第031回国会 内閣委員会 第18号
昭和三十四年三月十三日(金曜日)
    午前十時四十九分開議
 出席委員
   委員長 内海 安吉君
   理事 岡崎 英城君 理事 高瀬  傳君
   理事 高橋 禎一君 理事 平井 義一君
   理事 前田 正男君 理事 受田 新吉君
   理事 木原津與志君
      植木庚子郎君    纐纈 彌三君
      始関 伊平君    田中 龍夫君
      富田 健治君    橋本 正之君
      石橋 政嗣君    石山 權作君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣 伊能繁次郎君
 出席政府委員
        内閣官房内閣審
        議室長兼内閣総
        理大臣官房審議
        室     長 吉田 信邦君
        防衛政務次官  辻  寛一君
        防衛庁参事官
        (長官官房長) 門叶 宗雄君
        防衛庁参事官
        (防衛局長)  加藤 陽三君
        防衛庁参事官
        (教育局長心
        得)      小幡 久男君
        防衛庁参事官
        (人事局長)  山本 幸雄君
        防衛庁事務官
        (経理局長)  山下 武利君
        厚生政務次官  池田 清志君
        厚生事務官
        (大臣官房長) 森本  潔君
 委員外の出席者
        専  門  員 安倍 三郎君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 総理府設置法の一部を改正する法律案(内閣提
 出第七〇号)
 厚生省設置法の一部を改正する法律案(内閣提
 出第一二九号)
 防衛庁設置法の一部を改正する法律案(内閣提
 出第九四号)
 自衛隊法の一部を改正する法律案(内閣提出第
 九五号)
     ――――◇―――――
○内海委員長 これより会議を開きます。
 総理府設置法の一部を改正する法律案、厚生省設置法の一部を改正する法律案、防衛庁設置法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案を一括議題とし、質疑を許します。受田新吉君。
○受田委員 防衛庁当局には、いずれ総理と御一緒に防衛の大綱その他について御答弁願わなくてはなりませんので、きょうはわれわれ側としては御足労いただきたくないというところだったのです。きのうおいでいただけなかった関係上、総理と御一緒にという希望があるわけですが、せっかくそこへおすわりになっておられるので、ほんの一言だけお尋ね申し上げて、あとに控えている厚生省の問題、総理府の問題、これを取り扱いたいと思います。
 防衛庁関係の法案について今回例年のごとく三つ出ておるのですけれども、防衛の根本的な問題として、一応入口に関する問題としてお尋ねしておきたいことは、安保条約の前文のおしまいにある「直接及び間接の侵略に対する自国の防衛のため漸増的に自ら責任を負うことを期待する。」という言葉があるわけでございますが、漸増ということと今回の防衛庁設置法によるところの改正等による人員増加と深いつながりがあるものかどうか、お答えを願いたいと思います。
○伊能国務大臣 日本国とアメリカ合衆国との間における安全保障条約の前文末尾にありまする内容につきましては、御承知のように当時の締結の状況におきまして、実質的には日本が自衛力をほとんどと申してもいいほど十分に持っておらなかった。そういう事情にかんがみまして、日本はこの条約を契機としてアメリカの防衛力を期待すると同時に、みずから自衛力の漸増をするという一応の条約の前文としての話し合いができたわけでございますので、それに対応いたしまして国力、国情に応じて逐次漸増をいたして参り、現在については受田先生御承知のように、陸上自衛隊十七万、海上自衛隊約二万五千、艦艇約十万トン、航空自衛隊約二万六千、航空機千機に近い保有をいたしておりまするが、今後の問題並びに御審議をいただいております本法律案との関係におきましては、御指摘のごとく国力、国情に応じた最小限度の自衛力を作り、同時に当面昭和三十二年に決定いたしました防衛目標の整備に向って進んでおりまするので、当然本条約の精神をくみ取って、一方国力、国情に応じた昭和三十五年度末並びに一部昭和三十七年度末における整備目標とにらみ合せて増員等の処置をとり、国会の御審議をわずらわしておる、こういう状況でございます。
○受田委員 その漸増といううたい文句は、これからも停止するところを知らない漸増ですか、一定点に達すればとどまる漸増ですか。
○伊能国務大臣 御指摘のごとくその前に、「但し、アメリカ合衆国は、日本国が、攻撃的な脅威となり又は国際連合憲章の目的及び原則に従って平和と安全を増進すること以外に用いられうべき軍備をもつことを常に避けつつ、」かように抽象的な文章ではありまするが、一応の一般的な限界というものは当時もうたっておりまするし、私どもといたしましても現在の状況において、少くとも日本の国力並びに日本をめぐる国際情勢、それにそのもとにある日本の国情というものに照らしまして、一応の限界というものを求めなければならぬ、かように考えておりまするが、御承知のように現在の段階におきましては、まだアメリカの防衛力に期待しつつも、なお一応私どもが今日の国力、国情において考えましたところにおいても十分な力を持っておらないということで、なお漸増の過程にあるわけでございまするが、ただし三十五年度一部三十七年度の、御承知のごとく陸上自衛隊十八万、海上自衛隊十二万四千、航空機千三百機という目標は、骨幹自衛力としては一応態勢は整う、かように考えておる次第であります。
○受田委員 そうしますと、たとえば今度沖繩を共同防衛区域に含むというようなお約束をされる場合には、この漸増という問題にも、別の意味の自衛隊の増強政策をとらなければならぬということが考えられることになりますか。
○伊能国務大臣 新しいと申しますか、新しい事態もしくは日本の領土が実質的に拡張をされる、今日沖繩の具体的な問題につきましては、現在の自衛力をもってしては小笠原、沖縄に対する防衛自衛の態勢を整えることは困難であるということは、われわれ明確な意見として政府部内にも伝え、同時に国会においても御回答申し上げておりまするが、御指摘のように、私どもは沖縄、小笠原を加える問題につきましては、政府部内としては困難であるという意見を持って、外務当局、政府部内の主管当局に処理を願っておりまするが、御指摘のように、万一仮定の問題といたしましてお尋ねのような場合には、防衛力をさらに増強する必要があろう、かように考えております。
○受田委員 こうした漸増という言葉の陰には、一定の限界点に達したときにはとどまるという、その前段の関連もありますけれども、新しい事態に対するたとえば今申し上げましたような地域の防衛を共同でやらなければならぬというような場合には、別に考えるというお考えのようでありますが、私はここで自衛隊のあり方について掘り下げてお尋ねしておかなければならぬのですが、第一次長期防衛計画が一応完了する段階に近づいているわけです。これをもってしてもなお自衛力の漸増というものはとどまるところがないので、従って第二次長期防衛計画というものが当然立てられて、そこではさらに漸増的な計画が進められる、こういうことが伏線として考えられるのではないか。従って底止するところを知らない漸増ということになるおそれがあると思うのでございますが、長官はどういう御信念を持っていらっしゃるでしょうか。
○伊能国務大臣 ただいまのお言葉のうち、第一次防衛目標の次には伏線として第二次というお話でございましたが、私ども、これは明確に伏線という意味ではなく、現在の目標といたしております骨幹防衛力をもって十分であるかどうかということにつきましては、御承知のように国際情勢なり、兵器の科学的進歩という他の状況がございますので、それらによってさらにまた日本の自衛隊の力、またあり方というものを再検討せねばならぬと考えております。しかしさればといって御指摘のように、裏には無限に増強するというような意図が含まれているのではないか、こういうお尋ねであるやに拝聴するのですが、その点につきましては私どもは現在の安全保障条約等にも一部見えておりまするが、国際連合の集団保障態勢、その一環としてのアメリカとの集団保障条約、これらのものにつきまして、おそらくソビエト、アメリカといえども、一国をもってみずからを守るということは、私は現在の国際情勢においては困難である。いわんや日本のごとき防衛力、自衛力のきわめて弱いところにおきましては、みずからの力をもってみずからを守るということは、理想ではあると存じますが、これは日本の国力の点から、私どもとしてとうてい不可能なところである。従いまして第二次防衛力の整備目標につきましては、私どもは主として、人員の増加ということもさることながら、もちろん全然考えないということではありませんが、主として装備の質的強化、こういう方面を中心にいたしまして、半面、しばしば国会においても世論議をいただいております一体国の防衛の経費と国の力、国情というものをどういうバランスで見ていくべきかという点等については、しばしば単に日本だけでなく世界のいずれの国会等においても論議の対象となっておりまするが、少くとも私どもとしては国の維持、安全、平和、独立を守るための保険料とでも申しますか、そういう意味において国民所得の二%程度の防衛費というものは必要ではなかろうか、従いましてこれは実際の装備というものとはややかけ離れた、数字上の観念的議論ではございまするが、大体二%程度ということを目標に国の防衛力というものを考え、一方さらにアメリカ、国際連合との集団防衛態勢、集団安全保障態勢というものに依存して参りたい、こういう考え方でおるわけであります。
○受田委員 私がお尋ねする問題に限ってお答えを願いたいのです、御親切ではありまするが。次にお尋ねすることにお答えいただきたいのです。今あなたのお説によると、一つ新しい意義を感ずるわけですが、日米安保条約の中の第四条「この条約は、国際連合又は」とこうある。この条項をあなたは不可能であるということに考えていい、かように了解してよろしゅうございますか。
○伊能国務大臣 お尋ねの趣旨日がよく私に理解できませんが、第四条が不可能であるという御趣旨は……。
○受田委員 今あなたが御説明になられた中にこういう言葉があった。「国際連合又はその他による日本区域における国際の平和と安全の維持のため充分な定をする国際連合の措置又はこれに代る個別的若しくは集団的の安全保障措置が効力を生じたと日本国及びアメリカ合衆国の政府が認めた時はいつでも効力を失うものとする。」ということに関連する今お返事があったのです。この第四条の規定というものは、結局今のあなたのお言葉を裏にして返せば、この第四条の実施は不可能に近い、かように了解してよろしいかとお尋ねしておるのです。
○伊能国務大臣 お尋ねの件につきましては、私どもとしては世界の恒久的な平和ということは最も望ましいことだと存じまするが、現在の国際情勢におきましては、不可能というよりは少くともみずからの力でみずからを守るということは非常に困難である、従いまして世界の大勢は集団安全保障態勢に向っておるという事実を私は申し上げ、同時にその事実に関連いたしまして日本としての今後の態度を申し上げたわけでございまするが、不可能であるというところまでは私ども考えておりません。理想としてはそうあるべきだ、しかし現実としてはなかなかそこに達するには距離があるのではないか、かように考えております。
○受田委員 ここにあなたが軍の指揮官としての立場で、あまりにもこういう平和的な取扱いの方に努力を欠いておられる考え方があると思うのです。今あなたのこの第四条に関連する措置については不可能であるというような御発言があったので、それがあたかも四条に規定したことと同じようなことを言うておられたからお尋ねするわけですけれども、やはり軍の責任者である防衛庁長官というものが常に平和的な考えを持って、外交等においても平和外交を推進するような信念でおやりにならないと、あくまでも軍の増強を企図するという考え方をもってやられるということになると問題があるわけです。たとえば沖繩、小笠原を含んだ場合には現在ではとても防衛力を充実しておらないから、そのときには別に軍備を備えなければならぬのだ、こういうお考えであると、いかにも防衛庁長官は軍備強化の総本山であるような印象を国民に与えるわけです。そうしたことが今の外務当局に対する希望となっても現われておるということになれば、より一そうわれわれは危険を感ずるわけなんです。ここに今お尋ねを初めに戻しまして追及したい点があるのでありますが、たとえば漸増的という言葉についても、あなたは第二次計画は質的の強化というところへ重点を置きたいということを言っておられますけれども、人員の強化ということは、これは避けたいという意味かどうかということも問題になるわけです。人員は現状程度でとどめて、質的充実を第二次防衛計画で考える、こういう意味かどうか。
○伊能国務大臣 考え方としては御指摘の通りでありまするが、人員を現状維持にとどめるということにつきましては、これは今後の問題として私どもはできるだけそういう考え方で参りたいと考えてはおりますが、人員の増備につきましても、これは必要やむを得ざるものについてはやはり若干のものについては増備せざるを得ない。しかし趣旨としては御指摘のような考え方で進みたい。
○受田委員 あなたの方から示された取扱い注意の資料の中に、注意程度でありますから、不注意な場合が起ることもあるわけです。公開して一向差しつかえないと思いますけれども、北部方面に、たとえば陸上自衛隊に例をとるならば、北部方面の所管に属する隊員というものは五万二千幾ら置かれておる。そのほかの地域を見ると大体二万程度ずつしかないわけです。こういうところを見ると、北海道に莫大な陸上自衛隊の人員を擁するということを見ると、何か地域的に北海道に重点を置いておるということが言えるわけなんです。これはたとえば広い土地があって、演習するに都合がいいとかいう事情だけか、ほかに事情があるかをお答え願いたい。
○伊能国務大臣 特に北海道に重点を置いておるという趣旨ではございませんで、九州等におきましても三万近い自衛隊が駐屯をいたしております。そうして九州と北海道との地域につきましては、これは私が申し上げるまでもなく相当地域においての隔たりがあるように、かように存じまするが、御承知のように北海道等について全体としての北海道部隊の整備その他について特に重点がある、かような趣旨ではございませんで、内地につきましても今後御審議を願っておる法案につきましても、全体の指揮掌握の関係と指揮の公正をはかると同時に、各部隊の練度の強化をはかるという意味で、三方面隊を今後御審議を願って、御審議をいただいたらそういう趣旨で方面総監を置きたいというような趣旨も、全体としての装備の平均化ということも逐次考えて参りたい、かように私は考えております。
○受田委員 旧軍部時代は、平常時の常備軍が二十個師団、その中で北海道には一個師団しかなかった。今日では陸上自衛隊の三分の一が北海道におるという、この理由は何か、重大な意義がるあのかどうか。
○伊能国務大臣 旧軍時代と申しますか、第二次世界大戦以前におきましては御承知のごとく日本国内のほかに朝鮮、台湾もしくは満州というような大陸への、何と申しますか、軍の装備というような問題が政策の一端として重点が置かれておりましたが、今日におきましては御承知のように、日本の領土内において守るという自衛隊の本来の目的に沿った考え方からいたしまして、かような配備をいたしておるのですが、特に御指摘のように北海道のみに重点を置くというような趣旨ではございません。
○受田委員 これはまた後ほど個々にお尋ねする機会があると思いますが、私がもう一つあなたにお尋ねしておかなければなりらぬことは、第二次長期防衛計画がいまだに立てられておらないということは、あなた方の立場をもってすれば、はなはだおそきに失すると思うのですが、ある程度今の装備の充実というような方面で、人員は現状にとどめたいという方針は大体承わったわけですが、ほかに何か具体的なものを考えるに至ってはいないわけでございますか。
○伊能国務大臣 第二次防衛目標の整備につきましては目下せっかく研究中で、御指摘のごとく、所定の研究、調査があるいは計画よりもやや遅滞を見ておるということも事実でございまするが、第二次防衛目標における整備の重点は、さいぜん申し上げましたように質的改善、その具体的な例は、海幕につきましては主として対潜水艦装備の充実、また空幕につきましては航空機とともに、ミサイル、ロケット等の装備に重点を置きたい、かような趣旨で目下計画中でございます。
○受田委員 まだ計画をわれわれよくお聞きしてなかったわけですけれども、第二次といえば三十五年はすぐ目の前に迫っておるわけですが、いまだに具体化してないということになりますと、防衛庁としてははなはだ不手ぎわであるということもいえるわけなんです。われわれはこれを推進する役割でなく、阻止する役割でありますけれども、あなた方の計画だけは承わっておかないと、阻止するのに大へん苦労しますから承わっておきます。 そこで、私次の問題をお尋ねしたいのですけれども、あなたの部下である井本熊男陸将が、昨年アメリカを視察された途中で、日本の自衛隊は当然核兵器を持って充実した自衛隊にしなければならぬという言明をされておる。防衛庁の職員であり、自衛隊の幹部である人が、外国において、政府自身の政策に関係し、あるいは憲法違反に関係するような問題を平然と言い放つことを、あなたはどういうふうにお考えになるか。
○伊能国務大臣 防衛の問題につきましては、これはおのおのその職にある者が、日本の安全と独立を守るためにあらゆる角度から研究をし、そうしてほんとうに日本の安全と独立を守る熱意を持っておるということについては、私はこれは望ましいことであって、御指摘のように、そのことだけでどうこうということではない。問題は核兵器を日本が持つべきかいなか、この問題につきまして現在の政策としては、御承知のように岸内閣は政府として核兵器を持たないということをはっきり申し上げておりまするが、戦略上の見地から核兵器を持つべきであるかどうかという議論については、いろいろ世界の戦略家あるいは軍事専門家の間に議論があろうかと思います。また先般来本国会におきましても、憲法上の解釈云々の問題等にも発展いたしておりまするが、世界の大勢が、スイスあるいは西ドイツ、スエーデン等、いわゆる中立国といわれる国々においても、みずからの平和と安全を保つには核兵器を持つという決意をしておるというような点から、おそらく、私は井本君の個人的見解をつまびらかにしておりませんが、そういう意見の開陳があったということは、それだけで特に責めるべきことでもなかろう、かように感ずるのであります。
○門叶政府委員 大臣御就任前のことでございますので、私からちょっと補足的に御説明を申し上げます。当時旅先で井本陸将が話したことが、こちらにも電報になって参っております。当時の事情を帰朝早々直ちに聴取いたした次第でありますが、たまたま核装備の問題についてある記者から質問があったのでござざいますが、前提として、この問題は、日本においては核装備をしないというのが現政府の建前であります。ただ具体的に核装備をしている方としない方とどっちが、たとえば相手方が核装備をしている場合において、核装備をしないで守るのと核装備をして守るという両方の場合をとった場合は、やはり核装備をした方が守りやすいというような意味の発言をした。それがあたかも日本の軍部が核装備を希望しておるというような具体的な印象を与えたようでございます。
    〔「長官の答弁と違う」と呼び、その他発言する者あり〕
○伊能国務大臣 私は井本君自体のしゃべった内容についてはつまびらかにしておらないかということを――速記録をごらんいただけばおわかり願えると思います。その点ははっきり申し上げております。従いまして一般論として、井本君個人の見解の内容については私はつまびらかにしておらないが、受田委員御指摘のような、個々の意見について不都合であると考えるかどうかというお話でありましたから、その点については必ずしも不都合であるとは私は考えておりません、かように申し上げたのであります。
○木原委員 官房長のお答えの通りならば、われわれとして了承することができる。しかし長官の先ほどの答弁は、ちょっと血迷うていますよ。一体現在の岸内閣も、政策上か憲法上か知らないが、核兵器を持たないと言っておる。歴代の内閣が、核兵器を持たないことを日本国民の悲願にするということを言うておる。しかもその悲願にしておる人の統率を受けておる軍隊で、その軍人が、何ぼ個人の思想の自由とはいいながら、もしそういうことを主張するならば、はっきり防衛庁をやめて一国民となって、日本は防衛上今の段階において、持たなければ国の防衛を全うすることはできないのだということを言うのだったら話はわかる。防衛庁に籍を置いておいて、そういうことを外国に行って言うということを是認されるというのは、あなたの食言ですよ。取り消しなさい。
○伊能国務大臣 私は職務上の命令に違反したとかいうような場合については、木原先生御指摘のような場合も起り、われわれとしても処分もしなければならぬ、かように考えますが、さいぜん申し上げましたように、私は井本氏自身の個人的意見もしくはアメリカ等において発表した内容はつまびらかにしておりませんが、そのことだけをもってして、今御指摘のように、やめるべきであるとかどうとかいうことは、直ちには当らないのではないか、かように申し上げました。
○木原委員 重複するようですが、こういうことを、防衛庁の少くとも陸将という立場にある、指揮官の立場にある人が言うということを妥当とされ、なおその職務におられることを、あなたとしては認められるのですか。私はそういうようなことを認めるということであれば、また考えなければならぬ。当然ここに来てもらって、その真意を委員会として十分聞かなければなりませんが、どうです。
○伊能国務大臣 私、井本君自身の発言の内容についてはつまびらかにしておらないということは、最初に前提として申し上げましたが、たまたま官房長の説明によりますと、井本君自身はさような発言をしておらないということでありましたので、事態の内容につきましては明らかになったわけでございますが、ただ一般論としてそういう事態の際に、それだけでもって直ちに本人をどうするかという筋合いではない、内容自体によりましては単に個人としてではなく、公職にあるものとしてきわめて不適当だというような発言であれば、その内容について十分処理をしなければならぬと存じますが、それだけで――井本君がさような発言をしてないということが明確になりましたが、発言の内容によっては、それが公人たる井本君の職務に関連し、しかも命令に違反するような事態であれば、これはもちろん御指摘のように、適当な処理はいたさなければならぬ、かように考えます。
○木原委員 なお重ねてお尋ねしますが、今後とも防衛庁の職員が個人的見解という言葉によって、核武装をしなければならないというようなことを、他国もしくは他人に発言する場合、あなたは長官としてそれを認められますか。職務違反として、これに対して将来処罰をされますかどうか、その点を明らかにしていただきたい。
○伊能国務大臣 その内容が職務に違反するような場合におきましては、御指摘のように適当な処置をとりたい、かように考えております。
○木原委員 はっきり職務に違反するのじゃありませんか。個人とかなんとかいうような立場でないでしょう。私どもは、そういうことは少くとも防衛庁をやめて一個人となって批判すべきであって、防衛庁の中で、職務の内容であろうと個人的意見であろうと、そういうことを言うことは許されないと思うが、どうですか。
○内海委員長 ちょっと速記をとめて下さい。
    〔速記中止〕
○内海委員長 速記を始めて下さい。
○受田委員 私、こういうことを今お尋ねしたのです。今、井本さんの発言は国際的に非常に影響を与えているのです。ところが、その後国会でもわれわれは御遠慮しておったわけだが、たまたまあなたが参議院で、この核兵器の使用を認めるような発言を、政策と憲法解釈は別という意味でやられたというので、そこで私はきょうこれを持ち出したわけです。今まで遠慮しておったのです。ひそかにあなた方の言行を監視しておった。そこで、もうすでにずっと前から防衛庁の内部においては、核兵器の使用ということが可能であるという話し合いができておったのじゃないかという不安をわれわれに与える。そこで、今の自衛官の高級官である井本さんが、アメリカなどで公然とこれを言われた。それが新聞報道に――これは今官房長の仰せられるように、多少の相違点はあるにせよ、井本さん御自身の気持は、核兵器を持って自衛隊を固める方が、戦略の上から見ても戦術の上から見ても有利であるという考えを持っておられる以上は、これはもう井本さん個人の考えは、核兵器を持った方がいいということになっておるのですから、そういう発言をされるそのことがすでに私は問題だと思う。従って防衛庁の内部には、核装備についてはもうすでに内部的には強い希望を持っておって、それがたまたまおとといのあなたの御発言となって現われたという印象を与えておるのですが、いかがでございましょうか。
○伊能国務大臣 誤解がありますといけませんから、この点は防衛庁の見解を明白にしておきたいと思いますが、防衛庁におきましては、核兵器を持つことを前提とする諸般の調査その他等については、一切いたしておりませんことはもちろん、政府の方針を順奉いたしまして諸般の整備をいたしておることは事実であります。従いましてただいま御指摘のような御心配については、もちろん私どもは御心配はないと申し上げますと同時に、私自身就任二カ月にいたしまして、これらの問題について、核兵器を前提とした諸般の装備あるいは諸般の研究をしておるというようなことはございません。井本君の発言につきましては、本人から十分その内容については聞きたいと思いますが、戦術上の問題について、おそらく米軍もしくは米国の専門家との間において、核兵器と核兵器でない装備との間における戦略、戦術の立場において、いずれが有利であるかというような問題等について、研究もしくはその発表をしたものと、官房長の説明によると察せられますので、それを前提とし、そういう考え方から防衛庁長官初め防衛庁内部においては、ただいま御指摘のような考え方でやっておるのではないかということについては、万さようなことはございません。
○受田委員 それはいずれまた井本陸将の御意見を正式に報告をいただきたいと思いますが、あなたにもう一つ伺っておきたいことは、そういう考え方であるから、現在自衛隊の演習などをやるのに、核兵器の攻撃を受ける、ことに核弾頭を有する弾丸が飛んでくることに対して、これを防衛するための演習をやっておられると聞いておるのですが、それは事実でございますか。
○加藤(陽)政府委員 お答え申し上げます。この前から当委員会でも申しておりますが、わが国の防衛につきまして自衛隊の考えておりますことは、局地戦を主としてやる。しかし全面的な戦争というものは、世界全般から見まして、最近の武器の発達から見ますと、もちろん起り得ないというように考えます。しかしその局地戦につきましても、あるいは制限的な核兵器が使われるかもわからない。こちらは使いません。使いませんが、使われるかもわからないというふうな設定は、われわれとしては一応考えなければならない。もし万一その核兵器の攻撃が――希望しないことでありますし、そうないようにわれわれは大きな意味で努力しなければいけないと思いますが、あった場合に、自衛隊としてはどうするか、国民をどうして守るかというようなことは、考えるべきことでありまして、技術研究本部、化学学校等におきまして、その場合にわれわれのとるべき動作、いかにして被害を防ぐかということについては研究しておりますが、訓練をしたということは私は承知しておりません。
○受田委員 研究段階であるということで、まだ訓練には及んでいないということでありますから、私はそれで一応了承します。
 それでは私きょうはこれでおきますが、これから毎日防衛問題についてお尋ねするように、お互いが態勢を整えておりますから……。
○石橋(政)委員 核兵器が出ましたので、関連して一点だけお伺いしておきたいと思います。
 今参議院で非常に問題になっておりますオネスト・ジョンの問題であります。大体政府の意向を聞いておりますと、憲法上からいって違憲ではないが、政策的には持ち込ませたり、あるいは自衛隊が核兵器を持ったりすることは考えておらぬ、こういう統一見解を述べておるが、私はこれがどうも承服できないわけです。一体兵器それ自体の本来持っておる性質といいますか、性能といいますか、そういうものからいって、防御的なものとかあるいは攻撃的なものとか、分類ができるだろうかという疑問を持っているわけです。おそらく長官におきましても、これが防御的兵器だ、これが攻撃的兵器だということは区別できないだろうと思う。そうするとオネスト・ジョンなら、たとえば核弾類をつけても憲法違反にはならぬという理由は一体どこにあるのか。これから先に一つお伺いしておきたいと思います。
○伊能国務大臣 御承知のように日本における自衛隊は、国内を守る、日本の独立と平和を守るという趣旨から、自衛の目的を持ってできておる。かような趣旨で、攻撃的な性格を持たないということから私どもは考えまして、そういう観点から、憲法上核兵器であればいかなる核兵器も持てないだろうかという議論をいたしておりました際に、坐して死を待つというような状態におきましてはどうであるとか、いろいろな論議が出てきましたが、憲法上においても、自衛という観点に立った場合においては、理論的に核兵器の一部を待つ、明らかに常識的にだれが考えても水素爆弾、原子爆弾というような、国内においてこれを使えば、敵を殺傷すると同時にみずからをも殺傷するというような大きな攻撃的性質のものについては、いろいろな論議もありましょうが、少くとも敵が国内に入ってくる、それを前提として、相手がそういった手段に出る際に、こっちもそれを全然使うことができないかどうかというような際には、それは憲法上も許される範囲ではなかろうか、必ずしもすべてを違憲と言うべき性質のものではないか、かような議論をいたしました。その際に、しからば御指摘のように攻撃的な核兵器、防御的な核兵器というようなものが一体あるのかどうかというような論議でありましたが、科学の飛躍的な進歩、なかんずく兵器等の飛躍的な発展の段階において、それらを区別する。これがそうで、あれがそうだということを区別するということは困難ではございますけれども、これはあくまで理論的な、観念的な憲法上の解釈としての御議論でありますから、私どもとしてはさように御回答申し上げるということでありましたが、再三のお尋ねでありましたので、たとえばオネスト・ジョンのごとき兵器の着弾距離がわずかに三十キロ程度、最大射程四十キロ程度のものは、これを日本が持ったとしても、現在の日本の地理的な条件からいって敵を攻撃するという種類のものではない。従って、たとえばこういうようなものは少くとも憲法上の解釈として直ちに違憲ではない、かような趣旨の御説明を申し上げた次第でございます。
○石橋(政)委員 そこがおかしいと言うのです。オネスト・ジョン一つに例をとってお答えになっておられるのですが、味方をも殺傷するというならば、オネスト・ジョンだって同じだと思う。特に日本のような狭隘な地域で使った場合に、味方が全然これで殺傷されないかというと、そんなことはありません。だから、本来防御的な兵器だから、攻撃的な兵器ではないからというようなことでは分類ができないと私は思うのです。そういう分類をあえてやって、オネスト・ジョンならば核弾頭をつけたって憲法上いいのだということを一つ認めてしまえば、これはICBMだって原子爆弾だって水素爆弾だって同じだということになりますよ。使いようだと思うのだ。本来持っておる性格ではなくして、攻撃的な武器として使うか防御的な兵器として使うかという使い方によるのであって、本来持っておる性格によって分けることはできないのですから、オネスト・ジョンがいいというならば、もう一切の兵器が憲法上いい、こういうことにならなければおかしいと思うのですが、どうですか。
○伊能国務大臣 お気持は私も全く同感でございますが、しかしオネスト・ジョン等については日本の地理的状況、ことにさいぜん申し上げましたように、風その他の状況等によっては、逆風が吹いた場合には三十キロ程度であれば、味方をも放射能によって殺傷する場合がないとは言えないことは、御指摘の通りでございます。従って私どもとしては、最近のオネスト・ジョン等については、すでに文献等にも明らかにされておりますように、ソビエトについては私どもつまびらかにいたしませんが、アメリカ等においては普通の師団がすべてこれを装備しておる。通常兵器としてこれを使っておると同時に、外気の放射能等についてもできるだけこれをクリーン・アップして、放射能被害というものを少くする努力がなされておる。同時にオネスト・ジョン自体についても、いわゆる硝安爆薬換算にいたしまして相当大きなものであったものが、最近は非常に小さなものも作られつつあるという形で、通常兵器化しておる。そういう意味からいって、日本の地理的条件等からするならば、理論的な憲法上の解釈の問題としては、すべてが違憲であるという観点には私どもは立ちません。同時に御指摘のごとく、攻撃的兵器と防御的兵器というものを、理論的に実際的に明確に区別をするということは、不可能でございますということを私どもも再三答弁をいたしたのでありますが、しかしたとえば、具体的にどういうものがあるかというから、その例として私は申し上げておる。そういう場合にはすべてが違憲であるという解釈を私どもはとらない、かように申し上げました。
○石橋(政)委員 それは無理ですよ。オネスト・ジョンだけを切り離してそして違憲じゃないということであれば、もう違憲ではないものばかりです。結局違憲の兵器というものはありますか。長官も自分でお認めになっておる。防御兵器と攻撃的兵器と分けられないといって、分けられないものの中を無理に分けて、そしてこれならば違憲じゃない、これならば違憲だ、そんな理屈が成り立つはずがないじゃありませんか。オネスト・ジョンだってそうです。それでは用いようによっては攻撃兵器になるということはお認めになるわけですね。その点いかがですか。
○伊能国務大臣 少くとも日本においては、私はこれを攻撃的兵器として使うことはないと申し上げました。
○石橋(政)委員 そんなばかなことがありますか。防衛庁の見解は一々ぐらぐら変るのですか。どうして攻撃兵器として使われることはないのですか、どうしてないのですか。使いようによってはあるのじゃないですか。
○伊能国務大臣 日本におきましては、外へ出てみずから攻撃をするということがない。従いましてオネスト・ジョンのように国内から外に向って、長大な弾着距離等の観点から、攻撃的にこれを使うことは、オネスト・ジョンの性能自体から不能だということを申し上げました。
○石橋(政)委員 重大な発言をいたしておりますから、変更にならないようにして下さいよ。また食言を重ねて……。
 昭和三十一年四月十九日、本委員会におきまして当時の船田防衛庁長官は何と答えておりますか。速記録をちゃんと読んであげましょう「これは使い方によりまして、もちろん攻撃的兵器にもなると思います。手ぬぐいでも人殺しはできますから……。それかといって、手ぬぐいが凶器だとは私には考えられない。ですから、その使い方によってはオネスト・ジョンも攻撃的兵器になると思います。わが自衛隊といたしましては、ああいうものがもし米軍から供与されましても、これはどこまでも防御兵器として使って参りたい、かように考えておる次第でございます。」使いようによっては攻撃的兵器になる、前の長官が言っておるじゃありませんか。あなたは絶対攻撃兵器としては使えない。使いようによってはなりますよ、オネスト・ジョンでも……。防衛庁の見解は変ったのですか。
○伊能国務大臣 これは人、人によっていろいろな意見があろうと思います。一般論としてはいろいろな御意見も立ち得ると思いますが、私は日本における自衛隊の性格その他から考えて、自衛隊は国外に向って攻撃するということはその使命にない。そういう趣旨からオネスト・ジョンのごときは侵略的な兵器にはならない、かように申し上げております。
○石橋(政)委員 人によってとあなたはおっしゃいますが、私が引例したのは防衛庁長官ですよ。前の防衛庁長官です。あなたは、絶対にオネスト・ジョンは攻撃的な兵器として使われることはないと今断言された。前長官は使いようによっては攻撃的兵器になるとおっしゃっている。非常な相違ですよ。あなたのおっしゃることが間違っておる。船田さんの言っていることがほんとうなんです。第一に使い方によって分けるならば話がわかるけれども、本来の性能から絶対に攻撃的に使いようがないという解釈はどこから立ってきますか。先ほどおっしゃったことと違うじゃありませんか。防衛庁の見解は変ったのですか。
○伊能国務大臣 私はさいぜん来、攻撃的兵器、防御的兵器ということを分けることは困難であるが、オネスト・ジョンのごときは、少くとも日本においては一般論としては――船田さんは使いようによる。おそらく私も国によってはこれが攻撃的兵器になる場合がないとは申し上げておりません。しかし日本においては、自衛隊の特質上、攻撃的兵器になることはないということを申し上げております。
○石橋(政)委員 そういうことはありませんですよ。あなたが今おっしゃっている答弁をずっと一貫して分析してみましても、オネスト・ジョンであろうと何であろうと、核兵器そのものを違憲でない、持ってもいいのだと一つでも認めれば、ほかの全部認められることになりますよ。自分でも矛盾を認めておるじゃありませんか。負けられない。ところが今になってオネスト・ジョンになると、自分が違憲じゃないと言ってしまったものだから、さあ国内において使う場合は攻撃的にならぬとかなんとか言って一生懸命逃げておられるけれども、これはおかしいですよ。それではもう少し私の方でもあなたが今答弁された速記録をよく読んでみましょう。委員長それでは休憩して下さい。
○内海委員長 関連質問があります。高橋禎一君。
    〔発言する者多し〕
○内海委員長 静粛に願います。関連質問ですから、まだ時間もありますから、高橋禎一君をあらためて指名いたします。
○高橋(禎)委員 防衛長官に二、三お尋ねいたします。防衛庁設置法の一部を改正する法律案、これは人員の増加、こういう内容を持っております。それから自衛隊法の改正は、隊の新設、編成がえ、その他の配置に関する問題が主たるものであると思いますが、そこでお尋ねするのは、こういうふうに機構の改正、隊の編成がえ、新設ということと、それに応じての人員の増加が行われて、今一番私どもの疑問を持ちますのは、兵器は一体どういうふうにその隊に配置されるであろうか、そこでどういうことをやるのか、その内容が知りたいわけであります。この改正案に盛られておる各隊、そうして増加される人員等によって、こういう兵器によってこういうことをやるのだということを一つ内容的に御説明を願いたい。
○加藤(陽)政府委員 私からお答えいたします。今度自衛隊におきましては、職員千四百数十名を増員するわけでございます。これは平服職員でございますので、武器の関係はございません。ただ千四百名余り増員いたしますが、そのうちの千名は、現在補給処、学校等に働いております自衛官を平服職員にするのがむしろ能率的であるというのでかえまして、この千名の自衛官をもちまして地区施設隊、ロケット実験訓練隊、教育隊等に充当いたすのでございます。海上自衛隊の方におきましては、艦艇の増加に伴う増員でございます。今作っております艦艇は、御承知の通り警備艦及び掃海艇等でございまして、これらの持っております装備は御承知と思いますが、三インチ砲、五インチ砲などを主としてこれらの艦艇は装備しております。航空自衛隊の方の増員は、レーダー・サイトの要因であります。漸次レーダー・サイトの返還を受けておりますので、これに当ります職員、また航空機の増加に伴います。パイロット、整備員というふうなものの増加と補給処の増加でございます。これらの装備は御承知の通りでございます。
○高橋(禎)委員 今兵器の問題について御説明がありましたが、これらの詳細については後に譲るといたしまして、時間の関係もありますからあまりその問題について深入りはしないことにいたします。そこでこれは簡単にわかる問題だと思うのでありますが、出動に関して二、三お伺いしたいと思います。自衛隊の任務に関しましては、自衛隊法第三条に規定するところでありますが、この第三条第一項の規定によりますと、「国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当るものとする。」この規定の文言からいたしますと、公共の秩序維持ということが副次的なもののように規定してあるのですが、防衛長官は、直接侵略及び間接侵略に対してわが国を防衛する任務と、公共の治安、秩序の維持ということとをどういうふうに考えていらっしゃるか。並列的な価値のものと考えておられるか。一方を主とし、一方を副次的なものとしておられるか、それらの点についての御見解を伺いたい。
○伊能国務大臣 御指摘の点につきましては、第三条の文章としては、御指摘のように「必要に応じ」と書いてありまするが、私どもとしては公共の秩序維持の問題等については、本来の目的と同様きわめて重要な問題と考えまして、全く同様な趣旨でこの仕事に当って参りたい、かように考えております。
○高橋(禎)委員 そこで治安出動に関してお尋ねいたします。自衛隊法第七十九条によりますと、防衛長官は、事態が緊迫して、そうして第七十八条第一項に規定する治安出動命令が発せられることが予測される場合においては、これらに対処する必要があると認めたときは、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の全部または一部に対して出動待機命令を発することができる。前項の場合においては、長官は国家公安委員会と緊密な連絡を保つものとする、こういう規定がありますが、事態が緊迫をして治安出動命令が発せられることが予測される場合ということについて、そういう事態というのは、大体どういう事態を考えておられるのか、その点を一つお答えいただきたいと思います。
○伊能国務大臣 お答え申し上げます。幸いにいたしまして、今日までかような事態の発生を見ておらないことは、国家のために非常に仕合せなことと存じておりまするが、さような条項を特に設けましたゆえんは、御承知のように内外の情勢が非常に緊迫いたしますに伴いまして、国内においても、内乱とまでは申し上げませんが、それに近いような騒擾状態あるいは経済的な闘争でありましても、ゼネラル・ストライキ、かつて昭和二十二年二月一日に経験されようといたしましたような、そういう一般の警察ではとうてい処理が不可能ではなかろうかというような事態が予想されたような場合におきましては、出動準備命令を出す、かようなことで私どもは研究をいたしております。
○高橋(禎)委員 これは警察との関連があるわけですが……。今のお答えにありましたように、一般警察力をもってしては、とうてい治安の維持とすることができないであろう、こういう事態を考えていらっしゃるようでありますから、警察と関係が出てくるわけであります。ところが、ちょうどこれは、昨日も法務委員会において質問いたしたところでありまして、法務当局の見解は大体わかっておりますが、ちょうど北海道の苫小牧市において、御承知のごとく王子製紙の労働争議がありました。あそこは人口五万ぐらいの都市で、しかもその町は王子製紙で生まれ、王子製紙で維持されておるとまでいわれるような、人的にも経済的にも非常に関係が深いわけであります。ところがそこへ争議が勃発して、御承知のごとくにその争議に関連して、非常に規模の大きい集団的な暴力行為、脅迫行為、その他人権侵害行為があったわけです。そのときのいろいろの資料を調べてみますと、また公けにされた新聞雑誌等の記事によってもうかがわれるところなのですが、北海道の警察官は大体五千人余りで、そして現実に出動できるものは、動員できるのは三千人くらい。三千人の警察力に対してであるから、われわれが四千人、五千人で騒げばどうにも収拾することができないのだというようなことを宣伝しつつ、いろいろの事柄が行われたように見受けられるのです。そういう場合において、警察は他の都府県等から応援を求めることが、やろうと思えばできることになっております。ところがその応援を求めるには、この北海道の公安委員会の意思というものが問題になる。他から応援を求めるためには、平素いわゆる共助協定を結んでおくのが例になっておるようでありますが、北海道ではそれをやっておらない。だからそういう事態になったときに他から応援は求めない。そしてその地区では警察力が非常に弱い、こういうことで公共の安寧秩序が乱れる、維持されないというようなときに、いわゆる公共の秩序維持に関して自衛隊の指揮に当られる立場にある者として、一体どういうことを考えておられたらいいのであるか。すなわち今のいわゆる警察力をもってしては、とても事態を収拾することができないというような状態である。それでは先ほどお尋ねいたしました第七十九条の、事態が緊迫をして治安出動命令が発せられるかもしれぬということを予測していろいろ準備をなさるかどうか、こういうことであります。そこのところを明確にお答え願いたいと思います。
○伊能国務大臣 だんだんのお尋ねもありましたが、基本的には警察と緊密な連絡を常時とっておる。たとえば、北海道の例をおあげになられたのでありますが、北海道の苫小牧の事態につきましては、いろいろと各方面から治安上の問題にまで論議が及んだ事態もございますが、私どもとしては、警察の方から出動の要請がなかったと同時に、知事自体からも出動の要請がなかった状況でございますので、北海道の自衛隊としては、事態について十分注意もし、万一の事態に――実際上命令で備えるということはございませんが、治安上遺憾なきような、何と申しますか、調査等は十分いたしておりますが、さしあたっては警察もしくはそれを代表する知事等から要請がない場合におきましては、当面出動するということは考えられません。もちろんそれにいたしましても、地方的な治安の混乱ということが現実に起りますれば、その際には総理大臣の指揮を受けて、また県当局、警察当局等と協議して、適切な措置をとらなければならない、かように考えております。
○高橋(禎)委員 苫小牧のあの争議が、自衛隊の出動するほどのものであったとは私は考えておりません。ただあの例からわれわれの教えられるところは、北海道に対して他の地区から警察官の応援をするということは、第一には北海道の公安委員会がそれを要請しないとできない。ところが公安委員会において、もしも判断を誤まって、事態を収拾することができないように非常に規模が拡大していって、いわゆる社会の治安が乱れ、公共の安全が維持できないというところまで発展した。そういうときに内閣総理大臣が、警察法所定の緊急事態の特別の措置をとるということになれば、これは問題はその方に移っていくわけでありまして、解決ができるわけですが、自衛隊の先ほど指摘しました、七十九条にいう、いわゆる事態の緊迫したということと、それから内閣総理大臣が警察法に基いて、大規模な災害または騒乱その他緊急事態に際して、治安維持のために特に必要あるものとして、この緊急事態の布告を発する、こういうこととは条件が必ずしも私は一致していないと思うのです。ですから総理大臣は、緊急事態の布告はしない。しかしながら都道府県の――先ほど例をとりましたから北海道と申しましょう。北海道の公安委員会の意思では、他からの警察官の応援を求めないで、事態がだんだん発展していって収拾がつかないようになった。しかしまだ内閣総理大臣は緊急事態の布告をしない。そういうときに自衛隊としては、事態が緊迫しておるのだというようなことで、この七十九条による出動待機をなさるようなことがあるのかどうか。これは実際の日本の国内全体の治安の維持という問題と、自衛隊の持っておる任務というものとを考え、そして現行警察制度というものとを考え合せますと、それらの点についてはよほど深い研究をしておかないと、せっかくの自衛隊も何らの用をなさないという事態に立ち至ることを心配いたしますから、それらについてのお考えを承わりたいと思います。
○伊能国務大臣 私どももさような事態が万起らないことを心から希望いたしておりますが、ただいまのお尋ねの点につきまして、総理大臣から緊急事態の発令がない場合に、自衛隊として独自の七十九条に基く出動命令もしくは出動準備態勢をとるということは、一般論としては困難ではなかろうか、かように考えます。しかし、もちろん具体的にそういうような事態が発生した場合には、われわれとしては適切な措置を総理大臣に仰ぎ、これによって行動をとりたい、かように考えております。
○石山委員 関連して。北海道苫小牧のことが、いかにも治安を非常に乱して、自衛隊を対象にしなければならないような同僚議員の質問は、私問題を非常に複雑にすると思うのです。特に自衛隊の性格を複雑にすると思う。(高橋(禎)委員「そうじゃないと言った。」と呼ぶ)そうじゃないと言うのは、あなたは前職が前職だからことにそういう言いわけをしているのです。それじゃいけません。そういう方向に自衛隊を巻き込むことは、何とかかんとか最近自衛隊が国民の中である種の認定を得ております。これは皆さんの側からいえば、認められつつあるというような希望観測にも通ずるのですが、それが今高橋委員みたいな質問の中にいい工合に入ってきて、私の方に治安の任務もうんとあるような話をしてごらんなさい。それではあなたたちのせっかくの努力の芽をつむことになりかねないのじゃないか。それから治安の不安定というふうな現象、特に武装された自衛官が出動するというような異常な雰囲気、そういうふうにしなければならぬという要請、こういうものはそう軽々に判定すべきものではないと思います。北海道でいえば、私も苫小牧に何べんも行ってちゃんと知っていますが、たとえば五千人いる警察官の中の出動可能性が、それの三分の二であれば三千人と見ていいでしょう。そこで大衆行動を起した人数はどのくらいかというと、最大で二千人です。警官一人で〇・八人くらいの人間を左右できないなんて、そんなばかな話はないですよ。警官一人で、指導方針さえよければ五、六人の群衆を整理し得る可能性は、日本の警官の中にあります。そういうことを無視して、二千人に対して三千人も警官が動員できて、それでもまだ足りないから自衛隊を要請しなければならないなどというものの考え方がどこかにあるとすれば、これはゆゆしい問題です。そういうことは……(高橋(禎)委員「そうじゃないと言った。」と呼ぶ)私もそうじゃないと思う。ないと思うからあえて言いませんけれども、そういうことに巻き込まれて、長官が簡単に条文などをたてにとって、出動の可能性を論ずるのはいかぬということを、私は親心で御忠告申し上げて、あとは防衛問題等にからんで、いわゆる治安と自衛隊の任務というふうなもの、今後のあり方等については、これから大いに論議したいと思っております。
○内海委員長 次会は公報をもってお知らせいたします。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後零時五分散会