第040回国会 本会議 第9号
昭和三十七年二月六日(火曜日)
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 議事日程 第八号
  昭和三十七年二月六日
   午後二時開議
 一 所得税法の一部を改正する法
  律案(内閣提出)及び地方税法の
  一部を改正する法律案(内閣提
  出)の趣旨説明
 二 新産業都市建設促進法案(内
  閣提出)の趣旨説明
 三 日本国に対する戦後の経済援
  助の処理に関する日本国とアメ
  リカ合衆国との間の協定の締結
  について承認を求めるの件の趣
  旨説明
 四 特別円問題の解決に関する日
  本国とタイとの間の協定のある
  規定に代わる協定の締結につい
  て承認を求めるの件の趣旨説明
 五 行政事件訴訟法案(内閣提出)
  の趣旨説明
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○本日の会議に付した案件
 所得税法の一部を改正する法律案
  (内閣提出)及び地方税法の一部
  を改正する法律案(内閣提出)の
  趣旨説明及び質疑
 新産業都市建設促進法案(内閣提
  出)の趣旨説明及び質疑
 日本国に対する戦後の経済援助の
  処理に関する日本国とアメリカ
  合衆国との間の協定の締結につ
  いて承認を求めるの件の趣旨説
  明及び質疑
 特別円問題の解決に関する日本国
  とタイとの間の協定のある規定
  に代わる協定の締結について承
  認を求めるの件の趣旨説明及び
  質疑
 行政事件訴訟法案(内閣提出)の趣
  旨説明及び質疑
   午後二時八分開議
○議長(清瀬一郎君) これより会議を開きます。
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 所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び地方税法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
○議長(清瀬一郎君) 議院運営委員会の決定により、内閣提出、所得税法の一部を改正する法律案及び地方税法の一部を改正する法律案の趣旨の説明を順次求めます。大蔵大臣水田三喜男君。
  〔国務大臣水田三喜男君登壇〕
○国務大臣(水田三喜男君) 所得税法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 御承知のように、政府は国民の税負担の現状に顧みまして、昭和三十六年度の税制改正に引き続く税制の体系的整備の一環として、昭和三十七年度において中小所得者の負担の軽減を主眼とする間接税及び所得税の減税と、国、地方団体を通ずる税源配分の適正化を中心に、国税において平年度千二百億円程度の減税を行なうこととし、今国会におきまして、これら税制の整備のための関係法律案を提出する準備を進めて参りましたが、さきに提出し、委員会に付託されました通行税法の一部を改正する法律案外二法律案に引き続き、ここにこの法律案につきまして御審議を願う運びになったものでございます。
 この法律案の概要について御説明いたします。
 まず第一は、中小所得者を中心とする税負担の軽減合理化をはかることとしたことであります。すなわち、基礎控除及び配偶者控除を現在の九万円から十万円に引き上げるとともに、青色申告者の事業専従者について十二万円の控除限度が認められる年令区分を、現在の二十五才から二十才に引き下げております。
 また、税率につきましても、課税所得百八十万円以下の階層に適用される税率の緩和をはかるとともに、国と地方団体との間の税源配分の適正化をはかる等の見地から、所得税の収入の一部を道府県民税の収入として移譲することとし、道府県民税の所得割の税率を、課税所得百五十万円以下二%、百五十万円超四%の標準税率に改めることにいたしておりますが、この場合、所得税及び道府県民税を総合した負担が軽減されるように、さきに申し上げました所得税の税率緩和のほか、所得税の税率においては、現在課税所得十万円以下の金額について適用される税率は一0%となっておりますのを八%に引き下げる等、所要の調整を行なうとともに、道府県民税においては、昭和三十六年分の所得税と昭和三十七年分の個人の道府県民税との間における所得控除等の額の相違分については、特別の税額控除を行なう等必要な調整措置を講ずることとしております。
 以上申し述べました控除及び税率の改正により、夫婦及び子供三人計五人の家族の場合を例にとりますと、所得税を課されない限度は、給与所得者につきましては、現在の約三十九万円から四十一万円に、青色申告者である事業所得者につきましては、現在の約三十七万円が三十九万円に引き上げられるとともに、中小所得者の負担は、所得税、道府県民税を通じて相当程度軽減されることになります。
 第二に、中小所得者の生活の安定と貯蓄の増強をはかる見地から、生命保険料控除の対象となる生命保険料の限度額を現在の三万円から五万円に引き上げるほか、退職年金については、法人税法の整備と相待って、所得税においては、企業が従業員のために拠出した掛金に対する課税の繰り延べを行ない、年金受給時に給与所得として課税する等所要の整備を行なうとともに、最近における生活水準の向上、消費支出金額の増加等を考慮して寡婦、老年者等に対する税額控除を現在の五千円から六千円に引き上げることといたしております。
 さらに、寄付金控除制度を創設し、教育または科学の振興等のための寄付金について一定の金額を税額から控除すること、文化功労者年金を非課税とすること、昭和二十八年一月一日前から引き続き所有していた資産の譲渡所得及び山林所得の計算上控除する取得価額を、原則として同日現在の相続税評価額によるものとするとともに、資産再評価法による再評価の制度及び再評価税の課税は廃止し、また、個人間の資産の贈与等の場合で譲渡等に関する明細書等の提出があったときは、その贈与等の際には譲渡所得課税を行なわず、事業用の固定資産等について生じた損失は、原則として事業所得等の計算上の必要経費とするとともに、その損失が災害による場合は被災事業用資産の損失として三年間の繰り越し控除を行なうこと、生活に通常必要でない資産について生じた災害損失は、雑損控除の対象から除外して災害を受けた年及びその翌年の譲渡所得計算上の損失とすること等税制の整備合理化をはかることといたしております。
 第三に、非居住者等の課税につきまして、わが国の締結した租税条約との調整等をはかりながら、非居住者がわが国で事業を行なう場合における事業所得の課税の要件を明らかにすること、わが国に事業を有しない非居住者の資産の譲渡による所得の課税について不動産、企業支配的な株式の譲渡その他重要な資産の譲渡について課税するようその対象を列挙する等の措置を講ずる等所要の規定の整備を行なっております。
 以上、この法律案の趣旨につきまして御説明申し上げた次第でございます。(拍手)
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○議長(清瀬一郎君) 自治大臣安井謙君。
  〔国務大臣安井謙君登壇〕
○国務大臣(安井謙君) 地方税法の一部を改正する法律案について、その提案理由と要旨を御説明申し上げます。
 地方税制につきましては、累次にわたる改正により住民の税負担の軽減合理化を行なって参ったのでありますが、最近の経済発展に伴い、国民所得の水準も向上し、地方税においても、自然増収が相当見込まれることとなったことにもかんがみ、さらに、その軽減合理化をはかることが適切であると存ずるのであります。
 ただ、地方財政は、経済の好況と財政健全化措置と相待って逐次好転して参ってはおりますものの、地方行政水準はなお低く、これをすみやかに引き上げていく必要もまた大きいのであります。従いまして、地方税制については、このような地方財政の実態を考慮しつつ、住民負担の軽減合理化を実現するとともに、地方財政の自主性と健全性をさらに進めるために、税源配分及び税源帰属の適正化について所要の改正を行なうこととしたのであります。
 これが、この法律案を提案するに至った理由であります。
 なお、今回の改正による減税規模は、平年度四百二十二億円、初年度二百七十三億円でありますが、あわせて国と地方団体との間に税源配分の適正化措置を講ずることとしたので、地方独立財源が充実し、平年度百五億円、初年度八十二億円の増収となり、差し引き平年度において減収額三百十七億円、初年度において減収額百九十一億円であります。
 以下、法律案の概略について御説明いたします。
 その第一は、大衆負担、中小企業者の負担の軽減合理化をはかるために地方税の減税を行なうことであります。すなわち、個人の市町村民税についてその税率の緩和をはかることを初めとして、事業税、料理飲食等消費税、電気ガス税、鉱産税等につき、その税率の引き下げないし負担の軽減をはかることといたしております。
 第二は、税源配分及び税源帰属の適正化についてであります。別途所得税法の改正により、所得税と道府県民税の総合負担を軽減する方向で、所得税の収入の一部を道府県民税の収入として移譲を受け、道府県民税の所得割の税率を改正することといたしております。なお、これと並行して、たばこ消費税の税率を二%引き上げ、その課税標準を合理化するとともに、法人事業税における分割基準を改善し、もって地方団体間の税源帰属の適正化をはかることとし、あわせて入場税の地方譲与の制度を廃止することといたしております。
 第三は、税負担の均衡化の推進等税制の合理化をはかることでありまして、住民税、事業税、不動産取得税、娯楽施設利用税、自動車税、固定資産税、電気ガス税、国民健康保険税等につき、その非課税の範囲、課税標準、税率等の合理化をはかることといたしております。
 第四は、固定資産評価制度の改正の準備措置を行なうことでありまして、そのために、中央及び道府県に固定資産評価審議会を設置する等所要の改正を行なうことといたしております。
 以上が地方税法の一部を改正する法律案の提案理由及び要旨でございます。
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 所得税法の一部を改正する法律案
  (内閣提出)及び地方税法の一部
  を改正する法律案(内閣提出)の
  趣旨説明に対する質疑
○議長(清瀬一郎君) ただいまの法案趣旨の説明に対しまして、質疑の通告がありますから、順次これを許します。前田義雄君。
  〔前田義雄君登壇〕
○前田義雄君 私は、ただいま趣旨説明のありました所得税法の一部を改正する法律案及び地方税法の一部を改正する法律案につきまして、自由民主党を代表いたしまして、これに対する政府の考え方について質問をいたしたいと存ずるものであります。
 これらの法律案は、地方財政にとりまして、重要な意義を持つものであると考えられるのであります。すなわち、地方財政は、ようやく過去の不健全性から脱却して、自主的かつ健全な運営ができるようになってきつつあるのでありますが、しかしながら、今なお地方団体の行政水準はきわめて低く、地方団体が国民から負託されている責務を遂行するためには、地方財源の充実、強化をはかる必要が大であると存ずるのであります。(拍手)このときにあたり、政府が税制調査会の答申を尊重して、国、地方を通ずる税源配分の適正化を断行されようとしていることは、国民の要請にこたえたものであり、まことに時宜を得たものとして賛成の意を表せざるを得ない次第であります。
 さらに、国民の租税負担の現況を見ますると、国税、地方税を通じての負担はかなり高いものがあるので、国税と相並んで地方税の軽減、合理化をはかる必要が大であると考えられ、これを実現することは国民的な当然の要望であるのであります。しかしながら、三千有余に上る地方団体の財政の実情に適合した税制の改善をはかることは、まことに言うはやすく、行なうはかたいものがあると考えられます。今回提案されました法律案は、政府においてこの点にも十分な配意を払われた上、提案をされたものと存ずるのでありますが、私は以下次の諸点についてお尋ねをし、政府の率直、明快なお答えを得たいと存ずるのであります。
 第一に、今回の改正案の基本的考え方についてお尋ねをいたしたいのであります。
 先ほど述べましたように、地方財源の充実、強化は、わが国の地方自治発展の基礎的要件をなすものとして、ぜひとも実現しなければならない問題でありますが、これと同時に、国民の租税負担の軽減、合理化をはかる必要も大であるということは、言うまでもありません。この二つの要請を、同時に矛盾することなく実現するためには、どうしても国から地方団体に対して財源を移譲することにより、地方財政の充実、強化をはかりながら、地方税の減税をはからなければならないと考えます。この点について、政府はどのように考え、措置しようとせられるのか、自治大臣及び大蔵大臣の御所見を承りたいのであります。
 第二に、税源配分の適正化についてお尋ねをいたします。
 提案説明によりますと、国、地方を通ずる税源配分の適正化の措置として、所得税の一部を都道府県に移譲し、道府県民税の所得割の税率を改正するものと説明されておりますが、所得税の改正と道府県民税の税率の改正との間にどのような関係があるのか、この改正によって地方財政はどの程度改善されるのか、さらにこれと関連して、この改正によって国民の税負担はどのように変わって参るのか、また国民の総合税負担が、この改正によって重くならないという保障があるのか、これらの諸点について、明確なる説明をお願いいたしますとともに、なお一部の市町村にあっては、この改正案によると、事務の負担が過重になるという声が相当大きいようでありますが、政府はこの点についてどのような措置を講じようとしているのか、これらの点について自治大臣の御所見をお伺いいたしたいのであります。
 第三に、税源帰属の適正化についてお伺いいたしたい。
 三千有余に上る地方団体の財政状況は、一様一例ではなく、現行地方税制のもとにおいても、財源の帰属状況は、必ずしも各地方団体の財政上の必要に適合しているとは認められないのであります。従って、地方自治の観点からすれば、でき得る限り普遍性のある税源を地方団体に付与するとともに、地方団体間における税源帰属の適正化をはかる必要があると考えます。政府は、この点についてどのような措置を講じようとしているのか、これまた自治大臣のお考えをお伺いいたしたいのでございます。
 第四に、地方減税の基本方針について承りたいのであります。
 提案説明によりますと、今回の地方税の減税は、大衆負担及び中小企業者の負担の軽減、合理化のために行なうものとされており、なお、改正法律案の要綱を見ますると、零細な負担を排除するためかなりきめのこまかい配意が行なわれているように見受けられるのでありますが、一体この改正案によって低額所得者、中小企業者、農民等いわゆる担税力の低い納税者の地方税負担は、どのように軽減されるのでございましょうか、その大よその見通しについて政府の所見を承りたいのでございます。
 第五に、今回の改正案の地方財政に及ぼす影響について承りたいのであります。
 今回の改正案による地方税の減税額は、平年度四百二十二億円、初年度二百七十三億円という多額に上っているのでありますが、税源配分の適正化により、自主財源の増強がはかられることを考慮に入れますると、地方財政に及ぼす影響は、全体としてそれほど大きくはないと認められます。しかしながら、最近の経済情勢からいたしまして、今後の地方税の自然増収にあまり多くの期待がかけられないとすれば、地方財政の運営上それ相応の注意を払う必要が生ずるものと考えられるのであります。そこで、明年度以降の地方財政の動向、及び今回の改正案が地方財政に及ぼす影響等について、政府はどのようにお考えになっているのか、明確な御所見々承りたいのであります。なお、弱小な市町村が税制改正によりこうむる影響についての財政措置についても、あわせて自治大臣から御方針をお伺いいたしたいのでございます。
 最後に、税減配分に関する根本問題の検討についての所見を承りたいのでございます。
 今回の改正案により、地方財政の自主性、健全性が一段と向上することは疑いないところでありまして、方向としては大いに賛意を表するものであります。しかしながら、わが国における社会経済の実情に即応して地方自治を推進していくためには、いまだ多く検討すべき諸問題が残されていると考えられるのでございます。すなわち、国、地方を通ずる行政事務の再配分、経費の負担区分の明確化、税外負担の解消、国庫補助負担金制度の合理化等の根本問題について検討を加えながら、税源配分の適正化について、引き続いて検討を加える必要があると存ずるのでございます。政府は、すでに地方制度調査会、税制調査会等の審議機関に諮問し、今回新たに行政審議会及び補助金等適正化審議会を設置するように聞き及んでいるのでございますが、およそ地方税、地方財政に関する制度の改革を検討するにあたっては、地方自治の本旨を達成することを根本的に忘れてはならないと存じます。政府においては、今後これらの諮問機関をいかに有効に活用し、所期の目的を達成せんとせらるるおつもりであるのか、この点について国民の前に率直明快に、総理大臣から所信を明らかにしていただきたいと存ずるのでございます。
 以上をもって、政府の趣旨説明に対する私の質問を終えることにいたしたいと存じます。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) 中央と地方の行政のあり方、財源の配分につきましては、われわれは以前より非常な関心を持って参っておるのであります。地方財政は最近非常によくなりました。しかし、まだ十分ではございません。今回の税制改正によりまして、地方財源の拡充強化が来たされるものとわれわれ期待いたしております。今後中央、地方のあり方につきまして、すなわち行政のあり方、機構等につきましては、お話のように行政審議会その他各種の機関を通じまして、地方自治の本旨を達成するよう努力して参りたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣水田三喜男君登壇〕
○国務大臣(水田三喜男君) 今度の税制によって、地方税との関係から見て国民負担はふえないかというお話でございましたが、所得税と府県民税を通じて計算いたしますと、低所得層において、平年度、私どもの計算では、明らかに五百億円以上の税負担減になるということになっておりますので、国民負担がふえるということはございません。
 それから、税源配分の適正化の問題でございましたが、税源配分を適正にするということは、これは税制だけではできない問題でございます。御指摘のように、行政事務をどう配分するか、国と地方の経費の負担区分をどういうふうにきめるか、国の補助金、負担金が今年度六千億円以上に及んでいますが、この金額はすでに交付金よりも多いということになっておりますので、この交付金制度と国の補助金制度をどういうふうに調整するかという問題も起こりますので、こういう問題を解決しないと、国と地方との税源配分というものを適正にすることはできません。従って、そういう意味から、今度内閣にこういう行政審議会及び補助金等の審議会を作ることになりましたので、こういう機関を通じ、さらに従来からこの問題をやっております税制調査会、各調査会が連絡して、この問題を解決するような方向にいきたいと私どもは考えております。(拍子)
  〔国務大臣安井謙君登壇〕
○国務大臣(安井謙君) 地方財政を強化いたしますためには、どうしても固有の地方財源をふやすということが第一であろうと思います。今度の税制改正にも、先ほどお話のありました通り、所得税の一部を都道府県の住民税に移しかえるという操作をいたしたわけであります。これにつきまして、初年度が約百八十一億、平年度百九十八億程度の増収が見込まれるわけであります。
 なお、この移しかえによりまして住民税率が高くなるから、下層階級で負担の重くなる人はないか、こういうお問いでございますが、現在所得税と住民税とは税率の基準を切っておりますために、そういう御懸念もあろうかと思いますが、これは現在所得税を納めてない人で住民税を納める人にはこれが増額にならないような措置をはっきりとることにいたしております。
 なお、国と地方団体間の税の配分は、そのほかにたばこの消費税を二%移しかえるという問題でございますが、さらに、地方団体同士の財源の適正化という問題につきましても、今回このたばこの税率の移しかえを機会に、従来、従価制、すなわち価格制によって配分しておりましたたばこの消費税を従量制に移しかえまして、地方団体に非常に有利なような配分をすることにいたしております。
 なお、分割事業税の配分につきましても、大都市における配分額を少なくして地方へ移すようにいたしております。また、今度の県民税率の改正につきましても、地方の県に有利な配分になるような計画にしておるわけでございます。
 この点を数字的に申し上げますと、初年度におきまして減税総額は二百七十三億、平年度四百二十二億に対しまして、この県民税の税率の改正によりまして、初年度百八十一億、平年度百九十八億、たばこ消費税の引き上げによりまして、初年度七十一億、平年度七十七億、さらに、入場譲与税の廃止がマイナス百七十億、初年度、平年度同様でございまして、差引、初年度が八十二億、平年度百五億円の増収ということに相なっております。なお、これだけじゃ足りませんので、全体の財政強化のためには、地方交付税の税率の引き上げ等も今回実施を見る予定になっておれます。(拍手)
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○議長(清瀬一郎君) 太田一夫君。
  〔太田一夫君登壇〕
○太田一夫君 私は、ここに日本社会党を代表いたしまして、ただいま趣旨説明のありました所得税法の一部を改正する法律案及び地方税法の一部を改正する法律案に対しまして、内閣総理大臣、大蔵大臣及び自治大臣に対しまして御質問をいたします。
 まず第一に、総理は、国民所得に対する税負担の割合を、いかなる程度をもって妥当と考えられますのか、お尋ねをいたしたいと思います。
 欧米諸国と比較しまして格段に低いわが国の国民所得を考えますと、本年度、国税において五千億円、地方税において二千億円の自然増収が予測されますにかかわらず、その減税は、国税千百六十四億円、地方税三百十六億円でありまして、増収分に比し、わずかに二一%にしかすぎないのであります。今回の減税は、過去十年間の実績減税率二五%をも大きく下回るのでありまして、物価騰貴、家計費増大の陰に苦しむ国民生活の実情に目をおおうた昭和三十七年度の超大型予算の犠牲に供されたものというべきであります。(拍手)
 税制調査会すら、今次の答申において、各税を通じて、わが国の税負担は、戦前及び諸外国の税負担に比較して、なお相当に重いといっております。その実情をくみ取らず、政府は、自然増収という増税によって景気調整を行なわんとするがごとくであります。まことに遺憾千万といわざるを得ません。国民生活の安定向上と国民経済の発展のために、租税負担率を高めることなく、常に大幅減税を断行し、予算規模を縮小して、およそ二0%の税負担率をもって押えるべきであると思うが、お考えのほどを伺いたいのであります。(拍手)
 第二に、地方財政確立の根本方針について、大蔵大臣並びに自治大臣はいかなる具体案をお持ちであるか、お伺いをいたしたい。
 政府は、国と地方団体間の税源配分の適正化をはかるとの名のもとに、所得税のほんの一部の二百億足らずを道府県民税に移譲するとのことであるが、これをもって地方の自主財源がいかほど充実するとお考えになったのであるか。今回の税制の改正は、百九十八億円の所得税を県民税に移し、たばこ消費税を一%ずつ、七十六億円を増額し、そのかわりに、入場譲与税百七十億円を全額取り上げてしまい、地方税全体から見れば三百十六億円の減収としたものであって、自主財源の強化など、思いも寄らぬ結果となっておるのであります。
 政府は、言葉では地方自治の確立、地方財政の強化をうたっていますが、実行されるものがありません。今日、なお財政再建団体として赤字克服にあえいでいる地方団体は十九府県、百五十九市、三百三十三町村の多数に上っております。再建団体ならずとも、人件費を切り詰め、物件費を削り、建設的公共事業費をも極力圧縮し、学校、道路、橋梁等の施設の補修改善を放置して、ようやくつじつまを合わせているのであります。地方団体の職員の給与は、国家公務員のそれよりも低く、行政水準の引き上げどころか、引き下げのやむなき状態にあり、はなはだしきは公共事業費補助金返上論さえ生じている実情にあるのであります。(拍手)しかも、国家の経済基盤強化のために、公共投資計画に必死になって協力している実情にかんがみますならば、自然増収があるだろうとか、受益者負担金を取ったらどうだなどの無施策に頼らず、また、地方交付税、たばこ消費税の出し惜しみなどせず、この際それぞれ三0%に引き上げ、懸案の消防施設税を創設し、起債の自由化を実現する等の積極策を打ち出すとともに、入場譲与税の取り上げ等の無謀な方針は、この際中止さるべきであると思いますが、お考えはいかがでありますか。
 第三に総理にお尋ねしたいことは、予算と地方財政計画との関連であります。
 すでに予算審議はその総括質問を終わったというのに、地方財政計画はようやく本日委員会に提出されたばかりでございます。国と地方と表裏一体をなす地方財政の軽視、まことに大なるものがあると申すべきであります。そもいかなる理由と見地によってかかる取り扱いをいたされるのでありますか、伺いたいのであります。(拍手)
 国の予算は、表面上まことに大規模でありますが、実質的には地方予算こそさらに大きいのであります。昭和三十六年度国の実質租税収入配分金額は九千七百八十一億円、これに対しまして地方は一兆六千四百七億円、すなわち税金は、国が七割、地方が三割を徴収しますが、その使用は、地方団体が六割、国は四割となるのでありまして、地方財政こそ真の日本の財政の眼目であると申すべきであります。もちろん、国の予算のきまり方によって地方財政も定まることでありますから、国の予算を軽しとは申しませんが、地方自治団体の予算、財政をいかにするかを念頭に置かずして、一方的な補助金、負担金、交付金をきめるという態度は、本末を誤った考え方と申さねばなりません。何ゆえに予算案と同時に地方財政計画をお出しにならないか、その理由を承りたいのであります。
 第四に、所得税の減税とその一部を県民税に移譲し、県民税の徴収方法を改悪して、二段階比例税率とされたことに関して、総理、大蔵大臣並びに自治大臣に承りたい。
 このたび政府は所得税の減税をしごく小幅に実施されようとしています。千七百四十三億円の自然増収分をまるまる減税すべしとは申しませんが、わずかに五百十三億円、五人家族で給与者年収四十一万円、事業者三十一万円までを非課税としたことも小幅に過ぎましょう。税制調査会の答申を待つまでもなく、今日の物価高と重税にあえぐ国民のために、生活費には課税をしないという原則に立ち、五人家族年収五十万円、事業者にあっては四十五万円までは当然に非課税とすべきだと考えますが、いかがでございますか。
 また、所得税の一部が県民税に移され、二段階比例税率の課税方式を採用されることは重大であります。所得税は応能主義により、住民税は負担分任の精神によって賦課されて参りました。特に零細な所得者にまで住民税は遠慮なく重くかかり、その負担のされ方はまさに逆進的であって、現状においてさえ大衆課税的非難を受けていたのであります。しかるに、今回の改正によると、県民税は悪平等に二%を賦課されることになり、逆進性をますます強化されたのであります。すなわち、所得税の地方住民税への移譲を契機としまして、上に軽く下に重い、低額、零細所得者にとってはまさに苛斂誅求、重課重税政策が開始されたものと見なければならず、地方住民大衆の嘆きのほども思いやられるのでございます。政府は何ゆえに減税精神を忘れ、改むべきでもない累進課税方式を捨て去られたのでありますか、総理の明快なるお答えをいただきたい。(拍手)
 また、県民税を比例税率によって増収をはからせるよりも、交付税、譲与税の増額と傾斜配分によることこそ、財源強化並びに地域間不均衡の是正になるのではないかと考えますが、この点について大蔵大臣及び自治大臣のお考えを承りたいのであります。
 なお、県民税を二段階比例税率によって徴収するとだしますと、市町村の県民税徴収についての費用ははなはだしく大となり、その負担にたえがたくなるものと思われますが、この点について、市町村に犠牲を負わせることは絶対にないか、自治大臣のお考えを承りたいのであります。
 第五に、料理飲食等消費税について、自治大臣にお尋ねいたします。
 昨年は、外人観光客に対する料飲税非課税制度をめぐりまして、地方税法、地方財政計画の策定がおくれたことは印象に新しいのでありますが、本年は料理飲食税の根幹である高級料亭、キャバレー等におけるぜいたくなる遊興飲食を大衆飲食と同一視し、大幅なる減税を行なうとのことでありますが、不可解しごくであります。承るところによりますと、高級飲食に対する税金はなかなか徴税しがたく、収税率三0%と評されていると聞きますが、公給領収書の軽視を改むることが先決でありますのに、にわかに高級飲食税大幅減税とは、まことにうなずけないのであります。いかなる理由によるものか承りたいと思います。
 また、本年も外人旅客に対する宿泊税非課税を継続すべしとの論が主張されまして、その勢力は内閣提出の地方税法の一部改正案を不満として、外客誘致臨時措置法案なるものを強引に制定せしめんとの動きをしているやに承りますが、本件は昨年限りで廃止されるものと決定していたはずであります。あわせて自治大臣の所信のほどをお聞かせいただきたいのであります。
 第六に、鉱産税の軽減に関しまして自治大臣に伺います。財政力乏しい市町村におきましては、先年来、鉱産税の減収が財政力の極度の低下となることをおそれ、反対の態度をとって参ったのでありますが、このたび政府は、
〇・八%軽減税率制定に踏み切られました。炭鉱界不況のもと失業対策、生活保護に莫大なる費用を必要とする産炭地弱小市町村の財政に大いなる影響を及ぼさずにはおかないでありましょう。もし確固たる財政対策のないままに減税を強行されるとしましたら、住民の負担ますます過重に、行政水準いよいよ低下の一途をたどること必至であります。この際、政府は、困窮する産炭地等の市町村には臨時特別交付金を出し、または国庫負担金の増額を措置する等、即時適切なる財政援助をなすべきであると思いますが、御方針を承りたいのであります。
 第七に、農地に対する固定資産税を軽減すべき御意思がありますかどうかについて、自治大臣にお尋ねをいたします。
 農家所得と工業所得との不均衡は、つとに指摘されて参ったところであります。このたび政府は、固定資産評価審議会を中央、地方に設置する方針をおきめになりました。それは別として、農地田畑に対する固定資産税は、イギリスにならえばこれを全廃することとなりますが、少なくとも田畑の価格か名目価格であることにも照らし合わせ、三分の一程度の引き下げを行なうべきことが急務であると考えられますが、御方針はいかがでありますか。申すまでもなく、評価がえを行なうことによって農地の固定資産税の増徴をはからんとするがごときは、時代逆行もはなはだしいものでありまして、万一にもかかる施策を行なわれるとは思いませんが、自治大臣の考えを承りたいのであります。
 次に、地方住民の税外負担をいかにすべきかについて、総理の御見解を承りたいと思います。
 住民税は、収入少なき者にも、住民なるがゆえに、負担分任の名のもとに過重な負担を背負わされています。さらに、その上に、自発的という名前で道普請までやらされています。受益者負担の名のもとに多くの寄付金をも命ぜられております。今日これら寄付金、PTA会費、町内会費、部落協議費等の税外負担は七千億円に近く、一世帯当たり三千円をこえるとさえいわれているのでありまして、財政法その他関係諸法の抜本的改正を行ない、不当な住民負担を解消することは、まさに焦眉の急というべきであります。
 法治主義国家においては、国も地方団体も、法令に基づく公共的事務や事業に要する経費は、租税等、法令に定められた収入によってまかなうことを求められているはずであります。国会においても、多額に上る住民の税外負担を解消し、公費をもって支弁すべき経費に対しては財政措置をすること、という決議も行なっているのでありますが、いまだに土木、教育、消防、経済、産業関係に多額の税外負担を求めているのは、法律による行政の原則に反するものであって、すみやかにこれを規制し、廃止し、かわるに財源を与え、もって国民生活の向上をはかるべきであると考えますが、総理の御所信を承りたいのであります。(拍手)
 最後に、国税通則法に関しまして大蔵大臣にお尋ねをいたします。政府は、燎原の火のごとき反対意見の燃え上がりを知りつつ、なお国税通則法制定の意図を固執しつつあるやに承りますが、徴税攻勢の強化と税務行政独裁化の危険性を持つといわれている法律を何ゆえにさほどまでこだわり、急がなければならないのか、意図のほど疑いなきを得ないのであります。反対の声は、ただ個人市民、中小企業団体ばかりではない、専門家、学者の集まりである日本税法学会まで声を大にして反対を唱え、慎重に検討されるよう要望しているのであります。租税正義に徹し、主権者国民のための税基本法たることをこいねがう世論にこたえ、拙速主義を捨て、慎重に検討を重ねられることとし、無理やりに本国会に提出するがごとき暴挙は、この際慎まれるべきであると信じますが、大蔵大臣のお考えを承ることといたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 御質問の第一点は、国民所得に対しまする税負担割合の問題でございます。この税負担の問題につきましては、全体の所得の量、また、一人当たりの所得の量、また、その所得の階級別等の調査をいたしまして適正を期せなければならぬことはもちろんでございまするが、わが国の状態から申しまして、国土の保全を含みます公共投資、あるいは社会保障制度の拡充、文教の刷新等、いろいろ経費がかかるのでございます。私は、こういう点を考えまして、従来減税をやってきたのでございます。昭和二十四年以来のわが国の減税は一兆円をこえるような減税でございまして、各国にその例を見ない状態であるのであります。私は、減税につきましてはだれよりも努力して参ったのでございまするが、先ほど申し上げましたように、文教とか、あるいは社会保障制度の拡充、国土保全等、歳出面を考えまして、徐々に減税をやっていくべきだと考えております。しこうして、今、日本では、国民所得に対しまして二0%、こういう説がございまするが、これは、私はとらわれる必要はございません。二二%前後が今の状態では適当かと考えます。先進国のそれに比べますと、われわれは、相当低いと考えているのであります。
 次に、予算と地方財政計画との問題でございまするが、すでに御承知の通り、地方財政計画は、国の予算がきまりましてから後に計算する建前になっておるのであります。それが実情でございますので、本年は予算の総括質問中に財政計画ができたということは、従来よりもよほど早いことであると私は考えておるのであります。
 次に、府県民税の税率を累進税率から比例税率に改めた、これは改悪ではないかというお話でございますが、これは府県民税の負担分任の性質から申しまして、累進税率よりも比例税率の方がいいということは学者の定説であるのでございます。私は進歩だと考えております。
 次に、市町村の負担に属する経費を一般国民の拠出によるということはよくない、お話の通りでございます。従来、政府もこの点に意を用いておりましたが、なおこういう弊害が行なわれておりますので、本年度からは特別に調査費を出しまして実情を調べ、今後そういうことのないように努力いたしておるのであります。
  〔国務大臣水田三喜男君登壇〕
○国務大臣(水田三喜男君) 所得税の減税が幅が狭いという御意見でございましたが、その通りでございます。これは、本年度の所得税の減税は、昨昭和三十六年度の減税と体系的に一体をなすものでございまして、この両年度の減税を見ましたら、所得税は千四百億円ぐらいに上っております。今年は所得税を改正する方に重点を置いておりませんで、御承知のように、間接税に手を触れるという方針でございましたが、先ほど御説明いたしましたように、所得税を一部地方に移譲するということから、さらにもう一歩の所得税の減税をしないと国民負担がふえるというような問題もございましたので、今年さらに五百十三億円の減税をしたということでございまして、これは両年度にわたって考えてみていただきたいと思います。先ほど提案理由を説明するときに、二万円くらいの引き上げで――私も提案理由の説明を読んでおりまして、あまりいばれない気持を持っておりましたが、今言いましたように、二年間を見ましたら、たとえば、先ほどの標準家庭を見ますと、昭和三十五年度の三十二万円というものが今度四十一万円に上がっておりますし、青色申告の事業所得者の例をとりますと、三十万円から三十九万円に引き上げられておるというふうに、二年間の所得税の減税は非常に大幅なものになっておりますので、この点御承知願いたいと思います。
 それから、地方財源の問題でございますが、先ほど申しましたように、税だけではなかなか解決できません。ですから、本年度は、収入の伸びが非常に乏しい入場税と、収入の伸びの多い税源との取りかえが行なわれたのでございますから、これによって地方財政が相当強化すると思います。しかし、お説のように、これだけでは不足でございますので、財政面におきましても補助金の傾斜配分という制度もとりましたし、また、本年度は交付税率の引き上げも行なった次第でございます。
 それから、国税通則法について税法学会でも非常に反対があるというようなお話でしたが、この反対は全くございません。と申しますのは、現行税法が非常に複雑難解で、各税法ともそれぞれ共通の手続でありながら、税法ごとにこの手続が重複してみな入っておりますために非常に難解である、何とかこれを整備して、わかりやすい税制にしてくれないかというのが国民の要望でございまして、私どもは、この要望にこたえて、今回各税法の中から共通的な手続法みたいなものは全部抜き出して国税通則法を作ろうというのでございますから、これは国民にとって非常にいいことであっても、反対される理由はどこにも私はないと思っております。先日来、労働組合の方もこの税法に反対だとしばしば陳情に来ますから、内容を説明しますと、大ていそれならけっこうだと言って帰っていくのが現状でございます。(拍手)
  〔国務大臣安井謙君登壇〕
○国務大臣(安井謙君) たばこの消費税を三0%にしてはどうかというお話でございますが、これは地方財政の上から考えますれば、多々ますます弁ずるというものではございましょうが、現在の財政収支から申しまして、交付税の増額、あるいは地方税の自然増、かく考え合わせますと、今度の二%増額の二一%程度で収支バランスは立つものと心得ております。
 なお、県民税を徴収します際に、市町村に委託をいたしまして、これが非常に犠牲を与えないかという御懸念でございますが、これにつきましては、十分と税制改正の趣旨を徹底させまして、さらに必要な手数料につきましては、十分これを見るということで処理をいたしたいと存じております。
 飲食等消費税の変更につきましては、御承知の通り、従来、税率が場所別、業種別によっておりましたのが、これは措置上非常に不便を生じます、混乱をいたしますので、今度は従価主義にこれを変えた次第でございます。
 外人旅客の課税につきましては、仰せの通りの処置にいたしております。
 鉱産税につきましては、これは中小企業の、ことに石炭業等の企業家に対する税負担を軽減いたしたいということで、若干の減税を行なったのでございまして、この減収分につきましては、交付税の方で十分めんどうを見る用意をいたしております。(拍手)
○議長(清瀬一郎君) 以上をもちまして、二案の趣旨の説明に対する質疑は終了しました。
     ――――◇―――――
 新産業都市建設促進法案(内閣提
  出)の趣旨説明
○議長(清瀬一郎君) さらに、内閣提出、新産業都市建設促進法案の趣旨の説明を求めます。国務大臣藤山愛一郎君。
  〔国務大臣藤山愛一郎君登壇〕
○国務大臣(藤山愛一郎君) 新産業都市建設促進法案の提案理由とその要旨を御説明申し上げます。
 わが国の経済が近時目ざましい発展を遂げつつあることは御承知の通りでありますが、今後引き続いて安定した経済成長を維持するためには、なお解決すべき幾多の課題をかかえているのであります。
 なかんずく、京浜、阪神等の既成の大工業地帯における人口及び産業の過度の集中は、いわゆる過大都市化の問題として、工業用水の枯渇や地盤沈下等、生産面への弊害のみならず、住宅難、交通難等の生活面にまで深刻な弊害を惹起しつつあり、また、既成工業地帯へのこの集中傾向は、同時にそれ以外の地域との間にいわゆる地域格差を生ぜしめる原因となっているのでありまして、これらはわが国経済の均衡ある発展に重大な阻害要因として作用し、早急に総合的な対策を講ずることを必要としているのであります。
 以上のような地域的課題を解決する方策の一つとして、前国会において、いわゆる低開発地域における工業の開発を促進するため、低開発地域工業開発促進法の成立を見たのでありますが、さらに、全国的な視野に立った適正な産業配置の構想のもとに、産業の立地条件と都市施設の整備をはかることにより、新たに相当規模の産業都市を地方に建設することが特に緊要と考えられるのであります。この対策は、既成大都市の過大都市化の誘因を減殺し、地方の産業や人口が既成の大都市へ流出するのを防いで、そこに定着させ、また新産業都市が中核となってその地方の開発に大きな波及的効果をもたらすという点で、地域格差是正の有効な手段たり得るものと考えるのであります。
 本法律案はこのような趣旨から、地方の開発発展の中核となるべき新産業都市の建設を促進するため、所要の措置を講じようとするものであります。
 次に、この法律案の要旨を申し上げます。
 第一点は、内閣総理大臣は、関係都道府県知事の申請及び経済企画庁長官等関係大臣の要請に基づき、新産業都市建設審議会の議を経て、大規模な新産業都市となる可能性を備えている区域を新産業都市の区域に指定し、新産業都市の建設に関する基本方針を指示するものとしたことであります。
 第二点は、区域の指定を受けた場合は、関係都道府県知事は、新産業都市建設協議会の意見を聞いて当該区域にかかる建設基本計画を作成し、内閣総理大臣に承認を申請するものとしたことであります。
 第三点は、内閣総理大臣の諮問に応じ、新産業都市の建設の促進に関する重要事項を調査審議するため、総理府に新産業都市建設審議会を置くものとし、また、新産業都市の区域の属する都道府県に建設基本計画の作成等について調査審議するための機関として新産業都市建設協議会を置くものとしたことであります。
 第四点は、国及び地方公共団体は、建設基本計画の達成のため必要な施設の整備を促進することに努めるとともに、またこれらの施設の用に供するため必要な土地の取得につきましては、公有水面埋立法等の規定による処分にあたり特別の配慮をするものとしたことであります。なお、建設基本計画を達成するために行なう事業に要する経費に充てるために起こす地方債についても、特別の配慮をするものとしたことであります。
 第五点は、国及び地方公共団体は、新産業都市の建設に寄与すると認められる製造事業、運輸事業等の事業を営む者が必要とする資金の確保に努めるものとしたことであります。
 第六点は、地方公共団体が、新産業都市の区域内に工場を新増設する者に対して不動産取得税または固定資産税の減税をしたときは、当該地方公共団体に交付される地方交付税の算定の基礎となる基準財政収入額の算定につき特別の措置を講ずるものとしたことであります。
 第七点は、新産業都市の一体的な建設を促進するため、関係市町村は、合併により、その規模の適正化に資するよう配慮するものとし、合併に際して議会の議員の任期等に関する特例を設けるものとしたことであります。
 以上がこの法律案の提案理由及びその要旨であります。よろしく御賛同願います。(拍手)
     ――――◇―――――
 新産業都市建設促進法案(内閣提
  出)の趣旨説明に対する質疑
○議長(清瀬一郎君) ただいまの法案趣旨の説明に対しましても質疑の通告が出ております。これを許します。兒玉末男君。
  〔兒玉末男君登壇〕
○兒玉末男君 私は、ただいまの新産業都市建設促進法案の趣旨説明に対し、日本社会党を代表いたしまして、十六点につきまして質問をいたさんとするものであります。
 ただいま提案説明におきましても明らかにされました通り、最近の大都市における人口の急増はきわめて憂慮すべき段階に立ち至っておるのであります。現在に至ってようやくこの法案が提案されましたことは、明らかに、自由民主党政府のとった大企業中心の高度経済成長政策によって生じた経済力の格差、人口、産業、文化の大都市への集中、後進地域の公共施設の立ちおくれ、雇用の不安定等々の幾多の失政によるものであり、池田内閣の重大なる責任といわざるを得ないのであります。(拍手)このことを前提といたしまして、総理大臣を初め関係各大臣に対しお尋ねをいたしたいと存じます。
 まず、新産業都市は、その地方の開発、発展の中核となるべき都市であるから、将来産業及び人口に対して十分な吸収力のある大規模な都市として建設されなければなりません。そのためには、工業を中心とはいたしますけれども、さらに広く各種産業発展の基盤となる諸施設や、文化、教育、厚生、その他都市生活に必要な諸施設を整備し、地域住民の福祉の向上を実現すべき総合的な都市的機能を持つものとして考えるべきであり、これをどのようにこの法案の中に生かしているのか、お答え願いたいのであります。
 第二に、新産業都市の建設は、関係地方公共団体の組織並びに運営の根幹に関するものであり、かつその事業は主として地方公共団体の手によって実施されるものであります。従って、その区域の指定、計画の作成については、都道府県知事がイニシアチブをとる建前が適当かと思います。さらに、計画作成の段階においては、関係地方公共団体の意見を徴するなど、地域住民の意見がよりよく反映されるよう考慮することも必要であり、また、全国的な視野に立つ産業立地政策とは、その調整において相当の困難が予想されるわけでありますが、これに対する対策はどのようにお考えになるのか。
 さらに、産業の配置は、国の責任において計画的に行なうべきでありますけれども、本法案は計画性を欠き、国で行なうところの助成策がきわめて抽象的であり、地方自治体を企業に奉仕させる危険性を包含するものであります。その懸念は、はたしてないかどうか。
 さらに、区域の指定にあたりましては、国土総合開発法第七条の規定による全国総合開発計画に適合するようにされるべきでありますが、この点についてどのような考慮が払われておるのか。国土総合開発法が昭和二十五年に最終的な改正がなされましてから、今日すでに十二年間経ておるにもかかわりませず、いまだにこの七条による総合開発計画がなされておらないのは、企画庁長官のきわめて重大な責任であろうと私は存ずるものであります。(拍手)
 この法案中、最も重要な条項であります第一条の目的に関連してお尋ねいたします。本案には既成工業地域そのものの規制措置がなく、大都市改造の構想が全然織り込まれておらないのであります。既成の四大工業地帯の工場密集地帯は、すでに飽和状態に達しておりまして、とのことが社会的に各種の弊害を与えていることは、ただいま提案説明の中にも明らかにされた通りであります。この状況からいたしましても、当然この地域における工場の新築、増築等は禁止または規制するなどの措置を織り込むべきだと考えますが、これについてはどのような措置をされるのか。
 また、指定の要件等から見ますと、工業に片寄っている感がいたしますが、半ば慢性化した不況地帯あるいは立ち遅れている農村内陸地帯や、さらに、地場産業、農産加工業の育成など、所得格差の是正を要するものに対しては、いかなる考慮がなされておるのか、伺いたいのであります。
 さらに、地方の中心都市の工業立地条件の整備を無計画に先行させまして、地方財政を圧迫している現状をどのように考え、またこれをどのように処理されようとするのか。
 さらに、地域経済開発について、地方自治体の責任と負担をいたずらに重くし、その結果教育、社会福祉など、地方自治体本来の仕事をおろそかにする傾向を助長する懸念がございますが、これに対する処理はどのようにされるのか。
 さらに、地方税の不均一課税の問題でありまするが、不動産取得税または固定資産税等の軽減免などの特別措置は、地方財政の根本をゆるがす重大な問題でありますが、関係当局は、責任を持って処理する自信があるのかどうか、お伺いしたいのであります。
 次に、新産業都市の建設促進をはかるために、必要な資金の確保に努めなければならないと規定をされておりますが、この表現はきわめて抽象的でありまして、積極的に取り組む意欲がないものと断ぜざるを得ません。肝心の必要な資金は、その財源をどこに求めるのか。一体この資金源はどこにあるのかを明らかにしていただきたいのであります。
 次に、区域の指定についてお尋ねいたします。
 これは、基本方針、一定の基準等に基づいて指定がなされるわけでありますが、申請を通じまして、いろいろの要素が複合し、基本方針が骨抜きにされる可能性を多分に持っているのであります。これが指定にあたって、各省間の調整に自信があるのかどうか、また主務大臣はだれになるのか、主務大臣は基本方針が完全に生かされるような責任を持てるかどうかについてお答えをいただきたいと思うのであります。
 次に、基礎調査についてお伺いをいたします。
 新産業都市建設の中核をなします区域の指定、建設基本方針の指示のため必要な基礎調査を行なうことが義務づけられておりますが、建設省の広域都市計画調査、自治省の地方開発関連調査、通産省の工場立地調査など、との調査は何年度を最終目標としているのか、調査完了の見通しと、予算の裏づけ等、具体的な構想について、関係大臣並びに経済企画庁長官の責任ある答弁を求めるものであります。
 次に、総合的な産業立地計画の必要性について、総理の所信をただしたいと存じます。
 日本を訪れました外国の経済、地理、交通学者のほとんどが一致して、この問題が無計画に野放しにされていることを指摘しておりまするが、昭和三十五年春訪日いたしました全米企画協会のコルム博士は、日本政府の国民所得倍増計画を達成するためには、産業の立地計画が必要であり、立地計画なしに人口過剰の島国で所得倍増計画を実施しようとしても、いたずらな混乱と隘路を招くだけだと指摘をしております。また、三十四年に訪日しましたロンドン大学の地理学教授ワイズ博士も、工業都市が不均衡に発展しないようにある程度の統制が必要だ、日本では都市計画や県計画などはあるが、全体的な産業立地政策の指導原理を確立することが必要だということを指摘をいたしております。産業立地の重要性、特にその総合性、長期計画性が強調されながらも、政府によって作成されましたところの今までの長期経済計画においては、この産業立地問題が取り上げられておりません。総理は、新産業都市建設促進法を今日ようやく提案をされましたが、この重要施策を現在まで放置しました理由と、本法案のように問題点を数多く含んだ法律によって所期の目的を達成できる自信をお持ちかどうか、御答弁を要求する次第であります。
 以上、この法律の持つ問題点について質問申し上げましたが、今指摘いたしましたように、多数の是正を必要とすること、そうして、その実施にあたっての具体的な実施段階に全然触れておらないということ、これでは国民の期待にこたえることはとうていできないと存ずるものであります。先進国であるイギリスにおきましては、第二次世界大戦後いち早くニュー・タウン法(新都市法)、都市開発法、工業適正配置法、都市計画法等の制定並びに法改正を行ない、一九五四年の九月末までのわずか九カ年の間において、新開発地域に二千百十工場、六千八百九十万平方フィートの建設を行い、二十四万の労働者を吸収したといわれますが、これがいかに工業並びに人口の大都市集中を緩和しておるかをうかがい知ることができるのであります。ここに先進国の例を申し上げるまでもなく、日本社会党におきましても、さきに産業と雇用の再配置法案要綱を提出いたしまして、建設省を中心とするところの国土開発省なり、あるいは後進地域開発のための開発公社等の設置を基準にいたしまして、地域間格差の是正、地域における安定した雇用と生活水準の維持を中心にした方針を打ち出しておりまするが、国民生活安定のために急速かつ効果的に過大都市改造と地方開発を促進し、均衡のとれた国民経済の発展をはかることが必要なことをここに強調いたしまして、私の質問を終わる次第であります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 政府は昭和二十五年国土総合開発法を設けまして、いろいろ総合開発につきまして努力をいたしてきましたが、お話の通り、その効果はあまり上がりません。これは何と申しましても、食糧その他の関係また産業の立地条件が経済の激動によりましてはっきりしなかった点もあると思います。しかし、今の状態、すなわち人口の都市集中、あるいは低開発地域の早急な経済開発等々から考えまして、政府は、今回新産業都市建設促進法を出し、そうして今後全国的視野に立ちまして産業の立地条件を検討すると同時に、でき上がった都市の施設整備等を考えまして、人口の集中の防止と同時に低開発地域の開発、そうして国民所得の格差を解消しつつ、全体としての上昇をはかっていこうといたしておるのであります。これは今外人の話がございましたが、外人の意見を聞くまでもなく、どうしてもわれわれとしては早急に新都市を作り上げ、そうしてわれわれの所得倍増計画を達成しようといたしておるのであります。
 御質問は非常に多岐にわたっておりましたが、その他の点は関係当局からお答え申し上げます。(拍手)
  〔国務大臣佐藤榮作君登壇〕
○国務大臣(佐藤榮作君) 私に対するお尋ねは、工場立地調査は何年度で終了するか、またその予算は幾らか、こういうことであったかと思います。
 三十三年以来、工場立地調査としてもうすでに二百十六カ所調査をいたしました。三十七年度も四十カ所調査するつもりで予算を要求して千六百万円が計上してございます。
 ところで、この調査は最も新しい資料を必要とすることは申すまでもないところでありますし、また、一たん調査いたしましても、さらに再調査の必要がございます。そこで、ただいまのところは、すでに調査いたしましたものも一年置きに補正調査するということになっております。従いまして、この制度は何年度で完了するというものでないことを御了承いただきたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣藤山愛一郎君登壇〕
○国務大臣(藤山愛一郎君) お答えを申し上げます。
 この法律でもって工場の用地であるとか、工場用水であるとか、あるいは上下水道であるとか、重要な新産業都市に適切な施設について規定をすることはむろんだろうけれども、しかし、文化、教育というような面について配意する必要はないのかという御質問であったように思います。
 むろん相当規模の都市を建設いたします以上は、単に工業の立地の要件を整えるばかりでございません。文化、教育の全般の施設についても、新都市としての十分な機能を発揮するような面に留意して参らなければならぬことは当然でございまして、われわれは、この案の基本計画を実施して参ります上において、その点関係各省大臣と十分協議をして進めて参りたいと思います。
 なお、指定が総花的に陥ることはないかということでございます。地方の御要望も相当多数あるかと思いますけれども、こうした点については、適正な配置を考えて、そうして適正に指定をしていくことが必要でございます。新産業都市建設審議会によりまして厳正な御協議を願って、そうしてなお、政府といたしましても、各省緊密な連絡をとって、この指定が適正に、総花的でないように行なわれるよう努力して参りたいと思います。
 また、御質問の中に、非常に抽象的ではないかということでございますが、法律に作りますと、抽象的にならざるを得ないところもございますけれども、しかし、実施計画、基本計画を作りますその際に、現実的な実行方面を十分考慮して取り入れていくことによりまして、その完璧を期して参りたいと思います。
 また、全国総合開発計画のその後はどうなっているか、及びその関係はどうかという御質問でございます。御承知のように、全国総合開発計画はおくれましたけれども、昨年七月に草案を作りまして、ただいま草案について意見を求めておるわけでございまして、三月末各方面の意見が出そろったところでこれを確定して、そうして案を策定して参りたい、こう思っております。
 なお、この法律には、総合開発計画に適合しなければならないということが、第五条二項に規定しておるのでございまして、全国総合開発計画と抵触しないように、条文の上からも処置するようになっておるのでございます。
 四大工業地帯と申しますか、東京その他過大都市の防止について、この法案に規定がないじゃないかということでございますが、この問題は各方面重要な問題でございまして、この法の中には規定をいたしておりませんけれども、別の法体系によりまして、今日、過大化防止の方法を進めることに努力をいたしておるのでございまして、その点は皆さん方の御了承をいただけることだと思います。
 なお、工業偏向であり、あるいは農村地帯その他についての発展を考慮していないじゃないかという御趣旨でございますが、さきに国会を通過いたしました低開発地域工業開発促進法によります低開発地の開発というものが、御指摘のような農村方面地帯の開発あるいは低開発地域の開発ということになっておるのでございまして、これと相関連して、これらの法律の運用によりまして、今お話のようなことが進められていきますし、また、産炭地振興法その他諸般の法律によって、そういう農村地帯あるいは特殊の産業地帯の問題を解決していくことになろうかと思います。
 以上申し上げましたが、さらに、先行投資によって過去において著しく損害をこうむった都市があるが、そういうことが起こらないかということでございますが、今回は十分な計画を策定いたしまして振興して参りますので、先行投資によって何か地方財政が影響をこうむる、あるいはせっかく整備したところが活用できないようなことには陥らないようにと信じておりますし、また、そうせざるを得ないのでございます。(拍手)
  〔国務大臣水田三喜男君登壇〕
○国務大臣(水田三喜男君) 新産業都市建設のための資金源についてのお尋ねでございましたが、道路、港湾、工業用水道、住宅、下水道、こういうものについては、公共事業費等の予算を通じて行ないますし、工業用地、用水、鉄道、水道、住宅用地というようなものにつきましては、財政投融資の資金が充てられることになっております。
 そこで、公共事業費につきましては、すでに現行制度によって国と地方との負担区分がもうはっきり確立されておりますし、さらに昨年度から、後進地域開発のために公共事業にかかる国の負担割合についての特例法が通過いたしましたので、これに基づきまして、今後補助金の傾斜配分を行なっていくことにいたしますれば、御心配になるような地方財政の特別の圧迫になるというような事態は避けられるのではないかと考えております。(拍手)
  〔国務大臣中村梅吉君登壇〕
○国務大臣(中村梅吉君) お答えいたします。
 建設省においても広域都市建設計画調査というのをやっておるが、これはいつごろ完了する予定かという御質問でございます。建設省が目下やっておりますこの調査は、やがて本法によります新産業都市建設の重要なる基礎的な資料になると思いますので、極力速度を早めてやって参りたいと思いますが、現在の予定といたしましては、すでに御承知の通り、中京、阪神、北九州等の大都市地域の問題は別としまして、地方開発の調査対象としまして五十四地域を目標にいたしまして、昭和三十六年度に二十カ所の調査を完了する予定で目下進めております。さらに、昭和三十七年度二十カ所の調査を完了し、三十八年度に残りの十四カ所の調査を完了いたしまして総くくりをいたしたい、かような予定で進んでおります。経費の関係としましては、昭和三十六年度は調整費を含めまして二千八十四万円でございます。三十七年度もこれ以上の額を投じまして、この調査を継続して参る予定でございます。
 なお、もう一点、私の所管に若干関係がございますので申し上げておきますが、大都市地域の新産業都市の建設を促進していくためには、大都市地域について工場等の増設、新設等について抑制措置を講ずべきではないかということでございました。この点につきましては、企画庁長官から、この法律そのものでなしに、別途並行して研究すべき課題であるというお答えがございました。これは首都圏関係としましては、御承知の通り、首都圏の既成市街地――東京及び川崎等の既成市街地につきましては、すでに工場、学校等の新増設に関する抑制の法律を作りまして、実施中でございます。さらに、今国会におきまして、この抑制のワクをもっと強化いたしたい、かような立法措置を講ずるようにいたしたいと目下考えておるわけでございまして、この新産業都市建設と関連をいたしました大都市地域、人口の過度の集中を憂えられておるような地域につきましては、この法律そのものとは別の角度で考慮すべきものではないか。私どもも、企画庁長官と同じように考えておるような次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣安井謙君登壇〕
○国務大臣(安井謙君) 地方財政を圧迫するのではないかという御懸念につきましては、先ほど大蔵大臣の御答弁の通りで、そういった懸念のないよう十分戒心をして参りたいと思っております。
 なお、地方の民意を無視して、一方的に押しつけになるのじゃないか、こういう御懸念に対しましては、御承知のように、この法案が、まず地方の道府県の知事が関係団体と十分協議をいたし、その議会の議決によって申請をする、こういう建前になっておりますので、そういった御心配は不要であろうと存じております。
 なお、地方税の不均等課税になるおそれがある、こういうお話でございます。これは確かにそれぞれの地域の特殊性、団体の財政の状況に応じまして、そういった不均等の場合は出てくると思います。これが非常に乱費にならない、非常に乱れないように十分監督をいたしますと同時に、減税をいたしました分につきましては、これが合理的なものであれば、地方交付税で十分補てんをする、こういう建前にいたしております。(拍手)
○議長(清瀬一郎君) 以上をもって、新産業都市建設促進法案の趣旨説明に対する質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
 日本国に対する戦後の経済援助の
  処理に関する日本国とアメリカ
  合衆国との間の協定の締結につ
  いて承認を求めるの件の趣旨説
  明
○議長(清瀬一郎君) 次に、日本国に対する戦後の経済援助の処理に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件の趣旨の説明を求めます。外務大臣小坂善太郎君。
  〔国務大臣小坂善太郎君登壇〕
○国務大臣(小坂善太郎君) 去る九日東京において署名されました日本国に対する戦後の経済援助の処理に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について御承認を求めるの件に関し、趣旨の説明をいたします。
 御承知の通り、ガリオア等、米国の戦後対日援助の処理は、アメリカとの間の多年の懸案でありまして、米国は、わが国と同じくガリオア等の援助をうけた西独に対し、これが解決を申し入れたとほぼ時期を同じういたしまして、わが国に対して昭和二十七年秋、これが解決を正式に要請して参りました。その結果、昭和二十九年夏、本件に関し米国側と数回にわたり公式会談が開催されました。
 その後も、米国よりは、本件の早期解決方につきしばしば要請があり、他方、わが国の賠償問題もほとんど解決し、経済力も比較的向上して参りました今日、わが国の国際信用を高め、かり、日米友好関係を強化する見地からも、本件をすみやかに解決することを適当と考えまして、昨年五月十日、私から在京の米国大使に対し、本件交渉を再開したい旨申し入れ、種々交渉を進めて参りました結果、今般、本件を最終的に処理する協定につき合意を見るに至った次第であります。
  〔議長退席、副議長着席〕
 今回の協定におきましては、米国の戦後対日援助に対する最終的処理といたしまして、わが国は四億九千万ドルを、年二分五厘の利子を付して、十五カ年間にわたり半年ごとに支払うことを規定しております。わが国がこの支払い額及びその支払い方法について米国側と合意いたしましたのは、援助の総額についての日本及び米国の双方計数及び学童給食用、ミルクのごとく、この援助総額から控除すべき各種の項目を考え、かつ、西独のガリオア処理協定の前例などを勘案し、また、韓国及び琉球との清算勘定残高を反対請求権として処理した結果であります。
 しこうして、この四億九千万ドルの支払い方法としましては、この協定の効力発生の日から起算して、半年ごとに十五カ年間にわたって元本及び利子を支払うこととなっており、現実の賦払い額は、当初の十二年間は毎回二千百九十五万ドル、その後の三年間は毎回八百七十万ドルとなっており、元利合計五億七千九百万ドル、二千八十五億円となっております。
 なお、本協定におきましては、わが国はいつでもこの支払い計画を繰り上げて支払うことができ、他方、もし将来経済事情が悪化したような場合には、日米双方協議の上で、支払いを延期するよう取りきめることができることとされております。
 また、この支払いは原則としてドル貨で行なわれますが、米国は総額二千五百万ドルを限度として、わが国に対し円貨払いを要請すべきこととなっております。
 なお、この協定には二つの付属交換公文がありまして、これらは本協定御審議の際の参考として提出してあります。
 その第一は、支払金の使途に関する交換公文でありますが、これにより、わが国が支払う金額の大部分は、発展途上にある諸国に対する経済技術援助の資金として利用されることが期待されるのであります。
 また、その第二は、支払金の一部円貨払いに関する交換公文でありますが、これにより、わが国の支払額のうち、前述の二千五百万ドルに相当する円貨は、日米両国間の教育文化交流のために充当される予定であります。
 以上が本協定並びにこれに付属する文書の概略説明でございます。
 顧みまするに、この米国の援助が提供された終戦直後のわが国の事態はきわめて困難なものでありました。当時、わが国の食糧生産は戦前の半分以下に低下し、国民は未曾有の食糧難に当面していたのでありますが、わが国には食糧や生活必需物資を輸入する外貨はもちろん、外貨獲得の余力もなかった状況でありました。しかも、海外からは数百万に上る復員、引揚者を迎え、国民の食糧対策をいかに進めるかは、わが国民にとってまさに死活の問題であったのであります。このような際、米国が提供した対日援助が、いかにわれわれを勇気づけ、今日のわが国経済復興の原動力となったかは何人もこれを否定し得ざるところであります。(拍手)
 ただ、このような米国の援助は、無償でなされたのではないかと考えられる向きもあるようでありますので、この際、この点につき一言申し上げます。
 当時、援助物資は、連合国総司令部から日本政府あての覚書によって日本側に引き渡されたものでありますが、この覚書には、明瞭に、援助物資の支払いについては、後日これを決定する旨が規定されております。このような経緯からいたしまして、政府は、この援助は将来何らかの処理を要するものであるという意味において、債務と心得ているとの立場を一貫してとって参り、また、国会に対してもそのように言明して参った次第であります。
 御承知の通り、わが国と同様の立場にあります西ドイツは、すでに九年前の昭和二十八年にこの返済協定を結び、さらに、その後繰り上げ支払いまで行なって大部分の債務を履行し、国際信用を高めております。これに対しまして、いまだかつて対外債務の履行を怠ったことがなく、対外信用において、いずれの国にもひけをとらぬわが国といたしましては、この米国の援助に対して返済を行なうことは、矜持ある国民として当然であります。(拍手)しかも、わが国が支払うのは米国が援助した全額ではなくて、その三分の一にも満たない額であります。
 なお、国民の支払いました援助物資の代金は、見返資金特別会計に積み立てられ、昭和二十八年度に産業投資特別会計に引き継がれましたが、その額は約二千九百億円に及び、現在までに多額の運用益を生みつつ、わが国産業の発展と民生の向上に大いなる役割を果たしているのであります。
 ガリオア債務の支払いにつきましては、開発銀行出資金に対する毎年度の納付金と開銀貸付金の約定に基づく回収金及びその利子収入によっても十五年間に十分完済し得るものでありまして、債務支払い後も、納付金のもとになっている出資金はそのまま手つかずに残り、引き続いて収益を生み続けていくわけであります。
 以上申し述べた事由によりまして、政府は、今回の協定は、本件援助に対する解決としてはきわめて妥当なものであると確信いたしております。(拍手)
 以上が、日本国に対する戦後の経済援助の処理に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について御承認を求めるの件についての趣旨の説明でございます。よろしく御賛同を願い上げます。(拍子)
     ――――◇―――――
 日本国に対する戦後の経済援助の
  処理に関する日本国とアメリカ
  合衆国との間の協定の締結につ
  いて承認を求めるの件の趣旨説
  明に対する質疑
○副議長(原健三郎君) ただいまの趣旨の説明に対して、質疑の通告があります。これを許します。戸叶里子君。
  〔戸叶里子君登壇〕
○戸叶里子君 私は、ただいま趣旨説明のありました、日本国に対する戦後の経済援助の処理に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結、すなわちガリオア・エロアについて、日本社会党を代表して、総理並びに外務大臣に質問を試みんとするものでございます。(拍手)
 戦後の食糧事情の窮迫したとき、アメリカより放出された多くの食糧は、確かに日本国民にとっては感謝でありました。だからこそ、国会においては、各党各派の代表が最大の感謝の言葉をこの壇上より発表したのであります。(拍子)
 その言葉の一、二を引いてみますと、「連合国最高司令官は、しばしば輸入食糧を放出されて、わが国民を飢えと困窮から救われました。全国民は、ひとしくこのことを感謝し、その高い人道的精神に感激している。」また、「人類愛に基づいて、国内における食糧を節約されてまで、わが国に多量の食糧を輸入されて、国民を飢餓と窮乏から救った」等、感謝感激を表明したのは実にこの議場であったのであります。(拍手)ところが、同じこの議場から、今になって、あれは借金であった、払わなければならないという声を聞こうとは、だれが一体想像できたでしょうか。(拍手)最大の感謝の表現をした人々は、恥ずかしさで身の縮む思いをするでしょうし、大統領が食糧を送ったのは、日本国民の飢餓を救うための人道的立場というよりは、余剰農作物を売り渡したもので、それが今日では日本が借金としてそれを支払わなければならないと知らされたのでは、いかにアメリカに好意を持とうとする人でも、疑心暗鬼を持たざるを得ないのであります。(拍手)
 政府は、しばしばこの感謝決議に対して、ただでもらってありがとうとは言っていないと答弁しておりますが、当時の決議案と賛成討論をした人の発言の内容のどこに、いずれは返すものとしての心がまえが出ておりますか。出ておらないのであります。(拍手)むしろ私は、日本語で「最高司令官の好意により人道的立場に立って国民を飢餓より救うために食糧を放出してもらった」という言葉の中のどこから、代価を将来払いますという意味が出てくるかを逆に承りたいのであります。(拍手)この考え方は、私のみではありません。国民の大部分がそうであります。そこで政府は、これらの援助が債務性を持っていると考えられる根拠資料を提出してきました。それはいずれも債務と考えるべき根拠が薄く、むしろ国民の目をごまかすために集めてきた資料にすぎません。(拍手)
 いかに占領中のことといえ、覚書すらなくて、アメリカの考え方の書類を出してきて、それによって債務としての根拠を求めようとしております。その一つは、アメリカの一九四七年六月十九日の極東委員会の決定で、降伏後の基本政策が、「日本国の輸出品の売得金は、国民の最低生活水準を確保した後、占領に必要な非軍事的輸入であって降伏以来すでに行なわれていたものの費用に対し支払いをするためにこれを使用することができる」となっており、第二は、一九四七年二月二十日、マッカーサー元帥が米国議会に対し発したメッセージの中で、「援助は慈善行為でなく、また日本国民も慈善を欲していない。」第三は、一九四六年七月二十九日のスキャッピン、すなわち指令書なるものに、援助物資の支払いについては後日これを決定するのただし書きであります。この三つを引用して、対日援助は債務性があると考えられる有力なる根拠資料であるといっております。
 しかし、これはいずれもアメリカの立場から、アメリカの考え方を述べたものを集めてきたにすぎません。(拍手)これらの資料で日本国の債務をきめる重大な資料とするならば、なぜこの当時日本の考え方なり意思表示を残しておかなかったのですか。今になって、アメリカがこう言っているから日本はそうだと思う、では納得ができません。それとも、何か秘密文書でも取りかわしてあるのでしょうか、首相に伺っておきたいのであります。
 むしろ、マッカーサー元帥が米国議会に対してメッセージを送ったのは、アメリカの納税者が自分たちの税金で食糧を放出する犠牲を好まないと騒ぐので、これを押えるために送ったメッセージにすぎないのであって、この事実からすれば、アメリカ国民は、アメリカ政府が日本に無償で食糧などを送っていると解釈していたから騒いだのが事実であります。(拍手)また、メッセージによって国の債権債務を決定する文書にならないことは、少し冷静に考えれば、だれでもわかることだと思うのでありますが、池田総理大臣はどうお思いになりますか、お伺いしたいのであります。(拍手)
 私たちはまた、わが同胞がとうとい命を失った阿波丸事件を忘れることができません。
 昭和二十年二月十七日、南方地域へ、連合国側の俘虜及び抑留者にあてられた米国からの救恤品を積んで日本の船が派遣されました。赤十字の旗が立てられてあり、国際法により安全航海権があるのに、四月一日真夜中、台湾海峡で、一米潜水艦に撃沈されました。当然にある日本の賠償請求権を放棄する決議案が出されたとき、国際法違反であり、請求権と感謝とは別ではないかという強い意見が出たのもこの議場でした。(拍手)賛成の人々は、アメリカよりの食糧の贈与を受けているので、その代償として阿波丸事件の犠牲に対する請求権を放棄してもよいとの意見でありました。
 ところが、ここに問題があります。この決議案のすぐあと、昭和二十四年四月十四日に政府は、阿波丸請求権の処理のための協定と了解事項をアメリカとの間に結び、国会の承認も経なかったのであります。いかに占領中のこととはいえ、国の債務に関することをアメリカとの間だけで勝手に話をつけて、国民のあまりなじみのない条約集にのみ載せておくことは、許すべからざる行為であります。(拍手)政府の持論の、批准条項がないからとか、占領中であったから国会にかけなくても仕方がないとかの逃げ口上は、問題によりけりであります。国民の利害に最も影響のあることを、こんな形で時の政府が権力を乱用しては、国民はたまりません。しかも、その了解事項の中には「本日署名された阿波丸請求権の処理のための協定の署名者は、各自国の政府のために、次の事項を確認した。占領費並びに日本国の降伏のときから米国政府によって日本国に供与された借款及び信用は、日本国が米国政府に対して負っている有効な債務であり、これらの債務は、米国政府の決定によってのみ、これを減額し得るものであると了解される。」とあります。問題は、ここで初めて、日本国に供与された借款及び信用は有効な債務であることをアメリカ側にのみ向かって確認したのであります。もちろんこれは、先ほど述べたごとく国会に諮ってありません。しかも、昭和二十四年四月といえば、すでに新憲法は発効になっております。憲法八十五条には「国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。」と記してあります。従って政府は、当然国会の承認を得る義務があったはずであります。ここで政府は憲法違反を行なっていることが一点。(拍手)さらに、財政法に違反しております。その八条には、「国の債権の全部若しくは一部を免除し又はその効力を変更するには、法律に基くことを要する。」となっているにもかかわらず、基づく法律もなくして、日本が米国に持っている損害賠償その他の債権を政府は放棄したのであります。これほど重要な日米の協定を、国会にかけず、また了解事項は、この種の債務に関しての敗戦後初めての米国政府との間に交換された公文書であるにもかかわらず、これをも国会にもかけず、みずから憲法に違反し、財政法を無視した態度は許すことができません。(拍手)この点をはっきりすることなく、ほおかぶりして、債務として支払う考えであるかどうか、伺いたいのであります。
 岡崎元外務大臣は、阿波丸事件に対する請求権を放棄した決議案に基づいてやったことであるから、財政法違反でないと、多少の良心があったのか、声を低くして言われました。これは大へんなことです。決議案が法律に優先するならば、多数党の決議案を通せば法律を無視してもよいことであり、勝手に自分に有利な法律も作れます。池田総理はまさかこんなお考えはお持ちでないでしょうと思いますが、念のために伺いたいと思います。(拍子)
 もっとも最近の政府の答弁は、債務とは言わず、債務と心得る、そうして国会の承認があれば債務になると、わかったようなわからないような答弁をしております。このことは、現在の自衛隊がだんだんに軍隊化し、最近では師団などという言葉さえ用いるようになりましたが、いかに軍隊と内容が同じでも、日本の憲法によって制約をされていて、軍隊と言えず、憲法さえ改正すれば、今日の自衛隊はそのままで軍隊と言えるので、自衛隊は軍隊と心得ると答弁するのと同じ意味であるかどうかを聞きたいのであります。(拍子)これは文字だけの問題ではありません。アメリカとの了解事項では債務と確認し、日本の国会では債務と心得る、一体どちらがほんとうでしょうか。債務と確認したことになると、憲法違反を追及され、責任問題になるので、苦肉の策として債務と心得ることにしたのでしょうが、この矛盾はこの際はっきりさせていただかなくてはなりません。(拍子)納得のいく責任ある答弁を、一国の責任者として総理大臣より承りたいのであります。
 政府はまた、口を開くと、西ドイツより有利であると言っていますが、西ドイツの場合と日本と根本的に違っている点は、西ドイツに対するアメリカの援助は早くからドイツの債務として確定しておりました。だからこそ、ドイツ国民は、トウモロコシの粉などは家畜の飼料で、人間の食べるものでないと堂々と断わったのであります。(拍手)私たちは、食べた大豆粉といわれるもので下痢を起こし、代替物を陳情にいくのにもずいぶん遠慮したものです。債務であったとするならば、政府自身もっと人間の食べものらしいものを主張したでありましょう。(拍手)西ドイツの場合は、戦前の債務二十六億ドル、戦後は余剰農産物を含めて三十七億九千六百万ドル、合計六十三億九千六百万ドル余りを三十二億七千三百万ドルに、ほとんど半分に話し合いで削ってもらいました。それが最終的には十六億三千五百万ドルを五年据え置き、三十年償還で、八七年七月一日までに返済がきまりましたが、繰り上げ償還も加えて近年中に支払いを済ませるようであります。西ドイツが支払いを始めた五三年ごろの西ドイツの人口は四千八百万人に比し、日本は八千六百万人、当時の国際収支は西ドイツの八億ドル黒字、日本の三億千三百万ドルの赤字等、西ドイツの人口は少なく、借りた額は多く、経済状態はずっとよかった国と、これと全く反対の立場の日本でありながら、ドイツよりも有利だと宣伝する日本の政府の意図がどこにあるのか、疑いを持つのは私のみではありません。(拍手)当時のドイツの事情等も正確に調べ、その比較の上に立って、なおかつ日本が有利であるとするならば、その根拠を数字に明るい総理にお示し願いたいのであります。(拍手)
 支払金に対して、政府は東南アジアにこれを振り向けることを熱望しているようであります。どこの国へ、何の目的で使われるかも重大問題でありますが、昨年十一月の箱根会談で、すでに申し入れたのにもかかわらず、米議会の承認が問題になっております。そして交換公文では、今後検討を続けることで、今すぐ日本の希望をいれると言い切った文句もなく、ただいまの外務大臣の御説明でもこれを期待されると言い、今後に問題を残しております。どれもこれもあいまいであります。なぜこのようにすっきりしない協定の承認を急がれるのか、了解に苦しむものであります。この他多くの問題を含む協定であるにもかかわらず、債務性の疑問すら解決されないまま、事前に国会に諮らず、アメリカと調印を済ましたのであります。しかも、まとまれば他党の党首に了解を求むるとの予算委員会での答弁も実行されておりません。首相はさっそくわが党の党首の意見に率直に耳を傾け、誤りは誤りとし、すなおに認められる御意思があるかどうか、承りたいのであります。(拍手)アメリカの理解と協力を得る点にのみきょうきょうとして、贈与であって、あとで返済を求められる債務でなかったはずなのにという、割り切れぬ一般の国民の納得と支持を得られるように努力されることこそ、国民のための政治であることをお考えにならないかどうか、念のために確かめたいのであります。
 以上で私の質問は終わりたいと思いますが、今ここに債務として払ってもよいという人があっても、その人は仕方がないから払おうという人々であって、心から納得している人はほとんどいないということと、そんな内容の協定を無理に通すことは、将来の日本の歴史の上に大きな問題点を残すことをお考えになり、アメリカの顔を立てるか、日本国民の信用をかちとるか、どちらの道を選ぶかの選択を聡明な総理が誤らないことを心から念願して、質を終わります。(拍手)
 なお、私は答弁によっては再質問を保留したいと思います。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 対日援助につきましては、戸叶さんより三点を根拠として申し述べられたのは、その通りでございます。昭和二十一年、スキャッピン、すなわち最高司令官の覚書によりまして、対日援助物資につきましての支払いその他の計算につきましては、後日これを決定することに相なっておるのであります。これは、当時の片山内閣はよく存ぜられていると思います。われわれもそれを知っておるのであります。今さら、放出物資につきまして、後日支払い方法を決定するという覚書をもらっておりながら、これを知らないというのは、どうかしたことでございます。(拍手)
 その次に、感謝決議につきまして、あのときは、放出物資が贈与である、くれたものであると感謝したのでございましょうか。そうではございません。あの決議を読んでごらんになりましたら、輸入食糧の放出についての感謝でございます。輸入食糧の放出でございます。援助が贈与であるということでないのであります。(拍手)はっきり決議文をごらんになったらおわかりと思います。
 また、阿波丸につきましての、国会の決議並びにその効力につきましては、外務大臣よりお答えさせまするが、あのときは衆参両院の同文の可決せられた決議に基づき、そうして政府がアメリカ政府と交渉して協定を結び、それを国会に報告しておるのでございまするから、一般の決議とは違って効力があることは当然でございます。
 次に、私が債務と心得るということを、本議場におきましても、委員会におきましても、昭和二十四年以来たびたび申しておりますることは、昭和二十一年のあの覚書によることであり、しかもまた、債務と私が言わないのは、国会の承認がないからでございます。われわれは、今回の協定によりまして、これを、国会の御審議により、初めて債務を確定しようとするのでございます。
 なお、ドイツとの比較につきましては、私は、わが国の方が有利であることを・・(発言する者多し)静かに。戸叶さんに聞こえませんから、再質問にお困りと思います。静かにしなさい。再質問にお困りでございます。
  〔発言する者多し〕
○副議長(原健三郎君) 静粛に願います。
○国務大臣(池田勇人君)(続) 西ドイツとの比較につきましては、知る人ぞ知るであります。(拍手)皆さん、向こうの計算通りにやった三分の一ではございません。こっちの計算に直して、そうしてドイツの三分の一以下にしておることは、はっきりしておる。(拍手)しかも、支払いの条件その他について、どうでございます。われわれは、今まで対日援助が金額にかえられたものを利殖して今日の復興を来たしたのであります。そしてこれから払おうという。しかも、援助物資に対して国民が払った織物代あるいは食糧代を、私は昭和二十四年大蔵大臣になりましたが、その金を全部ためたのが二千数百億円ある。そのためたお金で、元本に傷をつけず、その利子で払っていく。しかも、十五年たったら、その援助物資の出資金がみな残るというふうなこの条件は、寛大なアメリカならで――そして私は、十年前からこのことを準備しておったのであります。そうして、国民に税金を負担してもらうことなく、アメリカの援助物資をためておいた利子で払っていこうというのでありますから、ドイツなんかとは比較にならないと私は考えておるのであります。(拍手)
 他の問題は外務大臣よりお答えさせます。
  〔国務大臣小坂善太郎君登壇〕
○国務大臣(小坂善太郎君) 若干補足いたします。
 最初に、感謝決議の問題ですが、総理からお答えがありましたように、これは輸入食糧の放出について感謝をしております。と同時に、すでに国民はこの物資に対して金を払っておるわけです。従って、国民の代表であるわれわれが、国会においてその前提において感謝決議をしておるのでありますから、これはただという議論は成り立たないと思います。(拍手)しかも、全額払うのではありませんで、先ほど総理からお話がございましたように、われわれに見返り資金ができてから二千九百億円の金がある。しかも、その後にいろいろな利子その他が生み出されまして、千四百億円からの金ができておる。しかも、今後生まれていく納付金や利子、そういうものでもって十分払えるだけのものを返すのでありますから、これは当然返すべきものはその限度において返して、堂々として世界に日本国民が当たる方がよろしいというのが政府の意見であります。(拍手)
 次に、阿波丸の問題でございます。これも総理の御答弁で尽きておりまするが、これは昭和二十四年の四月六日に衆参両院での決議がございまして、その決議を実施する意味で、四月十四日に署名をいたし、また二十七日に国会に報告しております。その際に、了解事項がございまして、ここには有効の債務と了解しているということがあり、さらに政府の答弁として、その了解しておる有効な債務の中には、ガリオアと申しますか、エロアと申しますか、あるいは綿花借款と申しまするようなものを、多くの国民の中には、誤解によって、ただでもらったものであるというようなことを考えておる者があるから、そうではないということをここに明確にした、こういうことを申しておるのであります。
 それから西独との比較の問題も、これは総理からお話がございましたのですが、要するに、西独においては非常に被害がひどかったと思うのです。人口の問題をあげられましたけれども、たとえば終戦処理費を一つあげてみましても、日本の負担した終戦処理費は五十四億ドルでございます。西独の場合は百二十七億ドルと、倍以上の終戦処理費を負担しておる。そういうことで見ましても、戦争被害の多寡が明瞭だと思います。
 さらに、西独の方は食糧や何かをもらわなかったようなお話がございましたが、そうではございませんで、食糧の占める比率は、日本の場合は全体で五二・四%、それからドイツの場合は五八・六%でございまして、むしろ食糧の占める割合は西独の方が多いし、消費財についても、日本の場合は六一・八%、西独の場合には六四・一%で、ドイツの方が消費財もよけい援助を受けておる、こういうことでございます。
 しかも、なお、ガリオアに関します限り、この予算は軍事予算としてアメリカの会計は同じ会計から出ておるのでございまして、西独の方と日本の方と性質が違うという御議論は、これは了解できないところでございます。
 さらに、余剰物資を含めておると言われましたが、そうではございませんで、西独の場合は、余剰農産物、その他の物資というようなものは、二億一千七百万ドルというものを別に立てまして、そのうち支払い済み等の技術的な分を控除して、二億三百万ドルというものを払っております。これは、日本では一本に込みでやっておるわけでございます。
 なお、これも御了解のことと思いますけれども、念のために申しますと、西独の場合は、アメリカの支出したというアメリカの決算のベースで支払い額をきめたのです。われわれの方は、われわれが受け取ったと思われるベースできめた。これで、もう出発点からわが方に有利だということは明白です。
 それからなお、全体として見ますと、西独の場合は、切り捨て額を入れて全体の三三・一七八%というものを払っております。日本の場合は、アメリカの基準でいいますと、アメリカの支払いベースでいいますと、二五・八%しか支払わないことになりますし、日本側が出した資料によりましても二八・五%になるわけでございまして、これをもっても、わが方に非常に有利な協定ができたということが明らかだと思います。(拍手)
○副議長(原健三郎君) 戸叶君から再質疑の申し出があります。これを許します。戸叶里子君。
  〔戸叶里子君登壇〕
○戸叶里子君 私は、ただいまの総理並びに外務大臣の答弁を聞いておりまして、私の質問に対してその答えを全くそらしているのが残念でたまりません。(拍子)
 たとえば、その一例として引きますと、三つの例をあげて、こういうことをアメリカが言っているから日本は債務だとおっしゃっているので、私はそれを打ち消したのです。ところが、総理は相変わらず、こういうものが出ておりますという答弁にすぎません。ほかのことはいずれも同じような答弁でございました。
 西ドイツの問題につきましては、数字がこまかくなりますので、外務委員会で私はじっくり質問をしたいと思いますが、ただ、どうしても聞きたいところの、阿波丸の請求権の処理に関する協定とその了解事項というものを国会になぜかけなかったかということが、何も答弁してありません。今のお答えによりますと、衆参両院で決議案が通ったからこの協定も有効だと言っております。私が心配したことは、決議案が通れば、協定でも法律でもどんどん作れるかどうかというところにあるわけでございます。しかも大切なことは、了解事項の中ではっきりとこの債務を確認するということを言っております。債務を確認するということをさらに了解しているのです。これは明らかにアメリカに対して、日本の憲法に違反し、国会にかけず、アメリカにだけは債務として確認したではありませんか。(拍手)了解したということは、さらに債務と確認したことを強めたということに対してどうお考えになるかを、私は伺いたいのでございます。
 外務大臣の答弁も、また総理大臣の答弁を聞いておりましても、さっぱりはっきりいたしません。まるで落語家の話の種になるような答弁でございまして、私は国民を愚弄することもはなはだしいと思うのでございます。国民は政府の心得違いに対して憤慨をしていることを申し上げて、もう一度御答弁をお願いしたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) 再度の御質問でございますが、私が債務と心得ると申し上げるゆえんのものは、昭和二十一年にマッカーサー司令官より内閣に出されました覚書によるのであります。はっきり申し上げます。援助物資の支払い条件その他計算については後日これを定めるという覚書によるのであります。おわかりになりましたでしょう。
 それから、阿波丸につきましての決議については、先ほど申し上げた通りで、繰り返しますが、昭和二十四年四月両院で可決されました同文の決議により、政府がアメリカ政府と協定を結び、そうしてこれを国会に報告したのでございまして、この協定は効力あるものと私は認めます。(拍手)
  〔国務大臣小坂善太郎君登壇〕
○国務大臣(小坂善太郎君) 阿波丸に関する問題で総理からお答えになりました以外の部分についてお答えいたしますが、この協定の覚書の中で了解事項があって、そこで債務となる性質を持っておるということが双方で了解された、すなわち債務という性質のあることが了解されたのですから、債務と心得る、こういうわけであります。(拍手)
○副議長(原健三郎君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
 特別円問題の解決に関する日本国
  とタイとの間の協定のある規定
  に代わる協定の締結について承
  認を求めるの件の趣旨説明
○副議長(原健三郎君) 次に、特別円問題の解決に関する日本国とタイとの間の協定のある規定に代わる協定の締結について承認を求めるの件の趣旨の説明を求めます。外務大臣小坂善太郎君。
  〔国務大臣小坂善太郎君登壇〕
○国務大臣(小坂善太郎君) 去る一月三十一日にバンコックにおいて署名いたしました特別円問題の解決に関する日本国とタイとの間の協定のある規定に代わる協定の締結について御承認を求めるの件に関し、趣旨の御説明をいたします。
 戦時中、日本の債務であった特別円勘定残高処理の問題につきましては、昭和三十年七月に締結された特別円問題の解決に関する日本国とタイとの間の協定によって解決されたのでありますが、その第二条に規定されている九十六億円の経済協力に関し、協定締結後、タイ側はこれを無償供与であると主張してきました。わが方は、協定第二条の経済協力は投資及びクレジットの形式で資本財及び役務を供給することによって行なわれるのであるから、これは償還を前提とするものであるとの立場に立って九十六億円を日本から投資ないし融資してタイにおいて経済協力を行なう方式を基礎として種々折衝を重ねて参りましたが、いずれも実施されるには至らず、第四条に規定されている合同委員会を開こうにも開けないような状態でありました。最近に至り、タイ側は、協定の解釈に関する日本側の立場は正しいことを認めざるを得ないが、そもそも、戦時中の日本の債務であった特別円問題を解決する協定を実施した結果、逆にタイ側が債務者となるような解決方法は、タイの国民感情として納得できないので、何とかこれをもらえるような形で解決してもらいたいと要請して参りました。
 政府としては、本件がいつまでも身近なアジアの友邦であるタイとの間の係争問題となっていることは、日タイ両国関係の現在及び将来より見て好ましいことではないと考え、かたがた、タイがわが国にとって東南アジアにおける最大の輸出市場であること、及び、タイには一千人もの在留邦人がいて、東南アジアにおける日本人の活動の基地ともいうべき役割を果たしていること等も考慮して、今般、大局的見地より八年間に分割して九十六億円をタイに支払い、タイ側はこの金をもって日本の生産物及び日本人の役務の調達に充てるという方式で本件の解決をはかることとした次第であります。
 今般締結されました協定は、昭和三十年の協定の第二条九十六億円の経済協力に関する規定及び第四条経済協力実施のための合同委員会に関する規定にかわる新しい協定であります。この協定によりまして、日本政府が毎年十億円ずつ七年間、第八年目に二十六億円をタイ政府の指定にかかる日本並びにタイの外国為替公認銀行に設けられる特別勘定に支払い、タイ政府がそのうちより日本国の生産物及び日本人の役務の調達を行なう方式並びに手続が定められ、また、前記合同委員会は廃止されることになりましたが、日タイ両国政府は、本協定実施のため相互に緊密に連絡をとることになっております。
 なお、タイ政府は毎年すみやかに調達契約を締結かつ実施して、特別勘定の残高を最小限度にとどめ、かつ、利子等の生ずる余地をきわめて少なくする意向であることを明らかにしております。
 政府としては、本件が解決されれば、日タイ両国の友好関係は飛躍的に増進されることと確信するとともに、今後ますますアジア外交を積極的に推進するよう努力する所存であります。
 以上が、特別円問題の解決に関する日本国とタイとの間の協定のある規定に代わる協定について御承認を求めるの件についての趣旨の説明でございます。よろしく御賛同をお願い申し上げます。(拍手)
     ――――◇―――――
 特別円問題の解決に関する日本国
  とタイとの間の協定のある規定
  に代わる協定の締結について承
  認を求めるの件の趣旨説明に対
  する質疑
○副議長(原健三郎君) ただいまの趣旨の説明に対して、質疑の通告があります。これを許します。森島守人君。
  〔森島守人君登壇〕
○森島守人君 私は、ただいま趣旨説明のありました特別円問題の解決に関する日本国とタイとの間の協定のある規定に代わる協定につきまして、日本社会党を代表いたしまして、重要な数点についてのみ、総理並びに外務大臣に質問をせんとする次第でございます。(拍手)
 いずれ詳細な点につきましては、外務委員会における審議の際に譲る所存でございますが、ただいま外務大臣の御説明を拝聴いたしましても、国民を納得せしむるに足る十分なる理由を何ら発見せざることは、私のきわめて遺憾とするところでございます。(拍手)
 第一に、総理にお伺いしたいのは、本件協定の審議にあたりまして、総理のとられましたる政治的取り扱いの問題でございます。
 条約案に対する修正ないし留保等に関する問題につきましては、一昨年の春、安保条約が審議せられました際、重要な問題となりましたことは、御承知の通りであります。議院運営委員会を初め安保条約特別委員会等におきましても審議の対象となったのでございますが、今日までいまだ結論に達することなく放置せられておりますことは、これまた私のきわめて遺憾と存ずるところでございます。私は、ただいまこの問題に関しまして、特にこの点を取り上げて論議せんとする意図を持っておるわけではございませんが、政府としては、何ゆえに、憲法第七十三条第三号ただし書きに関する政府従来の法的解釈を離れましてでも、本件協定の重要性にかんがみまして、本件協定に署名するに先だって、国会を通じて国民の了解を求めるという政治的措置に出なかったのであるか、この点を総理にお聞きしたいのでございます。もし総理にその意思さえありますれば、幸い国会は開会中のことでもございますので、このことは決して不可能なことではなかったのでございます。総理の真意をお伺いいたしたいのでございます。
 池田総理は、先般の東南アジア旅行に際しまして、親善旅行であって、具体的な案件を処理する意図は持っていなかったという態度をとりつくろっておられたようでございます。それにもかかわりませず、総理はタイ国滞在中、独断的措置をもって従来の協定の一部を廃棄し、そして九十六億円の大金をタイ国に無償で供与するという了解をタイ国政府に与えたことは、御承知の通りであります。これは日本の民意を全然無視した、総理個人の独裁的やり口でありまして、わが党といたしましては、断じて容認し得ざるところでございます。(拍手)元来国会の承認をすでに経、批准をも得ました協定の一部が実施せられないままに廃棄せられ、別に新しい協定を締結するというような事例は、国際政治の上において、かつて類を見ざるところと信ずるのでございます。(拍手)この異例の措置に対しては、政府としましては、従来のようなしゃくし定木的な取り扱いをやめて、調印前に国民の了解を得るという措置に出ることが、政治道義の点からも要請されておるのであります。私は、かくてこそ初めて国民の要望を外交上に反映し、民主主義を確立する上からも望ましいことと信じておる次第でございます。
 第二に総理にお伺いしたいのは、本件協定の締結に関する政府の政治的責任の問題でございます。
 特別円の支払い協定は、昭和三十年七月外務委員会に付託せられましたが、その当時におきましては、与野党ともに九十六億円を限度とする投資またはクレジットの設定の点に関しましては、ほとんど論議を見なかったのであります。それと申しますのは、与野党ともに、協定の文字通り無償供与ではないとの当然の立場をとっておったからでございます。しかるに、調印後久しい間を出でないで、タイ国側に異論を生ずるに至ったのでございます。この間の経緯に関しまして、政府当局は国会における質問に対しまして、当時タイ側の代表でありました外務大臣に帰国を取り急ぐ事情があり、協定自体が拙速であったことを認めております。また、実施細目を取りきめなかったところに、タイ国側の誤解の原因があったことをも率直に認めていたのでございますが、日本の無条件譲歩のごときことは、今日まで一言もこれを示唆したことがないのでございます。いずれにいたしましても、本件協定のような結果を招きましたことは、その事情のいかんを問わず、その理由のいかんを問わず、その責任は全部政府にありますことは、一点の疑いをいれないところでございます。国民は今日まで政府に欺瞞せられてきたと申しましても、決して過言ではございません。(拍子)政府は、この点に対する政治的責任をいかに処理せられんとする意向でございますか、総理の御所信を伺いたいのでございます。総理はビルマの賠償の問題に関連いたしまして、予算委員会において、国民に陳謝するのはまだその時期が早いというふうな発言をされたようであります。タイの特別円問題は、これと全然趣を異にいたしまして、われわれの眼前に起こっておる現実の問題でございます。総理の責任ある答弁を求めるゆえんでございます。また、外務大臣は、昨年十二月四日の外務委員会の席上におきまして、戸叶委員の質問に答えられて、原協定、すなわち廃棄せられます協定の第二条の規定が明確を欠いておることを、みずから率直に承認せられておるのでございます。速記録をごらん下さりますれば、はっきりいたします。外務大臣自身がこの条項に不明確な、疑惑の点があることを率直に認めております以上は、外務省内における事務的責任の問題はすでに解決せられたものと私は信じておりますが、もしこれが処理未済でありましたならば、外務大臣としては、政治的責任とあわせて事務的責任をいかに処理されんとするのであるか、明確に御答弁を願いたいと思います。(拍手)私はなお、寡聞でございまして、本件協定のような事例を承知しておりません。もし、国際政治上にかかる前例でもありましたならば、外務大臣よりお教えを願えれば、はなはだ幸いと存ずるのでございます。
 第三点としてお伺いしたいのは、かりに本件協定が承認されることと仮定いたしましても、今後ビルマの賠償問題、日韓会談中の請求権の問題などに波及するおそれがなきやいなやという点でございます。
 ビルマ政府が再検討条項を持ち出して、賠償額の修正を求めておりますことは、諸君のすでに御承知のところでございます。わが党議員は、フィリピンやインドネシアに対する賠償交渉に関連いたしまして、機会あるごとに、ビルマに再検討条項を援用する懸念なきやいなやを政府に質問を続けてきたのでございます。わが党の注意にもかかわらず、歴代の自民党政府は、そのおそれは全然ないとの否定的答弁をもって終始して参ったのでございますが、現在の実情は、この自民党歴代内閣の見通しが根本的に全然誤っておったことを如実に物語っておるのでございます。また、日韓会談中の請求権の問題に関しましては、総理は予算委員会等においていろいろ詭弁的な答弁をせられておりますが、その額において、すでに大蔵省と外務省との算定に非常な大きな差異があります。また韓国側よりは、八億ドルというがごとき膨大なる要求を持ち出しておるとの報道も伝わっておるのでございます。要するに、もやもやした空気はまだ完全にぬぐい去られておらないのが実情でございます。総理は、日本国民の立場に全然考慮を加えず、大所高所からとの抽象的理由をもって、タイ国の前例のないがごとき理不尽な要求をそのままうのみにされたのでありますが、ひいて、今後、ビルマや韓国との交渉に微妙な影響を及ぼすことは必然だと憂えるものでございます。これらの問題を処理する上において、いかなる御所信を持っておられるか、今日、事前に明白にしていただきたいと存ずるのでございます。
 最後に、私のお尋ねしたいのは、賠償その他対外的支払いを必要とする案件に関する政府の見通しでございます。昭和三十四年秋、南ベトナムの賠償問題が審議せられました際、政府は、今後ガリオア・エロア問題の妥結を見ますれば、この種の対外的支払いの問題は一応片がつくという態度をとっておったのでございます。しかし、その舌の根のかわかぬうちに、タイ国との特別円問題の発生を見、またビルマの再検討条項の援用の問題を見ておるのでございます。国民としては、どの程度まで政府の言明に信頼を置いてよいか、途方に迷わざるを得ないのが現在の実情だと私は率直に申し上げます。(拍手)政府は、この際、血税を払って、対外的支払いを負担している国民に対して、従来の不始末へ従来の不手ぎわを謙虚に陳謝して、今後これ以上の負担を絶対にかけないということを明白に誓約すべきであると思うが、政府の御意図はいかに、お伺いしたいのでございます。その用意ありやいなや、私は総理大臣並びに外務大臣に明確なる御答弁を求めてやまぬ次第でございます。国民といたしましては、現在とかく批判のありまする国際収支の成り行きに関しまして、もとより大きな関心を持っておることは申すまでもございません。この際、政府といたしましては、国民に新しい負担をかける本件のごときにつきましては、ただ従来の形式的な逃げ口上的答弁でなく、誠意ある具体的な答弁をもって国民の疑惑を一掃されることが政府の責務であることを私は痛感いたすものであります。私はこの点を特に政府に警告いたしまして、私の質問を終える次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 非常に大事な問題でございますので、お願いいたしますが、静かにお聞き願いたいと思います。
 特別円につきましては、森島さん御承知の通り、大東亜戦争中における日本軍の徴発物資の代金でございます。しこうして、三十年にこの協定ができ上がりました。いろいろの経過がございまして、タイ国からは千三百五十億円を初め要求し、五百四十億円になり、最後に百五十億円になったのでございます。しこうして、その百五十億円の払い方につきまして、五十四億円は、金約款等がございましたので、その金約款の分は一ポンド千円のあれで払っております。そうしてその残りの分を合わせて五十四億。しこうして九十六億円につきましてはどうするかという問題は、お話のように九十六億円を投資あるいはクレジットの形式によって、日本からの資材、役務を供給する。供与とは書いてない。供給する。しこうして、そのやり方につきましては、第四条で、日本とタイ国でそのやり方を協議しようといっておるのであります。
 私は昭和三十一年に大蔵大臣になりまして、この問題につきましていろいろ要求があり、考えて参りました。当時の状況では、九十六億円につきまして、現金即時払いという要求を出してきております。しかし、われわれは、この第二条の規定によって、これは無償ではないのだ。有償だということはタイもはっきり認めております。私にも認めております。そこで・・(発言する者あり)お聞き願います。認めております。しかしタイの言うのでは、今申し上げましたように十五億円という品物をタイから徴発して――戦争中の十五億円でございますよ。それを金約款のあったものは今の値段で払い、その他の分を百五十億円で済まして、しかも十五億円供出したのにかかわらず、五十四億円だけ払って、あと九十六億円はタイが借金するのだということは、タイの国民としては、あの協定に、日本のいうことに誤りはない。タイが誤ったけれども、タイの感情がこれを許さないということをいうのであります。(拍手)皆さん、そこで私は・・(発言する者あり)静かにお聞き願いたい。そこで私は、四、五年前から九十六億円を有償でやって――こういう事案もありました。九十六億円で石油精製工場を作って、そうしてその利益をどんどん積み重ねて十五年、二十年たったならば、九十六億円をタイにやることになるじゃないか、われわれはあの規定通りに石油精製工場を百億でこしらえて、そうしてその利益を年々タイに十五年ないし十八年、二十年でやったならば、タイはいいじゃないかと言ったら、それじゃタイに工場が設けられて、タイが借金して――借金した格好になりますから、それはたえ切れぬ。そこで私はこう考える。この九十六億円というものを、もし一般の人が考えるように有償だからといって九十六億円を二十年間タイに貸したらどうでございます。現在価値というものは非常に下がるでしょう。(「無償でやればいいじゃないか」と呼ぶ者あり)いや、そういうわけにいかない。九十六億円を投資またはクレジットの格好でやって、九十六億円をタイの人にそれが渡るようにするためには、長期の、あるいはごく低利の分でやらなければならない。今九十六億円を日本がすぐ出して、長期に何かを投資するとか、あるいは安い利子で貸し金にして、九十六億円を生み出すまで元本をタイに置いておきますか、そういうことは私は考えものだ。そこで私は向こうへ出発します前において、九十六億円をどの程度に減額したならば一時払いができるかという点につきまして、いろいろ外務、大蔵、私とで研究いたしたのであります。(「国会の承認を得たか」と呼ぶ者あり)国会の承認はあとから……
 それで、私は、どういうふうにしたらいいか、いろいろ腹に計算を持ちまして会いました。サリットは、日本の言う主張は、第二条正確です、誤りございません、われわれがあやまります、しかし第四条できまらない、政府としても第四条で合同委員会を開こうとしてきまらない、いつになってもきまらない、しかもこれは戦争中のわれわれの債権だ、これをこのままほうっておいて、特別の関係にある日本、タイがお互いに変なことになるということは、両国のためにとりません、何とか一時払いしてくれと、こう言うのであります。私は二日間考えまして、どれが日本のために一番いいか。九十六億円を現物出資で工場を置いて、その利益から長いこと払っていくのがいいか、あるいは九十六億円を直ちに貸してやって、低利で十五年も二十年もたってその金を戻してもらうのがいいか、あるいは減額さして一ぺんに払うのがいいか、あるいは十億円ずつずっと払っていったのがいいか、どれが一番いいかということを、私はタイに行く前から、あるいはおる間じゅう、ずっと考えたのであります。
 そこで私は、サリットともいろいろ二人で話をいたしました。メモで計算をしながら、私は八年間というふうにいたしたのでございます。しかも八年目に二十六億円としました。そうして初年度は十億円ずつにいたしたのであります。このことは、日本の対外信用からいいましても、タイとの親善関係、ことにタイは、東南アジアにおきましても、あなた御承知の通り、千人からの在留邦人がおります。そうして貿易は片貿易、日本としては最も関係の深いところであります。こういう点を考えますると、今度の協定は、タイ国民はもちろん、在留邦人にも、国内に帰りましても、私はよかったとおほめをいただいておるくらいでございます。(拍手)
 そこで問題は、私はなぜ独断でやったか、国会の承認をなぜ得なかったか。私は独断ではございません。関係各大臣と十分打ち合わせいたしております。しこうしてまた、こういう問題を事前に国会に出す必要はございません。事後に出してけっこうなんです。これは今まででもみなずっとやっておるじゃございませんか。私はそういう意味でやっておるのであります。もちろんこのことにつきましての責任は、池田内閣が負います。これは当然のことでございます。また、ビルマ賠償あるいは日韓会談につきまして・・
  〔発言する者多し〕
○副議長(原健三郎君) 静粛に願います。
○国務大臣(池田勇人君)(続) タイ特別円の問題は全然関係はございません。関係はないのであります。ビルマ賠償あるいは日韓正常化につきましては、ただいまわれわれは熱心に交渉を重ねております。今タイの特別円解決で、国会で議決を願いまして、これに影響は私はないと確信いたしております。
 また、ガリオアその他を払うのにあたって今までの賠償関係はどうか、こういうお話でございます。ビルマ賠償につきましては、ただいま折衝中であります。日韓会談におきましての平和条約第四条に基づく請求権につきましても、今交渉中でございます。これが大部分でございます。その他は今御審議願うタイの問題、また、一部にごく少額の財産権の補償等の交渉はございますが、これは外務大臣からお話し申し上げてもよろしい。大体このくらいで賠償その他の日本の対外支払いに関する大きいものは済むと考えております。(拍手)
  〔国務大臣小坂善太郎君登壇〕
○国務大臣(小坂善太郎君) ほとんど総理大臣からお答えがありまして、私に対して残っておりますのは、こういうような例があるかどうかというととだと思います。協定を一回結んでおいて、あとでそれを変えた例があるかどうか、こういうことだと思います。実はヴェルサイユ条約でドイツの賠償がきまったわけでございますが、これはあまりに多額で払えない。そこでドーズ・プランが出て、あるいはまたその次にヤング・プランが出て、これが減額されていった、こういうことがある。要するに、実態とあまりにかけ離れたものができました場合には、これが修正されることもあり得るということは言えると思うのであります。(拍手)
  〔発言する者あり〕
  〔国務大臣小坂善太郎君登壇〕
○国務大臣(小坂善太郎君) 答弁漏れがございまして、お答え申し上げますが、私のこの問題に対する事務的の責任はどうか、こういうお話でございます。私は外務大臣としまして、外務省に関する限り、政治的並びに事務的の責任は一切私が負うつもりでおります。(拍手)
○副議長(原健三郎君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
 行政事件訴訟法案(内閣提出)の趣
  旨説明
○副議長(原健三郎君) 次に、内閣提出、行政事件訴訟法案の趣旨の説明を求めます。法務大臣植木庚子郎君。
  〔国務大臣植木庚子郎君登壇〕
○国務大臣(植木庚子郎君) 行政事件訴訟法案について、その趣旨を説明申し上げます。
 御承知の通り、行政事件訴訟は、日本国憲法の施行に伴いまして、司法裁判所の管轄に属することになりましたため、とりあえず応急措置を講じますとともに、早急の間に所要の規定を設けることとなりまして、昭和二十三年七月、現行の行政事件訴訟特例法が制定、施行されるに至ったのであります。しかし、この特例法は、何分にもそうそうの際に制定されましたので、各般の事項にわたっての検討が必ずしも十分でなかったうらみがあり、そのために解釈上幾多の疑義を残しましたのみならず、各種の行政法規との関連につきましても、不統一、多岐にわたっておりまして、その結果、運用上幾多の困難な問題に逢着し、国民の権利の伸長及び行政の運営に少なからぬ支障を来たしておる次第でございます。よって、政府といたしましては、行政事件訴訟に関する法令の全般にわたりまして再検討を加え、従来の疑義、欠陥をできるだけ除去する必要を痛感いたしまして、去る昭和三十年三月法務大臣から法制審議会に本件に関する諮問を発しました。しかるところ、同審議会は、自来慎重審議の後、昨年五月ようやくその改正要綱を答申して参りました。この答申は、現行法令の改正を必要とする諸要請をおおむね十分に満たしておりますので、現在の時点におきましては最も妥当な案と考えられますので、この際、これをすみやかに立法化する必要があると存ずる次第であります。
 次に、この法律案のおもな点を申し上げます。
 第一に、現行法と異なりまして、訴訟の種類を類型化し、これに適用される法規を明確にいたしております。すなわち、行政事件訴訟を抗告訴訟、当事者訴訟、民衆訴訟、機関訴訟の四種類に分け、さらに、抗告訴訟の態様といたしましては、処分の取り消しの訴え、裁決の取り消しの訴え、無効等確認の訴え、不作為の違法確認の訴えを例示いたしまして、それぞれについての定義規定を設けまするとともに、適用もしくは準用せられる規定の範囲を明らかにしまして、よってもって現行法解釈上の疑義を取り除こうといたしております。
 第二には、国民の権利救済の面から従来とかくの批判がありました訴願前置主義を原則として廃止することといたしております。ただ、訴願を前置する必要がある行政処分も少なくないことは、これまたいなめない点でございますので、そのような行政処分につきましては、個々にそれぞれの特別法で所要の規定を置くことといたしました。
 第三に、現行の専属管轄の制度を廃止いたしますとともに、一般管轄のほかに特別管轄を認めることといたしております。これは管轄裁判所の範囲を広げまして、国民の権利救済の便宜をはかろうとするものでございます。
 第四に、訴えの提起があった場合における行政処分についての執行停止の制度を整備することといたしております。また、現行の執行停止に対する内閣総理大臣の異議の制度につきましては、これによって国民の権利の救済が不当に阻害されることのないよう、その政治的責任を明らかにしますため規定を設けることといたしました。
 第五に、行政処分の取り消しの判決は、公法上の法秩序安定のため、第三者に対しましてもその効力が及ぶことといたしますとともに、これと関連して、現行の訴訟参加の制度を改め、また第三者保護のために再審の訴えを認めることといたしております。
 第六に、行政処分の無効等確認の訴えは、現在の法律関係に関する訴えによっては目的を達することができない場合に限って許されることを明らかにしますとともに、これに関連して、行政処分の効力等を争点とする私法上の法律関係に関する民事訴訟につきましても、所要の規定を設けることといたしております。
 右のほか、出訴期間、当事者適格、関連請求の併合、処分の取り消しの訴えと裁決の取り消しの訴えとの関係、事情判決その他各般の事項にわたって現行法の規定を改正しあるいは新たに規定を設けることといたしております。これらもすべて前同様に現行法の欠陥を是正し、また解釈上の疑義を除去するための所要の措置であります。
 なお、この法律案による改正に伴い、他の多数の法律における訴訟に関する規定を整備する必要があるわけでありますが、これに関する法律案は本法案とは別途に後刻提出いたす所存であります。
 以上が行政事件訴訟法案の趣旨でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
 行政事件訴訟法案(内閣提出)の趣
  旨説明に対する質疑
○副議長(原健三郎君) ただいまの趣旨の説明に対して、質疑の通告があります。これを許します。鈴木義男君。
  〔鈴木義男君登壇〕
○鈴木義男君 私は、民主社会党を代表して、ただいま趣旨説明のありました行政事件訴訟法案について若干の質問を試みようとするものであります。
 わが国の行政救済の制度は、訴願法といい行政裁判法といい、明治二十三年、官権万能の時代にきわめて限られたものとして制定されて、終戦に至ったのでありまして、その救済はすこぶる不完全なものであったのであります。新憲法の施行に伴いまして大幅に解放されたのでありまするが、忽忙の間に行政事件訴訟特例法として法三章的に規定されましたために、疑義百出、実際の事務処理に困惑していたことは万人の知るところであります。今回久しきにわたる法制審議会の議を経て、訴願法にかわる行政不服審査法案とともに、行政裁判法にかわるべき行政事件訴訟法案が提案されまして、ここに御説明を聞いたわけでありまするが、行政救済制度の一歩前進として慶賀すべきことというにはばからないものであります。その根本の趣旨においては、われわれは賛意を表するにやぶさかなるものではないのであります。しかし、これを通読いたしまして、しさいに観察いたしますれば、なおいろいろの疑問が起こって参るのであります。しかし、立法技術上の問題については、本会議においてお尋ねをするのは適当でないと信じまするがゆえに、限られた時間の関係もありまするので、そういう問題はすべて委員会に譲りまして、ここでは基本的な構想についてだけ、二、三の点を質問いたしておきたいと存ずるのであります。
 まず第一に、この法案は、立法の体裁としてはなかなかよくできております。しかし、大切なことは、行政の客体たる国民が、どの程度これを活用するかということであります。終戦後、わが国もよほど民主化されつつあるのでありますが、まだまだ官権万能でありまして、行政権を相手として争うということは容易ならないことだという感想があるのであります。これ、行政事件が統計上、もっともっと多かるべくして案外に少ない理由であります。
 一例を税に関する異議の申し立て、行政訴訟にとってみますると、家々暁の星であります。アメリカ人などは、納税の義務に目ざめていることは、わが国民の比ではないのでありまするが、しかし、納めるべき税額と納めることを必要としない税額の区別については、実にはっきりしておる。従って、税に関する再審査の請求や行政訴訟の件数は実に多いのであります。これを専門とする弁護士や裁判官があるくらいであります。しかるに、わが国では、税の収納については収税官吏は表見上、税法によるような顔をしておりますが、大体割当というものがあり、見込額というものがあって、幾ら取るということをきめてかかっておる。納税者の説明を聞いて直すということをしないのであります。はなはだしきは、人民というものはうそを言うものだときめてかかっているのであります。中にはうそを言う者もありましょう。しかし、みながみな、うそを言うものではないのであります。しかるに、一応この人民の抗弁を聞くような顔をして、聞いてだけはおるのでありまするが、さては、わかってくれたかと喜んでいると、結局出発点に戻って見込み通りにやってしまうのであります。腹の中は煮えくり返るようであるが、訴えなどを起こすと後難がおそろしい、泣く子と地頭には勝たれぬということで服従してしまうのであります。収税官吏はその結果だけを見て、それ見ろ、おれの目に狂いはあるものかというのであります。
 かくて悪循環は絶えないのであります。そこで、この後難をおそれるという心理を払拭することが大切であります。この点に対して、政府はこの法案を出す際に、一つ総理が全国民に向かって言明をしていただきたいのであります。この用意があるかということを、まずお伺いをいたしたいのであります。
 行政事件においては、当然訴うべくして訴えないのには、この後難をおそれるという心理のほかに、民事事件などと違いまして、金額に見積もりまして、係争金額が割合に少ないものが多い。あるいは金に見積もることができないものも相当あるのであります。一円のために十円を使うということをいさぎよしとしないのであります。それが当事者の貧乏と相待って、ついに権利の上に泣き寝入りをしてしまうということになるのであります。それでは、この法治、法によって治めるという法治というものが、いつまでたっても成長しないわけであります。
 かの刑事事件にありましては、貧しいために自己の権制を擁護することができないようではかわいそうだというので、国選弁護の制度が設けられておるのであります。行政事件にありましては一そう強い意味において、貧しいために正当な権利を主張することができないようなことがあってはならないわけであります。また、自己の利益のためでなく公益のために訴えを起こす、たとえば民衆訴訟のようなものにありましては、時間と金がそうかかるのでは、だれでもしり込みをしてしまうわけでありまして、正義は少しも行なわれないということになるのであります。こういう弊害をなくするためには、刑事事件における国選制度のようなものを設ける必要があると信じます。政府はこの問題についてお考えになったことがあるかということをお伺いいたしたいのであります。
 われわれは、かの民事訴訟における生活困窮者の法律扶助というような、なまぬるいものを考えておるのではないのでありまして、そのことはお断わりをいたしておきます。終戦後、新憲法のもとにおいて、あらゆる行政処分や裁決が行政訴訟の目的となったにもかかわらず、ドイツやアメリカ等に比して行政事件の件数が著しく少ないのは、こういうところに原因があるのではないかと考えられるのでありまして、深く検討すべき点であります。フランスにおいて、婦人郵便配達人――フランスでは大体郵便配達は婦人でありまするが、人間にかみつくおそれのある猛犬を飼っている家へ、郵便を玄関まで持っていくことができない。そこで猛犬を鎖につないでおかない家には、郵便物を遠く門のさくのところに置いていってよろしいという新判例を得るために、一人の婦人配達人が勇敢に戦ったのであります。労働組合が援助したのかどうか知りませんが、これでこそほんとうに権利のために戦うものと申すことができるのであります。
 次に、行政事件にありまして最も大切なものは、いわゆる裁量処分の問題であります。裁量処分に対しては行政訴訟を許さずというのが原則であります。しかし、何が裁量処分であり、何が羈束処分であるかということはすこぶる困難な問題であります。学説も多岐に分かれております。裁量の名のもとに、行政官僚の恣意、独断が許されては、国民の権利は少しも保障されないのであります。裁量といっても、多くは条理に従い先例に準じて行なわれるものでありまして、客観的批判を許さないものは少ないのであります。いわば程度の差であります。最も多く、裁量の名のもとにいわゆる政治的解決がなされるのでありまして、弊害のおそるべきものがあります。ゆえに裁量処分の範囲はできるだけこれを縮小することが必要であります。そして、できるだけ多く裁判所の公正な判断にゆだねることにしなければなりません。それには、法案はわずかに三十条一カ条だけに、しかも裁量の範囲をこえまたは乱用があった場合に、判断をすることができるというふうにうたっておるのでありまするが、これでは不十分ではないか、もっと慎重に、広範にこの問題を取り扱うべきではないかと思うのでありまするが、政府の御所見はいかんということをお尋ねいたしたいのであります。
 また、第二十七条に総理大臣の異議が規定されておりまするが、総理大臣の異議はこの裁判の進行を阻止する力を持っているのでありますから、事はすこぶる重大でございます。従って、これが乱用された場合の責任について、もっと明確に規定する必要があるのではないかと存ずるのであります。国会に報告のしっぱなしということでは足りないと存ずるのでありまして、この点についての御所見を伺いたいのであります。
 第四に、そして最後にお尋ねをいたしておきたいのは、行政事件に陪審制度に似たものを採用する必要がないかということであります。つまり民間の知識を導入する必要がないかということであります。刑事事件においては、陪審を用いなくても、非常な誤りを犯すことは少ない。民事事件は、事実関係は裁判官の良識で十分認識でき、法理上の疑問は参考書なり同僚、先輩に教えを請うことによって解決することができるのであります。しかし、もろもろの行政行為というものは、行政百般の上に行なわれるものでありまして、それぞれ専門的性格を帯びるものであります。行政官僚はそれで飯を食べているのでありますから、その主張や抗弁はすこぶる巧妙である。国民や弁護士は歯が立たぬということがよくあるのであります。だんだん行政事件専門の裁判官というものも現われてくると思いまするが、いかに勉強しても、行政の領域は無限に広い。また、日に日に新しい領域が加わってくるのでありまするから、そのすべてに精通するわけにはいかない。そこで、知識と経験とを補充する者の存在が必要になってくると存ずるのであります。また、行政庁を構成する国家または地方公務員は、民事事件の当事者と違い、勝ちさえすればよいというものではない。行政の客体たる人民の立場も尊重して、できるだけ円満に解決してやるべき使命があるのであります。そのためには争いを終局まで持っていかずに、和解、認諾等で解決するのが妥当である場合があり、ときとしては負けてやることが妥当なことさえあるのであります。しかし、処分行政庁の代理として出てくる官公吏は、あたかもこの民事事件の私的利益の代理人のような態度をとりまして、何でも負けてはならない、あらゆる手段を尽くして人民の要求を圧殺することに努力する傾向があるのであります。職業的裁判官も、その方面の知識経験の欠除から適当にリードすることができない。そういう関係からしまして、行政救済の制度が一向救済の使命を果たさないのが実情であります。かの西ドイツの行政裁判制度には、御承知のように、職業的裁判官のほかに、民間のそれぞれの行政に知識と経験のある名誉職裁判官というものを設けておるのであります。一定のリストに登録しておいて、事件の種類、内容によって、それぞれ適任者を陪審員に任用する。そして、公正妥当な結論を出すことに協力させるのであります。裁判の民主化という見地からも、これはきわめて有意義なことであります。
 今回、政府は、行政不服審査法案とともに、行政事件訴訟法案を提案されまして、行政救済のために一時期を画する整備をされようとしておる際でありまするから、民間のベテランをこの制度に参画させようとする御意図はないのでありましょうか、所見を承っておきたいと存ずる次第であります。
 お尋ねをいたしたいことはたくさんありますけれども、ここでは以上四点についてだけお尋ねをいたす次第であります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 今回の行政事件訴訟法を提案いたしましたゆえんのものは、国民の権利救済の伸長をはかるためでございます。また、お話のうちに税務に対しまする訴訟が少ない、こういうお言葉でございましたが、全国におきまする税務行政は、戦前とは違いまして、税務機構内に別の苦情処理機関を設けまして、機構内で他の人が審査請求に応じてやることになっているのであります。戦前よりもよほど変わって参りまして、私は、これによりまして国民の租税に対する権利が相当守られておると確信いたしております。
 なお、総理大臣の異議申し立ての問題、すなわちインジャンクションの問題につきましては、いろいろ議論がございまするが、私は今の実情から申しまして、公共福祉に重大な影響があるとき、具体的にこれを示して、そして総理大臣がやむを得ないという条件のもとに、ある程度の異議の申し立ては現状ではいたし方ないと考えております。従いまして、そういうことの乱用を防ぐために、事後におきまして国会にこれを報告する、こういうことでやっていくのが実情に合ったことと思います。
 なお、裁判官につきまして、この行政事件につきましては、専門的な知識の裁判官を要するからこういうものを任命することの制度を設けたらどうか、こういうお話でございまするが、なかなかむずかしい問題でございますので、今後臨時司法制度調査会等にも諮問いたしまして、十分検討を進めていきたいと思います。
 その他につきましては、法務大臣よりお答えいたします。
  〔国務大臣植木庚子郎君登壇〕
○国務大臣(植木庚子郎君) ただいまの御質問に対しまして総理がお答えになりましたことのうち、一、二を補足させていただきます。
 税の事件につきましては、ただいま総理も仰せの通りでございますが、最近の状況は、最近聞いておりますと、訴訟事件になりますものは年に二百件余と聞いております。しかし、この二百件余の件数というものは、従来、すなわち戦前等に比べますと、はるかに件数としては多くなっておるという実情であるということを税務当局から承りました。従いまして、大体においては国税、地方税それぞれその税法の範囲内におきまして救済の措置がありますが、さらに訴訟に至るものも近年は従前に比べれば非常にふえて、救済を求め、かつこれによってその目的を達しておるということが言えるかと存じます。
 それから、裁量処分の問題でございます。裁量処分の問題につきましては、なるほど三十一条一カ条しかございませんけれども、これはどちらかと申しますと、当該実体法規の裁量範囲が適切かどうかという問題がむしろ先になる問題でございまして、この手続法といたしましては、裁量権をこえて裁量をした場合、行政処分をした場合、あるいは裁量権を乱用したような場合、かような場合に適当な措置を講じるようにしてあれば、これでまずもって目的を達するのではないか、かように考えておる次第でございます。
 なお、最後に、行政訴訟に関連しまして、いわゆる名誉職裁判官――陪審員のような制度のもの、これを考えたらどうかというお話でございましたが、これは今日まで審議の途上においても若干研究の対象にはいたしたそうでございます。しかし、結論といたしましては、現在は、おおむねの場合、これが裁判所等におきましては、必要に応じて特別の部を設けて、そしてこれでもってその裁判を扱う、あるいは特別の調査官をこれに当てまして、もってその目的を達しておるというようなことで、まずもって現在の段階においては、これで足りるのではなかろうかというので、原案ではこの制度を取り入れておりません。しかしながら、非常に研究を要するよい問題と考えまして、今後ともなお検討して参りたいと存じます。(拍子)
○副議長(原健三郎君) これにて質疑は終了いたしました。
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○副議長(原健三郎君) 本日は、これにて散会いたします。
   午後五時二十三分散会
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 出席国務大臣
        内閣総理大臣  池田 勇人君
        法 務 大 臣 植木庚子郎君
        外 務 大 臣 小阪善太郎君
        大 蔵 大 臣 水田三喜男君
        農 林 大 臣 河野 一郎君
        通商産業大臣  佐藤 榮作君
        建 設 大 臣 中村 梅吉君
        自 治 大 臣 安井  謙君
        国 務 大 臣 藤山愛一郎君
 出席政府委員
          法制局長官 林  修三君
        法制局第一部長 山内 和夫君
         経済企画庁総
         合開発局長  曾田  忠君
        法務省訟務局長 濱本 和夫君
        外務省条約局長 中川  融君
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