第032回国会 法務委員会 第3号
昭和三十四年八月十日(月曜日)
    午前十時四十八分開議
 出席委員
   委員長 瀬戸山三男君
   理事 小島 徹三君 理事 小林かなえ君
   理事 田中伊三次君 理事 福井 盛太君
   理事 菊地養之輔君 理事 坂本 泰良君
      綾部健太郎君    高橋 禎一君
      三田村武夫君    淺沼稻次郎君
      猪俣 浩三君    大貫 大八君
      神近 市子君    五島 虎雄君
      田中幾三郎君    三宅 正一君
      中村 高一君    志賀 義雄君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 井野 碩哉君
 委員外の出席者
        検     事
        (民事局長)  平賀 健太君
        検     事
        (刑事局長)  竹内 壽平君
        法務事務官
        (人権擁護局
        長)      鈴木 才藏君
        専  門  員 小木 貞一君
    ―――――――――――――
八月十日
 委員淺沼稻次郎君辞任につき、その補欠として
 五島虎雄君が議長の指名で委員に選任された。
同日
 委員五島虎雄君辞任につき、その補欠として淺
 沼稻次郎君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 法務行政及び検察行政に関する件
     ――――◇―――――
○瀬戸山委員長 これより会議を開きます。
 法務行政及び検察行政に関する件について、調査を進めます。
 ただいま政府側から井野法務大臣、竹内刑事局長、平賀民事局長が出席されております。その他の政府関係者は他の委員会との関係で、ただいま出席がありません。
 委員諸君の方でもいろいろ御意見があると思いますが、私から政府側に若干の質疑を申し上げておきたいと思います。といいますのは、これは今に始まったことではありませんが、最近特に多数の威力と申しますか、集団的な暴力的行為が各地に行われておる。それが最近特に目立っておるように私には感ぜられるのであります。そこで、最近新聞等によって報道されました事件について、簡単にそれに対しての政府、特に治安の任に当っておられる法務省当局の考え方、並びにそういう各地に起りました事件についての処置の方法等について、どういうふうにやっておられるかを伺いたいと思います。
 最近起りましたのは、御承知の通りに、七月の三十日、いわゆる文部省主催の新教育課程研究協議会、これが、関東地区として東京世田谷の東京学芸大学付属小学校で開かれました。これについては、新聞報道でありますが、この都の都教連を中心に、東京地評、都労連の応援、また東北各地の教組、こういう人々が多数講習会に詰めかけまして、新聞の写真等でもごらんのように、会場に乱入をした。そうして多数の警官隊によってその混乱を防いだ、防いだと申しますか、おさめた。四人の検束者と申しますか逮捕者を出しておる。こういう事件が報道されております。それからこれは全国的な問題ではないかと思うのでありますが、これも七月の下旬、二十九日、三十日にかけまして、いわゆる全日自労、自由労務者の夏季手当に対する闘争と申しますか要求に関して、多くの事件――事件といいましょうか、問題を起しております。私の手元にあります新聞報道によりますと、たとえば三十日、宮崎県の県議会開催中でありましたが、これに多数の自由労務者の諸君が乱入をした。そうして県議会を麻痺状態に陥し入れております。そしてやはり同じく警官隊が出動いたしまして、それを回復しておる。もう一つは、同じ二十九日から三十日にかけてでありますが、宮崎県の都城市長に対する自由労務者諸君の交渉といいましようか、この際都城市長を二十九日の午後から三十日の午前九時過ぎまで市長室にカン詰にして、その自由を奪っておる。これも市長の要請によって警官隊がそれを排除しておる、こういう事件であります。それからこれは内容がきわめて不明でありますけれども、同じ新聞報道でありますが、今月の五日でありますか、東大の学生諸君が茅学長を長時間にわたってカン詰にしておる、こういう事件であります。それから特に最近起りました広島の原水爆禁止世界大会、これに対して右翼と称せられる人々が多数暴力的な行為をいたしておる、こういう一連の事件であります。
 各地において相当の混乱をし、場合によってはけが人を出しておるという状況であります。これは今日に始まったことではありませんが、最近特に各地にそういうことが行われておる。これは国民の側から見ますと、そういう状況を新聞報道などで見ておりますと、まさに法治国でないような状況を感じられます。各種の法律規則はあるのでありますが、それに従って国民生活を規律しなければならないと一般には考えられておるわけでありますけれども、こういう事態が各所に起っておりますが、これにはもちろんそれぞれの理由があることでありましょうけれども、しかしそういう暴力行為をもって他人の行動と申しますか、各種の問題を妨害する、あるいは他人の職場に乱入してその仕事を妨害する、こういうことを一体どういうふうに法務省としては考えておられるか、それを一つこの際御説明を願いたいと思います。
○井野国務大臣 ただいま委員長よりお示しの暴力ざたが最近各地でひんぴんと起っておりますことは、まことに私といたしましても遺憾に存じております。内閣が、暴力追放につきましては一つの大きな方針として今までももちろん努力をしてこられたと思うのでありますが、最近の世相から見て、なかなかこれが追放を完全にし得ないという点は、われわれ当局といたしましても十分の責任を感じなければならないのでございます。しかし、暴力ざたに対しましては、法務関係における起訴の状態を見ますと、他の犯罪に比べまして五割六分以上の起訴をいたしておりまして、相当厳重なる処分をもって臨んでおります。こういう点につきましては、未然に防止することも大事であり、検察当局も警察当局も連絡を十分いたしまして、今後こういう事犯が減少して参りますように極力努力いたすことは当然であろうと考えております。従って、法務当局といたしましても、この問題に対しましては今後真剣に取り組んで参りたいと考えております。
○瀬戸山委員長 真剣に取り組んでもらわなければ、多数の国民としては不安と不信を持っておると思います。
 そこで、先ほど私が事例として具体的にあげました事件について、常識的に考えて、刑事事件が起っておる場合が相当にあると考えられる。もちろん私から申し上げるまでもなく、処罰することが必ずしも能ではありません。能ではありませんが、この一連の動きを見ますると、計画的に行われておるという感じを持つのであります。そこに加わった人は何百人、あるいは何十人という多数の人でありますが、こういう人々を全部処罰するなんということは、理論としては別として、実際問題として必ずしも穏当でないと思います。けれども、こういうことの責任者は責任を明らかにすべきである、こういうふうに私どもは考えております。それについて今私が事例としてあげましたことについて、一体どういう処置をしておられるのか、ただその場を元に回復すればそれで事足れりとしておられるのかどうか。そういう問題の責任者に対してどういう処置をとっておられるのか、その点を一つ明らかにしていただきたい。
○竹内説明員 ただいま委員長からお示しになりましたたくさんの事例がございましたが、まず広島における右翼の暴力ざたにつきまして、その状況を、私どもの手元に唐いております報告に基いて御説明申し上げますと、八月五日午後三時四十分ごろ、護国団の、右翼団体でございますが、団員約二十名が荒神東詰め付近で日共の県委員のトラックの宣伝幕を引き破りましたので、警備中の西警察暑の巡査がこれを制止しようとしたところ、団員の約三名が同警察官に暴行を加え、かつ進行中の日共党員ら三名となぐり合いをいたしまして、双方に負傷者を出すという事態を惹起しております。この事件につきましては、所轄の東警察署におきましてただいま被疑者の割り出し、その他証拠固めの捜査をいたしておる状況でございます。
 同じく護国団員約三十名が、午後三時十五分ごろ、全学連の集会が開かれておりました中央公民館玄関から入って参りまして、学生が騒いだので間もなく退去いたし、学生との衝突はございませんでしたけれども、プラカード数本をこわしたという事犯を起しております。これも同様捜査中でございます。
 なお、愛国党の党員六名が、同日七時四十分ごろ、平和記念広場に車で乗りつけまして、そこは車馬の乗り入れ禁止地区になっておったのでございますが、警察官の制止を振り切って中に入って、さらに警備中の警察官が制止しましたときには、労組員ら付近の群衆が車を目がけて投石をして、党員はこん棒を持って警察官や付近の人をなぐり、合計七名くらいに傷害を与えた事件が発生いたしました。所轄の西警察がその六名につきましては現行犯逮捕をいたしまして、ただいま背後関係その他を捜査中でございます。こういうのが広島の現地から報告されております。
 なお、冒頭に御指摘のございました教育課程講習会の開催をめぐって発生した暴力事犯につきましては、広島、福岡、御指摘の東京、青森、大分等五県の傷害あるいは公務執行妨害、建造物侵入等寸の事犯が発生をいたしております。いずれもただいま捜査中でございますが、福岡の関係におきましては、去る六月二十九日、関係者四名が起訴済みになっておりますが、その他はいずれも捜査中でございます。
 その地自労の暴力事件等御指摘がございましたが、昨年来、この種の左右の思想的な対立という点もございますが、暴力に訴えて問題を解決しようとするような風潮と申しますか、そういう傾向が事犯全体としてうかがわれるような状況でございまして、この点は大臣も御説明申し上げましたように、非常にわれわれ当局としましては遺憾に思っておるのでございますが、これにつきましてはいろいろ捜査上の困難――証拠収集、特に被害者と加害者とが同じような職場にいる人があるといったような関係もありまして、非常に難渋をいたしておるのでありますが、捜査技術を向上させる、あるいは機動的な検察力を集中するといったような方法によりまして、鋭意これが対策を講じつつある状況でございまして、今後とも遺憾なきを期して参りたい所存でございます。
○瀬戸山委員長 私からこれ以上質疑を続けませんが、いずれにしても、今も御説明がありましたように、物事を暴力で解決するということは、だれが見てもとんでもない話であります。しかも、こういう事件が各地に起るということは、国民が非常な不安を感じ、そして政治に対して不信を起すもとであろうと思います。これは極端な言い方かもしれませんが、窃盗がどうだこうだということについて、これは治安当局が一生懸命なのは当然でありますけれども、これを処罰する、それよりももっとこれは根本的な問題だと思っております。どうか一つそういう意味において、今御説明の通りに、御努力を私の方から御要望申し上げておきます。
 これについて関連質問がありますから、これを許します。坂本泰良君。
○坂本委員 今の委員長の御質問並びに大臣、局長の答弁を聞きますと、単に現れた現象についての弥縫策みたいにすぎないと思うのであります。特に大衆がその生活と人権を守るためにやっておる教育の問題についても、政府の教育のやり方が、わが憲法並びに民主教育を破壊するものである、かような考え方に立ってその阻止を行なっておる。それを単に暴力だといってこれを取り締るということは、これは民主政治の破壊であり、憲法の精神に反することであると思うわけであります。そこで、大臣にお聞きいたしたいのは、このような問題について真剣に具体策を考えておると言われるが、いかなる具体策を考えておられるか。私は当面の現われた問題よりも、このような問題が起らないように、政府は国民のための政治を行わなければならぬと思うのであります。岸総理大臣は何ら外遊の目的もないのに一カ月有半外遊をして、そうして数千万円の国費を使用しておる。その留守中に起った問題である。そのような総理大臣が果して日本の国民の信託を受けた総理大臣と言えるかどうか、私ははなはだ疑問に思うのであります。だから具体的に現われた問題を暴力として鎮圧するその前に、法務大臣としては真剣な具体策があると思うのでありますが、それをお聞きいたしたいと思います。
○井野国務大臣 今、坂本委員の御質問の通り、暴力ざたが起ってからこれを取り締るという行き方よりは、むしろ未然に防ぎ得る方法があれば、もちろんそれが一番けっこうでありますが、ただしこれは法務省自体の問題ではなくて、むしろ警察関係の問題が主となっておると思います。従って、警察方面ともよく連絡をとりまして、その対策を練りたいということを申し上げておるのであります。
 また総理の外遊の問題もございましたが、総理が外交上の重大問題で外遊中でございますので、その留守は副総理が責任を持ってすべての問題を処理しておられますから、どうぞ御安心をいただきたいと思います。
○坂本委員 広島の今度の世界大会に起きたところの不祥事件は、これは政府が、また自由民主党が幹事長談などで発表しておるのを聞きますと、最初からこれを分裂させよう、あるいは断圧しようというようなことであり、右翼団体を政府みずからがこれを支援してやらしておるのではないか、こういうような国民の誤解も受けておるようなわけであります。この問題については、まだきょうは午後も委員会が開かれますから、具体的な問題としてお聞きしたい、そう思っておりますから、具体的な問題についてはやめますが、そういうような広島、長崎のあの被爆が今後ないような悲願のもとに立てられて推進されておるものを、今政府の行わんとする安保条約改定の問題に引っかけて、そうしてその政府の安保条約改定の違法をこういうようなことで糊塗しようというようなふうにも考えられるのでありますから、これは重大なる問題であるし、法務大臣はこのような問題の取扱いについては、真剣に取り組んでやらなければならぬ。単に容共だ、共産党だ、あるいは労働組合がどうだ、そういうことがあるというのは、政府の施策そのものがそこに原因をしておる、こういうことを根本的に考えて、大臣は処せられなければならぬと思うわけでありますが、この点についての御所見を承わりたい。
○井野国務大臣 広島の原水爆禁止大会におきまして右翼が暴力を用いた、これは世間では、あるいは政府なり与党が大いにこれをけしかけているのではないかといううわさもあります。これは非常に迷惑なんで、むしろああいう事件がありましたので、与党も政府も実は迷惑に感じておるような次第でありまして、ああいった問題が起りました以上は、徹底的にこちらも警察当局をしてその事件に当らしめたいと考えております。今後もああいった問題について、根本的に――政府の施策がいろいろそういう問題を引き起すのではないかというお話もありますが、施策自体は、国策として大事なことはどうしてもやらなければならぬ。それに対してああいうことが起らないように、われわれとしても未然にいろいろ問題を考えていかなければならぬことはお説の通りだと思います。
○瀬戸山委員長 田中幾三郎君。
○田中(幾)委員 私は、昨年来問題になっておりますオリンピック後援会の寄付金の不正使用問題にからみまして、二、三法務当局にお尋ねをいたしたいと存ずるのであります。この問題は、国会におきまして、昨年の十月の十七日、文教委員会におきまして、さらに二月の二十四日には予算委員会におきまして、それから本年の三月五日には決算委員会におきまして、各委員からそれぞれ質問されたのであります。この問題は、昨年の十月の十七日の文教委員会では、与党の原田憲君がまず劈頭に質問に立っておる。これはわれわれ社会党の委員からのみ追及いたしておる問題ではありません。ことにオリンピック世界大会がわが国において開催されるようになったやさきにおきまして、この基金を集める組織をめぐって、かくのごとき問題が不明朗にいつまでも長引いておるということは、ひいてこのオリンピック大会の開催にも影響いたして参りますし、また各位が問題にいたしましたのは体育の向上、体育の振興ということをめぐってこの問題を早急に明らかにしておかなければならぬという立場からこの問題を追及しておったのでありまして、私が質問せんとするのも、一佐藤被告の逮捕の問題ではありません。やはりこの問題を早急に解決して、そうしてわが国の体育向上、体育振興という面に寄与したいと存ずるからであります。
 この問題は、去る三月二十七日に本委員外六名からやむを得ず告訴の手続をとっておるのでありますが、このオリンピック後援会が集めた寄付金の二億七千万円のうちで、千九十三万円という金が、当時の事務局長である佐藤昇によって不正に横領使用されたという事実でありますけれども、この問題は非常に大きな金額を扱っておりまするし、掘り下げていけば、私はこの点にとどまらないと思う。これを追及することによって、あわせて今後の寄付金募集の組織、それから運営の上に非常にこれは参考になろうと思うのでありまして、この点についてお尋ねをいたしたいのであります。
 まず、すでにこれは昨年の十月から問題になっておる。文教委員会におきましても刑事局長に質疑もありまして、なぜこれを検察庁において手をつけないつのかということを追求しておったわけです。あなたの答弁もここに書いてあります。これがようやく今年になって、三月の十七日に告発状が出て、初めて着手するという事態になりました。私は、先ほど申しましたように、これはうっちゃっておけない、緊急に調べて明らかにしなければならぬ問題であると存じておったのです。告発がなくても、これだけ大きく国会で各委員会で問題になった事件を、捜査もしない、で数カ間も放任しておいたということは、私はやっぱり検察当局の怠慢ではないかというように実は現在考えております。法務大臣はついせんだって大臣になられたわけでありますが、経過はその通りであります。今日になって、去る八月の五日でありましたか、佐藤を逮捕して取り調べられた。これはもう、法律を少しでも考えている者から見ましたならば、右手してもいいわけだが、なぜこんなふうにおくれたのであるか。委員会においても、会長は藤山愛一郎氏であるし、当時東京都知事の立候補をやっておりました東能太郎氏が体協の会長でありますし、政府のこれに対する弾圧があったのではないかという声すらあったわけであって、そうしてこの選挙が終ってから、告発を待って初めて取調べを開始した。私は、抜くべき宝刀をなぜ隠しておって、早くこれを抜かなかったのかという点にやはりどうも遺憾の意を表するものであります。この点、法務大臣はいかにお考えでありますか。
○井野国務大臣 オリンピック後援会の事件は、私就任前からいろいろ伺っております。この件は、オリンピックの後援会自体においていろいろ内部的な責任問題を調査してもおったようでございます。従って、検察庁もそういう点でその結果を待っていたのじゃないかと、これは想像ですが、私は思いますが、最近告発もあり、警察当局もいよいよ本気に乗り出しましたから、これからの捜査によりまして皆さんの御心配の点が明らかにされると思いますので、これから十分御趣旨に沿ってやっていきたいと思っております。
○田中(幾)委員 私はこの事件を、私から言えば軽視をしておったのじゃないかというふうに考えるのですが、そこで私はこの事件の情状について一ぺん申し上げて法務当局の御意見をお伺いしたい。これはごらんになったであろうと思うのでありますけれども、オリンピック後援会の組織というものはきわめて膨大である。現大臣の藤山愛一郎氏、当時の商工会議所の会頭、これが会長であります。大阪の商工会議所会頭の杉道助氏が副会長、平山孝氏が理事長で、メンバーからいえばベストの人物を網羅している。そうして理事はあらゆる階層から集めて四十五人、そのうち八人は体協のうちから来ておりまするし、国会議員も四名これに名前を列しております。組織からいいまするならば、会長があって、理事長があって、そうして評議員会というものをさらにこしらえて、決議機関もしくは諮問機関のようなものを作っている。外部から見ましたならば、これはまことにりっぱな会の体形をなしているのであります。しかしながら、これはいろいろ突き詰めてみると、任意団体だということで逃げておるのですが、実質はいかにも財団法人もしくは公益法人のような形をした会の組織を表現されておるのでありますが、藤山会長も予算委員会でもみずから答弁しておりまする通り、自分は会長であるけれども何も仕事をしなくてもいいということであったから名前を貸したのだと、こう言う。会の代表者は理事長である平山氏である。そうすると、会の責任者でもない、実務にタッチしない、ただ看板だけを、名前だけを貸しておる。広告にすればきわめて誇大な広告である。そういう組織のもとにこの会が運営されて、しかも実権は一事務局長――初めは事務局次長といったそうでありますが、それにまかせておって、それがいわば金を集める手足である。つまり非常に大きな信用のあるような会の体裁をして、そして天下にこれを宣伝をして、そのルートを通じて、大きくは競輪の金、小さくは学童の十円、二十円に至るまでこの金を集めた。私は、詐欺の意思はないかもしれぬけれども、実際において出した方からいえば、だまされて出しているのだ、これはやはり詐欺的行為によって寄付をさせられているものも多数にあるのじゃないかと思うのです。そういうからくりを作って、こういう組織のもとに大きな寄付金集めにがかったという意図は、これは刑事上の犯罪の行為はないかもしれないけれども、形態はりっぱに詐欺の形をなしておるのではないかというふうに私は思う。
 それからこの国会の委員会におきまして、任意団体ではあるが、体協とは別個の人格だといいますけれども、このオリンピック後援会のできたそもそもの始まりというのは、昭和二十八年の十月に松山における体育協会の全国支部長会議で会長である東氏が発言をされ、そしてこういうものを作りたいということをいって、この発意に基くものです。ですからみずから基金を集めずに、自分の手足になるようなものを作らせて、このルートを通じてこの金が集まった。ですから自分の方の体協からも理事を送って、このオリンピック後援会という組織の中に入り込んでおる。ですから、これは表面上は別個だというかもしれませんけれども、私は実質は一体だと思う。一体の体をなしておって、その手となり指先となって働いたのがこのオリンピック後援会である。ですから、そういう実質的な活動の面において一体であるところのこのオリンピック後援会がこういう不始末をしたということに対しては、この責任を十分負わなければならぬと思う。もし監督もしくは連絡しなければならぬものを故意にしなかったということならば、これは不作意によるところのなにか欠陥ができたわけでありますが、私は、この問題をめぐっての事実を認識するに当っては、こういう情状を無視してはならぬ、これはすこぶる悪質に近い、もしくは悪質であるというふうに考えます。のみならず、この会ができたときにはこういうりっぱな組織を持っておりましたがために、後援会の内部においては、これは二十九年の末までに財団法人にするということが条件になっておったそうであります。そうでございますならば、これはなおさら財団法人にしてりっぱな運営をしなければならぬ。それを、発足早々からこの不始末があったかどうか、これは時期の問題でありますけれども、しかしその財団法人にするという道をみずから捨てて、そしてこういう任意団体の形の上においてやったということに情状上――これは佐藤一人でありません、この組織に関連する一連の組織の人々に対しても情状の憎むべきものがある。こういうことで今後の寄付金というものは運営されるのでしたら、これはみんなまゆにつばして警戒しなければならぬ。これではスポーツの振興なんかできません。私はそういう意味合いにおきまして、これは情状上非常に憎むべきものがあると考えておるのでありますが、法務当局はいかにお考えになりますか。
○井野国務大臣 佐藤個人のいろいろの行為につきましては、今日拘束も受けておりますし、いろいろ取調べによって明らかになると思います。ただ、まだ取調べの事前に、その行為が悩むべきものであるかどうかということは私から申し上げるわけに参りませんし、また藤山外務大臣のお話も出ましたが、藤山外務大臣はお説の通り外務大臣になりましたとき二百以上の会社を全部やめましたときに、これをやめるかどうかということも話が出たのでございますが、これは全く名誉職で、俸給も一文ももらってないし、ただ名前だけの問題であるというので、まあスポーツのことでありますから残ったらよかろうということで残ったような次第であります。全然そういう問題とは関係なく、そのために起訴をおくらせるとかなんとかいう圧迫を加えたような事実はございません。その点だけははっきり申し上げたいと思います。
○田中(幾)委員 刑事局長によく御認識を願いたいのは、今、担当の田村検事はなかなか優秀な検事でありますから、資料も私の方から出そうと思っておりますけれども、途中で取調べを中止されたりするようなことになりますと、オリンピックの基金の募集ということの今後にも非常に影響することでありますから、その点はよく認識願っておきたいと思います。
 それから、本件の事案は、ただ清算書から見まして、基金のうちで不明なりもしくは不当な、あるいは不正な金が千九十数万円あるということ、しかも外部からはわからなかったのであります。私はこういう事案の成り立ちといたしまして、いろいろ内容的にたくさんあろうと思うから、法務当局の御意見もただしておきたいと思うわけですが、この間の新聞の発表によりますと、使途不正もしくは不明の千九十数万円、これは全部なのかどうかわかりませんけれども、これが不正であれば明らかに横領であります。そのほかに浮き貸しがあったというのですが、そういう報告を受けておりますか。これは刑事局長に伺いたい。
○竹内説明員 私の方へまだ詳細な報告は来ておらないのであります。去る八月五日逮捕されまして、八月七日に勾留請求をして、きょうが十日でありまして、もう少したちませんと、事実はわからないのでございます。ただ申し上げたいと思いますことは、先ほど御指摘のございましたように、本件の告発になっております一千九十二万六千四百十二円という清算委員会で認めた不当の金額がすべて犯罪になるかどうかということは、今後の捜査によってわかることでございまして、検察庁におきましては、この告発を受けます以前から明確なものに集中をいたしまして、そのうちにも含まれると思いますが、約数百万円の横領につきまして逮捕状をとるというところまでこぎつけたのでございまして、その間おくれたことは間違いございませんが、おくれますにつきましては慎重な捜査をしてきたということと、それから御承知のようにこの四月から七月にかけまして、各種選挙がございまして、ネコの手も借りたいほどの忙しさでございまして、かたがたおくれたような次第でございますが、これから鋭意捜査をいたしまして、ただいま御指摘の情状の問題等につきましてもできるだけ糾明をいたしまして、この事件の処理を適正にいたしたい、かように考えております。
○田中(幾)委員 それから、私どもの考えまする点といたしましては、募集の仕事に当った者に対する歩合の問題であります。これは約束の通りやったら歩合を出すのは当然でありますけれども、大部分は競輪の金でございまして、その点は別に手数料を出すようなほどのことはないはずであります。でありますから、競輪から来た金などについて歩合が出ているということになりましたならば、これもやはり私は横領になると思います。この点が一点。それからもう一つ、帳簿がずさんでありますから、寄付金をもらって、受け取りは出したけれども、帳簿には載せないとすれば、二億七千万円の寄付金の募集があったといっても、極端に言えば三億円かもわからない。佐藤が一人で受け取りを出して金を受け取って持ってきて、帳簿の上には半分なら半分渡せば、あとは受け取りは出してありても帳簿に入ってない金があるはずですから、この点を私は横領事件として一番おそれるのであります。
 それからもう一つは、この点は特に刑事局長に御意見を伺っておきたいのでありますが、これは文部省からきょう来ていませんけれども、昨年の十月十七日における文教委員会の議事録でありますが、第三回アジア競技大会の費用に使うというので、特にこれを指定して通産省から認可を受けて、その金として寄付金をもらって受け取りを出した。でありますから、その金の使途というものは明らかになっておるのでありますから、私はやはりその金はそのまま寄付金としてオリンピック後援会をトンネルとして体協というものにいかなければならぬと思うのでありまして、こういうものの中からオリンピック後援会の事務費もしくは人件費のごときょうなものを引くべきものでない。ところが文部省の清水説明員の答弁によりますと、第三回アジア大会の金のうちで、この競輪の金は事務費その他に回っているということを認めざるを得ないというようなことで、その金の全部が移っていない点もありますから、これがたとい事務費もしくは人件費等の金に使われておっても、そういう指定されてきた金はそのままやるべきであって、目的が違ったところへ使ったようなことがもし現われてきましたならば、これはやはり私は横領問題が生じてくるのではないかと思うのでありますが、その点はいかがでしょうか。
○竹内説明員 御意見ごもっともでございますが、まず事実関係を明確に把握いたしまして、その事実関係についてやはり法律問題を研究してみなければならないわけでございますので、今あらかじめ違法になるか合法であるかということの論議は差し控えたいと思いますが、ただいまの段階におきましては、正確な事実を最も早くつかむというところに主力を置いて捜査を進めて参りたい所存であります。
○田中(幾)委員 それはその通りでありまして、私の申し上げますのは、そういう事実をつかんだ上において判断をしてもらいたい。そういうことも調査の対象にしてやっていただかないと、今後も基金の問題が起った場合に、使途にそういうずさんなことをやられたのでは、寄付する人もなくなるだろう。
 それからもう一つは、オリンピック後援会の計算書というものは清算にも出しておるわけです。ですから、今のことにからんで、ただ帳簿のトータルが合っておる、帳じりがきっちり合っておるからそれでもうこの計算はいいのだということは、私は言えないと思う。その内容に立ち入って、果してこれがいかなるところにどういうふうに使われたかということをきわめないとはっきりしないと思いますが、この点もよくお調べの上でこの事件を調査していただきたい。
 それから、先ほど申しましたように、これは一つすみやかに結末をつけていただきたいと思いますので、その点は一つ現場の検事を激励していただいて、正確なる、しかも厳重なる御調査をしていただきたいということをお願いしておきます。
○瀬戸山委員長 坂本泰良君。
○坂本委員 私は本日は法務大臣並びに検察庁、警察庁長官に質問が多数ございますが、この人権問題はあとにいたしまして、法務大臣に対しまして二つの問題についてお尋ねいたしたいと思います。一つは死刑執行の問題であります。もう一つは、ただいま最高裁判所で判決の言い渡しがありました松川事件の問題につきまして、これは当委員会におきましても、諏訪メモ等の問題について論議をいたした問題でありますし、これは志賀委員からも御質問があるかと思いますが、私は一、二点だけお聞きしたいと思います。
 まず死刑執行の問題でございますが、去る六月三十日に東京地方裁判所民事第二部の浅沼裁判長から次のような死刑執行の停止の決定があったわけであります。簡単でありますからそれを読みますと、「被申請人国の申請人に対する、長野地方裁判所松本支部が昭和二五年三日三一日申請人に対し言渡し昭和三三年五月二一日確定した「被告人松下を死刑に処する」との刑事判決の執行を、東京地方裁判所昭和三三年(行)第九六号死刑受執行義務不存在確認請求事件の本案判決があるまで停止する。」こういう決定であります。これは朝日新聞その他各新聞にも大きく報道されまして話題を呼んでおるものでありますが、死刑につきましては、憲法三十六条の残虐な刑罰に当るか当らないかということについては非常な議論がありますが、従来の判例といたしましては、残虐な刑罰ではないという判例がやや確立しているようであります。この事件では死刑の執行方法の違法性が問題にされまして、現在の死刑執行の方法は憲法、法律に違反するものである、絞首、刑場、絞めなわについての規定はあるが、その刑式、方法については具体的な規定はなく、単に死刑執行という抽象的な言葉があるだけであります。わが国の死刑執行方法は明治六年二月の太政官布告による屋上絞架式、屋上で首を絞める方法がとられているのに、現在は地下絞架式、首になわをかけて落す方法に変っているのであります。しかし現在の方法では、専門家の鑑定によっても、自分の体重で首を絞めることになり、法規にいう絞首とはならない。従って現在の方法は、具体的な科刑方法がないのに死刑を執行していることになり、何人も法律の定める手続によらねばその生命を奪われないという憲法第三十一条に違反するばかりでなく、絞首と定めた法律にも違反するとして、死刑受執行義務不存在確認請求の行政訴訟を起して、その執行停止の申請をした。それに対して、その行政訴訟が確定するまで死刑を停止する、こういう決定であるわけであります。
 そこでお伺いいたしたいのは、現在死刑犯人は何人おるか、これは刑事局長に聞きたい。この多数の死刑の判決の確定した者が――このような訴訟を起してそして執行を停止するというような情勢があるわけであります。これは重大なる問題でありまするから、法務大臣はこの事件の解決に至るまでは、現在死刑の判決が確定しておる者に対してもこれを中止する、その方がいいじゃないか、こういうふうに考えられるわけでありますが、そのような考えを持っておられるかどうか。死刑囚が何人であるかという点を局長に、それから今の点を大臣にお伺いしたい。
○井野国務大臣 現在の死刑確定囚は、私が引き継ぎを受けましたときには六十四人でありましたが、今はもう少しふえて、七十人近くあるのじゃないかと思います。それからこの事件のためにその六十数人の死刑執行を停止するかどうか、した方がいいじゃないかというお話でございましたが、この死刑執行停止の問題は個人だけの問題であります。その申請理由にも何も理由が書いてございませんから、個人だけのものと判断いたします。従って、他の死刑囚に対してはこの停止の申請の効果は及ばないと考えておりますので、他の死刑囚につきましては、自分の考えとしてしなければならぬものはやはりして参りたい、こう考えております。
○坂本委員 その点、執行方法に対しての憲法違反の問題がありますから――七十名の死刑囚はいろいろ個々の事情はありましょうが、その死刑の執行の方法についての憲法違反の問題でありますし、これは大臣の指揮がなければ死刑の執行はできません。こういう重大な問題が今行政訴訟として提起されておりますから、それが確定するまで、――これは大臣の執行の通知がなければできないわけでありますから、行政措置としてやられた方がいいのじゃないか。七十名にいたしましても、いやしくも同じ国民の生命に関することであります。ことにまた憲法上の重大な問題でありますから、そう思うわけでありますが、重ねてお聞きいたします。
○井野国務大臣 死刑の執行の方法についての違憲の問題に関連いたしておりますけれども、現在の死刑執行の方法は決して違憲ではないと私自身は考えております。しかし、これは裁判によらなければわかりませんが……。従って、今私の考えております考えにおいて、現在の職責上はしていかなければならぬ責務があると思います。しかし、するかしないかは私の権限でありますから、その点はおまかせいただきたいと思います。
○坂本委員 大臣の権限でございますから、一つ十分慎重にやっていただきたいと存じます。
 次は松川事件について、本日十時から、国際的にも国内的にも重大関心事であった判決の言い渡しがございまして、原判決を破棄して事件を原審裁判所に差し戻すという判決があったわけであります。聞くところによりますと、これはあとで判決が詳しく判明すると思いますが、十二名の裁判官のうち七名が原審判決の破棄、さらに事件を原審に差し戻す意見であり、四名の裁判官、ことに田中耕太郎長官、池田、垂水、高橋、四名の裁判官は上告却下、このようなひどい意見であります。下飯坂裁判官は一部有罪、一部破棄、優柔不断な意見であるわけであります。そこで私たちは、先ほども申しましたように、本委員会におきまして、この裁判の取扱いについて、これは検察当局のでっち上げである、また裁判の進行に対して、非常な謀略、陰謀が行われているのである、その一例といたしまして被告人に有利な証拠でありました諏訪メモ、これを握って証拠に出さない、弁護人から閲覧を求めましても閲覧をさせない。だから検察官というのはもちろん犯人を刑事訴追しまして、果して犯罪をやったかどうか、その実態、真実発見には協力しなければならぬ、従って間違った起訴をしたものはいさぎよく被告人に有利な証拠も出して、国民のための裁判が公平に行われるようにしなければならない職務を持っておるのでございます。その検察官が、被告人に有利なアリバイの諏訪メモを出さない、あることがわかって閲覧を求めても閲覧をさせない、これは検察事務の取扱いについて間違ったものである、陰謀、でっち上げの事件であるということはさておきましても、検察官が起訴した事件について被告人に有利な証拠を出さずに押えておく、これはもってのほかである。当時九州の菅生事件におきましても、やはり検察官は紛失したと称して重要な証拠を出さなかったものであります。そのような点についてこの委員会で追及されまして――その諏訪メモを弁護人に閲覧をさせればよいものを、閲覧もさせずにそっと所有者の諏訪氏に返した、それが弁護人の手に渡りまして、上告の審理に重要なる証拠となり、異例の事実審理が行われて、本日判決になったわけであります。被告人は、先日保釈を許された数人は、十カ年間未決勾留として畳一畳敷の中に十カ年間生活をしておる、逮捕されるときに生まれた子供が十才になっておる、そのようなことは私は人権じゅうりんで、この上もないことだと考えるわけであります。今や事件が、一部四名のこのひどい裁判官は別といたしまして、ここに再び原審において裁判が行われると思います。これが解決するのはあとまた三年、五年とかかるのであります。人間の半生はこの不都合な起訴によってじゅうりんされてしまうという結果になるのであります。私は、少くとも検察官は、この破棄、差し戻しの本日の判決に対して重大なる責任があると思うわけであります。大臣は検察行政の長官として、また検事総長を監督する責任者として、かような検察官の責任をどういうふうに考え、どういうふうに取り扱われるか。これは差し戻しの事件が審理をされて、被告人全部がさらに無罪になったときに解決するという問題じゃない、今ここに破棄、差し戻しという重大な判決があったこの際において、私は決意すべきだと思うわけであります。その意味において、これに関連した検察官、これに対するいかなる処置を考えておられるか、その所見を承わりたいのであります。
○井野国務大臣 松川事件に対しましては、本日最高裁の判決があったようでございますが、私はまだその内容を詳しく聞いておりませんが、破棄、差し戻しをしたようであります。従って、裁判は再び仙台へ移ると思います。検察官の責任について御質問でございますが、検察官としては今まで自分の信ずるところをもってこの事件に処して参ったと思います。従って、その間に人権じゅうりんのいろいろの問題があったり、また不当なことがございましたら、これは検察官の適格審査会において十分審査されるべき問題であって、責任も明らかにされると思います。しかし、ただ裁判が思った通りうまくいかなかったというだけで責任を課すということはないと思います。その点は十分に調査して、そうしてしかるべき後に、責任があれば責任をとらせるということが適当ではないか、こう考えております。
○坂本委員 これは先ほども申しましたように、本委員会でも明瞭になりましたように、諏訪メモです。これを検察官が握って、裁判所に出すどころか、出さずに押えて隠しておった。わかっても、ここで問題にして大きい世論を巻き起したから、そうっと返した、こういう不都合な行為をやっておる。これで真に起訴権を持っておる検察官としての職務と言えるのでありましょうか。私たちはここを問題にする。さらにその他の問題についても、これはでっち上げであり、いかにしてこれをでっち上げて裁判という合理的な方法によって被告人十数名を極刑に処するかということに対して全力をあげたこの検察官に対しては、峻厳なる処置をもって臨まなければならぬと思うわけであります。そうでなければ、国民は信頼して検察官の処置に甘んずるわけには参りません。この問題は御存じのように、日本の国内を問わず、国際的の問題になっている。そうして本日の判決が言い渡された。だから適格審査会なんというなまぬるいものではいかぬと思う。法務大臣は真にこの検察行政の長として当っておられるならば、この問題を即刻取り上げて、その関係検察官に対しての峻厳なる処置に臨まなければならぬ、こういうふうに考えるのでありますが、重ねて御所見をお伺いいたしたい。
○井野国務大臣 先ほどお答え申し上げました通り、検察官のすべての行動に対しまして、裁判の結果によってその検察官を処罰するというようなことは、これは法務大臣としても差し控えなければならないと思うのであります。やはりまず事実を調べた上で、人権じゅうりんの事実が極端にございましたり、その他の事実がございましたら、これはまた適当の処置を考えますが、ただ裁判の結果だけですぐ責任を問うということは、私としてはいたしたくない、こう考えております。
○瀬戸山委員長 志賀委員。
○志賀(義)委員 ただいま坂本委員から質問がありましたが、これに引き続いて質問をいたします。
 今度は法務大臣も新任されたし、法務委員長も新たになられたわけでありますが、この際一つ希望を申し上げておきたいことがあります。特にまず法務委員長でありますが、ここ四年ばかりの間、法務委員会というものは従来のような、半ば隠居的な場面から去って、法務行政の審査並びに人権擁護の立場から、相当活躍してきたと思います。その場合、必要なときには外部から参考人その他を呼んで十分審査もするし、あるいはこちらから出かけていくこともあったのであります。近来それがだいぶ少くなっております。これはうわさでありますから、私はほんとうかどうか知りませんが、あまりそういうことをすると、法務委員長から今度はさらに自民党内部あるいは政府の大臣なんかになるのに妨げになるからというようなことで、戦々きょうきょうとして、あるいは小心翼々として勤められ、それで大臣になればいいが、みこしから落ちたというような人があるということも聞いておりますから、委員長もあまりそういうことに拘泥せずに、今後は法務委員会の権威を高めて、国民の信用を得るために、そういう点はあらかじめ十分お考え願いたい。
 それから、その点に関して法務大臣の井野さんも、あまりやられたら困るからと自民党の幹部の方から手を回して委員長にかれこれとおっしゃることのないように、あらかじめ希望しておきます。
○瀬戸山委員長 委員長からお答えいたします。志賀委員よりの御注意まことにありがとうございますが、私に限ってさようなことは全然ないと御信用願いたい。
○志賀(義)委員 それでは大へんけっこうな御答弁でありますから、そのように十分やっていただきたい。名委員長としての名声を将来に残されるようにしたいと思います。
 ただいま松川事件のことについて坂本委員から質問がありました。当法務委員会でも、この松川事件の石坂修一判事の忌避問題あるいは当時の松川工場長代理の諏訪親一郎君のメモの問題をここで取り上げまして、ついにその所在がはっきりしたという因縁がございますので質問をいたしたいのであります。
 実は当法務委員会で取り上げたことが正しかった理由は、石坂判事がついにみずからこの松川事件に関する法廷に出席することを遠慮するという形をとり、また諏訪メモが、異例の措置ではあったが、最高裁において証拠に準じて取り扱われるということになったことでも明らかでありますし、きょうの判決理由書の中でも、松川で列車を転覆させる謀議が成立しなかったという謀議不成立ということがこの判決の主たる理由になっておるのであります。一つは精神異常のある太田という被告の自白を土台としていること、もう一つは諏訪メモの存在によって佐藤一という被告のアリバイが証明される、こういうところから謀議不成立ということになったのであります。当法務委員会の活動が今度の判決を導き出すのに一つの非常に大きな働きになったのであります。これらの法務委員会の活動によっても明らかなことは、松川事件については被告が全く無実であるということの事実関係並びに証拠が十分に条件が備わっておるのであります。これについて最高裁判所が大膽かつ公平に無罪を自判でもってやらなかったことは、私はきわめて遺憾に思うものでありますが、これをもしも無罪にしたならば、裁判所はもちろん一切の司法権、並びにこれまでの占領軍のやり方が全然不信任を受ける。それでは安全保障条約を改めようというときに困るという濃厚な政治的な意図が働いておるのでありますが、それはそれとして、とにかくこういう判決が一審二審と違って出てきたことは、これはやはり国民の世論、人民の力のせいでありまして、私どももその点は一つの進歩であると思うのであります。それについて、無実は明らかなのでありますけれども、八海事件の例などを見ても、原審差し戻しになると、検察庁はやっきになって、もう一度これを有罪にしてやろうというのでやっておる形跡が多分にあります。今度の事件でもそういうことをすると検察庁は必ず失敗するということをあらかじめ私から申し上げておきます。私どもには真犯人のこともわかっておるということを申し上げなければなりません。そこで従来のいきさつに拘泥するのでなく、公正な観点からやる意思、決意があるかどうか、その点を監督なさる御決心があるかどうか、この点を法務大臣と刑事局長とにお伺いしたいと思います。
○井野国務大臣 本件が第二審に差し戻しになりまして、検察当局が第三審で負けたという気持から、やっきになってこれを有罪に持っていくように努力しやしないかという御心配でございます。これは検察当局としては、第二審に戻りました以上、自分の職責の範囲内において正しく自分たちの主張をして、そして破れればまたこれに従わなければならぬという決心のもとにいたすことと信じております。決して不当な取調べなりその他の行為をさせないように、私どもとしても十分指揮監督いたしたいと考えております。
○竹内説明員 今度の破棄、差し戻しの理由となっております点をただいま志賀委員から御説明がありましたが、私まだラジオで聞いた程度でございましてつまびらかにいたしませんが、この破棄になりました理由というものは、法律上、当事者である検察官が拘束を受けることは当然でございますし、また道義的に申しましても、その最高裁の判断につきましては十分な敬意と信頼を持って臨まなければならぬというふうに考えております。従いまして、今度二審に差し戻された場合に、その理由となりました部分について裁判があらためて行われる、これに対して検察官ができるだけ真相を明らかにするように努めることは当然でございますし、その間に何かでっち上げるとか、いろいろお言葉がございましたけれども、さような態度でなく、きわめて厳正公平に事に臨んで参る、これは検察官の信条でございますし、またそれを貫いて参りたい所存でございます。
○志賀(義)委員 前にここで菅生事件を取り扱いましたときに、今最高検察庁の公安部長をやっておられる井本台吉君があなたの先任者でありました。そのときに、市本春秋という偽名であった戸高公徳という警官がスパイとして交番所にほうり込んだ脅迫状、これはどこに行ったかわからないと検察庁が答えられて、あれは証拠としてとったものではございませんとまであなたの先任者は言われたのです。そこで、これも今の警察庁長官の前任者である石井君にお尋ねしましたところ、石井君の申されるには、確かに証拠として提出し、その領置書までいただいておりますと、二人並んでおってそういう答弁でありました。私は前の井本さんとあなたが同じ穴のムジナだと頭からきめてかかっておるのじゃありませんが、刑事局長の職にある人には往々そういう危険があるから、私の方も用心をしてかからなければならない。この点はおわかりでございましょうね。そういう用心をするのは当然でしょう。
 そうして諏訪メモのことについても、どこにあるかわからないという御答弁があった。それで川井課長に伺ったところ、川井課長は、まだ井本さんがここでさんざん失敗したことをお知りにならないから、同じような、こちらから見ればまずい逃げ口上ととられる答弁をなすったのですよ。その間についた諏訪メモというものが隠し切れなくなって――これは九年も隠されておったのです。この諏訪メモのような証拠がまだこの事件にはあるのです。というのは、検察庁が、こちらからつついたから諏訪メモだけは出したけれども、すべての押収物の目録、その内容を公開しておらないのです。いいですか。その証拠物を、今度は原審差し戻しになっていよいよ公平なものをやろうとするならば、あなたの方ではどうしてもこれを全部出すように国会における検察庁の代表者としてあなた約束して下さるか。すべての証拠物を隠すところなく今度は出すということを一つ約束していただきたいと思います。
○竹内説明員 まだ隠した証拠物があるということでございます。また証拠品の目録を出してないということでございました。志賀委員の意のあるところを十分検察当局に伝えまして、出すべきものでありかつ必要なものであるならば、当然出すべきものだと私は考えております。審理の支障のないように、十分真相を明らかにするように努めるようにいたしたいと思います。
○志賀(義)委員 ただいまの御答弁にやはりしかけがあります。出すべきもの、出す必要のあるものというのは検察庁側が考えられてでしょう。日本語は往々主語を省くので、文章があいまいになるということは世界で有名なことです。今出すべきもの、出す必要のあるものというのは、検察官がしかりと認めてのことでしょう。しかし、刑事訴訟法ではどういうふうに書いてありますか。被告人にとって有利なものということがありますよ。被告人にとって有利なものというのは、被告人側あるいは弁護人側から見ての判断も加わらなければならないことであって、証拠はこの際すべて出していただきたい。検察庁が出すべき理由ありと認め、あるいは出す必要ありと認めるだけの判断ではいけないことは、諏訪メモでもわかったでしょう。市木春秋の脅迫状でもわかったでしょう。そういうことがありますから、もう一度ほんとうに文法的にも法律上にも正確な答弁に直していただきたいのです。そうしないとわれわれ安心できない。
○竹内説明員 被告人に有利な証拠は検察官が出さなくて、それは被告側が出すのだというような考え方を私は持っておりません。被告人に有利なものでありましても、出すべきものは出す、必要のあるものは出す、これが私の考えでございます。
○志賀(義)委員 では法務大臣、ただいまのようなことで、これは人の生死に関する問題で、結局はあなたがもし在任されておったら判こを押して、刑の執行命令をされなければならないことですから、あなたにとって後日寝ざめの悪いことのないように、今刑事局長が言われたことは、確かに自分も監督権を持ち、指揮権を持つ者として十分やるという御決意を一つ披瀝していただきたいのでございます。
○井野国務大臣 私もかつては被告となったこともある人間でございます。お気持はよくわかります。どうぞ一つその点は御情用いただきたいと思います。
○志賀(義)委員 そこで私は別の真犯人――これは今の被告が真犯人であるというようなことを繰り返したってだめなんですから、私が大よそ真犯人の範囲をお知らせしますから、それに従って検察庁ではよくそこに目をつけていただきたいと思うのです。第一に当時のアメリカ占領軍・第二に特にそのCIC、第三には日本の中野スパイ学校の出身者、第四には旧軍人及び右翼、この範囲で一つ調べて下さい。そうすると割り出せますから……。
 そこで、今の犯人の範囲のことについて最後に申し上げたいのでありますが、メーデー事件でも渡辺警視がうその供述をしたということがあります。警官が偽証したということが明らかになってきておる。これはあなたもよく御承知の通りです。検察庁ことに刑事局長としては、当時の玉川警視、それから先ほど法務大臣も申されましたが、職権乱用があった場合には検事たりとも容赦しない、警察官たりとも容赦しないとおっしゃったので、玉川警視、松川事件の地検等についても再調査をしていただきたい。特にその証拠を隠しておる最高検察庁ではなくて、福島の地検の倉庫にあったとかおっしゃったのはほかならぬあなたですから、そういうこともこちらで催促すればあなたは探して下さる人ですから、今度はこの点についてやっていただきたい。つまり重ねて申しますが、今の被告人になっているのをもう一度被告人にしようというのでなくて、正確にやっていくには、今私が申し上げた点を十分に取り入れてやっていただきたい。その御決心がありますか、刑事局長から伺って、井野法務大臣に念を押したいと思います。
○竹内説明員 御趣旨の存しますところは十分承わりまして、よく現地にも伝えまして、処理に遺憾なきを期して参りたいというふうに考えております。
○志賀(義)委員 大臣はいかがですか。
○井野国務大臣 今刑事局長のお答えしたことについては私も同じく責任を持っております。
○坂本委員 ただいまの志賀委員の最後の御質問に関連するわけですが、本件については他に犯人がある、こういうのが火のないところに煙は立たないというところで世論であります。またはっきりした事実もあるわけであります。そこで破棄、差し戻しになりましたから、仙台の高等裁判所でこの事件を全部有罪にするという建前で死力を尽してその証拠固めをするというよりも、この事件については、十年たってはおりますが、重大な問題でありますから、検察当局としては別個に捜査本部を作りまして、新たな別の捜査を開始して、そうしてその黒白を明らかにすべきではないか、こういうふうに考えるわけでありますが、その点についての大臣の御所見はいかがですか。
○井野国務大臣 十分検察当局ともこの問題についてはこれから相談しなければならぬ問題と思います。従って、今私がここでどうするということは言明申し上げかねるわけであります。
○坂本委員 もちろん検察当局と相談をされなければならぬということはあると思いますが、このような重要な段階であり、本日は歴史的な判決を言い渡した当日であります。日本の人民の信頼を受けておる法務大臣ならば、これをいかに取り扱うか、十年後ではあるが、やはり私が申し上げましたような捜査本部をここに作って、そうして徹底的に究明をして国民の前に明らかにする、こういう決意がなければならぬと思うのですが、その点はいかがでございましょうか。
○井野国務大臣 新たなる捜査本部を作るとかいう問題につきましては、これは重大な問題でございます。従って、今ここできょう判決があったから、すぐそれでは決意をしろとおっしゃっても、これは無理な話だと思いますが、私としては十分研究して考えていきたい、こう考えております。
○瀬戸山委員長 五島虎雄君。
○五島委員 私は、戦後特高警察は廃止されて、そうしてわが国の警察は民主化されたとはいいながら、ここ数年来刑事警察それから民主団体の抑圧を任務としておる部門が飛躍的に強化されて、その方向は憲法の諸規定を踏みにじるものといわなければならぬと思います。それで、国民の自由保持にこういう問題は重大な関係があろうと思うのです。その例としては、ただいま各委員から例に引っぱり出されました管生事件で、秘密警察とその存在が明らかとなっております。また昨年でしたか、和歌山の西署の送達簿事件が明るみに出ました。それから本年一月大阪府警の平野署の作業報告などの一連の秘密警察文書が拾得されたところから、今や再び戦前の特高警察に変貌しつつあるこつとが大体明らかになってきておるようです。これらの問題に対しては、ただいままで当委員会においてそのつど事件を取り上げて、その性格を明らかにされてきたところでございますけれども、私はここにその一環として石川県の金沢市の北陸鉄道という労働組合の中で起きたところのいわゆるスパイ事件の問題を取り上げて、関係局長に質問をしてみたいと思います。
 この北陸鉄道スパイ事件に登場する人物は、北陸鉄道労働組合に三年有余プリンターとして仕事をしていた大河初二という人物、これがいわゆる警察の手先となって労働組合の状況を警察に提供していた人物です。それから警察としては、警察官は長井巡査という人物が登場します。それからその仲間の役割を果したのに、一般市民であるところの西野写真館を経営する夫妻がここに登場するわけです。その他労働組合の幹部あるいは広坂警察署長及び黒川石川県警本部長等々が登場するわけですけれども、この警察官がいわゆる民主団体あるいは労働組合等々についてその状況を常時視察する、そうしてそれは第三者を介して秘密的にその情状を情報として聴取する、第三者が情状収集に協力すれば、これはいわゆるスパイ行為であるとわれわれは思うのですけれども、警察としてはこういうような情状の収集について常時情状の収集、そうして第三者に対するところのスパイ行為を強要したりするような指導を行なっておられるかどうかということについて、まず一点として質問をしておきたい。
○井野国務大臣 警察の点は公安委員長の方に御質問していただきたいのです。私の方の所管ではございませんから……。
○瀬戸山委員長 五島委員に申し上げますが、警察庁関係は他の委員会の関係で、まだ出頭はないわけです。
○五島委員 それでは警察の方面にお尋ねをしながら、そして人権擁護の問題とか、あるいはその他の問題に非常に大きな関連を持ってくると思いますけれども、そのまず手初めに質問するのは警察関係ですけれども、まだ来ていないのだったら質問にならない……。
○瀬戸山委員長 猪俣浩三君。
○猪俣委員 私は一点だけお尋ねしますが、これは前に二回、私当法務委員会で若生事件の押収第七号、これはさっき志賀委員が言いました戸高が書いた脅迫文ですが、これが検察庁へ行ってから行方不明になっておる。これはその放火事件、交番爆破事件を前に予告した脅迫文でありますから、これを何人が書いたかということが、何人が爆破に関係したかを知る絶対的な物的証拠です。それが、戸高なる者が書いたということになっておるにかかわらず、その証拠書類を紛失したと称している。そこで私は、こういう被告に有利な証拠物件が検事の手元で紛失せられた場合における検事の責任について二回にわたって質問いたしておりますが、調査中ということでそれに対する御答弁がいただけないのであります。しかし数カ月もたっておりまして、すでに天下の大問題となっておるこの件につきまして、私は、責任回避するような御態度に受け取れるのであります。申すまでもなく、今刑訴のやり方は弾劾制度をとっておりますけれども、検事は公益の代表者であって、民事事件の原告の弁護人、被告の弁護人とは違う。国費によって捜査なさっておる。それが被告に有利であっても不利であっても、真実発見のためにはその証拠を明らかにしなければならぬ。しかるに、まるで民事事件における原告、被告のような立場に立って、そして検事がそういう心境の下にやるということになったら、これは重大問題です。弁護人は捜査権は持っておりません。検事は国家権力を背景とした刑罰請求権の行使としての捜査権を持っておる。ここに絶大な権力の差がある。その検事が公益の立場から、真実発見の立場から捜査せられた被告に有利な証拠物件、今日の諏訪メモのごとく裁判所の要求によってやっと提出したとか、こういうこともいずれ私どもは刑事訴訟法そのものの改正問題として御論議願いたいと思うのですが、私はすでにこの菅生事件の証拠書類である脅迫文の所在について再三御質問をした。なくなったのなら、なくなったで、いたし方がない。これは物理現象です。しかしそれに対する責任というものは残っております。被告に最も有利な証拠物件が検事の手元になくなった、何人もこれに対して責任を負う者がないということになりますならば、われわれの人権の保障などというものはゼロにひとしい。国家権力を背景として、そういう被告に有利な証拠を握りながら、それをないと称して裁判所に提出しない。それで済ませるということになるならば、一体われわれの人権の保障はどういうことになりますか。私はおそるべき結果を起すと思うのです。検事をわれわれはある程度信用しているから、国民はそれに対してあまり心配をしないでありましょうが、こういうことをもし検事が意識的にやったとするならば、どういうことになりますか。その一札があるならば無罪になるというような被告に有利な証拠物件を検事が提出しない。あるいは紛失した。こういうことで物的証拠として裁判所に提出せられないということになったならば、どういうことになりますか。実に戦慄を禁じあたわざるものがある。そこで、この紛失したという者に対しましては、十分なる責任追及を行わなければ、かような不安を一掃することができないという立場から、私は二回にわたって質問しているはずであります。あなたの前の刑事局長の際にも、それからあなたにも一回やっておる。いずれも今調査中でございますということだけで今日済まされておる。われわれも忙しいからそのうち忘れてしまって、私もはなはだ無責任だと思いますが、そのとき法務委員会へ答弁なさらぬでいるうちに、ほかの問題がいろいろ起ってくるうちに忘れてしまって、質問しっぱなしで答弁を何もせずにほおかぶりされておることがたくさんある。しかし、今日諏訪メモなる事件が起ってくるとともに、私はこれは不問に付せられぬと思いますので、その調査の結果、どういうことであの脅迫文が証拠物件として紛失したか明らかにしていただいて、そうしてその紛失した責任者に対してどういう責任を追及なさるのであるか、これに対する御所見を承わりたい。私は再三これは質問申し上げておるので、もう調査も、半年になりますからできておると思うのです。ことにあなたが刑事局長になってからも私質問しておるはずだと思いますから、御答弁いただきたい。
 それから、弾劾制度のもとにおきましても、検事は公益の立場であるがゆえに、被告に有利な証拠のごときは進んで提出すべき公務員としての責任があると思う。それを民事事件の弁護人のように――弁護人といえどもそういうことは許されないことでありますが、しかし、これを民事事件として、原告、被告に頼まれた弁護人にはある程度了とする点もありましょうけれども、検事という立場の人間がさようなことをやりましたならば、おそるべき結果を引き起すわけであります。これに対しての法務大臣の御所見も承わりたい。ことにそういう紛失した検事に対して一体どういう責任を追及するのであるか。これは大臣の責任になってくる。それに対する方針を明らかにしていただきませんと、私どもは非常に心配にたえない。諏訪メモのことにつきましては、私はきょうは触れません。これに対していろいろ刑事訴訟法上の問題が横たわっておると思うのですが、後日お尋ねしたいと思うが、前から私が質問しておりました点につきまして御答弁いただきたい。
○竹内説明員 猪俣委員から御質疑がございました脅迫状の行方不明問題でございます。これは決して私どもほおかぶりしておるわけではございません。鋭意調査をいたしておるのでございますが、これは検察と警察との間の意見の食い違いがあるようでございます。検察側は、見て返したと言っておるようでございます。それから警察側は、今御指摘のように検事の方に渡してしまったと言っておるようでございますが、検察庁の帳簿には証拠品として受けつけていないということでありまして、当事者間にそういったような責任のなすり合いみたいな話があるようでございます。しかし、いずれにいたしましても重要なる証拠品であることには変りないのでございまして、国家機関たる警察がどこにやろうと、国家機関である検察庁が、所在がわからない、いずれにいたしましても国家機関においてその所在がわからぬということにつきましては、これは責任きわめて重大でございます。従って、その点につきましての現地の考え方を、私どもとしてはいつまでもじんぜんと待つわけにはいかないので、決着をつけたいというふうに考えておりますが、現地の方ではなおもう少し待ってくれ、真相をきわめたいということを言ってきておりますので、その間待っておるというのが現状でございます。しかしながら、証拠品を紛失したということになりますると、これはその取扱いの衝に当りました者、監督者それぞれ責任を負うべきことは当然でございまして、いずれにいたしましても事実関係が決着いたしましたならば、それに基きまして必要な措置をとりたいというふうに考えておるのであります。
 それからなおこの問題に関連して、公益の代表者である検事のあり方についての御質疑もございましたが、この新刑事訴訟法につきましても検事と被告との当事者としての対等関係と申しますか、そういう当事者主義が強く主張されまして、ほとんどの事件について弁護人がつくという形になって参りましたことと、英米法の慣例から申しまして、検事の出すべき証拠品というものの範囲、限界についてはいろいろ議論の存するところでございますけれども、私どもといたしましては、御指摘のように検事は公益の代表者でありますし、日本の弁護人と申す者は、検事が国費を使って捜査をするのと違いまして、どうしてもその点において、防御的な捜査というものはなしにくい立場にございます。そういう点をよく考えまして、具体的な運用といたしましては、被告の側に立って有利な証拠も検事が収集し、真実発見のためにはこれを裁判所に提出するということが、公益の代表者としての検事の立場であろうというふうに私は考えております。従いまして、環境調査の問題にいたしましても、検事側から十分被告のために有利なる証拠も集めまして、これを提出するということは、かの売春防止法の五条違反の関係等につきましても、鋭意その方向に向って努力をいたしておるのでございまして、検事全体が不利なことはみな隠しておくんだというようなことは決してございません。さようなものではないというふうに私は確信いたしておるのでございます。
○猪俣委員 実は私きょうはこの質問をする準備なしに来ました。ちょうどあきができましたために質問するのでありますが、今のあなたの答弁に対して、結果として非常に不満であります。
 第一点といたしましては、今日数カ月を要しておりまして、当国会で私だけが二回も質問をしておる。その間には刑事局長は変っているのです。それまでの長い間、まだ調査中であるとか、現地ではもうちょっと待ってくれと言っておる。また私が質問を忘れてしまうとそのままほおかぶりをする。こういうことは私はけしからぬと思うのですよ。そこで私は、先ほど申しましたように、きょうは質問の材料なしで出てきました。そこでこれは検事の調べた中に、私の記憶に誤まりなかりせば、押収七号として脅迫文を検事が被告に示して、聞き取り書きをとっておるはずであります。押第何号を示すといって、被告の答弁を調書に書いてある。私はその調書を見た記憶があるが、今日持ってこなかった。しかるにかかわらず警察に返したという。警察庁長官と当法務委員会におきまして、あなたであるか前の井本刑事局長であるか忘れましたが、ここで向い合って、確かに警察庁に渡しました、こういうことを法務委員会ではっきり説明をしておるのです。そうして領収書までとって、しかも検事調書にはその押収番号まで示して陳述を得ておる。聞き取り書きもできておる。私はきょうこの検事調書を持ってくればよかったのですが、用意がなかったので持って参りませんでした。警察へまた返したなどということは、あなた方がお調べになればわかるはずだと思う。交番爆破の犯人が何人であるかという事件に、その前に脅迫した脅迫又を、検事がそれを見て不要だと思って返したというようなことが一体あり得ますか。あまりに人をばかにした態度じゃないですか。逆の立場だったらどうですか。脅迫文は何人が書いたかということは、唯一絶対の物的証拠ではないですか。それを警察へ返してしまったとか、どこかへやってしまったとか答弁しているのは、無責任もはなはだしいと思う。そういうことは国民に対して申しわけが立たぬと思うのですよ。それを今日まで諸君の方では明らかにしない。そういうことでは綱紀の粛正もできませんし、検察権の公正な運用もできない。検察権全体が国民の疑惑の的になります。そこへ持ってきて今度の諏訪メモなんという事件が起った。その理由はまだ私どもよくわかりませんが、被棄され、差し戻すというようなことは検察当局の大きな黒星じゃありませんか。大体士気が頽廃しておる。それは法務大臣なり刑事局長なり、また監督官庁が今日まで厳重なる監督をしないからだ。そんな無責任な答弁はないと思う。調書を一つ調べて下さい。検事調書に出ているはずだ。私まで番号を覚えている。押収第七号である。そういう重要なる唯一絶対とも言うべき物的証拠を、検事が警察から受け取っておるものを、自分からそれを領置せずして警察へ返すなんていうことがありますか。そんなたわけた答弁をしていることは、不都合千万だと思う。
 第二点といたしましては、今あなたのおっしゃった当事者主義というものに対しても、いろいろ異論がある。あなたは断定はなさっておらぬけれども、当事者主義ということをもって、何か検事と弁護人が対等の立場――対等の立場ということは、真実発見のためにそういう弾劾制度、当事者訴訟主義をとっておる。いずれも真実発見のためであります。しかし、先ほど申しましたように、それを曲解いたしまして、近ごろの検事は自分たちの公益の立場ということを忘れて、ただ自分の起訴を維持すればいいというような、熱心のあまりに被告に有利な証拠までも出し渋るということが非常にある。この刑事訴訟法は占領中にできた。そのときの起訴状一本主義に対しまして、私どもは司令部へ行きまして、日本の弁護士事務所はアメリカのように完備しておらぬから、起訴状一本主義ということは非常に危険である。検事は捜査権を持っているが、弁護士にはないのだから、ということで了解を求めに行ったところが、当時の司令部では、検事の手元にあるものはことごとく弁護人が見れるようになればいいじゃないか、そうするのが今度の刑事訴訟法の建前ではないか、だから起訴状一本主義だって決して都合が悪いことではないということで、われわれはそういう精神で刑事訴訟法を審議したのだ。しかし、その後に至りまして、聞き取り書きなどを弁護人に見せないということがだんだん起ってきた。刑事訴訟法ができた当時は、トラブルはあまりなかった。ところが、近ごろ至るところの刑事裁判において検事側と弁護士側との間にその調書を見せろ、見せないということで摩擦が起っている。国家機関である検事が、国家の立場として、公務員として取り調べたものを、被告の弁護人にことごとく見せるということがなぜ悪いのか。今度の刑事訴訟法はそういう精神でできたのだとわれわれは了解しているにかかわらず、だんだん検察ファッショが起きてくる情勢に乗じまして、検事は自分の取り調べたものを出し渋る傾向がある。私は刑事訴訟法を改正しなければいかぬと思う。これが毎年の日本弁護士会の悩みの種である。そこへ持ってきて、今度は見せないだけじゃなしに、紛失したと称して提出をこばむ。何でも調べたものを見せるということになっておれば、こういう問題は起らなかったはずである。諏訪メモもそうです。調べたものをことごとく見せるということになっておれば、こういう問題は起らない。前の刑事訴訟法はそうなっておった。すべて公判記録に全部の警察及び検察の取り調べがくっついておった。それを見てわれわれは弁護の方針が立てられた。起訴状一本主義になって、調書はありますが、そういう意味において非常に都合の悪いことが起ってきた。そして今回のようなことができた。検事の立場というものは、当事者主義というものを曲解いたしまして、ただ弁護人と対等の立場で訴訟のかけ引きをするのだと考えたら、とんでもない間違いである。そういう考え方が多少とも法務当局にあるといたしますならば、大へんな間違いである。そういう御指導をなさっておるとしたら、大へんな間違いである。なるべくならば、すべて検事の調べたものは弁護人にこれを見せる、そうしてほんとうに当事者の立場に立って、ほんとうの対等の立場になって裁判をやって、真実を発見するということでなければならぬ。
 そこで、これは法務大臣にお聞きしますが、かような責任の衝にある検事が最も重大なる証拠物件を紛失したと称するということに対して、一体どういう責任追及をなさるのか。それから検事の取り調べたものを、とにかく弁護人に対して手のうちを全部見せて、お互いに公判に臨むという態度をとるべきものじゃないだろうか。そうしないと真実の発見ができません。これについて大臣並びに局長の御答弁をお願いしたいと思います。
○竹内説明員 先ほど私から申し上げました点について重ねての御質問がございましたが、私もここで突然の脅迫状の問題でございまするので、調査資料を持ち合わしてはおりませんが、私の記憶いたしておりますところでは、あの脅迫状が検事の調書の中に援用されておりますことは事実でございますが、この脅迫状の問題は一つの別の脅迫事件として一方において警察で捜査しておったわけであります。一方また爆破事件の捜査を検察庁の方でいたしておるのでございます。そしてこの脅迫状を出したものと爆破とが何らかの関係があるのじゃないかということから、検事がその脅迫状なるものを見せてくれというので持ってこさせて、そのときにこの脅迫状を示して弁疏を求めた、そのあとで、脅迫事件はまだ警察で捜査中でございますので、その証拠を警察の方へ返したというふうに記憶しておるというのが検事側の言い分のように私は理解しております。いやしくも同じ事件について脅迫状を検事が示す段階になっておれば、脅迫事件として送致を受けておるならば、それは当然その証拠品でございますから検察庁にくるわけでございますが、その脅迫事件は別件になっておって、当時まだ警察で捜査中の事件で、しかも押第七号というような番号がついておりますが、これは警察の押収番号でございまして、その辺はもう少し実情をよく御理解をいただきたいと思うのでございます。しかしこれは私の弁明ではございません、そういう事情になっておるということだけを申し上げておるわけでございます。
 それから第二点の証拠品を見せろといううさとは、日弁連からも常に検察側への御要望として私ども伺っております。これは先ほど申しましたように、私どもの気持としましては、被告人に有利なものでありましても、当然真実発見のために役立つものであるならば検事は出すべきであるという考えを持っておりますが、御案内のように、刑事訴訟法には、実際に法廷に出すものについて弁護人側に見せろということに規定されておるわけで、この点は、根本的に解決しますには、やはり刑事訴訟法の解決を待ちませんと十分でないように私は考えておるのでございます。刑事訴訟法につきましても、ただいま私どもの手元においていろいろ改正の問題点等について調査をいたしておるような状況でございまして、その問題も当然論議をいたしておるのでございます。
○井野国務大臣 恐喝文書の紛失事件につきましては私も話は聞いておりますが、そう長くこういう問題になっておるとは実は承知しておりませんでした。従って、今刑事局長が述べましたような事実をなるべくすみやかに調査いたしまして、適切な処置をとりたいと考えております。
 なお検事の証拠を弁護人にすべて示すかどうかという問題。これは刑事訴訟法にも関係のある問題でありますので、刑事訴訟法の研究とあわせまして私としても十分考慮いたしたい、こう考えております。
○猪俣委員 官庁同士の行為ははなはだルーズな点があると思うのですが、こういう大事な証拠を検事が一たん受け取って被告人に見せて、それをまた警察に返したという場合に、警察から受け取りか何か取るのかどうか。受け取りがあるならば返したことははっきりしておる。警察当局としては、責任ある警察庁長官が、それは検事に渡した、そのままになっておるという証言を国会でしておる。しかるにかかわらず、返したはずだというようなことを言って、それに対してさっぱり責任を明らかにしない。私はこれははなはだ不都合だと思う。返したならば返した証拠があるわけですが、証拠もないのに、漫然待っておっても、出るはずはないじゃありませんか。警察庁長官は検事に引き渡しましたと明言しておる。それに対してちゃんと返したならば返したという何か証拠がなければ、ただ待ってくれ、待ってくれといっても、一生かかっても明らかになるところはないじゃありませんか。返したならば返したという何らかの形で明らかになるような返し方をやっておられるのですかどうか、そこをお尋ねしたい。それをまた刑事局長としてはよく調べなければいかぬと思うのです。返したと言い張っておるが、返したならば返したという証拠があるのか、それを明らかにせよといわなければならぬと思う。返したはずだといったままで、今日まで黙っていらっしゃるということは、無責任だと思う。検事は返したという主張をしておる。それに対して何か裏づけがあるのかどうか。一たん受け取って、被告人に見せて調書までできておることは、今あなたがお認めになった。それをまた警察に返したという証拠があるはずですが、それをお尋ねします。
○竹内説明員 一般に事件送致になりますときには、記録と証拠品をつけて受理をいたします。その場合はちゃんと記録を受けたこと、証拠品を受け取ったこと等の受領書を警察に渡すということになっております。しかし本件はまだ送致を受けてない事件で、送致を受けてない事件の証拠品だけを検察庁がとっておくということはあり得ない。なぜかならば、今度事件を送致いたしますときに、証拠品は検察庁に送り済みというようなことは一般的にいえないわけなんで、必ずそのときに脅迫事件と一緒に証拠品である脅迫状をつけて検察庁に持ってこなければならぬはずである。そこで警察としては、検察庁に置きっぱなしにしておくわけにいかない証拠品であるわけであります。それを関連事件だというので、検事がちょっと見せてくれ、よしということで授受されたように思われるのであります。それがはっきりと検事調書に引用してありますから、見せたことは間違いないわけでありますが、さてそうした脅迫事件がまだ警察で捜査中という段階でありましたので、検事とすれば、それを置きっぱなしにしておくわけにいかないので、必ずこれは警察に返しておかなければならぬ。その場合に、事件の送致を受けたわけではありませんから、そこは事実上の信頼関係で授受されたというのがこの事件の真相でございます。従って、警察で、長官が受領証を受け取ったというふうにおっしゃっているということでございますが、それは一般の送致事件についてのことをおっしゃっているんじゃなかろうかと私は思うのでございます。そういう点で問題があるわけでございます。
○猪俣委員 そういたしますと、非常に証拠は危険ですね。あなたの御答弁によると、警察から正式な送致を受けておらぬので、そこでどういうことになるのですか。検事が正式に取調べを始めて、被疑者にその証拠を見せて、聞き取り書きに、ちゃんと押第何号を示すというように書いてある。それでも、それは正式に受け取ったのじゃないので、従って返すときもただ個人の信頼関係で返した。それを受け取るときも信頼関係で――ちょっと見せてくれといって借りてきて、返すときも信頼関係で、ああ、ありがとうといってちゃんと返したということで、その間に何ら公けの証明がない、そういうことで、重大な証拠のやり取りをやっていられて、一体どういうもんかと思うのだな。そうすると、今のあなたの御答弁だとすると、てんで、幾ら調査しても検事は返したという、警察は受け取らぬという、水かけ論じゃないか。それで、待ってくれ、待ってくれといったって、十年待ったって水かけ論だ、何も証拠がない。ただここへ残っておるのは警察庁長官という公けの立場の人が国会という公けの機関において明白に証言している言葉が残っておる。あと現場の平検事が待ってくれ、待ってくれ、そんな待てるわけはないじゃないか。十年待ったってらちはあきません。いいかげん、あなた方は常識上判断して、責任の所在を明らかにする時期がもう来ているんじゃないですか。待ってくれといわれるなら、いつまで待っているのか、幾ら待ったって、そんなものは出てきやしません。もうすでに長官は責任ある発言をしている。そうしてみれば、そんな公けの証拠物件をちょっと貸してくれなんて借りて、またちょっと返すなんといって返して、てんでその受け渡しが明らかになっておらない、そんな乱暴なやり方は僕はないと思う。そういうことでやっているならば、これはもっと厳重に法務当局は一般検事に指示しなければならぬ。そういう証拠物件についての、何といいますか、はなはだ無責任な態度、それが僕は諏訪メモにも出てきたと思うのだ。そういうことでは、証拠裁判の今日、われわれの人権に対して何が最も大切か、申すまでもなく証拠ですよ。ことに物的証拠、これが最も大事なこと、それを全く簡単な、まるで熊公、八公のやり取りみたいなことをやって、そういうことが果して許さるべきことでしょうか。もしそういうことが事実なら、なぜ今まで法務当局は、それに対して適切なる指示を全国の検察官に向ってなさらなかったか。ただ待ってくれというので待っておるということは、法務省それ自身が無責任きわまると僕は思う。国会を侮辱するもはなはだしいと思う。われわれも悪いです。一たん質問して答弁なさらぬで、そのまま忘れてしまうのも、われわれが悪いのだが、しかし、われわれの質問に対して、いずれ調査してお答えすると言った法務省の方が頭に置いて答弁しなければならぬ。ちょっとあなたにお聞きしますが、私どもが法務委員会でいろいろ質問し、あなた方が即答できない場合がある。私は即答できない場合に、直ちに答弁を求めたことはありません。それから質問の通告をしない場合に、私は、答弁は今なさらぬでもいいと、いつもそういう態度をとっております。これは僕はしかるべきものだと今でも思っておりますが、しかしわれわれの質問に対して、あなた方、何かメモでもしておいて、いつ幾日、猪俣がこういう質問をして、これに対して答弁をすることになっておるという何かメモでもなさっているのですか。聞きっぱなしなんですか。実際、実務としてどうやっていますか。
○竹内説明員 実務といたしましては、私どもスタッフを連れてきておりまして、スタッフがメモをとっておりますし、私も速記録を見まして、答弁を要すべきものにつきましては必ず答弁を用意するようにして、実は今までの御質疑の点でまだ答弁が未済になっておりますものは、常に未済として私ども手に持っておるわけでございますが、機会がありましたならば答弁さしていただくつもりでおるわけでございます。扱いとしましては、そういうふうにいたしております。
○小島委員 関連して部長にちょっとお伺いしますが、そうすると、別件になっている脅迫事件というのは、起訴されたのですか、されていないのですか。
○竹内説明員 これは捜査をされたようでございますが、事件として私の方には受け取っておりません。
○小島委員 そうすると、起訴されていないということですね。
○竹内説明員 さようでございます。
○小島委員 従って、それについての証拠というものがどうなったかわからない……。
○竹内説明員 さようでございます。
○坂本委員 関連して――今の問題ですが、これは今小島君の言ったようなことをいえば、何も責任がないようになるのですが、これは菅生事件では検察官の調書が証拠として出ておる。その調書の中に、今はっきり書類は持っておりますが、その脅迫文を示してその取調べをしてある。その脅迫文がやはり菅生事件の重大なる証拠になるのです。ところがそれを出しますと、その証拠を出すと市木春秋なる者を警察が使ってあの事件をでっち上げたのだ、さらに市木春秋に対して弁護団側から爆発物取締罰則違反で、法律の第一条によって告発をいたした、それが出てくると、その告発に重要な影響を及ぼして、市木春秋は重大なる犯罪を犯したことになるのである、とこういうふうに、結論的に申しますと、われわれは考えておる。ですから検察庁の方ではそれを出したならば困る、だから言を左右にして出さないのが真相じゃないかと私は思う。もしそうでなかったならば、この市木春秋に対しては裁判も行われておりますが、この裁判が片づかない前にはっきり出して、そうして市木春秋をあの終戦後において警察官が使って、あの事件をでっち上げた、また市木春秋が爆発物を持って、第一条のあの十年以下の懲役と禁錮と思ったですが、あの犯罪に該当するならば該当するように今後処置しなければならない。それを、やはり検察と警察は一緒になって、そういうことをしたくないから、それを出さないのだ、こうわれわれは考えるわけです。ですから、この問題はじんぜん二年も過ぎております。もうはっきりそれを出さないと、市木春秋が裁判が上告までいって確定した後に出しても、それでおしまいだ。それでは私は相済まぬと思う。われわれも菅生事件では弁護人の一員でもありますし、また法務委員として国民の負託を受けて、当委員会でこの問題は重大視して、その責任の所在を明らかにしております。そうしてはっきりしていただいて、やはり罰すべきは罰し、そういうことが今後ないようにしなければならないというのがわれわれの重大な責任だと思うのです。ですから一つ、この点はもう一カ月と延ばさないうちに――何べんも言ったと思いますが、一つはっきり、なくなったのならなくなったと、なくなったと称してもどこかにあったならばいさぎよく出して、そうして人民のためにやらなければならぬと思うのです。その点を私は要望しておきます。
○瀬戸山委員長 この問題の質疑はこれで終ります。
 私から法務当局に申しておきますが、私もこの話を聞いたのはきょうが初耳なんです。しかし、お話を聞いていると、どうもふに落ちない点がありますが、すみやかにお調べになって、検察、裁判に対する信頼という一番根本問題であると思いますから、お調べ下さって、事の真相を明らかにして、もし責任をとるべきものは責任をとる、こういうふうに一つお願い申し上げます。
 坂本君。
○坂本委員 本日は労働争議に関する不当弾圧についてたくさん質問する予定でありました。さらに北鉄労働組合に対する官憲のスパイ事件についても、今五島委員から質問をしかけましたが、警察庁長官は他の関係で出られませんそうですからあとに回すことにいたしますが、北鉄の労組に対するスパイ事件は、単に警察だけの問題でなくて、検察と一緒になり、今後労働争議その他あらゆる裁判に関する点においては検察官も重要な関係があると思いますから、大臣並びに人権擁護局長に御質問を若干いたしたいと思います。
 その前に、人権擁護局長にお伺いいたしたいのですが、本日の委員会の最初に委員長から御発言がありまして、去る八月五日の広島における護国団の暴力事件について質問をいたしたわけであります。この件については、日共その他労働組合各方面から人権問題として擁護局長に申請して、局長もこの点についてはすでに調査をしておられると思うわけでありますが、調査をされましたならば、その調査の結果について御報告を願いたいと思います。
○鈴木説明員 その件につきまして、志賀委員から私の方に調べてもらいたいという御要望がありまして、さっそく現地の方へ電話連絡をいたしました。ところが、その報告が土曜日あたりに参ったのでありますが、現地では護国団と申しますか、右翼団体の暴力事件あるいは外国代表に対して日本から退去するようにというような詰問的な要求の点、そういうものについて新聞情報を集めておりますが、まだ詳細な調査をしておらない、こういうふうな報告に接しまして、まことに遺憾でありますが、新聞情報以上の詳しい調査内容についてただいま御報告いたしかねるのは非常に残念だと存じます。
○坂本委員 この問題については近く委員会において明瞭にしたいという考えでありますから、人権擁護局独自の立場から一つ調査をしておいていただきたいと思います。
 次は、北陸鉄道労働組合に対するスパイ事件の問題であります。これは北鉄労働組合の印刷員である大河初二というのがおりまして、組合の印刷物の印刷を主として印刷員として、昭和二十九年三月二十九日から組合事務所の一部を借りて印刷作業を行なっていた者でありますが、たまたま大河がGHQの警備員として勤務していた当時に親しい知り合いとなっていた、広坂警察の警備課公安係刑事の長井幸蔵巡査にさそわれまして、十三間町の幸楽という飲食店で酒さかなの供応を受けた機会を契機として、昭和三十一年十一月以降、常時香林坊の西野計二の写真店をアジトとして、長井巡査と直接またはこの西野夫婦を介して組合の情報の提供――組合機関紙、速報、通達、運動方針、闘争方針、闘争スケジュール、指令、指示、諸会議議事録など、組合発行の諸資料の提供を行い、長井巡査直接、または西野夫妻を介して、その報酬として毎月二、三千円程度、総計約五万円程度と考えられますが、金を受け取っており、またときには酒さかなの供応を受けたものであります。昭和三十四年五月二日、大河初二、西野夫妻の証言で以上の点がはっきりいたしまして、この警察官の北鉄労組に対するスパイ活動の全貌が明らかになっております。これに対しまして現地では抗議団を組織いたしまして、県労評、社会党、共産党、それから北鉄労働組合、これが広坂署に、林広坂署長と面会しまして抗議を行なった。これが大体の集約でありますが、このように警察官が五万円程度の金をやる。これは自分の金でなくて、やはり国民の税金の金だと思うわけでありますが、こういうふうにしてスパイ行為をやらせる。これは北陸鉄道労働組合の問題ではっきりいたしましたが、このようなことは、すでにこの委員会でも問題にいたしました大阪府の作業報告書の問題、これなんかもまだ調査をするということで質問が中断されている。こういうように秘密警察の文書というのがほかからも多数出ておりまして、そしていわゆる警察は憲法上保障された正しい組合運動に対し、人権を無視してスパイ行為をやらせる、こういうことが行われることになりましたならば、これは戦前の秘密警察、特高警察の再現である、これは厳として今のうちに改めなければならない、われわれはこういうような考え方に立ちまして、民主政治を守る上においてやっておるわけであります。警職法の改正の問題なんかも、やはりこういうような危険が警職法の改正によって法的に裏づけられるというので、国民の総反撃を食って、あれが廃案になったというようなことは御存じの通りであるわけであります。ことに、警察においてスパイ行為が行われ、それが検察官とマッチして裁判が行われるということになりましたならば、これは合法的裁判によって正しい行為の重大なる弾圧ということになるわけであります。それによって処刑をされるということになれば、ここに人権じゅうりんもはなはだしいということになるわけであります。北陸鉄道の労働組合に対する官憲のスパイ事件というものは今申し上げたようなものでありますが、ほかにもこのようなことが行われている。従いまして、井野法務大臣は戦前にも非常な活躍をされて、このスパイのことについてはエキスパートであられるかもわからぬですが、新憲法のもとにおける内閣の一員である法務大臣として閣議に列席しておられるし、こういうようなことは絶滅しなければならぬと私たちは考えるわけでありますが、この点についての大臣の御所見と、またこういう問題についてこそ人権擁護局は設置されておるわけでありますから、人権擁護の活発なる活動によってこういうことがないようにしなければならない、こういうふうに考えるわけでありますが、擁護局長の御所見もこの際承わっておきたいのであります。
○井野国務大臣 新憲法になりましてから、人権を尊重することは戦前より非常に重くなりましたことは、お説の通りであります。従って、スパイ行為が人権擁護のためにどういう影響を与えるかということについては、いろいろな場合があると思います。人権擁護の上に非常に害があるスパイだと、これは取り締っていかなければならない。そういう意味におきまして、私どもとしても十分研究いたしたいと思います。
○鈴木説明員 警察のスパイ活動、これは別の言葉で申しますと、警察の警備情報活動がどの程度まで合法的に行い得るかという、非常にデリケートな問題を含んでおるように思うわけであります。しかも、その限度を逸脱いたしました場合には、国民の人権に関しての重要な尊厳を侵します。また一般の国民がいたずらな不安と恐怖にかられる事態を生ずることもまた明らかであります。従いまして、私の方といたしましても、広い意味の人権擁護の問題として、このいわゆる警察の警備情報活動のあり方、その限度については、この問題が起きます前にかねがね検討はいたしております。非常にむずかしい問題のように考えるのであります。しかし、深い関心を持って調査を続けております。
 先ほど取り上げられました大阪のスパイ活動の事件でありますが、これは大阪の法務局の人権擁護部を督促いたしまして、再度にわたり綿密なる調査――その主眼点は警察のいわゆる作業報告書に書いてあることと実際の行動とがほんとうに一致するかどうか、そういう点につきまして綿密なる調査をいたさせております。相当調査は困難をきわめたようでありますが、最近に至りまして相当分厚い報告書が参りましたので、ただいま調査課において検討をいたしております。近く何らかの結論を出すつもりであります。
○坂本委員 この問題は、具体的問題で資料もたくさんあるわけでありますから、警察庁長官の出席を願いまして、その上でさらに監督の地位にあられる大臣その他の御所見も承わりたいというふうに考えるわけであります。いずれにいたしましても、やはり労働組合運動は、今自民党の代表しておる資本家と分配の問題について激しい双方の生活権の問題で対立しておる。その労働運動に対して警察がどうやるかということを、国民の税金を使ってスパイ活動をしておる。多数の中からえり出してそういうことをやるということになれば、これこそ真に国民の不安と秩序の紊乱の基礎になるわけでありますから、このスパイの問題は重要な問題と思いますから、さらに次の委員会で警察庁長官の出席を願って、まだ北陸以外にもたくさんの資料がございますから追究することにいたしまして、本日はこの程度で留保しておきたいと思います。
○瀬戸山委員長 本日はこの程度で散会いたします。
    午後一時十五分散会