第040回国会 本会議 第7号
昭和三十七年一月二十四日(水曜日)
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 議事日程 第六号
  昭和三十七年一月二十四日
   午後二時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
            (前会の続)
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○本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑
            (前会の続)
   午後二時二十一分開議
○副議長(原健三郎君) これより会議を開きます。
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 国務大臣の演説に対する質疑
            (前会の続)
○副議長(原健三郎君) 国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。和田博雄君。
  〔和田博雄君登壇〕
○和田博雄君 私は、日本社会党を代表いたしまして、池田総理の施政方針演説に関しまして、外交、財政等につきまして若干の質問をいたします。
 質問点の重複を避けまして、外交についてはアジア政策を中心として質問をまずいたしたいと思います。それは日本がアジアにあるという理由からだけではなしに、東西ブロックの対立から生ずる緊張がアジア、特に極東から東南アジアに見られ、これの平和的解決が世界平和に重大な関係を持つからであります。世界は大勢としては平和共存に向かいながらも、局地的な紛争は起こる危険があり、特にそれが朝鮮、台湾、ベトナム、ラオス、また西イリアンに起こりかねないことをわれわれは非常に憂慮いたします。日本がアジアにおいて重要な国家であればあるだけ、なすところなくすわっていたり、あるいは対立の一方の当事者にくみしたりしたのでは平和は訪れないのであります。池田首相が演説しましたように、世界の平和と繁栄とに独特の貢献をしたいということは国民のひとしく願うところであります。(拍手)問題は、いかなる心がまえ、方針でアジアにおいて日本がこの独特の貢献をするかであります。こういう点から、首相、外相が外交方針の中でアジア外交を特に重視されておることに私は非常に関心を持つのであります。政府の外交方針は、自由国家群の一員であると同時に、アジアの一員であるという立場に立って、国連を中心として平和外交を展開したいというように要約されると思います。政府がこれまで三つの原則として掲げてきたことであります。外交が原則だけで行なわれるものでないことは言うまでもありません。しかしながら、原則をしっかりとわきまえない外交、さらには特定の国の動きをまず第一に気にするような外交からは、日本の独特の外交は生まれないのみか、平和に対してもわずかの貢献もできないで終わるでありましょう。(拍手)政府の掲げておるアジアの一員としての立場という原則が、もう一つの原則である自由陣営中心主義のゆえに実は外交の内容がまことに乏しいものになっておるということ、また、自由陣営中心主義に立つ外交によって国連の強化にもさほどの貢献はしていないと思います。この点について政府にお尋ねしたいと思いますが、その前に、きのう本会議において田中君が日韓会談について質問した点について一言触れておきたいと思います。
 その質問において、田中君は、外交を政争の具に供するなとか、あるいは外交について国論が分裂しているとか、分裂を策している者があるとか、まるで人ごとのように言っていたようでありますが、一体それはだれの責任でしょう。(拍手)国民の声に耳を傾けようとしなかった自民党政府の責任であることをごまかさないでいただきたいと思うのであります。(拍手)今回の日韓会談においても同様であります。国民あるいは国会の意向を十分に聞かないで会談を進めていくやり方では、国論がまとまらない方が当然なんであります。(拍手)首相は外交上の重要な問題について、国民の世論に耳を傾ける用意があるかどうか、率直にお聞かせ願いたいと思います。政府の外交がここかしこで行き詰まっているのを隠すために、その責任を野党になすりつけるようなことは最も卑怯な態度であります。(拍手)社会党は寛容の精神は十分に持っていますが、政府の責任までも引き受けるほど、それほど寛容でないということを皆さんに承知していただきたいと思います。(拍手)
 さて第一に、国際連合についてでありますが、平和のための国際組織としての国連に大きな期待を寄せ、また、国連の育成強化に日本が貢献すべきことは、わが憲法の精神に待つまでもなく、当然のことであります。国連が平和のために十分な働きをしていくためには、その組織が普遍的、すなわち世界にある国々をすべて加盟国とし、世界の世論を正しく反映するようにならなければなりません。今日国連の加盟国が百四カ国にふえ、国連結成当時の二倍以上になったことは、この当然の事理が認められているからでございます。昨年国連総会におきまして、中国代表権の問題について日本政府のとった態度は、私の指摘した国連の第一の条件である普遍性について、これは岡崎国連大使の演説には触れておりましたが、しかし、それにもかかわらず、一体どう考えているかを疑わせるに十分なものがありました。(拍手)なるほど中国の国連代表権の問題は重要な問題であります。重要であるということは、単に形の問題だけではないのでありまして、肝心なことは、この重要な問題をいかに解決するか、それをまさに首相の言葉で言えば、賢明と勇気とをもって示すべきことなのでございます。(拍手)日本が中国と歴史的にも地理的にも近いことを知っているアジアの国々は、このことを日本に期待していると私は信じます。(拍手)政府は情勢に押されて、特にアジア・アフリカの国々が中国の代表権を支持している情勢に押されまして、代表権の承認をとりあえず一年間延ばすことに主導権をとっただけのことでございます。これを池田首相は、国連にアジアの世論を正しく反映するために日本が独特な貢献をしたものと考えでおられるのかどうか、この点をお伺いしたい。また、中国を国連から除外して、はたして国連が予想されるアジアの緊張を緩和するのに十分な働きができると思うかどうか、この点についても御質問をいたします。
 国連問題に関連しまして、昨日自民党の田中角榮君が、社会党が去る一月十三日北京において中国人民外交学会――政府でもまた共産党でもありません。人民外交学会との間に出した共同声明に言及され、また首相も外相も田中君とともにこれを批判されました。いやしくも一国の総理、外相が、また与党の責任者が文書に言及される以上は、文書を正確に、しかも全部読んでから批判をするならしていただきたいと思うのであります。(拍手)ただ、田中君の言うように、新聞の見出しだけを読んだのではないかと思われるような批判をなされるのは、まさにこの国会を党利党略に利用したものにほかなりません。(拍手)共同声明は明確に、「依然として日本の領土沖縄、小笠原を占領し、日本の至るところに軍事基地を設け」るなどしている米国の政策に対する戦いは、日中両国の人民が、おのおの民族独立と国家主権を守るための独自の立場に立った自主的な戦いである、と言っています。また、「日本社会党の中立政策とは平和五原則、バンドン会議十原則及び日本の平和憲法の基本精神に立っていかなる軍事ブロックにも参加せず、いかなる外国の軍事基地も置かず、あらゆる軍事ブロックの解消を求め、これにより平和共存を実現せんとするものである。」ということが、実にこの通りの言葉で書かれております。(拍手)池田内閣のように、米国の極東政策について、たとえば沖繩についてさえ、米国に要求できないような自主性のない態度は、日本社会党の全くとらないところでございます。(拍手)中ソ論争のきびしい中にあって、戦争は不可避であり、平和共存に強い批判を持っている中国に対して、平和共存の路線の上に日本社会党の積極中立の立場を認めさせましたことは、社会党の自主性を物語るものであって、社会党は積極中立の立場を一そう深め、この立場に立りた政策を実行していくことを言っておきたいと思います。(拍手)この点について、池田総理に質問したいと思います。
 私は、国会は国政についての討論の場所だと思います。従って、政権をとっている政府の政策に関する論議が中心課題でなければならないと思うのであります。野党の見解も、もちろん討論の対象にはなりますが、それには一定の形式と、一定の場においてそれをやらなければならぬと思います。国会においては、自由討議の形式において行なうのが最も適当だと思います。社会党は、もちろんその掲げる政策について討論は避けはいたしません。喜んでお受けいたします。その批判は喜んでこれを聞き、反省するところがあれば反省し、それを実際に実行していくのにやぶさかなものではございません。しかしながら、政府の施政方針の質問や答弁の形をかりて、これを批判し誹謗するに至っては、明らかに党内干渉であり、断じて許すことはできないのでございます。(拍手)昨日の本会議における田中君の質問は、口では党内干渉はしないと言っておりながら、事実上は質問自体もさることながら、政府の答弁と相待って明らかに党内干渉と思うが、池田首相はこの点についてどう思うかを聞きたいと思います。第二に、池田首相の答弁は社会党に対する希望としての趣意であると解釈するが、はたしてそうであるかをお聞きしたいと思うのであります。(拍手)
 次に、国連をいかにして育成強化するかについてであります。世界の人々の大きな期待にもかかわらず、平和機構としての完成にはまだほど遠いことも認めなければなりません。小坂外相の言っておる、国連自体がある意味においては東西抗争の舞台となったということも事実でございます。しかし、東西抗争の舞台となったことを指摘するだけでは自主性のある外交ではございません。問題は、国連をいかにしてそういう舞台でないようにできるか、日本はそれに対してどの程度の貢献をなし得るかということでございます。国連がその本来の機能を発揮するのを妨げるのは何であるかを適切に認識したならば、日本はもっとこの面で独特の貢献をなし得ると考えます。首相はこれが何であると考えておられるかをお尋ねしたい。
 私は、東西の両ブロックが、それぞれブロックの利益、支配権を求めて争っていることが、今日国連の機能をそこなっておる第一のものであると考えます。しかし、他面、東西の二つのブロックといずれのブロックにも加わらない多数の国々のあることは事実でございます。数でいえば、昨年ベオグラード会議に際して、非同盟、中立の国として招かれた国が四十一カ国であり、参加した国はアジア、アフリカ、ラテン・アメリカから二十三カ国に及んでおります。これだけの中立諸国があることは事実であり、これを無視することはできないと思います。(拍手)これらの国々がいずれのブロックにも加わることなく、平和のために協力していること、国連の強化にとって果たしている役割を池田首相はどのようにごらんになっておりますか。これら非同盟の国がふえていくことは、世界の緊張緩和に役立つことであって、日本はこれといかに協力していくか、首相の見解を明らかにしていただきたいと思うのであります。(拍手)非同盟の国々が今や現実にあり、そしてその力は、もはや平和の問題を考える場合に無視することができないこととなっておる現実のときに、池田首相はまだ中立政策は幻想であるという考え方に立っておられるかどうか、その点をはっきりしていただきたいと思うのであります。(拍手)
 以上、若干指摘しましたように、政府は自由陣営中心主義が第一の原則であって、国連の育成強化に貢献するという方針は、そのために第二義的になっているのは事実でございます。また、アジアの一員とはいいながら、実はその内容においては、アジアの諸国の大勢を理解していないのではないかと思います。その事例として、植民地独立についての首相の見解をただしておきたいと思います。
 植民地独立は当然のことであって、これをすみやかに実現するために、国連は一昨年の総会で植民地独立の宣言を採択し、昨年も同じ趣旨のものを採択いたしました。植民地独立に最も支持を送らねばならない日本でありながら、一昨年米国がこれに棄権した際には、日本はこれに追随して、提案国には加わっておりません。ところが、昨年米国が賛成に変わると日本は提案国に加わった経過を見ますと、日本政府がほんとうにアジアの一員としての自覚に立っているとは、とうてい思われないのでございます。(拍手)政府は何ゆえにかかる行動をとったか、お伺いしたいと思います。
 また、他の具体的な事例を申しましょう。すなわち、南アフリカ連邦における人種差別の徹底していることは、今や世界の常識でありまして、これまでほとんどの総会によって、この人種差別を攻撃する決議が採択されております。本年もこれに関して二つの決議案が出ました。日本はアジアの諸国というよりは、米英仏などの自由陣営と共同行動をとるために、南アフリカ連邦に対する国連の制裁決議に反対をしております。このような国連活動によって、日本の地位は、自由陣営においてはいざ知らず、はたして世界の信用が高くなったと言、えるでありましょうか。(拍手)もし首相がそう考えているとしたならば、時代おくれのした大国意識がひそんでいることを私はおそれるものでございます。
 首相、また関係閣僚は、一様にアジア諸国との外交を強調されました。これらの演説から池田内閣がアジア諸国に急に注目し出したのは、欧州共同体が急速にその統合の成果をあげてきたことと、米国の輸入制限の強化に直面して、あわててアジアに目を向けたという印象がぬぐい切れないのであります。(拍手)アジア諸国の外交に対する理解に不十分なことと思い合わせると、特にこの感を強くいたします。政府のたよっている自由陣営からの経済的障害に直面して、アジアに目を向けざるを得ないことこそ、自由陣営中心主義の行き詰まりを示すものにほかなりません。世界、特にアジア、アフリカ諸国の大多数のとっている中立の立場と政策を正しく理解することなくして、アジア諸国との経済提携が期待通りいくかどうか、これについての首相の具体的な見通しを伺いたい。
 このように、池田内閣の自由陣営中心主義は、みずからの掲げている他のもう一つの原則であるアジアの一員という原則と矛盾し、これの内容を空虚にしていると考えます。
 また、アメリカが沖縄の施政権を行使しているのは、平和条約の第三条に基づいているのでございますが、米国はこの条文に従って沖縄の信託統治を提案したこともなく、また、国連加盟国である日本の領土沖繩を信託統治することはできないのでございます。米国が沖繩を統治しているのは、平和条約と国連憲章とに違反していると首相は考えないかどうか。もししからば、これを米国に主張し、国連に提訴するだけの自主性を首相は持っておられるのでございましょうか。
 次に、政府は今年度の外交の重要な課題として、経済外交の積極的な推進ということをあげております。経済外交の重要さは、貿易依存度の高い日本としましては、事あらためて強調するまでもないことでございますが、今年度特に強調されるゆえんのものは、高度成長政策の結果生じた国際収支の赤字のゆえであり、高度成長政策の破綻を取りつくろうために国際収支の回復を是が非でも必要とするに至ったからでございます。近年、世界の経済はブロック化の傾向を強めております。なかんずく欧州における経済共同体、EECの発展が目ざましいものがあることは、総理大臣や外務大臣の言う通りでございます。やがてはイギリスもこれに加入するでございましょう。自由貿易連合の諸国も加入ないし連合するでございましょうし、アメリカも共同体との貿易関係を強化するでございましょう。発展する共同市場から、今は部外者であるところのアメリカ、日本、オーストラリア、カナダ、東南アジアの中で、日本だけが貿易の面でどのブロックにも属せず、世界の孤児になる傾向があることを、私は非常に憂慮しておるのでございます。(拍手)
 東南アジアとの貿易を見るに、その輸出入の品目構成をしさいに見たときに、独自のブロックを形成することは実り多いものとはいわれないのであります。一九六一年八月に発足した東南アジア連合は、マラヤ、タイ、フィリピンを加盟国としておるのでありますが、アメリカの志向する東南アジア軍事同盟との関係もあって、中立政策をとっておる諸国、ビルマ、インドネシア、カンボジヤ等の諸国はきわめて冷淡であるのが実情であります。中立の立場をとらない限り、日本がブロック形成に成功する望みはまずないものと思われるのであります。(拍手)しかしながら、政府は、あたかもアジア共同市場がいかにも可能であるがごとき幻想を抱いておるのであります。私は、この際中国を加えない限り、ブロックの形成としてほとんど価値のない東南アジア・ブロックについて、首相はどういうような見解を持っておられるかを、またその可能性はどうであるかを、具体的に御説明を願いたいと思います。(拍手)
 政府は欧州共同体との緊密化を盛んに言っておりますが、具体的にはどうして日本の貿易を伸ばそうとしておるのか、その可能性はどうであるかということをお聞きしたいと思います。また、ガット三十五条の援用撤廃を主張しておられますが、日本の低賃金が援用問題の根本の障壁である実情にかんがみて、この問題を解決しないままに援用撤廃が可能であるか、その可能性の限度はどうであるかということについてもお尋ねしたいと思います。(拍手)
 さらに池田首相は、外交と内政は一体不可分のものであると言っております。私もそう思います。しかしながら、不可分であるというのは、ただ池田内閣のように口先だけで不可分という意味ではございません。外交も内政も相互に矛盾なく国家利益を追求するという点において不可分でなければならないという意味であります。(拍手)私はこの見地から、若干財政問題について質問をいたしたいと思います。
 第一は、財政規模についてでございます。池田内閣の高度成長政策が、無計画な設備投資の拡大によって経済の各分野に不均衡を生じただけでなしに、昨年以来国際収支の悪化の原因となったことは、首相自身も認めておられる通りであります。そこで、政府はこの事態に処しまして、昨年秋から国際収支の均衡回復を至上命令として、金融引き締めを初めとする一連の施策を行ないまして、内需を抑制するとともに、景気調整の総合対策の一環として財政面の施策を講ずることといたしております。従って、国民は、三十七年度の予算につきましては、それが景気調整的役割をになうものとして期待しておったのであります。しかるに、このたびの予算原案では、一般会計で対前年度比二四・三%増、二兆四千億円の大型予算となっております。これは積極財政がうたわれた三十六年度の対前年比二四・四%にほぼ匹敵するものでございます。さらに、財政投融資計画におきましても、三十六年度における当初計画を一七・九%も上回る規模となっております。当面緊急の政策課題である国際収支の早期改善のため、内需を抑制し、輸出促進に全力をあげなければならないときに、このような予算を組むことは明らかに矛盾であり、無原則な財政政策であるといわなければなりません。(拍手)この点についての政府の見解を承りたいと思います。
 第二に、三十六年度の増加財源は、自然増収分に税外収入、繰り越し剰余金などを含めまして、四千五百億円程度のようでございますが、このうち補正予算や三十五年度の繰り越し分を除いても、なお二千二百五十億円が残るわけであります。政府は、剰余金として極力あとの年度に繰り越す方針のようでございますが、それがどのように処理されるにせよ、三十七年度の自然増収だけでも当初の見込みを大幅に上回ることは間違いがございません。自然増収見込み四千七百五十九億円に加えて、増税分、税外収入、前年度剰余金受け入れ分を合わせると、すでに増加財源は五千七百八十一億円もあるのでありますから、これに自然増の伸びを加えれば、実に八千億からの増加財源が生じる可能性があると思います。しかるに政府は、これだけ巨額の税の吸い上げを行ないながら、あり余る財源を持ちながら、減税に対しては全く熱意を示しておりません。(拍手)三十六年、三十七年度のような租税収入の多い際に、なぜさらに大幅な減税に踏み切らなかったか、理解に苦しむところでございます。二十九年度や三十三年度予算のごとく、思い切った歳出の抑制を行なうのであれば、減税が小幅であっても、理解が私にはできます。減税が国内需要増大の要因となることは事実でございますが、公共投資を中心とする歳出増はさらに内需誘発の効果が大きく、投資と輸入誘発効果も、減税特に所得税の減税の場合とは比較にならないのであります。今回の政府の減税案千四十一億円、関税の増を差し引けば純減税九百八十七億円。その内訳を見ると、所得税四百三十八億円、酒税等の消費税五百七十六億円、その他二十七億円となっております。従来減税が所得税の引き下げに重点が置かれ、消費税の負担引き下げが忘れられていたので、今回は消費税に重きを置いたという説明が行なわれているようでありますが、所得税は累進税率でありますから、逐年減税を行なわねば過重負担となるのであって、この説明は納得できないものであります。(拍手)あたかも所得税は引き下げ過ぎたかのごとき政府の考え方があるとすれば、これは改めてもらいたいと考えます。
 すなわち、今回の減税案によっても、課税最低限は、独身者で年十四万二千円、四人家族で三十五万一千円となるにすぎないので、ボーナス三カ月分でやっとせびろの一着も作れる独身者ですら月収九千五百円から、四人家族では二万三千四百円から所得税がかかることとなっているはずであります。成年にも達しない少年少女の初任給すら所得税の対象となりかねないような国が一体どこにありますか。(拍手)また、四人家族で月収二万三千四百円では、総理府の三十六年九月東京における家計調査では平均五百八十六円の赤字世帯となっておるのであって、二万五千円ないし三万円で初めてバランスがとれることになっております。それも家族の収入を加算しての話であるとすれば、政府は所得税の減税に財源を向けるべきであると考えるものであります。
 消費税の引き下げは、低所得層が最も潤うよう配慮さるべきで、酒、たばこ、砂糖等が主となるべきであります。しかるに、今回は酒税が中心で、それ以外の物品税、入場税、通行税等の財源は、五百七十六億円中わずかに二百六十七億円であります。このうち、どのくらいが消費者価格の引き下げになり、勤労者のふところに戻るでありましょうか、私はこの点をお伺いしたい。
 一方では、大企業中心に千五百億円にも上る租税減免の特別措置を講じ、しかも、これをして景気過熱化の役割を果たさせながら、他方、巨額の増加財源は勤労大衆のふところには返さないのでございます。納税者が千三百万にも及ぶ大衆課税としての所得税の大幅減税、特に基礎控除の引き上げと、最下層の適用税率の引き下げ等を中心とする減税措置を、この際思い切って講ずべきであると思うが、これに対して政府の考え方をお伺いしたいと思うのであります。(拍手)
 第三に、物価対策についてお尋ねしたいと思います。最近の物価の値上がりは申すまでもなく顕著であって、大衆の生活を脅かすばかりでなく、全体の経済を刺激して、輸出の伸び悩みの一因となっております。政府の経済見通しによりますと、政府の財貨サービス購入は三兆六千億円に達しております。三十六年度の対前年度増加をはるかに上回っておるのでありますが、政府需要のこうした増加が民間投資に波及して、投資は投資を生んで需要を増大していくことになるのは当然であります。この結果、企業の銀行借り入れは増加し、日銀貸し出しの増加を来たし、日銀券の発行高は膨張する。そして民間投資のこの数年のすさまじさが結果したものは、社会的な間接資本とのアンバランスでございます。このアンバランスは、政府が少々社会資本の充実を口にしても、是正されないのでありまして、公私資本のアンバランスの結果、いわゆる公共料金といわれるものも値上げによってギヤップを埋めようとしておるのであります。三十三年四月から三十六年九月までの国内消費物価の二、三の例をあげれば、公共料金では教育費二八・三%、水道料金が一二・二%、家賃、地代が四一・九%と著しい値上がりを示しております。政府は、物価は上がっていない、卸売価格も上がっていないと言っておりますが、事実はその逆であります。物価値上がりに対する適切な措置なしには、少しばかりの減税や社会保障費の上昇はほとんど無意味といわねばなりません。財政的要因を除去し、こうした物価値上がりのメカニズムを、大幅減税によって断ち切るための効果的な対策が、三十七年度予算には全然見当らないのでございます。(拍手)政府は、この点にいかに対処するつもりであるかをお伺いしたいと思います。
 次に、財政投融資の計画について若干触れてみたいと思います。一つの問題点は、投融資額の一七・五%を公募債と借入金に依存しておる点でございます。景気が行き過ぎ、これを調整しようとしている段階で、なぜ公募債や借入金までして資金を調達することが必要であるかは、まさに疑問なのでございます。また、財政投融資資金の配分の問題がありますが、どうも投融資が総花的で、政策的に一貫したものがないように見受けられます。私は民間投資の発展の結果、今やあからさまになった公私資本のアンバランスへ特に社会的間接資本の増加に大きな重点を置いた施策を必要としていると思うのでございます。(拍手)以上の点について政府の見解をお伺いしたいと思います。
 高度成長政策や所得倍増政策の名で呼ばれる経済政策は、それ自身目的ではございません。一定の目的を達成するための手段でございます。生産力の増進、所得の増加、各産業の均衡ある発展、国民生活の充実等が目的なのでございます。これらの目的は、経済政策である以上、当然持つべきものでありまして、あたりまえのことであります。今さら事あらためて言う必要はないのでございます。(拍手)目的とは目標でございます。進路と、それに至る筋道でございます。手段です。手段が十分その目的を達しないときには、その手段が誤っているか、またそれはどこかに欠陥があるからでございます。目的と手段とを混同してはならないと思います。高度成長政策が誤りであり、少なくとも是正を必要とすることは、大衆はその生活を通じて日々実感しつつあるところであり、その批判は各方面から起こっております。(拍手)
 池田首相は、その経済政策について、それにしても、あらかじめ起こるべき事態の的確なる予見と、これを回避すべき事前の対応策に十分でなかったことは、これを認めるにやぶさかでないと、一応の反省は示しながらも、われわれの堅持している経済政策がその進路を誤ったと見る見解には承服できませんと、相変わらずの高姿勢の強弁をいたしております。目的と手段とを混同したまさに適例でございます。(拍手)私は国民感情とかけ離れたこの強弁を聞きながら、首相には気の毒でありますが、北風に吹きさらされた町かどで、なかなか買手のない風船を売ろうと声をからし、汗をかいている風船売りの姿を連想して、政治の持つ非情さをしみじみと感じていたのでございます。(拍手)私は、池田首相がまずい強弁なんかをせられずに、率直にみずからの政策の誤りを反省して、そして善処されんことを要望して、私の質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 外交問題について国民の声を聞けというお話でございます。全くその通りでございまして、私は組閣以来、この外交問題につきましては、特に朝野各界の方々の意見を聞いております。また、野党の意見につきましても、国会を通じて十分承知いたしておるのであります。しかし、問題は、あまりにもわれわれと野党の意見とが正反対であるので、聞きましても、私はそれを受け入れるわけにいかないのであります。(拍手)この点は非常に不幸でございます。百八十度互いに正反対であるという国は、なかなかないのでございます。私は、この点につきまして、われわれも十分聞きますが、あなた方ももっと謙虚な、建設的な外交政策をおやりいただきたいと考えておるのであります。(拍手)
 第二に、中共問題につき、ことに代表権の問題につきまして、いろいろお話がございました。私は、国連が、国連憲章の目的達成のために、いよいよその機構と能力を強くすることを念願しておるのでございます。なおまた、中共問題につきまして、われわれが重要問題として提案したことにつきまして不満であり、直ちに中共の代表権を認むべきだという腹がまえでの御質問のようでございますが、この中国代表権の問題をいかに取り扱うかにつきましての国連における情勢は、すでに御存じでございましょう。われわれ五カ国の、重要問題として国連で十分討議すべしという案に対しましては、国連におきまして、六十一カ国の賛成を得ておるのであります。そうして、われわれの提案に反対するものは、六十一カ国に対して、二十一カ国である、この事実をごらん願いたいと思います。(拍手)しかもまた、中華人民共和国に国連の代表権を直ちに認めろというソ連の提案は、皆さん、どうでございましょう、賛成は三十六票で、反対は四十八票ではございませんか。(拍手)いかに世界の各国が、中共問題は、アジアのみならず、世界の重要問題として非常な関心を持っておるかということが、これでもおわかりでございましょう。中共問題につきまして十分の検討を加えず、直ちに拙速主義で誤った早い結論を出すということは、国家百年のために慎まなければならぬ問題と考えております。(拍手)
 第三番目に、田中君の昨日の演説が社会党の党内干渉であるというお話でございますが、これは何を党内干渉というのでございましょう。われわれお互いに批判し合うということは、民主政治のあり方ではございませんか。(拍手)言論の自由をたっとばれるあなた方が、党内干渉と言うことは、私は受け取れないのでございます。
 また、国連機能の強化についていろいろお話がございました。私は、先ほど申し上げましたごとく、国連機能の強化につきましては十分努力していきたいと思います。この間における中立諸国の態度につきまして、ベオグラードの四十数カ国の会議をお出しになりましたが、ベオグラードの四十数カ国の会議のあの内容と結果はいかがでございましたでしょう。私は、ある機会に、東南アジアの有力な方にこのベオグラードの話を直接聞きました。今後ベオグラードでの会議は、ああいう会議はいつ行なわれるかと聞きましたところ、なかなか行なわれないだろう、行なわれても効果はないという意見であります。皆さん、私は、中立諸国が今のように東西の両大国の意見のみに支配せられずに、ほんとうに世界の平和に、中立諸国のみならず、全部が協力することを願うと同時に、中立国の今後の真摯なる世界平和への努力に対しましては、われわれは期待するものであります。(拍手)と同時に、御質問の、わが国が中立主義をとるかということと、他の国が中立国家として立っていることとは、問題が違うのであります。いろいろな国が、中立主義――あるいはどこの国とも講和条約を結ばないという中立主義もありましょう、あるいはほんとうの中立主義もありましょうが、私は、さきの国会で申し上げましたごとく、日本の置かれた立場として、いわゆる中立主義をとることはできない、とるべきにあらず、日本人から見れば、中立主義は日本にとっては幻想であるという考え方は、今もなお変えていないことをはっきり申し上げます。(拍手)
 植民地問題につきましては、私は、民族自決と世界の平和のために、植民地の独立主義につきましては満腔の敬意を払うのであります。いろいろな実例を申されましたが、いろいろな実例につきましては、外務大臣よりわれわれの植民地政策に対する態度を鮮明させます。
 また、アジアの一員たるそしてアジアの自由主義国とのみ経済交流をやるというふうな誤解があるようでございまするが、いわゆる中立国、インド、ビルマ等とも御承知の通り経済関係を強化しておりますし、また、ビルマとわれわれとの関係も近い将来において急速に発展することを、私はここに申し上げたいと思うのであります。
 その次に、沖繩の問題でございまするが、われわれは平和条約によりまして沖繩の信託統治を認めました。それまではアメリカがここに施政権を行使することになっておるのであります。これは平和条約によってきめられたことでございます。しかるところ、和田さんは、国連憲章のある条文を引いて、日本が国連に入った場合においては、この日本の一部の信託統治は国連憲章上認められないという、世界にも比類のない説にとらわれておられるようでございます。私は、平和条約によってわれわれが認めたこの問題は、日本が国連に参加しようとも、この事実を変えることはできないというのは、世界の人全部の定説でございます。御研究を願いたいと思います。
 次に、アジアにおける共同市場、並びに中華民国あるいは中共の参加を得てこれができるかという質問でございます。御承知の通り、ローマは一日にしてならずと申しまするが、EECのあの結合にいたしましても、ベネルックス三国が始めてから十年以上かかっておるのであります。地理的にも、歴史的にも、経済的にもほとんど同一の条件でありながら、そういう時間がかかるのであります。従いまして、われわれは、将来アジアの国全部が共同体になることを熱望するものでございますが、今直ちにこれを実現することは不可能に近いのであります。従いまして、われわれは、できるだけ早い機会にこのわれわれの念願が実現しまするよう、できるだけ個々別々に経済協力を深めていって、そうして将来におきまして共同体の実現を祈念いたしたいと存ずるのであります。
 日本の貿易の発展の可能性は、われわれはあると思いますし、発展しなければ、われわれの国は栄えていかないということを申し上げておきます。
 また、ガット三十五条の援用撤廃の可能性につきましては、外務大臣は、今年こそ差別待遇を廃止するときだと言っております。私は、根拠のあることでございまして、その線に向かって進んでいきたいと思います。すでに、イギリスにおきましても、大体われわれの立場を了解してくれつつあるのであります。従いまして、ヨーロッパ諸国におきましても、近い将来私は撤廃することを希望し、またその確信があるのでございます。ガットの会議におきまする昨年秋以来の決議をごらんになったら、おわかりできると思います。
 なお、三十七年度の財政規模につきましていろいろ御質問がございましたが、私は簡単に申し上げます。
 三十七年度の財政規模は、決して膨大なものではございません。私から見れば、少し引き締め過ぎておるくらいに思っておるのであります。また、われわれは、減税を相当いたしますと同時に、国土の保全、社会保障制度の拡充、文教の振興に、もっとやりたいのでございまするが、今経済的に不均衡が出ておりますので、腹七分目程度の予算にしておるのでございます。(拍手)詳しくは関係当局から御説明申し上げます。
 また、物価問題につきましても、最も重要な問題としてわれわれはこれに善処いたしたいと存じております。
 財政投融資で借入金が多いとおっしゃいまするが、財政投融資についての借入金の割合は、各国の財政投融資の内容をごらんになったら、日本の財政投融資がいかに借入金が少ないか、おわかりできると思うのであります。
 なお、私の申しまする所得倍増計画、高度成長も、和田さんのおっしゃる通りに、これ自体が目的でない、これは手段であるということは、今まで本議席を通じてたびたび申し上げておるのであります。われわれは、高度成長を通じ所得倍増を早く実現して、そうしてりっぱな福祉国家を実現し、風船売りにしても、楽にりっぱな風船売りができることを期待いたしまして努力を続けたいと思うのであります。(拍手)
  〔国務大臣小坂善太郎君登壇〕
○国務大臣(小坂善太郎君) 和田さんから意見を求められましたから、若干意見にわたることがあるかもしれませんが、お答えいたしたいと思います。
 まず、国論の統一、外交については超党派的に考えたいということを私は常々考えておるのでございまするが、どうもその根拠にございまする世界観というものが非常に隔たっておるという場合には、これは非常にむずかしいことかと思います。たとえば、先般の中共との、社会党の一部の方と思いまするが、共同声明をされたその中に、現在の世界の緊張はすべてアメリカの政策によって引き起こされておる、こういう前提に立っておるようなお話がございました。こういう一方的な判断に立つということになりますと、超党派的にものを考えるということは、外交上なかなかむずかしいと思うのであります。しかしながら、これは私は新聞で読んだのでありますが、その方々が、日本共産党は教条主義であるということを言って、お前は何を言うかといって中共の要人にしかられたということが書いてございましたが、どうもあまり教条主義の行き方で、わが国の国内にある尊敬すべき大政党が外交の問題を扱われるということになりますと、非常に国のために残念だと思いますので、どうぞその点はよろしく願いたいと思うのであります。すなわち、わが国の立場に立って、わが民族の繁栄をともに考えるという立場に立って一つ御協力を願いたいと思う次第でございます。(拍手)
 次に、国連強化の問題でございますが、私は、今日国連が、ある意味で非常に危機にあるというふうに思います。それは、一つには財政上の問題が非常に大きいのでございまして、たとえばコンゴの問題、スエズの問題、これに拠出する金額に非常に大きくかかるのでありますが、一部の国はこれを出さないのであります。そのために、通常の拠出金と同じくらいのものがコンゴ経費にかかるのに、それを出しませんので、御承知のように国連では困って、二億ドルに上る国連公債を出そう、こういうことまでいっておるのであります。こういうふうに、全部がみな、やはり国連というものは抽象的にやるものではなくて、われわれ加盟国が国連をもり立てているという意識に立ってくれないと、なかなか国連は強化できないと思います。これがまず第一点であります。
 それからもう一つは、大国の拒否権であります。大国が、自分の方は気に入らないということで、理由のいかんを問わず、政略的に拒否権を行使するということになりますと、これはなかなか世界平和機構としての国連が十分にその機能を発揮することはできません。
 そこで、わが国といたしましては、あくまで正しい理屈を堂々と主張していく、それによって国連に筋を入れたいというのが、私どもの考えでございます。先ほどベオグラードの会議を引かれましたけれども、あの会議が行なわれておる際に、例の五十メガトンの核爆発の実験が行なわれました。そのとき、中立国の側においては、これはまっこうから非難しない。私は、やはり悪いことは悪いといって、人類の福祉と平和のためには、わが日本は正しいことを言うという態度に終始したいと考えております。(拍手)
 それから、先ほどお話の中に、一昨年の植民地独立宣言の問題に触れられました。これは打ち明けて申し上げますと、私ども、その起草にあたっては、多くのアドバイスをして、ともにやって参ったのでございます。しかし、その中に、最後になって、ある一部の国から、植民地は、政治上にも経済上にも、何らの理由なく、直ちに独立さすべきだという文言が入れられた。そういたしますと、植民地の住民の独立の希望については、十分われわれは理解しておるし、同情も持つ、しかしながら、そのために、急に独立してコンゴの問題のように、政治的、経済的に条件が満たされていないときに、独立をかち得たためにかえって世界の平和に害があるということがあれば、そういう点は慎重に考えなければいかぬ、こういう意味で私どもは提案をいたしました。
 それから次に、沖繩の問題に触れられたのでございますが、沖繩の問題は総理大臣からお答えがございましたので、これは省略いたします。
 要するに、さような国連を強化するという考え方は、私どもとしては、植民地の解放とか、あるいは人種差別――この人種差別については、われわれは、ベルサイユ会議以来率先してこの人種差別撤廃ということにはわが国としてやっておるのであります。従って、この二つの問題については、特に日本の主張というものは非常に正しく、しかも実際的であるということにおいて、多くの国の尊敬を得ておるのであります。私は外務大臣として責任を持って、国際間において、国連において、そういう立場に立っておるということを申し上げておるのでございまして、あえて、国内から、それはうそだというようなことをおっしゃらぬように一つお願いしたいと思います。
 以上をもってお答えといたします。(拍手)
  〔国務大臣水田三喜男君登壇〕
○国務大臣(水田三喜男君) 予算の規模の問題、財政投融資の問題については、もう総理からお答えがあったようでございます。財政が経済にどういう影響を与えるかという問題は、財政、予算の規模だけでこれを判断することはできないと思います。財政支出をどういう財源でまかなっておるかという健全性の問題、その内容、どういう点に重点的に支出されるかという内容の問題、またそれが金融政策とどういう関係において運営されるかという問題で判断さるべきものだろうと思います。(拍手)かりに規模だけを問題にいたしますと、国民所得に対する予算の規模は、先進工業国に比べたら日本はまだ最低の規模でございまして、日本の予算規模が大きいということは言えません。またもしことしの、三十六年の補正予算、それから剰余金を入れた決算から見ましたら、三十七年度の予算額はわずか千四、五百億円しか増加を見ていないことであって、私どもは決してこれを大きい規模であるというふうには考えておりません。
 さらに、減税が少ないというお話でございましたが、税金の中にはいろいろございまして、たとえばガソリン税のごときはもう道路の財源に充てられることになっておりますし、酒税以下の三税は、約三割を交付金として地方に交付するということになっておりますので、この実質から見ましたら、税法上千五百五十億円、平年度千二百億円という減税は、昭和三十八年以来一番大きい規模の減税でございまして、私は今度の減税を小さい減税だと思っておりません。(拍手)しかも、この減税によって、予算規模は一千億円圧縮されているということを考えましたら、これを膨大予算というようなことを言う御批評は、私は当たらないのじゃないかと考えております。
 それから経済指標の伸び率と自然増収との比較がございましたが、これは単純に比較することはできません。予算編成のときの当初予算でいう自然増収というものは、いわば前年度に見らるべき自然増収と本年度、二年度分を合わせた自然増収というべきものでございまして、三十七年度の自然増収の中には、三十六年度のことしの経済を土台にして見込まれる税収が入っておるのでございますから、との自然増の率と経済指標における伸び率と単純に比較してどうこうということは間違いだろうと考えます。私どもは本年度の税収を基礎に、かなりこまかい積み上げ計算をやって、来年度の税収を見込んでおるのでございまして、との見込みは私は不当な見込みではないと思っております。ですから、ここに経済の伸び率とこれを単純に比較して、多い少ないという議論は、あるいは間違いじゃないかと思っております。(拍手)
  〔国務大臣藤山愛一郎君登壇〕
○国務大臣(藤山愛一郎君) 物価の問題は本年度の非常に大きな経済問題でございまして、外貨の、国際収支を合わせる問題とあわせて、私は政府としても重大に考えて参らなければならぬ問題だと思っております。また、それによりまして国際収支の問題についても影響を受ける場合があろうかと思います。従って、これを十分に取り組んで参りますことが一つの課題だと考えておりまして、今後全力をあげてこの問題に対処して参りたいと思っております。ただ、物価の問題は、御承知の通り、今日短期的に消費者物価の動向に対して十分な施策を講じますと同時に、長期的な施策の上に立って物価問題を考えてみませんと、将来の経済成長の段階においても、再び同じようなことが起こっては相ならぬのでありまして、それらの長短両方の施策をあわせ考えながらやっていくべきではないかと考えております。
 当面の問題として、われわれといたしましては、御承知の通り、先般の消費物価の見通しにおいて、残念ながら二・八%の騰貴を見込まざるを得なかったのでございますけれども、この範囲内にできるだけおさめまして、そうして消費物価の影響が、各家庭の主婦に赤字財政にならないようにできるだけやって参らなければならぬと考えておるのでございます。従いまして、それらに対します諸般の方策を総合的に考えて参りますことが必要でございまして、いずれ政府といたしましても、生鮮食料品等の農林物価の問題について、あるいは耐久消費財の問題について、また公共料金等の問題について、それぞれ対策を立てて参らなければならぬと思います。
 御承知の通り、自由主義の今日の経済の運営に当たっておりまして、政府の物価問題に関与し得る範囲というものは、必ずしも多くは期待できないのでございますけれども、その中で政府が監督し得るのは、ただいま御指摘の通り公共料金の問題がございます。これらにつきましては、政府といたしましても、十分な全体としての物価政策を考慮しながら、この段階においてはできるだけ抑制の政策を支持して参ります。ただ、御承知の通り、社会各般の資本の動き方と同じような意味におきまして、将来の生産拡充あるいは経済発展に支障を来たすようなことにならないようにだけは考えて参らなければならぬのでございまして、その意味において、われわれは特別な例外がある場合があろうかと考えております。そういうような点につきまして十分考慮いたしまして、今後消費者物価の対策を立てて参ると同時に、あわせて卸売物価の問題についても十分な検討を加えて善処して参りたいと思っております。(拍手)
○副議長(原健三郎君) 和田君から再質疑の申し出があります。これを許します。和田博雄君。
  〔和田博雄君登壇〕
○和田博雄君 私は、今の答弁に対しまして再質問をいたしたいと思うのでありますが、この問題はもう少し時間をかけて突っ込んでやらなければ結論は出ぜん、従いまして、その多くは予算委員会における同僚の質問にまかせますが、ただ二点だけ私は質問をしておきたいと思うのです。それは事態を明らかにするためです。
 私は総理に対しては、社会党の共同声明に対する批判が、質問と総理の政府答弁の形においてされることに異論があったわけです。もちろん、社会党のとっておる態度について、政策について、この討議において批判をするということは、それは当然であります。しかしながら、質問と答弁という形ではなしに、それをするならば、国会において自由討議という形式において、両党が時間をかけて、両党が正当なそういう自由討議という形においてその討論をやったらいいと思うのであります。質問とそして答弁という格好において一方的なそういう批判をするということは、私は国会の形式としては非常にまずいことだと思うのです。(拍手)その点について、私は、その形式をとられたやり方が、いかにも、社会党の政策に対する単なる批判ではなくして、やっぱり党内干渉に及ぶような批判になりがちだ、なっておるという点について申し上げたのであります。従って、総理としては、自由討議の形において自民党の政策と社会党の政策とを十分に討論をしていくだけのお考えがあるかどうか、ということをお聞きしておるわけであります。
 それから、いま一つは、自由諸国の会議に対する政府の認識であります。私は自由諸国の会議に出席しました。今外務大臣が言うように、五十メガトンのソ連の核実験は、なるほど会議の始まる前の日に発表したわけであります。従って、その点については、会議に出席しておる自由諸国は非常なショックを受けたわけです。従って、チトーにしましても、そしてスカルノにしましても、その他の諸国が、すべて五十メガトンの実験に対しては非常に遺憾の意を表しておるわけです。従って、そこに集まった国々は、さっそくネールをモスクワにやりまして、そして五十メガトンの実験に対する厳重なる抗議を申し込んでおるのが現実なんであります。そういう事実を十分にお知りになった上で、私は外務大臣に答弁をしていただきたいと思います。自主的ということは、やはり事実というものを正しく認識した上で、そして行動していただきたい、こういうことであります。
 この二点についてだけ私は事実をはっきりさしておきたいと思います。答弁は別段要りません。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答えいたします。
 社会党の中共訪問使節団と中共の外交委員会でございますが、外交学会との共同声明につきまして、国会議員からの本会議場での質問を受けまして、そうして私の方針と違っておる、遺憾だと言うことは、私は何ら国会の権威を傷つけるものではないと考えております。
 なお、ベオグラードの会議につきましては、これは私の答弁に対する質問でないようでございます。外務大臣の方に譲ります。(拍手)
  〔国務大臣小坂善太郎君登壇〕
○国務大臣(小坂善太郎君) 言葉じりをとるつもりはございませんけれども、ベオグラードの会議は、中立諸国の会議の言い間違いだと思います。その意味でお答えいたします。
 私は、別にこの会議を少しも非難するという意味で言ったのではございませんで、ただ、そういう会議さえやっておればいいようにおっしゃいますから、そういう会議はあっても、五十メガトンの核実験をやった際に大して大きな声の抗議が出ない。それよりも、われわれが必要なことは、国連の場において、悪いことは悪いということを強く国連憲章の原則並びにその目的に従って抗議をする、それが国連の強化に役立つのである、かようなことを申し上げた次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(原健三郎君) 西尾末廣君。
  〔西尾末廣君登壇〕
○西尾末廣君 私は、民主社会党を代表して、このたびの政府の施政方針に対して二、三の質問を行なうとともに、特にわが国の政治の根本に触れる問題について、政府の所信をお伺いいたしたいと存ずるものであります。
 まずその第一は、池田内閣の政治の姿勢についての問題であります。私は、過去一年八カ月にわたる池田内閣の政治を、実は異常な関心を持って注視して参ったのでありますが、その結果、最も痛感いたしました問題は、池田内閣の施策が、あまりにも経済に片寄り過ぎておるということであります。もちろん、経済の成長は国力伸張の基本であります。しかしながら、経済の成長と相並んで、いな、むしろ経済成長をささえる大前提として、国民精神の支柱を確立することに深い思いをいたさないならば、それは片ちんばの政治であります。(拍手)戦後十七年、現在の日本の世相を静かにながめますと、安易な享楽主義が横行し、経済環境の目先だけの好転が、かえって国民精神の堕落を誘致しつつあるかに見受けられるのであります。昨年の犯罪白書によれば、青少年の犯罪は激増しております。国家の将来をになうべき青少年のかかる憂慮すべき現状は、教育の貧困に由来することもちろんでありますが、さらに掘り下げれば、池田内閣のあまりにも経済に片寄り過ぎた片手落ちの政治にも重大な責任のあることを、私はここに指摘いたしたいのであります。池田総理は経済の専門家であります。専門家なるがゆえに経済に片寄って、国政の大本を忘れる。上手の手から水が漏れる。長所がかえって欠点になるのであります。経済とは、本来経世済民の意味でありまして、国民の目先に札束をちらつかせることだけが政治と心得るようであってはならぬのであります。このような考え方は低級な金権万能主義であって、断じてこれは賛成しがたいものであります。総理の施政方針演説では、この点にやや反省の色があるかに見受けられますが、しかし、との経済偏重は池田政治の持って生まれた性格に根ざすものでありますがゆえに、ややもすれば、これは一片のから念仏に終わるのではないかという危惧を、私は禁ずることができないのであります。衣食足りて礼節を知るといいますが、同時に、人はパンのみにて生くるものにはあらずともいわれます。経済の成長と並んで、国民精神の支柱をいかに確立し、教育の大本をいかに正すか、政治の姿勢について総理の所信を伺いたいと存ずるのであります。(拍手)
 次に、池田内閣の政治の姿勢のゆがみとして、第二に私の憂慮しております点は、いわゆる無原則な低姿勢であります。むろん私は高姿勢を歓迎するものではありません。権力の座にある者は、常に謙虚であることは民主政治の要諦でありますから、本来の低姿勢そのものは私も賛成するところであります。しかしながら民主的秩序の確立は、まず国政を担当する者が、きぜんたるべきときにはきぜんとして、いわゆる筋を通して国政を処理することが根本的に大切であります。(拍手)しかるに過去一年八カ月にわたる池田内閣の政治は、目先の政権に恋々として、無原則な低姿勢に終始しているかに見られるのであります。このことはまことに遺憾であります。たとえばその一例といたしまして、私は昨年の政防法の問題を取り上げたいと思うのであります。周知のごとく、この法案の作成にあたっては、三党ともその趣旨に賛同し、社会党は、いわゆる猪俣試案まで提出して、ほとんどその線できまるかに見受けられたのであります。(拍手)しかるに社会党が、内部不統一のためか、あるいは共産党や総評の突き上げのためか、急に反対を唱え、実力行使もあえて辞せずという強硬態度を示すや、政府はにわかに腰くだけとなり、現在はほとんど廃案同様のたなざらしになっておるのであります。世間では、社会党との議会運営のやみ取引のために政防法を犠牲にしたと見る向きさえあるのであります。議会を暴力から守らんとする、政防法のごとき民主的秩序確立の根本ともいうべき法案を、取引の具に供するような無原則、無節操な態度が、はたして正しい意味での低姿勢でありましょうか。これをも低姿勢というならば、さような低姿勢は、国政を担当する者として、まことに無責任きわまるものと申さねばならぬのであります。(拍手)これもひっきょう、池田内閣が、目先の政権に恋々として、自他ともに欺くような、無原則な低姿勢を事としている政治姿勢の誤りに因由するものと考えられるのであります。わが党は、すでに政防法の共同提案者たることを拒否しているが、政治の姿勢を正す問題に関連して、池田総理の心がまえを承りたいと思うのであります。
 以上は、池田内閣、特に池田総理の政治の姿勢について、私の所見を申し上げたのでありますが、さらに、政策上の問題について二、三御質問を申し上げたいと存ずるのであります。
 まず、外交問題についてお尋ねいたします。現下の国際情勢は、昨年来のベルリンの緊張が幸い小康を保っておるとはいえ、東西両陣営の対立はますます激化の方向に進みつつあるのであります。特に本年は、アジアに東西緊張の波がしわ寄せされる危険を多分に内包しておると見られるのであります。現在ラオス、南ベトナムを中心に、紛争の火種は拡大の様相を呈しておるのであります。かように重大なる国際情勢下において、世界の平和と日本の安全を守るためには、日本独自の強力なる外交を展開せなければなりません。しかして、日本独自の強力なる外交を展開するためには、何よりもまず、国内において国論が統一されていることが最も必要であります。(拍手)しかるに、日本の現状はどうでありましょうか。政府与党は秘密独善に終始し、野党第一党の社会党は、全く正反対の方針を堅持し、国論はまさに二分、三分しているというのが現状であります。国内問題について時に行き過ぎた議論がありましょうとも、大した弊害はないが、しかし事外交に関する限り、これを党利党略の具に供し、国論の分裂をそのまま外交の場面にさらけ出すことは、国家国民の利益のため絶対に避けねばならぬのであります。(拍手)かような意味において私は、かねてより超党派外交の必要を提唱し、池田総理にも幾たびか進言して参ったのであります。しかるに、遺憾ながら、今日この問題は何らの進展を見せておりません。そもそも超党派外交のような重要な問題は、外交権を持っておる政府が、まず率先して話し合いを求めることであって、そういうことをしなければ、とうてい実現は不可能であります。にもかかわらず、政府は、野党に対する不信をたてにして、責任を野党に転嫁して、みずから国論統一の場を作ろうとしないのであります。(拍手)
 池田総理は、昨年アメリカ、次いで東南アジアを訪問され、種々の重要なる取りきめをされたのでありますが、このような外交交渉は、事前、事後において、真に胸襟を開いて野党と話し合い、その野党の協力を求めるべきであります。しかるに、政府はいまだかつて一回もこのような態度を示されたことはなかったのであります。近ごろ池田は外交づいてきたという言葉をちらちら聞くようになったが、あなたはそのうち、外交は池田にまかせておけと言うようになりかねないと私は心配しておるのであります。(拍手)かような秘密独善の態度をもってしては、国論の統一も強力な外交も望みがたいことを私は断言してはばからないのであります。わが党は、立党以来、国連を中心にした自主独立の外交を主張して参りました。これは原則的には自由陣営の立場に立ちながらも、西欧中心の大国主義に追随せず、アジアの後進諸国との調和の中に日本独自の立場を十分に宣揚しようとする考えにほかならないのであります。もちろんわれわれは積極中立の仮面をかぶり、実は共産勢力のお先棒をかつぐ以外の何ものでもないような自主性のない態度にくみするものでは断じてありません。(拍手)しかし、それと同時に向米一辺倒の外交によって民族の独立心をスポイルし、経済の自主性を失わしめるような危険な大国追随主義に対しても、断固として反対するものであります。(拍手)中共の国連加盟問題について、アメリカと日本とはその国家的立場が著しく異なっているにもかかわらず、依然としてアメリカに追随して、重要事項指定の共同提案国となり、この問題に対する独自の態度を明らかにし得ないということは、まことに池田内閣の自主性のない向米一辺倒外交の姿をまざまざと露呈したものであります。(拍手)総理のアメリカ訪問も、東南アジア歴訪もけっこうでありますが、政府は、はたしていかなる自主独立の方針に基づき、国家百年の外交を推進されんとしておられるか。先ほどの超党派外交に対する問題とあわせて、日本の自主性を貫く外交方針について、池田総理の所信をただしたいと存ずるのであります。
 次に、経済問題についてお尋ねいたします。所得倍増政策を中心とする超膨張政策の結果と、これに対する批判につきましては、すでに他の質問者からも指摘、追及されたところでありますが、重ねて総理の所信を明らかにしていただきたいと存ずるのであります。
 私は約一年前、同じこの壇上より総理に対して、本年下期の経済は楽観を許されない事態が起こるおそれがある。国民はそれを憂えている、そこで、もしあなたの見通しがはずれて世人の心配しているがごとき事態が起こったら、総理大臣としていかなる責任をとられるのかと質問いたしましたところ、これに対して総理は、責任をとるほどの見通しの誤りは起こらぬと確信しております、とお答えなさったのであります。しかるに、今やあなたは、私の警告通りの失敗をみずから認める立場に立っておられます。すなわち、先日の施政方針演説におきましても、「あらかじめ起こるべき事態の的確な予見と、これを回避すべき事前の対応策に十分でなかったことは、これを認めるにやぶさかではありません」と、その非をはっきりと認めておられるのであります。私は、あなたが明年度の経済政策を述べ、これに対する国民の協力を求めるならば、まずみずからの誤りを率直に国民にあやまり、責任政治のあり方というものをみずから示すことが先決問題であると思うのであります。(拍手)すなわちあなたは経済閣僚として二回、総理として一回、二十八年、三十二年、三十六年の三回にわたり経済過熱を誘発した責任者として、あなたが四回目の同じあやまちを繰り返さないためにも、いかなる点において経済見通しの予見を誤り、その対応策が十分でなかったか、これを国民の前に率直に披瀝する義務があると思うのであります。この点について、総理の所信をお伺いいたしたいのであります。
 次に、その膨張政策の是正と対策は、常識的に見ると、第一に国際収支の均衡回復に対する対策であり、第二に物価高を中心とする膨張政策のしわ寄せから勤労者、中小企業者、農民及び一般消費者など、経済弱者に対する保護防衛政策をいかにするかというととであります。しかるに、これらの対策を最も集約的に実現すべき昭和三十七年度予算は、いわゆるコンニャク予算といわれ、無性格、無方針の単なる拡大予算であって、的確なる具体的対策を織り込んでいないと考えられるのであります。(拍手)経済政策の失敗に対する政治責任のとり方が、単に引責辞職ということでないとするならば、率直にその不明を陳謝するとともに、具体的に対策を示して国民に協力を求め、経済回復の実をあげることでなければなりません。その具体策の明確なる提示を要求するものであります。
 さらにこの点につきまして、具体的に一、二の点をお伺いいたします。
 その第一は、国際収支の均衡回復に対する対策であります。せんじ詰めれば輸出振興の具体的方策となるかもしれません。御承知のごとく、本年度の世界経済は、欧州共同市場の拡大、英国のそれに対する加入の動き、米国の互恵通商法の改定を中心とするEECとの提携強化、ドル防衛体制の強化の動き、さらに本年十月からの貿易自由化九0%実施の公約実現等々でありまして、本年度、わが国を含む先進国間の激烈な貿易競争を必然化するととが予測されます。この国際経済の荒波の中で、わが国が昨年以上に輸出を伸ばすことは、きわめて困難と思われますが、かかる国際的、経済的視野に立って、具体的な貿易振興策を示されたいのであります。(拍手)
 第二に、昨年の膨張政策の欠陥は、わが国の二重経済機構を一そう深刻化せしめたこと及び物価高騰を招来したことにあるが、これに対する本年度の具体的対策いかん。一般消費者物価並びに私鉄運賃、バス料金など公共料金の値上げ要因は、今日なお継続しているように考えられるのでありますが、政府のこれに対する確固たる方針ありやいなや。まず、この問題についての明確にして基本的な態度を伺いたいと思うのであります。(拍手)
 次は、労働問題についてでありますが、さきに日経連は、本年度における賃上げ抑制の構想を明らかにし、一方、労働大臣は春闘対策として、本年度の春闘賃金相場を一定限に押え、かつこれに介入する態度をほのめかすなどの動きを示しております。われわれは、労使双方が産業発展のだめに相互協力することを前提として、産業民主化への義務と責任を労働者もまた分担すべきであるとの見解を主張して参りました。しかし私は、財界並びに政府が経済調整に名をかりて、あらかじめ賃金抑制政策をとらんとするがごとき態度は、好況時の利潤は、これを資本家のふところにおさめ、不況の犠牲はこれを労働者に転嫁せんとするごときは、典型的な資本主義政策の態度でありまして、断じて容認しがたいのであります。(拍手)この問題に対する総理の所信を明らかにしていただきたいのであります。
 次に、政府は昨年度において農業基本法を制定し、その経営の合理化と近代化による農業構造の改革意図を明らかにいたしました。しかし、それは、抽象的な方針を提示したにとどまり、近代化、多角化のための事業資金措置及び農産物に対する価格の適正化安定措置などの具体策を全く欠き、あるいは従来の政策の惰性にすきない措置にとどまっており、農業改善はその緒にさえついておらない状態であります。(拍手)かくて、池田膨張政策は、昨年度において生産原材料の値上がりのみを農民に押しつける結果となり、さちに加えて貿易自由化の実施による不安を農民に与えておるのみであります。政府の農業改造に対する基本的対策、並びに当面する農民層と地階層との所得格差是正についての政府の方針をお伺いいたしたいのでございます。(拍手)
 次は中小企業対策であります。トルーマンは、かつて次のごとく言っています。すなわち、最もよい中小企業政策は、景気の波動の影響を中小企業に絶対に与えない政策をとることであると言っておるのであります。しかるに、不況期に入らんとしている本年度の経済問題の中で、最も危惧されていることの一つは、不況の中小企業への大幅なしわ寄せの危険であります。はたしてそうであるとするならば、池田内閣の経済政策は、中小企業に対して最も過酷な政策であると断ぜざるを得ません。(拍手)加うるにわが国の中小企業は、積年の資本主義による二重構造政策の押しつけによって、資本、労働、技術及び経営の各面において、近代的企業としての条件を奪われ続けてきたのであります。従って、わが党は、中小企業の基本条件を整えなければならないとの見地に立って、すでに昨年八月以来、中小企業基本法の構想を明らかにし、自民、社会両党に呼びかけて、この問題についての超党派的提携を求めてきました。ここに重ねて総理に対して、中小企業基本法を今国会に提出する用意があるのかないのか、またあるとするならば、その構想、内容について総理の明確なる御答弁をお願いいたしたいのであります。(拍手)
 最後に、政治の責任の問題についてお伺いいたしたいと存ずるのであります。
 総理は施政方針演説において「国家社会の安定は、国民一人片々が、国民生活の支柱をなす民主的な法秩序を尊重し、これを順奉することにより確保されるものであります。」と述べられ、さらに最近国会正常化の問題の促進について、党内に指示されておるやに承っておるのであります。言うまでもなく、国会の正常な運営すら行ない得ずして、国民に秩序の尊重を説くことはできません。従って、国家社会の秩序維持を国民に求めるためには、まずもって国会の正常化をはからねばなりません。しかるに、本国会において問題とならんとしているのは、国会法や議事規則の改正による枝葉末節の技術論にすぎないのであります。一昨年秋の総選挙の際、三党首テレビ討論会において、単独採決をしないこと、審議拒否をしないこと、院内において実力行使をしないことなどの申し合わせを行ない、これを国民に公約したのでありましたが、このような民主主義や議会政治のイロハすら守られていないのであります。真剣に国会正常化をはかるためには、まず自社両党が重大なる自己反省から出発しなければなりません。そして各党が議会制民主主義に徹することが何よりも重要であり、先決問題であります。総理は、国会正常化問題に対する以上の私の意見に対していかにお考えになられるのであるか。国会の正常化を、ただ単に国会運営の問題とのみ考えてはいけないのであります。今日わが国における政治が、文化、経済の面と比べて十年あるいは二十年のおくれを示しているとの声は、国民の間に近時とみに高まりつつあるのであります。この政治のおくれ、この政治のゆがみが、国民生活に悪影響を及ぼし、ひいてはわが国民主主義の健全なる発達をも阻害をしておるものであるとともに、国民の間に政治不信の声を高めつつあるのであります。(拍手)このように国会正常化の問題は、単に国会運営の問題だけではなくして、民主政治の根幹に根ざすところの重大な問題でありますがゆえに、私は、あえて再び、総理であり、自民党の総裁である池田さんに率直なる御答弁を願いたいと思うのであります。
 政治のおくれ、政治のゆがみ、これを直すということは、朝野を問わず、われわれ議会人のまことに共通の責任であります。(拍手)われわれは、このことをはっきりすることなくして、高いところから国民にものを言うことはできないことをみずから大いに反省をして、これから日本の政治のおくれ、政治のゆがみを直すことに、われわれともにともに協力することを約束いたしますから、総理はこの点を肝に銘じて実現されんことを希望いたしまして、私の演説を終わる次第であります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 いろいろ御心配、御注意を受けました。私は、一昨年組閣以来、政治の姿を正すことが民主主義議会政治の確立上ぜひ必要であるということは、まず第一に申し上げまして、これのために努めたのであります。あるいはこの考え方を低姿勢といって非難する向きもありますが、私は、いちずにこの考え方が正しい姿勢であると今日まで思い続け、実行して参ったのであります。もちろん、不徳のいたすところ、十分の効果は上がらなかったかもわかりませんが、しかし、私は、国民の大多数がこれを支持して下さっておると確信を持っております。ただいま、私の低姿勢が無原則である、その証拠は、昨年来の政防法についてのわれわれの態度が遺憾であるということがおもなる論拠のようでございます。しかし、西尾さんにおかれましても、この衆議院における政防法のあの状態が、ほんとうに正常化でございましょうか、私は、大政党とし、責任ある地位といたしまして、あの衆議院における政防法の問題を参議院におきましても行なうことは、いましばらく考えるべきではないかというので、今日まで来ておったのであります。両院におきまして、ああいう姿を両方とも見るということは、私は、西尾さんも賛成なさらないことだと思います。しかし、私は、先ほど来申し上げましたごとく、政防法につきましては、今国会におきましてぜひとも通過すべきだということを、両院を通じて言っておるのであります。昨年の通常国会のような状態で参議院もやれとは、まさか西尾さんはおっしゃらないと思います。やはり正常化には時間を要します。だから、私は、継続審議で適当な機会にこれを通すことを考えておるのでございまして、決して無原則の低姿勢であるという御批評は、私は、受け入れるわけには参らないのであります。
 なお、超党派外交につきまして、日ごろの持論をここでまた聞きました。私も、この問題につきましては、御意見まことにごもっともだと思いまするが、今の外交に対しまする各派の考え方の相違をどうお考えになりますか。私は、先ほど申し上げましたごとく、超党派外交をやるのには、あまりに与野党が正反対であることをまことに遺憾といたしておるのであります。従いまして、今後におきましては、私はできるだけこれが近づき合うような努力を続けて参りますと同時に、たといそれが超党派外交でなくても、日本の外交に自主性ははっきり守っていくことを、ここにお誓い申し上げます。いたずらにアメリカ追従だとか、昔の占領下のときを忘れずに、今もなお日本がアメリカに追随しているということはいかがな言葉か、実際の世界の情勢を御存じないことと思うのであります。
 次に、経済の見通しにつきまして、昭和二十八年、三十二年、池田が大蔵大臣として処置を誤った、今度は三十六年に総理大臣として誤っておるという御批評でございまするが、私はたびたび申し上げましたごとく、二十八年、三十二年のあの経済危機は、日本の経済発展の途上におきまして当然越えなければならない段階である、越え得る関所であると考えたのであります。結果から見ますると、日本が二十八年、三十二年のあの難関を越えたからこそ今の経済の発展があり、それを世界の人はだたえておるのではございますまいか。また、三十六年のこの危機は、不均衡はございまするが、これを通り抜けて一段と高い経済の基盤を作り上げるための関所であると私は考えておるのであります。もちろん、しさいな点におきまして、あらゆる事象を前から考えつきましても、これについて十分完全な措置をとることができないのは、自由主義経済の持つ宿命的なものでございます。しこうして、私は、自分ができるだけの予見に努め、できるだけの措置をやって参りましたけれども、なお不十分であったことは認めます。認めますが、私の経済成長政策が誤りであったということは、私は認められない。(拍手)この不均衡、このひずみを是正するために、池田は全力をあげてやれという国民の激励の声はありまするが、池田はやめろという声をまだ聞かないのであります。(拍手)私は、この意味におきまして、この国民の多数の支持を得て、この難関を手ぎわよく乗り越える確信を持ち、それに向かって努力をしていきたいというのが私の念願でございます。また、国民もさよう御支援下さることと確信を持っておるのであります。
 次に、国際収支の見通しについての対策を言え。私が昨年来いろいろ対策を講じていることは、新聞紙上その他でも御承知のことと思います。国内的のあらゆる措置、すなわち、金融の措置、あるいは銀行、税、保険、その他いろいろな点のみならず、国外に対しましても、国際収支の危機に対しまして十分な措置をとっていることをここに申し上げておきます。ことに、国民の協力を得まして、今のところ、大体先月、今月にかけての輸出の状況は、私の期待以上の状態でございますが、まだまだ絶対に安心はできない。まだまだ安心するときではございませんが、私の予期している状況にはだんだん進みつつあることをここに申し上げておきたいのであります。
 なお、輸出振興と、いわゆる世界各国のブロック、また、世界の関税制度につきましての考えは、今ここで申し上げるにはあまりに時間を要しますので、私は、適当な機会に、私あるいは関係閣僚から申し上げたいと考えておるのであります。
 また、政府は労働賃金の抑制をはかるということを言っておるようにお考えのようでございますが、政府は、そういうことはいたしません。皆さんのお考えのように、ただいまは景気の行き過ぎがありますので、この際におきましては、賃金問題は慎重にお考え願いたい、こういうことを言っておるのでございます。私は、すでに御承知の通り、ずっと前から、ことに昨年も経済同友会等の考え方とは違った私の意見を発表いたしました。賃金は適正でなければなりません。ただ、適正であるということは、長い目で見なければなりません。経済事情の非常に行き詰まったときと申しますか、不均衡なときには、やはり上げ方につきましても慎重にしなければならぬということは、西尾さんも同意見だと思います。ことに、西尾さんなんかの御関係の労働団体は、他の労働団体よりも、この点にはよほど理解があるような態度をとっておられることを私は知っておるのであります。(拍手)
 次に、農業所得と他産業の所得との格差の問題は、御承知の通り、他の産業が急速に進展いたしますのに比し、農業も進展はいたしましたが、その度合いは違っておるのでございます。従いまして、われわれは、他産業の所得の急速な上昇が鈍ると同時に、農業基本法によりまして農業の所得の上昇をより以上にはかっていって、長い目でこの格差をなくしようといたしておるのであります。
 中小企業につきましては、いろいろお話がございましたが、私は、一般の大衆、一般の中小企業は、十年前と比べまして全体的にはよほどよくなったと認めております。もちろん、大企業に直結しておりまする中小企業の金詰まりは存じておりまするが、一般の中小企業は、過去二、三年来相当の蓄積がありまして、今は大企業に直結した中小企業よりはよほど違い、全般的にはまだまだあなたのおっしゃるような状態ではないと考えております。しかし、今後の問題といたしまして、この際、中小企業がそういう赤字倒産その他が起こらないように、今のいい状態を今後とも続けていくように、万策を講じつつあるのでございます。そうして、中小企業基本法につきましては、関係当局を督励いたしまして、できるだけ早く御審議を願うように努力いたしておるのでございます。
 最後に、国会の正常化につきましては、特に施政方針で申し述べた通りでございます。私は、正常化を願いますがゆえに、あなたのおしかりを受けながらも、攻防法についてああいう態度をとってきたのであります。しかし、これにも度合いのあることでございまするから、施政方針で申し上げたごとく、各党各派は、ほんとうにりっぱな国会正常化の実をあげ、政防法につきましても、あなたの御希望のように、本国会を通過することを心から念願いたしたいと思います。(拍手)テレビでの三党首の申し合わせにつきましては、私は十分守っておることを再確認いたしたいと思います。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(原健三郎君) 滝井義高君。
  〔滝井義高君登壇〕
  〔「定足数がないぞ」と呼び、その他発言する者多く、退場する者あり〕
○副議長(原健三郎君) この際、暫時休憩いたします。
   午後四時二十二分休憩
     ――――◇―――――
   午後四時五十五分開議
○副議長(原健三郎君) 休憩前に引き続き会議を開きます。滝井義高君。
  〔滝井義高君登壇〕
○滝井義高君 私は、日本社会党を代表いたしまして、池田総理の施政方針演説に対し若干の点について質問をいたさんとするものでございます。(拍手)
 池田総理は、施政演説の中における政治と行政の刷新の中で、「さらに国会がすみやかに懸案の国会正常化をなし遂げ、国民の負託にこたえられるよう、各党各派の真剣かつ建設的な話し合いを心から希望するものであります。」と、こう述べております。話し合いは、単に議会運営委員会や党だけの話し合いで国会の正常化は行なわれるものではございません。与党と野党とがそれぞれの政綱、政策をもって正々堂々と本会議や委員会で討議を戦わせるところに、国会正常化のいろはがあるのでございます。(拍手)池田総理は、この議場から、あるいは社会党の委員長が、あるいは民社党の西尾委員長が述べられたその口の下から、まだ舌の根もかわかないうちに国会の議場を退場する姿は、一体これを国会正常化とお考えになるのかどうか、まず総理の見解を明らかにしておいていただきたいと思います。(拍手)
 さて、昨年、池田総理は、経済のことはもちろん、生命財産もこの池田におまかせ願いたいと申しました。これはすばらしい言葉であります。この池田内閣の基礎は絶対多数の上に乗っております。しかも、その内閣は実力者内閣でございます。それなのに、そこに日本の曲がりかどが来ておるのでございます。思い起こして下さい。昨年一月三十日、池田総理は、この演壇で、施政演説において、こう然とこう遊べました。「国民総生産は、本年度十四兆二千三百億円に達すると思われる。しかも、卸売物価は安定を保ち、国際収支も依然として黒字基調を維持し、外貨準備高は三十七年三月末には約二十億ドルに達する見込みである。また、雇用情勢も一段と改善を見、国民生活も著しく充実向上してきた。これは、わが国の経済が歴史的な勃興期を迎え、構造的変化を遂げつつあることを物語るものであり、この成長と発展は世界の驚異となっておる」、こう述べました。この自信に満ち満ちた言葉に対して、与党の皆様方は割れるような拍手を送ったのでございます。これを受けて水田大蔵大臣は、日本経済は本年度九%以上の成長が期待されること、歳入が多いから、これで国民所得倍増計画を進めること、金融については、わが国の自由化に伴い外国と競争する必要があるので、すでに金利を引き下げたが、この上もなお低下を誘導することを告げました。われわれ国民は、こういう演説を聞いてこれを信じ、日本丸の前途は洋々たるものである、波は静かで船は快速だと思ったのでございます。すなわち、昭和三十六年度という年は、経済のさらに新たなる成長の道、景色のよい方向への曲がりかどであると信じて疑いませんでした。だが、あれから一年が流れました。事態はだんだんおかしくなってきました。高率成長という数字の代償として、至るところに不安定と不均衡を生み出してきたのでございます。第一に生産と消費の不均衡、第二に消費者物価の上昇、第三に労働力の不足、第四に私的資本の暴走と社会資本の立ちおくれ、第五には国際収支の赤字、第六には過剰設備と過剰生産等でございます。こうなると、池田総理の強気論にも弱気の不協和音がまじってきました。超心臓の自信に、おおいがたい動揺の影がさしてきたと見るのは、私のひがみでしょうか。(拍手)
 私は、まず、高度成長経済がもたらした社会経済的矛盾の一、二について池田総理の見解をただしてみたいと思います。
 第一は、消費者物価の高騰についてであります。そのメカニズムの中心は独占物価の引き上げにあります。なるほど、名目上の独占物価の引き上げが行なわれていないものもありますが、生産性の上昇でコストは下がっているにもかかわらず、販売価格が下がらないこと自体が、実質的な値上がりを示しております。(拍手)このからくりによって大企業の収奪は強化され、これを起点として、非独占物価、特に消費者物価は値上がりを余儀なくされ、一波は万波を呼んで全般的な物価騰貴をもたらしております。主婦連の調査によりますと、昭和三十六年度中に、ゆりかごから墓場まで、すなわち、お産の費用からお坊さんのお経の費用、さらに墓地に立てる卒塔婆の費用に至るまで、実に七十種類に及ぶ値上がりをしたのでございます。(拍手)いかに庶民の生活を圧迫しておるかがわかるのでございます。特に注目すべきことは、地価の暴騰であります。その原因は、土地使用の計画的なプランを持たない膨張経済が、地価の経済的性質と相待って、一般的物価上昇の機運とともに乗数的効果を発揮したことを見落としてはなりません。このため、生産力の拡大を目ざす中小企業の工場拡張は阻止され、一般庶民の夢であった住宅の建設は、建築資材と土地の値上がりで無限のかなたに吹っ飛び、都市及び工場地帯の周辺の農家は、農業生産力拡大の意欲を失って、地価値上がりの待望型の投機ムードに酔っておるというのが現状の姿でございます。
 池田総理並びに藤山経済企画庁長官は、この物価騰貴に対して、いかなる具体策をもってこたえんとするのか。昭和三十七年度中には二・八%しか消費者物価は上がらないと言っておりますが、抽象的ではなく、国民が安心のできる具体的な方策をここに明らかにしていただきたいのでございます。
 さらに、成長経済がもたらした第二の矛盾は、公害の頻発であります。所得倍増計画によると、いわゆる社会資本の充実と整備が政府の最大の仕事になっていて、一見、公害に対する高い見識を見せているようです。しかし、よく見ると、これは大企業の高度経済成長を援助するか、あるいは固定投資を国家が代替するという性格を持っておるものであって、大企業が地域社会に与える有形無形の害悪に対しては、ほとんど実質的な考慮を払っていないのでございます。たとえば、ビルの無計画な建設、さらに、工場及びビルの地下水のくみ上げ及び地下ガスの採取、これらによって広範に見られる都市の地盤沈下は、一たび台風に襲われると、高潮や河川の決壊の被害を極端に大きくしております。第二室戸台風による大阪低地帯の惨害はともかくとして、大阪財界人が誇るビジネスの牙城、あの大阪中之島地帯が一面に洪水の海となったことは印象的であります。彼らが胸を張って豪語する経済成長の成果が、このような反作用で彼らにはね返ってきた皮肉を一体何と見るでしょうか。先ごろ京浜地帯を襲ったえたいの知れない悪臭は、石油精製工場が捨てたもののしわざであることがわかりましたが、各工場の責任者は、いずれも鼻をつまんで逃げ口上を並べております。これは日本の大企業が公害に対する配慮を全く欠くか、あるいはその政策を行なわないことで企業のコスト・ダウンをはかったものと考えられます。いずれも、その経営者が日ごろ好んで口にする公徳心の尊重とは無縁の態度というほかありません。
 このほか、交通の混乱、交通事故のウナギ登りの上昇、水俣病を初めとして、高度成長のもたらす公害の頻発は、ここに一々あげれば枚挙にいとまないほどであります。このため、大気も、河川も、海水も、景観も、これら一切の環境が急速に悪化をしております。その原因の相当部分が大企業に帰せられるにもかかわらず、具体的な責任の追及が困難であるという事情で、その解決は大部分放置されておるのでございます。この高度経済成長下の公害に対し、総理は一体いかにお考えになっておるのか、この機会に明白にしていただきたいと思うのでございます。(拍手)
 さらに、第三の社会経済的な矛盾は、大企業の中小企業分野への進出の問題でございます。高度成長に伴う産業構造の重化学工業化は、大企業の中小企業分野への進出を必然とします。最近の事例でいえば、八幡製鉄が子会社に資金を援助し、同時に重役の派遣を行なって、中小企業の製品であるボルト、ナット製造に乗り出さんとしておること、また、電気器具製造の巨大メーカーが、中小企業製品である石油ストーブに一斉に進出したこと等があげられます。生産力の向上によって、従来の手工業ないし小規模生産の分野で大量生産が可能となり、ここに大企業が進出をして品質の向上と価格の低下をもたらすことは、それ自体として歓迎すべきことでございます。ただし、現実に見る大企業の中小企業分野支配は、同時に大多数の大企業間の競争を伴って行なわれております。しかも、その競争と中小企業駆逐が、非価格競争といわれる宣伝広告活動を尖兵として行なわれるという点で、必ずしも最終消費者にとって大企業製品が信頼に値するとは限らないのでございます。たとえば電気がまでありますが、出発の初めは中小企業製品の方が優秀なものがあったにもかかわらず、ついに大企業製品によって中小企業の製品が駆逐をされてしまいました。また、大企業の中小企業分野の支配は、初めは中小企業を下請系列化し、その後、技術の吸収が終わった段階で下請関係を断ち切るケースが多いのでございます。そして大企業の中小企業分野支配の最大の問題点は、分解を余儀なくされた中小企業主及びその労働者の救済について、ほとんど何らの社会的保障がないという点でございます。高度成長下においてこのような現状にある中小企業に対して、何らかの積極的な保護対策が必要であることは明白でございます。池田総理は、さきに西尾民社党委員長の中小企業基本法をどうするのかという質問について、明確な答弁を出しませんでした。池田総理は、一体この四十通常国会に中小企業を守るための中小企業基本法を提出する意思があるのかどうか、この機会に明白にしておいていただきたいと思うのでございます。(拍手)
 次に、私は三十七年度予算に触れつつ質問を続けたいと思います。
 そもそも、所得倍増計画の究極の目的は、国民生活水準の顕著な向上と完全雇用の達成に向かっての前進でありました。そのためには、経済の安定的成長の極大化がはかられなければならぬとしたのであります。そしてその目的達成のための主要経済指標が立てられました。しかし、前に述べたように、不安定と不均衡によって、残念ながら、設備投資も、輸出も輸入も、物価も、そして国際収支も、すべて計画された数字はその的をはずれてしまったのでございます。そしてただ一つ、人口増加の推計のみが、白々とした的を確実に射抜いたのでございます。
 元来、経済は人と物で動きます。物と金についての計画は比較的熱心に議論されますが、物と金を動かす主体である人間の問題については、いつも従属的に、付属的にしか議論されませんでした。二兆四千二百六十八億円という、前年度より二割四分も拡大をした大型予算といわれ、しかも、五千八百億に上る新財源を持った三十七年度予算でも、例外でないのでございます。
 所得倍増計画の真のねらいが、生活水準の向上、すなわち所得格差を縮小するものだとするならば、底辺の人たちの生活をどう引き上げていくか、これが予算でどう引き上げられたかが問題の初めといわなければなりません。私は、まず、底辺における問題である生活基準について質問を続けてみたいと思います。
 まず、生活保護基準でございますが、保護基準は、昭和三十六年度当初予算で一割八分、同じく補正予算で五分、さらに三十七年度予算でも一割三分、合わせて三割六分の引き上げがありました。この限りにおいては、幾分の改善があったといわなければなりません。しかし、最近の物価の上昇、特に食料品、公共料金、家賃、地代、サービス料金等の、生活に直接関係のあるもろもろの物価の値上がりは、低所得階層の生活を強く圧迫しております。本年度一割三分の引き上げは、食費でいうと、今までの一人一日五十四円の食費が六十円、わずかに六円程度上がったにすぎないのでございます。はたして、一日六十円――一食六十円ではございません、一日六十円で、この物価高の時代に一人の人間が生きていけるでしょうか。
 失業対策事業における日雇い労働者の賃金についても同様のことが言えます。全国平均一日三百八十六円、これが四百二十五円と、三十九円引き上げられました。就労日数は二十二日間、一カ月九千三百五十円です。日雇い労働者の家族構成は三・四人です。一カ月九千三百五十円で三・四人の家族の生活を想像してみて下さい。何と寒々とした生活でしょうか。まさにこれは昭和の残酷物語といわなければなりません。(拍手)
 池田総理は、昨日参議院におきまして、数年前までは日本の生活程度は世界で四十番目であった、しかし、最近はこれが二十番目になっておると、誇らしげに胸を張って答えたようでございます。しかし、このような底辺の人々に対する思いやりのない政治、貧乏人は麦を食え式のあの政治のもとでは、もはや数字や予算の問題ではなくして、むしろ、日本人のヒューマニティの問題であります。私は、これを高め、これをゆり動かすのでなければ、もはやだめだということを、本年度予算を見てしみじみと思い知らされました。(拍手)私のこの言葉が幾分でも池田総理の琴線に触れるものがあるならば、池田総理の心をゆり動かすものがあるならば、この議場を通じて、池田総理は、率直に自分の底辺に対する政策がどんなものであったかを反省して、ここでお答えを願いたいと思うのでございます。(拍手)
 さらに私は、池田内閣の所得倍増計画の中で、ただ一つ正確であった人口の問題に触れながら、質問を続けたいと思います。
 最近の日本の人口構造は、富士山型から、そのすそがすぼまったつぼ型に、明瞭に変わってきました。このことは、幼年人口が減少して、生産年令人口や高年令人口が増加してきたことを意味します。まず第一の問題点は、増加をする老人人口に対する政策の貧困であります。現在、私たちの平均寿命は、男子六十五才、女子七十才に達しました。そして、六十五才以上の老人人口は五百三十八万人で、総人口の五・七%に達し、しかも年とともに急激に増加の傾向にあります。この増加する老人層の老後の生活を保障する政策は、厳重な所得制限付きで、しかも、七十才以上に対し、月わずかに千円の福祉年金が昭和三十四年から実施されているにすぎません。本年度予算においても、わずかに九千八百七十二万円の老人福祉対策費、すなわち、軽費老人ホーム、老人福祉センター、老人家庭奉仕員等、これらの経費が申しわけ的に計上されております。このような政策の貧困のために、六十五才以上の老人中、約二百万人の人たちが何あかの仕事について生活のかてを求めておるというのを、私たちは発見するのでございます。私たち日本社会党は、拠出制の年金もさることながら、このように増加する老人の老後を保障する無拠出の福祉年金の強化を、一貫して主張してきたところでありますが、本年度予算においてもいまだその前進を見ないことは、きわめて遺憾に思うところであります。総理は、増加する老人人口に対し、物心両面よりの生活安定の方途についてお考えになったことがあるかどうか、お聞かせを願いたいと思うのでございます。(拍手)
 次に、第二の問題点は、老人の問題に関連することでございますが、最近の一つの傾向として、疾病の構造が変わってきたことであります。わが国の最近の死亡の動向を見ますと、結核その他の伝染性疾患による死亡が年を追って減少の一途をたどり、これにかわって、脳溢血、ガン、心臓病、老衰などの、いわゆる壮年期以後に多発する成人病による死亡が増加をし、昭和三十五年の死因統計によると、成人病と目されるものが実に七割を占めております。このような状況に対処するためには、もっと健康管理を充実することが必要です。そのためには、保健所と医療機関の密接な連携のもとに、早期発見、早期治療の体制を確立しなければなりません。しかるに、現状は明らかに大きな立ちおくれがあります。全国の保健所、医療機関には、その待遇の劣悪なために、医師、看護婦等の医療技術者が極度に不足し、しかも、開業医が予防行政に協力できる諸条件に欠けているのが現状であります。このような悪条件のもとで、一体、灘尾厚生大臣は、この成人病対策をいかに立てようとするのか、お示しを願いたいのでございます。
 こうした立ちおくれは、ひとり成人病対策にとどまりません。わが国医療保障全体の問題であります。現在の九千四百万人の国民のうち、池田内閣の高度経済成長政策のしわ寄せを最も強く受けている農民、中小企業者等の四千八百五十万人が加入しておる、医療保障の一大支柱である国民健康保険を見てみても、この給付はわずかに五割にすぎず、しかも給付範囲の制限すらついています。これでは、高い保険料や保険税を払っても、いざ病気のときには、窓口負担の残りの五割が払えず、医療機関に行くことを思いとどまって、配置薬や売薬や加持祈祷などの迷信によって済ませる人が相当多数あることを、私たちは見落としてはならぬと思うのでございます。(拍手)
 このような現状に立って、私たちは、医療保障の確立のために、まず国民健康保険、及びこれと同じように財政的に貧弱な日雇い健康保険について、その内容をよくすることが何より先決であると考えて、昨年以来国庫負担の大幅増額を強く主張してきました。しかるに政府は、本年度予算において、国民健康保険の国庫負担二割を二割五分に引き上げたにすぎません。しかも、日雇い健保に至っては、依然三割五分の国庫負担のまま据え置きであります。これでは、七割給付どころか、医療費の値上がり分すらカバーできかねる状態であるといわなければならぬのであります。昨年お作りになった厚生行政の長期計画というバラ色の夢が泣くというものでございます。
 そこで、政府にお伺いいたしたいことは、予防、治療、後保護の一貫した医療保障体系の確立について、一体どういう構想を持っておられるのか、社会保険の総合調整並びに社会保険行政における現業と監督の分離の問題と、あわせて御答弁を願いたいのでございます。
 さらに、第三の問題は、十五才から六十四才までの生産年令人口の増加に関連して、幾つかの質問をいたしたいと思います。
 最近特に注目すべき傾向は、高度経済成長に刺激されて、激しい国内人口の移動が現われてきておるということであります。昭和三十四年十月から昭和三十五年九月末までの一カ年間に、五百十九万人の移動がありました。しかも、これらの移動人口は、青少年人口が大半を占め、移動先は東京、大阪等を中心とする大商工業地域に集中いたしておるのであります。このため、昭和三十五年の農業就業者数は、全就業者数の三二・八%、すなわち、三分の一を割って、千三百二十二万となり、昭和三十年千四百八十九万人より百六十七万人も減少しました。このような人口移動の中で、私は、その影響を最も受けた農業の問題に触れなければなりません。
 池田総理は、農村の人口を減らし、農業の生産性を高め、都市と農村の所得格差をなくすることを主張してきました。しかし、今や、農村からの若い筋骨隆々たる働き手の急速な無計画的な流出は、農業のにない手を老人や婦人等の脆弱な労働力に変化せしめつつあります。農村まさに荒れなんとする姿を呈しつつあるのが、現在の日本の農村の姿であると申さなければなりません。これは政府の高度経済成長政策が、農業を他産業の成長に従属させるという考えで進められたために、農村と都市の所得格差がますます拡大をして、農村の青少年が、農業の将来に希望が持てなくなった結果であります。この現状に対して、政府が農業基本法でうたっている自立経営農家の育成が、はたして可能でしょうか、池田総理の自信ある見解をここでお示し願いたいと思うのでございます。
 さらに注目すべきことは、農業人口は減少しても、農家戸数、世帯主はほとんど減少していないことであります。そのために、零細経営の矛盾は解消されず、動力耕耘機等の農業機械の急激な増加も、むしろ過剰投資となって、投資効率を低下させています。そのほか、肥料、飼料、農薬等の農業資材の投入が増加をしているため、農業経営費は増加して、農家の所得率は次第に低下の傾向を示しつつあります。一方、農業資材投入額の増加による農家所得率の低下は、飼料や農業資材を生産する大資本の成長を促進しておることも見のがしてはなりません。池田総理はこの矛盾にいかに対処する所存であるか、ここに明らかにしていただきたいと思うのでございます。
 さらに、政府は、農業基本法の中で農業生産の選択的拡大をうたい、成長部門として畜産、果樹、野菜などをあげておりますが、これらはいずれも農家手取価格と小売価格の間に大きな開きを示しております。そして、最近国民の総食費支出は年率五・四%ずつ増加をしており、消費者の食糧に支出する全金額は四兆円をこえているのに、農家の販売年額は一兆一千五百億で、三分の一にも足りません。しかも、農業手取率は、昭和三十年の三五・三%から、最近は二八・七%に低下し、中間の流通加工部門の配分が増加する傾向を示しております。これでは、食糧の消費が増加をし、あるいは農業生産が上昇をしても、農民の所得を増加させることはできないのでございます。ここに、農家人口が急激な勢いで都市に流れる根本的な理由を私たちは発見するのでございます。特に、最近は、大手水産会社を初め食品大企業が各地に農畜産加工工場を建設し、農産加工分野に進出しています。もし、資本力を背景にして農畜産物の買い占め、買いたたきが行われるならば、農家の手取価格は一そう低下することは、火を見るよりも明らかであると申さなければなりません。(拍手)最近、アメリカにおいては、このような問題に対して、農民の団体交渉力の必要性が認識されるようになったといわれております。現インド大使、元ハーバード大学教授のガルブレース氏は、大会社は市場におけるその規模と地位に基づいて有利な交渉力を確立した、農業者は団体交渉力を強化する必要がある、と述べております。米国に比して農業経営規模が零細なわが国では、農民の団結権、団体交渉権を強めて農家手取額を高めなければならぬと考えるが、これに対する池田総理の見解をお伺いいたしたいのでございます。(拍手)
 さらに、こうした人口移動に対処して問題となる第二の点は、住宅問題であります。
 農村あるいは失業多発地帯等からの労働力の移動を順当に進めて高度経済成長に対応するためには、住宅の供給は不可欠の条件であります。しかるに、現状はほとんど有効適切な手が打たれておりません。わずかに炭鉱離職者に対して幾分の政策の前進がありましたが、きわめて不満足なものでございます。現在住宅の不足は約三百六万戸といわれていますが、一体これをどう充足していこうとするのか、過去の住宅政策を検討してみますと、かいもく見当がつかないのであります。
 数年前、西ドイツのエアハルト経済相が来日したおりに、彼が日本の労働者の低賃金を指摘したことは有名でありますが、そのとき、エアハルト氏は、わが国の労働者住宅を見て回って、こう言いました。日本の労働者がこんな粗末な住宅に住んでいる限り、西ドイツの商品は日本商品に絶対に負けないと申したのであります。(拍手)この言葉はきわめて示唆的であります。急テンポの経済成長を誇る日本の労働者住宅が、国際的に比較した場合に、いかに劣悪な水準のものであるかが端的に示されておるのであります。経済成長のにない手である労働者は、生産に従事し、働いて寝るだけであって、住宅の保障もろくろく行なわれていないというのが現状でございます。ここにも、昭和の残酷物語の一端が現われております。(拍手)
 本年度の予算案を見ましても、公営住宅、公庫住宅、公団住宅を合わせて、建築予定数はわずかに二十一万六千戸にすきません。もちろん、このほか民間建設分もありますが、これでは焼け石に水というべきであります。私は、この際、政府が思い切った措置を講じて、たとえば五カ年なら五カ年で住宅難を完全に解消するめどをつけ、そのためには、現在の天井知らずの宅地の値上がりを強力に押える措置をとり、公営住宅を大量に建設し、また住宅の質を向上させ、かつ森林の乱伐を防ぎ、森林資源を豊かにし、あわせて、防火の見地からもブロック建築等を画期的に推し進め、これが資金については、年金積立金や失業保険の積立金を積極的に活用する等の措置を直ちに講ずべきであると思いますが、住宅問題解決に対する総理の明確な御答弁をお願いいたしたいのでございます。(拍手)
 さらに、生産年令人口増加の条件のもとで第三の問題点は、中高年令層の失業の問題であります。
 最近は、新規若年の労働力に対する需要は、娘一人に婿八人の状態でありますが、四十才をこえると供給過剰の状態が生じております。特にこの傾向は農村と炭鉱において顕著であります。従って、当面する課題は、このような労働力の需給のアンバランスをなくし、産業の発展に応じて適切な労働力の配置をすることでありますが、それには、住宅や移住資金や生活を保障する賃金が与えられ、かつ必要な技術訓練を施す等の条件が整備されなければなりません。しかるに、現状は、すでに指摘したように、住宅事情は悪く、また移動するにも費用が足らないといったありさまでございます。
 また一方、技術革新下の経済高度成長をになう現場においては、技能労働者及び技術者の深刻な不足の問題が現われつつあります。昨年二月の調査においても、百十万人をこえる技能労働者の不足が明白になって参りました。所得倍増計画の目標年次までには、中級技術者が四十万人、高級技術者が十七万人も不足するといわれております。おそらく、現状のままで推移するならば、人間の問題からも所得倍増計画に大きな行き詰まりを来たすことは、明白なことといわなければならぬのであります。(拍手)この際、政府は公費による職業訓練を大々的に行ない、さしあたり失業者、半失業者に一定の技術を身につけさせるとともに、中級、高級の技術者養成にも計画的、積極的な施策を講ずべきであると思うが、総理の見解をお示し願いたいと思うのでございます。
 さらに、中高年令層の失業問題に関連をして、この際、私は一言賃金問題について政府の見解をただしておきたいと思います。
 昨年十一月の箱根における日米会談において、日本の低賃金が問題になって以来、労働省は、低賃金の事実を否定するPRを盛んにやっております。最近は、機構の改革で労働基準局に賃金部を設けようとする予算も要求しておるようでございます。一方、日経連は、前田専務理事の主張に見られるように、低賃金政策を今年度の課題とすべきことを全経営者に強調いたしております。池田総理は、この賃金問題についていかなる見解を持っておるか、この機会に明らかにしていただきたいと思います。
 なお、さきに石炭労働者の賃金切り下げ、首切り、あるいは第二会社の設立等が問題となり、石炭産業の雇用安定のため、最低賃金制の確立が必要であるとの見解に立って、中央最低賃金審議会に炭鉱労働者の最低賃金について諮問されましたが、該審議会の審議状況は一体どのようになっておるのか、また、審議会が一定の金額を答申した場合に、政府は一体これをどう処置する方針であるか、労働大臣の見解をこの機会にお示しを願いたいと思うのでございます。
 最後に、人口構造の変化における第四の問題点として、十五才以下の減少しつつある幼年人口の問題について質問を進めたいと思います。
 日本の人口動態が、多産多死から少産少死に変貌した現在、私たちは、私たちの次代を継ぐこの十五才以下の幼年人口を、質的に優秀な国民に育て上げなければなりません。かかる見地に立つときに、まず第一の問題は、昭和三十八年度から大幅に増加する高校生急増対策をどう進めるかということであります。昭和三十八年度から高校に進学する諸君は、ミルクも食糧も衣料も不足の時代に生まれ育った子供たちであります。この窮乏と混乱の中に生育した子供たちに、さらに狭き門の悲哀を与えることは、民族の将来にとって不幸であるといわなければなりません。(拍手)政府は、わずかに来年度五十億の起債のワクだけで、この不幸な環境に生育した子供たちの夢にこたえようとしております。それで政治家の良心が許すでしょうか。池田総理は、この際、昭和三十八年以降の高校進学希望者数と収容可能数が政府の措置によって十分満たされることを、国民の安心のいくようにこの機会に御説明を願いたいと思います。日教組に強く、予算に弱い荒木文部大臣も、あわせて具体的な数字でお示し願いたいと思うのでございます。(拍手)
 さらに、問題は六・三制の義務教育までの段階にもあります。それは、教科書の無償配布と、学校給食の完全実施と、保育所の拡充強化並びに児童手当の実施がこれであります。教科書の無償配布については、昭和三十八年度から一年生だけまず実施ときまった様子ですが、一割四分の値上がりがずうずうしくも先行することになりました。学校給食は、パン一食一円補助が八十五銭に削減され、そのかわりに、ミルクやおかずの量と質を幾分高めてお茶を濁しました。しかし、同時に付録がつきました。四月から月に四十円ないし九十円の給食費の値上げをやろうとしておるのでございます。保育所の問題も、職員の給与改善その他が幾分の前進を見ました。しかし、高度経済成長で年功序列型の賃金体系が崩壊せんとし、同一労働同一賃金の機運が高まってきた現状で、その必要性が強く主張し始められている児童手当については、海のものとも山のものともかいもく見当がつかないというのが今の状態でございます。
 政府は、内政的に見ますと、旧地主の補償には思い切った政治的な配慮を加えました。防衛費については、前年度より二百億以上も増額をする予算措置をとりました。対外的には、ガリオア、エロアの返済に四億九千万ドル、すなわち千七百六十四億円も気前よく協定をしました。タイ特別円に対して、九十六億円も出す用意をしました。あるいは韓国の財産請求権に対し、無償供与までもつけ加えて措置しようとしています。もしこのような余裕のつく金があるならば、民族の将来を背負う若年人口のための、これらの教育上の重要な問題をまず解決すべきであると私は思うのでございます。(拍手)このことは、今や、社会保障の見地から考えても、所得格差を防止する手段として目下の急務であると考えるのでございます。たとえこれらのかわいい子供たちが選挙の票は持っていなくとも、あるいは政治献金はできなくとも、日本民族の将来のために、気前よく金を出す寛容さがほしいものです。(拍手)このことこそが、池田総理の言う、青少年こそ祖国の生命力の聖なる源泉であるという施政演説の言葉にも合致するものであると思うのでございますが、池田総理のこれらの幼年人口に対する明白な方針をここに国民の前に明らかにしていただきたいと思うのでございます。(拍手)
 さて、以上で私の質問を終わりたいと思いますが、要は、池田内閣のもとにおける高度経済成長政策が、国民生活の上にあまりに強い明暗を描き過ぎており、日陰にある多くの人々が、依然として希望のない状態に放置されておるということであります。超近代的なオートメ工場、冷房、暖房の完備した壮麗なピルの林立、町には自動車と高級品の洪水がありながら、すぐそのそばに山谷と釜ケ崎があり、五人の家族が一カ月わずかに一万三千円でぎゅうぎゅういう生活をしておる六十万の保護世帯があることを私たちは見落としてはならないのであります。(拍手)このようなアンバランスは、単に社会保障の費用を少しばかり引き上げるということで解決のつく問題ではありません。もし、政府も財界も、生産力と企業が国民のための社会的公器だということをお認めになるならば、国民経済全体のもっと合理的な規制と計画化によって、いわゆる二重構造といろものをなくす努力をしなければなりません。たとえば合理的な資金計画の策定、財政投融資の民主化等を直ちに行なわれてしかるべきものであります。そうなりますと、こうした政策と並んで社会保障の費用を大幅に増額し、国民の医療や所得の保障をする、全国一律の最低賃金制を確立して賃金の底上げを行ない、勤労者の生活を少しでも安定をさせる、職業訓練施設を増強して、労働力需給の不均衡をなくし、失業状態を好転させる等々の措置がきわめて効果的な対策となってくるのでございます。また、このことによって安定した国内消費市場は拡大し、日本経済自体の安定度も増すということになるのでございます。
 池田内閣の高度成長政策の破綻は、今日では、もはやだれも目をおおうことのできない明白な事実となっております。そこでこの際、池田総理も虚心たんかいに自身の政策の破綻を反省され、財界の中にささやかれておる、好漢惜しむらくは税を知るも経済を知らず、好漢惜しむらくは行政を知るも政治を知らずという汚名を返上し、日本社会党の主張に十分耳を傾けられいよいものは大いに取り入れていくといろ度量を示し、さすがは池田勇人と言われるようなステーツマンシップを発揮していただきたいのであります。(拍手)
 このことを最後につけ加えて、私の代表質問を終わりたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) ただいまの本院の休憩の問題につきましては、これは国会議運の問題でございますから、私は答弁いたしません。
 なお、消費者物価の上昇につきまして、独占物価の上昇によるのだ、こういう断定でございますが、消費者物価の上昇が独占物価の上昇に基因するというものはごく小部分であります。大体におきまして消費支出の増加とかあるいはサービス料の上昇、生活内容の上昇が主たる原因と考えておるのであります。しかし、いずれにいたしましても、国民生活に重要な関係のあるものでございますから、政府といたしましては、今後消費者物価の上昇を極力押えるように努力いたしたいと思います。
 また公害の頻発につきましてのお話であります。われわれは、昭和三十一年以来、工業用水法あるいは水質保全法あるいは工場廃水法等いろいろな法律を設けまして、これの防止に努めております。ことに最近の地盤沈下の問題につきましては、いずれ法案を提出いたしまして、御審議願いたいと考えております。
 また中小企業基本法につきましては、私は実態を調査して、すみやかに出すべく関係閣僚を督励いたしておるのであります。
 大企業と中小企業との関係のお話でございまするが、この産業構造の問題は、大企業と中小企業のみならず、大企業間におきましても、今後この構造改善につきましては、われわれは相当いろいろの事態を考えて、善処しなければならぬと考えておるのであります。
 なお社会保障関係の問題につきましてヒューマニティの問題がございましたが、過去二、三年の間、ことに去年と今年における社会保障制度に対しまする政府の熱意は、滝井さんもおわかり下さると思っておるのであります。
 なお、私の経済成長政策につきましての御批判は御勝手でございまするが、今まで答弁した通りの態度で進んでいきたいと思います。
 その他は非常に専門的な問題でございますので、各省大臣をして答弁させます。(拍手)
  〔国務大臣福永健司君登壇〕
○国務大臣(福永健司君) 労働力流動化を円滑に行なうための住宅政策につきましては、従来賃貸宿舎の設置、移動宿舎の貸与、住宅確保奨励金の支給等を行なって参りましたが、新年度の予算は、御承知の通り、住宅対策費十八億五千余万円でありまして、従来に比較いたしますと、八億五千万円以上の増と相なっております。十二分とは申し上げませんけれども、大幅に拡充することに相なることを御理解をいただきたい。
 なお、新たに労働者の雇用を促進するための融資制度、新年度は二十億ということになっておりますが、これを設けまして、民間企業に対してその雇用する労働者の住宅等の建設に活用するような資金を融資いたしたい考えております。
 中高年令者の雇用を促進するためにということでいろいろ御説がございました。参考にはいたしたいと思いますが、私どもは転職訓練の推進、職業紹介の強化、適職研究の実施等に従来とも努めて参ったのでありますが、これを強化いたしますとともに、今度新たに雇用奨励制度を作ることにいたしましたし、また先ほど申しました融資制度も、こういった面にも活用して参りたいと考えております。
 経済の高度成長に伴う技能労働者の不足に対処するための訓練につきましても、御説を参考にいたしますが、少し勘違いをなすっていらっしゃいますところもあるのであります。賃金等につきましても、私が申さないようなことなども申しておられますが、あなたの御説も参考にいたしますから、どうぞ勘違いは改めるようにしていただきたい、そういうふうに存じます。(発言する者あり)勘違いの点は、私は賃金ストップなどということを申しておりませんし、またその他のことについても、だいぶ誤った表現があるから申し上げるのであります。
 石炭産業における最低賃金制につきましては、詳しく経過を言えということでございまするからちょっと申し上げますが、昨年十月、中央最低賃金審議会においてその検討方をお願いしたところであります。同審議会におきましては、労、使、公益三者構成の小委員会を設置してこの問題の検討を進めております。すでに六回の会議を開催し、関係労使の意見聴取等を行なったほか、筑豊地区の実地視察も行なって、鋭意検討を進めておるところであります。さような次第でございまして、さらに全国的規模で調査を実施することになっております。政府といたしましては、これらの検討結果について、中央最低賃金審議会の答申を期待しておる次第であり、答申が出れば十分これを尊重いたしまして善処をいたします。(拍手)
  〔国務大臣灘尾弘吉君登壇〕
○国務大臣(灘尾弘吉君) お答えをいたします。
 まず、公害問題についてお答えをいたしたいと存じます。この公害問題は、関係するところがすこぶる多いのであります。また態様もいろいろ違うのでございますが、厚生省といたしましてただいま最も力を注いでおりますのは、従来やっておりますいわゆる環境衛生施設を整備することは当然なことでありますが、大気汚染の問題について特に勉強をいたしておるところでございます。従来専門家、関係者を介しましてその意見を徴したり、あるいは問題点等について究明、検討を行なってきたのであります。今後におきましても、これを継続いたしますと同時に、全国数地区におきまして、この大気汚染に関する実態調査をやる予定を立てております。また、都道府県における大気汚染の対策を推進いたしますために、九つばかりの府県の地方衛生研究所に必要な設備、施設を整えまして、これが対策の促進をはかろうといたしておる次第であります。いずれにいたしましても、この問題は関係するところが非常に大きいのでありますから、関係各省よく相談をいたしまして、すみやかに対策を確立いたしたいと存じております。
 次に、生活保護の問題でございますが、滝井さんもよく御承知の通りに、また先ほども言及せられたところでございますが、われわれといたしましては、経済の成長、国民所得の増大、財政収入の増加ということを通じまして、いわゆる日の当たらない階層に対する手当が取り残されないようにいたしたいと存じておるわけであります。生活保護の基準にいたしましても、従いまして、漸次これを引き上げて参りたい、これが基本の方針でございます。昨年は御承知のように、まず一八%、次に五%、今度はこの上に立ちましてさらに一三%の増加をはかろうとするものでございまして、昭和三十六年度並びに昭和三十七年度を通じて考えますれば、約四割以上の増加と相なるのでございます。御指摘のような数字につきまして、一日五十四円あるいは六十円という数字もございましたが、なるほど標準世帯について平均いたしますればそういうことにもなりましょう。しかし、世帯の構成はいろいろ違っておるわけであります。必ずしもその通りではございません。ただ、私どもは決して今のが十分だと申し上げておるわけじゃないのであります。漸次上げて参りたいのであります。今後も引き続いて基準向上の努力は続けて参りたいと存じております。物価の騰貴はわれわれにとりましては大禁物でございますので、これは政府といたしましてできるだけその上昇を防ぐことに努力することは当然でございます。
 次に、老人福祉対策の一環といたしまして、現在の無拠出の老齢福祉年金の強化充実ということについてお話がございました。御趣旨につきましては何ら私も異存はございません。ただ、現在の福祉年金につきましても、所得の低い人たちでなおこれを受け得ない人が相当あるのであります。従いまして、福祉年金の金額を上げることもけっこうでございますけれども、われわれといたしましては、まずもってこの支給を受ける範囲をさらに拡大しようと考えておるわけであります。公的年金と福祉年金との併給の道を開きましたのも、あるいはまた本人の所得に関する制限を緩和いたそうといたしておりますのも、この理由に基づくものでありまして、これによりまして約四十万人ほど福祉年金を受ける人の数がふえるはずであります。
 次は、成人病対策であります。なかなか困難な問題でございますが、高血圧あるいは心臓病等に対しましては早期発見、早期治療、これは滝井さんの方がよく御承知であります。早期発見、早期治療に主眼を置きまして、いろいろ調査を重ねておるところでございます。また、ガンにつきましては、医療機関の整備充実という方向においてこれが対策を進めて参りたいと存じております。
 次に、医療保険の問題でありますが、御承知のように、また御指摘にもありましたように、現在の医療保険はいろいろな種類がある、ふぞろいであります。その意味におきまして、国民健康保険でありますとか、あるいは日雇い労働者の健康保険を整備充実することが必要であるということにつきましては、私も全く同感でございます。従いまして、漸次その内容の整備充実をはかって参りたいと存じておりますけれども、まずもって考えなければなりませんことは、これらの保険はあまりにも財政的基盤が薄弱であります。従って、その財政的基盤の強化に向かってまずもって努力をいたしたいと考え、それぞれの措置をとりたいと存じておる次第であります。
 医療保険の総合調整の問題につきましては、しばしば申し上げておりますように、現に政府においても検討中でございます。社会保障制度審議会において、その検討がなされておるわけでありますので、われわれはなるべく早くその結論を得まして、政府といたしまして十分前進したいと考えております。
 また、現業と監督との分離という問題につきましても、目下本議会に提案すべく準備をいたしておるところでございます。
 なお、児童手当の問題、それから保育所の問題がございましたが、児童手当の問題が、社会保障的見地から申しましても、また経済、労働政策の上から申しましても、私は意義のあるものと考えます。これにつきましては、目下各諮問機関においてそれぞれ検討いたしておりますので、われわれといたしましても、積極的にこの問題を取り上げまして、研究を進めて参りたいと存じております。
 保育所の拡充強化が必要であるということも、お説の通りであります。政府も十分御趣旨に沿うように努力いたしたいと考えておりますので、御協力を願います。(拍手)
  〔国務大臣河野一郎君登壇〕
○国務大臣(河野一郎君) お答えをいたします。
 農村の青年が都市に走って、農村の労力が老齢化するのじゃないかということでございますが、この点は、国際的にそういう傾向がございます。(笑声)実はわが国におきましても、戦後農村に機械が入って参りましたことと、それから、都市の労銀が上がりましたために、農村の青年が都市に参る。これは、お笑いになりますけれども、世界的傾向でございます。しかし、わが国におきましては、この点について深く留意をいたしまして、農村の青年に希望を持たせることが必要である。その意味におきまして、農村の構造を改革いたしまして、わが国農村に、徹底的に光明を与えるようにいたす所存でございます。
 第二といたしましては、中間経費が非常に多くなっておるのではないかということでございますが、この点も、実は農家の生産者の取得するものと、消費者の購買する価格との間におきましては、たとえばアメリカにおきましても、農村の生産者の取得は三七%程度でございます。これも、わが国が非常に悪いということでは決してございません。(発言する者あり)それは認めております。わが国が決して高いとは言うておりません。そこで、この間に合理化をいたしまして、中間経費を省略していかなければならぬ点につきましては、目下鋭意検討中でございます。そして、なるべく早い機会にこれを合理化していきたい、その対策を立てたいと考えております。特に、先ほど御指摘になりました、価格について団体交渉云々ということでございましたが、私は、この点は中央卸売市場の中立性等にかんがみまして、これらを十分に監督して、そして適正な価格を形成するようにいたして参る所存でございます。
 以上、お答え申し上げます。(拍手)
  〔国務大臣荒木萬壽夫君登壇〕
○国務大臣(荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。
 まず第一点は、総理にお尋ねになりまして、総理から答えられていない点でございますが、科学技術者の養成は必要であること、お説の通りであります。三十六年度に、御承知の通り一万六千人増員計画に基づきまして、三千二百二十人の増員を予算上認めていただきました。さらにこの増員の要請がございますので、三十七年度といたしましては、国立、公立、私立合わせまして合計三千三百六十人、高等専門学校国立、公立、私立合わせまして二千二百九十人、総計五千六百五十人を養成する予算措置を講じましたので、御心配かけないで済むかと思っております。このほか、私学に対する養成につきましても、予算措置を講じております。
 工業高校の新増設につきましては、八万五千人の入学定員の増員計画、それに応じての今年三十七年度二万八千人定員増の措置をいたしました。
 第二点は、高校急増の問題でございます。文部省としましては、三十六年度以来、いわばこの高校急増は終戦処理の一端、いわば国がその責任の一端を負うべきものという意味において予算要求をして参ったのでありますが、三十六年度も失敗いたしました。三十七年度の要求におきましても、三分の一の国庫補助は失敗いたしました。負けました。これは政府部内として、予算折衝ではそういう結論でございましたが、要は高校急増、御案内のごとき公立高等学校に対しましては、三十八年度六0%の進学率として百五十万人が考えられます。四十年度のピーク時の純増八十万人、そういう推定のもとに、私立の四十三万人を合わせて百二十万人ばかりの増員に対してどういう対策を講ずるかが子供を持つ親たちの御心配の焦点であります。それに対しまして、本来高等学校は、都道府県がその施設責任者でございますから、その財源措置について懸念がある点に一般の関心があるわけでございますが、これらに対しましては、先ほど申し上げました通り、国としての補助金を負担することによって、ともに協力してこれに対応したいという考え方であったのでありますが、そのことは、今申し上げました通り、予算措置としてはあきらめざるを得ませんでした。それは高校の施設責任が都道府県にありという、その建前を突き破ることができなかったわけであります。
 そこで、これを滞りなく実施しますためには財源措置が第一でございますから、今までの例を破りまして、自治省ともとくと相談をいたしまして、今申し上げましたような要請すべき数字を地方財政計画上にはっきりと盛り込んでもらって、年次計画を定めて起債をつける。そうしてまた交付税をつける。そういうことによって財源措置に万全を期することといたしたのでございますので、高校急増対策に対しましては、結果としましては、一般国民から御心配いただかぬでも済むめどが立ったことを申し上げさしていただきます。(拍手)むろん予算上は今御指摘の通り、五十億円の特別ワクを設けておりますが、それでは足りません。足りませんが、三十七年度一千億以上に及びまする起債のワクの中での操作は弾力的な可能性がございます。その運用と、もちろん三十八年度のピークに備える前向きの問題でございますから、三十七年度と三十八年度と合わせまして御心配ないようにいたしたい、かように考えておるような次第でございます。
 第三点は、教科書無償の問題でございますが、このことは御案内のごとく、三十八年度に使います小学校一年生から着手する、そうして無償交付をするという筋道が確立をいたしましたことは、まことに御同慶に存じております。(拍手)本来ならば、一挙にこれが実現をはかりたい気持で一ぱいでございますが、現実問題としてはさように参りませんでした。与党たる自由民主党の教育に対する情熱と、池田総理の識見が一致をいたしまして、今申し上げた一つのルールがここに確立され、その線に沿って無償が実現するに至りましたことを、国民とともに御同慶に存ずる次第でございます。(拍手)
 なお、教科書の値上げの問題についてお話がございましたが、このことは、昭和二十七年以来値上げをいたしておりません。三十一年に一割の値下げをいたして今日に至っております。ところが、この間、諸物価の値上がりは教科書についても例外ではございませんでした。それにもかかわらず、その教科書に関連する印刷工あるいは製本工の給与も据え置きのままでございました。何としても、ある程度の値上げはやむを得ない事態にあったのであります。もしこのことが実現しないならば、当面、三十七年度に使います教科書の配給にも懸念が持たれたことは、昨年春以来の実情であったのであります。できることならば、教科書無償と一緒に解決することが望ましくはありましたが、結果は以上の通りでございます。それで、教科書の値上げと無償の問題は、本来別問題でもございますから、やむを得ず最小限度の値上げを実施した、しばらくごしんぼう下さいというわけでございます。(拍手)
  〔国務大臣藤山愛一郎君登壇〕
○国務大臣(藤山愛一郎君) 物価問題に対する御質問でございますが、具体的な対策を持っておるかということです。われわれは、今年、重要な問題でございますから、十分具体的な案を練って、そうしてこれに対処していくわけでございます。いずれ、予算委員会等におきましては、相当この問題に論議が集中いたしますから、その席でいろいろ申し上げたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣中村梅吉君登壇〕
○国務大臣(中村梅吉君) 住宅建設の重要性について御指摘をいただきましたが、御趣旨につきましては私ども全く同感でございます。従いまして、われわれとしましても、財政の事情等勘案いたしまして、逐年政府施策住宅は増加をさしておるわけでございます。昭和三十七年度としては、御承知の通り二十一万六千五百戸の計画でございますが、さらにわれわれとしましては、今後とも御趣旨の点に沿うように努力をして、住宅の充足に努めて参りたいと思います。(拍手)
○副議長(原健三郎君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
○副議長(原健三郎君) 本日は、これにて散会いたします。
   午後六時九分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  池田 勇人君
        法 務 大 臣 植木庚子郎君
        外 務 大 臣 小阪善太郎君
        大 蔵 大 臣 水田三喜男君
        文 部 大 臣 荒木萬壽夫君
        厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君
        農 林 大 臣 河野 一郎君
        通商産業大臣  佐藤 榮作君
        運 輸 大 臣 斎藤  昇君
        郵 政 大 臣 迫水 久常君
        労 働 大 臣 福永 健司君
        建 設 大 臣 中村 梅吉君
        自 治 大 臣 安井  謙君
        国 務 大 臣 川島正次郎君
        国 務 大 臣 藤枝 泉介君
        国 務 大 臣 藤山愛一郎君
        国 務 大 臣 三木 武夫君
 出席政府委員
         内閣官房長官 大平 正芳君
          法制局長官 林  修三君
        総理府総務長官 小平 久雄君
        厚生省社会局長 大山  正君
     ――――◇―――――