第039回国会 本会議 第5号
昭和三十六年九月三十日(土曜日)
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 議事日程 第四号
  昭和三十六年九月三十日
   午後一時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)
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○本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)
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   午後一時三十九分開議
○副議長(原健三郎君) これより会議を開きます。
 国務大臣の演説に対する質疑
            (前会の続)
○副議長(原健三郎君) これより国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。下平正一君。
  〔下平正一君登壇〕
○下平正一君 私は、日本社会党を代表いたしまして、災害対策並びに食糧管理制度の問題を中心にいたしまして、質問をいたしたいと思います。
 質問に先だちまして、たび重なる災害のために、各地の被災者は非常な御苦労をされていると思います。御同情を申し上げるとともに、すみやかなる復興をお祈り申し上げる次第であります。(拍手)
 細部につきましては、いずれ委員会において質問することにいたしまして、ここでは、特に重要と思われる問題につきまして、若干の質問をいたしたいと思います。
 御承知の通り、ことしの災害は、五月のフェーン災害から六月の集中豪雨、今回の十八号台風、あるいは風水害の陰に隠れてはおりますけれども、六、七月の関東、中国あるいは九州に起こりました大早魃、あるいは北美濃地震、こういうふうにたくさんの被害がありまして、その被害も相当額に上り、かつ、範囲も全国に及んでいるわけであります。史上最大の被害といわれました伊勢湾台風に次ぐ大被害となっておりますし、かてて加えまして、多くの地域が、梅雨前線の豪雨やあるいは十八号の災害が相重なりまして、被害の深度というものは、きわめて深刻になっているわけであります。
 質問の第一点は、万全の対策と地域住民の協力があれば、災害というものは、被害を防止することが可能である、ないしは、また、少なくとも最小限度にとどめることができるではないかということでございます。
 今度の十八号の台風は、御承知のように、伊勢湾台風と同程度の威力でありましたけれども、その被害が予想以上に少なかったことは、御承知の通りであります。もちろん、これは台風の進路とか、あるいは時期とか、あるいは雨が少なかったとか、こういうこともありまするけれども、私は、防災対策というものが伊勢湾当時より進んでいた、もう一つは、地域住民の防災協力活動というものがよかったんだ、ここに一番の大きな原因があると思います。しかし、それにしても、なおかつ、十八号台風だけでも二千数百億の被害を出しております。今度の災害の被害実態を詳細に調査いたしますると、確かに天災ではありまするけれども、その内容は、人災的な面が多分にあることが判明いたします。今回の災害もいつの災害も、災害はやはり人災であり、政治の欠陥ではないかということを指摘いたしたいと思うわけであります。
 三十四年度の伊勢湾台風のおりに、私は、当時の岸内閣に対しまして、代表質問を通じて、こういうふうに災害の被害が増大することは、歴代保守党内閣の責任である、すなわち、いわゆる再軍備に狂奔して、大切な国土の保全とか、あるいは防災対策というものをなおざりにした政策の欠陥にあるということを指摘いたしました。昭和三十五年度からは、この点に対しまして、若干前進したことは率直に認めますけれども、やはり、今度の十八号によれば、人災であり、政治の欠陥だということを痛感するわけであります。特に、災害の被害というものが低所得階層に多いということは、見のがすことのできない点であります。所得倍増計画もけっこうでございます。しかし、国土の開発とか保全あるいは災害防止の面についても、重点的な施策として、誠意をもって推進していただくように、特に池田首相に強く要望いたしたいと思うのであります。
 こういう点から見まして、重要なる問題点と思われます点について御質問をいたしますので、それぞれ関係大臣から御答弁をいただきたいと思います。
 被害を根本的に防ぐ最大の策は、何といいましても、砂防とか植林とか、あるいは河川改修、こういう治山治水対策の万全を期することが一番大切であります。六月下旬の集中豪雨で長野県の伊那谷は大へんな被害を受けましたが、この状況をしさいに見ると、堰堤二十数本を中心といたしまして、対策の完備しておりました松川という川は被害がゼロであります。同一地域にあり、同一雨量のもとにありましたけれども、原始河川的に放置されておりました野底川は、最大の被害を受けているわけであります。
 また、ことしの災害の特徴は、上流水源地帯の中小河川の土砂流出による災害が大きかったことが、一つの特徴になっております。本川の治水対策は、もちろん忘れてはならないところでございますけれども、さらに、この際、水源地帯の砂防事業あるいは中小河川の治水事業も、ほんとうに身を入れて進める必要があるのではないかと痛感いたします。
 過ぐる昭和二十八年度の災害を契機といたしまして、当時の吉田内閣のもとに、治山治水基本対策要綱というものができました。全国二千数百河川の大改修がこれによってでき、洪水調節、発電などの多目的ダムが建設されて、さらに、二千余の河川砂防事業や海岸保全事業が完成されるという計画でありました。これが予定通り完成されるといたしまするならば、毎年六十万町歩に及んでおりますはんらん面積もなくなるし、今日まで年平均二千四百億という被害もこれを四百億にとどめることができるのだ、こういうことでありましたけれども、一体、この実施計画はどう進んだでありましょうか。五カ年間でわずかにことの進捗率は一四%にすぎません。
 最近、昭和三十五年、閣議決定をいたしまして、新しく治山治水十カ年計画というものを策定いたしました。これが、昨日、成田質問でお答えになった池田総理の言う治山治水計画でありますが、これを見てみましょう。この新しい計画の投資を見ても、前期で四千億、後期で五千二百億、順調に計画が遂行されても、この計画の終了年次であります昭和四十四年に、河川が五四%、砂防がわずかに四五%しか進捗しないという状況であります。途中の変更等を考えてみるならば、この治山治水十カ年計画は、完成するにはあと二十年も三十年もかかる、とれが実情であります。
 御承知のように、今年度の予算は二兆億円、この中で、一体、大切な治山治水事業費が幾らでありましょうか。たった七百億円であります。昨年は六百億円であります。わずかに百億円だけふえたにすぎません。軍事予算とか独占資本擁護の予算の増加ぶりと比べてみたら、あまりにひどいではありませんか。(拍手)きのう池田内閣総理大臣は、成田さんに対する答弁で、防災的な面も、経済の成長に比例して増加させると言っておりました。治山治水十カ年計画で十分考えていると言われましたが、実は、内容をしさいに検討してみれば、池田さんの言う防災は大丈夫だということは、かくのごとき実態になっておるのであります。(拍手)国土の保全という立場から見るならば、まさにこれは怠慢ではございませんか。政治の欠陥ではございませんか。この際、私が池田内閣総理大臣にお伺いしたいことは、治山治水十カ年計画なるものをこの際改定して、あるいは繰り上げ実施をして、すみやかに国土の保全と防災の完璧を期すべきだと考えますが、御所見を伺いたいと思います。
 十八号台風のもう一つの特徴は、高潮の被害がひどかったことであります。特に、大阪における被害は、地盤沈下によって被害が倍加されております。御承知のように、ここ数年、日本の国土は地盤沈下が非常に激しくなってきております。東京の江東地区、大阪、尼崎、新潟、こういうところの地盤沈下がひどく、特に、大阪湾一体の地盤沈下によりまして、せっかく巨額の費用を投じて作りました防潮堤あるいは岸壁等の港湾施設が、今度の災害では役に立たず、付近一帯に浸水をいたしまして、台風が通過しても数日減水せず、被害をますます増大さしているわけであります。地盤沈下の原因は、もうすでにわかっております。これは、地下水の過度のくみ上げによるものだということは明々白々であります。昨日成田質問でも申し上げましたが、とのことの一番大きな原因は、何といっても、無計画な所得倍増にあると思いますが、私は、工業用水のくみ上げや、あるいは冷房用水のくみ上げ等について、この際、明確なる規制措置を講ずるとともに、今日直ちに行なわるべきことは、クーリング・タワーへの転換等、こういう措置についても、助成措置をすみやかに考える必要があると思います。また、高潮対策につきましては、御承知のように、運輸省と建設省がおのおの分担をいたしております。この建設省と運輸省の計画につきましても、この際これを繰り上げ実施をするとともに、高率補助の適用を行なうべきだと思います。なお、地盤沈下は一種の災害であります。従いまして、地盤沈下によるかさ上げ等の費用については、一般の治水計画からはずして、災害対策として早急に改良に着手する必要があると考えます。
 十八号台風は、幸いに東京に参りませんでした。かりに、十八号台風が東京にきたといたしましたならば、銀座の尾張町で浸水は一メートルであります。江東、大田地区では、わずか四メートルの高潮で浸水をいたします。高潮対策、地盤沈下対策は、災害防止の面から緊急の問題点ではなかろうかと考えます。
 さらに、地盤沈下なり、あるいははんらん地区、あるいはがけくずれと、日本では全国にこうした危険個所が数多くあります。この際、私は、これらの危険地帯というものを統一的に調査をし、対策を立て、必要とあるならば、建物、住宅の移転ないしは集団移住等、国の責任で地域住民の協力を求めて実施することが必要と考えまするけれども、関係大臣の御所見を伺いたいと思います。(拍手)
 また、今回の災害の特徴の一つは、いわゆる利水ダム、特に発電ダムによるところの被害が目立ってきております。集中豪雨で天竜川水系が莫大な被害を出しましたけれども、特に、日本三大桑園の一つといわれました下伊那郡の川路の桑園は壊滅いたしました。その原因は、すぐ下流に泰阜ダムを建設されたために、過去二十三年間に、天竜峡におきまして、河床は、何と、六十尺上昇をいたしております。これが災害の原因であります。こうしたことは、全国に数多くあると私は考えます。当初の計画河床をはるかに上回っていることが原因で起きたこの種の災害が、地域の住民の犠牲だけで処理されていいものでありましょうか。私は、当然、国なり構築物所有者が補償の責任を負うべきではないかと考えます。(拍手)
 また、泰阜ダムは、当初四万キロの発電がありましたけれども、現在は埋まって参りまして、約八千キロの発電になっております。防災的な観点から見るならば、当然これを撤去するということも考えられます。しかし、これを撤去すれば、すぐ下流にある浦島ダムが、また大災害を起こします。満島ダムを撤去すれば、御承知の佐久間ダムに重大な支障を与えることになります。
 このようなことも、全国至るところにある問題だと私は思います。ダム行政の基本問題として、政府においても本格的にこの種の問題に取り組む必要がありはせぬか。当面の管理、操作等の措置とともに、関係大臣の御所見を伺っておきたいと思うわけであります。(拍手)次に、個人災害の救済についてでありまするが、今度の台風では、非常に個人災害が目立っております。特に収穫直前にありましたリンゴ、ナシ、和歌山県のカキ、ブドウ、こういった果樹作物を中心にいたしまして、農作物に甚大なる被害を与えております。その被害総額は、伊勢湾台風の被害総額を上回って、およそ五百億円といわれております。これらの被害に対しましては、わずかに天災融資法によるところの融資、あるいは樹勢挽回に対するわずかなる助成措置しかないのが実情であります。あるいは、個人住宅の崩壊は三万戸をこえております。中小企業の被害も、また非常に莫大であります。火事などの場合には保険金が入りますが、台風でうちをつぶされた場合には、一部住宅公庫の融資等が考えられますけれども、すべて個人の犠牲で立ち上がらなければならないわけであります。(拍手)毎年罹災をするだけではなく、今度の災害では、二回も三回もうちをつぶされた人も数多くあるわけであります。台風の被害から立ち上がるために大へんな努力をいたしておりまするこれらの罹災者の人たちに対して、この際、何らかのこうした個人災害の救済の道を考えてやる必要があると思いまするが、この点については、池田首相からお考えをお伺いいたしたいと思うのであります。(拍手)なお、当面、現行法の中でも個人の救済の道はあります。この点について若干関係大臣にお伺いをいたしたいと思いますが、その第一点は、この際、天災融資法を改正して、返済期間の延長、貸付限度の引き上げ、これはもちろんでありますけれども、連年災害等の場合には、国の補償によるところの債務打ち切り等をお考えになってはどうかと思うしわけであります。また、成長部門といわれておりまする果樹等についても、それはなるほど価格が不安定だというようなむずかしい条件もありましようけれども、農業災害補償制度の一環として取り上げるべきではなかろうかと考えるわけであります。(拍手)さらに、厚生大臣に特にこの点はお願いをしたいのですが、災害救助法が今日あります。災害救助法の二十三条には、九項目にわたって、土砂流入の排除とか、住宅の補修とか、埋葬料とか、いろいろの救助の方法が示されておりますが、この際、災害救助法の二十三条を拡大して、十分な予算措置のもとに、個人災害の救済の方途を講ずるお考えがあるかどうかをお伺いいたしたいと思うわけであります。さらに、罹災者の立ち上がりを援護するために、死亡見舞金の支給とか、負傷者の医療費の全額負担、あるいは立ち上がり資金の長期貸付等、罹災者援護について特別立法のお考えがあるか、それぞれ関係大臣からお伺いをいたしたいと思うわけであります。次に、気象観測についてお伺いをいたしますが、災害の防止のためには、何といたしましても、まず、その全貌を完全に把握すること、そうして、これを関係機関はもちろん、地域住民に迅速に周知徹底させることが、一番私は肝心なことと思います。わが国の災害といいますと、すぐに台風――風や雨を想像いたしますけれども、わが国の災害の特徴の一つに冷害がございます。試みに、昭和二十九年から三十五年までの七年間の冷害による農作物の被害を拾ってみますと、実に千九百八十数億円になっております。特に、この種の冷害防止対策としては、長期予報、これが災害の軽減に非常な貢献をしておることは御承知の通りでございますが、さて、防災気象の点はきわめて不十分であります。わが国の気象観測用のレーダーは、御承知のように、台風対策のために、ほとんどが海岸付近に設置されております。比較的山岳地帯に多く被害をもたらす集中豪雨については、何らの益をもたらしておりません。先般、気象庁では、広島県の山岳部にレーダーを設置するために適地を探しておりましたが、米軍の有閑通信施設があって、これを撤去する以外に、効果的にレーダーを作ることができなかった等々の事情もありまして、今日、山岳地帯レーダーというものは、全く不十分でございます。さらに、気象観測関係の職員を見ると、驚くなかれ、過去十年間ほとんど増員をされておりません。肝心の防災気象官はどうでありましょうか。常識的にも、およそ百名は必要だといわれておりますが、たった二十七名にすぎません。こうした要員の充実を初め、あるいは定点観測、あるいはレーダー、あるいは通信設備等、この際、気象観測の完璧を期する必要が私はあると思います。これに要するすべての予算措置を見ても、わずかに十億円、できないととはないと考えますが、関係大臣の御所見を伺いたいと思います。(拍手)
 次に一災害の復旧に関しまして、二、三お伺いをいたしたいと思いますが、第一の点は、今回の復旧につきましては、少なくとも伊勢湾台風と同等の特別措置を考えなければならないと思いますけれども、どの程度の特別措置をお考えになっているか、お伺いをいたしたいと思います。特に、中小企業の災害につきましては、今回の災害の実態から特別に考慮が払われなければならない問題点だと考えます。また、台風の陰に隠れてはおりまするけれども、先ほど申し上げました六月以降の関東、中国、九州における大早魃の被害も見のがすことはできません。早魃被害についても、当然従来の助成その他の措置を必要と考えるわけであります。
 さらに、再度災害を防止するという観点から、この際、災害関係法案の中の原形復旧主義というものを改良復旧に改め、三・五・二という進捗率についてもこれを改め、かつ、災害ごとに議論をいたして特別立法をしている小災害等は、これは当然恒久法に入れるべきではないかという考え方を私は持っているわけであります。
 以上の諸点につきまして、それぞれ関係大臣の御所見を承りたいと思います。(拍手)
 最後に、今回の災害はもちろんでございまするけれども、災害の復旧に対する自衛隊の活動というものは、実に目ざましいものがあります。被災地の住民は心からこれに感謝をいたしております。(拍手)国民が自衛隊に感謝をしているのは、鉄砲を持った自衛隊ではないわけであります。シャベルを持ち、土のうをかつぎ、ブルドーザーを運転して、災害の復旧に、国土の保全に、汗を流して献身的な努力をしている、この災害復旧に努力をしている自衛隊の皆さん方に感謝しているわけでございます。(拍手)私は、この際、自衛隊を、その予算とともに、国土の保全と開発をするために国土建設隊に切りかえなさいということは、単なる社会党の主張でなくして、全国民の強い要望であるということを申し上げたいと思います。(拍手)
 次に、農業問題でございまするけれども、時間がもうございませんので、主として食管制度について若干のお伺いをいたしたいと思います。
 河野さんは、従来のやみ米を自由米として公認をする、こういうことを骨子にして、いわゆる河野構想というものを就任直後に発表いたしました。そうして、これは直接統制を廃止するものでもないし、現行食管制度について実質上の影響を与えるものではない、こういうことを言明いたしておりまするけれども、しかし、全国の生産農民、また消費者も、との構想に対してはきわめて深い不安を感じております。私ども社会党も、この河野構想に対しましては反対をいたすものでありまするが、この際、重要と思われまする問題点五つについて、見解を明らかにしていただきたいと思うわけであります。
 その第一点は、との構想によりますと、食管制度はなしくずしに廃止をされる、そうして、生産費・所得補償方式が後退をするのではないかという点であります。この構想は、御承知のように、統制、自由の二元的要素を米の流通販売に認めようということであります。河野さんは、全国の食糧事務所長に対する訓示の中でこういうことを言っております。「自由米を公認しても、政府買い入れ米の数量が、二千万石なり三千万石に減少するとは考えられない、しかし、それはやってみなければわからない」、こう言っております。現在、流通過程に流れる米は、御承知の通り、およそ政府買い入れが四千万石、やみ米は、正確に把握はできませんけれども、一千万石とも、一千三百万石ともいわれております。かりに、政府買い入れ米の数量が二千万石になったといたしますならば、流通過程で、統制をされる部面はたった四割、自由米の部面が六割という結果になります。このことは、完全に実質上統制が撤廃されることを意味するわけであります。こうしたことが考えられるにもかかわらず、やってみなければわからないと言い、また一方では、現行食管制度については実質上の影響はないと河野さんは言われておりまするけれども、この点について河野さんはいかなる数字的な根拠を持っておられるか、その見通しについてまずお伺いをいたしたいと思うわけであります。(拍手)
 食管法違反のやみ米が公然と存在していることは、法の権威を落とすものであり、法治国家として好ましくないといわれておりまするけれども、平和憲法のもとで、やみの軍隊が、あれは軍隊ではない、自衛隊だ、いや、あれは戦車ではない、特車だ、こういって堂々と強化をされている実態、これこそ、まさに法律の権威を失墜し、法治国家として好ましくない最たるものではありませんか。(拍手)やみ米は一体どうして出回るのでありましょうか。やみ米の出回る原因というものをなくさなければならないと思います。やみ米の第一の原因は、何といいましても、現在の米価というものが、ほんとうに生産費、農民の所得を補償する米価になっていないことが最大の原因であります。(拍手)原因の第二は、農家の所得がきわめて低いということであります。国民の平均所得の三分の一という低所得は、必然的に大部分の農家の生活を苦しくしております。その一面として、一体今日農家はどのくらいの借金を背負っておるかということを眺めてみますと、これは農家経済調査に現われている数字でありますが、内地の農家は、今日一戸当たり五万八千九百二十五円の借財を背負っております。北海道は、二十一万三千五百十九円という借財を背負っております。平均いたしましても、一戸当たり借金は六万五千七百一円、こうなっているわけであります。供出米の代金は、御承知のように、一たんは農協に入ります。農協に行けば、借金の請求をされます。借金のある農家は、どうしても農協へ行くことを好まなくなります。こうしたことから、毎日の生活資金の不足を補うために、悪いこととは知りつつも、なおかつ、やみ米の方が供出価格より安くても、やむを得ずやみ米を売り渡すというのが、やみ米の出回る第二の原因だと私は考えております。こうした原因が取り除かれさえすれば、いうところの法の権威も回復されると思います。この点に対する見解をお伺いいたしますと同時に、この第一点の結論として、私どもは、米の直接統制は、生産者に対しては、その再生産と所得を補償するという点、消費者に対しては、常に安定した供給価格を維持するという、きわめて重要な社会政策的意義を持つものでありますので、この直接統制の食管制度というものは、一時的な食糧事情の変動によって左右すべきでないという信念を持っておりますが、この点に対する御見解をお伺いいたしたいと思うのであります。(拍手)
 なお、池田総理大臣は、きのうの成田氏の質問に対する答弁の中で、米の直接統制方式は変えないと言明いたしましたが、よりよい方法も考えなければいけないとも言っておりまして、多少あいまいであります。この際、池田内閣総理大臣に対しまして、米の統制方式を変えないということであるならば、米の無制限政府買い入れ、及び価格については、生産費・所得補償方式を厳格に守る御意思があるのか、また、消費者価格の引き上げは行なわないと、ここから確約できますかどうか、重ねてお伺いいたしたいと思うのであります。(拍手)
 第二の問題点は、食管会計の赤字の問題であります。河野構想は、この点で、「最近の食糧事情と米の現行管理制度のもとにおける各種の措置、それらの運用、及びこれと関連する食管会計の実態にかんがみ」こういうふうに述べまして、暗に食管特別会計における国家の財政負担の増大を懸念をしているように見受けられまするが、この点は大へん大切な点であります。食管会計に一般会計から繰り入れている、これを単なる保護政策によるところの財政の重圧的支出と見るか、あるいは、米価が果たす社会政策的な支出と見るか、あるいは、米作農家の所得倍増を達成させるための財政支出と見るか、ここに大きな問題点があると思います。池田総理は、さきの公約で、十年間に所得を倍にすると約束をいたしました。農民だけは別だとでもいうのでございましょうか。また、さきに強引に国会を通過させました農業基本法の中には、農民の所得を他産業の所得と均衡させるということが眼目に書かれております。来年のことを言うと鬼が笑うといいますが、十年先のことでは間に合いません。私は、今日ただいまからでも、この公約と、農基法にいうところの責任を果たすべきだと考えております。(拍手)
 食管法に含まれておりまする米と麦の作付面積は、御承知のように、延べ作付面積八百十六万町歩の中で四百八十七万町歩を占めております。全耕作面積の五九・六%を占めております。全農産物の生産額の中で、米は五三%を占めておりまして、農業所得の大宗であります。この面の所得増加をはからずして、農民の所得増加は絶対あり得ない問題であります。(拍手)また、現在農民が政府に売り渡す米は、御承知のように、生産費・所得補償方式によって算定をされております。なるほど、今度の臨時国会に補正予算として食管繰り入れが三百億出て参りましたが、これはなぜ出たのでありましょうか。これは、御承知の通り、最近の物価上昇によって、労賃と諸材料費が大幅に上昇したからであります。物価倍増のムードから引き起こされました物価の値上がりによるところの政府の政策上の責任であります。また、消費者価格の据え置きは、先ほど申し上げた通りであります。さらに、赤字々々といいますけれども、補正予算を含めて七百七億円の、一般会計よりの食管繰り入れの中をしさいに検討してみるならば、この中には、金利が百四十五億円あります。管理費が百三十五億円、予算編成期と実際の買いあげどきの食い違いその他で約七十億円、合計三百四十五億円というものは、これは明らかに赤字ではございません。食糧行政上の経費でありまして、純然たる国庫損失金ではないのであります。(拍手)ましてや、これによって農民はいささかの利益も受けていないのであります。赤字々々と宣伝をして、これがあたかも農民の責任かのような国民世論を作り上げて、あわよくば食管法を廃止しようとする、そういう卑劣な手段はやめるべきだと思います。一般会計からの繰り入れば、池田内閣の公約を果たす責任上、社会政策上、また、所得倍増の上からも、当然の支出と見るのが正しい考えであろうと思いますが、農林大臣、総理大臣のお考えをお聞きいたしたいと思います。
 第三の問題は、農業基本法に関係してであります。
 農業基本法は、今後の農業生産に選択的拡大の方針を採用しております。そうして、米の生産者価格を引き上げたり、統制を維持したりすることは、選択的拡大の方針に支障があるという考え方がありますが、間違いであります。政府は、さきの国会に、大麦、裸麦の特別措置法を提案いたしました。食管法第四条に定められているところのパリティ計算方式と、無制限買い入れを除外するという法案でございましたが、このことにつきましては、第一に、食管法の重要な条項を、このような特別法によって実質的にこの条項を消してしまうという点、ここに重大な疑義があると同時に、第二には、麦は余ってきたから、もう要らないんだ、こんなものについて価格の引き上げを行なったり無制限買い入れをすることは、選択的拡大方針に支障を来たすという考え方が一番問題であります。特に、地域的には農家所得の重大なる減収にもなります。日本農業の一つの欠陥としてコスト高があげられておりますが、これは農民の責任ではありません。過去における農政を見るならば、それは低米価、強権供出、これによるところの戦争遂行、また、これを土台とした低賃金政策によるところの経済の構造等にあるのであります。そのために日本農業の近代化がおくれ、零細経営、非近代的な農業から脱却し得ないというのが実情でございます。(拍手)過小経営とか、兼業化とか、非能率的な農業の生産構造を改めて農業上の発展をはかるためには、農業に対する投資を増加しなければなりません。また、一面におきましては、農産物の価格を安定する、また、災害補償等にういてもそれぞれ国の責任を明らかにして、農民が安心して選択的拡大の方針に協力できる基礎条件を作ることが先決でございます。(拍手)現在の農民は、決して、米がもうかるから作っておるのではありませんし、米に固執しているわけでもないのです。ほんとうに新しい農業の姿に脱皮をしようと思いまして一生懸命やっております。一体、なぜ米にたよるのでありましょうか。ほかの農産物が不安定のために、やむを得ず米にたよっているのであります。(拍手)政府がいうところの、農業基本法にいうところの成長部門に転換しようといたしましても、豚を飼っても、牛を飼っても、リンゴを作ってみても、その価格がきわめて不安定であり、しかも、こうした成長部門に転換をするためには莫大なる資金がかかるわけであります。これでは選択的拡大ができないのも当然ではありませんか。食管法の矛盾というものは、単なる食管法の矛盾ではありません。日本農政の持つ矛盾であります。(拍手)日本農政の矛盾であり欠陥であるということをここで御認識いただかなければならないと思います。私は、この際、日本農政の基本的な諸問題につきましては、考え方として、農産物が需要に応じて生産されればよいという、物を中心にした考え方では、農政は解決できないと思います。農民の人間としての生活を保障するという、人間的な考え方と、日本農業の持つ宿命的な後進性からして、当然農政の基本は保護政策が中心となるべきであると考えますが、この点についての総理並びに農林大臣のお考えをお聞きしたいと思います。(拍手)
 時間が経過をいたしましたので、少し抜きまして、第四の問題点は消費者価格の問題であります。
 河野構想は、自由米を公認しても、流通過程の混乱とか、消費者価格の騰貴は心配ないというております。そしてその理由として、現在端境期の手持米が三百ないし四百万石あるといっております。なお、早期栽培技術がよくなってきたから、端境期の心配がなくなった、万一心配ならば、外米を入れるから大丈夫だ、こういっておりますけれども、早期栽培で端境期が早く終わるということは、逆に言うならば、それだけ端境期が早く来るということであります。また、天災、異常災害の多いわが国といたしましては、万一の場合を考えて、外米を輸入すればいい、こういうふうに簡単に片づけることはどうでありましょうか。買い占めその他による災害時の価格騰貴と結びつきましたら、大へんな社会不安を招くことは、私は当然だと思います。統制という権力のもとにあるからこそ、端境期三、四百万石でも不安が少ないのではないでしょうか。連続豊作といわれて米がだぶついているんだというムードが出ておりますけれども、政府の三十六年度の端境期における手持米は七十五万トンと推定をされていたが、今日五十五万トンしかないと聞いております。統制が行き渡りまして米が順調に回っておりますので、ちょうど空気や水のように、ほんとうにありがたみがなくなっておりまするけれども、私は、まだまだ、供給面から考えるならば、絶対に心配ないとは言えない情勢ではないかと考えておりまするが、消費者価格、供給面についての河野農林大臣の見通しをお伺いいたしたいと思うわけであります。
 最後に、河野構想は、「具体的米価の決定については、別の審議会において学識経験者によって調査審議する」となっておりまするが、今まで参加を認められておりました農民代表をどうするかが問題だと考えます。現在の物価値上がりに基因する食管の赤字増大を農民の責任であるかのように転嫁して、米価審議会から農民代表を締め出そうというやり方は、けしからぬやり方だと私は考えます。そういうふうにして、政府買上米の価格の引き下げが容易にできやすいような準備と並行して、一方、自由米の公認によるところの統制の実質上の廃止、こういうことをもくろんでいるということが、現在の河野構想に対する農民の不安と不満の最も大きな点でございます。生産農民の正しい要求を米価の決定に直接反映させるためには、米価の決定について従来通り農民代表を参加させるべきであると考えまするけれども、大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。現在の農業問題の中で重要なる食管制度に関する問題でありますので、多くの農民や、また消費者がこの御答弁を刮目して見ております。どらか明確なる御答弁を重ねてお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 御質問の第一点は、災害対策についてでございます。昨日申し上げましたように、治山治水緊急措置法によりまして、一応十年間の計画を立てております。また、今国会に災害対策基本法の御審議を願うことになっております。私は十年間で今の計画だけで十分だとは思っておりません。財政の許す限り、これを繰り上げてやることに努力いたしたいと思います。
 その次の、災害に対する国家補償の問題でございます。災害の性質、また程度、いろいろな問題がございます。また、国家財政の点も考慮しなければなりませんので、ただいま国家補償をするという結論は出ませんが、その結論は出なくても、われわれといたしましては、従来の災害対策、いわゆる復興資金の融資、貸付等につきまして万全を期したいと思います。また、今回の災害の性質から申しまして、果樹その他につきましても私は、特段の措置を講じたいと考えております。
 第三の、米の統制の問題でございますが、ききの国会で申し上げた通りでございます。私は米価の算定に生産費及び所得補償方式をとって参ります。そうして農家の作られたものは、希望によって無制限に政府は買い入れます。そうして配給の価格を安定し、国民の生活安定の資に供するということは、これはもう米の基本問題でございまして、私はこの根本理念を変える考えはございません。ただ、時代の進運によって、その根本理念を守りながら、いい方法があれば考えていくということが政治の進歩ではないか、こう申し上げたいのであります。根本は変える気持はございません。
 また、消費者価格を引き上げないかということでございますが、今年は引き上げません。将来のことは何とも申し上げかねる次第であります。
 また、農業に対する保護政策。農業の保護政策は、われわれは従来もやっておりますし、今後も続けて参る考えでございます。ただ、保護政策には限度がございまするから、その保護政策につきましては、毎年あなた方に相談いたしまして決定する建前で参ります。(拍手)
  〔国務大臣佐藤榮作君登壇〕
○国務大臣(佐藤榮作君) 災害の場合に地盤沈下が一そう災害を大きくしておる。その意味において工業用水、地下水のくみ上げ等について制限を加えるとか、あるいはクーリング・タワーを作って冷房用の水の確保を考えたらどうか、こういうようなお話でございました。いずれもその通りだと思います。御承知のように工業用水法ができておりまして、ただいま新規に工業用水の地下水くみ上げ、これは禁止されておるのであります。なお、いわゆる地下水によらないで工業用水道による、そういう計画を各地に進めておること、これまた御承知の通りであります。
 また、ダムの建設あるいは管理操作等が、災害との関係においてしばしば批判をいただいておるのでありますが、御指摘の通り、今後ともダムの管理操作につきましては万全を期して、災害を避けるようにいたしたいものだと思います。
 また、罹災者の方々に対する対処の問題といたしまして、立ち上がり資金の確保が最も緊要だ、こういう御指摘でございます。その通りでございますので、今回も過去に劣らないような措置をそれぞれとっております。(拍手)
  〔国務大臣河野一郎君登壇〕
○国務大臣(河野一郎君) 下平さんにお答えいたします。
 第一の農業政策に関するいろいろ御意見を拝聴いたしましたが、大体私たちも同じような考えで、これまで同じような政策をとって参ったのでございまして、この点は、別に今のお話に私たちは違っておる点はそうたくさんない。これまでそういうふうに積み上げて農業政策をやって参りましたことは御承知の通りと考えます。従って、今あらためて措置するということはない。
 第二の米の問題について申し上げます。この点もいろいろお話しになりましたが、食管法第三条、第四条をお読みになりますと、第三条には生産者価格決定が規定いたしてあります。第四条には消費者価格決定の条件が規定いたしてあります。この現行食管法第三条、第四条を変えるという意思は毛頭ございません。従って、今後といえども生産者に対して米価の不安を与えるというようなことはありませんし、また、消費者に対して第四条を変えるというつもりもございません。従って、第三条、第四条に規定いたしておりまする方式によって、将来といえども私は、生産者価格、消費者価格は決定せらるべきものである、これに変更を加える意思は毛頭ございません。
 そこで、次に赤字の問題について申し上げます。赤字の問題をお取り上げになりまして、いろいろお話がございましたが、この赤字は、ただいま申し上げましたように、第三条によって生産者価格が決定せられ、第四条によって消費者価格が決定せられた、その結果としてここに差損が出て参るのでございますから、これは当然一般会計から負担されるべきものであって、とれが今米の問題としてとやかく取り上げられるべき問題ではないと私は考えております。当然補てんされるべきものである、こう考えておるのでございまして、これについて社会党の皆さんがいろいろ御心配なさいますけれども、そのなさる御心配が農村の方にうつりまして、農村の方に心配させる、そういうふうに思うのでございます。でございますから、食管法の第三条、第四条、生産者価格、消費者価格を変えるか変えないか、この三条、四条は絶対に変えませんと、ただいま総理からも明確にここで御答弁になっております。でございますから、われわれがいうところのものは、この点を申し上げているのであります。
 今お話しの中に、自由米がだんだんふえたらばどうするか、こういうお話がございました。やみ米が、自由米がだんだんふえたらばどうなるか、こういうお話でございました。私は、いわゆるやみ米といい自由米と申しまするものは、消費者の皆さんが今の政府が配給する価格で米を買わなくても、その価格に対してこだわらぬで、食糧は米に依存をするということでございまして、そういう生活が向上し、所得が倍増して参りますれば、おのずから消費者価格が大した問題でなくなるというときでございます。そういう時代が参れば、おのずからまた別のことが考えられるのであって、今申し上げますように、もっと米の値が高くても一向差しつかえないという時代が来るのでございますから、私は、そういう場合は、また別の場合を考えるべきであって、現在のように生産者価格が消費者価格を上回って、われわれが購入をする、政府が買う、そうして安く政府が売るというような場合におきましては、当然現在行なわれておりますような三分の二程度の安い米に依存される大衆があられる、強く期待される点があるというふうに考えますので、今申し上げましたように、自由米がそんなにふえるはずがない、また自由米がふえるような世相は来ない、こういうふうに私は考えておるのであって、それをただ仮定の価格を想像されまして、消費者が配給によらないでみんなが自由米によってきたらどうなるか。そういうふうに安い米を大して必要としないようになってくる世相こそ、われわれの期待いたす世相でございまして、その場合には、また別の問題が生まれてくることと考えます。
 いずれまた詳しいことは委員会で御説明申し上げることにいたします。(拍手)
  〔国務大臣灘尾弘吉君登壇〕
○国務大臣(灘尾弘吉君) 災害救助法り適用を拡大する考えはないかというような御趣旨に伺ったのであります。
 現行災害救助制度の趣旨あるいはその内容については十分御承知のことと存じますので、くどくどしいことは申し上げませんが、御承知のように、災害救助は、災害直後における混乱した状態の中で、生活のために必要な措置を講ずる仕組みでございます。これにつきまして、救助を実施するための程度であるとかあるいは方法であるとかあるいは期間につきまして、一応の基準は定めてございます。しかし、災害の規模、様相は申すまでもなく千差万別でございます。そのそれぞれの実態に応じまして、あるいは救助の限度を引き上げるとかあるいは期間の延長をはかるとか、臨機の措置を講ずる道もあるわけでございますので、私は、まずもって現在の災害救助法の適切な運用を期する必要があると考えるのでございます。拡大の御趣旨につきましては、なおよく一つ検討させていただきたいと存じます。
 それから罹災者の立ち上がり資金の問題につきましては、ただいま通産大臣からもお答えがございましたが、私どもに関します限りは、世帯更生資金でありますとかあるいは母子福祉資金でありますとか、さような種類の資金を活用することによって、御援助いたしたいと考えておる次第であります。
 なおまた、医療関係について、国庫負担の問題についてのお尋ねがございましたが、罹災者の医療につきましては、災害救助法にもその規定がございます。あるいはまた、低額所得者に対する医療費の貸付制度もございます。また、各種保険もあるわけでございます。現行制度を活用することによって、大体医療についての目的を達することができるのではないかと思うのでございますが、いずれにいたしましても、個人災害につきましての御質問の御趣意につきましては、十分一つわれわれの方におきましても検討させていただきたいと存じます。(拍手)
  〔国務大臣安井謙君登壇〕
○国務大臣(安井謙君) 今回災害を受けられました地方団体に対しましては、すでに二回にわたりまして地方交付税の繰り上げ支給百三十数億をやっております。また、災害復旧に対しましては、起債ワクの拡張も今予定をしておるわけでございます。さらに、地方団体が住民に対する減税その他の処置によって、財政欠陥を生じそうな場合には起債特例を設ける、あるいは農地等に対しましても、小災害に対しての起債、元利保証を含んだ起債の特例を設けるという法案を、今国会へ提出して、御審議をいただいておる次第でございます。
 なお、集団移住の問題につきましては、先般の長野県等の例におきましてその必要は痛感をいたしております。しかし、これを実施いたします際には、個人の権利義務、その他、相当いろいろな複雑な問題がございますので、目下それは鋭意検討中でございます。(拍手)
  〔国務大臣斎藤昇君登壇〕
○国務大臣(斎藤昇君) 高潮対策の事業の推進についてお答えをいたします。
 伊勢湾高潮対策につきましては、かつてないほどの事業量と、また、短期間の事業でございまするので、予定の通り三十八年度までに完成をいたしたい、かように考えております。
 大阪湾及び東京湾等の高潮対策事業につきましては、高率補助の適用のお尋ねがございましたが、これらの公共団体は相当裕福な公共団体でございまするから、従いまして、むしろ事業を早く推進をしていくという面において考えて参りたい、かように存ずる次第でございます。
 次には気象観測、防災気象業務の充実についてのお尋ねでございます。まことにごもっともだと存ずるわけでございます。ことに長期予報の的確を期しまするためには、どうしても海洋観測船によります気象観測が大事でございまするので、従いまして、これらの整備とあわせて海洋気象の観測を充実をさせて参りたい、こう考えておるわけでございます。
 また、観測用レーダーの整備は大いに効果を上げておりますることは御承知の通りでございます。できるだけ早く全国的なレーダー網を整備をいたしまして、そうして、また、必要に応じまして、先ほど仰せになりました山岳地帯へのレーダーの設置をいたして参りたい。
 さらに、通信の近代化と設備の充実をはかることも、気象業務の的確迅速を期する上において、非常に肝要なことでございまするので、これらもあわせまして気象観測用の資材その他の設備の整備に、一段と力を入れたいと存じております。
 また、気象業務に従事をいたしておりまする人員は、戦前の人員にまだはるかに下回っておるわけでございます。二十七名の防災気象官を本年設置を見まして、非常な効果を上げておりまするが、これらの増員をもあわせまして、人員の強化もはかって参りたい、かように存じておるわけでございます。
  〔国務大臣中村梅吉君登壇〕
○国務大臣(中村梅吉君) 災害に関係をいたしました御質疑のうちで、基本的な点につきましてはすでに総理からお答えがございました。なお、ほかの関係大臣からもお答えがございましたので、私は、残されておると思いまする二、三の個々の問題について率直にお答えを申し上げたいと思います。
 ダムの操作についての御指摘でございましたが、私も災害の際に現地等も見まして、また、ダム操作に関する世論にかんがみまして、建設省といたしましては、現在ございますダム操作規定は相当もう古いものでございますので、新たに再検討いたしたいということで、私が就任いたしまして以来、関係方面の専門家を委員にいたしまして、ダム操作規定の再検討を開始いたしておる次第であります。できるだけダムの操作については、適正を期することに、われわれといたしましては万全を尽くして参りたいと思います。
 それから地盤沈下に関連しまして、ビルのクーリング・タワーの設置のお話がございましたが、これは大阪の災害等を見ましても、ビル街の地盤沈下というものは、確かに工場用水の吸い上げとは別の角度でございまして、各ピルが冷房用水をくみ上げて放出をしておる、これを還流させまして、クーリング・タワーによって水を浪費しないようにするということは、非常に大事なことでございますので、実はこのビル用水の規制措置について、目下立法的な措置を講じたいという意図のもとに、ビルの使用、あるいは私権との関係もございますので、検討作業を開始いたしておる段階でございます。
 なお、高潮対策事業費というものは、一般治水事業費とは別ワクにしたらどうか、こういうお話がございました。これは確かに治山治水等の一般治水事業と、東京、大阪その他の海辺の重要な地点の高潮対策事業というものとが一緒になりますと、治水の幅というものが圧縮をされますので、私どもとしましては財政当局の御理解もいただきまして、来年度からぜひ高潮対策事業費というものは、治水事業費の別ワクとして計上を願うようにいたしたいということで予算要求もいたし、財政当局との折衝を続けておる次第でございます。さような次第で、御了承をいただきたいと思うのでございます。
 なお、一般罹災者の立ち上がり関係につきましては、私どもの方の関係としましては、住宅がきわめて重要な問題で、この点につきましては住宅金融公庫に災害復旧住宅資金のワクがございますので、われわれとしましてはこれを極力活用いたしまして、罹災者の住宅復興について寄与して参りたい、万一これが費用として足りません場合には、予備費等の使用をお願いしましても、できるだげ罹災者の方々の立ち上がりに遺憾のないように期して参りたい、こう思っておるような次第でございます。
 なお、原形復旧という原則でなしに、改良復旧にいくべきではないか。この点は最近大蔵省にも御理解をいただきまして、最近の災害復旧は、なるほど原則は原形復旧ということが法律の建前でございますが、しかし、あとの災害を防止するという、再度の災害防止ということがきわめて重要なことでありまして、そのような角度から努めて改良復旧をいたしまして、次の災害を防ぐということに重点を置いてやっております。大蔵当局もこの点につきましては最近重々御理解をいただいております。
 また、三・五・二の復旧年次の点につきましては、御承知の通り、できるだけこの三・五・二の比率を縮めていくという努力をいたしておる次第でございますが、ただ、直轄事業とは違いまして、補助事業になりますと、実施機関が都道府県であり、市町村でございますから、三・五・二の比率をできるだけ縮める、縮めることのできるところに対しては、それだけの財政措置を講ずるという建前でいたしておりますが、いろいろ事業機関等の関係もございまして、思うようにはなっていないようでございますが、極力三・五・二の比率を前進して復旧をはかっていただくように、私どもも配慮をしておるような次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(原健三郎君) 多賀谷真稔君。
  〔多賀谷真稔君登壇〕
○多賀谷真稔君 私は、日本社会党を代表し、高度成長政策の国民生活に及ぼす影響並びに当面緊急な問題である石炭政策について、政府の所信をたださんとするものであります。(拍手)
 もはや戦後ではないと経済白書は述べ、さらに、神武景気から石橋、岸内閣のもとに大蔵大臣として池田さんは積極政策を唱え、国民所得が戦前の一八〇%になった昭和三十三年二月、内閣官房審議室において次のような国民生活に対する世論調査を行ないました。それは「戦前の暮らし向きと比べてどうでしょうか。お宅の場合、戦前の方がよかったと思いますか。同じようなものであると思いますか。」というアンケートに対して、戦前の方がよかったというのが実に四六%、同じようなものというのが一八%、今の方がよいというのがわずか一九%にすぎなかったのであります。また、本年四月五日朝日新聞が調査をいたしました「去年の今ごろに比べてお宅の暮らし向きはどうでしょうか。」というアンケートに対しましては、楽になったという答えはわずかに一四%、苦しくなったというのが実に三一%あったのであります。これうの世論調査を見るときに、戦後の、すばらしいといわれるわが国経済の成長も、決して国民の窮乏感を緩和し、生活の不安を払拭したものではなくして、経済の成長は、貧乏をより成長さしているのではないかと私は考えざるを得ないのであります。(拍手)
 むやみに太るからだは必ずしも健康体とはいえません。高度成長が日本経済の体質改善をし、真のバランスのとれた健康体となりつつあるかどうかが問題であります。まず、体質改善を要請された中小企業は、はたしてその方向に進んでおるでありましょうか。この高度成長下において、中小企業は二つの傾向を示してきたのであります。
 その一つは、機械工業等の成長産業領域において、大資本の系列化に入り、急速に成長しつつあるものがあります。新しい系列において、一面生産力的な合理性実現の傾向もありますけれども、その多くは、依然として景気変動の安全弁のためのものであり、かつ、中小企業の低賃金を利用するための非合理的従属関係にあるのであります。今後自由化を迎え、大企業相互の競争から系列化が促進せられ、コスト・ダウンが強制せられ、不当な取引が強要されてくるでありましょう。もはや下請代金支払遅延等防止法のごときものでは解決できない段階にきておるのであります。わが党は、親企業に圧迫されることのないよう、下請関係法の制定を主張しているのでありますが、政府の御所見を承りたいと思います。(拍手)
 第二の傾向は、従来の中小企業の専門領域に巨大資本が進出して、中小企業を排除せんとする傾向にあるのであります。大電機メーカーは、そのネーム・バリューの威力をもって、石油、ガス・ストーブ製造にまで乗り出し、繊維会社は、ワイシャツはもちろん、おしぼりや台所のふきんにまで手を出し、巨大商社は次々と扱い品目を拡張して、系列化を進め、即席ラーメンや卵やサラダ油、粉末とうふまで扱ってきておるのであります。百貨店は進出し、スーパー・マーケット・システムは、従来の八百屋、魚屋にかわって食料品店にまで伸びて参りました。このことは、農業の分野にまで及び、鯨会社がみずから養鶏、養豚を行ない、牛乳は、近き将来わが国のいかなる寒村に行ってみましても、森永、明治、雪印以外のマークの牛乳を見出すことは困難になろうとしておるのであります。(拍手)これ、まさに大企業天国の姿であります。産業分野の確保こそ、中小企業政策の基本的柱でなければなりません。この点に関し、先般、自民党幹事長は、大企業の進出を規制することは憲法違反であると述べたといわれておりますけれども、労働者の基本的人権を剥奪する場合には憲法違反でないとして、大企業の無謀な進出の制限は憲法違反であるとずる自民党の憲法解釈こそ、憲法は国民のためのものではなくして、独占のためのものであると考えておる証左ではないでしょうか。(拍手)産業分野確保に関する総理の御見解を承りたいと思います。
 現在中小企業のあらゆる団体が要望している中小企業基本法の制定について、政府はいかに考えておるのか。政府の態度はきわめて不鮮明でありますが、一体いつ国会に提出されるのか、提出するとするならば、その構想はいかなるものであるのか、通産大臣より御答弁を願いたいと思います。
 さらに、私は、求人難が中小企業の存立基盤をゆるがしている事実を見て、中小企業の労働政策の確立と社会保障の推進を特に強調いたしたいのであります。経済白書は、大企業と中小企業の規模別賃金格差は縮小したと述べております。しかし、これは政府の都合のよいところだけの説明であります。なるほど、初任給並びに若い労働者の賃金の格差は縮小しております。しかし、三十才をこえると逆に増大をしておるのであります。中小企業の労働者は大企業へと引き抜かれていっておりますけれども、実態は、ほとんどが本工員ではない長期の臨時工として使われておるのであります。大企業の臨時工雇用政策こそ、今日の中小企業の求人難の最大の原因であり、この面からも、大企業には中小企業圧迫の面を見出すことができるのであります。(拍手)ゆえに、かような大企業の差別的雇用政策は当然廃止すべきものであると思います。
 次に、適用労働者百万人をこえたと労働省は宣伝しておりますけれども、そのほとんどが二百円から二百三十円程度の、まことにお粗末な内容の業者間協定を中心とする最低賃金法は、もう職業安定所の露払いにしかすぎません。ざる法にならないように、家内工賃も早急に制定できるような家内労働法を作って、労働者の生活の安定をはかるべきであると思います。さらに、社会保障の法律の恩恵の外にある五人以下の企業の労働者に対して、健康保険、厚生年金、失業保険等を当然加入とし、使用者の負担率を改めて、国が代替し、すみやかに社会保障制度の充実をはかるべきであると思うのであります。これなくしては、中小零細企業は新しく雇用をすることができず、企業そのものが自滅の方向をたどるに至るでありましょう。これらに対する労働、厚生両大臣の御所見を承りたい。
 次に、今日この金融引き締め政策により、すでに二百十日の台風手形まで出され、勘定合って銭足らずという黒字倒産が現われ始めてきておるのであります。昨日の池田総理の答弁では、中小企業金融対策として、政府関係三機関に三百五十億円をきめたから十分であるというようなお話でありました。しかし、現実はそんななまやさしいものではないと思います。昭和三十二年の景気後退時においても、市中銀行の中小企業向け貸し出し残高は、前年に比べ三・八%低下しております。今かりにこの低下率を現状に当てはめますならば、三十六年度中小企業向け貸出残高当初見込みが六兆三千八百億円でありますから、実にその計算でいきますと、二千四百億円も中小企業にしわ寄せになる計算になるわけであります。三百五十億円では、全く焼け石に水ということになるでありましょう。このような金融逼迫の中において、総理は、中小企業向け貸し出しは金利を上げないと言っておられますけれども、政府機関はともかくといたしまして、他の民間金融機関の中小企業向け貸出金利を、どうして具体的に抑制をされるのか。また、予想をされる選別融資、歩積み、両建をどうして規制をされるつもりであるのか、もっと明確にお答えを願いたいと思います。(拍手)
 第二に、高度成長下において二重構造の底辺並びにその周辺にある人々は、はたして生活が向上したでありましょうか。
 賃金の上昇率も、生産性の向上率よりもはるかにおくれ、労働分配率は低下の一路をたどっておる中に、重役の所得だけは一般勤労者よりも著しく上がっておるのであります。高度成長は貧富の差をますます拡大をしておるのであります。福祉国家たるの要件は、富める者より多く税を取り、貧しき者に社会保障、教育、住宅、食糧等の政策を通じて多くの再配分をするということであろうと思います。はたして所得再配分が有効に行なわれたでしょうか。経済自書は、経済成長をたたえた後に、その末尾におきまして、「全体を総合してみてもわが国の所得再配分の効果はあまり大きなものであるとはいえない。」と遠慮がちに述べておるのであります。物価の高騰は、国民生活に非常な脅威を与え、特に低所得者は物価値上げの最大の被害者となりました。去る三月、公共料金の値上げは当分の間行なわないと閣議了解をしたその口の下で、東電の料金の値上げを認可し、このことは、私鉄から、バスヘと、あるいはまた水道料金へと連鎖反応を今起こしつつあるのであります。これらを認可するつもりであるのかどうか。もし臨時国会の終了を待ってということであるならば、まさに国会軽視もはなはだしいといわなければならないと思います。(拍手)運輸大臣の御答弁をお願いいたしたい。
 第二に、池田総理は、低所得者にも好景気の恩恵をと、生活保護基準を五%引き上げると言われておりますが、すでに消費者物価は、東京において、ことしに入ってから七・五%、四月から四・九%も上がっておるのであります。しかも、値上げは足早にやってきております。厚生省が面目にかけてとがんばった、当初予算要求二六%にも及ばないのでありまして、この五%は物価騰貴の手直しにも足らないという状態であります。何ゆえ大幅に上げないのか。同じまた低所得者の中で、日雇い失業者の賃金は何ゆえ据え置きにされたのか。労働大臣が外遊中で留守であったとか、あるいは忘れておったとかいうような言いわけでは済まされない問題であると思うのであります。(拍手)また、六百八十万をこえる、減税も及ばない、生活保障もないボーダー・ラインの人を一体どう処置するつもりであるか、お聞かせ願いたい思います。
 第三に、医療保障について、ことに医療費値上げに関連をしてお尋ねいたしたい。自民党は両医師会の一斉休診、保険医総辞退戦術にあわてて、医師会と単価値上げの政治上の取りきめをいたしました。当初予算は単価一〇%の値上げを予定し、それにより政府負担分としてわずか七十四億円しか計上しておらず、しかも一〇%アップによる国民健康保険の患者負担分は四十六億円の増になっておるのであります。しかるに、厚生省はその後一二・五%引き上げを告示し、実施しておりますのに、予算の追加を全然行なっていないのであります。前国会において、わが党の社会労働委員の医療費値上げによる予算補正要求に対し、総理は次の臨時国会で補正をすることを確約したにもかかわらず、この公約がなされていないということは、総理の医療保障への熱意の欠除を端的に物語るものであると思うのであります。わが国の健康保険受益者一人当たり支出の所得における割合は四・五七%でありまして、各国の中間に位しておるのであります。しかるに、初診料五十四円、便の寄生虫検査二十七円と、治療費のきわめて低いことを医者をして嘆かしているのでありますけれども、その原因は、国民所得の低いことと病気の多いことに基因していると思うのであります。西欧の国々では、一世帯一年間に八回以上医者にかかる国はないといわれております。しかるに、わが国においては実に十四回をこえておるのであり、これは結局小児麻輝のワクチンに見られたごとき、予防医学の貧困と環境衛生の後進性によるものと思うのであります。赤痢のような恥ずかしい病気が一年じゅう流行しているような文化国家がどこにあるでしょう。これは結局国及び地方団体が本来負担をしなければならない上水道やあるいは下水施設の整備をやっていない結果であって、これが国民医療費の負担になって現われておるのであります。病気は貧困をもたらし、貧困は病気をもたらします。医療費の負担は低所得者ほど大きいのであります。ネオン輝くはなやかな町のすぐ裏に、山谷や釜崎のようなスラム街が同居しており、病院には冷房がないけれども、どこのパチンコ屋にも冷房が入っておるような現実をもたらしておるのが、これが池田内閣の高度成長政策の実態であると思います。(拍手)これらに対する総理並びに関係大臣の御答弁をお願いいたしたい。
 次に総合エネルギー対策、なかんずく石炭政策についてお尋ねしたいと思います。
 昭和三十八年を目標として、千二百円コスト・ダウンが至上命令の形で提起されて以来、炭鉱には合理化のあらしが吹きすさびました。その合理化の方式は、きわめて原始的な、非近代的な方法がとられたのであります。
 第一は炭鉱の閉鎖、第二は首切り、第三は大幅な賃金引き下げ、第四は租鉱権の第二会社への移行、第五は機械修理工場を初めとする坑外職場の分離等であります。結局、これらは全部首切りと低賃金によるものであって、合理化は労働者側の犠牲によってのみ強行されてきたのであります。その結果、今日まで基準年度たる昭和三十三年度に対し、実に六万名もの者が山を去っていきました。出炭能率は五〇%上昇を示して参りました。しかし、その陰には、三菱新入やあるいは上清炭鉱のごとき、あるいは豊州炭鉱等のごとき相次ぐ大災害のあったことを忘れてはならないと思います。労働者当たりの災害率が六%も上昇しておるのであります。かように労働者は合理化のために最大の譲歩をし、がまんをしてきました。しかし、いまだ石炭鉱業はその前途に曙光すら見出すことができないのであります。加うるに、貿易自由化の繰り上げは、ざらに向こう一年に労働者四万七千名の首切り、能率三〇%以上の引き上げという、実に過酷な合理化要求が突きつけられようとしておるのであります。かかる情勢のもとにおいて、政府は石炭鉱業をわが国経済の中においていかに評価をし、それにいかなる地位を与えようとするのか、国民の前に明らかにしていただきたいと思うのであります。(拍手)
 第一に、政府はエネルギー安定の見地から国内エネルギーの供給確保をいかに見ておるか、まずお尋ねいたしたい。輸入エネルギーの依存度は、昭和四十五年度は五八・八%も増大し、五十五年度には実に七二・五%にも達することになっております。かように大幅に輸入に依存することが、はたして国策として妥当であるかどうか、疑問なきを得ないのであります。石油には価格はないといわれるほど、価格は国際石油カルテルによって政治的にきめられておるのであります。エネルギーが経済発展の原動力であり、基幹物資であるだけに、一定規模の国内エネルギーの確保が絶対に必要であると思うのであります。欧州諸国は、今日エネルギーの供給の安全性の保障の見地から、国内エネルギー源の積極的確保の方法を検討しておるといわれております。貿易自由化になり、ボイラー制限法が廃止されるならば、国際的石油カルテルの攻勢がわが国の産業界にやって参り、わが国の石炭産業は一たまりもなく私は壊滅するであろうと思うのであります。(拍手)これはまた、国内開発の石油についても当然同じ運命をたどると思います。欧州における石油は、西ドイツが最も安いという事実をわれわれは何と見たらよいでしょう。ドイツ石炭の市場を奪わんとする国際石油カルテルの動きではないでしょうか。これを防ぎ得る唯一の道は、国内エネルギー源を守るという大方針の確立以外にはないのであります。(拍手)これに対し政府はいかに考えられておるか、総理の御所見を承りたい。
 第二に、政府の石炭政策は、資源主義から経済合理主義へと転換し、その経済合理性が千二百円引き下げの合理化計画の基調をなしておりますけれども、政府はこの経済合理性の根拠をどこに置いておられるのか、お尋ねいたしたい。単に重油と石炭の価格比較を行なって、安いエネルギーを使用するということは、個別企業の立場からの合理性はありますけれども、はたして国民経済全体の立場から合理的といえるかどうか。輸入エネルギーに要する所要外貨だけでも、昭和四十五年度は十九億ドルと増加し、さらに労働集約的産業であり、関連産業の労働者多数をかかえております石炭鉱業のこれ以上の急激な縮小は、社会的総コストを増大するのみであります。ここに、完全雇用の状態にある欧州諸国においても、この社会的側面についてはきわめて慎重に配慮し、わが国のごとくせっかちに、鋭角的に合理化が進められていないそうであります。
 以上の諸点から総合的に考え、政府はわが国の石炭鉱業をいかに評価せんとするか、所見を承りたい。(拍手)
 ざらに海外エネルギーと国内エネルギーの調整、国内エネルギー内の調整の問題、そういったエネルギー総合政策の樹立が必要ではないか、いわばエネルギー基本法の制定が必要ではないか、これに対して関係大臣から御答弁を願いたいと思います。
 第三に、政府は何ゆえに経営者側の合理化を要求しないのか、お尋ねいたしたい。炭鉱の合理化は、まず生産体制の集約化であり、生産体制の集約化は鉱区の整理統合であります。イギリスが国有化し、フランスが公有化しておるのは、ともに鉱区問題の解決のためである。第一次大戦後の合理化は切羽の集約化であり、第二次大戦後の合理化は鉱区統合の合理化といわれておるのであります。西欧資本主義国における石炭の国有化は、単に社会主義政党のイデオロギーによるものではなく、石炭産業の性質からくる合理化対策であるといわなければなりません。(拍手)しかるに、わが国においては、鉱区の整理統合が全然行なわれないために、多くの山が閉鎖し、国民の貴重な資源が死蔵されておるのであります。それのみか、最近は逆に租鉱権への移譲、第二会社への移行の形をとった鉱区の分散が行なわれ、近代化とは全く反対の石炭全体の非合理化が平然として行なわれておるのである。地下資源は本来国民のものであります。鉱区は国民に最も役立つように開発されなければなりません。一部の旧財閥会社によって独占せられ、私的利潤追求の対象となり、鉱区問題が合理化の最大支障になっているにもかかわらず、政府は鉱区改革に何ら対処されようとしないのは、当然非難されてしかるべきであると思います。(拍手)
 さらに、改革を要請されておる問題に、流通機構の一元化の問題があります。銘柄は二千数百に及び、複雑な中間販売機構の存在は、たとえば山元で三千数百円しておる家庭用炭が、東京においては実にトン当たり一万円以上もしておるのであります。北海道の石炭が東京を越えて阪神に行っておる、九州の石炭が阪神を越えて東京へ行っておるという、全くむだな錯綜輸送が現実に行なわれておるのであります。価格の二五%ないし二〇%を占める流通経費の削減が当然必要であるのに、これまた個別資本の利害関係から何ら対策が行なわれていない。経営者は、今日この状態は石炭鉱業として最大の危機であると言っておる。しからば、なぜ、みずからの犠牲による合理化を回避しようとするのか。鉱区も販売機構も明治時代の経営そのままの姿にして、真の合理化ができるでありましようか。この際、政府は自由主義のイデオロギーに固執することなく、鉱区の整理統合、休眠鉱区の解放、流通機構の改革等を断行して、石炭鉱業の継続的安定をはかるべきであると思うが、これらの点に対する総理の明快なる答弁をお願いしたい。
 第四、政府は炭価値下げにいかなる協力をなしたかお尋ねしたいと思います。
 千二百円のコスト・ダウンのらち、四百円は政府の施策に期待するということになっておりましたが、現実は運賃、坑木、電力料金、火薬、荷役等の値上がりにより、トン当たり逆に約四百円のコスト上昇があり、千二百円ダウンが政府の政策によって重大な破綻を来たそうとしておるのであります。政府はコスト・ダウンどころか、逆にコスト・アップに協力しているではありませんか。一体、政府は、直接コスト引き下げのためにいかなる処置を講じようとしておるのか、お伺いしたいと思います。
 第五に、炭鉱最低賃金の設定について質問いたしたいと思います。
 現在「炭鉱労働者にして、緊急失業対策事業よりも低い賃金で働いておる多くの労働者のあることを私は指摘いたしたいと思うのであります。(拍手)しかも一賃金引き下げは中小炭鉱より大手炭鉱へと一巡」、杵島のごときは九千円の賃下げが行なわれ、また、再度の賃下げ攻勢が今や行なわれようとしておるのであります。地下数千尺のもとに、生命の危険を冒して働く炭鉱労働者が、生活をも破壊されるような低賃金しかもらえないということは、全く放置できないゆゆしき問題であると思うのであります。労働者は、この際限のない賃下げに、炭鉱に希望を失い、大手、中小を問わず、容易に転換のできる若い者、技術を身につけた者は、日々山を去っていっている状態であります。この中堅労働者の退職は、やがて炭鉱の近代化を不可能にするばかりでなく、わが国の炭鉱自体を破壊する結果になることは明らかであります。政府は、すみやかに炭鉱の最低賃金制度を確立して、苦しいながらも最低の保障だけは確保し、希望ある職場を作ってやることが必要ではないでしょうか、労働大臣の御所見を承りたいと思います。(拍手)
 第六に、炭鉱離職者対策と産炭地振興政策についてお尋ねいたしたい。
 今日解決を迫られておるわが国の雇用問題は、大きく言えば二つあります。一つは、中高年令者の雇用問題であるし、一つは、一方において労働力が足りないという現状の中に、労働力が非常に余って困っておるという過剰労働地帯の問題であります。この地域間の労働力流動化の先決条件は、私は率直に言うと、住宅の問題であると思う。ことに、炭鉱は、終戦直後傾斜生産の頂点として、食糧の加配を受け、炭住を建てて、全国から家のない戦災、引揚者を集めて参ったのであります。もし、政府が当時の努力の十分の一でも傾けるならば、この問題はかな力改善されると思うのであります。次に、職業訓練を充実し、さらに中高年令者の雇用促進のための奨励金の交付、前収の差額補償、失業保険の延長、政府支出による特別な失業手当の創設等、画期的な措置を講ずる必要があると思うのであります。政府はさきに雇用促進事業団を新設いたしましたが、これは従来の炭鉱離職者援護会と労働福祉事業団から分離した職業訓練部を合わせたにすぎず、全く羊頭を掲げて狗肉を売るの類であります。労働大臣は、この転職に弾力性のない中高年令者の多い炭鉱離職者の再就職をいかにして行なわんとするか、実効ある方法をお伺いいたしたいと思います。(拍手)これらの政策がかなり前進をいたしましても、相当の労働者が滞留をし、現在の死の谷、地獄谷、飢餓の町といわれる失業地帯は容易に解消されず、破壊された地域経済は救済されないのであります。
 第二次世界大戦後の失業問題は、局地的失業問題であるといわれております。この慢性的労働力過剰地帯の解消のために、英国は、御存じのように、工場配置法、地方雇用法を制定いたしました。アメリカにおいてすら、不況地帯再復興法が作られ、池田総理が最も敬愛をされているケネディ大統領は、選挙公約において、この慢性不況地域の再開発を重点にやると公約されておるのであります。
 政府の提出しております産炭地域振興法案は、遺憾ながら事業推進の機関がありません。新しい産業誘致のための土地の確保、関連施設の整備、また、みずから雇用を拡大するための事業の経営、各企業への投資または助成等を行なうべきであって、これなくしては政府案は単なる審議会の調査法案に終わり、住民の要望と期待にこたえることはできないと思うのであります。(拍手)政府はすべからく産炭地域振興公団とも称すべきものを作って、産炭地振興のために万全を期すべきものであると思うのでありますが、御所見を承りたいと思います。(拍手)
 今や、石炭政策転換を求める声は、国民的要求となって政府に迫りつつあります。現在、炭労四千名の諸君は、九州、北海道より国会へと、政策転換を叫んで行進しつつあります。全炭鉱、職員組合の諸君もそれぞれこれに呼応する態勢をとりつつあり、経営者諸君も近くまた全国決起大会の開催を予定しております。
 一九五七年未曾有の石炭危機に直面した西ドイツの炭鉱労働者は、石炭鉱業とみずからの生活を守るために、山から首都ボンに向かって大行進を行ない、国民の共感を呼び起こしつつ、政府にその政策の確立を訴えたのであります。西ドイツの政府は、この炭鉱労働者の切実なる要求を全面的にその内容を聞きいれまして、今日見られるような雇用対策を含む石炭政策の確立に踏み切ったのであります。池田内閣も、この際、働く人々の叫びに静かに耳を傾け、石炭鉱業の抜本的対策を確立されんことを最後に強調いたしまして、私の質問を終わる次第であります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 まず、中小企業関係で下請関係の問題をお話しになりました。下請関係法を制定してはどうかというお話でございますが、まだその内容を私存じておりません。ただいまございます下請代金支払遅延等防止法等を活用していくと同時に、また大企業が不公正な進出をなす場合におきましては、独禁法の運用等で考うべきでございましょう。また資金その他の指導面につきましては、商工会法の精神にのっとって指導していくべきでございましょう。ただ、こういう法律に待つまでもなく、私は、今回の緊急措置によりまして中小企業のしわ寄せを極力未然に防ぐために昨日金融についてはお話を申し上げた次第でございます。その際に、三百五十億円で十分だとは言っておりません〇三百五十億円以外になお二百億円を買いオペで融資しますと、これでもなお足りなければ臨機に適当な措置をとると言っておるのでございまして、あれで十分だとは言っていないのであります。
 それから中小企業に対し策する金利の問題でございます。これは、私は、金利問題に直接関係はございませんが、大蔵大臣をして、日本銀行並びに銀行協会に、今回の措置によって中小企業に対する金利の引き上げを行なわないようにと、強く指導してもらうことを申しつけました。従いまして、きょうの新聞によりますると、信用金庫あるいは相互銀行等におきましては引き上げないということが載っておりました。また、一般の銀行におきましても、三百万円以下の貸付はもちろん、ほんとうに中小企業の資金といたしましては、できるだけ引き上げずにやっていくという方針に変わりないと思います。
 なお、医療関係につきまして、補正予算云々の問題がございましたが、医療問題懇談会とか、あるいは医療審議会等の結論が出ませんので、補正予算を作るに至らなかったのでございます。また、七月の医療費の値上げによりましてからの結果も、まだ出ておりません。詳しくは厚生大臣よりお答えきすことにいたします。
 なお、病院に冷房がなくて、パチンコ屋にあるというお話でございますが、私は、あいにくパチンコ屋には生まれて行ったことがございませんが、しかし、病院の中にも、あるところもないところもございます。これは自由主義経済の原則によりまして、私は、所得倍増によって、全部冷房が病院に行なわれることを期待いたします。
 なお、石炭対策でございまするが、石炭の価格が安いから石炭、高いから重油の方へ変わっていくという政策は、政府はとっておりません。すでに多賀谷君御承知の通り、石炭に対する問題は価格面ではございません。雇用の問題もあります。あるいは国内資源開発の問題もあります。また、国際収支の問題等々、各般のことを考えていくべきでございます。私は、一昨年来このことを研究いたしまして、その後も、石炭鉱業の合理化促進には万全の策を講ずるよう努めて参ったのでございますが、最近におきまして、貿易自由化の問題から、急にまたやかましくなって参りました。従いまして、政府におきましても、また、国会におきましても、石炭問題につきまして特別に考慮を払うべく研究をされるようで、私は大賛成でございます。
 それから石炭の合理化について、鉱業法の改正等々、お話がございました。御承知の通り、鉱業法の改正は、せっかく今審議会で検討中でございます。また、一昨年の西ドイツの石炭対策も研究いたしております。ベルギーあるいはフランス等々についても、通産省は、極力この問題に没頭して対策を検討中でございますので、しばらくお待ちを願いたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣水田三喜男君登壇〕
○国務大臣(水田三喜男君) 中小企業に対する金融問題でございますが、行き過ぎた設備投資を少し押える必要が出てきているというための金融措置でございますので、この措置によって、中小企業にしわ寄せが特にこないようにという配慮を、私どもは十分しておるわけでございますが、一番心配なのは、中小企業の金融は、一般の市中金融機関からの金融が何兆億円ということでございまして、政府関係機関の資金量というものは、そう多いものではございません。従って、公定歩合を引き上げましても、まず金利を上げないようにという措置を前回の七月のときからとっておりますし、今回もこういう措置をとることにしております。金利だけでなくて、資金量を切られることが中小企業には一番困る問題でございますので、前回の場合も、銀行の申し合わせによって、資金量は落とさぬということをきめてもらいましたが、今回も、同じように、貸付率というものを落とさないような行政指導は十分して参るつもりでございます。
 それから政府関係機関に対しましては、先ほど総理からお答えがございましたように、国民金融公庫に九十五億円、中小企業公庫に九十億円、商工中金に百六十五億円の資金手当をいたしましたが、それ以外に、まだ政府資金で、中小企業向けの金融を円滑にするために、買いオペレーションをするという方針をきめました。これは必要に応じて順次適切な対策をとっていくつもりでございますが、とりあえず、政府はそういう方針をもって、根本的には、市中金融機関の資金を中小企業に対して確保するという方針を第一位にして、政府関係機関に対するいろいろな施策と相待って、この点だけは十分に、私どもは配慮したいと考えております。(拍手)
  〔国務大臣佐藤榮作君登壇〕
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいま、通産省が、最も力を入れております中小企業対策並びにエネルギー対策についてのお尋ねでございます。従いまして、詳細にわたりますと時間も相当要しますが、これは他の機会に譲ることにいたしまして、総理あるいは大蔵大臣からお答えした以外の点で、お答えをしてみたいと思います。
 まず第一に、お尋ねの中小企業基本法をいかにするかというお話でございます。申すまでもなく、中小企業は、その業態が千差万様でございます。従いまして、その実態を十分把握して、それに対する対策を立てなければならないと思います。まず、その調査をすること、それによって必要な今後の中小企業のあり方を方向づける、そういうものを基本的に調査することが大事なことだ、かように考えております。従いまして、中小企業基本法の制定は、時期的にはややおくれることはありますが、これは真剣に取り組みまして、そうして、中小企業が自由化後の事態におきましていかにあるべきか、その基本的なもの、また、政府がいかにこれを指導すべきか、育成すべきか、そういう点を明確にいたしたい、かように考えます。かように申しましても、当面しております中小企業に対する対策をないがしろにするという意味ではございません。今日とられております緊急調整措置、その面からも、いろいろ中小企業は困難な状態に立ち至っておると思います。
 ただいま、下請代金の支払いについて、その遅延についてのお尋ねがございました。総理からお話がございましたが、今後下請契約等の条件が悪化するようなことがないように、この点につきましては、現行の法律だけで十分かどうか、さらに私どもは研究して参る考えでございます。なおまた、ただいまのところは、私は下請契約自体が、その条件が悪化しているとは考えておりません。従いまして、先ほど総理が指摘いたしましたように、下請代金の支払い等において、これが手形その他になり、非常に遅延している。これについては、下請代金支払遅延等防止法、これを十分運用いたしまして、そうして現在の窮境を救いたい、かように考えております。
 なお、金融自体につきましては、一応、三公庫初めその他のものに対して資金ワクを拡大いたしておりますが、もちろん、金融の問題でございますから、常時その実態等を把握いたしまして、弾力的な運用をすること、これはもちろん大事なことだ、かように考えます。従いまして、中小企業庁、中小企業の主務官省であります通産省といたしましては、金融の実態について絶えず監視してその弾力的運用に違算なきを期したい、かように考えております。
 また、次のエネルギーの問題でありますが、ただいま総理からその一端に触れられました。私ども、総合エネルギー対策という観点に立ちまして、ただいまこれと真剣に取り組んでおります。すでに石炭部会の答申は得ております。また、近く石油部会も外国の実情等調査に来月早々出張することになっております。もちろん、これらの審議会の方々の意見は、私どもが施策を樹立する上の参考にいたすわけのものでございます。従って、早急にこれらの調査をいただきたいと思っておりますが、しかし、先ほど来御指摘になりました石炭自体の問題につきましては、総理がお話しいたしておりますように、石炭と石油をなまのままで対立競争さす、かような考えは毛頭持っておりません。いわゆる石油が安く石炭が高い、こういうな宙の姿において石油と石炭を競争ざす考えは毛頭持っておりません。また、石炭自身につきましては、ただいま総理からお答えいたしましたように、供給の安定性であるとか、あるいは雇用の面であるとか、その他外貨の面であるとか、いろいろの観点からその経済性を考えていかなければならないと思っております。
 そこで、石炭の将来についての問題でありますが、政府としては五千五百万トンを確保する考え方でございまして、そして、この五千五百万トンを確保していく、また、その供給を続けていく、この観点に立ってのいわゆる炭価千二百円引きというこの基本的線を実は堅持いたしておるのであります。これをいかにすればできるかということになりますと、先ほど来個々の点にいてのお尋ね、御意見が出ておりますが、いわゆる能率炭鉱に力を集中していく、そのためには、鉱区の整理も必要でございますし、あるいは休廃止の問題も出てくると思います。そして、能率ある炭鉱による五千五百万トンの供給、しかもこれを長期に引き取り契約をさすということで、その七割程度は供給が確保されるような施策をとりたい、これが私どもの主眼点であります。その場合に生じます、あるいは資金の確保の問題であるとか、あるいは労務対策であるとか、いろいろ問題が起こるわけであります。ことに、今後の離職者が中高年層の労務者において予想されるという事態に対しましては、十分通産省としても考えて参りたいと思います。政府自身は、これらの問題に対処するために石炭関係の懇談会を政府部内に持つことにいたしております。来週早々にも発足する予定でございます。もちろん、今日まですでにそれぞれの対策等は立てられておりますが、その内容の充実を要するものについては、さらに内容を充実し、新たな工夫をこらして、この石炭対策と真剣に組り組んで参る考えでございます。(拍手)
  〔国務大臣藤山愛一郎君登壇〕
○国務大臣(藤山愛一郎君) 物価騰貴につきまして、御承知の通り、四・七%の上昇を見ましたことは、経済成長の段階におきましても、また国民生活の中におきましても、非常に重要な問題だとわれわれは考えております。従いまして、政府といたしまして、これに対して十分な対策を講ずるということはむろんでございまして、一般的な物価の運営につきましても、需給の関係を十分に調節して、そのために起こる物価値上がりというものは当然打開して参らなければならぬと思います。また、そのためには臨時的な措置等を講じて、そうしてその緊急事態を切り抜けて参る、あるいは木材等の関係におきまして打ちましたような諸般の手、あるいは緊急輸入というようなことも考えて参らなければならぬと思います。また、流通機構の整備その他合理化を行なって、中間マージンの適正化もやって参らなければなりませんし、独禁法を活用いたしまして、便乗的な協定を防止するということも心がけて、強くこれを監視して参らなければならぬと思います。
 今申し上げたような処置をとりつつ、あわせて公共料金の問題につきましては、三月七日の閣議決定を、七月に至りましてさらに再確認をいたしまして、当分、公共料金については、原則として値上げをしない。しかしながら、やむを得ない経済発展の過程において、それを許さない限りにおいては、かえって物価騰貴その他諸般の将来の発展に困難を来たすような面については、これは厳重に当該主務官庁において審査をされまして、そうして、十分将来の発展のための緊急やむを得ないというものに限ってへ特別の場合を認めるという方針にいたしたわけでございまして、その活用によりまして、十分公共料金の問題につきましては抑制の措置を続けて参りたいと、こう思っております。
 なお、御質問にありました低所得階層に対する影響でございますが、これはもちろん、低所得階層に対しまして、物価の値上がりというものは影響をいたしておるのでございまして、決して楽観すべきものではございません。可処分所得の増加もいたしてはおりますけれども、しかし、低所得者層の消費支出ということも相当進んでおりますことも、これまた言うまでもないことでありまして、その点については、十分物価対策の上において考慮を払って参らなければならぬと同時に、他方、社会保障の面等において、十分、物価政策の上において足らざるところを補う必要があると存じております。(拍手)
  〔国務大臣福永健司君登壇〕
○国務大臣(福永健司君) 多賀谷さんから、私に対しましては数多くの御質問がございましたが、以下、整理をいたしましてお答え申し上げます。
 賃金等につきましての大企業と中小企業の格差是正の問題でありますが、これはもとより重点施策の一つでなければなりません。問題の性質上、一瞬にして解決というわけにも参りませんが、根気強く諸般の施策を進めていきたいと存じます。基本的には、中小企業の労働条件を改善することが必要でありまして、今後とも最低賃金制の拡大、労働時間の漸進的短縮、安全衛生の確保等、いろいろの施策を推進していきたいと存じます。
 次に、失業対策事業就労者の賃金引き上げの点でありますが、これが今次補正予算に数字を表わしていないことは、私も残念に存じます。本年度における措置といたしましては、就労者の所得の増加について何らかの適切な措置を講じたいと目下検討、折衝中でございます。皆様の御推挙をいただきまして列国議会同盟執行委員たるがゆえに、とのたび外遊をいたしました。しかし、そのゆえをもってこの問題がうまくいかなかったということは断じてありません。議会外交の推進ということは、私は、世界の趨勢にかんがみて、わが国において最も大切であると思いますから、大臣たる地位とこの執行委員たる地位を両立せしめていくように、今後とも努力いたしたいと考えております。
 それから賃金の低廉な労働者について、最低賃金制の普及拡大をしていかなければならぬことは、これは当然でございます。現在の適用労働者の数等については、多賀谷さんの示されたところでありますが、労働省といたしましては、さらに昭和三十八年度末までに適用労働者を二百五十万人とする普及拡大計画を強力に推進したい所存であります。
 なお、家内労働法制定についてお尋ねがございましたが、ただいま臨時家内労働調査会におきまして、これを検討願っております。その答申を待ちまして善処したいと存じます。
 炭鉱労働者の最低賃金制について御質疑がございました。この点につきましては、ただいま中央最低賃金審議会において、労使、公益三者構成の小委員会を設置いたしまして検討を願っております。やがてその結果が出ると思いますので、これによって善処いたしたいと存じます。
 なお、中高年令者の就職については、適職訓練を積極的に推進いたしまして、新しい職場への就職を容易にするとともに、中高年令者の適職を調査いたしまして、この結果に基づきまして、これらの職種には中高年令者を優先的に採用するよう、政府関係機関等に勧奨いたしておる次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣灘尾弘吉君登壇〕
○国務大臣(灘尾弘吉君) まず第一に、中小企業に働いておられる方々に対する社会保障の問題でございます。この点につきましては、御指摘の通りに、現在、中小企業、特に五人未満の事業所に使用せられておられるような諸君に対する社会保障制度が、大きな企業に使われておる人たちに対してよほど格差があるということは、これは事実であろうと思います。私は、とりあえずの問題といたしましては、これら零細な企業に従事しておられる方々に対する問題として、国民年金あるいは国民健康保険、それの内容の充実、水準の向上をはかって参りたい、かように考える次第でございますが、御承知のように、各種の保険が今並立いたしておるのであります。そうして、その保険の間にかなりアンバランスのあることも、御指摘の通りであります。こういうふうな点について、やはり慎重に検討を加え、いわゆる総合調整を行ないます等、社会保障の背景を整備するということが、今後の大きな課題ではなかろうかと思うのでございまして、この方面のことにつきましては、せっかく勉強させていただきたいと思うのでございます。
 生活扶助の大幅引き上げの問題について御質疑がございましたが、生活扶助の基準は、生活保護法にとりましては基本的な大事な問題であります。従って、この基準を定めることにつきましては、よほど慎重な検討を要すると思うのであります。われわれといたしましては、いわゆる経済成長とか所得倍増とかいう時代であります。国力が充実するにつれまして、国民生活の底を上げて参りたいという念願を持っておる次第でございます。本年度の予算において、御承知のように、一八%の引き上げが行なわれたのであります。来年度の予算におきましても、さらにまた大幅の引き上げをお願いしたいと思っております。ただ、昨今の物価の動向等にかんがみまして、この際、とりあえず、五彩ばかりの引き上げをお願いすることにいたした次第であります。御了承をいただきたいと思います。
 それから医療費の改定に伴う補正予算の問題でございますが、去る七月に医療費の改定を行ないました。その結果といたしまして、一部予算の補正をお願いしなければならぬ面がございます。その後、医療問題懇談会等の経過に徴しまして、なお一部是正を適当とする点があると思いましたので、ただいま中央医療協議会に諮問いたしておるところであります。その結論を待ちまして、前の分と合わせまして、いずれ適当な機会に予算措置をお願いしたいと思っておる次第であります。
 また、国民健康保険の療養給付費に対する国庫の負担率の問題でございます。この問題につきまして、前国会において、きわめて御熱心な御要望がありましたことはよく承知いたしております。これは、恒久的な制度としての国民健康保険の財政健全化対策だと考えるのでありまして、この種の問題につきましては、通常国会におきまして法律も改正し、また、予算もお願いしたい、こういうつもりで、いろいろ検討を加えておる次第であります。
 なおまた、予防衛生の状況についての御指摘がございました。この点も、お話の通りと考えます。日本の予防衛生の状況は、決して私は完璧とは申しがたいと思うのであります。ことに、社会保障を完備する、医療保障を整備すると申しましても、そのほんとうの要諦は、やはり国民の健康を維持する、国民の健康を増進する、病気を減らすということが、むしろほんとうの目的でなければならぬと思う。そういう観点からいたしまするならば、との予防衛生の向上をはかるということが急務中の急務であるということも、御指摘の通りであると私は思うのでございます。学術上の問題といたしましても、まだ進歩発展をはかる必要もありますし、現在の環境衛生施設等におきましても、もとより不十分な点は免れないのでありまして、皆さんの御協力を得まして、この方面につきましては、さらに一そう努力をして参りたいと考えております。(拍手)
  〔国務大臣斎藤昇君登壇〕
○国務大臣(斎藤昇君) 私鉄、バスの運賃値上げの問題につきましては、極力抑制をしたいという方針のもとにただいま慎重に検討中でございまして、まだ結論が出ておりません。臨時国会が終わったならばこれを許すかというような今お尋ねでございましたが、そういうことも、まだ何らきまっておりません。どうぞさように御了承願いたいと思います。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(原健三郎君) 伊藤卯四郎君。
  〔伊藤卯四郎君登壇〕
○伊藤卯四郎君 私は、民主社会党を代表して、池田総理の施政方針演説の主要な点についてお尋ねをいたします。
 まず、外交問題について池田総理は、ケネディ会談以後一体何を話してきたのか、少しも国民に明らかにしておりません。少なくとも社会、民社両野党の党主には直ちに報告をするの慣例を確立すべきにもかかわらず、これをやらないのであります。一体あなたは、アメリカ政府に対して核実験禁止を要求したのかどうか、中国の国連加盟促進につき、わが国側よりいかなる具体的な提案をしたのか、沖繩施政権の返還の具体的な積み重ね方式についていかなる提案をしたのか、これらの諸点について国会に報告をする義務があるのにもかかわらず、これを怠っておるのである。私の質問に対する答弁を通じて明確に報告されんことを要求いたします。(拍手)
 外交問題についての第二の質問点は、国連総会に臨むわが国の外交方針についてであります。国連総会で小坂外相は核実験禁止決議を提唱しております。われわれは、むろんこの趣旨の決議に反対するものではございません。要は、わが国としてこの重大な国連総会に単なる核実験禁止決議の提案にとどまらず、米ソを初めとする核兵器関係所有国が有効な査察制度を伴った核実験禁止協定を結び、さらに中国や西ドイツなど、第五、第六の核兵器保有国を作らないように、関係各国が国連の監督下に核兵器及び通常兵器を含む軍縮協定を作るように、日本としても国連総会の舞台において精一ぱい働くことが、これが絶対必要であると私は信ずるが、この点についての所信を伺いたい。(拍手)
 幸いこの問題については、三大政党の間に意見の食い違いはないものと信じます。その超党派的な激励のもとに、政府は真剣そのもので問題の処理に当たるべきものと思うが、首相、外相の所信表明では、全く誠意と気魄を欠いており、単に核実験反対の口頭禅に終わるおそれがあるのであります。実にこの点、遺憾千万であります。あらためて首相の見解をただしておきたいと思います。
 国連におけるいま一つの重大な問題であるとともに、池田・ケネディ会談の山であったのは、中共の国連代表権の問題であります。池田首相の、ケネディ大統領との会談を中心とするアメリカ訪問の結果が、この中国問題に関する限り失敗であったことをわれわれは残念に思っております。すなわち、首相はケネディ大統領に対して、中国問題についての日本の意見を吐露すべきであったにもかかわらず、むしろアメリカの御意見拝聴の態度に出たため、全くアメリカの一方的なペースに終始していることを全く私も遺憾にたえない。(拍手)あなたは、日本は自由主義陣営であるといわれておる。その日本が、アメリカ外交の転換に関する忠言、苦言を呈するという建設的な自主平和外交の機会を失してしまった点は、はなはだ遺憾であります。(拍手)
 今回の国連総会において、中国代表権の問題が議題にされることになったのは当然であるが、そのイニシアチブを日本がとらなかったことは、これまた遺憾千万であります。いずれにしても、総会の議題となった以上は、政府は従来のような逃げ腰で済ますわけには参りませんぞ。わが国の基本的な態度を表明せざるを得なくなると思うが、首相、外相の施政演説には、いずれもこの肝心な、重要な問題をぼかして、一言も触れていないことは、これまた遺憾千万であります。もはや、中国を代表する政府は、北京政府であることは議論の余地はありません。(拍手)池田総理は、日本の生き行く将来のためにへ勇気を持って日本政府の態度を明確にすべきであります。(拍手)
 外交方針の第三点として伺いたい問題は、沖繩の施政権返還についてであります。
 最近、米国側からも、沖繩の行政水準の向上についていろいろ提案があるようでありますが、私どもにとって必要な目標は、施政権の返還であって、単に行政水準が向上すればそれで終われりまするものでは断じてございません、米国の沖繩における施政権の行使ね、サンフランシスコ条約に基づくものとはいえ、それは、現状を無期限に継続することでは断じてございません。(拍手)従って、施政権返還を要求する大きな根拠は、きわめて明確でございます心また、沖繩住民の海外旅行は、日本政府の旅券を使用すること、これらを米国側と交渉し、実現する必要があると思うが、総理の見解を明確に伺っておきたいのでございます。(拍手)
 次に、経済政策についてであります。
 池田総理、あなたの所得倍増とは物価の倍増であります。貧富格差の倍増となっております。(拍手)経済二軍構造の激化以外の何ものでもないことを、もはや暴露しております。あなたの過去、現在に一貫して流れているものは、計画的な政治家ではなく、思いつき、放言政治家であるということに、今日決定的になりました。(拍手)私どもは、前国会において、大企業本位に民間設備投資の膨張を放任しておけば、輸入増加となって国際収支の悪化をもたらしますぞと、強く警告をして参っております。しかるに、池田総理は、四億や五億ドルの国際収支の赤字はかまわないと放言して、ある程度の赤字を冒しても経済の高度成長を行なうべきだと広言をするとともに、その強がりを示すたあに、この一月、公定歩合一厘引き下げの低金利政策を自画自賛したのであります。ところが、政府は、池田総理の舌の根もかわかない七月五日には、設備投資一割繰り延べ、自主規制を金融界に要望し、七月二十一日には、日銀公定歩合一厘の引き上げの措置をとりました。九月に入るや、輸入担保率の引き上げ、また、さらに一昨日は、公定歩合の再引き上げなどの対策をとった。これらは、明らかに設備投資、金融抑制、輸入金融の引き締めに転じたことである。これは、明らかに自己の失政を認めた池田経済政策の逆転そのものであるとせなければなりません。(拍手)ところが、国際収支は、総合収支も赤字となり、九月末現在の外貨の保有は十六億ドル台、明年三月末には十二億ドル台に減少することは必至となっています。しかも、外貨保有の内訳を見ますと、輸入ユーザンスを維持するためには、十二億ドル台を割ることは、対外支払い上まことにおそるべき危機であるという見通しになっておるのでございます。すなわち、期年三月から四、五月にかけて、わが国の経済は、国際収支上重大な事態に直面する方向に向かって動いております。これは、換言すれば、デフレ不可避となり、その結果は、不況は免れ得ないことを覚悟しなければなりません。このような憂慮すべき事態に立ち至っても、あなたは、明年度経済の見通しすら明らかにしないで、いたずらに強がりを言っている。これは国民を欺くものであり、国民を愚弄するものであって、断じて許すことはできません。(拍手)政府は、この九月二十六日の閣僚懇談会で、明年秋までに貿易自由化九〇%の計画を立てた。この重要な取りきめをしながら、一方では、自由化に備えるべき国内経済については何らの見通しすら持っておりません。あなたはまた、いざとなれば、国民の犠牲による出血輸出をやらす心づもりではないかということが心配されておる。まことに無責任きわまるものといわなければなりません。(拍手)あなたは、国際収支の四、五億ドルの赤字は何でもないと言う放言こそは、経済の高度成長だ、所得倍増だと国民を扇動しておいて、その不況のどん底に陥れる結果を作るところの無責任きわまる政治家といわなければなりません。(拍手)池田総理のこのようなやり方は、死罪に値するものと私は思う。(拍手)政治の失敗のきずは、浅いうちになおすことが国民の犠牲を軽くすることでございます。あなたのひとりよがりの所得倍増放言は、今日限りこれを返上して、健全な、均衡のとれた政策へ転換されるよう、私はこれを強く総理に要求いたします。(拍手)従って、この点について責任を持って答弁してもらいたい。あなたの数字の魔術をもって国民をごまかしてはなりません。数字のみをもって、日本の経済は決して健全化いたしません。日本の経済の健全化ということは、国際市場において打ち勝ち得るかどうかということが、これが問題でございます。国際経済と離れた日本の経済の健全成長はございません。この点を、あなたに強く私は苦言を呈しておきます。
 その第一点は、国民の租税負担の軽減についてであります。経済拡大は必然的に税収を増加させるが、今日の税収の伸びは、毎年度とも自然増収が月に平均三百億円以上に達するといわれております。従って、経済拡大の過程において必要財源を確保しつつ、税負担の不公平の是正を実施するには最も絶好なチャンスであると思います。また、最近の減税は直接税に片寄ってやるので、直接税納税者本位となっております。物価引き上げの影響は、納税もできない低額所得者の方で茂ります。これらの人々はひどくこの被害を受けておる。この結果となっている。現在の間接税の収入は、専売収入を含めて七千億円以上あります。しかも、増収の伸びも高い。従って、減税は、大衆生活必需品の間接税関係においての税金を優先してこれを実施することでございます。課税負担の公平は、これを行なおない限りには消えてしまうのでございます。政府は、口を開けば一千億円減税と言うが、直接税の減税の効果は、上に厚く、下に薄いのであります。わずかな減税効果は、物価の値上がりで相殺をされてしまっております。しかも、現在労働力の人口は四千三百万人のうちに、所得税、申告税を合わせて、その納税者は三分の一にすぎない。残りの二千九百万人は、減税どころか、物価値上がりの被害だけを受けて、生活に苦しんでおるのが現状でございます。池田総理は、この際、この問題を勇気をふるって解決されなければ、低額所得層に明るい生活と希望を与えることはできません。これをやらなければ、あなたが大蔵大臣をしておられた当時、貧乏人は麦飯を食えと言ったその当時の悪名をぬぐい去ることはできないと私は思う。(拍手)これに対する総理の見解を伺っておきたいと思います。
 また、税負担の公平を期するために、現行の租税特別措置法によって、大企業は年間一千億円以上の恩恵を受けています。この法律は資本蓄積助成法になってしまっております。従いまして、現状を全面的に改正するということは、最も私どもはこの二重構造を解消する上において大事な点であると思います。総理の考え方を、この点について明確に伺っておきたいと思います。昨日、成田議員から質問をされたけれども、総理はこの点において答弁をされておりません。
 第二に伺いたい点は、政府が現在行なっている金融引き締めが、中小企業に金融と雇用の全般に対して、これまた大きな被害を及ぼしています。これをいかに食いとめるか、そして解決をしてやるかが、今日から最も緊急の問題としてとられなければなりません。すでに大企業側は、景気過熱を警戒して、政府の設備制限の方向に同調を示しております。この影響として、中小企業に対する支払いが手形が多くなり、しかも、それが長期化して参っております。このために、せっかく改善されかけている中小企業経営の安定化も、労働条件の歌書をも阻害して、また暗い不安を与えつつあるのが現状でございます。私が端的に政府に尋ねたい点は、第一に、政府は、中小企業の金詰まりを、年末融資増額程度でいつもごまかそうとしておるが、このやり方は、中小企業者が破産、倒産をして、首つりをしたあとに香典を持っていくのに過ぎないのであります。(拍手)中小企業は日本の総生産量において四割をになっております。大企業はわずか三割程度であります。これを肝に銘じて、中小企業対策は立てるべきでございます。一中小企業に対する根本対策は、中小企業の設備の近代化と、その産業を法律制度で守って、その特殊性を精一ぱい働かすこと、このための長期計画の必要資金でなければなりません。この基本的な方向を確立するために、ぜひとも中小企業基本法の成立を急ぐべきでございます。池田総理は、この点についてどうお考えになっておるかを、あわせて明確にお答えを願いたいと思います。
 社会保障関係について伺います。政府は、さっきから厚生大臣の御答弁を伺っておりましても、ごまかしている点がございます。というのは、医療保険の医療費値上げについての予算補正を、医療協議会の意見がいまだきまらないからといろことを理由にして延ばしております。しかも、医療費が一円相当上回る額に単価引き上げの方向を政府は応諾をしておるじゃありませんか。現在の状態において、この値上げをすべて国民に直接負担さすのか、政府の国庫補助の増額で補うのか、この方針を明確にするということは、政府が当然なさなければならない義務と責任でございます。(拍手)しかるに、政府は、今日予算補正に際して、この問題を回避をしたばかりか、その理由をも明確にいたしておりません。これらのいきさつについて、責任を持つべき点を明確にしてもらいたい。
 政府は、さらに、公務員の給与の引き上げについても、人事院の勧告を無視して、十月より実施することにしているが、支払い財源に見通しのある現在、何ゆえに人事院の勧告通りに五月よりこれを実施しないのか。政府が人事院の勧告を守ろうとしないところに、公務員労働組合をあえて闘争的にかり立てていくのである。これすべて政府の責任であると私は言わなければなりません。(拍手)この点に対して、政府機関である人事院でございますから、総理から明確に答弁をしてもらいたい。
 さらに、総合エネルギー対策について、先ほど多賀谷議員から詳細にお尋ねをいたしましたけれども、いまだ十分でない答弁でございますので、重ねて私からも簡単に伺っておきます。
 今日、わが国の産業は高度成長を遂げ、エネルギーの必要量も増加しているのに、石炭消費量は減少し、石炭は斜陽産業となり、炭鉱は経営難に陥り、廃山に次ぐ閉山のやむなきに至っております。戦後盛んなときは、炭鉱労働者は四十八万人おりました。それが今日では二十二万に減少しております。この二十数万の離職者に対して、政府は何ら具体的にこれを解決したことはございません。これは全く無責任きわまるといわなければなりません。このために、炭鉱には悲惨な争議が続発し、深刻な社会不安を引き起こしております。ゆゆしき状態でございます。石炭鉱業がこのように重大な社会問題となったのは、これはすべて自民党政府のエネルギー対策に対する無能無策の結果でございます。(拍手)従って、石炭のエネルギーとしての価値は、なるほど確かに、これは世界的に一つの低下をしつつあることは事実でございます。しかし、これは経済上の理由だけで解決すべき問題ではございません。その多くは、政治的考慮を重視して、この問題は当然解決をせなければならない問題でございます。これらの点につきまして、あわせて私は伺っておきたい。
 さらに、政府は、昭和三十四年から五年間に石炭単価をトン当たり千二百円引き下げを、強制命令のごとくして出しております。石炭生産に必要な機材は、トン当たり四百円以上値上がりになっております。このような現状にあるから、政府の炭価引き下げの方針を強行するなら、炭鉱はつぶれる以外に何ものもございません。私は、過去十年来、歴代の通産大臣に対して石炭対策の確立を要求し、総合エネルギー対策をあわせて確立するように要請をして参りましたが、しかし、ほとんどそれらは取り上げられておりません。そういう結果、今日総合エネルギー界は大きな混乱を起こしておると申し上げなければなりません。幸いにこの国会に石炭対策特別委員会が設置されたことは、これはまことに喜ばしいことでございますが、石油の自由化を実施するということを政府は言明をいたしております。今のままにしてこれが行なわれるということになりますならば、エネルギー界は明年度は大混乱をいたしますが、池田総理は、このエネルギー対策について、どのような完全な対策を立てようとしておられるかを、あわせて伺いたいと存じます。
 さらに、海運対策について。わが国の海運は、戦前は外貨をかせぐことでは世界の代表であったのでございます。それは、さきの無謀な戦争によって、日本の外国航路船は全滅をしてしまいました。ゼロにひとしいのでございます。この現状を解決するには、自力のみでは再建ができないのであります。従って、従来の計画造船方式をもって強化し、国際収支のうち、海運収支を改善する早道を開かなければなりません。現在の輸出船建造に対しては、輸出入銀行より低金利が保証されております。それは計画造船よりはるかに金利安であります。しかも、輸出された外国船とわが国の船が競争して、わが国側の積み取り率は非常に低下をいたしております。これはどうすることもできない現状に立ち至っております。政府は、国際収支改善の見地に立って、この現状をいかに是正される考えであるか、この点を伺っておきたいと思います。私どもは、計画造船の金利を輸出入銀行並みに引き下げること、向こう五カ年間、戦時型低能率船の代替を含めて年間百万トンの外国航路船の建造を行なうこと、この資金の八割を財政資金の供給によってこれを認めてやること、このような方針こそが、海運問題を解決するきわめて急務の問題であると思うが、この点に対する政府の見解を伺っておきたいと思うのでございます。
 さらに、河野農相の発言についてでございます。
 なるほど、先ほど河野農林大臣、池田総理大臣等から、それぞれ食管制の問題についてお話しがございました。しかし、国会で答弁をされることと、外でやられることが食い違うということは、私は、国民を非常な不安に陥れるものではないかと思うのであります。(拍手)さきに発表された河野構想は、農村をひどく不安に陥れておる。河野構想が、単に農林省部内の一試案であるならば、政府は、ここで、一閣僚の勝手な発言を統制する方針を示すべきである。河野構想は、明らかに食糧管理制度を破壊するといわれておる。米作収入を農家の収入の大半としておる現在の農家経済を、河野構想によって撹乱しておるということは、これはもう論議の余地はないのであります。(拍手)この点について、総理は、一体、これらの矛盾をしておる点をどのようにさばき、解決をして、農民に安心を与えようとしておられるかを伺いたい。
 さらに、災害対策についてでございますが、政府は、予算補正で災害対策費を計上されているが、将来に対する災害防止については完全なものが立てられておりません。毎年々々、同じような台風による災害を繰り返して国民を不安に陥れているということは、政府の災害対策の怠慢であるといわなければなりません。また、災害によって失われた人命、壊滅的な打撃を受けた個人の財産に対して、現行制度のもとにあっては、これが補償の道がございません。災害対策の根幹が、国民の生命、財産を保障するにある以上、災害による死亡、負傷、個人財産の喪失に対しては、国が、その個別的な災害についても補償の原則を立てるべきであると思う。最近の災害対策は、個々の対策がますます具体化されているのに、国庫補助の点でもいろいろ配慮されるようになっているが、国民の個別の災害に対する援護の措置が、応急措置以外は統一的に立てられていない点は、まさに制度上の欠陥でございます。これらの点について、今後政府は、これらの災害対策に対してどのようなことをやろうとしておられるか。災害対策基本法においても同様であります。これらの点について、明確にお知らせを願いたいと存じます。
 さらに、武州鉄道事件についてでございます。
 本事件は、地方鉄道の認可について、当時の現職大臣が贈賄を受けたことは、ほぼ明らかでございます。政府にとってもきわめて重大な汚職事件でございましょう。私がまず総理に伺いたい点は、本事件は、鉄道建設認可のおりたのは、本年七月、池田内閣になってからおりたものでございます。この点に対して、池田総理は責任をのがれることはできないと存じます。新軌道認可のずさんな点に対して、運輸当局の監督は驚くべき怠慢であります。この責任は、池田総理、あなたにもあります。池田内閣総理大臣として、自民党の総裁として、政治上、道義上の責任を一体どのようにとろうとしておられるかを、明らかに一つここで答弁をしていただきたい。(拍手)
 また、法務大臣に伺いたい点は、本事件に関し、かりに閣僚、国会議員に対して、検察当局が取り調べの必要が起こった際、国会の開会中であっても積極的にこれに協力をすべきであると思うが、法務大臣はどのようにお考えになっておるか、この点もあわせて明確に伺っておきたいと思います。(拍手)
 政防法案についてでございます。
 政防法案は、政治目的をもってする人殺しその他の暴力行為を絶滅し、日本の民主主義と議会政治を擁護するための時限立法であります。従って、一党一派の党略的なものであってはならないといろ点から、自民、社会、民社から三党三様の法案が提案されたものを、これを三党一致の法案とするために、三党よりそれぞれ折衝委員を出して努力をされたのである。最終的に、社会党の折衝委員でありました猪俣浩三氏の提案したこの調整案を認めまして、三党一致の法案とすることに私どもは同意をしたのであります。(拍手)ところが、突然社会党側から、猪俣案を認めずという反対態度が明らかにされたのでございます。最後に至って、この私どもの努力は成功いたしませんでした。しかし、私ども民社党といたしましては、三党話し合いによって、本国会においてぜひとも日本の民主主義、議会主議政治を守るために成立さすべきであると思うが、池田総理はどのようにこの点お考えになっておるか、明確にしてもらいたい。(拍手)
 最後に、私は議会主義政治について伺います。
 議会主義政治の権威は、議長の職務執行に権威がなければなりません。ところが、今日までそうは立ち至っておりません。たとえば、議長が本会議場に入場される場合に、定められた以外のドアから自民党議員の腕力をもって入場させ、議長席にも着かせずに、自民党議員の議席から議決をさすようなぶざまなことをしては断じてなりません。われわれ議員は、議長の職務執行を妨害してもなりません。衆議院は、各党の申し合わせによって、議長は与党から、副議長は野党第一党から選出し、当選の暁には党籍を離脱するということが決定されております。さきの国会において、自民党は、党略的に副議長を奪い取ったのでございます。このようなことは断じて許されません。よって、副議長は当然野党第一党の社会党に返すべきであります。議会主義政治は、話し合いによってまとまったことが守られなければ、議会政治の正常な軌道の確立はいたしません。この点につきまして、今後の議会政治の運営の上においてきわめて重大でございますので、池田総理は、議会主義政治を守る立場から、どのような強い信念を貫こうとしておられるかを明確にお伺いをいたしまして、私の質問を終わることにいたします。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 ケネディ大統領と私との会談は、六月二十二日、ワシントンにおきまして共同声明として発表いたしております。これによって御了承願いたいと思います。
 なお、核実験の停止の問題につきましては、アメリカ政府及びケネディ大統領と話しましたのみならず、私は、先般の列国議会同盟にも特に福永君に行ってもらいまして、そうして多数で決議させたごとく、あらゆる機会に極力努力いたしておるのであります。
 次に、中国問題につきましては、私は自主的に考えております。伊藤さんは、もう中共を日本が認むべしという結論に立っての議論でございまするが、私の見るところでは、施政演説に申し上げた通りの状況であると考えます。
 次に、沖繩の問題につきましては、われわれは、従来、施政権の返還を常に強く要求いたしておるのであります。私も要求いたしております。しかし、これは先方が聞かないという場合に、腕ずくでもというわけにはいかぬことは、御承知の通りであります。従いまして、われわれは常に要求すると同時に、それまでの間におきましても、沖繩住民の生活安定と福祉向上を考えなければなりません。(拍手)従いまして、われわれ自身もいたしまするが、アメリカにもこれに参加してもらうよう話し合いをしたことは、共同声明にもある通りでございます。常に私は、この問題は今後におきましても続けていきたいと考えております。
 所得倍増は、所得倍増でなしに、物価倍増とか格差倍増だと言っておられまするが、まあ伊藤さんも長い目でごらん願うと同時に、過去の日本の歩んできた道をもう一ぺん振り返って見てもらいたいと思います。所得倍増、十年間の倍増はいち早くわれわれが申しましたが、社会党さんも、民社党さんも、その後において唱えられたスローガンではございますまいか。大体今の世界において、所得倍増とは申しませんが、経済の成長はどこの国でもその基本方策にしておるのであります。われわれは過去の実績に考えまして、十年以内に成長をしようということは、実績が示し、国民もこれに向かって進んでおられることを喜ぶのでございます。
 なお、国際収支が四億、五億ドルの赤字が出ても心配ない――心配ないという程度の問題でございまするが、私は、二十億ドルが十五億ドルになりましても、この緊急施策等うまくいけば心配はないと思います。また、あなたの言うように十二億になろうということは、私の胸にはございません。三月末に十二億に外貨がなるということは、私は考えておりません。そういうふうにお考えになると、あなたは御心配でございましょう。悲観されるでしょうが、私はそうなるとは考えておりません。
 次に、減税問題で間接税を云々せられておりました。今、税制調査会でせっかく検討中でございます。私は、先ほど申し上げておりますように、減税はわが党の重要施策でございまするから、他の重要施策と勘案して実行いたしたいと思います。内容につきましては十分今後検討いたします。
 また、租税特別措置法につきまして、これは、日本の産業の発展と産業力の上昇に伴って、だんだん少なくしていく方向に向かいたいと思います。すでに十年以前からだんだんこれは軽減の措置を少なくして参っておるのであります。これは租税政策の上から公平の原則は大きい柱でございますけれども、経済成長の原則も租税原則のうちにあることは、御承知の通りでございます。
 次に、中小企業基本法は私は大賛成で、今、党におきましても検討を続けており、成案ができ次第、御審議を願うことにいたします。
 また、公務員の給与の引き上げにつきましては、先ほど来大蔵大臣あるいは労働大臣がお答えした通りでございます。経済事情等を勘案し、昨年の事例によって十月からといたしたのでございます。
 石炭対策につきましては、先ほど通産大臣がお答えした通りでございますし、船舶の対策につきましても、運輸大臣が答えた通り、輸出船と国内船とのアンバランスにつきましては、今後是正することにいたしますし、また、計画造船を一年百万トンということはなかなか困難でございましょうが、所得倍増計画から申しますると、大体千一、二百万トンの国内船が必要であるということは私は存じております。従いまして、おそまきではございまするが、計画造船の二十五万トンを御承知の通り五十万トンにふやしたのであります。民間の自己造船も考えますると、今のところでは、大体八十万トンくらいになるかもわかりません。これをふやして、行く行くは百万トンにいたしたいという考えでおるのであります。
 食管問題につきましては、ただいまお答え申した通りでございまして、私は食管制度の根本はくずしません。ただ、経済事情の変化によって、いい案があれば、国民の協力を得て行なおうということは、民主主義の根本であります。河野さんの意見がいいか悪いかは、国民が判断いたします。そうして、河野さんがそういうことを言うととは、食管法の根本に触れておりませんので、けっこうだと思います。
 武州鉄道事件につきましては、まことに遺憾でございます。武州鉄道を認可いたしましたのは、運輸審議会の答申によりまして、そして運輸大臣が許可いたしたのでございます。その間に汚職があったかないかということは、別問題でございます。私は、汚職のあったことは非常に遺憾といたします。検察当局の厳正公平なる判断に待って処置いたしたいと思っております。
 政防法は、私は成立を希望しております。何分にも参議院に今継続審議中でございまするから、その審議を待ちたいと存じます。
 議長の尊厳、あるいは国会正常化は、お話の通りでございます。今国会の当初から、その問題につきまして各派話し合いをしておるのでございます。私は、国会運営の正常化のために、与野党を通じてりっぱな申し合わせができることを心から期待いたしております。(拍手)
  〔国務大臣水田三喜男君登壇〕
○国務大臣(水田三喜男君) 低所得者の負担を軽くするために、来年間接税の減税を考えるかということでございました。まだ来年度の経済見通しとか自然増収の見込みが固まっていないときでございますので、減税の方針を述べる時期ではございませんが、従来のいきさつにかんがみまして、来年度はやはり間接税の減税というものを考慮したいと考えております。(拍手)
   〔国務大臣灘尾弘吉君登壇〕
○国務大臣(灘尾弘吉君) 今回の医療費の改定に伴います補正予算の問題についての御質疑でございました。今回補正予算に計上するに至らなかった事情につきましては、先ほど多賀谷君にお答え申し上げましたところによりまして御了承いただきたいと思います。この医療費改定に必要な財源につきましては、保険の種類がいろいろございますので、各社会保険の財政事情に応じまして、適当な配慮をいたす所存でございますが、いずれにいたしましても、この医療費の改定によりまして新たに被保険者に無理な負担がかからないように、政府において十分考えるつもりでおります。(拍手)
  〔国務大臣植木庚子郎君登壇〕
○国務大臣(植木庚子郎君) お答え申し上げます。私への御質問は、いわゆる武州鉄道事件に関して、万々一政府の部内の者あるいは国会の一員に、こうした事件のために検察当局が調べなければならぬような場合が起こったとき、そのときにどうするか、こういうような御質問でございます。この御質問につきましては、仮定の御質問でありまして、私は、ほんとうはお答えすることさえ避けたいというくらいに考えます。しかし、そのことによって、かえって世論の誤解を招いてはいけませんと思いまして、特に立ち上がってお答えを申し上げます。
 私は、あえてこの事件に限らず、一般に、刑事事件につきまして、検察当局の厳正にして公平なる取り扱い、われわれ国民は法の前にすべて平等に取り扱われなければなりません。従って、その従来の検察当局の態度に対しまして、私は深く敬意も表し、信頼をしております。少なくとも、今日までのところ、私は常に当局との間に密接にお互いに話し合いをしておりますが、その間において、特に意見のそごを来たしたことはございません。従って、今後、ただいまおあげになりましたような事案の場合におきましても、私は、おそらくは検察当局の公正なる態度を承認して参ってちっとも差しつかえない、こう考えておるのであります。言いかえれば、もっとはっきりした言葉で申しますなら、いわゆる指揮権の発動をするかしないかというようなことになると思いますが、私は、今日の段階においてさようなことをする必要は、おそらく将来も起こるまい、かように確信いたしておる次第であります。(拍手)
○副議長(原健三郎君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
○副議長(原健三郎君) 本日は、これにて散会いたします。
  午後四時四十三分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  池田 勇人君
        法 務 大 臣 植木庚子郎君
        外 務 大 臣 小坂善太郎君
        大 蔵 大 臣 水田三喜男君
        文 部 大 臣 荒木萬壽夫君
        厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君
        農 林 大 臣 河野 一郎君
        通商産業大臣  佐藤 榮作君
        運 輸 大 臣 斎藤  昇君
        郵 政 大 臣 迫水 久常君
        労 働 大 臣 福永 健司君
        建 設 大 臣 中村 梅吉君
        自 治 大 臣 安井  謙君
        国 務 大 臣 川島正次郎君
        国 務 大 臣 藤枝 泉介君
        国 務 大 臣 藤山愛一郎君
 出席政府委員
        内閣官房長官  大平 正芳君
        法制局長官   林  修三君
        法制局第一部長 山内 一夫君
        総理府総務長官 小平 久雄君
        厚生省社会局長 太宰 博邦君
     ――――◇―――――