第033回国会 予算委員会 第2号
昭和三十四年十一月四日(水曜日)
    午前十時五十二分開議
 出席委員
   委員長 小川 半次君
   理事 上林山榮吉君 理事 北澤 直吉君
   理事 西村 直己君 理事 野田 卯一君
   理事 八木 一郎君 理事 井手 以誠君
   理事 今澄  勇君 理事 田中織之進君
   理事 佐々木良作君
      青木  正君    池田正之輔君
      稻葉  修君    内海 安吉君
      江崎 真澄君    川崎 秀二君
      久野 忠治君    倉石 忠雄君
      佐々木盛雄君    椎熊 三郎君
      周東 英雄君    田中伊三次君
      床次 徳二君    橋本 龍伍君
      保利  茂君    三浦 一雄君
      水田三喜男君    山口六郎次君
      山崎  巖君  早稻田柳右エ門君
      淡谷 悠藏君    石村 英雄君
      岡  良一君    岡田 春夫君
      加藤 勘十君    北山 愛郎君
      黒田 寿男君    小松  幹君
      河野  密君    島上善五郎君
      高田 富之君    楯 兼次郎君
      成田 知巳君    三宅 正一君
      加藤 鐐造君
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  岸  信介君
        法 務 大 臣 井野 碩哉君
        外 務 大 臣 藤山愛一郎君
        大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君
        文 部 大 臣 松田竹千代君
        厚 生 大 臣 渡邊 良夫君
        農 林 大 臣 福田 赳夫君
        通商産業大臣  池田 勇人君
        運 輸 大 臣 楢橋  渡君
        郵 政 大 臣 植竹 春彦君
        労 働 大 臣 松野 頼三君
        建 設 大 臣 村上  勇君
        国 務 大 臣 赤城 宗徳君
        国 務 大 臣 石原幹市郎君
        国 務 大 臣 菅野和太郎君
        国 務 大 臣 中曽根康弘君
        国 務 大 臣 益谷 秀次君
 出席政府委員
        内閣官房長官  椎名悦三郎君
        法制局長官   林  修三君
        大蔵事務官
        (主計局長)  石原 周夫君
        大蔵事務官
        (主税局長)  原  純夫君
        気象庁長官事務
        代理      多田 壽夫君
 委員外の出席者
        運 輸 技 官
        (気象庁予報部
        長)      肥沼 寛一君
        専  門  員 岡林 清英君
    ―――――――――――――
十一月四日
 委員阿部五郎君及び岡田春夫君辞任につき、そ
 の補欠として三宅正一君及び高田富之君が議長
 の指名で委員に選任された。
同 日
 委員高田富之君及び三宅正一君辞任につき、そ
 の補欠として岡田春夫君及び阿部五郎君が議長
 の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 昭和三十四年度一般会計予算補正(第2号)
 昭和三十四年度特別会計予算補正(特第1号)
 昭和三十四年度政府関係機関予算補正(機第1
 号)
     ――――◇―――――
○小川委員長 これより会議を開きます。
 昭和三十四年度一般会計予算補正(第2号)、同特別会計予算補正(特第1号)、同政府関係機関予算補正(機第1号)、以上三案を一括して議題といたします。
 これより質疑に入ります。田中伊三次君。
○田中(伊)委員 あらかじめ私の質問要綱を用意しておきましたが、お手元に回してある通りであります。これはこのまま私が読むだけでも三十分くらいかかる。そこでこの順序と要領によって漸次お尋ねをして参りますから、政府側においても答えは簡単明瞭、要領よく舌を短くしてお答えをいただきたい。
 まず第一は災害対策、続いてベトナム賠償、続いて安保の問題についてお尋ねをいたします。
 まず災害対策でありますが、私の質疑のねらいは、災害対策以前の対策ともいうべき台風対策でございます。私の手で各省関係の各省庁にわたる終戦以来の予算の計数を拾ってみますと、わが国は台風、水害等のいわゆる天災によって受けておる災害復旧のために、年間二千四百七十億円に上る大金を使っておる。この金は都道府県の持ち出し分は含まれていない。なお国並びに地方庁とは無関係の民間の災害についての被害は含まれていないのであります。国民経済全体に及ぼす影響という点から広くこれを見ると、年々歳々数千億円に及ぶ災害が起こっていることは現実であります。こういう国が台風の対策を具体的に講じないで――努力はしておるのだろうが、徹底しないで今日に及んでおるというようなことで一体よいものだろうかということが私の反省でございます。同時にこれは政府与党においても深刻に考えていく必要があるのではないか。きょうは幸いに総理を初め各閣僚がおそろいの席でありますから、こういうまくら言葉を申し上げるわけでありますが、第一に私がお尋ねをしたいのは、わが国の科学技術を動員して台風をはるか洋上において撃滅をするか、(笑声)それはできないにいたしましても、分散をさすことができないか。これはきょうはこの話をするとお笑いになるのでありますが、アメリカにおいても、オーストラリアにおいても、オランダにおいても、すでに研究実施の段階にいっておるということ、これは日本の政治を担当する立場からいえば、笑えない真剣な、ここに実施の段階にきておるわけであります。
 まず米国では、フロリダ州のマイアミに米国国立台風研究所ができておりますが、数年前二年間にわたって台風に見舞われたアメリカは、世界的に基礎が健全であると言われておった保険会社がつぶれかかったという事態に処して、ここに数年前にマイアミに有名な研究所ができたわけでありますが、これは研究実験をいたしました結果、軽い台風の発生であれば発生直後に撲滅することは可能である。相当にこれが成長をいたしましてからも分散の可能性が出てきておる。それから大陸の近くに接近をしてぎたときにはいたし方はございませんが、洋上はるか向こうであると方向転換は可能であるという研究が実験の結果出て、これを担当いたしましたシカゴ大学の気象学のプラハム博士は、北米合衆国には今後再び台風の上陸は許さぬという有名な文献も出しておる。これは笑えない話である。これは真剣に考えてみなければならぬと私は思う。オーストラリアにおいても、すでに御承知の通りにシドニーにクラウド・フィジックス研究所があります。クラウドは雲、フィジックスは物理でございましょうか、雲物理の研究と称しまして、集中豪雨を分散せしめて台風の災いを防ぐ道が考えられて、これは現にもう実証しておる。それからオランダにおいては、日本に次いでの有名な台風の国であるから、オランダの国立研究所においてもこのことの研究ができておる。原理はきわめて簡単でございます。私は自然科学に関する常識はございませんが、私が名古屋大学、東京大学、政府当局の研究機関で理解をしておるところによりますと、簡単に申しますと水から水蒸気を出すにはエネルギーが要る、これはこの通り。同時に水蒸気を冷やして水にするのもエネルギーが要る。台風の中心はエネルギーである。このエネルギーに刺激を与えて雨を降らす。雨にあうと台風はよろめく。このよろめきを繰り返しておる間に方向の転換可能なりというのが三大国の研究所で一致をした文献上の意見である。こういうことでございます。
 まず第一に、これからスピードをかけて項目を走りますが、わが国の科学技術当局、中曽根大臣、わが政府は、一体この研究をどういうふうに見ていらっしゃるか、どうお考えになるか、実効の上げ得る研究だとしてわが国においても活用の道があるものかどうか。それは夢物語りとお考えかどうか、これをお尋ねしたいのでございます。
○中曽根国務大臣 お答えいたします。台風の事前処理につきましては、外国の研究及びわが国における気象庁の係の博士の方々にいろいろ聞いてみましたが、必ずしも夢物語りではないようであります。アメリカにおきまして今お話のありました通り、大規模なナショナル・ハリケーン・プロジェクトというのをやっておりまして、議会は、このためにのみ年間二百万ドル以上の金を出しております。それによって今やっておりますことは、ドライ・アイスを台風の上にまきまして、それによって台風の方向を変えるということをやっておりましてこれは実験的にはある程度方向が変わったという事実があります。しかしそれがドライ・アイスをまいた結果大きに変わったのか、回数がまだ少ないものですから、はっきりはいたしませんが、しかし大体ドライ・アイスをまくことによって方向が変わるということは、非常に可能性があるということであります。現にここに、これは豪州の写真でありますが、七千メートルくらいの雲がここにあるわけです。ここに、ドライ・アイスをまきましたら、三十分後にここに猛烈な豪雨が現にありましてこういうことを台風の上についても行なえば台風のエネルギーが変わっていくわけでありますから、それで今までの方向が変わるということが明らかになっているようであります。現に台風の腕があるわけであります。中心がありまして、こういうふうに輪を巻いております。腕の一つにドライ・アイスをまいて方向を変えようという努力をしております。それで台風は、御存じのように二十八度くらいの高温の場合にエネルギーが一番大きくなるわけですが、それを二十六度の海面あたりに持っていきますと台風が消えるという現象が、わが国の定点観測船等の結果から出ておるのであります。そうすると、台風を二十六度くらいの海の上へ誘導するということも必ずしも夢ではない、荒唐無稽ではないということであります。あるいはまた台風が発生するのは大体マリアナ群島ということにきまっているらしいのですが、その辺の卵のうちにその下へ油をまいたらどうだ、それによって水蒸気が上がるエネルギーを防いだらどうだという構想もございます。しかしこれらはまだ実験したことはございませんので、そういう幾つかの確実と思われるアイデアを実験的にこれを実施いたしまして、確実な方法を発見していくということが重大であろうと思うし、また可能性もあると私は思います。
○田中(伊)委員 そこで続いてお尋ねをしたいのは、今中曽根大臣からの御答弁は、私の先ほど説明をいたしましたエネルギーに刺激を与える方法としてドライ・アイスをまく、こういうことだった。そこであるいは沃化銀、沃化塩のごときものを、地上あるいは船の上あるいは島の上から、これをたいて煙を出すといったようなことは、逆にいいまして同じくエネルギーに刺激を与えるという道でございます。相当真剣に研究ができて文献が出ておりますが、ここでお尋ねをしたいのは、一体日本の国はどの程度の予算を使って、どういう機関において研究をしておるか、中曽根大臣は何を根拠に御発言になったのか、世界の研究をそのままお持ちになって御発言になったのか、それとも日本においては相当進めて研究をやっておるのかどうか、日本ではどうしておるのかという段階をちょっと一言、簡単でけっこうですから。
○中曽根国務大臣 わが国におきましては、気象庁、それからこれは防災の方に関係しますが、土木研究所とか建築研究所、それから運輸技術研究所、農業技術研究所、あるいは大学、あるいは学術会議、あるいは資源調査会等におきまして、この検討並びに研究をいたしておりまして、特に人工降雨研究会というのがございまして、気象庁長官の和達さんが委員長になりまして、電力会社等とも提携いたしましてこの実験をやって、実験は成功しております。しかし台風というものを中心に、本格的に科学的に取り上げたということはまだございません。従ってこれは今後われわれが当然取り上ぐべき問題だと思います。
○田中(伊)委員 お尋ねをしておるように、予算はどれくらいな規模でやっておられるか、どれくらいな予算措置をしておられるかということであります。
○中曽根国務大臣 台風のみを中心にした予算は、まだ各省のものを合計したことはございませんが、三億ないし五億以下だろうと思います。
○田中(伊)委員 台風の研究実験に五億も六億も金は使ってないでしょう。私の意見をお聞き違いになっておるので、台風対策としての研究並びに実験にはどれくらい金をお使いになっておることになるのか、こういうことです。
○中曽根国務大臣 台風の実験研究を、実験を主にしてまだやったことはございませんので、まだ一銭も出してないということであります。
○田中(伊)委員 そこでこの台風対策に続きましてもう一つ重大な台風対策をやりたい。それは集中豪雨であります。日本の国は世界的集中豪雨に見舞われる国でありますが、最近の例は諌早の例であります。一度に地上五尺も六尺もたまるような水が降ってくる。それは地上が平面であると見て、数尺の高さの雨が降るわけでありますが、地上に高低がありますから、水が一斉に流れる。それによって人間の命を奪われ、家屋を奪われるという形になるわけで、集中豪雨というものの歴史は、明治二十九年以後において、一度の降雨量が三百億トンをこえるもの、こういう記録が残っておる。三百億トンと申しますと、奥只見のダムが三億五千万トン程度の水であるということでありますが、三百億トンをこえる降雨が一斉に降る、こういう歴史は、明治二十九年以来大体一年置きに起こっておる。最近は諌早がその例であります。集中豪雨で殺される。これは台風の研究よりはもっとやすいので、集中豪雨を空中において分散せしめる方向でございます。これもアメリカ、マイアミの研究所、それからことにこれは才ランダの研究所等、シドニーのオーストラリアの研究所において、これはどんどん実行に移しておるところでありますが、こういう事柄についての研究についても、日本においては必要なものと考える。この点についても御意見を承りたい。
○中曽根国務大臣 集中豪雨につきましても、日本は例年被害を受けておるのでありますが、ここにちょっと図面をもって御説明いたしますと、この赤い二重まるのところが四百ミリ以上が降ったところであります。九州から近畿地方、それから関東地方、この辺が非常に多い。東北あるいは北海道は割合に薄くなって、日本海岸は割合に少なくなっておる。大体梅雨前線、前線が起きたときにこれが起こっておるようであります。そこで集中豪雨の予報ができないかということをいろいろ検討してみましたが、現在のところは、北九州地帯に集中豪雨がありそうだとか、南九州にありそうだとか、四国地方にありそうだとかいう程度までは言えるそうです。しかし諌早に落ちるとか、熊本に落ちるとか、そういう地点を明示するところまではできないそうであります。しかしそれはまだ雲物理の研究は日本は進んでおりませんので、それを十分にやりましたら、ある程度一時間前とか二時間前くらいの予報ができるようになるかもしれません。今後そのように努力いたしたいと思っております。
○田中(伊)委員 総理大臣にお聞きの通り、世界的な研究、それからわが国の見ておる見方も夢ではない、これは少年少女物語ではない、こういうことに結論が出そうであります。そこで結論として総理大臣に伺いたいのでありますが、わが国には、こういう研究所が、私の調べたところではある。申し上げるまでもなく、名古屋大学、東京大学、官公私立の各大学の気象研究をやっておるところ、これは非常に大事なところであります。それから中曽根大臣の科学技術庁、その中にある臨時台風科学対策委員会、最近今お話しになったものができておる。それから気象庁気象研究所、建設、農林、運輸、文部の四省関係当局、それから特に大事なのは航空当局、飛行機の関係です。科学技術会議、これは総理のもとにある会議でありますが、台風常襲地帯対策審議会などという研究機関が、あちらにも、こちらにもちりちりばらばらと点在しておるということ、これで中曽根大臣の言われる通り、予算はまだそのものとしては一厘も持ってない。いずれも予算不足、いずれも人手不足、いずれもこれ自体として考えてみると、完全なものでありません。世界一の台風、世界一の集中豪雨を受ける国でございますから、内閣総理大臣にお尋ねをいたしたいのは、これらのわが国の公私の研究機関を一つ結集をせられ、わが国の世界に誇る科学技術者の頭脳を動員をせられて、一大台風国立研究所を設けられ、台風の事前措置、特に大事なのは集中豪雨の分散措置――台風というものは、必ずしもはるか洋上で抑えるだけがよいのじゃない。雨の足らぬときには、これを日本列島に迎えて、そうして処理をするという方法にまで進まなくちゃいかぬ。そういう研究のみならず、研究かつ実験を行なうことが必要であると考えますが、研究かつ実験を行なうために、思い切った予算を計上して、国立日本台風研究所を設けること必要なりとわが党は信ずるのでありますが、政府の御意見を内閣総理大臣よりお伺いをいたしたいと思います。
○岸国務大臣 台風や集中豪雨に対して、従来科学的な研究という点におきまして、日本においてほとんど手がつけられておらないことは、先ほど来の御質問で明瞭でありますが、このことは私は非常に遺憾であり、また災害、年々起こるところの台風や豪雨についての事後の対策だけじゃなしに、事前の対策については、今お話のように、日本の科学陣を動員し、さらに諸外国のこれらの研究機関とも十分な連絡をとり、これに対処する必要があるということにつきましては、全然同感であります。今回の十五号台風の後に、科学技術庁に臨時台風科学対策委員会というものを設けまして、そういう方面についての科学者を集めて、これに対する具体的のその対策をどういうふうに進めていったがいいかということを検討さしております。その結論ともにらみ合わせて、御趣旨のような方向に向かって、事前の科学的な研究対策ということが最も必要でありますから、今申しましたような趣旨において、検討を進めて参りたい、かように考えております。
○田中(伊)委員 くどくなって恐縮でございますが、国立研究所を設けることに努力をするとの御答弁と承ってよろしゅうございますか。
○岸国務大臣 大体そういう方向で検討を進めていきたいと思っております。
○田中(伊)委員 気象庁は来ておりますか。――それではこういうことをお尋ねをしてみたい。今度の被害でも、人命の犠牲が非常に大きいのでありますが、この天災が起こって参りましたときに、まあ大いに政府は努力をするとして、いかに努力をしてみても、人間の力と自然の力との争いでございますから、幾らか被害が発生することもあるものと覚悟しなければならぬが、その場合に、一人の命をも犠牲にしない対策いかん、これが大事じゃないか。いろいろ対策はあるだろうが、一人の命も犠牲にせない対策として重要なのは、この気象通報であります。気象通報がどういうことであることが必要であるかといえば、迅速であって、確実であって、一人々々の国民にこれが徹底をするということが必要であります。それをやるためには、私は今日の気象通報のやり方に対して、非難などをする心は毛頭ないのでありますけれども、ありのままの自分の所見をここで申し上げてみると、現在の気象通報のやり方では、私は足らない、これじゃ、人を殺すんじゃないかと思う。二十六日の大災害のありました寸前の十一時の放送をちょっとここで読んでみますと、こういう放送をやるんですね。「台風十五号は、本日午後五時現在、潮岬の南々西およそ八十キロメートルの海上を北または北々東に向かって進行中、今夜の雨はところにより二百ミリないし三百ミリに達しましょう」こういうのであります。これは聞いておってわからぬ。日本語ですから、日本語はわかるんだけれども、どう処置をしてよいのかわからぬ。こういう放送をいたしましたときに、その次にこういうことが言えぬものか。「こういう次第でありますから、何々海岸の何市、何町、何村の皆さんは、何時何十分までにこれこれの食糧、これこれの衣料、道具を持ってうしろの高台のどこそこに避難をしてもらいたい、何時何十分までに、たとえば明朝午前二時までに、留守宅には板のたすきをかけてくぎを打ちつけてもらいたい」という放送を同時にやるわけにいかぬものか。これは現に日本で農業気象というものがやっておるじゃありませんか。「今晩は霜が降る、霜はマイナス五度ないしマイナス三度の見込み、今晩の霜に対してはブドーだなはこうしてくれい、果実に対しては新聞の袋をおかけなさい」ということで実行をしている。非常な感激を受けておる。しかし農林省にも予算を十分やらないものだから、東北の一部と北海道の一部に実施をしておって、九州には、ここにもやってくれ、ここにもやってくれと九州七県は非常に要望しておるのにかかわらず、これは実行ができぬ。農林省は現に苦心してやっておる。こういう農業気象のやり方を、台風に対して、水害に対して適用するわけにいかぬのか、これを私は気象庁当局にお尋ねをしておきたいのであります。これはやれないのかどうか。これをやれば命が救える。ところが、これを聞いても、どうしたらいいかということがわからない。直ちに翻訳をする必要がある。専門語を必要最小限度に――くろうとでなければわからぬ放送をNHKを通じ民放を通じてやってみても、何のことやらわけがわからぬ。それに対しては大臣でなくて一つ気象庁の立場から、これをやることが非常によいと思うのだが、その御所見を伺ってみたいと存じます。
○肥沼説明員 ただいまの御質問にお答えいたします。気象庁の気象警報が、ただいまおっしゃったように内容が気象に偏したものであることはお説の通りでございます。これを実際に避難し、いろいろの対策を立てるようにせよという御意見は、ごもっともでございます。この点につきまして、私どもいろいろ今回の伊勢湾台風にかんがみて検討をして、それに必要な予算などをお願いする計画を持っております。しかしそれをいたしますには、どの川はどういう堤防である、どの町のどの地域はどうなっているかというこまかい調査をしていなければ、こういうことはできないわけでございます。それを気象庁のできる範囲の計画をいたすつもりでございますが、しかし実際にどの町は避難せよというようなことになりますと、これは気象庁の能力あるいは責任の限界を越えるのではないかと考えます。
 それから農業のお話がございましたが、こういうことにつきましてはかねてから、目的がはっきりしております警報はだんだん進んできている現状でございます。霜に対しても、農民の要望によりまして、そこで連絡会のようなものを作って各地で始めております。そういう目的別の予報というのは、今後もいろいろの面で進めていかなくちゃならぬ、こう思っております。その例は、電力会社との間には電力気象通報というのもございますし、船に対しましては船舶気象通報、あるいは漁船に対しては漁業気象通報、こういうふうに目的別のはすでに幾つかやっておるのであります。一般災害に対しましては、これは非常に責任が重いので、今申しましたようなことを各市と連絡をとりながらやるという計画を持っております。
○田中(伊)委員 今の御答弁まことにごもっともで、気象庁当局だけにこれをやれという私の質問が無理であります。そこで、専門の気象通報までは気象庁当局でやれる。それを翻訳して、何町、何村はどうしろということを、日ごろから用意をしておくためには、どういうことが必要であるかと申しますと、まずそれぞれの地方管区がありますから、地方管区別に大きな百畳敏なら百畳敷の地図を作る。その地図にはどういうことを記載するかというと、海面及び主要河川の水位は、満潮時は幾ら、退潮時は幾ら、中間は幾らと、まず川並びに海の水位を地図に明確に表わすことが第一であります。それから、川の流域及び海岸の臨海地帯につきましては、土地の高低を明らかにすることが必要であります。それぞれ所在する市町村の人口、戸数、病院、工場――工場のごときは、地盛りはどの程度にできておるか、内容の機械はどういう機械であるかということを図面で一覧することができるようにしておくことが必要である。この地図が、一枚管区の本部に掲げてありさえするならば、専門の、北々東に向かって進行中、雨は何ミリときたときに、その瞬間に、時間をかけずに直ちに翻訳ができる。どの土地はどう、どの土地はどうと、海岸の形によりまして、風の方向と力さえわかれば、どれだけの高潮がくるかということは、計算式で、直ちにできる。それでありますから、いとやすい対策であります。
 ここに一枚の地図がありますが、この地図は、岸内閣のもとにおける某役人が、休みの時間、寝る時間、祭日、土曜の午後をさきまして、三年間かかって作った地図であります。これには、私の希望する各村落の人口、戸数と、病院の実情、工場の実情というものは書き込んでありませんが、それを数字によって書き込みますと、こういうすばらしいものになる。これは、建設大臣は特にごらんを願いたい。そういうものが日本でもできております。実は、それを印刷する印刷の経費がないというのが現状であります。それは差し上げておきたいと存じますが、これは日本でなければできない地図と存じます。私の注文するのにほぼ準じたものが、この通り、りっぱにできておる。これは日本全国の台風のやってくるところの地域に関して、金と時間と技術者の頭脳をかけさえすれば、三月あったら、日本全国、こんなものはすぐそろう。せっかく不眠不休で休みの時間をさいて作ってくれても、印刷費がないようなことでは、台風対策にならぬ。一口に申しますと、この地図を何百倍に拡大したものを、日本全国の気象庁の各地方管区の本部に一枚ずつ置いておきさえするならば、専門通報を受領した瞬間に、どの村はどうしろという翻訳ができる。これをぜひ実現に移したいと考えます、そういう努力をすることによりまして、すみやかに翻訳をする。翻訳をいたしましたものを、NHK、民放、新聞、通信社、それから大事なのは全国の都道府県本部、警察本部、消防本部、特に市町村役場、こういうところに徹底をいたしまして市町村役場より、それぞれの水防団その他を通じて一戸々々に徹底するという道を考えるならば、人間の命は一人も犠牲にせずして、その防御対策をするということが可能であると私は信ずるのであります。建設大臣の御所見を伺っておきます。
 それから、これは厚生大臣にも、避難、救護に関する問題、警報を順守するという意味の重要なことも含まれておりますから、各大臣から御所見を伺います。そういう協力がありませんと、気象庁限りではこの翻訳がやれない。翻訳をするために三省が協力をする、こういう御意見があるかどうか。
○村上国務大臣 災害防除の対策の一つとしてこれはそういう点につきましての最も肝要なことでありまして、そういう点については、われわれ今後十分検討して参りたいと思っております。
○渡邊国務大臣 田中委員の御意見の通りでございまして、われわれは災害発生が予報されまするや、直ちに中央におきまして対策本部を設けまして、関係府県並びに地方庁、これに対しましてはあらゆる通信機関、ラジオその他を通しまして、常に強制待避命令その他ができるように、人命に絶対に心配ないように、われわれは平素の訓練というものが必要であろう、かように存じておる次第でございます。
○田中(伊)委員 それから、これは簡単にお尋ねをしておきますが、気象通報を正確、迅速にやらせるためには、私が演説をしておるだけではやれない。各省が協力なさってもできない面がある。どういう面かといいますと、努力だけでは行き届かないのは、近代気象観測は高層観測をやるということが一つ。もう一つはレーダー基地を持つこと。高層観測基地を持ち、レーダー基地を持つということができなければ、これはいかにしたって正確迅速にはキャッチできない。洋上はるか向こうでキャッチするということはむずかしい。そういうことでありますから、これは特に私から大蔵大臣にお尋ねしておきたいのでありますが、気象通報を正確迅速にやる目的から申しまして、高層観測基地、レーダー基地の設置が非常に大事でありますが、大へんありがたいことには、この補正予算で室戸岬は認めてもらっておるわけでありますが、さらに名古屋、広島、仙台、函館、八丈島、それから八丈島の南方にある鳥島、沖縄の施政下でありますが南大東島、これは交渉が要ると存じますが、こういうところに観測基地を作るということについて深甚なお考えを願いたい。これができませんと、ここで私がせっかく力んでおりましても、早くキャッチできないことになるわけであります。飛行機の飛び出しようがない。今は米軍の飛行機が飛び出して、そして台風の目をとらえて、その発展の状況を基地に向かって報告をしております。それがやれないことになりますので、金のかかることでごぎげんはよくないと思いますが、とにかくこれだけについては――これは気象庁を呼んで私が聞いてみたら、気象庁はそんな質問をして下さるかと涙を流しておるわけです。そこで気象庁の意見は聞かないが、大蔵大臣はこれに対して一つ真剣に考えてみたいという決意をお持ち願いたいと思うのであります。無理のない話だと思いますが、一つ御答弁を願います。
○佐藤国務大臣 御承知のようにもうレーダーの基地が今日できておりますのは、東京、大阪、福岡、種子島及び奄美大島、これは名瀬であります。今回補正予算で室戸岬を追加いたしたわけであります。御希望のような点が全部整備ができますれば大へんしあわせと思いますが、財政ともにらみ合わせまして十分検討してみたいと思います。
○田中(伊)委員 それから、少し私の口からはいかがかと思ってだんだん考えてみたのでありますが、世間がやかましいものでありますから、ここでお尋ねをするわけでありますが、港湾です。日本の港湾の形によりましては、非常に台風の悪条件にあるところと、比較的そうでないところとがある。これは建設大臣御存じの通りです。台風に対する最悪の条件にあるのは、上から順番に言うとどこかというと、私は実はお恥ずかしいのでありますが、伊勢湾だと考えておった。専門当局に聞いてみると、最悪の条件にあるのは神戸港を含む大阪湾だ、その次は九州の有明湾、それから第三位は東京湾で、第四位が伊勢湾になる。そういう事実があるからでありましょう、大阪においても神戸においても、東京においても、第一に市役所を中心にして大騒ぎで、海岸堤防をこうしてくれなければ命がなくなるというので大へんな騒ぎで、人心の不安な現状は捨ておきがたいものがある。そこで私はこれを質疑をしなければならぬので、するわけでありますが、伊勢湾台風程度のものが来ないものとは保証できない。それは仮想の議論だから答えをせぬというわけにいかぬ。伊勢湾に現に来ておる。伊勢湾以上のものが来るという仮想の議論はしませんが、伊勢湾程度のものが神戸、大阪を襲うた場合、一口に言うと大阪湾を襲うた場合、東京湾を襲うた場合においては被害の程度はどこまで及ぶか、どういう内容の被害になるか、これを明確にして根本的対策を講じて人心の安定をはかることが政治の要諦である、このまま捨ておけぬ、こういう観点から聞くのでありますが、大阪、神戸、東京、三大都市を襲うた場合におけるところの被害の範囲及びその内容、これを建設大臣にお尋ね申し上げます。
○村上国務大臣 お答えいたします。東京、大阪につきましても、今日、従来からずっと防潮堤につきましては実施中であります。しかしながら、今回の異常な伊勢湾台風の被害にかんがみまして、これらの実施中のものに対して再検討を加える必要があろうと思いまして、目下十分研究いたしておりますが、これは現在におきましては確信を持ってお答えいたしかねます。しかし、海岸堤防あるいは河川状況及び地形等の土地条件から勘案いたしますと、大体東京におきましては三十八平方キロ、これが水面以下、いわゆる零メートル以下でございます。それから一メートル程度のものが約二百平方キロありまして、その推定人口は二百五十万くらいであります。それから大阪におきましては、零メートル、いわゆる海面すれすれのところ、あるいはそれ以下のところは約二十平方キロであります。そして一メー十ル程度のところが百五十平方キロ、この推定人口は百万くらいであります。
○田中(伊)委員 東京については具体的な地域を言わない方がいいのかもしれませんが、東京においては二百万余り、大阪においては百万の人口、この相当する部分が水びたりになる、水の被害ですね。これははっきりしておかぬと、命がなくなるというと大へんなことになりますけれども、水の被害がある、こういうことですか。
○村上国務大臣 ただいまのところ、はっきりしたことは申されませんが、伊勢湾台風程度のものであった場合には、それくらいの地域に水の被害があるのではないか、かように思っておるのであります。
○田中(伊)委員 大阪百万というのは、神戸を含んで、大阪湾として百万ですか。
○村上国務大臣 大阪湾としてです。
○田中(伊)委員 そこで総理大臣及び建設大臣にあらためて伺いたいと存じますが、民心は非常な不安になっておりまして、遺憾であるとも言えませんが、東京のごとき、大阪のごとき、市役所、都庁が中心になって研究会を開いて、それが大騒ぎになっておるということであります。これは簡単なことではこの民心安定の道はないのではないかと私は考えるので、わが政府は高潮対策についてしかも臨海地に大都市を擁しておりますような場合においては、優先的に重大な決意をもって防災工事に措置を施すという決意をお持ちになっておるかどうかをまず総理大臣から伺い、それから続いて政府及び与党を中心に立てております治水五カ年計画は、高潮対策としての堤防のやりかえということに頭を置きますと、大蔵省においても、お好みになるとならないとにかかわらず、高潮対策が必要だという観点に立つならば、根本的に大改定を施す必要がある。これを施さないでおいてしっかりやりますなどと言うのは意味がわからないことになりますが、まず総理大臣の御決意、続いて建設大臣の五カ年計画やり直しについての具体的な御決意を伺いたいと思います。
○岸国務大臣 今回の十五号台風の体験は、今御指摘になりましたような高潮による浸水、その被害が非常に大きかったわけであります。この高潮対策を台風対策の上からは最も重要視しなければなりません。またその重要な観点を置くところは、大阪湾や東京湾等人口が密集しておる大都市の地帯であるということにかんがみまして、人心の安定の見地からも高潮対策について特に従来の考えではなしに根本的に考えなければならないと考えまして、今回の台風の直後に、建設省その他の関係のところ並びに関係都市等につきまして、これが対策について特に緊急具体的な方策を立てるように連絡をいたしまして今日に至っておる状況であります。私は、来たるべき通常国会において、治山治水並びにこの災害対策の点から考えますと、特に高潮対策を含めた災害対策を根本的に立てて、そうして今回のようなことが繰り返されないように万全を尽くしていかなければならぬ、かように考えます。
○村上国務大臣 災害防除の基本的なものは、大台風が襲来以前に施設を完璧にしておるということが最も肝要でありますので、従来もその方針で参ったのでありますが、今回の伊勢湾等の異常な大災害にかんがみまして、東京湾あるいは大阪湾その他の地域に対しましても、すでに五カ年計画におきまして相当その事業を実施中でありますが、なお再検討を加える必要があると思いまして、今日慎重に検討を加えております。この点につきましてはただ建設省だけの考え方でなく、関係各省とも十分に連絡をとり、また民間あるいはその他の学識経験者等の意見等も聴取いたしたいので、つい最近高潮対策協議会というようなものを、これは仮称でありますが設けまして、十分防潮に対する施設を完備いたして参りたい、かように思っておる次第であります。従いまして三十五年度の予算にはこれを十分加味したものにしたい、かように思っておる次第であります。
○田中(伊)委員 それからこのたびの災害にかんがみて考えるところでは、どうも警報それから当局の指示というものが民衆に徹底をしない。徹底をしないのは、徹底さす方にも努力が足らぬのかもしれぬが、これを受ける民衆の方でも、いや基本的人権だと称してなかなか非常事態のときに思うように動いてくれぬ。私は仏壇と一緒に死ぬとか、先祖伝来の家で死にたいということで、このたびの被害も無視できぬ数がある。そこで私はどうしてもこれを徹底をさす道を考えたい。一人の命も犠牲にせざる対策ということのためには、警報の徹底、指示の徹底それから避難措置、事が起こってから避難の場所を考えるようでは話にならない。日ごろから避難の場所は高低を調べておいて考えておく。それから救護対策に対して万全を期するということで人間の命は捨てないという考え方に立ちたいと思うのでありますが、そういう場合にまず防災センターを作ることと、これに対しては警報の徹底、指示の徹底それから避難地の用意それから救護策の徹底という事柄を日常より用意をいたしまして、いざというときにば直ちに効果のあるごとくする必要があると思いますが、各大臣の御意見を伺いたい。まず厚生大臣。
○渡邊国務大臣 東京を中心といたしまして近県、埼玉、神奈川、これらの災害をこうむるところの地域につきまして現在調査を進めておりますが、避難個所は大体二千個所、収容人員は百八十万人、かように私どもは現在調査を進めております。
 応急措置といたしましては、給水の問題は小河内ダムや利根川その他につきまして、あるいは淀橋浄水場等においては高地にありまして、この問題については比較的心配はないようでございます。
 救護班は一日約千五百班をいつでも用意できる態勢になっております。
 食糧問題につきましては、現在備蓄米が一カ月半くらいのものが常時用意されておりますし、四十万人の乾パン等その他も用意されております。それから一日八百トンくらいの近県からの米等の食糧輸送が可能ということに相なっております。
 救護班は先ほど申しました通りでありまして、防疫対策その他につきましては、公立病院あるいは私的医療機関等を動員いたしまして、これらにつきましても決して心配のないような状況になっておるようでございます。
○田中(伊)委員 それから問題がすっかり変わりますが、奈良、京都、鳥取、石川等の大被害地でないと見られておる災害地に関する問題であります。これはいずれも被害は比較的に小さくとも、その府県の基準財政収入額の少ないような府県につきましては、被害は甚大と見なければいけない。たとえば京都のことを言って恐縮でありますが、基準財政収入額は五十五、六億、五十六億を出ない。しかるに被害は八十億をこえておる、これは大へんな被害だという観測が必要であります。これらを軽視するなとの声が強い。政府与党は軽視をしておらぬのでありますが、軽視するなとの声が強いが、これに対して、一つ総理大臣及び大蔵大臣から御所見を伺いたい。
○岸国務大臣 今回の対策を実施する上において、いわゆる被害の激甚地をどういうふうに見るかということにつきましては、いろいろの点からこれを検討しております。具体的なことにつきましては、大蔵大臣よりお答えすることにいたします。
○佐藤国務大臣 今回の被害は、御承知のように全国にわたりまして各地に非常な被害を与えております。そこで全県がいろいろな激甚な被害を受けておる、こういう場所もございますし、あるいは県によりましては、その県内の一部が非常に激甚な被害を受けておる、こういうような県がございます。いずれにいたしましても、政府が補助いたします特例法を適用いたします場合には、被害県について適正にかつ公平でなければならぬ、これは申すまでもないことであります。従いまして、ただいまおあげになりました県について軽視する考えはもちろんございませんし、またおあげにならない県等におきましても、それぞれ重大な被害をこうむっておる場所もあることだと思いますので、この特例法の適用にあたりましては、どこまでも公平適正を期するように工夫をいたしたい、かように考えております。
○田中(伊)委員 時間の都合であとは端折りまして、二枚目のべトナム賠償に入りたいと思います。これは主として外務大臣に簡単明瞭に伺っていきたいと思いますが、ベトナム国に対してわが国が賠償義務を負うておる根拠はどういうところですか。
○藤山国務大臣 お答えいたします。サンフランシスコ平和条約調印国として、ベトナムが調印をいたしております。従ってサンフランシスコ条約における賠償義務を日本はそれによって負担をいたします。
○田中(伊)委員 サンフランシスコ条約に調印をいたしましたのは、当時のベトナム王国であるか、あるいはそれと争いをしてぱちぱちやっておったホー・チミン側であるか、これはどちらが調印したのであるか。
 もう一つ、調印をいたしますときに、一体この国と調印をしたのはどういう事情から調印をしたのか。日本が希望したのか、連合国側が招請をして調印をなさしめたのか。日本はどちらがいい、どちらがいけないということを選ぶ立場にあったのかどうか、こういうことであります。
○藤山国務大臣 サンフランシスコ平和条約に調印をいたしましたのはベトナム王国で、当時バオダイ皇帝を抱いておった王国であります。サンフランシスコ条約の調印国は連合国がきめたのでありまして、日本はそれに対して何らの意見をさしはさむ余地はなかったわけであります。
○田中(伊)委員 そこで疑問が一つ起こるのであります。お言葉の通り、連合国側の選んだお客さんを相手に調印したのだ。こっちに選ぶ自由はなかったのだ。これは敗戦国としては、非常に大事なところです。そこで伺いたいのは、しかしながら調印をいたしました後に国が南北に分かれてベトミン側と王国側に分かれた。私の記憶では一九五五年かと思いますが、国の制度も王国より共和国の制度に変革があった。人民も二分の一は北と南に分かれた。領土も二分の一は北と南に分かれた。調印のときはそうでありましょうが、賠償協定を結ぶときには二分の一の国民、二分の一の領土に狭まっておる。しかるにかかわらず、北を相手にせず、南と調印をしたということは、筋論としてはいかなる筋によってそういうふうになさったか。
○藤山国務大臣 御承知の通り、フランスが仏領インドシナ全体の戦後処理をいたしますときに、ラオス、カンボジアとともに独立させたベトナム王国がございます。当時むろんフランスといたしましては、ベトナム王国を認めますまでにいろいろな経緯があったと思いますが、しかしラオス、カンボジアと合わせて現ベトナム地域全体を代表する政府としてベトナム王国を一九四八年の三月でありましたか、アロン湾の宣言をいたしまして、そうしてその翌年の三月にエリゼ協定によりまして独立をフランスが認めたわけであります。しかもサンフランシスコ条約調印の当時におきましては、このベトナム国がベトナムの主要な都市ハノイ等もまだ施政下に置いておった時代でございます。そういう関係でむろん連合国としてもベトナムをサンフランシスコ会議に招請をいたしたことだと思っております。その後政情がいろいろ変わってきておりまして、御承知のように一九五五年に選挙によりまして王国が倒れまして共和制に移ったわけでありますけれども、その共和制は前王国のすべてを継承している国として建国をいたしておるわけでございます。現在四十九カ国がこれを承認して、ベトナムの正統政府だということを認めているわけであります。
○田中(伊)委員 実はベトナム賠償問題での質問は、ここが明らかになったらほかはしないでもいいのです。ここが一番大事なところです。人民の半分、領土の半分が向こうで、調印をしたときとは事情が違う。協定のときはそういう事情になっておる。なぜ北だけをほおっておいて南とやったのかということです。今の大臣のお話を承っておりますと、賠償義務が南とあるといっているが、事実の問題としては北と南に分かれておるじゃないか、それはどういう説明になりますか。
○藤山国務大臣 御承知のように北と南とが分かれております。しかしながら今日、世界の四十九カ国が南のベトナムをベトナム全土を代表する国家として承認いたしておるのであります。北のベトミンの方を、全土を代表する国家として承認しているのが十二カ国であります。従って世界の大半が当然そういうふうに考えておりますことは申すまでもないことだと思っております。
○田中(伊)委員 私の方から伺いますが、サンフランシスコ条約によって義務を負うたのは南です。北じゃない。南の領土がその後において多少変更があった、人民の数において変更があったにしても、賠償する以上は国際法上の義務は北を相手にする道がない。南とやる以外に道がなかったから南とやったのだ、こういう答えですか。
○藤山国務大臣 ただいま申し上げた通りでありますが、ただお話のように、その後領土が変わった、あるいは治めている人が変わったというのじゃないのでありまして、南ベトナムは全ベトナムを代表する正統政府として四十九カ国から承認されておるわけでございます。それにわれわれとしては払うわけであります。従ってサンフランシスコ条約に調印した義務を南に払いますことが全ベトナムに払うことなのでありまして、ジュネーブの休戦協定におきましても、この境というものは政治的もしくは領土的な境ではないのだということを明言しておるわけであります。当然われわれといたしましてはサンフランシスコ条約に調印いたしております南を代表政府として払うわけであります。
○田中(伊)委員 条約の筋論として道がない、南を相手にする以外に方法手段がないという御意見よくわかりました。
 そこで伺いたいのでありますが、理想からいえば、南北の統一ということは、御承知の通り一九五四年のジュネーブ最終宣言で約束されております。それは二年以内ということだから、二年以内は一昨年済んでおって統一が実現しないということだけれども、多少ジュネーブ協定による二年以内という約束が過ぎたにしても、統一の見込みがあるならば、統一を待って賠償をすることが政治的に見ていいのじゃないか、統一の見込みが一体あるのかないのか、もう一つはどうして待てないのか、待てない事情を一つ明らかに願いたい。
○藤山国務大臣 ジュネーブ協定で統一を希望いたしたことは事実でございます。ただ二年間たちまして選挙が行なわれない。そこで今日に至っているわけでありますが、二年間過ぎましたときに、当時一九五六年の五月八日でありますが、ジュネーブ会議の議長をしておりますソ連とイギリスとが、この統一というものが期日にはやれない、なかなか困難な旨を南北ベトナム政府及びフランス政府に通報いたしております。そのようなことで、ジュネーブ協定の実施が非常に困難だということをソ連も認めて議長国としてそういう通報をいたしておるのであります。なかなか困難な事情にあると思います。従ってわれわれといたしましてはむろんこの賠償義務を負っておりますので、義務をできるだけ早く履行いたして参りますことは当然のことであります。従って日本といたしましては、これらの賠償に対して向こうと折衝いたして今日に至ったということでございます。
○田中(伊)委員 七年以上も経過しておるから、国際義務を誠実に履行する立場からは待てないという御意見ですね。そこでそのほかこういうことを私はここで聞いてみたい。南が北を統一したという場合は話は簡単です。外務大臣なかなか見通しがよかったということになる。逆に北が南を統一したということなしと言えない。強いといわれておりますよ。ですから北が南を統一した場合は、この賠償協定はどういう影響をもたらすのか、具体的にいうと、あらためて北を相手にまた賠償の義務を負うような話し合いが進むのじゃないか、こういうことなんです。
 それからついでにもう一つ聞いておきますが、これはどちらがどちらを統一しても理屈は一緒でありましょうが、北が南を統一した場合、北の方が南の方の国際上の権利義務を承継すれば問題はないが、おれは反対しておったのだ、おれは留保しておったのだから、そういう権利義務は承継しない、あらためて賠償をよこせ、こういうおそれなしと言えない。これは社会党の口をかりなくても明らかです。それはどういうふうに説明するのですか。
○藤山国務大臣 両当事者が合同いたしまして権利義務を承継していくのが当然なことだと思いますが、今日の状況ではどちらが統一するということも考えられないのであります。かりにそういう御仮定の全然別個の北が統一したというような場合には、これはサンフランシスコ条約の調印国ではございません。従って調印国としての要求をいたすわけには参らないと思いますので、そのときにわれわれがすぐに調印国としての義務を果たすという必要はないと考えております。
○田中(伊)委員 こういう場合はどうでしょう。新たなる要求には応じない、それは筋としてそれでなければならぬが、さて北の方が南を吸収して南の権利義務を承継いたしますという立場に立ったときに、ちょうど賠償は実施中でまだ残りがある、建設途中だ、工場もダムも途中だ、こういうことになったときには、その残部の賠償実施の義務ということについては、日本は北から要求があれば国際的に従うかどうか。
○藤山国務大臣 新しい、政府が前政府の義務を承継して参りますれば、これは北であろうと南であろうと、その内容に問題はございません。当然承継されたものを履行していくということは国際通念でございます。
○田中(伊)委員 この賠償の内容ですが、三千九百万ドルが純賠償だということです。それから七百五十万ドルがこれはまあ政府借款だ、九百十万ドルが民間借款だとこうなっておりますが、三千九百万ドルという金額が高いか安いかということの議論があるわけです。これは伺ってみたいのでありますが、一体いつからいつまでのこれは賠償か。私の調べたところによりますと、旧日本軍が仏印に平和進駐をいたしましたのは一九四〇年と思います。約四年間、四四年ごろまで平和進駐があって開戦になって、約一年間戦争をして、そして終戦をやった。賠償という以上は戦争の損害でなければならぬ。戦争の損害だとすれば、一年間の損害だとこうなる。ここがやかましいところでありますが、こういうことを聞いてみたい。平和進駐時代四年間の借金もあれば、物資の調達もございましょう。ああいう状況における平和進駐だから、事実上占領したような形になっておる。このときの損害は三千九百万ドルの中に入っておるのかどうか。
 それからもう一点は、一年間の損害であるとするというと、金額がかさむような心持になるが、人的被害、物的被害はどういう被害があって、どういう積算からすると三千九百万ドルなお高くないという答えが出るのか、この二点をお答えを願いたい。
○藤山国務大臣 この開戦は一九四四年八月二十五日、ド・ゴールがヴィシーに帰りましてフランスの主権者として政治をやった当時でありますから、それ以前のものはこの賠償に入っておりません。従って翌四五年の八月に終戦に至りましたので、一年間では多いじゃないかという御議論もございます。しかしその仏印に対する主たる戦闘的作戦行動というものは、一九四五年の三月における明号作戦と申しますか、あるいは六月におけるイ号作戦、中共の方から入って参りました日本軍隊の作戦、そういった戦闘がこの一年間にも行なわれております。また同時にベトナム側からも二十億ドルの賠償の損害があったといって参っておりますが、その中で半分十億ドルぐらいのものは百万人ぐらい死んだ人があるといったようなことであったわけです。百万人というような大きな数字はあろうと思いませんが、相当な餓死者もあった。全ベトナムを考えますれば三千九百万ドルは必ずしも多いとは言えないと思います。
○田中(伊)委員 この三千九百万ドルという金額の基礎は、人的な被害が相当だというようなことでは基礎にならぬ。相手が百万人の死者があったということを表明して要求したというのでしょう。それはそれでいいとして、相手の主張だから……。日本の方はこの金額をきめるときに、それをかりに値切ったとして、幾らの頭数が殺されたものと大体において認めたのか。これは物的の損害もありましょうが、人的な損害が中心となって考えてみても、どのくらいと日本は抑えてこの金額をきめたということがなければならぬ。相当なということでなしに、どのくらいのものはあったものと日本は認めたのか。
○藤山国務大臣 言葉が足りなかったと思いますが、物的損害も相当にありましたし、今の人的損害と申しますか、これについてはいろいろ当時の事情、あるいは作戦の関係者等もまず三十万程度は少なくもあったのじゃないかという予想をいたしております。
○田中(伊)委員 それから時間がないからこちらから聞いておきますが、借款の七百五十万ドルというのは、これは本会議の説明のように輸銀を通じて政府の責任においての借款ですね。そしてこれは利息はつくのですか、つかないのですか。どんな利息がつくのか。
○藤山国務大臣 これは輸銀を通じまして三年据え置きの大体七年ぐらいの償還、利息は世界銀行並みというのでありますから、六分前後になろうと思います。
○田中(伊)委員 それからもう一つわかり切ったことですが、三種類の借款を、二種類の借款と純賠償とを加えて議論をする国民が相当多いと思いますので明らかにしておきたいのですが、九百十万ドルというのは経済開発借款、民間と民間との借款ですね、国民の血税とは関係がないのだ、こういうことですか、どういう条件なんですか、国民と国民との関係だというのは……。
○藤山国務大臣 今回の賠償にあたりましても他の賠償と同じでありまして純賠償はむろん日本の政府が責任を負って賠償をいたすわけであります。それからただいま御説明した借款協定の方は政府として負っておりますものは輸銀がそういう借款に応ずるときに、輸銀の資金をできるだけ枯渇しないようにやってやるというだけのことでございます。それから経済関係の借款九百十万ドルの方は、他の賠償等にもありました通り純然たる民間のものであります。政府はただできるだけ円滑にそういうことが民間でできるように希望するということでございます。
○田中(伊)委員 それからもう一口これを伺って終りたいと思いますが、何というても与党の私たちがこれをお話を承っても、サンフランシスコ条約で義務を負うたから、形はやや変更しておるけれども、ベトナム共和国を相手に賠償を結ばずにはおれない、結ぶとすれば三十万人の犠牲だからして三千九百万ドルは安くとも高くはない、これは話はわかる。話はわかるが、ここで一つ伺いたいのは、何としても北を捨てて南とだけ賠償を結んでここに至っておるということは、政治論というか、事実論としては私たち与党が見ても残念に思う。これは正直なところはこの点に無理があるのではないかということが私たちの見るところだ。そこで伺いたいのは、せめて賠償の内容においてこの内容が水力発電を作ってやる、機械修理工場のセンターを作ってやるということでありますが、こういう二つを中心とする賠償の内容ができ上がった暁に、日本が賠償実施をして、それが完成した暁にその利益はどこに及ぶのかというと、南のみならず将来統一の場合には北の地域にも及び得るように、この発電の計画、機械センターの位置、場所、内容というようなものを作りまして、将来統一をした場合において、おかげは北もこうむっておるのだからという立場に立たざるを得ないようにこれを持ち込んでいくことが肝要であろうと与党の立場は思うのである。それに対してどういう考えか。アウトラインはきめてあるのだろうが、場所はどこにするのか、工場、機械にしても場所はどこにするのかということはこれからきまることと思う。それから電力の内容というのも相当強力なる電力量が発電されないとものにならないと思う。どういう発電内容か。それから工場、機械のセンターは一体どの地点に作って、その利益は南北に均霑するようにするお考えか。これをぜひやってもらいたいと思いますが、御所見を伺いたい。
○藤山国務大臣 もちろんあらゆる賠償の場合に、賠償を受けます国民の利益になるように考えて参りますことは当然のことでありまして、われわれといたしましても賠償交渉にあたりましてはそういう点を考えて参ります。従いまして向こう側の希望も聞いて参るわけでありますが、お話のようにこれが永久に全ベトナム国民に統一されました後にも十分な好影響を与え得るようなものを作っていくということが必要だと思います。向こう側としては水力発電を作りたい、しかもダニムの水力発電を作りたいという希望を持っております。御承知の通り現在ベトナムでは約八万キロくらいな発電能力しかないように考えておりますが、今度かりにダニムの発電所を作りますと、第一期、第二期を通じて十六万キロくらいの発電力になるわけであります。当然全ベトナムを潤すことになるのじゃないか、こう考えております。
○田中(伊)委員 そこでフランスに支払った三十三トンの金の問題でありますが、仏領インドシナ銀行と旧日本正金銀行との清算の結果、三十三トンの金を向うに払ったという、これは一体賠償で払ったのか、旧債務の支払いで払ったのか、どういう事情か。
○藤山国務大臣 フランスとの特別円の問題は、御承知の通り、昭和十六年日本が進駐をいたす前にフランス国と基本協定を結びまして、貿易あるいは日本の進駐費用の調達のための契約をいたしたわけであります。それを代行いたしますのが仏印銀行と正金銀行であったわけであります。三十三トンの金というものは、当時その支払い代金として金とドルで払うことになっておりました。従って、金で渡しておりますので、その残が八月の二十五日に三十三トンであります。その渡してあります金は、すでにイヤマークされておる金でありまして、日本が新しく渡したものでも何でもございません。
○田中(伊)委員 それじゃ時間の関係で安保条約に移ります。内閣総理大臣からお答えをいただきたいのでありますが、世の中のいろいろな疑いをここで明らかにしておきたいという考えであります。
 一体この安保条約の改定問題は、このたびの分は、アメリカ側から押しつけられたものか、日本から希望をしたものか、案はどちらが出して交渉が進んでおるものかということをまず伺いたい。
○岸国務大臣 安保条約の改定の問題は、すでに三年前の鳩山内閣時代に、当時の重光外務大臣がアメリカに参りまして、私もその席にいたのでありますが、提案したことがございます。当時はアメリカは時期尚早であるということで、日本側の要望は聞き入れなかった。その後私がアメリカに参りましてアイゼンハワー大統領と話し、今後アメリカと日本との間の関係を対等な関係に置いて、真に理解と信頼の上に協力関係を築き上げようという共同声明を出しましたときに、やはりこの安保条約の改定問題を提案したのでありますが、これに対しては、とりあえず安保委員会を作って、その運営の点において日本国民の利益と感情に合うように運営をし調整をしようという話になりました。その後一年の経過を見まして昨年の九月末、外務大臣がアメリカをたずねました際に、やはりこの問題を提議いたしたのであります。当時の国務長官のダレス氏も、たびたび日本側がそういう提案をしておるので、今回はそれじゃ一つ話に乗ってもいいが、一体どういう点を改正したいのだと聞かれて、これに対して数点をあげて、こういう点について現行の安保条約は非常に不平等であり、また日本の自主性を認めていない、こういう点を改正したいのだという提案をいたしまして、それに対してアメリカ側としても、そういう方向で東京においてマッカーサー大使と藤山外相との間で交渉をしようという話し合いができた。その後今日に至るまでずっと交渉を続けてきておる、こういうわけでございますから、アメリカ側から押しつけられたというようなことは全然事実に反しております。またこの改正の要点につきましても、今申しましたように、藤山外相がダレス国務長官に数点をあげて、こういう点を改正したいんだという日本側の意向を述べて、それを基本にして話が進んでずっと今日まで来ておるというわけでありまして、項目が大体まとまり、両方の意見が合致するに従ってこれを案文化していくという経緯をとっております。従いまして名実ともに日本側からの提議であり、日本側からの要請に基づいてアメリカ側がこれを受けて立っておる、こういうのが実際であります。
○田中(伊)委員 それから日本の安全の持っていき方でありますが、政府与党が考えておるような日米安保体制という形で持っていこうとすることも一つの方法。また理論的な立場では、日本を中立化していこうじゃないかという意見もこれはえりを正して聞く必要があると思います。しかしながら内閣総理大臣は、政府与党の立場において中立化をとらないで、日米安保体制という立場をとっていかなければならないとお考えになる根拠を本件の基本として承りたい。
○岸国務大臣 日本は終戦後一貫して自由主義の立場を堅持し、自由主義の国と提携して日本の国際的進路を定め、これによって日本の繁栄と国民生活の向上を期して参った。そしてその基礎になる日本の安全を確保するために現在日米安保条約という体制ができておるのであります。これに対して、いわゆる中立論というものにつきましては私は二つの考え方があるように思うのであります。一つは、自由主義の立場において、アメリカとの緊密な協力と提携の上に安全を保持するということをやめて、自由主義の立場を従来よりも薄めて中立的な立場をとろうという考え方。第二は、そういう考え方ではなしに、純粋にどちらの陣営にもつかずに中立の立場でいこう、それが安全を確保する道だ、こういう考え方があるように思います。第一の点は、われわれは自由主義の立場を堅持し共産圏の方へ近づくという考え方を持たないという意味において私は反対であります。第二の点は、そういう考えではないと思いますが、日本のような工業力を持ち、地理的立場を持ち、経済力を持っておる国が、国際間の今日の情勢から見て、どちらの陣営にも属さない、いわゆる中立の立場において安全が確保されると考えることは、私は実際上とうてい実現できない、かように考えます。
○田中(伊)委員 それから、新しい条約はまだ発表されておるわけではありませんから、これは私が勘で思うところでありますが、新条約は、アメリカの日本防衛義務が今の条約は明確でない、それを明確にさすためにやり上げるんだということが大きなうたい文句になっておる。どういう文言を用いてアメリカの日本防衛義務を明確にする考えか、その文言はどんな形の言葉になるのでしょうか。
○藤山国務大臣 文言の最終的確定はまだいたしておりませんけれども、武力的な侵略を受けた場合には両国の共通の攻撃を受けたものとして宣言するというような言葉を使っていくのが適当じゃないか、こう思っております。
○田中(伊)委員 これも外務大臣から。この太平洋上のアメリカの安全政策を見ると、三つの条約の先例がありますね。たとえば韓国との米韓条約、それから台湾政府との米華条約、それからフィリピンとの米比条約、この三条約はいずれも条約のタイトルは相互防衛条約となっておる。日本の場合はちらちら宣伝されるところによると、それは相互防衛でなしに相互協力という言葉になっているんですね。相互協力何々の条約となっている。これはどういうわけでしょうか。何か意味があるのか。
○藤山国務大臣 今回の場合におきまして、むろんわれわれの第一の考え方は、国連の精神を体していくということであって、従って防衛的なものであることは当然であります。ただ防衛の場合におきましても米韓、米比、米台などと違いまして、日本の憲法上の制約もございます。従ってわれわれといたしましては相互協力という言葉は適当に使用すべきである、こう考えております。
○田中(伊)委員 憲法では相互防衛は実際はやれぬ、だから協力という言葉を使う、こういう意味ですね。
 そこでもう一つ伺ってみたいのは、この相互協力という中には私は三つの意味があると思う。当然にあると思うのであります。それは政治協力と経済協力と防衛協力。防衛協力は本条約にうたわれている。問題になるのは政治協力と経済協力でありますが、政治協力は国内政治などに関係を持たれると内政干渉をしてもらうことになる。アメリカの政治協力を内政についてするということは、日本がアメリカの政治干渉をすることになる。でありますからこの政治協力とは一体どういう意味を言うのか。それからもう一つは経済協力とはどういう意味を言うのか。経済協力というものを劈頭一番にうたうという建前のようでありますが、この経済協力という中にはこういうことは含まれるのかどうか。今日米間の協力をしてもらわなければならぬことはたくさんあります。たとえば紅ザケの漁業の区域、サケの輸出、これはカン詰の輸出を中心とします。それから日本商品のアメリカに対する輸出を制限するというアメリカの世論が非常に強くなりつつある、こういうことは一体経済協力の上から考えられるのかどうか。それからもう一つは、ほんの昨今の切迫した事情でございますが、アメリカの国際収支は変調というか、逆調である、そういう事情に置かれておって、すべて後進国に対するMSAその他三種類の物資の援助は、日本で調達をして日本で加工せしめないで、アメリカ本国において調達をして本国において加工すべし、わかりやすく言えばドルを節約する道だという議論がやかましくなって、日本の業界を刺激しておるという事情もある。ことにアメリカのドルを節約するという考え方から申しますと、アメリカの対外援助に対しては非常な引き締めをやるべしだという議論が昨今APの報ずるところであります。こういう事柄をめぐって日本との経済協力というりっぱな条約ができることになりますが、この条約ができた暁には、この種の日米間の経済上の諸問題に少なくとも好影響がある、解決に役立つのだという解釈をしているのかどうか。これを一つ交渉に当たっておられる外務大臣に、どういう話し合いが今日までにできておるか伺いたい。
○藤山国務大臣 政治的なあるいは経済的な協力関係をうたいましたことは、この種の条約を作りますときに両国の精神的な態度をはっきりさしていくということであることむろんであります。従いまして政治的な協力関係と申せば、国連の平和維持機構をお互いにりっぱなものにしていこうじゃないか、砕けて申せば、そういう形の、またできるだけ世界に戦争をなくしていこうじゃないか、そういうような意味のお互いの精神的な、しかも確固たる決意を表明していくということであります。経済協力関係におきましても、お互いが経済を十分円満に運営していく、しかもそれは世界の経済に貢献するように自由主義陣営の立場に立って、そうして経済の大きな協力関係によって、世界平和の機構の一つの基礎である経済問題についてお互いに協力をしていこう、こういうことであるのでありまして、必ずしも個々の具体的な日米間の問題というものをすぐにそこで取り上げるわけではございません。しかしそうした協力関係が経済上打ち立てられますことは、むろん日米間の経済協力の面においても非常に有効だ、とこう考えております。
○田中(伊)委員 現実の問題にも好影響ということですね。
 そこで総理大臣にこの点を伺ってみたいと思いますが、今の安保条約は条文の表にも書いてある通りに、一行にすばらしく明確に答えてある。日本は平和条約を結んで効力を発生した。しかるに日本は武装解除だ、手のつけようがない。ところが日本を侵略せんという国がないとは言えぬからアメリカに残っていただいて防衛をしてもらうのだ、言葉をかえていえば、この条約は暫定条約だという、においじゃない、文言が出ておる。これはすっかり今度は消えてしまってそうして十年という期限をどかんときめて、これによって本格的な条約だというにおいが出ておる。これはまあそういうふうに見えるのも私は無理がないと見なければならぬと思うのですが、そういう声が非常に高い。それは一体米ソを中心とする国際緊張、雪解けの傾向とは逆じゃないか、こういう声は野党ばかりじゃない、ちまたに高いのでありますが、内閣総理大臣はどういうお考えであろうか。
○岸国務大臣 現在の安保条約は、今御指摘がありましたように、これが条約として締結された当時におきましては、日本の防衛力というものも全然なかったし、また日本の経済力も国力もまだ非常に低い。またさらに国連の一員でもなく、国際的の地位というものもなかった、こういう際に日本の安全をいかにして保持するかという見地に立って、アメリカに来てもらって、アメリカの力によって日本の安全を確保していく、こういう建前であったことは当時の事情からいってやむを得なかったと思うのであります。しかしその後日本の国内の情勢もまた国際的の地位も変わって参りまして、先ほどお答え申し上げましたように、私がアイゼンハワー大統領と話したときにも、今後アメリカは対等な立場において独立国としてお互いの自主的な立場を尊重しながら協力を進めていこうという根本の話し合いをいたしたわけでありまして、今回のこの状態におきましても、この今までの不平等な、また日本の自主的の立場を認められておらない安保条約を相互の対等な地位に置いて、そうして協力をし合うという立場においてこれを是正していこうというのが私どもの考えであります。今日東西両陣営の間におけるところのこの関係がいわゆる雪解けの方向に動いておる。方向は確かにそういう見方はできると思いますし、またそれは非常に望ましいことであることは言うを待たないのであります。しかしそれは決して両陣営とも一切の力の関係を無視して、そうして渾然と融和するというような方向に動いているというわけではございませんで、両方がやはり力を背景として、そうして武力を用いることなく、話し合いによってすべて平和的にものを解決しようという方面に動いておるということが国際の情勢であります。そうしてその力の関係というのは単に武力だけを意味しているのではないのであって、やはり両陣営とも政治的、経済的な基盤を同じゅうしておるところの国々が協力し、結束して、その結束を背景として話し合いをしていくという情勢であると思います。こういう情勢のもとにおいて、やはり日本がその将来に向かっての安全を確保する意味から申しますと、今申しましたような不平等なものを平等に直すということが望ましいことである。そうして今の条約も無期限でありますが、それは暫定的の性格であるということは、これはしばしばアメリカ側も声明をしておったわけであります。しかし今回の条約においてこれを十年という一応安定した基礎に置いて、しかもそれが非常に長期というわけではございませんで、この種の、もしくは国際的に存しておりまする各種の防衛条約等を見ますと、二十年、三十年、あるいは五十年というような中にありまして、十年ということは私ども国際情勢から見て適当な期間である、かように考えております。
○田中(伊)委員 これも総理に伺いたいのでありますが、新しい条約の第二の特徴は、わざわざ文言の中に国連の強化がうたってある。国連の任務の遂行を遺憾なからしめるために、両国全力を尽すということがしっかりうたってある。これは私はそのうたい文句じゃないけれども、うたい文句であってはならぬと考えるのでありますが、アメリカの大統領及び日本の総理大臣は、この条約を締結せられる以上は、具体的に国連の強化、国連をして完全に任務を遂行せしむることを一日も早く実現するように努力をされることが国際的に非常に大事なことであって、日本の信用を獲得する上からもこれはベトナム賠償以上に大事な国際信用だと私は思う。そこで伺いたいのでありますが、一体国連の強化とは何だ、こう考えてみると、国連の強化とは、大国がその拒否権を使うことができるようなことでは国連の強化はできぬ。これは国連強化の根本的なマイナスであります。そこでアメリカの大統領及び日本の総理大臣は、米国に協力をして国連憲章を改正して、大国の拒否権に対して制限を加える決意がないか。この決意がなければこれはうたい文句だ、こういうふうに私は思われるおそれがあると案ずるのであります。どういうものでございましょうか。
○岸国務大臣 わが内閣の外交の基本方針として、国連中心主義の外交ということを申しております。これはただ口先だけの問題ではございませんで、国連におけるわが国の代表が事ごとに努力しておることが常に国連を中心として国際的問題を平和的に解決し、ここに戦争その他の危険が存せないように現実に平和外交を推進する手段として国連中心主義ということを申しており、その通り努力をしております。今回のこの日米の間の新条約におきまして、その点を強く私どもは両国ともに念願しておるわけであります。今御指摘のありましたこの安保理事会における大国の拒否権という問題に関しまして、これをいかにするかという問題は、国連におきましても従来もいろいろと論議をされております。また国連の機構を強化する上においてこの拒否権、これが実際過去においてどういうふうに使われたかという実績から見て、国連の機能を十分に果たすのには、やはり拒否権について何らかの制限を加えなければならぬという議論も相当に有力になってきつつあると私は思います。今直ちに拒否権をなくするということを一挙に提案して、それがはたして成功するかどうかは非常に疑問があります。私どもいわゆる角をためて牛を殺すの愚をして、そのためにかえって国連機構そのものにひびを入れるようなことがあってはならぬと思います。十分にいろいろな情勢を判断しつつ、国連を強化して真にこれが世界の平和維持の機構としてその使命を十分に達するように今後とも努力していきたいと思います。
○田中(伊)委員 党を代表する希望でありますが、雪解けの段階をよく注目をしていただいて、潮どきを見て、ぜひこの日米の協力のもとに、拒否権の制限という方向に向かって国連憲章の改正をいただきたい。これでなければ国連の一人前の力というものは出ようがないということをここで申し上げておくことにしたいと思います。
 それからもう一つ総理に伺いたいのは、バンデンバーグの決議から申しますと、今藤山さんのお話によると、相互防衛でなしに相互協力だというお話でありますが、バンデンバーグの決議から言うと、この出先のマ大使がどういうお話をなさろうと、アメリカ外交の憲法とも言うべきものがバンデンバーグの決議だとすると、バンデンバーグの決議は相互防衛でなければいけないのだ、おれのところが日本を守ってやるかわりに、いざというときには日本もアメリカに来ておれの国を守れ、国の領土の一部または全部を守れというのがバンデンバーグの決議だ、そういう点から申しますと、よほどしっかりした話し合いができておりませんと、この条約地域が日本の施政下に限られるなどということが守れないのじゃないかということを私は案ずるのであります。たとえて申しますと、兵器がだんだん進んできておる。たとえば一CBMというものは長距離弾道弾でありますが、これは八千キロ飛ぶ。八千キロの長距離弾道弾が飛ぶことをかりに考えてみると、中距離弾道弾でも五千キロを飛ぶというのでありますから、北京と日本間でこれが飛ぶ場合、基地をたたくことまた自衛なりということが言えるわけであります。日本の飛行機が憲法の建前上からは、外に出ない建前をとるわけでありますが、しかしながら新兵器によって攻撃を受ける場合に、攻撃の基地をたたくという建前から言うと、海上に出ざるを得ない。日米両国で話をしたこの条約には了解をつけて、外に飛び出すような事態が起こっては相ならぬということが心配になるわけであります。そこで総理に伺っておきたいと思うことは、この日本の条約上の援助義務というものはいかなる事情があろうとも拡張解釈はしない、施政下の領域にかたく限られるということの厳格な了解がついておるものかどうか。
○岸国務大臣 今回の条約におきましては、この日本の義務ははっきりと日本の施政下にある領域に限るということが明瞭になっております。従いまして日本自身がそれを越えて行動するということはないわけであります。
 なお、先ほどバンデンバーグ決議のことをお話しになりましたが、バンデンバーグ決議の本来の趣旨は、決していわゆるアメリカが日本を助ければ、日本もアメリカの本土がやられた場合にこれを助けるのだという意味ではございません。いやしくもアメリカがある種のそういう援助を与えるところの国は、その国みずからが自分の責任を果たすという決意と努力をしておるところでなければいけない、一切をアメリカにおんぶして何でもかんでもアメリカに負わして自分の責任や自分のなにを尽すところの意思を持たない、決意を持たないようなところには援助は与えないのだと、こういう趣旨に私どもは解釈いたしております。決してバンデンバーグ決議があるからといって、日本がアメリカの本土を何らかの形において侵略された場合に、日本が出ていってアメリカの本土を防衛するということは絶対にないのであります。
○田中(伊)委員 それから条約文が出ておるわけではありませんから、こまかいことは聞けませんが、表に出ておることをとらえて、大事だと思う点について、ちょっと藤山外務大臣に伺いたい。この条約を実施する場合に、この実施に関し、そして極東の平和、日本の平和というものを維持する必要があるときには、事前協議でなくて一般協議というべき協議をすることになっておりますが、これはどういう場合でしょうか。具体的に……。
○藤山国務大臣 今回の条約は、御承知いただいております通り、協力関係を打ち立てて参るわけでありますが、あらゆる場合に条約の実施に関してむろん協議をして参らなければならぬのであります。日本の平和と安全が脅かされたような場合であろうと、その他の場合であろうと、具体的にそれらの問題について、いろいろ平素から話し合いをしていくということが円滑な実施に移るゆえんだと思います。従って適当な協議機関を常時置きまして、そうして協議をしていく。また同時に、何か非常な事態が起きたような場合に、協力関係を自衛隊とアメリカ軍との間に打ち立てる意味における協議機関というようなものもできることになろうかと、こう考えております。
○田中(伊)委員 それでは具体的にこちらから伺いますが、内乱、騒擾という場合を考えなければならぬ。この場合は間接侵略の背景がある場合と、ない場合とがございます。大規模なものはあるという、そうでない場合にはない場合もあるかもしれない。そういう両様の場合でありますが、内乱、騒擾の場合は一般協議に入るのかどうか。
○藤山国務大臣 今回の場合、単純な内乱はむろん協議に入らないことは当然でございます、しかしながら間接侵略に類似したような侵略行為がありました場合には、当然それは間接侵略であるか、ないかということをまず協議する必要もあろうと思います。そうしてそれが間接侵略であるというふうになりますれば、それに対して次の協議に移っていくということになるかと思います。
○田中(伊)委員 それから協議するとあるのですね。そうなるのだと思いますが、単なる協議じゃ役に立たぬのですが、協議かつ必要あらば措置をすると、こういう意味に話し合いができておるのかどうか、協議のみならず、必要あれば措置をするということの話し合いではなかろうかと思うのですが、どうでしょうか。
○藤山国務大臣 むろん協議をいたしますことは、いろいろな処置をいたす前提として協議をいたすわけであります。協議の結果、処置をしなくてもいい場合もございましょうけれども、処置をしなければならぬ場合が多くあると思います。
○田中(伊)委員 協議の結果必要とするということを双方が認めることになれば、直ちに条約は発動すると、こう聞いていいですね。
 それから協議機関はどうするのでしょう。だれとだれ、どういう地位の人で協議機関を構成するか。それからその協議機関の下に下部組織というか、専門機構が必要ではないかと思うが、そういう機構はどういうふうに組み立てる考えであるか。
○藤山国務大臣 ただいま協議機関の問題については検討をして参る過程にございますけれども、現在御承知の通り、岸・アイク共同声明によりまして、日米安保委員会というものができております。この構成は、日本側は外務大臣と防衛庁長官、アメリカ側は極東軍司令官と駐日大使ということになっておりますが、まずそういうものが骨格として考えられるのではないかと思っております。常時の協議機関としては、そういう種類になろうかと思います。それから実際の問題を扱って参ります場合には、いろいろなお話のような下部的な協議機関と申しますか、自衛隊とアメリカ軍との間の作戦上の協議、あるいは共同動作上の協議というものも行われる機関が当然できて参ります。
○田中(伊)委員 これは総理にお願いをしたいと思いますが、沖縄、小笠原の扱いであります。これは条約の今表面に出ておるところからいうと、条約地域にはならない建前でございます。しかし沖縄、小笠原の住民は、あげて日本がこの条約に際して何とか措置をしてくれるのではなかろうかという非常な期待がある。そこでこれは私の党を代表する意見でありますが、この条約の上からは、条約そのものからは、日本が援助の手を伸ばすことはできない建前になります。しかし憲法の自衛の原則というものから申しますと、沖縄、小笠原といえども領土である。ただ施政権を施行しておらない、いわばよくいわれる言葉で言えば、潜在的な主権を持っておる、その潜在的主権というものにものを言わして、日本の憲法上許された範囲内において、わが自衛隊独自の行動として行動をとることはアメリカが了解すればできないことはない、こう考える。アメリカはそういう点について了解をする見込みがあるのかどうか、また今までの経過から申しますと、言葉をかえれば、条約地域に準ずる地域として日本が責任を持つのだ、こういう見通しがあるかどうか、まず藤山大臣に、どういう経過になっておりますか。
○藤山国務大臣 もちろん今回の条約地域は沖縄を除外されております。従いまして当然日本としては沖縄に対して何らかの行動をいたすことはないと思います。がしかしながら沖縄におります沖縄の国民というものは日本人であります。従って非常事態の際に沖縄国民の福祉をできるだけ援護して参るということは、日本政府として重大な関心がある問題でございますので、従って武力的な問題を別にいたしましても、少なくも沖縄国民の沖縄が攻撃されたときにおける福祉幸福安寧というものに対しては、日本はできるだけこれに対してアメリカと相談をしながら、あるいはある場合には本土に引き揚げさせるとかあるいはそれらのものに対して救血品を送るとか、そういうような、できるだけ援護の道を開いていくように交渉はいたしております。
○田中(伊)委員 それからMSA協定によっていろいろ物資をちょうだいをしておる。議論のあるところでありますが、とにかく現実には来ておる、このMSA協定と、この条約との関係、MSA条約に基づく各国との協定に関しては、アメリカはしぼろうしぼろうという傾向にある。ドルの逆調ということが原因であります。このMSA協定との間にはどういう影響が来るのかということ。
○藤山国務大臣 アメリカ側は今日財政的理由でもってMSA協定そのものに対して非常な、今お話のようなできるだけしぼりたいという意向が出て参っておりますことはむろんのことでありまして、御承知の通りだと思います。日本とアメリカとができるだけ協力体制を作って参りまして、有効に日本の防衛をやっていきます場合に、必要なことについてはしぼっておる範囲内においてもできるだけ協力してくれるものとわれわれは考えております。
○田中(伊)委員 最後に、事前協議について伺いたいのでありますが、一体協議々々ということがやかましいのです。これは無理はない、協議というのは協議なんだから、協議に別の意味があるというのは無理なんです。協議は協議なんだ、そこで伺いたいのでありますが、協議ということの意味です。相談の段階を協議という、こういうのですが、その相談の段階でどういう姿になったときに協議成立せりと見るのか、どういう話し合いになっておるか。
○藤山国務大臣 協議でございますから、むろんできるだけ円満に話し合いをつけていくことのために協議をいたすことは当然でございます。ことに日米協力体制の中において協議が円満に進行することをわれわれも希望いたします。しかしながら協議であります以上は両者意見が違うことがある、これまた当然でございまして、その場合には日本の発議によって協議がととのわない場合も当然ございます。協議がととのいませんければ、そのととのわないままで実行されるということはないわけであります。従って、協議はやはり合意を含んでいるというふうに考えて、交渉上話し合いをいたしております。
○田中(伊)委員 この協議が合意を含んでおるとか、同意を含んでおるとかいうお言葉には無理があるのじゃないか、今のあなたのお言葉を私の方で翻訳をしてみると、こういうことになるのではないか。日米の関係は普通の関係じゃない。単なる外交関係じゃない。非常な相互信頼関係に立っておる。その相互信頼関係に立っておる両国が協議をするという以上は、協議で今のお話のごとく話がつかなければ行動には入らぬのだ、すなわち、ここに言う協議とは、もう一口言葉が加わって、協議の成立ということに解釈をすることが必要ではないか。協議の成立ならば同意を含む、それは離婚の場合も一緒ですね。相手が承諾するから離婚が成立をするので、離婚の協議をしたら離婚が成立する、そんな気違いじみたことはない。そこで、この協議とは協議の成立を意味するものだというのは何を根拠でそういうのかというと、両国の相互信頼関係が基礎だ。そうして協議の成立とは同意を含む、承諾を含む、オーケーを含むんだ、こういう解釈でしょうね。どうです。
○藤山国務大臣 私の言葉が足りなかったかもしれませんが、今お話の通りでございます。
○田中(伊)委員 そこで、これは大事なことなんですが、どうして交換公文に譲ったのですか。交換公文に譲った理由。
○藤山国務大臣 条約の文中にも協議ということは出て参ります。ただ、交換公文にいたしましたのは、日本の基地から作戦行動に出る場合、あるいは核兵器を含む重要な装備、配備については、事前に協議をしてもらいたいという意味において、交換公文にそれを摘出いたしまして書いたものです。
○田中(伊)委員 それから、日本政府が拒否をする場合があり得る。同意をする場合があり得る。中間の場合があり得る。これは三つの場合があり得る。その場合に、伺っておきますが、拒否ということが日本独自の立場で考えてみてできるということについては、かたく話し合いはととのっておりますか。
○藤山国務大臣 むろん協議でありますから、意見が合わない場合がございます。それを拒否という言葉でも言えると思います。その場合には、当然実行はされません。
○田中(伊)委員 どんな場合に同意をするか、どんな場合に拒否をするか、こういうことは、腹がきまっておらぬとこういう条約は結べぬわけですね。どういう場合に拒否をするか、どういう場合にオーケーを言うのか、その基準を一つ言えたらお話を伺いたい。
○藤山国務大臣 むろん、今回の条約は、日本の安全を第一とすること当然でございまして、従って、日本の平和と安全に対してわれわれが考えております基準に従って賛成を表して参らなければならぬと思います。日本の安全と平和が守られることよりも以上に何かあったような場合には、むろん日本としてそこまでいかなくてもいいんじゃないかということは当然言えることだと思います。個々の具体的な例になりますと、いろいろな場合が想定されると思いますから、原則的に必ずしも一言で申し上げることは不可能かと思いますけれども、大きな建前とすれば、むろん日本の安全が守られるということ、それから、同時に、むろん国連憲章を両国が尊重して参るわけでありますから、国連憲章に違反しないように処置して参るということは当然のことでございます。
○田中(伊)委員 アメリカの立場を拒否権でしぼる、そういう言葉がどういう反響があるかは別でありますが、結論はそういうことになりますが、協議段階における拒否によってアメリカの行動をしぼるということには多大の疑問がある。日本、弱腰だからむずかしいんじゃないかといったような世論が相当に強いわけです。そういう声があちらこちら、一部にある。これは内閣総理大臣に伺っておきたいのでありますが、この条項に基づいて、協議段階でわが国の安全、平和の上から感心せないと見た場合において拒否をするという、この拒否権の行使によって米軍の行動をしぼり得る自信が政府におありになるかどうか。
○岸国務大臣 今回の条約改正の基本の考え方は、先ほども申し上げましたように、相当長い交渉の上にでき上がったものでありまして、日米を同じ立場に置いて、そうして、日本の自主性を十分尊重するという建前が今回の改正の要点であります。そうして、日米間は理解と信頼の上に立ってこの条約を忠実に守るという前提に立っておりますから、私は、国力が、日本とアメリカは実際上差があるとか、あるいは武力の上において差があるというようなことではなくして、両国が真にこの改定に着手した今日までの経過から見まして、両国が対等の立場において、おのおの自主性を認めて忠実にこの条約を守るという信頼の上に立っておりますから、日本が各種の事情からこれを拒否した場合に、アメリカがそれを守らないということもなかろうし、また、日本自身が力が弱いから云々というようなことは全然私ども考えておらないのでありまして、対等な、また、日本の独立自主の立場から、われわれの主張すべきことは当然条約に基づいて主張していく、こういう考えであります。
○田中(伊)委員 最後に、期限の問題で、要点でありますが、藤山さん、十年十年と言われるのですが、条約文が出てこぬからわからぬが、予告一年を加えると、有効期間は十一年という建前になるのですか。
○藤山国務大臣 その通りであります。
○田中(伊)委員 それから、最後に総理大臣に伺いたいのでありますが、この有効期間十一年以内といえども国際情勢に大変化があればいつでも改定ができるのだ、などというようなことがにわか作りに言われるのであります。これは、国際法というものの原則論から言いますと、条約というものは、国と国との約束なんだから、両国が承諾をすれば、きょうきめたものは、理論的にはあすにも改正がなし得る、廃棄ができるということは、理論であります。しかし、日米両国の今日の現状から見て、一体国際情勢の変化というようなことが十一年以内に考えられるだろうか。これは、具体的に申し上げますと、この場合における国際情勢の変化とは、アメリカと手を切って日本がソ連と結ぶ、あるいは日本が中立化するということが国際上の大きな変化でありましょう。また、一つの考えは、高度な軍縮が実現をする、アメリカ、ソ連を含んだ高度の軍縮が実現して、そうしてもう自衛以外には手の出しようがないというような極端な高度な軍縮が実現するということも一つの国際上の変化であります。そういうことが十一年以内に起こるという見通しもなくして条約改定の中途において国際情勢が変化するならば、ただし書きは書かなくても当然改定ができるのだという不用意な論議を行なうということはいかがなものであろうか、こう考えるのでありますが、その点は、総理大臣はどうお考えですか。
○岸国務大臣 もちろん、この条約の中にも、国連において何らかの機構が作られ、そうして、日本の安全が保障されるということが明瞭になってくるならば当然失効するというふうな、国連を中心としての大きな変革に対しては対処するような条項が置かれると思います。その他一般理論として、今お話しになっているように、こういう条約は、国際的に非常に情勢が変わり、両国の意見が合致すれば変えられるということは、これは当然なことでございますが、しかし、今田中委員が御質疑になったように、日本がいわゆる自由主義の立場をとって、そうして、日米の協力のもとに日本の安全と繁栄をはかっていきたいということは、わが党並びにわが内閣の基本的の考え方でありまして、国際情勢の変更いかんによって日本が自由主義の立場を捨て、日米協力関係をやめるというようなことは絶対に考えておりません。またその間において軍縮その他国連においていろいろな機構ができるかできないかという見通しにつきましては、われわれも先ほど質疑応答にも述べたように、国連を中心に世界の平和維持というものを強力に推進するように今後ともわれわれは努力していくのでありまして、それに関連しては条約にちゃんとその場合にはこの条約をやめるということが規定してあります。今後十年の間にそういう情勢が出てくるかどうかは今日まだ判断できませんけれども、努力はするつもりであります。
○田中(伊)委員 それで終わりますが、大蔵大臣に、大事なことを一つ落としておりますから、簡単に一口お答え願いたいと思います。
 昨今から来年度の予算編成期に入っておるわけであります。補正はいろいろ御苦労をいただいて、こういう状態の補正が上程されておる。来年度の予算案の編成にあたって、来年度の予算の規模、大きさの見通し、それからいかなる新事項を織り込んでやるかということによって生ずる予算の性格いかん。なおこれらに対する財源が非常に枯渇しておるものとして案ぜられておるが、本格的な災害対策は来年度予算からでなければならぬ。これには大蔵大臣として非常な決意と用意がなければならぬと思いますが、これに関するアウト・ラインをここで伺っておきたい。
○佐藤国務大臣 先ほど来の質疑応答においても事態が明確になっておりますように、今回の災害はまことに被害が甚大でございます。この臨時国会で御審議をいただきます応急処置並びに復旧の費用にいたしましても、これが財源捻出については既定経費の節約までお願いをしたり、あるいは債務負担行為でまかなうというようなことまでいたしまして、ようやく今回の対策を樹立いたしたわけであります。
 ところで来年度の予算を編成いたすにつきましてまず歳入がどういう関係になるか、これを私どももいろいろ工夫し、苦心しながらただいま検討中でございます。ただいままだ全貌を明らかにする段階でございません。しかして今までいわれておりましたところは、来年度の税の自然増収は相当多額を計上し得るのではないか、最近の経済情勢の伸び等から見まして、そういうことが実はいわれております。この臨時国会開催前の状況におきましては、まず自然増収千五百億というような金額がうわさされて参ったわけでございます。しかしながら今回の災害まことに甚大でございますので、この災害から相当減収の分もある、かように見積もらなければならない。従いまして増収がどの程度におさまりますか、まだもう少し時間をかしていただきたい、かように考えます。そこで税の自然増収が千五百億あるいは千六百億というような金額になりました場合に、この税の自然増収分は全部が歳入増と実は見れない点があるのであります。と申しますのは、御承知のように、歳入は税あるいは剰余金あるいはたな上げ資金あるいはその他の国庫収入、益金というものを計上して参るわけでございますが、剰余金の点におきましては、三十四年度予算を編成いたしましたときに比べますと、非常な減額でございます。またいわゆるたな上げ資金も使い果たした今日でございますから、さような点を考慮に入れますと、歳入増として計画いたしますと、税の収入そのものでないということに実はなるのでありまして、この点が来年度の予算編成の際におきまして非常に私どもの工夫を要する点ではないかと思うのであります。ところで歳出の面におきましては、すでに昨年以来あるいは本年の予算等から見ましても、当然増加を予定される歳出がございますし、さらにその上、今回の災害に対する対策を本格的に計上する、あるいはまた治山治水等についても根本的な対策を講ずる、かように考えて参りますと、この歳入歳出の面におきまして、非常に困難な状態ではないかと、実は非常に心配をいたしておる次第であります。また一面災害に対する対策は、これを中心にして予算を編成して参るといたしましても、経済の伸張に非常に支障を来たすような予算編成ということはできないわけであります。当然私どもが絶えず申しておりますように、予算や財政投融資の面から、経済に対して、非常な刺激などを与えないようにこれまた工夫して、健全な状態で経済の伸張も期していきたい、ここに非常な苦心がある、かように私ども考えて、ただいま慎重に対策を検討中でございます。
○田中(伊)委員 最後に総理大臣に伺いたいのでありますが、以上申し上げましたような質疑の内容から見ましても、このたびは、科学技術に関する施策をうんと進めなければいかぬ。それから各地方庁の、広範囲にわたるこの災害に満足を与えるような意味からいいましても、地方自治を担当する自治庁の任務も重大であります。自治庁及び科学技術庁をぜひこの機会に省に昇格をさせたい。必ずしも金のかかるような機構いじりをしようとは考えないのでありますが、これに対してどうか一つ積極的な深甚な顧慮をお払いをいただきたい。これをもって質疑を終わるわけでありますが、総理大臣のお言葉をいただきます。
○岸国務大臣 自治庁や科学技術庁を省に昇格しろという御議論は、いろいろの点から、重要性の上から申しましても、相当傾聴すべき御意見だと思います。ただ行政機構の問題につきましては、かねて各般に影響するところがありますので、審議会等において審議いたして参ったこの結論もございます。これらを十分参酌して、政府としては善処したい、かように思っております。しかし、十分、今後科学技術の面及び自治、各地方公共団体の仕事が強力に推進されるように、中央機構も整えて参る必要がある、かように考えております。
○田中(伊)委員 終わりました。
○小川委員長 午後二時より再開することといたしまして、この際暫時休憩いたします。
    午後一時九分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時三十分開議
○小川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。三宅正一君。
○三宅委員 私は社会党を代表いたしまして、六つの問題を質問いたしたいと存じます。その第一は安保条約改定についてであり、第二は日中国交回復の問題についてであり、第三は南べトナム賠償問題、第四は所得倍増計画の矛盾について、第五は災害問題について、第六は石炭産業の危機突破について質問をいたしたいと考えるのであります。そのうち、災害の問題、石炭の問題、南ベトナム等の問題につきましては、それぞれ同僚がその問題中心に質疑を試みることになっておりますので、私は重点を外交問題に置きまして質疑を試みたいと存ずるのでございます。
 質問の第一は安保条約改定についてでありますが、そのうち特に私が第一にお伺いいたしたい点は、安保条約改定交渉のやり方それ自体について、納得のいかぬ点が多々あるのであります。国の運命と方向を決定づけるこの重要な安保条約改定交渉が、まず第一に政府内部の意見が不一致のまま発足し、党内の意見が不一致であり、国民の大部分がまだこれに無関心でおるというような状況のもとにおいて、なま煮えのまま調印が強行せられますことは、社会党がこれらの点を憂慮いたしまして安保条約改定の交渉をしばらくやめろという決議案を出そうとしておる点から見ましても、私どもは納得がいかないのであります。
 そこで第一点としてお伺いいたしまするのは、岸首相は改定交渉の初めからいたしまして、日米新時代に即応する対等にして双務的な相互防衛条約的性格に切りかえていきたいという意図を持っておられることは明らかであります。しかしながら担当の大臣でありまする藤山外相の構想は、基地貸与協定的な性格のものとして、核兵器の持ち込みを禁止し、日本を作戦基地とする際における事前協議問題等、主としてこの二点にしぼって交換公文を交換して、軍事同盟的な性格を弱め、骨抜きにし、国際情勢の変化に即応し、安保条約それ自体を解消の方向に持っていこうとしておられたことは明らかであります。私は藤山氏のこの見識には、大きな敬意を表したいと存じます。この点を裏づける資料といたしまして、藤山外相が信頼された記者諸君に話されたというようなことは、取材の秘密に属しまするからここでは取り上げませんが、三十三年十一月二十四日藤山外相の京都談話を引用さしていただきたいと存じます。その京都談話におきまして、「新条約は基地貸与協定的な性格が濃いものになろう。新条約の米軍の配備、装備についての協議事項は、当然拒否権が含まれる。核兵器の持ち込み、米軍の国外出動なども当然その協議の対象となろう。」こういう発言をしておられるのであります。なおこの藤山外相の発言に対しまして解説記事が載っておるのでありますが、その解説記事の一部を引用いたしますと、「藤山氏の基地貸与協定的な方向については、一応三木・松村派などの反主流派は藤山構想を支持するものと思われる。社会党が安保条約廃止、交渉打ち切りを決定したとき、藤山外相は、社会党は僕を助けてくれるつもりかと冗談を言っていた。この冗談の陰には岸構想に追い立てられた藤山外相の本心がのぞいている。最初双務条約をうたい、次いで国内情勢が悪化すると見るや基地貸与協定に変えるというのでは、あまりに一貫性がなさ過ぎる。基地貸与協定に変えることは、本来は望ましいことかもしれない。しかしそれならば、なぜ最初から閣内を統一して対米交渉を行なわなかったのか」という解説記事を出しておるのであります。藤山氏が最初この線でマッカーサー大使と交渉されたことは事実であります。この点につきまして、藤山氏の京都談話というものはほんとうであるか。そういう方向において、マッカーサーと交渉されたのはほんとうであるかという点について、まずお伺いをいたします。
○藤山国務大臣 今回の交渉に当りまして、御承知のように出発点からわれわれは現在の安保条約について、岸総理とアイゼンハウアー大統領との共同声明にありますように、日米新時代が来た。対等の立場でもって話し合いをし、お互いに占領されていた、あるいは占領していたというような、優越感や劣等感は捨て去って、そうして対等の立場でもって話し合いをするようにしていこう。でありますから、そういう意味においては当然双務的と申しますか、お互いに対等の立場で話し合いをしていくということでございます。しかしむろん今度の改定の内容というものが、日本の憲法の関係もございますし、いろいろな関係から基地貸与的な性格が非常に大きく出ているということは、これは日本のいわゆる軍事同盟でありますとか、あるいは普通の相互防衛同盟条約よりも、そういう性格が強いということは、内容から見てそうならざるを得ないと思うのであります。そういう意味において私ども総理の方針に従って対処して参ってきております。
○三宅委員 そうすると藤山さん、京都の談話は事実でございますね。
○藤山国務大臣 京都においてむろん今申されたような点を言ったわけでありまして、新聞にどういうふうに出ておりますか知りませんけれども、私の趣旨はそういうことであります。
○三宅委員 それでは、さらにこれを追及いたしますが、十一月二十四日に京都の談話を発表されました次の日、三十三年十一月二十五日の閣議の席上におきまして、当時経済企画庁長官の地位におられました三木武夫君が、安保条約改定の問題に関しまして、「この際改定は現行の条約で規定する以上に日米の軍事的提携を強化したり、防衛範囲を拡大するものであってはならぬ。」と発言をして、閣議で異論がなかったと報ぜられております。この記事の方向と全く逆な軍事提携強化の方向で改定されようといたしておりますが、この間の事情はどうして変わったか、藤山外相にその点を承りたいと思います。
 さらにちょっと、ついででありますから申し上げますが、その閣議のことを出しました記事の中に、こういう記事が出ております。すなわち「政府は二十五日の閣議で安保条約改定問題について意見を交換した。その席上まず岸首相が、安保条約改定は通常国会を目途としてぜひ行ないたい。このため党側ともよく相談して、慎重に作業を進めていきたいと発言、各閣僚の協力を要請した。次いで各閣僚より藤山外相に対し、去る二十四日の安保条約改定は基地貸与的な性格なものになるという外相談話に対する質問があったので、藤山外相は従来の交渉の経過を説明した。この外相説明に対し、三木経企庁長官は特に発言を求め、安保条約の改定問題は国民の多くから疑惑を持たれているので、政府としてはまず改定に先だって、現行条約の規定する以上に、日米の軍事的提携を強化したり、防衛範囲を拡大するものではない、現行条約の不明確な点並びに国民感情にそぐわぬ点を改善するだけであるとの二点を国民に率直に周知徹底させ、理解と協力を求める必要がある。」という藤山さんの意見を支持するがごとき発言をいたしておるのであります。これらの閣議の経過等を見まするときに、藤山氏が明らかに基地貸与協定的なものとして、軍事同盟的な性格を排除し、国際情勢の変化に適応してこれを解消する方向へ持っていこう、弱める方向へ持っていこうとされておったことは私は明らかだと考えまして、これは一つの大きな見識だと存じます。しかるに結局岸首相の軍事同盟的に強化しようという方向に引きずられてきたという経過がある。こういう重大な問題については、私は藤山氏の良心に従われて、閣内においてもほんとうに争われなければならぬ問題だと思うのであります。まだあと同じ材料がありますが、まずここで藤山さんの答弁を求めます。
○藤山国務大臣 御承知のように今回の安保条約の改定にあたりましては、九月九日にダレス長官に日本の改定の要望をいたしたときにも、いろいろ問題点として出しております。それは現行安保条約では、アメリカ側は日本を守る義務を持っていない。従って日本を守る義務を持ってもらいたい。その意味においては、やはりアメリカがさらに一そう深く日本を守るという形において、いわゆる普通の基地貸与協定というよりも、もっと進んだものになることは当時から想定されておるわけでありまして、国民の要望にいたしましても、せっかく基地を使っていながら、いざというときにアメリカが義務を負わずに逃げてしまっては困るじゃないかという議論があったことはむろんであります。でありますから、その点をはっきり申して、アメリカ側にもその意味においてあれしたわけであります。私の申しました点は、要するに当時、それでは日本が何か秘密にもっと義務をしょっているのじゃないか、内容からいってあまりにアメリカが義務を負って日本はよ過ぎるじゃないかという話がありましたので、なるほど内容的にいえば基地貸与的な性格が非常に多いということを申したのでありまして、私といたしまして初めから何か自分の交渉を曲げてきた経過はございませんし、また総理も初めから私と同じ考えのもとにものを進行さしておられたと思っております。
○三宅委員 昨年の九月国連総会出発の前日、藤山外相、岸首相がマッカーサー大使と会談いたしました際に、マッカーサー大使からこの疑問をつかれ、その矛盾を追及せられた結果、結局岸首相の軍事提携強化の線に踏み切って、アメリカに引きずられて、バンデンバーグ決議による軍事同盟強化の線に引きずり込まれたのではないかと――これはごまかされても、後世の史家によってだんだん明らかになってくると思いますが、そういわれておるのであります。この点はいかがですか。要するに藤山氏や三木武夫君の線は安保解消への一歩であり、岸首相の線は軍事同盟強化の線であって、東と西ほど方向が違っておると思うのであります。こういう重大な問題に対して、特に最近の国際情勢の変化等を勘案いたしまする場合に、国家百年の大計を、こういう食い違いが閣内においてさえある、そういう状況のもとに進めますることは、私は非常な危険な話であると考えます。閣内におけるこういう不一致があるのに、不用意にこういう問題に取り組まれる岸総理大臣の態度にも、私ははなはだ不満を感ぜざるを得ないのでありまして、この点は総理及び外相両方から御答弁をいただきたいと存じます。
○藤山国務大臣 初めからただいま申し上げたような形において交渉をしてきておるのでありまして、バンデンバーグ決議は御承知の通り、バンデンバーグ決議そのものの精神を申しますれば、必ずしも軍事同盟をやれという決議ではございません。バンデンバーグ決議の趣旨から申すと、それはこういう協力体制を軍事的に作っていく、防衛上の立場において作っていくという、その国と国との間というような関係は、それぞれ自分の防衛力を増加していくという意思を持っている国だ。それはむろんその当時のその国の経済事情その他がありますから、意思を持っていてもなかなかできない場合もあります。しかしお互いにそういう意思を持っている国と、初めてこういうような協力関係を結ぶことができるのであります。従ってそういう意味において、バンデンバーグ条項の精神を取り入れて参るということが、何か非常に軍事同盟的な色彩を深めたというふうには私ども考えておりません。従いまして今諸般の事情からの御質問でありますけれども、私と総理との間にその点について初めから拝格があったとは少しも考えておらぬのであります。
○岸国務大臣 安保条約のごとき重大な条約その他重要な政策につきまして、内閣の意見が不一致である、あるいは不統一であるということは、総理大臣の全責任でございます。もちろんこの安保条約については、初めから外務大臣と十分な話し合いをし、また交渉の経緯にかんがみ党自体としても方針を決定して、その範囲内において内閣も党も、あるいは実際の交渉に当たっている外務大臣も一致しておるのでありまして、私は閣議の席上におきましても、この安保問題に対して意見が分かれているとか、あるいは考えが全然違っているとかいうようなことは、絶対にないことを確信しております。
 先ほど来基地貸与条約であるとか、あるいは軍事同盟的な色彩が強いものであるとか、いろいろ御批判もあるようであります。私ども初めからしばしば申しているように、現行の安保条約の不備な点や、あるいは不合理な点や、あるいは不平等な点を直すというのが主眼でありまして、この条約によって軍事的に日本が従来特っているところの責任や、あるいは行動の範囲というものを、拡大するような義務を負うものでないことは明瞭であります。そういう意味におきましては、最初からわれわれの間には十分に話が一致しております。従って閣議の意見が不一致であるというようなことは絶対にございませんから、御安心願いたいと思います。
○三宅委員 今度の改定案が軍事同盟強化であるというような点については、私はあとからこの問題を限って一つ御質疑をいたしたいと考えます。ただいまは閣内不一致の問題について質疑をいたしたのでありますが、それは党内をまとめてから出ていきますことは当然でありまして、党内をまとめずにおいて出かけるというようなこと自体が、これまたやり方がさか立ちであることは明らかであります。大体今日までの経過を見ておりますと、大観いたしまして、昨年から今年の初めにかけましては、安保条約改定は藤山外相の一人舞台であったようであります。今年に入りまして参議院選挙前後に、河野一郎君らの同志の諸君が、沖縄、小笠原の施政権区域包含問題、行政協定の根本的改定こそ中心であるというようなことを唱え出しまして、党内における反撃が始まり、岸総理の外遊後は、党内がハチの巣をつついたような状態になったのであります。今年の十月二十二日河野君の京都談話は、重大な事実を暴露しておると思うのであります。すなわち総務会長であった河野君は、安保改定で何を要求しているのか全然いきさつを知らないと言い、党の三役も知らぬ間に事実が進行してしまったと言うに至りましては、全く順序が逆転していると思うのであります。私は河野談話につきまして重要な点三つ、四つあるようでありますから、この点を一つ伺いたいと思うのであります。
 河野君は、この安保期限十年の問題でごたごたがあって、善処というようなことをきめたあとの記事でございますが、これは各社ともに書いております。その一つでありますが、こういうことを言っておるのであります。「一体安保改定をやろうと言い出したのはアメリカか日本か、今もってわからない。もし日本が言い出したのなら、どういうところを改定したいというのか、日本側の具体的な希望がはっきり出ているはずなのだが、今までそういうものが出たことがない。少くとも私は総務会長時代からそういう相談には一度もあずかっていない。」こういうことを言うておるのであります。さらに第二点については、「改定草案は、まずアメリカ側から提出され、日本側(藤山外相)はそれに対して『そこを何とかしてもらえないかとか』、そういう程度の若干の修正を施しただけだと思われるのだ。」「党に相談する前に外交交渉は事実上終わろうとし、党内調整といっても政府はそのアメリカ側の結論をわれわれに押しつけてしまうだけだ。」こういうことを、ともかく今は野におるかもしれませんけれども、総務会長という要職におりました実力者の河野君が言うておるのであります。そうしてさらに十年の問題につきましては、期限の問題はやかましく言っておりますが、第三点で「期限問題について十年間も今のような状態でくぎづけされるのはわれわれの恥だ。批准段階がくれば腹痛か昼寝だね。」とこう言っておるのであります。腹痛か昼寝だねと言っておる。記者の観測では欠席する意味の言葉のようだといって、私は三年ないし五年後には必ず再び安保改定の要望が起ると思う。そのときの自分の発言権だけは確保しておきたい、こういうことを言うておるのであります。河野君はここにおりませんから、河野談話がうそだと言われればそれまででありますけれども、各社が全部書いておることでありまして、閣内で、ともかく党と政党内閣におきまして、党の意見が不一致であり、しかも党内にいろいろの議論がありますという状態のもとにおいて、一歩誤れば――私は善意を疑うのではないけれども、一歩誤れば原水爆時代に、日本をほんとうに壊滅してしまうかもしれない危険性も持っておりますこの問題について、こういう状態でもって、さか立ちした状態で交渉などを軽々しくやられるということは、非常な問題だと思うのであります。河野君はその後も期限問題で抵抗いたしまして、政府は善処する――政府ですか、党ですか、善処とは一体どういう意味であるか、これも一つ承っておきたいのであります。
○岸国務大臣 党内におきましていろいろ党員の間にもこの問題を真剣に検討し、議論があることは、私はもちろん当然だと思います。党としては今年の参議院選挙前に党のそれぞれの機関におきまして、安保改定の要綱を決定をいたしました。すべてその範囲において最後の交渉を行なわれておるのであります。しかして河野君の今の新聞に現われておる、今度の交渉がアメリカ側から提案をされておるか、日本側から提案されておるかわからぬという、まだそのことについては何ら相談も受けたこともないと言うておるそうでありますが、これは河野君の何らかの記憶違いであると思います。明確にその後におきましても河野君と私はその新聞記事が出たあとにおいて、この交渉が河野君と一緒に行った重光外相の時代からずっと根を引いてきておるといういきさつについて、君が誤解があるのははなはだ自分としても了解に苦しむ。また昨年九月に藤山外相がワシントンをたずねた際にやはり同じ考えのもとに同じことを提案をしておる。その際にアメリカ側から大体どういう点が問題になるかという問題点を提起したということも、その後帰ってきて、党内のそれぞれの機関に、あるいは有力な人々に、藤山外相自身が私が立ち会った上で話をしておる事実も君は記憶されておるはずだ。何らかの記憶違いがそういうふうに誤り伝えられたことは、一般の国民に正しい理解を与える上からもはなはだよくないことであるということを河野君に話したことがあるのであります。
 期限の点については、河野君は十年の間において国際情勢等あるいは国内の情勢等がひどく変わった場合において、これが改定について話し合いのできるような根拠を、あるいは条約に書く必要もないかもしれないが、何らかの文書かあるいは話し合い等をしておく必要があるのではないかということが、最後の河野君の意見であります。それらの点については先ほどの議論も出ておりましたが、一応条約としては安定した十年というものを置くけれども、その間において非常な変化があればこれがまた交渉ができるということは、国際条約の本質から見ても当然のことであるけれども、それを何らかの形において文書に残すか残さないかというようなことについては、現実に交渉しておる政府にまかすという意味において、いわゆる善処ということがつけ加えられておるわけであります。すでに党議がきまり、それにまで党員として反対して云々ということは、これは河野君がわれわれの党員として、同志として、そういうことは絶対にあり得ないということを河野君が私に明言しておるところでありまして、党議がきまるまでの間において、自分たちがこうした方がいいとか、あるいはこうもあってもらいたいという希望を述べることは、党員として当然の自分たちの務めである、しかしながら党議がきまった上において、党員として忠実にこれを守ることは党員の当然の責務であるということを、私に明らかに申しておりますから、新聞記事のことは全然間違いであるとか、あるいは河野君が全然間違ったことを言っておるということは申しませんけれども、私に最後に申しておることを私は信じておるわけであります。
○三宅委員 ただいま十年の期限の問題についても、河野君のみ込んだように言っておられますが、総理大臣は十月二十二日以後に、河野君に会われてそれで納得さしたという意味だろうと思うのでありますが、この際は藤山外相は河野派の主張に対し、いつでも改定できると反論しておる。しかし三年前重光外相のときも、一昨年岸首相が渡米したときも、アメリカ側は安保改定に同意しなかった。藤山外相が昨年渡米して、どちらが言い出したか知らないが、ようやくアメリカ側は安保改定に同意したのだ。だから十年ときめれば、事情変更の原理だとかなんとかかんとか言っても二回断わられておるではないか。それで言うことを聞かなければ腹痛か昼寝だねということを言っておるのでありまして、多分腹痛も昼寝もしないということを外国へ行く前には岸さんに言うたろうと思うのでありますが、そういうことは別といたしまして、ともかくこれほど党内においても――まだこれは十月二十二日ですから、先ほど私が出し藤山氏の問題や三木君の問題は、これは去年のことでありますが、先月の末に河野君のような、一人じゃない、相当な大きな部分を代表いたします者がそう言っておるのでありますから、明らかに党内に不満の空気、まずいぞという空気、宇都宮徳馬君を外務委員会の理事からやめさせようとされておるということも伝えられております。石橋湛山氏にしても松村氏にしても、三木武夫君だって、こういう形の安保改定をこの時期に――二、三日前に国連が軍縮決議案を米ソ共同で出して、日本も賛成しておるこの時期に出すのはどうもおかしいじゃないか。しばらく待っておったらよかろうというような気持が党内にありますときに強行されますことは、実にあぶないと思うのであります。しかし答弁は要りません。
 その次に今度は国民の関係であります。閣内がまだすっきりしておらない、党内がこういう状態である。国民はどうであるかといえば、国民が、大部分が知らぬうちにこの交渉が進み、そうして国民の知らぬうちに強引に調印してしまおうということが、はたして妥当であるかどうかということを私は考えたい。政府が中央調査社に依頼して行なった世論調査、これは十月の九日に閣議で報告があったそうでありますが、その調査の五〇%は安保改定が問題になっておるかどうかを知らない。あとの五〇%のうち安保改定が問題になっていることは知っておるが、賛否を表明せず、関心のない者が二五%、わずか四分の一の二五%のうち、改定賛成が一五%、反対一〇%という状態である。その他の新聞等の世論調査もありますが、政府が委託されました世論調査におきまして、国民の三分の二がほとんど無関心でおって、三分の一の賛否の問題であって、しかもほんとうに日本の運命に関係いたしまする重大な――あとからだんだん私は問いただしたいのだが、こういう問題について、押し切って調印などをするというようなことは、私は非常な不謹慎だと思うのでありまして、これらの点について、時間がありませんから簡単でよろしいが、総理の御所見を伺っておきたい。
○岸国務大臣 外交交渉の問題は、その内容等につきまして、交渉の途中において一切を明らかにすることができない性質がございます。しかし安保条約の問題につきましては、国会の論議等を通じまして、問題になっておる点、その他の点につきましては、われわれこれを御説明申し上げるように努力してきておるのであります。ところが今御指摘になりましたように、この問題に関して国民がどういう関心を示しておるかということは、いろいろ調査によりますと、最初の一月におきましては、調査の対象になっておる五七%がこの問題を知らないといっておる。七月にはそれが五〇%になっております。八月には四四%に減っております。政府及び関係方面におきましてこれがPRにつきましても、従来消極的でありましたのを、積極的に国民に理解してもらい、その納得の上にこれを推進したいというつもりで努力をいたしておりますので、この数字に現われているように相当急激に国民の間にこれが了知されつつある状況であります。またその後における調査を今いたしておりますが、私は相当国民の間に理解されてきておる、かように思っております。
○三宅委員 さらに加えて、私は改定それ自体に臨みまする前提条件として、憲法の問題についてもう一ぺん確認をしておきたいと思います。念のために聞きますが、政府は憲法第九条の解釈をどういうふうにしておられますか。簡単にやって下さい。
○岸国務大臣 憲法の九条は言うまでもなくいわゆる戦争放棄の規定といわれておるものでございます。しかし第一項におけるところのこの規定が、日本が独立国として自衛権そのものを否認した、自衛権まで放棄したものとは解釈すべきではない、自衛権はある、こう解釈をいたしております。しこうして二項における戦力につきましても、いわゆる自衛権として必要な、これを裏づけるところの最小限度の実力は、二項に禁止しておる戦力に当らない、こういう解釈をとっております。
○三宅委員 今度の改定では、改定草案第五条に「自国の憲法上の規定と手続に従って、共通の危険に対処するため行動することを宣言する。」云々というようなことで、自国の憲法の規定の範囲内ということを盛んに言っております。ところが憲法の解釈が、それこそ風船玉のようにしょっちゅうふくれていって、一体どこまで解釈が進むかわからない。現に自衛権の問題についても、ここで厳粛に一ぺん考え直しておかなければならぬことは、国連が認めておる軍隊というものは、一体自衛のための軍隊以外を認めておりますか。国策遂行のための軍隊だとか、あるいは侵略のための軍隊なんというものを国連が認めているわけはないのであります。国連に加盟し、国連憲章を尊重するという立場においては、自衛のための軍隊以外にはないのであります。文明国の個人といえども自衛の権利は持っております。しかしながら国の法律におきまして、ピストルを持ったり、機関銃を持ったりしちゃいかぬということになれば、個人の自衛権の発動の場合には、それ以外のくわを持ってやるとかなんとかいうことになるでしょう。それと同じ意味におきまして、私どもは自衛のためでない軍隊なんというものはないのだから、自衛のためにも軍隊というものは持たないといっておる憲法の解釈というものは明らかであって、これをどこまででも広げていくというような解釈をされたり、これで憲法の範囲内でやってくれるのだから安心だと思っていたならば、無制限に解釈を拡張されたり、岸さん自体は憲法改正論者だ。改正されてしまったら憲法の範囲内なんといったって憲法自体が変わってくるということでは問題にならないのであります。従いましてこの問題についてわれわれは根本的反対の態度であるけれども、かりにやむを得ないものとして国民の何%かが賛成するとしても、岸さんが今後憲法の改正はやらないのだ、解釈の拡張解釈はやらないのだ、自衛のために軍隊は持ってるのだから、自衛のために核兵器も持てるなどということを言い出したら何にもならぬじゃないか。この点についても私はもとをたださずして安保条約の改定などを進められることは、実にさか立ちした行き方だと思いますが、この点をもう一度御答弁願いたいと思います。
○岸国務大臣 自衛権、憲法九条の解釈の問題につきましては、しばしば国会におきましても論議された問題でございます。しこうして私が先ほどお答え申し上げましたのは、政府が一貫してお答えをしておるところでありまして、私自身がこれを拡張解釈したというようなことではございません。
○三宅委員 この改正の問題はどうしますか、改正をやられたら何にもならない。
○岸国務大臣 憲法改正の問題につきましては、法律において憲法調査会が設けられまして、ここであらゆる意見が審議されております。個々にいろいろな人々があるいは改正賛成論であり、あるいは改正反対論であるということは、自由主義の国におきましては当然あることで、私が個人として改正論者であることは天下周知でございますから、ここで申し上げる必要はないと思います。
○三宅委員 私はほんとうの質問の第一点でありまする安保条約改定に取っ組む姿勢それ自体についても、この質疑を通じまして国民は非常な不安心を感じたろうと思うのであります。しかしながらそれだけで時間はとれませんから、第二に政府は最近の国際情勢をどう考えておるかという点についてまずお伺いをいたしたいと存じます。政府は国際関係の動きをどう見ておられますか。国際情勢が緊張緩和の方向に向かい、力による平和の考え方から話し合いによる平和の考え方に席を譲り、両体制の平和共存の原則が徐々にではあっても国際的に承認されつつあるように思うが、いかがでありますか。安保改定のごとき日本国民の運命を長期にわたって拘束する重大案件に手をつけるにあたっては、国際情勢について短期的にも長期的にも明確な見通しを藤山外務大臣は持っておると思うのであります。短期的には明らかに雪解けに入っておる。それは国会でも言っておられる。長期的にはなおさら究極兵器の発達等がいい方向にいくと思っておるのでありますが、これらの点についての御答弁を得たい。まず第一点にこれをお伺いいたします。
○藤山国務大臣 今日世界が軍備拡張の競争をやるということについては、だれも賛成はいたしておらないと思います。従いまして米ソ両国の首脳者にいたしましても、何とかしてそれをとめて、そうしてできるだけ平和のうちに話し合いをしながら、諸般の国際問題を解決していきたいという努力を払う段階にあることは申すまでもございません。その努力の現われというものがフルシチョフ・アイクの相互訪問にも至ったものだと思います。しかしそれはそういう希望を持って努力していくことでありましてフルシチョフ・アイクの相互訪問ということ自体が、すぐに雪解けになると予想することは早計だと思います。雪解けになる努力をこれから続けていくということでありまして、われわれもできるだけ雪解けになる努力を続けていかなければならないことは申すまでもないことであります。そういう状況でありますから今後軍縮の問題なり、あるいは核実験禁止の問題なり、諸般の問題が取り上げられて参ろうと思います。一方では世界においていろいろ問題になっておりますたとえばベルリン問題その他も、漸次話し合いの上で取り上げていくような方向に進んで参るかと思います。むろんそれについてできるだけの努力はして参らなければなりませんが、今どういう形ですぐそれらのものが解決し、あるいは即時雪解けになるということまで見ますことは、若干早計ではないか、こういうふうに考えております。
○三宅委員 この間からの御答弁の通りの御答弁をされておるわけでありますが、夫婦の間だって努力をしなければならぬことはきまっておるのでありますから、努力をやっておる。あとから私は申し上げますけれども、これだけ兵器が発達いたしまして、努力せずに夫婦げんかを一ぺん始めてしまったならば、勝ち負けはない、全人類が滅びるから努力しているのです。その方向というものは――国連において一昨日、日本国憲法第九条を世界的に適用しようという大きな国際的運動が起きたと私は理解していいと思うのであります。そういうふうな理解の上に立って、平和憲法を作り、戦争をざんげしておる日本国民が、そういう努力をしなければならぬことは、私は明らかだと思うのであります。そういうときに、私が非常に不満に存じまする点は、椎名官房長官が、話し合いでやるなどということは今までだってだれだって言っておったことであるとか、あるいはまたあなたの部下である外務省においても、最近の傾向について非常に冷ややかな批判をしておる。椎名官房長官の言葉をいいますと、「力によらず、話し合いによってあらゆる国際問題を解決したいということは、従来からいわれてきたことで、特別目新しいことじゃない。」何という捨てぜりふでありますか。外務省の非公式見解も「本会議が有意義であったとしても、東西の冷戦が緩和されるかどうかは、一応別個のものと考えねばならない。」といっております。最も噴飯ものは、あなたの党の幹事長川島君が「ソ連が平和を望むなら、まず共産体制を解体してくるべきだ。」平和というのは、それぞれの政治体制などを認め、社会体制、経済体制を認めて共存をすることが平和でありまして、平和を望むならば、ソ連は共産体制を解体してくるべきだなどという驚くべき発言をいたしておるのでありますが、米ソ首脳会談その他世界の努力によって、こういう方向に向きつつありまするその努力に対しまして、こういう川島君の議論のごときものは、友人だから言いたくはないけれども、頭の程度は、少くとも二十世紀以前の頭であってこれではコンサーブァティブではなくて、反動だといわなければならないのじゃないかと思うのであります。故意にこういう傾向に対しまして冷やかしたり、こういう傾向に水をぶっかけたりする態度というものに対しまして、一体政府はどうお考えになっておるか。こういうことは非常にいかぬから、気をつけなければいかぬと思っておられるかどうか、一分で御答弁を願いたい。
○岸国務大臣 新聞等に現われておる意見というものは、三宅君も御承知であろうと思いますが、そのときの記者の扱い方によりまして、全部がそのまま書かれないことがずいぶん多いのでありまして、私どももずいぶんそれで誤解を招いておることがあると思います。先ほど外務大臣が述べたように、政府も党も同じように考えております。
○三宅委員 だから、少くとも新聞に出ましたこういう傾向は歓迎すべき傾向ではない、総理大臣や藤山外相の言っている傾向と違っているというふうに了解をいたしまして、私は次に質問を進めます。
 今回のアイク・フルシチョフの交換訪問の意義はどこにあったかという点であります。また答弁を求めていますと時間が少なくなりますから、私の解釈を申し上げまして御同意かどうかを承りたいのであります。
 交換訪問の大きな意義は、まず東西間の不信の空気を変えて、国際間の信頼を回復し、その上で諸懸案を一つ一つ解きほごそうという原則が認められたことであり、軍拡競争と冷戦の悪循環を断ち切るために、まず国際間の不信の空気を変えるという原則が大国間政府によって認められたことが、巨頭会談や十カ国軍縮委員会が関係諸政府によって準備されているゆえんであると存じます。今までは個々の懸案が解決されなければだめだといっておりましたのが、そうじゃなくて、大国間の信頼を樹立することによって、大所から個々の懸案を解決しようという方向に変わったところに、私は大きい意義があると思うのであります。これに対しまして、先ほどの問題とも関連するが、政府や自民党の責任者が古い冷たい戦争の論理に執着して、緊張激化を予想ないし期待するような――予想だけならよろしいが、期待するような言明が相次いで行なわれておることは、日本の立場を悪化させるものであると考えますが、いかがですか。
○岸国務大臣 そういう国際間の話し合いによって平和的にものを解決していく、大国間において不信を除去して信頼を取り戻そうという努力は、私はまさに歓迎すべきものであると思います。これに対して、私ども自由民主党として、決して冷淡な考え方を持っておりません。そういうことは望ましいことである、ただしかしそれを早合点して、すでにもう雪解けができたような、非常に大きな効果を直ちにそれに結びつけることの危険は、私どもはやはり持っておるわけであります。こういう意味において今の国際情勢を、われわれは冷静に正しく分析し判断していくことが必要である、こう思っております。
○三宅委員 それではさらに聞きますが、政府は、なぜ世界の大勢が、力による平和から話し合いによる平和、両体制の平和共存の原則の確立へ、軍縮よりも軍備撤廃へという方向に向いてきたと考えられますか、これも簡単に御答弁願いたい。
○岸国務大臣 最近におけるいろいろな問題の解決がほとんど行き詰まった、国際間東西両陣営の間に起るところの問題はほとんど解決できない、こういうふうな行き詰まった関係にあります。このなにを打開するについては、従来の行き方を変える必要があることを両陣営の首脳とも考えておるだろうと思います。それに最近におけるところの軍備拡張の競争は、非常に大きな金額を要し、そのために払うところの犠牲がいかにも大きくなっている。また先ほどお話がありましたように、一たびこれが用いられた場合の危険というもの、惨害というものを頭に置くならば、話し合いによって解決すべきものであるという考え方になってくるのは、私は自然の勢いであると思います。
○三宅委員 ただいまの御答弁、私の考えておることと全く同じであります。私は、この世界の大勢は、米ソ両指導国ともに、無限に拡大する軍備費の重圧とともに、滅亡するほかない究極兵器発達の結果であると信じます。この点は岸さんも認められた点であります。米国の軍事費は四百十億ドル、日本の総予算の一兆四千億の十年分以上であります。これが米国の国民生活等に大きな重圧を及ぼしておることは明らかであります。しかもソ連が月ロケットの打ち上げに成功いたしますれば、これに追いつき、追い越すために、また莫大な軍事費を追加する。いかにアメリカが金があるからといって、それは耐え得るものではない。そして米ソ両国ともに、史上かつてない巨大な資金をつぎ込んで、兵器を発達させればさせるほど、人類滅亡の危険に拍車をかけることになるのであります。第二次大戦を勝利に導いた偉大な将軍でありますとともに、英知と善意に満ちた世界的な政治家であり、指導者であるアイゼンハワーにしても、このまま進めば人類を滅亡させる、無限に続く人類の殲滅兵器の競争のために、無限に軍事費をふやしていくということのおそろしさに、深夜ひそかにりつ然としたと思うのであります。四百億の軍事費、これが五百億になり、六百億になり、これで精巧な兵器ができれば、ますます自分の首をともに絞めることになる。私は、政治を預かっておる、何億の人間の命を預かっておりまするアイゼンハワー大統領が、あのすなおな精神の上に、ここに大きな戦慄を感じたと思うのであります。これがアイク・フルシチョフ会談になりましたところのアメリカ側の指導者の感覚であったと私は思うのであります。これは岸さんの答弁と同じでありますから――私はまだ岸さんのその点に対する謙虚なるおそれというものが、慎みというものが足らぬと思うのでありますが、大体においてこの点については質問を別にいたしまして、大蔵大臣にこの点をお伺いします。
 米国内では忍び寄るインフレでドルが海外に流出いたしまして、そのために金一オンス三十五ドルのアメリカ・ドルの実勢は、一オンス七十ドルで約二倍に減価しております。これはアメリカのドルが世界経済に占める支配体制がくずれていく徴候ではないかと存じます。一ドル三百六十円でドルとリンクしております日本の円にも将来大きな影響があり、アメリカ経済はその意味でも、私はアイクも考えたと思うのでありますが、一皮むけば非常に危険な状態にあるということを感ぜざるを得ないのであります。大蔵当局として、政府の所見を承っておきます。
○佐藤国務大臣 最近アメリカ経済、そのドルが流出するということで一部非常に心配しておる向きもございます。しかしながらアメリカ経済の持つ強大さは今日の状態ではゆるぎないものがございます。従いましてただいま御指摘になりましたような金の買上値段を変えるとかあるいはドル自身がどうなるとかいうことは、当分の状態ではないように私は見て帰っております。
○三宅委員 今私はアメリカの立場を申し上げたのですが、次に政府はソ連の立場をどう理解しておられますか。フルシチョフがアイク・フルシチョフの会見をやり、最近におけるソ連最高会議における演説、ああいう柔軟な態度に変って参りました。その大きな原因はどこにあるか。軍備縮小、軍備撤廃の提案を出してきたのをどういうふうに分析しておられるか。これも時間の関係がありますから、簡単に御答弁をいただきます。
○岸国務大臣 アメリカが軍備に使っているとほぼ同額のものをソ連も軍備拡張に使っているように承知しております。しこうしてそれが国民一般所得や国民生活の他のものとの比較におきまして、アメリカ以上にソ連の国民の生活を圧迫しているような状況になっておる。ソ連においては御承知の通り産業経済の開発の長期計画が進行中であり、また七年計画が今進行中であります。これによってソ連もその経済の基盤を確立するとともに、国民の生活の安定及び向上ということを主眼として非常に努力しておるように理解しております。こういう点から見て、今アメリカに対して三宅委員のアイゼンハワー大統領の心事をそんたくしての言葉がありましたが、同様なことがやはりフルシチョフの心事を物語っておるものじゃないかと思います。
○三宅委員 岸さんの心事もそういうところで、一つ安保改定は取りやめていただきたいと存じます。
 私は多くの点で岸さんの御認識と食い違っておらぬのでありますが、こういうふうに認識しております。ソ連は一九一七年、最もおくれました封建的農業国から敗戦後革命に成功して、今日までアメリカに追いついて、追い越すということを目標にして戦って参りまして、確かにソ連の鉱工業は大へん伸びました。平均して産業技術がアメリカに勝っているという評価は私はいたしませんけれども、少くとも月ロケットだとかミサイルだとか、そういう面におきましては確かにアメリカがおくれをとっていることは明らかであります。あと七カ年計画で追い越すという確信を、フルシチョフはアメリカへ行っても盛んに公言をしております。しかしながらただいま岸さんが言われた通り、ソ連も軍備競争が国民生活を圧迫しておることを認めざるを得ないばかりでなく、体制として資本主義体制にまさることを確信して、一つの落ちつきを取り戻したのではないかと存じます。何よりも彼らを考えさせました点は、限りなき軍拡競争が米ソ両陣営全部を滅亡させる恐怖であるという点であります。二、三日前の三十一日のソ連最高会議におけるフルシチョフの演説は、「次の大戦では、もうだれ一人ものがれるものでなく、人類に空前の惨害をもたらすであろう」と言って、次の大戦から共産主義体制は生き残り得るというような考え方をもはやどこにも見せていなかった。共産主義体制の国もともに滅びるということをちゃんと出しておるのであります。今やその意味において平和共存は軍事技術の異常な発達からして、動かすことのできない絶対的な必要となったと見ておると存じます。われわれはこれこそ世界の大勢だと思いますが、この点については総理大臣も御同感だと思いますが、御同感なら御同感というだけの御答弁をいただきたいと存じます。
○岸国務大臣 私どもは世界の恒久的平和を望む意味からも、軍縮を徹底してやられることを心から念願しております。ただフルシチョフの今引用されました演説の真意がどこにあるか、あるいはそれと関連してのソ連の意図等につきましても、十分検討しなければならぬ点があると私は思います。そういう意味において、ただ単に同感であるとか、あるいは同感しないとかいうことは誤解を招くと思いますから、一言つけ加えておきます。
○三宅委員 私は時間の関係もありますので、その点についての答弁を追及いたしません。
 その次に、私はこういう情勢のときに日本は軍縮で世界をリードすべきであると存じます。世界最初の平和憲法を持ちました日本は、ようやく日本の第九条の憲法というものが――今までは力の均衡で平和を保っておる。これを岸さんは盛んに言われた。恐怖の均衡で平和を保つという状態に入ってきて、初めて私は世界の動きが日本の平和憲法に同調しなければならぬような動きになってきたと思うのであります。そうして二日、国連政治委員会においては八十二カ国満場一致で軍縮共同決議案を可決いたしました。もちろん日本もこれに賛成をしておるわけでありますから、岸さんも藤山さんも賛成だろうと思います。私は日本こそこの機運にさおさして、世界の平和のために世界の軍縮をリードするという意気込みをもって立つべきであると存じます。その意味におきましては、三十一日、社会党は国連軍縮決議案を支持する決議案の提出をきめまして、自民党にも共同提案を呼びかけたのであります。この点について御賛成であるかどうか、二つの点の御答弁を願いたい。
○岸国務大臣 私は先ほど憲法の解釈について所見を申し述べましたように、今日世界で問題になっておる軍縮とかあるいは軍備拡張とかいうようなことの中に入るような実態を、実は日本が持っておるとは思っておりません。私はその意味において、ただ独立国としてわれわれが最小限度その独立を保持するに足る自衛の組織を持ち、自衛の力を持つということは、独立国として当然なことであり、今の軍縮問題とは直接の関係はないと思います。
 世界の軍縮の機運を醸成することに対して、日本が積極的な役割を演ずるという問題につきましては、われわれ国連におきまして毎回の総会においてそういう考えのもとにいろいろ決議案を出したり、あるいは決議案に協力をして今日に来ておるわけであります。そういうのが日本の立場であり、私はそれが正しい、こう思っております。
○三宅委員 国連軍縮決議案を支持する決議案についてはいかがですか。
○岸国務大臣 これは国会における問題は、この前にも私の言葉が足りなかったために非常に議論を生じたところでありますが、私は国会においてそれを採決するとか、国会においてどう扱うかということは両党において、それぞれの機関において十分に御審議願いたい。趣旨は先ほど申したような趣旨であります。
○三宅委員 国連の軍縮決議案というものは、これがほんとうにできますればけっこうな方向であることは岸さんも認められるところであります。そして日本も共同提案者であります。これを支持する決議案に対しまして総裁として、好ましいことである、ぜひそれをやらせたい、こういう発言があるのが私は当然だと思うのでありますが、その点いかがですか。
○岸国務大臣 国会における決議案等につきましては、党の機関に諮って、それにおいてきめるというのが私の方の党のあり方でございます。従いまして、趣旨は今お話しのように、日本がこの共同提案にも参加しておるという事実は事実として、国会がどう扱うかということにつきましては、国会対策その他できめていただきたいと思います。
○三宅委員 趣旨が賛成であったら、総裁としてそういう指導性を発揮されたらいいだろうと思います。ただこんなことで時間をつぶすのはもったいないからして、さらに次に進みますが、多分この決議案の中に、この趣旨に即して自衛隊の増強計画を取りやめるようにということが入っておるので、自民党の方では文句が出ておるのじゃないかと存ずるのであります。私どもは、そういう点こそは、党の立場もありましょうから話し合ったらよろしい、しかしながら、国連軍縮決議案を支持する決議案自体に自民党が反対するというようなことは、公党の名誉の上からも考えていただきたいと存じます。
 この機会に防衛庁長官に伺いたい。調印に出かけられます際に第二次増強計画を岸さんが帯同しておみやげに持っていくということが巷間伝えられております。それで、これとうらはらの関係かどうか知りませんが、赤城防衛庁長官が北海道におきまして、何年計画かで三千億の程度の第二次軍拡計画をやるということを言っておられます。これは一体国防会議の承認を得たものかどうかということをまずお伺いいたします。
○赤城国務大臣 御承知のように第一次防衛計画というものがありまして、三十五年度が三カ年の終期であります。この防衛計画は事情によって繰り延べたものもあるし、達成されないものもあるわけであります。そういうことで、三十五年度の計画を変更しなければならないようになった。同時に防衛計画はある程度長期にわたるものでありますから、三十五年度の計画変更とにらみ合わして、大体四十年度あたりまでの防衛計画を立てたい、こういうことで事務的に作業を続けておるわけでございます。しかし、これはまだ最終的な結論に達しません。最終的の結論に達しますならば国防会議に諮りたいと思っておる次第でありますが、まだ最終結論に達しておりません。
○三宅委員 こういう重大な問題を国防会議にもかけずに出先で発表されることは、私は少なくとも不謹慎だと思います。これだけちょっと言っておきます。防衛庁長官にはあとになって相当お伺いする点がありますので、おっていただきたいと思います。
 次に、私は安保条約改定の方向はいかにあるべきかという大局論につきまして、四、五の点について質問をいたします。
 第一は、日米安保条約ができた事情をどういうふうに了解しておられるかという点であります。一九四八年、アメリカは従来のモンロー主義、中立主義を放擲いたしまして、安全保障取りきめ政策に転換をいたしました。その際に上院においてバンデンバーグ決議というものがなされたのであります。その背景をなしたものは、当時における、ベルリンにおける封鎖であるとか、朝鮮戦争等の冷戦がいつ熱戦に転化するかわからないという情勢であったと思います。このアメリカの政策の変化がすぐ日本に影響いたしまして、米国は従来日本を非武装中立主義でやろうという方針をとっておりましたのを改めまして、当面日本とドイツを目標に、早く平和を与えて独立させ、再軍備させて、アメリカの率いる民主陣営の防衛体制の同盟者として迎え入れようとして、一九四九年から対日平和に動き出したことは御承知の通りであります。従って、米国側といたしましては、平和条約を結ぶとともに日本に再軍備をさせ、その上で、バンデンバーグ決議による二十五条の双務的安保条約を八年前に結ばせたかったのがアメリカ側の底意であります。このアメリカの希望に日本は反抗いたしまして今日に至ったのであります。それを八年後、岸さんが今アメリカの希望をかなえさせる役割をになっておられますが、歴史の皮肉は、もう一ぺん八年前の中立主義の方が世界の情勢から見て日本の安全にもよろしいという転換期にあたって、時代錯誤な軍事同盟強化という役割をアメリカの希望に即してやっておられるということは、私は歴史の皮肉であると考えておるのであります。こういう状態に対しまして、当時の吉田総理は、頑強に再軍備、憲法改正に反対されたことは、私は吉田氏の骨のあるところだと存じます。骨の髄から親英主義の政治家といたしまして、日米戦争に反対をして憲兵隊に引っぱられたのでありますが、アメリカが中立平和主義の憲法を指導しておいて、そうして国際情勢が変わったからといって、今度はそれを急に憲法改正、再軍備の線でバンデンバーグ決議による軍事同盟に引き入れようとしたことに対しまして、吉田さんが反抗いたしましたその骨は、私はさすがに吉田さんだと思いまして、吉田氏の高弟である佐藤氏にしても池田氏にしても、私はそのいいところだけは引き継いでもらいたいと思うのであります。その再軍備の拒否にあたりましては、四つの理由をあげて吉田総理は拒否したのであります。第一は、日本の経済復興がまだ十分でないということであります。第二は、今日の日本には今再軍備をやれば軍国主義が復活する危険性があるということであります。第三は、日本の再軍備を近隣諸国が容認するようになってからにしなければならぬという点であります。第四は、憲法上こんなことはできないという点であります。以上の理由によりまして、アメリカ側が、ダレスも何べんも来た、それからその他の使節団も来た。これに頑強に反対をいたされました結果、結局最後にマッカーサー元帥のもとで、アメリカの使節団と吉田総理との論争となって、マッカーサーは御承知の通り東洋のスイスたれと言った建前もあって、日本の言うことの方が妥当でしょうということで、日本側に軍配を上げた。これがために、ダレス使節団としては、平和条約を与えることによって日本に再軍備の決意をさせたいという第一の目標が不可能になって、非常に失望落胆したという事実は、岸さんも御承知だろうと存ずるのであります。そこで再軍備を拒否いたしまして平和条約を結びまするために、日本の安全保障について吉田総理は注目すべき二つの案を外務省において作らせられたのであります。一つは、一九五〇年十月米策の駐留を認めるということによって日本の安全を保持する場合の条約は、どういう条約にしたらいいかということを作れということを当時の西村条約局長等に下命されたのであります。それからしばらくたって、十一月に日本と朝鮮を完全に非武装化して、その周囲に非常に広い範囲を限り、その範囲内では、米英中ソ四大国が常時配備しておる陸海空軍をある程度凍結することによって西太平洋の安全をはかるという趣旨の条約案を書けと命令せられたのであります。日本の憲法をそのまま生かし、われわれが今やっておるようなその米英中ソ四大国の日本を取り囲むところの軍備計画をある程度その区域を凍結さして、朝鮮と日本を非武装朝鮮、非武装日本にしようという案を講和条約のときにこれを安全保障の道として考えられたのであります。以上の歴史的事実の前にわれわれは講和条約締結当時の吉田氏が再軍備、憲法改正の押しつけに抵抗、反対された苦心の跡を知りますとともに、日本の安全保障についても、非武装地帯案をも用意せられました事実に注目しなければならぬと存ずるのであります。少なくともステーツマンシップを持った政治家吉田氏の脳裏にひらめいた非武装地帯案と精神が、水爆時代の今日また深く考えに値する一つの案であるということは確かだと思います。とるとらぬは別でありますけれども、一つの大きな案であるとして再登場してきた。時代がこういうふうに動いてきたということは、私は歴史の一つのおもしろさだと思います。さらに昭和二十五年六月二十五日に朝鮮戦争が始まりましたが、極東委員会はその一年前の昭和二十四年の夏ごろまでは、極東委員会を構成するソ連をも含めました十一カ国との全面講和をめどにいたしまして、平和条約では日本の戦争放棄と非武装化が再確認せられ、日本は十一カ国の共同保障のもとに中立国になるという想定が中心になっておったのであります。すなわち平和憲法を守り、中立の立場で日本の安全を考えるか、基地提供の方法によるかという大きな悩みの上に、やむを得ざる悪と考えて吉田氏は後世史家の批判をも甘んじて受け、責任を負うつもりをもって、講和条約の調印には、ここにおられます池田氏など全権団六、七人で調印されましたが、安全保障条約は吉田氏の一人の責任において吉田氏一人が調印したという事実は、私は日本を中立非武装でいくか、あるいはやむを得ざる悪として基地提供的な安保条約でいくかといって吉田氏が悩まれた姿が、あそこに象徴せられておると私は思うのであります。
 以上の安保条約成立の過程を顧みますときに、改定の方向は、ある某紙の社説が指摘しておりますが、この四点を岸さん考えてもらわなければいけません。第一は、新たな防衛義務を双務条約という名のもとに負わせられる。双務性の運用に対する憂慮を取り除かなければなりません。第二は、今や安保条約はその役割を終えて次第に姿を消すべき段階に来ている。この日米の結びつきは、軍事的にはこれをゆるめ、経済的にはこれを緊密化するという方向でなければならないというのが第二点であります。第三点は、日本側の国民全部が求めているものは日本の安全であります。アメリカ側は、日本の安全のほかに極東の平和を守るというその課題をこの条約に期待しておるのであります。極東の平和を守るというのは、日本の外でアメリカが行動することであります。日本が安保条約に一つの目的を期待しておるのに、アメリカ側は二つのものを求めておる。しかもその一つは、ときに日本を期せずして他国の戦争に巻き込む危険を持っておるということであります。これが第三点。第四点は、日本の安全が保障されるだけでも、アメリカにとってはその広義の安全保障に資するものであります。安保はそれが必要がなくなるための暫定的なものでなければなりませんという立場に立って、日本は平和政策を推進すべきであるというこの四つの点を、社会党の立場でありません、有力なる某紙の社説が指摘しております。
 以上は良識のある国民の声であるとともに自民党の多くの心ある人士の指摘している方向であると私は信じます。吉田総理などの苦心からその経過、そして軍事科学の発達、国際情勢等をながめて、私は少なくともこういう方向に持っていく感覚であって、これを具体的に言えば、取り消されたけれども藤山さんなどが初めに考えられた方向が、保守党としても少なくともとられるべき方向であると信じます。政府の所見を伺います。
○岸国務大臣 現行の安保条約の制定のときのいろいろないきさつや、また当時の日本の国内における経済力やあるいは防衛の自衛力の点であるとか、あるいは国際的地位、いわゆる国連にも加盟を認められておらないというようなことから、しかも世界の情勢から見ますと、全然無防備で国の安全を守るということは、とうてい不可能の状況であったために現行の安保条約ができたのであります。しかし時代がたちまして、いろいろな日本の国内の情勢も、また国力も国際的地位も変わったわけでありますから、この状況に基づいて日本が独立国にふさわしい安全保障の体制をとるという必要が出てくることは当然でありますが、日本自体、一国の力だけで今日日本の安全を確保できるという気持にみんながなり得るかというと、私は国民の多数がそう思っておらない。また私自身もそういう国際情勢ではないと思います。世界の各地におきましても、地域的な集団的な安全保障の体制が自由主義国の間にも、また共産主義国の間にも作られて、そうしてそのバランスの上に平和が保たれておるという状況、この現実のもとにおいて日本がいかに独立国としてまた自由主義国の一員として、日米協調の線において日本の安全と繁栄とを求めるというこの既定の方針に従ってこれを考えるときにおきまして私は今回のわれわれ考えておる改定というものは、よく日本の独立国としての自主性を認め、決してこれによって従来われわれが日本の安全のために、また現行条約が持っている以上の実質的な義務と、あるいは戦争の危険をはらむものでは絶対にないものである。ことに現在の規定におきましては、アメリカが一方的に使えるけれども、われわれがこれに対して事前協議の条項を入れて、われわれの意思に反してそういうことの起こらないような規定にするというふうな点を考えてみましても、当然この改定は私はやるべきである。また同時に、それが今御指摘になりました経済的な協力なりあるいは国際場裏におけるところの外交上の協力をなすような意味においての根拠の規定を置くということを考えておるわけでありましてわれわれとしては決して時勢に逆行してこの改定を考えているというわけではないのであります。
○三宅委員 独立国にふさわしい改定だとか事前協議だとか言われますが、私はそういう認識自体にほんとうに憤りを感ずるのです。
 そこで本質論に触れましょう。安保改定の本質は、軍事条約であるということであります。一切の問題はここにあると思います。安保改定の本質は軍事条約である。これを見失ってはなりません。その通りでしょう、岸さん御異議ございませんか。御異議があったらお答え下さい。
○岸国務大臣 先ほど田中委員の質問に対して外務大臣がお答えをしたように、今度の条約においては防衛の協力のほかに政治協力やあるいは経済協力の点も明らかにして広範囲のものでございます。防衛協力という点におきましても、いわゆる今、三宅委員の御指摘になっている軍事条約とか軍事協力と言われますけれども、その言葉自体におきましてはわれわれは非常に誤りがあると思います。
○三宅委員 それでは岸さん頭がいいからよく聞きますが、自助、互助というバンデンバーグ決議の立場に立ちまして、アメリカの基地がやられたとき、そのときには日米両国が陸海空三軍の全力をあげて敵と戦うということが軍事条約でないと言えますか。何で戦いますか。日米の軍事力全部をあげて戦うというバンデンバーグ決議によって自助、互助、そうしてしかもその軍隊はふやしますということを約束させられているじゃありませんか。ほかに経済協力だとか、いろいろなことがありますけれども、この条約の本質が軍事同盟であるということをごまかすなんということは、私はほんとうに国民をばかにした言い方であると存じますが、どうですか。(拍手)
○岸国務大臣 バンデンバーグ決議の趣旨につきましては、私は三宅委員のお考えは違っておると思います。われわれがこれを取り入れて条約の中に置きます条項も、決してこれによってわれわれは軍事力を増強する義務を負うというような規定にはなっておりません。われわれは当然の従来の方針に従って、われわれの責任においてすべてのことをやるのでありまして、これがために軍事力の増強についての責任を持つというようなことは私は考えておりません。
○三宅委員 この本質論が問題でありまして、その本質論を認めた上においても必要であるという立場なら、これも立場です。それをごまかしましてこの原水爆の時代に日本をほんとうに蒸発さしてしまうような危険を私どもはおそれますから、この点を私は明白にしたいと思います。そこで私はお伺いいたしますが、米ソともに、最近の軍事科学の進歩は、核兵器を多量に保有いたしまして、すでに飽和状態に達しておる。戦争手段としては皮肉にも逆に不適格になってしまった。敵にも殲滅的打撃を与えると同時に、味方もまた壊滅する。アイク・フルシチョフ会談の意義もここにあることは、私がさきに指摘した通りであります。こういうふうにして、もう原水爆時代に入っておる。戦争になれば滅びるという危険性が出てきております。岸さんは防衛大学でもって局地戦はしょっちゅうあるようなことを言っておられましたが、全面戦争がもし起きたら、ほんとうに滅びます。そこで私は政府に聞きます。政府は諸外国の原水爆の保有量をほぼどのくらいと見ておられますか。私が信じ得る資料として持っているものは、アメリカは原水爆五万個、ソ連は一万個、イギリスは四千個台という資料を持っておりますが、相手国を殲滅させるには、そのうちの数十発でよろしい。数十発で相手国が殲滅できる。その原水爆をアメリカは五万、ソ連が一万個という程度に保有しておる。日本やイギリスのような小さい島国は、十メガトンの水爆五発ないし七発で蒸発してしまう、ぽっと何にもなくなってしまうと言われております。しかもこの十メガトンの水爆は、爆撃機に積む標準的な大きさでありまして、これが必要以上にすでにできてしまっておるという事実は、私はほんとうに深く考えなければならぬと思います。私はしろうとでありまするから、この辺の観測が違っておるのだったら――ここにもあまりくろうとはおられぬと思うが、赤城防衛庁長官、違っておれば一つ指摘して下さい。
○赤城国務大臣 原水爆の生産、保有等につきまして、新聞あるいは軍事評論家の間に、どれくらいあるかというようなことがいろいろ出ておりますし、ただいま御指摘の数も、大体外字新聞のマンチェスター・ガーディアン紙の解説等にはそういう数が出ております。しかし御承知のように、原水爆を生産しておるのは、ただいまのところ米・ソ・英の三国であります。その保有量等は各国とも最高の秘密としておりますので、うかがい知ることはできないのであります。ただ原水爆の実験回数は私ども承知しております。アメリカが百四十二回、ソ連が七十八回、イギリスが二十一回、こういうところから考えますれば、相当量を保有しておるということだけはわかりますけれども、数は申し上げることは私にはできません。
○三宅委員 今の御答弁でけっこうでありますが、大まかなところについてお伺いいたします。ミサイルの発達はすでに大陸間弾道弾を作り出しましたが、その生産の段階はどの程度まで来ておると見ておられますか。フルシチョフは、本年一月の第二十一回ソ連共産党大会で、ICBMは連続生産の段階だと言っております。アメリカのマケルロイ国防長官は、ソ連の一CBMは二十個前後と見ておると言っておりますが、これまたそれこそ軍の機密でありまするから、赤城君の方でもわからぬかもしれませんから、非常に違っておる、見当違いを言うたと思われたならば、御指摘を願います。要するに大観いたしまして、大陸間弾道弾、ICBMというものは、まだほんとうに実用という段階、戦列化したという段階には入っておらぬと私は判断しております。同時に、原水爆を搭載いたしまして、アメリカ本国からソ連の中心部を一挙につく、ソ連の中心部からアメリカ大陸を一挙につくという、この超長距離の戦略空軍というものも、まだ十分でないという段階だと私は思います。そこに、最近におけるいわゆる原水爆を中心にした中距離弾道弾と、中距離戦略空軍を中心にする、いわゆるソ連の包囲網とか、両方の対決の線があると考えております。今日中距離弾道弾はすでに戦列化し、戦略空軍も基地から敵地の段階でありまして、本国から本国という段階でなく、日本の基地からソ連をつくとか、イギリスの基地からソ連をつくとか、向うもそういう状態だと思います。アメリカの戦略空軍の中心でありますB48にいたしましても、米本国からソ連中心部まではまだ行けない段階だと私は承知をいたしております。そこに、日本、沖縄、台湾、比島、イギリス中央条約機構等、こういう基地の重要性があると存じます。ソ連もまた、日本を対象に考えますれば、樺太、沿海州、中国東北地区等が必要となってきており、ここならば、IRBM、中距離弾道弾は明白に射程距離の中に入る、爆撃機も周辺基地を攻撃することができると存じます。中距離弾道弾IRBMの射程距離は、M101号は千キロ、M103号は千六百キロ、M104号は二千五百キロの射程であると言われておりますが、これらはすベて周辺に基地を持っておりますればともかく、本国から本国には行かないけれども、日本などは射程距離の中にりっぱに入るということであります。以上の中距離弾道弾戦略空軍の戦列化によりまして、米国の極東戦略は一昨年ぐらいからアジア原子力体制に入ったとわれわれは判断しております。一昨年から地上軍を大量に引き揚げて、グアム、韓国、台湾、沖縄には逐次原子力兵器等を持ち込み、第七艦隊も原子力装備をつけております。日本にもミサイル装備と原子力装備を持たせたいというのが米国の要求であります。これを防いでいるのは、日本の世論と憲法であります。反面アメリカ側から見れば、こういう包囲網の中において日本だけが穴があいていることについて、これは日本の立ちおくれであり、足並みをそろえたいと考えるのは、アメリカの立場から見れば当然だと存じます。いろいろなことを言いましても、どんな弁解をされましても、安保条約は実質的にはNATO、SEATO、中央条約機構、米州機構などと、こうした集団体制を基にした軍事包囲網であって、その核ミサイル化と、四百に上る米国の海外基地も、これが西側の備えであると存じます。切り離して見れば、一個の相互防衛条約でしかない日米安保条約も、西側の対ソ包囲網の一環である。間接的には集団安全保障体制の一部としての意味を持ってくる。この危険を私は心配されなければならぬと思います。総理に質問をすれば、憲法の範囲だとか、装備だとか、配置についてはちゃんと協議することと――あとから私はこの点も聞きますけれども、それで答弁されますが、大きな目で見れば、こういう一環をなしておるということを見なければならぬと私は思います。
 ここでちょっと私は触れておきますが、沖縄の問題はしばらく別といたしまして小笠原の状況をどう見ておるかお伺いをいたしたい。小笠原群島には石灰石の横穴がある。しかも島の数が多いので、ここに原爆を貯蔵することは、アメリカにとっては格好な貯蔵場所だと存じます。五メガトンの原水爆は重さがニトンといわれておりまして、横穴に入れるに手ごろでありますが、日本から見れば、あそこの横穴に原爆がぐっと入っておるとしますならば、はだえにアワを生ずる恐怖だと存じます。この点について、もし御答弁がありましたら、御答弁をいただきます。
○赤城国務大臣 ICBMはまだ実験中といいますか、試験中のように私どもは聞いております。中距離弾道弾、IRBMは相当使える程度になっているんじゃないかと思いますが、その点も私どもはっきりしておりません。
 小笠原の問題は全然承知しておりません。
○三宅委員 赤城君の正直な御答弁ですけれども、私はそういう点で、ほんとうに日本も考えていかなければいかぬと思うのであります。日本にもすでにミサイルが持ち込まれて、研究用のエリコンであるとか、サイドワインダーであるとか、地対空のナイキであるとか、ホークであるとか、中距離弾道弾のソアであるとか、原子砲のオネスト・ジョンなどが逐次持ち込まれようといたしております。これにつける原水爆はB47爆撃機で一時間でグアムから持ってこれますから、取りつけるミサイルさえ装置しておきまするならば、一瞬にして原水爆の基地になり得るのであります。エリコンが来ておることは私は承知しておりますが、その他のミサイルはどんなものが日本にあるか、わかっておりましたら、一つお教えを願いたいと思います。
○赤城国務大臣 エリコンにつきましては、今お話のように、スイスから買って、入っております。これは実験研究用であります。それからその他飛行機から飛行機に撃つサイドワインダー、これはもちろん御承知のように核装備はできないものであります。これは三十二年度にアメリカから買うことにいたしまして、十四発でしたか、近く入る予定でありますが、いつごろ入るかまだはっきりしておりません。ミサイルにつきましてはそれだけであります。
○三宅委員 ナイキはありませんか。
○赤城国務大臣 ナイキは全然ありません。
○三宅委員 そこで私は、基地の性格の変化について申し上げたいと存ずるのであります。かつての基地は、ジークフリート線にいたしましても、マジノ線にいたしましても、敵を食いとめる性格を持っていたと存じますが、現在の原水爆時代における基地というものは、食いとめる役割ではなくして、原水爆を吸収する役割を持ってきておると存ずるのであります。米ソ両国ともに直接本国より敵本国を討つ大陸弾道弾も爆撃機も不十分な今日、まず近い基地からつぶして進んでいくのが、全面戦争のときにおける基地の役割だと思います。起きては大へんでありますが、万々一米ソの全面戦争となりますれば、まず日本がつぶされる、沖縄が吸収される、グアムがやられる、ハワイがやられるということで、その間に、専門家に聞きますと二週間から三週間の日時をかせげるといいます。この間に米国が本国を固める、そうして米ソ戦争におきまして、かりに米国が勝ったといたしましても、前線基地は殲滅せられるのであります。日本の役割は、玉砕して米国に準備させることであります。私は米国の友情を疑うものではないが、米国の軍事的な本心は、日本の犠牲で米国の安全をはかることではないかと信じます。日本が生き残ることが、あらゆるイデオロギーを越えての第一義でありまして民族滅亡の危険をかけての政策は不可であります。言いにくいことでありますが、さきに大東亜戦争の宣戦の詔勅に署名した閣僚として、何千万の生命を失わしめた責任者でありました岸総理は、また万一全面戦争に巻き込まれたとき、アメリカを生き残らずために日本は消滅し、吸収されてしまう、このようなことがないと言えませんでしょうか。確信を持って、どんなことがあっても絶対にそういう心配はないと言えるなら別でありますが、あり得ないと言えますか。あり得ないということができないとするならば、ほんとうに深くおそれ、深く慎しまれなければならないと存じます。私はこの点について岸さんの意見を聞きたいのであります。
○岸国務大臣 現在の状況のもとにもしも全面戦争が起きたとするならば、フルシチョフの演説にもあるように、先ほどの御指摘にもありましたように、全人類の破滅を生ずるものであって、これはわれわれはいかなることがあってもそれを防止するという見地に立つ以外には私はないと思います。ただ、われわれが安保条約を作ったからその危険があり、安保条約がなければ全面戦争の場合にわれわれは生き残るというふうな甘い国際情勢の判断に立つことは間違っておると私は思う。現にフルシチョフ自身が共産国を含めて考えておる。従って、われわれが今安保条約を結んで日本の安全をはかるということについては、そういう全面戦争に対抗するような日本の防備ができていくということは、自衛隊の本質からいってもできないものであります。しかしながら全世界の大勢をごらん下されば、決してそういう全面戦争のみがわれわれの安全を脅かしておる唯一のものではないのであります。われわれとしては、全面戦争は即人類の破滅をもたらすものとしてこれが勃発を防ぐことに努力するとともに、同時に、われわれはやはり独立国として直接間接の侵略によってわれわれの平和が乱されるということのない態勢をとっておくことが必要である。これが安保条約のねらいでありまして、全面戦争に対抗するための安保条約、こういうふうにお考えになることは、事実に反しております。
○三宅委員 私は岸さんの答弁はほんとうに不満であります。今も申しました通り、こういう全面戦争がもし起きたら、核戦争下における日本の任務は、中距離弾道弾でアメリカまで行きます間の吸収作用である。従って、かりにこの段階におきまして――まだ大陸弾道弾ができぬ段階において戦争が起きたときに、これは日本だけがほんとうにアメリカのために消滅することになる。全面戦争は起きっこないといったって、今までだって戦争はやらぬといったって起きておる。それは起こさせぬようにしなければならない。起こさせぬようにするためには、一方を仮想敵としてその軍事同盟の性格のものに加盟することは危険であります。金門、馬祖などで間違って小さい原子爆弾でも落としてごらんなさい。気違いだっておるから、自殺するかわりに落とすようなやつがおって、それでもし始まれば、あるいは原子力を使った局地戦に終わるかもしれませんけれども、原子を使われたら日本は滅びてしまうじゃないですか。私はほんとうにこういう点については考えてもらわなければならぬと思います。すなおに考えてもらわなければならぬと思います。私は吉田さんとも論争したけれども、吉田氏はその点においては筋が通っております。もうこういう時代には吉田が抵抗した線が通せる時期が来たと私は思うのでありまして、安保条約の改定などは、少なくともしばらく見送ってもらいたい。私は、これは心ある国民、心ある自民党員はみんな考えておることと思います。今のままでは不平等かもしれません。基地貸与協定的なものであるかもしれません。しかし、積極的に恒常化し、軍事同盟化するという形は、世間みんなそう思っております。あなたがどう弁解されたって、そういうことをせずに、だんだんと国際情勢の緩和とにらみ合わして、憲法の精神の通りに持っていける方向に努力することが私は妥当だと思います。御答弁をいただいても単なる水かけ論になるから、さらに私は次のことを申し上げます。
 こういう状態で、今の中距離弾道弾の時代は、基地が非常に必要であります。しかし、もう五年たちまして、幸いにして軍備全廃とか、核兵器禁止というようなことが通ればよろしいが、今のままでいくと今度は超距離弾道弾というものが実用化してくる。その段階においては、今度日本は捨てられるということです。軍事資本家などが少々下請の仕事をもらって喜んでいる間に今度捨てられます。国防省顧問のタウンゼント・ブワープスが昨年の十一月米誌フォーリン・アフェアーズにおきまして、将来ICBM、ポラリス――ポラリスというのは、水爆ミサイルのついた潜水艦、これができますと、一方では大陸間弾道弾、一方では海の中を幾らでも動いていって、しかも水爆の積める潜水艦、この二つができると海外基地は不要となる。基地を置いて相手国民の反感を招くことは危険であると言っております。基地の関係で取引をしてアメリカとうまくやろうとか、そんな感覚でやっておると、ポンと捨てられる用心をしなければならぬと私は存じます。軍事資本家の諸君も、そういうことでいくという考え方を捨てなければならぬと思います。昭和三十三年十一月十四日、マケルロイ国防長官は、今や米国にとって完全な米国の管理のもとにある米国内に設置されたICBM、大陸間弾道弾の方が海外に設置された米国と同盟諸国との共同管理下にあるIRBM、中距離弾道弾より望ましい兵器となりつつあると言明しておるのであります。また八年前には絶対視された海外基地に対するアメリカ戦略の依存度というものが、ぐっと軽くなってきた事実も、国防長官自体が指摘いたしておるのであります。今や時代はそういう方向に進みつつある。それを意識的に努力しなければならぬ時期でありまして、私は、ここで方向転換をすることは大へんでしょうけれども、ほんとうに民族千年の運命を考えられましたならば、ここで考えていただきたいことを申し上げておきたいと存ずるのであります。答弁を要求しません。
 次に、私は、中立政策の評価についてしばしば岸さんが中立政策は共産党に利用されるとか、非常なデマゴーグ的な発言をしておられます。現にこの間二十四日に共立講堂でやられました演説会におきまして、中立政策をとることは、日本の自由諸国に対する国際的信用を失うばかりでなく、国の安全の基礎を危うくするということを言っておられます。そして、安保条約改定反対の中心は極左勢力で、そのねらいは安保体制そのものの破壊であり、日本を容共に導こうとするものであると言っておる。そういう認識こそ反対党を侮辱するものであり、良識のある国民を侮辱するものである。何千人かの学者、評論家がほんとうにまじめに考えて反対の決議等をしておりますが、そういう人々を侮辱するものであります。それは一部の極左勢力も入っておるかもしれぬけれども、そうでない立場に立った中立主義というものがある。現に日本の憲法は中立主義ではありませんか。この点について、私は岸総理の中立政策に対する評価をいろいろの例をあげてお伺いをいたしたい。
 第一、岸総理は中立政策をいかに理解しておられますか。今の演説はそういう演説であります。われわれは軍事的な中立政策を主張しておるのでありまして、政治の体制におきまして、言論、集会、結社の自由を認め、議会主義の上に立ち、全体主義に反対し、デモクラシー体制を政治制度として堅持することにつきましては、私は岸さん以上だと考えます。その立場に立ちながら、われわれは軍事的には中立政策をとらなければいけない。一方について一方を仮想敵とするという古い形をやめようというのが日本の敗戦後における建国の理念であると考えます。そういう意味におきましてこの民主主義、デモクラシーの政治体制を堅持しつつ積極的中立主義の立場をとってアメリカとも親善関係を深めるとともにアジア、アフリカ諸国はもとより中ソ共産陣営とも全世界と親善共存の関係を続けんとしようとするのが、われわれの考えておる中立主義のほんとうの意義だと思います。共立講堂におきまして、日本が中立政策をとることは、自由諸国に対する国際的信用を失うばかりでなく、国の安全の基礎を危うくするといっておられます。安保問題のごとき重要の問題は、国民に判断してもらうためにはデマゴーグや独断を排しまして、ほんとうの真実をもって国民の良心に訴えなければならないのであります。一国の総理大臣が何ということですか。これに反対しておるものはアメリカとけんかする考えのものであるとか、極左勢力であるとかいうように思わせるような演説をするということは、ほんとうに不謹慎千万であると考えざるを得ないのであります。すでに世界が、体制の違う米ソ両陣営が話し合って共存しようというときに、中立政策が自由諸国の信用を失うというのは何たることであります。インドは中立でありますが、自由諸国の信用を失っておりますか。スイスは中立国でありますが、自由諸国の信用を失っておりますか。スエーデンは中立国でありますが、自由諸国の信用を失っておりますか。オーストリアはイギリス、ソ連、フランス、アメリカの四カ国でそれぞれ占領しておったのではいけないから、中立主義の国として独立させて、四カ国で安全を保障しようという体制において中立国になっておるではありませんか。これがソ連を利益させましたか。りっぱに民主主義の国として四カ国の共同保障のもとに中立主義をとっておるではありませんか。中立主義をとることが、一体自由主義陣営の信用を落とすというそういう卑俗な言論をもって安保条約のごとき本質的な問題を議論されますることは、私はほんとうに信義においても憎まなければならないと考えておるのであります。本来国連の精神は中立主義ではありませんか。一方を仮想敵とする対立関係を排除し、全部が親善関係に入ることを予定しておるのが国連精神ではありませんか。日本国憲法は中立主義の憲法であり、アメリカを代表して敗戦後日本を管理したマッカーサ上元帥は、日本は東洋のスイスたれと中立主義を勧めたではありませんか。そのときは平和憲法を礼賛し、中立主義を謳歌しながら、アメリカの風向きが変ったらまた逆の立場をとるに至っては、私はほんとうにアメリカから尊敬されるゆえんでないと存じます。以上の点について御答弁をいただきます。
○岸国務大臣 私は中立政策をとるという議論を午前中に田中君に対して答弁をいたしまして、日本に対してそういう議論が二つの傾向を持っておる、内容を持っておるように思うということを申し上げました。一つはいわゆる容共的勢力によって日本を自由主義の立場から切り離して、容共の方向に一歩進めるという意味において中立政策をとれという議論であります。このことは同時に、共産主義の国々から日本に中立政策をとるようなことをいろいろな機会に声明し、もしくはそういうことを勧告するような態度に出ておるということとと表裏をなしておる議論でございます。不幸にしてそういうことが日本を取り巻く現実の中立政策のうちにあることは、これは三宅君も十分認識されてよい。三宅君自身そういう意味で御主張になっておるとは私は決して申しません。もう一つは、中立政策というのは、そういう意味でなく、日本は、両方の陣営に属せない立場においてとれという今の三宅君のお説のような考え方であります。これは、しかし、現実の問題として、日本のこの地理的の立場、また、日本の工業力その他経済力、国力の上から見まして、私は、両陣営のいずれにも属せないで日本の安全が保てるのだという見方をすることは、日本の置かれている立場及び日本の国力から言ってそういうものでないということを申しておるのであります。これは、日本が戦争に負けて、その後において、国力が非常に微弱であり、経済力が弱かった時代においてはそういう議論もあったろうと思います。しかし今日日本が国際的な立場におきましても、国連においても認められており、また日本の経済力、国力の回復に対して、非常な敬意の払われておる日本の現在の状況から見まして、私はそういうふうに見ることは、国際情勢の分析が甘いと言わざるを得ないというのが私の考えでございます。こういう意味におきまして、結果からいって、少なくとも一部において相当の力をもって日本のこの自由主義の立場を捨てさして、日米の協力関係を従来のような緊密の度から切り離して、そうして容共の方向に一歩進めようという勢力があるという事実は、私はその主張の根拠は違っておりましても、結果においてこういうことも利用されるおそれがあるということは従来申しておるのでありまして、今日もなおその考えでございます。
○三宅委員 岸総理は、ソ連や中国が中立主義ということを日本について、盛んにプラウダで言ったりいろいろしておる、それだから危険であるということを言っておられますが、そういう発言自体が私はほんとうに李承晩かなんかと同じ立場の態度じゃないかと思います。(「その通り」と呼ぶ者あり)私は少なくとも日本国憲法は中立主義の立場に立ち、国連もまた軍事的中立主義の立場に立ちまして、一方を仮想敵とするというような軍事の関係を結ばないのが国連における精神だと思う。現状におきまして、なかなかそういかぬからと岸さんは言っておられるのでありますけれども、それならそれで、なるたけそっちの方べ持っていく。安保条約を弱化するという方向へ行くべきでありまして、それを逆の方向へ持っていきながら、中立論者を赤呼ぱわりするということは、私はこれはほんとうに卑劣だと思うのであります。岸首相は現行の日米安全保障条約が戦争を食いとめた抑止力としての力を発揮したと言われておりますが、万一その全面戦争に今度の改定によって巻き込まれますれば、日本の運命は、さきに述べたごときことでありますることは、申すまでもないところであります。しからば日本で現実に中立という立場を取るのと、どっちが安全か。全面戦争に巻き込まれて、基地として吸収されるかどうかということも、もっとまじめに、偏見を持たずに論議しなければいかぬと思います。日本が中立政策を堅持し、しかも軍備を持たない場合に、ソ連は侵略してきましょうか。戦略の要衝で、工業力のある日本をほうっておかない、こういう議論をされますが、これこそ短見であります。対米軍事基地としては、大陸に接近しておる日本などは意義をなしません。長距離弾道弾でアメリカに届きはしない。だから軍事基地としては、米本国から遠隔の日本は、何らの軍事的意義を持ちません。日本の工業力は、日本へ侵攻してきて、こわしてつぶして取っても役に立ちません。資源の少ない、そして人口の多い日本を維持することにかえって困る状態だと思います。そういう意味におきまして、日米安保条約の改正というものは、全面戦争の場合には軍事的には全くゼロであります。五発の水爆をもって国土全部を蒸発させてしまうだけであります。防衛力もないのに仮架空なこの事情で金を使って、しかも中国との関係は逆に悪くなるというようなこういう政策は、私はやめなければならぬと思うのであります。安全保障条約の解消後の中立国日本の安全保障につきましては、米・ソ・中・日等による、不侵略集団保障という、われわれの考えておる方式もある。アジアの集団安全保障体制の樹立ということもある。アジアの非核武装、中立地域の設置など、多くの構想がありますが、すでにソ連や中共は、こういう段階になってくるならば、中ソ友好条約の軍事条項を廃棄することについて言明をしております。日本との不侵略条項にも賛成の言明をしております。アメリカがその気になってくれますならばこれは空想ではなくて可能であります。そしてどういう事態が起きても、原爆などの被害を日本がこうむらないでいけるという状況だと思うのでありまして、私はこの方向への努力を真剣に考慮すべきときがきていると思います。中立主義の評価ということで、私が質問しているのはそれなんであります。岸さんはこびりついておる、ほんとうに頭にこびりついておるが、もうちょっと頭を柔軟に切りかえることによって中立主義をもっと真剣に評価されなければ、私はアップ・ツー・デートの政治家として役に立たないと考えるのであります。(拍手)時間が参りましたので、それでは私は答弁に時間をとるのはもったいないので……。(「答弁、々々」と呼ぶ者あり)それでは答弁をお願いいたします。
○岸国務大臣 中立政策ということ、今私が申しましたように日本を取り巻く中立論の間には、二つの考え方があることはこれは事実であります。そうして共産主義国の方において、日本に対しては中立を求めておりますが、一体共産圏の中において、中立をとろうとしておる、あるいは中立をとった国に対して、どういうふうに共産国が扱っておるかという現実をごらんになると、決して三宅君の言われるような理想論が今日現実のなににあるわけではありません。ユーゴの問題にいたしましても、あるいはハンガリーの問題にいたしましても、あるいはまたインドの国境問題におきましても、われわれはただ中立という理念だけで国の絶対の安全を守るということは、現在の情勢においてはできないと思う。従って私どもはみずからを守るという態勢だけはとって、しかしどの国とも仲よくしていく、友好親善をなにするというのは平和外交の方針でありますから、あるいは国連を通じ、国連を通じなくても、共産国との間にも、国交を回復すべきものは回復していいと思っております。そういう態勢でもって進んでいくことが、真の日本の安全であると同時に、平和を推進する道であって、決して観念的な中立論によってのみ、日本が安全であり、世界は平和になるというような甘い国際情勢では現実はない、これをよく御理解いただきたいと思います。(拍手)
○三宅委員 岸総理はいつでも共産主義圏の侵略とか、そういう表現を使っておられますけれども、それでは私は具体的な例をあげて、もう一ぺん追求をしてみたいと思います。
 中立主義を評価するにあたりまして、先ほども例にとりましたが、オーストリアの例は多くの示唆を与えると存じます。オーストリアは、英米仏ソ四カ国の占領地区に分割されて、首都であるウイーンもやはり四カ国に分割して占領されておりましたことは、今日のドイツと同じような状態であります。また南北朝鮮の状態、あれより複雑であります。四つにやられておる。それが戦後十年にいたしまして、一九五五年、外国の占領を免れて、再び単一国家として国際社会に復帰できた。その原因は、第一はそれぞれの地区の占領国にあやつられることなく、最後までただ一つの中央政府を守り通したということであり、第二は中立化によって占領から脱するという賢明な着想にあったと私は信じます。中立主義オーストリアが、米英仏ソの四国の保障によりまして、統一主権国家として独立と領土を回復したことは、大きな教訓を与えております。その意味におきましては、ソ連は自分の占領権を手放しちゃった。そしてしかも共産主義の態勢なんかとっておりません。いわゆるデモクラシー的な政治態勢をとっておるのであります。日本は海を隔てておりますが、これよりもっと複雑な国境をつないでおるところで、りっぱに独立国としておるということは、中立主義はソ連を利したとか、そういうつまらぬ表現をもって解決すべき問題でないと存じます。こういう意味におきましても、中立主義というものが、そんな今の状態においてなどと軽々しく考えるものではないと思うのであります。
 さらに次に質問をいたしますが、どう考えられます。ドイツの統一をかりに考えるときに、ドイツの問題が解決しなければ、ヨーロッパの安全というものはない。ドイツの統一をかりに考えますときに、ドイツが東独まで含めていわゆる軍事的にも西欧陣営に入るといったら、ソ連は承知しないでしょう。また西独が向こうの共産陣営に入るといったら、今度はこちらが承知しないでしょう。もしほんとうにドイツの問題を解決するならば、中立主義ドイツとしてその近隣のソ連、アメリカ、イギリス、フランス等がドイツの中立と安全を保障するという形において中立主義ドイツを作らなければ、ドイツの統一なんということはあり得ないと私は考えますが、あなたはどう考えられますか。この意味においても中立主義という考え方というものは、非常に大きいと思います。
 さらにまたアジアの緊張を緩和するために、南北朝鮮の統一は非常に大切であります。三十八度線で火をふかせてはならない。その場合に、北鮮側が李承晩を征服して統一するという形はこっちが承知しない。またこちら側でどうこうということは向うが承知しない。やはり南北朝鮮を統一するのは、日本も加わった近隣諸国がその独立と安全とを保障いたしますところの中立国朝鮮として統一させるよりほかに道はないと考えます。私は、中立主義はだめだとかなんとかけちなことを言わずに、岸さんなども、アジアの緊張緩和のためにこういうような方途を国連などに働きかけて、一つ努力するというくらいな積極的経輪を持たれるべきであると存じます。(拍手)
 南北ベトナムの統一はどうします。南北ベトナムの統一を、分裂を恒常化さすような線においてやるのではなしに、軍事的にはこれまた共産ベトナムにもならない、自由主義ベトナムにもならない、両方を統一させて中立国ベトナム、そうしてその安全と独立は、中国を含み、ソ連を含み、インドを含み、日本、アメリカ等を含んだ国々によって保障するという中立国ベトナムという考え方でなければ、私はできはしないと思うのであります。鶏三羽の被害に二百億の賠償金を南の方に払って、対立を固定化さすというようなやり方自体が、いかに時代錯誤であるかということを私はほんとうに痛憤をせざるを得ないのであります。
 かくのごとくいたしまして、たとえば中立インド、中立日本、中立朝鮮というふうに、アジアにわたって中立国がずっと続いて、軍事的に中立国になり、ソ連とアメリカとの間を隔離する平和地域、中立地域ができるということは、もう先覚者によって唱えられた通り、世界の全面戦争をなくいたしまする上における、私は一つの大きな建設的な方途だと思うのであります。かりに核非武装地帯というものがこの区域にできて、できたならば、中国もまだ核兵器を持っておらぬのだから、中国にも持たせぬようにして、そうしてこれができまするならば、日本にとってどのくらい大きな問題であるか、私はわからぬと思うのであります。私は、日本の中立主義についてもっと大きな評価をしなければならぬという立場のみならず、中立政策の評価というものは、私はアジア、ヨーロッパを通じて、藤山外相にしても、岸総理大臣にしても、外交問題の一つの大きな考慮に値いするものだという点を考えられなければならぬと思うのであります。たとえばすぐ中立日本に日本を持っていくことが、かりに岸さんのようにまだタイムが要るとしても、その方向はよろしいとすれば、その共通の方向に向かって――タイムは違うが、軍事同盟強化の方でなしに、弱化の方へ持っていくという線であるならば、あるいは超党派外交でもその限度において話し合いができるかもしれないのでありまして、中立主義に対してもう一ぺん再考慮を求めまして私は岸さんの答弁を得たいと存じます。
○岸国務大臣 今、具体的にドイツの問題であるとか、南北朝鮮の問題であるとか、あるいはベトナムの問題とか、いろいろな事例をおあげになりまして、これが解決の方法として中立論をお漏らしになっておりますが、どうも世界各国の事情を見ますると、いわゆる中立政策をとっておりまする事情も、国々によって違っておるのであって、これを共通した一つの中立政策というものが支配しておるというふうに見ることは、現実に非常に反しておると思う。従って今オーストリアが中立になったことを引いて、直ちに日本がそれだから中立でなければならぬというふうな議論は、やはり飛躍しておるのでありまして、私は、そういう意味において、日本の今の現実の中立論が、どういう形でもって日本を取り巻いておるかという現実を直視して、われわれが中立政策をとらないという結論を出していくほかはない、かように思っております。
○小川委員長 三宅君、申し合わせの時間が過ぎておりますので、一つ結論を急いで下さい。
○三宅委員 私も時間を急ぎたいと存じますが、さらに安保改定の問題に関しましては期限の問題があります。河野君が十年ということについて非常に反対をいたしましたことも御承知の通りであります。事情変更の原則の適用なんというものがなかなか通らぬことも、これまた皆さん御承知の通りであります。NATO条約の十三条には再審議条項がありまして、一国の要望によって改定に応じなければならぬとあるのに、一体なぜ日本においては加えなかったか。米韓、米台条約でも、一年の予告でもって廃棄できることになっております。国際関係がこれほど変転をし、しかも藤山外相自体が予測ができぬというほど、来年の五、六月ごろにならぬと――今後どんな動きか追っていきたいと言っているほど動いておりますときに、私は河野君の議論などももっともだと思うのでありまして、この点についてのことを承りたいのであります。
○岸国務大臣 こうした政治的なまた防衛的な意味を持った協定が、相当長期の安定した期間を持つということは、国際の慣例から見ましても当然であると思います。もちろん内容は違いますけれども、中ソ条約が三十年であるとか、あるいはNATOが二十年であるとか、その他三十年、五十年というような相当長期にわたっておるものが多いのであります。私は十年ということは、こういう条約としては最も妥当な期間であるという見解であります。もちろん国連でもって世界の平和を維持するような、確保するような機構ができるように努力はするつもりでございますから、努力していく上におきまして、そういうものができれば、これが効力を失うことは当然であります。その他国際情勢が変更されると申しましても、われわれの自由民主党及びそれを代表しておる内閣におきましては、日米の協力によって日本の安全と繁栄をはかっていこうという基本的な考えは、私は、国際情勢の変化いかんにかかわらず変わらないと思います。ただその場合において、条約の内容そのものに何らかの変更を加える必要があるじゃないかという問題に関しましては、国際情勢の変更によりまして、そういうことが日米の理解と信頼の上に立っておる条約である以上は、一方が述べた場合において、これを誠意をもって取り上げて考える、結論として必ず改定をするというようなことは、十年の期間を設けたことからいって不適当だと思います。また河野君あたりの議論も決してそういう意味ではないのでありまして、私は、われわれが考えておる十年の期間にする、そしてその後は一年の予告をもってこれを一方的に廃棄できるということにすることが、この条約の性質から見て適当である、こういう考えであります。
○三宅委員 NATOの条約においてもちゃんと再審議条項が入っているのに、そういう例があるのに、答弁はなかったのですが、なぜ入れないのですか。
○岸国務大臣 NATOは御承知の通り二十年という長い期間でありますし、それから非常に多数の国が入っております関係上、そういう条項が入っておるのかと思います。
○三宅委員 NATOは二十年、もう十年済んでおりますから、これから十年やればNATOと日本と同じです。NATOの方には来年でもちゃんと変えられるのに、日本だけは残しておくというところに、そういうところに河野君までが憤慨するのですから、反対の立場の者が心配するのはあたりまえであります。
 時間がないので次の質問に移りますが、核持ち込みの禁止をなぜ本文の中に入れなかったか、拒否権をなぜ明らかにしなかったか、この点であります。さらに配備、装備の変更、施設区域を日本防衛以外の目的で作戦行動に使用するための事前協議、この協議も、これも外務委員会等でしばしば問題になったのでありますが、なぜ少なくとも同意としなかったか。日本の国内法におきましても、同意と協議とでは非常な違いでありまして、独禁法におきまして協議という場合は、協議ととのわなくても一方的にやられることがある。同意となりますれば、同意を得なければやれないということになりまして拒否権が事実上入るわけであります。なぜ一体、少なくとも協議を同意としなかったか、この点を伺いたいのであります。
 さらにまた、ボタン一つのミサイル時代に、事前協議なんということが実際においてほんとうに役に立つのか。既成事実を作られたあと、協議をしたということで共同責任を負わされる結果だけになるなれば、国際法上かえって損をするのじゃないか、この点も御答弁をいただきたい。
 さらに岸・アイク会談において日米合同委員会を作ったのでありますが、金門、馬祖の戦いのときに、佐世保軍港から出動したアメリカ軍の動きについて、事前協議があったかどうかを尋ねたいのであります。
 それからさらに最近の佐世保におきまして、行政協定でとりきめられた区域以外の海面を、米軍側が無断で使用をした事件が起きている。平時においてもとりきめを平然と無視する米軍が、ロケット時代の今日、一旦緩急の際日本側に事前に協議するとは考えられないのでありますが、この点をまとめて御答弁願いたい。
○藤山国務大臣 この事前協議の問題でございますが、御承知の通り本条にいろいろの協議事項がございます。その中から特に配備、装備及び基地を作戦的に使う場合を取り上げまして、それを事前協議するという形において条約を作って参りたい、こういうふうに考えております。従いまして、そこから取り出しましたことは、その点が非常に重要であるという立場から取り上げておるわけなんであります。
 そこで事前協議のひまがないではないかということでありますが、今回の条約は、むろん両国が友好親善関係、信頼の立場に立ちまして、常時条約の運営について協議をいたして参ります。従って突発的に非常な、何か雷が落っこちるという状況にもないわけでありまして、常時起こっております事態に対しまして十分な協議をしていく。こういう場合にはこういうふうに考えてったらどうだ、ああやっていったらどうだ、こういう状況はどうだということを協議いたしておりますので、事前に協議する十分な時間があると考えております。また、これは当然協議でございますから、協議がととのわなければ相ならぬわけでありまして、その間、日本の意見を主張し、また日本の見方を申し、そうして日本の考え方を協議によって入れていくということは十分できるわけでありますし、また、することによって協議がほんとうに正確にととのっていくわけでありまして、それなしには協議とは申し得ないのであります。従って日本として主張すべきことは主張いたして参ること当然であります。そういたしますれば、むろん同意ということと同じであるわけでありまして、同意を含んでいることもまた当然であります。条約の慣例もございますし、従ってこの点につきましては協議ということで事足りると、私どもは考えております。
 なお、長崎その他から、金門、馬祖の場合にはいろいろ出たではないか、協議があったかということでありますが、今日の安保条約ではそういう意味における協議事項はないのでありまして、今後これを入れますことによって、そういう場合の協議をいたしていくということ、当然でございます。
○三宅委員 ただいま、協議さえすれば同意もとれるし、拒否権もとれると言うが、協議で同意と同じように、協議しても、同意しなければできない、それから同意しなければ拒否権があるんだと、そういうふうに解釈して間違いありませんか。
○藤山国務大臣 午前中にお答えいたしました通りです。その協議が成立しなければ、事は行われていかないのでありまして、従って、その意味において日本の言っていることが通っていくということは当然でございます。
○三宅委員 それは平時の場合であって、一たんいろいろの場合におきましては、私どもは非常な危惧があると思います。あとから押しつけられる結果になると思いますが、時間の関係もございますから、砂川判決と安保改定の問題について質問をいたします。
 砂川判決は外国軍の駐留自体が憲法違反であるという趣旨でありますが、これは西村前条約局長も、八年前の安保調印の際に、日本は憲法で軍隊を持たないと規定していながら、条約で外国の軍隊を日本に駐留させるというのは、憲法の精神に反するという議論が有力で困ったと言うておる通り、憲法をすなおに読めば、これは明らかな判決だと存じます。今砂川の判決に対しましては、検事側の跳躍上告によりまして、最高裁で審理されております。改定安保条約でも、憲法の規定に沿うてといっておるのでありますが、憲法の解釈は、最終的には最高裁が最高権威だと存じます。行政府だって、最高裁の解釈を憲法の解釈として適用するのが当然であります。従いまして最高裁の判決があるまでは、私どもは安保条約の調印などは延ばすべきであると存じます。しかも、これはわれわれが言うておるだけでなしに、八月一日、椎名官房長官が、調印は砂川判決後になると言うたのは、私は当然のことだと存じます。また藤山氏自体も、これとは別なことでありますが、最高裁が違憲と判決すれば、これはもうだめになるのだから責任をとる、そうして改定もやめるという発言をされておられることは、お忘れになっておらぬだろうと存ずるのであります。この点についての御答弁をいただきます。
○岸国務大臣 憲法の解釈が最高裁の判決によって、解釈によってきまるということにつきましては、私どももそう思っております。ただ外国軍隊が駐留することが憲法違反であるということは、実は私どもはそう考えておらぬのみならず、学者の大多数もそれを違憲だとは言っておりません。もちろん行政府としては、行政府の責任においていろいろなさなければならぬこと、また憲法上与えられておる権限を行使することは、当然であります。ただ、最高裁の判決がありまして、行政府のやっておる行為がそれに違反しているという場合に、これをいかにして是正するかという問題は、自後において起こると思います。われわれは裁判に係属しておるというだけでもって、行政府として、与えられた権限に基づく条約を調印することを差し控えるということは、考えておらないのであります。
○三宅委員 そうしますと、椎名官房長官が判決後であると言ったことは、お取り消しになるわけですね。
○岸国務大臣 それはどういう意味であるか、時期をそういう観測をしたという意味であって、私、今の椎名官房長官の発言を、性質上判決の後にするという意味にはとりませんが、椎名君もそういう意味で言っているのだろうと思います。
○三宅委員 この間、淺沼書記長の本会議の質問に対しまして、岸さんは、私ども政府としては、別にこの判決の時期とは関係なく、われわれの信念に基づいてやっております、という答弁をされて、今もそういう答弁をされたのでありますが、いやしくも外国軍隊の駐留が憲法違反であるという下級裁判所の判決がありましたならば、そのときにはそれに服するのがあたりまえであります。そうして上告しなければ、それが確定することもあたりまえであります。従いまして、最高裁へいって審理をしておりますときに、そういう判決が出るかもしれない、現に伊達判決においてあった。そうして今も申しましたように、憲法上議論のあります問題に――あなたの言われるように、学者の多くがどうとか、こうだとかいうことは別問題だ、あなたがお考えになるのは別問題。われわれとしては三権分立の立場に立って、憲法の最高の解釈は最高裁でありますから、最高裁で現に係争中になっておりますことを、不謹慎にそれで調印をしてしまう。今あなたは、かりに違憲の判決がありましたらば、その部分を修正すると言っておられますが、外国軍の駐留を許すことは違憲であるという判決が下ったら、その部分の修正をしたら一体何が安保条約で残りますか。そういう重大な問題を平気で、多数党だから押し切るとか、あるいは、行政府が独断で押し切るということ自体が、私はほんとうの順法精神に反すると思います。第一、一審において違憲となっておる。時間を急ぐから跳躍上告をされたのでしょうが、これは最高できまるのだから、それまでお待ちになることは私はあたりまえだと思う。何のために一体急いでそういうことをやられますか。われわれは全体として延ばしてもらいたいということを言っておりまするときに――国民の大多数もそうですよ。まだまだなま煮えだから延ばせと言っておるときに、最高裁の判決まで待たずにそれをやる。さっきあなたは、もし違憲判決があったらその部分を直すと言われたのだが、その部分を直すということで片づきゃしない。これは政治上の大きな責任だから腹を切るのだ、政治的な責任をとるのだということを藤山さんも言っておるのでありますが、当然な話であります。そういう意味においても、私は最高裁の判決まで待つのはあたりまえだと思いますが、もう一ぺん御答弁をいただきたい。
○岸国務大臣 これは内政上もあるいはその他の問題におきましても、最高裁に何か係属中であるならば、その判決があるまで、それまで行政処分その他の行政府として持っておる権能は――同時に私は義務だと思います。それを待っておるべきかといえば、やはり行政庁は行政庁としての解釈によって事を処理していく。もちろん最後の最高裁の判決ができるならば、それに覊束されることは当然でありますが、その間われわれはすべての行政行為その他のものを延ばすということは適当でない、こう思っておるのであります。
    〔発言する者多し]
○小川委員長 岡田君、静かに。
○三宅委員 私は実に驚いてしまうのでありますが、一体こういう大きな重大な憲法上の問題を、一審におきまして違憲判決があった、そうして最高裁にかかっておるというこの段階におきまして、行政はやるだけの仕事をやらなければならぬ、そんな答弁で満足すべき問題ではないと思います。こういう重大な問題について、しかも議論がうんとありまする問題について、なぜ待てませんか。向うに了解してもらって、――アメリカだって三権分立でわかりますから、向うに了解させて、そうして最高裁がやっておるのだから、この疑義が確定するまでは、あなたの方にも迷惑をかけますから、これは根本的な問題であるから、さまつな問題ならば別ですよ、この行政協定自体がだめになってしまうというこの根本的な問題について、最高裁で係争中なのに、知らぬ顔してやるという態度自体は、私は実に不謹慎だと思います。それを行政的な解釈だとか何とかということ自体が、はなはだ不謹慎だと思います。憲法違反だと思います。もう一ぺん……。
○岸国務大臣 これは三権分立の精神からいっても、やはり行政庁は行政庁のなすべきことをしていくのは当然であります。最後に憲法の解釈として、行政府の解釈に優先して最高裁の判決が権威を持つことは当然でありますけれども、しかし三権分立の精神からいえば、当然各機能は独立して自分の職責を行なっていく、これが私は当然であると思います。
○三宅委員 水かけ論になりますけれども、こういう重要な政治問題につきまして、三権分立のほんとうの精神からいきまするならば、これが外国に対しても非常な不信用ということになります。もし違憲判決が下りまして、調印されたのがだめになった、そのときに条約とは違うとか何とかという議論が出て、そうして憲法上の論議が紛糾するようになったら大へんであります。もし違憲判決が出ましたならば、その点についてほんとうに責任を負うかどうかということをもう一ぺん言明していただきたいと思います。
○岸国務大臣 われわれは、正しいことであり、これが正当であると思うことをやりまして、それが権威を持って、間違っておると言う場合において、政治的の責任をとるということは私は当然であろうと思います。どういう形において政治的責任をとるかはそのときの問題でございます。
○三宅委員 私は、ただ政治的責任をとればそれでいいということでなくて、ほんとうにこういう問題については判決のあるまで待つのが当然だと思います。しかし水かけ論をしても仕方がありません。それだけでなしに、今までに申し述べました通り、事は実に重大でありまして、核兵器の時代、こういう時代におきまして、軍事同盟を強化する方向などに安保改定を持っていかれますことは、ほんとうに危険だと思いますので、私はほんとうに国民の一人といたしまして岸内閣の再考慮をお願いいたしまして、この問題については伊達判決等の最高裁の問題等もあり、国際情勢の変化等もありますので、しばらく交渉を休まれて、新しく考えられるという態度をとられることを要望いたしましてほかの質問は時間がありませんのでほかの同僚に譲りまして、これをもって質問を終了いたしたいと思います。(拍手)
    ―――――――――――――
○小川委員長 加藤鐐造君。
○加藤(鐐造)委員 私は、この国会における重要問題でありまする南ベトナムの賠償問題あるいは安保改定の問題等につきましても岸総理大臣に質問をするつもりでございましたが、私の質問時間は非常に制約されましたので、この国会は災害国会といわれておりまするし、従って私は主として災害問題について政府の所信を伺い、その他の問題については、他の同僚議員に譲りたいと考えておる次第でございます。
 岸首相は、先般の施政方針の演説におきまして、今次伊勢湾台風を未曽有の大災害であると言い、再びかかる大災害の起こらないようあとう限りの財源をもって災害復旧と民生の安定に万全を期する決意である、こう申しました。それからさらに総合的、科学的に検討し、恒久的災害予防の方途を樹立すると言い、さらにまた国土保全の万全を期する所存であるとも言っておるのでございます。これらの言葉は、一言にして言えば、抜本的に改良復旧を行なうということであり、しかもそれは国土の保全という見地に立っておるのであります。台風国日本は、言うまでもなく、毎年はなはだしい災害のために国土は決して安全が保たれておりません。また民生も決して安定しておらないのであります。毎年台風の季節になりますると、国民は不安におびえておるのであります。今にしてこの岸首相の言明がほんとうに実行されなければ、日本は文化国家とは決して言えない。世界の一流国家の仲間入りはできないのでございます。先ほど、午前中の質疑応答から見ましても、こうした世界第一の災害国でありながら、台風の研究、それによって起こる災害の研究というものが十分に行なわれない。根本的な台風の研究のために一銭も国費を使っておらないというのは、これはもう驚くべき事実であると考えるわけでございます。いつも天災という言葉で、従来は天災には抗することができないというあきらめの言葉でもって来たわけでございます。いつまでもこうした天災には抗することができないという考えでおりますならば、これは日本という国は、今申し上げましたような文化国家でもなく、いわゆる未開国家といってもよいと思うわけでございます。こういう点から岸首相の言明を考えて、そうしてここに提出された補正予算を見ますと、この言明にいわゆる施策が伴っておらないのではないかということが言えると思うのでございます。いわゆる首相の言明を全く裏切っておる、こういうことが言えると思うのでございます。今度の災害は未曽有の大災害であると岸総理が言われましたところから見てもわかります通り、最近の大災害であるといわれました二十八年度の災害をはるかに越えておるわけでありますが、今度の政府の施策は、おおむね二十八年度を限度としておるのでございます。またあるものはそれを下回っておるのでございます。こういうところから見ますと、岸首相は全く言葉だけで国民をごまかそうとしておる、こういうことが言えるのではないかと考えるわけでございますが、その点岸首相の心境をまず承りたい。
○岸国務大臣 今回の台風に対しましては、政府としては二つの考え方をしておるわけであります。すなわち、一つは災害地の復旧、それから民生の安定を主にした、いわば応急対策とでも申すべきものと、それから治山治水、また防潮、高潮に対する対策等を含めた抜本的な対策、こういう二つを考えていかなければいかぬと思います。
 応急的な復旧対策につきましても、必要なところにおきましては、従来いわゆる原形復旧の原則をとっておりますけれども、これに対して、むしろ改良復旧と申しますか、従来の原形を今度の体験に基づいて相当改良して将来に処するという意味を持った施策を応急対策にもとっております。
 さらに恒久的な根本対策といたしましては、これは臨時国会に提案するまで準備が整っておりませんので、来たるべき通常国会において総合的な、さらに本日午前中にも論議がありましたような科学的な方策も加えて国土保全に関する恒久策を立てていきたい、かように考えておりまして、今回の応急対策につきましても、いろいろな特別措置につきまして、あるいは二十八年のときの災害を上回るものもありますし、あるいはそれと同様なものもありますし、二十八年のときの実績その他を考えて、それを下回るものもございますけれども、大体におきまして民生の安定と復旧、これによって被災者が立ち上がる気持を持つようなところまでわれわれは考えておるわけでございます。
○加藤(鐐造)委員 岸総理の今の言葉によりますると、改良復旧ということは考えておるが、このたびの補正予算は応急対策を講ずるにすぎない、こういうふうにとれると思います。そうしていわゆる根本的な対策、改良復旧という点についての予算というものは次の通常国会にいろいろと根本的な対策を整えて提出する、こういう答弁だったと思います。しかしながら、今回のような非常な大災害は、相当の費用をもって初年度において相当復旧工事を行なわなければ、いたずらに長期にわたる工事となって、また来年度再びこうした大災害がもし同一地域に起こったといたしますならば、より一そうの災害が起るということが考えられるわけでございます。従って、私は岸首相の今の答弁を信じて通常国会に根本的な改良復旧に関する予算が提出されたといたしましても、それは非常におそいということを考えるわけでございまするが、その点はそれで十分間に合うというふうにお考えになりますか、もう一ぺん伺います。
○村上国務大臣 ただいまの総理の御答弁に補足させていただきます。
 今回の補正予算には、大体補助災害におきましては三・五・二の三が十分含まれておりますし、それによってどうしても再災害を出水期までに起こすおそれのあるところは、十分これの処置のできるような予算措置になっております。
 また直轄災害、特に木曽川下流あるいは愛知、三重の海岸堤防等につきましては、本年度五五%まで仕事を進めることができる、それによって原形復旧までは本年度中にやりたいということになっておりますので、それから先、いわゆる今後の抜本的な対策につきましては、来年度においてこれは学識経験者その他各省で海岸堤防の協議会を作りまして、それによって堤防の高さをきめて抜本的な施工をするということでありますので、この補正予算によって十分今年度の災害の復旧には支障を来たすことはありません。直轄災害と海岸堤防につきましては、ことし、来年と二年間でこれを完成するつもりでやっておるのであります。
○佐藤国務大臣 先ほど総理がお答えした点につきまして、あるいは少し誤解していらっしゃるのではないかと思いますので、補足して説明いたします。
 御承知のように、昨年改良復旧という制度が採用されまして、いわゆる災害の場合の復旧工事は原状回復だけでは実はないのであります。今回もそういう意味で、改良あるいは関連工事をも含めての予算を実は計上いたしております。同時にまた、ただいま建設大臣から御説明いたしましたように、工事の進捗率を例年に見ない高度のものに引き上げまして、重要なもの、あるいは一般のもの、それらを合計いたしまして二八・五%の進行率を初年度に計画しておる。これは新しい企画でありまして、この予算をもっていたしますれば、従前にも増しての復旧ができる、かように私ども確信をいたしております。
○加藤(鐐造)委員 建設大臣の御答弁ですと、この予算においては、いわゆる応急復興をしておいて、通常国会へ提出される年度予算において改良工事を行なう、こういうふうにとれたわけです。また大蔵大臣は改良復旧を含めておるというふうにおっしゃる。そこに食い違いがあるように思ったわけですが、建設大臣のお考えですと、今のお言葉ですと、改良復旧は来年度になるわけですが、大蔵大臣の答弁でありますと、改良復旧は今度も含めておるということだと思います。もし建設大臣のおっしゃることですと、いわゆる同じ個所、たとえば愛知、三重等の海岸線の堤防の復旧工事について考えてみても、応急復興と改良復興とは全然違うと思う。一応応急復興として原状復旧までやるといたしましても、一応それをやってさらに改良復旧をやるということになりますれば、これは全く二重工事になると考える。こういう場合に、私は最初から改良復旧の計画を立ててやるべきではないかと思うのですが、この点どうですか。
○村上国務大臣 私の言葉が足りなかったかもしれませんが、今年度の五五%直轄災害において進捗率をやるということにつきましては、これは改良復旧も含まれておるのであります。その点、一つ誤解のないようにお願いいたしたいと思います。
○加藤(鐐造)委員 そうしますると、改良復旧も含めてやる。非常に危険なところは当然改良復旧で行なうということになるであろうと思います。そういう場合に、今回の予算六百十四億の中で、災害予算というものは三百四十億でありまするが、これで十分であるかどうか。私が最初に申し上げましたのは、この予算というものは応急復興の程度ではないかというふうに考えて、また総理大臣の答弁もいわゆる応急復興、一応原状復旧を限度として根本的な改良復旧は来年度に考えるという御答弁でございましたが、今大蔵大臣の答弁あるいは建設大臣の補足せられた答弁によりますと、改良復旧が相当に含まれておる。またそれは私の解釈によれば、海岸線等の危険な場所は当然改良復旧でやっておかなければ二重工事になるし、来年度の危険が予想される、こういうことが考えられるので、その点総理大臣は、改良復旧がそういうふうに大幅に行なわれる場合に、三百四十億の予算というものがそういう建前において立てられておるかどうかということを総理大臣にお聞きします。
○岸国務大臣 さっき私が御答弁申し上げましたこと、あるいは言葉が足りなかったせいで御理解いただけなかった点があるかと思いますが、通常国会に提案するということは、国土の保全、治山治水、高潮対策等を含めた抜本的な総合的、科学的な方策については通常国会に出すということを申したわけでございます。災害地に対する応急復旧につきましては、改良復旧も含めて、その場所々々において必要な改良も加えてこれを復興する、復旧するという建前をとっておるわけでございまして、必ずしも原形復旧ということの原則にとらわれて二重工事その他のことが行なわれるということは、先ほど大蔵大臣、建設大臣がお答え申し上げた通り避けて、なるべく改良の必要な場所における改良は含めて復旧するつもりでございます。
○加藤(鐐造)委員 そういうことになりますと、私はこの三百四十億の予算というものははなはだしく不足であると考えますが、それは別といたしまして、一体その改良復旧をするについても、どの個所をどの程度に行なうかということが十分ではございません。特に予算に関係するところの法律案もまだ三件しか出されておりませんし、またいわゆる災害の激甚な地域がどこであったか、そうしてそれによって地域の指定をするということもまだ明確ではないわけでございます。元来予算には法律が伴うわけで、災害に関するところの法律案ができなければ、一体その予算をどういうふうに使うかということもつまびらかでない。ことに今回の予算というものは災害予算でありますから、一体どの地域にどの程度の復旧をやるか、あるいはまた補助金を出さなければならない場合もございますし、そういう点を考えますと、関連法律案と、それからいわゆる激甚地域指定というものが明確でなければ、われわれはこの予算の審議ができないわけでございます。その点、総理大臣はどういうふうにお考えになりますか。これでわれわれは予算の審議ができるというふうにお考えになりますか。いかがでありますか。
○岸国務大臣 災害対策に関する特別措置を規定する法律案の提出がまだ全部そろっていないことははなはだ申しわけないのでありますが、今日の閣議におきましても十一件決定いたしました。金曜日の閣議においては、あとの残りを全部決定いたしまして提出する予定になっております。今の補正予算及び特別措置によって現在の災害地における復旧、必要に応じての改良復旧を含めての対策としては、十分私ども罹災者の復興意識を盛り立てるに必要な復旧ができる、こういう確信であります。
○加藤(鐐造)委員 午前中の質問に対する答弁の中にも、地域指定等はできるだけ公正にやる、こういうことでございました。公正に行なうと政府は言われても、どの範囲をいわゆる被害の激甚な地帯として指定するかということとはまた違うわけでございます。従って、われわれはこの予算がどういうふうに使われるかということを知らなければならないのは、特にこの激甚地の範囲でございます。この範囲がわからないで一体この予算がどうして組まれたかということをわれわれは疑わなければならない。私は、どうしても激甚地の範囲というものが明示されなければこの予算の審議を進めることはできないと考えるわけでございます。この点については、政府部内においてもいろいろと意見の食い違いがあると聞いております。建設省はその範囲をできるだけ広くしようという意見であるが、大蔵省はこれをできるだけ狭くしようという意見である。特に大蔵省は県で言うと一、二県の範囲でとどめたいというような意見であると聞いております。その点について大蔵大臣の意見を承りたい。
○佐藤国務大臣 先ほど来のお尋ねと、なお今のお尋ねにお答えする前に、基本的な問題を一つ御披露しておきたいと思います。ことし三百四十四億の予算を計上しまして、さらに予備費八十億のうち五十億程度は災害復旧費に回し得るものだ、かように実は考えております。この金額が多いとか少ないとかいう御議論があるようでございますが、初年度の復旧費といたしましては、私ども十分確信を持っておるつもりであります。これは過去の初年度における計上した金額等から見まして、今回は特に災害復旧を急ぐという意味におきまして十分予算を工夫した、かように実は考えておるわけであります。
 それでただいまお尋ねになります激甚地というものがきまらないと、特例法があっても適用の場所がきまらないじゃないかというお尋ねでございますが、予算を計上いたしました際は、御承知のように全部の災害の額自身にいたしましても、全部まだ報告を完了いたしておる状況ではございません。ことに報告はありましても、被害状況等の査定は相当おくれておるわけでございます。そういう際にどういう予算の組み方をしたかと申しますと、大体被害総額の六割程度のものについて特例法を適用するようになるのではないか。これは普通考えてみますと、過去の例でございますると、まずその半分程度が実績のようでございますが、今回は特にそれもやや率をふやしまして、まず六割程度が特例を受けることになるのではないかということで一応予算を計上いたしておるわけでございます。そこで激甚品地をきめますことは、これは災害の対象によりましても実は違うのでございます。たとえば公共土木等の場合だと、これは地方団体の財政力、その負担ということも相当考えなければならない、特に重点として考えなければならぬ点であります。あるいはまた農地災害のような場合でございますれば、これは地方団体の負担ということではなくて、被害農家の一戸当たりが幾らになるか、こういう点がやはり被害激甚という場合の標準になるのであります。しかもこの農業の場合、あるいは共同施設、あるいは農家の負担、こういうような場合と、公共土木との均衡も十分考えていかなければならないのであります。そういう意味でただいま関係方面ともいろいろ折衝しておる段階でございます。私ども申し上げますのは、被害激甚地、またその激甚地から漏れる、あるいは激甚地のきめ方いかんによりますと、この特例法を施行する場合におきましても不公平を生ずる、そういうことがあっては、これは政治上の責任だ、かように考えますので、この特例法を適用する被害激甚地の指定にあたりましては、公平であり、また特例法の施行が適切である、この二点に特に重点を置きまして関係各方面ともせっかく協議中で、まだその点をお諮りすることができないことはまことに遺憾に思いますが、ただいま申し上げるような気持でこの激甚地をきめていく。大蔵省は数を減らすとか、またどこの省は数をふやすとか、こういう気持でこの問題を取り扱うつもりは毛頭ございません。
○加藤(鐐造)委員 その六割程度というのは腰だめですか、あるいは具体的に調査せられた結果、その程度に査定が行われたのか、それを明確に承りたい。それからこれは新聞の伝えるところですが、大蔵大臣は県で言うと一、二県にとどめたいというふうに出ておりますが、それは事実であるかどうか。
○佐藤国務大臣 ただいま申し上げますように、全体の調査が終了しておるわけではございません。従いまして、これは私どもが過去の経験等から見まして、まず六割程度だろう、こういう計算をいたしておるわけであります。そういう意味から予備費のうちにさらに五十億程度災害復旧に回し得るという金がございますし、あるいはまた工事の進行工合によりましては、債務負担行為によりましてこれをまかなっていくというようなことも考えておるわけであります。また私は、今まで被害激甚地というものを二、三県に限りたいというようなことを申したことはございません。これは私の方の考えでそういうものがきまるものじゃございませんで、先ほど来申し上げまするように、一定の基準を設けまして、その基準に該当する限り落としようがない。また基準に該当しないものは拾い上げようがないというのが実情でございます。誤解のないように願います。
○加藤(鐐造)委員 時間に制限がありまするから次に進んで参りまするが、今、大蔵大臣の答弁によりますると、調査もまだ不十分だということでございます。おそらくその通りだろうと思います。しかも六割程度ということは、過去の経験に徴してということでございました。過去の経験というものが必ずしも適確であるかどうかということは、この際当てはまらないと思います。従ってだんだんと調査も進み、さらにいろいろと具体的に方針を立てて参って、この予算では足りないというときにはどうせられますか。その場合には来年度まで、通常国会まで待つのか、あるいは第二次補正をやられるのか、この点を承りたい。
○佐藤国務大臣 先ほど建設大臣からもお答えをいたしましたが、今回の災害復旧にあたりましては、初年度工事、さらにまた来年の六月の時分までの工事復旧を一応の目安にいたしまして、農地におきましては来年の作付に間に合うように、また台風襲来に備えまして一応の災害復旧工事が完了するように、こういう意味で予算を計上いたしております。先ほど来申し上げますように、私どもはただいまのところ、今回御審議をいただいております予算案によりまして十分初年度の所要工事はまかない得るという確信を持っておりますので、今お尋ねのありますように、足らないときはどうするかという点は私どもただいま考えておりません。私どもこれで十分間に合う、かように確信を持っております。
○加藤(鐐造)委員 確信を持っておられても、先ほどの話では調査がまだ十分でないとおっしゃった。そうして大体過去の経験で割り出した数字だとおっしゃる。そうすれば、その確信通りにいかないということも起こり得ると思うのです。その場合のことを聞いておる。重ねてお伺いいたします。そういう事態になったときにはどうせられますか。
○佐藤国務大臣 先ほど申しますように、そういう意味で予備費のうちに五十億を計上いたしておりますし、さらにまた国庫債務負担行為としても工事をなし得るような道も開いております。そういう点で私ども十分まかない得る、かように考えております。
○加藤(鐐造)委員 この問題はまた後ほどいろいろな機会にお尋ねしたいと思います。そこで先ほども地域指定の場合に申し上げたことですが、地域指定の問題でも、建設省と大蔵省とに非常な開きがある。私は建設省と大蔵省だけを取り上げて言うわけじゃございませんが、一例ですが、おそらく他の各省の間にも、大蔵省との間に開きがあろうと思います。これは私は、大蔵省はいわゆる財源にこだわって、できるだけ予算を圧縮しようという考えだけでおやりになるから、こういうことになるのじゃないかと考える。そこで私は、建設省のみならず、ほかの各省との間の調整の結果、こういう予算ができたと思うわけですが、新聞等に伝わるところによりましても、各省は相当の予算を出しておるのに、大蔵省は削ったという結果になっておりますが、一体その調整というものはどうして行なわれたか、これが完全なる各省の了解の上に行なわれたかどうかということを総理大臣に承りたい。
○岸国務大臣 今回の補正予算編成にあたりましては、関係各省と大蔵省との間に折衝され、また党との間にも話をつけまして、十分各方面納得した数字が提案されたわけでありまして、いろいろその途上において、各省と大蔵省との意見の相違もあったと思いますけれども、最後におきましては、円満に話がついた額を計上したわけでございます。
○加藤(鐐造)委員 それでは具体的な一例として、また建設省を引き合いに出して恐縮ですが、公共施設災害予算を建設省が百八十六億円要求したということが伝えられております。これは各新聞に出ておりますからして、間違いのないところであろうと思いますが、しかし最終的には六十億円も削られておる。その中には、この海岸線の堤防の問題、建設省と大蔵省の査定の違いというものが出ております。建設省は仮締め切りの堤防の高さを七・五メートルを必要とすると言っておるのに、大蔵省は六・七メートルでよい、こう言ったということでございます。おそらくこの問題については私は建設省が専門家だと思います。専門家の立場で七・五メートルでなければいけないというのに、予算の問題だけを扱う大蔵省が、そんな必要はない、六・七メートルでよいという査定をせられたその見解、これは両大臣に承ります。建設大臣はそんなに減らされても自信が持てるのか。そうすると、建設省はいわゆるかけ引きをやっておったということが言えるわけですが、その点どうか。大蔵大臣は、ただ単に予算の切り盛りの点だけから値切りをされたのかどうかという点を承りたい。
○村上国務大臣 海岸堤防の高さにつきましては、建設省としては一応七・五メートルくらいまで上げなければならないのではないかというようなことも研究いたしております。しかしこの点に関しましては、単に建設省だけの考え方で万一あやまちがあった場合を考えまして、農林あるいは運輸等の各関係省と連絡いたしまして、なおその上に、民間あるいはその他の学識経験者等にいろいろと諮問をする機関を作るために、海岸堤防の高潮対策の協議会を設けることにいたしております。これによってその堤防の高さがはっきりときまるのでありまして、今建設省で七・五メートルということを一応われわれが考えた高さが伝わっておりますので、この点については、あるいは七・八メートルになるかもしらぬし、あるいはまた六・八メートルで間に合うかもわかりませんので、この点は十分検討した上で、将来再びかかることのないような堤防の高さを決定いたしたい、かように思っておる次第であります。
○佐藤国務大臣 今の建設大臣のお答えでよろしいかと思います。大蔵省はもちろん専門的な技師を持っておるわけではございません。そういう意味で建設省ともよく話し合いまして、そうして各方面の有識者を動員してりっぱなものを考えたいということでございます。またこの機会に、大蔵省の立場を一言弁護さしていただきたいのですが、大蔵省は査定をするから何によらず削りたがる、こういうようなお気持があるようですが、必要なものは私どももちろん計上いたします。国民から納めていただいた大事な税の使い方でございますから、これについて十分大蔵省としての主張をいたしますことは御了承いただきたいのでありますが、これはただ単に予算を削る、こういうような意味ではございません。りっぱな国民の納めた税の使い方でありますから、そういう意味で私どもの方で十分自信のある方法でこの金を使いたい、かように考えております。
○加藤(鐐造)委員 大蔵省は決して財政的な見地だけから査定しないということですが、答弁はそういうことをおっしゃる以外にないでしょう。また村上建設大臣の今の答弁は、非常に苦しい答弁だと思います。建設省が相当の技術者を持っているのに、そんな自信のないことでこうした決定が行なわれるとは思いません。これからおもむろにいろいろな専門家の意見を聞いてやるというようなことでなくても、この程度のことならば、建設省で判断ができると思う。そういう点を考えますと、これはどうしても大蔵大臣が予算を削ったということしか判断できないわけです。
 そこで私は、財源の問題について一つ大蔵大臣に聞いてみたいと思います。今回の財源となるおもなものは、自然増収の四百九十億ということでございます。私はこの本年度自然増収四百九十億の見積もりというものが低過ぎはしないかという見解を持っておりまするが、その点についての大蔵大臣の見積もりの根拠というものを承りたい。
○佐藤国務大臣 最近の経済情勢は、上昇を続けております。そこで、最近の税収入の実情等から勘案いたしまして、年内の増収を一応見積もり、さらに災害による減収等を差し引きましてそうしてただいま御指摘になりましたような金額を算出いたしたわけでございます。
○加藤(鐐造)委員 それでは、あまり大ざっぱな、数字に根拠を持たない説明だと思いますので、一応私は数字に根拠を持ってお尋ねしてみたいと思うのでございます。大体四百九十億という数字の出た根拠は、どこかでの大蔵省の説明によりますと、災害地のいわゆる税収の減収というものが大体百二十億ということであります。そこで、この減収がなければ六百十億程度の自然増収になる、こういうことでございます。政府は、十月二十三日の閣議の承認事項として、本年度の国民総生産の伸びの率を一一%と発表しております。これに対する租税収入の伸びをどれほどに査定したかということが問題でありまするが、私の調べた過去の実績によりますると、国民総生産の成長率が好調であって、年率一〇%をこえるような場合には、これに対する租税収入の伸びの率は大体一五%以上、ときには二〇%になっている例もあるのでございます。そうしますると、本年度の当初予算の税収は一兆一千二百億の見積もりでありまするから、従って災害地の減収を差し引いても、四百九十億をはるかに上回ることになるわけでございます。これに一五%というものをかけてみればわかるわけで、四百九十億の見積もりというものは非常に少ないということになると思いまするが、その点についての大蔵大臣の御見解を承りたい。
○佐藤国務大臣 大体私ども災害減収といたしましては百億程度と考えております。正確といいますか、今日はじき得る金額としては、百六億という数字が出ております。従いまして五百九十億程度が災害なしの増収かと思います。
 そこでこの五百九十億を算出いたしました基礎的な数字でございますが、源泉所得税において二十九億四千九百万円、法人税におきまして三百二十億八百万円、酒におきまして三十億四千三百万円、揮発油税におきまして、これは減でございます。また物品税におきまして九十億、有価証券取引税におきまして二十一億、印紙収入において十三億、こういうものをそれぞれ数字に基いて計算いたしまして、ただいまのような金額が計上されたのであります。そこで、よく経済の伸びから見まして、これが逆に国民所得の面から見て税収入を算定するということを、従来も説明して参ったと思いますが、これは大体の経済の成長と国民所得の増と、税の伸びとを長期にわたって見ます場合には、御指摘のような数字が適用されると思いますが、今回の場合におきまして、昨年あるいは一昨年等の経済状態から見まして、最近の急上昇しておる段階において、一般の長期に計算するような数字を当てはめることは適当ではないのであります。ただいま申し上げます五百九十億というのが、私どもが見得る最大限の税の自然増収、かように私ども考えております。
○加藤(鐐造)委員 長期にわたっての経済状況というものを勘案しなければならぬということですが、私の調べによりますると、最近の租税印紙収入というものは大体非常な増収になっております。三十一年度は当初予算に比べて決算において千二百三十五億円、三十二年度は一千三十億円、こういうふうになっております。ただ三十三年度は少し下がっておりまするが、これはこの年度における不況が法人税の減収となって現われたものだ、こういうふうに見まするが、とにかく最近の日本の経済というものは、大体において順調に伸びておると考えられなければならないわけでございます。そうしてさらに政府が本年度の下期の経済の見通しとして発表しておりまするところは、鉱工業生産においては上期に比べて八%増、それから今年度全体としては二四%増というふうに見込んで、結局国民総生産は一一%の増と発表しております。こういう伸びというものは、私は世界でもまれに見る事実だと考えるわけでございます。そこで今御説明を待つまでもなく、四百九十億の自然増加の中で、三百二十億が法人税の増収になっております。これは当初予算収入見積もりの三千四百八億円に比べると一〇%に足りない、こういうことになるわけですが、こういう算定をした基礎というものは、おそらく本年の三月から九月までの法人収益の決算というものから判断されたのだと思います。こうした飛躍的な伸びをしておるのに、非常に少ない税収の見積もりというものは、今の大蔵大臣の説明ではどうしても私は納得できない。過去の増収の実績から見ましても、この伸びというものを非常に少なく見積もられるのは、私はどうしても納得できないわけですが、もう一度大蔵大臣の答弁をわずらわしたい。
○佐藤国務大臣 九月末までの税収の累計、これは対前年度の実績に比べまして五百五十四億になっております。これが四月から九月までの半年でありますから、これを十二月分として見ると千百億ということになります。しかし三十四年度の予算の見込みは、三十三年度実績よりも九百億多くを見積もっております。従いまして、千百億出ましても、九百億すでに見積もりがふえておりますから、私どもが今日取り扱い得る自然増収として考えられるものは、これだけでは二百億しかないということになるのであります。加藤さんの先ほど来言っておられるように、一年に千億以上の増収になるだろうというその点は、その通りだと考えてよろしいと思いますが、三十四年度の予算の見込みは、すでに三十三年度の実績よりも九百億よけい見ている。従いまして私どもが取り扱い得る自然増収としては、二百億程度の自然増収という計算になるということです。それから生産の伸びの影響はまだ十分現われておりませんが、半年くらい大体ずれるということでありますし、法人税にいたしましても、大会社の方はほぼ見通しがついておりますが、中小法人、これは相当の金額になるのでありますが、その方の実情はまだ十分把握できておりません。これらのものを一応見当をつけまして、先ほど来御説明申しましたような金額を自然増収として計上いたしておるということでございます。
○加藤(鐐造)委員 本年度はすでに九百億の増収を見ておると言われましたが、そうすると、従来増収をあまり見ておらないような言い方ですが、三十一年度、三十二年度等の増収見込みにおいても、私は今その資料を残念ながら持ってきませんでしたが、増収は相当見ておられると思う。年度ごとに予算もふえておるし、従って税収の上においても増収を見ておられると思う。その中で一千億という増収が実績として出ております。従って私はことしも、特にこの下半期の好調というものが考えられるときに、一千億程度の増収は当然見込まれなければならぬと考える。今大蔵大臣はいろいろと御説明になりましたが、この下半期の好況というものはこれはだれしも予想しておるところであって、いわゆる貿易の伸びというようなものから判断しても、相当日本の経済が伸びる、国民所得も従って伸びるということが予想される。中小企業はどうも不安定だとおっしゃいまするが、それはどうも私はごまかしだと考える。今急に大企業が伸び出したわけではないので、中小企業ももうすでに徐々に伸びつつあり、特に下半期におけるところの輸出貿易の伸びというものは、相当中小企業においてもこれは予想されておると思うのです。従って大蔵大臣が何とか伸びを少なく押えるために、中小企業が伸びないというようなことは、これは少しごまかしじゃないかと思うのです。その点、もう一ぺん承りたい。
○佐藤国務大臣 中小法人が伸びないというのではございません。伸びておると思いますが、その数字がはっきりつかめないということを、実は申しておるのであります。ただいま申しましたように、千百億の税の増加がございましても、そのうち九百億程度は三十四年度の予算で使う予定をしておりますから、それを今日使うわけにいかない。予定しない、それをオーバーしておるものについて、今回の補正予算にこれを計上したということでございます。中小法人も相当伸びておる。かように思いますから、さらに先ほど申しました二百億に、それらのものを足してそして自然増収としての補正予算の財源を作ったということでございます。
○加藤(鐐造)委員 大蔵大臣は、将来のことでありますから、いわゆる財政の健全という建前から、それをかりにあるものとしても見るわけにいかないというようなお考えで、今のような答弁をされておると思いますが、今は非常時なんです。これだけの大災害というものは、いわば国全体の非常時だと考えてもよい。それくらいの見通しを持って大体正確な伸びの率を計算するのが、この際正しいのではないかと私は考えるわけでございます。そこで次にもう一つ、所得税の自然増収ですが、源泉所得を今二十九億の伸びを計上しておる、こういうことでございます。これは雇用者の問題ですが、政府は年度を通ずる雇用者の増加を百二十万人と見込んでおります。そうして賃金水準の上昇率がこれに伴うわけですが、一体百二十万人の雇用の増加に伴う賃金水準の上昇というものをどういうふうに見ておいでになるのであるか。
○原政府委員 御説明申し上げますが、源泉所得税の見込みは、毎回のことでございますが、雇用の量がどうかということと賃金のレベルがどうかということが大きな視野になります。雇用の量は、経済見通し、経済計画、そういう方面におきましては、全体の雇用の量の動きが出て参ります。ところが、税の方では、低い賃金であって、所得税がかからないというところで、人間が幾らふえましても、それは税収の増にならないわけであります。従いまして、所得税の課税の対象となるランクにおいてどの程度伸びるかということを、従来私どもが手がけております民間給与実態調査というような、給与所得者の階層別、所得の階級別の散らばりを参考といたしまして毎回の雇用の増を基礎として、それが所得税の対象者のクラスでどの程度伸びるかということを、こまかに計算をいたします。そういうような計算をいたし、その際にあわせて賃金の増というものが、やはり階層別にどういうふうな散らばりになるかというような問題も見なければならぬわけでありますが、その両面から詰めて参りまして、課税所得者の人数は何人ふえるか、減るかというような点を検討いたすわけであります。大体税の見積もりにおける納税義務者の数の見込み方等はそういうことでありますので、そういうようなベースで運んでおるというふうに御承知願いたいと思います。
○加藤(鐐造)委員 当初予算を見ますると、雇用量は一%増、給与水準は五・六%増、こういうふうに見込んで三百九十九億の増収を想定しておられるようであります。特に雇用者数は前年度千九百九十三万人であったのが、二千六十七万人と七十四万人の増の見込みであった。ところが百二十万人の増加が見込めるということになりますると、さらに五十万人近くも雇用増を見込めるわけでございます。そうすると、この二十九億円の自然増というのは根拠が薄弱である。これをはるかに上回る数字が出てくるのではないかというふうに思うわけですが、その点どうですか。
○佐藤国務大臣 今のお話のように、当初予算におきましては、昭和三十三年度に対しては雇用は一%、賃金は五・六%増と見込んだのでございます。最近の調査によりますと、雇用が二%、賃金は七・五%、この増加傾向がございますから、当初予算に見込んだものを上回っておる。この点でこれを基礎にいたしまして、さらに今次災害による影響をも考慮して、次に詳しい計算方法を採用して、それで計算した結果が二十九億という数字になるのであります。この計算方法は事務当局に説明させます。
○原政府委員 実はおっしゃいます百二十万人の増というのは、私はどれを見ておっしゃっておるのか、伺わなければいけなかったのでありますが、それを伺わしていただきたいと思います。私どもの見込みでは、給与所得に対する源泉所得税の納税義務者が百二十万ふえるというような見通しはいたしておらないつもりでございます。そ、れで先ほどは人数の見込みはこういうふうにいたしますという方法論を申し上げたわけでございます。どの数字をおっしゃっておるのでございましょうか。もしなんでございましたら後ほどまた……。
○加藤(鐐造)委員 百二十万人の増の根拠はまた後ほど申し上げるとして、もう一つ申告所得の増というものは全然見込んでおられないのでありますか、この点はどうですか。全然見込まれない状態であるということはちょっと言えないんじゃないかと思いますが……。
○原政府委員 申告所得税におきましても、おっしゃる通り、景気、経済の伸びに伴いまして伸びる面はございます。しかしながら半面におきまして災害による減収というものもございまするし、それからさらに御記憶でございましょうが、当初予算の見積もりでは、例の予約減税制度を廃止するという前提で、あれは十五億程度でございましたが、増収を見込んだわけでございます。それがその後御存じのような経過で、もう一年続けるということに変えておりますので、その減も相当立って参るということでございます。かれこれ勘案いたしまして、この際ネット増を見積もるのはいかがかという結論に達して、これは増を見ない、動かさないということにいたしましたわけでございます。
○加藤(鐐造)委員 時間がないので、政府委員と押し問答しておっても仕方がありませんから、大蔵大臣にもう一つ財源の問題をお尋ねいたします。
 今申し上げたように、私は税の自然増収というものはもっと見積もるべきであると考えます。大蔵大臣も今いろいろと答弁せられたけれども、大体私の申し上げておる筋はお認めになったように思うので、これは再考を願いたいと考える。
 もう一つ財源として考えられるのは、インベントリーの問題でございます。これは現在千五百十億円あるわけでございますが、この中で、インドネシアの債権放棄による減収分六百三十六億余を差し引いて約八百七十三億円あると考えます。これは今日のような輸出貿易が非常に順調に伸びておる、さらに上昇率を高めようとするときに、これを取りこわしして、そうして一般会計に振り戻すことができるじゃないか。今日のような非常事態におきまして、こういうことは当然考えるべきじゃないかと考えますが、この点はどうですか。
○佐藤国務大臣 インベントリーの取りくずしにつきましては、私は私の考えを持っておりまして、これはやるべきでないという実は考え方をいたしております。しかしただいま御指摘になりますように、災害復旧の財源を確保するためにインベントリーを取りくずしたらどうかというお話でございますが、先ほど冒頭に御説明いたしましたように、今回の災害復旧については初年度の所要の経費は計上いたしてございますから、ただいまインベントリー取りくずしのような議論のあるものを採用するような必要は実はないのでありまして、本年度の災害復旧の所要の予算は、私ども十分責任を持って計上いたしております。この点を御披露いたしまして、インベントリーについての議論は差し控えさせていただきます。
○加藤(鐐造)委員 大蔵大臣はあくまで予算はあれで十分だということを固執されますので、私の意見とはまるっきりこれは押し問答になるわけであります。私は足りないという見地に立って申し上げておる。その点についていろいろと各省の間の意見の食い違い、要求予算との食い違いも申し上げたわけですが、これは食い違いがあるということは、おそらくここで言われないでしょうから、まあ私は、将来もしほんとうに改良復旧をしようとするならば、国土保全のために、民生の安定のために改良復旧をしようとせられるならば、おそらくこの予算が足りないという声が、国民の中から猛然としてわき起こってくると思うのです。そのときに政府の責任は当然追及されると思うのですが、そのときになって大蔵大臣は私に言われたことを思い出してもらいたいと思うわけです。
 それからもう一つ、今度は総理大臣に戻ってお伺いしたいのですが、最初に申し上げました通り、日本人は従来天災という考えでもって、ひどい災害にあって無一物になっても、うちを流されてもあきらめてきている。私はこの天災という言葉をなくさなければならないと思うわけですが、そういう点で一つほんとうに抜本的な改良復旧工事をやってもらいたいと思うわけです。
 それからもう一つ、これは近代国家として、また文化国家であるならば、そうして天災という言葉をなくするためには、この災害によるところの損失というものを、一切個人の負担に課するということは間違いではないかと考える。なるほど従来も農業関係その他に多少の補助というものが行なわれておりますが、これは補助金を出してやるというような考えで行なわれておるにすぎないので、私は、もっと根本的にこうした災害は、たとえば戦争中の災害と同じように、国の責任において負担をするという根本の精神が立てられなければならない、こういうふうに思うわけであります。特に個人の生命、財産の保護という点から、私は国の責任ということが考えられるようにならなければ、いわゆる文化国家にもならなければ、また福祉国家ともいえないと考えるわけでございます。そこでこの考えを推し進めて参りまするならば、たとえば損失補償という点について今までやった例がございます。これは戦争中のいわゆる損失を国家がある程度補償するという建前に立って、引揚者に対して在外財産の打ち切り補償として交付公債を発行した、こういう例があるわけです。私は今回もこういう考えの上に立って罹災者の財産喪失及び人命の喪失に対する国家補償ということを――金額の多寡よりも、こういう根本的な考えをこの際岸内閣は持つ考えはないのかどうか、これを承りたい。
○岸国務大臣 災害についてこれを予防し、また災害の復旧について国が相当な力を入れて、国土の保全と復旧をしていかなければならぬという根本は私は考えておりますけれども、しからばというて個人の被害そのものを国において補償するというふうな考え方は、今日のところ直ちにこれを採用するということはまだ私は考えておりません。
○加藤(鐐造)委員 根本の考えには賛成であるが、現在考えておらないというのはどういうことですか。これは主として財政的な理由によることか、その点、承りたい。
○岸国務大臣 公共的ないろいろな施設であるとか、あるいは国として当然施設しなければならぬような施設について、国や公共団体が行なう仕事について相当な負担をするということは従来もやってきておりますし、今回においても考えておりますが、個人の問題について補償するということにつきましては、私はいろいろな点においてまだ考究する必要があろうと思います。国としては、今申す、ように、公共的な施設であるとか、あるいは多数の人が利用し、また多数の人に便益を与えるような施設について国が負担していく、こういう従来の考え方が適当であると私は考えております。
○加藤(鐐造)委員 そうすると最初におっしゃったことと違いはしませんか。原則としては賛成するというならば、その方向に向かって一歩でも進めるのが政治である。原則としては賛成するが実行できないというのは政治じゃないと思うのですが、その点どうですか。現在としてはそれは行なえないとおっしゃる理由を承りたい。
○岸国務大臣 今申し上げているように、従来の天災という観念を全然なくせという加藤委員の初めからの立論でございますが、そういう方向にわれわれが考えて、総合的な、また科学的な対策を立てていくということは当然考えなければなりませんけれども、今日の状況においてそういう天災という観念を全然なくすという、そして一切国においてこれを負担していくという考え方は、私はまだ採用すべき時期に達していない、むしろ国としては公共的ないろいろな仕事や、あるいは多数の人に便益を与える施設であるとか、あるいはまた罹災者に対しまして、いろいろな金融やその他の処置によって、本人の努力と相待って復興をやっていくという考え方が今日のところでは適当である、こう思っております。
○加藤(鐐造)委員 そうしますと岸首相は依然として、天災はやむを得ない、こういう非常に古い時代の日本の慣習というものにとらわれて、いわゆる福祉国家というものの基本的な、個人の財産、生命を保護するという考えにはまだ到達できない、こういうふうに判断して差しつかえないですか。
○岸国務大臣 今申し上げましたように、従来の天災と考えられておるところのものに対する処置として、予防の処置やその復旧の処置について、国家が思い切ったなにをやることは当然やらなければならない。従来それに対して国が力を用いておるところが足りないという点においてはもちろん考えております。また同時に私は国のいろいろな力と公共団体の力を合わせて個人の復興を望んでおるのでありますが、とうてい復興することはできないような非常な苦しい立場にある人々や、それらについて別途考えなければならぬことは、これは当然でございます。一般に個人のこの災害によって生じた生命、財産の損失について広く国が補償するという制度を立てることについては、私は考慮する余地があるこういうことを申し上げたのであります。
○加藤(鐐造)委員 よく天災か人災かということをいわれますが、今回の災害についても、これは明らかに人災だと考えられる問題が多々あります。たとえば名古屋市におきましては、港区、南区等にありまする貯木場からあふれた材木、流木のために千七百人の死者が出ておるといわれております。これは愛知県の全体の死者の半ば以上でございます。流木のために千七百人が死亡しておるという事実、これは重大な問題だと思う。単に人が死んでおるだけでなしに、この流木のために多くの家屋も流されておるという事実、これを何と見られるか。これは明らかに人災である。もっと露骨にいえば、これは一つの殺人だと考えていいと思うのでございます。この原因を現地で私が聞いたところによりますると、まず第一に収容力以上の貯木をしておったということ。それから設備が非常に不完全であった。特に二十八年台風で相当いたんだものが、そのあとの補修が完全に行なわれておらないという事実があったといわれておる。これはその改良復旧どころか、原形復旧も完全に行なわれておらなかったということがその原因であるわけであります。その当時、私は新聞やラジオをつぶさに聞いておりましたが、人家に流れてきた材木のために命を落とすところを、九死に一生を得たという人の悲痛な叫びを聞いた。ある人はこう言っておる。水の中にほうり出された瞬間に周囲はもう一面の流木で、無数の巨木が恐龍のごとく四方から襲いかかった。こういうおそるべき事態が発生するということが予想されなかったかどうか。これは所管としては農林省の所管か、あるいはそれ以外の所管に属するかもしれませんが、私はこうした悲惨な事態を発生させた問題について、だれかが責任を負わなければいけないのじゃないかということを考える。そしてこの死者に対して何らかの補償をしなければいかぬのではないかと考えるのですが、その点どういうふうに考えるのですか。
○福田国務大臣 運輸大臣の方の所管にわたる問題ですが、私の方とも関連いたしますので便宜私からお答え申し上げます。
 お話のように、今回の災害で名古屋の地区におきまして貯木が非常に人命の損害に影響を及ぼしたということ、まことに残念なことであります。これは今後こういうことを繰り返してはならぬ、かように存ずる次第でございますが、この貯木場の管理者は主として民間の業者でございます。業者とよく連携をとり、また港湾の復旧計画におきまする運輸省の計画作成の途上におきまして、今後これを繰り返さないということを心がけなければならぬ、かように考える次第でございます。
 なお、死者に対する見舞をどうするかというお話でございまするが、これはさような状況もありますので、業者が相寄りまして相談をいたしまして、被害者に対しましてはお見舞を申し上げております。被害者の方々とも大体話がついておる、かように伺っております。
○加藤(鐐造)委員 業者が補償するというのは、前回も例があったそうですが、きわめてわずかで、一人当たり百何十円にしか当たらなかったというような話を聞いております。これでは補償というような言葉には当たらない。この点は、農林大臣にしても運輸大臣にしても十分監督して、ある程度の補償が行なわれるように、死者の霊が慰められるような方法を講ぜられることを要望いたしておきます。
 それから、時間がございませんので次に移りまするが、通産省関係ですが、今回の災害は、特に愛知、岐阜、三重の商工業の中心地帯が襲われておる。従って、個人災害がこの面においても甚大であったわけです。従来の災害の程度でしたら、いわゆる今通産省当局が処置されておる個人あるいは協同組合に対する融資というようなことでもよかろうと思いまするが、今回のように重大な、しかも広範にわたって多くの中小業者が被害を受けておるというときには、国の経済の上からいっても、従来の二十八年台風の前例にならって金融処置をするという程度では足りないのじゃないか、こういうふうに私は思うわけです。八百億をこえておる中小商工業者の立ち上がりには、そんな程度でやれるものではないと考えるわけです。そこで、簡単に申し上げまするが、政府は一応特に立ち上がりの困難な中小企業関係の三つの金融機関に対して、百五十億のいわゆる財政投融資をするといわれておりまするが、一体八百億をこえるところの中小商工業者の立ち上がり資金として、どれくらいの必要を考えておられるか、まずそれを承りたい。
○池田国務大臣 お答え申し上げます。大体私は、災害復旧に対しまして、三公庫を通じまして百億という気持でおったのです。もちろんこれは出先機関あるいは金融機関等の意見を聞いて考えたのでございます。再度調査いたしまして、百五十億ならば大体まかなえる、三金融機関の意見も徴した結果でございます。
○加藤(鐐造)委員 私が申し上げるのは、単に政府関係の金融機関だけの問題ではございません。全体の資金としてどれだけが必要であるという見解を持っておいでになるか。そしてこの民間の金融機関と、いわゆる市中金融と政府関係機関との供給する割合というものを承りたい。
○池田国務大臣 大体伊勢湾台風、すなわち三県におきまする銀行、各種の金融機関の貸し出しは、三千数百億円に上っております。しこうして、政府関係機関の、いわゆる三機関の貸出現在高は二百数十億円でございます。普通銀行の貸出残高が千四、五百億円と相なっております。その残りの千七、八百億円というものは、相互銀行あるいは信用金庫、信用組合、あるいは一部農協もあるのであります。こういう状態でございますので、私は政府関係の三機関の、百五十億の災害ならば、貸付残高の六、七割に相当いたしますので、大体その程度が限度ではないかと思っております。従って中小企業全体の復興資金といたしましては、三機関が中心になって参りますが、これだけでは足りませんので、やはり信用金庫、相互銀行、普通銀行等に御協力を願うよういたさなければならぬと思っております。
○加藤(鐐造)委員 今の説明によってみましても、民間金融機関に依存する割合というものは、非常に多いと思うのです。こういう点になりますると、いわゆる中小商工業者の中で特に立ち上がりの困難なのは零細業者でございまするが、この零細業者に対しては、特に市中銀行は貸し出しを渋っておるという事実は、通産大臣も十分御承知のことと思うのであります。私は、こういう点は、時間の関係で簡単に申し上げまするけれども、政府はもっと金融機関を督励して、あるいは政府が何らかの保証をこれに与える方法を考えないと、実際に資金の必要なるところの零細業者は金が借りられなくて、資金さえ得られれば復興ができるのにみすみす復興ができないで、災害のために倒れていかなければならないという者が相当あるのではないかと考えております。その点についての所見を承りたいということと、もう一つ中小企業信用保険公庫の補償の場合の補てん率も、それから保険料率も二十八年度災害と同じであるということですが、先ほど申し上げました通り、この中小商工業者の被害というものは二十八年度の比ではないのです。ただ一律に二十八、九年の災害対策を限度として行なうということにとらわれて、二十八年度以上の処置を講ずることができないということになっておるのではないかと考えます。中小商工業者がこの好景気に向って、経済の上昇期に向って立ち上がれば、ほんとうにわずかな資金があれば立ち上がれるのに、それがないために立ち上がれないというこの現実を私は直視いたしまして、この二つの問題についてさらに通産省当局として再考を要するのではないかと考えますが、その点どうですか。
○池田国務大臣 第一の問題点は、政府関係機関が手早く貸付業務を始めまして、そして相当の資金をやっていけば民間金融機関も私は非常に貸しよくなるという考えのもとに相当の額を見積もったのでございます。通産省といたしましては、各種金融機関を監督しておる大蔵省に、あなたと同じような考えでお願いをいたしておる次第でございます。
 なお、融資を円滑にするための信用保険公庫への十億円の出資、また料率の三割引き下げ、そしてまた填補率の七〇%、八〇%、大体私は各方面の意見を聞きまして、それが九割の填補率ということもございましたけれども、まあ八割程度ならやっていけるのではないかという考えをいたしたのであります。もちろん二十八年度の災害とはその及ぶ範囲が違っております。九州地方にも相当の中小企業の災害がございましたが、今度の災害は商工業中心地でございます。私は二十八年ということにとらわれず、私自身としてこの程度はやるべきだ、しこうしてまた十分ではないが、この程度でがまんしていただきたい、こういうことを各方面の意見を聞いてからの結論としたのでございます。
○加藤(鐐造)委員 私は先ほども申し上げましたように、個人災害に対しても、やはり補助制度をとるべきだという見地から考えて、一方農業災害に対しては従来補助金制度があるからして、商工業者に対しても一歩進んでこの方法をとるべきではないかと考えます。しかし、個人に対するところのいわゆる補助とか補償というようなことは、この際できないという岸首相の考えの上に立っても、少なくともこういうことは通産省当局としてできるじゃないかということを考えまするが、その一つは、中小企業者の共同施設というものが、このごろ非常に広範に行なわれております。協同組合の発展とともに、共同施設が非常に発展しておりまするが、これが非常な災害を受けております。大きな建物というものは、大体大なり小なり災害を受けておりますので、その復旧はどうしても必要なわけですが、少なくともこの中小企業者の共同施設の災害復旧に要する費用に対しては、国が補助を行なう、これは法律改正を伴いまするけれども、この程度のことは行なってできないことはない、当然これはしなければ、共同施設というものがなかなか復興できないということを考えるのです。この点どうですか。
○池田国務大臣 中小企業関係に対しまする政府の補助は、お話しの通り私は十分とは考えません。しこうして、中小企業の共同施設の受けた損害に対しまして、私はある程度のことをしなければならぬとは考えておるのでございますが、さしむき中小企業振興資金助成法を活用いたしまして、昭和三十五年度には相当の金額は出し得ると思います。しかし、とりあえずの問題といたしまして、協同組合等による共同施設につきましては、三百万円を限度といたしまして、低率の六分五厘で融資する、こういうことにいたしております。将来の問題として、共同施設の災害につきましての問題を考えていきたいと思います。
○加藤(鐐造)委員 中小企業振興資金助成法をこの際適用するということですが、これは災害者に対して適用するということですか。さらに経営合理化のための設備または協同組合の共同施設等に対して、どの程度のワクで貸付を行なおうとしておられるか。
○池田国務大臣 今回の措置で、三百万円を限度といたしまして、六分五厘ということにいたしております。
○加藤(鐐造)委員 それでは次に移ります。農業災害の問題ですが、激甚地指定が行なわれないために、一体どの程度の復興ができるかという見通しがつかないわけです。特に今回の災害は全所有耕地を失ったというような人が非常に多い。従って、この補助率というものが非常に問題になってくるわけです。もし個人災害の程度が非常にひどくても、いわゆるその地域の税収とのにらみ合わせにおいて激甚地指定が行なわれないということになりますと、五割内の補助金でやらなければならない。こういうことになると、一カ年で完全なる復旧ができないということになるわけです。そういう点からいって、各府県のいわゆる農業者が心配をして、この激甚地指定を待っているわけですが、この点農林大臣から、どの程度のものに対して激甚地指定が行なわれるかという点を承りたい。
○福田国務大臣 激甚地につきましては、農地、農業施設についてのお尋ねと思いまするが、これにつきましては市町村ごと――それは新制市町村でもよろしいし、あるいは旧制の市町村でもいいのです。いずれか有利な方でけっこうでございますが、市町村ごとに計算いたしまして、その村にあるところの農地なり施設なりが受けた被害に対する復興額、それを被害を受けました農家の数で割りまして、その額が一定の額以上のものに適用する、かような考えを持っておる次第でございます。激甚地につきましては、九割補助ということになるわけでございますが、その他の施設につきましては、農地は五割、また農業施設は六割五分、かような補助率に相なる次第でございまして、先ほど大蔵大臣からお話がありました通り、予算には、大体その基準で計算いたしまして、激甚地が六割、一般の地帯が四割、かような積算をいたしておる次第でございます。
○加藤(鐐造)委員 今申し上げました通り、今度の災害は、特に耕地を失った率が非常に高いのでございます。耕地の大半あるいは全部を失った農家が、一カ年で来年度の植付に間に合って完全に復旧ができたといたしましても、来年の十一月まではまず収入皆無といわなければならぬ。これをどういうふうに農林省は考えておるのか承りたい。それを救済するために、いろいろな方法を考えておられると思いますが、それを承りたい。
○福田国務大臣 被害を受けました部落につきましては、天災融資法の発動があり、また自作農創設資金の融資が行なわれる、さらに災害復旧資金の貸付が行なわれるというような金融措置がとられるのでございます。しかし、お話のように、収穫が皆無になったというところは、なかなか融資だけでは復興ができないわけであって、それに対しまして、もろもろの公共施設を復旧するとか、あるいは個人の農地施設等につきまして復旧を助成するとかが行なわれますことは、ただいまも申し上げた通りでございます。しかし、それでもなかなか困難であろうかというところは、農業者につきましては、たとえば多芸輪中というようなことく、長期にわたって湛水をしておるというような地点でございますが、さような特に被害の激甚の地帯に対しましては、建設省やその他の各省におきまして行なわれる事業との関連から考慮いたしまして、特に農林省所管で救農土木事業というものを行ないたい、かように考えておる次第でございます。救農土木事業につきましては、予算に三億円を計上いたしておりまするが、二億円は農村地帯、また一億円は開拓地にこれを使用していくという計画を立てておるわけでございます。それから、さらに、部落単位に見まして、非常に被害が激甚であって、その復興が部落全体としてなかなかむずかしいという地帯につきましては、部落復興対策補助金というような性格のものを考えておる次第でございます。それで、農家に必要とするいろいろな施設を国の助成によって作ってそうして立ち上がりにつきまして政府としても援助をする、こういう態勢をとっておる次第であります。
○加藤(鐐造)委員 救農土木事業をやるということですが、これは非常にけっこうです。税の免除だとか融資等ではとうてい一カ年を持ちこたえることができない農家が相当ありますから、救農土木事業を積極的にやってもらわなければならぬと考えます。ただ、救農土木事業というものは、従来の観念で道路を作ったり林道を開いたりするということでなく、いわゆる農家の生産に直結した事業をやってもらいたい。そこに救農土木事業の対象となる労働力を打ち込んでもらいたい。たとえば排土事業、それから区画整理あるいはまた災害を起こした河川のかさ上げというような、直接農家の生産に直結した事業に労働力を使うことが適当ではないかと考えます。これは時間がございませんから、要望として申し上げておきます。
 それから最後に、文教施設の復興の問題ですが、これも簡単に申し上げますと、先般来いろいろと報ぜられておるところによりますと、大体問題としては、文教施設の全壊に対しては、六割まで改良復旧、いわゆる鉄筋コンクリートによる改良復旧をやる。それから半壊に対しては三割程度の改良復旧をやる、こういうことでしたが、その割合はその通りですか。
○松田国務大臣 おっしゃる通りでございます。全壊に対して六〇%、半壊に対して三〇%でございます。
○加藤(鐐造)委員 それでは全体の六割とか三割ときめられるその基準は何ですか。
○松田国務大臣 今回の学校の災害に対しては、これをことごとく改良復旧にすべきである、してもらいたい、こういう地元民の要望も切なるものがありまして、私も視察いたしまして、でき得る限り、事情の許す限り、これを改良復旧というか、鉄筋コンクリートの堅牢なものにした方が究極においてはむしろ安上がりでもあるし、そうしたいものであると考えまして、鋭意大蔵当局とも折衝いたしましてそういう率になったのでありますが、従来においては、全壊の場合でも三〇%、半壊の場合においては、ほとんどこれを改良復旧にするという例は今まで私は承知しないのであります。しかし今回は、大蔵当局も被害の甚大または台風の本質にかんがみて、きわめてわかりのいい考え方であったと内心感謝しておるくらいでありまして、私は、これをもっていたしますならば、ほぼ地方民の要望にこたえ得るのではないかと考えます。もちろん実施にあたりましては、地方それぞれの実情に即し、学校それぞれの実情に即して措置しなければならぬと考えておりますから、これをもってしてほぼ地方民の要望にもこたえ得るのではないか、かように考えておる次第でございます。
○加藤(鐐造)委員 文部大臣の答弁は、私の質問に答えられておらない、的はずれなんです。全壊の場合に六割の改良復旧、半壊の場合は三割ときめられた基準は何か、どこにその区別を置かれるのか、それをお聞きしておるのです。
○松田国務大臣 基準と申して一言に私はお答えいたしかねるのでありますが、全壊として当然再建築をしなければならないものに対しては、これは当然改良復旧になる場合が多い、かように私は考えるのであります。また半壊と認定されましても、なおその学校校舎の実情を見て、相当の修理を加えますならば、十分ものの用に立つと思われるもの、これらのものは木造にいたしましても、古い建築でも台風に耐えたものもたくさんあるのでありますから、必ずしもどれもこれも地方の実情を無視し、度外視して、ことごとく改良にしなければならぬというふうには考えておらぬわけであります。
○加藤(鐐造)委員 私の申し上げたその区別の境目、基準というものがはっきりしておらない、これは陳情によって事がきまる、盛んに陳情をやったところは改良復旧になって、陳情の程度の弱いところはならないというような弊害が起こってくると考える。そこで私は基準を繰り返し聞いたのです。それからもう一つ、全壊と半壊の区別ですが、個人の家ですと、全壊と半壊とは区別してもよろしい。半壊でもそのまま突つかい棒をかって使用できるところもある。しかし学校の半壊というものは全壊と同じです。半分倒れたものがそのまま使えるということは絶対ございません。全壊よりも厄介な場合がある。だからそういう区別をするということはおかしいのです。非常に観念的だ。全壊だから重くする、半壊だから軽くするというのは、非常に観念的な考え方で、私は区別すべきではないと考える。従って、必要なところは半壊であっても改良復旧をやる、こういうことでなければならないと考える。それから今回の学校被害というものは、おおむね強風のために倒れた、風速四十メートルのちょうど風道に当たったために倒れたということなんです。従って、将来これだけの風が吹かない、あるいはこれ以上の強風は吹かないとは保証できないから、この際学校復旧は、建て直す場合には、ことごとく鉄筋コンクリートの改良復旧にすべきだ、こう考える。文部省もおそらくそういう考えを持っておられたと思う。というのは、私が最初聞いたところによりますと、九〇%までは改良復旧にしたいというのが文部省の意向だったと聞いておる。従って、これも大蔵省の予算の都合で削られたと思うのです。これは、学校教育というものを非常に重大に考えなければならぬことは、私が申すまでもない。一たび学校が倒れると、教室もなくなってしまうということになる。それを建て直すまでの教育というものは、そこに非常な欠陥が生ずる。だからこの際特に学校教育だけには重点を置いて、完全復旧すべきだ、鉄筋コンクリートの復旧にすべきだというふうに考えるのですが、文部大臣はどう考えられますか。
○松田国務大臣 あるいは私見を申し上げて相済まぬかもわかりませんが、学校の教育ということに対しては、ただに建築の堅牢性のみを私は求めるものではないりむろん児童の情操といったようなことも強く考えなければならない。鉄筋コンクリートの建物必ずしも最善のものでないと私は考える。ことごとくこれを堅牢な鉄筋コンクリートのものにするがよろしいという一がいな私は考え方じゃないのでございますが、しかしまあ現実の問題として、こういうような事態に対処するためには、将来は全部鉄筋コンクリートにすべきであるというような議論がますます強くなることかと存じますが、また今度の場合におきましても、そういう要望も多いのでありますが、私どももできる限りそういうふうにしたいと思っておりますけれども、しかし半壊、全壊を通じてそれぞれ地方の実情、学校の実情に即して措置して参らなければならぬと、かように考えている次第であります。
○加藤(鐐造)委員 今のような答弁をせられるとまた一問したくなりまするが、そういう前世紀的な古い考えでこの学校教育の問題をもし考えておられると――苦しまぎれの答弁ならよろしいですけれども、そういうことを考えておられるならば、あなたは文部大臣として適任者じゃないということが言いたくなります。もっと、災害復旧であるということと、将来こういう事態が起こったらどうなるかということを考えて、せいぜい大蔵大臣と折衝して予算をたくさん取ってもらいたい。これを要望いたしておきます。
 もう時間が来ましたので、私はこれで質問を終りまするが、はなはだ各方面に対して不十分な質問――私自身の質問も不十分でございました。それからまた答弁については非常に不満な点が多い。特に大蔵大臣の財源に関する答弁というものは、私は問題の核心に触れておらないと思う。改良復旧をするという考えで大蔵大臣は取っ組んでおられないと考える。これで十分だというのは、私はあくまでも原状復旧程度の考えしか持っておられないと思う。これはいわゆる財政上の担当者として、あるいは無理はないと言えるかもしれないけれども、最初に申し上げました通り、こういう大災害が将来再び起こったらどうなるか。従来は比較的都市であっても、中小以下の都市であったから、災害の程度というものは少なくて済んだけれども、今回は名古屋という大都市であった、しかも日本の産業の中心地であるここへこういう災害が起こったために、これは重大な問題になったわけですが、さらに将来これが東京地帯あるいは大阪地帯に起こったらどうなるかという問題でございます。けさほどの建設大臣の答弁によりましても、東京にあの災害が起こったならば、百万人の罹災者が出ると言っておられました。私は、しかし、これは過小の見積もりだと思う。名古屋よりもいわゆる湿地帯の多いところの東京を考えますと、江東区は全滅だ、ある人は埼玉県にまで及ぶということを言っております。そういうことを考えると、単に目前の健全財政の面からだけでこの問題を処理しないで、岸総理大臣が施政方針で述べられたように、ほんとうに根本的に改良復旧をやる、ほんとうに文字通り再びかかる災害が起こらないようにするということを言葉通りこの際行なわれるべきだと考える。財政の面においても、いわゆる財源の面においても、今申し上げたような点で足りなければ復興公債を発行するという道もあるのです。その復興の財源を外国に求めるということも必ずできる。だからして私は、そういう点から、この際思い切ってその財源をあらゆる面から考えて捻出して、そして完全なる改良復旧を行なうという考えでこれに対処してもらいたいということを要望して私の質問を終ります。
○小川委員長 明日は午前十時より開会することといたしまして、本日は、これにて散会いたします。
    午後六時五十五分散会