第038回国会 予算委員会 第23号
昭和三十六年五月十七日(水曜日)
   午前十一時五十七分開議
 出席委員
   委員長 船田  中君
   理事 愛知 揆一君 理事 重政 誠之君
   理事 野田 卯一君 理事 保科善四郎君
   理事 井手 以誠君 理事 川俣 清音君
   理事 横路 節雄君
      相川 勝六君    赤澤 正道君
      稻葉  修君    臼井 莊一君
      小川 半次君    小沢 辰男君
      上林山榮吉君    仮谷 忠男君
      菅  太郎君    北澤 直吉君
      櫻内 義雄君    正示啓次郎君
      園田  直君    床次 徳二君
      中曽根康弘君    中野 四郎君
      中村三之丞君    羽田武嗣郎君
      橋本 龍伍君    細田 吉藏君
      前田 正男君    松浦周太郎君
      松野 頼三君    松本 俊一君
      三浦 一雄君    山崎  巖君
      淡谷 悠藏君    岡  良一君
      木原津與志君    小松  幹君
      高田 富之君    楯 兼次郎君
      永井勝次郎君    野原  覺君
      長谷川 保君    堀  昌雄君
      松井 政吉君    安井 吉典君
      春日 一幸君
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  池田 勇人君
        外 務 大 臣 小坂善太郎君
        大 蔵 大 臣 水田三喜男君
        農 林 大 臣 周東 英雄君
        通商産業大臣  椎名悦三郎君
        国 務 大 臣 西村 直己君
        国 務 大 臣 迫水 久常君
 出席政府委員
        法制局長官   林  修三君
        公正取引委員会
        委員長     佐藤  基君
        総理府事務官
        (公正取引委員
        会事務局長)  坂根 哲夫君
        大蔵事務官
        (主計局長)  石原 周夫君
 委員外の出席者
        専  門  員 岡林 清英君
    ―――――――――――――
五月十七日
 委員菅太郎君、園田直君、田中伊三次君、河野
 密君、田中織之進君及び堂森芳夫君辞任につき、
 その補欠として小沢辰男君、正示啓次郎君、細
 田吉藏君、安井吉典君、堀昌雄君及び畑和君が
 議長の指名で委員に選任された。
同日
 委員小沢辰男君、正示啓次郎君、細田吉藏君、
 畑和君、堀昌雄君及び安井吉典君辞任につき、
 その補欠として菅太郎君、園田直君、田中伊三
 次君、堂森芳夫君、田中織之進君及び河野密君
 が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 昭和三十六年度特別会計予算補正(特第1号)
 昭和三十六年度政府関係機関予算補正(機第1
 号)
     ――――◇―――――
○船田委員長 これより会議を開きます。
 昭和三十六年度特別会計予算補正(特第1号)及び同じく政府関係機関予算補正(機第1号)を一括して議題といたします。
 井手以誠君より発言を求められております。この際これを許します。井手以誠君。
○井手委員 ガリオア、エロアの援助総額について、私どもはこの前の予算委員会、さらに今回の予算委員会において、すみやかに資料を提出されるよう要求を続けて参りました。それは政治のあり方から当然のことでありますとともに、あの終戦後の対日援助、もらったものと思っておった国民感情からいたしましても、私は当然の要求であると考えておりまするし、またその総額を国民に知らせる、その上で外交交渉に臨むということが、外交交渉を有利に導くものであると私どもは判断して、強く資料の提出を求めておったのであります。特にこの問題については、さきの予算委員会において政府与党と私どもの間には約束がございました。それは通産大臣からすみやかに資料を取りまとめてこの国会中に提出いたしますという約束があっておったのであります。その上に、当委員会においては何回も理事会、懇談会を開きまして、その上で委員長から政府に資料の提出を求めておったことを考えますると、当然資料の提出はあってしかるべきものと私どもは信じておるのであります。ところが、すでに外交交渉に入った今日であるから、資料の作成はできておるけれども提出するわけにはいかないといって、強く政府は資料提出を拒んでおる。私はここに、この国会に資料が提出されないことに対し強く遺憾の意を表明するものであります。
 そこで私は総理にお伺いをいたしますが、このガリオア、エロアの交渉はなるべく早く妥結したいという意向でありましたし、そのような見通しが今日までこの委員会で表明をされたのであります。さらに一昨日以来の当委員会における総理の答弁によりますると、渡米以前に党首会談を開きたいという気持が表明されておるのであります。そこで私は総理にお伺いしたいのは、なるべくすみやかに総額その他できるだけ明らかにしたいという意向でございますが、おそくとも渡米前のいわゆる党首会談においては、ガリオア、エロアの援助総額その他を、野党の協力を得られるために、その内容について野党にお示しなさる御用意があるかどうか、お考えがあるかどうか、またそうなさることが、私は外交交渉という重大な問題について国会の運営上いい慣行を立てる道であるとも考えておるのであります。その点について総理の所見をお伺いいたしたいのであります。
○池田(勇)国務大臣 先般来ガリオア、エロアの問題につきましていろいろ御質問がございました。われわれは、できるだけ資料をごらんに入れたいという気持であるのでございますが、何分にもただいませっかく外交交渉中でございますので、その間におきまして数字を公表するということは、交渉上いかがかと思いますので、しばらく御延期を願いたいと思います。
 なお交渉が妥結いたしましたなら、私自身から野党の党首の方々にガリオア問題につきましての資料その他を十分御説明する機会を持ちたいと思います。
 なお私の渡米前につきましては、ガリオア問題のみならず、私は一般の重要問題につきまして野党の党首の方々の御意見を承り、外交上の参考にいたしたいと思います。また自分の考えもできる限り披瀝いたしまして、ともにともに日本の外交の進め方につきまして懇談をしていきたいという気持でおるのであります。
○井手委員 ただいまの御答弁で総理の意向は大体わかったのでありますが、一点気がかりになります言葉がありました。それは妥結いたしましたならばということであったのであります。昨日来いろいろ交渉して参りました結果によりますると、近々妥結するという情勢のようであります。その見通しのようであります。あるいは外交交渉でございますから延びるときもあるでありましょう。しかし、私どもは近日のうちにその機会があろうというふうに承っておるのでありまするから、党首会談をお開きになる場合には、万一妥結しない場合でもその総額あるいは今お話しになりました外交の重要な問題についてはお示しなさる、協力を求められるという御用意があるかどうか。妥結したならばお示しするという言葉だけでは私は承知しかねるのでありますから、その点について念を押しておきたいと思います。
○池田(勇)国務大臣 私は交渉中にもし極秘のもので絶対漏れないということならば、これは党首とも話してもよろしゅうございますが、そういう保証のないときに、交渉中にこれを公表するということはいかがなものかと思います。しかし、私はできるだけ早い機会にこの交渉を妥結いたしたいと思っておりますので、自分としては妥結いたしましたら直ちに両党首に経過並びに結果につきまして自分で御説明申し上げる、これが至当ではあるまいかと思います。
 なお渡米に先だちまして、私は、昨日お答えしたように、野党の両党首にお会いし、意見を聞きたいと考えております。これはぜひ実現したいと思いますが、その際におきまして、日本の外交の根本はこれは施政演説で言っておりますが、個々の問題につきまして、私のこれからの交渉に先立っての問題ということも、これは特定の問題というのでないのでございますから、どんな問題が出るかもわかりません。ただ心がまえの点につきまして両党首の意見を聞き、また自分として適当なことであれば私の意見も両党首に申し上げたい、こういう考えでございます。
○井手委員 妥結したならばということでは了承いたしかねるのでありまするが、ただいまは近々妥結するという見通しであるという言葉であるし、私はここに重ねて、党首会談を開かれる場合には最大限の誠意をもって当たられることを強く要望いたしまして、議事進行を終わります。
○船田委員長 質疑を続行いたします。横路節雄君。
○横路委員 外務大臣にお尋ねをしますが、今までガリオア、エロアについては債務と心得ておる――ずいぶん国会でも論議されましたが、たとえば吉田内閣のときには、緒方副総理は、道徳的に債務と心得ておる、あるいは同じ吉田内閣で吉田総理は、独立国の名誉心に訴えてこれは返さなければならぬと思っておる、こういうような表現を使われているわけです。
 私がこれから主として外務大臣にお尋ねしたいのは、ガリオア、エロアは債務と心得ておる、これはもちろん今アメリカ大使と交渉されて、それから調印されて、憲法八十五条の規定に従って国会にかけて初めてそれが債務となるのがこれはもう明らかですが、しかし、外務大臣がガリオア、エロアについては債務と心得ておるのだということは、国会に、憲法八十五条の規定によって債務として出すのだろうと思うのですが、そのガリオア、エロアが債務であると心得ておるわけですが、というのは、アメリカとの間に一体どういう協定があったのか、どういう根拠に基づいてガリオア、エロアは債務であると心得ておる、こういうように言うのか、この点を一つまずお尋ねをしたいと思います。
○小坂国務大臣 これは今までもいろいろな機会に申し上げておったことでございまするけれども、あの当時、日本の状況といたしましては、非常に物資が窮乏いたしまして、国民のあすの生活も非常に不安定である、こういうような際に、アメリカからいろいろな援助物資が送られたわけでございます。これにつきまして日本政府は、これがはっきりもらったものであるということを確認していない、こういう点におきまして、これはいつかの機会に、この問題の処理について交渉しなければならぬという前提が生じておると心得ておるのであります。それにつきましては、ただいま横路さんもおっしゃいましたように、この援助すなわち債務であるとは私どもは言っていないのでございまして、この援助全体をよく見てみまして、それについて外交交渉をいたしまして、その結果これこれを債務であるというふうに両方が合意をいたしました額を、それぞれの――私どもの方は日本の国会、アメリカ側においては議会にかけまして、その憲法上の手続を経て、わが方においては憲法八十五条の規定によって債務を確定する、こういう手続をとるわけでございます。
 要しまするに、どういうふうなことでそう考えておるかということでございまするので、今交渉中で実はあまりそういうことを申したくないのであります。これは一方において、それを言いますことは、われわれの債務と心得る根拠というものをあまり強くするという点もございまして、いわば、これは横路さんには私は非常にできるだけ申し上げたいという気持はございますけれども、これはもろ刃のやいばになるような関係がございまして、なるたけそういう点はこの際申し上げることを差し控えたいと思っておるのでございます。できましたらこの程度にしていただいて、あらためてまた適当な機会にそれを申し上げさしていただきたいと思っております。
○横路委員 今の外務大臣のお答えは、国会の論議としては私はちょっと当を得てないのではないかと思うのです。実は私はきのうまで本委員会で、昭和二十四年三月以前のガリオア、エロアについての総額は幾らになっているかという点についてお尋ねしたのですが、きょうは、ぜひ外務大臣に、この委員会を通じて、国民全般に池田内閣がガリオア、エロアについては債務と考えているのだ、債務と考えているのであれば、一体どういうアメリカとの間の協定とか、アメリカの国内法でそうなっているのかどうか、また日本の法律でそれが債務となっているのかどうか、これこれの理由だから債務なんですと、こう言わなければ、今ここで外務大臣から、個人的には私にその点についていろいろお話をしたいと思うが、どうもしかし外交交渉に入っているのでお答えができないというのでは、これは今まで時間をかけて論議をした総額、金額とは違うのですから、これではちょっと外務大臣、大事なこの委員会における論議としては当を得ていないと思う。これはあとで総理にもお尋ねしたいと思いますが、ちょっと今の外務大臣の御答弁は、これは今この論議を通じて、国民全般の前に、あなたの方は債務性の正当を得ようとするのでしょうし、私の方は債務でないと思って今聞いているわけですから、やはりこの点で政府が債務であると心得ているというのならば、アメリカとの協定であるとか、アメリカの国内法の関係とか、日本の法律の関係とか、そういう点をやはりここできちっと御答弁されて、それについて私の方でお聞きをした上で、私どもの意見を述べていきたいと思う。どうも個人的には話をしたいけれどもということは、ちょっと私は本委員会における論議としては当を得ていないと思いますので、どうか一つ率直に、私もそういう点では債務性の問題についていろいろお尋ねをしたいし、私の意見も述べたいと思っているわけですから、どうかそういう考え方でお述べいただきたいと思います。
○小坂国務大臣 それでは少し申し上げるようにいたします。
 実は、この交渉は、御承知のように、一九五四年に五回会合を持ちまして、その際にも先方からいろいろな話し合いがございましたわけです。そのときに、アメリカ側から、アメリカとしては当初から援助の返済を要求する意図を持っておったものである、こういうことを言っておるのでございます。それを示す根拠といたしまして、一九四五年九月二十二日付の降伏後における米国の初期の対日方針というものを上げております。それからやはり同年の十一月一日付の日本占領及び管理のための連合国最高司令官に対する降伏後における初期の基本的指令、それから一九四七年六月十九日付の極東委員会決定、降伏後の対日基本政策及び米国の政府関係者の議会における証言等を提出いたしております。それからいろいろな人が証言したりいたしております。これをいろいろあげておりますが、これは向こうの申すことでございます。
 そこで、わが国の関係では、一九四九年四月十四日阿波丸協定がございます。これと同時に署名されました日米了解事項、この中におきまして、両国政府は占領費並びに日本国の降伏のときから米国政府によって日本国に供与された信用及び借款は、日本国が米国政府に対して負っている有効な債務であるということを確認いたしております。
 なお、これに関連いたしまして、元の吉田総理大臣は、当時外務大臣を兼任しておられたのでありますが、やはりこの協定のあとの四月二十六日参議院本会議におきまして、この了解事項の趣旨を説明いたしまして、こう言っておるのでございます。「このクレジット、或いはいわゆるガリオア、イロア・ファンド、費用と言いますか、或いは日本に対する棉花その他のクレジットというようなものが、恰かもアメリカ政府から日本が種々常に無償で以て貰っておるような誤解を与えておりまするから、この機会に了解事項として附加えたのであります。」と答弁いたしております。
 次に平和条約との関連でございますが、特にこの第十四条(b)項との関連で申し上げますと、「連合国は、連合国のすべての賠償請求権、戦争の遂行中に日本国及びその国民がとった行動から生じた連合国及びその国民の他の請求権並びに占領の直接軍事費に関する連合国の請求権を放棄する。」こう規定されておりますが、特に「直接軍事費」といって断わっておりますことは、社会不安を除去し、民生を安定せしむるために費やされたこのガリオア・エロアというような援助費のように直接軍費に属しない経費については、連合国は請求権を放棄していないということを意味するものという了解になっておるのでございます。
 その後、わが国会におきまして、一九四七年七月五日の衆議院におきまして、食糧放出に関し連合国最高司令官に対する感謝決議を行なっております。しかし、これは当時の事情からいたしますと、非常にありがたかったのでありますけれども、さりとて、これは日本の方で非常に理詰めに考えてみますと、国民はすでにそのときに放出物資に対して代価を払っておるのでございます。従って、日本の国民の代表である国会が感謝決議をいたします場合には、そのすでに代価を払っておる国民を代表して感謝決議をしておるのでございますから、無償でもらったということについて先方の確認を得ない限り、この感謝決議があったから、これは無償だったのだということは言い切れないと思うのでございます。要するに、国民はすでにこの金は払っておる。そこでその金が政府に入ってきているわけでございます。そこで政府はその金をアメリカに払わぬでいいかどうかという問題でございまして、それについては、先ほど申し上げたように、こういういきさつもございますし、その金についてどう債務として確定するかということは、外交交渉の問題であろうと存ずるのでございます。
 さらに、この援助につきまして、実は終戦直後のいろいろな混乱期の関係もございまして、資料が十分に整備せられていないようなむずかしい点もございます。これらについては十分先方の援助の条件について考えてみなければならぬと思いますが、いろいろ物資が配給されますにつきまして、混乱期とはいえやはり先方の軍と日本国政府との間には文書が往復されております。そこで御承知のように、アメリカ軍が何か出します――占領軍あるいは占領軍総司令部が何か出します場合には、御承知のようにスキャッピンというもので指令書が来ておるのでございます。これがすべてであるとも言い切れぬ点もあろうかと思いますが、その辺あまり詰めますと、やはりもろ刃のやいばになりますので御了承願いたいと思いますけれども、その中の相当部分のものには、タームス オブ ペイメント アンド アカウンティング、支払い条件というものがウィル ビー デサイデッド レーター、後日決定されるということが書いてあるのでございます。そういう書いてあることを承知の上で日本政府が受けておるのでございます。これについては、私は党派を越えてやはりこれは考えなければならぬ問題ではなかろうかと思う。これは自民党政府ばかりが日本の終戦後の政府であったのではございません。今の関係の諸政党がその間に政権を担当しておるわけでございます。やはりこうした問題も考慮に入れて、しかも国民感情というものを考慮に入れてこの問題を解決しなければならぬ、こういうふうに思っておる次第でございます。
○横路委員 今外務大臣からお話しされました点について、一つ一つ私の方から私どもの意見を付しながら、お尋ねをしたいと思います。第一番目の占領方針その他については、アメリカ側が発表せられましたものですが、日本との間の取りきめというのは、第一番目に、今外務大臣からお話がございました一九四九年四月十四日東京において取りきめた阿波丸事件に関しての了解事項、私も今ここに資料がございます。これは四月十四日に東京で署名をしたわけです。ところが今外務大臣からお話しのように、「占領費並びに日本国降伏のときから米国政府によって日本国に供与された借款及び信用は、日本国が米国政府に対して負っている有効な債務であり、これらの債務は、米国政府の決定によってのみこれを減額し得るものであると了解される」、こういうわけです。そこでこの借款については私もいろいろ調べてみたわけです。この借款については一体どういうようになっておるのかというと、この点につきましては、一番最初この問題については、アメリカ国務省の対外援助、その中に民生品の供給計画というのがあるわけです。それに基づいてガリオア支出予算をきめましたのが一九四七年法であって、これは五月に可決をしています。この一九四七年の第一次追加予算法合衆国公法典第六一巻六二五ページによって、内容は(9)項がガリオアに当たる、こういうふうにいわれている。(9)項とは「かかる地域の市民人口に対し達成すべく追求されている目的を害するような飢餓、疾病、不安を阻止するに必要な最低の供給……」となっておる。このアメリカの商務省の対外援助の中には、援助を贈与とクレジットに分け、ガリオア援助は贈与としている。なおこの贈与については、しかし贈与の一般的定義を、同書は、明白な贈り物で、一つは支払いは期待されていないが、被援助者が米国または他の諸国と共同目的遂行の義務を持つものとしている。従って、民生品供給は債務に近いものとするのは矛盾をする。そこで、一体それならば、アメリカの予算で、日本に対する、今外務大臣からお話しの援助はどうなっているのか。一九五一年六月末現在の日本に対する分はどうなっているのか。そこで日本への贈与は、一つは国防省、陸軍、空軍の民生品供給は二十一億五百八十一万八千ドル、公法八十四号経済協力国のポストアンラと国際児童救済許可の法律から十七万八千ドル、合計二十一億五百九十九万六千ドル、これがアメリカの言い分でしょう。しかし日本へのクレジットについては、これは日本に利用されたクレジットについては、ここに書いてございますが、大体においてこの金額は三億八十一万ドル、このうちで農務省の占領地物資計画、あるいは国防省の天然繊維回転基金、輸出入銀行借款、財務省の余剰資産、復興金融会社占領地物資計画、こういうことで三億八十一万ドルについては、元本の回収が利子とも合わせて二億八千九百四十一万四千ドルになって、いまだ償還されていないものは千百三十九万二千ドルと五一年六月になっている。ですから、今あなたが御指摘をされた阿波丸事件に対するそのときの昭和二十四年四月十四日東京で署名された日本国に供与された借款及び信用は、日本国が米国政府に対して負っている有効な債務であるというこの借款は、なるほどこれは綿花に対する借款その他でしょう。しかしこれは現に返している。アメリカ側の予算、決算の中で返している。そこで今私が申し上げたように、このガリオアについては、相手方の民生品の供給計画の中で、これは贈与である、その贈与については支払いは期待をされていないが、しかし被援助者が、米国または他の諸国と共同目的遂行の義務を持つものという場合には、それは返さなくていい。だから日本はアメリカと一緒になって極東における平和のために、たとえば安保条約その他についてのそういう締結をして義務を負ったわけです。ですから阿波丸撃沈事件に関して国会において議決をされたその上からする了解事項の「借款及び信用は」という中には、アメリカの対外援助の中で、あるいはこれをきめた支出予算の中で、ガリオア、エロアはこの阿波丸撃沈に関する阿波丸事件請求権処理のための協定の中の「借款及び信用」のいずれにも入らない。もしも入るならば、これは借款及び信用ではないのです。まずその点が外務大臣と私たちの意見の違う点です。しかもこれはアメリカの予算の中ではっきりと二つに分けてあるんです。日本への贈与、日本へのクレジット、しかも日本へのクレジットについてはほとんど返済されて、あとの残余については五一年六月でわずかとなっている。まずその点について、きょうは金額ではなしに、外務大臣から一つずつ、あなたは債務の正当性を言うのでしょうし、私の方はきちんとしておかなければならぬと思いますので、阿波丸請求権放棄に関する了解事項の中で、違うと思う点について外務大臣から御答弁願います。
○小坂国務大臣 お述べになりましたように、「信用及び借款」という字を使っておりますので、その点に基づいての横路さんの御議論は非常に条理を尽していると拝聴いたしまするが、先ほど申し上げましたように、この協定の説明的解説的な意味において述べられました当時の吉田外務大臣が日本政府を代表して答弁された言葉の中に、ガリオア、エロアということをはっきり言っておるのでございまして、その意味において、そのときに了解事項の「借款及び信用」というものの中に、ガリオア、エロアが含まれておるということを日本政府として言い切ったということになろうかと思うのでございます。それからアメリカの商務省の発行いたしました資料で、フォ−リン・エイドという雑誌がございます。との中に援助というものがグラントとクレジットに大別される。しかしグラントということであっても、贈与というものであっても、返済については後日決定される旨の了解が行なわれている援助もある。借款及び援助といっても、その中にグラントという字を使う場合もあるでしょう。しかも後日決定されるグラントについての返還が、グラントそのものが借款ではないのであるけれども、そのグラントをすることについて、供与するということについて、その返済を後日協議するという断わり書きがついておれば、この点については、やはりグラントもすなわち語義の通りの贈与ではない、こういうことが書いてあるのでございます。またこういうことをそのまま実行いたしましたのが、西独に対する返済協定でありまして、そういうことに実際行なわれておる次第でございます。
○横路委員 今外務大臣はガリオア、エロアについてはそれは贈与ではないという点については、昭和二十四年四月の阿波丸の請求権放棄に関する点が、衆議院の本会議ですかにかかった場合における吉田総理の説明といいますか、答弁の中に、ガリオア援助については返済をすべきものだと言っているが、きょうはそれを持ってきませんでしたが、私もそれは読んだのです。そのあとの吉田総理の答弁を読んで下さい。あの人はかっとなって言ったのだと思いますが、それは日本の債権ではありません、こう言っているのです。もしもこの速記がそのまま吉田総理の答弁であるならば、日本の債権ではないと言っている。非常に分厚いものでありますから、私もきょうはここへ持ってきませんでしたが、私も同じに読んだのです。そうすると今、外務大臣からお話がありましたように、西ドイツの例を引かれておりますが、しかしイタリアの例だってあるのです。イタリアは全部なくなったのですから……。お返しする方の西ドイツは払ったのだ、払ったのだと言うけれども、イタリアの方は全部払わないことになったのですから、イタリアのことについては一つも政府の方ではお考えにならないということもおかしい。そこで今のお話の贈与については、これは支払いは期待されていないが、被援助者が米国または他の諸国と共同目的遂行の義務を持つものとしている。支払いの義務は期待されていない。しかしそれに付随して共同目的遂行の義務を持っているのだ、今あなたの言うように、贈与だけれども、あとになってそれが借款その他になって変わったものもあると言うが、それは私はそういうものもあろうと思う。そういうものが全部ではないですけれども……。ですからそういう贈与の中の特殊な例外のものをあげて、日本に対するガリオア、エロアについてはそれは当然援助である、それは当然返さなければならぬ債務だというようにきめてしまうのは、私は論理の飛躍だと思うのです。
 もう一つ、私も外務大臣が去る四月十二日、外務委員会でお話がございました、たとえば一九四六年三月二十二日付スキャッピン八三四に「かかる対日輸入計画に基づくものの支払い方法については後日決定する」これは米軍の払い下げ物資だ。実は私もあなたがそういうように答弁されていますので、その資料を私の方でもいろいろ探してみました。今あなたの言われる通り、そういうのはあります。確かにアメリカ第八軍から払い下げた物資については、最後に支払い及び勘定の条件は追って決定される、こうなっておる。もしもそれであるならば、きのう通産省から発表になったように、この軍の払い下げ物資については大かた金額がきまっている、それについての総額は六千万ドルだ、こういうわけです。それならばアメリカとの交渉は二十四年三月以前のものについては六千万ドルだということになる。外務大臣、あなたが四月十二日に答弁なすっているので、私の方でもあなたが答弁されたそのものについて私もここに持ってきた。これは四六八のナンバーが打ってあるのです。実は分厚いものですから一部だけです。あなたの方でも一部だけ言っているから。そういう意味では、阿波丸請求権に対する放棄、その中の了解事項として、この日本国に供与された借款及び信用は日本国が米国政府に対している有効な債務で、これらの債務は米国政府の決定によってのみこれを減額し得るという、それは、そこの中にガリオア・エロアは全部入っておるんだという考え方は、私は交渉する外務大臣としては、前に吉田総理が衆議院の本会議や予算委員会で答弁したからそのまま自分はいかなければならぬというものではないと思う。今あなたが御指摘のように、アメリカ商務省の対外援助あるいは一九四七年のガリオアの支出予算をきめた一九四七年法、それらの中で、これはそうなっておるのですから、この点についてもう一ぺん外務大臣から伺いたい。私もきょうはできるだけ問題を次々とお尋ねをしていきたいと思うので、議論の分かれるところになるでありましょうけれども、私は今の外務大臣の御答弁は、この点は納得できないわけです。もう一ぺんお答えしていただきたい。
○小坂国務大臣 衆議院の本会議におきまする当時の吉田外務大臣のお答えの中に、ガリオア、エロアは債権じゃない、そのまま債権じゃないというお話があったという御紹介もございましたが、これはその通りであると考えます。われわれも援助額そのものが債権ではない、ただ債権と心得る先方の債権、こちらにしてみれば債務と心得ておるというようなことを申しておるわけであります。従って、その債務と心得る額は幾らかということにつきましては、諸般の問題を十分に討論しなければならぬと考えておるのでございます。先ほどイタリアの場合がゼロになったではないかというお話がございました。なるほどイタリアは五億四千四百万ドル、これがゼロになっております。このうちガリオアは千三百万ドルにすぎませんが、その他陸軍救済計画、このうちプレ・ガリオアに相当するものが四億ドルあるのでございます。ただ、イタリアの場合は、私どももこ
 の点をいろいろ調べてみたのでございますが、何といたしましてもバドリオ政権というものが寝返って連合国側についた、その結果終戦が早く来たというようなことでありまして、イタリアの場合はわれわれの国あるいはドイツに対するのと違う立場として考えられておるということであるのであります。これは私どもがいかぬといっても仕方のないことだと存ずるのであります。しかし、その他のスキャッピンの問題につきましては、あまりここでいろいろ申し上げることはいかがかと思うのでありますが、その一つの例は、今、横路さんおっしゃいました一九四六年七月二十五日付スキャッピン一八四四A、これは日本側の消費いたしまする食糧その他の生必物資が供給されるということが通報されております。そういうものはこの累計に入っておるわけでございます。それから、なおそのほかに米軍の払い下げ物資、いわゆるクォ−ター・マスターズ・グッズ、QMといっておりますが、これを日本政府に引き渡すことを最初に提示した基本指令、これなどにもこれはやはり支払いの方法あるいは輸入計画に基づく支払いの方法は、ウイル・ビー・デターミンド・レイターと書いてございます。そういうように書いてあるのもございますし、その中には報奨物資等もございまするし、あるいは健康管理のための医療等のものもございますし、いろいろあるわけでございます。そういうものについて、こういうものはほんとうに何らあと支払いを要しないものじゃないかというものもあるわけでございますので、そういう点についてできるだけしさいに検討しておるわけでございます。
○横路委員 今、外務大臣から最後に報奨物資のお話がございましたが、報奨物資についての総額は一体幾らなんです。二十九年の第一回の日米のこのガリオア、エロアについての交渉のときに、アメリカ側から提案された報奨物資については、たしか三千三百万ドル程度のものではありませんか。ですから私はどうも今、外務大臣の御答弁でおかしいと思うのは、たとえば第八軍の払い下げ物資は、総額六千万ドルあるいは報奨物資については大体三千万ドル程度のものである。そういうものも入れて例外的なものをあげて、総額約十九億ドルともいい、あるいは十七億八千万ドルともいう。こういう中で第八軍の払い下げ物資は六千万ドルだ。今外務大臣からお話しの報奨物資というものは、二十九年第一回の日米交渉のときは、たしか三千三百万ドル程度で出ておる。そういうものについて、それは支払い及び勘定については後日決定するんだ、こうなっておるからといって、ガリオアその他について全部同じような扱いをするというのは、私は当を得てないと思うのです。
 次に、外務大臣は西ドイツの例をお話しなさいましたから、私も西ドイツのことを申し上げたい。これは「対独援助が請求権であり、ドイツの輸出代金中から返済さるべきであることは、既に一九四五年のポツダム四国会議で認められ、四六年の米英西ドイツ占領地区統合協定でも確認され、四八年のマーシャル援助の米独経済協力協定でも引つがれた。」だから、ドイツにおいてはここで何べんか議論しましたように、これが債務であるということは、一九四五年のポツダム四カ国会議でも認められた。四六年の米英の西ドイツ占領地区統合協定でも確認をされている。四八年のマーシャル援助の米独経済協力協定でもそれが認められている。連合軍最高司令官というのは日本においてはオール・マイティだった。絶対の権力者であった。西ドイツでは初めから、四五年から協定を結んで、四六年、四八年となっている。日本は今日に至るまで、この協定の中に何らこれが含まれていないのです。それをもって西ドイツは払ったんだ、払ったんだと言うことは、ドイツにおいてはこういうように四五年、四六年、四八年と、それが債務であるということが明らかに協定でなっておった。これを日本側も、今西ドイツの例を引っぱってそれが債務であると言うことは、これは外務大臣おかしいですよ。あなたがこれから交渉なさるときに、何でも西ドイツがやったと言うけれども、冗談ではない、四五年、四六年、四八年とやったじゃないか、あなたの方の連合軍最高司令官は、オール・マイティで、絶対権力者だ、やるべきものをやらないでおいて、援助なのか、くれたのかはっきりしないでおいて、今さらになって返してくれなんというのはおかしいではございませんかということを外務大臣としておっしゃるべきです。西ドイツの件はそうなっていますから、これは外務大臣だって否定なさらないでしょう、何も私、別な突拍子もないことを言っているわけでもないですから。
○小坂国務大臣 簡単にお答えいたします。最初に報奨物資の点でございますが、との報奨物資は、一九四七年十二月十三日付貿易庁あての覚書BT四七−一一六〇というのが一つの例として考えられますが、報奨物資の点について、こういうものはわずかではないか、そういうものがあるからといって、ガリオア全体を債務と心得るのはどうかという御議論でございましたが、これも実はあまり言いたくないのですが、御質問があったから申し上げますと、これは返済については後刻決定するということは書いてないのでございます。従ってこれは私どもは問題にならないと最初から考えておるのでございます。最初からあとで交渉するということが書いてあるものについて言えば、それは議論になると思います。
 それから西独の方はあまりすっきりしておりまして、これも言いにくいのですけれども、そういう協定がはっきりしておりましたので、西独の場合はプレ・ガリオア、ガリオア、それからECAができましてからのECAの援助、それから若干の行政費等の控除分もございますけれども、これは全部アメリカの決算のベースでもって、西独は何ら文句を言わないで、先方に出ている決算数字そのままをすっぽりと処理しておるのでございます。わが国の場合は、先ほどから横路委員のお話しのように非常にはっきりしない点もございますので、そこで政府としては非常に苦心をしておる次第でございまして、その点については機械的に西独方式を適用することはわれわれは承諾し得ないのだ、こういうことを申しておる点を御了承願いたいと思います。
○横路委員 外務大臣、私も別に報奨物資についてはどうと言わないのです。あなたがこの一つ前の御答弁の中で報奨物資について触れたものですから、二十九年のときにアメリカから報奨物資については三千九百万ドルというものを示されているのだから、そういうものを例にとって全体を言おうとすると無理が出ますよ、こういうことを私は申し上げたわけです。
 次の問題に移って外務大臣に伺いたいのは、先ほど申し上げましたアメリカの商務省の対外援助の中の民生品供給計画、その中に、先ほど申し上げましたように、「第二次大戦は新しい政治的軍事的考慮から、混乱と飢餓を救う人道的必要をより強めた」云々とあって、そして最後には、「日独降伏後、旧敵国占領地に対する民生品供給という新局面が生じた。米国軍隊を病気と民間の不安から守るためにのみでも、占領地での民生品供給は必要であった。」そして先ほど言いましたようにガリオアの予算をきめました一九四七年法の(9)項の中で、「かかる地域の市民人口に対し達成すべく追求されている目的を害するような飢餓、疾病、不安を阻止するに必要な最低の供給……」と、こうなっておる。それで私はあなたに次の問題についてお尋ねをしたいのは、ハーグの陸戦法規の四十三条に、「国ノ権力カ事実上占領者ノ手ニ移リタル上ハ、占領者ハ、絶対的ノ支障ナキ限、占領地ノ現行法律ヲ尊重シテ、成ルヘク公共ノ秩序及生活ヲ回復確保スル為施シ得ヘキ一切ノ手段ヲ尽スヘシ。」これがハーグの陸戦法規の四十三条です。ハーグの陸戦法規については、これは米軍は守っているわけですね。ハーグの陸戦法規に基づいて日本を占領しているわけです。そこで、先ほど申し上げたアメリカ商務省の対外援助の中における民生品供給計画、それから一九四七年のガリオアの予算の支出、ハーグの陸戦法規の四十三条からいって、これは占領軍としては当然なすべきことだ。外務大臣、私は今国際法の関係から言っているんですよ。ハーグの陸戦法規の四十三条、それに合わせてアメリカ商務省の対外援助の民生品供給計画、それから四七年のガリオアの予算支出、こういう点から言って、これは占領軍として当然なすべきことをやったんだ。だからそういう意味ではこれは債務ではないですよ。独立日本としての名誉心からやるというなら別ですよ。しかし債務の正当性というものはどこから生まれてきますか。そういう意味で、まずアメリカ商務省の対外援助の民生品供給計画、それからガリオアの一九四七年の支出、それからハーグの陸戦法規の四十三条、それからいって、これは返す必要がない。これは当然占領軍としてなすべきことをやったにすぎない。この点についての外務大臣の見解はいかがですか。
○小坂国務大臣 よく御研究になっておられて、なんですが、ハーグの陸戦法規四十三条は、ただいまお読み上げになりましたように、「占領者ハ、絶対的ノ支障ナキ限、占領地ノ現行法律ヲ尊重シテ、成ルヘク公共ノ秩序及生活ヲ回復確保スル為施シ得ヘキ一切ノ手段ヲ尽スヘシ。」とございます。そこでなるべく、できる限り公共の福祉と民生安定に寄与すべしというのでございまして、これが一切、そうするのは無償で全部やる義務を負うのだ、こういうふうには読みかえられないと考えます。この点においてはなるべくそういうふうにやるということでございまして、その限度があろうことと心得ざるを得ないのであります。
○横路委員 今の外務大臣の答弁は非常に私は大切だと思う。実は私、率直なところ、外務大臣は陸戦法規の四十三条についてはこのガリオア、エロアとの関連で拒否されるのかと思った。しかしあなたは今原則的にはハーグの陸戦法規の四十三条をお認めになっておる。お認めになって、ただあなたはその中の言葉として、「公共ノ秩序及生活ヲ回復確保スル為施シ得ヘキ一切ノ手段ヲ尽スヘシ。」ただその頭に「成ルヘク」とあるから、なるべくという限度なんだ。しかしその後段は、「公共ノ秩序及生活ヲ回復確保スル為施シ得ヘキ一切ノ手段を尽スヘシ。」こうなっている。そうすると、今外務大臣の御答弁下さったように、ガリオア、エロアについては債務であるという正当性というものはおかしいですよ。(「例外だよ」と呼ぶ者あり)いやいや、今外務大臣がここで言われたことは、私は非常に重大だと思う。外務大臣のその考えでいかれれば、当然ライシャワー・アメリカ大使に対しては、陸戦法規の四十三条  今あなたが言ったようにあなたはただ「成ルヘク」という上にこだわっている。一番最後には、「施シ得ヘキ一切ノ手段ヲ尽スヘシ。」となっている。あなたは「成ルヘク」の方だけやっているが、条文はそうなっている。そうすれば当然あなたは対米交渉の中で、この陸戦法規の四十三条からいって、あなたの方はガリオア、エロアについては占領軍として当然やるべき、公共の秩序及び生活を回復、確保するために施し得べき一切の手段をあげてやったんだ、だから、この点は債務というのはおかしいですということが生まれてきます、今のあなたの御答弁から……。この点についてあなたはどう御答弁するだろうと思っていたら、「成ルヘク」というところにあなたは主眼を置いた。そういう点では、あなたは陸戦法規の四十三条というものをお認めになられたわけだ。私はこれからの対米交渉というのはそういう意味で一つやっていただかなければならぬと思う。今御答弁になったのをお取り消しになりますか。
○小坂国務大臣 せっかくあなたの顔を立てているのに、そこまで言われると、それじゃこっちも開き直らざるを得ない。
 御承知のように、占領軍が占領経費を要した、その直接軍事費を敗戦国に負担させているということはきわめて通常の例でございます。日本との講和条約におきましても、日本が直接軍事費を負担していることは御承知の通りでございます。そこでこの陸戦法規の趣旨というものは、陸戦法規のみについてお話がございましたから、その解釈について私は申し上げたのでございます。ガリオア、エロアの場合は、日本の敗戦の混乱を救うために、できるだけアメリカ国としても好意的に配慮したという点は、われわれとしても十分感謝をしなければならぬ。しかも、感謝しつつ、そのときに日本政府が、ある部分についてはあとで協議いたしまして、支払い方法その他を決定いたしましょうといっておるものについては、当然われわれとして考えなければならぬ。これは別の問題であると思います。
○横路委員 外務大臣、支払い方法については、あとで決定しましょうなんということについて、何も覚書を取りかわしたり協定を結んではいないのですよ。なお外務大臣、ここは個人的な場所ではないのですから、決して私の顔を立てるために都合のいいことを言ったり何なりしていただかなくてけっこうです。やはりこれは国会を通じて、お互いの論議を通じて私たちは国民に明らかにすべきだし、また私たちはそういう意見を政府側に述べて、政府側も十分その意見に基づいて交渉されるべきものはすべきだと思って言っているわけです。
 なぜ私がこのことを言っているかといえば、一九四五年の十二月十九日、マッカーサー元帥は、管下部隊に対する訓令を発している。この管下部隊に対する訓令の中で、占領軍は国際法及び陸戦法規によって課せられた義務を順守すると述べているわけです。一九四五年の十二月十九日に、マッカーサー元帥は管下部隊に対する訓令の中で、陸戦法規は順守する、こう言っているわけです。陸戦法規は順守するという以上は、この陸戦法規の四十三条については当然なんです。だからこそ、先ほどから私が引用しているように、アメリカ商務省の対外援助の中における民生品供給計画、それからガリオアの予算をきめた一九四七年の支出法、その中を通して、当然マッカーサー元帥が管下部隊に対する陸戦法規は順守してやりなさいという一九四五年十二月十九日の訓令、それからいって、当然これはやらなければならない。アメリカ側としては当然の義務ですよ。外務大臣、私は、ほんとうはもっと議論したいのですが、あなたの方でこれから対米交渉されるのですから、野党側といいますか、私たちは、正しい国際法、正しき陸戦法規、アメリカの予算、アメリカの対外援助計画というものを、やはりそういう上に立って議論をしているわけですから、その議論の上に立って十分交渉なさるべきだと思うのです。この点については何かありますか。マッカーサー元帥が管下部隊に対してその訓令を発した。次の問題に移りたいのですから、決して私の顔でなく、外務大臣として御答弁して下さい。
○小坂国務大臣 占領軍総司令官がその管下の部隊に対して陸戦法規に背馳しないように訓令を出すことは当然のことだと考えております。
○横路委員 そうすると今外務大臣からお話のように、マッカーサー元帥が管下部隊に対して陸戦法規を順守するようにという訓令を出したのは当然だ。当然だということになれば、ハーグ条約の陸戦法規の四十三条を守ることは当然だ、四十三条を守ればこそ、先ほどから私が繰り返しているその商務省の対外援助民生品供給計画、それから予算等について相談をする……。
○小坂国務大臣 ただその陸戦法規を順守しろということと、費用の問題とは無関係であると思います。
○横路委員 それは外務大臣、そういうことは、今あなたが、管下部隊に対して陸戦法規は順守せいと言ったことと、それからハーグ陸戦法規の四十三条、占領地の法律の尊重――もう一ぺん読みますよ。「国ノ権力カ事実上占領者ノ手ニ移リタル上ハ、占領者ハ、絶対的ノ支障ナキ限、占領地ノ現行法律ヲ尊重シテ、成ルヘク公共ノ秩序及生活ヲ回復確保スル為施シ得ヘキ一切ノ手段ヲ尽スヘシ。」ここなんですよ。管下部隊に対しては陸戦法規は守りなさいと言った。しかし総司令官は、ハーグ条約の陸戦法規の四十三条についてはそれは別だなどということは、外務大臣、筋が通らないですよ。これはやはり外務大臣、今あなたも陸戦法規並びに管下部隊に対する、その占領軍に対する訓令は了承されたわけです。
 次に移ります。次に外務大臣にお尋ねをしたいのは、先ほどあなたから、平和条約第十四条の(b)項についてお話があったわけです。「この条約に別段の定がある場合を除き、連合国は、連合国のすべての賠償請求権、戦争の遂行中に日本国及びその国民がとった行動から生じた連合国及びその国民の他の請求権並びに占領の直接軍事費に関する連合国の請求権を放棄する。」そこで今あなたから、直接の軍事費に関する連合軍の請求権は放棄するときめてあるが、先ほどの言葉の中に、ガリオア、エロアについては間接の軍事費だから、これは請求権は放棄してないのだという、何かこういう意味の御答弁であったように思うわけですが、そういうわけですか。ガリオア、エロアについては間接の占領の軍事費だから請求権は放棄してないのだ、十四条(b)項についてはこういう意味ですか。
○小坂国務大臣 先ほどの陸戦法規の問題でございますが、陸戦法規において四十三条にさように規定されておりますけれども、その費用は往々にしてほとんど大部分の場合敗戦国からあとで取り立てられているのが通例でございまして、これがあるからといってガリオア、エロアの方は考えろというのも、ちょっと一般のすなおな国際法の解釈からすると無理があるかと思います。
 それから直接軍事費ということは十四条(b)項に書いてあるからということに関連しての御質問でございますが、ガリオア、エロアというものは軍事費ではないと思います。しかし百歩譲ってかりに軍事費的な性格があるとしても、それは間接なものである、こう考えざるを得ません。
○横路委員 そうすると、外務大臣あれですか、この平和条約第十四条の(b)項の中からは、ガリオア、エロアはどこからも出てきませんね。その点はどうなんですか。この点を明らかにしていただきたい。
○小坂国務大臣 それは出て参りません。
○横路委員 それで私はよくわかったのです。たとえば昭和二十六年ですか、サンフランシスコの平和条約が国会にかかりました場合に、当時の西村条約局長の説明、答弁というものを私も詳細に調べてみました。調べてみましたところが、第十四条(b)項においては、ガリオア、エロアは間接の占領軍事費であるから、従って第十四条(b)項からする直接の軍事占領費については放棄しているが、間接の軍事占領費であるガリオア、エロアについては放棄していないのだというのが第十四条(b)項の解釈だ、こう言っているのです。しかし今外務大臣から、この十四条(b)項からはどこからもガリオア、エロアについては出てこないというから、そうすると政府側の解釈というのは、まあ訂正ではなしに進んだと思う。私はその解釈でけっこうだと思うのですよ。十四条(b)項のどこからもガリオア、エロアについては何の特段の定めも規定もしていない、そのように外務大臣が解釈されれば、私はそれでけっこうです。ただ一つ今外務大臣が私に、陸戦法規四十三条について費用はあとで取り立てることになっているのだというようなことをおっしゃっているけれども、この陸戦法規四十三条の「一切ノ手段ヲ尽スヘシ。」という中のこの条文の解釈の中からはそういうものは生まれてこないです。そこで外務大臣、私は次に移りますがいいですか。十四条(b)項からはガリオア援助のものについてはどこからも生まれてきていない。それでよろしいですね。それであれば次に移りたいのです。
○小坂国務大臣 放棄されていないという意味においてですね。
○横路委員 じゃどこに放棄されていないということが書いてあるのですか。この十四条(b)項のどこにガリオア、エロアについては放棄していないということが書いてあるのですか。
○小坂国務大臣 十四条(b)項の後段におきまして、「占領の直接軍事費に関する連合国の請求権を放棄する。」ということの中に、その通り読みますれば、ガリオア、エロアは含まれていないと解さざるを得ないと思います。
○横路委員 それは速記を調べてごらんなさい。外務大臣、あなたは先ほど十四条(b)項のどこからもガリオア、エロアについては特段何も定めがないと言っていますよ。言っているんですよ。だから私が念を押したのです。しかし私はきょうは次に移りたいと思います。
 以上私は今あなたにお尋ねをしたのは、そういう意味では、一つは阿波丸請求権放棄に関するときの了解事項、その次に陸戦法規の問題、それからサンフランシスコ条約の問題、あなたは最初私への答弁の中で、十四条(b)項の中ではガリオア、エロアについての規定はない、こう言っているのです。ですからそういう意味で、債務がある、債務と心得ているというものの正当性についてあなたはお述べになっているが、この点はまことにその根拠というものは薄弱です。逆に言うならば、そういう意味では、ガリオア、エロアの債務についてはそういう正当性はないです。しかし遺憾ながらきょうは時間がございませんから次に移りたいと思います。
 そこで私はあなたにお尋ねをしたいのは、この間私に対する三月四日の答弁で、当初日本に来たガリオア・エロアの物資の中で、沖繩に行っているものが一億七千四百万ドルある。そこで私はあなたにお尋ねしたいのだが、今度のアメリカ交渉の中で、その一億七千四百万ドルについては、日本のいわゆる援助という額の中から当然差し引いていますね。その点についてお尋ねをしたいのです。
○小坂国務大臣 若干誤解があるかもしれませんのですが、その点はちょっと違うのでございまして、この一億七千四百三十万ドルというものは、これは日本から行ったのでなくて、直接にアメリカとして出しておりますガリオアでございます。これについて同様のことを全部参考資料として申し上げますと、西独に対して三十億一千四百万ドル、イタリアが五億四千四百万ドル、オーストリアが五千六百万ドル、トリエステが三百七十万ドル、韓国三億一千九百万ドル、琉球一億七千四百三十万ドル、こういうことになっておるわけでございます。
○横路委員 外務大臣、しかし三月四日、私はこういうようにお尋ねしたのですよ。二十九年二月の予算委員会で、そのときの岡崎外務大臣は小笠原大蔵大臣とあわせてここで答弁していますが、その答弁の中で、日本に来たガリオア、エロアの物資の中でそれは沖繩に行っているものもあります、こういうことを言われているのだが、今日外務省では、沖繩に行っている金額は一体幾らになっているのですか、こう聞いておるわけですね。二十九年二月の岡崎外務大臣の答弁から私は聞いたわけです。そうすると、あなたはそのときに、一億七千四百万ドル行っています、こう言うから、その答弁からすれば、当然日本に来たガリオア、エロアの物資の中から沖繩に一億七千四百万ドル行っているということになるようにあなたは答弁しているのです。お読みになってごらんなさい、そうでしょう。私は二十九年二月の岡崎外務大臣の答弁から引用してあなたに聞いた。そうすると、それは違うわけですか。その点、違うなら違うとはっきりとここで言っていただかないと困る。
○小坂国務大臣 これは実は私の聞き方が悪かったのでございますが、あなたの最後に、沖繩に幾ら行っているのですかというのについて、私は一億七千四百二十万ドル、こう申し上げたようになっております。その前段もございますので、その点は違います。ただ今度の場合、日本から沖繩に行っているものも若干ございます。そういうものについて、いろいろこれからの話し合いの中に当然話題になるわけでございますが、この点はいろいろまだ詰めてみなければならぬ点もございますので、一つ御容赦願いたいと思います。
○横路委員 いや、その点について委員長、大へん恐縮ですが三、四の数字だけお尋ねをしておきたい。
 一つは、二十八年の七月の予算委員会で、河野一郎氏から吉田総理に対して、いわゆる朝鮮に対する輸出入物資の関係で、対米債権四千七百万ドルの焦げつきがあるではないかという質問で、それはガリオア、エロアについての返済のときに勘案をします、こうなっている。そうするとまず一つお聞きしたいのは、これはそのときのその四千七百万ドルというのか、それとも、私のところに数字がございますが、四千八百六十六万ドルというのか、まずその金額はどうなっているのです。それから今度の交渉では、当然それはその返済の中で差っ引く。総体から差っ引くか三分の一にしてあとで差っ引くか、それは聞きませんが、とにかく差っ引く。これは二十八年七月の予算委員会で言うているわけですから、この点はまず金額がどうなっているのか。それから、その点は今度の交渉の中で当然入っていると思うが、その点はいかがでございますか。
○小坂国務大臣 このわれわれの方で当然返済すべき額が、確定したものが幾らになるかということについては、当然差し引くべきものは差し引いたあとでやってもらいたい、こう考えております。ただ数字その他については、これは一つ差し控えさしていただきたい。
○横路委員 しかし外務大臣、この点は前にも出ていることなんですからはっきりして下さい。では数字は四千七百万ドル、そういうように河野一郎氏が言った数字で私はいいです。四千七百万ドル、その点については、当然今度の交渉の中で明らかにして、どちらから引くかは別にして、当然それは交渉の中に入ってくる数字ですね。その点だけ明らかにしてもらいたい。
○小坂国務大臣 さようでございます。
○横路委員 次に私はお尋ねをしたいのは、昭和二十一年度、これは日本ですよ、昭和二十一年度改定歳入歳出総予算追加案(改第一号)、この中の昭和二十一年度の連合軍関係費の中に、朝鮮住宅建設資材費、これは第九十臨時議会に提案された予算案の中で十二億円を出しておる。それから同じく沖繩再建資材その他に対する経費として、第九十臨時議会に提案された予算案の中で、これは一億出しておる。この朝鮮に対する住宅建設資材、占領軍の沖繩に対する再建資材その他に要する経費、この合計十三億については、当時のドルと円との換算からいって、これは私ども承知しておるところでは、約四千百二万四千ドルになっているというように聞いておる。まずこの金額について間違いがないかどうか。今度の交渉の中には、昭和二十一年度の連合軍関係費の中のこの朝鮮の住宅建設資材費十二億と沖繩に対する一億、この四千百二万ドルについては、当然これは差っ引くものというように政府としてはその交渉をなさると思うが、この点はどうですか、外務大臣。
○小坂国務大臣 そうした点も勘案いたしております。
○横路委員 そうすると、今外務大臣お認めになったわけですが、そこで次に総理にお尋ねをしたい。これは総理が二十六年のときに大蔵大臣をされて、大蔵大臣として御答弁されている経緯がありますので、私お尋ねしておきたいと思います。
 総理にお尋ねする前に、もう一つ大へん恐縮ですが、外務大臣にお尋ねします。終戦処理費は、そのときそのときによってドルと円との換算は違いますが、大体われわれの計算からすれば、総体で四十七億ドル程度になっておると思う。この点はいかがでしょうか。
○小坂国務大臣 終戦処理費は、御承知のように、五千百三十一億円ということになっております。これをいかに換算するかということでございます。これはその当時の複数レートの変遷その他について議論のあるところでございますが、大体今おっしゃいました金額から五十四億ドルというところもございますけれども、これはいろいろな見方があるわけでございます。
○横路委員 総理大臣にお尋ねしておきながら、また外務大臣に重ねてというのもちょっと恐縮ですが、終戦処理費の中から昭和二十五年以降の朝鮮事変に対して支払った金額について幾らになっておりますか。日本の連合軍については、われわれは終戦処理費を払った。ところがその金のうちから一部を朝鮮事変に出た連合軍に出している。その出した金は、今度のガリオア、エロアのこの返済交渉の中では、当然その分は差っ引くことにしなければならぬ。一体朝鮮事変に対して終戦処理費の中から幾ら出ていますか。
○小坂国務大臣 この点は私どもの方としても十分に考慮しておりますと申し上げる点で御了承願いたいと思います。
○横路委員 そうすると、外務大臣、今のお話で、終戦処理費の中から昭和二十五年、六年等のいわゆる朝鮮事変について終戦処理費から出した金があるということを、今お認めになったわけです。それは当然考慮しているという、これはちょっとここで一つ金額を出してもらいたい。これはぜひ出してもらいたい。これは一体幾らになっておりますか。
○石原政府委員 ただいま横路委員御指摘の終戦処理費のうちにおきます国連軍関係でございますが、それはアメリカ側から百八十三億四千二百八十六万一千円、これだけ返還を受けております。
○横路委員 大へん恐縮ですが、主計局長もう一ぺん数字を言って下さい。
○石原政府委員 百八十三億四千二百万円でございます。
○横路委員 今主計局長からは昭和二十五年のときの費用の中で――外務大臣ちょっと聞いて下さい。実はこれは取りきめで絶対使ってならぬとなっておったのですよ。そうですね。終戦処理費から絶対に朝鮮事変に出動する軍隊に使ってはならぬということになっておったのだが、あとで連合軍から実は使いましたというので、今石原主計局長からお話しのように百八十三億幾らですか返してきたという。それは返してきた金額ですね。そうすると終戦処理費の中で返した金額のほかになおあるわけですね。あるから今度の交渉の中でこれは差っ引く、こういう計算になる、そうですね。その点どうです。
○小坂国務大臣 それはございません。
○横路委員 それでは外務大臣、先ほど私に対する答弁で、終戦処理費の中からの朝鮮事変に出動した連合軍に対する費用についても当然考えると言ったのは、それは考え違いだったのですか、どうなんです。これは大事な点です。
○小坂国務大臣 私の言葉が足りなかったと思います。
○横路委員 外務大臣、それは決してあなたの言葉が足りないのではないのです。あなたの言葉が正しいのです。
 そこで総理にお尋ねします。実は安保条約のときの吉田・アチソン交換公文の中に、「連合国最高司令官の承認を得て、日本国は、施設及び役務を国際連合加盟国でその軍隊が国際連合の行動に参加しているものの用に供することによって、国際連合の行動に重要な援助を従来与えてきました」と言っているわけです。そこで、私はこのときのことを参議院において――衆議院の記録を読んでみましたが、衆議院の方はどうもはっきりしないのですが、参議院の兼岩委員の質問に答えて、総理は当時大蔵大臣として御答弁されているわけです。兼岩委員の質問は「次に大蔵大臣にお願いいたしておきましたが、朝鮮戦争勃発以来日本政府は国連協力の方針で施設及び役務を国連軍に提供して来たし、現にしつつあることを確認した。よって朝鮮戦争以来現在までに提供した施設及び役務の種類及び価格を左記の形において明示する資料を全委員に配付し、その内容を明らかにされたし。記(一)土地、建物、役務その他の援助の有償、無償の区別とその価格、人員、(二)有償のうち幾ら返済されているか、(三)役務及び施設の内容、」こうなって、大蔵大臣から「折角資料を収集中であります。」こういうことを言っておる。そしてお出しなさいといえば、「出せる資料もありますし、出せない資料もあるということは、昨夜申し上げた通りです。」と今と昔とあまり変わらないことをおっしゃっていますが、しかし、この吉田・アチソン交換公文の中で明らかに、日本政府は連合軍に対して役務、施設その他あらゆるものを提供している、こう言っているのですね。これは当然終戦処理費の中から差っ引かなければならない。だから、そういう意味では、先ほど小坂外務大臣から、今度の交渉の中で終戦処理費の中から朝鮮事変に施設、役務を提供したそれぞれの金額については引きますということは、決してそれは言葉が足りないのではないのです。外務大臣のお答えが正しいのです。小坂さん、これは正しいのですよ。総理どうですか。これはすでに二十六年のときから問題になっている。もう十年たっているのです。一体総額幾らになっているのですか。当然外務大臣がお話しのようにこれは差っ引くべきじゃないですか。どうですか総理大臣。
○池田(勇)国務大臣 はっきりした記憶はございませんが、そのときにお答えしたように、日本への駐留軍が施設を使っております。その施設を使うということが、国連軍との関係がございまして使っておるということは言ったでしょう。しかしこれは特別に費用が要ったわけでもございません。そうしてこの終戦処理費の問題とガリオア、エロアの問題とは、私は別問題と考えております。
○横路委員 今のお説のそれは総理おかしいじゃありませんか。外務大臣はさっき何と言ったのです。昭和二十一年における連合軍の費用、終戦処理費の中から――第九十帝国議会、臨時議会です。その中に、朝鮮に対する特別資材として十二億円、沖繩に対して一億円、四千百二万ドルについては、外務大臣が言ったように、それを今度の交渉の中で入れると言っているじゃないですか。すでにここで答弁があったのです。答弁があったばかりではなしに、二十九年の五月の第一回の交渉のときに日本側から出しているじゃないですか。外務大臣が答弁しているじゃないですか。そこで私がお尋ねをしているのは、その朝鮮事変のときに、今あなたは、施設を提供したって何が金がかかるか、こう言っているが、そうじゃないのです。ここに言うているじゃないですか。ここにあるように、施設及び役務を提供したのです。役務というのは全部賃金の換算ですよ。占領軍は当然占領のためにおるべきものが朝鮮事変に出る。そのために使った金なんですよ。それは当然返してもらうべきじゃありませんか。それを吉田・アチソン交換公文の中で、きちっと吉田さんがアチソンにそれを言っているのです。だから出してもらいたい。幾らになっているのですか。
○池田(勇)国務大臣 話がだいぶこんがらがっておるようでありますが、朝鮮に対しましてのガリオア関係あるいは琉球につきましてのガリオア関係、これはさきにお話し申し上げましたように四千七百万ドル、あるいは琉球関係につきましてもガリオア返済のアイテムとしてわれわれは考慮いたしております。それから吉田・アチソン会談における、朝鮮事変に対しての日本の施設、役務の提供というものにつきましては終戦処理費の関係でございまして、これは主計局長が答えておるように、換算してこちらでもらっておるわけでございます。
○横路委員 それは総理、換算してもらったのと吉田・アチソンの交換公文で出しているのとは違うんですよ。それは何と言っているかというと、連合軍の行動に重要な援助を従来与えてきましたし、また現に与えています。重要な援助を与えているというのです。
 そこで委員長、実は私に与えられた時間もだいぶ過ぎましたので、これで終わりたいと思うのですが、昭和二十六年の十一月十七日当時の池田大蔵大臣からも、吉田・アチソン交換公文に対しての、この提供した施設及び役務――施設については有償無償、役務、それらについては資料を出すということになっているのですから、ぜひ一つここで出していただきたい。そのことは、今回の対米交渉の中で終戦処理費は、これは二十五年のときにおそらく一千億円になっている。しかも二十五年は、日本国内のアメリカの四個師団、イギリス、オーストラリアの連合軍一個師団は、日本をがらあきにして行ったわけですから、一千億円をこえている終戦処理費の中で返したものは百八十三億円にしかならないというのですから、ぜひ一つこの資料は出していただきたい。
○池田(勇)国務大臣 終戦処理費の問題は根本的に……。
  〔発言する者あり〕
○船田委員長 静粛に願います。
○池田(勇)国務大臣 私は、終戦処理費の使い方につきましては、先ほど申し上げましたように、ガリオア、エロアとは全然関係がないと思っております。そうしてまた吉田・アチソン会談におきまして、朝鮮事変に関しまして日本が提供した施設、労務につきましては、これは日本が負担することに相なっておるのでございます。問題はないと考えております。
○横路委員 私はこれで終わります。大蔵大臣に一つ、吉田・アチソン交換公文で昭和二十五年、六年、国際連合の行動に重要な援助を従来与えてきた。さっき主計局長から百八十三億円返ったからいいというがそうじゃない、与えてきた。それはその施設及び役務、それの有償無償について仕分けをして出していただきたいということを要求して、私の質問を終わります。
○船田委員長 午後三時より再開することとし、暫時休憩いたします。
   午後一時二十七分休憩
     ――――◇―――――
   午後四時三十八分開議
○船田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 ただいま井手以誠君外十五名より昭和三十六年度一般会計予算の補正を求めるの動議が提出されました。
○船田委員長 この際その趣旨弁明を求めます。小松幹君。
○小松委員 私は日本社会党を代表して、昭和三十六年度補正予算が提出されている本予算委員会に、さらに昭和三十六年度一般会計予算の追加を求める動議を提出いたしたいと存じます。
 動議は文書をもって提出してありますが、一応前段だけ朗読して提案にかえさせていただきます。
  今回、政府より提出された予算補正は、政府関係機関予算並びに特別会計予算のみにとどめているが、これでは、現に本年度中に最少限度の増額の必要を認められる社会保障関係費並びに先に両院の決議となった石炭保安対策費において著しい不足を生じ、国民の切実な要求にこたえることができない。
  よって、政府は、左の通り社会保障関係費及び石炭鉱山保安費について昭和三十六年度一般会計予算の補正を行ない提出することを要求する。
以上でありますが、次に具体的に追加要求項目及びその予算額を説明いたしたいと存じます。
 まず第一項といたしまして社会保障関係費でありますが、二百億円を要求いたしております。
 まず医療費一〇%値上げに伴い、当然本年度増額を必要とする国庫負担額でありまして、特に国民健康保険等各種保険料の引き上げによって犠牲を受ける患者の負担分及び地方自治体国保負担の増額分、六十五億円と十八億円との合計額八十四億円を要求いたしております。
 次に、生活保護費について保護基準の引き上げが現在一八%しか予算化していないので、これをさらに八%引き上げ、その差額十二億円を追加要求いたしております。
 次に、母子福祉資金貸付額拡大のため、貸付増額分として十億円を要求いたしております。
 次に、社会福祉及び保護施設職員の給与の引き上げは、本年度予算に七・五%しかなされていないので、これを一五%に引き上げ、職員の増員分をも含めて六億円を追加要求いたしております。
 次に、小児麻痺対策は、予防接種の拡大が急務であり、そのためには補助率の引き上げをはかり、三分の一より三分の二にいたしております。さらに生ワクチンの研究は、ソ連あたりでも相当決定的に研究されているのでありますが、日本は依然として研究が進んでおりません。その研究費の早急増額は当然であります。これら小児麻痺対策に六億円を要求いたしております。
 次に、原爆被害者の対策費は、医療手当のみならず、進んで援護措置を講じていく段階になって参りました。そのため医療手当、援護手当等を含めて八億円を追加要求いたしております。
 次に、失業対策費でありますが、一般失対事業費の労力費は、現行予算は昨年度の一五・六%引き上げにしかなっておりません。これを二八%まで引き上げ、国庫負担の単位を二百二十二円から二百八十四円に引き上げるようにすることであります。
 また、就労日数が現行二十一・五日になっておりますが、これを二十五日までに引き上げ、完全就労の体制に持っていくこととし、就労人員も二十万からさらに四万の増加を見込み、期末手当に夏冬二十日間を考慮に入れて、合計五十二億円を追加要求いたしております。
 次に、石炭業離職者対策でありますが、石炭産業合理化のために犠牲退職者となった者に対して緊急就労を急がねばなりませんけれども、現行予算額では、助成単価が低くて、対象人員が少ないので、離職対策も遅々として進んでおりません。よって、これに要するために八億円の追加要求をいたしております。
 次に、学校給食費補助は、完全給食の奨励に伴い、生活保護者以外の貧困家庭の子弟のために免除措置が必要となって参りました。すなわち、ボーダー・ライン層の解決のために、これらの子弟十万人の追加を見込み、四億円の要求をいたしております。
 次に、第二項といたしまして、石炭鉱山保安関係費でありますが、打ち続く中小炭鉱の災害を防ぎ、保安体制を確立し、危険を予防するために緊急対策をとることは、さきに両院の決議もありましたので、わが党は率先してこれら対策費を予算化し、十分な予算措置をもってその趣旨に沿いたいと考え、予算要求をいたしております。すなわち、危険を予防し、救護するための経費を五億円、監督行政強化のための鉱山保安行政費三・五億円、さらに積極的に保安施設改善の見込みのない炭鉱の廃止、休山をはかり、その離職者対策費として七億円を要求いたしております。合計保安関係費一五・五億円を追加要求するのであります。
 以上で、一般会計追加要求合計額は二一五・五億円であります。
 私は、この際、簡単にこの動議提出の理由を明らかにいたしたいと思います。
 このたび予算補正にあたって、一般会計予算の補正を出さなかった政府に反省を求めたいと思うのであります。
 わが党はさきに本年度予算審議のおりに、予算組みかえの要求を政府に迫って参りましたが、しかしそれは膨大な予算全般にわたってのことでございました。しかしその後、予算通過の直前、社会、自民両党の党首会談を要望し、この予算組みかえの要求を撤回することを前提として、社会保障関係費のみの二百億円の予算を追加修正しようと試みたのであります。しかして社会保障関係費の増額をさらに強く政府に訴えて参りました。しかし、政府は頑迷にもこれを受け入れず、強引にそのまま予算通過をはかって参りました。わが党が引き続きこのたびもこのことを持ち出して、あくまでも社会保障費の予算追加を要求いたしますのは、次のような理由があるからであります。すなわち、池田内閣が言う経済成長、所得倍増の急激な助長は、その反作用として、経済格差を拡大し、多くの貧困階層を造成することは明白であります。物価値上がり、家計支出の増大は、国民生活を漸次圧迫し、心なき転落者を作り、生活要保護者の増加、労働者の貧困化を多からしめることは現下の情勢であります。
 資本主義経済が労働者を貧困化するなどという一般的な教条ではなく、池田さんのやり方は、必ず落とし子を作るか、またはまま子いじめされる階層ができるということであります。われわれはこのような事実を一番おそれているのであります。
 税金でいじめられ、麦飯で苦しめられ、中小企業の死の倒産で悲しんだ国民といたしてましては、永年の経験から、池田政策の次の犠牲者はだれであるかということを心配しておるのであります。
 わが社会党が、社会保障関係費を絶対に捨て切らず、あくまでも増額要求してやまないのは、以上の池田内閣の政策欠陥を知り抜いているからであります。このたびの一般予算補正の動議も、かかるゆえんから起こったものであります。
 経済のことは池田にまかせと言われますが、大いに経済成長はやっていただきたい。しかしただ、犠牲者だけは十分に始末をつけていただかねばなりません。自己の責任とは言えない経済政策のための転落者、低所得者層の予算的救済は十分やってもらいたいと思うのであります。
 この程度の一般会計予算の追加増額は、野党から言われるまでもなく、今度の補正に積極的にやっておらなければならないと思うのでありますが、政府は一般会計予算の補正は出さないのであります。
 また、このたびの医療費の引き上げは、医療関係者の抵抗をおさめる頓服にはなったかもしれませんが、そのため、国民であり患者である大衆は、保険料の引き上げを押しつけられ、医療費の値上がりを背負わされ、医療国家保障とは逆に、値上がり二重苦に追い込まれてしまったのが本年度予算の実体でもあります。
 また経済成長合理化に伴う中老年令層の離職者、失業者の続出の現状からしても、これらの救済の道は、社会保障費の高度増額以外にはないのであります。このことは池田さん自身もよく承知していることであり、自民党の公約でもありますので、なぜあえて予算措置を怠って、そのまま特別会計、政府機関関係予算のみを提出をやったかということを私は遺憾に思うわけであります。
 政府は、また現に社会労働委員会、予算委員会などで、医療費の国庫負担や石炭鉱山保安対策費が当然一般会計予算に補正されねばならない実情を認めているのみか、その予算措置が急がれていることも十分承知していながら、あえてこの追加補正を見送ったことは、はなはだ遺憾と思うのであります。
 三月二十九日、社会労働委員会で、自民党の理事である永山議員が、池田内閣は社会保障最優先だと言って、何といっても社会医療保障を前進させるのだと看板を掲げておきながら、実際は後退してしまった、補正予算を組むなら、その中にこの保険費の不足分を割り込まねば内閣の面目がない、とまで言っておるが、まことにその通りであります。自民党、与党の社会労働委員会の理事からすら当然だと公言されている補正予算に、あえてそっぽを向いて取り組まなかった政府の態度は、私は無責任という以外の何ものでもないと思います。
 石炭鉱山保安費の予算化は、参議院予算委員会においても、今国会中に予算的措置をすべきであると決議されております。大蔵大臣もその予算委員会の席上において、予算的、資金的措置をするということを公約しているにもかかわらず、ただ最近になって予備費三億七千万円の支出をしておるのみでは、両院の決議に従う鉱山保安の完璧は期しがたいと私は思うのであります。今度は当然十分なる予算化をもって補正予算に臨むべきであったと思うのであります。これが全くなされていなかったということは、のど元過ぎれば熱さを忘れるとして簡単に許さるべきものでもないと私は思うのであります。むしろ政府は、鉱山保安の根本的な改変に取り組む意欲よりは、もっぱら大企業中心の産業振興しか考えていないものと判断されます。ここに至れば、われわれは池田内閣の本質を責める以外に道がないと思うのであります。
 以上が、わが党が本予算委員会に補正予算を要求し、強く自民党議員のいろいろ文句がある中に、動議を出して求めておる理由があるのであります。何とぞ各位の御賛成を求める次第でございます。以上動議の提出を終わります。(拍手)
○船田委員長 これにて本動議の趣旨弁明は終わりました。
 これより井手以誠君外十五名提出の昭和三十六年度一般会計予算の補正を求めるの動議を採決いたします。
 本動議の賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○船田委員長 起立少数。よって昭和三十六年度一般会計予算の補正を求めるの動議は否決されました。
    ―――――――――――――
○船田委員長 引き続き昭和三十六年度特別会計予算補正(特第1号)及び同政府関係機関予算(機第1号)について質疑を続行いたします。永井勝次郎君。
○永井委員 技術革新を背景に、所得倍増計画が発足したわけでありますが、早くも物価の値上がり、貿易国際収支の赤字、設備投資の行き過ぎ等の困難な問題に当面しております。言ってみれば、日本経済がこういった関係の発熱状態にあるわけであります。この熱が微熱で終わるのか、あるいはもっと悪質なものに発展するのか、われわれはその先行きをはかりかねておるわけであります。この場合、所得倍増専門医である池田総理からこれらの症状について御診断を願いたいと思うわけであります。
○池田(勇)国務大臣 いろいろ問題があるようでございますが、これは微熱であるか高熱であるか、こういう御質問でございます。私はもし熱とすれば、それは伸びていく知恵熱と申し上げたいと思います。
○永井委員 知恵熱といって、子供をだましている間はいいのでありますが、これは科学的根拠はないのでありまして、ちょうど物価白書で、物価の問題を言いくるめようとするような、そういった当面の経済問題に対する政府の対処に対しましては、われわれははなはだ不謹慎であると思うわけであります。
 そこで私は、物価の問題は、物価だけをつついてみても問題の解決にはならない、また国際収支の問題をその部分だけつついたって、これは問題の解決にはならぬ。やはりその熱の出る根源にメスを入れなければ、私は解決にはならぬと思うのであります。その熱の出る原因はどこにあるかといえば、設備投資の行き過ぎがいろんな方面にこういうような熱を出しておるわけでありますから、この問題の解決なくしては、私は当面の解決にならないと思うわけであります。これに対して、設備投資の評価について、総理の御判断をわずらわしたいと思います。
○池田(勇)国務大臣 設備投資は、経済成長に伴って、私は当然起きる問題だと思います。しからばその程度いかんということでございます。私は設備投資にはいろいろあると思いまするが、たとえば電力の問題、永井さんは今のままの設備でいいとお考えなんでございましょうか。私は電力は社会党さんの言っておられるように、十年で倍にしようというときには、この電力の設備はどうしてもまだまだやらなければならぬと思います。それから鉄鋼の設備投資、これも非常に行き過ぎだという説もございまするが、日本の製鉄業の稼働率というものは、どの程度に相なっておるのでございましょうか。私はアメリカの製鉄業の操業は非常に低い、五〇%以下である、最近は六〇%前後にいっているのではないかと思います。日本の製鉄業の操業率は大体一〇〇%をこえるといっていいくらいの状況であるのであります。しかしそれだからといって、私は鉄鋼業の設備投資を早急にふやせという意味ではございません。しかし長い目で見るならば、必要な設備投資は私はやらなければいけない。ことに日本の産業経済が直面している貿易・為替の自由化の問題を考えまするときにおいて、設備の近代化、合理化は私はぜひ早目にやっておかなければならぬ問題だと思うのであります。
 しからば全体について設備投資が行き過ぎでないかということになりますると、これは業種によってないとは申しません。ここでこの業種はどうこうということは差し控えまするが、何と申しまするか、自分の面子とかあるいは他の会社とのせり合いとか、いろいろなことで、ある程度ある業種につきましては行き過ぎの点もあると私は思う。こういうことにつきましては、私は産業界の人が十分に反省し、世界の情勢、国内の情勢を考えて、適当な処置に出られることを望んでおるのであります。
 私は日本の設備投資の状況が各国のそれに比べてかなりいっている。たとえば総生産の二割近く、国民所得の二割をこえるという状態のことは世界にはございません。たとえばイギリスやフランス、イタリアの設備投資のGNPに対する割合は七、八%でございまするが、日本は二〇%近くにいっているということは、われわれの経済の成長と今後の合理化、そうして日本の財政経済と国際収支の問題等々十分に考えて処置しなければならぬと思いまするが、お話しのように、一がいに行き過ぎだということを断定することは私は早計で、各業種によって十分検討しなければならぬ問題と思います。
○永井委員 池田総理は、電力の問題をさして、これで十分か、こう反問されたわけでありますが、私は今の電力の投資が少ないとは考えません。三十五年度が三千億、三十六年度が三千七百十二億、これほどの膨大な拡張をいたしましても、これで火力が三百五十五万キロワット、水力が八十二万キロワット。これだけ拡張いたしましても、そのほかのものがそれ以上に伸びておるので、三十八年以降の電力需用に対してなお不足を生ずるという実情にありますことは、総理から御指摘をいただかなくとも、われわれの方でも検討いたしておるわけであります。しかし鉄鋼関係で申しますと、所得倍増計画によると、最終年度が四千八百万トン、この目標に対しまして昭和四十年には四千七百万トンの生産という五年切り上がった形。こういうように総合的な均衡された一つの経済の発展ではなくして、跛行的に、あるいは刺激的に安定した形の発展がなされておらないところに私は問題があると思うのであります。でありますから、電力と鉄鋼とを比べる、あるいは自動車を比べるという形ではなくして、もっと総合的な立場に立ち、あるいは安定的な経済の発展という角度から、これらの問題を検討しなければ私はならぬと思うのであります。
 そこで私は総理に伺いたいのでありますが、現在の設備投資、三十六年度における設備投資の目標というものはどのくらいであって、このくらいだからこれは過剰ではないのだ、こういうふうにお考えになるのであるか、そこの基準を何を根拠に、何を基準に適当であるとか適当でないとか、こういうふうなお話をなされておるのであるか。その基準を明確にしていただきたい。
○池田(勇)国務大臣 設備投資は自由主義経済の立場、またわれわれの立場から申しまして、政府がこれをこれだけにしなければならぬということを積極的に言う建前になっておりません。新聞紙の報ずるところによりますと、昭和三十六年度は三兆五、六千億になるのではないかと言っておる。それから企画庁の当初の計画では三兆一千数百億と見込んでおったようでございます。ただいまのところ各業種、各会社別にいろいろ計画をしておるようでございますが、何分にもこれは金を伴うもので、増資の問題、借入金の問題、社債発行の問題等々がありますので、今政府でどのくらいになるという計算はなかなかむずかしいと思います。原則はやはり各業種ごとの各社の考え方によってきまるべき問題でございます。ただ国の産業行政の上からいって、各社の間でお互いに話し合う、また話し合ってもまとまらぬときには、行政官庁の方に民間の方から意見を求めてくる場合もございましょう。そういうふうな建前になっておりますので、政府がこれだけだ、これだけにしなければいかぬのだというところまではまだきていないと思います。
○永井委員 私は自由主義経済の論争をここでやろうとはいたしません。しかし自由主義経済には自由主義経済としての一つの立場がありましょうし、またその経済を進めていくにおいて効果があるのだ、それがよりよいものであるという、こういう実証がなければ私は議論にならぬと思うのであります。総理は自由主義経済だからこれだけのことをやるという責任はないのだとこうおっしゃられますが、自由主義経済はそれならば無責任なのか。政府は責任を負わないのか、自由放任にほったらかしなのか、この点はいかがでありますか。
○池田(勇)国務大臣 政府がどうこう言う筋合いのものではございません。政府は経済の見通しその他につきましては、政府としての考えをやりますが、個々の産業についての設備をどうしろこうしろということはやらないことに相なっております。
○永井委員 それならば、鉄道料金その他の公共料金を上げましたあとで、池田総理は当分の間公共料金の値段は上げない、とこういうことを表明せられました。これはただいまの御答弁と自由主義経済の立場からどういう関連にあるのでありますか。この関係を明確に一つお示しを願いたい。
○池田(勇)国務大臣 公共企業体あるいは政府の許認可を持っておるものにつきましては、政府の意思によってこれが支配されることは、自由主義経済のもとにおいても当然のことでございます。
○永井委員 それならば無責任ではないということであります。無責任ではないということであるならば、現在の動いておる一つの経済に対して、政府はどこまで責任を持つのか、その責任の限界をこの際はっきりしていただきませんと、私はこれから話を進めていく上に困ると思うのであります。政府の責任はどこまでなんだ、どこからは民間の全体の動きなんだ、だからそういう立場において池田にまかせろとこうお話になっておるのだ、池田にまかせろということは、どこからどこまでをまかせろとおっしゃるのか、そこのところを明らかにしていただきたい。
○池田(勇)国務大臣 政府の関与し得るところは法令できまっております。法令の範囲内でございます。
○永井委員 法令ということでありますが、経済は、私は法令の限りにおいて動いていくものではないと思います。西ドイツあたりも、これは自由主義経済をエアハルトはやっておるわけでありますが、総理もよく御存じだろうと思う。西ドイツにおける自由主義経済は決して自由放任ではない。しかし統制でもない。この二つのほかの第三のものである。しかし、そこには一つの基準がある。少なくとも財政と金融政策で大ワクをきめて通貨の安定をはかるということ、通貨の安定の責任を持つということが政府におけるところの責任なのだ、そうして自由な競争の中において自由の調節作用によって事柄が運ぶのだ、そういう経済の環境条件に責任を持つことが、これが自由主義経済のもとにおける政府の責任である、とこういうことを西ドイツは言っておるのであります。ところが池田総理は、自由主義経済だから責任は負わぬのだ、自由放任なのだ。そうして物価はどんどん上がって、巨大な財政支出はやる、通貨は膨張する、こういうふうに通貨の安定がなくて、価格の安定がなくて、そうして野放図な設備投資が行なわれて、そういう中で物価が上がり、あるいは国際収支が赤字になってくるという、こういう事態に対しましては、政府は自由主義経済だから知らぬのだ、法令のどこにそういうことの責任を負うということがあるのかというようなことは、私は言っておられないのではないか、こう思うのであります。通貨の安定、あるいは安定的な一つの発展、こういうものに対して、何といたしましても私は政府がやるべき一つの限界というものがある、責任を持つべき限界があると思う。重ねてお答えを願いたいと思う。
○池田(勇)国務大臣 一般的の行政の責任は政府にあることはもちろんでございます。しかし法治国でございまするから、問題々々によりましてやはりその基準その他が法令で定められておるのであります。その法令によりまして政府はでき得るだけの経済の安定的成長をやるべきでございます。通貨の安定の問題につきましても、これは財政の規模等も影響いたしましょうが、金利その他の問題も関係して参りますので、中央銀行、いわゆる日本の日本銀行がやっておる状況でございます。野放図にやっておるとか何とか言われますけれども、物価の安定、長い目の安定につきましては、先進国のそれと比べて日本ほど安定しておるところは少ないと私は考えておるのであります。
○永井委員 自由主義経済のもとにおける一つの調節作用は、自由な競争ということだろうと思う。従って、政府は独占の存在については、これは厳重に国民に対して私は責任を負わなければいけないと思うのでありますが、今日本のいろいろな経済の動きの中には価格に対する管理の状況がないかどうか、独占の事態がないかどうか。総理はどういうふうにこれを御判断なすっていられるか承りたい。
○池田(勇)国務大臣 独占禁止法の運用その他におきまして、適正な措置を講じております。詳しくは関係閣僚から答弁させます。
○永井委員 公正取引委員長が見えておりますから……。公正取引委員会では先般来石油の問題、鉄鋼の問題、その他について動いておるようであります。また最近のいろいろな価格の動きの中で、日本の独占の関係がどんな事態にあるか、これを一つかいつまんで、焦点をそこへしぼって答弁を願います。
○佐藤(基)政府委員 石油の問題につきましては、先般揮発油税増税に伴いましてある程度の減産を話し合ったのじゃないかという疑いがあったので、これを目下調査しておる次第であります。
 それから鉄鋼の問題につきましては、鉄鋼の不況対策として生産のワクということが考えられておるのでありますが、鉄鋼は御承知の通り基礎資材でありまして、わが国産業に影響するところが非常に大きい。そこで鉄鋼業の安定ということは国家的に見て非常に必要である、そういう見地から通産省と協議いたしまして、鉄鋼の著しい不況につきましては生産のワクを作って不況を防止する、また非常に高いときには増産を奨励して価格の安定をはかるということになっております。最近におきまして中型形鋼、厚、中板、線材等が相当値段が上がってきましたので、従来の不況対策としての生産ワクを撤廃してはどうかという意見を私どもの方から述べております。通産省におきましては生産ワクを増加しましたので、やや市中価格が下がっておる。たとえば中型形鋼は四月ごろは公販価格が四万一千円ないし三万九千円であった。ところが市中価格はそれよりも二万円も高かった。それが最近には一万円以上下がりました。そういう関係であるので、もはや不況とはいえない。生産ワクについて事務当局で相談させておりますので、委員会といたしましてはこの情勢をもう少し見守って、適当な措置が必要ならば講じようと思います。
 それから最後のお話の生産集中度の問題でありますが、これにつきましては昭和三十三年度の分はすでに調査を終わっておりますが、昭和三十四年度、三十五年度については目下調査中であります。私の方といたしましては生産集中することによって価格カルテルの疑いがあるとか、あるいは不公正取引の疑いがあるということになれば独禁法に照らして措置をとる、こういうふうに思っております。
○永井委員 通産大臣にお尋ねいたしますが、鉄鋼の価格は、――私は質問の順序といたしましては国際収支、設備投資、物価の問題ということで話を進めていこうと思ったのですが、少し横の方へ、設備投資からそれてしまったので、話が独禁のところへきましたからついでになにしますが、通産大臣にお尋ねいたしますのは、鉄鋼の価格は四つある。建値、販売価格、市中価格、公販価格、この四つがあるわけです。通産大臣は建値の問題をどういうふうにお考えになり、あるいは公販価格の問題をどういうふうにお考えになっておるか承りたいと思います。
○椎名国務大臣 建値の制度はこの公販価格制度というものによって置きかえられて参っておるのでありまして、公販価格は御承知の通り全体の生産の九割程度を占めており、約三、四十社の会社の間において行なわれておるのであります。それで先般鉄鋼価格が建築ブームに促されて相当値上がりをいたしましたが、公販価格においては少しも動揺しておらない。わずかに一割程度の公開販売制度に加入しておらない中小メーカーの製品が著しく高いのでありまして、それが鉄鋼値段を非常につり上げられておるような格好になっておりましたが、公開販売制度に加入しておる業者の品物は依然として動かなかったのであります。それでこれに対処いたしましてこの約三、四十社のいわゆる大メーカーに対して形鋼、線材、板等に関して増産の勧告をいたしました。たちまち値段が鎮静をいたしました。ただ従来の取引のまだ完了しておらないもの、あるいはまた高いものを買って二次、三次製品を作るというような方面がまだ尾を引いておるというような情況でありまして、ほとんど根底においては今日は非常に鎮静をしておる。私はこの公開販売制度というものはかなり有効に働くものであるということを考えております。
○永井委員 これは通産大臣は百も承知だろうと思うのですが、建値というのは旧一貫三社の先物契約による販売価格のことであります。これは三社が毎月一回指定問屋を集めて、そうして先物協議会を開いて二カ月先の販売予定量をきめるわけであります。そうしてその販売価格、建値価格というのはどうしてきめるかというと、原価プラス利潤、この限りにおいてはけっこうなんでありますが、その利潤の考え方は会社当局はどういうふうに考えておるかといえば、蓄積を基礎として形成される、会社の資本蓄積を基準にして利潤を算出する、こういうことをいろいろな公開の場所で会社の重役が言っておるのであります。でありますから、これは十年先のやつを五年繰り上げてどんどんやっても、こういった形で建値によって価格はもう長期にわたって安定しておる。卸売価格が上がらないといったって、もう朝鮮事変のときにべらぼうに上がってもうけ過ぎるほど上がったのでありますから、それが下がらないということが不思議なんです。その幅の中でぬくぬくと非常な利潤をかせいでいるわけでありますから、私は下がらないのがおかしいので、下げないのがやはりこれも自由主義経済でほったらかしか知りませんけれども、これはもう政府の責任だ、こう思うわけです。こういう形において建値というものが、これは独占価格が実行されておるわけです。そうしてそのほかに販売価格、市中価格というものがありますが、そこから出た建値を中心にして手数料とか何とかいくのでありますが、ただ小さなメーカーが動いてそして大メーカーが支配できない分野、それを一定のワクの中においてやはり管理された価格の中でこれを縛りつけるために考えられたのが公販価格であります。中小メーカーをみんな集めて、そうして競争品目をきめて、そうしてそこで実際の価格カルテルをやっているわけです。でありますから建値は旧メーカー二社の独占価格。公販制度による価格というのは、中小メーカーもその中に含めたそうしてこの大メーカーが支配した一つのカルテル、こういう形においてこれらの価格が支配されているのでありますから、私は自由競争も何もあったものじゃないと思うのです。もし自由主義経済ということで、真正面から池田内閣が所得倍増計画を推進していく一つの背骨と考えますならば、このような管理された価格、独占の価格をそのまま放任しておいて、これは鉄鋼ばかりじゃありません。独占の関係の問題はまだたくさんありますけれども、時間がありませんから私は例を引きませんが、こういった形において独占価格というものを放任しておいて、自由競争による自然調整というものが行なわれない形において、どうして自由主義経済が正しい、国民に公約する一つの経済効果というものが期待できるか。私は政府は責任を感じてもらわなければいけない、こう思います。この点について通産大臣と公取がどのようにこれを評価されているか、私は簡単でいいから承りたいと思います。
○椎名国務大臣 先ほど申し上げましたが、初めは鉄鋼三社がそれぞれ個別に通産省に届け出て、そして建値なるものを実行して参ったのでありますが、それだけでは今日の鉄鋼界の実勢にそぐわない。そこで数十社公開販売制度というものに加入しまして、そしてその建値にかわる――もちろん品種の限定はございますけれども、実行をしておるのであります。今回の建築ブームに際しての値段はきわめて安定的である、そしてわずかにこれに加入しておらない業者の製品がべらぼうに上がった、世間はその問題をとらえて騒いだ、こういうのでありまして、この間に処してこの制度が経済の安定成長にきわめて大きな貢献をしておると私は考えております。なお今の公開販売制度というものの値段がそんなに、べらぼうに高い独占価格であるというようなふうに今お述べになったように私は拝聴いたしましたが、広く世界の先進国の鉄鋼の国内価格と比較いたしますると、日本の鉄鋼価格はむしろきわめて安定的であり、そして低い。少なくともこれらの諸国の製品、国内価格に比べて高くはない、こういう状況でございますから、いわゆる独占の弊というようなことを、決して私はこの間に認めることはできないのではないか、かように考えております。
○佐藤(基)政府委員 ただいまお述べになりましたお話の独占価格の問題でありますが、独占禁止法は御承知の通り事業者の公正、自由な活動を基礎にいたしまして、経済の発展をはかり、消費者の利益を守るということになっておるのであります。そこで、私的独占であるとかあるいは事業者の共同行為というようなことによりまして、価格の維持をはかるとかあるいは引き上げるということになれば、これは独占禁止法の問題になるのでありますが、それ以外の場合におきましては、独占禁止法の問題にならぬのであります。
 なお鉄鋼につきましては、先ほどもちょっと触れましたように、鉄鋼がきわめて経済的に国家的に重要な産業である。そこでその安定をはからなければいかぬ。その関係におきまして、通産省が行政指導を自由経済を害しない程度においてやるということについては、われわれ了解をしておる。従って非常な不況な場合にてこ入れをするということは差しつかえない、こういうふうに思っております。
○永井委員 まあ公取が骨抜きになって、何が何だか、形式的な、脱法行為をそのままほおかぶりしておるような形では、私は自由競争も何も行なわれる条件はないと思うのですが、時間がありませんから先に進みます。
 ただ通産大臣は、こういったものは独占価格でなくて、国際価格であって、そうぼろもうけはしていない、こういうお話でありましたから私はお聞きをいたします。昭和三十四年度における法人の純所得は、先般の予算委員会でも申したのでありますが、資本金一億円以下の全会社、四十三万六千五百五十一の会社の純所得が三千三百五億です。一億以上の会社千七百五、との会社の純利益が四千三百九十七億です。一億以上の千七百の会社の純利益に、日本の全部の法人が寄ってたかって、そうして全部利益を上げている。そうしてなおかつこれは足らないのです。この三十四年度の純利益にわれわれは驚いていたのでありますが、さらに三十五年度の純益表をきょう政府の方から資料としていただきました。これによりますと、資本金一億円以上の会社の純利益が五千七百五十七億です。どうですか。昨年に比べて一千三百億以上の純利益の増を来たしておるのですよ。野菜が上がった、あるいは豚肉が上がった、豚が食えないのでモツを食うとか、一般の庶民は今ほんとうに物価の値上がりの中で苦しい生活をしておるのです。そうして一方では所得倍増で、大企業にはどんどん資本が集中されて設備拡大をやっておる。その中で、消費ブームだといって大いに太鼓をたたかれて、チンドン屋のようにあふって、さあレジャー・ブームだといって、さあ時間をうまく使えというわけで、どんどん使わされる。そうして使わされた結果として、その金がこのような一億以上の大資本の会社の純益が、昨年に比べて一千二百億以上の純増を来たしているというような、こういう経済政策なんですよ。これが自由主義経済ですか、公正な経済運営でありますかどうか、私は池田総理にこのことを伺いたいと思います。
○池田(勇)国務大臣 一億以上の会社と申しましても、一億、一億五千万円もありますし、また五百億をこえる会社の資本金があるのでございます。一がいには申されません。しかし私は経済の好況は、何も一億以上の会社にのみいっているとも考えていないのであります。
○永井委員 一億以上の会社は、数が多いわけではありません。一千幾らです。その会社の利益の純増が一千三百億、そこに集中された、この一年間にそれだけふえた。こういうことは、これは所得倍増計画の、会社側からいえばこれは御利益でありましょう。こういう御利益は、均衡ある経済の発展の姿であるとお考えでありますかどうかということを、総理に伺っておるわけであります。
○池田(勇)国務大臣 大資本の会社も中小の方も、私はどんどん伸びていっておると考えております。ただ高度の成長の場合におきましては、えてして大資本の方に行きますので、それを中小の方にも行くようにいろいろ施策を講じようといたしておるのでございます。
○永井委員 どのような施策を具体的に行なっておられますか。
○池田(勇)国務大臣 まあ一番問題になるのは租税関係でございまするが、今回におきましては、中小企業の償却の問題も含めて、日ごろよりもよほどよく考えておると思っております。また政府関係資金におきましても、大企業よりも中小企業の方に多目に出すようにいたしておるのであります。
○永井委員 それだけによっていろいろな経済の地ならしができると、それほどにも池田総理はお考えになっておらないだろう、こう思うのですが、答弁であるとか、あるいは口の先でどうこうということではなくて、こういう現われた数字を、常に池田総理は数字数字ということをおっしゃるわけでありますから、この現われた数字をどう読むかということが、やはり私は政治家としてのモラルの問題だと思います。どうか、この場合の答弁はとにかくといたしまして、このような方向に所得倍増計画というものが動いていて、その実がこのようにここに収獲されつつあるのだ。その反面、国民大衆がこの物価値上がりなり何なりによってへとへとに栄養失調になりつつあるのだということの現実は、やはり正しく見て、次の施策の上に保守党の政治家として、私は良心ある施策を立てていただきたいことを希望しておくわけであります。
 そこで国際収支に入るわけでありますが、通産大臣に伺います。ただいま池田総理は、設備投資は過剰ではないのだ、このまま進めるのだ、多々ますます弁ずるのだというように私は理解されたわけであります。そういうことに……
○池田(勇)国務大臣 違います。違います。
○永井委員 それではどういう意味だったか、あらためて伺いましょう。
○池田(勇)国務大臣 私は多々ますます弁ずるとは決して申しておりません。業種によりまして相当設備を拡張しなければならぬ。また貿易自由化を前提といたしまして、合理化、近代化に対処するために設備の増強ということを考えねばならぬ。しかしまたどの産業とはここでは申しませんが、いろいろ行き過ぎの点もあるように見受けられます。そういうものにつきましては、世界の情勢、日本の現状を考えて、自粛してもらわねばならぬところもある。こう言っておるので、多々ますます弁ず、そうおとりになりますと、私は大へん迷惑でございますから申し上げます。
○永井委員 その点は了解しましたが、今の答弁でもおわかりのように、設備投資については非常にゆるやかなお考えを持っておられるようであります。そういたしますと三十六年度における、これは経企大臣でありますか、三十六年度の国際収支の見通し、その見通しと、その見通しの上に立って、この年度は四月だけでありますけれども、この一月以降の輸出輸入の足取りから本年度の国際収支というものを展望して、どういうふうにお考えになっておられるか、これを伺いたいと思います。
○迫水国務大臣 昨年の十二月に立てました見通しでは、昭和三十六年度経常収支ほぼとんとん、資本の収支の方において約二億ドルの黒が出るという予想を発表いたしましたが、その後一月以降における足取りが私どもの十二月に立てました予想とはやや狂いまして、経常収支の赤字がよけい出る傾向になりました。現在のところ政府が正式に立てておりまする見通しでは、先般の外貨予算の際における昭和三十六年度の上期における貿易収支、それにおいて約九千万ドルの赤字が出る、こういう予想を立てております。しこうして年間さらにどうなるかということにつきましては、これはもう少し様子を見てみなければわからないのでありまして、ただいま大体このくらいな赤になるであろうとか、あるいは黒になるであろうとかということは、ちょっとまだ申し上げる時期ではないと思っております。
○永井委員 国際収支の見通しということは、これは日本経済に大きな影響があるわけでありますから、年度の当初にあたりましても、予算の提出にあたりましては、その見通し等をお示しになることだと思うのであります。すでに年度当初において大きな変化があると御理解になりますならば、それに対する修正が行なわれなければならないと思うのです。修正のお考えがありますか。修正はいつどのような時期においてこれをお示しになりますか。
○迫水国務大臣 ただいま御答弁申し上げました通り、十二月の見通しは年度を通しまして経常収支ほぼとんとんという見通しを立てました。しかし一月からの以降の足取り等にかんがみまして、外貨予算の際には上半期において九千万ドルの経常収支の赤が出るという一応の予想を立てたのでありまするが、そのさらに先において一年間全体でどうなるか、すなわち昨年十二月の見通しをここで変更するかどうかということにつきましては、とにかく始まってまだ二カ月たたないのでありますから、ここでそれを修正する必要はないと私は考えております。ただとんとんになるか、もう少し赤字が出るかというようなことについては、まあ赤字が出そうだなという感じは持っております。
○永井委員 ただ、大臣の答弁は赤字なり何なりの量の問題をお話しになりましたが、私は基調として変わってきているのじゃないか、基調が変わったのではないか、こう思うわけでありますが、この点はいかがでありますか。
○迫水国務大臣 よくその貿易の基調が変わった、基調という言葉はよく方々でも使うのですけれども、私は必ずしもそれをどういう意味で言うのかということが理解できません。言葉を変えて言うならば、日本の国際的な競争力が非常に弱くなる、そういうようなことでもって日本の貿易が全く情勢を変化したと、こういうのが基調の変化というもし意味でありますならば、それは全然基調は変化してないと考えております。
○永井委員 基調という用語の理解の仕方もいろいろありましょうが、われわれといたしましては政府がとにかく基調は変わっていないという答弁をしばしばしておりますし、見通しにおいてもそういうことを言っている。それは輸入はこれこれで、輸出はこれこれでと、こういう数字をあげておるわけであります。その数字が質的に変わってくる、長期にわたって輸入がふえていく、長期にわたって輸出が伸びない、こういう態勢でありますと、今われわれに示された政府の国際収支の見通しというものは質的に変わってきている。それを基調の変化、基調が変わったのではないか、こういう意味にわれわれは理解をし、そういう意味において発言をしておるわけであります。そこでそういう意味における基調の変化というものはないかどうか、伺います。
○迫水国務大臣 そういう意味における基調の変化はないと考えております。
○永井委員 それならば、輸入における見通しを伺います。一月からこちらのいろいろなこの変わり方は、これは特殊なものであって、臨時的なものであって、年間を通じたら輸入輸出の関係は変わらないというならば、その数字的基礎を示していただきたい。
○椎名国務大臣 貿易の玄関口を受け持っておりますから私から申し上げます。
 輸入がなぜふえたか、一月から三月まで経常収支で二億三千万円ほどふえております。総合収支では資本取引がございましたので黒になっていることは御承知の通りであります。四月−六月もすでに半分ほど経過しておりますが、これも経常収支において大蔵大臣がこの予算委員会において一億余の赤字ということを言われたようでありますが、われわれもせいぜいその程度ではないか、こう考えておるのであります。
 そこでその原因でございますが、輸入が意外に多かった。そして輸出が一〇%ぐらい伸びる予想でございましたが、その半分程度であるわけでございます。輸入の内容を見ますと、綿花、羊毛、鉄くず、こういったようなものがふえておるのでございますが、これは季節的な要因である。特に在庫量が少し減っておりますので、それを補てんするための輸入がこの三つの品種において相当に活発に行なわれたというのが大きな原因であります。それからそのほかには、生産活動が御承知の通り非常に活発でございますから、これに伴って一般の原材料の輸入もふえておる。それから最後に、貿易自由化を控えて、設備の合理化のための輸入も相当に見られておる。この三つが原因でありますが、第一の季節的要因である原材料の在庫補てんということが大きな原因である。これはしかし七月以降は大体在庫補てんも底をつきますから、七月以降においては生産活動に要する原材料の輸入並びに合理化輸入、この二つの要因が引き続いて働くでございましょうが、そうなりますと、よほど輸入の上昇率が鈍化して参るということをわれわれは予想しておるのであります。
 それから輸出でありますが、最近四月、五月と五%ぐらいの増加でありまして、予想よりも半分ということになっております。これはアメリカの市場の不振というのが非常にきいておる。前年同期に比較いたしまして八〇%ぐらいの輸出でございまして、その他の方面は後進国における機械輸出は相当伸びておる。それから軽機械その他の雑貨、繊維等、欧州向けの輸出も伸びておる、こういうことでございまして、アメリカの経済の回復もそろそろそのきざしが見えて参りますので、これは輸入が減退し、輸出はむしろ今後においてだんだん伸びて参るのではないか。もちろん輸出の促進につきましては、われわれといたしましてもあらゆる努力を払いたい、こう考えますから、今経済企画庁長官が言われたように、本質的に変わっておるというようなことではないのでありまして、もう少し推移を見なければならぬのでありますが、われわれはそう悲観をしておらない、こういうふうに考えております。
○永井委員 そういたしますと、輸入は年間を通してふえるのですか減るのですか。ふえるとすればどのぐらいふえる、減るとすればどのぐらいになるのか、予想通りとんとんなのか、そこのところの見通しをはっきりさしていただきたい。
○椎名国務大臣 結局輸出は一〇%くらいいけるのじゃないか、それから輸入の問題でありますが、これはただいまの状況よりもだいぶ鈍化して参る、こういうことで経常収支においてはとんとんという計画でございましたが、あるいは一億くらいは引っ込むのじゃないか、こういう予想であります。
○永井委員 季節的要因だとか、あるいは在庫補充の条件だとか、いろいろございましょう。また通産大臣の今の答弁から伺いますと、上期は輸入なんだ、下期は輸出に回るのだ、こういったパターンの考え方で、ただ型通り答弁をしておる。それならば輸入が減っていくのだという数字的根拠を私は示してもらいたい。国内においてずっと設備投資を締めて需要を押えていくというような、そういう経済作用が行なわれれば別でありますけれども、四兆に近い設備投資が進んでいく場合に、国内における生産が――どのような形で設備投資に回ったものが動いていくにいたしましても、私は国内の生産でこれはまかなえるものではないと思う。輸出の面において少なくも毎月基調的に二割以上の輸入増が予想されるのではないか、場合によってはもっといくのではないか、こう思うのであります。本年の四月における輸入が前年同期に比べて六割に近い大幅な伸びを見せておるのでありますが、これはどういうふうに理解されておりますか、伺います。
○椎名国務大臣 今申し上げたように綿花、羊毛、鉄くずといったような在庫補てんが非常に活発に行なわれておる。こういうのがこの一月以来輸入が上昇しておる大きな原因である。合理化の投資、これは主として機械等でありますが、年間を通じて一億五千万ドルくらいの程度のものだろうと思います。それから一般の生産活動に要する原材料、これもそう大きなものではないのでありますから、この季節的要因が終息すれば鈍化して参る。その数字的根拠と、こうおっしゃられますけれども、これは数字的に二一天作の五で出るものじゃありません。そういう状況でありますから、私どもは日本の貿易の構造、本質が変わっておるなどとは思いません。
○永井委員 綿花にしても、羊毛にしても、鉄くずにしても、今のところは輸入しておるでしょう。輸入がふえておりましょう。季節的にそういうものがふえ、在庫補充が進んでいくことは私わかります。わかるが、一たんとまってそれが動いてきたときに、それが輸入にどれだけ結びついていくのか、あるいは国内消費にどれだけ回るのか、ここが問題であります。その点はどういうふうに考えておりますか。ただ輸入が鈍化する鈍化するといって、何だか鈍いような話ばかり答弁でありますけれども、二一天作の五まではじかなくてもいいから、およそのところでもっとはっきりした見通しを伺います。
○椎名国務大臣 設備投資も輸入を助長する一つの原因でありますが、三十六年度の設備投資は一体どういうことになっておるかということを、対前年あるいは前々年に比較して申し上げてみますが、三十四年度は前年度に比較いたしまして、設備投資の上昇率が三二%であります。それから三十五年度は三十四年度に比較して三八%、三十六年度は、これはやってみなければわかりませんけれども、われわれのかたい推定では二〇%、そういうわけで、最近設備投資、設備投資と騒がれておりますけれども、大体において騰勢が鈍ってきておるのであります。その関係で、今の季節的要因のほかに輸入を激減するという働きは考えられない、こういうふうに考えております。
○迫水国務大臣 永井さんのお述べになりました数字で、私ども持っております数字とちょっと違う点は、四月の輸入が昨年に比べて六割もふえておるというお話でございますが、私どもの手元にあります数字は、為替ベースはまだわかっておりませんが、通関のベースでは十二%の対前年同期、昨年の四月に比べまして二三%の増加でございまして、六〇%ということではございません。
 なお、ちょっと御参考に申し上げますが、三十五会計年度、三十五年度の第四・四半期の輸入通関を見てみますというと、対前期、つまり第三・四半期に比較いたしますと、繊維原料が四六・三%増加しましたことを主因として、全体では二八%の増です。同時にまた対前年同期、すなわち前年の第四・四半期に比べてみますというと、その他の食糧、これはおもに飼料でございますが、これが五六・五%、機械類が三一・五%、その他製品が二九・七%それぞれ増加したことを主たる要因といたしまして、全体で一五%の増でございます。従いましてこの数字から見ましても、基調的に非常に大きな変化があって、この輸入が将来ずっといつまでも続いていくという傾向にはないと一応判断をいたしておる次第でございます。
○永井委員 通産大臣の御判断も経済企画庁長官の話も、これはとにかく三十六年度の見通しを立てたのが、もうその足元から狂っておる。先般の予算審議の国会において、その見通しの上に立っていろいろお述べになったことが、この年度に入ってもうくずれてしまっておる。こういうふうに一度だまされたり、一度立てた見通しというものが、こんなに根拠のない空虚な一つの基礎で、ただ作文しているのだという、こういう前歴がありますと、どのようにおっしゃってもわれわれはもう信用ならぬのです。従ってもっと輸入がふえるという要因は、何といたしましても、皆さんが設備投資が三兆一千億内外だろうと言ったのが三兆六千億も七千億もある。実際は四兆にも伸びるだろう。そしてこれをどのように規制するかという規制の作用が効果を上げればとにかくとして、総理大臣がおっしゃっているような形においてこれが進むといたしますならば、いやでもおうでも輸入の増が刺激されてくることは、これは私が言わなくても議論の余地がないことだと思う。これだけ国内の需要が激増しているのにもかかわらず、これが減っていくのだというような逆の見通しというものは、これは私は常識があればだれも信用はしないと思う。政治家は責任を負わなければいけないのでありますが、三十六年度の輸入見通しは、季節的な要因が終われば減っていくのだ、こういうことが責任を持ってここで答弁できますかどうか。できるならはっきりとこれは責任を持ってそのことをお示しいただきたいと思います。
○迫水国務大臣 私どもの立てました見通しが年度早々狂っているじゃないか。いかにも現在のところの状況はそういう状況でありますけれども、年度全体たって見なければはっきりした答えは出ないと思っているのです。輸入が減るという言葉の意味でございますけれども、今のような高い国際収支の赤字は出てこないという意味に私は理解をしているので、輸入の分量が今よりがたんと減るとは私は思いません。それはただいまおっしゃいました通り、国内の生産活動が非常に、予想以上に高い状態にありますので、当然原材料の輸入等は予想したよりも高い状態にいくでしょうけれども、現在の赤字幅が多く出ておりますのは、輸出が私どもの予想いたしましたよりも伸びてないというところに大きな理由がありまして、それはアメリカの経済の問題もずいぶん影響しておりますので、そういうことから見合わせて、下半期における輸出の増進ということに非常に大きな期待を私たちは持っております。従って赤字幅というものは、今のような赤字幅は継続しないだろう、こういうふうに考えているのでありまして、輸入の分量そのものがある一定の時期からがたんと減る――季節的なパターンの形もありますから減ることは減りましょうが、がたんと減るということを申しておるのではありません。
○永井委員 私は輸入はふえると思います。月にならして少なくも二割の増加はあるのではないかと観測いたします。問題は今長官の言われたように輸出であります。相当に輸出の伸びを予定しているようでありますが、この輸出の伸びの基礎はどこにあるのか、お示しを願います。
○迫水国務大臣 現在輸出が予想に比して赤が――赤と申しますか、予想に達していない一つの大きな要因というのは、対米輸出でございます。私たちは、対米輸出は逐次その兆候を現われております通り、下期においては伸びてくる、こういうふうに考えますので、輸出が今の段階をずっと通っていくとは思いません。
○永井委員 アメリカの景気が二月に底入れになって上向いてきた、日本の三十六年度輸出の運命は対米貿易にかかっておる、こう言っても過言ではない。アメリカ一辺倒で三十六年度の見通しを立てておるということは、これは非常に冒険ではないかと思います。御承知のようにアメリカ景気は、五八年のV型のようなものではなくて、ゆるやかにやってきてゆるやかに回復していくだろう。経済の実勢から言ったって、ぐっと景気が反映して日本にはね返ってくるような期待はできない。さらにアメリカはドル防衛であり、日本とアメリカとの貿易関係においたってこれはなかなか容易ではないと思う。ことに従来あったようなトランジスターであるとか、ゴムぞうりであるとか、あるいはカメラであるとかというような花形商品は今ないわけでありますから、大きな期待をアメリカ市場にかけるということは非常に危険だと思う。それならばアメリカ以外の地域においてどのような期待を持てるのか、そこがアメリカが狂ったらもうそれでお手上げだ、こういうような冒険な計画を立てておるのか、あるいはアメリカが狂ってもこちらの方でこういう補いをするからというような、そういう見通しがあるのかどうか、私は伺いたいと思うのです。
○椎名国務大臣 この対米輸出も一つの大きな要因でございまして、最近のアメリカの赤字の状況は非常に減っておるというような通信も見えておりまして、大体ことしの三月が底で漸次景気が上昇する、特に七月以降においては立ち直るというふうにすべての方面でいわれておる。しかしわれわれは輸出市場をアメリカだけに期待しておるのではないのでありまして、プラント輸出等につきましては、依然として後進国の需要が相当活発でございます。これは相当伸びると思います。これにはもちろんいろいろな輸出努力が必要でございます。なかんずく支払い条件のさらに大幅な緩和というようなこともぜひわれわれとしては考えてみたいと思っておるのでありますが、それのあるなしにかかわらず、とにかく後進国向けのプラント輸出は相当に伸びるものと予想しております。それからその次は欧州向けでございますが、これは軽機械、雑貨、繊維、こういうものも現に活発になってきておりますから、本年度においては相当前年度に比較して伸びるものと考えておる、こういうことでございます。
○永井委員 池田総理に伺いたいと思いますが、池田総理は国内消費に力を入れて、あまり輸出の方に力を入れなのではないかというのが一般の感触であります。アメリカのケネディ大統領は本年の二月六日に教書を出しまして、アメリカは五八年から六〇年まで三年間に百十一億ドルの赤字を出した。金は五〇年に二百二十八億ドルあったものが、六〇年には百七十八億ドルよりなくなった。従って貿易を通してこれを回復しなければならぬ。そのためには政府は先頭に立って指導をする、輸出入銀行はどうすればよいか、金融、保険の関係においてよく調べろ、経済外交を強力にやる、経済外交官を四十数名海外に派遣する、そのもとで働く者を四十八名直ちに増員する、トレード・センターをロンドン、マニラ等に作る、貿易ミッションをふやす、平和部隊を作る、こういうふうに非常に具体的に、即刻それぞれの手を打って、貿易振興にあのアメリカがこれだけの努力を払っておるのであります。日本が今国際収支の帳じりが赤字だ、輸入は減る減ると言っておるけれども、私は事実は減らないと思う。問題は輸出をどう伸ばすかということが国際収支の運命のかかっておるところだろう、こう思うのであります。そういうようなときに池田総理が所得倍増計画の成否を決するのも貿易の関係だろうと思う。このときに私はやはり池田総理大臣の感触というものが熱意がなさ過ぎるじゃないか、熱意があるならばあなたの運命をかけるこの所得倍増計画の成るも成らないも貿易にあると思う。輸出にあると思う。この問題に対して本年はどのような具体的な政策を持ってお臨みになるのか、総理大臣から伺いたいと思う。
○池田(勇)国務大臣 どうも私の不徳のいたすところか、ちょうど設備投資の問題につきましても、永井さんは初めの多々ますます弁ずるというふうにおとりになるのであります。しかし実際私の真意を繰り返して申し上げますと大体了解を得ておる。私は一国の経済を立てる上におきまして、しかも原材料あるいは食糧まで相当の部分を外国から入れておる過去の実績からいって、日本の経済の発展のために輸出が必要であるということは、これは何人も否定できない。これはよその国よりもっと日本が必要であることは当然なことでございますから、私はこれも大前提として考える。ただ問題は、輸出オンリーでは経済の発展はできません。これは総生産の、イギリスにしてもドイツにしても一割五分くらい、日本も一割一分くらい、フランス、イタリアは一割足らず、大部分は国内消費というものが経済の進歩を促すということを一つ思って下さいということを言っておるのであって、決して輸出をないがしろにしろということはございません。前提はもう輸出振興が当然のことであります。ことにわが国においてはそうでございます。それを私が言いますと、輸出は何でもないんだ、国内消費が第一だ、こういうことにえてしてとられるのですが、これは私の不徳のいたすところか、あるいは皆さんの十分お考えにならないところか、私はどうも心外に思うのでございます。輸出振興につきましては、従来からいろいろ手を打っております。私は見本市その他の点から申しまして、昨年ソ連で見本市をやったことが、日ソの貿易に非常に拡大要因をなした。従来一年おきにやっておりました見本船の海外派遣、こういうことも今後は日本で見本船を別に作って中南米、ことに日本の品物を非常に要求しておるアフリカ、東南アジアはもちろんでございます。こういうようなことを企てるべしというので、輸出見本市の特別の船を作ろう、あるいは輸出振興につきましてできるだけのことをやっております。
 ことに経済外交、経済外交と申しましても、なかなかうまくいっていないのでございます。やはり輸出を振興をするためには通商航海条約というものを結ばなければいかぬというので、この通商条約の締結にも、もう二度、私が総理になりまして、パキスタン大統領あるいはイラン大統領が来ると、すぐつかまえて、通商条約を結ぼう、こういうので、おる間に調印するという格好で、あらゆる手で輸出に対しまして、またわが国の人的、物的の海外進出に対しましても努力いたしておるのであります。輸出の振興ということはもう言わずもがなでございますが、そういう誤解がありますので、今各閣僚に対しまして、輸出の振興については新しい措置、今までの措置に対して新しい思い切った拡充をするようにと言って、輸出振興を考えておる次第でございます。
 ただ今までの質疑応答をずっと聞きまして、私はもっとやはり国際収支を長い目で見てもらわなければいかぬ。原材料が国内消費にのみ向けられておるか、また原材料の在庫がどういうふうな状況になっておるかということを長い目で見ていかなければ、心配しなくてもいいものを取り越し苦労する場合もあります。またあまりにこのことをやりおると、心配しなければならぬときに心配せぬようなことも起こる。私は常にそういうことにつきましては十分の注意をして――すぐ池田は楽観だと言っておりますが、こういう方面につきまして、私は日本人のうちだれよりも一番気をつけてやっておる次第でございます。おまかせ下さいというのではございませんが、十分検討してだれにも負けないような勉強を続けてやっておるということを御了承願いたい。
○永井委員 池田総理はただいまそのような誤解のあることは池田総理の不徳のいたすところだという御謙遜でありましたが、私はそういう御謙遜は要らないと思うのです。それは不徳のいたすところではなくて、総理、予算の関係なんですよ。こんな予算で輸出振興をするといったってできるか。だから、予算に現われたそれだけの数字において池田総理の輸出の振興の度合いというものをはかっておるから、熱意はないんだ、こう言っておる。輸出入銀行九百七十億で十分ですか。
○池田(勇)国務大臣 輸出入銀行につきましては、一応の見通しでつけておるのでございます。これは予算には十分ということはございません。やはり情勢を見ながらその額並びに――輸出入銀行ばかりではございません。輸出入銀行は一般の民間銀行とタイアップしていっておるわけでございます。金融情勢その他を見てやっていかなければならぬと思っておるのでございます。十分でなくて足りないようなときにはまた適当の処置が講じられると思います。
○永井委員 この輸出入銀行は、例年の例で申しますと、もう十二月に行くと予算がなくなってしまって手を上げておるのです。本年だって、もうすでにソ連だけでも百数十億円というものが、予想以外の関係で数字として出てきておる。さらにインドに対して八千万ドルの借款ができておる。そういたしますと、もうこの輸出入銀行における一つの予算ワクというものはほんとうに限られたものです。だからこれだけの予算で何ができるのか。そしてこの貸し出しについても、金利の関係や何かで、これはもう輸出入銀行の資金ワクがこう小さくなったから金利を上げるという話がある。これは新聞にも出ておりますし、一部にも出ているわけですが、そういうようなところから、池田総理は輸出振興に熱意がないんだ、こう言っているわけなんです。何も人間的な不徳とかなんとかでなくて、これはもう金で解決できることで、名誉回復ができるわけですから、もっと追加予算をするならするということをこの機会にお示しになった方が、これはもう不徳のいたすところと謙遜する必要はないと思うのです。でありますから、金利はどうするのか、それから金利はもっと引き下げるのか、ワクは少なくも総理の大よその目安では、ことしはどのくらいふんばってやって、伸ばすにはどのくらいの裏づけが要るのだというような点についてお考えがあったら、この際一つ輸出の振興のために、この議場から一声かけることは大きな刺激になる、こう思うわけです。
○池田(勇)国務大臣 輸出入銀行のワクについて言っておられますが、昨年は足りませんでした。しかし三、四年前、ずっと過去の歴史をごらん下さいますと、あなたのおっしゃる通りにはいっていないと思います。輸出入銀行の分が繰り越しという場合もたびたびあったのでございます。昨年は足りませんでした。それは問題は、輸出入銀行は主としてプラント輸出でございますが、もちろんプラント輸出も奨励しなければならぬことは当然でございます。しかし輸出入銀行のあれだけできまるわけじゃございません。私は先ほど申しました見本市その他の雑貨等々におきまして実際力を入れていきたい。どういうものの輸出が一番いいかといったら、私は中小企業あるいはほんとうに輸出としては手のかかったものの分が一番いいプラント輸出を否定するわけじゃございません。そうすると総理はプラント輸出はどうでもいいと言われる。そういう意味じゃございません。九百七十億円なら大体例年に比べまして相当伸びていくと私は思います。
 誤解があってはいけませんが、インドに対しての八千万ドル、これは今度の予算を組むときに話がなかったのでございます。こういう問題につきましては、これはまた今後国際的にきまる問題でございますが、別途の措置をとらなければならぬ。ソ連の百億円程度の分もこれは影響しましょうが、私は輸出入銀行は九百億円もあれば大体まかなっていけるのじゃないか。しかしまかなえぬときには、そのときを見なければ言えないので、九百億円じゃ足らぬぞ、だからどれだけふやすかというのではいけません。やはり堅実に見積もってやらなければいけない。
 それから金利の問題でございますが、御承知の通り四分を原則といたしております。それで輸出入銀行の負担する分が七割で、ほかが三割でございます。これは六割、四割の場合もありますし、八割、二割の場合もございます。これは金融の情勢等を見て考えなければならぬし、また輸出する品目によって随時変えて参っておるのでございますが、何分にも輸出入銀行の四分の金利というものは、国内の金利から比べても、また世界の金利水準から比べても、アメリカのEXIMのあれから見ましても、少し安過ぎるのじゃないかということは、以前から議論があったのでございます。そこで大蔵省としてはこれを引き上げたいという意向のようでございます。私は通産大臣のときには極力反対して参りましたが、どうも情勢では大蔵省の考え方が今ではいいんじゃないかと思っておりますが、その後の大蔵省の考え方を最近聞いておりませんが、傾向としては、国際的に考え、国内的に考えて、ある程度上げるのはやむを得ぬのじゃないか。これを直ちに輸出振興を阻害すると業者は言うかもわかりませんが、しかしこれは長い目で見れば合理的な措置をとることが私は必要であろうと思います。具体的な問題につきましては大蔵大臣からお答えします。
○永井委員 金利については、これは私の調べが不十分であったらお教えをいただきたいわけでありますが、ドイツあたりは非常に安い金利で貸す。従ってプラント輸出その他において、七年が十年になる、あるいは十五年になる。長期になればなるほど商社は金利の上において有利な条件だ。それだけの幅を商社がかせげるようになっている。だから安心して長期にわたってプラント輸出ができる。日本のやつは四%でありましても、これは銀行その他から出てくる短期、長期で金利の面においていろいろ違うわけでありますが、これがやはり追っかけてくるから、長期にわたってこのドイツのような競争ができないというのが商社の声である。ドイツは長くなれば長くなるほど政府の金を安い金利で借りて商社としての利幅をかせげるから安心して有利な条件で長期に持っていける。日本と力が違う関係でそうなっているのかもしれませんが、その関係から考えましても、わずかな金利の関係でこれが刺激剤になるならば、けちな金利を引き上げるなどということを言わないで、もっと引き下げるというくらいの気合いを入れると、池田総理はいよいよ輸出に熱心になった、こういうことになるだろうと私は思う。大蔵大臣はその金利の関係はいかがでありますか。
○水田国務大臣 金利は、今総理が言われましたように、各国の輸出入銀行の金利から比べたら日本は特段に安いということになっております。これは安いに越したことはございませんが、この金利をかりに維持しようとするならば、輸出入銀行に対して非常にコストの低い資金を供給しなければならぬということになりますので、私どもは御承知の通り産投会計からの出資ということを相当骨を折ってやって参りましたが、これもなかなかむずかしい問題で、私は今度の予算でもう少し思い切って入れればよかったと思っておるのですが、御承知のような経過でなかなか十分というわけにはいきませんでした。やはり資金量の問題が今一番大きい問題でございますので、私どもはこの必要な資金量を十分に輸出入銀行について確保したいという方向でいろいろ検討しておりますが、そうなりますと、日本の一般の金利体系から見ましても、外国の輸出入銀行の金利のあり方から見ましても、この四分という金利についての訂正は、私はもう少し不均衡を直すような方向で検討して、資金量の問題あるいは貿手その他の優遇の問題とかいろいろなものとからんでこの問題は解決したいと考えておりますが、これによって輸出が大きい打撃を受けるというような形には今の状態ではいかぬと思います。問題は私どもが資金の必要量を獲得するということが輸出振興について一番重要な問題だと思います。
○永井委員 打撃を受けるという問題ではなくて、気合いを入れるという問題であろうと思います。まあ、どうしようといずれは具体的になったときにこれらの問題は審議するわけでありますから、資金量の問題と金利の問題は十分に輸出振興の上から考えるべきだと思います。
 さらに総理に伺いますが、海外経済開発協力基金、これはこんなはした金ではいかないと思うのです。この関係はどういうふうにお考えになっておるか。またこの基金の運用は一体だれがどこでどのようにされるのでありますか、伺いたいと思います。
○池田(勇)国務大臣 誤解があってはあれでございますが、ドイツなんかは輸出を非常に奨励して金利も安いし期間も長いというふうなお話でございまするが、私の知るところでは、ドイツの輸出入金融会社は五分五厘、イギリスが五分くらいではなかったかと思います。それからプラント輸出に対しましての年限の問題でございますが、年限の問題は、国際会議では日本は少し甘過ぎるのじゃないか。これは原則は五年か六年になっておったかと思いますが、日本は七年、八年というのがございます。甘過ぎるのではないかという非難を日本が受ける場合があるということを一つお考え置きを願いたいと思います。ソ連との延べ払いの分でも、ソ連はヨーロッパ並みにしてくれといっておりますが、これはヨーロッパ並みにはなっておりますし、あるいはヨーロッパの方から日本は甘過ぎるといわれておる状況であるということは、今あなたが御質問になりました点とはよほど変っておりますので、申し上げておきます。
 また輸出入銀行のワクにつきましても、これは御承知の通り資本金の倍額まで借り入れ限度がございますから、私は機を見てやっていきたいと思っております。
 それから海外経済協力基金の問題、これは先年五十億、今度五十億、それに利子を入れて百三、四億になっておりまして、この分で十分だとは私は思っておりません。ただ問題は、国際的に西ヨーロッパ、カナダ、アメリカ、日本、こういうものがOECDの別働隊のDAG、つまりダッグとの関係に日本が入っておりますから、これで今国民所得の一%という話がありまして一度会議を開いたようでございます。この問題につきましては今度たびたび国際会議が開かれて、われわれも参加していろいろ検討しなければならないと思いますから、そういう問題とかみ合わせて海外経済開発協力基金も考えていかなければならない。私は今の百億円、それに利子のついた百数億円、これで日本が東南アジアあるいは低開発国の開発に協力するのに十分とは毛頭考えておりません。国際的ないろんな計画とマッチいたしまして、日本としても海外への発展が高度成長のもとをなすものでございますから十分検討していきたいと思います。海外経済開発協力基金の問題につきまして陣容は整いました。その後の動きにつきましては所管の企画庁長官からお答えいたします。
○迫水国務大臣 基金の運用は当然海外経済開発協力基金の幹部がきめるわけでございまして、各省はそれぞれいろいろ関係するところがございますので、経済協力基金に対して各省ばらばらでものを言うというような弊害を避けるために運営委員会という各省事務当局の連絡機関がございますが、基金の運用そのものは基金の重役がきめるわけであります。
○永井委員 何か最高輸出会議というものがあって、それが年一回開く。それから産業別輸出会議があって、そこでいろいろ審議する、そこに各省代表が来ていろいろな話をする、こういうことを伺っておるのですが、この開発協力基金は採算のとれないようなものでもそれぞれの地域の関係においてこれは決断をしてやらなければならないという性質のものでありましょう。またその年度限りというものではなくて、長期計画のもとにこれが運用されなければならないものでありましょう。そういう重要なこれらの問題を各省代表が集まって何ぼ会議を開いたって、その会議でこれはどうするという決断なんかこれはできるものではありません。やはり問題はタイミングが要りましょうし、計画が審議にかかってから半年も一年もかからなければ結論が出ないようでは問題にならない。やはりほんとうに熱意を持って、これだけの金では足りないからもっと多くを出してやるのだというそういう熱意があるならば、相当その場所において直ちに――直ちにと言ってもいろいろ機関がありましょうが、少なくとも決断をして長期の計画を推進できるような責任のあるシステムでなければ、私は各省代表が事務的に集まったのでは問題にならないと思うのですが、その点はいかがですか。
○池田(勇)国務大臣 海外輸出最高会議というものと海外経済協力基金というものとは全然関係がないと言っていいのであります。これは日本の輸出貿易を振興するために業種別に、たとえば雑貨とか鉄鋼とか機械とか船とか、いろいろな輸出品目によって十数団体から代表が出られまして、各業種別の今年の輸出はこのくらいになるだろう、こういう方面に力を入れるつもりだ、こういう会議であるのであります。それから海外経済開発協力基金というのは、これは先般御審議願いましたような企画庁のもとに、主として民間の人が入って、そうして輸出入銀行とタイアップしながらやっていくというものでございます。役所がみんな集まってとやこう言うあれではないのでございます。
○永井委員 さらにこの問題については資金量をふやし、また日本の外交の向かうところを的確に出していかなければならないと思います。しかし時間がございませんから先に進みます。
 やはりこれからの外交は経済外交が相当重視されなければならない。今のように自衛隊のために外務大臣があっちに飛び、こっちに飛び、鉄砲かついで走るような外交をやっていたのではいけないと思うのでありまして、やはりそろばんを持った外交が平和外交の正しい姿であろうと思うのです。そのためには今の各派遣されておる経済外交官の配置及びその機能、そういうものがどのような状態にあるか、外務大臣から御答弁願いたい。
○小坂国務大臣 私は別に自衛隊のために飛んで歩いたことはございません。どちらかといえば私は経済畑でございますので、経済外交を最も得意と考えておるつもりでございます。
 そこで今お尋ねの在外公館の経済担当の職員でございますが、各省からだいぶ供出していただいておりまして、省別にいろいろございますが、通産省が一番多く、それから大蔵省、農林省の順で全体で九十三名おられるわけでございます。そのほかに外務省の方でもできるだけこの経済関係の専任者を作りたいということで、現在経済関係専門の館員は七十名おります。それから経済関係を兼務しておるものが四十八名、大体各省から供出されている方々と見合っておるという関係になっております。ただ、もちろんこれがあるから十分だと申しているのではございませんで、全体の予算の関係もございまして、できるだけその範囲内で万全を期したいと考えておるのであります。まだまだ努力を大きく要する点だと思っております。
○永井委員 こういうことを話しましたらいろいろ当たりさわりがあるかわかりませんが、われわれ海外に参りましていろいろ外交官の方と接触いたします。外交官出身の方かと思うと、警察官だと言う、あるいは自衛隊から来ているのだ、こういう人たちがたくさんあります。そうして外交官の方といろいろ話しますと、ほかの省から派遣されている人たちは一生外交官としてやるつもりはない、二年か三年そこに来ているので、海外に出ている間にその辺を遊山をしたり、あるいは見物をしたり大いに楽しみながら、本国の方の人事の情勢を常ににらんで、気持は本国の方にばかりあって、現地では物見遊山、いざという場合の外交官としての機能は十分に果たせない状態になっておる。こういうことで小さなところは非常に少ない人数で、大きなところにいたしましても、そういう人たちがたくさんいる。こういうことでは経済外交というものはできないと私は思う。実際の状況について外務大臣はどうお考えになっておるか。そしてまたその外交官の教育、訓育あるいは経済の問題は事務的には運ばない。やはり人と人とのつながりの関係によって長期にわたるものだと思うので、この関係はいかがですか。
○小坂国務大臣 ただいまのようなお話は、結局公館長の人柄にもよろうかと思います。公館長がよく館員を掌握してやっておりますれば、そうした問題はおのずから解消するかと思いまするし、また外交というものに対して大蔵省初め関係各省が十分に理解を持ってくれるということもこれまた必要でございます。有能な人が本省に帰って、外務省のためには惜しみなく予算をつけるということも、これまた経済外交の上においては大きな動力となるものであろうかと考えて、これまた活用の仕方であって、問題はその動かし方によると考えております。
○永井委員 総理は御用があるということでありますから、総理の答弁を急ぎましてお帰りを願いたいと思います。
 私は、輸出はそう伸びないと思います。また輸出は日本の国内事情ではそんなに国際市場でぐんと伸びるような条件というものはなかなか出てこない。そういうものが出てくれば、必ずそこに抵抗が出てきて、ゆるやかにゆるやかにという形、ワン・ステップ・アンド・ワン・ステップというような形だから、飛躍的にぐっと輸出を伸ばすというようなことは私はなかなかできないと思います。対米輸出が大きな部分を占めるわけでありますが、これらはいろいろな品目から見たって私はなかなか伸びないと思います。また品目別に見ますと、大きな輸出の対象であります繊維の関係は、台湾にいたしましても、香港にいたしましても、スペイン、ポルトガルなんか、今まで輸入国であったのが、これが輸出国に回わって生産を始めておりますし、違った技術の分野を開拓しなければ、繊維の形においては従来の形では伸びないと思います。機械その他の関係におきましては、やはり相当国内態勢を整えなければ輸出に回われないだろうと思う。地域別に見れば東南アジアがこれからの大きなところでありましょうがアメリカの対外援助をヨーロッパの方で肩がわりするとするならば、援助だけを肩がわりして貿易の関係をほったらかすわけがありませんから、それを足場にしてどんどん出てくるでありましょう。アメリカもどんどん出てくるでありましょう。そうすると、先ほど総理から頭金二〇%の五年か七年の延べ払いというのは世界で一番いい条件だというように御答弁があったのでありますが、最近のヨーロッパ方面の東南アジアへの進出は、一〇%頭金の十年、十五年という、こういう長期のものでどんどんやってきておる。やはり向こうがそうするならば日本もそうやらなければ競争にはならないので、そういう関係がはっきりやはり国の政治として動いて、そうしてそれが向こうと対抗していかなければできない。やはり日本の輸出業者は世界と同じ条件でやらしてもらわなければ困ると、こう言っておるわけであります。そういったような事情からいたしましても、東南アジアへの進出といってもこれはなかなか容易じゃない。ヨーロッパの方にいたしましても、これは雑貨その他いろいろ進出する品目もあり、もっとここは伸ばさなければならないわけでありますけれども、今日本が年間一億ドル以上の輸出を持っておる主体というものは、数え上げて十ぐらいしかありません。まるでほんとうに零細なる輸出の対象でありますが、その十のうちの大部分は、香港であるとか、台湾であるとか、タイであるとか、こういったところであります。でありますから、私は輸出は努力さえすれば簡単に伸びるのだというような、そんな甘い考えでは、とても三十六年度の国際収支を明るい見通しのもとにこれを運ぶことは非常に困難だ。輸入の面でもう少しチェックすることを考え、輸出の面でもっと馬力をかけて進む。さらに観光であるとかその他いろいろ貿易外の収入の関係もわれわれは努力していかなければならないと思う。そのようにいたしましても国内に設備投資のこの行き過ぎ、四兆に近い設備というものがあって、なにしますとこれを国内で消費してしまう。輸出になかなか伸びがない。輸出意欲が減退しているということが伸び悩んでおるものの一つの原因にもなりましょう。国内で売った方がもうかって、輸出すればそんなにもうからないのでありますから。それこれ考えましても、まず国内における大きな消費の部分をチェックする、そうして輸入をある程度制限する。ことに貿易自由化の中における国民生活に対する政府の呼びかけというものも、これは相当考えていかなければならぬと思うし、輸出の面におけるこれらの問題を総合しなければ、本年の国際収支というものは非常に危険である、私はこういうふうに考えるわけです。外貨の問題にいたしましても、年度末においてはユーロ・ダラーなんかは、ロンドン市場その他において普通四%の金利を五〇%出し、あるいは五・五%を出して、高い金利で、単に帳じりを合わせるために、その外貨を、ユーロ・ダラーなんかを押えておるわけです。帳じりでいかにも外貨が手持ちがいいような格好にこれは見せかけをしておるだけで、作られた一つの帳じりでありまして、ほんとうの実勢としての張じり数字というものには私はなっておらないと、こう思うのであります。そういうような関係から考えまして、貿易の関係はもっとほんとうに内容を正しく分析して努力しなければならぬと思う。
 総理がお忙しいようでありますから、一つこの点について答弁をわずらわしまして、物価の問題、設備投資等なおお尋ねをいたしたいと思ったのでありますが、今回は足どめするのもどうかと思いますので、一つそういうものも含めて、物価の問題等全部均衡ある経済の発展をやるという立場において、安定的な発展をはかるという、こういう立場において、そうしてその所得倍増計画の推進の中で、先ほど小松君も言ったように、非常な犠牲になっておる消費大衆なりあるいは勤労大衆というものがある。そういうものの是正ということがやはり大きな役割を果たさなければならぬという立場において一つ答弁をわずらわしたいと思います。
○池田(勇)国務大臣 問題が非常に多岐にわたっておるようでございまするが、この輸出振興、そうして観光事業の育成、これはお話しの通り、また先ほど来答弁申し上げた通りでございまして、政府としてもやっておるのでございます。また輸出ムードが衰えておるのではないか、こういうお考え、私はこれは同感でございます。日本の貿易の特殊体系であるところの商社が、国内の流通に力を入れて輸出の方がおろそかになる、こういうことはよくないことで、輸出ムードを起こさなければならぬということも自分は考えております。
 それから一億以上の輸出が十ほどしかないということでございます。われわれは今後一億ドル以上の国をふやそうというので努力いたしております。この貿易というものは各国の経済事情によほどよりますが、日本の輸出の基調といたしましては、私はほかの国よりも成績はいいと考えております。五、六年前は輸出が十七、八億というふうな状態でございます。三十二年のときは二十八億程度だった、そして輸入が四十億をこえた。ああいう異例な場合がございますが、その三十二年のときから比べまして二十八億が大体四十億。このごろでは、大体過去は一割五分から一割二、三分、一割、そして三十六年度は九分程度の増であったかと思います。ほかの方は予想通り伸びておりますが、アメリカの方が伸びていない。しかしアメリカにいたしましても、去年からことしにかけては伸びが悪うございますが、おととしは前年に比べて五割以上伸びた。七億ドルぐらいの輸出があった。七億ドルで向こうからの輸入が十一億ドルくらいだったのが――七億足らず、六億八千万ドルぐらい、それが十億をこえまして、おととしは五割ふえた。去年はあまりふえません。こういうのでございますから、やはりその国の事情を見ながら、一時のでこぼこはございますけれども、輸出全体といたしましては、私は努力すれば相当に伸びていくのじゃないか。この伸びということも、結局は昭和三十年ころから三十一年に比べますと、輸入品の価格は、船舶の運賃も下がった関係もございましょうが、五、六年前に比べまして八五%の輸入品の価格、輸出は九五%、日本の品物は輸入品は非常に安くて、出ていくものは昔に比べて下がりようが少ない。こういうことで、わが国の競争力は、実際の本質の競争力というものはわが国は相当持っておる。ただそれが外交上の問題でいろいろの点がございますので、先ほど申し上げましたように、できるだけ各国との通商航海条約を結んで、そうして自由に行けるように、そうしてガットの三十五条の援用を早急にやめてもらうように、いろいろ努力いたしたいと考えておるのでございます。
 総じて見まして、これは心配するのには切りがございません。しかし私は安心してはおりませんが、傾向として長い目で見ていくならば、私はそう取り越し苦労で、一年々々の分を見て、あるいは半年、三、四カ月分を見て、ああでもない、こうでもないと言って、わが国の経済の伸びる見通しを誤るということが、これは一番いかぬと思います。だからこういうことはほんとうに過去の経験から将来を見、各国の事情を見て泰然自若で、腰を抜かしてはいけませんけれども、とにかく長い目で見て泰然自若として見通しをつけて、及ばないところを補給していくようにしていくことが、心配するよりも、取り越し苦労するよりも大事なことであると考えております。従って私は外国の人なんかの意見を聞きまするが、日本の経済の見通しにつきましては、西ドイツと同様に、ほんとうに日本は実力があって伸びていくと外国人は考えております。私はそれをうぬぼれるわけではありませんが、国民の英知と努力と、そうして今までの基盤を考えていくならば、一時的の問題で右顧左眄したり、そうして進むべき道を誤ってはいかぬ。これは楽観主義ではございません。楽観ではなしに、ほんとうに自分の力を見ながら、そうして足りないところを補っていくならば、私はそう取り越し苦労は要らない。楽観はいたしておりません。そういう考えであるのであります。
○永井委員 それではだいぶ時間もたったようですし、ほんとうは農林大臣に大豆の問題、木材の問題、通産大臣には東電の料金を上げるのかどうか、その他物価問題等について経済企画庁長官にいろいろお尋ねをいたしたいと考えたのでありますが、時間も経過しておりますし、この辺で終わりたいと思います。いろいろ質問したいことがたくさんありまして残念でありますが……。
○船田委員長 次会は明十八日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後六時四十六分散会