第038回国会 本会議 第29号
昭和三十六年四月十三日(木曜日)
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 議事日程 第二十二号
  昭和三十六年四月十三日
   午後一時開議
 第一 失業保険法の一部を改正する法律案(内
  閣提出)
 第二 郵便振替貯金法の一部を改正する法律案
  (内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
 総理府設置法の一部を改正する法律案(内閣提
  出、参議院回付)
 港湾法の一部を改正する法律案(内閣提出、参
  議院回付)
 政治テロ行為処罰法案(坪野米男君外八名提
  出)の趣旨説明及び質疑
 公共用地の取得に関する特別措置法案(内閣提
  出)の趣旨説明及び質疑
 日程第一 失業保険法の一部を改正する法律案
  (内閣提出)
 日程第二 郵便振替貯金法の一部を改正する法
  律案(内閣提出)
 新技術開発事業団法案(内閣提出)
   午後一時三十九分開議
○議長(清瀬一郎君) これより会議を開きます。
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 総理府設置法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院回付)
○議長(清瀬一郎君) お諮りいたします。
 参議院から、内閣提出、総理府設置法の一部を改正する法律案並びに港湾法の一部を改正する法律案が回付されております。この際、議事日程に追加いたしまして、右両回付案を順次議題とするに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
 まず、総理府設置法の一部を改正する法律案の参議院回付案を議題といたします。
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○議長(清瀬一郎君) 採決いたします。
 本案の参議院の修正に同意の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○議長(清瀬一郎君) 起立多数。よって、参議院の修正に同意するに決しました。
     ――――◇―――――
 港湾法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院回付)
○議長(清瀬一郎君) 次に、港湾法の一部を改正する法律案の参議院回付案を議題といたします。
    ―――――――――――――
○議長(清瀬一郎君) 採決いたします。
 本案の参議院の修正に同意するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、参議院の修正に同意するに決しました。
     ――――◇―――――
 政治テロ行為処罰法案(坪野米男
  君外八名提出)の趣旨説明
○議長(清瀬一郎君) 議院運営委員会の決定によりまして、坪野米男君外八名提出の政治テロ行為処罰法案の趣旨の説明を求めます。提出者坪野米男君。
  〔坪野米男君登壇〕
○坪野米男君 私は、日本社会党を代表して、政治テロ行為処罰法案の提案理由について御説明いたします。
 まず、第一に申し上げたいことは、社会党が何ゆえに本法案を提出しなければならなかったかについてであります。
 私たちは、昨年十月、右翼テロの凶刃によって浅沼委員長を失い、その直後の臨時大会において、浅沼委員長の死を乗り越えて右翼テロを根絶することを誓ったのであります。さらにまた、第三十六回臨時国会においても、満場一致で暴力排除の決議が採決されたのであります。しかるに、本年二月、再び右翼テロによる嶋中事件の発生を見るに至り、右翼テロに対する国民世論はがぜん硬化して参りました。今国会においても、警察当局の警備責任、政府の政治上、行政上の責任について、きびしい追及がなされ、さらに、右翼テロの背後勢力、また、右翼団体への資金源についても、きびしい究明が続けられましたが、必ずしも国民の納得する結果は得られなかったのであります。ところで、一方、国会で右翼テロに関する質問をした国会議員に対してまで右翼の脅迫やいやがらせが続き、国会における言論の自由まで右翼テロによって脅かされ、ついには、国会周辺や議員宿舎に制服警官が常時警備をし、また、特定の議員に対して私服の警備がつくという、異常な事態が出現したことは、御承知の通りであります。わが国議会史上まことに忌まわしい汚点を残したものというべきであり、一刻も早くかかる異常な状態を解消しなければ、わが国の民主主義、議会政治の前途が危ぶまれるのであります。(拍手)
 およそ、相手方の言動が自己の政治上の主義、信条と相いれないからといって、その相手方を殺傷するがごとき政治テロ行為は、最も憎むべき、また、最も凶悪な犯罪であり、民主社会の敵、国民共同の敵であるといわなければなりません。(拍手)何となれば、政治テロは、民主主義の大前提である言論及び政治活動の自由を侵害し、民主主義の根幹をゆるがすものだからであります。かかる政治テロを根絶するには、何よりもまず、生命は尊貴である、一人の生命は全地球よりも重いという、最高裁判所判決に示された生命尊重の精神に徹し、いかなる動機、原因があろうとも政治テロは絶対許さないという、国民世論のかたい意思を表明する必要があります。右翼テロリストは、愛国の美名のもと、殺人も社会的に許容されるもの、少なくとも、国民大衆の同情や共感が得られるもの、と盲信しているようでありますが、このような危険な誤った妄想を打ち砕くためには、政治テロを憎む国民世論のきびしい意思を明確に打ち出すことであります。本法案は、このような国民世論の表明として、政府に政治テロ根絶の決意を迫るため提案したものであります。
 元来、治安の責任を持つ政府や警察首脳に、はたして政治テロ根絶の熱意ありやいなや、はなはだ疑いなきを得ないのであります。(拍手)もし、政府や警察首脳に政治テロ根絶の決意さえあれば、現行法令をもってしても、政治テロを取り締まり、予防鎮圧することは、必ずしも不可能ではないのであります。ただ、政府・与党にその熱意がなく、全く焦点のぼけた暴力対策を立案したり、デモもテロもともに暴力犯罪として公平に取り締まるべきだとか、テロ以外の一般暴力犯罪の防止も必要だとか、当面する政治テロ対策を一般の防犯対策の中に埋没してしまおうとしておりますが、これは、政治テロ対策をごまかし、糊塗しようとするものでありまして、責任ある政府・与党の態度としては、まことに不可解千万であります。(拍手)
 政治テロは、言うまでもなく、人を殺傷する行為であり、あらゆる暴力犯の中で最も凶悪な犯罪でありますが、これに反し、デモは、言論表現の自由として、憲法や法令で保障された国民の基本的権利であります。(拍手)ただ、デモの行き過ぎから、派生的に器物を損壊するなどの暴力事犯が発生することはありますが、このような違法な行為についても公正に取り締まるべきことは言うまでもありません。しかしながら、テロも悪いがデモも悪いとか、テロの原因は違法なデモにあるんだとか、テロとデモとを同一時限で論ずることは、見当違いもはなはだしいといわなければなりません。(拍手)
 一般の暴力犯罪の防止はもとより必要なことではありますが、問題は、民主主義が危機に瀕している今日、最も凶悪な政治テロ犯罪をいかにして防止するか、これが根絶策いかんでありまして、政治テロに対して厳罰をもって臨まんとする本法案こそ、当面の必要最小限の立法措置であると確信するものであります。(拍手)社会党は、政府・与党が政治テロ対策につき治安の責めを果たそうとしないので、やむを得ず、責任ある野党として本法案を提出した次第であります。(拍手)
 第二に申し上げたいことは、本法案は、政治テロ根絶の抜本策でもなければ、長期対策でもなく、あくまでも、当面の政治テロ防止策として緊急やむを得ない、最も現実的な立法措置であるということであります。
 政治テロを根絶するためには、テロを憎み、テロを断じて許さぬという強固な国民世論を背景としなければなりませんが、それと同時に、池田総理の言う政治の姿勢を正すことによって、テロを生み出す社会風潮の一掃をはからなければなりません。しかし、これは、一朝一夕にしてなるものではなく、長期にわたる政府、与野党の努力に待たねばならないと信ずるのであります。
 さらに、現実的、総合的な政治テロ対策としては、政治テロの正当性、必要性を主張する団体、すなわち、一人一殺主義を唱える右翼団体などに対する資金源を究明し、その政治資金を規正することも必要でありましょうし、また、政治テロを扇動する団体その他を規制することも必要であります。さらに、また、政治テロに走るおそれのある青少年に対する根本的な指導、積極的な対策が必要であります。単なる不良青少年に対する防犯、矯正等の消極的対策だけでは不十分であります。自分の生活に明るい希望の持てる健全な社会人としての青少年育成策、これこそが青少年をテロに走らせない根本策であろうと信ずるのであります。政府・与党がかかる根本策に手を触れず、単なる総合的防犯対策だけで事足れりと考えているならば、それは真の防犯対策とはなり得ず、いわんや、長期の政治テロ根絶策とはとうていなり得ないものといわなければなりません。
 本法案は、政府、与野党が話し合いによって真剣に政治テロ根絶の抜本策を樹立し、長期施策を講ずるまでの必要最小限の緊急措置として、とりあえず、三年間の時限立法として立案されたものでありまして、刑罰の強化によって政治テロを防止するというのは、政策としては下の下策でありますが、真にやむを得ざる現実的な措置であります。従いまして、社会党は、恒久的根本法たる刑法の一部改正は軽々に行なうべきではなく、また、一般犯罪にも適用され、さらに、乱用のおそれさえある警察官の取り締まり権限強化をはかる銃砲刀剣類等所持取締法の一部改正、破防法その他の法令の改正はその必要がなく、左右を問わず、政治テロのみを対象とした最小必要限度の単独立法で、しかも、暫定立法で対処すべきものと考えるのであります。
 第三に、本法案のねらい、すなわち、その目的について申し上げます。
 言うまでもなく、本法案は、刑法の特別法として、テロ犯罪に対し、刑罰を加重することによって、すなわち、厳罰主義の威嚇力によってテロ犯罪の一般予防をはかろうとするものであります。死刑その他の極刑の威嚇によってテロ犯罪を一般予防しようとするものであります。私たちは、一般犯罪の防止策として、現行刑法以上の厳罰主義をとることには、原則として反対であります。刑は刑なきを期することが刑事政策の理想でありまして、いたずらに厳罰主義をもって犯罪の防止をはかることは、時代逆行のそしりを免れませんし、近代刑法理論の進歩に背を向け、刑罰緩和化の歴史にもそむくことになりましょう。しかしながら、民主主義を圧殺し、文明を破壊せんとする政治テロに対しては、民主社会防衛のため極刑をもって臨むととも真にやむを得ないところであろうと信じます。歴史の発展を阻止しようとする反動的な政治テロに対し極刑をもって臨むことは、何ら文明の名に恥じないものと信ずるのであります。(拍手)私たちは、刑罰の威嚇力が絶対的なものとは考えませんが、相対的には相当の効果を期待し得るものと考えるのであります。また、政治テロこそは、最も凶悪な犯罪であり、強盗、殺人犯以上の極刑に値することを、政治テロ犯人に対し教育し、また、一般国民や裁判官に知らしめるためにも、厳罰主義の法定刑が必要であると確信いたします。さらにまた、本法案の厳罰主義は、単なる報復主義に基づくものではないのであります。刑罰理論は、復讐刑から応報刑へ、さらに、一般予防、特別予防から教育刑へと進んで参りましたが、刑罰の本質としては、道義的応報の要素は否定し得ないのでありまして、いわゆる罪の償いは当然しなければなりませんが、単に私的、感情的な報復観念に根ざすものであってはならないことは言うまでもありません。
 次に、本法案に盛られた厳罰主義は、いわゆる確信犯人に対してはほとんど威嚇力を持たないのではないか、との疑問が当然起こるでありましょう。もとより、確信犯、思想犯に対しては、刑罰の威嚇力は大きな効果を期待できないでありましょう。しかし、問題は、政治テロ犯人ははたして確信犯なりやいなやであります。その政治的な主義、信条については思想的な確信を抱いている者もありましょうけれども、自己の信奉する政治的主義の実現のために人を殺すことのできる正当性、必要性を確信する犯人は、はたして何人いるでありましょうか。いわんや、自己の生命を犠牲にしてまで反対者を殺傷せねばならぬとの決意をもって臨むテロリストはきわめて少ないのではないかと考えられるのであります。主観的には、崇高な目的達成のためには凶悪な手段も正当化され、少なくとも、社会的には許容され、同情を受ける、また、裁判上も死刑だけは免れるとの甘い考えを持ったテロリストも相当多いのではないかとも考えられるのでありまして、テロ殺人実行の後、必ず死刑になるとわかっていて、なおかつテロ殺人を敢行する確信犯人は、今日ではきわめて少なく、従って、テロ犯人に対しても死刑の威嚇力は相当大きな効果はあると考えられるのであります。さらに、私たちは、殺人の正当性や必要性を確信するごく少数の盲信者に対しては、殺人確信犯人であるからこそ、その犯罪に対して、社会防衛上、犯人を社会から永久隔離するため、無期懲役または死刑をもって処断することもやむを得ないと考えるのであります。
 なお、私たちは、わが国の文化が高度に発達して、平和な民主社会が実現し、死刑の威嚇による犯罪の防止を必要としない時代の出現を待望しておりますが、現在は、残念ながら、制度としての死刑を廃止する段階には至っていないと考えるのであります。健全な国民感情は凶悪犯人に対する死刑を少なくとも是認していると確信するのであります。
 最後に、本法案の内容について簡単に御説明を申し上げたいと思います。
 本法案は、わずか十二カ条からなる刑法の特別法でありますが、本法に規定のない限り、刑法総則その他刑法理論が当然適用されることになるわけであります。
 そこで、第一条は、この法律の趣旨を明らかにしたものであり、特に説明を要しないと思います。
 また、第二条は、適用の基準を示したものでありまして、特に、左右を問わず、思想の自由、言論、結社の自由そのものを不当に制限し、弾圧するものではないことを注意的に規定しております。
 第三条は、扇動と凶器の定義を明示して、乱用防止をはかっております。特に、扇動の定義は、大審院判例以来確立した定義でありまして、教唆に近い概念でありますから、拡大解釈のおそれはないものと考えます。
 次に、第四条ないし第十条は、各種のテロ犯罪の構成要件と刑罰を規定したものでありますが、政治テロ行為の基本的な構成要件は、たとえば第四条では、「自己の政治上の主義と相容れないことのゆえをもって人を殺した者」となっておりまして、殺人の行為そのものは刑法上の殺人罪と異なるところはなく、ただ、殺人の動機が、自己の政治上の主義、信条に反する他人の言動を憎み、これを抹殺せんとして人を殺す場合にテロ殺人罪となるのでありまして、犯罪の動機によって特別に刑を加重せんとするものであります。
 なお、政治上の主義とは、たとえば、資本主義、共産主義あるいは民主主義というように、政治によってその実現を企てられる、比較的、基本的、一般的かつ抽象的な原理をいうものであり、政治上の主義、信条と解釈して差しつかえないと考えます。従って、現実的、具体的な政策や行政上の施策は含まないと解釈すべきであります。
 そこで、第四条は、テロ殺人の既遂、未遂、予備、陰謀罪を規定し、刑を加重しておりますが、刑法の殺人罪や殺人未遂罪も最高は死刑となっているのであります。
 第五条は、テロ殺人の教唆、扇動者を独立罪として重く罰しております。ただ、本条は、正犯が殺人の実行に着手しなかった場合の規定でありますが、第十二条の規定により、正犯が殺人の実行に着手した場合は、正犯に準じて、最高は死刑に科することができるわけであります。
 第六条は、テロ傷害致死罪の規定、第七条は、銃砲刀剣等の凶器を準備し、これを用いてなすテロ傷害及びその未遂罪を規定しております。
 第八条は、情を知ってテロ犯人に凶器や金品等を供与した者を罰する規定でありまして、第九条は、凶器を示してするテロ脅迫罪を規定したものであります。
 次に、第十条は、テロ殺人犯人を公然と賛美した者を罰する規定でありますが、本条は、テロ殺人の教唆、扇動には至らないが、テロ殺人が敢行された後に、その犯人の殺人行為をほめたたえるがごとき不穏な言論は、きわめて反社会的な言論であり、テロ殺人を助長するおそれがあり、憲法で保障された言論の自由の範囲を著しく逸脱したものとして、社会的にとうてい許容し得ない犯罪的言論でありまして、かかるテロ殺人賛美の言論は、国民の法意識において、言論犯罪として是認されるものと確信いたすのであります。
 なお、第十一条は、刑の減免の規定でありまして、事前の自首等によりテロ殺人や傷害が未然に防止できた場合に、刑を減免する旨の政策的な規定であります。
 以上、本法案の目的並びにその内容の概略について御説明いたしましたが、国民の基本的人権に関する重要な法案でありますから、何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますようお願いいたしまして、私の提案説明を終わります。(拍手)
     ――――◇―――――
 政治テロ行為処罰法案(坪野米男君外八名提出)の趣旨説明に対する質疑
○議長(清瀬一郎君) ただいまの趣旨の説明に対しまして、質疑の通告がございます。よって、これを許します。仮谷忠男君。
  〔仮谷忠男君登壇〕
○仮谷忠男君 私は、自由民主党を代表いたしまして……。
  〔「まっすぐ向け」と呼び、その他発言する者あり〕
○議長(清瀬一郎君) 静粛に願います。
○仮谷忠男君(続) ただいま日本社会党より提出いたされました政治テロ行為処罰法案に対し、提案者並びに池田内閣総理大臣に質問を行なわんとするものであります。
 昨年以来相次いで発生いたしました右翼のテロ行為は、わが国民主主義発展の上からきわめて遺憾な事柄であり、将来かかる不祥事根絶のため、適正妥当なる法的補整の必要なることは、何人といえども異論のないところでありまして、この問題につきましては、与党、野党を問わず、真剣に取り組むことが政治家としての使命ではないかと思うのであります。(拍手)この意味において、私は、日本社会党の熱意と努力に率直なる敬意を表するものであります。(拍手)
 さて、御提出の法案を一見いたしまして、まず、私の率直なる感じを申し上げますなれば、これを現行刑法あるいは破防法と比較対照いたしますとき、いたずらに処罰の対象が広い。しかも、刑罰がきわめて過重である。いかにも被害者の報復立法、あるいは全く威嚇のための立法といわざるを得ないのであります。(拍手)ある専門家は、この法案を評して、むやみに刑が重くて刑事法の専門家を驚かしている、幾ら立法府で法律を作るのがお手のものとはいえ、国会議員が被害者になる可能性が多いからといって、刑罰のお手盛りは歳費のお手盛りほど下品ではないが、事は、はるかに重大であるといって、皮肉な警告すら発しているのであります。目前の事象を憎むの余り、最も冷厳なるべき立法の精神が、いささかたりとも感情的であってはならないことは、申し上げるまでもございません。(拍手)私は、こうした観点に立って、まず、提案者に対して、以下、数点をお伺いいたしたいのであります。
 まず第一点は、法案全体を通しての基本的概念である「自己の政治上の主義と相容れないことのゆえをもって」という字句についての疑問であります。すなわち、この言葉は、相手方と政治上の主義が相反するということを意味するのか、それとも、単に自己の政治上の主義が受け入れられないという意味であるのか、いずれにも解釈されるあいまいさがあります。提案者は、政治テロの概念を厳格に規定して乱用防止をはかったと言われておりますが、私は、このようなあいまいな用語のもとに厳罰を許し得る本案についてはまことに重大な問題があると思うのでありまして、まず、この点についての御意見を承りたいのであります。
 第二点は、元来、テロ犯罪は、国の内外を問わず、思想的確信に基づいて、あえて国法を犯すものであり、犯人は、刑の重いことぐらいは覚悟の上であります。この点、提案者の御趣旨はきわめて甘いと思うのでありますが、このことは、浅沼事件の山口犯人が、犯行後、かねて覚悟の自殺を遂げた例を見ても、その一端を知ることができると思うのであります。なるほど、厳罰主義で、ある程度の潜在性犯人を思いとどまらせる効果はないとは申しません。しかし、現実のテロ防止対策として、本案のごとき極端な威嚇立法がはたして妥当なものであると思われるかどうか、立法政策の上からも疑いなしとしないのであります。提案者の御所見を承りたいのであります。(拍手)
 第三点は、独立犯としての教唆、扇動、あるいは予備、陰謀の処罰規定でありますが、法定刑の当否は別としても、この規定と破防法三十九条との関係は一体どうなるのか、明確なる御説明をいただきたいのであります。
 第四点は、第十条の殺人の罪等の賛美の罪であります。法文は、「第四条第一項若しくは第二項又は第六条の罪を犯した者としてこれを公然と賛美した者は、三年以下の懲役に処する。」としていますが、構成要件をもっと厳格にしぼらないと、きわめて広く解釈適用される余地があり、国民はうっかり正直な感想も口に出せなくなるおそれがあるのであります。過去の事件についても、庶民の中には必ずしも憎む声ばかりでなかったことは、おおえない事実であります。私は、そういう声が生まれたという原因については、これを率直に反省するだけの雅量が政治には必要だと思うのであります。要するに、実行行為に直接つながらない単純な言論までも刑罰で弾圧しようとするに至っては、まさに、提案者の申される通り、下の下策であり、明らかに違憲の規定であります。(拍手)しかも、この法案の趣旨は、言論と政治活動の自由を擁護する法律のはずであります。単なる言論にまで重罰をもって臨む自己矛盾を、提案者は一体どう弁明されるのか。
 第二は、賛美の概念について、なお、さらに、その賛美の対象となるテロ行為のうちには、過去の歴史上の事実にとどまるテロ行為をも含むのであるかどうか、この点は憲法上の言論の自由との関連において重大な問題であろうと思いますので、あわせて明確にしておいていただきたいのであります。(拍手)
 第五点は、この法案を三年間の限時立法としたことであります。時を限った厳罰法によって右翼テロを圧服しようとする一種の非常立法でありますが、本法案が緊急の必要悪だという考え方は、すでに提案者自身も認めているところであります。日本社会党があえて限時法にたよろうとする意図はわからぬでもありませんが、しかし、みずから必要悪と認め、下の下策といいながらも、それを国民に押しつけようとする立法精神には、納得できないものがあります。もっと冷静に、腰を落ちつけて、みずからも納得する法案を検討すべきではないか。なおまた、提案者は、みずからこの法案はやむを得ない現実的施策だと言われておりますが、かりに、より有効な施策が生まれたとすれば、本案を撤回する用意があるかどうか、伺っておきたいと思うのであります。(拍手)
 第六点は、およそ、政治テロ防止のためには、第一に、行為者の処罰、第二に、独立犯としての教唆、扇動、あるいは背後関係等、周辺にある者の処罰、第三に、予防のための手続規定、第四に、団体の規制等、この四者の規定を並行して補整すべきであります。しかるに、本法案は、前二者のみを内容とし、後者に対する何らの意思も明らかでありません。むしろ、急がなければならないのは、犯人の厳罰規定よりも、犯罪を未然に防止する施策であります。提案者は、一体、事前防止と団体規制についてはいかなる対策を持っておられるのであるか、予防のための法改正には反対をし、事後の罰則のみを考えるのは、いささか本末転倒の感なしとしないのでありまして、御所見を承りたいと思うのであります。
 さて、最後に、いま一点、これは池田内閣総理大臣にもあわせて御所見を承りたいのであります。
 およそ、政治テロは、言うまでもなく、それを生む素地があるからこそ起こるのであります。特に、昨年来続発した事件に関しましては、もちろん、発生した事象の感じ方、対処する姿勢、あるいは立法技術の問題等、各党それぞれの立場において異なるのは当然でありますが、しかし、多数国民の率直なる感情は、たとえば、嶋中事件の直接の原因が「風流夢譚」であり、言論自由の原則にもおのずから社会良識と責任が伴うべきだという深沢氏への批判にしても、あるいは政治テロを誘発した原因が最近の激しい左翼の集団暴力にあるという飯守発言にしても、少なくとも、これを否定はしていないのであります。このことは、テロはテロとして大いに憎みながらも、その反面、安保闘争あるいは勤評闘争のごとき逸脱した集団暴力に対する国民大衆の無言の回答であることを見のがしてはならないのであります。もちろん、右翼のテロと左翼の集団暴力とは、その動機、その目的、その本質等において相違はありますが、よしんば、左翼のそれがかりに偶発的な現象であるにもせよ、多数国民がそれを区別して是認するほど寛大ではありません。かくのごとき国民感情を無視して、単に一方的に右翼弾圧のみを考えましても、テロの根絶はきわめて困難ではないでしょうか。(拍手)いわんや、「岸を殺せ」というプロカードをこう然と押し立てる集団はあたりまえのこと、単純なるテロ賛美の国民は三年の懲役、こんな政治で、はたして国民が納得するでありましょうか。(拍手)あるいはまた、勤評闘争による人権を無視した集団つるし上げが学校長や教育委員の生命を断つ重大なるところの原因となっていることを思いますとき、こうした人々の生命や人権は無視されて、政治家のみが保護されようとする身勝手は、断じて国民の承服しないととろであります。(拍手)私は、決してテロ行為を軽く見るものではありません。しかしながら、立法の精神は、あくまでも両刃の剣でなければならないということであります。反対派だけを切る、自派には使わせないというような考えは、いずれの政党にも許されない、ということを申し上げたいのであります。(拍手)あえて、日本社会党の率直なる御見解を拝聴いたしたいと考えるのであります。
 なお、池田内閣総理大臣に対しましては、以上申し上げました観点に立ってテロ対策を考えますときに、すでに日本社会党よりはただいま法案が提出いたされ、民主社会党においても政治危害防止法案要綱が発表されております。また、自由民主党よりも近く何らかの提案は必至と思われるのでありますが、かくのごとき政治情勢下において、一体、総理はどの程度の決意をもって対処いたされんとするのであるか。国会の正常化、話し合いの政治こそ、池田総理の金看板の一つであるはずであります。この際、国民の要望にこたえて、勇気をもって三党間の意見調整を行ない、総合的中庸の道を切り開く用意はないか、率直なる御所見を拝聴いたしたいと考えるのであります。
 以上をもって私の質問を終わります。(拍手)
  〔坪野米男君登壇〕
○坪野米男君 ただいまの御質問にお答えしたいと思います。
 最初に、刑法や破防法と比較して対象が広い、また、刑が非常に重い、こういう御意見のようでありましたが、対象は決して広くないわけであります。左右を問わず、政治テロ犯人の個人の犯罪行為に限るということでありまして、対象は決して広くないと思います。刑は確かに加重されております。
 それから、報復主義のにおいが強い、お手盛りの立法だ、こういう批判がございましたけれども、われわれは、決して被害者の報復感情からテロ処罰、テロ防止を考えておるものではございません。テロを根絶するという国民の強い決意、意思を表明するための立法であります。感情に根ざすものでは決してございません。(拍手)
 それから、質問の第一点に、自己の政治上の主義と相いれないゆえをもってという、このテロ犯罪の基本的構成要件についての疑義でありますが、これは、テロ犯人の政治上の主義、信条、一方、被害者たる相手方の主義、信条は問わないわけであります。従って、自分の政治上の主義、信条と合わない、気に入らないというような感情的な動機で相手を憎み、相手を殺傷するという場合でも、犯人の政治上の主義、信条と相いれない、相反するという事実があれば、そういう犯罪の動機があれば、テロ犯罪は成立するわけでありますこのように、犯罪の動機でもって刑を加重するということは、刑法体系の中で比較的珍しい例ではございますけれども、立法技術的に決して不可能ではない、不合理ではないわけでありまして、このようなテロ犯人に対して、現在の破防法の規定をもってしてはテロ犯人を十分に規制し得ないというところから、このような規定をあえて挿入したわけでございます。
 それから、第二点の、確信犯については威嚇効力がない、山口犯人は自殺をしておるじゃないか、こういうことでございましたけれども、山口犯人は犯行直後に自殺をしておらないのであります。未決勾留期間中に、社会的に大きな圧迫を受けて自殺に追いやられたものというように考えられるのであります。(拍手)嶋中事件における小森少年は、犯行直後に、頭をまるめて坊主になっておる、坊主にさえなれば罪は許される。殺人行為は許されるのだというような甘い考えを持っておるテロリストもたくさんおるのであります。(拍手)そういう意味で、私は、テロ犯人に対しても極刑の威嚇力は十分あり得ると考えておるのでございます。
 第三に、独立犯として設けられた殺人の教唆犯、あるいは扇動罪と破防法との関係でありまするが、破防法の規定は、御承知のように、政治上の主義、施策を推進し、反対し云々する目的をもってという目的罪になっておりまして、この破防法でもっては、赤尾敏さえも、あのような悪質なテロ殺人の教唆扇動者さえもくくり得なかった、起訴し得なかったという事実にかんがみまして、われわれは、テロ殺人の本犯よりも、テロ殺人の教唆扇動者の方をより憎むべきである、テロを防止するためにも、このような背後にあってテロを教唆扇動するやからを重く罰する必要がある、そういう観点から、独立犯として処罰するものでありまして、破防法との関連においては何ら矛盾するものはないと考えております。(拍手)
 第四に、テロ賛美の言論犯罪についてでありますけれども、いやしくも、テロ殺人が行なわれた直後に、そのテロ犯人の行為を賛美する、ほめたたえるというがごとき言論は、なるほど、直接実行行為には結びつかないでありましょう。けれども、テロ殺人を助長する最も悪質な反社会的な犯罪として、言論犯罪として、これは処罰に値するものであります。(拍手)現に、言論犯罪として名誉毀損罪が刑法の中に規定されております。言論の自由が無制限でないということは、憲法上当然でありまして、テロ殺人を賛美するがごとき言論は、新たに法犯罪として創設されて、何ら不合理はないと考えるのであります。
 なお、歴史上の人物について賛美した場合には、これが処罰の対象になるか、こういうお尋ねでありますけれども、条文をよくごらんいただけば、本法が成立以後のテロ殺人犯人を賛美した行為、しかも、三年間の時限立法でありまするから、歴史上の人物は含まれないことは、条文の解釈から当然でございます。
 それから、下の下策であるが、よりよい案があれば撤回の意思があるか、ということでございますが、自民党並びに政府に、テロを根絶するという熱意、決意が具体的にあれば、われわれは十分話し合う用意はございます。しかしながら、テロとデモとを混同するような暴力対策に対して、われわれは話し合いの余地がない、ということを申し上げておきます。(拍手)
 なお、団体規制を急げ、こういうことでございまするが、もちろん、団体の規制も必要でございます。しかしながら、政府が今考えておる破防法の改正、あるいは単独立法による団体規制、その内容をよくつまびらかにいたしませんが、民社党の法案を見ますると、破防法の焼き直し程度で、私は、団体規制につきましては、憲法との関連上、もっと慎重に考慮すべきものであるとして、直ちにここで立法化すべきでないと考えておるりでございます。
 最後に、意見でありましたけれども、われわれは、左翼の集団暴力がテロの原因だというようなことは、全く愚にもつかない暴論でありまして、テロを憎む国民の世論を盛り上げることによってテロを根絶できると確信をいたしております。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 暴力行為は、民主主義の最大の敵でございます。われわれは、日本社会党並びに民主社会党の御提案になりまする法律案の内容を検討するはもちろん、各方面から鋭意検討を重ねて、りっぱな案を御審議願うよう、今準備中でございます。(拍手)
○議長(清瀬一郎君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
 公共用地の取得に関する特別措置法案(内閣提出)の趣旨説明
○議長(清瀬一郎君) 次に、内閣提出、公共用地の取得に関する特別措置法案の趣旨の説明を求めます。建設大臣中村梅吉君。
  〔国務大臣中村梅吉君登壇〕
○国務大臣(中村梅吉君) 公共用地の取得に関する特別措置法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げたいと思います。
 御承知の通り、狭隘な国土に多数の人口を擁しておりますわが国の実情といたしましては、経済の発展と国民生活の向上をはかるためには、この国土を最も合理的に利用することが必要でございまして、このため、公共事業あるいは公益事業を今後一そう推進することが必要とされておるのであります。
 政府といたしましても、この点にかんがみまして、公共投資の拡充強化を重視いたし、本年度の予算編成においても所要の措置を講じておる次第であります。しかしながら、公共事業及び公益事業の増大に伴いまして、これらの事業に必要な用地も相当増加して参っておるのでありますが、これらの公共用地を取得いたしますることが次第に困難になっておりまするため、事業の円滑な執行に著しい支障を及ぼしておる現状であります。従いまして、公共用地の取得難につきましては、早急にこれに対する適切な措置を講ずる必要が痛感されておるところでありますが、この問題は、私権の保護と公共目的の遂行との調整につきまして特に慎重な配慮を講ずる必要がございますので、政府といたしましては、広く各方面の学識経験者の検討を経た上でその対策を樹立することが適当であると考えまして、昨年七月、建設省に公共用地取得制度調査会を設置して、公共用地取得制度の改善について諮問をいたしておった次第であります。公共用地取得制度調査会におきましては、昨年以来、終始、慎重かつ熱心な調査審議を重ね、本年三月一日付をもちまして答申が行なわれた次第であります。
 政府といたしましては、この公共用地取得制度調査会の答申の趣旨を十分に尊重いたし、さしあたって、その用地取得難を緊急に打開することを要する特に緊要な事業に限って土地収用法の特例等を設けることにより、これらの事業の円滑な執行とこれに伴う損失の適正な補償の確保をはかる方策について立法化を進めて参りまして、ここに公共用地の取得に関する特別措置法案として提案をいたし、御審議を願う運びとなったものでございます。
 次に、本法案の要旨について概要を御説明申し上げたいと思います。
 まず、第一に、この法律案により用地の取得について特別措置を適用すべきものとした対象事業の範囲につきましては、公共の利益となる事業のうち、特に公共性及び緊急性の高い道路、鉄道、空港、通信、治水、利水、電力等の重要事業について、必要最小限度のものを法律に限定列挙いたしまして、さらに、これらのうちから個々の事業について、具体的に建設大臣が特定公共事業として認定したものについてのみ特別の措置を適用するものといたしております。なお、新たに建設省に公共用地審議会を設置し、建設大臣が特定公共事業の認定をする際には、その議を経なければならないものといたしまして、特定公共事業の認定に慎重を期しておる次第でございます。
 第二に、これらの特定公共事業の円滑な執行をはかる措置を講ずることといたしました。
 まず、その一として、事前の説明等を義務づけております。すなわち、特定公共事業となるべき事業の目的、内容及び緊急性について、あらかじめ地元住民等に対して説明し、またはこれらの者から意見を聴取する等の措置を講ずる義務を事業施行者に課することといたしております。
 その二といたしまして、特定公共事業の収用手続が円滑に進む措置といたしまして、事業認定及び土地細目公告の有効期間の短縮、事業認定または裁決の申請書の縦覧を市町村長が怠りましたような場合の都道府県知事の代行規定、土地調書または物件調書を作成するための立ら入りを拒まれ、または妨げられた場合の特例等、所要の措置を講ずることといたしております。
 その三といたしまして、緊急裁決の制度を新設いたしました。すなわち、収用委員会の裁決が遅延することによって事業の施行に支障を及ぼすことのないよう、そのおそれがあると認められるときには、損失の補償に関する事項で、まだ審理が尽くされていないものがある場合であっても、収用委員会が概算見積もりによる仮補償金を定めて緊急裁決をすることができる制度を新設いたしたのであります。これに伴い、緊急裁決が行なわれる場合におきましては、収用委員会が収用後または使用後においても補償額を適正に算定することができるよう所要の措置を講ずる義務、収用委員会が必要と認めるときには事業施行者が担保を提供する義務、緊急裁決の後、確定補償額について裁決があり、かつ、差額が生じましたときには、利息を付して清算する制度等につきまして、あわせてこれを規定いたし、被補償者の保護をはかる道を講じておるのであります。
 第三に、特定公共事業に伴う損失の適正な補償を確保する措置を講ずることといたしております。
 その一として、現物補償の裁決の規定等を整備いたし、現在土地収用法によって認められているかえ地の提供、宅地の造成等の現物補償のほかに、建物の提供による補償の裁決ができる制度を新設いたしますとともに、緊急裁決が行なわれる場合におきましては、被補償者からの物件の逆収用の請求及び仮住居の提供の要求を認める制度を新たに設けることとしております。
 その二といたしまして、当時者の協議により土地等を買収する場合におきましても、土地、建物等、現物による給付の請求があったときは、事業施行者は、できるだけその実現に努めなければならないことといたしております。
 その三として、生活再建対策の規定を設け、特定公共事業に必要な土地等を供するため生活の基礎を失うこととなる者に対しましては、これらの者の申し出によって、都道府県知事が関係行政機関、関係市町村長、申し出をした者の代表及び事業施行者と協議を行ない、生活再建計画を作成し、この計画に基づいて、土地もしくは建物の取得、職業の紹介、指導もしくは訓練、またはやむを得ず環境不良の土地に転居した場合の環境整備に関する所要の措置をとることといたしております。
 以上、この法律案の要旨について御説明を申し上げた次第でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
 公共用地の取得に関する特別措置法案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
○議長(清瀬一郎君) ただいまの趣旨の説明に対しまして質疑の通告がございますから、順次これを許します。まず、亀岡高夫君。
  〔亀岡高夫君登壇〕
○亀岡高夫君 ただいま趣旨説明のありました公共用地の取得に関する特別措置法案につきまして、私は、自由民主党を代表いたしまして、若干の質問を試みんとするものでございます。
 わが国経済の伸張発展をはかりまして、国民所得の増進と民生の安定向上を期するためには、まず、これが基盤となるべき公共事業並びに公益事業を今後ますます拡充し、推進する必要があることは、申すまでもないところでございます。わが党におきましては、党の重点公約でありますいわゆる所得倍増を目途とする経済成長政策を達成いたしますため、特に昭和三十六年度を契機といたしまして、道路、鉄道、港湾、電気通信、水資源開発等、公共投資の画期的拡大をはかり、これらの事業を強力に推進することといたしたのであります。これに伴いまして、これらの公共的諸事業の用に供する土地を適正かつ迅速に取得することは先決的要諦であり、土地収用問題は、公共事業の実施推進とともに、きわめて喫緊の重大事となって参りました。しかるに、他面、この用地問題をめぐりまして、近来、いわゆるごね得的風潮が至るところに醸成せられ、緊急を要する公共用地の取得は、ますます困難かつ深刻の度を加うるに至りまして、事業の執行に致命的な隘路となっている実情であります。このような事態のもとにおいて重要公共諸事業の画期的実施をはかり、国民の期待にこたえることは、現行の土地収用法のみをもっていたしましてはきわめて至難のことであり、この際何らかの抜本的緊急対策を必要とするものと思われるのであります。近時、世論の動向に徴しましても、ひとしくこれを指摘、強調いたし、これが実現を強く要望していることは、すでに御承知の通りでございます。このときにあたりまして、政府は、公共用地収用制度調査会を中心として、過去一年間にわたり、慎重かつ綿密に専門的調査検討を行ない、その答申に基づきまして公共用地の取得に関する特別措置法案の成案を得られまして、ここに提案の運びとなりましたことは、まことに時宜を得た措置であり、きわめて共感を禁じ得ないところであります。一般世論もまた、強くこれを支持するものと信じて疑いません。(拍手)
 もともと、この法案は、緊急の用地対策を必要とする公共的、公益的事業につきまして現行土地収用法の特例を規定したものでありますが、これが実施にあたりましては、必然的に私有財産権に相当の影響を及ぼすおそれがあるものと思われます。すなわち、私権の保護と公共の利益増進との間における相互の背反的な関連をいかに調整するがということが本法案の根本的命題であると考えられますので、私は、この点について政府当局の御見解をただし、一般の理解に資するために、次の五つの点に関し質問を試みたいと存じます。
 まず、第一の質問は、この法律を適用する事業の範囲についてでありますが、この法案によりますと、適用事業は、道路、鉄道、空港、大都市交通、電気通信治水及び利水並びに電力の各事業のうち、特に重要なものに限られているようであります。これは、前に述べました私権の保護、私有財産権の尊重ということを特に考慮いたしまして、公共性、公益性のきわめて高いものにしぼられた御苦心の跡は明瞭に看取されるところでありますが、これらの事業範囲はいかなる基準によって選定せられたものであるか、まず、この基本的な問題についてお伺いしたいのであります。
 質問の第二点は、この法案によりますと、いわゆる緊急裁定の規定等を設けまして、収用手続の迅速化をはかることといたしておりますが、このことは、この法案の生命でもあり、同時に、他面、現実の実施面にあたりまして、ややもすると、不当に私有財産権を侵害するような事態を招くことなきを保しがだいと思われるのであります。もとより、当局としては、十分慎重な検討を重ね、周到な用意をもって臨まれているものと考えますが、この私有財産の保護についていかなる措置を講じているか、率直な御見解を伺いたいのであります。
 質問の第三点は、補償基準についてであります。公共用地の取得に伴う補償基準の設定は、収用業務の円滑な推進上きわめて根本的な要件でありまして、従来、公共事業並びに公益事業を通じて適用される統一的な補償基準がないために、用地買収にあたって、ことごとに無用の論議をかもし、混乱を生ずる事例が、しばしば見受けられるのであります。しかるに、この法案においては、土地収用上の根本的な問題である補償基準について何らの規定がないようでありますが、政府当局においては、この際、統一的な補償基準を作成する用意があるかどうか、この点についてお伺いしたいのであります。
 次に、第四点といたしまして、現物補償の問題についてお尋ねいたします。私の見解としては、用地買収を円滑に実施し、かつ、被買収者の積極的理解と協力を得るためには、これら被買収者に対して、まず、生活上の不安を与えないようにすること、生活再建対策に遺漏なきを期すること、これがきわめて肝要でありまして、これがため、現物補償の強化について特段の考慮を必要とするものと思うものでございます。この法案においても、特にこの点について留意されまして、現物給付及び生活再建対策に関する規定が設けられてあるようでありますが、政府は、これらの規定によって現物補償が十二分に確保されるとお考えになっているかどうか、率直な御所信を承りたいのであります。
 最後に、内閣総理大臣に対し、最も基本的な、この法案と憲法との関連について、特に御見解を伺いたいと存じます。さきにも若干触れたところでありますが、特に、本法案の規定と憲法に保障する基本的人権との関連がきわめて微妙かつ重要な問題であることは申すまでもありません。この点につきまして、この法案によると、緊急裁定の規定を設けて、確定補償金額の決定を待たずして、概算見積もりによる仮補償金の支払いをもって所有権を取得することになっております。このことは、この法案の立法趣旨にかんがみまして、特別措置法たるゆえんであると考えられますが、この点、憲法第二十九条第三項の規定に触れる心配はないかどうか、きわめて本質的な重要な問題でありますので、特に総理の明確な御答弁をわずらわしたいのであります。
 以上をもちまして私の質問を終わることといたします。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 本法案と憲法第二十九条第三項との規定の関係でございます。憲法第二十九条第三項は、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」こう書いてあるのであります。従いまして、財産を供与すると同時に、これが補償を行なわなければならぬと義務づけてはいないのであります。直ちに補償しなければならぬとは、憲法学者も、また、最高裁の判例もそうなってはいない。しかし、私は、私人の権利を補償する上から申しまして、本法には仮補償金の支払い等を収用委員会で規定して、できるだけ私人の権利を補償するようにいたしておりまするから、その疑問はないと確信いたしております。
  〔国務大臣中村梅吉君登壇〕
○国務大臣(中村梅吉君) お答えいたします。
 第一に、対象事業についての御質問でございましたが、この対象事業をどうしぼるかということは、きわめて重要な問題でございます。従いまして、用地取得制度調査会におきましても、非常に熱心な議論と、また、いろいろな資料によりまして検討をされまして、本法案に盛り込みました要旨の結論を得たような次第でございます。従いまして、緊急性と公共性というものについては特に重点を置いて、今後、審議会ができまして、具体的にきめていく場合におきましても、この精神を十分に生かして参るようにいたしたいと思うのであります。
 第二に、緊急裁決についてのお尋ねでございましたが、これは、事業の執行を促進するための特例でございますので、特にこの問題につきましては、仮補償金の前払いの規定を設けますと同時に、起業者に、その前払金について、あるいは最終的な補償決定が行なわれまして差額を生じました場合等の用意のために担保を供せしめる規定を設け、あるいはまた、緊急裁決を収用委員会が行ないました場合におきましては、すみやかに補償裁決を行なわなければならない、最終的な補償裁決をできるだけ早く急いでやれ、こういうことを収用委員会に義務づけております。また、差額を生じた場合の清算金につきましては、起業者が万一怠ったような場合には、利息を付して過怠金を課する、あるいはまた、利息を付して清算をする、こういうような方途を講じておるような次第でございます。また、同時に、緊急裁決に関連をいたしまして、現物給与の規定の強化、あるいは生活再建に関する規定等を設けまして遺憾のないようにやって参りたい、私権の保護ということについては、遺憾なきを期して参りたい、かような措置を講じておる次第でございます。
 次に、現物給付についてでございますが、現物給付の規定及び生活再建に関する規定は、本法案の中でも重要な部分をなすものでございます。特に、この点についての御質問の要点は、現物給付はどのくらい一体できる見込みか、こういう具体的な御質問でございましたが、この点は、各起業者に対しまして、建設当局といたしましては、この規定の精神を極力発揮して参りまするように、行政指導を強く行なって参りたいと思うのでございます。
    ―――――――――――――
○議長(清瀬一郎君) 石川次夫君。
  〔石川次夫君登壇〕
○石川次夫君 私は、日本社会党を代表して、今回提案になりました公共用地の取得に関する特別措置法案に対し質問をしようとするものであります。
 われわれは、公共事業が正常に迅速に進むことを心より望んでおります。そして、そのために障害となるごね得があれば、それを排除することは当然と信じております。本法案は、その趣旨にのっとって出されたものであるとは思いますけれども、それにしては、あまりに多くの問題を包蔵いたしております。本国会においては、このほか、市街地の改造に関する法案、さらには、宅地造成法等の提案も予定されておるやに伺っております。これらは、いずれも公共用地取得難の現状に対処して、強硬に、かつ、迅速に用地を取得せんとするものでありますけれども、なぜ、かくも用地難に陥ったかの根本原因には、ことさらに目をおおっておるのであります。
 すなわち、一般物価や株価の値上がりに対しましては、それなりに、不十分ながらも、何らかの対策を講ずるのが常でありますけれども、ひとり地価の高騰に対しては全くの無為無策であったことが、この根本原因であります。(拍手)このため、昭和三十一年ころよりの地価の著しい高騰は、全く目に余るものがございます。たとえば、戦前に比較いたしまして物価は三百四十倍でありますけれども、地価は、全国平均で約七百五十倍、特に東京のごときは、昭和三十一年に比して、すでに宅地は倍でございます。工業用地は六倍になっておるという状態であります。そのため、一般庶民は、毎月々々の乏しい収得をさき、あるいは退職手当等を引き当てて老後の安住の地を得ようとする、ささやかな、しかも、人生最後の最大の夢は、むざんにも打ち砕かれておるわけであります。これこそ、歴代保守党政治の最大の失政の一つに数えなければなりません。(拍手)なぜこうなったかといえば、保守党は、その代弁する資本家階級の持てる膨大な土地が政府の無策によって高騰し、労せずして膨大な利益をおさめることをよく知っております。だからこそ、最近では、商事会社、貿易会社が、政府の無策によって地価が高騰し、不当な利益を上げ得ることを見越し、不動産部門へ殺到いたしておるということ、そして、そのことによって地価の値上がりに拍車をかけておるというようなありさまでありまして、この地価抑制の根本策を講じないことには、資本家の利益を暗黙のうちに守り、そのことによって国民生活を徹底的に破壊しておるといわれても、弁駁の余地はないと信ずるのであります。(拍手)のみならず、地価対策を抜きにして、現象としての用地対策だけに集中するということは、全く枝葉末節の対策でありまして、木によって魚を求めるの非難を避けることはできません。
 さらに、これに関連をいたしまして、諸外国では、国民生活の安定のために地代、家賃の統制を何らかの形で行なっておるところが多いのでありますけれども、住宅事情の逼迫しておる現状であるのにかかわらず、地代家賃統制令を一挙に撤廃して、ひいては地価を引き上げようとする法案が本国会に提案されておるというがごときは、まことに時代逆行であり、資本家擁護であり、国民生活無視の暴挙でありまして、このままでは、われわれは断じてこれを許すわけには参らないということを、この機会に強く訴えたいのであります。(拍手)ともかく、政府は、その地価抑制の根本対策として、官民合同の総合機関を設け、その中で、まず、先ほども質問がありましたけれども、現在あいまいのまま放置されておりまする補償基準を具体的に明示して不公平を是正する、かつ、国家機関としての評価鑑定機関というものを全国各地区に設け、そして、高度の識見を持つ公認鑑定員制度を設けて評価に権威を持たせるということが、特に緊急に肝要なことであると思うのであります。その他、税制あるいは都市分散計画等、いろいろの対策は、この公共用地審議会というような、場当たりのものでない、総合的な国家機関の審議にまかせて、早急に決定をしなければならぬと思うのであります。このような根本対策なくして、公共用地の獲得だけを先行させるということは、まことに本末転倒でありまして、効果を期待することはできないと思うのでありますけれども、この機関の設定について、総理大臣の確固たる所信を伺いたいと思うのであります。(拍手)
 現在の土地収用制度にも多くの問題がありまして、なかんずく、収用委員会は知事の任命になっておりますけれども、その保障された身分にあぐらをかいて、被収用者に対しては、刑事裁判官が被告に接するような態度で臨んでおるのが多い現状であります。公共のための犠牲者であるというあたたかい気持で接するような民主的な人を選んで、かつ、その運用にも多くの改善を施すことが、本法案の前提として、ぜひ必要であると思いまするし、そのためには、この際、あわせて法改正が必要であると考えるのでございますけれども、建設大臣の御意見を伺いたいと思うのであります。(拍手)
 今度の法案の対象となる事業は七つに限定をされたと言われておりますけれども、諸外国の例に見るように、市街地の交通麻痺、動脈硬化に対処するところの高速道路、その他二、三の、真に緊急やむを得ざる公共事業だけに限定すべきではないかと考えるのであります。特に、公共事業の名のもとに、私鉄、電力事業等の営利を目的とする民間企業を含めることは、納得ができがたい。また、将来さらに他の産業にまで拡大解釈の余地を残すことになるのではないかという懸念を持たざるを得ないのであります。(拍手)たとえば、原子力の発電施設のごとき、本法案によって当然特定公共事業の対象となるとすれば、将来に大きな禍根を残す危険がありますけれども、この点は一体どうなのか。さらに、ガス、水道等は公益事業であるという見解も成り立ちます。さらに、肥料、鉄鋼等も社会的影響の大きい事業であるという見解のもとに、際限なく拡大されるおそれなしとしないのであります。現に、全国知事会におきましても、地方道その他に大幅にその対象を拡大すべきであるということを決議しておるような次第でありまして、われわれの危惧が早くも現われ始めておるのであります。この点、建設大臣は、将来これ以上にふやさない、あるいはまた、現在の対象をさらに検討する意図があるかどうか、伺いたいのであります。
 また、国民は、今なお住宅難にあえいでおりまして、建設大臣は、国民生活に最も密接な関係のある住宅対策に苦心をされておるわけでございますけれども、その住宅用地、少なくとも、政府施策住宅用宅地は、本特定公共事業の対象にならなかったことを、どう考えておるか。少なくとも、営利追求の民間企業よりは優先するとの立場を貫かなければ住宅対策の責任を全うすることができないのではないかと思うのでありますけれども、この点、建設大臣の御所見を伺いたいのであります。
 この法案の原案は、御承知のように、公共用地取得制度調査会で作成されたものでありますけれども、この調査会の設けられる際、内閣委員会におきましては、補償額決定以前に、起業者に対し、被収用者の意思に反してその使用権を認めるがごとき公権力の強化により私有財産権を侵害することのないよう強く要望する旨の附帯決議を付しておりますことは、当然、補償金前渡しの原則を確認したものと解すべきであります。ところが、今度の法案では、緊急裁決があった場合、起業者が収用または使用開始の時期までに見積もり補償額を払い渡したときは収用の効果が発生するとなっておりまして、明らかに、さきの内閣委員会における附帯決議を無視しておるわけであります。このように立法機関を無視する法案を提案するようでは、議会の権威、議会の秩序というものは保たれる道理がございません。(拍手)あるいは、概算払いも前払いの一種であると強弁されるかもしれませんけれども、概算では、補償額の決定とは言い得ません。また、概算では、関係者の完全な合意を得ることは不可能なはずであるにもかかわらず、その過程で強制収用が行なわれるというようなことは、明らかに憲法第二十九条の財産権に違反する疑いが濃いと思うのでありますけれども、この点、総理大臣の御所見を伺いたいと思うのであります。
 次に、農林大臣に対して伺います。
 本法案に対しましては、農民組合はもちろんでございますけれども、農業協同組合等の農業団体も、公権力の強化をはかり、農地法を無視し、現に、農民が電力会社等の横暴と戦いつつあるダムや送電線までこの法律に便乗させ、一挙に農民の要求をじゅうりんすることに対しては、断固反対の態度を明らかにしておりますことは、農林大臣も、つとに御承知のところと思うのでございます。調査会の答申では、特定公共事業の用に供する場合は、農林大臣、知事の許可を要しないという原案であったのでございますけれども、これに対して、農林省としては、農地転用許可は、本制度の趣旨の末端までの徹底を措置した上で許可を行なっているが、この調査会の答申では、これらの趣旨の実現を確保し得るような制度が確立されないままで転用許可制度をはずすことになり、適当でないという意見を述べられておりますことは、きわめて妥当と思うのであります。本法案では、農林省の主張が生かされて、本法案に関連する農地転用許可に関する法改正は行なわれておらないようであります。公共用地の七割までが農地の転用であることを考えますと、農民を擁護する立場に立って、今後とも農林大臣はその趣旨の貫徹を期することと信ずるのでございますけれども、念のため、農林大臣に所信を伺いたいのであります。
 われわれは、財産権が神聖不可侵であって、すべてに優先する、とは考えておりませんが、強権による収奪によって生活権を脅かすおそれが強ければ断固立ち上がらなければならぬと思っておるのであります。本法案では、補償と生活再建対策で、従来より一歩前進しようとする努力は認められますが、具体的な裏づけもございませんし、結果的には単なる倫理規定に終わっている点は、まことに残念でなりません。ここに、百尺竿頭一歩を進めて、従来の生活より悪くはしないという意味のことを明文化すれば、政府に対する信頼も回復され、事業の進捗にも役立つところが多いと信ずるものであります。その具体的な裏づけとしては、収用によって生活に影響を与えられた人たちのために、国の機関として補償金庫を設け、補償金とは別個に、生活の再建を容易ならしめるための援助、融資を考える温情ある措置がなければ、いたずらに公権力を強化する印象を与えるだけであると思いますが、この字句の追加及び補償金庫の新設について考慮しておるかどうか、建設大臣の御所見を伺いたいのであります。
 この点に関しましては、自治省といたしましても思いをいたし、補償は現物補償を原則とすべきこと、さらに、生活再建対策は起業者の責任において処理する建前とすべき旨の意見を出しておりました。この意見は、きわめて不十分ではあるけれども、妥当なものと考える次第でありますが、残念ながら、本法案では、この趣旨は十分生かされてはおりません。この点、自治省大臣としては、責任上、今後どう対処しようとされておるのか、御所見を伺いたいと思うのでございます。
 政治は、国民の幸福、生活の向上のためにあるのであります。いわゆる所得倍増というようなものが曲がりなりにも推進されるとすれば、ますます産業基盤としての公共事業は累増するばかりでございますけれども、その犠牲となる人たちの幸福のために心から愛情のある対策を考えること、及び、地価暴騰の根本対策を講ずることこそが肝要でありまして、また、そのことこそが事業推進のかぎでもあると信ずるものであります。このことを忘れて、東京オリンピックが近いというようなことで、あわてふためいて、おのれの長年にわたる失政による事業の渋滞を強権をもって無辜の国民に転嫁することによって打開をはかろうとするようなことに対しましては、強い警告を発して、私の質問を終わる次第であります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) 御質問の第一点は、地価の暴騰に対する対策でございます。この地価の暴騰は、経済の急速な発展、ことに、人口の急速な都市集中にあることと考えます。従いまして、従来、学校とか工場等は、大都市において相当制限をしてきたのでございます。しかし、それにもかかわらず、お話のような暴騰がございますので、われわれは、今後、土地造成、ことに、衛星都市の建設あるいは交通の整備等、あらゆる方法を講ずると同時に、今後、積極的に、学校等について東京都外に出すことができるかできないか、そういう場合のいろいろな問題を検討し、地価の暴騰を押えたいと私は考えておるのであります。
 第二の、地代家賃統制令の撤廃は、御承知の通り、昭和二十五年七月以前の建築にかかるものでございます。その後のものは全部統制しておりません。従いまして、昭和二十五年七月以前の分ばかりを統制するということは権衡上おもしろくございませんし、なお、今後貸家建築に支障を来たすと考えられますので、これを撤廃しようと考えておるのであります。
 その他の点につきましては関係大臣よりお答えいたさせます。(拍手)
  〔国務大臣中村梅吉君登壇〕
○国務大臣(中村梅吉君) お答えいたします。
 まず、補償基準につきまして、先ほどの亀岡君からの御質問の際にもお答えをすべきであったのでありますが、あわせて、この機会に申し上げたいと思います。
 補償基準につきましては、現在の土地収用法にも基本的なことは規定されておるのでありますが、さらに、これをもっと明細に、補償基準を検討して定めるべきであるということにつきましては、私どもも全く同感でございます。従いまして、今度設けられまする公共用地審議会ができましたならば、できるだけ細目にわたりました補償基準について調査審議を願い、すみやかに結論を得るようにいたしたい、かようにいたしておるような次第でございます。この補償基準と鑑定制度等につきましては、急速に具体化をはかるつもりでございます。
 次に、現在の土地収用制度、ことに、収用委員会についての御質問でございましたが、現在の土地収用委員会は、各都道府県ごとに、都道府県知事が都道府県議会の同意を得て人選をし、任命をされておるのでございます。従って、選任の方法としましては民主的な手続をとられておるわけでございますが、さらに、この収用委員会といたしましては、審理にあたりましては、当事者主義を建前といたしまして、また、口述審査を中心にして、そして、審理は原則として公開をするという建前をとっております。この収用委員会に呼び出しを受けていろいろ聞き取りをされる人から見ますれば、裁判官から審理を受けるような感じがなさるかもしれませんけれども、この収用委員会といたしましては、さような制度のもとに、努めて民主的に、かつ、厳正に審査が行われるような制度になっておりますので、私ども、この収用委員会の制度につきましては現行でよろしかろう、かように考えておる次第でございます。
 次に、適用事業についてでございます。この点につきまして特に御指摘のございましたのは、住宅公団等の住宅用地の取得についてなぜ適用しないのか、こういう御意見がございましたが、この点も、従来の検討の上において議題に上ったのでございます。なるほど、近時の情勢から見て、住宅団地、住宅用地等の取得の重要でありますることは申すまでもございませんが、幸いにして、この住宅団地、住宅公団等の用地取得につきましては、従来、土地収用法を適用するに至った事例が一つもございません。ことごとく話し合いによりまして解決を遂げておりまするので、そういう実情にかんがみまして、この対象事業は、できるだけ緊急性と公共性ということでしぼって参りたい。ことに、将来拡大する危険があるじゃないか、意思があるかというお尋ねでございましたが、かような考えは持っておりません。努めて限定をいたしまして、法律の上に列挙主義をとって、今後できるだけしぼって参りたいというのが、この法案の立法の考え方でございます。さような次第でございまするので、御了承を得たいと思います。
 次に、私鉄あるいは電力等につきましての御意見もございましたが、これは、なるほど私企業ではございまするけれども、電力事業及び大都市における私鉄――私鉄は大都市の分しか適用しないことにワクをはめておりますので、電力事業及び大都市における地方鉄道事業、これらにつきましては、御承知の通り、事業の公共性というものは、これは認めなければならないと考えまするので、用地取得制度調査会におきましてもいろいろ検討の結果、この範囲は含めさせるべきであるという答申でございましたので、かような措置をとった次第で、私どもも、この範囲は適切である、かように考えておる次第でございます。
 次に、内閣委員会の附帯決議との関係についてお尋ねがございましたが、この内閣委員会の附帯決議の要旨は、補償額決定以前に使用権を認めるような、私有財産権を侵害することのないようにせねばならない、という御趣旨でございまして、今回の立法措置におきましては、補償額は、仮補償額をまず収用委員会において決定いたしまして、この仮補償額を支払い、さらに、最終的な補償額の決定を見ました場合に、差額がもし出ましたならば、その差額については金利を付して支払う、こういう制度を付加いたしまして、被補償者の財産権の保護に十分配慮をいたしておるようなわけでございますので、この附帯決議の趣旨には反するものでない、かように私ども考えておる次第でございます。
 最後に、補償金庫創設の意思はないかというお尋ねでございましたが、この点につきましては、私どもも今後慎重に検討いたしたいと思っております。(拍手)
  〔国務大臣周東英雄君登壇〕
○国務大臣(周東英雄君) 石川君にお答えをいたします。
 御指摘のように、公共用地取得制度調査会においては、事業認定があれば、知事または農林大臣の許可を要しないことにするようにという答申のありましたことは、御指摘の通りでありますが、私どもは、まだ事業認定の段階におきましては、農地利用者の調整とか、あるいは耕作者の地位の安定というような、農地法の目的とするところを十分に達し得ないと考えますので、本法案が制定されましても、事業認定の段階だけでは、なお知事または農林大臣の許可を必要とするという行き方で継続していくつもりであります。(拍手)
  〔国務大臣安井謙君登壇〕
○国務大臣(安井謙君) 土地の提供者に対する、現金以外の現物補償の件は、四十六条に盛られております。また、提供者の生活再建あるいは環境整備等につきまして、都道府県の知事が関係機関と十分協議をしてあっせんをするし、同時に、工事施行者から必要な正当な補償はするということも法律上盛られておりますので、行政措置の全きを期して、これは十分自治省の主張はいれられておるものと心得ております。(拍手)
○議長(清瀬一郎君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第一 失業保険法の一部を改正する法律案(内閣提出)
○議長(清瀬一郎君) これより本日の日程に入ります。
 日程第一、失業保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。
○議長(清瀬一郎君) 委員長の報告を求めます。社会労働委員長山本猛夫君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は会議録追録に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔山本猛夫君登壇〕
○山本猛夫君 ただいま議題となりました失業保険法の一部を改正する法律案について、社会労働委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 日雇い失業保険制度は、昭和二十四年に創設以来、社会保障並びに雇用失業対策の一環として、日雇い労働者の失業時における生活の安定をはかる機能を果たしてきたのでありますが、最近における日雇い労働者の賃金の実情にかんがみ、その保険金日額を引き上げる等、制度の改善をはかろうとするのが、本案提出の理由であります。
 以下、その内容を簡単に御説明申し上げます。
 第一は、日雇い失業保険金日額を引き上げ、現行第一級二百円、第二級百四十円の二段階制を、第一級三百三十円、第二級二百四十円、第三級百七十円の三段階制に改めることであります。
 第二は、日雇い失業保険料日額について、現行第一級十円、第二級六円の二段階制を三段階制とし、賃金日額四百八十円以上の場合を第一級十六円、賃金日額二百八十円以上四百八十円未満の場合を第二級十二円、賃金日額二百八十円未満の場合を第三級六円に改め、日雇い労働被保険者及び事業主の保険料負担は、それぞれ第一級八円、第二級六円、第三級三円とすることであります。
 第三は、保険料日額の三段階制に伴う日雇い失業保険金日額の算定方法、及び、日雇い失業保険と一般失業保険との受給資格の調整について所要の改正を加えておるのであります。
 本案は、二月十五日本委員会に付託せられ、以来、慎重なる審議を行ない、四月十一日質疑を終了いたしましたととろ、自由民主党、日本社会党、民主社会党の三党共同提案にかかる修正案が提出せられました。
 その要旨は、第一に、日雇い失業保険金日額及び保険料日額の第三級をとりやめ、賃金日額四百八十円を区分として二段階制とすること、第二に、一般失業保険金日額の最高額を三百円から七百円にすることであります。
 かくて、修正案並びに修正部分を除く原案について順次採決を行いましたところ、本案は全会一致をもって修正議決すべきものと議決いたした次第であります。
 右、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
    ―――――――――――――
○議長(清瀬一郎君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○議長(清瀬一郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告の通り決しました。
     ――――◇―――――
○議長(清瀬一郎君) 日程第二、郵便振替貯金法の一部を改正する法律案を議題といたします。
○議長(清瀬一郎君) 委員長の報告を求めます。逓信委員長山手滿男君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は会議録追録に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔山手滿男君登壇〕
○山手滿男君 ただいま議題となりました郵便振替貯金法の一部を改正する法律案につきまして、逓信委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 この法律案は、去る二月二十四日内閣から提出されたものでございますが、今回改正の主要点は郵便振替貯金の料金の改定でありまして、すなわち、郵便振替貯金の現行料金は昭和二十九年四月に改定されたまま今日に及んでおり、この間の人件費の増加等のため、現在、事業収支に相当の不均衡を生じておりますので、この際、各種取り扱い料金を改定して、事業経営の健全化をはかろうとするものであります。個別料金の決定にあたりましては、必ずしも原価主義をとらず、別途改定の郵便為替料金とあわせて、為替、振替両事業を通ずる収支の改善を目途とし、また、金額段階別料金は、金額の高低による効用の度合いに見合うように格差を設ける方針によっております。
 その他の改正点といたしましては、利用者へのサービス改善のため、別名使用の料金や、口座譲渡の料金などの付属的料金を廃止したこと、日本放送協会の放送受信料及び日本育英会の学資の貸与金の返還金につき、公金等の例に準じて特別取り扱いをすることとしたことでありまして、施行期日は本年七月一日となっております。
 以上、本法律案の内容を御説明いたしましたが、逓信委員会におきましては、本案の付託を受けまして以来、会議を開いて慎重審議を重ね、昨四月十二日質疑を終了、討論を省いて直ちに採決の結果、賛成多数をもって本案はこれを原案の通り可決すべきものと議決いたした次第でございます。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(清瀬一郎君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○議長(清瀬一郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。
     ――――◇―――――
 新技術開発事業団法案(内閣提出)
○田邉國男君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 すなわち、この際、内閣提出、新技術開発事業団法案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
○議長(清瀬一郎君) 田邉國男君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
 新技術開発事業団法案を議題といたします。
    ―――――――――――――
○議長(清瀬一郎君) 委員長の報告を求めます。科学技術振興対策特別委員長山口好一君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は会議録追録に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔山口好一君登壇〕
○山口好一君 ただいま議題となりました新技術開発事業団法案につきまして、本委員会における審査の経過並びに結果について御報告申し上げます。
 本案は、従来理化学研究所の開発部において担当いたしておりました新技術の開発業務を、より強力に推進させるため、同部門を理化学研究所より分離独立させ、新技術開発事業団を設置しようとするものでありまして、本事業団の業務は、企業化が著しく困難な新技術について、企業等に委託して開発を実施し、その開発の成果を普及するとともに、新技術の開発について企業等にあっせんすること等であり、その資本金は、三十六年度に予定されている出資金三億円と、理化学研究所の新技術開発関係資産約三億四千万円の合計、約六億四千万円であります。また、本事業団に学識経験者十名以内をもって組織する開発審議会を置き、重要事項について理事長の諮問に応ずることとし、役員及び委員の任命並びに事業団の監督は内閣総理大臣が行なうこととするほか、本事業団に対する税制上の助成措置を講ずること等が本案の要旨であります。
 本案は、去る三月十六日池田国務大臣より提案理由の説明を聴取した後、商工委員会と連合審査会を開会し、田中武夫君より、行政の総合調整を主務とする各庁と事業所管各省との権限の関係について根本的に検討の要がある旨の質疑が行なわれ、これに関し参考人より意見を聴取する等、きわめて熱心なる審議が行なわれたのであります。
 かくて、本日質疑を終了し、採決の結果、全会一致をもって可決すべきものと議決した次第であります。
 なお、各省庁間の権限調整及び国産技術の開発に関し政府の適切なる措置を要望する旨の附帯決議を全会一致をもって可決いたしました。
 以上、御報告いたします。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(清瀬一郎君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○議長(清瀬一郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。
○議長(清瀬一郎君) 本日は、これをもって散会いたします。
   午後三時二十八分散会
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 出席国務大臣
        内閣総理大臣  池田 勇人君
        法 務 大 臣 植木庚子郎君
        農 林 大 臣 周東 英雄君
        郵 政 大 臣 小金 義照君
        労 働 大 臣 石田 博英君
        建 設 大 臣 中村 梅吉君
        自 治 大 臣 安井  謙君
 出席政府委員
        法制局長官   林  修三君
        法制局第二部長 野木 新一君
        総理府総務長官 藤枝 泉介君
        科学技術政務次
        官       松本 一郎君
        運輸政務次官  福家 俊一君