第029回国会 外務委員会 第10号
昭和三十三年七月三十日(水曜日)
    午前十時十二分開議
 出席委員
   委員長 櫻内 義雄君
   理事 岩本 信行君 理事 宇都宮徳馬君
   理事 佐々木盛雄君 理事 床次 徳二君
   理事 岡田 春夫君 理事 松本 七郎君
      安倍晋太郎君    稻葉  修君
      臼井 莊一君    川崎 秀二君
      北澤 直吉君    久野 忠治君
      竹内 俊吉君    中曽根康弘君
      中村 梅吉君    福家 俊一君
      福田 篤泰君    松本 俊一君
      大西 正道君    田中 稔男君
      高田 富之君    戸叶 里子君
      永井勝次郎君    帆足  計君
      森島 守人君
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  岸  信介君
        外 務 大 臣 藤山愛一郎君
        国 務 大 臣 左藤 義詮君
 委員外の出席者
        内閣官房長官  赤城 宗徳君
        法制局長官   林  修三君
        外務政務次官  竹内 俊吉君
        外務事務官
        (アジア局長) 板垣  修君
        外務事務官
        (アメリカ局
        長)      森  治樹君
        外務事務官
        (条約局長)  高橋 通敏君
        通商産業事務官
        (通商局振興部
        長)      日高準之介君
        専  門  員 佐藤 敏人君
    ―――――――――――――
七月三十日
 委員池田正之輔君、椎熊三郎君、千葉三郎君、
 古川丈吉君、前尾繁三郎君、松田竹千代君、森
 下國雄君及び穗積七郎君辞任につき、その補欠
 として稻葉修君、松本俊一君、中村梅吉君、臼
 井莊一君、安倍晋太郎君、竹内俊吉君、久野忠
 治君及び永井勝次郎君が議長の指名で委員に選
 任された。
同 日
 委員安倍晋太郎君、稻葉修君、臼井莊一君、川
 崎秀二君、久野忠治君、竹内俊吉君、中村梅吉
 君、松本俊一君及び永井勝次郎君辞任につき、
 その補欠として前尾繁三郎君、池田正之輔君、
 石田博英君、松山義雄君、森下國雄君、松田竹
 千代君、千葉三郎君、椎熊三郎君及び穗積七郎
 君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 国際情勢等に関する件
     ――――◇―――――
○櫻内委員長 これより会議を開きます。
 国際情勢等に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますので、順次これを許します。川崎秀二君。
○川崎(秀)委員 岸総理大臣は、先般各国の視察におもむく議員団のうち、自由民主党関係者の送別会に臨まれまして、現下の国際政局に臨む日本の態度及び議員団への要望について見解を発表されたと聞いておるのであります。私はその内容をつまびらかにいたしませんが、ここにお伺いしたい第一の点は、ここ一カ月以来の中東異変その他世界政局の動きは、まさに岸内閣成立以来最も重大な時期を迎えた観があるのであります。中東の異変は決して対岸の火災でないことは、第二次大戦前とは違いまして、世界政局は国連を中心の舞台として動き、われわれはアジアにおける唯一の代表的理事国であるからであります。
 私はまず、昨日御連絡を申し上げておりますので、冒頭に当り首相の基本的見解、承わり得るならば、中東異変の処理に臨む岸総理大臣の御所見を伺いたいと思うのであります。
○岸国務大臣 ここ数年来中東の地域において相次いで起りました事件、さらに最近においてイラクの革命、レバノンの出兵、ヨルダンの英軍の駐兵等をめぐって非常に重大な事態に直面しているのであります。
 私は日本外交の根本としてわれわれは平和外交ということを強く言っておりますが、いかなることがあってもいわゆる第三次世界戦争のごときものをこの世界に発生せしめないということは、私は現在の政治家の最も大きな責任であり、義務である。従ってその危険をかもすがごとき事態の発生を極力押える、またある事件が起った場合にそのことをできるだけ拡大しない、その問題として早期に処理するということが、現在の東西両陣営の対立の状況から申しますと、私は最も必要なことであると考えております。
 さらにこの中東の地域は、御承知のように、その地理的の地位からいい、また経済的利益の点からいい、また民族的の関係からいい、さらに大きな東西両陣営の戦略的な意味からいって、きわめて重要な地域であり、この地におけるところの事態の発展いかんによっては第三次戦争にもなりかねないだろうということは、現在世界の人々がいずれも考えていることであります。
 こういう意味において中東に起った問題というものは、私は日本として世界平和を念願し、われわれが人類のほんとの福祉と平和を考える意味から申しまして、きわめて真剣に今言った考えでもって対処すべきである。しこうして今起こっております事態を処理するという問題に関しましては、言うまでもなく、この政治的な紛争が平和的に早く解決されまして、この地域に平和と秩序が作り上げられることが最も望ましいことは言うをまたないのであります。
 私どもは、この地域に起っているところのいわゆるアラブ民族主義というものが真に健全な民族主義として、これらの人々が一方において従来の植民地的な立場から真の独立した地位を獲得して民族の自由と繁栄を望み、これを実現しようとしている努力に対しては十分な理解と同情を持って対処すべきことは言うを待たぬ。
 ただ先ほど来申し上げているように、この地域が東西両陣営の非常に強い関心の地域であって、従ってこれらの両陣営のいろいろな動きというものはきわめて微妙なものがあると思うのであります。従って私はこれらの事態が早く――われわれがアジア地域の代表としていわゆる安保理事会の理事国にも選ばれておることでありますから、また国連憲章が望んでいるあの崇高な精神に従ってこれらの問題が処理されて、そうしてできるだけ今言っているように一日も早く平和と秩序が回復されるということを望んでおると同時に、日本としてあらゆる努力をこれに傾注していきたい、またいきつつある、こういうのが日本の根本の態度でございます。
○川崎(秀)委員 基本的見解はただいましかと承わりました。しかしながら私の見るところでは、今回の中東異変の処理について、日本政府の方針はしばしば動揺しておる。動揺しておるだけではなしに、決定的な瞬間において誤まりを犯すかあるいは表現の方法について重大な過誤を犯しておるように思っておるのであります。もちろんこれはイラクの革命がきわめて突発的であったことが第一であります。
 第二は、アメリカ軍のレバノン上陸というものが急速、しかも国運をかけて思い切った方針で決定されたことなどの要素もありますが、これに対する政府の対処策が事務官僚や五大使にまかせ切った観がありはしないか。少くともこのような重大な問題の決定に当っては首相みずからがイニシアチブをとって、政府与党の重要なるメンバーに御相談あってしかるべきだと私はまず第一に思う。しかるに経過を見ると、十六日の朝から十六日夜半にかけての日本政府の行動というものは、あたかも大東亜戦争勃発直前におけるところの政府の秘密的な取扱いに似て、しかもそれが事務官僚によって支配されておるような感じを私はしておるのであります。それが日本の政府としてとった行動が誤まりであったかどうかについては、われわれは今日いろいろな考え方を持っておるのであって、必ずしも政府の方針に反対ではございません。しかしそれならば十六日の朝に総理大臣がみずから、新聞紙の報ずるところによると、赤城長官と協議の上大国の武力介入については反対である。こういう言明をなされて藤山外務大臣に連絡をされた。もしこれが事実であり、その後に外務省の最高首脳部がきめたる大国介入というものに対しては反対であるという声明にもかかわらず、米国の決議案を支持したということは筋が通らぬと私は思うのでありますが、経緯について明確に伺いたいと思うのであります。
○岸国務大臣 もちろんこの問題は突発的に起ったことでありますけれども、そして安保理事会が急速開かれたことも御承知の通りであります。これに対して日本としてとるべき方針につきましては、私は十分に外務大臣とも連絡をし、その態度について打ち合せをいたしたことはもちろんでございます。私は従来、先ほど申しました東西両陣営の対立というものの激化を防いで、そして戦争の危険をなくするためには、大国が直接的たると間接的たるとを問わずこれに干渉するということは、私は望ましくないという考えを持っておるのであります。ただ今日までの状況を見ますると、世界の情勢は、両陣営の対立の姿、その間におけるところのいろいろな動きというものは、必ずしも直接的なものだけでなくして、間接的な方法によるところの介入も私は少くないと思う。こういうことが、いろいろな民族の自立を願い、真に民族の自由と繁栄をこいねがっておるところの民族主義の勃興というような場合に、いろいろな形において動いておるということは事実であります。こういうことは世界の平和を望む私どもの考えからいうと、望ましくないということで一貫をいたしております。従って、このレバノンに派兵したということ自体も、これだけを私は不当なり、もしくはこれを遺憾というだけではなくして、今申すように直接的たると間接たるとを問わず、大国がこれらに干渉することは望ましくないという考えでございます。しこうしてレバノンの派兵というこの外に現われたきわめて明確な事態は、できるだけこれを早く解消せしめる。なくする。すなわち撤兵を早く行なって、その事態を収拾することが望ましいという考え方のもとにきております。
 しこうして国連の安保理事会においてこれを扱う場合において、御承知の通り、ソ連の案とアメリカの案が、まず決議案として提案をされました。これを安保理事会として処理しなければならない、どうやるかという日本の代表からの請訓もございますから、これに対する態度として、どうしても私は現実の事態を早く平静状態に返す。ただ法律論をし、ただ非難をするというだけではいけない。その現実に基いてとにかく建設的に撤兵を早からしめる案として、最も望ましいとは私どもは考えておらないけれども、アメリカの案の方がすぐれておるという考え方のもとに、両案に対する日本の態度をきめたわけであります。決して私どもはその間に矛盾とかあるいは軽々にやったとか、もしくは一部の事務官僚だけにまかして事を処理したことはなかったということでございます。
○川崎(秀)委員 あらためてお伺いいたしますが、アメリカ軍のレバノン武力介入というものは、ただいまの仰せでは、直接的にしろ間接的にしても悪い。間接的ということは、私は他の国のことを大体さすのだと想像はいたしておりますが、武力介入というものが悪いという判断は、絶対に政府の方針として今後堅持をする。そしてけじめをつけていかなければなりませんから申し上げるのでありますが、それは悪いという考え方でありますか。
○岸国務大臣 私は、それが法律論的に違法であるかどうかということじゃなしに、それが望ましくない、適当でない、われわれが先ほど来申しておるような世界平和を望む意味からいくと好ましくないことである、こういうふうに考えております。
○川崎(秀)委員 それでは伺いますが、アメリカの決議案というものは、ソ連の拒否権によってつぶれるということは、当然予想をされておったわけであります。ソ連の決議案も出れば必ず否決をされるということは大体予想されておって、日本の決議案が上程をされるということの見通しもあるのでありますから、従って、あの場合にとるべき措置というものは、筋を通すならば棄権という手も私はあったと思う。それを何ゆえにアメリカの案に賛成をしなければならなかったかということの理由を伺いたいと思う。(拍手)
○岸国務大臣 アメリカの案は、先ほど申しましたように国連軍によって置きかえて、そうして撤兵をするということを内容としておるものであります。それについては、いろいろ条件であるとか理由とかいうようなものも付せられておったことは当然でありますが、これらについては、松平代表が日本の考え方を述べて、われわれの留保をいたしておることも御承知の通りであります。当時の状況からいうと、最も早く国連のワク内において撤兵をさせることが望ましいというのが、日本の考え方であります。当時直ちに日本が独自の提案をする余裕があり、そういう事態であるかどうかということは、当時の最初の状況においては、まだ結論が出ていなかったので今言ったような態度をとったわけであります。
○川崎(秀)委員 ただいま伺っておりますると、アメリカの案は、撤退を一つの目標にしたものである、米軍の今度の行動でもし買える点があるとするならば、目的と限界は明らかになっておる。これはわれわれは買っておる。買っておるけれども、とにかく兵力を出したその日に決議案を出すということは、これはいかにアメリカが国連の中における発言が強いにしても、心臓が強いのもこのくらい強いものはない。実際の話が、暴力行為を起して、張り手を一発食らわしておいて、やむを得ずやったんだ早いところ仲介してくれ。これはなぐった暴漢が仲介してくれというにひとしいと思うので、外務委員会のこの席上を通じてアメリカの反省を促すためにこの発言を残してもらいたいと思っておるのであります。従って、その際において日本のとるべき態度はきわめて明確であります。筋を通してわれわれはアメリカの案に反対するか、そうでなければ、自由主義陣営の一環として将来行動をともにしなければならぬアメリカの窮地に立ったところの姿を見るならば棄権をするか、この二つしかない。従って、私は総理大臣に申し上げたいことは、日本の外交場裏における困難な立場、ことに中東異変が純粋にアラブ民族主義の台頭であって、これが歴史的に必然性を持つ植民地からの解放運動である限りは支持しなければならぬ。しかし、その背後に国際共産主義のいろいろな策動の要素がないとは何人も否定できないのであるから、将来日本が国際共産主義と自由主義陣営の対決の場において、どちらの陣営につくかということは、保守政府である限り行く道はきまっております。日本の大部分はそれは認める。認めるけれども、あの際における日本の行くべき道は、世界平和を追究し、いかなる場合にも他国の不当なる内政干渉を排除する国連精神の純粋なる尊重ということを二回も三回も声明をしておいて、その当日にはこれを変えて武力介入をしたアメリカの決議案を支持しなければならぬという理由はない。そこに私はやはり筋道の通った正しい行動というものが、日本政府の評価を内外に高からしめていくところの原因になりはしないかと思うので、はなはだ遺憾であって、朝令暮改という言葉がございますが、朝令暮改ではなくて朝令昼改です。朝きめて昼変えるということは、これはわれわれとしては納得のいかないことでありまして、こういうことのないようにぜひお願いをいたしたいのであります。今度の十六日朝から十六日夜にかけての政府のとった行動につきましては、ただいまお話を聞いてみれば、全体としてはわれわれとしても納得し得るところもあります。ありますけれども、第一に首相自身のイニシアチブが非常に少かった点、それから朝言ったことと夕べやったところの行動は全く背馳をしておる。松平大使の演説は、米軍を非難しておるどころではない、議論のあるところなどというようなとぼけたことを言っておる。それは、初め松平大使はもっと純粋な立場で発言をしたかったというふうにも聞いておりますけれども、日本政府の訓令が来たのでトンボ返りを打った。そこに非常な矛盾があった。
 それから第三には政党内閣でありますから、ああいう場合にはやはり政党の重要者あるいはあなたが主張されておるところのインナー・キャビネットともいうべきものを招集をされて、そうしてこれに対処しなければならぬと思う。第三の点はきわめて重大、アメリカは今度の事変に当って両党の首脳者を招いた。私は鈴木委員長くらい招くだけの度量と、そしてこれに対処するところの政府の緊張した姿というものがあの際に見受けられなかったことははなはだ遺憾である。将来こういうような事態が起ったときには政府の首脳者、与党の首脳者を招いて会合をされますか。この点を伺っておきたいと思うのであります。
○岸国務大臣 もちろん外交の根本の重大問題について、政党内閣として党及び内閣等の首脳部においてこれを十分に論議し、十分に研究していくべきことは、これは当然だと考えております。また超党派的に日本の立場というものを考えろというお考えにつきましても、従来もしばしばそういう考えについても私は考慮をめぐらしております。ただ私の認識が違っているかどうかは議論があるかもしれませんけれども、現実の問題として今日直ちに社会党の首脳部とこういうことを話し合うことが適当であるかどうかということについては、私まだ適当であるという確信に立っておりませんからなにでありますけれども、十分慎重にそういうことについては取り扱っていくべきだろう、かように考えております。
○川崎(秀)委員 私は社会党と共同して案を練れなどと申し上げておるのではなくして、そういう緊急な情報は鈴木委員長にも通告をした方がよかろう、協議は自民党の首脳部の間あるいは政府の重要な閣僚において対処せられたいということを申し上げておるのであります。
 この際伺っておきますることは、一昨日の外務大臣の中東異変に対する報告にもありましたが、アラブ民族運動には同情と理解を惜しまない、これは大公使の声明にもあります。ただそこに健全なる民族運動という言葉を使っておりますのは何か意味があるのか。私も意味があってしかるべきだと思うのでありますが、今日アラブ民族運動というものが次第に大きくなってきて、ことにスエズ問題の英米軍の撤兵以来、ナセル大統領のアラブ連合における地位並びにアラブ全民族間におけるところの人気というものも非常に高まってきておるけれども、一面世界政局から見れば、かなり危険なる行動であるというふうにも解せられる向きもあるのであります。従って政府がアラブ民族運動の健全なる民族運動というものに対しては同情と理解を寄せるということは、どういう意味があるのかということを総理大臣から伺っておきたいと思うのであります。
○岸国務大臣 アラブだけではなく東南アジア諸地域においてもそうでありますが、いわゆる国民運動としての民族運動というものを見ますと、こういう長い間の植民地政策のもとにあり、また同時にいろいろな経済的、政治的の不安定な情勢から見まして、考え方は純粋に民族主義でありましても、やっている手段とか背後に動いているいろいろな政治的な環境というものを十分考えてみないと、ただ民族主義というものの現われとして現われたところをそのままに無批判に受け入れることのできない事態が、私は一つは国際的の自由から、一つはほんとうにその民族の自由と繁栄をもたらすところの堅実な方法として、世界の人々がほんとうに同情し、これに対して理解を持つような手段、方法がとられなければならぬと思います。たとえば民族主義の現われとして非常に非人道的な流血の激しいなにが行われるというような過激な方法がとられますと、世界の人人がこれに対して十分な理解と同情を持つことを得ずして、かえってその同情を失うというようなこともございますし、また東西両陣営の動きが相当に対立が激化しておる現状におきますと、いろいろな勢力が背後に動いておる。それと結びついておるという事態もございますので、これらを十分に考えて、そうしてその民族のほんとうの自由と繁栄のために、また独立のために、その運動が展開していくようにわれわれとしては理解と同情をもっていきたい、かように思っております。
○櫻内委員長 時間ですから簡単に願います。
○川崎(秀)委員 イラクの新政権は相当治安も確定いたしたようにも聞いておりますし、また英米に対する態度に対しても、石油資源の確保ということについては相当の弾力性のある態度をもって臨んでおるので、従ってこの新政権によって大きな紛争が、将来惹起するとも思われぬ。従ってもし事態が推移をするならば、アメリカやイギリスの態度いかんにかかわらず、日本は自主的な判断をもって新政権を承認するかいなかということをきめるべきだと思うのであります。今日どういう判断でこれをきめられようとしておるか、伺いたいと思います。
○岸国務大臣 革命が起りましてから当座は、通信等におきましても制約を受けておって、現地の事情等も十分明らかでなかったのであります。最近それも解除されまして、現地の公館に対して治安の状況なり、あるいは反革命的動きなり、あるいは革命政府の将来の見通しなりというものに対して詳細に報告を求めております。今回崎委員の御指摘のように、私どもはやはり先ほど来述べておるような意味におきまして、この革命政府によって治安秩序が十分に保たれ、そうして将来永続性のある政権であり、またそのとっておるところのものが過激でありもしくは非人道的なことでなくして、十分にわれわれの望ましい健全な民族主義の方向に動いておるということを見きわめるならば私は承認すべきものであって、決して英米等に追随してどうするというようなことにとらわれずに、日本独自に進みたいというように思っておるのでございます。
○川崎(秀)委員 もう一問伺っておきたいのですが、首脳会談がこの問題から懸案が解決されそうな方向にある。中東問題に限ってはおりますけれども、開催場所いかんによっては、われわれの希望であった首脳会談が開催されようとしておる。それについてはもう一段各国の政府が力を合せてこれを成功させ、その結実を効果あらしめるようにしなければならぬと考えておる。それに対して日本の政府はどういう態度に出ておるのか。それからもう一点は、しばしばここでも外務大臣に対して要望されたことでありますが、でき得るならば安全保障理事会が将来開催をされるとするならば開催をされ、それが首脳会談への手続的なものとなるならば、情勢いかんによってではありますけれども、私は総理大臣みずからが出かけて、他国が首脳者をもってすべてのものを切り開こうというときでありますから、総理がそういうような情勢ができたときには渡米の御用意があられるか、近ごろ政界の要人にしてもよくアメリカに行かれたり、あるいはヨーロッパに行かれる。しかし用もないのに特使を任命しようとしたり、あるいは用もないところに出かけていって、そうして十月までは会見の日時がないなどとアメリカから妙なことを言われないように、こういう所用のあるところに、大事なところに総理が出かけていく、あるいは外務大臣が出かけて処理をされる、その心がまえが一番肝心ではないかと思うのであります。その点について所信を伺っておきたいのであります。
○岸国務大臣 安保理事会の経過は、御承知の通り各国の決議案もそれぞれ否決され、あの行き悩んでおるところの状況から見まして、これを打開する方法として、各国の首脳者会談によってこれを打開していこうという動きが出ておることは、私は非常に望ましいことである。ぜひともこのままに放置せずして、これが各国の首脳者によって真に世界の平和のために合理的な解決の方法を見出すことは、私ども先ほど申したように、これは各国の首脳者の責任であります。しこうしてその首脳者会談がどういう形において、どこでいつ開かれるかということに関しましては、御承知の通り英米の首脳者とフルシチョフとの間の交換書簡がいろいろと動いておりますし、各国の態度も必ずしも一致した状況ではございません。従ってまだいつどこでどういう形式で開かれるかということは決定的ではございませんけれども、私はあくまでも今言ったような意味において、首脳者会談によってこれが解決されることを望む。しこうして私どもの立場から言うと、国連でこの問題を取り上げておるのでありますから、この問題の処理については国連のワク内において、従って安保理事会のワク内においてこれが行われ、そうして解決の道が見出されるということが望ましい。従ってそういうようなことについての事態の変化に処しまして、必要があり、またそれが適当であると考えるならば、私みずから、あるいは外務大臣等におきまして出かけていって、世界の平和のために微力であっても全力を尽したい、かように考えております。
○川崎(秀)委員 この時局艱難になりかかっておるときに、総理大臣の責任というものはもとより私は重要であると思うのであります。私は総理大臣が、臨時国会の達成のために肝胆を砕かれておる姿を拝見をし、また同時に若い健康力を持ち、新鮮な感覚を持って対処されんとする、十分に休養されて秋の国会に臨まんとする姿は、従来の日本の総理大臣をやや酷使しておったこととは違って、世論が寛大になってきた、総理大臣の行動に寛大になってきたということは非常にいい傾向だと思う。しかしそのことと、時に異変があって国運が大きな曲り道にきた、あるいは国運が非常に大きな岐路に参った際には、当然国をになう最大のまた最後の一人としての自覚を持って対処してもらいたいと思うのであります。その意味では、かつて総理大臣であった吉田総理大臣にしても鳩山首相にしても、日ソ問題あるいは日米問題というような重要な問題に対しては、常に一貫した信念と行動を把持されておったことに、われわれはたとい立場が違っておっても敬意を払っておった。ここぞという一番にもし間違うようなことがあればきわめて重大である。先般の十六日朝から十六日夜半にかけての外務当局並びに政府首脳の動きというものは、決して健全な状態ではなかった。そのことについてはさらに究明をいたしたい点もありますけれども、本日は時間の制約もありますので、ただ総理大臣にこのことだけを国民の一人としてお願いを申し上げまして質問を終ります。
○櫻内委員長 田中稔男君。
○田中(稔)委員 七月十二日の五大使会議で行われた中東情勢に関する判断は、まことに当を得たものであります。この正しい情勢判断がアラブ共和国を初め広くアラブ諸国民の共鳴を得たことを、私は政府とともに心から喜ぶものであります。外務省から発表された刷りものによりますと、「アラブ・ナショナリズムというものの勢いは阻止することはできず、地域内各国の政治体制いかんにかかわらずますます一般化してくるであろうと意見が一致した。」こういうふうに書かれておりますが、岸総理はアラブ民族主義に対するこういう見方に同意されるかどうかお尋ねいたします。簡単に一つ。
○岸国務大臣 大体において五大使会議の場合に、いろいろな、現地もしくは他の諸地域から大使諸君がながめて国際情勢の分析を行なったわけでありますから、アラブ民族主義に対するこれらの意見の一致したところは、私も大体にそういうふうに見ております。
○田中(稔)委員 大体では困る、完全にと言ってもらいたかったのですが、その次にレバノンの反乱やイラクのクーデターは、アラブ民族主義が米英の植民地支配の手先となった自国の政権に対して行なった抵抗であります。外務省の刷りものによりますと、レバノンの情勢についてはこう書かれておる。「レバノン情勢=内戦は同国の特殊事情による全くの国内問題で外国からの干渉は避け、自主的解決に待つべきである。」こう書かれておりますが、私は岸総理はもちろんこれに御異議はないと思います。実は東京にありますアラブ連合共和国大使館が昭和三十三年七月十七日に発表しました文書によりますと、こういうことが書いてあるのです。「日本首相による声明」という題で、「岸氏はレバノンの危機は国内的性質のものであり、外部勢力による介入を正当付ける何物もないと宣した。日本国連大使、松平康東氏は、英・米宛と同時に、上記の日本の態度に就いて通告を受けるであろうと語った。」またその少しあとに、「岸氏は、イラクのクーデターを、アラブ民族主義によって鼓舞された純粋な国内問題であるとしている。」云々、これはアラブ連合共和国大使館の文書であります。このアラブ連合共和国大使館の文書なり、あるいは先ほど申しました五大使会議の情勢判断についての外務省の発表の文書等に書いてある点につきまして、総理の御所見を聞きたいと思います。
○岸国務大臣 先ほど五大使会議の意見の一致したことについて私は同意を表したのであります。今のレバノン問題に関してアラブ連合共和国の何か書類を引用されましたが、これは私が何か、何日のお話でありましたか、声明をしたとかいうお話でありますけれども、それについては私そういう声明をいたした覚えも実はないのでありますが、ただレバノンの問題及びイラクのクーデターの問題につきましては、先ほど来申しましたように、この地域が非常に両陣営の微妙な、複雑な情勢のもとに置かれておりますので、またそれが突発的に起った事態から見まして、私どもはその実相を初めにおいて正確につかみ得るというようなことはなかなかむずかしいと思うのであります。傾向としてアラブ民族主義というものがずっと歴史的な意味を持って展開しており、これに対して十分な理解と同情を持つということは私一貫した考え方でありますが、具体的の問題につきましては、やはり具体的の事情というものを十分に考えてみなければならぬのであります。直ちに今のアラブ連合共和国の書類のようなことを言い切るということは、私はしたこともございませんし、またそういう考えも持っておりません。
○田中(稔)委員 日本が承認した国の大使館が発表した印刷物であります。それを総理が否定されるということは、私やはり重大なことだと思うこのことにつきましてはまた後ほど申し上げようと思うのですが、総理は米英のレバノン及びヨルダンに対する派兵というものが内政干渉である、成功の見込みのない暴挙である、そういうふうにお考えにならないか。
○岸国務大臣 厳格な意味において内政干渉になるかどうかということは、私いろいろ議論があると思います。たとえば両国とも国連憲章五十一条を引用してその派兵をいたしておりまして、従ってそれが内政干渉になるかならないかというような議論は、私はいろいろあると思います。しかし、私は先ほど来申し上げているように、それが国連憲章の上において内政干渉というふうに扱うべきものであるかどうかというような議論とは別に、政治的情勢として、アラブ民族主義に対して理解と同情を持ち、その健全な発展を望むという立場から見て、先ほど申しましたように、直接たると間接たるとを問わず、他国が介入するというようなことは望ましくないことであるという考えを一貫して持っておるのでありまして、従ってレバノンにおける米軍の派兵というような問題は、国連の安保理事会においてわれわれが取り上げて、そしてこれを一日も早く解消するように努力すべきものである、かように考えておるわけであります。
○田中(稔)委員 先ほど同僚川崎委員からも質問がありましたように、七月十六日の午前から午後にかけて外務省の中東問題に対する態度が急激な変化をいたした。そのためにアラブ諸国民の間における日本の信用はたちまちのうちに地に落ちたのであります。巷間伝えるところによりますと、この態度急変の裏には朝海駐米大使の動きがあったとか、吉田及び芦田両元総理の意向が重大な影響を与えたとか、あるいはまたマッカーサー大使の岸総理に対する申し入れが行われたとか、いろいろ伝えられております。その間の事情を説明していただきたいと考えますが、特にマッカーサー大使の申し入れの事実及びその内容について岸総理の御説明を願います。
○岸国務大臣 マッカーサー大使の申し入れということは、そういう事実は全然ございません。そしてまた今何かこの間において態度が豹変したとか、そうしてそれにはいろいろな党内その他の動きがあって、それに影響されたのであろうというあなたの御推定でありますが、そういう事実もございませんし、これはいろいろな御議論はあるかもしれませんが、私どもは最初からこの問題を取り扱うことについて矛盾とかあるいはそういう態度を変えたというようななんではございませんで、初めから一貫しておると私どもは考えております。
○田中(稔)委員 米英の中東派兵は世界の世論の反対を覚悟の上で、非常に強い決意をもって行われたものと考えられるのであります。その証拠に全世界における両国の陸海空の三軍は直ちに警戒態勢に入ったのであります。もしソ連が中東において米英に対する軍事行動をとるというようなことが起りますならば、戦争の危険は明らかに近つくものと考えます。しかもその戦争は必ずや世界戦争に発展するでありましょう政府はそういう場合を予想して、日米共同防衛態勢の立場から国連においてアメリカ案を支持したのではないか、こういう推測が一般に行われております。岸総理の御所見を伺います。
○岸国務大臣 レバノンの派兵あるいはヨルダンの派兵というような問題について、英米が相当強い決意のもとにこれを断行したであろうという見方につきましては、私どももそう思います。そうしてこれが世界戦争への一つの危険性を持つものであるということも、これもそう言わざるを得ないと思います。従って先ほど私が申し上げましたような立場においてこの事態を現地的に、そうしてできるだけ早い機会に処理するということでなければいかぬ、このために日本としてはあらゆる努力をしようという考えに立って安保理事会において行動をしたわけであります。決して日本との安保条約云々を考慮してアメリカ案に賛成するとかしないとかいうような態度をとったわけでは全然ございません。
○田中(稔)委員 この際左藤防衛庁長官にお尋ねいたします。米英派兵の直後、在日アメリカ軍が警戒態勢に入ると同時に、自衛隊も警戒態勢に入ったと伝えられております。横浜あたりでそういうことを聞きました。そういうことについて御答弁を願います。
○左藤国務大臣 自衛隊が警戒態勢に入ったような事実は全然ございません。
○田中(稔)委員 もしこの中東問題から世界戦争が起った場合、朝鮮戦争当時のように、在日米軍が日本を基地としてアジアの各地域に自由に出動するというようなことがあるとしたなら、政府はこれを許す意向であるかどうか、また日本の自衛隊にこの米軍と共同動作をとらせる方針であるかどうか、これら二点について左藤防衛庁長官の御答弁を願います。
○左藤国務大臣 在日の米軍が、今回の事件について動くような情勢は私ども見ておりません。それからこれに対して共同の行動を求められたような事実は全然ございません。
○田中(稔)委員 将来そういうことになったらどうするか。朝鮮戦争の際は在日米軍は日本を基地として作戦をやったこと御承知の通りでありましょう。将来世界戦争が起った場合、朝鮮戦争の当時のようなことが起るのじゃないか。さらにまた日本の自衛隊は――当時は自衛隊がなかったわけです。今度自衛隊は米軍と共同動作を求められる場合拒否できないのじゃないか、そういうことを心配するからお尋ねする。もう一度……。
○左藤国務大臣 私どもは防衛庁設置法あるいは自衛隊法の建前から申しましても、共同動作を求められましてもこれと共同に海外に派兵するとか出動するというようなことは考えておりません。
○田中(稔)委員 フルシチョフ首相が中東の危機を平和的に処理するために提案した首脳会談は、アメリカの引き延ばし戦術によってその早急な実現が困難になっていることは御存じの通りであります。その間にレバノンにおける兵力の増強は間断なく続けられ、現在すでに一万をこえております。トルコのアダナには一万一千の原子戦部隊が待機しております。第六艦隊には三万の海兵隊が乗っておるのであります。またイギリスもヨルダンにおける兵力を盛んに増強して現在八千名に達しております。ソ連がかかる事態を黙認するわけはありません。アイゼンハワー大統領及びマクミラン首相にあてた一昨二十八日付のフルシチョフ首相の第三書簡は、国連の内であろうと、外であろうと、すみやかに首脳会談を開くことを督促しております。この書簡の言葉は穏やかでありますが、最初に首脳会談を提唱した七月十九日付のフルシチョフ書簡のあたかも米英に対して和戦の決定を迫るような重大な内容を思い浮べますならば、この督促状の意味するところまたきわめて深刻であります。この歴史的危機の瞬間において、政府は、日本が安保理事国の一員である当然の義務に基き、米英特にアメリカに対して首脳会談のすみやかな開催に応じるよう、強く勧告すべきだと考えますが、岸総理のお考えをお尋ねしたい。
○岸国務大臣 先ほど来申し上げているように、首脳会談は、われわれの希望としては、国連のワク内において安保理事会がこの問題を取り上げて扱っておるのでありますから、そのワク内において実現されることを、日本としては望んでおるわけであります。御承知のように、この首脳会談の問題は、以前に、この中東問題だけに限らずして行われようとしたなにもありますし、さらにこの首脳会談に対して、いわゆる五ヵ国首脳会談として安保理事会の理事国でない国も入れてやろう、また参かさせる範囲をどうするかというようなことにつきましても、いろいろ英米とソ連との間におきましては、見解を異にいたしておる点もあるように思います。従いまして、この両方の間における交換の書簡等を見ますと、いろいろこの間におけるところの複雑した外交上のかけ引きも含んでおることは、これは当然想像できることでございます。これらの情勢に対処して、われわれとしてはあくまでも、安保理事会が、過般の経過におきまして各種の各国の決議案を成立せしめることができなかった、事態を収拾することが従来のやり方だけではできなかった、しかしなおわれわれは安保理事国の一つとして安保理事会の範囲においてこれを各国の首脳者の会談によって解決しようという努力をいたしておるわけであります。十分諸情勢を判断して、この開催が行われ、またそれが早く実現するようにあらゆる面から努力をして参りたい、また参るようにいたしておるわけであります。
○田中(稔)委員 かって中国に対する認識を誤まって、岸総理、あなたを含めて、日本の政治家と軍人は、国を誤まったのであります。今日安定した政権のもとに大建設を続けている新中国に対する認識を政府が再び誤まるようなことがあるならば、その結果は実におそるべきものがあります。しかるに政府は、しばしば中国に対して強い態度で静観を続けていけば、やがて向うから折れてきて、貿易の再開も可能であると考えているようでありますが、そういう政府の考えの根拠を率直に説明してもらいたい。
○岸国務大臣 今日日本と中国との関係がこうした断絶状況になりましたことは、非常に遺憾であります。しかしそれに対して、私どもは従来の態度を、特にこういうような断絶に導くような、敵意とか悪意とか、あるいは何かの施策を変えてそういうことになったわけではございません。しかるに、中共の政府からは、しきりにわが内閣に対して、相当激しい言葉をもってわれわれを攻撃しておるというのが現状であり、また貿易等を一方的に、すでに契約があるものに対しましても契約を破棄する等の非常手段によって貿易関係を遮断したという事態でございまして、私どもはこれに対して、日本の真意は、あらゆる面において、あるいは国会を通じ、その他の面におきましても十分にわれわれとしては述べており、そうして日本国民の大多数がわれわれの考えを支持しておるというのが現在の実情であります。こういう際において、われわれももちろん、一から十までわれわれが正しくて、一から十まで中共側が間違っているというような態度なりあるいは言動なりをすべきものではないと思います。われわれはどうしても日中間の関係が歴史的に見ましても、地理的に見ましても、あらゆる面から見てこういう状況であることは望ましくない。これは改善されなければならないという考えでおります。そうして同時にその考えについては私ども保守党の内閣として、これが政治的の関係を結ぶというようなことに関しましては、今日直ちにこれを結べない立場にあることも従来とも中共側におきましても相当に理解しておったとわれわれは思うのであります。こういう際でありますから、これを今の状況から見ますと、あらゆる、あるいはスポーツの関係においてもあるいは文化的な関係におきましても、従来いろいろな計画があったこともほとんど中共側によって一方的に取り消されておる、これが遮断されておるというような状況のもとにおいて、今いろいろな手段を講じても効果がないと私は思う。むしろお互いがもう少し反省をし、そうして事態の推移を見て、両方においてこれを打開しようという一つの機運を醸成するという必要があるのであります。そのために今具体的にいろいろなこと、たとえば使節を派遣するというようなことにつきましても、あるいはそれを受け入れないというような事態が出てきますと、ますます悪くなってくるというようなこともございますので、十分に各般の情勢を検討し、そういうふうな情勢を打開して、こういうせっかく積みかけてきたところの従来の関係というものを回復しようという機運を醸成するように努力することが、今日の最も必要なことであろう、こういう意味において私は静観と申し上げておるわけであります。
○田中(稔)委員 必ずしも的を得た御答弁ではなかったのでありますが、時間の関係で先に進みます。アメリカは蒋介石による大陸反攻の可能性が薄らいだために、次善の策として台湾を中国本土から切り離して、二つの中国を作ろうとしておるのであります。この陰謀を中国は最も警戒しているのであります。しかるに政府はアメリカの政策に追随してこの陰謀に加担しているのであります。過般赤城官房長官は中華人民共和国と台湾とは二つの別の国である、こういう言明を行なって失言とされたのでありますが、これは決して一場の失言ではなく、岸内閣の確固たる方針であると見るべきであります。かって吉田内閣が台湾政権をもって中国を代表する正統政府とみなし、これと日華平和条約を結んだことは外交上百年の失敗であったのであります。しかるに岸内閣はこの失敗を拡大再生産しつつあるのであります。昨年岸総理は台湾を訪ねて日台関係の強化に努めましたが、うわさによれば近く蒋介石総統が答礼のため日本に来訪するということであります。こういうことを続けていったならば、現在危機に直面している日中関係の打開は永久に不可能になるに違いありません。政府は、この際翻然として過去の失敗を清算して、台湾が中国の一部である事実にかんがみ、二つの中国を作る陰謀をやめ、台湾問題が中国の内政問題として平和的に解決されていくことを助けるために、台湾政権との接触を漸次弱めていきながら――今すぐ中華人民共和国を承認せよとは申しません。今のお話にあった通り、そういうことを私は政府に望むのではありませんが、なるべく早い機会に中華人民共和国を、中国における唯一の正統政府として承認する方向に向って政策の転換を行う意向はないか、これについて岸総理の御答弁をいただきたいと思います。
 なお今うわさされております蒋介石総統来訪のうわさについても御答弁願いたいと思います。
○岸国務大臣 御承知のように中華民国と日本との間には正式の平和条約が結ばれ、これとの間に正常な国交が回復されて、友好関係が樹立されております。また中華民国の代表が国連における安保理事会の常任理事国の一つであることも御承知の通りであります。今日の状況から申しますと、この作られたところの国際的の関係及び両国の関係というものを、やはりわれわれとしてはあくまでも誠実に、これに対して友好関係を進めていくことは、国際的の日本の立場として当然であろうと思います。われわれはこれによって、今田中委員のお話のように、中華民国との関係を弱めていくというようなお話がございましたけれども、政府としては――政府としてのみならず、日本としてそういうことを私は決して言うべきものではないという考えに立っております。なお蒋介石総統の日本来訪のことにつきましては、私は全然承知いたしておりません。
○田中(稔)委員 最後に一問であります。昨日の閣議決定によりますと、武漢・広州日本商品展覧会の出品物引き取り費用の二部として一千七百五十万円の政府補助を支出することになったようであります。しかしそれでもなお六百万円の不足を来たす勘定であります。さらにまた中国側に対する未払金は会場借用料、鉄道運賃、梱包費、倉庫料等を含めて約六千万円に上るのであります。この未払金を中国に残したままで出品物を持ち帰るということは、今日の微妙な日中関係から見まして、はなはだまずいのであります。政府は当然引き取り費用の不足分と中国側に対する未払分を含めて約六千六百万円の補助を行うべきものだと考えます。またいっそのこと、この際約六億五千万と評価される出品物全部を中国側に寄贈してはどうでしょうか。そうすることは、将来日中貿易が再開される場合に備えて目に見えない大きな効果をあげるのではないかと考えるのであります。そのために必要な補助金も考えていただきたいと思うのでありますが、高碕通産大臣御欠席でありますので、どうか一つ政府の慎重な御考慮をわずらわしたい、こう考えております。岸総理の御答弁をお願いしたいと思います。
○岸国務大臣 武漢の見本市に出品をいたしました日本側の団体に対して一千数百万円の補助を閣議決定で予備金支出をいたすことに決定をいたしたのでありますが、今この金額につきましては、担当の通産大臣が十分に実情を調査して、これが適当であるという結論のもとに閣議に出されまして、閣議決定をいたしたわけであります。今田中委員からの新しい一つの御意見に基く御提案につきましては、なお通産大臣におきまして研究をさせることにいたしたいと思います。
○田中(稔)委員 ぜひ一つお願いいたします。
○櫻内委員長 中曽根康弘君。
○中曽根委員 私は、まず総理大臣に沖繩の問題について御質問をいたしたいと思います。
 中東の問題は、アラビアの民族主義でありますが、沖繩の問題は日本の民族主義の重大問題であるからであります。先般沖繩に参りまして非常に感じ入ったことがありました。それは沖繩が第二次世界大戦における日本民族の最大の犠牲者であったということであります。沖繩の那覇の町に参りますと、相当傷ついた人がまだおります。それらはみな戦争のとき南部に追い詰められて、父親が子供を手ぐわや何かで殺して自分はがけから飛び込んで死んだ、その子供が生き残って今那覇の町にいるというそういう姿もあります。にもかかわらず、沖繩の民衆はどういう気持で本国を見詰めておるかと申しますと、先般教育基本法を作りましたが、その教育基本法の冒頭に、われわれ日本国民はという言葉が書いてあります。ところがこのことは民政当局を刺激して、三回にわたって拒否権を行使されて、立法院を通らなかった。しかし立法院は不焼不屈でこの法案を再度提案して、今年三月とうとう通過させたという事実があります。このように日本人としての自覚を持って祖国政府を待ち望んでおるのが実情であります。考えてみますと、沖繩が戦争中われわれの最大の犠牲者で、そういう戦禍をこうむった上に、戦後においては、日米関係の条約等によって変態的な態勢に暗い曇天の生活を送っておるとすらわれわれ本国の者からは言えるのであります。こういう人たちに対してわれわれが各府県並み以上の愛情を注ぐべきであると痛感して帰りました。総理大臣もおそらく御同感であろうと思うのであります。先般来土地問題とかあるいは市長選挙とかそういう問題がいろいろ論議されましたが、こういう問題は、当間主席やあるいは立法院議長の努力でアメリカとも交渉して、アメリカも相当寛大な気持で善処する模様でありまして、島内では今静観しております。しかし残っておる問題は経済問題であります。沖繩は現在日本の金で七十億円くらいの予算を組んでおりますが、裁判所の費用や警察の費用や教育の費用や、内地では国家が負担すべきものを自分でみな出しておる。しかもアメリカが補助金で出しておる金は日本円にして約七億円であります。そうすると七十億円のうちの約一割という点を見ますと、内地の県と比べると大体八十万の人口ですから、四、五十億の中央からの交付金が行くべき性格のものなのであります。そういう点からしても、社会保障はそう進んでいない。教員の共済組合もない。そのほか内地から見ると非常に水準が落ちているのであります。これを経済的な問題でもあるいはその他の行政機構上の問題万般について内地の水準まで引き上げてあげるというのが、母国政府の親心でなければならないと思います。そういう点から先般来当間主席及び安里立法院議長が参りまして、経済協力の問題あるいは財政援助の問題等について御陳情があったと思いますが、総理大臣はこれらの問題についていかにお考えになりますか、お尋ねいたしたいと思います。
○岸国務大臣 沖繩の問題に関して中曽根委員がきわめて理解のある同情のお気持――これはおそらく九千万日本民族も同様に考えるところであろうと思うのであります。従来この根本は、この変態的な状態を早くなくする意味において、施政権の返還というようなことをかねてからも強く要望しておるゆえんも、そこにあるのであります。しかしそのことはいろいろな関係上、国際関係その他も手伝いまして、なかなか一挙に実現することは困難である事情も御承知の通りであります。しかしその間において、それでは指をくわえておるべきかというならば、そういうことは私はすべきものではなしに、できるだけのこれが改善をしていかなければならぬ。特に日本国民としての一つの意識というものも十分に住民が持っておるわけでありますから、政府としても、また内地の国民の諸君も、十分にそれに対して理解と同情を持って処置していかなければならない。特に具体的に申しまして、今おあげになりましたように、これがもしも日本の都道府県の一つであったとするならば、今の日本の政府が各都道府県に対してやっておる施設というものとの関係を比較考慮してみますると、水準が低いという結論になることは御指摘の通りであります。私が昨年アメリカへ参りまして、アイゼンハワー大統領との間に日米共同声明をいたしましたが、その中に、特にその施政権を返すということについては、今日の状況についてわれわれの考えとアメリカの考えとが一致を見ることができなかったけれども、しかしその間において、沖繩の住民の福祉とその生活の向上ということについてアメリカ政府が十分に意を用いるということは、共同声明の中にも出ておる。従いまして、そういう見地から、われわれはアメリカの政府に対してそういう意味の改善なりあるいは日本内地との比較等を十分示して、沖繩の行政の水準や国民生活の水準を高めるように一つアメリカをして努力せしめることは当然であろうと思います。しかしさらに日本の政府として、これに対して財政的な援助や経済協力等において考える点はないかという点につきましては、財政援助の問題はとにかく、施政権を一切アメリカが現在のところ持っておるという状況のもとにおいて、相当に私は困難があろうかと思います。しかし経済協力によってこの沖繩におけるところの経済状況をよくし、沖繩住民の経済的地位を高めるというような意味におきまして、経済協力を進めていくという点につきましては、相当に私は具体的に考え得るのじゃないか。財政的の援助の問題につきましては、これは十分アメリカとも――先ほど申したようにアイゼンハワーとの共同声明に盛られておる趣旨に基いてアメリカが第一段的にやるべきであります。また日本としましてもある程度のことは、従来のたとえば見舞金等の方法によって出しておる例もございますから、適当な方法においてこれが援助をして、そして一方においては沖繩住民の国民生活の水準を高め、その福祉を増すとともに、沖繩の人々は日本国民であり、やはりいわゆる潜在的主権を持っておって、今時期はわからないけれども、将来は必ず日本に復帰し、日本の一部としてわれわれが考えていくというこの気持を表わす方法について、さらに政府としても十分に考慮もし、努力もしていかなければならぬ、かように思うのであります。
○中曽根委員 復帰を促進するためにも、民生安定にしてもあるいは行政制度にしても、内地とゲージを合わしておくということは、これを促進するゆえんになる、これがおくれておるということはますます復帰がおくれる原因にもなると思います。その中で、財政的な問題については今お話の通りであると思いますが、昨年の岸・アイク共同声明の中で、沖繩問題の民生安定に協力するという言葉が書いてありましたが、あそこの部分だけは、日本政府とかアメリカ政府とか、両国政府という言葉がないように思います。これはアメリカがやるという意味ですか、日本政府もともに協力してやるという意味ですか、その辺の解釈はいかになっておりますか。
○岸国務大臣 正確な字句の上のなにはありませんけれども、アメリカが全部の施政権を持っている以上は、その施政権の内容に属する限りにおいてはアメリカがやるべき問題であると私は思います。ただ先ほども経済協力の問題がございましたが、経済協力の問題等につきましては、施政権に触れずに経済協力によって沖繩の民生の安定なり向上に資することができる、こういうことは当然日本としてもやってよろしい、こう思っております。
○中曽根委員 その財政協力の問題で、いずれこれは対米折衝に待たなければならぬと思いますが、たとえば一つの案として総理府の南方連絡事務局、今の特殊地域連絡事務局の予算に、ある程度の金を払い切りで載せておいて、それを向うへ交付金としてやる、これも一案であろうと思います。日本の予算書にそういう若干の数字が、沖繩に交付されるという意味で載るというところに非常に意味がある、見舞金と違う意味が私はあると思います。こういう点もぜひ推進していただきたいと思いますが、今の財政協力あるいは経済開発等の問題にいたしましても、大いにアメリカと話し合ってやっていくべきものだと思いますが、藤山外務大臣はいずれ国連総会でアメリカにお渡りになるが、ワシントンに行ってこの二つの問題について当方の意思をよく向うにも説明し、向うの協力を求めてこれをぜひ実現さしていただきたいと思いますが、そういう御意思がありますかどうか、承わりたいと思います。
○藤山国務大臣 今回中曽根委員が個人としておいでになりまして、沖繩の人たちのなまの声を十分聞いてわれわれにお伝え願いまして、またその上に立っていろいろ御意見を拝聴したわけでありますが、政府としても当然それらの御意見、また声というものに応じて今後いろいろな問題を考えて参らなければならぬと思います。同時に、アメリカに参りましても、今回私は特殊の折衝に行くつもりではございませんけれども、当然こういうものを例にとり、またこうした問題について解決せらるべき問題はできるだけ努力して参りたい、こう考えております。
○中曽根委員 沖繩問題で総理大臣にもう一つ伺いますが、沖繩の人が内地の政府を当てにしていることは、ちょうど鬼界島の俊寛が都を望んでいるのと同じような気持にあります。それで内地の政府の一挙手一投足というものは、非常に向うに楽観を与えたり、悲観を与えております。しかもまだいろいろ問題が山積しております。たとえば先般来御努力願っている漁船の補償の問題にしても、あるいは戸籍の統一の問題にしても、あるいは恩給の通算の問題にしても、非常にまだ残っている。そういう意味で内閣に沖繩問題の審議会でも作っていただいて、その窓口を作ってやる、そして向うの人が苦情処理に来られる、そのことだけでも非常に政府の親心を示すことになると思います。審議会をぜひ作って、彼らに安心を与えてやりたいと思います。これが第一点。
 それから先般来新聞で松野総務長官が渡られるということを聞いておりますが、これも非常にいいことでありまして、政府の高官が総理大臣代理というような資格でもいいから、ともかく見舞を兼ねて向うに行かれるということは非常に大事なことであると思います。松野総務長官をぜひやっていただきたいと思います。これが第二点。この二つの点について総理の御見解を承わりたいと思います。
○岸国務大臣 御承知の通り総理府に従来南方連絡事務局――名称は変ったようでありますけれども、こういうものがあって、沖繩問題についても現地の事情等について十分に連絡をとり、また意見のあるところはこれを聞いて参ったのでありますが、しかしさらにそれを強化するような意味において審議会を作れというような御提案でありますが、あるいは審議会にすることが適当であるかどうかというようなことも、行政組織との関係も考慮して研究をしなければならぬ点であると思いますが、いずれにしても、このことに対する日本政府の一挙一動なり、あるいは日本政府に対して非常な期待を持っておるという現地住民の心持なり、また解決をしなければならない幾多の問題ができるだけ合理的に早く処理され促進をするために、適当な行政機構も考えていく必要があろうと思います。これについては御提案もありましたが、十分一つ考究をしてみたいと思います。
 なお松野総務長官の沖繩訪問のことについてでありますが、これは事務局の長官としても沖繩の現地を一応見る必要もあるということを痛感いたしておるようであります。時期等につきましては諸般のことを十分あわせ考慮して実現するようにしたいと思います。
○櫻内委員長 中曽根君、時間がありませんので……。
○中曽根委員 それでは私はこれでやめます。
○櫻内委員長 岡田春夫君。
○岡田委員 中東問題についてもいろいろお伺いをしたいのでありますが、三十分の時間でありますので、あまり伺えないのですが、一点だけ伺います。簡単にお答えを願いたいと思います。
 先ほど川崎秀二君の御質問に対して岸総理大臣は、アメリカの出兵は好ましくない、妥当ではなかった、こういう点をはっきり答弁されておられる。いわゆる不当であった、こういうことになると思うのですが、そこで安保理事会における日本代表が決議案を出すに当って、そういう考え方があるならば、日本の決議案の最後の採択に当っての努力は、私は間違っておったと思います。というのは、ソビエトから日本の決議案に対する修正案が出された。これに対してやはり日本の決議案としては、スエーデンの修正を日本がのんだのでありますから、当然これはソビエトの修正案に対しても共同の修正に対する努力を行わなければならない。こういう点を全然行わないで、何かアメリカの案が中で最もよかったというようなことで――先ほど岸総理大臣はアメリカの案が中で最もよかったというお話なんだが、先ほどの川崎君のお話のように、アメリカは中に入った強盗なんです。強盗が撤退の条件を出している。その撤退の条件がいいからそれによってまとめるというのじゃ、まとまらないのはわかり切っている。アメリカの出兵が悪いというのならば、特に岸さんは自由諸国の一員としてアメリカに最も近接な関係にあるというのならば、日本の決議案を通すという場合においてはソビエトとの共同修正をやって、そしてアメリカを説得する最も近い関係にある日本の国が、アメリカを説得するという努力をしなければならないにかかわらず、そういう点がさかさまになっているところに、日本の決議案が否決になるという実情があったと思うのです。こういう点について岸さんはどのようにお考えになるか。
 それから第二の点は、十六日に先ほど指摘されたように日本政府の態度が大きくひっくり返った。その中で最も大きな要因をなしたのは、ちょうど日本に帰っておった朝海大使が暗躍をした。外務省の幹部会において朝海大使が発言をするのならば、これは外務省内部の問題ですから一応いいとしても、朝海大使は外に出て前の吉田総理大臣に対して電話をかけている。そうして岸総理大臣に吉田さんから電話がかかったでしょう。藤山外務大臣にも電話がかかったでしょうこれは外交官として公務員としての朝海大使の態度というものは適当ではない、明らかに穏当を欠いていると思うのだが、この点はどうですか。
○岸国務大臣 御承知の通り日本の提案は十一ヵ国の中で十ヵ国の同意を得ておるわけでありまして、私は決してソ連の修正案であるから、ソ連であるから聞かないとかどうとかいうことじゃありませんが、十分に理屈のある修正案はこれを取り入れて、そうしてまとめていくことが必要である。しこうして今申し上げた通り、この立場の違っておる国も含めて十一ヵ国の中で十ヵ国が賛成してソ連が拒否権をなにしたという事態をごらん下されば、日本の修正案というものは国際的に多数の国がこれを支持しておるという結果を示しておると思います。
 十六日の問題に関しては、先ほど川崎委員に対してお答えをした通りであります。朝海大使が何らか暗躍をして云々というお話でありますが、そういう事実は全然知りませんし、そういう事実があるとは思いません。
 なお吉田前総理から電話があったというようなことは、全然そういう事実はございません。
○藤山国務大臣 吉田前総理から電話がかかったという事実は全然ございません。
○岡田委員 この問題をやっておると時間が長くかかりますから……。最近、数日前の新聞で、ネール首相が、ごく近い機会にAA会議を――バンドン会議の第二回目ですが、開きたいという意向がある。それから、きょうの新聞によると、ナセル大統領がその準備として外相会議をやりたいということを言っておりますが、これは中東問題を解決する意味で、アジア・アラブのナショナリズムを尊重する意味で、ぜひとも参加すべきだと思いますが、総理大臣はいかがでありますか。
○岸国務大臣 今おあげになりました事実については、私今何も承知しておりませんが、AA会議が開かれるということがあるとすれば、これに参加することは私は当然であろうと思います。
○岡田委員 それに参加することには賛成されるというのですが、それから続いて次の問題に入って参ります。
 私のきょう伺いたいのは、主として核実験の問題と、それからヴェトナムの賠償の問題です。核実験の禁止については、解散前の国会で、私の調べたところによると、三月二十六日に岸総理大臣は予算委員会で私の質問に答えて、今度の国連総会には日本は核実験禁止の提案を重ねて出したい、その場合には軍縮問題と切り離してこれを出したい、こういう点を実は明らかに答弁されておるわけであります。そういう点は、もうだんだん国連総会も近づいておりますし、そればかりではなくて、最近アメリカでは、最もきたない原水爆の製造を準備するということを言い始めておりますし、フランスの原爆実験も伝えられております。そういう意味で原爆実験の禁止の決議というものは、国際的にすみやかに行われることが私は必要だと思うのですが、この点についてどのようにお考えになりますか。
○岸国務大臣 来たるべき国連の総会において、日本としては核実験の禁止の問題につきましては、その後における昨年来のいろいろな国際情勢も頭に置いて、これを禁止するような有効な提案をしたいということで努力をいたしております。
○岡田委員 これは外務大臣に伺いたいと思いますが、軍縮問題を切り離して実験禁止の提案をするというので外務省ではすでに案が大体でき上っている、こういうように聞いておりますが、その内容を具体的に一つお話し願いたいと思います。
○藤山国務大臣 目下国連にどういう案を出すか、しかもただいま総理のお話しになりましたように、昨年と状態がだいぶ変っております。従って実際的に早く核実験の禁止ができる方法として、問題を取り上げて提案をして参りたいと思うのでありまして、われわれとしては昨年以後の情勢に、対応して、できるだけ積極的な案を準備していきたい、こういうことでただいま準備しております。
○岡田委員 もう少し具体的にお話し願いたいのですが、軍縮問題とは切り離すという大前提はすでにできている。それから第二の点は、原爆の即時実験禁止、そして無期限、こういう点はすでにはっきりしていると思うのですが、こういう点だけでも明らかにしていただいた方が、国民にとっては非常に明らかになってくるので、この二つの点だけははっきりしていただきたいと思います。
○藤山国務大臣 われわれが提案をしようということでただいま研究しておりますのは、むろん原爆の実験をできるだけすみやかに禁止するということを目的としてやっておるわけであります。御承知のようにソ連もそういう線を出しましたし、あるいは監視方法についても、ジュネーヴで専門家会議も先般来行われたわけでありまして、そういう線から見まして、私も、実現に移す道が現在実際的にあるいは昨年より進んできているのではないかという見解を持っているわけであります。でありますから、そういう線に沿って、必ずしも軍縮問題と一緒にしなくてもこうした提案は実現できるのじゃないかという観点から、われわれは研究をしておるのであります。まだ最終的成案はできてはおりません。
○岡田委員 それは外務大臣得意の表現で、必ずしもという言葉をしょっちゅう使うのだが、それであいまいになるのですけれども、岸総理大臣はこの前はっきりスタッセンもそう言っているので、軍縮問題とは切り離すのだ、こういうことを予算委員会ではっきり言っておられる。これは軍縮問題と離すということならば、必ずしもではなくて、離すということをはっきりしていただいた方がいいと思うのですが、この点しつこいようですが、もう一点……。
○藤山国務大臣 最終的成案ができておりませんから、私どもとしては最終的の問題としてただいま言明をいたすわけではないのであります。しかしながらただいま申し上げましたように、必ずしもという言葉を使うとまたしかられるわけでありますけれども、完全に軍縮問題と一括したものである必要はないのではないかというのが、昨年来の情勢の変化からきておりますので、私どもはそういう線でただいま研究しております。
○岡田委員 それから太平洋におけるるアメリカの原水爆の実験の問題なんですが、これについては再三日本が禁止の要求を出している。ところがこれに対して禁止をさせるための方法がもっとあるのではないかということを、この前の予算委員会でも私は取り上げた。というのは信託統治制度違反であるという点で、安保理事会でこれを取り上げなければならぬ義務がある。これは国連憲章の八十三条においてそういう義務がある。この点を私は指摘したのですが、藤山さんはそのときに、いろいろ研究してやれるのならばやりたい、こういう御答弁で逃げておられる。ところが安保理事会でいまだに取り上げられないのですが、そういう権限はないのですか、どうですか。
○藤山国務大臣 それらの点につきましては、高橋条約局長から御説明をいたします。
○高橋説明員 技術的な点で恐縮でございますが、この前そういう御質問がありまして、私御答弁申し上げたのでございますが、多少間違った点がございましたので、ちょっとこの席で訂正させていただきたいと思います。と申しますのは、憲章の規定上はなるほど安保理事会の問題となって安保理事会の権限事項となっておりますが、一応安保理事会なら安保理事会自体の決議で、このような問題はすべて信託統治理事会の問題にするという決議がなされまして、自来信託統治理事会の問題とされてきておる、こういうようなことになっております。
○岡田委員 しかしそういうような慣例があったにしても、憲章の八十三条においては、戦略地区に関する国際連合のすべての任務は、安保理事会において行われるということならば、これは安保理事会で取り上げることを妨げるものではない。これは当然取り上げられるはずなんです。もし日本の国が本気で太平洋のアメリカの原爆実験をやめさせようとするなら、安保理事会でなぜこういう問題を取り上げないのですか。今まで安保理事会でやっている問題というのは、常に仲の調停者というような小ずるい立場をとっていた。日本の独自の問題を何も取り上げてないじゃないですか。この点はどうですか。外務大臣はなぜお取り上げにならないのですか。
○藤山国務大臣 原爆実験禁止の問題について、これをできるだけ友好的に早く推進させる方法というものをむろんわれわれとしては考えて参らなければならない。でありますから、ただいま御指摘のような御質問に対しても、外務省としても安保理事会でどの程度に取り上げられるか、あるいは信託統治理事会等においてやられるか、こういう問題も研究いたしているわけであります。従いまして今後一定の方針がきまり、あるいはそれらの問題の解釈がきまって参りますならば、われわれはそれらに応じてやはり考えて参らなければならないという立場をとっております。
○岡田委員 そういうことでは困るのです。私があなたに質問したのは三月なんですよ。そのときからすぐ研究する、こういうお話でもう今七月の末です。来月になると原爆実験は終るのです。終ったころに研究して、態度がきまったからやりますと言ったってしょうがない。今度の安保理事会ではやるのですか、やらないのですか。アメリカの実験が済んでから態度をきめるというのではおそいですよ。外務大臣はすぐやると言ったのですが、どうしたのですか。
○藤山国務大臣 私といたしましては、ただいまお答えいたしました通り、やはりこれらの問題につきましては正確に事態を把握して、そうしてその上に立ってやるのでなければ軽率にできない。出した以上はやはりそれが通っていくというだけの見通しを持って、できるだけの努力をしていくというのでなければならぬ。むろん原爆実験禁止をやります方法としていろいろな方法が考えられると思います。総会の席上におきましても決議案を出すということも必要であろうと思います。それらの点についてはできるだけ抜かりなく研究して参りたい、こう考えております。
○岡田委員 これは岸伴総理大臣にはっきり申し上げておきたいのですが、安保理事会で原爆実験の禁止問題を取り上げられるのに、これを日本は取り上げていないのです。あなたは国会における施政演説でも、原爆問題を真剣にやると言うのだけれども、安保理事会でも取り上げようとしていないじゃないですか。これは岸さん、取り上げさせるように外務大臣を督励させる必要があると思いますが、どうですか。
○岸国務大臣 もちろん原爆実験禁止についてはあらゆる面からほんとうに真剣に努力していくべきものであろうと思います。ただいまの安保理事会でこれを取り上げるべきことがあるとかないとかいう御議論については、私初めて聞いたわけなんですが、なお今の話によりますと、条約局長の答えでは、これは安保理事会において取り上げられるかどうかということについてももう少し研究してみる必要があると思います。
○岡田委員 一生懸命努力してもらわなくては――ただ形だけでは誠意があるかどうかわかりませんから、はっきり努力してもらいたい。
 それからヴェトナムの賠償問題に入って参りますが、賠償問題について去年第二次東南アジア訪問のときに、総理大臣はヴェトナム、カンボジア、ラオス、これらのいわゆるインドシナ三国を訪問した。そのときカンボジア、ラオスについては賠償を放棄したという理由で日本から経済技術援助をしよう、カンボジアに対しては十五億円、ラオスに対しては十億円を贈与する、こういう決定を共同声明でやられた。この経済技術援助協定というのは、近いうちきまるはずなんですが、これはどうなっているのですか。太体今月中にきまるといっておったのがきまらないのはどうなんです、外務大臣。
○藤山国務大臣 詳しいことはアジア局長から説明をいたさせます。
○板垣説明員 カンボジアとの交渉は現在相当進んで参っておりますが、なお細部の点につきまして、もう若干日にちがかかると思っております。それからラオスはほとんど交渉は完了いたしまして、一点だけ技術問題が残っておりますので、両方ともまだはっきりは申し上げられませんが、二、三週間以内に大体妥結の運びになると思っております。
○岡田委員 ヴェトナムの賠償についても、岸さんとゴー・ディン・ディエムとの間の共同声明で早期妥結を決定しているのでありますが、今度久保田大使が二十六日に赴任してヴェトナム賠償の交渉が再開すると言われているのですが、この点については大体いつごろまでに妥結しようというようなお考えですか。政府はこの次の国会にかけるんだなどという話がありますが、総理大臣としては久保田大使にもお会いになったそうでありますが、大体どういうふうなことになっておりますか。
○岸国務大臣 この前私が参りましたときにも、その問題がゴー・ディン・ディエムとの間に話がされまして、できるだけ早く解決して、そうして両国の通商関係なりいろいろな各種の関係を友好的に進めることは望ましいことであるという考えのもとに、なるべく早く解決しようという努力を町田ともしてきたわけでありまして、今日に及んでおります。久保田大使が赴任するにつきまして、もちろん同じような考えのもとに交渉を再開してやるわけであります。時目的に申しますと、いつということは相手方もあることでありますので、今日はっきりいつまでにやるんだということは申し上げかねると思います。
○岡田委員 その共同声明の中で特に重要なことがあるんですが、共同声明の文章を読んでみますと、文章の一部に「岸総理大臣は、ヴィエトナム共和国が一日も早く国連への加盟を認められるべきであるとの日本政府の意向を表明した。」このように共同声明の中にあります。これについて去年の三月十六日に山岸さんが外務大臣の時代、私が国連の提案について実は質問している。そのときの岸さんの答弁を、その前後を読んでみますが、私が「ヴェトナムという国はどこまでを国境線として、どういう領域の国として、提案国になられたのか、この点をまず伺いたい。」岸国務大臣「南ヴェトナムの国境は、今日、北緯十六度の線で南北を分界されておる、こういうのが一般の考え方だと思います。」私「それでは伺いますが、この間の国連総会の提案国としては、その十六度の線までの南ヴェトナムとしての提案をされたのでありますか、どうでありますか。」岸国務大臣「その意味でございます。」という答弁がはっきり出ておる。そうすると、この共同声明にあるところのヴェトナム共和国というのは、――十六度線というのは間違いなんで十七度線なんですが、十七度線以南をもって国境とするところのそういう国を国連に加盟させようというのが共同声明の趣旨であったと解してよろしゅうございますか、どうですか。あなた書かれたんだからわかっているでしょう。
○岸国務大臣 ただいまお読みになりました、私が外務大臣時代の答弁については、あのときたしか結局法律論として私も非常に不明確なところがあるからなお研究するということで、留保したように思っております。実は事実問題として南ヴェトナムの統治権が実際上行われておる地域については、ウェトナム全部に及んでおらないということは、これは現実の事実がそうであろうかと思います。ところがこの南北に分れておることを統一して、そうしてヴェトナム全体のなにをしなければならないということに関して、各国の間にジュネーブ会議でありましたかで、一つの方法が提案されておるのでありますが、これが将来は統一さるべきものであろうと思います。しかし現在までの状況においては、その点は法律的に申しますと、私の今外務大臣時代の答弁としてお読みになったことは適当でないので、やはりヴェトナム全土を代表するものとして考えることが日本の立場として適当であろう、こう思います。
○岡田委員 訂正されるのですか。
○岸国務大臣 その点は訂正をいたします。
○岡田委員 訂正されるんならば、ちょっと伺わなくちゃならない。私は、さっきの方が正しいと思う。というのは、バンドン会議、これは藤山さんが出ておるのですが、バンドン会議の決議の中に、こういうように出ておるのですよ。バンドン会議に参加した三十四万国がヴェトナム民主共和国並びにヴェトナム、二つの国家を承認しておるのです。それは十七度線を境界にして国家の承認を了しておるのです。これは日本政府がはっきり認めておる。そうすれば、二つまあるのですから、あなたは訂正される必要はなかったのです。あなたはこれに賛成しておるのじゃありませんか。これとどういう関係になるか、国家の承認でしょう。もう一回訂正したらどうですか。
○岸国務大臣 今のバンドン会議のなには、正式な国家の承認として、そういうふうには実は解釈をしておらないのです。国家の正式な承認ということは、バンドン会議の決議を直ちにそう見るということは適当でないと思います。
○岡田委員 何だかあいまいですな。あいまいですが、もう一つ伺います。
 あなたは、先ほど全ヴェトナムを代表する政府と訂正すると言われましたが、そういう意味でしょうか。――それじゃ、ヴェトナム民主共和国、北ヴェトナムというものはどういう地位になるのですか。政府のあるのは事実じゃないですか。
○岸国務大臣 今申し上げた通り、バンドン会議の決議が、別に日本がこれを承認したということにはならぬと私は思います。日本が今日まだ承認しない国を代表しておる者が出席しておるのですから、それはそう言えると思います。日本としては、南ヴェトナムを正統政府として承認をし、これとの間に国交をなにしておりまして、そういう意味において、先ほど私が訂正すると申し上げたわけであります。
○岡田委員 時間がなくなりますから、私またゆっくりやりますけれども、岸さんもう一つ間違いをはっきり訂正しなくちゃならないのです。
 岸さん、先ほど南ヴェトナムは南北を統一するあれだと言われたが、それじゃこれはどういうように解釈いたしますか。バンドン会議の決議ですね。決議の中に、参加諸国の中で、国連加盟の資格のある国として、カンボジア、セイロン、日本、ヨルダン、リビア、ネパール、それからヴェトナムでありますが、統一されたヴェトナムと書いてある。南と北とが統一されたヴェトナムと書いてある。それじゃあなたの今のヴェトナムの概念と違うじゃないですか。この点はどうですか。統一されなければ国連加盟の資格がないといっておるのですよ。それなのにあなたは南ヴェトナムだけの国連加盟を日本政府としては要請したと言われておるが、その点はどうですか。バンドン会議の決議を否定されるのですかどうですか。
○岸国務大臣 先ほども申し上げました通り、バンドン会議の決議そのものは、日本が承認したとかいう問題とは私は別な問題であると思います。日本としては、南ヴェトナム政府を正式に承認し、これとの間に国交を正常化しておるその趣旨は、私は提案されておるような方法で将来統一さるべきヴェトナム政府というものができた場合において、それに引き継がるべき正統政府として南ヴェトナムというものとの間に国交を正常化し、これとの間に各種の交渉をしておる、これが私は日本の立場である、かように思っております。
○岡田委員 この点はまだ私は総理大臣の意見に承服できませんが、きょう時間がありませんから、続いて進めます。
 実は、これはこの前の外務委員会で問題になっておるのですが、岸さんにもぜひ伺っておきたいと思います。
 五年前にヴェトナムの賠償が実は事実上きまっているのです。沈般引き揚げに基く賠償として二百二十五万ドルという金額できまっている。ところが今度久保田大使が交渉しようとしているのは、それの約三十倍、五千五百六十万ドルになっている。同じ被害を対象にしてこういうように変ってきているのは一体どういうわけなんです。この点が今までのところきわめて不明確である。この点については合意議事録がはっきり出ているのだが、合意議事録はいまだに外務省が出しておりません。二百二十五万ドルについての合意議事録を隠しているところにくさいところがある。三十倍になっている点は国民は納得しない。
 それからもう一つはラオス、カンボジアについては先ほど賠償放棄のお礼として十五億円、あるいは十億円を出すといっている。ところがこの五千五百万ドルというのは約二百億円ですよ。ラオス、カンボジアに対しても同じように日本軍はいわゆる平和進駐をしておる。ところが平和進駐の場合においても、私は事実を現実に証拠として知っておりますが、カンボジア、ラオスに進駐した場合においても、日本の軍隊は向うの現地の婦女子を虐殺したとか、そういう事実がありますよ。経済的、精神的、あなたの言われる物質的損害があったラオス、カンボジアに対しては十五億円か十億円なんです。ところがヴェトナムに対しては二百億円――しかも前のやつを破棄して三十倍になって二百億円を払わなければならないという特別の理由は何かあるのですか、どうなんですか。
○岸国務大臣 私の承知している限りにおいて前におあげになりました二百幾らというのはいわゆる中間的な措置でありまして、最後的な決定、賠償全部をこれでもって解決するという趣旨ではできておらなかった。御承知の通りラオスの方では、これらの国々が進んで賠償は放棄するということを言って、日本に対してこれを要求をしない、その他の賠償協定を結んでおる国々におきましては、それぞれ日本に対して相当な賠償額を要求し、これが平和条約なり友好関係の前提として解決を要する問題になっておったわけであります。ヴェトナムにつきましては、最初ヴェトナム側の要求は相当大きな額を要求をしておったのでありますが、これを数次の交渉の結果、今日、今久保田大使が持っていっております五千五百六十万ドルという、これは純賠償と借款と両方含んだものでありますが、そういう額を一応目標として交渉に入っておるという段階でありまして、以前の二百二十万ドルですか、二百数十万ドルというのは、これは決して最後的な意味における賠償額として支払ったものではない、中間的の意味のものであったと承知いたしております。
○岡田委員 これで終ります。その中間的なということは、総理大臣、これはお調べ下さい、間違っているのですよ。ヴェトナムと日本との合意議事録において、沈船引き揚げによって、これは大半が終了したものと認めるという合意議事録があるのです。これがあるのは困るから外務省は出さないのですよ。この間から出せといっても出さないのです。そういう点が――これはお調べ下さい。今言いません。
 それじゃ五千五百万ドルはどうして出たかというその種をはっきりしましょうか。これはこうなんですよ。きょう通産省の振興部長は来ているはずだが、これは五千五百万ドルのうち四千四百五十万ドルはダニムの発電所の建設計画の経費なんです。このダニム発電所の建設計画というのは何も賠償の被害が根拠になっているのじゃない。何かといったら、おととし日本工営という会社、これは水質ダムをやった久保田豊氏がやっている、その日本工営の会社がダニムの発電所に対して第一期計画、第二期計画の見積り計画、仕様見積り一切がっさいを出した。これを金額で積算すると、四千四百五十万ドルになるのです。この四千四百五十万ドルのほかに肥料工場の建設の九百十万ドルと、工業センターの二百万ドルを加えて五千五百六十万ドル、だからこれは被害は大きな問題になっているのではないのですよ。すなわちこれは平和条約の十四条に基く被害、戦争の損害に対する賠償が根拠になっているのではないのです。明らかにこれはヴェトナムの開発計画のために賠償という名目を使ったにすぎないのですよ。これは賠償というものはいかにこういう形で運用されているかということをはっきり暴露している。こういう賠償を国民の税金で払うということは絶対に納得できない。どうですか。振興部長来ていますか。ダニムの発電所に対して設計計画一切がっさいを日本工営がやったでしょう。全部これを作って、それに基く金額四千四百五十万ドルなんです。だからこれが三十倍にもなっているのですよ。この点だけを明らかに指摘して私は質問を終りますけれども、そういう日本工営が設計をしたという事実だけを明らかにしておいていただいて、これはおそらくもっと問題になりますからどんどんやりますから、一つ十分準備しておいて下さい。
○板垣説明員 日本が賠償交渉をやりまする場合に、できるだけ少い金額でまとめようという交渉に入ることは当然でございまして、従ってただいま御指摘の通り一時は沈船引き揚げ二百二十五万ドル、これを大部分として賠償交渉を妥結しようとして努力したことは当然であります。ただこれが、日本側としましてはこれで大部分片づけようという当時の意思でございましたけれども、先方側はこれを結局のまずに、沈船引き揚げ協定というものは妥結を見なかった次第であります。
 なお今御指摘の合意議事録の点でございますが、この点につきまして合意議事録というものはございません。調査いたしますと、こちら側で一方的にとった交渉議事録はございますが、これは交渉上の内部の問題でございますので、国会に提出すべき性質のものではないと存じますので、提出いたさない次第でございます。
 なお第二の問題、日本工営の問題につきましては、振興部長から回答いたします。
○日高説明員 ただいまお話のございました発電所の、日本工営がやりましたことは事実でありますが、これは賠償ということではなくて、発電所の地形調査あるいは地質調査につきまして設計調査だけを商業ベースでやっております。普通の経済協力という形でやりまして、一昨年の暮れから大体ことしの五、六月にかけて終りました。これは役務契約としましてヴェトナム政府からそれに対する報酬を受けておりまして、従って商業ベースの問題としては全くこれで片づいている問題でございます。
○岡田委員 それではあとでやります。
○櫻内委員長 森島守人君。
○森島委員 一昨日来、中東の問題につきましてはいろいろ論議がありました。特に本日川崎委員の御発言は、われわれの問わんとするところを率直に問うたものであります。私は、与党の委員として川崎委員の所見に対しまして敬意を表します。
 私が一、二点伺いたいのは、第一に、日本政府は当初において基本的な問題と方法論とを混淆しておった。外国の国内問題に対する干渉はいけない、これは基本的なものです。しかしそれからひいて世界平和を脅かすかどうかという重要問題が根本にあった。この基本的問題に対する政府の態度をまず明らかにするのが至当だったと思うのでありますが、外務省は直ちにアメリカの撤兵をいかにして実現させるかという方法論に移ったというところに、政府の処置が前後した。そこで国の内外に対しても不信の念を抱かしめるに至ったという、根本的な原因はそこにあったと私は信じておるのであります。
 そこで一つ伺いたいのは、日本がアメリカ案に留保付ではありますが、賛成をいたしましたときに、外務省としては、このアメリカ案に対してソ連の反対があるかないかという点についてはっきりした見通しを持っておられたかどうかという点を、明らかにしていただきたいと思います。
○藤山国務大臣 むろん当時、ただいまお話しのように、アメリカ軍を撤兵させますことが一番緊急の事態を解決する道であります。ただ非難攻撃だけをしておったのでは問題は解決しないという立場から、われわれとしてはアメリカ案に賛成をして、そうしてアメリカが撤兵をすることができるようにしよう、こう考えたわけであります。当時の情勢からいいまして、ソ連が果してこれに賛成するだろうか、あるいは反対するだろうか、棄権するだろうかという判断は非常にむずかしい状況でありました。ソ連もまた一日も早く――事態を拡大しないということについては十分そういう気持で対処しておったと思います。しかしながら、当時のソ連側の非難というような問題から見ますと、ソ連が必ずしも賛成するとは考えられなかったわけであります。しかしながら、事態の収拾ということから、ソ連も決して第三次世界大戦を希望しておりませんから、あるいは棄権をするというような状況もあり得るのではないかというふうにも考えておったわけでございます。当時短時間の判断でありますから、非常に困難だったと思います。
○森島委員 ただいまの御発言に関しまして、当時の状況が非常に複雑であった、判断に苦しんだという点は私も了解するに苦しくないのであります。しかし、もしソ連が拒否権を発動しまして、アメリカ案が成立しなかったということになりますれば、これはあぶはちとらずなんです。私は当時の状況としては、ソ連の態度というものは、推察するのにかたくなかった、これは見解の相違があるかもしれませんが、私はソ連の態度は初めからわかっておった、こう判断すべきものだと思うそこに重大なる事態に関する認識の相違があったと私は思うのであります。もし当時日本がアメリカ案に対して反対しない事でも棄権でもやっておきますれば、私は最後の日本の提案をいたしましたときに、ソ連があるいは棄権くらいはしただろうという推測はできる。私は、要するに方法論と基本的な態度を混淆した点がある、こう思うのでございます。
 次に、田中委員からも御発言がございましたが、最近のフルシチョフの書簡等から見ますと、首脳会議が国連のワク内で開かれる、ということも非常な奇妙な立場に立っておりますが、この際最も必要なことはなるべくすみやかに首脳会談を開く、時の要素が非常に重大である。時を経過いたしますと、その間に不測な事態が起きて最悪の事態に落ち込むという可能性も全然ないとは断言できない。私は時の要素が非常に重大である、こう思うのでありまして、必ずしも国連の中のワク内で解決するということにとらわれる必要はないと思うもちろん政府は国連中心主義ということを言っておられますから、国連のワク内において解決ができるならけっこうですが、時の問題が私は重要だと思う。あまりこの点にとらわれないで御解決あらんことを、また関係国に対してもその所見を明らかにして、一刻もすみやかに首脳会議を開くという方向に努力されんことを望んでやまないのであります。
 その点につきまして、一、二点伺いたいのは、藤山外相は一昨日は、もしできれば総理自身あるいは外務大臣自身、国連の会議に出席するような御意向のように聞いておりましたが、私はこれも必ずしも、特に対米従属外交を事として、この問題の発端において大きな誤まりをやっておる日本政府が出たって大したお力にならぬと思う。従ってこれらの点にとらわれないで、首脳会談をなるべくすみやかに開くという方向に一つ努力していただきたい、私はこれを要望しておきます。
 それから第二の問題は、中東問題が起きましたために、日韓交渉とか日中の貿易問題等は陰に隠れたようになりましたけれども、日本の立場からいたしますと、これも非常に重要な問題だと思います。そこで一点伺いたいのは、日中の問題でございますが、大体政府には直接中共の態度等に関する情報はないかもしれません。私たちも手に入れることはできません。しかし新聞紙等、特に漢字新聞等に報ぜられておる中共の態度を見ますと、非常に不退転の決意に固まっておるというふうに受け取られるのです。ことにこれは幾日でしたか、今月の十五日に帰られましたか、第二十一次帰国船白山丸で中共を訪問して帰ってこられました日中友好協会の代表の宮崎世民氏、これは多分総理とも同窓の間柄とも思いますが、これが廖承志その他の意見をはっきり伝えております。私はこれが大体正鵠な中国側の判断として受け取るべきものだと思いますが、この内容を見ますと、中共としても岸政府が中共を敵視する政策をやめろ、二つの中国を作る陰謀を放棄する、国交の正常化を妨げないこと、これを三原則として、この点において日本政府の態度が変るならば、岸内閣といえどもこれを相手として交渉してもよろしいというふうな態度をはっきりされておるのであります。私はこれについては政府としてもいろいろ御議論があると思いますが、これも一応十分研究に値するものと思います。その点はお考えいかがでございましょうか、総理の御答弁を願います。
○岸国務大臣 日中関係をこういう不幸なまた望ましくない状況から打開していかなければなつらぬということは私どもも考えております。それについて中国側の情報といいますか考え等につきましては、あらゆる点からわれわれも十分に意を用いて研究はいたしておりますが、まだ何分正確なことはわからないのであります。今おあげになりましたいわゆる三原則といいますか、これらあたりにつきましても、私どもは決して従来中共に対して敵意を持っておる政策をとっておるわけではございません。一体何が敵意を持っておる政策であるかということを具体的にわれわれに示してもらわないと、ただ抽象的にそう言われましても決してそういう考えを持っておるわけではありませんし、それから二つの中国に対する陰謀に加担しそれを助長しておるというふうな意見であるようでありますが、この二つの中国という考え方については、御承知の通りこれは国民政府もまた中国側におきましても、両方が強く、反対しておる事柄であります。またアメリカの現在の政策もそれを強く退けておることは御承知の通りであります。わが政府が何かそういう計画があり、そういう陰謀にくみしておるというふうな考え方は、私ども毛頭持っておらぬのみならず、そんなことで非難されるということは、私どもとしてははなはだ心外に思うわけであります。従って私自身並びに岸内閣ができましてからの中共に対する政策というものは、これは一貫しておると思うのであります。今日においても変っておりません。ただしばしば申し上げました通り、現在の段階において直ちにこれとの間に政治的関係を開いて国交を正常化し、承認問題に触れた解決をするということは、私どもとしてはとり得ないということも、これも従来内外に明らかにして、そのもとにおいてしかし貿易の問題なり経済の問題なり文化の問題なり、あるいはいろいろな友好関係を進めるようなことについては、これはできるだけやるという考え方でわれわれ努力してきており、またその考え方は今日も一貫しておるのであります。私はどうしても、今お話しのようなわれわれが改めなければならないと指摘されておる三点というものは、ともに私どもとしてはとっておらないところであるということを、中国側におきましても十分に一つ理解してもらいたい、こう思います。
○森島委員 われわれの考えからいたしますれば、国交回復が貿易を促進する最もいい方法だ、こう存じておりますけれども、これは現在政府ではとられぬ。この点についてはあえて触れませんが、私はこの際政府側においても赤城官房長官の談話とか長崎の国旗事件とか、あるいは日韓会談の首席代表である澤田君の発言とか幾多日本側としても慎むべき、また考え直すべき行動があったと思うのでありまして、これらがひいて岸内閣の政策と関連しまして、中国側に非常な誤解を与えておることもあり得ると私は信じております。そこでいつまでたっても両国が静観をするというだけでは問題のきっかけを作り得ません。
 そこで私が申し上げたいのは、日ソの関係におきましては古い時代には芳澤・ヨッフェ会談というものを北京において開いて、数十回の会談の後これが成功しました。最近におきましてはここに列席しておられる松本君がロンドンにおいて会議が開かれたそのきっかけを東京において作られたということもございますが、私はこの点に関連してモスクワもしくはジュネーヴ等の第三国において日本の出先官憲が非公式に中共の官憲に接触するというような方法をとって、話し合いの機会を誤解がある誤解があるといって両方でやっておったらもうすでに三カ月たっておる。いつまで、たっても私は打開の方法はないと思う。具体的な今のような方法をとって日中関係の打開の糸口を作るというお考えがあるかないかということを総理にお聞きしたいのであります。
○岸国務大臣 先ほども申し上げましたように、われわれはこの状態を望ましい関係ではない、従ってこれを改善しなければならぬ、打開しなければならぬというふうに考えておるわけであります。そのために今御提示のありましたような方法というものも私は十分に考慮すべき問題であろう、こう思います。
○森島委員 考慮すべき問題だという御答弁を承わりまして、私は満足いたしますが、もう一つ、考慮すべき時期にすでに到達しておるという点については御見解はいかがでありましょうか。
○岸国務大臣 私はその時期につきまして、なるべく早く打開することが適当であると考えておりまして、いつまでもこういう状態を永続せしめるということは望ましくないと考えております。時期につきましても決して今早過ぎるとかいうふうには考えておりませんが、なお微妙な関係もございますので、十分に考慮いたします。
○森島委員 なるべくすみやかに十分なる考慮を遂げられて、具体的な措置をおとりになることを政府に要望しておきます。
 第三の問題は日韓問題。いずれあとに同僚の委員から御質問があると思いますから、簡単に一、二点だけお伺いしたいのであります。矢次さんでございますか、これが総理の特使として朝鮮に行かれた。これについては二元的な外交であるというふうな批評をこうむっておることは御承知の通りであります。私もそのおそれがあると思っております。二十五日に総理は林大使と柳公使とにお会いになった。これも矢次氏のお取りなしになっておるということを承わっておりますが、これは事実でございますか。
○岸国務大臣 二十五日には林大使が八月一日に韓国に一応帰国する、帰国のあいさつの意味において一ぺん外務大臣及び総理大臣にあいさつをしたいということが矢次君を通じて申し込みがあったのであります。もちろん林大使が向うへ帰るということについてあいさつを受けるということ、それから現存停頓しておる事情が、御承知の通り漁業代表がこちらに来ておりません。これを一日も早くよこして、そしてこの今示談が始まることを実は私は望んでおりましたから、林大使が帰国するあいさつということであるならば、その機会に会ってそのことを林大使にもわれわれの考えを述べて、せっかく帰国することであるから一日も早く漁業代表を送るようにということを申し入れるいい機会である、こう考えまして、二十五日に矢次君を通じて向うから申し入れがあって会見をいたしたわけでございます。
○森島委員 私的会談のようにも受け取れますが、やはり公式的な資格で私はお会いになっておると思う。そういたしますればこれは外務省を経由して――外務省の儀典課というようなものでその方の仕事をやるところもありますが、これを経由して正当な経路で御会見になるのが私は至当だと思う。列国とも同じような慣例がございます。これは藤山外務大正臣はそれについていかにお考えになりますか。
○藤山国務大臣 今回あいさつに見えるということでありましたので、別段特殊な会談をいたすわけではございません。あいさつを受ける程度ならば、矢次君から話があったので会っても差しつかえない、こう判断したわけであります。
 外交の問題につきましてはむろん私としましては正当のルートを通じて仕事をするというのが当然であろうと思います。
○森島委員 今、総理の御答弁を承わりますと、漁業代表の派遣の問題というのは非常に重要な問題である。数カ月来実現しておらないのであります。これがおそらく日韓会談の中心議題の一つであると私は思います。これらの問題について意見を交換したという以上は、私はやはり公的な問題を論議したものと思う。この点私は藤山外務大臣の答弁も洋首相の答弁もきわめて不満だと思う。
 時間もありませんので、一点お伺いしたいのは、日韓会談は数年来の問題である。しかも昨年の暮れ以来すでに半年以上たっている。私は日韓会談の成功の見込みとかいうことは申しませんが、韓国政府に果してこれを妥結に導くだけの誠意があるかないかという点について総理はいかにお考えになりますか。
○岸国務大臣 日韓会談の問題は、御承知の通り今日までの経過を見ますると、私は非常に困難な前途にあると思います。しかし昨年交渉をいたしまして予備会談をやり、そうして本会談を開くに至った間における韓国側との折衝を通じまして、韓国側もこういう状態では両国の関係としてはなはだ望ましくない状況であるから、これはどうしても従来の懸案を解決して、両国の間を正常化させなければいかぬということに対しましては、予備会談を通じ今回の本会談を開くに至るまでの経緯に徴しますと、私は相当に強く向う側においてもその誠意を持っておるものだと思います。われわれもそう思っております。
 ただそういう誠意だけですべてが解決されるかどうかということになりますと、そう簡単な問題でないことは言うを待ちませんけれども、今までの経緯から申しますと、今度正式会談を開くに至りましたいきさつから見て、私は韓国側においても今度こそはまとめたいという誠意は十分ある、こう思います。
○森島委員 その点に対する認識が私たちと違うんですが、私はこの際政府においても韓国に対してはきぜんとした態度をとって、従来のような韓国政府を交渉妥結の上の唯一の政党と見なすというふうな前提に立った交渉のやり方をおやめになって、韓国に対しては場合によれば、これは相互平等の原則にも反しているんですから、在日の韓国代表部の引き揚げを要求するというくらいのきぜんたる態度をとって臨むべき時期にすでに到達していると思う。この古川につきましては私は御答弁を求めてもむずかしいと思う。私はそれは根本的に態度を転換すべき時期にきている。すでに韓国との通商関係が断絶しても日本としてはさしたる経済的な影響をこうむることはないように私は考えております。この在日代表部の取扱いの問題、並びに通商関係の取扱いの問題等について、日本がきぜんとした態度をおとりになることが、かえって日韓会談を促進するゆえんだと私は信じております。この点を要望いたしまして私の質問を終ります。
○櫻内委員長 大西正道君。
○大西委員 私の質問も重複を避けまして、日韓問題について総理に聞きたいと思います。
 その前にまくら言葉を一つ。五月三日の韓国の民議院選挙は、これは与党の勝利に終ったのでありますけれども、御承知のようにあの選挙は、反日、反共を旗じるしにして独裁政治を行う李承晩の率いる自民党と、それから親日、日韓貿易促進を旗じるしの民主的な運営を唱える野党との決戦であった。結果は与党の勝利に終ったのでありますが、その以前に李承晩は、自分は力ずくで反共の政策を、反日の政策を推して進めて、いろいろなものを日本から獲得しておるのだ。こういうことを向うの新聞を見ますと国民に誇示しておる。ですから、自分の主張でなければ韓国の独立と繁栄はないのだ、日本の干渉を排除する手段はないのだ、こういうようなことを言って国民に訴えておるのであります。そういうふうな国内の事情を反映いたしまして日韓間の問題を見ますと、今も森島君からもお話がありましたように、すでに長い間の交渉は続けられておるのでありますが、特に最近におきましては、たとえば財産請求権を放棄するとか、あるいはまた国民に内密で重要文化財を向うに返す。あるいはまた李ラインにおきましてどんどんその後も漁船が拿捕されておる。竹島の問題も一向手がつかない。こういうようなことはすべて李承晩の政策よろしきを得たからこういうふうな結果が出た。こういうふうなことを国民に宣伝して選挙に臨んでおる。そういう結果から見ますと、日本政府のこの日韓会談に対する今日までの譲歩に譲歩を重ねてきたところの政策というものは意図は別としましても、結果するところ反日、反共を唱えるところの、少くとも反日を政策とするところのこの李承晩派を勝利に導いたその力を与えた。ある論者は言っております。岸外交、特に日韓会談に打った手は李承晩の事前運動をやったようなものだ、こういうことを言っておるのであります。私はこういうことにつきまして、意図はそのようにあったとは申しませんけれども、結論するところそういうことになったということは、私はまことに遺憾だと思うのでありますけれども、この点につきまして首相の今日までの日韓会談にとって参りましたところの態度についての反省を、一つ聞いてみたいと思います。
○岸国務大臣 御承知の通り、日韓の交渉の問題は数年前から継続をされ、その間において日本のたくさんの漁民、漁船を拿捕され、同時に拘留をされておった事実が、だんだんと人数が重なってきておったことは御承知の通りであります。私はまずこれを人道的立場から、これらの漁民の釈放、帰還を求め、またこれを向う側に強く要望をして、私が外相就任以来努力をしてきたわけであります。これを解決するためには正式会談を開いて、そうして続いて将来そういったことが繰り返されないような事態を作り上げることが必要なので、そういう意味においてこの正式会談を開く。ところが正式会談については、すでに過去において数回これが行き詰まった経緯もございまして、これに臨むところの基三本的態度は、できるだけこれを成功せしめる意味において話し合うという意味におきまして、約一年の日子を経て昨年の末に予側会談の交渉をまとめて、そうして釜山に抑留されておるところの者を帰し、同時にわれわれとしても大村に収容しておる者を釈放して、そうして正式会談に臨むという根本をきめたわけであります。それに基いて今日まで交渉をいたしておるわけでありますが、先ほども申し上げたように、具体的の問題として、一番現実の問題として、両国の間の関係、特に国民感情を刺激するところのものは、いわゆる李承晩ラインにおけるところの漁船の拿捕及び漁民の抑留という問題でございます。これらの問題を解決するということが、私は日韓の問題を冷静な立場に立って、そうして正当な、両国の合理的な基準で解決するゆえんである。こういうものを押えておいて、そうして国民感情が非常に高まっておるような状況で正式会談はできないという意味において今日まで努力をしてきたわけであります。決して私自身今お話しのように、何か韓国に対して李承晩大統領の反日政策を助けるような意図を持ってやっておるわけでもなければ、私自身の考えは、今申したような考えをもってやっておる、こういうことを申し上げておきます。
○大西委員 残念ながら結論はそういうことになっておるということを、私は申し上げたのであります。今るるお話しのように、日韓会談は、会談が開始されましてからすでに七年もたっておる。いろいろとその間に紆余曲折がありましたが、今日この時点においてこの日韓会談を判断いたしますと、何ら進展していないと思うのであります。これに対しまして、見通しにつきでましては困難であるけれども努力をする、こういうことを言っておられるのでありまするけれども、そういう努力々々と言って今日まで長い時間を経過してなおこのような状況では、このまま従来とって参りましたような方針では、私はこの問題の解決は困難ではなかろうかと思う。やはり率直にこの問題についてつお考え願わなければならぬ。困難だけれども努力をしておるということだけではいかぬと思う。藤山外務大臣は、すでに閣議において、第二星丸事件があった後に、非常に事態は困難だということを率直に言っておられる。ところが、この間の内閣と与党との連絡会議においては外務大臣は欠席しておったと思うのでありますが、そこでは、この問題についてさらに推進するというような、何か見通しがあるような話になっておる。こういうことでは、私どもはどうもらちがあかないと思う。そこで私は申しますが、この際一つ舞台を転換してこの問題を解決する必要があるのではないかと思う。私は大体三つ考えておる。これまでのように、平和的な解決々々と言って、譲歩に譲歩を重ねて財産請求権も放棄した、今申した重要美術品も返した、李ラインでどんどん拿捕されておる、こういうことを続けてなお将来に希望を持っていくということが一つでしょう。それからもう一つは、この間もあの第二星丸事件に当っていろいろ論議がかわされたのでありますけれども、目には目を歯には歯をという方式で、これに対して力でもって対抗していく、自衛の方法でやっていくんだ。あるいは経済的な手段もあろうし、今森島さんお話のようなそういう方法もあるが、これは私は第二だと思う。しかし私はそういう方法はやはりイラインにおいて拿捕されるものを、これを阻止していくということになりますと、事態は不測な発展をするから、こういうことはとらざるところである。そうすれば以前のような方法で譲歩に譲歩を重ねてだらだらと引き延ばしていく、そういうことでは私はいけないと思うから、私はこの際思い切ってこの問題を国連に持ち込んで、国連の場においてこの問題を解決する努力をやるべきではないか。もうその時期にきている。この点につきましては、いやまだ努力を日韓間で続けたいという御答弁があるかもしれませんけれども、私はこの問題については少くとも国連にこの問題を持ち込むということの考慮がなされなければならぬ段階ではないか、こういうことを思うのですが、いかがですか。
○岸国務大臣 今日まで先ほど申しましたような経過をとって正式会談を開きまして、今日までの空気は一応友好的に進んできております。ただ漁業代表が来ないという問題に関しまして、従来からもこの点を向う側の代表に強く要望しておるのでありますが、これは向う側としては何か今漁業代表に任命されている人の個人的理由で来ることがおくれるであろうけれども、遠からず来るということを申しておりますし、先日林大使に会った場合におきましても、八月の初旬までには必ずこちらに来るようにして、そして漁業会談を開こうということを申しておりまして、いろいろな困難な問題がありますが、友好的な空気のうちに会談が進められておりますから、私は現在の段階において直ちに国連に持っていってこれを処理するということは適当な時期ではないと思います。
○大西委員 総理大臣、あなたは非常に甘い考えを持っておられるのじゃないか。韓国の世論を聞いてみますと、ここにもごくその一例でありますけれども、与党の機関紙であるソール新聞などが六月の十四日にすでにその社説において、日本政府が漁船の返還を打ち出してきたということはつまらぬ言いがかりをつけてきた、そうして韓日会談を意識的に停頓させようとする意図、こういうことを言っておる。さらに韓国日報においても、その翌日の十五日に、これはあなたに対してはまことに失礼ですけれども、東条内閣の軍需大臣を歴任した岸氏を相手に進展のない、無意味な韓日会談をこのまま継続するべきかどうか、政府当局の再考を望む、これはごく一例であります。こういうことを言っておるのであります。さらに友好な雰囲気と申しまするけれども、あの六月に拿捕されました第二星丸の事件を何と見られますか。友好な雰囲気で、ああいうイラインとは何の関係もないところの日本の第二星丸が拿捕されたというようなこと、それに対して抗議を申し込んでもてんではねつけている、そういうものが友好な雰囲気だとあなたは考えられますか。どこに友好な雰囲気の根拠を求めるか。私は断じて友好な雰囲気ではない、残念ながらそう見ざるを得ないという段階ではないかと思います。いかがですか。
○岸国務大臣 われわれも会談中は拿捕という問題の起らないことを大事なことの一つとして考えております。従いましてこの拿捕事件に関しては、強く釈放を向う側に要求しておるのであります。今申しておるように、前途はいろいろ問題がありますから、ことに過去の七年間の経験に徴しましても、日韓の問題を処理するというなにに対しましては、他の問題についても相当そうでありますが、特に相当に忍耐強く進めないと、私はこの問題は解決しないと思います。私は今の状況においていろいろな事態はありますけれども、特に両方の主張があるところに乗り上げて、そうしてにっちもさっちも行かないというような事態が今日の段階においてでき上っておるとは思いません。従ってなおわれわれは忍耐強く従来の方針によって両国会談を進めることが適当である、こういう見解でございます。
○大西委員 忍耐強くという、あなたの忍耐は七年越しです。それでなお忍耐強くと言われるならば、私は政治家としての責任いずこにありやと疑いたい。このことは国民の世論です。友好な雰囲気に忍耐強く努力をすれば将来の見通しが立つというのは国民の中のごく少数でありましょう。この重大な時期に忍耐強く、忍耐強く努力しながら――私は具体的な一例を申しますけれども、たとえばイラインでまだどんどん拿捕されておる。これをそのまま見ておりますか、これはごく一例です。私は、平等な立場で話し合いを進めようというような建前をとっておる立場としては、そういう忍耐強いという言いのがれは成り立たぬと思う。私はこの点につきましてはまた後ほどお伺いいたします。
 これもその一つでありますけれども、昨年の十二月三十一日に、あなたの非常な忍耐強い努力によって一応三月から全面会談を始める、こうことになったんであります。私はそのときの両国政府の間で交換されたところの覚書に対して非常な疑念を持っている。二つの覚書がありますが、この覚書の後に発表されました共同声明によって、日本政府は財産請求権を放棄したやに言われておる。私はそういうことはよもやあるまいと考える。向うの財産権要求とこちらの要求とを照らし合せて、この財産権請求委員会で討議すべき問題だと考えております。ところが新聞その他におきましては、日本は一方的に財産請求権を放棄したのだということを言われておる。私は念のためにこの共同声明の正確なものを見ますと、そのようには書いてない。こういうふうに書いております。その前におきましては久保田発言を撤回する。そうして「昭和三十二年十二月三十一日付の合衆国政府の見解の表明を基礎として昭和二十七年三月六日に日本国と大韓民国との間の会談において日本側代表が行なった在韓財産に対する請求権主張を撤回することを通告した。」こういうふうに書いてある。これは日本の貴重な財産権の放棄ではない。あのとき発表したところの必要な撤回をやったんだ、このように私は考えて、さすがは最善の手ではなかったが、次善の手を打たれたものだと解しております。これに間違いございませんか。
○藤山国務大臣 ただいまお話になりました財産請求権の問題は、われわれとしてはアメリカの態度に沿いまして、これを処理していくという方針をとっております。
○大西委員 何が何だかわからない。アメリカの方針に従いましてこれを処理していくという方針であるというのですが、アメリカの方針というのは何ですか。結論を申しますが、財産請求権を放棄したのかどうかということです。この二つをはっきりして下さい。
○藤山国務大臣 アメリカの解釈によりましてこれを進めていくということでありまして、放棄しておるわけではございません。
○大西委員 放棄しておるのではない。そのように確認してよろしゅうございますね。この点は総理大臣から確認を求めます。
○岸国務大臣 今外務大臣がお答えした通りであります。
○大西委員 それではもう一回外務大臣に念を押しますが、財産請求権の放棄はしてない。これは後日この委員会においてこの問題の主張はでき得るということは間違いないですね。はっきりしておきます。
○藤山国務大臣 この問題はアメリカの解釈によりまして、われわれは日本の財産がアメリカに接収されたという事実を認めておるわけであります。
○大西委員 アメリカに接収された、しかしそれによって日本の財産請求権は消滅したのか。そうじゃないでしょう。なお現存しておるという考え方に立っておるのでしょう。これは初めにあなたが言われたのだが、この点をなお念を押しておきます。
○板垣説明員 この問題は法律的にいろいろと解釈があると思いますが、ただいま御指摘になった通り、ジョイント・コミュニケにありますように、日本側としましては財産請求権の主張を放棄したわけじゃないのです。しかし現実に日本の財産請求権が放棄されるかどうかは、今後の全面会談におきまして、韓国側の対日請求権との関連におきまして、米国の解釈等も参照いたしまして最終的にきまるべき問題でございます。
○大西委員 はっきりしておきたいのです。アメリカの占領軍が日本の財産を処分したということは事実であって、これは認めておる。だからといって日本の財産請求権が消滅したものではない、主張はできるのだ、こういう確認を得たいということなんです。説明は要らぬです。その点でよろしいですね。
○板垣説明員 ただいま申し上げました通り、請求権の主張は放棄しておりまするから主張はいたさないわけであります。
○大西委員 重大なことを言うですね。請求権の主張は放棄した、だから請求権の主張はしない、こういうことですか。
○板垣説明員 その通りであります。
○大西委員 これは大へんなことだ。それではなぜこのようにあやしい発言をするのですか。これは日本の国際法学者だとかあらゆる評論家がこの問題についていろいろと議論を戦わした結果、この問題については日本の財産請求権は放棄してないのだ、そういうことは軽々しく政府がやれるべきはずはないじゃないか、会談の内容としてやるべきもので、だからこういうふうに三月六日の主張を撤回する、これにとどめておるのであって、財産請求権は放棄したのじゃないというふうにみんな考えておるのです。しかるに何ぞはからんや、あなたの言葉でいうと、これは財産請求権を放棄したということになるわけでありますが、この点は最後に外務大臣、総理大臣、これはまことに重大なことでありますので、アメリカのメモランダムに従ってというそのメモランダムの公表も求めます。そうしてこういう日本国民の財産に関する問題を議会にも諮らず、しかもこういうあやふやな方法でもって、共同声明でもって事を処理したということはまことに重大な問題です。この点について今事務担当官の説明したそれに間違いございませんか。それならそれで確認をして話を進めます。
○藤山国務大臣 三月六日の主張をわれわれは一応放棄しております。そうしてサンフランシスコ条約にもありますように、アメリカの解釈に従いましてこれを処理していく、こういうことなんであります。
○大西委員 だからそこはあやふやに言わないで、答弁のための答弁でなしに、事は重大です。日本の財産請求権を放棄したかせぬかという問題ではないのですか。アメリカのメモランダムの趣旨に従って処理していくというならば、アメリカのメモランダムの趣旨というものはどういうものですか。またその趣旨をあなたの方はうのみにして、こういう重大な問題の決定をやったのかどうかということなんです。
○藤山国務大臣 日本の財産権と見合って韓国の請求権を考えるということであります。
○大西委員 それでは後ほど委員会において日本の財産請求権の主張はできますね。そういうことを日本は持ち出す根拠がありますね。
○藤山国務大臣 委員会におきまして日本が、ありました韓国における財産というものを見合って、そうして韓国の請求権を処理するというのがアメリカの解釈であります。
○大西委員 見合ってどうするかこうするか、それは処理の問題なのです。請求権があるかないかということなんですよ。あるかないかということは初めにはっきりして――その請求権を行使するかせぬかはそれは政治的な判断、政治的ないろいろな取引によりましょう。しかしそれがあるかないかという問題です。いかがです。
○板垣説明員 ……。
○大西委員 ちょっと待って下さい。それは打ち合せて総理大臣並びに外務大臣の口から返答を求めます。
○藤山国務大臣 韓国におきます日本の財産というものはアメリカ軍に接収されたわけであります。従ってこれは日本が請求権を持っておりません。しかしながら、その持っております財産を見合って韓国の請求権を処理するというのがアメリカの解釈であります。
○大西委員 そういうふうな解釈ではないでしょう。なるほどアメリカ軍は日本の財産を処分しましたよ。この処分はいわゆる敵産処理、こういう性格のものであると言っておるのです。これは外務省の従来の主張もそういうことであったのじゃないですか。ですからアメリカ側が日本の財産に対してそういう処理をしたということは認めます。だからといって日本の財産請求権がそこで消滅したという根拠は何もないです。処理の効力を認めることと、われわれが財産請求権を放棄したということとは全然別問題です。アメリカが日本の財産を取り上げてこれを韓国に渡したという、この処理は認めます。そうしますと日本の財産請求権の主張は韓国に対してあるのだという主張が成り立つわけです。われわれが認めたのは、また軍政令の三十三条というものは、その敵産処理の効力を認めろということなのです。それは認めたけれども請求権は消滅していないということでなければならぬ。
○藤山国務大臣 条約局長から御説明いたします。
○大西委員 条約局長でない。条約局長は総理並びに外務大臣と打ち合せて、その口から答弁を求めます。これは単なる法律の解釈の問題じゃない。
○櫻内委員長 一応お聞き下さい。
○高橋説明員 この財産請求権を放棄したかしないかという問題は、ちょっと私考えますと言葉の問題ではないかと思います。ある意味では放棄した、ある意味では放棄しないというふうに言えるのじゃないか。と申しますのは、あの財産があのように処理されたということを考慮に入れるということでございますから、考慮に入れ方によりまして、考慮に入れることによって、今度は韓国側の請求権の問題も、それが考慮に入ることでございますから、そのことを考えれば、その意味において放棄していない、こういうふうに考えていいと思います。
○櫻内委員長 大西さんに申し上げますが、総理が一時二十分までで、松本君の質問が残っております。なお外務大臣は総理が退席後にもおられますから、総理への御質問をなるべく早く……。
○大西委員 私はこれは総理に求めているんだけれども、総理が外務大臣に答弁さしているからこういうことになるのであって、この問題は重要な問題であるからして、私の希望からいえば総理みずからの答弁を求めたい、しかしいきなりこれを総理に求めてもなんだから、外務大臣の立場なりを総理が了とせられるならば、その範囲において判断をして話を進めていきたい、こういうふうに考えます。
○櫻内委員長 どうぞ、時間がありませんから……。
○大西委員 これは重大な問題だから、私も十分時間を尊重したけれども……。
○櫻内委員長 社会党の理事の方にも御相談したのです。社会党の方の質問が残っておるそうですから、今御相談したのですからどうぞ……。
    〔「委員会の権威のためだ」「総理大臣、統一見解をはっきりやれ」と呼ぶ者あり〕
○大西委員 請求権があるとも考えられるし、ないとも考えられる。これは単なる法律とか、そういうものの解釈の立場なんです。そのいずれをとるかということにおいて、現実に日本は日本人の財産を保護するための行動をしなければならぬじゃないか。そういう行動が政府に要請されているときに、解釈は二通りある、どちらでもいいということで、どうしてあとの処理に責任ある行動がとれますか。この点ではっきりして下さい。この文句の通りに財産請求権はなお生きておるのだというふうに見られますか、あるいはこの共同声明とは別に、これはもう放棄したのだ、こういうふうに考えられますかということなんです。もし放棄したということになれば、これはもう重大問題です。
○岸国務大臣 従来韓国に対して平和条約の、今大西君の主張されるような主張を日本がしておったのであります。それでは問題が解決しないというので、これを撤回して、同条の解釈については、アメリカのメモランダムのこの解釈を両国においてとるということがその共同声明の内容であります。アメリカのこのメモランダムの内容というものは、要するに日本側として韓国にあるところの財産に対して請求はしない。しかし同時にそれは日本内における、韓国が日本に対していろいろな財産上の請求権を持つ、その請求権を、この日本がなくなったということと合せて、内地側のなんについても適当な処置をするということを条件とした関係において、その範囲においてなくなる、こういう解釈がアメリカのメモランダムの解釈であると思うのです。従ってこれを法律的に見ますると、もしも韓国側の方において日本に対する請求権というものを不当に大きく要求するならば、これはアメリカのメモランダムは、それを両方突き合してなくなるということを認めているわけでありますから、その点が将来の交渉の問題になるわけであります。
○大西委員 このアメリカのメモランダムに対する請求権の有無というものにつきましては、今もお話のあった通り両様の解釈ができる。日本政府は当然日本国民に有利な立場から、国民的利益の立場からこの解釈を強く主張しなければならぬのです。ところがあなたの今の話では、これはもう放棄した、こういうことになることになるわけです。事実そういうことをやっているのです。そのことは私は知っているんです。この共同声明の発表されたときに口上書をもって、二度と再びこの種の議題は後の委員会において提案はいたしませんという口上書を出しておる。それに対して国民の批判を恐れてはっきりと財産請求権を放棄したということをこれには書かないのです。なぜこういう方法をとったのです。しかもアメリカのメモランダムというものは、それほど日本の重要な決定をやるメモランダムをなぜ公表しないのです。この理由は何ですか。当然こういうものに基いてこういう判断をして、そうして覚書を交換し、共同声明をやったというならば、その根底にあるところのメモランダムというものを国民の前に公表して、少くとも議会において審議の対象にして、そうしてこういう処置をとるというならばそれはよろしいのです。それを隠しておるということは何です。私はこういうことから申しますれば、とにかく今の政府のとった態度というものは、国民的利益を全くあなた方の秘密外交によって一方的に相手に売り渡しているということになります。こういうことをやって、しかもあとでは請求権委員会を作って、そうして韓国の請求権を最少限度に押えたいなんて言ったって、こちらにも請求権があるから向うの請求権を突き合して、そこに甲論乙駁の議論を戦わして妥当なところに持ち込むというのならばわかるけれども、会談の初めに議題とせずして、会談を始める前提条件にこういうものを日本みずから撤回して、どういう有利な会談が進められますか。この点についてはどうですか。しかもなおそれで有利な日韓会談の将来の見通しがある、ねばり強くやっておったらよろしいというようなことがぬけぬけ言えるかどうか。さらに私は言います、李承晩ラインの問題はどうなのです。会談を始めるのは友好的な雰囲気のうちに始めると言っている。ところがどんどんと李承晩ラインで拿捕されている。数は少くなったかもしれないけれども、それに対して何らの約束もしていないのか。約束をしていないということになれば釈放は何のためにやったのか。何のために日本の重要美術品を返し、一方的な財産権の放棄までしたのです。拿捕はしないという約束のもとに拿捕されたというならば強硬に主張すべきだ。その指標は一体どっちなんだ。私はこういうことで声を大にして言うのは国民的な憤激をあなた方にぶちまけているのです。これはほんとうですよ。こういう処置をとらざるを得なかったというならば私は了としたい。しかしすべからくこういう重大問題は国民の前において明らかにしてやるべきなのです。これを秘密外交といわずして何ですか。私はこういう問題についてもっとこまかく聞きますから……。とにかく総理大臣、あなたは請求権を放棄したということを言っている。しかもこれを前提条件として放棄してしまって、会談の内容として触れられないということになっている。こういう会談をなお進めて、そうして日本の利益を守ることができるかどうか。この段階においてはもうこういうふうなわけのわからぬ相手といつまでも話をせずに、国連中心主義というならば、この際この問題こそ、日韓間の七年間も続いたこの紛争を国連に提訴したらいいじゃないですか。国連の平和的な紛争の処理の三十三条から三十七条まで見てごらんなさい、こういうふうな両国間の紛争は安保理事会に提訴しなければならぬ義務さえあるのです。
○櫻内委員長 大西君、時間がありませんからまとめて下さい。
○大西委員 それを安保理事会において、イラクの問題、ヨルダンの問題について血道を上げて努力したのはけっこうでしょうが、自分の問題をなぜ国連に持ち込まないのです。自分のことを忘れているじゃないですか。だから私は言うのです。この問題に対して国連に提訴して、イラクに対して監視団を派遣したように、少くとも監視船団を派遣してこの紛争の調査をやり、あるいはそういう不幸な事態が起らないように処理すべきが必要ではないか、そういう意味で私は国連提訴の問題を申し上げた。国連に提訴して、そういう名目のもとに、この問題の解決を要求すべき時期に来ているのではないかということを私は申し上げたいのです。あとは外務大臣に聞きます。
○藤山国務大臣 誤解があるといけませんから申し上げておきたいのでありますが、形式的には財産請求権そのものを放棄しておりましても、実質的にはアメリカの解釈によりまして、日本の持っております韓国の財産というものと見合うわけであります。その金額等の算定によりまして向うの財産請求権がどうなってくるかということが実質的に解決されるわけでありまして、決して全部を放棄しているという意味じゃないのであります。従って先ほど放棄したような放棄しないようなという形で申し上げた場合もあったと思いますけれども、実質的には日本が韓国に持っております財産の総金額と、向うの要求とを委員会において見合いながら解決するのでありますから、実質的には放棄しておりません。
○大西委員 それはあとでやります。
○櫻内委員長 松本七郎君。
○松本(七)委員 一昨日の外務大臣の答弁、それから本日の総理の答弁で、アメリカの軍事介入は適当ではない、こういう答弁が両者からなされたのでございまするが、最初に確認しておきたいのは、このことは適当ではないけれども必ずしも国連憲章違反ではない、こういう意味でございましょうか。総理大臣からはっきります確認したいのです。
○岸国務大臣 国連憲章違反であるかどうかということは、これはいろいろな議論があると思います。私どもはそれを論断はいたさない。しかし、あの事態を収拾する意味からいって、適当な処置ではないか、こう思っております。
○松本(七)委員 国際連合の警察軍が出動する場合はどういう場合か。たとえば今回のようにレバノンにアメリカ軍が出動した、それにかわって国際連合の警察軍を派遣すべきであるというこのアメリカの決議案にいうところの国連警察軍が出動するためには、アメリカの派兵が妥当であるという確認がなければ、それは国連警察軍としては派遣できないと思うのです。この点はどうですか。
○岸国務大臣 これは事態を見、そうして安保理事会において十分事態の実態を把握して、警察軍を出すか出さないかをきめらるべき問題であります。また警察軍の組織、内容等もいろいろあると思います。私は前提としてレバノンに派兵したことが妥当であるということの前提をもとに置いてのみ国連警察軍が出されるのだというふうなことは、そういうふうには考えていないのであります。よく事態を見て、事態に応じてこれを平和的に処理する意味において適当な内容を持った警察軍を出すことによって事態を収拾する、その必要ありやいなやということが安保理事会において十分審議され、きめらるべきである、こう思います。
○松本(七)委員 国際連合が警察軍を派遣する場合は、それに先行しておるある国の派兵が果して国際連合憲章に合致しておるかどうか、これを判断してその結論が出なければ国連警察軍というものは動けないのじゃないですか。それでは一体何を基準に国連警察軍の出動の当否はきめるのですか。
○岸国務大臣 国連憲章と国連警察軍の法律的な解釈につきましては条約局長からお答えをさせることにいたしますが、私は、先ほど申し上げましたように、諸種の事態を十分に検討して、その必要ありやいなやということを安保理事会において決定するということが前提になると思う今お話しのように、その前に先行した事態が正当であったということを条件としてのみできるというふうに限定して考える必要はないと思います。なお法律的解釈につきましては、条約局長からお答えをさせます。
○松本(七)委員 その解釈はあとでまたゆっくりやりますからいいです。そこで、そのこまかい法律解釈は別として、とにかく日本はそのアメリカの決議案に賛成したのですが、そのとき、さっきの首相の答弁によりますと、アメリカは国連憲章五十一条を援用して派兵したのだ、こういう御説明があったわけです。現実にアメリカはそういう立場をとっているのです。そこでそれに基いてアメリカの出した決議案は、国連警察軍で肩がわりしようというのですから、当然日本がこれを検討する場合には、この憲章の五十一条というものの解釈が明確になっておらなければならぬと思うのですが、総理はさっき、今度のレバノンの場合には、間接的な干渉の事例はいろいろな面であるのだ、こういうことを言われたところを見ますと、この国連憲章五十一条の武力の攻撃という概念の中には、間接侵略も含めたものと考えておられるのかどうか、これを一つ……。
○岸国務大臣 先ほど私五十一条を援用していると、こういうことを申しましたが、正確に言うと五十一条を援用しているわけではないので、その趣旨はそういう趣旨でございます。今のいわゆる武力侵略というものに対して間接侵略が入るかどうかという問題でありますが、これは法律論としても確定した解釈がまだ決定されておらないようであります。また間接侵略という言葉自体も、これは方法いかんによって、武力の侵略とは見ることのできないものもありましょうし、また解釈によってはそう見得るものもあるのじゃないかと思うのです。従って間接侵略がただ抽象的にこの中に入るか入らないかという解釈については、法律論としては相当に議論のある点であり、国連としてはいまだ一定した解釈ができておらないようであります。ただ、さっきからもいろいろ議論いたしましたように、ある国のほんとうの民族運動やあるいは独立運動、あるいは国内の問題、内政上の問題に他から干渉し、あるいは侵略という言葉を用いていうならば、やる方法は、いろいろ今日の状況を見ますと、あるのであります。いわゆる間接侵略といわれ、直接侵略といわれ、あるいは武力を直接に行使するものもあろうし、武力でない方法によってやられるものもありましょうし、武力の行使につきましても直接いわゆる正規の軍隊を入れてやる場合もありましょうし、義勇軍というような形でやられる場合もありましょうし、あるいは武器を供与するということによって関与する場合もあるのであります。いろいろな事態があるのでありまして、その事態を十分に把握して、それに当てはめて考えないと、ただ抽象的に議論することはむずかしいのじゃないかと私思います。
○松本(七)委員 岸内閣の今まで唱えてとられてきた外交三原則の中には、国連中心主義というものがあるのであります。その国連中心主義の中心的な核心をなすものはやはり国連憲章を守っていくということであろうと思う。しかもその五十一条というのは国際紛争の場合には非常に大事な規定になっております。その大事な規定の中の武力の攻撃、この解釈をどう解釈するかということは、これは今後の非常に重大な問題です。この規定ができてから今まで国連で論議されておることを見ても、いかに今の世界の平和維持という点に重大な問題かがはっきりしておるわけであります。そういうわけでありますから、それをいつまでもあいまいにしておってこういう事態に対処するということ自体に危険があると私は思うこの論議は後にまた残しますけれども、すみやかに日本政府は日本政府として、これはどう解釈すべきものかということを、ただ国連の論議にまかせるのでなしに、日本独自の解釈を打ち出して、それで国連の解釈を統一させるぐらいの積極的な努力を今後なすべきだと私は思います。この点はこれ以上は申し上げません。
 その次にお伺いしたいのは、この前もこれは外務省でいよいよ国連に臨む態度を協議する場合に考慮されたということでございますけれども、これは当然首相としても考えられたことであろうと思うのです。それはああいう中東で問題が起きて、下手をすれば米ソの戦争にまで拡大する危険があるということは、これはだれも考えておったことですから、首相としても当然その危険をはらんでおるものとしてこれに対処されたと思うのですが、いかがでしょうか。
○岸国務大臣 先ほど川崎委員の質問にお答えをしました通り、私は、この中東の置かれておる国際的情勢の複雑であり、微妙であり、また一方において東西両陣営の対立の激化しておる際に、この複雑な関係にあり、微妙な関係にある中東に兵を動かすということ自体は、われわれが絶対に防がなければならない世界の戦争というものにつながる危険が少くともある、従って、そういう事態をその場においてできるだけ早く解決する、しかもそれを国連を中心に解決していくということが最も望ましいことであるということで努力もし、また今後も努力をしていきたい、こう思っておるわけであります。
○松本(七)委員 そういう危険があるものとして、しかるがゆえに、なおさら、何とかしてそういう大戦にならないようにという努力をされなければならぬ点はもちろんそうなんでございますけれども、さっき川崎さんから出された万一不幸にしてそういう大戦に発展した場合、これは日本の自衛隊はもちろん海外に出るというようなことはないという答弁はなされたし、従来からもなされておるのですけれども、そういう事態になった場合に、少くとも日本の国内で、これは自衛隊ばかりではない、あらゆる国力を総動員して、国内では協力援助する義務というか道義的な責任というか、そういうものがアメリカに対しては当然生じてくると私は思うのですが、その点はどうですか。
○岸国務大臣 ちょっと御質問の趣旨を、あるいは取り違えておったら再度御質問願いたいと思いますが、自衛隊も安保条約も、御承知の通り日本の平和維持、国際間の安全の保障ということでありまして、これらの事態が発展して、日本が他から攻撃を受けるということになれば、当然自衛隊としても日本を守るための行動にも出ましょうし、あるいは安保条約上のアメリカ軍と協同して、これを防ぐというような問題が起ってくるだろうと思います。
○松本(七)委員 そこで米ソ戦になれば、これはそれと当然結びついてきて、アメリカとしても安保条約第一条によって、これは駐留軍が動かなければならぬ。それに対して自衛隊ということに限らぬで――自衛隊も国内のあれとして、今言うように動かなければならなくなるでしょうし、あらゆる態勢をもってアメリカを援助する。朝鮮動乱のときにあらゆる態勢をもってアメリカを援助したと同じように協力する義務がここに生ずるかという点をはっきりしておいていただきたい。
○岸国務大臣 これはアメリカがそういう場合において国連の憲章に基いて動いておるというふうな場合に、われわれが国連の加盟国の一員としての協力というような問題もありましょうし、また日本自身が侵略され、もしくは侵略のおそれある場合に、日本自身としてこの防衛という問題が起ってきましょうけれども、いかなる場合においても米ソ戦争があれば日本が全面的にアメリカに協力しなければならないという義務は私はないと思います。
○櫻内委員長 松本君、時間ですから……。
○松本(七)委員 いかなる場合と言われるけれども、私は全面的なことを言っているのではない。レバノンを中心としたこの問題で、これが米ソ戦に拡大する危険があるという予想のもとに、これを防ごうという努力を政府としてもされておる。もしこれをきっかけに米ソ戦になった場合は、安保条約上の規定なり、あるいはこの事件に対して今まで日本のとった行動の帰結として、当然米国に協力する義務が私は生ずるだろう、生じないのか生ずるのか、その点を明確にしていただきたいというのです。
○岸国務大臣 これが今の状況のままでかりに世界戦争に発展した場合に、そうして日本が侵略を受けるという事態でもないという場合において、直ちに協力するというような義務が発生することは全然私はないと思います。日本はあくまでも安保条約の規定とか、あるいは国連の定めに従って、われわれは世界の平和を維持する上において、安全を保障する意味において条約上の義務というものがありますけれども、それ以外には今言うように、これがただ発展したからといっても、今までの行きがかり上アメリカに全面的に協力するのだということが起ってくるようなことは考えておりません。
○松本(七)委員 しかしレバノンのこの問題で世界大戦に発展したら、当然極東の安全にも関係することです。そうなれば安全保障条約第一条の発動が当然なされるでしょう。そうすれば、もういや応なしに日本がこれに協力しなければならぬ状態に追い込まれる。これを考えないでこの問題に対処しておるとすれば、あなた大へんなことですよ。そこをはっきりしておいていただきたい。
○岸国務大臣 今申し上げておるように、日本の立場というもの、日本のそういうことに対するアメリカとの関係は、安保条約に定められているところの条項に当るものが現実に出てくれば、それに従っての事実を行う、あるいはさっき申しましたような国連として何か取り上げて、これが決議をすれば、その一員としての義務がある、これだけでありまして、アメリカに対してこれが発展したら日本は協力するのだということは絶対にないと考えております。
○松本(七)委員 これは、もう問題提起だけにとどめておいて、非常に重要な問題ですから、また別の機会にもっと突っ込んで御質問したいと思います。
○櫻内委員長 大西正道君。
○大西委員 私は今の論議を敷衍するために、アメリカのメモランダムなるものを一つここに資料として公開されることを要求します。
○藤山国務大臣 メモランダムにつきましては、韓国とも話し合いをいたしておりますので、今は……。
○大西委員 メモランダムに基いてこういう重大な決定をしておるのです。そうしてその決定を今審議しておる際に、その根拠となったメモランダムというものが公表されないで私は論議を進めるわけにいかない。はっきりとこの共同声明の中にもこのメモランダムが引用されておる。それに基いてこういう処置をとったという以上、これはもう国会の審議を尊重する意味におきまして一つ公表されたい。なおその点を私は要求します。
○藤山国務大臣 これは先ほど申し上げましたように、韓国側と約束しておりますので、韓国側と交渉して公表できるような状態に持っていければ公表はできるだろうと思いますが、そうでなければ今約束をしておりますから、今日の段階では……。
○大西委員 これは約束をしたというのだが、そのメモランダムを公表することは日本政府としては当然やっていいものだと思いますが、どういうわけで公表しないのですか。なぜそういう約束をしたのですか。
○藤山国務大臣 なぜ約束をしたかというお話がありましたが、交渉の途中でそういう約束をいたしたのであります。
○大西委員 当然公表すべきものを公表しないというのは、どういう理由があるのかということです。
○藤山国務大臣 両者の話し合いの結果、そういう結論になりました。
○大西委員 そうしますと、今の話のように、あなたは初め言われたのと違って財産請求権の放棄ということは、放棄しておるのだ、こういうことになりますね。放棄したということが確認されて、そうしてそれに見合って韓国の対日請求というものは手心を加える、こういう約束であるというふうに見るのですが、そこをはっきりしてもらいたい。放棄しないで、なおそこのところは話し合いでというのか、放棄したのだ、しかし放棄したというその日本の態度をよみして李承晩の方から今度は一つ手心を加えてやろう、こういう話になっておるのか、こういうことですよ。
○藤山国務大臣 先ほど御説明申し上げましたように、形式的には放棄しておりますけれども、実質的には日本の韓国にあります財産というものを見合うわけでありますから、そういう意味において実質的には放棄していないということを申し上げておったわけであります。従って韓国の財産というものが幾ら、日本の韓国に残した財産が幾らというものを両方照らし合せまして決定をしていくということであります。
○大西委員 その点は相も変らずはっきりしないけれども、しかしそういうふうな申し合せというものは、相手側を拘束するだけのどういう形式的な書類その他がございますか。ただ単なるその間の話し合いだけでは、私は相手が相手のことであるから、例によってそういうことをやっておっても一人合点になると思うのですが、相手に対してこういう了解事項をお互いにかわしたということの、はっきりした、後日その問題が持ち上ったときに、この問題を根拠にして処理するというような根拠か何か、書類として残っておりますか。
○藤山国務大臣 両国政府がアメリカの解釈を文書で受け取りましたし、その文書の基礎の上に立って、アメリカの解釈の上に立ってこの財産請求権の問題をお互いに処理していくということになっております。
○大西委員 処理していくというその内容はよくわかりました。それをどういう形で確認し合ったかということです。それがなければ、後日紛争が起きたときにどうしますか。
○板垣説明員 米国の解釈に基いて、日本側が対韓請求権の主張を撤回するという文書を、韓国側が同意しておるのであります。それがまた共同発表されておりますから、完全に日韓双方の合意の上に立っておる次第でございます。
○大西委員 その点については私は十分なる手段が講ぜられていないと思う。必ずやこの問題は、ここで予言をいたしておきますが、今あなた方が楽観的な見解を述べておるけれども、もし会談がこのまま続いていきますならば、あなた方の言っているようなことは決して尊重もされない。これまでの交渉の経過を見たら、そういうことがわからぬあなた方ではないと思うのです。そういう意味で私は申し上げているのです。殷鑑遠からずです。そういうことはたくさんあるのです。私はこういうことは予言にとどめておきます。しかしそれにしましても、何がゆえにそれではこの問題を会談の本筋に持ってこないで、会談を始める前提としてこういう重大な問題を処理してしまったのか。この問題はやはり依然として残るのです。これはどういう意味で会談の委員会に持ち込んでやらなかったのか。この問題の見解。
○藤山国務大臣 実質的な討議は、ただいま申し上げましたように会談の委員会の中で行われるわけであります。
○大西委員 それでは委員会の中で行うという根拠がないのだ。何らそこで話し合いをするということではないから、私は申し上げている。この問題についてはそれではこの程度にしておきましょう。しかし事は非常に重大であるし、あなた方はここでは一応の答弁でごまかしても、後日この会談が進めば、目に見えてあなた方は後悔するのだから、その点をとくとやはり考えておかれたいと思うのです。
 それから、この問題についても私は時間の関係で一々答弁をいただかなかったけれども、会談を始める前に、イラインの問題について、イラインが合法か非合法かという問題はもちろんこの委員会でやるのだけれども、少くともイラインに籍口して日本の漁船を拿捕するというこの事実だけは、会談の途中においては停止すべきだと私は思う。そうでなかったら何のために抑留者の相互釈放をやったのか。筋道の違う李承晩ラインというものを作って、そして勝手に人質政策をとったものと、厳然たる国内法規によって違反した者を処分したものとの間の相互釈放ということは、これはたびたび言われた通りに理屈に合わぬ。政治的な配慮によってこれを解決した、それ以外は少くとも会談の途中におきましては、李承晩ラインによるところの拿捕だけは遠慮させるように話し合いができずして、しかも対等な立場だとか友好的な雰囲気であるとは私は言えない。この点につきましては、したがごとくしないがごとく不明確でありますが、私はこの点をもう一回総理大臣に聞きますが、この李承晩ラインの問題が一番緊急な問題です。この問題があるがゆえにわが方としてもいろいろと会談をあせっているわけです。この問題に対してただ話し合っただけで、何らはっきりした約束がなかったとすれば、私は怠慢もはなはだしいと思う。こういうような不手際な準備で話をするのだったらとうていらちがあかないと思うが、この李承晩ラインの拿捕について、少くとも会談中はどうするかという話し合いができたかどうか。
○藤山国務大臣 日本としては予備会談の終局におきましても、またその後の状態におきましても、イラインの問題は、ことに拿捕事件というものは重要な問題でありますから、われわれとしては再三韓国側にそういうことのないように注意を喚起しているわけであります。
○大西委員 問題をはぐらかさないで下さい。注意を喚起していることは分りますよ、しなければならないですよ。通り一ぺんの喚起だけじゃだめなんです。一体この友好な雰囲気において会談を進めるという一つの条件に、どうしてイラインの拿捕の問題についての話し合いをはっきりと取りきめなかったかと言っているのです。それがあったのかなかったのかと言うのです。
○藤山国務大臣 私どもは韓国との予備会談において友好的に話し合いを進めてきたのであります。そういう経緯から見ましても韓国側にもやはり誠意を期待したいわけでありまして、そういう意味においてわれわれとしては十分われわれの意のあるところを申しております。しかしながら、その後韓国側が必ずしもそういうことに対してわれわれの考えております通りでないことは遺憾だと思うのであります。
○大西委員 それは考えていることはわかるけれども、そういう約束をしなかったか、どういう形の約束であってもしたかしなかったかということですよ。
○藤山国務大臣 特別な文書による約束はいたしておりません。
○大西委員 特別な文書による約束でなければ、どういう形の約束をしたのですか。
○藤山国務大臣 私の言葉じりがあれかと思いますが、われわれとしては会談の際に絶えずこういう問題について注意を喚起しておったわけであります。文書による約束はいたしておりません。
○大西委員 それでは、その後、数は少いけれども拿捕がどんどん起きているのですが、当時そういう約束をしなかったということに対して、不備であったと今思いませんか。
○藤山国務大臣 われわれとしましては、やはりこういう会談を円満に進行いたします上において、必ずしもこういう問題を文書で取りきめますよりも、両国が友好関係のうちにそういう事態に陥らぬことを希望しておったわけでありますが、しかるにそうでなかったということはまことに残念であります。
○大西委員 こちらがそういう友好的な雰囲気を期待しておったって、現実に私がたびたび申しているように、友好的な雰囲気じゃないですか。こういうことが起るということの予想もあるわけで、なぜそういうことについてはっきりと約束をかわしておかなかったかということを私は言っている。あなたはかわさなかったということはこれは手落ちですよ。大手落ちです。そこまで譲歩してそれで友好な雰囲気だなんて言ったら、それは全く愚弄された屈辱的な態度です。そういうことを私から言うから、あなたは反発してそうでないとか、つべこべ言っているけれども、平心に返って考えたらそんな約束でこういうスタートをして話ができる相手じゃないですよ。現実にこういう拿捕問題が起っているのです。この間、拿捕された抑留者がどういうふうな悲惨な体験をしておるかということについて、私どもは参考人を呼んでここでいろいろと聞いたのです。あなた書類においてもそんなものを見たかもしれませんけれども、そういう悲惨な現実が続々として起きている。この現実に対してやはりあなたは責任を感じなければならない。それは期待に反して遺憾であったというけれども、何ゆえに、日本の財産請求権まで放棄したそういう段階において、イラインの問題についてその当否は別として、せめて会談中くらいは拿捕はしないというくらいの約束を取りつけなかったのか。私の声が大になるのはあまり腹が立つからだ。ほんとうですよ。こういうことでは、だれだって国民は、日韓会談に関する問題については政府の態度はまことに不可解だと考えている。しかもこまかいことをいえば、ここの相互釈放の覚書にしても、これはいつも問題になっているように、こちらは大韓民国政府に抑留された者は刑を終えた者、こういうようにいって、はっきりと刑を終えたということになれば、李承晩ラインの存在を認めたということになる。李承晩ラインを侵したという形でもって抑留された者、そうして刑を課せられてそれが終った者ということは、間接的に承認しておるのですよ。ところが同じような場合にも、日本の場合にはそういうことは書いてない。これをしもなお友好的な雰囲気だ、平和的に解決するという態度なれば、日本外交の自主性というものはありません。こういう態度でなんぼ卑屈に事なかれ主義でいったって、ますます愚弄されるばかりです。ですから私どもは、こういうふうな将来に見通しのない会談をいつまでも続けるよりも舞台を転換したらどうだ、こういう考え方なんです。それから李承晩ラインの漁業委員会の問題にしても、いまだに予定されているチャン・ギャングン氏は来ないじゃないか、この理由は何と見ますか。
○藤山国務大臣 漁業委員会の韓国側の委員がまだ日本に来ないことはまことに残念だと思います。むろん向側としては個人的理由であって他意がないということを説明いたしております。私どもは一日も早く来てこの委員会が開かれ、話し合いが進むことを希望いたしておるわけであります。
○大西委員 個人的理由というのは、それはこちらが個人的理由をとやかくそんたくする必要はないのであって、やはり韓国の責任においてそれにかわるべき人でもよろしい、とにかくこの担当の委員というものをすみやかに出させるということが、あなたの期待する友好的雰囲気じゃないですか。今日までこの問題について代表が来ないということは、相手方の誠意を疑っても決して行き過ぎではないと思います。どういうふうな手段をもって今日まで遅延しておるところの代表を促進をいたしますか。私はいろいろな情報によりましていろいろな内部の事情も聞いております。そういうことは言いませんけれども、そういつまでもただ期待をしておる、待っておるというこれだけでは、私は話は進まないと思うのです。責任ある、この委員会を開くための措置をどういうふうに考えられるか。
○藤山国務大臣 漁業代表が来ないことは、われわれとしてもまことに困るわけでありまして、従いまして今日までも再三督促をいたしております。また今回林代表が帰るときにも、われわれとしては澤田代表を通じて督促をいたしております。向うも来ないと言っているわけではないのであります。近く来るということでありますから、われわれとしては来ることを待ちながら見ております。
○大西委員 請求権の問題をお互いに了解のうちに話し合いたいと言っておりますけれども、李承晩の郡山における演説会あるいは情報によると、政府の内定したところの対日賠償の請求額というものがちらほら見えておる。群山のあの会合におきましては李承晩は八十億の賠償を要求する、こう言っておる。あるいは政府の一つの試案として出されておるのは、二十八億ドルの賠償を請求するとかいわれておる。私どもはこういうことは全然もう問題にならないと思うのだけれども、しかしながら、今言うように片方で賠償の要求というような準備もしながら、そして一方では日本の財産請求権の問題と見合って解決するというようなことを言っておるけれども、一体日本は、たびたび言うことだけれども、賠償支払いの義務というようなものは毛頭感じてないと思うのですが、いかがですか。
○藤山国務大臣 日本としましては、ただいままで申し上げておりますように、日本の財産と韓国側の請求とを見合いまして、そうして決定していくわけであります。まだ韓国側が幾ら要求するということを正式に持ち出しておりません。いろいろ李承晩氏は韓国内で言っておるかもしれませんけれども、われわれには正式の何らの意思表示もいたしておりません。
○大西委員 ちょっと混乱があるようですが、これは財産請求権の問題、ところが今申しておるのは、賠償としてそういうものを要求する、こういうことを言っておる。額の問題ではないのです。賠償として要求する、こういう立場をとっておるのですが、そういう問題については毛頭考えるべきではないと思いますが……。
○藤山国務大臣 私は日韓会談のワク内において問題を解決していくわけでありまして、賠償というような問題の要求が現在出ておるとは思っておりません。
○大西委員 思ってないと言っても、そういう準備があるということに対して警告を発しておるのだから……。
 それからもう一つ、これはちょっとした問題ですが、あなたは日韓合邦ということを言っております。私どもは子供のときから日韓併合というふうに聞いておる。あなたが合邦と言われるのは何か意味があることなんですか、ちょっとお伺いしたい。
○藤山国務大臣 私が日韓合邦と言いましたかどうか記憶がないのですか……。
○大西委員 御記憶がなければ見せてあげます。この間の引揚特別委員会で受田代議士の質問に答えて、あなたは合邦ということを言っております。合邦ということと合併――私どもは合併と言っておるのですが、これは何か違った意味にお考えになりますか。
○藤山国務大臣 私は別段違った意味でいろいろ言葉を弄しておるわけではないのでありまして、一般的に通俗的に今までいわれておる通りの発言をしておったつもりでありますが、大西委員の追及急な余り、あるいは戸惑ったかもしれません。
○大西委員 私は今この委員会で何も追及しておりませんよ。ちょっと戸惑っておられるようですが、矢次何がしという人も合邦ということを言っております。だから合邦々々ということは一つの意味があるのじゃないかと思って私はいろいろ聞いてみたのです。そうすると、合邦とか合併とかいうのは併合とはだいぶ趣きが違う。私は思慮遠謀な外務大臣のことであるから、いろいろあとの問題に影響のあることを考えられて、合邦と言われたのだろうと思いますが、そうではないのですか。合併と同じような意味だと理解してよろしゅうございますか。
○藤山国務大臣 実は私が合邦と言いましたかどうかも今記憶していないような状態でありまして、私は一般的にいわれております通りの言葉をふだん使っておるつもりなのであります。
○大西委員 ついでに条約局長に、条約の問題ではないかもしれませんが、合邦、合併と併合というのとはどういうふうに違うのか、最近合邦がはやっておるようですからちょっと聞かせていただきたい。ということは、矢次さんが向うに岸特使として行かれて、この日韓の併合はあるいは当時はやむを得なかったかもしれませんが、あれは悪かったと言って土下座しているのです。それに対して岸さんは、そういうことを自分は言った覚えはないというふうに否定されている。しかしこれは向うとしては、そのことを、あの日韓併合がどういう性格のものであるかということによって、後ほどの賠償の要求だとか、あるいは財産請求権の問題なんかにもいろいろと影響してくると私は思うので、この際この機会において、やはり有効な一つの発言を得ておく方がよかろうと思うので、申し上げているのです。
○高橋説明員 私寡聞にしまして、あまり合併とか併合、割譲合邦とかというような言葉が、国際法上テクニカル・タームと申しますか、専門的な言葉としてはっきり区別されているかどうか、ことに日本語訳といたしまして実ははっきりしたことを申し上げられないと思います。従いまして、結局通常われわれが持っている言葉の意味で解釈するほかないかと思います。と申しますことは、結局申し上げることは、非常に常識的な問題になりますが、合邦と申しますと、たとえばアラブのエジプトとシリアの合邦というように、二つの国が一つの国になるということ、併合というのはアネクセーションの訳かと思いますが、一国が、他国を自国の領土に併合してしまう、結局常識的な言葉だと思いますが、それ以外にはちょっと申し上げられないと思います。
○大西委員 大臣のその言葉は非常に常識的に、どっちでもいい意味でとられたのでしょう。
 それからもう一点だけ聞いておきます。沖繩の問題ですけれども、今も話がありましたように、何か援助をしなければならぬというような話で、私どもはもし沖繩の住民が困っておるならば、いろいろな手を打たなければならぬと思うが、しかし私は、これは岸・アイクの共同宣言にもはっきりと出ておりますように、米国はその経済的な福祉、文化的な向上を引き続き継続するということをあそこで明確にいっておるのであります。引き続き継続するということは、従来もその点については配慮したということであります。ところが今日日本の他の県のレベルにまでも達しないような悲惨な状態であるというようなことでありますれば、私どもはあの岸・アイクの共同宣言によって明確にされた米国のアイクの約束というものは、実現しなかったというふうに見て差しつかえないかということです。
○藤山国務大臣 アメリカはアメリカなりにあるいは福祉の問題についていろいろ配慮したのかもしれません。しかしわれわれから見て、ことに先ほど中曽根委員が言われましたように、いろいろ現地の事情等もありまして、そうして必ずしもアメリカなりの配慮そのものが適当であったかどうかというふうに、われわれとして――当然われわれとして、もう少しその問題について考えなければならぬということをアメリカにも申すべきだと思います。
○大西委員 やはり施政権を持っているアメリカに、こういうふうに経済的に非常に困窮した状態にありますれば、日本政府として打つ本筋は、やはりあの岸・アイク共同宣言に沿って、米国に――あなたの言葉をかりれば米国なりにやったかもしれないが、それではこっちがありがたくない。その効果が上ってないとすれば、米国に対し出て、その施政権の責任において、やはりこの問題の解決をさせるべき一つの方向に日本の外交を展開していかなければならぬのじゃないですか。そういう面に主張を展開しなければならぬのじゃないですか。私はそれが本筋ではなかろうかと思います。本筋の問題を聞きます。
○藤山国務大臣 むろんわれわれとしては、アメリカの配慮が必ずしもわれわれの考えている配慮と違いますれば、アメリカの配慮をもっと地に着いた配慮にするように努力することは当然なことだと思います。
○大西委員 だからその点について従来も抜かっておったわけなんです。ですから、問題はただばく然と経済援助をするということじゃなく、アメリカに対して十分なる措置をするようにということを強く交渉する。これは岸・アイク共同宣言の不履行ではないか、こういうことを進めるのが本筋である。もしそれができないならば、当然この問題については、われわれが言っているように施政権の返還というこの大筋を打ち出すべきであろうと思う。その方をなおざりにしておいて、そうして安易なる援助の手を打って、それがかえって沖繩住民に対する援助ではなくて、米国の施政権に対する援助になることを私はおそれる。そういう意味において、せっかく大方針であるところの施政権の返還というものをこういうことによって肩がわりしてしまう、ぼやかしてしまうということを私はおそれるのである。この際日本政府は岸・アイクの共同宣言をたてにとって、すべからく米国が十分なる対策を講ずべきであるということを推進することが第一であると考えますが、どうですか。
○藤山国務大臣 先ほど総理の言われましたことも、むろん岸・アイクの線に沿って努力をするということであって、――しかし同時に日本の政府としてもやはり何らかあたたかい手を差し伸べる方がいいのではないかと言われたのだと私は思っております。
○大西委員 それがそういうふうになっていない。また今までのいきさつから見ますと、言うべきところには言わずして、こそくな手段でもって解決に当ろうとしているから、私は警告を発している。重点をどっちに置くかの問題なんです。こういうことを言うのは、決して沖繩に対してあたたかい援護の手を差し伸べるなと言っているのではない。われわれこそ基本的人権をもっとはっきり確保するために、いろいろな問題についてもこれまでも声をからして訴えてきた。われわれこそそういう沖繩住民の福祉堅持のために努力してきた。だからその点本筋を間違えないようにしていただきたいということを言っておるのです。
○櫻内委員長 大西君、大体時間が参りましたから……。
○大西委員 それではこの辺でやめておきます。
○櫻内委員長 それでは、本日はこれにて散会いたします。
    午後一時五十八分散会