第029回国会 外務委員会 第9号
昭和三十三年七月二十八日(月曜日)
    午前十時四十四分開議
 出席委員
   委員長 櫻内 義雄君
   理事 岩本 信行君 理事 宇都宮徳馬君
   理事 佐々木盛雄君 理事 床次 徳二君
   理事 山村新治郎君 理事 岡田 春夫君
   理事 穗積 七郎君 理事 松本 七郎君
      相川 勝六君    川崎 秀二君
      清瀬 一郎君    小林 絹治君
      千葉 三郎君    中曽根康弘君
      福田 篤泰君    古川 丈吉君
      松田竹千代君    森下 國雄君
      大西 正道君    田中 稔男君
      戸叶 里子君    帆足  計君
      森島 守人君    八百板 正君
 出席国務大臣
        外 務 大 臣 藤山愛一郎君
 委員外の出席者
        外務事務官
        (アジア局長) 板垣  修君
        外務事務官
        (アメリカ局
        長)      森  治樹君
        外務事務官
        (条約局長)  高橋 通敏君
        外務事務官
        (国際連合局
        長)      宮崎  章君
        専  門  員 佐藤 敏人君
    ―――――――――――――
七月二十八日
 委員池田正之輔君、北澤直吉君、石田博英君及
 び松山義雄君辞任につき、その補欠として相川
 勝六君、清瀬一郎君、古川丈吉君及び川崎秀二
 君が議長の指名で委員に選任された。
同日
 委員相川勝六君及び清瀬一郎君辞任につき、そ
 の補欠として池田正之輔君及び北澤直吉君が議
 長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
七月十九日
  次の委員会開会要求書が提出された。
   外務委員会開会要求書
 中東問題及びこれに関連する国連問題の審議の
 ため至急委員会を開会致されたく、衆議院規則
 第六十七条第二項の規定により左記連名にて要
 求致します。
  昭和三十三年七月十九日
   外務委員長櫻内義雄殿
                 岡田 春夫
                 穗積 七郎
                 松本 七郎
                 大西 正道
                 田中 稔男
                 高田 富之
                 戸叶 里子
                 帆足  計
                 森島 守人
                 八百板 正
                 和田 博雄
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 国際情勢等に関する件
     ――――◇―――――
○櫻内委員長 これより会議を開きます。
 国際情勢等に関する件について調査を進めます。この際外務大臣より発言を求められておりますので、これを許します。藤山外務大臣。
○藤山国務大臣 休会中に起っております一番大きな問題として、レバノン、中近東の問題について、一応政府のとりました処置につきまして、御報告申し上げたいと思います。七月十四日にイラクに起りました革命を契機といたしまして、急激に緊張を増したレバノン及びヨルダンにおける情勢に関し、安全保障理事会等を通じ、わが国がとった態度を簡単に御説明申し上げたいと存じます。
 レバノン問題は、アラブ連合共和国からの人員、武器等の不法浸透により、内政干渉を受けているというレバノンの安保理事会に対する提訴以来、世界の注目を集めておったのでありまするが、安保理事会は六月十一日、スエーデンの提案に基きまして、これらの浸透が行われないことを確保するため、国連監察団をレバノンに派遣することを決議いたしまして事態の改善をはかったのであります。わが国は、レバノンにおける騒擾が果して外部からの干渉によるものであるかいなかにつきましては、調査を要するという見解をとっておるのでありまして、前述のような不法浸透の事実が立証されない段階にあっては、監察団の派遣が最も現実的な解決方法と認め、これに賛成いたしたのであります。事務総長は、直ちにこの決議を実施するため現地におもむき、約百名からなる軍人をレバノン国境に配置し、飛行機、車両等をも利用し、国境地帯を監察するための措置をとったのであります。
 七月十四日イラクに起きた革命を契機といたしまして、米国は即日レバノン問題の再審議のため、安保理事会の緊急集会を要請いたしました。翌十五日にはレバノン政府の要請に基き、レバノンの主権と領土保全を擁護するため、及び在留米国人の保護のため、海兵隊をレバノンに上陸させる措置をとったのであります。この派兵が今回の理事会における最も重要な問題であったことは、御承知の通りであります。
 そもそもわが国は、中近東諸国のアラブ・ナショナリズムについては、それが健全な民族感情の発露である限り、これに深い同情と理解とを持つべきものと考えております。従いまして、かかる民族感情を無視し、またはこれを抑圧するごとき政策は、これら諸国を自由諸国群から共産勢力に追いやる結果になることをおそれるのであります。その意味で大国の武力による介入は、いかにそれがやむを得ぬものであっても、長い目で見て果して当を得た政策であるやいなや疑問とするところであります。特に米国のレバノン派兵は、安保理事会がすでにレバノン問題解決のため前述のような措置をとっていた最中であっただけに、問題であったと考えられます。かかる観点から、わが国としては国連における関係国との協力により、一日も早く事態の平和的収拾に対する適切な処置が講ぜられ、レバノンの独立と領土保全が確保せられるとともに、米軍の撤退を見るべき運びとなるよう希望し、かつこれに努力していきたい旨所信を明らかにいたしたわけでございます。
 今回の安保理事会ではこの事態に対処しまして、国連軍を派遣する旨の米国決議案、米軍の即時撤退を要求するソ連決議案、及び国連監察団の機能を一時停止する旨のスエーデン決議案が提出されたのであります。米国決議案は、新たに国連軍を創設しこれが派遣を予想するもので、わが国の考えと必ずしも一致するものではありませんでしたが、ソ連決議案及びスエーデン決議案と異なり、米軍撤退を可能ならしめる現実的解決策を含んでいるのでありますから、これに賛成したものであります。賛成に当って、米軍の派兵自体は望ましくないことを明らかにし、かつ同決議案がアラブ連合共和国からの不法浸透の存在を前提としている点、及びわが国の国連軍への参加について、それぞれ態度を留保いたしたのであります。この留保は、前者はレバノンの騒擾が果して外部からの干渉によるものであるかいなかは明らかでないという観点に基くものであります。後者は、わが国としては国連軍が成立しても、これに参加し得ないとの立場に基くものであります。
 ソ連決議案は米軍の即時撤退を要求しております。撤退それ自体にはわが国も賛成でありますが、武力介入の適否は別として、これを直ちに憲章違反として非難している点については疑問があります。レバノンの情勢を改善する措置に何ら触れておりません。問題を建設的に解決する面に欠けていたので棄権いたしたのであります。
 スエーデン決議案は、米国の派兵により事態が変ったのにかんがみまして、国連監察団の行動を当分停止するという趣旨のものであったわけであります。わが国としてスエーデンの立場は十分了解し得るところではありますが、かかる事態に直面してこそ国連が問題解決に積極的に努力すべきであって、事態を一時的にせよ国連の手から離すことは、安保理事会としてその責任を果すゆえんにあらずとの立場から、これに反対せざるを得なかったのであります。
 わが国は右三決議案について、いずれの決議案も可決される可能性のないことを察知いたしまして、何とかして安保理事会として有効な措置をとり、問題の国連を通ずる解決により国連の権威を保つように努力いたしますことは、安保理事会のメンバーとして当然の責務であるとの信念に基きまして、わが国独自の決議案として、国連監察団を増強することによって米軍の撤退を可能にする趣旨の決議案を提出することに決定いたしたのであります。
 わが国の決議案は、現に活躍中の監察団の強化をはかるものであります。国連軍のごときものの設立を予想はいたしておりません。これは外部からの不法浸透の事実は未確定であるとの国連事務総長の立場を支持するわが国としては、当然のことであります。またわが決議案は、米軍の撤退を可能ならしめるという目的をはっきり規定しております。この二点は米国決議案と本質的に異なる点であり、米案支持に当って留保した点を決議案の形に整えるとともに、三国案がすべて否決された事態においてなおかつ理事会メンバー諸国が合意し得る点をまとめ上げたものであります。
 前記三決議案は、いずれも予想通り否決されました。わが国はわが決議案を何とかして可決させる以外に、問題を解決して安保理事会の権威を保つ方法がないことを信じまして、まずスエーデンをしてわが決議案に賛成させるための努力を行なったのであります。すなわちスエーデンがとっていた立場、すなわち米軍のレバノン介入により国連監察団はその使命を果し得なくなったとの主張をわが方案と両立せしめるため、スエーデンの修正意見を入れてわが決議案の本文第一項を削除いたすとともに、ソ連に対し、スエーデンを含みソ連以外の全理事国がわが方案を支持しておる新情勢のもとに、わが国の真意を説明いたしますとともに、もし賛成が困難ならば棄権してほしい旨を要請いたしたのであります。これらの努力にもかかわりませず、わが決議案がソ連の反対によって否決し去られたことは、まことに遺憾であったと思います。
 しかし米案に棄権したスエーデンを含み、ソ連以外の全理事国が賛成したほか、理事会外でインド、アラブ連合共和国等がわが案を支持してくれたことは、米国の派兵に反対の国も、わが案の趣旨には賛成したことを示すものでありまして、米国決議案と本質的に異なるわが決議案の意義が理解されたと考えるのであります。
 なおわが決議案表決の直前、ソ連はこれに対する修正案を提出いたしました。監察団の任務を限定するほか、米国の派兵を非難して、その即時撤退を要求する趣旨の規定を加えていましたが、前回のソ連案同様否決されたわけであります。わが国は、この修正案の趣旨がソ連提出決議案と全く同様のものであると認め、同決議案の場合と同様、棄権をいたしたのであります。
 このように日本としては、安保理事会のメンバーとしての責任から、中東問題の平和的解決のため少しでも役立ちたいと考え、努力したわけであります。ソ連の拒否権行使によりこの努力が結実しなかったのは、まことに残念ではありますが、しかし安保理事会の他の全員が日本案を支持してくれたことは、わが国の外交担当者として、まことに喜ばしいところでありました。これらの国々の協力、また特にハマーショルド事務総長の協力に謝意を表したいと思うのであります。日本案は否決されましたとはいえ、将来の時局収拾に必ず役立つことあるべしと信じております。この点は世界各国の言論機関が、広くわが方案の意義とわが国の努力に対し賛辞を呈していることより見るも明らかであると思います。
 今後のことにつきましては、まだ情勢もはっきりしないので、今具体的な方針を言う段階ではないと思いますが、中東問題ができるだけすみやかに、平和的に解決されるよう切望する日本といたしましては、この目的に役立つならば、適当な方法で今後ともできるだけの努力をいたしたいと思います。
 なお英国は七月十六日、ヨルダン政府の要請に基きまして、その領土保全と独立を擁護するため、ヨルダンに派兵するとともに、右派兵措置を国連に通告いたし、安保理事会がヨルダンの正統政府を外部からの脅威から擁護するための措置をとるならば、派兵をやめると声明をいたしました。一方ヨルダン政府は、右派兵と同時に、アラブ連合共和国のヨルダンに対する内政干渉に関する訴えを、安保理事会に提訴いたしております。
 わが国は米国のレバノン派兵と同様の理由により、英国の派兵も望ましくないと考えまするが、国連としてとるべき措置に関しましては、ヨルダンと英国との主張を十分聞いた上で検討することとし、前記わが決議案でも、とりあえずレバノン問題のみを取り扱うことにいたしたのであります。以上御報告申し上げます。
○櫻内委員長 質疑の通告がありますので、順次これを許します。松本七郎君。
○松本(七)委員 ただいま外務大臣から中東問題についての日本の態度、これまでとったいきさつの御説明があったわけでございますが、この中東問題は日本の外交の根本に触れる非常に重大な問題であり、特に岸内閣が今まで唱えて参りました外交三原則のかなえの軽重を問うほどの具体的な問題であったと思うのであります。そういう観点から、この問題に対する政府のとった態度を見て参りますると、非常に根本的な重要な問題について、われわれ納得できないところが多分にあるわけであります。今の御説明の中にもちょっとありましたけれども、アメリカの派兵が憲章違反であるかどうかということについてはなお疑いがある、こういうふうな言葉の端にも、政府がこれをどのような態度で見ておるかということが、すでにうかがわれるのでございますが、私どもはやはりこのアメリカの派兵というものは憲章の違反であるし、それから岸内閣の唱えておる国連中心主義にもこれは全く反するものである、こういう観点から、これらの問題について少し突っ込んで御質問をしてみたいと思うのでございます。
 まず第一に、中近東における最近の民族主義運動の勃興、これをどのように評価するかということについては、在外公館の大使たちも相当高くこれを評価しておったように、われわれは聞いておったのであります。特に最近行われました五大使の会議、これは従来にない内容の充実したものであったように、私も外部から観察しておったのであります。こういう会議が開かれることは非常にけっこうなことだと思って喜んでおったのでございまするが、この大使会議の結論から見ましても、レバノンの問題は内政問題であって、そうして外部からの侵略の可能性というようなもの、干渉というものはないのだ、こういう結論に達したと聞いておるのでございます。また国連の正式機関である、今御指摘になった監査団、これの報告によりましても、やはり外部からの干渉なり侵略を認めておらない。またハマーショルド事務総長の報告にも、はっきりと干渉のないことがうたわれておるのであります。そういう状態にあるにかかわらず、しかも日本の政府当局は、米国の派兵が起った直後にはこの派兵を非難するような声明を出されておりながら、いよいよ具体的にこの問題が討議されて、米国が国連の警察軍を派遣しようという案を出した場合には、条件付ではあったけれども、原則的にこれに日本が賛成したということについて、果していかなる理由をもってこの決議案に日本が賛成したかということが、ただいまの御説明でも十分なされていないのでございますが、まずこの点を明快にしていただきたいのでございます。
○藤山国務大臣 アラブ・ナショナリズムに対しては、われわれ深い同情をもって見ておるわけであります。アラブ・ナショナリズムが共産主義と同意語だとはわれわれ考えておりません。そしてアラブ・ナショナリズムが健全に発達していくことを希望いたしておるのであります。ゆがめられた形なり、あるいはアラブ・ナショナリズム自体がソ連共産主義に影響を受け、あるいはそこに走るということは、われわれ自由主義陣営の者として十分な注意をもって見て参らなければならぬと思うのです。と申しますことは、やはりアラブ・ナショナリズムというものに対してあたたかい同情の目をもって見ていかなければならない。これは日本の一貫した方針であります。今回レバノンに問題が起りましたときに、果して外部からの侵略があったかないかという問題については、最終的にまだ決定がいたされておらぬ。アメリカは侵略があったということを言っております。またソ連はないということを言っております。それは六月十一日の安保理事会における国境監察団の報道によって最終的に安保理事会が決定する問題だと思います。むろん過渡的にハマーショルド事務総長が若干の報告をいたしておりますけれども、それは、まだ御承知のように、国境におきまする監察団の人員も足りない、なお三分の一しか行動範囲がないというような事実から申して、必ずしも全部決定をいたす時期ではなかったかと思います。むろんハマーショルド報告というものが安保理事会に出まして、十分な討議の後にそれがきめらるべき問題でありまして、われわれとしてはそういう態度をとっております。従って、侵犯があったかないかということについては、疑問を持つということが当然われわれの態度であると思うのであります。そういう意味におきまして、われわれは一貫して態度を進めてきたわけであります。ただ、現実の事態が起りまして、これをいたずらにお互いに非難しておりましても問題は解決いたしません。個人のけんかでもそうであります。お互いにいい、悪いだけを言っておったんでは解決しないのであります。具体的な問題としてこれが解決の方途をはかるということが一歩でも進められなければならぬと思います。われわれは、そういう意味におきまして、とにかくアメリカが兵隊を出しました。これを早く引き揚げて、そうして解決する方途がありますれば、各国がそれに賛成いたしますならば、その努力をいたすことも当然なことでありまして、われわれとしては、留保はつけましたものの、国連警察軍ができるならば、それはアメリカ出兵の跡始末の一つの方策として賛成をいたしたわけであります。そういう意味におきまして、われわれは首尾一貫しておると存じております。
○松本(七)委員 今外務大臣は、最終的決定はまだされておらなかったのだ、ハマーショルド事務総長なんかは暫定的な中間報告である、こういうことを言われたのですが、最終的決定が安全保障理事会でなされておらないうちに、警察軍の派遣だとか、つまり実力による行動を最終的決定がなされておらない前に認めるということが、果して国連憲章を尊重する行き方であるか、国連中心主義に違反しないかどうか、最終決定がなされておらないからこそ、あくまでも安保理事会の十分な討議とその結論を待って、さてしからばどうするかということにならなければならぬ。その結論がないうちに警察軍を出すということに賛成することは、これは私は重大な国連憲章違反であり、また国連中心主義に反する行為だと思うのですが、この点もう少し十分な説明を聞かなければ納得できない。
○藤山国務大臣 国連におきます監察団の報告によってそれらの問題が一日も早く決定されることの望ましいことは当然のことであります。われわれも、そういう意味において、アメリカが出兵したことを必ずしも適当だとは考えておりません。しかしながら、出兵したという事態を一日も早く解決いたしますことが必要であるとすれば、何らかの形でもって、具体的な方法によってアメリカが撤兵をするような方向に考えて参らなければならぬと思うのでありまして、われわれの用意いたしました監察団の強化もそうであります。われわれとしては、そういう意味において、アメリカが警察軍を出すことによってもし問題が解決するならば、それは一つの方法である、こういうふうに考えております。
○松本(七)委員 国連警察軍ということをばかに簡単に考えておるようですけれども、それでは日本政府のとった態度からいえば、安保理事会の結論の出ないうちに実力による行動を――アメリカは、自分の兵隊が出ていった、今度は肩がわりさせるために、国連警察軍という、国連というみのに隠れて、自分の行為を結果から言えば合理化しようということになるのですけれども、あくまでも国連中心主義と国連憲章というものを尊重する建前に立つ以上は、その警察軍を派遣するということが、あるいはそれの前提になっておるアメリカ軍の派遣ということが、少くとももう侵略の危険が迫っておる、そういう中間報告が事務総長からなされているならまだ考える余地があるとしても、中間報告はその危険がないと言っている。そういう状態にあってこのアメリカの決議案に賛成したということは、これはもう明らかに国連憲章の違反といわなければなりません。一体外務大臣は、そのアメリカ軍が武力介入したことはけっこうなことではないけれども、そういう事実があった以上は、これを撤退する便法としてあの決議案に賛成したと言われるけれども、それではアメリカ軍が派遣されたこと自体は一体法的に不当であると考えられるか、それとも国連憲章違反ではないと考えるか、その点を明らかにしていただきたい。
○藤山国務大臣 アメリカ軍が派遣されたのには、アメリカ、ソ連二つの理由を言っております。一つは、国連憲章第五十一条の問題であります。国連憲章第五十一条の侵略があったかないかという問題でありますが、これにつきましては、アメリカとソ連との解釈が必ずしも一致いたしておりません。武力による侵略以上に、他のものによっても侵略行為が行われるという解釈もアメリカがいたしておるわけでありますが、しかし、この問題は、やはり結局どういう内容によって行われるかという内容の問題だと思います。第二は、もう一つは、合法政府の要請によって出兵をするということ。合法政府によります出兵といいますことは、主権者によります出兵の要請ということは、国際法で認められているところであります。従って、合法政府が何らかの形で出兵を要請した場合に、これを非合法だと言うわけにはいかぬ点もございます。でありますから、こういう法律問題についてはやはり今後十分現状の上に立って論議をしなければならぬのでありまして、われわれとしては、そういう点について今後の解釈その他によって問題を決定いたしていきたい、こう考えているわけであります。
○松本(七)委員 国際法上、合法政府が武力援助を要請した場合にはこれが認められるということはわかり切ったことである。けれども、それだけで放置しておったんでは、国際法が認められているからそれでよいということでは、国際平和が守られないからこそ国際連合もできておる。そして国際連合の憲章というものもちゃんとあるわけなんです。ですからわれわれが平和を守るためには国際法に認められておることは何でもやっていいというわけにはいかない。やはり国連憲章というものを守っていこうということでなければならないわけなんです。あなた方も国連中心主義といわれる以上は、国連憲章をどこまでも守っていくという精神が貫かれておったと思う。その具体的な問題が今度中東で起きたのですから、いかにしてこのアメリカの派兵が国連憲章に照らして正当であるかどうか、ただ国際法一般に照らしてこれがどうの、こうのと言うのでなしに、具体的に国連憲章に照らして正当であるか間違いであるかということを、いやしくも理事国の一員となってこの討議に参加しておる日本としては、この点は明確にして臨まなければならぬことだと思うのです。これからその解釈を勉強しよう、解釈を研究しようというのではもうおそ過ぎるのです。間に合いませんよ。今まですでに行動をとった以上は、その行動をとる前提として、この国連憲章に照らしてみて、アメリカの行動が正か邪かということについては、はっきりした判断がなければならぬはずです。この点を伺っておるのです。
○藤山国務大臣 国連憲章第五十一条の侵略という解釈につきましては、まだその武力という問題についてあるいはどこまで拡大解釈をするかいなかという、国連憲章を守るにいたしましても、その問題は非常に大きな問題だと思います。従ってこれらの問題については今後国連内でもって十分討議し研究もすべき問題だと思うのでありまして、軽々に判断をいたすべきものではないと思います。
○松本(七)委員 憲章五十一条では、「武力攻撃が発生した場合には」こう書いてあるのです。これをアメリカの方はしきりに間接侵略という概念でもって拡大解釈しようというような動きがあるようですけれども、日本がもしこれにまでそういうふうな拡大解釈をする余地を残しておると――今の御答弁によるとはっきりしたことは、今後の研究に待つというような御答弁ですが、それによればその間接侵略の概念もこの中に含める可能性を私はにおわしておると思うのです。もしそういう態度で今後これに対処されようというのであれば、私はアジア・アラブ諸国の信頼はますます失う結果になるだろう、これは非常に大切な点でございます。一体この条文の解釈を外務大臣はどういうようにされておるのですか。いやしくも国連憲章に基いて平和を守っていこう、アジアの一員にもなろう、国連中心主義で外交をやろう、こううたっておられる以上は、具体的な事件に際会して、この国連憲章の解釈くらいは明確にしておかなければ責任は果せない。この際はっきりあなた自身の現在の解釈を伺いたい。
○藤山国務大臣 国連憲章五十一条にあります武力侵略という問題について、今日の事態におきまして各国のそれぞれ意見がございます。われわれにおきましてもこれは重要な問題でありますから、むろん直接武力侵略以外にどの程度のものまでが拡大されるかということは、考えて参らなければならぬ問題だと思うのでありまして、その点は松本君と意見が若干違うところかと思います。
○松本(七)委員 この点を不明確にしたまましかもそれが明確になるまでは、合法政府が要求すれば武力介入も認められるというような前提でこれに対処しておるということになりますと、これは間もなく日本にも非常に関係してくると思う。これは私どもは今不幸にして安保条約というものでまだ縛られておりますけれども、これがなくなってアメリカ軍の駐留がなくなったとしましても、もしも台湾水域でごたごたが起り、これは日本に対する間接侵略になる可能性もある、またその危険が迫っておる、こういう解釈をもしアメリカがし、また日本の合法政府がそういう解釈をしてアメリカの援助を要請した場合、せっかく安保条約がなくなり、駐留軍がいなくなっても、いざという場合には同じような危険にさらされることになるわけです。ですからこういった問題はただ中東自体ばかりの問題ではない。こういう大事なことを、世界の平和か戦争かというきわめて重大な事件が起ったこの際に、まだそれに対する明快な態度を打ち出せないでは、あなたの今まで唱えておられた国連中心主義などというものは、全くの看板にすぎない、から文句であると言わなければならない。一体この解釈はいつまでに結論を出すお考えですか。
○藤山国務大臣 私ただいま申し上げました通り、私の方は国連中心の外交を展開し、平和を守りたいと思っております。従ってその意味においてもこういう問題には軽々に解釈をいたすべきではないと考えております。やはり世界の各国の意向も聞き、十分みなが合意し得るような方法において問題が解釈されていかなければらなぬ。国連中心主義でやります以上は、独断的な解釈をなすべきではないと考えております。
○松本(七)委員 この問題はさらに明確に、現在の政府の解釈を後に要求いたしまするが、そういう態度をとった裏には、今度の事件に対処する場合に、日本政府はもう少し深刻に事態を考えた結果ではなかろうかと思う節がある。それはもちろん今度の中東事件というものは、大戦争に拡大する危険をはらんだ非常に重大な事件である。それだからこそいざ戦争という場合のことを考慮に入れるのは当然なことではございましょうけれども、聞くところによると最初あのアメリカの派兵ということを非常に強く非難し、そしてそのこと自体を攻撃する空気が相当濃厚であったのが、このアメリカの警察軍派遣という決議案に賛成するに至った、その間における外務省首脳部の考え方の移り変り、これを付度してみますと、やはりそれはいざ米ソの戦争になったときのことも考えてみなければならないのではなかろうか、そういうところまで考えた結果、あのような態度になったと私どもは聞いておる。と申しますのは、これが万一不幸にして米ソの戦争にまで拡大するような場合には、これは日本としてはやはり自由主義陣営の一員としてアメリカを支援する以外に道がないのだ。従ってここでアメリカの決議案に反対、あるいはソ連の決議案、アメリカ決議案両方に棄権するというような態度でいて、それでアラブ諸国の民族主義に同情し、理解し、これを支持するような態度を一たんとっておきながら、いざ戦争になってアメリカを支持するというようなことでは、これは一貫しない。それこそ大きなよろめき外交になる。従ってその点を考えて今から少し不満であるけれども、アメリカの警察軍派遣の決議案には賛成しておこうというような意見が、だんだん外務省内に強くなってきた結果、こういう訓命を出したとわれわれは聞いておるのでございますが、その移り変り、考え方の変遷、それは一体どういうところに一番大きな原因があるのか、その点を大臣からお伺いしたい。
○藤山国務大臣 こうした問題が起りましたときに、日本の態度をきめますためにいろいろ討議をいたしますことは当然なことだと思います。討議の過程においていろいろな議論のあったことも当然であります。しかしながら最終的結論は、私が先ほどから申し上げておりましたような私の考え方で一貫して参ったわけであります。
○松本(七)委員 政府の今までとってきた態度を見ますと、結局、結果においてはアメリカが武力介入をやった、その非難がごうごうと起ってきたので、これを国際連合の機関の決定によった行動によって合理化しよう、それを日本が支持したということになっておるわけであります。もしこれを許しますならば、この理事会の決定は、これは拒否権もあることだし、なかなかそう簡単に結論は出ない。そういう間に行動を起して、そうしてアメリカは武力によって国連の決定を強制したということに形においてはなるわけです。従って今の日本が国連警察軍の派遣を支持したということは、このこと一つを見ても、あなたの言われる――藤山さんが外務大臣になりましたからアジアの一員というものが加わってきた。岸さんは今までしばしば国連中心主義とそれから自由主義陣営との協調ということを言われてきた。それに、あなたが外務大臣になられてアジアの一員ということが加わって三原則になったわけでございますけれども、今のような結果になっておる。アメリカの行動を日本が支持したということは、これは国連中心主義の違反であると思う。いざというときには、こういう大事な戦争か平和かの分れ目になるとアメリカを支持する。そうして国連憲章の明確な解釈もここに打ち出すことすらできない。こういう態度でいては、アジア・アラブの諸国がこれを客観的にながめた場合にはどうなるか、アジアの一員というものもから文句だ、国連中心主義といっても文句だけであって、いざというときにはアメリカと一体になって行動するのだ、こういうことを世界にはっきり暴露した今度の事件であると私は思うのです。従って、今後この三原則というものを具体的にほんとうに適用していく意思があるのなら、もう少しアジア・アラブの諸国が納得できるような行動を国連においても具体的にやる必要があると思うのです。もうすでに、いろいろな論評を見ましても、日本の決議案というものはアメリカ決議案の焼き直しにすぎない、こういう意見も出てきておる。先ほどから米ソの間に憲章五十一条の解釈についても両方ある、こう言われますけれども、これが今度の国連における首脳会談あたりでおそらくはっきりまた対立してくるでございましょう。そういうときに日本が明確な解釈をもって臨まなければ、もう今すでに首脳会談も間近に迫っておる、そういうときに依然としてこれは先の問題で、とにかくこの場を糊塗して過ごすんだというようにじんぜん日を過しておったのでは、私はアジア・アラブ諸国の信頼を得ることはできないと思う。今後国連におけるいろいろな動きに対しては、日本政府は一体どう対処されようとしておるのか。まず第一には、この首脳会談がだいぶ空気が盛り上って実現できそうにはなっておりますけれども、米英仏の間にも多少ニュアンスの違いもある、意見の違いもある。私どもの見るところでは、アメリカはできるだけこれをいろいろな理由でもって遷延させようとしておるのではないかと疑われる節もあるのでございますけれども、日本としてはやはりアメリカ案を支持した建前からも、できるだけアメリカにこの首脳会談を急速に開かせるように側面から勧告するぐらいのことはなすべきだと思いますが、これはただ外部から傍観しておるだけにとどまるものでしょうか。
○藤山国務大臣 今回の日本がとりまして、一時も早く中近東の事態を平和的に安全に解決したいという努力に対しては、決してアラブ諸国が日本に対して不信の感情を持っておるとは私は思っておりません。今後行われます首脳会談等につきましても、われわれは早くそういう状態になりまして、そして問題が首脳部の間で解決されて、一日も早く中近東の平和が到来することを希望いたしておるわけでありますから、従ってわれわれとしてはそういう意思を常に持って各国に接触をいたしておるわけで、今日まででも、私どもは日本の立場から、米国等に対しましてもその他の国に対しましても、アラブのいわゆるナショナリズムに対する気持というものを十分説明をしておるわけであります。そういうものをむしろ向うに追いやらないことこそ、自由主義陣営の非常な力強い将来ができるのだということを、私はアメリカ初め各国に申しておるのでありまして、その意味におきまして、アラブ諸国はわれわれの努力を多としてくれておると存じております。
○松本(七)委員 アメリカが至急に首脳会談を国連安保理事会のワク内で開くように勧告するなり、日本としての意思表示をされますかというのです。
○藤山国務大臣 日本といたしましては、安保理事会が一応問題の解決をできないような状態になりました後に、緊急総会を開くかあるいはソ連が主張したような首脳会談を開くかという問題が起って参ります。いずれについても、われわれとしては平和的解決がすみやかに起ることを希望いたしておるのでありまして、日本としては各国に対して首脳会談ができるものならばできるだけ早くやってもらいたい、そうして問題の解決をはかってもらいたい、またそういうことが不可能ならば、あるいは緊急総会に対してもわれわれは十分考えなければならないと思っております。
○松本(七)委員 そんなばく然たる気持を聞いておるのではないのです。その気持を持って臨まれる場合に、アメリカに対してソ連の提案がきっかけになって、イギリスからまたああいう提案があって、今首脳会談が安保理事会のワクで開かれることについてのいろいろの書簡のやりとりなんかが起っておるのだから、その際日本の政府として、正式にアメリカ政府に対して、首脳会談はぜひ早くやれということを勧告される意思があるかと聞いているのです。
○藤山国務大臣 私どもはただいま申し上げましたように、アメリカに対してもイギリスに対しても、正常外交ルートを通じて、日本は早くこういうものを開いてもらいたい、そして問題を解決しなければ、安保理事会がとにかく一応行き詰まったということで、そういう意思の表明はいたしております。
○松本(七)委員 それから緊急総会はどうなるか、まだ先のことになってくるでございましょうけれども、その間におそらくインドだとかアラブ諸国が、いかなる形にしろソ連の提案の理事会のワクの中での首脳会談に出るか、この可能性も十分あるわけです。緊急総会になればもちろん出てくるということになりますが、こういうときに、今後はもう少しインドなりあるいはアラブ諸国と、具体的なこういう国々と提携して、日本一人でどっちつかずの立場をとるというようなことをかなぐり捨てて、はっきりインドなりアラブ諸国と提携して国連内でも行動するということが、これから非常に必要になってくるのではないかと思うのですが、その心がまえを伺っておきたい。
○藤山国務大臣 アラブ諸国との連絡は、昨年日本が国連に入って以来、AAクループの会議が国連の中にございます、その中に松平代表は常時出席をいたしておりますので、アラブ諸国との連絡というものは十分に私はとれておると思っております。また今回の問題につきましても、先ほど申し上げましたように、インド等とは十分話し合いをいたしましたし、またインドは日本案を支持して、できるだけソ連に話もしてやろうという好意的態度をとっておりますことも申し上げた通りであります。
○松本(七)委員 今後理事国の常任代表の首脳会談についてのいろいろの打ち合せが始まるわけですけれども、そういう動きがある以前に、いよいよ首脳会談なり緊急総会が始まる前に、日本政府としても早くイラクの新政権を承認するというような態度に出れば、アラブ諸国に非常にいい印象を与えると私は思うのでございますが、これらについてどういう考えでお臨みでしょうか。
○藤山国務大臣 イラクが革命を起しましてから一週間は音信がございませんでした。ところが、一週間くらいたちましてから、とまっておりました電報が全部正確に配達されて、第一報から参りました。その後の状態は比較的安静を続けておるようであります。われわれとしては、将来の問題をどう考えるかという意味において、石黒公使にも訓令を発しまして、十分イラクの現在の実情について報告し、時々起っておる問題についてのイラクの態度等についても説明を要求しておるわけであります。それに応じまして、いろいろ電報も来ておりますから、今後それらを参考にしてわれわれの態度をきめていきたい、こう考えております。
○松本(七)委員 できるだけ早く政権を承認するというお気持で検討されるのですか。
○藤山国務大臣 御承知のように、アラブ連邦ができましたときに、アメリカは七月二日承認いたしております。しかしイギリスはアラブ連邦ができたというのをテイク・ノートしているだけだし、日本も同じような態度をとっております。従いまして、今後の問題は、やはりわれわれとしては、イラクの内政上の安定その他の問題を十分考慮に入れながら問題を考えていきたい、こう考えております。
○松本(七)委員 日本政府としては、アラブ連邦というものをどういうふうに理解されておるのですか。特に今度の革命が起ってからそこのところをはっきりしておかないとならないと思うんですけれども、二つの国があって、ゆるやかに結合しておって、そうしてイラクに革命が起った。これは別の国として分離されたのですか、それとももともとゆるいんだから、これは別な政権ができたらすぐ別な独立国となる、そういう解釈ですか。あるいは完全な連邦として一つの国であって、そして命革政権ができたために、これが完全独立になったのか。それでなくて、今度は完全な一国であって、しかも内政問題として、革命政権が事実上の政権としてできた、従って日本としては、この事実上の政権を今度は公的に承認する問題が今後いっ起るかということが今後の問題であって、国家の承認ではないという観点に立っておる。このどれでございましょうか。
○藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように、アメリカはアラブ連邦を承認いたしました。しかしイギリスはテイク・ノートをして、まだ行動を起しておりません。日本もイギリスと同じ態度をとってきております。従いまして、日本が現在イラクの旧王制によるあれを承認したのを継続いたしておるわけであります。そういう意味におきまして、今後われわれは事態、問題を考えて参りたい、こう思っております。
○松本(七)委員 現に革命が起きて、よその国がぽつぽつ承認しておるんですから、今後対処する場合に、国家承認の問題として考えられるか、それとも政府承認の問題として考えられるかということです。
○藤山国務大臣 ただいま御説明申したところでおわかりいただけると思うんですが、アラブ連邦というものはわれわれはテイク・ノートしただけである。日本は従ってイラクの国を引き続き承認いたしておるわけですから、今後そういうような問題は、政権の交代その他として考えられるか、あらためてアラブ連邦というものを考えるかということにあろうと思います。
○松本(七)委員 私は、今後起るところの問題で一つ重要な点は、政府はイラクに対して承認の問題その他をどういう態度をとるか、もともと連邦に対して今御説明のような態度だったんだから、イラクとヨルダンは別々の国々としてこれは対処するんだ、こういう態度であるにしても、今後イラクに対する干渉の問題が必ず出てくると思う。もともとレバノン、ヨルダンに対する派兵そのものがやはりイラクの革命を契機にして起っておるのですから、当然これが出てくるであろうと思うのでございまするが、今後国連で行動を起す場合に、やはりイラクに対しては一切の干渉を排除する、こういう声明なり、日本政府としての態度を、この点に対してもっと明確に打ち出しておく必要があるのではないかと思うのでございますが、この点はいかがでございますか。
○藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように、日本はまだ現在におきましてアラブ連邦を承認しておりませんし、またイラクの今後の新政府をどういうふうに認めるかということを言っておりません。日本が態度をはっきりしましたときには、そういう問題について小さな独立国の立場を擁護することは当然だと思います。
○松本(七)委員 それは日本だけの問題ではない。イラクに革命が起って、それに対してどうこれに対処するかということが根本問題になってくるわけです。だから、これに対しては、日本として干渉はしないという原則くらいはここで明確にできるでございましょう。その点を聞いているのです。
○藤山国務大臣 干渉するか、しないかとかいうことは、そういう問題の前提として、まずイラクの今度の革命政府が安定した政府として国内の行政をやっているかどうかという問題に関連してくるわけでありまして、われわれとしてはそういう問題について、十分に現実に即した調査の上でなければ何とも申し上げられません。
○松本(七)委員 近く開かれる理事会のワクの中のいわゆる首脳会談、これはどういうふうになってくるのでございましょうか。今までの新聞を通じてわれわれが考えられるのでは、一応正規の理事会を開く、ここにはおそらくまだ首脳は出てこないだろう、ここでもってその首脳会談の構成だとかその他をきめるということになるわけだろうと思いますが、この正規の理事会に首脳が入って会議が開かれるというようなことは今後考えられないでしょうか。どちらが可能性が多いか。理事会に首脳が入ってくるか、それとも別に特別委員会を構成してやるか。どちらの可能性がありますか。
○藤山国務大臣 ソ連とアメリカとはかなり緊密な話し合いをいたしておると思います。一応安保理事会の常任代表による会議によりまして開催の期日あるいはその議題等について一応の決定をして、そうして各国の首脳が集まることになると思います。各国の首脳が集まるという場合に、ソ連の提案の趣旨である五カ国というような問題をアメリカも相当尊重するのではないかと思うのです。そういう意味からいいますと、安保理事会のそのままの席でそういう各国の首脳者が集まる会合が開かれるかどうかということは疑問に思います。ソ連の最初の提案におきましても、そうした首脳者が集まって、そうして安保理事会が決定すべき基礎的な勧告及び案を話し合おうじゃないかというわけでありますから、安保理事会そのままの席でそういうことが行われる可能性は少いのではないか、こう見ております。
○松本(七)委員 日本政府としてはそのどちらが効果的であり、いいと考えられますか。安保理事会に首脳を呼んでやるのがいいのか、それともやはり下相談は安保理事会でして、別の特別委員会に首脳が参加してやるのがいいか、どちらが効果的だと考えますか。
○藤山国務大臣 御承知のように、安保理事会は公開いたしておりますし、これらの首脳が集まって参りますと、それぞれ各国の首脳でありますから、フルシチョフにおきましてもアイゼンハワーにおきましても、それぞれやはり慎重な態度を期すると思います。そうして問題の解決をはかる意味からいいますと、何らかの形でもって安保理事会の小委員会と申しますか、あるいは原案作成の委員会と申しますか、そういう形において集まることが、より適切なのではないかと考えられます。しかしこれらの問題については、ただいまいろいろ話し合いが進んでおりますから、あるいは安保理事会の席上において各国首脳者が問題の口火を切って、その後小委員会に移すということがいいか、これらの問題は一番円滑にいく方法がわれわれは好ましいと思っておるわけであります。一番円滑にいきますことは――それぞれの国の首脳者があまり公開の席上で議論するということは、むしろかえってまずいのではないかとわれわれは考えております。
○松本(七)委員 憲章二十八条に基けば、正規の安全保障理事会にも首脳なりその他の政府の人が入れるのですから、一応かた苦しい議論をするかどうかそれは運営のことでどうでもやれるし、それから非公式の会談もできるでしょうから、この際はやはり一応安保理事会に各首脳が集まって、そしてそこで一通りの話し合いをしてから特別の小委員会を構成するということにするのが、私は日本としてはむしろいいのじゃないか。というのは最初から少数の首脳会談ということにきめてしまえば、日本側はぜひ参加したければそれは申し込む方法もあるでしょうけれども、日本もその空気に全然触れないでいきなり首脳会談だけ持たれるということもあり得るわけですから、やはり安全保障理事会へ日本も総理大臣なりが出かけて、そして各国の首脳と一堂に会して、いろいろな空気にも接する、向うの主張なりを一応聞く、そしてその後の小委員会にはかりに入れなくても、非公式の会談その他で、ソ連のフルシチョフその他とも直接に岸総理大臣なんかが話し合いをする機会ができるわけですから、私はこういう重要な問題が起きたときには、やはり最高責任者である岸さんが出かけていって、そうしてそういった正式の会談なり非公式の会談をやる機会を積極的に作られた方がいいと思う。そういう意味からも日本政府から、安保理事会に首脳が集まって一応協議した後小委員会に持ち込むということを提案されたらどうかと思うのですが、この点いかがですか。
○藤山国務大臣 お話のように、安保理事会の席上に各国の首脳が集まりますことは、私は適当なことだと思います。従ってそれがそこで議論されないまでも、小委員会に移るにしても、そういう方途がとられますことは、日本が今日まで安保理事会において努力して参りました結論から申しましても、適当だと考えます。従ってわれわれとしては、むろん日本が安保理事会でもってやりますのには、総理もしくは外務大臣が当然行くべきものだと考えております。今日以後どういうふうにそれがなって参りますか、またわれわれの考え方というものは、アメリカなりイギリスなりに伝えております。
○松本(七)委員 それからもう一つ、監査団が今後増強された場合に日本の自衛隊もこれに参加するのじゃないかということが世間に伝わって、一部じゃずいぶん心配されておるわけですけれども、これは一体どういうところから出たのでしょうか。何か日本の方から進んでそれを申し出るとか、あるいはそこまでしないまでも、国連からそういう希望が表明されればこれに応ずるというような考えが政府の一部にあるのでしょうか。
○藤山国務大臣 私は現在まで日本が監察団に対して自衛隊を出すという考え方を持ったということは全然ないのであります。ただ日本が提案国として監察団を強化するということを言いましたから、あるいは日本もその一部を分担してくれというときには、当然自衛隊でなくてシヴィリアンが出るべきだ。現在の監察団は武器を持たない監察団でありまして、たとえば兵籍にある人も全然武器を持っておりませんし、またシヴィリアンも参加いたす、そういうのが監察団の性質でありますから、私は自衛隊がこれに参加するということは考えたこともございません。
○松本(七)委員 それはあなたが考えたことがないというだけであって、政府の一部にはそういう意見が出たということですか。
○藤山国務大臣 どういう考え方をどういう方がしているかは存じませんが、私は終始一貫今申し上げたような態度でやっております。
○松本(七)委員 閣議でそういう意見が出たかを聞いているのです。
○藤山国務大臣 私は今申し上げた通りであります。
○松本(七)委員 それでは今後監査団に正式に加わらないまでも、監査団が増強されて、各国の監査団が向うへ派遣される、その場合にたとえば出張でただそれを見学にいくとか、いかなる形においても自衛隊は絶対にやらないということをあなた外務大臣として保障できますか。
○藤山国務大臣 日本が提案したのも、必ずしも日本が監察団に人を出すということを要件にしてやっているわけではないのです。ただもしそういうことが起ってきたときには、あるいは日本はシヴィリアンを出すことを考えなければならぬことがあるかと思います。しかし自衛隊を出そうなんということは私は今まで一ぺんも考えたこともありませんし、また今後ともそれは適当だとは思っておりません。
○松本(七)委員 われわれの聞いたところでは、左藤防衛庁長官自身がそういう希望を表明されているように聞いているのです。だからこれはいずれ防衛庁長官にも来てもらってもっと御質問したいと思います。
 私どもは、今度の中東問題は日本にとってはただ中東の問題ではなく、先ほど言うように、国連憲章五十一条の問題は日本自身にも降りかかってくる問題だし、それから一番大きい影響が当面あるのはやはり中国だと思います。御承知のように中国はいまだに岸内閣を、中国に対する敵視政策を継続している、いよいよ強化しようとしているというふうな態度で非常にきびしく見ているわけです。こういうときに、この中東問題に対してどう具体的に日本が動くかということがすぐ中国にも響いてくると思うのです。そういう意味で、今後の日本の政府の態度というものを非常に慎重にやってもらいたいと思うのですけれども、その中でも中国は一体何をもって岸内閣を敵視政策をやっているというふうにきめつけているのか、これについては日本の政府ではどうもこれがわからないというような気持でおられるように新聞は報道しているのですが、私どもこの中で一つぜひ指摘したいのは、この前もあなたに申し上げたことがある、それはやはり核兵器の問題だと思うのです。日本が今に核武装するのじゃないかということはわれわれも心配しているし、アジア諸国は非常にこれを心配しているわけです。それで岸さんはもう何回となく核兵器の持ち込みはしないし、核武装はしない、こう言っておられるけれども、現に解散前の国会でその決議案を出そうとすれば、自民党の方からこれを拒絶されて先に延ばされる。いよいよ選挙が終って新しい国会で再度これが出されればこれもまた外務委員会でやってくれということになり、外務委員会でこの決議を採決までやろうとすれば、とうとう自民党は総退場をするというようなことでこれが遷延される、こういうことになりますと、果して今の政府は核武装を絶対にやらないのだ、核兵器の持ち込みは一切禁止するのだということをほんとうに真剣にやる気だろうかということを、これは外国ばかりではない、われわれだって疑わざるを得ないわけです。そこでここでもう一度確認しておきたいのは、外務大臣は今度渡米されることになるわけですが、その場合もおそらく一般の心配しているのは、アメリカがせめて防御用の核兵器くらいは日本も持つところまで踏み切ってもらいたい、こういう話はそろそろ出てきていると思うのですけれども、もっと強力に出てくるのじゃないかということが非常に心配されているわけです。そこで今まで核兵器ということが言われておったのですが、防御用の核兵器も絶対に持ち込みは許さないし、みずからもこれで武装するようなことはないということを、ここではっきり言明しておいていただきたい。そしてまたアメリカにあなたが行かれて、そういう話が出ても明確にこれは拒否するということをもう一度再確認しておきたいと思うのです。
○藤山国務大臣 総理が、この問題につきましてははっきりと従来とも所信を表明しておられます。私は総理が言われます所信は決して偽わりだとは思っておりません。私はその線に沿って外務大臣として行動をいたしておるわけであります。
○松本(七)委員 それでは今度アメリカに行かれた場合に、そういう話が出たときにその防御用の核兵器も拒否するという態度を明確にされますか。
○藤山国務大臣 総理が言われている通りであります。
○松本(七)委員 総理が言われている通りじゃない。総理が言われていることを敷衍してあなたは実行する責任があるのだから、外務大臣として防御用の核兵器も一切持たないのだ、また持ち込みも許さないのだということをここで意思表示されて、そしてこのことはアメリカにも伝わるのだから、そのこと自体が大事なんです。そしてアメリカに行かれた場合にも、そういう話が出た場合にはそのことをはっきり明言されますか。ただ総理の言う通りやるということでは、外務大臣は勤まりませんよ。
○藤山国務大臣 総理が言われておりますので、私はその通りに、日本としては核武装をしない、また今後アメリカからそういう話があっても、われわれとしてはしないのだということを申すということを今申し上げたわけであります。
○松本(七)委員 それだから、核武装をしないということを今まで言われておるけれども、その核武装の中には防御用の核兵器も含まっておるのだということをここではっきり言って下さいと言っておるのです。
○藤山国務大臣 これは総理が議会を通じてお話の通りのことを言われておるわけでありまして、その趣旨に沿って私どもは話を申すだけであります。
○松本(七)委員 その防御用ということを分離して、そしてこれも含めたものを一切持たないし、また許さないのだということはまだ言われていないのです。だから、この時期に際して、あなたがアメリカに行かれる前にこの点をはっきりしておくことは非常に重大なことになってきておるので、わざわざこれを外務大臣の口からはっきり言ってもらう。総理大臣が今まで何を言われたかということは、われわれもよく知っていますよ。それをほんとうに実行する気があるなら、外務大臣としてその点を明確にされる必要があるから、こう言って聞いている。はっきりして下さい。
○藤山国務大臣 総理が言われました日本の核武装をしないということは、核武装全体に対して言われたのでありまして、防御用だとかあるいは攻撃用だとかを分けて言われているとは思っておりません。全体の日本の核武装をしないということを言明されていると思うのであります。
○松本(七)委員 次に、もうそろそろ時間ですからやめたいと思いますが、今度アメリカに行かれる問題で、やはり東南アジア開発基金の問題は、おそらく政府としても再度これを持ち出されるつもりがあろうと思うのです。今度のこれは見込みがあるのでしょうか。第一アメリカ側がどういう態度で応ずるかということと、もう一つはやはり中近東問題に対する日本の政府の態度がこれに関係してくると思うのです。今度のアメリカ決議案に賛成したことによって、いかにこの岸内閣の東南アジア開発基金構想にアメリカが今までより以上の好意を示したとしても、受け入れる方で今度は警戒心が今までより強くなるのじゃないかと私は思うのですが、この点の見通しを伺っておきたい。
○藤山国務大臣 アメリカに参りまして、今度は私は日米間の基本的な意見の交換をいたしたいと思います。それにはむろんただいまお話のありましたような東南アジアの経済問題というものも、これは日米間で話し合うべき基本的な問題だと思います。ただ具体的の問題の解決に参るわけではございません。従って基本的な話し合いをして、対東南アジアの政策について、ことに経済問題について、日本とアメリカの意見が一致するか、かりに一致すればどういうところが一致し、しないとすればどういうところが一致しないかということをきわめて後、ほんとうは具体的な問題に入るべきだと思うのであります。そういう態度でもって私は参るわけであります。しかしながらアメリカにおきましても、いわゆるモンロニー上院議員の第二世銀案等もすでに脚光を浴びております。従ってわれわれはそういう問題について、十分具体的に例証をあげて、その上で話をしてみたいということは考えております。むろん東南アジアの経済協力の問題について、今回の中近東の情勢がどう影響したかというような問題は、私は政治的な問題を別にいたしますれば、経済的問題といたしましては、いわゆる開発基金的な構想の内容、運営その他のいかんによるかと思っております。
○松本(七)委員 最後に、この中近東問題が起ってから日本の政府に対してマッカーサー大使から岸首相あてに、アイゼンハワー大統領のメッセージが連絡されたということを新聞に報道されておりますが、その内容についてはまだ政府もはっきり公表しておらないようです。その内容をここで公表して、その経過を説明していただきたい。
○藤山国務大臣 アメリカからアイゼンハワー大統領の信書が来たか来ないかということでありますが、今日アイゼンハワーから信書が来たかいなか、私は直接存じておりません。従いましてその内容等についても申し上げるわけには参りません。
○松本(七)委員 信書というけれども、マッカーサー大使がメッセージを首相に伝達したということは事実でしょう。外務大臣は知らなかったということになる。
○藤山国務大臣 マッカーサー大使と総理が会われたか会われないか、私は存じておりません。従いましてそういう事実があったかないかも存じておりません。
○櫻内委員長 佐々木盛雄君。
○佐々木(盛)委員 私は社会党とはだいぶ立場を異にした観点から承わっておきたいのでありますが、結論から申しますと、今後日本の外務当局のとった外交方策というものは、その途中においていろいろな紆余曲折はありましたけれども、結論的に見て非常に成功であった、ソ連の拒否権にあって目的を果すことはできなかったが、少くとも参加した安保理事会の各国はソ連を除いて全員これに賛成するというわけで、世界の世論の支持を得た、これだけでも非常に効果があったと私は思います。しかしながらその途中におきまして、ややともすれば世の中には外務当局がその外交方針においてよろめいておるとか、あるいは首尾一貫しておらないというような、いろいろな非難がないでもないのであります。私はこういう機会に外務省というものはよろしく信ずるところに向って、国会を通して一般国民に明らかにしなければ、いたずらに外務省のやったことだけを秘密のうちに守るとか、他の一切の批判は耳をかさないというような、どちらかといえば独善的な考え方ではなくて、こういう機会を通して外務省の考え方を広く国民に徹底してほしい、そういう観点に立って私は御質問申し上げるわけであります。
 そこで私はただいまの外務大臣のお話を承わっておりますと、別に日本の外交がそうよろめいてきたわけではありませんけれども、最初の五大使会議の結論から出ました日本の中東に対する態度、これは民族主義というものの立場を非常に尊重していこう、そうしてアメリカのこれに対する武力介入というものは排撃しなければならぬというような結論だったように思うのでありますが、それがその後やはりアメリカの派遣軍を国連の警察軍に置きかえて、そうしてアメリカ軍の撤退をはかろうというところになり、さらにそれがもう一回最後には監視団の派遣ということに置きかえられていくという、その間の曲折を静かにフォローしていきますと、大きなロジックの間違いはないようでありますけれども、そういう日本の態度で、その局面々々によって変った断面だけを見ますと、やはり日本の外交はよろめいているのではないかというふうに思われる節もあるようであります。
 そこで私は今の社会党の方の質問の中にもありましたが、アメリカあるいはイギリスのレバノンやヨルダンに対するところの派兵の根拠が、国連憲章五十一条にのっとっておる。ところが外部からの武力干渉、武力侵入の危険性は全然なかったのだ、こういうふうに外務省は見ておられるようでありますが、その点につきましてはいかがですか。私たちもアメリカの大統領の派兵のときの声明を見ましても、レバノン自身国内秩序を維持して間接侵略を防ぐことができないかもしれない、これは大へんだから助けなければならぬという意味のことが、アイク大統領の談話の中にもあるわけでありまするが、外務省はたとい間接的であっても、これが共産主義だとか、そういう侵略の前に立っておるという事実はお認めにならないでありましょうか。ただいま行われておりますところのアラブの民族運動というものの実態を一体どのように把握されておるのか、その辺のものの考え方を一つ御説明願いたいと思います。
○藤山国務大臣 今回のとりました処置につきまして、私は先ほど御説明申し上げた通り、私自身一貫した態度できておると思います。その間いろいろな経過過程等につきまして、いろいろ新聞紙に論議されたり何かした点が、あるいはよろめいた点があるようにみえるかもしれませんが、私としてはよろめかないで一貫した方針をとってきております。
 それからアラブのナショナリズムをどう見るかということでありますが、われわれは今日の時代におきまして、それぞれの国家が独立して、植民地から解放される。そのアラブのナショナリズムというものは決して共産主義というものと同一のものではない。従ってこれに対するあたたかい手を差し伸べて、十分考えていかなければアラブのナショナリズムの健全な発達は期し得ない。私どもは自由主義の立場をとっておりますから、共産主義に走りますことが、アラブ・ナショナリズムの健全な発達とは考えておりません。従ってアラブ・ナショナリズムの健全な発達というものは、われわれの立場からそうした方向で健全にそれぞれいくことが適当だと思います。この立場は私ども変えないのであります。今回レバノン問題が起りましても、アメリカ等に対しても、日本のその立場というものははっきり申しておるわけであります。それからきた処置をわれわれは続けてとっておるつもりであります。
○佐々木(盛)委員 最近の世界の民族運動の中には、これを巧みに利用する共産主義勢力というものもある。民族運動という竹馬に乗っかって共産主義が出てくることもあるわけです。今度のアメリカあるいはイギリスの中東への派兵ということの背後に、やはり間接的な侵略というものの脅威の前に自由主義陣営が立ったのだ。そういう必要から生まれてきたものではなかろうかと私は考えるわけでありますが、そういう危険は全然ない、こういうふうなお考えなんでしょうか。
○藤山国務大臣 私がただいま申し上げましたように、アラブ・ナショナリズムというものを正当に理解し、これに対してあたたかい目をもって見て参りますれば、われわれの立場からいってアラブ・ナショナリズムは正当に発達していくと思います。もしそうでなかったならば、今お話のように共産主義に利用されることが起ってくるのではないだろうか、竹馬に乗っていくというような状態になるのではないか、それはわれわれのとらぬところというのが、われわれの一貫した態度でございます。
○佐々木(盛)委員 従って、今度の中東の動乱には、何らそういう共産主義陣営の脅威はなかったというようなお考えにお立ちになっておるのでありますか。
○藤山国務大臣 必ずしも何らというような表現が適当かどうかは疑問であります。しかしながら、もし誤まればそういう方向に押しやるのではないかという心配は、私どもいたしております。
○佐々木(盛)委員 アイゼンハワー大統領の派兵の声明の中にも、今申しますような間接侵略の危険の前にさらされているのだということをいっておりますし、あるいはまた外務大臣も東京でアメリカの駐日大使との間にも話をされ、あるいは次官も何回かお会いになっておるのでありますが、その間アメリカ側が日本に、派兵の事情について説明する場合に、そういうことの説明は全然なかったのでありましょうか。もししかりとするならば、アメリカの派兵の一番大きな目的は一体何であったのでありましょうか。
○藤山国務大臣 アメリカは、われわれに説明するところによれば、相当大規模の間接侵略がある、そこでやはり国連憲章五十一条の問題についても抵触する問題があるということをいっております。しかしながらその事実をわれわれはまだ確認をいたしておりませんし、またその事実に立って論議をいたしますのは早計だと存じます。
○佐々木(盛)委員 アメリカがほっておけばイラクのような連鎖反応が各地に起って、収拾のつかない動乱の状態になるという危険性があるのだ、従ってたまたまレバノンの問題でアメリカがこの辺に出兵しておいて、そしてこれから拡大しようという連鎖反応をチェックしよう、こういう考え方に立って、考え方によってはアメリカは自分たちの理想の前、主義の前に勇敢な精神をもってやられたことであって、一面考えればアメリカの外交政策は、その点からいうとなかなか思い切ったことを主義の前においてはやってのけるものだということに私はなると思うのであります。そこで、同じ自由主義の思想を同じゆうする陣営の中にあっても、日本のアメリカに対する理解というものは、今度の単なる外務省の声明を見ておりますと、ややその理解に乏しいのじゃないかというふうにもわれわれは感ずるわけでありますが、この点については一体いかがなものでありますか。
○藤山国務大臣 アメリカが何を考えておるかという問題につきましては、われわれも十分意見の交換をいたしておるつもりであります。ただわれわれ自由主義陣営の中にありましても、アジアにわれわれは国を持っております。またアジア人の心理というもの、アジア人の希望というものを、われわれはアメリカ人よりもよく知っていると思います。従ってそれらの希望というものを率直にアメリカにいって、そしてアメリカにそういう日本の考えておるアジア人観というものを理解してもらうように努めますことが、自由主義陣営が世界に対して平和をもたらす動き、あるいは中近東のアラブ・ナショナリズムその他に対する動きに対処する一番必要な道だと思います。従って、われわれとしては、同じ自由主義陣営であります、そしてアメリカと緊密な関係を打ち立てなければならぬほど、われわれはアメリカに対して率直に、われわれのそういう見解をいうことは当然なことだと思うのであります。それ自体がアメリカと日本との関係を阻害することは、私は決してないと思っております。
○佐々木(盛)委員 今の岸内閣の外交の三原則の中で、国連中心というものは、これは前後を貫くいわば不変の鉄則のようなものでありますが、これを横に広がったいわゆる自由主義陣営との協調あるいはアジアの一員としての善隣外交を進めていくというようなこと、その横の面を見ますと、必ずしもこの三つというものは筋が通らない、時によると非常に利害関係が相反する、少くとも今度の場合におきましては、私は今の三原則というものが、はしなくもアジアの中東におきまして、西欧勢力、西欧主義というものと、それからアジア主義というもの、この二つの争いの形になって現われてきた。そこに日本は非常に苦しい、いわば論理としては、今回のアメリカやイギリスのとった態度に対しては、これは大いに非難もし、攻撃もしなければならぬが、現実に日本の生きる道というきびしい問題になってくると、やはり日本の置かれておる宿命というものがある。こういうところにぶつかってきたのじゃなかろうかと思うのであります。従って国連中心という外交政策というものは、これは縦に連なったところの大きな基本的な精神であると思います。しかしアジアの一員たらんとすることと、西欧陣営と手を結んでいくということとの間には、大きな矛盾が今度出てきたのではないか、私はこのように考えるのでありますが、大臣はどのようにお考えでございましょうか。
○藤山国務大臣 私は自由主義陣営の一員として行動することと、アジアに国を持っており、アジア人の立場をもって行動するということと、矛盾をいたすとは思っておりません。日本がアジア人の気持そのものを率直にアメリカに伝えて、アメリカがそういうことをアメリカの政策の上に反映させますことは、非常に必要なことだと思っております。従ってそのこと自体は、アメリカとの緊密な関係を阻害するとは私は思っておりません。むしろ率直にそういう問題についてアメリカと話し合うことこそ、真に日米親善の道を行くのではないか、こう考えておるのであります。そういう意味におきまして、矛盾はいたしておらぬと思います。また具体的に問題が起りましたときに、これらを解決するためには、やはり相互が相互の立場だけを主張しておったのではならぬので、お互いに相手の言うことも聞き、そうして問題をすみやかに解決することにして参らなければならぬのであります。そういう精神を持って、問題が起りましたときに対処することが必要であります。そうしてその場というものは、国連の場において実際的問題の解決に当るということでありまして、私は現在の岸内閣のとっておる三つの原則というものは、やはり日本の現状におきまして適当な外交方針だと考えております。
○佐々木(盛)委員 次にアメリカの派兵の理由でありますが、先刻来社会党の方からもいろいろお話があったようでありますが、アイゼンハワー大統領の派兵声明によりますと、一つには自衛権だということを言っておる。それからそれに基いて合法政権が派兵の要請をしてきたのであるから、それにこたえて送ったのだ、こう言っておる。また一つには在留民を保護するのだということを言っておるようでありますが、外務省としてはやはりこの自衛権という理由が、アメリカの派兵の一番大きな理由であるというふうにお考えになっておるのでありましょうか。アメリカの居留民の保護というようなことも書いてありますし、また間接侵略の危険というようなことも書いてあるのでありますが、その辺は一体どのように了解されておるのでありますか。
○藤山国務大臣 アメリカに対する正統政府の主権者からの要請、それから国連憲章の五十一条による侵略という問題を主たる問題として、居留民の保護というものは第三の理由じゃないか、こう思っております。
○佐々木(盛)委員 一つ心配があるのですが、それは、アメリカのレバノンに対する、あるいはイギリスのヨルダンに対する派兵が、正統政府から要求されたので、派兵ということは一向に差しつかえないということになりますと、たとえばこの間のハンガリアに対するソ連の派兵というようなことにもぶつかってくるのであります。これも考え方によっては、合法政府が派兵を要請してきた。ハンガリアの場合と今度の場合と同一に論ずべきものではありませんけれども、早い話が、今度あるいは今後、革命政府というものが中東において、あるいはナセルに、あるいは共産主義陣営に向って派兵の要請をしてきたというときに、それにこたえてそれぞれの国々が派兵したというときには、これは合法になるということになって参りますと、私はどうもふに落ちないものがあります。同時にもしそのようなことをいたしますと、それぞれの国が他国からの派兵の要請を受けて出かけていくということになりましたならば、第二の朝鮮あるいは第二のスエズ紛争ということになりかねない。従って世界戦争の危険性になりかねないというような、非常に重大なことになるわけであります。この点については外務当局の御意見はみな一致して、どこの国の政府でも要請してくれば兵隊を出すことはきわめて合法的である、こういうふうにお考えになっておるのでありますか。
○藤山国務大臣 従来の国際法の解釈の上から言えばそうであります。法律論としてはそうでありますけれども、今お話の政治論としては、必ずしも現在の段階において妥当性があったということは言えないのじゃないかというのが、われわれの見解でございます。
○佐々木(盛)委員 事務当局の方ではやはり大体御意見は同じですか、別に付加することはございませんか。
○高橋説明員 お答え申し上げます。派兵につきましては、やはり正統政府から正式の要求がありますれば、これに応じて派兵するということは正当でありまして、合法的である。現在の国連憲章でもそれを禁じておるものではない。合法的な行為であるというふうに私どもは考えております。
○佐々木(盛)委員 国連憲章との間の疑念もないわけではありませんが、先ほど社会党の方からも御質問もあったようでありますから、この程度にいたしまして、私は今度日本がこの紛争を最小限度の損害に食いとめようとした努力を非常に多とするものであります。不幸にして決議案は踏みにじられてしまいましたけれども、そこまで努力した日本は、最後の有終の美をおさめなければならぬ。それについていろいろお考えになっておると思いますが、まず最初に、先ほども問題になりましたが、日本の趣旨は、要は監視団を増強してこれを派遣する、こういうことに尽きるようでありますが、日本としては提案した以上、みずから監視団の一員に参加して相当な役割を演ずるだけの責任を持たなければならぬと私は思うのでありますが、そういう心がまえをお持ちになっておるのか、またそういうことについてはすでに関係の方面に御連絡等があったものかどうか、この点を一つ承わりたい。
○藤山国務大臣 日本が提案をいたしましたけれども、われわれは積極的にこの監視団に入るという要望はいたしておりません。すべての処置はハマーショルド事務総長に一任をしておるのであります。私は提案したから必ずそれに入らなければならぬというようなことは考えない。従って世界の情勢に応じて国連においてそういう問題について十分研究さるべきものだ、こう思っております。
○佐々木(盛)委員 しかし私は一歩進んで、監視団には進んで日本が入るという態度に出た方がよくはないかと思うのであります。かりに国連当局の方から日本はぜひとも監視団の中に加わってほしいという要請があった場合には、日本は喜んで参加すべきだと思うのでありますが、いかがでありますか。
○藤山国務大臣 日本が提案したからということで、果して国連からそういう勧告があるかどうかということは、私は疑問だと思います。しかしながら国連がそういう希望を強く表明いたしましたならば、そのときに私どもは先ほど申し上げましたように、何かわれわれがシビリアンで役に立つことが実際に監視団の中でできるかいなかを十分にあれした上で、検討いたすのが当然だと考えております。
○佐々木(盛)委員 先ほど社会党の質問の中にも出ておったようでありますが、日本の自衛隊が参加するというようなことについて、これは私は与党の立場からも国民の前に明らにしておいていただきたい、いろいろな揣摩憶測を生んではいけませんので、明らかにいたしておきたいと思う。左藤防衛長官の談話が新聞に出ておりますが、それによりますと今の自衛隊を派遣をすることは、要求されたときにおいてはこれは法律上は断われない、しかし政治的には断わることができるんだというようなことを言っております。これは本人に聞かなければわからないことでありますが、そういう何か根拠というものはあるのでありましょうか。人のことを外務当局に聞くのはおかしな話でありますが、どこかそれに関連したようなことはあるのでございますか。
○藤山国務大臣 新聞紙上に現われております左藤防衛長官がどういうことを言われたか、私ども理解いたしておりませんし、またそれが果して左藤長官の言われたように正確に出ておるのかどうかも私は確かめる道もございません。従って私としては、左藤長官がどういう意図でそういうことを言われたか存じておりませんが、ただ私は閣議の席上で自衛隊は派遣しないんだ、そしてシビリアンが出る場合には、それが今のようにどういう役割をそれによって勤め得るかということは、そのときによって考えるべき問題だということを、経過報告の中で言っておるわけであります。
○佐々木(盛)委員 日本側が提案された監視団増強という、そういう性格の監視団の中に日本が参加することは、何か日本の国内法上あるいは憲法とか何かの関係において、違法であるとかいう疑義はありますか。
○藤山国務大臣 私は法律論はいずれあれでありますけれども、現在日本が参加する場合に自衛隊が出ることは適当だとは考えておりません。
○佐々木(盛)委員 私は念のために事務当局に聞いておくのですが、左藤長官の言葉を引っぱり出して非常にあれですが、法律的には派兵を国連から要求されたときには拒否できないが、政治的には拒否できるというようなことは、国連憲章のいかなるところに基いておっしゃっておるか知りませんが、事務当局から一つ御説明願いたい。
○高橋説明員 私、どういう根拠かははっきりわからないのでありますが、おそらく国連憲章というよりかわが国の自衛隊法の規定上、そこに出兵するとか派兵するということがあるいはもし問題とすれば、そういう点が問題になるのではないか、従って自衛隊法の関係及び今度オブザベーション・グループと申しますか、監察団に出るという――どういう性質、どういう関係の決議がそこに行われるかということを彼此考慮されて決定さるべき問題じゃないかと思います。
○佐々木(盛)委員 私はあまり深く追及いたしませんが、大体日本がここまでイニシアチブをとって紛争解決に臨んできたわけでありますから、私は最後まで努力を続けていただきたいと思います。
 先ほど社会党の方からもお話がありましたが、日本の外務大臣が出かけていくとかあるいは総理大臣が行くとかして、何らかの方法によって、いわゆる国連中心の一貫した方策によって、この問題の解決に一つ積極的に当っていただきたいと思うのでありますが、そういう点に対するお考えはどういうことをお考えになっておるのでありましょうか、承わりたいと思います。
○藤山国務大臣 この中近東の平和をもたらすためにわれわれが最大な努力をすること、しかもそれを国連のワク内でしますことは、当然私どもとして考えて参るわけであります。ただ国連内においていつでも主役を演ずるということではないので、ある場合にはできるだけ積極的に主役を演じ、ある場合には情勢を見ながらいくということも考えるわけであります。しかしながらこの問題を解決するためにできるだけ努力を払うということにおいては、お話の通りわれわれは最善の努力を尽して参りたい、こう考えております。
○佐々木(盛)委員 従ってこの問題解決のために藤山外務大臣とか岸総理大臣が何らかの次のステップをとろうというような、あるいは渡米でもしようというようなお考えはございませんですか。
○藤山国務大臣 私といたしましては、問題の進展によっては即日出発していくだけの覚悟もいたしております。また総理もおそらくそういう考え方だと存じております。
○佐々木(盛)委員 そういう点についてアメリカとか関係筋にはいろいろ了解と申しますか、隔意なき懇談をするというような、事前の打ち合せとか何かそういう相談なんかはないものでございますか。
○藤山国務大臣 先ほど申し上げましたように、日本としてこれをどうして解決していくか、しかも安保理事会における四つの決議案が否決された後に、フルシチョフ氏も提案をいたしております。またアメリカがそれに対する返答もやって、ただいま米ソの間、及びイギリス、フランス等の意見が出て、それらの調整が行われているわけであります。従いまして、われわれとしてはその調整に――できるだけ一日もすみやかに到達点に立ちまして、そして問題の進行がはかられることを希望するのであります。その中において日本ができるだけ協力をし、また日本が出席することによって適当な解決がとれるというのでありますれば、むろん日本が出席してやらなければならぬわけであります。またかりに日本が現実に出席しなくても、問題が進展して巨頭間に話し合いができれば、しいて出席しなくてもいいし、それらの点については現実の問題に即して考えて参りたい、こう思っております。
○佐々木(盛)委員 アジア・アフリカ陣営におきましては、安保理事会の非常任理事国というものは、イラクがかりに当事国であるというなれば、それを除けば日本だけということになるわけであります。先ほどの外務大臣のお話では、アジアの民族運動に対して、日本は同じ民族、同じ血を持った国として、きわめて同情的であり、非常な理解を持っている、従って日本がアメリカにもよく説得しなければならぬという御説明でありましたが、そういう立場から考えますと、私はこの問題の解決のために進んで日本が一役買ってやろうというようなことを、外務大臣や総理大臣が当然考えていただきたいと思います。あるいは事によったらそういうことをお話になって、すでにアメリカやイギリスに対しても内外の意見の交換等もあるかとも思うのでありますが、もう少し積極的な意図というものはお持ちではございませんか。それは日本国民が非常に要望しておるところであります。今日の外交というものは、外務省がやるから黙ってみなついてこいというのではなくて、国民の民族的な気持というものを背景にして、大きく盛り上った外交でなければならぬと思うのでありますが、どうも外務大臣のいすに腰かけられますといろいろと消極的なことをおっしゃるのでありますが、ほんとうのところどうですか、もう少し積極的な意図というものはお持ちじゃないのでありますか。
○藤山国務大臣 この問題の解決に当りまして、私は決して消極的な態度をとっているとは思っておりません。積極的に問題の解決をはかっていきたいということを念願して、今日まで努力をしております。ただ先ほど申し上げたように、いつも何か主役がとれるというようなことは、国際社会の中におきまして、必ずしも連続的に主役をとっていくというようなことにはなかなかいかぬわけであります。そこいらは、われわれは積極的にやるにしても、やはりそのときの情勢等を見て、そして適当な発言をいたして、それを引っぱっていくときは引っぱっていくという立場をとらなければならぬ、決して私は消極的な考え方でこの問題に対処いたしておらぬつもりであります。
○佐々木(盛)委員 私は決してスタンド・プレーをしろとか、日本がスターになって国連のヒノキ舞台で活躍しろということを言っておるのではない。場合によっては縁の下の力持ちでもけっこうなんでありますが、今日、日本の国民的感情からいっても、せっかく日本がここまで、中東に起った紛争を、同じアジアの民族の血のつながりを持った一員として東西の解決役を買って出ようとして、不幸にしてこれがソ連の拒否権にあってあえなくつぶれましたけれども、あなた方が抱かれたこの計画というものは、みんな国民全部が支持しておると思う。従って有終の美をなし遂げたい、こういう立場から言うのであります。藤山さんが出かけられて、あそこで名演説をしろとかいうことを言っておるわけではないのであります。総理大臣や外務大臣がこの問題解決のために一つニューヨークにでも乗り込んでいこうじゃないかというふうなお気持はないのでございましょうか。
○藤山国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、総理もむろんだと思います。私はこうした問題がありまして、実際的われわれの国連の場と申しますか、あるいは安保理事会の席上、必要とする問題がありますれば、私は即日でも飛んでいくだけの気持を持っております。ただ、やはりそういうことが実際的に役に立つように動いて参らなければならぬと思うのであります。気持だけで問題を解決するわけに参りませんので、そういう点について、ただいまお話のように、舞台裏で努力することも私は非常に大きな必要なことだと思うのであります。そういう意味において努力は怠っておらぬつもりであります。
○佐々木(盛)委員 日本が安保理事会などに出て、調停役と申しますか、大いに努力をするというようなこと、あるいはその他の方法によって積極的に問題を解決するために努力するということについて、日本におります英米の大使との間に話をするとか、あるいは日本の出先が英米の国々等と話をしたというようなことはないのですか。
○藤山国務大臣 今回の問題に当りましては、相当広範囲の任地の大公使を動員して私ども活動をいたしてきておるのでありまして、ただいまでもその意味におきまして在外大公使諸君の活動を要請し、また現実に活動をいたしておると思っております。また国連におきまする松平大使は、当然そういう問題について毎日のように努力をしておると思います。
○佐々木(盛)委員 私の今申し上げたことを誤解されておるようでありますが、簡単に言うと、外務大臣や総理大臣が現地に出かけて解決に乗り出すのだというようなことについて、先方の関係国の意向を打診したということはありませんか、ありますかということです。
○藤山国務大臣 先ほど松本さんの御質問にお答えしたように、英米等に対しては、そういう問題につきまして連絡いたしております。ただ、おれが解決するのだから行くのだというような言い方はしておりませんが、そういうような問題について、実際に役に立つ努力をするという意味からいって、そういう問題について連絡はいたしております。
○佐々木(盛)委員 そういうことに対して、英米等の向う側ではどういうふうに言っておりますか。歓迎されておりますですか。
○藤山国務大臣 まだ第一、ソ連と英米との間に話し合いが十分ついておりません。従って、どういう形でいくかということを今やりとりしている最中でございまして、そういう意味において、まだ現実にどういう反応があるかということは申し上げかねます。
○佐々木(盛)委員 その程度で打ち切りまして、藤山さんは近く渡米なさるようですが、これは間違いないと思います。簡単に申し上げまするが、渡米するに当っての、別に避暑に行かれるわけでもありませんし、相当な目的を持っていらっしゃるのだと思いますが、大体今度の渡米なさる大きな目的というものは、ほんとうにこういう機会を通して私は国民に言うべきだと思うのでありますが、どういうふうな目的を持って向うへいらっしゃるというお考えなんでありましょうか。
○藤山国務大臣 私は、第二次岸内閣ができまして、相当長期にわたって政権を担当いたすと思っております。従って、この際日本の今後の外交方針を、やはりはっきりきめて打ち出していくことが必要だと考えております。その前提としては、やはり国際情勢をわれわれは十分把握し、また日本と一番密接の関係にありますアメリカと、十分基本的な問題について論議を戦わし、そうしてこの点はアメリカの考え方と日本の考え方と一致する、この点は必ずしも一致しないというような問題をまず明らかにしますことが、今後の日本の外交政策を打ち立て、少くもこの数年間政府としてその線に沿って進めていくのが必要でないかと思うのであります。従いまして、今回参りますことは、特定の問題を持ちまして、その問題の解決に当りますというよりも、むしろ日米間の基本的ないろいろな問題、見方、立場、国際情勢に対するいろいろな論議等を、できる限り尽すことが非常に必要なことだと思います。むろんそれらの問題を論議しますときに、特定の問題が例証としてあげられることは当然なことだと思うのでありまして、そういう例証としてあげました問題に意見が一致して、解決し得る問題もあるかとは思いますけれども、またそれを目的として私は参るつもりはないのであります。そうした基本的な話し合いをした上で、岸内閣としては長期政権担当の外交的な立場を打ち立て、その上に乗って日米間の懸案を解決していくということが、しっかりした外交方針の確立によって一番適当にいけるのではないか、こう考えるのであります。でありますから、今回参りまして基本的な話し合いをし、その上に立って方針を立てました上で、具体的な問題の解決というような問題については、さらにアメリカと通常外交機関を通じ、もしくは私自身が参って解決に努力するというような考え方で今度参るわけであります。
○佐々木(盛)委員 もうだいぶ前ですが、岸総理大臣も前にアメリカへ行かれて、そのときに出されたステートメントの中にも、この安全保障条約の改訂の問題とかあるいは沖縄等の領土問題であるとか、こういうことも当然討議をした、今後ともこの問題について解決をはかるのだということの声明が出ておったようでありますが、その後これらの問題については一体どうなっておるのでありましょうか。それとも今度行かれるときも、これらの問題についてはお触れにならないのでありましょうか。安保条約の問題とかこの領土問題等は、当然やはり外務大臣から御説明になってしかるべきだと私は考えるのでありますが……。
○藤山国務大臣 私は、ただいま申し上げましたことで実は尽きていると思うのでありますけれども、日米間のそうした懸案を解決するのは、そうした個々の事態についてのそのときどきの解決案を出しまするよりも、基本的な認識、安保条約なりあるいは沖縄の問題なり、そうした問題の基底になっております両国の認識というものをお互いに議論し合って、どこが一致する点か、どこが一致しない点か、そうした上に立って、そうして今のお話のような問題を解決することがほんとうに解決の道ではないか、ただ表に現われております安保条約なり沖縄の問題なりという、そのときに起っております事象を解決しますよりも、基本的な話し合いをしなければほんとうの意味の解決はできない、そういう考え方で私はアメリカへ参るつもりであるわけであります。
○佐々木(盛)委員 基本的に非常に食い違った問題がございますが。ものの考え方の基本的に違った問題は何でございますか。
○藤山国務大臣 会談をしてみなければ食い違っているか、食い違っていないかもわからぬわけでありますが、私は率直に、日本の現在まで国際社会に出てきた地位、あるいは日本の経済力の戦後発展してきたこの立場に立ちまして、日本の現在の事情等を十分率直に言ってみたい、こう思っております。
○佐々木(盛)委員 その領土問題にもいささか関係のある沖縄の問題でありますが、ここの委員長自身が話題の人でありまするが、委員長や中曽根君が向うの方へ最近旅行なさっての関連した新聞記事も出ておるようでありますが、最近に領土問題を持ち出すことはアメリカの方も非常に感情の上からいってもよくないから、この問題は当分引っ込めてしまって、経済援助の問題であるとかあるいは戸籍の問題とか、財政援助の問題とか、そういったものに方向転換しよう。岸さんも近く総務長官を現地に派遣してこの問題の解決に当るというようなことも伝えられておりまするし、また藤山外務大臣も国連にこの沖縄問題を持ち出すんだというようなことも言われておるようでありますが、九月ごろ行かれればちょうどいいときであるし、当然問題は取り上げられると思うが、そういう御用意はございますか。
○藤山国務大臣 他の方々かどういうことを言われましたかは私は存じておりませんけれども、私自身が沖縄問題を国連に持ち出すということを言ったことはございません。
○佐々木(盛)委員 そうすると、そういうことを言ったことはないが、今もお考えにはなっていないわけですね。九月ごろいらっしゃるときには、この問題を国連に持ち出すというようなお考えはお持ちでないのですか。
○藤山国務大臣 私といたしましては、先ほど申し上げましたように、いろいろ基本的な問題の話し合いをして、その上で、どういうふうに日本とアメリカの関係においてこういう問題を調整するかということを第二段に考えていくわけでありまして、従って現在において国連に持ち出すとか持ち出さないとかという断定的なことを申し上げることは差し控えたいと思います。
○佐々木(盛)委員 非常に抽象論ですが、私は結論から申しますと、もう少しこういう国会の場を通してお考えになっていることを率直に言っていただきたいと希望するわけです。それを単に与党であるとか野党であるとかいう立場であるとか、あるいは外務省のやっていることは一切国民には言わない方がいいんだというふうなものの考え方であると――新しい憲法のもとにおける外交というものは、私はもっと変ってくるのが当りまえじゃないかと思う。今までの外交と、いわゆる新憲法のもとにおける外交というものは、本質的にもっと変ってこなければならぬ。たとえば外交政策は外務省が決定するのではないのであります。われわれ国民の代表であるところの国会の意見をもっと尊重して、そうしていわばわれわれがここで外交政策を決定するのであります。それを何でもきめたことにはみんなついてこいというようなものの考え方――そういうことは藤山さんお考えだとは思いませんよ。しかしそのような傾向がないわけでもありません。藤山さんも個人的に会えばいろいろなことを話していただけるでしょう。しかしここに来ると、かみしもを着けたような気持で、あれもしゃべってはいけない、これもしゃべってはいけないというような、三猿主義というか外交三猿主義をとられて何にもしゃべらないということのようでありますが、考え方によっては、もっとこの場を大いに利用すべきじゃないか、あるいは大いに活用すべきである。ここで言ったことは、すぐ世界に通じ、ニューヨークに通じ、ロンドンに通じるのですから。これはどうも今まで私はもの足りないところがあるのでありまして、深く追及するとまるで党内野党のように思われてもあれですから申し上げませんけれども、私はそういう観点から、これからは政府の思っていることをどんどんもっと積極的に言って、大衆を指導していく、啓蒙していくのだ、外交啓蒙は国会を通してやるのだ、これが一番大事なことなんだと思う。外務省がときどきお出しになっております「世界の動き」とかなんとかいうかた苦しいものはありますけれども、ああいうものを読んでいる人は割合に少い。やはりこういうところで直接――私たちだけが聞いておるのではなくて、私たちは少くとも八千万の国民を代表した立場から聞いておるのでありますから、その国民にわからぬことを教えるのだ、国民とともに外交するんだという考え方で今後進んでいただきたいことを特に強調し、なお中東問題に関しては、日本がここまで積極的に時の氏神の役割を買って出たのであるから、あるいは日本が縁の下の力持ちでもいいですから、とにかくこの問題の解決のためになお一そうの努力をしてもらう。外務大臣や総理大臣が必要に応じていっでもニューヨークに出かけていってこの問題の解決をはかろうというくらいの決意を大いにしていただきたいということを特に申し上げておきます。
 最後に一点だけ、これは外務大臣でなくてけっこうでありますが、ちょっとお聞きしておきたいのです。きょうの新聞を見ておりますと、日本郵船の紐育丸というのが台湾沖で台湾の国府軍から砲撃を受けたということが出ております。今の世の中ですから、これはすぐに無電で入ってくるわけでありますが、それは入ってきていますか。また入っておれば、それに対してどういう処置をおとりになったか、伺っておきたい。
○板垣説明員 本件につきましては、現地の大使館から昨晩簡単な電報だけ入っております。なお現地でも実情を調査中でありますが、私どもの方におきまして日本郵船より直接事情を聴取した結果は次の通りでございます。日本郵船の紐育丸が七月二十三日に広畑港を出港いたしまして、鉄鉱石積み取りのためにマラヤにおけるズングンの方に向って台湾海峡を航行中に、二十六日の午前十一時三十分と三十五分の二回にわたりまして、台湾の西北海岸の白沙灯台沖八マイルと七マイルの地点で陸上から砲撃を受けたようであります。最初のたまは当りませんでしたが、第二弾は右舷の三番倉の起重機の付近に当ったのでありますが、損害の程度は目下不明でございます。ただ乗組員は無事で目下目的地に向って航行中であり、八月十日ごろ帰港するというだけは現在わかっております。従いまして損害の程度などにつきましては、この船が帰りましてから委細取調べをいたしまして、損害賠償とかそういう手段をとる予定になっております。なお政府といたしましては、けさ新聞に出ておりましたように、国府側はこういう事実はないといって否定をしたというような新聞報道もございます。この辺はわかりませんが、現地大使館を通じまして、即刻この事情調査の申し入ればいたす所存でございますし、本船が帰りましてから実情をさらに調査いたしまして、その結果さらに抗議をするということも当然とらなければならぬというふうに考えております。
○佐々木(盛)委員 それに関連して。それは国府の軍隊からの砲撃を受けたと言われておるが、そのことはまだわからないのですか。あるいは出先の日本の外務省当局を通じてお聞きになったことはございませんか。
○板垣説明員 ただいま申し上げましたように、もうすでに台北の日本大使館から第一報は昨晩入っておりますし、ただいま調査中でありますが、あるいは本日中にも日本大使館から報告があろうかと思います。なお本件はおそらく陸上の向うの砲台から砲撃したものであろうと想像されます。
○佐々木(盛)委員 その結果の報告を待たなければわからぬことですが、これはどんなことが予想されるのですか。日本の船が通行するところを砲撃してくるというようなことは何か……。
○板垣説明員 御承知のように、台湾の周囲五十海里に外国船が入りまするときは、事前に国府側の国防部に通知をすることになっておりまして、本船も二、三日前にすでに通知の手続はしておるわけでありますが、私どもの推定では、もちろん国府と日本とは友好関係にございますので、理由もなく砲撃をするはずはないので、おそらく何か事実があったといたしましても、誤認等に基いて砲撃したものと思います。いずれにしましてもその結果は重大でございまするので、実情を十分調査いたしまして、抗議をすべきものは抗議をし、損害賠償を要求するものは要求するということになろうと存じます。
○佐々木(盛)委員 想像の上で話しても始まらぬと思うが、誤認するといっても何を誤認するのですか。
○板垣説明員 誤認したのかどうかもわかりませんが、誤認いたしますとすれば、国府側と非友好関係にある艦船と誤認したのかもしれません。とにかく全然まだ事実を確認しておりませんから、あまりはっきりしたことは申し上げられません。
○櫻内委員長 午前中の会議はこの程度にとどめ、午後一時五十分まで休憩いたします。
    午後零時五十一分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時十二分開議
○櫻内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 国際情勢等に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますので順次これを許します。戸叶里子君。
○戸叶委員 中近東の問題につきましては同僚の議員からだいぶ出ましたけれども、私二、三点だけ確かめておきたいと思うのでございます。
 まず第一にきょうの午前中の質問を伺っておりますと、国連憲章五十一条につきまして、アメリカは今度の出兵に対してはこの五十一条に抵触する、そういうふうな言い方をし、日本はこれはレバノンの国内問題である、こういうことを断定しているわけでございます。そしてさらに正当な政府が要求した場合には、頼んできた場合には兵隊を送るというふうなことを法律上ではきめられているからというふうに言われているわけでございますけれども、こういうふうな解釈をもってしますならば、このことを聞いただけでも私どもが非常に心配になるのは、そういうふうな事態がこれからあちこちに起きてくるということであります。正当な政府が兵隊をよこしてくれというふうなことを言いますと、それじゃ頼まれたのだからといって、いつどんなときでも出すというふうなことになりますと非常に大きな問題になってくると思いますので、やはりこの五十一条の解釈というものに対して、はっきりした態度をこの際日本は出しておくべきではないかと私は考えるのでございます。先ほどの藤山外務大臣の御答弁を聞いておりますと、今日本がどう考えるかということについて議論するのは早い、こういうことを言っておられるのでございますけれども、今こそ私はしておかなければいけないんじゃないかと思いますけれども、もう少し具体的に日本がこの問題に対してどう解釈するかということを承わりたいと思います。
○藤山国務大臣 国連におきまして、この問題については解釈に関して研究が続けられておりますことは御承知の通りだと思います。日本としましても、この問題は重要な国連憲章の解釈の問題であります。また具体的に言えば、どういうところに、またどういう点が問題になるのか、間接侵略の方法としてラジオがいけないのか、何がいけないのかという具体的問題になろうかと思います。そういう問題についてはいま少し研究することが一番適当だと思います。
○戸叶委員 いま少しく研究するということは、結局国連で何らかの結論が出るまで日本としては何らの意思決定もしないというふうに了承していいわけでございますか。
○藤山国務大臣 かりに国連においていろいろ研究調査するというような場合におきましても、日本としても国連のメンバーでありますから、それに対して日本の意見も出す必要があろうかと思います。われわれはそういう意味におきまして慎重な検討をしていく、こういうことであります。
○戸叶委員 外務大臣今おっしゃいましたように、当然何らかの態度をもって国連に臨んでいかなければならないわけで、そのどういう態度をもって臨まれるかということが、私たちは国民として知りたいわけなんです。それをまだわからないというようでは、あんまりたよりない政府としか考えられないのですけれども、この点いかがでございますか。
○藤山国務大臣 お話のようにわれわれはそういう際に当然日本としての意見を出すわけであります。間接侵略というものは特に昔はなかったと思うのでありますが、最近間接侵略的な問題が提起されるというようなことが多いわけであります。しかしそれをどの程度まで間接侵略と認めるか、認めないかという問題は、これは相当重大な問題だと思います。特に今後の世界の政治の上にも大きな影響を持つ問題でありますから、決してわれわれはなまけておるわけではございませんけれども、やはり日本の研究が世界に訴えられるようなふうに慎重に考えてみなければならぬ、こういうことでございます。
○戸叶委員 外務大臣のおっしゃることもわからないではないのですけれども、私たち単刀直入に考えまして、正統政府が兵隊を貸してくれと言えば何でも貸せるのだというふうな解釈のもとでこれから進められていきますと、いろいろなときに非常に不安を感ずると思うのです。きょうのような御答弁がそのまま国民に知らされますと、これは大へんだというふうに考える人は私ばかりではないと思います。そういう意味でなるべく早くそれを出していただきたいと思うのですけれども、さらに今問題になっております武力侵略の問題でございますけれども、武力侵略の定義がないということがいろいろ問題になっているのじゃないかと思うのです。侵略の定義に関する条約というものが、八カ国くらいで結ばれているわけでありますけれども、その他の国々がこれに加盟しておりませんので、当然今後この五十一条の問題にもからんで、武力侵略というものの定義についての討議がなされなければならないと思うのですが、今度の国連の安保理事会にいらしたときに、こういった問題も議論にお出しになるかどうか。この点を承わりたいと思うのです。
○藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように、国連では委員会において侵略の定義その他について、国連憲章をどういうふうに解釈するかというような問題について進行しております。いろいろな議論があるのでありまして、まだしばらく決定の段階にはいかぬと思います。われわれとしましてもそういう意味でできるだけ委員会が国連憲章の解釈というものを統一するように考えております。
○戸叶委員 今回のレバノンにアメリカが兵隊を出し、ヨルダンにイギリスが兵隊を出したということは、いずれもこれはけしからぬことではございますけれども、ヨルダンにイギリスが兵隊を出した場合とレバノンに兵隊を出した場合との違いというものは、国連の方から安保理事会の承認を経て監察隊が先に行っていた。これがレバノンのケースだと思います。そしてその監察隊が安保理事会に対して兵隊を出さなくても乗り切れるというふうな報告をしているにもかかわらず、レバノンに兵隊を出したというところに問題があるのじゃないか、こういうふうに思いますけれども、この点はいかがでございますか。
○藤山国務大臣 国連の監察団が参りまして、活動を開始しておったわけであります。そうしてその国連監察団というものは、全部の国境を監察することがてきないで、若干の部分は監察できない状態にあったというようなことであります。しかしハマーショルド事務総長が行きまして、国境侵犯の事実がそう言われるように多くなかったということを述べておるわけであります。従いまして、これらの問題につきましては、その後ハマーショルド事務総長が安保理事会で、全部の国境に監察団を派遣し得ることになった、今後は監察団でも強化すればそういうことがなお適当に処理できるだろうということを言っております。われわれもその説に応じて、監察団の強化ということを事務総長に一任することが適当と思うのでありますけれども、そういうような事態でありますから、国連において何らかのこういう問題について結論が出まして解決することが適当であったかと思います。従いまして、アメリカが急いで、かりに法律上合法政府の主権者が要請したといっても、適当であったかどうかという点については、私も必ずしも適当だったとは、この時期においては承知できないわけであります。
○戸叶委員 きょう午前中も問題になったんですけれども、初めにレバノンの問題は国内の問題であるというふうに外務省が断定をして、すぐまた午後からはその方針を変えて、アメリカの決議案に賛成するというふうな、一日のうちにぐるぐる変っていったということに対しては、国連におる新聞記者の仲間にも非常に評判が悪くて、日本の外交は国内向けと世界向けと二つに分れているんだというふうな評判がもっぱらあったということさえ指摘されているわけでございまして、非常にその点は不手ぎわというものが非難されなければならないと思うんです。国民の私たちからしてみるならば、どうしてそんなに早く外交政策を変えたんだろうか、考え方を変えたんだろうかというふうなことが非常に不思議に思えるわけなんですけれども、こういう点について、私たちは国会におりますから、何とかかんとか想像はいたしますけれども、一般の人たちにはそういうことがわからないのであって、もっと率直に、考え方がこうだから変ったんだということを単刀直入に説明していただきたいと思います。
○藤山国務大臣 ただいまお話で、何か午前中と午後からと急に考え方が変ったんだというお話でありますけれども、そういう点はないのでありまして、当日あの最終的訓令を出しますのには、一日会議を続けまして、われわれとしてはいろいろな協議をいたしております。主として午前中はソ連の提案に対するわれわれの考え方をいたしておったのであります。午後からアメリカ案に対するわれわれの態度をきめるということで議論しておった。その間にもアメリカ案が変化をして参っております。そういう刻々の情勢を見ながらわれわれは検討して、最終的に私の責任においてああいう態度をとることに訓令をいたしたわけであります。その間何か私ども会議をしておりまして、夕刊にいろいろ出ておりますので、実に不思議に感じたのでありますけれども、私どもの態度としては一貫してそういう態度であったのであります。
○戸叶委員 藤山外務大臣が夕刊のせいにされるのは少し卑怯だと思うんです。私どもあれを読んだり、聞いたりしておりまして感じられたことは、はっきりと初めレバノンの問題は国内問題だということを言ってらして、そして今度はアメリカの派兵を認めたかのような態度をされているわけなんでして、この間において私をして言わしめるならば、結局今の政府の持っております外交三原則というものが非常にむずかしいんだ、やりにくいんだというふうな結論からこういうふうなものになるんじゃないかというふうに考えるんです。それはなぜかと申しますと、先ほど与党の佐々木さんからさえも指摘されましたように、アメリカと協調し、アジアの一環としていくというふうなことは、時と場合によっては両立しないと思うんです。このときにどっちに重きを置くかということになると、今の藤山外務大臣はどうしても自由主義諸国との協調という方に重きを置くために、どたんばにいって、やはり君子豹変でもございませんけれども、考え方が変っちゃったというふうに考えられるんですけれども、一体この点はどうでございましょうか。もう一度はっきり伺いたいと思います。
○藤山国務大臣 この問題につきましてわれわれはいろいろな検討をいたしたわけであります。御承知のように、国連憲章第五十一条の問題については相当法律的にもあるいは政治的にも問題を考えなければなりません。法律的見地からだけいいますと、合法政府が出兵を要求したということは、国際法上の従来の観念からいえばある程度認められるということも、これまたわれわれが故意に作った議論ではなくして、過去の実例がそうだと思います。そういうことを考えて参りますと、われわれはその問題をとやかく論ずるよりも、一日も早く具体的な方法としてアメリカが兵を引く方法は何であるかといえば、やはり監察団を強化するか、あるいは国連の警察軍を置いてそれに置きかえるというようなことが、一番早い時期にアメリカをして撤兵させることになろうかと思うのであります。でありますから、そういうことによって、われわれは現実の問題として、できるだけ早くアメリカに撤兵をしてもらうということが必要な段階であったと思うのでありまして、そういう意味において、その点だけわれわれは賛成をいたした、こういうのが事実でございます。
○戸叶委員 アメリカは兵隊を出してしまったんだから、この現実の上に立っての処理方法を考えたとおっしゃるのですけれども、私どもがアメリカともしも友好関係を結んでいくとするならば、やはりアメリカの悪かった点は悪かった点として、どこまでも究明していかなければやはりその非を繰り返さないとも限らないと思うのです。そういう意味からいって、日本の今の政府はアメリカと友好関係にあるということは、もう何度も宣伝してはっきりしているわけなんです。そうしてまた藤山外務大臣は大へんアメリカとの間に自信がおありになるようで、そういう立場にあるならば、私はむしろ今度のような出兵は間違っているんじゃないか、こういうことをすると今後困るではないかということをどこまでも究明する態度に出るのがほんとうのアメリカを思うあり方ではないか、こういうふうに考えるんですけれども、出してしまったんだからもうしょうがないというふうな形でのアメリカとの協調ということは、これはアメリカ追従外交であって、アメリカのためを思う親交、友好外交ではない、こういうふうに私は考えますけれども、その点についてどうお考えになりますか。
○藤山国務大臣 私どもとしましては、中近東が平和的に、話し合いの上で解決するということを絶えず念願をいたしておったわけであります。従いまして、レバノンの問題が起りまして国連に提訴をして以来、六月十一日の決議を支持したのもそれであります。その後も私どもとしては、アイゼンハワー・ドクトリンのようなものでもって行動することは適当でない、かえって中近東の事態を悪化させるという点は、私どもは友好関係を樹立する建前からいって、繰り返しアメリカに言っておったわけであります。従って今回の段階におきましても、あるいは今後の段階におきましても、私どもとしてはそういう考えを持っております。しかしながらできた事態を一日も早く片づけませんければ、問題の解決はできないのでありますから、そういう意味から言うと実際の国連の場において一日も早くアメリカが兵を引く方法がとり得られるならばとるべきが、一番問題の解決をスムーズにしていくことであろうと私どもは考えておったわけであります。
○戸叶委員 私はやはりそうした間違った態度に対してはどこまでも追及して、再びそういうふうな非を繰り返さないようにしてもらわなければ、少しもアメリカとの友好関係を結んでおるということは言えない、こういう考え方を持っておるわけです。今外務大臣は、今度レバノンにアメリカが兵隊を出したことに遺憾の意を表しておられますけれども、そういうふうな気持が出先の人たちにはある程度伝わっておらないで、下田公使が十七日に米国国務省に釈明をして、ウィルコックスという国連担当事務次官補と会見をして、日本は国連の安保理事国として、あるいはまたアジアの一員の日本として、中東問題はアメリカの立場を支援することが正しいというようなことを言っていると新聞は伝えているわけでございます。これは事実かどうかわからないのでございますけれども、おそらく私はこれは事実であろうと考えるので、こういうふうな点から見ましても、何か外務省の外交政策というものの一貫性がないということを私は考えざるを得ないのですが、こういうことを御存じでいらっしゃいましょうか。
○藤山国務大臣 問題が起りましてから、われわれ在外公館としては最大の活動をいたしておるつもりであります。従いましてアメリカばかりではございません。各国の外務省なりその他とできるだけ緊密な連絡をとってやっておるのでありまして、下田公使もそういう意味において数回アメリカ当局と話し合いをされたことは事実だと思います。しかしお話のような決定的な話を下田公使がいたしたとは、われわれ考えておりませんし、またわれわれの態度というものが逐次わかって参りますれば、そういう発言もすることはなかったのではないかと思います。しかしながら何といたしましても、とにかく刻々に変って参ります情勢に応じて本国の訓令を出して参るわけでありますから、そういう時間的な制約もいろいろありまして、必ずしもその場その場の一々の応対が日本のそのままの筋に乗らぬ場合も若干はあり得るかと思います。しかしこれはやむを得ぬことだと私どもも考えておりまして、われわれのとりました態度については、先ほど来申し上げているように私は一貫しておるつもりでございます。
○戸叶委員 刻々といろいろな情勢が変化することは私も認めますけれども、ただその場合に大事なことは一つの中心、中核というものを持っていなければいけないと思います。一つの信念なり、一つのイズムというものを持った上に立って、刻々と変っていく外交政策に適応していくということが必要であって、信念がなくこっちへふらつきあっちへふらつきするところに、私は日本の外交がよろめき外交であるといわれる一つの理由があるのじゃないかというふうに考えるわけでございます。
 そこでお伺いしたいのですが、もしも自由主義諸国との協調ということと、それからアジアの一員としていくという、この二つの場合が同時に起きて、そのどっちかに重きを置かなければならないという場合ができたときには、外務大臣として今の場合どちらをお選びになりますか。
○藤山国務大臣 仮定の御質問でありますから、非常にお答えがむずかしいのでありますが、むろんアジアの一員の中にもいろいろな立場をとっておる国もございます。ただわれわれは共産主義と自由主義という立場においては、日本ははっきり自由主義を支持しておるのでありますから、自由主義の線で問題が解決できるようにやっていくのが、われわれの今日の根本的な態度であることは、むろんこれは間違いございません。しかしながら自由主義陣営の中にも、アジアの中にもいろいろの立場をとっておる国があり、利害関係が錯綜しておりますと同じように、いろいろ立場があるわけであります。意見の相違もございます。従いましてこれらについては平素から十分意見の交換をし、率直にやっていくことが必要なことだと考えております。
○戸叶委員 その問題についてもうちょっと伺う前に、外務大臣が午前中の答弁におきまして、今度の中近東の問題は一日も早く平和的な解決を望んでいる、こういうふうなことをおっしゃっておられるのですけれども、平和的な解決というものの具体的なものは一体何でございましょうか。消極的静観、積極的静観いろいろあると思うのですけれども、一体どれをおとりになるか伺いたいと思います。
○藤山国務大臣 先般の事態におきまして、一歩間違いますと、アメリカの意図しないような大きな発展を見るし、あるいはソ連の意図しないような大きな発展を見るのではないかという憂慮がされただけに、世界が心配いたしたのだと私は思います。従って一日も早く国連のワクの中で、軍というものなしに、できるだけ話し合いで平和的に解決するということが、当面私どものとるべき一番必要な態度であったのではないかと思うのであります。でありますから、アメリカができるだけ早く撤兵をして、そして平和のうちに話し合いをする、こういうことでわれわれは善処してきたわけであります。今後ともわれわれはそういう意味において、国連を中心にして国連の中で十分に話し合いをして、そして討議を尽して世界の大きなこうした問題についての解決案を練っていくことが必要であろうと思います。その意味におきましては、両陣営がやはり互譲妥協の精神を持って平和という目的のために話し合いをしていくということが一番最良な道であり、日本としてはその道に沿うようにできるだけやって参りたい、その努力を続けていきたい、こう考えております。
○戸叶委員 アメリカを中近東から撤兵させることと、それからイギリスもアメリカも中近東に対しては非常に執着があるわけでございますけれども、こういったものをある程度なくすというふうなことが、中近東の平和的な解決に非常に役に立つというふうに考えますが、これについていかがお考えでございますか。
○藤山国務大臣 今日の世界においては、第二次世界大戦後植民地も解放され、大きな文化的な知的交流も行われております。ことに今までは新聞紙等がありましても字が読めないというような状態もありましたが、耳からラジオ等で入ってきますいろいろの時代感覚というものは、悪い意味での侵略ということでなしに、相当に浸透するのじゃないかと思います。そうすると、アラブ・ナショナリズムが植民地解放を受けて後の国民運動としては、事態の状況に応じて今後とも相当に進んでいく状態だと思うのであります。そういう問題について、われわれは先ほど来申しているように、自由主義陣営のものは、それが共産主義陣営に走らぬように、自由主義陣営の中でともに幸福にいけるようにできるだけの努力をして参りますことが一番大きな解決策だと思うのであります。そういう意味から考えますと、過去に持っております各国の利権等につきましても適当な話し合いがつくことが必要なんでありまして、そういう問題についてはやはり平和裏に話し合いをしていく、また西欧もそれらのものを通じて援助していくというようなことがアラブ・ナショナリズムというものを共産主義陣営に追いやらぬための自由主義陣営の考慮でなければならぬのじゃないか、こう考えております。
○戸叶委員 そういうふうな外務大臣のお考えも伺いましたし、午前中には、やはり英米に対してナショナリズムというようなものに対しての認識を持ってもらうために、いろいろな点で説き伏せていくというような御答弁がございましたので、そういうふうな努力は口だけでなく、ぜひ在外公館の方たちにもしていただくような努力をしてもらいたい、こう考えるわけであります。さらにもう一つの解決の方法として、今問題になっております首脳者会談の問題でございますが、これは午前中の質問にもございまして、積極的に日本が出ていくべきではないかというふうなことも言われたのですけれども、それに対してのはっきりした御答弁を伺うことができませんでした。私がこの二十六日のジャパン・タイムスに出ておるものを読んでみますと、岸さんもこの会議にもし招待状がくるならば行くであろうというふうなことが発表されており、そしてまた藤山外務大臣も招待状がくるならば行くであろうし、それは近い機会にそういうことがきめられるであろうというふうなことを発表されております。また外務大臣としても、もし自分が行くような場合には喜んでニューヨークのその会議に行くけれども、おそらくそれは外務大臣級の会談ではないだろうというようなことも言っていられる記事が、ここに出ているわけでございますけれども、私どもとしてみますれば、もっと積極的に岸首相が乗り出して問題の解決に当るべきだというふうに考えるのです。招待状が来るならば行こうというふうなお気持、これは少し消極的過ぎやしないかというふうに懸念いたしますが、これはどういうふうにお考えになるかということが一つと、それから招待状というのは一体どこからの招待状が来たら行くというお考えなのか、この二点を伺いたいと思います。
○藤山国務大臣 招待状が来るか来ないか、今後の動きでありますけれども、たとえば安保理事会におきまして、お話のように常任代表が集まって会期をきめるあるいはどういう議題かきめる、構成をどうするというような問題が今後行われると思います。でありますから、招待状が来るとか来ないとかいう問題は、あるいは全然別個の何カ国会議というのと違いますので、そういう招待状が来るとか来ないとかいう事態は起るか起らないか予見できません。しかしながら、とにかく国連の安保理事会を中心にして、あるいは国連のワクを中心にして、いろいろな問題を解決していきますときに、各国とそれぞれ協調した態度をもちまして、われわれの方で代表を送るということは当然のことなんでありまして、従ってこれに対してわれわれは積極的に協力をしていく心づもりでおるわけであります。ただ招待状が来たら行くとか、来ないから行くとかという問題ではないと思うのであります。従いまして、こういう問題については今後の経緯を見ながらわれわれは考えるわけであります。総理としても私といたしましても、問題がありまするならば、われわれとして行くことに決して消極的な態度をとっておるわけではございません。
○戸叶委員 そうしますと、米英仏、こういった国々がある程度こういうふうな内容で、こういうふうな形で首脳会談をやりましょうというふうな、そうした案が半分ぐらいコンクリートになりかけたときに、こちらの方も乗り出していく、そういうふうにお考えになっていらっしゃるわけですか。
○藤山国務大臣 御承知のようにこの問題の起りましたのは、フルシチョフソ連首相が五カ国に呼びかけまして、そしてこの問題を提起されたわけでありまして、初めのいきさつから申しますと、それに対するアメリカなりイギリスなりあるいはフランスなり、そうした呼びかけられた国との間の話し合いによって問題がきまっていくと思います。現在その段階でありまして、だんだん両者の意見が接近しておるのでありまして、何らかの形で具体的に安保理事会の席なりあるいは安保理事会の必要によって開く別個の問題という形でだんだん落ちついていく情勢に現在あろうかと思います。従いまして、それらの情勢を今しばらく見ながらわれわれは考えて参りたい、こう思っております。
○戸叶委員 午前中にも非常に積極的な御意見がございましたけれども、私どもも自由主義陣営の協調とアジアの一員というふうな両方の旗を掲げている日本として、今度の問題で一番積極的に両方のかけ橋となって働き得る立場にあるのじゃないか、こういうふうに思いますので、もう少し平和的解決を望むというふうな御意向がおありになるならば、もっと安保理事会に、自分たちは首脳会談をするならこういうふうにした方がいいとか、そういった積極的な解決策をどんどん出されて、そしてこの問題の解決に当っていただきたい、こういうふうに要望をいたしたいと思います。
 それから次の問題に移りますが、先ごろ海上保安庁の船の「拓洋」と「さつま」この乗組員が放射能を受けて非常に苦しんでいるような記事を見たのでございますけれども、この人たちの被害状況というようなものは一体どうなっているか、伺いたいと思います。
○藤山国務大臣 詳しいことは政府委員から御答弁させますが、先般海上保安庁の地球観測年の観測に従事しております、ただいま御指摘の「拓洋」と「さつま」の二隻が、いわゆるアメリカの設定しましたエニウェトクの危険海域を百五十海里離れておりますところにおって、非常に大きな驟雨がきたわけであります。その驟雨にかかりました結果被害があったようでありまして、ラバウルに入港いたしまして、その事実はある程度確認されてきたわけであります。詳しいことは政府委員の方から答弁いたさせます。
○森説明員 大臣の御説明を補足して御説明申し上げます。大臣も申されましたように、国際地球観測年計画に基きます赤道付近の海流調査のために、海上保安庁測量船「拓洋」及び巡視船の「さつま」が七月上旬に東京港を出港したわけであります。七月十四日以降両船はエニウェトク危険区域外の西方水域約百八十海里の地点におきまして相当の量の放射能を雨水、海水、船体各部位から検出いたしたわけであります。特に「拓洋」は先ほど大臣も申されましたように、七月十四日にエニウェトク環礁西方約千五百キロの地点におきまして、スコールに遭遇いたしまして、このスコールの中から相当量の放射能を検出いたした次第でございます。そこで、海上保安庁といたしましては両船に対しまして直ちに観測作業を中止して、危険区域から遠ざかるように指令いたしました結果、両船は七月十九日にオーストラリアのラバウルに入港いたした次第でございます。そこで直ちにオーストラリア政府に対しまして、現地における両船員の取扱いその他に関して便宜を供与してくれるように依頼いたした次第でございます。次ぎましてアメリカ側からもし日本側で希望すればエニウェトクに待機中の放射能関係の医者及び放射能除去作業関係の要員を航空機でラバウルに派遣する用意があるという申し出がありましたので、関係方面とも打ち合せました結果、その申し出をいれて、二十五日にこれらの米国関係の要員はラバウルに到着いたしまして、翌日から直ちに乗組員の検査及び船体からの放射能の除去作業に従事いたしておる次第でございます。今日までの結果によりますれば大体二十八日ごろはラバウルを出港して日本に帰港して差しつかえない、その程度のものであるということになっておりますが、なお精密検査の結果は、本日もう少したちませんと判明いたさないというのが現状でございます。
○戸叶委員 これはこの前の福龍丸以来の大きな問題だろうと私は思います。ことに原水爆の実験をやめてほしいという国民の悲願にもかかわらず、それを強行し、そうして危険水域以外のところでこうした放射能をこうむったということは、これは非常におそろしい問題でございまして、公海の自由も何も全くなくなってしまうのじゃないかということを非常におそれるものでございます。今度の問題に対しまして、一体日本政府としてアメリカ政府にどういうふうな形の抗議なり、補償要求なりを申し入れされたか、この点について承わりたいと存じます。
○森説明員 ただいまのところ先ほど申し上げました通りに、事態を究明するのに努めておると同時に、船員及び船体の安全を確保するための善後処置、もっぱらその点に重点を置いて考えてきた次第でございます。かたがた米国政府に対しましては、ただいま戸叶委員の申されましたように、この両船が観測作業を中止せざるを得なかった事実及び両船が放射能にさらされたのは、設定された危険区域外であったという事実について注意を喚起いたしております。今後の措置につきましては、事態の判明を待って処置いたす所存でございます。
○戸叶委員 この問題は、この危険区域外に起きた非常に残念な事件でございますけれども、当然アメリカに対しての補償ということの請求権はあるにしても、危険区域の中にあったよりももっと大きな補償なり抗議なりというものが強く出されなければならない。一応危険区域というものを勝手に指定して、そしてその中に入るなと言ってきておるのですけれども、それに対しても私たちは非常な憤りを感じますけれども、今回はさらに危険区域として指定された以外のところで起きたということで、問題はさらに大きく考えられなければならないと思います。そういう意味におきまして、補償の問題などもよほどよく考えて、そしてまた再びこういうことが出ないような形でのアメリカとの話し合いというふうなことをしていただきたい、こう考えますけれども、外務大臣の御所見はいかがでございますか。そうでないと、やはりアメリカとの友好関係なり、アメリカとの協調といいましても、そういった迷惑をかけられることはかけられていて、そしてアメリカの弁解をするのは日本がするのだというふうな態度では、どうしても私たち日本国民として納得できないものでございますから、どうぞこの点に対してのはっきりとした態度をお示し願いたいと思います。
○藤山国務大臣 ただいまお話のありましたように、この問題はまことに遺憾であり、残念なことだと思います。従いまして、日本としては事実の上に立脚し、十分結論を出しました上で強硬な抗議を申し込む。また今後補償等の問題についても、できるだけ事態に即した問題として提起して参りたい、こう考えております。
○戸叶委員 八月は平和大会が日本で開かれることになっておりまして、そのときにもおそらくこういうふうな問題をも取り上げて、さらに強く原水爆の実験禁止なり、それから核非武装化ということがうたわれるだろう。そしてその効果を上げていきたいということを私どもは念願しているわけであります。そのときにおそらくいろいろな国からの代表者が、その大会に出席するために来ると思うのですけれども、その大会に出席する人たちに対しましては、どこの国からくる人にでも日本への入国を許す。そうしたパスを出すだろうということを当然のこととして考えますけれども、いかがでございましょうか。
○藤山国務大臣 ただいまお話のように、核実験禁止の問題等につきましては、われわれとしても今日までとってきた態度をさらに強めて、今後も国連等の実際の場において、この問題を一日も早く解決するように努力をして参りたいと思います。
 平和大会に対する入国者の問題でありますけれども、各国からこれらの人が人道上の見地から参りますことについてわれわれは異議を持っておりません。ただしかしながら分裂国家の場合においては、分裂している国の事態というものを考えまして、相当考慮せざるを得ない点があろうかと思います。
○戸叶委員 たとえば韓国あるいは北鮮というような場合に、一方には許して一方には出さないとか、あるいは両方とも出さないとか……。どういうふうにお考えになっておりますか。
○藤山国務大臣 分裂国家の場合は非常にデリケートな問題があるわけでありまして、一方が出席すれば一方は欠席するというような事態もあるわけであります。でありますからそういう問題については、われわれとして適当に考えざるを得ない場合があろうかと思います。
○戸叶委員 しかしこれは平和の問題でございますし、何もほかに意図あっての入国というわけでございませんから、当然私はこの平和大会に出席する人に対しての入国許可ということは、政府としてすべきではないか。しかも政府が原水爆実験禁止ということは、心から望んでいられることでございますから、その会議に出席する者を何ら拒む権限はないと思うのですけれども、この点についてどういうふうにお考えになりますか、重ねて伺いたいと思います。
○藤山国務大臣 一方が出席すれば一方が出席しないという問題もありますので、友好国の方で出席したいという方がそういう場合には先決問題になり得る場合もあるということをただいま申し上げただけであります。
○戸叶委員 今ちょっと外務大臣の初めの方がわからなかったのですが、さっきの御答弁によりますと、分裂国家の場合には、一方の国が出席する場合には他方は出席しない、こういうふうな建前をとっているようだというふうなお答えでございましたけれども、韓国と朝鮮の例を引いてみますならば、もし韓国の方が来ないけれども朝鮮の方が来るというふうな事態が起った場合には、やはりそれは受け入れていただけるものと思いますけれども、いかがでございましょうか。
○藤山国務大臣 韓国が出席するという場合と北鮮が出席するという場合、かりに北鮮が出るから韓国が出ないというような場合が起ってくることがあります。これは西独と東独の場合においても同じようなわけでありますが、そういう問題につきましてはわれわれは一応友好国の方を先にすべきでなかろうかと考えております。
○戸叶委員 韓国が来るというふうな希望を持っておれば別ですけれども、韓国の方が来るという希望を持たないで、北鮮だけが来るという希望を持っておる場合には、それは許していただけると思いますけれども、いかがでございますか。
○藤山国務大臣 分裂国家の場合には、今申し上げたようなデリケートな問題があるわけでありまして、それらの問題につきましては、事態の情勢に応じまして最終的に判断すべき問題だと考えます。
○戸叶委員 今の外務大臣の含みのある御答弁を私はいい方に解釈いたしまして、その揚に応じて適当に考えるというふうに私は了承しておきたいと思います。
 それから最後に一点伺いたいことは、日韓会談の問題でございますけれども、先ごろ新聞発表を見ますと、この七月八日に外務大臣が、李ラインとか漁船拿捕、抑留邦人漁夫の釈放、こういった問題は早期解決の見込みがないというふうなことを発表されております。その後、非公式ではございましょうけれども、林首席代表と柳公使あるいは矢次一夫氏、岸首相等がお会いになりまして、何かお話をなされたようでございますけれども、何か日韓会談の明るい見通しについてでもお話になったのでありましょうかどうでしょうか、伺いたいと思います。
○藤山国務大臣 林代表が八月一日に約十日間の予定をもって本国に帰ってくるのであります。その帰国前に私と総理にあいさつをしたいということであります。従って私及び総理は林代表のあいさつを受けたわけであります。特にわれわれとしてはできるだけ早く日韓会談を円満に解決して参りたい。それには一番問題は、漁業代表がまだ米ておらぬので、漁業代表が一日も早く来ることを要望いたしておるわけであります。
○戸叶委員 その中に、一番問題になっている矢次氏がおられたようなわけで、この方が韓国の問題については相当自信がおありのようでございますけれども、そうだとするならば、漁業代表がいつ来るとか、そういった日韓会談の一つの進展のためのめどか何か、そこでお話し合いなすったかどうか、ただ単にお茶を飲んで別れたというだけでもないように思うのでありますけれども、いかがでございましょうか。
○藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように、林代表が八月一日から約十日間の予定をもって帰る、そこで外務大臣やあるいは総理大臣にもあいさつをして帰りたい、こういうことでありましたので、われわれは会ったわけであります。従ってこの会見におきまして、特別に何か日韓会談間の問題を論議したわけではございません。ただわれわれとしては、やはり漁業代表ができるだけ早く来なければ、一番大きな問題でありますこの問題が進展しないために、日韓会談がなかなか進展しないと平素から考えておりますことを、申し述べたにすぎないのであります。
○戸叶委員 それでは漁業代表は一体いつごろ来られるというような話し合いをされたのでしょうか。
○藤山国務大臣 林代表は、自分が帰国する前から、漁業代表ができるだけ早く来るように要請しているが、自分が帰るまでに来なければ、自分は韓国へ帰って漁業代表ができるだけ早く日本に着任するように話をする、こう簡単に返事をされたのであります。
○戸叶委員 ここにもやはり私ども二元外交を見ざるを得ないのでございまして、正当な筋での外交でなくして、矢次氏が入ってこられる。入ってこられても、それがもしも成功するならいいのですけれども、何か日韓会談もそのままストップしてしまって進展を見ない。しかしそれでもなお矢次氏が韓国と往復して、しかも岸さんの親書を持っていくというような、こうした何かわからない黒幕の外交というふうなものは、やはりもう少しすっきりした方が、日韓会談というものはうまくいくのじゃないか、私などはそういうふうに考えるわけでございまして、こういうところにも国民の疑惑の目が向けられているわけでございますから、この点についても大いに考えて、もっとすっきりした外交方針をとっていただきたいと私は思います。
 それからこれに関係いたしまして、大村収容所におられます人たちのことですが、これはいろいろ問題がございましょうけれども、ともかくハン・ストまでやって命を縮めた人たちさえいるわけでございますので、こういうふうな人たちが一日も早くその希望する国に帰れるようにしてあけてほしいと私は思いますけれども、これはどういうふうになっているか、伺いたいと思います。
○藤山国務大臣 この問題につきましては、法務省と緊密な連絡をとってやっておりますが、先般のハン・ストによりまして、その結果として、釈放をしていく方針を進めまして、保証人その他の問題もありますから、若干おくれておりますけれども、ごく最近の機会に、予定されたような三年以上の人々が、まず第一に釈放されて参ると思います。私どもといたしましては、この問題は人道上の問題でありますし、韓国側に帰す義務を負っております。従ってその線に沿って今後とも善処して参りたいという考えであります。
○櫻内委員長 大西正道君。
○大西委員 だいぶ中近東の問題について承わったのでありますが、アイクの教書を見ますと、派兵をすることは、これはよほどの重大なことである、しかしこの危険を冒してもなおわれわれはこの際断固派兵するのだ、こういう非常にきっぱりした決意を述べておるのであります。幸いにしてこの問題につきましては、ソ連が自重をしておりますので、今のところ事は破局の段階には至らないようでありますけれども、アイクが申しましたごとく、私はこの問題はなお今後事件の進展いかんによっては重大なことになるし、それは単に中近東の問題のみならず、米ソの世界的な対立の中におきましては、極東におきましても、またわが国もその渦中に巻き込まれるというような、そういう連鎖反応的な危険が十分あると思うのであります。そういう意味で非常に重要事態に際しての外務委員会であって、私はもっと早くこの委員会か開かれてしかるべきであったと思うのであります。従って今日私どもが大臣にただしたいことは、ただ政府のこれまでやって参りましたところの処置についてあげ足をとるとか、そういうふうなけちな気持ではございません。まかり間違えは今申しましたように、第三次世界大戦にも発展するような事態であるという感覚のもとに、質問をするのであります。
 この事態の発端は、今るる申し述べられたように、米国の派兵がきっかけであると思います。私どもは初めにあなたの談話、声明等によって明らかなるごとく、この中近東の事態は、イラクの問題もレバノンの問題も、これは単なる国内問題である、従ってこれに対して米国が派兵するという理由はない、こういうふうな立場が正しいと思います。政府の方も初めはそういう見解をとっておられたことは明らかであります。ところがその後、あなたはよろめいてはおらぬと言われるけれども、現地における代表の発言、あるいは各国の決議案に対する日本の態度、さらに日本の決議案の内容などを見ますと、幾変転、紆余曲折をいたしております。こういうことは結論といたしまして、あなたはかなり日本の努力は成功であったし、国際的にも認められたというような自画自賛をしておられますけれども、私は日本のあの決議案が採択されて事態が一転したということならば、そういうことも言えると思うけれども、今の段階では十カ国の支持を受けたからといって、日本の決議案は何ら実らなかったのであります。そういうふうな評価というものは過大評価である、こういうふうに私は考える。私はどうしても問題を初めに戻して、米国の派兵というものが国連憲章に照らして正しいものであるかどうか、この問題の価値判断、是非というものをはっきりして、そうして事態を収拾するにはどうすればいいか、こういうふうに話を段階をつけて発展させなければならぬと思います。そういう意味で私はお尋ねいたしますが、政府の把握しているところでは、米国はどういう法的根拠あるいは政治的理由でもって、レバノンに派兵をしたのであるか、この点を念のためにもう一回簡単にお聞きします。
○藤山国務大臣 アメリカは派兵に当りまして、一応三つの理由をあげております。一つは国連憲章五十一条における侵略があったということ、それから第二は合法政府の主権者が要請をしたということ、そして第三は在留民の保護、こういう三つをあげております。
○大西委員 この三つに対しまして日本政府の態度は、アメリカのその理由というものは納得できる、こういうふうに考えられますか。今までのお話を聞いておりますと、不明確なようで非常にあいまいである。こういう問題につきましては、あとの判断の根拠になることでありますから、今日までとって参りました行動もこういう理由についてはっきりした判断をして、そうしてその上に立っての行動であったと思うのでありますから、はっきりと一つお答えを願いたい。
○藤山国務大臣 合法政府の主権者の要請によって兵を出すということは、これは従来の国際法の観念の上からいって別段不当だとは言えないのでありまして、そういう意味においてわれわれはその点を認めております。それが政治的にいいか悪いかは別にして、法律上はそういうふうになっております。それから国連憲章五十一条の侵略というものは、範囲を拡大して解釈するかしないかという事実問題にもなってくるわけであります。私は必ずしもこれは適当であるとも思いません。また在留民の保護という問題につきましては、合法政府が国内騒乱によってどの程度外国在留民を保護し得る能力があったかなかったかという事実問題だと思います。合法政府の要請の中に含まれる問題だと解釈しております。
○大西委員 三つの理由についてそれぞれの見解が表明されたのでありますが、合法政府の要請によって派兵をするということは法律的にはよろしい、しかし政治的な判断は別だ、こういうふうに言われるのでありますが、私は法的にもこの点は十分問題があると思う。まず政治的にはこれは別だと言われるが、それでは政治的にはどのような判断をされたのか。
○藤山国務大臣 事態が非常に大きく発展する可能性のある問題でありますから、やはり適当にこれらの問題を考えてアメリカが善処すべきであった、こう考えております。
○大西委員 アメリカが善処すべきであったということは、この理由においては派兵は政治的にはよろしくない、こういうふうな判断ですか、善処というのはどういうのですか。
○藤山国務大臣 私どもは、合法政府の主権者が要請してアメリカが出したということに対して、それが国際法上の違反だとは考えません。しかしながら前から申しておりますように、中近東の事態に対しまして軽率に兵隊を動かし、アイク・ドクトリン等適用するということは必ずしも適当でないということは、われわれがずっと前から言っておったのでありますから、そういう意味においては私どもはそう考えております。
○大西委員 適当でない、こういう見解でありますね。さらに法的にはこれは合法的だと言われるのですが、私はそういうことが国際法上の慣例ということになっておると言われる意味かとも思いますが、そういうことにつきましてははっきりした根拠が別に何かあるのか、その点をお教えを願いたい。
○藤山国務大臣 法律について条約局長から……。
○高橋説明員 ただいま御指摘の点でございますが、やはり一国が要請し、要請された国がそれを承諾する場合は、これは派兵は合法的になるんだと思っております。と申しますのは、一つの国が独立国である以上、独立国の主権の当然の作用であって、その主権的権限の範囲内のことをやったものである、従いましてその点につきましては、純粋に法律的に言えば合法であるというふうに考えます。
○大西委員 具体的な事実でありますからその点を申し上げますが、これは大統領の要請によって出た、これが合法だ、こう言われるのであります。しかし政治的な判断を加えますれば、大統領の選挙をめぐってむしろ大統領側が憲法違反の行為に出ようとしてあの紛争が起きたということは、これはだれ疑うことのない事実であります。従いまして、合法政党といいながら憲法に違反しようとするのが合法政党であるということは、形式的に言われても事実問題として私は非常に疑点がある。特にこの問題につきましては議会の議長が強い反対を示しておるということは、私は、形式的には一応合法政府の要請であると申しましても、レバノン国民の総意ではないという考えから重大な疑義がある。その点につきましては、政治的には好ましくないということを外務大臣から言われました。その点は納得いたしますが、こういうふうな一国からの要請によって、そうしてそれが合法であるから他国に兵を出す、こういうことが過去の国際場裏におきましては絶えず行われて、そうしてそれが戦争のきっかけになったということは、外務大臣十分御承知の通りである、だれも侵略すると言ってやったものはありません。自衛だと言い、あるいは他国のやむにやまれぬ要請だと言い、そういう理由のもとに兵を出しこれが戦争になったということは、これは過去の歴史が教えるところで、私が言うまでもない。そういうふうな過去の事実から、新たなる国際連合はその憲章を定めるに当っては、そういうふうな自主的な自衛権は認めるけれども、それの乱用を避けるために、国連憲章五十一条のこの制限規定があると私どもは思うのでありますけれども、この点はいかがでございますか。
○藤山国務大臣 法律論として、果してそういう問題を念頭に置いて五十一条ができたかどうかということは、ちょっと私から申し上げかねます。しかしながらたとえばハンガリーの場合にソ連が出兵した、これは合法政府からの要求だということに対して、必ずしも自由主義陣営が賛成しておらなかったわけであります。そういう点から見ると、私は政治的には今度のやり方は適当でなかったのじゃないかということを申し上げておるのであります。
○大西委員 それはあなたの見解というのはよくわかっております。そこで私は国連中心主義を唱える政府の態度、これはよろしいのですよ。従いまして、こういうような紛争した国際問題を処理するためにはどうしても国連中心主義というなれば、国連憲章に従って行動するということが大事であって、従ってもし今言うところの一国の要請によって派兵するということが国際慣行として批判すべき余地はないとしましても、国連憲章五十一条によって、武力攻撃の場合を除いては個別的並びに集団的な自衛というものは禁止しておる。そういう意味から申しまして、当然国連の中における中心的な役割を占めておるところの米国、国連中心主義を唱えるところの日本は、むしろこの際国連憲章の五十一条を優先すべきではないか、そういうふうなことを私は考えるがどうかということを申し上げておる。
○藤山国務大臣 この問題について、当時の現実の事態から申し上げまして、基本的な法理論その他でもってやってじんぜんとして日を暮すということは、私はあのときの状況が一触即発のような、先ほど大西さんも言われましたような事態で、一日も早くこれは何とかしてやらなければならぬ、そうしてその一つは、やはりよかったか悪かったかは別として、出したアメリカ兵を引き揚げるということでなければならぬ、それがいいと思うのでありますが、それにはアメリカ自身も、国連警察軍ができるならば兵を引くと言っておるのですから、兵を引く方法が一番早くとられることが根本的に、当時の非常な危険な状態を脱出し得る私はただ一つの方法でなかったか、こう思っております。従いまして国連がこうした問題に対して、ただいま御説明申し上げましたように、国連の中の委員会等におきましても、五十一条の解釈その他については委員会ができて論議をいたしております。われわれとしては、今後再びこういう問題が起らぬように、またその解釈があいまいでないように努力していくのが一つの適当な解決方法だ、こう考えております。
○大西委員 日本政府代表が解決のために熱意を傾けているということに対して、私どもはとやかく言っておるのではない。しかしながら、その解決の前に、アメリカの派兵は許すべきか許されざるべきかということに対しての評価、価値判断というものをはっきりして、是は是なり、非は非なりとして、しかる後にこの対策が打ち出されるのが順序です。ところが、それは米国との関係もありましょうけれども、日本政府の態度というものは、初めは内政問題と言いながら、途中でこれがくずれてきた。そうして松平代表の討論の内容を見ますると、まことにもって、国連憲章五十一条に従っても、違反であるかのごとく、ないかのごとく、まことに微妙なあいまいな表現を用いておる。だから、そういうふうなところで解決を急ごう、収拾を急ごうとしましても、それは無理なんです。まず判断をして、そうしてその上で解決を急ぐということが私は順序だと思う。だから、私はその意味において日本政府の解決を急ぐ努力は決して無視はいたしませんが、この派兵の是なりや非なりやということの判断だけは、厳格に国連憲章に従ってやらなければならぬ。私はどの理由もないと思うのです。ないと思うのだが、国連憲章五十一条によっては、武力の攻撃がないという、この事実から見ても、これの援用はできないと思う。さて、しからば何かといいますと、今申しました一国政府の要請によってこれは出兵できるのだ、こういうところに米国は逃げ道を求めておるから、それに対して日本政府も、政治的にはこれはよろしくないけれども、法的には理由もあるというふうな、アメリカの主張に若干左祖をしたような説明であるから、それもこういうふうに相対立したと申しまするか、一致しないところの立場に対しましては、国連憲章五十一条によって、これが優先すべきであるということを確認すべきじゃないか。それが私は国連中心主義の立場だと思うし、そういう判断に立たなければ、いたずらに国連憲章あってなきがごとく、そうして従来の慣行によって一国の要請があれば何ぼでも出ていく、こういうことになるのじゃないですか。ですから、私はそういう問題につきましては、当然国連優先の原則によって、米国の派兵というものはどうしても、どの面から見ましても理由なし、合法でない、こういう判定を下すべきじゃないかということを言っておる。国連憲章に対する尊重の立場をとられる外務大臣、この問題に対しましてどちらの考えを是とされるか。
○藤山国務大臣 われわれは国連憲章を尊重しておりますが、御承知のように国連憲章についての解釈その他については、先ほどから申し上げております通り、委員会等において検討が進められておるわけでございます。そういう意味において、問題はあろうかと思います。従って、そういうような法律論だけを戦わしておりましても、現実の解決はできぬ。あの事態に長く放置しておきますことは、先ほど大西委員もお話のありましたように、もし間違えば一触即発の非常に危険な状態にある。それには一日も早く、何かアメリカ側が兵を引く方法があり得れば、そういう方法によって兵を引くということが、危険を回避するまず第一段だということで、私としては終始そういう処置をいたして参ったわけであります。
○大西委員 その点は私も認めておる。認めておるけれども、派兵がよいか悪いかということの判断なくして自後の収拾をなし得る根拠はないじゃないですか。その点、私の主張はお考えになれませんか。納得できませんか。私は、当然それが一つの考えの順序だと思う。しかし判断は、これは米国の派兵はよろしくないとしても、その点を追究することに第一に重点を置いたソ連案というものは、政治的にこれは事態の収拾の方策じゃない、だからわれわれは別の方策をとる、こう言うなればわかる。しかし事の判断というものを明確にしないで、ただ事態の収拾をはかるというこのことについては、私は日本政府のとった態度は間違っておるというのじゃないけれども、その前の問題に対して何とされるかということについてお尋ねしておる。国連加盟国は、国連憲章は他のあらゆる国際的な条約、法規に優先するということは、百三条によって明らかであります。この点についての見解はいかがですか。
○藤山国務大臣 それでありますから、ただいま御説明申し上げましたように、私どもとしては国連憲章の解釈について、法律論をやっておりましたら、いつまでも問題はあると思います。またただいまお話のように、一国の合法的な政府の主権者が要請すれば兵を出す、これも法律論からいえば、そういうふうに解釈が今日までされるわけでありますが、しかし必ずしも適当だとは思いません。従ってそういう意味において、われわれはアメリカ案についても留保をつけましたけれども、しかしその態度というものはそういうふうに表現いたしております。そうして、われわれとしては一日も早く具体的な解決策を講じていくというところに重点を持ったわけであります。
○大西委員 その点は私も認めておるのです。――それじゃこういうふうに聞きますが、国連憲章の第百三条によって、国連加盟国は、国連憲章優先の義務を持っておるということ、これは確認されますか。
○藤山国務大臣 国連を尊重して参ります以上、国連憲章を十分尊重して参ることは当然のことであります。
○大西委員 そうした場合に、今回のような事態のあった場合に遭遇したときに、派兵の問題をめぐって、片一方では今日までの国際慣行によって、一国の要請によっては派兵もできる、それに従ってやった。ところが一方の国連憲章の五十一条によっては、武力攻撃のほかはこれはすることができないのです。自衛権――集団的な、個別的な自衛権も行使することはできないのであります。そのいずれを重く見られるかということであります。
○藤山国務大臣 法律論は条約局長から……。
○大西委員 いや法律論じゃないのです。条約局長はよろしい。
○櫻内委員長 一応お聞き願います。
○高橋説明員 ちょっと補足さしていただきますけれども、ただいまの派兵の問題でございますが、実は五十一条は武力攻撃ということが規定して書いてございます。従いまして、この武力攻撃をどういうふうに解釈するかという一つの問題もございますけれども、集団的自衛権が発動していく場合には、これは一般的に申し上げまして、相手国政府の承諾も要らないというふうに、その相手国が攻撃を受けましたら、それはすなわち自分に対する攻撃として即座に兵を向けるわけでございますから、その場合におきましては、実は相手国政府または国の承諾も要らないわけでございます、従いましてやはりこの派兵という場合に二つの問題がございまして、おのおのどちらがどちらというふうな問題じゃないのじゃないか。一方アメリカの方は、これが正統政府の正当なる要請であって、自分も承諾した、そういう意味で一つ派兵しているわけでございます。しかしそれだけのみならず、レバノンの国内情勢がそのような逼迫した状態であるということも一つの理由にあげておる。しかしながら、それはどちらがどちらというふうに相矛盾する問題ではないのではないかというふうに考えております、
○大西委員 それはあなたの説明は法律屋の説明なんです。だから私どもはそういうことじゃ納得いたしません。やはりこの緊急事態を解決するために、国連憲章の大原則に従って――前文にも明らかであります武力の行使ということをやめようということ、これが国連憲章の本旨でしょう。ただしやむを得ざる場合は、武力攻撃を受けた五十一条の場合に限る、こういうふうに特定に限定しておるのです。そういう考え方から見ますと、今までの国際慣行上、正統政府からの要請があったからといって、それで何でも出兵する、そういうことになれば戦争の絶え間がないでしょう。そういう過去の例から考えて、国連憲章のこの精神からなるべく武力行使をやめよう、しかしやむを得ぬときは、外国からの武力行使のときには、これを受けて立つ、これが五十一条にあるのです。当然われわれはそういう意味から、国連加盟国は国連憲章を優先するという立場をとるということを私は外務大臣から言質をとりたいのです。そういうことができませんか。こっちも法律的にしろうとなら外務大臣もしろうとだから、しろうとのことはしろうとが答えなさい。法律屋にわけのわからぬことを言われたらこっちは引き下りません。
○藤山国務大臣 私は今回レバノン問題が起りまして以来とってきた態度というのは、先ほど来申し上げております通り、中近東のこのナショナリズムの運動に対して、兵を出して問題を解決するということは適当ではない、従って、いろいろな理由がありましょうけれども、また法律的にはあるいは適当な理由のつく場合もありましょうといえども、私として必ずしもこれが適当な処置だとは思っていないということを、前提としてずっととって参っております。そうしてアメリカに対しても六月以来数次にわたってこの見解を表明いたしておるのであります。私どもはその見解の上に立って今日までも仕事をしてきております。ただあの機会にその法律論だけを論議いたしましても、これは問題がなかなか解決しないんじゃないか、両方がとにかく対立して四つに組んでおるというような状態が起りそうであります。また一触即発という問題が起きては相ならぬ。でありますから、私どもはそういう意味で解決策として努力をいたしたわけであります。
○大西委員 問題がそういうふうに発展するなら、それでは僕も言いますが、四つに組んでそうして争っているときに、その問題の是非を論議しておったのでは問題の解決にならぬと言うけれども、四つに組んでいる相手のソ連はこの問題の判断を日本に要求しているのです。アメリカはこの問題を回避しようとしておる。ところがソ連は、この派兵は間違っておるということを明らかにして、しかる後に米軍の撤退ということを言うのです。事の解決をやるということになれば、この問題に触れないというのが米国の立場であるし、この問題について明らかなる判断を下してから事に臨もうというのがソ連の立場でありましょう。その中に立って日本はこの問題をむしろ回避しているんです。そうしますと、事の解決ということは、日本政府の立場から申しますと、これはアメリカ側に加担をしたということであって、この問題を押し進めていってソ連を納得させるというような自信がございましたか。見通しがございましたか。いつでも問題の底にまでわたって派兵の可否を論じておったのでは、法律的な問題がいろいろあるからそれは問題の解決にならぬ、問題の解決を急ぐために次の手を打った、こういうのでありましょう。しかし私はそのとき思ったのです。ソ連は、このアメリカの派兵ということが間違っておるということを断定して、しかる後に行動に移そうというのです。そういう対立した見解の中に立って、日本の案というものは両方を納得せしめる、そういう見通しと自信が当時からございましたか。今もってその努力したことは間違いなかったと考えられますか。
○藤山国務大臣 私としては日本が事の正否のいかんにかかわらず、最終的に努力をすべきであると考えております。従って日本案を出しまして、そうして最終的にできるだけの努力をいたしたわけであります。ソ連に対しても日本の真意を通じたのでありますが、ただ賛成を得られなかったのは残念だと思っております。
○大西委員 大体米英の好むような案を出しておいて、そうしてソ連が拒否権を発動したからといって、それはソ連の一方的な責任だ、こういうような言い方には、少し事のわかる人は賛成いたしません。十一カ国中十カ国の賛成を得たからかなりの成功だと言われますけれども、十一ヵ国のうちで、若干の色合いの相違はあっても、大半は米英側の陣営に属するものじゃありませんか。それらに受け入れられるような案を出しておいて、ソ連は当然反対するということを予測しておいて、そうして十カ国の賛成を得たから、この案は将来とも生きるだろう、その精神は生かされるだろうといっても、やはりソ連を納得させなければこの問題の解決はできないという以上は、アメリカ側の陣営が九人か十人賛成したところで、ただ一つソ連の賛成を得られないという見通しのもとに行動したという行動は、目測を誤まっておった。日本の立場というものは最初から決裂を覚悟でやっておったと言われても仕方がないと思う。まあそうではないでしょう。しかしながらその判断というものは私は非常に間違っておると思う。この問題につきましては、私はあなたの自画自賛、日本政府の自画自賛にはどうも賛成はできません。
 そこで問題はもう一ぺん元に戻しますけれども、それでは五十一条の問題についてもう少し明確な政府の態度を聞きたいと思う。五十一条は明らかに武力攻撃があった場合にその自衛権を発動できる、こういう考え方から申しますと、何ら外国からの武力攻撃はなかった、国内問題だという立場をあなた方もとっておったのであるから、この点につきましては、五十一条は今回の米英の派兵をカバーする何らの力もないものだ、五十一条に対する違反だ、こういうふうに見ていいのですか。
○藤山国務大臣 五十一条の解釈につきましては、先ほどから申し上げておりますようにいろいろあると思います。しかしながら私どもとしては、五十一条を適用することは必ずしも適当だとは思っておりません。
○大西委員 五十一条を適用することは必ずしも適当だとも思われぬというのは、米国がそういう態度をとるのは適当だとは思わない、こういうことですか。適当だということではないということは五十一条に対する――適当な言葉はちょっと見出せないけれども、あなたの言われる適当でない、こういう言葉に何か割り切れないものを感ずるのでありますけれども、五十一条によって派兵をしたということは正しくない、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
○藤山国務大臣 六月十一日の決議によりまして国連監察団が行って、一体そういうことがあるかないかという問題を調査いたしておるわけであります。従いましてただいま申し上げましたように、五十一条が適当に適用される状態にあるのかないのかという問題は、まだ必ずしも決定いたしておりません。決定によって、五十一条が適当であろうという結果論の出る場合もありましょうし、出ない場合もあろうと思います。私どもはハマーショルド事務総長の報告というものを大体筋ではないかというふうに見ておるわけでありまして、必ずしも最初から侵犯があったというふうには感じておらなかったわけであります。
○大西委員 これは事実認定の問題でありますけれども、あなたは当然ハマーショルドのあの監視団の報告というものが正しいというふうな考えに立たれると――それに異議はありませんが、あれに対してなお疑問を持たれますか。もちろん中間的な報告ではありますけれども、外部からの不法浸透の事実は認められなかった、こういうことは認められますか。
○藤山国務大臣 ハマーショルド報告では、国境全線にわたって監察団が行動できない状態にあったという留保はつけておられる。しかしながらハマーショルド事務総長がとにかく現地に行き、ナセル大統領にも会い、あるいはシャムーン大統領にも会い、あらゆる努力をされまして、その上に立って報告されたものは相当尊重さるべきもので、それらの問題について若干の留保はつけておりますけれども、そういうものをわれわれはやはり尊重していくのがいいのじゃないかという考え方で今日までおったわけであります。
○大西委員 これは当然のことである。当然のことを何か日本案では非常に遠慮しながらしゃべっておる。それで私は申し上げますが、日本の決議案の中になぜ、レバノンの不当な訴えを聞き、かつまたこれに対するアラブ連合の反論を聞き、こういうことを書いてはっきりと国連の決定によって行なったところの監視団の報告を日本案の中に入れなかったのか、この理由は何です。
○藤山国務大臣 前文において今のことは入れております。
○大西委員 入っておりますか、外務大臣。もう一ぺん見て下さい。私の資料が間違っておるのかもしれません。
○藤山国務大臣 この報告告をテーク・ノートするという意味において最終案には出ておりませんけれども、その精神は貫いておるもつりであります。
○大西委員 それではあなたは、入っておるという言葉は訂正されますか。
○藤山国務大臣 最終案において日本が努力をして、あれがまとまるためにはそういう状態を一応訂正したということは認めます。しかしその精神は入っておると思います。
○大西委員 あなたが入っておるとたんかを切ったときには、もちろん最終案にそれは入っておるとあなたは思っていたのでしょう。ところが間違っておったから、その精神は入っておると言う。精神が入っておったって、あなたの言われる静観というのと同じことで、辞書にはないことです。それはそういう思い違いはある。しかし私は今重大なことを発見したのだが、そういう思い違いをなさるほど外務大臣の考え方というものは、当然この監視団の報告が主になるべきものだ、そしてそれが日本案には入っておるべきが当然だということを裏書きしておると私は思う。ところがあにはからんや、初めは入っておって、後にはこれは削除されてしまった。それじゃ聞きますが、削除された理由は何ですか。なぜ削除したのですか。
○藤山国務大臣 これは国連の松平代表に対する訓令というようなものは、ある程度の幅を持ってその事態に即応するような処置をとっていかなければならぬわけであります。刻々に変化しております国連の舞台でやりますためには、やはりスエーデンの賛成も必要でありますし、全体としてそういう状況のもとに、最終的にある程度の権限はまかせざるを得ないのでありまして、そういう意味において、われわれは精神が通っておりますれば、若干の修正はやむを得ないと思います。
○大西委員 そうしますとこの問題は、あなたは初めの案のときには、訓令を出してそして報告書を入れる、ところがその後現地において、いろいろな事情のためにこの報告はカットした、これは現地の裁量による、こういうことですか。
○藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように、訓令には幅があります。従って幅のある中での裁量というものは許されると思います。
○大西委員 訓令に幅があることはわかっておるのですよ。わかっておるが、それじゃどういうふうな訓令をやったか、そのことを聞きたいのです。これは重大な問題です。幅があるといっても、この問題をカットするかこれを入れるかということは、不法な浸透があったかなかったか、さらにひいては、それに籍口して、あるいは間接侵略の名のもとに国連憲章五十一条を援用しようというような重大な問題に発展するのであるから、これを幅によって、出たり入ったり、なくなったり、また出たり、そういう問題じゃないと私は思う。初めの政府の態度、訓令には、この問題を入れるべきであるとしたのかどうか。
○藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように、訓令には幅がありますから、こういう事態をまとめる上において、こういう項目あるいはこういう前文が、まとめる上において若干問題があるならば、それらのものは、あるいは代表の演説なり、あるいはその他の場合の説明なり、あるいは適宜処置する、こういうことを言ってやらざるを得ないのでありまして、そういう範囲内において適当に善処するということはやむを得ないと思います。
○大西委員 そうすると、初めのあなたの考えは、報告の文章を入れる、こういうことであったわけですね。
○藤山国務大臣 われわれは原案を何べんもいろいろに作成をしては連絡をいたしたわけでありまして、この問題については相当最終的まで前文として残っていたのでありますが、最終段階において、今申し上げたような事情で削除されたわけでありまして、その点において、それではこれは削除していけないという訓令を出しておるわけではないのでありまして、幅のある訓令でありますから、こういう問題について一歩々々いろいろな訓令の形を出しておりますから、それで処置いたしました。
○大西委員 今のお話で、いろいろな事情を勘案してあれを削除したと言われるのは、それは日本政府において削除した、こういうことですか。
○藤山国務大臣 最終案は、御承知のような決定で出したわけであります。
○大西委員 その決定はどこでされたのですか。
○藤山国務大臣 むろん外務省の訓令の範囲内におきまして、最終的に松平代表のその易における判断も加わりましてしたわけであります。
○大西委員 そうすると、こういうふうに理解してよろしいですか。日本政府におきましては、この問題については入れるべしとも、あるいは削除せよとも、それは決定をしなかった、ただし現地の事情によって最後にはあれを削除したのだ、こういうふうな態度ですか。
○藤山国務大臣 でありますから、たびたび申し上げておりますように、これらの問題につきまして、削除をする場合にはこう、あるいは、しない場合にはこう、いろいろ事情によってそれを組み合せていくわけでありまして、そういう意味での訓令をいたしております。
○大西委員 どうも訓令の内容、さらにいろいろ討議したことについて私はあなたから説明を得られないと思うから、この問題については非常に疑義がある。ただ私が言いたいのは、こういう問題はただ単なるテクニックとかいうような問題じゃなしに、事の判断の基礎になる問題であるから、入れると入れぬとでは、かなりこれは大きな、決議自体の性格にも影響してくる問題、この問題を現地にまかしたというような態度は、私はどうも納得ができない。どうしてもこの問題については、はっきりした一つの判断を持つべきなんです。それをそういうふうにまかしたということについて、私は非常な問題があると思う。それでどういうことなんですか、現地で決定した、あれを削除したということが是なりと今認定されておるのですか。
○藤山国務大臣 ただいまのお話の、現地だけで決定したというわけではないのでありまして、訓令の幅の中で現地で決定したわけであります。でありますから、私は現在でも別に差しつかえないと考えております。
○大西委員 それじゃ聞きますけれども、現地にその裁量をゆだねたといって、それをカットしなければならぬ理由を述べてきましたか、どういう理由でしたか。
○藤山国務大臣 この問題につきましては、すでにテーク・ノートされることになっておりますし、またハマーショルド事務総長がこの問題について十分今日までの態度を推し進めておるわけであります。そういう意味からいいましても、また日本の過去の立場からいいましても、あらためてさらに入れなくても、問題が解決するのでありますれば、私は差しつかえないと思います。
○大西委員 それでは、それで問題が解決するという見通しでありましたか。アメリカの側にしては都合がいいかもしれぬけれども、不法浸透があったかなかったかという国連の正規の機関のこの報告を削除して、そして問題の解決ができるという考えを持っておったことは、驚かざるを得ない。政治的配慮であるというならば、その政治的配慮は何かということを聞いておる。これは米国からその点について横やりがあったのなら、はっきりとおっしゃい。そういうことだって、私はむげに否定はしない。私はああいうものを入れて、その判断の上に立ってやるのが当然だと思いますけれども、その政治的な配慮は何ですか。
○藤山国務大臣 とにかくあの事態に即しまして、安保理事会が何らの解決案を出さないということは、私どもとしてまことに残念に思います。しかも先ほど大西委員の言われましたように、一触即発のような非常に危険な状態でありますから、できるだけまとまるような案を出すべきである。またハマーショルド事務総長もそれに対して非常な努力をしておられるのでありますから、事務総長とも相当な打ち合せをわれわれはいたしてきておるのであります。従ってそういう事態が――われわれも主張してきておりますし、そういうことがテーク・ノートされるようなチャンスもあるわけであります。そういう意味からいいましても、最終的にあれを落したことが、日本の従来の主張を変更したというふうには私ども考えておりません。
○大西委員 この問題はもっと明らかにしなければならぬけれども、時間がないからこれはあとでもう一回質問をしますが、初めに佐々木委員も言ったように、まかり間違えばこれは戦争になることなんです。そういう実感が果して大臣にあるかどうかわからぬけれども、私どもはそのくらいな考えを持って、この問題を処理しなければならぬと思っておる。そうした場合に、ほかの問題と違うのだから、やはりできるだけのことは国民の前に明らかにし、そうして絶えず国民の批判を受けて事を進めるということが順当だと思うから、この問題についてはもう少し今度聞きます。
 その次の問題は、五十一条の問題とは別に、残念なことに日本政府の態度はやはりぐらついております。ぐらついておらぬと言われても、これは速記録がないから、あなた方の外務省として出されたこの経過報告に基いて私はずっと言っておるのであるが、この中に書かれたことだけ見ましても、もうこれは二転、三転しております。五大使会議のときにかなり元気のいいことを言った。これはけっこうです。ところが初めの十四、十五日には、あなたの方も訓令を出しておるが、これなんかを見ますと、はっきり国内問題で、そしてレバノンに新たな派兵または警察軍には絶対反対だ、こういう立場をとっておるのです。ところが米国案が出て参りました十六日になりますと、どういうことをいっておるかと申しますと、米軍の行動は相当に議論の余地あるものであり、そして理想的な方法ではない、疑点を感ぜざるを得ないと、この中に政府の責任において書いてあるのです。もうここで前のはっきりと断定した態度から大きく後退をしておるということは、あなた方認めますか。これはいなとは言えないと思う。あなたの方のこれに書かれておる。しかも事もあろうに直ちにこの米国案に飛びついて、ただ素っ裸では賛成とは言えないから、二条件を出しておる。監視団の報告と米案の第一項は一致しないといっておる。第二番目は軍の提供に対しては態度を保留する、こういっております。これは十六日の朝監視団の報告が出た以上、まさかその目の前で、それと違ったことを言おうとしている米国案に条件もつけないで賛成もできないであろうから、それをつけたのだろうと私は思う。そして最後に、これに対して賛成せざるを得ないといっております。この態度を打ち出すと、符節を合わすごとく、ワシントンにおいて下田公使が早速行って、十四、十五日の日本政府の態度、あるいは松平発言は行き過ぎであったからということで了解を求めるがごとき行動をとっておる。そのことを外国の新聞は笑っております。初めは内政問題である、派兵は絶対に反対だということを訓令しておきながら、十六日の松平の演説というものは、このように疑念があるとか、理想的ではないとか、あるいは疑惑を持つとかいうような弱い、一歩も二歩も後退した態度になっているということは、これは大臣事実でありましょうか。しかもこれは大きな態度の変化であると言わざるを得ないと思うのですが、いかがですか。
○藤山国務大臣 私は、必ずしも日本の精神というものが後退しているとは考えておりません。ただ問題が具体的に起ってきた場合に、それに対処して一日も早く平和状態に置きたいということによって現実の措置をとり、問題を扱ったわけでありまして、態度としてはそう二転三転いたしておるとは考えておりません。
○大西委員 大臣、そういう答弁はだめです。精神と言われるが、その精神でどうして相手が納得するか。表現によって相手は納得するのでしょう。初め派兵は反対だといいながら、そのあとで派兵は相当に議論の余地があるものである、理想的な方法ではない、疑点を感ぜざるを得ないというような表現をして、精神は前と変っておらぬというようなことは、どういうことを言うのですか。それは変ったなら変った理由があればよろしいのですが、そういう強弁をしてはいかぬと思う。この表現において、前の態度と変りがないというようなことは納得しませんよ。どうです、率直に言われたらいいじゃ、ありませんか。
○藤山国務大臣 私どもの考え方そのものは変っておりません。しかしながら、具体的な事実の問題の取扱い方は、そのときどきに応じて善処して参るというのが、一日も早く問題を解決する点でありますから、従ってそういう意味で、やはり実際の問題を扱う国連の場においてはそれぞれの処置をしていくというのでありまして、そういう意味において、私どもの態度がそう変っておるとは思っておりません。
○大西委員 変っておらぬと言うことが一番いいことで、変ったと言うたらえらい悪いことのように考えておられるらしいが、変っておるなら変っていると言ったっていいじゃありませんか。外交は生きものであるし、相手の出方によっては変ってよろしい。それを変っていると言うと、何かけしからぬと言ってしかり飛ばされるように思っているが、間違った方ヘスタートしたら、それは変ってもいいのだし、正しい方向へ行っておって変ったら、それはまずいですよ。この現実に対して、変っておらぬというようなことを言われるならば、それはここであなたがなんぼ言われても、国民は納得しません。そういうことは絶えず国民というものを頭に置いて考えてもらいたいと思う。
 さらにもう一つこの問題を発展して話しましょう。しかもこれが十七日になったらどうです。今度はだいぶ立ち直っている。これはけっこうなことだ。中だるみということがあるのですから……。監視団報告による新事実にかんがみ、派兵は不穏当で遺憾である、そういって、そして米国案には疑問を有するといって派兵を非難しながら、単に米軍の出兵を否認するのみでは問題の解決に役立たない、早期撤退を可能ならしめる措置をとる必要がある、そしてレバノンの出兵を必要とした事情を検討すべきであるといっている。ここへきたらまた、米国のレバノン出兵というものはそれ相当の理由があるのだから、それを検討すべきであるというふうに、何かの理由があるというような口吻になっているのです。こういうことは大きなる態度の変化ではないか。よろめきではないか。最後にちょっと立ち直りかけたのだから……。こういうようなことを申して、私は首尾一貫しないことをいたずらに攻撃しているのじゃないけれども、そういうことを率直に認められる方がよろしいと私は思う。
 そこで、私はこまかいことを一つ聞きますが、十六日に二つの条件を出している。そして早くも賛成の態度を出しているが、これは少し早過ぎはしないか。これはあなたも早かったと思うかいかがですか。出たときに、すぐに条件をつけて飛びついているが、なぜこんなときに早く言う必要があるのか、あなたの反省を一つ聞きます。
○藤山国務大臣 時期が早かったか早くなかったかということは、見解の相違だと思います。私どもとしては、今申し上げたようにわれわれのレバノン出兵に対する見解というものをそう変えてきているわけではございません。ただ処置については、そのときどきで適応すべきような処置をとったというふうに考えております。
○大西委員 そういう答弁は、国民を愚弄するものです。
 それから私は、こういうときに早く飛びつく必要はないと思う。条件をつけた、条件をつけたと言っても、国会の決議のように条件が生きるわけではないのです。ただ言いわけだけなんです。条件付という言葉はいいけれども、国会の条件なら決議の中に生きるけれども、これは日本が自分だけそういうことを言い聞かす、あるいはそういう言いわけだけなんです。こういう条件付ということは何ら実効がないということをとくと銘記されたい。
 それから次に、もう一つ。米国は警察軍と言っているのですが、その警察軍に対しては反対しているのですか。軍の提供について態度を留保する、こういうふうに言っている。これは日本の自衛隊の性格上からいってそういうことになると思うのですが、反対の理由は何ですか。警察軍の構成には日本が参加できないから反対する、こういうのですか。これはどうもそういうふうにとれますが、いかがですか。
○藤山国務大臣 事態を収拾する上において、警察軍を出すということに賛成はいたしました。しかしながら、日本がその警察軍を出すかどうかということについては、われわれとしては留保をしたわけであります。日本が出すということについて留保した。
○大西委員 そうしますと、あなたは国連の警察軍を認めた立場ですね。日本の条件というものは、国連の警察軍は認めないというのではなしに、国連警察軍は認めるという立場なんですね。
○藤山国務大臣 こういう場合に何らかの措置をする、たとえばスエズの場合でも、警察軍を出すという国連の決議によりまして、そういうものを出して適当に問題が解決できる場合にはその方法によって解決するのが私は適当ではないかと思う。それでアメリカの軍隊が撤退することができますれば問題の解決は促進されるのではないか、こう思っております。
○櫻内委員長 大西君に申し上げます。大体申し合せの時間ですから、お話をおまとめ願いたいと思います。
○大西委員 まだこれからなんですが……。この点をはっきりして下さい。そうすると、あなたは国連の警察軍には賛成をした。ただし、国連警察軍がもしできた場合に、日本がこれに参加するということの態度を留保した、こういうことですか。間違いございませんか、念を押しておきます。
○藤山国務大臣 その通りであります。
○大西委員 そうではなかろうと思うのでありますが、そうおっしゃるなればそのようにして話を進める。国連の警察軍はどういうときに必要なんですか。しかも日本案には、国連警察軍ではないということを明らかに言っておる。監視団の増強であって国連警察軍ではないと指定しておきながら、何がゆえに国連警察軍の米案に賛成したのですか。
○藤山国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、事態をできるだけ早く解決する、その方法として、アメリカ軍が兵を引き得る方法が立つならば、何らかの形で立てるのが適当だと思うわけです。そうして国連におきますいわゆる警察軍が否決されました以上、警察軍を適当とはわれわれ考えないのでありまして、監察団を設けてこれにかえることは当然だと思います。それでまとまるならばそうしていきたいというのがわれわれの考え方であります。
○大西委員 おや、おや、これは大へんなことになっちゃった。それでは日本政府の考え方としては、国連警察軍というものがよろしいという考えを初めは持っておった。ところがそれが否決されたから今度は監視団でいく、こういうことになったというのですね、日本の態度は。この点ははっきりしておきます。
○藤山国務大臣 少くもあの段階において、私は、国連警察軍を必ずしも全部出すということに賛成であったわけではございません。しかしながら、少くもあの段階で何らかの解決方法をとってアメリカ軍が引くことができるというなれば、その一つの方法としてそういう問題も考慮に入れていいではないか。そうしてその構成等については、やはり事務総長が十分国連で話し合いをするわけでありますから、そういう問題について、内容等についても、われわれとしてはまだ言うべきこともあるので留保いたしたわけであります。日本がそれを分担する問題についても留保したわけでありまして、そういう意味においてわれわれは解決の方法の糸口を見つけたい、そう思っております。
○大西委員 日本は監視団ということを固執して、それで国連警察軍ではないということをこの演説でも強く言っているということは、監視団と国連警察軍は警察行為をやるかどうかという問題で重大な違いがある。監視団でよろしいという場合と警察軍が必要だという場合は、情勢の判断にもおのずから別なものがあるはずです。そういう意味で、日本の立場は、もちろん国連警察軍はよろしくない、監視団がよろしいという考え方で進まれたのだと思った。ところが逆である。警察軍がよかった。ところが警察軍は否決されたから監視団でよいことになったというのであります。これはまことに重大なことである。あなたの考えの違いであったら、今訂正していただきたい。もし間違いでなければ、その点を確認いたしまして、この問題はさらにあとでやります。
○藤山国務大臣 私どもは、日本案の提案をすることを相当早期に持ち出しております。その場合において、われわれは、やはり国連監察団がよろしいと考えていたわけでありますが、しかしながら、今申し上げましたように、現実に警察軍によって問題が収拾できるならば、やはりそれで収拾する。これはやはり国連のみんなの意向も聞いてみなければならぬわけでありますから、そういう意味において一日も早く問題の解決をはかりたい、こういうことになるわけであります。
○大西委員 その問題はあとでもう一ぺんよく調べてからやりましょう。
 それから日本案に移りますけれども、日本案によりますと、監視団を作って米軍の撤退を可能ならしめるということを言っておりますね。ところが米軍は、今のお説のように、国連警察軍になってから肩がわりすると言っている。監視団によって米軍が撤退するという確約を得られましたか。
○藤山国務大臣 この案が、われわれとしてはとにかく全面的解決案――御承知のように、三つの案が否決されておるわけでありますから、このまま放置しておきますればどういう事態になるかわかりません。従って、いろいろな疑義はありましょうとも、一歩でも半歩でもやはり安保理事会が措置をして前進していくことが必要なんでありまして、そういう当面の措置として、われわれとしては従来の監察団を強化して、その上でアメリカ軍が撤退するような素地を作って撤退させるということが必要かと思います。アメリカといたしましても、何らかの形で引く機会があれば引きたいということは考えておったと思います。
○大西委員 それならむしろ国連警察軍という案にした方がよかったんではないですか。それなら政府の言っている案が生きるわけです。いや応なしに監視団を増強することによって撤兵を可能ならしむると言われても仕方がない。外交をやる上においておそらくその辺の理解はあったではないかと思うが、いかがですか。ただ、そういうことのできる条件を作ってやっても、向うがその条件ではいやだということは、この点で明らかである。やはりその点に何かの約束があったかなかったかということを聞いているのです。そたれでなければこっけいですよ。
○藤山国務大臣 監察団を強化する、そうしてそれによってアメリカの撤兵を可能ならしめるということについて、アメリカは日本案支持の投票をいたしたわけであります。従いまして、アメリカとしては、可能な限りにおいて監察団が強化されてくれば引くということを考えていることは当然なことだと思います。
○大西委員 この問題についてはまだあるが、一つ波及すべき問題について聞いてみたいと思うわけです。日本案は否決されたが、あとでハマーショルドの声明で国連の監視団を増強するということがきまったわけです。そうしたときに日本案はその精神は生かされた、こういうことを言っておるのであります。そうしますと、これは否決されても可決されても何にも効果のない、毒にも薬にもならぬものじゃないか。米軍の撤退ということが、監視団をふやすということにおいて約束されてない、単なる期待にすぎないということならば、日本案が否決されても、事務総長の権限においてこの監視団をふやすということを言っておるのですから、そういうことになったら、日本案というものは否決されたって可決されたって同じだ。そんなものを後生大事にかかえ回って、そうして国連の十カ国の賛成を得たのは大成功だといったところで、それはおかしいと思う。どうですかその点は。
○藤山国務大臣 何か私どもの努力が自分で大成功だと言っているというふうにおとりになって非常にあれでありますけれども、私どもは今回の処置についてできるだけの努力をし、また先ほど御報告申し上げましたように、インドその他もわれわれの努力に対してできるだけサポートをしてくれたという事実をあげておるのでありまして、私は自分から非常に大成功だったというふうなことを特に申し上げたわけではないのであります。
○櫻内委員長 大西君、だいぶ時間が過ぎましたからお取りまとめ願います。
○大西委員 私は日本案にソ連が反対したということを非常に遺憾に思う。しかし反対するには反対する理由があったと思うのです。そこでまず私の一つの考えとしては、米案に対して日本は、ソ連案に対してと同じように不満な点もあったのだから、条件付ですぐ賛成と飛びつかずに、これに対しても棄権をやる。そしてソ連案にも私は賛成すべきであったと思うのですけれども、あなたの立場からいえば賛成できなかったんだそうです。それならば少くとも米案にも棄権をし、そしてソ連案にも棄権をしておったならば、日本の真意というものももっとソ連に了解されたのではないかと思う。これは私の一つのあとからの想像であるけれども、こういう点につきましての感懐はございませんか。
○藤山国務大臣 こうした問題を取り扱いまして、あとから考えましていろいろな問題があるということは、それは私どもとしても考えております。しかしながら私どもとして決して最善の道をとらなかったのではなくて、最善の平和解決の道をとったというふうに考えております。
○大西委員 最善の道をとったと言っておいて、それでまたそれほどうぬぼれておらぬと言うが、こんなものは最善の道じゃありません。今も申しましたように世界は一つなんです。中近東の緊迫した状態は世界的に一つの緊張状態をかもし出しておる。伝えられるところによりますと、中共は義勇軍の派遣の用意ありとも声明しております。あるいはまた台湾に面したところでは、いろいろな軍事行動がとられておるというようなことも聞いておるのであります。あるいはまた三十八度線をめぐっての韓国と朝鮮との間ではいろいろな動きがあるとも言われております。韓国におきましては米案賛成だという大デモが行われているという、まことにこっけいなことであるけれども、ことほどさように極東におきましても容易ならざる事態がはやちらちらと見えるのでありますが、こういう情勢について何かの情報を持っておられますか、何かの懸念をお持ちでありますか。
○藤山国務大臣 今回の中近東の動乱を最小限に平和裏に解決しなければ、問題はいろいろな動きに転換して参りますことを私どもはおそれております。従いましてできるだけ早い機会に実際の平和的な解決をはかりますことが一番いいと思っておるわけであります。それぞれの国にそれぞれのいろいろな動きがあります。われわれの情報のとれる範囲内ではできるだけそういうものの収集はもちろんやっております。
○大西委員 その収集の結果何かそういうふうなことについての情報はないかというのであります。私の懸念するところは、もし三十八度線において再び小ぜり合いが起きた場合、あるいは朝鮮海峡をめぐって、あるいは南北ヴェトナムの間にこういう問題が起きたときに、これは容易ならざる事態になると思う。御承知のごとくに日米安保条約の第一条に、米軍の使用目的の中には極東の平和と安全の維持のために米軍を使うことができると書いてある。この点についてはたびたび岸総理並びにあなたに対しては私は注意を喚起したところでありますけれども、もしあの中近東から問題が波及して、極東におきまして問題が起きた場合には直ちに在留米軍はこれに対して出動いたしましょう。御承知のように極東の云々と書いてあります。日本の安全と平和を維持するために米軍がおるのではないのであります。極東の平和と安全の維持であります。しかもその極東はどこかということについて私はあなたに質問してもようしいのですが、南北朝鮮は入りますか。台湾海峡を隔てて中国と台湾は極東の中に入りますか。ヴェトナムはいかがですか。この点だけ一つお伺いしたい。
○藤山国務大臣 私は先ほど来申し上げておりますように、中近東の問題が原因になりましていろいろな方面でいろいろな動きが起りますことをやはり心配をいたしますし、またそれが最終的には第三次世界大戦になるというようなことが起ることは、日本としては望ましいことでないばかりでなく、極力避けて参らなければならぬと思うのであります。そういう意味においてできるだけわれわれとしては実際的解決によって一日も早くそういう事態が少しでも静穏になるように、そしてそれが極東にも、あるいは世界各地にもそうしたことが波及しないように努力していくべきだ、こう考えております。
 極東という問題につきましては、いろいろ前の国会においても議論があったようでありますけれども、非常にはっきりした定義はないかと思いますが、御指摘のようなところは、ヴェトナムまで入りますかどうかわかりませんが、大体入るのではないかと思います。
○大西委員 そうしますと中近東の問題が全世界に波及しないように最善の努力を尽す。そのために、その立場から努力されることをむろんわれわれも望むが、その努力の方向が間違っておったということについて、若干の批判を加えて、今後はその間違いを直して、これに対する平和的な解決のために努力されることを念願して言っているのです。そういう努力と同時に、今の日米安保条約に基くところの日米軍事関係においては、もし不幸にしてわれわれの努力もむなしく、人類の英知もむなしく、戦火が広がった場合に、せめても日本がこの戦争の中に巻き込まれないためには、問題は日本自身の手にあると私は思う。それは安保条約の問題です。今あなたが言われたように朝鮮しかり、台湾も極東の中に入るというなれば、安保条約の厳存しておる以上、日本に何の関係もない三十八皮線において事が起る、台湾海峡において事が起った場合には、米軍は日本政府に何らの相談もなしにこれに出動することができる。安保条約のことはもう御承知の通りです。ですから私どもはこの緊急の事態に即応して、国連の舞台において中近東を平和的に解決するために努力しなければならぬと同時に、一歩退いて日米間のこの安保条約を大きく改廃するということ、この点についてもう一回あなたは考え直して、アメリカに行かれるときに基本的なことを話し合いをするというふうなのんきなことを言わずに、差し迫ったこの段階において、安保条約のそういう問題について、少くとも改訂することの明確な意思を持たれぬかどうか。その点の決意がなければ、今日ここでとやかく言っておったって、言い抜けのための言い抜けでしかない。あなたがほんとうに中近東の問題に対して、ひしひしと世界戦争の危機を感じ、日本に対してそれに巻き込まれる危機を感じられるならば、私は今申しました日米安保条約、日米関係の是正ということを、少くともここでその決意だけでも述べられる必要があると思うのであります。その点を聞きまして私は終りたいと思います。まだほかに質問いたす問題はありますが、これはまた次の機会に譲って、その点だけを一つ明らかにしていただきたい。
○藤山国務大臣 われわれといたしましてはできるだけ世界が動乱に陥らないように、第三次世界大戦の危険を回避するようにできるだけ努力して参ろうということをわれわれは考えておるわけです。今後ともその努力を続けていくわけであります。日本とアメリカの関係は、私はやはり友好親善関係をできるだけ保っていくことが必要だと思います。それについては、たとえば今回の中近東の問題でもあるいは東南アジアの問題につきましても、やはり率直にアメリカと話し合いをしまして、日本がアジアの一員としてこういう見方をしておるのだという基本的な話し合いをすることが必要だと思います。そうしてそれらのはっきりした両者の意見の交換の上に立って両国の問題を考え直していくのが必要で、それは非常に手ぬるいというお話でありますけれども、私はやはりそういう情勢の認識なりあるいは考え方の相違というものを一ぺんはっきりアメリカと話し合ってみることの方が、手ぬるいようであって存外問題の解決その他に早道ではないか、また基本的にそういう問題を扱う上において必要じゃないかというような考えを持っておりますので、今回はできるだけそういう問題につきまして基本的に話し合いをしてみたいというのが、今回私が参ります一つの大きな目的であります。
○大西委員 ちょっと一言。話し合いをするというのは私は反対していないが、基本線の話し合いをするにはあなたに一つの目的がなければならない。所期するところなくしてばく然と話し合いはできないでしょう。日米間の安保条約の問題、沖縄の問題、日韓問題、あるいは日中問題、日ソ間の問題、賠償問題などが具体的な問題だというけれども、その具体的な問題を除外してどういう基本的な問題があるのですか。まさに日米の安保条約の問題こそ基本的な問題じゃないか。それに対して不合理を認めて話し合いをするというような言明なくして、国会においてそのぐらいな答弁ができないようじゃ、これは国民を冒涜しているものだと考える。岸総理が去年アメリカを訪問されるときには、少くともこの問題については不合理がある、努力をしたいということを言われた。総理がそういうことを言われて努力むなしく今日まで実っておりませんけれども、この緊急事態を前にしてあなたがそれぐらいのことが言えなくて、なお私の質問を回避されるということになれば、それはあまりにも無責任、あまりにも消極的である。この点について私の考え方について率直に言われたらよろしいじゃないですか。私は、そんなことについて言明できないような外交だったら、この危機を乗り切ることはできぬと考える。率直に一つ決意を述べてあなたの良心のほどを聞かしてもらいたいと思う。
○藤山国務大臣 その点はたびたび日米間の問題について申しております際に、たとえば過去の協定なり過去の条約なりそういうものについて、必ずしも今日に適当していないものがある、そういう問題を再検討してみなければならぬということは、前から私は申しております。しかしその再検討する基盤になる両国の世界政治に対する見方なりそういう問題についての扱い方なりの考え方をまず話し合うことが必要である、それからけさほども申し上げましたように、話し合いをする場合に、具体的問題の解決にいきはしませんけれども、具体的問題を例にして取り上げて話し合いの材料にしていくということは申し上げておるわけでありまして、それでおわかりいただけるのじゃないかと私は思っております。
○櫻内委員長 帆足計君。
○帆足委員 レバノン、中近東をめぐる緊迫した状況につきましては、国民のすべてが注視しておるところでありますので、同僚議員からそれぞれ適切な質問がありました。従いまして私もできるだけ重複を避けまして、事態の直相を国民の前に明らかにしまして、国民各位がこの切実な問題について判断を誤まらず、政府に対する適切な監視を誤まらず、同時に政府の真意を明らかにしていただきまして、政府の反省を求めたいと思います。
 時間も移っておりますので要点を質問いたしますが、まず第一に、政府は外交三原則ということをかねて唱道されておりますけれども、私どもがこの三原則を見ますると、これはまだ朝鮮戦争前後の時代の戦略戦術、すなわちジェット機と爆撃機時代、このいわゆるダレス外交の残滓の上に立っておるのであって、今日のミサイル、人工衛星または原水爆、いわゆる平和共存といわれ、宇宙の新世紀が近づいているといわれている時代の尺度から見ますと、この三原則自体がことごとく矛盾を露呈しつつある。従いまして保守政権といえど日本の運命を担当しております以上は、この辺でやはり合理的に再検討していただく必要があるのでなかろうかということを、このたびの事件をまのあたり見ましても痛感する次第であります。
 第一にお尋ねいたしたいことは、自由世界の立場に属し、同時にアジアの善隣を考え、国際連合の憲章を尊重して外交を立てられるといいますが、一体その自由世界ということは、藤山外相は何を意味せられるのか。自由世界と申しましても、私は一つでないと思うのです。そういう抽象的な言葉では困ると思うのであります。自由世界の中でも、歴史的に見ますれば、小学校の社会科の本にも書いてありますが、アメリカ、イギリス、フランスー――フランスは今ちょっと別な立場にありますけれども、そういういわゆる多くの植民地を持っており、巨大なる工業と軍事力と資本力を持っておるところの帝国主義といわれた世界の強国、それからまたそれらの間にはさまって平和と自由に対して非常に謙虚なる願いを持っておる多くの小国、たとえばスイッツルとかスエーデンとかノルウエーとかデンマークとかそういう国々、それからまたアジアで長い間植民地の状況で苦しんでおって、今や自由と独立を取り返そうとして成果を上げつつあるインドとかエジプドとかインドネシアとかいう国々、この三つはそれぞれ違うと思うのです。自由世界と協調し、自由世界とよく理解し合って進むという言葉はけっこうですけれども、その言葉の実際が、実はただアメリカと協調するということだけであるならば、自由世界との協調などという美しい言葉をお使いにならずに、日本は戦争に負けてアメリカに占領されて、占領下でいろいろのことを強制されてきたから、仕方がないからアメリカ協調政策を第一にする、こう言われればよさそうなものを、自由世界という名のもとに実際はアメリカ一辺倒の外交が行われておるということはまことに遺憾なことと思いますが、外務大臣はこれをどういうふうにお考えになっておられるか。
○藤山国務大臣 自由主義陣営の中に日本がおるということは申すまでもないことだと思います。従いまして、共産主義に対する自由主義陣営という大きなワクの中で日本が動いておる、これはわれわれとして、ことに保守党としては堅持して参るべきだと思います。しかし自由主義陣営の中にもいろいろな歴史的過程もあり、あるいはまた地理的なその国の位置という問題があります。従いまして自由主義陣営の中でも、必ずしも全部が全部個々の問題について同一態度であるというわけにいかぬ場合もあります。日本は日本の置かれている過去の歴史なりあるいは現在の地理的立場を考えて参りますと、やはりアメリカと常時協調し、親善関係を保っていくことは非常に必要だと思います。その自由主義を守るという意味において、私どもはそういう意味で使っておるわけであります。別段アメリカと親善をするということだけを自由主義の国として申すのだという意味ではありません。
○帆足委員 これまでの外務省当局、それから歴代の外務大臣の説明などを伺っておりますると、たとえば中立主義に対してすら、それは赤であるとか桃色であるとかというような観点で、それは反米思想であるというようなことで、日本政府は不賛成だ。それは中立という考えが社会党の考えであって、こういう点が自分の考えと違うというならばそれだけのことですけれども、そうではなくして、中立という思想そのものがもう自由世界とうらはら、相いれない思想であるかのごとく従来保守政府の方では論ぜられてきた。従いまして、たとえばそれと矛盾しておりますのは、スエーデンでも中立政策をとっておりますし、インドは著名なる中立国であることは御承知の通りである。従いまして、従来のような超保守的な――保守というよりも反動的な考え方からしますると、ナセルも、インドも、あるいは桃色である、赤であるというような、アメリカ上院議員のごく少数の極端な諸君の意見に相通ずるような結論が、ちらほら政府側の口から聞かれるということになって、まことに遺憾であるとわれわれは思っておる次第であります。同時に、アジア善隣外交といいましても、またアジアと一言にいっても複雑でありまして、藤山外相はアジアとは一体どこをさして言われるのか。アジア善隣というのはどういう系列をさしていわれるのか。私はアジアというときは、概括して長い間植民地であって、そして工業の発達がおくれて、治山治水の関係、水の国であったために封建主義の爛熟期ですら非常におくれて、資本主義の発達もおくれて、工業化もおくれて、今ややっと化学工業を起し、国民の統一と独立を回復しようとする流れ、それらの国をアジアと言っておるように思いますけれども、外務大臣は一体アジアと仲よくする、これをどういうふうに理解されておられるのか、これを伺いたい。
○藤山国務大臣 私はマルクス、レーニン主義と、それから自由民主主義の間に中立主義という哲学的な立場はないということを就任以来考えておるわけであります。ただ政策の上において自分たちの立場を率直に各国に対して言うということであれば、それはある意味からいえば中立主義という形がある。共産主義と自由主義、民主主義との間に何か別個の哲学的なそういう社会構造その他に対する主義があろうとは、実は考えておらぬのでありまして、むろんそういう意味において、アジア各国も共産主義でなくて自由主義をとっておるということは、インドのネール氏あたりの考え方でもそうだと思います。従ってわれわれはそういう意味において、従来何かそういう固定的な中立主義という思想があるようには私は実は考えておらぬ。日本としても自由主義陣営の中の一員でありまして、それぞれ置かれております環境によりまして、また過去の歴史的な、人種的ないろいろな立場からして、日本の自由主義陣営の中での問題解決に当っては、それぞれ日本の立場を宣明しながら、問題の解決に当っていくというのが適当だと思います。
 またアジアというものをどういうふうに考えるか。これはあるいは地理的に、あるいは人種的に、あるいは経済的にいろいろな見方ができるかと思いますが、しかし大体において、やはりグループの中というようなものを大体大きな意味においてアジアと解釈していくのが適当ではないか。また日本は地理的に見ましても、その東の端におるわけでありまして、人種的に見ましても相当関連を持った人種的な立場を持っておる。あるいは宗教的、思想的な場合にも、アジア人的思考の範囲内に日本人の思考が入るのではないか、こう考えております。
○帆足委員 私の実業家出身の政治家であられる藤山外務大臣と哲学論争をする意思は毛頭ないのでありますが、実際的に自由主義世界と称している国の中に多くの中立政策をとっている国があるという事実に着目していただきたいということをまず申し上げたのでございます。同時に、アジアと一口にいいますけれども、アジアの中心の流れで、アジア諸国との提携という一つの流れでは大体においてバンドン精神が中心になっておるのでなかろうか、これはだれしも認めるところであろうと思います。
 それはこういうことをなぜ申し上げるかといいますと、問題の本質を明確にいたしますために、もし藤山さんが、アジアに流れている精神はバンドン精神である、植民地から解放された平和にして自由なる国家を作っていこうというアジア諸国の目ざめであるとすれば、遺憾ながらアジア諸国はまだ帝国主義の残滓が非常に深いと考えられておって、そうして米英をもって典型的な、理想的な自由主義国と考えずに、いわば一面に自由を主張してきたけれども、その巨大なる資本と軍事力にものを言わせて植民地を押えている国々である、こういうふうに見られていると思う。従いまして、それらの帝国王義に対してアジアの国々は今目ざめようとしておるわけです。そしてそのアジアの国々のうち眠っていた国々は、封建時代よりもっと古い王様や酋長が支配していた。米英は口でいろいろいいことを言いますけれども、過去におけるアジア侵略の歴史が示しておりますように、これらの幼弱な国民と、そうしてその上に立っている王様たちをうまくろうらくして、特殊の石油資源その他の資源を押えて長い間植民地、半植民状態で参った。従いまして、藤山さんはアジアにおける多くの国々は今日自由に属する国と言えると言われました。それならばアジアにおける自由の所在はどこにあるかといいますと――藤山さんは昔の王侯や土侯や酋長やそれらの封建勢力よりもっと古い勢力、それらの国々を一体自由なる政体とお考えでしょうか。あるいはまたそれらの政体を改革して、そうしてインドのネールやナセルやケマルパシャがやったように、そういう奴隷時代、封建時代、無自覚な植民地状態を改革して、近代的な平和と幸福と独立の国々にしようとするいわゆる民族運動の流れを自由とお考えになっておるか。それとも過去の王侯貴族の政権をろうらくし、それを維持しようとする側の方に自由があるとお考えか。これを承わりたいと思います。
○藤山国務大臣 アジアの各国が政治的な独立を全うしたということは、アジア諸国の自由に対する一歩前進だと思います。しかしながら政治的独立を完成いたしましても、その裏づけをなす経済的独立、経済的な力の充実というものができなければほんとうの政治的な独立を全うし得ないのではないかというふうに私は考えております。従いまして、アジアの繁栄と生活の向上というものが、やはりほんとうの自由主義をそれぞれの国が享受する上において非常に必要なことだと考えております。ただ政体が君主制であるか共和制であるかというそれだけの問題で判断はできないと思います。御指摘のような過去の君主制のひどい国もありましょうし、そうでない国もあり得るかとも思います。ですから、ただ君主制か共和制かだけでその国の中の自由という問題については判断はできないと思います。ただ植民地経済から脱却して自国の経済を打ち立てるということによって、政治的独立も全うできるということによって、やはり自由と独立とを全うし得るのではないか、こう考えております。
○帆足委員 私は今次のレバノンの事件を見まして、米英がほんとうに自由主義国であるならば、封建勢力と無知と迷信、それから王侯の独裁を倒して、ちょうど明治維新やケマルパシャの革命や、イギリスの名誉革命のように、国民の自由それから新しい憲法、新しい土地制度等、民族の独立と自由と平和を回復しようとするその流れこそが、これはどの歴史学者もこれをもってアジアの自由主義への目ざめと描くだろうと思うのです。そのアジアの自由への目ざめに対しては常に懐疑的であり、まあ仕方がないからやむを得ず認めているけれども、事あらば機関銃で弾圧しようとし、従来弾圧してきた西欧諸国、それに対して今自由を要求する勢力が戦っておるのが今日の流れだと思います。従ってみずから自由を口にする政権であるならば、どちらに好意を持つか、内政干渉をしないまでも好意を持つかというならば、自由の政府を作ろうとしておる側に好意を持つべきであって、今や没落の、瀕死の状況にある昔流の――私は英国流の皇室を言っているわけじゃない、昔流の封建的な王侯、酋長がくずれていくのに対して、これに突つかい棒を自由主義国が自由の名においてしようなんというのはばかばかしくて、そういうことをいいと思う青年は日本だって一人もいないだろうと思うのです。これが歴史の矛盾であって、だれが見ても、イギリスやアメリカが、一方においてはかっては名挙革命、かつては独立戦争を起した自由の民でありながら、今はアジア諸国に必ずしもほんとうの理解を持っていないということがアジア諸国民の英米に対する不信であり、懐疑の念だと思う。こういう中に入って日本は、過去のように満州を持ち、中国を半植民地とし、台湾、朝鮮を支配していたならば、私は心に正義がどっちにあるかということを知りつつも、仕方なくフランスのような立場に立ち、あるいはイギリス、アメリカに追随したでありましょうけれども、政府の今次の問題に対する藤山さんの声明も、岸さんの声明も実にりっぱな最初の出だしであったことは、われわれが幸か不幸か植民地というものを持たない、ほんとうの自由の国になった、その点で日本はスイスやスエーデンなどと同じ客観的立場に立たされておると思うのです。それからまたそういう点において日本は帝国主義と共通の利害を本来ならば持っていないはずである。第二には同じく日本はアジアに属しておる、そしてアジア諸国民を今や搾取したり弾圧したりする立場になくて、互恵平等の立場からアジア諸国と貿易もし、産業投資も心からそれをし得ることを叫び得る状況に立たされておる。従いまして同時に私は、日本は当然お互いに誤解もありまた不満足なところも多少あろうとも、インドのネール首相やエジプトのナセル、またはインドネシアの国々とも互恵平等の立場で話し合い得る基盤を持っておる。従いまして日本の客観的に置かれた地位を、小学校の社会科の教科書に書いてあるような常識で考えましても、日本はソ連、中国のような共産主義国圏に属しておるのではないことはもちろん、同時にアメリカやイギリスの利害にもっぱら追随すべき客観的立場に置かれていない。似ている立場というならば、西欧諸国ではスエーデンとかノルウエーとかそういう国々と多少共通するところがある。また似ている立場というならば、バンドン精神、すなわちインドやエジプトやインドネシアの諸国と非常に多くの共通のものを持っておる。しかもそのアジアの中において、アジアの孤児という国々、これはみずからアジアでありながら独立自主の精神をまだ持っていない、また歴史の不幸のために、イギリスやアメリカのかいらい政権になっている国々、南ヴェトナムとか、李承晩政権とか、蒋介石政権とか、キューバ島とか、フィリピン、これらの国々はその道徳的善悪を論ずるのではなくて、その置かれた歴史的地位からして、インドやインドネシアやエジプトのように独立自主の気魄を持って進んでおる国でなくて、他国の軍事占領下にとにかく生きている国々、それらの国々とただひたすら仲よくして、それをまさかアジア精神とは外務大臣は言われないだろう。そうだとするならば、私は今日の外務大臣が一人の文化的政治家として卒然として自分の置かれた地位をごらんになるならば、一方において西ヨーロッパの小さな国々、小さくてしかし幸福と平和を探求している国々と多くの共通性がある、同時にまたアジアで今独立しようとして、自主独立の道をたどろうとして、他国の軍事基地などに身を落していない国々、それらの国々に大いに共鳴するところがある。そうしてその両側に一方にソ連があり、中国がある、他方にアメリカがありイギリスがある。またアメリカやイギリスの軍事基地になっているかいらい的な諸国が今苦しんでいる、これが今置かれた状況だと私は思います。従いまして今次の政府の中近東に対する最初の出だしは国民ひとしく拍手を送ったと思います。やがて政府の政策がよろめくにつれて国民は不安を感じた。不安を感じながら敗戦国日本というものはやはりこういうものであろうかと、政府に対して同情と理解を持ちながら非常に心配している。そこで日本の立場というものに対する国民自身の反省も行われ、また政府に対する批判も行われつつあるというのが、私は今日のありのままの現状であろうと思うのであります。こういう観点から今度のレバノンの問題を見ますと、先ほど大西委員が指摘されたように、問題の技術的な一番の中心問題は、政府は一方では警察軍に賛成し、他方では監視団の強化に賛成している、私はここに問題があると思います。もし日本政府がほんとうにソ連にもアメリカにもとらわれずに、調停者としての役割を果そうというならば、この問題の本質をよくお考えになって――東京新聞の社説もきわめて明確にこの点を指摘していたと思うのですが、ソ連案に棄権をするならば同時にアメリカ案に対しても私は棄権をすべきであったと思います。と申しますのは、日本政府は警察軍に本来賛成していない、そしてあのときの留保条件は、国際連合の監視団の報告にあるごとく、レバノンにおいて外部からの干渉の事実はまだ起っていない、そのことをアメリカの決議案に賛成するときにも松平代表は留保条件に入れているわけです。留保条件に入れているならば国際警察軍が発動する基礎がないということを同時に留保条件に入れたわけでありますから、国際警察軍を承認したアメリカ案にはいかに苦しい立場であろうと、私は論理を理解している政府ならば、これは賛成できなかったはずだと思います。従って当然棄権すべきはずであった。一体藤山外相は監視団の強化という問題、国連警察軍の派遣という問題が全くこの段階において異なる見解に立つところの異なる範疇であるということにお気づきになっていないかどうか、これを伺いたいと思います。
○藤山国務大臣 国連警察軍と国連の監察団とは必ずしも同一ではないと思います。当時われわれが考えましたのは、先ほどから申し上げております通りとにかくアメリカが出兵しているという事態を一日も早く解決して、そして第三次世界戦争に突入するというようなことを避けて参らなければならぬのでありまして、そういう事態に処しまして、われわれとしてはアメリカが手を引くという解決案でありますならばそれを支持して、一日も早くアメリカが兵を引くという処置をとるということが第三次世界大戦を避け、あるいは今後の中近東における問題の発展を阻止するゆえんだと考えておったわけでありまして、そういう意味からいいまして、われわれはアメリカ案にも賛成し、あるいはこれが否決されたときには引き続き国連監察団によって何らかの形でアメリカが兵を引く道を開きたい、こう考えたわけであります。
○帆足委員 外務大臣は緊急の戦局の拡大を阻止するきわめて実際的見地から便法としてこれに賛成したと言われますが、それならばこれの実現性というものを同時に考慮に入れなければならなかった。それ自体の実現性と同時にこれが破れたときのあとの案の実現性についても考慮に入れなければならなかった。そこで多少理論ははずれているけれども、緊急事態であるから実際問題として非常の措置をしたと言われるならば、それだけの現実的裏づけがなければならぬ。これは大西委員が言われたように、それならばまずソ連を納得させる基礎があるかどうか、拒否権を行使するということは簡単なようですけれども、ただ一票のようですけれども、今二つの世界は大体国の数で分れているわけじゃない、五対五になっているわけです。キューバ島あたりがいつも一票加わったりなどして、いろいろ言いますけれども、しかしそういうことに問題はあるのでなくて、世界は今五対五に分れておるわけですから、拒否権を行使されるということがわかっているとすれば、その案はとにかく実際問題としては流産になるということを考慮に入れねばならない。そうだとするならば国際連合の監視団がいまだ干渉の事実がないといっていることに対して、監視団の強化という道でいくならばこれは多くの人々の共鳴を得られるけれども、またソ連に対してもせめて棄権をしてくれないかという程度の発言をなし得る論理性はあるけれども、国際警察軍をアメリカ軍のかわりに置くというのでは、これはソ連側が受け入れないであろうということは火を見るよりも明らかなわけです。従いまして、受け入れられない案に対してただゼスチュアを示して、そして日本政府の基本的立場をくずしてしまう。この問題に対して、それは一部の西欧諸国には同情的評論があるでしょうけれども、アジア諸国の言論機関はあげて日本の立場に対して不信の声を当時は発しております。そして最後に日本の案及び修正案が出ている。これに対しては、その努力に対してはだれしも御苦労であったと言っていることは、外務大臣が自画自賛をなさらずとも、多くの人がその努力を認めているということも事実でしょう。しかし前にアメリカ案に棄権しているものならばあとのものが生きようものを、前にアメリカ案に賛成しておりますから、日本案はそこに道徳的権威を持つことができません。しかも最後の日本案というものは何を言っているか。前にアメリカ案に賛成したという論理から類推をするならば、そのいわんとするところがきわめて不明瞭であるという弱点をそこに持たざるを得なくなってくる。そこで私はお尋ねいたしますが、日本提出の最終決議案と最初の政府の原案との間に非常な開きがありますが、その最後のぎりぎりのときに最初の決議案から修正した点、その点だけでけっこうです。文章でなく、最終的にはどの点とどの点であったか伺いたい。
○藤山国務大臣 事務的には政府委員から御答弁させます。
○宮崎説明員 日本の初めの案には前文が四つありまして、それから主文の方は、最後の決をとったときの案と比較しますると、第一項が抜けただけであります。主文のところにはいろいろ今までのこの問題のいきさつを書いたのでありまするけれども、それは国連本部に提出する前にすでにもう落ちてしまいまして、日の目を拝まないで済んでしまっておるわけであります。いよいよ提出する場合には、ずいぶんほかの理事国と協議いたしましたので、現在のような格好のものになっておるわけであります。これは御承知のようにスエーデンの案の前文と同文章であるわけであります。そういうふうに変りましたいきさつは、今申し上げたように、ほかの国との折衝の過程で変ってきたわけであります。
○帆足委員 ただいまの口頭による御説明だけでは十分にわかりませんから、まだ明日、明後日委員会が続きますので、国連で日の目を拝まなかったときの原案から、最終の案までの修正点を一覧表を一つ作っておいていただきたい。これは資料として要求いたします。
 それからこの日本の決議案は文章が非常に抽象的でありまして、一般の国民にはやはり理解しにくいと思います。私ども外務委員をしておりましてもこの委員会で専門委員なり外務大臣に伺わなければいまだに理解できないところがありますが、要するにこの日本決議案というものは、言葉はいろいろぼやかしておりますけれども、アメリカ軍がレバノンから一日も早く撤退することが望ましい、そのためにはそのかわりに国連監視団の強化を国連事務総長の手でやってもらいたい、こういう意味なのですか。その言葉の上に現われていることの中のほんとうの真意を一つ明確に聞かしていただきたい。
○藤山国務大臣 ただいまお話申し上げた通り、また私が先ほどから説明しております通り、アメリカ軍の出兵というものを、一日も早く撤退するような条件を可能に作るということの努力をわれわれはいたしたわけであります。従いまして監視団を強化し、それによってアメリカ軍の撤退を容易ならしめるということは、当然われわれの使命であります。
○帆足委員 ところが先ほどの大西委員からの質問を伺っておりますと、大体そういう気持はあるけれども、監視団が強化され、国連事務総長が適切なる措置をしたならば、アメリカ軍はそれによって撤退するという明瞭なる約束、また明瞭なる拘束力は、この決議案にないように伺いましたが、そういうような決議案ならば、これは単なる道徳的決議案であって、そういうものでも半歩前進としてよかろうと努力されたとするならば、それも一努力として、努力のほどはわかりますけれども、そういうものでしょうか。
○藤山国務大臣 日本案が最善最良の案だということを必ずしも私ども思っておりません。しかしながら実際的にこの処置によりまして安保理事会で何らかの決定ができることが、少くとも最少限に事態を食いとめ得るところに持っていくのではないかということを考えておるわけであります。決して私どもは日本案がこれ以上ないりっぱな案だとまで考えては必ずしもおりません。
○帆足委員 そういう抽象的な案でありますから、多くの日本国民にも政府の決議案というものはどうもぴんとこなかった。諸般の消息を知っておる西ヨーロッパの諸国は、日本の努力のほどを多少評価したことも事実でしょう。しかしソ連の新聞の社説を見ましても、こういうあいまいな案であります上に、前に国連軍の派遣について賛成した日本の案であるから、従いましてこの案をもって監視団の強化、アメリカ軍の撤退というふうにいくかどうか疑問である、むしろアメリカの現状を合法化するようなことになりはしないかというような疑いの論文が、ソ連、中共の新聞の社説に出ていたように私は記憶するのですが、この疑いの念も必ずしも私は根拠なきことというわけにもこの経過からいって参らぬと思うのです。監視団の強化か、国際警察軍の派遣かということは大へん違う二つの案でありまして、全く私は異なる範疇だと思うのです。従いましてアメリカの決議案に対して日本政府がやみくもにたてをつこうとしておるのではないのであって、長い目で見るならばアメリカもこの際自重されることが得策であるという誠意のほどを披瀝するというのであるならば、むしろアメリカの決議案に対して反対するか、少くとも棄権して、なおそれに対して何らかの記者会見とかまたは国連で発言の機会があるときとかに、日本の真意はこういう建設的な立場からきているのであるということを棄権して言うべきであって、逆に賛成しておいて弁明したとすれば、これは弁明にならない。これは詐欺であり偽善であるというふうな攻撃を受けても返すべき言葉がない。同時にまた日本案に対して外務大臣の真意を知っておりながらアメリカが賛成したとするならば、これまた私は偽善であると思うのです。アメリカは国際警察軍ならばかわる意思がある、しかし監視団ならば居すわろうという気が腹にあるのならば、私はアメリカはやはり日本案に対して棄権すべきであった。それからまたソ連に対しましても一体、日本の政府が東西のかけ橋になるなどといいますけれども、今の日本の置かれた経済力その他の力をもって、この巨大なる二つのマンモスのかけ橋になるということはできぬことだと思う。しかし同時に、今日の時代は人工衛星とミサイルの時代であって、あの武力のないインドが、その発言の論理と哲学ゆえに、そしてその一貫性ゆえに、最初はこじき坊主の仏教哲学といわれておったガンジーやネールの哲学が、今では世界に一つの権威を持つようになってきた。それと同じようにアジアの貧困の中に育ちながら、ヨーロッパの空気を吸っておる日本が、敗戦の経験から学んで多少論理的発言をするようになった。日本はアジアの植民地だった国でありませんので、西欧諸国の事情もよく知っておる。同時にアジア諸国の苦しみもよく知っておるということからして、日本がときどき独自の立場からよき発言をするようになったと言われたいと思うならば、私はやはりある程度節操を貫く必要がある。それならば私は東京新聞の社説は正しいと思うのです。やがて第三の道を日本が発見し、そして第三の道を提案しようという下心があるならば、それだけの精神的気力を持たねばならぬ。そのためにはアメリカの決議案に対しては反対しないまでも、せめて棄権してほしかった。そして日本の誠意のほどをアメリカにも示す、それだけの努力をしておれば、日本の決議案に対してはソ連もアメリカもあるいは棄権するという可能性もできたかもしれない。かくてこそ論理の一貫性といえるのでないかという東京新聞の社説は妥当とすべき筋であったと田う。
 最後に、日本決議案があれほどの御努力をされたにもかかわらず、国民一般がきわめて不満であって、そして政府がよろめいたといって心配しておるゆえんのものは、あのアメリカの決議案に対して積極的に賛成したということにある。しかも留保条件は、国連の監視団は外部からの間接侵略の事実を認めぬということを留保条件にしておきながら、しかも国際警察軍には賛成する。私はそういう論理は成り立たないと思いますけれども、藤山外務大声はその留保条件と国連警察軍に賛成したということが論理的に結びつき得るとお考えでしょうか、その論理を伺いたい。
○藤山国務大臣 当時われわれは最善と思う研究とあれの上に立っていたしたわけでありますけれども、実際問題を解決していきます上において、一番適切な措置であって、そういう意味において現実の国連の場においてわれわれはそういう態度をとって、問題の解決をはかってきたわけであります。
○帆足委員 私どもは、ただいま述べました論理がいかに筋が通っておるかということは、もう満堂の諸兄が御了解されておることであって、これ以上質問してみたって文化人たる藤山外相は苦しい立場に立たれるだけで、帆足君の質問は妥当であるけれども、おれの苦しい立場を理解していない、友情において欠除しているところがありはしないかという御疑問を抱かれても恐縮ですから、私はこのことを国民の前に明確にしておき、同時に外交の問題は、問題によっては党派をこえた、国民の利害もそれにあるわけですから、一つ政府としても重要なときに、ダレスのジェット爆撃機時代の外交でなくて、今やミサイル時代に移った、宇宙の新時代に移ったといわれるときでありますから、ユネスコ協力会の会長たりし藤山さんですから、われわれ野党の言うことをよく聞いていただきたいと思うのです。大西さんの言うように、一触即発の危機が回ってこないとも限らぬ。しかも日本は長い間、東南アジアで多くの失敗と人道に反する数々の失敗を犯してきたのです。その税金を私は必ずしも十分に払っておるように思いません。もちろん二発の原爆を受けたあの四十万の人たちがわれわれにかわって、天の摂理への犠牲を払って下さったかとも一人よがりに思ったりしますけれども、敗戦の経験から日本民族が十分に学んだとは思いません。従いまして、このおこれる国民の気持が残っている間は、中近東の火の手がいつ極東に波及せんとも限りません。こういう問題は民族の運命に関する問題ですから、保守、革新を問わず十分に語り合って、われわれの論理の中から摂取すべきものは摂取していただきたいと思うのです。
 まだ明日、明後日と外務委員会が続きますから、同僚の諸兄と相談しましてわれわれ質問いたしますが、最後に差し迫った問題といたしまして外務大臣のお耳に入れておきますが、日中の国交断絶によりまして、一億五千万ドルにもこぎつけた七年間の努力が水泡に帰しまして、最初はちょっとした外交の手違いだと思っていましたところが、だんだん深刻な対立になりまして、まことに国民の一員として遺憾なことだと思っております。これに対しましてはもう諸般の資料も集まって参りましたが、どうか政府当局、与党におきましても、中国の問題にどう善処するかということは、中近東の問題ともにらみ合せて適切な手を打っていただきたいと思います。同時にきわめて事務的な問題ですが、商品見本市を数億円かけて開いておりましたが、これが見捨てられた孤児のようになりまして、敗残の姿を異国にさらしておる状況であります。その商品の八、九割までは全部売却済みという約束になっておりましたが、不幸な事態のために持ち帰りを余儀なくされました。そのために会場費等約五千万払い、持ち帰りの費用五千万円も、貿易が再開するならば業者はその五割、六割を喜んで出すでありましょうが、再開のめどもできませんために業者も熱意を失っておりまして、展覧会当局はとほうにくれておるような状況にあるのです。これに対しまして、通産省としては若干の補助金なども見込んでおるようですけれども、これは形式的な補助金の問題でなくして、この問題をどうきれいに解決するかという実質上の問題でありますから、外務省も参加されまして、そして業界も犠牲を払い、政府もまたこれを助けて、そしてあとくされのないように、立つ鳥はあとを濁さずといいますが、あとを濁すことのないように、軽率に閣議を開くよりも、事前の懇談をよくなされて、業界納得の上で、最後に閣議に持っていくようにしていただきたいと思います。私のただいまの希望に対して外務大臣はどうお考えか、これを伺いまして、与えられた時間が参りましたので質問を終ります。
○藤山国務大臣 数日前でしたか南郷さんがお見えになりまして、現にその問題についてお話を承わりました。直接のあれは通産行政の上でありますけれども、南郷さんのお話等も伺いましたので、なお十分政府としても協議をいたしてみたいと思っております。
○櫻内委員長 床次徳二君。
○床次委員 おそくなりましたので簡潔に申し上げます。
 ただいままで各委員の質疑応答は、中近東におけるところの事態が、いわゆる武力攻撃でないという前提のもとに議論がかわされているように思うのであります。この武力攻撃であったかどうかという問題は、監視団の今後の調査に待たなければ明瞭なことはわからないと思うのでありますが、私ども心配いたしますのは、もしも間接侵略によりまして今後いろいろの事態が起って参りまして、これがAA地方その他において広がるという場合におきましては、やはり世界の平和と安全を確保するための大きな障害が出ると思うのであります。これに対する必要な考え方を持っておらなければならないと思うのでありますが、まず第一にお尋ねいたしたいのですが、国連憲章の五十一条におけるところの武力攻撃の問題、これはいわゆる直接の武力攻撃によるもののみを従来考えており、また現在もさように考えられておると思うのでありますが、さように解してよろしゅうございましょうか。
○藤山国務大臣 詳しいことはアジア局長から申し上げますけれども、国連憲章の解釈については先ほどから申し上げておりますように、委員会を作って国連内においてもいろいろ検討いたしております。間接侵略という問題は具体的にどういうところまでか、あるいはどういう程度までが間接侵略かどうかという問題は、相当困難な問題と思いますが、十分われわれとしては研究した上で解釈をきめたいというのが、われわれの態度であります。
○床次委員 今後の国際情勢から見ますと、各国において、いわゆる間接侵略が起り得る可能性も予想しなければならないと思うのでありまして、この間接侵略に対しまして、それぞれの方法も考えられるのでありますが、まずさしあたり当該国が、自衛上の立場から他国に援助協力を求めるということがあり得ると思うのです。さような場合におきまして、もしもその合法的なる政府からの要望によりまして兵を出すという場合に、今回のごとく、これが国連憲章の精神に反するのではないかというような意見が多くなりますと、なかなかこの間接侵略の防止ということがむずかしくなると思うのであります。でき得る限り間接侵略というものをはっきりさせておきまして、また間接侵略ということも実際に起ることがあり得るのでありますから、かかる場合の間接侵略に対しましては、政治的のみならず、なお国連の精神から申しましても、間接侵略に対する防遏手段を講ずることが必要であるということを、私は考えてもよいのではないか、今後におきましても国連の精神から申しまして、必ずしもかかることを排除するものではないと思うのでありますが、この点御意見を承わりたいと存じます。
○藤山国務大臣 国連の精神から申しまして、間接侵略というものをどの程度に考えるかということは、具体的事実に沿いまして相当検討をしなければならぬ場合があろうかと思います。従いましてわれわれとしては、とにかく侵略行為というものが起ることを好んでおりませんから、そういう立場からわれわれとしては、できるだけそういう問題をそういう見地から解決していきたい、こう考えております。
○床次委員 今後世界の平和と安全を確保するためには、直接侵略、間接侵略ができるだけなくなるということが望ましいのでありまして、今後の国際会議等におきましても、この間接侵略というものがいろいろのカムフラージュをとりながら出て参ろうかと存じますけれども、かかる間接侵略がないという方面に、またこれをなくさせるという方面に、今後わが国といたしましてもでき得る限り努力をすべきであると考えるのであります。この点に対して政府に対しましても御要望申し上げたいと思いますが、なお今日まで間接侵略に関しまして、国際間におきましていろいろ定義に類するもの、また間接侵略と認めて相互援助をするというような規定があるかと思いますが、かかる事例等に関しまして、果していかような事例があるか、条約局長から御説明を願いたいと思います。
○高橋説明員 ただいまの御指摘の点でございますが、御承知の通り、間接侵略という侵略につきましては、一九三三年でございましたか、軍縮会議におきまして、侵略の定義に関する条約というものがソ連側から提案になったことがございます。そこで、間接侵略という言葉の問題でございますが、普通の通常考えられています攻撃のみならず、一国で組織された武力団体、武装団体が、武器弾薬の供給を受けて他国に潜入して、そこで相手を攻撃するということも、侵略であるという考え方に基きまして、そのようなことも入れた侵略の定義に関する条約というものができ上ったことは、御承知の通りでございます。その後最近になりまして、第五総会以来、この間接侵略という言葉が非常に大きな問題になって、自来各総会ごとに特別委員会を開催いたしまして、この侵略の定義、侵略とはいかなるものであるかということで、非常に問題になり、しかもそのときに間接侵略というふうな考え方が入りまして、非常に問題となって、現在に至っておる状況でございます。またこれに関する条約としましては、NATO条約、ワルソー条約も、間接侵略という場合には協議するということになっております。集団的自衛権に基いて救援をする、派兵するというような場合は、憲章五十一条における武力攻撃ということになっておると考えております。ただこの武力攻撃という問題も、非常に厳格に武力の具体的な攻撃だけに限るか、それともそうでないのかということになりますと、武力攻撃の解釈いかん、すなわちいまの侵略の定義いかんということになりまして、非常な問題が起きてくることは御承知の通りであります。
○床次委員 ただいま御答弁がありましたごとく、間接侵略ということ、これはすでに論ぜられておりますが、今後の国際情勢におきまして、これは非常に増加する、しかも複雑化した形において起り得る可能性があるわけであります。かかる新しい国際情勢に対処して平和と安全を守るということは、われわれとしても大いに努めなければならぬことだと思います。特に今回の中近東の問題は、この例自体が直ちにそれに当るかどうかは別といたしまして、この機会に十分検討いたしまして、間接侵略の根を防止する、あるいは武力攻撃というものの定義を明らかにいたしまして、今後の国際的な紛争を防止するということが必要なのではないかと思うのであります。この点政府に対しまして、間接侵略防止ということに対する善処をせられんことを特に希望いたしまして、私の質問を終ります。
○櫻内委員長 本日はこれに散会いたします。
    午後五時十七分散会