第029回国会 外務委員会 第5号
昭和三十三年七月三日(木曜日)
    午後一時三十三分開議
 出席委員
   委員長 櫻内 義雄君
   理事 岩本 信行君 理事 宇都宮徳馬君
   理事 床次 徳二君 理事 山村新治郎君
   理事 岡田 春夫君 理事 松本 七郎君
      小林 絹治君    前尾繁三郎君
      松田竹千代君    大西 正道君
      田中 稔男君    戸叶 里子君
      帆足  計君    森島 守人君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 愛知 揆一君
        外 務 大 臣 藤山愛一郎君
 出席政府委員
        外務政務次官  竹内 俊吉君
        外務事務官
        (アジア局長) 板垣  修君
        外務事務官
        (アメリカ局
        長)      森  治樹君
        外務事務官
        (経済局長)  牛場 信彦君
        外務事務官
        (条約局長)  高橋 通敏君
 委員外の出席者
        法務事務官
        (入国管理局
        長)      勝野 康助君
        参  考  人
        (日本赤十字社
        外事部長)   井上益太郎君
        専  門  員 佐藤 敏人君
    ―――――――――――――
七月一日
 委員松田竹千代君辞任につき、その補欠として
 菅野和太郎君が議長の指名で委員に選任された。
同日
 委員菅野和太郎君辞任につきその補欠として松
 田竹千代君が議長の指名で委員に選任された。
同月二日
 委員西村関一君辞任につき、その補欠として高
 田富之助君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
七月二日
 日本への核兵器持込禁止並びに核非武装に関す
 る決議案(淺沼稻次郎君外五名提出、決議第一
 号)
 日中両国間の緊急事態打開に関する決議案(淺
 沼稻次郎君外六名提出、決議第二号)
六月二十八日
 核兵器持込み禁止等に関する請願(大西正道君
 紹介)(第一三七号)
 同(勝澤芳雄君紹介)(第一三八号)
 同(勝間田清一君紹介)(第一三九号)
 同外一件(栗原俊夫君紹介)(第一四〇号)
 同(河野密君紹介)(第一四一号)
 同(島上善五郎君紹介)(第一四二号)
 同(堤ツルヨ君紹介)(第一四三号)
 同(中島巖君紹介)(第一四四号)
 同(原彪君紹介)(第一四五号)
 同外二十二件(帆足計君紹介)(第一四六号)
 同(赤澤正道君紹介)(第一五三号)
 同外一件(飛鳥田一雄君紹介)(第一六四号)
 同外一件(上林與市郎君紹介)(第一六五号)
 同(野口忠夫君紹介)(第一六六号)
 同外一件(松尾トシ子君紹介)(第一六七号)
 同外八件(門司亮君紹介)(第一六八号)
 同(中原健次君紹介)(第一八九号)
 エニウエトク水爆実験中止に関する請願外二件
 (中村高一君紹介)(第一四七号)
 原水爆実験禁止等に関する請願外一件(帆足計
 君紹介)(第一四八号)
同月三十日
 核兵器持込み禁止等に関する請願(伊藤よし子
 君紹介)(第二二三号)
 同(内田常雄君紹介)(第二二四号)
 同外一件(金丸徳重君紹介)(第二二五号)
 同外二件(川村継義君紹介)(第二二六号)
 同外五件(高橋等君外十二名紹介)(第二二七
 号)
 同(倉成正君外八名紹介)(第二三七号)
 同(野原正勝君紹介)(第二三八号)
 同外一件(黒田寿男君紹介)(第二七〇号)
七月二日
 原水爆禁止に関する請願(鈴木一君紹介)(第
 三〇四号)
 核兵器持込み禁止等に関する請願(永山忠則君
 紹介)(第三二九号)
 同(三宅正一君紹介)(第三三〇号)
 同(淺沼稻次郎君紹介)(第三七三号)
 同外一件(原茂君紹介)(第三七四号)
の審査を本委員会に付託された。
六月三十日
 原水爆実験停止及び核非武装に関する陳情書(
 下関市議会議長高田整治)(第九号)
 核兵器持込み反対に関する陳情書(東京都世田
 谷区成城町赤羽隆次)(第一〇号)
 沖縄米軍使用の地代一括払い阻止等に関する陳
 情書外一件(東京都新宿区明治神宮外苑日本青
 年団協議会長佐々木栄造外一名)(第一一号)
 核兵器持込み禁止に関する陳情書(石川県議会
 議長浜上耕三)(第五七号)
 韓国抑留漁船船員の早期帰還に関する陳情書(
 下関市大和町六韓国抑留船員留守家族会連合
 会長石原松枝外四名)(第五八号)
 ビキニ・エニウエトク水爆実験禁止に関する陳
 情書(富山県下新川郡入善町議会議長松田栄
 松)(第五九号)
 原水爆実験禁止等に関する陳情書外三件(刈谷
 市議会議長早川守治郎外三名)(第六二号)
 日中国交回復等に関する陳情書(戸畑市長百木
 正元外四名)(第六三号)
 日中漁業問題早期解決に関する陳情書(長崎市
 議会議長脇山寛)(第六四号)
を本委員会に参考送付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 閉会中審査に関する件
 国際情勢等に関する件
     ――――◇―――――
○櫻内委員長 これより会議を開きます。
 国際情勢等に関する件について、調査を進めます。
 まず、お諮りいたします。本件について、参考人として、日本赤十字社外事部長井上益太郎君を招致し、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○櫻内委員長 御異議なければ、さよう決定します。
 質疑の通告がありますので、順次これを許します。松本七郎君。
○松本(七)委員 入国監理局がまだお見えになりませんが、せっかく井上外事部長さんに参考人としておいで願いましたから……。実は大村収容所で、十三人ばかりハンストに入っておるという事態になっておるのですが、先般井上外事部長は、例の朝鮮赤十字からの差し入れの送金を中心に現地に行かれて、向うの事情をいろいろ視察されたりして、最近の事情がおわかりだろうと思います。日赤としてのお考えなり、最近の向うの状態、それから特に今申しました朝鮮赤十字からの差し入れ金処置の問題、今後大村収容所の、特に朝鮮民主主義人民共和国に帰還したいという希望を表明しておる人たちの問題に、一体どう対処したらよいかというようなことについての、日赤としての御意見を一応伺っておくと、非常に参考になりますので……。
○井上参考人 私、日本赤十字の外事部長の井上益太郎でございます。
 ただいま、私に、北鮮赤十字から送ってきた金の分配をどういうふうにやったか、それから北鮮へ帰国を希望する人について日本赤十字はどういう考えを持っておるか、この二点について、御質問をいただきました。
 まず第一の点からお答えいたします。北鮮赤十字は、米貨にいたしまして約二千五百ドルという金を日本赤十字に送って参りまして、それを大村に収容されている人に平等に、つまり男女、政治的意見、それから老幼を問わず、平等に分けてくれ、こういう依頼の電報がありました。これは初めてのことではないので、この前も、ちょうど一年ばかり前にそういう依頼があったのであります。そのときは、日本赤十字に送らないで、ジュネーブの赤十字国際委員会に金を送って、そうして日本におります代表がこれを分配いたしたのであります。そこで政府の方でも、そういう先例もあるし、その方がうまくいくだろうからそうしたらどうかというお話がありました。私もその方がいいと思った。というのは、そうすれば国際委員会の人も大村を視察ができる。ですから、それでどうかということを北鮮赤十字に電報いたしまして、そして北鮮赤十字はそれでよろしいということで、ジュネーブの国際委員会の方に電報を打ちました。その結果、二十七日に、私は国際委員会の駐日代表アングスト氏と一緒に大村に参り、二十八日にその分配を終えて、二十九日に帰ってきたわけであります。でありますから、この分配の仕事は、日本赤十字の仕事ではなくて、赤十字国際委員会の仕事であります。でありますから、これはあまり詳しく申し上げる必要もないと思います。予定通り、ジュネーブの訓令に基きまして、これは赤十字の金であるから、百パーセント人道的な金であり、何ら政治的ひもつきのない金である。受け取る人もその赤十字の精神によって受け取ってくれ、こういうふうに言われまして、わざわざ両方の人たちを集めてそういうことを言われた。皆さんもそれを承諾して受け取られました。この前は、そのあとで何かけんかが起ったそうで、今度はそういうことがあっては大へんだ、収容所の人は非常に心配しておられたわけであります。しかし今度は全部これを受け取りまして、何らの騒動もなかったわけであります。
 次は、現在大村にハンガー・ストライキをやっている北鮮帰国希望者について、日赤はどういう考えを持っておるか、どうしたらいいと考えておるか、こういう御質問だったと思います。私が向うに参りましたのは、全くそういうことを予期しておらなかった。着いてみてハンガー・ストライキがあったということが初めてわかったのであります。それでわれわれが来るのを知ってやったのかということを直接に尋ねましたら、それはあり得ないことだ。なぜかというと、私どもがちょうど到着する前日に初めてわれわれが来るということが報道された。ところがハンガー・ストライキはもうそれよりもっと前に、長いのは十日も前から始まっているわけでありますから、私どもが来ることを予想してなされたものではないことは明らかであります。これは、その数はその後ふえております。私が行ったときは、七十何人の人が入っておりましたが、今は百人くらいになっているそうですが、これはどういうことかと申しますると、結局北の方に帰ることができない。また南の方の人は仮釈放されるが、北の方の人に対しては仮釈放ということがない、下手すれば、南に送り返されそうだということで、リミットがきた、こういうふうに申せると思います。この人たちは密入国者であります。でありまするから、人を殺したとか強盗をやったとか、そういうような人たちではないのであります。会って話しましても、私どもと変らないので、非常にノルマルであります。それなのに、長い人になりますると五年くらいであります。北鮮系と南鮮系と比べてみますと、北鮮系は平均三年以上になります。南鮮系の人は平均六カ月以下であります。そして釜山の人は帰っておるのであります。南鮮に帰りたいという人は帰っておるのであります。自分たちだけが取り残されてしまった。下手すれば南鮮にやられてしまうんじゃないか、そこでつまりリミットがきたのでありますね。非常に強迫感とか何とかで、牢獄できたえられたんじゃありません。それから女子供がおります。子供の数は、これは南北合せてでありますが、二百人くらいいるわけであります。
 そこで日赤はこの問題についてどう考えるか、私が率直な意見を一つ申させていただきますと、北鮮に帰るということは今持ち出すと日韓会談に支障を来たす、そのために帰したいんだけれども、今そういうことを持ち出されては困るというふうに一般に印象を受けるのであります。なるほど日韓会談は、日本にとっては非常に重要な外交交渉でありましょう。しかし人道問題はそれよりはるかに重要な問題であるということを私は申したいのであります。日本が外国人に対して人道的取扱いをしないでおいて、どうして外国人に対し人道的取扱いを要求できるでありましょうか。自由陣営の人はナジ元首相が殺されたということで非常に共産圏のことを悪く言いますけれども、少くも日本赤十字はこれまで北鮮、ソ連、中共から何万という日本人を引き揚げさせております。つまりこれらの国は日本と外交関係があるわけではありません。日本の政治的信条と違う信条を持っておる国でございます。これが大陸的な面積を持っておる国で、人を集めるのにも大へんであります。それにもかかわらず戦犯をも含めて帰してきておるのであります。この政治的信条、国交、そういうことを超越して帰してきておる。日本はこの人道的取扱いに対しては報いておりません。というのは、北鮮に帰りたいという人はまだ一人も帰していないのであります。そればかりではありません。今収容されておる人は、戦争犯罪者ではないのであります。それにもかかわらずこれを抑留しております。しかも期限はないのであります。私は一体そういうことがどうしてできるかということの法律的根拠を知りたいと思うのであります。いやしくも日本の憲法のもとでは人を四年も五年も抑留するには、成規の裁判による判決、そしてそれが法律に基くものでなければならないはずだと思います。でありますから、これはおそらく法律に基いているのだろうと思います。しかしそうであるならば立法府にお願いしたいことは、そのような法律は改めてほしいと思います。なぜかというと、私は寡聞にして、世界のどこにおいても密入国したから無期限に人を拘置してよろしい、そういう法律はないと思うのであります。あったら知りたいと思います。もしそれが法律によらないで、行政処分でできるというのであるならば、そのような行政処分が合法的である、つまり法律にかなっておるかどうかということを検討していただきたい。日本赤十字は、御承知の通り日本の赤十字であります。日韓会談がいかに重要であっても、国際赤十字の見地から見ればこれは何の関係もない問題であります。ただ日本赤十字といたしましてはそうはいかない。でありますから、なるべくそういう問題に災いの起らないように、しかも帰国を実現しようと苦心しているのであります。そして日本政府に援助を与えているのであります。そうでありまするならば、日本政府も最善を尽して日本赤十字に協力していただくことが必要であります。日本赤十字は日本赤十字社法によって動くのであります。これは法律であります。日本赤十字社法第一条には、日本赤十字社は、赤十字国際会議の決議を守って、その精神によって人道的仕事をやらなければならないと書いてあります。それでは赤十字国際会議はどういうことを決定しておるかというと、戦争、内乱、国際紛争その他の事故によって、今世界中で自分の故国から離れて、あるいは家族から別れて、帰ることができない人がいる。こういう人はその人個人の意思に従って再会できるようにしてやらなければならない。赤十字社は、この場合政府の間の最も自然な媒介者である。各国政府はこの点について全力を尽さなければならない、こう規定してあるのであります。これは昨年ニューデリで開かれました第十九回赤十字国際会議決議第二十であります。この決議は満場一致で一つの反対もなく通っております。もちろん韓国政府、韓国赤十字代表も賛成しております。そこでわれわれのやろうということは、この決議を実行することなのであります。日本赤十字といたしましては、これがなくてもやらなければならないのであります。なぜかと申しますると、今から数年前に、北鮮にいる日本人を引き揚げるために電報を打ったことがあります。これは日本政府の御承知の上で打った電報であり、日本政府からむしろすすめられて打った電報であります。それには、もし北鮮にいる日本人の帰国を北鮮の赤十字が援助してくれるならば、それを迎えに行く船に、ここにいる朝鮮の人で北鮮に帰りたい人を乗せて帰すということを言っていたのであります。これは日本赤十字の公約であります。これは日韓会談なんかが起るずっと前の話であります。それでありまするから、日本赤十字は、その公約から申しましても、また国際決議から申しましても、これはやらなければならぬ。そしてこれは私の方では政治問題ではないというふうに思っております。政治問題でないということは日本政府の主張であり、韓国政府の主張でもあります。釜山の抑留者を帰すときに、日本人はそれを政治問題と切り離して人道的に考えてくれということを言っております。実際、国交がないときに、あるいは敵対関係にあるときに、これは人道問題でなければ解決できない。忘れてならないのは、まだわれわれは、大陸から日本に帰国してもらわなければならない人がいるのであります。たとえば北ヴェトナムなんかにおります。それから中国からでもまだ帰ってこなければならない人がおります。漁船がつかまればやはりそれは帰してもらわなければなりません。これは全部国交がないのであります。そういう場合に人を帰すということは当りまえのことなんです。ですからそれができないということは、私は非常に不思議でならないと思うのであります。大体私の申しましたことは日本赤十字社の見解とおとり下さい。
○松本(七)委員 日赤としての見解は非常によくわかったのでございまするが、一番私がお伺いしたいのは、日赤は今のような見解を持っているにかかわらず、いろいろな事情で思うように問題が処置できない。政治的考慮は一切抜きにして日赤としては現在日本政府が、どういう具体的な処置をとることが一番緊急であると考えられるか、この点。
 それからさっきお話の中で少し確認しておきたい点は、今までも朝鮮赤十字から差し入れの金がきておったけれども、それは国際赤十字を通じておった。今度に限って日赤にきた。しかしこれはやはり国際赤十字が中に入った方がよかろうというので、そういう処置になったというお話でございましたが、朝鮮の赤十字から今までの例を破って直接日本赤十字に送ってきたについては、何か特別の先方の意向が今回に限ってあったのかどうか。従来国際赤十字を通じてやっておったのに、今度なぜ日本赤十字に直接きただろうか、それをどう判断されておるかということ。
 それから先ほどのお話ですが、従来の例からいっても、これは国際赤十字に扱わせた方がよかろうという判断は、日本赤十字独自でそういう判断をされて、独自で国際赤十字に通じ、朝鮮赤十字に通じられたのか、あるいは日本政府と相談され、あるいは日本政府の方から積極的に日本赤十字にこの旨が伝えられたのであるか。というのは、私どもの聞いたところでは、日赤がわざわざ法務省にこの扱い方を相談したところが、法務省としては日韓会談にも関係があるので、これはやはり国際赤十字に扱わせた方がいいであろうというような意見が吐かれたために、日赤としては処置を国際赤十字にまかせることにしたというふうに聞いておりますので、その間の事情をもう少しお伺いしておきたい。
○井上参考人 日本政府に何を希望するかという点でございます。私は一番希望いたします点は、今大村に収容されている人、何国を問いませんが、あまりに収容期間が長い人、つまり二年以上もいる人、こういう人はぜひ仮釈放をしていただきたいと思うのです。その際は老人、病人、子供を優先していただきたい。北鮮系は仮釈放がない、南鮮系があるということは、私は法の前の平等に違反すると思います。とにかく私の了解しているところでは、大村収容所というのは、船待ち場みたいなものだと思います。それだったら船の出る目安がつくまで仮釈放しておく。そして船が出そうになったら帰す、こういうことにしていただきたい。私の日本政府に心から希望したいのは、これをやっていただきたいということであります。
 それから金を渡すことが日本赤十字独自の見解であったかどうかということは、正直に申し上げますと、私は別に深い意図が北鮮の方にあったとは思いません。北鮮は何億という金を教育費のために現送したことがあります。ですから、金を送ることは自由なわけですから、それを一々ジュネーヴを通さぬでも――ジュネーヴを通しますと、ジュネーヴを通してまた今度東京に現送するわけですから、日本赤十字にやってもらった方がいいだろうというふうに私は考えました。別にその点について意見を聞いたこともありません。
 それから入管に行って相談したことはほんとうであります。入管の方は、前がこうだからこういうふうにやった方がいいだろうといってサゼストしたので、私はこれに賛成したことはさきに申し上げた通りであります。そうすれば、国際委員会の人が視察できる機会が与えられる、いろいろな問題がありますからよく見てもらいたい、こういうふうに考えたわけであります。
○松本(七)委員 国際委員会の方々は、大村収容所のいろいろな問題について、意思の表明が何か公式にされたでしょうか。それから今、井上さんの御希望の仮釈放の問題、その他についての日赤としての意見というものは、従来も日本政府に対してはしばしば要請はされておったのか。その経過を。
○井上参考人 これは私は少し手続が間違っておるかもしれませんが、仮釈放してくれということはまだ政府に申しておりません。これは今度行ってみて、リミットに来ている。これはこれから政府にそのことを申し入れよう、こういうふうに思っております。
 国際赤十字は一定のしきたりがございます。これはジュネーヴ条約によるのであります。ここにおるアングストも戦時中約五十個所くらいの収容所を見て参っております。その方のエキスパートです。これはジュネーヴ条約によってやるのでありまして、つまり方方の収容所を視察する。そうしますると、その報告がジュネーヴにいくわけです。そしてその報告は、普通政府に届けられるわけであります。この前大村収容所を視察したとき、その結果はジュネーヴから日本政府に報告がありました。今度そういうことがあるかどうか聞いておりません。なぜかと申しますと、今度は視察が目的じゃなかったので、分配が目的だった。だから分配したのだから、それ以上やるかどうか、これは私国際赤十字のことでありますから、よくわかりません。
○松本(七)委員 さっきの御趣旨からいえば、せっかくこの機会だから、国際赤十字が行けば向うのいろいろな視察もできる、そういう期待も日赤としてはあったと思います。日赤としては、せっかく国際赤十字が分配のために向うに行く以上は、いろいろな事態について十分検討して必要な示唆も与えてもらい、必要な機関に報告書でも出してもらうことを希望されたことがあるかどうか。
○井上参考人 私は、ハンガー・ストライキにぶっつかるということは予想しておりませんでした。ただ金を分けるつもりで行ったわけです。ただいろいろな陳情はきておりました。ですからいろいろな問題があるということは予想しておりました。国際委員会がどういうことを言ってくるかということは、私はわかりません。ただアングスト氏としては、当然見てきたことをいろいろ報告するだろうと思います。
○松本(七)委員 入管の当局として、今の日赤の御意見に対して、現在日赤の御意見では、すでにリミットにきておる、そういう緊迫した事態なのでありますが、入管としては一体現状をどう認識し、どう対処しようとしておるかという点を少し御説明願いたい。
○勝野説明員 今日赤から非常にフリーな立場からお述べになりましたが、非常にわれわれとして同感のところも多い次第であります。確かに大村収容所の収容者の中に相当長期にわたる者があるということは事実でございます。現在のところ北鮮との交通がとだえておることから、われわれ、外務当局ではございませんが、日韓会談の交渉に非常に機微な影響があるという御趣旨でありますので、その点非常に考慮を加えますために、現在のところ、今までこれについて何らかの積極的な措置をとるということはできなかったのであります。
○松本(七)委員 今までとれなかったと言われるのですけれども、日赤に言わせればリミットにきている。一体いつになったらとれる見通しがあるのかないのか、ここ当分日韓会談が結末がつくまでは、事務当局としてはお手あげだということなのでしょうか。
○勝野説明員 事務当局といたしますれば、そういう根本方針が確立いたしますまでは、現在の状況をそのまま続けていく以外やむを得ないじゃないかと思います。
○松本(七)委員 早く大臣を呼んで下さい。
○岡田委員 関連して。それよりしようがないというお話なら、どうするのですか。ハンストをしておる人の問題は、局長としてどうお考えになっておりますか。
○勝野説明員 今まで政府の方針といたしまして、北鮮帰国希望者は、彼らの主張する希望を尊重するということをはっきり申しておるわけでございますが、それ以上進むためには、やはり現在の日韓交渉の段階がもう一歩進みませんと、われわれとしては何ともいたし方がない次第であります。
○岡田委員 あなたの御意見を伺っていると、日韓交渉という政治的な問題について、人道上の問題は従属するんだ。言葉をかえて言うならば日韓交渉のために人質にさしてもやむを得ないのだ、こういうことになりますか。
○勝野説明員 現在のところ大村収容所におられる方々は、監獄に入れておるわけではございませんので、非常に長くはなっておりますが、一定の収容所から出られないという自由の拘束は確かに存在いたしますが、これが刑事犯罪人ではないという取扱いの面におきましては、非常に違う点が根本的にございますので、一応知っておいていただきたい。
 それから人質といいますが、現在のところ病気あるいは自分で出国して帰るという人は、病気の者は病気の手当をいたすために仮放免をいたしております。それから自費出国で、自分で帰りたいという方は仮放免いたしまして、帰すようにいたしておりますが、遺憾ながら北鮮行きの希望の方につきましては、現在そういう大きな困難が横たわっておるために、結局自費出国ができないので、仮放免という手段ができないという状態になっております。
○松本(七)委員 政府がそういうふうな具体的なはっきりした指令というか、命令を事務当局に与えておるとすれば、これは事務当局に幾らそこをついてみたって仕方がないのですけれども、あとで法務大臣にいろいろお伺いしますから、そのときの念のために聞いておきたいのです。日韓会談に対する考慮ということをさっき言われたのですけれども、政府の最高方針として日韓会談に非常な微妙な影響を与えるので、北鮮希望者については仮釈放もまかりならぬ、そういう具体的な上司の命令が事務当局には来ておるのでしょうか。
○勝野説明員 現在仮放免をしてはならぬという明確な命令ではございませんが、われわれとしましては、こういう問題を外務省その他と打ち合せいたしましていろいろな対策を協議します場合に、その点が時期的に非常にデリケートであるから、そういうことの手段その他そういう措置をとることについて、まだ自由な活動を現在し得ないという次第であります。
○松本(七)委員 それについて、今言うように閣議その他で何か具体的なものがきまって、そして法務大臣からあるいは外務大臣からそれぞれの局長なり何なりに、そういう日韓会談の影響を加えて、北鮮希望者は仮放免まかりならぬ、こうくる場合と、それからその事務担当の責任者が独自の判断で、日韓会談を待っているのだから、こういうことは控えようと自分の裁量でもってこれをやらない場合、それから皆さん方がこれは人道問題だから、日韓会談のいかんにかかわらず、やはり仮釈放すべきであると意見具申をしたけれども、これが上司によって拒否されたという場合があると思うのです。これはどっちですか。
○勝野説明員 まだそういう積極的な意見は具申しておりません。
○松本(七)委員 それを今までやらなかったのは、どういう考えに基いてですか。今言う日韓会談ということを中心に考えてですか。
○勝野説明員 その通りでございまして、私は最近入管局長になりましてまだ日がたちませんけれども、その前の歴史をいろいろ前任者その他からお聞きしまして、非常にデリケートな関係があって、一歩やりそこなっても非常に危険な結果を来たすかもしれないので、非常に注意深くやれということを承わっております。それがわれわれ当局者としての考えるべき筋道かと思って、その信念でやって参りました。
○松本(七)委員 危険な結果を招くというのはどういうことでしょうか。
○勝野説明員 それは詳しいことは私当局者でございませんので申し上げれませんが、危険というのはちょっと言い間違いでございまして、非常に機微な影響がある。前に北鮮帰国希望者の自由意思を認めるかどうかというような問題がありましたときにも、韓国側が相当強硬に出て、日本の漁夫送還を拒絶するというような事態に立ち至りかねなかったようなときがあったと聞いておりますので、こういう点は非常に注意しなくてはならないのじゃないかというふうに考えております。
○井上参考人 私は大村の問題は実地をよく見ていただきたいと思うのであります。一つ一つのケースを人道的見地から親切に調べていただきたいと思います。日韓会談にどのくらい微妙な影響を及ぼすかしれませんけれども、次のようなケースは何ら影響はないだろうと思います。一人の婦人が日本に成規の手続を踏んで入国いたしました。その人には夫と六人の子供があるのであります。その人は親が死ぬという報に接しました。そこで南鮮に行って親に会ってきて、親が死んだので帰ってきますと、この人は不法入国だといって大村収容所に収容されてしまったのです。母を六人の子供と夫から分離して南鮮に強制送還する。こういうことはまさに赤十字の離散家族再会の原則と正反対のものだと私は思います。もちろん私は当人の言うことだけしか聞いておりません。ですからあるいは事実と違うかもわかりません。けれどもそういう人を仮釈放することがどうして日韓会談に影響するか、私はそういうふうには思いません。これは空論をやったのではいけないので、一つ一つ見ていただきたいと思います。李承晩大統領はみずから釜山収容所を視察しております。この制度というものは非常に妙な制度でありまして、国際委員会ではかって釜山収容所及び大村収容所は閉鎖すべきだという意見を述べました。今度ハリー・アウグスト駐日代表が見てきて、これは閉鎖はどうもむずかしい、それならば国際委員会が定期的に視察しようと言ったくらいであります。ですからこの人道問題を十分一つ重視していただいて、個々にケースをよく調べていただきたい、こういうふうに考えます。
○岩本委員 関連して……。大村収容所というのは一体どのくらいの人員を収容してあって、そして北鮮に帰る希望者というのはどのくらいあるものか、ちょっと参考にお伺いしたい。
○勝野説明員 現在の数字を申し上げますと、六月二十一日現在七百二名、それで北鮮行き希望者というのが九十二名、そうしてこの七百二名の中で去年日韓間に覚書が交換されまして、抑留の者を帰して、釜山の漁夫と交換するというので、ことしになって四回帰しましたが、その中にまだ二百二名だけが第五次の送還に帰るべきものとして残っておるわけです。その二百二名の中に北鮮行きの九十二名の者がございますので、それを差し引いた者が今度送還があるとすれば、韓国側に送り帰される人数であります。
○岩本委員 二百二名と七百二名というのはどういうわけか。
○勝野説明員 その後に密入国をした者を収容したものがその差引の差になっております。全部で七百二名、それからその中に九十二名の北鮮行きがおりまして、そのほかに約百三十名の者が、去年の覚書によって南鮮に帰されるべき者としてリストに載っておるものであります。
○松本(七)委員 新法務大臣に質問したいと思いますが、もうすでに御承知と思いまするが、大村収容所、特に収容されておる者で、朝鮮人民民主主義共和国に帰りたい人が、希望が達せられずに、非常に長い年限にわたって困り抜いているわけです。とうとうハンガー・ストライキという事態になってしまったのですが、先ほどから日赤の井上外事部長の、日赤としての御意見をるる述べていただいたわけです。日赤としてもこれは人道上、とにかくすみやかに、せめて仮釈放でもやってもらいたい。今までこういうことは政府にも要請したことはないが、この前、国際赤十字が朝鮮赤十字から送ってきた差し入れの金二千五百ドルというものを分配するために行かれて、現地を井上さんもともに見られ、もう限度に来ておるというので、すみやかに仮釈放でもお願いするはかなかろうということなんでございますが、今事務当局のお話でもすでにお聞きになったように、日韓会談に微妙な影響があるということを考慮するあまり、人道が無視されておるという結果になっておりますね。これはどうしてもこういった政治的問題を超越して、人道問題としてすみやかに解決する。事態が切迫しておると思うのですが、新法務大臣として一つここに新機軸を出して、急速にこの問題だけは解決する必要があるんじゃないか。全般的に御意見をお伺いして、さらにもし質問することがあれば質問したいと思います。どうぞ一つよろしくお願いいたします。
○愛知国務大臣 この問題は今さら申し上げるまでもございませんが、実は政府といたしましても、かねがね非常に頭を悩ましておる問題であります。それで根本的の考え方といたしましては、本人たちの意思を尊重したいという気持から申しまして、帰りたくないようなところには帰したくない、まあ常識的な言葉でいえば、そういう気持で、私は従来おったわけでございますが、一方日韓会談が進行中でもございますことですし、またその経過において、これも御承知と思いますが、いろいろの微妙な問題が起りましたので、かたがた非常に人道的立場から気持はあせりながらも、一方日韓会談の円満な進行ということを顧慮しておりましたために、なかなか歯切れのいい対策がとれないで、今日に至りました。ところが一方、ただいま御指摘のように先月の終りに六十数名という人がハンガー・ストライキをするというような事態になりましたので、私といたしましても何とか早急に結末をつけたい、こう考えておるわけでございますが、何分これは私一人の力でどうにもなるものでもございませんし、根本はやはり日韓会談の推移に影響を与えないように、十分各方面の納得を得た上でありませんと処置ができないように考えるわけでございまして、さしあたりのところは、このハンガー・ストライキをされておる方々に万一生命の危険でも起っては一大事だと思いますので、とりあえずの措置といたしまして、すでに御説明申し上げておるかと思いますが、医務管理と申しましょうか、医師あるいは看護婦等に十分の指令をいたしまして、これらのハンガー・ストライキをしておる人たちに対して万一のことがないように、とりあえず万全の措置を講じておるようなわけでございます。できます限りこういったような不幸な事態をすみやかに解決をいたしたい、つきましては外務当局とも十分、さらに一そう連絡を緊密にし、日韓会談の方にも影響なく、すみやかな措置をとりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
○松本(七)委員 今の法務大臣のお話では、やはり従来と同じ、日韓会談というものを最優先的に考え、そしてその推移を見た上で処置しよう、こういうことになると、今言われるようにさしあたりは医務上の注意を払うとかいうようなことが、結果においてはできるだけ長くハンガー・ストライキをやるようにという、それを奨励する結果になる。そんなことよりも、やはりハンガー・ストライキを解く基本的な条件をどうやって作るかということにもっと積極的な努力をしていただかないと、これは日韓会談の推移を見てというのでは、なるほど法務大臣一人の力ではどうにもならないだろう、日本政府一人の力でもどうにもならない、そして結局は韓国の言いなりになってくる以外に私はないと思う。そういう態度でいるから、私は日韓の間の問題がかえっていろいろむずかしくなると思いますけれども、それは外交政策上の問題として、今ここで意見を述べても仕方がないことですが、それはそれとして、人道上の問題としてこれを取り上げるには、やはり法務大臣がここで奮起していただくということがもう頼みの綱なんですね。それは、外務省としては日韓会談をこれに優先させるというような考えをとるかもしれない。われわれとしてはそのこと自体がすでに日本と韓国との関係をむずかしくする外交のやり方だと思いますけれども、これはここで言っても仕方がない。しかし今当面の問題は、そのような政治とは離れて、人道問題としてこれを取り上げる意思が、日本政府の中で、そういう人道問題を担当しなければならぬ法務大臣に、一体おありかどうかということが一番大事なことなんです。これがなかったら、われわれもあなたにお願いするのではなくて、別な方法を考えてこなければならぬ。従って、新しい法務大臣として――今までの法務大臣には事実それがなかったのですよ。韓国が、そういう日本政府のとっておる方向をいいことにして、いろいろな難題をふっかけてきたかどうか、その経過はここでは申し上げませんけれども、少くとも日本の政府の法務大臣にはそういった人道問題を優先させようという気魄が見られなかった。私は、愛知法務大臣にその気魄を期待しているわけなのです。そのためにわざわざ今日おいでいただいたのですから、ただそういうおざなりな、会談の推移を見てというような、これでは何も新しい期待は持てませんので、法務大臣としてのもう少し決意のあるところを披瀝していただきたい。
○愛知国務大臣 お話の点はまことにごもっともで、私も、その間のいろいろのお考えにつきましては十分理解ができるつもりでおります。ただ、本日のところ、まだ私一人がこうこうやるつもりだと申し上げる環境ではない。ただいたずらに日韓会談の推移を見て、そしてただ単に今ハンガー・ストライキをやっておられる方に対して措置するということを、いたずらに引き延ばしていいのか、こういう御意見のようでございますが、私はそうは思わないのです。しかし十分その間の事情も御了解いただいておると思いますので、政府部内におきまして一つ十分の対策を講ずるように、私どもの処置をしばらくお待ち願いたいと思うのであります。
○大西委員 人道問題、人道問題ということを非常に軽々しく言っているが、人道問題ということをどういうふうに考えているのか、私はちょっと疑いたくなってくる。政治折衝に影響があるから人道問題を差し控えなければならぬというのでは、人道問題ではないと思う。人道問題というのは、そういう政治的な配慮などに優先して、何よりも優先的に考えられなければならぬということで、人道的な立場からこの問題を解決しようという、そういう立場ではないですか。私はそう思うのです。もちろんこの問題は、今の日本政府の態度からいうと、日韓間の問題に好ましい影響があるとはだれも考えません。しかもそれを承知で、なおこの問題については優先的に考えようというところに人道問題の本質がある。だから、それが日韓会談に悪影響を及ぼすであろうからといって、この人道問題をあと回しにしたり、これに手心を加えるというなら、それは人道的な立場からの問題解決ではないと私は思うのですが、人道的な立場というのをあなたはどういうようにお考えなのか、これを一つ聞かなければならぬ。
○愛知国務大臣 私は、先ほどから申しておりまする中に、人道問題を大切に考えないというようなことは全然申し上げているつもりはないのでありまして、本件についてその人たちの真意を尊重する、帰りたくないようなところには帰したくない、こういう気持も先ほど申し上げた通りでございます。しかし、私がこの席で自分個人こうこうやるつもりだと申し上げるのには、まだ時期が熟しておりませんから、私が申し上げることは、先ほども自認しておりまするように歯切れが悪いことは承知しておりますが、日韓会談に悪影響が来たされるからというよりは、日韓会談もそれからこの人道問題も、両方ともうまく措置するのにはどうしたらいいのかということを焦点に私たちとしては考えておるわけであります。
○大西委員 私は、人道問題というのは、他の政治問題に優先して――そういう問題の考慮ももちろん必要かもしれぬけれども、人道的な立場と政治的な立場とが衝突して相いれない場合は、全面的に人道問題に席を譲るべきだ、そういう考え方が人道的な立場という考え方だろうと思うのです。だからそういう考え方に立てば、日韓会談に多少の悪影響があろうと、勇敢に人道的な情熱を燃やして、人道的な立場から、人道主義をモットーにしておる李承晩にこの問題の話をする。こういう立場がないから、外に対しては政治問題として逃げ腰であり、内に対しては人道問題、人道問題というてわれわれの質問に対する答弁の具に供しておる。あなたは十分考えておると言われるけれども、ほんとうに人道的な立場からのお考えでないからそう言うのです。だからもう一回私はお伺いしますけれども、あなた一人の力では何ともできぬといっても、もう少し強い決意で閣議でこれを一つ問題にして、十分なる結論が出るようにするとか、そういう一歩進んだあなたの決意を聞きたいと言うのです。これまでのように何も問題が起ってなければ別です。しかしハンストをやっているのですから、それに対して医者の手当とかなんとかを十分にやっている、これは人道的な立場かもしれぬけれども、そうではないのですから、その点についてもう一回御意見を聞きたいと言うのです。
○愛知国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、その御意見の点は私も十分に理解ができるのであります。しかしいかなる措置をとるかということにつきましては、ただいまは申し上げられません。
○森島委員 先ほど井上外事部長のお話を聞きますと、北鮮系と南鮮系の人々に対して差別待遇があるというお話があった。南鮮系の人たちはすでに仮釈放されておる人々もあるが、北鮮系はそれがないというお話でございましたが、その通りでございますか。
○井上参考人 私のいた限りにおきましては、多少の例外はあるかもしれませんけれども、大体におきまして、北鮮系については仮釈放が許されない、南鮮系は仮釈放されておる。これは法の前に平等ということに違反する、こういうふうに思います。
○森島委員 それでは法務省の当局にお聞きしますが、いかなる根拠に基いて、差別待遇をしておるのか、北鮮系に対しては仮釈放の措置をしてないのかという点を一つお聞きしたい。
○勝野説明員 先ほどもちょっと御説明いたしましたように、差別待遇はいたしておりません。今仮釈放の条件とついたしまして大村において実行しております方法は、病気の方は、医師の診断を経まして、医者がこれは収容所に置いておくのは適当でないと認めた者は全部仮釈放して、別の病院に収容しております。それと同時に、自分の費用で国に帰りたい、もう長くなったから早く帰りたいというのは、便船がございますので、そういう人たちは仮釈放しております。たまたま韓国との間には交通がございますので、そういう人たちが帰りたいと言えば、事実上そういう人たちを出すことになります。北鮮系の方につきましては、先ほどから申し上げますように、現在交通がとだえておるという点で、自費出国そのものを認めることができない状態になっておりますので、結論的に韓国側の人の方が仮釈放の人数が多いという結果になるのであります。
○森島委員 ただいまのお話では、赤十字の方と法務当局の御説明の間に非常な相違がある。これをあらかじめ明らかにすることが質問を進める前提条件だとも考えますので、それらの点について正確な資料を一つ法務当局から項目別にして、人数も明らかにしてお出し願いたいと思います。
○松本(七)委員 今、差別待遇をしてないのだ、たまたま北の方は交通がとだえておるから、こう言われるのですが、しからばもし北に帰りたいという希望者で自費はなかなか調達できない、しかし朝鮮民主主義人民共和国が、ちょうど教育費を送ってきたように、もし北に帰りたい人があったならばその費用に充ててもらいたいといって金を送ってきたとします。そして船は第三国の船で北に帰れる、そういう便が今後できれば、無条件に、仮釈放ばかりでなしに帰国も許されますか。
○勝野説明員 堂々めぐりになってまことに恐縮でございますが、先ほどの交通の点と先ほどから出ました日韓会談の議事の状況、この二つが障害になっておるものですから、その方と……。
○松本(七)委員 そういう答弁をされるから時間もかかるのですよ。差別待遇はしてないのだ、森島さんの質問に対して、差別待遇はしておりませんと答弁の前置きをしながら先ほどの答弁をされたから、私はこういうことを聞いておるのです。それならやはり差別待遇ではないですか。ちゃんとそういう船の便あるいは金の点では同じような条件がそろっても、日韓会談というもう一つの条件があるから、この点差別待遇をせざるを得ないというのが実情なんでしょう。それをはっきり言って下さい。
○愛知国務大臣 それは今松本さんの最後に仰せられた通りだと思います。主観的に差別待遇をするという意図はないわけであります。しかしそれを制約する問題が従来においてございましたから、結果において、差別待遇というと言い過ぎかもしれませんが、それに類するような結果になった事態が起っていたのだということは、これは否定することはできないと思います。
○松本(七)委員 そういうふうに北に帰りたいという希望者が一人も帰れない。しかもこれらは戦犯でもない、刑余者でもない。それが無期限に勾留されておる、そういう状態の法的根拠はそれではないとこう考えていいですね。
○愛知国務大臣 まあその法的根拠ということになりますると、先ほどから申し上げておるように歯切れのいい答弁ができないような、そういう性質の問題なんです。
○松本(七)委員 ないと言えば歯切れがあるでしょう。
○愛知国務大臣 いや、だから法律上そういうことはないとは言い切れないと私は思うのです。
○松本(七)委員 あると言うんならその根拠を説明して下さい。
○愛知国務大臣 これは法的根拠とおっしゃると同時に、韓国、現在の李承晩政府との間のいろいろの話し合いその他が一つの制約になっておるということは、先ほどから申し上げておる通りでありますから、国内法的な根拠というものは私はないと思いますが、それ以外の法的根拠に準ずるような制約がある、こう申し上げたらばいいかと思います。
○松本(七)委員 はっきり答弁されて、結局政府の考えは日韓会談という国際政治上の制約から、国内的な法的根拠はないけれども、これはやむを得ない処置だということなんでしょう。政府の考えをはっきりしてもらえばいいわけです。われわれはもともと考え方が違う場合は、幾らあれしようとしても一致点が見出せないことはあるが、ただ考え方というものははっきりさせていただかないと、あいまいでは困るのです。国内法的な根拠はない。しかも日本憲法からいってもですよ。本来ならばそんな無期限に勾留するということは、これは裁判によらなきゃできないことなんですね。それさえも無視してやられておる結果になっておるわけですよ。その原因は、そういった日韓会談を中心にした国際的な政治的な考慮を優先せざるを得ない今日の状態だ、こういう根拠で政府は説明される以外に説明のしようがないと思うのですがね。やはり説明の根拠というものをはっきりしなければ、われわれの務めが果せませんから、それで聞いているわけなんです。
○愛知国務大臣 それはまことにごもっともなことでございますが、ただ出入国管理令というような法令だけを検討いたします場合には、御承知のように何といいますか収容期間といういうようなものに定めがないわけであります。この点においては別に差別待遇をするということにはなっておらぬわけであります。
○松本(七)委員 結局あれでしょう。結果においては差別待遇しているんですから、そして無期限に勾留しているということは、これは事実ですからね。世界のどこの国にも無期限に勾留できるというような法律はあるはずがない。法律でさえないわけです。だから日本の場合は、結局行政処分でもってやむを得ない政治的考慮からこれをやっておるということは、政府にかわって説明すれば、これはそういうところに持っていかざるを得ないだろうと思うのですがね。何も私は日本の政府がこれを隠しだてすることはないと思う。日韓会談というものをやる以上は、韓国の考え方というものを尊重しなきゃ日韓会談はうまくいかない。最初からこの日韓会談はむしろ危険なものであって、意義を認めないという立場に立てばこれは別ですよ。私どもも、どっちかというと日韓会談そのものに非常な疑いを持つのですけれども、今の政府のように日韓会談は何とかして妥結させようという立場に立てば、今日のような事態を説明するには、やはり日韓会談という政治的考慮というものを持ち出す以外に説明のしようがないと思うのですがね。その点の政府の立場というものをやはり明らかにしてもらわないと困るのですよ。
○愛知国務大臣 たとえばその人道問題というお話にいたしましても、これは私が今申し上げる必要もないことでありますが、過去における日韓間の会談にいたしましても、実は日本の同胞がなかなか帰りにくくなった、あるいは約束通りには帰してもらえなかったというようなことにも関連いたしましたから、これは非常に微妙な関係であったということは、認めていただけると思うのであります。その辺のところを十分に考慮して、私は日韓会談を阻害するというようなことのないように、これも円満にいき、かたがた先ほど御指摘もございましたが、人道問題という観点からこの北鮮系の人を何とか早く始末をしていきたい、こういう念願に燃えておるわけであります。ただ具体的にお前はこうするか、こうします、そういうことをここでお取りつけになろうとしましても、事柄の性質上私は御無理だと思うのでありまして、その点のことは十分御承願いたいと思います。
○大西委員 関連。今の話でちょっと表現ははっきりしないけれども、抑留されている人が帰してもらえなかった例があるということは、これはどういうことですか。韓国に抑留されておる日本の漁夫のことですか、そこのところをお聞かせ願いたい。
○愛知国務大臣 これは今さら御説明するまでもございません。よく御承知の通りでございます。
○大西委員 いや、私は承知しておるけれども、あなたの承知していることと私が承知していることが一致しているかどうかということを聞いておるのです。
○愛知国務大臣 これは客観的な事実でございますから、一致しておると言わざるを得ません。
○大西委員 あなたなかなか俳優だね。そうすると、日本の漁夫が抑留されていまだに帰してもらえないという相手は韓国でしょう。人道的な立場から考慮すべき当然の問題を、人道的な立場から考慮しない相手は韓国です。それと今朝鮮に帰りたいという人を日本の政府が人道的な立場から考慮するという問題とからませてあなた話をしているけれども、まことにもって私はおかしな問題だと思う。何だか今のあなたの話では、韓国に抑留されておる日本人が帰してもらえないその腹いせに朝鮮に帰りたいという人をとどめておくのだというようなところが、どうも考えの底にあるような今の発言だと思うのですが、私どもが人道的に問題を処理してほしいということを言っておるのは、韓国に対してです。ところがその人道的な問題を処理しないその相手に、日本政府が人道的な立場から問題を持ちかけても、一向話がらちがあかぬのじゃないですか。そこのところにあなたの混乱があるように思うのだが、どうです。
○愛知国務大臣 私はあなたが前段におっしゃったようなことを毛頭考えておりません。これは御指摘のように相手が違うのです。しかし相手が違いますけれども、これは納得ずくで円満に処理をいたしますためには、過去においても苦労したということを申し上げただけでありまして、私は先般来申し上げております通りに、すべてがどういう関係の国であっても、人道的な立場で相互に協調して問題の処理ができるようにしたいということを念願にしております。
○大西委員 韓国との間の人道的な立場を要求するというのは、これは韓国に対してわれわれは言いたい。ところが朝鮮に帰りたい人の人道的な立場は、日本政府がその立場を了として手を打たなければならぬ問題なんだ。その問題とこの問題と全然問題が別個じゃないですか。あなたは人道問題人道問題と言っておるけれども、人道問題じゃないじゃないか。この抑留者の生命の問題を政治問題に使っておることになりやしませんか。そうとしか受け取れませんでしょう。この朝鮮に帰りたいという人を仮釈放さえもできないというのはどうしてできないのです。そのくらいのことを当然韓国に対してき然たる態度で要求する立場こそ、政府のとるべき人道的立場と言いたい。それを韓国に対してそういう立場を主張しないで、そうして朝鮮に帰りたいという人をいつまでもああいう形で抑留していくということが、どうして人道的な立場からそういうことができますか、できないはずです。人道的な立場というものは撤回なさったらよろしいと思います。人道的な立場というものは、そういうものではないのです。人道的な立場に立たれるならば、どうして韓国に対して、その希望に従って帰すということが言えないのですか。私はその立場こそ人道的な立場だと思いますが、どうですか。
○愛知国務大臣 大体先ほどから申し上げておりますところで御了解願えるはずだと私は思うのです。これ以上は申し上げられません。
○大西委員 仮釈放のことでもできませんか。そしてなおもあなたは人道的な立場からこの問題を処置すると言われますか。その点はいかがです。
○愛知国務大臣 従来申し上げておる通りでございます。
○松本(七)委員 今までの御答弁では、従来よりも一歩も前進できないということですね。あなたが、もう少し人道的な立場を日韓会談をめぐる内閣全体としての態度に比重を重くするように努力していただいて、そして全般的な態度から打開の道を発見していただく以外になかろうということで、きょうは御出席を願ったわけなのです。日赤の方にしろ現地を直接見られた方は、もういよいよこれはリミットにきた。そこで本来ならば北に希望する者はちっとも仮釈放もしないで、長い人は五年にもなっておる。平均すれば三年だ。ところが南の方は六カ月以内で大体仮釈放あるいは帰国しておる。こういう事態になったときに、せめて二年以上の人を早く仮釈放する。その中でも老人、病人、子供等を優先して仮釈放するというようなことでもやってもらいたいという希望が切実に出ておるわけです。ですから何とか一つ、こういう点の打開についてお力をかしていただきたいという気持から、きょうはおいで願ったのですけれども、先ほどからの御答弁を聞くと、どうも前進を期待できないような非常に心細い感じがいたすのです。その中で特に気になりますのは、入管の事務当局からの先ほどの御答弁でも、しきりに日韓会談ということが出てくるわけです。仮釈放をすることさえも日韓会談に影響があるということになると、これは大問題ですよ。そういうふうなことが韓国側から具体的に、北に希望する者は仮釈放でもまかりならぬとか、まあそこまで言わなくとも、明らかに日韓会談には影響するということがわかるような発言がなされておるとすれば、これは私は国際的にも大きな問題だと思う。果してそうなのか。それとも日本政府独自の判断で、これは日韓会談に影響があるだろう、韓国側から何も言ってきておらないけれども、具体的には要求はないが、影響があることを見越して、どちらかといえば韓国側に気がねをしての御配慮か。この辺のところはもう少し全般的な判断をする上で私どもにお聞かせを願いたい。
○愛知国務大臣 私はただいまお話のございましたように、全般的な見地から本件の解決をできるだけすみやかに促進したいということは、はっきり私の決心として申し上げることはできるのであります。ただ申すまでもございませんが、この点はいろいろ微妙な点もございますから、先ほど申しましたように今日ここで私が、一つの決心を持っておると仮定いたしましても、こうこういたしますということを微細にわたって申し上げますることは、かえって本件の促進を阻害すると思いますから、これ以上は申し上げられないということを率直に皆様にお訴えしておるわけでございます。
○松本(七)委員 いや、方法は述べられないでも、その決意だけでも披瀝していただきたい。
○愛知国務大臣 ですから、日本政府独自の立場で仮釈放をするとか、その決心をいたしますとかいうような具体的なことについて申し上げることはごかんべんを願いたいと思います。大所高所から総合的に申しまして本件の解決を促進したい、これは私の念願であるということは明白にいたしておきます。
○松本(七)委員 さっきの質問に対する御答弁はいかがですか。韓国側からその仮釈放なんかについても意思表示があったものか、それとも日本政府が独自の判断で、つまり韓国側の希望をそんたくして、そしてこれは日韓会談に影響ありと判断されておるのか。
○愛知国務大臣 これは正確には日韓会談の衝に当っており、またその責任者である外務大臣からお聞き取りを願いたいと思います。
○松本(七)委員 それは法務大臣は何も聞いておられないで知らないという意味ですか、それとも知っておるけれども、答弁は外務大臣からしてもらわないと自分からは言えないという意味ですか。
○愛知国務大臣 何も聞いていないわけではございませんが、しかしこれは大切な外交の問題であり、私は外交折衝というものは一元的にやるべきものであると思いますから、外務大臣から責任のある答弁をお願いしたいと思います。
○松本(七)委員 それでは最後にお聞きしておきますが、先ほどから事務当局にもお伺いしたように、たとえば北の方から費用を送ってくるとかあるいは第三国の船の便がある、そういう条件が出てきてもやはり今説明されたように、政府全体としてこれをどうするかという基本的なかつ具体的な方針が決定するまでは、なかなか希望通りの解決はできない、こう考えてよろしゅうございますか。
○愛知国務大臣 これは私も先ほど申しましたように、全体的の立場を十分勘考いたしまして解決を促進したい、こういうことで私はうんと努力をいたしたいと思います。その上で方法論の問題は別に考えられると思います。
○大西委員 この前にもちょっと触れましたが、あれは何日でしたか、しばらく中絶しておりました日本漁船の拿捕、また第二星丸というのが拿捕されたようであります。このいきさつを一つ詳しくお聞きしたいと思いますが、その御用意はございますか。もしなければ、あしたでも書類によって提出を願いたいと思うのですが、どちらでもよろしゅうございます。
○板垣政府委員 最近拿捕されました漁船についての善後措置については、御承知の通り外務省といたしましては直ちに文書による抗議をし、私自身も柳公使を招致いたしまして厳重なる抗議と即時返還を要求しております。ただその拿捕の経緯等につきましては、ただいま書類を持っておりませんので、後ほどお届けをいたしたいと思います。
○大西委員 それではあすの委員会でこの問題を再び議題にしたいと思いますから、十時までに一つなるべくその事情をつまびらかにして報告書の提出を願いたいと思います。参考までに申し上げますと、拿捕された場所が李ラインのうちであるか外であるかどのような場所であるかというような問題、あるいは第二星丸が拿捕される以前に、他の船に対しても拿捕のかまえをしたというようなことも聞いておるのだが、第二星丸を選んで拿捕したという理由は何であるか。さらに発砲したとも聞くのであるけれども、その事実はどうか。わが海上保安庁の巡視艇ですか、監視艇ですか、これはどういうふうな処置をとったのか、そういうふうな問題、そのほかまだ政治問題としていろいろ重要なポイントをはずさないように御報告を願いたいと思います。
○櫻内委員長 よろしゅうございますか。
○板垣政府委員 よろしゅうございます。
○大西委員 それからこの問題に対しまして事後の処置でございますけれども、報道機関の報ずるところによれば、何か抗議をしたとか、する用意があるとかいうことでありますが、この点についてはどうなっておりますか。――それではこれもそのときに一つ聞きましょう。それからもう一つは、これもこの前の問題にありました韓国へ返した百六点の美術品のリストでありますが、これは予算委員会においては公表すると言っておられるようであります。まだ公表がないようでありますが、これは公表されますか。
○板垣政府委員 百六点の内容につきましては衆議院の予算委員会で資料の提出要求がございましたので、ただいま内部手続をほぼ終えまして準備中でございますので、あるいは明日中に資料として国会へ提出できることと思います。
○大西委員 ぜひあす提出を願いたいと思います。私の方も私なりの資料を持っておりますから、もし提出がなければそれをもととしていろいろ質問をしますから、でき得べくんば、そういう委員会の決定もあることですから、あす資料を提出していただきたい。それでこの問題についての質問はあすいたします。なおこの問題が国会で論議されましたときに、それに関連して柳公使の声明なるものが出たように聞いておりますが、これは御承知でございますか。
○板垣政府委員 私は英文のジャパン・タイムスで読んでおりますから、承知しております。
○大西委員 この問題についても、一つそのときにそれをもとにして質問いたします。
 それからもう一つお願いしたいのですが、今日まで日韓会談のいきさつ、問題点が部分的にこの委員会において答弁などを通じて明らかにされましたけれども、なお全く全体的に明らかにされておりません。これは日韓会談の性質上やむを得ない点もあろうと思いますが、差しつかえない程度の各委員会ごとの進行状況、問題点くらいを一つあす御発表願いたいと思うのです。ということは、今申しましたように、差しつかえのあるものはもちろんけっこうでございます。しかしやはりこういう問題は国民に明らかにして、国民の協力を得るということが必要であろうと思いますので、その点について可能な範囲でよろしいですから、日韓会談の各委員会の状況、それからその問題点等についての報告をあす願いたいと思います。
○板垣政府委員 ただいま御要求がありました現在行われておりまする日韓全面会談の経過につきましては、実はやや実質的討議に入っておりますのは国籍に関する委員会でありますが、その他は大体手続問題程度で、まだそれ以上は進んでおりませんということと、そのほかに大体この会談内容につきましては、簡単にコミュニケでそのたびごとに発表しておりますが、これ以上の問題につきまして、たとえ内容が大したことがないといたしましても、今の段階において、国会で御説明申し上げますことは、ちょっと差し控えたいと存ずる次第でございます。
○大西委員 全然言えませんか。それならまたこちらで一つ一つ質問もしなければならぬですけれども……。
○板垣政府委員 現在行われております交渉の内容につきまして、私の方から積極的に説明、発言をすることは差し控えたいと存じます。
○大西委員 それじゃ、そういうことでありますから、あす私の方から具体的に一つ一つ質問します。
 それからこの間、沢田代表を呼んでいろいろと意見を聞いたのでありますが、外務省のおえら方は一人も出てこない。私は両方出てもらって、交互に日韓会談のかまえというようなものを聞きたかったのでありますが、それができませんでしたが、あなた方は沢田発言と俗にいわれているステーション・ホテルにおけるあの発言の内容は御存じであったのですか。もちろんこの間外務委員会において問題になりましたから、承知されたと思うが、その以前にああいうふうな発言があったということは承知しておられましたか。
○板垣政府委員 ごく概略につきましては承知しておりました。
○大西委員 概略でも一番大事なところはどうですか。すなわち日韓会談の目的は三十八度線を鴨緑江の方へ押し返すんだ。これが目的なんだ、個々の問題なんか大したことはないんだというのが一番の眼目でありますが、そこのところについては、表現はともかくとして、そういう重大な発言であるということは御承知であったのですか。
○板垣政府委員 当時一部の新聞にも出ましたので承知しておりましたし、私どもとしては、さっそく沢田代表に意味をお尋ねしましたところ、沢田代表から、国会で説明をされたと同じような御返事をいただいておりました。
○大西委員 それでは、私どもがあれを委員会で問題にいたしまして、日本の外交が大へんな誤まりを犯そうとする点を事前に指摘して、沢田全権も訂正されて大過なきを得たのでありますが、もしわれわれがああいう問題を委員会において提起しなければ、あなた方はそういうことを承知しながら、日韓会談をあの考えのもとに沢田さんに進めさせることになると私は思うのでありますけれども、あの発言を承知しておきながらどういう処置をとろうとせられたのか、過去のことではありますが、聞いておきたいと思います。
○板垣政府委員 沢田代表の真意というものが、言葉で現われたものと非常に違っておったということでありますから、私どもとしましてそれをまた取り上げて、新聞で取り消しをやるとかというような、それまではもちろん考えておらなかった次第でございます。
○大西委員 そうするとあれは、言ったことは言ったが沢田さんの真意とは違った発言であった、こういうふうに了解をされておったのですか。それでもう、そのままほおかぶりしていこうというようなお考えであったのですか。
○板垣政府委員 ほおかぶりということはございませんけれども、代表の真意というものがはっきりしておりますれば、それでけっこうではないかというふうに考えておった次第でございます。
○大西委員 表現と、その内に盛られる思想というものは、どんなに激しておっても、あるいはとっさに発言したことも、そう食い違うことは私はないと思うのです。多少のニュアンスが違っておったというようなことなれば、そういう弁解も成り立つと思うけれども、あれだけ明快に言い切っておられることを、真意ではなかったというようなことでもって簡単に了解されることは、私どもの常識としては納得しかねるのであります。ほんとうにあなた方は、ああいうものを読み、またすでにそういうことを聞いて、真意ではないというような沢田全権の弁解をただそのまま、はいそうですかと納得されて、何の懸念もお持ちじゃなかったのですか。
○板垣政府委員 表現上確かに不適当なところはあったと思いますが、沢田代表が誤解されたような真意を持っておるということはわれわれ信じられませんし、われわれとしましては、沢田代表が釈明されたような本旨でもってけっこうであるというふうに考えた次第でございます。
○大西委員 それはずいぶん強弁であります。この前の委員会でも、沢田全権のことであるから、ああして訂正をされますと言われたが、しかし訂正をすると言っても、ちょっとしたとっさの場合の言い違いだとか言い過ぎだというなれば、それは訂正ということで、取り消すとかいうようなことで事は済むと思うけれども、あれだけの考え方をるる述べておるということは、それは訂正とか取消しでは私は実は納得しないのです。非常な疑念を持っておるのです。疑念どころではない。そういうことを取り消しされましても、その根底は私は変らないと思っておるのです。それを裏づけるところのあの発言だけではなしに、そのほかいろいろな場面において、同じような陣営に属する人が言っていることが符節を合せるのです。そういうことでありますと、訂正しますと言われただけで引き下る気持は私はなかったのであるけれども、あの席上で、あれ以上深追いすることもどうかと思って、そのことはむしろ外務当局にその責任を一つ感じてもらわなければならぬし、またその真意を聞き、善後措置も聞きたいというので、あの席はほこをおさめたのであるけれども、外務省の立場が、やはりあれは言い違いであった、真意はそうでなかったということで、そのままでほうかむりされるということであるならば、あるいは言い違いされるかもしれない。言い違いをされているのに、私がその機会を見のがせば、その言い違いがほんとうになってしまって、とんでもないことになるので、その点については言いがかり上でなしに、もう少しその点について虚心たんかいに、外務省のあの沢田発言に対し、あるいは沢田さんの考え方に対して、もう少し慎重な誠意のある態度、今後に対する保障というようなものが、私どもほしいのです。一ぺん見解を聞きましょう。
○板垣政府委員 先ほど申し上げました通りでございまするが、幸い国会を通じまして、表現上不適当な点が沢田代表の真意でなかったということは、非常に明らかになった次第でございまして、政府といたしましても、現在におきまして、別に新たなる措置をとる必要はないというふうに考えるわけでございます。
○大西委員 あの席には外務省からはどなたがお出になったのですか。
○板垣政府委員 私存じませんが、代表の人が一人であります。高野君が出ておったと思います。
○大西委員 それだけですか。
○板垣政府委員 それだけの由でございます。
○大西委員 矢次さんが首相の特使ということで向うへ行かれたのですが、向うでいろいろなことをしゃべっておるように聞くのでありますが、特に矢次さんは、日韓合弁の漁業会社を作って、そうしてそのものだけ李承晩ラインの向うへ入ることができるような特権を与えて、この問題を解決しようというような提案をしたということがもっぱら伝えられておる。こういうことをお聞きじゃございませんか。
○板垣政府委員 矢次氏が京城に行かれたときに、そういう話をされたかどうか、全然私存じません。ただその後矢次氏も加わったその種の合弁会社の案があるといううわさは私も聞いております。
○大西委員 聞いておるというのは、矢次さんがそういうふうに話したということを聞かれたのですか。それとも何か根拠の薄弱な風聞ですか。
○板垣政府委員 京城でそういう話をしたということは聞いておりません。ただ最近になって、そういう情報を私は書類で見たことがあります。
○大西委員 これは重大な問題である。私どもは、そういう形でもって李承晩ラインを認めて、一部の利権屋だけが甘い汁を吸おうういうような李承晩ラインの解消の方法には断然反対したい。この問題についての保障を後にあなた方に要求しますけれども、そういううわさを聞かれて、これは重大な問題であるから、当然アジア局長としてはこの問題の真否を確かめられる必要があったと思うけれども、確かめられましたか。
○板垣政府委員 単なるうわさでありまするし、かりにそういうような計画があったといたしましても、そういうような方式で日韓の漁業問題が解決される案にならないことはきわめて明瞭でありますので、特別な措置はとっておりません。
○大西委員 それで外務省の態度は明確になりました。その点はあなた一局長でなしに外務省の立場で、また首相の立場としても、当然そういうものは許すべき問題ではないというふうに受けとってよろしゅうございますか。
○板垣政府委員 日韓の漁業の問題は、これから討議をされる段階でありまして、どういう形で解決されていくか全然見当がつかないわけであります、日本側も一案がございますから。従ってそれに関係あるわけでございますが、私どもが申し上げますのは、一種の独占的な漁業の一合弁会社案のみによって、日韓間の漁業問題は片づかないという意味でございます。場合によっては、将来漁業問題が一般に片づいて、いろいろな形の合弁会社ができることは、これはあり得るかとも思いますが、その辺はまだ全然将来の問題でありまして、予想がつかない次第でございます。
○大西委員 だんだんあやふやになってきたのですが、一合弁会社のみによって解決しない、しかし合弁会社もあり得るというようなことであると、私は一つの危惧の念を抱くのです。私は、そういうことは今の段階において考えらるべきことではないというふうにあなたが断言されたものだと思って、やや安心しようとしたのですが、そういうことは一合弁会社のみによって解決できない、しかし他の問題と一緒に解決することは可能である、あるいはそういうことも予想されるというふうに私はとるのであります。そうすると非常に危険なことになるのでありまするけれども、この点はいかがですか。あなたの心の中にも、そのうわさも事実といってもいいという気持があるのですか、どうですか。
○板垣政府委員 そういう点は全然予想してお話申し上げたわけではありません。ただ抽象的に申し上げたわけでありまするが、私の申し上げました意味は、今の特定の合弁会社一つを作ることによって、いわゆる日韓間の漁業問題、李ライン問題を片づける方式にするということはあり得ないという意味でございます。
○大西委員 そうしますと、あなたは何ですか、それが一つでなくても二つでもいい、多くの解決策のうちの一つとしてこの合弁会社を作って、そのものだけが特権的に李承晩ラインの向うへ入らしてもらって、魚をとるということもあり得る、こういうことですか。
○板垣政府委員 お話がだんだん具体的になりますると、先ほど申し上げましたように、日韓間の漁業問題の解決方式は、まだこれからの交渉段階でありまするし、また相手方の出方にもよりまするし、こちらにも二案、三案あるわけでありますから、今いろいろと予測をいたしまして、かえって将来の交渉に阻害を来たすということも困ると思いますので、これ以上の具体的な論議は差し控えたいと思います。
○大西委員 具体的なことを私は要求しているのではないので、そんな具体的なことを言ってもらいたくないから言っているのですがね。そうしますと、あなたは、日本政府の立場として、何とかの形で李承晩ラインを認めて、そうして特別なものが向うへ入るとかいうようなことも解決の一つになるというようなことになると、李承晩ラインを肯定するということも考えられるということになりはしませんか。われわれが今言われるような意見を聞くと、李承晩ラインというものは不当なものである、この立場に立ってあなた方は交渉されているのだろうと思う。これを認めて、どれだけのものがどういう条件で魚をとらしてもらおうかというような妥協策をもって今から腹がまえとしておられるのではないと私は思う。ですから、その点で李承晩ラインを認めないという立場、これは微妙でもくそでも何でもない。こんなものを認めるというような立場で、条件次第によるというようなことであったら、それこそ日本政府みずから事を微妙にしている。こんなものを認めないという立場が当然の主張なんですから、それを少しでも認めるかのごとき、そういうような主張であってはならぬと思うのですが、どうですか。
○板垣政府委員 御説の通りであります。李承晩ラインを認めるというようなことは、毛頭考えておりません。
○大西委員 そういたしますれば、まだ話の最中に、特定の合弁会社を作って、特定のものが向うで魚をとるというような、そういう伝えられるような矢次氏の構想が出てくるということに対しては、これは断じて、あなた個人のみならず、政府の態度としては認めないのだということをはっきりされればいいのであります。はっきりされかけておったが、またどうも怪しくなってきた。
○板垣政府委員 現段階において、まだ日韓間の漁業問題が解決しない前においては、お説の通りでございます。
○大西委員 ちょっと話が込み入ってきますが、私は矢次さんという人をよく知らないのですが、この人はどこの人ですか。
○板垣政府委員 存じません。東京に在住しておられます。
○大西委員 私が尋ねておるのは、もちろん日本人であろうと思います。しかしはえ抜きの日本人かどうかという点についてもいろいろなうわさもあります。ですからこの点を一つ聞かしていただきたい、こういうことです。
○板垣政府委員 私は、もちろん日本人で国策研究会の事務局長をやっておることも承知いたしております。私個人的にももちろん知り合いでございます。
○大西委員 この点は、私はいろいろな風説を聞くものでありまするから、おい立ちから一つよくお調べになって――首相の特使として、外務省のお役人も知らないいろいろな重大な役目を果しているこの人の素性を私は少し洗ってみたいと思う。私どもも若干調べて持っておりますが、あなた方の方でこの問題については一つ調べていただきたいと思う。よろしゅうございますね。
○板垣政府委員 特に個人につきまして身元調べをいたす気はございません。
○大西委員 身元調べといって、これは探偵の意味で言っているのではないのであって、首相の特使として働いた人がいろいろとうわさをされている。日本の政界の黒幕だとか何とか言われている人なんです。そういう人の素性を政治の立場から可能な範囲であなた方に調査をお願いするということは、何らこれは間違った筋ではないと思う。そういう意味で一つ御調査を願いたい、こういうことなんです。
○板垣政府委員 私としましては多少の知り合いでもありますが、総理が御信頼になって個人的な特使としておやりになったことでありますので、外務省といたしましてそれ以上素性まで調べる責任はないと思います。
○大西委員 なかなか強気だが、じゃあしたその問題についてお聞きいたします。
 大臣が来られたからなんですけれども、もう一つだけ聞いておきます。この前も問題になったのだけれども、日韓会談の相手の李承晩政府というのは、三十八度線以南かあるいは北も含まれるのかという問題であります。この前にいろいろと問題になった百六点の美術品でありますけれども、何か古墳の中から出たものだという話でありますが、その古墳は三十八度線の南、すなわち李承晩政権の及ぶ範囲の韓国から出たものか、あるいはそれ以外のところから出たものか、この点について一つ聞きたい。
○板垣政府委員 昌寧郡の古墳から出たものでございまして、韓国の最南端でございます。
○大西委員 それは間違いありませんか。
○板垣政府委員 間違いございません。
○大西委員 百六点全部ですか。
○板垣政府委員 さようであります。
 一カ所から出たものであります。
○大西委員 私の調査によりますと、そうではないのですけれども、それはあとで取り消しされるようなことはございませんか。百六点は明確に韓国から出たもので間違いないですか。
○板垣政府委員 これは文化財保護委員会の資料に基いたものでございまして、ただいまのところ外務省もさように信じております。
○大西委員 もしその中に三十八度線の北から出たものが含まれているとすれば、これを李承晩政府に返すということは私は重大な問題があると思うのであります。これは仮定のことでありますが、私どもはあなたが言われるように南ばかりではないと見ておるのです。仮定のことのようですが、しかしこの点は聞いておきます。そういう不合理なことはありませんか。
○板垣政府委員 私どもは、現在のところこれは南からのものであるということを信じておりますので、不合理なことは生じ得ないと考えております。
○大西委員 もし北から出たものだったら、あるいは現在朝鮮の中に居住している人から、あるいはその土地から日本に持ち帰られたものというような美術品は、要求されましても当然私は韓国に対して返すべき筋合いのものではないと思いますが、その点はどうですか。
○板垣政府委員 その点は問題の点でございまして、私どもとしましては、かりに将来文化財というようなものの引き渡しが行われるにしましても、北からきたというはっきりした証拠のあるものは、できるだけ保留をいたしたいと存じますが、その点はまだ今後の交渉の問題にもなろうかと存じております。
○大西委員 できるだけ保留をしたいという御趣旨であります。それではこの問題は一応打ち切りまして、あとでまた質問いたします。
○櫻内委員長 松本七郎君。
○松本(七)委員 一般情勢の問題で、まだたくさん質問することはあるのでございますけれども、それは次会に譲りまして、きょうは先ほど愛知法務大臣に大村収容所のハンガー・ストライキをめぐるいろいろな問題についての質問をいたしましたので、それと関連することだけにとどめて、他は同僚に譲りたいと思います。
 何しろ、ずいぶん長い間朝鮮民主主義人民共和国の帰国希望者が、仮釈放もされずに放置されておるというので、この前日赤の井上外事部長も国際赤十字の委員と一緒に、朝鮮赤十字からきた差し入れの二千五百ドルの配分のために向うに行かれて、事情を見られて、これはリミットにきている、せめて仮釈放でもしてもらわないことにはどうにもならないという意見をさっきここで述べられたわけなんです。それについて法務大臣にいろいろ御質問をしたのですけれども、結論は今までとあまり変らない、まあ法的には差別待遇をする建前にはなってはおらないが、事実上、結果においては北と南の希望者を差別待遇をしておる、これは認められたのですけれども、その理由の中心は、やはりこの日韓会談に支障を来たしてはならぬという配慮の結果、こういうふうになったんだ、そうなれば、こういうふうにせっぱ詰まった状態を、日韓会談よりも人道問題を優先させてこれを解決する意思ありやいなやということになれば、それは気持はあるけれども、ここで具体的に、しからばどういう方法でその熱意を表わすかというところまではいえない、閣議にもはかり、外務大臣にも相談して、十分内閣としての基本方針を早くきめようという趣旨だろうと思うのですが、そういう御答弁であったわけです。
 そこで、私は外務大臣にお聞きしたいことはたくさんありますが、きょうは数点だけにしぼってお伺いしたいのは、日韓会談というものと関連させて基本方針をきめようというのでは、もうハン・ストにまで入って、せっぱ詰まった状態に一方ではなっておるにかかわらず、問題の解決はそう早急には望めないような気がする、そこで一応政治問題とは切り離して、問題を少し具体的に進展させる手段として、たとえば朝鮮の赤十字の代表を日本赤十字が呼ぶ形でもって日本に来てもらう、あるいは国際赤十字の委員が日本に来る、この三者でもって問題をもう少し進展するような努力をする、そういうことを少くとも韓国側に、これは日韓会談とは全然関係のないものとして、赤十字という立場から問題を検討するというくらいは、この際日本政府を通じて了解させるという程度のことはやる必要があるんじゃないか、そうしないと事態は深刻になるばかりだ、こういう点についての外務大臣の御意見をまず伺いたいのが、第一点でございます。
○藤山国務大臣 北鮮に帰る希望をしておられる方々の問題でありますけれども、これは日韓会談と全然別個のものだとも、あの十二月三十一日の取りきめからいいますと言えないわけですが、あの取りきめによってわれわれは忠実にこうした問題の解決をはかっていきたい、こう思っております。これは国際間の問題でありますから、できるだけ理解を深め、そうして問題の解決を円満にはかることが一番必要だと思うので、われわれもそういう立場をとってきたわけであります。この帰還問題につきましては、かねてから申し上げておりますように、本人たちの好まないところに帰そうという意思は日本政府は持っておらぬのであります。ただ円満にそうしたことが解決できることを期待しながら今日まできておるわけであります。しかしお話のように、ハン・スト等の問題も起っております。われわれとしては今後こういう事態とも照らし合せまして、問題の処理についてさらに考えていく必要があろうかと思います。
○松本(七)委員 これは今の政治的な問題と関連があるとなかなか事態は発展できない。たとえばさっきこれは南の場合ですが、自費で帰るものは帰しておる。北にはそういうものがない、あるいは交通の便がないから、そういうふうな差別が生じているのだ、最初こういう説明だった。それならもしも朝鮮民主主義人民共和国から帰国のための費用が送られてきたり、学校のための費用も送ってくるのだから、そういう人道上の問題の解決のためには費用がくるかもしれない、その費用がきたり、あるいは第三国の船の便もある、こういう場合には北に帰りたい者はすぐ帰してもらえるか、こう聞きましたら、いやそれはそうはいかない、それは日韓会談というものがやはりあるんだから、それに支障を来たさないようにやらなければならぬので、そこのところは結局政治的考慮から差別待遇になってしまうのだという結論なんです。そういうことに対して、外務大臣がやはり大局的に判断して、こうなればせめて仮釈放くらいはしなければどうにもならないんだから、そういった具体的な問題について少し意見をはっきりさせてもらいたいのです。ただ帰りたくないところに帰す意思はないのだ、これでは済まないのです。現にここまできた以上は、せめて仮釈放くらいできるのかどうか、あるいは第三国の船の便があれば帰ることを認めるのかどうか、そういう点を少しはっきり伺いたい。
○藤山国務大臣 最初延びておりましたのは、むろん北鮮に帰る希望者あるいは韓国に帰る希望者それぞれに対して、はっきりした意思表示を受けなければならぬわけであります。もしそれが間違いましたら大へんなことになるわけでありますから、そういう点については相当慎重を期して、それぞれの希望を聞いたように思います。若干その過程において南に帰る人が北に帰るというふうになった希望者もあるようであります。そういうものをはっきりさせなければ、もし間違ってやりますと、これまた大きな問題でありますので、そういうことからもおくれておったわけであります。むろんこの問題は人道上の問題も関連しておりますので、決してないがしろにいたしておるわけではないわけであります。国際赤十字等の力をかりることも、われわれも考えないわけではございません。しかしながら現在までのところ、非常にデリケートな日韓会談も並行してやっております関係上、それらについてもやはり若干の配意はいたさなければならぬことは当然なことだと思います。しかし今お話がありましたように、もうぎりぎりの段階にきているじゃないか、ハンスト等も行われておるというような状況でもありますので、それらをにらみ合せて今後考えて参らなければならぬということを申し上げているわけであります。
○松本(七)委員 少し具体的に事態の進展をはかっていただけるお言葉のようにも聞えるけれども、しかしさっき言ったように具体的に帰る条件がそろったら――今までは出入国の当局はそういう条件がないからだめだ、こう言っていたのだから、そういう条件がもうこうなってくるとできる可能性が十分あるわけです。そういう場合には、日韓会談ということに固執せずに帰るようにとりはからっていただけますかと言っておるのです。はっきり答弁して下さい。ほかのことはいいから、気持はわかっておるから、できるかできないか……。
○藤山国務大臣 これは法務省とも相談いたす問題でありますが、しかしながらただいま申し上げましたように、この問題は相当デリケートな問題ではありますけれども、ハンストというものが行われておるぎりぎりの段階にきておる、必ずしも今日まで延ばしたことが、何か日本政府が悪意を持って特に延ばしたというふうな問題では、先ほどから申し上げておるようにないのでありまして、調査その他についても慎重にしておった結果であることは申すまでもないのであります。でありますから、どうかそういう意味において、過去の経緯等については御理解をいただきたいのでありますが、さらに将来の問題については、むろん日韓の正式会談を開きます過程において話し合いをした問題でありますから、全然日韓会談と関係がないということは申し上げかねると思います。しかしながら日韓会談がどういこうと、人道上の問題をそのままに放置していいのかといえば、必ずしも私どもはそういうふうに考えておりません。しかしながら先ほどから申し上げておりますように、円満になるべくこういう問題は解決することが望ましいことでありまして、そういう意味での努力を今日も続けてきたわけであります。でありますから、円満に解決する方途がありますれば、できるだけその線に沿ってはやって参りたいと思いますけれども、ぎりぎりの線まできておるような状態ということも、私ども十分認識いたしておりますので、その基礎に立ってやはり考えていかなければならぬというふうに現在考えておるということを申し上げたわけであります。
○松本(七)委員 そのはっきりしない点があるから調査を十分にしなければならなかった、さも全体がそうであったごとく言われますけれども、それは一部にあったかもしれない。しかし大部分のものは北に帰りたいとはっきり意思表示しておる。それは長いものは五年以上、平均すれば三年以上北の者は勾留されておる。それだから、せめてもうこうなれば、一歩具体的に前進させるためには仮放免くらいは早くやるべきだ、そうして事態の解決に乗り出さなければ、このまま日韓会談の推移を見てというような今までの態度では許されないと思う。そこで日本政府が日韓会談に対する影響を考慮して、仮釈放もこれは遠慮した方がよかろうという韓国に対する遠慮から調べなかったのか、あるいは韓国側から明確に仮釈放も困ると言わんばかりのことを日本政府に何らか伝えてきたものか、この点は私どもがいろいろ判断する上に非常に大事な点になりますので、これは法務大臣が、自分は知っておるけれども、この点は事外交に関することだから外務大臣から聞いてくれと特に言われた点なので、外務大臣からはっきりとお答え願いたい。
○藤山国務大臣 日本におりました朝鮮の方々を帰すという問題については、日韓交渉の一つの前提条件であったわけであります。われわれもその線に沿って帰すという問題を処理したわけであります。むろん本人の意思に反して帰すことも適当とは思いませんし、またそういうことが現在行われることが適当であるということも考えておりません。従って本人の希望するところに帰すのだということを韓国側にも申しておるわけであります。全部を韓国に帰すということを申しておるわけではございません。韓国側は全部を韓国に帰してもらいたいということを言っております。しかし私どもとしては、前から申し上げております通り、人道的立場でもって、こういう人は本人の意思のあるところに帰していくのだということで、前国会でも申し上げた通り考えてきておるわけであります。しかしただいま申し上げましたように、できるだけ円満にこういう問題を処理することができれば、それが一番いいのでありますから、そういう意味においてわれわれも考慮をしてきた。韓国には帰さぬけれども希望のところに帰すという立場で考慮をしておるのでありますが、しかしできるだけ円満に帰した方がいい、また円満に話し合いをつけていく方がいいということで、今日までやってきておるわけであります。しかしお話のように今日ハンスト等も行われまして、ぎりぎりの段階に来たということも、私ども先般来この経緯を承知いたしておりますので、十分考えておるわけでありまして、そういう問題について円満にやることが一番適当でありますけれども、そういかない場合もあり得ることも最終的段階ではいろいろ考えていかなければならぬと思います。そういう意味において今後考えていくということを申し上げておるわけであります。
○松本(七)委員 せめて仮放免くらい韓国側の了解のもとにやる見込みはあるでしょうか。
○藤山国務大臣 日韓会談の交渉というのは非常にむずかしい、またデリケートな折衝でありまして、今私から韓国側がそういうことを了解するだろうとか、あるいはしないだろうということを申すことは、必ずしも適当でないと思います。しかし私がたただいま申し上げたような考え方で、外務省としてもできるだけ内輪をまとめ、そして問題の進展をはかっていきたいということを考えておるのであります。
○櫻内委員長 田中稔男君。
○田中(稔)委員 今の松本委員からの質問に関連いたしまして、私も二、三補足的にお尋ねいたしたい。外務大臣、このごろはなかなか答弁が上手になられたというか、ずるくなられて、あいまいもことして捕捉しにくいような答弁で困るのです。だから繰り返しの質問になりますが、はっきり一つ御答弁願いたい。
 まず、大村収容所におる北鮮に返りたいという朝鮮人、この諸君を北鮮に帰すという問題は、日韓会談その他政治問題と切り離して、これだけを個別的に人道上の問題として処理する、こういうふうなお考えをお持ちでありませんか、一つお尋ねいたします。
○藤山国務大臣 この問題につきましては、昨年来経緯があるわけでありまして、九百二十二名の日本人抑留漁夫の送還ということを前提にしてわれわれは話をしたわけであります。同時にこの問題も出てきたわけであります。十二月三十一日のああした会談ができます前に、問題が解決しないならば、これは人道上の問題としてやはり別個に解決するしか方法がないのではないかという考え方、それは相互の抑留漁夫についてもそうなんでありますが、そういう考え方も持ったわけであります、むろん考えなかったわけではございません。しかし日韓会談の予備協定ができたものでありますから、一応その線に沿ってわれわれとしては実行をしていくという形で、今日まで取り進めてきているわけであります。従ってできるだけ調査等も十分いたしまして、しかも疑問のある方は、送還順位等もできるだけあと回しにして逐次やってきたのが実情でございます。従って相当長くかかりましたことも、やむを得なかった点もあるのであります。しかしお話のように日韓会談につきましても、今後相当長期にわたった会談になって参りますし、いろいろな点から考えまして、さらにこうした問題については今松本委員にお答えしたように、事態の進展に応じてやはり考えていかなければならないのではないかと考えております。
○田中(稔)委員 日韓会談の予備協定で双方が合意に達したのは、南鮮の方に帰るのを希望している朝鮮人の問題だと思います。朝鮮民主主義人民共和国に帰りたいという朝鮮人のことは、その協定外じゃないですか。だからもともと日韓会談の議題の、予備協定の範囲外の問題ではないか、それはどうです。
○藤山国務大臣 韓国から密入国して来た人その他の問題でありますが、一応韓国側としては、これは南から来た人である、そういう意味において韓国に送還さるべきが適当であるのだという主張を続けてきているわけであります。しかしわれわれ日本側で調べたところでは、韓国に帰ることを希望しない人があることも、われわれからすれば認めざるを得ないし、また認めていく。そういう人の問題については、やはり先ほど申しましたような経緯によって、今日まで処理をしてきているわけであります。
○田中(稔)委員 韓国から日本に密入国した朝鮮人の一部が、韓国には戻りたくない、北の方に行きたいということについての日本政府のお考えはわかる、従来通り本人の希望するところに帰す、行きたくないところには帰さない、これはその通りですが、そういうことは韓国の政府の代表は了解しているのですか。ちょっと私うかつな質問のようですが、その点あらためてお聞きしておきたい。
○藤山国務大臣 韓国側としては、とにかく全部の人を韓国に帰してくれということを要求しております。
○田中(稔)委員 その主張を一歩も譲らないだろうと思いますが、どうですか。
○藤山国務大臣 必ずしも現在まで譲っているとは考えられません。
○田中(稔)委員 譲歩はしないわけですね。そうすると彼我双方の主張は、その点で対立しているわけですか。向うは全部韓国に引き取りたい、日本側では、それは韓国から来た密入国者であるけれども、本人の希望に応じて北の方に帰したいと思っている、こういう主張をして、双方の主張が折り合わないのでしょうか。その点はっきりしていただたい。
○藤山国務大臣 この問題は、韓国側はそういう行き方をしておりますが、日本側として韓国に帰りたくないという人がある以上、その現実の事態を認めていくということなのでありまして、別に韓国側に日本はこうしなければならぬということではなしに、今その事態の上に立って処置しなければならないということであります。
○田中(稔)委員 そういう外務省の態度はそれはけっこうなんです。しかし外務省のそういう意向は、韓国側ではおそらく承認しないことだろうと思う。そうすると、要するに北に帰りたいという朝鮮人を北に帰すということは、初めから日韓会談の協定外の問題なのですね。だからもう日韓会談とか、韓国に対するいろいろな政治的な配慮とかいうようなことを別にして、日本政府がもっと積極的にこの問題に対処するということが望ましいわけなのです。要するに政府が従来の態度をもっと積極的にしていただけばいいと思うのです。そこで今松本委員長も言われましたように政府が積極的な態度をとってこの問題を解決しようというなら、その解決するための条件はもうそろっているわけです。たとえば船の問題をどうするかということだっていろいろな方法があるだろうと思うのです。向うは引き取ろうといっているわけですから……。そこでそういう具体的ないろいろな方法を研究されておるかどうか、また研究する御意向があるかどうか。そうしてこのことはあるいは政府自身が表面に立つということがまたまずいとすれば、日赤に一つ委託してやらせるか、そういうふうないろいろな具体的なことをもうお考にならなければならない段階だと思うのです。またそうでないと外務大臣の誠意というものがただの口頭禅にすぎないということになるわけです。その辺のことについて、もう少し具体的なお話を聞きたいと思うのですが、外務大臣の御答弁でなくともアジア局長でもいいですが、そういうことについて、ただ本人の意思に反して帰りたくない者は帰さないというようなことを百万べん答弁されても、これはもう私どもハンガー・ストライキで多数の人命が危険に瀕している今日、引き下るわけには参らぬのですが、いかがですか。
○藤山国務大臣 こまかいことはアジア局長から答弁させますが、先ほど申し上げましたように、日韓会談をやりました昨年の経緯から見まして、なかなか相互釈放の問題が解決いたしません。そういう場合には、どういう手段方法をとるべきが適当であろうかというような意味において、ただいまお話のありましたような国際赤十字の問題等につきまして相当に研究もしておるわけでありまして、必ずしもないがしろにいたしておる、また方法、手段について全然無関心であるという意味ではございません。
○板垣政府委員 ただいま外務大臣の御答弁にもありました通り、従来の経緯を申し上げますと、昨年の協定の実施の段階におきまして、韓国側は、大村におりまする抑留者は全部例外なく韓国で引き取るということを言っております。ところが事実九十名ばかりがどうしても北鮮に行きたいというグループがおります。この問題は、日本側と韓国側の主張が全然相対立をいたしまして解決を見なかったのであります。一方そういう日を送りますと日本人漁夫の返還問題に非常に支障を来たしまするので、この問題は未解決のまま今日まで来ておるという状況でございます。従ってこの問題は相当根本的な問題、片や人道の問題もありまするし、片や日韓交渉全般の問題もございまするのでただいまのところでは全面会談において引き続きこの問題を議論するということになって参りましたが、まだその議論の段階まで入っておらないわけであります。一方現実の事態はお話のような事態になってきたということで、これにつきましてどういう処置をとるべきかとうことにつきましては、政府といたしましても至急研究しなくちゃならぬと思っておりますが、現在の段階におきまして、これを北鮮に帰すというようなラインではまだ検討いたしておりません。しかしそれ以外にもいろいろと研究の方法はあろうかと思いますので、至急検討いたしたいというふうに考えております。
○田中(稔)委員 今の発言は重大だと思うのです。北鮮に帰すラインで考慮していないということですが、北鮮に帰ることを希望している朝鮮人の送還の問題について、外務省は本人の希望するところに帰すといっておられるわけでしょう。そうするとその意味するところは、北鮮に帰すということになるのじゃないですか。その点はどうです。
○板垣政府委員 本人の希望すると申しましても、これはやや問題が具体的になりまするが、現在北鮮に帰りたい、あるいは行きたいといっている者の大半は、やはり韓国から入り、しかも親子はみな韓国におる者が相当多いわけでございます。従いまして一方国際赤十字の原則といたしまして、帰国先の自由という問題もございまするけれども、あの趣旨はやはり家族との再会というのが趣旨でございます。そういう点につきましても、もう少し根本的に掘り下げる必要もありますので、ただいまのところ北鮮に帰すというラインでは検討しておらないのでございます。しかし今申しましたことは、やや具体的な枝葉の問題でありまして、もう少し大きな見地から再検討する余地は、もちろんあるのであります。
○田中(稔)委員 さらにお尋ねしますが、今のは本人は北鮮に行くことを希望しておる。しかしあなたの解釈では、その朝鮮人の家族が韓国におるから、韓国に帰すのが国際上の、何といいますか、常識であるような御答弁でありますが、そうすると、何か外務省の態度は、非常に動揺して確定をしてないような印象を受けますが、その点をもう一ぺんはっきり伺いたい。
 もう一つつけ加えて言いたいのは北鮮に帰りたいと言っておる朝鮮人の中に、家族が日本におる、たとえばその夫が日本におる、あるいは子供が日本におるというような人で、北鮮に帰りたいのが第一だけれども、北鮮に帰れないならば、むしろ日本にとどまりたいという人もぼくはあると思うのです。それに今のあなたのお話だと、私の聞き違いかもしれませんが、北鮮に帰りたい朝鮮人を、家族が韓国におるので韓国に帰すのが、むしろ国際的な常識のようなお話ですが、その点もう一ぺんはっきり……。
○板垣政府委員 少し具体的なことを申しましたので、誤解を生じたと思いますが、必ずしも家族がおるから南鮮に帰さなくちゃならぬ、何々の建前で北鮮に帰すべきだという確定的な意味で申し上げたわけじゃありません。今お話のように家族が日本におる者もございます。そういう工合にこのケースは非常に複雑であります。従ってその点につきましては、われわれとしてもなお検討の余地がある。のみならずもの一つ大きな面といたしまして、日韓交渉上の関係がございますので、こういう点を全部合せまして検討を要する問題じゃないかというふうに考えておる次第でございます。
○田中(稔)委員 日韓会談の結果どうなるかということは、今確定的予測はできませんけれども、従来の経緯からして、日韓会談において韓国政府が、韓国から日本に密入国した朝鮮人を北鮮に帰すということに同意を与えるというようなことはちょっと予想できないと思うのです。だから日韓会談の結果を待ってと言っておれば、これはもう北鮮に帰国するという朝鮮人の希望は、ほとんど絶対に実現ができない。世界人権宣言の建前から考えましても、その人の選ぶ祖国に帰るというのが、ぼくは人類の権利であると思います。外務省は大体そういう線で今までお考えになったようでありますが、どうも今のアジア局長の答弁だと非常に何か考え方に動揺があるようでありますが、これは外務大臣にもう一ぺん念を押しておきますが、北鮮に帰りたいといって今大村収容所でハンストをやっておる朝鮮人を北鮮に帰すという、それは今具体的にどうということは御答弁がなければ仕方がありませんが、根本的な方針として、北鮮に帰りたい者は北鮮に帰すという従来の御方針に変化はない、こう見てよろしゅうございますか。
○藤山国務大臣 韓国に帰りたくないという人を韓国に帰すわけにはいかぬと思っております。
○田中(稔)委員 そうすると、それは韓国に帰りたくない人を韓国に帰すわけにいかぬというだけであって、北鮮に行きたい人を北鮮に帰すというのじゃないのですか。
○藤山国務大臣 むろん本人の希望によって帰すわけでありますから、あるいはお話のありました通り、日本の国内に家族がおるというような問題もありましょう。ただ韓国に帰りたくないという人については、韓国に帰さないという方がいい。
○田中(稔)委員 そうするとこういうわけですね。韓国に帰りたくない朝鮮人が、北鮮に帰りたければ北鮮に帰す。それから自分の子供、親がおるために日本にそのまま残留したいという場合も、それはまたそれで考える、こういうふうに二つのケースが考えられ、そのいずれについても政府が好意的に考えておる、これでよろしゅうございますか。
○藤山国務大臣 つまり韓国に帰りたくない、北鮮に帰りたい、あるいはこの際南米に行って働きたいという者もありますかもしれないし、あるいはないかもしれないのですが、そういう問題としては今後また――先ほどお話がありましたような国内に家内がいるというような場合、その人を無理に韓国に帰そうということはわれわれは考えておらぬ。ただしかし韓国人の戸籍上の処遇の問題もあります。そうしたいろいろの問題がありますから、今すぐこれらの者をこういう取扱いをするということは言えないわけでありますけれども、韓国に帰りたくない人を無理になわをつけて韓国に帰すという処置はとれぬということだけは間違いない。
○田中(稔)委員 とにかくそういう御答弁ではほんとうに困るんです。これは事務当局にお伺いしますが、国際的な事例として、ただ密入国をしたということのために刑務所類似の収容所に四年も五年も収容しておく、そういうとがあるのでしょうか。外国でそういうことがありますか。大体書いたものによると、出入国管理令には一カ月に限って強制収容の規定があるそうですが、それを無限に延ばすということは法の建前としてできないのじゃないですか。ちょっとそのことを移住局長か、入管か知らぬけれども、事務的に御答弁願いたい。
○板垣政府委員 各国の例は、私つまびらかにしないから存じませんが、常識的に言いますと、そう長い間収容所等に入れておるところはないだろうと思います。問題は、要するに朝鮮の現状から来る非常なむずかしい事態から起っているわけでございまして、普通の状態ならば、確かに本人の帰りたいところに帰すというのが原則でありますし、私どもとしてもその考えでおるわけであります。ただ遺憾ながら日本といたしましては、李氏が支配しておりまする韓国を国連の精神に基きまして唯一の合法政府と認め、これと日韓交渉をやっておる。その交渉の相手方が、どうしても日本にいる朝鮮人は全部韓国人であり、かつ引き取りは全部韓国に引き取りたい、こういっているところから起っている事態で、そのために相当長く収容所に入っているという事態が生じておるわけであります。この点はまことに遺憾に存じておりますけれども、根本はこういう非常に複雑な朝鮮の現状から起っている事態であることは申すまでもありません。
○田中(稔)委員 そこでまた外務大臣にお尋ねしますが、政府として表面に立つことは、日韓会談もやっておられるから都合が悪いでしょうが、日赤に代行させて、北鮮に帰りたいという朝鮮人が北鮮に帰れるように何らかの具体的な方法を講じる、それだけのお考えは外務大臣ないですか。
○藤山国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、現在までこういう問題については、できるだけ話し合いで平和に問題が処理されることを希望して、私どもはやってきたわけでございます。しかし先ほど松本委員の御質問にもお答え申し上げましたように、事態がなかなか急迫しているというような段階になりますれば、われわれとしてはさらに今後これらの問題についてどうするかという問題については、いろいろ考えていかなければならぬのではないか、そうして先ほども申し上げましたように、昨年十二月三十一日に日韓会談が妥結いたします前に、なかなか予備交渉ができない前にはいろいろな方法も考え、研究もいたしたこともありますので、そういうこともあわせて今後――何もしていなかったというわけではないのでありまして、方法論については若干研究している問題もございます。
○田中(稔)委員 今の御答弁は非常に含みのある御答弁で、私も今までいろいろのことが行われたことを知っておりますから、その御答弁を百パーセント私は善意に解釈いたしまして、その外務大臣のお気持が何らかの具体的な形で実を結ぶことを強く期待しておきます。
 外務大臣は、きのう朝鮮総連の諸君の代表を連れて事務次官に詳しく申し上げて、大臣にお伝え願いたいと言っておきましたが、お聞きでしょうね。
○藤山国務大臣 きのうちょうど外務委員会が休みになりましたので、自分の所用で出かけておりまして、私お目にかかる機会を得なかったので、次官に会っていただきました。大体の様子は聞きました。
○田中(稔)委員 この問題はこれで終ります。
 次にほかの問題で質問したいと思います。中国人の劉連仁という人のことでありますが、この間私岸総理にも相当詳細に質問をいたしました。当時の官房長官である愛知さんにも質問いたしました。そうして私どもの満足しないような形で、その劉連仁君がついに国に帰って、一応事件は解決したようでありますけれども、実はまだいろいろ尾を引いたものがあると思うのです。この劉連仁君が中国に帰りまして、中国では大へんな騒ぎで、劉君の物語りが小説として新聞にも連載されております。あるいは戯曲化もされておりまして、それが全国的に公演されており、最近それは中国の岸内閣に対する非常なきびしい抗議運動の一つになっているわけでありますが、これはやはり私は劉連仁君の問題を日本政府がほんとうに解決しなかったためだと思う。そこで私は、日本と中国との最近の非常に不幸な事態を打開するためにも、この劉連仁君の問題をもう少しやはりはっきりさせる必要があるのではないか、こう思うのであります。そこで実は岡田中国課長に来てもらいたいと要求しておきましたが、見えておりませんで、アジア局長が見えておりますから御質問しますが、華人労務者就労事情調査報告書というものが外務省には必ずあるはずなんです。これは岡田中国課長が、かつて有田八郎氏その他の者にあるということを肯定されている。ところが私に対してはないと言う。この書類というのは、何か横浜の連合軍の極東軍事裁判の際に、資料として当時の外務省が提出したものであります。これは戦後に作ったものでありますから、戦災で焼けたというわけでもないから、外務省のどこかに必ずあるわけです。これがありますと、この書類によって劉君の身分から劉君に関する一切の事情がわかるわけでありますが、こういう書類があるということが確かであるにもかかわらず、ないと言い切っておる。この際もう一度外務省の御答弁を求めます。アジア局長どうですか、この書類は外務省にないでしょうか。
○板垣政府委員 その問題は前国会からしばしば問題になりまして、私も直接調査を命じた次第でございますが、判明いたしたところによりますると、一度外務省には詳細に個人名を並べた収容所調査簿があったわけでありますが、それが終戦直後焼失いたしまして、現在その詳細なものがないことは確実でございます。ただ岡田課長が有田八郎氏にあると申しましたのは、警察で作りましたそれの抜き書きでございましてその書類はございます。しかしそれは個人名に並べたものでなく、グループ別に当時の華労の入国状況というものを概略書いた書類でございまして、原本は遺憾ながら外務省のどこを探してもないということは確実でございます。
○田中(稔)委員 今のアジア局長の言明を一応信用するとすれば、その原本はないが、警察で作った原本の抜き書きがある、こういうことになるわけですね。その抜き書きというのはこれは資料としてわれわれに見せていただけますか。
○板垣政府委員 御提出できると思います。
○田中(稔)委員 それじゃ一つ見せていただきたいと思いますから、委員長一つ。
○櫻内委員長 承知いたしました。
○田中(稔)委員 それは相当厚いですか。
○板垣政府委員 一冊で割に厚いものでございます。
○田中(稔)委員 できるなら外務委員全員に配っていただきたいと思いますが、もしそういうことをするのがなかなかむずかしいなら、私個人だけに見せていただいてもけっこうです。
○板垣政府委員 研究してみます。
○田中(稔)委員 その抜き書きか原本か知りませんが、それには劉君のように鉱業関係で炭鉱に強制労働を命ぜられた者は、行政供出というような範疇になっておるようであります。そうしてそれは半強制的であったということがはっきり書いてあるそうでありますが、その点はどうですか。
○板垣政府委員 私は劉連仁氏自身が行政供出かどうかよく存じません。しかしながら日本に入ります場合には、当時日本に来た華工は全部雇用契約の形に切りかえられて来ているものと私は存じております。
○田中(稔)委員 劉君が十何年北海道の山の中で、ロビンソン・クルーソーみたいな生活をやって、見つかって帰ったわけでありますが、劉君を中国に帰す際は一体どういう扱いで帰したのでしょうか、お尋ねいたします。
○板垣政府委員 詳細は存じませんが、まず当時劉連仁を雇用しておりました明治鉱業が非常に手厚くもてなしまして、衣服も与え、東京に連れて参りました。東京に参りましてからは、前官房長官がみずから衝に当られまして、見舞金及び見舞状を当人に渡しまして、私どもの感じでは円満に帰国したものと信じております。
○田中(稔)委員 その当時警察の方では劉君を不法入国者ということで一ぺん逮捕しようとしたこともあったんですが、これはさたやみになったようであります。ところが官房長官が、金額は知りませんが幾らかまた見舞金を出したりした。普通の契約労働者なら一国の内閣の官房長官がわざわざ見舞金まで出す必要はないわけですね。やはり劉君に対しましては、日本政府として幾らかどうも謝罪の意味か何かそういう気持があって、そういう見舞金になったのだろうと思うのでありますが、見舞金は一体どういう意味で出されたものか、これについてアジア局長、その間の事情を御存じならば御答弁願いたい。
○板垣政府委員 これはもともと雇用契約で入ったものでありますから、戦時中就労中はもちろん賃金が払われておったものと思います。その途中におきまして劉君が山の中に入って十二、三年も人里のないところに入っておったということに対しまして、その労苦に対して慰謝する意味で出したわけで、謝罪というような意味はないと思います。やはり慰労という意味で若干の金額を贈呈した次第であります。
○田中(稔)委員 もともとこれは契約労働で来た労働者だという主張を固執されるならば、どうも私としてもそれ以上の質問をやっても仕方がないのでありますが、私は、政府にこの際資料の提出を願って資料に基いてまた質問いたしたいと思います。少くとも私どもが従来調べておる限りでは、平和な農民が本人の意思に反して拉致されてきたことは明らかであり、そして非常に残酷な強制労働にたえかねて職場を脱出した、こういうことも明らかであります。だから、このことについて一片の見舞くらいで片づけようというこそくなやり方が、中国の国民の反感を引き起したわけだと思うので、この問題はさらに私後日に質問を保留いたしますが、十分一つこれは追及いたしまして、この問題の処理について政府がほんとうの誠意を示すということでないと、日中間の今日の不幸な事態を打開することも困難じゃないかと思うのです。
 それから、これと関連いたしますが、劉君は幸いに生きていてよかったわけでありますが、劉君の同僚で多数の中国人が強制労働に耐えかねて死んだわけであります。その中国のいわゆる殉難者の遺骨送還の問題が、かねて民間の手で細々ながら続けられてきたのです。しかし財政的にもどうも力が足りない。また調査をいたしますについても、地方の自治団体その他の協力を得なければできないのであります。それについてはやはり何といったって政府の協力がなくてはうまくいかない。そういうことで従来たびたび政府の協力を要請して参ったのでありますが、政府はそういう協力の意思がなかった。ところが最近急に政府がこの問題を取り上げてやろう、こういうふうに様子が変って参りました。政府が協力をするということはけっこうなことでありますけれども、一体その真意はどこにあるのか。政府が一応中国に対する一つのゼスチュアというようなものとしてやるけれども、ほんとうに誠意を尽してやらない、いいかげんにごまかすということでありますとかえって逆効果になります。最近政府がそのような意向を表明されましたことについて、その真意がどこにあるか、また一体どういうふうな方針で今後やっていこうとされておるのか、外務大臣にお尋ねしたいと思いますが、外務大臣であまり詳細な御答弁ができなければ事務当局からでもけっこうです。
○板垣政府委員 この問題につきましては、今お話のごとく過去において民間団体の手で調査送還をやっておったのでありますが、民間団体の方でも大体民間団体でやり得る限度も過ぎたということで、政府で直接やってくれという要望が強かったことは御承知の通りであります。政府におきましても研究しておった次第でございますが、いよいよこのたび厚生省を中心といたしまして、政府の手で調査を開始することに決定いたしました。すでに厚生省から予備的な調査の指令を各府県に出しておるわけでございます。従いまして、残りましたものは従来民間団体でやり得なかった残りのものでありますから、おっしゃる通り非常に困難があるかもしれませんけれども、政府といたしましてはこの遺骨を慰霊するための純粋の人道的な見地から、できる限りの誠意を尽して調査発掘を行い、これを丁重に本国へ送り届けたいという方針であります。
○田中(稔)委員 そこで政府が調査をやる、発掘をやる、送還をする、その一貫作業全部をほんとうに責任をもっておやりになるならばけっこうでありますが、その場合に従来この問題で長い間努力して参りました中国人俘虜殉難者慰霊実行委員会、この民間の団体との関係はどうなるのですか。この団体は誠心誠意この問題に今まで当ってきているずいぶん苦労した団体でありますが、この団体の協力を求める意向があるのか、それともこういう団体は排除して政府が単独でやろうとお考えになっているのか。政府がこういう団体の協力を得ずに勝手にやると、これは役所仕事に終って、私はほんとうに徹底した仕事をすることができないといううらみが必ずできると思う。だから私の希望としては、この慰霊実行委員会がほんとうに気持よく協力するような形で政府も一つやっていただきたいと思いますが、その点についての政府のお考えをお尋ねしておきたいと思います。
○板垣政府委員 この問題は主として厚生省の問題でございまして、厚生省とも連絡を受けながら、ただいま大谷会長を通じまして、民間団体とも今後の関係をどうするかということにつきまして協議中でございます。厚生省の考えといたしましては従来民間団体でやっていただいた御心労、御苦労はもちろん十分了察する次第でございますけれども、民間団体としてはもう手の及ばない範囲外の仕事に移るわけでございますから、政府といたしましては、ただいま排除というようなお言葉がございましたが、そういう激しい意味ではございませんけれども、この際政府としては自力でやっていきたいというふうに考えている次第でございます。しかしながらこれは今御指摘の通り従来いろいろ調査をし、経験等もございますし資料等もございますので、私の考えといたしましては、その点の協力を求めるということは場合によっては必要ではないかというふうに考えております。
○田中(稔)委員 それはぜひ一つ協力を求めるようにしてもらいたい。
 それからさっきの話にちょっと戻りますが、調査し発掘する仕事は、厚生省にやらせるわけです。それから発掘した遺骨を集めまして中国の方に送り届けるわけでありますが、この場合はやはり政府といいましても外務省の所管事項になると思いますが、そういうふうに考えてよろしゅうございますか。
○板垣政府委員 ただいまのところ予算の区分といたしまして送還の方は外務省からということに一応方針をきめております。
○田中(稔)委員 そうするとこれは船に乗せて外務省のだれか役人がこれを持って中国へ行くといったようなことになるわけですか。
○板垣政府委員 これは必ずしも外務省の役人が行けるか、行く方が適当かどうか、この点はもう少し今後の様子を見てからきめていきたいと思っております。
○田中(稔)委員 ぜひこれは政府の代表者がこれを向うへ持って行って、一切の経緯を説明し、それからまた国を代表して十分陳謝の意を表する、こういうことがあってしかるべきことだと思うのであります。在華同胞の帰国の問題につきましても、日本のジュネーヴ駐在総領事が、中国側総領事と接触いたしまして、いろいろ折衡したという経過もあるわけですが、国交が開かれておりませんでも、こういう終戦の善後措置みたようなことでありますから、これは少しも差しつかえないと思いますが、そのことについてどうお考えになりますか。
○板垣政府委員 私どもといたしましては、これは事人道上の問題でありますので、お考えのような方法でいけるのではないかというふうに考えております。
○櫻内委員長 戸叶里子君。
○戸叶委員 時間がないのでごく、二三点だけ核実験の問題について、私は外務大臣に質問をしたいと思います。新聞によりますと、今度七月の二十五日から三、四週間アメリカがジョンストン島で核実験をするので、そのための危険水域を設定するということを原子力委員会と国防省が共同発表した。それに対して日本の外務省からの抗議を出したというその抗議文の内容が出ていたのでございますけれども、あの抗議文はあの通りでございましょうか。
○藤山国務大臣 ジョンストン島の核実験に対しては、抗議をいたしております。
○戸叶委員 そのアメリカの共同発表というのは、どういうふうな形で日本の国に入ってきたわけでしょうか。
○藤山国務大臣 アメリカが核実験をやるという通知をして参りますれば、われわれはそれに対して当然抗議をすべきだと思って、抗議をいたしておるわけであります。
○戸叶委員 核実験をするからこの地域は危険区域であるから、その期間は気をつけなさいというふうな形で通告してきたのでしょうか。
○藤山国務大臣 さようでございます。
○戸叶委員 それはアメリカの大使館を通してでございますか。
○森政府委員 原子力委員会と国防省の共同発表がございまして、その共同発表がワシントンの大使館から電文として東京に入っております。
○戸叶委員 そうすると共同発表したのを大使館からこちらの外務省へ持ってきて、そうして外務省がそれに対して抗議を申し入れた、そういうふうに了承していいわけですね。
○森政府委員 共同発表前に、事前に二十五日から危険区域を設定するということを非公式に通報して参りましたが、ワシントンの大使館からは、共同発表後に電文を打って本省に言って参った次第であります。
○戸叶委員 私は抗議を読んだわけなんでございますけれども、最初の方にはそれはぜひやめるようにということですが、最後にもしそれを強行したときには補償の権利を留保するというようなことが書いてありまして、あたかも実験を認めておるかのような感をあの抗議文を見ると感ずるわけであります、私は最後の方の補償の権利を留保するということを言わずに、あくまでもこういうものはやめてもらいたいというふうな形の抗議文にすべきではないか、こう考えるのでありますけれども、藤山外務大臣はいかがお思いになりますか。
○藤山国務大臣 日本が核実験をやめてもらいたいということはたびたび表明もいたしております。またこういう発表がありました際には、必ずやめてもらいたいという抗議をいたしております。同時にやはりやめなかった場合の処置も外務省としては考える必要があるのでありまして、それだけのことを留保しておりませんければ、何らかのあれがありましたときの前提としては必要だと思います。
○戸叶委員 今度の抗議は、七月二十五日のに対しての初めての抗議だと思うのです。そうであるとするならば、公海の自由を制限するような一方的なこういう通告に対しては、日本としては受け入れかねる。ことに人道上の問題でもあるから、こういうことはやめてもらいたいということで、一応抗議文として出すべきであって、それにさらに、もしもするならばというふうな仮定のものをつけてやるというというのは、何か日本が肯定しているような感をアメリカに与えると思うのでありまして、最初からこういうふうなことは言うべきではないと思うのですけれども、いかがでございましょうか。もう一度伺いたいと思います。
○藤山国務大臣 日本が核実験禁止に対して、率直に日本の熱意を表明いたしておるわけであります。従って今回の場合でも、当然その意思を表明して重ねて申し入れをいたしますことは当然だと思います。ただ外交上の問題として考えまして、何らかの損害が起ったという場合に、それに対する補償を求めることも言う必要があることは、申すまでもないわけでありまして、そういうことに対してアメリカが何か補償をしないというような、後になりまして問題が起ることはいかがと思うのであります。
○戸叶委員 そうしますと、今度のアメリカの実験に対してはもう一度、やめてほしいという申し入れをしないおつもりですか、これでもうおしまいでしょうか。
○藤山国務大臣 私どもはあらゆる機会に、アメリカに対してもあるいは他の国に対しても、核実験をやろうという国に対して抗議をいたしておるわけでありまして、これをやめてもらいたいという趣旨においては、重ね重ねその趣旨を述べておるわけであります。
○戸叶委員 そうしますと、二日付でこの抗議をいたして、実験をするというのは、予定ならば七月二十五日のようでございますけれども、それまでにやめるようにということはもっとたびたびお出しになる、こういうお考えと了承してよろしゅうございますか。
○藤山国務大臣 核実験全体について、日本の態度ははっきりいたしておるのでありまして、それを否定してきておる今日でありまして、一々の実験が起りまして、たとえば危険水域を設定しないような、たとえばソ連の場合のようなときは実は抗議のしようもない場合もございます。しかしながら危険水域というようなものを設定するということで、明らかにやるということがはっきりしたときには、重ねてそういう機会をつかまえて抗議をすることは当然なことだと思うのであります。抗議をして、われわれはそういう趣旨で核実験はやめてもらいたい、こういうことにいたしております。ただ危険水域を設定されまして、それじゃそのまま認めたのだ、そして損害はもう賠償されなくてもいいのだというような問題になりますと、外交上の慣例からいっても適当でないと思いますので、そういうものをつけ加えてやるのが慣例になっておるわけであります。従って、そういうものをつけますことが弱い印象を与えるということは、従来の外交文書の関係からいきまして、ないと信じております。
○戸叶委員 それでは今回の問題に対しても、なお実験をやめてもらいたいというような抗議というものは、再三再四ぜひやっていただいて、そして二十五日には実験できないようにするだけの熱意をもってやっていただきたいと思います。時期もちょうどいいのじゃないかと思いますことは、今ジュネーヴで東西両陣営の核実験探知専門委員会を開いておるときでございますから、そういうふうなことともにらみ合せて、重ねてそうした抗議をやっていただきたいと思うわけでございます。
 もう一点伺いたいことは、今のジュネーヴの東西両陣営のやっております専門家会議というものは、核実験停止のための一歩前進であるというふうにお考えになられますか、どうでしょうか。
○藤山国務大臣 今回のジュネーヴの会議そのものは、非常に専門的なものであることは事実でございます。しかしその専門家が集まりまして、核実験を探知し得るという方法が発見されますことは、その結果はやはり核実験停止に対する一歩でも半歩でも前進であり、またそういう核実験禁止にいきます一つの機会を作るものだ、こう考えております。
○戸叶委員 今回の会議は専門家会議でございまして、非常に限られた少数の国しか集まっておりませんけれども、日本が第十一回の国連の総会において、探知に成功した場合には即時実験を禁止するようにというような決議案を出しておることもございますので、私は当然ここへオブザーバーか何かの形で行って、そうしてなおこの核実験を禁止するような雰囲気なり何なりを作っていくことが非常によかったんじゃないかと思うのですけれども、これに対してどういうふうにお考えになりますか。
○藤山国務大臣 いろいろな国際会議が開かれておりまして、それに代表が出ることが望ましいことはむろんでありますし、ことにこうした問題につきましては、あるいはそういう場合が必要かと思います。しかしながらこれらの問題については、ソ連とアメリカとの間で参加国の問題についてお互いの話し合いがついて――参加国の問題自体が会議を成功させるか成功させないかのかけ引きの問題になっておるのであります。日本としてそういう国際的ないろいろな会議に率先して出ることは希望いたしておりますけれども、そういうような、ソ連とアメリカとの参加国についてのいろいろなかけ引きの問題があるわけであります。こういう問題を越えて、そしてこういう会議が成功することを希望する立場から、必ずしもすべて出ることが必要であるとも考えられない場合もあるわけであります。
○戸叶委員 もう一点だけ伺いたいのですが、この間アメリカの原子力委員長ストロース氏が辞任されたわけですけれども、このことによって核実験の禁止に対して一歩前進という人もあるし、そうでもないといわれる人もあるわけですが、日本の外務大臣はどういうようにお考えでありますか。
○藤山国務大臣 ストロース委員長の辞任につきましてはいろいろな説もございます。今お話のように、そういう委員長の辞職そのものが核実験停止の線に一歩前進するのではないかという見方もあるわけであります。しかし個人の進退の問題になりますと、いろいろ表にもてはやされる以外の事情もございましょうし、果してそれ自体がすべての方向をきめるということは必ずしも言えないのではないかと思います。しかしながら何らかの形でもって、そういうことが核実験禁止に向う方向になるならば、非常に喜ばしいことと存じます。
○戸叶委員 あとの質問は明日に回します。
    ―――――――――――――
○櫻内委員長 次に閉会中審査に関する件についてお諮りいたします。本委員会といたしましては、今国会が閉会になりましても、国際情勢に関する件、国交回復に関する件、国際経済に関する件、以上三件について審査いたしたいと存じますので、この旨議長に申し出たいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○櫻内委員長 御異議なければさよう決定いたします。
 なお、閉会中、委員を派遣し実情を聴取する必要が生じました場合におきましては、その人選、派遣地、日数につきましては委員長に御一任いただきたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○櫻内委員長 御異議なければさよう取り計らいます。
 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。
    午後四時四十九分散会