第031回国会 本会議 第36号
昭和三十四年四月七日(火曜日)
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 議事日程 第三十一号
  昭和三十四年四月七日
    午後一時開議
 第一 一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第二 特別職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第三 防衛庁職員給与法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第四 恩給法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第五 行政機関職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第六 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(法務委員長提出)
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○本日の会議に付した案件
 九州地方開発審議会委員の選挙
 最低賃金法案(内閣提出、参議院回付)
 日程第一 一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第二 特別職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第三 防衛庁職員給与法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第四 恩給法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第五 行政機関職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第六 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(法務委員長提出)
 農地被買収者問題調査会設置法案(内閣提出)
 賠償等特殊債務処理特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
 接収貴金属等の処理に関する法律案(内閣提出、参議院送付)
    午後二時十五分開議
○議長(加藤鐐五郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 九州地方開発審議会委員の選挙
○議長(加藤鐐五郎君) 九州地方開発審議会委員の選挙を行います。
○松澤雄藏君 九州地方開発審議会委員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されんことを望みます。
○議長(加藤鐐五郎君) 松澤君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。
 議長は、九州地方開発審議会委員に楢橋渡君、上林山榮吉君、大久保武雄君、伊藤卯四郎君及び石橋政嗣君を指名いたします。
     ――――◇―――――
○議長(加藤鐐五郎君) お諮りいたします。参議院から、内閣提出、最低賃金法案が回付されております。この際議事日程に追加して右回付案を議題とするに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
 最低賃金法案の参議院回付案を議題といたします。
○議長(加藤鐐五郎君) 質疑の通告があります。これを許します。多賀谷真稔君。
    〔多賀谷真稔君登壇〕
○多賀谷真稔君 私は、ただいま参議院より修正せられ本院に回付せられました最低賃金法案につき、修正部分について、提案者並びに労働大臣に対し、日本社会党を代表して、以下、数点につき質問せんとするものであります。(拍手)
 質問の第一点は、まず、本法案の批判の最大なるものは、世界に他に類例を見ない業者間協定についてであります。これは、近代労働法の最大の原則たる、労働条件は労使対等において決定するということに全く背反することは、識者の認めるところであります。労働基準法第二条にこの原則を明定し、また、たとい組合の組織ができない場合でも、労働基準法は、賃金の一部控除の場合も、時間外及び休日の労働協定の場合も、就業規則の作成の場合も、それぞれ、条文に「当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。」と規定しており、労働条件の決定には、当該労働者の代表の意見を反映すべく、非常な苦心と努力を払っているのであります。これを修正案においてはいかに考慮せられたのか、いかなる点を修正されたのか、お尋ねいたしたい。使用者の一方的決定を法によって保障することは、労働立法でなくて産業立法であり、中小企業団体の組織に関する法律の調整事項ともいうべきものでありますが、この点、いかに修正案では盛られたか、お尋ねいたしたいのであります。
 質問の第二点は、本修正案とILO条約第二十六号との関係についてでありますが、ILO条約――最低賃金決定制度の創設に関する条約が、その第三条において、「本条約を批准する各締盟国は、最低賃金決定制度の性質及形態並に其の運用方法を決定するの自由を有す。」とあり、この条約、批准国に自由裁量の余地を残す、きわめて寛大なものであります。これが寛大になった理由は、本条約は、一九二八年、すなわち三十年前に採択されたものでありまして、国際法としては賃金規則が初めての試みであり、いまだ経験がなかったからであります。また、当時は、オーストラリアやニュージーランドの最低賃金制を別とすれば、ヨーロッパ大陸の最低賃金制は多く苦汗労働者ないし家内労働者に対するものでありました関係上、国際労働法としては非常にラフな規定となっており、最低貸金制も、勢い、特定の低賃金労働者階層を対象とせざるを得なかったのであります。かように、この条約が寛大であるとはいえ、ただ一つ、この条約が要求しておりますことは、本条約第三条ただし書きにおいて、いかなる場合においても労使対等で制度の運用に参与せしむべしという、労使対等参与の原則をうたっているのであります。この点が、政府原案においては本条約に違反するということが論議せられ、公聴会においても幾たびか指摘されたところであります。本修正案においては、この非難を緩和するためか、第九条第二項において、労働大臣または基準局長は、賃金の最低額に関する定めを改正し、再申請すべきことを勧告することができる、と修正されておりますが、これで果して条約に適応することになったとお考えであるでしょうか。この点、明確にお答え願いたいと思うのであります。(拍手)
 さらに、最低賃金決定制度の実施に関する勧告においては「最低賃金決定制度は、其の採れる形式の如何を問はず、……該職業又は職業の部分に於ける使用者及労働者と協議して、之を運用すべく、如何なる場合に於ても、最低賃金率の決定に関する一切の事項に付ては、右使用者及労働者の意見を求め且其の意見に対しては充分にして均等なる考慮を払ふべし。」と規定しているのであります。政府原案はこの勧告に抵触すると、みずから認めているのであります。この点は、修正案についてはどうなっているか。第三十一条の専門部会において、必要と認める場合、関係労使の意見を聞くといった程度の修正で、果してILOの勧告に合致すると考えるかどうか。この点、お尋ねいたしたいと思うのであります。(拍手)
 質問の第三点は修正の第九条第二項についてであります。「賃金の最低額に関する定を改正して再申請すべきことを勧告することができる。」となっておりますが、勧告された業者間協定の民事的効力はどうなるでありましょうか。対労働者の関係においては無効となるのか、有効となるのか、依然として、改正を勧告されても有効であるのかどうか。この点、修正者から御答弁願いたいと思うのであります。(拍手)改正せず、再申請しなくとも民事的には有効であるというならば、全くナンセンスであり、かような規定は意義の大半が失われて、いわば不当な低き賃金カルテルが横行することになるが、修正者はどういうように考えられておるか、お尋ねいたしたい。さらに、再申請の勧告をなすよりも、労組法第十八条の地域的一般拘束力におけるように、当該労働委員会は、「当該労働協約に不適当な部分があると認めたときは、これを修正することができる。」と、こういった審議会に修正権能を認めた方がよいと考えるが、修正者はどういうようにお考えであるか。何ゆえに、この点について、修正案は、しり抜け的な、ざる的な規定にしたのか、その理由を伺いたいのであります。
 次に、質問の第四点は、修正案は、第十五条に、「最低賃金審議会の意見の提出があった場合において、その意見により難いと認めるときは、理由を附して、最低賃金審議会に再審議を求めなければならない。」と修正しております。この修正は、わが国には立法例を見ないのであります。おそらくイギリス法によったものであると考えられるのであります。そこで、イギリスでは、再審議の結果、再び原案と同じものがされれば、大臣はそれを採用して命令を出す慣行になっておりますが、提案者はこの点いかに考えられておるか、お尋ねいたしたい。また、政府は、本案が可決され、成立した後に、再答申が行われた場合、いかにその意見を採択するのか、法の運用に当っての労働大臣の答弁をお願いいたしたいと思うのであります。また、審議会の権限を強化するに際し、何ゆえ審議会独自の発案権をお認めにならなかったのか。これこそ、私は審議会の権限強化と考えるのでありますが、この点、いかに考えられたのか、提案者にお尋ねいたしたいと思います。
 質問の第五点は、第二十条の修正点についてであります。第二十条の修正点は、私たち、政府の原案によりますと、第二項の最低工賃の決定は、第一項の最低工賃の決定と同時のみならず、その後においても、必要と認めるときは、大臣または基準局長はそれを決定することができるものと考えられるのであります。しかるに、本修正案は、同時のみの決定を認め、その後、他の同種の業務に従事する家内労働者の工賃がきわめて低廉であるということが判明した場合においても、これに対して工賃の決定をすることができなくなり、原案よりも逆に範囲を狭め、著しい後退となると考えるのでありますが、その点、かような修正をされた理由はどうでありましょうか。もし、提案者の答弁が、原案と同じである、こういう説明であるとするならば、原案はきわめてずさんといわなければなりません。一体、法の運用に当って、労働大臣は、原案と修正案とが同一の趣旨の規定であって、立法技術上の改正であると解せられているのか、この点について明確な答弁をお願いいたしたいのであります。
 最後に、提案者に一言申し上げたいことは、本修正により、政府原案の不備を補わんとする参議院のささやかな良識をうかがい知ることができるのでありますけれども、似て非なる最低賃金法案は、いかに手直しをしても、しょせん、にせものにすぎないのであります。むしろ、ILO条約を批准するために、業者間協定の不当性をカムフラージュせんとする、かえって知能犯的修正といわざるを得ないのであります。(拍手)わが国の労働基準法制定よりここに十三年、最低賃金制度の実施を遷延し続けてきました政府が、ようやくにして、労働者の要求と国の内外の批判を受けて最低賃金制度に踏み切り、日の目を見んとするときに、三十年前に採択されたILO条約の適法性を議論することは、まことに遺憾であり、常任理事国としてまことに恥かしい次第といわなければなりません。(拍手)この業者間協定を柱とする法案の成立は、やがて国際労働機構で種々問題を提起されることでありましょうし、国際的信用を失墜する結果を招来することでありましょう。せっかく修正していただきましたけれども、これでは、労働者の生活の安定も、産業構造の近代化も期待することはできないようであります。
 以上の点に対して、提案者並びに労働大臣の答弁をお願いいたしたいと思うのであります。(拍手)
    〔国務大臣倉石忠雄君登壇〕
○国務大臣(倉石忠雄君) 審議会の再審議に付した結果、審議会において同様な答申がなされた場合に、政府はどうする考えであるかというお尋ねでございますが、ただいま多賀谷さんからお話もありましたように、英国の例では、審議会が再審議の結果同一内容の意見を提出したときは、政府は慣行として大体それに従って措置すると聞いておりますが、本法案の運用に当りましても、大体これと同じ気持で運用して参りたいと考えております。
 それから、第二点は、第二十条に関する原案と修正案は同じ趣旨であるかどうかというお尋ねでありますが、われわれは同じ趣旨であると存じます。同時に、また、修正案によってその意味がかえって明確になった、このように考えておる次第であります。(拍手)
○議長(加藤鐐五郎君) 修正案提案者、参議院議員草葉隆圓君。
    〔参議院議員草葉隆圓君登壇〕
○参議院議員(草葉隆圓君) 修正案の提案者といたしまして、多賀谷君の御質問にお答えを申し上げます。
 今度の修正は、業者間協定その他において、労使対等の精神に反しておるのではないか、あるいはILO第二十六号条約の精神に反しておるのではないかという、第一並びに第二の御質問でございます。業者間協定に基く最低賃金は、業者間協定そのものを直ちに最低賃金の決定とするのではないのでありまして、労、使、公益三者構成の最低賃金審議会に諮問をいたしまして、その意見を尊重して行政官庁が決定するものでありまするから、原案そのものにおきましても、私はILO条約に適合しておるものと考えておるのであります。しかし、ILO条約の、ただいま御指摘になりました二十六号第三条その他におきましても、ILO条約の労使双方の均等の参加という趣旨を一そう明確にいたしまする意味において修正をいたした次第であります。その修正の中心は、最低賃金審議会の権限を強化して、行政官庁は、最低賃金審議会の意見によりがたいと認むるときは、理由を付して再審議を求めなければならないといたしました点、さらに、最低賃金審議会は、審議に際して必要があるときに、関係労使その他の関係者の意見を聞くものとするという新しい一項を加えまして、この点を一そう強調いたしたのであります。
 第三の点におきましては、業者間協定による最低賃金の申請の内容が不適当と認める場合におきまして、最低賃金審議会が必要と認めたときには、行政官庁は、その意見に基いて、当事者に対してその内容を改正して再申請すべき旨の勧告をすることができるという、一項を加えたのであります。
 さらに、ただいま、家内工賃、いわゆる内職等の場合の問題を御引例になりました点におきまして、地域的最低賃金の決定に当りまする場合、アウトサイダーの労働者には、従来は異議の申し立てが明文化しておらなんだのでありまして、従来は使用者だけにこれを認めておったのでありますから、今回第十二条の改正に当りまして、労働者の異議申し立てを修正いたした次第であります。
 なお、賃金審議会に再申請をすることとなっておるが、むしろ修正権限を付与すべきものではないかという意味の御質問であったと了承いたします。しかし、賃金審議会はどこまでもいわゆる諮問機関であって、行政の責任は、行政官庁の責任者である労働大臣またはその下部機関でありまする都道府県の機関によってなさるべきものであると存じまして、審議権を付与することは同意いたしかねて、かような修正といたした次第であります。次の御質問は、業者間協定は、改正を勧告された場合に、民事的の有効無効はどうかという御質問であったと了承いたしまするが、もちろん、民事的には有効であると存じます。しかしながら、社会的に必要があります場合には、最後は、御案内の第十六条の発動も考える、その前提となり得ると存じておるのであります。
 次に、第九条の第二項、これは、ただいま申し上げましたように、申請が適当でないとき、行政官庁は、審議会の意見に基いて、改正して再申請すべきことを勧告する、この点につきましては、従来の第九条をさらに一そう明文化する意味において、むしろ問題を解明するという意味において、この一項を新しく加えた次第であります。最後に、第二十条第二項の問題でありますが、第二十条第二項におきましては、従来は、「労働大臣又は都道府県労働基準局長は、必要があると認めるときは、最低工賃において、当該地域内の家内労働者で前項に規定する家内労働者と同種の業務に従事するもの及びこれに対して委託をする委託者で前項に規定する委託者と同種の事業を営むものに、当該最低工賃を適用すべきことの決定をすることができる。」とありましたが、この第二十条の第四項を、一項新しく、今度修正で加えたのであります。それは、家内労働者のいわゆる工賃に対しましても第十五条第二項の規定を適用できる旨の一項を加えましたために、第二項の御質問の点を明瞭にする意味において字句を修正いたしたのであります。従いまして、その内容は原案と変りがないばかりでなく、これが決定いたしましたあとにおきましても、第三項によりまして、工賃に対するその他の低い方面からのそれぞれの手続がなし得るようにいたしておる点を御了承願いたいと存ずるのであります。
 以上をもってお答えといたします。(拍手)
○議長(加藤鐐五郎君) これにて質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
○議長(加藤鐐五郎君) 討論の通告があります。これを許します。五島虎雄君。
  [五島虎雄君登壇]
○五島虎雄君 私は、日本社会党を代表いたしまして、最低賃金法案の回付案に対し反対の討論を行わんとするものであります。(拍手)
 顧みますと、わが国の労働法制、なかんずく労働保護立法の支柱をなす労働基準法が制定されて以来、すでに十年有余の日子を経ております。しかしながら、この法律の眼目たる最低賃金制度が今日に至るまで遂に日の目を見るに至らなかったことは、周知の通りであります。かかる労働条件の最低基準に関する重大な抜け道は、底なしの低賃金労働者を広範に生み出し、その結果、さらに日本的低賃金を生み出すという忌まわしい悪循環を形成してきたのであります。そればかりか、この低賃金こそが、労働基準法の息の根をとめ、八時間労働制の原則をすら突きくずす作用を営み、労働強化の抑制も不可能な状態に追い込んでいったことは、否定できない事実であります。(拍手)このため、総評、全労、新産別、中立を含む、まさに全労働者階級がひとしく最低賃金制の確立を熱望し、わが日本社会党もまた、最低賃金法制の一日も早き制定を目ざし、日夜努力して参ったのであります。
 しかるに、政府は、このような、ほうはいとしてわき上る労働者の力を目の前にして、なお、労働条件の労使対等決定という、歴史的でしかも世界的な原則を無視し、業者間で勝手にきめた最低賃金をそのまま法定の最低賃金にしようという暴挙を、最低賃金法の名において強行しようとしていることは、あらためて説明するまでもございません。わが党が、国会審議を通じて、世界の舞台に通用しないこのような政府案の重大な誤まりを指摘し、これを真実の最低賃金法制として制定させるべく努力すること、当然過ぎるほど当然のことといわなければなりません。(拍手)ところが、衆議院の委員会においては一方的な採決を強行したばかりでなく、参議院においては、会期いまだ一カ月を余しながら、四月二日、夜を徹して委員会の中間報告を求め、しかも、今ここに回付されている修正案を、委員会において全然審議することなく、一挙に本会議に提出して可決するという、国会審議のルールを全く踏みにじった行為は、われわれの断じて容認し得ないところであります。(拍手)従いまして、私は、今ここで回付案に同意するかしないかを論ずる以前に、まずもって、政府与党が、この参議院修正を、参議院自身の手において、謙虚にしてしかも誠意をもって審議し尽すことに努めるべきであったと、声を大にして主張しなければならないと考えるものであります。(拍手)
 さて、政府与党の諸君は、四点にわたる参議院修正が、何か最低賃金法を一そうりっぱな法制にするものであるかのように錯覚いたしまして、あるいは、そのように思い込ませようとしているけれども、この点を順次明らかにして参りたいと思います。
 修正の第一点は、行政官庁が最低賃金審議会の意見によりがたいと認めるとき、理由を付して再審議を求めなければならないことにした点であります。このことは、行政官庁は最低賃金審議会の意見を尊重しなければならないという規定に追加したものでありまして、このために、意見を尊重することと、意見によりがたいことが同時に規定されるという、非常に大きな矛盾を作り出し、審議会の意見を果して尊重するのかどうか、原案以上に不明確となるばかりか、三者構成という審議会の構成を考慮に入れるならば、この修正の果す機能は、最低賃金の水準を引き下げること以外に考えられません。審議会の決定に対する行政官庁の干渉を許すものといわざるを得ないのであります。
 修正の第二点は、審議会が必要ある場合、関係労使の意見を聞く道を開いた点であります。これは、審議会に関係労使の意思をより一そう反映させるという、一歩前進の修正であるかのごとく見えるのであります。しかし、ILO条約とその勧告が求めているのは、関係労使と協議することでありまして、単に意見を聞くことでは決してないということを忘れてはなりません。このような立法技術によってILO条約をごまかそうとすることは、国際社会における名誉ある地位を決して日本の将来に約束するものではないといわざるを得ません。
 修正の第三点は、業者間協定の内容が不適当なとき、行政官庁はその内容を改正いたしまして再申請を勧告するという点でございます。私は、衆議院における質疑において、政府が、この点の質問に対し、繰り返し、原案でもそのようにできるのだと答弁し、会議録にも明確になっていることを承知いたしております。このことは、原案でも、この修正でも、何ら変るところはない、ということの証明にほかなりません。また、この勧告に何ら強制力が伴うものでないことは言を待ちません。従って、その実効は全く期待できないというべきでありましょう。この点について、朝日新聞の社説は、参議院通過の翌日、「最低賃金法案は可決されたが」という見出しで、「業者間協定は数多く生まれても、法律に基くほんとうの最低賃金は大して生まれないことになるだろう」と指摘しているのであります。この主張は世の識者の一致した見解と見て誤まりはないでありましょう。およそ世界にその例を見ない業者間協定に対し、どのような小細工を加えてみましても、その本質を変えることは不可能であるということを知らなければならないと思います。
 修正の第四点は、地域的最低賃金の決定について、アウトサイダーの労働者に対しても異議の申し出を認める点であります。これも、何か労働者の意思を特別に反映させる道を講じたかのように見えるのでありますけれども、しかし、労働協約による最低賃金を拡張適用しようとするとき、労働者に異議の申し出をさせるということは全く無意義なことであり、むしろ、最低賃金の実施をおくらせ、あるいは最低賃金額を減額するという、正反対の道に進ませようとするものにほかなりません。そればかりか、ここでさらに注目すべきことは、労働組合法第十八条による拡張適用方式が、最低賃金法のこの規定によって、その建前をくずし、混乱を生ずるばかりでなく、少くとも最低貸金に関する限りは、労働組合法第十八条を全く空文化するということであります。
 以上、参議院の修正を一つ一つ検討してみるならば、この修正が審議会の権限強化であると称しながら、およそ権限強化とはほど遠いばかりか、これが政府原案の修正であるか、一そうの改悪であるかは、おのずから明らかでありましょう。政府原案の基本線をくずすことなく、かかる小細工に終始している事実は、驚くべきナンセンスといわざるを得ないのであります。
 日本における最低賃金制はいかにあらねばならないか。わが党は、さきに、わが党の最低賃金法案をもって、その点を明確にいたしました。それは、世界の常識に反したものであれ、ないよりましだ、といった無原則な態度を許す性質のものでないことは、言うまでもありません。そうして、日本の最低賃金法制は、わが党の主張に沿って法制化することこそ、必ずや低賃金労働者の頭上に輝き、その労働条件向上の旗を高く掲げるであろうことを確信し、この回付案に対して反対の意思を強く表明するものであります。
 以上をもって私の反対の討論を終ります。(拍手)
○議長(加藤鐐五郎君) これにて討論は終局いたしました。
 採決いたします。本案の参議院の修正に同意の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○議長(加藤鐐五郎君) 起立多数。よって、参議院の修正に同意するに決しました。
     ――――◇―――――
○議長(加藤鐐五郎君) 日程第一、一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案、日程第二、特別職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案、日程第三、防衛庁職員給与法等の一部を改正する法律案、日程第四、恩給法の一部を改正する法律案、日程第五、行政機関職員定員法の一部を改正する法律案、右五案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。内閣委員会理事高橋禎一君。
    〔高橋禎一君登壇〕
○高橋禎一君 ただいま議題となりました五法案につき、内閣委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。詳細は会議録によって御承知を願うこととし、簡潔に要点を申し上げます。まず、一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案の要旨は、第一に、昨年七月十六日付の人事院勧告に基き、一般職の国家公務員の六月の期末手当を〇・一五月分増額いたしますとともに、俸給表を改正して、初任給相当額の引き上げ、昇給期間の若干の短縮等を行おうとするものであります。第二に、現行暫定手当の一部を俸給に繰り入れ、これに伴う暫定手当の整理を行うことであります。なお、施行期日は本年四月一日といたしておりますが、暫定手当の繰り入れに関しては実質的に本年十月一日から実施することといたしておるのであります。
 次に、特別職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案の要旨は、一般職の職員との権衡を考慮して、秘書官の俸給表を改正し、暫定手当の一部を俸給に繰り入れますとともに、その他の特別職の職員につきましても、恩給もしくは退職手当等に関する法令の適用に当って、その受ける暫定手当の一部を俸給とみなすこととするほか、若干の規定の改正を行おうとするものであります。
 次に、防衛庁職員給与法等の一部を改正する法律案の要旨は、一般職の国家公務員の俸給額の改定に準じて防衛庁の職員の俸給の額等を改定し、また、国家公務員等の退職手当の改定に伴い、任期制自衛官の退職手当につき所要の改定を行い、あわせて自衛官の俸給等を月額表示に改める等、必要な措置を講じようとするものであります。
 右三法案は、それぞれ一月二十六日、同じく二十六日、二月十四日本委員会に付託され、二月三日、同じく三日、十九日、それぞれ政府より説明を聴取し、三月三日より質疑に入り、慎重審議を行い、四月三日質疑を終了いたしましたところ、右三法案に対し、自由民主党提案にかかる修正案がそれぞれ提出され、岡崎委員より趣旨説明がなされましたが、その要旨は、いずれも施行期日にかかわるものでありまして、「昭和三十四年四月一日」としてありますものを「公布の日」に改め、適用は本年四月一日とする等であります。
 かくて、討論の通告もなく、直ちに採決の結果、右三法案は全会一致をもっていずれも修正案の通り修正議決すべきものと決しました。
 次に、恩給法の一部を改正する法律案は、戦傷病者の恩給法上の処遇につきまして、昨年九月三十日政府に報告されました傷病恩給症状等差の調査に関する専門調査会の答申をもととし、必要な法的措置を行おうとするもので、その第一は、肺結核、精神障害等のいわゆる内部疾患にかかる傷病恩給につきまして、従来の精神的または身体的作業能力の制限という抽象的な規定及びそれに基く内規あるいは裁定例を再検討し、合理的な基準を明らかにすることによって、症状の実態に即する適切な増加恩給または傷病年金が支給できるようにしようとするものであります。第二は、有期の増加恩給または傷病年金の期間「五年」を「三年以上五年以内」の期間に改めることによって、疾病の消長に対応して合理的な恩給が給せられるようにしようとするものであります。
 本案は、去る一月二十六日本委員会に付託され、二月三日政府の説明を聞き、慎重審議を行い、四月三日質疑を終了いたしましたところ、岡崎委員より、自由民主党の提案にかかる修正案が提出されたのであります。
 その修正の要旨は、有期の増加恩給または傷病年金の期間を従来のまま「五年」とするため、その改正部分を削除すること、増加恩給受給者のうち、公務による傷痍、疾病によって生殖機能を廃した者については、退職後養子縁組みをした未成年の子も、これによって生計を維持し、またはこれと生計をともにしていれば、一人に限り扶養家族として加給を認めること、並びに、施行期日につきまして「四月一日」を「公布の日」に改め、四月一日から適用するようにすることであります。
 この修正案につきまして内閣の意見を求めましたところ、松野総理府総務長官より、「有期の増加恩給の期間を修正案のように修正することは改正案の趣旨を没却するものであり、また、生殖機能を廃した増加恩給受給者の退職後に養子になった者についても、その一人を限り加給の対象とすることは、年金、恩給制度が退職当時の条件を基礎として給されるものであることよりして、なお慎重に検討を要するものであると思われる」旨の意見が述べられたのであります。
 かくて、同日、討論もなく、採決の結果、全会一致をもって修正案の通り修正議決すべきものと議決した次第であります。
 なお、本案に対しまして岡崎委員より附帯決議案が提出され、全員一致の議決を見たのであります。
 次に、これを朗読いたします。
 一、第二十八国会昭和三十三年四月四日の内閣委員会において、「恩給法等の一部を改正する法律案」の可決されるにあたり、特に内閣委員長より質疑したる各項目については、総理府総務長官より「政府としては十分検討の上善処する」との言明を得ているので、この際本問題解決のため、すみやかに具体的方策をたつべきである。
 二、傷病恩給の症状等差の是正については、昨年政府に「傷病恩給症状等差の調査に関する専門調査会」が設置され、学識経験者等により専門的な調査研究がなされたが、短日月のため肺結核、精神障害など僅か三ツの分野に止まったと報告している如く、その範囲が誠に狭隘であるから、その他の傷病についても引続き調査研究を行い、恩給法の別表第一号表の二及び三を改正し、もって諸般の不均衡を是正すべきである。
 三、戦傷病者の医療制度は誠に不備であり、今回の国立箱根療養所の入所料の増額問題を見ても明かである。依って、次期国会において戦傷病者戦没者遺族等援護法の必要なる改正を行い、再発者を含め戦傷病者の根本的な医療制度を確立すべきである。
 次に、行政機関職員定員法の一部を改正する法律案の要旨は、昭和三十四年度における各行政機関の事業予定計画に即応し、行政機関全般の定員の適正化をはかろうとするものでありまして、各行政機関職員の現定員の合計六十七万四千百四十四人に対し、六千六百四十四人を増員する反面、一千百二十七人を縮減し、差引五千五百十七人を増加して、結局、第二条第一項の表の合計を六十七万九千六百六十一人にいたそうとするものであります。
 まず、増員のおもなものを申し上げますと、科学技術庁付属の研究所の整備拡充等に伴うもの二百三十七人、国立大学の学年進行、学部の増設等に伴うもの六百二十六人、郵便取扱い業務量の増加に伴うもの二千五十五人、電気通信施設の拡充に伴うもの千九百十七人、道路事業の増加に伴う増三百八十人等でありまして、現業的職員がその大部分を占めております。
 次に、減員のおもなるものは、郵政省の電信電話業務を日本電信電話公社の直轄に移管することに伴うもの五百八十七人、調達庁の行なっております駐留軍施設等の提供業務の減少によるもの三百二十人等であります。
 本案は、一月三十日当委員会に付託され、二月三日政府より提案理由の説明を聴取し、慎重に審議を行なったのであります。
 四月三日、質疑を終了いたしましたところ、自由民主党提案にかかる修正案が提出され、岡崎委員より、その趣旨説明が行われました。
 その要旨は、第一に、今回定員化することになる五千四百名の増員は行政機関職員定員法に基くものとし、その総数の中には、農林省統計調査部の職員百名の優先配分及び地方自治法附則第八条に基く職員を含むことにしております。第二に、総数の五千四百名については法律をもってこれを定め、各行政機関別の具体的配分は政令にゆだねることとしております。第三に、四月一日の施行日を公布の日に改め、適用を本年四月一日としております。
 別に討論の通告もなく、直ちに採決の結果、全会一致をもって修正案の通り修正議決すべきものと決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(加藤鐐五郎君) 日程第一ないし第三の三案につき討論の通告があります。これを許します。柏正男君。
    〔柏正男君登壇〕
○柏正男君 私は、ここに日本社会党を代表して、ただいま議題となりました給与関係の三法案に対して、以下、反対の討論を行うものであります。(拍手)
 まず、これら三法案については、去る四月三日の内閣委員会において反対討論を行うことになっておりましたが、当日はついに両党の話し合いがつかなかったため、わが党委員が出席不能のまま採決され、実施期日を四月一日に修正して可決されたというところに、すでに正常でない国会審議の所産として、これらの事実そのものを認めることができないわけであります。(拍手)さらに、また、これらの法案自体についての反対点を、以下、論議しようとするのでございます。
 すなわち、現在の公務員は、憲法第二十八条に保障せられている団結権、争議権を行使されなくなっている、弱い立場にある人々であります。これに対し、政府は、いつも、黙って政府の出す給与をもらっておけばそれでよろしいというような態度で押しつけてきており、今度のこれら三法案もまた、いつもの通りであります。あまりにも再三のことで、もう四十万公務員も承知できないところでありましょう。また、国民としても、岸政権のような、人間を人間として扱う根本精神に欠ける政府のやり方に対しては納得できないというところからも、これらの給与法案に対し強く反対を表明するものであります。(拍手)
 第一の反対点として私の主張したいところは、現在ここに提案された給与法案は、一体、どこで、いつ考えられたかということで、そのそもそもの出発点が問題だということであります。すなわち、昨年七月十六日の人事院の給与勧告そのものはすでにゆがめられたものであったということを指摘しなければならないのであります。人事院が資料としたものは昨年三月の統計で、この給与法案の基礎となったものは一年前の日本の社会の給与状態であり、一年前にそうあるべきであった給与が今ここで審議されて、これくらいでがまんしろといって渡されようとしているのが、現実の姿であります。この事実の上に立って公務員の給与を考えるとき、これではあまりにも不合理であり、また、思いやりがなさ過ぎるとはお考えになりませんか。しかし、政府側では、いつもそういうことになっているのだ、別に今度だけがそうなっているわけではないと言うでありましょう。しかし、いつでも、いつまでも、こういうことが繰り返されているというところに、もうがまんがならないものがあるのではないでしょうか。
 この一年間、物価はもちろん上っています。ことに、政府がガスやバスの値上げを許して以来、ぐんぐん目に見えて物価は上っています。こういう事実を無視して、今度もこれで給与改定ができたというように安易な気持でいることが大きな問題なので、深く給与の実態、給与の根本的立場等に思いをいたし、人間尊重の立場からの反省がなくて、勧告の通りに出したのだからもらっておけばいいじゃないかというような程度のものであっては、この給与案を通過させることは、これをいさぎよしとはしないのであります。自民党の方々は富裕階級でいられるから、栄養と顔つきといったようなことにはぴんとこられないかもしれませんが、毎朝七時前に職業安定所に集まっている失業者の人々の顔つきをごらんになったことがございますか。栄養と顔つき、給与と生活、ほんとうに胸を締めつけられるようなものがございます。人間らしい顔つき、人間らしい栄養、その意味での給与、実に重要な問題であって、全く、憲法第二十五条に「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と書かれてありますが、健康で文化的な、そこまではいかずとも、せめて生きていくに足りるだけのものが得られなければなりません。
 公務員の生活も、日本の国情を反映して、決して豊かというところまでいけないのも、もっともでございますが、しかしながら、がまんにがまんを重ねるにしても、もうそろそろ限界にきているのではないでしょうか。人事院の昨年の勧告では、民間給与との差は四・一%といっておりますが、全体では八・五%の格差になっており、二千円の一律ベース・アップを当然に実施すべき事態を押し隠しているということの事実、公務員にどんな生活をしいようとしているのでしょうか。スト一つできない立場、物価は上る一方、出費はふえる一方、一体、政府は、この程度の給与改善で、公務員にその全生活を国家公共のために尽せと言い切れるものがあるのでしょうか。公務員がその品性を保ち、恥かしくない生活をするために、今のこのような給与だけで十分でしょうか。
 一方、政治の面では、待合政治、金権政治と、金のかかるのは当りまえになっております。選挙の面では、これもまた、おそろしく金のかかる選挙が、ごくありふれたものになってきた今日、何もかにもが金の力でゆがめられてしまっている今日、公務員がきわめてつつましやかな給与に甘んじて、しかも、なお国民の師表となるべきことを強要されている今日、声なき声は、心からなるのろいを込めて、このような人間性の尊重に欠ける法案の通過をいさぎよしとしてはいないということを、わかろうとはしないのでしょうか。(拍手)国民はよらしむべし知らしむべからず、国民を衆愚として取り扱ってきたような政治は、もう通用するはずがありません。英雄も要らない、指導者も要らない、国民の一人一人の意思とその知恵とがすべての原動力というのが新しい政治方式です。恩恵的な政治施策、くれてやるぞといった調子の給与などでごまかせなくなってしまった時代について、まだ気がついていないのが日本の政治の現実、ここに日本の悲劇があり、ここに基本的な命題があることを感ずるものであります。
 初任給は大学卒業者に一千円増額、それによって号俸の是正も行われたとはいうものの、次官クラスの給与に新しく七万八千五百八十円の八号俸、八万一千七百二十円の九号俸が追加されたのが今度の給与改正の実態であります。このようにして、高級官吏がますますよろしくなっていくことはけっこうといたしましても、中堅、中級の官吏などは、教育費等に出費が多く、どうにも動きがとれなくなっている。いわゆる給与の中だるみのままにほったらかされている。このような状態からしても、ここで政府に強い反省を求めて、公務員の給与に対して根本的な態度を改めて、真実に公務員が健康にして文化的な生活の水準まで達するようにしてあげなくては、どうして公僕としての責任を期待することができるでしょうか。
 問題点となる暫定手当の本俸繰り入れも、地域給の不均衡是正等をそのままにし、さらに勤務地手当廃止の方針による圧縮の方向も明示されぬままに、実施期日を半カ年も繰り延べるなど、何もかにもがその場だけのやっつけ仕事になっているありさまで、何もかにもが、不十分でありますから、公務員の生活を憲法の保障する文化生活にまで引き上げるというような、政府が当然にしなければならないことが、実現されようとはしていないのであります。しかも、それは、富裕階級、特権階級の生活の擁護を政治としているような政府では、とうていできない相談でありましょう。私の言わんとするところは、全く人間蔑視、金権尊重の政治をするものとは反対の考えでありますから、岸政権のごときものではほとんど理解不能であろうと思いますが、一事が万事で、今問題となっている米軍駐留は憲法第九条違反であるというような判決に対して、下級裁判所の判決ぐらい問題ではないと小ばかにし、最高裁判所に圧力をかけ、自分たちに都合のよい判決をさせてみせるぞというような態度を見せている岸政権に、国民はもう信頼を持たなくなり、国民はその一人々々の力でみずからを守らなければならなくなってきているという、そういう傾向が、こういう給与法案の審議を通じてもその底流において現われてきていることに、岸首相も思いをいたすべきであろうと、私はここに強くその反省を求める次第であります。(拍手)
 最後に、いま一言、人事院並びに人事官に対し、その独立性が失われてきかけているのではなかろうかということを警告いたしたいのであります。人事院の給与勧告は、もうおざなりのものになり、その実施がどうなろうと、いつになろうと、ただ勧告のやりっぱなしという段階になってしまっていることそれ自体に、権威のないものと化し、無責任なものとなってしまっていることを立証しているではありませんか。人事院は、争議権を持たなくなった公務員を守ってやる義務を持った機関であるはずです。それが、政府の意識的怠慢に同調してしまっている姿、これで人事院並びに人事官が独立の責務を果していると言えるでありましょうか。心からの憤りをもって、人事院は政府の御用機関と酷評する声をさえ聞くに至っております。このような事態である限り、公務員に対する給与につき、私どもが政府に対し不信任を表明すると同様に、人事院並びに人事官に対しても、同じくこれが不信任を表明するに至るであろうことを申し述べ、以上をもって私の反対討論を終結するものであります。(拍手)
○議長(加藤鐐五郎君) これにて討論は終局いたしました。
 五案を一括して採決いたします。五案の委員長の報告はいずれも修正であります。五案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○議長(加藤鐐五郎君) 起立多数。よって、五案とも委員長報告の通り決しました。(拍手)
     ――――◇―――――
○議長(加藤鐐五郎君) 日程第六は、委員長提出の議案でありますから、委員会の審査を省略するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。
 日程第六、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。法務委員長小島徹三君。
    〔小島徹三君登壇〕
○小島徹三君 ただいま議題となりました裁判所職員定員法の一部を改正する法律案につきまして、提案の趣旨を御説明申し上げます。
 本案の趣旨は、定員外職員の定数の一部を裁判所職員定員法による裁判所の職員の員数に組み入れることとすることであります。従来、裁判所におきましては、二カ月以内の期間を定めて雇用される定員外の常勤職員が相当数勤務しておるのでありますが、これらの職員の中には、その従事する職務の内容その他の点について定員内の職員との間に格別の差を認めがたいものがあるにもかかわらず、これらはすべて裁判所職員定員法による定員の外に置かれておるのであります。今国会におきまして、行政機関職員定員法の一部を改正する法律案が政府より提出せられ、その審議に際し、定員外職員の処遇の改善をはかるため、定員外職員の一部定員化を行うこととなりましたことは、御承知の通りであります。よって、これに対応しまして、定員外職員の定数の一部を裁判所職員定員法による裁判所の職員の員数に組み入れることが適当と考えられますので、本案におきましては、裁判所の職員の定員の員数を二十二人増加することといたしたのであります。以上が本法律案の趣旨であります。
 法務委員会におきましては、去る四月四日、以上申し述べました趣旨に従い本改正案の作成をいたし、全会一致をもって委員会提出の法律案とすることに決定いたした次第であります。
 何とぞ諸君の御賛成をお願い申し上げます。(拍手)
○議長(加藤鐐五郎君) 採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。
     ――――◇―――――
○松澤雄藏君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、この際、内閣提出、農地被買収者問題調査会設置法案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
○議長(加藤鐐五郎君) 松澤君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。農地被買収者問題調査会設置法案を議題といたします。委員長の報告を求めます。内閣委員長内海安吉君。
    〔内海安吉君登壇〕
○内海安吉君 ただいま議題となりました農地被買収者問題調査会設置法案につきまして、内閣委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本法案の要旨は、戦後行われた農地改革が従来の社会的、経済的基盤を大幅に変革したことはいなめない事実であるけれども、これは正当な法律に基いて正当に行われたものであるから、これを是正する意味における補償は考えられないところであるが、しかし、現行の農地法の問題とは別に、この農地改革の副次的な結果ともいうべき被買収者に関する社会的な問題について、広く各界の学識経験者の意見を聞いて、その実情を明らかにするとともに、これに対して何らかの措置を講ずる要があるかいなかを二年間にわたって調査審議するため、総理府の付属機関として、内閣総理大臣の諮問機関とする農地被買収者問題調査会を設置しようとするものであります。
 この調査会は委員二十人以内で組織し、専門の事項を調査させるため専門調査員十人以内を置くことができることとし、委員及び専門調査員は学識経験者のうちから内閣総理大臣が任命することといたしております。
 本案は、二月十九日本委員会に付託され、三月十二日本会議に上程、審議された後、三月十八日政府より提案理由の説明を聴取し、慎重審議の結果、本日質疑を終了いたしましたところ、高橋委員より、四月一日の施行期日を公布の日に改める修正案が提出され、次いで修正案を一括して討論に入りましたところ、日本社会党を代表して茜ケ久保委員より反対、自由民主党を代表して平井委員より賛成の意見がそれぞれ述べられたのであります。
 採決の結果、本案は多数をもって修正案の通り修正議決すべきものと決定いたした次第であります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(加藤鐐五郎君) 討論の通告があります。これを許します。石山權作君。
    〔石山權作君登壇〕
○石山權作君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程になりました農地被買収者問題調査会設置法案に対しまして反対の討論をいたします。
 この法案は、農地改革によって生じた副次的結果ともいうべき被買収者に関する社会的な問題について、その実情を明らかにするとともに、これに対して何らかの措置を要するかいなかを十分慎重に検討しようとするもので、これが調査会は二カ年間、委員は二十人以内、さらに十人以内の専門調査員と十人以内の幹事を置くことができるという趣旨のものです。これら、一見何ら特別の事柄も含まないような形で、いうところの低姿勢で打ち出されてきた法案でありますが、この法案の提案されるまでの経緯を考えると、なかなか物騒千万な内容を持つものがあるのです。
 日本の保守党は、日本農政に対する過去の事実が示すごとく、その農村対策は現代よりの著しい逆行性を示しています。これは何も農政のみに示される彼らの方向づけではないのですが、旧勢力の温存をはかり、旧勢力をまたまた支配勢力へと衣がえするための努力は、あらゆる機会と場所において行われています。
 ここ数年間に本国会を通過した法案のうちでも、教育に関する諸法案は、いたく教育の発展と学問の自由を束縛しております。自治警察より国家警察へと、しかも、この権力者は果てしもなく権力を求めて、先ごろの警職法のごとく、国民をいたく圧迫感に陥れています。これとともに、自衛力は一段、二段、三段飛びで拡張され、憲法制定当時は、外国との交戦力さえ、よう認定し得なかった平和憲法は、最近は、小型の核兵器をもっても戦い得るというのだから、やがては大陸間弾道弾をもって戦う軍隊をも用意することができると解釈することに努めそうであります。憲法調査会は、調査に名をかりて天皇制の利用を前面に押し出し、憲法改正の必要性を列記することを役目とする危険性が多分にあるようです。過度の集中排除法や独占禁止法はゆがめられて、独占企業の横断的結合は、その価格維持が不景気の中にも大手をふるい、資本の上下の統括は、中小企業をして子飼いの下僕としてしまいました。
 これらの法案は、表面は何もどぎついものではなく、しごく当然の手直し程度であるがごとく提案されているのでありますが、立法技術のからくりは、時の権力者に都合のよい拡大解釈のできるようになっているのです。法文と法文との間に弱き国民階層の頭をたたき、反対するものからは僅少の権利さえ剥奪し得るように努めることが最近の傾向であります。
 政府批判の強い団体の分断政策として最近とられたのは、小中学校長の管理職手当でした。まことに人間性の弱点をついた巧妙なものです。また、各種団体に補助金を出してその団体の不満を押え、その持つ使命の高度化を抑える工夫も試みています。法律の一部改正によって農業団体に給付される補助金は、金のない農村にとっては良薬の役目をなすはずであるが、一部法律の改正という文章は、農業団体をして、農民の権利擁護の立場から、政府政策の、突き詰めれば保守党の時代逆行の基本である農業政策の宣伝機関の役目を勤めざるを得ない立場に追い込みつつあるというのも、農村に現われた一つの現象であります。
 すなおに人の言うことを聞けと、そう言われると、国民大衆は、ほんとうに従順で、すなおなものですから、その通りにしていても、ちっともそれが約束通りでなかったり、あるいはとんでもない逆な意味がその中にあるのがだんだん明瞭になるので、いつも驚くのですが、驚くときはすでに手おくれで、法律は驚く人々を冷然と見おろしているのです。悪法も法律である。法治国の国民として何ですかとしかられると、国民大衆はすなおなものですから、それに従うことを繰り返しているのですが、その反面に、だんだんに、政府、自民党の諸君の言い分にはうそが多いから、からくりが多いから安心ができないと考え始めているのです。
 特に、過去の実績は、保守党のいう農村振興策なるものは、かなり場当り式であることと同時に、ごまかしを多く含めたものであることを物語っているのであります。だから、去る三月十二日の本院において、自民党の綱島議員が、本法案の質問に際して、「農村人口は全国の三九%を占めているにもかかわらず、その所得は一六%を下っているのであります。」と言わざるを得なくなっております。
 終戦後、わが党の片山内閣が農地解放を行なって、十年余がすでに過ぎ去ったのであります。旧自作農創設特別措置法による農地解放は、偉大な農村の近代化への第一歩でありましたが、これは、繁茂した旧時代の封建性の強い農村のジャングルを大きなブルドーザーで地ならしをして、明るい光とやわい風を近代的様式で大地にしみ込ませたのですが、それ以後、そこにまかれた種は、どうも育ちが悪いのです。灌漑する水が汚職に連なる腐れ水だから、根のよく発育しない毛根にとっては、政府の施策は毒水に似ているのです。肥料は、外国にダンピングする赤字埋めのために高く買わされるのだから、化学肥料の目方に、そこらの石ころの目方を足したものを通り相場として買っているようなものです。貧しいものは、よく、もっと光をと、明るさを求めるのですが、光と微風の中に原子核の放射能が多いのでは、農作物も人も育たないし、健康の維持もできないのです。軍事費は年々増額される傾向であるが、農漁村への投資は年々減少していくのが統計の指向線です。日本の農村は、やはり、不遇の地位から身をかわすことができないのでしょうか。
 一昨年、農林省は、農林白書を出し、五つの赤信号を明らかにしました。その五つのうちに、特に注目すべきは、農民層の中に上層、下層の分離作用が行われていることです。この流れ始めました傾向は、もちろん放任することは許されないのですが、さればといって、政府与党が毎度行なっている選挙対策程度の補助金制度や、十数年がかりの改良政策では、この傾向の流れはとどめ得ないでしょう。政府与党の行う三割農政は、三割の農民の地位の安定は強化されるでしょうが、残りの七割の農民は、その貧乏のために、土地の転売となり、一時は農地の細分化が起るのですが、やがては、その細分化された土地は富農層に吸収される運命にあるのです。その運命というのは、政府与党が農政の極秘と赤い判の押された本の中に書いてある筋書だから、当然といえば当然なわけです。政府は、そこをねらって、この法案を適当な時期なりと思って出されたのかもしれません。しかも、政府は、農民の個々が孤立していることによって、その勢力の維持の保てることを、よく知っているのでしょう。だから、農業団体の強大になることと、農民組合が方々でできることをおそれているのかもしれません。それよりも、農村指導においてのその土地の利用の共同化、その農具や機具などの共同管理、隣組やその部落の共同作業場の設置と共同作業、これなくして、近代産業の一工場の設立費が数億円を数えるのが通常であり、資本の投資と生産単位に懸隔のある今日、争ってみても、とても優位どころか、現状維持さえ困難なことは明らかであります。生産性向上云々と呼称しても、農民個々にとっては、まことに零細なる補助金、補償金などのごまかしでは農村は立ち行かぬ段階にきているのです。真に日本農業の発展を考えるものにとっては、かつての農政を、かなり高い姿勢で、かなりの規模において大変革を試みなければならないときにきたことを自覚しているはずです。これにこたえて、政府は、それがために農林漁業基本問題調査会設置法を出したのだということでしょう。しかし、これは多分に海のものとも山のものともつかない、有名無実のものにする工夫がなされているということが予定のコースでしょう。何といっても、農村が近代的になるときは、政府与党の諸君は、その立っている立場をわれわれに譲るときだからです。だから、それに対する押えをも含めまして本法案を出したのでしょう。
 旧地主の農地補償に関する法案とか、あるいは旧地主救済に関しての一部国家負担について、附則農地転売過当利得課税法などのかわりに、農地被買収者問題調査会とは、なかなか知恵の悪ずれした表現でございます。人のいい農民やわれわれは、まあまああの当時は気の毒なような気もしたのだから、何かを調べるというくらいはいいではないか、調査費の一千万円は高いが、調べて何もできないと学者先生から言われれば、あの人たちもあきらめるのだろうから、それであとくされがなくなれば一千万円も高くないと考えているのですが、しかし、問題は、いつもそういう工合には発展しないのです。
 憲法調査会は、憲法を改正するしないの調査よりも、改正するのだという前提で、米国より押しつけられの憲法だからということで、改正の理由の一つに数えたいのでしょう。わざわざその証拠探しにアメリカへ出かけていくという工合です。そうかと思うと、国民年金や社会保障の審議会の答申には、政府はあまりいい顔をしません。税制などもその例に漏れません。政府は、調査会、審議会によってその欺瞞性を隠そうとするが、反面に、これらを通じて、さまざまな事例をでっち上げて、自己の所信ともくろみを、調査会や審議会の第三者の発意の形で、国民に巧妙に発表するのです。
 先ごろの、本法案の審議に当って、松野総務長官は、わが党の高田議員の質問に、「私に対する御質問は、税金を取るか取らぬかという話でございますが、この法案は、税法でもございませんし、税金のことは一条も書いてございません」と、変にからんだ理屈の答弁をしたのですが、おかしなことです。この法案を出すのは、何も実情の調査というよりも、補償の名目でいけなければ、社会的な変革に伴い経済的な損失、安定を欠くような事態に対して何らかの処置、救済をするという岸総理の答弁を見ても、動かすべくもないのです。だから、そのときの救済費用の多寡によっては、国家の通常財源でまかなえるかどうかも問題になるでしょう。
 一ころの地主団体は、一反当り補償費十万円、そのための運動費として一反当り三百円の資金を出したこと等を思えば、これはかなりの額になることも想定されます。当然に、いやいやに売った田畑の一定以上の金額に対しては、地主補償の一部資金として課税対象にすると言い始めるでしょう。彼ら地主や政府の一部には、一種の正義感のごとくに、旧小作人の得た土地の売買の高値には悪罵に近い放言をしている事実を、われわれは知っているのですから、松野総務長官の答弁は、弁解の役には立ちません。
 また、政府は、この法案はどこまでも農地解放によって起きた地主の社会的、経済的実情の調査にあるというが、これは、農林省が昭和三十年に行なった臨時農業基本調査において、すでにその結果は明らかにされているのであります。旧地主層は、一般農民に比べ、はるかにその生活水準は高く、その経営内容も良好であることは、われら同僚議員より引例も指摘もされているので、再度ここでは述べることを避けますが、昭和三十年以後、農業界において大変革でもあるというならいざ知らず、政府与党は、自画自讃、経済は伸展し、その安定度は増し、国民生活は向上したと常々言っているが、それはうそなのでしょうか。農林省の統計調査部は、でたらめな仕事をやっているということでしょうか。
 今国会の内閣委員会で審査をしました各省の設置法十八、審議会、調査会等は十六ですが、この法案ほど、内容が膨大な補償金額を含み、しかも、現代を否定しがちな旧支配者を呼び戻すような邪悪に満ちた法案はないのであります。そして、今また与党の諸君から持ち出されているのが国民の祝祭日に関する審議会です。これは、祝祭日の検討に名をかりた、紀元節の復活のための審議会のようです。その次が栄典法ですが、これは国家に功労のあった者に勲章をというが、どうも、これも、名誉の金鶏勲章がないと、自衛隊は日本海のかなたへ進軍しないだろう、という思惑から持ち出されているようであります。
 これら前後を見回し、この法案の意図することの範囲を考えると、時代逆行もはなはだしいと思わざるを得ないのであります。常々、農村改革と農民生活の向上こそ日本経済の上昇と安定の一支柱だなどと、口を開けば言っていられる与党の農政通の方々も数多く見るのでありますが、風光明るく、新風の吹くべき農村に過去の幽霊を闊歩さすようなこの法案は当然に否決さるべしと信じて、私は反対討論をいたす次第でございます。(拍手)
○議長(加藤鐐五郎君) これにて討論は終局いたしました。
 採決いたします。本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○議長(加藤鐐五郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告の通り決しました。(拍手)
     ――――◇―――――
○松澤雄藏君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、この際、内閣提出、賠償等特殊債務処理特別会計法の一部を改正する法律案、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案、内閣提出、参議院送付、接収貴金属等の処理に関する法律案、右三案を一括議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
○議長(加藤鐐五郎君) 松澤君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
 賠償等特殊債務処理特別会計法の一部を改正する法律案、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案、接収貴金属等の処理に関する法律案、右三案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。大蔵委員長早川崇君。
    〔早川崇君登壇〕
○早川崇君 ただいま議題となりました三法律案について、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 まず、賠償等特殊債務処理特別会計法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 この法律案は、去る三月二日署名され、国会の承認を経るため、別途今国会に提出いたされました、日本国とカンボディアとの間の経済及び技術協力協定に基いて、総額十五億円の無償の経済及び技術援助をわが国がカンボディアに供与することになりましたので、右債務に関する政府の経理を賠償等特殊債務処理特別会計において行うことができることといたそうとするものであります。
 本案につきましては、審議の結果、本七日質疑を終了し、討論の通告がありませんので、直ちに採決いたしましたところ、起立多数をもって原案の通り可決いたしました。
 次に、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。
 本法案は、国際通貨基金及び国際復興開発銀行に対する出資額が増額されることとなるのに伴いまして、出資額に関する規定を改めるとともに、その増額により必要となる財源を確保するための措置を講じ、あわせて所要の規定の整備をはかろうとするものであります。
 すなわち、まず第一に、政府は、基金または銀行に対し、それぞれ二億五千万ドルまたは四億一千六百万ドルの追加出資を行うことができることといたしております。
 第二に、この追加出資額の払い込みの財源に充てるため、日本銀行所有の金地金のうち、大蔵大臣の指定するものについて、日本銀行にこれを再評価させ、これによって生じた再評価益金を全額国庫に納付することといたしております。
 第三に、昭和二十七年の加盟時における出資に当り、政府が日本銀行から帳簿価格で買い上げた金地金の買上価格と、その金地金を当時の金管理法の規定に基く価格により評価した場合の価額との差額は、買い上げがあったときにおいて国庫に納付すべきものとして、これに納付されたものといたしております。
 第四には、政府が国際通貨基金から外貨買い入れの取引を行うに当りまして、基金に対して円現金を支払うかわりに、無利子の交付国債によってこれを行うことができることとし、これに伴いまして、この国債の発行、買い戻し、償還等に関する所要の規定を設けております。
 本案は、慎重審議の結果、本日質疑を終了し、討論に入りましたところ、石野委員は社会党を代表して本案に反対する旨、また、足立委員は自由民主党を代表して本案に賛成する旨の討論を行いました。次いで、採決いたしましたところ、本案は起立多数をもって原案の通り可決いたしました。
 最後に、接収貴金属等の処理に関する法律案について申し上げます。
 この法案は、まず第一に、貴金属等を接収された者またはその所有者の返還請求の手続を定めており、第二に、接収貴金属等の返還の方法を定めており、第三に、返還される貴金属等について、国、公共企業体、地方公共団体及び日本銀行の所有にかかるものを除き、その価額の一割に相当する金額を国に納付させることといたしております。さらに第四に、接収された貴金属等のうち、交易営団、中央物資活用協会、金銀運営会、金属配給統制株式会社が政府の指示または委託に基いて回収あるいは買い入れたもの、及び軍需会社が軍需品の材料として旧軍または軍需省から買い入れたものはすべて国に帰属させるとともに、これらの者に対しては、貴金属等の取得の代金及びその手数料または加工費に相当する金額をそれぞれ交付することといたしております。第五に、接収貴金属等処理審議会及び臨時貴金属処理部の設置について規定し、第六に、国に帰属または返還された貴金属等で一般会計に所属するものは無償で貴金属特別会計の所属に移して管理することといたしております。
 以上が政府案のおもな内容でありますが、本案は参議院先議で、去る三月十日の参議院大蔵委員会において附帯決議を付して修正議決され、同十三日本会議において可決いたされました。修正の内容は、納付金が価額の一割とあったのを二割と改めたものであります。
 本法律案は、大蔵委員会に付託されて以来、慎重に審議を続けて参りましたが、本日、社会党の平岡忠次郎君外十三名提出の修正案が提案いたされました。
 修正案の内容は、第十六条の納付金について、接収貴金属に対する国民感情と憲法の財産権不可侵の原則との両者を彼此勘案して、二割を五割に修正しようとするものであります。
 次いで、質疑を終了し、討論に入りましたところ、石野委員は、社会党を代表して修正案に賛成し、原案に反対する旨、また、足立委員は、自由民主党を代表して賛成する旨の討論を行いました。次いで、採決いたしましたところ、修正案は起立少数をもって否決され、原案は起立多数をもって可決されました。
 なお、以上の各法律案に対する質疑応答の詳細につきましては会議録に譲ることといたします。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(加藤鐐五郎君) 接収貴金属等の処理に関する法律案につき討論の通告があります。これを許します。石野久男君。
    〔石野久男君登壇〕
○石野久男君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題になりました接収貴金属等の処理に関する法律案に断固として反対するものでございます。(拍手)
 本法案は、第十九国会以来五カ年間、すでに四回にわたって審議未了となった、いわくつきの法案でありまして、わが党は、占領軍によって接収された貴金属は、戦時中の供出貴金属と同様に、国の所有に帰せしめて、戦争で肉親を失い、今日なお生活の苦悩にあえいでおる遺家族や、または戦争の犠牲者に対して、これを社会保障の立場からその経費に充てるべきであるという主張を持ってきました。この法案が通過、確立いたしますると、戦時中に強制供出をしいられた多くの人々に対しては、何一つそれの見返りがない、あるいはまた、本人が買い戻しをしようとしてもでき得ないにもかかわらず、この法案のもとにおいて、法人としては約百四十八の法人が、また、個人としては同じく百数十の個人の方々が、それぞれ、法人は三十九億円、個人は二億円、それに、戦争中日銀が買い戻し条件付の金製品の買い上げをしておるものとして三億円の返還が行われるのであります。しかも、これらの法人あるいは個人は、戦争中、多くの人々が戦争に協力し、国に協力して、自分のはめておる指輪をはずし、あるいは、めがねの金ぶちまでも国家に供出していたときに、この人々は、多くの場合、その供出をしなかった人々であります。そういう人々が、戦後において占領軍が日本に来てから、その接収にかかったものとして、これらのものが取り上げられたのであります。政府の答弁によりましても、この四十四億円の中には、政府からそれに払い下げをしたようなものはないのだというようなことを言っておりますとすれば、それは、もとより、戦争中に供出すべかりしものであった貴金属であるといわなければなりません。このような諸君に対して、今こういうような大きな金額の返還が行われるということはどうしてもこれは国民感情の立場から納得のいかないところでありまして、社会党としては、絶対にこういうようなことは許さるべきでないと考え、われわれは反対するわけであります。(拍手)
 しかも、この三十九億の法人の諸君に対しては、会社によりますと、日本金属のごときは十二億四千五百万円の返還を受けるのであり、田中金属興業株式会社は三億五千三百万円の返還を受け、三菱電機株式会社は三億三千三百万円、東洋工機株式会社は三億二千四百万円、旭ダイヤモンド工業株式会社は二億八千六百万円の返還を受ける。また、個人としては、永井という方が一億六千百万円、江藤という方が三千万円、根岸という人が一千三百万円、その他多くの個人の人々がこの返還を受けるのであります。買い戻し条件付の金製品というもの三億円については、これは戦争中に日銀が買い上げたが、買い戻しの条件がついておるからというので、今これを戻すというのでありますが、戦争中に代金も受けずに供出しておる人々と、こういう買い戻しの条件がついておるから買い戻しができるのだということとを考え合せたときに、国民の諸君はこれを納得するでありましょうか。われわれは、これは絶対に納得できないことだと思うのであります。
 この法案が通過すると、一般には貴金属ブームがくるとさえいわれております。そういうようなうわさも立っておるほど膨大なる貴金属が市中に流れてくるのであります。しかも、こういう人々は、決して戦争のために大きな被害を受けて今日生活に苦しんでおる人々でない。これらの人々は、むしろ富裕者であります。政府が、戦争中にまじめにやった者に対しては何一つあたたかい思いやりをしないで、戦争中にはほとんど隠匿をしておった諸君に、こういうような大きな金額にわたるものを返還するということになりまするならば、正直者がばかを見て不正直者が得をするということをそのまま裏づけすることになってしまう。われわれは、絶対にこういうことを許すことはできないのであります。
 この法案の持つ内容の中で、特に私どもが反対をしなければならない考え方の第一点として、私は、この法案は、もうすでに戦争中に供出された貴金属と同様な扱いを受けるべきものであるという観点を持っておるからであります。一九四七年の極東委員会は、対日貿易十六原則の中で、金、銀その他の貴金属及び貴石、宝石のストックで明らかに日本の所有として立証されるものは、終局的には賠償物件として処理すべきものであるという、断定的なわれわれに対する通告を行なっており、規定されてきておるのであります。こういう建前からするならば、これらの貴金属というものは、当然に賠償物件として処理されなければいけない。そして、また、今日、私どもが、賠償問題はすべて解決しておるとするならば、これらの物件はすべて賠償の物件としてすでにもう処理済みのものであるという点を考えますと、たまたま、賠償の案件が成立されておらないために、こういう問題が出てきておるのでありまして、これらの観点からしても、この貴金属の取扱いは、国民の全般的な立場から見て、非常に重要な問題であるといわなければなりません。
 一九五一年六月十七日付のスキャッピンの七七四三―Aというものによって、日本大蔵省は接収貴金属の処理についての処置をしてよろしいという通告を受けております。しかし、それと同時に、その通告の後段においては、貴省はさらに平和条約の発効に伴って起ってくるであろうすべての関連事項の処理のために必要な準備をすることを認められるということが書きとめられておるのであります。このことの意味は、先ほど来言っておりまするように、平和条約の発効に伴って、これらの貴金属に関連するすべての問題に対する処理をすることを考えなければならない政府の立場があるのであって、それは同時に、いわゆる接収貴金属と、かつて供出された貴金属との間の関連性を考えなければならないのでありますが、そういう問題に全然考慮を払っていないのであります。政府のこの立場は、戦争中に多くの人々が無理やりに供出させられたものに対しては一顧だにしようとしない立場をとり、そうして、法人においては百四十数名、個人におきましても百数十名という、ごく少数の人々に対して、今日非常に高価な形に価格変動しております貴金属を返還しようというような立場をとることは、常に政府、自由民主党が少数の大資本家や大富裕者に対して奉仕する態度をとり、戦争によって痛苦を受けた多くの国民に対して同じような立場で臨まずして、ごく少数の人々を守る、許せない態度であると断ぜざるを得ない。(拍手)私たちは、こういう立場は、国民の立場から見て絶対に許せるものでないと信じております。私たちは、そういう立場からも、この法案に対して反対しなければなりません。
 特に、この法案の本質的なものとして、憲法で許された私有権を尊重しなければならないということを盛んに言っております。しかし、私有権を尊重しなければならないというならば、戦争中に供出した人々の私有権に対してはどういうふうな考えを持っているかということを、まずお尋ねしなければいけない。政府は、それに対して何一つ考えていない。また、今日返還するんだという法人の中には、当時軍管理の工場であり、あるいは軍の監督工場として、常に、陸軍や海軍あるいは軍需省から、あたたかい手当をもって守られておった会社が数多くあるのであります。その人々は、当時、ただのような値段で原材料としての貴金属を受けているはずであります。そういう問題についての調査が明確でありません。それにもかかわらず、これらのものをその法人や個人の所有だということに断ずるならば、その払い下げる物資そのものが、国民から供出された貴金属を混和状態に置いたものでありまして、溶解して一つの延べ棒にしてしまっているものである。そういうものであるとするならば、以前の所有者に対する、戦争中に供出した人々に対する配慮は、なぜ行われないか。憲法上の私有権をこの人々に対してなぜ尊重する立場をとってやらないかということを、われわれは主張しなければいけない。こういう立場からしても全く片手落ちであり、今日この接収貴金属の返還を受ける人々に対して、ごく少数の富裕者や法人に対して、政府あるいは自由民主党が不均衡な取扱いをするものであるといわなければならない。これらの観点から、かつていろいろうわさがありましたように、この接収貴金属の問題は、この法案が成立したときに莫大な政治献金が出てくるであろうというようなうわささえも出てくるのは、ゆえなしとしないのであります。私たちは、私有権を尊重しなければならないという主張の根拠はきわめて薄いものであり、それはごく少数の富裕者に対する主張であるとしか断ずることができないのであって、かかる点からいっても、この憲法の私有権尊重の論拠は、政府の所論も、また自民党の所論も成り立たないと断ずるのであります。
 また、この法案によりまして、閉鎖機関である法人に対して約十二億四千万円の貴金属の返還が行われるのであります。これはきわめて不明朗であります。また、理解のできないことであります。日銀の倉庫の中の暗い地下に眠っておるところの、しかも混和状態に置かれておるところのこの延べ棒、その所有が明らかでない、だれに帰属するかわからないようなものを、だれに、どのようにして返還しようとするのか。私は、こういうような問題がこの法案の中で認められているということは、どうしても、国民感情の立場からいっても、正当な、正義の立場からいっても、これは認めることはできないのであって、不明朗きわまるものであると断ぜざるを得ないのであります。
 本法の第二十条におきましては、交易公団等の接収貴金属等に関して特例を設けて、取得者の所有に属していたものであるかどうかを認定することを規定しておるのでありまするが、これは本法実施に当りまして非常に重要な条文であると私は思います。この条文の取扱い方いかんによりましては、ただいま申し上げましたような不均衡さが一そう不明朗なものとして輪をかけていくだろうと思うのでありまして、私どもは、軍需品の修理あるいは製造に従事していたところの、旧陸、海あるいは軍需省の庇護のもとに、これらの貴金属を国の所有として、ただ払い下げを受けた多くの製造工場や法人等に対しましての、その所有の帰趨を決するこの条文の取扱いは、国民の多くの人々が持つ疑惑を、あたかも、これによって目隠ししようとする、巧妙な案文であるとしか思えないのでありまして、私どもは、この法案が全体を通じて持つところの、ごく少数者の利益を守り抜こうとする自由民主党の考え方に対して、どうしても納得できないのであります。
 私は、この法案が成立いたしまするならば、法案の成立そのものによって問題は解決しましても、国民には納得できない多くの問題が出てくると思います。戦後、社会的にあるいは経済的に、正直者がばかを見る、不正直者、また陰険な人々がもうけるんだということが常識化されておりまするが、特に、戦争中、政府あるいは軍の要請に基いてまじめに供出した者は、何一つそれのお返しがないときに、ふまじめで、しかも、政府に協力しないで、そうして隠匿していた者が、戦争が終った後に、その隠匿物資であったものが占領軍によって接収されて、それが今日このようにして返されるということになりますると、戦争中のふまじめな者、非協力者が、今日政府と国会のあたたかい手によって守られるという、きわめて理解のできない事態が出てくるのでありまして、国民感情の立場からしましても、絶対にこれは認められないでありましょう。同時に、政治に対する国民の信頼はまさに地に落ちるにひとしきものが出てくるであろうと思うのであります。ひとり、接収貴金属の問題は、その所有のいかんを決するというだけの法案ではございません。この法案の中を貫くものは、国民の政治に対する信頼をいかにして確保するかという、その帰趨を決すべき、きわめて重要な内容が入っているものだと、われわれは信じております。
 それゆえに、私どもは、これらの接収貴金属は、さきにも申しましたように、戦争中に供出した貴金属と同様に、これを国が接収して一切を国の所有に帰せしめ、そして、それらのものは、多くの戦争の犠牲者や、今日貧困を訴えておる人々にこれを分ち与えるような処置をすべきが、最も妥当公正な処置であると信じております。だから、われわれは、委員会においても、憲法上認められておる私有権の問題は一応認めるという立場をとる、あるいはまた、参議院におけるところの修正の段階をも顧慮して、われわれは絶対に反対であるけれども、それでもなおかつ、多くの国民諸君のその感情にこたえるべき処置として、納付金の比率を二〇%から五〇%に上げることによって、自由民主党の諸君の協力をいただき、そして国会が国民からも信頼を失わないような処置を次善の策としてとろうと試みましたが、自由民主党の諸君は、それに対して協力をしてくれない。われわれは、きわめて残念だと思っております。おそらく、国民諸君は、この自由民主党の態度に対して疑義を差しはさむであろうと信じております。
 いろいろな善意のある処置を国会がとるべきであるにもかかわらず、牢固として政府の原案を守り、あるいはまた、わずかばかりのごまかしによってこの少数者を守り抜こうとする、自由民主党の魂胆を貫き通そうとするこの法案に対しては、絶対に日本社会党は賛成できないのである。また、国民の多くの人々も、その国民的感情の立場から、これは賛成し得ないであろうということをここに申し上げて、私は本法案に対する反対討論を終ります。(拍手)
○議長(加藤鐐五郎君) これにて討論は終局いたしました。
 三案を一括して採決いたします。三案の委員長の報告はいずれも可決であります。三案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○議長(加藤鐐五郎君) 起立多数。よって、三案とも委員長報告の通り可決いたしました。
    ―――――――――――――
○議長(加藤鐐五郎君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後四時二分散会