第031回国会 本会議 第28号
昭和三十四年三月二十四日(火曜日)
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 議事日程 第二十六号
  昭和三十四年三月二十四日
    午後三時開議
 第一 連合国財産の返還等に伴う損失の処理等に関する法律案(内閣提出)
 第二 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とパキスタンとの間の条約の実施に伴う所得税法の特例等に関する法律案(内閣提出、参議院送付)
 第三 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とノールウェーとの間の条約の実施に伴う所得税法の特例等に関する法律案(内閣提出、参議院送付)
 第四 中小型鋼船造船業合理化臨時措置法案(内閣提出、参議院送付)
 第五 消防組織法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第六 消防法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
 第七 外務省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第八 関税及び貿易に関する一般協定の新第三表(ブラジルの譲許表)の作成のための交渉に関する議定書の締結について承認を求めるの件
 第九 日本国とカンボディアとの間の経済及び技術協力協定の締結について承認を求めるの件
 第十 日本国とユーゴースラヴィア連邦人民共和国との間の通商航海条約の締結について承認を求めるの件
 第十一 国民年金法案(内閣提出)
 第十二 石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第十三 漁船法の一部を改正する法律案(農林水産委員長提出)
 第十四 繭糸価格の安定に関する臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第十五 酪農振興法の一部を改正する法律案(内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
 大矢省三君の故議員山村庄之助君に対する追悼演説
 科学技術会議議員任命につき同意を求めるの件
 ヴィエトナム賠償に関する緊急質問(松本七郎君提出)
 四国地方総合開発促進に関する決議案(前尾繁三郎君外四十六名提出)
 日程第十一 国民年金法案(内閣提出)
 日程第一 連合国財産の返還等に伴う損失の処理等に関する法律案(内閣提出)
 日程第二 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とパキスタンとの間の条約の実施に伴う所得税法の特例等に関する法律案(内閣提出、参議院送付)
 日程第三 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とノールウェーとの間の条約の実施に伴う所得税法の特例等に関する法律案(内閣提出、参議院送付)
 日程第四 中小型鋼船造船業合理化臨時措置法案(内閣提出、参議院送付)
    午後三時四十五分開議
○議長(加藤鐐五郎君) これより会議を開きます。
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 大矢省三君の故議員山村庄之助君に対する追悼演説
○議長(加藤鐐五郎君) 去る十八日逝去いたされました議員山村庄之助君に対し弔意を表するため、大矢省三君から発言を求められております。これを許します。大矢省三君。
    〔大矢省三君登壇〕
○大矢省三君 私は、諸君の御同意を得まして、議員一同を代表して、去る三月十八日急逝せられました故衆議院議員従四位勲三等山村庄之助君に対し、つつしんで哀悼の辞を申し述べたいと存じます。(拍手)
 私どもは、夢にも思わなかった山村君の訃報に接し、驚愕悲痛おくところを知らなかった次第であります。
 山村君は、明治二十二年二月、奈良県宇陀郡室生村に生まれ、四十一年、長野県の上田蚕糸学校を卒業し、直ちに奈良県養蚕組合及び農業補習学校に迎えられ、県下養蚕業の指導に当られたのであります。大正三年には、台湾総督府蚕業技術官となって台湾に渡り、同地における養蚕技術の向上に努められ、着々業績を上げられたのであります。大正七年、君、新しい事業を開拓しようとの熱意に燃え、台湾産業社を興し、くだものの移出業に従事し、次いで十二年に居を大阪に定め、くだもの問屋を設立し、その経営に当られたのであります。
 しかるに、文字通り徒手空拳をもってする君の事業は、もとより容易なものではなく、君は、生来の不屈不撓の精神をもって奮闘し、あらゆる困難と障害とを克服し、漸次その事業を拡大し、ついに、よく成功をおさめて、大阪における食料品業界の重鎮として厚い信頼をになわれるに至ったのであります。
 この辛苦と努力によってみがかれた君の人格と識見は、やがて大阪府民の認めるところとなり、昭和十二年に初めて府会議員に当選以来、二十三年まで連続して在職し、戦中戦後の困難な情勢のもとで、よく地方自治の発展に貢献し、民生の安定に尽瘁せられたのであります。
 昭和二十三年、君は、赤間府知事の懇望により、大阪府議会から与野党一致の推薦を受け、大阪府政史上初の民間副知事として就任せられたのであります。(拍手)しかして、昨年その職を辞するまで三期にわたり、前後十年間、知事を助けて、大阪府政に卓越せる手腕を発揮せられたのであります。君は、大阪がわが国再建の上に果すべき役割のきわめて重かつ大であることに思いをいたし、大産業都市の建設を目ざして献身的努力を重ね、もって赤間氏の知遇と府民の信頼にこたえられたのであります。
 その間、昭和二十九年には、かねて懸案の大阪市周辺の合併問題を解決し、また、二十八年及び三十二年には、それぞれ世界の各国を歴訪し、その政治、経済、産業、貿易の実情をつぶさに調査し、海外市場の開発と貿易の振興のために尽力される等、大阪に残された君の功績は実に枚挙にいとまがないのであります。
 君は、昨年五月の総選挙に、新たなる決意を持って大阪府第一区より立候補し、最高点をもって、みごとに本院の議席を得られたのであります。(拍手)また、本院にあっては、終始、熱心に国政の審議に当り、特に大蔵委員として税制に関して豊かなうんちくを傾け、その他、長年にわたる貴重な経験をよくその上に生かされたのであります。在職期間は一年に満たなかったとは申せ、精励もって議員の職責を果された君の功績は、まことに著しいものがあるのであります。
 思うに、山村君は、まれに見る清廉高潔の士であるとともに、かたい信念の人でありました。その資性は明朗、らいらく、その人格は温厚篤実、まことに苦労人と呼ぶにふさわしい人柄で、人を信ずること厚く、よく他人のためをはかられたのでありまして、広く各方面の尊敬と信頼とを一身に集めておられたのであります。
 君は、よわいすでに古希を越えておられたにもかかわらず、壮者をしのぐ意気をもって速日活躍しておられたのであります。しかるに、去る十日、大蔵委員会の税関係法案の審議に当り、午後、本会議に出席中、にわかに胸部に不快を覚え、医師の診断を受けられました。翌十一日も病を押して登院し、委員会に出席して、砂糖消費税法の改正案等の審議に参加されましたが、採決直前、ついに耐えがたく、やむなく退席されたのであります。午後、大阪に帰り、直ちに入院、加療に努められましたが、御家族の手厚い看護もむなしく、御本復を見るに至らなかったのであります。日ごろ健康を誇っていた山村君ではありますが、あまりにも激しい活動がこの不幸を招いたのだと思われます。私どもは、一身を顧みず、最後まで議員の責務を遂行し、ついにその職に殉じられた君の崇高な精神に強く心を打たれるとともに、哀惜の情ひとしお深きものを覚えるのであります。(拍手)
 現下、内外情勢はますます多事多難であり、従って、国会議員の職責もいよいよ重きを加えております。私ども、君を知る者は、みな、君が練達たんのうな力量を本院において今後ますます発揮されるものと期待し、その将来を大いに嘱目して参ったのであります。君もまた、民主政治家として深く期するところがあったことと存じますが、不幸、病魔のためにその抱負もむなしく、その手腕を十分に示される機会を失いましたことは、国家にとってまことに限りない痛恨事と申さなければなりません。しかし、君は、たとい短かい在職期間であったとは申せ、多大の印象と感銘を私どもに残して去られました。
 ここに、山村君生前の事績を回顧し、つつしんで御冥福を祈り、もって追悼の言葉といたします。(拍手)
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 科学技術会議議員任命につき同意を求めるの件
○議長(加藤鐐五郎君) お諮りいたします。内閣から、科学技術会議議員に内海清温君、梶井剛君及び茅誠司君を任命したいので、科学技術会議設置法第七条第一項の規定により本院の同意を得たいとの申し出があります。右申し出の通り同意を与えるに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、同意を与えるに決しました。
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 ヴィエトナム賠償に関する緊急質問(松本七郎君提出)
○荒舩清十郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、この際、松本七郎君提出、ヴィエトナム賠償に関する緊急質問を許可されんことを望みます。
○議長(加藤鐐五郎君) 荒船君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
 ヴィエトナム賠償に関する緊急質問を許可いたします。松本七郎君。
    〔松本七郎君登壇〕
○松本七郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ベトナム賠償に関し、岸首相並びに関係閣僚に緊急質問を行わんとするものでございます。(拍手)
 社会党は、従来から、政府がベトナム賠償交渉を南ベトナムのゴ・ディンジェム政府のみを相手に進めているのに対して、ベトナムの統一を阻害するものであり、アジアの平和に害ありとして、強く反対してきたのでございます。もし、政府がこの誤まった方針を変えることなく、賠償協定の調印を強行する場合には、北ベトナムと日本との貿易にも重大な支障を来たすばかりでなく、ひいては社会主義諸国との関係をも悪化させることになり、日本にとって大きな不利益を招くのみならず、平和のため好ましからざるゆえんを再三説きまして、また警告もして、賠償交渉をベトナム統一まで延期すべきことを要求して参ったのであります。しかるに、政府、あくまでも頑迷な態度を続けて参りまして、最近の報道によりますと、遠からずその調印の運びに至るということであります。現に、去る十八日にも、アジア公館長会議の席上において、藤山外相は、ベトナム賠償も近く解決する見込みであることを、はっきり言明されておられるのであります。このために、北ベトナムとの貿易は、今や重大な事態に直面しております。
 十七日付の新聞の伝えるところによりますと、ハノイにいる日本の五つの商社、すなわち、明和産業、第一通商、燐鉱貿易、睦、並びに日協商事の駐在員から、十六日に日越貿易会あてに電報が入っております。それによりますと、「北ベトナムとの貿易交渉は、南ベトナムとの賠償調印近しの報道によって最悪の事態に陥り、新貿易協定はもちろんのこと、石炭、鉄鉱石、繊維、肥料の商談さえすべて停止し、賠償が調印されれば日本商社代表は即時帰国せざるを得ないおそれがあるばかりか、日中貿易再開にも悪影響を及ぼす。従って、万難を排しても調印を阻止するよう国会に働きかけてほしい」、こういう趣旨の電報でございます。昨年三月十八日に結ばれました貿易協定は、本月十七日に期限がきております。新協定の見込みがなくなり、貿易が最悪の事態に陥って参りましたのは、全くこれは岸政府の誤まれる賠償政策に責任があるといわなければなりません。(拍手)
 貿易の行き詰まりは、単に関係商社だけではなく、メーカー、消費者、船会社、保険会社、銀行など、その被害の及ぶ範囲もきわめて大きいのは、これは当然のことでございます。一昨年の、日本と北ベトナムとの貿易の実績を見ますると、往復が三十億円をこえております。昨年は往復約六十億円の貿易協定を結びまして、現在実施中の北ベトナム政府の国家三年計画並びに日本商品に対する強い要求は、日越貿易の将来にとってますます有望な条件となりつつあったのが、最近の状態でございます。特に、過去二十年の長きにわたりまして引き続き輸入してきておりますポンゲー炭が、いかに日本にとって必要不可決のものであるかは、これは今さら言うまでもないことであり、将来有望なものとしては、世界的に優良品位として折紙のついております鉄鉱石もあります。こういった重要な時期に貿易中断の危機を迎えたのでございますから、関係者をいたく失望させたのは当然なことでございましょう。かかる事態に直面して、政府は、いかなる対策をもって臨むのか、北ベトナムの貿易を犠牲にしても、なおベトナム賠償交渉を進展させ、調印する方針を変えないつもりか、この点を、まず総理大臣から明らかにされたいのであります。
 かかる事態に陥って、輸出入の面では当然損害が生じますが、この生じた損害に対しては、何らか補償をする対策を政府は用意しておるのかどうか、これは通産大臣から詳しくお答えを願いたいところでございます。
 賠償の内容について申しまするならば、御承知のように、純賠償が三千九百万ドルのうち三千七百万ドルを占めるダニム・ダムの建設は、発電所として北ベトナムにも利益が及ぶというのが、政府の今までの言い分でございます。また、十六日の外務委員会における参考人としての植村甲午郎氏も、やはり、この点を繰り返し説明されておられるのでございます。しかしながら、いかに日本政府がそのように考えておりましても、肝心な、これを受ける方の北ベトナム側では、決して自国にとって利益になるとは判断しておらない。朝日新聞の特派員がこれも詳しく伝えておりますように、昨今の南ベトナムは米国の軍事基地、軍用道路が充満しており、ダニム・ダムの建設も、これら基地に供給する電力の電源開発だとさえいわれておるのでございます。つまり、北ベトナム側からいたしますならば、日本の賠償の実施は米国の北ベトナムに対する敵視政策に対する援助であり、強化としか受け取られていない点に留意しなければならないのであります。(拍手)さらに、ダニム・ダムは、すでに戦時中におきまして日本が計画したこともあります。戦後は、久保田豊氏が社長をしておられる日本工営が民間べースの契約で従事してきたものでございます。それが、そのまま純賠償に繰り入れられまして、三千九百万ドルのうちの三千七百万ドルという、ほとんど全部を独占しておる状態であります。そのため、日本工営は私設賠償庁の観を呈して、賠償そのものがまだ国会で承認も受けておらない前から、商社、電機電線メーカー、土建業者などの間では、この日本工営と結んで賠償の分け前を獲得するための乱戦を展開していると報せられておるのでございます。その間、日本工営は、植村甲午郎氏を通じまして、賠償繰り入れのための強い働きかけを政府に対して行なったと報ぜられているのでございますが、この間の事情を首相からつまびらかにしていただきたいのであります。賠償ほど、安易にして、ぼろい金もうけはない、といわれておる。これでは、賠償は、戦争の償いとして、被害者たるベトナム国民の利益のためではなく、日本のごく一部の者の金もうけのための事業だと評されてもいたし方あるまいと思うのでございます。(拍手)従来、ベトナム賠償に関しましては、賠償額の基礎について何らの説明もなされなかったのであります。十六日の外務委員会における参考人でもあった、また、この賠償の当初の担当者でもありました植村氏でさえ、五千五百六十万ドルという額の基礎については何らの説明ができなかったようなありさまでございます。この際、賠償額の基礎について、一体、政府は納得のいく説明ができるのかどうか、この点を、まず私どもは要求しなければならないのでございます。
 岸首相が全面的に協力いたしました日本帝国主義の侵略は北からなされたにかかわらず、「賠償は南から」と皮肉られているのが、今日の状態であります。また、被害の全部は、ほとんど北が受けたのであります。南は、わずかニワトリ三羽であるということは、外務省ですら認めているといわれておるのでありますが、一体、この日本の戦争の直接の被害者はだれであるのか。政府が調査した結果並びに賠償額の算定の基礎を、外務大臣から、ここに明示していただきたいのでございます。(拍手)
 このことと関連いたしまして、賠償の相手として南ベトナム政府を選んだ根拠がまたきわめて薄弱である点も指摘しなければなりません。政府は、この点につきましては、もっぱら、サンフランシスコ条約当時の事情を引き合いに出して説明しておるのでございますが、当時はフランス連合の名で参加したものであります。その後、一九五四年にはジュネーヴ協定が成立いたしまして、従来の関係は、ここで一新いたしました。そして、国家としてはベトナム民主共和国が正式に承認されて、ただ停戦の便宜上、フランスの権力を継承した地方権力としてのゴ・ディンジェム政権が存続したにすぎないのであります。ジュネーヴ協定でも、この基礎の上に立ちましてベトナムの統一が明示されたことは、皆さん御承知の通りでございます。また、一九五五年のバンドン会議には、日本政府代表が正式に参加いたしまして、統一ベトナムの国連参加を決議いたしておるのであります。これらの事実に加えて、自由諸国のうち、イギリス、フランス、インド、エジプト、インドネシアその他の国々が、経済代表団あるいは領事館をハノイに設置いたしておる事実、また、一部の国では、政府間の貿易協定さえ結んでいる事実を考えますならば、単に形式的に南ベトナムが全ベトナムを代表するなどという態度が、いかに大きな誤まりであり、北ベトナムに対してはもとより、統一ベトナムに対しても非友好的態度であるかは、明白であろうと思うのであります。(拍手)この点、岸首相の猛反省を促して、その所見をはっきり伺っておきたいのであります。
 また、バンドン会議には、日本の代表として、政府代表として高碕さん、また、民間代表としては、今は外務大臣である藤山さんが正式に参加されておるのでございますが、一体、いかに対処して、この国際信義を保たれんとするのか、高碕通産大臣や藤山外務大臣こそ、この岸首相のあやまちを改めさせる責任をになっておるはずであります。この際、その所信を明確にされたい。
 政府は、即時交渉を打ち切りまして、少くともベトナム統一まで延期する態度をきめるか、あるいは、調印を無期延期することによって、今日直面しておるこの貿易上の危機を打開するために積極的に乗り出すべきだと確信するのでございますが、首相の明確な態度をここに表明されたいのでございます。
 最近のベトナムからの報道によりますると、ベトナムもまた、岸政府の日米安全保障条約改定には非常に大きな関心を抱いておるようでございます。南ベトナムにおける米軍基地の拡張とからみまして、日本と韓国、台湾、南べトナムを反共体制に固めようという、この米国の意図を見抜いて、かつ憂慮しておるベトナム政府とすれば、当然、岸政府の安全保障条約改定に対する動きを注目せざるを得ないと思います。南ベトナムでは、アメリカの社会主義陣営に対する敵対的な包囲政策に協力するとともに、ベトナムの統一を口にする民族主義者に対してさえ激しい弾圧が行われておるのが実情でございます。その端的な現われといたしましては、最近伝えられている、昨年十二月一日に起りましたフーロイ事件であります。ゴ・ディンジェム一派は、政治犯としてフーロイ収容所に監禁しておりました六千人に対して、食物に毒を入れて集団虐殺をはかりまして、その日のうちに一千人以上の者が絶命してしまったというのでございます。南ベトナムにおける、このようなフアッショ的な弾圧政治の実態は、この非人道的にして残虐無比なフーロイ事件によって世界じゅうにさらけ出されてしまったのでございます。
 以上述べたような内外の情勢にある際に、ベトナム政府の意思を無視して、南ベトナム政府だけとこの賠償協定の調印を強行するようなことになりますならば、おそらく、これは、ただに北ベトナムに対する非友好的態度としてばかりでなく、全社会主義諸国に対する非友好的態度の現われとして、非難の的になるは必至だと思うのでございます。(拍手)このことは日中関係にも必ず悪影響が及ぶと考えられます。南ベトナムにおける米国の急速な軍事基地拡大強化の政策と、また、一方では、国内的には反動化、フアッショ化が、単にこれは北ベトナムに対するのみならず、隣国の中国に対する直接の脅威となっておるのでございます。ここにもまた、客観的事実として、アメリカ帝国主義が日中両国民の共同の敵であるという本質が暴露されておるといわなければなりません。(拍手)これらの事実に基きまして、社会党は、岸内閣がその誤まれる外交政策を再検討し、根本的に変更すべきことを要求するものでございます。
 以上の諸点につき、明らかにその答弁をしていただきたいことを要求いたしまして、質問を終る次第でございます。(拍手)
    〔国務大臣岸信介君登壇〕
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。
 私どもも、ベトナムが南北に分れておる事態が統一せられることにつきましては、これを心から望むものでありますが、しかし、日本とベトナムの関係につきましては、御承知の通り、サンフランシスコ条約におきまして、われわれは、戦争中損害を与えた地域に対してそれぞれ賠償をすることになっておりまして、他の国々に対しましては賠償協定がそれぞれできました。ベトナムにつきましては、去る二十八年ごろから交渉を続けてきておりまして、大体その結論に達する時期にきたのであります。今日、これの調印を延ばすとか、あるいは賠償協定を打ち切って統一まで待てという御意見でありますが、政府としては、そういう沿革をたどってきており、今日にきておりますので、これが調印を無期延期するとか、あるいは交渉を打ち切るというような意思は持っておりません。
 また、この南ベトナム政府、すなわちベトナム政府をわれわれは相手として交渉しておるが、北ベトナムというものに対して一体どう考えておるか、また、賠償するにしても、南ベトナムに対する賠償は北を含まないじゃないかというような御意見でありましたが、私どもは、この平和条約との関係から見ましても、いわゆる南ベトナム政府、すなわちベトナム政府を全ベトナムを代表する正当政府として、これと交渉し、協定を締結するものでございます。従って、損害につきましても、ベトナム全体の戦争による損害を対象として、われわれは賠償交渉をいたしております。将来統一された場合におきましては、この正当と認められておるベトナム政府の権利義務がその統一された政府に継承されることは当然であると思います。しからば、そう見ることが格別ではないかという議論でありますが、サンフランシスコ条約を引用することは当然でありまして、同時に、日本以外におきましても五十ヵ国という多数の国がやはり日本と同じ立場をとっておることを考えてみますると、われわれは、国際的にかように扱うことは決して間違っておらない、かように考えております。
 ダニム・ダムの問題につきましては、これが賠償協定におきましてその内容となる場合におきましては、どういう業者にこれを請け負わせてやらせるかというふうな問題は、すべてベトナム政府が決定する問題でありまして、いろいろ御心配の点があるようでありますが、これはベトナム政府が当然の権利としてその相手方をきめるわけでございます。何か植村君を通じて政府にこれを入れることを強要したというような御意見でありましたが、そういう事実は全然ございません。
 また、安保条約改定について日本がアメリカと交渉いたしておりますが、それが社会主義諸国に対しての非友好的な考え方を持っておるとか、あるいは、この賠償協定を成立せしめることが社会主義国家に対して非友好的な考えの現われであるというようなことは、われわれは全然考えておりません。当然われわれが条約上の義務としてやらなければならぬ、また、日本とアメリカとの関係において、日本みずからが独立国としてどういう安全保障体制をとるかという立場から考えておるわけでありまして、これをもって非友好的な考えであるとか、あるいは他の全然関係のない貿易その他の問題に必然的に関係ありとして考えていくということは間違いである、私はかように思います。(拍手)
    〔国務大臣藤山愛一郎君登壇]
○国務大臣(藤山愛一郎君) 総理の御答弁のありました以外に、私に対する御質問は、賠償の金額等につきましての決定はどういう工合にして基礎的に考えてきたのかということだと思います。もちろん、賠償のことでありますから、その損害につきましては、人的、物的、もしくは、戦争中の、経済的と申しますか、無償で徴発したというような場合における損害、また、精神的な損害というものも考慮しなければならぬことは当然だと思います。ただ、日本といたしましても、賠償を支払います場合には、各国との賠償の額というものも考慮に入れなければなりませんし、また、日本の国力というものも考えのうちに入れて参らなければならぬと思います。従いまして、そういうことを基準にして、われわれは、二億五千万ドルの最初の要求から、ただいま御指摘のありましたような三千五百万ドルの金額に次第に詰めて参ったわけでありまして、そうした諸種の条件を勘案しながら、今日まで交渉を進めてきた次第でございます。
 なお、南北ベトナムの統一はジュネーヴ会議、バンドン会議等でやっておるが、お前はバンドン会議にも出席しておるので、どう考えるかということであります。むろん、バンドン会議等に出席いたしまして、南北ベトナムの統一というのは、これは当然希望するわけで、分離剛家におきまして、分裂国家が統一を一日もすみやかにやることを望んでやまないことは、日本国民として当然のことだと思います。ただ、この問題と賠償を支払うという問題とは直接関係があるわけではございませんし、ことに、われわれとしては、全ベトナムを相手にして賠償を支払うことを主義としてやっておるわけでありますから、両ベトナム間の幸福になろうかと思いますし、統一によってそれが両ベトナムに影響して参ることになろうことは問題ございません。
    〔国務大臣高碕達之助君登壇〕
○国務大臣(高碕達之助君) 北ベトナムとの輸出入が途絶した場合に商社の受ける損害を政府が補償するかとの御質問でありますが、これは、輸出入保険の範囲を越えた以上は、政府は補償する考えは持っておりません。
 それから、一九五五年のバンドン会議に首席代表として出席いたしました私といたしましては、今日におきましても、南北ベトナムが一日も早く統一して国連に加入されんことを希望してやまないのであります。(拍手)
○議長(加藤鐐五郎君) ただいまの松本君の発言中、もし不穏当の言辞があれば、速記録を取り調べの上、適当の処置をとることといたします。
     ――――◇―――――
○荒舩清十郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、前尾繁三郎君外四十六名提出、四国地方総合開発促進に関する決議案は、提出者の要求の通り委員会の審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
○議長(加藤鐐五郎君) 荒船君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
 四国地方総合開発促進に関する決議案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。前尾繁三郎君。
    …………………………………
  [前尾繁三郎君登壇〕
○前尾繁三郎君 ただいま議題となりました四国地方総合開発促進に関する決議案について、自由民主党並びに日本社会党を代表いたしまして、その提案の趣旨弁明をいたします。
 まず、決議案を朗読いたします。
   四国地方総合開発促進に関する決議案
  四国地方は、本来、本土と海を隔てて相互の交通連絡に著しく円滑を欠くのみならず、地域内各県をつなぐ道路、鉄道等の交通網をはじめ、港湾その他の施設の整備ははなはだしく立ち遅れ、ばん近における経済諸情勢の進展に即応し得ない実情にあり、さらにまた、本地方は、宿命的台風豪雨の常襲地帯として累年の災害に悩まされ、ために、旧態依然たる経済の悪循環を繰り返して、産業は振わず、民生の安定向上また期すべくもなく、ひいては地方財政に難渋をきたし、本地方の後進性はますます顕著の度を加えている。
  隣接する和歌山県についても、その後進性と災害ひん発の実情は四国各県と類似の自然的立地条件のもとにおかれ、同地域をあわせて総合的対策の確立を必要とするものと思料する。
  他面、これらの地方は、由来、豊富な未利用資源を包蔵しながら、いまだにこれが調査活用の積極的方途を進むるに至っていないことはまことに遺憾である。
  よってこの際、四国各県及び和歌山県を一丸とする画期的防災対策を強力に推進するとともに、交通、運輸等公共諸施設の整備充実を図り、さらに進んで未利用資源の積極的開発、産業基盤の培養強化に努め、もって経済の助長発展を期することこそ、ひとり本地方民生の安定、福祉の増進を図るゆえんたるのみならず、国土総合開発の大局的見地において、刻下喫緊の急務であり、国の建設的施策にまつところきわめて大なるものがあるといわねばならない。
  叙上の趣旨をもって、政府はすみやかに本地方開発に関する基本方策を樹立し、これが実施を推進するため、昭和三十五年度を契機として、予算上、法制上所要の措置を講じ、もって施策の万全を期すべきである。
  右決議する。
 わが国は、狭隘な国土と過剰な人口をかかえて、原料資源の大半を国外に依存しなければならないことは、御承知の通りでありまして、これらの隘路を打開、克服し、産業の振興と雇用の増大をはかり、経済の自立再建を達成することは、わが国の当面するまことに重要な課題であります。これがためには、まず国土の保全に努め、資源を最高度に活用して、適正な産業立地計画のもとに、地域的均衡のとれた経済の発展をはからなければなりません。われわれは、この国土総合開発の一環として、いち早く北海道、東北地方並びに九州地方の重要性を取り上げ、さきに本院においてこれが開発促進に関する決議案を上程し、満場一致これを可決いたしまして、現在着々その実をあげつつあることは、まことに同慶にたえないところであります。
 さて、四国地方について見ますると、この地方は、本土と海を隔てておりますために、本州並びに九州との交通連絡が円滑を欠いておりますのみならず、地域内を循環する鉄道網を初め、各県を結ぶ幹線道路及び各地港湾等の公共諸施設の整備は遅々として進まず、かてて加えて、本地方は宿命的な台風、豪雨の常襲地帯でありまして、その産業、民生に及ぼす被害は年々はかり知れないものがあります。このような事情のもとにおきまして、産業の開発は著しく立ちおくれ、民力が乏しく、地方財政もまた難渋を来たしているのでありまして、旧態依然とした経済の悪循環を重ねつつ今日に至っているのであります。今にしてこの地方の後進性を打開するため建設的な施策を講ずるにあらざれば、民生の安定向上はもとより、産業経済の伸張発展はとうてい期すべくもありません。
 同時に、また、一衣帯水の間に相対する和歌山県は、その地位的、自然的条件が四国地方ときわめて類似し、従って、その後進性と災害頻発の事情は、おおむねその軌を一にするものと思われますので、この際、同県をあわせて総合的な対策を立てることが適切であると考えられます。他面、また、この地方に賦存する豊富なる水、森林及び地下資源については、いまだに十分な調査、活用が行われていない状態にありますので、将来これらの開発が進められますならば、わが国産業経済の振興に多大の貢献をなし得るものと、ひそかに期待する次第であります。
 このような地位的特殊性と経済立地上の重要性にかんがみまして、これらの地方に対する防災対策とともに、特段の開発方策を確立して、これを本土経済の中枢に連係せしめることは、ひとり本地方民多年の宿願たるのみならず、国家経済の大局的見地において、きわめて緊要であります。
 すなわち、水資源については電力、農工業用水等の多目的な活用をはかり、あわせて森林資源及び地下資源等の積極的な開発を行うとともに、この地方における根幹交通網、工業用地、港湾など、経済立地の整備をはかり、産業の近代化を促進し、経済基盤の培養強化と民生の安定向上に資する等、本地方開発の画期的新生面を切り開かんとするものであります。
 このような当面の地方的並びに国家的要請に即応して、政府はすみやかに四国地方開発に関する長期かつ総合的基本計画を樹立し、これを強力に実施推進するため、予算上、法制上所要の措置を講ぜられるよう、特に期待するものであります。
 如上の趣旨をもちまして、ここに本決議案を上程することにいたしました。切に満場の諸君の御賛同をお願いする次第であります。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(加藤鐐五郎君) 討論の通告があります。これを許します。廣瀬勝邦君。
    〔廣瀬勝邦君登壇〕
○廣瀬勝邦君 私、ただいま提案されました決議案に対し、賛成の討論を行わんとするものであります。
 古来、わが国において辺境の地と目され、その後進性が指摘されていた北海道、東北、九州、四国の各地方のうち、前三者については今日まですでに開発促進の立法化がなされ、着々と総合開発が進められているにかかわらず、ひとり四国地方のみが、いまだにその趨勢から取り残されているのであります。
 海を隔てて隔絶せられている本地方は、瀬戸内に面する一部の地帯を除いては、その本土との交流の疎外に因を発し、全般的に産業、経済の開発が著しく立ちおくれ、近時急テンポに上昇の一途をたどる日本経済の進展に即応し得ず、他地域に比して、ますますその落差が顕著になっているのであります。
 すなわち、入口は対全国比四・八%を占めながら、工業生産額はわずかに二・九%の一千九百億円にとどまり、第二次産業部門の比率は、全国平均二三・八%を大きく下回る一七・四%にすぎないのであります。ために、地場産業は低迷状態から脱却できず、年年増大する農村方面よりの労働余力の地区内就業などはとうてい期待しがたく、ひいては、本地方産業の主体である農業経営の細分、零細化を必然的に招来し、耕地面積二十五万四千五百ヘクタールに対し、農家戸数三十九万八千戸、平均一戸当り六十六アールという状態を現出しているのであります。かかる要因は、四国各県民の所得水準の低位くぎづけをもたらし、銀行預金全国比の二・三%、国税収納金一・四%となって現われ、従って、みずからの投資力も弱く、さらには地方財政の財源枯渇と貧窮化を結果づけているのであります。しかも、なお、本地方に定期的に常襲する台風、豪雨の被害は年を追って累積し、これまた地方財政への圧迫に拍車をかけ、総合開発の自主的な推進をなし得ない原因となっているのであります。
 狭い国土に過剰な人口をかかえながら、経済自立を達成するために国土総合開発が進められている今日、以上のごとく最も立ちおくれた本地方の開発を早急に促進し、未利用資源を最高度に活用することは、一日もゆるがせに放置し得ない国家的急務であろうと信ずるのであります。
 かかる本地方の開発のために、まず第一には、経済発展の基礎要件となる交通網の整備、港湾設備の拡充、土地造成など、産業誘発条件の整備を必要とするのであります。現在、本地方の対本土輸送施設は、その大半が機帆船による海上輸送に依存しており、これを近代的施設によって日本経済の中枢ラインへ密着せしめなければならないのであります。また、地区内四県にわたる鉄道、道路等の交通網もすみやかにこれを整備し、港湾施設の増強と相待って、臨海工業地帯を主軸とする近代産業発展の基礎たらしめる必要があります。
 第二には、未開発資源の開発利用推進であります。従来、本地方は有数の水資源に恵まれており、四十一万八千キロワットの既開発電源のほかに、未開発包蔵電源百十八万六千キロワットを有し、工業用水の面においても、大規模需要を優に受け入れる余力を持っているのであります。このことは、わが国工業発展の過程において、近き将来に予想され得る隘路としての工業用水と熱エネルギーの観点より、国家としても大きく日本経済全般の立場から注目せねばならぬ点でありましょう。林産資源においても、未開発山林は六十万八千三百ヘクタールに及び、蓄積推定四千八百五十八万立方メートルは、これまた、わが国有数の森林資源にして、その有効な開発利用が待たれるのであります。
 その他、農産資源の利用についても、いわゆる西南暖地の特性を生かしつつ、豊富な水資源から農業用水を取り、土地改良、干拓、開墾の促進と、酪農、果樹、蔬菜、園芸等の助成振興によって、本地方の農業経営の画期的な向上躍進をはからねばならないのであります。さらにまた、打ち続く災害防除のための河川の改修事業、治山、砂防、地すべり対策、海岸の侵食防止のための海岸堤防及び防災林工事、老朽化ため池の保全、農地、特に急傾斜地の保全事業等、総合生産性向上の上に大きな障害となる問題も山積しております。
 しこうして、以上のことは、また、類似する自然的立地条件のもとにある本地方隣接の和歌山県についても言い得ることであります。
 よって、この際、政府は、本決議案が可決されますことを契機として、四国四県並びに和歌山県全住民の多年にわたる悲願である本地域の総合開発と防災対策の強力なる施策推進をはかり、法制上、予算上、必要の措置をすみやかに講ぜられんことをここに強く要望し、本決議案に賛成の意を表明いたします。(拍手)
○議長(加藤鐐五郎君) これにて討論は終局いたしました。
 採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。
 この際、世耕国務大臣から発言を求められております。これを許します。国務大臣世耕弘一君。
    〔国務大臣世耕弘一君登壇〕
○国務大臣(世耕弘一君) ただいまの御決議につきましては、政府といたしまして、慎重に検討いたしまして、なるべく御趣旨に沿うように努力いたしたいと存じます。(拍手)
     ――――◇―――――
○荒舩清十郎君 議事日程順序変更の緊急動議を提出いたします。すなわち、この際、日程第十一を繰り上げ上程し、その審議を進められんことを望みます。
○議長(加藤鐐五郎君) 荒船君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程の順序は変更せられました。
 日程第十一、国民年金法案を議題といたします。委員長の報告を求めます。社会労働委員長園田直君。
    …………………………………
    〔園田直君登壇〕
○園田直君 ただいま議題となりました国民年金法案について、社会労働委員会における審査の経過並びに結果の大要について御報告申し上げます。
 わが国の公的年金制度としては、恩給、厚生年金保険、各種共済組合等など、すでに幾つかの制度がありますが、これらはいずれも一定の条件を備えた被用者を対象とするものであって、国民の大半を占める農民、商工業者、零細企業の被用者などには何らの年金制度が確立していないのであります。
 翻って、最近のわが国の人口趨勢を見ますと、戦後、国民の死亡率は激減し、平均寿命は飛躍的に延び、その結果、老齢人口は、絶対数においても、また、国民全体の中において占める比率においても、著しい増加の傾向を示しておるのでありますが、一方、これら老齢者の置かれている生活状態は、戦後における社会経済情勢の変化、家族制度の崩壊等からいたしまして、戦前に比べ、むしろ、きびしさを加えている状態であります。このことは、程度の差こそあれ、身体障害者や母子世帯の場合にも同様であります。
 かくして、社会保障制度の一環として年金制度を全国民に及ぼし、これを生活設計のよりどころとして、国民生活安定への体制を確立することが、国民の一致した要望となって参ったのであります。政府が今回提出いたしました本法案は、これにこたえるためのものでありまして、昨年六月の社会保障制度審議会の国民年金制度に関する答申を参考として企画立案せられたものであり、国民生活の安定が老齢、障害または死亡によってそこなわれることを国民の共同連帯によって防止しようとするのが、その目的であります。
 以下、本法律案の内容について、その概略を申し上げます。
 まず第一に、国の財政負担を考慮して、拠出制を基本とし、拠出制年金を受けられない者に対しては、経過的または補完的特例として、無拠出制の年金を併用していく建前をとっております。
 第二に、拠出制については、その適用対象を二十才から五十九才までの全国民としておりますが、現行公的年金制度の適用者及び受給者は適用除外とし、また、その配偶者及び学生については任意加入を認めることにいたしております。
 第三に、保険料は、二十才から三十四才までは月額百円、三十五才から五十九才までの者は百五十円でありますが、保険料の負担能力の乏しいと認められる者などについては保険料免除の道を開くなど、低所得階層に対する特別の措置を講じております。
 第四に、年金給付の種類は、老齢、障害、母子、遺児及び寡婦の五種類でありますが、まず老齢年金は、保険料を二十五年以上納付した者が六十五才になったときに支給するものであり、年金額は保険料納付の期間に応じて年二万四千円から四万二千円までを支給するものであります。なお、一定の年令をこえる者については、保険料の納付期間及び年金額に関して経過的措置が講ぜられております。
 次に、障害年金は、一定期間保険料を納付した者が日常生活に著しい制限を加えられる程度の障害になったときに支給し、その額は保険料の納付期間に応じて二万四千円から四万二千円とし、さらに、重度の障害の状態にある者に対しては、これに年額六千円を加算することにいたしております。
 次に、母子年金は、妻が、一定期間保険料を納付した後、夫と死別して、十八才未満の子を扶養しているような場合に支給するものであって、年金額は保険料の納付期間に応じて一万九千二百円から二万五千八百円までを支給するものであり、遺児年金は、父母いずれにも死に別れた十八才未満の子に対して支給し、その年金額は保険料納付期間に応じて七千二百円から一万五百円であります。いずれの場合も、子が二人以上あるときは、第二子以降の子一人につき四千八百円を加算することにいたしております。
 また、寡婦年金は、婚姻後十年以上経過した妻が、老齢年金を受けるに必要な期間保険料を納付した夫と死別したときに、六十才から六十五才まで支給し、年金額は夫の受けるべきであった老齢年金額の半額といたしておるのであります。
 第五に、無拠出制年金についてでありますが、拠出制年金を受けられない者に対して、老齢、障害及び母子の三援護年金を経過的に支給することといたしております。
 まず、老齢援護年金は、本制度発足時すでに五十五才以上である者、または保険料の負担能力が乏しいため拠出制の老齢年金を受けるに必要な保険料の納付を行い得なかった者に対して七十才から一万二千円を支給いたし、障害援護年金は、制度発足時二十才以上の者であって、すでに著しい障害の状態にある者、保険料の負担能力が乏しい者、または二十才未満で、これと同程度の障害があって、拠出制の障害年金を受けるに必要な保険料の納付を行い得なかった者に対して一万八千円を支給することとしたほか、母子援護年金は、制度発足時すでに夫と死別して、十六才未満の子を扶養している者、または保険料の負担能力が乏しいため、拠出制の母子年金を受けるに必要な保険料の納付を行い得ずして、夫と死別し十六才未満の子を扶養している者で、いずれも二十五才以上の子のない場合に一万二千円を支給いたし、子が二人以上語るときは、第二子以降の子一人につき二千四百円を加算することといたしております。なお、これらの援護年金は、すでに現行公的年金制度による年金を受けている者、あるいは一定程度以上の所得のある者に対しては、この支給を制限することにいたしております。
 第六は、年金財政についてであります。本制度の財政運営方式としては、国家財政並びに国民の負担能力の見地から積み立て方式をとることにしておるのでありますが、国庫は毎年度の保険料収入総額の二分の一に相当する額を負担するとともに、援護年金の給付に要する費用並びに事務費につきましては全額国庫負担することといたしました。
 次に、実施の時期でありますが、援護年金は本年十一月一日から支給することとし、拠出制年金については昭和三十六年四月一日から保険料の徴収を開始することとしております。
 本法案は、二月十二日本委員会に付託せられ、同十八日厚生大臣より提案理由の説明を聴取し、次いで、同じく本委員会に付託せられた八木一男君外十四名提出の国民年金法案及び国民年金法の施行及び国民年金と他の年金等との調整に関する法律案について、提案者八木一男君よりその提案理由の説明を聴取した後、三案を一括して審議に入り、連日、長時間にわたり、きわめて熱心な質疑が行われたのであります。
 そのうち、最も議論の中心となった問題として、まず、「本年金と既存の公的年金制度との調整をどうするか」との質問に対しては、「国民皆年金の実をあげるためには、本制度と既存制度等の間に資格期間の通算等調整が行われねばならないので、本法案にはその趣旨を明記しており、具体的な方策については、昭和三十六年四月、拠出制の保険料の徴収が開始されるまでに解決することの答弁があり、第二に、「拠出制年金支給開始年令の六十五才はおそきに過ぎる。また、四十年の長期にわたって積み立てた拠出年金が月三千五百円では、憲法で保障された健康で文化的な生活ができないのではないか」との質問に対し、「外国の事例も六十五才が多いのみならず、老齢人口が激増するわが国の現状と国家財政の点を考慮すれば、現段階では六十五才が適当である。また、三千五百円は生活設計のよりどころを与える趣旨であって、何よりも実行可能な年金制度の確立ということを意図するものである。ただし、これにくぎづけするつもりではない」との答弁があり、第三に、「保険料の徴収方法については、月百円ないし百五十円の負担困難な階層をも考慮して、もっと幅を持たした所得比例方式にすべきではないか」との質問に対しては、「フラット制が最上の方法ではなく、所得比例方式が望ましいが、これによる場合、全国的に徴収事務の円満な遂行をはかるためには現在の国税庁ぐらいの機構が必要となるので、直ちに採用できない。また、負担能力のない階層に対しては保険料免除の制度を設けて十分考慮が払われておる」との答弁があり、第四に、「国民年金受給者に対しても生活保護費を併給すべきではないか」との質問に対しては、「本年金は生活保護法による被保護者に対しても当然支給されるのであるが、それが収入認定の対象となり、従って、被保護者にとっては何ら実質的な意義がない結果に終ることを防ぐ意味において、生活保護の運用上、老齢加算制の新設、身体障害者加算、母子加算の増額等の措置を講じていく方針である」との答弁がありました。
 なお、本法案の重要性にかんがみ、十八日には特に岸内閣総理大臣及び世耕経済企画庁長官、十九日には佐藤大蔵大臣及び青木自治庁長官の出席を求めて質疑を行い、また、十一日には都立大学教授磯村英一君外六名の公述人を招致して意見を聴取いたし、さらに十四日には、新潟、大阪及び福岡へそれぞれ委員を派遣し、地方の意見をも聴取いたしたのでありますが、これらの詳細については会議録により御承知願いたいと存じます。
 かくて、十九日の委員会において質疑を終了いたしたのでありますが、日本社会党提出の二法案に対しては、坂田厚生大臣より、政府案と競合するのみならず、予算の裏づけがないから賛成いたしかねる旨の発言がございました。
 次いで、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して中村英男委員より、日本社会党両案に賛成、政府案に反対の意見が述べられた後、自由民主党を代表して田中正巳委員より、政府案に賛成、日本社会党両案に反対の意見の開陳があって討論を終了し、次いで採決を行いましたところ、本案は多数をもって原案の通り可決すべきものと議決いたした次第であります。
 なお、日本社会党提案の両案は、すでに政府原案が可決せられた結果、議決を要しないものと議決いたしたのであります。
 次いで、山下春江委員より、自由民主党及び日本社会党の共同提案にかかる次の附帯決議を付すべしとの動議が提出され、同委員より、その趣旨の説明がありました。朗読をいたします。
    国民年金法案に対する附帯決議
  政府は、国民年金法案発足後、その総体について改善拡充に努力すべきである。
  特に左記事項について特段の考慮を払い、早急に適切なる措置が講ぜらるべきである。
 一、国民年金制度、各種公的年金制度の相互間に通算調整の途を講ずることは国民皆年金の理想を達成するための不可欠の要件であるから、昭和三十六年度までにこれに必要な措置を完了すること。その際途中脱退者が不利にならないよう充分の配慮をすること。
 二、生活保護法の運用において、老齢加算制度の創設、母子加算及び身体障害者加算の増額等の措置を講じ、生活保護法の被保護者にも援護年金支給の趣旨が充分に行きわたるよう早急に措置すること。
 三、積立金の運用については、一部を資金運用部資金として運用するほか、一部は被保険者の利益の為に運用する方途を講じ、努めて被保険者にその利益が還元されるよう特段の配慮を加えること。
 四、援護年金の支給に当つては各種の制限措置、老齢援護年金の年令制限、各種所得制限に若干厳し過ぎる向も考えられるので、将来国民経済の発展に対応し、漸次これを緩和するよう考慮すること。
   なお、準母子家庭にも母子援護年金を適用する道をひらくこと。
 五、障害年金及び障害援護年金については、内科的疾患に基く障害者に対して逐次支給範囲に加えるよう考慮すること。
以上であります。
 次いで、本動議の採決を行いましたところ、本動議は全会一致をもって附帯決議を付することと議決いたした次第であります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(加藤鐐五郎君) 討論の通告があります。順次これを許します。
 堤ツルヨ君。
    〔堤ツルヨ君登壇〕
○堤ツルヨ君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました政府提出の国民年金法案に反対し、日本社会党提案の国民年金法案、並びに、国民年金法の施行及び国民年金と他の年金等との調整に関する法律案に対し賛成の意を表したいと存じます。(拍手)
 顧みますれば、昨年五月、衆議院の選挙に際し、自由民主党が国民年金を公約されましたことは、今なお記憶に新たなところでございます。国民のすべてが待つこと久しかった医療保障と相並んでの社会保障の一つの柱である国民年金が、とにかく、今国会に日の目を見ることになりましたことは、御同慶のきわみといわなければなりません。(拍手)戦後十四年、新しい世界の息吹きの中に民主主義への理解と平和な世界実現のために年々目ざめつつある国民の前に、政府与党が、公約である本制度の実現に手をつけざるを得なかったことは、近代国家として理の当然とはいえ、あずかって大きな力があったものは、わが日本社会党であったと言えましょう。(拍手)
 すなわち、わが党が、かたい信念のもとに、同志、先輩の志を継いで、結党以来、社会保障の理念を広く国民に呼びかけるとともに、本制度の必要と完成を主張して参りました。昭和二十五年、ようやく社会保障制度審議会の勧告がなされたにもかかわらず、歴代の保守党内閣は、見て見ぬふりの怠慢を続け、旧態依然たる資本主義の上にあぐらをかいて何らなすところなく、心ある国民からは、しばしば、ひんしゅくを買って参りました。(拍手)これに比べて、わが党は、昭和三十一年、呼び水的なものではありましたが、慰老年金法案並びに母子年金法案を提出、また一昨年、全国民のための総合的な年金制度を研究して国民年金法案とし、昨年の第二十八、二十九、三十国会にこれを提出して参りましたが、さらに幾分の検討、修正を加えて本国民年金法案となりました。
 本法案は、わが党の思想に立脚し、実行可能にして、手続上の具体的な内容を盛った関係四法案と相待って、年金をやってくれるのなら社会党案のようにあってほしいと、公述人のほとんどが述べられたごとく、きめのこまかい愛情と、最善の努力を払った、至れり尽せりのもので、わが国民生活の実態をとらえた、完璧に近いものであります。(拍手)これまでにこぎつけるためには、政党としてのたゆまざる努力と、国民の啓蒙に多年の日月と労苦を惜しまなかった、日本社会党の組織をあげての力こそ、まことに偉大であったといわねばなりません。(拍手)今日では、国民のすべてが、社会保障制度を抜きにしては近代国家の政治はあり得ないとさえ思うようになり、この世論が、都市といわず、農山漁村といわず、国民の常識となって、ついに、これをやろうとしない自由民主党への非難となり、これが批判の結果、選挙の投票にも響くとあって、選挙民のこわい保守党が、一票を持った国民にピントを合わさざるを得なくなったというのが、最も適切だと思います。(拍手)
 それはなぜか。すなわち、出て参りました政府の法案を見ますれば、一目瞭然、お粗末きわまるものであります。(拍手)世間では、「どうせ、自民党のやることだから、それくらいのことだろう」、「まあ、ないよりはまし」といわれておりますが、あまりにも社会保障の理念からほど遠く、保障というよりも保険であり、防貧という考えよりも救貧であり、しかも、所得保障だと言いながら、その実は涙金か小づかい銭であり、全国民を対象にと口には言いながら、数多くの漏れる人々を捨て去りにし、真に必要度の多い人々に厚みをかけず、果してこれでも国民年金と言えるのかと、その良心を疑わざるを得ないものであります。(拍手)公約を監視する国民の手前、とにかく、本年度百億のつかみ銭を計上してお茶を濁したと申しても、決して過言ではありません。
 以下、政府案の問題点を指摘しつつ、わが党案と比較検討して、その反対の根拠を明らかにし、本議場を通して国民諸賢の御理解を仰ぐとともに、将来のわが国社会保障制度がいかなる姿において完成すべきか、その骨組みだけを、時間の許す限り述べてみたいと思います。(拍手)
 大別して、まず拠出制について申し上げます。
 その第一点は、年金財政についてであります。政府は、完全積立方式一本としての建前をとり、財政収支にこだわっておりますがゆえに、国家の行う保障制度でありながら、むしろ任意保険に近い考え方が随所に見られるとともに、社会保障の精神をはるか逸脱いたしております。従って、救貧的な色彩が濃厚に現われておりますことは、根本的な致命傷だといわねばなりますまい。無拠出制年金を過渡的、補完的制度にとどめたり、援護年金という名をつけて、年金の受給資格にきわめて過酷な所得条件を付したまま、何らの策も講じておらなかったりすることは、許しがたいといわなければなりません。すなわち、本制度の必要度が最も多いボーダー・ライン層をこの制度から締め出して、保険料を納め得る者だけの任意保険的な制度となってしまっております。この点、わが党案は、年金税による積立方式に加うるに賦課方式を取り入れることに踏み切っております。審議の途上における公聴会では、しばしば、多くの人々が、賦課方式による大幅な国庫負担の繰り入れで、万人にひとしく生活保障をするというのでなければ、国民年金という名に値しない、ということを言っております。窓口の事務機関を例のごとく叱咤激励して、苦しい人々から保険料をかき集めることによって、国庫負担をできるだけ避けていこうという、さもしい心根であればこそ、ないよりはましなものとなってしまいました。
 第二点は、保険料と年金との問題であります。政府が言うところの二千五十万人の本法の対象者は、いわゆる中小零細企業の自営者、五人未満の職場の労働者や商工業者、医師、弁護士、農漁民、日雇い労働者等、十数種にわたる現行公的年金制度の適用を受けておらない人々であります。この人たちから、二十才以上三十四才まで百円、三十五才から五十九才まで百五十円を、四十年間の長きにわたって強制的に徴収するのでありますが、住友のだんな様もニコヨン層も均一に、有業者も無業者も同額を徴収するというのは、いかがなものでありましょう。この点、社会党案は、均等割五、収入割三、資産割二の比率で、力のある人ほど多く出してもらい、所得能力の少い層ほど少額で済むという配慮をいたしております。(拍手)また、政府案が掛金期間四十年、据え置き五年というのに対し、わが党は三十五年だけかけるという、国民にとって有利な開きがあります。しかも、六十才から受給資格を与えて、本制度完成の暁には月七千円以上を生涯支給しようというわが党案に比べて、政府案は六十五才にならぬと支給されず、その支給額は最高月三千五百円という始末で、その上、十年以上保険料を納付した者でなければ減額年金が支給されません。低所得者の多い実態にかんがみ、せめて五年以上納付した者に支給するよう改めよとの声が多かったのでありますが、これさえも政府はのんでおりません。全く保険主義である証拠であります。できるだけ保険料をとって、なるべく年金を支給したくないという方針は、市井の民間保険会社の経営精神と似ております。社会保障は営利事業でないということを銘記してもらわなければなりません。(拍手)
 第三に触れておかなければならないのは、開始年令であります。狭い四つの島に九千万の人々が激しい生存競争をしております日本人の苦しい実態は世界でもまれであり、なまのからだにむち打って、働けるだけ働くという悪条件のもとでは、早く老衰することは免れません。幸いなるかな、平均寿命は戦前に比べて延び、男子七十四才、女子七十七才に達し、総人口に対する老人比率も年々増加して、やがて一〇%の日も近からんとしております。オートメーション化による労働人口の過剰と生産年令人口の減少等によって、六十才にもなれば所得がないという老人が激増いたします。一生を働き抜いた親への孝行は、常識として六十才くらいとしたいもので、わが党が開始年令を六十才にしたのも、また当然であります。支給開始六十五才という政府案を見たとき、持てる者も持たざる者も一律に百円、百五十円の保険料を強制され、六十五才になって生きているやら死んでいるやらわからぬのにと考え出したら、果して国民が保険料をまじめに納めて協力をしようという気持が起るでしょうか。(拍手)しかも、対象者の三分の一が保険料を納めることができない人だと政府は見ておりますが、保険主義の政府案が、生活保障のあたたかい手をこの人たちに果して差の伸べることができるかどうか。この点、わが党案は、収入の少い人には政府案の百円よりもずいぶんと安くなる見込みで、百六十六円平均の年金税を積み立てにとりますが、さらに、納入困難あるいは不能の人については減額または減免をすることとし、しかも、何回減免を受けた人でも、年金を支給されるべきときには、無条件で、他の人と同じ年金を支給するという、社会保障に徹した考え方に立っていることを、重ねてつけ加えておかねばなりません。(拍手)政府案が、保険料納付を怠った者には援護年金をも支給しないことにしているのは、見のがしがたい点だと、審議会も強く批判いたしております。納めたくても納められないという、やむにやまれぬ人々を、一体どうしようというのか。
 第四点は、年金額についてであります。老齢年金を見ますと、わが党案では、四十年先の完成時には年八万四千円、政府案は四万二千円で、わが党の半額でございます。明治以後のわが国経済成長率平均四%と同率をもって今後の日本経済が拡大するという見方は、世耕企画庁長官も本議場でこれを認めており、ごく控え目なものでありますが、これによっても、三十五年後には四倍となります。すなわち、五兆六千億と見て、実際には四割ぐらいが減税に回ったといたしましても、なお三兆三千億以上の財政規模になるわけで、そのうち、わが党の四十年先四千二百億円程度という年金への国庫支出は、全国民を対象としたものである以上、さして驚くことはなく、国民は双手をあげてこれに協力することを、かたく信じて疑いません。(拍手)月七千円という年金額も、わが党案は、これに見合って算出した妥当なもので、政府案の月三千五百円は、なるべく出したくないという精神から生まれた、怪しげなものでございます。しかも、長期経済計画の一環として社会保障費を組み入れて計算しておらないと政府自身が答弁しておるごとく、国民皆保険への道と相待って、心細い限りでございます。保険料四十年納入者三千五百円、二十五年納入者二千円、十年以上千円、十年未満は年金なし、三年未満はかけ捨てとなる政府案の詳細を検討いたしますとき、月々の保険料に困らぬ裕福な層が年金を完全にもらい、反面、保険料さえも払えぬ人々が、諸制限のために、かけ捨てや年金をもらえぬ立場に立たされて、貧困層が高いところに土持ちをするという結果になりますが、社会保障の理念に照らし合せて、これはどうなるのでしょうか。矛盾もはなはだしいといわなければなりません。(拍手)
 第五の欠点は、物価変動によるスライドの問題であります。生計費または生活水準の変動等に応じて年金額を改訂し、インフレ等にも善処して実質価値を維持する保険は、ILOの社会保障の最低基準にも規定しているのでありまして、当然なされなければならぬにもかかわらず、これに対する明確な規定がございません。この保障のないものでは、制度への信頼を深めて、国民が協力するという魅力がないのでございます。わが党案は、その時の経済情勢につれて年金の実質価値を明確に保障しておりまして、公述人も、この点を高く評価いたしました。大蔵大臣は、国がこれに対処する考えだとは答えましたが、ばく然とした、体裁のよい答えをしたにとどまるという心配もございます。
 次に、大きな第六の問題点は、現行公的年金制度の対象者である労働者並びにその家族を無視したことであります。二十才以上の全国民を対象にすると大きく言いながら、労働者の年金は全く考えられておりません。現行公的年金制度の適用者及び受給者は本法の適用除外とし、また、その配偶者及び学生につきましては任意加入という方法をとって、しかも、将来これをどうするかという案は持たないまま、とにかく、これを出しておるのでございます。保険料徴収を始める昭和三十六年四月一日までには何とかすると言っておりまするけれども、それは口先だけで、実際にはやれないのだという懸念と危惧を持たざるを得ません。現行公的年金制度の厚生年金法、船員保険法、恩給法等々、十数種にわたるものを個々に検討してみますと、その適用者並びに家族をも含めて、その数は優に二千二百万人をこえましょう。これらは、おのおの成立当時の歴史的事情もあって、技術的、事務的には国民年金との通算がむずかしいと同時に、まちまちで、このまま整理、通算、統合に持ってくることは、幾多の不公平や取り残される人々を生む結果となり、うっかり手が出せぬとあきらめたものでしょうが、国民皆年金を目ざして、忠実な通算調整をまっ先にやらなければならないのが、政府与党の任務ではないでしょうか。全部の現行公的年金制度を相互間に調整し、国民年金とのかね合いの上に立って、引き上ぐべきは上げ、漏れたるは拾い、不備なものは完全に調整して、ひとしからざるを憂うる国民がないというところに持っていくのが、社会保障制度であります。労働者の配偶者及び学生についての任意加入は、女性の立場から申せば男女同権の憲法の精神に反する扱いで、家が苦しいからやめておけと主人に命令された妻は、この制度の恩恵に浴せません。つまり、かなり余裕のある労働者の妻だけに限られます。また、ここで両親を失った孤児の問題にも触れておかなければならないと思います。準母子世帯といわれる、祖父母や兄、姉が生活の柱となって孤児を連れておる場合は、母子世帯よりもなお不幸といわなければなりませんが、本法は、その孤児たちを置き去りにしております。極力この点を政府に修正するよう反省を求めましたが、お説ごもっともながらとばかりで、法文の修正に応じません。
 かくのごとく、労働者や弱い人々を無視した政府案に比べ、わが党案は、一般国民年金と労働者年金の二つに分け、おのおの養老、障害、遺族の給付をいたしております。すなわち、一般国民年金では、農漁民、商工業者、医師、弁護士等、すべての自営業者と、労働者の家庭も含めた全家庭の主婦等、すべての無職者に適用されるものであり、言いかえれば、労働者本人以外の全国民をこの中に入れております。一方、労働者年金については、あらゆる職種の労働者本人に適用されるもので、五人未満の事業所の労働者、日雇い、山林労働者にも適用されます。老齢年金は六十才から支給されるのが原則でありますが、炭鉱労働者、機関車労働者、船員などは五十五才といたしておりまして、現行厚生年金に準じております。しかも、老齢年金額は一般国民年金と同様とした上に、標準報酬額に比例した金額が付加されます。その金額は、賃金水準で平均六万三千円くらいになる計算で、合計平均十四万七千円になります。
 さらに、この労働者年金の特徴は、異なる事業所間はもちろんのこと、農村、漁業、商工業、家庭等、一般国民との間にも完全通算をすることでありまして、基本給の八万四千円は、何回職業がかわっても完全に確保され、平均六万三千円の標準報酬比例部分は労働者であった期間だけ、たとい一年でも加算されます。しかも、国庫の負担率は、四十年後の完成時には五割見当となり、一般国民年金と実質上同程度のものとなるよう、国民皆年金の本旨に沿って、心あたたまる制度といたしております。実施に当っての既存年金との関係は、国民年金法の施行及び国民年金と他の年金等との調整に関する法律案に規定しておりますが、既得権、期待権の尊重に十二分の考慮を払うとともに、完全な持ち分移管方式を採用して、途中で制度が変る人や、または転退職をする人々の利益を完全に保護いたしております。制度の上では、厚生年金保険外数種は直ちに労働者年金へ統合、恩給法等数種は新規採用者より労働者年金を適用することになります。こうした具体策を持たないままで、二年の間に何とかするというだけでは、国民が納得しますまい。次に、第七点として、母子年金に触れておかねばなりません。夫が死亡前に所定の保険料を納付している場合には年金を支給するのでなければなりませんのに、妻が保険料を五年以上納付していることを支給要件としているのは、何といっても、うなずけません。また、障害年金の支給要件については、きびしい所得制限をつけた上に、第一級のみを対象とし、二級以下を捨てておりますが、わが党案は、内部疾患をも含めて三級まで取り上げ、障害の程度に応じて支給額に差をつけております。所得能力のない人に生活保障をするというのなら、これでなければなりません。
 次に、無拠出年金について触れてみましょう。政府は、これを援護年金と呼び、わが党はこれを特別国民年金といたしました。本制度発足に当って、すでに拠出期間と能力のない老齢母子、身体障害者のいずれかである人々は、今日まで政治が貧困であるがゆえに捨てられてきたわけで、日の当らぬ谷間に、国民年金実施の一日も早からんことをこいねがってきた、最も必要度の高い層であります。よしや拠出能力はなくとも、本制度の対象者として、いの一番にその恩典に浴すべき日をこの方々が迎えられましたことは、まことに喜ばしき限りであります。本制度が待ちきれなくて死んでいった老人や、生活苦のため一家心中を余儀なくされた母子世帯の犠牲者、さては、身体の障害を克服しつつ、政治への恨みを持ちながら、自活の道以外になかった身体障害者のお気の毒な姿を思いますとき、まことに感無量のものがあり、働き抜いた老人が、楢山節考たらずとも、きびしい世相の片すみに、あきらめに似た生活を送り、また、自分一人なら何とかできるだろうにという母が、子あるがゆえに働くことも死ぬことさえもできなかった敗戦後の未亡人世帯のみじめな社会悲劇を、後の世の人たちにまた繰り返してもらいたくないとこいねがうのは、私だけでありましょうか。その意味で、さしずめ、老人、母子、障害の三者が同時に無拠出によって生活の保障を受けられるということは、まことに仕合せなことであります。
 しかし、政府案を見てみますと、老齢年金において七十才以上と限り、月一千円の涙金でございます。長生きをして息さえしていればよいというのではありませんから、所得保障の役を果すものでなければなりません。援護年金という、いかがわしい言葉が出てくるのも、寺参り銭か、または、孫にあめ玉程度のものをやっておけばよいという精神から生まれます。農山漁村の奥深く、重労働の生涯を送らざるを得ない人々は、とても七十才まで生きることは困難で、むしろ裕福な層が生き残ります。ほんとうに老後をねぎらってあげたい苦労をした年寄りは死んでしまって、この世におらないということになって、当を得ません。(拍手)わが党の六十才支給開始、六十五才からは倍額という案はここから出たもので、所得制限を加えたとはいえ、適当な案といわなければなりません。母子、身体障害者世帯に、今日、支給を必要とする人々の数と度合いが非常に多いのを重視して、財政上とのかね合いもあり、老人の分に残念ながら所得制限をつけることによって、育ち盛りの子供を連れた母子世帯や身体障害者の世帯にお年寄りの分を回したという形になっておりますが、国民は、おそらく、これを了としましょう。次に、母子年金に至っては、言語道断といわねばなりません。十三万円以下の所得制限と、十六才未満の子を持つ母親に老齢者並みの月千円の生活保障としたのは、どうしてもうなずけません。わが党案の、所得制限十八万円に、子女の年令を二十才、支給額は月三千円程度のものである上に、遺児加算が六百円であることを見まするときに、政府案の遺児加算二百円とはひど過ぎます。せめて二千円でもいただけたらという、遠慮がちな全国未亡人世帯の声さえも、政府の耳には通じません。金の要ることなら、びた一文でも法文の修正には応じられぬといったところが、政府与党の偽わらざるところだと拝見いたしました。十六才で中学を出た子供が、一体、幾らかせげるというのか。子供を二十五才にしたら、未亡人は生活に困らぬというのでしょうか。家族制度から個人主義への現状に照らし、二十五才ともなれば、むしろ母一人残されるという今日の実情では、疲れ切った母子世帯の未亡人の生活をこそ保障する必要がありましょう。(拍手)この点も、政府案は強く反省を要するところでございます。
 さらに、障害者年金は、拠出制と同じく、二級、三級を置き去りにしたままであります。月千五百円の少額であって、わが党案の一級四千円、二級三千円、三級二千円とは格段の差があり、これを見ただけでも、この人たちに対する考え方の根本的な違いがわかります。(「時間だ」と呼び、その他発言する者あり)どうぞ、大事な法案でありますから、もうしばらくかんにんして下さい。(笑声)拠出も無拠出も……。
○議長(加藤鐐五郎君) 堤君、申し合せの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。
○堤ツルヨ君(続) 盲、ろうあ、肢体不自由者、精薄、結核等の内部障害をも二十才の子供にまでは支給するよう要望する声が強いのに、これも取り入れておりません。特に、政府案の中で慎しみたいのは、不具廃疾という言葉がしばしば使われていることであります。身体に障害を持った人たちは必要以上に暗い人生を送っておりますのに、この言葉は失礼千万で、旧思想の上に立った古い言葉であります。恵んでやるという慈善的な考えの上に立った戦前の法律の中にはうかがえるものでありますが、近代国家では、これを葬り去らねばなりません。国民生活の実態から離れて、旧思想に根拠を置いた昔の法律に準拠しようとする政府の古い頭が災いをいたしております。
 なお、この拠出、無拠出両年金とも、支給のときには、生活保護を受けている人々には、わが党案のように併給されなければなりません。しかし、政府はこれを避けております。今日、農村で老人一人の生活保護費二千円という微々たるもので、ぎりぎりの最低生活をしいる政府が、老人や母子のもらった年金をこれからまた差し引くというのでは、血も涙もございません。老人、母子、障害加算を何とかしてつけてみたいと答えてはおりますが、大蔵当局あたりにたたかれて実現不可能にならぬよう、大きな欠陥を指摘いたしておきます。
 以上の諸点を述べて、なぜ政府案に賛成できないかを明らかにして参りましたが、要は、政府案があまりにも国民待望のものとはかけ離れたものであり、同時に、せめて少しでも歩み寄って、良心的な修正に、わが党と同調されるのならば、まだしも考える余地があるかとも思いましたが、その気配さえもありません。坂田厚生大臣が、ものやわらかに答弁に立たれたのは、好感が持てました。(笑声)しかし、これは、一面、考えてみれば、あまりにも自信がなく、社会党にたたかれる通りなので、低姿勢で切り抜けるに越したことはないとの作戦とも見え、(笑声)結果としては国民にいんぎん無礼となったように思います。(拍手)見えすいた欠陥は虚心たんかいに是正されるのが若い大臣としてとられるべき道ではなかったか。もちろん、本法の立案者でありながら、橋本前厚生大臣が文部大臣に横すべりされたこと自体にも、大きな不満を持っております。当然、この重要法案の本国会審議に当っては、責任者として最後までこれを仕上げるべきが国民への義務であったと思います。
 最後に、この年金は、本院を通過し、参議院を経て実施の段階に入りますが、事務を担当する市町村の窓口や郵便局において、果してこれを受け入れる自信ありやをただしてみますと、大きな市は別として、町村段階では自信がない……。
○議長(加藤鐐五郎君) 申し合せの時間が参りましたから、簡単に願います。
○堤ツルヨ君(続) わかりました。これで終ります。あと一分か二分ですから……。(発言する者あり)郵便局等において、これを受け入れる自信がないと申しております。事務機構上から見ると、経費面が特に心配であります。一億五千五百万円の事務費では、一町村当り五万円見当、保険者一人当り五十円くらいの費用となり、郵便局は一局当り五千円で、保険者一人につき三十五円くらいと見られます。今日までの国保の事務費を全国的に見渡しますと、地方財政の二百四、五十億円といわれる赤字の原因の四割くらいは、国保事務をつかさどる町村が、国からは一人当り九十五円くらいしか出さないのに、実際は百五、六十円かかっているところにあるといわれております。事務費の全額国庫負担を完全にやってもらわぬと、町村では、国保の二の舞で、引き受けかねるというのも無理からぬことであり、本制度の運用を左右下る役場の窓口を、国保ではすでに前科者である政府が、町村を納得させる自信がありやいなやと、一大警告を発しておかなければなりません。以上、私は、反対討論はまだ残っておりまするけれども、与党の方々が時間制限をなされておりまするし、残念ではありますが、これをもって私の反対討論を終りたいと思います。附帯決議は、せめて参議院段階で、法文の修正を自由民主党が社会党とともになされますよう切に念願いたしまして、私の討論を終りたいと思います。失礼をいたしました。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(加藤鐐五郎君) 藤本捨助君。
    〔藤本捨助君登壇〕
○藤本捨助君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました内閣提出の国民年金法案に対して賛成し、議決不要となった、八木一男君外十四名提出国民年金法案、国民年金法の施行及び国民年金と他の年金等との調整に関する法律案、以上二法案に対して反対の討論を行わんとするものであります。
 そもそも、年金制度は、所得保障の一環として、医療保障とともに社会保障制度の根幹をなすものでありまして、フィラデルフィア宣言、ILOの所得保障に関する勧告におきましても、所得の喪失及びその中断に際して、すべての国民に必要な所得の保障を行うことは、社会保障の最も重要な要素であり、かつ、それが人類の福祉と国際平和のために崇高なる義務であることをうたっておるのであります。わが自由民主党は、文化国家の使命として福祉国家の建設を目ざし、つとに社会保障制度の確立をはかり、憲法第二十五条に規定する、すべての国民に健康で文化的な最低限度の生活を確保するため、各種の施策を鋭意推進いたして参ったのであります。すなわち、さきには医療保障として国民皆保険の体制を整え、また、昨年春の衆議院議員総選挙に際しましては、国民年金制度の創設を国民の前に公約し、その実現を期して参ったのであります。
 ただいま議題となりました内閣提出の国民年金法案は、この公約に従い、また、国民の年金制度創設の熱烈な要望にこたえて、わが国の現在の社会経済の実情に立脚し、制度的にも財政的にも幾多の困難な問題を乗り越えてこれを実現し、もって国民皆年金の道を開こうとするものでありまして、まことに、福祉国家の建設を指向するわが国民主政治の歩みに、また、わが国社会保障制度の歴史に、画期的な輝かしい一ページを加えるものと言い得るのであります。(拍手)
 内閣提出の国民年金法案は、社会保障制度審議会の答申を尊重し、原則的な構想として、国民の共同連帯を基調とし、すべての国民に対して、老齢、身体障害または死亡の事故に際し、その最低生活を保障することを理念とするものでありまして、イギリス、アメリカ、西ドイツのごとき拠出制の年金を基本とし、スエーデン、ノルウエー、ニュージーランドのごとき無拠出制の年金は、これをしばらく公的扶助制度の一環のうちに含ませ、拠出年金の恒常化するまで、この制度の発足するときすでに給付事由に該当しておる者に対しまして、経過的に、並びに拠出能力の乏しいため受給要件を満たし得ない者に対しまして、補完的に支給する建前をとっているのであります。これは、すべての国民が原則として年金の支給を受けるに必要な費用の一部を負担し、その負担に応じて年金の支給を受け得ることとするものでありまして、この負担にたえ得ない低所得層の人々に対しては、全面的に国の負担において一定額の年金を支給することとしたのであります。従いまして、国民の負担する保険料の額も、現在の国民経済の実情から見て、一般にその負担能力にたえ、かつ、所定の年金給付をまかなうに足るものとし、なお、負担の困難な者については相当大幅に免除の措置を講ずることといたしましたから、社会保障といえども自己責任の原則を全面的に解除するものでないとする現代社会の基本理念に合致し、また、経済的には、人口老齢化の過程にあるわが国において、六十五才以上の人口一人を生産年令人口十一人で扶養すれば足りる現在はともかく、やがて六十五才以上の人口一人を三・三人の生産年令人口で扶養しなければならない将来を考えますると、国民経済の安定向上と国民年金制度の維持発展をはかるために健全にして妥当な構想であると確信するものであります。(拍手)
 しかるに、社会党の諸君は、これを評して、内閣提出の国民年金法案は、組み立ては社会保険主義に堕し切って、社会保障とはおよそ縁の遠い制度であるとされますが、しかし、この考え方は、国民年金は社会保険の一環であり、従って、当然に保険主義に立脚すべきものであるとの認識不足を暴露するものでありますから、私は、社会党の諸君が、第二次大戦後、ビヴアリッジ郷の調査報告を基調として画期的に発足した社会保障制度の先進国英国の社会保障が、早くも一九四八年を境として後退を始め、一九五〇年、英国労働党左派の領袖ベヴアン氏が、党の分裂を賭してまで、バターか大砲かの有名な論争をあえてしてもなお及ばず、ついに一九五七年英国労働党が、さらには、越えて一九五八年英国政府が、国民年金白書において、ビヴアリッジ郷以来の鉄則に背馳する社会保険の保険主義化を一そう打ち出した事実と、その理由の那辺にあるやに想到されんことを望むにとどめたいのであります。
 もとより、政府案に示された年金給付の額につきましては、われわれとしても、老齢年金の最高月額三千五百円、障害年金の一級の場合二千五百円以上四千円まで、母子年金の二千円以上とする給付をもってしては、すべての国民に、老齢、身体障害等の事故に際し、健康で文化的な最低生活を保障するためのものとしては、必ずしも十分な額とは考えないのでありますが、しかし、わが国社会経済の現状ないしは国家財政の実情からすれば、実現の可能な限度においてまず国民年金制度を発足させることこそ、最も肝要であり、かつ時宜に適したものと考えるのであります。(拍手)しかして、われわれは、このゆえにこそ、さらにわが国の人口構成及び社会経済の現状並びにその推移に留意し、また、国民年金制度の維持発展は国民経済の発展と国民の負担能力に依存することを銘記して、ただいたずらに高ねの花のごとき高額の年金給付を誇示して国民を幻惑することなく、ししとして産業経済政策を果敢に推進し、強靱な経済基盤の培養に努めて完全雇用の道を開き、また、実行可能な最低賃金制度をすみやかに実施して国民生活の安定と向上に寄与するとともに、公衆衛生を普及し、福祉施設を拡充して、まさに発足せんとする国民年金制度の運営途上、国がこの制度に要する経費として、他の社会保険等に例のない高率の負担をもってしてもなお当面及ばざるところを補足して、民生の福祉増進に一路邁進せんとするものであります。(拍手)
 なお、ここにいささか論及を要することは、社会保障は社会政策の一分野として、主として老齢者、身体障害者等のごとく、すでに再び健全な産業労働力としては期待し得ない人々の生活扶助のみを目的とする関係のものにおきましては、社会事業的な生活保護の性格がひそみ、従って、近年、社会保険は社会保障へ、さらに生活保障への動きのあることに対しては、これを認めるにやぶさかでありませんが、しかし、このことは、根本的には国家と個人との関係のあり方を明らかにし、社会保険の中心原理として、国家が広い範囲において個人生活の世話に任じ、個人は広い範囲の国家の扶助に依存するという体制をとるか、または、国民の共同連帯の精神に基く個人の自助と自己責任とを基本として、国家は個人をしてこのような生活態度を可能にする制度を設け、これに必要な措置を講ずることを任務とすべきかの政治理念の問題に帰着するのであります。
 前者は、社会主義の国家に、当然にして、また可能であり、後者は、資本主義の国家に、政治目的の要諦としてこれを見るのであります。従いまして、内閣提出の国民年金法案を目して社会保障のかけらもないとするがごときは、全く社会主義的な視野に立っての論評であり、また、わが国の社会経済の現状から見て、社会党提出の国民年金法案のごときは、ソ連の社会保険のごとく、社会主義国家においてでなければ、当然のこととしてその実現を見ることはとうてい不可能であろうと申さざるを得ないのであります。(拍手)社会党の諸君が、これを意識して、なおかつわが国の政治、経済の現状に目をおおい、実行不可能な提案をあえてしたとすれば、それはまさに社会党一流の悪質な宣伝本位の欺瞞政策であり、責任を重んずべき天下の公党の態度としてはまことに遺憾であるのみならず、それこそは、また、真に羊頭狗肉にも値しないものといわざるを得ません。(拍手)
 次に、私は、社会党提出の国民年金法案について論及いたさんとするものであります。
 まず、私は、社会党がつとに年金制度の必要性を痛感し、その実現を目ざして、昭和三十一年以来今日に至るまで数回にわたり国民年金法案等関係法案を提出されましたことに対して、衷心敬意を表するものであります。しかしながら、その内容をしさいに検討いたしますると、この制度の立て方に、理論過剰にして一貫性がなく、また、保険基金の調達や年金財政の運用方式に、さらに保険給付の基準等に、多くの疑いなきを得ないのであります。
 まず第一に、社会党案による国民年金は、国の財政にかんがみて、これを実現することは不可能であろうと考えるのであります。すなわち、本案に関しまして、社会党が初年度の経費見積りとして公表している年金給付費を見ましても、初年度千百四十億円を要し、自後はさらに逓増することを予定しているのであります。しかし、わが国の国民経済及びそれに基く国家財政に何らの破綻を招くことなく、国民年金だけのためにこれだけの巨額の経費をいかなる財源によりて調達されるか。私は、わが国の国民所得や国家財政の規模に徴して、これを理解するに苦しむものであります。しかも、本案の初年度の給付費について、わが自由民主党が検討した結果によりますれば、無拠出の身体障害者年金の障害範囲が広いので、これに要する経費は、社会党が公表している四十五億円では過小推算であり、さらに約百億円を要するものと推定され、また、社会党の公表では、初年度給付費に全く計上していないところの、国民年金法の施行及び国民年金と他の年金等との調整に関する法律に基き、年金法実施と同時に、二十才から五十四才までの者に対して、経過的に普通年金たる障害年金を支給するための費用が約六百九十億円と推定されますので、結局、両者を合せて、さらに約八百億円程度の給付費が初年度に必要とされるはずであります。さらに、同案による後年度の財政を検討いたしましても、社会党案の年金税の額は老齢年金の給付分のみで数理計算されているようでありますから、障害年金及び遺族年金の給付に対する年金財源をいかにするかの重大問題が、不用意にも閑却されているのであります。従って、社会党案の提案者は、社会党案による国庫負担の額を三十五年後で約四千二百億円とされております。以上の諸点を考慮して推算すれば一兆円程度に達するとのことでありまして、これらの点から見ても、社会党案は、われわれの期待に反して、初年度のみならず、将来に向っても、財政的に見て成り立ち得ないものであることは明らかであります。(拍手)
 第二に、社会党案によれば、国民経済の成長と年金財政に対する世代間の負担の公平を考慮して、積み立て方式のほかに、現在の勤労者の拠出金をもって、過去の勤労者、すなわち現在の年金生活者の生活を保障せんとする賦課方式を大幅に取り入れ、これによって国民年金の実質的内容の充実をはからんとしておられますが、しかし、これは、年金を発展的経済に適応せしめて動的年金制度にせんとする年金保険の新しい理論には合致いたしますけれども、保険財政の運営方式に賦課方式をとるためには、これに必要な条件とその限界があり、従って、これに対する十分な検討と吟味を要請されておるのであります。社会党案は、果してこの要請にこたえて立案、策定されたものなりやいなや、はなはだ疑いなしとしないのであります。(拍手)すなわち、まず、わが国の基本的人口構成から見て、生産年令人口は、今当面はしばらくおくも、相対的に逐次減少するに反し、老齢人口は次第に増大の一途をたどる趨勢にあるため、結果的には、より増加する老齢人口を、より減少する生産年令人口をもって扶養していかねばならない事態にかんがみましても、賦課方式は決して好ましいものであるとは考えられませんのみならず、特に社会党案のように、一般国民年金の財政と労働者年金の財政とをそれぞれ区分して別建のものといたします場合には、産業構造が急速に高度化して参ることが予測される将来におきましては、生産年令人口は、相対的に、労働者年金の対象者である被用者階層に著しく片寄る結果となり、一方、一般国民年金の対象者のグループでは、逆にその財政のにない手である生産年令人口が極度に縮小して参ると考えられますので、労働者年金はともかくとしましても、一般国民年金の方は、遠からぬ将来において財政的に破綻を来たすことは必至であるといわなければならないからであります。これ、政府案が保険財政運営の方式として、賦課方式をとらず、あえて積み立て方式をとり、年金財政をそのときの国の財政需要の変動から切り離して、長期にわたりこの制度の安定性を確保せんとしたゆえんであります。(拍手)
 第三に、社会党案によれば、その最大の特徴として、生活保護を受ける人人は、扶助と年金を両方とも全額支給されることになると称していることであります。しかしながら、社会党案のごとく、ひとしく最低生活費を全額国庫負担によって保障するとせば、同様な目的の制度が併存することは明らかに矛盾であり、また、実施に当っても不公平となるのであります。このことの当否は一応別といたしましても、もしも社会党案が低所得層の人々に対してかかる態度をとるとすれば、子弟を国にささげ、そのために公務扶助料を受けておられる遺家族で、生活保護の適用を受けておられる人々に対しても、何ゆえにこれを均霑せしめないのでありますか。もしも社会党の諸君がこの明白な事理に気づかなかったとすれば、社会党案のごときは、全く自家撞着にして、実施を前提としない、かけ声だけの現われにすぎないものとなり、もしも、また意識してなおかつかかる差別待遇をあえてしたというのであれば、遺家族に対して、はなはだ冷酷無情な政策の現われであるといわざるを得ないのであります。(拍手)
 要するに、社会党提案の国民年金諸法案は、制度全体としてはなはだ未熟粗漏であり、しかも、いたずらに高額の年金給付を誇張して、わが国の政治、経済の現実を無視し、この制度の根幹ともいうべき国民の負担能力と国家財政に対する考慮を欠き、従いまして、全体としての財政面における計数の整理、給付に対する財源の確保等について重大な欠陥を包蔵し、いまだ全く机上における空論の域を脱しないものといわざるを得ないのであります。(拍手)
 最後に、私は、多年国民待望の国民年金が政府の努力と国民の支持により近く発足を見るに至りましたことは、まことに御同慶にたえないところであります。しかし、何分にも、わが国社会保障制度を確立するため、国民年金制度の創設は画期的なものでありますので、制度的にも財政的にも、政府、自由民主党その他の努力をもってしましても、なお多くの重要な問題点の解決を将来に残し、この制度の消長はむしろ今後にありといわざるを得ないのであります。ここにおいて、政府は、附帯決議の趣旨を尊重し、進展する内外の情勢に即応して鋭意国民経済の発展をはかり、堅実な国家財政を確立して、この制度を拡充する基盤をつちかい、国民の負担能力の強化、年金給付の改善、まず各種被用者年金制度等との通算調整から進んで整備統合へ、この制度の経済変動に対する適応性等の問題の解決について、謙虚な態度で聞くべきは聞き、とるべきはとって、福祉国家にふさわしい、よい年金制度を確立するため、さらに周到な調査研究を進めるとともに、極力、国民に対して、この制度の性格、内容等の周知徹底をはかり、国民がこの制度を自分のものとし、自分の手で育て上げることができるようにするため、万全の措置を講じられんことを要望するものであります。
 以上によりまして、私は、内閣提出の国民年金法案に対して賛成し、私の討論を終る次第であります。(拍手)
○議長(加藤鐐五郎君) これにて討論は終局いたしました。
 採決いたします。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立]
○議長(加藤鐐五郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)
     ――――◇―――――
○議長(加藤鐐五郎君) 日程第一、連合国財産の返還等に伴う損失の処理等に関する法律案、日程第二、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とパキスタンとの間の条約の実施に伴う所得税法の特例等に関する法律案、日程第三、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とノールウェーとの間の条約の実施に伴う所得税法の特例等に関する法律案、右三案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。大蔵委員長早川崇君。
    …………………………………
    〔塚原俊郎君登壇〕
○塚原俊郎君 ただいま議題となりました中小型鋼船造船業合理化臨時措置法案について、運輸委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本法案は、長期経済計画の趣旨に沿って中小型鋼船造船業の設備の近代化、能率の増進、生産技術の向上等を促進し、これにより総合的に中小型鋼船造船業の合理化をはかりまして、船舶輸出の振興及び海運業の健全な発達に寄与しようとするものであります。
 次に、法案の内容のおもなる点を申し上げますと、第一点は、本法案の対象となる中小型鋼船造船業は、主として総トン数三千トン未満の鋼船の製造または修繕を行う事業であります。
 第二点は、運輸大臣は、中小型鋼船の製造及び修繕に関する技術の向上及び生産費の低減を促進するため、海運造船合理化審議会の意見を聞いて、中小型鋼船造船業について合理化基本計画及び合理化実施計画を定めなければならないこととなっております。
 第三点は、右計画達成のためにとるべき主要な措置といたしまして、設備の近代化のための所要資金のあっせんと技術向上のための基準等の公表の二措置が定められております。
 本法案は、二月七日予備審査のため本委員会に付託され、同月十日政府より提案理由の説明を聴取し、三月四日本付託となり、同月十二日、十七日、十九日質疑を行いましたが、その内容は会議録により御承知願います。
 次いで、同十九日、討論を省略し採決の結果、本法案は全会一致をもって政府原案通り可決いたしました。
 なお、井岡大治君より、自由民主党及び日本社会党を代表して附帯決議案が提出されましたが、その要旨は、政府は中小型鋼船造船業の合理化の実施に必要な資金源を確保すること、輸出の振興をはかるため、取引の円滑化に努めるとともに、特にポンド圏市場の開発について取引条件の緩和をはかること等であります。
 次いで、附帯決議案について採決いたしましたところ、これまた全会一致をもって可決いたしました。
 右、御報告申し上げます。(拍手)
○議長(加藤鐐五郎君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。
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○荒舩清十郎君 残余の日程は延期し、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
○議長(加藤鐐五郎君) 荒船君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。本日は、これにて散会いたします。
    午後五時五十九分散会