第034回国会 法務委員会 第7号
昭和三十五年三月四日(金曜日)
    午前十時四十九分開議
 出席委員
   委員長 瀬戸山三男君
   理事 鍛冶 良作君 理事 小島 徹三君
   理事 小林かなえ君 理事 田中伊三次君
   理事 福井 盛太君 理事 菊地養之輔君
   理事 坂本 泰良君
      世耕 弘一君    高橋 禎一君
      竹山祐太郎君    阿部 五郎君
      井伊 誠一君    三宅 正一君
      志賀 義雄君
 出席政府委員
        警  視  監
        (警察庁保安局
        長)      木村 行藏君
        検     事
        (刑事局長)  竹内 壽平君
 委員外の出席者
        警  視  長
        (警察庁警備局
        参事官)    曽我 力三君
        警  視  長
        (警察庁警備局
        警備第三課長) 倉井  潔君
        専  門  員 小木 貞一君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 参考人出頭要求に関する件
 刑法の一部を改正する法律案(内閣提出第八〇
 号)
 法務行政及び検察行政に関する件
     ――――◇―――――
○瀬戸山委員長 これより会議を開きます。
 法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。
 質疑の通告がありますので、これを許します。坂本泰良君。
○坂本委員 三井三池の問題は、本年に入ってから最後の段階と申しますか、会社側がロックアウトをやり、組合側が全面ストをやりまして、すでに一カ月を経過しておるわけであります。この問題については、今後非常な危険が予想されておるわけでありまして、なるべく労使双方の問題として解決しなければならぬ。会社側の不当なロックアウトを取り消して、指名解雇を撤回する。ことに活動家として生産阻害者というような関係で指名解雇をしており、企業整備の名のもとにこれを断行しておるのを、これは中労委からもありましたように、組合側では指名解雇を撤回して、希望退職には応じようというところに出ておったのでありますが、会社側が強引にロックアウトをやった。しかしながら三池炭鉱労働組合では秩序を守りまして、現在までトラブルが起きなかった。われわれも極力そういうことは避けて、労使双方で何とか解決しなければならぬ、こういうふうに考えておりますが、会社側は日経連その他の総資本のバックのもとに強引に押しておるわけでありますから、今後弾圧問題その他が非常に危険に思われるわけであります。でありますから、そういう際におきましても、労使双方の問題に対しては、断じて官憲の介入があってはならない、かように考えるわけであります。そこで、そういう大きい不当介入等の問題が予想されるのでありますし、過去の問題について懸案になっておるのがありますから、三、三ただしておきたいと思います。
 そこで、警察庁の方に先にお聞きしたいのでございますが、先般福岡県警察本部がピケ排除の実戦訓練として、仮想敵はOO鉱業所、三井三池である、こういうことでOO鉱業所正門の大きい標札を掲げて、その中で福岡県の警察官が多数ピケ排除の訓練をしておる。こういうことは断じてやってはならない。これは昨年の九月の四、五日ころでございますが、本委員会で質問をいたしまして、長官はまだ聞いていないがよく調査をする、そういうようなことで委員会が終わっておるわけであります。そういうような訓練がされておることは事実ですが、警察庁としては昨年の九月五日当時、当委員会で問題になりましたのを調査されて、そしてどういうような措置をされましたか。その点をまずお伺いしたいと思います。
○曽我説明員 お答弔えいたします。警察は、警備上の各般の問題に対処しまして、日ごろ訓練をいたしておるわけでありまして、その訓練にあたりましては、特に従来の経験からいたしまして、いろいろな事変あるいはいろいろな不法事犯が各方面に起こっておりますので、それらの諸問題あるいは群集的犯罪等の場合の経験に徴して、将来過誤のないような形態並びに方法をもっていたしておる次第であります。御指摘のありました昨年九月の訓練につきましては、確かに従来の月例訓練の一環といたしまして、福岡県で実施されておるわけであります。これにつきましては、たまたまピケ排除等を含む一連の訓練をやっておることは事実でありますが、これはまだ一つの労働問題を特に選んでやったというのではございませんで、先ほど申し上げましたように、一つの場合を想定いたしまして実施いたしたものでございます。しかしながら、これが実施につきましては、その報告をいろいろ検討しまするに、その時期あるいはその内容等につきまして、必ずしもそれが非常に適当であるということじゃないと考えまして、一応この点は将来の反省の材料にいたしておる次第でございます。
○坂本委員 長官にかわり反省の御答弁があったわけでありますが、明らかにOO鉱業所正門と書いて、朝日新聞その他各新聞が仮想敵は三井三池、こういうふうに大きく新聞に出しておる問題でありますから、われわれは非常に関心を持っておりましたが、反省をされると同時に、その後こういう訓練が仮想敵あるいは労働組合を対象として、これが全国的な問題として行なわれておるかどうか、また今後こういうことは行なわれてはならないと考えますが、その点いかがでございますか。
○曽我説明員 その後こういうふうな訓練、特にかような方法を特定した訓練については承知いたしておりません。また今後におきましても、訓練の方法等については特に慎重を期したい、かように考えております。
○坂本委員 それから次にこれも昨年のことでありますが、三川坑かあるいは港クラブかと思うのですが、そこで団体交渉をしておる、それを二百メーターばかり離れたところに会社のお客さんが来て泊まるりっぱな建物があります。大牟田では目抜きのところにあるりっぱな建物でありますが、そこへ大牟田の警察官が参りまして、盗聴機を備えて、団体交渉の状態を盗聴していた事実があったわけであります。これも今資料がありませんから詳しいことを申し上げられませんが、当委員会で質問をいたしまして、長官としてもよくその事実を調査しておく、こういうようなことで終わっておるわけでありますが、その点について調査をされましたか。またそこに立ち合っていた大牟田警察署の警官に対してはどういう処置をされたか、その点を承りたいと思います。
○曽我説明員 昨年の六月並びに七月の当委員会で警備局長並びに長官からこの問題につきまして御答弁申し上げておるわけでございますが、その内容につきましては、そのときに申し上げてあることと相違はございません。このことにつきましては、結局当の警察官は、その争議に随伴する不法事犯があるいはあってはならないということから出かけて参ったのでありますが、たまたま会社の方でマイクを使用しておったところに出っくわした、ここで聞いておったということでございまして、警察官としてこういった場合においては、決してそういったふうなことにかかわり合うべきでない、かように考えるのでありますが、ただこのことにつきましては、こちら側で特にそういったことを目的として参ったのではございませんし、またこれにつきましてはしかるべき理由があって当所に参っておるのでございまして、本人に対しましては今後かかる場合における行動について、特に慎重を期するように注意を現地においていたしております。
○坂本委員 この問題についてはわれわれも、大牟田の組合あるいは炭労の臨時大会がありましたから、臨時大会の決定で長官にも抗議に行ったことがあるわけですが、盗聴器のある場所は先ほども申しましたように、会社のお客さんのりっぱな人だけしか行かないところなんです。普通の人とか警官、労働者なんか行かないような場所にたまたま行ったということは、われわれも了解ができないわけでありまして、警察庁長官も福岡の警察本部長も、たまたま会社が使用していたから聞いたにすぎない、こういうことを申しておりますが、たまたま通りがけで、床屋かその他のテレビを見るように行くような場所でなくて、ちゃんと門があって中に入って、そうしてその二階で、貴賓室みたようにりっぱなところでやっていたもんですから、これは会社と警察が一緒になって団体交渉の内容を盗聴器でキャッチしたんだ、こういうふうに現在まで誤解が解けていないわけであります。ですから、この点については、立ち会いの警官に対しては今後ないように注意をされたということでありますが、これは非常な誤解を招くわけでありまして、労使の争議が熾烈化しますと、非常にこういうことで先鋭化するという問題がありますから、今後こういうことのないように警察庁としてはやってもらいたいと思います。
 それから次は、大牟田に製作所支部というのがあるわけです。そこが今度三鉱労組から分離をしたわけでありますが、その際に、全部ではありませんが、大部分が分離をして、その三井の製作所に離脱した組合員諸君が長い間籠城した。その際に会社の方から米約四百俵ぐらいを持ち込んでたき出しをするし、援助したというような状態があるわけです。これは食管法違反じゃないかというので、大牟田警察に告訴ではなくて、捜査を要望したわけです。大牟田あたりでは食糧がないから、米一斗か二斗のかつぎ屋に対してもこれを摘発して、一万円とか二万円という罰金を課しておるわけです。それを三井の会社が、長い間、トラックで米を持ち込んで、そうしてそこでたき出しをしてやった。これは米大体四百俵ぐらいのものと思いますが、明らかに食管法違反だ、こういうふうに考えるわけでありますが、この点について福岡の本部長、さらに大牟田の警察署長は、捜査はしたけれども、そのままにした、こういうようなことを言っておりますが、われわれには捜査をした事実がない、こういうふうに考えられるわけであります。この点については何か報告を――われわれ調査団が参りましたときに、警察本部長並びに大牟田の署長にも厳重に捜査を進めるように、一カ月ばかり前になりますが、言っておきましたが、本部の方では承知しておられるかどうか。またこういうようなことに対してどういうような処置をされるか、この点を承っておきたいと思います。
○曽我説明員 このケースにつきましては、承知いたしております。保安局の方でこの問題について報告を受けておりまして、ただいま保安局長が参りましたので、そちらの方からお答えを願うことにいたします。
○木村(行)政府委員 おくれて参りまして申しわけありません。ただいま御質問の最中に参りましたので、御質問の要旨を正確につかんでおらないかもしれませんが、お答え申し上げます。
 この問題は、第一線の福岡県警から報告がありまして、その事情を調査いたしておるわけであります。福岡県警といたしましては、法律違反の点があるかないか捜査をしておる最中でありまして、目下その点について捜査中である、こういうことの報告を受けております。
○坂本委員 この問題は、福岡の県警から特に今専属に派遣されて、二、三名おるわけです。だから署長よりも福岡の県警から派遣されておる者の方が権力が強く、あとで質問しますが、面会なんかも、署長は許していいと思っても、福岡からの出張してきている者が拒否するからできないというような非常な不合理な弾圧に似たようなこともやっているわけですが、こういうことを言うのです。組合でも食管違反があるじゃないか。どういうことかというと、組合でも米を寄付して持ってきているじゃないか、こういうことを言う。それは私熊本県ですが、熊本県の労働組合でも、米一握り運動といって、正式に配給を受けた米の一握りずつを集めた。一握りずつでも多数のことだから十俵とか十五俵になるわけです。ですから、これは正式に食管法に基づいた配給を受けたのを、ほんの一握りずつを多数の人から集めたから大量になるわけであります。だからこれは違反にならぬと思うのです。ところが四百俵というのは、明らかに会社がトラックで持ち込んで、そしてたき出しをしたのですから、これは明らかに正式のものじゃないわけなんです。すなわち正式のものであるかどうかということを捜査したかというと、まだ捜査中だ、こういうわけなんです。食管法上正式のものであるならあるように、捜査をした結果を明瞭に言えばいいけれども、捜査中である、そうしてその捜査は発表せずに、組合の方でも違反しておるじゃないかと言う。組合の方では今申しましたような関係なんです。やはりあとで質問しますように、わずか二日か三日のかすり傷で公務執行妨害、傷害、こういうふうにして起訴されておる。こういうのを考えますときに、米四百俵も食管違反したのを公認しておくことはないと思うのです。また大牟田では、御存じのように、かつぎ屋はさっき申しましたように、たった一斗か二斗摘発されると、その米は没収されて、そうして一万円とか二万円とかという罰金を食っておるのです。会社がやれば何百俵違反しても処罰をされない。非常な不合理な、社会問題的の問題にもなるというようなことですから、これは至急に一つ調査をして明らかにすべきだと思うのです。そう思いますが、その点いかがですか。
○木村(行)政府委員 確かに最近のやみの取り締まりといたしましては、特に営利目的をもって大規模にやみの売買をする、こういう悪質事犯に重点を置いて、警察といたしましては取り締まりをいたしております。今のお尋ねの点につきましては、会社が従業員のために、その食料に供するために多量の米を買い入れて供給したということにつきましては、その配給のルートなり、それから目的なり、数量なりを明らかにしなければ、ほんとうの実体はわかりませんが、会社がただ組合員の自己消費のために提供しただけでは、その買い入れ行為自体が必ずしも一律に違反になるとも限らないのでありまして、これについてはさらに事態を私たちもできるだけ早く調べまして、真相を明らかにいたしたいと思います。
○坂本委員 そういうようなことを言って、もう三、四カ月もの間放任しておくから疑問があるのです。会社はこれだけの米を買うのには、相当不正なルートをとっておると思う。これは話は別ですが、千葉の政府倉庫米が六千俵余りなくなっているのです。その倉庫番か何かが持ち出してやっておる。それじゃそれを買ったところはどこかというと、川島幹事長なんか関係しておられるセンターがある。そこに行っていることは明らかであるが、そんな捜査をしていない。そういうふうで、これは決算委員会でわれわれはもっと追及することにしておりますが、組合のために供給するからといっても、各組合員はやはり家庭に配給を受けておるはずです。それ以外の供給を会社がやる。何も組合員のためにやるのじゃない、そういうことをやれば不当労働行為になると思う。ですからこういう点は早くやってもらわなければならぬ。組合の方は十人も二十人もどんどん起訴して裁判にしながら、こういうような捜査をゆるやかにしておくことはないと思うのです。これは至急に一つこちらからも指示していただいて、その真相を当委員会で近く明らかにしてもらいたいと思います。
 次に、現在大牟田におきましては、熊本の裁判所に三名、大牟田の裁判所に三名か四名、それから久留米の裁判所に四名、福岡の裁判所に四名、こういうふうに起訴されておる。それはいずれもわずかに三日間くらいのかすり傷で公務執行妨害、傷害というような起訴になっておるわけです。それで、それをやるのには、これは団体交渉あるいは大牟田の繰り込み場で会社側が不当なことをやったから、その団体交渉の際にできた問題なんですが、多数の参考人を争議中に調べた。これが労働者側にとっては非常に不当介入になり、弾圧になるわけなんです。こういうような場合に、よく調査しますと、警察は告発もないのに事件をどんどん取り上げて、争議中に取り調べを開始する。さらに容疑のある者は、何も抵抗もしないのに、三、四台のジープで乗りつけて、そして警察に来てもらいたいと言って、任意出頭を慫慂される。朝早いから朝飯を食うからそれまで待ってもらいたいと言うと、なに警察でも飯はあると言って、朝食もさせずに連れていく。さらに組合の事務所とか組合員の個人の家を家宅捜索する場合に、捜査令状も満足に見せずにどんどん朝も夜もやる。それから組合の捜査の際には、幹部がいないから、幹部に連絡するまで待ってもらいたいと言うけれども、もうそのときは会社側の立会人を連れてきて、そしてどんどん家宅捜索を執行する。こういうようなことが行なわれておるわけですが、今労使双方が対立してやっておる場合に、一方的に組合側をこういうことにされると、やはりこれは組合の分裂を策する会社側の協力行為になる。こういうような関係になるわけでありますし、こういうことが大牟田警察署で行なわれているわけですが、こういう点について、今申したような事実を調べられたことがあるかどうか。これは荒尾の警察署も含むわけですが、こういう問題については、今後どういうように考えていかれるか。われわれは全く総資本と総労働の対決といわれておるこの三井の争議に対しては、こういうことは絶対に避けてもらわなければならぬと考えるわけですが、この点についてはいかがですか。
○曽我説明員 御指摘の点につきまして、まず大前提としまして、今回の三井の長期の争議の問題のみならず、警察としましては、労働争議下にあってこれに介入するということは絶対にあり得べからざることでございます。また現地におきましてはそういうことについて十分に戒心いたしますと同時に、反面におきまして、いかなる場合でも不法事犯の発生ということにつきましては警察の中正な立場で対処する、こういう根本方針のもとに臨んでおる次第でございます。
 ただいま三池の諸問題、現地のいろいろな点について御指摘がございましたが、これらの点につきましては報告を受けております。外形的に申しまして、ただいま申されました第一点でございますが、非常に軽微な事案を警察がどしどし検挙し、起訴するというようなことでございましたが、これはこの争議に関連して特にそういうことをしたとか、あるいは労働争議についてそういう方針があるとかいうことは毛頭ございません。事件の捜査にあたりましては、適法に行なうことはもちろんでございますが、常に妥当性の面につきましても慎重に検討して処理いたしておるような次第でございます。ただいまお話がありましたのは、おそらく十二月四日の三川坑での傷害事件、それと十月二十二日の四山坑での暴力行為事件等であろうかと存じますが、これらの事案を一応検討いたしましたが、外形的には軽微な事案と見られますけれども、その内容を検討いたしますと、必ずしもそうではない。総合的に検討しまして、現地でやはりこれは事件として措置する、こういう結論を出しているようなわけ合いでございます。従いまして、現地の措置につきまして、これが不当であるということもなかろうと私どもは判断いたしておるような次第でございます。
 それから朝食を朝被疑者に与えなかったという問題でございますが、これはどの件でございましょうか、私どもの聞いた範囲では、九月二十九日に三川支部の西川、峯両氏を逮捕した際のことと思いますが、午前五時十五分に西川氏、午前六時に峯氏という方々が逮捕になったのでありますが、ちょうど食事の準備もできていない状態だったので、朝食は大牟田署でとるということで、そちらの方へ連行して食事を差し上げた、こういう経緯になっておりまして、決してその間にそごがなかったように聞いております。
 それから家宅の捜索にあたって、組合の関係者の入室とかあるいは立ち会いをさせなかったというお話のように聞き取りましたが、労働組合の事務所の捜索等にあたりましては、組合の当直員に立ち会いを求めるわけでありますが、拒否されたところがございます。そういうところでは、やむを得ず隣人に立ち会いをしていただくということで措置をいたしておるわけでありますが、しかしながら捜索が適法な手続で行なわれております際には、そこへ法的に立ち入りを禁止することができるわけではございますが、こういった場合に捜索に支障を来たさない限度で入室をいずれも認めておるというような状況でありまして、別にその間に私どもから見て不当な措置はないのじゃなかろうか、かように考えております。それから組合幹部の方々の入室をことさらに禁止したというような事実もないようでございます。
○坂本委員 今の問題は、あなた方として、これはありました、注意しますというようなことは言えないでしょうと思うのですが、大いにあるわけですよ。それはもう現場におれば警官がいろいろやることは全く忍びないのがたくさんあるのです。しかし、きょうは時間がありませんからその点はまた後日に譲りますけれども、今後一番大事なことは、双方とも法に基づき憲法上保障された経済的の闘争であるし、労働組合としては憲法三十七条、二十八条によって保障された権利である。特に今度の指名解雇は不都合の点が十分あるわけでありまして、こういう際に組合側を検挙する、あるいは参考人として調べるというようなことは、これは調べること自体については、ふだんならば何も影響はありませんが、こういう労使双方の対立しておる際には非常な打撃になるし、こういうことをやること自体が会社側に協力をして、そして組合側を弾圧するという結果になるわけですから、今天下の注目を浴びておるこの大きい闘争に対しては絶対行き過ぎがないように、またやることも、こういう三日か四日くらいで逃げも隠れもしない堂々たるものですから、何も争議が終了した後にそういう刑事事犯があったらこれを調べて、事実があればまた処置するのもやむを得ないだろうと思うのです。ただ、わずかなことでやられるということは、今対決しておる労使双方の戦いと申しますか争議における労働組合に対する非常な弾圧になるから、十分この点は慎重にやっていただきたいと思うわけであります。
 そこでもう一点だけ警察庁の方にお聞きしたいのは、今度の争議が始まりましてから、いわゆる暴力団の方から幹部を消せとかいうふうな意味のものを、きょうはその資料は持ってきておりませんが、飛行機でばらまいてやっておる。時間がありませんから申し上げませんが、大牟田市は今組合側と会社側に商店も両方に分かれておるような状態なんです。そこに暴力団が来て、組合の行為は暴力だ、幹部を消せ、こういうようなビラを飛行機からまいておる。こういうようなことについては警察としても十分関心を持って取り締まるべきは取り締まってもらわなければならぬと思う。その点についてと、それからもう一つは、これは流言かもわかりませんが、政府筋から三池問題は治安問題として取り扱うように通達がきておる、こういうようなことが言われておるわけです。こういうことがはたしてあるかどうか。こういうことがあっては大へんだと思うのですが、盛んにそう言われておる。従って、組合側でちょっとしたことをやればすぐ治安問題として引っくくられて処罰されるぞ、こういうようなことが、デマとも思えますが、出ておるわけでございます。こういう三池問題を治安問題とするようなことがあるかどうか。まずそういうようなことを福岡県警あるいは大牟田の警察、荒尾の警察に通達されたことがあるかどうか、この点を承っておきにたい。
○曽我説明員 第一点の問題は「灯をともす会」という大日本生産党の宣伝活動であろうと存じますが、これは昨年九月ごろから盛んに行なわれておるようでございます。警察といたしましては、これが合法的に行なわれている限り、直接どうというわけには参りませんけれども、トラブルなり不法事犯を起こすようなことがないように、そのつど警告、注意等を与えておりまして、私どもの方に参っておる報告を見ましても、相当の回数にわたりまして現地の警察が警告等をいたしまして、未然にその間に、これらの労働問題にそういった思わざるトラブルが起こらないように防止の実をあげておるようでございます。今後もかような線に沿って、かような第三者の、特にそういった暴力的な、あるいは右翼等の介在については注意をいたして参りたい、かように考えております。
 それから第二点につきましては、さような通達なり指示なりをいたしましたことは絶対にございません。
○坂本委員 まだいろいろありますが、時間が参りましたから、また別な機会にあらためてやりたいと思いますが、再三私が口のすっぱくなるように申しましたように、非常に労使双方の対立した状態でありますから、ちょっとしたことでも非常な利益を会社にもたらし、組合側の弾圧になるというようなことになりますから、そういうことにならぬように、幸いロック・アウト後一カ月になりますがトラブルは起きていないわけです。われわれもそういうことのないようにやっておるし、組合も一万数千名のあの組合員を統率して、トラブルが起きないようにやっておるわけであります。しかしながら、やはりいろいろと、ロック・アウトの問題で、あるいは豪州炭を持ってきてやるとか、あるいは他の日経連その他の経済的な支援によって不当なことが行なわれる際には、やはり組合としても全面ストで戦っており、その過程においてのトラブルが起きないとも限らないわけでありますから、そういうような際はやはりいずれにも味方せずに、厳正中正な立場でやってもらいたい。軽微なことは争議が終わった後でも処分ができるわけですから、捜査もできるわけです。今の大牟田の組合員なんかは、決して逃げも隠れもしない統制ある組合員ですから、その点を十分考えて、慎重にやっていただきたいということを要望しておきます。
 それから竹内刑事局長に一、二お聞きしたいのは、今申しましたような、告発もないのに警察が捜査を始める。そうして多数の参考人を呼ぶ。検察庁に持ってくるのはもちろんずいぶんしわ寄せされておるわけですが、しかしながら検事がまだ事件も担当していないのに、いろいろ大会なんかやるときには出かけていっておる。聞くと、やはりそれは模様くらいは知っていなければならないから、こういう工合なことを言われておりますが、行けばやはり警察官と一体になって警察官を指導する、こういうふうに誤解されやすいし、またそういうことになるかもわかりませんですが、そういうようなことがないようにすることと、さらにしわ寄せてきた場合に、この起訴の問題について先般われわれが参りましたときに、これは福岡の高検、地検から資料をもらったのですが、それの十一、大体三日間の傷害、十日間の傷害、それからデモに巻き込み暴力を加えた者、それから経理部長外二名を体育館前までかつぎ上げて連行した者、連れ出した者、こういうようなことで起訴になっているわけですが、これがやはり暴力行為等処罰法違反あるいは監禁、暴力行為処罰並びに監禁、暴力行為、傷害こういうようにまことに軽微なことで三名なり四名なりが起訴されておるわけなんですが、こういうようなことについて、起訴の問題についてもう少し検察庁は考慮すべき点があるのじゃないか。この陰には、警察に引っぱられて面会もさせない、さっき言うたように食事も与えない、こういうようないろいろの問題がありますが、検察庁でこの起訴の問題について考慮すべき点はないか、その点が一つ。
 時間がありませんから項目的に申し上げますが、もう一つは、このごろは四名なり五名なりを起訴するにあたって、これを一緒に起訴せずに一人々々を起訴する。そうすると一人々々の事件になりまして、裁判所も一人々々で裁判をする。それから大牟田の事件を久留米に持っていくとかあるいは福岡に持っていくとか、もう一つの四山の事件はこれは熊本県の地域でありますから、熊本の裁判所に持っていったわけですが、同じ福岡の事件を各所に分散する。そうしてさらに起訴においては個人に分散する。やった行為は同じ行為であるから、一緒に共同被告として起訴すればいいのを別々にやる。やりますと、やはりわれわれは弁護の運用その他で、久留米の上部団体だから一つ福岡の方に併合してもらいたいというようなことをやりますが、なかなか法的手続その他で困難な点があるわけです。それからさらに別々に起訴しますと、五、六名が別な判事の係になる。それを一緒に併合して、そうして合議体に移すというので、なかなかその点がうまくいかない。そうすることによって、これは検察官は国民の税金で月給をもらってやっておるのでしょうが、その被告はそこまで出かけていかなければならないのです。また弁護をするについても、個々に分散してやらなければならぬ。事実上弁護なんかはできないというような結果になる。被告が起訴されて、せっかく憲法上与えられていた弁護人を選任して権利の擁護をすべきことが、事実上できないような状態になるわけです。ですからこういう点については、これは今後あっては困りますが、もしあった際にもやはり起訴のときなんかは十分併合すべきは併合して、大牟田でやり福岡でやればいいのをわざわざ久留米の裁判所に持っていく、こういうことがないようにすべきだと思うのです。この二点について一つお伺いしたい。
○竹内政府委員 御質問の御趣旨は三点あったように思います。
 第一点は警察との協力の問題でございますが、検察官といたしましては、公訴官でありますとともに、御承知のように捜査官でもあるわけでありまして、警察と検察庁との関係におきましては密接協力の関係を保たなければならぬということが建前でございます。従って、刑事事件が将来検察庁の手元に送られてくるということが予想されます場合はもちろんのこと、刑事事件の発生があるかもしれぬというような状態のもとにおきましては、将来受けるべき事件の適正な処理をしますために、できるだけ諸般の事情を知っておくという必要があるわけでございまして、そういう関係において検事も、まだ事件を受理しておらない段階におきましても、関心を持っておりますことは当然でございます。ことに警察が捜査をしております場合にはもちろんのことでございまして、警察から法律上の質問を受けるような場合には親切に意見を述べるというようなことは私ども検察庁に指示しておるところでございまして、そういう関係は密接に連絡し、警察の処置もまた不当にならないようにということは検事も考えておるところであります。そういう意味において警察と検事が密接に協力しておる関係をさして、これはけしからぬというふうには私どもは考えておらないのでありまして、その点御了承願いたいと思います。
 第二点の事件の処理、特に起訴の点でございますが、お話によりますと非常にささいな事件をも起訴しておるではないか、これは警察からの圧力といいますか、警察に引きずられてやっておるのじゃなかろうかという御意見もあったように伺いましたが、申すまでもなく公訴権の行使ということは検察官に与えられました最も大切な権限でございまして、何人にも影響されることなく、良心に従って処置いたしておるつもりでございます。今後ともそういう考えでございます。ただ御指摘の中に三日くらいな傷でなお公判請求をしておるという点につきましての御意見がございましたが、私どもが報告を受けておりますところによりますと、公判請求をした者の二名の中の一人――二件あげられましたが、その一人は三日くらいな傷を負わした、もう一人は十日くらいというお話でございましたが、この二名につきましては検察官も、起訴はしなければならぬ、しかし罰金刑が相当であるという考えを持ちまして、相手方に対して略式手続に応じるかどうかという通知を出したのでございますが、被告側でこれに応じないということで、やむなく公判請求の手続をしたように聞いております。従いまして、公判の手続を経ましても、検察官としては罰金刑を求刑する考えのようでございます。
 なお事件全体を見ますると、昨年七月以降現在までに検察庁において受理いたしました争議に関係する刑法犯は、全部で十三件、三十九名でございます。それから労働基準法違反が三件、四名、以上合計十六件、四十三名でございますが、現在までに処理しております状況を見ますると、刑法犯の十三件三十九名のうちで、九件については起訴が十二名、不起訴が十七名、他の四件につきましては不起訴が一件、一名、残り三件、九名が現在検察庁で捜査中でございます。それから労働組合側から告発されました会社の労働組合法違反事件は三件、四名でございますが、これはただいま捜査中でございます。そういうふうに数字を見て参りますと、すでに処理をいたしました十件、四十名についても、起訴した者はその半数にも満たない十二名にとどまるのでございまして、全体的に苛察になっておるというふうには考えられないのでございます。特にその中の二人につきましては、先ほど申しましたように罰金刑を相当とする事案でございます。これらの事案は先ほどお読み上げになりましたように、多数人によるつるし上げ的な交渉要求をやりその際に行なわれた暴行傷害といったような刑法犯でございます。あるいはいわゆる洗たくデモによって生じた傷害事犯の中で、主犯者と見られる者を公判請求したものでございまして、もとより不問に付すべき事案とは認められないものでございます。さように考えて参りますと、この事案の取り扱いとして、検察庁のとっておる態度が特にきびしいものだというふうには考えられないのでございます。検察庁の方針は、もう毎回申し上げますように、あくまで公正な立場を堅持いたすものでございますが、争議に伴って発生する事件でございましても、暴力ということになりますると、これは放任するわけにはいかないのでございまして、それらの点を慎重に考慮いたしまして処理をいたしておるのが現状でございます。
 なお最後の第三点の管轄権の問題でございますが、これは土地管轄、事物管轄ともに法律で定められておるところでございますが、ただ一人々々起訴するか一括して起訴するかという問題があるわけでございまして、これはその事案によって、あるいは一括してグループごとに起訴するということもありましょうし、あるいは全体を起訴する場合もございますが、また個々的な事案と見て個別に起訴することも便宜あり得るわけでございます。その個別に起訴したことをもって直ちに不当だというふうには申せないのでございますが、事は審理とも関係がございますので、もしそれらが併合審理されることが相当であるということになりますならば、個別に起訴され得るものにつきましても併合審理されることになると思います。それから起訴手続は、みんなが出そろうまで待って、その上で起訴するということも事案によってはあり得るのでございますけれども、身柄の拘束その他の関係がありまして、場合によっては個別的に起訴せざるを得ないこともあるのでございます。これは一がいに当不当を論ずるわけにはいかないと思います。その他事件はすみやかに処理し、すみやかに刑事責任を追及するというのが根本的な憲法の要請でもあるわけでございまして、争議中であるから刑事手続の進め方をちゅうちょするというようなことは、検察官としてはむしろ許されないことなので、事情の許す限りすみやかに処理をしなければならぬというふうに考えているのでございます。従って、証拠の収集上あるいは関係の方々に事情を話してもらうというために呼び出しをするということも、これは真にやむを得ないことでございまして、この点は、関係の方々にはできるだけ捜査に御協力をいただきまして、すみやかに処理をするということが、お願いをしなければならぬ筋合いだと考えております。
○坂本委員 実は管轄の問題といっても、それなら大牟田か、その親の福岡の本庁にしなければならぬのを、わざわざ久留米にやる、そういうことをやっておるわけです。それから各個にやるか、一緒にまとめてやるかというようなことは検察官の掌中にあるわけだから、今乱用しているわけです。これは私ここに資料を持っておりますから、時間があれば一々お聞きしたいところなんですが、乱用しているおそれがある。そういうことのないように、一つぜひしてもらいたい。
 それからなお、捜査を早くして協力してもらいたい、それはもちろんそうなのですが、一カ月か二カ月で終わるようなのを、特に捜査を迅速にしなければならぬというので、労使対立して大きな問題に逢着しておるときに、どんどんそれをやられると、組合の士気を沮喪するし、またハンディキャップがそこに大きくついてくるわけなのです。そこをわれわれは非常に憂えるし、今そういうことを警察も検察庁もやっているのです。だから、検察ファッショといわれるのは、そこにあるわけなんです。だから、ぜひそういうことのないようにしてもらいたいというわけです。
 さらに事件の受理もしていないのに、検事が出かけていって、それはやはり懇意だからすぐ警察と話をするでしょう。ほかに話したって相手にされぬからそういうこともあるでしょうが、とにかく陣頭指揮をするようなふうに、外見的に見える場合があるわけです。こういうことは大いに慎しまなければならぬと思う。だから、そういうことのないように今後善処してもらいたい、この二井の問題については、特に注意してもらいたいということを要望いたしまして、質問を打ち切りたいと思います。
○瀬戸山委員長 世耕弘一君。
○世耕委員 私は警察当局に二、三点お尋ねしたいと思います。
 最近横浜市に起こった圧死事件の問題でありますが、警察当局は、この問題について、どの程度報告なりお調べになっておられるかどうか。新聞等にも報道されておりますけれども、確かなところをつかんでおりませんので、御調査になっておられるならば、その範囲でお聞かせ願いたいと思います。
○木村(行)政府委員 この点につきましては、まことに遺憾なことでございまして、警察といたしましても、人命損傷の事故防止が最重点でなければならぬと思います。まことに残念なことだと思います。これにつきましては、詳細に報告を受けておりますので、若干時間がかかりますけれども、詳細に申し上げます。
 起こった時刻は、三月二日の午後五時三十五分ごろでございます。場所は、もうすでに御案内の通り、横浜公園の体育館でございまして、主催者はラジオ関東、催しは、島倉千代子ほか数名の人気スターを中心にしまして、ラジオ関東の開局一年の公開録音といたしまして、歌謡ゴールデン・ショーを催したのであります。当時、定刻ごろには最高約六千名の観衆が集まっている、こういうことでございました。
 それから被害の状況でありますが、死者十二名でございます。その中で未成年が七名ございます。未成年が大部分だということで非常に残念に思います。それから重傷者は七名、軽傷は七名、合計二十六名の死傷者を出しております。この状況に関しまして、主催者側からは、三月二十五日に、ラジオ関東事業部長から、こういう催しをやるからということで、所轄の加賀町警察署に事情を述べに参りました。それから翌二十六日に、正式に届出の申請書を持って参ったわけであります。そのときに、同警察署の警備課長が、どのくらい招待券を出しているのかと聞きましたところ、約八千枚出している、こう、いうことであった。これにつきまして同警備課長も驚きまして、八千枚は多過ぎるではないか、あそこは大体四千名くらいの収容能力であるから多過ぎるではないか、こういうふうな注意を与えたのであります。ところが主催者側としては、大体四千名の収容人員であることはわかっている、しかし八千放出しても、従来歩どまりから考えて、実際に参るのは三千ないし四千名ではないか、こういうとであった。さらにもし満員の際は入場をお断わりする、こういうことを招待券に明記するということも言っておりました。また現実に満員になった場合には、これに対して整理員を使って入場をお断わりするという措置もとる、こういうことでありました。さらにそれに対しまして、署といたしましては、主催者側の自衛警備についても十分にやってもらいたい、こういう要望もいたし、また警察署といたしましても、会場周辺の交通整理及び雑踏整理について警察本来の職務としてやるということを申し入れて、その二十六日の打ち合わせは終わったわけであります。それから二十九日に、電話で、正式にその催しに対しましては回答をいたして許可いたしておるわけであります。
 それで、この状況でありますが、事件の起こったその当時の現場の状況を申し上げますと、図面をお手元に差し上げておりませんのでおわかりにくいかもしれませんけれども、この体育館は、電車道をはさんで横浜市役所のすぐ隣にございまして、この体育館の横浜市役所側の入り口は、普通正面入り口と申されております。これは西側に当たるわけです。この西側の方に――大体開刻の定刻は、開場が五時半で、開演が六時ということになっておりましたけれども、すでに午後から相当集まってきておりまして、四時前後には、この西口のいわゆる横浜市役所側には数百人の者が集まっておりました。このほかに北側の中央口というのがございます。野球場に近い方の入口、この口の方にも数百人、そのころには集まっておりました。署といたしましては、その状況が情報でわかっておりますので、早目に四名の警察官を四時十分ごろにすでに派遣しまして、状況を把握、それから予定といたしまして、五時に制服部隊十三名、それから私服の警備員七名というものを、五時、いわゆる開場三十分前に配置完了という予定でありましたけれども、比較的観衆の集まり方も早うございますし、また相当多いという状況でありますので、わずか十分ではありますけれども、予定より早めまして、部隊を四時五十分に現地に派遣しまして、それぞれ配置に当てました。
○世耕委員 御報告いただいておる内容は、大体新聞に発表されておりますので、私の質問を簡潔にする意味において、途中で説明を中止していただいたのでありますが、要するに私がお聞きしたいことは、従来こういう事件が京都にもあり、大阪にもあり、和歌山にもあったと思うのです。それから東京で例の日暮里の駅の事件である。さらに新潟県で大きな事件があって、百何名の死傷者を出したということがある。今急に起こった事件ではないのです。結局こういう死傷者のできたガンはどこにあるかというと、多数の人が集まっている。狭い場所へ人間が一挙に押し込んできたというところに死傷者を出した原因があるのです。横浜の事件を見ましても、また京都、大阪の事件を見ても、同様な結論が出てくる。今度の新しい横浜の事件を見ましても、開演が六時なのにかかわらず、五時四十五分まであけずにおいたというふうに私は聞いておる。十五分間で三千人、五千人の人間を狭い場所から入れるということに、すでにもうそこに事件が出てくる。ここに取り締まる者も、またそれを指導する者も、すでに間違いがあるのではないか。この点をわれわれはよほど考えなければならぬ。
 それともう一つは、あの会場の設備の前の広場、ああいうような集団、大衆の集まる場所に適している広場が、はたして建設上、設備上、考慮されておったかということをまず考えなければならぬ。三千人、あるいは三千五百人の定員のところへ、八千の入場券を配ったということ、横浜の事情を聞きますと、あまりあそこは人が寄らないから、まあ八千人ぐらい配っておけば、歩どまりで、いいところ二、三千人も集まるだろうということは、これはもう想像できることなのです。けれども、それだけで、これは責めるべき問題ではない。むしろ私は問題の焦点は、狭いところへ短時間に、しかも多くの人を入れようというところに事件が起こる。この点が常に問題の焦点ではないかと思います。たとえば、大ぜいの人がかりに集まっておりましても、その指導よろしきを得たなれば、狭いところでも、多数の人に出入りさせることはできるのです。ところが二重橋の前の事件でもそうです。橋のところで行き詰まって、あの死傷者を出したということにもなるのでありますから、この点が問題の焦点じゃないかと思うのです。今後そういう場所の選定の場合に、どういう指導方針をお出しになるつもりであるかということを実は聞いておきたい。その点はいかがですか、その点をまず聞かしていただきます。
○木村(行)政府委員 ただいま先生の申された件について、なるほどと感ずるところもございますが、あの体育館自体は収容人員は割合大きいのですけれども、体育館の大きさに比較して、入口は確かに狭うございます。一番最初に入れました中央の、いわゆる北口でさえ二・六メートルの幅でありますから、二メートル半くらいの幅で狭い。それから短時間に入れるということにつきましては、私たちいろいろ事情を聞きますと、現場における警察官も非常に心配しまして、相当集まっておりましたし、長い時間待たしておりますので、五時五分ころに現場の警察の隊長が主催者の今関事業部係員に会いまして、早く入れてもらいたい、だいぶ待っているからということを申したわけであります。ところが主催者側におきましては、公開録音放送があるので、場内のいろいろな準備がある、それからラジオ等の関係もあって、事前に入れるのはちょっと待ってもらいたいという強い要望がありまして、やむなくそれに応じたわけです。また同時に、そのときの外の状況は、必ずしも喧騒なる状況でありませんでしたので、あえて主催者の希望に対して、こちらがさらに強く言う状況ではありませんでした。しかし定刻五時半になりまして、またもう一度申し入れをしました。入れてもらいたい、定刻であるからと言いましたところ、まだ準備ができないということで、結局五分おくれまして入った。そういうところも間接には影響があったと思うのです。ただ狭い口から入りましても、これは警察と主催者側とが相談して、ことに警察が希望しまして、北口の、中央の口以外に、それの向かって左の方に野球場側の口があります。これもそう広くありませんが、こっちも主としてあけてもらった。こちらの方はやはり半とびらしかあいておりません。半とびらのあきでございましたけれども、こちらのもたもたする直前あるいは直後にも、すでに粛々と二千人入ってしまった。ですから何かのきっかけがなくて、群衆が落ちついておれば、狭いところもうまくいったわけであります。ところがこっちの中央口の方は、ちょうど開場直後に、先ほど申し上げました市役所側の入口におりました三十名ばかりの若い者が北口の方に回ってきまして、しかもロープを張っておったところを飛びこえたり、くぐったり、警察官が三人これを阻止しておりますけれども、阻止しきれずに押されております。そこで従来から長く待っておった北口、中央口の方の連中が刺激されまして、かけ足状態になった。そのかけ足状態で少し雑然としてきた。ところがちょうどその入り口の二メートルぐらい先のところにずっと縁石があります。しかもその縁石に排水溝が少しくぼみとしてある、高さが結局十五センチぐらいの差がある。そこに、二、三名の若い人、あるいは子供とお母さんと一緒に倒れたのではないかと思いますが、倒れて、そこにかけ足でいったものですから、そういう状況で、わきから、非常にふらちだと思いますけれども、この連中が夢中に走った。そして警察官も阻止したが、あるいはロープを飛びこえ、押しのけてまできたというような、特別のきっかけがあったわけです。そういう点については、若干問題点があると思います。
○世耕委員 大体わかりました。結局警察側から批評してみますと、ある一つの目標のために乱闘のある場合を予想した対策は、相当最近は警察側も緻密な形で訓練もされているように思いますが、大衆の集まりで突発的に起こる群衆心理によるこういうような問題に対しては、案外私は訓練が足りないのじゃないか、かように考える。いわゆる臨機の処置がとれない。これは警察行政の面においても考えておかなくちゃならぬ問題じゃないか、かように考えられる。それから特にこれは研究してみなくちゃわかりませんが、私の考えとして率直に申しますると、よく駅の切符売り場のような場合でも、群衆を集めておいて、時間的に短時間で、さあこれから改札を始めますというところで乱闘騒ぎが起こるのです。そういうところで群衆心理がいわゆる動物心理に転じて、そこに道徳的な社会道徳の破壊が現実に見られる。みにくい日本人の潔癖性からくる非公衆性というものを露骨に現わして恥をさらすということになるのでありますから、私はそういう点を特に今後指導する上において研究する必要があるのではないか。今度の事件の内容は、私は具体的にはわかりませんけれども、多くは窒息死のように聞いております。しかも負傷者並びにその窒息状態になった者を救い出して近くの病院に運んだものの、手当が二十分以上かかっておる。だからこれも敏速な処置をとられたならば、これだけの死者を出さずに済んだのじゃないか。いなかじゃないのだから、近くに病院があったはずなんだ。二百メートルか三百メートル内外のところに病院があったはずだ。それについての手配がほとんど行き届いていない。死骸を運んだ程度の状態ではなかったか、こういう点も検討してみますると、大衆を扱うすべての訓練、また大衆を集める主催者側にも多くの落度があった。従来も多くの犠牲者を出して、数個所に大きな経験を持っておるのだから、今後こういう点はもっと科学的に、しかも敏速に、さような場合には非常措置をとれるような方法は当然とっていいのじゃないか。今度はそれがどうもできてなかったということが、こまかく調べてくる上において現われておるのであります。それと、これは直接警察には関係ないかもわかりませんが、大衆の集合する場所における公衆道徳というものをもう少しあらゆる方面で検討すべきである。ことに学校教育には当然のことでありますけれども、この点も特にこの悲惨な現実を見きわめて、新たな対策をこの際考えておく必要があるのではないか、かように考えておるのでありますが、そういう点について何かお考えがないか。
 それと、特に大衆の集まるときには、非常の場合、突発事件ということを考えておかなくちゃならない、そういう場合の注意事項が当然あっていい。火災予防、火災、出火の場合のこともよくこまかく指示されていますが、火災以外の突発事故、たとえばこの間のような、これも火災に関係あるけれども、フィルムに引火したというようなこともありましたし、またフィルム以外で、近ごろは相当多くの電気を使いますために、漏電等の関係で煙が出ただけで人死にを出す大きな騒動を起こした、あるいはわずかな震動しか起こらない微震に、大きな地震を予想して一挙に狭い入り口に殺倒したがために多くのけが人を出したということはもうひんぴんとして現われてくるのですが、この点について具体的な対策が一応講ぜられてないように私は考えられる。もしこれが講ぜられておるとすれば、今度の事件なんかこんな大きな事件にならなかったということを思い起こして、実はお尋ねしておきたいし、また御意見等も伺っておきたいわけです。特に今度の事件でいやな気持を起こすことは、ほとんど婦人子供がいわば踏み殺されておる。圧死というけれども、倒れた上を歩いて通っておる。まあ実に非人道きわまる今のありさま、これはむろん日本の今日の現状の一部を物語るものとして、すべての者に責任があろうと思いますが、かくのごときことを繰り返されないようにあらゆる手を打つべき時期に今到達しておるのじゃないか、かように考えまして、特に時間をいただいてお尋ねした次第でありますが、これについて何かお考えがございましたら、この際お聞きしておきたいと思います。
○木村(行)政府委員 この事故防止対策に関しましてのお尋ねでございますが、先生もただいま仰せになりましたように、五、六年前から最近までに数回にわたって相当悲惨な雑踏事故による死傷者を出しております。その直後はもちろんのこと、その前にも雑踏事故防止に関するいろいろな規定が警察部内にございます。その規定を、その事故の事件のつど現場のいろいろな反省をいたしまして、それを取り入れて規定を改正し、またただいまお話がありましたように、群集処理、ことにこの非常に動揺した場合の異常なる群衆心理、これに対応する警察官側の合理的なしかも巧妙な処理の技術というものがまた必要であると思います。これらについても数回にわたって係官を集めて教養いたし、また執務資料も数回出したわけであります。それにもかかわらず、こういう事故が起きてまことに残念ではありますが、根本的にはただいま先生からもお話がありましたように、一般の日本国民の現在の状況なり、ことに若い者の心理状態というものが非常に大きな問題ではないかと思います。今度の事件に関連しましても、すでに二千人入っておりまして、事件が起こったから早く帰れと、いろいろごたごたして収拾しなければいかぬからというわけで、主催者側と警察が指示いたしましても、なかなか帰りません。一番最後まで残ったのは八時過ぎまで、すなわち二時間以上も三百人も残って、なおかつ島倉千代子さんなどのサインをもらいたがっている。こういう心理状態、おそらくその中には、場合によっては、最初に中央口から入った五十名の中の何人かがおるかもしれません。その場合にはそれが加害者であったかもしれない。現に人が死んでおるというにもかかわらず、なおかつ残ってサインを求めようというような心理状態は根本的に嘆かわしいことではないか。これらの問題につきましては、警察だけではどうにもなりませんで、やはり各界各層の全体が、そういう広い意味における国民のレベルを引き上げるために、大きな動きをしていただかなければならぬ。それなくしては、警察だけで幾らやりましても、なかなか防ぎきれない。もちろん警察の責任においてできるだけのことはいたしますし、いたさなければならぬと思いますが、技術をいろいろ研究いたしましても、なおかついろいろ――私は交通の方もやっておりますが、交通事故防止の方に相当警察官がとられます。強盗やぐれん隊の検挙にも非常にとられますので、そういう関係で、全部が全部完全に十分な警察官をいつでも配備できるというわけにも参らない場合もあるわけであります。そういう点も考えまして非常に苦慮いたしておりますが、ただいま先生がおっしゃいました科学的な大衆処理の技術なりまた訓練なり、こういうことはさらに一段と――それに対して、今度の事故につきましても、警察だけで調査するのではなしに、検察庁とも合同して、ほんとうの真相を追及していきたい。その真相に基づいて、責任があれば責任をとる、また反省すべきところは反省して、十分に今後に生かしていきたい、こういうふうにすべきではないかと思います。
○世耕委員 もう一点だけ、私は希望なり意見を述べてみたいと思いますことは、どうぞ今度の事件を最後にして、形式的な処罰に終わらないで、一つ根本的に対策を立てていただきたい。それには検察当局も特に力を入れられて、各界、各方面の徹底した意見を聴取されて、万全の策を講じていただくことを希望して私の質問を終わることにいたします。
     ――――◇―――――
○瀬戸山委員長 この際参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 ただいま審議中の不動産登記法の一部を改正する等の法律案につきまして、参考人の出頭を求め、意見を聴取することとしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○瀬戸山委員長 御異議なしと認め、さように決しました。
 なお参考人の人選、出頭の日時等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○瀬戸山委員長 御異議なしと認め、さよう取り計らいます。
     ――――◇―――――
○瀬戸山委員長 次に、刑法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 質疑を続行いたします。質疑の通告がありますから、これを許します。阿部五郎君。
○阿部委員 不動産侵奪に関する問題についてお尋ねしたいのでありますが、その前に、先ほどの坂本泰良委員の質問に関連して、一言お尋ねしたいと思います。
 近ごろ労働争議に関連して、多数の人間が、混乱しておるうちに、たまたま暴行傷害というような事件が起こることがよくあります。そういう場合に、犯人がだれであるかということは、暴行傷害が起こっておることははっきりわかっているのですが、さてそれが、犯人がだれであるかという、その場におったものがみな犯人であるはずはないので、たまたまそのうちの一人が犯人であろうということは推察できるのであるけれども、現実にそれではだれであるかということが発見がなかなか困難な場合が多いだろうと思うのです。これは検察庁がそのうちだれを起訴するか、また警察が捜査する上にも、これはずいぶん困難な問題であろうかと思うのでありますが、それについて法務省としてどういう扱いをなさる方針でおられるか、その点に関して疑問を生ぜざるを得ないような場合が時にあるのであります。それで、どういう御方針でおられるのかという点を伺いたい。
○竹内政府委員 仰せの通り、集団的に集まっておる中で刑法犯が行なわれた場合には、だれがその事件を引き起こしたかという犯人の確定と申しますか、これはなかなかむずかしいわけでございます。ことに警察官なりがその場に居合わしておるような場合には比較的発見が容易でございますけれども、そういうものがいなくて、あとから告訴、告発というような形で出てきた場合、あるいはそういう事犯が起こって現に負傷した者が出ておるというようなことを知ってから後に、それではその傷害はだれが与えたかということを確定しますことは非常に困難でございます。犯罪の捜査は、犯人の確定と、その犯人が手を下したに違いないという証拠を集めることが犯罪の捜査になる。そこでそれらの捜査を、間違いなく証拠を集め、犯人を間違いないように確定いたしますために、関係者の方々に御協力を願う場面が非常に多いのでございまして、先ほど来御質疑の点もそこにあったと思うのでありますが、私どもの立場としましては、手を下した者がだれであるかということは、大前提として確定しなければなりません。しかし、手を下した者及びその共犯者と見られる者がここに明らかになった場合に、その中でだれが責任を負って処罰されるかということになりますと、これは検察官が考える問題でございまして、基本的な考え方としましては、一罰百戒と申しますか、できるだけ被告人の数を少なくして、しかも刑罰の目的を達成するにはどうしたらいいかということに結局はなる。そうしますと、首謀者とかあるいは首謀者ということはわからないにいたしましても、最もその場面で大きく活躍をした人とかいうものを選んで起訴するということになるわけでございますけれども、仰せのように、そのつもりで起訴した者が、実はそれほどではなくて、もう少し隣にいた者がそうだったといったような場合もないとは保しがたいのでありまして、そういう意味で苦心もし、慎重を期して処理をいたしておるような次第でございます。
○阿部委員 そこに実は大きな問題があるのではないかと思っております。何といいますか、主要な役割をその場合に演じておった者を起訴する。ところが主要な役割を演じておるといいましても、それは直接暴行とか傷害とかいうものを指導した者、やれと言った者ではない場合が多いのであります。それで現実に暴行傷害でありますから、何か物理的な力が作用しなければ起こらない。その物理的な作用を及ぼした直接の犯人、それが発見しがたいというだけで、それでその多数の行動において主要な役割を演じた者を目して、いろいろな状況、周囲におった者とかのはなはだ薄弱な証言などを援用してこれを犯人と定め、そうしてそれを起訴するというようなことが往々にして行なわれておるやに見受けるのであります。これは法務省としてそういうことを是認なさるのでありましょうか。
○竹内政府委員 薄弱なる証拠でもいいからそういう者を選んで起訴しろというようなことを是認する筋合いのものではございませんし、またそういうことを指令すべき筋合いのものでもございません。できるだけ責任の重い者を選び出して最小限度の処理をするということは、私どもの基本的な考え方でございますが、はたしてそれに当たるかどうかはその衝に当たりました方の証拠の判断ということになるわけでございまして、一片の指令によって処置をきめる筋合いのものではございません。これは犯罪というものはすべて証拠によって裏づけられなければならないのでありまして、事情を知らない中央におります者が、組合の地位が幹部であるという一事をもって、同時にその刑事事件の幹部であるとは言えないのでございますから、その点は現地において具体的な証拠とにらみ合わせて決定すべき事柄でございます。
○阿部委員 その何人かにしぼってきて、そうして主要なる役割を果たしたものと目すべき者を選んで起訴なさる。何人かのうちから選んでというその選ぶ範囲、それが問題だと思うのですが、それは、何らか物理的な作用を及ぼした者が三人なり五人なりあって、そのうちから主要なる一人を選んで起訴するというのであれば、これは私たちももちろん是認せざるを得ないのですが、その三人なり五人なりを発見するということも非常に困難な場合が現実の問題として多い。結局かりに五十人か六十人のうちから三人なり五人を選ぶことも困難である。そういう場合に、犯人を確知することができないとしてだれも起訴される者がないということになると、はなはだ捜査当局としては困った立場に陥ることは事実でありましょうが、そういう場合に、苦しまぎれかどうかは知りませんが、とにかくだれかを選んで起訴をなさる、こういうことがあるやに見受けられるのであります。私はこういう事件を直接扱った経験は少ないのでありますが、昨年たまたま一つの事件を扱ったことがありまして、現実に起訴されております。ところがそれはその暴行なり脅迫自身において主要なる役割を果した者ではないが、労働運動においては主要なる役割を果たしておる。常々その場におった者も、またもっと広く事実なり範囲なりを縦にも横にも目で見て目立つ顕著なる人間を目して起訴しておる、こういうふうに思われるのであります。それから類推していきますと、やはり捜査当局、検察当局などでも、争議行為、デモ、罷業というようなものを、これは法律上当然の権利として認められたものでありますけれども、長い伝統がありますから、何か犯罪あるいは犯罪に近いもののように思っておって、その方面で目立った者が、たまたまその争議行為に関連して起こった犯罪、法律違反に対しても顕著な者とされるきらいがあるやに見受けられるのであります。そこで私たちがその場にそれを扱って起こる気持は、かりに暴行、脅迫、傷害が起こったことは争いのない事実であっても、また具体的に五十人、六十人の中にはそれを犯した者があることは確実であるが、現実の犯人を確知することもできない場合、それが非常に困難な場合、多少無理をしてでも選び出さなければならないというような場合において、これはやむを得ないから起訴ができないならできないなりで済ましてもいいのじゃないかと思うのです。しかし上からの指令なり何かの場合にそういうことは許されなくて、現実にそれに当たった者はだれかを犯人に仕立てなければならないというような立場に追い込まれておるのではないかという疑いを持つのであります。そうして、その追い込まれておる現実に捜査に当たっておる人々が、その場合に現在犯罪ではないけれども、犯罪に近いようなふうに争議行為を思っておるとすれば、その方面で顕著な人間、目立った人間を選ぶ、何らかの証言なり何なりを寄せ集めてきて起訴の材料にし、これを起訴するというようなことがいまだに行なわれておるのではないかという疑いを抱かざるを得ぬのであります。これに対して、刑事局長は、こういう事件を御報告になったりお扱いになったりする御経験があろうと思う。どういうお考えをお持ちになりますか。
○竹内政府委員 阿部委員がただいまお述べになったような御疑念をお抱きになっておるということを承りまして、実は非常に遺憾にも存じますし、残念にも思う次第でございますが、刑事事件が発生して犯人の確定ができませんために、ついに終局的に起訴をしないまでもだれ某が犯人であるということを確定し、起訴猶予というような処分にすることになります場合もありますが、そういうふうに終局的に処理のできなく終わった事件も少なからずあるわけなのでございます。それで、捜査に当たっておりますものは、現実にそこに犯罪があるということは歴然としておる。たとえば人が一人死んでおるという場合に、自殺でない限り、病死以外の者は他殺でございますので、手を下した者をだれか探さなければならぬ。これは捜査官に課せられた義務でございますから、あらゆる知能をしぼって犯人を割り出さなければならぬわけでございます。今そこの点が疑念の点でございますが、だからといってあいまいな者を犯人に仕立てて処理をして責任を果たしたかのごとく装うというようなことは、これはまた捜査官の良心が許さないところでございます。これは警察におきましてもその点は私はっきりと申し上げ得ると思いますが、検察庁におきましてはすぐこれは裁判にかかる問題でございまして、裁判におきまして証拠のない者が有罪になるわけがないのでありますから、検察官は冷静に証拠の判断をいたしまして、犯人と確定し得るかどうかということにつきましては慎重な態度で臨んでおるわけでございます。不幸にして犯罪があったが犯人がわからないというような事例も少なからずございますが、これをもって上の方から何とか仕立てて犯人を作れというようなことは絶対いたしておりませんから、その点は御安心を願いたいと思います。
○阿部委員 検察官の良心を信頼してくれというお言葉は、お立場としてはごもっともだと思いますが、現実の問題としましては、自己の良心に従うよりも、上の鞭撻といいますか、だらしのない処置をするなというような一言の方が、はるかにその人に対して強い影響力を持つことは現実の事実としては免れない、また見のがせない事実だろうと思います。そこでこの点法務省なり検察庁の上の方に、平生の方針を授けるとか訓辞するとか、上からのなお一そうの御注意が必要であるかと思うのであります。現に私の扱いました事件を御参考までに申し上げてみますると、いろいろ証人が出ておりますし、そのうち労働者の間からもたくさんの証人が出ておりますが、だれそれがそばにおりましたとか、だれそれが石を投げておったかもしれませんとかいうようなものが重なっておるのであって、裁判にもかかるのであるから心配はないとおっしゃるけれども、裁判にかかったところでそれ以上の明確なものがなくとも、やはり状況上この者がやったと裁判官においても判断をする場合が多いのであります。そこで起訴をなさるについては、よほどその点検察当局に十分の注意を払っていただかなければならぬと思います。別に御答弁は求めませんが、なお一そうの御注意をお願いしたいと思います。
 それから本件の問題でありますところの不動産侵奪罪についてお尋ねいたしたいのでありますが、私はまずこの問題に関して観念上の点をお尋ねしたいのであります。人間は土地の上でなければ生きておれないのは言うまでもないと思います。しかし、人間すべてがみんな所有権なりそれから賃借権その他の用益権を必ずしも持っておるとは限っておりません。そこでかりに所有権もその他の用益権もない者が生きておるとすればこれはどういうことになるか、たまたまどこかへ足を踏み入れるとそれが他人の不動産の権利を侵害する、こういうことになって直ちに犯罪になる、これはなかなか妙な問題だろうと思うのでありますが、その点どういうふうにお考えになっておるか、お開きします。
○竹内政府委員 まず非常にむずかしい問題の御提起でございますが、この不動産侵奪という罰を除きましても、現行法のもとにおきましても不法侵入罪とか器物損壊罪とか、若干の不動産を目標とした刑罰法規がございます。もしこの所有権も賃借権も、土地家屋不動産等に対する何らの権益も持ってない人は、この世の中におることができぬじゃないかという御意思で、その点が法律上どういうふうになっておるのかという御質問かと思いますが、これは一切がっさいが権利ずくめできまっておる建前ではございますけれども、なおその権利の行使につきましては、共同生活という関係からあるいは所有者が認容し、あるいは公共的な立場で便宜を供与するといったような、いろいろ実際社会におきましては足の踏みどころもないというような状態になってないことは私が申すまでもありませんが、刑罰は最小限度のそのような権益を保護する手段として設けられておるのでございまして、私どもが今ここで御審議を願っております不動産侵奪罪も、現行法のもとにおきましては、不動産の侵害を放置できない、もう少し厚く保護しなければならない、そういう観点から立案をしておるわけでございまして、これができたから、あるいは現行法とこれと相待って一切がっさいいるところもないじゃないかというような考え方を私どもはいたしておらないわけでございます。お答えにならないかもしれませんが、それ以上のことになりますと法律以前の問題と申しますか、そういったような問題に入るようなことになるのじゃないかと考えます。
○阿部委員 この法律ができなくとも、住居侵入その他の規定があるから人の財産権を侵害することはできない、こうおっしゃいますけれども、住居侵入は御承知の通り住居であります。住居に準ずべきようなものが判例上犯罪になっておりますけれども、たとえば農地とか山林とかあるいは道路とか河川という、そんなものには犯罪は成立しないのであります。ところが今度はすべての不動産、こういうことになっております。おそらく所有者のない不動産は日本国中どこにもないと思います。かりにあるとすればそれは国に属する、こう法律で明文してありますから。そうするとこれができると、現実問題は置いておいても、観念上は、日本人であってしかも不動産について所有権も賃借権もその他の用益権も何も持たない者、これはずいぶんたくさんおるのです。それらの者はどこにもおるところがない。そしてたまたまどこかへ入っていったらそれはたちまち不動産侵奪罪で犯罪になる、そういう観念になると思いますが、そうじゃないのじゃないですか。
○竹内政府委員 この侵奪という意味につきましては、先般来申し上げておりますように、一切の不法の占拠、そういうものを罰しようとしているのではなくて、その中で動産の場合ならば窃盗というのに当たるような形態の不法占拠と申しますか、そういうものだけを罰しようというだけでございまして、お話のようにちょっと足を踏み入れたら侵奪になるというものではないわけでございます。
○阿部委員 そのお答えはお答えにならぬと思います。ちょっと足を踏み入れたというのではなくて、人間というものは土地に定着しなければ生存はできないのでありますから、生存できる範囲において土地を占拠しなければならぬ。そうすると所有権その他の権利のない者はどこも占拠するところがない。たまたま占拠すればそれは犯罪になる、この法律ができることによって日本全国がそういうことになってしまう。観念上はそういうことになると思うのですが、そうじゃありませんか。さらに私の考えを説明しておきますが、お考えになったところでは、不法領得の意思とかいうこの解釈によっていろいろやっていくお考えのようでありますが、不法領得の意思というものは法律上そう明確な観念ではないように私は思っておるのであります。所有を自分に帰属せしめよう、所有権といいますか、事実上、所有権の内容をすべて自分に帰着させようとする意思が、それだけが必ずしも不法領得の意思ではなくて、たとえば使用窃盗という観念もありますから、単にその所有権のうちの一部であるそれを、その効用の一部を自分がとろうとする意思も領得の意思だ、こういうふうにも考えられておるようでありますから、人間が一面では土地に定着しなければ生きておれないという事実と、それから今度の法律ができた場合のことと、こういうようなことを考えて見ますと、観念上は、権利のない者はとにかく生存ができない、こういうことになるのではありませんか。
○竹内政府委員 私は、意見でございますが、さようには考えないのでございます。動産の場合を例にとりますとおわかりいただきやすいと思いますが、不動産でも動産でも同じくまる裸ではわれわれは生活できないのでございますが、着物も着、食物も食べ、すべて物と動産と常に密接な関係なくしては一日も生存できないわけでございますが、動産につきましても窃盗罪ということで、みだりに不法に他人の者をとってはいけない、これと同じような意味におきまして、他人の不動産を侵奪してはいけないということを言うておるだけでありまして、何人にも不動産を持たせないようにする法律であるとか、あるいは権利を取得することを許さない法律であるとかいうのじゃなくて、持っておる権利を不法に侵奪してはいけないという法律案であります。従って、それは動産の場合と同じようにお考えをいただけばいいというふうに考えておるわけでございます。
○阿部委員 私は反対のことを言っておるので、権利をとってはならぬとかなんとかいうことをこれで定めておるのではなくて、権利を得るのはもちろんけっこう、ところが不動産ということになっていますから、これは建物を除きますが、土地ということに考えてみますと、日本国じゅうの土地はみんなだれかが権利を現に持っておるのであります。新たに合法的な手段で、たとえば対価を得て、あるいは対価なくして、それぞれの原因があって権利を得なければならない。ところがその権利を得るというのは、それは当然に何ら原因なくして得ることはできません。それで、それだけの原因を作ることができない人も世の中にはたくさんおるのですから、そういう人たちは宙ぶらりんでおらなければならない。たまたまやむを得ずどこかの土地を占拠した、そこで自分が生活できる程度の占拠の仕方をした場合においては、これは当然不法領得の意思があると認められるでありましょう。そうすると犯罪になる。そういうことになって、これははなはだゆとりのない世の中になってくるではないかという観念上の疑問が生ずる。これは現実の問題としては多少離れるかもしれませんが、そういう観念上の疑問がわくのであります。ところがこれが単なる観念上の疑問でありましたならば、不問に付してもよろしいでありましょう。しかし、未解放部落という問題が、まだ日本には解決されておらぬのでありまして、はなはだ狭い地域に重なり重なって生活しておる人たちがおります。また私は現実には見ておりませんけれども、実際日本国じゅうどこにも所有権を持っておらない、土地に関して、家屋に関して、所有権も賃借権もその他の権利も持っておらなくて生活している一部の人たちがある。そうなるとこの法律というものはなかなかきびしいものである。全くゆとりのない日本の国にしてしまう。今まではこの点がはなはだゆるやかなものでありました。現に、あなたの方から、法務省刑事局として私たちに渡されておる不動産不法侵害の実情についての報告書におきましても、不時の事変とか、あるいは災害等があった場合においては、主として公有地にそれらの人たちの不法占拠が集中する、こういうことが現われております。そして国においてもそういう場合に放置することはできないので、たとえば戦争直後においては焼け跡に、前にそこで借家をしておった者には仮にその土地に家を建てる権利を与えたり、あるいは遊休の宅地においては、食糧事情が緊迫しておった関係から、戦後においては他人の所有地であってもその借家人が所有者の承諾なくして菜園地にすることを許したりという立法措置――そのときは立法措置でなくて勅令とかでやっておりましたが、そういう処置もやっております。御存じだろうと思います。それで、これは不時の事変や災害の特別の場合でありますが、しかし特別の場合でなくとも、平時でもそういう処置の必要なような事態なり、あるいは環境にある人々、それが一人や二人でなくて、集団的に存在しておる事実をお認めにならぬのでしょうか。もしそういう人たちがあるとすれば、この法律というものは大へんな法律になる、こういうふうにお考えになりませんか。
○竹内政府委員 よく御質問の御趣旨はわかりましたが、私もそういう集団の人々があることを認めますし、そしてこの法律はそれと関係がないということを申し上げたいと思います。と申しますのは、そのような集団の困っておる方々のために、あるいは公有地を提供し、あるいはある施設に入ることを承知し、あるいはそれに家を建てることを承知しておるような場合には、すべてこの法律とは関係ないわけであります。不動産のいわゆる侵奪、他人の権利を排除して、権利者の権利を排除して、自分の支配下に移すという行為はないわけであります。つまり構成要件に該当しない行為でございますので、すべてそれらは侵奪罪にならない、そういう考えでございます。
○阿部委員 お答えはそれは全く反対でありまして、今まではそれはそういうことになっておったでしょう。犯罪にもならないものですから、自分の土地にそういう人が入ってきても、それを宥恕するとか、大目に見るとかいうこともたくさんあったのでありましょうが、それが一たび犯罪を構成する、こんなことになりますと、それは宥恕はしない、こういうふうに所有者なり権利者なりの態度は変わってくると思うわけであります。そうすると、それらのことを必要とする人々にとっては、この法律ができたら、これは非常に過酷な世の中になってくるわけです。その点局長は原因と結果とを全く転倒してお考えになっておるようでありますが、いかがですか。
○竹内政府委員 個人の関係につきましては、仰せのように、この法律ができてから後におきましてはなかなか承知しないという事態になろうかと思います。しかし、今宥恕とおっしゃいましたが、宥恕ということはこの法律施行後におきましてもあると思います。慈善的な考えを持っておる人は、めんどうを見てやろうという考えで宥恕される場合が多いと思います。過去におきましても宥恕のような形をとっておりますが、これは実際はやむを得ずそうでもするより手がないということで、不本意ながらそうなっておるという事例もたくさん報告されております。それで、そのような個人の権利が、法律に定められておる権利を権利者として十分行使できないような状態になっていることは是正しなければなりません。しかしながら、そのように困っている人たちが放置されていいというのではありません。そのための福祉政治というようなこともあるはずだと思います。地方におきまして、各大都市にはかなり不法占拠された状態があると思います。これを侵奪だとは必ずしも申しませんが、権利者の承諾もなくして占拠されておる面積というものは相当あるように私どもの少ない知識でございますけれども、そこにお集めして御報告申し上げておるような事情でございまして、相当あると思うのであります。しかし、これは刑法で解決する問題ではなくて、やはりその人たちに国なり、地方公共団体なりができるだけ土地を作り、それに家を建てて住居を与えるというようなこと、これが政治ではございませんでしょうか。私は政治のことを申し上げるのではございませんで、刑法の問題を論じておるつもりでございますが、そういうふうに考えております。
○阿部委員 やはり局長は問題を転倒してお考えになっておるようにしか思われないのが残念でございます。なるほどそういう土地所有権も賃借権もない人たちに生存の余地を与えるのは、これは憲法にも書いてある通り、国の義務であり、政治でありましょうが、それが完全に行なわれていないのもまた事実であります。そしてそういうことを完全に行なう一面の措置を伴わずして、こういう法律ができることがはたしていいものかどうか、私が疑問に思うのはその点であります。私ももちろん不動産に関する所有権その他の権利がいまだに侵害されて放置されておるのがいいとは思っておりません。それは動産におけると同じように保護されなければならぬと思います。保護さるべきであるということは考えるのでありますが、さりとてこの土地に関しましては、その権利はすでに完全に日本国じゅうみんなあるわけであります。それに対して何ら権利を持っておらない国民は、これまた百人や二百人ではないのであります。何千何万、場合によったら何十万人、百万人をこえるでございましょう。それに対して、私は十分の知識を持っておりませんが、それらの人はもちろん自分の労働によって何らかの対価を得て、その対価を払うことによって土地に関する権利を得て生存していくべきでありましょう。しかし、それができる場合もあり、できない場合もあるのが実情であります。そういう事実を一面に放棄しておいて、一方でこの法律を作って、現在の所有権を保護していく、こういうことが大づかみな考えの上からはたして是認されるべきか、こういうことなんであります。
○竹内政府委員 その点は仰せの通りでございまして、現状を放任していいとは思っておりませんけれども、地方公共団体におきましても、国家にいたしましても、その点の施策を強力に進めるべきでありますし、現に進めつつあるやに聞いております。しかし、だからといって、権利の保護が放任されておっていいということにはならないと思うのでございます。だから、そういうものが完成するまでは保護せぬでもよろしいというわけには法治国としてやはりいかない。その辺を勘案いたしまして、一切の不法占拠を罰しようという立法ではなくして、窃盗的な形態による不法占拠、侵奪を罰する、そして権利関係の筋を通していこうという趣旨でございまして、今これをやることがそのような施策とちぐはぐではないかという御質問に対しましては、私正確にお答えできないのでございますけれども、しかし、そういうものが不十分であるならば、保護はせぬでもいいのだという議論には私は左袒いたしかねるわけでございます。
○阿部委員 私がさっきも申し上げたように、不動産所有権、その他不動産に対する権利を保護する必要はないのだという前提に立って私は申したのではないのであります。それを放置してよいのだということを前提としてのお話は、全然的をはずれておる。そうじゃなくて、今までこういう問題が一番起こったのは、現在でなくて過去であります。敗戦の時期であって、もし保護するのが必要であるとすれば、あの敗戦直後の時期三、四年の間こそそういう不動産所有権、その他の権利は大いに保護されなければならなかったのであるにもかかわらず、そうでなくて、もう事態がよほど落ちついた今、特に必要になってきた、こういうような立法趣旨を法律案の提案理由の説明におっしゃっておるのであります。きょうは大臣がおられぬから、この点はいずれ大臣に聞かなければならぬと思うのでありますが、この提案理由は、最も保護されなければならない時期をいたずらに過ごしている。その面においても明確にしなければなりません。一方所有権を保護すると同時に、所有権の上に眠っておる遊休のものを利用させる方面においても、かつてやったよりももっと完備した抜け目のない権利を与えなければならなかったと思います。しかし、そういうむずかしい時期を過ぎて、今あらためてこういうものをお出しになる。そして反面、土地も家もなくて、生存のできない人が残っておるにもかかわらず、その方面の処置をしないで、この法案だけを出している。こういうのは一体どうしたのか、こういう私の疑問であります。
 この点いずれまた大臣などに御出席を願いまして、そのときにお尋ねをすることにいたします。そして内容に入りましていろいろお尋ねしたいのでありますが、委員長に御相談いたします。どうせこれは三時間や三時間の質問では疑問をただすことはできないと思いますので……。
○瀬戸山委員長 ちょっと速記をとめて。
    〔速記中止〕
○瀬戸山委員長 それでは速記を始めて。
 本日は、この程度で散会いたします。
    午後一時八分散会