第038回国会 本会議 第4号
昭和三十六年一月三十一日(火曜日)
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 議事日程 第三号
  昭和三十六年一月三十一日
   午後一時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
                (前会の続)
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○本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑
                (前会の続)
 議員請暇の件
   午後二時十六分開議
○議長(清瀬一郎君) これより会議を開きます。
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 国務大臣の演説に対する質疑
           (前会の続)
○議長(清瀬一郎君) 国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。松野頼三君。
  〔松野頼三君登壇〕
○松野頼三君 私は、自由民主党を代表して、総理大臣の施政方針演説及び三大臣の演説に対し質問をいたします。
 その第一は、外交政策であります。
 私は、先般の総選挙において、わが国外交の進路につき国民が賢明な審判を下されたことを、きわめて重要視するものであります。(拍手)この賢明な国民の審判の前には、与党も野党も謙虚に従い、いやしくも外交問題を軽々に取り扱うことのないよう留意することが、民主政治における政府及び政党の責任であると信ずるのであります。(拍手)外交は国の運命を左右するものであり、その効果的な推進は、国民一致の支持を背景としなければ困難であります。そのためには、常に努力と忍耐をもって意見の調整に努め、いやしくも国内の意見の分裂を外国に露呈するがごときは厳に慎しむべきことであります。(拍手)アメリカの若々しいケネディ新大統領の就任によって、東西間の冷戦緩和に何らかの前進が見られるものと期待も多く、私どもも、そうなることを心より切望するものであります。しかし、その反面において、近くにはラオス問題があり、さらに、コンゴ、キューバ、アルジェリア等における紛争は、国際情勢のいよいよ複雑微妙なことを思わしめるのであります。このような世界の諸情勢下において、わが国のとるべき外交の基本方針は、国連を中心として自由諸国との協力を密にし、さらに広く世界の各国との親善を深め、現実的かつ弾力的に平和外交を進めることと信じます。特に、安保条約の適正な運営により日米関係の強化をはかることは、わが国の安全保障の上からも、世界平和の維持のためにも、動かすことのできない外交の基調と信ずるのであります。(拍手)世上の一部には、ケネディ新大統領の就任とソ連の平和攻勢のきざしによって、東西間の対立が急激に解消するかのごとき意見も少なくないと思います。わが国の外交基調につき、政府の所信を伺いたいのであります。
 次は、中共問題であります。
 今日まで政府がとって参りました相互の立場尊重と内政不干渉の原則のもとに、漸次、民間貿易、文化等の交流を広げ、最終的には、国連内における情勢の推移に応じて適切に対処すべきものと思うのであります。最近、中絶状態にあった日中貿易が再開の機運にあることは十分留意すべきでありまして、基本的態度を堅持しながら、政府はこの機運を活用する態度が望ましいと思うのであります。(拍手)
 日韓関係につきましても、韓国の新政府がその調整に積極的な態度を表明されたことは喜ぶべきことであり、政府は、この機会に、長い間の懸案である日韓国交の正常化に一段の努力を払うべきであります。(拍手)
 さらに、沖繩問題につきましては、住民の要望にこたえ、予算措置を講じ、その民生向上にできるだけの援助を与えることは大きな前進であります。なお、住民の最終的要望である施政権の返還につきましても、たゆまざる努力を続けなければならないと思うのであります。
 この際、特にお聞きしたいことは、アメリカのドル防衛政策がわが国の経済及び防衛に及ばす影響であります。わが国としては、ドル価値の維持に大いに協力すべきであると思うのでありますが、私は、これがわが国の経済と防衛計画にどのような影響を及ぼすかということに関心を持たざるを得ないのであります。
 以上の諸問題につき、政府の答弁をわずらわしたいのであります。
 第二の私の質問は、経済問題、特に物価と貿易の問題についてであります。
 現下のわが国の経済が空前の繁栄を続けておることは、まことに喜ばしいことであり、三十六年度も実質九%以上の成長が期待できることは私も確信しておるものであります。また、今回提出されました三十六年度予算案が従来に比べて画期的に充実されたものであり、わが党の重要公約はことごとく実現され、減税、社会保障、教育と科学技術、雇用対策一公共投資、農林漁業と中小企業にわたり、おおむね均衡のある財源の配分がなされており、特に各種の所得格差の是正については、あとう限りの配慮が払われておることは、喜びとするところであります。(拍手)しかしながら、現在国民一般がいささか心配しておるのは物価の動きであります。所得が倍増する前に物価の方が先行するのではないかといった感じが、たとえ一部の宣伝の結果とはいえ、ばく然と国民感情の中にあることは、すなおに認めなければならないと思います。わが国の物価が、これまで世界的に見て最も安定しておること、それがわが国の輸出の増進と民生の安定向上の最大の要因となっておることは、もちろん間違いのない事実であります。一方、昨年来の消費者物価の値上がりの傾向は、庶民の感覚にはインフレになるのではないかとの疑いを与えておることも否定できません。政府の示す統計によりますと、三十五年度の消費者物価は、前年度に比べて三・二%の上昇と推定されております。この上、さらに国鉄運賃、郵便料金、ガソリン税、医療費等の値上げが行なわれ、さらに、これが私鉄運賃、バス料金、電気料金等の引き上げを誘発することになりますと、一般の大衆が、消費者物価がさらに相当値上がりをするのではないかと不安を抱くのも無理もないことと思うのであります。消費者物価は、原則として、物資のコスト、効用、需給関係等によってきまることはもちろんでありますが、心理的な要因を軽視することはできません。特に、料金の引き上げは、一波が万波を呼ぶ傾向が強いのであります。公共料金引き上げは、長期的に見れば、基礎固めの作用を持つと信ずるのでありますが、このような不安のある際、政府はしっかりした総合的な物価対策を立て、特に消費者物価の合理的な安定をはかることがきわめて緊要であると確信するのであります。
 そこで、私が特に申し上げたいことは、物価対策の根本は、生産を増強し、生産性を高め、需給を安定させることであり、権力をもって人為的に物価を統制するがごとき思想は、絶対に物価の安定をもたらすものでないということであります。(拍手)それは、いたずらにやみ物価を横行させ、正直者がばかを見ることになることは、われわれの過去の体験が教えるところであります。(拍手)私は、物価問題の根本につき、まず総理大臣の所信を承りたいのであります。
 なお、このような観点からお聞きしたいことの第一点は、今後予想される各種の料金引き上げの要請に対し、政府はどのような方針と基準によって処理する考えであるか。政府の干渉できる公益事業、環境衛生関係事業の料金についても、一定の明確な方針によって、国民の納得のいくような処理をされることが大事だと信ずるのであります。この点について、政府の見解をお聞きしたいのであります。
 物価に関する第二点は、生鮮食料に関する価格安定と流通改善であります。消費者物価の中に占める生鮮食料の比重は相対的に高く、昨年における消費者価格急騰の最大の要因が肉類、魚介、野菜等の生鮮食料品の異常な値上がりにあったことは、周知の通りであります。この生鮮食料の価格を適正に安定させることが、生産者にとっても消費者にとっても望ましいことであります。この点につきましては、三十六年度予算にある程度の配慮が払われておりますが、要は、その具体的な実行手段であります。政府はどのような対策を用意されておるか、政府の答弁を願いたいのであります。
 第三点は、金利についてであります。わが国の物価、料金の中に占める金利負担の比重が諸外国に比べて非常に高いことは、周知の通りであります。国鉄運賃、電気料金等、公益事業の料金引き上げの理由の一つは、常に金利負担の増加ということになっているのであります。これらの事業においては、本来借入金でまかない得る建設改良費が、金利が高いために、勢い料金の引き上げに依存せざるを得なくなるのであります。最近、金利水準が低下の傾向にありますことは、まことに喜ばしいことでありますが、私は、さらに一そう金利の低下を促進すべきものと思うのであります。所管大臣の所信を伺いたいのであります。
 公共料金引き上げに関し、私がいま一言申し上げたいことは、企業の経営改善、合理化に一段の工夫を払うべきであります。言うまでもなく、公共料金の物価や国民生活に及ぼす影響は、物心両面にわたって、はなはだ大きいものがあります。公共事業の経営者も、職員も、まず、みずから生産性の向上と経営の合理化に最善を尽くした上の料金問題でなければ、国民は納得し得ないと思うのであります。(拍手)この点については、政府もできる限り努力を払うべきであると信じます。
 経済に関してお伺いしたい第二の問題は、貿易についてであります。
 経済成長政策の成否を決する一つのかぎが輸出にあることは、今さら言うまでもありません。国際収支にあまり過度に神経質になる必要はないと思いますが、私は、わが国のように、資源が乏しく、多くの原料、食糧等を輸入に依存している国においては、常に国際収支の安定ということを考慮に置くことが絶対に必要であると思います。政府の見通しによりますと、三十六年度の輸出は、前年度に対し約一割増しの四十五億円四千万ドルを見込んでおるのであります。この目標は、本年の輸出の伸長率一五%より低目でありますが、米国のドル防衛政策、世界的輸出競争の激化等の見通しから考えますと、決して容易な目標でなく、適切な対策と相当の努力とが伴わなければ達成困難かと思われます。政府は、この目標達成のため、一連の対策を立てるべきであると思います。
 貿易に関して、いま一点お尋ねしたいことは、自由化についてであります。貿易、為替自由化の方向は、世界経済の繁栄とわが国貿易の恒久的な発展をはかる上から当然の方向であり、これを適切に推進することが現下の貿易政策の最大の課題と信ずるのであります。しかし、その具体的な実行にあたっては、わが国経済の特殊性を十分に考慮し、競争力の弱い産業または新興産業に急激な打撃を与えないよう、細心の留意を要することは、言うまでもありません。特に、わが国の農畜産業は、まだ国際的競争力が非常に弱く、今後これが育成強化には相当の年月を要すると思われますので、自由化には最も慎重な配慮を要すると思うのであります。政府は、これらの点につき、どのような配慮を払われておるか、お伺いしたいのであります。
 第三に私の質問したいことは、財政、特に国民負担と今後の財政の見通しであります。
 昭和三十六年度一般会計予算の規模は一兆九千五百二十七億円という空前の巨額に達し、六年前の昭和三十年度の決算一兆百八十億円に比べて、約倍に近い数字となったのであります。このような財政の拡充は、わが国力の発展をそのまま象徴するものであります。この豪華な予算の中において、ただ一つ気になりますことは、国民所得に対する税負担の比率が約二〇、七%に達し、若干高目に見えるのであります。今回政府が提案を予定しております減税案は、所得税、法人税を中心として、平年度千百三十八億円に上る大幅なものであります。また、その内容は、妻控除の新設、専従者控除の拡充、税率の引き下げ等、主として中小所得者の負担軽減、耐用年数の短縮等、企業の体質改善をねらったものであり、これが国民生活の向上と産業の振興に大きく役立つことを信じて疑いません。私は、もし三十六年度の正確な自然増収がいま少し早く予想できたならば、減税の規模もさらに拡大することが適当ではなかったかと思うのであります。(拍手)今回はやむを得ないとしても、今後、できるだけすみやかな機会に、さらに相当な減税を行なうことが適当と信ずるのであります。特に、今後は国民大衆が広く恩恵を受けるような間接税の減税も重視すべきであると思うのであります。(拍手)
 財政について伺いたい第二点は、今後の財政の見通しであります。一部の論者は、三十六年度予算があまり急激に飛躍的に膨張したため、これが景気を刺激するとか、三十七年度以降の財政の弾力性をなくして、将来の財政を不健全にするおそれがあると批判を加えております。このような議論は、財政規模が大きく拡大した場合、常に行なわれた議論であり、事新しいものではありません。しかし、三十六年度予算は、従来に例を見ないような画期的な膨張であるだけに、金融政策とも合わせ、適切に運用することが肝要だと思います。この点につき、政府の見解をお開きしたいのであります。
 第四の私の質問は、農林漁業政策についてであります。
 わが国の農林漁業政策が大きな転換期に直面しており、新しい基本政策の確立が緊急の課題であることは、今さら申すまでもありません。今回提出されました三十六年度予算が、この点につき、従来に見られない格段の配慮を払っており、わが国農政の躍進をはかっておることは、十分に私はこれを認めます。わが国における農林漁業の問題は、単に経済上の問題ではなく、わが国社会構造の根本問題でもあると思うのであります。わが国のよき伝統を保持し、最も穏健着実な思想と行動を守り、わが国社会構造の支柱となっておるのは、農家であり、漁家であると信じます。このような堅実な農家や漁家を長きにわたって安定するよう保護育成の道を講ずることが、農林漁業政策の考え方の根本でなければなりません。(拍手)従って、企業として農林漁業を育成確立しつつ、わが国社会構造のバック・ボーンともいうべき農村社会を一そう堅実なものに育成すること、これでなければならないと思うのであります。しかるに、わが国の現在の農家所得は、他の産業に比べて非常に僅少であります。この最大の原因は、農畜産物の販売価格内に占める生産者の手取り分が少ないことにあると思うのであります。従って、市場、流通の改善が何より緊要な課題であると信ずるのであります。生産手段の改良と生産性の向上はもとより大事ではありますが、二、三男の他産業への就業、成長農畜産物の画期的増産等、今後は所得の向上を第一義とする農政に勇敢に前進すべきであると信じます。(拍手)この意味において、この際、農業基本法を制定せんとする政府の方針は、きわめて時宜を得たものであります。しかし、その内容が最も問題であります。すなわち、その内容と水準が諸外国のそれより進んでおること、同時に、わが国の農業の特質に十分即したものでなければならないと思います。政府はどのような内容の農業基本法の制定を準備しておられるか、お示しを願いたいのであります。
 第五の私の質問は、社会保障及び雇用問題であります。
 三十六年度予算の大きな特質の一つは、社会保障関係費の飛躍的な増加であります。私は、これをきわめて高く評価するものであり、画期的な前進であると信ずるのであります。そもそも、社会保障の拡充は、経済の繁栄の基礎に立ってこそ可能であり、今日の空前の繁栄がこのような社会保障予算の躍進を可能ならしめたものであり、国民とともに、これを喜びとするのであります。(拍手)しかし、社会保障は経済成長政策の眼目の一つであり、今後まだまだ充実を要する必要のあることは言うまでもありません。特に、社会保障の特質として、きめのこまかい、均衡のとれた、人情味のある政策を講ずることが大事であります。その意味において、私は、政府の社会保障政策につき、一、二の質問をいたしたいと思います。
 その一点は、国民健康保険の改善であります。三十六年度予算案におきましては、結核、精神病に対する給付の改善等、相当の前進が見られますが、一方において、一般医療費の引き上げが必至と見られ、国民健康保険の財政に相当な重圧を加えることは避け得ない情勢であります。国民皆保険の実をあげるためには、今後国民健康保険の内容を一そう充実改善することが必要であります。
 第二は、生活保護についてであります。今回の予算において一八%の保護基準の引き上げが認められたことは喜ぶべきことでありますが、経済の成長発展に応じて、今後なお一そうこれを改善することが必要と思うのであります。さらに、福祉年金と他の公的年金との併給等についても、あたたかい配慮が望ましいと存じます。
 次に、雇用問題であります。最近における雇用情勢は、経済の繁栄によって急速に改善を見つつあり、完全失業者は著しく減少し、すでに年少労務者は不足の状況にあります。しかし、一面においては離職者の出る産業もあり、特に、中年労働者の再雇用が非常な難問題となっております。これは、すなわち、労働力の流動性の乏しい結果でありまして、今後は、職業訓練、技能労働者の育成、広域職業紹介を飛躍的に拡充し、もって労働力の円滑な需給をはかる必要があります。その意味において、雇用促進事業団の創設をはかっておることは適当な措置と思うのであります。問題は、その運用にあります。中年離職者の再雇用の問題は決して容易なことではなく、事業団の運営にあたっては十分な用意と配慮が必要と思うのであります。
 なお、この機会に、あわせて、ILOの批准問題につきお伺いをいたします。
 ILO八十七号の批准につきましては、三十四年の二月、労働問題懇談会の答申に基づき、前内閣で国会に提出をしたものであります。労働問題懇談会の答申は、一つは、批准に際しては、公労法四条三項、地公労法五条三項を削除すること、この削除と関連して、国内関係諸法規の必要な整備をはかるとともに、関係労使が国内法を守るよき労働慣行の確立が必要なこと、二つには、現行労使関係法全般についての再検討が望ましいことを述べており、なお、さらにつけ加えて、関係労使が今後とも国内法を順守し、業務の正常な運営を確保することを前提としておるのであります。(拍手)私は、ILO八十七号の批准については、この条件の完全な実現が絶対に必要と信ずるのであります。(拍手)特に、争議権のない公共企業体の職員が違法のストを計画するがごときは、組合みずからILO精神に逆行するものであるといわざるを得ません。(拍手)
 以上の諸点につき、政府の明快な所信を承りたいのであります。
 第六の質問は、公共事業及び後進地域の開発促進についてであります。
 経済成長政策の前提条件は公共投資であり、また、そのねらいの一つは、都市と農村における所得格差の是正ということであります。それがまた農業と他産業との所得格差の是正に資することにもなるのであります。昭和三十六年度予算が、二兆一千億円の道路五カ年計画、二千五百億円の港湾五カ年計画等、公共事業の画期的な前進を見ていることは、経済成長政策の着実な推進を意味するものであります。問題は、それをいかに効果的に実行するかということであり、特に肝要なことは、後進地域の開発と地域格差の是正ということに最重点を置いて実行することと思うのであります。(拍手)それとともに、各行政機関がばらばらになって事業の効率を妨げることのないよう十分な配慮を払うことが大事と思うのであります。また、後進地域の開発に対して、全国的に補助率の引き上げを行なうことも必要と信ずるのであります。政府は公共事業の運営と後進地域開発振興につきいかなる具体策を用意しておるか、御答弁をわずらわしたいのであります。
 最後に、以上の各種各般の問題は、要するに、最終的には政治の姿勢と規律を正すことに帰するものであります。特に、正しい議会政治を確立し、政治に対する国民の信頼を確保することがすべての前提条件であると確信いたします。(拍手)そのためには、政府はもとより、与党、野党とを問わず、話し合いによる公明な議会政治の確立に努め、民主政治の擁護に徹すべきであると思うのであります。(拍手)世上批判のある選挙制度の問題についても、真剣にその改善を検討すべきであると考えるのであります。
 以上の諸点につき、総理大臣及び関係大臣の答弁を求め、私の質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) 松野君の御質問にお答えする前に、一言申し上げたいことがあります。
 昨日の本会議における加藤勘十君の御質問に対する私の答弁中、――の二字は、誤解を生ずるおそれがありますので、これを取り消します。(拍手、発言する者多し)
 松野君の御質問の第一点の外交政策でございまするが、これは昨日の施政方針演説で申し上げました通り、私は、国連を中心として自由国家群と協力し、また、アジアの一員たる立場を堅持し、そうして国際平和に協力いたしたいと考えております。共産諸国との関係につきましても、あとう限り友好関係を増進していきたいと考えておるのであります。
 なお沖繩に対しましては、昭和三十三年来、アメリカといろいろ協議いたしまして、沖繩の民生安定、経済復興に協力いたしております。昭和三十六年度の予算におきましても、模範農場あるいは漁場等を開発すると同時に、電信電話、ことにマイクロウェーブの回線、あるいは医師派遣等、民生安定に努力いたしておるのであります。
 第二の、ドル防衛とわが国への影響でございまするが、これは、さきの国会でお答えいたしました通り、だんだん全貌が明らかになってきつつありまするが、私は、これによってわが国の財政、金融政策を変える必要はないと思いますし、また、今の状態では、われわれはこのドル防衛の影響を克服し得ると考えておるのでございます。
 第三の、経済成長と物価の問題でございます。御承知の通り、経済の成長は、過去十年間、非常な発展をいたしたのでございます。昨日企画庁長官が申し上げましたごとく、最近の三十年を基準といたしますると、国民総生産は四年間に五割近く増加いたしておりまするが、物価は、おおむね卸売物価は安定し、消費者物価は、昨年で四%程度の引き上げで、外国のそれと比べますると非常に低いのであります。今年になりまして消費者物価が三%余り上がりましたが、八月、九月、十月を頂点といたしまして、だんだん消費者物価も落ちついて参りました。十二月は前月に対してある程度の下落を見ておることは、統計の示す通りでございます。今後におきましても、卸売物価の安定――小売物価も上がらない、消費者物価は極力これを押えていって、消費生活にあまり影響のないようにいたしたいと思います。お話の通り、物価の問題は心理的影響も相当ありますので、こういうことの起こらないように、具体的に、統計的に、私は随時これを示しまして、値上げムードの起こらないように努力いたしていきたいと考えております。
 なお、料金につきまして、合理的根拠のあるものは、これは経済成長の過程で必要でございまするから認めまするが、もちろん、経営の合理化をはかることは当然でございます。そして、根拠のない料金の引き上げは断固押えるつもりでおるのであります。
 なお、貿易振興につきまして、いろいろ御意見がございました。わが国の産業基盤は、昔に比べて非常に強くなりました。外国との競争力もついてきておるのであります。先般金利の引き下げが行なわれましたのも、これは外国との競争力を強くするものでございまして、私は、おととし二割、昨年一割と、今年一割程度の増加は日本の経済力からいって適当な見方と思っております。もちろん、振興政策といたしましては、輸出入銀行の投資、あるいは市場調査、あるいは税制等におきまして十分の措置を考えるつもりでございます。
 また、貿易、為替の自由化につきましては、お話の通りでございまして、競争力のあるものから随時はずして参ります。しこうして、農産物に対しましては、わが国の農業の実態から申しまして、競争力が非常に弱うございます。これは、ずっと先で、競争力がついてからにいたしたいと考えております。この農産物に対しまする自由化は、世界各国が要保護政策をとりまして、野放図に自由化していないのが各国の例であるのでございます。
 なお、雇用関係につきましての、またILOにつきましての御意見、また、政治のあり方につきましては、松野君と全く同感でございます。
 なお、公共投資の必要性は、お話の通り、経済成長の基幹をなすものでございまするから、この公共投資につきましての措置は、これが最も効果的に行なわれるようにいたさなければならぬことは当然でございます。
 後進地域の開発につきましては、私は、国の補助率を引き上げるとか、あるいは直轄事業の起債を認めるとか、あるいは金融、税制、あらゆる方面から後進地域の開発に努力していきたいと考えております。
 他の問題は関係閣僚からお答えいたします。(拍手)
  〔国務大臣水田三喜男君登壇〕
○国務大臣(水田三喜男君) 御質問にお答えします。
 まず、本年度の予算規模を画期的に大きくさせたことによりて、後年度の予算の弾力性を奪うことになりはせぬかという御質問でございましたが、本年度の予算規模は一兆九千五百億円でございまして、これを三十五年度の当初予算の一兆五千六百億に比べますと、確かに二割四分もふえたことになっておりますが、今年度の予算補正後の歳出歳入の規模を見ますと一兆七千六百億になりますので、これと比較しますと一〇%前後規模が大きくなった、実質の増加は千八百億くらいの規模ということになりまして、これを国民所得に比べた比率を見ますと一五・三%ということで、例年とほとんど変わっておりません。また、国民総支出の中に占める政府の財貨サービス購入の比率を見ますと、やはり一九・三%、昨年、一昨年とほとんど比率が変わっておりません。従って、私は、この一兆九千億の予算規模は、膨大な規模とか、特に画期的な規模とは今考えておりません。経済成長に見合った規模であって、経済成長に伴って増加を予想される普通歳入を歳入に立てて、その範囲内で歳出を立てた予算でございますので、その意味におきましては、この予算規模が後年度の予算の弾力性を奪うというようなことは全然考えられないと思っております。
 その次は、減税が少し少なかったのではないかということでございますが、私どもは、減税は、前々から申しております通り、一千億円以上の減税をすると公約しておりましたが、今度の政府案は、平年度千百三十八億円の減税となっております。税制調査会の答申通りに、今回は、所得税と法人税を中心として、しかも、所得税は中小所得者の減税を中心とする、法人税は中小企業を中心とするという減税で一千百三十八億円の平年度減税でございますが、税制調査会の私どもに出しました意見は千二百二十億前後の減税を適当とするということで、税制調査会より九十億円政府案の方が少なくなっております。これは、御承知の通り、課税所得百八十万円以内を減税しろというのが税制調査会の御意見でございましたが、今、納税者の九五%は課税所得七十万円以下でございます。つまり、百万円以下の所得者が納税者の九五%でございますので、その範囲の所得者の減税に力を入れるということにした関係で、百八十万円以下の減税というものをやめたという関係で、若干税制調査会の意見よりは下がっておりますが、初年度において計算しますと九百二十五億円の減税でございます。国税と地方税を合わせますと千四百三十億円の平年度減税で、初年度においても約一千億の減税となっておりますが、問題は、租税の公平を期するために特別措置を合理化することにしました。との部分は増税でございまして、特に大企業に増税をしたということになりまして、この金額がガソリン税の増税と一緒に三百億円以上になっておりますために、差引して純減税が六百二十億と、きわめて少ないような印象を与えておりますが、しかし、政府が当初考えておった一千億円以上の実質減税はりっぱに行なっておるということでございますので、この点は御了承願います。(拍手)もちろん、私どもは、今回の減税でこれを終わったとは考えておりませんで、逐次、税制調査会の研究を待って、毎年減税を行なっていくつもりでございますので、先ほど御指摘のありましたような間接税その他については、昭和三十七年度の減税日程として、ただいま検討中でございます。
 その次は金利の問題でございますが、これはもう御承知の通り、自由化に対処しまして、日本の企業が国際競争力を強めていくためには、国際金利水準に日本の割高な金利をさや寄せしていく必要がございます。政府としましては、その方向に今まで努力して参りましたが、ようやくこの機運が醸成されてきまして、御承知のように、今月におきまして日銀の公定歩合の引き下げになり、一般銀行の利下げになり、同時に、政府の金融機関も利下げをするということになって、私どもの望んでおりました金利水準の引き下げというものが、まず徐々に実現していくという方向は非常に喜ばしいことと思っております。今後さらにこの方向を進めるために、私どもは努力するつもりでおります。(拍手)
  〔国務大臣周東英雄君登壇〕
○国務大臣(周東英雄君) 農業者の所得、従って、また、その根本をなす農業所得が、他産業に比較して均衡を得ておらない、この際大きく農政が転換を要求されておるということは、御指摘の通りでありまして、これに対処いたしまして、近く農業基本法を提出して皆様の御協賛を得ることになっておりまするが、その内容についてというお話でございます。要は、農業と他産業との所得差を少なくするということからいいますれば、第一にあげられるべき問題は、農業生産の選択的拡大と申しますか、今日における食糧事情等の大きな変化に即応して、農業の作物の大きな転換でございます。これに対しては、でき得る限り内需もふえ、外国輸出もできるもの、または輸入農産物の国産化という面をとらえまして、これが生産の転換をはかるべく努力いたそうと思います。このことが一つの内容をなします。また、農業生産の生産性の向上ということであります。これは、今日における農業の実態が、他産業に比して所得の伸びが悪く、また、所得の差というものは何に起因するかといえば、御承知の通り、大きくこれは生産性が低いということであります。従って、農業生産性の増、また、農業構造の改善、また、流通価格政策というような問題、こういうふうな問題を織り込んで一つの農業基本法の制定をいたしたいと思いますが、でき得る限り諸外国における立法例の長所を入れるとともに、日本農業の実態というものに即する形において必要な制度を取り入れていくつもりでございます。
 なお、流通経済における生鮮食料品の問題についてお尋ねがありましたが、この点につきましては、特に三十六年度予算におきましても、あるいは畜産に対して畜産事業団、あるいは水産に対しまして、従来からありますサンマ等の多量生産するものを時期的に調整するという問題、需要と供給を調整して価格を維持するという政策、この制度がございますが、この自主的調整をなしておる調整積立金にある程度政府も出資いたしまして、あわせてこれが需給の安定と価格の安定をはかるような施策を講じます。同時に、生産地等につきましては、生産者団体等による生産、出荷の調整等の処置、あるいは市場間における通報制、こういうふうなことを考えていくことにいたしまして、流通過程からくる価格の変動を防止して、安定した形において生産者並びに消費者に対処していきたい、かように考えております。(拍手)
  〔国務大臣古井喜實君登壇〕
○国務大臣(古井喜實君) まず、国民健康保険の内容改善の問題であります。今年度をもって皆保険態勢が整うわけでありますけれども、国保の内容に至りましては、お話にもありましたように、不十分な点がたくさん残っておると思います。お話の給付率の問題につきましても、今後、結核とか精神病とかだけに限らず、また、世帯主だけに限らず、もっと広く、できるだけ早く給付率の引き上げをいたさなければならぬものだと思うのであります。漸進的に、同時にまた、できるだけのスピードで改善をはかっていきたいと思います。
 次に、医療費の引き上げと国保財政との関係であります。国保財政は従来から窮屈であるわけでありますが、それに、今回医療費の引き上げで重圧をこうむるわけであります。そこで、今回も、この辺の事情を考慮いたしまして、本来ならば国保団体、市町村で当然負担すべき経費の部分に対しましても、それに対して大体三分の二程度は特に国が助成の策を講ずるというようなこともいたしたわけでありまして、これによってどうやら国保財政も乗り切れるものと思っております。
 次に、生活保護基準の引き上げの問題であります。生活保護基準の引き上げは、国民生活の底を引き上げる問題で、大きな意味を持っておりますし、できるだけこれは引き上げをしなければならぬのだと思います。今回の一八%につきましては、いろいろな見方もあろうかと思いますけれども、従来、大体一%とか三%とかいう程度しか改定の際に引き上げていなかった過去の例に比較いたしますれば、ともかく、ここで一挙に一八%引き上げたということは、画期的なことだと思います。(拍手)むろん、これで十分とは思いませんので、今後改善について十分検討いたしたいと思います。
 次に、国民年金と他の公的年金との併給の問題であります。今回の予算でこの実施費を掲げるまでに至らなかったことは、はなはだ心残りであります。しかし、予算に掲げてあります調査費にいたしましても、やるかやらぬかの調査ではなくて、実施するということを目途にした調査費でもございますし、時期がずれただけで、実施をする方針には変わりはございません。(拍手)
  〔国務大臣石田博英君登壇〕
○国務大臣(石田博英君) 雇用促進事業団の運営につきましては、松野君御指摘の通り、その世間から期待されております任務にかんがみまして、機構、人事、運営にあたって、情熱と使命感をもってやって参りたいと考えておる次第であります。
 ILO八十七号条約の批准につきましては、この条約は、ILOの各種条約のうちで基本的なものの一つでございますから、前任者である松野君の御努力を継承いたしまして、関係法規の整備に努めて、今国会に提出できるように準備中でございます。
 ただ、ただいまのお話にありましたように、この条約の批准を、労働問題懇談会――労・使・中立三者で構成せられております労働問題懇談会が批准すべきものと答申をいたしましたときには、労働組合あるいは使用者団体が国内法を守るということが強くうたわれておることは、私どもがこの際特に銘記をしなければならないことと存じます。(拍手)
 それから、お話のように、政府は、公労協の労働者諸君の賃上げにつきましては、かねがね申しております通り、公共企業体等労働委員会の仲裁裁定の完全実施を貫きますが、その前に、あるいは公社、現業等の当局者が組合と十分の話し合いをされることも、あわせて希望いたす方針でありまして、この点については、政府は、あくまでも、みずから法律を守ることを前提として、関係者に法律の順守を要求いたしておるのであります。
 それから、もう一つ特に申し上げておきたいことは、ILO八十七号条約の八条に、労使の団体は、他の個人及びその他の団体と同様に、国内法を守らなければならないということが明記されておるのであります。今回、公労協の一部が、公労法に禁ぜられておりまするところの争議類似行為を行なうという決議をしたことは、みずからが労働者の条件の向上の建前あるいは標識ともすべきILO条約の精神をじゅうりんしたものであると、私は、はなはだ遺憾に存じます。(拍手)良識ある人々の反省によって、再びかかる不幸な事態が起こらないように期待をいたす次第であります。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(清瀬一郎君) 諸君、ただいま、傍聴席に、ドイツ連邦共和国国会議員ウイルヘルム・ブレーゼ氏、ハンス・ドラクスラー氏、ヘルマン・ハーゲ氏、ニコラウス・ユルゲンゼン氏並びにヘルムート・ウエンデルボルン氏の五氏がお見えになっております。御紹介申し上げます。
  〔拍手〕
    ―――――――――――――
○議長(清瀬一郎君) 質疑を継続します。勝間田清一君。
  〔勝間田清一君登壇〕
○勝間田清一君 私は、日本社会党を代表いたしまして、主として財政経済に問題を集中いたしまして、政府の施政方針演説に対する質問をいたしたいと思うのであります。(拍手)
 政府は、三十六年度一般会計予算として、一兆九千五百二十七億円の予算を計上、提出いたして参ったのであります。これは、ことしの経済成長率九・二%あるいは三十五年度の当初予算に比して二四・四%の増であることから見ても、まさに飛躍的な予算の増大であります。しかも、政府は、このほかに第二次補正予算四百四十億円、財政投融資七千二百九十二億円を計画しておるのでありますから、実質的には、わずか一カ年で三〇%に及ぶ急激な予算の膨張であります。従って、もはや、中立予算とか健全予算とかでは済まされない、インフレ含みの刺激的予算であるということができると思うのであります。(拍手)このことは、予算の額だけの問題ではなく、給与の引き上げに続き、大幅な公共事業費の増額と、わずかではあるが、社会保障費や減税を内容といたしておりまして、国内の財政需要と個人消費を著しく刺激するものであるだけに、一そうこの感を深くするのであります。しかも、政府は、何ゆえか、今日、この時期において、公定歩合の引き下げ、市中銀行の貸出金利の引き下げを行ないました。そして、国鉄や郵便の料金とガソリン税を一斉に引き上げようといたしておるのであります。こうした政府の態度は、無謀と思えるほどの強気の態度といわなければなりません。
 われわれは、この際に、本年の国際経済の動向を冷静に見る必要があると思うのであります。アメリカは、昨年秋以来、明らかに景気は後退しております。本年の下半期には上昇に転ずるかもしれないという説も、その根拠は必ずしも明らかではありません。特に、ドル危機は、アメリカ経済の国際的地位の低下と、冷戦外交、軍需インフレにつながる本質的矛盾を内蔵しておる問題であるだけに、きわめて深刻であります。従って、アメリカのドル防衛対策の日本経済への影響を軽視することは許されないと思うのであります。(拍手)その上、西欧諸国も、後進地域も、昨年とは違って、明らかに頭打ちの状態であります。
 政府が、本年の輸出貿易の伸びを、せいぜい背伸びして、ようやく一〇%弱に見積もらざるを得ないのも、こうした不安が根底にあるからだと思うのであります。少なくとも、本年の日本経済は、昨年のように、上昇期にあった国際経済を背景として成長してきたと同様の楽観的な期待を持って望むことは、責任ある政府のとるべき態度では断じてないと思うのであります。(拍手)池田総理は、過日の記者会見で、インフレを懸念するものは拡大した日本経済を過小評価するものだと豪語したのでありますけれども、私は、本年の貿易を中心とする国際経済の動向と、それに反した日本の刺激的財政政策とのギャップ、そのギャップから生まれてくる日本経済への影響を重要視いたすのであります。(拍手)不安と混乱含みの国際経済の中で、日本のみが独走して、自然増収を一ぱいに見積もって、弾力性の乏しい、膨大な刺激的予算を組み、なおかつ、金利を引き下げ、公共料金その他を引き上げる財政政策の態度を私は批判するものであります。
 池田総理は、かつて、一千億減税、一千億施策を強行して、わずか三カ月にして国際収支を破綻させ、ついに未曾有の引き締め政策に転落した、あの苦々しい経験を、この際想起すべきであります。(拍手)そのときのことを、経済白書は、すれ違いの悲劇と呼んだのでありますが、今度再びすれ違いを生むならば、悲劇はさらに深刻なものとなるでありましょう。池田総理は、経済はおれにまかしておけと豪語いたしておるのでありますけれども、私は、その自己過信の中に、やがて起こる池田内閣の危機を内蔵いたしておると思うのであります。(拍手)総理の所信を承りたいのであります。
 私は、この際、日本としてとるべき政策は、まず減税を大幅に断行して、予算の規模をそれだけ縮小して、公共料金や物価の値上げは押えて、貸出金利、公定歩合の引き下げは将来の経済事情の変化に見合ってなさるべきである。特に、減税については、昨年税制調査会が答申した当時は、自然増を約二千五百億円と見積もり、純減税はその三分の一、八百七十億円程度、これを妥当とするというのが税制調査会の答申である。すなわち、四千億円に近い自然増を見積もるわけでありまするが、さらにこれを大幅に減税するということが税制調査会の精神を守ることであると考えるのであります。(拍手)しかるに、政府は、当初八百八億の減税になおガソリン税の一割五分の引き上げを行なったのでありまするから、三十六年度の純減税は、わずかに六百二十八億円に縮小いたしたのであります。このために、一千億減税の公約は無視されて、同時に、予算規模はふくれ上がったのであります。
 減税の内容につきましても、政府は、法人税の減税を二百八十五億円計上いたした上に、長年の懸案であった租税特別措置をわずかに百十八億程度整理いたしたにすぎません。これは、政府の方針が依然として独占資本中心の減税であることを証明するのであります。(拍手)国税において七百億円、地方税において約三百億円、合わせて一千億円にも及ぶ租税減免措置をこの際大幅に整理し、これをもって所得税や消費税の減税の財源に充てべきだと思います。特に、消費税の減税は、所得税等の減税に浴しない低所得階級に直接つながる問題であると同時に、物価を引き下げる有力な手段であるにもかかわらず、政府が、間接税、通行税をわずかに十億円減らしただけで、逆にガソリン税を一割五分ふやしたという態度は、理解することができないのであります。(拍手)いずれにいたしましても、国鉄運賃の値上げだけで五百五十六億円、それに郵便料金の値上げ、医療費一〇%の値上げに伴う国民負担の増、実に六百ないし七百億円の国民負担の増加でありまして、ここに減税は帳消しに相なっておるのであります。(拍手)政府は、まず減税について公約を無視したと考えます。
 次に、政府は、膨張予算と公共料金引き上げと同時に、資金需要のなお高い今日において、公定歩合と市中貸出金利を引き下げたのでありますけれども、私は、その理由を問いたいのであります。聞くところによれば、政府は、証券界や基幹産業の強い圧力を受けて、いやがる日銀に無理やりにこれを実行させたと聞いております。もしそうであるとするならば、日銀の中立性を侵しておるのであります。同時に、このことによって、池田内閣が過般の総選挙において財界から献金を受けたお礼政策であるといわれても弁解の余地はないと私は考えるのであります。(拍手)ケネディは、一月の十九日に、アメリカのドル防衛のためには、日本や西ドイツが金利を引き下げ、若干インフレを起こしてくれることが望ましいと言っておりますけれども、池田内閣のアメリカ追従政策は、この点にも現われておると考えるのであります。(拍手)
 国際金利と比較して割高にある日本の金利を漸次引き下げていくということは、一般的理論として、私はこれを了承するものであります。また、イギリスも、西ドイツも、それぞれ公定歩合の引き下げを行なったのであります。しかし、それといたしましても、信用規制の緩和を意味するものではないということを厳重に強調しての話であります。
 政府は、なお、郵便貯金を初めとして、預金の金利あるいは公社債の金利等の引き下げを行なっていくと考えまするけれども、この際に、政府の金利政策に対する全貌も同時にお伺いをいたしたいと思います。
 次に、公共料金と物価対策について、企画庁長官にお伺いをいたします。
 政府は、国鉄運賃を初め、公共料金の大幅引き上げを決定いたしました。このために、私鉄、バス、トラック、タクシー、電力その他一般の消費物価にまで重大な影響を及ぼし、世はまさに値上けムードの様相を呈しております。所得倍増どころか、物価倍増であるといわれるのも、ここにあるわけであります。(拍手)
 そもそも、こうした国民生活に重大な関係のある公共料金の引き上げについては、選挙の際に前もって国民の前に公表してその批判を仰ぐべきが当然であったと思います。(拍手)そこで、今なお未解決である電力料金、私鉄料金、バス、トラック、タクシー、小麦粉、これらの料金あるいは物価が今後どうなるのであろうか、関係大臣に明白にお答えおきを願いたいと思うのであります。(拍手)
 政府は、また、三十六年度の消費物価を強含み横ばいと見て、わずか一・一%程度の値上がりと見ているようでありますが、私は、とうていこれでは済まされないと思うのであります。経企長官は、さらに具体的な計数を発表されたいのであります。
 私は、物価や料金に対する政策としては、商品の種類、事業の性質、流通市場の状態、価格形成の状況等によって、今日ほど総合的な対策が立てられねばならぬ重要な時はないと思うのであります。すなわち、農畜産物のごときは、貿易自由化を抑制し、むしろ支持価格制度を強化拡大し、流通市場の機構合理化をはかることが大切であると思います。また、零細なサービス業の料金は、不当な独占的料金引き上げは抑制いたすものといたしましても、所得の安定と雇用条件の近代化のためには、適正な値上げは当然であると思うのであります。しかしながら、国が経営管理する国鉄運賃や郵便料金は、たとえば貨物の品目別調整、広告宣伝に利用されておるところの第五種郵便の料金の是正は当然といたしましても、一般的引き上げは厳重にこれを抑制すべきである。ましてや、通勤定期の引き上げや、建設や拡張による料金の引き上げには絶対に反対すべきであります。(拍手)そして、もし政府が物価や料金の引き下げに熱意を持つならば、すでに一言したように、消費税、物品税を大幅に下げて、砂糖、酒、たばこ、これらの生活必需物資を当然引き下げることができるはずであります。この処置をとらないということに対して、物価対策に対する政府の熱意を疑わざるを得ないのであります。(拍手)しかし、価格政策の問題は、こうした個々の問題に幻惑されてはなりません。私は、その根本は、日本の独占価格に対してどうしてメスを入れるかということ、これが基本の問題であると思うのであります。(拍手)
 池田総理は、卸売物価は横ばいであるから心配はないと言われるが、私は、横ばいであればこそ、これを批判せざるを得ないのであります。何となれば、最近の独占企業は、独占をいよいよ強化するとともに、合理化を強力に進めた結果、労働の生産性は西欧の水準にまで達しておるのであります。しかるに、労働の賃金は、イギリス、ドイツの三、四割、イタリアの六、七割にすぎない低水準であります。彼らは、明らかに独占価格を形成し、独占利潤をむさぼっておるのであります。(拍手)これを許してきたのは、歴代の保守党内閣の独禁法緩和の政策であったことを忘れてはなりません。(拍手)
 池田総理は、公共料金の値上げは生産性の向上で吸収できると言ったが、確かに独占企業は吸収できるはずであります。できないのは国民生活であることを銘記すべきであります。(拍手)政府は、今後の物価対策について、いかなる具体策を考えておるのであるか、独禁法を強化し、独占価格にメスを入れる考えはないか、経済企画庁長官にお伺いをいたしたいと思うのであります。
 次に、社会保障と雇用政策についてお伺いをいたします。
 池田総理は、減税より社会保障だと、しばしば強調いたしておりまするけれども、事実は、社会保障よりも公共事業だと言った方が適切だと思います。それほど社会保障は後退し、今回の予算においても、失業対策費を含めて、すなわち、広義に解釈しましても、純増加は六百三十六億円、総予算に対する社会保障費の比率は、わずかに一二・一%にすぎないのであります。一千億の社会保障増額を広言した池田総理の公約は冬空とともに消え去ったかの感がいたします。
 内容についても、医療費の一割引き上げ方針は決定をいたしましたが、医師会との対立はいまだに解消せず、医療協を開くことさえ今日できないありさまであります。しかも、改定の根拠、配分方法、保険料や受診負担へのはね返り等については、依然として不明であります。深刻な生活不安におののいておる百六十万に及ぶ生活保護世帯の保護基準五割引き上げの当然の要求も退けられ、わずか一八%に押えられておるわけであります。池田総理の月給は昨年十月からすでに七割も上がっておるのに、保母さんの給料は、ことしの四月からわずかに七・五%しか上がらないのも、皮肉といわざるを得ないのであります。(拍手)しかも、政府は、過般の安保国会で、わが党の提案を退け、あの無謀な拠出年金制度を強行通過させました。今、国の津々浦々に、中止せよ、大幅改正せよという声が、ほうはいとして巻き上がりつつあります。政府はこれをどう処理するつもりであるか、国民拠出年金制に対する政府の態度をお伺いいたします。
 しかし、私は、個々のこうした問題もさることながら、重要視いたしたいのは政治の建前であります。政府は、所得倍増を宣伝し、急速度な経済成長を自慢して参りましたが、独占資本主義の経済社会においては、成長率の速度というものと国民の福祉とは必ずしも一致しないのであります。いな、むしろ急速度の成長率は、そのまま大衆収奪の強烈さを意味するものであります。(拍手)すでに申し述べた通りに、わが国の労働の生産性はすでにイギリスやドイツの水準に達しています。それにもかかわらず、労賃はこれの三割ないし四割であります。しかも、イギリスは、経済の成長率はわずかに四%でありましょう。それは、日本の成長率にはるかに及ばないことも明らかであります。だが、国民所得の中に占むる社会保障の費用というものは、日本の六・七%に対して、イギリスは一〇・七%であります。日本と同様に経済成長率のきわめて高いといわれるドイツにおいて、社会保障は、全国民所得の中で実に一九・二%を組んでおるのであります。池田内閣が宣伝しておる所得倍増の完遂される十カ年後において、わが国の社会保障が全国民所得のわずか七%であることは、この事実を明らかに証明しておるのではないでしょうか。(拍手)すなわち、いかに経済が成長しても国民の幸福は得られない、これが私は如実にわかると思うのであります。すなわち、自民党の基本的な考え方は、独占資本のための経済成長が目的であって、社会保障は大衆収奪からくる不平不満を押える手段にすぎないと私は思うのであります。(拍手)
 今、日本の経済は戦後ではなくなったと申します。確かに成長の時代に入っておるのであります。さればこそ、今後、日本の経済成長の何割かというものは必ず国民の幸福に役立つように計画されなければなりません。政府は、今こそ、この段階に立って、憲法第二十五条を新たに見直して、揺籃から墓場までの全社会保障体系を確立して、国民とともに希望を持って前進できる福祉国家建設の経済計画に切りかえるべきであります。(拍手)私は、池田総理の考えをお伺いいたしたいと思います。
 最後に、石田労働大臣に質問をいたします。
 最近の雇用統計におきまして、形式的には、雇用人口も拡大し、賃金の若干の改善も見られることは確かであります。しかし、一たび雇用の実態に触れるならば、技術革新に伴う労働需要の質的変化、合理化企業整備による失業、大企業と中小企業との賃金格差の拡大、近代工業における社外工、臨時工の存在等、不安と混乱がその実態であることに気がつくのであります。たとえば、雇用の総数はふえております。しかしながら、職業安定所の職業紹介の実態は、求職者百三十万人に対して求人は七十八万人で、依然として潜在的失業の人口がきびしく存在いたしております。また、同時に、実際に就職できるものはわずかに一八%、また、求人者で人を求めることができるものはわずかに三〇%であります。すなわち、全面的な人口過剰が存在すると同時に、求人難と求職難とが同居しておるというのが、今日の労働の実態であると私は考えるのであります。(拍手)
 この原因は一体何であるか。言うまでもなく、日本の雇用関係の特色である、すなわち、低賃金、年功制賃金制度、地域別、規模別の格差、木工と臨時工の存在、労働市場の分断、いわゆる日本の労働の二重構造が、急速度な経済の近代化と合理化というものとの潮流に真正面からぶつかっておるというのが、今日の労働市場の実情であると考えるのであります。従って、このような衝突を基本的に解決するところの第一の突破口は、まず、低賃金制の克服であります。そのためには、まず、一律八千円の最賃制の確立であると確信いたすのであります。(拍手)第二の手段は、労働に流動性を与えることであって、当面は、中年層以上の労働者の職業安定を期することでありましょう。
 石田労働大臣は、三池の調停の際に、雇用は完全に政府が保障するから安心しろ、こう言ったのでありますけれども、事実は相違いたしております。なるほど、三菱や住友あるいは三池において、第二組合、肩たたき、こうした者の再就職は比較的順調かに見えます。だが、千百七十六名の第一組合の失業者の実態は、次のごとく悲惨であります。職についた者はわずかに五十五名、うち、組合あっせんが二十二名、個人で探した者が十六名、相談所扱いはわずか十四名、会社あっせんは実にわずかに四名にすぎないのであります。故郷に帰った者六十一名を合わせて、今日解決された者はわずかに百十六名であります。労働大臣が誠意と良心を持ってやると言われた訓練所にも四百八十三名の入所者があるのでありまするけれども、いずれも、施設の不完備、資材の不足、科目や教師の未熟、そうした中に不安の日を送っておるのが、今日の現状であります。しかも、失業保険の期限の切れる者は、三月十日で九十一名、四月十日で三十一名、あとは全部六月中旬にその期限は切れるのであります。この三池の姿が高度成長下における日本の労働階級の真の姿であることを私は知るのであります。(拍手)さればこそ、政府がこうした無責任を行なって改めず、石炭労働者の完全雇用を今日実現しない限り、われわれは、十一万の労働者の首切りに絶対反対するものであります。石田労働大臣は、三池の労働者を今後どうして安定させるのであるか、わが国労働者の完全雇用政策をどう考えておるのであるか、明らかにせられたいのであります。
 以上、私は、日本経済の重要課題について御質問いたしたのでありまするが、政府の誠意ある答弁をお願いして、私の質問を終わる次第であります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 勝間田さんは、昭和三十二年の石橋内閣における、私が大蔵大臣として組みましたあのときを思い出してくれということでございます。私は思い出します。あの当時、千億減税、千億施策を唱えました。当時は、道路予算は一兆円五カ年計画ですが、今は二兆一千億五カ年計画を打ち立てるように、日本の国力は伸びたのでございます。あのときと今度大体似ていることは、鉄道運賃を引き上げたり、あるいはガソリン税を引き上げたり、千億減税をいたしましたことは似ております。違っていることは、あのときは、スエズ運河の非常な影響を受けて思惑輸入が行なわれたこと、消費者米価を引き上げたこと、そうして、日本の外貨はあの当時よりもほとんど六、七割増加したことが違っておるのでございます。私は、こういう点をよく吟味いたしましてあのときに千億減税、千億施策をしたことが今日の高度成長をもたらしたものと確信いたしておるのでございます。(拍手)ただ、問題は、スエズ運河の影響で外貨が一時減りましたけれども、輸入原材料が相当ふえました。外貨の減った以上に輸入原材料がふえておったから、その年からどんどん輸出超過になってきたことを思い出すのでございます。いずれにいたしましても、あのときの、あの積極予算で、今問題になっておりまする卸売物価、小売物価、消費者物価は、三十二年の暮れから三十三年にかけて一様に下がりました。しかし、鉱工業生産はどんどん伸びていっているし、一般国民の消費支出もふえていっておるのであります。こういうことを思い出しまして、私は、今回の予算は、ほんとうに健全な成長予算であり、日本の経済の成長、国民生活の安定を約束するものだと確信を持っておるのであります。(拍手)
 なお、卸売物価横ばいについてのお話でございまするが、この卸売物価で、鉄とか繊維は下がりぎみでございます。ただ、今横ばいとかいうのは、木材、建築材料が相当上がっておりますので横ばい程度、鉄はだんだん下がっておるような状況でございます。個々の品目別をごらん下さいましたらおわかりいただけると思うのでございます。
 なお、社会保障制度につきまして、千億以上の平年度減税を申しましたが、社会保障制度の予算額は、一切私から申したことはございません。
 なお、所得倍増後における社会保障につきましては、私は、ほんとうにりっぱな福祉国家を建設すべく、所得倍増計画を打ち立てたのでございます。十年後、倍増計画ができましたときには、勝間田さんも、こんなによくなって社会保障が伸びたかと言って下さることを期待して努力いたしたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣水田三喜男君登壇〕
○国務大臣(水田三喜男君) 何か独占資本中心の減税ではないかというお話でございましたが、先ほど申しました通り、今度は中小所得者、中小企業中心の減税でございまして、しかも、ほとんど税制調査会の答申通り、千百億円以上の減税を実施しようというものでございますので、これに対しましては、政府から提出いたします法案によって御判断下さればわかると思います。(拍手)
  〔国務大臣迫水久常君登壇〕
○国務大臣(迫水久常君) 私に対しまする御質問は、昭和三十六年度の消費者物価の値上がりの見通しが一・一%と言っておるが、それで押えられるかどうか、その中身を言え、というお話であったように思います。それが第一点だと思いますが、それにつきましては、これは卸売物価は弱含み横ばいということを前提といたしまして、昨日私がここでお話をいたしましたような労働の対価の上昇、これは勝間田さんも御承認になったようでありまするが、そういうようなものとか、あるいは公共料金、国鉄運賃の値上げ等を入れまして、一・一%と想定をいたしたのであります。この中で、国鉄運賃の値上がりの分は、おおむね〇・一三%ぐらい含まれておると考えております。私は、これは先ほど総理大臣が参議院で御答弁になりましたが、あくまでも見通しで、見込みでありますが、この見込みは当たらずといえども決して遠くない、基準としては正確なものと考えておるのでございます。
 それから、第二の点は、バスやトラックその他のものの値上げの問題があるらしいが、それについてはどうするかというお尋ねでございました。これらの物価の直接の主管省は私の方ではありませんが、もし将来こういうような問題が起こって参りました場合には、経済企画庁といたしましては、消費者の立場に立って十分に検討を加えていきたいと思っております。
 それから、独占価格がある、独占禁止法によってメスを入れていく考え方はないか、というお話がございましたが、現在、卸売物価等におきまして、そういうような協定で不当に値段がつり上げられておって、それを下がらないような処置を協定か何かでしておるようなものを発見いたしましたならば、よくそれぞれの関係各庁と相談をいたしまして、そういうようなものは引き下げるように努力をいたしたいと思っております。(拍手)
  〔国務大臣木暮武太夫君登壇〕
○国務大臣(木暮武太夫君) 御質問にお答え申し上げます。
 現在の国有鉄道は、輸送力がなかなか逼迫いたしておりまして、所得倍増に関連いたしまして、今後増量するところの輸送に対しましては何とかいたさなければならぬ、これが所得倍増、日本経済成長発展の隘路となることをわれわれはおそれまして、国鉄におきましては、三十六年から五カ年計画で約一兆円、九千七百五十億円、一年千九百五十億円の割合の金をもちまして、今日問題になっておりまする通勤者の輸送の緩和であるとか、あるいは国鉄幹線の複線化あるいは電気化、あるいは電化できないところをディーゼル化する等のことによりまして、これから増して参りまする輸送の円滑を期したいと考えておるのでございます。この場合に、膨大な、今申し上げました五カ年間一兆円に近い金を要しまするので、これを全部借入金によるということは公共企業体の独立採算制の基礎を強固にするゆえんでございませんので、ある程度は自己資金をもってこれをまかなうということが常識の上から当然でございます。従いまして、本年におきましても減価償却費等の繰り入れによって六百億円をまかないましても、しかも、残りはまだ千四、五百億円というものが借り入れになるのでございまして、こういうものを、もし全部借入金にいたしまするならば、五年後においては、国鉄は一兆一千億円の借入金をしょって、年に利払いだけで七百億円になるというような、まことに行き詰まった経営状態になるような状態でございます。そこで、国鉄といたしましては、企業の合理化によっての相当の自己資金を捻出するととはもちろんでございまするが、この際、最小限度、あまり社会的に影響のない程度に、国鉄自身がなし得る運賃の改定をいたしまして、四百八十六億円の増収をはかりたいというのが、今回の運賃改定の理由であるのでございます。御承知の通り、通学定期などにいたしましても、九二・一%というような、まことに法外な割引をやっておりますけれども、これはもうすでに生活に溶け込んでおるのでございまして、これをここで改定することはいかがなものであるかと当局は考えましたものですから、こういう定期運賃につきましても割引率は従来のままにいたしまして、最小限度の実収一二%、すなわち、旅客収入において一四・六%、貨物におきまして一五%程度の、あまり影響のないところにきめましたような次第でございます。そこで、ただいま、新線建設のために定期の料金を上げるというようなことは反対であるというようなお話がございましたが、御承知の通り、従来から新線建設というものはいわゆる借入金によってやっておりますので、直接には運賃改定には何も関係はないのでございます。
 それから、また、国鉄運賃の改定に関係いたしまして、いろいろ他の交通の運賃があるいは上がるのではないかというような御心配がございましたが、しかしながら、国鉄運賃の改定は、国鉄運賃改定の特殊の理由があってこれを改定するのでございまして、これに関連せざるその他のものが便乗して上がるような傾向があるとは、われわれは考えておらないのでございます。
 また、物価の問題につきましては、再三総理からお話がございましたから、多くをつけ加える必要はございませんけれども、従来の国鉄運賃改定は、この程度におきましては、その前後において卸売物価あるいは小売物価に何らの関係がなかったという事実によって、皆様方が御判断を願いたいとお願い申し上げる次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣石田博英君登壇〕
○国務大臣(石田博英君) わが国目下の雇用情勢につきましては、勝間田さん御指摘の通り、漸次求人と求職が見合ってはきておりますけれども、その中に、いろいろなめんどうな問題を内包いたしておるのであります。その中で特に困難な問題は、お指摘の通り、中高年層の就職の問題、あるいは臨時工の処理、あるいはまた不完全就業者の存在でございます。この中高年層の就職の問題につきましては、ただいま私どもの方と経済界とが協力をいたしまして、中高年層のための、あるいは中高年層で十分充足し得る職種の調査をいたしておる次第でありまして、この職種の調査を待って、中高年層の新しい職場の造出に努めていきたいと思っておる次第であります。しかし、調査の結論を得ないでも、現在の段階におきましても、特に中高年層の職種の造出ということに力を注いでおります。それから、臨時工の相当数、たくさんの数の存在は、やはりわが国経済の依然たる底の浅さからくるものとも考えられまするので、私どもは、そういうものの一般的発展を期待はいたしますが、特に労働行政といたしましては、労働基準法の適用を厳格にいたしまして、その地位及び条件の向上に努めたいと考えておる次第であります。
 さらに、その他のアンバランス、たとえば、地域的、技術的あるいは年令的なアンバランスの是正につきましては、このたび御審議を願います雇用促進事業団を中心といたしまして、流動性を確保するように努力をいたして参りたいと思っておるのであります。しかし、一般的にこの条件を緩和いたしまして、わが国の低賃金の存在を改善するために、最低賃金制を一律八千円にしたらどうかという御意見であります。前段のわが国の賃金の実情でございますが、これは、御指摘の通り、決して高いということを私は申し上げるつもりではございませんけれども、しかし、一ドル三百六十円の現在の公定レートで各国の実質賃金を比較いたしてみますると、日本を一〇〇といたしました場合に、米国は九六〇ぐらい、イギリスは約三〇〇、西ドイツが二三四から二四〇であります。しかし、円の実質購買力をその消費内容によって調査いたしますると、一ドルが大よそ二百円という程度に相なります。それから、これら各国の消費者物価指数は、日本を一といたしました場合に、アメリカは一・九、その他の諸国は一・四ということに相なります。それから福祉施設、厚生施設等は、諸外国におきましては、支払わられた賃金の中から、言いかえれば、労働組合の仕事として行なわれているのでありますが、わが国におきましては、大半これが会社の経費をもってまかなわれているのでありまして、そういう点を勘案いたしますると、決して高い賃金と私は強弁をいたすわけではありませんけれども、国際的にみずから卑下して、低賃金だとあえて言うほどのことはないと思うのであります。(拍手)
 それから、最低賃金制を一律八千円にしろという御議論は、かつて私が労働省におりましたときからも議論の中心でございました。私は、現行の最低賃金法を満足なものとは思っていないのであります。しかし、この法律は、一面において、わが国の経済の実情、特に中小企業の実情に応じつつ、その中小企業の勤労者の条件をよくしていくのでありまして、現在、施行いたしましてから一年有余の間、対象人員が約四十万人に達しておるのであります。そこで、これを、昭和三十六年を第一年といたしまする向こう三カ年の間に二百五十万人に拡張することを目標に、今努力をいたしております。その過程を通じまして、問題点を抽出いたしまして所要の改正を行ないたい。現在は、法律制定後一年有余であります。目下、最低賃金法の性格、内容について国民各位の了解を求めておる段階であるのであります。
 それから、最後に、石炭関係、特に三池関係の離職者に対する対策の御指摘でありますが、私が、この三池の離職者の千二百名、現在で正確に申すと、千百七十六名の方々に対する就職の最終的責任を私が負っているということをしばしば申し上げましたことは事実でありますし、今日も決してその責任を回避いたすつもりはございません。しかし、あの失業が発生いたしまた直後に、私どもの役所と福岡県で、現地に職業相談員を派遣いたしまして、一人々々についてその御希望を伺ったのであります。ところが、その際、過半数の七百数十名の方は意思表示をなさらなかったのであります。それから、約三百名未満の方が職業訓練所へ入ることを御希望になり、直接直ちに就職を希望された方は八十五名でありました。残余の方々は自家営業その他を希望されたのであります。その八十五名の中から、現在、お話のように、五十五名の方が就職をされておるのでございます。(「成績が悪いぞ」と呼ぶ者あり)八十五名の中から五十五名でありまして、千百七十六名のうちから五十五名でないことを御了承いただきたいと存じます。(拍手)それから、勝間田さんがおあげになりました数字は、その後、組合側と協力をいたしまして、意思表示をされなかった七百数十名の方々につきまして、さらに御希望を伺ったのであります。その御希望の中から、今第二の計画をいたしておりまして、職業訓練所に入ることを希望されておる方が非常に多くなりました。ただ、入る行き先の訓練所について、御希望とわれわれの方の用意しておる状態とに合わない点がございます。しかし、これは、私どもの方と組合側と密接に連絡をして、現実に消化をいたしております。失業保険の給付期間が切れるまでの間には、これらの人々に行き先をはっきりさせたいと思っておる次第であります。ただ、残念なことには、会社側が直接あっせんをすると約束された数字が、特に第一組合員については、勝間田さん御指摘の通り、非常に少ないのであります。この点につきましては、私は、近々会社当局と会いまして、約束の履行を希望いたすつもりでございます。ただ、会社側が希望退職者に特に重点を置くとおっしゃいますが、希望退職者に特に重点を置くことも間違いでございます。しかし、同時に、私といたしまし七は、指名解雇者に対して直接責任を負っておるものでありますから、第一義的に、指名解雇者の方々の行き先を見つける責任がありますが、会社側は、指名解雇者と同様に、やはり希望退職者の就職のあっせんもしなければならないのでありまして、これは両方合わせて御希望に沿うようにいたしたいと思いますが、私も、現状の会社側あっせんの数では満足をいたしておりません。
 それから、職業訓練所の内容について、いろいろ御批判と申しますか、御誹謗がございました。しかし、現在職業訓練所を卒業いたしました者の就職率は九七%であります。残余の三%は、あるいは移転とか、あるいは、たとえば自動車の運転を覚えた者が免許状をとる間とか、いろいろそういう条件がございます。それを加味いたしますると一〇〇%でありまして、特殊な種目については十三倍にも上っているのであります。この事実は、内容が現在で完全であり、満足だと申すのではございませんけれども、職業訓練所の訓練の実績及びその社会的な需要というものの現状を御理解いただけると存ずる次第であります。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(清瀬一郎君) 中澤茂一君。
  〔中澤茂一君登壇〕
  〔議長退席、副議長着席〕
○中澤茂一君 私は、日本社会党を代表して、重大時期にある農政の問題に集中して政府の所信をただし、責任ある御答弁を賜わりたいと存じます。(拍手)時間の制約があるので、当面しておる農民の切実な不安と要求だけを取り上げ、池田総理を初め関係閣僚にお伝えして、特に善処を要望するものであります。
 なお、この際、総理初め関係閣僚に申し上げますが、とかく、政府の御答弁は抽象的に流れて、何ら具体的なものが現われてこないのであります。そのような口頭禅的なお答えでなく、誠意ある御答弁を要望いたします。なぜならば、今、四千万の農民は非常な不安と動揺の中にあります。自分の行く道さえ全くわからないという混乱の様相を示しておるのが、今の日本の農村であります。
 第一に総理にお伺いしたいことは、総理が言われる所得倍増計画と農業人口六割削減論とはいかなる関係にあるのか、ということであります。
 農民の率直な疑問は、所得が倍増するのに、何もわれわれ仲間を六割も首を切らなくてもよいではないか、こういう気持であります。一体、農業所得は倍増するのかどうか、人口を削減しなくては倍増しないのかどうか、池田総理の御答弁、並びに、経済企画庁長官には、特に、農業所得倍増の具体的な十カ年の年次増加率、同時に、年次農業人口削減数、また、農産物の部門別所得増加率を、農民の納得するように御答弁を願います。(拍手)
 農民の第二の不安は、われわれ農民が二千万人も削減されることには反対であるが、万一やむを得ないとしても、このわれわれをどこへ池田総理が連れていってくれるのか、という不安でございます。(拍手)まさか、みんなが東京や大阪や名古屋へ行くわけにはいくまい。ただ、われわれに汽車に乗れ、汽車に乗ればどこかへ行けるだろう、こういうようなことでは、農民としてとても不安で、池田列車には乗れないということであります。(拍手)これが真実の農民の声であります。一体、総理は、いつ、どこへ、どのような方法で農民を連れていく所存なのか、これも、具体的に、農民の納得するように御答弁を願います。
 わが党は、政府の具体政策のない現状においては、農業所得は政府の言うように増加しないという判断に立っております。なぜならば、政府の所得倍増計画によって判断しても、農林水産業生産水準は年率二・八%の割合で伸長し、十年後の農林水産業生産は、基準年次に対して一四四%増ということになっております。これでは、農民所得は倍増というわけにはいきません。そこで、政府の倍増計画を拝見すれば、農林水産業の就業人口が十カ年に現在の七〇%に減るものと仮定をして、これを差し引いて、農林水産業の就業者
 一人当たりの所得が十年後に倍になる、これがこの計画の趣旨であります。この計画をまるまる信用して、若干過去の計数と政府計画を参考にして検討してみても、何ら具体的政策を持たない政府において、年率二・八%以上の伸び率で農林水産業の生産が伸びることは期待できない、とわれわれは判断しておるのであります。農業人口削減が計画通りにいくかどうかによって農業所得の倍増の成否が決定するというような賭博的要素を加えて、一体、政府の施策といえるものでありましょうか。
 農林省が昨年二月一日現在で行なった農業センサスによれば、昭和二十五年から三十四年の十年間に、農家人口の減少率は一〇%であります。しかし、農家戸数は二・五%しか減っておりません。しかも、この十年間に、日本資本主義経済は、世界資本主義諸国の中でも最高度の速度で成長し、国民所得は約二・七倍にふえておるのであります。国民所得が二・七倍にふえても、なおかつ農家人口の減少はたった一割にすぎなかったのであります。これが過去の十カ年の実績であります。今後、かりに、池田総理の言うように、日本経済の高度成長が実現できたとしても、農業就業人口は、政府の想定しているように三割も減少するととはあり得ないと判断しなければなりません。従って、農民一人当たりの所得が十年後に二倍になるという計画は、達成不可能とわれわれには思われるのであります。また、三割の減少さえ不可能であるという判断をせざるを得ない過去の実績から考慮して、池田総理は、十年間に農業就業者を六割削減すると言われたが、その具体的な、計数的な根拠は一体どこにあるのか、これを、特に総理から、農民の納得するように御答弁を願いたいのであります。(拍手)
 申すまでもなく、わが党は、農民切り捨て政策には反対であります。しかも、農業外の分野において安定した雇用と生活給所得が保障されているのかどうか、現実のわが国の賃金構造には、先ほども御議論のあったように、はなはだしい二重構造があり、低賃金が支配しておることは、御承知の通りであります。また、農村から工場へ通勤する者の多くは、不安定な臨時工であります。景気の変動によって、いつ首切られるかわからない、産業予備軍的性格を一歩も出ておりません。政府の自画自賛する社会保障、すなわち、厚生年金、国民年金等の給付は、池田総理の昨日言われた、サンタクロースどころか、とうてい老後の生活を保障するに足りない低水準であることも、御承知の通りであります。こういう条件下において農村から農業外へ就業する者は、どうしても片足を農業の中に突っ込んでいなければならない。この片足を突っ込んでいるという不安な現実が農民の姿なのであります。これが農業から農業外への労働力の流動を妨げており、零細な兼業農家をして必死に農業にしがみつかせておる根本的な理由なのであります。こうした農業外の条件を改善する具体的政策は何一つなく、一体、どうして農業人口を農業外へ転出させるのか。わが党は政府に具体策なしと断定しますが、もし具体策ありとすれば、総理並びに労働大臣から具体的な方策を明らかにしていただきたい。(拍手)
 次に、所得倍増計画では、今後十カ年間に行なう行政投資は十六兆円、そのうち、農林水産業への投資は一兆円ということになっております。これは、比率にすると、わずか六・二%にすぎません。昭和三十五年度の実績で見ると、行政投資総額九千三百七十億円に対して、農業投資は八百二十五億円で、比率にすると八・八%であります。現在ですら、農業関係の投資僅少のために農業と他産業との所得の格差が拡大の一途をたどっておるのでありますが、所得倍増計画を拝見すると、その比率が八・八%から六・二%へ後退するのであります。このような僅少な投資で、一体、どこから所得倍増が生まれるのか。資本主義経済は、投資なくして利潤なしが原則であります。農業の場合はこの原則が変わるのかどうかということをお答え願います。また、所得倍増計画の農業投資を大幅に増額する御意思が政府にあるかどうか、この点も明らかにしていただきたいのでございます。
 わが党は、経済的有効な可耕地三百万ヘクタールを積極的に開発すべしと主張するものです。国家による大規模な機械開墾、干拓、土地改良等によって、まず、農業経営規模の拡大をはかり、農業生産物を増大させ、もって農業所得の向上を企図するものであります。このように申すと、経済効果いかんという反論がよく出るのでありますが、現在のわが国の食糧輸入総額は年間約六億ドル、概算二千億円が食糧輸入であるというこの事実を考慮するならば、この相当部会を国内生産に振りかえて外貨を節約することは、それだけ一般工業の原材料の輸入をも拡大することになるのであり、大局的な国家経済の見地から見ても何人も首肯し得ると考えるのであります。また、大規模な農業開発と、徹底した共同化、基盤整備によって、初めて対外農産物と競争し得るコスト・ダウンが可能になってくるのであります。同時に、国内産業活動を活発ならしめ、国内市場の拡大ともなり、日本経済にとっての新しいフロンティアをも切り開くものとわが党は確信いたすものでありますが、総理はどのように今後の農業政策をお考えであるか。(拍手)
 第二にお伺いすることは、貿易自由化と農産物価格政策についてであります。
 昨日の水田大蔵大臣の施政演説を拝聴しても、貿易自由化は世界の大勢であるから積極的に推進すると申されたが、一体、農産物自由化は、いつ、どのような方法で政府は行なわんとするのか、各農産物の品目別、年次別自由化計画を明らかにしていただきたい。農民としては、貿易自由化は世界の大勢だと政府はおっしゃるが、われわれにはよくわからない、世界の大勢なら仕方ないとあきらめるとしても、農産物の値段が自由化の声だけでどんどんと下落してきている、これをどうしてくれるのか、ということであります。一体、これで所得倍増ができるのかどうかという疑問を農民は持って、今首をかしげて考え込んでおるのが、日本の農民の姿であります。わが党は、現段階においての農産物自由化政策には断固反対いたします。前段に申したような、積極的な農業財政投融資による農地開発と共同化、基盤整備によるコスト・ダウンのできるような具体的政策を実施して、もって対外農産物と競争が可能となる段階までは農産物保護政策を貫くべしということを主張するものですが、農林大臣、通産大臣、大蔵大臣はいかように考えておるか、御答弁を願いたい。(拍手)
 次に貿易自由化に伴う価格政策に対して、政府はどのように考え、いかなる施策を実施するのか。わが党は、農業保護政策の前提に立ち、主要農産物の支持価格制の徹底化を主張するのであります。池田総理は、過ぐる特別国会において、物価は天井知らずに上昇しておるではないかという質問の答弁に立たれたとき、野菜は下がったとお答えになられたことは、お忘れないと思う。野菜が昨秋のような大暴落をして一体だれが因るかということを考えて言われたのかどうか。総理は不用意のうちに言われたのであろうが、人間は不用意の言葉が最も真実を語るものである。(拍手)ことほどさように総理の心底には農業軽視の考え方があるからこそ、農民六割削減論も平然と語られるのではないか、そのように私は推察いたしますが、いかがでありましょうか、特に御念を入れて御答弁を願います。(拍手)もし、総理はそうでないと答弁されるならば、一体、農業保護政策を徹底化するのかどうか、続いて主要農産物の価格支持政策をとるのかどうか、価格支持政策をとるなら、今回の麦対策問題については、総理はいかように考えておられるのか。これは農林大臣、総理大臣ともに御答弁を願います。(拍手)
 第三にお伺いするのは食糧管理法の問題でございます。
 政府は、三十六年度食管会計予算では、大、裸麦の政府買い入れ価格を昨年通りとし、また、政府買い入れ数量に一定の制限を加えることになっております。これは、食糧管理法第四条のパリティ計算方式を全く無視し、同条の無制限買い入れ規定に違反するものであります。まさに、政府は、現在、食糧管理法違反をしようとしておるのであります。しかも、政府は、三十七年度にはさらに政府買い入れ麦価を大幅に引き下げることを予定しておるようですが、これは農民所得を減少させるもので、重大な問題であります。私は、政府が現行の麦管理方式を改めようとするならば、まず、正々堂々と食糧管理法の改正を今国会に提出し、しかる後に措置を講ずべきことを、特に農林大臣に要求するものであります。
 また、この際特に明らかにしておかなくてはならない点は、政府のなしくずし自由化のPRとして、よく食管赤字云々という報道を見受けますが、食管赤字の内容をしさいに分析すると、決して農民のためにのみ出る赤字ではないということを明らかにしておく必要があると存じます。第一に、食管会計では、金利が百四十五億円、次に大きなものとして、管理費、人件費が百三十億円、合計二百七十五億円あります。これは、政府が買い上げ、売り渡しをともに政府の食糧政策としてやる以上、当然政府が負担すべきものであります。同時に、また、赤字の中に食管予算編成時期と買い上げ米価決定時期の食い違いのために生ずるものが約三十億前後、買い入れ数量の過小評価のため、農民の売り渡し数量との食い違い誤差分、これも赤字計上されておるのでありますが、本会計年度においては約四十億前後と推定されます。合計約七十億円くらいはあるでしょう。これは明らかな経理上の赤字であって、純然たる国庫損失金ではないのであります。ましてや、農民がこの赤字のために利益を受けているものではないということを、この際明らかにしておくのであります。赤字片々のPRで国民世論を作り上げて食管法を廃止しようという卑劣な手段は今後一切とらないように、厳重に警告をいたします。(拍手)
 続いて、米についてお伺いいたしますが、政府の所得倍増計画の第三部には、明らかに、米については直接統制を廃止して間接統制に切りかえる、と述べております。政府は、いつ、いかなる方法で間接統制に切りかえる所存か、農林大臣のお答えを願う次第です。
 第四に、流通機構の問題を政府はどのように考えておるか。先ほど松野君も若干触れられましたが、農民の率直な考え方は、自分が苦労して作ったくだものにしても、自分は一個三円か四円で売ったものが、店屋の店頭へ行けば十五円で売られておる。これは一体なぜだろうか。また、自分が作った牛乳は基本価格一升四十五円か五十円くらいで売っておる。しかるに、自分が一合買って飲み、よく考えてみたら一升百三十円になっておる。自分の手取りの三倍も四倍もの高値で売られておる。これは一体なぜだろうか。また、豚の値が上がった。これは、てっきり、政府が将来の農業を畜産と果実の方向であるというから豚の値が上がったのだろう。池田総理はうそを書わないと公約したから、さっそく子豚を五千円出して買った。一生懸命、自分の食うものまでも豚に食わして太らせた。太り始めたら、どんどん値が下がってきた。半年たって売ったら六千円にしか売れなかった。結果は、農民がやせ、豚が太っただけで、もうけは全然なかった。これは一体どういうことなのか。また、政府は、一昨年、もはや養蚕は斜陽でだめだから桑を抜け、桑を抜け、一反歩千五百円の補助金をやる、政府はうそを言わないだろうと農民は信用して、どんどん桑を抜いた。抜き終わったとたんに繭値はどんどん上がり出し、ばかを見たのは桑を抜いた農民だという結果になった。政府はうそを言わないと言うが、農民はいつも政府のうそで泣いてきておるのです。これが農民の率直な言葉であります。(拍手)だから、近ごろの農民は、何でも政府の言う反対のことさえやっていればもうかるだろうと考えるようになった。(拍手)これは農民にとって大へん不幸なことである。一体、政府は、このような事実を解決するためにどのように考えておるのか。また、いかような施策を行なわんとするのか。今ほど、資本主義経済の矛盾、特に流通機構の矛盾が農民の上にひしひしと押しかぶさっておるときはないでしょう。この矛盾を解決することが農業所得を増加せしむる基本的な命題であるとさえ言えるのであります。(拍手)
 わが党は、このような露呈された矛盾の解決には農産物流通機構の徹底した公営化政策以外には方法はないという結論に立って具体的政策の検討を加えておる次第ですが、農林大臣はこの点をいかようにお考えになっておるのか。百歩を譲って、資本主義経済を維持し、自由主義経済の前提で政策を立てるとしても、具体策はあるはずである。もちろん、根本的な矛盾の解決は不可能であるが、政府の施策としては、価格維持政策というものがとり得るはずである。すなわち、自由主義経済の原理は、需要と供給、これが価格決定の要素であるがゆえに、需給を調整し、政府が責任を持ってそういう価格調整機関制度を作るならば、これは自由主義経済の前提でも可能であるとわが党は考えておるのであります。特に、その中で、果樹、蔬菜、牛乳、畜肉、魚類等、生鮮食料の価格維持政策は、この際政府はやる御意思があるのかどうか。野菜が下がったなどと総理がうそぶく前に、なぜ、親切に、このような可能なる施策をとらないのであるか、また、今後価格維持政策または需給調整政策を全般的な生鮮食料に取り上げるということを農林大臣はお考えになっておるかどうか、同時に、具体的に実施する所存であるかどうか、農民のために明らかにしていただきたい。(拍手)
 第五に、水産業の問題についてお伺いいたします。
 まず第一に、近く開かれる日ソ漁業交渉に関連して、国際漁業に対する政府の方針についてであります。
 国際漁業を発展させるためには、何よりも政府の一貫した正しい方針がなければなりません。たとえば、同じサケ・マス漁業にしてみましても、ソ連に対する場合とアメリカに対する場合では全く違った態度を政府がとられておるのであります。すなわち、日米加漁業条約に対してはアメリカの要求に屈し、日本は、御承知のような、西経百七十五度以東の膨大な海域への出漁をみずから放棄しております。このことが日ソ漁業交渉においてわが国を不利な立場に追い込んでいることは、周知の通りであります。しかも、政府は、日米加漁業条約を改定すべきであるというわが党の要求に、今もって何らの答えを出しておりません。国際漁業に対する政府の態度、特に、ただいま申し上げた日ソ漁業条約、日米加漁業条約及び李ラインに対する基本的な政府の方針を、この際、外務大臣、農林大臣から明らかにしていただきたいのであります。(拍手)
 また、漁民の切実な声は、魚がたくさんとれれば値下がりして損をする、とれなければ生活にさえ事欠く、一体、日本には政治があるのだろうかという、農民の嘆きと同じため息をついておるのであります。政府も、この漁民の嘆きが幾分かわかったか、わからないか、三十六年度予算には、魚価安定対策として、わずか八千万円を計上している。しかも、それさえも、生産調整組合という、生産の拡大と全く相矛盾した方法を抱き合わせて実施しようということでありますが、このようなこそくな手段で、しかも、相矛盾した政策によって漁業を発展させ、漁民の生活を高めようというがごときは、木によって魚を求めるということわざがありますが、このことを言のでありましょう。(拍手)政府は、この際、魚価安定についても、第四にお伺いした流通機構の問題と関連して抜本的対策を講じてはどうか、農林大臣のお答えを求めます。
 第六に、農業災害補償法についてであります。
 本法の抜本的改正については、政府において審議会を昨年から持ち、昨年四月から四十五人本委員会で八日間審議をいたしました後に、二十人小委員会で十二日間審議し、その間、三党の代表議員が数回にわたって意見調整をいたしました。わが党も忍びがたきを忍び、譲るべきは譲り、農民のために一歩前進した小委員会案が完成したことは、御承知の通りであります。ところが、突如としてこの小委員会案が根本的に踏みにじられるような決定が与党内部において行なわれたのであるが、一体、政府は本委員会に対していかなる責任を感じておるのか、また、いかなる方策をとらんとするのであるか、農林大臣は具体的な改正点とその経過をもあわせて説明されんことを要求いたします。わが党は、かかる政府の無責任な態度に対しては断固反対を表明するものであります。
 第七は、農業基本法について政府にお伺いいたします。
 政府はいつごろ基本法を御提案になる予定であるか。また、十二月八日の第三次幹事会案を拝見したが、あまりにも抽象論のみ満ち足りたものではないかと考えます。もちろん、基本法は宣言法である。そのことは、わが党も認めますが、わが党も、実は三カ年間検討に検討を重ねて、第三次草案から目下立法化を急いでおります。いずれ、近日中に提案いたしますから、そのときに根本的な農業の論争をいたすことにいたしますが、政府におかれても、国の責任を明確にした実体的宣言法まで前進させるところのお考えと御意思が農林大臣にあるのかどうかということを御答弁願いたいのであります。(拍手)
 最後に、池田総理に一言申し上げますが、国家財政、特に予算編成には、出るをはかって入るを制するという大原則があることは、御承知の通りであります。ところが、本年度予算編成の経過を拝見すると、分どり主義の横行であります。出るは出ほうだい、入るは取りほうだい、適切なるに見るべきものはないと批判せざるを得ないのであります。国家予算は大なるをもってたっとしとせず、適切なるをもってたっとしとするのであります。(拍手)しかるに、大蔵大臣の施政演説を拝聴するに、自画自賛、大幅増額のみの大なるを誇りとして、適切なるを誇る何ものもないのであります。入るを制するための減税公約は、諸物価一斉値上げの政府の号令で一切吹っ飛んでしまい、逆に実質的増税となることは明らかであります。三十六年度予算は、税金と物価の追いかけ競争を開始したにすぎないのであります。また、社会保障の公約も同様の条件下に置かれ、ただひとり、かせぐに追いつく貧乏神だけがおのれが春をうたい池田総理万歳を叫んでおるという、との皮肉な現実を、声なき民の声として銘記されんことを特に警告いたして、私の質問を終わりといたします。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 お話にもございましたように、他の所得は増加するが、農業所得はあまり増加しない、その通りでございます。従いまして、私は、施政方針演説で申しましたごとく、この農業の問題は難事中の難事と考えております。従いまして、農業の育成に対しましていろいろ想を練ったのでございまするが、えてして、今までのようなやり方では、第二次産業、第三次産業はどんどん伸びて参りまするが、農林水産業は、その事業の性質からいって、なかなか伸びにくいのでございます。そこで、今の日本の状態から申しまして、農産品に対する需要の関係、そしてまた、他産業の労働需要の増大等と見合いまして、農業がりっぱな企業として成り立つようなものにしよう、これが私の農業政策でございます。
 農業につきまして今後どうなるかという問題でございますが、先ほど申し上げましたように、農業自体におきまして、合理性と生産性の向上をはかっていくと同時に、他産業へのいわゆる移動というものを考えざるを得ない。そこで、いつどこへいくかという問題でございまするが、私は、全体の所得が倍になる場合におきましては、第二次、第三次の方が相当ふえるだろう、農業自体の所得はふえませんが、農家所得がふえるような方向を出したいと考えておるのであります。(拍手)従いまして、私は、自由主義経済に立っておりますので、何割減らすとか、どうするとかでなく、だんだん移り変わっていくような、りっぱな政策をとろうといたしておるのであります。農業基本法を国会に提出して御審議願いたいのも、この意味でございます。
 なお、お話にございました、所得倍増計画で農業投資が一兆円では少ないじゃないか、こういうお話でございますが、政府は、あの通りにやっていくのではございません。今後の推移を見ながら、農業投資につきましても十分考え、また、農産品の輸入防止、輸入農産品の国内での増産等々保護政策と同時に奨励政策をやっていく考えでおるのであります。(拍手)
  〔国務大臣周東英雄君登壇〕
○国務大臣(周東英雄君) お答えをいたします。
 まず第一に十年間における削減の年次計画を示せということでありますが、今、総理からお話をいたしましたように、積極的に農家を削減するということは申しておらないのであります。最近における経済上の実態からいたしまして、年々大体四十万人前後の農業労働力が他産業へ移動しておる現状は、これは所得倍増計画の委員会においても、農林漁業基本問題調査会におきましても示しているところでございまして、この率は大体二・四から二・九%の状態になっております。最近三カ年における労働力移動の状況はさようになっておる。それに対して、農業の自然的伸び、これも、最近の状況からいたしまして、大体二・九、二・八という形になっております。そういう形を合わせつつ、将来の農業の生産性の向上と農業それ自体の伸びをはかっていこうと考えておりまして、私どもは、かくのごとき労働力移動の現状に沿うて、それをその自然のままにまかせずに、ある程度転換し得るような形に導いていこうということを申しておるのであります。積極的に削減論を唱えておるわけではございませんで、十年計画は別に持っておりません。
 それから、経済の高度成長に追いつくために、倍増をするのには、社会党は可耕地三百万町歩をやって、輸入農産物をここで作るというお話は、また一つの御意見かもしれませんが、私どもは、ただいま総理が申しましたように、今一兆円という一応の所得倍増計画を立てております。ただ、私どもは、土地をふやすだけが問題でなくて、ふやした土地、また、土地改良によって生産性を上げた土地に何を植えていくか、農家に対して、大きな立場で今後十年後を考えつつ、もうかる農業にする、これに何を植えさせるかということが先に問題になっておる。それを計画せずに三百万町歩やっても御困難かと思います。中澤さんは非常に御勉強でありまして敬意を表しますが、私どもも、輸入農産物の国産化ということを唱えております。その一番大きなものは何か、小麦の輸入を国産化することでございましょう。ところが、小麦は、御承知のように、今ハード小麦をたくさんパン用として輸入しておりますが、品種改良の経過を経ていかなければ、直ちにこれは日本では植えられないのです。また、それをソフト小麦にかえるかどうかということは、やや安易でありますが、その程度においての主張、また、大豆のごときも輸入を国産化する、これはけっこうであります。しかし、それらの計画とともに、今後畜産というものを置きかえていく。これは大麦、裸麦に転換させていく一つの大きなものであります。これは、内需もふえるし、輸出もできる可能性もあるものでありますから、そういうものに作物の転換をしていく、いわゆる生産の選択的拡大という問題であります。その点については、私どもは、このたびの予算にも、大、裸麦の転換に沿うて作付け転換資金等のごときも与えつつ転換を持っていこうと考えております。これは一つの政治の大きな転換であります。しかし、このことは、私は計画の方を申し上げますけれども、川に馬を持っていくことはできても水を飲ますことはなかなか困難だとことわざに言いますが、農家に対して、今後における農産物を何にかえていくかということの理解を求めていかなければ困難だと思います。従って、中澤さんのごとく、大きく転換をやるということでございますから、そういう面におきましては、どうかこれらの関係法令が出ましたときに十分の御協力をお願いいたしまして、私どもがやらんとする政策の実体が農村にしっかり侵入するように、御協力をお願いいたしたいと思います。
 それから、貿易自由化についてお話でありますが、農産物自由化については、いつごろ行なうのか。主要農産物である米麦のごとき、また畜産物のごとき、ことに酪農製品のごときは、当分これは行なう意思はございません。また、大豆について、このたび七月ごろ行なう予定でありますが、これに対しては、大豆生産に関して反当収量が上がるように、その生産の品種改良等について相当額の予算を組みますと同時に、大豆について差額の補給を与えるような方法を講じつつ、これが保護をはかっていこう、かように考えております。
 その次に、青果物、水産物等についての流通機構はどうかというお話であります。これはごもっともなことであります。このたびの予算におきましても、特にこの点については、農家の所得を確保するために、倍増計画の一環として流通機構に対する措置を考えております。たとえば、畜産物等につきまして、昨年は供給が需要に伴いませんために非常に価格が上がりました。一面、これを増加しても、逆に流通機構の悪いために損をするというお話もありましたが、そういうことでは困りますので、新たに畜産事業団のごときを置きまして、酪農製品並びに豚等の価格安定、流通の安定をはかるための措置を講ずる施設をこのたび設けました。また、水産については、御指摘の通り、一時に多量に捕獲することのあるようなものにつきましては、先ほど八千万円では少ないとおっしゃいましたが、これはある程度自主的に調整した形のものができております。その自主的調整の積立金等に政府の金を合わせまして、これが時に買い入れ、保管をするというようなことなり、また、冷蔵庫その他を各地に置きましてこれが安定をはかり、その市場、流通に関する時期的な調整をはかることによって進めるつもりでおります。
 ただ、私がこの際申し上げたいことは、何もかも国で国でというのではなくて、青果物のごときは、ほんとうは、農業協同組合、販売組合等におきまして、大阪市場、東京市場を市場とする背後地は、その周囲の府県においてどれだけあって、どれだけの品物を出すかということは、年々の統計でわかるはずであります。そういう統計を見ながら、生産の自己的な調整をはかりつつ出荷調整をするというようなことを指導して参りますことが第一であります。それに対しての市場調査その他の考え方を盛り込むことが一つの行き方であって、これはぜひ農業団体の自覚を促す必要がある、かように考えるのであります。(拍手)
 それから、食管会計についてのお話でありますが、なるほど、これにつきましては、御指摘のように、管理費、事務費、人件費等を払っております。これは、ああいう特別会計の自己の負担においてという説と、そういうものは当然政府が負担すべしという議論がございましたが、今日は、御指摘のように、これが食管会計の負担になっております。これなんかは将来研究すべきものであるかと思います。
 それから、米に対して直接統制を廃止して間接統制に移るという話があるがどうかというお話。そういうことは、政府ではいまだかつて言うたことはございません。米については、今日の場合、直接統制を廃止するという意思はございません。
 それから、次に農業災害補償に対する問題でありますが、お話のように、これは、社会党におかれまして、中澤さんなりあるいはまた皆さん非常に御協力いただきまして案ができましたが、しかし、このたび提案しようとしておりまする法案は、根本的に変わったものではございません。あなた方社会党の皆様に御協力いただいた線は、しっかりと出ておるのであります。たとえば、責任体制を町村の末端の組合に負わせること。農民負担を軽減するために保険組合の事務費、人件費を全額国庫負担とすること、また、一つ中央に農業保険公団のごときものを作ること、これは全部入っておりますので、根本的に踏みにじっておるということは当たらないかと存じます。ただ、あなた方が御指摘になる点は、共済連を廃止すべしという御意向であったようでありますが、これを廃止するという機構の問題をとらえて、農民のために実質になる事柄があなた方の主張通り入っておるものをやめるかどうかということになりますと、私どもは、農業者の保護ということをまず第一に考えて、農業者のためにあなた方の主張の三点が入っておるならば、しばらく共済連を残してもよいのではないか、かように考える次第であります。御了承願います。
 それから、農業基本法はいつごろ出すかということでございますが、これは、私ども、ただいま立案を急いでおります。草案はこの前出ておりますが、相当長くかかるかと思いますが、できるだけ早く出したいと思います。しこうして、これに対して、政府のある程度の義務的な規定を置くかどうかということは、大体そういう方向へ規定を持っていきたい、かように考えております。
 もう一つ、日米加ソ漁業問題でありますが、お話の通りに、基本の問題として、漁業の交渉というものは、あくまでも、現在のサケ・マス等の繁殖保護上、それをどれだけとったらいいかという資源論に基づいて、統一ある形にこれをきめることがよろしかろうと思います。ただ、日米加の問題とソ連との関係が違うというお話でありますが、私の承知しておりますところでは、アメリカの方の関係におきましても、西経何度でございましたか、御指摘がありましたが、実際の場合は、回遊の魚でありますので、相当あれの方の関係がわれわれの漁場に入っておるのをとっておるような状況でありまして、あまり変わらないと思います。
 それから、漁業対策についてのお話でありますが、価格安定につきましては、ただいま申し上げましたように、三十六年度予算におきましては、サンマ等の特別なものに対して、保管あるいは調整というような機能を行ないまするし、また、冷蔵庫を産地、消費地におきまして、価格の安定と時期的の調整をはかる、かようなことを考えておることを申し上げます。
  〔国務大臣水田三喜男君登壇〕
○国務大臣(水田三喜男君) 私に対する御質問は自由化の問題でございましたが、この点は、ただいま農林大臣がお答えした通りでございます。
  〔国務大臣石田博英君登壇〕
○国務大臣(石田博英君) 私に対する御質問は、農村人口を削減した後の雇用、失業対策ということでございますが、現在約千六百万に上る農村人口が、今御質問のように三割なり四割なり一ぺんに削減されて失業者として出てきた場合の雇用対策はございません。私は、手を上げるよりほか仕方がないのでありますが、だれもそういうことを言うている人はないのでありまして、第二次産業、第三次産業の膨張に従ってこれを吸収していくというのでありますから、従って、それに沿うような職業訓練計画を立てますとともに、同時に、地域的定着性との関連を考えまして、地方への工場分散等を通じて処理して参りたいと思うのであります。
 また、先ほど勝間田さんのお話にもありましたが、格差は増大し、失業は増加し、そして、新しく雇われるのは臨時工ばかりという御議論でありますが、しかし、地域的格差は、なるほど、昭和三十二、三十三年ごろは増大する傾向にございましたが、三十四、三十五年は逆に縮小しつつあります。また、企業の賃金の規模別路差も同様でありまして、こまかい数字等はいずれ予算委員会等で申し上げたいと思います。
 それから、雇用の伸びは、昭和三十年を一〇〇といたしますと、三十四年が一三五、三十五年は一四五でありまして、一〇%程度常用雇用は伸びておるのであります。それから、現在の常用雇用労働者総数は二千十六万でありますが、その中で、臨時工の数が九十六万、日雇い者は百万、それから季節労働者が二十五万でありまして、しかも、それは建設業、農林業が大半であります。
 臨時工の問題は、御指摘の通り、重大な問題でありますが、しかし、雇われて通う者は臨時工ばかりというような御表現は、事実をはなはだしく歪曲するものと考えます。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(久保田鶴松君) 西尾末廣君。
  〔西尾末廣君登壇〕
  〔副議長退席、議長着席〕
○西尾末廣君 私は、民主社会党を代表して、政府の外交、内政にわたる施政方針について質疑を試みるとともに、われわれの所信を明らかにしたいと思うのであります。
 私は、本年の政治の進路を決するにあたって、最大の考慮を払うべきは次の二点であると考えます。その第一は、わが国の平和と安全維持の基本的方向を明らかにすることであり、第二は、政府の膨張予算の谷間にある国民各階層間の生活格差を、経済拡大の過程においていかにして縮小するかということであります。
 まず、私は、前段のわが国の平和と安全の問題から政府の所信をただしていきたいと存じます。
 昨年の秋以来、世界政治に三つの大きな動きが台頭し、その動きは、今後の世界政治の大きな基調として進行しようとしておるのであります。
 その第一は、ケネディ政権の登場によって、従来のアイク、ダレスの硬直した米外交が、彼のいわゆる新開拓精神に基づく弾力性ある外交に置きかえられつつあることであります。昨日発表されましたケネディ大統領の一般教書でも明らかなように、国際平和を達成するために、あらゆる努力を払おうとする、彼のたくましい意気込みが見受けられるのであります。
 その第二は、昨年十一月、モスクワの八十一カ国の共産党会議で、いろいろな論議の末ではあったけれども、結果におきまして、平和共存政策が確認されたのであります。それは、あるいは共産主義の世界戦略の一環であるにもせよ、自由諸国の出方次第では世界平和についての東西間の話し合いが行なわれる可能性が生まれ出たのであるということは間違いない事実であります。このほど、RB47乗組員を釈放したことなどはその一つの事例でありまして、共産側の中にも東西間の対立を緩和する動きが生じつつあると見ることができるのであります。
 その第三は、アフリカにおいて誕生した新興諸国が世界政治で大きな役割を果たしつつあるということなどであります。
 こうしたもろもろの動きを、一概に冷戦の緩和、東西歩み寄りの方向と即断し、あるいは過大評価することは行き過ぎであるかもしれませんけれども、また、それとともに、これを軽視することは国際情勢の認識を誤るものといわなければならないのであります。(拍手)われわれは、これらの冷戦の緩和と、国際平和に通ずる世界のあらゆる動きを積極的に活用する態度を常に堅持していなければならないのであります。そのために、われわれがとるべき方向は次の二つであります。
 すなわち、その第一は、冷戦の緩和と国連強化への積極的協力、そのための具体的努力の積み重ね、すなわち、国連中心外交の推進であります。
 その第二は、対米追随、中ソ迎合、いずれの立場をも排し、特に冷戦の片棒をかつぐような安保条約を薄めていく方向、すなわち、日本自主独立外交の推進であります。
 しかるに、池田内閣は、一方では、施政方針演説の中で、世界は大きな転機に差しかかっていると認め、また、東西双方を結びつける方向により多くの関心を払うべきだと言いながら、実際の外交政策では、吉田内閣以来の対米追随の外交路線に相変わらず固執し、何ら世界情勢の転機に即応する新たなる外交方針を行なおうとしてはいないのであります。(拍手)
 以上のような観点に立って、私は、対米追随外交から脱却する自主外交、冷戦の緩和に積極的に協力する国連中心外交の具体的内容について次の四つのことを提案し、これに対する総理大臣の所信を伺いたいと思うのであります。
 第一は、中国の国連加盟について、日本政府が積極的に努力することであります。
 今、世界の平和を守るための最大の焦点は、核実験停止協定を含めて、国際的の軍縮協定が実現されるかいなかの一点に合わされているのであります。しかるに、六億の人口と二百万の常備軍を持ち、また、核武装の用意すらあると伝えられる中共を除いた軍縮協定は、何ら意味を持たないということは、今や世界の世論となっているのであります。(拍手)国連を中心に世界の平和を考えるとき、この一事をもってしても、中共を国連に加盟せしめる必要性はきわめて明らかであります。特に、中国と隣接するわが国にとって、わが国の平和と安全の確保のためには、中共の国連加盟の実現と国交正常化とは、今年度の外交上の最優先問題であるといわなければなりません。(拍手)
 しかるに、池田内閣が、この問題について何ら積極的な姿勢をとらないのは、なぜでありましょう。政府は、今後の国連活動の中で、この問題を積極的に取り上げるべきである。同時に、この問題は、台湾問題の処理という難問題をかかえておるのであります。かつ、アメリカの外交方針とも重大な関係があることからして、この際、アメリカに対して、対中共関係の是正を直接打診する必要があります。また、中共の核武装問題をいかに判断しているか。もしそれ、そのおそれありとするならば、欧州における核武装国の出現に対しても今より具体的な手を打たねばならないのであります。これらの諸点に関する総理の所信をまず伺いたいのであります。
 第二に、安保条約再改定のための対米再交渉を開始することであります。
 ケネディ大統領のもとにある多くのスタッフの中には、日本に新安保を無理に押しつけることは日本国内に反米中立的ムードを強化することになるから再交渉に応ずべきであるとの意思表示をした者もあり、また、長距離弾道弾やポラリスのごとき強力なる核兵器の発達した今日、日本における基地の必要性は薄らぎつつあるとの意思表示をした者もあります。その上に、ラオス問題に対するケネディ政権の弾力性ある態度などから見て、再交渉の可能性は今や十分にあると私は思うのであります。総理は、この際、わが党が主張してきたように、事前協議の問題、海外派兵の問題、核兵器持ち込みの問題、常時基地撤廃の問題、さらに、条約期限などの諸点について、再交渉に踏み切るべきであると確信するのであります一総理は、承るところによりますと、近く渡米するとのことでありますが、その際、以上の諸点につきましてケネディ大統領と十分に話し合ってみるべきであると思いますが、総理の所信はいかがでありましょう。この際伺っておきたいと思うのであります(拍手)
 第三は、沖繩の施政権返還要求についてであります。
 沖繩の現状についてはここに多言するまでもありませんが、名目上日本政府の潜在主権が認められながら、その実質は、アメリカの完全なる軍政支配のもとに置かれ、アメリカの極東戦略をになう重要拠点として、その全土が軍事基地化されているのであります。わが国領土の一部がこのような状態に置かれていることは、日本復帰を熱望している沖繩居住民の総意に反するものといわなければなりません。政府は、この際、沖繩住民の切なる願いにこたえるためにも、アメリカに対してその施政権の返還を要求すべきであろうと思うのであります。また、施政権の返還が正式になかなかされなくとも、その間、われわれの同胞である沖繩居住民の生活水準の引き上げとか、義務教育充実などについて、日本政府が積極的に援助する方途を講じ、実質的にわが日本の施政権を行使するよう努力すべきではないかと思いますが、この点について総理はいかなる決心を持っておられましょうか。
 第四は、わが国の防衛に関する考え方を明らかにすることであります。
 歴代保守党政府は自衛隊を漸次増強してきたが、池田総理もまた、その所信表明の中で、祖国愛を国民に訴えるだけで、自衛隊については一言半句も触れていないのであります。そんなことで、一体、責任ある政治といえるでありましょうか。自衛隊が生まれて十年、昨秋以来、この問題は国民の中にもいろいろと論議が起こっておるのであります。政府は、新安保条約を締結したにもかかわらず、国の防衛と自衛隊の問題については全くほおかむりでありまして、国民は、自衛隊はどこへ行こうとしておるのであるかということを少しも知らされていないのが実情であります。われわれは、冷戦の緩和と国連の普遍的安全保障機構の完備に見合いながら、自衛隊を質的に改編、縮小していくべきであると考えているのでありますが、総理のこの点についての所信を伺いたいのであります。
 次に経済問題についてでありますが、総理の所信をただしたい。
 池田内閣が登場してわずか半年しか時日を経過しておりませんが、総理登場のころと現在とでは、国際情勢、特に国際経済の動向は著しく変化しておるのであります。この点につきまして、昨日の総理の施政方針演説が、わが国経済発展の実績の明るい面だけを強調して、その裏に横たわる暗い面やいろいろの矛盾に目をそらして、世界経済の変化に対処すべき真剣な検討が国民に対して語られていない点は、まことに残念であります。(拍手)昨夜発表されたケネディ一般教書は、米ドル価値堅持の決意を強く表明しております。しかも、中南米や後進諸国には援助を続けるが、先進諸国には協力をかえって求めておるような状態であります。これがわが国経済に及ぼす影響としては、池田内閣が期待しているように、明年度のわが国輸出一割増はなかなか困難になり、かつまた、米国民間資本がわが国内の有利な産業に資本導入を強く要請してくることもまた明らかであろうと思うのであります。
 これらの諸点について、政府が何ら具体的に問題点を指摘することなく、国民をいたずらに高度成長ムードに酔わしている点は、徳川家康流の、いうところの、民は知らしむべからず、よらしむべしとするところの権力政治の現われではないかと思うのであります。(拍手)明年度経済は、少なくとも後半期になれば楽観を許さない事態になるおそれが強いことは、今や国民の憂慮の種になっておるのであります。かつて、石橋内閣当時、一千億施策、一千億減税の積極政策を、国際収支が急速に悪化している最中に頑迷に主張した総理は、今また同じ誤りを犯すのではないかと私は憂慮せざるを得ないのであります。(拍手)治にいて乱を忘れずという格言があるが、国の施策におきましても、好況の際において不況時に備える政策を用意しておかなければなりません。アメリカの政治の中には、机の引き出しの中にしまっておく政策というのがあるのであります。これは好況時において不況時対策をちゃんと整えておって、たとえば、公共事業などの政策を立案しておいて、それを机の中に一応しまっておく、不況時になりますれば、いつでもこれを出して実施する、こういうことの意味が含まれているのであります。総理は、このような、洗いざらい財源を吐き出してしまった、弾力性のない楽観経済政策をとっているが、もしこの見通しを誤った場合に、その責任をとるつもりであるかどうか。この点につきましては、特に責任を持って御答弁を願っておきたいと思うのであります。(拍手)
 次に、二兆円に近い予算は選挙公約と所得倍増計画に基礎を置いて編成されたのでありましょうが、これらの予算編成は、一体、だれのための奉仕を目ざしているのであるか。なるほど、総理は、経済政策として、所得倍増はまず所得格差の是正からということを言われておりますが、事実はこれに反して、政府自身の諸資料が示すごとく、一般世帯と貧困世帯の消費格差は拡大しているし、大企業と零細企業の生産性も賃金も、格差は一向に縮小されておらないのであります。それどころか、これらの是正をはかるべき予算編成の実態を見ると、予算編成の実権は行政府を離れて与党に移っており、次いで、圧力団体の暗躍次第で予算額が大幅に動かされておるのであります。かくて、国民大多数の声なき声は与党の耳に入らず、でき上がった明年度予算案は、格差縮小予算ではなく、むしろ格差拡大予算になり果てている始末であります。(拍手)
 所得格差の是正について最優先を要する措置は社会保障費の拡充であります。政府は、明年度の社会保障費として二千四百六十億円を計上しておりますが、本年度に比べての増額分の大部分は当然増であって、新規政策としての増額は、実は一部の圧力団体の意見に屈服したものばかりだといわれても仕方のない状態である。(拍手)政府の医療費の一割値上げ案は、同時に、国民の保険料金負担の一割引き上げを予定しておりますし、従って、低所得者にとっては手痛い値上げであります。これは貧困と病気との悪循環を断ち切るのではなく、かえって悪循環を強める方向であります。また、生活保護費基準の引き上げを一八%にとどめて、厚生省の要求する極貧生活者の最低生活維持の方針を無視したのは、いかなる理由に基づくのでありましょうか。その上に、さらに四月より拠出制国民年金が実施されれば、低所得者といえども、夫婦で月四百円から六百円の義務負担を課せられることになるのであります。総理の主観的意図がどこにあるにせよ、このような社会保障予算の編成は、低所得者にとって、サンタクロースどころか、納税能力もないのに税務署からの訪問を受けるがごとき収奪を意味するものではないかと思うのであります。(拍手)
 いわゆる所得格差是正についての第二の問題点は、物価引き上げ問題であります。
 政府は、予算膨張並びにこれに助長された民間設備投資の大幅増額と並んで、国鉄運賃、郵便料金、電力料金などの公共料金値上げ、ガソリン税引き上げをはかっております。これらが民間の諸サービス料金や一般価格に影響を及ぼすことは、過去の経験から見て明らかであります。総理は、卸売物価が横ばいだから消費者物価は上がらないと言っておりますが、過去一年間を見ましても、卸売物価が上がらなくても、消費者物価は三・四%の値上がりをしております。また、より重要なことは、大企業が独占的に各産業間で価格協定を実施し、卸売物価の下落防止によりて消費者物価の値上がりムードを支援している情勢が生まれてきつつあるのであります。政府は、公共料金の値上げは他の一般物価に波及しないと言うが、その根拠はきわめて薄弱であります。総理は、なぜ公共料金の値上げを極力押えなかったのであるか。この点について、政府の施策はあまりにも努力が足りなかった、怠慢といわざるを得ないのであります。
 第三に、減税について見るならば、明年度税収の自然増が次第に見積もりをふやされてきた経緯にかんがみれば、今回の所得税減税があまりにも低水準であることは明白であります。しかも、減税の主たるねらいは法人税に傾き、国民消費生活に直結する間接税については何ら手を触れていないのは、いかなる理由によるものでありましょうか、全く不可解であります。
 第四に、産業所得の格差が最もはなはだしい農業問題について、政府は、農業基本法において、結局零細農を農業外に追い出す資本主義的合理主義の貫徹を意図しております。食管会計においても、政府の基本方針は明らかならず、麦価の引き下げだけを行なっているように見えるのであります。中小企業対策においても、政府は前例のない増額を行なったと言うでありましょうが、予算全体の増額から見ても、貿易自由化に備える今後の中小企業の困難さから見ても、今回の予算編成における中小企業対策費の比重はきわめて軽視されたものといわなければなりません。
 このように、政府の財政経済政策全般並びに明年度予算編成全般にわたって、いかに総理が弁明されようとも、所得格差是正への努力は全くなされていないのであります。むしろ、予算規模の大膨張にもかかわらず、所得格差の問題を軽視したもの、従って、大企業本位の予算編成をあえて強行したものと断定せざるを得ないのであります。私は、所得倍増といいながら所得格差拡大に傾き、かつ、低所得者の生活向上について何ら計画性も長期見通しもないと断ぜざるを得ません。私が右にあげた事例につきましては、総理並びに関係大臣において、それぞれ具体的な御答弁を求めたいと思うのであります。
 最後に、総理の言う政治の姿勢について一言しておきたいと思うのであります。
 総理は、施政方針演説の中で、「政府みずからその姿勢を正し、」あるいはまた、「相互の良識と寛容の精神をもって、審議の委曲を尽くして堂々と事を決する」と言われております。その範囲において、私は全く同感であります。しかし、問題は、むしろその内容にあるのであります。総理の言う姿勢を正す云々とは、単に低姿勢であるとか、あるいはまた、形式的に少数野党の意見を十分に言わせるにとどまってはならないのであります。一番大事なことは、その少数意見が正しいものであったり、また、国民世論を正当に反映するものであるということがわかったときには、それを率直に認め、これを取り入れ、また、原案を修正するなど、謙虚な態度を常に堅持することでなければならぬのであります。そのことは、保守党の歴代内閣が従来とってきたような、内閣が提出した法案や議案が国会で修正され、あるいは撤回を求められることが、何かその内閣の権威を失墜するというような考え方であろうと思うのでありますが、しかし、このような考え方は、旧憲法時代の権力政治のときの遺産であります。総理は、自民党の近代化ということを盛んに唱えておるが、それは、このような古い旧憲法時代の権力支配的な政治の考え方、それを自民党の中からまず完全に追放するということから出発しなければならぬと思うのであります。そのことが、とりもなおさず、総理の言う政治の姿勢を正すことになり、真の意味で民主政治の基本であると私は考えておるのであります。この点に対する総理の所信を明確にされたいのであります。
 以上の諸点について率直なる御答弁を求めまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 西尾さんの世界情勢に対する判断、並びに、わが国が国連を中心としてやっていくべきだということにつきましては、私と変わりないようです。ただ、御質問の、中共問題が重大であるから、これを早く、承認とはおっしゃいませんでしたが、今の国連への代表権の問題を認むべしと、こういうことにつきましては、私は、世界の情勢を見ながら、自主的に、弾力的に進めていきますということだけで、台湾問題もございますし、お気に入るような御返事ができないことを遺憾に思います。
 なお、安保問題について、もし私が訪米した場合に打ち合わせをしたらどうか。私は、ただいま、安保問題について、改正するという考えは持っておりません。
 第三の、沖繩の施政権返還の問題でございまするが、従来、前内閣におきましても、こういう問題があり、話には出ました。しかし、今の国際情勢、冷戦下におきましては、アメリカは強硬に反対いたしておるのであります。私は、この場合におきましては、ほんとうに、琉球の方々の生活水準の向上、経済の発展に、日、米、琉球、この三者が話し合いまして、とにかく民生の安定と生活水準の向上をはかっていくよりほかに、ただいまはないと考えておるのであります。従いまして、三十六年度予算におきましても、いろいろな方法で、沖繩住民の方々の満足のいくように、できるだけの措置を予算上とったのであります。(拍手)
 四番目の自衛隊につきましては、質的に改善する必要がございます。日本の国力の増加とつり合って、防衛につきましては漸増方針をとっていく考え方でございます。
 次に、経済問題につきまして、外国の事情その他をお話しになりましたが、私は、昨日のケネディの方針にもありますように、ドル価値の維持、そうして為替・貿易の自由化、この原則をはっきり言っておりますので、予定通りの輸出はできるものと思っております。また、その方向に努力をいたしたいと思います。
 なお、今回の予算あるいは財政計画が見通しを誤った場合に責任をとるか、私の考えでは、見通しを大きく誤ることはないと思います。従いまして、見通しでございますから、寸分違わぬということはございません。私は、責任をとるほどの見通しの誤りは起こらぬと確信いたしております。
 それから、所得格差の拡大でございますが、これは、私は拡大しておるとは思いません。ただ、生活保護を受けておられる方々に対しましては、これはお話の通り、一般の生活水準が上がるにつれて生活保護費を受けておられる方の生活は上がっておりません。これは認めましたので、今までにないほどの、一八%の増加をいたしたのであります。しかし、これでも十分ではございませんので、今後におきましても、社会保障制度の拡充をはかり、特に、生活保護を受けておる方々の生活水準の引き上げにつきましては全力をあげていきたいと考えておるのであります。
 なお、物価の問題につきまして、私は、卸売物価は横ばいで、消費者の物価指数というものは、ある程度のサービスがあるから上がっております、こう言っておるのであります。ただ、消費者物価につきましても、できるだけ上がらないように努力いたしていくつもりでございます。なお、公共料金につきましては、私は、極力押えまして、あの程度はやむを得ないと考えた次第でございます。
 中小企業対策につきましても、従来に増して相当予算増の措置をとり、財政投融資でも今まで以上の施策を講じておるのであります。
 政治の姿勢を正すことにつきましての御意見は全く同感でございます。私は、謙虚な態度で民の声を聞くと同時に、野党の方々の御意見も十分尊重いたしたいと思うのであります。(拍手)
 以上であります。
○議長(清瀬一郎君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
 議員請暇の件
○議長(清瀬一郎君) なお、お諮りいたすことがあります。
 議員高碕達之助君から、米国における政治経済事情視察のため、一月三十一日から二月九日まで十日間、議員中曽根康弘君から、米国、中南米の憲法及び政治の実情等調査のため、一月三十一日から三月十五日まで四十四日間、右いずれも請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。
     ――――◇―――――
○議長(清瀬一郎君) 本日は、これにて散会いたします。
   午後五時四十一分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  池田 勇人君
        法 務 大 臣 植木庚子郎君
        外 務 大 臣 小阪善太郎君
        大 蔵 大 臣 水田三喜男君
        文 部 大 臣 荒木萬壽夫君
        厚 生 大 臣 古井 喜實君
        農 林 大 臣 周東 英雄君
        運 輸 大 臣 小暮武太夫君
        郵 政 大 臣 小金 義照君
        労 働 大 臣 石田 博英君
        建 設 大 臣 中村 梅吉君
        自 治 大 臣 安井  謙君
        国 務 大 臣 池田正之助君
        国 務 大 臣 小澤佐重喜君
        国 務 大 臣 迫水 久常君
        国 務 大 臣 西村 直己君
 出席政府委員
        内閣官房長官  大平 正芳君
        法制局長官   林  修三君
        総理府総務副長
        官       佐藤 朝生君
     ――――◇―――――