第038回国会 外務委員会 第6号
昭和三十六年三月一日(火曜日)
   午前十時三十七分開議
 出席委員
   委員長 堀内 一雄君
   理事 野田 武夫君 理事 福田 篤泰君
   理事 森下 國雄君 理事 岡田 春夫君
   理事 戸叶 里子君 理事 松本 七郎君
      小泉 純也君    椎熊 三郎君
      正示啓次郎君    床次 徳二君
      稻村 隆一君    黒田 壽男君
      田原 春次君    西村 関一君
      森島 守人君    川上 貫一君
 出席国務大臣
        外 務 大 臣 小坂善太郎君
 出席政府委員
        外務政務次官  津島 文治君
        外務事務官
        (アジア局長) 伊關佑二郎君
        外務事務官
        (条約局長)  中川  融君
        外務事務官
        (国際連合局
        長)      鶴岡 千仭君
        外務事務官
        (移住局長)  高木 廣一君
        農林事務官
        (振興局長)  齋藤  誠君
        運輸事務官
        (海運局次長) 若狭 得治君
 委員外の出席者
        外務事務官
        (大臣官房外務
        参事官)    北原 秀雄君
        大蔵事務官
        (理財局次長) 吉田 信邦君
        大蔵事務官
        (理財局資金課
        長)      鈴木 喜治君
        大蔵事務官
        (銀行局特別金
        融課長)    橋口  收君
        農林事務官
        (振興局拓植課
        長)      三善 信二君
        通商産業事務官
        (石炭局炭政課
        長)      小島 慶三君
        運輸事務官
        (海運局外航課
        長)      高林 康一君
        労働事務官
        (職業安定局雇
        用安定課長)  木村 四郎君
        日本輸出入銀行
        理事      鈴木 義雄君
        参  考  人
        (日本海外移住
        振興株式会社専
        務取締役)   源田 松三君
        専  門  員 佐藤 敏人君
    ―――――――――――――
三月一日
 委員勝間田清一君及び細迫兼光君辞につき、そ
 の補欠として田原春次君及び西村関一君が議長
 の指名で委員に選任された。
同日
 委員田原春次君及び西村関一君辞任につき、そ
 の補欠として勝間田清一君及び細迫兼光君が議
 長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
二月二十四日
 国際電気通信条約の締結について承認を求める
 の件(条約第一一号)
 航空業務に関する日本国とベルギーとの間の協
 定の締結について承認を求めるの件(条約第九
 号)(予)
 航空業務に関する日本国とドイツ連邦共和国と
 の間の協定の締結について承認を求めるの件
 (条約第一〇号)(予)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
二月二十四日
 沖縄におけるナイキ・ハーキュリーズ発射演習
 中止に関する陳情書(沖縄那覇市松川区七班沖
 縄人民党委員長瀬長亀次郎)(第二七一号)
 沖縄周辺海域における米軍演習場撤廃に関する
 陳情書(枕崎市長福崎静雄外一名)(第二七二
 号)
 日韓会談即時打切りに関する陳情書(長野市県
 町六百四十七番地目朝協会長野県支部長半田孝
 海)(第二七三号)
 日ソ間文化及び航空協定締結に関する陳情書(
 札幌市議会議長斉藤忠雄)(第二九九号)
 ラオス問題に関する陳情書(大阪市北区曾根崎
 中二丁目十五番地日中国交回復関西国民会議会
 書小畑忠良)(第三〇〇号)
 日ソ漁業条約の早期締結に関する陳情書(札幌
 市議会議長斉藤忠雄外四名)(第三〇一号)
 日中政府間の貿易協定締結促進に関する陳情書
 (札幌市議会議長斉藤忠雄)(第三四六号)
 同(小樽市議会議長岩谷静衛)(第三四七号)
 海外移住振興対策確立に関する陳情書(東京都
 議会議長村田宇之吉)(第三九八号)
は本委員会に参考送付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 移住及び植民に関する日本国とブラジル合衆国
 との間の協定の締結について承認を求めるの件
 (条約第三号)
 国際情勢に関する件
     ――――◇―――――
○堀内委員長 これより会議を開きます。
○岡田(春)委員 議事進行について。きょうは一つ与党の諸君に注意を喚起したいと思うのですが、定刻十時から始まることになっておりまして、先ほど外務大臣もすでにここに出席をいたしておったのであります。私たちは与党は来なくとも委員会を進行してかまわないのでありますが、一応野党として、与党の諸君がおいでになるまでかんにん袋の緒を切らないでがまんしておったのであります。一つ今後十分御注意を願いたいと思います。
 なお、委員長としても、その点については自民党の諸君に十分注意を喚起されまして、先ほどのように、外務大臣が見えましても、それを帰すというような取り扱いではなくて、今後においては、野党としては、自民党がここへは来なくても、委員会の進行ができるような状態になりましたら、委員長からいかなるお話がありましてもわれわれは進行するつもりでありますから、その点は念のために申し添えておきます。
 こういうだらしのないことでは困るので、一言だけ注意を喚起しておきたいと思います。
○堀内委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。
 質疑の通告がありますので順次これを許します。森島守人君。
○森島委員 私は、本年度の重要問題としましては、アフリカの問題と並んで中国関係の問題が大きくクローズ・アップしてくる、こう存じておるのであります。ところが自民党のやり方を見ておりますと、池田さんの演説でもうかがわれるように、国際情勢の動く中で、自主的に弾力性のある政策をとるという一言に尽きておりまして、今日まで予算委員会その他の委員会における質疑応答を見ましても、変転する世界政局に対処すべき政策の片りんをも伺い得ないことは非常に残念に存じておるのでございます。ことに池田さんは、今回経済成長というふうな点で、経済政策に重点を置かれることは了解ができますけれども、とかく外交問題を軽視しておられる傾向があると思うのでございます。その片りんとも申すべきものは、たび重なる池田総理の失言に現われておると申しても決して過言ではありません、たとえば中立政策をとっておる国が一がいに――国と断定したり、あるいはイギリスの対中国政策に関する施策を誤って伝え、これを国民に押しつけるような印象を与えておるということは、私らとしましてははなはだ遺憾に存じておるとこでございます。私はこの際国会の論議を通じまして、われわれの所見も忌憚なく大臣諸公に申し上げ、政府の意向もお聞きしまして、建設的に中国政策に関する施策を進められんことを願ってやまぬのでございます。私は本年は中国政策に関しましては転換期と申しますか、あるいは再検討の時期と申しますか、その時期は必ず来るという確信のもとに質疑を行ないたいと存じておるのでございます。中国問題は、池田さんのように、国際間の問題として考慮すべき一面は確かにあります。しかし現在の状況ですと、日本が自主的に政策を決定すべき部面も相当にあるということを確信しておるのでございます。中国政策を考えるにあたりまして、大きな前提となるべき事実が大体三つありはせぬかというふうに私は信じておるのでございます。
 第一は事実関係と法律ないし条約関係との関係でございます。もしこの事実関係が法律関係と完全に符合いたしますれば大した問題がないと思うのでございますけれども、遺憾ながら東西両陣営の対立の関係から、この事実が必ずしも符合してない。そこに大きな問題があると私は信じておるのでございます。政府のやり方を見ておりますと、従来ややともいたしますと事実関係を軽視し、これを無視して、既存の条約関係のみによって規律せんとする傾向が多かったように思うのでございます。たとえば南ベトナムの賠償金の問題なんかはこの適例でございます。韓国との交渉のごときもこの適例だと思うのです。中国の問題につきましてはことさらにこの感を深くするところが多いと信じておるのでございまして、政府はこの関係を一体どういうふうに見ておられるか、外務大臣の御所見を私は伺いたいと思います。
○小坂国務大臣 国際間の状況を把握いたしまする場合、事実関係はもとより重視しなければならぬし、一方において法律関係もまた重視しなければならぬ、こういう立場で考えておりますけれども、ただいま韓国の問題について事実関係と法律関係とを混淆があるというお話でございましたが、私はさようなことはないと存じます。
○森島委員 その通りお運びいただきますればけっこうなんですが、中国の問題のごときは、既存の条約関係にとらわれて、事実関係を全然無視しているという傾向が非常に強いと思う。私はこの際時間の関係もありますのでこれ以上深入りはいたしませんけれども、もう少し外務大臣としては事実関係に主眼点を置いて規律せられることが必要であるということを痛感しておるのでございます。
 第二にお聞きしたいのは、大戦以来いわゆる法律関係に属する国際法の原則とかあるいは国際慣習とかが大きく変化しておると私は思っております。一言をもっていたしますれば、国際法なるものは現に発展の途上にあると申しても差しつかえないか、こういうふうに思っておるのでございます。しかるに外務省は、ややもいたしますと既存の条約関係のみをとらえて事を処理せんとする傾向が多い。私はこの点についても政府に御注意を求めたいと思っておるのでございます。
 一、二の例を引きますれば、たとえば政治犯人の問題ですが、第一次大戦の場合には、カイゼルは政治犯人としてオランダに逃げましたが、引き渡しをやっておりません。しかし今次の大戦にかんがみますと、ペタンやラヴァルはスイスがこれをフランスに引き渡しておる。政治犯人引き渡しの問題についても新しい先例ができたのではないか。
 もう一つ大きい問題は、アメリカの対英武器貸与の問題でございますが、これもアメリカが中立国である時代において、大量の武器をイギリスへ供給しておるというがごときは、従来の観念からいたしますれば、完全な中立違反であると申して差しつかえない。しかしこれも何らかの口実のもとに肯定されておる。
 もう一つの例を引きますれば、これは米国においては中立時代にすでに哨戒地域というものを拡大いたしまして、そこへ入ってくる独伊の艦船は見つけ次第撃ってもよろしいというような宣言をいたしております。さらに大きな問題は広島、長崎に対する爆撃の問題でございますか、これらのごときは完全に従来の戦時国際法の違反であると申して差しつかえないのでございます。しかるにアメリカ国内におきましては戦争による被害者を数百万人も救う、戦争を早期に終結するという見地からいたしまして、アメリカにおいてはこれを肯定しておったというふうな例もございますが、確かに戦時国際法、条約関係等については、新しい視野から日本としても考うべき問題が多々あるのだ、私はこう存じておりますが、外務省においては依然として既存の条約関係、法律関係のみにとらわれて政策を決定しておる傾きが多いと思います。中国問題のごときもその適例です。国家承認の原則に関する考え方一つでどうともなると私は思うのでありますが、これを主義上の問題として外務大臣はいかようにお考えになっておるか、ごく大ざっぱでよろしゆうございますから御意見を伺いたいと思います。
○小坂国務大臣 国際法の関係はもとより既存のものを重視しなければならぬとは思いますけれども、やはり国際法の場合、ことに慣習が積み重なって国際法になるということは否定できないことであります。さような点は十分に考えていきたいと思うのであります。ただ国際間の問題につきましてやはり影響するところ非常に重要なものもございますので、そうした諸般の関係を考慮に入れながら、ただいま森島さんのおっしゃいますように、あくまで法律は法律として尊重いたしますけれども、それだけでなくやはり周囲の状況というものを見ながら新しい慣例というものも十分考慮に入れながら進むべきものだというふうに原則的に考えておる次第でございます。
○森島委員 第三点に私がお伺いしたいのはアメリカの対外政策の風潮なんです。アメリカは建国の歴史からいたしましても、大体アメリカのやっておったことが一番いいのだ、アメリカ第一主義というふうなものがあるように思われる。また、アメリカは独立後約三百年間、対外関係については大きな問題がなかったために、主として国内の開発に従事しておった、そういうような関係からいたしまして、アメリカの外交政策といたしましては、概括して申しますと主義、原則にとらわれて実際の事情をうとんじておる傾向が多いと思う。たとえば中南米に対するモンロー主義、極東に対する門戸開放、機会均等のごときはその適例でありまして、アメリカの外交については日本としてももう少しアメリカに注意を喚起する必要があるのではないかと私は信じておるのでございます。この点からも中国政策というものを見直さねばならぬと私は思っておる。たとえばダレスの反共政策のごときも、その傾向を持っておることは明らかでございまして、新聞に伝うるところによりますと、アメリカの外交にも転換のきざしが見えるようでもありますが、朝海大使のボールズ次官との会見談が新聞等にも出ておりますが朝海君の得ました印象によると、中共関係は従前の政府と何ら変わらないだろうという観測をいたしてきておるのでございます。これらの点も、外務省が今後転換期にきておる対中共政策を考慮せられる上において、大きな参考にすべきものだと私は信じておるのでございます。この点についても大体の御意見を伺えればけっこうであります。
○小坂国務大臣 国際事象を見まする場合、デ・ファクトというものを非常に重視する見方と、あるいはその上に一つの主義、プリンシプルをかぶせてそれを把握する考え方とございまして、アメリカの場合とかく今森島さんのおっしゃるように、そうした一つの主義上こうすべきであるという前提のもとに事実を見ていくという傾向があることは、私もその通りだと思います。しかしこの国際情勢の把握にあたりまして、ことにわが国の立場から見た極東の情勢の把握あるいは世界平和に対するわれわれの考え方というものに対しては、最近非常に敬意を払って聞かれるようになっていると思います。これは講和後十年たった今日、日本の国の力というものがさようなことをさせたのだと思いますけれども、そういう傾向でございまして、私は日本の目から見た世界情勢の把握というものは各国に十分伝えていきたい。そしてわれわれの立場から見たものの見方というものを中心にして、各国と話し合っていきたいというふうに考えております。これも原則でございますが、さように考えております。
○森島委員 ただいま伺いましたところによりますと、外務省としては非常によくおやりになっておるというふうな御吹聴のようですけれども、私が見ておるところによりますと、外務省は必ずしもそういうふうなやり方をやっていないと私は信じておる。中共の問題に関しますと、鳩山内閣以来今日に至るまで五年間、外務大臣も数回おかわりになり総理大臣も数回おかわりになったのです。わが党といたしましては、当初から五年先、十年先を見て先見のある政策を立ててきたと私は信じておりますが、今日まで外務省に関する限りは一歩の前進もないということは、これらの原則に対してあまりにとらわれ過ぎておるというふうに私は信じておるのでございます。これから私は具体的な事実に基づいて外務大臣の御所見を伺いたいと思うのでございますが、右のような前提に立って、一つ建設的な具体的な御方針をお示し願いたいと存じておるのでございます。
 池田総理は、中共との政府間の貿易協定の問題に関しましては、承認にひっかかる危険があるのだということをその理由としてあげておられますが、その上にもう一つは、気象観測やあるいは郵便協定ならば差しつかえないという御意見を吐いておられます。しかし私が明確に知りたいのは、郵便協定や気象協定は差しつかえない、政府間の貿易協定は承認にひっかかる危険があるからこれは困る、そこにどういう差別があるのか、もう少し明確にお話しを願いたいと思います。これまで外務省の言うことを聞いておりますと、速記録も私全部読んできましたが、はっきりしておりません。その点がどういうところに違いがあるのか、外務大臣から一つ明確に御説明を願いたいと思います。
○小坂国務大臣 気象、郵便というような問題につきましては、これは技術的な問題であるという点で承認とはつながらない。貿易の問題になりますると、これが国対国の貿易協定という形になりまするので承認につながるということであります。国対国の承認ということになりますと、これは日本だけで解決することがいいか悪いかという問題がありまして、これは国際的に非常に関係の大きな問題になるので慎重に考えなければならぬということでございます。
○森島委員 非常に不明確ではっきりしたことがわからないのですが、突っ込んで申しますれば、貿易の問題も、締結それ自身は技術的かもしれません。私はその間に何ら差異がないものだ、そういうふうに思っておるのでございます。
 そこで私は一歩進めてお聞きしたいのは、日本はフィリピン、インドネシアそれからビルマ等との間においても、長らく国交は回復しておりませんでした。これらの諸国が唱えておったことは、賠償問題を片づけてから国交回復をするのだという主張をやってきたのです。しかしその賠償問題の解決しないうちにも、これらの三国との間には貿易協定は確かにできておったと私は信じております。それのみならず、在外使臣ではございませんけれども、在外事務所という名前のもとに公的の機関が設置せられておったことは事実でございます。これらの国と、中共との間の貿易協定の問題とはどういうふうにお考えになっているか。私は、これらの三国に対して貿易協定を結んでおる、しかも国交が回復してないんだという事態から判断いたしますと、中共に対しても貿易協定を結ぶことが何ゆえに承認につながるのか、その点についてもっと明白に政府の態度を明らか
 にしていただきたい。
○小坂国務大臣 インドネシア、フィリピンとの間には、すでにその国の承認がなされておりまして、貿易協定がなされて、国交は未回復でありましても、それらの国は承認されておった、中共の場合は違う、そうでないということであります。
○森島委員 はなはだ珍しい御意見をお聞きしたのです。外務大臣が国際情勢の根本に関してそんな御認識を持っておるならば、これは日中間の貿易協定なんか初めからできぬのは当然だ。私はもっと外務大臣としてはその辺を明確に、間違いのない情報を与えていただきたい、その点を一つお聞きしたい。
○中川政府委員 インドネシア、フィリピン等と、正式国交が回復する前にすでに貿易協定を結んでいたことは全くお説の通りでございます。なお、御承知の通り平和条約が発効すると同時にあるいはそれ以前から、日本政府の在外事務所というものがフィリピン、インドネシア等にできておるのでございます。日本政府はすでにその平和条約発効と同時に、これらの国及び政府を承認しておるのでございまして、国交回復はおくれましたが、すでにインドネシアとの平和条約等ができてから国交は回復したのでありますが、政府の承認がさらにそれに先立って行なわれておったわけでございまして、中華人民共和国との場合はその点が違うわけでございます。
○森島委員 条約局長としてはきわめて不適当な御説明をなさった。私が従来政府当局から聞いているところによりますと、これらの三国とは賠償関係が片づいたら正式な国交回復に入るのだ、その前提であったから前もって在外事務所も置いたし、貿易協定もやってきたのだというのが、従来外務省の一貫した説明だったのです。現在の説明とすっかり違う。
 それでは私はもう一つお聞きしたいのだが、これらの国に対しては、事実上の承認は与えておったとおっしゃるのですか、あるいは正式な承認をすでに与えておったとおっしゃるのですか。これは根本的な問題ですから外務大臣にお聞きしたい。
○小坂国務大臣 先ほどお答えした通りでございまして、国交は未回復であっても、その国の承認というものはすでにそれ以前になされておったということでございます。
○森島委員 私は、外務大臣からはなはだ新しい御意見を伺ったのですが、それを立証すべき資料がありましたらお出し願いたい。
○中川政府委員 決して新しい解釈でも何でもないのでございまして、正式の国交回復あるいは正式の国交を開くということと、その政府を承認するということは、違った問題でございます。通例の場合、これが同一時期に行なわれることもありますが、政府の承認、さらにそれに対して正式に国交を開くということは、必ずしも一緒になる概念ではないのでありまして、従来外務省が説明しておりましたのは、平和条約が成立してから初めて国交を正常化するということであるのでありまして、食い違いないのでございます。
 なお、文書等の証拠と申されますが、結局在外事務所を設置する了解とか、あるいは貿易協定を作りましたその貿易協定自身、こういうようなもので、その承認の事実がはっきり証明されておるわけであります。そういう書類で御承知願いたいと思います。
○森島委員 私はもう一つ伺いたいのですが、在外事務所を設けたのは、日本の独立後でございますか、独立前でございますか。
○中川政府委員 平和条約発行後であったと思います。
○森島委員 発効前のはございませんか。
○中川政府委員 アメリカ、イギリス等は発効前に設けました。フィリピン、インドネシア等は発効後に設けられたわけであります。
○森島委員 私は発効前にあったように思うのですが、この点はさらに事実を確かめた後に御質問を続けたいと思いますが、私は、マッカーサー司令部のときに在外事務所というものができたのじゃないか、必ずしも日本政府の独自の機関として置いたのではないというふうに了解しておりますが、この点、念のためにお調べを願いたいと思います。
 ついでにお伺いしたいのは、韓国の関係はどうなっておりますか。
○中川政府委員 大体在外事務所というものは、マッカーサー司令部がまだありました末期に、日本に実際上外交関係を作らせよう、いわば平和回復の準備行為として在外事務所を作らせようということでできたことは、御説の通りでございます。従って、大部分の在外事務所は、講和発効前にできたわけでございます。私が今インドネシア、フィリピンと申しましたが、フィリピンは講和発効後でございます。インドネシアは発効前であったかと思います。私訂正いたします。
 なお、韓国の代表部は、これは御承知のように、占領中マッカーサー司令部に対する機関として設置されていたのでございますが、平和条約発効と同時に、これを日本政府に対する準外交機関として性格を変えたわけでございます。
○森島委員 非常に大事な点に前提が誤っておると思うのですが、インドネシアは講和条約発効前だとおっしゃいました。ビルマもそうじゃなかったかと思うのですが、もしそういたしますと、その当時に事実上の承認とか、こういうものがあり得る道理がないと私は信ずる。私は条約関係はしろうとですから、大した知識も持っておりませんけれども、その関係はどうなるのですか。
○中川政府委員 講和発効前、つまり占領治下におきましても、日本国としての法人格は失われていなかったのでございまして、日本国の法人格はあって、ずっと継続していたのでございますが、しかし、たとえば外交あるいは内政につきましても、これは占領軍当局という一つの制約のもとにあったわけでございます。従って、完全な意味におきましての対外関係を開始するということは、もちろん講和発効後でございます。しかし日本は、たとえば在外事務所を設置した場合に、これは従来から、たとえばアメリカとかイギリスとか、こういう国は承認の問題はもとよりないのでございまして、戦争関係はありましても、国家というものあるいは政府というものは引き続き認めていたわけでございます。平和回復という問題がございますが、承認という新しい問題はないのでございます。新しく独立した国について承認の問題があるわけでございますが、これはたとえばインドネシアにつきましては、在外事務所を設置いたしましたときに、潜在的な意味におきましては、承認したと見るべきでありますが、それが完全な効力を発生いたしましたのは、講和発効と同時であるということに解釈するのが適当じゃいかと思います。いずれにせよ、講和発効と同時に、正確な意味あるいは全面的な意味におきます承認ということが行なわれた、かように考える次第でございます。
○森島委員 いや、新説をお聞きしてびっくりしたのですが、講和発効前にそういう日本政府として新しい在外機関を設けたりすることは私は許されていなかったと思う。私は、これはマッカーサー司令部の命令のもとにおける一つの行為である、日本国の独自の行為ではないというふうに解釈するのが妥当ではないか、こういうふうに思っておる。この点から申しますと、私はインドネシアやビルマと貿易協定を結んだのから考えまして、中華人民共和国との間にこの際貿易協定を結んでも、絶対に日本が承認をしないという立場を持するならば、国家承認にはならぬというふうに信じておるのでございます。私が三つの前提条件を引用して外務大臣の御意見を伺いましたのも、私はこの問題にひっかかってきておると思う。私は国家承認の問題と、それからまた貿易協定の締結の問題は、何ら直接間接の関係はないというふうに信じておりますし、また日本政府として、そういうふうな立場を自主的にとることも私はあり得ることで、やるべきことだと信じておるのでございますが、この点について外務大臣の御意見を伺いたい。
○小坂国務大臣 いろいろな解釈も、ここで私どもの方の条約局長と森島さんの間に違うように、この問題は非常に解釈がまちまちであろうと思います。しかもなお政府の解釈としては……。(「御方針はどうだ」と呼ぶ者あり)ちょっと黙って聞いて下さい、質問者だけと対談させてもらいます。
 そこでそうしたいろいろな紛淆するような問題もございますから、私どもの立場は、貿易に関する政府間協定というものは承認につながるという解釈をとっているわけです。そこで、現在のそういうことと関係のない貿易が促進されるということは、これは望ましいことである、こういう立場をとっておるわけであります。国際貿促の山本君も行かれていろいろ話をされておられるようであります。そういう問題も一方に見ながら、この問題は慎重にかつ弾力的に取り扱っていきたいというのが政府の立場であります。
○森島委員 いろいろ御意見がございますけれども、これは政府が根本的な観念においてまちまちであって、何らそこに具体的な政策を表わす意欲のないということを表わすものとしか私には思えない。政府はもっといろいろな解釈があれば政府独自な見地で、日本独自の見解に立って政策をきめてこれを実行に移すということが私は必要じゃないかと思っておるのでございます。
 もう一つ、それに関連しましてお聞きいたしますが、予算委員会の質問を見ておりますと、小坂さんは貿易協定どころじゃない、えらい発言をしておられます。十二月十六日の予算委員会ですが、民社党の受田委員の質問に対しまして、公的機関を置くことを、承認しないということをはっきりすればできるのだという御説明をなさっている。私読んでみます。「そうした公的機関を置きますことが、その政府を承認しないということをはっきりさしておく場合でありますならだ、それは可能であります。」という御説明をなさっておる。これがもし可能ならば、貿易協定をおやりになることも可能だという結論に到達することは私は当然だと思う。どう御説明になりますか。
○小坂国務大臣 その私の申しておる通りでございまして、それはたしか領事館の話からそういう話になったのだと思います。そこで、台湾にイギリスが領事館を置いておるということから、中共の方にそういうことを考えたらどうかという御質問があって、そう答えたのだと記憶しておりますが、その場合、そうした公的機関を置くのは承認にならないという前提がはっきりしておれば、それを置くことは可能であろうということを申し上げました。ただそういうことを言うことが政治的に一体どういう意味があるか、かえって事態を紛糾させるようなことなら意味がないじゃないか、これは政治的な判断の問題だと思いますが、私はさように思います。
○森島委員 これは言葉じりをとらえて相済まぬようですけれでも、あなたは領事館のごときという一般概括的な御説明をなさっており、概括的に公的機関ということをおっしゃっておる。むろん質問は領事館設置の問題から出ております。それは私肯定いたします。しかし領事館の設置が可能ならば承認をしないという前提のもとに可能だとおっしゃるのだから、領事館以下の通商代表、あるいはその他の在外事務所のごときは、できるのじゃないか、そういたしますれば、貿易協定のごときは政府の腹のきめ方一つで、日本政府としては貿易協定をやっても、これは国家承認にならないのだという立場をはっきりさせますならば、私はできぬ道理がない、こう思っておるのでございますが、もう一度外務大臣の御意見を伺いたい。
○小坂国務大臣 はっきり承認につながらないという前提があれば、そういう機関を置くことも可能であろうということは私考えております。その通り申しました。ただ、そういうことを言うことが、一体国際的にどういう影響があるかということも考えなければなりません。国際的ということの中には、相手国に対する影響も入っておるわけです。そこでそういうことが可能であるという状況のもとにおきましては、それ相応に考える。また日本の国内でもそういうふうに解釈が違うことでございますから、国際的にも解釈が違うことも考えられる。その解釈の違いからくる、それによって生ずる国際的な影響というものも、政府としては考えなければいかぬことだと思います。そういう点も十分頭に入れて、この問題については考えていきたいと思っております。
○森島委員 いろいろ御説明がございますけれども、要するに日本としては自主的に何にもできぬ。承認にならぬならばとおっしゃっているのですから、日本政府が、私がさきに申し上げましたように、承認にならないのだという立場を堅持いたしますならば、できぬ道理はない。ことに小坂さんのこういう御発言もあるのだから、外務省としては主義上の問題で日本の根本的な立場の問題等をおきめになりますれば、私は貿易協定ができぬ道理はないというふうに信じておるのでございます。いわんやインドネシアとか、あるいはビルマ等の講和条約発効前にも、貿易協定を結んだという現実なる前例があるのですから、その前例等を利用されまして、日中間の問題についても、いま一歩進められることは可能だ、私はこう信じておるのでございます。いろいろ小坂さんから御説明がございましたけれども、何を言っておられるのか、私にはちっともわからない。私はその点だけにしぼって、もう一度御答弁を願いたい。
○小坂国務大臣 私は諸種の関係ということを申します中に、相手方の意向ということを申したつもりでございます。相手方とは中共のことを言っております。そういうことを言って、一体中共がどう思うかということももちろん考慮しなければならぬということを申しております。森島さんのような外交のくろうとに、こういうことを申し上げる必要はないことでございますけれども、自主的にきめるということは当然のことであります。しかし外交の問題において、ただ自分さえ思えばいいとも言えないと思うので、いろいろ関連する影響等も十分に考えていくということは当然でありまして、それを考えるということが、自主的でないとは私は言えないと思います。
○森島委員 むろん相手方のあることでございますけれども、私がさきに三つの点をお聞きしましたのは、いろいろ変わってきている。情勢が新しいのだから、新しい見地に立って、日本の独自の解釈でやっても差しつかえないと思っておるのでございます。
 中共と貿易協定をやりましても、これは日本がはっきり承認問題とは別個の問題であるという前提のもとに立って、おきめになりますれば、中共としても、必ずそれをもって国交回復の前提となるべき承認の問題と解釈するかいなかは、私は別個の問題と申し上げなければならぬと思うのでございます。中共がどう出る、ほかの国がどう見るかという点をあまりに苦慮されては、いかなる政策も日本としては徹底し得ないと私は信じておるのでございます。
 この点について岡田さんから関連質問がございますので、私は先へ進みます前に、岡田さんの関連質問を許していただきたいと思います。
○岡田(春)委員 関連ですから一、二加えますが、第一点は、先ほど小坂外務大臣の答弁を伺っていると、何か政府の中で見解がいろいろある、こういうような意味で、日本の国内においてもいろいろ意見がある、こういう意味にお話になったのです。というのは、私がなぜそういうことを伺うかというと、外務大臣の答弁と条約局長の答弁は、考えてみると、必ずしも条約上論理的には同じものとは考えられない。従って、そういう点から考えて、外務省内においても意見がいろいろ違うのだ、そういう意味で、そういうような御答弁をなすったのですか、どうなんですか。
○小坂国務大臣 そういう意味ではございません。私と条約局長は全く同じ考えであります。私がいろいろな意見というのは、森島さんがお述べになる御意見とこちら側の意見が違うということを申したのであります。
○岡田(春)委員 それでは伺いますが、先ほど国交回復以前に事実上相手の国を承認しておる場合がある、こういう点について御答弁があったのですが、その承認というのは、これは国際法上どういう承認になりますか。事実上の、いわゆるデ・ファクトなんですか、何ですか。
○小坂国務大臣 事実上の承認ということであろうかと思います。
○岡田(春)委員 事実上の承認の場合に、その要件、相手国を事実上の承認をする場合の要件というのは、具体的にどういうことですか。たとえば代表部というようなものを置くということは、何も相手国を承認するという前提に立って問題になっているのではなくて、いわゆる占領軍の指令に基づいて存置されておる。占領中において、そのような相手国の承認という外交関係が樹立されるということは、どうしてもこれは考えられない。従って、そこで要件はどういうことが要件になるのですか。外務大臣に伺います。
○中川政府委員 条約問題でございますので、私かわって御説明いたします。デ・ファクトの承認ということは、結局正式、デ・ジューレの承認に至る前提と申しますか、その前に実際上その政府をその国の正統政府として認めると推定される行為があった場合に、これはデ・ファクトの承認というわけでございまして、ある意味で暫定的な行為でございまして、結局におきましては、正式の承認、デ・ジューレの承認によって、それが正式なものになるわけでございますが、いわばそういう段階的な状態であると考えます。
 なお、占領下の国が、はたして外交行為を行ない得るかということでございますが、これは国家の法人格というものはなくなったわけではないのでございまして、占領当局というもののいわば統制下に外交なり内政なりを行なっておるのでございまして、これは現実の例で申しましても、日本は、占領軍当局が承認した場合には、外交関係、外交行為と申しますか、普通の国家がいたします外交行為をやった例があるのでございまして、たとえばILOの条約に日本は一九五一年に加盟しております。これは占領軍当局が承認したので、日本は正式にこれに入っておるのでございます。同様のことが、やはり在外事務所の設置ということは、同様な観点で見るのが適当であると思うのであります。占領軍の命令によって、日本政府の意思に関係なくこれが行なわさせられたのである。そのときの経緯から考えても、日本政府がむしろこういう関係を樹立したいということで、占領軍当局の了解を得て、これを設置したという経緯があるわけでございます。従って、実際上の外交行為を占領軍当局の了解のもとに行なったと見るのが適当だろうと思います。
○岡田(春)委員 今の御答弁には、国際法上から考えても、実は問題になることがたくさんあるのです。たとえば、第一点としては、一つの国が敗戦して占領されている場合において、相手の国をそういう形で承認し得る、実際上の承認をするという外交関係が結び得るということを今御答弁になったのですが、これは国際上非常に新しい説なんで、これはもう少しこれから伺っていかなければならないと思いますが、この問題については、きょうは関連質問ですからこの程度にしておきます。しかしこの問題は、そのように御答弁になっているのですから 速記録に残っているのですから、あとでこれは十分論議して参りたいと思います。先ほどの御答弁から伺うと、それは潜在的な外交関係であるとか、あるいは潜在的な相手国の承認の問題であるとか、こういうような御答弁をされておられるのですが、そういう点も間違いないのでございますね。潜在的なという言葉をお使いになった。だから私は、これは新説であるというようにとったのですが、その点も国際法上間違いございませんね。
○中川政府委員 やはり占領下でございますから、日本の外交権というのは完全には発揮できない状態にあったのであります。占領軍当局が許容する限度においてのみ発揮し得た。そういう意味で、そのときの承認もいわば完全な効果を伴った承認とは言えないと思います。従って、その意味で潜在的と言ったのであります。
○岡田(春)委員 今の御答弁を伺っていると、基本的には国際法上外交関係は樹立されているという考えですね。
○中川政府委員 外交関係ではなくて承認関係でございます。外交関係の樹立はもっとおくれてやったわけでござます。
○岡田(春)委員 それじゃ外交関係ではなくて承認関係というのも、これは一つの外交関係ではありませんか。違いますか。
○中川政府委員 外交関係と申しますと、やはり外交使節を交換する、そうなった場合に外交関係が樹立されたというふうに通常言いますので、従って外交関係という字句を避けたわけでございます。
○岡田(春)委員 それでは外交関係という言葉を避けなくてもいいですよ。相手国との承認の関係に基づく国際法上の一つの関係ですね、そういうことをわれわれは外交上の関係と思うのです。国内上の関係だとは思わないのです。しかしそうじゃないとおっしゃればそれでもけっこうですが、そういうような関係は樹立される、占領下で平和条約が未締結の場合においても、事実上そういう外交関係は平和条約発効以前において締結できるんだという断定をなすった、このように私は解釈してもいいと思うのですが、いいですね。
○中川政府委員 占領という制約がございますが、しかし国家としてのエージェンシーはあるわけでございますから、従ってそういうことは可能だと思います。
○岡田(春)委員 それじゃその点はあとでいたします。
 もう一つ伺っておきますが、先ほど森島君の質問に答えて郵便協定あるいは気象協定というものは技術的な協定であるからという、その技術的なというのはどういう意味ですか。
○小坂国務大臣 郵便というものは、郵便百年の歴史で非常に技術的に積み上げられてきたものである、気象関係も技術の問題が主になっている、一般の経済行為その他のものとは違う、ということでございまして、これは賢明な岡田さんにはよくおわかりになっていただけると思うのであります。
○岡田(春)委員 それじゃお伺いしますが、郵便あるいは気象というのは政府間に何らの関係なしにやれる技術的な事業ですか。政府は何らそれに対して関係なしに、郵便の交流、気象の交流というものが行ない得ますか。
○小坂国務大臣 純粋に技術的に郵便を送達する、あるいは気象関係の調査をするということは行ない得るものでありまして、一般の経済外交とは違うと思います。
○岡田(春)委員 貿易の問題は、品物を運ぶというのは純粋に技術的におやりになれるのじゃないですか。あれは何か政府が北京まで品物を持っていくのですか、どうなんですか。
○小坂国務大臣 幾ばくの品物を、しかもどういう種類のものを交易するか、しかもその価額はどうするか、支払い条件についてどうするかという経済行為が伴うものでありまして、これは郵便とか気象とは全く違うのであります。
○岡田(春)委員 気象観測は民間がやっておるのでございますか。
○小坂国務大臣 これはどうも御質問までもなく、岡田さんも御承知だと思いますが、政府がやっておるわけです。
○岡田(春)委員 技術的なことをやっているのは政府じゃありませんか。
○小坂国務大臣 これもどうもあまりきまり切ったことを聞かれるような気がするのですが、岡田さんと私は同じことに考えております。
○岡田(春)委員 それじゃ気象協定、郵便協定だって、政府の関与なしにやれないじゃありませんか。技術的であるとかないとかいうことは、決定的な条件じゃないじゃないですか。貿易の問題だって、政府がまさか品物を一々運んでいくわけにいかないじゃないですか。これは全く技術的な面ですよ。そんなことが、いわゆる政府間の協定を結ぶか結ばないかの条件なんかになりっこないじゃないですか。それはどなうんです。
○小坂国務大臣 政府の意思がどこまで入るかという問題だと思いますが、これは、気象の観測というものは、雨が降るとか雪が降るとか政府が曲げて伝えるわけにいかぬ、こういう、純粋に技術的な問題であろうと思うのであります。
○岡田(春)委員 あなたは語るに落ちたと思うのですよ。貿易の問題については政府の意思で左右しようという意図があるから、そういう意図がある上いうことをお話になっているわけでしょう。
○小坂国務大臣 全くそうじゃないのです。雨が降るとか風が吹くとかいうのはあらゆる意思が入らないでしょう。貿易の問題は、いかなる数量のものをいかにするかというようなことをやるのが貿易です。その受け渡しがどうだとか、それに対する支払い条件がどうだとか、あるいはクレームがついた場合どうするかというようなことについては、単純に一つの行為としていかないわけです。雨が降るとか風が吹くとかいう問題は、一つのことで、だれが見ても変わらないわけです。貿易の問題は、岡田さんがやる場合と私がやる場合と違うかもしれません、あるいは同じかもしれません。そこに意思が入っている。こういう違いがあるわけです。
○岡田(春)委員 私は関連質問ですからこれでやめますが、それじゃあなたは、郵便協定あるいは気象協定の場合においても政府の意思は入らない、政府がきめたことでもそれは意思が入らないのだという前提に立ってお話になっているのですね。そういうことになりますね。それならばそれでお答えいただきたいのです。気象あるいは郵便については政府は責任を持たない。これは何ら中国に関することではありませんよ。政府は、郵便協定は外国と結んでいるが、それは政府の意思に基づかざるものとしてやっている、気象の問題も政府の意思に基づかざるものとしてやっているのだ、こういう解釈に立っているのだという御答弁だと思いますが、この点だけ伺って声きます。
○小坂国務大臣 政府の意思が入らないということですが、これはものの解釈のしようなんでありまして、要するに、その意思の入っていく度合いといいますか、郵便というものはたまたま政府がやっている、あるいは気象というものはたまたま政府がやっている、しかし、これはだれがやってもそのやり方は変わらないであろう、そこにいくと、貿易の問題になりますと、政治経済的にいろいろな関連の度合いが強くなってくる、そういうように認められる、こういう点で相違があるわけであります。
○森島委員 時間の制約がありますので、中国関係の問題は総理が御出席になったときに譲ることにいたしまして、私はもう一問だけお聞きしておきたい。
 これは私は、実はあまり引用したくないのです。中華人民共和国に悪い印象を与えるおそれもあるので、私はこういう話を持ち出すことは好まないのですけれども、満州国の時代に、満州国とドイツとの間で貿易協定がされました。しかしそのときには、ドイツは国家承認の問題にならないのだという前提を明らかにして貿易協定を結んだ実例がございます。これらはいかにお考えになりますか。
○中川政府委員 森島委員の御指摘の通り、たしか満州国とドイツとの間で貿易取りきめを結んだかと思います。またその当時ドイツは満州国承認にはならないということもはっきり言ったのじゃないかと思います。必ずしもこれは戦前ばかりじゃなく、戦後におきましても、このごろの新しく興った国等におきましては、貿易取りきめを結びながら承認にならないものだと言っている事例も散見するわけでございます。従って承認にならないとその国がはっきり言えば、これはその国が承認しないという意思がはっきりするわけでございますから、そういうことも可能なわけでございますが、現在政府がどうして貿易取りきめを中華人民共和国との間にしないかという点は、むしろ政策上の問題として、さような、中華人民共和国との間に承認にならないというような条件のもとに貿易取りきめを作るというようなことは、全体から見て適当でないという考えからとっておる、政策上の見地からである、かように考えておるのでございます。
○森島委員 今の御説明は私はわからぬことはないのですが、従って問題を拡大していきますと、中華人民共和国の唱えておる三原則の問題に触れてこなければならぬと思うので、この質問は留保いたします。
 その次に私が承りたいのは、イギリスのごときは実際の実情に応じた外交をやるということでこれは世界から認められておる国ですが、このイギリスすらも中国関係の問題につきましては、たとえば蒋介石が武漢に武漢政府を作った、これは地方政権であって中国の中央政府とは認められない、しかしイギリスは目前の急務に応じまして九江や漢口の租界を返還するという政治協定をすら一地方政権である武漢政府と結んだことがある。これらは外務省としても大いに参考にすべきものだと私は思っております。なお一例を引きますれば、ソ連の関係ですが、ソ連が、これは事実上日本との関係ですが、満州国との間で東支鉄道の譲渡協定というものを結びまして、そのときにもソ連は政治協定であるにもかかわらず国家承認にならぬのだという建前を堅持しておったことがございます。これらの実例もあることなんですから、政府さえ腹をおきめになればできぬことはない。ことにあなたは公的機関を設けてもいい考えなんだ、こうおっしゃっているのです。それから、承認にならなければいいのだ。貿易協定を結んでもいいということは池田総理大臣も言っておるのだから、この点から考えましても十分に前進的に、建設的に問題をお考えになる時期に到達しているのだ、ただこれをやり得ないのは、依然としてアメリカのごきげんをとっておる、アメリカに追随しておるという以外にないと私は思っておるのでございます。
 私は中共関係の問題は次回に譲ることにいたしまして、一点だけ明らかにしていただきたいのは、ラオスとの関係で、ラオスと安全保障条約の関係でございますが、小坂さんが一月の十八日に成田政審会長と会見しておられますが、その際に、新聞所報によるのでございますが、外務大臣は、事前協議の問題が生じた場合にはそのときの状況を十分考慮して、平和維持の観点から慎重に取り扱うが、拒否すべきものは拒否する、しかし実際問題として安保条約の事前協議が適用されるような事態は今のところ考えられない、こういう御答弁をやっておられますが、これに間違いございませんか。
○小坂国務大臣 新聞記事のことですから正確だと思います。
○森島委員 これは大体どの新聞にも出ておりますから正確だと思いますが、しかし池田内閣や保守党内閣のやっておることを見ておると、事があれば新聞が書いたんだといって責任のがれをした例が非常に多かったのです。岸さんのごときはしょっちゅうその手を使っておったということは御記憶願いたい。私は、こういう御答弁が正しいのならば、ラオスの問題について安全保障条約適用の問題が起きる余地がございましょうか、この点だけお伺いしておきます。
○小坂国務大臣 今のところはないと思います。法律解釈として、極東における国際の平和と安全という問題がかかればかかるわけでありますけれども、現在のところはさようなことはないと思っております。
○森島委員 しかしその点に関しましては、予算委員会や安保特別委員会でしばしば問題になったのですが、ラオスが極東の範囲に入るか入らぬかという問題を蒸し返さなければならぬ。ラオスが入らぬというのは当時の統一解釈の結果だったと私は思っております。その点念のためお伺いしたい。
○小坂国務大臣 統一解釈は最終的には極東といって地理的にどことどこと入れることは適当でないというふうであったかと思いますが、しいて言えば範囲外であるというふうに思います。ただ条約は御承知の通り極東における国際の平和と安全、そこにおけるインタナショナルな紛争関係と申しますか、そういうものがわが国にも直接影響を及ぼすようになる場合は、それは、やはり考えられると思うのですが、現在のところはそういうことはないと思います。
○森島委員 いや非常に重要な問題なんですが、この点に関して小坂外務大臣の認識がはっきりしないから、私はこの点に関連して外務大臣の将来にわたる認識をはっきりされなければいかぬということで、あえてこの問題を取り上げたのですが、統一解釈を見ますとこういうことになっておりますよ。一般的な用語として使われる極東は、別に地理学上正確に固定されたものではない。これはあなたのおっしゃる通りです。しかし日米両国が条約に言う通り共通の関心を持っておるのは、極東における国際の平和及び安全の維持ということである。これもあなたのおっしゃった通りです。この意味で実際問題として両国共通の関心の的となる極東の区域はと、こうはっきり言っております。この条約に関する限り在日米軍が日本の施設及び区域を使用して武力攻撃に対する防衛に寄与し得る地域である、こうなっておる。そしてあとに、かかる区域は大体においてフィリピン以北並びに日本及び周辺の地域であって、韓国及び中華民国の支配下にある地域もこれに含まれておる。こういうふうに地域的に明確に規定しております。しかも委員会における質問等において南ベトナムが入っておるか入っていないかという問題が出ましたときにも外務省としては、南ベトナムは入っていないのだという否定的な答弁をしておるのでございまして、この統一解釈を政府が堅持される限りは、ラオスは絶対に極東の区域に入っていない。第六条ですか、交換公文に関する限りにおきましては、ラオスは入っていないと見るべきものであって、ラオスに対して第六条に基づく事前協議を必要とするか必要とせぬかという問題が起こる余地は絶対にないと思っておるので、もしアメリカが世界戦略の関係から、ラオスに何らかの行動をとるというような意図がうかがえる場合にはむしろ第四条の問題、日本としてはこの危険があるから事前にはっきりとアメリカに対して日本の軍事基地の使用等を拒否すべきものだと私は信じておりますが、外務大臣の御認識は非常に間違っておると思うので、この点は明確にされぬと将来大きい問題になると私は思っております。
○小坂国務大臣 安保条約上日米両国が共通の関心を有するのは極東における国際の平和及び安全の維持でございます。この意味において両国共通の関心の的となる極東とは、米軍が日本の施設、区域を使用して武力攻撃に対する防衛に寄与し得る区域でございます。しかしながらこの区域に対して武力攻撃が行なわれ、あるいはこの区域の安全が周辺地域に起こった事態のため脅威されるような場合、米国がとることのある行動範囲は、その攻撃または脅威の性質いかんによるものであって、これは必ずしも前記の区域に局限されるわけではない。これが外務省の解釈でございます。
○森島委員 そういたしますとラオスに対して現実に問題の起こるのは、安保条約の第四条の関係において初めて問題が起こるのであって、今あげられました第六条の関係におきましては、今おっしゃいました通り日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するということと、もう一つは合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更、同軍隊の装備における重要な変更並びに日本国から行なわれる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用、この二つの条件が必要なのでございまして、いやしくもラオスが極東の範囲に入らないという御解釈をとっておられる以上は、ラオスに関して事前協議の問題の起こる余地はないものだと私は思っておる。従ってそういう問題がアメリカから持ち越されましても問題外だということで、安全保障条約の関係から、当初からこれは拒絶せられるのが当然である、もし何らかの動きがあるとすれば、第四条の関係でなければならぬと思いますが、第四条すらも、いずれか一方の締約国から要請するということになっておりますが、アメリカから要請があったのですか、ないのですか。
○小坂国務大臣 要請は全くございません。条約関係の御説明は条約局長から……。
○中川政府委員 この新安保の解釈につきましては、森島委員の御意見大体においてわれわれ賛成でございます。一つだけ非常に例外的な場合でございますが、今外務大臣が言われました通り、いわゆる極東の範囲外、つまり周辺地域に起きた事態でありましても、それがこの極東の範囲の国際の安全及び平和を脅威するというような場合には、例外的にこのような事態に対しても日本におる米軍が対処する道が開けるわけでございますが、しかし現実に今のラオスの場合にそういうことが起こっているかどうかということは、全然今問題になっていないのでございます。従って原則的には森島委員の御解釈が正しい御解釈であると思います。
○森島委員 私が気になるのは、例外的な場合が起こり得るのだとおっしゃいますが、例外的な場合が起こるというのは安保条約違反の場合ですよ。それ以外に例外的なことは起こり得ないと思う。たとえば第四条に関してアメリカから要請があって、日本から海軍なりあるいは空軍が、あるいは台湾海峡なんかへ出るというようなことを仮定いたします。これは第四条で認めてもいいと思いますが、それが途中から戦闘作戦行動に入るという場合が起きたらどうなりますか、しかも戦闘作戦行動に関する定義に関しましては、当時の防衛庁長官は、その任務につく場合もあるのだというふうな御答弁で、比較的広い解釈をしておられますが、もし第四条でもそういうふうな行動がとられて、それが途中から変わるということになれば、これはアメリカの戦略上からする行動以外の何ものでもないのであって、私は安保に関する限りにおいては、この点を明確にしておいていただかねば困る。例外が起こる余地がないと私は信じております。
○中川政府委員 例外が起こる余地がないという仰せでございますが、政府の統一解釈と称するものの中に、すでにそういう場合があり得ることを申し述べておるのでございまして、例外的にいわゆる極東の周辺地域に起きました事態につきまして、それが極東の範囲内に重大な影響を及ぼすという際には、安保条約を発動し得る道はないではないということが統一解釈の中に入っておるのでございまして、その点を申し上、げた次第でございます。
○森島委員 その点は御説明を聞くまでもなく、政府の統一解釈の中にはうたってあります。しかしこれについては、米国の行動には基本的な制約がある。すなわち米国の行動は常に国際連合憲章の認める個別的または集団的自衛権の行使として侵略に抵抗するためにのみとられることになっておる、という厳重な制約があるのでございますが、この点から考えましても、現在のラオスの状況に関する限りにおいては、事前協議なんかの問題は全然起き得る余地がないと私は断定しておる。これは外務大臣もこの点をはっきりしておかれないと、事前協議の問題があったらそのときに考えるのだというくらいの御解釈では、ラオスに対する対策においても日本は誤ることがあるだろうと私は心配しております。またこれは安保条約成立後におけるファースト・ケースであり、このことについて外務省は明確なる認識を持って応酬されなければ、あとでまた前例として引かれるというふうなこともないとは限らないと私は思っておりますので、この点についてあえて私は質問をしたわけであります。この点について外務大臣の御所見を一つ伺いたい。
○小坂国務大臣 ラオスの問題に対しまして事前協議の問題は現実に起こっておりません。また将来も起きないだろうと思っております。かりに起きたならば、拒否すべきものは拒否する、こう言っておるのであります。
○森島委員 その点が非常に重要なんです。私は初めからラオスは極東の範囲外である、事前協議の問題の起こる余地がない問題であると信じております。外務大臣は、この点について起こる可能性があるのだということを前提にして御答弁になっておる。私はその可能性がないのだという前提に立ってアメリカと応酬に当たらなければ困るということを申し上げておるのであります。もう一度明確にしていただきたい。
○小坂国務大臣 ですから私は先ほど申し上げ、また森島委員もお認めになったように、非常に例外的な場合ですが、この区域に対して武力攻撃が行なわれ、あるいはその区域の安全が周辺地区に起こった事態のために脅威されるような場合、アメリカのとることのある行動範囲は、その攻撃または脅威の性質いかんによるものであって、必ずしもその区域に局限されないということを言っておるわけであります。それは非常に例外的な場合であるということを申し上げ、また現実の判断としてさようなことはないのではなかろうかということを見通しとして申し上げておるわけであります。
○森島委員 私はもっとこの問題を突っ込んで質問したいのですが、時間の制限もありますので他日に譲ることにいたします。
 もう一つ私の伺いたいのは、松平発言に関する点ですが、松平君は、えらい大使か何か知りませんが、非常にえらいことを言っておりますよ。国会で取り上げられた以外に、外務行政として十分考慮にならなければならないことがあると思います。松平君は、国連大使の仕事はいわば国内より一つ上の国際的見地に立って行なうべきもので、国内の政治情勢に迎合すべきではないというのが私の見方だ、国内情勢は本省で考えればいいことなので私は日本語の新聞は読まないことにしておる、こういうようなことを言っております。これがいわゆる池田さんのエゴイスチックか何か知りませんが、国連大使の心がまえ、日本の在外使臣全体の心がまえといたしましては、内政問題に通暁しなければ、外国の外交官ではないのですから、日本の利益を代表する外交官としては日本の事情を十分つまびらかに知っておらなければ国外に対して十分な活動はできないと私は逆に考えております。これを外務大臣はいかようにお考えになっておりますか。私は外務省全体に、頂門の一針と申しますが、御注意を申し上げたい。私は、外務省全体がもっと国内の問題を研究して、国内の問題に対して十分な知識を持っておりますれば、古くは太平洋戦争あるいは中国事変等に関しても、もっと異なった政策がとれたのじゃないかというように考えております。ともかくも、国内情勢に関する十分な知識を得るということは、在外使臣としても、また在外に働く官吏としても非常に重要なことではないかと考えておりますが、小坂さん、いかがでありますか。
○小坂国務大臣 大体私も同感であります。そういう気持もあって、しばらく日本へ帰ってきていなかった松平君に、日本に帰ってきて日本の空気を吸わした方がいいと思ったわけですが、どうも少し行き過ぎてしまったようなことがございまして、それゆえに私は厳重に戒告をしたわけであります。上とか下とかいう問題はとんでもない話だと思うのでありますが、これに対する松平君の弁解は、自分はそういうことを言わなかった。ただ在外使臣といり者はできるだけ任地で受ける気持を円地に帰り本省に伝える。外務大臣は円内の政治感覚からして最終的な判断を下していく、こういう意味で、自分は一生懸命先方の任地における国際間の気持をお伝えするようにしているのだ、こういうふうに言ったところが、妙な表現をしたようなふうになってしふって申しわけないということを言っておりました。根本的には私の言うことはよくわかっておるわけでございます。
○森島委員 私は松平君自体のことを今お聞きしているのじゃないのです。外務省として在外公館に対して国内情勢を明らかにするためにいかなる措置をおとりになっているか。どういうお覚悟でおるのかということを私は質問しておるので、私は外交というものは内政の対外的表現、対外的反映と申すべきものだと信じておるのでございます。内政と外政が一致しない場合に、りっぱな外交があり得る道理がない。松平君としても、在外使臣にもそういう考えの人がおったとしたら、これは考えを変えていただかなければならぬと思っておるので、その点を私はお聞きをしておる。外務大臣としてそういう点についてどういうふうな御配慮をなさっておるか伺いたいと思います。
○小坂国務大臣 内政、外交が一体になって日本の外交は進むべきものであるということは私もそうだと思います。それから日本の内政としても、国際感覚というものをできるだけつけていかなければならない、こういうことも必要だと思います。そういう点をできるだけ在外使臣にも十分含んでやりまするように私ども事あるごとに言うておるつもりでございます。なお足らぬ点はできるだけ考慮いたすようにいたしたいと思います。
○森島委員 私は言っているとか言わぬとかいうことじゃないのです。外務省としてはこういうふうな施策を進める上においていかなる方法をとっておられるかということを原則的にお聞きしておるのです。一々帰ってきたとき言っておるとか言わぬとか、これは当然なことなんですね。外務省としてはどういうふうな具体的な方策をとっておられるか、それをお聞きしたいと思います。
○北原説明員 そのために在外との連絡につきましては十分留意しておるつもりでございます。毎年定期的に在外公館長会議も開きますし、費用の許します限り割合近隣諸国の在外公館長には東京へお帰り願いまして、東京の空気等も十分に吸っていただくというようなことで、中央と出先との連絡をできる限り密接にやって参りたいというのが考えでございます。
○森島委員 それ以外に何らか方策をとっておられませんか。
○北原説明員 一般的な外務省の所掌事務につきましての何といいますか、本省と出先との連絡につきましては、これはできる限りあらゆる能率向上を考えております。電信交信その他日々の国内におきます情報におきましては、いわゆる一般情報という制度を昔からやっておりますが、問題はできる限り文書によります連絡のほか、予算が許します限り、できる限り人的交流も漸次拡大していきたいというふうに考えております。
○森島委員 その点について私は非常に欠けていると思うんです。この点をもう一そう努力していただきたいということを要望いたしまして、本日の質問はこれで打ち切りますから、いずれ総理大臣が出ましたときにまた発言を留保しておきます。
○松本(七)委員 委員長、ちょっと資料の要求があるんです。政府に要求して下さい。国連の去年と一昨年、朝鮮復興委員会の決議がある。それの英文と和文の両方を一つなるべく至急にお願いいたします。
○堀内委員長 いいですね。
○鶴岡政府委員 お言葉に従います。和文の方はちょっと時間がかかるかもしれません。
○堀内委員長 川上貫一君。
○川上委員 私は外務大臣に対して二、三の質問をしたいのでありますが、具体的に御質問いたしますから、解釈論はいたしませんから、時間も貴重なのでありますから、簡単にお答え願いたいと思います。
 まず第一に、外務大臣は韓国に対する請求権の問題、これは平和条約の第四条の(b)項によって消滅した、こういうように答弁なさっておられまするが、これはこの政府の解釈はいつごろからそういうことになっておりますか、これをお伺いしたい。
○中川政府委員 大臣にかわりまして御答弁申し上げますが、この解釈は昭和三十二年、一九五七年の十二月三十一日からさような解釈をとっておるのでございます。
○川上委員 そうすると、外務大臣はこの請求権の放棄をしたのは覚書によったのじゃない。覚書という言葉であったかどうか、とにかくアメリカの日本の在韓財産に対する(b)項の返還についての覚書、これによったものじゃないのだ、(b)項によって消滅したのだ、こう言うておるのでして、これは法制局長官じゃない、外務大臣にお答えを願いたい。
○小坂国務大臣 一九五一年平和条約ができました際に、四条(b)項で認めたわけです。その(a)項であらためて協議するという問題について一九五七年十二月三十一日の解釈、アメリカ側が出しておる解釈を日韓双方で認めた、こういうことでございます。
○川上委員 そうすれば、平和条約調印の時分にもう日本政府は認めたのですか。
○小坂国務大臣 理論的にはそういうことでありますが、問題は戦時国際法で私有財産権は失わないということがあるので、いろいろその後においていきさつがあったわけですが、どうにもしょうがないということになったのが一九五七年の解釈ということになっております。
○川上委員 それはどうしてなったのですか、初めそうでなかったのが三十二年の十二月になったというのでしょうが、どうしてそうなったのですか。
○中川政府委員 これは平和条約に調印いたしまして、すぐ日韓間の交渉が始まったわけでございます。この日韓間で財産請求問題というものがある意味で非常に大きな問題だったわけでございますが、交渉にあたりまして日本側は交渉の関係上、今と違った解釈を実は交渉において主張したのでありまして、それでずっときたわけでありました解釈というのは、やはり平和条約の解釈としてどうも必ずしも適当でないというふうに考えまして、日本政府がはっきり今から三年前にこの解釈はやはり不適当であったから、こういう解釈にするということで、従来の解釈を撤回いたしまして、新しい解釈を提示したわけでございます。従って現在から申しますれば、初めから平和条約の解釈はそういう解釈であるべきであったという考えを日本政府はとっておるわけでございます。
○川上委員 考えてみたら、間違うておったから直したというのですか。
○中川政府委員 それは日韓間に相当困難な交渉をしております。交渉の際は、初めは自分の方に都合のいいいろいろな議論をするのは普通人の間の交渉でも同じことでございまして、交渉がある段階に進みますと、おのずからそこに歩み寄りというのが行なわれるのでございます。交渉上そういう一種の戦術をとっておった、かようなことでございます。
○川上委員 あまり長く聞きませんが、そうすれば、この覚書で放棄したということをちゃんと方々に言うておる。日本が考えたんじゃない。アメリカの覚書で放棄したのだ、こう言うておる。たとえば韓国に対する通告にしても、日本は、大韓民国に対して日本政府が昭和二十八年十月十五日に久保田貫一郎首席代表が行なった発言を撤回する。かつ昭和三十二年十二月三十一日付アメリカ合衆国政府の見解の表明をもとにして請求権を放棄する、こう言うておるのです。これをはっきり聞きたいのです。覚書で変えたのだと政府は言わぬ。日本の政府がいろいろ考えて考えたと言う。何ではっきり覚書によって変えたと言えない。外務大臣に聞きたい。
○小坂国務大臣 覚書というものが出て、日本政府もこれはもっともじゃということできめたわけです。
○川上委員 そういうことを言うなら、覚書と同じものはもっと前に出ておる。ここには中川さんが来ておる。中川さんは覚えがあるだろうと思うのですが、これは五年も前です。アルプス・シリーズ三十五号に御本人が執筆なさった。それには、アメリカの国務省は昭和二十七年の三月二十五日付の在来韓国大使館のアメリカ政府あての書簡への返事の形でアメリカ政府は四月二十九日付で、日本との平和条約第四条(b)項に対する米政府の見解を明らかにしている。この内容は、日本との平和条約第四条(b)項の規定の結果とし、在韓日本財産は請求権が消滅している。こう言うてきておるのだ。その同じ内容のものを在米日本大使館に対して同年の五月の十五日に通報しておるということを、当時の中川アジア局長が執筆しておられるのです。これはどういうことになりますか。
○中川政府委員 川上委員御指摘の通りでございます。このアメリカの解釈というのは相当前から提示されていたのでございまして、その解釈について日本政府も十分検討したのであります。その結果が三十二年の終わりのあの声明になって出たのでございまして、その点は少しも間違いはないと思います。
○川上委員 間違いがあるのです。その時分に来たアメリカの大使館に出されたものと、あとで来たものとが同じものじゃということをあなたは言うておる。執筆しておる。それならなぜ在米日本大使館に来ても――その後に岡崎外務大臣は、ここに速記録がありますけれども、非常にはっきりと請求権があるということを言うておる。これは少し考えてみたらどうも工合が悪かったからというような問題じゃありません。国会において外務大臣はこう言うておるのです。これは二十七年の五月十四日でありますが、平和条約の四条(b)項、すなわち日本が財産処分の効力を承認するという意味は一般国際法の原則、通則によって解決せらるべきものであって、朝鮮の米軍政府が占領軍として敵産管理の処分を行なったとしても、その財産に対するものとの所有権は消滅しない。つまり処分を承認したけれども、もとの権利、請求権はあるのである。さらにはっきりと、ヘーグの法規によりましても、占領軍が私有財産を没収することはできない、これは当然であります。日本には請求権はありますと外務大臣が答えておる。この外務大臣は平和条約に調印した吉田内閣の外務大臣です。平和条約の担当者なんです。これが、はっきり、ないと言うているのです。そこでいろいろ考えましたけれども岡崎外務大臣は考えなかったのか。そうじゃなくて、三十二年の十二月三十一日にアメリカが覚書を出してきた、この覚書を出してこられて、仕方なしにとは言いませんが、政府は放棄したのであるということが、なぜはっきり言えないかということです。事情は明らかなのに、日本で考えてやったんでありますというようなことをなぜ言わなければならぬか。アメリカの覚書によって改めました、こうどうして言えませんかということを聞いているのです。
○中川政府委員 従来の経緯でございますので私から御答弁申し上げますが、日本政府はアメリカの解釈が、ずいぶん前でありますが、初めて示されたときにすぐにそれに同意したのでも何でもないのであります。アメリカの解釈を四囲の状況を考えながら十分検討したのであります。非常に長く検討の時間がかかったのでありますが、三十二年末に至りましてこの解釈を採用するのがよろしい、この際この解釈を採用するのが一番適当である、こういう見地に立ちましてその解釈をとったのであります。アメリカの解釈が三十二年の末に出たから、すぐそれに応じたという次第ではないのであります。
○川上委員 そういうことを聞いているのではないのです。アメリカのそれが出なかったら変えやせぬのでしょう。アメリカの覚書という表現がよいか悪いか別として、これが出たから変えたんでしょう。このことを聞いているのです。なぜ正直に言えないか。
○中川政府委員 アメリカの覚書が出たから変えたのではないのでありまして、アメリカの覚書に書いてある解釈が適当であると考えて変えたのであります。
○川上委員 アメリカの覚書が適当であると考えたというような答弁をしているのですが、そのアメリカの覚書というものはどういうことを書いてあるのですか。これをここで明らかにしていただきたい。それを政府が適当だと思うたということが適当であるかないかここで判断しなければならない。だからその覚書の全文をこの委員会に出してもらいたい。そうでなければこれを基礎にして考えましたと言うても、それが何のことやらさっぱりわれわれにはわからない。
○伊關政府委員 アメリカの解釈を発表するようにという要請は前からございまして、これは韓国との間でお互いに発表しないということを当時申し合わせておりましたので、一方的に発表もいたしかねますので、目下相談いたしております。きわめて近い将来に発表しようということになっております。ですからその解釈の内容として詳しいことは今のところ韓国に対する関係上申すことはできませんけれども、大体の考え方は韓国における日本の財産が全部韓国政府の手に渡ったというこの事実は、第四条(a)項の特別取りきめを行なう際に当然考慮さるべきだ、いわば一種の相殺思想というものがうたわれているわけであります。
○川上委員 アメリカの没収という言葉を使いますが、没収した財産が全部韓国に渡った、これは重大な発言だと思いますから、この点についてはあとで克明に質問します。
 その前に、政府のお考えによると、アメリカが言うたから変えたのではなくて、日本の政府が考えて変えたということになれば、日本の政府は軍令三十三号とヘーグの法規の四十六条は抵触しないと考えておりますか。アメリカの軍政庁の法令三十三号はへ−グの法規以上の効力があるものである、こう考えて政府はこの解釈をとっておりますか。
○中川政府委員 アメリカが朝鮮で出しましたいわゆる軍令三十三号というものは、へ−グの陸戦法規四十六条にきめてあるものを越えた措置であると考えております。
○川上委員 越えた処置であることを認めたのですか。日本政府は三十三号はへ−グの法規を越えたものであると認めた、こう解釈していいのですか。
○中川政府委員 へーグ陸戦法規の規定を越えたアメリカの軍令三十三号の効力を平和条約第四条(b)項で日本は承認しておる、こういう解釈でございます。
○川上委員 へ−グの法規を越えるようなものをどうして承認できる。そうすれば三十三号というのはへ−グの法規以上の権威があるのですか。日本政府はどういう見解で三十三号がへ−グの法規以上のものであるということをきめたのですか。
○中川政府委員 先般もこの委員会で御質問があったのでありますが、今度の戦争におきましては、従来の国際法の観念を逸脱した行為が非常にたくさん行なわれておるのでございまして、必ずしもこの軍令三十三号ばかりではございません。日本人の海外にある私有財産が平和条約によって補償なしにすっかり接収されてしまったという事態もございます。日本ばかりではございません。これはドイツの海外財産、あらゆる私有財産が結局連合国によって没収されておるのであります。さようなことが、結局平和条約によりまして敗戦国が承認するということによって、いわば最終的に決定するのでありまして、この四条(b)項の措置も結局そのような規定の一つである、かように考えます。
○川上委員 日本の財産がほかのところでも没収されたという問題は、この韓国の問題には適用できません。これは別です。それからドイツの問題を今出されましたが、これは違います。ドイツの条件というのは、連合軍が入っていって、デーニッツ将軍が降伏をしてすぐ逮捕されて、直ちに没収されてしまっております。日本はそうじゃない。日本はポツダム宣言を受諾して、日本の政府に日本の一定の統治を託させて、その上で占領軍が来ておった。従ってドイツの例は日本には全然適用できません。ドイツの例のごときは国際法の前例となるべきものじゃない、こういう解釈をしなくちゃだめなのです。それから日本がよそのところで没収されたと言いますがこれは朝鮮の放棄の問題には関係ありません。つまり(b)項によってこれを認めたということは、朝鮮で行なった軍政庁の三十三号がへ−グの法規に違反しておるのだという前提のもとで日本政府が認めた、こうなるのでしょう。
○中川政府委員 平和条約四条(b)項の規定は、アメリカ軍司令官がとった日本財産に対する措置の効力を承認しておるのであります。従ってとった措置である。いわゆる軍令三十三号が何であるかという問題がいわば実体をきめることになるのでありますが、軍令三十三号のすなおな解釈として、これは要するに最終的に所有権を取ったものである、接収したものである、かように解釈せざるを得ないというのがただいまの政府の考え方であります。
○川上委員 この問題で長くかかるのは、時間の関係上私は好みませんが、そういう解釈じゃだめですよ。(b)項では処分を承認しておる。それだから、処分は承認したけれども原権は残っておるのだという解釈を、調印をした当事者、吉田内閣の外務大臣が国会で主張しておるのです。どこまでも請求権はあるのだ。(b)項で認めたのは処分を認めたのであって、原権は放棄しておらぬと言うておる。あなたは初めから認めたようなことを言うておる。そうじゃないのでしょう。覚書が出たものだから、ここで考え方を改めざるを得なかったのでしょう。そういう言い回しをしないで、これをなぜはっきり言えないかというのです。私はこの問題でいつまでも時間をとろうと思っておりませんけれども、これをはっきりしたければあとの問題が出てきますが、これは工合が悪いですよ。
○中川政府委員 先ほどと同じお答えになりますが、覚書が出たから日本の解釈を変えたということは事実でないのでありまして、覚書と同じようなことは、すでに川上委員御指摘の通り、相当前にも提示されたことがあるのであります。日本政府が、日韓交渉等の関係を十分考慮した上で、従来の解釈が適当でないということで解釈を変えたのであります。
○川上委員 覚書が出たから変えたんじゃない。そうではないので、前にも覚書は在日アメリカ大使館には書面の格好で来ているのです。来ておるが、この時分にはなお岡崎外務大臣は請求権はあると言うておる。ところが覚書が出てきて、これで三十二年十二月三十一日に変えた。覚書が出てきてから考えて変えたんじゃない。放棄しておるのは同じ日付じゃないですか。覚書が出てきてから何時間考えるのか。そういう妙な言い回しをしないで、覚書が出てきましたから改めましたとなぜ言えないかと言っておる。覚書が出たのは三十二年十二月三十一日です。ところが政府がアメリカに通告したのも三十二年十二月三十一日です。同じ日です。何時間一体考える。
○中川政府委員 覚書と実質的に同様なことはすでに数年前からわれわれ知っておるのであります。アメリカがこういう解釈をとっておるということは知っておるのでありしまて、考える期間と言えばむしろ数年間考えたわけでございます。決して覚書と同時に変えたというのではないのであります。
○川上委員 そうすれば大臣に質問しますが、それを知っておって岡崎外務大臣はなぜあんなに突っぱったのですか。岡崎外務大臣の解釈が間違っておるのですか。国会で二へんも三べんも答弁しておる。これは外務大臣にお聞きします。
○小坂国務大臣 軍令三十三号は一九四五年に出ておりますが、その中に、そうした財産を取得し所有しという言葉がある。平和条約第四条(b)項には、「日本国は、第二条及び第三条に掲げる地域のいずれかにある合衆国軍政府により、又はその指令に従って行われた日本国及びその国民の財産の処理の効力を承認する。」こうありますので、先ほどから平和条約の四条(b)項の解釈として日本の韓国における財産権は放棄されたものと考えざるを得ないということを言っておるわけであります。しかしながらわれわれとしては、できる限りわれわれの同胞の多年苦心経営いたしましたるところのものを守りたいという気持はもちろんあるわけでございます。その考え方に基づいて、へ−グの陸戦法規四十六条によれば管理権が移転するだけであるという主張をしておったわけであります。これは一九五二年に日韓交渉を始めてからこの主張をしておった。ただいま御指摘の岡崎外務大臣の言明というものはそれを反映して、さような主張を外部に対してしておるのでありますから、国会でもさようなことを言っておったわけであります。しかしどうもなかなか日韓双方において話がつかない。一方アメリカの解釈というものが来ておる。そこで結局数年間の考究の結果、やはりこの条約をすなおに読んでみればそういうことになろうかということで、一九五七年十二月三十一日に、アメリカの解釈というものは承認すべきものだ、すなおに読んでみればこういうことになるということで、それを基礎にして日本政府の考え方を明らかにした。しかしそれと同時に、平和条約第四条(a)項によるところの特殊の取りきめというものは、さっき伊關アジア局長が言ったように、日本がそうした私有財産まで提出しておるという事実を十分考慮に入れるということをまた一方において承認さしておる、こういう関係であろうと存じます。
○川上委員 考慮に入れるなんということはほんとうは要らぬものなんです。これを考慮に入れなければならぬところにほんとうの問題があるのです。この問題でなお時間をつぶすのは私は困るので、もう長くこの問題は聞きませんが、林法制局長官の解釈は起草者であるアメリカの解釈を尊重して放棄した、そうして三十二年十二年三十一日に放棄しますということを韓国に言っておるのです。覚書の日付は同じ年の十二月三十一日なんです。考えてもごらんなさい、それが出るまで政府は請求権があると言ってがんばっておるのであります。これははっきり外務大臣は言いませんけれども、岡崎は間違っておったんだということをやはりおっしゃっておるのです。考えてみたらそうじゃなかったというのなら、前の外務大臣は間違っておったから変える――三十二年十二月までは、政府は請求権があると突っぱっておる。ところが三十二年十二月以後は、平然として請求権がないと言い出した。そうして覚書も出さぬと言っておる。率直に、アメリカの覚書によって変えましたとも言わぬのです、これはどういうことなんですか。
 そこで、この問題は関連もありそうですからあとで質問することにして長く言いませんけれども、そうするとアメリカは韓国に一体どのようなことをしたのか。韓国が困るとおっしゃるが、韓国は困らぬと言っておる。日本の政府も、うちは困るのだとは言っておらぬ。そうすると、この覚書を出されたらアメリカが困るのじゃないか、どうですか。韓国の外務部次官は、はっきり困らぬと言っておる。これは正式じゃないからとかなんとかいう問題じゃありません。公然と韓国日報に発表され、覚書の全文まで出た。それについて外務部次官は、発表はちっとも韓国は困らぬと言っておる。この一切の連絡を考えてみれば私はわかると思う。岡崎外務大臣が請求権ありと言ったこと、三十二年十二月に覚書が出たこと、その同じ日に韓国に向かって日本政府は放棄をしておること、そしてその覚書は出さぬと言っておること、手のひらを返すごとく政府の見解を変えておる。岡崎が間違っておったのかというと、それもはっきり言えない。間違っておったという内容は言っておるけれども、はっきりと外務大臣は言わない。そうすると、この疑問を解決するのは、アメリカの覚書が出たからこれによって日本は解釈を変えましたという以外には、解釈の仕方がないのです。ところが先にも言いましたように、その当時の中川アジア局長は、五年も前に出ておるのだということを言っておる。それを政府は突っぱっておる。そうしてみれば、三十二年十二月の覚書が出てのっぴきならぬようになったから放棄したのだと解釈せざるを得ない。それをはっきり言ったらどうかと言っておるのにはっきり言わない。外務大臣は、国会のここの答弁をうまいこと言うのが能じゃない。国の財産権に関する問題並びにへ−グの法規に関する問題、アメリカの軍政庁の法令三十三号に関する問題です。それを適合もしないドイツの例を出してみたり、日本の財産を没収されたと言ってみたり、いろんなことを言って合理化しようとなさる。これは率直に言って、アメリカが韓国で莫大な資産を略奪しておる、これを合理化する覚書だ。この覚書をなぜ出さないか。それはアメリカが困るのじゃないですか。韓国におけるアメリカ軍の略奪行為を合法化する覚書だ。この放棄の解釈を別項によってやろうとしておる、こう解釈をせざるを得ないことになるから、この点についてはもっとはっきりと答弁するのが外務大臣の仕事ではないのか。委員会でうまく言いのがれしさえすれば、国の政治のすべてのことはうまくいくというものではなかろう。もっと率直にやったらどうかということを聞いておるのです。あらためてお聞きします。
○小坂国務大臣 率直にお答えいたしますが、このいわゆるアメリカの解釈を公表するということは、これは伊關局長が答弁しましたように、韓国と打ち合わせた上で発表するということになりましたので、打ち合わせの結果、近い機会に発表することになるだろうということを申しておるわけです。先方からするとやはり先方の事情もあろうかと思いますので、やはりこれは信義の問題でございますから、一度公表しないと約束したものを今度公表するのでありますから、やはり先方の同意を得て公開すべきものだと思います。
 それから新聞紙上の金外務部次官ですか、先方の言明がいろいろありましたが、これは私は存じませんことであります。とにかく、先方に問い合わせたら、公表は待ってくれ、こう言うのでありますから、先方はそう言う以上は公表していないと思います。
○戸叶委員 今の問題で、私も奇異に感じたものですから、その点を確かめておきたいと思いますが、大体川上委員がおっしゃいましたように、米合衆国の見解に対して予算委員会でもまたこれまでの外務委員会でも、日本の政府は韓国との信義の関係があるから発表できないという答弁をされてこられたわけでございます。ところが、今御指摘がありましたように、二月十六日に金外務次官――この方は私は相当政府の責任のある人だと思いますが、その人の談話で、日本の政府が、発表をするのは韓国との約束があるから差し控えているのだと言うことはまことに心外だというようなことを言っていられるわけでありますし、またその日の韓国日報にはその全文なるものが出ておりました。私もそれを見せてもらいましたけれども、そうなって参りますと、日本の政府だけが信義を重んじていて向こうの方が信義を重んじないのか、どういうことになっているのか、私はちょっとわからないものですから、向こうが信義を破ってそれを出したのか、あるいはまたそこに出された全文というものは一体うそなのかどうか、この点を確かめておきたいと思ったわけでございます。
○伊關政府委員 三十二年十二月三十一日に、日韓の間で話し合いの了解ができておりますが、あれが三十一日までかかりましたのは、もう二、三日早くきまるところを、アメリカの解釈を発表するかしないかということで最後にもめまして、三十一日ぎりぎりの夕方になったのを一つ私は記憶いたしております。結局、韓国側が当分これを発表したくないということを申しまして、わが方は発表すると言ったわけですし、アメリカ側はもちろん異存がなかったわけですが、韓国の方でどうしても発表せずにおいてくれということで、それでだいぶもめまして、結局のところ当分の間発表しないということになったのであります。ところがその直後一月に、日本の何かの通信にその全文が漏れておりまして、韓国側から文句を言われた事実もございます。その後日本の新聞社の方はそれを引用しておらないわけです。おそらくそれがこの間韓国日報に引用されたのじゃないかと思っております。それから、先般こちらから相談しました際には、韓国側はまだ請求権の実質的な討議も始まっておらぬ現状においてこれを発表するのもどうか、いずれ発表することには異論はないが、もう少し待ってくれと申しまして、そのままになっておるわけであります。その間に金外務次官の発言なるものが新聞に出ておりますけれども、新聞程度でありますから、これは向こうの新聞をどの程度信用するかの問題でありますが、いずれにいたしましても、私たちはきわめて近い将来に発表するように打ち合わせようと思っております。
○戸叶委員 関連ですから私は申しませんけれども、ただ、発表するのを待ってくれというので日本が発表を差し控えているのに向こうの方だけが発表をしたということであれば、一応新聞に出ていたわけでございますけれども、新聞に出ていた以上それを信頼できないということも言えないと思うのですが、あなたの方では発表されたじゃないか、日本の方では発表を待っていろというのであくまでも信義を重んじているのだというくらいは一応問い合わしてもいいのじゃないかと思ううのです。韓国の言われる通りに、日本の国は待っていなさいと言いながら、向こうだけで発表するというのは少し私は国際信義の上から見てもどうかと思うのですが、この点はいかがでございますか。
○伊關政府委員 ただいま申し上げましたように、三十三年一月には日本側から全文が漏れておるわけでありまして、これを引用いたしまして韓国日報でありましたか何か一新聞が出したにすぎないのでありまして、出ましたものはほんとうのものでございます。われわれの方は近く発表しようということを申し入れておりまして、向こうも請求権の討議でも始まったらということを申しております。これは今週末から始まると思いますので、来週には発表するのに向こうも異論ないものと思っております。
○川上委員 次に移る前に、今の問題で一つだけ聞きます。いわゆるアメリカの合衆国の軍政庁の三十三号はへ−グの法規違反であると政府は認めますか、どうですか。
○中川政府委員 先ほど申し上げました通り、へ−グの陸戦法規を越えたものであると考えております。
○川上委員 へ−グの法規四十六条、占領軍は私有財産を没収することができないというのを越えたというのは、違反したということですか。
○中川政府委員 これはいろいろの法律上の理屈はあると思います。つまり陸戦法規というのは一応戦闘の際の行動を律する基準ということであの当時できたものと思います。これはすでに今から五十年前にできたものでありますから、現在のような、ことに今度の戦後処理のように長期にわたってある国が占領下に置かれ、そこで占領軍がいわゆる行政を行なうというようなことは、必ずしも予見していなかったというようないろいろな事情があろうと思います。従って、越えたという表現が一番適当な表現じゃないかと思います。
○川上委員 この問題は、政府の解釈は非常にあいまいであって間違っておると思いますから、留保しておいて、この次の機会に質問します。これは政府の今の答弁では了解できません。
 そこで続いて時間の関係上次の質問に移りますが、合衆国の見解の表明、いわゆる覚書というものは、「合衆国軍の管轄内にあった朝鮮の部分における日本の財産は所属を変ぜられて、その後、大韓民国に移転された。」こうなっておると思う。このことをアジア局長もさきに答弁されたと思う。そこで、韓国にあった日本の財産は大韓民国に全部移転されたのであるかどうかを外務大臣にお聞きします。
○伊關政府委員 私その点全部であるか大部分であるか、ちょっと今のところはっきりいたしません。多少留保したものがあるかも存じませんが、後ほどよく調べてからお答えいたします。
○川上委員 全部であるかないかわかりもせぬのに交渉できますか。この覚書によると、日本の財産をアメリカが没収して、それを韓国に引き渡した。この文書は全部引き渡したとなっています。しかもそのことを考慮に入れて、韓国の日本に対する請求権が消滅したか、どの程度充足されたかということを両国の取りきめによって決定せいと書いてある。どのくらいやったかわからぬということで、どのようにして交渉するのです。交渉できないでしょう。
○伊關政府委員 その後にアメリカが韓国に渡しますときに米韓協定ができております。その原文を今ちょっと持ってきておりませんのではっきりいたしませんが、大部分が渡ったと思っておりますが、ただいかなるものがアメリカ側によって韓国側に渡されたかという点につきましては、請求権の交渉の過程において日本側が資料を出すことを要求いたしております。それに対して韓国がまだ出しておりませんけれども、今後交渉いたします際には当然そういうことも問題にいたします。
○川上委員 これはあとで聞きますが、韓国に引き渡されたものは有料ですか、無料ですか。
○伊關政府委員 原則としてもちろん無料だと思います。
○川上委員 原則を聞いているのじゃないです。請求権の問題で交渉を今しておるのですから、原則じゃない、事実上有料か無料かということです。しかしこれは責任者である外務大臣が答えなければだめです。しかも、この日韓交渉というものは、今後われわれは質問を続けなければならぬと思うが、非常に重大な問題なんだ。あいまいにしておいてこの請求権の問題はやれぬですよ。そこで、有償か無償かということがはっきりしなければいかぬと思う。これは外務大臣どうなっておるのですか。
○小坂国務大臣 今アジア局長のお答えしたことで尽きておると思いますが、要するに米韓協定の内容というものをわれわれ十分に見なければなりません。しかしこの財産請求権の問題の交渉の過程において当然われわれはそれを見て判断するわけでありますから、今その交渉はそこまで入っていないというのが現状でございます。さっきお答えしたように来週早々から入る、そういうことであります。そのとき当然問題になると思います。
○川上委員 米韓条約は今持っておらぬというが、私の方は持っておりますから必要があれば出しますけれども、それを今持っておらぬということはない。アジア局長なんかちゃんと宙に覚えておるに違いない。しかしそれはこの問題には関係がないことが一つと、いま一つは、日本の外務大臣は日本の財産がどのくらい没収されたのかまだわからぬ、そのうちどれだけ韓国に行ったかわからぬ、しかもその行ったのが有償であるか無償であるかわからぬ、こういう答弁と解釈してけっこうです。
○小坂国務大臣 それは交渉に入る前に言うべき事柄でないということです。
○川上委員 わかっておるけれども言わぬというのですか。アジア局長、わからぬのですか。
○伊關政府委員 私が先ほど申し上げましたように、それは無償で行っておりますが、ただ米軍が取得しまして韓国政府に渡すが米軍が使用いたしております、そのときの多少の例外がございますから、その例外の細目がわからないのでありまして、大部分のものが無償で渡されたことははっきりしております。
○川上委員 四六年の二月二十一日の軍政庁法令第五十三号、新韓公社というものができております。東洋拓殖等の農地、この農地は全韓国の耕地の約二〇%に適合すると思うが、この東洋拓殖の農地は全部没収しております。そしてそれを米側が農民に払い下げておる。払い下げたけれども、高いから農民がそれをなかなか買い取らぬ。その残りを韓国に譲渡したということになっておる。この譲渡は有償か無償かわからぬが、新韓公社というものを作って、東拓の全韓耕地の二〇%に相当するものを農民に払い下げをしておるというこの事実を認めますか、どうですか。
○伊關政府委員 その事実につきましては、調査いたしました上でなければ認める、認めぬは申し上げかねます。今その事実について私は存じませんので、調査いたしました上で認めるとか認めぬという点は申し述べます。
○川上委員 これは僕はとんでもないことだと思う。何にも知らぬというようなことをおっしゃるが、何にも知らぬで一体請求権の問題の交渉なんかできますか。日韓会談は何年かかっているのです。きのうやおととい始まったことじゃない。長い間これが問題になって今日に及んでおるのです。今になってもこれがわからぬ、こういう答弁では私は答弁にならぬと思う。しかしこれがわからぬというのだから、そうすれば韓国へ残りを譲渡したのが無償であるかどうか、これもわからぬというのでしょうが、払い下げをしたその代金、これはだれがとったのか、これは買い取ったのですか。
○伊關政府委員 この韓国にあります日本の公私の財産につきまして、これを詳細に調べております主管官庁は大蔵省でございます。大蔵省の管財局がこれを調べております。大蔵省は集められる範囲の資料は集めております。ただ韓国側に照会しないとわからぬ面も多々ございます。今まで日韓交渉を十年近くやっておりますが、非常に交渉は難航しておりまして、そういうようなこちらの欲する資料も向こうはくれてないというものも多々あるわけでございまして、大蔵省の持っておる資料が完全なものであるかどうかについては、私は韓国側の協力を得なければ完全なものにならないと思います。私が今知らないと申し上げたのでありまして、大蔵省に確かめますれば、御質問の点にもお答えできると思います。外務省としましては、そこまではまだ調べておりません。これは大蔵省の責任において調べると思います。
○川上委員 その問題は繰り返しませんが、外務省が何にも知らずに交渉するという態度、それはもううそです。そういう答弁をなさってはいかぬと思います。それは大蔵省が知っておると思う。外務省は知らぬ――外務大臣、これは知らぬで一体交渉できますか。交渉方は大蔵省がするのじゃない、外務省がやっておる。自分の力で知らないで、大蔵省にあるのだ、こんなことでは、もう全くむちゃくちゃな答弁です。こういうのが日韓会談の正体だと思う。
 それではもう一つ聞きますが、四七年の三月二十四日の軍政庁法令では、価格百万円以下の全企業を払い下げております。全企業です。ほかに百万円以上のものもアメリカの資本が払い下げを受けて現在運営しておる。たとえば南鮮唯一の製鉄工場の三和製鉄なんというのはこれでやっておる。現在原料工業の大部分、これは大部分と言うてよろしいが、アメリカが握っておる。没収した財産を大部分渡したと言うが、まず第一に土地を渡しておらぬ。知らぬと言うたってだめですよ、法令があるのです。法令を知らぬことはないでしょう。土地を渡したのは四六年二月二十一日軍政庁法令第五十三号、企業を没収して払い下げをしたのは四七年三月二十四日の軍政庁法令です。そうすれば企業はそうなる、土地はそうなっておる。何を渡した。在日財産としてほかに何がある。韓国に渡した渡したと言うけれども、何を渡したのか。
○伊關政府委員 ただいまおっしゃっておられるケースは、私は大体例外的なものに属すると存じますが、いずれにいたしましても、この交渉をいたしておりましても、大体請求権の交渉の主査は大蔵省の理財局長がやっております。もちろん外務省もこれに出席いたしておりますが、大臣とか私もいろいろやっておりますので、そういうこまかい点にまで、まだ交渉も現実に入っておりませんし、私が知らないわけでありまして、もちろん必要な段階になれば、そういうものは調べればわかるわけであります。
○川上委員 日韓交渉何年やっておるのです。外務省はまだ今から調べる、いつまで交渉をやっておるのです。財産請求権という問題は、漁業問題その他と合わせて日韓会談の重要なものです。この重要なものを外務当局は何にも知らぬと言う。何にも知らないで、一体請求権問題を中心として交渉できますか。これはここでいいかげんな答弁をして時間を過ごすというのじゃなくて、まじめに答弁していただきたい。外務省には、わからぬならわからぬと言ってもらったらいいんです。知っておらぬと言えばそれでいいんです。材料持たずに今かかっておるのだと言えばいいんです。大蔵省に行けばわかるだろうけれども、外務省としてはまだ何にもわかっておりません、こう言えば、これはまだはっきりする。どうなんです。
○伊關政府委員 交渉は長いことやっておりますが、まだそういう細目の討議に入っておらぬことは事実であります。それは申し上げた通りであります。それから、そういう資料が現実の交渉で必要になれば、大蔵省が持っておりますし、大蔵省が主査としてその会議の主任をやっております。私が知らないということだけを申し上げておるのでありまして、私の方の下の者はもう少し詳しく知っておると思います。
○川上委員 外務大臣、どうですか。私が知らないだけだとアジア局長は言っておるが…。
○小坂国務大臣 アジア局長の答弁の通りであります。
○川上委員 外務大臣も知らないのですか。
○小坂国務大臣 私は、この日韓関係が今日まで数次にわたる交渉をやりまして、しかもそういうところまで入れない状態にある。今度初めてそこに入った、漁業の問題も、今までそういうことに全然先方が触れなかった問題に入っていくようになってきた、請求権の問題も入っていくようになってきたということで、だいぶ進歩が見られたというように考えております。
○川上委員 これは外務大臣が一番正直だと思う。私はまだ新米でよくわからないと言っておる。外務大臣に聞きますが、韓国は地金二億四千九百六十三万グラム、地銀八千九百十一万グラムの返還を日本に要求しておるはずです。これは莫大なものですが、この要求はどういう工合になっておりますか。これは外務大臣に一つ答弁していただきたい。
○伊關政府委員 韓国側は要求いたしております。これに対しまして日本側はまだそういう討議に入っておりませんから、何とも意見の表明をいたしておりません。
○川上委員 その金は何ですか。全部韓国に引き渡したものなら、そんなものは要求せぬ。この金はどこにあった金だと思いますか。そうしてこれはどこにいったんですか。これは膨大なものですよ。これは三億グラムに当たるのです。
○伊關政府委員 そのものずばりかどうか存じませんが、請求権の委員会において韓国側が、金、銀、地金を要求しておりますのは、朝鮮銀行が持っておったものを日本銀行に渡したもの、それを言っておるわけであります。
○川上委員 アメリカはどの程度持って帰ったのでありますか。日本財産を没収したものは全部向こうに渡した、こう言っておる。そうしたらこんな大きなものまで返還要求するはずはない。向こうに渡っておりますれば…。
○伊關政府委員 アメリカがどうしたかということは、先ほど申しましたように、私は知りませんけれども、それは朝鮮銀行と日本銀行との間における発券準備として渡したものか何か存じませんが、朝鮮銀行のものを日本銀行の方に渡したのだというのが向こうの主張であります。
○川上委員 この問題については、私はだいぶ時間をとっておりますから、あとでそれがうそだという資料を提供します。
 それからアメリカは、朝鮮から、新羅時代の金冠や首飾りを持って帰っておる。高麗時代の大蔵経の版木を持って帰っておる。李王朝の玉や王妃のこしを持って帰っておる。金塊、銀塊を持って帰っておる。そのほか約三万数千点持って帰っておるという資料があります。この中で、日本の没収した財産をどの程度持って帰ったかということを政府は調べたか。外務大臣は何も知らぬか。こういう点については、ほおかむりをしておるのか。調査したのかどうか。これは外務大臣から答えて下さい。
○伊關政府委員 私、大蔵省に聞いてみませんと――私は存じませんから、大臣もちろん御存じないと思います。
○川上委員 大蔵省にあると言うなら、外務大臣、あきまへんで。日韓交渉をあなたがやっておる。質問したら大蔵省にあるというような、これじゃだめですよ。これは、わしは今新米だから何もわからぬとおっしゃるなら、まことに正直な答弁だと思うが、アジア局長までがそんなことを言われる。これは外務省の態度としては、この日韓交渉というものは全くわけのわからないもので、こんなもので交渉することはできないと思う。現在韓国にあるアメリカの大使館の建物は、どこの所有ですか。
○伊關政府委員 その点も存じません。
○川上委員 これはもとどこのものですか。
○伊關政府委員 それも存じません。
○川上委員 こういう答弁では質問する気がしないですな。現在のアメリカ大使館がどこのものか、民間だって知っております。どこのものだったかわからない、こんなばかな話がありますか。一体こういう委員を侮辱した答弁が許されてよいのですか。
○堀内委員長 川上委員に申し上げます。これからの質問を次会にしていただくことはできませんか。
○川上委員 次会では困ります。こんなむちゃくちゃな答弁をしておいて、引っ込めなんて…
○小坂国務大臣 日韓交渉の内容についていろいろ御質問でございますが、これは今討議を進めておるわけでございます。従って、その討議の過程において漸次明らかになるものは明らかになって参ります。従いまして、現在の時点でいろいろ御要求になりましても、日韓の関係は今まで御承知のような関係にありますので、われわれも韓国へ行っていろいろどこに何があるかということを見ているわけでもございませんし、これは討議の過程において明らかになる問題でございますから、われわれはその過程においてただすべきものは十分ただしていく、こういう考えでございます。さよう御了承願います。
○川上委員 それを質問しているのじゃないのです。資料は全部ある、あるけれどもこの際は外交上の問題だからここでは発表できませんというのなら、それはそれであなたの方の筋は通る。私の方がそれを認めるか認めぬかは別です。ところが何もない、何も知らぬというのでしょう。これで交渉ができるかということを私は聞いておる。外務当局が何も資料を持たずに――財産請求権の問題は数の問題ですよ。財産の問題です。政治取引の問題じゃないのです。基礎がなければ交渉ができないはずなんです。アメリカがどれだけのものを没収したか、その没収したうちで何ぼ韓国へ渡したのか、韓国へ渡したのは有償か無償か、その分類が全部わからなければ交渉に入れぬ。このことを言っておるのです。そんなことでどうして交渉ができるのですかということを私は聞いておる。しかもアメリカ大使館のあのものは、もとどこの財産だったかという質問に対しては、アジア局長は知りませんというような無責任な答弁をしている。普通民間の人だって知っていますよ。こういうような答弁が、一体委員会の政府の答弁であっていいのかどうか。一体政府はほんとうに知らぬのですか、外務当局は知っておるけれども言わぬのですか、どっちなんです。
○伊關政府委員 私から事実を申し上げますと、いろいろ韓国にあります日本の財産についての調査は大蔵省が担当いたしておりますので、われわれは交渉にあたりましては大蔵省と一緒にやっておるわけであります。ですからもちろん全部知っておるかどうかは、これは大蔵省に聞かなければわかりません。こちらの人間が向こうに行ったわけでもありませんし、韓国に要求いたしましても、従来はこちらの要求した資料を全部くれておりませんから、どの程度完備した資料かどうか存じませんが、集め得るものは全部大蔵省が集めて持っておるわけであります。その持っておるものを一々私が見たわけではございませんし、私自体がこの段階において今知らないということを申し上げておるわけです。
○川上委員 日韓交渉は大蔵省がしておるのですか。担当はどこです。
○伊關政府委員 日韓交渉は、政府としてやっておるわけでありまして、もちろん窓口は外務省がやりますけれども、漁業のような問題になりますれば、外務省が一々この漁業の実態を知りませんから、これは水産庁が主となってやります。請求権の問題になりますれば、非常に専門的になりますので、大蔵省が主になりまして、ただ会議の大きな方針、運び方、そういうものは外務省がかじをとる、こういうのが実態であります。
○川上委員 大蔵省だというのではわからぬのであって、大蔵省は資料は作りましょうけれども、その資料を外務当局は握っておらぬのですか、どうなんですか、このことを聞いておる。
○伊關政府委員 大蔵省が持っております資料の写しをどの程度現実に外務省が持っておるかどうか、そこは私は存じませんが、必要な資料はいつでも大蔵省に行けば出てくるわけであります。
○川上委員 私は存じませんというのでは困る。それはだれが知っておるのですか、政府の方に聞きます。
○伊關政府委員 大蔵省の理財局が知っております。理財局長並びに係官を呼べば知っております。
○堀内委員長 ちょっと速記をとめて。
  〔速記中止〕
○堀内委員長 速記を始めて。
 午後一時三十分まで休憩いたします。
   午後零時五十九分休憩
     ――――◇―――――
   午後一時五十九分開議
○堀内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 国際情勢に関する件について質疑を続けます。川上貫一君
○川上委員 午前中に引き続いて少しばかり質問いたしますが、さきにアジア局長は、韓国が地金の問題を請求している。それは日本銀行が韓国の銀行のものをこっちに移してきた。取り上げたと言ってもよろしい。それを請求しておるんだという答弁でありましたが、それは韓国の銀行から日本銀行はいつそういうことをしたのですか。その日にちをちょっと伺いたい。
○吉田説明員 今の地金銀の問題につきましては、現在韓国側から一応請求権として請求いたされております。これにつきましては、韓国にあった朝鮮銀行から日本へ送った金銀ということで要求が出ておりますが、私どもの調査いたしました限りにおきまして、そういう地金銀はすべて有償で、つまりお金を出して買い入れられたものでございます。それは長い年月にわたって、もう明治の終わりごろからずっと毎年朝鮮は産金国でございます。そういうような意味で、産金されたものを朝鮮銀行の手を経て精練して、そして日本に送られた、それはいずれも有償でその当時の金の相場でそれぞれ買い上げられて、日本に送られたものであると存じております。
○川上委員 そうすると韓国が返還を要求しておるのはこれは不法だということですか。
○吉田説明員 向こうの請求はそういうことで出ておりますが、私の方としては、何か不法行為に基づく請求権のようなものという考えは全然持っておりません。向こうがそういうふうに請求しておられる、従ってその請求に対して応ずるかいなかは、そういったふうな実情を十分調べた上で、お返しすべきものはお返しし、お返しすべからざるものはお返ししないという判断を最終的にきめるつもりでおります。
○川上委員 それはさっぱりわからぬ。全部有償で買うたものを請求しているのだというなら、お返しする必要がどこにあるのですか。
○吉田説明員 従ってそういうような意味ではお返しするものはないはずではないかと考えております。
○川上委員 そうすると韓国の政府が請求しておるのはこれは不法だ、無法だというように日本政府は考えますか。
○小坂国務大臣 いろいろな点があろうと思いますが、そういう問題を扱うために財産請求権に関する委員会を作っておるわけであります。それが今日まで動いておりません。しかしだんだんに双方の気持が熟しまして、来週早々からこの委員会において正式に扱っていこう、漁業問題についても同様であろうと考えております。そういうふうな状況になってきた、こういう段階であります。従ってその前にいろいろ個々の問題を取り上げて御質問があれば、お答えせねばならぬかと思いますけれども、しかしこういうことは、交渉の前にいろいろ個々の問題を扱うことは常道ではございませんので、できれば一つごかんべんを願いたいと思います。
○川上委員 かんべんせぬとかなんとかいうのじゃありません、交渉なさるのに当局が材料がないという、材料を持たずに交渉ができますかという点をわれわれは聞いておる。ここに対日賠償要求調書という資料があります、これは委員の方々には配ってあるはずなんですが、これは出所もはっきりしておる。そういうことがあったということは、アジア局長からさきに答弁があったのです。請求があった。ところが今の答弁を聞くと、その請求は産金を買い上げた、これを請求しておる、こういう御答弁です。そうすると韓国が請求しておる約三万グラムというものは無法な請求をしておるのだ、むちゃくちゃな請求をしておるのだというように日本政府は考えるかどうかということを聞いておるので、これは何も答えられぬとか答えられるとかいう問題じゃない。外務大臣どうなんですか。
○小坂国務大臣 そういう請求があったことについては、その委員会でもっていろいろ応答するわけでございます。私どもももとより日本の国民の利益を代表する政府としまして、筋に合わぬものははねるし、筋に合うものはとらなければならぬかと思います。それが交渉でございます。交渉はそのことだけでなく、いろいろな問題があると思いますので、これは逐次明らかにし得るものは明らかにいたしますが、今申し上げたように、財産請求権の委員会というのは、来週からいよいよ実質的な討議に入ろうということになったきたわけです。この際は一つこの程度でごかんべんを願いたいと思います。
○川上委員 日本が降伏をして、アメリカ軍が朝鮮に上陸をした、こういう時分に朝鮮銀行にはどれだけの金塊、銀塊があったのですか。それからもう一つついでに質問しますが、この請求書のは、全然入っておらぬという何か証拠があるのですか。
○吉田説明員 その当時あった金は、今私資料を持ってきておりませんので、数字を覚えておりませんが、終戦の当時、そのときにあった金銀等は一切持ってきていないということでございます。私どもの今まで調査したところでは、終戦のときあったものは一切持ってきていない、持ち帰っておらないという調査に相なっております。
○川上委員 それはだれがとらないと言うたのですか。
○吉田説明員 それは私どもとしては、当時のそういう関係者から徴したものにおいて、そういうものはないということでございます。
○川上委員 そういうことを聞いているのではない。あったものは全部アメリカ軍が押えておるわけです。全部没収しておるはずだ。その金はどのくらいあったかということです。朝鮮銀行にあった金は全部没収された。それはこれには全然関係がないかということを聞いておるわけです。
○吉田説明員 今資料を持っておりませんので、その金が幾らあったかははっきり私記憶しておりませんが、いずれにしてもその金はその際には持ってこなかったということであります。それから先方の要求しているものの中に、そういうものが入っているかどうかという点につきましては、まだ具体的に先方の意向を突きとめておりません。
○川上委員 私が聞いておる意味は、朝鮮銀行にあった金塊、銀塊はアメリカが没収しておるはずなんです。その朝鮮銀行にあったものを一緒に請求しておると理解しなければ理解の仕方がないのです。これは日本で産金、産銀を買い上げたものを請求しておるのだ、こういう御答弁なんですが、それはどういう証拠でそういうことを言っておるのですか。この中に書いてありますのは、これは産金、産銀を日本が買い上げたものなんだというその論拠はどこにあるのですか。
○小坂国務大臣 この対日賠償請求調書というものも、実は現在私どもの手元では、正規のものとしては受け取っていないわけであります。従ってこれについていろいろこの際議論することは、私どもとしてはいかがかと思うのであります。実際わからぬことはたくさんあるわけです。これは韓国だけでないので、満州においてもたくさんわからぬことはございますし、樺太、千島においてもわからぬことはたくさんあるので、現在わかることから逐次明らかにしていかなければならぬ立場にあるわけでございます。交渉においていろいろなデータが出ますれば、それについて十分これを確かめて、そうしてわかる限りにおいてこれを解決していくということよりいたし方ないと思います。もとより日本国民の利益をそこなうことはいたしません。
○川上委員 伊關アジア局長は、そういう請求がありましたということを言うておる。ところがきょうは、大蔵当局の方は、この請求してきたものは、産金を買い上げた、これに当たるのだ、こういう答弁をなさっておる。そうすると、この請求しておる約三万グラムというものは朝鮮で長い間産出した金銀の原鉱、これを買い上げたんだ、それをあらためて返還要求してきているんだ、こうおっしゃる。それはどの論拠によるのか、これがそれに当たるのだということはだれが言ったのか、どういう資料があるのか、どこからそういうことがきておるのかということを聞いておるのです。これは具体的に聞いておる。
○吉田説明員 まだ具体的なこまかい協議を先方といたしておりませんので、そういう意味では具体的に向こうの言っていることと正確な突き合わせをした結果、こうであったというような御説明はできないわけでございます。今御質問にありました事項につきましては、そういう意味で、厳格に考えますれば、まだ具体的な話が進んでいないから何もお答えできないと申し上げるべきだったかもしれませんけれども、一応現在向こうが説明された範囲内で私どもの聞いておるところでは、今申しました有償で買い上げたものに該当するであろうというふうな意味でお答え申し上げたわけでございます。
○川上委員 そうすれば、日韓会談の過程で向こうさんがそういうように言ったというのですか。ここは、将来の問題があるから確かめておきたいと思う。あなたの答弁が、日本側が適当に考えた答弁であったのか、あるいは韓国側がこの請求はこれに当たるものでありますということを言った、それが基礎なのか、あるいは見当で言ったのかという点、それをはっきりしないとわからぬのです。
○吉田説明員 それは先方が、朝鮮銀行の手を経て精練して日本に送った金銀ということを言っておりますので、そういう朝鮮銀行を通じて送ったものは、私どもの調査ではそれ以外にございませから、そういう意味で申し上げたわけです。
○川上委員 これはお困りになるだろうと思うからこれ以上言いませんが、話は違うのですよ。最初には、それは産金を買い上げたものだ、こうおっしゃった。それならこれまで請求するのは無理なんじゃないか、そう解釈するかと言ったら、そこは答弁しない。さらにその上に、それなら産金を買い上げたものであって、この代金は全部払ってあるということに間違いないか、どういう基礎でそれを言ったかと言ったら、答えがあいまいになる。これはやはり工合が悪いと思う。しかしそれはもう長く質問しません。
 そうすると、朝鮮銀行にあったアメリカ軍が押えた金塊、銀塊はどのくらいあるのですか。
○吉田説明員 ただいま申しましたように、今資料が手元にございませんので、お答えできません。
○川上委員 手元にはないというと、あなたの手元にはなくても政府にはあるのですか。
○吉田説明員 当時の朝鮮銀行の数字は調査してございますので、調べればわかると思います。
○川上委員 そうすれば、これは正確に調べてあとで報告できますか。
○吉田説明員 御報告できるだろうと思います。
○川上委員 そうすれば、その分はこの請求の中に入っておるか入っておらぬかわからぬのですが、入っておらぬということははっきり言えるのですか。
○小坂国務大臣 ただこれは請求そのものを突き合わしていない。請求権の委員会がまだそこまでいっておらぬのです。先ほどから申し上げておるように、来週からいよいよ請求権委員会を本格的にやろうという段階なんだから、その前にこういうあなたの資料でもってそれを突き合わしたり何かすることは差し控えさせてもらいたいと思います。
○川上委員 大臣は低姿勢でなかなか答弁がうまいのだが、しかしこの請求権があったということはアジア局長も認めたのですよ。ありませんというのじゃない、ありましたと言っておる。その内容を問うておるのですから、外務大臣は助け舟を出してなかなか答弁はうまいが、それじゃ工合が悪い。
○伊關政府委員 先ほど私が御答弁申し上げましたのは、韓国の請求権の中には金銀の地金が入っておるということを申し上げただけであります。それがどれだけの量であるとかどういうものだとかいうことは私は詳しく存じませんから申し上げませんで、おそらく朝鮮銀行から日本銀行へ移したものと思いますと申し上げましたので、数量その他一切私は先ほど申し上げておりません。
○川上委員 答弁のたびごとに違う。私は額まで詳しく言うたんです。何ぼ何ぼ請求しておるだろうと聞いた。その事実があると言った。その次にはそれは朝鮮銀行から日本銀行が取り上げた金に当たる、こう言うた。ところが大蔵省の方では、そうではない、産金を日本が買い上げたものと一緒に請求しているのだからと言う。これは政府の答弁が全然合わぬのです。どこがどこやらわからぬ。これが日韓交渉の正体ですか。
○伊關政府委員 速記録を見ないとわかりませんが、先ほど数量をあげて御質問はありましたが、その数量について申し上げずに、韓国からは金銀の地金の請求をされたということを申し上げたので、その数量を肯定したわけでも何でもありません。
○川上委員 こういうことで争うことは工合が悪いですけれども、そういう言いのがれをしてはいかぬのです。私の方では数字をあげておる。こういうことがありますかと言うたら、そういうことがあるという答弁をしておる。これは、委員会だけで何とか言いのがれをしていこうという手練手管ならよろしいが、まじめに国会で討議を進めるという態度ではないと思う。この点は、大臣もおられるのですけれども、むちゃくちゃなことを委員が聞くのも大きな間違いですけれども。数字などをあげて率直に聞いておるときにはやはり率直に答えてもらいたい。何とかかんとか言いのがれさえすればいいという形が、相当長い間、委員会の中でも、現大臣だけでなしに行なわれてきておると思う。こうなりますと、私は妙な争いのような委員会の討議になると思うのです。だからその点は、今後はどうぞ率直にお答え願いたいと思うのですが、今の終戦当時朝鮮銀行にあった分は、アメリカ占領軍が押えたことは間違いないと思うのですけれども、これはそう考えて間違いありませんか。
○吉田説明員 それは事実上押えているということは確かにあろうと思います。その後に、当時の財産は軍に接収されるという布告を遡及的に出しております。そういう意味で、占領軍が一応全部押えたというふうに解せられます。
○川上委員 その押えた金銀は韓国に引き渡されておりますか。
○吉田説明員 米軍が接収したのは終戦後間もなくなんでございますが、それから後韓国に移管されるまでには相当の年月がたっております。その間にどういう変動があったかは私どもにはわからないと申し上げたのであります。
○川上委員 それならば外務当局に聞きます。覚書には韓国で押えた日本の財産をアメリカが――没収ということを私は言いますが、没収したものを韓国へ引き渡したとある。それで、アジア局長の答弁にもそのほとんど全部が渡されてはあるだろうと言う。ところが今の答弁は、朝鮮銀行の金は引き渡してあるかどうかわからぬという答弁です。そうすればこの覚書をどうして承認するのですか。
○吉田説明員 これは原則として全部韓国に移管されたと一応考えられるわけでございます。ただ、その間には年月がたっておりますから、それだけにどういう変動があったかということはわからない。しかし、原則として、それはすべて移管されたという意味で、前の答弁とは全然違う趣旨ではございません。
○小坂国務大臣 補足いたしますと、そういう関係でございますけれども、財産権の取得に関する委員会におきましてそういう問題が出ましたら、われわれの方としては韓国側にチェックいたしますし、もとよりアメリカ側にもチェックいたします。そうして所在というものを明確につかむことができるわけであります。今ここで御答弁することよりも、そうしたあとの御答弁の方がさらに適切かと考えます。
○川上委員 さきに私は土地の問題を質問しましたが、東拓の土地を初め、日本人が持っていた土地は全部アメリカが押えておる。これは軍政庁法令で出ておるのですから、もう何とも言えない明らかなことなんです。それからさきに質問したように、アメリカは企業体を没収してどんどん払い下げをしておる。これも法令で出ておるのです。これはどうなったかわかりませんというような問題ではないのです。それからアメリカは金塊、銀塊を没収しておるが、それがどこへいったかわからぬといっておる。土地を除き、企業体を除いて、何が韓国に渡されたんですか。三和製鉄のごときもアメリカが取ってしまう。そうしてこの覚書を見ると、韓国へ引き渡した。アジア局長の答弁によると、その大部分は韓国に引き渡した。どういうものを渡したのですか。これは了解がいかないのです。韓国へほとんど渡しておりはせぬのじゃないですか。何が韓国に行っているのですか。私が、無償か有償か、どの程度かと言ったら、大部分は渡したのだと言われる。それから土地も渡しておりません、売り払っております。これは軍政庁法令で出ておるのです。それから企業体を取って、これを払い下げたと出ておるのです。百万円以上の企業体は多くアメリカの資本が取っておるのです。その中には三和製鉄も加わっておるのです。それから金塊、銀塊の問題がある。そうすると何を韓国に渡したのですか。アジア局長は大部分を渡したと言う。その大部分は何を渡したのか。これを明らかにしたいから、われわれは、金塊、銀塊の問題とか、こういう請求権の問題とかいうことを言っておるのです。もっと率直にいいますと、韓国に渡しておりはせぬのじゃないか。ほとんど大部分はアメリカが取ってしまっておるのじゃないか。そこで私は、アメリカの大使館の、あれはどこの財産であったかということまで聞いておるのです。
 外務大臣に聞きますが、韓国に渡したとあるのです。また渡したとアジア局長は答弁なさっておるのですが、何を渡したのですか。渡すものがないじゃないですか。私は韓国に対しては請求権があるということを主張しておるのじゃないですよ。誤解せぬようにしていただきたい。アメリカが持っていってしまったんじゃないかと私は聞いておる。これはどうなんですか。
○小坂国務大臣 法令の上からいいますと、あなたの資料は本物のようですが、一九四五年にここで取得し、所有する、こうなっておるわけです。一九四八年にこれを韓国に渡した。そこでわれわれはその文言の通り一応読んでおるわけです。しこうして、これはどういうふうになっておるかということは、これから請求権の委員会で逐一明らかにしたいと考えております。さような情勢でございます。
○川上委員 これで交渉をしなければ内容も何もさっぱりわからぬのに、覚書をまるでのみ込んでしまっておる。覚書には、韓国にあった日本の財産はアメリカが取り上げる。言葉は違いますけれども、それは韓国へ渡してしまう。そこで、この渡したことによって、韓国の日本に対する請求権が消滅したか、あるいはどの程度充足されたかということは、両国の特別取りきめによってやれ、これが覚書なんです。さっぱりわけもわからぬのにこの覚書を納得して、そうして日韓の会談をこの覚書によってやろうとしておる。これではやれぬじゃないですか。
○小坂国務大臣 いや、ここにあるのは、軍令三十三号にそう書いてあるということですね。そういう情勢になっておる。そこで覚書は、日本がそういう財産を取得し所有されてしまった、そういう事実を、今度はまた韓国側も頭に入れて、請求権の交渉を相互に――相互という言葉が適当ですかどうですか、要するに相殺思想のようなものをもって解決していく、こういうことが覚書なんです。ですから、どういうものが具体的に渡っておるかということは、これから請求権の委員会で逐一やってみるわけです。やってはいかぬとおっしゃるのは妙なことなんでありまして、やらないで、時期が先になればなるほどもっとわからなくなってしまう。今まで延びたことは、残念ながらそうなってしまったのですが、おそくなったとはいえども、私は、この段階においてはやらなければならぬと思っておるわけであります。これはおわかりになっていただけると思います。
○川上委員 私がこれを聞いておるのは、簡単なことではない。ほかの委員諸君もおられますけれども、土地はさっき質問したようなことで処分されてしまっておる。企業体は処分されてしまっておる。鉱山も工場も全部払い下げを受けておるのです。それから金銀については事態がさっぱりわからぬ。そうすると韓国に渡されたものはほとんどないことになる。全部没収をして、それを韓国に引き渡した。こういう状況があるから、へーグの法規には多小抵触するように思えるけれども、しかし、これは今日の情勢のもとにおいて、平和条約第四条の(b)項で放棄したのだ、こう言うのでしょう。ところが実際は、調べてみると、アメリカが取ってしまっておるのです。そうすると、アメリカはへーグの法規を完全にじゅうりんしておるのです。これは明らかでしょう。これを日本政府は認めたのでしょう。この問題はへ−グの法規にはちょっと差しさわりがあると思うけれどもということを外務大臣はおっしゃっておるのです。けれども、そのあとを推察すると、これは韓国に引き渡してあるので、日韓の交渉の問題にも関係するところがあるので、まずまず日本としてはという意味を含んでおると私は解釈しておった。ところが韓国にほとんど渡しておらぬことがだんだん明らかになった。ほとんどアメリカが取ってしまっておる。そうしますと、この取った行為はへ−グの四十六条違反です。だから岡崎外務大臣は、これは処理は認めた、しかし、原権、請求権を放棄したものではありませんということを、最近までの国会では厳として政府の答弁として言ってきておるのであります。ところが、最近になって放棄したと言うのです。しかもその放棄は、覚書によっただけではない、平和条約第四条(b)項によって放棄したのだということになりますと、大臣、アメリカのへ−グの法規違反を日本の政府は認めたということになるのですぜ。私はそのことを考慮するからこれを聞いておるのです。あえてこの質問をしておるのは、繰り返して言いますが、韓国に対しては請求権があるのだから、どしどし請求しなさいという立場で質問しておるのではなくて、これでは事柄が重大ではないか、アメリカ占領軍の行為を政府は認めることになりますぞ、究極すると軍令三十三号がヘーグの法規に違反したということを日本が得心することになりますよ。わずかなことではない。ほとんど韓国へやらないで、大部分のものをアメリカが取っているじゃないですか。このことを質問したのです。これに対してどう考えるかということです。外務大臣、これは技術的なことではない。ここになればもう政治上の問題です。ただ法理論の問題ではありません。政治的な解釈の問題でありますから、外務大臣の御答弁をお願いしたいし、これは重要な問題で手練手管の問題でないということをあわせて質問したいのであります。
○伊關政府委員 事実につきまして私から申し上げますが、アメリカが軍令三十三号で帰属させましたが、それらのもので韓国に渡す前売りましたものにつきましてはその売却した代金、それから企業等につきましては、その企業自体を貸借対照表とか運営の明細書をつけて韓国に大部分渡しておるわけであります。どれだけのものが例外として渡らなかったか、これは韓国側に聞いてもわからないのでありますし、また聞いてもそういう説明がないわけであります。
○川上委員 そういう答弁をなさるから私の質問が切れぬのです。土地は全部払い下げをしているでしょう。法令で企業体は全部払い下げをしているでしょう。三和製鉄はアメリカが運用しているでしょう。それなら何を渡したのですか。渡しておらぬじゃないですか。ほかのことを言わないで、もし答弁なさるならこれこれのものを渡したということを答弁して下されば私はそれで納得します。
○伊關政府委員 ただいま申し上げましたのは、三十三号でもって処分したもので、払い下げたものは代金を渡しておる、こう申し上げたのであります。
○川上委員 払い下げの金を全部韓国へ渡したということは間違いありませんか。政府の答弁として間違いないですか。
○伊關政府委員 多少の例外もある。それについては……。
○川上委員 多少の例外とは何です。
○伊關政府委員 アメリカが依然として使ったものとか、二年になりますか三年になりますか、その間の多少の例外につきまして、詳しいことはわかりませんが、原則として大部分渡したという点は間違いございません。
○川上委員 多少というのがいつも厄介なんだ。大部分渡したと言いますが、アメリカが没収したものは大部分渡したというのです。今になるとその答弁は売った金を渡したと言うのです。だんだん答弁が違ってくるのです。
○伊關政府委員 一応全部アメリカに帰属させたわけであります。そしてそれを韓国に渡したのでありますが、帰属させて渡すまでの間に処分したものは代金を渡したのであります。そしてその間アメリカが使用しておりますし、二、三年の年月がたっておりますから、そのままで渡ったか、そこに多少金額の増減があったか、その辺の詳しいことは、韓国側の説明を徴しないとまだわからないと思うのであります。
○川上委員 そうすると、三和製鉄をアメリカの資本が買い取って今運用しております。鉱山もやっておりますよ。これの代金は韓国に渡してありますか、これは間違いありませんか。
○伊關政府委員 個々のケースにつきましては私は存じません。初めから存じないと申しております。大部分についてと初めから申しております。
○川上委員 これは大きい問題を残しましたから、これからまだこの委員会は続くのですから、具体的な資料を出して私は質問します。そういうようないいくらかげんな答弁をされては納得できない。われわれの方にはもう精細な資料がありますから、これを具体的に提出をします。
 もう時間がありませんし、あと御質問の方がありますから、もう一点だけ外務大臣に聞きますが、この問題は三十八度線以北には適用できないということはもう当然だと思いますが、そう理解してよろしいですか。
○小坂国務大臣 さようでございます。
○川上委員 そうするともし朝鮮に南北統一の政府ができた時分には、この問題はもう一ぺんやりかえるのですね。
○小坂国務大臣 北に関する部分については別であります。
○川上委員 漁業の部分はどうですか。
○伊關政府委員 漁業につきましては、水域を三十八度以南の水域に限ってこれを対象にしております。
○川上委員 そうするとこの日韓会談というものは、近い将来に南と北の統一政府ができましたら、全部おじゃんになるわけですな。
○伊關政府委員 そういうことは全然ございません。どういうふうな南北の統一が行なわれるかにもよりますけれども、それによって変わって参りますが、南に関する限りはこのまま残っていくわけで、決しておじゃんになるわけではございません。
○川上委員 南に関する限りはといいましても、南北が統一しましたら、南に関する限りはこの条約、北にはこの条約がいかぬというような条約は、これは条約の専門家では通用しないのです。大韓民国が韓国唯一の合法政府であるから、ここに結んだ条約はいかなる政府ができてもこれは継承しますというのならこれはわかります。これはわかるけれども、韓国に結んだ条約が、その政府の形態が南北統一の政府になっても南にだけは通用します、こういうことがありますか。これで一体どんなことになるのですか。半分にしか通用しない、こういう条約はどうなるのですか。
○中川政府委員 今回の日韓交渉は、三十八度線以南を有効に支配しております政府と交渉するということが基本的な原則になっております。従って、ここで以南につきましてきめたことは、決して将来統一ができました際に全体の支障になる、さようなことには決してならない、そういう信念からやっておるのであります。
○川上委員 南半分だけの条約になるのですか、南北統一ができても……。簡単でいいです。
○中川政府委員 今回条約ができました場合に、その条約が効力を及ぼす範囲は南だけでございます。
○川上委員 そうしますと、普通の国際関係から言うて、一国と条約を結びましたら、たといその政府が――革命による場合は別としましても、次の政府に継承した場合は、これは必ずその条約というものは生きると思うのであります。これはわかります。しかし大韓民国というものが全朝鮮唯一の合法政府でない限りは、かわった政府、全鮮一体の政府ができたという場合に、南朝鮮にだけは適用する、そんな条約を次の政府が認めると思いますか、一体そんなことになりますか。
○中川政府委員 全鮮の統一が合法的に行なわれますれば、その新しい政府は、当然従来南が支配しておりましたその政府の権利義務を承継する、こういうふうに考えます。
○川上委員 もしそれを承認するならば、この条約は北にも及ぶ条約でなければならぬ。南の三十八度線以南にだけ限ったものを、今度は南北が統一した政府も当然継承するという、それはどういう基礎によるのです。そんなことはできません。
○中川政府委員 私どもは、南北の統一は合法的手段、平和的手段で必ず行なわれると信じておるのでございまして、従ってそういう平和的な、合法的手段で行なわれました場合には、当然継承されると考えるわけであります。
○川上委員 それは、次の政府が認めるか認めぬかという問題であって、南半分の条約は当然承認されるという法理論が立ちますか。
○中川政府委員 それは合理的にできます新政府は、当然その前の政府の権利義務を承継するというのが国際法の原則でございます。
○川上委員 それは一国の政府がかわるのと違いますよ。北の朝鮮は朝鮮民主主義人民共和国です、南は大韓民国です、こうなっておるのです。これは国際連合も認めておるわけです。これは南だけは政府がちょっとかわるという問題ではないのです。実質的の二つの政府は、オーソリテイということを言っておりますけれども、政府が一緒になるのです。その時分には、必然的に前のものは継承するというのなら、大韓民国と称するものは、全朝鮮にわたる唯一の合法政府である、こう言わなければ筋は立ちません。それならば南だけの問題をどうして継承するのですか。事実上の二つの政権が一つになって、そのときに向こうが継承しません、こう言うたら、それは国際法上絶対に言わさぬという根拠がありますか。
○中川政府委員 合法的、平和的に統一が実現する場合には、当然継承されると考えます。
○川上委員 もうだいぶ時間がたちましたし、私はたくさん留保しておりますから次の機会に譲りますけれども、その解釈はえらいことになります。その解釈では、南北が統一することがあったら、これは全部おじゃんだ。新しい政府は絶対にそれを認めませんと考えてもよろしい。また認めなければならぬという国際法上の法的基礎はありません。これだけははっきり言うておきます。従って、この日韓会談でできる条約というものは、南の方の朝鮮にだけは適用するでありましょうけれども、南北が統一するということになって、その政府ができた場合には、あらためて請求権の問題、それから協定の問題を全部やりかえなければならぬ、そういう日韓会談である。この点についてはそうじゃないとおそらくおっしゃるでしょうから、法理論としてそうじゃないことはありませんということをもっと言わなければならぬが、時間がありませんので、この問題については留保しておきまして、あとの質問をなさる方もありますから、本日は私の質問をこれで終わります。しかし、私の質問中たくさんの問題を留保しておりますので、次の機会にこれを続けて質問さしていただきたいことを特に委員長に申し上げておいて、私の質問を終わります。
     ――――◇―――――
○堀内委員長 次に、移住及び植民に関する日本国とブラジル合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
 本件の審査に関連して、参考人として日本海外移住振興株式会社専務取締役源田松三君の御出席を願っておりますので、政府当局及び参考人に対する質疑を一括して行ないたいと思います。
 この際参考人に一言ごあいさつを申し上げます。本日は御多用のところ、本委員会のために御出席下さいましてまことにありがとうございます。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。
 これより質疑を行ないます。稻村隆一君。
○稻村委員 移民に関する質問を簡単にしたいと思います。
 わが国の南米移民の問題は、過去においてしばしば人道上の問題を起こした実例があるのであります。幸い今度ブラジル合衆国との間に移民協定ができましたことは、わが国の移民を保譲する上において非常に喜ばしいことであります。しかしながらなお二、三心配な点がありますので私からお尋ねしたい、こう思うのです。あとで田原委員が詳しくやると思いますから、私、実例をあげまして簡単に申し上げます。
 ブラジルのバルゼアアレグンというところで、昭和三十二年九月二十四日に三万八千四百七十ヘクタールを移住会社が買っております。ところが、これを調査いたしますと、一割しか作付はできないそうです。あとはだめだ、こういうわけなんです。それから、私向こうの農業の実態を知っているわけではございませんけれども、大体農村問題に長い間関係している勘からいくのですけれども、移民のことも多少知っておりますから、土地はどういうふうに分譲したかというと、二十五町歩を六十五万で農民に払い下げしている。これはどうしても高いように思うのです。なお私具体的な問題は調査中ですけれども、こういう点詳細に一つお聞かせを願いたい、こう思っているのです。
○高木政府委員 バルゼアアレグレは、先ほど申されましたように、昭和三十二年にブラジルで買いました三万町歩以上の土地であります。この土地は、今仰せになりましたように、最初買いますときの予想ほど優秀な土地ではなかった。一部は一級の土地でありまして、これは非常によくて現在六十四家族入れるところ四十一家族入っております。それからあと二級地、三級地ございまして、三級地につきましては牧場として経営するということで、せっかくその方の研究を移住会社で現地に研究所を設けてやっております。最初考えていたほどよくないのですが、一時伝えられましたよりも思ったよりもいい土地である、案外これを活用する方法があるということで、会社でせっかく研究しておりますが、詳細につきましては源田専務の方から説明していただきます。
○源田参考人 私から御説明申し上げます。バルゼアアレグレの土地につきまして、最初買いましたときには一級地が相当多いように言われておったのでありますが、細密な調査をいたしました結果は、現在千七百ヘクタールぐらいが一級地として適当な土地であると思うのです。二級地が約四千ヘクタール、三級地が二万八千ヘクタール、四級地が四千ヘクタールというふうになっているように、私の方では確認しているのであります。それで実はこの土地は、テーラロシヤとテーラミスタと二つ――テーラロシヤに砂のまじりましたテーラミスタと、それから四級地につきましては砂地があるのでございます。しかし一級地、二級地につきましては、もちろん十分移住者を入れて、そうして今後の営農の発展も期することができる、こういうふうに考えておりますので、現在まず第一次に六十二ロッテを造成いたしまして、そうしてこれに四十五家族を送りましたが、現在落ちついておるのは四十一家族でございます。さらに五十ロッテを造成いたしまして、本年から入植させたい、かように考えておるのであります。
 それで一級地以外は役に立たない、こういうことは私は少し誇張した表現ではないかと思うのであります。ただ一級地は付近が一帯、カンボグランデからバルゼアアレグレに至ります間は、テーラロシヤの非常にいい土地がありますので、従ってこれらを耕作しております約五千の日本の移住者の方々から見ますと、この土地は一級地、二級地以外はしばらく入れないでもらいたいというふうな希望がございます。また二級地以下の利用につきましては、十分試験研究をいたしまして、営農の立つ見込みが十分になりましたときに入れることが適当である、こういうふうに考えまして、現在先ほど移住局長の方でお話しになりました試験研究を続けておるわけでありますので、われわれの見通しといたしましては、ある部分は牧場をぜひやりたい。牧場につきましては、これは専門家に調査をいたさせました結果、牧場として十分役に立つ、こういうことでございました。それからそれ以外の土地につきましては、あるいは造林でありますとか、あるいはこの地方に適しますところの作物を今研究中でございまして、まだここではっきりどういうものを入れれば営農が成り立つということを御説明するまでに至っておらないことをはなはだ遺憾といたします。
 それから、先ほどお話のございました、六十五万という分譲価格は非常に高いじゃないかというお話でございますが、この分譲価格は、われわれとしてはできる限り分譲価格を安くして、そうして日本から行かれる移住者の方々に分譲いたしたいと考えておるのでありますが、これは私の方で土地代それから造成費及び一般管理費、金利、これらを計算いたしまして、会社としてはこれで利益を上げるということじゃなくて、要するに出しました原価ほとんどそのままで実は計算いたしましても、現在六十五万以下ではちょっと分譲が困難だという状況でございます。その点御了承願います。
○稻村委員 その一級地は原価幾らですか、二十五町歩で六十五万というのは一級地でしょう。
○源田参考人 一町歩が二万六千円になります。
○稻村委員 それは牧場をやるのもけっこうだし、これからいろいろ研究してやるのもけっこうですけれども、土地を買うとき実際上は作付一割ぐらいしかできないというところを――一級地、二級地がきわめて少なくて、三級地ですか四級地ですかの一番多いようなところを買うのは、これはきっとよく調査をしないで買ったのですよ。私向こうへ行って聞かなくたってわかりますよ。そういうことを役所の人が入ってやっているのですから実際上農村の実情を知らない人も多いし、農業移民というのはむずかしいのですよ。ここで説明する必要はありませんけれども、率直に言って外務省の方なんかやれるものじゃない。これはよほどの専門家から鑑定してもらうか、実際にその土地で農業をやっておる人とよく相談をしてやらないと失敗するのです。これは失敗ですよ。私は何も海外移住会社をいじめるわけではないのですが、この前の外務委員会のときに私は最後まで、それは賛成だけれども内容の構成のいかんだと言って反対したわけです。それで農林省あたりがちょっと入ったわけですけれども、それだけでは不十分なんです。これは初めからうまくいくということはないでしょうけれども、しばしば失敗をしてよくなるのだから私はそれについてどうこう言うわけではないが、過去の移民会社がずいぶんいろんなことをやって――私は南米を知らないけれども、二十二国会のときには、現地の人から非常に陳情を受けたわけです。それで私いろいろ質問したのです。それで会社ができるときも注意を申し上げたわけなんです。こういうふうな失敗が絶対にないように移住局の方も十分注意してもらいたいのです。なおこれは私もう少し調査をしていろいろお尋ねしたいと思っておりますからこれで打ち切りますが、いずれにせよよく調査しないで、どこからか持ってきたものをうっかり乗って買ったのじゃないですかどうなんですか、それだけお聞きしておきたいと思います。
○源田参考人 ただいまお話しの点でございますが、その当時の調査にわれわれとしても手抜かりがあったというふうに考えておりす。まことにその点は遺憾であったと思います。ただ現地としてとりました処置は、農業土木の技師一人とそれから農業関係の技師と、コチアの相川という理事−農業については南米においても相当権威のある方でございますが、この三人の技術者に通訳をつけまして実は調査をしたのでありますが、その結果相川理事は移住地として適当でないものをまず五十点以下とするならば、この土地はいろいろよくない土地も含んでおるけれども、価格が安いのでまず六十点をつけることができるだろうというふうな結論を出されたわけです。それから私の方の会社の土壌その他を見ます技術者は、これにつきまして今後の営農についていろいろ検討を要するところがあるけれども、前の相合という不動産信託会社がこれを持っておったのでありますが、それのその土地に対する調査は非常に正直である、信頼するに足る、こういうことで意見を述べておるわけで、それで実は当時現地に駐在しておりました常務取締役がこの買収ということを実は決定をいたしたのであります。しかし事後において精密な調査をいたしました結果、私はこういう土地を買ったということについては会社として非常に遺憾であったと考えて、今後こういうふうなことの絶対に起こらないように、その後におきまして、土壌関係に相当学識経験を持った技術者を入れ、また営農関係その他技術上のスタッフを充実いたしまして、その後の土地につきましては十分注意をいたしてやっておるのであります。われわれが移住者が入るに適当でない土地を買うということは、われわれの会社の性質から見ましても、われわれの使っております金の性質から見ましても非常に相済まないことだ、従ってその点については十分戒心して、こういうことの再び起こらないように努めておる次第でございます。
○稻村委員 次に私は移住局の方にパラグァイの移民のことにつきましてお尋ねしたいと思うのです。だいぶパラグァイの方に力を入れておるようで、条件もそう悪くはないと思うのですが、何しろパラグァイは人口百六十五万人しかおらぬのですね。少し作ると生産過剰になって国内では売れないはずです。これは常識でわかります。そこで大豆を作って日本に持ってきたらというのですが、人口の少ないところで日本人を歓迎しているのだから、向こうに行くという人があったらむろん喜んでやるべきだと思うのです。ただ問題は、移民というものはしばしば棄民になるおそれがあるのです。これは善意でやってもそうなる結果が多いのです。そういう点十分よく考えて、やはり移民も生活し、日本経済に寄与するような方法をとらなければならぬ。パラグァイあたりは人口が少ないですから大量移民を計画的にやる必要がある。そして専門的な農業技術者をつけて計画的な生産をやって、しかも日本農業に脅威とならないようなものを作ったらいいと思うのです。そういうふうな計画的な生産をやるべきじゃないかと思うのですが、現在のところではそういうふうな計画的な移民政策をやっておらないようですね。その点一つ御意見をお聞きいたします。
○高木政府委員 パラグァイの移住につきまして、パラグァイが人口百六十万余りであって、日本人が少し生産をすれば生産過剰になるであろうということはしばしば言われておるところであります。現在のパラグァイには日本人以外にドイツ人が相当入っております。これらは主として桐油の生産をやっております。そのほか大きいみかんでございますとか茶であるとか、こういうものを作っております。桐油のごときは国際商品でございまして、パラグァイよりも主としてアメリカ、ヨーロッパあるいは日本に出ておるようであります。ドイツの移住者はまだまだこの油キリをふやして植え、ほとんど油キリ一本でいく傾向でやっているようでございます。われわれといたしましては、実にせっかくパラグァイのような移住地において原始林を開いて、日本人だけが入っていくのだから、できれば日本との関係もつけたい。そうすることによって市場の安定性が得られるのじゃないか。御承知の通り大豆は、日本は年々百万トン以上輸入しております。パラグァイの移住地がだんだん大きくなりまして、大量生産をやっていき、またこれの乾燥だとか、その他生産加工をやればやるほど、これのコストが安くなって参ります。また輸送費につきましても、現在パラグァイの首府のアスンシオンからヴェノスアイレスまで運ぶ船賃が十ドル以上、ヴェノスアイレスから日本までが十数ドル、ほとんど半分くらいがパラグァイとアルゼンチンとの間の船賃に取られているのでございます。これなんかは、一昨年与えましたパラグァイに対する船舶借款によって、パラグァイ自身が自分の船を持つことができまして、それによって、このパラグァイとアルゼンチンあるいは隣のウルグアイの国で積みかえるのですが、その船賃はぐっと安くしてもらうということの話をしております。こういうふうにいたしていきますと、現在でも、昨年実は入れました大豆は、アメリカと競争いたしまして、トン当たり二ドル五十セントばかり安く日本に入って、移住者も非常にいいと喜んでおりますが、これをもっと大量的にやっていくということにしていくと、もっともっと安定した市場を故国に持ちながら生計を持続していける。しかし大豆だけをわれわれは勧めているのではなくて、ドイツ人がやっておりますキリ油も、これは工業原料として需要は世界的でございます。その他トウモロコシなんかも日本まできておりますが、最近では国内で非常に売れているようですし、あるいはアルゼンチンと一緒になってやっていく、こういうようなことでございますので、われわれはアルゼンチンの移住地についてはいろいろの計画をしています。単に農作物を作るだけではなくて、これからは大豆を搾油して出すとか、あるいは大豆だけでなく、その他のものを作るというような計画をし、将来はこの日本人の移住地を中心にして、そこに簡単な日常生活のための軽工業とか、現在すでにパラグァイでは日本人の農協が中心になりまして、綿その他を入れます麻袋製造工場を自分でやろうとしております。こういうような製造工業とかその他の工業を興していくことによって、無から一つの新しい総合的な移住地を作っていく。そういう点で実はサンパウロのようなすでにでき上がった移住地と違ったやり方をしなければいけませんが、むしろおもしろみがあるのじゃなかろうか。同時に、かつてのサンパウロも、今から三十年前はちょうどパラグァイと同じような経験を経てきておるのでございます。サンパウロの移住地も、初期の歴史をごらんになればわかるように、最初はマラリアで全滅するというようなことがありましたが、今日のごとく発達した。その初めの苦労が今日の日本人の成功のもとになっておる。われわれは戦前のようなむだはできるだけ省きますが、そして移住会社とかあるいは海外協会連合会の援助というようなものもございますので、こういう新しい戦後の組織を活用いたしまして、日本人の海外移住地の発展にできるだけ努力していきたい。他方、先生も御存じだと思いますが、今日中南米は単に日本だけではなく、ヨーロッパ、特に最近はアフリカから引き揚げて参りますヨーロッパ人もどんどん入っております。パラグァイにも二千家族のアルジェリアから引き揚げるフランス人が五万町歩の土地をあそこで獲得いたしまして、これもあそこでもっぱら油を取る農作物を作りまして、これを搾油して本国に出す。そしてその代金の半分はまたフランス植民地の経済の発展のために使えということをやっております。ベルギーは、コンゴから引き揚げるベルギー人をパラグァイ、ボリビア、エクアドルその他に出すべく中心になって交渉しております。東南アジアからもインドネシアから引き揚げるオランダ人、あるいは東南アジアから締め出される華僑が南米へ、最近ではさらには中共から引き揚げて香港へ出てきます農民が南米へという事情でございますので、われわれとしては、入れるところにはどこへでも準備を十分整えることによってやっていきたい、こういうふうに思ってやっておりますので、御了解願いたいと思います。
○稻村委員 私はパラグァイなんかは非常にいいと思うので、そこへ日本の移民をできるだけ送る、それには専門的な技術者を入れていかなければいかぬというのです。そうでないと計画的な農業経営はできないです。できても失敗したりして、何度も失敗して時間が長くかかるのです。日本の農業技術はあなたも知っている通り世界の最高水準です。だからそういう技術者を、たとえば酪農をやるなら酪農、あるいは大豆をやるなら大豆、野菜なら野菜というふうな専門の技術者と農業経営の専門家をつけて、そうして初めから計画的な農業生産をやれと、こういうのです。そういう計画をやって下さいよ。それはやってますか。
○高木政府委員 ただいま仰せになったことは全くもっともでございまして、そういう技術者を移住会社及び海外協会連合会の現地支部に充実をいたしております。まだこれで十分であるとは申せないのでございまして、われわれとしては、大蔵省から予算をできるだけたくさんもらって、できるだけ充実してやっていくという方針でやっております。なおこういう移住地事業は政府が直接やるということは適切でないので、会社、海外協連のような民間団体をして実務をやらして、政府は政策と計画を立てて、予算を取って、それを与えてやっていくということが一番実際的かと思います。
○稻村委員 もう一、二点質問したいと思うのですが、アマゾンの奥地の移民計画を持っていますか、どうなんですか、それをちょっとお聞きしたい。
○高木政府委員 アマゾンにつきましては、戦後最初に日本人が入りましたのはアマゾンでございます。昭和二十七年の暮れに日本を出ました。当時はどこへでも飛び込んでいきたいというようなときでございました。しかもその受け入れも約束されたほど十分でなかったというようなこと、あるいは初期の苦労に耐え得るだけのみなの覚悟がなかったというようなことで、いろいろ問題がございましたが、今日では、この中で一つグァマの植民地、これはベレムの近くでございますが、これだけはまだわれわれ心配しておりますが、それ以外の土地は割合よくいっております。特に最近は、アマゾン沿岸の州が移住に非常に熱心になりまして、移住地建設、道路建設のため、相当機械化して植民地を作っておりまして、これに日本人も入れていこうということをやっております。昨年私も現地で見て参りましたが、最近入っておる者はみな非常に満足しておるようでございます。しかしこれも常にわれわれとしては、日本人が忘れられないで、むしろ積極的に援助されるということを見ながらやっていかなければならぬと思います。アマゾンの移住地につきましても、十分予算を取り、現地援助の施設を強化しながらやっていきたいと思います。最近は主としてブラジルの植民地を中心として、ブラジル政府及び連合州政府がやります移住地を中心にして入れておりますが、アマゾン河口のトメアスの近くに第二植民地を日本人が中心になって計画されております。
○稻村委員 私はアマゾンの奥地の移民はよほど慎重に研究してからということを政府に希望するわけなんです。トメアス第二植民地くらいならまだいいのですが、南米の奥地というのは、奥地からサンパウロまで出るには、ちょうど日本からシンガポールまでくらいの距離があるのです。そういうところで、いろいろなことを言われて入れられた人間というものはひどい目にあっているのです。それに私は陳情を受けたことがあるのです。だから市場もない、それから道路も完備しない、条件も整わないところに、あなた方うっかりしろうとが間違ってあんなところへ移民を送らぬように、まだほかにたくさんあるでしょうから、そういうことを希望するわけです。
 最後に私外務大臣に聞きたいのは、お聞きしたいというよりも私の考えを申し上げて参考に供したい、こういうわけなんですけれども、移民会社というものはよほど注意しなければならない。というのは、むろんその移民会社をやっている人は、国策の線に沿ってやっているんだし、私心がなくてよくやっていると思うのです。ところが会社というものはどうしても会社の黒字がまず第一だから、それでしばしば移住者とか現地民との間に対立を惹起する必然性を持っておるわけです。私は、ほんとうは会社というふうなものよりも、移住公社というふうなものによって、国家の予算でやることが一番いいのじゃないか、こう思うのです。過去における日本の台湾の製糖会社とか、あるいはキューバにおけるアメリカの砂糖会社のように、へたをすると、会社というものはどうしたって営利が第一になるから、そこで農民の犠牲をしばしば強要する場合があるのです。そこでブラジル政府は公社という形は好まない、こういう話を実は聞いたのですけれども、そういう点はあるいはあるかもしれませんけれども、それはやはり政府の方で、もっとブラジル政府に交渉して、政府がこれをやることが私は一番いいと思うのです。第一移民を保護するということは、移民がよくなれば日本に送金が多くなるわけで、移民が貧乏すれば送金も少なくなる、こういうわけなんですから、日本経済に寄与することも、そういう方が大きいと思うのです。そういう点で、これは国策の問題ですけれども、移住公社にしてやることが一番望ましいと思う。こういう考えを私は持っているのですが、外務大臣は一体その点についてどうお考えになっているかお聞きしたい、こう思うのです。
○小坂国務大臣 私も大体において稻村さんと同様な考えを持っております。しかし移住の問題は、相手方が外国でございますので、先方の思惑というものも考えながら、移住者の利益というものを十分保護していかなければならない問題だ。そこで国によりましては、国対国の関係よりも、やはりお世話をするのは民間の移住会社であるとか、あるいは海外協会であるとか、そういう移住ということに熱意を持つ任意団体の方が好もしいというふうに受け取る国も多いようでございます。そんな点でそのようになっておりますが、一方において国民の金を大きく預かる運営方針もとっております。その意味で、国民の金を保護しなければなりませんけれども、一方において故国を離れて海外に移住する同胞のために、できるだけの、営農の指導はもとより、医療、教育というふうな問題に至るまで、行き届いた気持を持ってお世話をするという方針でなければならぬと思います。源田さん、おられますが、わが国の移住会社というものは、今まで必ずしもよかったとも思えないところもあると思うのであります。しかし最近人も変わり、組織も一そう強化せられるようになって参りましたので、私どももできるだけ今稻村さんの仰せられたような気持で、この会社の運営をしてもらいたいというふうに思っておる次第でございます。
○堀内委員長 田原春次君。
○田原委員 私も稻村さんに続きまして三、四点、問題によっては移住局長また問題によっては大臣の御意向を承りたいと思います。
 まず最初に、稻村さんも言いましたように、社会党としましても、今回の日伯移住協定の成立は心より喜んでいるものであります。その衝に当たった人々の労を多とするものでありますが、なおまたこれを一エポックとしまして、その他の中南米の国で移住協定のできていないところ等についても漸次協定を進めていただくように、そうして少なくとも十万か十五万人くらいの者が出せるような予算、それから現地の設備、対外折衝等を進めていただくことが望ましいと考えておるのであります。その見地から二、三お尋ねを申し上げます。
 第一は、今稻村委員からも質問が出ておりました土地の買収、それから営農資金等に関する問題であります。それは海外移住振興会社のやり方に対するわれわれの心配なり疑問に触れるわけであります。この委員会に提出されました移住振興会社の報告によりますと、創立以来約二百五十口の貸し出しをしているようであります。しかもその大半は百万円以下で、また貸付先が移住者中心、農業、漁業等を中心に貸していることも、これまたまことに当然であり、けっこうなことだと思っておりますが、ただしこの二百五十口の中で一千万以上貸したところが十三口あり、なおその中で一億円以上貸したのが一社ここに出ております。それは東山農場という会社でありまして、これはブラジルの日本人の移住に関しては非常に功績もあります。いろいろな研究もしておりますし、その努力は多とするものでありますが、しかしこれは背景が三菱でございまして、また三菱であるからできるわけでありまして、三菱が早く四、五十年前から南米に着目したことについては敬意を払うものでありますが、何としても海外移住振興会社は資金が比較的少ないし、その大半はコロノの独立営農に対する資金の供与等が口数からいっても多いくらいでありますから、どうして天下の三菱に一億数千万かの金を貸さなければならぬか。もしこれが百万以下の小口の独立営農資金であるならば、少なくとも百四、五十口は貸していると思うのであります。従いましてこういう内地の大財閥会社の現地経営の農場に一億円からの金を貸さなければならなかった理由、何に一体使ったのか、その返還状況等も承りたい。それからそれ以外の小口の借り入れ申し込みを大半おくらかしたり、金額を削って貸したりしている例が多く、大へん評判が悪い。これは今の源田さんの前の時代かもしれませんが、いずれにしても移住振興会社ができるときには非常な期待を現地の人は持っておった。四年も五年も小作農で働いて、近所にいい土地を見つけ、そこばくの金を借りたいと思っていると、現地では簡単に貸すという。それから何度も何度も書類を持っていく。そうして東京に問い合わせた結果は、半年もして貸さぬということになって、これでは非常に不満が多い。三菱財閥の東山は確かにいい事業をやっているでしょうけれども、集中して一億何千万円かの金を貸さなければならなかったのは一体どういうわけか。これをまず最初に一つ参考人の方から承っておきたいと思います。
○源田参考人 ただいまの御質問にお答え申し上げます。会社の投融資につきましては、ことに融資につきましては、現在の会社の資金また東山に貸付をいたしました当時の会社の資金状況から見まして、一億をこえる金を貸すということはどうかというお話でございます。
 われわれとしてはできる限りわれわれの資金を南米にコロノとして行かれた方々または自営農として行かれた方々の営農の基礎をほんとうに確立することができるような方向にこれを使って参りたいということにつきましては、常に念願をしているところでございます。ただ東山につきましては、これは三十二年の六月に二万七千五百コントを実は貸したのでありますが、これにつきましては、実はブラジルで農業技術者、そういう指導的な立場に立つ人たちを訓練をし、そうしてここで養成をしていくということが非常に移住を進める上におきましても大切なことである。それで当時の山本博士がそういうふうな計画をされまして、同時に東山農牧の、ブラジル農業における指導的な立場というものは、御承知のように非常に大きなものがあるのであります。それでそれをますますりっぱなものに充実したいということで、その資金と、今の訓練に必要ないろいろな施設、またそれの実習のためのいろいろな施設、そういうふうなことにぜひ貸してもらいたいということで、この金は出されたものと考えておるのでございます。今日の事態から見ますと、それはいろいろ批判もあるかと思うのでありますが、その当時としては、そういうふうななには有意義なものであるし、また償還については、まず絶対間違いがないというふうなことで、この貸付を決定したものと思うのであります。
 貸し付けたものの償還の状況でありますが、これは利払いも償還もきちんきちんと実は納まっておりまして、それで今日におきましては、東山農牧も相当の資金的余裕を生ずるような現状にありますので、われわれとしてはこの間も山本博士が会社にお見えになりましたときに、できる限りこの金を期限前に繰り上げて償還をして、一般の資金を豊富にさせるようにしていただきたいということを申し入れまして、先方におきましてもその点を了承されて、努力するということにお約束をいただいておるような次第でございます。御了承いただきたいと思います。
○田原委員 一億円ですから、小さいと言えば小さいのでありますが、海外移住振興会社の資産から見ればそう小さくないと思うので、なるべくすみやかに回収されて、これを小口の独立営農資金に回すように、また独立営農だけでなくて、たとえばバス、トラック業をやるとか、倉庫業をやるとか、小さな町工場をやるとかいう方にも回すように希望しておきます。しかしながらまた反面、ブラジルのような非常に大きいところでは、事業の余地も多いのでございますから、相当まとまった資金を必要とする人もある。これに対して輸出入銀行の貸し出し、海外投資等を見ますと、輸出及び輸入及び海外投資と分けますと、非常に額が少ないのでありますが、この種の中南米における日本人の事業を助成する意味で、規約を変えてと言いますか、海外法人投資部といったようなものでも設けられて、相当まとまった額で有望な事業に対しては投資をされる。そのことはたとえば先ほど話に出た油ギリあるいは大豆等に対しても、これらの所要資金を貸し、そしてまたそのことによって、日本に輸入する上においても、比較的有利になるわけです。あるいはブラジル国内だけの航空会社、あるいは国内各地の内航船船舶とか、その他さまざまな有望な事業があると思いますが、これらに主として目をつけて貸してやるように、輸銀の事業内容を少し広げるようにしてもらって、移住振興会社は主として営農資金、それから相当まとまった事業に対しては輸銀の方から回すというふうになったらどんなものかと思うのですが、あなたの方の御都合を聞かしていただきたい。
○鈴木(義)説明員 先生も御存じと思いますが、輸出入銀行の目的は、大体海外市場の開拓あるいは確保、もしくは経済交流を促進するというふうになっております。その目的によりまして、海外投資とかあるいは海外事業の資金を供給しておりますが、その結果といたしまして、たとえばブラジルに造船工場ができる、あるいは精密機械工場ができる、そういう関係で工業移民が促進される、あるいは向こうにおられる移住民の方がそこに雇用の機会を持たれる、あるいは合弁会社に現地の移住民の方が参加される、そういうふうな関係で、結果として移住促進に資することが多々あると存じますけれども、本行の目的あるいは性格から申しましても、やはり目的自体が市場の開拓あるいは経済交流促進ということになっておりますので、直接に移住民の方に資金を提供するということはむずかしいかと思います。しかしながら従来輸出入銀行としましては、先ほど申し上げましたような例でいろいろな資金を出しておりまして、それが結果として移住民の促進に役立っておることは御承知と存じます。先生の御質問につきましては、われわれとしましてもできるだけそういうふうな形で、輸出入銀行の本来の目的に沿った融資が、結果として移住促進にはね返るというふうな方に努力をしていきたいと思いますが、正面の看板としまして輸出入銀行が移住促進という建前でやるということは、やはり本来の性格から見ても根本的な問題にもなりますし、また移住振興会社もあることでございますので、なかなか研究を要するのではないか、かように考えます。しかしながら本来の目的に従いました融資の結果、それが移住振興に役立つという点におきまして、われわれはさらに努力いたしたいと思います。
○田原委員 移住振興のために貸すという意味ではない。私の言うのは移住者の事業拡張資金を貸したらどうか、特に中小企業家に対してであります。なぜならば、たとえば八幡製鉄所のウジミナスであるとか、あるいは石川島重工とか、あるいは最近アルゼンチンに川崎造船とか、あるいは鐘紡とか、いろいろな計画もあり、それらは当然その会社としてか、またはそれらの会社に必要な機材器具等の輸出の面で、輸銀と大きな貿易商社の間に話ができると思うのです。私が言うのは、海外に移住した後における日本人の中小企業者に対する融資というものをもう少しやってもらえぬかということです。これは希望ですから研究しておいてもらいたいと思います。
 次は先ほどの稻村委員の質問の中にもありましたように、今までの移住振興会社の土地の買いぶりは非常に殿様芸で高い。移住振興が土地を買うといううわさが立つと、その付近の土地が五倍ぐらいにはね上がってしまう。そこへゆうゆうと出張とか調査とか本省へ稟議とかいっているうちに、ますます上がってしまう。結局会社として切って売るのに割高になるということが私は一つの欠点しゃないかと思います。そこで移住者の方に言わせますと、何も七千町歩だ八千町歩だと大きいところを買って、切って売ってもらわなくても、自分の住んでいる付近に、家で言えば中古家みたいに、十町歩とか二十町歩とかの売りものが出るのですから、そういう小口に貸す方が、目立たぬけれども役に立つと思う。従って土地の大買いというのをやめてもらって、むしろサンパウロのような相当多いところでは、働いている連中は休みにでも近所を探して回って、あそこに十ヘクタールある、それじゃそれを貸してやろうというように、もっと気軽に小口貸しというものを考えてもらいたい。今のグアタパラの問題にしても、バルゼアアレグレの問題にしても、要するに殿様買いであったことが、結局はぐるぐる回って買い手の方に高くつくというような非難の一つの理由です。その非難は当たらぬかもしれないけれども、少なくとも在留民や日本ではそういうふうに考えられておりますから、今後の方針はそういう小口資金に進んでもらいたい。それには、これはこれから大臣にお伺いしたいのですが、この移住振興会社のできる当時は、海外移住金庫という考え方と、それから移住振興会社と二つあったわけです。それが幾変遷の後に一本になりまして、金融部面と土地購入に分割して二つになっているところがら、土地の方の問題に追われて貸し出す方がどうしてものろくなる。私が今ちょっと聞いてもそんなふうで、直接にはすぐ中小企業には金融できかねる。そこであらためて研究をされて、仮の名前を海外移住金融公庫とでもいいますか、それと現在の移住振興会社との二本立にしたらどうか。古い、適切ではない例でありますが、朝鮮銀行と東拓というような関係、台湾銀行と台拓というような関係が考えられるのではないか。向こうの国の法律の関係もありますし、特に銀行法か何かわかりませんから、その点は研究しておるわけではありませんが、こういうことの一つの面は、農林省の人も知っておりますように、国内でいろいろ募集にあたりまして、さあ、それではいよいよ五十万か六十万の資金を作ってブラジルへ行こうか、そのためには自分の家や財産や牛、馬を売っていこうかということになりましても、それに対する金融はまだまだスピードが上がっておらぬわけです。たとえで農協その他を通じて、自作農創設維持資金とか、いろいろありますけれども、専門的な仕事でないものですから、本来の仕事の中のごく一部の海外移住者に対するあれでございますので、ともかくこれも時間がかかる。そして移住金融公庫のようなものができて、国内で財産を処理する場合、一種の信託行為か何かで一応買い上げる。それから予定通り出発して向こうでお百姓をする。国内の土地、財産等が売れたころ、またそれを送ってやるというような国内における移住者の整理財産の処理、向こうでの事業資金の融資、こういうように金融だけは一本独立してはどうだろうか。そして移住振興会社は、もっぱら土地の売買、あるいはこれに関連する倉庫業とかバス業とかいうものを経営するという二本立はいかがであろうかと考えるわけです。これは社会党としてまとまった意見ではありませんが、この振興会社法ができる当時の議論であつたわけです。再び蒸し返すようでありますけれども、現地では非常に資金を必要としますので、そういう点については外務大臣も考えられておかれてはどうかと思うのですが、あなたの御意見を聞かしてもらいたい。
○小坂国務大臣 移住振興会社ができましてから五年半になるわけでありますが、ようやく形態も整い、人的にも整備されてきたという段階のように私ども見ておるわけであります。最初土地をいろいろ探しまして土地が得られないという段階では、いろいろな妙なものに貸し付けたりして、大蔵省からいろいろ言われて、私どもも予算を見ますときに、移住振興会社にかなりその点で注目しておった時代もあったわけです。こういう点もだんだん直してくれておるようであります。現地では今田原さんのおっしゃるような土地会社と金融会社というものの必要は現実にありまして、ブラジルなどでは、御承知のように、土地の方ではジャミックというものでありますし、それから移住振興という金融の機関もあるわけでございます。ブラジルは移住の先覚地でございますので、そういう点もいろいろ分化しておるわけでございますが、最近、パラグァイ、それからアルゼンチンなどで日本の工業に目をつけまして、ジョイント・ヴェンチャーの希望があっちこっちに出てきておる。そうすると、移住者も、農業移住だけでなくて、工業移住の点も非常に有望に考えられておると思うのでございます。そういうふうになって参りますと、やはり東京に今田原さんの御構想のようなこともだんだん考えてみる必要があるのではないかというように私も感じますので、さらにこの点御一緒に、御意見も伺いながらよく研究してみたいと思っておる次第であります。
○田原委員 次はこれに関連した他の問題でありますが、先ほど稲村委員も触れておられましたように、新しい土地で農業をやるについていろいろ経験が必要である。そのためには専門家も出す必要があるということでありましたが、私はこれを裏から見て、現地に相当大きな農事試験場みたいなものをあっちこっちに作って、そして内地から単身で行く者、あるいは全然財産を持たない者等は、一応そういう農事試験場の実習生という名目かあるいは農夫という名目で入れる。そうして一年か、二年か三年間そこでいろいろ実習しておる間に独立して土地を買うというようになる。その段階ではまた移住振興が金を貸すというようにしたらどうかと思うのです。これは農林省の方がおればお尋ねしたいと思うのは、方法としては、たとえば各都道府県の農事試験場、畜産試験場等の共同経営みたいたもので、アマゾンに一カ所とかパラグァイに一カ所とか置いて、そこで一定の給料を払いながら働かす。実は実習生であって、後日の独立を前提とするものであるとすれば、今よりももう少し応募出発が楽になるのではないかという気がするのです。まとまった構想ではありませんが、これはどんなものでございますか、一応お伺いしておきたい。
○小坂国務大臣 田原さんの今の御構想、私も賛成でございますが、すでに海外協会連合会の方でそうした構想を持っております。ことしの予算折衝ではそれがうまくいかなかったのでございますが、そうした構想はぜひ実現して参りたいと思っております。従来移住の問題につきまして、農林省と外務省と必ずしも非常にいい共同関係にないような面もあったわけでございますが、これは今後大いに気をつけて参りたいと考えております。その一助ともいたしまして、前の農林次官だった渡部伍良君なども外務省顧問として今東南アジア方面を見て回っております。そんなことから、移住に対する外務省の方の考えも農林省でよくわかってもらって、両方でセクショナリズムを離れて、ほんとうに移住の問題を考えて参りたいと念願しておる次第であります。
○田原委員 それはまことにいい考え方であります。どうか言葉だけでなく、実際に、一つ農林省と外務省と仲よくそれぞれの専門を生かしてやっていただきたい。行く方から見ますと、一日も早くそうなってもらいたいと思っております。
 次は労働移民の問題であります。具体的にはアルゼンチンのリオトウルビオ国営炭鉱から二百名の坑内労働者をほしいという申し入れがきております。このことは外務省や海協連等もすでに知っておることと思いますが、場所がブエノスアイレスからずっと南の南緯五十度かどこかで、北緯に直してみますと樺太みたいなところなんですが、非常に寒いだろうということで慎重にかまえておるようであります。先方は日本の坑内労働者の勤勉ぶりを西ドイツの労働者の例から見て、非常にほしいということを言っておるようであります。たまたま、御承知のように炭鉱労働者はここ数年間に十一万人くらい自然退職しなければならぬことになっておりまして、炭鉱離職者援護会等もできて、国内の転業等の訓練も今日進めておるようでありますが、現にアルゼンチンが炭鉱労働者を求めておるということは、私は非常におもしろいことではないかと思う。私のところにもすでに六十通くらいこれに対する問い合わせの手紙が来ております。必要とあれば後ほどごらんに入れますが、そういうふうであります。炭鉱労働者の招聘ですから、問題は、収入とか、鉱山の保安設備であるとか、住むにたえるかどうか、それから郷里に送金ができるかという為替の問題等も含めて、一応調査団を出してみたらどうかと思うのです。ただ文書の上で問い合わせをするとか、あるいは寒かろう、だめだろうということで拒絶するのでなくて、せっかくの希望である以上は、一応調べたらどうか。それに対しては、役所側からの調査も、専門的にはいいかもしれぬけれども、むしろ大手の炭鉱の近く退職者を出しそうなところから、技術専門家をやって、坑内の保安設備を見るとか、住宅、衛生、教育、娯楽、あるいは収入、あるいは石炭の経営が見込みがあるかどうかといったような問題を十分に調べて見て、その上で、とてもこれはやれぬというのか、あるいはそこでこうこうこういうふうに条件を変えたら送ってもいいというような、現地交渉をするのにいい機会じゃないかと思います。これに対して外務省、それから石炭関係で通産省、もし労働省の方が来ておられたら労働省の方の御見解も聞きたいと思っております。
○高木政府委員 アルゼンチンの南のリオトウルビオの炭鉱につきましては、田原先生とは前からお話しておったのですが、私自身も昭和二十七年にアルゼンチンに行きましたときに現地近くに参りました。当時はペロン政府でございまして、労働者の待遇が非常によかったころでありますが、やはりそういう話がございまして、日本は炭鉱労働者なんかとても出さぬだろうと思って、私自身は遠慮して日本へ伝えなかったのであります。その後アルゼンチンの政府もかわりまして、労働者の待遇もだいぶ悪くなっておるようでございますし、またあの石炭は割合に品質の悪い石炭で、聞くところによると五、六千カロリーくらいの熱量しかない。それから、従来は、チリの南の方の労働者は非常に程度の低い、非常に薄給の労働者が主として行っておりますので、そういうものとの競争になるとなかなかむずかしいのじゃないかという気もいたします。しかしこの炭鉱につきましては、すでに日本の経済界からも見に行っておられると思いますし、この炭鉱から海岸への鉄道の機関車はすでに三菱が入れておるという関係で、かなり縁もございます。そういう意味で関心はございますが、その前に大使館からもう少し下調査をして、その上で、有望であるならば行った方が、慎重じゃないかという気がしております。
○小島説明員 ただいまの問題でございますが、先生も御承知のように、西独へ出しました炭鉱労務者は非常に評判がよろしゆうございまして、ドイツでも非常に高く評価いたしております。私さきにドイツへ参りましたときにも、向こうへ行きました炭鉱労務者と会いましていろいろ話も聞いて参りましたが、みな喜んで仕事をしております。そこで、これはもう一ぺん送ってくれないかという申し出もありますので、それを今調べておるところでございますが、ちょうどそのときにアルゼンチンからも、向こうの炭鉱へ来ないかという話がございまして、ドイツの方は事情は知れておりますけれども、アルゼンチンの問題につきましては一応若干不安な点がございます。従いまして、どういう条件で働くのか、ただいま先生もおっしゃいましたような俸給問題とかいろいろございますので、そういう点、海協連ともよく御相談をいたしております。主として炭鉱離職者援護会が中心となって御相談いたしております。その模様によりましては、ただいまお話のございましたような、業界その他を含めました調査団というものの派遣が適当であるということになるかもしれませんが、ただいまその前段階のところの検討をしておるという模様でございます。
○木村説明員 雇用移民につきましては労働省が所管するということになっておりまして、その手続は、外務省から私の方に雇用条件はどうであるとかあるいは就労条件はどうであるとかいうような具体的な連絡がございまして、われわれの方で募集あっせんをいたすということになっております。それでアルゼンチンの方の炭鉱労働者の募集というような点につきましては、実は私、勉強不足のせいか、まだ耳にしておらなかったわけでございます。今、移住局長のお話もありましたように、外務省といろいろ打ち合わせをいたし、外務省の方で、これは出すのに非常にいい労働条件である、出して差しつかえないというふうな御意見でありますれば、われわれの方といたしましては、炭鉱離職者の失業対策の一環にも相なりますので、積極的にこれが推進をはかっていきたい、かように考えている次第でございます。
○田原委員 私が聞いたところでは、サンタクルスは非常に寒いところで、風が強くて野菜等の栽培が非常に困難だということで、自然南米の労働者があまり行かないのではないかと思う。従って、そういう環境は技術と資本の入れ方でよくなると思いますから、せっかく求められてきたのだから出す、出すためにはどうしてくれるか、また日本政府はどうすればいいかという積極性をもって至急に交渉もされ、調査もされて、せっかくのアルゼンチン側の希望を無視されぬように、行きたい者もありますから、出す前提で準備していただきたいということを希望いたしておきます。
 次に大臣にお尋ねするのですが、大臣は出身が長野県で海外移住者も先覚者が多いところで、さだめし関心を持っておられると思いお尋ねしますけれども、北米、ハワイ、カナダ、中南米については約百万の日本人及びその子弟がおる。これは大へんな苦労をして戦前、戦時、戦後とずっと発展してきたのでありますが、これらの人々は、とかく何と申しますか、外務省関係でも、出先にいる人が殿様みたいな気になって、移民どもがという気持になりやすい。その中で彼らは自分の生活を打ち立ててきたのであります。すでに去年で第二回をやりましたが、海外日系人大会を隔年ごとに開いている。そうして向こうの日本人会長であるとかあるいは何々県人会長というしかるべき人が、郷里訪問に帰ってこられるわけです。その機会に、一つは日本の実情を見せる、海外で働いている人に対する感謝をする。また非常に功労のある人には感謝状を与え、あるいは叙勲などもするということで、向こうから帰られた方は言いたいこともたくさんあると思いますから、四、五日くらいはお客として何でもかんでも聞いて、お答えでき、説明できることはしてあげるということにしてもらいたい。なおそれだけではなくて、海外各地で、その国の法律に従って日本語を教育しているところが相当あります。北米から南米にかけまして大かた二百くらいあるのではないか。かなり不便な中で、その付近の在留者の費用で学校を経営しているところもあります。先生方も貧乏なために、日本の事情がよくのみ込めぬうちに二世、三世に日本語を教えている人が多いのでありますから、これに対しましても、一年置きくらいでいいのですが、海外日本語学校教師会議みたいなものを東京に設けて、全員一回に来られなければ一年置きか何かにして、夏休みくらいに、そうして日本のいいところを見せ、教材等も与え、そうして帰す、こういうことです。
 第三点は、海外で日本字新聞を発行しているものもあります。私が調べたところによりますと、北米、ハワイ、カナダその他中南米二十八社あります。ハワイと北米では日刊もあります。中南米は日刊が少なくて、週二回刊あるいは三回刊等があります。これらの人々は、ラジオあるいはその国の言葉の新聞の翻訳等をして、比較的その国の言葉に通じない移民の皆さんに、日本語にしてこれを配っている。在留同胞の少ない、たとえばパラグァイあたりでも、パラグァイの新聞を謄写版で刷って出している。アマゾン川の広いところで七、八千人しかおらないのにアマゾン新聞を出している。アルゼンチンも全体で一万四千くらいしかおらぬのに、活字の新聞が二つある。メキシコにもペルーにもあります。これはずいぶん苦労してやっております。そこでこれらの人々にも、全部呼んでも二十八社ですから、二年に一回くらい東京に招いて、海外で発行する日本字新聞の社長会議みたいなものをやって、正しい日本の姿を見せる。それから、いろいろ注文があれば聞く。場合によったら広告などもあっせんして、新聞がペイするようにしてやる。そうして二世、三世、四世等に、いわゆる日本の文化を日本語によって読ませるというふうにしてほしいと思うのです。以上三つ、海外日系人の、たまたま日本訪問の際における大会、これは別に政治的な問題ではありませんし、その日系人大会によって、その在留国と日本との親善等に対して非常に役に立つのでありますから……。それから海外日本語学校長会議みたいなもの、海外日本字新聞社長会議みたいなものを、これもやはり海外に日本を知らせるということからすれば、非常に私は役に立つと思うのです。昔のナチスのように、日本の侵略主義でやるのではないのですから、事実を教えてあげることは非常にいいと思うのです。費用もそうかからぬと思います。小坂さんがいつまでおるか知らぬけれども、あなたのおられる間に一つ道を開いておいてもらいたい。すでに岸総理兼外相の時代に日系人大会は始まったので、だんだん進めておるようでありますが、次には、学校長会議、新聞社長会議というものはないようでありますが、これはあなたに対する希望と陳情なんですが、御見解をこの際伺っておきたいと思います。
○小坂国務大臣 田原さんが常々先覚者である日本の海外におる同胞のために心を砕いておられる点に対しては敬意を表しております。昨年日米修好百年ということで、在来のこれらの同胞のうちの相当数の人たちに対して、叙勲をいたしたり、また日本訪問もいたしまして日系人大会なども盛大に行なわれたりいたしたことは非常にけっこうなことだと思いますし、他の学校長あるいは新聞を経営しておる社主その他に対して、いろいろな配慮をしろということは非常にけっこうなことだと思います。日本の方の経済力も非常に最近充実して参りましたのでありますから、なおよく一つ考えさせていただきたいと思います。
 それからこれは余談でありますが、教材のお話が出まして感じるのでございますが、日本のことを紹介するための教材がきわめて貧弱でありますわけで、早い話が、日本人のことを紹介するのに、よく中国人の弁髪姿の絵などがかいてある教材がずいぶんあるわけです。そういう教材を特にアメリカにおいて直させようという運動もございます。いろいろやってみたいことがあるわけでございます。
 今お話の三点につきましては、よく検討させていただきたいと思います。
○田原委員 なお、あと三点ほど大臣にお伺いしたい。
 そのうちの一つは、先日も移住局長に質問の形で申し上げたのですが、民間の募集会社といいますかのことなんです。せっかく向こうで土地を購入したり移住協定を作ったりして、いい条件でやろうとしますけれども、なかなか啓蒙宣伝が徹底していないために行く人が非常に少ない。たとえば一万人の予定を立てながら、いつも七、八千人しか行かぬという状態です。内面的にいろいろな理由がありましょうが、ともかく行っていないということは事実です。そこで少なくとも一万人をこさせて、進んでは、二万、三万、イタリアのように十五万人も出せるような大規模な計画を進めていただきたいという意味で申し上げるのですが、それには募集方法がお役所式であってはいかぬということが――これは先日申し上げましたように、最末端の町村役場、それから県庁の海外協会等は非常に人が少ない、また給料も実に安い、そうして出張旅費も思うようにない。私の福岡県のごときも比較的移住者が多い県でありますが、それでも海外協会の職員は専従者が五人ぐらいです。それから県庁が五人ぐらいおりますが、これはほとんど兼務です。五人であっらこっち回る。それで募集ポスターや趣意書ができたからといって、これは町村役場に流します。町村役場はもつと少ないので、とても一々家庭まで訪問してブラジルはいいところですと説明して決心させるところまでいきません。じいちゃん、ばあちゃんが、もうブラジルへ行くのはやめてしまえということで、とめる方の人間は至るところにいるけれども、勧める側は根強く勧める機関がない。映画とか講演とかポスターとかありますけれども、ばっと夕立でまくくらいでしみ込まない。そして、これは移住局長御存じのように、民間に移民募集の会社が七社ある。かなり募集しておるところもあればあまり動いてないところもありますが、それが最近ではどうもよからぬ人間を送るとかいうようなことで、マイナスの面を強調して、仕事をどっちかというと圧迫しそうな形になっている。しかしそれは――これは理屈なんですが、政府の公募で計画移民で行った者でも、ばくち打ちもおればくずもおります。この間コチアへ行った日本の青年などは、細君と通じて主人を殺したようなものがある。だからとても役場から募集したから全部百パーセントいいとは限らぬわけです。コチアの産業組合のある部長が言っておりましたが、少しは骨っぽいやつが来た方がいい、けんかの一つくらいするやつでなければいかぬという人もあるくらいですし、善良な人間ばかり来ても、すぐ気違いになって精神病院に入ったりするというのでありますので、やはり一万人をこすということについては、民間の募集をある意味で優遇したらどうかと思います。具体的には、A社には千五百人なら千五百人、B社には千人なら千人という、一万人のうち割当をして、お前の方ではこれだけ募集せい、募集が済んだら、その募集費用は海協連の持っておる募集費の中から渡してやろう、一種の下請ですね。これは一つの思いつきですから、その通り行なわれなくていいのですけれども、来年ぐらいにはともかく一万人をこすぐらいにやってみたらどうかと思います。これは小坂さんは知らぬかもしれぬけれども、戦前には井上雅二代議士が社長であった海外興業株式会社というものがあって、フィリピンやペルーやブラジルに土地を持っておったのです。これは営利会社ですから、むろん配当をしなければならぬ。その時代には各県に移民募集人というものが認められておって、そして戦争の前々年ぐらいには二万五千人から南米だけに行ったことがあるのですね。それが戦後農林省、外務省あらゆる方面で努力しておるのでございますけれども、もう一歩ということが足りません。どうしても一万をこさない、これは第一啓蒙宣伝の不足、これはもっと予算をとったらいいと思います。第二は、募集人の努力が足らぬ点がある。たとえば行きたい人が県庁に行って質問しようとしても、土曜日は休み、日曜に行って聞こうと思ったら、日曜も休みだ、そんなふうでは親切な御案内ができないですね。ところが民間会社ですと、どこそこで何人か行きそうだというと、そこへ乗り込んでいって、一晩でも二晩でも泊まり込んで話をする、少しはうそを言うかもしれないけれども、そのかわり行く気持を起こさせるわけですね。だから弊害だけを言わずに、長所を活用して、官民並行といいますか、あるいは海協連の予算の範囲内で、むしろ奨励して、一般の移住者から手数料をとらぬ、とるべき手数料は海協連からあとでボーナス式にでも渡す、いろいろ方法があると思います。そういうことで一つ小坂外相時代に一万人祝いぐらいやって、一万人こしましたということになったらどんなものだと思いますが、一つの建言ですから、一つ考えてもらえないかということです。
○高木政府委員 大臣にかわってお答え申し上げます。旅行あっせん業者、民間の募集者につきましては、今田原先生がおっしゃいましたように、戦後の移住募集については非常な功績があるのでございます。同時に累次にわたって現地でいろいろ問題を起こした点もございます。そういう点を十分考慮しながら、なるべくこれが活用されるような方法を研究したいと思います。明治時代に同じような状態が起こりまして、これを統一いたしまして、海外興業株式会社を作り、移民保護法もできて、これがしっかりとした統制下に行なわれるようになりました過去の経験もございます。本年はできれば移住基本法あるいは移住保護法のようなものがぜひできなければいけないと思いますので、それに関連してやりたいと思います。なおこれにつきましては、海外協会、地方海外協会の活用あるいはそれと旅行業者との連絡、いろいろな方法が考えられますので、こういう点十分地方及び現地の実情を考慮した上で最善の方法を考え出したい、こういうふうに思います。
○田原委員 この際、外務大臣に、移民問題でありませんが、外務大臣としての考え方を聞いておきたい問題が、全然別の問題がある。それは外務省の役人は三分の一は飛行機に乗っておるといわれるのですね。要するに、短期に異動、転任が多いということ、これはやはり専門家を養成する意味において、そう二年やそこらで転勤ばかりさせぬようにしたらどうか。私は個人的に知っているが、たとえば都村君、これはフィンランドやロシヤに対して非常に有能な人です。それがぽかっとキューバの大使になる。これは省内の人事の配置の都合だと思うのですが、もちろん外交官ですから何にでも通じて、ロシヤ語もわかる、スペイン語もわかることは大へんけっこうですが、二年ごとにぐるぐるかわるのでは、ほんとうに地についた外交はできぬ。私が外務大臣に言って実現したのは三等大使の問題です。あれは岡崎外相の時代に、やはりこの外務委員会で発言した。大使、公使というのは国内の給与の関係でなるが、相手国は大使を希望するのに日本側は公使だという関係になる。実質は大使を公使くらいにしておる。そのときに岡崎さんは、大蔵省が予算をいうからと言う。それじゃ大蔵省と話をしたらどうでしょうということで、そのうちに今では大使がだんだんふえました。そういうふうに、今度あなたに希望することは、同一地区に永年在職しながら給料が上がっていくような方法、たとえば官等と俸給と切り離してみたらどうか。これは外交の先進国のイギリスあたりはやっておる。たとえばタイ国にクロスビーという大使がおりましたが、タイ国だけに四十三年在勤したのです。あのむずかしいタイ語のなぞなぞを解くくらいに通じた。私は青年時代に南米のアマゾンに行ったとぎは、イギリスのジョンソンという副領事がおりましたが、これは二十五年副領事をしておった。そうしてベレンの町へ行ってみますと、顕微鏡を持って木材の木目を見ている。ゆうゆうたるおじいさんで、それが三、四年おりますと、半年か一年は有給で本国に休暇で帰る、また行くというふうなことで、別に副領事から以上を希望しない。そうして給料は上がっていくわけだ。従って、日本もこれは一般行政官との官等、俸給表と切り離して、外交官に対しては官等は年令や学歴に応じてだんだん上がっていく、俸給は在勤年数によってふやしていく、たとえばどこかの副領事は二十五年もやっておるから小坂外務大臣より給与が上ということがあっても一つもおかしくはないと思います。諸外国においてはそうです。あなたのおる間に――そういう無学歴の書記生や理事官で上はどん詰まりになっちゃって、それから二年もすれば本国に帰らなければならぬということになる、いい仕事をやろうというよりも、位を上がろうという考え方がある。そうでなくて、安んじて一生を外卒官としてやれるような、たとえば中国語をやれば香港、シンガポール、あるいは時期が来たれば中国の方に在勤というようにぐるぐる在勤していく、現にイギリスはそうやっております。イギリスでは、たとえば天津の副領事をやってそれから本国に帰り、その次は青島の領事になって、また本国に帰って、その次は北京の参事官になるということで、中国だけに一生をやってけっこうやっているようです。これは私の希望なんだけれども、すぐできぬかもしれぬが、あなにのような実業家で政治家で外務大臣になった人は私はやれるんじゃないかと思います。要するに、安んじて一生を専門的にやる。スペイン語ならスペイン語だけをやっている、アラビア語ならアラビア語だけやっている人というふうにして、ずっと永久に、位は上がらぬでも給与は外務大臣より以上をとるというふうな努力をしてみたらどうかと思うのです。このことは専門的な外交官を養成する上に必要じゃないかと思います。
 必然的に移民の問題になりますけれども、外務省の空気は、移民はダーティ・ジョブと言っておる。何か自分たちはハイ・カラーで、いいジョブをとっておると思っておる。それじゃフランスやドイツへ行った者はどれだけ明治、大正、昭和を通じて大外交をやったかというと、大したことはないと私は思う。移民と貿易が日本の平和のために必要なんだから、移民局や移住局、中南米に在勤する者を妙な卑下したような風をされたらいかぬと思う。よくやっている、あなたたちによって日本から十万、二十万も海外へ行けるのだ、そういう意味でやらせなければならなぬと思う。この際私は官等と俸給表を切り離して、必ずしも東大や一橋出だけが局長や次官になるのじゃなくて、無学歴でもなれるということを研究してみたらどうかと思いますが、あなたの御所見を聞かしてもらいたい。
○小坂国務大臣 私は田原君と全く同じ意見を持ちます。そういうふうに大いに考えてみたいと思っておるのであります。御承知のように、最近新しい国がどんどんできて参りまして、今仰せられたのと別に、認証官としても大使と従来の地位というものを別に考えていく必要も一方には出てきておると思います。そこで、日本の外交官のいき方ですが、今お言葉の中にあったように、欧米へ行くのが必ずしもいいんじゃないということをもっと強調する必要があると考えております。すなわち、アジア、アフリカ方面を通っていかぬ者は一番いいところへ行かれないというくらいなことにしなければいかぬのじゃないかと思っておるのであります。今お話の移住は全く重要なことでございまして、やはり移住を担当する者が移住に情熱を持ってやれるように、そういう者でなければそこへ入れないし、また入った者はそうしてくれれば必ず専門的知識を活用できて、外務省の中枢になれるような形をとっていくことも必要なことだというふうに思っております。
○田原委員 これで私の質問を終わりますが、どうか答弁だけに終わらずに必ず実行するように見ておりますから、よろしくお願いいたします。
○堀内委員長 西村関一君。
○西村(関)委員 私もただいま同僚の田原委員が申しましたように、日伯移住協定が締結、調印せられまして、国会に承認を求められておるのでありますが、この当局の労苦に対して深い敬意を表するものでございます。この日伯移住協定が時代の新しい感覚に基づく移住民政策を推進する上に大きな役割を果たすように心から念願するものであります。ただ単に一方的に一つの国の利益を推進するためであるとか、あるいは人口問題の解決のためであるとかいうような考え方の政策ではなくて、やはり世界の平和、共存共栄という立場から移住民政策が行なわれなければならないことは申すまでもないと思うのでありまして、そういう見地に立ってこのたびの協定が結ばれたものと思うのでございます。そういう立場から若干のことを御質問いたしたいと思うのであります。
 さきにも田原委員、稻村委員から触れられた点でございますが、わが国の移民の実績が計画目標に対してはるかに下回っておるという現状につきまして、この委員会に出されております資料によってもわかりますように、三十四年度海外移住促進のための五カ年計画というものによって示しておられます目標からは下回っておる。五年間に十万人というようなことはとうてい望まれないというような現在の状態であります。中南米諸国の外国移民に対する要求と申しましょうか、希望と申しましょうか、そういうものは今後おそらく十年、長くて十五年続けばいいと思うのでありまして、それ以後はもはやそういう必要がなくなってくる事態が中南米においてくると思うのであります。この向こう十年というときに非常に力を入れてこの協定の中に盛られております精神に基づいて移住民政策を実行しなければいけない。つまりこの協定の精神に基づくところの移民を送り出さなければならぬ。それでなければこの条約は空文に終わってしまう、どうしたら向こう十カ年間ブラジル国も喜こび、またわが国にもそのことが益となり、ひいては両国の親善協力、さらに大きくは世界平和のために貢献するというような実をあげるかということが、私は非常に大きな問題だと思うのでありまして、そういうことに対しては、私はこの前の本委員会においても質問をいたしたのでございますが、一つはやはり先祖伝来の田地、田畑を売り払って、墳墓の地を捨てて、まだ見ない、知らない他国に、しかも文明の恩恵に浴しがたい地に移っていく人たちにとりましては、よほど国が本腰を入れて、あらん限りの力を尽くして熱意を示さないと、これは実績が上がらない。ただ条約を結んだ、ただこういう方針で行けというのでは、成績は上がらぬと思うのでありまして、こういう点について機構も整備されております。海協連もあり、移住振興会社もあり、夫々機構は整っておりますが、こういうことに対して、機構を動かすところの政府当局の熱意というものが、これを成功させるかさせないか、ただ単にブラジル国に対する移民の問題だけではなくて、中南米諸国、また今後はさらに東南アジアその他の諸国に対しても考えられるであろうところの移民の成果が、やはりそういうところにかかっておると私は思うのであります。こういう点につきまして、非常に抽象的なお尋ね方をいたすわけでございますけれども、私はやはり何と申しましても、それが根本の問題だと思うのでありまして、そういうことが、ひいては予算の面にも現われてくる。私はここに出されておりますところの三十六年度の予算というものは非常に足りないと思うのであります。このくらいの貧弱な外務省、農林省の予算では、とうていこの大目的を貫徹することはできないと思うのであります。こういう点につきまして、まず小坂外務大臣の御所見を初めに承っておきたいと思います。
○小坂国務大臣 幸いにして中南米諸国が、わが国の移民を受け入れてくれるというのが今日の状況でありますが、これは向こう十年ぐらいのものであろうという西村さんの御意見には、私も同感でございます。従いまして、ここにおける移民の問題というのは非常に重要だと思うのでありまして、移民の問題を、単にわが国の人々を移すということだけでなくて、やはり移住者が先方に行って、先方の国の経済に協力する。そしてその国におけるある程度の地歩を占めていく、そのことが移住を受け入れた国とわが国との間の親善関係を深めていくということにもなるのでありまして、こういう意味において、移住というのは非常に重要な意味を持っていると思うのでありますが、残念ながら、御指摘のように現在われわれに与えられております予算というのは、その大きな意義にもかかわらず、少ないと言わざるを得ないと思うのであります。これは現在の予算制度が、一応事柄の重要性というのは、すべてみな重要だということで参りまして、結局前年度予算に対して、どのくらい増すというふうな予算の査定が行なわれている結果、なかなかふえぬということもあろうかと思うのであります。こういう点につきましては本年度のところは与えられた予算でできる限りやってみますけれども、次年度におきましては、やはり移住の問題というものは、全く超党派的な問題として、お互いに国会において解決に努力していきたいと考えておる次第でございます。どうも予算の際は、やはりさしあたりの重要性ということが強く表面に出て参りますので、当初予算をいろいろいじります際には、どなたも移住の重要性を信じて疑わないのでありますが、その声がだんだん小さくなりまして、結局なかなか所期の目的を達成し得ないというのが従来までの実情でございますので、一つ私どもは大いにいたします。また何分ともよろしく超党派的に御後援を願いたいと思います。
○西村(関)委員 どうもこの移民の問題は、事の重要性を認識している人たちでありましても、なかなか真剣になって取り組んでくれる人が少ないことを私は非常に遺憾に思うのであります。大臣が今申し述べられました点につきましては、私たちも超党派的にこの問題の振興のために御協力申し上げることはもちろんでございます。それにつきましても、いろいろな点を整備していただきたいと思うのでありますが、先ほど高木移住局長の御答弁の中にもございましたが、制度の上におきまして何らかの構想を、閣僚のお一人として大臣がお持ちになっていらっしゃるかどうか。イタリアのごとく移民省を設けるといったようなことは、機構の簡素化という方針にそぐわない点もあろうかと思うのでありますけれども、関係各省、特に外務省、農林省の間におきましてうまく御相談をなさって、よく連絡をとって、何の問題もないと私は思いますが、しかしいろいろ連絡調整の面におきまして、行政の体系を整備する面があるのじゃないか。この資料の中にもそういう意見が出ることを期待しておるかのごとくうかがわれる文書がございます。こういう点につきまして、大臣はどのようにお考えになっておいでになるでしょうか。
 また、さっき高木局長の言われたのは、移住基本法の問題で、機構の問題じゃなかったのですが、移住基本法を作るというようなことに対しましても、外務当局としてそういうお考えがある程度具体化しつつあるのでございましょうか。それらの点につきましてお考えを伺いたいと思います。
○小坂国務大臣 いろいろ機構の問題もあろうかと思いますけれども、一番実際的な問題として取り上げられなくてはならぬ問題は、やはり出先、国内における第一線の強化であると考えております。現在御承知のように地方海外協会というものがございまして、ここにはりっぱな殉教者的な気持で移住の問題を真剣に考えておる人もあるわけであります。しかしこの人たちが自分らの将来に対してかなり不安感を持っておるということも、現実の問題としてあるようであります。私は先日これらの人を集めまして一度食事をともにして激励してみたのでございますが、こういうことをしてくれるのは初めてだということで非常に喜んでおられました。やはり出先の予算も足りぬようでございますが、出先の諸君にほんとうに足をすりこ木にしてあちらこちら回って歩く情熱を持たせるということがまず必要のように思うのでございます。
 それから一方におきまして、現在ブラジルが一番大きな地域であるわけでございますけれども、ブラジルでいろいろ土地を買う、しかしこれはなかなか高いのでございます。しかもインフレが相当にあるように見受けられるのでございまして、他の国においてかなり安い土地の買えるところもあるようでございます。そういう点などは、移住会社の方において大いに努力して安い土地を買うようにしてもらいたいと思います。
 なお何といっても農業移住が主体でございますから、農林省の官吏の諸君にもできるだけいい人が出てもらって、やはり中南米の公館には、あるいは総領事館その他にも農林省から行かれる方を大いに迎えたい、これも大事ではないかと思います。それもデスクワークの専門家よりも、むしろ営農関係の権威者というような人が進んで公館に行ってくれるということが、やはり現地におけるそうした関係を改善する一つの力になりはしないかと思っております。全体の機構の問題はいろいろございますが、それよりもまず現在の機構内において重点的に諸機関を強化していくということで考えております。
○西村(関)委員 農林省の関係の方にお伺いいたしますが、今大臣がお話しになりました、農林省から在外公館に農業技術者として、農業専門家として出ておられる方は、中南米において何人くらいございますか。
○齋藤(誠)政府委員 現在農林省から技術者として在外公館に、ブラジルに行っておりますのは二名でございます。サンパウロの領事館におります。
 ついでにこの機会に申し上げますと、先般の当委員会で先生からそういう営農面についての御質問がございました。それに対しまして移住局長からも答弁があったわけでございますが、現地における営農ということは、入植上きわめて重要なことであろうと考えておりますので、われわれといたしましても、これに対する積極的な協力といいますか、全面的な協力をいたしたい、かように農林省としては考えておるわけであります。従いまして、今お話しになりました在外公館のほかに、現地における営農指導につきましては、移住会社あるいは海協連が当たっておるわけでございますが、これに要する人員につきましても、農林省としては現在八名技術者を出しております。今後におきましても、そういうふうな面につきましては、積極的な協力をいたして参りたい、かように考えております。
○西村(関)委員 外務省の在外公館に出ている方は、身分は保障されますけれども、会社及び海協の海外支部に出ておる方は、一応国家公務員という立場を離れて、国家公務員を退職して行かれるということになると思うのであります。これにはよほどの決意が要ると思うのでありますが、こういう点に対して農林省としては、あるいはここに源田参考人もおいでになっておられますが、移住会社としてはどういうふうな待遇をもって、これらの人々を迎えようとしておられるか、やはりそういう点も非常に大事な点ではなかろうかと思います。その点齋藤局長いかがでございますか。まず齋藤局長から一つ…。
○齋藤(誠)政府委員 一般的に海外に出る農林省関係の人につきまして、今御指摘になりましたような点がいろいろの点におきまして問題になるわけであります。たとえば移住関係だけでなしに、東南ア地方におきまする技術協力員として出ておる者もございます。これらの身分の問題につきましては、短期のものにつきましては出張という形で出るという方法をとりまして、身分の安定ということについて考えておるわけでございますが、たとえば移住会社に身分を移すというようなことになりますと、今度帰ってきた場合における身分の問題として、当然あとに不安のないような措置を講ずるということが特に必要だろうと思うのであります。現在の移住会社等の関係におきましては、恩給は通算されるという形になっておりますけれども、しかしやめた後における身分についてどうなるかという点につきましては、これは問題が残されておるわけであります。便宜出張の形というような方法もとったり、あるいは帰りました場合に、また再びもとの職場に帰るというようなことも便宜の方法としては考えられますけれども、私の方の送出する側から考えてみますと、ひとり移住の問題ばかりでなしに、全般的にそのような職員に対してどうするかということは、今後の問題として私たちも十分検討して参りたい、かように考えております。
○西村(関)委員 今の問題は、この前もお伺いをした点でありますが、現在の状態では何と申しましても農業移民が九〇%以上を占めておる。それだけに営農指導ということが大事だと思うのであります。今後ますます農林省関係の専門家を大事にする、専門家を優遇する。これは先ほども小坂外務大臣がお話しになりましたが、具体的にこういう技術者、専門家をどのように優遇するか、どのように身分を保障するかということが伴わないと、優秀な人が犠牲を払って出ることはなかなかできない。しかもそれは腰かけではできない、本腰を入れて打ち込んでやらなければならぬ仕事でございますから、そういう点が私は非常に大事ではなかろうかと思うのでございます。
 次に、源田参考人にお伺いいたしたいと思います。今の点でございますが、これはよくおわかりいただいておると思うのでございまして、現在会社の方と協会の支部の方に農林省から、八名と言われましたが、そういう方々が行っておられるのでございますが、先ほどお話のございました技術者の現地におけるところの養成という御計画のためにも、どうしてもこういう専門家が必要だと思うのでございます。また移住振興会社の幹部の中にもやはり農業専門家が一ぱいおいでになって、そういう点についての配慮をなさるということも私は大事ではなかろうかと思うのでございますが、そういう点につきまして会社側の立場としてどのようにお考えでございましょうか。
○源田参考人 ただいまのお話につきましては、実際事業を運営する上におきまして一番大切なことは、私は営農指導だと思います。要するに幾ら勇躍して南米に参りましても、その人たちの営農が確立しなかったならばどうにもならないわけであります。それからわれわれの方が幾ら融資をいたしましても――その融資が使われて生産がどんどん伸びて、それがまた返ってきて雪だるまのように大きくなって、ますますそれが効用を発揮していくというふうに持っていかなければならないが、営農が確立しなければみんな焦げつきになってしまうのであります。従って結局われわれが一番心配しておりますのは、営農が完全に成り立つようにするためには、いかなる犠牲を払ってもこれが指導態勢を完備していかなければならない。それから先ほどもバルゼアアレグレの問題で稻村さんからおしかりを受けたのでありますが、これなんかも結局南米の事情に通じ、そうしてほんとうにしっかりした技術者がおったならば、私はああいうあやまちは犯さなかっただろうというふうに考えるわけです。それで三十四年までは、営農指導ができるという人は会社にわずかに技術者一人しかいない、農業土木関係がわずかに二人なんです。それで、移住地の造成、ロッチャメントというふうなことをやり、さらにそこに入った人たちの営農について誤りのないような計画を立て、これを指導していくということはとうていできない。それで三十四年に外務省にお願いしまして、ことに農林省にお願いしまして八名の人、並びに現地において二、三名の相当優秀な技術者を入れていただいた。これによって、ようやく会社の移住地事業というものはどうやらこうやら動くようになって参りました。それまでは、移住が進行しないのは受け入れ態勢が悪いからだ、第一道路ができていない、また営農計画だってさっぱり何のことやらわからぬじゃないか、そういうふうな受け入れ態勢ではとても入れない。それからせっかくわれわれの方の会社が、たとえばフラムの移住地に入りました人たちに現地に参りまして話を聞きましても、入植した当時の状況というものは、日本で言われたことと現地とは非常に違っておった、こういうことを言われておるわけです。それなんかも、結局やはり技術者を充実いたしませんとどうしてもうまくいかない。ところが今度のアルト・パラナにつきましては、まだまだ会社の受け入れ態勢というものは決して満足すべき状況ではないと思いますけれども、しかしフラムの当時から見ますならば、画期的な改善を示しておると思うのであります。従って昨年入っていかれました八十五家族の人たちから参っておる手紙を見ましても、ほんとうにいいところにきた、また受け入れ態勢も、会社側も海協連の方もこれだけ親切にやってくれれば、まずわれわれとしてはあまり言うことはないというふうな手紙も参っております。もちろんそういうことばかりでもないと思いますけれども、そういうふうになって参りましたのも、結局会社の技術面が非常に伸びたということ、また会社の職員がそういう業務に熱練してきた、非常に熱意を持って動けるような態勢になってきたということだろうと思うのであります。しかしながら、日本における農地の造成なんかと比べてまだ非常に職員の数が少ないのです。しかしあり余る経費をもってやっていくわけに参りません。われわれとしても、何とかして造成にしても営農指導にしても十分基幹部員となって指導的な役割を演ずる人間を出していって、できるならば現地で技術者を次第に養成していく。これは言葉の問題もありますし経費の問題もあります。そういうふうな考えを持っておるのでありますけれども、ブラジルにおきましてもなかなか技術者を得ることはむずかしいのであります。それでわれわれといたしましては、事業を進めようと思いますと、今のところどうしてもやはり農林省またはそのほかに勤めておられる方々を割愛いただいて、その人たちが向こうに参りまして、まず語学ができなければならぬ、また現地のほんとうの実情に通じなければならぬ、それにはどうしても二、三年かかる。従って、会社の移住地事業のほんとうの核心となって技術面を担当する方々は、長くずっと会社にいて会社と運命をともにするという気持の人でなければなかなかいかないだろうと思います。しかしながら、そういう人は、先ほど西村先生もお話しになりましたように、会社の給与の面におきまして決して不安がないわけではございません。従って、会社の人事制度、給与制度につきまして今検討いたしております。これはぜひ主管官庁である外務省並びに予算の関係を担当されます大蔵省にお願いをいたしまして、そういう優秀な人たちが会社に進んできていただけるような制度をぜひ打ち立てていただきたい、こう思ってせっかく努力しているわけでございます。
○西村(関)委員 ただいまの問題につきまして小坂外務大臣に特にお願いをいたしておきたいと思いますが、主管大臣として、また池田内閣の閣僚のお一人として、現在の機構の中でできるだけ成果を上げていくように努力いたしたいという御意見でありましたから、ただいまの技術者の問題につきましては今後ともこの方面の整備拡充をいたしますために格段の御配慮をいただきたい。何と申しましても、スタッフを拡充強化するということ、しかも有能なスタッフを拡充強化するという点が非常に大事な点でございますから、その点をお願いいたしたいと存じます。
 次に、移民の問題は国際的な視野に立って行なわれなければならぬと思うのでございます。そういう見地から国際機関との協力を従来どのようになさっておいでになりましたかお伺いをいたしたいと思うのであります。たとえば、戦後ILOのマン・パワー・プログラムでありますかにおいて移民の問題が取り上げられましたことは御存じでございますし、ILOの移民会議も二回にわたって開かれたと記憶いたしております。また国連の――RO――国際避難民救済協会の関係の移民会議も開かれたと記憶いたしております。あるいはまた民間団体特に宗教団体のWCC――世界キリスト教協議会あるいはカトリック移住委員会、こういうような団体がそれぞれ移民の問題を国際的な立場から取り上げておるわけでございますが、こういう諸機関、諸団体に対してどういう連関を持っておいでになりますか。また今後ともそれらの機関並びに諸団体あるいはまたそのほかにもユネスコでありますとか国際開発銀行、世界保健機関、世界銀行といったものとも密接な連絡をとらなければならないと思うのでございますが、この点につきまして、大臣からでも局長からでもけっこうでございますが、お答えいただきたい。
○高木政府委員 ただいま西村先生がおっしゃいました国際的な機関でございますが、国連に関しましては、日本が参加いたしましてから後の活動として、移住関係につきましてもできるだけ努力しておるのですが、私の記憶が正確でございますれば、ILOはヨーロッパ移民につきましては取り上げましたが、アジア移民については取り上げられなかったと私聞いております。その他の活動については、中心的機関としては難民救済以外はあまり実質的なことをやっておりません。難民救済につきましては、日本もアメリカに難民としてかなりの移住者を出しまして、これがいずれも成功しております。それから今移住者の送出に一番積極的に働いておりますのは、欧州政府間移住委員会でございます。これはやはり名前が示します通り、欧州移民を対象といたしておるのでございますが、ほとんど世界的な機構でございます。日本といたしましても、これに何とかして関係をしたいということで、現在これにオブザーバーを派遣することについてせっかく努力いたしております。われわれの希望といたしましては、多分この四月の理事会から何とか入れるんじゃないかというような希望を持っておりますが、これは今のところまだわかりません。それから国際カトリック移住委員会、これは日本の移住に非常に関心を持ちまして、現在すでに東京にその支部を開いております。これはわが国移住の主たる対象である中南米諸国がカトリック国でございますので、現地のカトリック移住委員会とタイアップいたしまして、現在主として技術者の移住の世話に努力しております。そのほかWCCですか、現在日本の移住者が南米に行きます場合に、サンフランシスコでいろいろ救済物資をいただいております。こういうふうに、移住に関しましては、相当世界的な動きがございますので、われわれも移住は日本と相手の国の問題とだけ考えないで、世界の問題として堂々とこれらのものに連絡いたしまして、世界的規模で日本の移住が促進されるようこ努力している次第でございます。
○西村(関)委員 ただいまの問題につきまして、従来招待されなかった会議もございましょうし、また招待されても、たとえば一九五〇年ジュネーブにおいて開かれました会議などは、何らかの御都合で代表を出されなかったという向きもあったと思うのでございますが、やはり国際的な視野に立って移住政策を行なわなければならないということは申すまでもない点でありますから、オブザーバーであれ、正式代表であれ、できるだげ緊密な連絡をとっていただきたい。そのことはやはりまだ日本の帝国主義侵略といったような間違った考え方が、やはりヨーロッパ中心主義に傾く傾向を生んでおると思うのでありまして、日本の正しい立場をよく認識させる上からも、そういうことが必要ではないかと思うのでございまして、その点特に御留意をいただきたいと思うのでございます。
 もう一つは、やはりこれとも関連ございますが、出す場合においてこれが選考の問題について、先ほど田原委員も触れておられましたが、市町村にまかしておきましても、また地方海協にまかしておきましても、なかなか大ぜいのことでございますから、十分を期するということはできないと思いますが、やはり従来の一旗組と申しますか、一獲千金を夢みていくと申しますか、そういう人たち、つまり向こうへ行って同化しないような人たちを送らないということのためにも、日本におけるところの、国内におけるところの啓蒙開発、また教育指導という点に十二分の配慮を行なわなければならぬと思うのでございますが、そういう点については外務省としては何らかの具体的な計画をお持ちでございましょうか、いかがでございますか。
○高木政府委員 農業者の移住に関しましては、農林省でこれが訓練をやっております。それから、これから新しく力を入れて参ります技術者につきましては、特に訓練というものが重要になってくるであろう。日伯移住協定を見ましても、優秀な者を出すということになってきますので、われわれといたしましては、今後は選考とともに、送出の前の訓練というものに重点を置思っております。ただ現在は横浜及び神戸のあっせん所におきましてごくわずかの間にやっておりまして、期間も短うございますし、また予算も十分でございませんが、将来はこの期間をもっと長くして、この間にやる。あるいはここに集まります前にもっと長期の訓練をする。ヨーロッパあたりでございますと、語学の訓練なんかでは、いるところで半年なり一年の訓練を与えるというようなこともやっておりますので、こういう点、予算の面だけでなくて、もっと簡便でしかも実際的な訓練の方法というものを研究いたしたいと存じます。現在のところではまだ十分でないと言わざるを得ないと思います。
○西村(関)委員 農林省の方はどうですか、振興局長
○齋藤(誠)政府委員 ただいま移住局長から具体的なお話があったのでありますが、農林省におきましては、主として農業移民という観点から特に選出につきましては担当しておるわけでございます。今先生のお話しになりましたように、入ります農家につきまして、農業をやっていきたいというような農家を選ぶということ、これが一番大事だと思います。同時にその村におきましては、地域々々に応じまして、やはりその村における農村の、いわば計画といいますか、最近の言葉でございますと、農業構造の改善というようなことと結びつけて、農業移民というものが計画に合っておるものもあるわけでございます。そういたしますと、今後の指導といたしましては、やはりそういう村を選びまして、濃密な集団移民についての指導もやっていきたいというような考え方もとりまして、従来の送出に伴う訓練に比べまして、送出におきまする態勢といたしまして、特に濃密指導するような町村――ことしの予算では百カ村でございますが、そういう町村を選びまして、送出についても遺憾のないように努力する、こういう考え方をとっております。
○西村(関)委員 まだその点についても伺いたいことがございますが、時間の関係上先へ進みたいと思います。
 移住局長にお伺いをいたしますが、日伯移住協定の中にもうたわれております工業技術関係の移住民の送出計画でありますが、これにつきましては、何らかの具体的な計画をお持ちでございますか。
○高木政府委員 この協定が発効いたしますと、両国の混合委員会で、工業移民につきましての先方とわが方との実情を協議し合いまして計画を作ります。そして計画移民に乗せて移民をやるのでありますが、協定が発効いたします前におきましては、たとえは個々のケースで石川島造船あるいは豊和工業関係の技術者、これを計画移民として出す、あるいは最近サンパウロを中心として技術者をやはり計画移民のワクに乗せてやるべく現地と連絡しておりまして、すでにその一部につきましては、これは正確なデータはあとで申し上げますが、職安を通じまして正式に募集するというようなところまで今事務が進行いたしております。
○西村(関)委員 次に、この予算の中に現われております移住船運航費補助金というのがありますが、運輸省の外航課長来ておられますか。――これは一体どういう種類の予算でございますか。
○若狭政府委員 移住船の運航補助の予算について御説明申し上げます。
 移住船の運航補助につきましては、昭和三十四年度初めて外務省予算に計上されたのでございますが、総額六千四百万円でございまして、一人当たり八千四百円を移住者の輸送の実績に応じて支給するという制度でございますが、実際の配船と移住者の送出とがなかなか合致いたしませんので、どうも計画通り補助金の支給というのができないということでございまして、三十五年度は七千八百万円を運輸省予算として計上いたしまして、移住者の輸送に伴う赤字の補てんという意味で、計上したわけでございます。なお三十六年度におきましては、一億四百万円を計上いたしまして、現在御審議いただいておるわけでございます。
 この問題につきましては、御承知のようにブラジルまでの三等旅客運賃は十四万円でございまして、移住者の輸送の運賃は十万二千円ということになっております。従いまして、一人当たりの原価におきまして、すでに四万円近くの赤字が出るという状態でございますし、また現実の問題として、移住者の送出と配船の計画とが必ずしもマッチしないというような状況でございまして、われわれ、予算に計上されたような計画と移住者の総数とそれから輸送総数と配船の隻数というものとの調整がなかなか円滑に参りませんので、そういう点を今後調整いたしまして、できるだけ連絡を緊密にして実績を上げていきたい、また現在の予算の単価とそれから実際の原価との差額につきましては、担当の会社を督励いたしまして、できるだけ経費の合理化に努めていきたいと考えております。
○西村(関)委員 そうしますと、この予算は大体において移住輸送送出計画に満たない、たとえば一万名を送るというのが八千名しか送れないというときに、二千名の差が出てくる、その運賃を船会社に補てんをする、こういうことが建前になっているのですか。
○若狭政府委員 ただいま御説明いたしましたように、一人当たりの単価の不足と、もう一つ今申しましたような空席の補償というものと両面兼ね備えておるわけでございます。
○西村(関)委員 これがやっぱり足らないと思うのです。これがもう少し予算を増さぬというと、予定の計画を送出することはできないと思うのです。こういう点については、運輸当局もよほどよく考えてもらいたいと思うのです。戦前と比較することもどうかと思いますけれども、御承知の通り昭和十五年度は、南米航路の東岸線補助として、百三十四万九千三百八十九円、それから中南米主要港寄港補助として、一万五千円補助されておりました。これは、卸売物価の指数の三百五十五倍をかけますと、ちょっと正確な数字は今はじき出しておりませんけれども、五億円以上になると思うのです。それと比べて一億そこそこでは非常にこの大事な時期に足りないと思うのです。この五カ年計画を実行しなければならないときに、これでは足りないと思うのですが、そういう点についていろいろな関係がございましょうけれども、運輸当局においても二年度においては、移住政策に対してもっと協力的なかまえを示していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
○若狭政府委員 移住者輸送の問題につきましては、先ほど申しましたように、現在御審議いただいております予算は、一億四百万円でございますけれども、この予算につきましてまず第一に考えなければならないことは、送出の計画と配船とをできるだげ調整いたしまして、計画通りの旅客輸送を行なうということが第一の要点じゃないかと思うのでございます。この実績を上げることによりまして、担当会社の赤字というものが相当減ってくるというふうに考えております。
 それから第二の問題は、先ほど申しましたように、一人当たりの単価が現在の予算の面で非常に規制されておりますので、そういう面につきましては、できるだけ経営の努力によりまして経費を節約していくということを努めなければならないというふうに考えておりますけれども、なお今後の問題につきましては、できるだけこの一担当会社の負担において移民国策が遂行されることのないように、われわれもできるだけ努力したいというふうに考えております。
○西村(関)委員 いろいろまだ伺いたい点がございますが、だいぶ時間がたちましたので、もう一点だけお伺いをして次の機会に譲りたいと思います。
 それは日伯移住協定の問題とは少し離れますけれども、短期農業派米労務者の問題についてでございます。この点につきましては、政府当局また派米協会等において非常に努力をしておられる、これは私も認めるのであります。また今後予定の三カ年の期間が、半年早く本年帰ってくるというようなことが報ぜられておりますが、これもアメリカ国内の労働事情その他によってでありまして、決してこれがこの事業の失敗の結果であるとは私は思わないのですが、私はこの短期農業派米労務者の制度がいろいろな意味において大事な意義を持っている仕事だと思うのであります。一つは、とにもかくにも三カ年間日本の農村の中堅青年がアメリカに参りまして、アメリカの農業労務者として向こうで働く、そして百万円近い金を自分の汗とあぶらで働いてこれを持って帰るということは、ただ物質的な意味だけではなくして、農村の中堅的な青年の将来を思うときに、この制度は生かさなければならぬと私は思うのであります。しかしいろいろこれについては御苦労があるところとは存じますが、問題点があると思うのでございます。一つは、私が指摘するまでもなく、そういうことは検討しておられることだと思いますが、向こうの農業労働事情、特に全般の労働事情に関連しての農業労働事情というものが一つの問題になってくると思うのであります。向こうの労働組合から反対が出ておるということも聞いております。最初は北の方だけであったが、南のロスアンゼルス方面にもそういう反対が出ておるということも聞いております。それはやはりアメリカの労働者の低賃金の原因を作ることになるから、そういうものを送り出してもらっては困るという反対が出ておるようであります。もう一つは、カトリック教会からの反対でありまして、これは妻帯者が三年間も妻子を置いて海外で労働に従事するということは人道上の問題である、こういうことのようでありますが、これは外務で聞いてみますと、どうやらメキシコからの労働者の反対がそういう形になって現われておる。メキシカンの短期労務者の領域を日本の短期労務者が侵すという心配から、そういう形の反対が出ておる、こういうことも聞くのでございますが、それらの点につきましては、私は端的に向こうの労働組合の諸君と話し合う、これは季節的なものであって、むしろカリフォルニアの農業経営者の必要に応じて、向こうにニードがあって、これにこたえてこういう制度が生まれた。これは最初は米墨協定から始まって、英領西インド諸島からも来るというようなことで始まったのでございますが、これは私は話し合いによって解決ができると思うのであります。こういう事柄のためにこれが挫折するということは非常に惜しいと思うのであります。そういうような点につきまして、いろいろ出先の在外公館の総領事、領事、担当の人たちが、派米協会の出先の人々と協力していろいろ苦労しておられると私は思うのでありますが、こういう点につきましてもぜひ一つ小坂外務大臣が今度行かれるときには、出先の機関を督励していただいて、これが問題の解決のために一つ一はだ脱いでもらいたいと思うのであります。
 もう一つはやはり税金の問題があると思います。これはなかなかむずかしい問題ではございますけれども、家族控除の問題、これも一つメキシカン並みに、日本の短期派米労務者のためにも、ぜひ家族控除を認めていただくように、向こうの移民局に出先の公館の責任者を通じてぜひ一つ努力をしていただくようにお願いをしたいと思うのであります。
 それからもう一つは、やはり協会に属して現地の指導をしている人たちの努力、これは私は涙ぐましいものがあると思うのであります。こういう非常に手薄な陣容でもって、広い地域にわたって各キャンプを回って、寝食を忘れて働いている、これは私は南米においても同じだと思いますが、こういう人たちがえて忘れられがちになっている面があると思うのでありまして、こういう人たちの労苦に対して、ただ東京において事務をとっているというようなことだけではなくて、実際そういうところでほんとうに苦労している人たちのあることを私は知っておりますが、こういう人たちのために、たとえば宿舎の問題でありますとか待遇の問題でありますとか給与の問題でありますとか、あるいは特に私がお願いしたいのは、妻子を日本に置いて、三年間、四年間という長い期間現地で働いているということは、私は指導する上からいってもどうしても無理ができると思うのでありまして、こういう点についても、実際に若い農村から来た労務者の諸君に接する人たちでありますから、こういう人たちの処遇については格段の配慮をしていただかなければならないと思うのであります。このことは前のレパブリカンの政党が政権をとったときにできたのでございまして、今度のデモクラットのケネディ氏が大統領になりましてから、あるいはこのケースが少し変わってくるのではないかという心配もあると思いますが、これはむしろぜひ積極的にこの制度を生かしていくように進めていただきたい。いろいろな問題がありましたけれども、しかしこれだけの仕事をする上において若干の脱落者が出たりトラブルがあったりするということは、これはもうないのが不思議であって、あるのがあたりまえだと思う。私はつぶさに現地を見て参りましたが、こういうことに対しても予算の面ももちろんでございますが、いろいろな行政面の配慮につきましても、これもまた送出は農林省、現地の世話は外務省が派米協会と連絡をとってやるということになっているようでございますが、こういう点につきましても、ぜひ一つこれを前向きにしていただくように願いたいと思う。
 それから現地の青年諸君が、自分たちが日本に帰ってから一体どうなるのだろうということを一番心配しております。これが三年間働いて日本に帰りましてから後の受け入れ態勢、特にこれはブラジル移民を希望している者が圧倒的に多いのでございまして、できればもう帰らないでアメリカからすぐにブラジルに行くことはできないでしょうかということを至るところで聞きました。しかしそれはできない、一ぺん帰らなければいかぬ、そういうような場合に、海外の生活にも触れ、またかなりの労働にも耐えて、一応海外に夢を託しているところのこれらの青年たちを、さらにブラジルに送り出すというようなことのために御配慮を願いたい。この短期派米農業労務者の働きにつきまして大臣にお願いを申し上げる次第でございますが、その点大臣におかれましても御配慮をいただけるでございましょうか。
○小坂国務大臣 短期派米労務者は非常に従来順調に参りまして、わが国の青年にとりましても、また将来のわれわれの移民、移住者の新しい方向を示すものといたしましても、またアメリカの側における労働力充足という面から見ましても、非常に新しいおもしろい試みであったのでございますが、最近先方の労働事情その他によりまして、はなはだおもしろからぬ状況が現われておりますことは、われわれも憂慮をいたしております。その問題につきまして、在外公館を通じましてワシントンの中央政府はもとより、ロスその他の州政府に対しましてもいろいろと話をしておるのでありますが、なかなか御心配をかけておりまして遺憾に存じております。この問題についてはわれわれの意図するところを一生懸命に説いて参りたいと考えております。ただ最近政府は非常に日本のいろいろな要求に対して熱心に同調してくれておるのでありますが、他にこれとはちょっと違いますけれども、たとえば既製服の問題というものに労働組合の一つの指導者が、自分の何か偏見を持って指導をいたして、その一つの方法として日本品の排斥をやる、こういうふうな点がぼつぼつ現われておりますことは、非常に憂慮しておるのであります。こういう運動が成功――成功といいますか、そういう運動がある程度の展開を見まする素地がやはり一部にあるのではないか。この素地を私どもとしてはなくするように努力しなければならぬと思っておるのであります。九月のギャラッブのポールで、日本人に対する一般の考え方というものがかなり悪く出ていることは西村さん御承知の通りでございましょう。五六%が、日本人は信用できぬ、というふうなことを言っておるのであります。われわれは最近の日米関係は非常に大事なものと考えてやっておるのでございますが、最近この関係はどうでもよいというふうな一部の者もございまして、私どもはやはり日米関係というものは現在よくいっているのだから、これはやはりできるだけ日米両国の国民の相互理解を深めるということが必要だと思っております。そういう意味から、やはりなるべくこういう問題でいざこざが起りませんように、先方の国民にできるだけ日本及び日本人を理解せしめるように、常に努力をしていかなければならぬというふうに思っておる次第でございます。短期派米労務者の問題につきましてはせっかく努力したいと思います。
○西村(関)委員 けっこうです。大体これできょうの質問は終わりますが、なお移住政策につきましては、冒頭に申し上げましたように、非常に重要な問題でございますから、政府当局、関係各省におかれましては、さらに格段の御留意をもって進展をはかっていただきたい。なお若干質問を残しておりますから、機会を見まして、別な機会に、農林委員会あるいは外務委員会等に時間をいただきまして質疑をすることをお許しいただきたい。本日はこれで終わらしていただきます。
○堀内委員長 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時十二分散会