第033回国会 外務委員会 第6号
 昭和三十四年十一月十二日(木曜日)
    午前十一時六分開議
 出席委員
   委員長 小澤佐重喜君
   理事 岩本 信行君 理事 菅家 喜六君
   理事 佐々木盛雄君 理事 椎熊 三郎君
   理事 床次 徳二君 理事 戸叶 里子君
   理事 松本 七郎君 理事 森島 守人君
      愛知 揆一君    池田正之輔君
      宇都宮徳馬君    北澤 直吉君
      園田  直君    野田 武夫君
      福家 俊一君    森下 國男君
      山村新治郎君    岡田 春夫君
      柏  正男君    勝間田清一君
      田中 稔男君    帆足  計君
      穗積 七郎君    堤 ツルヨ君
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  岸  信介君
        外 務 大 臣 藤山愛一郎君
 出席政府委員
        法制局長官   林  修三君
        外務政務次官  小林 絹治君
        外務事務官
        (アジア局長) 伊關佑二郎君
        外務事務官
        (アジア局賠償
        部長)     小田部謙一君
        外務事務官
        (条約局長)  高橋 通敏君
 委員外の出席者
        専  門  員 佐藤 敏人君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 日本国とヴィエトナム共和国との間の賠償協定
 の締結について承認を求めるの件(条約第一
 号)
 日本国とヴィエトナム共和国との間の借款に関
 する協定の締結について承認を求めるの件(条
 約第二号)
 国際情勢に関する件
     ――――◇―――――
○小澤委員長 これより会議を開きます。
 まず、国際情勢に関して、調査を進めます。
 質疑の通告があります。順次これを許します。穗積七郎君。
○穗積委員 今まで本委員会におきましては、ベトナム賠償問題に関連をして、われわれの同僚岡田委員からおもに条約上の立場から質問をいたしました。これに対しては、まだわれわれの納得のいく政府の御答弁をいただいておりません。従って、平和条約の調印者の資格、並びに南ベトナム政府の性格、並びに地位につきましても、多くの疑点を残しておるところでございます。しかし、本日は総理の出席を得まして、最初に国際情勢一般ということでございますから、総理に対して礼を失しない質問をいたしたいと思います。ベトナム問題に対するわが方の政策も含みまして、今までの岡田委員の質問に出なかった外交並びに経済のもろもろの政策に関する総理並びに外務大臣のお考えをこの際伺って、そして与党、野党の党派にとらわれた立場でなくて、日本民族の独立と平和と繁栄のために、ここでじっくり考え合っていただきたい。そういう態度で御答弁をいただきたいと思うのです。
 最初にお尋ねいたしたいと思いますのは、先般行われましたフルシチョフ・アイクの会談に関するこれを頂点とする東西両陣営の雪解け状態が出て参りましたけれども、これに対して、今まで岸内閣の解釈並びに態度につきましては、これを不当に過小評価いたしまして、そして口の上では平和共存の成立すること、あるいはまた、国連で提案されました全面的なる軍備撤廃に賛成の意を表するかのごとくでありますけれども、直ちに言葉を返して、それは多くの期待を現実的に持つことはできないということで、今までダレス外交政策のかすであります武力の強化、軍事同盟方式の外交政策から転換しようとしない。この態度は私ははなはだ遺憾だと思うのです。そこで、そういう御意見を伺う基礎として、巨頭会談に現われ、これから続きます外相会議、核兵器禁止会議、あるいはまた軍縮会議、最後に来年の春に予定されておりますアイクのソビエト訪問、これらを一連の契機といたしまして、大きな一つの政治外交並びに経済政策における国際的な転換のきざしを見落としてはいけない、私はこういうふうに思うわけでございます。そこで、そういう意味からいたしますと、今度の巨頭会談によって提案されております問題は、すなわち、従来の武力政策から経済共存への外交政策の方向転換が提案されておる。ところでこの問題は、岸内閣の御解釈によりますと、それはある意味においては、足元を見落した非現実的な、理想的な、観念的な提案であるとか、あるいはまたはなはだしきに至りましては、一方的なる平和攻勢のから宣伝にすぎないと、あえて無理をしてこれを過小評価したり、あるいはけなそうという態度が現われておる。これは秋は猛省を促したいと思うのです。といいますことは、この問題は決して非現実的ではない、また根拠のないから宣伝ではないということでございます。非常な現実的な基礎を持っているという点を指摘いたして、総理の考え方を伺いたい。
 まず第一点は、このフルシチョフ提案によります軍縮あるいはイギリス提案によりまする軍縮案というものが、平和宣伝のためのものではなく、実はわが国におきましては、古い武器の知識と古い国防の観念から、もう一度軍隊を作って、軍事同盟方式が国の安全、共同の平和を守るという固定した考え方を持っておられますが、その力にたよって参りましたアメリカとソビエト自身、これは今日の日本の科学並びに軍事力からいたしますならば、非常に比較にならないほどの質と量の発展を遂げておる軍備でございます。その競争をどんどん両国がやってみて、そして最近におきましては、質量ともにソビエト側がアメリカを追い越し、はるかに有利な態勢をとってきている。そういう条件の中で、アメリカの首脳者とソビエトの首脳者が、国際緊張の問題をどうして解決するか、国際平和をどうして維持するかというときに、この競争された質量ともに非常な人知を越えるような発展を来たしました最終武器、これにたよることによって、はたして安全ができるであろうか、この道は、両方とも競争をし、日本よりははるかに知識と保有量を持って検討してみまして、それは決してお互い一方のわが方の安全を守るものではない、それは人類の破滅でなければならない。そういう認識に立って、そこで力による外交政策、力による安全の保障という考え方は、もう現実的に空想的ではない、または観念的平和論でこれをやめようというのではない、この道を現実行けるところまで行ってみて、そこで壁にぶつかって、お互いに持っておる武器の威力と、そしてこれを使用した場合の結果というものを現実的に考えたときに、この道は決して人類の安全と平和と繁栄を守るものではない。そこへ気がついたことが、私は今度の軍縮提案が決して観念的なものではない、非常に現実的なものである。少なくともこの軍備競争の道によっては、幾ら進めてみても、進めてみればみるほど不安とお互いの犠牲が多くして、戦争をしないまでも、経済的犠牲その他の犠牲が多くて、この道ではもう平和を守れない、安全が守れないという現実的結論に立ったことが、私は今度の軍縮提案の現実的な可能性のある基礎だと思うのです。それが核兵器の禁止会議を成立せしめる見込みになり、それがやがて軍縮会議を成立せしめる見込みになっておる重大なる基礎である。そこで双方の軍縮に関する時期と方法について、お互いに途中の過程において不安があるのです。従ってそれらの条件において、軍縮は賛成だが、軍縮の経過と条件において話がまとまらないであろうという見方は、古い過去の、戦争前の武器とあるいはまた防衛体制を頭に持っておる人の考え方であって、実際に終局的武器まで到達し、それを保有しておる国の指導者の考というものは、そういう困難があっても、再び軍備競争へは入らないのだ、そういう結論に現実的に達しておる。これが第一点であります。これがこの間の八十二ヵ国の共同提案に、日本がこの問題を含んで十ヵ国委員会に提案することに共同提案をしておきながら、国会における答弁を拝聴いたしますというと、その認識が、首相も外務大臣も欠けておる。はなはだ遺憾であります。これが私どもが軍縮提案なり平和共存が観念的なものではない、希望的な観測ではない、現実的なる基礎を持っておるということを主張する第一点でございます。
 もう一つさらに重要なのは、この軍縮会議あるいは東西の話し合いによる外交原則を確認した、いわば表面の雪解けです。その雪を割っただけでは平和は来ない。割ろうとする努力だけでは平和は来ない。そこで重要なのは、この雪を割って新たなる平和の芽ばえというものがなければならない。軍備競争、軍事同盟方式にかわる新たなるこの国際的な外交上における芽ばえというものがなければ、いわば雪割草というようなものが――雪が解けた中にもすでに雪割草の青い芽が出ておる。これをわれわれは現在の国際情勢の中で現実に発見しなければなりません。それは何かというならば、経済の政策の大きなる転換を来たしつつあることでございます。社会主義陣営内における経済問題については後にいたしまして、われわれが今日好むと好まざるにかかわらず属しております資本主義陣営内における経済関係を、特に今年度以後このアイク・フルシチョフ会談前後の情勢から検討してみましても、その雪割草というものが明瞭に出てきておる。すなわち軍需産業中心、対外軍事援助中心の経済政策というものは、もうすでにアメリカを中心とする自由主義諸国間の国際経済政策の中で行き詰まりを来たしておる。このことが私は雪解けを来たしまする新たなる芽ばえである、雪割草の芽であると思うのです。総理も外務大臣も、特に外務大臣は経済界から出られて、われわれの判断では経済外交を表面に立って戦うべき人が、これを引っ込めておる。ところがあなたがいかに岸さんに遠慮をされたり、安保交渉にじゃまになるということで引っ込めようとしても、すでに国際情勢は、経済外交政策を持たない国の外交政策の繁栄は保障ができないという段階に来ていることは明瞭でございます。
 まず第一に、自由主義陣営の中心をなしますアメリカ経済の今年度の徴候だけ取ってみましても、今までは国際収支の赤字が大体十億台で済んでおったものが、今年度の見通しにおきましては四十億ドルないしは四十五億ドルに達するかもしれぬということは、これはアメリカの当事者自身すでに発表しておるところでございます。その原因はどこにあるかというならば、特に問題は二つあると思う。一つはアジアにおいては日本、ヨーロッパにおいてはドイツ、フランス、イギリスを中心といたします工業国の戦後の生産力回復、いわば市場に対するアンバランスが生じつつあること、これが対米貿易におきましてアメリカが常に輸入超過の徴候を示してきました大きな一つの原因だと思う。しかもそれがヨーロッパ並びに日本からの対米輸出というものが単なる戦前のような雑貨であるとか、あるいは原料品であるとか、そういうものではなくて、近代機械工業、または化学工業、あるいは精密工業を中心とする対米輸出が、ヨーロッパを中心にして伸びてきておるということ、これが一つの大きな変化でございます。もう一つは、アメリカの経済的並びに軍事的対外援助が今までドルの上にあぐらをかいて、そうしてアメリカ経済は永久に世界の王者であるという誇りを持って、この十四年の間、世界の経済開発または世界の軍備強化、これを一手にアメリカの財政すなわち国民が負担して参りましたが、これがいささか経済的に見ましても、または外交的に見ましても、この軍事援助を中心とする対外援助というものが、経済的にも軍事的にも外交的にもさっぱり効果を上げていない。そのことが同時に今の輸入超過に関する対外支払いの中心となって、今のようなドルの流出とそれからドル貨の下落という現象を来たしておるのでございます。このことはアメリカを中心とする対外外交政策の大きな転換を要求するものであり、その政策の転換のきざしがすでに出てきておる。それに対し、その出てきたということになりますならば、わが方における特需を中心としてかすかに黒字を維持しておりました日本の対外国際経済というものは、非常な将来先細りといいますか、見込みのない不安定な、こういう国際経済の地位に置かれるわけでございます。これらの動向に対して、一体岸内閣は、総理並びに外務大臣は、最近いかなる検討をなすっておられるのか。この経済的な動き、すなわち雪解けの雪割草の芽でございます。この自由主義経済諸国間における対外援助と貿易政策をここで大きく転換しなければならなくなっておる、この情勢の変化、これは当然外交政策に関連して参ります。それに対して一体総理並びに外務大臣はいかなる検討をされ、いかなる見通しを立て、いかなるこれに対する対策の用意を持っておられるか、まず礼儀上総理からこの一般的なる見通しと判断をお伺いいたしまして、質問を続けていきたいと思います。
○岸国務大臣 国際情勢は、これは常に流動し、変化しておりますから、これに対しまして正確に国際情勢を分析把握して、そして対策を立てていくことは、もちろんこれが外交政策から申しまして、常にこのことに対してそういう態度で臨まなければならぬことは言うを待ちません。最近の国際情勢の変化としておあげになりました二つの点、すなわち話し合いによって共存の道を見出そうとするこの動き、これが世界平和の上に非常に望ましいことであり、また従ってそれに対してわれわれが協力をしてそれを推進するように努めなければならぬことは、これは私どももそう考えております。私どもは決してフルシチョフの訪米やアイゼンハワーがこれに対して来春訪ソするという、この米ソの両巨頭の訪問の交換を過小評価はいたしておるつもりはございません。ただそういう傾向なりあるいはそういう情勢を推進することは望ましいことであることは言うを待ちませんが、同時にその話し合いやあるいは共存の道を見出そうということは、決して従来の主張である共産主義国の共産主義の主張や、あるいは自由主義国の信条としておる自由主義の主張というものを、それ自身を変更するということではないのでありまして、あくまでもその立場を堅持し、従ってその理想を同じくし考え方を同じくする国々の結束というものの間におきましては、少しもゆるぎのない情勢であるということ、これも私は国際の現実であり、またその考えは、この共産主義と自由主義の根本的考え方の相違という点に立脚して、やはり今後においてもどういう立場をとっていくか、どういう考え方をとっていくか、その立場をとる以上は、その国々と協力をし結束を固めていって、そして両陣営の間に話し合いによってこれを解決していくということが、私どもは今後の情勢として当然考えられることであり、またそういうふうに考えることが適当であるというのが私どもの考え方であります。
 第二の経済の問題、特にアメリカ経済についての最近の変革についての御意見でございました。もちろんアメリカの経済が最近急速に赤字に変わっておるということから、いろいろな問題がアメリカ国内においても論議をされており、またそれが現実の対外政策としていろいろな点を問題にしておることは事実でございます。そうして一方において貿易の自由化という国際的の大きな体制、また一方においてはいろいろヨーロッパの統合体の問題やあるいはアメリカ、中南米方面においても共同体的な考え方が動いております。アメリカの軍事援助の問題あるいは対外援助の問題に関しましては、これは今御指摘がありましたように、アメリカの経済の上から見て、アメリカにおいても大いに論議されておることで、これは言うを待ちません。しかしながら同時にこの自由主義国内における未開発地域に対してアメリカ経済において援助して、これらの開発とそれからこれらの地域におけるところの国民生活の向上によって、そうして世界の繁栄を作り上げていかなければならない。それを従来の軍事援助の形でするか、経済援助の形でするかということは、これから論議されることであろうと思いますが、私は先ほど前段において申し上げた通り、自由主義国の間の結束、これによるところの繁栄、またこれによって、それを基礎として、背景として東西の話し合いをして、そして思想的に、また根本的な立場を異にするところの両陣営の共存の道を話し合いの方法によって見出していくということが今後の国際の情勢であり、またそれに対処していくようにわれわれの方も考えていかなければならぬ、こう考えております。
○藤山国務大臣 世界の平和を希求するという立場からいいまして三つほど問題があると思います。一つは膨大な軍備を持っておるその関係を調整していかなければならぬと思います。それからもう一つは、思想的に対立しておるのでありまして、共存の道を見出していくという方法を考えていかなければならない。さらに第三点として、後進国のいわゆる経済状態の改善、後進国が生活状態を改善し、経済発展がなければおのずから紛争の種がそこに生ずる。大体平和を希求してわれわれが考えていく場合に三つ考えられると思う。今穗積委員の言われた経済問題というものがその第三の点になると思うのです。御承知のように、第二次世界大戦後東南アジアにおきましても、あるいは中近東においても、あるいはアフリカにおいてもそれぞれ逐次独立の国家が形成されてきまして、おのずからその建設を進めて参らなければならぬ。後進国でありますから、技術といい、経験といい、いわんや資本といい、不足をいたしております。従って経済開発そのものが遅々として進んでおりません。またそれに伴って生活状態の改善も見ておりません。そういう状態でありますから、紛争の種がそこにまかれることもあるわけであります。その先進国と後進国との間の経済的なバランスをだんだんつけていくということは、これは当然みんなが考えていかなければならぬ問題であります。最近国連においてもあるいはアメリカ、ソ連においてもこうした問題について相当関心を深めてきた。またそれに対してどういう方策をとるかということは考えられてきておると思います。日本の外交にいたしましても、むろんこれらの国の経済的向上発展ということに対してできるだけ日本の力をかして、それの達成に努力していかなければならぬ。ただ日本といたしましても終戦後日が浅く、日本の経済の立ち直りも最近に至ってよくなりましたけれども、その過程は必ずしも各国を援助するというような状況にはなかったわけであります。日本の国力からいって十分なことができないことは当然であったと思います。しかし日本の経済も今日まできまして逐次これから増強されていくとすれば、外交の面においてもそういう意味における経済外交というものが相当に進められていく必要があると思います。その点についてわれわれとしても、経済外交の基本的な方針あるいは立場というものをそういう筋の上において進めていきたい、こう考えております。
○穗積委員 非常に抽象的な御答弁ですから、もう少し前へ進んで具体的にお尋ねいたします。
 順序といたしましてまず外務大臣にお尋ねいたしますが、この問題は要するに自由主義経済陣営内における無計画な生産計画、これがすでに戦後十四年を経まして有効需要といいますか、有効需要のマーケットとの比較において、すでに自由主義陣営内においては過剰生産の段階に入ってきておることを明瞭にしておるわけであります。そうなりますと、従来の古い考え方、すなわち力の外交政策の考え方からいきますならば、武力の威嚇または行使によって新たなる後進国を対象とする市場開発、獲得、あるいはひもつき融資によるいわゆる帝国主義的搾取の基礎に立つ対外援助、借款、こういうようなことで先進国における過剰生産問題を解決しようとしてきたわけです。ところが先ほど申し上げます通りに、戦前に考えられた古い力の外交政策、力と権力を背景とする対外外交政策というものでは、この問題を解決することができない。というのは平和と平等を愛する諸国の世論というものが政治的に強まり、不十分ながら国連においてもその世論というものが政治力として反映するようになってきている。そこでその道が選べないとすれば、他の外交政策、経済政策の上における方向転換というものが考えられなければならないわけです。そこに私は、今年度の歴史的な一つの意味は、アメリカを中心とする自由主義陣営のダレスの力の外交政策というものが根本的に再検討され、そして動揺と苦悶と努力が続けられて、新たなる一つの方向を見出さなければならない、そういうふうに考えられます。
 そこでその基礎に立ってお尋ねするわけですが、外務省は一体先般続いて発表になりました、アメリカの上院外交委員会が発表いたしましたコンロン報告、並びに去る十日に発表いたしましたシラキューズ大学報告――これは両方とも民間の、いわばインテリゲンチァの労作あるいは外交経済専門家の仕事ということになっておりますから、これが直ちに政府の政策ではない。ところが重要な意味を持っておりますのは、この二つの報告書というものか現在のアメリカの外交政策を今後決定するのに重要な立場をとっておる上院外交委員会、しかもその委員長であるフルブライト自身が、コンロン報告については前文を書き、十日発表になりましたシラキューズ大学報告につきましては、これは自由なる立場で慎重に検討に値するものだという前書きをつけて、国内のみならず広く世界に発表している点に、重要な政治的意味をわれわれは発見しなければなりません。われわれはついででありますから委員長を通じて事務当局に要求いたしておきますが、この二つの正式の文書、全文ですね、これをなるべく早く入手されて、この委員会の各委員に配付されることを要望いたしておきます。委員長、よろしゅうございますね。
○小澤委員長 よろしゅうございます。
○穗積委員 御了解を得たものとして前へ進みますが、この報告書は先ほど申しました通りに、日本または外国の信頼すべき民間報道機関が報道しておるものでありますが、UPIあるいは日本の在外総局等の報告によりますものを照らし合わせてみますと、骨組みにおいては大差はないと思うから、これを基礎にして少し情勢判断をいたしましても間違いはなかろうと思う。
 そこで外務大臣にお尋ねいたしますが、これに現われております報告書の中身には、対日政策を初めとし、アジアのアメリカの諸政策についての根本的な検討が行なわれ、多くの方向転換の示唆が示されております。これをお読みになりましたかどうか。そして外務省首脳部はこれをいかに検討なさいましたか。これに現われております諸政策転換の見込みについて、一体どういう判断を持っておられるか。それを最初に外務大臣にお尋ねいたしたいと思います。
○藤山国務大臣 むろんまだその原文というものを私は読んでおりません。お話のように新聞に出ておりますもの及びその抜粋的な報告というものだけを読んでおりますけれども、全文を読んでおりませんのでよくわかりません。また外務省としても、有力なそういうような研究所で作った報告でございますから、それ自体を十分分析し解明して、そうして今後のわれわれの参考にしていかなければならぬことは当然のことでありまして、それらの問題につきましては十分検討をしてみたい、こう思っております。
○穗積委員 私のお尋ねするのは、資料として検討するだけでなくて、こういう方向というものが今申しましたような経済的並びに政治的背景のもとに発表になっておるわけです。これはある音意味では一つのテスト・バルーンだと私どもは見ておる。単なる資料として皆さん読みなさいという意味ではなくて、アメリカ国内並びに国際外交における一つの反響をテストしているものと見なければならぬでしょう。先ほど言いましたような手順を通してきておるのですから。そして後に触れたいと思いますが、来年の大統領選挙を前にいたしまして、アメリカにおける次期大統領候補になり、それを支持する政党、責任ある政党の中においても、もうすでに現実の政策としてこの中に現われたものが事前運動として提案されて、国民並びに国際世論に訴えられておるわけです。だから外務省は一体この方向を問題にならない方向として考えておられるのか、この中に現われておる諸政策がやがては実を結んで、アメリカの具体的政策となって現われてくる可能性を見ておられるのか。そして第三にお尋ねしたいのは、外務大臣はその方向というものを歓迎されるのか、好ましくないものと考えておられるのか、いずれであるかを伺いたいのでございます。
○藤山国務大臣 もちろん上院外交委員会がこういう調査を依頼したことでございますから、また調査そのものがアメリカとしてはおそらく権威ある研究機関に委嘱したことでありますから、アメリカの上院外交委員会がその報告書を相当重要視することは、私は当然だと思います。ただしかし、その報告書にあります通りのことが、すぐに政策に取り上げられるということは必ずしも今日から断定できないし、あるいは取り上げられないものもありましょうし、あるいは時期を得てそういう方向にいくものもあろうと思います。それらの問題については、今後の帰趨を待たなければならぬし、われわれとしてはやはり慎重にそういう状況を検討しながら、盛られておりますいろいろな問題について、今後考えていかなければならぬというところにあるわけであります。そういうふうに考えております。
○穗積委員 そしてあなたは、この方向を歓迎されますか、どうですか。
○藤山国務大臣 まだその全体について歓迎するか歓迎しないかということは、申し上げかねます。
○穗積委員 先ほど言いました、私が最初に論じ、他の委員会においても首相並びに外務大臣が答弁なさったように、これは一つの経済的な、現実的な基礎を持った外交政策の方向転換、すなわち雪解けの一環であると私は思うのです。そうであるならば、当然こういうような、個々の政策の内容については別ですが、方向として、傾向として、この軍縮、全廃を歓迎し、話し合い外交を歓迎するということでありますならば、岸内閣も同様に、この方面というものは好ましい傾向であると見られるのがあたりまえだと思うのですが、首相はいかなる御感想をお持ちでしょうか。
○岸国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたように、私は力を現実に用いて国際問題を解決するということは、これはいかなる意見においてもとるべきではないと思う。従って、最近現われておる話し合いによってこれを解決するという考え方は、非常に望ましいことである、ぜひそういう意味においてこれを推進していかなければならぬと思います。ただ両報告書に現われております個々具体的の問題につきましては、先ほど外務大臣もお答え申し上げましたように、なお私は検討を要するものがある、こう思っております。
○穗積委員 そこでお尋ねいたします。この方向を望ましいものである、現実的に可能性もあるものであると見るならば、その観点に立って、現在あなたが政治的生命をかけてやっておられる軍事同盟である安保条約の改定、今当委員会にかかっておりますベトナムに対する軍事的性格を持った賠償協定の実施、これらに対して、この情勢というものは好ましくない、逆のものである、少なくともこういうような現実問題になっておる日本の外交政策の中心であるこういう政策というものに、いささか再検討すりべき情勢が生まれてきたというふうにわれわれは見るべきだと思いますが、総理の御感想はいかがでございますか。
○岸国務大臣 私は、安保条約の改定の問題を、ただ単に軍事同盟化するものであるというふうな抽象的な議論でもってこれに反対されることは、われわれの改定の本質を非常に誤解せしむるものである。よく内容的に御検討願って、この条項は適当でないとか、これはどうだという御議論ならなんでありますが、全体としてそういう考えを私どもは持っておらない。またベトナムの賠償問題を、軍事的意味を持つというふうに御解釈になるということは間違っておる。われわれはあくまでもサンフランシスコ条約に基づいての義務を履行して、そうしてわれわれとして、あらゆる面において最も関係の深い東南アジアとの関係を一そう友好的にするという考えのもとに、賠償の協定をするということでありますから、決して今申したようなことと私は相反するものではないとかたく信じております。
○穗積委員 安保条約の新条約が軍事的性格を持っていない、そういう性格を持ったものとしてけなすことは、言いがかりをつける不当なものであるというような言い方でございましたが、とんでもないことです。この条約というものは――言うまでもなく、再々論ぜられたごとく、一九四八年のバンデンバーグ決議以後、これを基礎として一体どういう条約が結ばれておりますか。数十に余る条約というものは全部軍事同盟条約です。バンデンバーグ決議そのものが軍事的内容を持っておる。これを引き写したものとして、今度の新条約の草案におきましては――内容を検討しろということであれば検討いたしますが、われわれは、今までの外務大臣の口を通じて発表されました草案あるいは内容等を検討いたしましても、特に草案というならば、三条、五条等は明確に軍事的性格を持っております。これが軍事的性格でなくてなんでございましょうか。そうではなくて、安全と対等、自主独立のための条約である、そう言うことこそが欺瞞である、ごまかしであるとわれわれは言わなければなりません。安保条約の内容そのものについては、もう少し後の機会に譲るといたしまして、あなた方は今まで東西両陣営の間における大きなうねりの中において、われれれがものを言っても聞かなかった。なぜかというならば、すべてあなた方の張っておるアンテナというものは、ワシントン以外にはアンテナがなかった。ところがワシントンのアンテナがすでにびりびり動き出してきておる。アメリカの国内の世論というものは一般の評論家や学者の世論ではなくて、大統領選挙を前にしての政治的世論というものは、こういう軍事的な同盟方式、外国における軍事基地強化の方式はもうすでに古いのだ、これは根本的に検討すべきだということが、今言いました評論家の方々ではない、政治的裏づけを持つ、責任ある、大統領につこうとする人々の口を通じて転換されてきておるのであって、それは共和党であろうとあるいは民主党でございましょうと、ニクソンにいたしましても、スチブンソンにいたしましても、ともにソビエトとの雪解けというものが今度の選挙の中心題目になっております。そしてニクソンにいたしましても、具体的に提案いたしておりますのは、軍事援助というものを打ち切って、あるいは軍事基地というものを縮小して、それにかわって年間五十億ドルの対外経済援助を実現すべきである、これを中心にしてすでに政治的公約をもって戦っておるのです。しかも、御承知の通り、われわれはいずれにもとらわれないで客観的に見ますならば、おそらくはニクソンが勝利を占める可能性が五〇%以上はあると思うのです。そのニクソンが、今までは保守的であり、東陣営に対してはあなたと同様に非常に頑強であるかのごとく理解されておったのが、今申しました通り、君子豹変して、見るところに目を注いで、ソビエトを訪問して巨頭会談を作り上げ、みずから立った大統領選挙のスローガンというものは、雪解けの政策であり、軍事政策、軍事同盟方式を批判して、そうして平和的なる経済開発援助、これが中心の外交政策となって、現実にすでに政治政策として公約されつつあるわけです。それをあなた方はごらんになって、そこで一つ今までの行きがかりや党派にとらわれることなしに検討していただきたいというのでございます。そこで私は、あなたも藤山外務大臣も、この報告書に現われたのは、一つのニュアンスといいますか表情にすぎない。しかしながら、第一にここで現われておりますのは何かというならば、軍事基地に対する根本的検討がうたわれておる。特にアジアにおきましては、韓国、台湾、ベトナム――これはベトナム協定に関係があるのです。この報告書はこれをすでに指摘しておるのです。特にこれらによって代表されるものは、昨日発表になりましたシラキューズ報告によりますと、沖縄の問題についても根本的に、あなたよりさらに沖縄人民の理解の上に立った提案がなされておる。それらのことも、これは何も沖縄における七十万の日本人の世論を聞いて転換したのではなくて、アメリカ本国の経済的利益、アメリカ本国の平和と安全の維持のために必要だというその必要さから方向転換が示されておるわけです。
 そこで具体的にお尋ねいたしましょう。それはそういう政治的基礎を持っておりますから、単なる一片の学生のゼミナールにおける報告書とはわけが違っている。そこで、この報告書が言っておるだけでなく、両大統領候補がすでに言っておるところのアメリカの対外基地に対する根本的再検討、それが韓国、日本あるいは沖縄、ベトナム、台湾、これらは主要な検討の材料になっておると思うのです。そうなりましたときに、今あなたが計画しておられる、常時相当の犠牲を払って、しかも平等と言われますが、われわれが幾たびか論じたごとく、協議事項におきましても、十年間という長期の縛りつけの固定した期限の問題にいたしましても、自主性を失っております。そういう形で、この政策をあなたが――もう間近に、アメリカの具体的な世論ではない、政治の方針が変わろうとしておる。その前に、この安保条約改定問題が再検討されるべき客観的情勢にきておるということを、すなおに私は認めらるべきだと思う。だといって、われわれはあえてあなたの過去の考え方を追及しようとは思っていない。この際、あなたの内閣の責任の問題ではない。日本の民族の平和とアジアの繁栄のためでございますから、このあなた方が唯一のたよりにしておった、アメリカ本国におけるこの政治世論の転換というものを、あなた方が率直に見て、しかもお二人とも、この傾向を歓迎すると言っておる。歓迎されるというならば、この政策に矛盾するところの安保条約そのものの個々の内容の条項ではない。その性格、方向そのものを、やはりこれに逆行するものとして、少なくも疑義を生ずるものとして再検討すべき客観的情勢にきておると私は思うのです。そういう率直な良識ある、良心的な御判断は出ないものかどうか、私は党派を超越して、真に日本の独立と平和のために、総理の反省を促しながら、お尋ねいたしたいのでございます。
○岸国務大臣 先ほどもお答え申し上げました通り、私は全体の傾向として、力の使用によってものを解決するのではなくして、あくまでも話し合いによって解決していく、そうして世界の平和を念願し、また今日行なわれておるところの両大国を中心としての非常な軍備拡張や軍事科学の発達というものとを考えて、世界の平和を念願するためには、軍縮とそして話し合いによって解決するというこの方向については、われわれは衷心から賛成をし、これを推し進めていきたいということは、私が先ほどお答え申し上げた通りであります。しかしそれに現われている個々の政策がアメリカの政策であり、またわれわれが直ちにその内容を個々に今日これを取り上げて、賛成するとか賛成しないとかいう性質のものではない。検討を要する問題であると思います。またわれわれが今回安保条約を改定するということは、現在あるところの安保条約そのものの内容というものが、日本の立場から見て適当でないことを、日本の立場から見て適当なようにこれを改善しようということで、この改定の経緯におきましても藤山外相が御説明申し上げた通り、日本側から提案して、日本側の要求するところのものにこれを改めていこうという努力をいたしておるわけでございまして、決してアメリカの政策に追随し、アメリカの政策に引きずられて、これが改定されるという性格のものではないということを御理解いただくならば、私は今穗積委員の御議論のような結論にはならぬと思う。この点を十分にお考え願いたいと思います。
○穗積委員 少し具体的に個別にお尋ねいたしましょう。藤山外務大臣にお尋ねいたします。もし示されておるごとく、すでに先ほど言いましたような政治的責任者の諸君も訴えておるごとく、日本並びに沖縄における基地撤退の方針が示されるとするならば、その可能性があるとするならば、あなたはこれに反対をされますか、歓迎をされますか、伺いたいと思います。
○藤山国務大臣 私どもまだこのコンロン報告に現われているものがすぐアメリカの政策になるかどうかということは存じません。むろんそういう研究でありますから、いろいろな角度から研究して上院外交委員会に提案したものではあると思います。世界の平和が確立する、あるいは極東における平和が確立するということになって参りますれば、おのずから軍備が縮小され、そして基地等も撤廃されることが望ましいことであることはむろんでございます。しかし現実の事態においては、少なくも現行にあります安保条約を改善していくという道だけは、われわれもできるだけ努力して一日も早くやって参らなければならぬと思います。そういう意味合いにおいて、私は現在の安保条約の改定を推し進めるべきだ、ただいま総理が言われましたように、日本の実情に沿うようにすべきだということを考えているわけであります。
○穗積委員 沖縄並びに日本本土における軍事基地撤退を歓迎せざる国民がありましょうか。しかもその可能性が出てきているのです。総理もあなたも安保条約をやっておられるから、安保条約のヨシのずいから世界の情勢を見て、それに差しつかえのあるものは全部見ないことにしている、聞かないことにしている。それは誤りです。それは日本国民の要望する態度ではありません。先ほど言いましたように、私が申すまでもなく、これは単なる学生のゼミナールの報告書とは違います。またその提案している人が単なる議員ではない。そういう情勢の中で、少なくともその情勢を希望するものとし、可能性のあるものとして見通しを外務省が立てるならば、それと、基地の十年間、予告期限を入れて十一年になるが、その十一年間は基地撤退の交渉ができないような、そういう常駐式な基地貸与の内容を持った新たなる協定を結んでしまうということは、明らかに違うではありませんか。どれがどう矛盾しないのでしょうか。私の判断というものは、国民の多くの判断だと思うのです。従ってこの基地撤退、特にアジア地区の基地の再検討問題というものが、こういう政治的情勢をもって可能性をもって出てきているときに、なぜ一体安保改定をそう急がなければならぬのか。もしやられるといたしましても、百歩譲って保守党の方の立場に立って考えてみても、沖縄並びに日本における基地撤退を実現することを、あなたが今まで交渉の過程において日米新時代の内容としてお考えになったことはないですか。国民の世論はどうだとお考えになっておられますか。そうであるならば、当然待つべきです、可能性がもうすでに出てきているのですから。所感をお伺いいたします。
○藤山国務大臣 われわれ平和を念願し、あるいは軍備が縮少しあるいは全廃されることは好ましいことでありまして、ただそれにはまだ今後のいきさつがいろいろあると思います。そういう意味において、国連においても少なくとも大国間、十ヵ国の委員会においてそういう問題が有効に審議されることを期待する決議をいたしたようなわけであります。だれもそういうことを期待すること当然だと思います。従って、そういう状況になりまして基地が撤廃される、あるいは軍備が縮小される、戦争状態が世界にないということは、だれも日本国民として、われわれとしても念願するのは当然のことだと思います。しかし現状においてまだそういうことがすぐに明日実現するということは、だれも常識ある人は考えておりません。やはりこれから長い折衝、長い話し合い、努力した話し合いによって逐次そういう方向に持っていこうということだと思うのであります。今までの不信感をできるだけ払拭しながらそういう話を建設的に進めていく、これをやるのがジュネーブの軍縮十ヵ国委員会でありますから、それに多くの者が期待することは当然だと思います。現在われわれといたしまして、その情勢下において、現行安保条約は制定後今日までの日本の実情から見ますと制定当時の事情から見てずいぶん適当でないことがたくさんありますことは、過去における外務委員会の私に対する与野党の方の御質問でも指摘されておるところであります。これをなるべく早く改善したらいいじゃないかという御議論は社会党の方からもあったように私は記憶しております。従ってこれを今できるだけ日本の立場に立っていいものに改善していくということについては、われわれやはり実際政治を扱っておる局に当る者としては一日も早くそういうことにやっていくのが必要だと思います。世界的な情勢の変化によりましてこういうものが不必要になりますれば、むろん当然なくなるのはあたりまえでありまして、十年と期限をつけましても、五年なり六年でもって軍備全廃というようなことが起こりましたら、置いておいたってしょうがないのですから当然話し合いでこういうものは解消されることになるわけであります。われわれは少なくもそういう事態に対処するためにできるだけのことは今後ともするのはむろんでございますけれども、かといって現在安保条約を現行のまま置いておいていいということは私は適当ではない、こう考えます。
○穗積委員 ベトナム問題はあとでいたしますが、ベトナム賠償にいたしましてもこれから明確にされるごとく、その賠償実施の内容というものは非常に多くの軍事産業的性格を持っております。その場合アメリカ側の対ベトナム軍事援助の政策というものが再検討される段階になるならば、対ベトナム賠償というもの自身も同様の性格を持っておりますから、これは全くどぶにわれわれの血税を捨てるようなもので、そういう時代的、内容的なズレが出てくる。そういうことについても一体反省をなすっておられるかどうか。
 そこで続いて総理に今度はお尋ねいたしますが、今度の大統領選挙を前にする情勢だけでなくて、この暮れにアイクがアジア地区並びにヨーロッパ訪問において予測されておるもの、これは外務省も大体の情報はとっておられると思うが、その場合に提案されることが予想されるのは、日本を含めNATO諸国、これらの諸国に対する軍事費並びに後進国援助についての平等負担の問題が提案される。そうなりますと、すでに安保改定を中心といたしまして、予測して、日本政府防衛庁が計画して発表いたしました兵力増強六カ年計画、これに対してすらあなたの弟さんである大蔵大臣がすでに経済的立場から見て批判を加えておられる、しぶっておられる。そこへ持っていってこのお互いの軍事力の負担、日本の場合においては分担金の問題から始まる。さらにそれどころか、在日米軍の現地基地その他の建設という名目で日本の軍事予算に対して負担を要求してくる。そういうことが出てくるといたしますならば、この安保改定を中心として、一環として計画されている日本の今の軍事計画、そのもとにおける軍事予算計画、そのもとにおける軍需産業培養計画、これらは根本的な再検討をしなければならなくなるわけですね。それに対する一体御判断はどう立てておられるのか、この際根本問題に触れますから承っておきたいと思います。
○岸国務大臣 御承知の通り日本の現在の防衛庁の防衛計画というものは、国防会議で昭和三十五年度をピークとする三カ年計画が立てられまして、要するにそれに基づいて今日まできていることは御承知の通りであります。それが明三十五年度で一応終了する。その中には計画通りに遂行されたものもありますし、おくれているものもありますし、またその後の情勢において修正を見ているものもあるのであります。しかし国の防衛というものを考えますと、三十五年で第一次の現在の三カ年計画が終わるわけでありますが、それに続いて第二次の計画を立てる必要があるということは、これは防衛当局として当然考えていることでありまして、いろいろと従来研究がされております。しかしながらそれは決して防衛当局だけがいろいろなことを確定するわけではございません。日本のそういう計画は国防会議において検討され、一つの計画として決定されるという建前になっているわけであります。まだ防衛庁からその後における第二次計画は――検討していることは私承知いたしておりますが、国防会議にも提出されておりませんし、まだこれが国の防衛計画になっているわけではございません。それは安保条約の改定があるなしにかかわらず、今申しましたような性格のものでありますから、防衛当局が研究していることは事実でありますが、財政的な見地からこれを検討することはもちろんでありますし、さらにこれが大きく民生の上に、国民の気持やあるいは日本の国情に合っているかどうかということをさらに国防会議において検討しなければならぬ問題でありますから、われわれは決して安保条約にすべてのものを結びつけて立っているということでは実際の実情はないということを御了承願いたいと思います。
○穗積委員 藤山外務大臣に、先ほど経済外交政策については自分の方針であるということを言われましたから、お尋ねいたしますが、アメリカ経済国際収支の危機の徴候が出て参りましたのに対して、これはもうすでに最近のことではない、アメリカの責任者の諸君があらゆる機会に、国際通貨基金会議におきましても、この間のガット会議におきましても、おそらくは今後の外交交渉におきましても一つ出てくることが予想されますのは、今中しましたような後進国援助費または軍事費負担の分担の問題だけでなくて、貿易の面におきましてアメリカ商品の優先買付を要求する、同時に日本に対しましてもその貿易制限、保護貿易政策というものを撤回することを要求し、自由化を要求してくる。この傾向はヨーロッパにおきましてもそうですが、もうすでに世界の潮流になってきていると思うのです。従ってこの間のガット会議では、日本の貿易制限が当面する非常に短い期間においては一応無理からぬところもあるという意見も出たわけですけれども、これは長続きするはずはございませんでしょう。そうなりますと、アメリカの国内における経済政策、貿易政策というものは、これから貿易市場確保、――過剰生産を消化するためにまた国際収支を改善するために、貿易の面においてもコスト・ダウンが中心になって参りましょう。そうなりますと、日本の貿易というものは、一方においては軍事費が切られていく、そして現在の日本の貿易収支のわずかなる黒字というものは、約四億五千ドルの特需経済というものがなくなったとするならば立ちどころに赤字になるのです。その上に、そういう傾向が徐々に出てきておるところへ持っていって、一方においては今の各国の生産費の引き下げ、合理化の政策をとりながら貿易の自由化の要求が出てくるとなると、これは日本としては今の国際収支を守るわけにはいかない。政府が発表いたしました国民所得または生産力の倍増論なんというものは、全く基礎のないから宣伝にならざるを得ないわけです。それに対して、そういう徴候が出てきたならばと言いますけれども、経済の転換というものは、条約上の廃棄とか改定とか転換と違いまして、安保改定を中心にして、これで戦闘機その他の国内軍需生産を中心に考えておる、それをやっておって、そうして一方貿易、平和産業への切りかえというものがそう簡単にできるものではございません。これはわれわれよりあなたの方が経済の専門家であるから、その点は十分よく御理解しておられると思う。そういう両方から攻め立てられてきておる日本の国際経済の立場というものは、この際ではすでにおそいくらいでございます。この際でこそ私は根本的なる再検討をすべき時期にきておる、こう思うのでございますが、外務大臣の経済外交、その基礎である貿易政策、その基礎である産業政策、こういうものについてのお考えをこの際伺っておきたいと思うのです。
○藤山国務大臣 今日世界の情勢から見まして、自由化の傾向に進んでおることはむろんでございます。昨年暮れ、ヨーロッパ各国が、一方では共同市場という考え方、あるいは自由貿易地域というイギリスを中心にした考え方、こういうものを打ち出して参っておりますが、同時に為替の自由化あるいは貿易の自由化ということを――為替の自由化は昨年ヨーロッパ各国が断行いたしたわけであります。従って、全体として自由化の傾向に進んでおることは、これはもう当然だと思います。そこで日本といたしましても、むろん大蔵大臣あるいは通産大臣も言っておられます通り、日本の経済は為替の上においてもあるいは貿易面においても自由化していくという方向に進んで参らなければならぬことは当然でありまして、それに対しては若干経過的な順序を経ていかねばならぬでありましょうが、大きな方向としては、大蔵、通産両大臣が言われておりますように、そういう方向に進んでいくことに相なろうと思います。そういう進み得る日本のいわゆる産業態勢、体質の改善というものは最近著しく行なわれてきておりまして、たとえば小型自動車の輸出というようなものまで進められておるくらいに、技術革新なりあるいは産業体質の改善なりがおのずから行なわれてきておるのでありまして、その音意味においては、ただいま御指摘のありました通り、条約なら廃棄する、産業状態ならば、もっと長い流れの上から盛り上がってくるということですが、現に私は日本の産業はこういうふうに長い流れの中から、そういう状況に適応するように盛り上がってきつつあると思います。従って、そういう状況下において、われわれは日本の産業がコスト・ダウンをして、そうして競争をしていくということは、当然先進国に対してそういう要求が起こると思います。ただ世界的な経済の問題を考えて参りまする上において、ことに先ほど申しましたような平和の外交を展開し、経済的な外交を展開するのに、一体後進国の経済というものを発達させるためには後進国の立場をどう扱うかということが、これは非常な大きな問題だと思います。日本は、欧米から見ますれば技術的においてもまだ若干後進国だといえると思いますが、しかし東南アジア方面あるいはアフリカなりアラブ、中近東なりを考えてみますれば、むろん先進国であります。従って、日本の今の経済の立場からいえば、その両面がわかる立場におるのではないかと思うのであります。先般のガットの総会におきましても、われわれはヨーロッパ共同市場に対して反論を申しましたが、同時にやはりこの後進国の経済を発展させるためにはどういうふうにしていくかということを他面考えて参らなければならぬと思います。そういう意味におきまして、アメリカに対する貿易あるいはヨーロッパに対する貿易というものは、自由主義的な立場をとって参らなければなりませんけれども、後進国の育成という面から考えますと、やはりそこにいろいろな考慮を加えて参らなければならぬ。全然自由な立場でやりますことは、後進国の経済発展の段階に適当でないと思います。そこらをかみ合わせて考えてみますことが、今後の経済外交の上で一つの与えられた課題だ、こう考えております。
○穗積委員 私はここで岸内閣並びにその担当する藤山外務大臣に特に申し上げたいのは、今までの岸内閣の外交三原則ですね。これはやはり根本的にこの際検討して、国連中心主義、アジア主義、経済外交主義というふうに、この際転換すべきだ、そういうことを自民党の立場に立っても、私は当然の正しい進むべき方向だというふうに考えるわけです。せっかくあなた方が、三悪追放であるとか、外交三原則であるとか、大衆的なスローガンをお掲げになっておられるから、私はあえて言うのです。これはぜひとも平和的なる経済外交政策というものを、今後の岸内閣の経済外交政策の重大なる柱の一つとして強調され、平和三原則の看板を掲げるということを御忠告申し上げたいと思いますが、所感はいかがでございますか。
○岸国務大臣 われれわは、全体として外交の基調としては平和政策を推進することであり、経済外交を推進することだということは、あらゆる面において強調して参っております。さらにこれを具体的に内容的に申したものが、いわゆるわれわれが国連中心の外交政策をとるということ、またわれわれがあくまでも自由主義の立場をとって、自由主義の国々との協調を基調に考えていくということ、またアジアに位している国として、アジアの一員としての立場を考えた政策を推進していく、こういう三つの政策を掲げたわけであります。むしろ平和推進であるとか、あるいは経済外交を全面的に推進するということは、その三原則の前提となって考えるべき問題であるように思います。従って、今日この自由主義の立場を堅持し、自由主義の国々と協調していくというわれわれの外交政策の一つの柱を、経済外交ということですり変えていくことは適当でない、こう思っております。
     ――――◇―――――
○小澤委員長 次に、日本国とヴィエトナム共和国との間の賠償協定の締結について承認を求めるの件及び日本国とヴィエトナム共和国との間の借款に関する協定の締結について承認を求めるの件、右両件を一括議題といたします。
 質疑の通告があります。これを許します。穗積七郎君。
○穗積委員 これからベトナム問題に入って、最初に申しましたように、総括的な質問を総理にいたしたいと思います。
 ただ一点、委員長のお許しを得て、この一般国際情勢の外交方針について、最後に一点だけ、最初にお尋ねしておきたい。それは先ほど言いましたように、アメリカ自身の動きも、自由主義陣営内だけにおける市場の狭溢というものは、もうはっきり自覚してきておる。そこに対中国政策対ソ政策の上において融和的な徴候が出てきて、特にたくましい力で再建しております中国の経済建設並びにシベリア七カ年開発計画、これと自国の過剰生産貿易とをからみ合わせたいということが、根本的に私は融和政策の中において見落してはいけないことだと思う。そういたしますと、今ソビエトの経済代表が来て、しかもシベリア開発に伴う長期経済提携を提案しておる。一方において中国問題については、あなたの党内においてすら、すでにこういう国際情勢をごらんになって、松村さんにしてもあるいは前の石橋さんにしても、中国問題について静観の態度をとるべきではないという態度を示しておられるわけですが、この二つの問題について、アメリカ政策の変換との関連において、あなたはそれで勇気がつくだろうと思う。そこで、対ソ長期経済提携並びに中国に対する無為にして悪意に満ちた静観の態度を修正すべきだと思いますが、その点についての総理の率直な得意見を最初に一つだけ伺っておきたいと思います。
○岸国務大臣 私の内閣におきましては、というよりも、むしろ日本の立場から申しまして、すべての国と友好親善の関係を深めていく平和外交を推進し、また特に経済の交流を盛んにしていくということは、これは必要である。それは、自由主義国の間だけわれわれは貿易するというのではなしに、経済の協力にしましても、貿易にしましても、共産主義国との間においても、これはやっていくべきものであるという考えは、私どもの一貫して持っておるところであります。最近ソ連との間には、いろいろ来年度見本市を開催する問題であるとか、あるいは貿易協定の問題であるとか、あるいはまた最近経済調査団が参りまして、日本との間にシベリア開発についてのいろいろな具体的な交渉が行なわれておる、これは非常にけっこうなことであると思います。また中共に対しましても、われわれはこの現在のもとにおきまして、貿易や文化の面において交流をしていくことは、両国の福祉のためにも、また両国がさらに理解を深めていく上においても、適当であるという考え方をもって、これを推進するような機会を持ち、またそういう方途を見出すように私は努力をすべきものである、こう考えております。決して今御指摘のありましたように、悪意を持ち、敵視的な考え方を持っておるということは、われわれは断じてないのでありまして、ただ不幸にして、まだその道が開けないということにつきましては、私は遺憾に存じておる次第でございます。
○穗積委員 今の御答弁はなはだ不十分でございますが、時間がありませんから、これはまた留保いたします。
 それでは、このベトナム賠償協定についての総括質問をいたしたいと思います。
 質問をいたします前に、一つこまかいようでございますが、重要なことですからお尋ねいたします。それはけさの産経新聞、同僚の岡田君がその熱心な調査によって、調印者であったトラン・ヴァン・フー氏がベトナムの国籍を持っていなかった、フランスの国籍しか持っていない、フランス人であったという点を指摘されたのに対して、外務省は、二重国籍を持っておったということを答弁しておられる。これは外務大臣もそれから法制局長官も、高橋条約局長も、このことをすでに他の委員会、この委員会において主張しておられる。ところが、産経新聞の堀口特派員がパリにおいて本人自身に直接会って聞くというと、読めば長くなりますが、ごらんになっているでしょう、私は二重国籍を持っていなかったたということを明確にしております。しかも自分はコーチシナの出身であって、持とうと思っても持つことができなかったのだということを明確に答弁しておるわけですね。それについて一体外務省は、もし違っておるならば再調査されるのか、あるいは今までの調査を確信されておるのか、念のために伺っておきたいと思う。
○高橋(通)政府委員 外務省の取り調べたところによりますと、従来通りの見解を変える必要はないと考えております。
○穗積委員 実はこのことはこまかい、重箱のすみをつつくような議論のようにお聞きになるかもしれない、あげ足をとるようなことにお聞きになるかもしれないけれども、実は……(「全文を読め」と発言する者あり)委員長、審議を妨害する者を制止していただきたい。
○小澤委員長 静粛に願います。
○穗積委員 実は、当時の終戦後今日に至るまでのベトナムにおける実情というものを、幾多の政治的または経済的な、そして軍事的にも変遷がございますから、従ってこれは明確にしなければならない。そういうことで、ただいまの上程されております賠償協定がはたして法律的、政治的に根拠を持っておるものであるかどうか、そういう点を確かめてかかる一つのわれわれは良心と責任を感じておるわけです、われわれ自身の血税で払うわけですから。そこでお尋ねいたしまして――一々われわれはそういう調査機関を外国に対して持っていないので、政府を信頼して、日本政府は日本の人民の利益のために調査をし、発言すると思って伺っておったら、そうではなくて、違った調査をして、むしろ外国に有利で日本人のために不利な答弁をしておられる。それが事実が違っておるということになると、このこと自身はそれほど大きくないことであるというふうにお考えになっているかしれないが、今までお尋ねしたこと、あるいはこれからわれわれがどんどんとお尋ねいたしたことに対する政府の答弁、あるいは調査報告が、こういうふうにでたらめなものによって行なわれておるとすれば、われわれはこの審議は重要な基礎を失ってくると思うのです。そういう意味で私は、政府の責任ある調査が、一体どういう経過でどういう自信を持っておられるのか。二重国籍を持っておったという御答弁ですが、そうであるならば、本人が確かに、持つことができなかった、持ってはいなかったと言っているそれに対して、最終責任は言うまでもなく外務省にありますから、外務省にあげていただきたい。
○高橋(通)政府委員 この点従来しばしば御答弁申し上げました通りでございます。
○穗積委員 証拠は――委員長、私は同じ答弁をリピートしてもらいたいということを言っているのではありません。そうではなくて、調査が違っておる、はなはだしく疑義をその調査に対して持つだけのこれは有力なる材料である。そういうことであるから、そうであるならば、これを打ち消すことのできる法律上かつ事実関係をこの際明確にして追加説明していただかなければ、われわれは納得できない、こういうことです。
○高橋(通)政府委員 フランス政府に問い合わせた結果でございます。
○穗積委員 その調査した結果は、これを挙証するに足らないのですから、挙証してもらいたい、説明していただきたいのです。
○高橋(通)政府委員 外務省といたしましては、フランス政府の回答を信用している次第でございます。
○穗積委員 それでは総理にお尋ねいたします。先ほど申しましたように、事は小さいようでございますが、重要な相手国政府の性格を検討する場合、あるいは条約の効力の基礎を検討する重要な一点でもあります。そういうものに対する日本政府の調査がはなはだしく当てにならぬものであるということであるならば、これはゆゆしき問題だと思うのです。そこで今の御答弁によりますと、本人に聞いたわけではない、あるいはベトナム政府について調査したわけではない。北ベトナム政府について調査したわけではない。そういうことでなくて、単にこの協定に対して、この賠償協定が早く実行されることをのみ一方的にかつ独断的に、利己的に希望しておるフランス政府の政治的なる、偏向を持った答弁をそのままわれわれに押しつけて、それが有権解釈であるということは、われわれとしては納得できません。国会はそういうような答弁に対して、われわれはそういうことですることはできない。従って(「全文を読め」と呼び、その他発言する者多し)そういう趣旨で、重箱のすみをつつく意味でなくて、重大な材料、資料の一つであると思いますから、従って今条約局長がお答えになったように、単にこの賠償が早くできることをのみ利己的に望んでおるフランス政府に聞いて、それがすべてを解決するかぎである、そういう調査の態度について、政府としてははなはだしく私は手抜かりだと思うのですが、その調査方法について第一点首相の所感をお尋ねいたしたい。第二点は、もしこれが不確かであるということのわれわれの疑点を挙証することができない場合には、一体どういう処置をおとりになるつもりであるか、その二点を、政府に対してお尋ねいたしておきます。
○岸国務大臣 政府としては、この全体の問題につきまして、私は、サンフランシスコ条約における全権としてこれに参加した国がそれぞれ有権的な全権委任状を出しており、そしてこれに参加したところの全権委員につきまして、お互いにその全権委任状を審査して、良好、妥当と認められたということであるならば、条約の効果には何らその人の国籍がどうであるかということは関係ないものだと考えているのが、われわれの本質的の態度であります。ただ、今穗積委員のお聞きになりました、われわれが、いろいろなここで質問のありましたような事実を調べることにつきましては、できるだけ完全な方法をとるわけでございますけれども、問題はこの代表者の国籍の問題であります。これがベトナム人であったという事実と、それが同時にフランスの国籍を持っておったということからそういう見解をとっておると私は思っております。調査につきましては今お話しのように最善を尽くすべきことは当然であると思います。
○穗積委員 私が総理にお尋ねしておるのは、この調印者がフランス国籍を持っておった場合と二重国籍を持っておった場合とベトナム国籍だけを持っておった場合と、この三つの場合が考えられるわけですが、それに対する、(「あたりまえじゃないか」と呼び、その他発言する者多し)やかましいことを言っている間は質問せぬぞ。
○小澤委員長 両方とも静粛に願います。
○穗積委員 その三つの場合に対する条約解釈についてお尋ねしておるのではありません。条約解釈についてはまた別にわれわれも意見を持っておる。今の総理の解釈も一つの解釈です。ですから条約解釈は後にいたしましょう。およそ法律解釈というものは事実関係を明確にしてからでなければ、条約は解釈は成り立たない。従って私が伺っているのは事実を明確にするための国政調査の態度、方法において、高橋条約局長からの御答弁の方法では手落ちがあるのではないかということを伺っているのです。それでは不十分ではないか。しかもこういう有力なる――私は本人が言ったからといって確定的だとは言いませんよ。独断はいたさない。しかしながらこれは条約局長の調査、すなわちフランス大使館からの答弁というものを疑いを持ち、これをくつがえすのに有力なる材料であることは疑いない、客観性があると思う。従って、そうであるならば、国政調査の、一方的な今のやり方というものは、これは重大なるその条約の効力、その賠償協定の相手国の政府の性格、これを規定してかかる重要な問題としてわれわれは取り上げておるときに、そういう調査方法では片手落ちであり、疎漏ではないかということを聞いておるのです。もしそういうことで疎漏があったとするならば、どういう措置を政府としてはおとりになるつもりであるか、それを聞いておる、第二点は、そういう一般的原則について。このことだけではありませんよ。他の国政調査についても同様です。特に外交関係、しかも過去のことにつきましては、日本国会といえどもこれを調査することができない。権限を持っていないのですから、外務省の政府機関を通ずることが当然なことでございましょう。それがわれわれに不利益な、フランスと相手国にのみ有利なような調査と答弁をしておるようなことで、そのような政府の調査を信用することができないという深刻な問題にわれわれはぶつかっておるから、だからその事実関係を聞いておる。条約解釈を聞いておるのではありません。条約解釈はその次のことなのです。総理に再答弁を求めます。
○岸国務大臣 事実問題としても、私は、国会において調査を要求されたことにつきましては、政府としては最善を尽くして調査をいたすことは当然でございます。
○穗積委員 だから、最善を尽くすことが当然だというのは、私もあなたも同じ意見だ。そこで具体的に今高橋条約局長から御答弁になったその調査の方法と結論は、はたして万全なものであるとお考えになるかどうかということを聞いておるのです。
○岸国務大臣 私はこの場合、外務省がこの問題の国籍をはっきりするためにフランス政府に聞いたということは、これは相当な適当な方法であり、またその回答によりまして国会に報告するということは間違っておらない、かように考えております。
○田中(稔)委員 関連してちょっと総理にお尋ねいたしますが、外務省はフランス政府に対してトラン・ヴァン・フー氏の国籍問題で照会をして、そうして回答があったわけです。それを一応信頼して御答弁になったわけです。それはそれで一応私はよいと思うのだが、しかし、今、穗積委員の質問にもありましたように、きょうの産経の朝刊を読みますと、トラン・ヴァン・フー氏自身が、自分は二重国籍は持たなかったのだという重要な証言をしておるわけです。だとすれば再調査ということもあるわけです。再照会ということもあるわけですから、国民の血税を支払う重大な賠償問題でありますから、一応の調査は――一応照会をしてフランス政府の回答があったとしても、もう一度新しいこういう事実があったということにかんがみて、再びフランス政府に対して照会をし回答を求めるということは、外交上の儀礼に決して欠けるところでもないと思う。しかもこれは国民の血税を支払うという重大な事項でありますから、国民をほんとうに納得させ安心させるためにも私はこれは必要だと思うのでありますから、もう一度フランス政府に対して照会を発する、さらにまたできるならば、トラン・ヴァン・フー氏自身についても事実を調査する、さらにまた南ベトナムの政府に対しても照会を発するというような万全の措置をとっていただきたいということを、国民を代表して要望するものであります。これについて総理の答弁を求めます。
○帆足委員 ただいまの田中委員の質問にまた要望に関連いたしまして、きょうの産経新聞に出ておりますトラン・ヴァン・フー氏の自分の身分についての説明の言葉の中に、いろいろ問題点がありますが、特にただいまの件に関連いたしましては、自分の資格の合法性についてもし問題が起こるならば、それはサンフランシスコ会議資格審査委員会にも関連してくる、こういう微妙な回答をしておる。これは自分の資格について疑義がないという意味ではなくて、疑義があった、そこでその点については、少くとも資格審査委員会で大いに論議された――普通ならば資格審査委員会で論議さるべきはずでもありませんけれども、しかし論議されたほどの問題であるという意味でありますから、そちらの方も、資格審査委員会の方の調査の内容につきましてもこの際お調べをしておいていただきたい。
○小林(絹)政府委員 本人が自分の国籍を知らない場合はたくさんある。(「そんなことがあるか」「それは新説だ」と呼ぶ者あり)それを説明します。たとえば……(「国際代表で行くのにそんなことがあるか」「小林さんは自分の国籍を知らぬのか」「まあ聞け聞け」と呼び、その他発言する者多し)本人が自分の国籍を知らぬ場合がある。どういう場合か、その説明を聞いて下さい。たとえば二重国籍について、アメリカで生まれた日本人で自分が日本人であるということを知らない者がたくさんある。なぜそういうことが起こるかといえば、これはアメリカにおいては属地主義をとっておる。属人主義をとっておるのは日本だけだ。アメリカの憲法十四条におきまして、アメリカに帰化した者、アメリカ合衆国内に生まれた者、あるいは各州に生まれた者、これらはすべてアメリカ人なりという憲法がある。この憲法は、南北戦争の後に奴隷解放をしたときに人権を与えた、そうして日本人で向こうで生まれた人で、私は日本人ではありません、アメリカ人でありますと考えておる人がたくさんある。日本では属人主義をとっておりますから、日本人の血は、世界じゅうどこで生まれても日本人なんです。だからしてそういう二重国籍というものは、国際私法上いろいろその国によって主義が違いますから、本人は知らないけれどもその国の国民になっておることはたくさんあるのです。
    〔田中(稔)委員「僕の質問に対する
    総理の答弁」と呼び、その他発言
    する者多し〕
○小澤委員長 静粛に願います。
○岸国務大臣 その点は先ほど来申し上げておる通り、この条約の効力の問題は別だとお話しになっておりますが、私どもは、この問題の要点は――先ほど来お話があるように、国民の血税を支払うところの重大な問題であるから明らかにしようと、こういうことをお話になっている。ところが条約の解釈から申しまして、それはいずれであろうとも、この効力には関係のない事項でありまして、国民の血税を支払うかどうかということは、この問題にはり関係のない事項でございます。これは明確でございます。そうしてわれわれが、今日まで外務省の当局がとりました措置は、一応とにかくフランス政府にこれを聞き合わせて、フランス政府の有権的な解釈をわれわれの方に報告になっております。これを信じていくということは、私は決して疎漏があるということではないと思います。これが私の考えでございます。
○穗積委員 総理は私の質問の趣旨をわざと誤解しておられるのではないかと思うのです。私は、この本人の国籍問題の所属いかんによって条約解釈がどうなるかということを、そこまで今議論を進めているのではないのです。そうではなくて、われわれの解釈によれば、これは重大なる瑕疵として認識しておるのであって、あなたの解釈とは少し違う。それはあとのことにいたしましょう。そこでこの条約解釈の論争をする前には、法律問題である以上は、あなたもやはり法律を学んで、一番重要なことは事実関係を確定することです。事実関係の確定なくして、架空的にこの法律または条約の問題を論争してみても無意味でございます、具体的には。従ってその事実関係を確定する場合において、そしてその調査を政府を信頼してやったのに対して、政府の調査の方法がはなはだしく欠陥がある、不十分であるということを私は問題にしている。このことだけを問題にしているのではなくして、一般的に問題にしている。このことだけであるならばまず外務大臣の責任でしょう。そうじゃなくて私が聞いておるのは、こういう――後になって、あなたの答弁についても、私は実はあなたがどういう解釈をされて、取り消されるかされないか知らぬけれども、今の解釈と違った答弁を私にしております。南ベトナムの政権について、これは全ベトナムを代表する正統政府でないということをあなたは心得ておるという答弁をしておられますから、そういうことについてもまたあとでお尋ねいたしますが、そういうふうに都合の悪いところはすべて間違っておるかあるいは調査がこうこうだ、都合のいい解釈をこじつけるために事実関係の調査を間違えたり、あるいはきのうときょうと間違えたりするようなことでは、そういうことでは政府を信頼して……
    〔「そんなことはない」「議事を妨害するとこっちにも覚悟があるぞ」と呼び、その他発言する者多し〕
○小澤委員長 どうぞ静粛に願います。
○穗積委員 この一事だけを問題にしているのではなくて、調査の態度、方法についてもっと責任のある態度をとるべきだ。これはあなたは過小評価しておられる、われわれはこれは重大なる瑕疵の一つとして取り上げようとしておる。そういうことであるから、その解釈の論争はあとにいたしましょう、あとにして、政府のすべての調査――これからはもう重大なるいろいろの調査を要求するわけですね。その調査要求した、政府が出したものがすべてでたらめな調査で、捏造であったりあるいは一方的な調査であったとしたらこの審議はできない、そういう意味で実はこの調査の態度、方法について一般的に政府の態度を伺っておるのですから、だから条約解釈によってごまかしてはいけませんよ。事実関係の確定を聞いておる。そうであるならば、ちょっと念のために申し上げますが、田中委員が今関連質問でしたごとく、私たちの常識からしても、フランス政府に聞くのもけっこうです。それも一つですが、まっ先に聞くべきは、南ベトナム政府に聞くべきです。この条約の相手国、すなわち契約の主体は南ベトナム政府なんです。その政府が、当時は調印国ではなかったかもしらぬけれども、交渉の事実は――一九五一年のサンフランシスコ条約調印当時の政府でないかもしらぬが、あなたが言うように、法律的継承をしておる政府としてバオダイ政府を認めておられる。そうであるならば、調査の責任と調査を明確にすべきことは、南ベトナム政府の責任のある調査、答弁を要求すべきである。それが、まっ先です。フランス政府に調査を依頼したり、答弁を求めることは、われわれの考えでは、副でございます。そういうこともしないで、そしてここで政府がそういうでたらめな調査に対して、下僚を弁護される気持はわかります。しかし、重大なこういう問題について、首相の態度というのは、はなはだ遺憾でありますから、それを伺っておるのであります。
○岸国務大臣 全体のこの調査の問題としては、これは政府として、そういう調査を求められましたときに、最も正しい、最も適当な方法でもって、全力を尽くして調査をすべきことは、これは当然でございます。その考え方については、穗積委員と、私は全然同感です。しからば、この本件の場合において、外務省において、フランス政府にこれを問い合わせて、フランス政府から正式に、フランス政府の責任において答えてきたところのものを、政府が議場に報告して、この見解ですということを申し上げることは、その間におきまして何ら手続上の粗漏があるとか、不適当であるということには、私は考えておらないということを申し上げたのでございます。
○岡田委員 総理大臣に一点だけ伺っておきますが、まず第一に、もしこのあとで調査をされた場合に、政府の今までの三回の答弁によって二重国籍であるということが、あなたの方の調査の結果において間違っておったというならば、これは当然取り消されるのだろうと思いますが、この点はいかがですか。
○岸国務大臣 もちろん、われわれがいろいろなことを調査をした、そして責任をもって国会に報告しておったことが、間違いであることはあり得ないと思いますが、しかし、万一にもそれが間違っておったということがあれば、神様ではございませんから、そういう場合には、事実が違っているときには、これを訂正することには、ちっともやぶさかではありません。
○岡田委員 先ほどから、調査の方法が適当であったという御答弁ですが、私は適当であったと思わない。これは岸さん、よくお聞き願いたいのですが、ベトナムの国籍を持っているかどうかということをきめるために、ベトナムに聞くのならばわかるのでありますが、フランスに聞いたということは、これは明らかにフランスのかいらい政権であるから、フランスに聞いたのじゃありませんか。だからその事実を、フランスに聞いただけでは、国籍が取得されているかどうか、わからないわけです。もしたとえば、あなたのおっしゃるように、ベトナム国というものが完全に独立をしておるものとするならば、ベトナム国の国籍について、フランス国にいかに聞いても、これはわかるはずはないわけです。それは、国籍法の問題、身分の問題というものは、これはあくまでも外国に対して無条件で知らせるということは、ありません。フランスに対して聞くということ自体が間違っているじゃないか。なぜベトナムの方をお調べにならないか。ベトナムの方に対してお調べになった事実がございますか、どうですか。その点が調べられないでおいて、フランスの返事だけをもって――あなたは、どうですか、日本に国籍があるかどうかを、アメリカに聞いて、わかりますか。それと同じことじゃありませんか。そういうことをほかの国に聞いて、これが有権的な解釈かどうかなんということは、明らかにあなたの方の答弁に誤りがある。しかもこの点については、あなた自身が今までとっていて、これは二重国籍は正しいということを言っておっても――先ほど小林政務次官は何ら国籍を知らない人があると言うが、それは小林さんの知っている人は知らないかもしれぬが、少なくともサンフランシスコ条約にその国を代表して出るのだという人が、自分の国籍を知りませんでしたなんていう話がありますか。これは答弁にはならない。これは明らかにはっきりしているではありませんか。本人自身がベトナムの国籍は持っておらない、選ばれなかったと、こう言っておるのではないか。本人自身が言っている。しかもその当時においてはフランスの国籍であったということをはっきり言っておるのではないか。二重国籍でないことは明らかではありませんか。これでも岸さん、これを二重国籍であるとあなたは断定されるのですか。今日の段階においても断定されるのですか。断定するなら断定して下さい。この点についてお答え願います。
○藤山国務大臣 先般の御質問では、一体フランス国籍を持っているかどうかということが一つの御質問でありましたから、従って当然フランス政府に聞くのはあたりまえでありまして、フランス国籍を持っていた人かどうかということは、フランス政府に今お話しの通り聞いておるのであります。われわれはベトナム政府にも問い合わしております。そして今日独立国家の過程におきまして、国籍法ができる前に、当然ベトナム人であればベトナムの国籍を持っているものということを一応判定せざるを得ないのでありまして、従ってそれでありますから五五年に選択をするときにも、片方の国籍をとらなかったということであります。でありますから、当時のことを一応われわれが二重国籍と申しましても間違いがないと思います。
○穗積委員 どうも私の質問の趣旨を作為的にそらしておられると思うのです。その点を総理も外務大臣もはっきりしていただきたい。今までにこの問題だけでなくて、すでにこの条約に関連をして、二つ三つ重要な基礎資料の調査を、資料を要求しております。私もこれから二、三の重要なものを要求しようと思っている。それに対してこういうような調査の態度と一方的な結論では、今後出てくる調査報告に対して、われわれは日本の国民の利益のために行なわれておるかどうかということに対して疑いを持たざるを得ない、そういうことであるから伺っておるのです。そこで総理と藤山さんから交互にお答えをいただきたい。
 先ほど来、私や田中君や岡田君から言っておるように、この調査については最も簡単に常識的に考えてみて、まず第一に聞くべきものは、条約の相手国であるベトナム政府に聞くべきである。それをしない。そうしてそれに対しても――総理、いいですか。それに対して総理は聞く必要は認めない、フランス政府に対して聞いて、そうしてそれの答えをとって、これを有権解釈とした報告をこれで万全であると考えておるとお答えになった。ところが藤山外務大臣はわれわれの主張を納得されたと見えて、ベトナム政府に対しても調査を出しておると言われた。違うじゃありませんか。調査方法が違うじゃありませんか。一方はフランスに聞くだけで万全と言い、一方は両方に聞かなければいかぬと言っておる。それで最終的な結論を出しておるではないか。それでは調査の回答がきたならば――ベトナム政府からの回答がいつきましたか。きましたのはどういう内容ですか。それを聞きましょう。
○伊關政府委員 同時にフランス政府とサイゴンに対しまして、ベトナム政府に対して調査をいたしました。両方に照会をいたしました。フランスの方からは、今までお答えしておる通りの回答がきているわけです。ベトナム政府の方は、正式な全権として出ておるのである、それについてとやかく言われるのは不愉快である、こういうことで答えないわけです。それで久保田大使はその点について調査をいたしまして、やはり二重国籍であるという報告が参っております。
○穗積委員 それを一体今までなぜ報告されなかったか。それでさらに伺いたいことは、その調査資料報告をここへ出してもらいたい。なぜお答えにならなかったのですか。今までの政府の最終結論は、二重国籍であるという結論なんです。その基礎は何かといったら、フランス政府の答弁であると言った。ここでわれわれが問題にして初めてベトナム政府に聞いたと言うから、それが事実であり、その内容がどういう調査命令をしたか、出した電報ときた電報を見せてもらいたい。何を調査して、何によってそういう結論を得ておられるのか、それを聞きたい。
○伊關政府委員 御説明いたしますと、サイゴンのベトナム政府の方は返事をいたしませんから、フランス政府の返事を申し上げたのでありまして、(「休憩、休憩」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然)それからそのベトナムの方はそういうふうに返事をしないから申し上げなかったのであり、またその後私は何べんも手をあげましたけれども、ちょっと立つ機会がございませんでして、ただ申し上げる機会がなかっただけでありまして、何もそういうことを隠していることは全然ございません。
○松本(七)委員 議事進行。この問題は先ほど質問者もちょっと触れておりましたが、私どもは今後の条約の効力にも関係する大事な事実問題だと思うのです。その効力に関係があるかどうかは、(「関係ないと言った」と呼ぶ者あり)関係ないとは言っていないのだ、この段階では、この効力問題を云々しているのではない。その前提として事実問題を取り上げているんだ。
    〔穗積委員「委員長、質問者として、こういう多数の暴力をもってわれわれの質問を封じようとするなら、審議に応ずるわけにはいきません」と呼び、その他発言する者あり。〕
○小澤委員長 今松本君に発言を許しているので、あなたには発言を許しておりません。松本君。
○松本(七)委員 さっきも言ったように、あの段階では、まだ効力の問題を論議しているのではない、事実問題を論議しているんだということを言っているのであって、効力の問題が疑義がないと断定しているわけではない。(「関係ないと言ったよ、速記録を見ればわかる」と呼ぶ者あり)今はその問題を論議しているのではない。そこで問題は、三回にわたる政府の答弁、それから今日における政府側の答弁によっても、フランス側の問い合わせたという事実ははっきりしている、この点は正しいと思う。それからベトナム共和国政府にも問い合わせたが、核心に触れた点には答弁がないという今の返事なんです。そこでこの調査については、また事実関係に非常に疑義が生じておる。本人自身がはっきりと自分はベトナム共和国の国籍をとれなかったと言っているのですから、その調査を徹底的にやらなければ、この事実関係というものは明らかにならないという点がここにはっきりしたのですから、一応ここで休憩して、この問題の今後の取扱い方を協議したいと思います。休憩の動議を提出します。
    〔「反対々々」、「休憩々々」と呼び、
    その他発言する者、離席する者多
    く、議場騒然〕
○小澤委員長 席について下さい。それでは理事会の申し合わせによりまして、昼食のため一時間だけ休憩をいたします。
    午後一時五分休憩
     ――――◇―――――
    午後六時二分開議
○小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。松本七郎君。
○松本(七)委員 先ほどの質疑応答の中で問題になりましたトラン・ヴァン・フーの国籍問題について、政府の答弁がはなはだ不十分であるばかりではなしに、その調査の方法についても非常な欠陥があるということが明らかになったわけでございます。私どもは、このトラン・ヴァン・フーの国籍問題は単なる国籍問題ではない、これは当時の政権の性格に非常に大きな関係のある問題である、この政権の性格は賠償を支払う対象の問題にもつながってくるものである、そういう観点からこの問題を重視しておるのでございまして、決してそれらと切り離された国籍問題だけとして取り扱っておるわけではないのであります。従って政府がこれまでトラン・ヴァン・フーの国籍についてどのような調査をされたか、その経過と内容を明らかにすべく岡田委員あるいは穗積委員がこれまでも質疑を繰り返してきたわけです。ところが政府の答弁にもありますように、フランス政府に対しては調査をしておる、そこでフランス国籍を持っておるということは明らかになった。同時に政府は三重国籍であるという答弁をやっております。しからば南ベトナムの国籍を持っておるかどうか、この点についての疑点については、今までの政府の答弁でははっきりした国籍についての話は出ておらない。ただ日本政府の解釈で二重国籍だというにすぎないのであって、何らそこには根拠がなかったわけです。ここに実は問題があるのでございますが、先ほどの伊關局長の答弁によりますと、ベトナム政府側も大へん不愉快な質問だというような返事しかしておらない。要するに、国籍問題についての回答は、ベトナム共和国政府は拒絶してきておるのです。不愉快だという言葉はどういうことを意味しておるのか。おそらく非常に痛いところをつかれたこと、そういうことはわれわれに聞いてもらっては不愉快だという意味だろうと思うのでございますが、それだけにこの問題にはなお疑惑が残るわけです。われわれとしては、ベトナム共和国政府がそれを不愉快だとして拒絶するような事情があればあるほど、なおさらはたして政府の言うように二重国籍か、それともフランスの国籍だけのものか、この事態をベトナム政府側に直接はっきりさせる必要がある、こういう要求を私どもは出さざるを得ないわけでございます。そこで本来ならば、この賠償の対象になるべきその政府の性格、これのおい立ちから、さらに政府が強調するところのサンフランシスコ条約の調印者の国籍問題というところに発展してきておるのでありますから、この国籍問題の事実関係がもっと明らかにされなければ、賠償審議は本格的に進めるわけにはいかない。特に社会党といたしましては、政府がその答弁で非常にあいまいである、資料がきわめて不確実なものであるという今までの経過からいたしてみましても、今後賠償問題についてはいろいろ資料を要求しなければならぬ。その要求に基づいて出てくるであろうところの資料が、今の国籍問題に現われたように非常に不確実なものであるということになりますならば、これは重大な問題になるわけでございます。そういうわけで、この国籍問題についての今後の調査については、非常にきびしい態度で私どもは臨まざるを得ない。しかし政府がかりに南ベトナム政府に対して正式に再調査を要求いたすといたしましても、これはかなり時間のかかることだろうと思います。その長い間審議をしないで待つということも実際問題としてはできませんし、私どもは百歩譲ってこの審議は今後続行したいと思います。しかしそうだからといって、政府がこの国籍問題の再調査に怠慢であることは許されることではないのでございますから、以前に久保田大使を通じて調査されましたように、必ず同じ方法をもって、ただ在日ベトナム大使館に電話で問い合わせるとか、大使に口頭で聞くということではなしに、久保田大使を通ずるなり、あるいは直接ベトナム共和国政府に対してこの国籍問題を明らかに再調査して、もっと明確な返答を求められることを強く要望いたす次第でございます。
○藤山国務大臣 午前中に行なわれましたトラン・ヴァン・フー氏の国籍問題につきまして、何か政府が非常に怠慢であり、あるいは不適当な方法によってこれらの調査をしているというお説でありましたけれども、われわれといたしましては、そういうことでなしに、適当な慎重な調査をいたしておるわけでありまして、十一月六日の予算委員会直後に、在仏古垣大使並びに久保田大使に電報を打ちまして、そうしてトラン・ヴァン・フーの国籍の問題について、それぞれ政府の見解を聴取いたしたわけであります。翌七日に在仏古垣大使からは次のような電報が入っております。「六日、仏国の外務省につき調査した結果、下記の通り。トラン・ヴァン・フー首相兼外相は、条約署名当時仏国の国籍を有していたことは確かであるが、一方ベトナム人としてベトナム国籍を有しており、仏政府は原則的に二重国籍を認めていないが、仏印については過渡的措置としてデ・ファクトにこの二重国籍を認めたものである。」こういうのがフランス外務省の回答でありまして、古垣大使を通じて七日に電報が来ております。またサイゴンの久保田大使からはやはり七日に着いておりますが、「当国外務省ラム総務局長につき、トラン・ヴァン・フーの国籍を照会したところ、同局長は、フーがベトナムを正当に代表し、ベトナムの名において平和条約に調印したという以外にはいかなる回答もいたしかねると答え、当方の質問は受け付けない態度であった。」久保田大使からこういう電報が来ております。この二つの電報によりまして、われわれは今日まで御答弁を申し上げているのでありまして、決して慎重でない、あるいは粗漏な調査をいたしておるというのではございません。しかし御希望がありますれば、さらに再調査をいたすことはやぶさかではございません。
○松本(七)委員 今のお話で七日にすでに電報が来ている。そうすると、これまで岡田君が予算委員会なりあるいは外務委員会で再三この国籍問題については質問したにかかわらず、なぜそのことをこの委員会を通じて明らかにされなかったか。
○藤山国務大臣 先般私は予算委員会におきまして、ベトナム人であり、フランスの回答は二重国籍であるという御返答を翌日申しておるはずでございます。
○松本(七)委員 向こうから来たという事実は、今まで一度も答弁されたことがないのです。ベトナム政府から正式にこういうふうに言ってきていると言えば――法的根拠というものをいつも追及してきておるにかかわらず、ただ政府がこういうふうな解釈をしておるというにすぎないのであって、法的な根拠は一度も出したことはないじゃないですか。ベトナム政府の正式な回答として政府が説明されたことは一度もない。きょう初めて伊關局長が、ベトナム政府側から非常に不愉快なことだという返事があったということが出たにすぎない。なぜこれまでその点を明らかにされなかったかという点……。
○藤山国務大臣 別段隠しておったわけでもございません。明らかな電報でございますから、むしろこちらとしては申し上げることが有利だと思います。しかし特に御指摘のあったような質問があったとは思いません。国籍について調査をしたかということでしたので、私どもとしては実は調査の結果はこうだということを申し上げたのでございます。その点もしあれがありますれば、今後ともわれわれも注意いたしますけれども、やはり質問にあたりまして、適当にそういう点を御指摘願いながら質問していただければけっこうです。
○松本(七)委員 今後希望があればさらに調査すると言われたのですが、私の方は先ほどからはっきり要求しておりますように、さっきのフランス側の回答によっても、法的には二重国籍ではない、こういうふうな回答だし、それからベトナム政府は、これについては調印者としての資格があるということについての返事だけであって、国籍問題については直接返事をしておらないのであるから、それらの点についてもう一度はっきりしたベトナム政府の見解について回答を求めていただきたい。それをはっきり約束していただきたい。
○藤山国務大臣 むろん御希望がありますれば再調査を……。(松本(七)委員「あるのです。要求しているじゃないか。」と呼ぶ)御要求があれば再調査をいたします。これらの問題につきましては、外交の通例の慣習からいえば、必ずしも適当なことではないと思います。友好国に対してこうした質疑を数回繰り返しますことは、外交の当事者としては必ずしも適当でございませんけれども、委員会の御希望がありますれば、それを照会することを決して怠るわけではございません。
○松本(七)委員 先ほどの理事会の話し合いでも、ここで正規に申し入れをしてもらいたいということだったから、私はわざわざこの発言をしているので、委員会として委員長から一つ外務大臣に要求していただきたい。
○小澤委員長 そうあらたまらずとも、必ず実行すると私は思いますから……。
○松本(七)委員 そんなことではだめですよ。はっきり……。
○藤山国務大臣 今の松本さんの再質問で、委員会の全体の御要求であり、委員長を通じて要求しろというくらいのものでありますから、必ずいたします。
○堤(ツ)委員 ちょっと関連。大臣がおいでになりますから、私はこの際特に審議をスムーズに進行していくために、お願いをしておきたいのでございます。このベトナムの審議に入りましてから、私たちが、答弁に立たれる政府委員から一貫して感じます空気は、非常に答弁に自信がないということなんです。今までの質問者が要求いたしました資料なども相当あるはずでして、これなども一部はきょう出てくるかと思っておりましたけれども、なかなかお出しにならない。それから答弁に困りますと、当時の係がおらないので判然としないという言葉がしょっちゅう出て参ります。当時の係がおらなければ、もうあとはうやむやになってしまうというような政治をやられておりましては、これは大臣は何回かわるかしれませんし、役人は常に御栄転があるのですから、しょっちゅうかわっていくことです。そのたびに前にやっておった者のことはおれたちは知らないというふりで、国会の審議もできないというような、会議録の不足をにおわせるような答弁ではいけないと思うのです。
 これを聞いておりましても、国民はなかなか承知しないと思うのです。私は政府が責任を持ってやられた賠償協定ですから、国会議員としてはできるだけ御協力したいのです。御協力したいのですけれども、しかしその審議の途上において、あまりにも納得しかねるものが多ければ、これは協力したくてもできないことになってくる。ことにこれは単なる警職法だとか国内法の問題と違って、外国を相手としたところの国際信義にかかわる問題でございますから、私たちはいたずらに反対のための反対をしようとは思わぬけれども、どうも政府の方ははっきりしない。どうぞもう少し思想統一を今夜徹夜をしてでもされまして、あした委員会が開かれるならば、声が出せないというようなことのないように一大臣のうしろにすわっておる政府の人たちがやらなければならない。それでこのベトナム賠償協定を通さなければならぬというようなことでは、ほんとうにおぼつかないと私は思うのです。ですから、もう少し堂々と答えられるように、過去の会議録をそろえたり資料をおそろえになって、やはり国会に対しては自信のある態度でお臨みにならぬと、痛くない腹をよけい勘ぐられる。このベトナム賠償借款の問題は、非常に疑惑に満ちているという言葉がすでに使われているのですから、どうぞその点は大臣が責任を持たれて督促されまして、第三者が見ても、私たちにも納得のいくような答弁ができるように、一つ準備をしていただきたいということを私はお願いをいたしたいと思います。
○藤山国務大臣 政府委員がいろいろ答弁に関して十分でないところがありますれば、むろんわれわれとして今後それらのものについて督励をいたしまして、十分な答弁をいたさせます。また先ほどお話のありましたように、当時の係がいないからわからぬということは、われわれ申し上げないつもりです。ただ当時の係がおらない、あるいは新しい人のために若干いろいろな調査がおくれるとか、あるいは当時のそのままのニュアンスがお伝えできないとかいうことはあろうと思います。しかしそういうことを口実にして、決して答弁を左右するものではございません。その点ははっきり申し上げておきたいと思います。
○小澤委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後六時二十分散会