第040回国会 法務委員会 第20号
昭和三十七年四月二十日(金曜日)
   午前十一時開議
 出席委員
  委員長 河本 敏夫君
   理事 稻葉  修君 理事 田中伊三次君
   理事 林   博君 理事 牧野 寛索君
   理事 坪野 米男君 理事 松井  誠君
      有田 喜一君    池田 清志君
      上村千一郎君    岸本 義廣君
      千葉 三郎君    馬場 元治君
      猪俣 浩三君    河野  密君
 出席政府委員
        検     事
        (訟務局長)  浜本 一夫君
 委員外の出席者
        専  門  員 小木 貞一君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 行政事件訴訟法案(内閣提出第四三
 号)
 行政事件訴訟法の施行に伴う関係法
 律の整理等に関する法律案(内閣提
 出第一三五号)
     ――――◇―――――
○河本委員長 これより会議を開きます。
 行政事件訴訟法案及び行政事件訴訟法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案の両案を一括議題といたします。
 質疑を継続いたします。松井誠君。
○松井(誠)委員 昨日いただきました執行停止事件の統計を拝見いたしまして、まずそれについて二、三お尋ねをいたしたいと思います。
 この第一表と第二表との関係ですけれども、この第一表には、総計が八百六十五件、第二表では八百八件となっておりまして、その数字に食い違いがあるわけです。この違いというものは、この第二表のこういう形の既済でなくて未済になっておるというようなことからくる食い違いなんでしょうか。どういうわけなんでしょう。
○河本委員長 松井君に申し上げますが、訟務局の参事官が内閣委員会に行っておるそうです。今呼びに行っておりますから、その間ほかの質疑を続けて下さい。
○松井(誠)委員 では今の問題に対するお答えは後刻いただくといたしまして、私がこの前、昨日も申し上げましたけれども、知りたいと思っておりました一つの問題は、先般いただいた資料によりますと、総理大臣の異議権の行使があったのが十八件、そのうちでいわゆる行政協定に基づく特別措置法関係の異議権の行使が五件を占めておる。そうしてその特別措置法関係の異議の理由というのは、何か特別措置法関係については、元来執行停止ができないのだと言わんばかりの理由を書いてある。そこでおそらくは、これは想像ですけれども、特別措置法に基づく執行停止には、例外なく異議を述べておるのではないか。そうしますと、この異議権というものが、客観的には行政協定というものの実施を推し進める、そういう役割をしておるのではないだろうか、そういうことを特に疑問に思ったからなんです。ところが、このいただいた統計では、その肝心の特別措置法関係がその他一般行政関係ということで一括されておりまして、具体的な数字が出てないわけです。しかし、異議権の行使の中で占めるこの特別措置法関係の事件というのは、一番比重が重いわけでありますので、当然この表の中には独立の項目として出てくると私は思ったのですが、これが出てくることができなかった何かこういう統計の調査の経過というようなものについて、しかるべき理由があるのでしたら一つお尋ねをいたしたいと思います。
○浜本政府委員 この御指摘の表に御指摘の事件が格別に明らかにされませんで、その他一般行政関係というところに含まれるようになりましたのは、特段の作為でできたものでは決してございませんので、これは最高裁判所が出している統計表から拾った数字であります。別段の意図はございません。その最高裁判所から出しております統計による以外には、私どもといたしましても、こういった資料を作ることができませんので、やむを得ずこういった結果になったわけでございます。決して最高裁判所の方にも、また私どもの方にも、その点については特段の作為はございません。
○松井(誠)委員 そうしますと、特別措置法関係の執行停止の統計というものを作るということは、現在では不可能ではないでしょうけれども、非常に困難だということになるのですか。
○浜本政府委員 不可能とまでは申し上げるわけではございませんが、一応困難であると私どもは考えるわけであります。
○松井(誠)委員 それからもう一つ――その前に先ほどの……。
○浜本政府委員 松井委員の一番最初の御質問にお答えしたいと思います。
 御指摘の執行停止事件の件数表、第一表、第二表における最後の計というところの数字が、第一表では八百六十五件となっており、第二表では八百八件となっておりますその食い違いは、第二表の方におきましては、当該年度の十二月三十一日において既済となったものだけを第二表に掲げます関係で、未済事件が落ちているわけであります。すなわち、第二表の方は結果表なんでありまして、第一表の方は継続した件数、従って未済がこの第二表においてはあがらないことになりますので、そこで五十数件の相違を来たしたわけであります。
○松井(誠)委員 その点はわかりましたけれども、この第二表の執行停止が認容になった件数、これは出ておりますけれども、実は私はこれの年度別の内訳を知りたいと思うのであります。と申しますのは、先般来から問題になっておりますように、何か執行停止が非常に乱用されるのだ、そこでやむなく異議権の行使があるのだというような、そういうようにとれる趣旨の御説明がたびたびあったわけですけれども、それでは具体的に、第一表は執行停止の申請の総件数であって、具体的に執行停止になった件数の年度別と内訳というものは出てないわけです。やはりそれを知らなければ、執行停止というものがほんとうに乱用と言われるほどひんぱんにあったものかどうか、やはり全体の行政事件訴訟の総数と執行停止の申請の総数、そしてその中から執行停止に現実になった数、そういうものの比率というものを検討していかなければならないと思うのですけれども、そういう意味で執行停止の申請が認容になった件数の年度別の内訳というものはおわかりにはなりませんか。
○浜本政府委員 御要求のような資料を作りますには、どうしても最高裁判所がすでに出しております統計表による以外に私ども困難でありますが、今までのところ、最高裁判所が公表しております統計関係の資料は、ただいま引用しております表以外にはございませんので、不可能ではないかもしれませんが、著しく困難でありますので、できましたら御容赦を願いたいと思うのであります。
○松井(誠)委員 私は何も不必要な、いやがらせのような意味でこういうことを申しておるわけではなくて、この異議権というものが司法制度にとってどれだけ重要であるかということを考えますときに、おそらく最高裁判所は反対であったに違いないと私は思いますし、おそらく法務省も、こういう制度そのものを喜んで取り入れたとは考えない。こういうものはないに越したことはないということで、そういう行政官庁の要求に対しておそらく抵抗されたに違いないと思うのです。その点についてはお答えの必要はありませんけれども、もしそうだとすれば、執行停止の現実の運用について、やはりもう少しきちっとした統計がないと、効果的な抵抗が元来できないのじゃないか。行政官庁の方で、最近執行停止が非常に多過ぎるじゃないかというようなことを言われたときに、そうであるのかないのかということが、第一この表では具体的に出てこないわけです。最近一体行政事件訴訟の件数がどれだけになって、執行停止の申請はどれだけあった、その中で現実に執行停止になったのが何件あって、それに対して異議というものがどれだけあったという相対の関係がきちっとできていなければ、具体的に反論をしようにもする方法がないのじゃないかと思う。私たちも、異議権というものを考えるときに、やはりそういうことをどうしても知りたいわけです。そういう意味で実は先般からお願いしておるわけです。早急には間に合わないかもしれませんけれども、しかし、あるいは参議院でもそういう要求があるかもしれないと思うのです。そういう意味で、そういう統計というものをさらに整備をしていただきたい、私はこのように考えて特にお願いを申すわけです。そこでこの表によりますと、何か次官会議の決定が二十五年の暮れにあって、異議権の行使についてはその後相当な規制がされておる。従って、それ以来は異議権の行使というものが少なくなったはずだというような先般の御説明でありましたけれども、実際はいただいた統計自体から見ましても、二十五年以来特に異議権の行使が少なくなっておるわけではない。それからまた全体の行政事件訴訟の数、それに対する執行停止の申請の数というものの比率も、必ずしも大きな変化はなしていない。肝心な執行停止の年度別の内訳がわかりませんので、肝心な点の問題がはっきりいたしませんけれども、そういういわば制度的に保証をされたから異議権の行使は乱用される危険性がないのだという、具体的な、実証的な数字は、この表の中からは必ずしも出てこないのではないか。この点はどうなんでしょうか。その次官会議の決定以来、異議権の行使そのものは少なくなったのか、あるいは執行停止そのものは少なくなったのか、あるいはまた行政事件訴訟そのものは少なくなったのか。少なくなったかどうか自体が問題ですけれども、かりに少なくなったとすれば、一体何が原因で少なくなったか、その点この統計自体は一体どういうことを物語っておるか、教えていただきたいと思います。
  〔委員長退席、田中(伊)委員長代理着席〕
○浜本政府委員 正確な資料に基づかぬことを申し上げるのは、はなはだ私恐縮なんでありますが、今日まで私どもが、御指摘の次官会議の申し合わせがありまして以来、内閣総理大臣の異議権を行使した数は少ないということを申し上げましたのは、数字的にもそういうふうになっておると思います。ただ、必ずしも少なくなっていないとおっしゃるのは、私ども申し上げておりますのは、つまり乱用にわたるというような非難を受ける異議権の行使が著しく少なくなっておるということを申し上げるつもりであったのが、あるいは多少語詞が不足であったために誤解をいただいたのではないかと思いますが、個々の事件についてその内容をしさいに検討していただけば、明らかに乱用という非難を受けるような異議権の行使は、むしろ絶無と言っていいくらいそれ以後はなくなっておると確信を持って言えると私は思うのであります。決してその事件全体が少なくなった、あるいは停止決定の申請件数が少なくなったことによるものではないことを申し上げるわけであります。
○松井(誠)委員 異議権の問題については、幾らお尋ねしても私は納得するわけには参りません。
 問題をその次に進めたいと思いますが、昨日お答えいただいたことで、私ちょっとふに落ちないことが一つございますので、あらためてお伺いをしたいのですが、たとえば公務員が首を切られる、そのときに首を切った解雇処分の無効確認ということではなくて、現在の法律関係である雇用関係が存在する、雇用関係存在の確認の訴訟を起こせるのだから、解雇処分の無効確認の訴訟はできないのだというような御説明であったと思いましたけれども、これはその通りだったでしょうか。
○浜本政府委員 御指摘の通りであります。
○松井(誠)委員 そうして雇用関係の存在確認の訴訟というのは、この訴訟の類型によると、当事者訴訟であるというような御説明だったと思いますが、やはりその通りですか。
○浜本政府委員 その通りであります。
○松井(誠)委員 この当事者訴訟の定義なんですけれども、この第四条の当事者訴訟の定義として、今の訴訟というのはどこに入るということになるわけでしょうか。
○浜本政府委員 御指摘の事件は、第四条の「及び公法上の法律関係に関する訴訟」、これに入るわけでありまして、まあ、これを今雇用関係とおっしゃいましたが、実を言いますと、私ども身分関係確認というふうに考えているのでございます。
○松井(誠)委員 公務員の身分関係と言うと、公法上の関係らしくなりますけれども、これが公法上の関係であるのか、私法上の関係であるのかという点について、どうなんでしょう、争いのない雇用、たとえば普通の公務員と違って、学校ならば講師とか、あるいは雇員だとか用人だとかいうような場合も、やはり公法上の法律関係ということで律してもいいわけなんでしょうか。
○浜本政府委員 その関係につきましては、ここで私、権威のあるようなお答えをすることができぬのでありますが、公法と私法との区別も、その境界面には明らかでないものがありますし、あるいはまた公法関係と私法関係にも限界が明らかでない部分があるかと思いますので、個々の事案によりませんと、一がいにそれが公法関係である、あるいは私法関係であるということは断じがたいと思うのであります。
○松井(誠)委員 解雇されたときに、今言ったような身分関係の存在確認という方法と、あるいは給与を支払えという訴訟も起こし得るかと思うのでありますけれども、給与を支払えという訴訟は、これは行政事件になるのか、あるいは普通の私法上の事件になるのか、この点はいかがでありましょう。
○浜本政府委員 当該公務員の身分が公法関係たる関係でありますれば、その給与支払い請求の訴えも、ここにいう同じく公法上の法律関係に関する当事者訴訟になるものと考えます。
○松井(誠)委員 そうすると、その給与を請求するという訴訟も当事者訴訟なんですか、それでいいんですね。そうですか。
 それからこの無効等確認の訴訟についてでありますけれども、この三十六条の「現在の法律関係に関する訴え」、この現在の法律関係というのは、公法上の法律関係だけをいうのか、あるいは私法上の法律関係まで入るのか、その点はいかがでありましょう。
○浜本政府委員 三十六条に言います「現在の法律関係」と申しますのは、事案々々によりまして、あるいは私法関係になる場合もありますし、あるいはそれ自身また公法関係になる場合もあるかと考えます。
○松井(誠)委員 そうすると、たとえばよく問題になる農地の買収処分が取り消されるということで、旧地主が所有権の確認を求めるというような場合には、これは私法上の法律関係で、普通の民事訴訟になるわけですね。
○浜本政府委員 全くその通りであります。
○松井(誠)委員 普通の民事訴訟の場合と、行政訴訟の場合とで、もちろんいろいろ違うわけですけれども、一番大きい違いは、たとえば当事者訴訟の場合には執行停止の規定の準用がない。普通の民事訴訟の場合には仮処分というものができる。そうしますと、普通の私法上の訴訟であるか、行政上の訴訟であるかということによって、執行停止ないし仮処分ができるかできないかということで非常に違ってくることになりますけれども、先ほどお伺いしました給与を支払え、公務員の身分をまだ持っておるんだから給与を支払えというのが、公法上の法律関係に関する争いであって、当事者訴訟だということになりますと、執行停止というものができない。もしこれが民事上の争い吏ということになれば、また仮処分というものを裁判所が許せば、それはできるということになるわけですが、公法か私法かという問題によって、そのように執行停止ないし仮処分という問題をめぐって取り扱いが非常に違ってくるわけですね。ですから、この行政上の訴訟についても、いわゆる公法上の仮処分というものを認めて、そして私法上の争いであるか公法上の争いであるかということによって格段の相違というものがないというような形にされた方がよかったのではないかということを考えるわけですけれども、この点は御考慮になったこともあると思いますけれども、いかがでございますか。
○浜本政府委員 ただいまの御設例の場合について申し上げますと、公法上の関係でありましても、給与を支払えという場合には、七条によりまして、規定のない事項については民訴の例によるということになりますので、仮処分ができることになると思います。
○松井(誠)委員 さっきこれは当事者訴訟だとお答えにはならなかったでしょうか。
○浜本政府委員 当事者訴訟ではありますけれども、規定のない事項については第七条によることになるわけです。
○松井(誠)委員 この当事者訴訟の準用の規定、四十一条の準用の規定では、わざわざ執行停止の規定をはずしておるわけなんです。これだけを読みますと、当事者訴訟には執行停止の規定は準用はないのだというふうに読まざるを得ない。今の御説明ですと、準用するということを書いてないから、準用するかいなかということは、第七条に書いてある法律に定めがないということに入るのだというような御説明でしたけれども、どうもわれわれの法律常識からいうと、少しおかしいのですが、やはりそれでいいんでしょうかね。
○浜本政府委員 その点については規定をしておらぬわけでありますから、執行停止を準用するのじゃなくして、民事訴訟の例によるわけですから、保全処分ができるということになるというのが私どもの解釈であります。
○松井(誠)委員 そうですか、これは非常に重要なことをお聞きしましたけれども、そうしますと、当事者訴訟には執行停止の準用はないけれども、しかし、仮処分の規定の準用というものを排除するわけではないというように七条は読み得るというわけですね、この七条の読み方は。そうしますと、仮処分に限らず――普通ならば仮処分と執行停止というものとは、いわば仮処分に対する執行停止が一種の例外みたいなものに私は考えておったのですが、そうじゃなくて、執行停止というものは仮処分のそういう例外的なものではない、いわば重なり合うものではない、そういうことなんですか。
○浜本政府委員 仮処分と執行停止とは必ずしもその適用分野を、何と言いますか、トラーグワイテを同一にするものではないと私どもは考えております。
○松井(誠)委員 もう一つ、いわゆる納税者訴訟というものについてお尋ねをいたしたいのですけれども、これは地方自治法の二百四十三条の二の第四項に、「裁判所に対し、当該職員の違法又は権限を超える当該行為の制限若しくは禁止又は取消若しくは無効若しくはこれに伴う当該普通地方公共団体の損害の補てんに関する裁判を求めることができる。」というこの訴訟の性質なんですけれども、当該行為の禁止を求める訴訟というものがこの四項によると認められておるわけですが、これはこの行政事件訴訟法の類型によりますと、どういうことになるわけですか。
○浜本政府委員 御設例の訴訟は、本法によりますいわゆる民衆訴訟に当たるわけであります。
○松井(誠)委員 この訴訟は、何か地方自治体の住民という立場、そういう立場でやるんだから機関訴訟だというような考え方もあるように聞いておりますけれども、民衆訴訟ということで一応割り切っていいんでしょうか。
○浜本政府委員 私どもの知る限りは、この訴訟は民衆訴訟であるということはほとんど定説で、異論を見ないように承知しておるのであります。
○松井(誠)委員 いろいろな例をあげて一つお教えをいただきたいのですが、きのうちょっとお伺いをしました判決の効力について、これはやはり学者のあげておる例で工業権の免許というのですか、そういう問題について先願主義というものをとっておる。甲と乙とが競願になって、そうして甲の方が先願だということで免許になった。乙の方で、その免許は自分の方が先願なんだからといって、乙の方でその免許を争って、その結果、甲の免許が判決によって取り消された。そうしますと、行政庁は、拘束力によって甲の免許を取り消すという、そういう拘束は生ずるわけだと思うのですけれども、その結果、行政庁が乙なら乙に免許をした場合、今度は甲がその免許に対して文句を言うという場合に、これは一体どういうことになるか。つまり乙の免許に対して、甲は先願ではないのだという判決を受けておるわけですけれども、そういう場合に、乙に対する免許に対して甲はどういう拘束と言いますか、を受けるということになるのか、この点ちょっとお聞きをいたします。
○浜本政府委員 御設例の場合に、乙の免許が行政事件訴訟の判決できまったものならば、その効力は第三者である甲にも及ぶわけでありますから、甲は後になって、乙に対する免許が無効であるとかいうことは主張できない関係になると思うのであります。
○松井(誠)委員 その点、私、もう少し考えて、あとで御質問申し上げます。
 それから、この訴願の問題についてちょっとお尋ねをいたしたいのですが、聞くところによりますと、現行法で訴願前置という制度をとっておるのも、やはりこの法律ができる当時のGHQの意向というものが入っておるのだというように伺っておりますけれども、この点は、その真偽のほどはいかがですか。
○浜本政府委員 私ども現在承知しております限りにおきましては、立法当時、もちろん占領時代でありましたから、すべての法案についてその審査を経たことは当然でありますけれども、特段に、問題の訴願前置制度なるものがGHQの示唆によってできたものであるというふうには承知しておりません。
○松井(誠)委員 いわゆる総理大臣の異議権が平野事件というものを契機として持ち込まれた。それとは直接の関係はないかもしれませんけれども、やはり、そういう裁判所に出る前にまず行政庁に審査をさせろという、訴願前置という制度も、GHQの意向によって入れられたのだというふうに私は聞いておるのですが、今度のこの改正案が出る経過の中で、訴願前置というものは原則として廃止をするということになったその中で、行政庁の方で、訴願前置も廃止をする、総理大臣の異議権も廃止をするということでは、行政庁の方がおさまりがつかない。そこで訴願前置の方はまあまあ譲るけれども、そのかわり異議権だけはぜひ残してくれ、そういうことで、いわば妙な妥協の形で一つは削り、一つが残ったというように聞いておりますけれども、この点はいかがですか。
○浜本政府委員 もちろん御指摘の総理大臣の異議という制度、それから訴願前置をするかしないかという論点、いずれもそれぞれ反対説があったわけでありまして、この法案をこの形でまとめますまでの経過におきましては、いろいろの複雑な経過をたどったわけでありますが、今松井委員が御指摘のような、特段に二つをかね合いにし
 て、今御審議を願っておるような形のものになったのだというような経過ではなかったと私承知しております。
○松井(誠)委員 そういうお答えはやむを得ませんけれども、異議権の方は、現行法の異議権よりも実はもっと強化をするという形で残された。そして訴願前置の方は、原則として廃止するということにはなったけれども、例外がへたをすると原則になりかねないような、そういう道を開いておる。そういたしますと、やはりこの行政事件訴訟法は、全体として行政権の優位という形でいわゆる抜本的な改正がなされておる、そういうように印象づけられるわけなんです。
 そこで一点お伺いをいたしたいのは、今内閣委員会に例の行政不服審査法というものが出ておりますけれども、これはもちろん立法府できまることでありますけれども、この法律案と、それから今審議をしておりまする行政事件訴訟法案とは、ともかく運命をともにしなければならぬ不離一体のものだと考えるわけですけれども、その点の御意見はいかがですか。
○浜本政府委員 この両法案がともに御審議を願うようになりました経過については、いささか両法案には切っても切れないと言いますか、確かに関係はございました。ございましたが、行政不服審査法案そのものと行政事件訴訟法案そのものとは必ずしも不離一体だという関係にはないと思います。ただ、両法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案につきましては、その構成上、行政不服審査法の方の整理法で各種の関係法令を改正されることを基礎にいたしまして行政事件訴訟法案の整理法が立案されておりますので、その点は不離一体と言えないことはないかと思うのでありますが、両方の本法そのものは必ずしもそういった関係にはないと私は思うのであります。
○松井(誠)委員 この行政事件訴訟法と、それの整理法というものとは不離一体じゃないかと思うのですけれども、その点はどうなんですか。今局長は、行政事件訴訟法の整理法は行政不服審査法を前提にしておるという意味で……。
○浜本政府委員 双方の整理法です。
○松井(誠)委員 双方の整理法同士が不離一体だということですか。この行政事件訴訟法の整理法と行政事件訴訟法とは不離一体じゃございませんか。
○浜本政府委員 ちょっと御説明が不親切であったきらいがあるかと思いますが、これは御承知かと思うのでありますが、私どもの方の法案の整理法案は、行政不服審査法案の方の整理法案で関係法令を改正しております、その改正になったことを前提にしてこちらの方の整理法案ができておりますから、こちらの整理法案は向こうの整理法案を前提にしておるという関係において不離一体ということは言えるのかもしれませんが、本法同士そのものは必ずしもそういった関係にはないというのが、私の先ほど申し上げました趣旨なんであります。
○松井(誠)委員 私が今お尋ねをしましたのは、この本法と行政事件訴訟法の整理法とは不離一体ではないかということなんです。
○浜本政府委員 それは、この行政事件訴訟法案と行政事件訴訟法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案とは、もう不離一体であることはもちろんであります。
○松井(誠)委員 そうでしょう。ですから、回り回って言えば、この本法と整理法と、それから行政不服審査法の整理法というものとは不離一体で、行政不服審査法の整理法とその本法とは不離一体なんですから、やはりこの四法というものは運命をともにすべきものではないのか。そうなると思いますけれども、どうでしょう。
○浜本政府委員 ちょっと私が誤解していたのかもしれませんが、おっしゃる趣旨で、全くその通りであります。
○松井(誠)委員 その点ははっきりしたいと思います。
 それではちょっとお尋ねをいたしたいと思いますけれども、きのう大臣に特にお尋ねをしましたが、いわゆる行政手続法というものについてどうお考えになっておるかということであります。御承知のように、行政上の救済なり、司法上の救済なりを幾ら手段を尽くしても、問題は、やはり事後の救済ということであって、事前の措置というものに公正を期するにしくはないと思う。聞くところによりますと、訴願制度調査会でも、行政手続法というものは必要なんだという意見であったということでありますけれども、この行政不服審査の制度をいわばよりよくするために、行政手続の中でいかにその公正を担保するかという、そういう制度を作るということについては、具体的に何か御計画なり何なりはございませんか。
○浜本政府委員 私どもが今日まで承知しておる限りにおきましては、おっしゃるような、処分がなされて後の救済に関する各種の制度の改正が論じられますごとに、むしろ、行政処分がなされるまでの手続について、法的な公正手続が担保されるような制度を考えなければならないということは、おりに触れて議論されたことはあるのでありますが、何分にも画期的な制度でありますし、また各国の制度についての調査も十分でないという点から、昨日大臣が答弁いたしましたように、まだその機が熟していないのが現実の状態であると私ども考えております。
○松井(誠)委員 私がきのうお尋ねしたときには、具体的に取り上げておるけれども、はっきりした形にはまとまってないというようにお答えになったと思うのですが、今の御答弁ですと、具体的に取り上げるという段階にさえも至ってないような印象を受けたのですけれども、必ずしも同じじゃないと思いますので、もう少し具体的にと言いますか、一つお答えを願いたい。
○浜本政府委員 昨日の大臣の答弁がどういうふうにあったか、私は、私の趣旨のように聞いておったのでありますが、私限りでお答えいたしますならば、まだ具体的にそのこと自体が取り上げられてはおらぬというふうに理解しておるのであります。
○松井(誠)委員 具体的には取り上げられてはおらないけれども、先ほどの御答弁だと、そういうものは必要なので取り上げたい、取り上げるべきだ、そういう御意向には間違いないわけですね。
○浜本政府委員 その通りであります。
  〔田中(伊)委員長代理退席、委員長着席〕
○松井(誠)委員 整理法についてお尋ねいたしたいのですけれども、昨日坪野委員からのお尋ねで、例の訴願前置を認める法律の中で理由が三つあって、第三者的な機関による審査というものがあるということが訴願前置を認めた理由だという法律が、つまり前の大量処分だとか、専門的知識云々という、そういう二つの理由による訴願前置を認める法律以外には、すべて第三者的機関ということを理由にしておるのだというお話でしたけれども、たとえばいろいろな保険法、健康保険法が大量処分だという理由のようでありますけれども、船員保険法だとか、厚生年金保険法、国民健康保険法というものは、大量処分ということではなくて、第三者的機関による審査があるからという、そういう理由だということになるわけですか。そういうことでいいのですか。
○浜本政府委員 御指摘の点は、おっしゃる通り第三者的機関による裁決という部類に入って訴願前置されてきたわけであります。
○松井(誠)委員 この訴願前置の問題ではなくて、今までは不法な場合だけでなくて、不当な場合にも裁判所に対する出訴を許されておったのに、それが今度削られて不法ということに限定された。独禁法の場合とか、土地調整委員会設置法ですか、弁護士法にもあると思いますが、これはどういう理由でわざわざ制限されたのですか。
○浜本政府委員 確かに文言の上では、御指摘のように若干のものについては、現行法では不当事項についても司法事項とされておるかのような観を呈しておるのでありますが、現行法のもとにおきましても、やはり解釈上は、その不当というのは違法の意味であるというふうに解されておると私ども解しておるのであります。
○松井(誠)委員 そうしますと、独禁法にしても、弁護士法にしても、土地調整委員会設置法にしても、不当という言葉をわざわざ使ったということは全く意味がない、そういう実際の解釈になってきておったわけですか。
○浜本政府委員 私どもの知る限りにおきましてはそうなのでありまして、従いまして、本法ではその点を改正しましたが、単に字句の整理にすぎないと私ども解しております。
○河本委員長 坪野米男君。
○坪野委員 時間の範囲内で少し質問をいたしたいと思います。
 総理大臣の異議規定がずいぶん今までに論議がかわされ、繰り返されている向きもあるようでありますが、局長の答弁の中で、まだ納得のいかない点等について少し論議を深める意味でお尋ねしてみたいと思います。
 この総理大臣の異議規定が憲法違反でない――違憲の疑いがあるというのが私たちの見解でございますが、局長は、少なくとも憲法違反にはならないのだ、最高裁判所の判決でも違憲とは言っておらないというようなことで、憲法違反でないという見解を堅持しておられるようでございます。私たちは、違憲の疑いが非常に濃いのだということでありますが、その合憲論の根拠として、局長の答弁の中で、執行停止の決定、こういう裁判は本来司法的な事項でなしに、これは行政処分なんだ、行政事項なんだ、こういうことがあるわけですが、この執行停止の処分が本来の司法処分でなしに、裁判でなしに、単なる行政処分なんだということに判例、学説がほとんど一致しているというような御答弁ですけれども、なぜ執行停止処分が本来の裁判でなく、性格上、理論上行政処分なのかということを、もう少し具体的に御説明願いたいと思います。
○浜本政府委員 同じ趣旨の答弁を蒸し返すようではなはだ恐縮なのでありますが、私どもが本来司法事項でないと申しますのは、行政処分が違法であるとか、あるいは無効であるとかいう判断そのものは、もちろん現行憲法下におきましては司法事項とされておるのでありますが、それ以前に至る執行停止のごときものは、行政処分そのものが違法であるとか、あるいは無効であるとかいう判断そのものとは異なりますので、特に行政事件訴訟法なりあるいは行政事件訴訟特例法なりによって付随的に裁判所に委任された事項であります。従いまして、憲法にいう純粋の司法事項には当たらないというのが、私どもの本来的司法事項でないということの理論的根拠なのであります。
○坪野委員 そうすると、行政処分が違法か無効かあるいは合法かという、そういう判断だけが司法的判断であって、その以前に、緊急の必要があるかどうか、あるいは回復すべからざる損害を生ずるおそれがあるかどうかというような事実的判断は、司法的判断でないと、こういう御見解ですか。判断なしに決定は出せないと思うのですよ。
○浜本政府委員 もちろん、執行停止をするかしないかについては、御指摘のような事実判断があるわけでありますけれども、執行停止そのもの自体は本質上、私が申しましたように、判断事項ではございませんので、一種の保全的な、政策的な、特段に本法によって司法裁判所に委任された、もともとは本質的には行政事項であるというのが、私どもの考え方なのであります。
○坪野委員 行政処分に対する執行停止命令、これが純粋の司法事項でないという、そういう学説があることはよく承知しておりますが、もちろん行政事件に限らず、一般の民事事件、民事訴訟の中で仮処分、保全処分、そういったものが純粋の司法事項でなしに、一種の行政処分なんだというような見解もあるようですが、そういうものと同じ理論的立場に立っての御意見ですか。
○浜本政府委員 私どもは、仮処分が民事訴訟上どういう性質のものであるかということはもちろん考えますが、必ずしもそれとは同一に考えておるわけではございませんが、ともあれ執行停止そのものは、私がただいま申し上げましたような趣旨で、純粋に理論的には司法事項でないというように解しておるのでありまして、民事訴訟法における仮処分、保全処分が同一性のものであるかについては、また非常に困難な私どもの及ばないようなむずかしい問題を含みますので、それと一緒であるかどうかということについては、私、答弁を保留させていただきたいと存じます。
○坪野委員 それから、今の行政処分についての執行停止の要件としては、緊急性とかあるいは回復しがたい損害を避けるというような要件になっておりますが、やはり民事訴訟の仮処分と同じように、本案の裁判において違法かどうかという判断が前提としてあって、幾ら処分によって回復しがたい損害が生じようとも、本案の裁判において結論的に勝ち目がない。それは合法な、適法な行政処分なんだという裁判官の判断があれば、こういった執行停止が出るはずがないと思うのであります。やはり限られた疎明であっても、違法らしく見える、少なくともその処分が違法らしく見えるという判断が前提になって、その上で緊急性その他の判断を加えて、執行停止をすべきかすべからざるかという判断を下されると思うのですが、要件の中にそういうものがなくても、これは当然今の違法かどうかという一応の判断はすべきものだろうと思うのでありますが、その点はいかがでございますか。
○浜本政府委員 もちろん執行停止そのものの性格上、明らかに原告が敗訴することが確実であるというような場合には、もちろん出さないわけでありますから、その関係におきましては、そういった点の判断ももちろん前提にはなっているということは言えるかもしれません。言えるかもしれませんが、それは仮処分におきましても、あるいは執行停止におきましても、の見込みなきにあらざるときに限るということは理論上当然なんでありまして、だからといって執行停止そのものが純粋の司法事項であるということにはならぬというふうに私は考えるのであります。
○坪野委員 この執行停止の性格が純粋の司法事項か行政事項かということを厳密に抽象された理論としては、それはいずれの解釈も成り立つと思うのです。しかし、そういうことを言えば、現在の司法裁判所で司法官たる裁判官が行なう裁判がすべて憲法上の司法事項であるかどうか。その中には行政的な判断も相当入ってきているのではないか、あるいは訴訟法の純理論からいえば、これは司法ではなしに、一種の行政処分なんだといわれる事項がたくさんあると思うのですが、そういうものがあるということはお認めになりますか。
○浜本政府委員 私も、民事訴訟法の理論につきましてはそう詳しいわけではありませんが、民事訴訟法の中の各種の制度につきましても、そういったものがあることは私どもも承知しております。
○坪野委員 私も、そう訴訟法学者ではありませんから詳しいことは知りませんが、現在の民事訴訟の中でも、純粋の司法事項でない行政的判断を、裁判の過程で、その前手続と言いますか、あるいは付随的な手続の中で、裁判官がそういった処分をやっておるということはあるわけであります。今私が、この総理大臣の異議規定が憲法違反の疑いがあると言うことも、別に憲法の第何条のどの条文に照らしてということでなしに、司法制度に関する憲法の精神、趣旨に著しく反するという意味で、違憲の疑いを非常に濃く持っておるわけですが、理由の一つとして、この執行停止が純粋の司法事項でないというような観点から合憲論を述べておられますけれども、私は、この執行停止の処分の性格が、純理論的に抽象的にそれが純粋の司法事項でない、行政的な事項だということでもって違憲の疑いを消し去ることはできないと思うのです。問題は、純司法的な事項であろうと、あるいは行政的な事項であろうと、通常裁判所が司法権を行使する段階において、行政官庁から独立した――司法権の独立というものは本来そういうものであろうと思うのです。その職務が独立しておる。そういう裁判官によって行なわれる裁判、それが司法の独立であろうと思うわけでありまして、本件の場合にも、なるほど違法、無効あるいは違法、適法を判断する本案の裁判は司法判断だとされておりましょうし、その前提としても、やはり適法か違法かという判断が前提になって、しかもここに言われておる公共の福祉に影響があるかどうか、あるいは緊急性があるかどうか、そういった判断を前提にいたしまして執行を停止する。こういう処分をするわけで、これも私は、プロパーの純粋の司法的判断でないといたしましても、裁判手続の一環としてのやはり裁判だ。執行停止という決定であり、命令であり、これは一つの裁判であります。そういう裁判をする裁判官は、行政官庁から独立した裁判官によって行なわれておる。その裁判官の行なう裁判、それが行政的な性格を持つにいたしましても、幾らも行政的事項を裁判官はやっておるわけでありますから、その裁判官の行なう裁判に対して行政庁である総理大臣が異議を述べるということが、私は、司法権の行使に対する介入行為になり、それが司法権の独立を侵すということで、憲法の精神、規定にそむくのではないかという当然の結論が導き出されてくると思うのでありまして、ただ純粋にこれが司法事項であるか、行政事項であるかという、裁判官の行なう行為の抽象的な理論の問題でなしに、裁判の過程で、しかも裁判の前手続として行なわれると言ってもいいかと思いますが、まあ本案の裁判とは別個の裁判でありましょう。別個の裁判でありましょうけれども、やはり、裁判手続の一つとして裁判官が行なうこの執行停止に対して、行政庁からこれに関与するということが、私は憲法違反の疑いを差しはさむ余地が十分あるという考え方を持っておるのですが、局長の答弁では、ただ、執行停止の性格は純粋の司法事項でない、本来は行政的な事項だから、これに行政庁が関与してもかまわないのだ。こういう御見解のようですけれども、裁判所の行なう裁判手続の過程で、行政庁がこういう形で入ってくるということは、いわゆる政治的な判断は別として、政治的な考慮を抜きにして、純法律的に言って、やはり憲法違反の疑義が出てくると思うのですが、その点に対する御見解。それ以外の理論的根拠はないのか、ただ純粋の司法事項でないということだけが、あなたの言う合憲論のただ一つの根拠であるのか、それをちょっと重ねてお尋ねしたい。
○浜本政府委員 同じことを蒸し返し御答弁申し上げまして、はなはだ恐縮なんでありますが、私どもがこれに関して抱いております見解を少しく整理して申し上げますならば、純粋に司法事項であることについては、法律をもって行政庁がこれに関与するようにすること自体が、実は憲法違反になるのであります。ただ、私が今申し上げました、純粋には司法事項でない行政事項を一個の法律で形式的に司法裁判所に委任しておる事項につきましては、法律の根拠に基づいて、これに行政庁が関与する場合には憲法違反にならないというのが私どもの考え方であります。従いまして、執行停止そのものは本来は行政事項であるにもかかわらず、現行法に基づいて申し上げますならば、行政事件訴訟特例法において、あるいはこの法案において、法案が成立いたしました後においては行政事件訴訟法によりまして、一たん司法裁判所に委任されたものを、さらに同法に基づいて、その一部について行政庁に関与し得る道を開いておるのでありますから、やはり法律の根拠に基づいて関与するにすぎぬのでありまして、いわば一たん委任した一部をさらに法律の根拠に基づいてもとに返してもらうと言いますか、本来の姿に持っていくということにすぎぬのでありますから、もともと法律で左右し得る事項であるというのが私どもの考え方なのであります。くり返して申し上げますと、もともと純粋に司法事項であるものについては、法律をもってしても行政庁に関与させることは憲法違反だ、形式的に司法事項とされているものについては、法律的根拠に基づいているものならば行政庁が関与しても憲法違反にならない、というのが私どもの考え方なのであります。
○坪野委員 それでは重ねてお尋ねいたしますが、局長のお考えで、純粋の司法事項というものをどういうように認識しておられるのか、参考に伺っておきましょう。
○浜本政府委員 ここで私、御納得のいくような御説明を申し上げることができるかどうか、はなはだ不安なのでありますが、三権分立の建前で、争訟についての判断事項、これは抽象的に申し上げますならば、本来の純理論上の司法事項であるということを申し上げる以外には、御説明の申し上げ方が、私のエキスプレッション能力がそれ以上にはありません。争訟についての判断、これは純粋の司法であるということであります。
○坪野委員 抽象的には、争訟についての判断事項ということになりましょうが、しかし、具体的に、その一つの争いごとを裁判という制度の上に乗せて、そしてその裁判制度の上で争訟事件について右左の判断を下す判断作用が司法だ、こういうように説明になっておるようですが、現実に際して、裁判所の行なうあらゆる行為の中で、それが純粋の司法行為である、あるいは純粋の行政行為であると明確に区別できる場合と、その限界点に達して初めて、司法事項か、あるいは司法に付随的な事項であるかという限界が非常に不明確になってくることがあるということはお認めになりますか。
○浜本政府委員 もともと抽象的にしかお答えできぬ性質のものでありますから、個々のものにつきましては、あるいはボーダー・ラインにおいては、非常に困難を伴うような事案もあるかと私も考えます。
○坪野委員 そのように私は、司法事項と行政事項というものは、抽象的には一応の定義的な区別はつくと思いますけれども、現実には、今の行政と司法の限界というものは区別ができないのではないかと思うのです。結局制度的に、今の最高裁判所を頂点とした裁判所制度の中で、そうしてまた訴訟法その他の裁判制度に関する法律の中で行なわれておる裁判、この裁判に関与する裁判官の身分その他が保障されて、司法権、行政が介入すべからざる司法の独立というものが保障されておると思うのであります。そういう意味で、私は、今純理論的に執行停止が本来の司法でないから法律でもって行政権の介入の規定を設けても違憲でないという御見解には承服することはできません。私は、やはりこれは司法に対する不当な介入の規定だというように理解しております。
 しかし、さらに一歩進めまして、それにいたしましても、現行法は、法律で、総理大臣の異議があれば執行停止の決定を下すことができないという、一つの総理大臣の異議という行為を条件に、一つの判断――決定を下すかどうかという、これも私は一種の判断だと思うのです。司法判断か行政判断かは別として、裁判官のなす判断が前提になって決定を下すわけですから、その判断を下す一つの条件として、総理大臣の異議、これがあれば決定をすることができない。こういうことになっているわけですけれども、本法では、決定があった後においても異議の申し立てができる。そうして異議の申し立てがあった場合には、裁判所は取り消さなければならないという、これも法律で裁判所を義務づけておると言えばそれまででありますけれども、私は、現行法のように、裁判官の判断によって、執行停止の決定が出る以前に総理大臣の異議があればそのような決定ができないのだという規定であれば、まだしも違憲の疑いが少なくなるわけであります。ですから最高裁が違憲でないという判断を下したというのは、現行法における異議制度を違憲であると言い切っておらないにすぎないのでありまして、私は、この改正案のように、すでに裁判所がこのような決定を下してしまった、それはなるほど行政事項だから裁判じゃないんだという言い方も成り立ちましょうけれども、私は、やはり裁判所が訴訟法の手続に従って下した判断でありますから、やはり裁判だと思う。その裁判官の行なった裁判に対して、その後に総理大臣の異議があれば裁判所は取り消さなければならないというように、裁判の決定を、裁判それ自体を取り消させるような法律、これは明らかに司法権行使に対する、裁判官の裁判を変更せしめるという、そういった効力を法律で総理大臣に与えるという意味で、違憲の疑いがさらに濃くなると考えるわけです。それを局長は、決定前であっても決定後であっても性質が全く同じだというふうに考えておられるようだけれども、私はそこに大きな意味があると思う。あなたのように、あれは裁判じゃないのだ、あれは裁判官がやっている行政事項なんだから、あとであろうと先であろうと同じだと言われるけれども、制度的に三権分立というのは、純司法事項である裁判事項を裁判所が行なうというのが一つの柱ではありますけれども、同時に行政官庁と独立した司法官庁と言いますか、司法裁判所、その司法裁判所によってそういう司法事項を行なわしめる。人事も同様に相当程度行政庁と独立せしめられておるという形でありますから、私は、そういう制度的に行政庁と独立した裁判所、裁判所の建物の中に行なわれることも行政といえば行政でありましょう。しかし、この執行停止の命令を出す裁判所、これは明らかに憲法上の裁判所でありますから、その裁判所が裁判を下した――裁判を下したけれども、それは理論的には裁判でないんだという理屈も成り立ちましょうけれども、しかし、憲法上身分の保障されている裁判官が行なった裁判、形式上裁判、それを行政上、総理大臣が取り消しをさせるということは、これは違憲の疑いがさらに一歩濃くなるものだ。最高裁判所も、文理解釈はともかくといたしまして、この異議制度の精神から申しましても、また今の司法権に対する行政権の介入という行為についても、おそらく最高裁も相当検討を加えられただろうと思うわけであって、あの最高裁判所の判決は、執行停止の出る以前における法律による異議規定という介入のあり方、これは違憲とまで言えないという判断を下されたにすぎないのでありまして、この処分の後にはできないという判断を下しておられるところからしても、この改正された本法のように、執行停止の後にも取り消しができるということであれば、最高裁判所の法律判断、判決はどうなるかということは、これはわからないと思うのです。あなたが言い切っておられるほど違憲の疑いがないというようには私は割り切れないと思うのですが、その点、その以後と以前とで判断がちりとも変わらないものかどうかという点について、局長の御意見をもう一度伺いたいと思います。
○浜本政府委員 もちろん、本法案が成立いたしました暁において、ただいまの論点について将来最高裁判所がどういうふうな裁判を下されるであろうかということを、現在の時点において間違いなく判断することは私にも不可能であります。私どもは、今申し上げておりますような理由から違憲でないと申し上げておるのでありますし、また現在まで最高裁判所がとっておりますあの裁判におきましても、現行特例法の条文の語句からして、決定後にはできないということを言っておるのでありまして、事前においてはいいが事後においてはいけないというふうに明らかには最高裁判所も言っておらぬように解しておるのであります。従いまして、私どもは従来申し上げておりますように、総理大臣の異議そのものが今言いましたような性質のものであり、また執行停止そのものが繰り返し申し上げておりますような性質のものでありますから、事前であろうと事後であろうと、その価値は同じであるということを申し上げておるのでありまして、私どもの理解する限りにおきましては、少なくとも今日まで最高裁判所が下しておりますあの裁判は、現行法の字句の上からはそうなるのだ、事後はいけないんだということを言っているにすぎないのでありまして、事後においても事前においても性質は同じであるということを、言いかえれば言外に含んでおるもののように私どもは解しております。
○坪野委員 この総理大臣の異議の規定についての違憲論なり議論は、この程度で一応やめておきます。
 次に、この総理大臣の異議規定の中にもございますし、また事情判決ですか、特別事情のある場合に取り消さなくても済むという三十一条ですか、この規定にもありますが、公共の福祉という言葉が出てきているわけであります。公共の福祉とは何ぞやということは非常にむずかしいことで、ここで議論しておっても、これは果てしがないことになると思うのですが、ただ少し政府の統一見解と言いますか、少しお尋ねしておきたいと思う点は、たとえば公務員の懲戒免職処分あるいは公立大学における学生の退学処分、放学処分、こういった行政処分が過去において行なわれて、そしてその行政処分の取り消しを求める裁判があって、処分の理由がない、処分が違法だということで、その懲戒免職処分なり放学処分が取り消された例が幾らもあるわけであります。私が直接関与した事件におきましても、たとえば旭ケ丘中学事件と申しますか、旭ケ丘中学の教員三名が懲戒免職処分を受けましたが、これが違法だということで一審、二審取り消し判決があり、上告で破棄差し戻しになって、今高裁で事件係属中でございます。あるいは府立医大学生放学処分の取り消し事件、こういった事件があったことは局長も御承知だろうと思うのでありますが、こういった懲戒免職処分の取り消しを求め、あるいは放学処分の取り消しを求める裁判の場合に、執行停止の申し立てを私たちがやりました際に、やはり総理大臣の異議が出てストップされたことがあるわけです。その理由に、公共の福祉云々という言葉が出てくるのでありますが、今の学生の場合をとってみましょう。大学の教授会で放学を決定して学長の名において放学処分がされてしまったという場合に、明らかにそれが誤った処分だということで裁判所が執行停止の決定を出したという際に、学長の威信失墜というようなことがあり得るでありましょう。あるいは今後の学校教育の上で、こういう執行停止が出ると、大学当局として教育のしめしがつかないというようなことがあると思いますけれども、それが即公共の福祉に重大な影響を及ぼすというような理屈に結びつくものかどうか。あるいは先ほどの懲戒免職処分にいたしましても、それを処分した地方の、京都市なら京都市の教育委員会の行政庁の威信失墜というようなことはあり得ても、その三人の教員の首がつながったからといって、公共の福祉に重大な影響があるかどうかということと無関係だと私は思うのでありますが、そういう今の人事問題の場合に、取り消したら公共の福祉に重大な影響があるというようなことを考え得る場合があるのでしょうか、あるいはそれも公共の福祉になるのでしょうか、あるいはそういうものは公共の福祉に重大な影響を及ぼすということにならないのでしょうか、その点の御見解を一つ伺いたいと思います。
○浜本政府委員 公務員の免職処分あるいは学生の放学処分と申しましても、各種の態様があり得るわけでありますから、抽象的に、さようなものは公共の福祉に関係がない事項である、あるいはそうじゃないというふうなことを、私、ここで断言する力はないのでありますけれども、多くの場合に、学生の放学処分のごときはあるいは公共の福祉に影響ないかと実は思うのでございます。教員の免職処分などにつきましては、必ずしも一がいに公共の福祉に関係がないとは私は断言し切れないのではないかと思うのであります。たとえて言いますならば、その当該教員がきわめて特殊な教育方針なり教育内容なりを信奉しておる者でありまして、たとえ公判の判決が下るまでのその一時の間とはいえ、それを執行停止することによりまして、そういった多くの子弟に彼独自の好ましからざる教育――好ましからざると一がいに言い切ってしまってはいかぬのでありますが、場合によっては特殊な教育がなされるというような事態を考えますと、とうていこれは公共の福祉に関係がないと言い切れない場合があると考えられるのではないかと思うのでございます。また、公務員の懲戒免職につきましても、やはり同じように場合場合によって考えないと、単に当該公務員の首が一時つながるだけだから公共の福祉に影響がないのだというふうには断言し得ない場合も考えられるのではないかと思うのでございまして、抽象的に私はここで確定的なお答えを申し上げることができぬものであります。
○坪野委員 ただいまの局長の答弁を聞いておりますと、まさにこの公共の福祉という言葉を用いて異議権が乱用されるおそれが十分あり得るということを私はここで確認をしたわけであります。従来も乱用されてきたし、このように制度的に若干の抑制がなされたといたしましても、ただいまのようなお考えでその教員を首にする。首にしても教壇に立つということもありましょうし、また首がつながっておっても、必ずしも授業をさせなくても月給だけやって遊ばしておくということも行政処分としてはできないことはないわけでありますが、要するに懲戒免職を受けた、そうしてそれが執行停止によって一時的に首がつながっておるという場合に、直ちにと言いますか、そういう好ましくない教員が教壇についておる、あるいは他の公務員の場合も、首になったけれどもそれが取り消しになった、執行停止になった、しかし、執行停止になってそういう公務員がおるというだけで、これが公共の福祉に重大な影響を及ぼす場合があり得るというお考え、私は、そういう考えでこの規定が設けられているとすれば、やはり乱用のおそれがあると思うのであります。あらゆる行政処分の中で裁判官が執行停止を出してしまった、あるいは出そうとしておる、けれども客観的に見てそのような執行をとめるということが、この事情判決と同じでありまして、なるほど違法かもしれない、違法かもしれないけれども、だからといってその処分の取り消しということはどうか、公共の福祉の観点からどうかということで、最終的にはあるいは事情判決で、違法だけれども取り消さないということもあり得る、そういう判断が裁判所に十分つかない場合に、総理大臣の異議規定で、まさに公共の福祉に重大な影響があるのだということで執行停止が出ない、あるいは取り消されるというような場合は私は許されると思うのでありますが、政治的な判断によって、政府、内閣が苦境に追い込まれる、あるいは威信が失墜する、あるいはそれに類似した一方の立場から、そのような好ましくない教員がまだ首が一時的につながっておるということが即公共の福祉に重大な影響を及ぼす場合もあり得るのだというようなことでは、私は、この異議規定が認めらるべきではないと思うわけでございまして、従来もそのような乱用がずいぶんなされてきておりましたし、今後も私は、今のような公共の福祉というような解釈を抽象的に広く解するということであれば、そういった乱用のおそれが残されておるということを申し上げて、この公共の福祉に影響を及ぼす云々ということについての議論はこの程度にとどめておきたいと思うわけであります。
 それからこの二十七条の異議規定で、もう少しこまかい点について、将来の解釈問題になりますから確かめておきたいと思うのですが、現行法と少し字句の文字が変わってきておるわけでございます。文字は変わっておるけれども内容的には、あるいは解釈としては何ら変わりはないというように理解していいのか、あるいは文字が変わっただけに要件その他の意味が変わってきているのだ、このように理解すべきかという点について一つお尋ねしておきたいと思うのです。現行法の十条の第二項では「第二条の訴の提起があった場合において、処分の執行に因り生ずべき償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があると認めるときは、裁判所は、申立に因り又は職権で、決定を以て、処分の執行を停止すべきことを命ずることができる。但し、執行の停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼす虞のあるとき及び内閣総理大臣が異議を述べたときは、この限りでない。」第二項ではそういうことになっておりますが、私は今この二十七条を言っておりますけれども、二十五条と二十七条を同時にお尋ねするわけですが、本法の二十五条の二項に書いてある要件と、それから現行法の十条の二項に書いてある要件と、文字が少し変わっておりますけれども、解釈は現行法と何ら変わりがないというふうに理解していいかどうか、ちょっとそれを……。
○浜本政府委員 御指摘の現行法の第十条第二項の執行停止の要件、それから本法案の第二十五条第二項の執行停止の要件たる関係は、文字の上では多少変わっておりますが、趣旨においては変わるところがないと私ども考えております。
○坪野委員 現行法では職権で執行停止ができるというこの職権によりという規定が、改正案では削除されておりますが、これはどういう理由ですか。
○浜本政府委員 現行法におきましては、なるほどおっしゃる通り職権でも執行停止がなされる場合もあるような規定になっております。実際の実情を見ますと、職権でなされる例は一件もありません。また、事実職権でやろうと思いましても、実際にはできないことになる。これは要件をごらんいただけばわかると思いますが、のみならず、現行法における職権でもできるといいますのは、行政裁判法時代の規定がそのまま入ってきたのでありまして、理論的にもおかしいというので、実情もありませんし、そこで今回はこれを削って職権でやる場合を除いたわけであります。
○坪野委員 その点はそのように理解しておきます。
 そうすると二十七条に入りますが、これも字句が若干変わってきておるという点で、現行法の三項では「前項但書の異議は、その理由を明示してこれを述べなければならない。」理由を明示せよという要請がなされているわけですが、こちらは「理由を附さなければならない。」文字が変わっているだけで意味は全く同様と理解してよろしゅうございますね。
○浜本政府委員 おっしゃる通り片一方は「明示して」とあり、片一方はただ「附さなければならない。」となっておりますが、その趣旨は同じであるとわれわれは解しております。
○坪野委員 これは前にも質問したのですが、今の改正案の二項、三項ですが、二項の「理由を附さなければならない。」という点は効力規定で、理由を必ず異議書には附さなければならないけれども、第三項の具体的事情ですね。「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれのある事情を示すものとする。」という規定は、単なる訓示規定であって、効力規定ではないのだという御説明を受けておるわけですけれども、しかし先回、白石参考人でしたかは、やはり裁判所を納得せしめるだけの具体的な理由、具体的の事情を付した理由がなければ、やはりそれは理由が付されたと言えないのではないかというような御見解も開陳されたわけですが、この訓示規定、効力規定というこれも、抽象的に区別するのでなしに、この第三項の「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれのある事情」をどの程度示さなければ、やはりそれは無効になるのか、あるいはどの程度もこの程度もなしに示さなくとも、事情を言わなくても理由だけでいいのかという点、もう少し確かめておきたいと思います。
○浜本政府委員 御指摘の点につきましては、ここで抽象的に申し上げても実は意味がないかと思うのでありますが、結局は裁判所が、この程度ならば理由を付したことになると考えるか、まだそれでは理由を付したことにならぬと解するのか、そこら辺は裁判所に委任されることになるのでありまして、ここで抽象的にそれだけ書いてあれば、具体的な事案を離れてここで論議することは不可能ではないかと思うのであります。そこは裁判所が、この程度ならば理由が書いてあると見られる、この程度ではまだ理由を書いてあるとするには値しないという裁判所の判断にまかされることになるのではないかと思うのです。
○坪野委員 そうしますと、今の三項は訓示規定というよりも、やはり二項と一体となった効力規定というように理解すべきじゃないかと思うのですがね。あとは裁判所が、理由がつけてあるかどうか、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれのある事情が示されておるかどうかの判断は、具体的に裁判所が判断すればいいことですから、その異議が述べられて、その異議に具体的な事情を付した理由があるかどうか、裁判所が判断すればいいわけで、そうしてそのような判断、あるいは異議が有効な説明がなされておらないということで、やはり二項、三項一体としてこれは効力規定と理解すべきじゃないかと思うのですが、どうですか。
○浜本政府委員 抽象的に申し上げますならば、二項は効力規定であり、三項は訓示規定であるというふうに言わざるを得ないのでありますが、その運用の実情においては多く御指摘のような結果になるかと私どもも考えております。
○坪野委員 理論的に二項と三項とを分けて、二項は効力規定である、三項は訓示規定と解さざるを得たいと言われておるその理論的根拠をちょっとお示し願いたい。
○浜本政府委員 私ども三項を訓示規定であると言いますのは、第三項はもちろんわれわれもそのつもりで作ったのでありますが、内閣総理大臣は示すものとする。こういうふうになっておるところから見ましても、これは訓示規定であることを示しておるものであると私どもは解しておるのであります。つまり訓示規定とするためにそういった実現の仕方をすると申し上げた方がいいかもしれませんが、内閣総理大臣が示すものとする、こうあるのでありまして、これについては裁判所の判断を受けることを前提にしておらぬつもりなんであります。
○坪野委員 そうですか、立案者としてあなたが文字で区別をしておるということですね。あとはそうすると理由、その理由が具体的に客観的に理由と認められるか、あるいは理由にならない、理由をつけたものと認められないという判断を第二項で裁判所がする。第三項は、その理由にはある程度の事情を示すものとするということであって、直接は裁判所の判断対象にはならない、こういう解釈をとるように承っておけばいいわけですね。
○浜本政府委員 その通りであります。
○松井(誠)委員 関連して。三十一条の事情判決についてちょっとお尋ねをしたいのですが、「これを取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、」というここの部分は、最初に小委員会の案として発表されたところにはなかったように思うのですが、この部分、「これを取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、」といろのがわざわざ入っておるのは一体どういうわけかということと、「公の利益」という言葉と、やはり同じ三十一条のあとの方にある「公共の福祉」というものと使い分けをしたのは何か意味があるのかどうか、その点をお尋ねをしたい。
○浜本政府委員 御指摘の小委員会の案と三十一条の第一項の案とで文言の違いますのは、多少字句が違うかと思いますけれども、私ども趣旨を変えたつもりはないのでございます。公の利益と公共の福祉とが違うか同じであるかという点につきましてはデリケートなニュアンスがありますので、一がいには言えませんけれども、合致する場合もありましょうし、多少のニュアンスの違いが出てくる場合もあると考えるのでありまして、抽象的に同じであるとか違うとかということは、私ちょっとここで申し上げかねるのであります。
○松井(誠)委員 お手元に小委員会の案がなければあるいは的確なことはおわかりでないかもしれませんが、私も今手元に持っておりませんけれども、私のメモによりますと、わざわざここのところを入れておるわけです。普通は公共の福祉という言葉を使いそうなのに、わざわざ普通使わない公の利益という言葉を入れたのは何か意味がありそうに思うものですからお伺いをしたいのですけれども、公共の福祉という言葉があるのに、わざわざそれを避けたという積極的な意味が何かあるんじゃございませんか。なければ、どうしてこういう無意味な言葉を使うのかよくわかりませんが……。
○浜本政府委員 きわめて形式的な説明を申し上げて恐縮でありますけれども、この三十一条の一項の構文におきましては、公の利益と私人の受ける損害の程度、これとをにらみ合わせまして、なおかつ公共の福祉に適合しない、どういうのでありますから、この構文では、抽象的に言いますれば公共の福祉の方が大きな概念になるわけであります。公の利益と個人の受ける利害とを対照しまして、なおかつその事案においては取り消すことが公共の福祉に反する、こういうふうに判断するわけでありますから、二つの概念は上位、下位という関係に立つかと思うのであります。
○坪野委員 もう一つ聞いておきます。第十四条の出訴期間の規定、これは現行法の六カ月を三カ月に短縮されたわけであります。しかし、これは一般法でありますから、特別法でさらに一カ月あるいは六十日、また延長することも可能なわけで、現にこの改正案が成立しても、既存の個々の特別法というか、一般の行政法に出訴期間の特別の定めがあればその規定によるということに当然なろうかと思いますが、その点はそう解してよろしゅうございますね。
○浜本政府委員 前回上村委員から質問がありまして、同じことを申し上げたと思うのでありますが、もちろん、これについては、一般法でありますので、将来できる特別法においてこれより短い出訴期間が規定されるような法律ができないことを担保することは、私どもの力の及ぶ限りでございません。ございませんが、私どもこの案の作成の作業中において、法制局と私どもの方とで、将来もこの線を維持していく、将来の立法についてもこの線で規制をしていくという口頭の申し合わせをいたしておりますので、私どもの力の及ぶ限りはさようなものはできない。もちろん、事情によりまして絶対に必要の場合がないとは言えませんけれども、無用に短い期間を定めるような新立法はできるだけ防止したいと考えております。
○坪野委員 今後できる法律では、法務省と各省との間で意見を調整してあまり短い出訴期間の特例を作らない、そういう努力は多とするわけですが、この法律ができましても、現在すでに三カ月以内の短い出訴期間を定めた法律が相当数あるのではないかと思うのですが、現行法の中で三カ月よりも短い出訴期間の定めをした法律をお調べになったことがございますか。
○浜本政府委員 その点は逐条説明で触れておるはずでありますが、私ども、この整理法を作ります作業中に全部の関係法律に当たりまして、これより短いものは全部これに統一したつもりであります。整理漏れはないつもりでおります。
○坪野委員 この出訴期間を三カ月に統合するように整理法案で整理をされた、こういうことですか。
○浜本政府委員 今、私の言葉が少し不正確であったようであります。全部洗い上げまして全部を三カ月にしたというわけではありませんが、不当に短いものは、三カ月とまではいたしませんでも、少し長くしておりますし、できる限りは三カ月にしております。長いものも、もちろんあり得るわけであります。
○坪野委員 その点、きょうでなくてけっこうですから、今まで洗い上げられた法律の中で、三カ月より短い法律を資料としてぜひ出していただきたいと思います。三カ月に改められたものはいいのですよ。そうでなしに、まだ現行法として残る場合、三カ月より短い出訴期間で残る法律の全部はむずかしいかもしれませんが、資料ですから、整理して三カ月に直された残りの法律を資料として参考にいただきたいと思います。
○浜本政府委員 大体はこの関係法律の整理等に関する法律案の逐条説明の八ページのところをごらんいただきたいと思うのでありますが、全部洗い上げたわけでありますから、洗い上げた後に、この法案に整理された後においても、なお三カ月よりも短くて残っておるもの、もちろんそれは御説明申し上げることもできます。ただいまはここでできませんけれども。
○坪野委員 ですから、私の求めておる資料は、整理された残りで、まだそういう三カ月以内の短い出訴期間の定めのある法律、それを一つ参考に聞かしてもらいたいということです。
○浜本政府委員 本日は、その点資料としては提出できませんけれども、後ほど提出いたすことにいたします。
○坪野委員 終わります。
○松井(誠)委員 ちょっと一点。どうも質問があちこち飛んで申しわけございませんけれども、当事者訴訟の点についてお尋ねをしたいと思うのです。
 この当事者訴訟は、三十二条のいわゆる形式的な効力というものの準用はないわけでありますけれども、先ほどの御説明のように、こういうものの場合に、この当事者訴訟の判決の効力、対世的な効力がありやなしやについて、民事訴訟法の原則で考えていくのだというように考えるべきものなんでしょうか。
○浜本政府委員 当事者訴訟における判決の効力について、本法に規定のないものにつきましては、もちろん七条によりまして民事訴訟の例によることになると思うのであります。
○松井(誠)委員 たとえば土地改良区なら土地改良区の設立が無効だ、そういう主張の場合に、会社の設立無効の場合と違って、土地改良区の設立は、設立という具体的な行為はないわけなんです。ただ県知事の認可によって登記をして設立されるわけなんですが、しかし、その設立の過程で重大な瑕疵があって、設立そのものが無効だというような場合に、土地改良区の不存在の確認というようなものは、これは公法上の法律関係の当事者訴訟ということになるわけでしょうか。
○浜本政府委員 御指摘のような事案を考えますれば、やはり一種の当事者訴訟になると思います。
○松井(誠)委員 その場合の判決の効力は、これはやはり七条によって考えるべきものだ、形成的な効力があるかないか、対世的な効力があるかないかということは、民事訴訟法によって考えるべきものだということになりましょうか。
○浜本政府委員 その通りに考えております。
○河本委員長 次会は来たる二十四日午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後一時六分散会