第029回国会 外務委員会 第6号
昭和三十三年七月四日(金曜日)
    午前十時五十五分開議
 出席委員
   委員長 櫻内 義雄君
   理事 岩本 信行君 理事 宇都宮徳馬君
   理事 床次 徳二君 理事 山村新治郎君
   理事 岡田 春夫君 理事 松本 七郎君
      北澤 直吉君    小林 絹治君
      前尾繁三郎君    大西 正道君
      田中 稔男君    高田 富之君
      戸叶 里子君    帆足  計君
      森島 守人君
 出席国務大臣
        外 務 大 臣 藤山愛一郎君
 出席政府委員
        外務政務次官  竹内 俊吉君
        外務事務官
        (アジア局長) 板垣  修君
        外務事務官
        (アメリカ局
        長)      森  治樹君
        外務事務官
        (欧亜局長)  金山 政英君
        外務事務官
        (経済局長)  牛場 信彦君
        外務事務官
        (条約局長)  高橋 通敏君
 委員外の出席者
        議     員 戸叶 里子君
        議     員 森島 守人君
        外務省参事官  粕谷 孝夫君
        大蔵事務官
        (理財局次長) 磯田 好祐君
        通商産業事務官
        (通商局振興部
        長)      日高準之介君
        通商産業事務官
        (重工業局防衛
        産業参事官)  金谷栄治郎君
        専  門  員 佐藤 敏人君
    ―――――――――――――
七月三日
 核兵器持込み禁止等に関する請願(松尾トシ子
 君紹介)(第三九五号)
の審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 日本への核兵器持込み禁止並びに核非武装に関
 する決議案(淺沼稻次郎君外五名提出、決議第
 一号)
 日中両国間の緊急事態打開に関する決議案(淺
 沼稻次郎君外六名提出、決議第二号)
 国際情勢等に関する件
     ――――◇―――――
○櫻内委員長 これより会議を開きます。
 国際情勢等に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますので、順次これを許します。岡田春夫君。
○岡田委員 お許しをいただいて、きょうは少し具体的に伺いたいと思うのですが、法律問題と実際問題と二つの点で伺って参りますけれども、時間の関係でヴェトナムの賠償問題だけに限ります。最近伝えられるところによると、ヴェトナムとの賠償交渉の再開について、先方から申し入れがあって、政府としても賠償交渉を再開しようというお考えで、今その準備に入っておられるというように聞いております。この点はいかがでございますか。
○藤山国務大臣 賠償交渉は前から引き続いてあるわけで、休会とか再開とかいうようなものではないのであります。引き続いて行われております。
○岡田委員 しかし四月の末に、賠償交渉は一応選挙が済むまで待とうじゃないかという申し入れを、南のヴェトナム政府にしているのじゃありませんか。
○藤山国務大臣 選挙が始まりますので、内閣がどういうことになるかわかりませんから、当然そういう事情は説明いたしております。
○岡田委員 それでは、あくまでも南ヴェトナムとの賠償交渉は進めるというお考えで、その金額等についても大蔵省と調整に入っているというように伝えられておりますが、その点は事実でございますか。
○藤山国務大臣 ただいま申し上げたような経過でありまして、従って選挙も済み、新内閣もできたならば、この問題が再び両国の間で論議されるという状態でありますが、まだ現在のところ国内的な調整をするとか、そういう問題まで進んでおりません。
○岡田委員 国内的にはまだ調整をやっておられないということですが、それでは向うとの交渉は、今事務的に進んでおりますか。
○藤山国務大臣 向うとの交渉は、今申し上げましたように一時見送っておったわけでありますから、これから逐次向う側においても日本に申し出をして参りましょうし、日本側としてもその申し出に対しては、従来からの態度等によりまして、話を受けていくことになろうかと思います。
○岡田委員 それでは現在休会中というようなことだろうと思いますが、政府側の態度は、従来の方針と変っておりませんかどうですか。
○藤山国務大臣 現在、申し上げましたような事態でありまして、賠償交渉が妥結することを希望して今日までやってきたわけであります。従いまして、最終的に両国の意見が合致するか合致しないかはまだわかりませんけれども、合致しますれば、今申し上げたような事情で賠償成立というような形に進むだろうと思いますが、交渉のことでありますから、前途については何とも申し上げかねます。
○岡田委員 これはこの前の国会でも、私は予算委員会で伺ったのですが、不明確なままになっております。これは条約解釈の問題ですから、高橋さんから主として伺いたいのですが、ジュネーヴの共同宣言並びに休戦協定、この協定並びに宣言によって、現実にインドシナ戦争が終戦をもたらしたわけです。その限りにおいて、少くともこの休戦協定に参加した国々は、この協定の法律的な拘束力を受けている。この協定それ自体は、その限りにおいて法律的効果を持っている。このように私は考えるのですが、この点はいかがですか。
○高橋(通)政府委員 ジュネーヴ共同宣言の問題でございますが、あれはわれわれもよく研究した次第でございますけれども、実は協定だとか条約だとかいうふうな形式をとっていないことは、御承知の通りでございます。そこで、あの前文とも思われますところには、両ヴェトナムであるとか参加国の名前は書いてございますが、しかし共同宣言というふうな形になっておりますので、果してわれわれが条約だとか協定というふうに考えますような意味の拘束力があるかどうかということも、ちょっとこれは問題ではないか。書きぶりなんかもそうでございます。ただいかようにしましても、あの協定によりまして十七度線が引かれまして、両方のオーソリティの間に拘束力のある休戦協定ができた。これは確かに拘束力があるものだと私は考えております。
○岡田委員 問題は、私の伺ったのは、あれによって戦争が終結をする、そういう限りにおいて法的な効力を持っておる。これが条約であるかどうか、同じものであるかどうかという点については、いろいろ解釈はあっても、法的な効力のあるということは私は事実だと思うのですが、この点は今条約局長の答弁の通りであります。そこでそれじゃ当事者間における法的な効力というものがあった場合、当事者以外の第三者、たとえば日本の国のような場合に、これに対する直接の法的な拘束力、あるいは効力を持たないにしても、そういう法的な効力を尊重する、そしてそれを破らないようにするということが国際間の基本的な原則であり、やはり国際法の基本精神といいますか、これに反するようなことはできるだけしないということが、これの当事者でなくとも守られなければならない道であると考えますが、この点はいかがですか。
○高橋(通)政府委員 お説の通りだと思っております。一つのそういうふうな、国際間の何と申しますか、政治的と申しますか、法的な部分もありますが、そういう解決の文書として尊重さるべきものだと思います。
○岡田委員 それからこの前、これは穗積君から質問があったのですが、大臣に伺いますけれども、バンドン会議でいろいろな決議が行われました。これに対しては高碕通産大臣が主席で参加されると同時に、当時藤山さんは民間の代表として出席をされたわけであります。このバンドンの決議というものは、やはり藤山さんが大臣になられた場合においても当然尊重されて、あらゆる機会においてこういうバンドンの決議が実行されるように努められるのが、やはり代表として出席された一人としての職責ではないか。まあそういう強い言葉でないにしても、一つ自分としてそういうように考え方を進めていくべきではないか、こういうふうに思うのですが、この点はいかがですか。
○藤山国務大臣 かねて申し上げておりますように、バンドン会議の宣言というものをわれわれは大きなともしびとして前方に掲げているということを申し上げておるわけであります。その通りであります。
○岡田委員 ヴェトナムの賠償の交渉の主として法律的な問題に入りますけれども、これはことしの二月にヴェトナム賠償の問題が起ったときに、これは政府の統一見解として正式に発表されたものでありますが、賠償交渉の対象として南ヴェトナムというものが対象になり得るのかどうか、こういう点が問題になった。そこで統一見解として答弁されたことは、南ヴェトナム政府は今日全ヴェトナム地域を代表する政府である、そしてかつ唯一の合法的な政府であると答弁されているわけです。私はこの点について、政府はその法的論拠について、どういうわけでそういうふうになるのかといえば、おそらく南ヴェトナム政府はサンフランシスコ条約に調印をいたしておりますから、それでありますからそういう法的な根拠があるのですと、こういうように答弁をされるんだろうと思いますが、私はこれはきわめて不十分であり、不当だと思う。ということは全ヴェトナム地域を代表する政府であるかどうかということは、これは国家構成の要件に関することなんで、調印国であるかどうかということが、しかも十年前の調印国であるかどうかということが、現在全地域を代表する政府であるということの理由にはならないわけです。ということは、たとえば例をあげて言うならば、第一次戦後においてできたバルト三国、たとえばラトヴィアならラトヴィア、これは国家として承認をされ、独立をしておった。ところが第二次戦後においてラトヴィアという国は消滅された。しかし今日において、第一次戦後においてこの国を独立国家として承認をしておるから、独立国家である、ラトヴィアは独立国家であるなどということは、これは話は通らないはずなんです。その国は現在ないからです。そういう点ではこれは調印国であったということだけで、全ヴェトナムを代表する政府であるということを決定することは、これは法的な根拠として不十分であると私は思う。そこで、南ヴェトナム政府が全ヴェトナム地域を代表する政府であるかどうかということを決定するには、現実に今日において全ヴェトナム地域を支配し、全人民の支持によって、持続性のある政府であるかどうかによって決定される。これがすなわち国家構成の要件に関することだと思うのですが、そういう点から考えて、南ヴェトナム政府が全ヴェトナム地域を代表する政府であるということを答弁されたんだが、そういう法的な論拠はどういう点にあるのですか、その点を伺いたい。
○高橋(通)政府委員 ちょっと私から初めに補足さしていただきたいと思いますが、ヴェトナム政府が現実の支配として、現に支配を及ぼしていないという現実の事実問題は、まことに御指摘の通りだと思っております。しかしヴェトナム政府も、自分がその全地域を代表する政府である、また自分が管轄と申しますか、責任ある施策を行うべき範囲というものは全ヴェトナムであるという立場における政府でありますし、またわれわれもそれを承認している、そういう建前で法律的な問題として全ヴェトナム国を代表するものとしてのヴェトナム政府ということをわれわれは認め、またサンフランシスコの平和会議でも、そういう地位においてこの政府が招請され、あの条約に調印したものであるというふうにわれわれは考えておる次第であります。
○岡田委員 そうすると、現実には支配しておらないが、それを全地域について支配し、代表するものというように考えざるを得ないと、こういうことですが、この点は、補足答弁の方が先に出たので、大臣の方から先に御答弁になった方がいいと思うのですが。
○藤山国務大臣 私どもは、今申し上げましたように、南ヴェトナム政府がサンフランシスコ条約にも調印しておりますし、従ってわれわれとしてはそれを全ヴェトナムの政府だと認めておるわけで、ただ現実の問題としてその施政が及んでない地域があるというふうに考えております。
○岡田委員 現実において施政が及んでおらないということになりますと、それでは北ヴェトナム政府というものはどういうふうに考えておられますか。北ヴェトナム政府の場合においても、これはわれわれとしていろいろいうべき根拠があるのです。私は北ヴェトナム政府というものが正統政府であるという法律的論拠はあると考えているのだが、外務省が南ヴェトナム政府がいわゆる全地域を代表する合法政府であるという論拠をお持ちであるならば、どういう論拠に基いたのですか、これは補足答弁が先でもいいですよ。
○高橋(通)政府委員 われわれといたしましては、どの国家でも、分裂とか内乱とか、そういう状態にありますときは、一時的には支配の及ぼし得ない地域が現実問題としてあるということは多々ある問題ではないかと思っております。従いまして現在の時点をとらえますればそういう及ぼしていない地域もある。しかしながら従来までの経緯を考えますと、やはりこれが正統政府として全ヴェトナムを代表し得る地位にあったのではないか。しかし時の経過とともに、そういうふうな代表する資格と申しますか、代表する問題が、内乱とか内戦の状態によって問題になってくる時期は、これはあると思っております。
○岡田委員 ちょっとあいまいですが、現在の南ヴェトナム政府というものが正統性がある、合法性があるという論拠はどこにあるのですか。フランス連合から何らかの継承性が合法的にはあるのですか、どうなんです。
○高橋(通)政府委員 その点につきましてはやはりフランス本国から独立したという一貫性を持っていると思っております。
○岡田委員 独立をしたということならば、これはヴェトナム民主共和国、北ヴェトナムの方が先なんですよ。しかもこれはフランス連合から独立をしたんじゃない。これは外務大臣もよく覚えておいていただきたいんだが、大東亜戦争の終戦以前、昭和二十年の三月九日に、フランス連合の軍隊は日本の帝国主義軍隊によって完全にヴェトナムの地域においては無条件降伏をしている。そしてあそこにおいて日本の帝国主義軍隊のクーデターが実現されたのです。従って権力はすでにフランス連合から日本の軍隊に移っている。そして終戦の直前の八月の十一日に、この日本の帝国主義軍隊に対してヴェトナム人民は独立の宣言のための闘争を行い始めた。ですからフランス連合からの独立ということは筋が通らないのです。日本の帝国主義からの独立なんです。そして昭和二十年の九月の四日の日に独立宣言が行われている。ですからフランス連合からの独立であるかどうかということは問題にならないのです。もしフランス連合からの独立ということが問題になるというように条約局長は御答弁になるとするならば、それはバオダイ政府としてフランス連合からの授権を受けたというかいらいの政権としての立場なんですよ。ヴェトナムにおいては、これは国連憲章に認められた独立なんですよ。そういう点をお認めにならないで、いわゆるフランス連合が権利を与えて独立をしたということによるところのそれが正統の政府であるということになれば、かいらいの政府の方を正統政府と日本政府は認めたということになると思うんだが、この点はいかがですか。
○藤山国務大臣 御意見の相違かもしれませんが、われわれとしてはやはりフランスの仏印における当時の実態から見まして、フランス国から独立したという時期が、その時期だと思っております。
○岡田委員 それは時期と言われましても、それじゃいつ独立したのですか。ずっとあとじゃないですか。ヴェトナム民主共和国、北ヴェトナムが実際に独立したのは終戦直後ですよ。フランス連合からの継承国、サクセッサー・ステートというのはずっとあとですよ。
○藤山国務大臣 だから、お話のありましたようにたとえば日本がクーデターをした、それに対抗して一つの反抗政府を作ったというようなこと、そのことだけがすぐに独立国が形成されたという事実になるかならぬかは、私としては疑問だと思います。
○岡田委員 この問題ばかりやっていてもしようがないから進めます。
 そこで先ほど尊重すると言われたジュネーヴ共同宣言並びに休戦協定ではこの点はどうなんですか。ヴェトナム民主共和国というものを国家として認めるのですか。条約局長、この点はどういうようにお考えになりますか。
○高橋(通)政府委員 このジュネーヴ会議の共同宣言でございますが、これはそのように現実の事態、すなわち二つのオーソリティと申しますか、それが戦っていた事態を何とか休戦をしたいという意向のもとに行われた手続でございまして、これによりまして二つの国を認めたとか、二つの政府を認めたとかいう効果まで持たせるのは、私はちょっと困難でなかろうかと考えております。
○岡田委員 しかし、条約局長とあまり言い合うのは好きじゃないけれども、ヴェトナム民主共和国とはっきり書いてあるんじゃないですか。国と書いてあるならば、当然これは国家として承認をしているわけですよ。承認か承認でないかは別として、国家の存在を認めているということなんですよ。その点はどうなんですか。
○高橋(通)政府委員 その点につきましては、とにかく言葉と申しますか、そういう名称であがっていることは確かでございます。しかしながらその内容を読んでみますと、たとえば境界線、そのようなものも、いかなる点においても政治的または領土的限界を定めるものと解することはできないというようなことがございまして、決してこれをもって政治的に効果のある文書をここで作成したという意味ではないと考えます。
○岡田委員 それは詭弁というものですよ、条約局長。この条約の調印の中にはっきり調印者として出ているじゃないですか。いいですか、ヴァイス・ミニスター・オブ・ナショナル・デフェンス・オフィサー・オブ・ザ・デモクラティック・リパブリック・オブ・ヴェトナムと書いてあるじゃないですか。ヴェトナム民主共和国というものが調印しているじゃないですか。その代表として人民軍の司令官が調印したのですよ。ヴェトナム民主共和国というのは国家として厳存していることを明らかにしているのですよ。それをお認めにならないのですか。それはもう国ですよ。国家ですよ。
○高橋(通)政府委員 そこまで内容と申しますか、政治的意義を、この文書に持たせるのはちょっと困難じゃなかろうか。これはあくまでも休戦という問題、すなわちあそこで戦闘行為を停止しようという問題のためにそういう形をとったのでございますので、そこまで考えるのは少し困難ではなかろうか。明らかにこの会議は、ヴェトナムに関する協定、戦闘行為を終結するために軍事問題を解決することを主要な目的とする、すなわちこれは軍事問題を解決するために、とにかくここに集まってこういう共同宣言がなされた、私はこう考えております。
○岡田委員 こればかり言っていてもしようがないのですが、もう少し御研究を願いたいのは、文章の中にあるのですよ、共同宣言の十四条のあとにおいても、ヴェトナム民主共和国、そこに対する云々と出ていますよ。だからこれは国家としての存在を少くとも当事者間においては認めているということの立証ですよ。そういう点を日本政府だけがお認めにならないならば別ですよ。アメリカも、ジュネーヴの共同宣言には署名しなかったけれども、単独宣言をやって、一項から十二項の決定についてはこれを尊重すると言っているのですから、アメリカもこれは認めている。日本だけがヴェトナム民主共和国を認めないとおっしゃるならばそれでもけっこうですよ。その点はそれでよろしいのですか。
○高橋(通)政府委員 私は、日本がヴェトナムの現政府を全ヴェトナムを代表する政府として認めているということを、この文書によって否定しなければならないとか、それを肯定しなければならないとかというような問題ではなかろうかと思っております。と申しますのは、この書類におきましても、御承知の通り、結局において双方が統一選挙を行なって一つの政府、一つの国を打ち立てるのだという将来の方向が打ち出されております。従いまして、各国が現在どういう立場をとっているかということは、これによって左右されるものではなくて、これの実施の結果、何と申しますか、一つの統一した国ができるという場合は問題になりますけれども、この場合、この段階において、すでにそういう点までを云々している問題ではないというように考えます。
○岡田委員 それじゃこればかり一言っていてはいけませんから、藤山さんに直接関係のある方で伺いましょう。
 それは、バンドン会議へあなた御出席になったと思うのですが、バンドン会議の決定の中に、ヴェトナム民主共和国というのははっきり書いてある。それは最終決定の中に、主催諸国のほか次の二十四カ国が会議に出席をした、その二十四カ国の中の二十二カ国目に、ヴェトナム民主共和国と書いてある。これに対してもし日本として疑義があるならば、会議の構成要件ですから、このとき一番問題にならなければならないはずです。これに対してどうですか。あなたも含めて高碕首席代表はこのように演説をしている。日本代表としてこれに対してこういうような演説をしている。「本日ここに主催国政府の熱誠あふるる御尽力により、アジア・アフリカ諸国の指導者が一堂に相会する歴史的会議が開催されたことは、私の最も欣快とするところであります。」ヴェトナム民主共和国が入っているのは、これは国家として認めるのは不当である、これは留保をする、なんてことは一言も言ってない。まことに欣快である、そういうふうに演説をしている。あなたも済んだら拍手したじゃないですか。認めたじゃないですか。あなたがヴェトナム民主共和国を認めたということをここではっきり立証しているわけでございますね。
○藤山国務大臣 アジア・アフリカ会議に南北のヴェトナムが出席しておりましたことは事実であります。しかし南北のそれぞれの国に対する会議の出席者の態度は、必ずしも一致しておらなかったと私は思います。同時にこの会議自体が、アジアの指導者が寄って
 一つ話し合いをしようということでありますので、そういう意味において必ずしも国家として認められない場合でも、代表者を出して相談するということは別に不当でもないと思うのであります。そういう意味において出席したわけであります。
○岡田委員 あのときは不平だったけれども黙っていた、今ごろになって値段を安くしろと言うようなものです。これははっきりしているじゃないか。日本が招集国じゃないですよ。主催国が招集をして、二十四カ国ということは文書上明らかになっているんですよ。国だということははっきりしているんです。いまだにヴェトナム民主共和国は国家として認めないというお考えですか、どうですか。
○藤山国務大臣 私どもは、日本から見まして南ヴェトナム政府が正当な政府だと思っております。しかしながら、現実の事態としてヴェトナム民主共和国というものを打ち立てておるという事態は認めておるわけであります。そういう意味において、私どもはヴェトナムの代表者が出席しても、別に不思議はないと思います。
○岡田委員 現実の問題として国家があるとおっしゃるのなら、それでいいんですよ。国家としてあるんですか。その点はどうなんです。
○藤山国務大臣 法律的にはあるいは一定の区域、一定の人口、一定の政府というようなものの形があるものが国家だという考え方からすれば、あるいはそういう意味においてこれは国家と認めていいところもあろうと思います。われわれとしては少くも正統政府は南ヴェトナムであるという考え方に立っておるのでありまして、国家的形態があっても、日本からそれを正統政府と見ないということは考え得るわけであります。
○岡田委員 それじゃ別な角度から伺います。相変らず全ヴェトナムを代表する合法政府は南ヴェトナムだというお話なら、たとえばこういう場合どうされますか。北ヴェトナムのハノイにおいて一大事件が起って、それに対して日本が損害賠償を請求する権利がある。その場合にあなた方の論理をもってするならば、全地域を支配しているのは南ヴェトナム政府であるから、南ヴェトナム政府がハノイの損害に対して支払わなければならない義務があることになる。それでいいんですね。
○高橋(通)政府委員 純法律問題として考えれば、そういうふうな論理的帰結となると思っております。
○岡田委員 それじゃ法律問題と違って、そういうことが出た場合に、現実問題としてどうしますか。
○高橋(通)政府委員 こういう現実の事態でありますから、そういう問題が起るわけでございます。たとえば一つの国に内乱が起きまして本来の正統政府と抗争をやっている。ところがその内乱を起した叛徒の側がある区域を自己の実力のもとに置いている。そこに何か損害の問題が起きた場合でございますが、これは正統政府との交渉、もしそれが非常に不当となります場合は、御承知の通り交戦団体の承認を行なっていくというふうに、こういう事態の場合は多々こういう問題が現実問題として起るわけでございます。
○岡田委員 交戦団体という認定に立っているが、交戦団体じゃないですよ。これはジュネーヴ協定で国家としての存在を明らかに認めているわけですから、その解釈は間違いだと思うのですが、現実に事件が起つた場合には、法律上南ヴェトナム政府に要求をするということなんでしょう。そうするとこれはおかしいじゃないですか、藤山さん。日本の国が賠償を払ってやる場合は全ヴェトナムの国に払ってやる。ところが日本から賠償を要求する場合には、さっきの話を聞いていると、法律的にいえば南ヴェトナムからもらうことになるのだけれども、実際問題としてはもらえない場合がある。それで平等な立場と言えますか。こんな話があるもんですか。ナンセンスですよ、それは。
○藤山国務大臣 この前から申し上げておりますように、南ヴェトナムと賠償の交渉をやりまして、従って正当にサンフランシスコ条約の調印国としてわれわれは南ヴェトナム政府を相手にいたしておるわけであります。しかし、現実の問題として支配の及ばない地域があるということを念頭に置ながきら交渉しているということを、この前から申し上げておるわけでありまして、われわれはそういう態度で交渉をいたしておるわけであります。
○岡田委員 それでは理由にならないけれども、あまり時間をとるといけないから進みます。先ほど条約局長の言われたように、南と北の政府が統一された、その場合に、統一された政府が、法律上は統一以前のたとえば南なり北なりがきめた条約を破棄する権限はありますね。あるでしょう。ないとは言えないでしょう、事情変更の原則からいって。
○高橋(通)政府委員 それは国家とか政府のやった行為の承継の問題でございます。非常にその点は困難な問題があると思います。法律上はやはり承継していくものじゃないかと考えております。前にやった具体的の行為の問題ではなくて、そういうふうな協定によって義務を負っているわけですから、これはいろいろな学説や困難な問題はありますけれども、その協定自体は継承していく場合もあると思います。
○岡田委員 場合もあるのでしょう。それでは具体的に伺いましょう。そうすると汪兆銘と日本の帝国主義政府が結んだ条約を国民政府が全部受けましたか。どうですか。
○高橋(通)政府委員 ちょっと今の言葉が足らなかったと思いますが、承継するとかしないとかいうことが法律的にはっきりきまって、国際法上どうでなければならないということは、純法理論的に一がいに結論を出すことは私にはできません。またこれについてはいろいろな学説があると思います。ただ実際問題として、そういう場合にはお互いに不便でございますから、何とかこれは解決していく問題だと考えております。
○岡田委員 法律的には破棄できるのですよ、事情変更の原則で。今南ヴェトナム政府と賠償交渉をしたって意味ないのですよ。あとになって統一政府が破棄すれば、それはやり直しなんですよ。
 そこで、法律問題はもうやめて次に具体的な問題に入りますが、インドシナ特別円勘定というのは、いつまでのものなんですか。大蔵省の方がおられれば大蔵省からお答え願いたい。終戦当日までのものなんですか、終戦が済んでだいぶあとまでのものなんですか。いつまでの勘定をいっているのですか。
 もう一つ、オペレーションはどういうように……。その勘定がずっと終戦まで行われておったものなんですかどうなんですか。
○磯田説明員 特別円勘定の締め切りはいつか、それからいつまでこれをワークしていたという御質問でございますが、この特別円勘定は終戦のときまでワークしておりました。
 それから締め切りのときでございますが、これは今ここに的確な資料を持っておりませんので、その資料に基きまして後ほど御答弁申し上げたいと思います。
○岡田委員 それではあとで資料を出していただきたい。先ほどワークしておったということは、勘定の上に動きがあった、勘定が働いておったということを意味しますか。
○磯田説明員 その通りでございます。
○岡田委員 そこで問題があるのですがね。これはこの前の予算委員会で問題になったことです。私には疑義があるけれども、一応政府側の見解を私は了承したとして、百歩譲りましょう。
 この特別円勘定は、政府の見解によると、平和条約の第十八条による戦前債務であるということです。そうすると戦争中のものは、平和条約の十四条の(b)項の該当を受けるわけです。それはいいんですね。そうするとインドシナの特別円において政府の見解では、昭和十九年の八月までは戦争状態になったという解釈です。これはこの前答弁されていますね。そうすると十九年の八月以降終戦当日までの特別円勘定は、十四条の(b)項に該当すべきものだと思う、そういうことになりますね。そうするとこの点は十四条のB項として、これは賠償として払わなくていいわけです。その点差し引いてありますかどうですか。
○磯田説明員 ただいまの御質問では、戦争開始の時期が昭和十九年の八月の二十五日である、従ってそれ以後の特別円債務については、これはそういう平和条約十四条の(b)の適用によって、その支払いの義務がないのではないかというお話かと思っておるのでございますが、御承知のように特別円勘定の取りきめは、昨年の三月二十七日に最終処理の取りきめをしたのでございますが、そのときの交渉の基礎といたしまして、終戦時における特別円の残高、すなわち十三億一千五百万円というものを一応基準にして交渉をして、その結果として十五億円ということで話が妥結したということでございまして、十九年の八月の二十五日以後の戦時中の債務をこの十五億円のうちで見ているという趣旨ではないのでございます。フランス側はこの問題につきましては、開戦のときは昭和十六年の十二月の八日に開戦したということを当初主張しておりました。しかもなおこの特別円協定というものは、十四条の(b)項の適用がなく有効であるという解釈をとっていたのでございますが、これに対しまして日本政府の側としては、終始戦時中の債務につきましては、いわゆる平和条約の十四条の(b)項の適用によりまして、日本側としてはこれが支払いをしないという建前のもとに交渉していたのでございます。従いましてかりに十九年の八月二十五日ということにいたしましても、十五億円の中に開戦後の債務を見ているということにならないと思うのでございます。
○岡田委員 これはまだ問題がありますけれども、譲るといたします。あと資料としてお出しになるそうでありますから、資料としてお出しいただきたい。
 そこでもう一つ、これは条約上の問題になります。この前の愛知官房長官の統一見解によると、特別円の問題は政府間の協定で国の債務である。国の債務であるならば、先ほどあなたは継承国として南ヴェトナムはフランス連ましたね。そうするとこの独立に関する条約、一九五四年六月四日、これらの第二条によると、「フランス領インドシナの名でフランスが締結したすべての他の条約又は協定から生ずるすべての権利、義務をフランスから承継する。」だから特別円も当然これは南ヴェトナム政府が継承されたものと考え、フランスに払ったのは間違っていたということですね、南ヴェトナムに払わなければならないということですね、サクセッサー・ステートならば当然……。
○高橋(通)政府委員 その点、第一は協定の問題でございますが、この協定の基本の協定は、全部当時のヴィシー政府と日本政府の協定であります。そうしてその協定の実施のため帳簿上にそのような貸借残高ができまして、その債務と申しますかフランス政府に対する債務として、またこれはフランス政府に対する債務ですから、それに対して支払ったということになるのでございます。そこで継承ということは、これはこういう一つの国から独立した国がどの程度のものを承継するかということは、これはまた学説上は一定したところは全然ないのであります、私どもの研究しました範囲でございますと、継承するという場合に、大体学説できまっておるところは、その地方に結合した財産についてのみこれは承継するのではないか。すなわち、たとえば鉱山でございますとか、鉄道だとか、そういう地域的に結びついたものだけを承継する、それ以外の問題は全然学説上定まっておりませんし、むしろ承継しないというのが通説ではなかろうか。なかんずくこのような債権債務関係と申しますのは、フランス本国に対するものでございますので、これはまさしく承継の問題は起っていない、こういうふうに考える次第であります。
○岡田委員 そこでこれはアジア局長だろうと思いますが、このヴェトナムの賠償というものは非常に複雑なんで、実は昭和二十八年の九月十六日に仮調印が行われておる、この仮調印は、沈船引き掲げによる賠償支払い協定であります。この場合の沈船引き揚げによる支払い協定で仮調印されたときの金額は幾らでございますか。それから賠償の基礎になっている対象といいますか、それはどういうものでございますか。
○板垣政府委員 ただいま資料を持ち合せておりませんので金額はわかりませんが、確かに沈船引き揚げに関する政府間交渉が行われたことはお説の通りでございますが、ヴェトナム政府側の批准を見ずして、そのまま発効を見なかったわけであります。
○岡田委員 それでは私はっきり言いますが、二百二十五万ドルです。その二百二十五万ドルという金額を出した基礎は何ですか。
○板垣政府委員 沈船引き揚げのための費用を概算したわけであります。これはしかし賠償ではございますが、賠償の一部として交渉したわけであります。
○岡田委員 そう言うだろうと思っていました。それじゃこういう資料も出していただきたいと思うのです。昭和二十八年の九月四日に、日本と南ヴェトナム政府の代表が東京において合意された、その合口意の中に、一、日本のヴェトナムに対する賠償支払いの総額は、仏印が直接戦火の下にさらされなかったという理由からきわめて少額にすること、二、その賠償支払いの方法として、日本は沈船引き揚げを提供して、範囲はできるだけ制限すること、第三は直接関係ないから省略します。こういうことにつき両国の合意が行われた事実がありますか、この事実はいかがですか。
○板垣政府委員 もちろん賠償交渉の過程におきまして、日本側といたしましては支払いの負担を少くするという建前で交渉して参ったわけでございます。その後ヴェトナム政府側におきましても、一度沈船引き揚げ協定につきまして妥結を見たわけでありますが、その後国内の情勢もありまして批准をしなかったという事実、それからその後ヴェトナム側としましては、日本側とはやや異なる数字上の要求をして参って、今日まで両国側の妥結を見ない現状にあるわけでございます。
○岡田委員 先ほど言った九月四日のこの合意された事項については、この沈船引き揚げ協定の付属合意議事録に明文化されているはずです。合意議事録を一つ資料として御提出を願いたいと思います。
 それからもう一つは、九月の士官に仮調印の直後において、外務省の情報文化局長は、沈船引き揚げ役務の提供によって、ヴェトナム側の対日賠償要求額の大半が支払われたことになると、そのように談話を出しておる。これも公文であります。この二つは、資料として御提出願いたい。一部であるけれども、これで大半が済んだというここは、二百二十五万ドルで済んだということを意味しておる。これは資料として要求しますから、よろしいでしょうね。
○板垣政府委員 はい。
○岡田委員 そこで藤山さんに伺いますが、二百二十五万ドルで賠償の大半が済んだということになったんです。ところが、今あなたが交渉されている五千五百六十万ドルは、三十倍です。三十倍もの賠償をなぜ払わなくちゃならないのですか。賠償の根拠が違うのですか。対象が違うのでありますか。どうなんですか。二百二十五万ドルですべてだと言われておるときにも、これはヴェトナム賠償だ。五千五百六十万ドルと言っているときにも、賠償なんです。同じ賠償を対象にして、賠償の金額はわずか五年のうちに三十倍になる、その根拠はどういうところにあるのですか。
○藤山国務大臣 沈船引き揚げの中間賠償に当りまして、どういう意味で情報文化局員が――私はただいまの声明書を読んでおりませんから存じませんけれども、御指摘のような言い方をしたとすれば、どういう意味で言ったかということは、ちょっと推測いたしかねるわけであります。しかし、俗に言いまして、こういうときには、できるだけそういうような表現を使いたいものだと思うのでありまして、必ずしもそれが全部であったというふうに当時考えておったとは、思わないのであります。
○岡田委員 そういうあいまいな答弁をしてはだめですよ。その後三十倍に賠償の金額がふくれ上ったということは、国民は何としても納得しませんよ。
 そこで具体的に伺いますが、通産省の方がおられると思うのですが、日本工営株式会社、社長は久保田豊さん、本社は千代田区内幸町二丁目十八番地、電話も言っていいのですが、電話もあるようです。こういう会社がありますね。これは御存じですか、どうですか。
○金谷説明員 私、重工業局で、所管が違いますので、今のお話、すぐにはぴんと参っておりませんので……。
○岡田委員 それじゃ重工業局としての仕事はどうなんですか。外地でいろいろな大きな工場の建設、そういうものに対しては何らかの援助をするでしょう。
○金谷説明員 きょう問題の趣旨がはっきりわかっておらないものでございますから――航空武器に関する問題であるということで出て参ったのでございますから、今の経済協力全般の問題については、所管でございませんので、明確にお答えができませんのは、非常に残念であります。
○岡田委員 じゃ、はっきり伺っておきますが、日本工営株式会社、久保田豊氏が社長の会社で、昭和三十一年から三十三年までの計画で、――これは工営株式会社の出版物ですから間違いないのですが、ヴェトナムのダニム川水力発電測量設計調査、ヴェトナム政府がこれは委嘱した。金額は、設計だけですが、一億六千二百四十二万五千円、これをやっているわけですね。こういう事実御存じありませんか。日本工営がダニム川水力発電の測量設計調査、これを現実にやっていることを御存じありませんか。
○日高説明員 その問題につきましては、日本工営会社がヴェトナムとの契約でやっておられるんじゃないかというふうに思います。
○岡田委員 やっていることは知りませんか。
○日高説明員 その事実ははっきり存じません。
○岡田委員 しかしこれは、きょう外務省の移住局長見えておるかどうかしらないが、何人か行っていますよ。移住局長見えておりますか――この日本工営の技師たちは、これに行っているでしょう。
○粕谷説明員 私、具体的なことは知りません。
○岡田委員 それは一つ調べて下さい。
 藤山さん、これがからくりなんですよ。今度の五千五百六十万ドルのヴェトナム賠償の中で、その大半はダニム川の発電工事なんですよ。五千五百六十万ドルの内訳を、あなた方の方で発表しないから、一応言いましょう。ダニム川の水力発電建設工事第一期、第二期外貨分三千七百万ドル、第一期工事現地通貨分七百五十万ドル、肥料工場の建設分九百十万ドル、工業センター設置費二百万ドル。この中で、ダニム川の水力発電工事費三千七百万ドルと工業センターの設置費二百万ドル、合せて三千九百万ドル純賠償になり、残りを政府借款にするというのが、賠償の内容ですよ。賠償がきまっていないうちに、すでに日本の独占資本はヴェトナム政府と利権でもって結んでいるんですよ。これが証拠ですよ。利権で結んでおいて、設計、工事一切がっさいをやって、賠償の金額はできるだけふくらまして、そうして日本の政府からこれを取ろうという考え方なんですよ。これがヴェトナム賠償のからくりなんですよ。独占資本がいかに利権と結びついているかという立証なんですよ。そうでないなら、そうでないとおっしゃって下さい。はっきりしているんだから。
○藤山国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、ヴェトナム賠償、については、向うは膨大な金融を要求してきているのでありまして、われわれとしてはそれに対して折衝をずっと続けておるわけで、沈船引き揚げの金額が大半だというようなことを向う側は言っておりませんし、当時非常に大きな金額でありますから、われわれとしてはそういう問題でその後交渉を継続して、とにかく若干ずつ金額を減らす交渉をしてきております。また向う側の希望としては、ヴェトナム側の工業建設その他に、将来非常に有利になるようなものを建設してもらいたいという希望でありまして、日本がそういう種類のものを建設して、物的に賠償してやるということが、ヴェトナムの発達のために必要であるとすれば、われわれはそういうことを考慮に入れてやることもさしつかえないことだろう、こう考えてております。
○岡田委員 しかし、この点はどうなんですか。実際の賠償の金額がきまる前に、賠償事業は、日本会社がすでにやっているのですよ。今その金額をきめるだけなんですよ。この事実はどうなんです。この賠償というのは、日本の独占資本の利権としてきまっておるのですよ。五千五百六十万ドルの内訳が違うだけで、五千五百六十万ドルの数字なんかきまっていますよ。この前、藤山さん、答弁しているじゃないですか。二月に、成田君の質問に対して、金額は幾らだ、五千五百六十万ドルだ、と言っているじゃないですか。それ以後変っていないのです。その工事はすべて日本工営会社がやることになっておるんだということですよ。
○藤山国務大臣 交渉中のことでございますから、五千五百六十万ドルになるか幾らになるかということは、まだ最終的には決定いたしておりません。同時に、ただいま申し上げましたように、賠償というものが、現実に消費財その他で消えてしまうんじゃなくて、そこに何らかの形でもってモニュメンタルにでき上って、そうしてこれが日本の賠償でできた、またそれによって利便を得たということが考えられることが必要だろうと思います。その工事をどういう人が請け負い、それが独占資本を有利にするかしないかということは、別個の問題だと思います。
○岡田委員 しかし、どうですか、今までの賠償支払い、インドネシア賠償、フィリピン賠償なんかの場合の工事の請負は、入札しているでしょう。今度の場合には、もう日本工営というのはヴェトナムの設計までやっているじゃありませんか。これはどうなんです。明らかに結びついていることがはっきりしているじゃありませんか。
 それじゃもう一つほかの点を伺いましょう。日本技術協力株式会社というのは、これは経団連の中にあります。藤山さんも経団連にいろいろ関係あるかもしらぬけれども、経団連の会長石坂泰三氏が社長であります。これは移住局次長に伺いたいのですが、この日本技術協力株式会社から、去年の秋からことしの春にかけて、約三十名の者が南ヴェトナムに派遣されています。こういう事実はおわかりですか。
○粕谷説明員 最近非常に海外に出ていくのが多いので、覚えておりません。
○岡田委員 それではそれはあとで資料でお出し下さい。三十名の者が出て、これは何をやっておるか。ICAファンドでもって海軍のドックの修理をやっているのです。しかもこれはどうですか、日本の賠償交渉の代表者として行っているのは、経団連の副会長の植村甲午郎氏じゃないか。経団連の会長の石坂泰三氏が社長になっている日本技術協力株式会社が、こういう形で南ヴェトナムの工事をやっている。これも賠償に関係があるのですよ。明らかに独占資本の利権と結びついているのですよ。これははっきりしている。
 それじやもう一つついでに調査願うので伺っておきますが、大南公司社長松下という人が南ヴェトナムにしょっちゅう行っているはずです。これが賠償の大本なんです。利権の橋渡しの大本なんです。こっちの方ははっきりわかっている。こういう償賠は国民は納得しませんよ。先ほど藤山さんはうまいことを言ったけれども、国民の税金でこういう大資本家を肥やすような、賠償の条約がきまる前にすでに賠償の取りきめが、金額もすべてきまっているような、こんな賠償なんかだれも納得しません。この点ははっきりしておこうじゃありませんか。賠償条約をきめるなんてナンセンスですよ。これは大資本家とヴェトナム政府の間にできているのです。
 もう一つ伺っておきます。これは答弁しないかもしれませんが、大蔵省に伺っておきましょう。賠償の金額については大蔵省と外務省と話し合いがつかないでしょう。どの点がつかないか、なかなか言わぬから私の方から言いましょう。千六百万ドルの中の政府借款の問題でしょう。政府借款千六百万ドル、どうですか、まずその点から伺っておきましょう。
○磯田説明員 先ほど来外務大臣から御答弁のように、まだ賠償の金額また内容等については交渉の過程でありまして、内容も全然きまってない状態でありまして、今の段階におきまして何も申し上げることはできないのであります。
○岡田委員 どうせ答弁しないからはっきり言いますが、政府借款は第一期の工事現場の賃金支払いの分七百五十万ドル、それから肥料工場の建設分九百十万ドル、合計千六百万ドル。そこで大蔵省が反対する。私は大蔵省は外務省よりもやや骨があると思って感心しているのだが、どうですか、このうちで七百五十万ドルの通貨分は、南ヴェトナムから何と言ってきていますか。南ヴェトナムから、政府としては金がないから、日本政府ではこの七百五十万ドルの分を消費財として送ってくれ、その消費財をヴェトナム政府は向うでやみ売りをして金をもうけて、それで賃金を払うからそれで了解してくれと日本外務省に交渉してきた。外務省は了解した。大蔵省は、それはいかにもひどいじゃないか、やみ屋の手先になるような政府は困るねと言ったのが大蔵省の態度じゃないですか。私はまだ大蔵省は筋が通っていると思う。こういうことはわれわれは許しませんよ。七百五十万ドルもやみの品物を売って、それでもうけた金を賃金に充てるために品物を送ってくれ、政府借款にしてくれ、こういうことで賠償を支払うなんというのは、いかに国民をばかにしているかということを明らかにしている。この点どうなんですか。こんなことで国民の税金を使われたら迷惑しごくですよ。ヴェトナム政府が品物のやみ売りをするために七百五十万ドルの金を日本の国がやるなんて、そんなのはやめてもらいたい。どうですか、こういうばからしいのは。もしこういう事実があったら、藤山外務大臣はやめさしてもらいたい。どうですか。
○藤山国務大臣 賠償のような交渉をやっております過程において、いろいろの問題が出てくることは当然でありまして、現在交渉中でありますから、それらのものの一々について、そうであるとかないとかいうことを申し上げかねます。
○岡田委員 そうであるないは別にして、賠償交渉でそういうやみ屋の手先になるようなことはやめてもらいたいというのです。そういう申し入れがあったら断わって下さい。その点はどうなんです。
○藤山国務大臣 私どもは賠償をやっておりますときに、先ほどお話のありましたように、独占資本云々ということ、独占資本ということ自体が社会党のよく言われる言葉でありますけれども、独占資本そのものがすぐ全部悪いとも私はいえないと思っておりますが、しかしそういうような意味で、何らか一部の人に恩恵を与えるとか、あるいは今のようなやみ的なものに利益を与えるとかいうようなことは避けたいと思っております。
○岡田委員 あなたは独占資本云々というけれども、あなた自身も独占資本の一人だから擁護するのです。ともかくそういうやみ売りの手先になるようなことはやめて下さい。七百五十万ドルやみ売りしようというのだ。それで賃金の金を作って、さっき申し上げたように工場の建設は全部日本の国で、三千七百万ドルの賠償金額で、全部日本工営にやらして、この金は日本政府がわれわれ国民の税金で払って、そして建設のための賃金は日本の品物をやみ売りして払う、ヴェトナム賠償の中身というのはこれなんです。
 私ばかりあまり言っていると時間がなくなるから、もう一点最後に伺って終りますが、三菱商事が今後南ヴェトナム政府と、この間弾薬を輸出する契約をしたでしょう。事実を明らかにして下さい。
○日高説明員 個々の契約になりますので、ちょっとよく存じません。
○岡田委員 しかし個々の契約は発表しないというけれども、これは条約違反だから、言っているのですよ。条約違反なら発表できるでしょう。委員長、正式に資料として出させて下さい。出しますか。
○日高説明員 よく調べます。
○岡田委員 そういう話は聞いたことはありませんか。
○日高説明員 私は聞いておりません。
○岡田委員 これはそういう事実がある。三菱商事が大量の弾薬と軍用被服の輸出契約を南ヴェトナム政府としている。これは明らかにジュネーヴ協定の何条であるか参考のためははっきりあなたにも申し上げておきますが、ジュネーヴ協定の第十七条違反です。これを許可したならば明らかに日本政府は違反しているのです。いいですか、あなたは許可されるについても、こういう点をはっきり見ないで許可されたら、今度の国会は会期は延長になったけれども、まだあとでやりますよ。
 ともかくどうです。さっきから言っておるように、ヴェトナム賠償というのは、独占資本が利権をとるために賠償の金額を三十倍に引き上げた。そうしてその利権はすでに賠償の金額がきまる前に着々準備が進められて、もう進んでいるのですよ。あとは金額はわれわれ国民の知らないうちに政府と政府の間でうまく取りきめて、国民の税金をそういう形で払ってやろうというのが、ヴェトナム賠償の内幕なんです。こういう点は藤山外務大臣は重ねて真相をつかんでいただいて――私は藤山外務大臣という人は人間的に非常にまじめな人だと思って尊敬しております。そういうまじめな人である限り、いかにあなたが独占資本の一人であっても、こういういいかげんなことは日本の国家のためにはやめてもらいたいのです。ヴェトナム賠償はぜひやめてもらいたい。私思い出しますが、ちょうど去年のきょうなんです。ハノイでホー・チミンと会見したときにこう言っている。ヴェトナムの賠償は統一後に交渉してくれ、統一後に交渉したならば賠償は支払わなくてもいい、こう言っている。もし日本の国が不景気で則っているときに、約二百億円になるような国民の税金をヴェトナムに払ってやる必要はないじゃありませんか。統一後なら払わなくてもいいというなら、払わなくてもいいじゃありませんか。独占資本のために奉仕するようなことはやめてもらいたい。私は藤山外務大臣が良心的な方であるだけに、特にこの機会に質問というよりもあなたに御注意を喚起して、ヴェトナム賠償を今後一つ停止することを要望いたしまして、私の発言を終ります。もし御感想があったならば一つお聞きをしたいと思います。良心的な外務大臣だから、御感想があるだろうと思うが、一つ御感想をお願いしたいと思います。
○藤山国務大臣 いろいろ御意見を承わりまして、むろん賠償交渉は現在進行しておりますから、慎重に、御意見のところも留意しながらやって参るつもりであります。
○櫻内委員長 大西正道君。
○大西委員 賠償によって独占資本がもうけようがだれがもうけようが、結果としてそういうことになることは私は何ら異議はない。しかし賠償協定もできないし、まだ国会の批准もないときに、すでに現地において額がきまって、そうして国内の業者がそれと緊密な連絡を持って話を進めているということ自体に、私は基本線の混同がある、こういうことを思う。私はそういう意味で岡田君の今の質問追究ということは、これは国民の気持をそのまま率直に表明したものだと思う。これは前の質問者の質問に対して私も同感の意を表しておきますから、一つ大いに考えてもらいたいと思う。
 時間があまりないようですから、短かい時間おもな問題だけを開きます。この前アジア局長に聞きましたのですが、矢次さんが特使で行きまして、何を話をしてきたのか一向話をしてもらえないし、わからないのでありますけれども、巷間伝うるところによりますると、日韓の漁業の合弁会社を作って、そうしてそのものにのみ李承晩ラインを向うに越えて魚をとる特権を与えたらどうか、こういうような案が提示されたというようなことが、いろいろと流布されておるのであります。この問題につきましてアジア局長に問いただしてみましたが、一応は否定するかのごとく、またそういうことも一部としてはあり得るような表現であったのであります。私は、こういうことは、今日李承晩ラインというものの違法性を強調して、それを認めない立場でわれわれ話を進めているこの段階におきましては、まことにもってふらちしごくなことであると思う。こういう問題につきまして外務大臣はお聞きになっておりますか。新聞その他でお読みになっておると思うのだが、責任ある地位から、矢次さんの向うの交渉の結果として、そういうふうな話があったということについての話を聞いておられますかどうですか。
○藤山国務大臣 今御指摘のようなことは、何かルーモアとしては私の耳にも入っておりますが、しかし矢次君がこの間行きましたときは、昨日も申し上げましたように、外交的交渉をいたしたわけではございませんし、また外交的交渉は当然外務省が担当してやるべきものでありまして、二元的な外交交渉をやるべきではないと私は思う。また矢次君が行きまして、向うでそうした交渉をした事実は私はないと思います。
○大西委員 そうしますと、そういう問題がもし会談の過程において出て参りましても、そういう問題は一切耳を傾けない、こういうふうなお考えと承わってよろしゅうございますか。
○藤山国務大臣 李ラインの問題を解決しますためには、相当いろいろ困難な問題があると思います。われわれはこの問題について適当な解決の方途に向わなければならぬのでありまして、向う側の意見も、むろん交渉でありますから聞く必要があると思います。が、しかしながらこちら側としても何か考えて参らなければならぬ。むろん李ラインを否定しておるわけでありますけれども、ああいう両方の近接した海域におきます漁業の問題でありますから、平和的に話し合いがつく方向をできるだけ考えていかなければならぬ、こういう考えでおります。
○大西委員 私の聞きたいのは、李ラインの問題の解決の一つの策として、こういう合弁会社を作って、特別なものにだけこれを越えて魚をとらせる特権を与えることによって、この問題を解決しようとするかどうか、こういう問題であります。そういうことは許されないというのが私の考えです。
○藤山国務大臣 私の交渉しております構想の中には、現在そういう考え方はないのであります。
○大西委員 構想の中にはそういうことがないのはけっこうですが、将来そういう問題がありましても、この問題につきましては結局はそういうことになりますと、それは李ラインを認めるということになる、それに条件をつけるということになるのでありますから、この点だけははっきりと一つ明言を願いたい。
○藤山国務大臣 今申しましたように、私はそういうことで解決しようという構想を現在持っておりません。今後、交渉のことでありますから、韓国側と日本側とがいろいろ折衝いたして参るのでありまして、その折衝の過程においていろいろな問題が出てくるかと思います。が、しかし私として、今申し上げたように、そういう構想を持っておりません。
○大西委員 それから飛び飛びになりますが、この間日韓問題、特に日中問題に関して、官房長官の赤城発言が問題になって、あわててあなたは取り消された。ところが私どもが推測いたしますところでは、どうもああいう問題は、行き詰った日韓間の問題を解決するためにも、従来の方針を何とか検討せなければならぬというような危機に追い込まれている政府の内部では、ああいう意見がかなり戦わされたものであるというふうに見ておった。ところが今回やはり有力閣僚である池田国務相が、一日の記者会見におきまして、米国の外交政策審議会のセリグマン氏の所説を引用して、やはり日中問題につきましては赤城官房長官とほぼ似たような発言をしておる。また日韓の問題につきましては、朝鮮の統一ということ、これはぜひ早い機会に実現されなければならぬし、その可能性もある、こういうことを言って話題を投げておるのでありますが、私はこういうことは具体的な、最後におきましてはいろいろ私どもは見解の違いもありますけれども、しかしある部面におきましては、今の自民党政府のとっております外交方針よりも一歩前進であると私は考える。そういう意味で、私どもはそれに対して一つの批判を持っておると同時に期待を持っておるのでありますが、これも何かあなたの方では風聞である、流説である、こういうふう一に否定をされますか。あるいはこういうふうな事実があったということを、あなたの行動ではないけれども外交に関する閣僚の一員としてのこういう発言が、記者会見においてなされたということについて、あなたは確認されますか。
○藤山国務大臣 池田国務大臣の発言につきましては、新聞紙上に出ておりますものと若干違うようであります。それは私ども当時列席されました方々にも聞きましたし、池田国務相自身も、あのセリグマンの本を読んだか、ああいう意見がアメリカにあるのだが、それに対してどう思う。なるほどおもしろそうな議論だから、自分も一ぺん読んでみたい。じゃああなたは意見が変ったのかと言ったら、自分はまだ変っていないのだという返事をされたというので、どっちかというと、新聞に出ているのとは、問答からいえば反対のような意味を池田さんが言われているように私は聞いたわけなんでありますが、しかしいずれにいたしましても、むろんこういう今日の世界の事情、また日本の将来の問題に対して大きな問題でありますから、それぞれの方がいろいろな意見をお持ちになることも、それは決してそれまでやめろというわけではございません。しかしながらそういうものがほんとうに固まった国策として、あるいは閣内においていろいろ討議された上でもって固まってこない場合にいろいろ言われることは、まことに遺憾だと思うのであります。外務大臣としては皆さんに対してそういう意味において注意を促しておるわけであります。
○大西委員 この問題はそれじゃまたこの次時間があるときにやります。
 きょうは、きのう資料をお願いしておきましたが、二つございまして、一つは第二星丸の拿捕の状況に関する資料でございます。これは拝見いたしました報告書の中にもありますが、念を押しておきたいのは、第二星丸が拿捕された場所というのは、明らかに李ラインの外にあるものであるというふうに私どもは思っておるし、またこれは報告書にもそう書いてあります。その点はわれわれはそういうふうに認めておるけれども、先方はこれをどういうふうに言っておるか、この点を一つお聞かせ願いたい。
○板垣政府委員 この点につきまして、この事実をはっきり韓国側に対しまして指摘をして抗議をいたしたわけでありますが、先方側がどう見ておるかについてはまだ確認ないし返答は受け取っておりません。
○大西委員 あなたの方の報告には、直ちに第二星丸に韓国の船が接近して、そして拿捕したように書かれておりますが、私どもの調査によりますると、その以前に、最初は第七六照丸という船に横づけして拿捕しようとした。ところがこれは魚が少しもこの船に積んでいないというので、これを離れて、獲物を満載しておるところの第二星丸に手をつけた、こういうふうに聞いておるのでありますが、この点は御存じでありますか。
○板垣政府委員 この第二星丸が拿捕される前後の状況につきましては、詳細は海上保安庁から私どもの方に報告はございません。なお、今御指摘の点は調査いたしたいと思います。ただいまのところ外務省といたしましては、そういう点についての報告、連絡はもらっておりません。
○大西委員 この私どもが入手した情報は間違いないと思います。こういう事実から、今回の拿捕がどういう意図のもとにやられたのかということに対して、かなり重大な意味を持つのです。一部ではこれは漁獲物をねらったまあいわば海賊的な行為である、こういうふうに見る向きもあります。しかしまたある一部では、先般来日韓間の問題につきまして、いろいろと国内においても意見が戦わされ、それが先方にわかりまして、その報復手段として意図的にこういうふうな措置をしたのだ、こういう見方もあるわけなのであります。私はこういうことにつきまして、今いずれがどうだということは言いませんけれども、これらにつきまして一つ見解がございましたら聞かしていただきたいと思います。
○板垣政府委員 ただいま御分析がございましたが、私どもも確認はできませんし、そういう問題につきまして政府側では見解を申し述べることはできない点を御了承願いたいと思います。
○大西委員 そこでもし私が言う獲物を主にしてやったというような海賊的な行為であるとするならば、こういうふうな問題に対しては、一体政府としてはどういうふうな処置をもって今日まで臨んでこられ、今後もこれに対処されようとするのかということを、一つ私は聞きたいのであります。この報告書を見てみますと、「いすず」はこれに対して百五十メートルまで近づいて、そして何かいろいろと信号や暗号をやったが一向きかない、かえって銃撃を受けた、そしてかえってあとずさりをした、そういうふうなことがある。こういうふうな事態に対しまして従来、海上保安庁などがどういうふうな処置をとっておったのか、あるいはこういう事態に対する海上保安庁の任務というものはどの程度まで具体的な手を打つべきものなのか、この点を一つ簡単に聞かしていただきたい。
○板垣政府委員 漁船拿捕に対する措置といたしましては、まず第一に予防措置が大切と思いますが、今海上保安庁がどういう方針でやっており、どの程度の力があるか、実は外務省としては存じませんけれども、私どもが承知しております限りにおきましては、福岡にあります海上保安庁の本部は、あらゆる可能なる予防的手段は講じておるようであります。しかし現実にこの拿捕されんとする船舶を救いにいくという場合に向うから銃撃を受けて、これに対してどの程度の応酬をし、どの程度の実力を発揮するか、これはまあこちら側の巡視艇の装備の問題もございましょうし、さらに進んでやる場合に、もっと大きな問題を惹起するという点もございますので、この点は非常に微妙な点があろうと思います。私どもの考えとしては、できる限り予防的な措置を完備するということが第一に大切じゃないかというふうに考えております。
○大西委員 これはこれまでたび拿捕されておるのでありまするから、その際どういうふうな措置をとったかということも聞きたいのだし、いつか内閣委員会で自民党のだれかが聞かれたように、海上自衛隊は何をしておるかというような勇ましい論議も出てくるかと思うのでありますけれども、いずれにいたしましてもこういうことが次々と行われて、そうしてそれに拱手傍観をして何ら具体的な手を打てないということになりますと、これは非常な不安になります。そこで私は、あとの問題ともからむのでありますけれども、こういう場合に、この問題はかなり長引いていろいろと問題が起きておるのであるから、この前にも私どもはこの問題について政府の喚起を促したのでございますけれども、国連憲章の第三十三条によりまして、いわゆる紛争の発生する疑いのある事態に対しては国連に対してその解決を依頼するという、この手を打つ意思は今ないか、こういうことであります。たびたび言っておることでありますけれども、事ここまでもつれて参りまして、一向友好な雰囲気の中に平和的な話が進まないということになりますれば、私どもはそういう手を打つ必要があるのではないかということを私は再びここに提起したいのであります。大臣いかがですか。
○藤山国務大臣 現在、日韓会談を成立させまして、そして円満に話し合いの上でこうした問題を解決していきたいという努力をしておりますので、現在はその努力に集中をいたしております。
○大西委員 日韓会談の初めに三つの条件があったと思うのです。この三つの条件の一つには、お互いに抑留者の相互釈放送還をやる、そうして今後再び李ラインを発動して日本の漁船を拿捕し漁夫を拿捕しないというようなことが、これははっきりと約束されたかどうか知らないけれども、両国間の取りきめとして、了解事項としてあったということを私は聞いておるし、またそうなければ意味がないと考えるのであります。そういうようなことは当然私はあったものだと思いまするが、いかがです。
○藤山国務大臣 日韓会談を円満にやりますために取りきめもいたしましたし、またそれの基礎になるべき話し合いもいろいろいたしておるのでありまして、われわれは当然取りきめをいたしておりませんでも、こうした問題については、向う側から日韓会談を円滑に進行するためにそうした態度に出てくるのが当然なことではないか、こう考えておるわけであります。何といたしましても非常に困難な交渉をやっておるのでありまして、できるだけ円満にこの交渉が妥結するようにということを今専念考えておるわけであります。
○大西委員 ここはまたぼかされるようでありますけれども、私は、この全面会談を始める初めの前提のいろいろな取りきめがくずされてしまっていると思うのです。四月何日かまでは拿捕がなかったということ、このことはお互いの暗黙の了解ということが実施されておったのであります。ところが今回この第二丸事件が起きたということは、この取りきめというもの、前提の条件がくずされつつあるのではないかということを考えるのです。こういうふうに考えると、何のために相互の釈放をし、相互の送還をやったのか、全然意味をなさなくなると私は思うのです。こっちの方は友好的な雰囲気が作られると言って、重要美術品を国民にも公表せずに百六点を返しておきながら、しかも向うでは依然として李承晩ラインというものによって漁船をどんどん拿捕していくということであるなれば、対等な立場で、平等な立場でこの友好的な雰囲気が作られるのではなくして、全く一方的な屈辱的な犠牲のもとに話が進められると言っても、私は過言ではないと思う。特に今回の第二星丸事件は、そういうにおいを私は非常に強く感ずるのです。そこで私が前に言いましたように、この第二星丸の拿捕は、一つの政治的な意図があるのではないかということを、私どもは考えるのでありますけれども、政府はその点に対して、まあ何とも言えないと言われますけれども、政府の見解といたしましては、前からのいきさつから考えまして、この第二星丸事件の意義というか、意図するところは、そういうところにあるのではないかというふうに考えませんか。
○藤山国務大臣 政府としましても、第二星丸の事件が起りましたことは、まことに遺憾なことが起ったと思っておるわけであります。ただ現在とにかく会談を開いておりまして、それが何らかの帰結に達するように努力をしております際でありますので、それ以上いろいろ言明いたしますことは、かえって適当でないかと思います。
○大西委員 これはこの会談の内容にも、もちろん李ラインの問題、あるいは漁業の問題は、一つの委員会も設けられた重大なテーマになっておりますが、この問題は初めて話し合いのスタートの条件のときにきめられた線が、くずされておるということではないかと私は思うのです。そうでしょう。それでは今から一方的に李承晩ラインというものをはっきりと認めてしまうことになるのではないか。だから李ラインの全面的な話し合いとは別個に、この問題を重大視しなければならぬと私は思うのですが、いかがですか。
○藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように、この事実そのものについては、私ども非常に遺憾な事実が起ったということを考えております。むろん今後こういう事実が次々に起るということを、現在の段階で予想してはならぬと私ども思いますが、そうしたことが起らぬことを希望してやっておるわけであります。
○大西委員 あなたの方で希望しましても、こういう不幸な事態がもう起きたのでありますから、今後もこういうようなことが次々に起らないということがどうして保障できますか。あなたの期待だけではこういう不幸な事態は阻止できないのです。そこに私は懸念を持っておるわけなんです。どういうふうにして将来はこれが起きないという保障をしますか。起きないだけの具体的な手が打たれますか。
○藤山国務大臣 相手国のある問題でありますので、保障できるとかできないということを今日申し上げるわけにはいかぬと思います。むろん起りました事実については、非常に遺憾だということは私ども痛切に感じておるわけでありまして、今後こうした問題がかりに次々に起るということは、日韓会談の上に非常に大きな悪い影響を与えるものではないかと思っております。
○大西委員 悪い影響はこっちにあるのであって、向うには何も悪い影響はない。それで私が前に申しましたように、とにもかくにもこの日韓間の多くの懸案の中でも、特に李承晩ラインの問題が一番の近接した当面の影響のある問題でありますから、この問題を全面会談とは別個にとにかく取り上げて、今申しましたように、国連にその介入を依頼するということが、私は一番適当な方法であると思うのです。こういう方向に進まなければ、私はあなたの御努力は多としながらも、なかなか日韓会談の前途はそう楽観するわけには参らぬと思います。もう一回お伺いいたしますけれども、この李ラインの問題を特に切り離して、国連に介入を依頼する、国連憲章三十四条によって、あるいはまた三十五条によって、調査あるいは提訴するということが必要であろうと私は考える。それなくしてあなたはこの問題の解決が確言できるかどうか、非常にむずかしい問題だと思います。先々のことはわからぬ、努力すると言われるよりも、こうした問題についてもう少し熱意を示してもらいたいと思います。
○藤山国務大臣 御意見として拝承いたしておきます。ただ政府としては現在日韓会談を開き、漁業委員会等もできております。その代表の来ることを待っておるわけでありまして、会談を開始するときでありますから、現在私どもとしては、日韓会談における漁業委員会の経過を見て参りたい、こう考えております。
○大西委員 それから百六点の美術品の目録でありますが、これは今いただきましたのは、私どもの調査しましたリストとまた一ぺん照合いたしまして、私の懸念しておるところが解消されるかどうか、一ぺん調べましてから質問いたしますが、一括してお伺いいたしますけれども、この百六点は全部これは韓国、南朝鮮の古墳から出た美術品でありますか、ほかの北から出たものはありませんか。
○板垣政府委員 提出資料の注に書いてあります通り、大正七年、朝鮮総督府の発掘調査事業といたしまして、現在の韓国の慶尚南通昌寧郡から出たものであることを、昨日あらためて文化財保護委員会にも確認をいたしております。
○大西委員 なぜ返されるものを韓国から出たものだけに限定されましたか。
○板垣政府委員 必ずしも韓国に限定したというわけではなくて、若干のもの、最も適当なもの、しかもそれを現行の法律の範囲内において行政措置で渡し得るものという意味で選定をいたしました結果、この慶尚南道から出た出土品が最も適当でないかということで、この百六点を選定いたした次第でございます。
○大西委員 このほかに四百八十九点ですか、このリストが韓国に渡されておるようでありますが、この点数には間違いございませんか。
○板垣政府委員 先般外務大臣が予算委員会で御答弁になりました通り、韓国側の新聞などに出ておるのは誤まりでありまして、確かに先方との交渉の過程におきまして、韓国側もこういうようなものが日本にないかというようなことで、資料を尋ねてきたことがあります。日本側といたしましても、東京博物館にこれらのものがあるというようなことで、これの交換はいたしたことはございますが、はっきりとしてそのものを引き渡すという前提でリストを提出したことはございません。
○大西委員 引き渡すという意味でリストは提出しないが、これこれのものがあるというリストの数は幾らですか。
○板垣政府委員 四百八十九点というものが東京博物館の目録の中にあるということを、向うに資料として渡したことはございます。
○大西委員 それはこちらが調査して出した資料ですか、あるいは向うからそういうものを要求してきて、それに応じてこちらが調査したものですか、どうなんですか。
○板垣政府委員 文化財のリストについては、実は韓国側もいろいろ調査しておったようでありますが、これは御承知のように博物館にある品目というものは交換されております。そういうものに基いて調査したものもあろうと思います。それに関連いたしまして韓国側の問い合せもありましたので、私どもも一応東京博物館に連絡いたしまして、その目録の中からチェックしたという程度でございます。
○大西委員 これは国立博物館に国有のものとしてあるものだけのリストで、これがすべてですか。朝鮮関係のものはこのほかにないのですか。
○板垣政府委員 その点は私詳細は存じませんが、大部分であると思っております。
○大西委員 向うの要求してきておるのは、個人の所有に関するものについても要求してきているということはございませんか。
○板垣政府委員 これは従来複雑な交渉の経過を経ておりまするので、韓国側は現在どう考えておるかは実は分明でないのでありますが、日本側といたしましては、この問題になっておりまする文化財というものは、国有のものというふうに考えております。
○大西委員 個人のものに対しての請求があったときには、この問題についてどう扱う考えですか。
○板垣政府委員 日本政府といたしましては一定の考え方はございまするが、これは今後の交渉の問題でもありまするので、この場で説明をすることを避けたいと存じます。
○大西委員 ちょっと聞き忘れましたが、百六点の美術品は国内法規に触れる心配はございませんか。これを渡したことにつきまして、たとえば文化財保護法とかいうようなものに……。
○板垣政府委員 その点はこの引き渡しを決定する前に慎重に関係各省とも相談をいたしまして、そういう点も一切クリアしてございます。
○大西委員 触れる場合には、重要文化財という名目で一応審議会の議を経なければならぬということになりますね。ところが私ども、民間に重要なる美術品その他文化財がある場合には、これの散逸をおそれて保存を厳重にするために、いろいろと指定をするわけでありまするが、国有のものにつきましては、それだけの価値のあるものでも、そういうふうな重要文化財としての指定をしないのが多いということを聞いておるのですが、そういうことはいかがですか。
○板垣政府委員 その点は私存じません。
○大西委員 私どもの常識では、そういうことを聞いておるのであります。そういたしますと、法律的にはこれらのものは文化財保護法の規定には触れないけれども、実質的に文化的な価値という面から見ますと、かなり価値の高いものもあるやに私は聞いておる。それで文化的な価値を金銭で評価するということはできませんけれども、参考までにお伺いしますが、一体この返しました百六点というものはどのくらいなものだと評価してよろしいのでしょうか。これはもちろん今申しましたようになかなかむずかしい問題であり、また主観的な立場によってもいろいろと評価の基準が違ってくると思うけれども、一応客観的な基準も出ると思うのですが、私は、どのくらいな値打ちのあるものか、一ぺんこれを聞いてみたいと思う。
○板垣政府委員 無理にいたしますれば、この財産価値というものも出て参ると思います。ただごらんの通り、最初に金製のものでございます。これはおそらく財産価値に換算できると思いますが、その他のものは大体において考古学的資料でございます。しかしながら財産価値と文化財というものは、両面から見られるものでありまして、金額はどのくらいになるということを申し上げることは、微妙であるとともに、また意味のないことであると存じております。
○大西委員 そこで、これも大臣に聞きますが、美術品の返還の問題は、これは会談においていろいろと話をされるのでありますが、この返された百六点のものが、全部韓国から出たものであるというように限定された意味は、今言われた偶然そうだったというふうなものでもないと私は思う。非常に御苦心の跡があるだろうと思うのでありますが、四百九十点のリストの中には、北鮮の古墳から出たもの、あるいは北鮮の地型から出たものがたくさん含まれておる。これは今の岡田君の南北ヴェトナムの問題にも関係するのだが、南北朝鮮の問題にからみまして、こういう問題は会談の過程におきましても、当然これは韓国に返すべきものではないと私は思う。そういう御配慮から今回は韓国だけのものを返されたのではないかと思うのでありますが、この点はきのうもちょっとアジア局長にも聞いておきましたが、大臣からもはっきりこの点を確認しておきたいと思います。
○藤山国務大臣 文化財の問題につきまして、韓国側の申し出をどういうふうにしていくかということは、やはり会談の重要議題の一つでありますが、今後会談の進行につれておのずからきめていく問題であると思います。
○大西委員 この問題は、会談の進むにつれてきめる問題じゃない。たとえばきのう問題になりました朝鮮人の国籍の問題、あるいは送還先の問題にいたしましても、これはむしろ前提になるべき問題です。李承晩政権というもの範囲をどこに限定するかという問題に関する問題でありまして、これはむしろ会談の前提となるべき問題だと思います。この問題の明確な規定なくして話を進めるということは、いたずらに半を混乱させる以外の何ものでもない。あまりにも考え方が違うということになれば、これは幾ら話しても途中で物別れになるだけであります。むしろ事の初めにこの問題だけをはっきりしたいから、私はただいま美術品返還の問題に一つ例をとって申し上げておるのであります。ですからこの問題は、話の進むにつれて北に返すか南に返すかわからぬというような問題ではなかろうと私は思う。たとえば船舶小委員会が持たれております。この船舶も、終戦当時朝鮮の港にあったものというようなことが一つの条件になっておるようでありますけれども、たとえば元山あるいはその他の北鮮の港に停泊しておったものをどうするかというような問題も、初めからはっきりしておかなければ話のしようがないのであります。同じような問題がたくさん出てきます。その意味でこの問題を一つはっきり願いたいと思います。
○藤山国務大臣 会談に臨んでおります私の態度を一々申しますことは、会談を進行させる上に適当ではないと思いますので、お許しを願いたいと思います。
○大西委員 この問題はむしろこういう機会に明らかにして、国民の支持を得るとともに、日本政府の基本的な考え方というものを相手側にも明らかにすることによって、かえって要らぬ紆余曲折をなるべく避けて話を進める一つのいい条件になるのではないかと思う。こういう問題を何か話の過程で機微に触れるように言われることは、外交の機微に名をかりて秘密外交をやると言われても、私は仕方がないと思う。この点だけは一つ明らかにされたいと思うのです。
○藤山国務大臣 私はただいま申し上げましたように、韓国とただいま交渉をいたしておるわけでありまして、交渉の全般の態度として、韓国の政府の位置その他について認識を持ちながらやっておるわけでありまして、事こまかな問題につきまして一々この際申し述べることは、適当でないということを申し上げておるわけであります。
○大西委員 繰り返しても意見の対立でありまするけれども、このくらいなことが言えずして、国民の利益に沿って外交を進めているということは、私は国民は納得しないと思うのです。一番大事な問題ではなかろうかと思うのです。やはり言えませんか。――それでは話を別にして、この前問題になったように李政権の権力の及ぶ範囲はどこかというような観点から、また問題を蒸し返さざるを得ない。この文化財の返還の問題につきましては、この間アジア局長がはっきり言っておるのですよ。私は妥当なことだと思う。ただそのことを、あなたがまた変な何でよろめかれても困ると思って、ここにはっきりと確約をするだけのことであって、天下周知のことだし、言うべきことですよ。アジア局長は言っているんだけれども、あなたにもう一回言っているのだから、こんなことは言ってもちっとも差しつかえないと思う。
○藤山国務大臣 私は韓国と交渉しておりますときに、私自身よろめいているつもりは毛頭ないのでありますが、先ほどから申しておりますように、会談をできるだけ円滑に進行さしたい、しかも日韓の会談は、過去の歴史に照らしてみましても、会談の内容の問題以上に感情上の問題、その他の誤解、行き違い等が起る場合が多いのでありまして、そういうことを考えますと、私は決して官僚的に秘密外交を主張しておるものでもないのでありますけれども、この機会にはできるだけ慎重に発言をする必要があるのではないか、こういうふうに考えておるわけであります。御了承いただきたいと思います。
○大西委員 飛び飛びになりますけれども、あなたは非常に今の段階においては友好な雰囲気にあるように言っておられるのですけれども、私は李承晩が依然として、あなたがそういうことを言われるにもかかわらず、反目的な、非常に好ましからざる感情を持っておるということを、私はいろいろな場所における発言その他で、遺憾ながらそれを打ち消すことはできないのですが、あなたは最近の李承晩大統領の対日感情というもの、それはこの話を進めていく上に非常に快適な条件にあるとお考えでありますか。初めの非常に悪い条件がやっぱり払拭されていないと考えられますか。せっかく特使まで出して、あなたは言いたいことも言わず、第二星丸が拿捕されてもこれも何とも言わないというように、非常に遠慮されている。相手が大いにあなたに敬意を表してもいいと思います。ところが私どもはそうじゃないと思っているが、いかがですか。
○藤山国務大臣 交渉相手国の政府あるいは主権者等の言説に対してとかくのことを、今交渉をやっておる段階において私が申し述べることは、これは絶対に適当でないと思っております。ただ先ほど申し上げたように、第二星丸の事件が起ったようなことについては、まことに遺憾であるということを申しておるわけでありまして、そういう意味において私は相手国の政府もしくは主権者個々の意見あるいはその考え方等に批評を加えたくないと思っております。
○櫻内委員長 大西君、だいぶ時間が経過しましたから……。
○大西委員 それではこれでやめます。
 御参考までに申し上げますけれども、今度の第二星丸の事件も一つの例でありますけれども、やはり反目的な態度というものは、残念ながら改められていないのですね。私どもはそういう具体的な例をここに持っております。アジア競技大会に出場した選手に対して、大統領が日本統治の四十年のことを忘れるな、この間のおくれを取り戻せというような、スポーツというような政治的なものが非常に希薄な領域におきましても、こういう問題を強調しているというようなことです。また日本語早わかりというようなものが向うで出ておって、ベストセラーになっているそうですが、これを韓国では発売を禁止したそうですね、店頭からこれを押収したというようなことも言っております。こういった問題だって、ほんとうに将来日韓親善をやっていく、問題を友好的に解決するというならば、こういう処置は私どもはまことに遺憾だと考えます。飛行機が李ラインを向うへ越えると、日本語をあの中で話したらいけないと禁止されているというようなことですから、これも大へんなことですね。それから竹島のことなんかここで言わなくてもよいと思います。
 それからまたあなたはこの点は御存じですか。沖縄の日本帰属に対して反対をしているということは、この前にもうはっきりしておりますけれども、その態度を依然として変えていないということですね。機会あるごとにこの問題を主張しているというようなこと、こういうふうにいろんな具体的な例を見ますと、あなたが考えられるように、言いたいことも言わず、国民には何も知らさないで、そしていろいろと意をいたされても事はなかなか簡単ではないということを私はあなたに警告したいのです。
 そういう意味で、この交渉になお一つ熱意を傾けていただきたいと同時に、もう少しこの会談の内容を差しつかえない程度で、こういう機会を通じて明らかにされることを私は望むのであります。どうも取りとめがないことになりましたが、これで終ります。
○櫻内委員長 松本七郎君。
○松本(七)委員 時間がないので二、三簡単にお伺いしたいと思います。
 この前、澤田発言の問題で、澤田さんが当委員会に来られたときに、社会党側から、韓国の政府は三十八度線以内の限定政府だ、そういう建前で交渉に臨んでいるかという確認を得ようとした。ところが澤田大使は、いや、法的に全朝鮮に支配の及ぶ正統政府だという発言をされたのです。これは非常な重大な問題なのですが、外務大臣はこの澤田発言に賛成なのかどうか。
○藤山国務大臣 韓国の政府を正統な政府としてわれわれは認めて交渉をいたしているわけであります。しかし韓国が事実上支配の及ばない地域があるということもまた認めながら交渉をやるわけであります。
○松本(七)委員 正統政府として認めていると言われますけれども、今まで長い間の外務省、特に条約局の当委員会における説明では、正統政府として認めているのではない。正統政府と認めているならば、当然在日韓国代表部も正式な外交機関、大公使館でなければならぬ。ところがそうじゃない。これもいつもこの委員会で問題になったソ国交回復以前、ソ連代表部が大使館としての取扱いをなぜ受けないかという問題のときに、いつも韓国が代表部を引き合いに出された。ところが韓国代表部は、正式に政府として承認はされていないけれども、これは便宜上政治的考慮から大公使館として扱うのに、だから法的には国交回復しておらないソ連の代表部と同じことだけれども、政治的扱いが違うのだ、こういう答弁を一貫してこの外務委員会を通じなされている。今の外務大臣のお言葉では、今までの説明と全然違う。一体いつから、またどういう新しい事実に基いて、どういうものを根拠にしてそういう別な解釈が出てきたのですか。
○藤山国務大臣 あるいは私の言い方が足りなかったかもしれませんが、私は今までの解釈の通りのことを言ったつもりでおります。
○松本(七)委員 今までのここでの御答弁、たとえば下田条約局長がここで答弁した中にも、韓国との間には、正統政府として認めた正式の国交の存在がないのです。ただこの代表部というものは、便宜上正統な国交回復をした国の代表部の扱いをしておるにすぎない。それは法的な関係ではなくて、政治的配慮からそういう事実上の扱いをしているんだ、こういうのと法的に正式な関係のあるということじゃ大へんんな違いなんです。
○藤山国務大臣 私の言葉が足りなかったかとも思いますが、むろん正統な正式ないろいろな関係に入りますのは、日韓会談その他で十分話し合いをし、妥結した上でそういう問題に入ってくるわけであります。ですから言葉が足りなかったかと思います。
○松本(七)委員 そうなれば、澤田さんの、正式に国交を回復して、そして法律に認められた政府ということは間違いだということになるのですが、今までの政府の答弁からいえば澤田さんの発言は行き過ぎなんです。それが行き過ぎであるということをはっきりしていただかないと困る。
○高橋(通)政府委員 ちょっと私から補足さしていただきますが、確かに澤田代表のそういう御発言でございますが、その意味からしますと非常な法律的な厳密性は欠いたと私は思っております。しかしその御発言の内容は、われわれが今まで考えておったような意味の発言だと思っております。現在において正式に国交回復した正統な正式な政府であるという意味ではなくて、やはり将来当然そういうことを前提とした政府である。ですからちょっと発言の厳密性は欠いたと思っております。
○松本(七)委員 では、現在は正式に国交のある法的に正統な政府ではない、それを一つ大臣から確認して下さい。
○藤山国務大臣 その通りだと思います。従いまして日韓会談をやりまして、国交の調整をはかろうということでやっておるわけであります。
○松本(七)委員 それでは澤田さんのここでの発言が、今までの政府の方針とも違っておったということが確認されたわけです。
 その次は、この前からソ連側から航空協定の申し入れがきて、やっと日本政府もこれに対して応ずるという態度をとったようですが、しかし一番肝心のハバロフスクー東京間を東京―モスクワ間なら交渉に応じてもいい、それが政府の態度と承わっております。これに対して何らかの先方の返答は参りましたか。
○藤山国務大臣 まだ参っておりません。
○松本(七)委員 そうすると東京―モスクワ間にしたいという日本側の主張は、今までのソ連側の主張からすると相当むずかしい問題じゃないかと思う。そこで今までの他の国とソ連との航空協定の例から、飛行機の飛ぶその国の領空の距離が、ちょうど東京―モスクワ間のように両国の間に開きのある例が日ソ以外にありますでしょうか。
○金山政府委員 インドとの間に最近ニューデリーとモスクワの間の協定ができました。距離的に見ますと、やはりソ連の中への乗り入れの方が長いわけであります。ただ東京とモスクワ、その領土内の航空の距離から申しますれば、日本側の方が長いことは事実でございます。
○松本(七)委員 インドより……。
○金山政府委員 ええ。
○松本(七)委員 そうすると、インド―ソ連間の航空協定のできたのはいつですか。
○金山政府委員 はっきりした期日は覚えませんが、約一ヵ月半くらい前であります。
○松本(七)委員 その他の国でそのように距離の違うところはございませんでしょうか。
○金山政府委員 御承知のように、英国との間に協定ができております。それからフランスとの間にも話し合いが進んでおります。その距離の点でどういうふうになっておりますか、はっきりしたことは調べてお答えいたします。
○松本(七)委員 それからこの前のわが党の鈴木委員長の質問に対して、今までもいつも問題になっておりました安全保障条約改訂は、安全保障委員会で検討する、こういうことを再度総理大臣は答弁されておるのですが、具体的に安全保障委員会でいつごろこの問題をお出しになるおつもりでしょうか。
○藤山国務大臣 こうした問題についていつごろということは申し上げかねますが、私は先日来申しておりますように、日米両国の関係をいろいろ調整すべき問題もあり、また基本的に話し合いをした上で、お互いに相互の意見の相違なりあるいは一致なり、そういう点をいま少し明らかにした上で、懸案のいろいろな問題を考えてみたい、こう思って、こういう気持でアメリカにも行ってみたい、こう思っておるわけであります。いっこういう問題をどういう形で取り上げるかということは、今ちょっと申し上げかねるのであります。
○松本(七)委員 これは時がたち過ぎますので、いつごろの委員会にどういう形で出すということを、むしろはっきり言ってもらわないと、その意思がないとさえ勘ぐりたくなる。アメリカにも行かれるのですから、これは安全保障委員会で議題にする前に、一応アメリカに行かれたときに、向うの首脳者とそのことの了解がなければ、なかなかおいそれと安全保障委員会で議題にすることすらむずかしいのじゃないかと思いますが、これを議題にする場合に、たとえば安全保障条約の条項の中に、日本にいるアメリカ軍の極東の安全のための出動ですね。この条項を安全保障条約から削るか、それでなかったら、この条項に基いて出動する場合にも必ず事前に日本政府の承認を得なければならぬ、そういうふうに制限を明確に加えるか。私はこの二つのいずれかをはっきりさせなければ、われわれの心配している問題は解消しないと思う。これは今まで長い間あなたとも質疑応答を繰り返した問題でありますが、もうそういう具体的なところをはっきりさせるかどうかというところにきていると思う。具体的にその問題を取り上げる御意思が、いつするかは別として、お持ち合せかどうか、もう一度聞いておきたい。
○藤山国務大臣 今どういう問題をどういう形で取り上げるかということは申し上げかねると思います。が、しかし、昨日も参議院の外務委員会でも申し上げましたように、日米間のいろいろな諸条約なり諸取りきめなり、その他の問題について、現在の日本の成長過程から見て、必ずしも適当でないものがあるように思います。これは私が外務大臣として一年間の経験――それは議会の論争を通じても、あるいは世間的ないろいろな論議を通じて見ても、感じる点もあります。そういう問題をやはり基本的にいろいろ話し合いをして、そうしてそれらの問題について腰を落ちつけて考えていかなければならぬと思うのでありまして、軽率に今どれとどれを取り上げるというようなことを申し上げかねるのであります。
○松本(七)委員 この今の二点はもうずっと論議し尽してきているのです。いつまで慎重に考えても切りのない問題です。今まであなたは長い間、日本にいるアメリカ軍の出動の場合には国連憲章に基いてやる、こういう御説明をされておった。しかしそれでは今の事態には不適当だから何らかもう少し具体的に前進させる必要がある、こういうふうに考えておられると理解していいのですか。
○藤山国務大臣 今どういうふうに考えているかということは申し上げかねます。しかしながら議会の論議を通じ、もしくは世間のいろいろな論議から見て、われわれも考えなければならぬところは多々あるということだけは申し上げておきたい。
○松本(七)委員 今までアメリカ軍の出動の際には国連憲章でやるんだ、こういう答弁をずっとやってこられた、それには変りがないのか。それともそれについても再考されるお気持があるのか。
○藤山国務大臣 今まで申したことをすぐに変えるということはございません。しかしながらこの間の両国の関係をさらに親善友好の上に打ち立てていく、また総理とアイクとの共同声明においての両国の願望に沿ったように、できるだけ将来問題の進展をはかっていきたいというような点から見まして、私どもはできるだけその線に沿って問題の解決をはかってみたい、こう思っております。
○松本(七)委員 これで終ります。
○櫻内委員長 暫時休憩いたします。
    午後一時二分休憩
     ――――◇―――――
    午後四時三十一分開議
○床次委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。
 委員長が所要のためお見えになりませんので、理事の私が委員長の職務を行います。
 まず日本への核兵器持込み禁止並びに核非武装に関する決議案を議題とし、提出者よりその趣旨説明を求めます。戸叶里子君。
    ―――――――――――――
○戸叶委員 私は提出者を代表して日本への核兵器持込み禁止並びに核非武装に関する決議案の趣旨弁明を試みんとするものであります。
 まず最初に案文を朗読いたします。
  本院は、核兵器の禁止、及びこれが実現に至る過程においての核実験の停止に関する本院屡次の決議に省み、またその後における国際情勢の推移、特に大国間におけるミサイル競争の激化と、他面東西首脳会談の気運を考慮し、四度原水爆を許さずとの日本国民の願望を達成するとともに、国際緊張の緩和に貢献するため、ここにあらためて次のごとく厳粛に宣言する。
  日本は、核兵器及び核ミサイルによる装備を永久に保持しないとともに、いかなる第三国によるとを問わず、これらの兵器を日本に持ち込むことを許さない。
  本院は、政府に対し本決議案の趣旨を達成するため、所要の措置をとることを要請する。
  右決議する。
 わが国は、昭和二十年広島や長崎でおそろしい原爆の被害を体験し、続いて二十九年にはビキニ島で行われた原爆実験に際して第五福龍丸が被害をこうむったのみでなく、久保山船長初め多くの犠牲者を出しました。実に私たちは三たびにわたる原水爆の唯一の被災国なのでございます。原水爆の被害は目に見えるもののみでなく、知らず知らずの間にじりじりといろいろな形で人間の身体を襲ってくるものであることは、幾多の実例が示すところであります。原爆をこうむった年ごろの娘さんが、ゆがんだ顔をしながらも恥かしさ、悲しさを乗り越えて、原水爆実験禁止の運動に挺身している姿を見るにつけ、また被爆の人妻が、生まれてくる子供が満足でないのではなかろうかとおそれて自殺した事件を聞くにつけ、また死を待つばかりの放射能を受けた人々が、何万人とベッドに横たわっている姿を見るにつけ、私たちは深く胸の痛みを覚えるのであります。(拍手)また一方国連の放射能科学委員会の報告によりますと、ことし一ぱいで核実験をやめても、大気上層に蓄積されている放射能の降下によって、白血病患者は多い年で四百人ないし二千人、遺伝的不具者は今後何年かの間に千五百人ないし十万人出るということであります。このようにその被害のいかに大きいかを考えていくと、私たちは核実験をなお行わんとする国々に対して深い憤りを感じるのみでなく、一体それらの国々には良心があるのであろうかと疑わざるを得ないのであります。(拍手)だからこそ私たちは衆参両議院におきまして二十九年、三十一年、さらに三十二年には参議院において、それぞれ原水爆の実験禁止を要望する決議を行い、政府を通して関係国に伝達し、善処方を要望したのであります。残念ながらまだ実験は続けられております。しかし最近世界の情勢も平和を望む諸国民の声が日に日に高まり、原水爆禁止、軍縮などの実現のため東西間の話し合いが熱望されてきております。今その現われの一つといたしまして、ジュネーヴでは東西の核実験探知の専門家会議が開かれ、国民はこれによって核実験の禁止も一歩前進することを期待しているのであります。私たち社会党は、院内のみならず、今後さらに一そう核実験禁止の国民運動を展開するとともに、世界の諸国に向っても積極的に呼びかけ、その実現を達しようとしております。それと同時にさらにこの運動の効果をあげるためには、わが国に核兵器の持ち込みを禁止し、核兵器及び核ミサイルによる装備を永久に保持してはなりません。ところが過ぐる国会におきまして、藤山外務大臣は、アメリカ軍は日本に核兵器を持ち込む条約上の権利を持っていると主張されているのでありまして、このことは非常に国民の不安を買っております。もし外相が御自分の職責を果されようとするならば、当然この国民の不安を除くような平和外交の方針がとられなくてはなりません。そのためにはまずアメリカとの間に、はっきりと核兵器は持ち込まないとの約束を取りきめるべきであります。私たちは幾たびかこの点を強調しましたが、政府は日米間は信頼が厚いから、そんな約束をする必要がないと答えて、積極的に持ち込みに反対の態度に出ないのは、一体どういうわけかと了解に苦しむものであります。もしそれほど日米間の信頼の度が深いならば、アメリカがあるときはエニウェトク島に、あるときはジョンストン島にと、核実験を行うといって一方的に公海の自由を制限した通告を行なったことに対し、日本から抗議を申し入れるならば、これを聞いてもらうくらいの自信があってもいいと思うのであります。政府のいう日米間の信頼は、私たちから見るならば全く信頼できないとしか思われません。さらに心配なのは、先ごろの日米委員会におきましてサイドワインダーの持ち込みも決定いたしました。これに核弾頭をつければ、すぐ核兵器になるのでありまして、このためにも核兵器の持ち込み禁止を強く打ち出しておくべきであります。この際核兵器を持ち込まない、核武装しないという国会の決議を通して、世界にはっきり日本の立場と平和に対する考え方を発表することこそ、最も必要であると思うのであります。非核武装地帯の設定という考え方は、ポーランドのラパッキー外相が、昨年十月二日国連第十二回総会の演説で提案したものであります。その内容は、東西両ドイツが核兵器の生産、貯蔵を禁止するならば、ポーランドも同じ措置をとるというものであります。
    〔床次委員長代理退席、委員長着席〕
これに対し、チェコ国連代表は直ちに賛成し、また東ドイツも賛成しました。ことしの一月十一日にソ連のブルガーニン首相は、デンマーク、ノルウェーの各首相あての書簡の中で、これらの二国にスェーデン、フィンランドを入れて、北欧非武装地帯設定の提案をいたしました。翌十二日にはグロムイコソ連外相は、訪ソ中のイタリア訪ソ使節団に対して、イタリア、アルバ二アの非核武装と、ソ連のアドリア海沿岸の安全保障とを提案いたしました。次いで一月十四日にはユーゴフ・ブルガリア首相が、バルカンに同様の地帯を設定することを提唱し、さらに二十一日には、ソ連は中東の非核武装化を提唱しました。アジア方面では、二月初めにホー・チミン北ヴェトナム主席が同様の構想を述べ、二十日にソ連が全朝鮮を非核武装化する提案をいたしました。その後西ドイツは議会におきまして三月二十五日、西ドイツ軍が核武装する決議を強引に可決したため、ラパッキー案も一頓挫いたしましたが、この案に対しましてはアメリカのジョージ・ケナン、ウォルター・リップマンのような有名な評論家でさえ、その検討を主張しているのであります。さらに西ドイツの社民党、イギリス労働党もこの案を中心に核武装反対の強い盛り上りを見せているのであります。
 私どもは北西太平洋アジア地域において核非武装地帯の実現の一日も早いことを望むものでありますが、その前にまず日本が国会の決議として非核武装宣言をすることが必要であります。日本の国民の意思が国会の決議として他に伝わったとき、その影響は大きく、平和を念願とする国々は、こぞってこの決議に賛意を表することは明らかであります。今もしこの決議案に反対するならば、悔いを千載に残すでありましょう。そして私たちの子孫から、なぜあのときに国会の決議として核非武装をはっきりしておかなかったかと恨まれるかもしれません。アメリカに対する気がねとか、あるいはまた面子などによってこの決議に反対することは、結局日本の国の将来の平和に対しての見通しの誤まりとなるでありましょう。日本に核兵器及び核ミサイルによる装備があるためにかえって他国を刺激し、日本が戦争の渦中に巻き込まれないとはだれも断言できません。現にけさの外電の伝うるところによりますと、チェコは西ドイツが核兵器を持ち込むならば核発射基地を置くといって、西ドイツの核兵器持ち込みに強い反撃を示しております。そのときこそ人類の最大の不幸であります。四たびの核被害をこうむらないためにも、進んでこの決議案に賛成していただきたいと思うのであります。私たちはこの決議案こそ当然本会議で決議されてよいと考えたのであります。ところが本会議に持ち込むことは話し合いがつかないそうであります。外務委員の方々は自民党の中でも良識派の方のみであり、国際情勢に対して正しい認識と判断を持たれた方々であります。従ってこの決議案に賛成されることによって、その良識を示されるとともに、反対される人がいるとするならば、その方々を説得され、次には本会議で決議されるよう御努力をしていただきたいと思うのでございます。そのときにこそ初めて日本の外交は、真から平和外交を望んでいるということが世界に理解してもらえると思うのであります。今こそそのときであります。この決議案に対して満場の賛成をお願いして、私の趣旨弁明にかえる次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
○櫻内委員長 次に日中両国間の緊急事態打開に関する決議案を議題とし、その趣旨説明を求めます。森島守人君。
○森島委員 私はここに提出者を代表いたしまして、ただいま議題となりました日中両国間の緊急事態打開に関する決議案の趣旨を御説明申し上げ、委員各位の御賛同をお願いいたしますとともに、政府においてもこれが趣旨を了とせられ、すみやかに適切なる措置を講ぜられんことを要望するものであります。
 まず決議案を朗読いたします。
   日中両国間の緊急事態打開に関する決議案
  本院は、政府が従来の態度を一新し、バンドン会議で決議された十原則を基調とする平和友好の精神に立脚して、日中両国間の第四次貿易協定の完全実施、漁業協定の継続、邦人帰国の実現並びに文化、技術の交流等の諸問題をすみやかに解決するよう積極的措置を講ずべきことを要請する。
  右決議する。
 申し上げるまでもなく、過ぐる長崎における中国国旗引きおろし事件を契機といたしまして、日本と中華人民共和国とは事実上経済断交という緊急事態に陥ったのでございます。従来われわれ日本国民は、国交未回復という悪条件の中で中華人民共和国との友好親善、経済、文化の交流発展になみなみならぬ努力を続けて参ったのであります。このことは過去の日本による帝国主義的侵略に対する中国の寛容な態度と相待って、両国の間における理解は近年著しく深まってきたのでございます。しかるに第四次日中貿易協定に対する日本政府の回答、長崎における中国の国旗引きおろし事件に対する日本政府の措置、ことに岸首相、藤山外相等の不用意な言説などに現われた政府の非友好的な態度は、中国人民の極度の憤激を招くところになったのであります。しかしながら事態の本質を究明いたしまするに、その原因はもっと根深いものであると考えざるを得ません。すなわち基本的には鳩山、石橋両内閣によって示されました外交の方針が、岸内閣によって再び逆転せしめられ、向米一辺倒、反共的態度の強化に向って推進されつつあるところに、深く根ざしておるものと断定せざるを得ないのであります。この岸内閣の外交の基本的態度は、岸首相のたび重なる言動にも露呈されておるのであります。台湾訪問、蒋介石総統との会談における大陸反攻を支持するかのごとき言動、台湾政府との間におけるひんぱんなる連携、特に第四次日中貿易協定に関する日本政府の回答が発せられました際、日本政府に加えられました台湾政府の圧力、アメリカを中心とする日本、台湾、韓国の三国間における最近の反共戦線的な動きなど、岸内閣はその成立当初から一貫してことさら反共的立場を明らかにして参ったのであります。従って今日の緊急事態は政治と経済とは別だとする岸内閣の安易にして浅薄なる考えによっては、一朝にして打開し得るものでないということを銘記しなければなりません。かくして営々十年にわたる辛苦のうちに民間の努力によって築き上げられました日中間の経済交流は、全面的に停止するに至り、加えて文化の交流と両国国民の往来も停滞するという憂うべき事態を招くに至ったのであります。このことは単に経済問題のみにとどまらず、日中両国人民の友好と、さらにはアジアの平和にとってきわめて憂慮すべき結果を招来しつつあるのであります。わが党は日中両国関係を規律する基本的方針といたしましては、両国間における国交の回復を最善の政策と信じ、これを提唱している次第でありますが、保守党政府によるその実現の不可能なことを承知しております中国側においては、決して中華人民共和国の即時承認とか、日本の外交方針の即時全面的変更を要求しているわけではなく、日中両国が相互の立場を理解し、尊重し、かつ経済的、文化的交流の発展を促進するという態度に出ておるのであります。政府は、人口六億をこそる中華人民共和国が、すでに確固不動の権力を樹立しておる事実と、日中両国間において経済発展の可能性が十分にある事実とを、すなおに認めなければなりません。そして政府の中国に対する外交方針は、中華人民共和国政府を、中国を支配する唯一の政府として率直に認める基本的態度を指向しつつ、当面する第四次貿易協定の完全実施、漁業協定の継続、邦人帰国の実現並びに文化、技術の交流等の諸問題のすみやかな打開のため、積極的な措置を講ずることが今日特に要請されるのであります。社会党はつとにかかる方針を堅持し、再三再四政府にその反省を求めて参ったのであります。
 要するに、今日のこの不幸な事態は、従来の岸内閣の中国に対する重大な認識不足に起因して惹起されたものでありますが、政府は今こそ、認識を新たにする絶好の機会に際会しておるのであります。すでに国際的な対共産圏輸出制限の措置が、すでに一部緩和されさらに大幅に緩和されようとしている今日、将来の飛躍的拡大が予想される日中間の貿易を、漫然現状のままに放任することは、わが国民の間にほうはいとして起っておる国民的要望を裏切るのみならず、国家的損失もきわめて大なりといわねばなりません。
 また、政府が真に平和と善隣友好の外交に立脚せんとするならば、またアジアの恒久的平和を念願するならば、まずアジアにおいて国際的緊張を緩和し、排除するため最善を尽し、その真意を関係諸国に明示しなければなりません。このことはすなわちバンドン精神を尊重し、バンドン会議で採択された平和十原則を名実ともに実行することにほかなりません。バンドン会議における決議には日本政府も参加し、責任の一半を負っておるのでありますが、他方中華人民共和国政府もまたこの決議の支持を明確にいたしておるのであります。従って、この際政府が従来の態度を一新し、バンドン会議で決議された十原則を基調とする平和、友好、互恵、平等の精神に立脚して、当面する日中間の諸問題に適切な措置を講じ、もって両国間の緊急事態を早急に打開し、ひいては国交の正常化へと前進することを強く要望いたしまして、簡単ながら本決議案の趣旨説明にかえる次第でございます。
○櫻内委員長 本日はこれにて散会いたします。
    午後四時五十四分散会