しておる大公使の人事のごときものを、今お話の想像の議論でこういう議場において論議されることは、私ははなはだ遺憾であります。私自身が責任をもって今柳田委員のお話のようなことを考えてはおりませんことを明確に申し上げておきます。(拍手)
○柳田委員 およそ政治をなすものは、李下に冠を正さず、瓜田にくつを結ばずというのが、これが鉄則ですよ。このように李下に冠を正して、そうして瓜田にくつを結ぶようなことをして、何ぼここでたんかを切っても、これでは国民が承知をしませんよ。(拍手)
 それではもう一点、三悪追放をうたっておる、綱紀の粛正をうたっておる岸さんにお尋ねしましょう。岸さんじゃなしに、内閣総理大臣の秘書官は、官制によりますと、内閣法第十五条で内閣官房に内閣総理大臣に付属する秘書官を三人置くことになっておる。現在三人あります。山地寿という人と安倍晋太郎ともう一人秋本健という人がおります。これはどういうことをやっておるかというと、内閣法第十五条によって「機密に関する事務を掌り、又は臨時に命を受け内閣官房その他関係各部局の事務を助ける。」とある。これは岸さんの秘書官でありません、内閣総理大臣の秘書官です、官制の上では。ところがこの山地さんという人は、今度何でも香川県から立候補されるそうであります。そうして月の相当日数は香川県の方へ行っておられるそうです。安倍晋太郎という人は山口県から立候補されるそうです。これも相当日数山口県に行っておられますが、これはそれぞれ公務を帯びて出張命令によって出張させておられますか。これは官房長官から伺いたい。
○愛知政府委員 ただいまお尋ねの件につきましては、賜暇をもって旅行してあることと思っております。
○柳田委員 それではこの一月一日から今日に至るまで何日の賜暇をとったか、それを一つはっきり提出して下さい。それは出せますね、官房長官。そして何日の賜暇をとったか、その職務は何であったか、それは出せますね。
○愛知政府委員 ただいまここで正確に申し上げる資料は持っておりません。
○柳田委員 それではこの次の予算委員会に出してもらいます。
○愛知政府委員 できるだけ御趣旨に沿います。
○柳田委員 それはできるだけでなく、出せますね。これはもう明らかになった通り、どちらも立候補の事前運動に帰っている。これは毒々しい事前運動をやっている。そしてお宮さんに寄付したり、桜の木を植えたり、自動車の周囲に安倍晋太郎帰るなんと書いてみたり、それをそのうしろから事もあろうに国務大臣の赤城農林大臣がお供についていったり、それは実際に目に余ることをしているのですね。私から言わしむるならば、官紀粛正を言われる岸さんでありますから、その者に秘書官をやめさせて、そうしてフリーの身にして何ぼでも事前運動に出したらよろしい。それを国家公務員でありながら、しかもこういうような内閣の重要な職務を与えながら、賜暇と称し、あるいは出張と称し、あるいはそれとも称さざりしか、それはわかりませんが、聞くところによると、月の二十日ほどは選挙区に行ってじゃんじゃんやっておる。これが官紀粛正でありますか。先ほどの人事の問題といい、このような秘書官の事前運動といい、こんなことをしておって、それで三悪追放でございの、官紀粛正でございの、そんなことはできませんよ。総理どうです。
○岸国務大臣 綱紀粛正の問題、官紀粛正の問題は、私がかねて申しておるように、これは勧行してやっておるつもりであります。また秘書官の問題につきましては、なお調査した上で資料等必要なものは出します。
○柳田委員 それでは最後に、解散はいつおやりになりますか。(笑声)
○岸国務大臣 それはしばしば申し上げておりますように、現在のところ、いっということは考えておりません。
○柳田委員 世上伝えるところによると、五月十一日の日曜説もあり、あるいはどうもメーデーと憲法発布記念日を中にはさむと自民党の都合が悪いから四月二十九日にやってしまえという説とかいろいろありますが、問題は政府の方はとにもかくにもわれわれの解散要求に対してこう答えている。とにかく予算を通すことが何より至上命令でございますだから予算を通すのだ。そういうことになってくるとこの予算案に伴って予算を執行するということになると法律が伴います。その法律が両院を通らなければ、法律が制定、公布されなければ、これは予算が意味がないことになってくる。特に恩給だとか道路だとか、その他もろもろの重要な予算と非常に関係のある法律がありますが、この法律が通るまで待たれるわけですか。予算が通れば法律の方はあと回しにしても、あるいは解散後の特別国会でまた法律をやるということで、法律とはそうあまり関係なしに、予算が通れば、それはいつということは言えないけれども、予算が通ることを前提としてやるのかどうか、こういうことについてお考えを伺いたい。
○岸国務大臣 私は予算が通ったら解散をすると言った記憶はございません。私としては常に自分に与えられておるその場その場における最重要なことに全力を上げるというのが私のすべての考えであります。一月末において予算を成立させることが何よりも重要であるということを申し上げたわけでありまして、予算が成立した後において解散するとか何とかいうことを申し上げたつもりではございません。先ほど申し上げたように現在におきましては私は予算の成立を念願とし、努力をしておる最中でございまして、解散のことについては、その時期等については考えておらないのであります。
○柳田委員 聞くところによると、スカルノ大統領がこの間来て参内したときに、岸さんは憲法に基く天皇の国事行為の一切の手続を完了されたということですが、そういう事実がありますかどうか。
○岸国務大臣 そういう事実はございません。
○柳田委員 私の質問はこれで終ります。(拍手)
○江崎委員長 以上をもちまして、質疑は終局いたしました。
 午後一時半より再開することといたしまして、暫時休憩いたします。
    午後零時五十三分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時一分開議
○江崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 昭和三十三年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算、以上三案を議題といたします。これより討論に入ります。辻原弘市君。
○辻原委員 ただいま議題となりました昭和三十三年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算、以上三案に対し、私は日本社会党を代表いたしまして、これに反対の討論を行わんとするものであります。(拍手)
 政府原案批判の第一は、世論が指摘するごとく、全くの無秩序、無方針予算であるということであります。すなわち政府が昭和三十三年度予算編成の基本構想なるものを発表いたしましたのは昨年九月でありました。当時国際収支は最悪の事態にあり、政府は三十二年末の実質赤字は四億ドル台になるとの見込みのもとに、財政の膨張は行わない、財政投融資は三十二年度実行規模並みにする等の緊縮方針を決定いたしたのであります。さらに十二月十日の閣議においてはこれを具体化し、予算規模の増加は前年度に比し一千億以内にとどめること、剰余金はたな上げをすること等を決定いたしたのであります。しかるに一たびこの方針に基いて大蔵省原案が作成せらるるや、大蔵省のあまりにも機械的な査定に反発をする空気と相待って、与党議員の手による選挙目当ての各種補助金の増額、復活要求が跡を絶たず、ここに醜い予算ぶんどり合戦が展開せられたのであります。はなはだしきに至っては、大蔵大臣を擁護せなければならない立場にある岸総理みずからが、大蔵大臣を責めるなどという姿が国民に報ぜられるに至り、選挙のみを念頭に置く与党議員の白昼堂々の百鬼夜行ぶりが、全国民の前に余すところなく露呈せられたのであります。(拍手)
 その結果、一月二十日に閣議決定せられた予算案は、同じ顔ぶれの閣僚がきめたはずだのに、さきにきめた基本構想や編成方針とはおよそ似ても似つかぬ予算案に化けてしまったのであります。すなわち一般会計では一兆三千百二十一億円となり、積極拡大の前年度放漫予算よりも、さらに千七百四十六億円の増加を来たし、四百三十六億円の財政余裕金たな上げ構想は結局二百二十一億に縮小し、三十三年度予算で歳出計上するはずであった五十二億の諸経費を、三十二年度補正予算に計上しなければならなくなり、財政投融資に至っては三千九百九十五億円と前年度の実行計画よりも四百七十二億の膨張を来たしたのであります。しかも三十二年度財政投融資の繰延額のうち二百六十億円を解除し、電力資金五十億の融資を行うなど、独占企業に対しては引き締め方針を事実上放棄してしまったのであります。
 以上のような予算編成上の混乱、無統制ぶりは一体何を意味するのか。岸内閣にはもはや統一した政権担当能力がないということであります。このことはその後の本委員会におけるわが党委員の追及に際しての政府側答弁の不手ぎわ、醜態に、よくその結果が現われているのであります。
 次に、政府原案全般を通じて言い得る特徴的性格は、選挙を前にしてますます大資本擁護の傾向を深めているということであります。すなわち自然増収二千億を持ち、財政規模も前年度よりはるかに膨張しているにかかわらず、大衆には依然として冷たい予算、無縁の予算であると世論が酷評するゆえんのものは、ここにあるのであります。
 その傾向の第一は、歳入における減税方針にも歴然と現われております。約二千億の自然増収、言いかえれば税のとり過ぎであります。この際における政府のとるべき方策の第一は、予算規模の膨張を押え、大衆に対する公平な減税によって、とり過ぎた税金を再び国民のふところに返すということでなければならぬと思うのであります。(拍手)しかるに政府が行なった減税はわずかに二百六十億円であります。しかもその内容たるや、法人税一率二%の引き下げ、相続税、長期預貯金の特別控除制度創設等、主として大会社、高額所得者に喜ばれる向きのものであり、わずかに酒税の若干の引き下げが、大衆減税への言いわけとなっているのであります。さらに財政投融資の膨張は緊縮方針とは全く相反するものであり、選挙を前にして選挙資金の財界への呼び水ではないかとかんぐられるのも、まさに当然と申さなければなりません。
 次に重要なる問題は、昭和三十三年度予算の関連において政府が発表した新長期経済計画なるものであります。この経済計画の前提となっているのは次の四点であります。すなわち輸出が輸入を上回ること、国民総生産の三〇%が貯蓄されなければならないこと、第二次産業の成長が確保されなければならないこと、雇用の増大が確保されなければならないこと、ということであります。以上が完全に行われて初めて昭和三十七年度にあるべきわが国経済の姿を作り上げることができるというのでありますが、いかにして輸出を増大せしめるか、果して計画のいうごとく雇用を増大せしめることができるか、貿易は金融引き締めによる輸入の減少により若干の黒字を示しているものの、輸出の伸びは今日停滞傾向を示しているのであります。加えて輸出依存度の高い対米輸出におきましては、アメリカの日本品に対する輸入制限が前途に暗い影を投げかけております。またわが国貿易のオアシスである中国貿易も、政府の対米従属外交と無理解の結果、今日北京で行われておる第四次貿易協定も難航を続け、まさに暗礁に乗り上げようとしているではありませんか。こうした情勢のもとで、果して岸内閣の施策でもって、輸出が輸入を上回る正常貿易が実現できるか、はなはだ心もとないものがあるのであります。
 国民貯蓄三〇%の確保、三兆八千億の資金量はいかなる方法によって求めようとするのであるか。委員会の質疑の過程におけるわが党河野委員の質問にも、確たる政府の具体的方法が示されなかったのであります。雇用の問題に至りましては、今日完全失業六十万を数えております。政府の雇用増大計画は毎年次八十万であります。従ってこの増加は単に完全失業を埋める程度であって、年々増加する新規労働人口の雇用を満たすにはほど遠いものであります。のみならずわが国の雇用問題は諸外国とはその状態が異なり、六百万に上る膨大な不完全失業の雇用問題が解決されない限り、雇用問題の本質的解決とはならないのであります。政府はこの点にことさら目をおおい、その対策を看過していることをこの際特に指摘しておきたいと思うのであります。
 以上のごとく、新長期経済計画は全く絵にかいたもちであり、何らの具体的方法と確たる見通しの上に立案せられているものでは断じてないのであります。従って、この計画の一環であるはずの昭和三十三年度予算も、実質的な長期計画とは何ら関連なしに編成せられていることは、今日までの予算審議においてことごとく明らかとなったのであります。
 次に、一兆三千億の歳出についてその性格を批判すれば、第一に申さなければならないことは、きわめて財政的に不健全な予算であるということであります。すなわち、総支出のうち、行政費、防衛費、恩給費を合すれば、その割合五三%となり、全体の五割以上が不生産的経費であり、将来のインフレ的要因がここにも内在しておるのでありまして、わが国の経済の発展上憂慮しなければならぬ重要なる問題であります。なかんずく防衛費に至っては、人工衛星、ICBMの新しい時代に、依然として陸上部隊を中心とした自衛隊の増強をはかっていることは、全く時代錯誤であり、ナンセンスであると申さなければなりません。(拍手)自衛隊員一万九千名の増加、そのために百九十億、その他艦船建造費等の債務負担行為七十九億の増額に、防衛関係費は実に一千四百六十一億の巨額に達したのであります。かかる防衛費は、今日の常識においては、それ自体税金の浪費でありますが、さらに例年防衛関係費が年度末に使い残され、かつまた中古エンジン、古ぐつ事件等に表われたような数多くの不正浪費が跡を断たないということは、断じて許すべからざることであり、私は腹の底から義憤を感じてやまないものであります。さらに、核兵器の卵であるサイドワインダー等を国会の承認を経ずして持ち込みつつあることは、憲法違反であるばかりでなく、世界があげて軍縮の方向にある今日、全く世界の大勢にも逆行するものであると申さなければなりません。岸内閣は、口に原水爆反対、平和を唱えておりまするが、具体的政策に至っては、全く逆の、事実上核兵器の持ち込みを将来にわたって是認する政策をとりつつあることは、もはや疑いもない事実であって、当委員会において日米共同声明についてその内容を総理にただした結果に基いても、核兵器持ち込みを防止する何らの法的保障の根拠が得られなかったことは、国民ひとしく一大不安感にかられているところであります。
 さらに、政府がわが党の追及により、天下にその醜態をさらしたヴェトナム賠償の問題にいたしましても、何がゆえに南ヴェトナムのみを対象とし急ぐのであるか、はなはだ了解に苦しむのであります。結局は、アジア諸民族の意思に反するアジア反共軍事同盟の布石となることを、今日国民は心配をしているのであります。
 防衛費に連なる旧軍人恩給制度の存続、増額は、それ自体財政を不健全にするのみではなく、旧軍人勢力を温存し、政府の軍備拡張政策を助長せしめる思想的陰謀であると、論断して差しつかなえいと思うのであります。このような目的、背景を持つ軍人恩給制度の犠牲となっているものは、遺家族であり、また傷痍軍人であります。依然として階級差をつけられ、応召下級軍人が冷遇視されていることには、断じてわれわれは承服しがたいのであります。さらにまた国家の保障が得られない数多くの戦争犠牲者のことを考えれば、何ゆえに一将功成り万卒を枯らして、今日生きている人たちにまで高額の恩給をあてがわなければならないのか、全く了解に苦しむところであります。
 こうした非生産的、反大衆的経費の増額に比べて、一体国民に直結する社会保障、文教、住宅建設、雇用等はどうなっているのでありましょうか。二千億円に上る自然増収がありながら、大衆に対する減税も行われず、また民生安定にもきわめて薄いのであります。歳出予算の総額の前年度予算に対する増加率は一割五分五厘でありますが、これに対して社会保障の増加はわずか八分五厘、九十九億、義務教育負担金六分八厘、五十八億、文教施設費は一分、一億、住宅建設費はとんとんであります。計百五十八億の増加にしかすぎず、また人口の半分近くを占める農民に対する農業予算を前年度に比し〇・七%減額していることも、農村不況の深刻化している現況を考えれば、黙過できないところであります。金詰まりによって最も深刻な打撃を受けた中小企業に対しては、一体どの程度の手当が行われているか。わずかに基金に若干の金額を計上したのみではありませんか。しかも社会保障、文教費等の増加は、人口の自然増に伴う義務的経費がその主たる部分であって、これを政策的に見ればほとんど実質上の増額はないのであります。保育所経費の減額、国民皆保険の放棄、また国民全般を対象とする国民年金制度の創設を見送るなど、総理が常に口にする三悪追放のトップに立つ貧乏追放の政策はことごとくお題目に終っているのであります。逆に、健保単価一円の引き上げによる患者負担の増加は、年間二百十七億、本年度百億円の大衆への負担となり、後退のあと歴然たるものがあります。失業対策に至っては、前にも申しましたように、完全、不完全合せて六百万を突破する膨大な失業者をかかえながら、わずかに二十五万人を失対事業に吸収しようというお粗末きわまるものであって、貧乏追放どころか貧乏拡大の政策と申さなければなりません。わが党は、かかる大衆に冷たい、しかも無方針きわまる選挙目当ての戦後最悪予算には、いかようにしても賛成するわけには参りません。従ってこの際わが党の予算の基本的構想を明らかにし、国民大衆に対してわが党の態度を明確にいたしておきたいと存ずる次第であります。
 今回特にわが党が、政府案に対し組みかえ修正を行わなかった理由は、昨秋、三十三年度予算編成の前に、わが党は予算編成に対する要望書を政府に申し入れました。しかし岸内閣は、わが党のわずかな合理的要求に対しても、一顧の考慮もしなかったのであります。社会党と対決を呼号する反動的な岸内閣は、わが党のいささかの組みかえ修正にも応ずる動きのないことは、この一事をもっていたしましても明らかであります。さらに、さきに述べましたように、このたびの政府予算案は、一方で緊縮方針を大衆に押しつけ、他方では予算編成の分どり競争で、財政投融資その他の膨張を行うなど、手のつけようのない支離滅裂の性格分裂予算案であります。従って計数的、局部的な組みかえ修正のみをもっていたしましては、われわれの正しい政策転換をとうてい表現し得ないのであります。かつまたこの予算の積算基礎そのもの、補助金の具体的な使途そのものが、保守勢力に有利となるように組み込まれておりますので、単に款項の大きな費目の組みかえのみをもっていたしましては、勤労大衆の政策要求を十分に表現し得ないうらみがあるのであります。よって以下わが党の構想を明示することによって、政府案と対決いたしたいと思うのであります。
 わが党の予算の構想といたしまして、昭和三十三年度予算編成は、わが党の長期経済計画の第一期三カ年計画の第一年度財政計画に基いて立案をいたすものでございます。予算編成の基本といたしまして
 一、一般会計予算規模については、不急不用額の削減を極力はかるが、不況下における国民生活の最低保障に必要なる経費は確保し、いたずらに緊縮を至上命令とはしない。
 二、歳入面では、国民の租税負担の不均衡是正のために、大法人及び高額所得者に対する過度の減免税措置の改廃による歳入増加と低所得者に対する減税を行う。
 三、歳出面では、財源増加分は主として社会保障的支出並びに将来の経済発展の土台としての科学技術の振興費の増額に充当する。政府は、口では外貨危機に対処するため、緊縮予算を編成すると主張しつつ、歳出における最も非生産的要素であり、かつインフレ促進要因である防衛庁費の削減をはからないのは、矛盾もはなはだしいと存ずるのであります。
 四、財政投融資計画の対象は、中小企業、農林漁業、低家賃住宅建設の引き受け等に重点を置く。
 五、地方財政においても国の財政に準じて租税負担の均衡をはかるため、零細企業(農業を含む)並びに勤労者住民に対しては減税、大法人に対しては増税する。なお地方財政の財源不足にかんがみまして、過去の起債のうち、交付債の利子支払額は全額国庫負担とする。
 この基本方針に基きまして、歳入規模及び税制改正に関しましては、
 一、現行の租税制度は、国税、地方税を通じて大法人の負担が軽く低所得者の負担が重い不均衡が放任されている。この実情にかんがみ、次の要綱に基く税制改正を実施せんとするものであります。
 イ、国税。
 (一)、所得税。家族五人年収三十二万円までを免税とし、累進税率を引き上げる。事業所得のうち年収三十万円までの所得を勤労者所得とし、これに対しては二〇%、最高六万円の特別控除を行う。
 (二)、法人税。低所得五十万円以下の税率を三〇%に引き下げる。
 (三)、物品税を廃止し、新たに高級品税を創設する。
 (四)、酒税。大衆向き酒類の税率を一〇ないし一五%引き下げる。
 (五)、相続税。基礎控除を現行五十万円より百万円に引き上げる。
 (六)、租税特別措置法の改廃。大法人及び高額所得者に対し過当なる減免税措置は原則として廃止する。
 (七)、富裕税を創設し、財産の価格から債務の全額を控除した金額が一千万円をこえるものに課税する。
 口、地方税。
 (一)、住民税。個人均等割の税率引き上げを取りやめて軽減し、地域的な不均衡の是正をはかる。
 (ニ)、事業税。零細企業の負担加にかんがみて個人事業税の基礎控除を二十万円に引き上げ、特に勤労者事業に対する課税に限り基礎控除を三十万円に引き上げる。法人事業税は国税における大法人に対する減免税措置の改廃に伴って当然増徴される。
 (三)、自転車荷車税を全廃する。
 (四)、固定資産税のうち、農業用資産に対する課税を軽減する。
 二、右によって明年度の一般会計歳入規模は、約一兆三千三百億円程度となり、政府案より約百八十億円の増額となる。
 第三、歳出予算の編成。
 一、社会保障関係。
(一)、医療保障。昭和三十五年までに国民皆保険を実施し、あわせて医療内容を向上するために、イ、健康保険制度を五人天満事業所に適用。口、国民健康保険に未適用者一千万人を新規加入。ハ、双方の療養給付率の引き上げ。ニ、国民健康保険事務費単価の引き上げ。ホ、被保険者の負担増を伴わない医療費単価の合理的改訂。へ、無医村解消をはかる。
 (二)、結核対策。結核対策を強力に推進し、五ヵ年計画をもって社会病としての結核禍を根絶する。このため結核対策本部を設け、予防、治療、後保護に至る一貫した対策を確立し、特に治療費は全額国庫負担をもって強力に推進する。
 (三)、国民年金対策。全国民の生活保障の見地に立ち、当面国民全体を対象とする左のごとき国民年金制度の実施に着手する。イ、六十五歳以上の老令者に対して二万四千円の年金を支給する。口、十八歳未満の子女を有する母子世帯に対しては、年額三万六千円の母子年金を支給する。ハ、第一級より第三級の身体障害者に対し、年額三万一六千円の身体障害者年金を支給する。
 (四)、国民福祉対策。国民福祉については生活保護単価と対象人員を増加し、かつ期末一時扶助の支給を行い、児童保育、婦人保護の経費を増額する。
 (五)、失業対策。明年度は雇用の伸びの減退と失業者の増加が必至となるにかんがみて、失業対策事業における一日平均吸収延人員を三十五万人に増加し、かつ生活最低保障の見地に立ち、日給ベースを三百六十五円に増額し、稼働日数月平均二十五日分、期末手当二十五日分の支給を確保する。失業保険は支給人員を四十万人分を予定する。
 二、低家賃公営住宅建設。明年度は公営住宅の建設を低家賃住宅を主体として最低十五万戸建設し、政府関係建設戸数は総計二十三万戸を確保する。
 三、文教関係。義務教育に対する父兄負担の軽減をはかるため、教材費の半額国庫負担、準要保護児童生徒七十三万人に対する教科書と学校給食の全額国庫負担、学校内における児童災害に対する国家補償を行う。
 (ニ)、詰め込み学級、校舎不足の解消。義務教育水準の向上をはかるため、教職員の一万名増員と校舎の増改築に対する補助率の引き上げを行い、かつ最低延五十万坪を建設する。
 (三)、教育の機会均等の実現。奨学生に対する貸与金の単価引き上げと人員増加、夜間定時制高校に対する国の負担率の引き上げ(最高四割まで)僻地教育振興のために適正なる僻地基準の制定、特殊教育の充実、私学に対する補助金を増額する。
 (四)、理工科系基礎教育の充実。科学技術振興の基礎として義務教育及び高等学校における理工科系教育を充実する。
  四、労働対策。
 (一)、日雇失業保険の給付内容の改善。給付金二百円の受給資格日額二百八十円を二百二十円に引き下げ、かつ待機期間を一日短縮する。
 (ニ)、駐留軍関係離職者対策費の確保。激増する離職者のために一律五万円の特別給付金の支給、離職者による企業組合に対する必要資金の融資、全額国庫負担による特別職業補導、離職に伴う移転費の支給等を実施する。
 (三)、最低賃金法と家内労働法の実施と港湾運送事業法一部改正とに伴って、まず審議会設置と調査に必要な経費を計上する。
 五、部落対策。不良住宅等の環境改善、職業補導、福祉施設の拡充、同和教育費の増額につき、関連歳出項目全般にわたって特別ワクを確保する。
 六、人権擁護対策。低所得者に対する訴訟費用の扶助、人権擁護局機構の拡充等を実施する。
 七、科学技術振興。
 (一)、科学技術研究費の増額。国立公私立学校における理工科系学部の拡充と研究費の増額。各省庁並びに学校以外団体の科学技術研究試験に対する助成費を大幅増額する。
 (ニ)、原子力平和利用。日本原子力研究所と原子燃料公社の予算を大幅増額する。
 八、地方交付税、交付金。地方財政の自主財源の窮乏にかんがみて、交付率を一・五%引き上げて、二七・五%を交付する。
 九、国土建設費並びに災害復旧対策。国土建設費は道路建設に重点を置くという名目をもって、河川改修その他の建設費の継続事業及び最低必要新規事業を縮小してはならない。請負単価の適正化、事業監督の徹底等によって経費の効率的使用をはかって事業量を増加する。災害対策事業については、単に原型復旧にとどめるだけでなくて、災害防止に役立つ事業費を計上する。
 一〇、農林漁業関係。
 (一)、生産費及び所得を補償する生産者価格の確保。米の生産者価格は生産費及び所得を補償する価格を定め、一般会計は食管特別会計不足分を負担する。生産者麦価は具体的な畑作振興対策と相待って決定する。一方的な麦価の引き下げは反対する。
 (ニ)、農業サービス・センターの設置。未墾地開墾、土地改良、草地改良、畑作振興を促進して農業生産力を高め、あわせて経営の機械化、共同化に資するため、農業サービス・センターを全国に当面百カ所設置する。
 (三)、農業関係融資の原資増大と資金コストの引き下げ。農林漁業金融公庫及び開拓者資金融通特別会計と農協系統資金に対しては、財政資金の出資及び融資を増額する。
 (四)、農薬補助。共同防除促進のため、農民が共同施設をもって防除事業を行うための農薬費は、国が一定額を補助する。
 (五)、沿岸漁業関係。漁業経営を安定させ、あわせて漁村失業対策にも資するため、全額国庫負担による水産増殖事業を大規模に行い、かつ漁港整備計画に基く修築事業の早期完成をはかる。
 一一、中小企業関係。設備近代化補助、貿易あっせん、小組合共同施設補助等を中心として、中小企業対策費を前年度の倍額以上に引き上げ、かつ国民金融公庫、中小企業金融公庫、商工中金に対する財政資金の出資及び融資を増額する。
 一二、貿易振興。中小企業関係の貿易振興費、海外技術者の受け入れ、在外技術協力機構の整備拡充等、未開発国に対する協力費を中心として計上する。
 一三、平和国土建設隊費。国土の建設と資源調査等のため、平和国土建設隊を設置し、当面五万名規模とし、第三年目までに十五万名規模に拡大する。
 一四、旧軍人等恩給費。
 イ、現行の旧軍人等恩給費は、国民年金との均衡を考慮して、生活保障的性格を付与しつつ改正し、公務扶助料の年額が五万四千円に満たない者については、すべて五万四千円まで引き上げる。普通恩給の年額が三万六千円に満たない者については、すべて二万六千円まで引き上げる。普通扶助料は右に準ずる。増加恩給については階級差を撤廃する等の現行体系の是正を行う。
 口、右の是正された体系に基き、打ち切り補償を行う。打ち切り補償の方法は、受給者の余命率を考慮して交付公債を発行し、国民年金の実施テンポ、国の財政負担力との見合いで年賦償還するものとする。この際、本公債を有する世帯の年間所得が二十四万円、月収二万円、または本人の年間所得が十二万円、月収一万円に達しない者については額面金額一カ年分の七割を、十八万円、月収一万五千円に達しない者については全額を、本人の希望に応じて政府は現金化に応ずる。傷病恩給については、政府は直ちに現金化に応ずるものとし、右の所得制限を受けない。本公債を有する世帯の年間所得が二十四万円をこえる場合でも、生業資金、医療資金に限り本公債を担保として国民金融公庫は一定の貸し出しをすることができる。右の措置によって恩給費の国庫負担はさしあたり大幅に軽減することができるのであります。
 一五、公務員給与の引き上げ。公務員の給与は民間給与水準に比較して初任給が低く、かつ給与の中だるみを生じているのみならず、昇給昇格の原資は確保されておりません。さらに最近は消費者物価も値上りしております。この実情にかんがみて、給与ベースの引き上げ、中だるみ是正のための臨時昇給、定員外に放置されている非常勤労務者等の定員内への繰り入れによる給与改善、通勤費の支給、期末手当の増額、寒冷地手当、薪炭手当の増額等をあわせて実施する。
 一六、防衛関係費。
 (6)、防衛支出金。本項目を廃止し、必要経費は予備費より支出する。
 (二)、防衛庁費。自衛隊を十二万五千人程度の民主的な警備組織に改組し、経費を大幅に削減する。
 (三)、調達庁費その他。防衛支出金に関連して支出している調達庁経費等の項目を廃止し、必要経費は予備費より支出する。
 一七、反動的諸行政費等の削減。憲法調査会費、国防会議費、国防調査委託費、日本生産性本部補助金、公安調査庁費、集団不法行為取締費のごとき、民主主義に逆行する国の歳出は全額削除する。
 以上の建設的な案を明らかにいたしまして、政府予算案はこれを全面的に返上することとし、再出発せられることを強く要求をするものであります。
 以上の討論をもちまして、政府原案に反対をいたしまして、討論を終る次第でございます。
○江崎委員長 田中久雄君。
○田中(久)委員 私は自由民主党を代表して、ただいま議題となっております昭和三十三年度一般会計予算外二案に対し、賛成の意見を申し述べたいと存じます。
 御承知の通りここ二、三年わが国経済は未曽有の活況を呈したのでありますが、生産規模の拡大と思惑の増加は輸入の急激な増大を招いた結果、昨年初頭以来国際収支の悪化を見るに至ったのであります。すなわち一昨年末十四億二千万ドルに達していた外貨保有高は、昨年に入って激減し、五月には十億ドル、九月には八億七千万ドルと、いわば最低線に落ち込み、この間実に五億五千万ドルもの外貨の流出を来たしたのであります。しかしながらこのような外貨危機も昨年六月以降政府並びに日銀によってとられた適切な緊急対策と、これに対する民間の理解ある協力とによって漸次解消いたし、ここ数カ月来外為収支は受取り超過の状態を続けておることは、まことに私どもの喜びとするところであります。しかし今後なおかような状態を持続的なものとし、日本経済に一応の安定点を見出すまでには、なお幾多の苦難の道を歩まねばならないものと思われます。
 すなわちまず国際的経済環境を見ますと、ここ数年来活況を呈してきた世界経済も、昨年半ばごろから漸次頭打ちの傾向を示すに至ったのであります。特に注目すべきことは、昭和二十九年当時と違って、今回の景気停滞はアメリカも欧州も、従ってまた後進国地域も、いわば世界の大部分の地域をおおっているという点であります。もちろん米国を初め各国においてそれぞれ景気回復のため、公定歩合の引き下げあるいは支払い準備率の引き下げ、その他所要の施策がとられつつあることをわれわれも承知いたしており、またその効果に期待しておるものでありますが、世界景気の動向に対しては、安易な楽観は決して許されないものと存じます。
 このような情勢に備えて、わが国としては輸出の伸張にあらゆる努力を集中することが必要なこと、言うを待たないところであります。三十三年度の輸出目標三十一億五千万ドルは、現下のわが国経済に課せられた絶対的な要請とでもいうべきものでありまして、経済政策、従ってまた財政政策の主眼も当然ここに置かねばならないものと思われます。
 三十三年度の予算編成に当っては、財政はあくまでも国民経済に過度の刺激を与えないよう、いやしくも内需の増大のために輸出の伸張が阻害されることのないよう、至当の配慮がなされているのでありまして、その点われわれは全面的に賛意を表するものであります。一般会計の予算規模は、歳入歳出とも一兆三千百二十一億円余で、前年度の当初予算と比べますと一千七百四十六億円余の増加でありますが、この中には四百三十六億円の資金ないしは基金の保留と、前年度に比しての国債費の純増三百十億円が含まれていることを考慮いたしますと、実質的な支出の増加は一千億円にとどまっております。この程度の財政規模に対してさえ一部には大き過ぎるとか、さらには経済の調整過程を逆転させるおそれがあるのではないかというような議論が行われておりますが、それはわれわれのとらざるところであります。すなわち財政の規模は、単純に国民所得あるいは国民経済の規模等と比較して多いとか少いとか論ずべきものではなく、景気循環の各段階に即して財政の役割は、いかにあるべきかという観点から論ずべきものと思われます。現在のような景気調整の過程においては、必要な部面への支出は大いに増加して、社会的、経済的摩擦をできるだけ少くする、これが財政の役割であると思うのであります。
 さらに財政支出は、第一次的には消費財に対する購買力となる部分が相当にありますが、繊維等のごとく著しい供給過剰に苦しんでいる部門のある昨今の需給状況から見まして、この程度の財政支出の増大が消費財の価格をつり上げるというような議論に対しては、無用の心配であると存ずるのであります。特に私が注意を喚起いたしたいことは、予算規模の増大にもかかわらず、均衡予算の建前が貫かれているという点であります。政府提出の資料によれば、昭和三十三年度における財政資金の対民間収支見込みは、外為資金を除いて四百六十二億円の散布超過となっておりますが、これはあくまでも歳入歳出が予算書に見積られた通りであることを前提としているのでありまして、実際上また毎年の例からいっても、この通りの数字に終ることはないのであります。三十二年度のごときも、当初見込みは外為を除いて三百六十五億円の散布超過であったものが、最近の見込み数字では、逆に一千十四億円の引き揚げ超過となっているのでありまして、歳入においてある程度の自然増が不可避である以上、三十三年度における散布超過の見込数字も、さほど気にかけるほどのこともなく、これをもって財政の基調が変化したと即断するのは誤まりであると思われます。もちろんこれらの数字は、年度間を通計した数字でありますから、国庫資金の出入りが金融市場に描き出す季節的な波紋に対しては、適時適切な金融上の諸施策を講ずる必要があることは言うを待たないのであります。
 金融の問題について申し上げますと、景気調節に対する金融政策の役割は、いよいよ重大であると言わざるを得ません。生産過程に対する直接的な規制力という点では、金融は財政に優先するものでありますし、そのときどきの経済情勢の変化に対応して資金を引き締め、あるいは緩和する等の機能は、すべて金融にゆだねられていると言い得るのであります。申し上げるまでもなく、歳入は法律の規定に縛られ、歳出は予算制度に縛られている財政の運営に、そのときどきの経済情勢の変化に対応する弾力性を求めるのは無理でありまして、この点財政と金融のそれぞれ特有な機能を明確に認識する必要があることは当然であります。
 予算と並んで景気に対して大きな影響を与えるものは財政投融資であります。予算審議の過程において、財政投融資に関して三十二年度分の繰り延べの一部が解除され、また三十三年度は、その総額がほぼ四千億円にもなることを取り上げて、景気に対して刺激的であり過ぎるとの議論がございました。しかしながら、このような心配もまた無用であると思われます。何となれば、来年度においては民間資金の減少三千億円が予想され、かかる情勢下においては、財政投融資の役割は、民間資金の不足分を補充し、また一部の中小企業のごとく、民間の資金供給ルートから取り残された部門への融資を円滑にすることにあるのでありますが、そのためには、財政投融資を増大することこそが望ましいのでございまして、これは一兆数千億円に達する産業資金全体のワクの中で、民間資金と財政資金との割合が変ってくることを意味するにすぎないのであります。財政投融資は、貸付の主体が政府関係機関であるとはいえ、その性質から見て金融の分野に属するものであることは言うまでもありません。従って政府の説明でも明らかな通り、経済情勢及び民間金融の推移に応じて弾力的に運用されることとされており、またそれが可能なのであります。ゆえにわれわれは、財政投融資のワクの問題について、いささかの懸念をも持つものではありません。
 次にこの予算に盛られている重要施策について申し上げます。
 まず第一に貿易の振興及び経済協力の推進であります。貿易の振興が当面する経済政策の至上命題であること、さきに申し上げた通りでありますが、予算の上でも、日本貿易振興会への出資金二十億円を計上して、海外市場の調査開拓の機構を整備するほか、特別宣伝の強化、国際見本市への参加、中南米諸国に対す巡回見本船の派遣等の諸経費が、重点的に増額されております。これらの諸経費は、いずれも従来専門家筋より不足を訴えられていた経費でありまして、商社の過当競争により生ずる弊害の是正等と相待って、貿易の振興に寄与するところ大なるものと確信するのであります。経済協力につきましては、新設の東南アジア開発協力基金への出資五十億円のほか、西ベンガル等の中小企業技術センターの設置、コロンボ・プラン関係経費の倍増等の予算措置が講ぜられております。
 なお、インドネシアとの間には、多年の懸案であった賠償の問題が解決され、平和条約が結ばれるに至ったことは、外交上の大きな収穫であり御同慶にたえませんが、これまた今後の東南アジア貿易に好影響を与えるものと期待されるのであります。
 第二の重要施策は、産業基盤の整備であります。これは道路、港湾、国鉄等の輸送力の増強と、電力、石炭等のエネルギー資源の開発という二つの部門を含んでおります。
 まず道路整備は、本予算の最重点施策として取り上げられておりまして、その総額は六百七十五億円で、前年度に比べ約百二十二億円の増加であります。道路整備事業の特徴としては、一、新しく道路事業五ヵ年計画を樹立して、計画的に事業の推進をはかるようにしたこと。二、道路整備特別会計を設けて経理を明確化し、かつ借入金の制度を設けたこと。三、一級国道の整備に重点を置き、改良舗装の事業は原則としてすべて国の直轄工事としたこと。四、一部の国道については国が直轄で、維持修繕の工事を行い得るようにしたこと等の諸点をあげ得ると思います。
 なお道路公団につきましては、前年度に比べて事業費を大幅に増加しておりますが、とりわけ三十三年度においては、約一億ドルの外資導入を期待している点が注目されるのであります。このように道路整備事業は、新年度を期として一段と促進されるものと考えられるのであります。
 また港湾につきましては、前年度も相当大幅な経費の増額を見たのでありますが、三十三年度はさらに重要な外国貿易港、工業港等を中心に経費を約二割増額して、その整備を促進することにしております。もちろん港湾建設工事は、その工事規模の大きさから見て、必ずしもこの程度の予算額で十分であるとは申せませんが、今後逐年予算を増額して、計画の完成を早め、産業発展のテンポにおくれることのないよう期待するものであります。
 さらに国鉄、電電公社等の建設工事につきましては、工事量を一そう増大する反面、資金源において民間借り入れを圧縮して、政府資金による分を増加する等の配慮がなされております。
 重要施策の第三は、民生の安定であります。社会保障関係費におきましては、前年度に比べて百二億円の増額が行われております。その内容は、社会保険の診療報酬の合理化、国民健康保険及び日雇い健康保険に関する国庫負担制度の充実、生活保護費の増額、社会福祉対策の強化、失業対策事業吸収人員の増加等、あらゆる部門にわたって拡充強化せられており、伝えられるごとき社会保障の後退論のごときは、数字を無視した観念論であると申さなければなりません。(拍手)
 なお軍人遺家族等の恩給費増額について申し上げますと、われわれのねらいは、あくまでも戦争による最大の被害者たる戦死者の遺家族や、戦傷病者の生活を保障することにあるのでありまして、これは国家として当然の道徳的義務であると存じます。(拍手)しかしながら、また現在の社会経済情勢のもとにおいては、国民年金制度の創設その他の社会保障制度の整備充実が急務であることも、われわれは十分認識するものでありまして、今後社会保障制度の発展とともに、特にこれらの戦争被害者の生活保障を確立し得るよう、十分考慮する必要があると思われます。
 重点施策の第四は、科学技術及び文教の振興でありまして、原子力平和利用のほか、各種の科学技術研究機関の拡充、理工科系学生の増募、進学保障制度の創設等、各種の施策が講ぜられております。
 重点施策の第五は、農林漁業施策の充実であります。一般会計における農林関係予算の総額は、農林省所管分八百三十億円余に各省所管の分を合せますと一千八億余円でありまして、前年度に比べて百十三億円余の増となっております。
 そのおもな内容としましては、災害復旧事業を除く公共事業関係費において三十一億円余を増加し、また融資による土地改良事業の推進に資するため六十五億円を出資して、農林漁業金融公庫内に土地改良事業助成基金を新設いたしたことと、さらに酪農振興基金への出資五億円、乳製品の学校給食のための経費七億円等があげられるのであります。総体としては、土地改良、開拓等の事業の強化、畑作振興対策の推進、漁港の整備促進と水産業の振興、畜産振興対策の充実、食糧管理特別会計の合理化等、各方面にわたり拡充強化策が講ぜられておるのであります。
 以上のほか、本予算には、中小企業対策の強化、自衛体制の整備、地方財政の健全化等、わが党の重要政策がことごとく実現せられておるのでありまして、(拍手)国民に対する公約を果し得た予算として、いささか誇り得るものであると信ずるのであります。(拍手)
 最後に、これは友党たる日本社会党に対して、はなはだ申しにくいことでありますが、この予算に対する同党の態度について一言批判を加えたいと存じます。
 従来社会党は、予算組みかえの動議を提出し、同時にその組みかえの要綱を発表していたのであります。このような方式は、その内容の当否はともかくとして、同党の抱いている予算の構想を明確にする点において、われわれも一応敬意を払って参ったのであります。しかるに、このたびの予算に対しては何ら具体案を明示せず、ただ返上論一本やりで進まれたのでありますが、これははなはだ残念なことであると言わざるを得ません。もっとも社会党は、先般昭和三十三年度予算大綱なるものを発表し、さらにまた、ただいま討論中においても重ねて申し述べられましたが、これは従来のものと異なり、個々の数字はもとより、大よそ予算全体の規模をどのくらいにするのか、また歳入歳出のバランスが一体とれておるのかどうか、それさえも示されておりません。これならば歳出は好きほうだいにふやすことができるし、減税は勝手ほうだいに行えるのは当然でありまして、これでは予算編成とはおよそ縁遠いものと言わなければなりません。(拍手)全くの机上プランであると言わざるを得ず、社会党としては数歩後退をいたしたの感があるのであります。(拍手)例年通りの予算組みかえ案をお作りになれなかったという点には、いろいろな事情もあることと推察されますが、唯一の在野党たる社会党、国民のための光栄ある野党としては、きわめて遺憾なことと申さなければなりません。(拍手)
 以上をもちまして、政府提出の予算三案に対する私の賛成討論を終ります。
○江崎委員長 これにて討論は終局いたしました。
 これより採決に入ります。採決は一括してこれを行います。昭和三十三年度一般会計予算、昭和三十三年度特別会計予算、昭和三十三年度政府関係機関予算、以上三案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○江崎委員長 起立多数。よって、昭和三十三年度一般会計予算、昭和三十三年度特別会計予算及び昭和三十三年度政府関係機関予算は、いずれも原案の通り可決いたしました。(拍手)
 委員会報告書の作成につきましては、先例によりまして委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○江崎委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。
 これにて昭和三十三年度総予算に関する議事は、全部終了いたしました。
 この際、一言ごあいさつを申し上げます。去る二月六日総予算の審査を開始いたしまして以来、終始真摯なる論議を展開せられ、本日ここに審査を終了するに至りましたことは、まことに理事並びに委員諸君の御理解ある御協力によるものでありまして、委員長といたしまして心から感謝の意を表するものであります。(拍手)連日審査に御精励せられました委員諸君の御努力に対し、深く敬意を表しましてごあいさつといたします。
 次会は公報をもってお知らせいたします。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後二時五十七分散会
     ――――◇―――――