第031回国会 予算委員会 第3号
昭和三十四年二月三日(火曜日)
    午前十時四十四分開議
 出席委員
   委員長 楢橋  渡君
   理事 植木庚子郎君 理事 小川 半次君
   理事 重政 誠之君 理事 西村 直己君
   理事 野田 卯一君 理事 井手 以誠君
   理事 小平  忠君 理事 田中織之進君
      井出一太郎君    小澤佐重喜君
      大平 正芳君    岡本  茂君
      川崎 秀二君    上林山榮吉君
      北澤 直吉君    久野 忠治君
      小坂善太郎君    篠田 弘作君
      周東 英雄君    田中伊三次君
      田村  元君    綱島 正興君
      床次 徳二君    中曽根康弘君
      船田  中君    保利  茂君
      水田三喜男君    八木 一郎君
      山口六郎次君    山崎  巖君
    早稻田柳右エ門君    阿部 五郎君
      淡谷 悠藏君    石村 英雄君
      今澄  勇君    岡  良一君
      加藤 勘十君    北山 愛郎君
      黒田 寿男君    佐々木良作君
      島上善五郎君    楯 兼次郎君
      中崎  敏君    成田 知巳君
      西村 榮一君
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  岸  信介君
        法 務 大 臣 愛知 揆一君
        外 務 大 臣 藤山愛一郎君
        大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君
        文 部 大 臣 橋本 龍伍君
        厚 生 大 臣 坂田 道太君
        農 林 大 臣 三浦 一雄君
        通商産業大臣  高碕達之助君
        運 輸 大 臣 永野  護君
        郵 政 大 臣 寺尾  豊君
        労 働 大 臣 倉石 忠雄君
        建 設 大 臣 遠藤 三郎君
        国 務 大 臣 青木  正君
        国 務 大 臣 伊能繁次郎君
        国 務 大 臣 世耕 弘一君
       国 務 大 臣 山口喜久一郎君
 出席政府委員
        内閣官房長官  赤城 宗徳君
        内閣官房副長官 鈴木 俊一君
        法制局長官   林  修三君
        大蔵事務官
        (主計局長)  石原 周夫君
 委員外の出席者
        専  門  員 岡林 清英君
    ―――――――――――――
二月三日
 委員勝間田清一君及び中崎敏君辞任につき、そ
 の補欠として楯兼次郎君及び岡田春夫君が議長
 の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
二月三日
 昭和三十四年度一般会計予算補正(第1号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 昭和三十四年度一般会計予算
 昭和三十四年度特別会計予算
 昭和三十四年度政府関係機関予算
     ――――◇―――――
○楢橋委員長 これより会議を開きます。
 この際閣僚及び政府委員に申し上げますが、閣僚及び政府委員の出席がおそいため、本委員会の審査に及ぼす影響の大なるものがあると存じます。本委員会への出席はすみやかにされるように委員長より特に注意を申し上げる次第であります。
 昭和三十四年度一般会計予算、昭和三十四年度特別会計予算、昭和三十四年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。質疑を続行いたします。中崎敏君。
○中崎委員 私は日本社会党を代表しまして、国政全般に対し総括的に総理大臣以下の閣僚に対して質疑を試みんとするものであります。
 まず民主主義を行う上において議会政治が行われるということは、これは議論の余地のないところであります。ただ二大政党論に対しましては、私としてはいささか問題を持っておるものであります。すなわち、二大政党が行われるがためには、まず第一に責任政治が確立されなければなりません。それと同時に、憲政の常道が成り立たなければならぬと思います。すなわち、まず責任政治が明らかにされない限りにおきまして、そうしてまた憲政の常道が確立されない場合におきましては、政治の紛淆を来たすものでありまして、決して議会政治が円滑に運営されるものでないと思うのであります。そういう点につきまして、現在の段階においては責任政治が十分に確立されていないという点についてお尋ねしたいと思うのでございますが、まず第一に、総理大臣は、自由民主党がかりに行き詰まりを来たしても、次の内閣を反対党であるところの社会党に渡すということについて、確たる回答をなされないのであります。いやしくも二大政党をもって云々するからには、一方の政党が政治的に行き詰まりを来たした場合において、他の政党に政権を渡すことは当然のことでなければならぬと思うのであります。それが先般におけるところの警職法の場合においても、これはつまり政治的生命をかけてこの問題の強行突破をはかられようとしたのでございます。ところが、その政治的生命をかけたところのその問題が行き詰まりを来たしたのにもかかわらず、何らこれに対するところの政治的責任を感じられない、こういうところにまず問題があると思うのでありまして、将来政治的責任をどういうふうな場合において感ずべきものであるかということをまずここで明らかにしてもらいたいと思うのであります。
○岸国務大臣 民主政治を完成するための議会政治の上からいって、二大政党論が望ましい形であるということを私はかねて言っております。これは今中崎委員のお話のように、一方においては責任を明らかにし、一つの、政権を担当しておる政党が政治的責任を負わなければならないような政治的の行き詰まりを生じた場合において、当然野党たる他の反対党がかわって政権を担当するということは、これは私は憲政の常道であると思う。しこうしていかなる場合にいかなる責任をとるかという問題に関しましては、結局は、これは主権者たる国民の判断に求めなければならぬ。あるいは総選挙によって国民の最高の意思を聞くという場合もありましょう。また国会におけるところの不信任決議なりあるいは信任決議等によってその内閣の責任を明らかにするということもあろうと思います。さらにいろいろな事態においてこれは具体的に考えるべき問題であって、根本の理念として、責任を明らかにし、そして政権の移動というものを二大政党によって交互にやっていくということは、私は憲政の常道であり根本である、かように考えております。
○中崎委員 そこで二大政党論に入るわけでございますが、総理大臣は先般の本会議におきまして、社会党が階級政党論を唱えることについてかれこれの意見を発言されたのであります。ところが社会党は御承知の通りに、労働階級を中核体とするところの、広範な勤労大衆をもって組織するところの国民的な、大衆的な階級政党でございまして、政治の実際をわきまえないところの学者の意見にかりにそういうものがあったとしても、これは社会党の性格そのものを決定する何らの力を持つものではないのであります。従いまして、社会党の持っておるところの綱領と主張の上に立って、われわれは終始政治活動を続けておるものでありまして、これに対しまして、私が言わんとするところのものは、自由民主党は資本家階級を中核とするところの政党である。むしろそうした階級の利益をはかるということを第一義とする政党であるということを言いたいと思うのであります。それはすなわち、まず第一に政治が大衆のために、また大衆を本位にして行われるべきものであるにかかわらず、そうしたところの資本家階級を背景とするところの性格を持った政党であるがゆうに、ややもすれば大衆の利益を犠牲にするところの政治が行われておる。また行われる傾向になるということが言えると思うのでありますが、この点について総理はどういうふうにお考えになるか、お尋ねしたいのであります。
○岸国務大臣 民主政治の完成のための二大政党というものは、それはその政策、綱領として社会主義を根本に考える考え方もございましょうし、あるいは資本主義の立場に立って考える考え方もありましょうし、いろいろなそういう考え方はありますが、民主政治を行うには、両党のいずれもが、いわゆる国民の各層を代表するところの国民政党の性格を持つべきことは、私は二大政党ともそうなければならぬと思います。そこに初めて、国民を代表して一方の政党が政権を担当し、これが行き詰まれば他の政党がこれにかわる。掲げておるところの政策はおのおの違っておるだろうけれども、政党の性格そのものは、二大政党ともに国民的基盤の上に立って、国民の各層を代表するものでなければならぬことは、私は民主政治の根底からいって二大政党ともそうでなければならぬと思います。私はそのことを強く言っておるわけであります。
    ―――――――――――――
○楢橋委員長 ただいま英国前大蔵大臣ピーター・ソー二ークロフト氏外三名の方が傍聴席にお見えになっております。この際御紹介を申し上げます。
 前英国大蔵大臣ピーター・ソー二ークロフト氏。
    〔拍手〕
 インド国会上院副議長クリシュナムルティ・ラオ氏。
    〔拍手〕
 マドラス州下院議長クリシュナ・ラオ氏。
    〔拍手〕
 インド臨時代理大使ヘジマジ氏。
    〔拍手〕
    ―――――――――――――
○中崎委員 そこで問題は、政党が政治を行う上において、その背後に立つところの団体の力というものが非常に重要だと思います。すなわち自由民主党の場合においては、いわゆる経団連あるいは日経連というふうな、大きなる資本家階級を中心とするところの団体が一つの圧力団体であるというふうに考えられておるわけでございます。すなわち、この圧力団体が国の政治を行う上において一つの大きなる力となっておるということを意味するものだと思うのであります。すなわち、これは戦争前における三井、三菱のごとき財閥が天下の政治を動かしておった、それがすなわち、今日においてはこうしたような団体に変って、これが大きなる圧力を加えて、それが国政の上に一つの大きなる力となっておる、こういうことを見のがすことはできぬと思うのでございますが、この点はいかがですか。
○岸国務大臣 国内にいろいろな団体がありまして、それがおのおの、その団体の利益なりあるいは団体が考えておる考えを実現しようとしていろいろな政党に働きかけるということは、世界のどこにもあることであります。ただ、今おあげになりました諸団体が自由民主党に対する圧力団体であり、何か自民党がそれの言いなりに動いておるというような意味において御発言があったと思いますが、そういう事実は絶対ありません。その点は、少くとも総評と社会党との関係のごとき関係は、われわれと経団連や日経連との間にはないと思います。その点は私は明確に申し上げていい。ということは、総評の方においては、総評の公認の人が社会党の公認となっておりますが、こういうような関係は、日経連や経団連と自民党との間には全然ないのでありまして、そういう点は非常に違っておる、私はかように思っております。
○中崎委員 それではお尋ねいたします。とにかくこれから先だんだん進んでいきますが、金のかかる政治、金力政治、権力政治、そうしたところに金がかかるのは、一体どこから金が出てくるのか、これが問題だと思うのでありますが、それは後にだんだん議論をしていきますけれども、いずれにしても、ただ経団連は公認候補を立てるとか立てないとか、あるいは推薦するとかしないとか、こういうような形式上の問題ではないのであります。政治の裏において、この大きなる資本家のその金が、またその政治的な力が自由民主党の上に反映して、これがまた国政の上に反映しておるという、それが問題だと思うのであります。たとえば選挙の場合におきましても、なるほど社会党は労働組合の協力を得ております。それはわずかの浄財を、一人が十円、二十円、五十円のこの浄財を隻められて、そうしてきれいなるところの金が使われて選挙が行われておるのであります。自由民主党の場合においては決してそうではなくして、結局大きなるところの財的背景の上に立って、あるいは政党直接に、あるいはまた個個の派閥をなしておるところのそういう人たちの上に金が回されておる。ここに問題があると思うのであります。でありますから、こうしたところの政治の根源をつく――こういう財閥の人たちが、また大きなる資本家の人たちが、そうした金を何がゆえに出すのか、ここに問題があると思うのであります。これらの点についてまず私たちが言おうとするところは、自由民主党は資本家階級の利益の擁護の上に立ったところの政党であり、社会党は労働者を中心とするところの、中小企業者あるいは農民あるいは漁民、こうしたような勤労階級の基盤の上に立つところの政党であるというところに、その成り立ちの違いがあるということを断定せざるを得ないのであります。この点についてもう一度総理からの説明を求めます。
○岸国務大臣 これはたびたび行われておる各選挙の結果をごらん下さると、今中崎委員のお話と実際とは違っておる。私は、民主政治におきましては主権者は国民である、その国民がその主権を行うのは、投票において自分の支持するところの政党に対して投票をすることによってこれが行われておるというのが、民主政治のあり方だと思うのであります。しこうして、今お話のように、われわれが資本家階級と称するところの限られたる階級の支持とその利益を追求するものであって、他の国民大衆の支持を受けるものではないというふうな論断は、選挙の結果をごらん下さればそうでないということがきわめて明瞭であると思います。
○中崎委員 総理大臣の発言は少し誤解があるのではないかと思う。私は大衆の支持を得ないということを決して言っておるのではありません。自由民主党は大衆の支持を得てないとは決して申しません。言いかえれば投票の結果においても現われておるのでありますが、そうしたところのその投票の数というものは、どうしてそういうふうに集まったのかというところに問題があると思います。でありますからこの点についてはもうかれこれ申しませんが、いずれにいたしましてもこの政党の成り立ちというものは、根本的にそこに相違があるということだけははっきり申し上げることができると思うのであります。
 さて今度は責任の問題にもう一度移るのでありますが、今総理は、内閣は不信任によって総辞職するか、あるいはまた国会の解散によってその内閣を作るか、二つの道があるということを言われましたが、そのほかにもう一つあるのではないかと思うのであります。すなわちこれは片山内閣のときにおきまして、御承知の通りに、補正予算が国会に提案されました。年末のわずか〇・四カ月分の手当を国家公務員に出すという、こういう予算案でありました。ところがこれが予算委員会において否決されたわけであります。ところでこの際におきまして、事はわずか補正予算の年末手当を出すか出さぬかというところのささたる問題でありましたけれども、これが否決されたということによって――不信任案の可決がされたわけではありません、また解散をされたわけではありません、ただ当時の片山総理大臣といたしましては、いやしくも自分の党の内部に不統一の問題が起った、そして国会において補正予算案が否決されたということは自分の政治的責任である、自分は政治的責任を感ずるがゆえにいさぎよくその責任を明らかにして総辞職するということでやめられました。当時マッカーサー元帥といたしましては、片山内閣は実に良心的で愛国的内閣であるということを言ったことがあります。ところで要するに、政治責任というものはそのくらいにして初めて国民に対するところの政治であるということを、国民に対して明らかにするものだと考えておるわけであります。たとえば解散によるとかあるいはまた総辞職によるとかいうことが普通の場合でありましょうけれども、いやしくも自分のやっておるところのその政策が重大な政策である、これがうまくいかなかったというふうな場合、あるいは国民から著しく信頼を失ったという場合においては、当然みずから責任を明らかにすべき場合もあり得るということを考えていいのではないかと思うのでありますが、この点についてどうお考えになりますか。
○岸国務大臣 私は先ほど申し上げましたように、一つの内閣の政策が、行き詰まって、これはもちろんそれによって最後の政治的責任を明らかにする、責任の地位から去るということをしなければならぬという場合において、意見が違っておる場合においては、第一段に事いては国会の意思を聞き、さらに第二段においては、最後の何としては国民の判決を聞くということが、私は最も民主政治においての責任を明確にする方法である、かように信じております。
○中崎委員 岸総理は内閣は運託生のものであるということをお考えになるかどうか、お尋ねしたいのであります。
○岸国務大臣 今のお話の運託生ということは、私よく意味がわからないのでありますが、内閣は内閣全体としての政策が行き詰まった場合において、内閣が全体の責任を負うことは当然であります。しかし各国務大臣として大臣ごとに責任を負うという場合もありましょうし、従ってそれは具体的の事例がないというと抽象的には言えないと思うのであります。
○中崎委員 先般あなたの内閣の閣僚の中で、有力なる閣僚五名がたもとを連ねてやめたことがあります。これに対しましてはいわゆる閣内の不統一といいますか、当然総理大臣としての責任を感ずべきだと思いますが、この点いかがですか。
○岸国務大臣 それは全然私は違うと思います。今の内閣制度におきましては、総理大臣は閣僚を任命し、あるいは必要ある場合においては罷免することもできることになっております。従って内閣閣僚の一部においてやめるということをしたからといって、直ちに内閣全体が責任を負うという性質のものではないと思います。
○中崎委員 先般刷新懇話会の声明によりますと、金権政治と権力政治を排し、金のかからぬ政治と国民とともに行く政治のために投ぜられた百六十六という票数の意義を、岸総裁が真剣に翫味されんことを要望してやまないという声明書を出しております。これはすなわち三人のあの閣僚の引き揚げとも関連し、同時にこの党内三分の一のこうした勢力というものが、あなたの政治のあり方について強い批判をしておると見なければならぬのでありますが、岸総理はこれに対してどういうふうにお考えになりますか。
○岸国務大臣 民主政治が金のかからぬ政治を望み、国民と常にともにある政治であるべきことは、私は民主政治の本質であると思います。従いましてそういう考え方が党内にあることは、わが党が民主政治を考えている以上当然のことでありまして、私は、それが百大十六人だけがそう考えているのじゃないので、わが党のおそらく四百何人のすべての人がそう考えておると思っております。
○中崎委員 それはあなたの過去のやり方、またあなたの考え方に対する強い批判である――あなたに強い反省を要求しているものであるということをお考えになりませんか。
○岸国務大臣 いかなる場合におきましても、総裁なり党の首悩者は、党員の意見というものは常に謙虚に聞き、また私はそういう論議が活発に行われることが、その党におけるところの常に反省と向上をもたらすゆえんだ、こう考えておりまして、きわめて謙虚な気持で私は言葉を聞いております。
○中崎委員 あなたが金権政治家であり、同時に権力政治家であるということを暗示したものであると思うのでありますが、この点はいかがでありますか。
○岸国務大臣 私はそういう私自身が金権政治や権力政治をやっておるものとは絶対に考えておりません。
○中崎委員 一昨年の三月、自民党の総裁の選挙の際においてあなたが立候補されました。当時あなたの陣営で使われた金が数億に上るということが伝えられておったのであります。そうしてしかも議員の買収がされたという事実があなたの党員の中からすでに発言がされて、これが問題になっておるということが伝えられておるのでございます。これが処罰を受けたとか受けないとかいうことも言われておるのでありますが、この点についてどういうふうにお考えになるかということをお尋ねしたいのであります。
○岸国務大臣 今おあげになりましたような事実は、私は責任を持って絶対にそういうことはないということを、この機会において明確に申し上げておきます。
○中崎委員 もしそうであるならば、あなたの名誉を害し、そうしてあなたの党を傷つける結果になるのでありますが、これが事実であるならば、これは何をかいわんであります。もし事実でないとするならば、それについて何らかの処置をとられるということが、やはり政治の責任を明らかにするゆえんであると思いますが、これはどういうふうにお考えになりますか。
○岸国務大臣 これは党内において党紀の問題としてわが党においてそれぞれの組織においてその審査をいたしております。
○中崎委員 それは一方には党内の問題であるでしょう。けれども、同時に一国の総理大臣の行為に関するところの問題であります。これをわれわれ国民としてもこのまま見のがすことができぬと考えるのでございますが、この点について何らかの措置をさらに考えられるかどうかということをお尋ねしたいのであります。
○岸国務大臣 先ほどお答え申し上げました通りで、そういう事実は絶対にございませんし、また党員として党内におきましては、それぞれの機関においてこれを審査いたしております。これで十分であると思っております。
○中崎委員 あなたが幹事長の時分に、江川の電源開発の問題が起ったのであります。当時、国の方針といたしまして、この陰陽をつなぐところの最も平坦線である三江線の貫通ということがすでに決定されて、工事も着々と進んでおりました。ところが、その電源開発の問題が起るや、あなたは、その後総理になってから工事の中止を命ぜられたのであります。ところが、これに対しまして、某電力会社が暗躍いたしまして、国費によるこの電源開発を強く働きかけたようであります。それがために、もしダムと鉄道と両立させるということになれば、その鉄道の工事は、山に非常に高く登っていく関係がありまして、五十億近いところの工費がよけいにかかるというのであります。もしそうであるとするならば、九万キロ程度のものに対してそれだけ莫大な費用をかけ、そうして今度電力のコストは一体どうなるか、あるいはまた、この鉄道が高いところに登る関係で、維持費もかかる、そうしてこれが赤字採算になること、またこの工事を強行することによって、八百数十戸の水没家屋ができるわけでありまして、おそらく日本の工事史上未曽有の水没家屋を出すという結果になるのでありますが、こういう無理があるがゆえに、運輸省といたしましても当初反対の態度をとっておったようであります。ところが、永野運輸大臣になってから、この両立論に何だか踏み切ったとかいうことで、今調査が進められておるようでありますが、それに対して、問題となりまするのは、相当巨額の金が、その当時におけるところの総裁選挙のときに、あなたの陣営にも流れておるということが伝えられておるのであります。
 そこで尋ねたいのは、こういう無理までして強行しなければならぬというところの理由というものについて、運輸大臣に尋ね、そうして総理大臣については、そういうふうな金がその後においても選挙のたびごとに多く流れておるということも伝えられておるのでありますが、その点について、一つ明らかにしていただきたいと思うのであります。
○岸国務大臣 この江川の問題は、中崎委員もよく御承知のように、両方を技術的に両立せしむることが可能であるかどうか、また、それによって、今お話のように、電源の開発をしてコストがどうなるか、あらゆる面から関係者及び専門技術者の十分な検討をする必要があるということで、検討をされておることは事実であります。しかしながら、これに関連して、電源の会社やその他から、われわれ、ことに私に対して多額の金が流されておるというようなことは、事実をしいるもはなはだしいものである。絶対にそんなことはございません。
○永野国務大臣 三江線の問題についてお答えいたします。三江線の建設計画はずっと古くからできておるのでありまして、三次、江津の間の工事は両端から実行に移っておるのであります。三十一年に通産省の方から江川の電源開発という問題が起りまして、自来両方の設計を進めて参ったのでありますが、研究の結果、発電の方に重点を置きますと、鉄道の方の建設が、不可能ではありませんけれども、ほとんど不可能に近い程度大きな負担をかけることになり、また、鉄道を従来の計画通りやるといたしますと、発電の方に非常に大きな変化を起さなければならないという二者択一的な場面に追い込まれまして、問題が非常に大きいので、昨年の八月、通産省、経済企画庁――運輸省はもちろんでありますが、幹部がそろって現地に参ったのであります。そうしていろいろ現地について実情を検討いたしましたところ、今まで考えられておりました設計の基礎になる数字になお十分検討しなければならぬ点をいろいろ発見いたしたのであります。そうして、今百十五メートルのダムを作る設計をしておるのでありますが、それを百十メートルに下げますとある程度の電源開発も考えられ、同時に、鉄道の計画もあまり大きな支障を受けないでできるかもしれぬという両方の見込みが十分立ちましたので、今百十五メートルのダムを百十メートルに切り下げることによって、果してどちらが利益であるか国家全体として考え、また地方民の利害を考えまして、その建設資金とその効率を検討中であります。その数字をきめますためにいろいろな調査が要るのでありますが、地元民の協力を得にくいような事情もありまして時間が非常にかかっておりますことは遺憾でありますけれども、なお一生懸命にその調査は継続しております。しかし、いずれにいたしましても、一番悪い場合が両立なんでありまして、従来の三江線計画を放擲するということは決してございません。今地盤だけできております式敷までの鉄道建設は、おそくも来年の春には着工いたしまして、秋には口羽まで鉄道を開設せしめ得る予定のもとに進めております。
○中崎委員 ただいま岸さんは、そういうことは絶対にないと言い切られましたけれども、当時の地方の新聞には一億円の金が流れているということが書いてありましたり、そのほか地方で、何がゆえにこう無理までしてやらなければならぬかということについて、非常に疑念を持っておる節が多々あるということを申し上げておきたいと思うのであります。
 次に、かつて岸さんが約束されましたところのいわゆる三悪の追放についてお尋ねしたいのでありますが、そのうちで暴力の追放ということは、これは非常に大きな意義を持つものと思うのであります。まず私は、暴力の中で一番大きいものは、力の政治、権道政治、国家権力の乱用によるところのそれであるというふうに考えるのであります。すなわち、これには民主主義の敵であるということが言えると思うのでございますが、この点について岸総理はどういうようにお考えになるかお尋ねしたい。
○岸国務大臣 暴力の追放につきましては、私はあらゆる暴力というものを民主政治の敵だと考えております。小さいところは町におけるチンピラの暴力もこれを排除しなければなりませんし、それが集団的な暴力になる場合においては、もちろんこれに対してこれを取り締って、そうして多数国民の安静な平和な生活を守らなければなりません。もちろん、これをなくしていく上においては、一面において法秩序を守ることを強く要望するとともに、私はあらゆる政治におきましても、国民の多数の人々の人権を保護し、その平和な生活を保護するに必要な施設や、あらゆる政治面において努力すべきことは当然であると思っております。
○中崎委員 李承晩大統領は、去る一月十五日から実施された改正国家保安法、改正地方自治法の国会審議に当りまして、にわか仕込の拳闘や柔道の衛視に命令して、反対党の議員を一人一人議場外に引きずりおろして、地下室や廊下に監禁して、与党議員だけで、その二十ばかりの法案と、それから予算案を強行突破したということが伝えられておるのであります。日本におきましても、過般の警職法の提案の前後の状況を見てみると、ややこれに似通ったような状況だというふうに考えるのでありますが、岸さんどういうふうにこれをお考えになりますか。
○岸国務大臣 私は根本的に違っておると思います。韓国のことは他国のこととして、私はここで批判を避けますけれども、私が警職法を提案し、これが十分の審議を通じて、国民に理解、納得を得ようといったことは、あの国会において私はしばしば言い、また私自身もそれに努力をしたのであります。ただ遺憾なことは、なるほどその提出の方法や時期等において十分慎重を欠いたということは、率直にこれは認めます。しかしながら国会の議事におきまして、あの当時とられた社会党の態度というものについては、社会党自身においても私は反省していただきたい。私はすべてこういう問題については十分国会を通じて審議をし、審議の時間が足りなければ、これを延長しても十分審議をして、国民に最後の批判を求める、この案に反対であるという理由でもって審議そのものをさせないような方法というものは、私は国会の正常なる運営の面において望ましいものではない、かように考えます。
○中崎委員 私の見るところによりますと、朝鮮のその場合と違うところは、野党議員を議場から引きずりおろして監禁しなかったということ、そのかわりにだまし打ちをして、副議長にこの会期延長のサル芝居をやらした、これだけがせめてもの違いだというふうに考えるのでありますが、いかがですか。もう一度お尋ねいたします。
○岸国務大臣 私は韓国で反対党の議員を議場から拉致したかどうか、それは、知りませんが、当時の状況はむしろ日本は逆であって、違っておるとするならば、反対党の方でこの審議をさせないために議場を占領しておるというような事態があったことは、私、非常に遺憾だと思います。
○中崎委員 議場のあれほど無理な、いわゆる数の暴力をもってしてこれに対する何ら反省なくして、かえって与党に対するところのあの平静な、それが議場に入るというまわりに持っていって一ぱいに集まっておるというくらいなことは、これは朝飯前の当然なことだと思う。せめてその程度のことで議事が進むということは、あの乱暴な総理のやり方に対して、それはむしろ恕すべきだというように考えるのであります。こういう意味合いにおきまして、むしろあのだまし打ち的な行動というものが、よほど民主政治、議会政治のりっぱな運営を阻害しておるものであるということをもう一度確認してもらいたいと思うのであります。
○岸国務大臣 臨時国会の議事の運営につきましては、鈴木委員長と私とは、率直にあの当時の状況をお互いに反省し合って、将来ああいう事態を再び繰り返さないために率直な話し合いで申し合せをしたことは御承知の通りであります。われわれはあくまでも規則あるいは慣行や、あるいは話し合い、申し合せというものを尊重して、そうして議長の権威を高めて、議場をあくまでも審議の場として、ああいうことを繰り返さないようにということを申し合せたことは御承知の通りであります。私は与党として反省すべきことはもちろん反省するにやぶさかでございません。しかしながら同時に野党に飼いても、私は同様に神聖なる議場を真に審議の場としてわれわれが論議を尽すというふうに、一つ与野党ともに十分に戒心すべきものである、かように考えます。
○中崎委員 岸政権ができてからというものは、青少年の非行、凶悪、残酷な犯罪等が続々と出て参りますし、一般の人間にしても、殺人、強盗など凶悪犯罪が実に目立って参っております。労働組合に対しましても計画的に弾圧政策を実行して、党利党略に終始するというふうな関係もありまして、最近におけるところの国民の考え方というものの中に少しも落ちつきがないように考えておるのであります。これは明らかに権力によるところの政治であり、力によるところの政治がそうしたのではないかということについて、岸さんは少し反省される余地があるかどうかということをお尋ねしたいのであります。
○岸国務大臣 私は、もちろん私の政治が万全であるということは考えておりませんで、常に反省もし、謙虚な意味におきましていろいろな方面の世論に耳を傾けることに努めております。しかしながら最近の社会状態を見ますと、この民主政治のもとにおいて、自分たちの主張を通すために集団の力をもって、いわゆる民主的な議会政治というものによってその意見なりその考えを実現しようとせずして、実力行使という名前のもとにこれを実現しようとすることは、私は民主政治の上から非常に望ましくないことであり、社会不安を与えておる大きな原因がそこにあるように思うのであります。
○中崎委員 私がお尋ねしておるもう一つの点は、青少年がことにここ一、二年来、岸さんが政権をとられるようになってから、非常に程度を越えたような姿になっておること、さらに一般の場合においても、切った、張った、殺したというのが毎日三面記事をにぎわしておる。これはわれわれが覚えてから、ほとんど前例のないというくらいな激しい姿になっておる。これは一体どういうわけかということを反省される必要がないかということをお尋ねするのであります。
○岸国務大臣 青少年の非常な非行化、犯罪等が多いということに対しましては、私自身も非常に憂えておるものであります。しかしそれが特に岸内閣になってから多いとか、岸内閣の政治からこうきておるという簡単な問題ではないと私は思います。これは戦争後における世界の大勢を見ましても、こういう青少年の犯罪が非常に多くて、そして残虐になっておるという傾向がございます。私は日本の将来を背負うべき青少年に対して、一方からいうと、これらの人々が希望を持ち、また生活環境をよくしてそういうものを未然に防ぐようにするとともに、今の少年保護法やあるいは警察官の職務執行等におきまして、そういう非常な危険のある場合にすぐ事前にこれに対して適当な措置をとるような法制がまだできておらないところにも欠陥があるように思います。いずれにいたしましても、これは憂うべき傾向であり、十分に一つ意を用いていきたいと思います。中崎委員は、ただこれを岸内閣の云々というようにお話しになりましたが、私は事実はそういう簡単な問題ではないと思います。
○中崎委員 これは岸総理の驚いた認識でありますが、とにかくいずれにしても、ここ一、二年来ことに目立って今のような凶悪な犯罪あるいは社会思想というものが非常に悪化してきておる、道義も著しく頽廃してきておる、汚職についても次から次へと半ば大っぴらでこれをやられておるという状態、ますますそれはひどくなっておるという事実を岸総理はもう少し謙虚な気持で一つ検討してみられる必要があるのではないか。今のような認識で、自分の政権になってからそんなことはないんだというふうに君えられておるのは、国民の実際に当面しておるところの現実とは違った認識である、こう思うのでありますが、もう一度それを明らかにしていただきたい。
○岸国務大臣 十分に青少年が希望を持ち、そういう犯罪等の残虐な行為のないようにあらゆる面から努力をしていきたいと思います。
○中崎委員 総理は過般の本会議における演説の中で、低所得階層の生活は一般水準との開きがだんだん大きくなった、こう言っておられます。確かにこうした階級の量と質とが相当に低下しておるという事実をわれわれは見のがすことができないと思うのであります。厚生白書によりますと、保護基準を標準にしてみて、この低所得階層が約一千万人もいる。その大部分は、零細自営業者、零細農家、低賃金労働者が約八百万、そして約四百万が日雇いあるいは内職者、完全失業者であるというふうに指摘されておるのであります。これらの人はほとんど食うか食わずの生活状態だと思うのであります。すなわち国民のうちの八分の一をこえるところの人たちはこういう生活にあえいでおる。岸総理は福祉国家を唱えておりますが、その陰においてこれだけ多くの国民がその生活にあえいでおる、こういう姿というものは政治の上に何らか考えなければならぬことがあるのではないかと思うのでありますが、貧乏追放ということを公約する岸内閣の手において、これだけの者が依然としてというよりも、むしろだんだんふえてきつつあるというこの事態をどういうふうにお考えになっているか。
○岸国務大臣 お話の通り、最近において経済の復興が着々行われておりますが、その反面において低所得階級の状態というものは、私はこのまま見過ごすことのできない状態である。このためには社会保障制度の完備によってこれらの人々に対してあたたかい手を伸べるということが国の政治のあり方であろう。たとえば低賃金の問題にしても、特に中小企業や零細企業でそういう傾向がありますから、われわれは最低賃金法の制定を国会に提案をいたしておるのであります。どうか社会党におかれましてもいろいろな御議論があるようでありますが、こういうものを一日も早く成立せしめて、これらの低賃金層の生活を安定せしめ、向上せしめることに御協力を願いたいと思います。さらに国民皆保険の実施やあるいは国民年金の問題やあるいは失業者に対する手当やあるいは生活保護等に関しまして、財政が許す限り増額していくというような方法によりまして、これらの人々に対してもできるだけのあたたかい手を伸べていきたい、かように考えております。
○中崎委員 今岸総理が言われたようなことは絶えずわれわれは岸さんの口から聞くのでありますが、それにかかわらず、今こういうふうにだんだんと悪くなってきた。ことに三十三年度の経済白書によりますと、不景気の進行が貧富の差を大きくしておる事実を認める、こういうことが明らかにされておるわけであります。すなわち一面においてあの株式価格に見るがごとく、次から次へと政府の方で株式の値段があまり上るのは好ましくないというようなわけで、四回にわたって取引所側に勧告しておられるにもかかわらず、ダウ価格は六百八十円とか七百円とかいうような高い値段までいっておる。これはすなわち政府の資金散布超過を初めとする一連の資本家政策あるいは富める階級をますます富ますという片寄った政策、いわゆる資本主義の誤まれるところの方向がかくせしめている。その反面においてこれだけ八分の一をこえるという大多数の国民が、その生活さえもろくにできないという低い状態に追い込まれている。ここに大きな問題があると思うのでありますが、この点についてどういうふうにお考えになっておるか。
○岸国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように、私は一面において経済の基盤を強化し、繁栄拡大をはかるとともに、一面においては社会保障制度を完備していって、これらの生活上苦しい立場にある低所得階級に対しては十分な処置を講じていく、これが経済政策の根本であり、われわれが福祉国家として進んでいかなければならぬ道である、かように思います。
○中崎委員 低所得層の中でことに見のがすことのできないのが、いわゆる零細漁民の実態であろうと考えておるのであります。近来資本家漁業によるところの進出によって、遠く沖合いまで行ってどんどん漁獲される関係もあって、多数の零細漁民の漁獲高がだんだん減少してくる。そこで大きなる資本家漁業の圧迫によってこれらの生活がますます困窮している。この状態はさらにその程度を越えるというふうに考えておるのでございまして、これら零細漁民の生活をどうするかということが重大なゆゆしい問題だと考えておるのであります。その対策について総理は一体どういうふうにお考えになるかということをお尋ねしたい。
○岸国務大臣 具体的の施策につきましては農林大臣からお答えをすることにしたいと思います。今中崎委員の御指摘のありましたように、私も日本の沿岸にたくさんいる零細漁民の立場が非常に苦しい状態にある、だんだんそれが圧迫されているような状態にあるということについては、かねがね非常に心痛をしておる一人であります。
○楢橋委員長 今農林大臣はちょっと農林委員会に行っております。必ず呼びますから一つ……。
○中崎委員 それではもう一つ続いてお尋ねしますが、この零細漁民にかてて加えての痛手は、近来の大資本によるところの工場誘致によって、ことにパルプのごとき、この廃液がどんどん海に流されるがために、漁獲高あるいは水産物の獲得の上に非常に大きなるところの脅威を感じておるわけであります。ことにパルプ工業に対しましては、先般浦安においてもあれだけの問題が起り、あるいはその前には島根県の益田市においても同じような問題が起っておるのであります。ことに、聞くところによるとパルプ工業はその設備が過剰のために、五割もほとんど操短の状態に置かれておるというのであります。それに対してなおかつまだ工場が新しく建設されるという動きもあるのであります。これに対しまして一体通産省としてはどういうふうに考えておるのか。
 さらにまたこうしたことによるところの被害については一体どういう保護対策をしようとするのか。これは総理大臣にお尋ねしたいのであります。
○岸国務大臣 工業が水産漁民やあるいは農業等にいろいろな悪影響を持って、要するに水質汚濁する場合においてこれに対して適当な基準をもってこれの汚濁しないような施設をする、同時にこれから生ずるところの損害に対しまして適正な補償をするという基礎を定めるために、水質汚濁防止に関する法律が、たしかこの前の国会で成立をしております。これの施行によりまして今御心配になっているような点を十分考えてみなければならないのですが、日本の今までの状況を見ますと、そういうことがきわめて無統制な状況にありまして、弱い漁民や農民が非常に迷惑しておるという実態を私はよく知っております。と同時に近代的工業がどんどんできていくということも、経済発展の過程からいうと、これをむやみに押えるべきではなくして、この間の利害をうまく調整していくことが眼目であろう、かように思っております。
○高碕国務大臣 近代発展いたします工業のために水質が汚濁し、それによってこうむる沿岸漁民等の対策につきましては、さきに提出されました水質汚濁防止法案を早く実行に移しまして、これを防止していきたいと存じます。その点につきましては、ただいま総理が答弁いたしました通りでございますが、パルプ工場のことにつきましては、昨年の二月以来パルプ原料つまり木材の供給状態からかんがみまして、もう今後パルプの製造は増加すべきものでない、この方針を立てまして、すでに着手しておるパルプ工場につきましては、これは許可しておりますが、今後の増産につきましては抑制する方針で進みたいと存じております。
○中崎委員 とにかくこうした大きな資本家の工業の進出によって多数の生活に困る人たちが、それに泣かされる、いわば切り捨てごめんの姿であったと思うのであります。これに対して水質汚濁防止法が通ったのはせめてもの仕合せとは思いますが、これによってこの問題の根本的解決になるとは考えません。ことに幾ら設備を近代化しても、あるいは汚濁防止の設備をしても、決して完全にこれが防ぎ得るものではないと考えます。そうしたようなことを考えて、さらに国家的にこうしたことについて、被害者については十分にこの配慮をすると同時に、さらにまた漁民全体に対するところの工作については、根本的に一つ国家があるいは転業の道を講ずるなり、あるいはまた相当の資金等の方法によって、何らか集団的にこれらの人たちの生計の道を立てていくような、こういう道を講じない限りにおいては、この問題の根本的解決にならぬと思うのでありますが、岸総理大臣はどういうようにお考えになりますか。
○岸国務大臣 零細漁民の問題につきましては、一方からいうと漁場をこれらの漁民のために確保する方法も考えなければなりません。また漁具、漁船その他の漁網等のことも考えていかなければならぬ。それと同時に水産資源と漁民の数との関係を見ますると、どういう方法をとってもとうてい成り立たないものについては、転業の方法を考えるというように進んでいかなければならぬと思います。いずれにしても日本に非常に数の多い沿岸における零細漁民に対する対策の問題は、私は、ちょうど他の中小企業、商工業者に対すると同様に、やはりある程度の組織化を考え、その金融の道を考え、同時に水産資源の確保の道を考えて、これらの人々の生計の立つような根拠を根本的に立てる必要がある、かように思います。
○中崎委員 次に、私は外交問題について少しお導ねしたいのでありますが、ことに外交の自主性についてお尋ねしたいのであります。
 いわゆるチンコムは中国と地理的並びに経済的に関係の深い日本にとっては、非常に大きなる制約であったのは言うまでもないのであります。その緩和に対しまして、われわれは絶えず国会においても政府に対してそれを要望し、その善処方を進めてきたわけでありましたけれども、イギリスあるいはフランス等におきましても同じようにこのチンコムの緩和を希望して、みずからアメリカと積極的に交渉をして、根強い努力の結果、チンコムが相当大幅に緩和されたのは周知の事実であります。この際におきまして、日本側においては何ら積極的な動きがされなかった、言いかえればただアメリカだけの鼻息をうかがうにきゅうきゅうとして、最も日本において重要と考えられたチンコムの緩和についてほとんど努力をされないで、いわば傍観に近い形であったということが伝えられておるのでありますが、これについてその実情を一つ外務大臣にお尋ねしたいのです。
○藤山国務大臣 チンコムの問題が解消になりましたのは一昨年の六月でありまして、当時日本側においてもむろん十分な努力をいたしたと考えております。
○中崎委員 核実験禁止の決議が国連において提案された際におきまして、これについては国会においてもしばしば満場一致の決議が出され、そしてまたこれはほとんど国論としてきまっておるのにかかわらず、国連におけるところの日本代表の態度はきわめてあいまいであって、終始アメリカ側の動きに左右されておるようにも考えられておって、外交の自主性を欠いておるということが中外において批判の的となっておるのでございますが、この点についての実情をお尋ねしたいのであります。
○藤山国務大臣 一昨年国連の総会におきまして日本側がこの問題について提案をいたした場合に、必ずしもアメリカと同じ歩調でなかったことは御承知の通りであります。昨年の総会におきましては、御承知のように七月に実際の技術者が集まりまして、核実験探知方法の会議が開かれました。その結果十一月からジュネーヴにおきまして核実験禁止の問題についてのさらに進んだ会議が開かれることになりましたので、私どもといたしましてはその会議の成功をできるだけ妨害しないように努力をいたして参ったわけであります。ジュネーヴにおきます核実験の会議等も、いろいろ問題はございまして長びいておりますが、順次解決の方向に一歩々々進んでおります。ことに最近ではわれわれが主張しておりました一般軍縮と切り離してこの問題を取り上げようということに英米側でもなってきたようであります。そういうことで、ひたすらこの会議の成功を祈っておりまして、われわれも単に追随しておるばかりではなかったと存じております。
○中崎委員 次に、後進国開発国連特別基金設置の決議が提案された際におきまして、日本においてはやはり態度きわめてあいまいであって、これもまた米国側の意向に追随の態度であったということがいわれておりますが、この点について御説明願いたいと思うのです。
○藤山国務大臣 後進国開発基金の問題は、数年来の問題でありまして、日本といたしましてはこれをできるだけ充実し、そして運営がりっぱに参りますように絶えず主張して参ったわけでありまして、決して単に追随して参ったわけではありません。昨年の委員会におきましては日本の萩原代表が委員長をしておられまして、その委員会においてこれが決定し、引き続き今回の予算にもそれに対する分担金を出していただくということで予算の上で計上しておりますが、同時にその理事国の一人としても当選をいたしておりますので、われわれとしては十分に分担金を大蔵大臣から出していただきました効果が現われてくると思っておるのであります。そういう意味で熱心にやっております。
○中崎委員 次に、アルジェリア問題を国連で討議するという決議が出ました際において、日本はついに棄権をしておるわけであります。これがために、三分の一にわずか一票足りないだめに、このアルジェリア問題がとうとう討議されないままになっておるということなのであります。もともとアジア・アフリカ会議の建前から、こうしたところの植民地の立場の国々が独立のために立ち上った、こういうところのことに対して、日本はアジア・アフリカ会議の一員としての立場から見ても当然でありますし、さらにまた政府の方針に沿うてもそうであるはずでありますが、それを棄権することによってとうとうこれがものにならなかった、こういうこともあるのでありますが、その点いかがですか、説明を願いたいと思うのです。
○藤山国務大臣 アルジェリア問題等の問題につきましては、歴史的ないろいろの事実もございます。われわれはむろん植民地解放等に対して、あるいはナショナリズムに対して十分な同情を持っておりますけれども、話し合いの上で問題を解決するという立場をできるだけとってきておりますので、そういう意味において円満解決するようにわれわれとしては努力をいたしたわけで、そういう意味で投票等もいたしたわけであります。
○中崎委員 昨年の九月、国連総会で中国の代表権問題を討議すべきであるという決議案が問題になったのでありますが、日本代表はアメリカとともに反対をしておるのであります。当時ニューヨーク発AP電によりますと、日本はこの日の白熱的討議に加わらず、高見の見物的立場をとったが、採決のときは結局アメリカ支持に回ったということになっておるのであります。アメリカに対するところの国連の支持率というものは、中国に関する立場において漸次変ってきておりまして、一九五四年には七一%であったものが、五五年には七〇%、五六年には五九%、さらに五八年には五四%というふうに、今やほとんどすれすれまで来ておるのでありまして、世界の国々もすでに中国の現状を認めて、当然これは国連に加入すべきものであるというふうに情勢が変ってきておるのであります。しかるにかかわらず、日本は依然としてアメリカ側の鼻息をうかがうのにきゅうきゅうといたしておりまして、現在のごとき反対的な立場をとるということは、われわれとしては納得のできないところであります。よろしく自立的立場に立って、こうした問題も大乗的見地に立って処置すべきものだというふうに考えるのでありますが、この点について岸総理大臣のお考えを伺いたいのであります。
○岸国務大臣 中共の国連加盟の問題につきましては、今おあげになりましたように、いろいろの変遷をしてきております。しかし現在のところにおいて、まだ国際的世論がこれを加入せしめるような空気になっておらない、かように私は考えております。十分この情勢を考えつつ、将来の問題については処していきたい、かように思っております。
○中崎委員 まだ国際情勢がそういうふうになっていないというふうに言われますが、ただいま申し上げますように、昨年すでに五四%だけが反対で、あとの四六%というものが、世界の国がすでに賛成しておるのであります。しかもこれらの国々の全体の様子を見ても、人口的に見ても、その力の割合から見ても、相当大きなる分野を占めるものと言わなければならぬ。こういうふうな点から考えてみて、世界の情勢がまだそこまでいっていないというのは、何といっても外交の自主性がないというところに原因があるのではないかと考えるのでありますが、この点についてもう一度お尋ねいたします。
○岸国務大臣 もちろんすべての外交について、日本が独自の立場でものを考えなければなりませんけれども、国際の空気としてわれわれが活動をすることから考えまして、国際世論の動向というようなものにつきましては、十分にこれを尊重して考えていく必要がある、かように思っております。
○中崎委員 次に私は中国問題、日中関係の問題についてお尋ねしたいのでありますが、まず第一に台湾問題についてお尋ねしたいのであります。
 二つの中国ということについてまずお尋ねをいたしますが、台湾の将来における国際的地位をめぐって、台湾人の台湾、あるいは信託統治案なるものが藩閥流布されておるのでありますが、外務大臣はこの点について何らか関知しておるかどうかをお尋ねしたいのであります。
○藤山国務大臣 台湾人の台湾もしくは信託統治、それらの問題についてわれわれは特に関知をいたしておりません。むろんこの問題は歴史的ないろいろの条件がございますので、今後それらのものを見据えた上でわれわれは考えていくべき問題だと存じております。
○中崎委員 中央公論の二月号に、自民党副総裁の大野伴睦氏の名前において書かれておるところの文章の中で、韓国とか台湾、これはやっぱりどうしても密接なる関係を保って、できるなら朝鮮、台湾と一緒に日本合衆国でも作ったらいいじゃないか、そうでなくては極東が安定しない。こういうふうな一節があるのでありますが、これに対して岸総理大臣はどういうふうにお考えになるかをお尋ねしたいのであります。
○岸国務大臣 私は台湾にある中華民国に対しては、御承知のように平和条約を結び、これとの友好関係を結んでおりますから、あくまでも国際信義の上からこれを尊重していくというのが、日本の外交の路線でなければならぬと思います。大野副総裁の言は、どういうつもりで言われたか私知りませんが、私どもは台湾に対する限りそういう根本の考え以外には何ら考えておりません。
 また韓国に対しましては、今、日韓の間の国交を正常化すために日韓会談をいたしておりまして、その筋において私どもは進んでいく、それ以上のことは何も考えておりません。
○中崎委員 いやしくも与党の立場において、しかもあなたの党の重要な立場を持っておる人が、事国際問題に関する限りにおいてこうした珍奇なとっぴな意見が出るということにつきましては、非常に論議をかもす可能性が多いものでありまして、ただこの問題に限らず、あなたの党の中、あるいは閣内においても、外交問題に関する場合においては特にいろいろ意見が出ておる。これは非常に国家的においても大きなる損失である。いたずらに外国から誤解を招く、無用な摩擦を生ずることになると考えるのでありますが、岸総理はどうお考えになりますか。
○岸国務大臣 お話のごとく事外交に関する問題におきましては、いろいろ国際的に影響もありますから、政府与党におきましては、政府与党という立場から申しまして特に慎重な態度をとっていくべきものだと存じております。
○中崎委員 これらはいずれもいわゆる二つの中国を生み出すものでありまして、ことにいろいろ日中関係の打開の上についても一つの障害をなすものであると考えるのでありまして、この点については十分に注意を願いたいと思うのであります。さらに今度は日華平和条約の交換公文によれば、中華民国は大陸反攻に成功して大陸中国に領土を拡張した場合、その地域を自動的に中華民国の領土と認めることになっておるのでありますが、これは今となっては著しく非現実的であると言わなければなりません。わずか八百万人の人間を持つところの台湾、しかも経済的、政治的、軍事的にはほとんどアメリカの援助の上に立っているところの一政権でありますに反しまして、中国は六億数千万人の人間を持ち、りっぱな目ざましいところの建設の上に立って、その経済力も、その将来も大いに刮目されまして、世界の勢力分野の上において、も見のがすことのできない存在となりつつあるわけであります。その現在におきまして、依然としてかくのごとき大陸反抗を謳歌するような、こういうものは無用である、無用の長物であるというふうにも考えるのでありますが、総理はどういうふうにお考えになるか、お尋ねしたい。
○岸国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたように、日本の国際的信義を貫く意味におきまして、私は日華の間の条約関係はこれを尊重してあくまでもいくつもりであります。
○中崎委員 次に国共合作の問題についてでありますが、中国政府と蒋政権の間に、国共合作の動きが進められておるということがひんぴんとして伝えられておるのであります。今どういうふうな段階にあるのか、この問題について外務大臣はどういうふうな情報を持っておられるかをお尋ねしたいのであります。
○藤山国務大臣 そういううわさはしょっちゅう流れておるようでありますけれども、的確な情報等は持っておりません。
○中崎委員 外交時報の一月号にもこれに関するような記事も出ておりますし、ことに台湾にも大使が派遣されておるわけでありまして、大使はやはりこうしたことについて重大な関心を持って、絶えず国際的また政治的な動きの中に情報を持っておるはずであります。これに対して、もし単なるうわさであるというふうな程度のことであるならば、私はこの大使も怠慢であり、外務大臣の怠慢であると言わなければならぬのでありますが、これについてもう一歩進んだ情報を一つこの際においてお尋ねしたいのであります。
○藤山国務大臣 各国大使が駐在国におきまして、各方面からいろいろな情報を熱心に努力をして集めておることは事実でありますが、台湾からはそういう情報は来ておりません。
○中崎委員 これはただ台湾に限りません。あるいは香港においても一つの動きがあるというわけでありまして、香港にも総領事館も置いてあるわけでありますから、それらのことも含めて、もう少し深切に、丁寧に、ただその場限りの言いのがれということでなしに、お互いにわれわれは真剣に国政を論議しておるのでありますから、ことにこうしたところの動きというものが、われわれの最も関心を持っておるところの中国問題とさらにどういうふうにつながっていくかということについても、一つ十分にこの情報を集めておく必要がある。政府としてもこれに対するところの対策は怠りなくやっておられると思う。そういう意味において、もう少し真剣に一つこの問題について取っ組む必要があるとも考えますが、外務大臣の率直なるところの説明を願いたいのであります。
○藤山国務大臣 もちろん、国共合作というような問題は重要な問題でありますから、そうした的確なる情報が得られますならば、大公使が進んで提供もしましょうし、またわれわれとしてもそれに努力するように命じておることはもちろんであります。ただ現在においては、うわさがときどきある以上には何らの的確な情報はございません。
○中崎委員 台湾ではインフレが進行し、政情が相当不安で、資本逃避が行われ、日本その他外国にも資金が流れておるというふうなこともいわれておるのでありますが、外務大臣並びに大蔵大臣はこれに対して、どういうふうに判断しておられるかをお尋ねしたいのであります。
○藤山国務大臣 ただいまお尋ねのような傾向がありはしないかというような見方はあるようでありますけれども、これに対して的確な資料というものはわれわれは持っておりません。
○佐藤国務大臣 ただいま外務大臣がお答えした通りであります。
○中崎委員 日華協力委員会総会の決議が一月十五日に台北において行われておるのであります。この決議の大要として伝えられておるところのものを要約してみますと、まず第一に中国を侵略者としておる、第二に中国を承認しない、第三に日中の貿易を行わない、第四に人民公社は東洋の美風に反するなどをうたっておるのでありまして、これは国際的に、ことに最近におけるところの日中間その他の国際情勢に照らして、きわめて微妙なときにおいて行われておるところの刺激であるというふうに考えるのでありますが、これに対して経団連の会長あるいは日商の会頭等が参加しておるということが伝えられておるのでありますが、この点についてどういうふうに外務大臣はお考えになっておるかをお尋ねしたいのであります。
○藤山国務大臣 日本は民主主義国でありますので、民間各方面において友好関係を結んでおります国とそれぞれ団体を作っておられまして、親善関係を増進する上に努力しておられるという事実は各国との間にあると思います。日舞委員会もその一つであろうかと思うのでありまして、最近台湾に行かれましていろいろ日華委員会としての友好の活動をされたようでありますけれども、われわれとしては各方面にそういうことがあり得るのでありまして、一々これに対して別段の耳をかしておりません。
○中崎委員 一月二十九日に日商会頭の足立正氏が藤山外相に招かれて藤山外相に対して申し入れをした。それは国府を刺激するなというところの申し入れであったということが伝えられておるのでありますが、それがこの日華協力委員会との関連性においてどうなるのか、あるいはその際においてどういうふうな応対をされたかということをお尋ねしたいのであります。
○藤山国務大臣 足立日商会頭とは長年の先輩であり、あるいは同僚であるわけでありまして、時々同君からいろいろな民間の意見を聞いております。今回は主として予算案に対する民間の反応等について聞いたわけでありまして、特に台湾問題等につきましての意見の交換をいたしたわけではございません。
○中崎委員 次に今度は日中国交回復問題について直接一つ触れてみたいと思うのであります。
 まず岸総理に対しまして、あなたは本会議における演説の中で、お互いにその政治的立場を理解しつつ通商の再開を望むということを言っておられます。これは政治は政治、貿易は貿易、貿易だけは切り離してやりたいというふうに解釈していいのかどうかをお尋ねしたいのであります。
○岸国務大臣 私の内閣また保守党内閣が一貫してとってきておりました中共に対する政策は、国交の回復という政治的な関係を今直ちに作るわけにはいかない。しかしながら経済交通は政治とは離れてやるべきだ。お互いの国がお互いの政治の立場なり政治形態ということを尊重して、しかも経済交流というものは可能である。こういう立場からお互いが政治と切り離して経済の交通、すなわち貿易をしよう、こういう考えでやってきておるのでありまして、私も今日もそう思っております。
○中崎委員 昨年の五月の国旗問題以来中国側の態度は相当大きく変っておる。いわゆる以前の積み重ね方式から第四次貿易協定に進むところの過程においては、ああしたような経済上の問題が一応切り離されておったのでありますが、御承知の通りに、あの不幸なるところの貿易ストップの事態が発生して以来というものは、相当向う側の態度は変っておる。今においても何らその態度において変化はないと見なければならぬのでありますが、ただ従前そうであったら、それでできるように甘く考えておいでになるかどうかをお尋ねしたいのであります。
○岸国務大臣 必ずそれが、今直ちに私どもの考えたように中華人民共和国の方でも考えるかどうかということについては、これは相手方のある問題でありますから、一がいに申すことはできぬと思いますが、しかし国際の通念として、お互いの政治形態は違っても、またその政治的な関係は離れても、貿易、経済交通や文化交通をすることは可能であり、実際にそれができるということは、過去においても中国大陸と日本との間にそういう実際の実行をしてきたのであります。お互いがそのことを反省してみるならば、私はそのことはできないという問題ではなくして、お互いがそういうことをよく理解して立つならば、そのことは可能である、かように考えております。
○中崎委員 その問題についてはさらにあとで触れるといたしまして、藤山外務大臣は、大使級会談、場合によっては政府間の協定をやりたい、こういうことを言っておられるのでありますが、この点については岸総理も完全にその意見が一致しておるのかどうかをお尋ねしたいのであります。
○岸国務大臣 今後どういうふうにこの日中間の貿易再開が行われていくかということにつきましては、十分適当な機会をつかんでいかなければならぬということは言うを待ちません。しこうしてその情勢によって、あるいは民間の団体間における話し合いになる場合もありましょうし、あるいは大使間において話し合いをするというようなことも、現在国交は正常化せられておらなくても、アメリカと中国との間にすでにそういう事例もあるのでありますから、国際慣行としてはそういうことも考えられる。それは一にわれわれがつかみ得るチャンスがきた場合におけるその状態によってきまるものであって、今必ずこういう方式でやるのだということをきめてかかることは適当でない、こう思っております。
○中崎委員 政府間の協定もあり得る、こういうふうに藤山外務大臣は言っておるわけなんです。岸総理は、これに対してどういうふうにお考えになるかということを、先ほど尋ねておるのであります。
○岸国務大臣 すでに気象問題であるとか、あるいは郵便の問題等について、政府間の協定によってこれを適当に処理しようという考えは私どもも持っておるわけでありまして、従って貿易の問題もそういう扱いができるかどうかということについては、なお研究の余地があると思いますけれども、研究した結果においてそれが適当であるという結論を得るならば、そういうような事態も出てこよう、こう思っております。
○中崎委員 藤山外務大臣にお尋ねしたいのでありますが、大使級会談も考えておられるようでありますが、一体どういう形でその大使級の会談をしようとするのか、どこへ持ち出して、どういうふうにやろうとするのか、それをお尋ねしたいのであります。
○藤山国務大臣 機会が参りまして、具体的なその機会のとらまえ方によりまして、いろいろ違って参ると思いますので、今直ちに具体的にどこでどうということを申し上げかねると思います。しかしながら大使級の会談でありますれば、中共側の大使のおるところ、日本側の大使のおるところ、適当な場所を選んで会談をするということには相なろうかと思います。
○中崎委員 中国側の意向によりますと、大使級の会談なんというものは全然考えていないようでございますが、もし何らかの話し合いがあるとしても――これはだいぶ前の話ですが、何らかの話し合いがあるとしても、それは何も他の国を介する必要はないのであって、東京でやるとか、あるいは北京でやるとかいうようなことは考え得るけれども、そのほかの地区ではそれは考え得るものではないということが言われておるのでありますが、この点について外務大臣は何らか聞いておられるところがあるかどうか、お尋ねしたいのであります。
○藤山国務大臣 中共側がどういう考えでありますか、今お話がありましたけれども、私ども今日存じておりません。われわれとしては適当な機会にそういうことがやり得る場合があるならば、やってみてもよろしいということを申しておるわけであります。
○中崎委員 そうすれば、もしそういう機会があるとすれば、一体どういうふうな内容を持ったところの会談をしようとするのかということをお尋ねしたいのであります。
○藤山国務大臣 たとえば郵便協定の場合には、郵便を内容とした会談になろうかと思いますし、それぞれの機会が参りましたときに、それぞれの問題をどう取り上げますかということは、今日から具体的には申し上げかねると思います。
○中崎委員 外務大臣が考えておられるのは、たとえば郵便協定とかあるいは航空協定とか、こうしたようないわば枝葉末節といいますか、現在の段階においてはなかなか運びそうもないような問題、しかもいわば国民生活の点あるいは国民の要望からいえば、大よそはずれたところの問題だと思うのでありますが、そういうふうなことが先に話し合いになるような余地があるというようにお考えになるのかどうかをお尋ねしたいのであります。
○藤山国務大臣 郵便の問題は大事な問題だと思うのでありまして、必ずしも枝葉末節だとは存じておりませんが、過去においても中共側から郵便協定という問題については話し合いがありましたことは、事実であります。でありますが、必ずしも郵便協定から先に始める、何から始めるというようなことは今後の問題でありまして、どれから先に始めるというようなことを今ここで申し上げるわけにはいかないのでありまして、中共側がどういうふうにこれを受けてくるか、あるいはどういう機会があるかということを問題にいたして参りたい、こう存じておるわけであります。
○中崎委員 話をするには話をするだけの環境を作らなければならぬと思うのであります。こうした行き詰まった――ことに岸総理は、中国に対して敵視しておる、あるいは二つの中国を作るような陰謀があるというようなことも言われて、向うでは相当に深刻にものを考えておる。現在のこの行き詰まった状態のさなかにおいては、郵便協定とか何とかいうふうなことでなくして、もう一歩進んでお互いが何らかの話し合いをしてみようじゃないか、こういうふうな雰囲気ができない限りにおいて、これは百年河清を待つようなものだと思うのであります。であるから、そういうような枝葉末節なことでなしに、ほんとうに一体話し合いをする気があるのかどうなのか、そういう気持があるのかどうなのかということをまず尋ねて、道を開かなければ道は開けない、どこからも入っていけるという情勢ではないということを、政府の方でも認識しておらなければならないはずなんです。その上に立って話し合いをするという考え方であるのか、ただゼスチュアとしてそう言ってみたのか、あるいは選挙対策としてそう言ってみたのかどうかということをお尋ねしたいのであります。
○藤山国務大臣 昨年以来政府が静観という態度をとってきましたのは、貿易をやらないという意味ではなくて、両国間に何らかの誤解があり、これ以上いろいろなことを日本側が申すことはかえって誤解を深めていくという意味において、静観という態度をとってきたのでありまして、われわれといたしましては、決して中国側をこの問題に関して何か総理が敵視しておるというようなことは考えておりません。従ってわれわれの空気なり気持を十分中国側で誤解なく了解すれば、おのずから道が開けるところがあろうかと考えております。
○中崎委員 その後において、政府の方で誤解を解くような一体いかなる努力をされたか、そうしていかに現在の状態が向うと話し合いをし得るような情勢に進んできておるのか、その後の行動を見なければ、事ごとにとは申しませんが、相当に中国を刺激するようなことが多い。そういうやさきにおいて、ただ単に大使級の会談だというふうな宣伝だけやって、これで一体国政を扱うところの外務大臣として事足れりというふうにお考えになっておるのかどうかをお尋ねしたいのであります。
○藤山国務大臣 静観をいたしてきましたこの事態が、おのずから誤解の解ける道だと私どもは考えております。従ってそういうことをだんだん向う側が了解して参れば、おのずから時期がくることであろうと思います。従ってこれは決して選挙対策等でないことを申し上げたいと思います。
○中崎委員 先ほど申し上げました足立さんがあなたに会いに行ったときに、あなたは、日華協力委員会について、足立さんから、あまり刺激しては困る、というのはこの大使級の会談あるいは両国政府間の協定をやってもいい、こういうことを表現されたために、それは台湾の方じゃ困るのだ、だから、あまりあんなことを言わないでくれというふうな話があった。それに対して、あれは実は七分通りは選挙対策であったのだ、こういうことをあなたが言ったということが伝えられておる。これが事実であるかどうかということを一つお尋ねしたいと思います。
○藤山国務大臣 そういうことはございません。
○中崎委員 そうすれば、現在ウルシの業者にいたしましても、きのうもあれだけのウルシの業者が全国から集まって深刻な一つの大会を持って、一体政府はこれでいいのか、おれたちの生活をどうしてくれるのだ、六万になんなんとするところのあのウルシ関係業者が、ウルシもなくなって、もうおれたちの生活は廃業一歩手前なのだ、倒産の手前なのだ、何とかしてくれなければ困るじゃないかというところの悲痛な叫びをあげておる。これはただウルシ業者だけじゃないのです。ほんとうにあの中国との不幸な事態が起ってからというものは、莫大なるところの損害を、業者並びに従業者が、消費者あるいは供給者が負っておるわけなのです。その当時だけの損害でも三百五十億円と言われておった。これだけ大きなるところの損害を受け、きょう道が開かれるであろうか、あす道が開かれるであろうかということで、ほんとうに待っておる。そういう事態の中において、一体岸総理は、日中関係の打開について、何らかの努力をするような考え方があるのかどうなのかということをお尋ねしたいと思います。
○岸国務大臣 すでに私は施政方針にも申しておるように、根本的の考えはできるだけすみやかな機会において通商の道を開くようにしたい、かように考えております。
○中崎委員 ただこの道を開くようにしたいというだけでは問題の解決にならぬので、先方におきましては、あなたの態度というものがもう少し、中国を向うへ回すような考え方でなしに、いわゆる平和共存といいますか、お互いに一つやっていこうじゃないか、こういうふうな気持に一体なれるのかどうなのか、そういう上に立って話し合いをしようじゃないか、お互いに貿易は相互の利益ではあるけれども、実際に面子と国の立場をじゅうりんされてまで、われわれは割り切ってはやれないのだから、その考え方が、岸さんの今日までとられたような考え方でなしに、もう少し何らか融和的な、友好の上に立ったところの考え方になれないものかどうかということを向うは望んでおるわけなのです。私はそれを聞いている。そうでなければ日中の問題の打開にはならないのだが、何らか一歩踏み切って、日中の問題を打開するような心がまえになれないのかどうかということをお尋ねするのであります。
○岸国務大臣 私は従来もしばしば申しておるように、中共側に対して敵意を持っている、あるいはこれに対して非友好的な考えを持っているということは毛頭ないのであります。去年の五月にああいう事態が生じたことについては、その当時も申したように、これは両国にとって非常に不幸であり遺憾なことだ、しかしながらここで両方が感情的にいろいろな誤解を深めるようなことがあってはいかぬから、静観して、冷静にお互いの立場を考えて、そして再び貿易が再開することの時機をつかむようにしようというのがあの当時の私の考えであり、またそれが一貫した考えであります。貿易をしようとかあるいは文化交流をしようという考えは、近隣の長い歴史的、地理的、あらゆる面において密接な関係にある両者の間に友好的な関係を作り上げていこうという考えであればこそ、私は貿易に対してその再開のことを熱望しておるわけであります。決して敵意を持ったりあるいは非友好的な考えを持ったりするものでは毛頭ないのであります。どうかこの点は、保守党より社会党の方が中共側にもいろいろ御関係が深いようでありますから、日本のために私がそういう考え、敵意とか非友好的な考えを持っておるものでないということを十分に御理解いただいて、向う側にも通ずるように御協力願いたいと思うのであります。
○中崎委員 あなたは実に口先だけはうまいことを言います。けれども実際において言うこととやることとは違っておるから国民も信用しない、中国もそれを信用していない。たとえばあなたが総理になってから以来というものは、いわば日米新時代――その前からですが――日米新時代なるものの上に立って、たとえば吉田あるいは鳩山内閣よりもだんだん、だんだんとまだ右へ曲るといいますか、アメリカヘだんだん片寄っていく、だんだん日本の自主性を失っていく、こういう方向へ進んでいるということは国民の世論です。識者はひとしくこれを知っているわけです。現にたとえば、あのNBCのブラウン記者に対してあなたが応対したあれを見ても、あなたが幾らこれを否定しても国民はそれを信用していない。たとえばあの言葉の一節に、これは英訳されたものですが、アイ・コンデム・レッド・チャイナという言葉がある。あなたは中国を非難するという言葉で言っている。これをあなたはうそだと言うかもしれぬ。しかしあなたの言うことは当てにならない。そういうふうなこともはっきり外国の文献にどんどん出ているのです。こういうことがどんどん記事の中に出ている。こういうふうな態度であって、まさか、敵対的考え方は一つもない、こういうふうなことを言われても、国民も信用しないし、中国も信用しない。であるからそういうことでなしに、今まではだいぶ方向が違っておったんだが、せめて、たとえば鳩山さんの時代まで方向を変えておるのだ、こういうふうな考え方で、この大きなる中国問題と取っ組むだけの用意があるかどうかということをお尋ねしたいのであります。
○岸国務大臣 中国に対する外交方針の根本については、吉田、鳩山内閣を通じて現在の岸内閣に至るまで、私は少しも違っておらない、異なっておらない。私は鳩山内閣当時は党の幹事長もいたしておりましたし、内閣と党の外交政策の根本についてはタッチをいたしておりまして、決して何らその間に変りはない。今、日米新時代の問題についてのお話がありましたが、これは決して私は日本をアメリカに隷属せしめるというような考え方から言っているわけじゃないのであります。むしろ終戦後そういうふうな国民感情が一部にもあり、アメリカ側においても占領時代の考え方が払拭されていない点があるのであって、日本は自主独立の立場から、真に両国の間の対等の関係における理解と信頼の上に今後協力していこう、この間に何らか一方が一方に隷属しているような考え方やあるいは劣等感等があるということは、これはいかぬことである、これを払拭して、真に自主的独立の立場で対等に理解と信頼の上に協力しよう、これが日米新時代の私の考えで、アメリカ側と話し合った根本であります。このことは日本の自主的な立場からいって私は当然のことであって、それはちっとも外交路線を変更したというような性質のものでない。従ってこの点に関してもしも私の態度を敵視しておる、あるいは非友好的であるというふうに中共側において考えておるとするならば、それは私がしばしば言うように誤解と言わざるを得ないのであります。私はその点において明確に私が敵視やあるいは非友好的な考えを持つものじゃない、真に近隣のこの両国の間に友好関係を作り上げる従来もとってきておったように、貿易や文化のものを積み重ねていくべきである、これが途絶しておることは両国のために不幸である、その前提としては両国が政治的な立場を尊重し合っていく、そして内部的なことには干渉しないという態度をするならばこれが可能である、こう一貫して考えております。
○中崎委員 先ほど申し上げたように、貿易の復活については、日本の国民あげて、ことにこの関係の業者を初めとして直接関係者があげて強く要望しておるところでありますが、藤山さんはこの貿易のことについて、ことに今政府間の協定とか大使間の会談とかというふうなものの中に、貿易の問題は全然頭の中に置いてない、こういうふうに考えているかどうかお尋ねしたい。
○藤山国務大臣 私は貿易のことを全然考えてないわけではございませんし、むしろ貿易のことを主にして、先般の外交演説その他でも申し上げておるつもりでおります。
○中崎委員 それであるからには、政府間の協定まで考えておるといえば、ある意味においてはこれは政治的にも考えがある程度進まない限りにはできぬとも思うのでありますが、かりにそれはそれとして、第四次貿易協定の内容の中には政府の支持と協力ということが問題となって、これはとうとう愛知官房長官の談話によってぶちこわしになったのですが、あの当時におけるところの支持と協力という言葉の内容と、それから第四次貿易協定についてことに政府間の協定まで考えておられるという、そういう場合におけるところのその協定の内容との間に一体どういう実質的な違いがあるのかということを一つお尋ねしたいのであります。
○藤山国務大臣 通商貿易等に関しましては、純粋の貿易の問題だけを取り上げていくべきが、私どもは今日の中共と日本との関係において適当であると考えておるわけでありまして、今後そういうような話し合いが進む場合に、貿易面だけにつきましてわれわれは考えております。
○中崎委員 その際において政府間の協定ということになれば、今までは民間貿易に対して政府が支持と協力をするという形であった。ところが今度は政府間の協定ということになれば、それよりも一歩進んだ形に考えられるのですが、その点は一体どうなんですか。
○藤山国務大臣 政府間の協定はやるかやらないかは、先ほど来申し上げておりますように、そういうような機会がどういうふうにして来るかということできまるわけであります。政府間にかりにそういうような話し合いをいたす場合がありましても、むろん貿易に限りますことは当然でありまして、われわれとしてはその点についてはっきりした態度をもって参るつもりでおります。
○中崎委員 それでは第四次貿易協定の中に、国旗の問題が関連してあったわけでありますが、たとえば通商代表部をお互いに置く、こういうふうな場、合においては、一国の象徴として国旗を出すのが通例なんです。当然のことなんです。これが依然として引きずりおろされたり侮辱されたり、こういうことになれば、これは耐えられない。そういうふうな国旗の問題などを切り離した政府間の協定でも考えておるのかどうかということをお尋ねしたい。またそれができるとでも考えておるのかどうかをお尋ねしたい。
○藤山国務大臣 先般の第四次協定におきます国旗問題等は、私どもは、純粋の通商の関係とは別であって、若干政治的色彩がかかったものだと考えております。われわれとしては貿易を円滑にする方針によって問題を解決していくという方針をとっております。
○中崎委員 驚き入ったる言葉であって、前よりも、第四次貿易協定よりも後退した形において政府間の貿易協定でもできるふうに、かりにももし考えておるならば、藤山外相はちょっと何らか感違いでもしておるのか、ちょっと認識が普通より違っておるとでも考えざるを得ないのでありますが、ほんとうにあなたはそういうふうに考えておるのかどうかをもう一度お尋ねしたい。
○藤山国務大臣 私どもは貿易関係を考えておるのでありまして、若干でも政治的色彩のあるような関係において問題を扱っていきたいとは考えておりません。
○中崎委員 次に貿易の中絶は一面において岸内閣の責任であります。これによるところの損害額は先ほど申し上げましたように三百五十億円と当時のものですでにいわれております。少くともこれについては業者は何らの責任はないはずであります。それなのにかかわらず、政府の政策によってここに重大なるところの支障を受けて、現に現在では立ち行かないという状態のものもある、こういうものに対して政府は何らかの措置を今日までやったか、あるいは金融的な措置、あるいはまた現実に受けたところの損害に対して何らかの一つの措置をしたかどうか、今後またこういうふうなものに対してその措置を講ずる用意があるかどうか、これを一つお尋ねしたいのであります。
○岸国務大臣 通産大臣よりお答えいたします。
○高碕国務大臣 業者が貿易ができないために起った損害というのは、当然利益のあったものと仮定して起る損害は三百何億という計算が出ておりますが、実際においてあの貿易中絶によって契約しておったものが取り消されたために起った損害というものは、これは各方面からアンケートをとりまして二億七千万円という数字になっております。そのうちですでに保険にかかったものは、政府は保険の対象としてこれを賠償いたしております。そのほかに見本市の問題につきまして最初政府は六千万円を支出しておりましたが、その後持ち帰りのために経費がないというのでさらに千何百万円を支出した、ところが向うにおいて非常な経費を要したというので、さらに政府は、五千何百万円を支出することになりまして、大体実質上に起った損害は補償したつもりでございます。
○中崎委員 それは見本市に関する実費支弁の問題を政府がこれで責任をもって処理をしたということだけであって、そのほかの問題については処理したということは聞いておりません。ことに今通産大臣が言われましたが、たとえば鉄鋼のごとき約三万トンのものが――これは特殊規格のものです。向うの注文によって作ったものだと言われておる。それが百億を突破しておると思っておる。それは依然として処分できないままになっております。これは大きな業者であるからいいとはいうものの、現実にはそういうふうに損害もある。だからあなたの計算はずさんだ。だからそうしたような損害がまだ他にもたくさんある。こうしたものに対して何ら措置を講じないまま放任しておることは無責任ではないかということを言うのであります。これに対してさらに調べて現実に損があったら、それに対して適正な措置を講ずる用意があるかどうかということをお尋ねしたいのであります。
○高碕国務大臣 ただいま許されております範囲におきまして、海外貿易を契約した場合に、その契約が履行されなかったということのために起る損害につきましては、政府はこれを保険にかけるということをとっておりまして、保険にかかっておるものにつきましては、政府はこれを補償する義務がございますが、一般における損害、これをいろいろな点から考慮いたしまして、それを計算すれば幾らになるかわからぬ、こういうふうなものにつきましては、私どもは、今直ちにその損害を補償するということは考えておりません。
○中崎委員 現実には、この貿易の再開ができるであろう、できるであろうと待っているわけです。だから、それについて、たとえば、これをどうするかは別として、百億なら百億の金があるならば、かりに金利が、これを六分と見ても、七分と見ても、八分と見ても、とにかく何億という金が一カ年間に現実には損をされておるわけです。そういうようなものに対しては、どの程度の措置を講ずるのか、少くとも輸出保険に関するような、こういうものに準じた扱いでもできるのかできぬのか、一体何らか考慮を払う用意があるかどうかということをお尋ねしているわけであります。大蔵大臣に一つ――それがわからなければ岸総理大臣にお尋ねします。
○佐藤国務大臣 先ほど通産大臣からお答えいたしましたように、現実に契約があったもの、これにつきましては、ただいま申すように保険にかかっておるものの範囲でその穴埋めをいたしております。しかし、貿易があるだろう、注文があるだろうという意味の見込み生産なり、見込みでストックをしておるものについても、商売ができないから、それはどうしてくれるんだと言われても、それは、ただいま通産大臣も申しますように、政府といたしましてはいかようの措置もできないのでございます。
○中崎委員 きわめて無責任きわまる。政府の政策の拙劣から、政府の政策によって現実に直接的な被害を受けた何ら責任のない――現実にすぐにデリヴアリーができるような、こういう態勢において用意されておった。だから、これについて政府が何らかの責任を持った措置をしない限りにおいてはこの問題の解決にならぬ。だから、大蔵大臣も、この点について何らかの考慮を払ってみる――きわめて甘く見て、ただ二億何ぼだというような、こういう甘い見方でなしに、もう少しやはり業者の立場になって、真剣にものを考えてみる必要があるのではないかと思うのですが、どうですか、岸総理は……。
○佐藤国務大臣 ただいま私お答えいたした通りでございます。問題は、今回の日中貿易がとまったことが当方の責任だという言い方をしておられますが、あの経過をごらんになってもおわかりになるように、これは一方的にはっきり貿易をとめられたのでございます。ことに、先ほど高碕通産大臣が御説明いたしましたように、漢口に出品をいたしました見本市の跡始末なども、当方といたしましてはできるだけの処置をいたしたのでございます。これは業界ともいろいろ折衝いたしまして、業界との間に話がつき、また従前からの幾分かの損失等もその際に全部処理しておる。総額八千百万円をこしておると思います。ただいま言われますように、その他のもので、日中貿易が続いておるならば引き続いて注文があるだろう、あるいはまたこういう品物についての要求があるだろう、需要があるだろう、こういうような意味で将来の日中貿易に非常に期待をかけておられた、こういう事柄は、これはもう経済情勢の変転でありまして、これについて政府が一々その損失を補てんするというわけにいかない。これはひとり日中貿易ばかりではございません。どこの国に対しましても、あるいはインドに対しても、インドネシアに対しても、貿易商社としてはいろいろその見込みをして品物を用意するでございましょう。その商売ができなかったからといってこれを補償するわけには参りません。先ほど来申しておりますように、その原因が非常に明確なものでございますだけに、今回の措置は今までとりましただけで十分のように私ども考えております。
○中崎委員 それでは次に、中立の問題について、きわめて重要でありますからお尋ねしたいのであります。
 岸総理は、社会党の同僚の質問に対して、中立問題は現実から離れておる、こういうふうに言われておるのでありますが、現にソ連並びに中国が日本の中立を期待しておる、希望しておる、こういうことだけはもう明らかになっておるのであります。そうしますと、一方において、アメリカさえこの中立に協力してくれるということになれば、日本を含んだ四カ国の中立の可能性もあるではないか。すなわち、アメリカの方へもう一歩努力していけばこれが現実の問題として可能になるのではないか、こういうように考えるのでありますが、この点いかがですか。
○岸国務大臣 私は、日本の外交、また経済発展の基礎として、日米間における対等な意味における信頼と理解の上に協力するという関係を非常に重要に考えるものであります。今お話のように、中共やソ連が日本の中立を呼びかけております。しかし、共産圏におけるこれらの国々が中立ということに対してどういうふうな考え方をしているかということは、世界各地における動きを見ますと、私どもは、ただ単に、中共やソ連が表向きに中立を呼びかけておるからこれをいれるというふうに簡単に考えるべき問題ではないと思います。その国が置かれておるやはり政治的、経済的、また国際的のあらゆる面からこれを検討すべきものであって、先ほども申し上げるように、私は、日米の間の真に対等の形における信頼と理解の上の協力ということが日本にとって中心をなすべきものである、こういう考えでおりますので、従って、今日のソ連や中共がその真意もわからない中立を呼びかけたからといって、これにすぐ従うというようなことは非常に危険である、かように考えます。
○中崎委員 真意がわからないと言われておりますが、いずれにしても、日本を敵国側に回して戦争の対象にいざという場合に考えていないということ、これだけはわかるでしょう。しかし、ほんとうに平和の方向に持って行って、その努力をするならば、この中立というものは日本のためにもとるべきではないかというふうに考えられるのであります。現に、たとえばオーストリアのごときも、あるいはスイス、スエーデンにおいても、りっぱに中立として立っておるわけでありまして、日本の置かれている立場はわからぬじゃないけれども、いつまでも今のような方向で行くというのでなしに、一時も早く中立の立場に立って、他から戦争の脅威を受けない独自の立場においてやっていくのだ、こういう態勢がとらるべきだと思うのでありますが、この点いかがですか。
○岸国務大臣 中崎委員も御承知のように、中立に対しては、オーストリア等の例がありましたが、隣のハンガリーにおいて、ナジ首相が中立を唱えてソ連からどう扱われたか、また、ユーゴスラビアが中立を唱えて共産圏からどう扱われているかということの現実をごらん下さるというとわかるように、私は、これらの国々の中立呼びかけというものは、多分に政治的な、この東西両陣営の対立の世界情勢からいって、非常に政治的な意味を持っているものであって、こういうことを軽軽しく、これがあるからこうだというふうに論断することは非常に危険である。ことに中立をすれば、戦争から侵略から一切なくなるのだというふうに簡単にお話しになりますけれども、これまた過去における不可侵条約等の実例、過去において結んでいたその実例がどういうふうに――裏づけがはっきりないとどういう結果になるということも、歴史的にわれわれは経験したところであります。こういう問題については、慎重に、十分に各般の事情を考えないと、外交路線を変えるなんということは、非常な危険を伴うものであると思います。
○中崎委員 今不可侵条約について話がありましたが、多分これは、ソ連がこの前の戦争のときに廃棄を通告してやったということだと思うのですが、これは御承知の通り、ヤルタ協定の申し合せによって、英米ソの話し合いの中にやられておる。言いかえれば、アメリカもその不可侵条約廃棄の相手方となって、そうして日本をやっつけるためにやったんだ。言いかえれば、不信行為はこれらの国実すべてにあったんだということを、もし言うとすれば言えると思うのであります。そのほかも、もしたとえばソ連が信用ができない、中国が信用できないというならば、一体どういうふうなことにおいてそういうことがあるかということの実例を示されないと、きわめて重大な問題であるだけに、一つそれを明らかにしてもらいたいと思うのであります。
○岸国務大臣 私は一国の、ソ連がどうであるとか、中共がどうであるとかいうことを言っておるのではありません。国際条約というものにおいて、それの裏づけの保障がない限りにおいては、ただ一片の条約であるとか、宣言であるとかいうものを信じて、その国がやっているということについては、非常な危険があるということを私は歴史的にも述べておるわけでありまして、一国をあげて、この国が不信であるというようなことは絶対に申す意思もありませんし、またそういうことを責任ある首相が言うべきではないと思います。
○中崎委員 あなたは、不可侵条約などの場合もあって、かつてそういう苦い経験もあって、それで信用が置けないんだ、ただ一片の条約だけきめても、これに対するところの信頼感がなければだめなんだ、こういうことを言っておられる。であるから、今私が言うのは、その不可侵条約が破られた、こういうことを意味するものと思うんだが、それは一体どういうことなんです。
○岸国務大臣 昔、日本とソ連との間にありました不可侵条約がそのままに行われなかったという事実は、これは動かすことのできない事実です。私はその原因がどの国の不信であるということを決して言明いたしておりません。ただそういう条約があっても、その条約が履行される確固たる保障なき限り、そういうものについては危険があるというわれわれの体験を申し述べたわけであります。その原因がどこにあるかということを、私はこの場合せんさくして申し上げるつもりはございません。
○中崎委員 それでは、たとえばアメリカの場合には信用が置けるけれども、ソ連の場合には信用が置けない、こういうように解釈していいかどうか。
○岸国務大臣 決してそういうことではございませんで、私はその意味において、国際間においては、両国の間に真に理解と信頼の上に立つ協力関係というものがなければ、ただ一片の条約を作ったとか、あるいは申し合せを作ったとか、宣言をしたというだけでは安心ならぬということを申し上げておるのであります。
○中崎委員 時間の関係がありまして……。
○楢橋委員長 中崎委員、農林大臣が来ていますが、何かありますか。
○中崎委員 農林大臣はちょっとあとにして下さい。(「もう本会議が始まるぞ」と呼ぶ者あり)あんまり急ぐなよ、党を代表している質問だから。
 そこで、さらに経済的な立場から申しましても、中国との間の関係を一日も早く正常化せなければならぬということは、言うまでもないのでありまして、ただ、日本がかりに英米自由主義国家群の側にあったとしても、ものの考え方というものは、向うが神経的にまで敵視政策をとるとか、敵対行為に終始しておるとかいうことを言わさないで、もう少し私はやり方があると思う。たとえば鳩山さんが、党内にもいろいろな異論がありながら、意を決して、またアメリカなどの国々の意向などもいろいろあるいはそこなわれた点があったかもしらぬけれども、ついに意を決して、ソ連との問にああいう国交正常化の方向に踏み切って、それだけの効果を上げておられる。だから同じような意味において、中国との場合においても、残された中国の問題が一番大きな問題だと思うのですが、岸さんがそういう気持で一つ踏み切られたならば、この方向といいますか、あるいは安全保障の点についてはアメリカ側にあるとしても、一方において、その他の問題については当然国交正常化の側に立つべきだ。言いかえれば、もう少し自主性を発揮してあまりに何もかもすべてアメリカに気がねをしないで、日本国家のために解決すべき問題は、ある意味においてはやはり割り切らなければならぬ場合もあるのじゃないか。そういう意味において中国との間の国交正常化について、一段と考え方を今までよりも変えていくのだ、こういうことができるかどうかをお伺いしたいのであります。
○岸国務大臣 中国との関係につきましては、しばしば申し上げている通り、私は現在の状態においてすぐ国交正常化ということは考えておりません。政治と経済を分けて、さらに国際情勢その他の関係を調整することによって、そういう国交正常化の問題も可能である。現在の状態においては、私は国交正常化ということをお話しになりますけれども、そういうこととは別に分けて、経済の問題についての貿易関係を調整したい、こう思っております。
○中崎委員 私が言おうとするところは、今すぐに割り切って、すぐに国交正常化をやれという意味じゃない。中国との間の関係を融和的に、自分の気持の中にもう少し思いやりのあるといいますか、前後をよく考えたこういうところのやり方をするのだ、そうしてだんだんそれが積み上げられていって、そうして今度は貿易の問題も漸次進んでいくし、あらゆる文化の交流なども進んでいくのだ、こういう方向に行くべきではないか。それが真に国家のためであり、同時に、あの戦争によるところの中国に対する犠牲というものは実に莫大なものがある。たとえばフィリピンに対しては八億ドルの賠償というものが払われておる。そしてインドネシアには四億ドル、ビルマには二億五千万ドル、これだけの賠償金を払って、ようやく国交の問題も解決しておる。ところが中国の場合においては、ほんとうに日本の国民がまた日本の政権の担当者が、中国と将来ともにやっていくという考え方であるならば、とにかく何十億ドルか何百億ドルに匹敵するものか知らぬけれども、あれだけ長年にわたって加えたところの損害に対しても、場合によれば寛大に考えていっていいということが表示されておる。それにもかかわらず、あなたはあの戦争責任において自分が新官僚なるものを作り、あるいは軍閥、財閥と結託して、そうして侵略主義の上に立ってあれだけの戦争をやって、その一番大きな被害者は中国である。その中国に対して、何らの反省も加えることなく、アイ・コンデム・レッド・チャイナというような態度で、依然として敵対扱いをしておる。これは実に日本国家のためにも、日本国民のためにも、アジア民族のためにも悲しむべきことであると思う。であるから、もう少しあなたは反省して、そうして中国の問題についても、せめて向うがそういう考え方であるならば、私たちももう少し腹を割って話合いをしてみようじゃないか、どの程度の話合いができるかやってみようじゃないか、そして一歩前進してみようじゃないかというような心がまえが、当然日本の政権を担当するあなたとしてあるべき心がまえだと思う。ただ日米新時代で、一そう日米間の協力を深めていくといっても、まず貿易などを見ても、一方においてはだんだんアメリカから締め出しを食っている。そうして片貿易のような形において、なおかつ日本の将来というものは、特需もだんだん細ってくる。どうして日本の将来をになっていくかということについても大きな問題がある。たとえば綿花のごときも、アメリカからあれだけ買わぬでも、あれに匹敵するところのりっぱな綿花が中国にたくさんある。その中国からどんどん綿花を買い入れればいい。あるいは塩にしても鉄鉱石にしても、どんどんこれらの国の天然の資源を、安いところの費用で買ってくればいい。それで日本のこの過剰生産といいますか、これだけの人口を養うところの、そういう生産物をどんどん中国へ出せばいい。これこそほんとうに日本の将来のためになるということを考えたときにおいて、あなたはもう少し過去の行動に対する反省をして、生まれかわったところの人間として、日本国民なり、あるいは中国にあなたは償いをすべきではないか。そういう意味合いにおいて、ただ勝手ほうだいなことを言わないで、もう少し責任的立場と反省の上に立って中国問題を考えるべきではないかと思うのですが、どうですか。
○岸国務大臣 中国に対する考えにつきましては、先ほど来しばしば私が答弁をした通りでありまして、私はあくまでも中国に対して敵意や非友好的な考えを持つものでないということを明確に申し上げて、同時に貿易や文化の交流を続けていって、そうして両国の間の友好関係を深めていくということがお互いのためにとるべき考えである、こう考えております。(「話し合いをしなさいよ」と呼ぶ者あり)もちろん話し合い等の問題につきましては、先ほど来申し上げておる通り、必要があれば大使間の話し合いもしよう、こう言うておるのでありますから、決してわれわれは話し合いをしないとか、そういうような狭い考えを持たないものであることは言うを待たないのであります。もちろん中崎委員は日中間のことをいろいろ御心配になっての御発言ではありますけれども、聞いておりますというと、中共側の言うておることをそのまま私に対して非難として与えておられるようでありますけれども、そうでなしに、ほんとうにまじめに、日本人として私はこの問題と取り組んでいきたい。ただ、社会党のお考えとわれわれの考えとの間に違うのは、今日において政治的な国交回復ということを前面に掲げて、そうしてこれを打開しろという考え方と、それは現在の状況においてはなかなかむずかしいのだ、われわれは実質的の貿易やあるいは文化の問題を積み重ねていくというところに違いがあるだけであります。それ以外にわれわれは決して敵対あるいは非友好的な考えを持っているものではないということだけを重ねて申し上げておきます。
○楢橋委員長 中崎委員、もう時間が……。
○中崎委員 それでは最後に……。今岸総理は私が中国のいうようなことを言っておると言いますが、一つにはあれだけ戦争をやってあれだけの被害を与えて、しかもそれに対して向うがその大きな損害賠償のことについて要求するという考え方でなしに、十分に話し合いをする用意がある、こういうことと、一つにはもう少しこっち向きにならないというと、ほんとうに貿易の問題もできぬし、お互いに将来の道がふさがれて、一歩も前進できないのだが、その点についてもう少し考え方を変える用意はないかということを言っておるのであって、何も私は向うの代弁でもなければ、向うのいいなりのことも言っておりません。だからあなたは真にあの過去の行為に対して何らの反省をいまだしておられないのか、あるいはもう全然前向きといいますか、友好関係のことについて少しは思いやりのあるといいますか、一歩進めるような、相手があるのだから、いつまでも現状ではだめなんだから、一歩進めるような努力をしてみる、こういう考え方をしてみるというふうな用意があるかどうかということだけをお尋ねしておきたいと思うのであります。
○岸国務大臣 先ほど来申し上げておるように、適当な機会をつかんで話し合いをして、この問題を解決するという心がまえで私どもはおります。
○楢橋委員長 午後二時再開することとし、暫時休憩いたします。
    午後一時四分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時二十五分開議
○楢橋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。周東英雄君。
○周東委員 私は自由民主党を代表いたしまして、ただいま提出されております予算案及び全体の経済政策、財政金融政策について、総理、大蔵大臣、外務大臣、その他関係閣僚に質問いたしたいと思います。
 その前に一、二外交の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。第一は日韓問題であります。日韓問題につきましては、何といってもその中で日本の国民に非常な関係のある問題は、李承晩ラインの解決の問題であります。これにつきましては二十七年以来足かけ八年、正味七年、政府当局におかれましても非常な御苦心をなさいまして、日韓問題解決のためにかなりの譲歩を重ねてきておられます。にもかかわりませず今日まで解決を見ないのでありますが、その解決を見ないで交渉が中絶しておる原因はどこにあるか、政府の御見解をまずお聞きしたいと思います。
○藤山国務大臣 ただいま御質問のありましたように日韓会談は相当長時間かかっております。過去におきますいろいろないきさつは別といたしまして、昨年春再開をいたしまして以来の経過から見ますと、日韓会談において解決しなければなりません問題は、李ラインの問題、あるいは文化財の問題、財産請求権の問題、船舶の問題等種々ございます。また朝鮮人の国籍の問題等につきましても問題を解決して参らなければならないのであります。しかし日本側から申しますと、一番重要な問題は言うまでもなく李ラインの問題であります。この問題は漁業委員会において取り扱うことにいたしておるわけであります。昨年四月日韓正式会談が再開されて以来、この問題の韓国側の委員長が、韓国内の政治的いろいろな事情のために、しばらく日本に来られませんでした。従いまして、そのため八月末まで漁業委員会を開会する運びに至っておりません。ようやく来られましてから漁業委員会を開会することになりまして、準備的ないろいろな話し合いの上で、日本側が一つの案を出しましたのが昨年の十月であります。それに対しまして韓国側としては、その案では自分たちとしては交渉の基礎にできないという話でありましたので、その後日本といたしましては、魚族保存の立場からいたしまして、一つの案を韓国側に十一月末に提出いたしたわけであります。それに対しましていまだ韓国側から返答をいたして参っておりません。右ようの事情で漁業委員会の開会がおくれております。文化財の返還問題でありますとか、あるいは船舶の問題でありますとかにつきましては、韓国側からいろいろな案が出ておりますけれども、われわれといたしましてはこれらの案は、ひっきょうするに日本といたしましては、漁業委員会を中心とした問題がある程度解決を見るのと並行して参らなければならないと思うのでありまして、それらの問題について日本側においていまだ具体的な対案を示しておりません。右ようの事情のために今日まで延引をいたしておる次第でございます。
○周東委員 経過はわかりましたが、私はこの李ライン問題に関しましても、政府の提案を漏れ聞くところによりますと、非常に常識的な、しこうして国際間にだれに示しても納得のいく案が示されておると聞いております。公海における魚族保存、資源保護という立場に立って、魚というものが現在生きておる人間だけのために取り尽されることはいけないのであって、あくまでわれわれの子孫にもこれを残していって、人類のために保存するという立場において、資源保護の立場からじっくり調査して、しかる上その公海に出漁する両国間の漁船の船数を制限して、これが保存をはかろうという立場に立って、李ライン問題を解決しようというような提案をされておるようでありますが、聞くところによると、韓国側におきましてはあくまでも李承晩ラインというものはそのまま認めて、李承晩ライン外において日本の提案のごときものをのもうという話も聞いておりますが、私ども今日考えますのに、日本の正当な要求、正当な提案の内容というものは、むしろ今日の場合となれば広く世界にも公表して、そうして日本の主張はいかに正しいかという立場に立って交渉を進めることが一つ必要であろうと思いますのと、それからもう一つは、日韓会談につきましてもいろいろな線から向うの関係においての交渉があるやに聞くのでありますが、私は民間外交の立場から言いまして、政府がおやりになることはもちろん必要である。またその他の方からいろいろな縁故関係をもって話を進めて会談の進捗を助けるということについては、決して異議はないのでありますけれども、すべての問題は一本の外務省なら外務省の筋を通していくようにしなければ、いろいろな線からいろいろな案が出て参つりますと、どうもその点解決が思わしくないと思うのでありますが、そういう点について今後どういうふうな処置をとられるか。私は今日までの政府側のやってこられたあとを振り返ってみて、この重要な李ライン問題の解決をするために、相当に譲り得ないところまで譲って隠忍してきたものだと思います。今日の場合においては、この正当なる提案については世界各国にもよく示して、そうして世界の世論に訴えてもその正当性を貫くだけの覚悟と、交渉に当っての一元性というものを一つ確保して、断固たる方針で臨まれたいと思うのでありますが、これに対する外務大臣の御所見を承わりたい。
○藤山国務大臣 今回韓国側に提案しております日本の魚族保存、資源保存という見地からの案は、一定地区を限りまして、その中において隻数もしくは漁獲量等を相互に委員会を作りまして決定していくという、まことに公正な案だと思うのであります。農林省当局と相談の上で作りまして、これを提出いたしておるようなわけであります。従いましてこの線を後退するようなことは、私ども現在考えておりません。ぜひともこの線において妥結をはかるように努力して今後も参りたいと思っております。民間各方面の方が日韓会談を側面から援助をされ、もしくは友好親善の立場からいろいろ話し合いをされることを私どもは拒否はしておりませんが、外交交渉そのものは外務省でやっておりまして、代表団を作りまして首席代表を任命してやっておりますので、一本化していると考えております。
○周東委員 その点につきましては、もっと国内的にも国際的にも要求の内容というもの、提案の内容を知らしめることが必要じゃないかと思う。日韓会談はどういう形において進められているか、ことに李承晩ライン問題についてどういう形で今やっているのかといこうとは、これは外交の秘密を守らなければならぬ場合もありますが、やはり日本の正当な要求というものは国民が知っておることが必要だろうと思う。私どもは政府が苦心されているその提案、その交渉の内容について、非常な公平妥当性を持っておると思う。これをしもいろいろな理由をもって拒否してくるところに向うに無理があると思うのですが、そういう点を国民は知らないのじゃないかと思うのです。そういう点につきまして重ねて今後の御努力をお願いいたします。
 次に私は日中問題についてもう一言申し上げておきたいと思います。日中問題に関しましてはいろいろと午前中も社会党の諸君からのお話がありました。私ども承わっておりますと、どうも日本の政府だけが中国を敵視して相手にならぬようなお話がありました。まことに遺憾に思います。私どもは今日までの経過において、日本政府が中国を敵視しておるとは思わぬのです。いろいろな事情において、今日の国際間の事情において、日本が台湾政府を承認しておる現在において、中国を直ちに承認をする形はとれないということは、これは理解が得られる問題ではないかと思う。従ってかって社会党の諸君であったと思いますが、中共に参られて貿易の問題について交渉のあったときも、向うの言い分をかりれば、今の保守党の政権を相手にせぬでも、民間の貿易は民間で協定をしたらいいのだというお話で進められておったということは聞いております。そのことば中共におかれても日本の政府に対する立場を理解して、ともかく貿易、文化の協定等に関しては民間同士でやっていこうという腹がまえが私はあったのだと思うのでります。だからこそ少くともあの当時から二年にわたっては、貿易は民間で進められておった。また今日貿易の問題が非常に中心になっておりますが、日中間における漁業の問題にいたしましても、東シナ海、黄海におけるトロール底びきの漁業に関して、これは関西以西の都市に対する蛋白資源の供給源として大きな力を持っておる。これもまたいろいろないきさつはありましたが、政府は相手にしないで民間の協定で十分であるということで民間協定が結ばれ、二年が過ぎて去年が三年目でありますが、たまたま国旗問題その他関係のことが起ったことを奇貨としてと申しますか、この機会に全部これを破棄する形をとって参られたのは、まことに遺憾に存ずる次第であります。しかし私はそういう面においては、先ほど総理も繰り返し答弁されているように、いろいろ難くせをつけて一方的に考えれば別でありますが、日本国民として考えたときに、中国を敵視して政府が政策をとっているとは僕らも思わぬのであります。その点につきましては、むしろ従来中共がとってこられた日本の立場を了解して、直ちに承認問題を前提としての政府間協定というものの困り難さを理解して、そうして民間協定を進められた形を進めるように、これからの話し合いを進めてもらいたいと思うのです。きのうも本日も外務大臣は、要すれば大使級の者の相談を始めさしてもよろしいという話も出ておる。これはしかし実行に入っておらぬのじゃないか。私はむしろそういう点については積極的に、あるいは国連におられる大使等を通じて――国連には向うは加入しておりませんが、その他の場所におる大使との間に懇談を積極的に進めてみたらどうか。ことに私は、郵便協定というものについてはできておったかと思うのです。これはま、だできておらないようですが、あるいは海難救助に関する規定というような協定というものは、無条約のいろいろな国の間においても、こういうものは人道上の立場において結ばれている先例がほかにもあります。そういう立場から考えると、まずそういう面から話し合いをつけつつ、たび重なって、そこに親近感を持ち、日本の誠意も認められ、向うの誠意も知ってだんだん接近するところに、さらに貿易協定などにつきましても、両国協定につきましても、政府間協定というものをやっていくことができるのじゃないかと思う。またそのことは常に中共の承認問題とは別に考えてもらうことはできないのか。この点について大きく積極的に踏み切って、話を進めるということでなければならぬのじゃないかと私は思うのであります。どうもその間に非常に妙な感情が動き、それを利用され、むしろ民間の生活上非常に苦しんでおる立場を利用してと言ってはあれですが、そういう点で国内において早く承認をせよ、しからずんば協定は進めないのだというような形をとられることは、私は中国のためにも惜しむものでありますから、そういう面については総理並びに外務大臣はもう少し積極的に話し合いの場を持ったらどうかと社会党も言っている。それはあくまでも中共承認を前提とせずしての話し合いを進めるということも、前に一歩進めるということであると私は思いますが、そういう問題については総理はいかがお考えでありますか。
○岸国務大臣 午前中中崎委員にお答え申し上げましたように、私どもは今日の国際関係から言い、特に中華民国政府との間の条約関係を考えますというと、こういう状態のもとにおいて国交を正常化し、中共との間にこれを承認するというようなことをやることはとうていできないのであります。しかしながらこれと離れて貿易の問題やあるいは文化交流の問題や、あるいはまた郵便その他の技術的な問題等に関しまして、人道的、技術的な問題等に関しまして話し合いをすることは、これはちっとも差しつかえないことであるのみならず、今日においては適当な機会を見てこれを話し合いをすべきものであると思います。しかしその前提はあくまでも今日両国の置かれている立場というものをお互いによく理解して、日本において直ちに国交を正常化すというようなことはとうていできない立場にあるということをよく理解してもらって、しかも両国の友好関係やあるいは将来のますます密接な親密な関係を作り上げるというために、これらの問題をそれと離れて話し合うのだということを両方ともよく理解して話し合うということは、非常に望ましいことであり、またそういう意味におきまして、そういう機会をできるだけつかむことに努力していきたい、かように考えております。
○藤山国務大臣 ただいまお話のように、郵便協定でありますとか、気象の協定でありますとか、あるいは海難救助の問題でありますとか、そういう問題につきましては適当な機会にこれを両国間の話し合いにしていくことは、政府も考えておるところであります。ただこちらからそうした問題を持ち出しますときに、何か誤解によって、頭から拒絶されるというようなことがあっても相なりませんわけであります。昨年五月以来われわれが静観を続けて参りましたのも、そういう情勢があっては相ならぬというような考えからやってきたわけでありますが、今後情勢が変りますれば漸次そういう機会をつかまえてやって参りたい、こう考えております。
○周東委員 ただいま総理及び外相のお話の点につきましては、今日の事態において、国連におられる日本の大使を通じて、ヨーロッパにおけるソ連の大使とまず話を進めるとかいうような打診といいますか、折衝の機会を積極的にしばしば持たれていくことが、一つの解決のかぎを持つことになるのじゃないかと思う。この点については、どうか慎重な考慮も必要でありますが、そういう形で御考慮を実際的な行動に移されることが必要であろう、かように考えております。
 次に私は、日ソ問題について一言総理の御見解をただしたいと思います。日ソ間における平和条約の締結ということにつきましては、去る三十年の八月でありますか、鳩山元首相に非常な御苦労をいただきまして、相当なところまで進んだわけでありますが、最終におきまして領土問題の了解が成立しないために、残念ながら平和条約は結ばれないで、領土問題を継続して後に審議を進めるということを条件にして、共同宣言の形で日ソの国交が回復された形になっておることは御承知の通りであります。しかるにそれ以後足かけ四年三カ月経遇いたしておりますが、毎年繰り返されることは、漁期を控えてのサケ・マスの漁獲数量の交渉だけが繰り返し進められて参っております。これは現下の事情やむを得ぬとはいえ、国民の間には何らか割り切れないような格好になっている。一般に領土問題は、あとで継続審議をするということになっておりますが、政府からは別に積極的な働きかけもないようであります。国民から見ると、あれはあれで済んだのかしらん、これで実質上そのままさっと進めてしまって、国民の記憶から忘れられてしまうということになるのではないか。今日安保条約の改定をめぐりして、沖縄、小笠原島に起ける施政権の返還とか、あるいは潜在主権の問題が議論されておりますときに、国民が非常に要望しており、平和条約交渉の際に問題になった領土問題の解決をあとでするということがそのままになっておることは、私は何としても国民に相済まぬことであり、残念なことだと思うのであります。おそらく政府におかれすしても御苦心のあるところは察しますけれども、一体この領土問題の交渉は、いつどういうふうにして今後進めておいでになるつもりでありますか。今日の国際情勢下において、なかなか困難なことではあるとは思いますけれども、繰り返し繰り返し日本国の正当なる主張は、世界の世論に訴えつつも交渉をなしていかなければ、どうも世界情勢がむずかしいからじっと黙っておるというのでは、いつの間にやら消えてしまうのではないか。国民の気魄も衰えてくるのではないか、こういう気がいたします。そういう点について総理の御見解を伺いたいと思います。
○岸国務大臣 日ソ間において平和条約を締結していきたいという考えは、日ソの交渉の最初から私どもが念願しておるところであります。平和条約である以上、領土についてのはっきりした両国の主張を取り入れて、この問題を解決しなければ、平和条約が結べないという経緯から、共同宣言によって国交正常化をしたことは、今御質問のあった通りであります。しかして私どもは、この北方の領土については、一面においては平和条約において領土権を放棄した問題がございます。同時にまたわれわれの領土についての考え方として、開聞以来かって外国に属したことのない部分、すなわちち択捉、国後を含めての南千島の問題は、わが国民の一致した、また歴史上きわめて明白な、日本領土に属しているものであるという点を考えまして、これに対する主張をわれわれは一貫して持っておるわけであります。しかるにいろいろな機会において、ソ連側においてはすでにこの領土問題は解決しておるのであって、歯舞、色丹はこの平和条約を結べば返すが、あとの地域についてはことごとくソ連に属しているのだというような主張を繰り返しております。ここにおいて私はこの共同宣言によって両国の国交を正常化し、同時に今おあげになりました年々の漁業交渉以外に、あるいは貿易の協定をするとか、貿易関係を深めていくとか、あるいは文化協定等によって文化の交流を盛んにして、そうして両国の理解を深め、特にソ連側においてこの日本の国民が領土について考えておる動かすべからざるこの国民の信念、またそれを裏づけるところの幾多の歴史的事実というものを正当に理解して、日本の要求に対してソ連側が譲るというようなこの日本側の状況の理解を進めることが、この問題を解決する唯一の道である、かように考えて、自来私どもはこの共同宣言によって国交が正常化され、両国がそれぞれ大使を交換し、あらゆる面において両国の理解を進めるような措置をとってきております。さらに北方の近海におけるところの安全操業の問題は、御承知の通りわれわれとしては非常に緊切な問題として起っておる。これに対する交渉の途上におきましても、ソ連側は国後、択捉のこの日本側の従来の主張を捨てて、ソ連の領土であるという問題をはっきり承認するならば、この問題についての解決はするというような主張をしておりまして、われわれはそうでないのだ、やはり領土問題について終始変らぬ国後、択捉についてのわれわれの固有の領土権を主張するのだ、しこうして安全操業の問題はそういう問題に関連なくしてむしろ人道的な立場からこの問題を解決すべきものであるというふうな交渉をしております。しかし領土に関する考え方において、いまだ両国の主張が近づいておるというふうな傾向が見られないことは、非常に残念であります。しかし私どもは日本のこの択捉、国後に対する領土権の主張そのものは、これは絶対に捨てることはできない、曲げることはできないことであって、ソ連側がこの正当なる主張を理解して、そうしてわれわれの主張を認めてくれるように、なおあらゆる面から努力をしていかなければならぬ。それには日本人のこの主張というものは単に自由民主党がこれを主張しておる、あるいは単に岸内閣がそういう主張をしておるのじゃなしに、日本の全国民がこれに対する強い要望があるのだ、一致した意見であるということをよく理解せしめるように、あらゆる面でなお努力していって、この平和条約の問題、漁業の問題は解決したい、かように考えております。
○周東委員 総理の御苦心もよくわかりますが、どうかこの問題はなかなか容易なことではないと思いますけれども、日本国民の悲願としての、また正当な要望としてのこの要求は、粘り強く一つ主張していってもらいたいと私は思う。同時に今お話のように、自由民主党としてはすべて党員は一致した形でおると思います。同時に議会の勢力としては社会党、また国民一般に対しましてもこの正当な理由と国民の悲願を機会あるごとによく宣明をして、共同してこの返還の望みを達せられるように今後とも政府の努力を願ってやみません。
 次に経済問題に入りますが、まず三十四年度の経済の見通しについてでありますが、政府は三十四年度の経済目標を国民総生産において名目上六・一%の増、それから輸出を三十億ドルの達成、国際収支の黒字を一億六千万ドルの確保ということに置いておられますが、この点は大蔵省並びに経済企画庁、通産省を通じて一致した御見解でしょうか。
○佐藤国務大臣 これは政府部内一致した意見でございます。
○周東委員 私はこの目標につきましては、私ども妥当な一つの目標であり、かつて立てました平均年六・五%の経済成長、これを目標として五カ年計画を立てて参ったのでありますが、三十三年度の国際収支の黒字を見ますると、大体四億六千万ドルの見込みであったようであります。最近の状態を調べてみますると、すでに三十三年の年末の統計で見ましても、黒字は五億三千万ドルに達しております。このまま推移すれば年度末にはおそらく六億ドル前後ということになるのではないか。この点は見込みよりも非常によくなっておるのであって、私は決してこれが悪いとは申しません。また貯蓄の増加する趨勢を見てみますと、これも三十三年度の目標は大体一兆三千億円でありましたが、このまま推移すれば大体年度間で一兆六千億円くらいになって、はるかに予想を上回るという状況だと思うのです。このことは非常によいことであって、これを私は悲観はしないのであります。しかしよく考えてみると、非常な危険な状態を含んでおるのではないかという気がするのです。いろいろな統計学者の発表によりますと、偶然かどうかしりませんが、戦後における景気不景気の循環は二年置きに来ております。大体二十八年、二十九年が非常に不景気であります。三十年、三十一年が非常に景気がよかった。三十二年、三十三年が引き、締めをして不景気であって、ちょうど今度の三十四年が三十年、三十一年にかけた状態に似てきておると思うのであります。景気の循環ですから、その意味においては経済学者の言うようにあまり景気だ、不景気だといって喜んではいかない。また悲観してもいかない。私どもそうだと思うのですが、しかし国の経済政策というものには一つの目標がなければならないと思うのです。こういうふうな状態になっておるからいいというのではありませんが、ちょうど三十年、三十一年に似ておる今日であるがゆえに、きのう社会党の勝間田君が質問いたしました心配と同じ心配を持つ。これは社会党の勝間田君の質問でありましたが、私は考え方としては当然な一つの心配だと思うのです。そこで通産大臣にお伺いしますが、今日設備の過剰投資になっておる分はどれだけありますか。
○高碕国務大臣 今私は正確な数字を持っておりませんけれども、大体において七五%くらいの稼働率がほんとうだと思いますが、現在におきましてはまだ七〇%くらいしか働いておりませんから、その間が過剰設備になっておると思っております。
○周東委員 この点につきましては私の調べによりますと、大体三十三年度までに設備の過剰投資になっておるものを金額的に見ますと、九千五百億ほどあります。そこで三十三年度に着手して三十三年度末までに完成するのが約一兆二、三千億になります。そのうち約二割というものを大体近代化された設備に置きかえてみますと、約一兆円ほどが増加した設備になると思います。これの動くのが四半期に二千五百万ドルくらいのものとしますと、これに加わった額が現在設備過剰投資になっておる。そこで私はこういう事態があると思う。このことはちっとも心配してないのです。もしもここに有効需要の働きが出て参りますならば、設備の増加というものをしなくても供給は間に合うという事態を示しておると思う。きのうもお話が出ましたが、消費は非常に堅実な歩みをして、あるいは今後伸びるかもしれません。これは今度の大蔵大臣の組まれた予算によりまして、公共土木事業その他各般の方面で、有効需要を補助する立場の事業に対して相当大幅の金をつぎ込んでいる。これに対する財政投資という面から言えば、消費の方はある程度伸びます。しかし有効需要の一つの姿としての設備投資はもう要らないはずだ。残る問題は、これをどういうふうに供給の増加になったものに使うかということだが、これはもっぱら輸出増加に向けられるものでなければならないと思う。どれだけ伸びたって私は心配しない。いい形になっておると思う。そういう面におきましては喜ぶべき状態でありますが、そこにきのうも出ましたように、今日の財政の規模が非常に大きな姿になってきて、二千二、三百億というものが金融においての散布超過になる。これは政府の金でありますが、民間投資は八百八十億ほどであります。これは政府が電源開発とかあるいは開発銀行に出される公募債であって、これ以上の金が民間に出るということは御承知の通りだと思う。現在は貯蓄の増加趨勢を示しておると私は思う。ところがこの貯蓄というものは全体の銀行その他民間金融機関を通じて十兆近くにもなっておる。そのうち貸付金が八、九兆ある。こうなるとほかの貸付その他における金融というものを一体どうするかということをよほど考えていかないと、過剰投資になっておる今日、景気がよくなってきた、また金が出てくるということになると、ちょうど三十年の中ほどから三十一年にかけての状態を繰り返すことになるのじゃなかろうか、この点についてどういうふうに金融面をお考えになっておるか。今日はもう金融も財政も概して予算と同じような形に動かせる金です。それだけに財政金融の一体化を主張されるのはけっこうだが、その間に何らかの政府のお考えを持たなければ、景気がだんだんよくなってきておる、三十四年度の財政見通しよりよくなってくるという状態は、下手をすると三十年、三十一年の状況を繰り返して、あまり景気にまかせてばたばたといくと、今度もう一ぺん引き締めの状態を起さなければならぬ、こう私は考えるのです。大蔵大臣のお考えを伺っておきたい。
○佐藤国務大臣 金融の面から経済の伸びというものと一体どういうように関連して見ておるか、景気の変動が二年ごとに起きておるじゃないか、こういう御指摘であったと思います。お話にありましたように、昨年の十二月は銀行預金が一兆三千八百億でありました。大体の計画としては九千百億程度のものであったのであります。計画よりも一・五倍という非常に銀行預金は伸びて参ったのであります。また先ほどお話になりましたように、国際収支の面においても非常な黒字基調を続けてきておる。この面から見ましても、民間金融は非常に緩慢な状況になっておる。これは御指摘になるまでもなく緩慢な状況でございます。民間の金融に対してはどこまでも自由経済で、私どもは統制をやらない、こういうことを申しておりますので、そこでそういう統制をやらず、これを自由にしておるなら、かつてのように、またずいぶんひどい事態を招来するのじゃないか、何か民間資金をうまく指導して、有効適切な方向に使わすことはないのか、こういう意味の御指摘だろうと思うのであります。ただいま通産大臣からも申しましたが、設備投資の金額は、三十四年は継続的なものとしては引き続いて出るが、総体の量としては幾分か下るだろうということを申しておりますが、過剰施設だからといって全然設備投資を必要としないわけではない。やはり科学の進歩といいますか、技術的な向上に順応する意味においての、設備の交代というものを考えていかなければならない。新しい近代化をしていかなくてはならない。そういう意味の設備資金というものはもちろん必要だと思います。そういう意味で、経済が伸びていく場合におきまして、おそらく現行の設備を一体どの程度までフルに使っておるか、通産大臣がお話のように、七五%の稼動ならさらに設備増加の機運が起るのだ、七一%ならまだ設備増加ということを考えないでもいいということも言えますが、同時に他面におきまして、今日の技術の進歩におくれをとらないような方法を、実はとっていかなくてはならないということだと思います。
 ことしの無字基調なり等から見まして、大体散超は二千四百億だと言います。預金が非常にふえる、あるいは散超が二千四百億だとか、こういうようなことになって参りますと、もちろん自由な金融だといいましても、政府の強い指導が要ることは、申すまでもないのであります。今回の三十四年度予算を編成いたしました際も、この点に特に注意を喚起されまして、今後金融の実情に応ずるように、適時適切な措置をとっていく。特にこういう予算編成としてはまれに見る、最後に一項目付記をいたしておるのであります。ただいまも申されました一体的運用となりますと、いかにも民間資金から政府資金への積極的協力という方を特に具体的に運用という意味で表現されてくることと思いますが、今回の予算執行に当りましては、三十二年度にわれわれが苦い経験をなめた、そういうことのないような意味においての、特に注意を怠らないようにしよう。その意味において日本銀行が持つ金融の調節機能というものを十分に一つ働かせていこう。それには適時適切な情勢の把握をいたしまして、それに対する対応策を立てていこう。問題になりますことは申すまでもないことですが、通貨価値を安定さしていくということが根幹になるのであります。その意味において、金融の正常化というものを推進していかなければならない。散超になるとかあるいは非常に民間市中銀行、地方銀行等に預金が吸収されるといたしますと、日本の金融機関の通弊だといわれていた日銀依存のあの姿を、この際にやはり直していかなくてはならない。さらにまた金融機関が自由であるために自由競争をするが、過当競争などはもうどうしても防いでいかなくてはならない。私どもは銀行検査、その他で常時指導監督はいたしております。しかし同時に金融機関の持つ日常の働きは、これは自由闊達にやらしたいという意味で、統制などをする考えはございませんが、この意味においては民間銀行、金融機関そのものも自粛した計画を持った方法により金融操作をしていただきたいというのが私どもの願いであります。
 もう一つ私どもが心配しておりますのは、ただいま申すような原則的な考え方を持ちましても、一般予算が増額される、あるいはまた財政投融資が膨張する、こういう場合において、民間需要に対する関連的といいますか、連鎖的な刺激というものが必ずあるわけであります。そういうものが十分理解されて、そうして民間金融が適正でないと私どもが心配するような事態、また周東さんがただいま御指摘になりましたようなあやまちを繰り返さないでもない、実はその点では特に引き締めていくつもりでございます。引き締めるというのは、注意を怠たらないつもりでございます。
○周東委員 財政経済政策として、通貨価値と経済の安定的成長ということを目途としておられることはよくわかります。私もこれに同感であります。それらのゆえにこそ、経済の成長というものは毎年々々あまり変化なく、平均的に進むということが一番望ましい姿であります。景気の変動が大きく、時によって非常な景気変動が起るというような形をとることは、非常に悪いことでありますので、その意味においても経済成長の安定ということを望むのは、私どもの最も強い考えであります。この点は一致しております。それがゆえに、今の問題について十分御考慮はいただけると思いますが、私が心配するのは、三十年、三十一年の当時においては、そのときは当時自由党でありましたが、これに対して大いに資金規制という統制はやるわけではないけれども、資金委員会等を設けて、ある程度の政府の指令をそこできめたらどうかということを指摘したけれども、そういうことをしないでも、金融機関の自主的調整にまかしておけば大丈夫だという話で、それもそうだ、大体自由主義経済をとるわれわれとしては、できるだけ統制はやりたくない、規制はやりたくない、自主的調整にまかせつつ指導をやることが、私は本来でなければならぬと思いまして、それをやったのです。当時は、実際の動きは別の行動になった。今日の場合も同じだと私は思うのです。大蔵大臣はそこの点は十分引き締めていただけると思いますが、こういう点については、実際上、今後とも十分の御注意を願った方がいいと思います。
 それから、そういう点について間接的に調整をする方法としても、やり方は金利に対する操作、あるいは今日いわれております預金準備という形、あるいは予算編成当時問題になりましたが、これは私のかねての持論でありますが、電源開発とかあるいは開発銀行を通ずる輸出関係の振興に関する経費とかいうものは、政府出資の形において財政資金が出、またそれを助けるために民間から八百八十八億の公募債が出るという形も一つの方法でありますが、道路とか河川、治山治水というような公共土木事業であって、それが長い年月の間、国民のすべてにおいて恩典を受けるものについては、今日のタック・スペーヤーだけが税金によってその整備等に関して財源を負担することでなくて、やはり今後における、これから助けになる意味においても、長くあとから少量ずつ分担させつついくという形において、今日のような緩慢な時代において、民間資金を、国債あるいは公債等において吸い上げて、これを政府の思うままに公共事業に使うという方向が考えられてしかるべきじゃないか。しかし、そのことにはおのずから段階がありましょう。直ちに一般会計において国債を出すという形を一ぺんにとるがいいか悪いかは、慎重に考えればよろしい。しかし、政府の特別機関といいますか、特別会計において、道路とかあるいは河川あるいは治山治水というようなものについて、公債の引き受けをやらせつつ年次計画を立て、すみやかにこれが完成をはかるということが一つの政治の行き方ではないか。そういう形で民間に多量に集まる資金を吸収して国家的に使われる方向へまとめていくということが、一つの金融に関する調整になるのではなかろうか。その際にはもちろん金利等に関して、あるいは公債発行に関しましては、政府機関の出す公債でありますから、これをある場合においては日銀に引き受けさせて、日銀がマーケット・オペレーションによって銀行に引き受けさせるために、その間における金利の調整をさせるということは起るでしょう。また、先ほど話しました預金準備のような形の金が、あれは無利子でありますね、従って、無利子の金を一〇%も五%も取られては困るということで、なかなかまとまっておらないようですが、そういう点においては、預金準備の金でありますから、ある程度の金をつけて公社債に応募させて仕事をさせるという方法はやはりこういう場合における一つの金融の調整の働きをなすものではなかろうかと思います。こういう点について、総理並びに大蔵大臣の御見解を聞きたい。
○佐藤国務大臣 散布超過という点から、また民間金融が緩慢だという点から、いろいろの案をお考えになっていらっしゃるように思います。先ほどの説明にもう一つつけ加えておきますが、ただいま財界を通じて議論になっておりますのは、いわゆる景気過熱論といいますか、金融過熱、こういう議論が盛んであります。これなどは、過去の金融のあり方について、自粛して警戒している現われだと私は思います。三十四年をこのままでいくならば、下半期になれば設備投資が非常に過大になるだろう、いわゆる過熱論といいますか、民間にこういう声が出ているということは、過去の苦い経験から、みずからが警戒してかかっている姿でありまして、こういう一般の動向というものも、政府自身としては十分つかんでいかなければならないと思います。
 そこで一画、今お話になりました準備預金制度を創設したらどうか、これは確かに一つの案には違いないと思います。私どもは準備預金制度を創設する前に、やはり日銀から借りているものをとにかく早く日銀に返してくれ、まず第一は銀行自身がオーバー・ローン解消の方向に努力することが必要だろうと思います。しかし、要すれば、ただいま言われたようなことも今議論されておるのでございますので、もちろん今すぐやるとか、やる準備を進めておるとかいうわけではございませんが、準備預金制度というものに対する研究も絶えず続けておるつもりでございます。また、民間資金を政府が国債その他の方法で吸い上げてはどうかという御議論であります。ことに長期にわたるものについては、長い間において国民がそれを負担する、こういう建前で公債論も一つのりっぱな議論だろうと思います。しかし、私どもが一番気をつけなければならないことは、先ほど申し上げたように、通貨価値を安定さす、その面で支障のないということを第一に考えていかなければならないと思います。従って、今日財政投融資の面で八百八十八億というものを考えて、民間の公募債その他を、そういう方向で起債等の引き受けを願っておりますが、絶えず考えておりますことは、通貨価値を安定さしていくのである、こういう議論で、実はまだ時期が早いということを考えておるのであります。最近の日本の円の価値そのものも、欧洲における交換性の回復等から、やはり円自身についてもいろいろな議論が出ている。円為替そのものについて、あるいはドル為替等との比率等から、今はいろいろな思惑などもありますが、絶えず気をつけていかなければならないのは、円というか、通貨自身の価値を安定させていく。そうしてその線から支障のない面は、もちろんいろいろ考えていっていいことだと思いますが、しかし、私は、今御指摘になりましたように政府機関、たとえば鉄道あるいは電電公社、こういうところの資金の獲得方法については、相当資金を認めて参ってはおりますが、まだ道路その他の特別会計のものについてまで公債を発行することは、今の状況では私ども賛成しかねる。いろいろと御指摘になりましたようなこの種の問題は、将来長く国民自身が払っていく、こういう意味で公債が適当じゃないかという御議論、これは、それだけの議論は了承できることでございますが、やはり通貨価値の安定という点を非常に重要に取り上げて参りませんと、日本の経済のあり方として、その健全性を確保していく上から、この点が特に重大ではないか、かように考えております。
○周東委員 大蔵大臣のお話はよくわかりますが、今日ことしの予算で直ちにそれをやれというわけではありませんが、私は、今お話しになっているように、これはあくまでも通貨価値の安定と、安定した経済成長を願うということの立場においての資金の運用の仕方だと思うのです。従って、野放図に公債を発行せよとか、公社債を発行せよというのではなくて、一つの行き方を――どうしてもそこにこういう資金の要る道路、あるいは治山治水というような問題について、それに関する公債を発行して、それでやらせる、その資金のやり方についての問題であります。まあその根本には御賛成のようでありますので、将来お考えを願いたいと思うのであります。
 そのくらいにいたしまして、次は貿易問題について伺いたい。首相は施政方針演説においても、「わが国経済の特質から考えて、輸出の増大をはかることは、経済成長の基本的な要件であります。」云々と言っておられますが、最後に後段で、従って、「輸出振興のための施策を一そう積極的に進める方針であります。」とありますが、具体的にこれに対してどういうお考えでありますか。
○岸国務大臣 輸出振興の問題は、日本の経済にとってきわめて重要な問題でありますが、同時にそれぞれの相手方の国の事情等もありますので、これに対する施策はなかなか一本に、これならこれで輸出が振興できるのだということはなかなか言いにくいと思います。要は一方において国内における各種産業の体質を改善して、生産性を向上して十分国際競争裏に立ってたえ得るような体質を持った産業に育て上げていくということが、内においては必要である。外においては、やはり日本商品としての将来性も考えて、確実であり、かつ有望な市場を確保していくということであろうと思います。加うるに、日本の貿易の一つの欠点は過当競争が行われるということでありますから、これに対しても適切な処置を講じていく必要があると思います。また、今申しましたこの市場の確保につきましては、現在購買力のある、あるいはアメリカであるとかあるいはその他の自由主義国、先進国における市場というものを伸ばしていかなければならぬことは言うを待ちませんが、同時に、未開発地域における購買力を作り上げて、将来の日本の貿易の何に充てるということ、それから共産圏の何に対しましても、先ほど来日中貿易についてお話をいたしましたように、われわれとしてはやはりこれらの地域に対する貿易の伸張というものも考えていかなければならぬ。いろいろな方策を総合的に行うことが必要であって、なお具体的な何につきましては、通産大臣からお答えすることにいたしたいと思います。
○周東委員 私は、ただいまの総理のお考え及び現在とられんとしておる輸出振興に関する一、二の処置に対しては非常にけっこうだと思うわけです。ただ総理も言われましたように輸出振興、輸出振興といっても、これは相手方のあるものだとおっしゃったその点なのであります。ことに日本の商品の輸出市場の確保に努めるというお話であります。日本の市場というものはこれはいうまでもなく戦争中及び戦後における空白時代というものによって昔の市場をだいぶ失った、ここで旧市場の回復ということに関して努力することと同時に、新市場の開拓ということが市場確保について絶対に必要でありますが、これらの市場に関しては、今日、ことに日本として最も関係の深い東南アジア、中近東、アフリカ、中南米という方面が、今後新しい地帯として出てくるのでありますが、こういう方面に対する中ソの貿易攻勢と申しますか、その力は非常に強く動いておる。これらの国々は、御承知の通り、コストなき生産とでも申しますか、非常に生産費の安い形で商品ができて参っております。その上に国営貿易でありますので、これと対抗していくことについてもかなり困難性を伴うのであります。その上、最近は、総理も演説にお述べになっておりますように、欧州十三ヵ国において通貨の交換性の回復をやりました。この結果は、これらの国々はわれわれの最も大事な市場に対しても、どこと取引しても、売っても買ってもいいという形に出て参りました。そこに、将来競争が非常に激甚しなるときに、一体これらに対する方策をどうするかという問題になると思うのであります。これに関して、ただいまお話になりましたような事柄ももとより必要であります。問題としては輸出商品の設備の近代化、合理化等によってコストの引き下げをやる、また先ほど大蔵大臣と問答いたしましたが、金利というものに対する引き下げということが、ほかの問題に関係のない範囲においては、それらのコスト引き下げの大きな要因になると思うのであります。かくして、コストの安い、競争にたえ得る品物を作ったとしても、やはり政治的の攻勢という問題をどうするかということは、私は、政府が大きく考えることだと思う。この点については、私が総理並びに外務大臣にお伺いしたいことは、外務省の在外公館というものの積極的活動というものを考えて、もっと機構の改善といいますか充実に力を注がれる意思はないかということであります。御承知の通り、外務省の在外公館というものは戦前におきましては日本の武力といいますか三大国といいますか、この大きな武力という政治的背景のもとに、あまり経済問題に関しては動かぬでも、外交はやれておったようであります。しかし今日の武力なく、ほんとうに変った日本の姿においてやらなければならぬ外交というものは、経済外交といわれておるこの点に集中せられなければならぬのではないかと思う。総理は経済外交の推進ということを言われる、私は、こういう面においてもっと積極的に外務省の在外公館が活動ができるような形に組織変えを行い、また経費の面においても十分この点を考えて、積極的に活動をなされる意思はないか、こういう点であります。この点を伺います。
○岸国務大臣 日本の外交の上において経済外交の占める重要性については、周東委員の御指摘の通りであります。従いまして、従来の在外公館の構成と今日の構成においては相当に違っておりまして、御承知のように、外務省の本来の役人以外に、通産省、大蔵省等の経済省からもそれぞれ人を派しておるというようなことがあり、さらにまた重要市場に対しましては、市場調査団等を組織して、時々これが側面的に在外公館の活動を助けるようなことも行なっております。しかしながら、現在の在外公館の機構をもってわれわれは決して十分だとは思っておりません。なおその点に関しましては予算の点につき、また具体的の人の配置の問題等につき、十分に考えていかなければならぬ点が多々あろうと思います。今後の問題として十分に考究して参りたい、かように思っております。
○藤山国務大臣 経済外交をやりますために、在外公館の充実をするということは当然なことでありまして、われわれとしても十分努力をして参りたいと思っております。現在大体八十五館ありまして、大、公使が兼任しておりますものは二十一館、計百六館ございます。ということは、そういう意味においては相当館数の割合に人が足りないというところであろうかと思います。従いまして、今後これら現存の館における外務省官吏のできるだけの充実をはかって参りますと同時に、ことに経済貿易等をやって参ります場合には、新しく国を立てましたそれぞれの国に、大、公使館を配置するばかりでなしに、同時に総領事館、領事館等を、貿易状況の変化に応じまして設置して参らなければならぬことでありまして、これらのことを考えますと、在外公館の数ももう少し増して参りませんければ、現在の貿易事情にほんとうに適応するようにはなかなかいかぬかと思います。また外務省の人たちの経済上の常識と申しますか、知識を十分に獲得して、単に政治的な問題ばかりでなく、経済上の問題について十分に処理をし、判断し得るような素質を養って、資質を向上して参りますことも必要だと思います。また現在在外公館に勤務しております者は約六百八十人おると思いますが、ただいま総理も言われましたように、防衛庁職員というような直接経済に関係のない人の一、二を除きまして、大体百余人が経済関係各省から来ております。従いまして、従来の外務省の人の資質の向上と合せて、これらの方に活動していただいておるわけでございますが、将来の貿易構造その他のことを考えて参りますと、もう少し経済各省の方々もわれわれは受け入れて、活動を便利にして参りたいと思っております。
 予算面につきましては、われわれ十分なことを望んでやみませんけれども、しかし今日の財政の状況でありますから、われわれもできるだけ乏しい予算の中で努力をして参りまして、その使命を全うして参りたい、こう考えております。
○周東委員 私は、ただいまの総理のお話もわかりますが、実は調査してみますと、在外公館における経済省関係の役人、あるいは事情を知っておる者の配置ということもありますが、これは非常に少い数であります。ことにわれわれが今後貿易問題に大きく関心を持つ中南米、近東、アジアという方面には、その兼務的な地には経済省の役人があまり配置されておりません。私はそういうこまかいことを言うのではなくして、実はせっかくこの中南米あるいはアフリカ、近東諸国等に配置されております在外公使館の人数が、三人、四人というのが非常に多いのです。これはちっぽけな国だからそれくらいでいいということであるかもしれませんが、これは金を捨てているのではないかと思うのであります。今日の外交官の諸君というものは、相当そこにおって、その地方における政治情勢はもとより、経済問題等あらゆる部分を調査して、そうして日本の通産省なり農林省なりに、何をしとるか、こういう事情でこうやれるというような、こういう形を持ってくるだけのものを置かなければ、三人とか、四人とかおって、ただ看板を掲げているという形であってはいけないのではないか、これはもちろん金の要ることでありますから、貧乏国として、だんだん今日ここまで発展したことはけっこうでありますけれども、これは今日の貿易その他が経済成長の基幹であるということのお考えからすれば、外務省の在外公館をどういうふうに活用して、どういうふうに政治関係においても、経済問題についても働かせるかというならば、三人とか四人とか――しかもそれが公使と、昔の何と申すか知りませんが、若い人が一人か二人おるということでは、これは何にもできない人を置いてあるので、これは置かないでいい。それだけの金をほかに集中した方がよほどいいということになる。こういう意味合いにおいて総理のお考えもあるようですが、これは一つ将来の問題としては積極的に今日から考えていただいたらどうかと思います。
 一例を上げますと、中近東、エジプトというような問題がありますが、ここになんぼの人間がいるかというと、八人おりますが、お金は八万ドル置いてある。一体八万ドルで、そこらの国に、招待外交というと悪いですけれども、そこの商工会議所なり、その方面にたびたび接してやれるかという気持になる。中南米のキューバには四人置いております。金は約四万ドルくらいありますか、スラバヤ三人、これはインドネシアで非常に重大なところであります。スラバヤに三人置いてあって、金は二万五千ドル、こういうようにひねってあります。
 これは一例にすぎませんが、私は個個のこういう問題を取り上げるのではなくして、経済外交推進ということの意味からいいまして、しかも今日の外務省の在外公館の使命というものは日本の貿易関係について大きな力を持っているはずであります。また持たせねばならぬ外交の行き方に対して、一つ十分に慎重な考慮を払っていただきたい。そういう人数がそろっておれば、経済上の調査のみならず、やれ関税を設けられれば、あわてて済んでしまってから大騒ぎするより前に、そこらの議員としっかり平生から接触しておいて、そういう議案が出ないようにすることも必要でありましょうし、通商協定締結の改善、輸入制限というような問題についても、あらかじめそのほかの国の事情から見て、大きな多数会議と申しますか、近隣の諸国からの在外公館が集まって、いろいろな問題について処置する道が一つの行き方ではないか、こういうふうに思うのでありますが、重ねて総理の御所信をお伺いいたしたいと思います。
○岸国務大臣 御指摘のように現在の在外公館は、予算の関係等もございまして十分な活動を期待することができないような面も少くないのであります。これらにつきましては、将来、十分実情に即してこれを充実するように努力をいたしていかなければならぬと思っております。
○周東委員 次に輸出振興に関連しまして、先ほど申し上げましたが、欧州十三カ国が通貨の交換性の回復をいたしました。これに関しまして、先ほど大蔵大臣もお話がありましたが、円の交換性の回復をやるのかやらぬのかという議論があるやに聞きますが、しかし、これは円通貨に関する交換性の回復であって、必ずしもこれによって貿易額がすぐに各国とも変るものとも私は考えない。これは通貨の信用回復であって、物に関する面においては、ドイツとかスエーデンは別として、どこも貿易管理をやっている。自由貿易にはまだ間があると思いますから、その点の心配はあえてしない。しかし、少くともわれわれ従来出た東南ア、中近東その他におきましても、通貨の交換性回復によって、種々の通貨が硬貨としてどの国々に売っても、それさえ持たれればドルにもかえられる、ポンドにもかえられるという格好になるわけでありますから、かなり積極的な攻勢に出てくる。こういう際に、一体日本はどういうふうに考えていったらいいのでしょうか。ごく簡単に……。
○佐藤国務大臣 ただいまお話のありましたように、通貨の交換性を回復したと申しましても、貿易の面で直ちに自由ではないこともその通りでございます。しかし、貿易の面におきましても、順次自由な方向にいくだろうということは、やはり想定して参らなければならないだろうと思いますし、そういうことが考えられれば、それに対する準備をやはりいたしていかなければならぬ。同時にまた、ただいま御指摘になりましたように、今度はそういう面から非常に貿易の面では競争は激化していくだろう。また当方からいたしましても、品物が安く手に入るところでありますならば、地域はあまり限ることはなくなるだろう。それだけです。競争も激しくなるが、当方にとりましても利益もある。とりあえずの問題といたしましては硬貨、軟貨の区別を今までしておりますが、これなどはもう意味もないことです。そういうところから順次こういうものもやめていって、順次その態勢に合うように一つ整えていきたい、かように考えております。
○周東委員 大体その方針は私も賛成であります。ただおそらく、通貨の交換性回復をした次には、関係各国は、国内における外貨保有量を増加するに努めつつ、やがて貿易自由化の方向へ出ると思うのです。日本も、この点においては今から相当準備して、外貨準備といいますか、それに努めなければならぬ。それについても結局外貨をとることが先でありまして、輸出に関して十分な処置を講じていくことが何よりだと考えます。
 これはこの点ぐらいにいたしまして、次に総理にお伺いいたしたいのですが、今度はともかく一兆四千百九十二億、財政投融資金五千百何十億という財政のワクを作られまして、このワクの範囲内で選挙公約でありました減税あるいは年金制度の確立、あるいは道路整備計画、港湾計画その他等々、相当な計画を立てられたことについては、非常にその労を多とするものであります。ただこまかいことについての質問はやめますが、減税に関しまして、国税を減税した、地方税について事業税等々を減税した、これも公約でありますから、私、非常によかったと思うのでありますが、考えなければならぬのは、この予算編成を通じて地方財政に関する処置が十分考えられていないことだと私は思うのです。私も、従来はあまり不勉強で、地方財政はむずかしいから外にいっておりましたが、いろいろやってみますると、毎年毎年繰り返されることは、大蔵省と自治庁との地方財政に関する見積りが四百億も違う。こういうことが一年かかってなぜ出るんだろうかということがだれしも持つ疑いでありますが、それは別といたしまして、地方財政というものは、でき得る限り独立財源を与えて、しっかりと地方財政の確立をはかるという方向へものの考え方を持っていかなければならぬと思う。そこでことし重要な独立財源である法人事業税、個人事業税というものを大幅に減税した。このことは国民全体に対する負担力の軽減から見ればけっこうなことです。そのことに異議を言うわけではないんですが、将来一体地方財政確立のためにどういうふうな点において国税の委譲をし、地方税をどう免除するかということに関して十分な処置を立てられて、そうして地方自治の確立をはかることが私は必要だと思う。これに関して総理の御所見をお伺いします。
○岸国務大臣 御指摘のごとく、地方自治の健全なる育成を考える上から申しまして、地方公共団体に対して独立の安定した財源を持たしめるということは望ましいことであると思うのであります。将来国税及び地方税をどういうふうに考えていくべきか。また地方公共団体の間におきましては、御承知の通り、ずいぶんいわゆる富裕県といわれるところと非常に窮乏な状態にある公共団体があります。また財源等につきましても、そういうふうな貧乏な府県等におきましては、公共団体の地域におきましては、なかなか独立の財源がない。いかなる方法においても求めることができないような地域もあると思います。これらの関係を根本的に検討して、将来の健全なる地方自治を育成していかなければならぬ。こういうふうに私は考えておりまして、その根本を検討して、これに対する対策を考究するために、内閣に各方面の有識者を網羅した税制調査会というものを設けて、国税と地方税を通じて一つ検討して、今御指摘になりましたような点に関する将来の見通しを立てた方策を樹立したい、かように考えております。
○周東委員 総理のお考え同感でありますが、ついては希望があります。今の中央地方を通ずる税制の調査委員会というものを開かれる、これは非常にけっこうなことであって、シャウプ勧告以来地方財政というものがゆがめられたる形になっておる税制に関する改正を徹底的にやっていってもらいたいと思う。ただ、どうも三年計画のように開きますので、大蔵大臣、これは地方財政というものはそこまでじっくり考えておっていいのかという気がするんです。できるだけ早くこれは調査をいたし、いろいろな問題があると私も考えます。相当拙速といっても、今度改正したらそういいかげんな改正はできませんから、しっかりやらなければなりませんが、それにしてもせいぜい二年くらいを目標にして、いかぬときはまた延ばしても仕方がありませんが、三年とはゆっくり過ぎるという気がしますが、地方財政の確立のために、主として地方税関係をどうするか、独立財源を与えて地方財政の確立をどうするか。これは国税の委譲等いろいろ問題が出てくると思う。
 この問題は、この次にお聞きいたします農村の根本政策に対する考えにも通ずるものであります。あまりゆっくりできないのであります。農村においては、国税の減税というものは非常に喜ばれております。あまり所得税を納める階級はなくて二割、今年はまた大幅な減税によって六十万戸ほど減ります。これは非常にけっこうな話です。しかし、一番地方税の負担に困っているのが農村、漁村の実情であります。これは地方財政の実情から考えますと、これまたやむを得ぬのでありますから、そういう辺から考えますと、農村の基本問題を考えるときにおきましても、負担、支出の減をはかる上において、減税という問題が大きく降りかかってくる問題だ。その際に何が問題かというと、やはり地方税であります。こういう面からも、私はあまりゆっくりしないようにしていただきたいと思うのであります。
○佐藤国務大臣 ただいま総理がお答えいたしました税制調査会を設置するということでございますが、別に三年計画というようなことを申したことはございません。御指摘の通り、できるだけ早い機会にその結論を出すべきだと考えております。ただしかし、非常に急いで結論を出すといたしますと、時に実態を十分把握しないこともあるという意味で、半年だとか一年だとかいうふうに年限は切らない、じっくり、もう少しかかるかもわからないということを表現いたしておりますが、そういう点が、あるいは三年くらいかかるのではないかというように、もし聞いておられるようだと、これは御迷惑をかけておると思います。大体二年程度の目標、できればもっと早く……。ただ問題は、最近の地方財政は、相当国並びに地方で努力して参りましたから、よほどよくなって参ったとは思います。しかし、今回の減税問題をめぐりまして、まだ地方財源についても相当の変化がある。そういう意味で地方財政の将来に対していろいろの議論が出ておることだと思います。その意味で、一部からは、あの減税公約は公約通りできていないじゃないか、こういうような批判まで受けるほど、地方税の減税の面では最初の線とはやや変ってきております。国税の減税に重点を置いたような形になっておりますが、しかし払う身になれば、国税だろうが地方税だろうが、同じように七百億減税を受ければ、公約履行としては目的を達したと思います。そこで今の地方財源を強固にする、安定するという意味で、今回の国税を中心にしての減税をいたしました結果、三税の伸びはありましても、同時にはね返りとして住民税等の減税が相当高く予想される。しかし、これは三十四年度の問題ではございません。三十五年度の問題でございますので、来年までには、またもっと地方の財政状態等についても実情を把握して参りまして、十分善処して参る、こういう考え方でおります。ただいまの税制調査会等も、御意見のように、できるだけ早い期間に結論を出すように努力したい、かように考えております。
    〔委員長退席、野田(卯)委員長代理着席〕
○周東委員 では次に、私は総理に対して農林漁業の基本政策について御意見を承わりたいのであります。
 総理は、施政方針演説におきましても、「農林漁業の生産力の持続的向上と経営の安定をはかることは、わが国農政の基調であります。」こうお述べになっておりますが、総理は、今後の農林漁業政策に関しまして、その基調を生産力の向上に置かれるのか、農家の生活安定、向上に置かれるのか、まずお伺いをいたしたいと思います。
○岸国務大臣 農山漁村の実情を見まするというと、一方において近代的工業が大きく発展をしておるのに対して、農山漁村の収入といいますか、所得といいますか、そういうものが総体的には工業のように伸びていっておらない。そこに生活上のいろいろな面において、生活が不安定になり、もしくはいろんな文化施設等の恩恵を受けることが十分でない、農村と都市との間の不衡権を生ずるというような事態が出ております。これをどういうふうに扱っていくか。今、生産力の向上に重きを置くのか、農村生活の安定、向上に主眼を置くかという御質問でありますが、もちろんわれわれは政治の目標として、国民全体の生活を安定、向上せしめるということがわれわれの目標であるように、われわれは農村の問題も、やはりこの農山漁村におけるところの国民の生活を安定させ、また福祉国家としての便益なり、あるいは文化的な施設の恩恵を受けるように持っていかなければならぬことは言うを待ちません。そこで日本の農業や漁業の実態を考えてみると、一方においては、われわれはやはりその経済の基礎であるところの生産力の向上ということを考えていくことは当然である。と同時に、ただ生産力さえ向上すればよい、物ができていけばいいというわけではないので、特に私は、最近の農業の政策を見ますと、過去においてわれわれがとってきたところの生産力の向上の面においては、いろいろな面において効果を発揮しておる。しかしながら、農村の生活がそれだけよくなっておるかというと、むしろ農産物の市場関係といいますか、マーケッティングの点における施策が十分にいってないために、あるいは豊作でかえって農家の経営が苦しくなっておるというような部面もあることを考えてみますと、今までのただ生産力向上を唯一の目標としてやるということでなしに、やはり経営の合理化なり、経営を十分に有利なようにしていくという、経営面のことを頭に置いて考える必要がある。この二つのことを私は柱として農業政策を立てていく。究極的な目的は今言う通り、農村における農民の生活の安定向上であろうと思います。
○周東委員 そこの点なんであります。実は終戦後における農業政策というものは、これは主として食糧政策、食糧の増産政策であったと思うのであります。これは当時の社会情勢から見て当然なことでありまして、戦争終結後における日本の食生活というものがいかに悲惨なものであったかということは御承知の通りであります。何とかして食糧、ことに米麦を増産して食糧の増加をはかりたい。その点において、ともかくも肥料の増産ということは第一に考えなければいかぬ。戦前においては百八十万トンくらいの硫安の生産能力を持った工場が、戦後においては約五十八万トンに減っておる。これではとても問題にならぬので、まずとられた政策が肥料の増産である、こういう形であったのであります。同時にまた、ここに戦後においてとられた政策の大きな問題は農地解放でありまして、小作農の大部分というものがここに自作農化したということは、これは一つのよき政策であったと思いますが、しかし、自作農にはなったけれど、その持つ耕作面積というものは、小作農であった土地をそのまま承継しただけであって、大体零細化した零細農、三反歩農家が非常に多かった。こういう零細農を相手にして、国の政策として、全国民のためにまず食糧増産、食糧増産へと目を向けていく、これはやむを得ない形であったと思うのであります。一面においては、自作農化した農民のみずからの土地を持ったということからする生産意欲の向上によって、政府の政策と相待って非常な増産が進められたことは、御承知の通りであります。その後における農業技術の改良とか、あるいは農薬等の発達によって、幸い今日においては非常な増産であって、約四年の豊作の跡を振り返ってみましても、かつて考えなかったような年に平均九千万石の生産を確保するようになった。しこうして食糧輸入を防遏した点において、約七、八百億円に上っておる状態であります。しかるにこれだけ伸びたにかかわらず、なおかつ農家それ自体は過小農形態であるという関係もありますが、水稲多作農家においてはある程度生活は上って参りました。ほとんど大部分の、田畑を少ししか持っていない農家だとか、あるいはあなたの御指摘の畑作農家、酪農農家、こういうふうなものを含めて、全体の農家としての生活というものはあまり見るべきものがない、上ってこない、こういうことであります。ともかく各人の農家の生活の安定ということよりも、国のために食糧増産ということ、生産性の向上ということが主として考えられた時代であって、これはやむを得なかったと思いますが、今日は、この意味においては、大きく農業政策の転換をなすべき時期だと私は思うのです。われわれは、当然今後においても農家の収入の増加、できるだけ彼らの所得を増加する意味において生産を上げることも必要でありますし、そのために土地の開墾、干拓、改良ということももちろん必要でありますけれども、これだけを取り上げても、すべての農家にこれを均霑するわけではないのでありまして、おのずからそこに限度があると思うのであります。なおかつ食糧の増産というものを今後もやらなければなりませんけれども、やはりそこに人口の増加趨勢というものと相対して、また食生活の改善と相対して、米麦をあまりによけい作り過ぎる、ことに米をあまりによけい作り過ぎるということになると、そこに私は価格問題が生じてくるだろうと思う。これは、どこまでもある程度の価格維持をやらなければならぬということは、保護政策として当然考えられることでありますけれども、たとえば農作物についても、輸入しておるような工業原料作物を作らせるかどうかということについても根本的に考えなければならぬ問題だと思うのであります。そういう意味においては、それらの施策というものは、むしろ農家それ自体の生活安定、向上ということが一つの主たる第一目標になりつつ、それを中心としてどの程度に土地改良をやり、どの程度に食糧増産をやっていくかということが考えられてこなければならぬ問題だと思います。こういう意味においてお伺いしたのでありますから、どうぞ総理の御所見をお伺いしたい。
○岸国務大臣 日本の農業に対しての今後の考え方につきましては、私は周東委員の御指摘になったような御意見のように大体考えております。
○周東委員 今日各種の農業団体、あるいは社会党等においても、農業基本法の制定ということを叫ばれております。私どももその点はよく承知し、党内においても決して社会党に劣らざる勉強をいたしております。しかしながら、この農業基本法の内容というものは、必ずしも西ドイツの農業基本法がいいからといって、そのまま日本へすぐに来年から取り入れられるものではないと思います。そこには総合的にいろいろな問題が含まれておる。農業に従事する農村構成の人口の問題もあると思います。あるいは租税問題があり、負担の軽減の問題があり、あるいは土地改良問題等、食糧の増産政策に関連したものをどの辺に置いていくか、あるいは農業団体に対する今後の行き方をどうするか、その間に保護政策として日本の政府がどれだけのものをどういうふうに負担してくれるかということは、なかなかそう簡単に考えられるべきものでないと思う。なかなか元気のいいところは、すぐに防衛費を削ってしまって、それをその方に向ければ一ぺんに農業基本法はできるというような話もあるやに聞きますが、そういうことはちょっと無理だと思います。私どもは現実的な形においてこの問題を考えていきたいと思っております。総理はこのたび、農林漁業の基本問題に対する調査会の設置をお考えになりました。私はまことにけっこうだと思うのですが、そのことに関して、どういう計画をもってお進めになりますか。これは農林大臣からでもけっこうであります。
○三浦国務大臣 先ほど周東委員から仰せになりました通り、歴史的に日本の農業の展開を見ますと、生産増強に中心を置いで参ったことは否定すべからざる現象であろうと思うのであります。そして、今後の農業生産の対象は、先ほど総理大臣からもお答えになりました通り、農家の生活安定を中心にして、相当強力に施策をしなければならぬということも考えられます。つきまして、今お触れになりました通り、各国ですでに農業に関する諸方策を打ち立てておりますが、基本法という字は必ずしも使っておりませんことは申すまでもございません。しかしながら、この問題を考えます場合に、第一、日本におきましても農業を成立する要件として、土地が狭小でありますことは申すまでもございません。従いまして、これらの問題一つ取り上げましても未解決の問題が多々あるし、今後施策をするにつきましても、相当に研究検討を重ねるべきで問題あります。同時にまた、諸国が取っておりますところのいわゆる農業振興の基本的政策につきましても、いずれの国におきましても、価格支持政策は、とっておる国々によってみな事情が違いますけれども、これを取っておる。しかし、その結果、相当国家の負担が多いということで、各国ともこの問題につきまして苦しんでおることも御承知の通りであります。従いまして、われわれはこの生産の面を強化するにつきましても、さらにまた価格安定の方策等につきましても、ただ単に農業のワク内においてだけの解決は困難でございますので、各方面にわたりまして徹底的な再検討を行いまして、そうして基本的な政策の確立に資したい、かように考えておるわけであります。
○周東委員 この点に関しましては、政府においても新たに調査会を制定されることであり、これは予算の通過後できます。それまでまだ期間もありますので、十分農業の基本政策として、ただいま申し上げましたような農家の生活安定を中心とした各般の総合施策を織り込む形、そこに法律の制定が必要ならば制定をするし、法律の制定を要せずして行政手続でまかなえるものはそれでいくとかいう形のものに、今後さらに御検討を進められて完璧を期せられんことを望むものであります。
 一言水産問題について触れておきますが、これも問題としては農林漁業の基本政策委員会等で考えられる問題だと思いますが、今日水産の問題につきまして一番考えなければならぬ問題は、いわゆる資本漁業と沿岸漁業であります。資本漁業の方は、ともかく何といっても資本の力でよくやっていらっしゃるようであります。しかし、漁獲高については、今日のような国際漁業の制限を受けて非常ないたみはありますが、まずまずということであります。しかし沿岸漁村は、実は水産業者は全体で五十万戸で、家族を合せると三百万人であります。ところが、これだけおりますにもかかわらず、水産業者があげる水揚高から比較してみますと、四三%、約半数になる沿岸漁業者が、わずかに二七%漁獲高をあげているというだけであります。その各個人の所得は非常に小さいものであります。農業も非常に困った問題でありますが、沿岸漁村における漁業者の所得は、非常に哀れな状態にあるということを私は申し上げたいのであります。
    〔野田(卯)委員長代理退席、委員長着席〕
 しかも、この沿岸漁業者が唯一の漁場として考えておる沿岸漁場というものは、能率的な漁業方法の発達によって、しかも、それが資本と結びついておりますが、非常に荒らされる。能率漁業でありますから、こまかくなりますが、一つ例をあげますと、下請漁業と申しますが、電気の五千燭光、六千燭光の灯をもって海の中を照らして、魚を集めておいて一ぺんにとるのですから、一網打尽というのはこれをさしていると私は思うのであります。能率漁業でありますから、消費者にとっては非常にいいかもしれない。それだけの能率を出す漁業であって、安くしてもらえればいいが、沿岸漁業の大衆をいかにして生かすか、一人を生かして百人殺すかというのが、現在の漁村の状態だと思う。私はそういう意味合いにおいては、今度の委員会等においてぜひ考えてもらいたいことは、この大部分を占める沿岸漁業者、漁村の対策について、これらの漁業者を救済するために、その専用漁場的なものを設けて、そこにはほかから入らぬようにしてもらう。極端な言い方をすれば、あまり能率漁業というものはそんなに近くでやってもらわないで、一本釣、はえなわ漁業というような、沿岸の旧来の漁法によって、細く長く生きられる方法をまず考えていくことが一つだと思う。そういう意味において、漁業制度調査会においてやられておると思いますが、このような漁村の現状について、一つ十分考慮を払ってもらいたいと思うのでありますが、これは農林大臣いかがですか。
○三浦国務大臣 沿岸漁業に対しまする構成の変革は、御承知の通りであります。戦前は専用漁業権等を持っておったのでございますが、過般漁業改革によりましてその形態が変って参りました。海草類であるとかあるいは貝類等の取得につきましては、沿岸の者を保護するということになっておりますが、しかし独占排他的な物権的な専用漁業権の設定のごときは、認めないという傾向になって参りました。しかしながら、今後の対策におきましても、やはり各般の増殖を期待し得る場合には、その増殖を徹底的に推進する。ただいまのところ、水産増殖等は総合助成の道を開いて、そうして新農村建設計画にやや似た形態をもってやっておりますが、この方面は特になお立地に応じて、その生産の増強をはかって参らなければならぬと思うのであります。同時にまた、能率的な漁獲をいたします場合におきましても、資源の培養とともに、地元のものに対しましても、能率の上る漁法は認めざるを得ない。その方面についての必要な施策は講じて参らなければならぬと思うのであります。同時にまた、御承知の通り、現在も進めておりますけれども、近海漁業であるとかあるいは沿岸漁業方面に進出し得る素地のありますところにつきましては、これをあわせて行うという基本的態度を持って進めるべきものと考えております。
○周東委員 もうあと一、二点で終ります。
 一つ、林業政策について意見を述べて、所見をただしたいと思います。多くを申し上げませんが、私は今日の国の行政として、森林行政というものが徹底して行われているとは認めておらぬのです。農林省の行う、林野庁の行う仕事というのは、国有林行政であって、国有林行政の倍近くもある民有林行政、その中に公有林野を含めての民有林行政は、行われておらないと極論してもいいくらいであります。これは国有林というものは、あれだけ維新以後国が保管して培養しておりますから、りっぱな植林がそのまま続いて、国有林のいたんでいるところはほとんどないといってもいい。これに反して、戦争中等において、切られたり荒られさた大部分の山というものは、公有林野を含めての民有林であります。ところが、これは大蔵省も大いに御考慮を願いたいのでありますが、ことしは大蔵大臣も決断して、相当に造林、林道その他に金も出たことはよろしいのでありますが、私は、国有林というものは、あのまま木がたくさん立っておって、経済的にもう伐期のきているものを保存しておくだけが能じゃないと思う。簡単にわかりやすく言えば、これを早く切って、もうけて、その金で民有林の仕事をして、民有林の養成といいますか、造林その他林道の措置、林道をつけるかという形に使うべきだと思う。これについては、大蔵大臣は別ですが、大蔵省としては、その金をあまり出し過ぎると、ほかへ出せと言われるかもしれぬ。農林省としては、あるけれども、あんまり切り過ぎるととられやせぬかというような考え方が、狭いところでないとも言えないのであります。これが今日まで伸び悩んでおる点であります。ことしは長年のこういう主張を入れて、一部は国有林から上った利益を積み立てた金の中から、関連林道とかむずかしい名前をつけて、こまかいことは別ですが、それを民間の林道にやるということになっておるが、これはごく九牛の一毛であります。私は治山治水がやかましく叫ばれておる今日、林野行政というものが、公有林を含めての民有林と国有林全体にわたって考えられなければならぬときに、あの財源を温存しておって、金庫の蔵番になっておるよりは、これを相当に活用して民有林行政に向けてもらいたいと思うのでありますが、いかがでしょうか。これは特に大きな問題でありますので、総理の御所見を伺い、農林大臣の所見を伺いたい。
○岸国務大臣 一国の国土保全の上から、森林の問題は非常な大きな問題であります。日本が従来、国有林に対して国家が特別な管理と、これが保全並びに経営の上からやってきておることは、御指摘の通りでありますが、民有林等について従来自由に放任しておる結果として、ずいぶん各地において荒れておる状態があります。これに対して治山治水の意味から、国土保全の意味から、どういう施策を取り上ぐべきかということは、常にわれわれは重要な国策の一つとして考えてきておるのであります。今おあげになりましたように、国有林の収益をもって民有林に直ちに充てるかどうかという問題につきましては、私専門的に研究いたしておりませんから、結論的には申し上げることはできませんが、しかしながら、現在の民有林を荒れた状況にそのまま放置しておくことはどうしても許されない。しかし、普通の予算の見地からは、これに対して国家が助成することは、財政の規模その他からなかなか困難があるという従来の観点から見まして、今御指摘になりましたようなことについても、一つ研究をしてみたいと思います。
○三浦国務大臣 若干補足さしていただきます。現在国有林のいわゆる余剰金と申しますか、これは百八十億程度ございます。うち九十億程度は、これは年々歳々国有林の経営の資金の運用のために利用さしておるわけでございます。現在この百八十億は預金部の資金に導入しておるのでございますが、百億程度の金は年々出し入れをしておる。同時に、その他の経費の使い方でありますが、現在といえども、一番重要でありますところの治山の問題、特に保安林等の公益的な性格のありますものにつきましての買い上げ、同時にこれの経営というものに三十数億投じておるわけでございます。そのほか、公有林の造林計画を進め、公有林の官行造林でございますが、この方面につきましても、相当の経費を投入しておる。そのほか今度ことし始めておるのでございますが、林木育成の経費であるとか、同時にまた、国有林のうちであっても、地元の産業並びに生業のために施設をしておりますこの方面の充実もしなければなりませんために、これらにも投じておるわけでございます。これを合せますと約五十億程度の金は使っておるのでございますが、基本的には、先ほど周東君も御指摘になりましたが、膨大な蓄積を持っておるものをもっと拡大した利用をしたらどうか、こういうことでございますが、基本的な政策としましては、林種の改良をいたしまして、最も経済的に運用をしなければならぬことは、国有林経営の根本の問題だと思います。しかしながら、これにいたしましても、やはり林道を発達させるとか、あるいは経営のために経費等が要るものでございますから、そう簡単には参りませんけれども、基本的な政策としての林種の改良等は、相当積極的にしなければならぬと思うのであります。従いまして今後のあり方につきましては、その方向によってこれを改善して参りたい。ただしいろいろの関連のことがございますので、これらは総合的に打ち出しまして、そして今度やりますところの基本問題の調査会等におきましても、十分検討した上に、もっと飛躍し、かつ積極的な方策を生み出したい、かように考えておる次第であります。
○周東委員 私の質問は大体これで終りますが、総理に最後に一言、夢のような、しかしながら一つの提案、考え方を申し上げて終りたいと思います。
 日本は今日戦争に敗れて、従来の一等国とかなんとかということからはずれて、なかなか世界に対する発言権も弱いような格好でありますが、幸いにして一昨々年から国連に加入して、非常任理事国になっております。この際私は、時を見て、世界平和のため、世界人類の幸福のために、ニューギニアの開発というものを考え、提案してみる必要はないのかと思うのであります。ニューギニアは日本の数倍に当る大面積を持ちながら、爬虫類のすみかになり、ジャングルの地帯であります。こういう土地があるというだけで、経済的価値のないままに放擲しておくということは、私は世界人類の幸福の上に非常に損なことだと思うのであります。そこでこのニューギニアの開発等に関して、開発の労力については一番日本が適しておりますが、これはあえて日本と限らぬで、ほかの国からも希望者を大量に入れる、資金はアメリカを中心としてほかの国から出す、そうしてこの土地はイギリス領並びに旧オランダ領でございましょうが、これを国際連合に帰属せしめて、どこの国からも所属をはずし、そこに行く労働者はみな国籍を離脱して国際連合のもとに置く、そこで開発された資源は世界人類のために公平妥当に分散させるという方向を考えてみることは、私は必ずしも夢のようなことではないと思う。これはかつて戦後に農業会議所等において研究された問題でありますが、大蔵大臣はその点知っておられると思うのですが、当時はそういう問題はうかうか発言すると、オーストラリアなんかの関係で、日本をそこへやると大へんな脅威を感ずるということで、うっかり出せぬという話もありました。そのまま眠っておりますが、今日、世界連邦の話が出ておるようなときであります。しかしいかに世界平和を言うても、世界連邦を作って各国の独立を失って一緒になるということはなかなかできないと思いますけれども、ほんとうに世界人類の平和のために、そうして世界人類の幸福のために、未開発にある資源を開発して、そこの資源を世界人類のために提供させる方向に、労力、資金あるいは土地の提供をやって、これを国際管理のもとに置いてやっていくというようなことを、日本はあんまり消極的な問題じゃなくて、時にそういうことをおのずからの話から国際連合等に持ち出し、そうしてそういう多数の賛成を得てこれを実現させるという方向へ努力するということも、日本の国際連合に加入した一つの責務ではないか、また大きな力になるのではなかろうかと思うのでありますが、総理は、あるいは外務大臣は、いかがお考えになるか。今日の状態ですぐにどうするとは言えないでありましょうが、考え方についての御所見を伺いたい。
○岸国務大臣 国際連合が真に世界の平和を作り上げる機関としての機能を充実していく上から申しますと、取り上げなければならぬ幾多の問題があると思います。すでに一部取り上げられておりますが、未開発地域の開発に関して、国際的協力のもとにこれを進めるという問題もあります。また私どもは今後提案して十分な一つの検討を得たいと思う問題には、人口問題に対する問題がございます。今周東君のおあげになりましたことは、そういうことに関連している具体的の構想の一つであろうと思います。将来日本として私は国際連合において取り上げていくべき問題であると、かように思っております。
○楢橋委員長 委員会散会後理事会を開きますから、理事の諸君はお残りを願います。
 明四日は午前十時より開会することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。
    午後四時二十七分散会