第040回国会 科学技術振興対策特別委員会 第18号
昭和三十七年四月四日(水曜日)
   午後一時四十四分開議
 出席委員
   委員長 前田 正男君
   理事 赤澤 正道君 理事 齋藤 憲三君
   理事 中曽根康弘君 理事 西村 英一君
   理事 山口 好一君 理事 岡  良一君
   理事 河野  正君 理事 山口 鶴男君
      安倍晋太郎君    佐々木義武君
      保科善四郎君    石川 次夫君
      西村 関一君    松前 重義君
      三木 喜夫君    山田 長司君
      内海  清君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣 三木 武夫君
 出席政府委員
        総理府事務官
        (科学技術庁長
        官官房長)   島村 武久君
        総理府技官
        (科学技術庁振
        興局長)    前田 陽吉君
        厚生政務次官  森田重次郎君
        厚 生 技 官
        (環境衛生局
        長)      五十嵐義明君
 委員外の出席者
        厚 生 技 官
        (環境衛生局水
        道課長)    石橋 多聞君
        厚 生 技 官
        (環境衛生局食
        品衛生課長)  高野 武悦君
        厚 生 技 官
        (国立衛生試験
        所薬理部長)  池田 良雄君
        労働基準監督官
        (労働基準局労
        働衛生課長)  加藤 光徳君
        参  考  人
        (東京医科歯科
        大学教授)   柳沢 文徳君
        参  考  人
        (順天堂医科大
        学教授社団法人
        日本食品衛生協
        会常務理事)  小谷新太郎君
        参  考  人
        (横浜国立大学
        教授)     山越 邦彦君
    ―――――――――――――
四月四日
 委員日野吉夫君辞任につき、その補欠として山
 田長司君が議長の指名で委員に選任された。
同日
 委員山田長司君辞任につき、その補欠として日
 野吉夫君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 参考人出頭要求に関する件
 科学技術振興対策に関する件(中性洗剤に関す
 る問題)
     ――――◇―――――
○前田委員長 これより会議を開きます。
 科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。
 この際、参考人に関する件についてお諮りいたします。
 すなわち、中性洗剤に関する問題について、東京医科歯科大学教授柳沢文徳君、横浜国立大学教授山越邦彦君及び順天堂医科大学教授、社団法人日本食品衛生協会常務理事小谷新太郎君を参考人と決定し、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○前田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
     ――――◇―――――
○前田委員長 この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。
 本日は御多用中のところ御出席をわずらわしまして、まことにありがとうございました。よろしく本委員会の調査に御協力のほどお願い申し上げます。
 なお、議事の進め方につきましては、最初に柳沢参考人、次に小谷参考人、次に山越参考人より、おのおの約二十分間程度において御意見の御発表をお願いいたします。その後厚生省五十嵐環境衛生局長から説明を聴取した後、委員各位の質疑にお答え下さるようお願いいたします。
 それでは、まず最初に柳沢文徳参考人より御意見の御発表をお願いいたします。柳沢参考人。
○柳沢参考人 私は公衆衛生学を専攻している者といたしまして、ABSに関する見解を申し上げます。
 私は、経口毒性という問題ばかりではなく、皮膚とか、公害などを含めまして、ABSは無害でないという結論を出しているわけであります。このことを冒頭に申し上げて御理解をお願いしたいと思います。
 まず、合成洗剤、いわゆる中性洗剤とも称しておりますその中のABSというものが、個人の生体あるいは社会に悪影響を及ぼすという根拠をお話しする前に、私の専攻する衛生学的な見解のもとにABSについて若干先に述べておきたいと思うのです。
 食品衛生上におきまして、個人が日常に使用する化学的合成品という物質が有毒であれば、利用価値があっても、原則としてそれを排除しようとする考え方が衛生学の基本であると私は思うのです。一体、量のいかんを問わずABSが生体に入ってもいいのか悪いのかという根本的な原則をまず考えてみなければいけないと私は思うのです。
 二番目に、ABSは回虫卵の洗い落としを目的として野菜に利用されることを強調されております。ABSは寄生虫を落とすということは、あくまでもこれは補助的な手段にすぎない。また、一〇〇%落ちるというものでもございません。実際におきまして、根本的には野菜に虫卵がつかぬようにする、いわゆる清浄野菜を作るということが可能であります。根本的な対策としてこの線に向かうことが、衛生学としてまた基本の線であると私は思うのであります。かような補助手段を現在のように誇大に主婦に啓蒙されるという結果から起きる考え方はどうなるかというと、根本的な、野菜に寄生虫卵がついてはいけないという考え方を忘れ、野菜に虫卵がついていてもいいのではないかという思想が出てくることをわれわれは非常におそれるものであります。そのために衛生対策の根本を見失うという一面も出てきはしないかと私は考えます。次に、その一例としまして、回虫卵というものは熱に対して非常に弱いものでございますが、ホウレンソウなどにつきましても、加熱するにもかかわらずそれを洗剤で洗っており、全くその使用目的においてもおかしな方向に移っているという事実がございます。数年後にオリンピックの東京開催を控えまして、真の文化国家というものを紹介するならば、野菜栽培は化学肥料によることが第一番で、それから真の文化国家を紹介するというふうになるのではないかと私は思うのです。現実に屎尿を用いるとしましても、現在の農民の指導がよろしければ屎尿の中に回虫卵が生きていないものを使える時期に至っていると私は考えます。また、回虫卵が落ちたとしても、ABSがついているならば、一面においては全く同じような結果が生じてくるということも考えなければいけないと私は思います。こういう考え方は、放射能物質の洗い落としの問題、あるいは農薬の洗い落としもそれに通ずるものだと思います。特に放射能の問題におきまして、そういう物質が根本的に人類からなくなるということをわれわれが考えなければならない問題であって、それを中性洗剤で落としているような考え方を持たすということは、私はいささか学問的にそのPRの仕方に不審を持つものであります。
 三番目に、ABSは石油から精製される化学的合成品であります。化学的合成品というものは、程度の差はあれ、すべて毒性を有するものであります。できるだけ使用をしないようにするのが原則だと私は考えます。少なくとも一月に、ABSを含み、タール色素とか防腐剤を、どのくらいわれわれがとっているかと申しますと、多くの研究者の資料によりますと、大体〇・四グラム内外というふうな量をとっていることが文献に書いてあります。かような化学的合成物が少量だからいいといって使用しているわけでございます。その少量が問題になるわけでございます。これらの化学的合成品が、わからないようにわれわれのからだを虫ばんでいくかもしれないわけであります。この点の考え方をまたABSについても強く導入しなければならないと思うのです。そのために、長年使用しているが何ら健康障害を起こさぬからよいという考え方が出やすいものでございます。これはきわめて危険な考え方でございます。最近の「食品工業」という雑誌に小谷教授が、ABSの使用経験から、何らからだに異常がないから無害という点から無害説を御主張になっておられます。前に述べたごとく、かような物質が直接健康障害を起こして亜急性の状態が起きなければ、原因はつかめないものでございます。
 過去においてオーラミンという黄色のタール色素がございます。これは長野県におきましてたくあんにかなり使われたものでありましてABS、この五年ばかり使われたというよりも、はるかに長年月にわたって使われたものでございます。このオーラミンというものは肝臓、じん臓を悪くするという物質でございます。しかしながら、長野県のたくあんを食べていて肝臓が悪くなった、じん臓が悪くなったという事実はございません。経験的にいってこれは無害であると言わざるを得ないのであります。だからオーラミンはたくあんに使っていいということになりますが、私の記憶の違いがあるかもしれませんけれども、小谷教授が課長時代に、実験根拠よりこの使用を昭和二十八年に禁止しております。オーラミ、ンのごとき毒性の強いものでも、明らかな障害がたくあんの摂取によって起きないということを知っていただきたいわけであります。経験無害説というものは一面においてはしろうと理論というふうにも考えられるわけです。経験理論というものは、森永の砒素事件のように、ああいうふうに明らかに亜急性に出たものはこの経験理論というものを私は尊ばなければならないと思うのであります。しかし、障害が現われない場合においては経験無害説というものでは価値がなく、実験根拠に基づかなければならないものと私は考えます。
 それからまた、化学的合成品であり、長く用いるというものにつきましては、長年の障害、特にABSは界面活性剤であるという特性を持っているために、この特性問題を強く毒性と結びつけて考えなければならないと私は思います。急性中毒という問題がございます。急性中毒におきましては、このABSは体重一キログラムにつき一また二グラムの範囲のものというようにいわれております。この点はあとでも申し上げます。こういうふうな数字のみにとらわれまして、栄養素である砂糖とか塩と同じように取り扱って、小谷教授がお茶の水医学会の席上で私どもに質問されたわけであります。これは栄養素と化学合成品とを混同してそのものを論ずるという点において、私はきわめて不審の点を持つわけでございます。いわゆる界面活性剤というものとこの砂糖などとを比較検討すべきものではない。まず一歩譲ったとしても、砂糖はABSのごとき界面活性剤の特性を持っているものではございません。無害論を唱える一部の方々がこのような砂糖とか、あるいは経験論というものによって無害を唱えられるために、国民が真のこのABSの毒性というものを認識されないということが生じているのではないかというふうに私は感ずるのでございます。
 まず前置きはこのくらいにしまして、ABSの経口毒性という問題に入ってみたいと思うのです。
 私どもがLD50という言葉を申し上げましたけれども、この言葉は一応毒性の目安として考えるものと私は考えます。日本における最も信頼の置ける急性経口毒性LD50の実験成績は大阪市立衛生研究所の井関博士のマウス一・六グラム・パー・キロというのが日本で随一のものだと思います。単にLD50から見ますと、ABSは私どもが研究してきた防腐剤というものに比較してみても必ずしも弱い毒性とは言えないと私は思うのです。たとえば安息香酸、ソルビン酸などはABSより毒生がはるかに低いものです。こういうものは日常使っているものでありますけれども、防腐剤として規定の上で使っておるものでございます。また、防腐剤として安息香酸、ソルビン酸というものをあげましたけれども、このものと界面活性剤であるABSとを比較することは、私は一面においては間違いだと思うのであります。
 ここで界面活性剤の毒性性の区分より見まして、米国のバーライルという人の文献を引用さしていただきたいと思うのであります。バーライルのLD50の毒性の強さの区分につき見ますと、二十五グラム以上が無毒、二十五グラムから十グラムが低毒性、十グラムから二グラムが中毒性、二グラムから〇・一グラムが高毒性、〇・一グラム以下が非常な高毒性というふうに称しています。これはみな体重一キログラム当たりについての数字でございます。この分類によりますと、ABSは高毒性の区分に属するわけでございます。事実この文献の分類が正しいかどうかということを考察してみますと、界面活性剤であるところの非イオン系のものである飲食物に添加されたところの界面活性剤のモノグリセライド、ソルビタン脂肪酸エステルは、少なくとも大体体重一キログラムに対し二十グラム内外のLD50のものでございます。ですから、これらの点よりこの分類はかなり信用を置けるものだ、またこのABSはかなり毒性の強いものであると言えると思います。
 このような毒性の一面、外国において一九五四年ごろに出された文献があるにもかかわらず、厚生省において出した昭和三十一年九月の通知ですか、この点から見て非常に私は不思議に思うのであります。また私は、行政的に見ましてこの通知を出したところの理論的根拠というものを見たことがございません。この通知というものが明らかに理論的で、また十分なる検査、研究というものがなされたならば、こういう問題も起きなかったのではないかと私は考えます。
 その点について、この前の参議院の社労委員会の坂本議員の質問に対しまして、五十嵐局長は、かような物質の使用許可に関する役所の検討の仕方を述べておられます。それに基づいて二、三、私のわからないところをここで申し上げたいと思います。
 まず第一番目に、こういう問題についての化学構造論という問題でございます。構造上から、毒性を考えてみるということをおっしゃっておる。アルキルベンゼンスルフォン酸ソーダというものの毒性を考えなければならない。またアルキルベンゼンが発ガン性物質であるということもいわれております。また、スルフォン基も発ガンの問題にされております。それから、事実私どもの実験から、このものに溶血作用がある。その溶血作用を見ると、百万分の六くらいの濃度まで溶血作用を持っております。このような毒性の強い、また溶血性の強いものは、まず化学構造から見て食品への使用上、話にならないのではないかと私は思うのです。こういう点は、化学構造あるいはそういう基本的な問題について、どうしてこれを使っていいというふうな結果になったのか、不思議に思います。
 二番目において、外国の毒性の文献を考慮するということをお考えになると言っておられます。これはきょう初めてこの資料をいただいたのでございますが、一九五七年ごろのこの文献だけでABSの慢性中海が安全であると言えるか。これはあとでも申し上げますけれども、この考察でいいかどうかということが疑問になります。
 三番目に、外国の使用状況を参考にするというふうにおっしゃっております。これは私、見ますと、実はここのところに一九六二年の一月二十四日に開催されたアソシエーション・オブ・アメリカン・ソープ・アンド・グリセリン・プロダクトの会議のときのパンフレットがこれだけございます。この中に、野菜に使うということは、ざっと目を通した範囲では一つも書いてございません。それからこの中に、石けんと合成洗剤の歴史とその使用に関するところの。パンフレットがあります。そこにも野菜に使用するなんて一つも書いてありません。むしろ皿洗いにおきましても、機械的に、オートマティックにやれということが非常に強調されて書いてあります。ですから、日本のように非常に多く野菜に使うということは、外国の事情ではほとんどなかったということが言えるのではないか。ほかの文献においても、みなしかりであります。事実、この前の参議院社労委員会におきまして五十嵐局長の答弁が十分おできにならなかったのですが、当時調べておったものだったら、野菜の使用状況を簡単に答えができるのが私は当然だと思います。ですから、その当時は使っていなかったということが証明されると思います。ほかの資料を全部私持って来ましたが、その多くの資料の中でも、野菜に使ったというような外国の文献はまったくございません。
 もう一つ、その次に述べますのは、国内におけるところの毒性の検査の問題であります。ただわずかにライポンFの急性経口毒性LD50の実験がなされただけであります。それの所見では、毒性が必ずしも大であるとは認められないとの所見を発表しておられる。こういうふうな毒性の検査だけでいいかどうかということにつきましては私は疑問を持ちます。
 それから、三十一年九月の通知に「通常の使用」と書いてありますが、通常の使用とは一体何か。この言葉の解釈すらわからない。これは国民に対して非常に波乱を起こさすもとの言葉ではないか。
 それから、多分、洗い落としてしまうのだからこの洗剤の毒性は問題はないのだという理論を展開されると思うのであります。洗い流せるというのは、どういうふうにしたら洗い流せるかというはっきりした定量的の根拠はどこにあるか。これはあとでABSの定量問題に触れますけれども、普通外国でやっている定量の問題では、野菜では目下定量できないのであります。だから、われわれは仕方がなくて、溶血作用を利用した溶血による簡易微量定量法を発見し、それをもって野菜の測定をしたわけであります。もちろんABSにSの三五をラベルして測定すればできるのでございますけれども、それは単なる実験の範囲のもので、一般の市販しているところのABS入りの野菜のものをとってきても、これについてどのくらい入っているかは調べられない。それだから、われわれは溶血作用で実験したのでありまして、他ではこういう実験はできないのであります。今までこういうような野菜の残存量をはかる実験を私どもは厚生省のものとして見たことはございません。こういうふうに、この通牒を出すときに少しおかしな問題があるから、今ごろこういうような問題がここで討議されなければならぬことが起こってきているのではないかと思います。
 厚生省の問題は別にしまして、これを推奨しているところの日本食品衛生協会に目を向けますと、私はここで一つお聞きしたいのは、同協会におきます推奨公告に、「純中性」「本品は毒性を有せず」「有害な不純物を含有せず」という言葉が推奨の中に書いてあります。特にこの推奨公告下におきまして、学会、国会機関における権威者の厳重な審査をした所見ということが書いてあります。これは厳重なる審査の結果においてしたということです。私は、日本におきまして界面活性剤の生物的影響の権威者はどなたがいるか、この際ぜひその名前をお聞きして、その方に私どもの研究の御教示を一つ願いたいと考え、名前をお聞きしたいと思うのです。
 二番目におきまして、日本食品衛生協会は「毒性を有せず」という根拠を有しているようでございます。しかしながら、国家機関の、池田博士の「毒性は大ならず」という見解がございます。この相違はどういうわけであるかということが私は学問的に見てもわからないところです。また、先ほど紹介したバーライルの毒性区分の説明から見ても、上記の「毒性を有せず」という点の解釈についても私はどうも納得がいかない。また「有害な不純物を含有せず」というのでありますけれども、同協会におきましては有害な不純物の許容量の基準を定めています。基準を定めて、基準量の中での不純物の含有であれば、この量であれば不純物は含有しないということが、衛生学において通用するかどうかということを私は非常に疑問に思います。
 以上のように、ABSに関し厚生省の通知を出した前後における態度に問題があります。野菜使用に関する通牒というものは、これは五十嵐局長の御返答をお願いしなければならないのでありますが、実際この問題はおかしいと私は思います。ほんとうに国民の保健を考えた結論からこの通知が出されたものでないというふうに私は考えざるを得ない。もしも国民の健康を考えるならば、なおさら、これは時間がございませんから私はここで申し上げませんけれども、食品衛生法の第二条を考慮の上使用のことをやってもらいたい。食品衛生法で規制することができるわけだと考えています。ところが、また、外国のFDAの役人の方の書簡を見ますと、こういうようなものを日本のように使うのだったら法的規制をするというふうに書いた今年度の書簡を私は持っております。そういうふうに、食品洗浄剤という概念が野菜洗浄に入って参りまして、最近におきましては業者はLD50においての実験のみで毒性を解釈し、魚を洗浄する、澱粉の除蛋白に使う、こういうふうな面の使用目的まで業界は考えておる文献を私どもは持っております。いかに昭和三十一年九月の通知の影響が大きいかを考える必要があります。食品洗浄剤なる概念を食品衛生に導入する場合には慎重にしなければならない。今からでもおそくないと私は考えます。
 こういうふうな毒性の問題につきまして、東京都で中性洗剤の委員会があったわけでございます。その席上におきまして東京医科歯科大学の生化学教室の宮本璋教授は次のごとき発言をしておられます。「ABSは普通の薬物や添加物のごときと異なり、質量法則が成立しないから毒性も普通の薬物と同じように考え、同じような方法をもって判断することはできない。ABSは拡散作用を初めとして界面活性剤の物理化学的性質を考慮に入れる必要がある。ABSは健康人には何ら影響しないかもしれぬが、ロカース・ミノールスを有する人、たとえば肝臓が悪い人、衰弱した人、老人、幼児では、ABSが入れば悪い影響を及ぼし、それもABSで起こしたかどうかわからぬように生じ、また死ぬこともあり得る。その発生の確率は一万人か十万人かわからぬが、これらロカース・ミノールスを持つ人を犠牲にしてもよいというならば問題は別だ」という発言をなさっております。この発言がありまして、大体問題は東京都の委員会がそのまま結論が出ないで終わったわけです。私どももこの宮本教授の発言を強く認識しております。
 私は、この界面活性剤の特性というものを見ますためにABSの静脈注射をしてみましたら、二ガンマという微量で白血球がきれいに下がります。それ以上においても、もちろん減少があります。その際に一番驚いたのは、二十ガンマと二百ガンマと千ガンマという微量におきましてときに足に麻痺がきておるのでございます。この現象がどうして起きたかというと、ABSが血液から脊髄液に入り、腰髄あたりにくっついて、界面活性剤としての大きな特徴であるところの浸潤作用と界面吸着作用のために広がりまして、それで脊髄の麻痺を起こさしたものと考えるわけです。それが界面活性剤ABSの特性を示した一つの実験であると思うのであります。この作用を見ますと、このものがいかにおそろしいかということを私ども感じているわけであります。
 その次に、皮膚の問題であります。ABSで皮膚が荒れるということは、文献的にどこにも書いてある問題で、問題がない。事実それならば、日本ではどうかといいますと、東大分院の皮膚科のデータがございます。主婦の手湿疹が昭和三十二年より増加しております。これに対しまして日本大学の三浦修教授は、この増加の統計は合成洗剤に帰する考え方は妥当であるというふうに述べておられます。日本でも合成洗剤を因子とする湿しんがまたほかの学者によっても認められておるところであります。事実私どもは、このためにゴム手袋をはめろということを初めから申し上げている次第であります。数日前、東洋経済の講演の席上におきまして富山博士から話がございましたけれども、職業的に洗剤を使っている人はゴム手袋をはめた方がいいということを述べておられ、今まで無害論を唱えられたところの人がわれわれと同じようになってきているということでございます。いかにわれわれのこのものに対する考え方に妥当性があるかというととも、明らかに御理解ができるところと思います。
 こういうような臨床以外にも、基礎実験といたしまして、順天堂大学の小谷教授がラットにABSを塗付した実験がございます。これは私は基礎実験として非常に大事なものだと思うのであります。これは日本公衆衛生学会に発表された資料であります。原液で塗りまして十五日以内に死亡しているということのデータになっております。翌日は発赤を起こしているということになっております。これは原液でございます。こういうことは、今言ったように、ABSというものはアレルギー感作ではなくて、毒物作用だという学説も一つある、この一つの裏づけになるものと私は思うのであります。このような皮膚に塗って死ぬというような強い毒性のものは、今まで食品に使うようなものではあまりないのであります。それから見ますと、大学におきましてはこういう毒性があるという実験が認められており、日本食品衛生協会の席におきましては毒性なしという推奨公告を出されておる。これは自分たち学問の場におりまして全く理解に苦しむところでございます。私ははっきり申し上げれば、日本食品衛生協会は学問的な根拠を持ってやっておるところではないのだということがはっきりすれば、私は何も申し上げません。外国の文献は、時間がございませんから申し上げませんが、ロースマンの実験データにおきまして、やはり外国においても合成洗剤による影響というものは家庭の主婦の問題として出ておるという文献がございます。
 次に、私は、公害問題などで一部を衛生学者の立場から簡単に申し上げます。
 地下水はすでに汚染されております。私がLM法で、これはイギリスの定量法でありますが、この方法で杉並区の三つの井戸をやった実験があります。それには〇・八三、〇・〇三、〇・〇二PPMというABSを含んでおります。〇・六PPMであわ立ちが起きるというのがABSの特性であります。これから見ますと、このような問題が起きながら、政府におきましてはこのABS測定の公定法すらも何もできていないということも問題にすべきであります。この点におきましては山越博士が権威者でありますから、お話があると思いますが、非常に不思議に思うのであります。
 それからもう一つ、水道も汚染されておるということも考えられなければならぬ。これは五十嵐氏が〇・九PPMということを国会ではっきり申し上げたのですが、水道に多く入っているか少なく入っているかということは多く申し上げる必要はないと思います。このように水道の中にABSが入るということはどういう観念になるかと申しますと、洗たくものや野菜を洗った水が水道水になって、それを飲んでいる。洗たく水を飲んでいるということも一面言えるわけです。清潔のためにこれが使われておるならば、私はこれは非常におかしいと思います。だから、ABSの使用というのは見かけの清潔じゃないかということが、こういうふうに水道に入ってくると、理論的には言えると思います。
 その次に、川の問題であります。川の問題は、日本においてもかなり大きなあわが立つということが言える。アメリカにおきまして、一九五三年に七百フィートの幅のオハイオ川が四フィートから一・二フィートのあわで全部おおわれてしまったという事件がございますが、このようなことも下水、上水に大きな影響を与えたわけです。日本でもこれが起きないとは言えないと私は思います。このあわの中は一体どうかというと、水の中より二十倍の細菌があるということもいわれております。
 下水の処理の問題でございますが、下水の処理は困難であるということであります。これは私は今オランダからの資料も持ってきておりますが、非常に困っているというデータを持っております。これはオランダ王立浄水局長のデータでございます。
 こういうふうな問題からいきまして、私の感ずるところは、アメリカにおきましては飲料水のあわ立ちの問題を考えており、ドイツにおきましては健康という問題を考えておる。何ゆえ一体そうなるかというと、ドイツではハーベルマンの血液の中にABSが入るという実験があるためであります。もう一つアメリカのウッドワードという水質の権威者の見解がありますが、これをちょっとお読みしますと、「洗剤がビールス伝播を促進するということはあり得ることだ。しかし、まだ証明されていない。たといアルキレート洗剤が飲用水の汚毒に責任がなく、単に汚染の指示役として作用するにすぎないという証明がなされても、水にとっては決して好ましい添加剤ではない。」これは私が衛生学者として、国民として最も望むところであって、これに対して、水の中に入っていいという人があれば私は非常におかしいと思います。
 以上、簡単に申し上げましたが、時間がないために十分な御説明ができず、言い落としたところもあり、また御理解のしがたいところがあるだろうと思います。その点は御質疑によって補足さしていただきたいと思います。このように多方面にわたって問題が生じている物質はあまりないと思うのです。ABSが社会に悪影響を与えている事実より、私はABSが無害でないと結論せざるを得ないわけです。そのための対策はどうするかといいますと、ドイツと同じように、ABSの家庭の中の使用だけでもやめてしまえば問題はなくなる。下水は家庭用水がおもになるわけです。この使用がなくなったならば、家庭が困るかといいますと、家庭では困らないことだと私は思います。家庭は困らないというところの事実もたくさん資料を持っております。
 以上でございます。
○前田委員長 次に、小谷新太郎参考人より御意見の御発表をお願いいたします。小谷参考人。
○小谷参考人 私は以前から柳沢教授をよく存じ上げておりますので、これから柳沢教授の研究御発表に対しましていろいろ御批判を申し上げますことは、私情におきまして大へん忍びがたいのでございますが、学問の問題でございますのでお許しをいただきまして、所信を申し述べさしていただきたいと存じます。
 結論を申し上げますと、私はABSの入っておる中性洗剤は通例の使用方法では無害であるということでございます。普通の使い方をしておって何ら心配はないということでございます。その根拠といたしますところは、普通の使い方をしておって有害であるというデータが出ていないということでございます。多くの学者の認めている有害であるというデータが出ていないということでございます。それから反面、普通の使い方をしておれば無害であるというデータがたくさん出ておるということでございます。御存じのように、この中性洗剤というのは欧米で広く使われておるものでございまして、アメリカあたりでも日本の十数倍使われておるというようなことでございまして、アメリカでは食器はもちろん洗浄しておりますし、今柳沢教授は野菜には使っていないということでございますが、最近向こうに行って調査してこられた人の話では、使っているということでございます。これは当然でございまして、アメリカではなるほど回虫卵はいないと思いますけれども、農薬を非常にたくさん使っておりますので、農薬が口に入ってくるおそれがあるというようなことから、洗うのは当然だと思いますが、洗っているということでございます。また、アメリカの方でもある程度の許容限度を野菜についてきめているというようなことでございますので、政府でそういうふうにきめているということは、洗っているということを証明するものであると私は思うのでございます。そういうふうに広く使われているものでございますから、これが有害であるということになると、私はアメリカの国民にとってもヨーロッパの国民にとっても、大問題だと思うのです。向こうでもこれにつきましてはいろいろ調査しておりまして、今日までのところでは、私の知り得る範囲のところでは、普通の使い方では有害であると唱えている世界の学者はないのでございます。
 次に、柳沢教授並びにその研究グループの方がなさっておる研究につきまして、私の見解を申し述べさしていただきたいと存じます。私が先生方の研究について知りましたのは、次の文献といいますか、次の事柄によってでございます。一つは、ことしの一月の下旬に東京都の食品衛生調査会がございましたが、その席で柳沢文正博士がこれまでになさっておった研究資料を配付なさいました。それが一つでございます。それからその次は、お茶の水医学会――これは東京医科歯科大学の学内の学会でございますが、このお茶の水医学会が一月の例会において柳沢文正博士が御発表になりましたデータがございますが、これが二番目の点でございます。三番目といたしましては、ことしの二月二十七日に参議院の社労委員会のときに柳沢文正博士が配付されました印刷物がございます。その印刷物並びにその委員会で御発表なされました事柄、それから今柳沢文徳教授からお話を聞いたということ、これを根拠にしての私の見解でございます。
 このABSの毒性につきまして、こういうような研究に基づいて判断いたしますと、このABSの毒性についての研究そのものが、毒性を論ずるのにはきわめて不備であるという点でございます。内容につきまして一、二触れさせていただきますと、たとえば動物実験で毒性を調べるというようなことをなさっておるわけでございますが、この実験に使われたネズミの数が非常に少ない。それから、ネズミの体重があまりふえないということを問題にしておられるわけでありますけれども、その際にネズミがえさをどの程度とったかということのはっきりしたことが書いてないのでございます。いろいろ私どもも実験をやっておりますけれども、動物にそういうものをやります際に、水の中へ入れてやりますと味が悪くなるので、食べものを食べないということが起こって参ります。食べものを食べませんと当然体重はふえないということになりますので、そういう点の明確さを欠いておるという点があります。それからこういった動物実験をする際には、いろいろ動物の個体差というものもございますので、こういうものを飲んだものと飲ませなかったものとの体重の差が出たといっても、その差がほんとうの差であるかどうか。実験誤差というのがございますから、誤差によって起こった差であるかというようなこと、これを調べることが非常に大事でございます。それが有意の差であるかどうかということになりますが、このためには生物統計学的な検討を加えることになっておるわけであります。一見動物に差があるように見えましても、それが誤差による差にすぎないということが往々あるわけでございますから、必ずこういう実験には出物統計学的な原則がなくてはならない。それがなくてはほんとうに学問的には正しいとは言えないのでございます。そういう点が全然してないというような点その他がございますけれども、そういうようなことで、毒性があるということをはっきりするには非常に不備であるということでございます。それからまたそのほか、消化酵素の動きを阻害するとか、あるいは溶血作用があるとかいう御意見でございますけれども、これはある程度濃くすれば、大ていのものといいますか、有害作用が出て参りますので、濃度が問題になるということであります。それから、こういう実験はいわば試験管の中の実験でございます。これは医学をおさめた方は大てい御存じでございますけれども、試験管の中で起こった実験の通り必ずしも生物の体内で起こるとは限らぬ。生物のからだというものは非常に複雑でございますから、試験管内で起こったことが必ず実験で起こるとは限らない。それからまた、生物というものは自分の生命を守るためにいろいろ巧妙な働きをしておりますので、そういうものを簡単に処理するというような働きもあるわけでございます。ですから、こういうもののほんとうの毒性を調べるためには、普通の濃度といいますか、通常使われている濃度において生物に応用してみて、動物実験をしてみて、害があるかどうか、どんな影響があるかということを調べるのが今日行なわれている方法でございます。これが化学物質の毒性をきめる方法として世界の学界で認められている方法でございます。いわば毒性をきめる公式のものさしだと私は思っております。そういうわけでございますから、柳沢教授方はこういうことで毒性をきめるのは間違っておるというような御意見でございますけれども、世界の権威ある学者が、こういう化学物質の毒性をきめるにはこういう方式でいくのだというふうに言われておりますので、私どもとしても世界の学界に認められている方法に従うべきだ、そういうふうに考えるわけでございます。
 そこで、動物実験ということになってくるわけでございますが、この急性毒性につきましては、先ほど柳沢教授もお話がございました大阪の井関博士は、体重一キロについて一・六グラムということであります。私どもの順天堂大学でも実験をやったのがございます。発表いたしておりませんけれども、大体体重一キロについて二グラムということになっております。ほかの方の実験を見ましても、急性毒性というのは大体LD50が体重一キロについて二グラム前後ということでございます。この毒性というものは、これは見解の相違で非常に強いとか弱いとかということを言われますけれども、LD50が体重一キロについて二グラムというようなものはそう特に毒性の高いというものではございません。中には食べものの添加物として許可されているものもあるような次第でございます。
 それから問題は、慢性毒というものはどの程度あるかということが問題でございますけれども、これについては多くの実験がございますが、時間の関係でその一つだけを申し述べさしていただきたいと存じます。これはアメリカで行なわれた実験でございまして、チュージングという方、そのほか二名の方が協力研究なさっておられますが、アメリカのこういった研究というものは、私もアメリカに一年ばかり行って向こうの大学で勉強したこともございますが、非常に科学的に、学問的に、良心的にやっております。そういう点で信用してもいいと思います。と同時に、この発表は専門雑誌「トキシコロジー・アンド・アプライド・ファーマコロジー」という雑誌がございますが、その一九六〇年の七月号に発表されております。専門雑誌に発表されるデータでございますので、私は信用すべきだと思います。この実験におきましては、ラッテ、ネズミを二百四十匹使っております。これを三群に分けまして、八十匹をコントロールに使っております。何もやらない対照に使っております。それからあとの百六十匹を半分に分けまして、その一群には〇・五%のABSをえさの中にまぜて与えております。それからもう一群には〇・一%の割にABSをえさの中に入れて二年間食べさしております。〇・五%えさの中に入れるということになりますと、これは体重一キロについて〇・五グラムということになります。人間は五十キロございますので、人間の場合ですと二十五グラム与えるということになります。それから実際市場に出ております合成洗剤、いろいろ薄めてございますが、三倍くらいに薄めているものが多い。三倍あるいは五倍くらいのものがありますが、三倍といたしますと、七十五グラム、つまり一日七十五グラムを五十キロの人に与えたという結果でございますし、それから水で四百倍に薄めて使いますので、〇・二五%として使いますので、四百倍に薄めたといたしますと、野菜や何かの洗浄に使う液としては三十キログラムを動物に与えたということになるわけです。毎年与えて二年間与えているわけでございます。その結果の報告でございます。体重増加には影響はない、あるいは食欲か何かには関係はない。動物の繁殖にも関係はない。普通の通り繁殖していった。それからいろいろな臓器を調べております。たとえば肝臓とかじん臓、脳とか骨髄、生殖腺とか甲状腺、脳下垂体とか肺臓、副じん、こういうような臓器を全部顕微鏡で調べて、いわゆる病理的の組織を作りまして、病理学的に調べておりますが、その結果何ら障害を起こしていないということでございます。なお、この方々の実験では、水に〇・〇五%の割にABSを加えましてやはり二年間飲ませ続けて実験をいたしておりますが、この場合は、動物は八十匹使っております。四十匹をコントロールとして使い、四十匹をそういった水を飲ましているということでございます。この実験におきましても前と同様に何か変化はなかった、障害を与えていないということでございます。
 以上のことから、私はこれを普通の使い方をしておれば害はないというふうに信ずるのでございます。
 先ほどお話もございましたように皮膚に及ぼす影響でございますが、これは御承知のように、洗浄力が強いものでございますから、若干皮膚の障害は起こる可能性があるわけでございます。何分にも皮膚の表面の脂肪をよくとります。洗浄力があるために起こってくる現象でございます。あるいは皮膚の表面の角層、いわば表面の部分、こういうものをとり過ぎるといいますか、そういうところに影響があるといいますか、そういうよごれをとり過ぎるために皮膚にも障害が起こってくるということはございます。これは人によることでございまして、人によって非常に敏感な方  何でもそうでございますけれど、非常に敏感な方もあれば、これを使っても平気な方があるし、また使っているうちにだんだんと皮膚も荒れなくなってくるというような方がございます。体質によることもあるだろうと思いますが、若干はそういうような方もあるということでございます。
 なお、私の教室でこれを実験をやりまして、それを日本公衆衛生学会の昭和三十五年の総会のときに誌上参加をいたしまして発表しております。それを柳沢教授が引用されておるわけでございます。どうも私、誤解を招いているような向きもあると思いますので、私がやりましたことと、これについて自分が考えておることを申し上げてみたいと思います。皮膚に障害が起こるということがありましたので、実験に使いましたのは、中性洗剤を三種類くらい選びまして、原液と、二〇%の液と、一〇%の液と、一%と液と、〇・二五%の液と、こういう段階のものを設けまして、ネズミの背中四センチ平方に塗ったわけでございます。動物の背中に四センチ平方でございますから、御想像いただければ相当広い部分であるということがわかると思いますが、それを毎日筆で塗ったわけでございます。そうしますと、原液というのは何しろ強いものでございますから、翌日から軽度の発赤を認めております。三日、四日たちますと、原液とか二〇%の液群には、塗った場所が発赤  赤くなってくるというようなことがございます。ところが、一%とか〇・二五%群では特に変化はなかったのでございます。しかし、八日目くらいになりますと、一%とか〇・二五%の群でも、続けておりますと皮毛がよごれてくる。少し荒っぽくなってきて光沢を失ってくるということでございます。この実験を一カ月ほど観察いたしておりますけれども、その後には大した変化は起こっていないのでございます。一%と〇・二五%の群におきましては毛がそういうふうに光沢を失なうとか、よごれたということはございますけれども、そのほかに特別の変化は起こっていないということでございます。しかしながら、原液群につきましては十五日までにほとんどのものが死んだということでございます。今までの柳沢先生の方では全部死んだということになっておりますけれども、実は私どもの実験では大部分が死んだという表現を使っております。もちろん生きたものもあるわけでございます。そういうふうに、皮膚の実験があるわけでございますが、この解釈につきましてはいろいろあると思うのです。たとえば苛性ソーダやなんかもございますけれども、ああいうものも同じように原液を皮膚に四センチも塗ったら動物も参るのではなかろうかという気がいたします。それから高級アルコール系の洗剤もございますけれども、こういうものもやはり原液を塗れば同じような変化が起こってくるのではなかろうかということでございます。それから動物の死んだ原因につきましては、皮膚の障害、そういうように皮膚の働きをしなくしてしまうわけでございますから、そのために起こる。たとえば、やけどでありましても、私どものからだの三分の一やけどしますと二日くらいのうちに死んでしまうようなこともございますから、そういう皮膚と障害というものは動物には相当影響があるわけであります。そういうものであるがために、あるいは感染を起こしてしまうかどうか、何か悪いばい菌でも入って感染を起こしたかどうか、そういうようなこともございまして、私どももいろいろ御批判を得たいためにあれを発表したものでございまして、決してこれが普通の使い方をして害があるということは一言も言っておりません。また、薬というものは濃い濃度で使いますと大ていのものはそういう害を起こしてくるということでございますので、これをもって直ちに中性洗剤は有害だということは一言もいまだかつて申しておりません。それで、柳沢教授の方では、私が害があるということを学者としては認めておりながら、日本食品衛生協会で認めないとおっしゃいますが、私はいまだかつて普通の使い方をして害があるということは申しておりません。それから野菜に入る量、これもいろいろのデータもございますけれども、そう多いものではない。残留するのはきわめて少ないということでございます。
 それから、公衆衛生の面でこういうものを考える際に大事なことは、やはり功罪だと思います。先ほど柳沢教授の言われますのは、野菜は清浄野菜にすればいいじゃないかという御意見でございますけれども、日本の現状ではなかなかそこまでいかないのでございます。もちろん理想は清浄野菜が一番いいかもしれませんけれども、しかし農薬の問題をどうするか。農薬を全部やめてしまうか。最近農産物が非常にたくさんできておる、そして私どもが比較的安い農産物を手に入れることができる、くだものや何か豊富に毎年食べられるという原因は、私は農薬のおかげじゃないかと思うのです。この農薬を使うなということは言えないと思うのです。大いに使っていただいて、増産をしていただく、これが国民のためだと思うのですが、その反面にこれによって、悪い影響がある。農薬を食べるために人体が害を受ける。何とかしてこれを善処していくといいますか、害の少ないものに持っていくということ、これが私ども公衆衛生に関係しておる者としては考えるべきことではないかと思います。それから、放射能のちりの問題にいたしましても、もちろんこれは原爆実験をやめてもらうことが理想だと思いますけれども、現実問題としてはそこまでできないわけでございます。やはり現実の中で最善を尽くしていくということを考えていくことが必要ではなかろうか、そういうことでございます。回虫の問題にいたしましても、回虫卵の国民の間の保有率というものを考えてみましても、昭和二十八、九年ごろの統計によりますと、国民の四〇%か、五〇%くらいは回虫卵を持っておったのでございますが、三十五年ごろの統計を見ますと、回虫卵の保有率が一五・五%、非常に減ってきております。東京あたりは六・二%、大阪あたりでは三二%というように、非常に減ってきておりまして、やがて日本から回虫をなくするということも望めるのではなかろうかというような気がいたしております。これはもちろん全部中性洗剤のおかげだとは申しませんけれども、中性洗剤の普及といいますか、そういうことが大へん役に立っていると思います。以上申しましたようなことで、私は中性洗剤は非常に役に立つ面が大へん多い。その反面に毒性というものは、世界いろいろなところでやっておりまして問題にならないということでございますので、通常の使用方法においては心配はない。むしろ使わない方がいろいろ日本の社会の現状では害があるのではなかろうかというような気持がいたしております。
 以上で一応終わらしていただきたいと思いますけれども、いろいろな関係で柳沢教授あるいは柳沢教授の方の研究者のグループの方の御発表に対しまして酷評しましたことをお許しいただきたいと存じます。
○前田委員長 次に、山越邦彦参考人より御意見の御発表をお願いいたします。山越参考人。
○山越参考人 私は中性洗剤の問題につきまして最初に火をつけたものといたしまして、ちょっと一言御説明申し上げます。
 私の研究している科目は建築医学科でありまして、水の汚染のようなもの、アルキルベンゼンスルフォン酸ソーダのようなものはだいぶ離れております。これは皆さん方から意外だということを聞かされるのでございますけれども、私が建築医学を研究しておりましていつも問題にいたしますのは、日本の建築が、格好の問題、構造の問題、そういう問題を非常によく解決しておりますが、残るあとの設備の問題、環境衛生の問題、その問題が非常におくれておりまして、私三十年前から非常に遺憾に思いましてこの方面を研究して参りました。もちろんその中には浄化槽の問題もございますし、暖房の問題もございますし、設備の問題、たくさん入っております。その暖房の問題、浄化槽の問題をつっついております間に戦争が始まりまして、私偶然北京に住まわなければならないことになりまして、北京におりましたが、ときどき内地に帰って参りますと、下関に着いたとたんに非常にくさいにおいがするのであります。それはいつも毎度同じような状態でして、外国の方が日本に来ますと、全部が同じような感じを持つのじゃないかと思いまして、それ以来極力浄化槽の方の研究を進めて参りましたが、最近は大体その方の問題も解決しまして、非常によい浄化槽ができるようになりました。普通十何万かかるというのが、一万そこそこでできそうな工合になって、そして最近の研究が非常に進みまして、台所の汚水を浄化槽に入れますと非常によく浄化する、そういうことを発見いたしまして、それを進めております。ところがその問題が、中性洗剤が入って参りまして急にばったりだめになってしまいまして、私の今まで三十年研究して参りましたのが、中性洗剤ですっかり破られてしまった格好になっております。
 もう一つ並行して研究しております問題に、最近台所から出る厨芥の問題、これはこのごろでもまだ騒がれておりますが、この厨芥の問題も建築家の解決しなければならない問題としまして、それもつっついておりますが、これも浄化槽の問題と同じように大体解決いたしました。ただ家庭の主婦がその槽の中に厨芥を流し込みさえすれば非常にきれいな水として下水に流れてくる、そういう非常に簡単な槽でございます。それも試験的に方々作っておりましたが、これを使った主婦の方は非常に便利だといって、だいぶ評判がいいようであります。ところが、昨年の六月になりましたら、一軒のうちで突然どうしても大根とかキャベツのようなものが溶けないで困るという苦情が出て参りました。その当時まだ私も中性洗剤というものは全然考えておりませんでした。それをいろいろ調べてみますと、台所で野菜を洗ったりさらを洗ったりする中性洗剤、これがどうも防腐剤の役目をして、その槽の中で腐らないような状態にしているということがわかりまして、私は驚きまして外国の文献を調べてみました。日本の文献はなぜ調べなかったかといいますと、日本の文献は今のところまだドキュメンテーション、整理ができておりません。私のところに外国の文献を非常にきれいにしてありますので、それを見ると世界じゅうの状態がすぐわかるようになっておりまして、そのカードを使ってみました。そうしましたら、中性洗剤の項の中に四、五十枚の文献が出て参りました。それで、それを集めてみましたら、驚いたことには、ヨーロッパ初めアメリカ、そういう国で川がよごれ、地下水がよごれ、それから汚水処理槽が全部アルキルベンゼンスルフォン酸ソーダでもって動かなくなっている。浄化施設が全然動かなくなっている。あわ立ちが多くなりまして、その浄化の設備が全然動かなくなった、そういう報告がたくさん出て参りました。
 それからびっくりしまして、一体内地ではどうしているのかと思って、今度は本格的に内地の資料を調べてみました。そうしましたら、内地の資料には一つもそのことが書いてあるのが見当らないのでございます。それで、私はこれもまたびっくりしまして、専門外のことでまたうっかり手をつけるのも大へんだと思いましたけれども、内地で全然こういうデータがないというのは不思議だと思いました。それから、忙しい身でありましたけれども、そういう方面に少し手をつけてみました。そうしましたら、内地でも意外にも同じような状態が出ていたのでございます。
 まずその内地の状態を一つ一つ申し上げますが、最初井戸水の汚染のことを申し上げます。
 その後私が、私は今三鷹に住んでおりますが、三鷹、武蔵野、小金井、国分寺、そういうところのなるべくよごれてないような水を採取しまして、その中にABSが入っているかどうかを検定してみました。ところが、全部入っております。ひどいのになりますと井戸水で〇・〇七PPM入っております。少ないのでも〇・〇二PPM入っております。私の調べた範囲ではゼロというところは一つもありません。ゼロが一つでもあれば、その条件を追及しましたら、どこかにきれいな水が得られるのではないかと思いまして、ゼロの部分を探しましたが、ゼロはとうとうありませんでした。これは井戸水の方で、三鷹とかあの辺は下水がありませんから、大てい吸い込みを使っております。吸い込みと申しますのは、下水のかわりに台所から出ました雑用水をそこに流し込みまして、それを地下の自浄作用によりまして水をされいにして、それを地下水に戻す、そういうように非常に原始的な方法でありますが、これは今までの状態でしたら割合に科学的にきれいにやっておりました。ところがアルキルベンゼンスルフォン酸ソーダが使われ出してから、このアルキルベンゼンスルフォン酸ソーダというのは非常に浸透力の強いものでございまして、こういう吸い込みのようなものはどんどん通ってしまいます。五十尺くらいの井戸でも、上の方から三十尺くらいの厚い層がありましても、それをどんどん通ってしまう。それで地下水の中に入ってしまう。そういうおそろしい、非常に浸透力の強いものでございます。そのためにあの辺の井戸水はほとんど全部汚染されております。それで私は非常に心配しまして、もっと深い井戸、たとえば三鷹とか武蔵野あたりは公共水道がございまして、百八十メートルとか三百メートル、そういうような水を今使っております。そういう深いボーリングによる井戸水を使って、それを水道として給水しております。その井戸水は、私はやるときはちょっと心配でしたけれども、もしよごれていたらと思いましたら、百八十メールの公共水道の水が〇・〇二PPM汚染しております。〇・〇二PPMといいますと、三鷹の近所の井戸水のいい水よりは悪いのであります。今その水がどうして汚染しているかその原因を追及しておりますが、これは少し手間がかかりますし費用もかかりますもので、ちょっと私は簡単には結論が出せないので、これからの問題だと思っております。それから、近所に三百メートルのボーリングの井戸を使っている水道がございます。その水を持っていって調べましたら、それはまだゼロになって、入っておりません。それで私は、ゼロをさしたので非常に喜んだのですが、これはそのうちに私は連続的にその水を調べるつもりでおりますが、いつになったらよごれるか、そのよごれるときが何年くらいたちますか、これは非常に興味のある問題だろうと思っております。そういうふうに、井戸水はもう完全によごれております。
 次に、河川の方の汚染の状態をちょっとお話しいたします。河川につきましては、ちょうど私の勤めておりまする横浜国立大学の電化の先生で、昨年十月にアメリカから中性洗剤を研究して帰って参りました先生がおられまして、その先生が今夢中になって河川の汚染を調べております。ただいま京都でもって、ちょうどきょうあたりそれを発表なさっておるはずであります。きょう私がそれをこの席上でかわって発表さしていただきますが、この小林義隆助教授の測定によりますと、一番ひどい河川は、私の学校のそばに大岡川という川が流れております。それが一番ひどくて二以上でございます。非常によごれております。それから次に鶴見川、これは綱島の近所を流れている川でございますが、これが一PPMでございます。この綱島あたりの井戸をはかってみますと、井戸がやはり一PPMで、一PPMといいますとこの間、水道局で御発表になった〇・九PPMよりよけいでございますので、かけますとあわが立つような水でございます。それが井戸水として綱島あたりでございます。多摩川は、大体あの近所で私の方で測定いたしましたのは、水道局でなすったものよりは幾らか少ないようでございますが、〇・七くらいでございます。丸子橋の近所で〇・七、上の方はもっと多いところもございますが、大体そのくらいのところでございます。隅田川の方は、これは多摩川よりももっとひどくて、お話にならないようなよごれ方であります。この近所で一番きれいなのは、国府台の下を流れております江戸川でございます。これはまだあまりよごれておりません。そういう結果が、小林助教授の研究で、ただいま発表されておると思います。
 丸子多摩川の水質汚染の問題が問題になりますのは、あのダムの上の水をとりまして、玉川浄水場であれを浄水いたしましてあの近所に給水しているようでございます。それで、あそこで〇・九PPMといいますと、もちろん手でかき回しますとあわが出る状態でございます。私のところにも、あの近所から来る人の報告がございまして、水道の水を使って洗たくする場合に、洗剤を入れないでも、もうあわが出るから、洗たくするときに非常に便利だ、そんなことを言っておりました。こんな水が水道から出ていたということ、ただいまどうか知りませんけれども、そんなことがあったそうでございます。この間、環境衛生局長さんから〇・九PPMというのが報告されまして、私もびっくりしました。大体ひどい水が給水されていることは前から感づいておりましたけれども、どうも私の方から言うのは悪いような気がしまして発表を控えておりました。ああいうことが発表されまして、どうして〇・九PPMというあの発表をなすったか、その真意が私にはわからなかったのですけれども、〇・九PPMがはたしてどんな意味かということは、これは水の方をなすっている方はどなたも大ていおわかりになるはずだと思っております。
 それで、その後すぐこの問題について、社会全体でだいぶ問題にされたらしいのですが、毎日新聞でもってつい最近、活性炭を使っていて中性洗剤を除去しているから心配ないというようなことを書いております。それを見まして私ちょっと心配になったのは、活性炭というのは非常に高価なものです。活性炭は吸着力の非常に強力なものでございますけれども、非常に高価なものでして、アメリカでもこれは使い切れないような高価なものでございます。それを東京の水道でお使いになるのは、どうやってそのあとの採算をとれるようにされるか、それがちょっと心配になっております。そうしましたら、ついその後、二日目ですか、また毎日新聞で、ちっとも心配ないという題で、活性炭を使っているから心配ない、活性炭の施設は四月から施設をするというようなことが書いてありましたが、おそらくこれは使っていらっしゃらないのじゃないかと思って、私はその点非常に遺憾に思っております。ABSを除去するということは、化学者の方ではもう十分研究されております。イオン交換樹脂などという非常にいい方法もございます。活性炭もいいようなことになっております。それから活性汚泥という、そういうものを使ってとることもできるようになっております。ただ、これは採算がとれるかが問題であろうと思います。ですから、これからもABSをもしたくさんお使いになるなら、ただいま日本でも四十万トン近く毎年作るような施設ができたように聞いておりますから、どんどん作ってどんどん国民に使わせた場合は、一方では水道を汚染した場合、井戸を汚染した場合、これをとる工夫を私たちで考えないといけないと思います。これを何を使うかということを急いで研究しなければならないと思いますが、ただいま考えられていることは非常に金がかかるものばかりでありまして、ほとんど手が出ない状態であります。
 川の汚染のことにつきまして、羽村からとっております東京の大部分の水道につきましては、これはまだあまり汚染してないはずでございます。それはいずれ羽村の上の方で中性洗剤を使うような人がたくさんふえれば当然よごれてくると思いますが、今のところまだ東京全体の水はあまりよごれてないと思います。横浜全体のは、今うちの方で調べておりますが、横浜は〇・〇二PPMという数字が出ております。これはちょっと意外でして、どこかで中性洗剤がやはり飛び込んでいるのではないかと思います。
 少し話が逆になりましたが、浄化施設のところでABSがどういうふうに入るか、ちょっとお話し申し上げたいと思います。家庭用の小さい浄化槽の場合は、これは大体今までの設計によりますと、浄化槽の中にはABSは入らぬようになっております。ですから、大体家庭用とか団地で使っております浄化槽の場合は、ほとんどABSの心配はありません。もし団地の浄化槽がうまく浄化しないことがございましたら、それは団地の浄化槽の設計が悪いとお考え下すってよろしいと思います。一般に団地でお使いになっているあの基本式の浄化槽は、私の考えからは、あれは浄化をあまりよくしないだろうと思っております。ですから、団地はABSは入りませんけれども、設計の工合が悪いとお考えになっていいと思います。最近の新しい浄化槽、小さい浄化槽で、家庭の雑用水を酸化槽に入れる式がございます。これは非常によく酸化いたしまして、浄化もよくいたしますが、この部分にもし、野菜を洗浄したり、さらを洗ったりするABSが入りますと、その機能が全然とまってしまいますから、その浄化槽はほとんど働かなるとお考えになっていいと思います。それで、家庭の浄化槽の場合は、ごく特殊なものだけがABSの心配があるわけでございまして、そのほかは考える必要はないと思います。
 ただ心配なのは、公共の大きい浄化施設でございます。この場合は家庭の雑用水はもちろん、便所から流れる汚水も一緒になって下水管から浄化施設の中に流れ込みまして、一たん腐敗槽の中に入りましてそこで腐敗される。活性汚泥によってすっかり腐敗されまして、その次の散布濾過槽に参りまして酸化されまして、それできれいな水になって川に流れる。これが一般の浄化槽の原理でございます。ところが、ABSが入って参りますとどういう現象が起こるかといいますと、この腐敗槽の中にABSが入りますと、活性汚泥が働かなくなる、それで腐敗現象が完全に行なわれなくなるということが最初起こります。腐敗槽の中の腐敗作用が行なわれないために、なまのままで次の酸化浄化槽の方に流れるという状態であります。そして酸化浄化槽でも、そこにABSが入りますと、そこには好気性菌といって空気の存在によって働く菌がありますが、これがやはりABSで働くことができなくなります。また、そこにはいろいろの小さい点のようなものがたくさん発生して、それが浄化を助けてくれますが、そういうものがやはりABSのために働かなくなる。浄化槽の施設はここでもってほとんど一割くらいしか動かなくなる。そういうふうなことが起こります。最近は空気をたくさん入れまして、それで酸化をいたしますが、そういうこともやはりABSの入っているために全然動かなくなってしまう。
  〔山越参考人、写真を示す〕
これは砂町で去年の十月ごろに写した写真だそうですか、こういうふうにあわ立ってしまう。ABSが普通の背の高さよりも高いあわになって、もう完全に浄化槽の浄化施設の機能がなくなっているらしいのです。私が去年新聞に書きましてから、新聞社の方が見に行かれて聞きましたところ、三年前からこういう状態が起こっておる。浄化施設の係の方は、三年前から手のつけようがなかった。ただいまは、何かあわを立たすのがいけないのかと思って、水をまいてあおを消しているそうです。あわを消しても浄化槽の問題には全然関係がないらしいのですが、そういうことを聞いております。
 ただいまいろいろ浄化槽とか浄化施設とか、川の汚染とか井戸の汚染、そういうことを申し上げましたけれども、日本の水は非常に貴重な水でございます。外国に行かれた方はどなたも、日本の水と同じように思って、パリで水道の水を飲まれる。初めは知らなかったのでしょうけれども、パリは非常に硬水のひどいところで、あれを飲みますと下剤を飲んだと同じことになってしまう。知らないでバリの水道の水を飲んだ人は、みな下痢をしている。パリでは、水を飲みたいというと、びんに入っているものを売っております。向こうではブドー酒を普通に飲むというのも、水が悪いからブトー酒を飲んだりするらしい。一般に大陸の方では水が非常に硬水になっておりまして、硬水になっておりますと水はなまで飲めません。私は北京に少しおりましたが、北京の水も非常に強い硬水でして、煮沸しなければ飲めませんし、煮沸しても茶のようなものはまずくて飲めない。ところが、日本の水ですと非常に茶はうまく飲めるし、これはもう世界中触れ回っても差しつかえないくらい日本の水はとうとい水であります。この水が最近ABSでもってだんだんよごれてくるということは、非常に残念だと思います。ただいま動物とか植物とか自然物に対して、天然記念物という名称を与えて保護しようとしております。富士山の頂上なども、あれも個人のものにしたらどんな格好にされるかわかりませんし、ブルトーザーなどを持っていって平らにしてしまうのではないかと思うくらい心配でありますが、富士山のようなものも天然記念物として保護しよう。とにかく今までの自然物を保護しようという努力があるわけですから、この大事な水を子孫に渡す場合に、よごさないで渡していきたいと思っております。簡単ですが……。
○前田委員長 次に、厚生省環境衛生局長より説明を聴取いたします。五十嵐政府委員。
○五十嵐政府委員 ただいま三人の参考人の方からいろいろな御意見を伺ったわけでございますが、私からただいままでの大体の経過と、それから問題を三つに分けまして、食品衛生の問題、水質の問題、下水等の終末処理と消化に関する問題、こういうふうに分けまして、私ども当局の見解を申し上げたいと思います。なお、私必ずしも専門でない部分が多数ございますので、お許しを得ますならば、それぞれ私どもの専門の担当官から追加御説明することをお許し願いたいと思います。
 中性洗剤が日本に初めて取り入れられましたのは、私の承知しておりますところでは、昭和二十五年にサンプルとして輸入されたのが初めであるというふうに聞いております。その後、諸外国の使用状況、あるいは各種の文献等の検討が行なわれておったわけであります。厚生省におきましても、一部毒性の検査などをいたしまして、これが使用は食品衛生上、先ほどもお話しがありましたが、農薬とかあるいは寄生虫卵、塵埃、土砂等の除去に非常に効率の高いものであるというような立場から、これを使用することが食品衛生上望ましいことであるという考え方に立ちまして、昭和三十一年に当時の環境衛生部長の通知によりまして、これをそういう意味で使うようにという指導をいたしたわけでございます。その後、昨年の秋ごろに雑誌の記事等でも、中性洗剤の使用についていかがなものであろうかというような御意見も伝え聞いておったわけでございます。本年に入りまして、先ほど柳沢博士からもお話がありましたような研究の結果が発表されまして、私どもといたしましては、その学問的な研究の御発表については十分これを尊重して、その内容を検討さしていただく。また、私どもの関連する専門家の御意見も伺いまして、従来諸外国の文献その他からとっておりました私どもの見解、すなわち通常の使用方法によりまして食器類あるいは野菜類等の洗浄に使うということは必ずしも健康上有害であるとは考えられない。むしろこれを使用することによって有利な面が考えられる。しかしながら、学者の御研究として発表された内容につきましては、私どもも十分謙虚な立場で、特に慢性的な毒としてどういう影響があるかというようなことについては十分追試の意味も含めまして検討する必要があるということで、これを所属の機関で検討せしめるというような措置をとって、従来の指導態度を継続して参っておるわけでございます。
 なお、このものにつきましては、法規上は薬事法による医薬品にも該当しておりませんし、また、食品衛生法に基づく食品添加物というものにも直ちに該当しない。また、その他の劇毒物という概念にも入らないということで、法規上は一応規制を受けておらない形になっておるわけでございますが、後ほど申し上げますように、水質の問題、あるいは屎尿消化槽、下水道終末処理の関連等もございますので、この問題を法規上どう取り扱っていくべきかということにつきましても、関係の課が集まりましてその検討をいたしておるという段階でございます。
 食品衛生上これが有害であるか無害であるかというようなことにつきましては、先ほど来いろいろ御議論があったところでございますが、私どもの検討いたしました結果では、使用方法に示されております通常のパーセントで通常の使用方法であります限りは、人の健康に障害を及ぼすという結論には到達しないという見解でございまして、その根拠になる多数の研究発表等につきましては、お尋ねがございますれば、専門の担当官からお答えを申し上げたいと思います。
 それから、水質の問題について申し上げたいと思います。水質につきましては、先ほども参議院の社労委員会におきまして私が御答弁申し上げました玉川浄水場における〇・九PPMという数字をお取り上げになりましていろいろ御説明もあったわけでございます。もちろん私ども全国にわたりましてつぶさに検討しておるということではございませんが、東京都におきましては十カ所の浄水場がございまして、その中で東京都からの報告によりますと、中性洗剤の問題がございますのは玉川浄水場だけであるというふうに聞いておるわけでございます。玉川浄水場の原水の汚染が、結局浄化した後も〇・九PPMというようなABSを残す。その原因につきましては、上流における住宅あるいは工場街からの汚染というようなことが直接な原因でございますが、何年にはない非常な渇水による流水量の減少ということが一つの誘因になっておりますことはいなめない事実でございます。そこで、先ほどもお話がございましたが、東京都におきましては、その原水の汚染を浄化するためにいろいろな措置をとっておるわけでございます。その一つとして活性炭の使用も行なっているわけでございます。〇・九PPMの水につきましては、これは玉川浄水場の水の壁が非常に少ない、それを補うという意味も含めまして、砧と長沢の両浄水場の系統から中性洗剤の問題のない水をこれに混合いたしまして、約三倍に薄めてこれを各戸に配水をしているというような事情でございまして、東京都の報告によりますると、家庭用給水栓から出る水につきましてはABSの心配はないというふうに報告を受けておるわけでございます。
 さらに、下水道終末処理の問題でございます。これにつきましても、私どもこれからまだまだ検討していかなければならない問題がたくさんあるわけでございます。これも東京都の砂町の処理場におきます最近の事情を聴取いたしておりますが、やはりかなり汚染されておりまして、流入の下水は最低一・五PPM、最高三・五PPMと報告されております。これを処理いたしまして放流する水では、最低が〇・八PPM、最高が二・二PPMと示されておりまして、このABSの、下水処理に及ぼす影響といたしましては、現在の程度の濃度では下水の浄化効率に影響はない。また、ABSもその処理過程において約五〇%程度除去されるというような報告を受けておるわけでございます。
 なお、水道の水質につきましては、水道法によります水質基準が省令によって定められておりまして、これは慣例によりまして社団法人日本水道協会に諮問をいたしまして、その答申によって水質基準をきめるということになっております。この点につきましては、前回の改正以来かなり日時も経過いたしておりますので、そのABSも含めまして、水質基準の改正の要否、その内容につきまして諮問をいたしておるというような次第でございます。
 以上、簡単でございますが、経過と三点について御説明を申し上げました。
    ―――――――――――――
○前田委員長 本問題について質疑の通告がありますので、順次これを許します。中曽根康弘君。
○中曽根委員 参考人にはまことに御苦労さまでございますが、国民の疑惑と不安を除くために、私はしろうとでございますが、お尋ねしたいと思うのです。
 本委員会が本日参考人を呼びましたのは、最近新聞あるいは投書によっても、相当広範にわたって合成洗剤に関する不安が広がりつつある。私はここへ一つの例を持って参りましたが、これは朝日新聞の「声」という欄における中性洗剤の不安を除けという投書であります。こういうようなものは相当あるのであります。従いまして、国民の代表機関である国会としては正式にこれを取り上げて、国民の目の前で、はたして毒性がありやなしや、ありとすればいかなる対策がとられるべきか、こういうことを解明することは国会の崇高な使命の一つである、そう思いまして本日の委員会が開かれたのであります。私は全くのしろうとでありまして、いかなる先入観も持っておりません。これが安全なものであれば、こんなにけっこうなことはありませんし、国民もほっとするだろうと思います。もしこれが不安なものであるならば、国民も使用について考えなければならぬし、国家としても、あるいは政府といたしましても、国民の保健上至急に対策をとらなければならぬ問題だろうと思います。国民は現在放射能による死の灰についてはきわめて鋭敏であります。これは過敏なくらいに鋭敏になっていると私は思いますが、目の前に起こっているこういう問題については、案外不感症であります。それは政治家とか、あるいは関係方面のそういう注意喚起と申しますか、そういう問題が放射能の問題より軽んぜられておるからではないかとも思われるのです。そういう点から、かえって私のようなしろうとが、国民のあまり知識のない人の代表として無知な質問をすることはきわめて有意義であると私は思いまして、そういう立場から率直にお尋ねいたしたいと思います。
 まず、今までのお話を聞いてみますと、問題が二、三あるようです。
 第一は、中性洗剤は、はたして使って毒なのか毒でないのか。今までのお話ですと、濃度の濃いものは毒であるけれども、非常に薄められたものは毒でないというような印象を与えられておる。しからば、その濃度というものは、どの程度が危険であるのか、ないのか、そういう問題が一つあります。あるいは、ちょっと濃度の薄いものでも危険性が、長く継続される場合には出てくるのかどうかという問題。そうすると、いわゆる許容量の基準というものは、はたしてどこにあるのかということがそこへ出てくると思います。
 第二の問題は環境衛生の問題で、水とか水道とか井戸とか、そういう環境衛生の観点から考慮されなければならぬ問題があるかないか、こういう問題だろうと思います。
 そういう点で、まず事実の点から私お尋ねいたしたいと思うのです。先ほどの陳述の中で小谷教授が説明されました、あなたがネズミについて実験したというデータは、これは非常に重大なデータであると私は思います。そのときのお話によると、濃度を、原液から二〇%のものを四センチ平方塗っていったら十五日までにほとんど死んだということを言われておる。一%から〇・二五%に至るくらいまでは皮膚が荒れた程度である。こういうお話があり、ましたが、一体何匹を対象にしておやりになって、そうして第一群の死んだものは何匹の中の何匹が死んで、何匹が皮膚が荒れたのか。その点をちょっと伺いたいと思います。
○小谷参考人 ただいまの御顧問でございますが、ネズミに実験いたしましたとき、原液と二〇%と一〇%、一%、〇・二五%溶液、五群でございます。洗剤としては三種類使っておりますので、おのおの五匹で、七十五匹使ってやっております。死んだのは、大部分ということになっております。実はこれは調べてこようと思ったのですけれども、ちょうど今、仕事をやった者が出張しておりますので、はっきり何匹ということは申し上げかねます。大部分ということでございます。生き残ったものもあるということであります。
○中曽根委員 大体の見当で何匹くらいですか。群に分けたというたら、大体見当がつくでしょう。
○小谷参考人 その点も今ちょっと……。
○中曽根委員 その辺が私は非常に大事なデータだろうと思うのです。大へん失礼ですが、あなたが無害論を主張なさるならば、こういう一番疑惑のかかるところの正確なデータをお持ちになってお話し願った方が、われわれの頭の悪い者にははっきりすると思いますが、それではその点はそのままにしておきます。
 第二に、厚生省の五十嵐さんは、参議院において川は〇・九PPMとお答えになっており、また、この投書にも書いてございますが、こういう事実が今のお話にもあったようです。それで、厚生省としては、どれくらいから危険だと思われるのか。使う量や時間や、そういうものとの関連において、いわゆる許容量というものはどの程度のものとして見ておるのか。その点を厚生省側にお尋ねいたします。
○五十嵐政府委員 許容量についてのお尋ねでございますが、私どもの集めました、また私どもの手元で得ております文献によりましては、毒性の点につきまして、野菜あるいは飲料水等に含まれておりますPPM等と、それから健康上障害のある毒性の面と、非常に大きな、数十倍、ものによりましては数百倍の開きがあるというふうに心得ておるわけであります。それにつきまして、許容量というものをきめたものをまだ持っておりません。
○中曽根委員 柳沢教授に伺います。今の点あなた方の御研究ではどの程度から危険が出てくるか、あるいは外国、アメリカとかドイツにおいてはどういうものを基準にしているか。その資料がありましたらお話し願いたいと思います。
○柳沢参考人 これは一番大事な問題だと私は思うのでございます。学問の考え方としてまず申し上げなければならないのは、先ほどから私が申し上げますように、世界的な通念に立ったところの慢性中毒の実験といわれているが、このものが先ほど小谷教授から紹介された研究で、すなわちアメリカのギャンブル会社の研究所でやられた膨大な実験でございます。これは多分日本では行ない得ないような実験だと私は思っております。そういうような実験は、私は実は、防腐剤の研究者として十数年の経験を持って研究をやって参りました。その経験的理念に立って、私はこの論文を見まして、この実験であれば慢性中毒実験としてはいいんじゃないか、それから考えて普通に使ったっていいんじゃないかというふうに私は考えたわけなんです。ところが、ここからが大切な点ですが、ABSがズルチンやサッカリンやタール色素と同じ性質のものであれば、私はそのまま何も申さないかもしれません。しかしながら、ABSは界面活性剤であるというところに実は問題点があって、このチュージングの実験をさすいわゆる世界的実験という通念に立つものといわれますが、界面活性剤、特にABSでは通用しないものだというふうに私は考えております。それはなぜかといいますと、この問題を実験するときに、一番初めに気がついたのは、ウサギの皮膚に塗り、飲ませ、それから皮下注射をする、そういうことをしますと、いわゆる電解質のカルシウムが減少して、燐やマグネシウムが増加して、カルシウムと逆相関になって、また血清のPHが下るという現象を認めた。それと同時に、私どもがその皮膚の場合におきましてABSの対照としてローテルという、こういう席上ではっきり申し上げていいかどうかわかりませんが、そういうものを塗りますと、アルカドーシスになる。ですから、ABSではアシドーシスになることを確認したわけです。もちろんその他ABSの対照となる実験はたくさんしています。そういうふうな現象、電解質の変動というものは非常に敏感に影響します。こういう実験根拠から、界面活性剤というものは生体におかしな作用を与えるのではないかと考えたのです。
 それから、溶血作用を見てみると、六ガンマという濃度にまで溶血作用を起こしてしまう。これは先ほども、人体実験ではなく試験管内実験だと言われましたけれども、こういうものがあることも界面活性剤の特性の観察の一つです。
 それから、私どもが文献を調べていきますと、これはこわれないということも皆様方御存じのことで、今後問題になるのもその点でございます。からだの中に入っていってしまう、そして小便に出るということが、ここに持ってきているところのパーベルマンというドイツの学者の実験でございます。豚に約一グラムのS35をラベルしたABSを経口的に与えます。そして、その豚の尿にどのくらい出てくるか、糞便にどのくらい出てくるか、殺しまして臓器にどのくらい入っているかということを見ているわけでございます。そういたしますと、かなり長期間にわたってABSが豚の体内に蓄積されている。そして尿に出てくる。尿に出てくるということは、血液の中に入らなければならないわけであります。血液の中に入ってからどうなるかという点に問題がある。これらの生体に入ったABSが生理的な機能にどのように影響するかが全くわかっていない。このようなものが界面活性剤の作用として問題になります。
 先ほども東京都の委員会における宮本教授の話を引きましたように、体内にABSが入った場合には、たとえばわれわれの食べものの中には発ガン性のものもある。それから、有害の色素もあります。それが体内によくABSと一緒になって入りやすいというふうなことも考えられる。そういう考え方から、同時に、セーラダーという人の学説ですが、これはABSではございませんけれども、界面活性剤というものは発ガン性の補助物質になるという研究を発表しております。私は発ガン性物質とは申しませんが、発ガン性補助物質になる。一緒にガン物質をやるとガンが起きやすくなるということです。あるいはヒーバーという人の、界面活性剤とコロイドを一緒に飲ましたらその毒性が強く出るのじゃないかというふうな見解も出てくる。こういうことになりますと、実験が非常にむずかしくなるわけでございます。
 われわれがネズミの実験をやるときに、健康なネズミを選んで、すべてに同じえさを与えて、えさの中でもいいえさを与えているわけです。色素など入っているはずはありません。そういう立場でやる動物実験の場合と、それからえさの中におけるところいろんな悪いものと一緒にやる実験も必要です。たとえば電解質の問題におきましても、蛋白質と一緒にABSを経口的に投与すると影響は少ないのです。ところが、野菜だけとABSで投与するとアシドーシスが強く出る。それから私どもの実験におきまして、これにまだしっかり申し上げる段階には至っておりませんけれども、アルコールとABSをまぜてやる、油とまぜてやる、こういう実験のやり方をしたのです。そうすると、LD50の死亡率の状況が変わってくるおそれがあるという傾向を認めています。こういうことになってくると、この実験が今まで世界の通念的に見られているところの実験では見られないものです。世界的な通念ということになれば、先ほどのバーライルのLD50の分類だと二グラムになるわけですが、二グラムなどというのは、タール色素とか防腐剤とか、そういうものに置きかえると、かなり毒性は弱いものを持っていることになる。界面活性剤におきましては一・五グラムというものが猛毒となる。これが界面活性剤の毒性の分類であります。先ほど申し上げたように、食品に加えるところのモノグリセライド、そういうものは毒性がないから食品に添加する。このものが食品添加物の規定に入っているというのも、この概念からくる。それでわれわれは実験から、どういうふうに健康障害を起こしているかをどういう方法で見たらいいのかを目下さらに研究しています。そのようにむずかしいのです。また私が申し上げたいのは、この健康障害がどういう影響を及ぼしているかということのために、今作っている洗剤全部をS35でラベルして、それを使用させれば、髪の毛にいくことも明らかな事実として現われてくる。どのくらいの量が髪の毛にいくか、こういう実験はできないので、髪の毛について現実に抜けても、S35でラベルしなければABSという証明はわれわれの現段階の実験の範囲においてはなかなかできない。これはほんの基本的な実験の根拠から、そういうものについての解釈を基礎的実験成績の根拠から持っていって考えざるを得ないわけです。そのために私は静脈注射でABSを入れて――静脈注射で入れたということは、この前参議院の社労委員会におきまして池田博士から、静脈の中に入れれば毒性が強いのはあたりまえじゃないかと言われました。これは確かにすべての物質においても、大体の点において経口投与よりも静脈注射の方が毒性が強いわけでございます。しかしながら、私どもが言っているのは、その場合におきまして池田博士は、溶血作用の強いということの比較のためにサポーニンという例をあげたわけであります。サポーニンとは、静脈注射におきましては猛毒であると申されましたが、経口的に体内に入る場合に、血液中には侵入しないということが薬理的な作用だと教科書に書いてあったことを私は覚えておりますが、そういうように口から入ったものが血液に入らぬものをわざわざ静脈注射をして入れようという無理な実験をやっているのではないわけでございます。ABSは血液の中に入った場合に、変わらないでそのままです。ABSが口から入っても変わらないで、血液の中に入っているわけです。だから、同じような条件とも考えて、無理でない条件だという意味でやっている。その場合に、私は大量にやっているのじゃございません。一キログラム当たり四ガンマというと、ガンマは一ミリグラムの千分の一の単位です。その場合は白血球がずっと減少があります。それは六時間ぐらいでなおってしまいます。これは量をふやすことでまた増加します。そのかわり、注射した場合に、四十ガンマを三分ぐらいで血液の中に入れてやりますが、そうすると翌日になったら足がびっこになってしまいます。四十ガンマの例は、腰が動かなくなる。その腰が動かなくなったのが、三日たったらなおる。先ほど申し上げたように、界面活性剤というのは脊髄のところに単分子膜を作ってしまってそれで麻痺が起こったわけですが、またそのABSが動いて排泄されてしまう。そのためにびっこがなおってしまう場合です。こういうところに界面活性剤の毒性のむずかしさというものを考えざるを得ない。病人にも、幼児にも、子供にも、健康障害を起こしているものでは影響を起こしやすい。そこのところを私は言っているのです。界面活性剤の中毒実験で、えさにまぜて動物にABSをやって、みんな糞便に出るような結果になるような実験をやっている。チュージングの実験においても疑問に思うのは、えさの実験だけにおいてかなり高濃度のものを与えながら、水の場合は量を減らしている。水で多くすれば毒性が出る。この毒性がどこに出るかということをはっきり出さなければならないが、これは肝臓に出ることははっきりわかっている。これはよく使われているところのフーマンの人体実験の犬の成績にございます。そのときの犬の実験を見ますと、大量に与えた場合には肝の脂肪変性を起こすということを書いている。同氏の人間の実験におきましても、毒性はない。影響はないと述べている。しかしながら、私のこの文献の解釈によれば、一例におきまして、この本の表に入っているところの糞便の窒素量とその脂肪量を見ると、ABSを飲ませる前の状況よりも、ABSを食べてからの方がそれらの量は約倍以上になります。ABSのために窒素が吸収されないで出てくる、脂肪が約倍になって出てくる、こういう事実がフリーマンの文献に出ている。また、同じ人体実験の例でございますけれども、体重の四カ月前後の比較を見ますと、目方がふえている場合もあればやせている場合もある。四カ月の間に体重が七十五キロの人が六十七キロまで減っている。約二貫目減っている。この問題をどう説明するか。この説明がない限り、これはABSに関係なしと言えないと私は思いますが、やせたとしてもABSであるかどうかの理由もわからない。もう少しコントロールをとって実験をする必要がある。
 次に、ABSの量的なことでありますが、これは私どもから見れば、許容量の問題ではないのだ。特に野菜ということになりますと、通常の使用ということになるけれども、現在ならば通常の使用ということは割合に通用するかもしれません。しかしながら、あの当時において通常の使用ということはわからないわけです。これは経験的に出てくる問題だからです。しかし、過去の資料は何もない。ですから、これからが通常の使用になるとすれば、今までの使用量が多いので、今後も多く使ってよいことになる。国民はどう考えるか。よく落ちるためにはかなり使って濃度を高くした方がいいと考えている。それはどういう理由で言うかといえば、ことしのサスキンドという教授の学会発表のときに追加した方が、野菜においてかなり高濃度において使う人が多いと言っている。国民において通常の使用は〇・二五%で使えるといったって、そのまま使えるはずがない。日本の家庭において液量計を持っているところがあるか。ない。そうなってくると、これは使用の限度なんということは問題ではなくなってくる、そういうふうに考えます。私は多分にはっきりと、このままでの使用方法で済むかどうか、これまでに述べたように、野菜の中に、たとえば五十ミリないし百ミリのABSが浸透した場合の野菜なんかが多少悪い場合の条件ですが、五〇ミリグラム野菜につけば体重一キログラム当たり一ミリとなる、こういう線を出しています。一キログラム当たり一ミリというものがからだの中に入って、一瞬に四十ガンマが血液に入ったとすると、一体どのくらいの割合かというと、約二十五分の一の量で、それが一挙に入り、脊髄に結びつく可能性があるというふうに私は考えますこのように界面活性剤は普通の薬剤と違うので、チュージングの世界的見解の通念に従うという実験ABSでは妥当性がないことの一面をお話しいたしました。
○中曽根委員 私の質問に対して端的に、簡単に答えてもらってけっこうです。
 今までの話を聞いてみますと、界面活性剤というものがくせもののように私は思う。界面性活性剤というものを今までの話が想像してみると、入っていって、溶けないでどこかへ引っかかるような、そういう印象を私持っておる。引っかかったら、そこで麻痺が起こるとか、足がびっこになるとかいう現象が起こる。そうすると、溶けないというところから、おそらく便所の何かも溶けないから被膜みたいにできて、殺菌ができないから浄化槽が用をなさなくなった、そういう今の山越先生のお話になっていっていると私は想像しているわけです。界面性活性剤というものは、一体そういうものなのかどうか。たとえば洗たくで使って手が荒れるということは、もう手に影響を与えているということです。これは、からだの中に入っていくものか、いかないものか。血液の中に浸透するものか、しないものか。それが一点。
 入っていくとすれば、どの程度入るものか。入っていって、血液の中でどういう作用を及ぼすと推定されるか。私は簡単なことで引っかかるということを言ったけれども、そういうことになるのかどうか知りません。想像するとそういうふうに感ずるのですけれども、その辺の毒性を、わかりやすく簡単にやってもらいたい。
○柳沢参考人 簡単にということは非常にむずかしいのでございますけれども、誤解があってもよろしいというなら私は端的に申し上げます。微量でもわれわれの重要な脳・神経細胞の中に入る、あるいは付着すればぽっくり死ぬという可能性があるということも私ははっきり申し上げます。それから皮膚への浸入問題におきましては、ブランクという人の実験がございます。その中には血管の壁まで浸透していくという実験成績でございます。これは大体〇・五%くらいの濃度で実験したものと記憶しますが、皮膚の中に入っていくという事実が明らかにSの35でラベルした実験で証明されております。それから、ほかに肝臓に吸着または蓄積すると私は思います。それから特に悪いもの、たとえば色素と一緒に吸収された場合には、からだの悪い人では特に悪い障害をからだに起こすというふうに考えます。
○中曽根委員 入るとなぜ障害を起こすのか。
○柳沢参考人 界面活性ですから、細胞の呼吸や機能を低下させる、また臓器によっては麻痺させるということがあるためと考えています。それからやはり蓄積していくことも問題ですし、酵素作用阻害も大きな点です。界面性活性剤の生体に及ぼす影響は今後の研究に待たなければわからない問題が多いと考えますが、特に物理化学的な面を通して研究する必要があります。
○中曽根委員 界面活性剤というのはどういうものですか。
○柳沢参考人 界面活性剤というものは、非常にむずかしい物質です。簡単に申しますればお洗たくのことを考えていただければ一番いいと私は思います。お洗たくの場合に、表面をぬらす性質を湿潤力といい、気泡が立つ。ABSが繊維の中に入っていく、すなわち浸透性でございます。それと同時にごみを吸着していく作用がございます。これを乳化力と言います。あぶくと一緒にあかを持ち出すことを分散作用といいます。特に浸透力が強くて界面張力の作用の強いものが界面活性剤のうちの一つでありますABSであります。水に溶けにくい疎水性と溶けやすい親水性の二つからできているのが界面活性剤の大きな特徴と化学的に見て言えましょう。ソルピタンの系統のものは乳化作用が強いものであります。
○中曽根委員 小谷教授にお尋ねいたします。今のような御見解に対して、あなたはどういうふうにお考えになりますか。浸透するかしないか。それから、入っていった場合にどういう作用を及ぼすか、どうか。
○小谷参考人 皮膚から浸透するかどうかということは実は私の方で実験いたしておりませんけれども、文献その他では、例のアイソトープを使ってみればある程度わかるのではなかろうかということで、それをやった実験がございますけれども、それでは皮膚の中に入っていかない、血液の中に入っていかないということでございます。
 それから、界面活性剤だから特別ということでございますけれども、結局はこういうものを普通に使った場合に、体内へ吸収されてそういうものがどんな障害を及ぼすかということがポイントではないかと思うのです。からだの中に、今おっしゃったように、そんなにこういうものが全体に入っていくかどうかという問題もございますし、それからまた、その働き方がどういうことか、現在のところではわからないことが非常に多いと思うのです。私ども人間の生理作用におきましても、医学も進歩したとはいいながら、なかなかわからない点がある。薬というものはどういうふうに働くかということについても、非常にわからないことがたくさんございますので、そういうものが全部解明された暁には、どういう働きをするということによって毒性があるかときめてもいいと思いますが、現在の段階で毒性があるかどうかということは、ある薬をからだの中に入れた場合に、総合的な作用によってどういう障害が起こってくるか、しかも長時間にやった場合にどんな変化が起こってくるか、そういうことでそのものの毒性があるかどうかをきめるべきだと思います。どこの国でもそういうことをやっているということでございます。
○中曽根委員 あなたの実験の結果によると、原液及び二〇%のものを皮膚に塗った。そうしたら十五日までにほとんど死んだ。それから濃度の薄いものは皮膚が荒れてきた。そういう結果から見れば、やはり浸透するのじゃないですか。その死ぬということは、何で死んだか私ちょっとわかりませんが、あるいは毛が荒れてきたということは、循環しているからからだ全体あるいは栄養障害を起こすとか、何かの影響がなければそういうことは起こり得ないと思うのです。浸透しないということは、ちょっと私解せないのであります。
○小谷参考人 さっきから私説明が足りなかったと思いますが、動物が死んだというのは原液の分においてだけ死んだ、その他は死んでいないわけでございます。これは毎日塗って異常な使い方をしているわけでございますが、皮膚を相当いためるわけでございますね。皮膚をいためますので、皮膚としての働きを失ってくるということによっても障害を受けるということです。それから、何も吸収されなくても、皮膚自体が障害を受けるということ、そのことによっていろいろと生命に危険を及ぼす。その例としまして、さっき申しましたように、やけどをした場合でも生命に危険が起こってくるということがあるわけでございます。
 それから、中に入るかどうかという点でございますが、皮膚の障害でちょっと私今間違いました。その皮膚が普通の働きをしておりませんために、ばい菌や何か来ますと非常にそこで繁殖しやすい。そしてばい菌がその皮膚に炎症を起こしてそこに有毒なものを出すというようなこと。感染という言葉ですが、そういうことでも起こってくるということでございまして、一%とか〇・二五%は毎日塗るわけでございます。現実の問題としては、手で洗ったりしますので、一%とか〇・二五%のものが永久に残っているということはございません。実験でございますけれども、そういうことをやった。そうしたら、皮膚というか毛が荒れてきたということは、結局の脂肪分とか何かを表面的にとっていくと、中に吸収されて全身が云々ということではないと思います。あくまでも表面的な作用ということだと私は考えております。
○中曽根委員 その辺私は専門家ではありませんから、いずれ専門家に聞いてもらうことにしまして、その次に、アメリカでどうしているかという点で御見解が違っている。柳沢さんはアメリカでは野菜には使っていないというし、小谷教授は使っていると言われます。これは事実の問題だから、はっきりすると思うのですが、一体どっちが正しいのですか。
 それから、ドイツでも相当使っているようですが、ドイツでは一体どういう取り扱いをしているか。その点三人答えて下さい。厚生省から話してもらいましょうか。
○五十嵐政府委員 私は直接アメリカに行って見てきたわけでございませんので、この点はお許しをいただきたいと思います。私の聞いております範囲では、アメリカでは市場で野菜を洗いまして、洗った形で家庭に届くようなことになっております。市場で洗います場合に中性洗剤を使うというふうに聞いておるわけでございます。家庭で全然使っていないかどうかということは私確かめておりません。
 それからドイツについてのお尋ねでございますが、これも私実際に見ておるわけではございません。従いまして、アメリカと似たような使い方をしているのではないかと想像をいたしておる程度でございます。
○中曽根委員 厚生省がそんないいかげんなことを言うのはいかんね。何のために国民の保健をやっているか、私は厚生省の非常な怠慢に対して遺憾の意を表したい。こういうことがこれだけ大きく騒がれたら、少なくとも在外公館を使うなり、あるいは専門家を派遣して、外国の実態を調べるべきじゃないですか。これだけ大きくなってからもう二カ月くらいたつじゃないですか。その間あなた方は何をしているのですか。それをまるで推理小説みたいな形の答弁をしている。
○五十嵐政府委員 ただいまの在外公館を通じて尋ねろということでございますが、そのように私どもいたしております。実は西ドイツで下水道の終末処理に関しまして、法律によりまして一定の規制をするというようなことが伝えられましたので、その点に関しまして、一体どういう理由で、どのような規制をするのか、またそれの基礎になる資料はどんなものであるかということを、実はドイツ大使館を通じまして質問をいたしたわけでございます。まだその回答に接しておりませんので、まことに不備なお答えを申し上げまして恐縮でございます。
○中曽根委員 あまりにも物事の速度をおそく、責任感のないやり方でやっていると私は思います。ある記事によれば、西ドイツでは昨秋以来この中性洗剤の使用に注意して、ことしの六月三十日より使用を中止することを法律できめたといわれる、こういうことも今私がいただいた新聞に書いてある。その話に関連している話かもしれない。こういうことがある以上は、大使館から返事がくるまでのんべんだらりん待っているという手はないでしょう。厚生省は厚生省の機関を使って、大使館員の話を聞くというようなことではなくて、もっと専門的なやり方でものをやるべきじゃないですか。
 小谷教授にお聞きいたしますが、あなたは使っているという方ですな。使っているということをもう少し納得するやり方で説明してもらいたい。使ってないというなら、これは挙証の方法がないわけだ。使っているということは何か挙証の方法がなくちゃならぬ。裁判上からいえばそういうことになる。
○小谷参考人 アメリカで野菜の洗浄に使っているかどうかということでございますが、先ほど私が申し上げましたように、使っているという方でございます。それは三月の上旬ごろ向こうへ行って調べてきた人の話でございます。
 それからアメリカのフード・アディティブというものがございますけれども、こういうものの中では野菜についてはこの程度の許容量というものを示されておりますから、そういうことが起こっておればこそ、向こうでもそういうものを示しているということだと思います。文書にも、政府が出しているこういう紙にも書いているということと、それから実際洗っているのを見てきたし、その写真もとってきた。私きょう持って参りませんでしたけれども、そういうことでございます。
○中曽根委員 この委員会で、外国で使っているか使ってないかが問題になるなんということは、実に情けないことであって、質問する方もいや気がさすけれども、その程度であるのだからやむを得ず私は質問している。柳沢さん、何かありますか。
○柳沢参考人 私もアメリカへ行ったわけではございませんから、すべて文献に基づいて私は申し上げたいと思います。
 その一つは、一九六〇年二月号の「日化協月報」に、ライオン油脂株式会社の富山新一博士が「合成洗浄剤の現状と将来」という論文をお書きになっております。その一文の一部を私読ましていただきます。「石油系洗浄剤はメーカーも意欲低調で一時伸びなやんでいた時代があった。そこで私達ライオン油脂KKでは、この競合から解放されて新しい分野の開拓によって、これを解決しようというふうに考えたのである。これは食器洗浄とか野菜洗浄という方面で、この方面には中性洗浄剤が本当に効果を発揮することが出来て、しかも使用量が多いのでその方に伸びていったのである。」。このあとにアメリカの家庭生活におけるグラスを初め食器とかなんとかのABS洗浄の解説が全部ついています。野菜のことは一つも紹介してございません。ですから、アメリカの家庭で食器以外に野菜にも使っているならば、当然この文章の説明の中に入っているべきじゃないか。これが私がアメリカの家庭で使用していないと申し上げる一つの根拠でございます。
 それからもう一つは、私も実は最近外国へ行ってきた方から話を聞いたのです。その方が、先ほど申し上げたようにアメリカのアソシエーション・オブ・アメリカン・ソープ・アンド・グリセリン・プロダクトでもらってきた資料には、先ほども申しましたごとく野菜のことは書いてない。また前記協会の中のかなり有力な方に会ったらしいのですが、ABSの毒性の問題に触れたところ、ABSの毒性というものは非常に微妙な問題である、アメリカにおいてはこういうことは問題になっていない、多分日本においては野菜などに使うからそういう毒性の問題が起きているのじゃなかろうか、そういうふうな発言を私は聞いております。
 それからもう一つ、これは先ほど申し上げましたように、柳沢文正博士が東洋経済での中性洗剤問題の講演集の最後に、アメリカでこういう洗剤を野菜に使うならば添加物として規制する方向に進むという考えを持っているというアメリカ合衆国の教育保健省の中のFDA局の関係の文書が記載されております。この文書によりますと、ABSは野菜には一般的には使っていないということが言えると考えられます。FDAではやっていない。だから野菜に使っていないという結果になると考えるのです。
○中曽根委員 今の小谷教授の話の中にアメリカの野菜についての許容量の話がありましたが、どういうふうに許容量というものを設定しておるのですか。
○小谷参考人 これは毒性があまり問題にならないので、私の持っておる文献によりますと、レストリクションはないと書いてある、洗うだけでいいという表現でございます。
○中曽根委員 あなたはさっき許容量のことを言ったじゃないですか。
○小谷参考人 それは取り消さしていただきます。
○中曽根委員 私ばかり質問しては恐縮ですから、私の質問は切り上げますけれども、もう一つ。
 きょう私は委員会へ来たら、衆議院議員の藤本捨助君からこういう記事をもらった。それによりますと、東京都江戸川区東篠崎町三十番地ミヨシ化学株式会社取締役社長柳原勝紀という人が、「当社が石油系の中性並びに合成洗剤即ちアルキルベンゼンスルホン酸ソーダ系(ABS系)の製造を中止するに至った経緯御報告」というのが「消費者の皆様へ」として書いてある。その中に、中性洗剤を今まで作ってきたけれども、毒性があることがわかったのでこれををやめる。そうして、その実際の経験として、「当社従業員の死亡並びに中毒の体験について」と書いてある。それを読んでみますと、二両年前頃よりABS系洗剤でなければ売りにくいから、その設備方について絶えず販売部員より申し出がありましたが、脂肪酸石けんの設備とは異り、ABS系の洗剤は鉄をも侵しますので、材料一切をステンレスにしなければならず、従って莫大な設備費を要しますので、折角従業員たちの希望もかなえられずに過しましたところ」、やむを得ず「昭和三十六年一月七日の当社専業計画会議において、ABS系洗剤を製造することに決定した。」そうして同年八月十七日から製造を始めた。「それで「同年九月十一日に前日まで稼動中のABS系洗剤部係長石本徳栄が、夜半より呼吸困難を訴えて、医学博士池田二郎先生に夜明まで二回に亘り往診処置を受け、同医師の勤めのもとに十二日午前八時三十分、救急車で小岩町厚生会小岩病院に入院、栗原玄達院長の処置を受けましたが、同日午後一時急死しました。同日現場に居合せた名古屋市立医科大学病理学佐藤教授が、石本係長の死因がABSの中毒死と思はれる故、残存の工員の健康診断を受けるよう進言をした。同年九月十四日、ABS系合成洗剤部作業員男九名女四名計十三名に、当工場医渡辺誠一医師の健康診断を受けさせたところ、全員が眼、咽喉等の粘膜を冒されていたり、または皮膚炎症等の中毒症状なりと診断されました。」いろいろなことが書いてあります。「なお当社では、合成洗剤生産にさきがけて昭和三十五年五月から、厚生省国立予防衛生研究所の証明を受けて、ABS二十五%混入の中性液体洗剤マイポールLを発売して、これを工場給食の野菜、食器洗いに使用していましたが、ABS系洗剤製造部員以外の従業員において、原因不明のヘルペス及び内臓障害を訴える者、並びに病床に臥すものがありました。そこで同年九月二十七日、都立衛生研究所医学博士柳沢文正先生に全従業員数に近い二百三名の健康受診の為に、第一回の尿検査を依頼いたしました結果、四十五%即ち九十二名に中毒症状が認められました。」云々とずっとあって、いろいろなケースが書いてあります。そうしてさらに「同年十月三十日、岩手県医療局の招きによって、当社の庄司宣伝部長と日高研究部次長の両名が販売に出張した際、偶々ABS系洗剤の毒性にふれて当社製品の使用上の諸注意を説明しましたところ、最近、東北地方の若い婦人層の間に悪性肝炎が増加しており、実はこれはABS系洗剤の中毒によるものであると、東北大学医学部の中村隆教授が県下各病院に調査協力方を要請している事実が判明しました。」云々、そうしてさらに「自衛隊向けのABS系合成洗剤八もを、本年一月四、五日の両日製造したところ、作業員大塚次郎が先に死亡の石本係長と寸分違わぬ症状を呈して呼吸困難を起しましたので、柳沢博士の指示に基づいて急拠小岩町片山病院に入院せしめ、解毒加療させたところ、幸いに一命を取り留め、二月六日退院、現在脂肪酸石けん製造に従事中であります。」云々と書いてある。
 これを読んでみるというと、原因はよくわかりませんが、今までの諸等を考えてみて、これは注意を要する問題であると私は感ずるのです。先ほどの界面活性剤ですか、そういうものは思わぬところに引っかかるとか、あるいは症状を露呈するという可能性がないとは言えない。しかし、あるということも積極的にまだ証明はされないでしょう。しかし、こういうケースがあるということはもう厳然たる事実です。そういう面から考えると、国民が不安に思うのは無理もない。しかも、厚生省において外国の実情調査も十分でなし、国内のそういう症状その他の検討も、十分データをとっているわけでもない。そういう不安のあるものを使わしておくということが、国家の衛生保全の上から見て、はたしてよろしいかどうか。食品衛生という立場や、あるいは環境衛生といい立場から考えると、害のありそうなものは使わせないという方向が正しい方向ではないか。積極的に無害であるというのが証明されたら、これは使わせるべきでしょう。しかし、少なくとも危険性があるという可能性が、あるいは想像されるという分野については、割合に消極的なのが厚生省の立場ではないかと思うのです。そういう点から見て、今度のこの合性洗剤に関してはやや越境しているという疑いが私には残ります。それが厚生省の立場として正しいかどうか。その点について私は大きな疑問が残る。厚生省の厚生行政の基準について、この問題についてだけ越境している部分があるのではないか、そういうように私は思うのであります。
 それからさらに、環境衛生の面から見ても、今の水道の問題、あるいは井戸の問題、あるいは便所の浄化装置の問題等はゆるがせにできない問題であって、その基準がどうであるか、あるいは無害であるかどうか、私はここではわかりませんが、少なくとも東京なら東京の一千万の人口、横浜の相当数の人口、ひいては全国の相当数の人たちが不安に感じていることは事実であります。
 この間、新聞を見たら、水道局の声明で、東京の水道は無害ですから安心して飲んで下さいと書いてあった。水道局がそれくらいに出さなければならぬ程度に市民が心配しているということは事実ですね。それに対して、日本の科学者あるいは関係当局が積極的な資料をもって説明しなくちゃならぬ。そういう努力をやってないのは、はなはだ遺憾です。厚生省も忙しいだろうけれども、一番大事なのは案外こういうことじゃないですか。流行性感冒の時期が去ったのだから、今度はこの問題に一つ入っていってもらいたい。ワクチンはもう要らないのですから、そういう点からしても、この問題に関して非常に私は行政上の落度があるように思う。厚生省は至急省議を開いて、大臣以下この問題を省の大きな問題としてもう一回取り上げて――食品衛生課の問題ではないのです。むしろ政治家が国民全体の視野において、国民の健康管理という面から取り上げるべき問題である。あるいは環境衛生、都市計画という面からこれは取り上げるべき問題である。水全般の処理という面から見てもそうです。そういう広い視野から、これは政治的に厚生省は取り上げるべき問題であると私は思う。
 そこで、私の質問はやめますけれども、われわれは当委員会において質問のしっ放しということは私はやる意思はない。必ずこの問題については何らか結末をつけなければならぬと思う。そういう点について、帰ったら至急厚生大臣に相談をして、対策を講じてもらいたい。
 それから、学界においても、今までのお話を聞くと、必ずしも両方の議論とも納得できない。できないが、私には疑問と不安が残る。これが私の結論であります。疑問と不安の残ることについては、これは使用とかその他の問題については慎重なるべきである、それが国の行政の基準でなければならぬ、そう私は思うのです。しかし、学界の方においてももう少し体系立った、そうしてもう少し数量の多いデータをそろえて、われわれの方へ知らしてもらえば、われわれの方も非常にありがたいと思う。これは一学派とか一学徒の見解の問題ではない。もっと大きな国民衛生の基本に関する問題、あるいはさらに新しい病理学の問題であって、これを解明したら、日本からノーベル賞が出るかもしれぬと私は思う。そういう意味の医学者が出てもいいと思う。金が足りなければ、われわれ国会の方としてもいろいろなことで金を応援することも考えてもいいと思う。そういうスケールの問題としてこれを取り上げられんことを私は希望いたします。私の質問はこれで終わります。
 大へんなまいきなことを申し上げましたが、これは無知から出た質問であり、言葉でありますから、どうかごかんべんを願いたいと思います。
○前田委員長 次に山田長司君。
○山田(長)委員 これから御質問を申し上げるわけでありますが、私も全く中性洗剤のようなものについては無知識であります。そういう点を前置きして、お答えを丁寧にお願いしたいと思うわけでございます。
 このことについて私が皆さん方にお尋ねをするゆえんのものは、実は昨年北海道へ旅行をいたしましたときに、旭川に流れている水を見まして、この水はただならない水であるということを発見すると同時に、非常に川にあわ立ちがあったわけです。これをまず私は疑問に思いました。
 それから、今度はまた大津市の坂本町二十九番地、滋賀県の真珠養殖組合連合会から実は陳情が参りました。この陳情について実は農林委員会で私は発言するつもりでおったのでありますが、たまたまこのことがここで問題になりましたので、この席で申し上げたいと思います。この真珠を養殖している組合が、実はどういうことか、真珠が全部死んでしまった。いろいろこのことを研究してみたが、近所にできた工場から出る汚水以外に今まで死んだ実例がない、こういうことなんであります。
 私は全く中性洗剤なるものは知らないのでありますが、最近の新聞を見たり、けさの朝日新聞を見ると、茨城県等の四十四市区町村の人たちが汚水問題について大騒ぎをしている。こういう記事を見て、これらが一連のつながりがあるような印象を私は持っているわけです。たまたまけさの産経に、やはり中性洗剤で東京の下町の、江東区南砂町の下水処理場で、中性洗剤のためにあわ立ちがひどくて浄化が困難だという記事を新聞で見たのです。そればかりでなしに、ただいま中曽根委員が申されましたように、新聞等でかなり話題になっておりますものですから、一体これは害があるのかないのか、私も非常に疑問に思ってお尋ねするのです。
 社団法人の日本食品衛生協会の小谷さんは、常務理事という立場できょうはおいで願ったのですが、この協会の推薦公告に、各家庭で使われている中性洗剤の中に本品は毒性を有せず、有害物を含まず、こういうふうなことが規定されているのですけれども、これはただいまの疑問から伺うのではなくて、厚生省もこの社団法人の監督の衝に当たっておるわけですし、それから、協会としてもこういうことをお書きになっております以上、これは確信があってお書きになられておるものだと思うのです。業者はさらにその品物に、厚生省証明、本品は毒性を有しないというふうな意味のことが帯いてあるわけです。これは厚生省が証明したものなのかどうなのか。それから、食品協会としてはどういう事情になっておるのか。やはり一応真偽をただしておく必要があると思いますので、お答え願いたいと思います。
○小谷参考人 私、たまたま日本食品衛生協会の常務理事をいたしておりますので、日本食品衛生協会でこの中性洗剤を推奨しておるということで、その中の文章に毒性を有せずという言葉があるということでございますが、これは普通の使い方においては害がないという意味の「毒性を有せず」ということでございます。言葉は足りませんでしたけれども、そういう趣旨で、社会通念上そういうふうに考えられるのではなかろうかというふうに思いまして、そういう表現を使わしていただいておるわけでございます。
 なお、有害物を含有せずということは、食べ物に使う洗剤でございますので、間違って砒素とか鉛というものが入っておっては工合が悪いということで、そういった有害金属、砒素、鉛、すず、アンチモン、銅、亜鉛、そういうものを含んでいないということでございます。
○五十嵐政府委員 ただいまの御質問で、厚生省証明とか、あるいはそのほかにも指定とか、あるいは実験済みとかいうような言葉を使っておるようなものがあるというふうに私も聞きましたので、そういう誤解のある表現は一切これを改めるように強い指示をいたしまして、これを改めさせました。また、表現の中で誤解を招くようなものにつきましては、今後とも個々に検討いたしまして改めさしていきたいと考えております。
○山田(長)委員 小谷さんのただいまの御説明ですが、やっぱり普通使用量という量の問題は、われわれしろうとには、まるきりわからぬわけですね。まして、普通の家庭で使用される場合における縦なんというものについては、まるきりわからぬのじゃないかと思うのです。そして、それが普通量でなかった場合には、さっきからのお話を伺っておりましても、何か害があるような感じがするのです。
 もう一つ、私はここで伺おうとするために資料を見ますと、さっきも中曾根委員の質問の中にもあったように、ネズミが死んでいるという事例を申された点などからいいますと、しろうとの私はこれはほんとうに害があるのだという感じが実はしてきてしまったのです。こういう点で、中性洗剤の害がないという普通使用量などというものは、どんな普通使用量なんですか。
○小谷参考人 普通の使用量というのは、洗剤を〇・二五%に薄めて使うということが基準になっております。濃いものを使ってもそれほど効果がないということで、ある程度薄めなければ効果がない。それからいろいろな経済的な理由もございまして、そう原液そのままを使うということはないと思います。ああいうものを使う場合に、洗たくの場合もそうでございますが、大体どの程度入れたらいいかということも書いてございますので、それによって使う使用量が普通の使用量ということでございます。
 それから、ネズミが死んだということは、実はこういう話がございますので、場合によってはほかの洗剤も使ってみて、はたして同じような変化が起こるかどうか追試してみることが必要だと私は思います。そういう追試をした場合に、すべてほかのものでも出るということになれば、これは何もABSだけが独特なものではないということになるのではなかろうかという気がいたしておりますので、この点については今後追究を必要とするということでございます。
 ただ、先ほどからお話が出ておりますけれども、結局これはアメリカあたりの実験で、二年間にわたっての長期の実験をやっておりまして、そして普通の使い方では毒がないということが出ておりますので、私はこういうものを禁止する必要はない、むしろ使用をすすめるのが国民のためではなかろうかという気がいたしております。
○山田(長)委員 私にはどうしても理解ができないのです。食品衛生協会の推薦公告というものは、あなたのところだけで勝手に推薦公告ができる筋合いのものではないと思います。この点は、だれが集まって障害がないということの推薦をしたものか。厚生省もそれは立ち会ったのだろうと思いますが、この点、学者としてのあなただけがこれを推薦する筋合いのものではないと思います。どなたがお集まりになって、どんな研究をしてこれを推薦する形になったのか。知っている範囲で一つお答えを願いたいと願います。
○小谷参考人 日本食品衛生協会の事業というのは、食品衛生向上のためのいろいろな仕事をしていきたいということでございます。中性洗剤を普及するということが、一つは先ほど申し上げました農薬とか回虫卵とかいうものがございます。あるいは食器をされいに洗うというような点で、食中毒の予防ということに役に立つ、プラスの面が大へんございますので、そういう仕事をやっていきたいということでございます。そういうことにつきまして、いいものがあったら皆さんに知らせて、よく知って使ってもらいたいということで、いいものを推奨するという制度が定款の中に書いてあるわけでございます。それに基づきまして、そういう食品衛生向上に役に立つ事業だと思いますので、推奨ということをやらせていただいているわけでございます。ただ、これは私個人で勝手にぽんぽんと推薦状を出すことは、おっしゃる通りできるものではございません。それで、いろいろ関係の学者の方々の意見を伺ってやっていきたいということで、審議をする委員会のようなものも設けております。そういう先生方の意見を聞く。先生方の意見というのも、結局、先ほど申し上げました内外の文献によって伺っても、これは害はないのではないか、のみならず、食品衛生上利益の面も多いというようなことで、推奨ということをやらしていただいておるわけでございます。
○五十嵐政府委員 中性洗剤の推薦制度につきましては、社団法人日本食品衛生協会に食品の器具及び容器、包装等推奨に関する規定という規定を設けまして、その中に委員会を設けて、その委員会で審議をして推薦、非推薦を決定するということになっておるわけでございます。その委員会で推薦する場合の審査の基準というのがございまして、食器具、野菜、果実等洗浄用中性洗剤推奨審査基準という九項目にわたる基準がございまして、その基準に合致するものを推薦するということになっております。また、その九項目に合致するかしないかということは、官公立の衛生試験研究機関で研究されましたデータをつけまして推薦をするという形になっております。そういう試験研究の結果に基づいて審査をいたしておる、こういうことに相なっておるわけであります。
○山田(長)委員 権威のある審査の結果こうした推薦をしたと思うのでありますが、この委員会の委員の名前はだれとだれです。
○小谷参考人 私今その名簿を実は持ってきておりませんので、記憶にある分だけを申し上げますと、公衆衛生院の松井博士でございます。それから国立衛生試験所の川城博士、それから予防衛生研究所の遠山博士、それから私も入っております。また厚生省の方も、ときどき監督の意味でその委員会には御参加を願っておるというようなことでございます。
○山田(長)委員 それらの人たちが研究した結果、中性洗剤なるものは毒性がないということから推奨する段階に立ら至ったものと思うのでありますが、それにしてはどうも理解ができないことは、一方では有害説が生まれてくるに至っては、研究されたものとしては、何かずいぶんふに落ちないわけです。国民の健康、衛生上から考えてみましても、国会でこのことをきょう論議されたことだけでも、ずいぶん私は中性洗剤に対する国民の不安というものは増してくると思うのです。そういう場合、あなた方としては、これは確固たる信念で無害説を出したわけでありますが、やはりこのことについては、ただいまの委員会に列席された学者の皆さん方もみな同じ見解だったのでしょうか。
○小谷参考人 審査の委員会に出席した人が全部同じ御意見であったかということでございますが、その通りでございます。これは先ほどから繰り返して申し上げるようでございますけれども、内外の文献によってABSの中性洗剤は普通の使い方をしては害はないという根拠がありますので、それによってやっておったわけでございます。
 それから、先ほど申し上げましたように、柳沢教授の方の御研究がございますけれども、その研究によりましては普通の使い方をして害があるという根拠にはならないと私どもは思っておるわけでございます。
○山田(長)委員 われわれのところにも国民の間から陳情があるのでありますが、厚生省にはこのことについての陳情等は今までなかったのですか。
○五十嵐政府委員 私の手元では聞いておりません。
○山田(長)委員 五十嵐局長のところでなくても、ほかに厚生省に、この事態に立ち至っている中性洗剤とまではいかなくても、中性洗剤という形の質問は、われわれもしろうとですから実は最近聞いている名前でありますが、おそらく一般の人にはこのことによる被害とは思わなくても、汚染による心配で何か不思議な事態というものを感じながら投書をしたとか、あるいは電話をかけてきたとか、何か調査の依頼というものはなかったのですか。
○五十嵐政府委員 食品衛生課に電話で婦人団体から二度ほど照会があったということを、今食品衛生課長から聞きました。そのほか私のところでは直接聞いておりません。
○山田(長)委員 山越先生にちょっと伺いたいのです。この中性洗剤がどこまでも浸透しているという浸透性が、どうも私には理解できないのです。もし洗たくをするのに使用したとか、あるいは野菜ものを洗ったとかで、それが井戸ばたあるいは水道等で使用して水を流した場合、その水はどこまでも浸透していって、いわば中性洗剤の生命力とでもいいますか、そういうものの持続性はどのくらいあるものですか。御研究になっておられるかおられないかわかりませんけれども、この実情を私に教えていただきたいと思います。
○山越参考人 ただいまの御質問、私は建築医学をやっておりまして、まだそういう科学的の方法はあまり研究しておりません。しかし、いろいろ井戸・を見たり、それを測定しておりますが、相当浸透性が強いわけでございます。普通の石けん水でしたら五、六尺の吸い込み口を作りまして、その中に汚水を入れますから、たいていそれで浄化できる。ところが、そのくらいの吸い込み口の中に入れましても、それが先ほど御説明いたしましたように百五十メートルくらいまで浸透しているらしいのでございます。そういうような強力な浸透性を持っております。それにABSは非常に化学的に安定性があるといわれておりますから、それまで化学性は破壊されないでいくわけでございます。そして、私たち心配しておりますのは、せっかく野菜ものの汚物をとったり、農薬をとったり、放射能のちりを落としたり、それから細菌のようなものを洗い落とした場合に、それを包んだままそれがどこまでいきますか、まだ研究したものを私は見ておりませんが、あるいは私たちの使っている井戸の中までは入っているのじゃないか、そういう心配がございます。詳しいことはちょっと今御説明できません。
○山田(長)委員 柳沢教授に一つ、ただいまの問題について教えていただきたいと思います。
○柳沢参考人 私も事実ABSがどのくらいの期間でこわれるかという実験をしていませんし、また、どのくらいそのままの状態を保っているかということを、調べたことはございませんけれども、もうすでにABSというものは微生物によって分解されないということが証明されて、それが定説になっているわけでございます。ほとんど分解されない。ですから、汚水や何かの処理の場合において、今までの石けんが問題にならなくて、ABSが問題になった。こういう社会的影響を及ぼしたというのは、昔は途中の微生物によって石けんは分解されていったわけでございますが、ABSは分解されないからです。ですから、ABS使用前は問題が起きなかったわけでございます。このものは分解されない。一つの例を、オランダの、王国浄水局長の書きものの一部を読ましていただきたいと思います。「又市販されて居る洗剤の中に含有されているアリキル・アリル・スルフォネイトは、」これはいわゆるABSのことです。「好気性バクテリヤでは破壊することが困難であると云うことが証明された。アルキル・アリル・スルフォネイトを含有する洗剤の使用が増加しているので、汚水や浄水施設の流出水は更に高い。パーセンテージのスルフォン化物を含むようになり、それが水面の状態に更に影響を及ぼすことになることが予想される。ドイツでは、ネッカー及びルール地域に於て石けんの泡が粘土質の中で拡がり、種々問題を起こして居る。」粘土質まで及んでいるということは、相当地下の方まで及んでいる。そのものが一たん浸入してしまったら、どうにもならない。ですから、これは今やめてもまだ尾を引くということが、地下水の問題に関しては考えられると思うのです。
○山田(長)委員 私の質問は終わりますけれども、私が劈頭に申し上げました北海道の旭川の事例は、私は自分の目で見てきたのです。しかも、サケ・マスの遡河が非常に減少したということを聞いてきているのです。どうしてこういう水の濁りや、あわ立ちをするのかと思って、あとで聞いたことですが、その奥に国策パルプがパルプの原料の洗剤にこの中性洗剤を使っているという話を伺ったわけです。これが今になってわかったとので、事実であるかどうかということを調べていただきたいと思っておるのですが、とにかくただいままでの中曽根委員の質問並びに私の伺った点等で、大体何とはなしの実は不安を感じています。これらの実情について、かなりの識者が有害物でないようなことを言われているという印象を受けたのですが、どうも解明できないものが私の脳中に残っています。そういう点で、厚生省当局も、もっとこのことについては真剣に、国民の衛生的見地に立って調査を順いたいところなんです。同時に、害がないと言われる小谷教授の話を伺っても、これは普通使用量というものがかなり問題で、科学知識の乏しいわれわれ初め国民の間においても、このことについては私は毒性を感ずる印象を持つのです。そういう点についていろいろ御研究を願わなければならないと思うのでありますけれども、本日お集まりの三人の参考人の方々におかれましても、もっと研究していただかなきやならぬ面もあると思うのでありまして、これからもこれらの問題については十分御研究願いたいと思うのです。
 私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
○前田委員長 次に、齋藤憲三君。
○齋藤(憲)委員 時間もだいぶおそくなりましたから、私は簡単に御質問申し上げて、後学のために御答弁をいただきたいと思うのであります。
 中性洗剤問題を二日ほど前に聞きまして、それから三月二十一日の朝日新聞で山越先生の「中性洗剤問題に対策を」という記事を拝見いたしまして、これは相当各家庭に甚大な影響がある問題だと考えて、私のうちへ帰って聞いてみましたら、やはり中性洗剤を盛んに使っておる。それで、身体に危険があるといけないからといってストップを命じたのです。私だけでなく、こういう記事が出ますと、各家庭に非常な大きな影響がきているんじゃないか、こう思うのであります。ところが、きょうお集まりを願いました三人の参考人の御意見を拝聴いたしますと、お二人は有害である、お一人は無害であり、まさに並行線をたどる対立関係にあるので、これはどうしても解決をしていただかなければならない問題だと考えたのであります。
 大体、私の貧弱な知識からいいますと、この中性洗剤の構成物質はベンゼン、それから亜硫酸基が入っておる。でありますから、ベンゼン、亜硫酸基そのものは有害なことは間違いないのですから、ベンゼンと亜硫酸基、それから炭化水素ですか、そういうものがかみ合ってできているところの中性洗剤は結局有害なものには違いないですから、これをどういうふうにして使用していくと有害であるとか無害であるとかいうことになってくるのではないかと思うのであります。山越先生のお書きになりました朝日新聞の記事を見ますと、アメリカでは許容量が〇・五PPMと書いてある。ところが、玉川上水は〇・九PPMで、アメリカの許容量をはるかにオーバーしておる。アメリカはどういうところで〇・五PPMという許容壁をきめたかわかりませんですけれども、われわれからいうと、放射能の許容量というようなことが問題になっておりますから、いろいろな観点はあると思いますが、とにかく〇・一五PPMならばいい。ところが、玉川上水は〇・九PPMである。そうすると、アメリカ式にいくと玉川上水の水は飲めないということになるわけです。そうなってくると、各家庭において水道を一々検査し、どれだけ中性洗剤の毒物が入っておるか検討しなければ安全な生活ができないということになってくると思うのです、普通の常識論から参りますと。
 念のために伺っておきたいのでございますが、アメリカの許容量〇・五PPMというのは、先生はアメリカの実態をお調べになったのかどうか。これを一つ伺ってみたいと思います。
○山越参考人 私も許容量については、はっきりわかっておりませんが、先ほどお話し申しましたように、最近アメリカから帰って参りました私の方の学校の小林義隆助教授が向こうで中性洗剤を研究して参りました。そうして、アメリカでは許容量は〇・五PPMだ、こういうことを言っておりましたので、その許容量に対して私いろいろ質問しましたけれども、小林助教授は、これは毒性があるかないかという許容量でなくて、〇・五PPMはあわが立つか立たないかということ。あわが立ったら、これは飲んだりする場合には感情の上から気持が悪いということから飲まないのじゃないか、そういうふうな説明でした。私はまだ許容量のことは調べたことはありませんが、小林助教授はそういうことを言っておりました。
○齋藤(憲)委員 この問題は一つ厚生省によく御検討願いまして、許容量の線を引いていただくことも将来大切な問題ではないかと思いますから、しかるべく御研究願いたいと思うのであります。
 もう一点だけ、参考のために伺っておきたいのでございます。先ほど五十嵐政府委員の御説明によりますと、これは食品衛生法における添加物にも入らない。それから毒物及び劇物取締法の難物にも入らない。こうなると、これは法的に取り締まる対象物にはならないというようなお話であったのであります。この広告の、本品は野菜果実等の洗浄に使用する場合、その実質を害せず、回虫卵除去並びに大腸菌等の除菌にすぐれた効果をあらわす、というふうな効果を認めるといたしますると、これは薬事法の第二条第二項第四号にも該当しないのであるかどうかということなのです。念のために薬事法の第二条第二項第四号を読みますと、「人又は動物の保健のためにするねずみ、はえ、蚊、のみ等の駆除又は防止」と書いてある。回虫卵とか、それから大腸菌、そういうものは中性洗剤で落ちるということになれば、薬事法第二条二項四号に該当しないのですか。
○五十嵐政府委員 薬事法の関係は私の直接所管でございませんので、担当官が、先ほど申し上げましたように、これを法律で規制するのにはどういう方法があるかという趣旨で検討いたしました段階で了解いたしております範囲では、この薬事法のただいま御指摘の条文には直ちに該当しないという解釈をとっておるようでございます。
○齋藤(憲)委員 そうすると、結局添加物でもないし毒物でもない。薬事法にも該当しない。そうすると、これを取り締まる法的根拠は今何もないということになりますか。
○五十嵐政府委員 ただいままでのところは、御指摘のような意味で法律の規制はないわけでございます。ただ、先ほど申し上げましたように、水質の問題につきましては水道法による水質基準がございます。その基準の中で、一定の限度を決定いたしますれば、それに基ずいて水質の上で規制していくという問題が出て参るわけでございます。
○齋藤(憲)委員 質問をやめますが、この中性洗剤だけでなく、先ほど山田委員からもお話がありましたように、私の方に参りましても、果樹園をやっている者が果樹の消毒薬で肝臓を冒されたという例はたくさんあるわけであります。農薬におきましても、塩素を用いている農薬というものはたくさんあるあるわけでございます。これが一年に十回ないし二十回、大がかりな機械消毒でまっ白になるだけまかれておるわけでありますから、こういう問題に対しましては一つ厚生省におかれまして、単に中性洗剤だけでなく、農薬関係についても、十分一つ検討を加えられて、環境衛生の面から、またあやまちのないように十分注意をいたしてもらいたい、さように私は考えております。私の質問はこれで終わります。
○前田委員長 次に、山口鶴男君。
○山口(鶴)委員 ただいま齋藤委員がお尋をいたしました薬事法にも該当しないし、食品衛生法の添加物にも該当しない。毒物取締法にも該当しない。こういうことを先ほど局長から言われたのです。私も非常に不思議に思いまして、お尋ねをいたそうと思ったのです。公衆衛生局長さんでございまして薬務局長さんでございませんから、お尋ねするのは控えたいと思いますが、私の感想を申し上げますと、かつて私の所属しております地方行政委員会で、農薬のチップ剤をブドウ酒に入れて飲まして死亡させたという殺人事件がございました。そのことを問題にいたしました際にも、確かに薄ければ問題ないですよ、しかし濃いものを飲ませれば当然有毒である。こういうものに対する厚生省当局の扱い方というものが、チップ剤においてもきわめて不備でございましたし、また今回のABSですか、合成洗剤につきましても、何か同じような感じに打たれるわけであります。この点は担当の方がおられませんから質問はいたしませんけれども、一応そういう感じを抱かざるを得ないということだけ一つ申し上げておきたいと思うのです。
 そこで、先ほど中曽根委員が具体的事例として指摘をいたしました東京都江戸川区のミヨシ化学株式会社の事件でございます。労働省の労働衛生課長さんがお見えでございますからお尋ねいたしますが、これによりますと、死亡した方もある。昭和三十六年の九月十一日に石本という係長さんが死亡しておるようであります。それからまた、ABSの作業に従事しております職員の方十三名がいずれも皮膚の炎症等、障害を起こしておるという診断が下されておるようであります。といたしますと、当然作業に従事しておりまするいわば作業上の障害という形になるわけでありまして、こういった危険な作業が何らの労務管理がなくて行なわれるということは、これは労働行政としても私は問題だと思う。このような問題に関して、労働省の労働基準局としては、こういう事実を承知しておりますか。また、承知をしておりますならば、いかなる手当をおとりになりましたか。お聞かせをいただきたいと思う。
○加藤説明員 この事件につきまして、そういうことを聞きましたが、その方の死亡につきましては労災の方でお取り扱いになっておりますので、それを聞きましたところでは、直接ABSによっての中毒ではなかったというように伺っております。
 第二点の皮膚炎等のことでありますが、そういうことを聞きましたが、当時私が聞きましたときには、ミヨシ化学におきましては生産を一時中止しておるように聞きましたので、現場に参りませんで、他の同様な生産をしておる工場二カ所に参りまして見たのであります。大体合成におきましてタンク合成でありまして、ほとんど手の触れるところがございませんし、包装にいたしましても、自動式の包装でございますので、ほとんどそういうことがございません。一応そういうような、他の社における調査をいたしたのでありますが、時期的に夏とかなんとかいうときには、皮膚炎というものはほかにもあると思いますが、私どもが調べたときにはそういうものがございませんでした。その程度の調査はいたしました。
○山口(鶴)委員 どうも、労働省はなるたけ労災保険を出したがらないという、うわさがある。金がかかることはしたくない、そういう意味で、なるべく死亡の原因をそういう意味にとりやすいような傾向があって、遺憾に思っております。この死亡された方の診断については、どのような臨床所見でございましたか。また、どのような方の診断――こういう特殊な事件でありますから、相当な権威の方を当然お呼びになって判定を下されることが適当ではないかと思いますが、そういう点はどうですか。
○加藤説明員 その点は労災補償の方でやっておりますので、私の方は存じないのでございます。ただ、そういったことは、聞いております範囲においては中毒死ではないということでございます。
○山口(鶴)委員 その点は、あとでまたほかの方が来るそうでありますから、一応保留いたしまして、ほかをお尋ねいたしたいと思うのでございます。
 三人の参考人の方及び公衆衛生局長さんからお話をずっとお伺いいたしたのでありますが、とにかく学者の方の閥には、それぞれ研究をもとにいたしまして議論があることは承知をいたしました。そこで、私疑問に思いましたのは、これほど世間の問題になっており、いろいろ論議されている問題であります。それに対して、五十嵐公衆衛生局長さんのお話では、たとえば水質の問題については東京都の水道局がいろいろ調べておるようであるとか、また下水道処理の問題についてもどうだというような話をされましたが、厚生省にりっぱに国立衛生試験所がございますね。いわゆる厚生省の機関として、国立衛生試験所として、厚生省みずからどういう研究をして、どういう答えを出したかというお話が全くなかったことを、私は非常に遺憾に思うのです。この点はどうなんですか。この中性洗剤の問題に関して食品衛生の面、水質の面、下水処理の面、厚生省の所管をいたしております研究所では全然この研究はされておらぬのですか。
○五十嵐政府委員 私どもの役所にも幾つかの付属の試験研究機関があるわけでございます。ただいままで私どもが問題として検討いたしております内容は、毒性に触れた問題でございます。この点につきましては、国立衛生試験所におきまして毒性の試験研究をやっておるわけでございます。その他水質の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、ただいま諮問中でございます。下水道終末処理等につきましては、まだ研究の手が及んでいない実情でございます。
○山口(鶴)委員 食品衛生については、厚生省の試験所で研究された答えはどういうことなんですか。簡単でけっこうですから。答えは出ているのですか、まだ研究中だということなんですか。
○五十嵐政府委員 この中性洗剤につきまして指導の通知を出しました昭和三十一年当時に、国立衛生試験所で研究いたしました内容につきましてはお手元に資料を差し上げてございます。なお、ただいま引き続いて研究中の慢性の毒性につきましては、中途の段階でございますが、担当の池田部長が参っておりますので、お許しを得ればそちらから御説明申し上げたいと思います。
○池田説明員 それでは、私どもで現在行なっております実験結果、これは現在実験中でございますので、結論的なことは申し上げられませんけれども、今まで行ないました経過を申し上げます。
 私は食品衛生上の問題としてABSの有害性を論ずるには、長期慢性毒性試験しかないという考えでございます。これは単に私ばかりでなくて、日本の多くの学者、あるいは外国の学者も、ひとしく認めておるところでございます。実験動物としましてラットを使用しました。一群二十匹でございます。五群を作る。すなわち全部で百匹のラットを飼いまして、そのうち一群は対照群で、普通の固形飼料を与える。それから実験群四群にはABSを〇・〇二、〇・一、〇・五及び二・五%を含有する飼料を与えて、現在まで二十四日でございます。現在までの成績を申し上げますと、〇・〇二から〇・五%までのものは、成長曲線は対照群と変化がございませんでした。それから死亡、中毒症状など、何ら異常はないのであります。それから最高濃度の二・五%群のものは、実験開始とともに、水様便でありますが、下痢を覚えまして、体重減少が見られましたので、十日後〇・〇二%を含有する飼料にかえましたところ、急激に元気を回復いたしまして、体重が増加してきております。期間がまだ短いので、結論的なことは言えないのでありますが、現在までの結果では、〇・五%飼料では毒性現象を認めておりません。これは期間の長短は別としまして、外国の諸成績と大体一致しております。それから二・五%、この二・五%と申しますと、ABSとしましてラットの体重一キログラムにつきまして二千五百ミリグラムという、ものすごい大量でございます。この群では下痢のために体重減少を見ておりますが、これはABSの物理的作用によるものと考えられておりますが、この点も、外国の文献でもそのような記載がございます。
 以上が今までの経過でございます。
○山口(鶴)委員 お話によりますと、実験を始められたようでありますが、今日まで二十四日というのですね。ということは、この中性洗剤の問題についてある程度問題になってきまして、あわててやったという感じを私ども受けざるを得ないのでありまして、三十一年に主として外国の文献を中心にして簡単に検討されて、一応通知を出された。そのあと六年間もずっとほうっておいたと言っては恐縮ですけれども、そして始めたのが二十四日前というのでは、私どもとしては、どうも厚生省がこの問題に対して熱心であると受け取れません。学者じゃありませんから、試験の内容について私ども、とやかく申しません。ただ、そういうやり方について少し疎漏過ぎるのではないか、こういうことだけは指摘しておきたいと思う。
 そこで、とにかく二・五%という濃度では相当影響があった。この点については、先ほど参考人の柳沢先生でございますか、あるいは順天堂の小谷先生が対立意見を申されておりましたが、とにかく厚生省で研究せられましても、ある程度の濃度に達すると危険があるということだけは、十分な試験ではないけれども、ある程度結果が出ているというふうに受け取っておきたいと思います。
 それで、問題は、公衆衛生の問題になります。主としてドイツなどで問題になっておるのは水質の問題だろうと思う。それから下水道処理の問題、これについては、私は、薄いからいい、悪いという議論にはならないと思うのです。家庭で使っているABSの濃度が薄くても、全家庭が大量に使うようになれば、当然地下にたまっていくABSの量というものは、使用する濃度が薄い濃いにかかわらず、相当な量が蓄積していくことは事実でありましょうし、そういうところに問題があるのではないか。従って、ドイツでもこの問題については、微生物の分解作用を阻害しないような新しい物質を作らなければいかぬ、こういうような研究に着手をしておるということも聞いておるのであります。そういうことがやはり問題ではないかと思うのであります。
 そこで、聞きますが、このABSは幾つぐらいの工場で、大体年産何トンくらい作られて、そして家庭には一体どのくらい使われ、工業用の洗剤等には一体どのくらい使われておるか。この点わかりますか。どなたでもけっこうです。
○高野説明員 現在私の承知している範囲では、家庭用の食器、野菜に使う洗剤を作っている会社は二十九社と承知しております。それから、年間のABSの所要量でございますが、はっきりした数字は、私どもは出産側ではございませんのでわかりませんけれども、大体の数字としては、去年の――本年と言った方がいいと思いますが、年間一万八千トンぐらいABSとして使用するであろうということでございます。それから使用する。パーセントでございますが、工業用と家庭用とございますが、工業用に使うのが約一〇%、家庭用が九〇%。そのうち洗濯用に使うものが七二%、台所用が二八%くらいと承知しております。
○山口(鶴)委員 相当な量が工業用、家庭用に使われているわけですね。
 そこで、このABSでありますが、私たちしろうとでありますからよくわかりませんが、石油産業に関連してこれは比較的簡単にできるでしょう。原価も非常に安いと聞いているのです。ですから、普通の薬局なんかで売っておりますが、薬局なんかで売りますいろいろな品物の中では、マージンの率がABSは非常によろしいという話も聞いているのです。ですから、テレビなんかでも大々的に、宣伝も非常に積極的に行なわれている、こういうふうに私考えるのであります。こういうところでありますから、原価がどのくらいでというような話を別にする必要もありませんが、そういう話を聞いております。そういうものが、ある程度厚生省が注意しなければいかぬような、誇大と言っては恐縮でありますが、これは完全に無害だというふうに言い切っておるような宣伝が行なわれておる。厚生省もこれについては注意をしておる。こういう状態だということも聞いております。そういう中で、どんどん大量に使われておって、しかも厚生省としては、食品衛生の面、水質の問題、下水道処理の問題についても、それぞれ研究が緒についたか、あるいは諮問をしたか、全然まだ調査をしていないか、こういう段階にあるというところに私は問題があるといわなければならぬと思うのであります。そういう点につきまして、厚生省当局においても十分責任を持ってこの問題に対する取り組みをお願いいたしたいと思います。とにかく一応調査した結果は、直接ABSの中毒死ではないというような御判断だったそうでありまするけれども、この点については特にABS自体の問題に対して、これだけ世論のわき上がっておる時期でもありまするから、この問題については再調査をなされまして、その原因を明らかにしていただくように、これまたお願いをいたしておきたいと思います。
 以上で質問を終わります。
○前田委員長 参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 長時間にわたり貴重な御意見の開陳を賜わり、本委員会調査のため多大の参考となりましたことを本委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。まことにありがとうございました。
    ―――――――――――――
○前田委員長 この際、安倍委員より本件について発言を求められておりますので、これを許します。安倍晋太郎君。
○阿倍委員 私は自由民主党、日本社会党並びに民主社会党の三派を代表いたしまして、合成洗剤の科学的調査に関する決議案を提案いたします。
 初めに決議案を朗読いたします。
   合成洗剤の科学的調査に関する決議(案)
  合成洗剤の毒性の有無等に関し、関係方面の意見が対立していることは、まことに遺憾である。合成洗剤が現在広範囲に使用され、国民生活に重要な影響を及ぼしつつあることにかんがみ、本問題の科学的解明は焦眉の急を要すると認める。
  よって、政府は、本問題に関する科学的調査を行い、必要とあればその行政的措置をも含めて速やかにその結果を本委員会に報告し、国民の疑惑と不安を解消するよう要望する。
  右決議する。
 趣旨につきましては、ただいまの質疑応答においてきわめて明らかになっておりますように、現在中性洗剤について国民は非常に不安を持っておるのであります。特にその毒性によるところの食品衛生上の不安あるいは水質汚濁の問題は、今後の国民生活にますます不安を高めると思うのであります。ところが、この洗剤の毒性の有無については、ただいまの参考人の御意見にも明らかなように、いまだ意見が分かれておる状態でございます。政府は一日も早く科学的解明を行なって、国民の不安に対してこたえるべきであると思うのであります。
 本問題に関する科学的調査に関しては、従来の経過を離れ、高度の第三者的な純粋な科学的立場から調査を進める必要があると思われますので、これは科学技術庁が主となってこれを進めることが望ましいと思います。
 また、その期間も非常に急を要しますので、一応三カ月以内に結果を御報告願いたいと思うのであります。
 また、厚生省に要望いたしますが、合成化学の今後の発達に伴いまして、この種の新薬剤が続々出てくると私は思うのであります。今次の経験にも徴して、これが措置に慎重の上にも慎重を重ねてもらいたいと要望するものであります。
 以上をもって趣旨の説明を終わります。何とぞ御賛成をお願いいたします。(拍手)
○前田委員長 本件について別に御発言はありませんか。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○前田委員長 御発言もないようでありますので、直ちに採決いたします。
 ただいまの安倍委員よりの御提案の通り、合成洗剤の科学的調査に関する件を本委員会の決議とするに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○前田委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。
 この際、ただいまの決議に対する政府の所信を聴取いたします。三木国務大臣。
○三木国務大臣 合成洗剤に関係いたしましては、関係の省庁も多く、調査研究の資料も不十分でございますが、ただいまの御決議の趣旨に沿いまして、ことに期限を切られての御決議でございますから、できる限り関係各省とも連絡をとって、そして行政措置がとれるような検討を進めていきたいと思っております。
○前田委員長 次に、森田厚生政務次官。
○森田政府委員 ただいま三木国務大臣からの御意見がありました通りであります。ただ、時間の制約の点でございますが、これはただいま政府委員から説明がありました通り、ある程度の時間をいただかなければ、客観的な価値ある答案ができない部分もあるのじゃないかと考えられますので、その点は御了承を願いたいと思います。しかし、私らの方といたしましては、全力をあげて御期待に沿うよう努力いたしたいと存じます。
○前田委員長 なお、ただいまの決議につきましては、関係当局へ参考送付いたしたいと思います。その手続等については、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○前田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
 次会は明五日午前十時より開会いたします。本日はこれにて散会いたします。
   午後五時十二分散会