第030回国会 社会労働委員会 第8号
昭和三十三年十月十七日(金曜日)
    午前十一時二分開議
 出席委員
   委員長 園田  直君
   理事 大石 武一君 理事 大坪 保雄君
   理事 田中 正巳君 理事 八田 貞義君
   理事 藤本 捨助君 理事 小林  進君
   理事 滝井 義高君
      小川 半次君    大橋 武夫君
      加藤鐐五郎君    河野 孝子君
      齋藤 邦吉君    志賀健次郎君
      田邉 國男君    谷川 和穗君
      中山 マサ君    二階堂 進君
      柳谷清三郎君    亘  四郎君
      石山 權作君    伊藤よし子君
      大原  亨君    岡本 隆一君
      多賀谷真稔君    堤 ツルヨ君
      中村 英男君    八木 一男君
      山中日露史君
 出席国務大臣
        労 働 大 臣 倉石 忠雄君
 出席政府委員
        警  視  監
        (警察庁警備局
        長)      江口 俊男君
        労働政務次官  生田 宏一君
        労働事務官
        (労政局長)  亀井  光君
        労働基準監督官
        (労働基準局
        長)      堀  秀夫君
        労働事務官
        (職業安定局
        長)      百田 正弘君
 委員外の出席者
        議     員 多賀谷真稔君
        通商産業事務官
        (繊維局紙業課
        長)      古河  潤君
        労働事務官
        (大臣官房労働 大島  靖君
        統計調査部長)
        専  門  員 川井 章知君
    ―――――――――――――
十月十七日
 委員吉川兼光君及び山口シヅエ君辞任につき、
 その補欠として石山權作君及び山中日露史君が
 議長の指名で委員に選任された。
同日
 委員石山權作君及び山中日露史君辞任につき、
 その補欠として吉川兼光君及び山口シヅエ君が
 議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
十月十六日
 旧軍人の内地発病者に療養費増額に関する請願
 (小川半次君紹介)(第四七八号)
 戦傷病者のための単独法制定に関する請願(山
 本猛夫君紹介)(第四七九号)
 同(大久保武雄君紹介)(第五六二号)
 同(倉成正君紹介)(第五六三号)
 同(亘四郎君紹介)(第五六四号)
 傷い軍人会館建設に関する請願(山本猛夫君紹
 介)(第四八一号)
 同(大久保武雄君紹介)(第五六一号)
 中小企業退職金制度創設に関する請願(荒木萬
 壽夫君紹介)(第四八八号)
 同(臼井莊一君外二名紹介)(第四八九号)
 同(中垣國男君紹介)(第四九〇号)
 同(保岡武久君紹介)(第四九一号)
 同(岡部得三君紹介)(第五一五号)
 同(木倉和一郎君紹介)(第五一六号)
 同(久野忠治君紹介)(第五一七号)
 同外二件(島村一郎君紹介)(第五一八号)
 同(中村幸八君紹介)(第五一九号)
 同(永山忠則君紹介)(第五二〇号)
 同(松本七郎君紹介)(第五八六号)
 同外一件(井原岸高君紹介)(第五八七号)
 同(大坪保雄君紹介)(第五八八号)
 同(倉成正君紹介)(第五八九号)
 同外二件(内藤隆君紹介)(第五九〇号)
 同(永山忠則君紹介)(第五九一号)
 同外一件(福田篤泰君紹介)(第五九二号)
 同(前尾繁三郎君紹介)(第五九三号)
 同外一件(三池信君紹介)(第五九四号)
 同(柳谷清三郎君紹介)(第五九五号)
 原子爆弾被爆者の医療等に関する法律の一部改
 正に関する請願外三件(今村等君紹介)(第五
 二一号)
 同外三件(木原津與志君紹介)(第五二二号)
 熊本県立アフター、ケア施設設置に関する請願
 (園田直君紹介)(第五二三号)
 医療費改訂に伴う増額分国庫負担に関する請願
 (中崎敏君紹介)(第五二六号)
 生活保護法の強化拡充に関する請願(中崎敏君
 紹介)(第五二七号)
 国民健康保険の国庫負担率引上げ等に関する請
 願(中村英男君紹介)(第五二八号)
 結核治療費全額国庫負担に関する請願(中村英
 男君紹介)(第五二九号)
 国民健康保険に従事する保健婦の国庫補助等に
 関する請願(長谷川四郎君紹介)(第五三一
 号)
 精神薄弱児(者)対策促進強化に関する請願(
 帆足計君紹介)(第五三二号)
 隔離病床数の補助わく増加に関する請願(木村
 守江君紹介)(第五三三号)
 国民健康保険事業の国営に関する請願(木村守
 江君紹介)(第五三四号)
 国民養老年金制度の早期実現に関する請願(木
 村守江君紹介)(第五三五号)
 結核回復者の就職保障に関する請願(中村時雄
 君紹介)(第五九六号)
 健康保険による入院費一部負担撤廃等に関する
 請願(中村時雄君紹介)(第五九七号)
 生活保護法に関する請願(中村時雄君紹介)(
 第五九八号)
 結核治療費の全額国庫負担等に関する請願(中
 村時雄君紹介)(第五九九号)
 医療単価改正による基準看護及び基準給食に関
 する請願(中村時雄君紹介)(第六〇〇号)
 国立病院、療養所の治療費に関する請願(中村
 時雄君紹介)(第六〇一号)
の審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 最低賃金法案(内閣提出第一九号)
 最低賃金法案(勝間田清一君外十六名提出、衆
 法第一号)
 家内労働法案(勝間田清一君外十六名提出、衆
 法第二号)
 労働関係の基本施策に関する件
     ――――◇―――――
○園田委員長 これより会議を開きます。
 勝間田清一君外十六名提出の最低賃金法案及び家内労働法案を一括議題として審査を進めます。
 まず趣旨の説明を聴取いたします。多賀谷真稔君。
    ―――――――――――――
  最低賃金法案
   最低賃金法
  (この法律の目的)
 第一条 この法律は、労働基っ準法(昭和二十二年法律第四十九号)第二十八条第二項の規定に基き、労働者の最低賃金額その他の最低賃金に関する事項を定めることを目的とする。
  (最低賃金額の決定の基準)
 第二条 最低賃金額は生計費、一般賃金水準その他の事情を考慮して、定めるべきものとする。
  (最低賃金額)
 第三条 最低賃金額は基本たる賃金(職務、能力、経験等を基準として定められる賃金であって、政令で定めるものをいう。以下同じ。)が月、週、日又は時間によつて定められている労働者につい
○多賀谷真稔君 ただいま議題になりました最低賃金法案につきまして、その提案理由及び内容の概要について御説明申し上げます。
 労働保護につきましては、すでに労働基準法の制定を見、労働時間の制限、女子年少者の保護、安全衛生の管理、災害補償等の法的措置がなされていることは御承知の通りであります。労働基準法はその冒頭において「労働条件は労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。」とうたっております。しかして労働時間と賃金は労働条件における二つの柱となっており、天井と床の関係にありまして、いかに労働時間の規制が行われても、賃金について何らかの最低保障がなければ、労働保護立法もその意義の大半は失われ、労働者の生活の安定は期し得られないのであります。ここに労働時間がそれ以上に上り得ないように天井を設けたと同様、賃金がそれ以下に低下しないように床板を設ける必要があると思うのであります。労働基準法が実施されてすでに久しく、この法律の眼目たる最低賃金制度が日の目を見ないことはまことに遺憾であり、本法案は労働基準法をして保護立法としての本来の使命を達成せしめるために、その補完的立法として提出いたした次第であります。
 最低賃金制は前世紀の末、ニュージーランドに実施されて以来、先進諸国等に行われ、第二次大戦後の今日においては、インド、ビルマ、フィリピンのアジアの後進国及び中南米諸国に至るまで、四十数カ国において実施され、ILOにおいてを一九二八年、第十一回総会において最低賃金制度の創設に関する条約並びに最低賃金決定制度の実施に関する勧告が採択されているのであります。
 わが国の労働者の賃金は、諸外国に比べて著しく低く、ことに中小企業の賃金はまことに劣悪なのであります。日本の資本主義は、農村の貧困と、中小企業労働者の低賃金を土台として発達し、現在においても独占資本は中小企業を隷属下に置き、その基盤の上にそびえ立っているのであり、独占資本は経営の危険をほとんど下請の中小資本に転嫁し、中小企業の労働者は低賃金と長時間労働に苦しんできたのであります。しかも最近における神武以来の好景気もこれらの低賃金労働者には潤わず、企業別労働者の賃金格差はますます拡大し、また本工員と同じ作業をさせながら、きわめて低い賃金で使用する臨時工、社外工という形の労働者を大量に発生せしめ、一たび不況となるやいなや、いちはやくこれらの労働者に解雇、賃金引き下げの犠牲がしいられ、社会問題を惹起しつつあるのであります。
 さらに、わが国の賃金構造の特質の男女別賃金格差の大きいことをあげることができるのであります。同一労働、同一賃金の原則は、賃金決定における大憲章であり、労働基準法の制定と同時に、その条章にもうたわれたところでありますが、婦人労働者は依然として低賃金に押えられ、工場に長年勤めている婦人労働者が、男子見習工よりも安い賃金をもらっている事実を、幾多も指摘することができるのであります。わが国のこの封建的慣習的賃金構成を打破して、近代的賃金構成になし、婦人の経済的地位の向上をはかることが肝要であります。賃金は労働力の再生産を可能にするものでなくてはなりません。しかるに現在の低賃金階層の人々は労働力の再生産どころか自己の労働力を消耗し続けているような状態であります。現在生活保護法による保護を行なっているのでありますが、その被保護世帯の約四割程度が世帯主が就職して働いているのであります。就職している者に生活保護法の保護をしなければならないという現実はわが国の賃金のいかに低いかを雄弁に物語るものであり、かかる最低生活水準も維持できないような賃金で人を使用することは社会正義上も許されないと思うのであります。かような人格をも認めない低賃金の労働者に資質の向上も能率の増進も望み得ず、中小企業もいつまでも劣悪な労働条件に依存し、企業間で互いに価格の引き下げ、コストの引き下げ、賃金の引き下げという形の過当競争を行なっていたのでは、ついにはかえって中小企業崩壊の結果を招来すると思うのであります。
 本法案はいずれの企業にも賃金の最低線を画することによって過度の不当競争をなくし、さきに国会で通過した中小企業団体の組織に関する法律、またわが党が提出しております中小企業の産業分野の確保に関する法律案、商業調整法案、中小企業官公需の確保に関する法律案、其の他税制、金融等の改正案とともに中小企業の製品の高度化と量産の推進をはかり、わが国の後進的産業構造の近代化を行わんとするものであります。
 他方、対外的見地よりしても、本法案は必要欠くべからざるものであります。戦前においては、わが国の輸出品、ことに繊維製品に対し、てはソーシャル・ダンピングの非難があり、戦後においても依然としてその復活の危惧が払拭されません。ガット加入に際して、イギリスを初め多くの国が第三十五条を援用し、またアメリカにおいての綿製品、洋食器その他の輸入禁止並びに制限が問題になったことは御承知の通りであります。本法案はわが国製品に対する諸外国のソーシャル・ダンピングのおそれを解消し、わが国の貿易の正常な発展に寄与せんとするものであります。
 さらに本法案は完全雇用への道に通ずるものであります。わが国の雇用問題は完全失業君の問題ではなく、むしろ一千万と数えられている見えざる失業、半失業、潜在失業という名で呼ばれている不完全就労者の問題であります。完全雇用とは単に量の問題だけでなく、質の問題であり、単に職につけばよいというのではなく、少くとも職についた以上は労働力を償う賃金が支払われなければならず、雇用の質的転換をはからなければならないのであります。また雇用の質の向上がなされるならば、家計補助のために労働市場に現われていた多くの者が姿を消し、労働力化率が健全化し、雇用事情が改善されると考えられるのであります。最低賃金の設定は労働時間の短縮、社会保障制度の確立とともに、わが国の非近代的雇用関係を解消し、完全雇用の達成に資するものであります。
 以下内容の概要について述べます。
 第一に本法案は附則において、労働基準法の最低賃金の条項を一部改正し、その改正した労働基準法の規定に基いて定めたものであります。そこで本法の適用労働者からは、雇用労働者でありましても、労働基準法の適用を受けない船員労働者、公企業体等関係労働法以外の国家公務員は除外し、これらの労働者に対しては別に定めることにいたしたのであります。
 第二に、最低賃金の決定は全産業を通じ全国一律方式を採用いたしたのであります。業種別、職種別、地域別に最低賃金を決定すべきであるという意見もあり、その方式を採用している国々もあります。しかしこの業種別、職種別、地域別を採用した国々の多くは、その国の労働組合が産業別組合であり、職種別組合であります。これら産業別組合または職種別組合は統一労働協約によって最低賃金を持っており、これらの組合の組織のできない産業、職種の労働者は低賃金で放置され、ここに最低賃金の必要性が唱えられ、かかる方式がとられたのであります。しかるに我国の労働組織の実態はみな企業別組合であり、企業規模の大小によって組織律が変っているのであります。ゆえに、わが国の賃金分布の状態はあらゆる職種にわたって低賃金労働者を発見することができるのであります。さらに、わが国の賃金構造の賃金格差の著しいことを理由に、全国一律方式の困難性を指摘していますが、現に産業別、規模別、地域別賃金格差が大きく、最低賃金を業種別、職種別、地域別に決定しているメキシコやインドにおいて、このような形態が賃金の固定化をもたらし、賃金の引き上げにならないとして再検討され、画一的最低賃金の必要に迫られている事実を見ることができるのであります。さらに各国における最低賃金制度の発展の歴史を見ますると、当初苦汗労働分野に限られていたこの制度が漸次全国的、全産業的規模に拡大し、一般的低賃金の防止へと発展し、質的転換を遂げつつあることを看過することはできません。以上の事実を総合してここに最低賃金は全国一律方式を採用いたしたのであります。
 第三に、最低賃金の額は十八才以上一カ月八千円といたしたのであります。十五才以上十七才未満の者につきましては別に政令により決定することといたしております。最低賃金額の決定の基準は、各国において種々でありますが、われわれは主として厚生省社会局委託による労働科学研究所の最低生活費の研究の結果によったのであります。これによれば昭和二十七年八月から十月間の調査で、住生活及び公租公課、社会保険料を除いて、家族と共同生活をしている軽作業従事の成年男子の労働力の再生産に必要な最低限度の消費単位が七千円でありますので、これに独身者たるの条件を加え、さらにその後のCPIの上昇率、地域差等により修正し、八千円といたしたのであります。しかしながらこの画期的法律を実施するに当り、賃金の階層別分布、その他諸般の社会的経済的情勢を勘案し、経過措置として施行後二カ年間は六千円を実施することといたしました。
 第四に、右の金額に達しなくとも使用できるものとして、技能者養成者、精神または身体の障害により著しく労働能力の低位な者、労働者の都合により所定労働時間に満たない労働をした者、所定労働時間の特に短かい者、十五才に満たない労働者の除外例を設けたのであります。
 第五に、中央賃金審議会は物価の変動その他により、その金額を百分の五以上増減する必要があると認めたときは、労働大臣に報告しなければならないという規定を設け、労働大臣はその勧告に基き、その必要な処置を講じなければならないといたしたのであります。
 以上が本法案の概要でありますが、なお本法案の円滑なる運用を期するため、一カ年間の調査期間を設け、実態の把握に努め、本法案施行に万遺憾なきを期する所存であります。
 最後に一言申し上げたいことは、業者聞協定をもって法的最低賃金の決定方式にされている政府案についてであります。業者間協定は美言間の競争を公正にするという意味はありますけれども、生活水準の向上を期するという労働立法としてはどうしても容認できないのであります。
 政府案はわが国の賃金格差の著しいことを理由に、全国一律方式を排除いたしましたが、賃金の不均等があればあるほど、業者間協定による最低賃金は、その実情に即するの余り、その職業や地域の低賃金をそのまま制度化したにとどまり、さらに競争関係にある他の職業や地域の賃金をもくぎづけにし、または引き下げる武器に使われるおそれなしとしないのであります。また最低賃金に関するILO条約は一九二八年いまだ多くの国において実施を見ていない初期の段階において採択された関係上、その最低賃金の決定の内容については各国の自主性にまかしてあるのであります。それを奇貨として賃金を使用者のみで決定さすという全く労働法の原則違反の方式を採用されていることは、ILO条約の精神にももとり、このことはかえって国際社会の信用を失墜する結果になり、依然としてわが国の政府並びに資本家が低賃金と労働強化にその輸出の源泉を求めて、業者間協定という似て非なる最低賃金制を作ったと非難を受けることは火を見るより明らかであります。かかる点を十分御考慮の上、本法案を御審議、御賛同賜わらんことを望みます。
 次に家内労働法案についてその提案理由及び内容の概要について御説明いたします。
 わが国の労働基準法は雇用関係にある労働者を対象とするものでありまして、商社、工場または問屋等の業者から委託を受け、その物の製造等を自宅等で行う家内労働者に対しましては法の適用がないのであります。わが国の家内労働には陶磁器、漆器の製造業、西陣織を初めとする織物業の伝統的技術による手工業的生産の専業的なものと、竹製品、わら工品等の農家の余剰労働力を利用しての副業として発達した副業的なもの、さらに主として未亡人、半失業者、低賃金労働者の家族等によって行われている被服、手袋、造花、玩具等の製造に見られる家計補助としての内職的なものがあり、これらは資本制工場生産の時代になっても社会の最下層労働として沈澱しているのであります。
 家内労働者は労働保護法はもちろん、社会保険立法の恩恵の外にあって、報酬は業者の恣意にまかされ、作業の繁閑、景気の変動の危険も全部負担せしめられているのであります。その労働報酬の劣悪なることは、中小企業の工場労働者のそれに比較してもなお格段の相違があり、しかも作業環境も衛生上きわめて不良にして、これら健康上必要な最低水準にもはるかに達しない劣悪な労働条件をこのまま放置することは全く社会的問題であり、これが解決は緊要なりと考え、ここに本法案を提出した次第であります。
 諸外国におきましても、このような事情にかんがみ、家内労働者を保護するために、最低賃金法の中で規定し、あるいは単独に家内労働法として制定し、あるいは若干の業種の家内労働の禁止をする等、その労働条件の改善に努めてきているのであります。
 また、本法案の制定は最低賃金法案との関連において必要性を有するのであります。最低賃金法のみを実施いたしますと、同法は前述したごとく雇用関係のある労働者を適用の対象とする関係上、一般中小企業の労働者と、家内労働者との労働条件の格差はますます拡大され、このことは、企業間の競争をきわめて不公正にし、かつ経営者は工場を解体し、機械器具を分散して労働者の自宅に持ち帰らせ、家内労働に逃避する危険なしとせず、最低賃金制度の実効をあげるためにも、企業間の公正競争を期する見地からも、本法案は必要なりと考えるのであります。
 本法案は大企業労働者、中小企業労働者、零細企業労働者、家内労働者と並ぶわが国の低賃金構造の最底部にあるこれらの労働者の最低報酬を保障するものであって、最低賃金法と相待って、わが国労働者の生活水準を引き上げ、労働者の生活の安定と資質の向上をはかり、わが国経済秩序の確立をはからんとするものであります。
 以下法案の概要について申し上げます。
 第一に、家内労働者とは委託を受けて物品等の製造等に従事し、これに対し報酬を支払われるものをいうと規定いたしまして、その最低労働報酬額は都道府県労働基準局長が物品ごとに決定することにいたしました。
 第二に、最低報酬額決定の基準は最低賃金法に定める時間労働賃金に当該物品等の製造等に要する標準所要時間を乗じて得た額とすることにいたしました。
 第三に、労働時間の制限その他作業環境の規制等の問題がありますが、労働の実態から規制することは事実上困難でありますので、これらは今後の研究に待つことにいたしました。
 第四に、機構といたしまして最低報酬額その他を審議するため、中央家内労働審議会、地方家内労働審議会を設け、監督組織といたしまして家内労働監督官を置くことにいたしたのであります。
 本法の施行は最低賃金法と同じく一カ年後でありますが、調査の必要上家内労働審議会のみを公布と同時に発足いたしますことにいたしたのであります。
 何とぞ慎重御審議の上、本法案に御賛同賜わらんことを望みます。
○園田委員長 この際、ただいま議題となっております勝間田清一君外十六名提出の最低賃金法案及び家内労働法案にあわせて、先般来審査中の内閣提出にかかる最低賃金法案を一括議題とし、審査を進めます。
 質疑を行います。八田貞義君。
○八田委員 最低賃金制は低賃金労働者の労働条件の改善のみならず、労働力の質的な向上、企業の公正競争の確保にも寄与するものでありまして、わが国経済の発展に資するところはきわめて大きいと思いまするが、その内容や運用のいかんによってはその実効を期し得ないことも考えられます。かかる観点から大臣に対して若干の質問をいたしたいのであります。
 まず現在の法律下でも、労働基準法で都道府県労働基準岡が企業脅協定締結を呼びかけ、最低賃金をある地域のある業種にきめさせることはできるわけであります。また労働組合法の労働協約拡張適用で同様なことを労使間で協約する頂もございます。一体こういった最低賃金制の法律の制定のみに執着する必要はないというふうに考えられるわけでありまするが、この点に対する大臣のお答えをお願いいたします。
○倉石国務大臣 お示しのように基準法でも一応やれるようにはなっておりますけれども、ただいまの基準法内では御承知のように家内労働関係の、たとえばこのたび政府が出しております案の中にありますように、家内労働の最低工賃をきめるというふうなことにも支障を来たしておりますし、それからまたやはり今日の日本の中小企業の一般の経済情勢を見まして、政府案が考えておりますようにそれぞれ自主的にまずきめることを勧奨して参って、そして最低賃金という制度がだんだんといきわたって参るようにしむけていくことが現在の状況では必要である、こういう考えで新しく最低賃金法案を立案いたした次第であります。
○八田委員 中小企業と大企業との差は、収益力にも支払い賃金にも大きな差がございます。かつ大企業に比べて総体的に地位が低いというだけでなくて、あらゆるしわ寄せを受けまして、中小企業の経済事情というのは非常に劣悪な状態にあるわけであります。低賃金労働者を保護しようとするならば、その根本を養っていかなければならぬ。中小企業自体が保護の対象となるべきものでありますから、それを無視して労働者だけ保護するような最低賃金制度ではとうてい実施できないのではないか、かく考えるのでありますが、一体この最低賃金制をお出しになった場合に、中小企業者に対するところの対策としてどういう点をお考えになっておるか、お答え願いたいと思います。
○倉石国務大臣 私どもが最低賃金制を考えました当初から、その受ける賃金を払うべき源泉である企業の実態がどうなっておるかということについては、最も頭を悩ましたところでございます。御承知のように外国の最低賃金制を見ましても、やはりそれぞれの支払い能力等について十分な考慮を加えておる国もありますが、日本は御承知のようにいわゆる中小企業の方が大きい部分を占めておるわけであります。従ってやはり賃金を生み出すべき源泉であるその企業が成り立っていくということが一方に前提に考えられるにあらざれば、いたずらに法をもって最低賃金を決定しても、経済界に混乱を招くだけであります。そこでお示しのように私どもは本案立案に当りましてはいわゆる中小企業中の零細企業、そういうような人たちの団体であるたとえば地方の商工会議所の中の零細企業の部分、そういうような方々の御意見についても十分承わったのであります。最低賃金を実施するしないにかかわらず、日本の零細企業についてはこれではいけないということを常々政府も考えておりまして、そこで最低賃金制というものを実施する段階においては、その賃金の源泉である企業をどうやって維持、育成していくかということがます前段として考えられなければならないと存ずるのであります。そこで御承知のように中小企業に対しましては、あるいはその団結を奨励して、そうしてお互いにその企業を守り合うという団体組織法というふうなものを一方において作り、そうしてまた中小企業に対しては中小企業金融公庫あるいは信用保証協会といったような中小企業が一番悩みの種にいたしております金融面については、財政投融資等を加えて、逐年予算の増額をいたして参っておることは御承知の通りであります。さらにまた事業税等の面においても、政府はもちろん国会においても非常なおもんばかりを持ってやっていっていただくわけでありますが、そういうふうに一方において中小企業を保護育成するという手だてをとりながら、しかもなお最低賃金制を実施することによって、そこに従事いたしておる中小企業の労務者諸君に安定した気持で働いていただく、そのことによってさらにそういう弱小企業というものがかえって健全に伸びていくのではないか、こういうふうな両面からの考え方を総合して政府は施策を進めて参りたい、このように思っておるわけであります。
○八田委員 大臣から中小企業対策につきましてお答えがあったのでありまするが、たとえば金融面で大いに援助していく、金融面ではもちろん本年度の予算では約八百億円になっておりますが、岸総理大臣が御答弁になりましたときには、来年度は一千億くらいの金融をやっていきたい、こういうお話でございました。しかしただ私は、中小企業を育成していく場合、金融面だけではなかなかうまくないと思います。今日の金融のやり方を見ておりますと、やはり大企業、中企業、小企業というような一つのワクがあって、金融はそれに応じて、そのワクによって融資されるという格好をとっております。そしてそれ以上伸びるというような格好はとられておりません。いつまでたっても中小企業というものはワク内でもって金融を受け、そのワク内でもって事業を伸ばしていくという格好になっておるわけであります。こういうことでは、金融のやり方についていろいろと問題が起ってくるわけであります。ただ金融面だけでは、私は実際中小企業は救えないと思う。たとえば事業税の問題についてお話がありましたが、やはり減税の問題と結びつけて中小企業の育成を考えていかなければならぬわけであります。ただ問題はそういうほかに、中小企業を育成していくのだ、こういうことはよくいわれるのですけれども、一体中小企業の何をつかまえて育成していくのか。たとえば産業基盤の強化あるいは拡大ということをよくいわれまするけれども、一体日本の今後ふえていく労働力人口をどのような産業に投じていくのか、こういうような面から考えて、ただ単にばく然と中小企業の基盤を強化していくのだと申しましても、どのような産業に、どのように労働力人口を詰めていくかという問題が、非常に大きく考えていかなければならぬことと思うのです。たとえば、今後のわが社会において完全雇用というものを進めていかなければならぬわけでありますが、失業というものを摩擦失業、自発的な失業に限って、完全雇用の社会を作っていかなければならぬ、こういうことがわれわれの今後進むべき道であろうと思うのであります。人口問題と結びつけて考えていかなければこういった問題は解決しないのです。わが日本は戦争によって国が狭くなった。こういった国土とそれから適正人口、それからこの完全雇用の問題、こういったものを結びつけていかなければ、ほんとうの最低賃金制の動き方として正しくない、こういうふうに考えるわけであります。ところで一体大臣は、日本の国土に見合う適正人口というものをどういうようにお考えになっているか、一つお答え願いたいと思います。
○倉石国務大臣 八田さんの一番専門の該博な抱負から述べられた貴重な御質問でございますが、私どもは一応こういうふうに考えております。人口の増加というものは、それ自体は決して悲しむべきことでもなく、むしろ喜ぶべきことであります。その人口の増殖に伴って適当なる産業が伸び、適当なる生活が保障されるという経済状態をそれに伴っていきさえすれば、人口の増加ということは、ある意味において決して好ましからざることではない、このように考えております。そこで八田さんよく御存じのように、日本は終戦直前に、日本の当時の国策として生めよふえよという奨励が行われ、同時にまた戦争が終った直後、何百万の青年が外地から帰ってきて、そうしてそのころ妊娠率が非常にふえました。それが今日いわゆる生産力人口という形で出て参っておりまして、いわゆる一般国民の人口増加率よりも、生産年令人口の増加数というものが非常に上回っておることは御承知の通りであります。しかしながら、最近の傾向を見ておりますというと、この調子でもしカーブが描かれていくとすれば、あと七年か八年目には一応前提として日本の経済力が今日の状態を維持していき得ると仮定すれば、私は雇用、失業の問題というものは、今日のような困難を伴わないのではないか、概括論としてはそういうことが言えると思います。ただ産業面においては御承知のように、だんだんとオートメーション・システムなどもとり上げられてきて、労働力をそれほどに要さないシステムが発達して参りますからして、これの影響というものはもちろん計算に入れなければなりませんが、従って今日ただいまの現状における労働政策、なかんずく政府が策定いたそうとしております長期経済計画等においては現在のところは、この雇用をいかにして拡大していくか、また当然考えられなければならない完全失業者をどうして救済するかということが、当面の問題だとわれわれは考えておるわけであります。私どもの政府が皆様の御協力を得て、かりに経済政策に非常に成功して、幸いに世界景気の中心であるといわれておるアメリカの不況が底をついて、やや上回ってきたといわれながらも、外国の景気がかりにそれに伴って上昇してきたとしても、やはり現在の段階では日本の経済政策を立案する場合の雇用計画というものが、非常な困難を伴っておることは否定することのできない事実であります。来年度の新卒業生の傾向を見ておりますというと、大体において昨年よりは求人の数は一般的にふえてきております。同時にまた昨年度よりもやはり上級学校に行く傾向もやや多いようでありますけれども、それにしてもやはり就職を希望する者が約十六万人くらい昨年度より多いという状況であります。従って政府は長期経済計画の中で、やはり来年度予算編成に当りましての雇用、失業の計画を十一月ころまでにはしっかりした見通しをつけて、そうして来年度予算編成に当りたいと思っております。まず政府の経済計画でどの程度に産業の伸びを見ていくか、国際収支の影響もあるでありましょう、しかしながら私どもは国際収支を黒字にすることにのみ努力して、失業者を出すということでは政治にはならぬのだと思います。従ってそういう産業規模をできるだけ雇用量の増大をし得るように計画を進めなければならぬということで、もっぱら今政府はその研究に努力をいたしておる最中でございます。そこで現在出ております失業者に対しましてはこれはあとの機会にまたお話があると存じますけれども、ともかくも今お話のような日本の雇用、失業の状況でございますので、やはり一面において比較的大規模の産業は別として、日本の産業構造の中でほぼ八割近いものを占めておる中小企業、その中の六割くらいを占めておる弱小企業ともいうべきものに従事しておられる従業員に対しては、一方においてはこれらの従業員に福祉対策をできるだけ強化していくのと同時に、また一方においては最低賃金制というようなものを実施して参ることが、現在の雇用、失業の状況に対処していく政府の施策としては、今これをやっていくことがきわめて妥当な時期ではないか、このように考えておるわけであります。
○八田委員 大臣も今雇用、失業問題から関連して、産業規模を強化していくのだと言われたのですが、先ほども申し上げましたように、産業と申しましてもいろいろな種類があるわけです。たとえば労働集約的な産業とか、あるいは資本集中的な産業とか、その中間の産業もございます。ですから日本としてただばく然と産業規模を大きくしていくんだといったことではなくて、日本のふえていく労働力人口をどのような産業にどんどん吸収させていかなければならぬか、こういうことが一番日本の今後の完全雇用と経済政策を結びつけた大きな問題であろうと思う。ところが今までのいろいろな経済企画庁などの報告を見ましても、労働力の集約的な産業にどのようにして追い込んでいくかというような具体的な施策というものは全然見られないわけです。ただ単に産業規模を拡大していくんだ、こういうことだけが出てきておるわけです。ですから大臣にお伺いしたいのは、今後人口がふえていく、生産年令人口というものがふえていく、さらにまた労働力人口がふえていく、こういう場合に、結局わが日本としてはイギリスと違ったような格好で、労働力の集約的な産業にやっていかなければならぬ。そのためには労働集約的な産業に対してどのような経済政策を及ぼしていくのか、こういうふうになってくると思うのです。ただ単に中小企業を保護するというような立法や対策だけでなくて、中小企業を社会産業経済政策の一環として盛り育てていくということでなければならぬと思うのであります。ところで一体こういうことを前提において考えて参りますと、次のようなことが考えられて参るわけであります。ふえていく労働力人口をどうしてもある産業にどんどん吸収さしていくというわけなんでありますが、しからば一体、わが国で年間百万円の付加価値を生むに必要な労働者の数、こういったことを産業別に比較してみる必要があるわけです。これは工業統計なんかを見るとわかるのでありますが、労働省においてこういった年間百万円の付加価値を生むために必要な労働人口というものを単位あたりについてとってみられた統計がございますか、あるいは成績がございますか、あれば一つお知らせ願いたいと思います。
○大島説明員 八田先生の先ほど来の御質問の要旨は、従業者一人当りの付加価値額の産業別の様子はどうか、こういうふうな御質問であろうかと思います。これは付加価値ではないのでありますが、通産省の工業統計調査の結果から、たとえば出荷額で押えてみました数字が手元にありますので、これで申し上げますと、出荷額百万円あたりの従業者数がどうか、こういうのを見ますと、規模別に申しますと、百人以下のところが〇・八二人、一人以下であります。千人以上のところでは、〇・四人になっております。それから産業別ではどうなっておるかということはこれは付加価値ではございませんが、たとえば大体同じような意味で、有形固定資産と従業者との関係で見ますと、固定資産を一億円をふやしますと、どのくらいの人員を吸収できるか、雇用吸収度と申しておりますが、これで申しますと、製造業全般では一億円固定資産をふやしますと、十九人の吸収になる。これを産業別で申しますと、綿紡あたりでは六・五人、化学繊維では八・一人、これが機械工業になりますと五八・七人こういうふうにふえてきます。従って労働集約度の高さということあるいは逆に言えば労働装備率の低さ、すなわち一定の資本を投下いたしましてこれに対する雇用の伸びということ、あるいは労働者一人を雇うために投資がどれくらい要るか、こういうふうな関係の数字から申しますと、機械工業あたりが労働集約度が非常に高い、それから中小企業の方が労働集約度が高い、大体こういうふうな統計からの結果の分析を一応いたしておるわけであります。なお政府の五カ年計画の中でも、たとえば労働集約度の高い中小企業の育成に意を用いるべきである、こういうふうな文章が入っております。
○八田委員 今の答弁から大体わかりますように、私が調べたところによりますと、古い統計になりますが、昭和三十年の工業統計によって、年間百万円の付加価値を生むために必要な労働者の数を産業別に示してみますと、単位あたりの人数になりますが、石油化学の場合には一・一九人、一般化学工業が一・四一人、鉄鋼業が一・八人、ゴム製品が一・八八人、電気機械が二・〇人、紙が二・一人、印刷出版が同じく二・一人、輸送機械が二・四人、皮製品が四・〇人木材、木製品が五・三人、衣服、身回り品が五・九人、家具製造が六・三人、こういうふうに単位あたりの人数というものが出ているわけでございます。わが日本が今後増大する労働力人口をどのような面にしぼっていかなければならぬかということがはっきりしてくるわけです。そうしますと、やはりわが国では木製品とかあるいは織物工業、こういった労働集約的産業に十分な対策を立てなければならない、こういうことになってくるわけです。ところがわが日本の第一次産業、第二次産業、あるいは第三次産業の就業者別というものを見て参りますと、イギリスなんかと比較するとはなはだしい差があるのです。非常に日本の第一次産業部門というものは頭でっかちになって、第二次産業部門は非常に小さい、そして第三次産業部門がふえてきているといった格好になっております。こういったことを見まして、なぜ一体欧米の先進国では第二次産業部門というものが大きくなっておって、そして日本だけが低くなってきておるのだろうか、こういうことを考えてみますと、やはり人口問題と結びつけて考えなければならぬわけです。イギリスなんかの例をとってみますと、イギリスは大体今後三十年の間に増加を見込める生産年令人口というものは二十万というふうにいわれております。ところが老齢人口はこれに対して三百万ということになっております。ですから、結局労働年令人口というものは非常に小さくなったために、やむなく第三次産業部門の重工業部門の方に入れていって、オートメーション化でやっていこう、こういう格好になっております。ところが日本が第二次産業部門に同じような方法でやっていくかというと、これはなかなかできないわけです。というのは、同一産業同一製品において互いに欧米先進国と競い合っていくということは、なかなか至難な問題であります。こういった観点から考えますと、単に労働集約的な産業に援助の手を伸べるのだ、あるいはそういった対策を強化していくのだということだけでは、実際の中小企業の育成強化とかあるいは経済基盤の強化ということには、ほど遠いような感じがするわけです。結局今後のわが日本の人口問題というものを考えて参りますると、ふえていく労働力人口を失業人口に追いやらぬで、これを国家繁栄のために活用するのだという政策がとられていかなければならぬと思います。よく日本が戦争に負けたから、国が小さくなったから、あるいはイギリスと比べて同じようになったから、もう適正人口は六千万人だというような簡単な計算でやってくるわけなんですが、しかし私が考えてみて、日本人は毎年百万人ぐらいふえていくのだ、その計算となるのが、大体結婚は四十五秒ごとに結婚して、そして七分九秒ごとに離婚をするのだ、そして十四秒ごとに赤ちゃんが生まれる、四十四秒ごとに一人人間が死ぬ、これを平均して大体三十秒ごとに一人の日本人というものがふえてくる、自然増加率だ、こういうふうに言って縦の線だけをながめて、日本人がこれ以上ふえたのではもう収容し切れなくなってしまう、だから減らさなければならぬのだというような簡単な考えが出てきたわけなんですけれども、私は人口がふえて国が滅んだためしが世界のどこにあるのだというふうに反駁します。どこにもない。人口が減ってきて民族が滅んだという歴史は随所にあります。わが日本でもアイヌ民族を見ればはっきりわかるわけです。ですから問題は結局ふえていく人口を縦の線だけをながめて減らせ減らせというような考えでなくて、これをどうして失業人口に追いやらぬようにするかという産業経済的な面から考えていかなければならぬ。わが日本で一番大切なものは人口の横の移動率であります。三分の一が六大都市に集まっている。これが非常に問題だと私は思います。ですから人口の移動率を、どういうふうにして産業のK模別によってこれを正しく配分していくのかということが一番大切になってくるのであります。そうでなくて、今日のようにただ単に産業基盤を強化するのだということで、人口の移動率をそのままにほうっておいたのでは、ますます頭でっかちの大都会だけが実現してどうにもならぬ。しかも三分の一の人口が六大都市に集まって社会悪というものが生まれてくる。そして失業がそこにたくさんふえる。従って仕方がないから失業者に特別失対事業をやらせる。道路なんかをやらせる。そうすると都会をはさんで全部放射線状に道路が作られていく。都会だけが栄える。地方がどんどん疲弊していくという格好ができてきている。ですから私が申し上げますのは、産業の基盤を強化するということはもちろん大切でありますが、結局ふえていく労働人日に対して、どのような産業というものを育成強化して吸収していくのかということが一番大きな問題ではないかと考えております。ところでそういう前提条件というものが一つもやられずに進まれていくところに、いろいろな賃金の格差が起る。事業別の伸び悩みが起ってきているわけでございますが、大臣とされまして、今私がいろいろ申し上げましたことにつきまして、こういった前提条件となるものに対して、単に対策を強化していくのだということではなくて、もっと具体的な何か御答弁がほしいのでありますが、お願いいたしたいと思います。
○倉石国務大臣 八田さんの御高見はまことに傾聴すべきものであると存じます。経済企画庁で長期計画を立てますときにおきましても、ただいまお示しのような基礎的なことはもちろん検討いたしております。しかしながら、何と申しましても計画経済を国が統制してやっているわけではないものでありますから、それぞれやはり自由企業のもとにおいて、しかもなお一方においては計画的に人の配置をやっていかなければならぬというところに非常な困難があると思います。しかし政府部内で経済政策の立案に当りまして、ただいまお示しのようなことをなお一そう資料にいたしまして、われわれとしても計画を立てて参りたいと思っております。私ども労働省側でただいま考えておりますのは、自由企業のもとにおいても、やはりただいま八田さんお示しのように、企業内部において、たとえば発電事業というふうなものはダムを作ったり、建設のときには非常に大きな人員を要しますが、一たびこれが完成してしまいますと、発電所のスイッチに対する少数の人々しか要らなくなるというようなものもありますし、また化繊なども割合に貿易金額は大きいようでありますけれども、機械的な作業が多いので、これも人員は少い。しかし機械それ自体を作る製造業などというものは、コンスタントにある程度人員を要します。先ほど統計部長が御説明申し上げましたような、ああいうことについて労働省では注意を喚起いたしまして、なお的確な状況を把握するような資料収集に努めておるわけであります。私どもは人を雇ってくれる方の側を産業別に選びまして、そういう人々がそれぞれの事業計画を立案する場合に、まず雇用というものを頭に描いていただいて、そしてわれわれの国としての施策に協力してもらうような何らかの対策を講じていきたい、ただいまはこういうことを考えておる最中でありまして、近くそういうようなものを実現して、実際に、八田さんお示しのように当該企業あるいは同業組合と申しますか、協会のようなものがそれぞれございますから、そういうところで政府の意を体して、一つ産業計画に雇用というものをまず前提に考えてもらうような施策を呼びかけよう、こういうことを現実に考えておる最中であります。八田さんのお示しのような御趣意を十分体して政府も経済計画を立案して参りたいと思っております。
○八田委員 御参考までに申し上げて参りますと、人口問題の中でわが国の人口構成比率というものを見て参りますと、昭和三十年には十五才から五十九才までの人口は全人口のうち五九%、六十才以上は八%、十五才未満が三三%となっております。ところが、先ほど申し上げましたようなことから、昭和四十五年になればどのような人口構成の比率になってくるかと申しますと、十五才から五十九才までの人口は六八%になって参ります。六十才以上は二%に増加し、そのかわり十五才未満は二一%に減少してくるわけです。これはもちろん厚生省あたりの家族計画とかあるいは産児制限、こういったものの影響を受けて十五才未満の人口は減ってくるわけです。しかし十五才から五十九才までの人口は六八%を占めてくるのだということであります。こういった生産年令人口のうち実際に働くのは六八%と計算いたしますると、今後十五年の間に一千万人の人々に対して新しく職を与えていかなければならぬ、こういう事態に見舞われているわけなんです。ですから、私が申し上げるのは、十五年間にどうしても一千万人の雇用人口というものを抱えていかなければならぬ。そのためには中小企業の方にその人口を吸収していかなければならぬのであるけれども、どのような産業にこの人口を吸収していくかということを大臣に強く申し上げまして、労働集約的な産業に特段の強化策を立てられることを希望するわけであります。
 次に、こういったことを前提条件といたしまして、最低賃金制の問題にまた入って参りますが、最低賃金制と賃金問題というのは、非常に関連はしておりますけれども、事柄としては多少違うのであります。ところがこれが非常にごっちゃにされて討論されているところに、いろんな問題が起ってくると思います。ところで、一体最近の賃金問題の動向がどうなっているかということをお尋ねいたしたいと思います。というのは、今日大企業の労働組合がいっでも賃上げというようなことで闘争を繰り返しておる。日本の経済が一体それをまかない切れるのであろうかというような不安が国民の中にあるわけであります。こういった不安をなくすためには、一体どのような数字を持っていなければならぬかと申しますと、賃金がどんどん上っていけばインフレになるという心配があるわけなんでありますが、ただその賃金の上り工合が日本の労働の生産性の伸びの範囲内にとどまっている限りにおいてはインフレというものは起ってこない、心配ないわけであります。ところで、一体こういった不安、賃上げ闘争というものがわれわれの経済を圧迫しやせぬか、あるいはインフレになりやせぬかという不安を解消するためには戦前、戦後にかけて、最近までのこの間の事情を数字をもって示す必要があるわけであります。たとえば労働生産性が、ある基準年度をとっていった場合に戦後どれだけ伸びたか、賃上げの度合いがどれくらいかということを数字をもってお示し願いたいと思います。
○大島説明員 労働生産と賃金との関係の数字でございますが、たとえば戦前と最近を比較した数字で申し上げますと、戦前を昭和九年から十一年までの平均をとり、最近を三十一年の数字をとってみますと、労働生産性の上昇は一四七%、四割七分の増加でございます。これに対しまして名目賃金は三百九十一倍になっております。それで消費者物価指数が三百十倍に上っておりますので、これで割りますと、実質賃金が一二六%、二割六分の増加になっております。なお、国民所得の関連で申しますと、一人当りの名目国民所得は四百三十二倍になっております。実質国民所得は一二四%、二割四分の増加、大体こういうふうな数字になっております。
○八田委員 ただいまの数字から見ますと、労働生産性と賃金の上昇を比べて参りますと、労働生産性の範囲にとどまっているわけです。ですから、この点からいえば、賃上げというのはそうは問題にする必要はない、心配はないという格好になってくるわけです。ただそれともう一つは日本の国の富、経済企画庁によって昭和三十年末に日本の国富というものが二十兆三千余億円ですか、そういうふうに示されたのでございますが、そうすると、国民一人当りが大体二十三万円の財産を持っておる。一世帯平均では三十三万円になる、こういうことになっていくわけなんでありますが、これを昭和十年あたりの日本の国の富と比較してみますと、もちろん今度の調査に合せて価格換算というものをやってみますと、昭和十二年の国富というのは約二十一兆億円というふうになってくるわけであります。そうすると国富が国民の所得を生み出す力という計算、資本係数というものをとって参りますと、三十年の国民総所得は六兆六千億円といわれております。従って資産効率、すなわち資本係数というものは二・八%になるわけであります。そうすると、昭和十年ではどうかと申しますと四・八であります。ですからこういった数字から見ますと、戦後の資本係数の低下というものは、賃金の上身が生産性の上昇より率において小さい、こういう結果が出てきております。ですからこういった部分的な計算から見た場合には賃上げ闘争というものは労働生産性の範囲内にとどまっておるんだから決して心配ないのだというような概念が浮かんでくるわけであります。これが大企業の諸君の間に、賃上げ闘争というものはいいのだ、天井はもっともっと上の方にあるんだということになってくるわけなのですけれども、ところが実際問題は中小企業というものは底がないということで、格差というものがずっと起ってきた。ですから中小企業の方の賃金がずっと低い。ところが賃金全部の状態から見れば、労働生産性の範囲内にとどまっているんだから何でもないんだというのですけれども、中小企業の賃金というものは非常に低いのであります。格差というものが大企業との間に非常に広くなってきた。従って大企業の賃上げというものは頭打ちの状態になっておるわけです。頭打ちになっておる状態を何とか突破していくためには中小企業の賃金を上げていかなければならぬということで、社会党あたりでは一律に金額に焦点を置いた最低賃金というものを出してきたのですが、金額に焦点を置くというような法律は、私に言わせれば決して近代的な立法じゃないのです。賃金に焦点を置いてやるというのは古いのであって、たといそういったことによって賃金体系の近代化ができたんだ、こういうふうに押し切ってみても、産業構造というものが依然として非近代化のままに残されておったのでは何にもならない。ですからこの点の深い追及ということが問題なのでございますが、私が申し上げましたように、最低賃金制と賃金問題というのは、関連はしているけれども事柄としては違うのだという問題でございます。ところでこれだけではなかなかはっきり問題がわからぬわけでありますが、一体賃金というものは国民所得の全体の中からどれだけ労働の分配分としてとるのが正しいかということであります。こういったことを知らなければならぬわけです。もちろんこの国民総所得の全体の中からどれだけの労働の分配分というものが正しいかどうかということを考えるとともに、それに一定の限界があるわけなんです。ですからこういったことから考えてみまして、日本の産業経済の現在の状態から生み出されてくる国民総所得に対して、一体どのように分配されておるか、いわゆる国民総所得の分配率というものをお知らせ願いたいわけなんてす。
○大島説明員 国民所得の統計は三十一年までしか現在のところ出ておりませんので、三十一年の数字で申し上げますと、国民所得総計を一〇〇といたしまして、勤労所得が五〇・一%、個人業主所得が三四・九%、個人賃貸料、個人利子所得が四・二%、法人所得が一一・四%、その他の所得がマイナス〇・六%、こういうふうな配分になっております。
○八田委員 今国民総所得の分配率を伺ったわけでありますが、勤労所得が五〇・一%になっておる。ところが戦前の勤労所得の分配率のワクは、私は三五%くらいに承知しておるわけなんですが、戦前から少くとも一五%くらい上ったわけなんです。その一五%上ったワクはどこから持ってきたかということになるわけですね。これは十分にわれわれが知っておらなければならぬことなんですが、分配率のワクが拡大していくためには、やはり他の分配率のワクから持ってくるしかない。戦前は三五%だった。ところが戦後は勤労所得が一五%増して五〇・一%になった。一体どこから持ってきたのかということになる。これは結局法人所得から動いて参ったものであるというふうに考えられます。ただ私は勤労所得が五〇%になったからいい悪いを言っているのではないので、これは簡単には言い表わせないのですが、戦前に比較して勤労所得が一五%もふえたのだ、そのふえたワクというのは結局法人所得の方から持ってきたのだ、こういうことになってくるわけでありますが、ただ問題は依然として業主所得が非常に低いことです。戦後の昭和二十六、七年ごろの個人業主所得は四〇%から四二%くらいだった。ところが今度のこの統計によりますと三四・九%に減ってきておる。業主所得というのはずっと減ってしまった。ですから前に三五%であったものが、私の初めの計算では四五%ですが、一〇%だけは法人所得から持ってきたのだというように私は解釈をしている。ところが五%ふえてきた。その五%ふえたのはどこから来たかということになると業主所得から持ってきた。こういう賃金の分配率から考えますと、これは非常に重大な問題になってくるわけであります。業主所得と申しますれば、先ほどから申し上げておるところの中小企業です。こういった中小企業、しかも農業と商工業を含めたこういった小さなところの所得がだんだん減ってきておるという格好ですが、これを一体どうしてやっていくのだということは、今後雇用人口と中小企業産業の育成の面において、結びつきによっては、ますます業主所得というものが減ってしまって、農民は食えないというような格好になってくる、こういう重大な問題があるわけであります。ところが、同じく勤労所得がふえて参ったにいたしましても、大企業と中企業と小企業では非常な賃金格差ができてしまっている。しかも統計の面においては小企業というのは三十人までしか出ていない。三十人以下の賃金所得というのは全然わからない。大体三分の一以下であろうというように概念的にとられているにすぎない。ですからわが日本は、現在支払われている賃金というものはどれくらいの分布になっているかさえわからない。ちょうど富士のすそ野のように非常に深い広がりを持っていて、なわ張りをして、これから富士のすそ野であるというように規定できないわけです。人によってみな違う。おれはもっと上の方から富士のすそ野を考える、いや、おれはもっと下の方から考えるというようになるわけです。従って現在わが日本で支払われておる賃金の分布はどうなっているかということが全然わからない。こういった非常にわからない状態において、最低賃金を金額に固定して、そうして八千円だと一律に考えることは、平均概念というものが少しもない。一体最低最低というけれども何を基準にして最低いうのかということです。(「食うことだよ」「憲法二十五条に言っているじゃないか」と呼ぶ者あり)社会党の諸君が憲法二十五条に言っているじゃないかというけれども、最低ということは生活保護が基準になると思います。日本の今の生活保護法というものは、非常に低い。標準五人家族で働いて月七千二百円というのは貧乏生活、それから一割弱上った七千九百円というのがボーダー・ラインということになっておる。ですから現在わが日本の賃金分布の形態というものははっきりつかめていないわけです。
 ところで労働省におきましては、昭和三十二年度にそういう零細な三十人以下の低賃金労働者の実態を調査するということで五千万円くらいの予算をとられたわけです。その状態について成績が出たと思うのでありますが、これをお知らせ願いたいと思います。
○大島説明員 わが国における賃金分布の状況、あるいは中小企業における賃金の状況についての御質問でありますが、賃金分布につきましては総理府でやっております就業構造基本調査、この調査で調べたところによりますと、労働者総数が一千七百万人のうち、たとえば六千円未満の労働者数は一九・九%、約二割、八千円未満のところで合計いたしまして三三・四%、約二分の一、こういうふうな賃金分布の状況が一応出ております。これは三十一年の調査です。
 それから、中小企業の賃金につきましては、昨年国会のおかげをもちまして三十人以下の賃金についての調査ができることになったのであります。三十人以下のうち五人以下につきましては、年一回やっております。毎年七月にやることになっておるのであります。従って昨年七月の調査で調べてみますと、規模別の賃金格差というものは、五百人以上一を一〇〇と置きますと、百人から五百人までのところで七二・七%、それから三十人から百人までのところで六一・六%、それから五人から三十人までが五一二%、それから五人以下が三六・六%、こういうふうな数字になっております。ただしこの規模別の賃金格差は総労働者の平均になるわけでありまして、従って性別構成、年令構成、勤続構成、職種構成その他が全部平均になっておるわけであります。従ってこの数字でもって、直ちにほんとうの意味の規模別賃金格差と言うわけには参らないのであります。
 なお中小企業ことに小企業、零細企業につきましては、このほかに現物給与の問題が非常に大きな問題としてあるわけなんですが、出て参りました定期給与についての調査では、一応そういうふうな数字になっております。
○八田委員 そういったばく然とした数字しか示されないのでありますが、ほんとうを言うと、そういった数字をこの委員会に出してこられて、詳しくお示しを願いたいのであります。私のお願いしたいのは、男女別の平均賃金であるとか、年令別賃金の状態とか、あるいは実労働時間の状態とか、そういうふうに分けてお示し願いたいと思う。ただ平均概念でとらえられて参りますと、なかなか施策としても十分な検討ができないというふうな格好になっていくわけです。
 ところで、これはあとで家内労働と結びつけて質問して参りますが、わが日本では、そういった非常に零細な小規模なものが、数においては半数以上を占めておるわけなんでありますが、その賃金が大企業従業員の半分以下というような国は、世界じゅうでは日本だけというふうに考えられる。イギリスでも、フランスでも、西ドイツでも、企業の規模によるところの賃金格差というものはそうないわけなんです。これは一体どうしてこんなふうになってきているのかということなんであります。これはやはり労働組合のあり方が問題になってくるのでありますが、外国では企業別組合制というものがちゃんとできておって、大企業で利益があれば中小企業でも利益が上げられるように、系列というものがちゃんとできておるわけです。こういった企業別組合制というものがわが日本でははっきりした体系がまだできていないというこの問題と、もう一つは、日本の労働組合運動というものが、会社別、企業別の組合が母体になっておるのです。これが外国の労働組合と違うところなんです。こういったようなクラフト・ユニオンというものが、わが日本の労働組合の中にないということ、これが非常に問題になってくると思うのであります。ですから日本の労働組合というものは、まだまだこういった観点から見れば未組織、まだ進歩の過程にあるというふうに言わざるを得ないわけなんです。ですからこういった点から考えて、労働組合の今後のあり方というものは、やはり外国にならってクラフト・ユニオンを作り上げていって、ほんとうの正しい要求が出されてこない限り、中小企業と大企業との間の賃金格差がますます広がっていくのじゃないかと私は考えるのでありますが、こういった点について大臣は。労組を今後指導していかれる方法、労働行政としてどういうふうな労組に対する考えを持って進んでいかれるか、それについてお答え願いたいと思います。
○倉石国務大臣 産業別労働組合がヨーロッパにおいて当初発達いたしました。しかし日本は、やはり日本の独自のいろいろな昔からの伝統がありまして、企業別労働組合が自然に発達してきておる。そこでヨーロッパのような産業別労働組合がよいか、企業別労働組合がよいかということについては、やはりその国のいろいろな産業情勢に応じ組合が自益的にきめられることがよいと思うのであります。今もお話がありましたように、日本でも、たとえば石炭のようなものは、企業別にはありますが、やはり産業別に一つのユニオンらしきものを作って、今は対角線交渉とかなんとかいっておりますが、かつては経営者側も協会を作ってそこで産業別の折衝をいたしておったことは御承知の通りであります。私の立場で今どういうふうにこの組合運動を指導していくべきかというふうなことについて、いろいろ影響もあることでありますので遠慮いたす方がいいんではないか、こういうふうに考えております。
○八田委員 もう少し時間をいただいていろいろとお伺いしたいのでありますが、時間が参りましたので、一応質問を保留させていただいて、次の機会にまた一つお願いしたいと思います。
○園田委員長 午前はこの程度にとどめ、午後二時まで休憩いたします。
    午後零時三十一分休憩
     ――――◇―――――
    午後三時七分開議
○園田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますので順次これを許します。多賀谷真稔君。
○多賀谷委員 先般本委員会において齋藤委員よりチェック・オフに関する質問がありましたので、それについてまず質問いたしたいと思います。この際大臣の見解もぜひ聞かしていただきたいと思います。
 日本の労働組合が戦後発足いたしましてから、いわば常時的な組合費については、会社がいろいろな費用とともに実際の事務としては差し引いておりますりで、それにいわば更乗してといいますか、そういった差引が行われておるわけです。それはもういわば慣行となっております。ところが、国策パルプにおいても、また日経連も、たしか昨年でしたか、一昨年でしたか、将来そういった賃金からの組合費の控除はやらない方針だ、こういうことを発表したわけであります。このことがむしろ組合を、いわば弾正圧といいますか、組合の力をそぐ一つの手段として使われておる。こういうところに非常に問題があると思うのです。齋藤委員は、むしろ現在行なっておる組合費の会社による控除というのは不当労働行為に適応するべき性質のものである、そのこと自体が不当労働行為に適応しはしないか、こういう質問をされたわけですが、そういったことに対する政府の見解を大臣からお聞きしたいと思います。
○倉石国務大臣 組合費のチェック・オフということは、元来私どもは組合というものは自主性をとうとんで、そうして組合員自身の自主性に基いて結成されていくべきものであると思っております。しかし御承知のように、組合というものが外国で発達をいたしましたその当初、だんだんと組合というものを育成していった方がいいという――御用組合みたいなものを作る場合には、やはり組合を育てていくということで経営者が組合費をとっておって、それからまた建物の中に組合の事務所を置いたりなどして、そういう御用組合的なものの考え方でそういうことをやったこともありますし、また現にそういうつもりでやっているところもあるようであります。日本の場合では終戦後、当初組合というものは育成していくという考え方、これはその限りにおいては必要のあった時代があると思います。しかしだんだんと組合もおとなになってきまして、自主的に組合を結成することもそれに参加しないことも労働者の自由意思でありますから、それを尊重する。同様な建前で、組合員になったならば、自分の参加している組合を盛り立てるために組合費を出す、これも当然自主的におやりになることはりっぱなことでありますが、それを特に制度的に会社が差し引いてやるというふうなことは、これは双方で話し合いでおやりになる場合は、団体協約なんかでもそういうものを結んでおるところもありますから、これはけっこうなことでありましょう。しかしながら組合の自主性、組合の発達ということから考えますと、私はやはりチェック・オフなんというものはやらないで、また組合に参加するという個人の労働者の自由な立場を尊重する、こういうふうになっていって初めて組合運動が堅実に発展していくものだ、こういうふうに考えております。
○多賀谷委員 チェック・オフをしないということが、自主性を尊重するというよりもむしろ組合の力を弱めるという手段として用いられておるというところに私はきわめて問題があると思うのです。齋藤委員は労働省におられて、二十四年の法案の改正に参画されたかどうかは知りませんけれども、このときは政府は、現在組合費の控除が会社によって行われておるけれども、これは第七条の三号にいう不当労働行為にはならない、経費の援助にはならないんだ、こういうことを明らかにして、衆議院の委員会においても答弁をし、また一般の労働組合についても啓蒙したわけです。ですから、そのことを私は変えられては困ると思う。立法のときにはっきりそういうことを説明されて、その後において法律の解釈を変える。そうして今までの慣行を変えるということは慎しむべきことではないかと思う。たとえば人事院の規則を盛んに引用されるのですが、これも私はきわめて法律ができた当時の趣旨とは違うと思うのです。あれはむしろ日本の封建的な慣習的な労使関係を打破するために、基準法の二十四条の適用があった。その二十四条の直接払いの適用と同じものを結局人事院規則できめておるわけです。それをたてにしてチェック・オフはしない、公務員についてはチェック・オフはけしからぬ、法律できまっているじゃないか、こういわれることは、これはやはり立法の当時の精神とは違うわけです。立法当時は、当然組合法の第七条についてもそういう解釈をしておるのですから、そのことは問題外である。ところがその後において人事院規則の九条の三をたてにとって、差引はできない、法律並びに規則できまっておる、こういうものの言い方をされますと、どういう法律でもわれわれは普通の見方をすることができないと思う。何かそのところに意図がありはしないだろうか、こういうように考えざるを得ないのです。これは将来曲げて運用されやしないか、これはすでに日本においてはそういう過去の痛ましい歴史を持っておりますからそういう法律がひとりでに歩いて、そしてとんでもないような解釈をされて運営されやしないかということを危惧するわけであります。そこで私は人事院の規則にしても、いわば封建的な慣習的なそういった労使関係を打破するという意味に書かれておる規定をもって、これはチェック・オフを禁止した規定だ、こういうふうな解釈はなされない方が賢明だと考えますが、その点どういうふうにお考えですか。
○倉石国務大臣 原則として、やはり労働組合の健全な発達ということを期待し、労働組合がやはり社会人としてりっぱに尊重されるという建前を早く打ち立っていきたいと思います。そういう意味から私どもは、やはり恩恵的な処置であるチェック・オフなどというものは組合側から辞退をされて、そして組合に参加することもしないことも労働者の自由であるというふうな堂堂たる立場をとられていくように発達されることが望ましいと思います。日本から炭鉱労務者が西独へ行っておりますが、その人たちが組合に入るという希望を申し入れたところが、そんなにあわてて組合に入るべきものではなかろう、組合に入ることがあなた方個人の利益になるかどうかということを十分検討した上で、やはり入った方がいいということになったら入られたらどうだ、こういうことを言われたということを最近承わったのでありますが、私はやはり組合というものはそういうものだと思うのです。さっき申しましたように、御用組合として育成していって、いざというときに自分の都合のいいようにこれを使っていこうというふうな、経営者が恩恵的に御用組合を作っていくという考え方なら、やはりチェック・オフも何も便宜供与をしてやることは、その方が都合がいいかもしれませんけれども、日本民主化の先端に立って堂々たる立場をとられる、今の日本の労働組合の発達という点から考えれば、やはり独立独歩で組合をみずからの手によって社会人として正々堂々とやっていかれるというドイツやイギリスの労働組合のようなふうに伸びていくことが望ましい。チェック・オフをやらないということが組合の力を弱めるためにそういうことをするのではないか、そういうような事柄は、私どもの立場としては組合の立場を弱めるなどということは個々の経営事情によってどういうことかよく存じませんけれども、やはり願わくはチェック・オフなどというものをやらずに、今申しましたような立場をとって、組合が正々営々とやっていかれることが望ましい。人事院のことでございますが、人事院規則で今の基準法の関係のお話がございましたけれども、御承知のように国家公務員では別段団体協約というものを結んでやっておるわけではございません。従って私はそういう意味でも、やはり一般の国家公務員が自分たちの利益のために職員団体というものを作っておられるのでありますから、これもやはりりっぱに一本立ちになって、外国の多くの例がありますように、これはりっぱな職員団体としてやっていかれるということが、それらの人々の自主性を尊重することになろうと思っております。従ってチェック・オフに対する私どものものの考え方は、いずれに対しても一貫した考え方で立っておるわけであります。
○多賀谷委員 日本はILOのアジア会議には入っておりますか。
○亀井政府委員 アジア会議にはもちろん入っております。
○多賀谷委員 そういたしますと、ILOのアジア地域会議でチェック・オフの問題について決議がなされたことを御存じないですか。
○亀井政府委員 今手元に資料がございませんので、記憶がございません。調べまして、必要がございますればあとで申し上げます。
○多賀谷委員 ILOのアジア会議で、アジアの地域においてはチェック・オフというものは必要なんだ、こういうことが決議されておる。ですから、やはりその国の実態に即応したものの考え方をしなければならぬと思うのです。今政府がお話になりましたような考え方であるならば、それについて、当時異論を唱えられたはずであるけれども、われわれは寡聞にしてそういう議論のあったことを聞いておりません。でありますから、国際的な舞台ではそういうことの決議に参加しながら、国内においてはそれの反対のようなことを発言をされるということは、やはり慎しむべきではないかと思う。しかも私はこのチェック・オフをやめるということについては、自主性を高めるという方向に残念ながらいっていない。その逆の方向にいっておる。このことを非常に残念に思うのです。その手段に使われておる。さっきの問題と、さらに今申しました問題について、局長でもけっこうですから、御答弁願いたい。
○倉石国務大臣 私は、まあ多賀谷さんも組合のことについては、もちろん十分御経験をお持ちの方であると存じますが、自主性を重んずるという建前から私は今論じておるのであります。ことに日本の憲法でも労働関係法でも、どこを見ましても、労使対等という精神をもって貫いておるのであります。従って、われわれからほんとうに考えれば、私どもが労働組合の立場であるとかりに立場を変えて考えますならば、恩恵的に企業者の持っておる建物の一室を借りて事務所にしたり、あるいは会計でチェック・オフをしてもらったりするということ、いかにも恩恵に浴するようなことの考えでありますから、多賀谷さん御存じのように、正々常々とりっぱな大きな日本の労働組合では、やはり建物も別にお持ちになっておるようになってきております。やはり日本の労働組合運動を社会の尊敬を受け、そうして産業の一翼をになっておられるという、その立場を一般社会からも尊敬されるように、法律上も対等の立場ということをうたわれておるのでありますから、やはりその恩恵的なことはみずからも辞退をされて、そうして自分の力で、やはり組合に入りたい者は組合に入れ、組合に入った者は組合を維持していくために組合費を出せ、こういうふうにやっていく。ドイツやアメリカや英国のような労働組合運動のあり方がほんとうにいいんだ、私どもはそのように考えております。
 アジア地域のお話がございました。私もまだそのことをよく存じませんが、この間マラヤの労働大臣、フィリピンの労働大臣というふうな東南アジア地域の労働大臣が、ILOの帰りに私を訪問いたしまして、そうして比較的長時間にわたって、彼らの国の労働事情等を聞いてみましたが、まだまだ終戦後の日本の当時よりも混乱をしておるし、これから労働組合をやはり堅実に育成していかなければならないところに立っておるような様子であります。日本はマラヤやフィリピンのおくれた労働事情とは違いまして、もう法律もりっぱなものを持ち、組合もりっぱな組合がたくさんできておるのでありますから、もはや日本ほそういう東南アジアの人たちと比較するよりも、やはり英米や西独に比較して劣らないような自主性を尊重していかれるように、むしろ組合側からそういうお気持で態度をきめていかれる方がいいではないか。私はチェック・オプなどについては、そういうふうに組合の自主性を尊重するという意味で、そういう立場をとられる方がいいではないか、こういうふうな考えを持っておるわけであります。
○多賀谷委員 私の聞いておるのは組合の力を弱める手段としてこれが行われる。こういう場合についてはどういうようにお考えですかと聞いておるのです。実は国策パルブの問題も現実には北海道で問題になって、北海道の地方労働委員会は不当労働行為である――ここは逆ですよ。チェック・オフを廃止することが不当労働行為であるという裁定を下している。これについてはどういうお考えですか。
○亀井政府委員 北海道の地労委の国策パルプに対する命令につきましては、現在行なっておるチェック・オラを会社が昨年より廃止をいたしておりまする事実行為につきましては、これを不当労働行為と言ってはいないのであります。ただそういう環境の中でそういう提案をし、そういうことを押し進めたことについて若干疑いがあるという言い方をいたしているわけであります。チェック・オフ廃止そのものが不当労働行為であるというふうな言い方をしているわけではございません。
○多賀谷委員 ですから、私は慎重に前提を置いて話をしている。力を弱める手段としてそういうものが行われる。これは組合のためによかれと思って行われるのではなくて、組合の力を阻害する意味において行うチェック・オフはどうですかと聞いておる。この国策パルプの命令も、事実行為としてはもうチェック・オフしておりますから、事実行為はどうにもならないのです。命令を出してもその効果はありませんけれども、そういう対抗手段として行われるチェック・オフというものは、これは不当労働行為だという命令が出たわけですね。ですから、組合の力を阻害するという意図があって行われるチェック・オフというものは、これはやはり好ましくない、こう考えざるを得ないのでありますが、政府はどういうようにお考えですか。
○亀井政府委員 この問題は現在中労委におきまして再審の段階にあるわけであります。従いましてわれわれとしましては、この具体的な問題につきましてとやこうの判断を下すことは差し控えたいと思います。
○多賀谷委員 問題は、抽象的に奪えてもいいのです。何も具体的な問題で議論をしなくてもいいのですが、そういったことに対して政府はどうお考えですか。都道府県知事からあなたの方に照会がいっておれば、あなたはどういうふうに返事をされますか、これを聞いているわけです。
○亀井政府委員 先ほど労働大臣から御答弁をいたしましたように、チェック・オフそのものにつきましては、組合の自主性の上からいいましても、また個々の組合員が、自分の出す組合費というものが一体どういうふうに運営されているか、組合言動にどう反映していくかということについて個々の労働者一人々々が自覚と責任を持って見守っていかなければならぬ。そういうことのためには、みずから自分の手で組合費を払っていくということが、やはり組合運営の上におきましても大事なことではないだろうかというふうにわれわれは考えているわけであります。それかといって、これが不当労働行為であるかということにつきましては、われわれといたしましては不当労働行為ではない、そういう一応の解釈を二十六年以来持って起るわけでございます。しかしながら不当労働行為でないから何をしてもよろしいということではないと思うのでありまして、そこにはおのずから組合みずからの自主的な判断もごさいましょうし、あるいは経営者みずからの倉主的な判断もございましょう。ただそれが機械的、両一的に、協定の期間が切れれば、組合は当然これはチェック・オフしてもらう権利があるんだ、あるいは会社側はやるべき義務があるのだというふうに画一的、機械的に考えられることはこれはどうかと思う。だからそのチェック・オフの本質について労使双方が十分協議をいただいて、そしてその判断の中から労使の協定でそれが結ばれるなら結ばれていく。ただそういう判断なしに、反省なしに結ばれることについてはわれわれは疑問があるという考え方でございます。
○多賀谷委員 えらく手間のかかるような話をされますけれども、実際はある会社の、いわば仲よしクラブといいますか、そういうものが会合する費用だって、みんな会社は引いてくれているのです。全く私的な、何々会と書いて伝票を渡せば全部引いてくれている。会社はそういう、システムなんです。ですからそういう実態の中からものを考えていただきたいと思います。会社としては何も大した恩恵をしておるのじゃないのですから、それをチェック・オフをやめるという意図は、やはり労働組合の力を阻害するという意図に出ておるのです。いかに客観的にそれを把握せんとしましても、主観的なものはそれなんです。それが日経連が命令をして、まず国策パルプにやらして、また次にいろいろなところにそういう問題を実施しようとしておる意図は明らかなんです。ですから政府としてはそれが望ましいのだというふうな解釈を今出すことは、やはり慎しむべきじゃないか。現在の実態の中でそういうことをお考えになるべきじゃないか。そういうことを判断したのがやはり国策パルプの事件における北海道恥労委の裁定だと思うのです。今、日本の労働組合が置かれている地位、また経営者が意図せんとする企図、こういうものを総合的に判断をしなければならないと思うのです。それだけを抽出して議論をしてもあまり意義がない。ですからチェック・オフの問題は、今後各組合においていろいろ大きな闘争問題になるでしょう。また会社は攻勢を向けてくるでしょう。これが会社の攻勢としての手段として使われることはいけないのです。私はこういうふうに考えるのですが、どうですか。
○亀井政府委員 先ほど申し上げましたように、チェック・オフは労使の協定で、合意の上で結ばれるのでございまして、合意の上でございますので、片側がこれに対して反対の主張をするということは、これまた当然あることでございまして、その主張すること自体が悪いというふうには、われわれは判断をしていないのでございまして、その主張の中から、両者の中で十分チェック・オフの実態、その本質というものを認識して、お互いに合意に達すればそこにチェック・オフというものが協定として結ばれていく。そこに意見の対立がありますれば、その意見の対立として解けない、あるいは解ける道をお互いに考えていくものでございまして、その反対意見を出すことがいけないというふうには、われわれは考えておりません。それは意見の対立でございます。
○多賀谷委員 私は、やはり今非常な資本家攻勢の手段として行われておるということは、十分政府としても考虜すべきである、こういうふうに考えるわけであります。この点については私がこれだけ言っておきましたから、よもや齋藤委員の意見をくんでチェック・オフをすることが不当労働行為なり、こういうような解釈は下されぬと思いますが、また立法当時からの状態を見ましても、そういうことは絶対あり得ぬと考えて次の質問に移ります。
 次に私はピケの問題についてお尋ねいたしたいと思います。それはピケを引いておる場合に、ことに日本の労使関係は企業別組合の関係で、いわばスト破りという人たちが実際に争議の中に出てくる。そこで日本においてはピケは確かに産業別組合あるいは職能別組合が確立されていない現状においては、諸外国に比べて割合に激しい。激しい根源はどこにあるかというと、それは企業別組合であるから、そこにスト破りというものが出てくる可能性が非常に多い。ここに私はやはり問題があると思う。先ほど最低賃金の法案についての八田委員の質問に対して、産業別並びに職種別組合を育成したらどうか、こういうことについて労働大臣は、今私が置かれておる立場からすると言いにくいということでありましたが、これはやはり政府としては踏み切らざるを得ないと思うのです。労働組織のあり方というのは、やはり産業別並びに職種別組合がいいのだ、こういうように私は政府としては踏み切って指導されることが好ましいと考えろ。しかしけさお話しになりましたから、畳に変えるということ、この前の淺沼書記長の話じゃありませんけれども、そうたびたび変えることはどうかということをおそらく倉石さんあたりはお話しになると思いますので、そり以上言いませんけれども、これはほんとうに考えていただきたいと思う。
 そこで私は、争議中に第一組合ができた場合のピケと、第二組合でありましても、争議の以前から、いわば別個の組合があった場合との就労の拒否とは、格段の相違があるんじゃないか、こういうように考えるのですが、その点どういうようにお考えですか。
○亀井政府委員 御質問の争議の途中で第二組合ができた場合、あるいは争議前から第二組合があって第一組合だけ争議に入ったというふうな両方の場合において、ピケの度合いがどうだろうかという御質問だと私は思っておりますが、いやしくもどういう場合でありましょうとも、暴行脅迫あるいは不法な行為をもって就労を阻止するということは、これはピケの正当な限界をこえるものとわれわれは考えておりまするし、最高裁の判例におきましても、その点は明確な結論が出ておると思っております。
○多賀谷委員 第二組合というものは、争議の過程の中にできた場合は最初は、その組合員はストライキに参加したのです。本人の意思決定が加わっておるわけです。そうして争議が行われておる場合に、その途中において自分は脱落していく、そうして就労をする、こういうことに対してさ、何らかの統制がなくては団結の維持はできません。ところが、最初から第二組合がある場合は、これはいわば第三者ですから、おのずからピケにつきましても違うと思うのです。ところが争議の過程で、最初自分たちが決議に参加しておきながら、その決議を無視して脱落して就労しようというものについては、感情的にいっても、また理論的にいっても、これはどうしてもピケの限界について差異がなくちゃならぬ、差異があるべきだ、こういうように考えるのです。一体最初の決議を無視して脱落し、そうして組合の意思と反対の行動をとる、こういう場合には、最初から第二組合ができておる場合と異なる、こういうような点がなくては団結権の保護はできないと思うのですが、その点どうですか。
○亀井政府委員 組合の最初の決定によりまして争議に入って、その途中において第二組合ができたというような場合におきましては、いろいろ事情原因がございましょう、あるいは最初の決定自体に無理があったという場合も考えられるわけでございまするし、また第二組合がそういう過程におきましてできたことに対して、第一組合が、感情的に最初から第二組合ができておる場合と違いますことはよくわかると思います。理論的にどうだという問題になりますと、われわれが先ほど申しましたように、平和的説得なり、あるいは団結権の保持について、争議の途中でできた第二組合につきまして強い感情もその中に入りまするために、若干強くなるだろうという場合もあろうかと考えられますが、しかしそれが先ほど申し上げますように、暴行、脅迫あるいは不法な行為という形で現われますれば、これは争議の途中でできた第二組合に対する就労の阻止であろうとも、私は正当なピケの限界をこえるものと考えます。
○多賀谷委員 暴行、脅迫という言葉を使われますと、非常に問題がありますが、たとえば益友の事件ですね、御存じのように最初ピケの限界を明らかにした是高裁の判決。この三友事件も、実は争議の途中から再建組合というものが起って、そうしていわばその再建組合というのが出荷をしようとしたことに対して婦人がすわり込んだ、こういう事件ですね。ですから私はこれは第二組合というのが最初からできておる場合とは違うと思う。その点はやはり最高裁は十分考慮しての話だろうと思うのです。それはいろいろ理論的には途中でつけてありますけれども、現状の問題としてはそれは最初決議に参加した、その者が脱落してそうして出荷しようとした、それに対してすわり込んでそれを阻止したということなんですね。ですからこれはやはり最初から第二組合というのが別にできておれば、こういう判例にはならなかったと思います。ですからやはり理論的にはそこに何らかの区別があるんじゃないか、また最高裁もそれを認めておるんじゃないか、こういうように考えるのですがどうですか。
○亀井政府委員 後段の御質問の、争議の前から第二組合があった場合あるいは争議の途中に第二組合ができた場合というふうに、私は最高裁は分けて判断をしていないと思うのです。ただ現状のいろいろな事実認定の場合におきましては、いろいろ問題がありましょうが、結論的にあるいは理論構成の上からいいまして、そういう考え方は現われていないというふうにわおわれは見ておりえます。
○多賀谷委員 今の三友の事件は無非になったんですね。違法性がないということになった。やはりこの違法性がないということの根拠は、いろいろ理論が地裁から高裁から最高裁と立てられましたけれども、私は根本的にあれが最初から第二組合であったならば、そういう理論構成はできていないと思うのです。これは争議の途中において脱落者が出たのです。脱落者が就労しようとした。そこにやはり私はこの最高裁あるいはまた高裁、地裁と、それに対して違法性を阻却する理論構成がなされたと思うんですね。ですからどう考えましても、最初決議に参加しておる、その参加しておる決議がいやだといって出るのですけれども、少くともその脚争に関しては発言権はないはずですね。自分が最初参画して、そうしてそれを行う、決行する、ストライキを行うということに参和しておるのですが、それを自分がいやで出るのですから、それを決議に違反しようとする場合には、それは暴行とか脅迫とかいうのは問題でしょうけれども、少くとも何らか私は第二組合が別の場合とは違うんじゃないかと思うのです。これについてもう一度お聞かせ願いた
○亀井政府委員 この問題につきまして、いろいろ学説のあることは私、承知しておりますが、最高裁の判例でそういう今お話のようなことが明確に理由の中に現われておるというふうには、われわれは見ていないのでございます。ただ先ほど申し上げますように、いろいろな諸般の事情、条件というものを勘案して、最高裁がその具体的な問題についての判断をいたしておるのではないかというふうに考えます。たとえば羽幌の事件、御承知のように最近出ました判例でございますが、これにおきましては軌道の上ですわり込みのピケをしまして、製品の搬出入を妨害したことに対しまして、これは明らかに正当なピケの範囲をこえておるという決定もいたしております。従ってこれらのことは学説としてはいろいろお話のような点があることは私は承知しておりますが、最高裁ではそういうふうに理論的に割り切った考え方をしておるというふうには、私どもは考えておりません。
○多賀谷委員 では最高裁は結局そういうことをまだ区別した判例がないというわけで、それを否定したわけでもないのですね。
○亀井政府委員 われわれ判例集を見まして、まだそういう点を発見をしていないということでございまして、将来最高裁でそういう具体的な問題についてはどういう決定がなされるか、これは先のことでありますからわかりませんが、今まで出ました中でわれわれがずっとピケの問題をめぐりまする判例を見ましても、われわれとしましてはそういうふうな理論的な区別というものは見出せないということを申し上げたのであります。
○多賀谷委員 ですから最高裁は判例はないけれども、多くの学者がそういうようにとられておる、こう解してよろしいのてすか。
○亀井政府委員 学説がまちまちでございまして、争議の途中で第三組合ができた場合には、ある程度の威力もこれは正当なヒケの範囲だという学説もございまするし、また逆の学説もございまして、この点は学説は一定しておりません。
○多賀谷委員 では労働省はどういうふうにお考えですか。
○亀井政府委員 これは先ほど申し五げましたように、われわれとしまして、争議の途中から第二組合ができた場合であろうと、争議の前からできた場合であろうとも、ピケの正当性の限界というものはおのずから同じであるというふうに考えます。ただそこに感情の問題が入るということについては、われわれもわからないことはないと思います。
○多賀谷委員 感情の問題ではわからぬことはないというだけでなく、団結権の擁護という面からもわかっていただきたいと思うのですがね。しかしこれは議論のあることは私も承知しております。どう考えましても、私は純然たる第三者たる第二組合の場合と、脱落していった第二組合の場合とは、若干そこに限度が違うのではないか、こう考えざるを得ないのであります。しかし局長はまだその理論構成にまで到達していないようですから、これ以上質問をいたしませんけれども、しからばその第二組合というものが、会社の支配介入によってできた第二組合ならどうなりますか。
○亀井政府委員 抽象的に支配介入でできたという言葉だけでは、いろいろの判断がむずかしいのでございますが、労組法の七条に列挙します構成要件を備えておりますれば、これは不当労働行為だということになろうかと思いますが、抽象的な今の御質問だけで判断するというわけには参らないのであります。
○多賀谷委員 不当労働行為によってできた第二組合が就労せんとした場合の阻止はどうなりますか。
○亀井政府委員 不当労働行為であるかどうかということは、それぞれ労働委員会におきまして決定をされるのでございまして、それまでは本人方の解釈によりまして不当労働行為であると言いましても、これは客観的な、何らの確実な意見とはならないわけでございますので、その場合におきましても、前段から申し上げましたような同じ実情にあるのではないかと考えます。
○多賀谷委員 それが不当労働行為になった場合はどうなんですか。
○亀井政府委員 不当労働行為になれば、その救済の仕方によりましていろいろまた違ってくるだろうと思っております。支配介入につきましても、救済の方法はいろいろあるわけでございまして、その救済の内容によって違って参ると思いますが、不当労働行為というものとピケの限界というもの、必ずしもそこに相関関係はないと私は考えております。
○多賀谷委員 ですから、不当労働行為とピケの限界は相関関係はありませんけれども、不当労働行為で作られた第二組合の組合員が就労せんとした場合のピケの限界はどうなるのか聞いておる。
○亀井政府委員 それはただいま申し上げましたように相関関係はないのでございまして、ピケの正当性の限界というものは限界として、私はその場合適用されなければならぬと考えております。
○多賀谷委員 それなら団結権の擁護なんということはあり得ないですね。あなたの方の労政では、団結権の擁護ということをどの面でピケにおいて確保しているのか、確保できないじゃないですか。
○亀井政府委員 ピケにつきましては、団結権の擁護のためにピケというものが張られますことは御承知の通りでございますが、これはあくまでも平和的な説得並びに団結権の保持という、この限界をこえることは許されないというふうに考えております。
○多賀谷委員 団結権の保持のためにやるんです。団結権の保持のためにピケを張って行うのです。ですから団結権の保持の範囲において行うのですか……。
○亀井政府委員 それが最高裁の判例にもありますように、暴行、脅迫あるいは不法行為というものにまで参りますれば、それは明らかに今の団結権の保持の範囲を越えたものだというふうにわれわれは考えております。
○多賀谷委員 あなたはすぐ暴行、脅迫という一言で片づけられますけれども、現実に動いておる状態というものはかなり違うと思うのです。こういう立体的な律動的な運動というのは、平面に持ってきてみると非常に実情にそぐわぬ場合がある。暴行、脅迫というところまでいかなくても、威力を示すという場合が実際問題としてあり得る。あなたのような議論ですと、経営者が純然たる第三者である町のあんちゃんなんかを雇ってきてピケ破りをした場合はどうなりますか。
○亀井政府委員 ピケ破り自体はよき労働慣行の確立のために適当なものではないということは同感でございますが、ただわれわれが二十九年の通牒を出しました際におきましても、これらの問題が、第三者が工場の中に出入いたします際に、ピケの限界としましてもやはり平和的説得、あるいは団結権の保持という限界を越えてはならないという見解をとっておるわけでございます。
○多賀谷委員 それが暴力団でもですか。
○亀井政府委員 暴力団であって、その暴力団がピケを突破するために暴力を行使すること、これ自体は私は許せないことと思いますが、暴力団というものの性格にもよりましょうが、暴力団が必ずしも暴力をふるうというものではないのでありまして、平和的に構内に入りたいという者を、暴力をもって、あるいは脅迫をもって、ピケを張っておりまする組合員がこれを阻止しますることは、これはピケの限界を越えるものと私は考えにております。
○多賀谷委員 そういたしますと、会社としてはこの工場の中に入れて何も仕事のない人を、また通路を通過させて入れるだけの、こういう人を使って、そうしてピケを破って工場の中に進入さす、こういう場合でも、これは許されておる行為でしょうか。
○亀井政府委員 ストライキに対しまする使用者の対抗行為としましては、平常の正常な業務を行うということにあろうと思います。そこでそれらのものが果して就業のために入るのか、あるいは単なる別な目的で入るのかということにつきましては、ピケを張っている組合員がその説得の際におきまして、十分その点の説得はできるんじゃないかと考えております。またそういうことを組合員みずからが努力すべきではないかと思っております。
○多賀谷委員 どうして努力しますかね。現実の問題としては暴力団が中に入っても仕事がないんですよ。ピケ破りであるということが明らかなんです。そういった場合にあなたのようなことを言われると、ピヶというものは引かれない、団結権の保持はできない。こう解釈してよろしいですか。
○亀井政府委員 諸外国のピケの実情等、多賀谷先生十分御承知のことと思いまするが、日本のピケッティングの態様を見ますると、諸外国の態様に比べますると非常に激しい行き方をいたしております。それだからといってそれが直ちに違法である、あるいは不法であるというふうにはわれわれは解釈をいたしていないのでございます。それは日本の労働のいろいろな歴史的な過程から見まして、ある程度日本独特のピケッティングの態様というものがそこにあることはよく了解をいたしておりますが、しかしそれかといって、それが先ほど来申しますような限界を越えるということはわれわれとしては許されないことだというふうに考えております。そこで第三者が入りまする場合におきましても、われわれとしてそのピケが先ほど申しますような正当性の限界を越えておりまする場合は、これは正当なピケではないというふうに考えるわけであります。
○多賀谷委員 会社は争議が熾烈になれば、下請の会社を通じてピケ破りのための要員を雇ってきて、そうしてピケを突破する、こういうことに使うわけですね。その場合も道を開いて通過させなければならぬということになれば、日本の憲法の規定している団結権の擁護ということは争議中にはほとんど不可能ではないか、かように考えざるを得ない。ことに外国の例をお引きになりましたが、なるほど外国はピケはそれほど熾烈でない。というのは、先ほど申しましたように、職種別並びに産業別組合が確立をしていて、プラカードを持って、今スト中ですよと歩けばあまりビケ破りはこない、少くとも現在の状態においてはそういう実情である、こういうことがいわれておる。日本のように会社がすきがあれば第二組合を作って、そうしてピケを突破して組合を切りくずそうというような状態では、ピケというものに対する考え方を変えなければいけないのではないかと思うのです。最高裁の三友事件の判決なんというものは、やはりその現われです。言いかえれば、団結権を擁護しようという現われが、あの判決によってそういう行為は違法でないと出た。だから全然関係のない第三者を雇ってきて、そうしてピケ破りの要員としてそれを使うというような場合にも、これは同じことだということでは、団結権擁護ということは争議中はできないと思う。これに対して労働大臣どういうふうにお考えになりますか。
○亀井政府委員 重ねて御答弁を申し上げますが、ピケ破りと一概に申しましても、これがどういう性質のものかわからないわけでございます。先ほど申しますように、会社がストライキに対する対抗手段としましては、正常な業務の運営をすることでございます。従いまして正常な業務を運営するに必要な人員、必要な要員が入りますことについては、先ほど申しますようにピケの正当性の限界というものを越えてそれを阻止してはならないという考え方でございます。しかしそのいわゆるピケ破りというものが、よく中小企業等でありますように、暴力団を使って意識的にピケを突破して、組合の団結権の威力を減殺していこうというふうな意図がある場合は問題がありますが、しかしその暴力団あるいはピケ破りというものの実態がどういうものであるかということがわからなければ、具体的にわれわれとしては判断ができぬと思いますが、先ほど申し上げましたように、業務の運営と直接関係のないいわゆる暴力団というふうなもの、しかもその目的がピケを張っておる組合員の団結をただ単に粉砕する、あるいは弱めるという目的のためにだけやる場合がかりにあるとすれば、それは私は問題があろうかと思います。しかしその実態は具体的ないろいろな場合場合を見なければわかりませんので、いわゆる下請だけがピケ破りかどうかという問題も、下請として構内において仕事をする面もございましょうし、それはいろいろな具体的なその場合において判断しなければならぬと思います。
○多賀谷委員 大体わかりましたが、たとえば下請がその構内において仕事をする必要のあるというような場合は別だけれども、単にそれを破るということだけ、あるいは組合の力を弱めるということだけでは、これはいわゆる純然たる第三者あるいはまた就労をせんとする他の労働者、そういう場合とは違うと解釈してよろしいでしょうか。
○亀井政府委員 その通りでございます。ただ先ほど申し上げますように、ピケ破りとかあるいは暴力団というものが、果して業務とどういう関係があるかということにつきましては、われわれは業務と関係がある場合におきましては、そういう実態のものであろうとも、これは関係ないというふうに考えます。
○多賀谷委員 次に私は近江絹糸のときの例を思い浮べるわけですが、近江絹糸のときに郷里にはがきを出しまして、お宅のお嬢さんは組合に入っている、これは非常に危険だ、だから組合から脱退をするように言うてくれ、こういうはがきを出したことは局長の記憶にあると思うのです。これは後になって不当労働行為としてその他の問題と一緒に取り上げられたわけですが、こういったいわば父兄を通じて組合の切りくずしをした場合に、これは一体どういうことになりますか。
○亀井政府委員 具体的ないろいろな条件を勘案しなければ判断はできませんが、単なる、そういう組合の切りくずしのごとき目的によって争議行為が行われたということがあれば、問題があろうかと考えます。ただその場合におきましても、やはり経営者としましては、労働者について一身上のいろいろな責任を持つわけでございますから、特に若い娘等でございましたらなおさらのことでございます。そういうことで経営者の方が父兄に対してそういう注意を喚起するという程度のものであれば、私は不当労働行為になることはないと思います。
○多賀谷委員 注意を喚起するということは組合のこととは全然別個に、たとえば私行上の問題であるとか、その他子女に対する風紀上の問題であるとか、組合員の動向と関連をして行えば不当労働行為になる、こう解釈してよろしいですか。
○亀井政府委員 ただいま申し上げましたように、その目的が組合の切りくずしその他の目的でない限りは、私はそういうことは不当労働行為にならないということを申し上げます。
○多賀谷委員 その組合の切りくずしというのはなかなか経営者の意図がはっきりわかりませんから、私は組合の切りくずしだとは言いませんけれども、少くとも組合に入っておる人、この組合は共産党の指導する組合とか、あるいはだれだれの指導する組合とか、だからこの組合におられるとよくありませんよ、だから組合を脱退するようにおっしゃってもらいたい、こういうことを言ったり、あるいはこの組合におられると風紀まで悪くなりますよ、だから親御さんの方から組合を出るように言って下さい、こういったりする行為は不当労働行為になりますか、こう言っているのです。
○亀井政府委員 それも先ほど申し上げますように、それだけとらまえてどうだと聞かれましても非常に判断に困るわけでございますが、その意図が先ほど申し上げますように、組合の団結権を弱めていこうというふうな意図が明瞭であれば、これは当然不当労働行為になるというふうに考えます。
○多賀谷委員 それは明瞭に見られませんか。
○亀井政府委員 先ほど申しますように、そのほかの諸般の条件というものを見なければ判断ができないと思います。
○多賀谷委員 それだけ客観的にはがき並びに封書に書かれておれば、普通の裁判官としては、あるいは普通の労働委員としては、私は不当労働行為になると判定をすると思うのですが、それは局長も非常に慎重に御答弁なさっておるのでこれ以上申し上げません。
 そこで私は具体的な問題をお聞きするわけですが、それは今度の王子製紙の問題です。最近国策パルプがいわば日経連の先頭といいますか、そういう形でチェック・オフをやりましてから、この紙パ労連に向って非常な攻勢をかけてきたと思うのです。ことにユニオン・ショップの問題、チェック・オフの問題その他の問題を、大体経済問題、賃金問題が実質的に片づいておるのにもかかわらず、そういう問題とからめて経営者が攻勢に出ておるところに、やはりこの問題が解決しにくい点があると思うのです。ユニオン・ショップの問題でも、それからチェック・オフの問題でも、今の日本の組合としては簡単にのめる問題ではありません。現行協定がそうですから、現行協定を改訂する場合にユニオン・ショップの廃止とかチェック・オフの廃止をいわれましても、組合としてはああそうですかと、なかなか後退をし得るような性格の問題じゃないと思うのです。それでこの賃金要求の問題あるいは作業方式の問題は大体事実上解決しておるのにもかかわらず、その問題で現在まで争議が延びておる。大体百日をこえる争議になっておる。これを私は非常に遺憾に考えるわけです。ものの起りは、賃金ベース・アップの問題あるいは作業方式の問題ですから、その問題が大体実質上解決をしておるならば、その線で一応とめる。それ以上追い打ちをかけても、これは争議が続くだけであります。やはり分離をして解決をしなければ、現在だれが労働組合長になりましても、おいそれとユニオン・ショップやチェック・オフの問題を廃止することに同意しますという責任者は出ないのです。ところがこの問題が長引いておるのは、非常にむずかしい賃金並びに作業方式の問題がほとんど片づいたのに、それが続いて出ましたところから今日のような状態になっておると私は思う。こういう問題に対して労政当局としてどういうようにお考えであるのか。さらに中労委のあっせんが行われんとしましたけれども、これは非公式あっせんといいますか、事情聴取の段階でありましたが、会社はがんとして応じなかった。会社が応じないがゆえに、せっかくの中労委が事情を聴取され、非公式あっせんに乗り出そうとする芽をつまれたわけです。また地方労働委員会も現在の紛糾を見て生れず、やはり乗り出そうとしたけれども、これまた会社の拒否にあってそういう方向にいかなかった。こういうことを私は非常に残念に思うわけです。これについて労政当局として、労働省が国家権力をもって介入するという立場でなくて、あるいは中労委とかあるいは地労委というような機関を通じて、何らかここに妥結の方向に進むように努力すべきじゃないか、こういうように考えるのですが、これに対してどういうようにお考えですか。
○亀井政府委員 王子製紙の争議が百日余にわたりまして長引いておりますことは、われわれとしましてまことに遺憾に感ずる次第でございまして、一日も早くこの争議が円満に解決することを期待をいたしておるわけでございます。われわれといたしましても争議の発生後、組合側あるいは使用者側、それぞれ数回にわたりまして労働省に来ていただきましていろいろ事情を聞き、そしてまた解決への糸口というものにつきましていろいろ話し合いをしてみたのでございますが、まだ両方ともに解決の糸口というものが見出しがたい現状にございます。お話のございましたように、中途中労委の藤林、中島両公益委員が出まして、事情聴取という形で非公式なあっせんに入ったのでございますが、これまた会社側の自主解決に対する強い要望がございまして、不成功に終ったのでございます。今後この争議がどういう形において解決されていくかという問題は、会社側はまだ現在におきましても自主解決ということを非常に主張をいたしておりますので、今すぐに労働省が出まして両者への解決への糸目を作るということもなかなかむずかしい段階にございます。それかといいまして、権力をもって両者の話し合いを進めさせるということも、現在の法規の建前上できないのでございます。従ってわれわれとしましては、中労委あたりが第二の実情調査というものを始められる時期がくるかこないかということを今ここで申し上げるわけにも参りません。中労委の事情もございます。しかしそういうふうな事態も、ある時期においては必ず出てくるのではないか、また出てくることによって解決へのきざしが出てくるのではないかというふうに目下のところは考えておる次第であります。
○園田委員長 石山權作君。
○石山委員 私、多賀谷委員からいろいろ質問されておるうちに、大臣に対して三、三何か疑問を持ったのです。大臣の答弁の中で特に私疑問を持ったのは、労働省の立場というようなもの、労働省は一体この場合労働者の味方なのか、サービスのお役所なのか、それとも指導機関なのか、それとも弾圧といってはおかしいが、説教する機関なのか、いろいろ考えさせられる節がございました。特に私大臣にお聞きしたい点は、王子問題についていつの日でしたか、閣議で何かおっしゃった。ホスゲンだかモルゲンだか、薬の話が出たので、王子がそんなものを発明したのか、モルゲンだから、おそらくこれは洗たく用の粉か何かかと思っておったら、そうではなくて、何だか大へんな毒ガスだとかいう話です。そういうことはさておいて、そういう点で、法律によってきちんとやってしまえ、きかないやつはモルゲンだかポルゲンだかでやってしまえというようなことを発言されたということを言っておりますが、労働省の今までのやり方を見ていますと、労働省は私たちのサービス機関であり、指導機関であるというような考えでいたのですが、倉石大臣のお話を聞くと、何だかそうではなくて、これは弾圧省に回ったのか、そういうふうに思ったものですから、それを一つお聞かせ願いたいのです。
○倉石国務大臣 労働省は、今の政府が考えております労働政策は、第二次岸内閣の成立に当りまして岸総理大臣が、労働政策は重点的に考えるというふうなことをどこかで言っておりました。これは一部には、いわゆる労働秩序の確立というふうなことだけを取り上げておるように考えて受け取ったものもあるかもしれませんが、私ども政府部内で話しておりますのは、どうか一つ、労働者と申しましても、いろいろな人がたくさんおられますけれども、大体日本の産業構造は中小企業の方が大部分であります。そこで、そういう中小企業の従業員などは、大産業の従業員に比べて、非常にいろいろな面においておくれておる。まずこういうようなところに一つ手を差し伸べて、できるだけ中小企業、なかんずく零細企業などに従事しておられる人々については、できるだけの思いやりを持って、あたたかい手を差し仲べるように政治を振り向けていこうではないか、こういうことが第一点であります。それからもう一つは、しばしばここでも御心配下さって論議がかわされております雇用、失業の問題、新長期経済計画を立案いたしますにも、やはり雇用の拡大ということを第一段階に掲げて、それにマッチするための経済政策というものを策定するのだということを言っております。われわれが政府部内において、特に経済閣僚懇談会に労働大臣も出席せしめて、常に経済政策の立案に当っては労働省が参加いたしておるのもそういう趣旨であります。従って、私どもが未熟でありますから、われわれのやることが徹底しないで、たまさか政策においてはお気に召さないこともあるかもしれませんが、そういうことについては御鞭撻を願って、私どもの精神は今申し上げたようなところでありますからこれが一つ円満に遂行できるように御協力をお願いいたしたい。世の中の雑音は一向気にする必要がないので、まじめに一つ今申しましたような方向で日本の政府の労働政策をやっていきたい。これに尽きるわけであります。
○石山委員 先ほど大臣のお話の中で、組合の独立独歩ということを大へんに強調されておりました。そういう面からチェック・オフの面も見え、不当労働行為もそういうふうな面から見られると思います。独立独歩の組合であって、もう人の援助によって育つようなものでないと、かりにあなたの言うように仮定いたしますと、私は労働組合の組合員の構成は自由であると思う。もちろん独立独歩の組合でございますから、シャッポにいただく組合の役員を作ることも、当然これは自由でなければならぬだろうし、ある意味においては公務員にも私は独立独歩のものを与えてもよろしいというふうになりはしないか。ある意味では独立独歩だとおだてておいて、こっちはそれじゃいけない、そういうことはやってはいかぬ、法律違反である、そういうような言い方になりそうに私は聞かれるわけであります。
 もう一つは、私は今の倉石大臣の言うことを聞きますと、大へんに労働組合を思いやって労働行政を行なっているような気持がしますが、今の労使の対立の場面において、組合の独立独歩という言葉が果して現実に即応しておるものがどうか。もう少し端的にいえば、今の経営者は組合が一つにまとまっているのが便利なのか、二つに分裂している方が便利なのか、こういうふうな反対の、対照的な現象もあるのではないか。あなたが言われているように、経営者は逆に独立独歩の組合を否定するような格好で、二つも三つも独立独歩があった方がよろしいのだという考え方で見ているのではないかと思うのですが、労働省から見た日本の現在の労働組合の実態と同時に、独立独歩は果して経営者が認めているかどうかという経営者分析を、あなたの方でやっておられるかどうかということもお聞きしたい。
○倉石国務大臣 基本的に申しまして、私どもは長い間封建的な制度にならされてきておるものでありますから、日本人の気持の中に、何となくまだ官尊民卑といいますか、政府というものに何でもやらせるような考えからまだ脱却しきれない面が多いのではないかと思います。われわれ国会議員が憲法、国会法を持っておって、そうしてたとえば法律案の提案というのは原則として国会議員にあり、政府もまた提案することができるというので、政府が従になっているのに、お互いに忙しいせいもありましょうけれども、アメリカなどのように、原則として認められておる議員立法というものは、まずだんだんふえてはきましたが、少数であります。そういうようなことで、労働関係などでも、何でもかんでも、何かあるとすぐに政府が出てきて仲裁したらいいではないかというふうな考えも一部にあるようでありますが、私はやはり民間産業の労働運動というふうなものには、それが行き過ぎて、たまさか治安を害するようなことがある場合などは別でありますが、なるべくこれは自主的に解決をしてもらうことがけっこうなことだと思っております。従って個々の民間産業の労働争議には政府は介入しないという建前をずっと前からとっておるのであります。そこで今のお話の組合の自主性でありますが、これは私はそういう気持をもってお互いが、社会の指導的立場に立っている者たちが、労働組合というものは社会のりっぱな一つの団体として、社会からやはり尊敬を受けるように、よく吉田元総理がわれわれに話したことでありますが、彼が英国に行ってチャーチルの招待を受けたときに、そのパーティに労働組合の会長や役員が相当数出てきておって、そうして各国の人々に紹介しておったのはうらやましいということを言っておりましたが、やはり日本でも、りっぱな大きな労働組合の指導者たちは、そういうふうに社会から尊敬を受ける、そうしてりっぱな労働運動が行われるということをわれわれは希望し、期待するのであります。そういう建前から申しまして、組合を結成しておられる方々自身も、やはり恩恵的な面で人さんに育ててもらうなんという時期はもう過ぎた。私どもは東南アジアの後進国と違いまして、もはや産業面においては英米独に匹敵するだけの実力をだんだん備えつつあるのでありますから、組合運動においても、そんな経営者のお世話になるなんということを考えずに、またその便宜供与などを受けずに、りっぱにやっていかれるように御自分の方からしむけていくべきだ、こういう意味で組合の自主性を盛り立てていく方がいいんだということを言っているのでありまして、先ほどからチェック・オフは組合を弱めるんだというような話がありましたが、そういうものの考え方の者も、あるいは経営者の中にはあるかもしれない。しかしそういう者もあるかと思えば、一方においてはまた、チェック・オフをやって御用組合にしておく方が便利だということを言っておる者もあります。私どもの立場からして、今の経営者がどういう考えであるかなどということを批評することは避けますが、最近の傾向としてはやはり経営というものの公共性を先にうたうというふうなことに、だんだんそういう風潮が進んできておりますから、私どもの希望としては、経営側も労働組合側も、日本経済の国際競争力を維持するために、その両翼の一方を両方が片方ずつになっているのだという建前をとられて、正々堂々と、一つ法律で言っているように実質的にも対等の立場で進んでいただくように願いたい、こう思っておるわけであります。
○石山委員 労使が生産を一生懸命やるということはいわゆる国家公共に幾分か役立つという面が非常に含まれているだろう。これは生産人の誇りだと私は思う。そうした場合における、そうした観点から見たところの労働争議の、いわゆる殿様争議でございますか、こういうことは私はよほど考えてみることが労働行政機関の中で必要なのではないか。たとえば王子のような問題、王子は前には殿様争議だとか、労使お互いがもうけているから余裕しゃくしゃくで争議をやっているのだ、こういうふうな意見もございます。しかし最近百日にもなんなんとする争議を見てみますと、これは労使双方の余裕しゃくしゃくたる企業内におけるところの争議であるのだ、おまかせできるものだ、そういう観点だけで見るわけにはいかないような場面が出てきていると思います。たとえば労使間で納める苫小牧市に対する市税などを見てみましても、これはおそるべき収入不足になって現われてきておるわけでございます。これは七月の十八日からストライキに入りましたが、苫小牧市の財政課で統計した九月の二十八日までを計算したデーターが出ておりますが、法人税が三千三百万円、電気税が八百四十万円、従業員の市民税が二千六百万円、合計六千七百四十万円という市の収入不足が現われてきており、苫小牧市としては頭をかかえているというふうにいわれております。過去五年間の苫小牧市の収入は、この王子製紙の苫小牧工場の労使によるところの市民税が全額の六〇%を示しているというふうに付言されております。こういうところを見てみますと、私はこれが企業組合の、あるいは企業内における労使の紛争であるから自主的に解決をしてもよいものだというふうな、東京にいられるのだからあまり見てないかもしれませんけれども、私はそういうふうな観点で、画一的にこの問題はきめられない段階にきているのではないか。もちろん民間の労働組合の場合には官庁や、ましてや警察力の介入などはもってのほかだと考えておる者の一人でございますけれども、公共の福祉、国家に対する一つの貢献をするのだという建前から見ますと、製紙産業全般から見て、苫小牧に生産されるのは三〇%以上でございます。それらを考えてみますと、この秋から冬にかけての読書時における新聞紙その他の紙類の払底ということが目に見えてきておる。払底すれば需要関係で値上りも起きてくる。これであってはならないのではないか。問題が、あるいは三十日とか四十日とか、社会にあまり影響を与えないうちならば、そういうふうな大臣の言葉も私は納得できるのでございますけれども、今の段階になっても、王子は民間の労使間の問題だからというふうにはならないのではないか、私はこういうふうに思いますので、大臣の御意見を伺いたいのでございます。
○倉石国務大臣 政府が個々の労働争議について、あるいは緊急調整みたいなものでやれるものもあることは御存じの通りでありますが、今御指摘になりましたような争議について、これはもう先ほど政府委員からも申し上げておりますように、一日も早く円満に妥結することが望ましい、このことは当然であります。しかしながら自由企業のもとに行われておる産業で、その労使関係の紛争でありますので、それが特に公共の秩序を破壊するような行動があれば、これはそれぞれの道で処置するよりいたし方ないとは思いますけれども、争議の内容にわれわれが立ち入ってとやこうやるということは、われわれとしてやるべきことではない。しかしながら先ほどお話がありましたように、労働委員会では実情調査ということをいたして、そうして願わくは双方の歩み寄りで話ができますようにわれわれは期待しておる、今そういう段階であります。きわめてデリケートな関係に立っておりますので、私どもの立場からは、ただいまは今申し上げた程度のこと以外にお話を出し上げる自由を持っておらないわけであります。
○石山委員 労働委員会がそれぞれ動くだろうというところに大臣は期待を持っていると言われていますが、その期待の言葉に私は大きな期待を持つものであります。
 それからもう一つ、私は大臣に注意していただきたいことは、たとえば治安の問題でありますが、治安の問題がああいうふうに起きたことは、甲がいいとか乙が悪いとかいう問題を別にして、決して好まし状態ではない。ですから、労働行政全般から見た場合において、治安の問題はそれぞれの関係方面で処理されるだろう、されるしか方法はないだろう、こういうふうな言い分であります。しかし、私はそれは納得しかねる。ということは、争議が終れば、好ましくない治安というものは自然の形で収まるわけです。争議が長引けば長引くほど、しかも第二組合をかかえて、日本の組合には違例であるオープン・ショップという単一の問題、オープン・ショップなどをもし現実にわれわれが受けるとすれば、労働行政に通じている大臣などは、一番私は理解していただけると思うのですが、労働組合の弱化の方向をたどるということは一目瞭然なんです。こういうふうな問題をかかえているとき、私は治安の問題は、それぞれの関係者が適当に処置するだろうというふうに、あなたがわきに立って第三者的な考え方で見ていられることは、これは決してあたたかい労働行政の担当者ではないのではないかというふうに思うのですが、その点はいかがでございますか。
○倉石国務大臣 私の申し上げ方が下手で、私の考え方が通じないようでありますが、私は労働省というものは、個々の争議の内容に立ち至ってとやこうさしずがましいことをすべきものではないと思っているのであります。総括的によき労働慣行が作られるように、外からずっと指導をしていくというふうなことは、われわれの労政がやるべきことでありますが、そのためにやはり公共的な立場に立つ労働委員会というものが厳として存在いたしておるのでありますから、それ以上われわれは支配すべきものではない。先ほどからお話のありました労働組合が自主性を持ってやっていただくということについては、結局労働組合自身がこういうような行動をとることが、個々の労働者に利益であるかどうかということを判断されて、そうしてその組合の会議において、指導者に一つの権限を付与するのでありますから、そのときに、これは少し私の考えを述べて失礼かもしれませんが、私はやっぱり争議行為に移るなどというときには、アメリカや英国がやっております通り、その直前に、スト権の確立とかなんとかいうことについてはある程度の厳重な制約を設けて、そこで組合個々人の慎重なる検討のもとにやるとかいうふうな慎重さというものは、だんだん日本の労働組合でもやっていくべきだと思うのであります。そういったように、労働者個人の利益というものを十分に判断されて、そうしてこういう行動はわれわれの利益になるか、不利益になるかということについてりっぱな判断を下され、そうして進むべきである。経営者側もまた経営者として、今の状況下において、こういう団体協約を改訂することが必要であるとか、あるいは改訂せぬ方がいいとかいうことを判断されて、そうしてそれぞれが行うのが団体交渉でありますから、その団体交渉というりっぱな場面を、法律上保障されておる場所を持っているのでありますから、やはりそういうところでそれぞれの自主性を十分に発揮されて、そしてお話し合いをなさる、こういうふうにしていってもらいたい。それにはさっきから私がお話いたしておるように、チェック・オフをやってもらったり、事務所を置いてもらったりなんかするということは、やっぱりどうも何となく気弱さを組合側の方で持つでしょう。従って、正々堂々と、法律にきめられたような対等の立場というからには、チェック・オフなどという恩恵的なこともやめ、事務所をその中に置いてもらって、電話も会社のものを借りておるというふうなことでなくて、やっぱり早く一本立ちになって正々堂々とやっていく。こういうふうなことが望ましいのではないか。これは組合のためを思うから私は言っているのでありまして、それ以外に何ものもないわけであります。
○石山委員 大臣のお話を聞いていると、大へん組合員がえらくならなければならないような――えらくないのにえらくなったような印象を与えられても、それは全く絵にかいたもちみたいな、われわれをつかまえて仙人になれといったようなお話です。あなたはお話がうまいので、私なるほどなるほどと、端々ではうなずいているのだけれども、全体からいうと、どうも魔術師にかかっているみたいな気がして、それを私はそのままには受け取ることが残念ながらできません。私は日本の労働組合の諸君は私と同じで、まだ残念ながらあなたの言うような正々堂々たる城を築くまでなっていない。もちろん早くなりたいと思っておる。しかしその間における労働省は、私が先ほど言ったわれわれのよき話し相手であり、指導的立場を勤めるのであって、われわれにいたずらにお説教のみを立てて、何ら役に立たないようなお役所であれば、局長初め、残念でございますが、高い税金を出してあんな大きなうちになんか入れておく必要を、私は労働者の代表の一人として認めるわけにはいかないというふうに結論したいのですよ。それはあなたのお説教は、お説教のごとく悪いことではないのでございます。一生懸命に勉強します。労働組合というものは現実を一審大切にしているということはあなたも御承知です。ですから、私は既得権に対しては執拗に反復して、反濁して、その問題が納得されなければ、これはどれがいいとか悪いとかきめられない。チェック・オフの問題にしましても、あなたに言わせれば、双方が話し合ってきめたらよかろうと言う。国策パルプをごらんなさい。双方話しているうち、経営者は契約を破棄してしまったでしょう。無協約になればいいも悪いもない。会計で金を集めないのだから、そのままになっちゃう。もう話し合いの前のことになってしまうというのが、今の経営者の心がまえなんです。そういう心がまえに向う、か弱い労働組合ですからね。あなたが言われるように、なかなか威風堂々とはなれない。
 そこで倉石大臣の名調子はそのくらいにしまして、私は局長にお伺いいたしたいのですが、これは事実問題として私は聞きたい。たとえば不当労働行為の問題ですが、会社から、王子の勤労部長から出されているわけですが、その中で――私文書をずっと読めばいいわけですけれども、これは速記の方方にもあなたたちにも煩雑だと思うので、不当労働行為になりそうな文章だけを読みます。「貴殿等王子労組を脱退された方々に対する賞与の支給についても早急になんらかの方法を講ずるよう検討中でありますので併せて御含み願います。」というふうに、これが第一組合員の人あるいは脱退しかかった人、脱退した人等に配られているわけでございます。これはやはり利益を目の先にちらちらさせまして、そうして組合を切りくずし御用組合を作るという、不当労働行為の範疇に入らないのかどうか、こういうふうにお聞きしたいのでございます。
○亀井政府委員 不当労働行為、特に王子製紙の不当労働行為の問題につきましては、先ほども申し上げましたように北海道の地労委におきまして今審問が続けられておる段階でございます。従いまして私としましてこの問題についての判断を申し上げますことはお許しをいただきたいと思います。
○石山委員 慎重な労働省の方々だから、おそらくそういうふうにおっしゃられるだろうというふうに思っておりました。しかし担当省としてこういうことはいろいろな方面から研究して、省は省としての独自の考え方を持たなければならぬ問題だと思います。あなた方にはやはり指導する任務というものはあるはずなのでございますから、こういうことが好ましいことであるかどうか、不当労働行為になるような危険性があるかどうかということ、おのずからあなた方は勉強しておかなければならないのでございます。ただ、たまたま北海道の労働委員会で裁定が下る前夜であるからというふうにおっしゃっておりますが、もう一つ実例を速記に残しておきたいと思います。
 これは先ほど私の方の多賀谷委員から言われた例の近江絹糸の問題とからみ合せて言われることでございますが、これは佐瀬という山林関係の課長さんからそれぞれの第一組合員あるいは脱退しそうな人に配られた手紙の中の一節でございますが、読み上げます。「兎角御子息がこのままの状態で誤まれる組合幹部の指導下に行動を続けられる事は将来王子製紙の山林部員として生、長していく上には」私はこの「生長していく上には」という言葉に非常に微妙なものがはさまっているというふうに考えます。山林だから木を大きくしなければならぬという気持もございましょうし、いろいろ考えて「生長」という言葉を使っていると思う。「生長していく上には勿論ときには刑法上の問題にも発展し得る虞れがあり前途洵に憂慮に堪えぬものがありますので早急に格別の御配慮をなされるが上策かと存じ、茲に説得方を御依頼申上げる次第であります。」これは父兄に出しているわけです。こういうのが不当労働行為を犯しているという見解を私は持つものでございます。こういう点もあなたに言わせれば、北海道の地方労働委員会で裁定を下す前夜であるから、労働省としては発言を差し控えるというふうに言われるだろうと思いますので、あえて御答弁は求めません。
 ただ私一言申し上げておきたい点は警察の問題でございます。私のあとで専門家が質問されるので、私は常識的に二つ、三つお伺いしたいわけでございますが、そのうちで私はこういう言葉を聞いているわけでございます。王子の労働組合が苫小牧でピケを張りました。立ち入り禁止の問題等にからみましてピケが張られました。そのとき町の人たちが見て言った言葉を私は立っていて聞いたのでございますが、あまりに乱暴で、粗野で、しかも力がうんと強くて組織的な威力を発揮したわけなんです。これは夜われわれ市民をパトロールしている警官ではないのではないか、これはどうも自衛隊ではないか、そうでなければあんなに秩序整然として、ものも言わずに乱暴を働くことはないのではないか、こういうふうに住民が言っていた。それほどひどく粗雑に強力に乱暴にこのピケを弾圧したということを私は実際に見たのでございますし、市民の声も聞いているのでございますが、あなたの方では地方からどういうふうな連絡を受けてあの問題を見ておられるか伺いたい。
○江口政府委員 お答えをいたします。いつのことを仰せになっておるのか存じませんけれども、秩序整然とおそらくは行動をしたのであろうと私も想像いたしますが、乱暴をやったという事柄は報告を受けておりません。
○石山委員 あなたの方はピケを解く場合に、相手をこん棒――警ら棒といいますか、それでつっつけとか、なぐれとか、泥ぐつで向うずねをけ飛ばしてピケ隊の威力を阻喪させろというふうな指令を出しますか。
○江口政府委員 そういう指令は出しません。
○石山委員 私たちの友だちがたまたま逮捕されるときがあるのです。その逮捕される理由として、どういうことを言っておるかというと、共同謀議という言葉です。もう一つはピケ隊がおまわりさんを踏めとか、つねれとかいうふうに指令したというのです。それで現行犯だというので、何にもしないで道路のはたに立って、たまたまながめていた人まで巻き添えを食って、皆さんの方ではもらっていってしまえということを言うそうですね。いただいていこうというのですね。もみ上げてしまえ、いただいていこうということは、北海道でも合言葉のようであります。そういうことをあなたの方は知っておりますか。
○江口政府委員 私不幸にしてそういう隠語は存じません。しかしおそらく共同謀議云々の問題は、ピケと無関係に市内におきまして、あるいはピケに向った第二組合との間でこぜり合いが起って、その中に割って入ったというような場合の乱暴をどちらかが働いた。それが暴力行為等取締りに関する法律を適用いたしまするためには、数人がやる場合に、お互いにその間に意思の疎通があったということが一つの条件になっておるのでありまして、やれやれと言ったとか、この分をおれが受け持つというふうに言っておったとか、そういう点はまことに重要な点でありまするので、あるいはそういうことを重視して調査したか、あるいは尋問したか、こう考えられます。
○石山委員 これで終りですが、私はあなた方は非常に優良だと思いますし、われわれ人民を守ってくれる方々ですから、問題が混乱した場合も非常に冷静であるように訓練しておると思います。先ほど私、まさか向うずねを踏めと指令しないだろうと言ったら、指令しないと言ったが、事実は、われわれの仲間、労働者、それからそればかりじゃない、あのかわいい主婦さん、娘さん、それまで髪を引っぱって何本か抜いてみたり、向うずねをけ飛ばしたり、はたいたりしておる。これは何から起ることでありますか。ここに写真もある。事実何にもないとは言わせません。どういう理由でこういうことが起るか説明して下さい。
○江口政府委員 写真は拝見してもよろしゅうございますが、髪の毛を引っぱったとかあるいは暴行したというようなことは聞いておりません。ただ職務を執行いたします際に抵抗を受けますれば、その抵抗を排除しなければ職務ができないものですから、あるいは体をつかまえて横の方に押し出すというようなことは当然ございます。その形があるいは写真に出て、一つの力を加えておるというふうに写るかも存じませんけれども、その間に暴力を行うというようなことがありましたら、そのつど警備実施のあとで反省いたしまして、正すべきは正すという方向で現在やっております。
○石山委員 一点で済まそうと思いましたが、それではなかなかやめられません。あなたたち反省をすればそれで済むわけですが、われわれとしては肉体的に暴行を受けたと感じているのですよ。内出血して、血が出て、頭がはれて、これは私たちは暴行と思うのです。こういう事実に対しては、皆さんの方では反省すれば済むわけなんですが、たとえば組合員が警官にちょっとさわった、第二組合員にちょっとさわった、それが内出血して三日もたってから初めてはれてきた、これは暴行罪だ、共同謀議だといってひっくくっていく。ずっと離れた道路のはたに立っていた者を連れていってみたが何にも出てこない、それで無罪放免か何か知らぬけれども放される、弱いものです。
 もう一つ私は申し上げたいのですが、あなたの仲間の地方の署長さんは、裁判になればこういう問題は微罪で、何でもないかもしれませんけれども、私たちとしては取り調べなければならないし、逮捕しなければならぬと言う。裁判になれば微罪である、そういう軽いものを警官が何でなぐらなければならぬか、何でけ飛ばさなければならぬか、しかも理由もなく、何日間も変な名目をつけて勾留する、罪状が出なければ野放しにして、あなたに言わせればその都度反省する、まことに便利な言だ。それではいけないでございましょうけれども、事実はそういう事実に進展をしておる。私はあなたの説明なんかもう聞きたくない。もっと反省していただきたいと思う。実際からいいますと、迷惑を受けているのは第二組合と対立しておる第一組合の立場でございます。私は王子の話だけでやめようと思ったけれども、東京でこういう問題が起きている。東京都内の製本屋が争議をしたら、それも第一組合と第二組合に分れた。あなたも新聞で見たでしょう。そうしたら暴力団を雇って、その暴力団が何をやったと思ったら、バットでぶんなぐったというじゃないか。それを警官が取り締らない、逮捕しない、それを黙って立って見ている警備中だとおっしゃる。それでは第一組合から見れば、あるいは第三者から見れば、市民から見れば、警察は会社の言い分のみを聞いて常に第二組合を擁護しておる、権力者に盲従しているんだ、こういうふうにとられてもやむを得ないじゃないですか。王子の争議でもそうです。来たのは町の暴力団だ。札幌から来た。それがどういう態度に出たかと申しますと、ビールびんをがんとくだいて、あのぎざぎざしたビールびんの口でもって、第一組合を脅迫して、第二組合のいいようにしてやったというのがはっきりしている。それを黙って見ている。そしてあなたに言わせれば、女の人であっても言うことを聞かない場合、公務執行をする場合にじゃまをすればそれを取り締まる、あるいはそれが暴力行為に見えるかもしれぬけれどもやむを得ないとおっしゃる。そんな言い分というのは私はないと思います。晩などにパトロールをしているおまわりさんを見ると、私は感謝している一人ですよ。感謝している一人でありながらも、ああいうふうに集団警備につくと突然猛虎のようになる。労働組合も団体になると少しは行き過ぎがあるかもしれないが、警官だって行き過ぎはあるじゃありませんか。それをよく理解していただいてあなた方中央部の方が指導していただかないと、全くわれわれはかあいそうなものです。そこを私はあなたに御要望しておいて、これで終ります。
○園田委員長 山中日露史君。
○山中(日)委員 私は王子の争議の苫小牧における暴力事件に関連をいたしまして、少しくお尋ねをしてみたいと思うものであります。実は私は九月の二日から九月の十六日まで十五日間、引き続き現地におりまして、朝から晩まであの労働争議の実態を目のあたりに見て参ったのであります。この間新聞にいろいろ報道せられておりますような不祥事件、たとえば第二組合員と第一組合員との衝突、これによって生ずる傷害あるいは警察官と組合員との間に生じたいろいろな傷害事件、こういう事件の起きましたことはその通りであります。私は現地におりまして組合員の諸君に対しましても行き過ぎのないように、そういう刑事事件の起ることのないように十分に注意をするように警告も発しましたし、同時にまた警察に向いましても数回にわたりまして警察官の不当な介入のないように、また組合は御承知のように二つに分裂をいたしまして、しかもその分裂が、争議が始まってから第一組合の方では会社の不当労働行為によって生じた第二組合だという認識に立って戦っておりますから、自然感情的にも高まって参りまして、いろいろな衝突が起きておりますが、そういった事件がありますけれども、組合に対しましてもあるいは警察に対しましても、双方行き過ぎのないようにずいぶん警告はして参ったのであります。そこで私がお尋ねしたいのは、こういった暴動的な事件がどういう原因で起きたかというようなことについては私は今お尋ねしようとはしておらないのであります。まず執行吏の仮処分の執行に際して起きました警察官の行動、その仮処分執行に際して第一組合員のとった態度、これが一体どういうものであったかということについて、労働省あたりの認識が非常に間違っておるのではないか、またその当時警察官のとった行動が非常に間違っておるのではないかということに私は質問をしぼりまして、これから少しくお尋ねしてみたいと思います。
 まず第一に、たしか九月の十二、三日ごろと記憶いたしておりますが、倉石労働大臣は閣議におきまして、王子の労働組合は裁判所の命令、すなわち仮処分執行でありますが、この裁判所の命令に対しても実力をもってこれを妨害する、法治国民としてあり得べき行為ではない、けしからぬ、こういうことを発言されたということが新聞紙上に発表されておるのであります。と同時に、去る九月二十六日の当委員会における齋藤委員の質問に対する亀井労政局長の答弁の中で、こういうことを言っている。「この仮処分の内容、会社が指定するものが会社の事業所に出入することを第一組合員は妨害してはならないという内容のものでございます。従ってこの決定を受けまして、決定の執行をいたす段階におきまして第一組合がこれに強力に妨害をいたしまして」こういうことを答弁されておるのであります。そこで私がお伺いをしたいのは、労働省当局はこの仮処分執行に際して、第一組合が実力をもって妨害したという事実が一体どういうことで認定されておったのか、まずこの点をお伺いしたいと思います。
○亀井政府委員 現実にこの仮処分の執行について妨害行為を行いましたのは、オルグ団でございます炭労あるいは国労というようなものが主体になっておるというふうなことも、あるいは第一組合がその中に入っておったということも、現地の北海道の労政課からの情報としてわれわれは把握しております。現場にいませんので、われわれとしましてはそれを一応の事実だというふうに認めておるわけであります。
○山中(日)委員 これは非常に重大なことであります。倉石労働大臣の新聞発表並びにただいま私が朗読いたしましたこの速記録にあります第一組合員の強力なる妨害ということに対して、現地の労働組合は非常に激高いたしておるのであります。そこで率直に申しますが、第一組合は執行吏の執行行為に対して妨害はしておらぬのであります。御承知と思いますけれども、仮処分の決定が出ましたのが九月の六日であります。ついで九月八日に札幌の執行吏が苫小牧に参りまして、この仮処分の執行に着手せんといたしたのであります。そのときに組合側のこの仮処分事件の代理人となっております弁護士、並びに会社側の代理人となっておりまする弁護士、執行吏、この三者の間におきましてこの仮処分の決定の主文について疑義がございました。この仮処分の決定によりますると――主文そのものを朗読いたしますならば「被申請人組合は申請人会社の指定する従業員及びその他の者が別紙図面(一)記載の朱線をもってかこむ区域内に出入することを実力をもって妨害してはならない。二、申請人会社の委任する執行吏は前項の命令に違反する諸行為を排除することができる。」こういう主文であります。そこで九月八日に執行吏が参りましたときに、執行吏に対して、この主文によりまするならば、執行吏は妨害を排除し得る対象は第一組合だけではない、従って第一組合と全然別個にピケを張っておるいわゆる炭労その他のオルグ団、いわゆる支持団体、こういうものに対してもこの仮処分の執行ができるかどうか、こういう点について疑義が生じました。そこで当時執行吏はさっそく札幌へ帰って、この命令を出した裁判官と打ち合せをしてくるというので、八日の日は帰ったのであります。そうして九日の日に出て参りまして、その執行吏の解釈の統一について双方代理人が立ち合って検討いたしました結果、執行吏から、これは裁判の覇絆力の原則として、この主文に書いてある第一組合員の妨害を排除するだけの権限が執行吏にあるのであって、それ以外の支持団体にはこの主文の執行吏は及ばない、こういうことが明確に執行吏から明示されました。そこでそれを執行吏の執行調書に記載をいたしまして、双方代理が立ち合って署名捺印をいたしたのであります。そこで当時の状態におきまして、この仮処分執行からいうならば、第一組合が妨害する場合においてはこれは明らかに職務執行妨害でありますから、第一組合員は絶対に妨害してはならないということは、組合の方でもはっきり認可されたわけであります。そこで当時、九日に参りました執行吏は、たといこの状態において執行に着手しても、現に今地労委があっせんに入ってきておるさ中であるから、これを実力をもって行使することになりますると血の雨を降らすということから、執行吏も非常に心配をされまして、九日、十日の二日間というものは地労委のあっせんの結果を執行吏はながめて、執行吏は執行しなかったのであります。ところが、こえて十一日になりまして、突如として午後の二時半ごろに執行吏が参りました。その執行吏は昨日まで来ておった執行吏ではございません。全然執行吏が変って参りまして、そうして午後二時半に執行吏が脱落した第二組合員の先頭に立って、就労を扇動して参った。そのときに第一組合員は前列におりました。けれども仮処分執行の決定にあります通り、第一組合員が、もしもこの執行吏の執行を妨害するならば、これは公務執行妨害であるというので第一組合は何らの抵抗もしないでそのままずっと引いて下ってしまったのであります。それでどんどん第二組合を扇動して、今度は別の団体のところへ参ったときに、かわった執行吏は直ちにこの別の団体に対しても執行せんといたしたのであります。そこで組合側の代理人がかけつけて参りまして、これは違うではないか、解釈の統一と違うではないか、執行の対象とならないではないか、それに対してあなたが執行するということは執行吏の職務越権行為ではないか、こういうことを言われまして、執行吏はやむなくそこで執行を中止をして帰ってしまった。そうして十二日、十三日、十四日と日が過ぎて参った。その間一つも執行吏は執行に来ない、こういう状態になるわけですが、一体どうして亀井局長は第一組合が実力をもって妨害したということを言われたのであるか、そこをはっきりさせていただきたい。
○亀井政府委員 言葉が足りなかったと思いますが、第一組合側というつもりで私は申したつもりであります。
○山中(日)委員 しかし速記録から見れば、第一組合側というのではなくて第一組合と言っておる。そこでそういう状態で十四日も済みまして十五日の朝になって、しかも未明の午前五時、警察官千八百名を動員いたしまして――これは北海道の五千五百名の警察官の約三分の一です。これを十五日の朝未明動員をいたしまして、しかも朝五時はまだ早朝でありますから、第一組合員もオルグもそうたくさん来ておりません。前の日からそこへ寝てピケを張っておって、門のところに第一組合員の人がばらばらとおるだけです。そうして第一組合員にあらざるいわゆるオルグ団というものが道路の先頭におった。そこへ千八百名の警察官がいわゆる脱落したところの第二組合の人々を擁護して、実力をもってそのピケを破ったのであります。そのときに千八百名の警察官が動員されたのでありますが、そこでお尋ねしたいのはこの十五日の朝五時の執行吏の執行に際して千八百名の警察官の実力の行使は一体何の理由で行使したのか、この点を一つはっきりしていただきた
○江口政府委員 執行吏の要請による応援でございまして、民訴五百三十六条二項によるものであります。しかしながらこれは執行吏の仕事の範囲内につきましては援助してやるのでありますが、それに付随して暴行とか傷害とかいうものがあったものにつきましては、警察自身ももちろんできることでありますから、それとはみ出た事柄もございます。
○山中(日)委員 問題はそこです。実は十五日の千八百名の警察官の動員は、その前日十四日の午後九時半に執行吏から警察に向って要請のあったことは私ども承知をしております。そこで問題は先ほど来申し上げましたように、執行吏の執行の範囲というものは、第一組合員の妨害を排除するということです。それ以上は及びません。そこで私どもも現地におりまして、そういうことでトラブルが起きてはなりませんので、警察の方にも、この執行吏との間に三者立ち会いの上で、第一組合員の妨害は排除できるけれどもそれは排除できないのだから、警察の方ではこの点を十分に考えてあやまちのないようにしなければ、あとでとんでもないことが起きますよと私どもは十分に伝達をいたしました。今の御答弁によりますと、その執行の要請によって警察権を行使したというならば、その執行吏の執行権はこの主文で及ばない、つまり支持団体、そういうものを排除するというために要請がされておるわけであります。現実はそうであります。その十五日の朝は第一組合というものは全然出ておりませんから、また支持団体もおらない。それに執行するということは執行吏の越権行為でしょう。これはもう文句のないところです。対象にならないものを執行しようというのですから、執行吏の越権行為、職権乱用を警察は協力を求められたから協力したということはどういうことですか。
○江口政府委員 ただいま山中議員のお話で、十五日の日には第一組合員が全然おらなかったというお話でございますが、それは私初耳でございます。ただわれわれの解釈としては執行吏自体に対する妨害のほか、執行吏の執行に対する妨害も合せて排除の対象になるというふうに解釈をいたしております。従いまして執行吏が仮処分の決定の通りに執行しようとするものを他の第三者がそれを妨げましても、それを排除するということは執行吏の仕事に付随するものという解釈のもとに、解釈を統一してこちらの方も応援をしたわけであります。
○山中(日)委員 これは重大なことです。執行史の権限というものは第一組合員の妨害を排除するという権限しか与えられておらないのです。それは明確になっておる。ところが十五日は、私は先ほど、第一組合員は一人もいないと言ったとおっしゃいましたが、一人もいないとは言いません。第一組合員は、朝早く、五時ごろですから、門のところにばらばらっとおるだけで、ピケも張っておりません。前方におったのは第一組合員でないのですが、そこに執行吏がやってきた。ですから執行吏は、この主文で執行できない人を排除しようとしておるわけです。あなたの説明を聞いていると、その仮処分の決定というものは第一組合員でない第三者でもだれでもみんな排除できると言われたのですが、そうなんですか。少くとも裁判書というものは、裁判書に書いたところの当事者、それ以外に効力は及びませんよ。第一組合員の妨害を排除する。あなたは第三者でもだれでも、仮処分の決定で全部排除できるというのですか。
○江口政府委員 われわれと執行吏とで解釈を統一いたしましたのは、仮処分の主文の被申請人組合員の解釈でございますが、これは被申請人組合の行為として行なってはならないということであって、組合の行為として行われるものであれば、第三者であってもその対象となるという解釈をとっております。
○山中(日)委員 それではあなたは執行調書をごらんになりましたか。そんなことは書いてございません。ただ問題になったのは、この第一組合員の中に第三者が混入しておった場合はどうなるかということの解釈の統一もいたしたのであります。第一組合員の中にはかの者が混入しておる場合においては、これは第一組合員と同体とみなす、これはもっともだと思うのです。もしも第一組合員の中に、組合員以外の者が混入して一団となって妨害するというのでありますれば、これは全部排除するという権能はあると思う。けれども混入しておらないで、全然別個の団体に対してその執行吏の執行権が及ぶというあなたの解釈はどういうふうになっておるのですか。どうもあなたの解釈では納得がいかない。そういう解釈でありますならば、裁判書というものは当事者以外にどんどん効力が及ぶ、これは大へんなことですよ。
○江口政府委員 そこまでいきますと、十五日の状態がどうであったかということが、おそらく議論の一番前提になると思いますけれども、この主たる執行をやるということを妨害する限りにおきましては、やはり執行吏が、これが自分の公務だ、公務の執行だという解釈をとっておる以上、私たちはそれに対する妨害は公務執行の妨害だ、こういうふうに考えておるわけであります。
○山中(日)委員 執行吏との間に解釈の統一がされまして、しかもその間執行吏が二度にわたって交代をして参りました。そこで私どもは先ほど申し上げました通りに、この決定の主文というものは、執行吏は第一組合員の妨害しか排除できないのだ。従って警察当局は、それ以上の範囲まで解釈を拡張して執行吏が執行せんとして、それに協力を求められ、協力するならば、あなた方は執行吏の越権行為に対して協力することになる。あなた方自体の職権乱用になりますよということを、再三にわたって私どもは警告をしておったのであります。少くとも警察官というものは多少法律は知っておると思う。そういうふうに私ども前もって警告を発しておる。それなのにただ執行吏が全部妨害を排除できると解釈してやったと思うから、ただそれだけで千八百名も実力でやるというようなことは、まことに軽率なやり方ではないかと思うのですが、いかがですか。
○江口政府委員 たびたび申すようでありますが、山中議員御自身もおっしゃったように、仮処分の決定が出ましてから十四日の晩、さらにはっきりとした出動の要請でいよいよ出なければならぬということになります間に、相当法律上疑義のあります点、先ほど仰せになったような点がおもでありますけれども、その以外にも、あけなければならぬ門の個所に矢線が引きそこねてあったというような点、いろいろなことがあったようでありますが、法律上のそういうふうな疑義を払拭いたしますために、相当急ぐような事情といいますか、そういう仮処分の決定を行わせることができないということは、公共の安寧上非常にゆゆしい問題じゃないかという考え方も一方にあったろうとは思いますが、あえて警察は一週間近くの間、そういう点についていろいろな打ち合せをし、そして十四日の晩には執行吏とこういうことを打ち合せしたのみならず、組合側に対しましてもお呼びいたしまして、こういう状態になっているから、あしたは妨害があれば実力を行使するということを言い渡しをしてやっているのであります。たださっきからの御質問の中で、その日は第一組合員は何ら執行吏の執行を妨害していないという点につきましては、事実の報告と相当違いますが、それがほとんどごく一部分であり、他の者の妨害が大部分であったというような場合におきましては、執行吏の職務執行といえるかどうか問題でありますけれども、警察としましてはやはりその間に起った現実の現象が、人の生命、財産、身体に危急を告げているというふうに判断すれば、そういうこととは別に、もちろんやれるわけであります。
○山中(日)委員 あなたは現場を見ておらぬから私の言うことがわからぬかもしれぬけれども、私は見ておるから言うのです。これは警察に聞いてもわかるが、警察も私の言うことをよく聞いてくれておる。十五日の朝は第一組合員は門のところにぱらぱらおっただけなんです。そして前の晩から泊っておったオルグが出ておった。そこへ執行吏が来た。そこで組合側の代議員が執行吏に、これは違いますよ、第一組合員でございませんよ、執行吏であるあなたはこれに対して妨害排除の執行を行うことはできないじゃありませんか、と言ったら、問答無用です。そうして警察官がいきなり実力行使をしたというのが実情であります。私どもはこういうふうにも解釈しておった。それは、執行吏の要請によって出てきたけれども、警察官が執行吏の執行に協力するというのではなしに、警察官自体の判断によって、これが威力妨害になるといういわゆる警察権発動の本質に立ち戻って、独自の考えで警察権を行使したのか、それとも執行吏の職務行為を援助するために警察権を行使したのか、一体どっちなんです。こういう質問に対しましては警察の方では執行吏の要請があったので、その執行吏の職務執行に協力をするという意味で警察権を行使したと言う。ですから、そうなれば今言う通り、執行吏が対象にならないもの――第三者には及ばないのですから、それを排除することに協力したというのが、警察の私どもに対する釈明であったわけです。あなたは何ですか、そのときの執行吏の要請に対して警察が協力したことは間違いないと思っていらっしゃるのですか。
○江口政府委員 執行吏の要請にこたえて、それに協力すべく出動したことは間違いないと思います。
○山中(日)委員 そうすると執行吏の要請が違法な行為であっても、要請さえあれば何でも協力するという考え方ですか。
○江口政府委員 そうではございません。はっきりと違法であるという場合にはもちろん意味がございませんが、かりに違法でありましても、執行吏は「援助ヲ求ムルコトヲ得」ということでございますから、そのこと自身からすぐ何でも言いなりに応援をしなければならぬ、こういうふうには考えておりません。従いまして出る時期とか出る方法とかということは、十分こちらにも自主的な判断の余地がある、こういうふうに思っておるのであります。部隊の十五日の出動につきましては、やはり出るべきものだとして出たのでございまして、そしてあと、執行吏の仕事を応援したのか、あるいは警察独自の権限を行使したのかということにつきましては、先ほどからお話しになっているような事実が私の聞いております事実とは――主として第一組合のことでありますけれども、違いますので、かりに執行吏の執行の範囲というものが狭いならば、その狭い部分についての執行吏の応援であり、他はこちらの権限によってやったことだ、こういうふうに申し上げただけであります。
○山中(日)委員 どうもあなたは、私の言っていることをそのまま有利に援用しているようだけれども、先ほど私が尋ねたことに対して、警察官の出動は執行吏の要請によって、執行吏のいわゆる執行行為を援助するために警察権を発動したと言っておるでしょう。そうなんでしょう。従って、その執行吏の要請が、つまり主文を超越した越権行為です。対象にならない者を排除するというのですから、その場面におればすぐわかるのです。対象になっていない者もいるんですから、警察が見ればわかるのです。そういう執行吏の執行の対象にならない越権行為について、要請があったからといって、出るべきときには出るんだといったところで、警察権はやはり何か根拠がなくちゃならぬでしょう。それはつまり、今民訴法上の規定にある通り。執行吏の要請があったから出る、これはいいです。しかしながら、出ることは要請によって出たんだけれども、その要請そのものが裁判と違ったことをやろうということは明らかなのに、その要請にこたえるということは、私はおかしいんじゃないかと思う。あなたの頭の中にはつまり第一組合員でなくても、だれでもかれでもその執行権でもって執行できるという考え方があるから、そういうことを言うんじゃないですか、どうなんです。
○江口政府委員 私は端的に言って、山中議員も御存じのように、北海道の実力行使は、非常に無権限なことをやっている、むちゃなことをやっているものでないという確信を持っておりますと同時に、十五日の状態は、私たちに参っております連絡によりますれば、それは人数がどちらがどうだったかということは別問題として、あくまでも第一組合の阻止を突破して、第二組合員を執行吏が入れたというふうに考えておるのであります。
○山中(日)委員 その点は、幾ら押問答しても話がつきませんからやめますが、私ほこういうことが必要だと思う。今の、執行吏の職務執行を援助するためにやったのか、あるいは警察官独自の考えで警察権を行使したのか、その点は別といたしまして、警察権を行使する場合においては、この警察権の行使をと受ける側に対して、あなた方のこれこれこういうことはこういうことに違反するのであるから、よってわれわれは警察権を行使するんだという警察権行使の理由を、私は少くとも受ける側に納得させなければいかぬと思う。どろぼうをつかまえるにしても、ただ引っぱってきて、お前はどろぼうした、こういうことであってはならぬ。にもかかわらず、十五日というものは、警察が一体何のためにわれわれに対して警察権を行使するのか、受ける方はちっともわかりません。問答無用というようなことでやってくる。そういうことは一体許されますかどうですか。私どもは警察権の行使はそれはどういう見解であったかは別としても、少くとも警察権を行使する場合においては、受ける側に、お前これこれこういうことは違法行為であるから、よって警察権を行使するんだと、警察権行使の理由を相手方に説明し、納得せしめて行動すべきさものだと私は思う。十五日はそういうことはない。どういうふうにお考えになりますか。
○江口政府委員 その納得はなされなかったので出られたものとは思いますけれども、十四日の晩に、苫小牧署としては、組合の代表者を呼んで、あしたはこれこれの理由で出動して実力行使に入るということを言っていたはずでございます。
○山中(日)委員 実力行使をする理由は、十五日の執行吏の要請の場合においては、全然ないのです。ただ要請があったということなんです。私はそれを突きとめた。なお私どもはその前に、もういつまでもこういう状態を続けておるということでは不祥事が起きますから、組合の方でも適当なときには何とか円満に解決しなければならぬだろうというふうに、組合の人にも話をし、また警察の方には、実力を行使するということになると、いろいろ解釈上の問題もあるし、主文の解釈の問題もあるから、そういうときには私どもは現地におりまして、警察の方にも協力すべきは協力するから、われわれに話をしてもらいたい、よろしゅうございます、ということは、私ばかりじゃない、十数名も立ち合いのもとに約束をした。にもかかわらず、そのことは一つも私の方に話はありませんでした。それはいいです。けれども、その執行吏の要請というのは、十四日の晩の九時五十分ごろです。みんなもう疲れて帰ってしまったときです。そういうときに組合の代表一人を呼んで、執行吏の要請がありました、あした実力行使します――その行使する理由は、暴力だとか何だとかいう、そういう説明は全然ありませんよ。ただ、執行吏の要請がありましたから、あすは実力行使します、それだけの話です。それを聞いて帰って、どうして朝の五時までの間に、組合の幹部が組合の人を集めて、いよいよ執行に来るんだがどうしようかと言うて、相談をする間があるのですか。できないじゃないか。晩の九時五十分ごろにちょっと呼んで、形式的に、執行吏の要請がありましたから、実力行使しますよと言って、夜明けの五時ごろやってしまうということは、一体どういうことか。こういうことが民主的な警察のやり方かどうか、私は疑問に思う。最近警職法の問題が問題になっておりますけれども、このように執行吏の越権行為が明らかであるにもかかわらず、それも独自で越権行為でないと判断して、こういう実力行使をする。こういうことは、今度の警職法の改正の問題とからんで、私どもは人権じゅうりんに大きな影響を来たす問題だと思っておる。一体、十四日の九時五十分ごろにそれだけの話をしたというだけで、朝五時ごろ――組合の幹部がピケを張っている人たちに、実力行使をされる理由を説明する時間も何もない。こういうやり方についてはどうか。
○江口政府委員 先ほどからおっしゃるように、どういう意味で実力行使をやるかということを説明して、納得を求めることができるならば、これが一番いいわけでございますけれども、相手方にそのことを納得させるということは、必ずしも実力行使の前提ではございませんので、私は十五日の実力行使につき、十四日に十分組合側の方にはこちらの意思を通じてあったという北海道警察の連絡を受けて、それは適宜な措置であった、こういうふうに考えておったわけであります。
○山中(日)委員 まあ納得ということになりますと、それは相手方がよくわかりましたといって承認したということまでにはいかないにしても、私は少くとも説明は必要だと思う。あなた方の行為はこれこれこういうことであって、これは刑法上こういう罪にもなるんだ、また職務の執行を妨害するとこうなるんだから、よってこうするんだというようなことを十分に説明をされて、そしてその説明を受けた執行部が、あれだけの人が殺気立っているときですから、実はこういうわけで実力行使をするんだということをみんなに説明して、そうして警察権の発動の理由を知らしめる機会を与えないということは、私はひどいじゃないかと思う。その点はどうですか。そういうやり方でいいんですか。
○江口政府委員 先ほどから何べんも申し上げるように、そのことは非常に望ましいことでありますけれども、いろいろな情勢の判断なり、あるいは時間の切迫等でそれができないということも、もちろんございます。執行法の話が出ましたけれども、やはり第一次的にはそういう場合には警告をして、警告が聞かれずに時期が切迫したというときに、実力的な制止ということにいくのでありますから、原則としては、おっしゃる通りにもちろんやるべきだ、こういうふうに思っておりますが、北海道のこの場合、それに当てはまっていないかどうかということにつきましては、あるいは見解の違いがあろうかと思います。
○山中(日)委員 見解の相違じゃないのでありまして、私は事実を述べておるわけですが、じゃ最後に、先ほど私が朗読いたしました二十六日の労政局長の答弁の中に、第一組合がこれに強力に妨害をしたということを指摘しておるのでありますが、この事実は絶対にないわけです。そこでこういう発言を取り消すお考えがあるかどうか、これを一つ承わりたい。
○亀井政府委員 先ほども申し上げましたように、私どもとしましては、第一組合側という意味で答弁をしたつもりでございます。ただその場合に、絶対に第一組合がいなかったかどうかということにつきましては私らとしまして、確実に北海道の労働部からの情報が入っていなかったわけでございます。この点につきまして、必要がありますれば、もう一度確認の報告をとりたいと思っております。
○山中(日)委員 最後に一つ。お調べになることはけっこうですけれども、第一組合というのはそれは現場にはおります。けれども問題は、この妨害排除の際に第一組合員が妨害したかどうかということなんです。それはあれだけの争議ですから、第一組合の人は団結のはち巻をしておりますよ。けれどもそのピケ――いわゆる妨害というのはピケのことを言うと思います。そのピケ、第一組合員が執行吏の執行を実力をもって妨害したという事実はないのです。全然ない。ですからこの文章からいけば、また労働大臣の閣議の発言が新聞に報道されました、その新聞紙上から受ける一般国民の印象から言いまするならば、王子の労働組合、つまり今の第一組合が執行吏の執行を実力をもって妨害した、こういうふうにあなた方は認識しておられると思う。また世間も、労働大臣の新聞紙上の発表やこういう速記録を見ますると、みなそう思います。とんでもないことであります。裁判所の命令に対しても、第一組合というものはこの通り妨害する、法治国民としてあるまじき行為である。なるほどそう思うでしょう。しかし事実はそうではない。第一組合員は執行吏を実力で妨害しておらない。こういう事実はきわめて重大なことなんです。ですからこれは取り消さなくちゃいけません。どうですか、その点は。
○亀井政府委員 ただいま申し上げましたように、私らの受けました報告の中で、第一組合員が入っていないという明確な連絡はなかったわけでございます。私もそのときに第一組合というお答えをいたしましたけれども、その趣旨は第一組合員側――私が炭労なり国労の組合員がオルグ団として現地におりまして、ピケその他に参加しておりますが、前からの情報で承知しておりますので、そういうものも含めまして、第一組合側という趣旨の御答弁をしたつもりでございます。ただ言葉足らずにそういうことになったわけであります。そこで先ほど申し上げましたように、現実に第一組合員がその場に実力をもって完全に阻止の態度に出たかどうかということにつきましては、もう一度現場につきまして調査、再確認をしてみたいと思います。
○山中(日)委員 それでは一つお調べを願いたい。もしも現実に第一組合員がこの執行行為を実力をもって妨害したという事実がないということが明らかになった場合においては、この言葉は非常に誤解を招きますから、これを訂正するお考えがありますか、調査の結果でいいです。
○亀井政府委員 調査の結果どういう形になりまするか、どういう報告が参りまするか、その結果におきまして判断したいと思います。
○園田委員長 滝井義高君。
○滝井委員 王子製紙の争議、日本の労働史上に非常に大きな問題を残しておる争議でございますが、私は通産省の繊維局の方に来ていただきまして、ちょっとその製紙関係の需給の見通しについて少しくお尋ねしておきたいと思います。
 それは御存じの通り、王子製紙が少くとも新聞用紙の三割の生産をやっております。上質紙の二割を生産しておる。こういう天下に有名な会社なんです。それだけに日本の資本家のバック・アップも強い会社であるという認定が、そういう点からも出てくると思うのです。従って私は通産当局に尋ねたいのですが、現在日本における新聞用紙の生産と、それから販売と在庫の動きというものは、どういう動きを今王子製紙がストライキに入って以来示しておるかという点をまず御説明願いたい。
○古河説明員 概略的に申し上げますと、新聞用紙の需給上、今直ちに混乱が起るというような実情にはないようでございますけれども、ただ私どもといたしましては、新聞用紙の非常に大事な使命を持っているという点にかんがみまして、新聞用紙のメーカー側と、それからまた新聞用紙を用います需要者側と常に連絡をとりまして、需給上に混乱が起らないように十分注意している次第でございます。
○滝井委員 私がお聞きしたいのは需給関係に心配のないようにされているということでございますが、この生産と在庫の動きは一体どうなっているかということをお聞きしたいのです。
○古河説明員 この七月になります前の状況でございますが、その場合には大体生産といたしまして、一億一千四百万から七百万の間を行き来していたように思います。その場合の消費でございますが、大体平均いたしまして一億五百万ポンドないし一億八百万ポンド、これが消費の工合ということでございまして、大体在庫が六月でもって八千五百七十万ポンドくらいございました。それが影響を受けまして、最近になりますると、八月では生産が約八千七百万ポンド程度、それから払い出し、つまり消費でございますが、これが一億九百万ポンド、その際の在庫が大体四千五百万ポンド程度でございました。それが大体八月ごろの状況でございましたけれども、現在の数字というのは、今ちょっとつかめませんので申し上げかねますけれども、九月の推定で申し上げますと、九月末の在庫が、大体一般的に推定されております数字といたしましては約三千四百五十万ポンド程度ということに相なっております。
○滝井委員 そうしますと、現在王子製紙のストというものは非常に長期化の傾向を強くいたしております。経営者側も世論がどうあろうと、世論がいかなる非難を経営者に加えようと、第一組合の指導方針が変るまでは徹底的にたたいていくということを会社の首脳も言っております。そうしますと、今の六月以降における在庫の動きを見ると、急激に減っております。しかも生産は一億一千万台を続けておったものが、これが八千七百万ポンドと、二千万ポンド以上生産が低下しております。消費は依然として一億をこえる状態です。そうしますとここ一、二カ月すれば在庫というものは底をりくことは目に見えているのです。そういう見方が成り立つと思うのですが、通産省の見方はどうですか。
○古河説明員 これは非常にむずかしい問題でございまして、今私どもといたしましても慎重に成り行きを検討しておりますけれども、ただ申し上げられますことは、こういう現象が起っております。と申しますの、今まで新聞用紙をすく設備を持っておりましたけれども、十分に稼動していなかったメーカーがございます。そういったメーカーがそういう設備を動かしまして今までよりもよけいに生産するというような現象、そういったものもございますので、全体としてはもちろん減っておりますけれども、そういった別の面でのプラスというものがございます。それに現在ございます在庫というものは、大部分もちろん王子の苫小牧以外のものでございます。そういたしますと、かりに在庫の中で占めます苫小牧の割合が非常に多い場合と少い場合と比較いたしますと、苫小牧の在庫が少くて、あるいは全然なくて、しかも在庫の数量が王子の場合が含まれておる場合よりも少いというような場合におきましては、輸送等の関係で割に簡単に工場から消費者へ行くという面がございますので、何とかやりくりという面については考えられるということでございます。
○滝井委員 王子製紙がストライキをやり始めて、そうして今まで休んでおった手持ちの機械が動くことによって一体どの程度の生産がカバーできるのか。これはわかっておるはずだと思いますけれども……。
○古河説明員 先ほど申し上げましたことしの六月の生産が一億一千四百万ポンド程度でございますが、その中で王子の苫小牧が実際に生産しました数量が約三千万ポンドでございます。従いまして一億一千四百万から三千万を引きますと、これで約八千四百万ポンドとなります。それでしからば九月の生産はどうかと申しますと、まだ確定した数字はでき上っておりませんが、九千万を少し出ておるのじゃないかと見られております。そういたしますと、その幅といたしましてはおそらく六百万あるいは七百万、場合によりましては八百万くらいというのが、その後の今まで動いてなかったあるいはまた動いていたけれどもそれにブラスいたしまして作り上げた数量でないか、こういうふうに見られます。
○滝井委員 王子製紙がストに入って以来、六百万ポンドないし八軒万ポンド新しい生産が出てきたということでございます。そうすると、現在王子製紙の第二組合が最近製品を出し始めたということがいわれておる。これは一体どの程度の生産ができておるのか。聞くところによりますと、第二組合というのはほとんど職員であって、とてもその紙はものの役に立たぬだろうといううわさもあるのです。これは一体ものの役に立ち、いわゆる八千七百万ポンドの八月それから九月の九千万ポンド、こういうものにどの程度寄与しておるものなのか。今ストの以後六百万ないし八百万増加したというのですが、この第二組合が作っておる紙というものは新聞用紙として役立つものだと思います。第二組合には賃金を払う、働かなくても払うそうですから、役立たない紙をまさか企業が金を捨てて作るはずはない。そうすると八百人ばかり就労しておるのですが、どの程度のものが出ておるか伺いたい。
○古河説明員 第二組合が入りまして作りました新聞用紙につきましては、私どもは新聞用紙として使い得るものであるというふうに聞いております。
 それから、しからばどの程度それが出ておるかということでございますが、九月十六日に操業を再開いたしましたよしでございますが、その場合大体日産にいたしまして二十万から二十二、三万ポンドという報告を受けております。
○滝井委員 日産一十万ないし三十三万程度だそうでございます。そうしますと、王子製紙が争議のために減産をした分は、新聞等の報道によりますと、十条製紙や本州製紙等がある程度肩がわりをして、増産に精を出しておるということを新聞でも見たことがあるのです。今言った六百万ないし八百万ポンドのいわゆるカバーされる分は、十条や本州製紙が主たるものなんですか。
○古河説明員 仰せの通り、そういう面もございますが、そういう十条とか本州以外のものも入っております。
○滝井委員 その名前は聞かなくてもいいと思います。そうしますと、もしストライキが終結をして、王子製紙の生産が再び元通りの順当な生産を繰り返す段階がやって参りますと、そこに当然これは相当能率を上げて紙を作らなければこれは損をすることになりますので、相当のやはり設備資金その他が投ぜられると思うのです。新しく六百万ないし八百万ポンドの紙を作るとすれば、新しい設備費というものが投ぜられる。そうしますと、そこにその後に起る、いわゆる王子製紙の争議が妥結した後における新聞用紙の過剰生産、過剰設備の問題というものは通産省は考えられておりますか。
○古河説明員 今先生のおっしゃいました中に六百万ないし八百万ポンドの新聞用紙を作るにはまたよけいな金がかかるのじゃないかということがございましたけれども、現にございます設備を使いまして作っておるのでございます。つまり今まで設備はございましたけれども、フルに生産していなかった面を、今あります設備でもってやります。その幅が六百万ないし七百万ポンドぐらいであります。
○滝井委員 そうしますと、六百万ないし七百万ポンドの紙を作っておるが、王子製紙の争議が解決した後においては、それらの製紙会社には首切りとか、またそういう王子製紙とは違った形の労働問題が起ることはないか。全く今まで休んでおったものが倉庫から、悪い言葉で言えば古い機械が引き出されて回転を始めた、こういうことなんですか。まさか私はそういうことはちょっとできかねるのじゃないかという感じがするのですが……。
○古河説明員 先生の御指摘のように、新聞用紙をすきます設備は非常にこの一年間において増加したということは確かにございます。ただ新聞用紙をすきます機械と申しましても、新聞用紙だけをすけるのじゃございませんで、その他のいわゆる下級紙と申しましょうか、そういうものもすけるわけでございます。従いましてそのときの需給によりましてそういう操作は可能である、こういうふうに考えております。
○滝井委員 労働大臣にお尋ねをしたいのですが、今お聞きのように、新聞用紙だけに私は時間の都合上一応限りました。そのほかに王子製紙では上質の紙を作っております。これは全国生産の二割を背負っておったと思うのです。今通産省の方から在庫なり生産の動きについて御説明をいただきましたが、この実態は私は通産省が考えておるほどそう甘いものではないと思います。もしこの争議が今後なお相当長期にわたるとするならば、新聞のページを相当減らさなければならぬというような事態が起る可能性をはらんでおる問題だと私は思います。そこで私はこういう生産の実態から考えて、一つの大きな矛盾が会社の態度の中に現われておるのを発見することができるのです。それは、今山中委員と江口局長との間にいろいろ論議をせられておりましたいわゆる仮処分の申請です。会社は仮処分を申請して、そして第一組合のいわゆる妨害を、ないものを、排除するという形で強行な就労をやってのけたわけです。それは何によって強行の就労をやってのけたかというと、いわば法の秩序によって、警察に守られて、そしてやってのけたのであります。ところがそのやってのける過程は、裁判所がこの事態は緊急であるということで、いわば仮処分の申請を認めたわけなんです。一方会社は、そういうように事態はどうしてもこれは就労してやらなきゃならぬという、そういうやむにやまれぬ気持で仮処分をやり、裁判所はそれを認めて、そして法の秩序という名のもとに、警察権を背景にしながら、いわゆる第三組合が就労して、今一日二十万ないし三十三万ポンド作っておるわけです。ところが一方においては、会社はどういう態度をとっておるかというと、中労委があっせんをやったときに、自主的にわれわれは解決するんですといってあっせんを拒否しているということなんです。この会社の態度というものは私は矛盾していると思う。一方において仮処分までして、緊急に仕事を始めなければならぬという意欲があるが、一方においては中立の機関であり、公正な天下の機関である中労委が、一つ話し合って何とかまとめようじゃないかというにもかかわらず、それを拒否している。そして世論が何と言おうと、第一組合の方針が変らぬ限りはだめだ、やります、こう言っておるのです。この態度というものは、私は、会社が自主的に解決をすると一方に言っていながら、一方は裁判所にお願いして就労させるという態度は矛盾をしていると思うのです。企業というものが天下の公器であり、大臣もさいぜん言われたように、少くとも企業というものは公共性を持っておる。こういう観点に立つと、今の会社の態度というものは受け取れないと思うのです。北海道の新聞はこういうことを書いておる。今の労働省と今の日経連というものが強く会社を支持しておるために、会社は中労委のあっせんを拒否しているんだということを言っておる。私は労働問題ではしろうとです。しかし客観的に、黙って労働大臣なり労政局長のこの揚における答弁を聞いておりますと、どうもやはり労働省は痛くもない腹を疑われても仕方がないんじゃないか。今までの労働省当局の答弁とは、この王子製紙に関する限り非常にニュアンスが違っておる。腹の中を見せないという答弁の仕方をしておるような感じがするのです。この点について、会社の態度については私は矛盾があるし、労働省も何かそこに奥歯にもののはさまったようなものの言い方、そういう態度のニュアンスが見えるのですが、こういう二点について、率直に一つ大臣の態度を表明していただきたい。
○倉石国務大臣 日経連は知りませんが、労働省は会社側を援助して、あなたのお言葉によれば、争議を長引かせるというような、北海道の新聞が書いているような、そういう意思は毛頭持っておりませんし、今まで労働省の労政当局がこの問題については、原則として個々の民間産業の争議に介入することは、労働組合に対しても経営者側に対してもわれわれはなすべきものでないと考えておりますから、やっておりません。ただなるべく早く事態を収拾してもらうようにということの注意はいたしております。そこで中労委が事情聴取をやったその報告も聞きましたが、どうも情報を聞いてみると、なかなかむずかしくて、出るべき段階ではなかったというふうなことを一応聞いてはおりますけれども、中労委があっせんをして、そしてまとめてくれることができるならば、これはまことにけっこうなことであります。
 それから今の公共性、ことに新聞用紙というふうなものを営んでおる、そういう製品の面からも公共性がございます。私が公共性と言っているのは、経営者、経営者を組織している多数の株主、それからそこに従業している労働者、これだけが自分たちの自由な意思で企業というものを運営をし、その利潤を処分するという考え方は間違っているのではないか。やはりそういう企業が存在しているというのは、目に見えぬ他人の努力もあり、見えざる陰の力もあるのでありますから、そういう点で企業家及びその事業に携わっている労働者諸君というものは、やはり企業の公共性というものを考えてもらい、生産性の向上などで出てきた利潤の分配というものは、まず第一に一般大衆の恩典に浴せしめて、それから労働者と経営者が分配する、こういうふうな考え方が今だんだんと出てきております。そういう意味において企業家が公共性を感じてきているのはまことにけっこうだ、こういうことを私は言っておるのでありまして、もちろん王子の争議が早期に解決することは望ましいのでありますが、前々から申しておりますように、自由企業のもとにおいて行われている個々の産業の労働争議についてわれわれがとかくの意見を述べ、干渉がましいことをすることは差し控えなければならない、こういうふうに考えております。
○滝井委員 一方においては裁判所に強行就労を頼んでいる、一方においては中労委があっせんしましょうと言っているのを拒否する、こういう態度は明らかに矛盾しているんですよ。あなたの方で出した団結権、団体交渉その他の団体行動権についてというあの労働次官通達、これは評判が非常に悪かった、われわれも反対だったが、あの通達の中にはロックアウトが発生しまたは発生せんとするときは争議を調整して早く解決をはかれ、こういう意味のことをいっている。安定した労使関係が確立していなければ、争議を労働委員会の調停に持ち込めということをあれはわざわざうたっている。そうして高い印刷代をかけて、本にまでして全国に出しておるのであります。ところが少くとも紙に関しては天下のチャンピオンと言われる王子製紙の問題になると、頑としてあなた方はからの中に閉じこもるような姿で、どうも不当労働行為についても倉石さんに似合わない明確な答弁がここで言えないということでは、疑われても仕方がないということになる。私はしろうとですけれども、客観的に見ると、どうもそういう感じがする。こういう問題についてはもう少しざっくばらんに――もう百日もかかって、そうしてお互いに泥沼で血みどろの戦いをやっているというのならば、何かそこに公平な立場に立ってこれを打開してやる方向に動いても、これは私は中立の立場で動くならばちっとも差しつかえないと思う。干渉すれば悪いかもしれない。いわゆる干渉というのはこの中に入っておせっかいをやく干渉です。そうじゃなくて全く中立の立場で、いわゆる労働省設置法第三条の精神によっておやりになるということならば、私はそれは当然だと思います。今後労働省は一つカタツムリがからの中に閉じ込もったような姿でなくして、目を出せやり出せ、角を出して下さい。そうしてもっと、北のはるかの北道海であるけれども、客観的な情勢をよくにらんで、そしてあなた方が積極的に動かなければ、十分中労委の会長とも御相談になって、中労委から動いていただくことも一つの方法だと思うのです。もっとからから出て、こういう事態の打開のためにやることが、私は労働省設置法三条の精神だと思うのです。そういう点についてぜひ大臣なり労政局長の積極的な御考慮をお願いしておきます。これは答弁は要りません。
○園田委員長 次会は来たる三十一日火曜日、午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後六時一分散会