第033回国会 社会労働委員会 第5号
昭和三十四年十一月十九日(木曜日)
    午前十時五十五分開議
 出席委員
   委員長  永山 忠則君
   理事 大石 武一君 理事 大坪 保雄君
   理事 田中 正巳君 理事 八田 貞義君
   理事 藤本 捨助君 理事 小林  進君
   理事 五島 虎雄君 理事 滝井 義高君
   理事 堤 ツルヨ君
      池田 清志君    藏内 修治君
      齋藤 邦吉君    田邉 國男君
      中村三之丞君    中山 マサ君
      古川 丈吉君    柳谷清三郎君
      山下 春江君    伊藤よし子君
      大原  亨君    中村 英男君
      八木 一男君    今村  等君
 出席国務大臣
        外 務 大 臣 藤山愛一郎君
        通商産業大臣  池田 勇人君
        労 働 大 臣 松野 頼三君
 出席政府委員
        外務事務官
        (条約局長)  高橋 通敏君
        通商産業事務官
        (大臣官房長) 齋藤 正年君
        通商産業事務官
        (石炭局長)  樋詰 誠明君
        労働政務次官  赤澤 正道君
        労働事務官
        (職業安定局
        長)      百田 正弘君
 委員外の出席者
        通商産業事務官
        (石炭局炭政課
        長)      小島 慶三君
        労働事務官
        (職業安定局職
        業訓練部長)  有馬 元治君
        専  門  員 川井 章知君
十一月十九日
 委員田邉國男君辞任につき、その補欠として加
 藤常太郎君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
十一月十八日
 原爆被害者援護に関する請願(橋本龍伍君紹
 介)(第三八〇穗号)
 同(星島二郎君紹介)(第三八一号)
 戦没者遺族援護の特例措置に関する請願(山口
 好一君紹介)(第三八二号)
 原爆被害者救援に関する請願(荒舩清十郎君紹
 介)(第三八三号)
 同(安倍晋太郎君紹介)(第三八四号)
 同(池田清志君紹介)(第三八五号)
 同(谷川和穗君紹介)(第三八六号)
 同(清瀬一郎君紹介)(第三八七号)
 同(藏内修治君紹介)(第三八八号)
 同(小島徹三君紹介)(第三八九号)
 同(小林絹治君紹介)(第三九〇号)
 同(佐々木盛雄君紹介)(第三九一号)
 同(重政誠之君紹介)(第三九二号)
 同(高橋禎一君紹介)(第三九三号)
 同(高橋等君紹介)(第三九四号)
 同(田中龍夫君紹介)(第三九五号)
 同(辻寛一君紹介)(第三九六号)
 同(富田健治君紹介)(第三九七号)
 同(中井一夫君紹介)(第三九八号)
 同(中川俊思君紹介)(第三九九号)
 同(中村三之丞君紹介)(第四〇〇号)
 同(中山マサ君紹)(第四〇一号)
 同(橋本正之君紹介)(第四〇二号)
 同(八田貞義君紹介)(第四〇三号)
 同(福永健司君紹介)(第四〇四号)
 同(松本俊一君紹介)(第四〇五号)
 同(内海安吉君紹介)(第四三七号)
 同(鴨田宗一君紹介)(第四三八号)
 同(内海清君紹介)(第四八一号)
 同(佐々木良作君紹介)(第四八二号)
 同(日野吉夫君紹介)(第四八三号)
 同(堤ツルヨ君紹介)(第四八四号)
 同(北山愛郎君紹介)(第五二八号)
 同(山中吾郎君紹介)(第五二九号)
 戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正に関す
 る請願(高瀬傳君紹介)(第四三四号)
 同(永山忠則君紹介)(第四三五号)
 戦傷病者のための単独法制定に関する請願(永
 山忠則君紹介)(第四三六号)
 武蔵野北部地区保健所誘致に関する請願(福田
 篤泰君外一名紹介)(第四三九号)
 国立病院等に勤務する医師及び歯科医師の待遇
 改善に関する請願(池田清志君紹介)(第四七
 五号)
 同(足鹿覺君紹介)(第五二六号)
 同(田中武夫君紹介)(第五二七号)
 水俣病対策の早期樹立に関する請願(大久保武
 雄君紹介)(第四七六号)
 未帰還者留守家族等援護法による療養給付期間
 延長に関する請願(堤ツルヨ君外一名紹介)(
 第四七七号)
 同(佐々木更三君紹介)(第五三〇号)
 精神薄弱者対策に関する請願(松尾トシ子君紹
 介)(第四七八号)
 けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護
 法の一部改正に関する請願(松尾トシ子君紹
 介)(第四七九号)
 同(神近市子君紹介)(第五七二号)
 同(本島百合子君紹介)(第五七三号)
 業務外の災害によるせき髄損傷患者援護に関す
 る請願(松尾トシ子君紹介)(第四八〇号)
 同(本島百合子君紹介)(第五七四号)
 戦傷病者の医療制度確立に関する請願(高瀬傳
 君紹介)(第五三一号)
 未帰還者留守家族等援護法による療養給付期間
 延長等に関する請願(井手以誠君紹介)(第五
 七一号)
 奄美群島地区の生活保護費国庫負担率引上げに
 関する請願(池田清志君紹介)(第五七五号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 連合審査会開会に関する件
 連合審査会開会申入れに関する件
 炭鉱離職者臨時措置法案(内閣提出第三一号)
 厚生関係の基本施策に関する件
     ――――◇―――――
○永山委員長 これより会議を開きます。
 この際お諮りいたします。炭鉱離職者臨時措置法案について、商工委員会より連合審査会開会の申し入れがありますが、これを受諾するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○永山委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。
 なおこの連合審査会は、来たる十一月二二十六日木曜日午前十時半より開会いたす予定でありますので、御了承願います。
     ――――◇―――――
○永山委員長 この際、連合審査会開会申し入れの件についてお諮りいたします。
 ただいま農林水産委員会において調査中の水俣湾における漁業被害に関する問題について、農林水産委員会に連合審査会の開会を申し入れたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○永山委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。
     ――――◇―――――
○永山委員長 炭鉱離職者臨時措置法案を議題とし、審査を進めます。
 質疑に入ります。通告がありますのでこれを許します。齋藤邦吉君。
○齋藤委員 ただいま議題となっております炭鉱離職者臨時措置法案につきまして、若干の御質問を申し上げたいと思う次第でございます。
 現在の石炭鉱業の不況は、私が申し上げるまでもなく、景気変動の姿において現われておるのではなくして、いわゆる燃料革命と申しますか、固体燃料から液体燃料へエネルギーの比重が非常に移ってきたということから発生した事柄でございまして、これは日本ばかりじゃなく、イギリス、西ドイツ、諸外国全般の共通的な傾向だ、かように考えるわけでございます。そこで、こういうふうな燃料革命に伴いまして、石炭鉱業が深刻な不況に見舞われ、相当の離職者と申しますか失業者が現実に現われてきておる。特に北九州あるいは常磐、山口、佐賀、長崎、各方面に石炭鉱業の離職者が現に相当現われて、政府の何らかの対策を待っておる、こういう状況にあることは事実であります。と同時に、将来の問題といたしましても、真に燃料政策全般においてあるべき姿において石炭鉱業を保持するといたしましても、これが合理化再建のためには、何と申しましても、ある程度の離職者、失業者というものが出てくるであろうということを予想することも、これまた常識であり、世界の共通の姿であると思うのでございます。そうした中にあって、今回政府が思い切ったこうした単独立法をお出しになったということは、非常に私はけっこうなことだと思います。こうした大きな問題について特別の臨時立法をもって、あるいは従来なかったような緊急就労対策事業というふうな事業を新たに興す、あるいはまたさらに炭鉱離職者援護会というものを設ける、こういうふうにいたしまして、臨時立法をお出しになったということにつきましては、政府の努力に対して私ども深く敬意を表するものでありますが、この法案の内容についてもっといろいろ明らかにしておきたい事項が多々ございますので、以下これからいろいろ御質問を申し上げてみたいと思うのでございます。
 そこでまず第一にお尋ねを申し上げたいことは、全般的に最近における石炭鉱業の不況に伴いまして来年の三月ごろまでにどの程度の離職者が発生するであろうか、また現在どの程度の離職者が出ておるであろうか、あるいはまたこうした出ておりまする離職者の中には、あるいは自分で職業につく者もあるでしょうが、政府の何らかの対策を必要とするそういう者の数はどの程度のものであるか、まずそういった発生の状況並びに対策を要する者の数、さらにまた大ざっぱに申し上げまして、こういうふうな対策を要する離職者に対して政府はどういう構想でこれに臨もうとするのか、どういう考え方でこれらの離職者というものを救済しようとするのか、そういうふうな総合的な政策の概要と申しますか、構想をまず最初に承らせていただきたいと思う次第であります。
○赤澤政府委員 私も単に国会から見ているというだけでなくして、実は現在でも石炭に関連のある産業を営んでおって、今日の石炭業界の実態というものはかねて予見もいたしておりましたし、当然のことがきた、しかもただいま齋藤委員が言われました通りに、これは将来大きな希望が持てない非常に暗い運命だと私どもは考えております。国内に各職種から出ました失業者というものが相当な数に上っておりまするけれども、私どもは特にこの石炭の離職者で現在滞留いたしております者、また新しく出ると予想されます人たちに対して特別の措置をしなければならぬと考えまして、この立法をした次第でございます。数字はあとで安定局長の方から述べさせますけれども、大体この秋の予備費でもって若干の手当をいたしますし、さらになお今後来年の三月末までに手当を必要とする約二万一千名ばかりにつきまして、今回七億円ばかりの予算措置をいたしたわけでございます。この立法の骨子は、ただいま齋藤委員がおっしゃいました通りに、まずとりあえず緊急就労でこの人たちの職場というものを新しく作るということ、また広域に職業紹介いたします上においても、単に炭坑で石炭を掘っておったとかあるいは運搬しておったとかいうだけではやはり新しい職につくことができませんので、そのために特別訓練の便宜をはかる、さらに転進いたしますためには、やはりどうしても背後であたたかく援助する機関が要るだろうということから、援護会を作りまして、やってみればいろいろなあらも出てくるかもわかりませんけれども、まだ今の段階では考え得る限りの措置をしておるつもりでございます。ただいまの失業者の数あるいは予算それぞれに伴っての手当の人数等につきましては、こまかく安定局長をして答弁させます。
○百田政府委員 炭鉱における離職者の発生状況でございますが、今お話しのように炭鉱の買い上げ、石炭事業の不振というようなことからいたしまして、三十二年度以降一貫して減少傾向をたどっておるのでございます。三十二年度末から最近まで状況を見てみますと、炭鉱における常用労務者数の推移は、三十二年度末に三十万八千くらいであったものが本年の八月には二十八万というふうに、約二万八千程度の減少を示しております。特にその二万八千というものは中小炭鉱において著しく、中小炭鉱において約二万二千の減少というようなことになっておるわけであります。
 今後の見通しでございますが、今年度におきましても年度内に、現在大手炭鉱の方ではいろいろな整理計画があるようでありますが、かりにこれが計画通りに実施されますと、本年度内だけでも、今申し上げましたのを含めまして二万七千人程度の減少が見込まれるというような状況にあるわけでございます。
    〔委員長退席、八田委員長代理着席〕
これを失業保険について特に六つの主要産炭県について見ますと、三十二年度と三年度において失業保険の受給資格の決定を受けた者は約五万二千、本年度に入りまして、上期において二万一千、下期においても大体同程度の数字が見込まれる次第でございます。従いまして、本年度内におきましてただいまお話のございました緊急対策を要すべき人がどの程度あるかということにつきましては、労働省におきまして主として筑豊を中心として実態調査をいたしました結果に基づきまして推定いたしますと、本年度内に緊急に対策を必要とするという数が二万一千をややこえるというようなことに推定をいたしておるわけでございます。政府といたしましては従来、本年の初め二月に石炭の離職者に対する対策についての閣議了解によりまして一応の方針を決定いたしまして、それによりまして、本年度におきましては公共事業、失業対策事業等の集中的な施行によりまして、産炭地域においては約五千八百人の離職者対策の計画を立てて参ったのであります。その後の状況等を見まして、その程度では必ずしも十分でないというような結論に達しましたので、本年の九月、予備金支出によりまして、鉱害復旧事業の追加施行、広域職業紹介の強化、特別職業訓練というような対策を講じまして、これによりまして失業対策事業を除きまして五千百四十人についての対策を措置いたしたわけでございます。今回の補正におきましては特に緊急就労対策事業を新たに創設いたしますと同時に、従来の広域職業紹介あるいは職業訓練というものをやるにつきまして、さらにこれを容易ならしめるための措置をとることが必要であるということで、新たに援護会を設立し、これに対しましてあるいは移住資金の支給、あるいは訓練中の手当の支給というような措置を講ずることによりまして、広域職業紹介その他の計画しております措置がスムーズに参りますような特別の措置を講ずることといたした次第でございます。
○齋藤委員 ただいまお答えがあったわけでございますが、今回の法案の対象として、相当の要退職者を対象として救済をしよう、こういうことがわかったのでございますが、その失業者救済の対策としてやはり根本をなすものは、民間企業へできるだけ職業紹介する、あたりまえのことでありますが、これが第一の根本。第二の根本は、失対事業をみだりに興すというようなことではなしに、国が相対膨大な金をもって興しておるところの公共事業へ集中的に吸収する。これが私はやはり一番の根本の対策でなければならぬと思うのでございます。労働省においては、もう失業者が出れば緊急失対法によって失業対策事業だ、こういうふうな安直な考えでなしに、あくまでも民間事業へ安定した職業を求めさして、就職をあっせんする、これが第一であり、第二には公共事業へ集中的にあっせんする、これが根本でなければならぬと思うのでございますが、こういうふうな民間求人へ充足する、あるいは公共事業へ集中的に世話するというようなことは、なかなかこれは口だけでは解決しない問題であります。特に安定所の窓口において、求人がくれば、それをただ黙って取り次ぐというだけでは済まぬ。あるいは公共事業へ集中的に世話するといっても、労働省では一生懸命やろうと思っても、各省ではなかなかそう労働省の言い分は聞かないのじゃないか、こういうふうに私はおそれておるわけでございます。特に公共事業については緊急失対法という、――これはほんとうをいうと実にりっぱな法律でございまして、御承知のように労働大臣が失業者吸収率をきめて、そしてその吸収率に違反する事業主体その他については、労働大臣が是正命令を出し得るというふうにまでしておるのでありますけれども、おそらく今日まで労働大臣は是正命令を出したことはないだろう。しかし現実に私ども地方のいろいろ公共事業のやり方を見ますと、労働大臣の示した吸収率というものをほんとうに守っているのは少ないのじゃないかと私はおそれておるわけでございまして、こういう点についてもっと総合的に、強力に政府はやるべきじゃないか、こういうふうに私は考えております。民間求人の問題については、幸いに石炭と造船を除いては、最近非常に好況を呈しております。もう少しこうした面について労働省は真剣な気持で、こういう職場に、炭鉱離職者とは申しません、一般の失業者を真剣にあっせんするという努力、これが一番望ましいことであると同時に、公共事業へ集中的に吸収するということについても、労働省だけが口先でああだ、こうだと言うのじゃなしに、各省をよく納得さして、失業者というものは各省からいわせれば能率が悪いのだ、能率が劣っているのだとおそらく言うでしょう、そういう中にあって、要するに労働問題を横断的に処理しているのは労働省だけなんですから、もう少し力強く公共事業に法の定めるところによって吸収させる、必要があったらそういう命令を出す、そのくらいの勇気を持って失業者というものを吸収しろ、こういうふうにあっていただきたいと思うのでございます。そういうふうな意味から申しまして、特に公共事業への集中的吸収の問題については、政府に労対連と称する機関があるやに聞いておりますが、この労対連でただわいわいと集まって議論しておったのでは、問題は解決しません。きょうは労働大臣がおらぬで、はなはだ残念でありますが、労働大臣が陣頭に立って各省の公共事業、たとえば港湾、道路に、吸収率の通りに使わなければいけませんということを、一つ閣議において主張し、それを通すというふうにぜひやっていただきたいと思うのですが、労働大臣おりませんから、政務次官からよくお伝えを願っておきたいと思います。そういうわけで、公共事業への集中的吸収と、口ではもっともらしいことを言いましても、これは容易なことではない。そこでこれを吸収させるような機構をはっきり作って、労対連というような、事務屋ばかり集めて縄張り争いばかりしていても解決しませんから、これは一つ機構も十分に整備し、同時にまた内閣としても、この失業者というものも、こういう方面に吸収するのだ、こういうふうな労働力の総合活用ということについて、強力な統一的な意思というものを確立することが先決ではなかろうかと私は思っておるわけでございます。そういう意味において、大臣はおりませんが、一つ政務次官としてのお覚悟のほどを承って、よく労働大臣にもお伝えをいただくように、強くお願いをいたしておく次第でございます。
○赤澤政府委員 齋藤委員のおっしゃることは、全くこれは文字通り問題の核心だと思います。公共事業に労働大臣の告示通り失業者の吸収が行なわれておれば、もっと現在の失業状態というものは変わっておると思います。むしろ地域によっては失業者がないので事業に困るというところも出てきているはずなんです。そこで私もそれに気つきまして、先ほど労対連が役人ばかり集まってもたもたしておるという御批評でございましたけれども、実は私どもも捨ておけませんので、政務次官段階で、関係事業省その他とよく協議いたしまして、できるだけ吸収を、告示通りいかぬでも、それに近いところまで吸収の実績を上げさせようと努力いたしました。今の段階では行政管理庁に連絡をとりまして、少なくとも北九州鉱害復旧事業については、吸収率が守られておるかどうかということを綿密に調査をしてもらっております。ここらを皮切りといたしまして、この問題を根本的に再検討したい、こういうふうに考えております。
 それから最初に申されましたが、民間企業への吸収が第一であるとおっしゃいました。これももっともでありまして、いかに広域職業紹介とか、役人が窓口であっせんの労をとろうといたしましても、受け入れる方がありませんと効果が上がらぬわけでありますから、日経連の幹部にも呼びかけて、そして将来相当発生を予想される、特に炭鉱から出てくる労務者諸君を積極的に職場で吸収してくれるように、日本の産業は、唯一の工業燃料資源といわれる石炭をもととして発展したわけでありますから、そういうことにもよく意をいたして、自発的に吸収するという計画を立ててくれという要請もいたしました。ところが先般いろいろ議論の結果、新聞でごらんになりましたように、約三万数千名を吸収する計画、私はそのものをまだ十分確かめてはおりませんけれども、受け入れ側でも今度はかなり本気になってきてもおりますし、私ども役所といたしましても、齋藤先生のおっしゃることはまことにごもっともでありますので、そういう方針で事務を進めつつあります。
○齋藤委員 ただいま政務次官から御答弁をいただいたわけでございます。ほんとうに失業問題というのは内閣をあげての問題だ、一労働省の問題ではない、こういうふうな考え方から、ただいま政務次官の強い御決意のほども承ったのでありますが、さらに一そう強い覚悟を持ってこの失業問題の解決に当たっていただくということを特に要望をいたしておきたいと思います。
 それから次に総括的な問題としてお尋ねをいたしておきたいと思うのでありますが、これは多少純法律的な質問になって恐縮かもしれませんが、炭鉱離職者臨時措置法という、炭鉱を離職した労働者、失業者のみについての特別立法をする、これがこの法律の根本の内容をなすものでありますが、私が申し上げるまでもなく、失業者というものには色がついておるわけでもないので、炭鉱からやめようが、あるいは駐留軍から離職しようが、鉱山からやめようが工場からやめようが、色はついていない。御承知のように日本の憲法には、法のもとにすべて国民は平等である、こういう規定もある。ところが炭鉱離職者臨時措置法案なるものは、炭鉱をやめたという前職に着目して、その者だけについて特別の事業を興し、援護会を設ける、こういうことになっておるようでございますが、私は憲法に違反するものでも何でもないと思いますけれども、とかく世間には説をなす者がありますから、その辺をはっきりしておく必要があるのではなかろうかというふうにも考えられますので、はなはだ法律的なことでございますが、一つはっきりお答えをいただきたいと思う次第であります。
○百田政府委員 今度、石炭離職者について特別な措置を講ずることといたしたのでございます。お話の通り炭鉱離職者のみならず、他の一般の離職者についても、失業という事態は同じではないかというような御意見は当然あろうかと思います。ただ今回特にこの特別の措置を講じましたのは、炭鉱離職者の特殊性、加えて申し上げますと、第一は、今回の離職というものが、構造的なものと申しますか、単なる不況というよりも、一つのエネルギー革命によって、そういうものに根ざしておるということでございますが、炭鉱の労働者というものが、一つには地理的な条件で、一つの地域に多数集中しておるという現実の状態にございます。それからさらにその地域において、日本の状況から言いますと、炭鉱地帯というものはほとんど炭鉱自体に依存しておるというような形でございますので、そうした非常に就職のしにくい、新たなる離職者の就職がしにくいというような事情も一方にはあるのでございます。同時にまた、炭鉱の労働者というのが、長いこと地下労働という特殊な条件の仕事に働いてきておる関係上、ほかのあるいは駐留軍離職者その他と比べてみました場合に、生活の実態から申しましても、それからその労働の実態からいたしましても、他の仕事に転換することが、今回は一つの大きな転業の対策だと思いますが、非常になじみにくいというような事情にございますので、これを通常の場合と同様な措置をとって、職業紹介なりその他の措置を講ずるという場合におきましては、非常なハンディキャップを有するものであると言わざるを得ないのでございます。そういう意味合いにおきまして、できるだけ他の者と同じレベルのところまで引き上げて、あるいはそれだけの補いをつけてやることによって、この人たちの再就職を容易ならしめようというような趣旨でこの特別措置を講じたのでございますので、特にほかの者より何か特権的に有利な条件を付したというよりも、劣っておる条件を、ハンディキャップに補いをつけるというような意味合いにおきまして、再就職を容易ならしめる必要がある、こういう考え方からいたしまして、この特別措置を提案したわけでございます。
○齋藤委員 ただいまの百田政府委員の御答弁によりまして、炭鉱離職者についてだけ特権を与えたわけではないのだという趣旨がよくわかったのでございます。すなわち、現にある特定の地域に多くの失業者が出て、失業の度合いも非常に深刻になり、再就職の困難性はさらに一そう困難になる、そういうふうな状態において、いわゆる就職戦線におけるハンディキャップを取り返すことによって平等化していくんだ、こういう解釈でございまして、まことに私ももっともなお答えだと思います。すなわち、就職戦線におけるスタートのハンディキャップを是正することによって、法のもとにおける平等を確保するという精神に出ておるということであれば、これは当然やらねばならぬ問題であり、憲法上の疑義もない、こういうことになるのでございまして、まことにけっこうな話だと思います。
 そこで、そういう考え方から一つ出て参りましたのが、この炭鉱離職者緊急就労対策事業という非常にむずかしい長い名前でありますが、こういう事業になったのだと思う。すなわち、失業者がいとどたくさんおるところの北九州その他において、一般失対事業で救おうと思っても、炭鉱離職者の労働能力、そういったふうな面、あるいは一般失対事業を施行することの困難さ、そういうようなことからいたしまして、こういう特殊な事業を興すということになったのだと思うのでありますが、私はこういうふうな方向に――方向としては、むしろこれは炭鉱離職者についてだけの特別な事業でありますが、こういう方面の事業に、将来私は一般失対事業というものは持っていくようにしたらいいのじゃないか、こういうふうにも考えておりますので、こういう面については、この炭鉱離職者のハンディキャップを補う意味においてできたこの緊急就労対策事業、これがむしろ一般失対事業の将来の発展の方向を私は指向するものではないかとも思うのでありますが、その点については、また後ほどお尋ねをいたしてみたいと思います。
 そこで、大体総論的なことはこの程度にいたしまして、今度は各論的にいろいろ問題の点を明らかにしていただきたいと思うのでございます。
 まず第一に、この第三条の職業紹介の計画というのでありますが、他の職業につくことを促進するための職業紹介に関する計画ということを策定して、できるだけ他の地域にあっせんしよう、こういうことでございますが、この計画の内容というものは、どういうふうな内容を労働大臣はきめられるのか、その内容についてお示しをいただきたいと思います。
○百田政府委員 この第三条におきまする職業紹介に関する計画といたしましては、その前段にございますように、いかなる地域についてこういう職業紹介の計画を樹立するかということをまずきめるわけでございますが、その場合に、たとえば筑豊地区なら筑豊地区、常磐地区なら常磐地区は、その意味においては非常に就職が困難だ。従って、他産業または他地域の職業につかなければならぬというような場合におきまして、具体的に筑豊なら筑豊、常磐なら常磐という地区において、第一といたしましては、その地区において他地域に転出して就職することができる炭鉱離職者の見込み数を把握せしめる。それからどこにそれを転出せしめるか、これは需要地域における労働市場の状況等がございますので、主要労働需要地域における炭鉱離職者の受け入れ可能数並びに受け入れの計画というものが一つの問題になります。その場合におきまして、そうした対象となるところの炭鉱離職者の状況に応じましての職業訓練の計画、職業訓練を実施する予定数、それによりましてどの程度職業紹介を実施するかといったようなことを、あらかじめ具体的な地域につきまして、需要地区並びに離職者あっせん地区において、以上のような事項を内容としたものを作っていく、こういうふうに現在のところ考えております。
○齋藤委員 ただいまの計画でありますが、私はこれを読みますと、もっと積極的な計画を、勇気を持ってお作りになっていただきたい、こう思うのです。というのは、私は総論的に申し上げたのですが、他の地域における公共事業その他――何も地元ばかりとは限りません、公共事業への集中的吸収という言葉がございますが、よその地域にどういう公共事業があるか、その公共事業になんぼ持っていくのだ、こういうことをきめるということが私はやはり大事だと思うのです。職業紹介と、何か非常に事務的な言葉になっておりますが、職業紹介になる前提である職場というものをはっきり確保することが大事なんで、どこどこの道路の事業に持っていくのだ。それで、どこの道路に持っていくのには家が足りぬというのなら、援護会で飯場を作る、こうなるべきものであって、あまりそう事務的じゃなくて、安定局長はほんとうに労働大臣以上になったようなつもりで、各省の事業をがちっと握って、道路なり港湾なり――あるいは緊急失対事業には適用がないかもしれませんけれども、道路、港湾、有料道路でもけっこうです、あるいは鉄道の新線建設ということでもけっこうです。そういうような計画は、公共事業であろうと、あるいは公団のような準公共事業であろうと、あるいは政府の財政投融資であろうが、そういう事業計画全部をひっくるめた計画というものが、職業安定法の基本に基づくいわゆる労働力活用計画と表裏一体の具体的な計画としてここに生み出す。こうでなければ、第三条というものは生きてこないという感じがいたします。そういう意味において公共事業の計画、具体的な職場々々の計画あるいは有料道路のような準公共事業あるいは財政投融資あるいは新線建設のような仕事に従事さす、そういう具体的な計画を作って、そこでそれを筑豊から持っていくには家をどうするんだ、こうなっていかなければならぬ。そこでこういう計画こそは労働大臣のなすべき最も重要な計画でありますから、あまり事務的な安定所の窓口の職業紹介くらいに考えないでやっていただくことが必要だと思いますから、もう一回その点をはっきりさしていただきたいと思います。
○百田政府委員 今お話しになったことは、実は前提として当然のことであると考えておったわけですが、先ほど労対連はいかにも事務的であるというお話がございましたけれども、私ども、政府全体としてこうした場合における総合的な労務の調整計画というものが前提となるべきものだと考えます。従いまして、労働省といたしましても今お話しのような工合に、たとえば電源開発工事についても、あるいは新線建設について、あるいは災害復旧工事等について、どの程度配置と申しますか、そこに就労せしめるという計画を作ることは当然であると考えておるわけでございます。
○齋藤委員 先ほど私も総括的にそういうふうに申し上げましたが、雇用問題というのは各省を通ずる横断的な仕事、労働省と何と、ということじゃなしに、政府の仕事ですから、そのつもりで一つやっていただきたい、こういうことをお願いいたしておきます。
 次に、炭鉱離職者緊急就労対策事業について二、三お尋ねを申し上げておきたいと思うのですが、これと緊急失業対策法との関係についていろいろお尋ねをしてみたい。緊急失業対策法は、失業者発生の場合の諸般の失業対策についての措置を規定した一般基本法であります。そこで、この基本法と炭鉱離職者緊急就労対策事業というものはどういう関係があるか。この緊急就労対策事業というものは、一般失対法でいうならば失対事業の範疇に属すべきものなのか、公共事業に属すべきものなのか、あるいはそれとは別に、特別立法として炭鉱離職者のみを対象とした失業救済的事業として、労働省の所管の権限として持っておる失業救済という、そういう概念の一環として、緊急失対法外の特別の事業として規定したものなのかどうか、その辺を一つ明らかにしていただきたいと思います。
○百田政府委員 この法律上の性格からいえば、これは緊急失対法による失対事業でもなければ公共事業でもない、特別の事業であると言わざるを得ないのでございます。実際の問題といたしまして、私は先ほど先生から御指摘がございましたように、こうした事業こそが本来の緊急失対法の目的ではなかったかというふうに実は考えておるわけでございます。しかしながら、現在の一般失対事業について見ます場合、または公共事業について見ます場合に、現実の問題として、まず第一に失業者をできるだけ公共事業等に吸収していく、そのためには吸収率の定めがある。従ってできるだけそれに吸収していく、それでもどうしても吸収できない、民間あるいは公共事業等に吸収できない者について、その失業期間、暫定的に一般失対事業に吸収するのが緊急失対法の建前であり、その点に関する限り炭鉱離職者の場合においても同様なことが言えると思いますけれども、現実の問題といたしまして公共事業、鉱害復旧事業、いろいろ適当な事業がございまして、それぞれ失業者を吸収するための目的と同時に、建設効果の追求という要請もございます。あるいは実施地域の関係もございます。実施時期の関係もございます。そういったことからして、おのずから公共事業のみをもってしては炭鉱離職者の吸収に不十分である。一方また、一般失対事業について考えました場合に、これは現状から見まして、あらゆる種類の前歴の異なった失業者が安定所に出て参り、これを対象にいたしまして現在のような失対事業をやっている。われわれとしましては、先ほど申しましたように炭鉱離職者の一つの転業対策、転換の対策というような建前から、できるだけ労働力を保全し、同時にそれぞれ同質の地下労働者として似たような肉体的な能力を持っている人たちを、単に一般失対事業に吸収していく、いろいろな前歴を持った人たちを一緒に吸収していくということは、そういう目的からいっても十分に労働力を保全するために有効ではないのじゃないか。かつまた、炭鉱離職者の発生地域というものはある特定の地域に集中しているというような関係からいたしまして、特別なこうした炭鉱離職者のみを吸収する緊急就労対策事業というものを、今申し上げたような観点から特別に設置した次第でございます。従って法律上は一般失対でもなく、公共事業でもないということになるかもしれませんが、今後の方向としまして、できれば第一には公共事業に吸収していきたい、それでやむを得ない者については一般失対に持っていかないで、特別に集中的にその均一の労働力を保全するためにこうした特別の事業を興したい、こういうふうに考えてこの緊急就労対策事業というものを提案した次第でございます。
○齋藤委員 大体今お話がありましたが、要するにこの緊急就労対策事業というものは失対法による一般失対ではない、よくわかりました。そこでこういうことを興した理由も、現在の失対事業の予算あるいは施行上のいろいろな問題があって、能率の高い炭鉱労働者を吸収するには適当でないから、失業救済的な意味でこういう事業を興したのだ、こういうことでありまして、まことにその点はけっこうだと思います。将来はこういう方面の範囲も拡張して、今の一般失対事業は能率が上がらぬと非常に不評をこうむっておりますから、こういうふうな予算上、施行上の改善も加えて、緊急失対法の失対事業も改善していただくようにお願いしておきたいと思います。
 なお、この緊急就労対策事業については請負を認める、国あるいは地方公共団体が直接やってもいいでしょうけれども、請負を認める趣旨である、こういうふうに考えております。また賃金等についても、雇われます業者との契約によってきまるべきものであって、緊急失対法のような労働大臣が定めるという性質のものでもないと思いますが、その点もはっきりとお答えを願っておきます。
○百田政府委員 今お話しの通り、この緊急就労事業につきましては、地方公共団体が直営することになっているわけでございません。もちろん請負を認めることになっております。さらに賃金につきましては、そういう関係で事業の施行主体、それから労働者との間においてきめらるべきもので、労働大臣がこれを幾らということをきめるということはいたさないわけであります。
○齋藤委員 今までのお答えによって大体わかって参りましたけれども、炭鉱離職者については緊急就労対策事業のみによって救うというのではない、一般失対事業もあると私は思う。炭鉱離職者のうちの能率の低い者については当然一般失対事業もある、こういうふうに考えるのでありますが、その点はどうなんでしょうか。やはりそういうふうに考えていいのでしょうか。
○百田政府委員 炭鉱離職者の中にもいろいろの人がございますし、あるいは相当労働能力の低下した層の人もおられるわけであります。そういう関係からいたしまして、やはり緊急就労対策事業がある程度負担しておりますけれども、それに適格でない人につきましては一般失対事業の対象として考えざるを得ない、こういうことであります。
○齋藤委員 先ほど来のお話によってわかりました。すなわち炭鉱離職者に対して転業的な意味において、暫定的とはいいながらこういう事業を興す、こういうことでありますから、従って賃金については労働大臣が定めるということもないでしょう。請負業者との間の話し合いによってきまる、こういうことでもございましょう。従って暮れになりますと全日労の労働組合の諸君が年末手当よこせ、お盆手当よこせということになりますが、そういうことはもちろん適用がない、それは業者との話し合いですから、ないということになると思うのだが、その点もはっきりさしていただきたいと思います。
○百田政府委員 その点は今お話しの通り、たとえば公共事業等に就労する者の場合と同様でございます。
○齋藤委員 そこでなおこの機会に、一般失対事業にも行くということでもありますから、ただ一点だけ私簡単にお答えを願っておきたい問題があるのですが、最近失業対策事業に従事しておる労働者が、賃上げ要求を各市町村においてやっております。どういう指令が出てどうやっておるのか、組合のことは私知りませんが、やっております。各市町村とも実際問題として困り抜いております。(「安いからだ、食えぬからだ。」と呼ぶ者あり)安い、高いは別として、労働大臣が賃金を定めるということになっておる。そこで市町村長は何ぼそういう陳情を聞いたってできないのです。ところが弱い市町村長――全国、数が多いのですから、頭の弱い方もおられましょうから、多少賃上げ要求の圧力に屈服いたしまして、権限外の賃上げを認めるかのごとき態度をとる者があるやに承っておる。こういう問題については私が申し上げるまでもなく、労働大臣が失対労働者の賃金をきめると法律に書いてある。必要があったら上げたらいいのです。必要がなかったら上げないがいいのです。その点をはっきりと私はさしておくことが必要だと思うのです。全国の市町村長に対して安定局長は一体どういう指導をされておるのか、この辺ははっきりしておいた方がいいと思いますよ。ほんとうに全国の市町村長は弱り抜いております。労働大臣がきめる。必要がなかったら上げなくていいです。必要があったら上げたらいい。御承知のようにPWの調査というものをやっている。おそらくこれがまだ完了していないと思うのです。この八月からやっておるのですから、おそらく基準局でも集計はまだできないと思います。調査中だと思います。そこで十二月中にはやらないならやらないのだ、四月くらいを見当に来年度の予算のときに考慮しているのだとか、何とかしてやらぬことには、全国失対事業において苦労しておる市町村長は、すわり込まれて実に苦労していますよ。いいとか悪いというのではない。そういう現実にある。そういうことに対して労働大臣は一体指導しているのか。まずその点だけ簡単でいいですから、あまり長く言いますといろいろデリケートでしょうから、簡単に御答弁願いたいと思います。
○百田政府委員 失対事業の賃金の問題につきましては、現在昭和三十二年十月一日に改定して今日に至っておるわけです。その後の一般賃金水準の上昇傾向等も考え合わせまして、労働省といたしましては来年度からは何らかこれにつきまして賃金引き上げの措置をとりたいというふうに考えて、現在折衝中でございますが、その間におきまして、現在自由労働者の組合におきまして全国的に指令しまして、各一番末端の市町村長に対しまして独自に賃金を引き上げろという要求をいたしております。これにつきましては申し上げるまでもなく、われわれとしては賃金についてそういうふうに考えて努力いたしておるわけでございますが、現在の法律におきましては改定になるまで、要するに今お話しのように失業対策事業の賃金額の決定は労働大臣が行なうということになっておるわけでございます。従いまして地方公共団体におきまして、賃金に関する限りそれを勝手にきめる権限はないわけでございまして、これは補助の条件にもなっておるわけでございますので、現在実際問題として各地で非常にお困りになっているようでございますが、そういう場合につきましては、全部これは労働省がきめるのであるから地方公共団体ではきめられない、だから交渉する場合には労働省に対してやるべきだというようなことで、全国市町村に対しては私どもはそういう態度を明らかにいたしております。
○齋藤委員 くどくは申しませんが、来年度において賃金問題については、善処するならするということをやはりはっきり安定局長が全国に指令されたらいいと思う。実際全国の市町村長は迷惑ですよ。ことしは予算の問題もあり、調査もおそらく完了していないのでしょうから、調整はとっていない。とっていないならとっていないでけっこうだから、安定局長は全国に、明年度の予算において考慮しているのなら考慮している、結論は出ないのですから、来年度において考慮しているなら考慮しているということを全国の市町村長に徹底させる。これは当然の責務ですからそういうふうにお願いしたいと思います。それ以上はお尋ねしないつもりであります。
 次にこの法案に入りまして、職業訓練でございますが、第五条第二項、「政令で定めるところにより、その一部を負担する」とおっしゃいますが、どの程度の予算の補助率になりますか、それを一つお尋ねをいたしたいと思います。
○百田政府委員 現在一般の負担率は施設費、運営費ともに画一、二分の一の負担率を、運営費につきましては三分の二にいたしたい。これは駐留軍離職者に対してとった措置と同様でございます。
    〔八田委員長代理退席、委員長着席〕
○齋藤委員 そこで、これはこまかいことをお尋ねして恐縮なんですけれども、一般職業訓練所は既存のものに併設するものがあるのでしょうが、併設するものだけについてそういうことになる、こういうことだと思いますが、いかがですか。
○百田政府委員 そういうことでございます。
○齋藤委員 そこでなお、この職業訓練については一般職業訓練所のほかに、炭鉱離職者については失業保険特別会計において別途総合職業訓練所的なものを設けられるということを承っておりますが、何カ所程度お考えになっておられるか、明らかにしていただきたいと思います。
○百田政府委員 総合職業訓練所につきましては、特にこの石炭離職者対策のために本年度の失業保険特別会計の予備費において、二億円をもちまして年度内に四カ所実習場その他の施設の整備をはかりたいと思って、現在考えておりますのは北九州の職業訓練所、福島、山口、大阪、この四カ所につきまして訓練人員千人を対象として考えております。
○齋藤委員 ただいま四カ所お作りになる、非常にけっこうなことでございますが、特に大阪に作られる、これは非常におもしろい構想だと思います。しかしまたそれだけ非常にむずかしい、こういうふうにも思いますので、炭鉱離職者を大阪へ連れてくるためのあたたかい諸般の準備というものを一つ考えていただいて、慎重にやっていただきたいと思います。こういう例、大労働市場にこういうものを作るということは非常におもしろい構想でありますから、りっぱに成功するように慎重な御努力をお願いいたしておきたいと思います。
 なお次に今度は援護会でありますが、この援護会の設置ということは、実にこの法律におけるあたたかい、大きな政策の大宗をなすものでありまして、政府がこういうことを思い切っておやりになられたことは、まことに敬意を表する次第でございますが、この援護会のいろいろな事柄についてお尋ねをいたしておきたいと思います。特にこの援護会の業務の内容を私は具体的に国民の前に明らかにしていただきたいと思います。一括して一つ明らかにしていただきたいと思いますから、項目を申し上げます。
 まず第一に、第二十三条の移住資金でありますが、移住資金の内容はどの程度の内容になるかということであります。おそらく扶養家族数により、あるいは移転する距離にもよると思いますが、移住資金の内容を一つはっきりとお示しをいただきたい。
 もう一点は、その移住資金に関連いたしまして、「多数居住する地域からその他の地域に移住する」こういうのですが、この地域から地域という考え方は、町村単位で考えるのか。町村単位といいましても、これはなかなかむずかしいと思うのです。炭住が甲という村にあって、炭鉱は乙の村にある、こういうものに通っている者もあります。こういうものの移住資金はどういうことになるのか、あるいはそういう町村単位にかりに指定するとして、北九州の炭鉱の山から山口の炭鉱のある地域に移転した場合に、出すか出さないかという問題もありましょう。しかしその場合でも、そういう場合には出さないのだというのではいけない。向こうに行ったからといって、独立自営する場合があるでしょう。独立する場合にはやはり出さなければならぬ、そういうようなこともありますので、この移住資金の内容並びに地域の指定のやり方、それから地域間の移動についての心がまえ等についてお聞かせをいただきたい。
 次に、職業訓練を受ける炭鉱離職者に対する手当でありますが、その内容についてはっきりとお示しをいただきたいと思います。
○百田政府委員 第一に、この業務の内容につきましての点でありますが、具体的には業務方法書できまるということになります。これをわれわれがどういうことで認可していくか、その基準はどうか、予算的な考え方はどうかということになりますので、最終的にこうということは申し上げられませんが、今御質問になりましたような点につきまして申し上げます。
 第一に移住資金の内容でございます。これはまだ最終的な結論には到達いたしておりませんが、大体の考え方といたしましては、ある一定の基本額を定めまして、それに対しまして、あるいは年令加算あるいは扶養親族加算といったようなものをこれにつけていく。同時に他地域に移動する場合に、遠距離の場合と、あるいは海外に移住される方もありましょうが、そうした場合の加算金、それにプラス移転の場合の移転費といったようなものを合算して参りたい。こまかい基準につきましては、加算率をどの程度にするかということを現在検討中でございますが、大体の目安といたしまして、現在炭鉱離職者につきまして標準世帯と申しますか、筑豊地区でこの間実態調査をいたしました。被扶養者を持っている人の平均年令が四十二才程度になり、扶養家族が三・三人ということで、勤続年数が大体十二年程度ということになっておりますが、そういう人たちがかりに標準的なところ、九州から大阪、関西方面を想定いたしますと、これが大体今のわれわれの考え方では十万円程度になるというふうに考えております。被扶養者のない場合におきましても大体三万円か四万円程度というようなことが一応の試算として出ております。この内容につきましては、さらに検討をいたしたいと考えております。
 第二に、指定する地域でございますが、この地域につきましては、炭鉱労働者及び炭鉱離職者が多数居住している地域を市町村の区域で指定いたしたいというふうに考えております。
 それから原則として産炭地域に、今申し上げました指定した市町村の区域に移住する場合には、現在のところ移住資金を支給しないというふうなことを考えておりますが、これも事情によっていろんな場合があろうかと思いますので、この点はさらに検討したいと考えております。
○齋藤委員 産炭地に移住した場合には原則としてやらない、それはけっこうでしょう。けっこうでしょうが、その地域に行って自営業をやるときには出さなければいかぬですよ。そういうふうに思いやりを持った仕事をしてやっていただかなくちゃならぬということを申し上げておきます。たとえば北九州から宇部の方に自営業をやるから引っ越すのだ、これをやらぬというのはどうしてもこの条文から読めませんし、おかしい。それははっきりやる、こうしなければいけないと思います。
 それからこういう仕事は、局長のお話によると、業務方法書ではっきりきめてやるのだから、それは最終的にはきまらない、そういうことでは困る。もらう方は国民なんですからね。労働福祉事業団のような、補導所を経営するとか病院を経営する、それは業務方法書でいいのです。しかしそれは国民が知らなければならぬことなんですから、もう少し自信を持って、きまらぬというならきょうじゅうにでもきめて、最終的なきまった意見を述べるということに私はしてもらいたいと思います。これは国民が望んでいることですよ。それを業務方法書であときめるのだ、最終的にはどうだ、これでは非常に困りますので、その点はもう少しはっきりとしていただいて、そうして自信のあるお答えをお願いいたしたいと思います。それから二番目の手当、次は宿泊施設、四の労働者用宿舎の貸与、こういう二、三、四の具体的内容について自信のあるお答えをいただきたいと思います。局長さんでなくて、自信のある方でけっこうでございます。
○有馬説明員 第二点の訓練手当についてお答え申し上げます。手当は、昼間の訓練所に通う者に対しましては日額二百三十円、夜間に通う者に対しましては百三十円ということにしております。せっかく手当を出しましても、税金の関係、生活保護の関係、いろいろ差し引かれると困りますので、税金については、額が割と少額でございますから、総合所得におきましても一時所得におきましても、この程度の額は課税の対象になっておりません。生活保護との関係でございますが、これは厚生省と折衝いたしまして、技能修得に要する経費といたしましてこの程度の額は生活保護法による生活保護の金額から差し引かないように調整をいたします。また失業保険金の支給とは両方併給をするように考えております。この支給の方法でございますが、出席日数に応じまして日割り計算するわけでございますけれども、月二回に分けて援護会から直接本人に支給させるという方法で支給を考えております。
○齋藤委員 この辺あまりこまかくなりましても恐縮ですから、以上の点にとどめておきます。特にこの移住資金に税金を――まあ法律的にはかかるようでありますが、実際かけない、これは非常にけっこうなことであります。援護会の仕事は、国がやってやれないところに手を伸ばすあたたかい援護の仕事をやろうというのでありますから、どうかこの援護会ができました暁におきましては、あたたかい手を差し伸べるという気持で、一つあまり形式ばらずに運営について御注意をお願いいたしたいということをお願い申し上げておく次第でございます。
 もう一つ私、石炭局の方にお尋ねをしておきたいと思うのであります。こういう炭鉱離職者を吸収するのは、民間の職場あるいは公共事業、これは私は非常に安定した職場として望ましい、こういうふうに考えるのでありますが、その公共事業の中で鉱害復旧事業、これなども炭鉱離職者を現地において吸入するには非常にいい仕事だと思うのです。ところが、私もあまり存じなかったのでありますが、この鉱害復旧事業は九州や宇部その他の地域にも相当あるようでございますが、常磐地域には鉱害復旧事業というものがないのです。国会でありますから、私はそう具体的なことをここで申し上げるつもりもありませんが、やはり地方にはそれぞれの鉱害があるようであります。こういうような鉱害復旧を私は常磐地帯においてもやるべきじゃないか、特に最近この石炭鉱業合理化臨時措置法によって買い上げ山が出てくる。そうすると買い上げられて山がつぶれるというと、土地の、地方の農村の方々は、今までは炭鉱があったからあまり言わぬでおった。しかしいよいよ閉鎖してしまったとなると、さあ二十年前のたんぼにして返せ、こういう声も出ないでもない、こういう実情もあるようであります。そこで通産省としては、常磐地帯においては鉱害というものがないとお考えになっておるのか、あるとお考えになっておるのか。あるとするならば、なぜ鉱害復旧事業というものはやれないのか、あるいは将来これはやらすつもりなのかどうか。これはもちろん通産省だけの職権ではできない。各市町村なり業界の方々の協力を得なければできないことでありますけれども、しかし通産省が、鉱害があってこれはぜひやらなければならぬということであれば、これは協力するでしょう。そういう意味において、この常磐地帯においてなぜ鉱害復旧事業というものをやらないのか、これを将来どうされるお考えなのか、その点も一つお尋ねしておきたいと思います。
○小島説明員 お答え申し上げます。常磐地区には、これはちょっと古い調査でございますけれども、昭和三十年の調査によりますると、約五億円程度の鉱害があるというふうになっております。その後若干増加いたしておりまして、来年度におきまして再度調査をいたしまして鉱害量をはっきりさせたい、かように考えております。そこで常磐地区の鉱害につきましても、次第にほうっておけないというふうな段階になって参りましたので、ただいま御指摘のように、九州とか宇部とか、これは臨時石炭鉱害復旧法という法律がございまして、それによりまして鉱害復旧事業団というものがそれぞれの地区で作られておるわけでございます。常磐につきましてもそういうものを作りまして、鉱害復旧を計画的に迅速に行なうという必要があると考えております。ただ事業団の設立の前提になりますることは、これは関係者――関係者と申しますのは、関係の市町村、それから関係の鉱業権者、それから関係いたしまする被害者、この三者のグループが関係者でございますが、この関係者の協調とその同意ということがありませんと設立がむずかしゅうございます。かりに設立いたしましても、あとの運営が計画的にいかないというおそれもございます。従いまして、さような意味におきまして、われわれの石炭局といたしましては、機会のあるたびに鉱業権者、関係者との話し合いをいたしております。できるだけ早くそういう事業団を作って、臨鉱法態勢で鉱害復旧をやろうではないか、こういう話し合いをいたしております。そういうような事業団を作つた方がいいというふうな雰囲気もだんだん醸成されて参ったようであります。さらに、今後われわれの方といたしましても一段の努力をいたしまして、できるだけ早く常磐地区にも事業団を設立いたしまして、鉱害復旧に全力を注ぎたい、かように考えております。
○齋藤委員 非常にけっこうな通産省の御意見で、臨鉱法も時限立法でございますから、どうかそういう方向でお進め願いまするならば、炭鉱離職者の失業救済の上から申しましても、鉱害の賠償という上から申しましても、非常に望ましいことではないかと思いますので、ぜひお願いをいたしておきたいと思います。
 なお援護会に対する寄付金の問題でございますが、先般新聞で見ますと、何か日経連が寄付をするというふうなことがちょっと出ましたけれども、そういう事実があるのでしょうか。それもまたどういうふうにお考えになっておられるか、その点を一つお聞かせ願いたいと思います。
○赤澤政府委員 私も新聞で見ただけで、具体的な申し入れなりは承知いたしておりません。
○齋藤委員 三億とか一億とかは別といたしまして、日経連が産業界全部の問題として寄付しようという態度は、非常にけっこうなことだと思います。(「けちくさい、けちくさい」と呼ぶ者あり)ところで、けちくさいという批判は別といたしまして、最後に、この法律は施行の目から五年以内に廃止するとありますが、五年といたした理由は、どういう理由でありますか、一つお聞かせいただきたいと思います。
○赤澤政府委員 爆発的に出てくるこの石炭離職者をできるだけ広域に就職させたい、その目的で緊急就労という別の柱を一つ立てますし、また訓練だとか、また別に援護等をいたすわけでありますので、これは恒久的に続けさすという考え方で起案したものではありません。五年で終わるということは、はっきりは申し上げられませんけれども、大体それ以内でこういう該当の人たちはそれぞれ適職につけたいという目標を掲げたまでのものであります。
○齋藤委員 炭鉱離職者臨時措置法案につきましては、大体以上のような点をお尋ねしたわけでございますが、冒頭に私申しましたように、今回の石炭業界の不況というものは、ほんとうに景気変動ではなく、燃料革命の結果として現われておる問題でありまして、そうした中にあって石炭業の再建合理化をはかっていくということは、政府だけの力ではとてもできない、非常に重要な問題であるわけでございます。労使それぞれ良識を持って、この燃料革命の客観的な事実を十分に認識して、その上に立って、石炭業の合理化をはかると同時に、また出たお気の毒な離職者に対しては、あたたかい援護の手を政府が考える、こういうふうに、政府、労使一体となって、この問題の解決に当たるということが必要だと思います。そういう意味において、どうか政府におきましても、経営者の諸君に対しては、あくまでも自分自身の企業努力ということを一つ強く訴え、またこうした出る離職者についても、全産業全体の問題として、全面的な協力をするという態勢を強力に御指導いただきますと同時に、労働組合の諸君に対しても、この燃料革命の客観的な事実というもの、これを良識をもってながめるという立場に立って、建設的な協力を求めるように御指導あらんことをお願いし、また政府においても、不幸にして出た失業者、離職者に対しては、あたたかい手を差し伸べるということを最後にお願い申し上げまして、私の質問を終えさせていただくことにいたします。
○永山委員長 ちょっと速記をとめて。
    〔速記中止〕
○永山委員長 速記を始めて下さい。
 滝井義高君。
○滝井委員 炭鉱離職者臨時措置法案に関連をして、こういう法案を作らなければならなかったその根本であるまず石炭の問題について、通産大臣、労働大臣にお尋ねしてみたいと思うのです。それで、何か通産大臣は二時からは御要件があるそうですから、なるべくそれくらいまでに終わるようにいたしますが、きょうだけで終わらぬと思いますので、もう一ぺん次会に来てもらうことにして、とりあえずおもな点だけをお尋ねしたいと思います。
 御存じの通り、最近石炭の問題がずいぶんマス・コミに取り上げられて、まああらゆる新聞で石炭のことが書かれております。ラジオ、テレビ等でも「日本の素顔」という中に、やはりこのボタ山の苦悩を訴えるような企画もテレビなんかにも出ております。そういうように石炭問題が非常にマス・コミに取り上げられておるが、同時に、今石炭産業に働いておる労働者自身もまたその石炭産業全体の問題を、やはり自分の首に結びつけて考え始めてきたということです。今までこういうことはありませんでした。それから日本の経営者の団体においてもどの程度の熱意があるか、これは一応参考人としてきてもらって聞かなければなりませんが、まず客観的に見ると、相当積極的に、単なる石炭資本だけの問題としてでなくして、やはり全経営者の問題として取り上げるゼスチュアを示しておるようであります。さいぜん齋藤委員からも、日経連の方で何か援護会に金を寄付するというようなことがあったが、幾らくらいだろうかということで、そういうのは新聞で見たので、額ははっきりしませんがという労働政務次官の答弁がありました。ここに日経連から出ているのを見ますと、石炭鉱業離職者援護会の活動を強化するため、さしあたり一億円の援助供与を行ない云々、こうあるのです。自民党が安保改定のPRをするために三億円の金を出してくるという、その三億よりかは少ないようであるけれども、まあ一億円の金をとにかく出そうという、こういう今までちょっと見ないような形が経営者全体に出てきているということです。そこで、そういうような客観的な情勢の中で、この石炭の危機というものは景気の循環には関係ないんだ、エネルギー革命だ、こうおっしゃっておるわけです。これは今齋藤委員の質問でもエネルギー革命だとおっしゃっておるんですが、通産大臣は今の日本の石炭危機といわれておるものを一体どういう工合にごらんになっているのか、石炭危機に対する大臣の認識をまずお聞かせを願いたいと思うのです。
○池田国務大臣 私は、今高原景気とか、また日本の経済の非常に上昇している姿の中に、世間でいっております石炭が斜陽産業ということから考えまして、何とかこれを一般産業並みに安定した、そして向上する産業に立て直さなければならぬという気持で進んでおるわけでございます。
○滝井委員 石炭を安定した、向上をする産業にやりたい、こういうことですが、そういう安定をした、向上する産業にする、その現実の石炭の危機というものに対してどういう認識を持たれておるかということなんです。たとえば政府とか石炭業者は、今齋藤君も言っておりましたが、石炭が危機ということは、とにかく大量の首を切って合理化をやっていくこと、これでなければ石炭はもうどうにもならぬのじゃという言い方をしておるわけです。そしてそれはエネルギー革命から来ておるんだ、こう言うけれども、一体今エネルギーの革命なんというものがほんとうに行なわれておるかどうかということなんです。私は、原子力の平和利用が大々的に、世界的に行なわれるというなら、これはエネルギー革命ということが来ておると思うのです。ところが原子力の平和的な利用、特に原子力によって電力を起こすなんというけれども、これが実際に商業べースに乗って行なわれるというのは、この前の電力会社の意見を商工委員会で聞いた――大臣もお聞きになっておりましたが、まず早くても十年、おそくて十五年だと言っておるんですね。そうすると今われわれは十年、十五年先の幻影に驚いて、エネルギー革命だ、エネルギー革命だと、こういう騒ぎをやっておるという感じがするんですよ。そういう点で実際に目前にあるものは、私はどうもエネルギー革命というようなもので、石炭が危機に来ているということは考えられないのですね。こういう点なんです。こういう点を一体どう大臣はお考えになっているかということなんです。そういうことから危機だ危機だといって、首を切らなければならぬ、首を切って同時に合理化をしなければだめなのだ、こういう言い方をされておるのです。一体そういう工合にエネルギー革命、首切り、合理化とすぐ結びつくのか、この認識なんです。
○池田国務大臣 革命という言葉がどういうのかわかりませんけれども、エネルギー事情が日本のみならず世界的に非常に変わってきたということは、滝井さんもお認めになると思う。たとえばエネルギーは年とともにどんどんふえて参っておりますが、過去五年間の状況を見ますと、重油の方は八割余りも増加しておる、電気の方は五割前後増加しておる、石炭の方は四%、こういう消費の状況は、これは革命という言葉がいいか悪いかわかりませんが、よほど変わってきておる。しこうして一カロリー当りの値段にいたしましても、石炭と重油との差が非常についてきております。また差がふえておる。こういうことを唱えて言っておるのではないか。特にエネルギーの流体化、早い話が一トンのボイラーを置くのに、重油をたくボイラーだったら五百万円程度でできますが、石炭だと五割増しの七百五、六十万円かかる。こういうことになってきますと、いわゆる合理化に進んでいく経済界としては、燃料費も安いし、設備費も安いということになれば、これは革命という言葉がよいか悪いか、実情はこうなっておるのであります。よほど変わってきた。しかも今見通しとしては、メリット関係はよほど違ってくるだろうし、重油もどんどんこれから下がっていく。ことに日本はガソリンと重油との関係におきまして、世界に比較しますと、ガソリンは非常に安くて重油は高い。これはどこから来るかというと、日本の石炭が外国の石炭より高いということで、原油から出た製品の価格差をつけておる。こういうことから考えますと、エネルギーの様相がよほど変わってきておるし、くるのではないかということで、世間の人が革命という言葉で言っておるのではございますまいか。
○滝井委員 大臣の言われる程度に、なるほど、たとえば一九五三年から一九五八年、この六カ年間をとっても、重油の生産は二・七倍になっておる。石炭は一割くらいしか伸びていない。こういうようなことも私もよくわかります。それから同時に、それは石炭だけでなくて、たとえば硫安はこの六カ年間に一・三倍、尿素肥料は六倍に伸びておる。それから三輪トラックなどは、これは全く生産が六カ年間に停滞しておる。ところが小型四輪トラックあるいは乗用車というようなものは七倍から八倍程度に伸びていっておる。綿糸などは伸び悩みだが、合成繊維は八倍に伸びておる。それから電気冷蔵庫のごときは五十五倍、テレビは九十九倍だ。こういうように市民生活をやる三種の神器、テレビと電気冷蔵庫と電気洗たく機といわれるくらいに、こういうように非常に変わってきておる。産業の様相、人間の好みと申しますか、そういう点でやはり私は変わってきておることも認めます。それからもう一つ石炭について変わってきておるものは、私は石炭の政治力も変わってきておると思うのです。たとえば一九二〇年に、当時の国鉄の総裁は後藤新平さんだったのですが、当時国鉄の石炭購入について、一等炭くらいの優秀なのを使っておったらしいのですが、ところが二等炭だ三等炭だという悪いものを石炭資本が入れてきた。そこで後藤新平さんは怒って、これから石炭価格の合理化をやるのだという申し合わせをいたしました。ところが、明治の元勲の井上馨さん、当時これは三井鉱山の顧問でしたが、これに呼びつけられて。ペちゃんこに怒られて、翌日それを撤回したというエピソードがある。いわゆる日本の政治の中における石炭資本の発言力というものは非常に強かったけれども、最近は石炭資本の発言力は弱い。たとえば国会の中で石炭のことを知っておる議員というものは、指を数えるくらいしかいません。商工委員会で石炭のことを知っておるのは、多賀谷真稔、滝井義高、伊藤卯四郎、それからそこにおられる今村さん、四、五人しかいない。あとの人は石炭のことを何も言わない、知らない。というのは、炭鉱というものは僻陬地の九州とか北海道にあるということからかもしれません。それで石炭の政治力というものは非常に後退をしてきておるということです。それからもう一つは、私たちが注意しなければならぬ点は、企業の内部における石炭会社の社長の発言力が非常に弱くなってきているという点、たとえば三井鉱山の栗木社長の姿を見ると――三池で出る石炭というものを三池合成が使って、そうしてカーバイドができてきた、そのカーバイドを東洋高圧が使って肥料を作っておったが、最近はその石炭会社の三井鉱山の栗木さんの発言をもってしてもやめさせることもできないし、かつて明治以来自分の得た金で築いた三井銀行が三井鉱山に金を貸さぬという、こういうゼスチュアが出てきた。私はこれをゼスチュアと言いたいのです。そしてその鉱山の社長の発言力が非常に弱いという、こういう形も出ております。それは私の地元においても、石炭の産地ですが、小学校が給食に重油を使い始めた。石炭よりも重油の方が安いのだということで、石炭を掘り出すすぐ隣の学校が重油を使い始めたという、こういう客観的な情勢は私も認めます。なるほど大臣が言われるように、エネルギーとしての重油というものがどんどん伸びておるということも私は認めます。しかしそれは全産業が発展をして、それでその発展の中でエネルギーの使用率がだんだんふえていく、そういう中における重油の総体的な増加ということではないかと思うのです。その証拠には、大臣、それならば一体、各国のエネルギーの中における石炭の使用の比率というものはどうなっておりますか、欧米諸国を一つ御説明願いたいと思うのです。
○樋詰政府委員 アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、西独、イタリアというような大きな代表的な国について簡単に申し上げますと、石炭と石油、大体この両方を申し上げたいと思っておりますが、アメリカにおきましては一九五〇年が石炭が三五%、それが五七年には二七に減っております。一方石油は、四三・八%から約五一%にふえております。それからイギリスにおきましては、石炭は一九五〇年の八五%から五七年の八〇%、それから石油の方は一四%から一八%、それからドイツにつきましては石炭が七二から六七に下がり、油が五から一三・七に上がっております。フランスにおきましても石炭が大体六五が五七に下がり、石油の方は一九が二九に上がるという格好になっております。
○滝井委員 大臣、今お聞きの通りです。私が言いましたように、全産業の発展の中において、だんだんエネルギーの使用量がふえるという分については、これは相当に重油の優位性というものが出てきておる。しかし依然としてイギリスにおいても一九五〇年に八五%のものが八〇%と、これは五%しか下がっていないのです。これは絶対量で見てみると必ずしもそうではない。パーセンテージではそうなるかもしれないけれども、絶対量では減っておるとは言えない。西ドイツの方は、これは褐炭を入れると九割くらいになる。それからソビエトを見てみますと、ソビエトはあれだけ大きな油の産出国ですよ。これが六割です。ところが、これが七カ年計画が終わったあとで四割ちょっと上回る程度になるのです。ところがソビエトは、石炭はだめだといっていない。どんどん増産をして、石炭の新しい用途を開いていっております。こう見てきますと、イギリスそれから西ドイツ、フランス――ただアメリカとカナダだけが三〇%程度です。他のヨーロッパの諸国というものはそういう状態ではない。こういうことが今はっきりしてきたわけですね。そうしますと、こういう状態がはっきりしておる中で、なぜ日本だけがエネルギー革命だ、革命だといって、ヨーロッパのイギリス、西ドイツ、フランスよりか後進国の日本がなぜそんなにあわてなければならぬかということなんですね。この点、どうしても私は納得いかないのです。今の大臣の御説明でも、世の中の人がエネルギー革命だといっておるので、そういうことだろう、こういうお話ですけれども、そういう点ではどうも納得いかないのです。
 そこでもう少し私は大臣にお尋ねをしたいのは、今までの日本の石炭産業の危機の問題についてわれわれが考える場合には、やはり日本の資本主義がずっと石炭をたくさん使っておって、そして今に至るまでの一応発展の経過というものをやはり考えてみる必要があると思うのです。そういう意味では、日本の資本主義のもとにおける日本の炭鉱というものの状態を見ると、これは御承知のように資本主義的な現在の水準に炭鉱というものは達していない。しかも鉱区が独占をされておる。しかも休眠鉱区というものは三井とか三菱というものが持って、そして封鎖しておる。明治のときにだれかが行って旗を立てて、ここはおれの鉱区だといったものが、国民のものである鉱区が依然として独占されて眠っておる。こういう矛盾もあるわけであります。さらにそこに働いておる労働者は低賃金、最近ガット三十五条の関係で、日本は低賃金でないということを政府はこのごろの新聞で発表しておりましたが、しかしこれはまたこれで論議するとして、炭鉱は低賃金、しかも資本主義特有の寄生的な腐敗現象というものが日本の石炭産業に結びついております。しかも労働者の生産性は機械化されておらないからなるほど低い。それで生産を上げろ、能率を上げろといっても、日本の炭鉱には上げるだけのポテンシャル・エネルギーがない。こういう状態ですから、景気がよくなれば人を増加するし、景気が悪くなれば首を切る、そして景気がよくなったときには石炭の価格というものを投機的にやっていく。だから電力会社は、今われわれが行って聞きますと、とにかく石炭業者くらい信用にならないものはない、あの人たちから直接石炭を買いたいのだけれども、あの人たちから直接石炭を買っておったのでは、ちょっと景気がよくなると持ってこない、だからわれわれは石炭を高いけれども商社から買うということを電力会社は言います。そういう場合に、石炭というものはその景気の変動によって価格がぱっとつり上げられるという投機的な要素というものを非常に持っておるということです。これが他の国に比べて異常な危機の状態というもの、社会的な危機だという、そういうことを生み出しておる第一の特徴だと私は思うのです。
 それから第二の特徴は、この点、私は大臣にどうしてもお尋ねをしておかなければならぬ点なんですが、今保守党でも、日本経済の自立をはかるのだということをおっしゃってきておるわけです。そうするとこの燃料問題というものは、少なくとも保守党の政策として日本で自衛力を増強していくという政策をとるとするならば、これは戦略的意味においても、非常に大きな問題なんですね。そうすると、昔の日本の帝国主義時代の日本の戦略態勢を燃料問題だけに限ってみても、国内には石油の資源というものはない。あっても非常に少ない。しかも石炭の生産というものは停滞をしておる。そして、水力発電というものが若干ある。こういう状態で、軍事的な発展を日本がずっとはかっていったときに、燃料問題というものが、軍事発展の、何と申しますか、重大なブレーキになっておったわけです。だからこそ、その結果、われわれの先人というものは――われわれの先人を外国人は帝国主義者と申しますが、そのわれわれの先人というものは、まず撫順炭に目をつけた。さらに撫順炭で足らずに大同炭、開らん炭と手を伸ばして、さらに仏領インドシナのホンゲー炭まで手を伸ばしていっておるのです。そしてそれが一つの侵略のコースをたどっていくということは、やっぱり燃料政策というものに結びついておったと私は思うのです。そして、それがさらに今度は油の方になると、人造石油を作ったり、あるいは戦争中は松根油というようなものを作ったり、いろいろ作ってみました。しかしそんなものは問題にならなかったので、今度はジャワ、スマトラ、ボルネオ、セレベスというようなところまで野心を起こし始めた。ところがそれは輸送計画でどうにもならなくなったという、こういう問題があったというわけです。従って私は、そういう先人の道をずっとたどってみると、やはりこれは国内炭を増産しなければならぬということに、究極的に追い込まれていったと思うのです。そしてその結果、私もその当時炭鉱に働いておりましたが、慶尚南道や慶尚北道から朝鮮人の諸君を連れてきて、外国の労働者ではないけれども、とにかく植民地の労働者を無理やりに連れてきて、そして石炭を掘らして、価格的にも補助金政策というものをとって、昭和十五年だったと思いますが、とにかく五千万トンの金字塔を打ち立てた。これは一大記録ですよ。ところが、今になって自立を叫んでおるところの日本の石炭業者なり政府というものは、手の裏を返したようなことを言い始めておるのですね。これは一体大臣は、やはりそういうように、もう石炭産業というものは、エネルギー革命がきておるからどうにもならぬのだ、日本の燃料国策の見地からも、もう外国のものに依存してもやむを得ない、こういう見地に立たれて問題を処理されていくのか、それとも、われわれの先人がとってきたような政策というものを石炭政策にとろうとするのか、この点を一つはっきりしてもらいたいと思うのです。
○池田国務大臣 先人のとってきた石炭政策、あるいは撫順炭とか開らん炭、こういう政策は、私はやろうとは思いません。国内の石炭資源を十分に活用していきたい。活用すると申しましても、やはりそこに経済性がなければなりませんので、合理化いたしまして、日本の石炭生産をできるだけ伸ばしていく、こうすることが、労働問題から申しましても、いわゆる雇用の問題から申しましても、外貨の問題から申しましても、私は必要であると考えております。
○滝井委員 そうしますと、具体的には、大臣としてはどういう方針をおとりになるつもりなんですか。それは私はどうしてそういう質問をするかと申しますと、エネルギーの需給を明白にした長期エネルギー政策というものを昨年発表されました。大臣の前の高碕さんのころですかね。そうして昭和五十年には、石炭というものは七千二百万トンが必要なんだという、こういうことになったわけです。そして私は今年の初めにも、うしろにおられる樋詰さんに、一体政府はこの政策というものはどうするのだ、財政投融資その他の関係もあるが、どうするのだと言ったら、樋詰さんは、それは財政投融資というものはそのままやっていきます、ただその年度計画というものが幾分先にずれていくだけでございますという答弁をされたのです。そうしますと最近になってから、政府は長期エネルギー政策、この前発表されたことについては一言半句も語らなくなってしまったのですね。語らなくなりましたけれども、その長期エネルギー政策を見てみますと、昭和五十年には少なくとも輸入燃料は五割くらいになるのですね。あのとき正確には四八%だったですか、四八%輸入燃料が占めるわけです。そうすると今度の石炭合理化がぐっと強行をされていくと、石油、それからアメリカの原料炭というようなもの、豪州炭、それから天然ガス、それらをかき集めて輸入燃料を見ますと、輸入燃料は五割五分から五割六分程度にはね上がっていくのですよ。そうしますとわが国の燃料、重要なエネルギーというものの基礎は完全に外国の燃料に依存する形態が出てくるのですね。私はここを言うのです。ことに開演炭とか撫順炭を、まさか帝国主義をやれと私は言っておるのではない。ただわれわれの先人のとった政策というものは、そういうことをやってみたが結局もとのもくあみに戻ってきた。国内の増産をやらなければならぬというもとへ戻ってきたのですが、今言っておるのは、今までのような帝国主義ではなくて、日本のエネルギーが半数以上も外国に依存しなければならぬという、こういう形態を一体どうするかということです。従って問題は二つになる。まず第一は、先般政府の出しておりました長期エネルギー政策というものはもはや放棄して、新しいエネルギー政策を作るということになるのか、その場合に、今までのように半分以上を外国に依存をすることになるのかどうかという、この点をはっきりしていただけばいいのです。ここから根本の政策が出てくると思う。
○池田国務大臣 長期エネルギー計画は、通産省においても再検討いたしております。企画庁においても再検討中でございます。従いましてある程度変わると思います。
○滝井委員 そうしますと、いつごろその再検討の結果は出て参るでしょうか。
○池田国務大臣 企画庁の方では年度内と言っておるようでございます。しかしこの問題は所得倍増計画といろいろ関連しておりますので、いつまでの分を作りますか、これが問題だと思います。だからいついつまでにどれだけの分が、すなわち昭和五十年までの分がいつできるか、あるいはもっと短期間で早くできるか、いろいろな問題があると思いますが、通産省におきましても検討いたしますし、また企画庁においても検討していただきたいと思っております。
○滝井委員 年度内ということは十二月までということなのか、それとも来年三月までということなのか。
○池田国務大臣 年度内でございますから三月まででございます。
○滝井委員 そうしますと、これはやはり私は大へんなことになると思うのです。その問題はちょっとあとに第二段にするとしまして、そうすると、その場合に大臣の腹がまえとしては、今までの計画でいけば明らかに五割五、六分のものが外国燃料に依存をするということになれば、少なくとも燃料部面においては、日本の経済は従属形態をとるという形になるわけです。外国に押えられるという形になるわけです。しかしそういうことでは私はやはり大へんなことだと思う。今私は、世界のエネルギーの、各国の使っている状態の中で、石炭がどの程度の位置を占めておるかということをお聞きしましたが、その中の今樋詰さんのお答えいただきました、イギリスにしても西ドイツにしてもフランスにしても、そういう政策をとっていないのですね。自国のエネルギーの半数以上を外国の燃料に依存するという政策をとっていないでしょう。そういう点を一体どう大臣は心がまえとしてお持ちになっているか。
○池田国務大臣 できるだけ国内でまかなえるものはまかなっていかなければなりません。しかし経済性というものがありまするから、やはり経済原則に従っていかなければならないのであります。しこうしてそういう二つの面からいって、どういう割合になるかということは、将来検討してみなければ、今直ちにお答えできません。
○滝井委員 冷厳な経済性のみを問題にするということになれば、国内産業がつぶれてしまうという矛盾が出てくるわけです。といって経済性を全部無視するということになれば、これは日本でできた製品が外国へ売れない、こういう矛盾も出てくるので、そこらあたりの調整が政治だと思います。それはもうよくわかっておりますが、大臣としては、現状の五割以上というような、こういう実態を相当大幅に修正をしなければならないのではないかと思うのです。
 そこで、これは少し事務的になりますので、大臣がお答えにくければ、事務当局でもかまいませんが、資本主義諸国において、経済が均衡の発展を保つためには、その一国の経済の生産におけるエネルギーというものは、一体どの程度の割合を外国のエネルギーに依存することが可能なのか、こういう点の各国の状態がわかると思うのですが、お調べになっておりませんか、普遍的に見てどの程度になるか、大臣でよければ大臣から……。
○池田国務大臣 正確な数字は事務当局が調べておりますので答えまするが、これは国の事情によることでございまして、今、日本なんか幸いに水力がある程度の重きを占めておりまするが、これは燃料資源の少ない国と、非常にあり余る国と違うのであります。ただ問題は、できるだけ国内資源を活用するということが経済の根本でございます。しかしそこに経済性とのかみ合わせもある。もし日本の経済がどんどん伸びていったときに、五〇%をこえたからこれは非常に不健全な国であると、すぐ断定はできないと思います。
○樋詰政府委員 OEECで、昭和五十年にどういうふうなエネルギーの構造になるかということを二、三年前に調べた資料がございますが、そのときは今のように石炭が非常に世界的に危機だということを言われる前で、大いに石炭は活用すべきであるというような見地から検討された数字でございますが、それによりましても、ヨーロッパの諸国を傍見いたしました場合、石炭は二十年間に九%伸びる、それに対しまして輸入エネルギーは三倍になる、石炭が一九五五年を一〇〇とした場合に、一〇九%になるのに対して、輸入エネルギーは三〇五%になるという資料が一応OEECの方から発表になっております。これからも、これは昭和五十年でございますので、世界的にやはり非常に新しい安い石油がどんどんふえてきたというようなことから、各国とも国産のエネルギーだけでは不十分で、相当部分を輸入エネルギーにたよらざるを得ないということで、いろいろ政策を立てておるというふうに考えております。
○滝井委員 石炭が九%伸びて、輸入エネルギーが三倍になるということですが、その場合の輸入エネルギーというのは、主としてどういうものですか。
○樋詰政府委員 ほとんど大部分が油でございます。
○滝井委員 次には、現在問題になっております石炭の問題は、大ざっぱに言って三つぐらいに分けることができると思うのです。その一つは企業合理化をめぐる労働者と資本家との争いというものが出ております。それからもう一つは、そういう争いというものが非常に国民的な関心を呼んで、第二番目には根本的な石炭の対策確立の国民的な要望と申しますか、そういうのが非常に出ている。そうして第三には、今の輸入エネルギー、特に競合燃料の油との利害対立というのが現実に非常に強く現われて参ったという、こういう三つの側面が現在の石炭のいわゆる危機といわれるものの中には含まれていると思うのです。そこでそれらを一つ一つこれから尋ねていくことになるのですが、これは時間の関係がありますので、そこらまでこまかくいくと大臣の時間の関係がありますから、まず大ざっぱなところを、それと少し切り離して尋ねてみたいと思うのです。
 まず第一に、先般出ました一昨年あたりの経済計画では、炭主油従の政策をとっているわけです。そうして昭和三十七年には六千四百万トンで、昭和五十年には七千二百万トンという強気の数字が出ておったわけです。これはその年度をいつまでにとるかということはいずれ検討しなければならぬ、こういうことで、三十三年度の五千二百万トンが五十年には七千二百万トンという非常に強気の数字が出ておりましたが、昨年の秋以来急激に情勢が変わったというか、どこからともなくエネルギー革命だ、危機だということが言われて、これは世界的な傾向だということで、そういうことは言われなくなりましたが、大臣は、炭主油従の政策というものをずっと今後おとりになっていくのか、巷間には、たとえば脇村義太郎氏なんかのように、あの政策は間違いなんだと言う人が出てきたんです。あれは間違いだ、炭主油従政策というのは間違いだという人が出てきたんですよ。ところが一昨年あたりの経済計画では、少なくとも長期エネルギー政策としては、炭主油従の政策というものが柱になっておったと思うのです。一体炭主油従の政策というものを大臣はここで大幅に間違いだとして修正されるのか、同時に脇村さんはこういうことを言っておるのです。石炭は石油にかわるという認識に立って十年、二十年の先を見通して、それ相応の政策を立てる政治家が日本にはいなかったんだ、これが間違いのもとだったと言っておるのです。私は池田通産大臣は十年、二十年を見通した政治家であり、将来自民党の総裁としてやがて総理大臣になる方だと信頼をしておりますが、炭主油従の政策に対しては、どういう見通しと心がまえをお持ちになっているか、これを一つお聞きしたい。
○池田国務大臣 先ほど来申し上げておりますがごとく、国内資源の開発という意味から申しまして、今のところはどちらかというと、石炭が非常に弱いのですから、弱いものを助けていくという考え方に変わりございません。炭主油従と申しましても、どの程度炭主かということにつきましては、日本全体の経済の姿ももちろん頭に入れなければならぬ。石炭ばかりたくさん掘って、日本の経済が物価高でどうにもこうにもならぬというふうなことはいたしたくないと思いますが、しかし根本におきましては、非常に条件の悪い石炭をできるだけ条件をよくして、国内資源の高度の利用ということを考えております。
○滝井委員 炭主油従の政策というのは、これは一つのキャッチフレーズとしては非常にわかりやすいのですが、これは数学みたような工合には、きちんと炭を七にして油を三にするというような工合にはなかなかいかぬと思うのです。当然大臣の言われるように、経済全体を見てやらなければなりませんが、やはりキャッチフレーズ、こういう言葉というものは、案外その政策の実体というものが大衆にもぴちっとわかりやすいし、われわれもそういう政策をやるのだということになれば、なるほど、やはりある程度石炭の方に重点を置くんだなということは、気持としてわかってくるわけですね。従って、その炭主油従という今までとっておった政策というものに、幾分の変更は加えるにしても、大体傾向としてはそういう方向になるのだ、そういう考え方でいいんですか。
○池田国務大臣 大体先ほど来申し上げていることでおわかりと思いますが、石炭の産業につきまして、十分いわゆる合理化等、助成策をとっていきたいと考えております。
○滝井委員 これからやりますと問題が多岐にわたっておって長くなりますし、大臣も用があるそうですから、次回にもう一ぺんきていただきたいと思います。
○永山委員長 それでは暫時休憩いたします。
    午後一時一分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時五十一分開議
○永山委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。
 厚生関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
 発言の通告がありますのでこれを許します。大原亨君。
○大原委員 私はこれから外務大臣に対しまして、終戦以来十四年間ですが、今まであまり本格的に国会で論争されなかった、昭和二十年の八月六日、九日の広島と長崎の原爆の投下をめぐります国際法上の問題に対する日本政府の見解、こういうものについて逐次お尋ねをいたしたいと存じます。
 御承知のように広島、長崎の原爆の被害というのは、死者だけで見ましても三十万人であります。その後の、被爆による障害を受けまして、生きる不安におののいておる人がやはり三十万人おります。御承知のようにこの被爆は千万度をこえる熱風と、それから爆発をいたしましたときの爆風、それともう一つは、その瞬間に中性子とかガンマ線とかいう、いわゆる放射線です。もう一つはそれと一緒に残留放射能といいまして、生成物が他のいろいろな物質と化合いたしまして、雨になりましたり、ちりになりましたりいたしまして、いろいろ大きな影響を及ぼしておるわけであります。そういうふうなのがございます。これは、私は逐次お尋ねいたしますけれども、戦時国際法からいいましても、害敵手段について規制をいたしておりますヘーグの陸戦法規の二十二条「交戦者ハ害敵手段ノ選択ニ付無制限ノ権利ヲ有スルモノニ非ス」そういう規定等に私は違反すると思う。こういう大量殺戮の非戦闘員に対する兵器でございまして、これは違反すると思うのでございますけれども、これは今まで本格的に論争されなかった問題ですが、これに対する外務大臣としての御見解を一つお聞かせいただきたいと思います。
○藤山国務大臣 この点に関しましては条約局長より一応御答弁いたさせます。
○高橋(通)政府委員 お答え申し上げます。ただいま御指摘の点でございますが、もちろん原爆は強力な兵器でございます。これはしかし何せ新しい非常な強力な武器でございますので、当時このような武器なるものはほとんど予想していたところではないと考えておる次第でございます。従いまして厳格な法律論、厳格な国際法的な実定法論からいえば、これは国際法に違反するのだというふうに断定することは無理ではないか、このように考えております。
○大原委員 今申し上げました第二十二条、これは日本も加盟いたしておるわけであります。ヘーグ陸戦法規は調印をいたしております。この二十三条のE項で「不必要ノ苦痛ヲ与フヘキ兵器、投射物其ノ他ノ物質ヲ使用スルコト」を禁止いたしております。これはそういう実定法に違反をするのではありませんか。今までのいろいろな実定法、それ以外の実定法、それと類推適用いたしまして、新しい爆弾であるから、具体的にきめてないから国際法に違反しない、こういうことでなしに、国際法の人道の精神からいえば、これは違反するのではないですか。
○高橋(通)政府委員 ただいま御指摘のヘーグの二十二条に、無制限の害敵手段を許すものではない、また二十三条にもいろいろ「毒又ハ毒ヲ施シタル兵器」を使用してはならないというふうに規定いたしております。そのことは私も承知いたしております。ただ、ただいま申し上げましたように、新しい武器として非常に強力な武器が出現したわけでございます。これは一九〇七年当時のことを考えた条項でございまして、当時はこのような武器――当時の武器と申しますれば、もっと非常に退歩した武器であったと考えておりますが、その当時の状況に照らして、このような条項ができ上がったというふうに考えております。従いまして厳密な国際法の実定法論から申しますと、これが違反するものと断定するわけにはいかないのではないか。それだからこそ現在におきまして御承知の通り国連で生産、製造、使用の禁止というふうな諸種の検討が行なわれておる、このように考えておる次第であります。
○大原委員 これは毒とかいうように抽象的に規定しておりますが、国際法の精神というものは、この放射能とか、それを含めまして、原爆は毒ではないのですか。人道の立場とか被害の大きさとか、そういう面から考えまして毒ではないのですか。
○高橋(通)政府委員 もちろん御指摘の通り人道上の立場で考えますれば、このような手段は使用さるべきでないということは御指摘の通りでございます。
○大原委員 さるべきでない、こういうふうに言われるのですが、世界で戦争中に原爆を受けた国は日本だけなんです。実際被爆しておるのだから。実験とかその他を含んで、今いろいろ使用禁止の問題はあるけれども、被爆しておるのは日本だけなんだから、ただ一つの被爆国として日本政府がこの問題に対する正当な見解を、被爆の実相を把握した上において表明するということは――これは私が逐次御質問申し上げるのは、その賠償責任、被爆者に対する援護という国の責任、こういう問題を逐次質問していくために言っておるので、決してアメリカを非難するために言っておるのではない。そういうことじゃなしに聞いていただきたいのですが、唯一の被爆国として、日本の政府は当然人道上の問題から――今はやや前進した御答弁ですけれども、これは国際法に違反する、こういうふうに、この点について明白な見解を表明されてもいいと思うのですが、いかがですか。
○高橋(通)政府委員 私お答え申し上げましたのは、純粋な法律論としてのお答えでございました。もちろん人道的な見地に立てば、このような手段というものは用いらるべきでないことは御指摘を待つまでもないことだと考えております。
○大原委員 きょうは厚生省の専門家がもう少しおくれるそうですけれども、一九二五年五月にジュネーブの議定書できめております特定兵器の禁止に関する規定があります。そこには今の毒という抽象的な表現以外に、毒ガス兵器及び細菌、化学兵器の禁止に関する議定書があります。そういたしますと、今の毒ガスとか細菌、化学兵器と原爆というものと、どちらが被害が大きいか、人道上もそういう点について明らかにする必要があると思うのです。そういうことが明らかになれば当然実定法にないからといっても、抽象的な包括的な実定法はあるのですから、見解の表明はできると思う。都築博士はこういうことを言っております。これは今までのいろいろな毒ガスとか細菌兵器とは比較にならない大きなひどい障害を及ぼしているのだ。というのは、生物の細胞の中の核に放射線が作用するということがわかってきたのであります。ことにビキニの放射能以来、非常に学者の研究が深まって参りまして、それでそういうことを申しておるのです。そしてそれがいわゆる造血機能とか、心臓ですね、増殖機能、これは遺伝に関係しますね、そして組織細胞を、今のように目に見えないけれども破壊をしておる。そういうことであらゆる身体に大きな障害を起こして、今日本でも被爆者の援護について大きな政治問題になっているけれども、その特定法を作る根拠に軍人軍属のワクがある、公務のワクがあるわけです。しかし、これは明らかに国際法に違反をした兵器であるから、毒ガス以上、毒といわれる以上、あるいは害敵手段については無制限にそれは許すものではないという実定法からいっても、国際法に違反すると思うのですよ。私はあまり政治的にこの問題のワクを広げません、国の責任という面から逐次話を進めて参りますが、これは外務大臣からお答えをいただきたいのです。それはそういう実情を御了知のことと思いますけれども、これはいわゆる国際法の実定法、慣習法からいいましても、類推解釈からいいましても違反をしておると思いますが、いかがでございますか。
○藤山国務大臣 国際法関係については、ただいま条約局長が申し上げた通りと思うのでありますが、われわれとして、むろん原爆が非常な大きな殺戮武器だというようなことを主張しておりますし、それがこうむる影響も大きいのでありますから、従って今日では原爆禁止という運動も起こっておるわけであります。そこいらの関連において、今後の問題として考えていかなければならぬ問題の一つだと当然考えております。
○大原委員 それで、もう少し具体的に御答弁いただきたいのですが、広島、長崎で原爆を受けたのは、日本人がただ一つの被災国民なのですね。だからこのことが、こういう被爆したことはこの国際法に違反するのだ、こういう点についてもう少し明確な、具体的な見解を一つ示していただきたい。条約局長のお話は、だいぶん答弁が進んでおるのですよ。
○藤山国務大臣 むろんこれらの問題が、今も私が申し上げましたように、非常な害を与えるところの大きな殺戮兵器である。従って、今後これをどうして扱うかということにつきましては、むろん日本としても明確な態度でもって国連その他にも主張をいたしておるわけであります。ただいわゆるヘーグのこの条約自体に対して違反しているかいないかという問題になりますと、今条約局長が御説明した通りだと思うのであります。なお、すでにもう非常な年月がたっております。従って、その間にやはりどういう解釈が行なわれたかというような問題については、いま少し研究してみないと、私から直ちに答弁申し上げかねます。
○大原委員 もう少し具体的にお話しをしますと、今のヘーグの陸戦法規の第二十三条E項には、「不必要ノ苦痛ヲ与フヘキ兵器、投射物」、こうあるのですね。こういう実定法があるのですよ。広島、長崎に落ちた原爆というものが、そういう兵器、投射物に該当するのではないのですか。さらにそれに加えまして、やはりヘーグの陸戦法規の二十五条、いわゆる防守せざる都市に対する無通告の爆撃ですね、あるいは空戦法規の二十四条に、軍事目標主義というのがあるわけです。そういう実定法があるわけです。これは今二十三条の点にしぼって申し上げましたけれども、そういう実定法に違反をするのじゃないですか、そういう兵器や投射物ではないのですか。あの原水爆の禁止を、国際的に藤山外相も主張されていると思うのですよ。そういう主張をしている立場というものは、こういう具体的な広島、長崎の被災国として、これは違反しているのだというはっきりした見解に立って主張なさることが、このことはほかの国の外務大臣と違うのだから、最も力強く、最も人道的であると思うのです。これに対しては、被災者が三十万人も即死いたしました。それから三十万人もそれを受けて悩んでおります。先般も東京都内におきまして、遺伝の影響があるというので、生後十二カ月の女の子を、お父さんが母親のふところからとっていって、子供と一緒に心中をした。子供を殺して、自分も睡眠薬を飲んだという新聞があったでしょう。広島や長崎におきましては、原爆ノイローゼというものがあって、精神障害におきましても、半分くらいは被爆に関係があるといわれている。結婚前の若い人の自殺、そういうことが多いのです。だからこういうことは、原爆ということがなくても、国際法の趣旨から、人道の上からいって、あるいは今までのこういう規定の上からいって、国際法に抵触する兵器であり投射物であるというふうに、外務省として、政府としての見解をおきめになっても、何も常識をはずれているとは言えない。私は政治的にそういうことを言っているのではない。そのことについて、外務大臣としてもう一回具体的な御答弁をいただきたい。
○藤山国務大臣 原爆の被害の重大さについては、御指摘がございましたように、われわれとしても、非常に大きな影響のあるもの、悲惨な影響を持つもの、また永久的な影響の与えられるものという、大原委員と同じ認識の上に立っているつもりであります。従いまして、御指摘の二十三条に書いてありますような条項の趣旨には、やはり該当するようにも考えられるわけであります。ただわれわれとして、今日までのこれらについての論争というものも、まだ十分聴取しておりません。従って、そういう趣旨に該当するものではないかというふうには考えておるということだけを申し上げておきます。
○大原委員 くどいようですが、毒ガスやいわゆる毒、こういうふうに具体的にきめられておるもの、あるいは当時の陸戦法規や国際法の観念から、「不必要ノ苦痛ヲ与フヘキ兵器、投射物」、こう書いてあるそういう具体的なものより、より以上の被害を及ぼしているということについては、外務大臣はお認めになるわけですね、その被害についての認識は。なければ、私はいろいろ資料を提供いたしますが、その点はそれ以上の被害であるということについてはお認めになりますね。
○藤山国務大臣 私どもは今日まで、原爆による被害というものが、毒物を使用するとか毒薬を使用するとか、あるいはダムダム弾でありますか、ああいう種類のもの以上の大きな被害を与えるということは、むろん承知いたすわけでございます。
○大原委員 だから原爆は、毒物やあるいは国際法違反の「不必要ノ苦痛ヲ与フヘキ兵器、投射物」、これ以上の非人道的な兵器である、こういうことを外務大臣お認めになったわけですが、そうすればこれは、それ以上のことについて私は追及いたしませんが、国際法に違反するでしょう。
○藤山国務大臣 この条文の趣旨、「毒又ハ毒ヲ施シタル兵器ヲ使用スルコト」――原爆の毒というものが、今申し上げましたように、毒と解してもいいような人体に被害を与えておりますから、趣旨から申せば、あるいはそういうことに該当するようなこともあり得るのではないか、こう考えます。
○大原委員 あり得るのではないかと思う、こう言われるのですが、それ以上の被害をお認めになったわけですから、人道の立場から国際法はあるのですから、大量殺戮兵器の禁止とか、無防備の都市に対する爆撃禁止とか、そういう国際法の精神からいって、国際法に違反をしておると思うが、これは少し広い範囲でお尋ねいたしますが、いかがですか。
○藤山国務大臣 国際法の精神には違反しているように思われます。
○大原委員 国際法の精神に違反をしているという御答弁であります。これは今まで国会で論議されなかったのが不思議だと思うのですけれども、たび重ねて言いますように、被害国は日本だけですから、その点をはっきりしてもらいたいと思うのです。そういう立場で原水爆禁止を訴えてもらいたいし、被害者の救援もしてもらいたい、こういうふうに私は思いますが、大臣として御所見があれば、それについて御信念のほどをお伺いいたします。
○藤山国務大臣 お話のありましたように、私どもといたしまして、今申し上げたような原爆の被害というものは重要であって、しかも戦時中原爆というような大量殺戮兵器を用いることは、戦争そのものがないことを希望はいたしておりますけれども、やむを得ない場合にもそういう兵器を使用してはならぬという立場から、われわれは今日まで国連に対してもその他に対しても主張いたしております。また原爆実験等に対しても、平和利用以外については反対であることを主張しております。その点については信念として申し上げて差しつかえないと思います。
○大原委員 それでは、今外務大臣の方からそういう点につきましては御所見の表明があったので、私は少し前に進みたいと思いますが、そういうふうに考えて参りますと、つまり原爆の投下は国際法で禁止をいたしておる。毒ガス以上の、あるいは毒物以上の不必要な苦痛を与える、そういう兵器、投射物以上の兵器であることを認められ、そして国際法の精神に違反する、こういうことを外務大臣としては明らかにされたわけでありますが、そういう国際法に違反をする兵器の結果、原爆の結果被害を受けた人々を人道の立場から守っていくことは国際法の趣旨である、国際法の当事国は国と国とですけれども、しかしその趣旨というものはそういう趣旨であると私は思うのです。そういう点について、その被爆者の補償というものはどういうふうにあるべきであるか、こういう点については条約局長からお伺いいたします。
○高橋(通)政府委員 ただいま御指摘の点でございますが、これは国際法的な見地から申しますと、そういうふうな非法な損害があるとすれば、一般的な問題としましてその外国に要求するわけでございます。しかしながら、現在の平和条約におきましては、一切そういう戦争中の請求権というのは日本は放棄させられておるのであります。従いまして、対外関係としてはそのような請求をなすことはできない、こういうふうな状況でございます。
○大原委員 逐次法律関係は明らかになって参りましたが、御承知のように平和条約の第十九条の(a)項にもございますように、日本は戦争の結果生じたいろいろな損害に対してその損害賠償を放棄する、こういうふうに述べられてあります。そこでそういうふうに放棄いたしましても、御承知のように国際法は人道の立場からきまっておる。お互いみんなが守ろうということを約束いたしております。従って日本の政府がへっぴり腰か、自主性があるかないかは別にいたしまして、それらを含んで、放棄いたしましたことによって人道的に許されないところの被害を受けた人々が泣き寝入りをしなければならぬ、こういうことはあり得るのですか。
○高橋(通)政府委員 御指摘の点はよく私理解いたすところでございますけれども、何せ平和条約では明確に請求権が放棄される、そういうふうな約束をいたしておるわけでございますから、日本としてはこの点につきましては請求権を提起するということはできない次第でございます。
○大原委員 日本の国内法には軍人や軍属、つまり公務による障害者に対しましては、たとえば戦争犯罪者に対しても恩給をやっている。しかし当時は総力戦といわれておりました。これは全部バケツをさげましたり、あるいは軍の命令でたくさんの死体運搬をいたしました。焼却もいたしました。これは残留放射能を受けております。そういうことでみんなが国の命令で、法律によりまして働いておったわけです。軍人軍属というふうな者だけに国家の援護、生活保障を限定するということは、私は不当であると思うのです。これは外務大臣もおうなずきになっておる通りです。そこで、そういうことを考えてみました際には、被爆を受けましたのは国際法違反、国が請求権を放棄したということが明確になりました。そういたしましたら、今の日本の社会保障の現状というものは、全部が生きる自由を保持するには該当しないほど水準が低い。救貧的な水準といわれている。貧乏を防ぐとか貧乏から立ち上るような法体系ではないといわれている。そういう実情におきましては、逐次特別立法が出るわけですけれども、国際法に違反し、そして国が請求権を放棄したものについてはやはり国の責任において、人道上の立場に立ってその被害について救済すべきである、そういう特別の根拠がある、人道的な立場、国際法上の立場からそういうふうにすべきであると私は確信いたしますけれども、この点は一つ外務大臣の方から御所信をお伺いいたしたい。
○藤山国務大臣 国として国際法上の請求権を放棄した場合に、それがすぐに国内的にどういう処置をすることが適当であろうかという問題については、そのときどきの事案によっていろいろ違って参ると考えます。従って国際法上放棄したものそのものが、直ちに国内の立法の上でやれるもの、やれないものというような、いろいろ限界があると思うのでありまして、そこらは考えてみなければならぬ問題だと思います。
○大原委員 私が言っているのは、非人道的な大量殺戮兵器による被害に対する人道的な要求を、サンフランシスコ条約の第十九条によって国が賠償請求の中で放棄したのですから、それは放棄した国がその責任を原則的に持つ、まるきり国の能力がなくてできない場合は別ですけれども、今まで軍人軍属とか戦犯に対しても軍人恩給を出している。また南ベトナムには鶏三羽しか被害がないのに賠償金を払おうとしているじゃないか、これはいろいろ論争があるようですが……。しかるにそういう国際法に違反した行為に対しましては放棄のしっぱなしで、このことを大きく言ったらアメリカに対して悪いとか、国際的に悪いとかということで、そして当然国際法上禁止されている兵器を使って、これは大臣がお認めになったが、被爆者に対してはこれを放置しておく、そのために就職も結婚もできない、一生台なしにしている人がたくさんある。遺伝まで影響がある、こういうことが人道上許されると思いますか。これは政治論ですから外務大臣にお尋ねいたしたい。
○藤山国務大臣 原爆被災者に対する諸般の援護措置というようなものは、むろん国家が賠償請求権を放棄しております以上、考える必要はある。戦争損害を受けた人全部に対していろいろな見地から検討して、そして国がそれを認めて何らかの処置をとるもの、あるいはとらないものというようなものがあり得ると思うのであります。これは今申し上げましたように、原爆被害というものは非常に大きいのでありますから、国として当然いろいろな援護措置をとってやることは私ども必要だと考えております。むろん今日までいろいろな措置が国内法的にもとられていると思うのでありますけれども、それらの問題の詳しいことにつきましては、厚生当局その他に伺ってみないと、私もこの場でもってどういう措置がとられたかということは申し上げかねるわけであります。
○大原委員 大臣は、国として当然援護の措置を講ずることは必要であると思う、こういう御見解です。私はおそらく政府のどの大臣に聞きましてもそうだと思う。ただ実情を御理解の上で閣議やあるいは政府の方針の中でどれだけ熱意を持って進めていただくか、こういうことであると思うのです。つまり私が申し上げましたのは、現在軍人や軍属や、そういう公務に限って損害賠償をいたしておりますけれども、その他の問題に及ぼそうといたしますと特別立法の根拠が要るわけです。そういたしますと被爆の実相からいっても、実際の被害からいっても、法律的にいいましても、大臣お認めになったように、私は社会保障制度が完全に確立するまでにはそういう特別立法として逐次援護をしていくべきだ、そういう御見解だと思うのです。これは自民党の諸君であっても、だれであっても、当然否定できないことであって、これは組織的に論議しなかったということはあっても、いまだ否定されたことを聞かないのです。私はこの問題について大臣が閣議において一つ本日の審議を通じて御理解いただきました点を御主張いただけるというふうに確信をいたしますけれども、この問題に対する御所見を一つお聞かせいただきたい。
○藤山国務大臣 大原委員の言われました点は、私といたしましても十分理解するところであります。そういう問題について政治家として関心を持って何らかの方法を定めていくことは必要であるということを、大原委員の御所見から私も十分了得いたした次第でございます。
○大原委員 くどいようですけれども、中曽根長官も、それから渡邊厚生大臣も、今日までそういう問題については原則的に御理解になっております。皆その点についての必要を言っておられる。(滝井委員「実行していないだけだ。」と呼ぶ)今お話がありましたが、実行していないだけであります。法律的に見ましてもそうです。人道上からいいましてもそうです。法律の、政治の公平という立場からいいましても、均衡という点からいいましても、先ほど申し上げた通りであります。今後私どもがそういう被害者を一人も作らない、こういう決意が禁止運動だと思います。唯一の被害国といたしまして、日本の政府といたしましてもきぜんたる態度をもって国内の施策をすると同時に、国外に対してそういうきぜんたる主張をすべきだ、こういうふうに考えますけれども、大臣に対しましてはこれが最後でありますから、もう一回決意のほどを聞かしていただきたい。
○藤山国務大臣 大原委員の御趣旨は十分理解しております。私どもも国際的には原爆禁止を主張する立場から見ましても当然のことだと思うのであります。御趣旨を十分了得した上で今後問題の扱いを考えて参りたいと思います。
○永山委員長 本日はこれにて散会します。
    午後二時二十四分散会