第031回国会 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第8号
昭和三十四年六月十日(火曜日)
    午前十時五十三分開議
 出席委員
   委員長 早稻田柳右エ門君
   理事 鍛冶 良作君 理事 古川 丈吉君
   理事 高橋 禎一君 理事 南  好雄君
   理事 島上善五郎君 理事 山下 榮二君
      岡崎 英城君    高橋清一郎君
     橋本登美三郎君    服部 安司君
      村瀬 宣親君    柏  正男君
      小松  幹君    阪上安太郎君
      滝井 義高君    土井 直作君
      中井徳次郎君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣 青木  正君
 委員外の出席者
        警  視  長
        (警察庁刑事局
        長)      中川 董治君
        総理府事務官
        (自治庁選挙局
        長)      松村 清之君
        総理府事務官
        (自治庁選挙局
        選挙課長)   皆川 迪夫君
        総理府事務官
        (自治庁選挙局
        管理課長)   桜沢東兵衛君
    ―――――――――――――
五月二日
 一、公職選挙法の一部を改正する法律案(内閣
 提出第一八号)
 二、公職選挙法の一部を改正する法律案(島上
 善五郎君外六名提出、衆法第一八号)
 三、政治資金規正法の一部を改正する法律案(
 島上善五郎君外六名提出、衆法第一九号)
 四、公職選挙法改正に関する件
の閉会中審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 公職選挙法改正に関する件
     ――――◇―――――
○早稻田委員長 これより会議を開きます。
 公職選挙法改正に関する件について調査を進めます。
 本日は、過般統一して行われました地方選挙及び参議院通常選挙後初めての委員会でありますので、主としてこれらの選挙を通じて現われました公職選挙法の改正点及び選挙の管理執行上の問題等について政府当局に質疑を行うことといたします。質疑の通告がありますので、順次これを許します。
 島上善五郎君。
○島上委員 私は実は岸総理大臣にぜひ伺いたいと思っておりましたが、どうしてもお見えにならないそうで、岸総理大臣に伺いたい点は保留しておきたいと思います。
 そこで青木自治庁長官にお伺いしますが、先般のいわゆる統一地方選挙、及び引き続いて行われた今回の参議院議員選挙、この状況を見ますと、非常に遺憾なことではありますが、これほど公然と選挙法が無視され、悪質な選挙違反がたくさん行われた選挙は終戦後かってない、私はそう思います。今それを裏づける数字的なものはここには持っておりませんけれども、私どもも調査をしておりますし、いずれその資料も提出してもらおうと思っておりますが、いずれにしましても今度ほど金に汚された選挙であったという点と、選挙法そのものを無視して行われた選挙運動であったという点は、あらためて数字を出さぬでも、これははっきりしていると思う。終戦後最大の違反の行われた選挙であり、終戦後最も金に汚された選挙であり、そして選挙法を頭から無視した選準運動であった、こう断定して差しつかえないと私は思う。この点に対して、まず自治庁長官はどういうふうに見ておられるか、お考えを承わっておきたい。
○青木国務大臣 先般行われました地方選挙並びに参議院選挙の姿につきまして、島上委員からのお話であります。私ども卒直に申し上げて、地方選挙がその前の地方選挙に比べまして違反の件数が非常に多かったこと、また警察側が警告した件数も非常に多いのであります。参議院選挙におきましては、今までのところの数字では、前回に比べまして違反の件数は若干下回っておるようであります。しかしながら、地方選挙と両方通じまして違反の件数が多く、あるいはまた、選挙法無視の傾向が強いというような一般の世評のあることも、私どもも率直に認めざるを得ないのであります。われわれは、選挙の過程におきましては、いやしくも公職選挙法という法律によって選挙を行わなければなりませんし、その法律が存在する限りにおいて、これはあくまでも、そのル―ルを守って選挙をやるべきものであることは言うまでもないのでありますから、公職選挙法の規定をあくまでも順守すべきことを各方面に強く要望もし、そういう意味で警察当局も取締りに当り、また両党当局におきましても、そのためにああいう委員会まで設けて、選挙法の徹底をはかったのであります。私どももそれに呼応いたしまして、選挙法の厳正な執行という点に重点を置いて参ったのであります。しかしながら、選挙の途中においてそういうことを言うことは、私どもは厳に慎しんでおったのでありますが、冷静に判断いたしまして、現行選挙法の中で、非常に不自然なというか、守りにくいという点のあることも否定できないのであります。従いまして、選挙の途中におきましては、あくまでも現行選挙法を守らなければならぬという線で私どもはやって参っておったのでありますが、反面におきまして現行選挙法における不備の点、あるいは不自然な点、あるいは無理な点、そういう点があるとするならば、これは次の選挙の機会までに直すべき点は直すようにすることが当然のあり方ではないか、われわれはそういう考えのもとに、選挙の期間中、関係各方面に対しましても、そういう点について十分検討すべき点があるならば、そういう心がまえで十分注意して、将来のために検討をしておくべきであるということは注意を促しておいたのであります。しかし、いずれにいたしましても、私どもは、現行選挙法のもとに行われなければならぬ選挙が汚されたという点につきましてはまことに残念に存ずるのでありまして、そのことはそのこととして、われわれは謙虚に、違反のあったことについて深い反省をしなければならぬと存ずるのであります。しかしそれとは別に、将来の問題として選挙法の不備の点につきましては、これはまたお互いに検討して、そうしてりっぱな選挙法を作るということに今後最善の努力を傾けていかなければならぬ、かように考えておるわけであります。
○島上委員 現在の選挙法が完璧なものでないことは、私どもも認めておる。ですからこそ社会党も、一部ではありまするが、選挙法改正の法律案を出して現在継続審議になっておる。政府からも出されて、継続審議になっております。しかし、それにしたところで、現在法律というものが厳存している以上は、選挙運動をやる者はその法律に従ってやらなければならぬことはもちろんだし、取り締る方も、その法律に従って取締りをすべきだと思う。しかるに、総理大臣みずからが法を破って平然としておる。これは総理大臣にあとで聞くことですけれども、選挙法は守れるような法律にしなければならぬ、選挙法改正に関してこういう談話を発表しています。選挙法であれ何法律であれ、守れる法律でなければならぬことはもちろんですが、そういう言葉を、裏返しすると、現在の選挙法は守れないのだ、守らなくてよい法律だというように多分にとれるのです。おそらくそういうことが腹の中にあるからこそ、総理大臣がみずから平然として選挙法を破っておるのだと思う。パレードでも五回も六回も注意されて、注意された後もまだやっておる。注意したということは、選挙法違反の疑いがあるから注意したと思うのですが、それについてその後どういう調査をされたか、どういう結論に達したか、一つ伺いたい。
○青木国務大臣 岸総理が選挙法を守れる法律にしなければならぬということを言ったことにつきましての総理のお考えは、おそらく一般論として申したことと思うのであります。お話のように、選挙法が厳存する以上、それを守らなければならぬということは、総理といえどもその点についてほかの考えを持っているとは、私どもも考えていないのであります。そこで問題は、そういう違反の事実があった場合どうかというお話でありますが、言うまでもなく、総理大臣であるからといって特別の態度、処置をとるべきものでない。総理大臣だからといって特に重くすることもおかしいでありましょうし、また軽く見るということも妥当でないことは言うまでもないのであります。ただ私は、この機会に私の信念を率直に申し上げておきますが、現行警察法というものが改正されたときに、公安委員会の中に公安委員長として党出身の閣僚が入ることになったのでありますが、しかしそのことが警察の中立性を侵すことになってはならぬということは、法案の審議の過程において最も強く論ぜられたのであります。そういう法律の審議の過程からばかりでなく、法律そのものの考えからいたしましても、党人である国務大臣が国家公安委員長というポストにおる、そのことのために警察の中立性が侵されるということが万一にもありましてはゆゆしきことになりますので、私は警察の中立性をあくまでも守るという線を堅持するために、他の犯罪におきましてももちろんそうでありますが、特に選挙の問題等につきましては、私といたしましては、あくまでもそれぞれの警察法の定めるところによって、その地域々々の警察本部長の全責任において、公正なる判断のもとに厳正に法律を適用するというあり方でなければなりませんし、それに対しまして私どもが何らか影響力を与えるということがあってはなりませんので、私は、そういう問題につきましては、法律の建前を強く堅持いたしまして、現地のそれぞれの責任当局の処断にまかしておったのであります。従いまして警察といたしましては、いろいろ選挙違反の疑いがあった場合、法に照らしまして警告もし、また違反として摘発すべきものがありとすれば、法に従って摘発するということで処置して参ってきたものと確信いたしております。そういうきわめて現実の、具体の問題につきましては、従いまして私は詳細には承知しておりませんし、また承知することを私はむしろ避ける立場におったのであります。むしろ警察当局にお聞き願った方が適当と考えるのであります。
○早稻田委員長 島上君、中川刑事局長が来られることになっておるそうであります。
○島上委員 それでは、今の問題の後段については、警察庁の刑事局長が来ましてから伺います。
 それから、今度の選挙を通じて、現在の選挙法に不備な点があるということは私どももわかったのですが、すでにこの選挙法の委員会で継続審議になっておる案件もあるし、小委員会を作って一つ党利党略にこだわらず話し合ってみようではないか、選挙法改正について十分検討してみようではないか、こういうふうになっておるのですが、政府及び自民党は、ときどき最近新聞で、選挙法改正の一方的な宣伝をやっておるという傾きがあるのです。せっかく国会でそういうふうに政府からも、社会党からも出されており、さらに小委員会を作って検討しようということになっておるのに、それを無視して一方的に宣伝するというような傾きが強いのですが、この国会の申し合せに対して、あるいは国会の審議の進行状況に対して、自治庁長官はどういうふうに考えていますか。どうもこれを無視しておるというふうに思えるのです。選挙法は改正しなければならぬ点がたくさんあるにしましても、これは絶対にというわけにいかぬだろうけれども、努めて党利党略を離れて国民の声も聞き、選挙運動の経験にも徴して、公正な改正をするという気持で今後進めませんと改正が改正にならぬと思う。そういう点に対して自治庁長官はどういうふうにお考えですか。
○青木国務大臣 選挙法改正に対する自治庁としての立場、またどういう考えかという御質問であります。私といたしましては、こういう機会を与えていただきましたことは、率直に言ってまことに感謝にたえないのであります。この機会に私の考えと申しますか、現在の、どうするかという心がまえにつきまして率直に申し上げまして、その考え方に間違いがありましたならば、また足りない点がありましたならば十分御忠言も承わりまして、一つ相ともにりっぱな選挙法を作ることに全力を尽して参りたいと存ずるのであります。
 まず冒頭に申し上げたいと存じますことは、今お話もありましたが、選挙法というものは政党が最も深い関係を持っております。また、管理する自治庁も、十分な責任を持たなければならぬことは言うまでもありません。また警察も、取締り当局として十分関心を持たなければならぬことは言うまでもないのでありますが、しかし、何と申しましても選挙法というものは、これは民主政治の基盤であり、国民みんなでやることなんでありますので、政党なり、あるいは一部の官庁、そういうものだけで考うべき問題ではないのではないか。むしろ選挙をやるのは国民なんでありますので、国民の各層が、自分たちの選挙としてどうすればりっぱな選挙ができるかということで、お互いに考える必要があるんじゃないが。あるいはまた、新聞等におきましては選挙についていろいろ批判をいたしておりますが、批判する立場にある新聞社等におきましても、単に批判するということだけでなしに、自分たちの選挙として新聞社あるいは評論家等の方々も、一つ一緒に考えようという気持でこの選挙法の改正という問題を取り上げていく必要があるんじゃないか、こういう基本的な考え方を持っておるのであります。
 そこで自治庁の立場からいたしますと、そうはいたしりましても、だれかあっせん役がいなければならぬ。どういう点に改正の必要があるか、またどういう点に問題があるか、そういうことにつきましては、自治庁が選挙の管理の立場にある役所としてまず問題点を取り上げること、あるいはまた検討するに当っての必要なる資料を集めること、そういうことは当然自治庁がやるべきことと考えますので、選挙の前からでありますが、私は自治庁の当局にそのことを話しまして、地方選挙、参議院選挙を通じて、いろいろ問題点等につきましては十分その心がまえで問題点を検討しておくことと、それに対する結論は、これは自治庁が直ちに出すべきものでありませんが、少くともどういうところに問題があるかという問題の所在点は、自治庁なり警察庁等におきましても十分検討しておくようにということを事務当局にも内々申しておったのであります。そこで選挙が済みましたので、私の考えといたしましては、問題点――まあ私どもの考えておる問題点、あるいは近く出てくるであろうと考えるのでありますが、選挙管理委員会の方面で問題としておる点、あるいは警察で問題としておる点を取り上げまして、これにつきまして衆議院の委員会なり地方制度調査会なり、そういう公的な機関でいろいろ御審議を願う前に、その前提として自治庁で十分な資料を集める必要があると考えるのであります。そういう意味で問題点をまず発見し、その問題点につきまして、たとえば言論界方面の御意見、あるいはまた評論家の方々の御意見、あるいは学者の方々の御意見、あるいは産業界の御意見、こういうものを自治庁として十分聴取いたしましてそういう資料を一応整理し、取りまとめまして、それからどう改正すべきかという点を検討していく必要があるんじゃないか。その場合におきまして、私は前にもいろいろな機会にお願いいたしたのでありますが、衆議院におきましては公職選挙法特別委員会という特別な機関がありますので、この委員会におきましてもできることならば小委員会等をお設け願いまして、ここで十分御検討を願う。その御検討を願うに当りまして、私どもが集めました資料等もできるだけ御参考にしていただきまして、役所は役所、国会は国会というばらばらな形でなしに役所も国会もあるいは民間人も協力してどうすれば日本の選挙法のいいものができるか、こういうことをやっていく必要があるのではないか。なおまた政党関係につきましては、衆議院では公職選挙法という、衆議院の機関として御審議を願うが、これとはまた別に、もっと自由な立場で、あるいは両党間の公明選挙のための委員会ができておりますので、そういうところで御審議を願う。また一方におきましては、公職選挙法のための選挙制度調査会ができておりますので、そこへかける必要があるとするならばその問題をかけて、選挙制度調査会の御意見も聞く。ただしかし、たとえばざっくばらんな話を申し上げますと、ポスターを何枚にするかとか、あるいは連呼をどうするか、こういうものを選挙制度調査会にかけるようなこともどうかと考えられますので、こういうものはむしろそういうところにかけずに、両党間、あるいは衆議院の委員会等におきまして十分御検討を願うという行き方が正しいあり方ではないか。しかしそれにいたしましても、単に役所が選挙法を直すというような考え方でなしに、これはあくまでも国民、みんなしていい選挙法を作るというあり方でやっていく、そうして最終的にきめるのは言うまでもなく国会でありますので、国会の委員会におきましても十分御検討を願う。しかし御検討を願うに当りましても、自治庁としてこれは当然準備と申しますか、やるべきこともやらぬで、ただ一切国会におまかせするというようなことであってはなりませんので、われわれとしてはそういうための資料を十分集めること、また各方面の意見を聞くというようなことをやっていきたい、かように今考えているわけであります。
○島上委員 広く国民の意見を聞いて改正するということは、これは当然であるし、けっこうだと思います。しかし、広く国民の意見を開いた形を選挙制度調査会を通じてとっているわけですが、私は選挙制度調査会に対するたとえば人選等につきましても、政府のやり方は非常に片寄っていると思う。政府の都合のいいような人選をしている。たとえば小選挙区制を諮問するときも、小選挙区制に賛成しそうな人を大部分集めている。これは否定することのできない事実です。反対の者は一人か二人、刺身のつま程度に入れておりますけれども、十人のうち八人までは小選挙区制に賛成の者です。参議院の全国区制を廃止するときも、廃止に賛成する者を八割も入れている。こういうようなやり方では、選挙制度調査会が国民の世論を真に公平に反映している場所でないと思うのです。こういう点からして反省してかからなければならない。たとえば参議院の全国区制の問題でも、全国区制のことだけを諮問するというようなやり方をしておりますが、今度の選挙を通じて見ましても、全国区制を検討する要はありましょうけれども、あわせて地方区制についても検討する必要が当然出てくると思う。政府の都合のいい部分だけ諮問して、政府の考えに賛成しそうな委員ばかり委嘱するというようなやり方が少くとも今まであった。そういう点を直してかからぬと、選挙制度調査会は真に国民の世論を反映する権威のあるものにならぬと思います。何か選挙制度調査会は今開店休業状態で、委員の委嘱も最近するということだそうですが、選挙制度調査会も、今の委員の前までは政党代表が入っていた。たしか自民党二名、社会党二名で、その委員の任期が切れて、今度新たに選任するときに、政党代表を除外するということをちらほら耳にしたものですから、私はそのときこの委員会で、当時はたしか田中伊三次長官だったと思いますが、質問したことがある。選挙運動については最も関心を持っており、最も経験を持っているのは政党なのだから、その政党の委員も、十人も十五人も出しているわけではなくて、両党二名ずつ程度です。その政党委員を除外するということは政党を自己否定するということになりはせぬか、そういう話を聞いているがどうかと言ったら、絶対に政党の委員を除外することなんか考えておりませんとはっきり答弁して、これは記録に載っております。今記録を持ってきておりませんが、そういう答弁をしておりながら、その次になってしゃあしゃあとして政党委員を除外している。そのときは長官はかわっているから、前の長官の言ったことは私は知りませんといったような態度です。私はこの問題についても、一体政党の委員を除外する理由はどこにあるかということを今もって了解に苦しむ。最終的には国会で審議するから政党の委員を入れなくてもいい、こういう理屈もあるかもしれぬけれども、今まで政党の委員を入れておって、政党の意見も十分その場所で反映しておるのですから、そのために弊害があったということは何もないのですから、今後選挙制度調査会を活用されるお考えならば、私は、選挙制度調査会の人選からしてもっと公平に考える、政府の都合のいいように運ぶというような考えを抜きにして、真に国民の各界各層の代表たるにふさわしい人を公平に人選するということがまず必要であるし、それから政党の委員を除外するという考えも――そういう考えでもってやったのかどうかはこれは別として少くとも前回だけは政党の委員を除外しておる、そういう考えをもう一ぺん一つ考え直してほしいと思う。どういうふうにお考えですか。
○青木国務大臣 前回の選挙制度調査会の委員の選任のいきさつ等につきまして、私は詳しくは承知いたしていないのでありますが、大体のことはその当時も間接に承わっておったのであります。そのときのいきさつは、たしか小選挙区制のときに、いろいろ選挙制度調査会が政党的な論争の場になったというようなこともありまして、むしろそういうことでなしに、選挙制度調査会は直接の政党関係の方のいない場で自由に御審議願った方がいいのではないか、そうして、また政党関係につきましては、言うまでもなく、最終的には国会で御論議を願うのでありますから、選挙制度調査会で政党の党派的な論議をやり、さらにまた、国会で党派的な論議をやるというあり方よりは、選挙制度調査会はそういう党派的な論議の場でないような形にして、そうして衆議院の方で、国会にかかってから、十分一つ国会は国会として御論議を願うというあり方がむしろいいのではないかということで、前回は政党代表というものを省いたというふうに、間接ではありますが、私承わっておったのであります。
 そこで、現在の選挙制度調査会は、参議院の全国区問題についてすでに諮問が出ておるのであります。そうして審議の継続中であったのでありますが、参議院選挙を直前にいたしまして選挙制度調査会が全国区制の問題について論議を重ねるということは、選挙にいろいろ影響を与える点もありますので、むしろこの機会は審議を中断した方が適当ではないかということから、実は一時中断の状態になっております。参議院の選挙が済みましたので、いずれ適当な機会に選挙制度調査会を再開いたしまして、そうして諮問になっておりまする問題を取り上げて御審議を願わなければならぬと存ずるのであります。そのときに委員をどうするかというお話でありますが、島上先生のお話の両党代表を入れた方がいいではないかという御意見も、確かに一つの御意見と思います。前の調査会はそういう姿になっておったのであります。しかしまた、むしろ党派的な論議の場でないような形にして、そうして、選挙制度調査会が御審議を願うということがいいではないかという考え方も一つの考え方と思うのであります。そういう点につきましては、ここでそういうことを言うのは変でありますが、いずれまた、選挙制度調査会の委員を任命する立場に立つ者が十分そういう点を検討して、決定すべきものと考えるのであります。
 なおまた、選挙法全般の改正についてそこで意見を聞く場合のあり方についてのお話でありますが、この点につきまして、私、先ほど申し上げましたように、選挙制度調査会に諮問するにいたしましても、いろいろ事務的なことまで選挙制度調査会に諮問することはどうかと考えるのであります。むしろ、これは選挙制度の根本についての諮問をなすべきところでありますので、選挙運動のこまかい点等につきましては、選挙制度調査会に諮問するよりは、むしろ私どもの力で十分検討もし、準備もして、そうして衆議院のこの委員会の小委員会等で十分検討を願うというあり方の方がいいのではないか。選挙の実際の運動の面につきまして選挙制度調査会で御議論願うよりは、実際に選挙に関係のある両党の委員会なりあるいはまたさらに衆議院の小委員会なり、こういうところで御検討、御論議を願う方がいいのではないか。そこで問題点をいろいろ検討した上、選挙制度調査会に諮問することが適当であるというような問題が出て参りますれば、当然これは選挙制度調査会に諮問せんければならぬ、また諮問すべきものと考えるのでありますが、しかし選挙運動のこまかい点――こまかい点と言うと語弊があるかもしれませんが、実際面等につきましては、むしろ実際に選挙に最も経験の深い両党の委員会なり、あるいは衆議院の当委員会の小委員会なりで御検討願うというあり方の方がいいのではないか、こう考えるわけであります。
○島上委員 今のお話では、問題点を自治庁において整理して、その資料を集めておるということですが、こまかいことを言えばいろいろたくさんありまするけれども、地方選挙と今度の選挙を通じて、私は、選挙運動をやる、あるいは候補者を立てる政党の側も、国民の側がらも、一番はっきりと浮き上って問題とされておるのは、金があまりにもかかり過ぎるということだと思う。これは事前運動を含めて、事後の運動にもそうですけれども、あまりにも金がかかり過ぎるということ、もしこの傾向がこのままでいくならば一体どうなるか、金がなければ選挙運動はできぬ、選挙はもう金だ、こういうことにもなってしまったら、私は民主主義というものは成り立たぬと思うのです。この金のかかり過ぎる選挙を、どうして金のかからぬ、法定費用でやれる選挙にするか。法定費用が実情に沿わなければ、法定費用の額を多少改正するという問題も起りましょうけれども、現在の選挙は、法定費用などは届け出をするときの書類に記載する数字という程度にしか考えていない。まあ何人かあるいは何十人かのうち、一人は法定費用の範囲内でやった人もあるでしょうけれども、全く無視されておる。あまりにも金がかかり過ぎる選挙である、これが一番問題だと思う。こういう点に対して、政府は、ほんとうに金のかからぬ選挙にしようという考えがあるのかどうか。私は、どうも岸さんの考えは、だんだん金のかかる選挙にしようという考えに、口先はともかくとして、腹の中はそうではないかというふうに疑われてしょうがない。ほんとうに金のかからぬ選挙にしようという考えがあるかどうか。そうして、それにはどこを改正すべきであるかという点について、およそ、選挙制度調査会に諮問するにしましても、自治庁としての考えがありそうなものだと思う。どうですか。
○青木国務大臣 私といたしましても、これはもう選挙法改正という抽象的な問題でなしに、具体的の問題として全く同感であります。どうすれば一体金のかからぬ選挙にすることができるか、そのことのために、これは政党も考えなければなりませんし、また国民の皆さん方にも考えていただかなければなりませんし、これは国をあげて真剣にその問題と取り組んでいく必要があるのじゃないか。言うまでもなく、選挙法の問題につきましては、お話のようにいろいろな点があります。守れるような法律にせんければならぬという問題であるとか、あるいはまた、もう少し選挙運動というものが明朗な姿で行われるようにしなければならぬという問題であるとか、あるいはまた、こういう二大政党の時代になりまして、選挙運動というものについて、政党の選挙運動をもう少し自由にするようにする必要があるとか、いろいろ問題があります。問題がありますが、一番大切な問題、また最も重点を置かなければならぬ問題は、御指摘のように、金がかからない選挙だという点にしぼって考える必要があると思うのであります。先般私は閣議の席上選挙法の改正の問題について、大ざっぱな考えでありますが、私の考えを申したときに、岸総理も、それに対する希望といいますか、注文といいますか、金のかからない選挙ということを一つ考えてもらいたいという点だけ――ほかの点には触れなかったのでありますが、その点だけを特に総理も重視しておったのであります。これはいろいろ御批判もありますが、どなたといたしましても、総理大臣という立場は言うを待たないのでありますが、ことに政党の総裁という立場からいたしましても、何とかして金のかからないような選挙にということは、私はだれしも重点を置いて考えるべき問題であり、また現に考えておることと思うのであります。
 しからば、どういうふうな方向に持っていくことによって金のかからない選挙ができるかということにつきましては、これは簡単に、あるいはまた思いつきでここで私が言うべき筋合いでもありませんし、また軽々に発言すべき問題ではないと思うのであります。しかし、大ざっぱな考えとすればいろいろあると思うのでありますが、公営という面を広めるという点もあるでありましょうし、あるいはまた、従来の個人本位の選挙というものを政党中心の運動にすることによって、金のかからないようなあり方に持っていく方法もあるでありましょう。その他、いろいろ選挙において、最も金のかかる面といわれておる選挙運動上の規制の問題等もあると思うのであります。しかし、それらを含めまして公明な選挙ということが必要でありますが、同時に、重点をやはり金のかからない選挙ということにしませんと、いかに政界の浄化あるいは民生政治の発達ということを口で言ってみたところで、現実に選挙に金のかかるようなあり方でありましては、私は、とうてい正しい民主政治というものも生まれませんし、また、ただ表面だけの公明選挙というものができましても、金のかかる選挙でありましては名実ともに公明選挙ということは言えないのでありますので、表面だけの公明選挙ということでなしに実質を備えた公明選挙ということになれば、当然金のかからない選挙ということに重点を置いて考えていかなければならぬ、かように考えるのであります。その金のかからない選挙運動というものをどうするかという点は、私どもも一つ考えますし、また単に私どもが考えるというばかりでなく、広く各方面の御意見を承わりまして結論を見出していきたい、こう考えておるのであります。
○島上委員 自治庁長官にもう一点だけ伺っておきますが、金のかかる選挙は、大別して言えば買収、供応その他全くむだな金です。言葉をかえて言えば、その金を使うことによって選挙民の良心を曇らせる、こういう方面の金、それから現在の選挙法のワクを越えて、文書などをたくさん出すという金等に分けられるのじゃないかと思うのです。文書などは、それを通じて党の政策を訴え、候補者の人物を披露するということで、必ずしも選挙民の良心を曇らせるというようなものではなくて、正しい投票をするのに若干なり役立つという面があると思う。もちろん、だからといって、これは規制なしにやっていいというものではありませんけれども、しかしどちらかと言えば、今言ったむだな、そのことによって選挙民の良心を曇らせる不正な金の方がよけい使われているのじゃないか。買収、供応もしくはそれに類似の後援会の名による事前運動、こういうものに対する取締りを峻厳にしなければ――最締りを峻厳にしただけで一切が解決するとは思いませんけれども、さしあたってはそれを考えなければ、私は金のかかる選挙運動を幾ら言っても、百年河清を待つようなものだと思うのです。買収、供応、それに類似の後援会の運動、こういうものを厳重に取り締り、そしてこれに違反した悪質違反に対しては連座制を思い切って強化する。かってイギリスがとったような、もうきびし過ぎると思われるくらいの連座制の強化を考えませんと、何をしても候補者に影響がなければ、当選すれば勝てば官軍だというような考えを持たれたら、法律をちょっとくらい改正しても何の効果もありませんよ。そういう点に対する御決心がおありかどうか。こまかいことはいずれまた論議するとしましても、そういう点に対する考え方をはっきり伺っておきたい。
○青木国務大臣 基本的には私も同感であります。文書等につきましてはむしろできるだけ自由にしまして、そして候補者の、あるいは政党の主張を国民に徹底するためには、文書、言論はできるだけ自由にせんければいかぬことは言うまでもないのでありまして、ただ、私選挙の姿をずっと見ておりまして、一番率直に考えたことは、現在では、直接有権者を買収するというようなことは、これは有権者は数が多いのでありますから、実際は行われることもおそらくないと思うのであります。(島上委員「いや、ありますよ」と呼ぶ)ただしかし、一番弊害と考えられますことは飲み食いであります。供応、これを何とかして直すようにしなければいかぬのじゃないか。これは取締り法規を厳重にするという面も確かに一つの方法でありましょう。しかし取締りだけでこれが果して徹底できるかどうか。しかし取り締らぬという意味ではありませんが、そこで何としても大切なことは、これは責任を国民側に転嫁するわけではありませんが、選挙には飲み食いというものは一切ついてはならぬのだ、こういうふうな国民的な一つの常識と申しますか、そういうふうにまで持っていきまして、いやしくも選挙運動に関する限りは、どんな場合でも飲み食いというものはつかないのだというような一つの常識にまで盛り上げていかなければ、これはなかなか押えることはできないのじゃないか。そうするためには、お話のように取締り法規を厳にし、あるいは連座規定の問題等も一つの方法かもしれません。方法かもしれませんが、しかしそればかりでもなかなかできがたいのじゃないか。全力を尽さなければならぬことは、一つの国民の常識として、選挙運動には飲み食いというものはないのだというふうな常識を作り上げることがどうしても必要ではないか。そのことのために、そういう常識まで盛り上げるための手段として、あるいは取締り法規を厳にするとか、あるいはまた、連座規定の問題等もいろいろ検討する必要があると思うのでありますけれども、根本は、金のかかる選挙がないようにするためには、買収、供応、特に買収の問題、そういう例があるという島上委員のお話でありますが、私の承知している限りにおきましては、現在有権者がたくさんになりまして、一々有権者に金を渡すということは、ごく例外としてそういう方があるかもわかりませんが、そうでなくて、何でもかんでも飲み食いをする、供応して票を集めるというようなあり方がどうも一つの弊風になっているのじゃないか。これをためるようにお互いに考えていかなければならぬのじゃないか、こう私どもは考えるわけであります。
○島上委員 大臣にお聞きしたいことがたくさんありますけれども、あまり一人ばかりで質問しては悪いから、残っているところは保留しておきまして、刑事局長に伺います。
 今度の選挙ほど、法律を無視した選挙はないと言えると思うのです、参議院選挙も地方選挙も。そして総理大臣みずからが法律を無視してかかっている。さっきも、あなたがお見えになる前に総理大臣の談話を引き合いに出して言いましたが、選挙法改正に関連して、今後選挙法は守れるような法律にする、こういうことを言っておりました。これは言葉をかえて言えば、現在の法律は守れない法律だ、守らなくてもいい法律だということが腹の中にあるからだ。だからパレードをどんどんやったり、利益誘導をやったりしている。総理大臣に山口県でたしか五件ほど注意をしましたが、この注意は、選挙法違反の疑いありとしてしたものだと思いますが、その後、この疑いありとして警告した事実についてはどの程度調査をされたか。選挙法違反でないという結論が出たか、選挙法違反であるという結論が出たか。それから、その注意をした後に、また方々で同じようにパレードをやっているのです。私が引き合いに出すまでもありませんが、百四十条に「何人も、選挙運動のため、自動車を連ね又は隊伍を組んで往来する等によって気勢を張る行為をすることができない。」とあるが、これに違反する行為がほとんど公々然と行われておる。この事実に対してどういうふうに調査をされたか、どういう結論が出ておるか伺いたいと思います。特に総理大臣のパレードに対して、山口県の五件は、その後調査の結果、選挙法違反であるとはっきり結論は出たろうと思いますが、その後百四十条違反に対してどういうふうになっておるか、それを伺いたい。
○中川説明員 私ども、公職選挙法違反ということについては、犯罪捜査を中心にして、その予防的措置も含めて、警察のやっておる態様から申しまして御了承願いたいと思います。
 御承知のように、公職選挙法には各条項に罰則規定がございまして、その罰則の行為が行われれば犯罪でありますので、われわれ捜査関係としては、犯罪捜査に従事する当然の義務としてやっておるのでありますが、これをすべてこまかいところまで全部立件して、これについて刑罰法規として裁判まで持っていくということも一つの方法であろうと思うのでありますが、何と申しましても、現状は選挙法規違反が各方面に相当多いものですから、この公職選挙法を守っていくということについて、取締りの側から――ただいま国務大臣がおっしゃいましたように、取締りだけが選挙法の目的だとは思いませんけれども、取締りの側からこれを担保する方法については、次のように考えておるわけでございます。いわゆる警告などの措置によって担保できそうなことについては、警告によって公職選挙法の違反がないように担保していこう。ところが、買収するなという警告を盛んに出すことも一つの方法ですけれども、買収をやった場合には警告だけでいきませんので、その買収事件は犯罪捜査としてやっていく。自由妨害の罪が、警告だけで事を達するということはないとは言えませんが、そういうことでは達しにくいということで、自由妨害の罪として立件する。すべてそうであるとは申しませんが、たとえば、鉄道地内でまずいから、そっちへ行って下さいということでよく警告するのでありますが、鉄道地内で選挙運動をすれば、公職選挙法の違反であることは間違いございません。鉄道の停車場という概念ははっきりしておりますけれども、百六十六条には「停車場その他鉄道地内」と書いてありますので、「その他鉄道地内」ということになりますと、現場の状況では、そこは鉄道地内だから、もうちょっと向うへ行って下さいと言うことをやることが、この法律を担保することになるだろうと思うのであります。そういう場合には、いわゆる警告によって公職選挙法が担保できます。われわれの側といたしましては、犯罪取締りという角度から見て、そういう警告措置によって事を処理している例が相当多いのでございます。全国的にこれを申しますと、現在で申せば、今度の参議院通常選挙におきましても、その前の統一地方選挙におきましても、両者合せて四万八千件くらい警告いたしておるのでありますが、その警告措置によって目的を達しますものについては警告措置にゆだねる。それだけにゆだね切れない場合につきましては、立件いたしまして捜査いたしておる、こういう建前をとっていることをまず御了承いただきたいと思うのであります。
 それでお尋ねの自由民主党の総裁とか社会党の委員長の方々がそれぞれ所属の候補者たちの政治活動として応授なさる、あるいは選挙の応援をなさる、こういうことを各政党の方々はやっておるのでありますが、政党の幹部の方々がいらっしゃいますと、ついそのいらっしゃる方々について引き続いてまた自動車が行く。こういうような場合がよくあるのでございます。これは、御指摘になりましたように、百四十条の罪になるかならぬかということは、場合によって異なるのでありますが、その自動車の列によって選挙運動をしていると認められる場合におきましては、お示しの条文違反に相なるのでありますが、行列の中で選挙運動が行われていない、全くトランスポーテーションと申しますか、土地を移動するために行われている場合には、百四十条の違反にならないということは公職選挙法の解釈上当然なのでありまして、たとえば選挙運動に従事していらっしゃる方々で、しかも選挙運動用の車がその中に入っている、こういう場合におきましては選挙運動であることが一応明瞭でありますので、そういう措置を講じておるという状況でございます。この種のことで政党の幹部の方々がいらっしゃる場合に、百四十条の違反になりそうだからこの車はちょっと待ってくれ、こういうようなことをやったことも確かにございます。山口県におきましてもそういうことで、岸総裁が違反したというよりもその行列の中で選挙運動の行為にわたるようなことがありましたので、この車は選挙運動をすることは御自由であるけれども、こう連なりますと気勢を張る行為であるということで、抑制した事実もございます。そういうことで目的を達しておりますので、これを立件ということにつきましては、その行為として犯罪がなされたということにつきましては疑義も生じますけれども、一般の運営といたしましては、警告措置で目的を達しますものはそれでやっておるそういう状況でありまして、全体の趣旨及び個々の趣旨にかんがみましてそのようにやっておりますので、われわれ犯罪捜査取締りといたしましては、各党各派について公平であるばかりでなく、それぞれ党内各派の人について区別しないということでやっておりますので、取締りについては御了承願いたいと思います。
○島上委員 警告で目的を達する場合もあるでしょう。たとえば、ここまでは国鉄の構内だから、その構内からちょっと道をそっちの方へ移動してほしいと注意されて、すぐに移動して演説をやる。警告によって違反が防止されたわけですから、これはそれでいい。ところが岸総理の場合には、山口県では五回の警告で、あとやらなかったかもしれないが、よその県でまたやっている。それでどうも、山口県では警告したけれども、よその県では、総理だということで遠慮しているのだろうと思う。よその県では、同じようなことをやっているが、警告していない。あなたは三百代言的な答弁をされますけれども、選挙運動のために気勢を張る行為ですから、総理大臣がある候補者を応援に行って、候補者の車を連ねて歩けばもちろんですけれども、候補者の車がかりにちょっと離れたところについておったとして、距離的にどういうふうにきめるか知らぬけれども、多少離れておっても、その特定の候補者を応援することについてはどう解釈するか。自動車を何台も連ねて、オープン・カーで選挙民に手を振れば、これは選挙運動のための選挙行為です。こういうことが山口県で警告されて、またよその県でやっておる。ところがその県では警告しない。一体これはどういうわけですか。あなたは、現場を見ないからとぼけたような答弁をするのだろうけれども、これは総理大臣なるがゆえに、警察が遠慮しておるのです。明らかにそうです。この点はどうですか。
○中川説明員 島上さん、すべて行為は当該事実関係によるわけでございます。そうすると、山口県において行われた事実と全く同じことが他の県において行われた場合には、仰せのようなことが成り立つと思いますけれども、山口県において行われた行為と態様の異なった行為が他の県において行われた場合には、異なった態様によって措置することは当然でございますので、その点は一つ御了承いただきたい。
○島上委員 そういうとぼけたような答弁をいつまで聞いてもしようがないのですが、おそらく異なったとその現地の警察官が認識しただけでしょう。事実は同じことをやっているのです。もしくはそれに近いようなとこをやっているのです。しかしこれ以上この問題を繰り返してもしようがないのですが、今度の選挙運動全体について言えることは、警察が違反に対して非常に、何といいますか、見て見ないふりをしておったということです。一つ具体的な例をあげて伺いますが、岸総裁何月何日駅頭に来たるというポスター、もしくは〇〇大臣〇〇候補応援のためどこそこに来たる、何々駅頭に来たるというようなポスターが至るところに張られている。岸総裁の場合にはちゃんと印刷した立看板だ。それは今の法律上の解釈として一体合法的ですか。もちろんその演説は、その候補者の選挙の応援のためにどこそこの駅頭に来たるといえば、その駅頭で候補者の車に乗って、候補者の応援の演説をするために来るのですから、政党の政談演説ではないのです。政党の政談演説では、御承知のように衆議院の一選挙区について一回、ポスターは一千枚、その一千枚のポスターの範囲内でもって岸総裁が政党の政談演説に来るというならば、これはもちろん合法的ですけれども、そうでない。特定の候補者の車に乗って、駅頭で候補者の応援演説をするために行くのに、〇〇大臣何月何日何時に何々駅に来たる、岸総裁何月何日に来たるというものをあらかじめ大量に印刷して看板にして、至るところに張りめぐらしてある。それから演説会場――まあ例をあげてもいいのですが、東京で一番金のあった鮎川金次郎、鮎川金次郎街頭演説会場という大きな看板が、東京都内に一体何万本立っておったか。私がこう言えば、あなたはこういうことに対して警告したと言うかもしれぬ。警告したって依然として立っているのですから、警告の効果がちっともない。どうお思いですか。どういう取締りをされたのですか。
○中川説明員 これは立法論としてはいろいろ御議論があろうと思いますが、現行法におきまして、ビラ、ポスターの類に関しましては――政治活動につきましては御案内のように第十四章の三があり、選挙運動文書につきましては、前の方の条文に記載されているのです。今回の選挙につきましても――この前もそうであったのですが、今回の選挙につきまして、特に文書図画の制限違反が各候補者とも相当多かったのです。これは事実でございます。それにつきまして警察といたしましては、特定の候補者が多かったところがあるかもしれませんが、全体の傾向といたしましても、文書図画の制限違反行為が相当多うございました。たとえば、東京の警視庁管内のごときは、各方面とも多数の文書違反がございましたものですから、押収の文書違反物件でもものすごい数になっている、こういう状況でございます。それで今回の選挙の一つの特徴ともいわれるのですが、文書図画の制限違反が相当多い。それに対して警察も、それぞれ犯罪として処置するものもございました。たとえば選管等による撤去措置もあったわけでございますけれども、選管の撤去措置の間において行われておる場合もある。それもやりきれないので、だんだん警察の犯罪捜査の押収というようなことから、領置というようなことまでやっておる例も少くないのでございます。相当多数の違反がありましたので、警察としては十分な措置をしておりますが、その中に措置の漏れといいますか、たくさんの違反の文書が――一々一生懸命やっているつもりでございますけれども、そこまで目が届かぬ。そこに目が届いたとしても、届き方がおそい、こういうようなことについても確かに御批判があろうと思うのですか、文書違反の取締りについては、なおざりにしておったという御指摘でございますけれども、特定の人だけをなおざりにしておったのじゃなくて、全体を一生懸命やっておったので残りが相当あった、こういうことが事実だろうと思います。今回の選挙のように、文書違反がかくのごとく多くなりますと、取締り官憲の側としても大へんである、大へんであって、一生懸命苦労しておるけれども、御指摘のようなことが町にはあるということが現状でございますので、立法論としても御研究願いたいのですけれども、われわれとしてもできるだけやっておるつもりでございまして、特定の候補者だけわざと残しておったということは、そうでないという考えを私は持っておりますので、御了承願いたいと思います。
○島上委員 法律改正の今後の問題は今後の問題としまして、とにかく今度は立看板でも、岸総裁来たるという印刷したものを大量に張ってもほうっておくから、やってもいいと思えば他の候補者もやるのです。やってもほとんど放任状態です。こういうように違反したことを放任しておくなら、今後法律を幾ら改正しても何にもならぬのです。伺いますが、〇〇大臣何月何日錦糸町駅頭に来たる、岸総裁何月何日錦糸町駅頭に来たるという印刷物を張ることが現行法上私は違反だと思いますが、どう解釈しますか。
○中川説明員 今の御質問のごときは、特定の候補者が出ておりますのは、政治活動関係の文書であります。政治活動の規制の範囲内――所定の政治活動用文書で、選挙管理委員会の措置に従う限度においては違反でありませんが、それの検印のないものにつきましては違反である、こう考えます。
○島上委員 私の言うのは、もちろん政談演説会をやる際に、政治活動の規制の範囲の検印を受けたポスターのことをさしておるのじゃないのです。そういうポスターにあらざるポスターが、岸総裁何月何日に来たると墨痕あざやかに印刷した同じものを、どこへ行ってもずっと並べておる。自民党さんではおそらく何十万枚印刷したでしょう。〇〇大臣来たるも同様です。検印のないポスターですから、明白に違反です。違反であるという答弁をはっきりいただいておけば、きょうのところはそれでいいのですが、そういうようなそれに類似の違反が非常に行われて、放任されておった。そしてそういうものは結局莫大な金がかかるから、金のある候補者でなければやれない。またやっても、金のある候補者が一万枚やるところを、金のない候補者は百枚しかやれない、こういう不公平な事態が起っておるわけです。私はこれに対しては御答弁は要りませんけれども、とにかく警察は全く放任状態であった。手が回らなくて、一部をやったけれども、あと残ったのであるというような程度のものではありません。全く放任状態であった。それが買収や供応、そういう方面にも同様であったと私は言えると思うのです。悪質違反がほとんど公々然と行われても、何も手をつけない。今ここに統一地方選挙の違反の数字、参議院選挙の違反の数字があったらお示し願いたいのですが、もしなかったら、この次の委員会までにその違反の数字を資料としてお出しを願いたい。
○中川説明員 違反の数字はございますので、ここで申し上げます。
 まず、今回の選挙を二つに分けまして、統一地方選挙でございますが、統一地方選挙につきましては、ただいままで私の方で集計された件数について申しますと、件数では合計二万五千百七十八件、被疑者の人数では四万四千七百三十八名、以上であります。そのほかに、先ほど申し上げましたように、警告事件が三万六千二百七十件、こういう状況でございます。
 参議院の通常選挙につきましては、これはこの間投票が済んだばかりでございますので、すでに犯罪捜査をやって検挙したものもございますが、今後発覚するものもございますので、今後の数字は今後出てくるわけでございますが、ただいま現在では、件数では千四百十九件、人数では二千百名でございます。そのほかに警告件数が一万二千百十件、こういう状況でございます。
 ついでに申し上げますが、島上さんの御意見によれば、警察は文書違反のごときはほったらかしておった、こういう御意見に近いようでございますけれども、私どもは能力にも限度がありますので、一つも残さず検挙したというふうにうぬぼれる自信もございませんが、警察といたしましては、警告その他の措置によって文書違反等がびまん化しないように措置も進めて参りましたが、それだけでは目的を達成できませんので、犯罪として検挙いたしたものの数字は今の内訳になるわけでございますが、文書、図書制限違反は参議院だけで九百七十五名を検挙しておりまして、文書の違反件数では七百三十六件でございます。ことに地方選挙のごときは、全体で多い関係もございますが、文書違反が人数で一千七百四十四名を被疑者として検挙しておる状況でございますので、いろいろ御意見はございましょうけれども、われわれ警察といたしましては、警告措置によって目的を達成するように努めつつ、なおかつ目的を達成できませんので犯罪捜査をして検挙しておるものも少くない、こういう実情を申し添えておきたいと思います。
○島上委員 参議院のはまだこれからどんどん出てくると思いますが、地方選挙のは、前回の地方選挙と比較してどういうことになりますか。
○中川説明員 ただいまの地方選挙の御質問でございますが、地方選挙のはこれからだんだんふえてくる面もございますが、大体われわれ比較する場合に、いつ現在かということを同様にとるわけでございますが、前回の続一選挙が行われまして一カ月後にまとまった数と、今回の統一選挙が御案内のように四月二十三日と三十日に行われたのでございますが、それから一カ月後の数字とそれぞれ合せて参りますと、すなわち投票後一カ月後に発覚いたしました件数の比率を申し上げます。前回に対して今回は、件数で申しますと一・三二倍、すなわち三割二分の増加でございます。人数で申しますと一・四倍、すなわち四割の増加でございます。
○島上委員 刑事局長にもう一点伺っておきたいのですが、今回の統一地方選挙、参議院の選挙も多少そういう傾向がないではありませんでしたが、特に地方選挙の際に、二百二十一条の利害誘導罪に該当すると思われるような言動が非常に多かった。案文は私が読み上げるまでもありませんけれども、参考までにちょっと読み上げますが、「当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもって選挙人又は選挙運動者に対し金銭、物品その他の財産上の利益著しくは公私の職務の供与、その供与の申込著しくは約束をし又は饗応接待、その申込若しくは約束をしたとき。」というのが二百二十一条の第一項にあるわけです。地方選挙の際に、たとえば知事選挙のときに、今は自民党の政府だから、この政府と直結する知事を出さなければ金が回らぬ、道路も橋も直せない、自民党の政府と直結する知事を出せば補助金や助成金や交付金もたくさんくるし、このようにこわれている道路も直せるし、この橋も直せる、こういうようなことが公然と演説でやられているのです。テープレコーダーでとってあるわけではありませんからあれですけれども……。伺いますが、こういうようなことはこの条文に照らして私は違反だと思いますが、一体どう思いますか。これもはっきり答弁をしてもらいたい。二通りにも三通りにも解釈できるようなあいまいな答弁じゃなしに、はっきり答弁して下さい。
○中川説明員 これは法律の解釈でございますから、はっきり申し上げます。これは島上さんも御案内のように、利害誘導罪の構成要件は特殊の直接の利害関係を誘導する場合に有罪でございます。御設例の場合において、特殊の直接の利害誘導に当らない場合があり得るわけでございます。といいますのは、特殊の直接の利害誘導ということの一番適例は、利用する住民に対しておれが当選すればこの橋をつける、こういう場合においては特殊の直接の利害関係になるわけでございますが、都道府県知事の選挙に関しまして、県内に橋を――道路行政といいますか、河川行政といいますか、そういう意味において橋をかけるということに重点を置くということは、政策の宣伝になりますので罪になりません。問題は選挙の内容、市町村の選挙であるか、国の選挙であるか、または県の選挙であるか、こういうことも判断の一つの基準でございます。それからいわゆる対象、県下一円に言う場合と、そうでなしに直接の利害を持っておる人に言う場合によって問題の違いが出てきますので、問題の内容であるといわれた対象と、言う内容と選挙の性質によって具体的に有罪になる場合があり、無罪になる場合がある、こういうことにならざるを得ないのでありまして、私がかく申すのは観念的に申しておるのではなくして、判例その他においてそういうことになっておりますので、御了承いただきたいと思います。
○島上委員 まだ聞きたいことがありますけれども、山下君が質問するそうですから、私は残余は保留してこの次にします。
○早稻田委員長 山下榮二君。
○山下(榮)委員 大臣がお急ぎのようでありますから、一つだけ伺っておきたいと思うのです。本来は法務大臣に伺いたいと思うのですけれども、法務大臣はきょうはお留守のようでありますから、いずれ後日法務大臣に伺いますけれども、自治庁長官に伺っておきたいと思うのは、公明選挙運動の委託費というものを長崎県の選挙管理委員会が返上をする、こういうことを決定をするという新聞記事を見たのですが、このことについて何か御承知でしょうか。
 もう一つ。鹿児島県でも、名瀬と指宿と枕崎を除くほかの十二市の選挙管理委員会の役員会で、同じようなことが決定されておるようであります。そうして全国区の選挙管理委員会にそれを提出する、こういうことが、しかも朝日新聞に大きく報道されておるのであります。その原因とするところは何かと申しますと、御承知のごとく、この二、三年来行われましたいろいろの選挙で、先ほどから話がございますように、いろいろな選挙違反が行われておるところが、せっかく警察が相当努力をして違反を摘発したり、処罰がいろいろ行われようといたしましても、あるいは国連加盟であるとか、あるいは御成婚であるとかいうようなことの意味で、大赦、恩赦でこれがむだになってしまう。せっかくの努力が徒労に帰した、こういうことでは公明選挙も何もあったものじゃない、こういうのが選挙管理委員会の憤慨の中心のようであります。従いまして、自治庁長官は皇太子の御成婚のときには長官でおられたわけですが、こういう問題は閣議その他の問題のときに一体どう対処されたのか、どうお考えになっておるのか、このことを一応伺っておきたいと思うのであります。
○青木国務大臣 長崎県の選管の問題、私不勉強で、まことに恐縮に存じますが、そういう事実をまだ私としては聞いていないのであります。あるいは何か婦人会等で、そういう動きがあった問題が取り上げられたのではないかと思うのでありますが、なおお話もありましたので、どういう事情があったか私も調べてみたいと思います。
 それはそれといたしまして、恩赦についてのお前の考えはどうかという御質問であります。私は皇太子殿下の御成婚につきまして、その喜びをともに分つという意味における恩赦、その恩赦が公職選挙法の人だけは除外するという考え方もどうかとも考えるのであります。たとえば食管法違反の場合にだけ適用されて、選挙法関係には適用されないというふうに、選挙法だけを別扱いにして恩赦の恩典に浴せないというあり方もどうかと考えられるのでありまして、この点は、政府の決定のようなあり方でいいのじゃないかと思うのであります。ただ私は選挙という立場から考えて常に申しておるのでありますが、公職選挙法の問題だけを除外するということは不適当と考えられるので、今回の場合も恩赦の恩典に浴したのでありますが、その恩赦の恩典に浴したということを、公職選挙の関係におきましては、特別な考え方を持ってその恩典に浴した者たちが考えなければいかぬのじゃないか。と申しますのは、自分たちが選挙違反を犯した、そのことが恩赦によって、たとえば復権を見るに至った、そのことを感謝する気持を強く持って、再び自分自身としてはそういうことを犯さないようにすると同時に、むしろ一般に対しましても公明選挙運動の中心となるような心がまえを持って、その恩赦の感謝の気持を今後の選挙運動の公明化に努力するということで、恩赦に感謝するような考え方でやってもらいたいということを私は常にあらゆる機会に言っておるのであります。まあ見方によりまして、選挙違反をやった者が恩赦によってのがれるということになると、恩赦は再び選挙違反を重ねるおそれがあるというお話も、確かにごもっともの点も私どもわかるのであります、しかし、選挙違反だけは恩赦から除外するというのも、これもどうかとも考えられますので、私は政府の決定でいいのではないか。しかし恩赦を受ける者の立場に立って、そのことをもって今後自分が再びそういうことをやらぬように、同時に、さらに進んで一般の公明選挙運動の中心となってやってもらいたい、こういうふうに私はお願いいたしておるのであります。
○山下(榮)委員 自治庁長官の言われることはわからないわけではないのですが、しかし昨年の五月の選挙のとき等をわれわれが伺っておりますと、前に国連恩赦で無罪になった、今度は皇太子の御結婚があるから少々のことをやってもまた恩赦になるのだ、こういうようなことが、当時、昨年の五月堂堂といわれて選挙運動が展開されておる、こういうこと等を考えますと、同じ恩赦という問題でも普通の犯罪とはこれはよほど違うのではなかろうか、こう考えられるのであります。そういう関係からして、われわれはこういう者に対しては恩赦というものをみだりに与えるべきではない、こう考えておるのであります。しかしこのことについては、当のこれを行われた法務大臣に私はその所信あるいはいろいろなことを伺ってみたい、こう考えておるのであります。いずれにいたしましても、こういうことが中心になって実際選挙を管理し、運営していくところの地方の選挙管理委員会というものがかような疑惑を持つに至るということは、これは将来の選挙のために大へんなことではなかろうか、かように私は考えるのであります。こういうこと等に対して一体自治庁としてはどういう指導をし、どういうことをされようとお考えになっておるか、伺っておきたい。
○青木国務大臣 先ほども申し上げましたように、私不勉強で、長崎あるいは鹿児島でありますか、どういうことでそういう公明選挙の委託費を返上するという方法が取り上げられたか詳細を承知しておりませんので、従いましてこれに対する適確な対策と申しますか、どうするかという考え方を今直ちに申し上げかねるのであります。しかし、いずれにいたしましてもよく事情を調べまして、万一それが誤解に基くものであるとするならば誤解を解くように最善を尽しますし、また政府のやり方が悪いということでありますならば、これは政府としても、当然謙虚に反省すべき点は反省しなければならぬと考えます。いずれにしても、どういうことからそういうことが持ち上ったのかという実態をきわめまして、私どもできるだけのことをいたして、公明選挙運動について、こういうことのためにこの運動を将来等閑に付することのないように、今後も公明選挙運動に力を尽していただくようにお願いいたしたい、かように思っております。
○山下(榮)委員 そのほかの公職選挙運動等も伺いたいと思いますけれども、長官お急ぎのようでありますから、いずれ後日に譲りたいと思います。なおこの問題につきましては、いずれ法務大臣の御出席を得まして、政府としてとられた処置等についてさらに伺いたい、こう思っております。
 本日はこれで終ります。
○早稻田委員長 なお質疑がおありだと思いますが、本日は、この程度にとどめて散会をいたします。次会は公報をもってお知らせ申し上げます。
    午後零時十七分散会