第033回国会 外務委員会 第12号
昭和三十四年十一月二十日(金曜日)
    午前十時三十四分開議
 出席委員
   委員長 小澤佐重喜君
   理事 岩本 信行君 理事 菅家 喜六君
   理事 佐々木盛雄君 理事 椎熊 三郎君
   理事 床次 徳二君 理事 小林  進君
   理事 田中織之進君 理事 戸叶 里子君
      愛知 揆一君    池田正之輔君
      石坂  繁君    宇都宮徳馬君
      加藤 精三君    菊池 義郎君
      野田 武夫君    福家 俊一君
      森下 國男君    山村新治郎君
      岡田 春夫君    柏  正男君
      勝間田清一君    田中 稔男君
      穗積 七郎君    松本 七郎君
      堤 ツルヨ君    春日 一幸君
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  岸  信介君
        外 務 大 臣 藤山愛一郎君
        郵 政 大 臣 植竹 春彦君
 出席政府委員
        法制局長官   林  修三君
        外務政務次官  小林 絹治君
        外務事務官
        (アジア局長) 伊關佑二朗君
        外務事務官
        (アジア局賠償
        部長)     小田部謙一君
        外務事務官
        (条約局長)  高橋 通敏君
        大蔵政務次官  奧村又十郎君
        通商産業事務官
        (重工業局長) 小出 榮一君
 委員外の出席者
        通商産業事務官
        (通商局次長) 倉八  正君
        日本電信電話公
        社総裁     大橋 八郎君
        専  門  員 佐藤 敏人君
    ―――――――――――――
十一月二十日
 委員森島守人君辞任につき、その補欠として田
 中織之進君が議長の指名で委員に選任された。
同日
 理事森島守人君同日理事辞任につき、その補欠
 として小林進君が理事に当選した。
同日
 理事松本七郎君同日理事辞任につき、その補欠
 として田中織之進君が理事に当選した。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 理事の互選
 日本国とヴィエトナム共和国との間の賠償協定
 の締結について承認を求めるの件(条約第一
 号)
 日本国とヴィエトナム共和国との間の借款に関
 する協定の締結について承認を求めるの件(条
 約第二号)
     ――――◇―――――
○小澤委員長 これより会議を開きます。
 お諮りいたします。理事森島守人君より理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○小澤委員長 御異議がないようでありますから、さよう取り計らいます。この結果、理事が一名欠員となりましたので、その補欠選任を行なわなければなりません。これは慣例に従い、委員長が御指名するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○小澤委員長 異議ないものと認めまして、直ちに御指名申し上げます。小林進君を理事に御指名いたします。
     ――――◇―――――
○小澤委員長 日本国とヴィェトナム共和国との間の賠償協定の締結について承認を求めるの件及び日本国とヴィエトナム共和国との間の借款に関する協定の締結について承認を求めるの件、以上二件を一括議題とし、質疑を行ないます。
 質疑の通告があります。順次これを許します。松本七郎君。
○松本(七)委員 最初に、総理大臣初め政府当局ばかりでなしに、委員長並びに特に自民党の同僚議員の方々に、私どもの今回のベトナム賠償審議にあたっての基本的な態度、今までの論議の内容から考えまして、これからさらに問題にしなければならない点について、私どもの立場をここに明確にしておく必要があると思います。と申しますのは、これまで、あるいはチャン・ヴァン・フーの国籍問題だとか、あるいは両政権の正統性、かいらい性ということがずいぶん論議されて参りました。これは表面賠償とは関係ないかのごとく見えますけれども、実は今度のベトナム賠償問題で見のがすことのできない大事な点は、政府がとっておられるサンフランシスコ条約に基づく義務履行という点と、この義務履行を受ける側のベトナムの実情、そこに実は大きな問題点がある。この際、サンフランシスコ条約の義務履行ということだけに突っ走ることがはたして妥当かどうか、もっとベトナムの実情を正しく把握してこの点を高く評価すべきではないか、こういうところが実は問題の分かれ目になっておるわけでございます。これから私どもがいろいろな問題点をあげて審議を深めていく場合にも、結局は最後の決定はこの点に関する判断になってくると思うのでございます。従って私どもは、このベトナムの国情を理解し、認識し、把握する上から、この政権の性格問題というものを取り上げざるを得ない。またサンフランシスコ条約に調印したチャン・ヴァン・フーの国籍問題も、こういう点から真剣に、これはどこまでも徹底的に論議しなければならない。こういう基本的な態度から問題が発展してきておるのでありますから、私どもは、今までの論議で納得したり満足するものではない。まだまだ、特に政権のかいらい性の問題には今後もわが党としては相当時間をかけて論議をしなければならないと考えておるのでございます。しかし、今日私自身はこの問題であまり多くの時間をとることは、先に進む上からも適当ではないと思いますので、今日はこの問題にはあまり多く触れずに、直ちに政府の提出した資料に基いて質疑を始めたいと考えます。
 今申し上げました趣旨を、委員長も、また答弁される側の政府当局も十分理解をして今後の審議に応じていただきたいということをまず申し上げたいと思います。委員長から一つそれに対する確答を得たいと思います。
○小澤委員長 十分了承いたしました。
○松本(七)委員 資料についての質問に入る前に、岸首相に二、三点にわたってただしておきたいことがあるのです。
 第一には、十一月十四日の新聞報道によりますと、「川島幹事長、それから藤枝、田中角榮両副幹事長、椎名官房長官、これらは十四日朝、帝国ホテルに各省の事務次官を呼んで、川島幹事長から『党と各省とのチームワークはこれまでの国会答弁の状況から見るとどうもうまくいっていない、ことに外務省事務当局はたるんでいる。今後は党と一体になって、今国会及び来たるべき通常国会の乗り切りに万全を期してもらいたい』と各省側に強く反省を求めた。川島幹事長はその席上チーム・ワークがうまくいっていない例として次の三点を強調した」と報じております。「一、ベトナム賠償の国会答弁で外務省事務当局は、これまでしばしば答弁に窮しているが、あとで反省会を開くでもなく、夜は料亭へ散らばってしまうというのが現状だ。野党側は十分な準備を整えて質問に当たっているのだから、これではやられるはずだ。一、各省が発表する白書には往々にして党の方針と異なつた内容が載っている。事務当局の側で事前によく党と相談して内容を打ち合わせるべきだ。一、ベトナム賠償に関する野党攻撃では外務省発表資料が南ベトナムはかいらい政権としていることが一つの攻撃材料となったが、このように南ベトナムをかいらい政権というなどは党の方針と全く相反する。今後絶対にこうしたことのないようにしてほしい。」続いてこの報道によると、なお、川島幹事長らは来たるべき通常国会での安保審議に万全を期するためには、答弁の矢面に立つ外務省関係局長の人事異動を要望している。こういうように報じておるのであります。(「でたらめを言うな」と呼ぶ者あり)でたらめかどうか、それは一つ総裁並びに総理に御答弁願いたい。これは事実であるのかどうか。
○岸国務大臣 国会の運営を円滑ならしめるために、党の幹事長が各省の事務事官と連絡の会議をしたことは私聞いております。新聞に報ぜられておるような内容につきましては、何ら報告を受けておりません。
○松本(七)委員 こういうことがいやしくも新聞には報道されておるのです。あなたは聞いておるかおらないかは別として、それではこの内容のようなことがもし事実であるとしたら、どういうように考えられますか。
○岸国務大臣 常識から考えてみても、そういうことはあり得ないと私は考えます。
○松本(七)委員 それではこの真偽については、ここで追及してみても、聞いておらない、それから新聞の報道には責任を持たない、こういつものように言われれば平行線になりますが、この内容については無視できない。御当人についても、いずれただす機会はあろうと思いますが、内容について重大なことがあるので、今後のわれわれの態度にも、あるいは日本の役所としての任務を果たす上からも、一つの重要な問題が含まれておりますので、川島幹事長がはたしてこういうことを言ったかどうかは、なお今後はっきりさせるとして、岸総理に一つ率直な意見を伺っておきたい。
 それは「各省が発表する白書には往往にして党の方針と異なった内容が載っている。」「事務当局の側で事前によく党と相談して内容を打ち合わせるべきだ。」まずこの点でありますが、この白書というのは、事務当局が客観的な事実に基づいて、そのときの政権の政策等にはできるだけ影響を受けたり曲げられたりしないように、客観的な事実をまず土台にしてから、政党なり国の政治に当たっておる首脳が正しい政策を打ち出すための客観的資料であるということが一番大事ではなかろうかと思う。この白書を作るのに、党なり、その時の政権の方針とすべてを一致させるために打ち合わせてやることが正しい白書を作るための態度と言えるかどうか、まずこの点あなたの御意見を伺いたい。川島さんが言ったかどうかは今後はっきりさせます。
○岸国務大臣 白書とか、いろいろな名前でもって各省の出します文書につきましては、それぞれの意味を持っておるだろうと思うのであります。あるいは今お話しのように、客観的事実をそのまま明らかにすべき性質のものについて、時の政府であろうが、あるいは政党であろうが、そういうものに関係なしになにする場合もありますし、また党や、あるいは政党内閣でありますから政府の方針を明らかにする意味において、その資料を発表するものもございます。いろいろなものがございます。しかし、客観的事実を明らかにするというような場合におきましては、あるいは政府や与党の方針に違ったような事実が現われておるという場合に、それをそのまま出すというような場合もあろうと思います。いずれにいたしましても、そのときの、その出します文書の性質によってきめるべき問題であると私は考えます。
○松本(七)委員 白書の場合はいろいろの場合があり得ると思います。
 第二の問題として、ここにあげておる具体的な報道によりますと、川島さんが言っておるように、外務省の発表した資料に、南ベトナムはかいらい政権だというくだりがある。これは攻撃材料になったのだが、「このように南ベトナムをかいらい政権というなどは党の方針と全く相反する。今後絶対にこうしたことのないようにしてほしい。」こういう態度では――この前から問題になったように、岡田君も予算委員会で指摘して、外務省の出した資料について、藤山さんもはっきり答弁されておる。これはいやしくも外務省が作ったものですから、そんなに大きな間違いはないと確信しておる、こう言われた。当時作った外務省も、おそらくかいらい政権だからかいらい政権だと事実ありのままを書いたのであって、今日これがこのような問題になろうとは、おそらく外務省一人として予想した人はないと思う。事実を事実として書いた。ところが今日になってこれが問題になり、攻撃の材料になるからといって、時の政府が一々その事務当局に対して、これはけしからぬじゃないか、おれの方の方針と違う、これからこんなことがないようにというきめつけ方をされるならば、今後は事実を記述するにも、先のことを心配しながら気を使わなければならぬ。こうなると正しい資料、客観的な事実を伝えることが本来の使命であるこのような資料の作成にあたっても、将来のことをおもんばかり、筆をゆがめなければならない、消極的にならなければならない、こういう弊害が起こる。こうなると、これは政党政治の非常な行き過ぎではないかと私は思うのでございますが、所見を一つ伺っておきたい。
○岸国務大臣 いろいろな資料におきまして、意見が加わっておる問題があります。あるいは事実をどう判断するかという判断を下しておる問題もあろうと思います。今のかいらい政権云々の問題も、その当時の事情がこういう事情であったということを客観的に記述しておるものではなくして、こういう事実からして一つのかいらい政権であるという判断なりあるいは意見が私は加わっておるように思います。こういうような問題に関しては、いやしくも責任を持っておる内閣とし、あるいは政党内閣としての与党等の考え方というものは、判断とかあるいは意見とかいうものの上においてはやはり責任上問題になると思う。ただ事実を事実として客観的事実を記載するというのは――事実を曲げるということは、われわれはいかなる場合にも考えておりませんし、また、そういう性質のものではないと思う。しかし、意見や判断の問題についてはそういうことが言えるんじゃないかと思います。
○松本(七)委員 このかいらい政権の資料は、その当時の事実を記述したとはっきり書いてあるのです。それでこの前岡田君もこれを問題にしたのです。これはこの点をさらに論争しておれば、再びかいらい政権の論議に入らなければなりませんので、これは後ほど必要に応じてまた論議し、あるいはまた同僚から問題が出されると思いますので、この程度にとどめて先へ進みたいと思います。
 ただここで、今の問題で首相に一つお願いしておきたいのは、あなたはまだ聞いてもおらないし、知らないと言っておるから、いやしくもこういう報道がされておる、こんな大事なことを川島幹事長に一つあなたは確かめて、その内容の真偽は一つはっきりさしておいていただきたい。いかがですか。
○岸国務大臣 私は、新聞に出たことを、国政全般にわたり党の全体にわたりまして、一々真偽を確かめるということは従来もいたしておりません。むしろ常識で判断すべき点は常識で判断して処置しております。
○松本(七)委員 この川島幹事長の発言というものは非常に重要な問題ですよ。だからあなたが御存じないということが今明らかになったのですから、この重要な問題は真偽を確かめてやるに値するかどうか、それではそれについての御意見を一つ聞かしておいて下さい。ほっておくべきものか、あるいはあなたはもう一度川島幹事長自身に確かめて、こういうことははっきりさせるべき問題だと思うから、それを聞いておるのです。
○岸国務大臣 私は、今申し上げておるように、いろいろな新聞の記事等については、私の常識において判断をいたしております。今特にこの問題をあまり――私が従来報告を聞いておることでたくさんである、こう考えております。
○松本(七)委員 そういう態度だから外務省の方もほんとうに協力しないのです。
 そこで資料について少しお伺いしておかなければならぬわけですが、この前政府から出された資料についてある程度の同僚の質問に対して、これは日本側の調査資料ではない、ベトナム側が作って出してきたものの一部だ、こういう御答弁があったわけです。これは岸総理もよく聞いておいていただきたいのですが、「ヴィェトナムの提出せる生産及び貿易に関する損害の資料を基礎として、一九四四年九月―一九四五年八月の生産及び貿易の減少による損失額を試算すれば次のとおり。」というので来ているわけですね。これについていろいろ質問しましたところが、伊關アジア局長は、今言うように、これはベトナム側が作ったものだ、そしてそれは全部じゃない、一部だ、こういうことを言われた。それが今までの過程です。それでその点を念頭に置いといていただきたいのですが、伊關さんにお伺いしたいのは、これは一部であるが、これはベトナム側からこういう文書の形できたものか、あるいは何か表にしてきたのか、あるいは口頭で説明されたものをこちらで記録したものか、その点をお伺いしたい。
○伊關政府委員 文書で参りましたもののうちの数字を引用したものでございます。文書の中に数字がございます。その数字を引用いたしました。
○松本(七)委員 そうすると、全文をなぜ出さないのですか。数字だけとらずして全文をわれわれは見たいのです。
○伊關政府委員 全文と申しましても、最初の文章は非常に簡単なものでございまして、ずっとあとがやや説明を加えつつ数字が入っておるという状況でございます。全文につきましては、文書の最初に外交交渉の経緯が入っております。これは多少極秘に属する部分がございます。文書の最初に小長谷大使との交渉の経緯を一ページほど述べておりますが、この辺は交渉の経緯でありますから発表できない点がございます。あと数字につきましては全部この中から引用してございます。
○松本(七)委員 そうすると、これは向こうの出したものの数字だけをとって日本側が作った資料ということになるのですね。
○伊關政府委員 数字は先方が出した数字そのままでございまして、四四年九月から四五年八月の一年分の換算は、外務省がいたしたものであります。
○松本(七)委員 今までの答弁では、向こう側の出した資料で、日本側の資料じゃないということだったのですよ。今のでは、これは結局外務省が作った資料だと言う。数字は向こうの数字をもとにしておる、そう理解しなければならぬと思うのですが、そうですが。
○伊關政府委員 最初に出しましたものは、向こう側から参りましたものの数字を引用したものであります。二度目に差し上げました詳しいものは、御質問に応じまして最後の一年分を計算したものであります。それは外務省が計算した、こう申し上げております。
○松本(七)委員 そうすると、このいただいた資料、今私が指摘した二度目に作ったものは、交渉のときに使ったものではないと了解してよろしいでしょうね。
○伊關政府委員 二度目の資料は最近作ったものであります。(「最初のものは」と呼ぶ者あり)最初のものは、交渉の経緯において先方が提出したものであります。
○松本(七)委員 そうすると、交渉のときに使った日本側の資料は全然ないと、今まで言われた通りその点は変わりないのでしょう。日本側の資料は交渉には何ら使うべきものはなかった、その点はどうなんですか。
○伊關政府委員 交渉の際には、先方が提出しましたこのエイド・メモワールというものを基礎にいたしまして、交渉当事者が、あるいは外務省の当時の関係者が個々に判断をしてやったものと思います。
○松本(七)委員 そうすると、先ほどから問題にしておるこれの中の数字は、ベトナム側が出してきたのでしょう。このベトナム側が出してきた数字というものは、交渉のときにも論議の材料としてこれが使われた数字ですかどうですか。
○伊關政府委員 最初にお出ししましたベトナム側が出した数字は、交渉の際に使われた数字であります。
○松本(七)委員 だから、その数字の全額においては変わりないのでしょう。
○伊關政府委員 全額と申しますと、要するに二十億ドルとして内訳を出してきたわけであります。それが交渉に際して使われたものであります。
○松本(七)委員 そうすると、その交渉のときに、向こう側が、今出してきた数字を土台にして論議をしなければならぬ。そうすると、こちらは、今あなたはわれわれの要求によって、その向こうの出した数字をいろいろ詳細に計算されてここへ出されておる。そうすると交渉のときには、同じ数字について詳しい計算もなしに、向こうの出した数字だけでこちらに交渉したのですか。それともここに出されておるような日本側の計算を、向こうの数字を土台にして計算をしたものを持ち込んで、それで向こうの資料とつき合わせながら交渉がされたものか、そういうことがさっぱりわからない。
○伊關政府委員 交渉にあたりましては、こういう先方の出しましたものをちょっと見ましても、計算し直さなくても、大体相当大きな損害数字があるということが頭に入っておりますから、それをもとにしまして折衝いたしております。こういうものを一々数字を出しまして、こういう計算をすればこうなるとやっていきますと、むしろ損害が非常にふえていくわけであります。むしろこちらとしましては、交渉におきましては、ラウンド・ナンバーで向こうも出してくる。こちらもラウンド・ナンバーで小さなものを出す。そうして三千九百万ドルにまとまったのでありますが、交渉当事者としましたならば、三千九百万ドルというものは実際の損害よりははるかに小さいということは、常に頭に置いて、常識的に頭に置いてやっておったわけであります。
○松本(七)委員 あなたは大体ラウンド・ナンバーで交渉する、そうしなければ額が多くなるというけれども、それ自体がおかしい。根拠がはっきりしてさえすれば、詳細に論議することによってむしろ額を少なくすることさえできる。その根拠なしに、ただラウンド・ナンバーで向こうがこれだけのものを言ってきたから、こっちは一応最低のここらでやろう、そんなことでは全然賠償の折衝にはならないと思う。岸さんどうですか。いやしくも賠償の交渉をするのに、ラウンド・ナンバーで向こうから出してきた、こっちもまあ腰だめで一番低い、最低このくらいのところで交渉しよう、これでは私は全然交渉にはならないと思うのですが、今の質疑応答を聞いておって、岸さんどう思われますか。
○岸国務大臣 賠償の額をきめるにあたりましては、ビルマにおきましても、あるいはフィリピン、インドネシア、今度のベトナムにおきましても、現実に生じた損害というものを数字的に計算することは、これはまた時日がたっておりまして、いろいろな事実を正確に把握してこれを評価するということは、なかなか困難であると思います。従って賠償請求権を持つ国がいろいろな資料を提出して、われわれの方がこれに対して、できるだけそのうちでもっともであると考えるもの、また日本の力というものも頭において折衝をしていかなければならぬと思うのであります。従いまして、今お話しのような、何かお互いが二つの根拠を持った数字をつき合わせてどうだというふうな交渉にならないのは、賠償協定の従来の例から見てもそうでありますし、またその性質上そういうものであると思います。
○松本(七)委員 岸さん、それはほんとうに正確な詳細な資料というものはなかなかできないでしょう。あなたの言われるように調査も困難、資料を作ることも私は困難であることを認めます。けれども、いやしくも賠償交渉をする以上は、今岸さんも言われるように、その中の妥当なもの、そういうようなものはできるだけ払おうという態度をとる以上は、それが妥当かどうかをやっぱり判断しなければならないじゃありませんか。ただばく然と、何らの資料もなしに――今度の場合は全然ないのですから、何らの資料もなしにそういう判断が一体できるか。これは常識から考えても疑惑を生む一番の根本ですよ。インドネシアにしろ、ビルマにしろ、フィリピンにしろ、ずいぶん賠償が疑惑ばかり生んでおる。それはあなたも今言われるように、詳細な調査の困難性、資料が作りにくいということにも原因があると思う。それならば、今までもそれは困難だったから、ベトナムもそれは仕方がないのだ、こういくかというと、ベトナムの場合は、私が先ほどから前提として申し上げておるように、日本側は、特に岸政府側は、サンフランシスコ条約で課せられた義務を履行しようという立場に立っておるけれども、この義務の履行を受ける側のベトナムの実情というものは、フィリピンや、ビルマや、インドネシアとは違うものがある。こういう場合に、それは困難ではありましょうけれども、交渉に使える何らかの資料くらいは用意して臨むのが私は当然な道ではないかと思うのです。それが何ら資料がない。全然資料もなしに、このような二百億という血税を支払おうという大事な問題の交渉がなされて、正しいといえるかどうか。この点は、それでもいいと言われるのならば、あなたはもう一度ここではっきりと、それでやむを得ない、これで正しいのだと言明して下さい。
○岸国務大臣 賠償交渉におきまして、向こう側から出した資料もございますし、それからまた当方として、当時いろいろな事情からこの当時の状況を知っておる人々からもわが方としては資料を得て、そうしてそれで一つの判断をして、大体の損害額として、われわれの妥当と思われる腹がまえをして、そうして向こうと折衝したというのが、私は賠償協定の本質であると思うのです。全然資料がなかったとか、全然われわれは……(発言する者あり)ただ、それを数字的にどういうふうに示せと言われるというと、さっき言ったような性質のものであるということを申し上げたわけであります。
○松本(七)委員 それではあなたは、資料が全然ないのではないと、資料はあるのだと言われるのですか。あるんならそれを出して下さい。今までの答弁では、日本側の資料はないと言っておられる。あると言われるのならそれを出して下さい。(「あると言うなら出せ」「それが賠償というものだ」と呼び、その他発言する者多し)出すのか、出さないのかはっきり言って下さい。全然ないから出せないのか、あるなら出して下さい。
○岸国務大臣 私は、当委員会において、従来の外務大臣及び審議の途上において出し得るものについては、今外務省の事務当局から聞きますというと、出しておるということでございます。
○松本(七)委員 それじゃあ交渉の材料として使い得たその資料はどれとどれか、一つ言って下さい。今まで出したもののどれが交渉の材料として使ったものか、それを言って下さい。
○伊關政府委員 はっきりした資料としてお出しできるものはこの間お出ししたものでありまして、それ以外はいろいろと当時の……。
    〔「なぜ出さないのか」「出せないものもあるとはっきり言っているじゃないか」と呼び、その他発言する者多し〕
○小澤委員長 静粛に願います。
○伊關政府委員 それ以外は当時のこの交渉当事者が、当時向うにおりました人とか、軍人とか、いろいろな人から話を聞いておりますが、こういうものは断片的なものでありまして、また、話した人も、確固とした数字は覚えていないが、大体こうであったろうというふうな話は、いろんな人に会って、いろんな話を聞いております。しかし、資料として提出するほどのものではございません。
    〔発言する者多し〕
○小澤委員長 静粛に願います。
 委員長から政府に伺いますが、現在までこの議論はたびたび行なわれました。その結果、委員長の了承するところでは、政府の資料は全部出したということに承っておりますが、これに間違いがあるかどうか、はっきり言って下さい。
○伊關政府委員 提出できますような形における資料は全部出しました。あとのものは断片的なものでありまして、提出できるような形ではございません。
    〔発言する者多し〕
○小澤委員長 静粛に願います。静粛に願います。
 なお委員長として、総理大臣に伺いますが、伊關アジア局長の答弁をお認めになりますか。
○岸国務大臣 局長の通りでありまして、私が先ほどお答え申し上げたのも、その趣旨でございます。
○小澤委員長 それで了承されましたから、どうぞ松本七郎君。
○松本(七)委員 委員長、よく聞いておいて下さい。今までの伊關アジア局長の話は、ベトナム側から出した資料、その中の数字は交渉に使われておる。それ以外に出したのは、その数字は根拠にしておるけれども、日本側が作ったものだ。それは交渉のときには使っておらない、こういうことですね。そうすると、それじゃ全然交渉に使った材料はないじゃないかと聞いたわけだ。総理大臣は、それは全然ないわけではないと、こう言うのですから、そのないわけではないという交渉に使った資料というものを、やはり不十分でしょうけれども、国会でこれだけ問題になって、資料が足りなくて困っているのだから、当然私は委員会に出すべきだと思うのです。その点を一つ委員長からしっかり総理大臣に言質をとって下さい。
○小澤委員長 松本七郎君に申し上げますが、政府の資料というものは全部出しておるというただいまの答弁でありますから、その次の議論にお進めを願います。
○松本(七)委員 それでは委員長、一応政府の出してきたのは、不満足ですけれども、伊關さんの言われる一端から一つ推測してくれ、こう言われる。非常にこれはむずかしい注文だと思うのですよ。その数字はベトナム側が出してきて、しかもそれは全部じゃない。一部だ。それからいろいろ数字で政府が計算したのを出してきておる。その一端に基づいて推測してくれ、こう言うのです。それではなかなかやりにくいから、もう少し何か交渉に使った、われわれの参考にできる資料はないかと言っておるのです。それがなかなか出てこない。やむを得ないからその一端の資料に基づいて少し質疑は続けますけれども、しかしその過程で、今問題になっておるこの資料の問題は、当然また出てくると思うのです。それだから私は冒頭に、もし出せるものがあるなら――もっとあるはずなんだ。それを国会にこの際出した方が、今後の審議を円滑にするゆえんだと思うから、この点を私は極力言っているわけなんです。委員長、この点一つ考えていただきたいのです。ことごとに、進めば進むほどこれが問題になってきますよ。
○戸叶委員 関連して。委員長も、ただいまの松本議員と政府との質疑の応答で、答弁の非常に食い違いのあることやら、そしてまたこの重大な賠償の協定を、この一番問題になる点を解決しないで、これより進むことは非常に困難だということはお認めになっていられると思うのでございます。そこで私はお伺いいたしたいのは、この賠償協定の交渉に当たったのは植村さんその他の人々でございますけれども、最初に沈船協定というものが一九五三年ですか、その九月の十六日に仮調印までされたものが、そのまま仮調印を向こうから断わられて、その後ほっておかれて、一九五七年の九月と、一九五七年の十二月に植村特使が、政府の特使という形で行っているわけでございます。特使として行くからには非常に特権を与えられて行っていると思う。しかし、何の根拠もなく、何にも持たずに手ぶらで行くなんということはおそらくないと思うんです。何かの資料を持って行ったのか、それとも少なくとも政府の訓令なり何なりを受けて行ったのか。そしてその訓令なり何なりをここで発表できるならば、していただきたいし、それは秘密外交でできないというなら、まだそこにも話はわかると思う。ところが、特使として植村さんを二度もやっておいて話がきめられておりながら、日本からの何の資料も持っていかないでやったなどというのでは、私どもだけでなしに、国民がこの点は納得できない点だと思う。従って私は、こういう重大な問題ですから、もっとはっきりさせていただいた上で先に進んでいただきたい、こう思うのでございます。
○伊關政府委員 植村さんが交渉なさっておる経緯におきまして、損害額の算定というふうなことはしておられません、数字に基づいて……。植村さんは政府の訓令に基づいて行っておられまして、九月のときには、先方がそういう大きい数字を出すのでは話にならぬということで、具体的な政府の数字は出さずに――当時向こうはまだ一億五千万とかいうようなことを言っておりましたから、それを全般的な、一般的な話で下げるようにという訓令を持って行っておられます。十二月に行かれましたときには、政府の方からはっきりした、この辺の数字からスタートしてこの数字以内で納めるようにという訓令を出しておりますが、訓令の内容でございますから、秘密にいたしております。
○戸叶委員 私はそれを伺っておりましても大へんふしぎに思う。特使として行かれて、しかも向こう側から出された資料だけで植村さんが今度の数字を出したということは、何かの政府からの話し合いがなければ、植村さんとしても特使として行った以上はやれないと思うのです。それが一つと、もう一つは植村氏が行かれまして、この委員会において三月十六日に証言をしていることがございます。そのときの証言を――私は関連質問ですからあまり時間をとってもいけないと思いますので結論のところだけを申し上げますと、ずっと植村氏が交渉をいたしまして、最後にこういうことを言っております。「その後いろいろ折衝がありまして、大体私のサゼスチョンなるものに基づいて賠償の問題は考えよう」、こういうふうに言われているのです。従って植村さんが出されたサゼスチョンによってこの賠償がきまったということがはっきりしているわけで、そういうことから考えてみましても、何らかのものを持って行ったとしか思われない。あるいはただからっぽとして行ったというのはおかしいと思うのですが、この点をはっきりさしていただきたい。
○伊關政府委員 先ほども申し上げましたように、五七年九月のときには、具体的な数字は植村特派大使には持たしておりません。十二月のときには、政府が、ここからスタートしてこの限度以内にとまるようにと、はっきりした数字を与えております。そうして政府がその数字を出します際には、政府としまして損害というものも考えて妥当な数字を考えまして、この範囲以内で交渉をまとめてくるようにというはっきりした数字を出しております。これは訓令でありますから出せません。
○戸叶委員 今の伊關局長のお話を伺っておりますと、大体このようだというような話を持って行ったというふうに言われております。そうだとするならば、今伊關局長も言われたその内容のものを出していただきたい。この答弁は、岸さんが先ほど答弁されましたところの何もなかったという答弁とは違うと思いますので、もう一度岸首相の見解をも伺っておきたいと思います。
○岸国務大臣 先ほど申し上げますように、政府が最後の腹づもりをきめるのにつきましては、いろいろな点を調査してこれをきめたのであって、そうしてそのきめたについて必要な資料等については、出せるものは全部出している。それ以上は出せない、こういうことを申し上げておるので、少しも矛盾をしておりません。
○戸叶委員 伊關さん、さっきの答弁、出せないのですね。出せるか出せないか。今の点ではっきりさせていただきたいのは、出せるのか出せないのか。出せないのは、あるけれども出せないとおっしゃるのでしょうか。
○伊關政府委員 訓令はある最低の金額、最低の限度、ここからスタートして最高の限度、この間におさめろという訓令は出ておりますが、そういう訓令を持って植村さんが行っておる。その訓令のどこで植村さんがおさめたかということがわかりますと、向こうの交渉の当事者の交渉が下手であったとか上手であったとかいう問題にもなって参りますので、これは発表できません。
○戸叶委員 もう一点だけ。今の伊關局長の言葉で、最高の限度、最低の限度というものを書いた訓令が出ているということでございますけれども、できれば秘密会でも何でもけっこうでございますから、それを一ぺん出していただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
○藤山国務大臣 交渉中の訓令内容につきましては、出すことができませんでございますから、御了承願います。
○田中(稔)委員 松本委員の質問に関連いたしまして、簡単に議事進行に関する動議を提出いたしたいと思います。
 国会における内閣総理大臣の発言というものはきわめて重大であります。ところが、先ほどから私どもが盛んに南ベトナム賠償についての根拠ある数字の提出を要求しておるのでありますが、アジア局長の説明によりますと、初めはそれがないかのごとく、戸叶里子君のただいまの質問に対しましてはあるかのように答弁されておる。植村特使が参ります際に持っていった何か数字があるようであります。さらにまたベトナム側との交渉の際にも、日本側で一応ラウンド・ナンバーは出したといいますが、そのラウンド・ナンバーの算定の根拠になる、やはりそういう数字があるわけであります。そういうわけでありますから、あるようなないような、非常に人を惑わせる御答弁でありますが、先ほど岸総理は、私どもの同僚の質問に対しまして、私どもがかねて要求しておる、交渉に用いた数字はあるというような御答弁が一度あったのであります。ところが、そのあと立たれまして前言を翻された。しかしながら、内閣総理大臣の国会における答弁がきわめて重大であるということにかんがみまして、ただアジア局長の答弁が今あったから、前言は間違っておったというような軽い御答弁では、われわれ満足できないのであります。
 そこで委員長、長い時間は要しませんけれども、二、三十分間休憩をいたしまして、総理の二回にわたる答弁の内容を速記録によって詳細に調べまして、もしその間に非常に重大な食い違いがあるとするならば、そのことにつきまして、われわれ委員としましてはやはり考えるところがなければならぬと思うのであります。従って、ここで二、三十分の時間休憩をしていただきまして、そうして速記録の内容を詳細に調べた上に委員会を再開して、審議を続行したい、こう考えます。
    〔「動議の採択」「反対」と呼び、その他発言する者あり〕
○小澤委員長 動議は適当な時期に採択いたします。発言を許します。松本七郎君。(発言する者あり)委員長は、動議は適当な時期に採決します。松本七郎君。
    〔「動議を一つ諮って下さい。一国の総理の発言はきわめて重大です。」と呼び、その他発言する者あり〕
○小澤委員長 御静粛に願います。先ほども田中君の動議に対しまして委員長が宣言をいたしましたが、ただいま松本七郎君の発言中でありますから、適当の時期にその動議は採決をいたします。松本七郎君。
○松本(七)委員 私の先ほどから申し上げたいのは、もちろん、できればその数字的な交渉に使われたものをなるべく出していただきたい。しかし一つ考えなければならないのは、このベトナム賠償の問題が起こったときの発端から、今回調印になるまでの、ベトナム側との折衝の過程、その実情――例の沈船引き揚げ協定からずっとこう移ってきたその実情を考えてみますると、数字の変化ももちろん大きな問題ですけれども、そればかりではなしに、日本政府のこの賠償に臨むにあたっての基本的な態度に変更があるのではないかと、われわれはそこに疑惑がある。そこで一体政府の基本的な態度というものはどういうものであるかということを、いろいろ政府の答弁なり、あるいは政府の出された資料によって私どもは検討しなければならない。今までの資料では、そういう大事な基本的態度についての資料というものは何もないのです。それは、政府はこういう態度できておりますと、断片的にはときどき言われる。それを通じて私の方はいろいろ推測するわけでございますけれども、しかし賠償の実態というものから考えてみると、必ずこれは政府の基本的態度に大きな変化がきておらなければ、あのような急激な変化はあり得ない。最初からの基本的な方針でいっておるならば、突如としてああいうような大きな変化は出てくるはずがない。そこでそれらの基本的な方針についての政府の資料というか、こういった方針で自分たちは交渉に臨んだ、交渉の過程においてはこういう問題が起きた、しかし基本的な態度は変えないであくまでもいったものか、あるいは変えざるを得なかった場面があったのか。そういう点は、いやしくも国会で審議する場合には一番大事な前提になる点ですから、もう少し権威のある資料として、そういう点までの資料として私は出していただく必要がある。この点が、これから先審議を続けるに際して特に問題になるので、総理大臣としては、そういうことは御存じないなら知らないという答弁でもやむを得ない。総理大臣からも一応返答いただくと同時に、担当者である伊関アジア局長から、そういった問題についての資料はもちろんのこと、態度の変更というものはみじんもないというならば、そのことをここではっきり言明していただきたい。それの前提に立って私は今後の資料的な検討も進めていきたい。それがないと、再びこの問題で論争しなければならないような事態になる。どうぞはっきりさして下さい。
○岸国務大臣 サンフランシスコ条約に基づくところの日本の賠償義務を各国に対して履行するという考え方は、一貫して政府としては、それをできるだけ日本の国力というものを頭に置いて、各地における妥当な賠償協定を作っていくという方針は少しも変わっておらないのであります。ベトナムに対しましても、長い間のいろいろな途中における交渉の経緯はありましたけれども、方針としてこれが急激に変わったというようなことは全然ないのでありまして、一貫した方針で交渉を進めてきておる、それが妥結したわけでございます。しこうしてそれに関する資料の問題に関しましては、先ほど来質疑応答がありましたように、政府側として出し得る資料につきましては、私は、一切出しておるという事務当局の報告の通りである、こう思っております。
○伊關政府委員 根本方針につきましては、総理がただいま御説明になりました通りであります。こういうことは、交渉当事者がみなその方針を頭に入れておったのでありまして、いわゆる資料というふうなものの対象になるものではないのでありまして、基本的な考え方としましては、交渉に当たる者がみなそういうことを体してやっておったわけであります。
○岡田委員 ちょっと関連して伺いますが、資料としてはもう出せるものがないと総理大臣はお話しになりました。それから伊關局長も御答弁になっておりますが、資料とあなたの答弁との間に食い違いがあった場合にはどうしますか。伊關さん、資料と答弁との間に食い違いがあったらどうしますか、ないのですか。
○伊關政府委員 私は、あるとも思いませんが、具体的な事例をおあげいただけば、また御説明申し上げます。
○岡田委員 これは岸総理に伺いますが、資料とあなたの今までの答弁の間に――今までの答弁というのは、佐々木盛雄君の質問に対する答弁、これは藤山外務大臣ですが、この資料と藤山外務大臣の答弁の間に食い違いがある。その場合には、これを訂正されて資料を直されるお考えはありますか、どうですか。(「具体的に言えよ」「仮定の問題には答えられない」と呼ぶ者あり)それでは具体的にあとで伺いましょう。間違っているなら訂正されますか。
○藤山国務大臣 佐々木君と私とがどういう問答をいたしましたか、今正確に記憶しておりませんので、何ともその点にはお答えいたしかねます。
○岡田委員 それでは伺いますが、資料を見ると、ベトナムの主張する戦争損害及び苦痛の中には人的損害として百万と書いてある。ところが藤山さんの答弁によると、人的損害餓死者二十万と書いてある。三十万と百万と違うじゃないか、どういう点で違うのか。(「向こうが言っておるのだ」と呼ぶ者あり)それならば、向こう側が言っておるならば、具体的に伺いましょう。向こう側が百万であって、あなたの方が三十万というのなら、三十万の資料がないじゃないか。なぜ資料を出さないか、三十万の資料が出てないじゃないか。出すのなら出しなさい。これは資料はないのですか。
    〔「言葉で出しておる」と呼ぶ者あり〕(笑声)
○伊關政府委員 その点につきましては、昨日も御答弁いたしましたが、先方の資料には百万となっておりますが、われわれがいろいろな人から聞きまして、常識的な判断は二、三十万と思うということは、ここで何度も申し上げましたので、わざわざ出す必要を認めなかったわけでございます。
○岡田委員 先ほどあなたも総理大臣も、資料はもうありませんと言ったじゃないか。ところが三十万の資料というものは出さなければならない。あなたは答弁している、三十万。それは答弁の資料としてお出しなさい。これはなぜ出せないのですか、総理大臣なぜ出せないのですか、三十万の資料はなぜ出せないのですか。日本側の資料というものはないということにならないじゃないか。(「こっちがそういうふうに値切ったのだ」と呼び、その他発言する者多し)だから夜店外交というんだよ。
○伊關政府委員 二、三十万と申し上げましたのは、いろいろな人の話を聞きまして、常識的な判断で二、三十万になったということでございまして、特に資料というものはございません。
○岡田委員 それじゃ伺いますが、それは特に資料ではない――資料ではないのですか。あなたの方の賠償、ネゴシエーションをした場合の交渉の資料になっておらないのですか、三十万というのは。資料として出しておるものではないのですか。資料として出したのでなければ、藤山外務大臣の答弁はうそだ、資料としての信憑性のないものだということになる、どうなんですか。
○藤山国務大臣 ただいまの説明ではっきりしていると思うのでありますけれども、先方側が百万というような数字を出してきております。しかしわれわれとしては、当然百万というような数字を信用することはできないのでありまして、従っていろいろな方々から当時の実情を聞いて、その聞いた方々の意見もいろいろございます、そういうものを参考にして、この間の佐々木君に対する答弁も、大体百万ということはわれわれも考えていない、しかしいろいろな話の上からいって、まあ二、三十万くらいならばあるいはそうかもしれぬというようなことを申しただけでありまして、特にそういうものを正確な数字がございません以上、資料として確実に持っておるというものではございません。
○岡田委員 それでは、藤山外務大臣の二、三十万とか三十万と言ったことは、これは根拠のないことで、そういううわさを聞いたからここで言った、そういうことですか。それでは私は伺いたいのは、ここではベトナムの賠償協定の、審議をしている。賠償協定の二百億円という血税を払うのが妥当であるかどうかを聞いている。そのためには、その基礎になるものがなければ話にならないじゃないか、基礎になるものが全然ないじゃないか。あなたの言っておるのは、三十万というものはうわさに聞いたので、資料として出すほどの価値のないものだということを答弁している。価値のないものを、あなたは資料として出す資格がないならば、二百億円の基礎になるものはないじゃありませんか。(「あるじゃないか」と呼ぶ者あり)あるならあるではっきりお出しなさい。あなたに伺いますが、それではベトナムの主張している百万の餓死者というものを基礎にしたのですか。それじゃ。三十万の方はうわさで、大した資料にはならないのだ、しかし資料としてお出しになっているのは……(発言する者多し)静かにして下さい。君はあとから来てわからないくせに黙っているよ。
○小澤委員長 静粛に願います。
○岡田委員 外務大臣に伺いますが、あなたは答弁の中では三十万はあまり確定的なものではない、不確定なものだ、こういうようにお答えになった。ところが、あなたの方で出されている資料には百万とある。百万の方は確定的な資料ですか。(「それは向こうの資料だ」と呼ぶ者あり)向こうの方の資料が百万であって、日本の方は資料はないというわけですか。ないならないとおっしゃい。ないならないでわれわれも審議の態度がある。どちらですか、はっきりなさい。
○藤山国務大臣 ただいま御説明申し上げた通りでありまして、向こうからは百万と言ってきておりますが、それが正確であるとはわれわれ考えておりません。従って各方面から意見を聞きまして、多い人もあり少ない人もあり、いろいろの見方がございます。われわれはそれらのものを念願に置いてやったわけでありまして、確実な数字が得られなければ、われわれはいろいろな人から聞いたものを判断しながらやるのが当然であろうと思います。
    〔発言する者多し〕
○小澤委員長 静粛に願います。
    〔「そっちを向いて言え」と呼び、その他発言する者多し〕
○小澤委員長 両方向いてやります。
    〔「名委員長」と呼び、その他発言する者多し〕
○松本(七)委員 先ほど根本方針には変わりはないというお話でしたが、さて根本方針がどこまでのものかということも問題ですけれども、私どもの今まで知る範囲では……(発言する者多し)委員長、時間がかかるし、周囲がやかましいと声を大きくしなければならない、疲れますからなるべく声をセーブしたいし、うしろでやられると発言がしにくいですから一つ……。
 今までの私どもの知る範囲では、大体こういうふうに考えていいのじゃないかと思うのです。それは正しいかどうか、資料がないのだからあれですけれども、ビルマだとかあるいはフィリピン、インドネシア、そういうものの額を大体出され、あるいは損害額を出され、大ざっぱに比較表というのが出てきていますね。それに対していわゆる相手国から提示された損害額の内容については検討しながら、それに対してわが国の負担能力、それから求償国相互間の均衡、並びに賠償の用途、これらが求償国の経済復興の発展、及び社会福祉の増進に寄与するかどうか、そういうことを総合的に考えて、最終的な賠償額を決定する交渉を行なった、具体的に政府の立った観点というものをあげて見れば、今まではこういうふうに理解してきておった、その点に間違いないか。
○伊關政府委員 ただいまおっしゃった通りでありまして、いろいろの点を彼此考量してやっております。
○松本(七)委員 そうすると先方から出してきて、その状況に応じて賠償の用途ということが非常に大きな要素になっている。賠償の用途は具体的に検討されたわけでしょう、これは一体何に使うかということを検討して、この前からの藤山さんの答弁でもそうだ、いろいろな用途が出てくる、それを検討してだんだん積み上げていくという方式で当初はやっておられた。ところがそういう方式でもって相手方と応酬しているうちに、今まで考慮の重点は、損害の原状回復という基本的態度をもって交渉に臨んでおった、けれどもそれが交渉の過程において求償国の経済復興開発というような観点に移ってきたということが言えるのではないか、その点どうなんです。原状回復から求償国の経済復興開発ということに移ってきたのではないか、その点はどうですか。
○藤山国務大臣 御承知のように、今日までやって参ってきておりますビルマ、フィリピン、インドネシア、今回の場合におきましても、今お述べになったような条件を考えながらでありますけれども、しかし向こう側と折衝いたします過程においては、技術的な専門委員会あるいは意見を交換する会合が行なわれまして、そうして向こう側がどういうものを希望するか、いずれの賠償交渉をとってみましても、原状復興ということが必ずしも一番優先的であったわけではございません。向こう側が今後の自分たちの立場においてこういうものを日本から賠償でもらうことが適当であろう、また自分の国としてはこういうものが一番ほしいのだというようなリストを出して、そうしてそれをお互いに検討する。その中には日本として特に外貨負担になるようなものでは、こういうのは困るというような交渉はいたしております。しかしそれが特に原状回復であるとか、経済復興であるとかいうような、最初は原状回復であったが後には経済復興になったというような経緯ではございません。
○松本(七)委員 それは私どもが今まで政府の答弁などで、それから実情とにらみ合わして考えてみますると、原状回復というためにはやはり損害の実態というものをはっきりつかまなければ、原状回復ということはできませんね。経済復興という観点に移れば、これは必ずしも損害の実情というものをそうはっきりつかまなくても、大体の見当でやるという道が出てくるわけです。特にこのベトナムの場合は、今言うように、政府も損害の実態については何らつかんでおらない。今までの答弁の限りでは、また資料の限りではほとんどこれは皆無にひとしい。さっき問題になった三十万餓死者の問題にしても、相手がどの程度はっきりした根拠を示して百万なりあるいは二百万というものを出してきたかということは別にして、少なくともこれに対して二十万なり三十万なりと言う以上は、もう少しはっきりした実情把握というものがなされなければ、ただいろいろな話を聞いて、大体二、三十万ということでは話にならぬ。そこでそういうところから経済復興というようなやり方がここに浮かび上がってきておる面が感ぜられる。いつも損害の根拠ということがもっとはっきりしておれば、こういう疑いは出てこないのですけれども、今の実際の賠償の移り変わり、その内容の移り変わりとにらみ合わして考えると、ここにも疑いが生ぜざるを得ない、この点はいかがですか。
○藤山国務大臣 私がただいま申し上げたようなわけでありまして、賠償を通じまして先方側が原状回復だということを言い、われわれがそれを認めてやったというのではないのでありまして、やはり向こう側が一番要求してこういうものをやってもらいたいということを出して参ります。そういうものを勘案して、われわれとしては実際的取り扱いとして、今日まで交渉の過程において、何を向こうがほしいのか、またそういうことを日本側が供与することが、日本の経済力あるいは技術能力あるいは今申し上げたような外貨負担その他によって、適当に処理できるかどうかというような問題を考えつつ、交渉を進めてきたわけでございます。
○松本(七)委員 どうもこの交渉は、賠償の交渉ではなくて、経済援助交渉みたいな実情なんですね。そういう点から、私どもは、もちろん、具体的に今後の問題について、もう少し後ほどまた明らかにしていきたいと思います。そこで、一応不満足ですけれども、政府の今まで提出した資料のごく一部、交渉の資料ということではほとんど皆無にひとしいけれども、やむを得ません。伊關さんの言うように、この出された数字は少なくとも相手側が出してきた数字だということですから、これをまず確認して、その上に立って質問を続けていきたいと思います。委員長、この点はかなりまだ時間を要しますが、少し早いけれども、切りがいいからここらで昼の休みをどうですか。ちょっと休憩して下さい。
○小澤委員長 それでは食事のため午後一時まで休憩いたします。
    午後零時二分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時二十七分開議
○小澤委員長 休憩前に引き続き会議を聞きます。
 お諮りいたします。理事松本七郎君より理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○小澤委員長 御異議がなければ、さよう取り計らいをいたします。この結果理事が一名欠員となりますので、その補欠選任を行なわなければなりませんが、これは慣例に従って委員長において御指名するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○小澤委員長 御異議がなければ御指名申し上げます。田中織之進君を理事に指名いたします。
     ――――◇―――――
○小澤委員長 午前中に引き続き両件の質疑を続行いたします。松本七郎君。
○松本(七)委員 だいぶ時間をとりましたので、少し進みたいと思います。従って政府も的確にどんどん答弁していただきたい。まずこの政府提出の資料について、三九年を基準にしてあるわけですが、この三九年の基準とは一体何か。
○伊關政府委員 指数を出します際は、この生産額につきましては、三九年の生産額に比べまして、四〇年、四一年が減退しておる――あるいはふえたものもあるかもしれませんが、三九年を基準にしまして、それとのプラス・マイナスを総計しておる。生産額につきましてはマイナスの総計が出ているわけであります。そういう意味でございます。
○松本(七)委員 三九年を基準にした根拠はどこにあるか。
○伊關政府委員 それは先方が三九年を基準にいたしておるわけでございますから、そのままとったわけでございます。
○松本(七)委員 ここに一つの問題があると思いますが、それはあとにしまして、この三九年基準の実数が出ておりませんが、それは出ますか。
○伊關政府委員 石炭につきましては二百六十一万五千トン、亜鉛につきましては一万三千三百六十トン、錫につきましては三千三十七トン、鉄鉱につきましては十三万八千二百トン、マッチにつきましては三億二千四百万箱、セメントにつきましては三十万六千トン、それから米につきましては、一九三九年の輸出総高はもみ換算二百二十一万トンでございます。それからゴムにつきましては、一九三九年輸出高を六万八千トン、それから貿易指数につきましては、一九二五年を一〇〇にいたしまして、一九三九年の指数が一六三になっております。それから輸入につきましては一六二になっております。
○松本(七)委員 この基準の実数については、少し詳細にわれわれの資料と検討してみなければなりませんから、ここですぐ質問することを控えておきますが、一つの問題は、先方が三九年を基準年度に選んできたというところにも一つの問題があるというのは、基準の選び方によって賠償額が変わってくるわけですね。その基準年度の工業生産高というものが非常に多ければ、それ以後の生産高をそれから差し引いた額を賠償の損失額としているのだから、そういう計算の方式をとっている以上は、基準にした年の生産高が多ければ多いほど、賠償を算定するときの基礎損失額というものが多くなるわけです。そうなると、先方が三九年を基準にしたというところには、私は相当な意味があると思う。御承知のように、第二次大戦が勃発する、その大戦に際会して非常な総動員体制というか、労働強化も行なわれる。この年は、ベトナムにおいてもあらゆる生産高が非常に高くなっている年なんです。それともう一つの問題は、日本側では、これはおそらくあなたはどう答弁されるか、先を少し急ぎたいから私から申しますが、ベトナム側に言わせれば、これが戦前ということは言えると思う。戦前から戦争中ということの境ということから考えれば、ベトナムに言わせれば、それは三九年は戦前の年度だ、従ってこれを基準にするという理屈も立つかもしれない。けれども、日本側から言えば、政府の説明にも明らかなように、四四年から戦争状態に入ったというのですから、当然戦前といえば、四三年一年間をそういうふうに基準にとる方式は、日本、自体では今までの統計であまりとってないけれども、かりにそこは一歩譲るとして、戦前という観点から選ぶとすれば、四三年にならざるを得ない。そこにも先方のこの基準三九年度と、日本側のいう戦争を境目にした考え方とは矛盾があるのではないか。この点はどうでありますか。
○伊關政府委員 第一点について申し上げますと、私の方でも一応調べましたところ、たとえばゴムの生産等は、三七年が四万五千トン、三八年が六万トン、三九年が六万五千トン、四〇年になりますと七万二千トンでありまして、特に三九年が多いというふうなことではございませんで、非常に年によって数字が違いますが、大体それほど変わっておりません。それから米について見ましても、三七年度から三八年度は、これはもみになりますが、六百二十万トン、三八、三九の米穀年度は七百九十万トン、三九、四〇は六百十五万トンというふうに、それほど三九年という年が特に高い年だというふうには見ておりません。それで先方が出しましたのが三九年になっておりますから、それから比較しましてこういうものを出したわけであります。
○松本(七)委員 その第二点の方はどうですか。これには関係ないのですか。
○伊關政府委員 第二点につきましては、この算定をこういうふうに最後の一年分を私の方は出しておりますが、これをどう評価するかというときの問題だと思います。
○松本(七)委員 先方は三九年を基準にしておる。だけれども、日本としては、いやしくも賠償は戦争の損害ということを中心に考えるのだから、その額を出す場合に、やはり戦争の時期ということも一つの問題点になるので、その観点からしても、三九年度を基準にして考えるのは矛盾しやしないかということです。
○伊關政府委員 特に矛盾するというふうには考えませんが、ともかく占領というふうな、平和進駐でありますが、そういう事態が四〇年から始まっておるわけであります。そういう事態があるわけでありまして、一番平年度、そういう何らのこの事態のない平年度を向こうはとっておるわけであります。
○岡田委員 関連して。伊關さんにもう一度伺いたいのですが、これは伊關さんではなくて、むしろ賠償部の関係ではないかと私思うのですが、この計算が出たのはどうなんですか。伊關さんの方ですか。賠償部の関係でしょう。それはどちらでもよろしいですからお答え願いたいのだけれども、今松本七郎君の言われたのは、ベトナムが三九年を出されるのは、私はベトナムとして筋が通っておると思う。なぜならば、きのう私に対する伊關さんの答弁によりましても、ベトナム側の主張としては一九四一年から戦争状態に入っている。従って、その前年の平和進駐の年は一九四〇年だ。従って、三九年というのは戦争状態の全然なかった年の直前の状態であるから、三九年を基準にしているというのは、私は当然だと思う。ところが、日本の政府の方は、四一年からの戦争状態というのは認めない。四四年の八月から四五年の八月までの一年間を戦争の状態であるということをあくまでも言っておられて、しかも四〇年からいわゆる平和進駐といわれている進駐をして、四四年の七月までの状態は戦争状態でなかったのだ、平和の状態であったのだというならば、戦争直前の基準をもって使うのが私はあたりまえじゃないか。こういうことになるのが日本側の態度でなければならない。しかもこの一年間の数字というのは、日本政府の責任においてこれを出したのだとおっしゃるならば、なぜ四三年の指数をとらないで、三九年の指数をとったか。ここにあなた方の準備において正確性がないではないか。この点が松本七郎君の質問の要旨であると私は思うのですよ。これは非常に私は松本七郎君の質問の趣旨は筋が通っておると思う。特にこれは自民党の諸君からいえば、戦争の損害はできるだけ多くない方がいい。これはもうそうでしょう。われわれだって必要のないものをよけい払う必要はない。多くない方がいい。多くないという数字を出すんだとするならば、なぜベトナムにおいて石炭の一番生産量の多い、生産のピークである三九年の指数をとっておるのか。四三年の指数をとるならば、結果において損害額というものは、自民党の諸君が期待していると同じように、非常に少ない数字になる。ところが、その数字が出ていないじゃないか。こういう点から言っても、あなた方の提出されているいわゆる資料というものが、いかにずさんなものであり、正確なものではないということが、こういう点で明らかになっているではないか。そしてまた、今伊關さんが言われたように、三九年をとって、これは戦前の状態であるから、そしていろいろな混乱が起こらなかった事態であるから、三九年をとったのだとおっしゃるならば、逆にひっくり返して伺うが、それじゃ平和進駐、一九四一年以降というものは、ベトナムの言う通り戦争状態であるという前提に立ってこの統計を出しているのかどうか。こういう点と相矛盾する問題が出てくるではありませんか。ですから、三九年をとっているというところに問題があるので、その点を松本君が聞かれたし、私も今の御答弁だけでは納得はできないわけですが、そういう点をはっきりしてもらいたいというのです。
○伊關政府委員 ただいまの御説明は、私の方もよくわかります。それで今度は、そうしますと、最後の一年――もちろんその数字を出しましたのは、五年分が出ておるから、それを戦争の最後の一年分を出せとおっしゃるので出したわけでございまして、今度は四四年八月二十五日から、それじゃあくる年の終戦までの間に、前年と比べてどういう損害になるかということは、またこれは別途に私の方は判断するわけです。
○岡田委員 あなたは今五年間と言われたが、五年間ですか。ベトナムの主張する資料は六年間じゃないですか。(「君たちが資料を出せと要求したから資料を出したんだ」と呼ぶ者あり)まあ待ちなさいよ。今ベトナムの方で出しているのは、資料は三九年から四五年。六年じゃないですか。五年ですか、六年ですか。
○伊關政府委員 四〇、四一、四二、四一、四四、四五と六年でございます。それは私の間違いでございます。
○岡田委員 なぜ私はこういうことをくどく聞くかというと、六で割るか五で割るか、全然違うじゃないですか。あなたは五年で割ったのですかということになる。損害額一年間を五で割った数字が二二八二であるか、六で割ったならもっと少なくなるはずじゃないですか。計算が違うじゃないか、どうですか。
○伊關政府委員 たびたび申し上げましたけれども、五とか六で割ったのではございませんで、四四年の算術平均と四五年の算術平均をとったのでありますから、その点は関係ございません。
○松本(七)委員 そこで、その出してこられた数字ですね。つまりベトナム側が出した数字、これはもう全然間違いありませんか。このここに出ておる数字、ベトナム側の出した数字、これは金額に換算した総額ですね、これが交渉のときに基礎になったものと了承していいのですか。
○伊關政府委員 金額は貿易のみについて出ておりまして、その他は数字だけであります。この生産等の数字は、金額は出ておりません。生産につきましては数字だけ出ておりまして、金額は私の方で、最近の金額でもってこの一年分を出したわけであります、
○松本(七)委員 そうすると、この資料はもう賠償交渉のときの損害を検討するのには役に立たないというふうになりますね。そうはっきり言ってもらえばわかる。さもこれが材料になるように言われるから迷いが出るので、これは賠償額の検討をする資料にはならないということですか。
○伊關政府委員 これは私の方で最近計算したものでございますが、私がなぜこの席でこういう説明を申し上げたかと申しますと、申し上げたところが出せとおっしゃったわけですが、損害額が少ない、少ないとおっしゃいますから、一年分を計算してみてもこれだけあるという御説明をいたしまして、そこでこれを出せというお話があったわけであります。
○堤(ツ)委員 関連して。ちょっと伊關さん、これは私が要求してお出しになったのだと思うのです。これはあなたの聞き違いですか、私の言い間違いがあったかもしれませんけれども、私はそんなに今日の値打に最後の一年を出したというような資料をお願いしたのじゃないのですよ。よろしゅうございますか。そうではなしに、私が言ったのは、ここに墨汁で消した変なものをもらったでしょう。この変な資料は何だかわかりませんから、従って日本側の自主的な数字を求めた。その自主的な数字というのは、私の言葉は足りなかったけれども、今朝から松本さんがおっしゃっているところの、交渉に当たったときの根拠になった数字、たとえば人間に対して何ぼ、財産何々に対して幾らの損害、そういうものを日本側からお出しになったものを私は要求したわけです。これは正直に申し上げますと、非常に資料がないものだから、困り果てて、そうしてこの六年間のものを通じて出しておった中から、ベトナム側の数の上に立って今日の金に換算して、最後の一年を出したというのが正直なところであって、これは私たちの要求したものとは非常にほど遠いものであって、今の国会審議の情勢では何ら意味がないものであるということをあなたはお認めになりますか。そうでないと、筋が通らないのです。そこをはっきりして下さい。
○伊關政府委員 ベトナム側が出しましたものは最初に差し上げたものでございます。それで、これはわれわれが最後の一年を出したものでありますが、全然意味がないというわけではございませんで、これを見ると、損害額はわかってくるという一つの資料になるわけでございます。
    〔堤(ツ)委員「それでは……」と呼び、その他発言する者あり〕
○小澤委員長 まだ許していませんよ。簡単にお願いします。
○堤(ツ)委員 それでは伊關さん、あなたがお出しになったこの数字というのは、それじゃそういうふうに了解しましょう。了解しますが、そうすると、これから出したところから想像しろ、想定しろとおっしゃるのですか。どういう基準に基づくのです。これに何パーセントをかけるとか、何割引するとか、何十倍をするとかということによって、みんな数字は変わってくる。たとえば松本七郎さんはこれを二倍なさる。私はこれに三〇%かける。戸叶里子さんはこれに五〇%をかけて、想定をしろ、こういうことですか、はっきり答えて下さい。そうなんでしょう。
○伊關政府委員 非常に資料は不足いたしておりますけれども、向こうがあげました数品目とか貿易の額だけをとってみましても、ある程度の損害があるので、資料が十分そろいましたならば、当然これよりもふえるわけでありますから、そういう意味におきまして、不完全ではありますけれども、こういうものしか資料がないわけでございます。戦争で日本軍のものは全部なくなっておりますし、向こうもないのでございますから、あるものから判断していただきたいという意味でございます。
○松本(七)委員 今まで出してきた最初の資料は、金額がない。だから、金額がなければ、賠償額を出すにも根拠がないじゃないか、もう少し金額も明示して出してもらいたいというのが、当初からの要求だった。いろいろ金額は出てきた。出てきたけれども、その出てきた金額は、その算定基礎は、現在の適当な時価でもってやっているわけでしょう。これでは、交渉のときの材料には何ら役に立たないということになるから、ほとんど意味ないわけですよ。だから、さっきから、たとえば時価その他でも、その当時の、交渉当時の時価ということになっておれば、それを基礎にしてまたいろいろ問題を質問できるけれども、そうでないとすれば、全然これは問題にならないということになる。しかし、たとえばマッチについていえば、ここに出しておられるのは、これはおそらく、先ほどからの答弁によると、ベトナム側から出してきた数字でしょう、このマッチの箱数は。ところが、ブィ・ヴァン・ティン大使の発表しておる――これは去年の一月七日ですか、アサヒ・イブニング・ニュースに、ブィ・ヴァン・ティン大使がずっと出しましたね。あれによると、ずっとマッチの箱数は少ないのですね。全然違うのですよ。だから、資料の信憑性ということを、出される以上は……(発言する者あり)ベトナムが出してきた数字だと、こう言われるのでしょう。(発言する者あり)岸さん、よく聞いていただきたいのですが、やっぱり賠償額が正当かどうかということを判断するには、できるだけそうした資料がなければならない。出してきた資料が、やむを得ない、どうしても日本側の資料は不十分だということになれば、それは、ベトナムの出してきたもので、できるだけの検討はしますよ。けれどもそのベトナム側の出してきた資料そのものが、現にベトナムの大使の言っておるのと非常な食い違いがあるということになると、これは信憑性が全くないということになる。こういう態度、こういう不準備では、この大事な問題は審議できないではないかというところになるじゃないか。間違っていればどっちが正しいのか言ってもらえばいいのです。これは御存じでしょう。去年の一月七日、ブィ・ヴァン・ティン大使が発表しておる。これによると一九四〇年から四五年のマッチの生産は七百万箱に落ちている、こう言っているのです。あまり違いがひど過ぎるから、事はマッチのことだけれども、数字においてはあまりにもひど過ぎるでしょう。何か間違いがあるのかどうか。
○伊關政府委員 これはおそらく大使が間違っておったのだろうと思います。これは当時のフランスの総督府が作った統計でございます。大体私の方でもそのインドシナ統計年鑑というものがこれの基礎になっておるわけです。そのインドシナ統計年鑑は私の方にはございませんが、古い資料を探してみますと、私の方で持っております南方年鑑というものに出てきます数字が、向こうの引用しております数字とほとんど違っておりませんから、私はこのインドシナ統計年鑑は信憑性があると思っております。大使が言うときに一けたか何か間違えたのだろうと思います。
○松本(七)委員 これはどうも資料が全然話にならないのですがね。だからさっきから言っているように、ベトナム側からでもいいから、とにかく表にして出炭してきたなら、それをそのままこっちに出してもらうということになればいいけれども、ただ向こうから引用した数字を政府側で適当にピック・アップして、そしてそれを今日の時価でもって算定するというような、そういう資料を作るから、こういう審議のできないような状態になるのです。ベトナム側からまとまった、出してきたものはないのですか。
○伊關政府委員 ベトナム側から出したものと同じ数字を引用しております。ただたくさんありますので、あまり御参考にならぬところを省いてあるだけでありまして、出ておりますものは一つも変わってはおりません。
○松本(七)委員 それで今一応やっぱりこの政府の出してきた資料に基、ついて聞かなければどうにもならないから、またこれを使いますが、この石炭は南北に分けてどっちになりますか。北ですか、南ですか。
○伊關政府委員 この生産統計に出ておりますものは、マッチにつきまして、サイゴンにマッチの工場が一つございますほかは、全部北でございます。
○松本(七)委員 この石炭というと、そうすると全部ホンゲイ炭ですか。
○伊關政府委員 ホンゲイ炭が主だと思いますが、そこにいろいろございますが、私もそれほど詳しくは存じませんが、二地区から出ておりますが、大体ホンゲイ炭ということで間違いないと思います。
○松本(七)委員 これはそうすると、正式に言うと、おそらく会社でしょうね。ホンゲイ炭はどういう会社のあれになっておりますか、当時の……。
○伊關政府委員 幾つの会社に分かれておりましたか、そこまでは私は存じません。
○松本(七)委員 何か代表的な大きいのでわかっているのはないですか。
○伊關政府委員 クワンエン炭田、ホンゲイ炭田、トンキン無煙炭会社、この三つになっております。
○松本(七)委員 石炭の銘柄についての、あなたの方が出された資料にもホンゲイ炭と書いてあるから、これから推測して、あなたの言われるように、おそらく大部分がホンゲイ炭だろうと想像できたわけですが、ここにも、四号から五号と一々書いてありますね。これはおそらく塊炭でしょう。それから六号、七号、これはガス用炭でしょうね。それから、ここに八号炭というのがあります。八号炭というのがホンゲイ炭にありますが、練炭に入れるやつ、そういうふうにあるけれども、いやしくも損害のもとにするんですから、そのくらいの――大ざっぱでもいいから、石炭の損害が、とにかく向こうから出てきておる。それは一体どの地区にあって、そしてどういう会社の、年間産出額はどのくらいと、代表的なものぐらいは調べなければ、交渉にならぬじゃないですか。もっとあなた、会社の名前ぐらい、はっきり答弁して下さいよ。
○伊關政府委員 シャルボナージュ・デュ・トンカンという会社がおもな会社でございます。
○松本(七)委員 それは一番大きいんですか。代表的ですか。私の方でも、その損害を検討するのに、あなたの方の出された石炭、亜鉛、あるいは錫鉄鉱、そういうものについて、大体どの程度の資本金で、どこにあるかということぐらいは調べることができたんです。ですから、外務省が、日本の政府が、いやしくも賠償交渉をするときに、損害を受けたと向こうが主張するこれらの大きな会社の所在地、それから産出額、資本金ぐらいは当然私は、調べることができるし、また調べなければならないと思う。私どもが調べたところでは、石炭で大きな北部のクワンエン省、ここにあるフランス・トンキン石炭会社、これなどは現に日本に無煙炭を送っておるじゃないですか。そういう事情は何にもわからずに、この賠償交渉というのはなされたんですか。これはいろいろ法的にも問題があるんです。一体通産省の方がおられたら、ここで今私の指摘したこのフランス・トンキン石炭会社からくるところのホンゲイ無煙炭――日本に相当量入っておるはずですが、その実情がわかっておったら、ここで御説明願いたい。
○倉八説明員 今の北ベトナムからの石炭でございますが、これは今御指摘のどこの会社からということは私存じませんが、昨年は向こうの北ベトナムから約三十五万トンの石炭を輸入しております。
○松本(七)委員 私どもも日本に今入ってきておるホンゲイ炭の問題は、ただ賠償の算定の基礎というようなことだけでなしに、これは実は非常に重要な問題を含んでいると思うのです。というのは今説明された三十五万トンのホンゲイ炭の内訳はどうなっているのでしょうか。旭石炭が全部扱っているのですか。
○倉八説明員 私もまだどこの会社が何トン扱っておるかということは、ここに資料を持ってきておりませんからちょっとこれはわかりかねます。
○松本(七)委員 それでは、資料がないようだから私の方で調べたのを、ここで一つ一つ言っておっても同じ答弁になってしまうから、代表的な石炭でとどめておきます。そこで問題は、その三十五万トン入っているうちの十万トンが実は問題なんです。今のお話はホンゲイ・エクスポートが北ベトナムから今のホンゲイ炭を送るわけです。その親会社の石炭産出会社がフランス・トンキン石炭会社、これが実は賠償の中心なんです。この会社が例のフランスが北ベトナムと争って、ホー・チミン政権と争って撤退するときに、この炭鉱の施設その他をそのまま北ベトナム政府に譲り渡す、その代価は今後において最初の年度しばらくは年間十万トンずつ、これを十五年にわたって百万トンだけ買い取り代金のかわりに北ベトナムはフランスに払う。つまりこの会社に払うということです。この石炭会社の所有権を完全に北ベトナム政府に移すその代価として十万トンずつ毎年フランスに無償でやる、こういうことになっておる。その石炭が、いきなりフランスにそれを送るのでなしに、日本にそれが送ってこられて日本がその代金をフランスに渡す、こういう筋道になっておる。私どもの調査ではそういうことになっているのですが、この点に間違いがあれば一つ説明していただきたい。
○藤山国務大臣 そういうこまかいような事情につきましては、われわれ承知いたしておりません。
○松本(七)委員 それは、こまかいと言われるけれども、あなた、とんでもないことですよ。それでは外務大臣に伺います。今指摘したこのフランス・トンキン石炭会社というのは当時私企業でしょう。私有財産です。それを北の政府に完全に所有権を移す、そのかわり、今の十万トンずつの石炭をフランスに与える、日本を通っていくかどうかは別として、フランスに無償で与える、こういう仕組みになっておる。そうすると、大体サンフランシスコ条約の十四条でいうところの連合国の資産の被害に対する賠償義務、この権利義務の移譲は、国の財産、資産が国に継承される。そればかりではなしに、私有財産も継承されるものかどうか、ここに一つの問題がある。これは非常に大きな問題です。継承されるのかされないのか、どっちですか。
○藤山国務大臣 御承知のように、賠償というものは、個々の会社の移動その他に対して払われるものではないのでありまして、賠償そのものは、その国に与えました損害、従ってその基礎になりますものは、むろんいろいろ個々の損害というものも見積られる場合がありましょう。しかしその集積としてその国に対する全体の経済的損害あるいは人的損害あるいは苦痛というようなものを払うわけでありまして、個々のどこの会社のどういう状態の移転に対してどうだというような問題とはわれわれ考えておりません。
○松本(七)委員 そうなったら、損害は石炭にこれだけこれだけと指摘しているでしょう。それが私有財産であるということになった場合に、それではその国との関係ははっきりしなくなるではないですか。その国に賠償を払おうとしておる。その国の財産ではない。それが国の財産ならば、そこに結びつきがはっきりできる。しかしこれが私有財産ということになると、一体私有財産に対する損害も国の財産と同じに扱うのか、どうですか。
○高橋政府委員 ただいまの御指摘の点でございますが、日本軍隊によって占領されたその連合国が希望されるときは、そこの損害についての賠償でございますので、当然私有財産、公有財産の区別なく、そこの損害に対する賠償をいたすということになっております。
○松本(七)委員 その継承の問題はそこに残ると思います。それともう一つは、はっきりそうやって、これはほかの問題にも全部同じことが言えるのですが、フランスは清算はまだ今日続けられておるにしても、ほとんど完全に所有権は北の政府に今移っているわけです。中にはなおそういう清算過程のものもあります。ホンゲイ炭のように、十万トンずつ送る。それにしてもフランス政府は正式に北の政府とそのような交渉を持ち、契約に基づいて所有権の移譲をやっておる。こういうフランスと北のホー・チミン政権との関係が、今言うような関係にあるにかかわらず、これと無関係に南の政府を正統政府という、この法理論に基づいて、何らの関係のない南の政府に払うというところに非常な大きな不合理がここに出てきはしないか。この問題を具体的にこうやって拾ってみると、みなそういう問題がはっきり浮かび上がってくるので、私はこれはホンゲイ炭一つを例にして申し上げているのです。こういうふうにして石炭がどこにあるか、さっき伊關さんにマッチの一部を除いて全部北だと言われましたけれども、これを私どもが一つ一つ拾ってみてその産出額、資本金あるいは創立年月というようなものをずっと一覧表にしてみますと、北に与えた損害が九九%であって、南にはよく言われるように鶏三羽しかないということが一目瞭然なんです。
 そこで私は一々ここでそういうこまかい点にまで触れることは時間をとりますから省略いたしますが、委員長に一つお願いしたいのは、会社の名だけここでざっと読ませていただきます。そしてわかりやすく資料を作っておりますから配付させていただいて、わかりやすい表にしてございますから、そこにちょっとかけさせていただきたいと思います。それを読みながらやっていきたいと思います。私どもは政府のこの間出されたこの資料に基づいて、石炭から亜鉛、錫、鉄鉱と順を追ってそのおもなるものはどういうものかということを調べたんです。もしそれで間違っておるところがあったらあとで指摘して下さい。
 石炭はフランス・トンキン石炭会社、これは北部のクワンエン省にある。創立は一八八八年、資本金が一億六十四万フランです。もちろんこれはホンゲイの無煙炭、それから亜鉛と錫、これはトンキン錫ウォルフラム会社、これは北部ハノイ市です。創立は一九一一年、資本金が百五十万フラン、それから鉄鉱、これはインドシナ鉱山研究開発会社、北部ハノイ市、創立が一九二〇年、資本金は十万フラン、それからマッチ、これはさっき伊關さんもちょっと触れましたインドシナ燐酸マッチ会社、これはハノイ市です。それからベンツイ、これは一九〇四年の創立で、資本金百六十万フラン、それからセメントはインドシナポートランドセメント会社、これは北部のハイフォン、創立が一八九九年、資本金が十五億フラン、それからゴム、インドシナヘベアス植林会社、これは南部サイゴンです。創立が一九三五年、資本金は二千九百六十万フラン、それから貿易商社は、インドシナ・アフリカ商業連盟、それからデスクールエカボー会社、デニスフレール会社、その他、それから鉄道橋梁、インドシナ雲南鉄道会社、これは地点は北部ハノイ、創立は一九〇一年、資本金が千二百五十万フラン、ハノイ―雲南間、それからそのほかにインドシナ国有鉄道があります。これは北部ハノイで、ハノイ―サイゴン間、ざっと調べただけでもこういう点が明らかになる。これを表にしてみますと、日本の与えた被害は、いかに北部が大部分であるかということが一目瞭然とするのでございます。そこへ表を張らして下さい。
    〔「そんな不体裁なことをするな」「委員長がいいと言った」と呼び、その他発言する者多し〕
○小澤委員長 静粛に願います。静粛に願います。どうぞ発言して下さい。
○伊關政府委員 ただいま松本委員の御説明の中に、損害の九九%は北だというお話がございましたので、誤解がございませんように、ここにあがっております生産、この石炭とか、亜鉛とか錫、鉄鉱、セメント、こういうものはそうでありますが、ベトナムの一番大きな産物は米とゴムでありまして、これは主として南部でございますから、南部の方が大きいわけでございます。
○松本(七)委員 私どもはこういう、もうほとんど間違いない正確なものだと確信いたしますが、もし正確でなければそれを一つ指摘してもらいたいけれども……(「今したじゃないか」と呼ぶ者あり)いや、これに対する指摘でなしに、南部のおもなものはこれこれだと言われる以上は、それがどこの地点でどういうものか、これに匹敵するだけのものを一つ出して下さい。私の方は正式にこういう調査の資料を出しているのだから、もしこれが間違いだと言うなら、あなたの方で一つ反証するに足るだけの資料を出して下さい。
○伊關政府委員 ただいまお出しいただきました資料が間違いとは、絶対に私は申しておりません。私の方は北と連絡がございませんので、そういう資料をいだたくと非常に参考になるわけでございます。
    〔「北と連絡がないとは何だ、北と現に貿易しているじゃないか」「間違いだと言ってないと言うのだよ」「不謹慎な話だ、取り消せ、審議できない」と呼び、その他発言する者多し〕
○小澤委員長 委員長からアジア局長に釈明を求めますが、ただいまの連絡がないという趣旨はどういう趣旨か、お答えを願います。
○伊關政府委員 私が申し上げましたのは、外交関係がないという意味でございます。もし私の言葉が不穏当でごさいましたならば取り消します。
○松本(七)委員 まだまだ損害についての基礎を検討すればぼろばかり出てくるのです。切りがないのです、これをやっていたら。それほど政府の今度の賠償については根拠が薄いということです。これはもう政府が資料を出せば出すほどこれが明らかになる。私どもが時間をかけて調査をすればするほど、この根拠がないということが明らかになる。これを一つ一つ今やっておったのではとうてい何時間あっても切りがありませんから、私はその次の餓死者の問題に移りたいと思います。
 先ほどもちょっと問題になりました餓死者の問題、餓死者の根拠です。今までは三十万と言っておられたようですけれども、今度は二、三十万に変わってきておるのですが、三十万の根拠を一つ出していただきたい。
○伊關政府委員 これは二百万というふうな数字もパンフレットに出ております。それからベトナム側は百万と申しております。われわれは累次申し上げましたように、いろいろな人から話を聞きまして、まず妥当なところは二十万か三十万じゃないか、これは判断でございますから、資料と申しましてもこれはちょっと資料があるというふうなものではございません。
○松本(七)委員 しかしこれも、百万といったりあるいは二百万といったりする説がある、政府はまあ三十万というので、一体実際はどういうところでどのくらいの餓死者が出ただろうかということを、いろいろな資料で私どもも調べてみたのです。そうしますと、大よそ地域別にしてここにはこのくらいというような数字はつかめるのですよ。そうなるから、われわれが及ばずながらいろいろ努力して調査してもかいもくわからないというのならば、それは政府がいかに膨大な機構を持っておるとしても、この餓死者の地域別の数字なんというものはなかなかできまいということになるけれども、われわれが調べてもある程度のものは出てくるのです。現にそういうものが出る以上は、政府が三十万というならば、やはり地域別に、どういうところに大体どのくらいということが出なければならないはずです。それを交渉する場合も、私どもが調べてさえ地域別の餓死者の数が出るのですよ、先方は百万を主張するにしろ、二百万を主張するにしろ、はっきりした根拠を持ってきっと言ってくると思うのです。これが違う、三十万だと日本側が主張するためには、少なくとも地域別の大よその餓死者数くらいは出さなければ、交渉が話にならぬと思うのですよ、どうですか。
○伊關政府委員 このビルマから始まりまして、フィリピン、インドネシアを通じまして賠償交渉の過程におきまして、先方が損害の数字を出し、こちらがその損害の根拠について一々議論をしたというふうなことはないのでありまして、賠償の交渉におきましては、そういうふうな損害の数字につきまして、一々両方でもって、多いとか少ないとか、そういうふうな交渉はいたさないのであります。午前中申し上げましたようないろいろな観点から、賠償というものはきまるわけでございます。
○松本(七)委員 そういうふうな根拠なしで主張しておったのでは、全然問題にならないでしよう。もう少しこの国会の審議に便利なように……(「日本に不利益じゃないか」と呼ぶ者あり)それは不利益になるとは限っていないのだよ。(発言する者あり)実ははっきり出して、必ずしも私は自民党の言うように、不利にはならないと思うのです。われわれの調べたところでは、大体大まかな省別に餓死者の数というものが出ているのです。それはあそこにも大体出ておりますから、参考のためにあとで見ていただけばわかります。(「総額幾らになるのだ」と呼ぶ者あり)それを見てもらえばわかります。ほとんどこれは北です。(「それを払えと言うのか」と呼ぶ者あり)払う、払わないは別で、はっきりした基礎資料に基づいて物事を判断しなければ、主張が弱くなるというのです。(「資料はどこから出たのだ」「外務省だ」と呼び、その他発言する者多し)外務省の資料の中にも、これはずいぶんいろいろなのがある。妙な、北政府からだとかなんとかいうけれども、われわれはみんなちゃんと資料を持っているのですよ。これはみな外務省の資料です。想定問答集というのが出ているじゃないですか。想定問答集をこれだけ作るなら、なぜもう少し国会の審議にも便利なように、内容にわたった資料を出さないのですか。(「それはどこから手に入れた」と呼ぶ者あり)どこから手に入れようとわれわれの勝手だ。ちゃんと秘と打ってある。想定問答集は十月二十四日と、二十七日と、十一月二日と分けて出している。
 そこで、基礎資料の質疑をやっておったのでは、もう時間がたってしょうがないから、移ります。ずいぶん基礎資料のことで時間をとりましたが、岸さんに一つお伺いしたい。今度は外務省から出したこれに基づいてお伺いします。その方が早いから……(「問答集でやろうや、その方が早くていい」「それがあれば質問しなくていいだろう、答えが書いてある」と呼ぶ者あり)これがあると、ますます質問しなくてはならなくなる。外務省の出した資料によりますと、日本の支払う賠償が相手国の経済の復興及び発展、ひいては国民の福祉の増進に資するような用途に主として充てらるべきものであることは、ビルマ、フィリピン、インドネシア及びベトナムを通じて一貫した方針である。それからさっき私が問題にしましたような、賠償の用途を一応予定した賠償計画が付言されているというような説明があって、ベトナムの場合にも、かかる効果が現状のもとにおいて直接に北部地域に及び得ないことは不幸であるが、さしあたり南部地域の経済力の基盤が増強されることは、ベトナム全体の利益になることでもあり、また将来、現在の境界線が撤廃されたときには、直接に北部に及ぶようになることも論を待たない、こういうふうに書いてあるわけです。これはただ、相手国の経済が復興及び発展することを通じて、ひいては国民の福祉の増進に資する、ここのところは私は非常に大事だと思う。この一貫した方針は私どもも賛成です。しからばベトナムの場合に、今日この賠償を支払うことが、政府の期待しておるように、相手国の国民の福祉の増進にはたして役に立つかどうか、この点が非常に大きな問題点になる。現に岸さんも御存じのように、いわゆる北部のベトナムは、国民も、それからこれを代表するところのホー・チミン政府も、南部においても多くの国民の間に、この賠償がはたしてベトナム国民の福祉に今役に立つかどうかということには大きな疑いを持って反対をしておることも御存じの通りです。第一北から再三反対の声明も出ておる、いろいろな団体でも反対運動が起こっておる、あるいはベトナム民主共和国ばかりではなしに、中国にしてもこのベトナム賠償問題には大きな関心を持って、政府に対する警告声明も発しておる。こういう事態を一体御存じなのか。御存じであるとすれば、なぜこのようにベトナムの国民が反対しておるのか、どう観測されておるのですか。
○岸国務大臣 ベトナムという一つの民族が分裂しておる。そうして、その間において真の統一がまだできておらないという状態は、これはこの戦争後におきまして各地にそういう状態があるのでありますが、これは望ましくない状態であることは言うを待ちません。なるべくそれがその土地において統一されていくことが望ましいことは、これは言うを待ちません。しかしながら、これはしばしばこの国会におきまして論議をされ、われわれが明瞭にお答えを申し上げておる通り、私ども今回のこの賠償ということは、サンフランシスコ条約においての義務を、われわれが全ベトナムを代表すると考えておる、正統政府であるという政府との間に、賠償協定を結ぶわけでございます。そうしてその賠償協定の実施にあたりましては、やはりしばしば申し上げておるように、この国民の福祉を増進し、そこにおけるところの経済発展に資するような方法によってこれを履行することが望ましい、またそういう考えで一貫してやっておるのであります。しかし、これはすでに行なわれました賠償協定におきましてもそうでありますが、具体的なそれを履行する場合のプロジェクトによって、主としてどの地方が便益を受けるとか、どの地方が特にその恩恵を受けるとかいういうような問題はいろいろあろうと思いますが、これはやはりその国全体を代表する政府との間にわれわれが協定を結んで、その政府が責任においていろいろなプロジェクトを提示して来、われわれがそれがその国の経済や国民の福祉に貢献すると考えておるものを具体的にやる、こういうことでありまして、たまたま現実に民族の間において休戦の状態があるとか、あるいはいろいろな紛争が残っておるというようなことがある場合におきまして――今たまたまベトナムがそういう状況でありますので、いろいろな論議が起こっておると思いますが、私どもはやはり一貫して申し上げているように、全ベトナムを代表する正統政府として、全ベトナムの損害に対して、その国の経済やあるいは国民の福祉に貢献するところの目的をもって賠償協定を結ぶ、これは一貫した考えでございます。
○松本(七)委員 質問の焦点をはずさないで、質問にまともに答えて下さい。この賠償に反対しておるベトナム国民があるというこの事実を否定されるのですか、肯定されるのですか。
○岸国務大臣 これはいろいろな今までの賠償協定につきましても、いろいろその国の事情で議論のあったものもたくさんあると思います。しかし今申しているようにわれわれはその国を代表しておる正統な政府との間に――その政府が国内の問題としてそういうものをどう取り上げるかということは別として、私どもは正統政府と話をしていく、こういうことでございます。
○松本(七)委員 反対しておる事実は認められるわけですが、それではその反対しておる根拠は一体どこにあると考えられるのですか。あなたのお得意のいわゆる誤解にあると見られるのか、その点一つお伺いします。
○岸国務大臣 これは従来におきましても、あるいは賠償協定に賛成を表してない政党等がその国々にあったわけでありまして、それを一々どういう理由で反対しているというようなことは私どもは考えておりません。
○松本(七)委員 私どもが今一番考えなければならないのは、少なくともベトナム民主共和国は国をあげてこれに反対しておる。ベトナム共和国の国民にも、多くの疑惑を抱きこれに反対しておる運動がある。なぜそうなるのか。この点に関してやはり私どもは今日のベトナムの実情というものをもっとつぶさに知る必要があるのではないか。その点から私どもが指摘しなければならないのは、第一には今御承知のように南ベトナムでは軍事基地がどんどん拡充されておる。この軍事基地の拡充を中心にした軍事力の強化の実態、ここに実はベトナム民主共和国が国をあげて反対しておる大きな根本原因があるのであります。また賠償に関連したいろいろな事件あるいは経済的、技術的協力という美名に隠れたいろいろの現象の中にも、軍事的な性格というものが明らかに出てきておる。こういう実情を政府ははたしてどの程度はっきりつかんでこれを検討したか、ここに実は大きな疑惑があるのです。先般の予算委員会においてもこれらの点について岡田君から幾つかの問題が提起されました。そこで最初に私は今二つあげました問題のうちの賠償に関連したいろんな事件あるいは経済協力、技術協力で行なわれておるところのいろいろな動きの中における軍事的性格から、まず明らかにしていきたいと考えるのでございます。
 最初に、この前予算委員会で岡田君が出しました二百万ドルの工業センターの問題、これについては政府の方から十分調査をした後に御報告をする約束になっておりますので、まず政府側からその後調査されました内容について御説明願いたい。
○伊關政府委員 私も、どの点を政府側で調査して御報告するということになっておりましたか、久保田大使の発言が問題になりましたが、あの点でございますれば、あれは久保田大使の誤解でございます。
 そのほか、工業センターの実態につきましてはまだはっきりいたしておりませんが、今まで私が承知しております範囲におきましてはベトナムでいろいろと工業建設も行なわれる、そこで機械の修繕をしなければならない、それからトラック等の車両の修理をしたい、また小さい部品ぐらいは作りたいというのが、この計画であります。それからこれをどこに作るかという問題がございまして、海軍工廠がこわれたままで、そのあき家がたくさんあったので、このあき家の一つを使ってやれば安上がりに済むのじゃないかというふうな話もございましたが、最近の情報によりますと、これは使えそうにない、やはり向こうの軍がこれを使うのじゃないか、そうしますとこういう民関係のものはここに割り込めないであろうというのが、最近の情報でございます。
○松本(七)委員 久保田大使が発言しました私も同じあれを持っておるので踐が、このことについて伊關さんは、この前の予算委員会で、兵器工廠の小屋を改造して、それで工業センターにするという計画があった、しかしそれは立ち消えになった、こう言われたですね。そこで、こういう問題は今後実施計画の段階でまた出てくるかもしれない。絶対に今後は出ないという保障はないと思うのです。実施計画を見なければ具体的にはわからないと言われるけれども、すっかりきまってしまってから、賠償を支払ってそういう問題が飛び出しては、これはあとの祭りなんです。そこで今後絶対にそういう計画は出ないという保障が一体取りつけられるものかどうか。これはいろいろなところの問題になって出てきておるのを見ると、すべてがそういう軍事的性格を持ったものが多い、これからもいろいろ指摘いたしますけれども。工業センターの問題も、これは伊關さんの言われるように、小さな小屋にすぎないかもしれないけれども、いやしくも一度は久保田大使がはっきりこういう公の席上で指摘しておるように、兵器工廠の修理ということが大きな要素になって出ておるのですから、小屋を改造するかどうか。どこにある小屋か知りませんが、再びそういう問題が今後出てくるかもしれない。出てからじゃおそいのです。そこで今後絶対にそういうことはやらないということが、はたして政府の決意として表明されるのかどうか、岸総理から一つ伺っておきたい。
○岸国務大臣 この賠償ということが、その国における軍事施設の強化を目的として行なわれるものでないことは、先ほど来賠償の本旨について説明をいたしております。従って、これが実施にあたりまして、その具体的のプロジェクトが出て参りますときには、日本側としてはこの賠償協定の本旨に従った、それに適合しているものに対して認証を与えるつもりでございます。
○松本(七)委員 賠償を支払う側の日本政府の主観的意図が、それは軍事力強化だとか、そういうことに結びつけるつもりはないという気持はありましても、客観的なベトナム自身の実情から、これが結果においては、軍事力強化に大きな役を果たす場合があるわけです。そういう事態に今日ありますから、先ほどから申しておるように、先ほど指摘した二つの点について、私どもは具体的な今日の南ベトナムの実情をつぶさにつかんだ上で、この賠償がどのような効果を持つかということを判断すべきである。そういう観点から、この前岡田君からも一、二の例が引き出されたわけです。そこで、少し例をとってみますると、中央区の日本橋本町にあります科研薬化工株式会社というのがある。これは火薬の工場として、この工業センターの中に組み入れられるというようなことも言われておるのですが、これはほんの一例にすぎませんけれども、そういう事実について岸さんは知っておられますか。これは爆薬工場です。
○岸国務大臣 私は具体的内容につきましては、承知いたしておりません。
○松本(七)委員 外務省は。
○小田部政府委員 工業センターの内容は、今伊關局長の御説明になりました通り、今後何が出るかわからないのでございますから、ましてやその中にどういう業者がやるということは、絶対にきまっておりません。
○松本(七)委員 これは何をやるかまだ全然わからない。それで、そのやる実施計画において、これは政府がどの程度関与することができるのですか。
○小田部政府委員 まだベトナム賠償協定は国会の承認を得ておりませんから、従前の賠償協定の例で申し上げますと、まず実施計画を出しますと、それが各省からなります委員会におきまして検討されまして、その上で賠償実施幹事会という外務大臣を議長としておる幹事会がございますから、それにかけました上で、これでよいということになれば、実施計画に乗るのでございます。
○松本(七)委員 今までの国の例をいつも出されまするが、ベトナムの場合は岸さんも御承知のように、ジュネーブ協定によって、そうして休戦協定、停戦協定監視国際委員会というのがある。これが現在すでにいろいろな問題について休戦協定違反だというような事項を方々から持ち込まれた問題を審査しているわけですね。日本の問題についても、これは審査している事項がたくさんあります。そういうふうな特殊の事情にある際に、よほど事前に軍事力強化に役立たないという保障が取りつけられておらなければ、岸さんがいかにこれは純然たる経済復興のためだという主観的な意図を持ってやられたことであっても、もし国際監視委員会でこのことが問題になった場合は、一体どうしますか。絶対に監視委員会では問題になる余地なしという確信がおありですか。どうですか、岸さん。
○岸国務大臣 今お答えを申し上げましたように、具体的の実施計画が出てきましたときに、その具体的の実施計画が賠償協定の本旨に照らしてみて適当であるというものであれば、われわれは認めていくものでありまして、不適当であるならば、適当な内容にこれを改善し修正していくということになると思います。
○松本(七)委員 その休戦協定監視委員会との関係を聞いているのです。これは現にいろいろな問題を取り上げていますよ、日本のことについても。
○岸国務大臣 条約の効力の問題でございますから、条約局長からお答えした方がいいかと思いますが、日本は御承知の通り締約国ではございませんから、締約国としての義務はないと思います。
○松本(七)委員 もちろん締約国じゃないから、法的には拘束の受けないということはわかり切ったことです。しかしそれに違反したような事項が起こった場合には、監視委員会がこれを指摘して問題にする一つの国際紛争の種をまくようなことになるじゃないですか。そんなふうになってから、自分の方はこれはジューネーブ協定には拘束されないから知らないじゃ済まないのです。ことさらそういう紛争の種をまくようなことをやる必要はないじゃないですか。そういう事例をこれからあげれば切りがありませんけれども、一つここで岸さんに聞いておきたいのは、そういう問題がいろいろあるのに、今しいてこれを払う――まあ岸さんは、サンフランシスコ条約による義務履行によって、国際信義をあげたいとこう言われるけれども、もしも統一ベトナムが実現するまで交渉一切持つというような態度をとって、今支払うことをやらない場合に、一体どういう害が日本自身にあるでしょう。そこを一つはっきりしていただきたい。
○岸国務大臣 御承知の通り、われわれはベトナム、この仏印諸国との間に友好親善の関係を持ち、経済的にもいろいろな関係を持っております。すでにカンボジアあるいはラオスは賠償請求権を放棄して、日本側においてこれに対する一つの日本の感謝の意を示す意味において、経済的協力のプロジェクトもきめております。これらの国々に対しまして日本が持っておるそういうふうな友好親善の関係及び経済諸活動を一そう盛んにしていく事柄は、私はアジアの一国として日本が条約上持っておる義務を早く果たすことによってそういうことを実現することが望ましい。これは今いろいろな意味において、経済的な意味におきましてもあるいは政治上の意味におきましても、私はなるべく早くこれを片づけることが適当である、かように思っております。
○松本(七)委員 やらない場合の実害は、一体どういうところに現われるでしょうか。
○岸国務大臣 やらなければ、今私が申しているような効果を、私が期待するようにできないということであります。
○松本(七)委員 やることによっていろいろ問題が生ずる、国際的な紛争の種をまくことになるおそれも多分にある。そうすると、私どもの考えでは、国際信義と言われるけれども、このサンフランシスコ条約による義務を履行できないという事情は、これは決して日本の責任でそうなっておるのじゃない、政府が義務を履行しよう、日本国民もこぞって犠牲をしのんででも履行しようという気持はあっても、客観的な周囲の情勢がそれを許さない、履行することによってかえって問題を起こす、よけい将来のベトナム統一を阻害するというおそれさえ多分にある、そういう場合に、なぜその条約義務を履行しないことが国際的な不信になるか、決して私はならないと思う。むしろ履行することの方が逆に国際不信を招く。ですから、自民党の一部にはこれを強行した方がいいという意見はあるかもしれない。日本国民の大部分は今反対しつつある。そういう反対意見があるときに、あなた方の考えだけでこれを強行せずに、一応義務を履行しますということだけはきめて、実際の交渉はさきに延ばすということでも、私は決して国際的な非難をこうむることはないと思うのです。そういう態度に私は出ることが正しかったと思うが、それがやれないのは、やはりこの賠償交渉そのものにどこかに無理があったからであると断ぜざるを得ないのです。その点、どうですか。
○岸国務大臣 賠償の問題につきまして、これをやれば国際紛争の種をまくというふうな御議論でございますけれども、私どもはそう思っておらないのです。また統一を害するということをお話しになっておりますが、統一の問題とこの問題とは直接関係のない問題であり、われわれが統一を念願しておることは、これは終始一貫申しておることでございます。私どもはやはりこの際賠償問題を解決して、そうして特にこれを終わるならば、サンフランシスコ条約の条約上の義務を一切履行したということになりまして、東南アジア諸国、戦争中のいろいろな関係を生じておりました国々との間に、いわば気持よくあらゆる友好親善、経済の関係を進め得ることになるのでありまして、私はそういう意味においてこれを解決することが望ましいことである、かように思います。
○松本(七)委員 そういうことでは納得できないような問題が、この賠償交渉の過程では幾多起こっておるわけです。これはやがて私どもの党でも、今度なお一つ一つその疑惑を解いていただくために問題を出すつもりでおりまするが、ここで一つ岸さん御自身から御説明を願っておきたいのは、いわゆる沈船賠償協定の問題、沈船引き揚げ仮調印の問題、あの当時、賠償の大部分がこの沈船引き揚げ仮協定できめられた分だ、二百二十五万ドル、これがメイジャー・パートだということまで外務省が情報文化局長の名によってこれを明らかにした。この沈船協定が一体今度の賠償額で含まれるのかどうか。沈船引き揚げは、今度の賠償に含まれるかどうかをまず伺いたい。
○小田部政府委員 今度の賠償協定の附属書の中には、発電所と機械工業センターと、その他両国政府の合意するというようなものに分かれております。それから賠償の交渉の途中におきましては、幾らとかなんとかいう数字も出たでございましょうが、できてしまいました後においては三千九百万ドルがランプ・サムの金額でございます。従って先方がこれを望む場合においては、これはその他合意すべきもののカテゴリーに入って実施できるものでございます。
○松本(七)委員 そうすると、その他の中にこの沈船引き揚げが入ってくる可能性はあるのですか。
○小田部政府委員 賠償の実施にあたりましては、先方との合意が必要でございます。そこで先方が希望するにおきましては、そこに入る得る余地は十分ある、こう申し上げたのでございます。
○松本(七)委員 そうすると、この沈船引き揚げの問題が起こって、これが立ち消えになった経過から考えると、おそらくこれはもう問題になり得ないだろうということが予想される。あれほど賠償の主要部分とまでいわれておった沈船引き揚げが、どうして一体この賠償の対象から消えてなくなったか、金額にしても二十四倍にも近いものにはね上がって全然別なものになってしまったか、だれが考えてもこれは疑惑を感ぜざるを得ないわけです。この当時の、沈船引き揚げができないで行き詰まって困っておる当時、外務省にずいぶん陳情が行った、あの当時の新聞をここで読んでみればはっきりいたしますが、時間もありませんからそういうことはやりませんけれども、私どもに言わせるならば、当時の事情から考えれば、いわば沈船引き揚げの方はベトナム側はこれを人質にとって、そうしてさもこれができるようなそぶりを示しながら、いざとなったならば別なものに乗りがえている。一体どうして沈船引き揚げというものが突然ベトナム側の拒否するところとなったのか、その間の事情をもう少し詳細に私どもに説明していただきたい。その説明がなければ、私どもは私どもで調査した経過、人の関係その他を明らかにしながら、間違いがあればみなそちらから指摘していただくという行き方をせざるを得ないのです。もう少し詳細にこの間のいきさつを説明しておいていただきたい。
○伊關政府委員 五三年の九月に沈船中間賠償の仮調印ができたのでありますが、その後わが方は何度か本調印をするようにということを迫ったのでありますが、どうも先方は理由をはっきり申しませんが、五五年の暮れになりましてこれをたな上げにして、そして賠償そのものの交渉をしたいということを申し出たわけであります。そこでわれわれとしましては、これに応じまして五六年から賠償そのものの交渉に入ったわけであります。賠償そのものの交渉に入りましてからも、沈船という問題はたびたび出ております。しかし最終的にきまりましたときには、やはり向こうが最も希望いたします、向こうの優先順位の高いものということになりまして、このダニムとか機械工業センターというものがまっ先に予想される事業として入ってきたわけでございます。金額に限度がございますから、やはり向うの最も希望しているダニム、機械工業センターというものだけが、一応表に出るという形において残ったという経緯でございます。
○松本(七)委員 この間の動きでは、私どももいろいろ手を尽くして調べておるのですが、疑惑が非常に多い。これは例のこの前出しました久保田さんが発言していることを伝えている「民族と政治」という雑誌ですが、この中に自民党でよくしきりに利用されるヴェトナム協会ですか、ヴェトナム協会の専務理事をされておる永田正義さん、この方もダニムの発電所の方に切りかえられたときの事情をちょっとここに書いておられる。たとえば、「ダニム水力発電所は南ベトナム政府の委嘱を受けて日本工営が測量、設計し、フランスの猛烈な競争があったところから、国連技術委員会で日本工営案とフランス案を慎重に検討した結果、日本工営案に軍配が上がり、日本工営が商業ベースで建設工事を行うべく南ベトナム政府の依頼によって、日本の大蔵省、輸出入銀行等と融資について折衝し、確約を得た直後に日本政府と南ベトナム政府間の賠償交渉で賠償の中に組み入れられることになった。」本来商業ベースでここまで進んでおって、そうして融資が受けられることにきまった直後に、突然これが賠償の方に切りかえられているわけですね。その間にいろいろな人の動きがあるわけでございますけれども、たとえば、こういうことが言われているのです。一九五五年、三十年、バオダイのおいと称する人が日本に来ておる。密使と言われておりますけれども、はたしてどういう任務を帯びておったかどうか。当時、これは故人になっておられるから、聞くすべもありませんけれども、総務会長をしておられた砂田重政氏がこの人に会った。このバオダイのおいと称する人は、出時――ベトナム側は二億五千万ドルを要求しておった当時らしい。その二億五千万ドルの要求に対して善処をしてもらうように、その応援方を砂旧さんにお願いした。ところが、砂田さんはこれを一蹴されておる。砂田さんばかりではなしに、松村謙三氏にもこの人は会っておる。そしてやはり同じようなことを依頼したけれども、松村さんもまたそういうことは考慮の余地なしとして一蹴されておると伝えられておるのです。これは、私どもは反対党であり、対立政党であるけれども、この御両人の態度は私は見上げたものだと思います。岸さん、こういう事情があったことを御存じですか。
○岸国務大臣 私は、その事実は承知いたしておりません。
○松本(七)委員 私は、こういう動きがあったのは、だれかが手引きをしたに違いないと思うのですが、外務省の方では旅券その他の面から、こういう事実はどうなっておりますか。
○伊關政府委員 すぐ調べますけれども、今こちらでもある程度のことは調べておりますが、ところが、名前がはっきり……。どういうのか。ただ密使とかおっしゃった。今の、来たのは……。(松本(七)委員「バオダイのおい」と呼ぶ)何というフル・ネームで、どういうんですか。ただバオダイのおいというんですか。ちょっと今のところまだよくわかりません。
○松本(七)委員 これは岸さん、私はいろいろな疑惑が生ずるのは、やはり賠償というような問題は、政府がなるべく財界などとは関係を持たずに問題の解決を進めることが大事なんじゃないか。財界といろいろな問題で特使だとか、その他で関係を作るために、そういうふうな疑惑が生じてくる。経団連の副会長の植村さんに特にこの賠償に御努力を願ったというところにも、私は岸さんの考え方が非常に政治家として欠けるものがあるんじゃないか。総理大臣としてばかりじゃない。いやしくも政治家ならば、こういう賠償のような大きな問題――経済外交、経済外交というけれども、これは経済外交じゃない。実際は商売外交になっている。やはり経済界とはなるべく関係を持たずに賠償の交渉を進められるという態度が欠けておったのではないか。この点について反省されるところがないんですか。
○岸国務大臣 私は植村甲午郎君とは多年知り会っておりますが、もちろん財界において経済人としていろいろな活躍をしております。しかし、私は同君がこういうことには最も適任であると考えたわけでありまして、今日もなおそう思っております。そうして同君の人格及びその従来の経歴から見まして、何らの疑惑を生ずるような人物でないことを確信いたしております。
○松本(七)委員 私はやはりこの賠償には、事を明らかにすればするほど軍事的性格というものが明らかになりますので、先ほどから申しますように、第一には、今の南ベトナムの実情、軍事的にいかに軍事道路なり、あるいは飛行基地なりが拡充されておるかという事情と、それからもう一つは、今申しますような技術協力、経済協力の面にも軍事的な性格が現われておる。こういう点について、今後もっと続々と材料を出して質問を展開しますが、この前岡田君が予算委員会で出したマイクロウエーブの問題について、これは郵政省の方、あるいは電電公社の方でもう少し詳細な報告をするということになっておりますので、この機会に、その後調査されたマイクロウエーブの問題についての御説明を一応承りたいと思います。
○植竹国務大臣 大要御説明申し上げますと、昭和三十二年六月十九日に電電公社とJPA、つまりジャパン・プロキュアメント・工ージェンシーとの間に契約が取りかわされまして、ベトナムにおける通信施設の調査に当たったのであります。そしてその調査は四十日間、十七名の者によって、電電公社の社員によりまして行なわれまして、翌年の昭和三十三年の二月四日に報告書が提出されたのが事実であります。この目的は、ベトナムにおきまするクワントリーとサイゴンとの間の九百五十キロメートルにわたるVHFの通信施設を設置することについての調査であります。超短波の電気通信施設を設置する契約でありました。そうして、その目的は一般的な内容を持っておりますので、特に軍用を主眼とした事実はないというのが事実であります。その後この契約につきましては、JPAでなしに、海外技術援助をいたしますICA、インタナショナル・コーポレーション・アドミニストレーション、行政一般につきましての機関がJPAにかわりましてその計画遂行等に当たっておるわけでございますが、電電公社といたしましては、この調査が完了いたしましたので、あとは関係をしていないというのが現状でございます。
 なお詳細につきましては、電電公社自身からお答えいたさせたいと思います。
○松本(七)委員 この向こうで調査したときの実情を調べると、これがアメリカ軍事顧問団、それの配下にあるところの通信班といいますか、そういうものと密接な関係があるということは明らかですね。そうすると、実際にそのマイクロウエーブを設置する場所をずっと二隊に分かれて調査したでしょう。そのときの設置場所は、ほとんど軍の施設内ばかりであります。そういう点にまで、あれから以後調査できましたでしょうか。
○植竹国務大臣 御説の通り、この端のターミナルが十五ステーションございます。いずれもそれは軍の施設内であります。それから中継所は軍の施設内にはございません。ところがそのターミナルの方は、ベトナムの国内事情からいたしまして、保安関係の上から、かつまた広い地域を要しまするので、既設の軍の設備内に設けますことが、地域的にも広くて、治安、保安等から見まして、完全であるという意味をもちまして、軍事施設内にステーションが十五設けられたのであります。また先ほど御質問のMAAGと申しますか、技術指導をやるものが、軍のものであったということは、確かに事実であります。それにつきましての私たちの解釈といたしましては、マイクロ設備といいますのは、非常に高度な専門知識を要しますので、そのために軍ではマイクロについての知識、またマイクロについての訓練が行われておりますので、向こうの軍が指導いたしますことが、この設備調査をいたします上に、最も適切と考えられまして、調査のときには、軍事顧問団であるいわゆるMAAGが手引き、指導に当った、こう承知いたしております。
○松本(七)委員 ただ私の方では、MAAGの機構が全部わかっているのです。軍事顧問団から応急装備実施施設団とでも申しますか、配下にある普通タームといわれておる、その下に、シグナル・ブランチというのがあるわけですね。そこのコールウエル・ハルフォードという人が、当時の係官です。この人のところに、調査団がいつもすべて連絡しておるわけです。まずここに調査報告なりやって、あるいは出発の前もここに連絡してから、ベトナムの国防省参謀本部に行くわけです。それは機構的にそうなっているばかりではなしに、便宜的に、今大臣の言われるように、この機構を通じているというのじゃないのです。実際に設置した場所を見てみると、そのことがはっきりわかる。まずサイゴンの参謀本部、キャンプ・チャンプンダオというところに、参謀本部通信班がある。それを出発点として、ずっと設置しておるのですが、その設置の場所は……。
    〔発言する者多し〕
○小澤委員長 静粛に願います。
○松本(七)委員 サイゴンからクワントリーまで十三カ所にずっと設置している。その通りでしょう。その中にはっきり軍事施設内であるのが十カ所ですね。軍事施設内は十カ所、しかしあとの三カ所、リエンホア、それからソンマオ、それからサワフィン、この三カ所は軍事施設じゃないですけれども、これは設置するための、いろんな条件が、軍事施設では不便なために、この三カ所は軍事施設からはずしたところに設置した。本来は軍事施設に設置するのが目的なんです。この軍事施設外の三カ所も、そういういろんな条件が整わないために、軍事施設内にはないけれども、わざわざ警備のための兵隊を数名置けるように、駐在所まで作っておる。そうでしょう。内容的に見れば、完全に軍事施設なんです。この前も答弁されたように、一回線しか軍事以外には使わないことになっているじゃないですか。マイクロウエーブの使用面も、それを考えたときに、軍事施設に関係ないということはいえないのです。今のマイクロウエーブのNEATO、SEATO、そういう各軍事体制との関連を考えてみれば当然わかることですけれども、具体的に今度調査されたその調査の事実に基づいて、こういうふうにはっきりここに出てくるわけです。それで軍事関係がないという結論は、むしろ逆のものが出てくるじゃないですか。
○大橋説明員 ただいまの御質問にお答えいたします。大体郵政大臣のお答えで尽きていると思うのでありますが、補足の意味において私から一言申し上げます。
 先ほど御指摘の通信施設の局は十五あります。十五のうち十カ所が今お話しの軍事施設内にありまして、五カ所はそれ以外にあります。しかしこのときは先ほど郵政大臣からお答えいたした通り、治安の関係もあります。また経済的、技術的に見ても、その軍事施設内に施設した方がよろしい、こういう見地からいたしたものでありまして、これがために直ちにこれを軍事施設なりとは言いかねるのであります。担当者の説明によりますと、この施設は一般の施設であって、軍事専用の施説ではないということに私どもは了解いたしております。
○岡田委員 関連して。私が予算委員会でこの問題を取り上げたので、もう一ぺん伺いますが、まず第一点に、大臣に伺いますけれども、JPAというのは何でございますか。私の理解では在日米軍調達部だと思いますが、いかがですか。
○植竹国務大臣 その通りであります。
○岡田委員 それでは在日米軍調達部と電電公社は契約した、向こうではMAAGという在日米軍援助団がいろいろと援助した、これも事実でございますか。
○植竹国務大臣 在日米軍調達部すなわちJPAと契約したことも事実でありますし、向うに参りましてから、援助と申しますか、MAAG、向こうの軍事顧問団が援助した。
○岡田委員 援助……。
○植竹国務大臣 援助でよろしゅうございます。
○岡田委員 もう一つ伺いますが、在日米軍MAAGが援助すると同時に、これについてもう一つ援助した機関がある。それはベトナムの共和国軍、いわゆる国防省の通信課が援助をした、これも事実ではないですか。
○植竹国務大臣 その通りであります。
○岡田委員 そういうことで、すべて軍人関係が援助をして、民間事業をやるわけなんでございますか。
○植竹国務大臣 さきに申し上げました通りに、その当時のベトナムの国情といたしましては、軍のものが援助してくれましたり、またMAAGが援助してくれますことが、調査を滞りなく遂行いたします上に、ことに治安的な方面において、安全に調査を完了いたします上にも一番都合がよかったことであり、またその目的についての御質問がただいまございましたが、それにつきましては、これは一般的な内容を持っておりましたので、またその当時のベトナムの情勢を見ますと、民間の設備と軍の設備とが両方とも独立しておりました。その設備規模もほぼ同じくらいな状態でございますので、そこで公社は調査をした程度でございまして、さっき設置と言われましたが、設置はしていないのであります。設置の調査をしただけにとどまります。その目的が、でき上がりました後に軍用にも使われ、民間にも使われることであったかどうかということは、公社の関知しないところで、公社はその契約の内容が一般的な内容を持つという意味におきまして契約をいたしておるところでございます。
○岡田委員 この点が特に重要なんですが、このマイクロウェーブの中継のいろいろな基地は十五カ所ある。ところがその起点になるのはサイゴンなんです。マイクロウエーブはサイゴンのどこから出ておりますか。おそらく、私の知っておる限りでは、ベトナムの国防省の敷地内から出ておるはずであります。
○大橋説明員 これはサイゴンの電話局から出ておることになっております。
○岡田委員 電話局というのはどういう電話局ですか。軍にも電話局がありますよ。チャン・フン・ダオという場所にある軍の施設物の中から出ておるじゃありませんか。これはベトナムの国防軍の参謀本部の敷地内、通信の施設の中から出ておるじゃないですか。電話交換台はそこにあるでしょう、電話交換台はあっても、この電話交換台は軍の電話交換台です。違うと言いますか。
○大橋説明員 いや、これはまだ現実に電話を架設した問題ではないのでありまして、将来は無線施設をどういうふうに使ったらいいかという設計を、調査を依頼されて、その報告を出しただけであります。
○岡田委員 そんなことでは答弁になっていません。私だって調査をやっているのです。大橋総裁こちらへお向き下さい。私の言っているのは調査の出発点がそこにあるということを申し上げたのじゃありませんか。調査の出発点はそこでしょう。そこを起点にしようとした調査を始められた、どうです、そこを起点にしようとした調査を始められたのじゃありませんか。
○大橋説明員 私の今日まで聞いておるところではサイゴンの電話局から特定の……。
○岡田委員 軍の……。
○大橋説明員 それは私存じません。
○岡田委員 関連ですからあまりやりません。この一点だけです。総裁にもう一点お伺いしておきますが、黒川廣次さんという人は、今公社の中におりますか。そのときの団長です。そのときはマイクロウエーブの部長であります。
○大橋説明員 その人は、現在本社におります。
○岡田委員 この人は現実にそこへ行って、しかも調査完了のときに行って、国防省の通信関係の担当のクァーンという大佐と会見しておる。しかも敷地の問題について打ち合わせておるじゃありませんか。この点今おわかりにならない、軍事用の電話局であるか民間用の電話局であるかおわかりにならないとお話しになりましたが、私はきょうは関連質問でありますからこれ以上伺いません。黒川さんにこの次に御出席願いまして具体的に私伺いたいと思いますから、来週の私の質問のときまで用意を願いたい。
○松本(七)委員 その問題は今お聞きのように、さらにもう少し岡田君によってあとでやることにしますから、この程度にしておきたいと思います。
 もう一つは、これは出せば切りがないから少しずつ整理してお伺いしたいと思いますが、私が本会議でちょっと出しました東洋精機の問題、これは当時外務大臣が本会議で答弁されたときに、これは普通の機械のライセンスをもって輸出されて、そしてこれが銃弾工場になっておるということを聞いておるが、ジュネーブ協定には自分は拘束されないからというような御答弁があったのです。その事実は間違いないというふうにこの前の本会議の答弁では承っておるのですが、それに間違いございませんか。もしその後詳細に調査されておるならば、その調査を御報告願いたい。
○藤山国務大臣 私の承知しております範囲内では、三十二年の五月に輸出契約ができまして、五月三十一日に輸出承認をいたしております。そして三十三年の二月に輸出完了をいたして、支払いを行なっております。当時東洋精機の工場を、塚本総業という貿易商社が総括的にこの輸出を取り扱っておる、そういうふうに承知しておりますが、こまかいことはそれ以上は存じておりません。
○松本(七)委員 どこを通じて送ったということよりも、向こうに行ってから銃弾工場として建設されておるという事実はどうですか。
○藤山国務大臣 うわさは聞いておりますが、はたして事実であるかどうかわかりません。
○松本(七)委員 この前の本会議で、すでに私はこれを出したじゃないですか。うわさを聞いただけでこういうことはほっておかれるのですか。それは調べる必要がないというのならば、はっきりここでそう言って下さい。
○藤山国務大臣 こまかいことにつきましては、事務当局から御説明させます。
○小田部政府委員 私も事情は通産省から聞いておりますが、しかしちょうど通産省の係官が出席しておりますから、通産省の係官から御説明を受けた方がいいと思います。
○小出政府委員 ただいまの東洋精機の銃弾施設の問題でございまするが、当時三十二年におきまする輸出の状況につきましては、ただいま外務大臣がお答えになった通りでございますが、その後このプラントが現地においてどういうふうな稼働状況になりておるかということにつきましては、これは私どもの方でわかっておりまする範囲におきましては、大体工場設備は完成いたしまして、それからまた東洋精機からの派遣技術者によりまする試験運転が一応終わりまして、これに対しまして先方からのクレームは出ておりません。それから工場全体がフル操業に入るのは来年の四月ごろの見込みである、かように伺っております。
○小澤委員長 松本君、郵政大臣の方はまだ質問がありますか。
○松本(七)委員 郵政大臣は先に延ばしましょう。
 通産省の今の御答弁ですが、銃弾工場になっておるかどうかということが問題の焦点なんです。その点はどうなんですか。わからないですか。
○小出政府委員 この工場施設は御承知の通り、最初に通産省に輸出申請がございましたときには、その機械の内容について全然書類の上においてはわからなかったのであります。その後におきまして判明いたしましたところによりますと、銃弾の製造設備ということがわかったわけであります。
○松本(七)委員 今の小出局長の御説明では、銃弾工場であるということがはっきりしたと言われるけれども、当時輸出するときにも、通産省では、これは名目は普通一般機械になっておるけれども、実際には銃弾工場であるということがわかっておったからこそ外務省に問い合わせたのじゃないですか。その輸出するときの事情はどうなんですか。
○小出政府委員 この輸出申請は、三十二年の五月三十一日に、先ほど外務大臣から申されました、申請者は塚本総業という株式会社が申請いたしまして、輸出いたしまする品目の表示は工場施設用の設備機械一式というきわめて抽象的な表現になっております。そこでこの機械設備の内容は何であるかということは、これにつきまして一応係官が申請者に対しまして説明を求めました。これに対する申請者の説明は、これは工作機械の工場である、こういう説明でありました。そこで当時の係官のこの問題に対する取り扱いでございまするが、御承知の通り、この申請の決済方式、支払い条件はいわゆる標準決済方式、LCべースでございまして、LCべースによりまする支払い条件の場合におきましては、輸出契約書の写しを提示せしめるという手続をとらないで承認を与える例になっております。これは手続の簡素化という点が主たる理由でありますが、従いまして支払い条件が標準決済方式であります関係上、一応係官が口頭で機械の内容につきましては調査いたしたのでありますけれども、工作機械の設備であるという説明でありましたので、そのまま実際の担当課でありまする――もしこれが銃弾設備であるということがわかっておりますならば、航空機武器課というふうな担当の課もございますので、あるいは外務省にも連絡をするという手続をとったはずでございますけれども、工作機械の工場であるということを一応信用いたしまして、そのまま輸出承認の手続をした。そういたしまして後になりまして、たしか八月ごろだと聞いておりまするけれども――輸出承認をいたしましたのは六月の三日でございましたが、八月ごろになりまして、たまたまこれが銃弾設備であるということが他の方面から判明いたしました。従いまして、実際にこの設備を輸出いたしました東洋精機等を調査いたしたのでありますが、そのときにはほとんどブラント設備の大半が船積みが完了しておった、こういうような事情でございます。
○松本(七)委員 これはやはり私どもが心配しておった通りなんです。これはたった一つの例にすぎないのですよ。岸さん、これはよく聞いておいて下さい。こうして普通の機械だといって輸出して、これが銃弾工場になる。尿素工場だといって向こうに持っていかれては、これが火薬工場になる。日本の戦争の当時のことを思い起こして下さい。肥料工場が一体何になりましたか。その式のことが今ベトナムでやられておる。それを日本が協力しておるという姿が、この東洋精機の一例でもはっきり出ておるじゃありませんか。こういう失態をあなたは今後どうされるつもりですか。必ず国際監視委員会でまた問題になりますよ。一体岸さん自身今の答弁に対してどう処置されるつもりですか。
○岸国務大臣 これはただいま担当官より申し上げましたように、従来の輸出許可に関する手続の簡素化からきている問題でございまして、われわれこの賠償協定の実施に関する具体的の実施計画につきましては、今申したようなしCで出すというふうな簡素な取り扱いをいたしておりませんから、十分条約の趣旨に合致するように私どもは施行していくつもりでございます。
○松本(七)委員 そんなことを言っていたっておそいですよ。もう現に国際監視委員会の問題になっておるのですよ。それは御存じですか。
○藤山国務大臣 現在まで、国際監視委員会でもって日本のこれらのことが問題になり、あるいは取り上げられたことはございません。
○松本(七)委員 それを調べたのですか。東洋精機の問題は現に国際監視委員会で取り上げて、そして調査中ですよ。それを知らないのですか。至急あなたは大使館を通じて調べて下さい。まだこれを知らないのですか。
○藤山国務大臣 今日まで国際監視委員会において発表されたものにおいて、日本がそれに違反しているという発表はございませんということを申し上げたのであります。
○松本(七)委員 先ほど通産省の方から、やはり兵器工場であったというはっきりした答弁があったわけです。私が本会議のときに大臣に御質問したときは、そういううわさがあるということを答弁されたに過ぎない。しかし、これは重要な問題だからと言って私が本会議で質問した以上、それに対する調査をあなたはされる責任があるじゃないですか。その調査をされたのかどうか。通産省で今現に兵器工場になっていると言っている。そういう事実が明らかになっておりながら、あなたは依然として、うわさは聞いたで済まされますか。責任重大ですよ。なぜ調査しなかったか。調査したかどうか、もう一ぺん答弁して下さい。
○藤山国務大臣 当時必ずしも調査の御要求があったとは、私考えておりません。御質問では、そういう事実があるのかということがあったから、それに対して本会議では御答弁を申し上げたのでございます。
○松本(七)委員 この問題はもっともっとほかにもあるし、出さなければならぬのですが、この東洋精機の関係を、人間的な関係を少しここで申し上げておきますから、これを一つ十分お含みおき願いたい。どうしてこれが銃器工場になるのか、その背後の関係も、私の調べたところをここで御披露しておきます。これがほかの問題にも必ず関係してくるのです。すべてそういうふうな背後関係で、これがどんどん平和産業という名のもとに軍需産業に切りかえられつつある、その一つの例でもあったということは、今後の岸内閣の政策に十分考慮しておいていただかなければならない。その警告として一つ申し上げておきたい。
 これはこの前もすでに明らかにしましたように、新興洋行、これは新興通商ともいいます。それの社長をしておる金泰成、これは朝鮮人です。日本の名前を、金谷善次郎という。この社長の金泰成という朝鮮人が、ゴ・ディンジェムに紹介されております。だれによって紹介されたかというと、韓国の元参謀長崔徳信、年は四十七才、崔徳信が金泰成をゴ・ディンジェムに紹介しているのです。この元参謀長の崔徳信というのは、日本の陸軍士官学校を出ています。そうして終戦当時は日本の大尉です、しかもSEATOの重要な人物です。五カ月くらい前にこの参謀長をやめまして、現在は反共同盟事務局長を勤めておるのです。こういう経歴の人がゴ・ディンジェムに金泰成を紹介し、そして一方金泰成はどういう仕事をやっておったか。これはもう一々そちらに答弁を求めないで私が概略を申し上げます。金泰成はくず鉄屋です。そして古い兵器を集めてはこれを方々に送っておった。日本へ輸出を計画しておったのです。ところがこの計画がだめになった。だめになったために兵器工場の建設を思い立ちまして、東洋精機の問題と発展したわけです。そういう経過をたどっておる。そこで今後は、南ベトナムのように軍事力を猛烈に強化しておるところに対して、機械工場、工作機械、いろいろなものを送る場合には、よほど慎重な態度で臨まないと、今日のような失態を演ずる。いかにこれが反共軍事体制の強化の一環としてなされておるかということは、今の人的なつながりから明らかになるのでございます。そうして契約では、一応設置して、それだけで引き揚げる予定だった。ところが試作をやれ――これは金泰成とゴ・ディンジェムの方では、ある程度試作をやって生産の加勢をする約束までできておった。ところが新興洋行と東洋精機の方では、ただ設置するだけという話になっておった。話が違う。そして東洋精機の方は、設置したら技術者を全部引き揚げようとしたところが、どっこい、そうはいかない。お前の方はまだ試作の義務があるじゃないかというので、これが人質にされて、例の新聞にも出ておったように、人質問題というのが起こっておる。そういうふうな事態を日本政府は理解されておらないということは、この賠償の相手国である今のベトナム共和国が、実態がどのようであるかということをもっと真剣に調査し、検討するというまじめな態度が欠けておるから、こういう誤りになって現われるのです。この点はここに警告しておかなければなりません。
 またそのほかに監視委員会の問題として取り上げられておるのには、海上自衛隊などの百七十名、このうちの十九名は昔の海軍工廠の技師、軍関係の技師でございますが、これが国際監視委員会でも問題になっておる。これは日本の国内におきましても、労働省から、これは職業紹介上の違反事項として問題にされたことがあるそうでございますけれども、これが今国際監視委員会では問題になっております。六十万発の銃弾の生産の問題、これは監視委員会では続々と問題になりつつあるのです。こういった事例をあげれば数限りありませんが、これの根本は一体どこにあるかということも、私どもはいろいろ調査して、われわれの観測では、日本にある技術協力会社が一つのてこ入れになっておると言わざるを得ない。この技術協力会社の正体を私はもっともっと政府にいろいろ質問いたしたいのでございますが、技術協力会社というのができたのは、岸さん御存じですか。
○岸国務大臣 承知いたしておりません。
○松本(七)委員 それではごく概略の様子をあれします。技術協力会社社長は石塚粂蔵氏、これが米国の国際協力局、ICAの資金によって南ベトナムの技術協力の話し合いをベトナム政府と進めておったのです。それがICAからの連絡によって二年前、おととしの八月中に正式契約を結んで、そしてさっそく九月中旬に技術者の第一陣九名を南ベトナムへ送るという話し合いになってきたわけでございます。その人的な構成だとか、そういうものは一々ここであげませんが、相手の契約者、署名者は、先ほどから問題になっておるように、ベトナムの国防省のグエン・ジュン参謀次長がなっております。そして植村甲午郎さんのところにおられる植村甲午郎さんとは非常に懇意な千賀さん、千賀さんが技術協力会社の兵器部長です。そしてサイゴンの大南公司、これは松下光広が社長です。例の日本工営の久保田豊をゴ・ディンジェムに引き会わせたこの松下光広という人は、もう御存じのように、ベトナムにおいて日本が何か仕事をしようとするためには、必ずこの人を通さなければ、向こうの政府と関係が結べないくらい大きな力を持っておると言われておる。ゴ・ディンジェムの私設顧問だと言われておる。この松下光広が大南公司の社長でございまするが、この大南公司の中に今言う技術協力会社の支店があるのです。この大南公司のサイゴン支店長、支店長格でしょう。正式に代表をやっておりますから。正式には何かきちっと職務の名前はついておると思うのですが、実質的には支店長格の任にあるのが小田親という人です。これがこの大南公司の支店長であると同時に、技術協力会社のサイゴン事務所長の役を勤めておるでございます。こういう人的なつながりを考えてみましても、植村甲午郎さんとの関係、久保田豊との関係、松下光広との関係、その中に立つ小田親、これは手紙も、技術協力会社にくる手紙は、全部このサイゴンの大南公司気付でくる。それがこっちに回ってきておる。詳細にこれはわかっておる。そういうふうに関係を洗って参りますと、私がさっき申しました、こういう賠償のような問題は、やはり経済界の人にたよったり、財界の人をいろいろ活用することがいかに危険なことであるか、どういう落とし穴があるかわからない。よほどこれを慎重にやらなければならぬという一つのいい例だったと思うのです。こういう事実を、あなたはもう少しこれから調査して、私もできるだけ調査しますが、こういう関係が明らかになった以上は、政府としても責任をもって調査して、ここへ御報告していただく義務があると思うのですが、どうですか、それだけの御意思がございますか。
○伊關政府委員 ただいまお話がありました技術協力会社等については、われわれの方も承知いたしております。人的関係がどういうふうになっておるかというところまでは存じませんが、会社そのものがどんなものであるか、現在どういうことをしておるかということについては承知いたしております。現在向こうでやっておりますのは、船舶並びに小さい艦艇の修理の技術指導をやっております。
○小澤委員長 それではこの際十分間休憩をいたします。
    午後三時五十九分休憩
     ――――◇―――――
    午後四時十九分開議
○小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。松本七郎君。
○松本(七)委員 私ども政府の資料に基づいて、この賠償の実体、本質というものを明らかにするために、いろいろわれわれ自身できる限りの努力はしてきたのです。けれども、先ほどからずいぶん長い間質疑応答の中に明らかになりましたように、資料自身がはなはだ不備だ。損害の基礎一つにしても、政府からちゃんとしたものが出てきませんので、私自身それから調査を開始して、そしてやっと、さっきごらんいただいたかどうか、――あすこに掲げておりますので、あれをちょっと見て下さい。あれを作るのにずいぶん時間もかかっております。時間もかかっておるし、そして非常な努力をして、われわれ少数の者であれだけのものをやった。今お手元にあれの詳細の説明の方も回ったと思いますけれども、そういうふうにして私どもはこの問題の多いベトナムの賠償の本質なり問題点を明らかにしていきたいという考えで、真剣に取り組んでおるのでございますから、政府も今後この審議期間中になるべく、調査のできるものならさらに調査をする、資料もわれわれが満足いくようなものを提出していただく。またこれからまだわが党にはいろいろな問題についての質問予定者がたくさん控えておるわけです。来週に入りましてからも、一つできるだけ岸総理みずから出ていただいて、質疑に応じていただきたい。このことは特にお願いいたしておきたいのです。
 今軍事的な性格の問題、経済協力あるいは技術協力の名のもとに行なわれておることが、先ほど東洋精機の問題ではっきりしたように、軍事的性格を持っておるということになりますと、もっともっと私どもは、それの背景をなしておる南ベトナムの今日の軍事基地の拡充を中心にした軍事力の強化、この点についてもメスを入れて検討をしなければならない、その任務が一そう増加してきたと言わざるを得ないと思うのです。先般のこの委員会におきましても、この軍事力、特にアメリカが南ベトナムに対してどのような軍事援助を与えておるか、これについて穗積委員から政府に答弁を求めたのでございまするが、これは軍機に属するということで、その御答弁が全然なかった。はたしてどの程度軍機に属するものかどうか、私どもも、われわれの力で及ぶ限りは、そういう面についても調査いたしました。けれども、これもわれわれの力ではなかなか及ばない点がある。そこでやはり政府の機関なり御努力をかりて、私どもの調査の足りないところは一つ政府の調査と相待って、南ベトナムの実情を正しくつかみたい。これはお互いにわれわれは協力すべき問題だと思います。隠しだてをするべきではない。特に岸首相は安保の改正を大きな問題として取り組んでおられる。それは、私どもは全面的にこれは反対です。しかし、もしも安保の改正がどういう理由で必要か、一貫した積極的な政府の方針なり説明が打ち出されれば、それは私ども反対の立場におるものでも、一応筋の通った説明ならば、あなた方の主張なり立場はそれなりにわかる。けれども、一方では世界の緊張は緩和しつつある、平和共存に向かいつつある、こう言いながら、なお力を背景にしたところの侵略の危険もないことはないというようなことで、説明が一貫しないあいまいな態度を続けてきておられると、国民はあなたのほんとうに考えておられる、ねらっておられる政策の方向というものがわかりにくい。私どもはあらゆる問題についてこれをはっきり明確に打ち出すということが、国民にとっては親切な態度ではなかろうかと思うのです。あなたは国際的な侵略の危険はまだあると言われる以上は、そしてしかるがゆえに自分のできる限りの力で防衛については協力する、それは憲法の範囲であろうが何であろうがやられるというこの立場をとられる限りは、やはり日本の近隣諸国、特にアジアの諸国における軍事基地の問題、これが平和の維持に役立つか、戦争の方に進んでいっておるかという評価は別問題として、どのような実情になっておるかということをもっともっと正しくつかんで国民の前に明らかにして、その事実の上に立って国民が判断できるようにする必要があると私どもは思うのです。従って、私どもの今まで調査したところでは、ベトナム賠償は、さっきはたった一つ東洋精機の問題がここで明らかになっただけではございまするけれども、やはりSEATOとの結びつき、反共軍事体制の実質的な結びつき、また現在南ベトナムで進んでおる軍事力強化と切っても切れない関係にある。安保の改定とは、本質的には同じ問題だ、こういうふうに私どもは実情から結論づけざるを得ない。もしも岸さんがこれを否定されるのならば、やはりそれに反証できるだけの具体的な材料をもって私どもを説得する努力をしていただかなければならないと思うのです。こういう意味で、この前穗積委員からも軍事援助の問題が出たのですが、政府は全然これには触れられない。はたして岸首相はアメリカのベトナムに対する軍事援助額、これらを御存じであるけれども軍機上これは言えないとおっしゃるのか、あるいはそういう点についての調査は全然されておらないで、材料がないためにお答えができないのか、この点についてまず御返事をいただきたい。
○岸国務大臣 このベトナムの賠償の問題につきましては、今松本委員からいろいろ御意見をお述べになりましたが、私どもは、根本において、これをもってベトナムの軍事施設を強化しようというような考えでもなければ、また安保条約とこれが必然的な関係にあると私どもは考えておらないのであります。あくまでもこの戦争によって迷惑をかけたことの償いとして、将来ベトナム国の繁栄とそれから国民の福祉に貢献するようなプロジェクトについてこれを実施していくという考えでおるわけであります。
 なお、アメリカがベトナムについて非常な軍事援助をしておるというようなお話でありましたが、その点に関しましては、私ども申し上げることはできない。
○松本(七)委員 これは知っておられるけれども言われないのか、それとも御存じないのですか、どうなんですか。それをはっきりしておかなければ。知らなくて言えないのか、知ってても言えないのか、ここは問題です。
○岸国務大臣 他国がやっておりますことにつきましては、われわれはこれを責任を持って調査するというようなことはいたしておりませんので、従って、こういう責任のある場所において申し上げることはできない、こう申し上げております。
○松本(七)委員 岸内閣のとっておられる立場は、とにかく世界は緊張緩和になっておるけれども、まだ危険はある。従って、一国では防衛態勢は十分ではないから、自由主義諸国を中心に協力態勢を築こう、こういうことでしょう。それにはやはり関係諸国の実情というものをつかまなければ、どの程度のこちらの努力で協力していいかということが結論が出ないじゃないですか。それでは、極東なりアジアなりの平和の問題に取り組むためには、今はやはりまだ力が背景になっておる。従って、ある程度の力が必要だという立場をとっていられる以上は、関係諸国、しかも自分一国だけでは問題が解決できないのだと言われる以上は、アメリカを中心にして、これと密接な関係にある諸国の実情というものをつかまなければ、自分はどの程度の努力をして協力していいかわからないじゃないですか。だから、そこはちゃんとつかんでおられて言われないのか、全然つかんでおられないのか、そこをはっきりして下さい。
○岸国務大臣 国際情勢の判断や、またそれに必要ないろいろな資料等は集めておりますけれども、またこれをつかんでおりますけれども、把握しておりますけれども、今申すように、御質問がアメリカがベトナムに対しておる軍事協力の内容についての御質問でありますから、そういうことはこの席では申し上げられませんと申したのであります。
○松本(七)委員 焦点をはっきり言って下さい。知ってて言わないのか、知らないから言われないのか、どっちですか、はっきりして下さい。
○岸国務大臣 各国の情勢につきまして、日本が進んでいかなければならぬ、また日本がとるべき政策のために必要なものにつきましては、各国の事情をできるだけ正確に把握しております。しかしながら、今御質問の点については、私はこの席において申し上げることはできない、かように申しております。
○松本(七)委員 それでは、たとえば一九五五年以降、南ベトナム政府の支出のうち、軍事費はどのくらいを占めておるかというようなことはつかんでおられるのですか、それともそれは知っておっても言えないのか、あるいはそこまで調査されておらないのか、それはどうですか。
○藤山国務大臣 それらのこまかい数字等につきましては、事務当局から御説明いたさせます。
○松本(七)委員 けっこうです。事務当局どうぞ。
○伊關政府委員 一九五八年度の軍事費は六十億ピアストル、一九五九年度は六十億一千七百万ピアストル、一九五九年度も大体同じ予算になっております。
○松本(七)委員 その割合はどうなんですか。政府支出の中に占める割合を聞いておる。
○伊關政府委員 一九五七年の予算が百四十一億ピアストル、それから五八年が百四十三億ピアストル、そのうちで軍事費が六十億になっておりますから、約四〇%くらいになりますか。
○松本(七)委員 その六十億ピアストルの軍事予算の中で、今度はアメリカの軍事援助が占める割合はどのくらいですか。
○伊關政府委員 アメリカの経済援助につきましては、昨日ですか、話しましたが、軍事援助につきましては、これは申し上げられぬと申しております。
○松本(七)委員 今軍事費の占める割合、これは五七年と五八年について言われたのですが、私のところで調べたのを五五年からちょっとあげてみますから、違っておるところがあったら指摘してもらいたいのです。五五年が、百万ピアストル単位にしまして、一万六百二十一、それから五六年が六千九百六十八、五七年が六千五百九十八、五八年が六千五百九十九、合計三万七百八十七、それで、割合にすると、五五年が六三・三%、五六年が五五・二%、五七年が四六・五%、五八年が六〇%、こういうふうになる。その点だけちょっと確認しておきたいのです。
○伊關政府委員 その数字につきましては、われわれの数字とちょっと違っておるところもありますから、いずれはっきりいたします。
○松本(七)委員 今のこの予算の中で占めるアメリカの軍事援助の割合ですね。これは政府としては言えない。これは言ないものを無理にあれするわけにはいきません。ただ私の方で調査したものはあるのですから、それについて著しく間違っておるものがあったら、一応指摘だけしていただきたい。私たちとしても再調査しますから、どれだけ間違っておるとか、そんなことを言う必要はない。そこが間違っておる、こう言ってもらえばよい。これも同じく百万ピアストル単位です。援助額が五五年には七千、それから五六年が五千五百九十一、五七年が五千六百九十八、五八年が五千六百七十四、合計二万三千九百六十、こうなると、さっきの五五年のベトナム政府支出のうちの軍事費の割合が多少違っておると言われたから、その点では幾らか比率も違ってくるわけですが、これを比率に直しますと、アメリカ軍事援助が占める軍事予算における割合は、五五年が六六%、五六年が八〇%、五七年が八六%、五八年が八六%、合計して七八%がアメリカの軍事援助で占めておるということになる。そこで、そのほかに経済援助、技術援助というものがあります。この数字は一々申し上げませんが、これを大体大ざっぱに考えてみますと、一九五四年以来、あの例のジュネーブ協定、このときからのアメリカの南ベトナムに対する援助総額十一億三千五百万ドル、その七割以上になる八億一千五百万ドルが軍事援助、残りが経済援助、大別するとこういうふうになっている。私どもの調査は五七年度現在で、これらの援助がどういうふうに使われているかということをできるだけ調べてみた。そこで、それは二年前ですから、さらにそのあとミサイル基地化、そういうものでかなり軍事基地の数なんか違ってきておると思います。それから基地そのものの数は減らしたけれども、充実したところもある。いろいろあると思いまするが、これもその資料が――委員長、もう一つちょっと表を掲げさせていただきたいと思います。もうそれだけです。すぐそれは終わります。
 あそこの海岸線にずっと道路がありますが、クァンナム―クァンガイがまだ当時非常に悪い道路だっただけです。あとは全部すっかり舗装されている。これは一九五七年現在ですから…(「五八年のも出せよ」と呼ぶ者あり)それは必要があればいつでも出します。御要求があればいつでも出します。反対の論拠が明らかにならなければなりませんから。――この資料についてもう一々御説明することはしません。要するに、今カンボジアは中立地帯です。従ってシャムに通ずる軍用道路というものは、今北の方から作られつつあるわけですが、これをずっと詳細に検討してみれば、軍事基地が非常に多いということと、それからSEATO体制に非常に重要な役を南ベトナムが演じつつある、このことを十分留意すべきじゃないかと思うのです。あの軍事基地のどまん中に今度の賠償で建設されようというダニム・ダム、あの青いしるしをつけてあります。岸さんちょっとあすこを見て下さい。青いしるしがあるでしょう。――それにはない。(笑声)あすこです。あるでしょう。一目見てもわかるように、これだけのたくさんな軍事基地に囲まれて、ダニム・ダムが建設されようとしておるのです。それを今ベトナム人が、ほんとうにわれわれ国民の福祉に役立つかという点から考えてみれば、少なくとも北のベトナムの国民にとっては、今はこのダニム・ダムができましても、それは自分たちの福祉にはならない。この軍事基地に囲まれたダム、軍事強化のために電力が使われる。将来のことはいざ知らず、それは日本の政府の資料にもあるように不可能だ。今はこういう事態になって、北の国民には及ばないということを認められておる。こういうふうな状態で、賠償によってさらに軍事基地の強化、反共体制の強化が進められれば、当然大きな不安を呼び起こし、単にベトナム民主共和国ばかりではない、ひいては中国も依然として――これは岸政府の敵視政策の現われである、こう断定せざるを得なくなるわけです。この現実を一体どう岸さんは見ておられるのか、率直な意見を聞きたい。
○岸国務大臣 ダニム・ダム建設の問題は、今日のベトナムにおける電力事情からいい、ベトナムの産業経済からいいまして、その将来の発展のために水力電気の建設をするということは、私はこれをもって軍事施設の強化であるとか、われわれがベトナムのいろいろな軍事基地等を――あの地図に示されておりますが、それとは何ら私は関係あるものであるとは考えておりません。
○松本(七)委員 そこの表にもはっきり現われているように、空軍基地が十五、ジェット空軍基地が六、海軍基地が五、潜水艦基地が一、既成の基地が二十一、その後基地の数を減らして充実したところ、あるいは基地のふえたところ、そういうところがかなり変動がございます。それについて政府の方
 で調べてあるものがあって、これに違いがあれば今後一つ資料で出していただきたいと思います。
○伊關政府委員 私の方も、サイゴンの大使館から北越放送に基づいて作りました、ほとんどこれと同じような表を持っております。どこが違いますか、あとでよく比べさしていただきます。
○松本(七)委員 その違いは、こちらへ資料として出してもらえるのですか。
○伊關政府委員 ちょっと見ましたところは、ほとんど同じだと思いますが、調べてみます。
○松本(七)委員 それを資料として出して下さい。先ほどから申しましたように、一つは南ベトナムがいかに軍事基地の拡充を中心に軍事力が強化されておるか、この中にベトナムに対する賠償はいかなる役割を果たすか、SEATOの関係、安保改定との関係、これらを中心に今後問題がもっともっとたくさんあるのです。これを明らかに今後して参ります。
 それからもう一つは、先ほど東洋精機その他からの数例を出しましたように、経済協力、技術協力にもそういう面が非常に露骨に現われつつある。これらをさらに資料に基づいて今後も出して参りますから、一つ岸内閣の方でも、もう少し、こちらから資料を出されて、さきのように、東洋精機はやはり銃弾工場でございましたというようなことでなしに、政府みずからの資料によって、実情を国会にもう少し明らかにしていただきたいということを要求したいんです。それを約束していただけますか。
○藤山国務大臣 今まで申し上げておりますように、出せるような資料がございますれば出せますし、十分な資料がなければ出せないということに相なろうかと思います。
○岡田委員 関連して――私は質問ではありません。資料の要求です。私は資料の要求ですから。それで私の調査要求は……(「資料の提出は松本君にやってもらいなさいよ」と呼び、その他発言する者あり)発言を許されております。調査資料要求をお願いいたしますが、先ほど伊關局長は、経済協力株式会社については詳しく知っておるというお話でございますが、経済協力株式会社と向こうの国防省との間に一昨年協定を結んでおるはずですが、この協定の全文をお出し願いたい。
 それから、第二の点は、これは非常に重要な点です。岸さんに関係する非常に重要なる点ですが、先ほど松本君の質問の中に、一昨年から昨年にかけて海上自衛隊の隊員を含む技術者百五十名がサイゴンに行っているということの質問がありました。この点は、われわれが見た限りにおいては、いわゆる今問題になっております海外派兵に関連する問題になるのではないか。こういう点をわれわれ心配いたしますので、こういう点についてはぜひ正確にお調べをいただいて、この次の来週の委員会において一つ御答弁を願うようにお願いをいたします。
 第三点は、国際監視委員会で現在取り上げられておる問題では、昨年すでに完成をいたしました日本の工場で銃弾が作られておる。この銃弾工場は、年間六十万発の銃弾を製作する工場であります。これが現在国際監視委員会において調査をされておりま。この経過についても一つ来週でけっこうでありますので、サイゴンの大使館に照会の上で、一つ御報告を願いたいと思います。
 この三つの点の調査の要求をいたしておきます。
○小澤委員長 今の資料について、伊關君、出せるものと出せないものをはっきりして下さい。
○藤山国務大臣 今御指摘のような資料要求に対して、はたして全部出せるかどうか疑問だと思います。たとえば、技術協力会社とアメリカと結んだものを、そういうものを出せといっても、出せないかもしれません。私どもとして技術協力会社に命令をする権能はないかと思うのでありまして、そういう点でありますから、今全部にわたって出せるか出せないかということはここで申し上げかねると思うのです。できるだけ出せるものは出したいということだけは申し上げます。
○岡田委員 ちょっと、今藤山外務大臣は勘違いがありますが、私のは技術協力会社との契約の相手はアメリカの国防省じゃないのです。ベトナムの国防省なんです。その協定はおそらく一回、最初のやつを出していただけばいいわけです。そのあとは協定が結ばれてないんです。そういう点をお出し願いたい。
○松本(七)委員 軍事基地の問題も、詳細にあれすれば時間をとるから、表を出して簡単に趣旨を出したわけですが、今までの、最初に申しましたように、かいらい政権問題その他条約自体に触れた問題で、かなりたくさんの問題点があるわけです。それを今入っておればまた中途半ぱになるので、ここらでどうだろうということになったんだろうと思いますけれども、まだ十五分か二十分あるそうですから、その中に入りながら、さらに――当然残りますから、中途半端になりますから、それはまた来週に持ち越すということを委員長が確約して下さるなら、続けてもいいです。
○小澤委員長 その問題は前回の理事会において、明日の本委員会が終了後相談することになっておりますから、今私は答えることはできません。
○松本(七)委員 明日のことじゃない。
○小澤委員長 あなた、来週というのでしょう。
○松本(七)委員 今からやったのでは当然残りますから、残ったものは来週に持ち越さざるを得ない。その点を一つ確認して下さい。
○小澤委員長 そういうことは、委員長は現在承諾することはできません。
    〔「これが引き延ばしでなくて何だ」と呼び、その他発言する者あり〕
○松本(七)委員 その点を確認しておいてもらわなくちゃ……。(「当然のことだ」と呼ぶ者あり)当然のことですよ、それは。これからまた別の問題に移ろうというのに……。これははっきり確認して下さい。
 それでは岸総理大臣にお尋ねいたしますが、先般本会議で私が質問した中で一番大切な点について一言も御答弁がなかった。全然触れておらないのです。あの本会議の席上で、私は第一に賠償に対する基本的態度について聞きました。そのときに、賠償は戦争に対する償いである、これは政府自身も認めておられる。しかしその過去の戦争の本質なり性質については、一体岸さんはどのように理解しておられるかということを聞いた。はっきり言えば、あの過去における戦争は、はたして当時日本の軍部によってしきりに吹聴されておったように聖戦であって、しかし力及ばずして敗戦のうき目を見たものか、それとも日本の帝国主義戦争という基底の上にこれを把握されておるか、このことを聞いたにかかわらず、全然これには触れないで答弁をはぐらかしておられる。すべての政策がこのことの認識にかかっておる今日、総理大臣としてこの点を私どもの前に明らかにしていただく義務があると思います。はっきりして下さい。
○岸国務大臣 過去の戦争について、今日からこれをいろいろに批判し、分析反省が行なわれておりますことは当然であります。当時のこれに関係しておった人々が、いわゆる聖戦という言葉で呼ばれておるように、日本の立場としてやむにやまれずやったものであって、決して帝国主義的侵略ということを意識し、そういう意図のもとに行なわれておったものではないということは私はその当時の事実であると思います。ただ敗戦の後における日本の状態、こういうことから反省してみて、いろいろな反省が行なわれておることは、これまた当然のことであります。今日から、われわれはいかなる意味においても、日本が再び戦争に引き込まれることのないような平和な状態を作ろうとして努力しておること、いわゆる民主主義の立場に立って、日本の安全と世界の平和を希求して、一切の戦争に日本が引き込まれないようにしようという努力をしておることは、戦争におけるわれわれの反省から来ておるものと私は考えております。
○松本(七)委員 今の御答弁では、私の質問しました、戦争が帝国主義戦争であったかどうかということについては明確に答弁がなされておらない。けれども、主観的にどうであっても、結果において帝国主義戦争の犯罪が生じておるということについては、首相も認められておるようでございますが、それならば当然今後日本が再び帝国主義的な政策をとったり、あるいは植民地主義の政策に逆戻りするということがないばかりでなしに、他国の植民地主義、帝国主義にも協力しないという政策が出てこなければ、せっかくのあなたの戦争に対する反省も実を結ばないといわざるを得ない。そういう観点からしますると、先ほどから問題になった今日の南ベトナムにおけるアメリカの軍事援助を中心にしたこの実情、これはフランスにかわったアメリカの植民地主義の政策の現われであるという批判が当然出てくるわけでございますが、この点については岸さんはどう判断され、評価されるのでしょうか。
○岸国務大臣 ベトナムは、民族独立の国家としてベトナム共和国を建てております。ベトナムのいろいろな国家機構上、その繁栄と安全と利益のためにいろいろな政策をとっておるのは、これはベトナムが自主的にとっておるものであって、植民地主義また他国の帝国主義の侵略によるものだというふうには決して考えておりません。
○小澤委員長 次会は明二十一日午前十時三十分より開会いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後五時十一分散会