第038回国会 本会議 第9号
昭和三十六年二月二十三日(木曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第五号
  昭和三十六年二月二十三日
   午後一時開議
 一 農業基本法案(内閣提出)及び農業基本法
  案(北山愛郎君外十一名提出)の趣旨説明
    …………………………………
 第一 所得に対する租税に関する二重課税の回
  避及び脱税の防止のための日本国とアメリカ
  合衆国との間の条約を修正補足する議定書の
  締結について承認を求めるの件
 第二 所得に対する租税に関する二重課税の回
  避及び脱税の防止のための日本国とパキスタ
  ンとの間の条約を補足する議定書の締結につ
  いて承認を求めるの件
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 松平国連大使の海外派兵についての発言に関す
  る緊急質問(石橋政嗣君提出)
 松平国連大使の発言に伴う自衛隊の海外派遣に
  関する緊急質問(受田新吉君提出)
 農業基本法案(内閣提出)及び農業基本法案(
  北山愛郎君外十一名提出)の趣旨説明及び質
  疑
   午後二時十分開議
○議長(清瀬一郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 松平国連大使の海外派兵について
  の発言に関する緊急質問(石橋
  政嗣君提出)
○田邉國男君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 すなわち、この際、石橋政嗣君提出、松平国連大使の海外派兵についての発言に関する緊急質問、及び、受田新吉君提出、松平国連大使の発言に伴う自衛隊の海外派遣に関する緊急質問を順次許可されんことを望みます。
○議長(清瀬一郎君) 田邉君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
 まず、松平国連大使の海外派兵についての発言に関する緊急質問を許可いたします。石橋政嗣君。
  〔石橋政嗣君登壇〕
○石橋政嗣君 私は、日本社会党を代表いたしまして、去る二月二十一日午後外務省において開かれた外交問題懇談会の席上並びにその直後に行なわれた記者会見における松平国連大使の発言と、これをめぐる諸問題について、政府の見解をたださんとするものであります。(拍手)
 質問に入る前に、松平大使の発言をいま一度思い起こしてみる必要があると思いますが、伝えられるところによると、発言の要旨は次の三点に集約されると思います。
 第一は、わが国がコンゴに派兵していないため、国連での発言権が制約されている、過去においても、レバノン問題が起きた際、日本政府が国連監察団への参加を拒否したため、国連代表部は非常に窮地に立たされたということであり、第二は、わが国が派兵していないことは、国連協力のあり方から見ても反省しなければならないことで、今後は、せめてオブザーバーを派遣できるようにすべきだということ、なお、将来国連警察軍の結成を予想しなければならないのであるが、日本が絶対に派兵しないということでは筋が立たない、派兵は本来国連協力の根本をなすべきものだということであり、第三は、国連大使の仕事は、いわば国内より一つ上の国際的見地に立って行なうべきもので、国内の政治情勢に迎合すべきではないというのが私の信念だ、という三点であると思います。
 小坂外務大臣は、その職責上、すでに松平大使と会い、その真意をただしているようでありますので、まず第一に、外務大臣に対し、発言の内容についてお尋ねいたします。
 それは、わが国がコンゴに派兵していないので、国連での発言権が制約されているということでありますが、わが国が国連当局からコンゴに派兵方を依頼された事実があるのかということであります。コンゴ派遣の国連軍はアフリカ諸国の軍隊で構成するというのがハマーショルド事務総長の当初の方針であったと思うのでありますが、そのような事実があったのかどうかを、まず承りたいと思います。もし、そのような事実があったとすれば、なぜこれを断わったのか、また、どのような形で国連における発言権が制約を受けているのか、具体的にお答えをお願いいたします。(拍手)コンゴに自国の軍隊を派遣していないアメリカ、ソ連、イギリスなどの諸国が活発な発言を行なっている現実を見るとき、全く理解しがたい発言とわれわれは受け取っておりますので、具体的にお示しをお願いする次第です。
 同じように、一九五八年、レバノン問題が発生したとき、国連監察団への参加の要請があったのかどうか、拒否したとすれば、その理由、そして、そのために国連代表部がどのような窮地に陥る羽目になったのかもお答え願います。この点に関し、松平大使は、別の機会において、レバノン問題などで日本の果たした役割は国連で高く評価されているという、全く矛盾した発言を行なっていることでもありますし、具体的に御説明をお願いするものです。かりに、コンゴ派兵の要請がなかったにもかかわらず、あったかのごとく大使が言い、あるいは国連での発言権が制約されたとか、あるいはレバノン監察団への参加を拒否したために代表部が窮地に立った事実がないとするならば、松平大使は事実を歪曲し、国連大使としての無能力を隠蔽するためにこのような発言を行なったものと推察することもできるのでありますが、この点はいかがなものでありましょうか。私がなぜこのような失礼なことをあえて申し上げるかといえば、最近、政府・与党の中にも国連代表部の強化が強く叫ばれ始め、具体的な人選が行なわれ、一部実現を見た事実があるからであります。松平大使の発言は、とりようによっては、このような一連の動きに対する反発であり、弁明でもあると考えられますので、お伺いする次第であります。
 第二にお尋ねしたいことは、派兵は本来国連協力の根本をなすべきもので、日本が絶対に派兵しないということは筋が通らない、この点からも十分に反省しなければならない、と述べていることであります。これは、非常に重大な問題でありますので、池田総理にお答えをお願いしたいのであります。総理は、このような考え方をまず第一に支持するつもりでおられるのかどうか、もし総理がこのような考えを支持しないとすれば、松平氏の発言によると、いかに国連代表部の陣容を強化してみても、それは本質的な国連外交の強化策とはならないということになりますが、この点について、いかがお考えですか。この場合における具体的な国連外交の強化策といったものについても御説明を願えれば幸いであります。もし、松平発言を支持するとするならば、池田内閣の強調してやまない国連外交の強化とは、自衛隊派遣という武力の裏づけを考えているということであり、これはまた、わが国国連外交の重大なる転換を意味するものと思いますので、お尋ねする次第であります。
 これは、過去において、総理も有力な閣僚であった岸内閣が、この点についてどのような見解をとっていたかを思い起こせば、はっきりすると思います。一例として、あの歴史的な新安保条約を審議した特別委員会における当時の藤山外務大臣の答弁を引用させていただきます。前藤山外相は、こう述べております。「先ほど来たびたび御説明申し上げておりますように、われわれは、国連の決議、総会の決議あるいは安保理事会の決議、そういうものを尊重いたしますことは当然でございます。従って、これにできるだけの支持を与える、これは国連のメンバーとして当然考えなければならないことであります。しかし、その支持の方法というのは、それぞれの国によっていろいろあるわけでございまして、必ずしも、すぐに、国連軍ができたからといって、軍隊を出さないという国もございます。そのかわり、軍隊を出さないけれども、赤十字活動で貢献する、あるいは、何と申しますか、兵站的な供給をやって支持するというように、いろいろな国があるわけであります。そういう国は、それじゃ国連の決議を尊重しないかといえば、やはり尊重して、そういう自分の一番適当と思う方法によりましてできるだけサポートをする、こういうことであります。そのこと自体は決して国連の精神に反しているわけではございません。」云々と述べております。これは、昨年五月六日、安保特別委員会における発言内容であります。わずか数カ月前のものであります。また、松平大使が自衛隊のレバノン派遣を断わったため苦境に立ったと称する一九五八年六月以後のことであることは言うまでもありませんし、そのような事実があったとしても、それを承知で打ち出した日本政府の正式見解であったと思うのですが、池田内閣は、早くもこのような方針を放棄し、国連協力の名のもとに海外派兵の既成事実を作り出そうとしているのか、あわせてお伺いをする次第であります。(拍手)また、もし、そういう事実はない、考え方は変わっていないというならば、国連協力の方式、限界という最も重要なる根本理念について、かくも政府と見解を異にする者を国連大使に任命している責任をわれわれは追及せざるを得ないのであります。(拍手)総理のこの点についての明快なる御答弁をお願いいたします。
 質問の第三は、本質的な問題として、憲法と海外派兵についてであります。これは、また、要約の第三として冒頭に申し上げた、内政迎合はいけないという松平発言とも関連するものであります。政府がもし国連協力の面で何らかの制約を受けるとすれば、それは憲法上の制約であろうと思います。そうだとすれば、国連大使の仕事は、いわば国内より一つ上の国際的見地に立って行なうべきもので、国内の政治情勢に迎合すべきでないというのが私の信念だ、国内情勢は本省で考えればよいことなので、私は日本語の新聞は読まないことにしているという、一昔前にわわれわれが常々聞いたせりふにちょっと似た感じのこの発言は、全くの暴言といわねばならないと思いますが、いかがなものでありましょう。(拍手)国民世論、国会の意思、憲法を超越した外交などというものがあるかのごときかかる暴言を、よもや総理や外務大臣が認めることはなかろうと思いますが、この発言の真意と、この点についての政府の見解とをお尋ねする次第であります。また、もし、この発言が事実であるとすれば、松平大使は、明らかに、憲法第九十九条に規定された、憲法を尊重し擁護する義務にも反すると思いますが、いかがなものでありましょうか。
 日本国憲法第九条は、明らかに、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」と規定し、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」と宣言しております。しかるに、歴代保守党内閣は、この憲法解釈の拡大に次ぐ拡大をはかって、今や自衛隊は海外派兵以外は何でもできるといわんばかりの段階にきているのでありますが、との海外派兵すらも国連協力の名のもとに合憲なりとしようとしているのではないかという疑念をわれわれは持つものであります。(拍手)
 そこで、私は、まず第一に、わが国は国連が要請する派兵を受諾するととが憲法上できるのかどうかという基本的な態度を、まず総理にお伺いしたいと思います。
 なお、具体的な例をあげてお尋ねしたいと思うのでありますが、次のような場合は、憲法上、自衛隊の参加は可能なのでありましょうか。すなわち、一九五六年十一月、スエズ動乱に対処するため国連総会の決議に基づいて設立された、国連緊急軍のような場合はいかがですか。この緊急軍は、敵対行為を中止し、監督するためのものであるから、軍事制裁を目的とする国連軍ではない、つまり、軍事制裁を目的とする憲章第四十三条による国連軍や、一九五〇年、朝鮮動乱の際、安保理事会の勧告に応じて各国の部隊によって編成された国連軍とは性格の異なる、憲章二十二条でいう国連総会の補助機関としての性格を持つものとされたようでありますが、このような形のものには参加できるのかどうかということであります。
 次に、先ほどから問題となっている、レバノンに派遣された国連監察団、ラオスに派遣された休戦監視班、あるいは今回派遣されているコンゴ国連軍のような場合は、憲法上、自衛隊の派遣が可能なのかどうか、ということをお尋ねいたしたいと思います。
 なお、松平大使が述べている、オブザーバーとしての参加とは、具体的にどういうことを意味するのか、また、そのような形でなら可能なのか、ということについてもお答えを願いたいと思います。もし、あくまでも武力の行使と関係のない警察行動的なものは憲法上参加することもできるというのであれば、その限界をお示し願いたいのであります。と申しますのは、もし、そのような部隊に参加するとしても、当然武器を持っているのであり、派遣後、どういうことで武力を行使しなければならないような事態に直面するかわからないのでありますから、ぜひその限界を明らかにしておいていただきたいと思うのであります。
 なお、この点に関してお伺いしておきたいことは、池田内閣は、今後、憲法上の疑義がないとみずからが判断した場合には、積極的に派兵して、直接国連に協力するつもりなのかどうか、ということであります。これはぜひ池田総理から伺っておきたいと思います。将来国連において編成されることが予想される国際警察軍への参加問題をも含めて、お答えを願いたいと思います。
 なぜならば、われわれは、昨日の記者会見における大平官房長官の発言に重大なる関心を持つものであるからであります。大平官房長官は、政府は今のところいかなる形でも自衛隊の海外派兵はしないという既定方針を変えていない、しかし、松平氏の発言をきっかけにして、国連軍派兵の問題が国民の間で活発に論議されるようになるのは歓迎すべきことで、世論の方向に従って政府の態度が変わってもよいと思う、と述べているのであります。一体、官房長官はいかなる手段によって世論の方向を見定めようとするのか、世論の支持という大義名分のもと、またもや既成事実を積み重ねて憲法無視の態度をとろうとするのかと疑わざるを得ないのであります心(拍手)憲法は、定められた手続によって改正しない限り、政府がいかに世論の支持ありと一方的に判定しようとも、これを無視することのできないことは、言うまでもないことであります。総理の慎重なる御答弁をお願いいたします。
 最後に、今回の松平発言に対し、外務大臣は、昨日の予算委員会において、国連大使が国連で発言するときは、すべて政府の訓令に基づいたものだから公的な発言である、しかし、請暇などで帰国しておるときの発言は、こうした公的なものと私的なものがあり、今度の場合は個人的な発言だ、と述べておるのでありますが、私は、国連大使が政府の統一的な見解と異なった見解を持つ、しかも、先ほども申し上げたように、最も基本的な方針において違った見解を持ち、これを外交問題を論ずる席上において堂々と述べたという事実を、個人的な発言だとして容認することは、常識が許さないと思います。松平大使が外交問題懇談会でこのような見解を述べたのは二十一日の午後でありますが、小坂外務大臣は、同日の午前、参議院外務委員会において、憲法の問題もあり、わが国からコンゴ国連軍に派兵することはできないと言明したばかりではありませんか。外務大臣が、いかに、外交の責任は直接は外相がとる、大使はその下僚にすぎないと胸を張ってみたところで、松平発言は、結局、外務大臣に対する挑戦であります。いな、憲法に対する挑戦ですらあると思います。(拍手)
 聞くところにたれば、このような考えは松平大使のかたい信念に発するものだということでありますが、このような人を依然として国連大使として認めなければならない理由があるのでありましょうか。そのようなことで国連外交はスムーズにいくものでありましょうか。世界の各国は全く奇異の感をもってこのような事態の推移を注視しているのではないでしょうか。私は、この際断固として松平大使を解任することが外交一元化の上からも絶対に必要だと思いますが、所見をお伺いしたいと思います。(拍手)もし、そのような措置をとらないというのならば、当面は異を唱えているものの、腹の中では松平大使の発言を肯定し、時至らば転換をはかろうというのが総理以下の真意なのではないかとさえ考えられる。そのような疑いを抱く第一の原因は、大平官房長官の昨日の発言であり、最たるものは、松平氏が発言の前日二十日にも池田総理と会い、コンゴ問題、中国の国連加盟問題に対する各国の態度等について約四十分間報告を行なっているという事実であります。新聞の報ずるところによれば、総理は今回松平大使と三回会っておられるようでありますし、特に、二十日の会談の際には、総理と大使は、今後国連の舞台でコンゴ問題に対するわが国の立場をどう具体化していくかについても意見を交換したというではありませんか。また、同大使は、今後国連外交について国内でのPRに力を入れる必要があると述べたということも伝えられております。このような話し合いが行なわれた以上、松平大使は当然自分の信念を述べたと考えるのが常識的でありますし、もし、この際、池田総理が否定的な意見を述べておるならば、翌日さっそくあのような見解を堂々と発表するはずがないと考えるのが自然なのではないでしょうか。(拍手)総理は、松平大使の報告を受けた際、このような考え方に対して一体どのような態度をとられたのか、ぜひお聞かせ願いたいと思います。
 以上、私は、国民のひとしく抱いたであろう疑問――政府首脳と出先外交官との間には意見の相違があるのではないか、そのようなことで真に国連外交の強化ができるのか、政府はまたもや既成事実を作り上げて、憲法違反の罪を重ねようとしているのではないか、今回の松平発言はそのために仕組まれた一つの布石なのかといったような疑問を取り上げて幾つかの質問を行なったのでありますが、総理以下の明快なる御答弁をお願いする次第であります。
 以上をもちまして私の質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 まず第一に、松平国連大使が、国連に協力する道は国連警察軍に参加することが根本であるということを言ったのは間違いでございます。私は、そういう考えを持っておりません。なお、昨年五月、藤山前外務大臣が国連に対しての協力の意見を申し述べられたことは、私と全く同感であるのでございます。政府は、前内閣のあの方針をかたく堅持いたしております。
 なお、派兵について、いかなる場合においてこれを受諾するか、もちろん、積極的に派兵ということは考えておりません。そうして、要請を受けたときに、いかなる場合にこの要請に応ずるかという問題につきましては、私は、個別的な問題で考えなければならぬと思います。案件の問題は、レバノン等におきましても派兵の要請は断わっております。今まで通り私は断おっていく考えでございます。また、憲法上できるか、あるいは違憲なりやいなやの問題よりも、自衛隊法では海外の派兵を禁止しておりますから、こういうことは、私は、今問題にいたそうとは思っておりません。
 なお、松平大使の発言につきまして、いわゆる海外派兵が現実味を持っているような疑いを起こさすことは不謹慎でございまして、外務大臣よりかたく戒告をいたしておる次第でございます。
  〔国務大臣小坂善太郎君登壇〕
○国務大臣(小坂善太郎君) 総理からのお答えで尽きておるかと思いまするが、松平大使のこのたびの言説は、国連におって感じた松平君個人の気持を述べたものでありまして、政策あるいは政府の方針についてものを言ったのではございません。しかしながら、その発表の場所あるいは表現の方法等につきまして不適当かつ不用意の点がございましたので、強く戒告をいたしておきましたるところ、今朝、自発的にこの言動を撤回いたしております。なお、取り消したとは申しながら、その発言中、海外派兵等について政府の意図に対する疑惑を生ずるおそれのあるようなことが言われましたことは遺憾なことでございまして、かかることのないよう、厳重に注意をさらにいたしておるのであります。
 さらに、コンゴについての問題を、実例をあげてお問い合わせがありましたのでありますが、これはレバノンの際にも経験があったことでありますので、わが国の憲法並びに国内法の関係が熟知されている関係もありましょうと思いますが、コンゴについての派兵の要求はありません。また、派兵をしないことによって、わが国が本質的な国連におきまする扱いにおいて不利益、制約をこうむることはないのであります。ただ、御承知のように、現在コンゴ問題は安保理事会において審議されておりまするので、安保理事会の理事国、関係国が主として発言しておるその関係で、日本は発言の機会は今のところはない、どういう事情だけであるのであります。
 さらに、海外派兵の問題につきましては、総理大臣から御答弁がありましたので私から申しませんが、しいて申しますれば、憲法上は、海外派兵は、外国におきまして国家対国家の関係で実力の行使が予見せられることでありますから、これは憲法上許されないのであります。また、政府の方針といたしましても、海外派兵はしないということは、たびたび申し上げている通りでございます。
 以上をもってお答えといたします。(拍手)
○議長(清瀬一郎君) 石橋君から再質問の申し出がございます。残り時間がわずかでございますから、何とぞ簡単にお願いいたします。石橋政嗣君。
  〔石橋政嗣君登壇〕
○石橋政嗣君 総理の答弁の中で一番大切な問題が抜けておるような感を受けましたので、再質問をさしていただきたいと思います。
 私がお尋ねしましたうちで、日本の憲法上、自衛隊の海外派兵、それが、かりに国連軍に編入するという形であろうと、国連当局の要請に応ずるという形であろうと、可能なのかどうか、憲法上許されているのかどうかということについて、一つ総理の口から明快に答弁していただきたいのです。総理は、自衛隊法上はできない、こう申しておりますが、これは当然のことであります。しからば、自衛隊法を改正しさえすれば憲法上派兵は可能と、このようにお考えになっておるのか、もし、問題別によって可能な場合もあるというならば、その限界を明確にお示しを願いたい、このようにお尋ねいたしたのでございまするから、最後の御答弁をお願いいたします。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 国連の警察軍につきましては、その目的、任務、機能あるいは組織等、いろいろの場合が考えられるのであります。わが国は、自分の国が侵略を受けた場合、これを排除する実力は持っておりまするが、国連警察軍に今派兵ができるかできないかという問題につきましては、先ほど申し上げましたごとく、具体的の事例でないと、憲法上違憲なりやいなやという判断はできません。すなわち、戦争目的を持たない純然たる国内的警察の場合、あるいは、世界治安維持機関としては、ほんとうに国家間の闘争のためでない治安問題につきましてできるかできないかということになりますと、憲法論としてはいろいろ議論がございましょう。私は、その憲法論につきましては、その警察軍の目的、任務、機能、組織等から考え、具体的の場合でないと判断はできないというのであります。これが純然たる警察目的のために派兵する場合において、憲法第九条の問題との関係は私は考えられる、ほんとうに警察目的であって、しかも、世界治安維持のためならば、憲法上考えられる場合もあるということを言っているのであります。ただ、問題は、今の自衛隊法におきましては、海外派兵を認めておりません。この問題は、具体的な場合でないと違憲の問題の判断はつかないと私は申し上げているのであります。
     ――――◇―――――
 松平国連大使の発言に伴う自衛隊
  の海外派遣に関する緊急質問
  (受田新吉君提出)
○議長(清瀬一郎君) 次に、松平国連大使の発言に伴う自衛隊の海外派遣に関する緊急質問を許可いたします。受田新吉君。
  〔受田新吉君登壇〕
○受田新吉君 私は、民主社会党を代表しまして、今回の松平国連大使の発言に関連し、次の諸点につきまして緊急質問を試みんとするものでございます。
 まず、松平発言は単なる個人の見解と解すべきでございましょうか。同氏の言動は、この人の理念から生まれたものであり、国際関係に日本のあり方について大きい混乱を生ぜしめる原因を作っておるのでございます。日本の国連外交はもちろんのこと、基本的外交政策の一貫性を失わしめるおそれが多分に存在するのであります。しかも、松平氏は、その地位たるや、国連総会の、現に副議長の地位にございます。さらに、日本の国連代表部における最高責任者でありまして、その国際的影響力はすこぶる大きいのでございます。同氏の責任が重大であり、松平氏に対して重大な措置をとることが、日本外交の権威を高める上にも必要ではございますまいか。このことに関しまして、大平官房長官は、こうした問題について世論が熟してくれば政府の意見を変えてもよいという重大な発言をしております。また、池田総理みずからは、三回にわたりて松平大使と会見をされ、国連の実情をつぶさに聞き取られて、これを激励しておられると伝え聞いております。このことは、要するに、見方によりますれば、政府部内の内心を松平氏に事寄せて発言せしめ、また、池田内閣の潜在的性格を現わしたものと見られてもやむを得ないのではございますまいか。私は、国連協力の最高のものが軍事協力ではないと断定いたします。日本としては、別の面で幾多の協力が可能であるのであります。軍事協力を第一義と考えるそのことが、かつて大東亜戦争への発展をもたらした悲劇に通ずるものがあると思われ、軍国主義の危険な思想が再び芽ばえんとするおそるべき動向であると思わなければなりません。私は、この機会に、コンゴへの自衛隊の派遣についての松平発言は、この要素が多分に包蔵されておると思います。コンゴに対する国連の措置については、二つの重大な見方の相違があるのであります。どちらについて派兵をするかという困難な立場も考えられ、憲法の規定からも、また、国際情勢からも、軽々しく発言すべきものではございません。憲章の四十三条の規定は、加盟国が特別協定を結んで絶対参加しなければいけないという規定ではないのであります。そして、各国は、可能の範囲で協力してよろしいとの軍事参謀委員会の報告も出ておるのであります。私は、現実の問題としても、国連軍出動について少数の国が参加しているにすぎないということを考えたときに、松平発言に関し、まず政府の答弁を次の諸点について求めたいと思います。
 その第一は、ただいま社会党の石橋議員にお答えになられたことにも関連するのでございますが、国連加盟のとき、日本の憲法の規定で海外派兵はできない旨の了解ができておったのかどうか。その後要求があったことはレバノン事件にも見られるのでございますが、そういう要求があるそのことが、日本の立場のPRにおいて不足していたのではないか。
 次に、憲法第九条の戦力と日本の自衛隊の法的関係について御答弁を願いたいのであります。
 いま一つ、海外における日本の自衛隊の認識は、戦力であり、軍隊であるとして、完全なものとして、一人前に見られておるのかどうか、という点についても御答弁を願いたいのでございます。
 さらに、国連協力の具体的な要求は、軍事協力が第一義とされておるのかどうか。また、軍事協力以外にはいかなる方途があるのか、これを具体的にお示し願いたいのであります。
 次に、私は、国連外交の各分野におきまして、次の諸点について質問を進めて参ります。
 その一は、国連憲章第二条一項の規定は、すなわち、主権平等の原則によって国連が生まれていることが規定されておるのでございますが、憲章五十三条の後段と百七条の敵国条項は、これはまさに削除すべきものではないかという点であります。日本の国連への協力の根本問題が解決をする第一の問題ではないでしょうか。過ぐる安保国会で、岸内閣に対しましてこの善処を要求し、かたくお約束されておりますが、その後いかなる措置をされようとしておるのか。もし、改正が現状で困難でありまするならば、加盟国となった国は敵国条項は適用されない旨の決議案を提出しまして、日本の意思表明をすべきではないかと思うのでございまするが、お答えを願います。
 第二に、すべての原水爆の製造及び使用を禁止するという確固たる内容を持った決議案を提出して、しかも、それが強力に採択されるように努力すべきではないですか。このことは、原爆被害のただ一つの国家であります日本のみが持つ最高の責任であり、また、義務であると信ずるのでございます。
 次に、国連の機能を完全に遂行させるためには中央の参加が必要であります。このことは、すでに国際的な世論になっており、最近における英国の世論は、年内にも加盟実現を予測される動きが大きく出ております。この意味におきまして、国連代表権が早急に中共に移されるようにするために、今最も障害になっております一九五一年の中共非難決議があるのでございまするが、この非難決議は、すでに朝鮮の休戦が実現し、再び戦乱の予想されない現段階におきまして、すみやかにこれの撤回のための決議案を日本として率先して提出すべきではないかと思うのであります。このことは、対中共の前向きの政策であり、対国連強化の重大な意義があると思うのでございますが、政府はいかが考えておられましょうか。
 最後に、池田総理は、組閣以来、口をすくして、国連中心外交、国連強化政策を進めることの言明を重ねておられます。そうして、そのために国連代表部の人事を刷新しようと意図しておるのでありますが、問題はこれによって解決するものではありません。政府としてなすべきことは、まず、総理自身の外交政策を確立することであります。政府部内に、国連外交に対する見解が、先ほど来の御答弁を聞いても、全く不一致な点がたくさんあるじゃありませんか。そうした点を十分検討されて、国連外交に対する見解をはっきりと統一する、そういう大事な仕事も残っておるのでございます。そうでなければ、どのように有能な人物を起用しても、本来の目的を果たし得ないのであります。今回のように、重大な地位にある人物が政府と対立する見解を表明するという結果を招くに至ったのも、その一つであります。この観点に立ちまして、政府は今後における国連の人事をいかに考えようとしておるのか、そうして、いかに国連外交に対する政府の一致した見解をもって対処されんとするのか、政府の所信をただしたいのでございます。
 以上、諸点につきまして、松平大使帰任前に解決を要求し、詳細かつ明確な答弁を求めて、質問を終わりたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 国連協力も、もちろん、わが憲法の条章に従うべきは当然でございます。私は、国連協力は派兵が第一であるということは、第一でない、そういうことは関係ないということは、先ほど答弁した通りでございます。また、国連加盟の際に派兵はしないということをはっきり了解をつけたかということでございまするが、軍事協力は義務的になっておりませんので、特別に了解はつけなかったと聞いております。わが憲法の条章に従って、日本が独自にきめるべきことである、と私は考えておるのであります。
 なお、国連外交強化につきまして、人事はどういうふうにするか、今まではキャリアの人ばかりであったのでございまするが、私は、民間の、良識あり、国際情勢に通じた方々を今選考しておる次第でございます。いずれきまりましたら発表することになります。
  〔国務大臣小坂善太郎君登壇〕
○国務大臣(小坂善太郎君) 国連加盟の際、わが国の憲法の特殊性に対する留保の問題は、総理大臣からお答えいただきました通りでございます。
 私に対しまする他の御質問は、国連憲章の中に旧敵国に対しまする例外規定が二、三あるのは遺憾である、現在これをどうするかという点がございましたが、これは、御承知のように、現在適用された事例はございません。また、これについて提案するやいなやということは今慎重に考慮をしております際でございますが、御承知のように、そうした規定は適用されておらないのみならず、日本の地位というものは高く評価されておりまして、現在副議長や社会経済理事会の理事国というようなことで活躍をしておる次第でございます。
 また、原爆使用をせずという決議が採択されるように特に奮闘するようにというお話でございましたが、これは、もとより、さような方向に向かいまして、核実験停止協定というものは、これは実現可能なものと考えまするので、ぜひこれが協定成立に達しまするように努力をしたい、こう考え、すでに、また、核物質の拡散防止に関する決議案等も、わが国が提案国となりまして決定しておるような次第でございます。
 以上をもってお答えといたします。
     ――――◇―――――
 農業基本法案(内閣提出)及び農業基本法案(北山愛郎君外十一名提出)の趣旨説明
○議長(清瀬一郎君) 議院運営委員会の決定によりまして、内閣提出、農業基本法案、及び、北山愛郎君外十一名提出の農業基本法案の趣旨の説明を順次求めます。農林大臣周東英雄君。
  〔国務大臣周東英雄君登壇〕
○国務大臣(周東英雄君) 農業基本法案につきまして、その趣旨の御説明をいたします。
 申し上げるまでもなく、わが国の農業は、過去幾世代にわたって、国民食糧その他の農産物の供給、資源の有効利用、国土の保全、国内市場の拡大等、国民経済の発展と国民生活の安定に寄与して参りました。また、農業従事者は、この農業のにない手として、多くの困苦に耐えながら、その務めを果たし、国家社会の重要な形成者として、他の産業従事者とともに、国民の勤勉な能力と創造的精神の源泉たる使命を全うしてきたのであります。
 しかるに、わが国経済の発展の過程において、農業は自然的、経済的、社会的制約のため、他産業と比較いたしますると、生産性において著しい格差を生じております。その上に、近時、産業経済の著しい発展に伴って、農業従事者と他産業従事者との間において生活水準の格差が拡大してきております。他方、国民生活の向上とともに農産物に対する需要にも変化が生じ、澱粉質食糧の消費が減って、蛋白質、脂肪質食糧等の消費が増大する傾向が現われてきたことや、農業から他産業への労働力移動の現象が見られ、農業就業人口が減少し始めてきたことなど、農業と農業を取り巻く条件の変化はまことに著しいものがあります。
 このように、いわば農業が曲がりかどにきているという事情を背景にして、産業、経済の重要な一部門としての農業も、国民経済の成長発展に即応して、他産業におくれをとらないように生産性を向上し得るようにするとともに、農業従事者も他産業従事者と均衡する生活を営み得るようにすることが強く要請されております。
 ここに、農業及び農業を取り巻く条件の変化と、農業ないし農業従事者のあり方を考え、その調和をはかって、この際農業の向かうべき新たな道を明らかにし、農業に関する政策の目標を示し、これに基づいて諸般の施策を進めて参りますことは、農業及び農業従事者の重要な使命にこたえると同時に、公共の福祉を念願する国民の期待にこたえるゆえんであると考えるものであります。これが本法案を提出いたしました趣旨でございます。
 次に、法案の主要点につきまして御説明をいたします。
 まず、前文におきまして以上申し述べましたような趣旨を明らかにしておるのでありますが、第一章総則におきましては、
 第一に、国の農業に関する政策の目標は、農業の自然的、経済的、社会的制約による不利を補正し、他産業との生産性の格差が是正されるように農業の生産性が向上すること、及び、農業従事者が所得を増大して、他産業従事者と均衡する生活を営み得るようにすることを目途として、農業の発展と農業従事者の地位の向上をはかることにあるものとしております。
 第二に、この目標を達成するため、国は、農業政策のみならず、政策全般にわたって必要な施策を総合的に講じなければならないことにしておりまするが、その際重点的に配慮すべき方向づけといたしまして、一、農業生産の選択的拡大、二、農業生産性の向上と農業総生産の増大、三、農業構造の改善、四、農産物の流通の合理化、加工及び需要の増進、五、農産物の価格の安定及び農業所得の確保、六、農業資材の生産及び流通の合理化並びに価格の安定、七、近代的な農業経営の担当者たるにふさわしい者の養成及び確保と農業従事者及びその家族がその希望と、能力に従って適当な職業につき得るようにすること、八、農村の環境整備等による農業従事者の福祉の向上の八項目を明らかにしております。これとともに、これらについての施策が画一的でなく、地域的に自然的、経済的、社会的諸条件を充分考慮して行なわれるべきものとしております。
 第三に、政府は、諸施策を実施するため、必要な法制上、財政上の措置を講じ、また、農業従事者が必要とする資金の適正円滑な融通をはからなければならないこととしております。なお、施策を講ずるにあたっては、農業従事者等の自主的な努力を助長することを旨とするものであることを明らかにしております。
 第四に、政府は、毎年国会に農業の生産性及び農業従事者の生活水準の動向と、これらについての政府の所見を含む農業の動向に関する年次報告を提出し、また、この報告にかかる動向を考慮して、今後講じようとする施策を明らかにした文書を提出しなければならないこととしております。
 以上が総則のおもなる内容でございますが、第二章ないし第四章におきましては、農業生産、農産物等の価格及び流通、農業構造の改善等に関し必要な施策の方針をそれぞれ明らかにすることといたしております。
 すなわち、農業生産に関する第二章におきましては、農産物の需要及び生産の長期見通しを立てて公表すること、農業生産の選択的拡大、農業生産性の向上及び農業総生産の増大をはかるため、右の長期見通しを参酌して生産に関する施策を講ずること、農業災害に関する必要な施策を講ずることについて、それぞれその方針を明らかにしております。
 農産物等の価格及び流通に関する第三章におきましては、まず、重要な農産物について、農業の生産条件、交易条件等に関する不利を補正する施策の重要な一環として、その価格の安定をはかるため必要な施策を講ずることとし、さらに、価格安定の施策の実施の結果を総合的に検討して、施策の万全を期していくこととしたほか、農産物の流通の合理化等についての施策、輸入農産物との関係の調整、農産物の輸出の振興について必要な施策を講ずることとしておるのであります。
 農業構造の改善等に関する第四章におきましては、家族農業経営の健全な発展、協業の助長、兼業農家の安定などに重点を置いております。まず、わが国農業のにない手としての家族農業経営の近代化をはかってその健全な発展をはかるとともに、できるだけ多くの家族農業経営が自立経営になるように育成するため必要な施策を講じ、また、協業を助長して、家族農業経営の発展、農業の生産性の向上、農業所得の確保等に資するため、農業協同組合組織のほか、新たに農業生産法人の道を開くなどの施策を講ずることによって、家族農業経営とその協業組織が相並び相補いながら、農業経営の近代化に資するようにしたいと存じております。そのため、農地についての権利の設定または移転の円滑化のため、農業協同組合が農地の信託を引き受けることができるようにし、また、近代的な農業経営の担当者たるにふさわしい者の養成、確保等のため、教育、研究、普及の事業の充実等をはかることとしております。さらに、わが国家族農業経営の過半は、いわゆる兼業によって家計を維持安定させている実態にかんがみまして、その家計の一そうの安定に資するとともに、農業従事者及びその家族がその希望と能力に従って適当な職業につき得るよう、就業機会の増大その他の施策を講ずることといたしております。なお、農業構造の改善は、土地条件等の整備を基盤として、農地保有の合理化、農業経営の近代化等を総合的に行なって初めて実効を期し得ることも多いと思われますので、そのため必要な施策を講ずることといたしております。
 次に、第五章におきましては、農業行政に関する組織の整備及び運営の改善と、農業団体の整備についての方針を述べております。
 最後に、第六章におきまして、この法律の規定により、その権限に属させられた事項を処理するほか、内閣総理大臣または関係各大臣の諮問に応じ、この法律の施行に関する重要事項を調査審議するための機関として、総理府に農政審議会を設置することとし、その組織等について必要な規定を定めております。
 農業基本法案の内容は、おおむね以上の通りでございまして、この法律は、今後の農業の向かうべき道、農業従事者の進むべき目標を示すにありますので、これに基づく具体的な施策は、基本法の趣旨により、今後にわたって法制上、予算上等の措置をとる覚悟でございます。とりあえず、三十六年度につきましては、予算案にすでにその趣旨を取り入れておりますが、また、関係法律案につきましては、当面措置すべきものについてすみやかに提案いたしたい所存でございます。
 以上をもちまして農業基本法案の趣旨説明といたす次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(清瀬一郎君) 提出者北山愛郎君。
  〔北山愛郎君登壇〕
○北山愛郎君 私は、日本社会党を代表して、社会党の農業基本法案について、その趣旨及び内容の概要を御説明いたしたいと存じます。(拍手)
 わが党が農業基本法の検討を始めましたのは昭和三十三年であり、その後三回にわたって草案要綱を発表し、広く各方面の意見を聞いて検討を重ね、いよいよこの国会に提案する運びとなったのであります。従って、この基本法案は、社会党の農業に対する基本政策を整理し、体系化したものであり、この原則を具体化するための関連諸法案とともに一体として、社会党の農業政策の集大成ともいうべきものであります。私は、ここにわが党の農業基本政策を明らかにすることによりまして、社会党に農業政策なしという世間の誤解が一掃せられ、社会党こそ働く農民の真の代表であり、味方であるということが宣明せられることを希望するものであります。(拍手)
 わが党の農業基本法案に次いで、政府から同じ名前の法案が提出せられました。政府案は、農業を資本主義自由経済の中に組み入れ、独占資本中心の経済成長計画に農業及び農民を従属せしめようとする基本法であり、われわれの案は、農民の立場に立ってその利益を守り、強力な農業発展政策を行なわんとするものであって、両者の相違は明白であります。(拍手)農業の行き詰まりと農政の大転換が叫ばれつつある今日、いずれの基本法が真に農民のためのものであるか、いずれの農業政策が明るい民主的な社会を作ることができるかということを十分に御審議願うとともに、国民諸君もまた真剣に検討せられるよう切望するものであります。
 農業問題を考える場合に忘れてならないことは、今日の農業の立ちおくれ、その根元は古くからの歴史的事情があるということであります。農民は、昔から、常に時代の支配者によって搾取せられ、抑圧され続けてきたということであります。奴隷時代はもとより、封建時代におきましても、農民は、その労働生産物の大部分をしぼり取られて参りました。徳川家康が、百姓とゴマの油はしぼればしぼるほどしぼれるものなりと言った、その言葉の通りに、しぼられ続けてきたのであります。(拍手)徳川幕府の命令の中には、百姓は雑穀を用い、米を食べてはならぬとか、たばこものんではならぬとか、あるいは、お茶ばかり飲んで、物参り、遊山の好きな女房は離縁せよとか、そういうひどい言葉すら言っておるのであります。
 このような封建時代の束縛は、明治維新によって一応は解放せられましたけれども、また、地主制による高い小作料に苦しめられ、広い山林から締め出され、明治政府は、高い地租を農民から取り立てて、これを産業資本育成の資金に転用したことは、御承知の通りであります。(拍手)また、絶え間ない内乱の連続、明治以後の相次ぐ外国との戦争は、農村に大きな被害を与え、農村の荒廃と、再び帰ってこない戦死者の遺骨のほかには、何ものももたらさなかったのであります。軍備拡張と戦争で金もうけできる商人はありましても、戦争で利益を受けた農民は一人もおらなかったのであります。(拍手)
 今日、農業の投資が不足をし、生産条件がおくれ、農地が狭く、農村生活が前近代的状態を脱し得ないでいるのは、農民がなまけたための責任ではなく、この長い農民搾取の歴史にその根源があるといわなければなりません。政府の農業基本法の前文には、農業の長い試練の歴史に触れて、農民は「農業のにない手として、幾多の困苦に堪えつつ、その務めを果たし、国家社会及び地域社会の重要な形成者として国民の勤勉な能力と創造的精神の源泉たる使命を全うしてきた。」と称賛し、また、その使命が今後においても変わることなく、持ち続けると確信する、としるされてあるのであります。私は、農民が支配階級によって収奪され、勤勉な労働力の源泉であるということを農民の使命とし、務めであるとするこの考え方には、絶対に承服することはできないのであります。(拍手)ましてや、この農民の歴史的な使命なるものが今後も変わることなく続くと期待する政府の考え方の中には、神武以来連綿として続く支配階級の農民搾取の思想がいまだにひそんでいると思うのであります。(拍手)
 終戦後の民主化と農地改革によって若干農民の地位が向上したのもつかの間で、独占資本の復活強化によって経済上の圧迫を受けて、農業は他産業に立ちおくれ、農民と他産業従事者との所得の格差は再び拡大して参りました。それは、また、政府の大資本、大企業擁護の政策によって、さらにはなはだしくなっております。
 民間設備投資が三兆円といわれる今日、農業投資はわずかに二千億にすぎない。農民の郵便貯金も、簡易保険の掛金も、農林中金への預金も、安い金利で大企業に使われ、農民は一割二分という高い利子の農協資金すら十分に借りることができないのが実情であります。本年度の農林予算は若干増加をし、総予算の九・六%まで増額をされたとはいわれますが、麦対策にしろ、大豆の自由化対策費など、農民への手切れ金的な性格のものが多くなったのみで、昭和二十八年度総予算の一六・五%でありたことに比べて、依然として安上がり農政の方向は変わってはおらないのであります。(拍手)
 今回の政府の農業基本法は、農民及び農業団体の自由な意思と自主的な努力を尊重すると称して、国の保護政策を後退させ、農業を自由競争にさらし、農村の階層分化、小農脱落を推進する、池田総理の農家人口削減の具体化をねらっておるのであります。(拍手)政府案には、米麦等の食糧管理制度を維持する何らの規定もなく、単に農産物流通の合理化をうたうにすぎません。ここに米の統制撤廃への布石がしかれているのであります。また、外国農産物の輸入制限や関税措置は、きわめて特殊な場合に限られ、ここにも貿易の自由化を原則とする意図が示されておるのであります。すでに、アメリカ経済の不況、ドル防衛、これらによって対米輸出減少の徴候が明らかとなり、わが国の国際収支は悪化し、政府の所得倍増計画も破綻の危機が迫っておるときに、農業を他産業の成長に依存し、従属させる政府の農業政策は、決して賢明なものということはできないのであります。(拍手)
 社会党は、政府案とは全く立場を異にし、国の責任において、農業自体の発展と農民所得の向上を積極的かつ計画的に行なわんとするものであります。(拍手)以下、わが党の農業基本法の内容について、その主要な点を御説明申し上げます。
 われわれは、農業生産を拡大し、自給度を高め、農民の所得と生活の水準を他産業のそれと同一の水準にまで向上させようとするものでありますが、そのためには、第一に、農用地の拡大が必要となるのであります。農地をふやさずに、零細経営の改善や畜産、果樹の振興は不可能であります。政府の基本法は、ほとんど農用地の拡大に触れず、所得倍増計画においても、十年後の農用地は依然として六百万ヘクタール、すなわち、現状維持であります。わが国の農地の全土地面積に対する比率は一九%で、二〇%に足りません。英国の八〇%、フランスの六二・七%、イタリアの六九・四%、アメリカの五六・八%、インドの五一・五%、及び山国であるスイスの五二%に比してもきわめて低いのであります。社会党は、当面、畑と草地三百万ヘクタールの開発を行なって、農用地の率を三〇%に引き上げようとするものであります。(拍手)このため、別に国土高度利用促進法により、国土の実測調査を推進し、土地利用計画、利用区分を定め、農用地とすべきものについては、国有地は払い下げまたは貸付をし、民有地、公有地は買収または利用権の設定などによって農地を拡張し、農民及びその共同体に利用せしめようとするものであります。(拍手)土地利用計画については、あわせて水の利用をも考慮し、また、林業との調整に留意することは申すまでもありません。演習地、ゴルフ場に貴重な土地をつぶす政治をやめて農用地を造成せんとするのが社会党の政策であり、本法案第四章はその原則を規定しておるのであります。
 さらに、土地所有形態については、これを耕作する者が所有するという原則を貫き、土地所有と農業労働との分離を排除することといたしております。耕作者の所有も、個人が持つ場合と共同で持つ場合とありますが、農民自身の自主的な意思によって、農地に関する権利を共同で保有するように、漸進的にこれを指導する方針をとるものであります。社会党は、農地の地主的所有や資本家的な所有は排除しますけれども、意味のない国有は考えておらないということは、現在の国有地についても農地に転換すべきものはこれを農民に解放する方針をとっていることにも明らかであると存じます。(拍手)
 次に、経営形態について、われわれは、経営規模の拡大、零細経営の解決は、基本的には共同化、共同経営によるものとし、農民の農業生産組合を育成しようとするものであります。言うまでもなく、われわれは、急激に、また強制的に共同化を進めようとするものではありません。経営の全部または一部の共同化を認め、共同施設や共同作業など、共同組織の奨励と並行しつつ共同化の方向に進めようとするのであります。政府案のように一町五反や二町歩程度の家族経営では、近代化、機械化を合理的に行ない、生産力を高めることは、望みがたいのであります。まして、食管制度を廃し、米が自由販売となった場合には、米の統制の上に立っている比較的大きな専業農家すらも転落の危険があるのであります。われわれは、共同化が真に農民の現実の利益をもたらすことを保証するために、別に農業生産組合法案、農業経営近代化促進法案、これらを作成して、共同化への営農設計、技術指導、各種の助成措置、低利資金の貸付、機械の貸与、税法上の特典などの措置をとるとともに、共同化に伴う農用地の造成、土地改良、農地の集団化事業は全額国費負担とするなどの措置をとろうとするものであります。(拍手)また、経営の近代化、共同化を進めるために、各都道府県内の地区に農業サービス・センターを置き、また、都道府県の中央部に国営の農業機械ステーションを置いて、ヘリコプターなどを装備し、大型農業機械の補給、修理、講習の基地たらしめようとするものであります。問題のロッキード戦闘機二十台を削れば、各府県ごとに十台ずつのヘリコプターを装備し、災害救援、病虫害防除、さらには、宮沢賢治の童話にありますように、肥料や種を空から降らすことができると信ずるものであります。(拍手)
 以上につきましては、本法案第五章に規定するところであります。
 次に、価格、流通、加工の問題についてでありますが、農産物の価格安定は、農民の所得確保のために最も重要な一環であります。われわれの基本法は、現在の食糧管理制度を維持改善し、生産費所得補償方式のもとに農産物価の安定をはかろうとするものであります。また、農産物需要の拡大のために、その最大の消費者である勤労階層の賃金、所得を豊かにしなければなりません。大資本家がどんなに金もうけをしても、一人で牛乳を一石も二石も飲めるものではないのであり、勤労者の購買力の上昇によってこそ、牛乳や肉、野菜、くだものの消費をふやすことができるのであります。(拍手)この点、農民は、労働者の賃上げ闘争の被害者ではなく、受益者であるといわなければならないと存じます。(拍手)また、農産物の生産、出荷の計画化を指導し、農協などの共販事業を強化し、公営卸売市場の整備など、流通面の合理化をはかるものであります。同時に、農産物の輸入を抑制し、自給度を高める措置をとり、また、農産物の輸出、海外市場の開拓などに努めることといたしております。
 畜産、果樹、園芸の振興に伴い、加工事業の重要性は増大して参りますが、これをなるべく農民の手で行なわせるために、別に農産物加工振興法の制定によって、農協またはその出資による農産公社を設置し、農畜産物の簡易加工と農村消費への還元などを進め、あわせて農村食生活改善に資し、また、農民が単なる原料生産者として他の資本からの圧迫を受けることのないように措置を検討いたしておるのであります。(拍手)そのため、農協の共販体制の強化や、農民と他の資本による加工企業との団体交渉など、農民の地位と権利を高めることを考慮いたしておるのであります。
 次に、農業用資材については、肥料、農薬、農機具、家畜飼料、電力、石油などの安価な供給を確保することが、農産物価の安定とともに重要な問題であります。そこで、われわれは、この生産、流通の規制などによって安価な供給を確保し、必要によっては、これらの生産、輸入、販売などを国営または国家管理に置くことを定めておるのであります。(拍手)
 次に、畑地、草地農業の振興と畜産、果樹、園芸農業の発展をはかることは当然のことでありますが、その中心は酪農であり、われわれは、米と並んで牛乳が農産物の新しい柱となるように、酪農経営の安定をはかるため、昨年の総選挙前、故浅沼委員長が発表した牛乳法案を準備し、牛乳の生産と消費の拡大をはかって、国民一人牛乳三合を実現せんとするものであります。(拍手)最近の農業生産額構成を見ると、わが国では、米が五〇%に対し、畜産は一二%、果樹が五%でありますが、西ドイツは、穀類がわずか九%に対して畜産物は七〇%、イタリアにおいても、穀類が二五%に対して畜産物は四〇%と、わが国の畜産物の生産の割合は非常に低く、今後の発展の可能性と必要性とを示しておるのであります。牛乳法案は、乳牛の導入、増殖、草地の改良、酪農経営の指導、消費の拡大などを規定するものでありますが、特に、牛乳の生産者価格については農家の生産費を補償する方式をとり、必要によっては国が補給金を支給することなど、思い切った対策によって、米を作っても牛乳をしぼっても農業経営が安定するような措置を目標としておるのであります。(拍手)
 以上に関する諸原則は、第六章、第七章に規定しておるのであります。
 その他、災害防除、災害復旧についての国の責任を明らかにし、災害による損失補償については、これが完全に補償されるよう十分な措置をすることを定めておるのであります。また、農民の権利と地位の向上については、農民組合その他農民の自主的組織を育成することとし、同時に、農産物の価格の決定に参加する権利を保障しておるのであります。特に、社会党の基本法第十章において強調しておるのは、農村の生活文化の向上であり、都市と農村の文化的格差の解消であります。衣食住の生活改善、ことに、おくれている農村住宅の改造と部落生活集団化を推進し、交通、通信、電気、水道、文教、保健、社会保障の施設を整備するため、別に、われわれは、農村生活近代化法という立法措置を準備中であります。農村の前近代的住宅様式、草ぶき屋根などの解消、不良老朽住宅の改造などは、政治の盲点ともいうべき問題であり、都市の住宅政策はありましても農村住宅政策がなかった欠陥は、すみやかに是正されなければならぬのであります。(拍手)また、農業従事者の六割は婦人であり、婦人はさらに重い家事、育児の仕事を担当し、農村の婦人労働ははなはだしく過重でありますので、その軽減と婦人の地位の向上について特に強調いたしておるのであります。
 以上申し述べた農業の生産、需給、流通、価格、経営等の改革は、いずれも国の責任と長期の農業計画に基づいて行ない、政府は、長期農業計画並びにこの年次計画を国会に提出をし、その承認を受けるものとし、また、計画に必要な予算、金融措置を義務づけて、計画の実行を確保することといたしておるのであります。なお、この基本法に盛られたことは社会党の農業政策の基本と方向を示したものであって、この個々の原則を実現するためには、さらに多数の関連法案の整備が必要であります。われわれは、本法案に引き続いて、これらの主要な関連法案をすみやかにこの国会に提案して、社会党の正しい農業政策の全貌を天下に明らかにしたいと考えております。
 最後に申し上げたいのは、いずれの国、いずれの時代を問わず、人間社会をささえるもの、人類の生存を保障し、社会の進歩を推進するものは、物を作り、物を運び、人と物とを育てる生産的労働であるということであります。この生産労働のにない手である労働者と農民の働きなくして社会は一日も立っていくことができないのは、明白な事実であります。(拍手)われわれが、この生産労働の正しい評価を忘れて、金がもうかるかもうからないかという資本主義のものさしで農業を取り扱い、第二次、第三次産業の発展にのみ期待して農業を軽視するならば、社会経済の中に大きな矛盾と混乱と不安を招来するでありましょう。農民は次第に独占資本の圧迫を受け、田園今や荒れなんとし、農村有為の青年は、農業に見切りをつけて続々と都市に集中して参りますが、彼らを待っておるものは、低賃金であり、重労働であり、臨時工であり、冷酷な生存競争の資本主義社会の壁であります。(拍手)十七才の青年の危機はまさにそこから生まれてくると信ずるのであります。現在政府がとるべき正しい政策は、小農切り捨ての農業基本法ではなくして、むしろ、これら第二次、第三次産業内部の二重構造の是正、低賃金の是正であり、また、独占資本の圧迫から農民を守る正しい農業政策でなければならないと信じます。(拍手)社会の一切の不平等、不公平を排除し、金もうけよりも人間と労働を尊重する政治でなければならないと信じます。われわれは、このような見地に立って、日本農業発展の可能性を確信し、とうとい生産労働のにない手として農民の地位と生活を高めることが、平和な、健康な民主主義社会を建設するゆえんであり、また、同時に、国の重大な責任であることを深く考えながら、全農民とともに、われわれの農業基本法案の成立を強く期待して、社会党の農業基本法案の趣旨説明を終わるものであります。(拍手)
     ――――◇―――――
 農業基本法案(内閣提出)及び農業基本法案(北山愛郎君外十一名提出)の趣旨説明に対する質疑
○議長(清瀬一郎君) ただいまの趣旨の説明に対しまして、質疑の通告があります。順次これを許します。野原正勝君
  〔野原正勝君登壇〕
○野原正勝君 私は、自由民主党を代表し、去る十八日内閣から提案せられました農業基本法案に対し、政府のこれに対する見解をただし、あわせて、その決意を伺いたいと存ずるものであります。
 わが党は、すでに昭和三十三年以降、国際及び国内における経済の動向に対処し、わが農業の向かうべき基本方針を宣明する農業基本法を制定するため、党の総力をあげて、これが策案に邁進して参ったのでありますが、政府においてもその必要を認め、内閣に農林漁業基本問題調査会を設置し、各界の権威を網羅して鋭意調査に当たられた結果、昨年その答申がなされたのであります。党及び政府一体となってのこれらの努力は、みごとに結実いたしまして、ここにわが農政史上画期的なる農業基本法案の提案と相なったのでありまして、われわれは、この歴史的な瞬間に際会し、ひとしお感慨深きものを覚えるものでありまするが、池田総理を初め各大臣におかれましても、また同様の御心境にあることと存ずるのであります。しかしながら、農業基本法案は、わが六百万農家の将来の命運に重大な関係を持つ幾多の基本政策をその内容といたしておりまするがゆえに、本案施行にあたっては容易ならざる決意と万端の準備とを必要とするものであります。そこで、私は、これらの決意と準備について、池田総理以下関係各大臣にお伺いいたし、もって全国農民の負託にこたえたいのでございます。(拍手)
 この農業基本法案は、日本国憲法及び教育基本法と同様、特に前文を置きまして立法の精神を説きまするとともに、農業に関する政策の目標を示し、その向かうべき大道を明らかにいたしておりまするが、これは、いわば国民の発した光栄ある農業宣言とも申すべきものでありまして、この法案の重大性を遺憾なく示しているものであります。(拍手)
 すなわち、そこにおきまして、まず、日本の農民諸君が多くの困難に耐えつつ、国民経済の発展と国民生活の安定に寄与して参りました偉大なる業績を賞賛し、国家社会及び地域社会の重要な形成者として、国民の勤勉な能力と創造的精神の源泉たる使命を全うしてきた歴史的な意義を強調し、しこうして、また、将来にわたり民主的で文化的な国家を建設する上において、農民諸君の受け持つ役割がいかに広範かつ重要であるかを指摘することによって、わが農業と農民の努力に対する国民の期待を表明し、次いで、近時わが国産業、経済の著しい発展に伴い、農業と他産業との間の生産性及び生活水準の格差が拡大しつつある事態に対処して、農業の持つ各般の不利を補正し、農民の自由な意思と創意工夫を尊重しつつ、農業の近代化と合理化をはかることによって、農民諸君が他の国民各層と均衡するところの健康かつ文化的な生活を営むことができるよう諸政策を集中することが、農業及び農民に課せられた使命にこたえるゆえんのものであると同時に、公共の福祉を念願する国家国民の崇高なる責務に属するものであることを、簡潔にして力強く内外に宣言しておるのであります。(拍手)まことにその言やよし、おそらく、全国六百万農家の方々は、この本会議場より流れ出るところの声に耳を傾け、総理の自信と責任感に満ちた御発言を期待しておると信じまするがゆえに、本法成立後、その施行について全責任を負う内閣を代表して、農業基本法の完全なる運用についての総理の不退転の決意を伺っておきたいのであります。(拍手)
 次に、私は、農業に関する政策の目標と施策の内容について、逐次、各大臣の御見解をただすことといたします。
 すでに法律案前文においても明らかな通り、国の農業に関する政策の目標は、国民経済の成長発展及び社会生活の進歩向上に即応し、農業の自然的、経済的、社会的不利を補正し、他産業との生産性の格差が是正されるよう、農業の生産性の向上と農民所得の増大及び農民の地位の向上とをはかることにあるのでありまするが、かかる目標を達成するため、国としては、あらゆる部面にわたって必要な施策を総合的に講ずべきは当然であります。そこで、第二条は、これら施策の内容を総括的に掲げておるのでありますが、農林大臣を初めとして各省大臣は、それぞれの立場において、農業基本法立法の精神に照らし、所管行政を積極果敢に展開し、もって農政の政策目標を達成すべき政治責任を負うのであります。すなわち、新農政の第一着手は、まずもって農業の生産性の向上にありますが、これについては、農業の生産基盤たる土地及び水の利用開発を大前提といたします。従来、とかく低生産地帯といわれておりました畑作地帯等に対し、積極的に土地利用の高度化をはかるはもちろん、畜産振興、酪農振興の基盤たる草地や果樹園等の大規模な開発に邁進しなければならないのでありますが、従来とかく画一的に流れやすい行政の弊害を改めまして、南北に長い日本列島の地域的特色を十分にこなした上で、きめのこまかい地域農政が実施されなければならないのであります。しこうして、一方におきましては、蛋白食糧、ビタミン食糧への需要の高度化に応ずる生産部門の再編成を実施するのでありますが、資本装備の高度化及び技術向上と相待って、わが国農業の生産性向上はまだまだ十分に可能であり、総生産を増大し得る膨大な余地が随所に残されておるのでありまして、わが農業は、指導よろしきを得るならば、前途洋々たる青年期にあると申しても過言ではないのであります。われわれといたしましては、かくして農業の生産性の向上をはかりつつ農業総生産の増大を期するのでありまして、この車の両輪の上に立って、一方においては価格政策のよろしきを得、また、他方によって農業構造政策の新展開を待ち、もって農業、農民の向上前進のため事に当たりたいのであります。
 以上の前提を置いて、各省大臣に御質問を申し上げることといたします。
 まず、企画庁長官にお伺いいたします。
 農業基本法案策定の背後に国民所得倍増計画があることは、御承知の通りであります。しかして、その国民所得倍増計画によれば、日本経済の成長率をここ三カ年は九%以上とし、その後もまた引き続いて伸ばして参りまして、十年を出ずして国民の総所得を二倍以上に引き上げることと相なっております。こうした国民経済の発展と成長の中において、農林漁業という第一次産業部門の生産の伸びは、わずかに年率二・九%とせられているにすぎないのであります。企画庁の計算されました十カ年間の行政投融資総額は、周知の通り、十六兆一千億でありますが、その中において、農林漁業投融資はわずかに一兆円とせられておるのであります。率直に申しまして、われわれは、この投融資計画にはなはだ不満であります。農政の転換期を迎え、所得格差を解消しようというわれわれの主張に対し、経済審議会の答申はあまりにも現実の要請を無視したものであると考えられ、われわれとしましては、かかる計画をそのまま閣議決定されては困るのであって、この際、農林漁業に対する投融資に関しては、あらためて再検討の上、必要とあれば十分これを増加することを条件として同計画を認めたことは、すでに御案内の通りであります。そこで、今ここに確かめておきたいことは、この農業基本法が成立し、三十七年度の予算案が編成されるころまでには、新しい構想による農林漁業振興のための施策として相当大きな額の行政投融資計画が示されるものと思うが、企画庁長官はそれを受け入れられるだけの腹がまえであるかどうかを伺っておきたいのであります。(拍手)
 次に、大蔵大臣にお伺いいたします。
 農業基本法の制定に関して、全国よりほうはいとして要望が生じましたゆえんのものは、昭和二十八年をピークとして漸減した農林予算の現状を憂慮し、農林行政の積極的展開を裏づける財政投融資の画期的増大を願う気持がその一つであることは、否定できないところであります。農業基本法の制定は、それ自体が最終目的ではなく、財政的背景を持つ農業新政策の展開の第一歩であることを銘記すべきでありましょう。昭和三十六年度農林予算は、幸いにして、前年度に対比し四二%という画期的増大を見たわけでありまするが、将来にわたってさらに飛躍的拡大を見なければならぬことは、基本法案第四条の規定よりしても当然であります。それにより農業基本法は初めて画龍点睛を得るのでありまするが、大蔵大臣の御所信のほどを表明せられたいのであります。(拍手)
 次に、自治大臣にお伺いいたします。
 農業基本法の制定に伴い、国は、今後の農業施策について長期見通しの上に立って生産政策を樹立し、これに関連して、農地の整備、開発、また、農業経営規模の拡大等、高度の地域性を持った種々の施策を推進することに相なるわけでありまするが、これら国の施策を行なう上において、地方公共団体の果たす役割はいやが上にも大なるものとなるわけであります。しかるに、農業を産業の大宗とする地方公共団体は、むしろ、その財政が窮乏し、今後の積極的な農業投資を推進する上に、国の施策に応ずる財政上の余裕があるかどうか。現行の地方交付税制度の中では、積極的に地方公共団体が投資を行なうについてきわめて不十分であるといわざるを得ないのであります。従いまして、これらの地方公共団体に対しては、その最大の産業である農業に対し、国と一体となって積極的な農業政策の実施を可能とするよう、地方交付税等の制度を改善して、財政上の優遇措置を講ずべきであると思われまするが、御所見を伺っておく次第であります。
 次に、通産大臣にお伺いいたします。
 世上、往々にして、農業基本法の制定に関し、これが農産物貿易自由化を促進するための準備措置であるかのごとく曲解する向きもないでもないのであります。われわれとしましては、むろん、農業生産性の向上をすみやかに達成し、海外農業との競争力を増強するに努めることが肝要であり、これが施策をますます強化しなければならぬと存ずるものでありますが、諸般の準備整わざるうちに自由化を行なうことは、断じてわれわれのとらざるところであり、政府もまた同意見と考えるのであります。(拍手)ガットの規定においても、弱小農業をかかえる国家に対しては各種の特例を認めており、手放しの貿易自由化対策を強制するものではないと信ずるものであります。農産物の貿易自由化に関連するIMFまたはガットの条約上の問題、あるいは関税操作、輸入制限の問題等に関するわが方の厳然たる方針をこの際明らかにして、全国農民諸君の不安を解消されたいのであります。(拍手)
 次に、農畜産物の価格対策に関して、大蔵大臣及び農林大臣にお伺いいたしたい。
 価格政策の要諦は、いかにして農民の所得を安定せしめ、安んじて生産に精進せしめるかにあることは、言を待たないところであります。農業基本法は、言うまでもなく、農民の所得を安定向上せしめ、他産業従事者との所得並びに生活水準を均衡化せしめるという至上目的を持つわけでありますが、これらの諸対策のうちにおいて価格対策の占める重要性はますます重大化して参るのであります。各種農畜産物の中において、すでに生産が需要を超過し、従来のごとき硬直した価格形成方式をもってしては国家財政ないしは消費者の家計に対し過重の負担をしいるものもないではなく、あるいは現行価格水準をもってしては需要のこれ以上の伸張を阻害するものがないでもないことは、これを率直に認めなければならぬのであります。大麦、裸麦のごときはその一例でありましょう。従いまして、一方においては有効なる作付転換方策を採用しつつ、他面においては弾力性を帯びた価格決定方法を採用することは理の当然であると存ずる次第であって、この国会において画期的な麦作対策を講ずるゆえんのものもそこにありまするが、この際厳に注意すべきは、農民の収入がいささかも減少しない方策を堅持すると同時に、将来に向かっては経営の合理化、近代化への道を開かねばならぬことであります。さらに、農業生産の前途において、生産の各部門を再編成して、いわゆる生産の選択的拡大を期し、畜産、果樹等、成長部門の育成に対する各種施策を強化するにあたって、そこに重要な役割を果たすのは価格政策、流通政策でありまするが、たとえば、牛乳、乳製品の価格形成方式におきましても、畜産物事業団の価格支持方法は、まず酪農民の生産する牛乳そのものの生産費を基準とし、酪農民の所得増大を期し、あわせて流通加工の合理化による消費者価格の引き下げをはかり、もって牛乳の飛躍的増産、消費の拡大を促進するに役立つものでなければならないのであります。従って、農業基本法のうたう価格安定なるものは、あくまでも農畜産物の価格支持を原則とし、生産費並びに所得の補償を大眼目とするものであると信ずるのであります。大蔵、農林両大臣の御所見はいかがでありましょうか、伺っておきます。
 次に、構造改善対策に関して、農林大臣、通産大臣、労働大臣に対してお伺いいたしたいのであります。
 構造改善対策が今後の農業基本政策において占める役割はきわめて重大でありまするし、農業基本法案におきましても相当の重点を置いて規定していることは、御承知の通りであります。しかるに、世間には、往々にして、問題の本質を歪曲し、あるいはことさらに悪意の宣伝の具に供する目的をもって、構造改善対策が貧農切り捨て政策であるかのごとく流布する向きがあるのであります。われわれは、かくのごとき、ためにする見解は、断じてとらざるところであります。わが農業構造の根本的な欠陥は、零細経営、手労働耕作、耕地分散というようなことであります。何人もこのことを否定する者はないと存じます。今後わが農業が国際農業に伍して繁栄し得るためには、これらの致命的弱点をすみやかに改善し、是正することが急務であります。よって、われわれといたしましては、わが農業の就業構造並びに経営構造の両面にわたって抜本的の改革を行なう必要があると存ずるのでありまするが、幸いにして、わが国民経済の高度成長下において、労働力に対する新規雇用の要請はきわめて顕著なものがあるのであって、これをてことして農業過剰人口の吸収をはかり、残された農業経営の拡大化に進むことは、だれが考えてもきわめて適切妥当な政策といわざるを得ないのであります。むろん、わが党といたしましては、経営拡大のための前提となるべき施策としては、農業生産基盤の整備拡大と資本装備の高度化に努め、効率の高い農業生産の場を積極的に拡充するに努めるわけであり、なかんずく、畜産、果樹、特産物を中心とする草地開発及び畑作の振興に対して全力を傾倒する所存でありまするが、これと並行して、農家の二、三男の諸君を中心として、適材適所、その希望に応じて、新たなる飛躍の天地を第二次、第三次産業部門に創造し、もって農村人口の適正な再配置を実現することは、近代国家として当然の責務であると存ずるのであります。しこうして、一方、農業経営構造改善対策にあっては、人口の適正配置と、農地、草地等の積極的な造成により、自立経営農家の育成と協業の助長をはかるわけでありまするが、以上に関連して、各大臣にお伺いいたすのであります。
 まず、農林大臣といたされましては、欧米各国の現状とも対比して、経済の高度成長下におけるわが国の農業人口の適正な割合はいかなるものであるとお考えになり、また、農業経営の中核となるべき家族中心の自立経営農家としては、将来いかような規模と資本装備を持つものを理想とし、これを育成するつもりでおられますか、また、兼業農家の生活内容の充実向上ということをも、農民福祉の見地に立って、農政の重要目標とせられるべきものと思うが、どうか、また、協業組織、協業経営の存在についても、決してこれを軽視しては相ならぬと思うが、その助長のための具体的な措置としてはいかなるものをお考えになっておりましょうか、御意見を伺いたのであります。
 さらに、労働大臣としては、農村人口の転就職、職業訓練等について、いかようなる計画をお持ちになっておられましょうか、詳細に伺っておきたいのであります。
 また、通産大臣としては、工業の地方分散、低開発地域の工業促進等の措置により、労働市場、商品市場を農村に散在せしめ、もって離農や農作物の生産、流通、消費に有利な条件を作る方途を講ずべきでありますが、その具体的方策はいかがでありましょうか。
 次に、農林金融問題について、大蔵、農林大臣にお伺いいたします。
 昭和三十六年度予算案において、いわゆる農村近代化資金制度を創設し、三百億円の農協系統資金を制度金融に組み入れるための画期的な措置を講じ、とかく農民資金が系統外に流れやすい状態を改善することとしたのであります。今後における農業の生産、流通、加工の面における融資対策の演ずる重大性にかんがみ、公庫融資、制度融資を通じ、三十六年度融資総額が千億を突破するに至りましたことは、まことに農民諸君とともに慶賀にたえないところであります。しこうして、翻って考えまするに、この種長期低利資金に対する農民の需要は将来ますます増大の一途をたどるものと思われ、農業の近代化、合理化に対する有力なきめ手になるとさえ存ぜられるのでありまして、三十七年度以降、公庫資金並びに近代化資金を通じ、資金造成量をさらに飛躍的に増大するはもちろん、近代化資金に関しては、末端金利七分ないし七分五厘とする計画に対しては、今後すみやかにこれを改定し、国の金利補助を二分ないし三分以上とし、農民の金利負担を一そう引き下げることが肝要と存ぜられるのであります。以上について、大蔵、農林大臣の所見を伺っておきたいのであります。
 次に、荒木文部大臣にお伺いいたします。
 農業近代化を実現するための重要なる施策として、人材の養成確保、教育、研究及び普及事業に関し、特に第十九条を設けてこれを明らかにしておりますが、農業振興の基礎は、何と申しましても、教育に負うところきわめて甚大であります。初等義務教育においては、農業に関する基礎教育に一段と力を注がれたいと考えるものでありまするが、さらに、農業高校における教育は、農業近代化を担当する中堅青年養成の機関でありますので、それにふさわしい施設の充実をはかり、将来の日本農業を背負って立つ有為の青年を農村に確保するよう、りっぱな教育の場を作ることに特に力を注ぐ必要があると存ぜられますと同時に、農村地帯に工業学校をもあわせ設置いたしまして、農家の二、三男等を中心に、その希望により工業方面に飛躍できる措置を講ずべきであります。さらには、農業に関する大学教育及び学術研究についても時代の潮流におくれないよう、また、青年教育についても、ラジオ、テレビ等、広く普及している時代でありますので、一そうの工夫を望むものであります。文部大臣の御見解をお伺いいたします。(拍手)
 さらに、農村における環境の整備、保健衛生及び農村の婦人問題に関し、厚生大臣並びに労働大臣にお尋ねいたしたい。
 農村の生活環境は、都市と比べ、きわめて非衛生であり、文化的生活にはほど遠いものがあります。特に、医療施設等においては、いまだに無医村地帯と称すべきものも少なくないのであります。交通機関にも恵まれざる農山村において、まことに憂慮にたえないことでありますが、国民皆保険により疾病の早期発見と治療を徹底し、国民の健康増進を期するためには、農村に対してこそ最大の力を注ぐ必要があり、国の責任に帰すべき事項と考えるのであります。医療厚生あるいは農村簡易水道、公衆浴場の設置、保健婦及び助産婦の設置等については、格段の配慮を加えねばならないと思うのであります。
 さらに、婦人労働問題についてでありますが、日本農業の現実は、婦人の労働力にささえられており、婦人は家庭の主婦たる使命に加え、常に過重な労働を負担しているのであります。私は、ここに、むしろ農業近代化以前の問題として、あまりにも過重な労働の重圧から婦人を解放することこそ、農業基本政策上の大問題の一つと考えるものであります。(拍手)貧しさよりの解放、婦人の過重なる労働負担のよってきたる原因の除去は、かかってここにあるのであります。常に黙々として働き、次代の生命を育て続けている農村婦人の地位の向上こそは、農業基本法制定の有力な契機と申せましょう。農村における託児所、保育所、婦人ホーム等の増設、家事労働軽減対策等、なすべき事柄は山積しております。農村婦人問題について格段の努力をいたさねばなりません。その御所見はいかがでありましょうか。
 以上、労働大臣、厚生大臣並びに農林大臣の御意見をお伺いする次第でございます。
 次に、建設大臣にお伺いいたします。
 農村の振興をはかり、農村の環境を改善するため最も重要なる問題は、農村における道路交通網がいまだきわめて不十分な状態に置かれている点であります。産業経済発展の動脈であり、不可欠の条件たる道路網、交通網の整備につき、政府は道路十カ年計画を策定し、二兆一千億の巨費をもって雄大な施策を行なうこととせられている点に関しては、もとより賛成いたすものでありまするが、しかしながら、かくのごときうらやましい計画の外に置かれているというよりも、むしろ置き忘れられんとしているものは、実に農村地帯における道路問題であります。山村地帯に対しては、三十六年度予算において山村振興林道を建設することとなりました。山村民に光明をもたらしている次第でありますが、今後、農村振興道路網の整備充実を実現し、農業の生産基盤を整備し、地域格差解消の根本対策の一つともなすべきものと思うものでありますが、建設大臣の御意見をお伺いする次第であります。
 最後に、運輸大臣に伺いたい。
 農業の発展のために運輸政策の果たす役割が大きいことは、申すまでもないところであります。今日の国有鉄道の経営方針ないしは国鉄運賃の決定原則は、ややもすれば大都市中心、商工業中心に流れ、地方開発、農業開発をとかく軽んずる傾向がないでもないのであります。農業と他産業との所得格差が拡大している事実は、すなわち、国民所得の地方格差の拡大を意味するものであるのであります。国鉄等に依存することの多い農林水産物については、新線の建設、運賃負担等については今後格段の配慮が加えらるべきは当然であると存ぜられますが、運輸大臣の御見解を伺っておきたいのであります。
 以上、政府提案にかかる農業基本法案について若干の御質疑を申し上げましたが、池田総理大臣以下各大臣におかれては、世界の各国がこの十年に、激動する政治経済の中にあって、いずれも農業基本法を制定し、とかくおくれがちな農業の保護育成、その近代化について血みどろなる努力をいたしておる事実をすでに十分に御承知のことと存じまするがゆえに、わが国もようやくここにその制定に踏み切ったわけでありまして、むしろ、われわれをもってすれば、おそきに失した感すらなきにしもあらずであります。すみやかにこれら先進諸国の戦列に伍して、しかも、これをすみやかに追い越すことができますよう、諸般の施策の推進に手抜かりのない努力を傾けられるよう、重ねて要望する次第であります。
 なお、社会党におかれましても、本日、くしくも、農業基本法案の趣旨説明を本会議において同時にされたわけでありまして、その御精進については敬意を表するにやぶさかでないわけであります。その内容の細部におきましては見解を若干異にする点もございますが、願わくは、わが農業、農民の熱望にこたえ、小異を捨てて大同につかれ、農業基本法のすみやかなる成立のため格段の御協力を示されんことを要望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答えを申し上げます。
 農業がわが国経済及び社会に果たすべき重大な使命と、農業を取り巻く最近の諸情勢の変化、すなわち、他産業との所得格差あるいは消費構造の変化、また、労働力の移動等、諸情勢の変化に伴いまして、農業の発展と農民の地位向上、福祉増進のために、農業の向かうべき新しい道を示し、新しい政策を出すことは、喫緊の、また最大の政治問題であるのであります。私は、かつて、この大事業は、いつかは何人かがやらなければならぬと申しておったのでございますが、今回、農業基本法案を提出することができましたことを非常に光栄に存ずるのであります。(拍手)
 私は、今後、諸君とともに、国民の御協力を得まして、農業の近代化と農民の福祉増進につきまして根限りの努力を続けていきたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣周東英雄君登壇〕
○国務大臣(周東英雄君) お答えをいたします。
 まず最初に、農業の構造改善についてお尋ねがありました。今日までの日本の農業の実態というものは、やむなき事情のもとに過小の形態でありました。耕地の少ない中に多数の農業者がひしめいておったわけであります。これは、他産業に比べまして所得を上げるについては、農業の近代化、合理化が叫ばれておりますが、他産業の発展ということ、これが最近大きく出て参りまして、その方面における農業就労人口の移動ということは、現実の問題であります。こういう機会はむしろ善用しつつ、その方に向かっていく人間については、職業訓練とか、技術訓練をして、よい機会に恵まれるように指導するとともに、残された農村に対して労働生産性を上げ、しこうして、構造改善といたしましては、家族経営農家を中心として自立主義の形をとり、そうして、労働生産性といいますか、一人の就業労働人口の生産性を高めるという方向に持っていくことが必要であります。先ほどからいろいろ社会党のお話も聞いておりますが、問題は、そういうふうな場合において、社会党は、農業構造として、むしろ法人、協業化というものを中心にされるようでありますが、私どもは、あくまでも家族経営農家を中心としてその自立をはかっていくことを原則とし、しこうして、必要な場合において、農業の一部または全体にわたっての協業化をはかっていくことが私どもの考え方であります。
 第二のお尋ねは、農業のやり方のお尋ねですが、これはあくまでも生産基盤の整備、農業技術の向上、資本装備の充実という方向へ持って参りますが、その際における分散農業地を集団化して利用化を高める、あるいは営農を機械化するという問題については、当然に私ども積極的にこれを進めていくつもりであります。
 第三のお尋ねは、価格問題であります。価格の安定についてお尋ねがありました。これは、当然、今後の農業所得を確保するについては必要なことでありますが、今日、御承知の通り、すでに食管法によって米麦は価格を支持されておる。また、農産物安定法に基づいてやられておる農産物もございます。また、てん菜振興の臨時措置法によって、てん菜の保護をし、繭糸価格安定法、蚕繭事業団による保護という形をとっております。私どもは、今後における価格の安定ということを目途にいたしまする場合においては、農業基本法に定むるところによりまして、まず、将来における需給の見通しを立てることが第一であります。いたずらに、ただ高価格を支持することによって需要のないものを作らせることは、農業者に対する不親切であります。私どもは、将来に向かって需要の伸びるものの生産を指導しつつ、その需給均衡をはかりつつ、しかも、生産したものについての販売、加工、商品価値の増大をはかるために必要な措置は、まず、先ほどもお話がありましたが、私ども、当然、農業者の団体である農業協同組合等の共同化による共同販売、共同加工、こういうことを進めつつ、真に市場に向かって有利な地位をとり得るような形を進めて参るつもりであります。
 さらに、お尋ねは、農村の環境整備であります。これは、私ども先ほど御説明をいたしましたが、農村生活の均衡といいますか、生活水準を均衡せしめるという問題は、中心はあくまでも農業所得を上げるということではあります。農家所得を上げるということではあります。しかし、先ほど社会党がしきりにお話しになったが、われわれも、あくまでも、これはそれだけでなくて、都市との関係において均衡せしめるために環境の整備をする、これは、上下水道とか、あるいは託児所、そういうのはもちろんでありますが、今日もやっておりまする、電気のない農村に対して電化を普及するとか、そういう面については、すべて環境の整備に関して施設をやらなければならぬという政府の義務をつけております。また、婦人労働問題についても、当然これらについて対策を行なって参るつもりであります。
 大体、以上私に対する質問にお答えをいたします。(拍手)
  〔国務大臣迫水久常君登壇〕
○国務大臣(迫水久常君) 所得倍増計画の中の農業に対する行政投資のことについてお答えをいたします。
 所得倍増計画――経済審議会の策案いたしました所得倍増計画の中の行政投資の中で、農林水産業関係のものが一兆円という数字が上がっておりますることは、お話の通りでございます。もっとも、この一兆円という数字の中には、土地の改良、開拓、干拓、草地改良、林道開設、造林、漁港整備というようなものが、この一兆円の中に含まれておるのでありまして、農業共同施設あるいは機械化等、つまり、農業の近代化のために投下せられるところの必要な国家資金のすべてが、この一兆円の中に含まれているというわけではございません。しかし、この数字が小さいというお話もありましたので、先般、閣議決定におきましては、農業基本法の制定ということを前提として、農業基本法の制定に伴って、農業生産基盤整備のための投資とともに、農業の近代化推進に所要する投融資額はとれを積極的に確保するものということを、所得倍増計画の構想というものの中で閣議決定を同じくいたしておりますので、今後は実情に即しまして機動的に運営をいたして参りまするから、必ずしもこの一兆円という数字にこだわるものではないことを御承知を願います。
  〔国務大臣水田三喜男君登壇〕
○国務大臣(水田三喜男君) 農業基本法は今後の農政の向かうべき道を示すものでありますから、農業生産性の向上、農業構造の改善、農業生産の選択的拡大、農産物物価の安定というふうに、基本法の示しておる必要な施策については、財政事情と国民経済の関係を十分に考えて財政上の措置をとることはもちろんでございますが、農業問題におきましては、今後、財政上の措置によるよりも、金融上の措置による方がより適切と思われる部面が非常に多くなることが予想されますので、金融上の措置を十分にして農業の近代化を促進したいと考えております。(拍手)
  〔国務大臣安井謙君登壇〕
○国務大臣(安井謙君) 農業基本法の効果を十分に上げますためには、国の政策に相マッチしまして、地方団体の裏づけがどうしても必要であることは、申すまでもございません。そこで、地方団体としても、単に国の仕事のしわ寄せを受けるといったような消極的な態度でなく、国と地方との仕事の分野を明確にいたしまして、職分に応じて積極的な協力をするように指導いたしたいと思っております。従いまして、交付税の配付税あるいは所要資金または地方税等の問題につきましても、必要に応じまして十分な配慮をいたし、効果を上げたいと存じております。
  〔国務大臣椎名悦三郎君登壇〕
○国務大臣(椎名悦三郎君) お答え申し上げます。
 農産物の自由化に関する見解の御質問がございました。基本的には、農業経営も、その近代化、生産性の向上によりまして国際競争力を強化することが必要であるということは、言うを待たぬところであります。しかし、現実の問題といたしましては、二つに区別して考えなければならぬと思うのであります。
 第一は、まずもって、現状ですでに国際競争力のあるもの及び関税の措置等によって自由化の可能であるというものは、逐次これは自由化して参りたいと思うのであります。しかしながら、主要農産物であって国際競争力のないものにつきましては、今後慎重に検討を加え、軽々にこれを自由化すべきものではない、かように考えております。
 第二の問題でありまするが、農業構造の改革に伴って、過剰労働力対策としての地方への工場分散、その対策いかんという御質問でございました。低開発地域のうちで、基本的に立地条件のすぐれているというような個所につきましては、産業関連施設、すなわち、道路、港湾、運輸交通、電力、用水、こういったような諸問題を重点的に整備をはかることが必要である。そうして、また、これに伴って進出すべき企業に対しましては、税制、金融、農地転用等の面において優遇措置を講ずる、これが最も重要な項目であると考えるのでありますが、通商産業省といたしましては、関係各省と十分今後協議を遂げまして、以上の線に沿うて総合的にこの問題を推進して参りたいかように考えております。(拍手)
  〔国務大臣石田博英君登壇〕
○国務大臣(石田博英君) 私に対するお尋ねの第一点は、構造改革に伴いまして農業人口から二次産業、三次産業へ移っていく者に対する処置であると存じますが、この数は、所得倍増計画によりますと、三十五年度から四十五年度までの十一年間に大体二百四十二、三万と推定されるわけであります。
 まず第一に、これに対しましては、二次産業、三次産業の発展によりまして、希望する人々を吸収していくということを基本といたしまして、具体的には、総合職業訓練所及び一般職業訓練所の拡充整備を行ないますことが一つ。現に、三十五年度におきましては十四、三十六年度におきましては十八新設されることになっておるのであります。
 第二は、広域職業紹介を拡充して参りたいと存じます。
 第三は、しかしながら、何と申しましても地域的定着性は無視できないのでありまするし、また、地方の発展のためにも、近代産業の地方分散を願うことが必要であると考えております。
 それから、農村の婦人の地位の向上に関してでありますが、御指摘の通り、婦人の地位は、都市に比べて明確に農村の方が低いのが実情であります。この改善のためには、まず、何と申しましても、農村におきましては特に婦人の労働が過重であるという認識を徹底せしめますとともに、それに対するいたわりの風習を喚起することが必要であろうと存じます。その具体的な方法といたしましては、やはり、生活の改善を通じ、労働の配分の合理化を行ないまして、そうして、過重労働からの解放に努力をいたして参りたいと存じます。具体的に申しますと、婦人週間等の指導をさらに一そう活発にして参る手段をとりたいと存じます。(拍手)
  〔国務大臣荒木萬壽夫君登壇〕
○国務大臣(荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。
 農業基本法第十九条の規定に関連いたしまして、農業の近代化、合理化を通じて質的な転換があるであろうが、その転換に即応して、教育の面でどういうふうな対策を考えておるかというお尋ねであったかと思います。御案内の通り、新しい教育課程が三十六年度から発足をいたしまして、主として科学技術教育の振興という立場から、小、中学校、高等学校に対しまして新しい課程が予定されております。そういうことで基礎的な常識を涵養しますと同時に、特に農業高校におきましては、園芸、畜産、農産加工、農芸化学、農業土木等、農村の農業の近代化に応ずるような角度から教育課程を充実し、改定して参ることに相なっております。このことは大学についても同様でございます。
 さらに、教育に関連いたしましてのお尋ねは、農村の二、三男対策として、農業以外の職場につきやすいように、教育面で、たとえば工業高校の配置等を考えていくべきであるというお説でございましたが、まさしくその通りの考え方で、三十六年度予算につきましても特に配慮いたしておる次第でございます。工業高校といえば都会地でなければならないと従来の常識はなっておるようでございますが、農村地帯に対する工業等の配分、それに相呼応いたしまして、自分のうちから工業高校に通学できるというふうな考え方のもとに、農村のどまん中に工業高校を設置するという構想も当然あってしかるべしと考えておる次第でございます。
 そのほか、お尋ねの対策としましては、社会教育の面につきましても、青年、婦人層に対しまして、たとえば青年学級、婦人学級の奨励、充実、あるいはまた、青年団、婦人団等の自己研さんの場を通じまして、これを育成し、助成していく、あるいは公民館活動を通じて農村の近代化、農業の合理化、質の改善等に即応する教養を高めていくことも、当然必要だと存じまして、そのことにも配意して参りたいと思っております。(拍手)
  〔国務大臣古井喜實君登壇〕
○国務大臣(古井喜實君) 農村における医療機関の普及整備の問題、環境衛生の改善の問題、婦人労働の軽減の問題等についでお尋ねを受けました。医療機関の普及整備の問題でありますが、特に僻地におきます医療機関の整備は、何年来かやってきておるわけでありますけれども、まだ十分行き届くというところまではいっておりません。従いまして、三十六年度におきましても、さらに三十八カ所、少なくとも僻地の診療機関を整備したいと思います。特別僻地という、特に不便な場所におきましては、医療機関というわけにもいきませんので、今度は巡回診療所とか巡回診療船まで三十六年度に考えていこうというわけでありまして、できるだけ努力をしていきたいと考えております。
 環境衛生の改善の中心問題は、いろろありましょうけれども、農村においては、私はやはり簡易水道の普及だと思います。明年度から十カ年計画でこの問題を強く進めたいという考え方で、現在は普及率が一六・二%でありますものを、十年計画で六四・八%までに持っていきたい、こういう計画で進みたいと思います。この簡易水道の普及問題は、婦人労働の軽減にも大きな関係を持っております。しかし、そのほかにも、保育所の普及とか、老人ホームの整備とか、これらもすべて婦人労働の軽減に大きな関係を持っておりますので、こういう方面にも来年度は今まで以上に力を入れて計画を立てておるような状況であります。(拍手)
  〔国務大臣中村梅吉君登壇〕
○国務大臣(中村梅吉君) 道路整備に関連した御質問にお答えいたします。
 道路整備の基本的な考え方といたしましては、地方的格差の是正ということを大いに重視して参りたいと思います。従いまして、全国的に幹線道路の整備を行ないますとともに、御指摘のように、農業地帯における地方道の整備につきましても、極力努力をして参りたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣木暮武太夫君登壇〕
○国務大臣(木暮武太夫君) ただいま国鉄に関する御質問がございましたので、お答えを申し上げます。
 現在、農林水産物等百一品目に対しまして、金額にして二十億円余の暫定割引をいたしておりまするが、今回の国鉄運賃改定にあたりましても、これはそのまま据え置くことにいたしておる次第でございます。
 また、国鉄といたしましては、御承知の通り、地方の産業を開発する国土開発、あるいはまた、地域の所得格差を是正する意味におきまして、山村に、赤字を覚悟しても新線を建設いたしておるのでございます。今回、政府といたしましては、三十六年度予算におきまして、三十五年度の新線建設の利子補給といたしまして三億八百七十五万円を計上いたしましたのは、御承知の通りでございます。こういう国鉄の赤字に対する政府の同情ある処置に感激して、国鉄は、これから新線建設をいたしまして、そして、地域格差をなくし、地方産業開発、山村の資源開発に力を尽くすつもりでございます。(拍手)
○議長(清瀬一郎君) 野原君の質疑に対する答弁は終わりました。
    ―――――――――――――
○議長(清瀬一郎君) 芳賀貢君。
  〔芳賀貢君登壇〕
○芳賀貢君 私は、日本社会党を代表して、内閣提出の農業基本法案について、総理大臣初め関係各大臣に対し質問を行なわんとするものであります。(拍手)
 ただいま政府案と同時に社会党の農業基本法案も説明されたのでありますが、両法案を比較するとき、政府提出の農業基本法案は、わが国農業の発展を指向する宣言法としての気品と気力に欠け、長期の展望と指針を失っておる点が、農業基本法制定に多大の期待を寄せた全国農民各位に大いなる失望を与えたと考えるものであります。
 質問の第一は、本法案の骨格ともいうべきわが国農業の国民経済的位置づけについてであります。
 農業が、国民食糧の供給及び原料の生産を担当する基礎産業として、国民経済を構成する一部門であることは、言うまでもないのであります。従って、原始産業としての劣悪な条件を背負った農業の場合は、国民経済の他の部門との相互関連の上に発展を遂げるべきものであります。しかるに、政府案によれば、農業があたかも国民経済の従属的地位にあるかの誤った認識に立って立案されたと見受けられるが、この点について、総理大臣は、農業に対し国民経済的位置づけをどのように理解しているのか、明らかにされたいのであります。
 質問の第二は、憲法と農業基本法との関連についてであります。
 国民としての農民の人権の尊重と生存権の保障については、同様に、憲法第二十五条、第二十七条、第二十八条に約束されているところであります。すなわち、農民の勤労に報ゆる正当な所得の保障、農民の過重労働からの解放、農民の団結権と団体交渉権の保障、農村の生活文化の向上等、農民に対する国の責任を当然基本法の精神として貫くべきであるが、政府案にはこの精神が全く欠けておるのであります。総理大臣は、この点について配慮を用いなかった理由を明らかにされたいのであります。
 質問の第三は、農業発展のための基本計画と必要な予算の確保についてであります。
 農業政策の目標は、当然、国民経済の成長に調和する長期的かつ計画的のものであるべきであり、政府は、その責任において、農業発展の基本計画を樹立してその方向を明らかにし、到達するための必要なる施策を積極的に講ずべきであります。政府案によると、農業基本計画の必要性が全く没却されており、単に「重要な農産物につき、需要及び生産の長期見通しをたて、これを公表しなければならない。」と述べておるにすぎないが、政府の責任において、この際、農業生産計画を中心に、農畜産物の需給計画、土地及び水資源の開発利用計画、農業経営の共同化、近代化計画、農民所得の増大計画、及び財政金融計画を含めた長期の農業基本計画を樹立して国会の承認を求め、あわせて実施に必要な予算を確保すべきことを基本法に明示すべきであると思いますが、この点を明確にしなかった政府の見解を示していただきたいのであります。(拍手)
 さらに、農業金融の施策についても、政府案では、「必要な資金の融通の適正円滑化を図らなければならない。」と、ばく然と述べておるのでありますが、経済効率の低い農業への投融資は、原則として年五分以内の低利で、しかも、長期であるべきであります。そのためには、郵便貯金、簡易保険及び将来拡大される国民年金等の積立金の運用については、今日までの大企業優先の偏重を改めて、農民の蓄積資金を農業発展のために還元利用することは重要な施策であるが、政府案には農業金融の方向が全く示されておらないのであります。総理大臣及び関係各大臣から、農業基本計画及び予算確保、金融政策につき、それぞれ御答弁をいただきたいのであります。
 質問の第四は、農業生産力の拡大についてであります。
 政府は、国土総合開発の基本目標を明らかにして、土地及び水資源の開発と高度利用を進め、農用地の造成と拡大をはかるべきであります。現在、わが国の農用地は、国土の総面積に対しわずか一七%の六百六十五万ヘクタールにすぎず、その内訳は、田三百四十一万ヘクタール、畑二百七十四万ヘクタール、草地五十万ヘクタールであります。今後、農業生産の拡大を畜産農業、果樹園芸農業の振興に求める場合、畑地及び草地の拡大が絶対に必要になるのであります。この際、政府は、国土調査に基づく土地の利用区分に従って、国営による未墾地の開発を進め、畑地百万ヘクタール、草地二百万ヘクタールの農用地の造成をはかり、農業生産力の飛躍的拡大をはかるべきでありますが、この点について、総理及び農林大臣の所信を示していただきたいのであります。
 質問の第五は、農業構造の改革についてであります。
 政府案によると、農業構造の改善の主体を家族農業経営の発展と自立経営の育成に置き、また、国民所得倍増計画においても、十年後を目ざして、平均経営面積二町五反、農業従事者三名の経営規模の、いわゆる自立経営農家を百万戸育成すると示してあります。戦後行なわれた農地改革の成果は、農民が地主制の収奪と社会的抑圧から解放されて、耕す農民に土地を与える自作農主義の農地制度が生まれたのであります。自作農の形態は、農地の零細所有と家族的零細経営の姿であり、これが今日政府案で期待する家族農業経営の姿でもあります。政府が自立経営の基準と考えている二町五反以上の農家は現在約二十五万戸で、六百万農家のわずか四%にすぎません。一部の農家にだけ育成を進めて、二町五反以上の経営を行なわせるといたしました場合においても、現行農地法によってさえも、農地の所有限度は、北海道においては農地十二町歩、採草地二十町歩であり、内地都府県では、農地につき平均三町歩、採草地につき平均五町歩程度であります。すなわち、現行農地法のワク内においてさえ、農地の所有拡大の余地は大きく残されているにもかかわらず、依然として零細土地所有の域を脱却できないのが、今日の家族農業経営の現状であります。政府は、一体いかなる方策を用いて土地所有の集中化を進めるのか。さらに、自立経営農家百万戸育成の結果取り残される五百万戸の農家は、必然的に兼業農家か脱農の方向に追い込まれる結果になるのであります。結局、政府案の指向するものは、池田総理の主張する、いわゆる農民六割首切りに通ずる農業政策を進めることであるのか、この点、特に総理大臣の責任ある御答弁を願いたいのであります。(拍手)
 質問の第六は、農業の共同化、近代化についてであります。
 政府案では、農業発展の必然的方向である農業経営の共同化、近代化に対して、ことさらに責任を回避する態度をとっておるようでありますが、農業生産力の拡大をはかるためには、国の責任を明らかにして、第一に、土地条件の整備のために、農地の造成、農地の集団化、土地改良及び農業の機械化を積極的に促進することであり、第二に、農業の試験研究機構を充実して、農業の面にも科学技術の導入をはかることであり、これらの機能を効果的に発揮する経営形態は、結局、土地所有と農業経営を一体化した共同化への発展であります。今後農民が自主的に共同化を進めたならば、かりに、全国六百六十五万ヘクタールの農用地を十町歩単位の経営にすれば、六百万農家の経営体は六十万の共同体による経営体となり、二十町歩単位の経営にすれば、三十万の経営体で、農業の近代化を前進させる道が開かれることになります。これを行なうことによって、農民六割削減とは異なった形で過剰労働力の他産業への質的な移動が行なわれ、あわせて、農村の生活、文化の向上と、特に農村婦人の過重労働からの解放も具現することができるのであります。(拍手)こうした共同化、近代化の母体としては、当然、農業協同組合と農業生産組合の育成が必要であります。さらに、農業生産と農村工業の関連については、農業協同組合を主体とした農民資本による農村工業の振興発展を期すべきであります。この際、農業の共同化、近代化と農村工業の振興に対する総理及び農林大臣の所見を明らかにされたいのであります。
 質問の第七は、農畜産物の価格支持と農民所得の増大についてであります。
 農民の所得増大の施策としては、経営規模の拡大による収益の増加と価格支持による所得の確保であります。社会党案におきましては、農畜産物の価格支持の原則を生産費及び所得補償に置き、他産業の労働所得との均衡については同一労働同一賃金の方式を採用するものでありますが、政府案においては、価格支持の原則が非常に不明確であり、価格安定の要素を、ただ単に「生産事情、需給事情、物価その他の経済事情を考慮して」と述べてあるが、政府は具体的にいかなる価格支持の制度を立てようとしているのか、この際明らかにしていただきたいのであります。
 また、価格支持とあわせて、農畜産物の需給と流通についても制度的に国が規制すべきであるが、政府案においては、この点も不明確であります。政府は、米、麦及びイモ類、澱粉、大豆、菜種等の主要農産物については、現行の食糧管理法や農産物価格安定法等を維持改善して管理制度を進めていくのであるか、さらに、生産の拡大が期待される牛乳、畜肉及び果実等についても、いかなる価格支持と流通の規制を行なうのであるか、明らかにしていただきたいのであります。
 これと関連して、農畜産物の輸入についてであります。政府は、過剰生産に苦しんでいるアメリカを中心に貿易の自由化を進める方針のようでありますが、現在、わが国においては、麦類において二百五十万トン、大豆百二十万トン、家畜飼料百万トン、砂糖百二十万トンと、大量な輸入を行なっておるわけであります。これらを、今後農業生産力の飛躍的発展によって自給度の向上をはかり、国民経済の成長に調和させる必要があると思うが、政府の所信を示していただきたいのであります。
 さらに、農業発展のための保護政策と、これを弱化させる目的を持つところの農産物に対する貿易自由化政策との矛盾を、基本法の中でどのように解明するのか。
 以上の点について、総理大臣及び関係各大臣の具体的な御説明を願いたいのであります。
 最後に、総括して申したいことは、政府提案の農業基本法案は、私が指摘するまでもなく、文学的につづられた、内容の空虚なものであります。(拍手)日本農業が現状を脱却して発展すべき方向を示す諾原則については何ら明示するところがないのであります。法案の前文及び六章三十条にわたる条項と、現存する農政上の諸制度を比較照合した場合、いささかの前進もない、全く現状維持そのものの内容であります。しかも、国民所得倍増に対応する他産業との格差を是正し、同一水準の農民所得の増大を実現させる確固たる国の責任の所在と基本施策に欠けておることは、本法案が農業発展のための基本法ではなく、農業後退の基本法ともいうべきものでありますが、これに対する総理大臣の率直なる御見解を示していただきたいのであります。
 以上で私の質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 農業は、それが単に産業経済上重要な問題であるばかりでなく、社会的にも、文化的にも、また、民族の今後の発展の上から申しましても、最も重要な産業であると私は考えておるのであります。(拍手)しかるところ、最近におきまする他産業の発展に伴いまして、農業がおくれがちであるということは、みな認めておるところでございます。この農業が、従来の集約的農業経営から漸次脱却いたしまして、ほんとうに近代的な農業として、農民の福祉向上に役立つように農業を改めていきたい、新しい道を示していきたいという考えに基づくのが、今回の農業基本法でございます。(拍手)私が、今後、予算あるいはあらゆる面におきまして農業の発展と農民の福祉増進をはかるということは、施政方針演説で申し述べた通りでございます。国民各位とともに、農業の近代化と発展のために全力を注いでいきたいと考えております。(拍手)
  〔国務大臣周東英雄君登壇〕
○国務大臣(周東英雄君) お答えいたします。
 まず第一の私に対するお尋ねは、農業発展のため必要なる措置が計画的にとられない、国もあまり責任を持っておらない、こういうお話でございますが、これは農業基本法の各条をごらんになるとわかりますように、将来に対する需給の見通しを立て、これに対する施策を確立して、法制上、財政上、金融上の措置をとらねばならぬという義務を国家に負わせておるのであります。(拍手)さらに、新しい考え方といたしましては、これらの計画は、一たびの計画だけで終わらないで、年々、これらの見通しに立っての計画が、その実績の上においていかなる形に現われたかということを国会に報告する義務を負わしておるのであります。しこうして、報告をした以後の内容について、実施がその通り行なわれておらない場合においては、さらにこれを改変し、また、それに対して国が施策を進めて参る所存でありますから、その点については御心配はないと思うのであります。(拍手)
 また、新しい農業政策を進めていく上について、金の問題にお触れになりました。お話の中で特に出たことは、年金制度等によって積み立てられる金、簡易保険積立金等を農村に還元するようにということでございます。この趣旨は賛成でありまして、今日、政府といたしましても、資金運用部に入ってきたこれらの金というものはお話のように大企業だけにはいっておりません。大きな額において農林漁業の方面に出ておることは、はっきりとお認めを願いたいと思うのであります。(拍手)
 それから、その次のお尋ねは、生産拡大について、土地及び水の高度利用を考えて拡大せよということであります。この御趣旨については、私も同感であります。ただ、先ほど企画庁長官が申しましたように、一応の計画というものについては、所得倍増計画の上に一兆円何がし出ておりますが、これらについては、今後、新しく、さらに農業基本法の制定の後、将来における長期見通しに立って、生産を拡大していくについて必要な土地の増大等については十分に考えて参り、これが幅のある計画であるということは、先ほど申し上げた通りであります。
 それから、その次は、農業構造改善に関して、自民党政府の案は、家族経営を中心とした自立経営農家を進めていく、これがどうも従来の自作農主義を離れてないじゃないかということでありますが、御案内の通り、かつて、日本の農村の実情は小作農形態であって、土地を持たない農家というものは非常に不安であった、これを自作農に変えた農地改革というものは、大きく農村に喜ばれたはずであります。私どもは、あくまでこの形態を中心に、第一に考えるべきことは、家族経営を中心としてこれが自立し得る形に生産基盤を増大し、あるいは近代化を進め、資本装備を導入し得るよう、個人家族経営を中心としたものに考えを向けていきます。これが一つの原則でありまして、あなた方のただいまの御質問の内容には、日本の農業者六百万戸、大体十五町歩平均に持たせれば四十万戸、二十町歩平均に持たせれば三十万戸の農業法人経営に持っていこうというお考えかもしれませんが、私どもは、その原則は逆に考えていきたいと思います。(拍手)
 今日の農村の生産性を上げ、生産コストを引き下げて、資本装備を整え、近代化、機械化をするについては、個々の農家でできない場合もございましょうし、また、産業の種類によって、一部共同すれば十分できることもありましょうし、全面的の協業ということが必要な場合もありましょう。従って、産業及び地域的の関係に即して協業化は進めて参るつもりでありますし、御指摘のように、私ども、農業協同組合及びこれがなすところの協業形態、また、共同施設利用というものに関しては、積極的に今後も助成して参りますし、また、これに必要なる農業法人に関する法律を出して、皆さんの御賛成をいただく運びになると思います。(拍手)
○議長(清瀬一郎君) 以上で趣旨説明に対する質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
○田邉國男君 残余の日程は延期し、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
○議長(清瀬一郎君) 田邉君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
 本日は、これにて散会いたします。
   午後四時五十九分散会
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 出席国務大臣
        内閣総理大臣  池田 勇人君
        外 務 大 臣 小阪善太郎君
        大 蔵 大 臣 水田三喜男君
        文 部 大 臣 水田三喜男君
        厚 生 大 臣 古井 喜實君
        農 林 大 臣 周東 英雄君
        通商産業大臣  椎名悦三郎君
        運 輸 大 臣 小暮武太夫君
        労 働 大 臣 石田 博英君
        建 設 大 臣 中村 梅吉君
        自 治 大 臣 安井  謙君
        国 務 大 臣 迫水 久常君
 出席政府委員
        法制局長    林  修三君
        外務政務次官  津島 文治君
        外務省条約局長 中川  融君
     ――――◇―――――