第034回国会 本会議 第22号
昭和三十五年四月十五日(金曜日)
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 議事日程 第十八号
  昭和三十五年四月十五日
    午後三時開議
 一 輸出入取引法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
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 第一 道路整備特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第二 特定港湾施設工事特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第三 国有財産法第十三条第二項の規定に基づき、国会の議決を求めるの件
 第四 優生保護法の一部を改正する法律案(参議院提出)
 第五 商工会の組織等に関する法律案(内閣提出)
 第六 裁判所法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第七 裁判官の災害補償に関する法律案(内閣提出)
 第八 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
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○本日の会議に付した案件
 議員小西寅松君逝去につき院議をもって弔詞を贈呈することとし、その文案は議長に一任するの件(議長発議)
 北海道開発審議会委員の選挙
 農林省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院回付)
 日程第一 道路整備特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第二 特定港湾施設工事特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第三 国有財産法第十三条第二項の規定に基づき、国会の議決を求めるの件
 日程第四 優生保護法の一部を改正する法律案(参議院提出)
 日程第五 商工会の組織等に関する法律案(内閣提出)
 日程第六 裁判所法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第七 裁判官の災害補償に関する法律案(内閣提出)
 日程第八 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
輸出入取引法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及びこれに対する質疑
    午後四時八分開議
○議長(清瀬一郎君) これより会議を開きます。
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 議員小西寅松君逝去につき院議を
  もって弔詞を贈呈することと
  し、その文案は議長に一任する
  の件(議長発議)
○議長(清瀬一郎君) 御報告申し上げることがあります。
 議員小西寅松君は、昨十四日逝去されました。まことに痛惜哀悼の至りにたえません。
 つきましては、同君に対し、院議をもって弔詞を贈呈いたしたいと存じます。なお、この文案は議長に一任されたいと存じます。これに御異議はございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 つきましては、議長の手元において起草いたしました文案を朗読いたします。
 衆議院は多年憲政のため尽力された
 議員従四位勲二等小西寅松君の長逝
 を哀悼しつつしんで弔詞をささげま
 す
 なお、この弔詞の贈呈方は議長において取り計らいいたします。
     ――――◇―――――
 北海道開発審議会委員の選挙
○議長(清瀬一郎君) 北海道開発審議会委員が一名欠員となっておりますので、この際、同委員の選挙を行ないます。
○天野公義君 北海道開発審議会委員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名せられんことを望みます。
○議長(清瀬一郎君) 天野公義君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。
 議長は、北海道開発審議会委員に高田富與君を指名いたします。
     ――――◇―――――
 農林省設置法の一部を改正する法
  律案(内閣提出、参議院回付)
○議長(清瀬一郎君) さらにお諮りいたします。
 参議院から、内閣提出、農林省設置法の一部を改正する法律案が本院に回付されております。この際、議事日程に追加して右回付案を議題とするに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。
 農林省設置法の一部を改正する法律案の参議院回付案を議題といたします。
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○議長(清瀬一郎君) 採決いたします。
 本案の参議院の修正に同意するに御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、参議院の修正に同意するに決しました。
     ――――◇―――――
○天野公義君 輸出入取引法の一部を改正する法律案の趣旨説明はあと回しとせられんことを望みます。
○議長(清瀬一郎君) 天野公義君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
     ――――◇―――――
○議長(清瀬一郎君) 日程第一、道路整備特別会計法の一部を改正する法律案、日程第二、特定港湾施設工事特別会計法の一部を改正する法律案、日程第三、国有財産法第十三条第二項の規定に基づき、国会の議決を求めるの件、右三件を一括して議題といたします。
    ―――――――――――――
○議長(清瀬一郎君) 委員長の報告を求めます。大蔵委員長植木庚子郎君。
    〔植木庚子郎君登壇〕
○植木庚子郎君 ただいま議題となりました二法律案及び一議決案について、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を報告申し上げます。まず、道路整備特別会計法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 道路整備特別会計におきまして、国が直轄で行なう道路整備事業にかかる都道府県の負担金につきましては、従来、地方債証券による納付を認め、他方、これに対応する措置として、この会計負担の借入金をもって事業資金の確保をはかることといたしてきたのであります。ところが、今回、政府におきましては、地方債証券による負担金の納付が地方財政に及ぼす諸般の影響にかんがみまして、昭和三十五年度以降、この方法をとりやめ、現金をもって納付することとし、従って、この会計における地方負担金相当額の借入金もこれを行なわないこととしているのであります。
 この法律案は、右の方針にのっとりまして、現行の道路整備特別会計法中の借入金の借り入れまたは償還に関する規定を削除いたしますとともに、歳入及び歳出、予算または決算の添付書類等について所要の改正を行なおうとするものであります。
 次に、特定港湾施設工事特別会計法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 この法律案も、また、ただいま申し述べました道路整備特別会計法の一部を改正する法律案と同様な趣旨の改正を行なおうとするものであります。
 すなわち、特定港湾施設工事にかかる港湾管理者の負担金につきましても、今後、地方債証券による納付並びにその資金的措置としての借入金の借り入れを行なわないことといたしますので、これに伴いまして、この特別会計法中の借入金の借り入れまたは償還に関する規定を削除いたしますとともに、歳入及び歳出、予算または決算の添付書類等について所要の改正を行なおうとするものであります。
 以上の両法律案につきましては、審議の結果、去る十二日、質疑を終了し、採決を行ないましたところ、全会
 一致をもって原案の通り可決となりました。
 次に、国有財産法第十三条第二項の規定に基づき、国会の議決を求めるの件について申し上げます。
 本案は、今回両陛下のお住居を皇室用財産として皇居内吹上に新営しようとするにあたりまして、国会の議決を求めようとするものであります。
 現在両陛下のお住居となっておりますお文庫は、戦時中に防空施設として作られたものでありますため、お住居としては適当でないと考えられますので、そのお文庫に連接して、鉄筋コンクリート作り二階建、延べ四百十坪の建物を増築しようとするものであります。この増築工事の予定価格は一億四千九百八十五万三千円でありまして、これを皇室用財産としようとするにつきましては、国有財産法第十三条第二項の規定により国会の議決を経る必要がありますので、本案が提案された次第であります。
 本案は、大蔵委員会に付託されましてから慎重に審議いたしました後、去る十四日、質疑を終了し、直ちに採決に入りましたところ、全会一致をもって可決となりました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(清瀬一郎君) 三件を一括して採決いたします。
 三件は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、三件は委員長報告の通り決しました。
     ――――◇―――――
日程第四 優生保護法の一部を改
  正する法律案(参議院提出)
○議長(清瀬一郎君) 日程第四、優生保護法の一部を改正する法律案を議題といたします。
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○議長(清瀬一郎君) 委員長の報告を求めます。社会労働委員長永山忠則君。
    〔永山忠則君登壇〕
○永山忠則君 ただいま議題となりました優生保護法の一部を改正する法律案について、社会労働委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本案の内容は、都道府県優生保護審査会の決定に基づく優生手術に関する費用については、現在は直接国庫が支出することになっているのを、都道府県の支弁とし、国庫はその費用を負担することに改めて、優生手術の実施及びその支払い事務等の円滑をはかることが第一であり、都道府県知事の指定を受けて受胎調節の実地指導を行なう者が受胎調節のための医薬品の販売をすることができる期間を五カ年間延長し、昭和四十年七月三十一日までとすることが第二でございます。
 本案は、三月三十日本委員会に付託され、四月五日提案者の参議院議員谷口弥三郎君より提案理由の説明を聴取した後、同月十三日、質疑を終了し、直ちに採決を行ないましたところ、本案は全会一致をもって原案の通り可決すべきものと議決いたした次第であります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(清瀬一郎君) 採決いたします。
 本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。
     ――――◇―――――
○議長(清瀬一郎君) 日程第五、商工会の組織等に関する法律案を議題といたします。
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○議長(清瀬一郎君) 委員長の報告を求めます。商工委員会理事小川平二君。
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    〔報告書は会議録追録に掲載〕
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    〔小川平二君登壇〕
○小川平二君 ただいま議題となりました商工会の組織等に関する法律案につきまして、商工委員会における審査の経過並びに結果の概要を御報告申し上げます。
 わが国の中小企業は、中規模事業者と小規模事業者との間に著しい経営格差があることをその特色の一つとしているのでありまするが、この格差を縮小し、中小企業の均衡した発展をはかるための小規模事業者対策は、従来必ずしも十分とはいえず、これを飛躍的に強化することが現在最も緊要とされているのであります。かかる実情にかんがみ、小規模事業者のための指導対策を推進するとともに、商工業の総合的改善発達をはかるための組織を確立すべく、本案が提出されたのであります。
 次に、本案の内容について申し上げますと、第一に、商工会は本法に基づく特殊法人とし、その地区につきましては、市町村の廃置分合等若干の場合の例外を除いて、一つの町村に一つの商工会を設けることを原則とし、商工会議所の地区とも重複することのないよう定められております。
 第二に、商工会は、商工業に関する相談、指導その他地区内の商工業の改善発達のために必要な事業を行なうものとしているのであります。
 第三に、商工会は、地区内の商工業者の半数以上の加入があれば、通商産業大臣の認可を受けて設立され、その管理は総会、総代会及び役員を通じて行なわれることとし、なお所要の監督規定も設けられております。
 第四に、商工会及び商工会議所の行なう小規模事業者のための事業については、国がその経費の一部を補助するよう定められておりますが、このための予算措置として、本年度においては約四億円が計上されているのであります。
 本案は、三月四日本会議において趣旨説明が行なわれた後、即日当委員会に付託され、八日政府委員より提案理由の説明を聴取し、十五日より質疑に入りました。
 審議にあたっては、二十二日に参考人九名より意見を聞く等、慎重を期し、なお、十八日には審査小委員会を設置して、鋭意検討に当たらしめたのであります。
 小委員会は、二十九日より六回にわたって会議を開き、本案並びに別途日本社会党より提案されておりました商工会法案及び民主社会党の本案に対する修正案を中心に綿密な審査を行なって参りましたが、四月十四日に至り、ようやく各小委員の意見の調整を得て、同日の委員会に小委員長小川平二より結果の報告がなされました。
 かくして、同日委員会において本案の質疑を終局したのでありますが、これに先だち、社会党提案の商工会法案について採決を行ないましたところ、起立少数をもって否決いたしましたことを、申し添えておきます。
 質疑終局後、本案に対しまして、自由民主党、日本社会党及び民主社会党共同提案による修正案が提出され、自由民主党小川平二の趣旨説明の後、直ちに採決を行ないましたところ、本案は全会一致をもって修正案の通り修正議決すべきものと決した次第であります。
 修正点は、商工会の事業の範囲、設立認可の手続、役員、総代会及び名称使用制限に関するものであります。
 なお、採決後、本案に対し三党共同提案による附帯決議案が提出され、日本社会党勝澤芳雄君の趣旨説明及び民主社会党武藤武雄君の賛成討論の後、これまた全会一致をもって提案通りの附帯決議を付することに決したのであります。
 附帯決議の要旨は、政府は商工会議所の行なう小規模事業者対策について十分に指導すること、商工会の事業を広く積極的に行なわしめるよう指導すること、経営改善普及員の身分保障について十分考慮すること、固定資産税の免除について配慮すること、及び、商工会連合会の法制化をすみやかに実現するよう努力すること、の五点であります。
 質疑の内容、修正案及び附帯決議等の詳細につきましては委員会議録に譲ることといたし、以上をもって御報告といたします。(拍手)
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○議長(清瀬一郎君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告の通り決しました。
     ――――◇―――――
○議長(清瀬一郎君) 日程第六、裁判所法の一部を改正する法律案、日程第七、裁判官の災害補償に関する法律案、日程第八、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題といたします。
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○議長(清瀬一郎君) 委員長の報告を求めます。法務委員会理事小島徹三君。
    〔小島徹三君登壇〕
○小島徹三君 ただいま議題となりました下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案外二法案につきまして、委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 まず、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。
 この法律案の改正趣旨は、最近における市町村の廃置分合、名称の変更、土地の状況並びに交通の利便等にかんがみまして、簡易裁判所の名称、所在地及び管轄区域を変更しようとするものであります。すなわち、改正点の第一は、古市簡易裁判所の名称並びに上下簡易裁判所の名称及び所在地を変更すること、第二は、京都簡易裁判所外六簡易裁判所の管轄区域を変更すること、第三は、本法の別表について所要の整理を行なうこと等であります。
 次に、裁判官の災害補償に関する法律案について申し上げます。
 現在、裁判官の公務上の災害に対する補償につきましては、他の特別職の職員と同様に、労働基準法等の施行に伴う政府職員に係る給与の応急措置に関する法律の規定によっているのであります。今国会に、政府は、国家公務員災害補償法等の一部を改正する法律案において、特別職の職員の給与に関する法律の一部を改正し、同法に掲げる特別職の職員の公務上の災害補償については一般職の職員の例によることとしようとしておるのであります。よって、これに対応して、裁判官の公務上の災害に対する補償についても一般職の職員の例によるものとして、その災害補償制度を整備しようとするのであります。
 さて、法務委員会におきましては、両案について、四月十二日、質疑を終了し、討論することなく、両案を一括して採決いたしましたところ、右両案はそれぞれ多数をもって政府原案通り可決いたしました。
 次に、裁判所法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 御承知のように、近時、裁判所に係属する事件の増加に伴い、訴訟が遅延する傾向にあり、その解消が目下の急務となっておるのであります。
 本案は、審判の適正、迅速化をはかり、人権保障の実をあげる一方策として、裁判所書記官をして、従来の職務に付随して、新たに裁判官の命を受けて裁判官の行なう法令及び判例の調査その他必要な事項の調査を補助させようとするものであります。
 本案は、三月二十一日当委員会に付託せられ、本改正案により書記官は一般的に裁判官の補助機関となるのではないか等の質疑があり、また、本案に関連して、別途裁判所が実施せんとする書記官の勤務時間の延長及び給与調整額の引き上げ等の問題について熱心な質疑が行なわれました。それらの詳細については会議録に譲ることといたします。
 かくて、四月十二日質疑を終了し、次いで、四月十四日、本案に対し、日本社会党及び民主社会党共同提案にかかる修正案が提出されました。すなわち、書記官は、裁判所の事件に関し、法令及び判例の調査をつかさどる、という趣旨に改めようとするものであります。
 この修正案に関し質疑を行なった後、討論に入りましたところ、自由民主党を代表して高橋禎一委員から、修正案に反対、政府原案に賛成、また、日本社会党及び民主社会党を代表して井伊誠一委員から、日本共産党を代表して志賀義雄委員から、それぞれ修正案に賛成、政府原案に反対の意見が述べられました。
 次いで、採決の結果、修正案は少数をもって否決せられ、本案は多数をもって政府原案通り可決することといたした次第であります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(清瀬一郎君) これより採決に移りますが、まず、日程第六につき採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○議長(清瀬一郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。
 次に、日程第七及び第八の両案を一括して採決いたします。
 両案を委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、両案は委員長報告の通り可決いたしました。
     ――――◇―――――
○議長(清瀬一郎君) 議院運営委員会の決定によりまして、内閣提出、輸出入取引法の一部を改正する法律案の趣旨の説明を求めます。通商産業大臣池田勇人君。
    〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) 輸出入取引法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
 現行輸出入取引法は、昭和二十七年九月、輸出取引法として施行され、その後、昭和二十八年八月、輸出入取引法に改正され、さらに、その後二回の改正を経て今日に至っております。その間、輸出入取引法は、輸出入取引における秩序の確立についての基本法として多大の役割を果たして参ったのであります。
 しかしながら、最近における世界貿易の状況を見ますと、諸外国においては、依然として、わが国の一部の商品の無秩序な進出が問題とされ、差別的な対日輸入制限はいまだ撤廃されておらないのであります。従って、輸出取引秩序の確立のための施策がますます強く要請されているのであります。さらに、今後わが国の貿易の自由化が進捗して参るに伴いまして、一部商品については輸入の過当競争の激化が予想され、その対策を整備する必要に迫られておりますとともに、後進諸国との貿易促進のためには、これらの国からの物資の買付を民間の協調体制のもとに進める必要性も増大して参っております。これらの諸情勢に即応いたしまして、この改正案を提出した次第であります。
 次に、改正の主要点につきまして御説明いたします。
 第一は、輸出貨物の国内取引に関する生産業者または販売業者に対する政府規制の規定の新設であります。現行輸出入取引法におきましては、輸出業者の協定の場合とは異なりまして、生産業者または販売業者の輸出貨物の国内取引に関する協定につきましては、アウトサイダー規制を行なう規定を欠いておりますが、過当競争の原因が国内の生産または販売の分野に存する場合には、必要に応じ、生産業者または販売業者の協定につきましてもアウトサイダー規制を行なうことができるように改正し、輸出の過当競争の防止につき万全を期せんとするものであります。
 第二は、輸入貨物の国内取引における購入に関する事項についての需要者または販売業者の協定の規定の新設であります。現行輸出入取引法におきましては、輸入取引における過当競争による高値買い等の弊害を除去するために、輸入業者の段階において協定その他の共同行為を行なうことが認められております。わが国の輸入取引におきましては、国内の需要者または販売業者が輸入取引の内容を実質的に左右している場合が多く見られる実情にかんがみまして、輸入業者による共同行為によって過当競争等による弊害を除去することが著しく困難である場合には、きわめて厳重な制限のもとに、需要者または販売業者が輸入貨物を購入する場合の国内取引について協定を締結することができるようにすることが、これからはぜひ必要であると考えまして、この点に関する規定を設けました。
 第三は、輸出入調整に関する輸出業者及び輸入業者の協定の規定の新設であります。従来、後進国との貿易においては、外貨資金割当制度によって、ある程度割高な物資の買付を行なって、わが国の商品の輸出を容易にしてきた例が少なくないのでありますが、貿易の自由化の進展に伴い、政府においてかかる措置をとることは次第に不可能となりつつあります。今後は、貿易業者間の自主的な話し合いにより後進国との貿易の維持拡大をはかることが必要でありますので、輸出入の調整に関する輸出業者及び輸入業者の協定に関する規定を設けることといたしました。
 第四は、貿易連合の制度の創設であります。貿易商社が連合して貿易取引を行なうということは、貿易取引の秩序の確立という観点からも、また、特に中小商社の健全な発展のためにも必要でありますが、現行法令における諸制度をもっていたしましては所期の目的を達成することが困難と考えられますので、今回、連合して貿易取引を行なう貿易業者の社団に、貿易連合という名のもとに新たに法人格を付与し、その助長をはかることとし、所要の規定を設けることといたしました。
 右のほか、今回の改正案におきましては、輸入組合の設立を容易にすること、輸出組合、輸入組合等の事業内容を明確にし、非出資組合を非課税法人にすること等、若干の改正を行なうこととしております。
 以上の改正によりまして、関係業界の協力と相待って、貿易の秩序ある発展が期待されるものと、深く確信いたしておる次第であります。
 以上が輸出入取引法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
○議長(清瀬一郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告がございます。順次これを許します。板川正吾君。
    〔板川正吾君登壇〕
○板川正吾君 私は、日本社会党を代表しまして、ただいま議題となりました輸出入取引法の一部を改正する法律案について、岸総理以下関係閣僚に対して若干の質疑を行ない、本改正案が、貿易自由化に伴う過当競争の防止という名目のもとに、その実は、輸出入に関する国内取引に、企業間の協定の強化、すなわちカルテル体制の強化をはかり、農民、中小企業者、労働者等に対し独占価格を押しつけ、大資本の利潤を守らんとする以外の何ものでもないということを明らかにせんとするものであります。(拍手)
 御承知のように、輸出入取引法は、昭和二十七年、輸出取引法の名のもとに、独占禁止法の適用除外法として制定されて以来、すでに三度にわたって改正が行なわれ、そのつど、独占禁止法の骨抜き的役割を拡大して参ったのであります。しかるに、岸内閣は、三十回国会に警職法とともに独禁法の改正を提案するや、輸出入取引法もまた四度目の改正を行なわんとしたのでありまするが、警職法と独禁法の改正案が国民の激しい反対にあった審議未了、廃案となるや、輸出入取引法の改正案もまた廃案となったのであります。さらに、岸内閣は、翌三十一回国会に、今度は輸出入取引法のみの改正案を提出したのでありますが、これまた審議未了となったことは、いまだわれわれの記憶に新しいところであります。
 今回、政府は、性こりもなく、輸出入取引法の改正案を提出してきましたが、おもしろいことに、この提案理由を見ますと、廃案となった前二回が不況による過当競争の防止という理由であるのに反し、今回は貿易の自由化による過当競争の防止と変わっておることであります。これは、常にまことしやかな理由を掲げて国民の目をごまかし、財界かねての要求である独禁法の骨抜きをはからんとする岸内閣の陰険きわまりない本質の現われとして、われわれの断じて容認できないところであります。(拍手)
 そこで、まず、私は、本法改正にあたり、政府の基本的な態度について、岸総理にお伺いをいたしたいと存じます。
 第一に伺いたいことは、カルテル体制の強化と貿易自由化についてであります。本法改正案で第一に不可解なことは、その改正の理由であります。貿易を自由化すると国際競争が激しくなるから、カルテル体制を強化し、国内取引での競争を制限するというのでありますが、これは、外国に対しては自由化を叫び、国内に対しては不自由化を押しつけるということでありまして、まことに矛盾もはなはだしいといわねばなりません。(拍手)特に、カルテルは、常に大企業の指導権下に行なわれるものであるから、貿易自由化の対策としてカルテル体制の強化をはかることは、政府の貿易管理権を大資本の手に移すことであって、本質的には何ら変わりはないのであります。これでは貿易自由化と相反すると思うが、岸総理の見解を伺いたいのであります。(拍手)
 第二に伺いたいことは、総理は、最近、海外の独占禁止政策をいかに認識しておるかということであります。第二次大戦後、世界各国は、カルテル容認の思想が全体主義に立脚し、戦争経済に通ずるとしてこれを排し、自由競争を基礎とする国際貿易によって平和経済を確立するという目的のもとに、国際通貨基金やガットが生まれたことは、御承知の通りであります。その後、西欧各国は戦後経済から立ち直り、貿易自由化の体制を整備しつつ、各国とも国内の独占禁止法制の充実をはかり、国内取引における競争を確保し、同時に、国際的にも反カルテル政策を強化する動きとなり、一九五八年、ガット総会では、ついにカルテル非難決議をいたしたのであります。このように、自由貿易を目標とするガット加盟国がみなカルテル禁止政策をとりつつあるときに、何がゆえに、わが国だけが、逆にカルテルの強化を行なわんとするのか、その理由を総理から明快に御答弁願いたいのであります。(拍手)
 第三に伺いたいことは、岸総理の商工行政に対する基本的な考え方であります。申し上げるまでもなく、戦前、商工官僚としての岸総理の足跡は、まさにカルテル強化の歴史でありました。すなわち、岸総理は、カルテル法といわれました重要産業統制法のそもそもの立案者でありましたし、昭和十一年には、商工省工務局長として、さらに同法を改正強化し、戦時中は、商工大臣、軍需大臣として、大企業を中心とした統制経済の総指揮者であったのであります。当時、岸総理は、みずから「重要産業統制法の解説」なる一書を著わし、その中で、過当競争の弊害を説き、カルテルの必要を強調しておりまするが、その内容は、今日の輸出入取引法の改正理由とほとんど変わっておらないのであります。三つ子の魂百までというがごとく、岸総理はいまだにカルテル政策を商工行政における金科玉条としておることは、総理自身、戦争責任を反省していない証拠ではないか。(拍手)一体、岸総理は、戦時中犯した商工行政の失敗をいかに反省されておるか、この際、総理の所信を明らかにしていただきたい。(拍手)
 岸総理に最後に伺いたいことは、わが国産業における過当競争の根本的解決に対する決意についてであります。昨年、わが国の輸出貿易は大幅に伸張を見ましたが、それでも、国民一人当たり、わずかに三十八ドル、一万三千五百円にすぎず、これは、わが国よりはるかに人口密度の高いオランダ、べルギー等に比較すると、九分の一ないし十分の一であります。このことは、日本の輸出規模が西欧諸国に比べていかに小さいかということを示しており、同時に、それは、日本の輸出市場がいかに狭隘であるかを物語っているのであります。従って、今日、もしわが国貿易界に過当競争の弊害ありとするならば、それは貿易の自由化によって生ずるのではなく、アジアの歴史と日本の地理的条件を無視し、みずから中国貿易を断絶し、輸出市場を狭ばめている岸内閣の対米追従の外交方針にこそ、その根本的原因があると申さねばなりません。(拍手)政府は、今、米国に押しつけられて、準備も確信もなしに自由化政策をとり、いたずらに経済界の混乱を引き起こしているが、日本経済が真に貿易の自由化をはかり、国際競争に打ち勝たんとするならば、まず日中を中心とするアジア貿易の自由化をはかることが先決要件でなければなりません。しかるに、岸内閣は依然として中国敵視政策を改めないことは、まことに遺憾千万であります。(拍手)最近、某新聞の世論調査によると、国民の八割は中国との貿易再開を望んでいますが、岸内閣のある限り、これら国民的願望を果たすことは不可能であります。
 そこで伺いたいことは、岸総理は、日本経済の底にひそむ過当競争の抜本的解決のためには、アジアにおける東西貿易の自由化が必要であるということを認め、この際、その障害となっている日米安保条約の批准を断念し、いさぎよく政治責任をとることが日本経済を発展せしめる前提であると思うが、これに対する総理の決意を伺いたいのであります。(拍手)
 次に、通産大臣に伺います。法案の内容については委員会の審議に譲りますが、主要な点について一、二伺います。
 第一は、輸出入取引法の規制範囲は、本来、輸出入取引の対外的窓口のみに限定し、国内取引に関しては独占禁止法によるべきが正しい法体系ではないか、しかるに、現行法では、輸出入に名をかりて、国内取引にまでカルテルやアウトサイダー規制を認めていることは、独禁法の法域を不当に侵しておるものと思うのであります。従って、貿易自由化の対策として輸出入取引法を改正せんとするならば、全国農業団体等が強く要望しているように、現行輸出入取引法の第五条の三及び第七条の二を削除して、国内取引のカルテルを禁止すべきではないか、しかるに、何がゆえに自由化と逆にカルテルを強化する改正案を出したのか、その理由を伺いたいのであります。
 第二は、各国の独占禁止法制の中で、公然と国内取引における競争を実質的に制限するカルテル及びアウトサイダー規制を認めている国はないと思うが、大臣はどう見ておられますか。もしありとするならば、一体どことどこの国にあるか、国名をあげてお答えを願いたいのであります。
 次に農林大臣に伺います。
 農林大臣は、全国の農業団体や漁業団体等がこぞって本法改正に反対している事実をどう考えておられますか。御承知のように、反独占の思想は、七十年前、米国の東部農民の独占の横暴に対する戦いから端を発して参ったものであります。今日、独占が農民の敵だという思想は、国境を越え、世界の常識となっておるのであります。本来、農林大臣は、わが国人口の四割を占める農民の代表者として、本法のごとき独占強化法に対しては、農民の利益を守るため、職を賭しても反対すべきであるのに、われわれは、農林大臣が閣内でこれに強く反対したという声を聞かないのであります。まことに遺憾といわなければなりません。
 そこで伺いますが、農林大臣は本法改正が農民に絶対に不利益を来たさないと断言できるかどうかということであります。農民に不利益なしとするならば、もし、将来、それが事実をもって明らかにされた場合、一体、農林大臣は、政治家としていかなる責任を負わんとするつもりか、その際の覚悟を明らかにしておいていただきたいと思うのであります。
 次に、外務大臣に伺います。
 御承知の通り、米国内では、カルテルは悪なりという思想は、政府はもちろん、資本家の中でさえも徹底しておるのであります。そこで伺いたいことは、本法が改正された場合、米国の政府等より、日米通商航海条約第十八条第一項の独占及びカルテル禁止の条項違反として将来問題とされるおそれはないか、ということであります。
 第二は、現在、ガット三十五条を援用して、わが国にガット加盟国の待遇を与えていない国が英国等十四カ国ある。それらの国では、わが国の低賃金によるダンピングを理由としていますが、本法の改正が通れば、さらにその上に、国際慣行を無視するカルテル政策によって、日本はますます国際経済社会の無法者として非難の的になると思うが、これに対し外相の見解はどうでありましょうか。
 最後に、公正取引委員長に伺います。
 最近、政府は、財界多年の要望である独占禁止法の実質的廃止を企図し、その具体的方針として、輸出入取引法や繊維工業設備特別措置法等を個別に改正せんとしており、海外では、独占禁止政策がますます強化されようとしておるとき、日本は全く逆コースをとっておるのでありますが、これでは、独禁法がやがて有名無実となり、独禁法の番人たる公正取引委員会は無用の長物となるでありましょう。御承知のように、公正取引委員長は、独禁法第四十四条第二項により、独禁法の目的を達成するために、国会に対し意見を述べる権限を持っております。
 そこで伺いたいことは、貿易の自由化に伴い、わが国今後の独禁法制のあり方に対して、一体いかなる見解を持っているか、独禁法制は強化さるべきと思うが、どうか、この際、率直なる見解を表明してもらいたいのであります。(拍手)
 以上申し上げました私の論点は、本来ならば、自由主義経済を標榜する政府及び自由民主党によって主張さるべき性質のものであります。しかるに、今日、自由民主党の中に同調の声なきは、まことに自由民主党のために遺憾とするところであります。私は、岸政権のもと、独占が強化され、ますますファアッショ経済に移行しつつあるわが国経済の危険なる現状を指摘しつつ、本質問を終わる次第であります。(拍手)
    〔国務大臣岸信介君登壇〕
○国務大臣(岸信介君) お答えいたします。
 第一点は、貿易の自由化とカルテルの強化の問題についての御質問であります。日本の経済は、御承知の通り、貿易に依存しておる度合いがきわめて大きいのでありまして、従って、輸出入とも、その貿易を拡大していくことが日本の経済を繁栄せしめ、日本経済自体を成長せしめる上から、絶対に必要であることは、御理解下さることと思います。そのためにどうすべきかといえば、言うまでもなく、日本の経済の体質を改善し、生産性を高め、そうして国際競争力を高めていくということが必要であることは、言うを待たないのであります。こういう意味において、最近の国際の、貿易自由化の大勢に順応して、貿易の自由化の方策をとるべきことは、当然であろうと思います。これが日本経済の成長と繁栄のために絶対に必要である。ところが、それを達するのには、やはり、自由経済主義によって経済を運営していくことが基本であることは、言うを待たないのであります。この意味において、公正な自由競争を妨げるような独占的な行為を禁止すべきことは当然であると思います。ただ、日本の貿易の実情を見ますると、海外の市場におきましても、至るところにおいて、日本の商品が、過当競争によって、その国の産業にいろいろな影響を及ぼし、そのために、日本の輸出の拡大というものが阻害されておるという実情にあるのであります。従って、自由競争は、われわれは基本と考えますけれども、その弊害、その行き過ぎというものに対しては、これを適当に是正していく、そうして、秩序ある貿易を伸展せしめることが必要であると思います。そういう意味において、今回、この輸出入取引法を改正しようというのでありまして、われわれは、これによって御心配になっておるような独占企業を拡大していくという考えではないのであります。
 次に、こういうやり方が海外における独占禁止の国際的な大勢に逆行するものではないかという意味の御質問であります。戦後、独占禁止について各国がとっております法制は、一言にして申しますと、公正な自由競争を確保するために、そういう独占的な行動を禁止するという傾向になっておることは、御指摘の通りであります。ただ、その立法の状況、実際のやり方を見ますると、これは、やはり、その国々の実情に従い、その国々の産業や経済の実情に沿うようなやり方をやっておりまして、ある場合においては、競争や独占行為から生ずる弊害を禁止、制限するというやり方もありますし、独占行為自身を全部禁止するというような法制をとっておるところと、両方あると思います。そうして、ガットの決議につきましても御指摘があった通りでありますが、私どもの今回のこの立法というものは――日本貿易に伴うところの従来の弊害、その弊害を指摘されて、各国においていろいろな日本商品に対する特殊の制限すら設けられておる。ガット三十五条の適用の問題に関しましても、むしろ、日本商品の過当競争から生ずるところの弊害に対する制裁が加えられておるという実情であります。従って、そういうものを、われわれが適当に制限し、除いていくということは、決して、国際の大勢に反するとか、あるいはガットの決議に反するというようなものではない、と考えております。
 第三は、私の商工行政に対する基本的態度いかんという御質問であります。特に、私がかつて商工省の役人とし、また商工大臣としてやったところの商工行政というものを、今日もなお引き続いてやる考えじゃないかという御質問であります。言うまでもなく、当時の経済事情と今日とは全然違っております。また、法制の上から申しましても、当時は、独占禁止法というようなものが産業経済の基本法として制定もされておりません。また、この法律が設けられました当時、いわゆる全解禁によって日本の不況をいかにして克服するかという課題があり、日本の産業の実情が非常な過当競争によって共倒れになるというようなおそれがある場合におきまして、カルテルを強化することによって、各種産業の維持と、その基礎の確立と安定ということに資したわけでありまして、産業政策の基本としてカルテル政策というものを一貫して強化するという考えは、私は決して持っておるわけではありません。
 次に、過当競争の根本的な理由は、市場が小さいので、従って、東西貿易を盛んにする、ことに、中共貿易を拡大していく必要があるのではないかという御質問であります。もちろん、日本の貿易を拡大していく上におきましては、自由主義の国だけではなくして共産主義の国に対しましてもまた貿易を拡大していくという方針のもとに、すでに日ソ間の貿易協定等についても御承知の通りであります。ただ、日中貿易につきましては、私どもは、あくまでもこの日中貿易というものを途絶するとか、あるいはこれをしないということを申したことは全然ないのであります。むしろ、われわれとしては、そういう貿易、経済の面は、依然として、従来と同じように、これを拡大していこうという考え方を持っております。いわんや、私が従来しばしば申し上げているように、中共側が非難しているように、敵視政策をとっているとかいうような考えでは全然ございませんで、私どもは、あくまでも、貿易、経済の点においては、お互いが交流することがお互いの利益であるという観点に立っておるのであります。ただ、政治的問題をこの際に解決するということは、日本の置かれておるところの国際的の立場からいって、そういうことは今日直ちに考えられない。しかし、それは敵視政策をとっているからではございません。日中両国が置かれておる国際的の関係を考えるならば、私は、良識ある人はその点については十分に理解されることだと信じております。
    〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 御質問の第一点の、今回輸出入取引法の改正案を出しました趣旨は、先年御審議願っておりましたあの改正案とは内容においてよほど違っております。今回は、輸出振興カルテル、あるいは商社の登録制等、広範囲にわたるものはやめまして、輸出入貿易促進のための最小限度の規定を設けることにいたしたのでございます。御承知の通り、輸出の無秩序をなくすると同時に、輸入の高値買いを防止し、また第三には、後進開発国との貿易を拡大する、自由化によりまして縮小しがちな後進国との貿易を拡大しようという、この三点が主たる目的でございます。御承知の通り、従来、輸出入につきましては、商社、すなわち輸出入の行為者についての制限はいたしておりまするが、いよいよ貿易の自由化になりますると、輸出入の行為者、すなわち商社に限らず、その背後におりまする生産業者、販売業者の影響も非常に出て参りますので、私は、今回は、貿易取引という特殊の分野におきまして、わが国の産業を拡大し、貿易を振興さす上の最小限度の規制を行なおうとするものであります。これによりまして、私は、世界の信用を高め、通商貿易の発達を期せられると考えておるのであります。
 なお、いろいろ弊害の問題が起こるという御心配もございましょう。しかし、これは法律にも書いておりますように、お話の農林水産関係物資につきましては、通産省は、主務大臣である農林大臣と十分打ち合わせをいたしました。また、公取ともあれいたしまして、弊害がある場合には認可を取り消す等、万全の措置をとるように準備いたしておるのであります。
 なお、独占禁止政策についての各国の例という御質問でございまするが、これは、先ほど総理がお話になりましたように、原則として制限行為を禁止し、例外にこれを許しておるドイツ、日本、アメリカのようなやり方もございます。また、イギリスのごとく、制限行為はしないで自由にやっている、しかし、そのカルテルその他が経済界に悪影響があると認めたときにこれを禁止する、この二通りのやり方がございます。私は、日本の独占禁止に対しまするいろいろな考え方は、独、英、米と比べて行き過ぎてはいない、と確信しておるのであります。(拍手)
    〔国務大臣菅野和太郎君登壇〕
○国務大臣(菅野和太郎君) 農林大臣に対しての御質問がおありでありましたが、ただいま通産大臣からもその点についてお答えがあったのであります。この改正法によって、農林漁業者に不利益を来たさないかということについてのお尋ねであったように思うのでありますが、まず第一に、このカルテルを法文上で容認する場合には、農林漁業者の利益を不当に害しないということを条件にいたしております。それから、また、ただいま通産大臣からもお話がありましたが、農林漁業者の必要とする主要な生産資材につきましてカルテルを容認する場合には、通産大臣と協議の上で容認するということにいたしておりますからして、従って、法文上並びに運用上において決して農林漁業者には不利益を来たさないということを確信いたしております。(拍手)
    〔国務大臣藤山愛一郎君登壇〕
○国務大臣(藤山愛一郎君) 私に対する御質問は、日米通商航海条約第十八条第一項に触れておらないかということでございますけれども、第十八条第一項は、御承知の通り、両国にありますカルテル協定等がもし通商に悪影響を及ぼした場合には、お互いに、一方からの要請によりまして協議をするということになっておりますので、これに触れておりません。元来、輸出入取引法は、輸出入の秩序を確立するものでありまして、現にその運用適正を得ておりますので、日米両国相互の貿易の健全な発展に資するところが多いのでございまして、アメリカ側もその点は十分認めております。
 なお、外国との条約その他取りきめに違反するおそれのありますような締結は認可してならないことになっておりますので、その点は相愛でございます。
 なお、ガット三十五条援用国によるダンピングの非難がますます出てきはしないか、こういうような御質問でございます。元来、日本がただいま非難されておりますのは、過当競争によって非常な安い品物を輸出している、そうして、それぞれの国の市場を荒らしている、影響を及ぼしているというところに非難があるのでございます。輸出入取引法は、もともと、わが国の輸出を正常にして、そうして、できるだけ秩序ある取引体制を打ち立てていこうということでございますから、この点から見ましても、ダンピングの非難をむしろ是正していく方向に向かって参りますので、低価格輸出問題を解決することによりまして、かえって対日差別待遇問題等の解決の道を開き得るのだ、というふうに考えております。(拍手)
    〔政府委員佐藤基君登壇〕
○政府委員(佐藤基君) お答えいたします。
 貿易の自由化に伴いまして、財界において独禁法を緩和すべしという要望があるということは、よく存じております。しかし、独禁法は、申すまでもなく、経済基本法でありまして、この改正、ことに緩和ということは、きわめて重要な問題でありますので、われわれは原則として反対の立場をとっておりますし、かりに、やるにしても、十分慎重な検討を要するものと思われます。
 次に、国の施策と独禁法の関係につきまして、ただいま独禁法第四十四条第二項の規定のお話がありましたが、独禁法第四十四条第二項の規定によりまして、国会に対しまして公正取引委員会は意見を述べることができることになっておるのであります。しかしながら、従来におきましても、公正取引委員会は、政府の提案するところの法令であるとか、あるいはまた行政措置、これらで独占禁止法に関係のあるものにつきましては、事前に協議をいたしておりまして、十分意見を調整の上、結論を出しておるのであります。従いまして、今国会に御審議を願いまするところの輸出入取引法であるとか、あるいは繊維工業設備臨時措置法、これらの改正案につきましても、十分関係官庁と協議して意見の調整を行なったのであります。従って、私どもといたしましては、国会に対して意見を提出することは考えておりません。
 次に、海外の諸国の独禁制度でございますが、米国におきましては、一八九〇年に有名なシャーマン法ができております。しかし、大多数の国におきましては、第二次大戦後におきまして独禁制度というものが整備強化されたのでありまして、しかも、これからの法制につきましては、先ほど通産大臣からもお話のありました通り、法の建前が二つの行き方がある。また、その法を作るにつきましても、その国の国情、ことに、経済事情というものを基礎にして作られるのでありますから、直ちにどちらの国の法律と比較するということは、きわめて困難ではないかと思っております。公取といたしましては、従来から、外国の独占禁止政策につきまして調査研究をしておるのでありますが、本年度の予算におきまして、国際取引課が新設されることになったのであります。そこで、この国際取引課を通じまして、独占禁止法の海外における法制等をさらに研究いたしますほか、国際カルテル、トラストの動向の調査検討を進めまして、独禁法制の適正な運用と自由化対策の検討に資したいと考えております。
    ―――――――――――――
○議長(清瀬一郎君) 加藤鐐造君。
    〔加藤鐐造君登壇〕
○加藤鐐造君 私は、民主社会党を代表して、ただいま趣旨の説明のありました輸出入取引法の一部を改正する法律案に対して、岸首相外各所管大臣に質問をせんとするものであります。
 政府は、昭和三十三年十月の第三十回国会に独禁法の改正案を提出して審議未了となり、次の国会で輸出入取引法の改正案を提出して、これまた審議未了となっております。今回政府が本案を提出した真意は、これら二案がいずれも審議未了のまま廃案になった経緯にかんがみ、従来の独禁法を骨抜きにしようとするねらいを、今度は貿易の自由化に備えるための輸出入取引法改正という新しい擬装をもって提出したものであります。政府は、最近、急に貿易・為替の自由化に非常な熱意を示してきて、今後三カ年間に九〇%まで自由化する方針を発表しております。われわれも、貿易の自由化は、基本的には反対するものではありません。わが国の経済発展の長期見通しに立つ限り、これと積極的に取り組むことは民族的課題であると信ずるものであります。しかし、それを達成するには多くの困難がそれに伏在しておるということを知らなければなりません。
 政府は、従来、貿易の自由化について積極的な意図を示しておらなかったにもかかわらず、岸首相が安保改定調印のために渡米するに際して、急に自由化品目を発表するなどの熱意を示すに至ったのは、アメリカ側から強要されたためであると憶測するものがあります。(拍手)対米輸出が黒字に転じた最近の貿易事情から見て、うなずける節がありまするが、しかし、もし、しかりとすれば、あまりにも自主性のない態度であるといわなければなりません。また、そうでないというならば、あまりに唐突な政策転換であるといわなければなりません。貿易自由化論者が引き合いに出す西欧各国の自由化が非常に進んでおることは事実でありますが、これは長期にわたる準備と努力によって達成したものであります。
 西独の例をもってみましても、エアハルト氏の名著「ドイツ経済の奇跡」によりますと、西独政府は、その成立の当初から、貿易の自由化を達成するために積極的な方針を立て、異常な努力を続けてきたことが、うかがえるのであります。しかも、西欧には、現在、欧州共同市場と自由貿易連合の二つの機構があって、相互扶助の体制ができております。
 しかるに、日本は、戦後今日まで一貫して外貨割当制度を堅持して、国内産業を温室の中で保護してきたのであります。さらに、日本の経済は、地域ブロックのささえもありません。また、中国貿易の再開も政府は考えておらないという状態であります。そして、他のアジア諸国との多角決済貿易もまだ確立されておらない今日、急激に自由化の荒風にさらすことは、温室の花を寒風にさらすようなものであります。貿易の自由化を進めるには、日本経済の体質改善が前提条件であるということを、今、岸首相もおっしゃいましたが、政府は、その施策をいまだ行なっておらないのであります。わが国には幾多の後進弱体産業があります。西欧諸国と違って、著しい経済の二重構造が残存しておって、近代化されておらない中小企業や農業があります。
 政府は、本案をもって貿易の自由化への必要対策と称しておりますが、さきに、本年五月には自由化へのプログラムを発表する、と経済企画庁長官が発表しております。今回、自由化対策の全貌を発表しないうちに、この案だけを急いで発表した理由がどこにあるか、それを総理大臣にお伺いしたいのであります。
 経済企画庁は、このような、一国の運命に関するような重大な政策の転換を行なう場合には、あらゆる面から検討して、総合的に政策の調整をはかり、かつ立案するのが、その任務ではありませんか。輸出入取引法の改正だけで貿易の自由化が達成できると考えておるのか、あるいは通産省に出し抜かれたのか、経済企画庁長官は、一体こういう問題に対して責任を考えておるのかどうか、その辺のことを長官にお伺いしたいのであります。
 本案は、輸出関係では、輸出組合員以外の業者を規制し得る範囲を、輸出品関係の製造業者と販売業者の国内取引の協定にまで拡大し、輸入関係では、輸入組合の設立条件を緩和して、一手共同輸入ができるようにし、かつ、輸入組合員以外の業者も、組合協定をもって規制できることとしており、また、輸出入調整関係においても、同様、輸出入組合の設立や存続条件を緩和して、共同行為を容易にし、かつ、アウトサイダーも規制できることとしております。
 かくのごとく、政府案は、輸出、輸入にわたって公然とカルテル行為を認め、輸出入商品の国内取引についても、カルテル行為を容易にするものであって、貿易取引の全分野にわたって事実上の独禁法適用除外をするものであって、明らかに独禁法をじゅうりんするものであります。輸出入取引法は、その第一条の目的に明記しておりまする通り、不公正な輸出取引を防止し、輸出取引、輸入取引の秩序を確立するための貿易秩序法であります。従って、本法は、独禁法の関連法として、これまた独禁法第一条の目的に明記しておる「公正且つ自由な競争を促進し、」云々という、わが国経済の秩序の根本を維持するという大目的に従う法律でなければなりません。しかるに、本案のごとく、大幅に共同行為を許し、かつ、アウトサイダーの規制を行ない得ることになれば、現在のような大企業本位の経済体制のもとでは、大企業のみを利するということになるのではありませんか。今申し上げましたような見地に立って、本法は明らかに独禁法違反と考える。首相は、先ほど、独禁法違反ではないとおっしゃいましたが、その理由は、はなはだ薄弱であります。もう一度、以上申し上げたような観点に立って、独禁法違反であるかないかを明確に御答弁願いたいのであります。
 また、かかる法案をうのみにする公取委員会は、もはや、その存在意義がないといってもよいではないか、と思うのであります。(拍手)公取委員会は、いわば憲法の番人であるはずでありますが、最近は、政府の意のままに法解釈を曲げて、あたかも政府の番人の観があります。さらに、もし本案を容認するようなことがあるならば、大企業の番人に成り下がったといっても差しつかえないと思うのでありますが、公取委員長の所見を承りたいのであります。
 次に、通産大臣にお伺いいたしますが、本案は、自由化の促進によって、従来は外貨割当制のもとに特権的地位をむさぼってきた大企業が、輸入の完全AA制実施によって、今後はカルテルの強化による恩典にあずかろうとする意図を助長するものといわなければなりません。
 さらに、従来は、外貨割当制で官僚が業界を支配してきましたが、その支配の形式を変えようとするのが、この改正でありましょう。すべての共同行為が認可制になっております。その上、認定によって決定せられる事項が非常に多いのは、明らかに官僚統制の強化であります。アゥトサイダーである中小企業者、あるいは組合のうちにある弱小業者を強力に規制するなどの点は、明らかに戦時中の統制経済に匹敵するものであると思うが、どうか。岸首相の言われた自由経済は――先ほど自由経済に即して貿易を進めると言われたのは、それは外国に対してだけであって、国内に対しては、自由経済ではなく、極端な統制経済であるということは、明瞭に言えると思うのでありますが、その点どう考えられるか、明確に承りたいのであります。
 また、このようなやり方は、先ほどもお話がありましたように、ガットの条文や、ガットの決議、その他外国と取りかわした条約などに見られる、商慣行を制限したり貿易を国家が統制したりすることなどを順次なくしていこうではないかとする国際的取りきめの精神に、明らかに反することとなります。しかるときは、自由化しないも同じだという外国からの非難が起こってくると思うが、その点はどうであろうか、通産大臣の意見を承りたいのであります。
 次に、本法の施行は公布の日より六カ月以内となっておりますが、十月よりの下期外貨予算の実施と日を同じくする方針であるか、また、輸入の共同行為の範囲の拡大は、完全AA制を実施された商品に順次適用するのか、これらの点について伺いたいのであります。
 さらに、輸入関係についてでありますが、現行法でも輸入取引について各種の協定を結び得ることになっておりますのを、新たに第七条の三の項目を設けて、輸入商品の国内取引まで共同行為を許したのは、輸入のワクをはずれて、国内の商取引まで規制が及ぶという危険があるが、その防止、予防措置をどういうふうにしようとしておられるか、伺いたいのであります。
 わが党は、このような現在の大企業本位の貿易体制をさらに強化せんとする考えにはあくまで反対し、弱い中小企業者を擁護する立場に立って、中小企業団体の組織に関する法律の第九条における商工組合の設立条件を緩和して、一定の種類の事業を営む中小企業者には、地域を無制限にして、全国的な商工組合の設立を許すこととし、中小企業の貿易体制を強化すべしという改正案を本国会に提出しております。(拍手)輸出組合や輸入組合等に加入する中小企業者には、このようにして力を持たさなければならないと思うが、通産大臣はどう考えられるか、御意見を承りたいのであります。
 さらに、わが党は、中小企業の産業分野の確保に関する法律を本国会に提出しております。これは、最近、大企業が系列化、金融支配等の形で中小企業の分野に侵入してきましたので、本案が施行されれば、さらにその傾向が強くなることは必至であります。政府は、貿易の自由化を行なうために、中小企業の振興を中心とした輸出産業分野を確立する法律を定めるべきであると思うが、どうであろうか、その点、わが党のこの提案に対して賛成されるかどうかを承りたいのであります。
 次に、農林大臣代理の方にお伺いしたいのでありますが、全国農業協同組合中央会、全国漁業協同組合連合会、日本生活協同組合連合会等、協同組合関係者がこぞって本案に反対しておるのは、本法の施行によって、需要者の協定を促進し、零細農林漁業者の購入する生産財、消費財の価格値上げのおそれがあり、かつ、従来協同組合が行なってきた貿易ができなくなるからであります。従って、農林省の立場から見ても、従来本案に強く反対してこられたと聞いておるのでありますが、ついに最後に賛成せられたのは、屈服したものであるか、あるいは妥協したものであるか。妥協したものであるならば、いかなる点で妥協したのかを明確にしていただきたいのであります。わが党は、このような悪法に対してはあくまで絶対反対いたしまして、外は、中小企業者、農林漁業者等、広範な国民の各層と提携して、院内にあっては、野党勢力を一丸として、あくまでも政府案の成立を阻止する決意を持っておることを最後に申し述べて、私の質問を終わりたいと存じます。(拍手)
    〔国務大臣岸信介君登壇〕
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。
 加藤君も、貿易の自由化は、日本の経済の長期的な発展の上から推し進めるべきものである、しかし、それには十分準備をすべきものであって、西独の例等を引かれて、政府がそういう準備をしてやるべきである、それを、唐突に、何かアメリカから強要されたような疑いでもって、急にこれに力を入れておるのは、はなはだ解せないというと御意見でございましたが、これに準備が要ることは当然でございます。政府が慎重な態度をもってこれに対しておることも当然でございます。そうして、私が安保条約の調印に参ります機会に米国からこれが強要されたというふうなことは、全然事実に反しておるのでありまして、政府は、従来からも、この自由化政策を進める基本方針のもとに、すでに昨年行なわれましたIMFやガットの会議等におきましても、この方針を明らかにし、政府としてはそれぞれ準備を進めて参っておったのでございます。ただ、たくさんの品目について、また、各種の産業の実施上につきまして、すべてのものを一律に自由化するというような無謀なことをすべきでないことは、言うを待ちません。また、御指摘のありましたような、中小企業や農業等に及ぼす影響というものを特に重大に考えて処置しなければならぬことは、言うを待たないのであります。
 政府は、これらの問題についての検討を――大体五月には全体のスケジュールを作って、三年くらいを目途として、九〇%を目標としての自由化のスケジュールをきめたいということを申しておるのでございます。これができないのにこの法律を出すのは、はなはだおかしいじゃないか、という御質問でありますが、この五月に作るということは、全産業に対して、日本の自由化の全体的の計画をそれまでに検討して、そうして、その全貌を明らかにしたいというのが、私どもの趣旨でございます。日本の経済は、先ほど申し上げましたように、貿易を拡大していく上におきまして、従来の輸出入の面においての、無秩序な、また過当な競争から生ずる弊害というものは、従来も各方面から指摘されておることでありまして、特に自由化によってそれが激化するおそれがございますので、本案につきましては、すでに昨年の夏あたりから通産省におきまして検討を加えて今回提出いたしたものでございまして、別に突如としてこの案を出したという意味ではございません。
 また、この法律が独禁法の違反ではないか、先ほど申し上げた違反ではないという言葉に対して、もう少し明瞭に説明せいという御要求でありますが、申し上げるまでもなく、日本の独禁法は、一般的に、カルテルのごとき共同行為を禁止するという原則をとっております。しかしながら、同時に、国民経済的観点から見て必要な共同行為については、独禁法自体においても例外を認めておりますし、また、個々の立法によりまして、政府の認可であるとか、あるいは届出その他の条件のもとに容認するという建前がとられておるのでありまして、この建前から申しまして、この改正は、われわれがねらっておるところの、貿易に関しての不当な競争を押えるための共同行為というものが、それぞれ法律に規定されている条件のもとに容認されるということは、決して独禁法に違反しているものでもございませんし、また、何らこれは大企業を擁護するための法律ではないわけでございます。(拍手)
    〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 今回の輸出入取引法の改正は、先ほど御説明申し上げましたごとく、従来輸出につきましては自由でございました。従いまして、外国から、輸出の自由のために日本の商品が一時的にフラッドする、すなわち、流れ込むということがあるというので、非常に非難を受けておったのであります。私は、この機会に、日本の貿易を伸張さす上から見まして、輸出業者のみならず、その背後におりまする生産業者に対しましても、こういう非難を外国から受けないような制度にしていくことが、国民経済上、また産業貿易上、必要であるというので、最小限度そういう外国からの非難をよけるための措置を講じようとしておるのであります。
 第二の輸入の点につきましては、お話のごとく、外貨割当制度をやっております。この外貨割当制度をだんだん解除して参りますと、高値買い等の危険がございまするから、私は、日本の国全体から申しまして、不当に原材料を高値買いする、いわゆる過当競争によるような場合におきましては、その特定品目につきまして、関係各省あるいは公取と相談して、特定品目につきましての制限をしようとしておるのであります。従って、国民経済全体から申しまして、何らここに弊害が起こらないと考えます。もしそういう弊害が起こった場合に、それを取り消すことに法律上の規定があるのでございます。全体といたしまして、日本の貿易を拡大し、また、日本に対する非難を除去する建前でございます。何ら差しつかえない。従って、こういう点から申しましても、ガットの精神に反するものではございません。私は、ガット加盟国はこの措置を歓迎すると確信いたしておるのであります。
  三の公布の問題でございまするが、これは、AA制の問題、すなわち、外貨予算と直接に関係はございません。他の法律と同じように、大体六カ月というのが例文になっておるのでございます。外貨予算との関係はないと御了承願いたいと思います。
 次に、貿易につきまして全国的な商工組合を設けたらどうか、こういうお話でございまするが、貿易というのは、中小企業ばかりでやっているのではございません。また、中小企業団体法の制限を受けますると、貿易は十分にいきません。従いまして、私は、そういう考え方よりも、大きい商社も、中小企業も、貿易商という一つのカテゴリーで、こういう法律で縛っていくことが適当であると考えているのであります。
 なお、中小企業の産業分野確保に関する法律で、この法律を活用してはどうかというお話でございまするが、生産分野を法律で規制することはなかなか困難でございます。私は、そういう考え方には賛成できないのでございます。(拍手)
    〔国務大臣菅野和太郎君登壇〕
○国務大臣(菅野和太郎君) まず、経済企画庁長官に対する御質問に対してお答えしたいと思いますが、貿易自由化がまだ行なわれていないのに、こういう法律を出すのは早いじゃないか、という御質問があったと思うのであります。この点につきましては、総理大臣からすでにお答えがありましたから、総理大臣の御答弁で御了承願いたいと思います。
 なお、この法案については、通産省に出し抜かれたのではないかというお話がありましたが、この法案を作成するにつきましては、通産省は経済企画庁と協議の上で策定いたしたのでありますからして、さよう御了承願いたいと思います。
 次に、農林大臣に対する御質問がありましたからお答えいたします。この問題につきましては、先ほど板川議員の御質問にもお答えしたのでありますが、農林漁業団体が反対し、農林省も反対しておったじゃないか、というお話であったのでありますが、決して反対をしておったのではありません。せっかく改正法を作るのでありますからして、農林漁業を一そう発展させるように、この改正法案を作ってほしいという希望で、まず法文上においても、このカルテルを容認する場合には、農林漁業者の利益を不当に損しないようにカルテルを容認するとか、あるいは運用上におきましても、生産資材の場合には、通産省と協議の上でこのカルテルを容認するということをやっておりますからして、法文上並びに運用上に
 おいても決して農林漁業者には不利益を来たさないということで、この改正案に賛成をいたしたような次第であります。(拍手)
    〔政府委員佐藤基君登壇〕
○政府委員(佐藤基君) この法案につきまして特に問題となるのは、需要者等の輸入貨物にかかる共同行為の規定であります。需要者等に輸入原料の購入価格あるいは購入数量等の共同行為を認めるごとによりまして生産調整に利用される心配があるのではないかという考えもありますので、通産省との間に十分意見の調整を行ないまして、認可の要件を非常に限定してもらったのでございます。従いまして、公取といたしましては、本法に唯々諾々と応じたということは決してありません。
 さらに、共同行為に対する主務大臣による認可にあたっては、公取との協議になっておりますので、その際におきましては、独禁法の根本理念に照らしまして特段の配慮を加える考えでおります。(拍手)
○議長(清瀬一郎君) 以上で質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
○議長(清瀬一郎君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後五時四十二分散会