第040回国会 本会議 第15号
昭和三十七年二月二十三日(金曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第十三号
  昭和三十七年二月二十三日
   午後二時開議
 一 義務教育諸学校の教科用図書
  の無償に関する法律案(内閣提
  出)並びに義務教育諸学校の児
  童及び生徒に対する教科書の給
  与に関する法律案(山中吾郎君
  外九名提出)及び教科書法案(山
  中吾郎君外九名提出)の趣旨説
  明
    …………………………………
 第一 昭和三十四年度一般会計歳
    入歳出決算
    昭和三十四年度特別会計歳
    入歳出決算
    昭和三十四年度国税収納金
    整理資金受払計算書
    昭和三十四年度政府関係機
    関決算書
 第二 昭和三十四年度国有財産増
  減及び現在額総計算書
 第三 昭和三十四年度国有財産無
  償貸付状況総計算書
 第四 昭和三十四年度物品増減及
  び現在額総計算書
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 北陸地方開発審議会委員の選挙
 蚕糸業振興審議会委員任命につき
  国会法第三十九条但書の規定に
  より議決を求めるの件
 人事官任命につき同意を求めるの
  件
 原子力委員会委員任命につき同意
  を求めるの件
 公正取引委員会委員任命につき同
  意を求めるの件
 日本銀行政策委員会委員任命につ
  き同意を求めるの件
 文化財保護委員会委員任命につき
  同意を求めるの件
 漁港審議会委員任命につき同意を
  求めるの件
 中央更生保護審査会委員任命につ
  き同意を求めるの件
 運輸審議会委員任命につき同意を
  求めるの件
 鉄道建設審議会委員任命につき同
  意を求めるの件
 ILO八七号条約の提出に関する
  緊急質問(大原亨君提出)
 義務教育諸学校の教科用図書の無
  償に関する法律案(内閣提出)並
  びに義務教育諸学校の児童及び
  生徒に対する教科書の給与に関
  する法律案(山中吾郎君外九名
  提出)及び教科書法案(山中吾郎
  君外九名提出)の趣旨説明及び
  質疑
 日程 昭和三十四年度一般会計歳
 第一 入歳出決算
    昭和三十四年度特別会計歳入
    歳出決算
    昭和三十四年度国税収納金
    整理資金受払計算書
    昭和三十四年度政府関係機
    関決算書
 日程第二 昭和三十四年度国有財
  産増減及び現在額総計算書
 日程第三 昭和三十四年度国有財
  産無償貸付状況総計算書
 日程第四 昭和三十四年度物品増
  減及び現在額総計算書
   午後二時十二分開議
○議長(清瀬一郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 北陸地方開発審議会委員の選挙
○議長(清瀬一郎君) 北陸地方開発審議会委員が一名欠員となっておりますので、この際、同委員の選挙を行ないます。
○田邉國男君 北陸地方開発審議会委員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されんことを望みます。
○議長(清瀬一郎君) 田邉國男君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。
 議長は、北陸地方開発審議会委員に堂森芳夫君を指名いたします。
     ――――◇―――――
 蚕糸業振興審議会委員任命につき国会法第三十九条但書の規定により議決を求めるの件
○議長(清瀬一郎君) お諮りいたします。
 内閣から、蚕糸業振興審議会委員に参議院議員小山邦太郎君を任命するため、国会法第三十九条但書の規定により本院の議決を得たいとの申し出がございます。右申し出の通り決するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、その通り決しました。
     ――――◇―――――
 人事官任命につき同意を求めるの
  件
 原子力委員会委員任命につき同意
  を求めるの件
 公正取引委員会委員任命につき同
  意を求めるの件
 日本銀行政策委員会委員任命につ
  き同意を求めるの件
 文化財保護委員会委員任命につき
  同意を求めるの件
 漁港審議会委員任命につき同意を
  求めるの件
 中央更生保護審査会委員任命につ
  き同意を求めるの件
 運輸審議会委員任命につき同意を
  求めるの件
 鉄道建設審議会委員任命につき同
  意を求めるの件
○議長(清瀬一郎君) 次に、人事官に佐藤正典君、原子力委員会委員に石川一郎君、兼重寛九郎君、西村熊雄君、公正取引委員会委員に佐久間虎雄君、日本銀行政策委員会委員に大屋敦君、文化財保護委員会委員に川北禎一君、細川護立君、漁港審議会委員に小田賢郎君、鮫島茂君、井出正孝君、斎藤静脩君、井内光虎君、奥田憲太郎君、川上善次君、坂本庄三郎君、中央更生保護審査会委員に神田多恵子君、運輸審議会委員に菊川孝夫君、鉄道建設審議会委員に鈴木清秀君、根津嘉一郎君、小島新一君、佐々部晩穂君、清井正君、柳満珠雄君、今野源八郎君、加藤閲男君を任命したいので、それぞれ本院の同意を得たいとの申し出があります。右申し出の通り同意を与えるに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、いずれも同意を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
 ILO八七号条約の提出に関する
  緊急質問(大原亨君提出)
○田邉國男君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 すなわち、この際、大原亨君提出、ILO八七号条約の提出に関する緊急質問を許可されんことを望みます。
○議長(清瀬一郎君) 田邉國男君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
 ILO八七号条約の提出に関する緊急質問を許可いたします。大原亨君。
  〔大原亨君登壇〕
○大原亨君 私は、日本社会党を代表して、ILO八七号条約の批准に関して、緊急質問を行なわんとするものであります。(拍手)
 まず、端的に御質問をいたしますが、去る二月十九日、政府・与党のILO世話人会で、ガリオア・エロアの跡始末や、タイ特別円協定が重要であるから、ILO八七号条約の批准提案をやめるという申し合わせをしたということであります。このことは、去る二月十三日、衆院社労委における労働大臣、大平官房長官の言明に反するものであります。
 一体、国民から二重払いの疑惑が持たれているガリオア・エロアや、国会の権威と国民の意思をじゅうりんして強行されようとしているタイ特別円協定が、ILO八七号条約よりも重要であるというふざけたことが本気で言い得るものかどうかということであります。(拍手)二つを天びんにかけるなどという本末転倒した国際感覚や労働認識には、全くあきれるほかはありません。ILO批准をめぐる自民党と政府内の混乱は、まるで労働問題を、犯罪、治安の対象とした西欧における十九世紀初頭の混乱を思わせる百鬼夜行の醜態であります。自民党総裁である池田総理のこれについての見解を明らかにされたいと思います。
 また、政府は、加藤労働政務次官をILOに派遣し、結社の自由委員会で釈明をさせるというが、国会や国民にはほおかぶりで、一体何を釈明するように訓令いたしたのであるか。殷鑑遠からず、ILOに対しては、すでに日本政府の労働大臣は前科があるのであります。昨年のILO批准が流れたことについて、秘密文書をもって、野党にぬれぎぬを着せた卑劣きわまる政府の報告は全く許しがたいことであります。どういう言いわけをするために加藤次官を派遣したか、まず本会議を通じて明らかにすることを要求いたします。(拍手)
 第二の点は、日本政府は、三年前、当時の倉石労働大臣をして、ILO総会で、すみやかに八七号条約を批准すると公約、池田演説の引用、昨年の総会における石田労働大臣の公約など、一寸刻みの苦しい言いわけを続けてきた点についてであります。
 その間、ILOの各機関は、七回にわたって、公労法四条三項、地公労法五条三項は、団結権を保障するILO八七号条約に違反することを明らかにし、その批准を迫ってきたが、昨年の十一月の結社の自由委員会は、ついに、日本政府の措置に失望を表明するという、全く外交慣例上空前ともいうべき非難を日本政府に浴びせたのであります。ILOは国連の専門機関であります。国連中心主義などという池田内閣の外交の正体が、まさしく羊頭狗肉、公正なる労働条件の上に平和を築いていこうとするILOを否認する反動的なものであることを暴露するに至ったことは、わが国の名誉のために真に遺憾というほかはないのであります。ILOに対する根本認識について、池田総理の責任ある見解を求めるゆえんであります。
 第三、昨年の春、ILOの条約、勧告専門家委員会が、公労法四条三項は一九五三年日本がすでに批准をしたILO九八号条約に抵触するというきわめて明快な見解を満場一致承認し、理事会、総会においても、外国の使用者代表を含めてこの見解を支持したことは重大問題といわねばなりません。日本国憲法は、条約優先、すなわち条約に抵触する法律は当然無効であると規定して、何らの疑義はないのであります。ILO条約は多数国間の条約であることからも、ILOにおけるこの見解、この事実を無視することは、国際信義に違反する行為であると思うのであります。日本は、ILO九八号条約に違反する公労法四条三項の無効を本会議を通じて宣言すべきであると信ずるのでありますが、池田総理のこれに対する見解を明らかにされたいのであります。
 第四に、ILO八七号条約批准に対するわが日本社会党の所信を天下に明らかにし、これに対する政府の見解をたださんとするものであります。
 社会党は、ILO八七号条約批准にあたっては、ILO専門家委員会の指摘する通り、公労法四条三項、地公労法五条三項を削除して、すっきりと八七号条約を即刻批准すべきであるというに尽きるのであります。もちろん、国内政策に対する政府の法案提出権を否認するものではないが、問題は、政府・自民党がILO八七号条約批准に便乗して関係法案と称する数々の悪法をからめて提案し、一括強行通過をはからんといたしている考え方が問題であります。社会党は、これらの法案が便乗であるばかりか、ILO八七号条約はもちろん、日本国憲法の精神に違反する法案であり、かかる国際法違反の犯罪行為の共犯者となることをわれわれは拒否するものであります。便乗法律案を切り離せというわが党の明快なる見解に対しまして、労働大臣はいかに考えられるか、御所見を明らかにされたいと存じます。
 第五に、専従制限、チェック・オフの廃止、交渉制限、管理職の範囲のきめ方、政治活動の法律による規制などは、明らかに、ILO労働憲章第十九条八項が、条約の批准に際して「関係労働者にとって有利な条件を確保している法律、裁決、慣行又は協約に影響を及ぼすものとみなされてはならない。」という規定に違反をし、労働者側との合意のない一方的な現状変更や既得権剥奪は、明らかに本条の精神をじゅうりんするものであります。
 私は、この際、昨年のILO総会で特別決議として、各加盟国に対し、労、使、政府の三者による機関を設けて労働紛争を処理すべきであると勧告いたしましたILO精神に基づき、いわゆる関係法案を関係労使間において再検討することが妥当と考えるのでございますが、池田総理の見解を明らかにされたいのであります。
 第六に、この際ILO条約全体に対する日本政府の態度についてただしたいと存じます。
 今日まで、ILOで採択された百十五の条約の中で、日本政府はわずか二十四の条約しか批准をいたしておりません。これはまさに植民地的水準であるといわねばなりません。ILOは、権利と賃金、労働条件は一体のものであるという国際常識の上に運営されているのであります。たとえば、アメリカの法定の最低賃金は、ケネディの公約通り、来年一時間一ドル二十五セントに引き上げられるのに比べ、日本では、二千一百万の雇用労働者のうち、驚くなかれ八千円、すなわち一時間十一セント以下の労働者が五百万人もおり、にせものといわれておる業者間協定による最低賃金は、九割九分が八千円以下という残酷きわまる実態であるのであります。業者間協定は、ILO二六号条約の労使対等の原則に反するのみならず、世界各国でこの方式をとる先進国は一つもありません。箱根会談や外交機関を通じていかに弁解しようとも、この事実と逆コースの労働政策を隠蔽することは断じてできないのであります。政府は、一体いつILO二六号条約を批准するのかという点、さらに、本年のILO総会において採択されるであろう、一週間四十時間労働制に対しては、日本政府はいかなる態度をもって臨むのかという二つの点につきまして、労働大臣の見解を明らかにしていただきたいと思うのであります。
 最後に、日本の国際収支は危機に直面し、経済、外交、貿易は重大な岐路に立っているが、ILO問題はこれと無縁ではないという点であります。
 ILOは、労使各一名、政府代表二名をもって構成し、百一の加盟国によって総会が運営されるという、各国の腹の底まで見える独特の機構であり、日本は、十大工業国の一つといたしまして常任理事国の席を持っているのであります。今、アメリカの日本品輸入制限はもちろん、イギリスを含むEEC諸国は、対日差別待遇の理由として、日本における低賃金と労働者に対する権利の圧迫を指摘しておることは周知の事実であります。われわれは、日本が、労働者の権利と賃金の不当なる圧迫の上に、不公正なる競争者として国際場裏において非難を受けるよりも、労働者の賃金と国民生活を引き上げて、国内の消費市場の安定の上に堂々と国際場裏に進出することが、輸出の増大と国民経済の安定した発展をもたらすただ一つの繁栄の道であると確信して疑わないところございます。
 経済外交の見地より、池田総理並びに外務大臣のこれらILO問題に対する見解を明らかにされるよう要求いたしまして、私の質問を終わりたいと存じます。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 自由にして民主的な労働運動の発展を期するという見地から、関係国内法規の整備とともにできるだけ早く国会に提出し、御審議を願いたいと考えておるのであります。
 なお、二月十九日の党との打ち合わせにおきましても、こういう趣旨によりまして十分意見の一致を見たのでございます。
 なお、加藤政務次官を派遣いたしましたのは、政府の、先ほど申し上げました基本方針をILO関係当局者に説明するためであるのであります。
 また、ILO諸条約に対しまするわれわれの態度、私は、日本の国内諸制度の整備とともに、できるだけ早く諸般のILO関係諸条約を批准するように努力していきたいと考えております。
 その他の点につきましては関係大臣よりお答えさせます。(拍手)
  〔国務大臣福永健司君登壇〕
○国務大臣(福永健司君) 昨年の政府から出しました報告について、野党にぬれぎぬを着せたというお話でございますが、よく静かに文章を読んでいただきますと御理解願えますように、積極的に事実を曲げて報告しておることはございませんが、ただ、文章はあまり上手ではございません。従って、そういう意味において今後気をつけたいと存ずる次第でございます。
 それから、政府・与党間において、ILO関係案件の提出について協議をいたしましたことは事実でございますが、その際、ガリオア・エロア、タイ特別円の問題等の関係で本案件がおくれることになったということでは毛頭ございません。そういうことでありまするならば第一私が承知できないのであります。そういうことではございません。いろいろの国会対策上の見地からの発言等もございまして、総合的の結論といたしまして、ただいまのところ、そうなっているということでございまして、早期に提出するという方針に依然変わりはないことを御理解いただきたいと存じます。(拍手)
 ILO九八号条約に公労法四条三項等が抵触しないか、こういう意味の御意見がございましたのでありますが、日本の法律全体、たとえば国家公務員法、労働組合法等、いろいろのものをこれもよく見ていただきますと、抵触していないのであります。抵触しないような措置が十分に講ぜられております。ただし、ILOにおきましては、こういう点で全部が全部きわめて詳細に検討されたということがあるかどうか、それはよく知りませんけれども、そういう点で日本の法制全体に対する理解につきましては、われわれと少し違うのでございます。私どもは、公共企業体等の職員については、解雇できる理由は、法律によりましてちゃんと制限的に列挙しておりまして、従って、御指摘のようなことにはならないし、もし、万々そういうことが疑いのあるときには、労働組合法上、その他いろいろの法律によって、そういうことのないようなための保障が十分にできておる次第でございます。
 それから、ILO八七号だけを単独に批准して――関連法案の便乗的改悪というお言葉がございましたが、それは別にやるべきではないか、こういうようなお話でございます。私どもは、便乗的改悪をやろうと思っているのではございません。八七号条約を批准するにあたっては、この趣旨をより徹底せしめ、目的をより効果的にするという措置において関連法律を改正する、こういう次第でございます。(拍手)従って、この点について、社会党はこう考えるということについて、社会党の考えについてどう思うかというお話でございます。私はこの際、社会党さんの考え方に批判を加えようとは思いません。社会党さんは社会党さんなりにお考えになり、われわれはわれわれなりに考えるのであります。このいずれがよろしいかについては、国民がおのずから判断してくれるものと思います。(拍手)
 それから、専従制限、チェック・オフ制限等についての御見解でございますが、昨年の総会で、労、使、政府の三者構成による機関を作って話し合い、問題を処理せよというような趣旨の特別決議があるのでありますが、こういうものにつきましては、従来から日本政府においてはそういう措置をとっておりまするので、別段、特にこれに違反するようなことはいたしておらないつもりでございます。
 それから、ILOの関係で、百十六の条約が採択されており、日本はそのうち二十四しか批准してないから、これはまさに植民地的水準であると、こういうお話でございます。私は、できるだけ多くのものが批准されていくことを基本的には望むものでございますが、世界各国いろいろの事例がございまして、フランスのごとく、七十三も批准しておりまするところもございますが、ソ連が二十二、カナダが十九、中国が十六といった――アメリカもついでに申しますと、アメリカが七と、こういうようなことでございまして、こういうのを見ますと、必ずしも一がいにわが方が植民地であるという表現はいかがかと思うのでありますが、しかし、こういう事情があるから、わが方は八七号その他はぼつぼつやっていいんだとは、私は決して思っておりません。ほかの例も申し上げて、それにしても、われわれは批准の促進をはかっていきたい、どういうように考えておる次第でございます。
 最低賃金法につきましては、私どもは鋭意これが普及につきまして努力をいたして参りました。着々成果を上げつつある次第でございまして、なお一そう馬力をかけまして実績を上げ、また、これと関連して、条約批准の問題についても検討を進めて参りたいと考えておる次第でございます。
 労働時間の短縮につきましては、今直ちに一律に四十時間ということは、なかなか日本の現状からいたしますと容易ならざる問題でございます。方向といたしましては、私はできるだけ労働時間も短縮されていくという方向へ行くべきだということに考えておるのでございます。この問題につきましては、なおILOでこれから先も検討されていくところでございまして、世界の情勢、また特にわが国の実情等考え合わせまして、そういう方向へ行く努力は今後も私は続けたいと存じます。(拍手)
  〔国務大臣小坂善太郎君登壇〕
○国務大臣(小坂善太郎君) わが国の賃金が名目的にも実質的にも上がっていきますことは望ましいことでございまするが、やはりわれわれとしましては、国際的な競争場裏において公正なる競争をする、そうしてそのために経済外交を積極的に展開いたしましてわが国の輸出市場をふやしていく、そして輸出貿易の振興を通じて国内経済の振興をはかりまして、労働者諸君の賃金を安定向上させていく、かようなことを考えておるわけであります。日本が特にお話しのように低賃金国であるとかあるいは労働権を圧迫しておるというような非難を受けましたことは、私としては聞いておりません。またそのようなことはございません。日本の賃金の名目的なるものと実質的なるものとについて十分各国に理解をせしめまして、この点については十分認識を得ております。日本品に対する差別待遇というようなものは年ごとになくなっておりますことはすでに御承知の通りでございます。
 以上をもってお答えといたします。(拍手)
○議長(清瀬一郎君) 以上をもって緊急質問並びにこれに対する政府の答弁は終わりました。
     ――――◇―――――
 義務教育諸学校の教科用図書の無
  償に関する法律案(内閣提出)並
  びに義務教育諸学校の児童及び
  生徒に対する教科書の給与に関
  する法律案(山中吾郎君外九名
  提出)及び教科書法案(山中吾郎
  君外九名提出)の趣旨説明
○議長(清瀬一郎君) 議院運営委員会の決定によりまして、内閣提出、義務教育諸学校の教科用図書の無償に関する法律案並びに山中吾郎君外九名提出、義務教育諸学校の児童及び生徒に対する教科書の給与に関する法律案及び教科書法案の趣旨の説明を順次求めます。文部大臣荒木萬壽夫君。
  〔国務大臣荒木萬壽夫君登壇〕
○国務大臣(荒木萬壽夫君) このたび政府から提出いたしました義務教育諸学校の教科用図書の無償に関する法律案の提案理由及びその内容の概要について御説明申し上げます。
 この法律案は、第一条で、義務教育諸学校において使用される教科用図書を無償とする方針を確立し、その措置に関して必要な事項は別途立法措置を講ずることとしているのであります。
 教育の目標は、わが国土と民族と文化に対する愛情をつちかい、高い人格と識見を身につけて、国際的にも信頼と敬愛を受けるような国民を育成することにあると思います。世の親に共通する願いも、意識するといなとにかかわらず、このような教育を通じて、わが子が健全に成長し、祖国の繁栄と人類の福祉に貢献してくれるようになることにあると思うのであります。この親の願いにこたえる最も身近な問題の一つとして取り上げるところに、義務教育諸学校の教科書を無償とする意義があると信じます。
 しかして、義務教育諸学校の教科書は、学校教育法の定めるところにより、主要な教材としてその使用を義務づけられているものであります。感じやすい学童の心に最も影響のあるこの教科書について、かつて各方面からいろいろの批判を受けましたことは御承知の通りでありますが、最近、新しい学習指導要領が作られるに及び、日本人としての自覚を持たせるに足る教科書が刊行されるようになりました。
 このように教科書は改善されつつありますが、政府は、昭和二十六年以降、小学校一年に入学した児童に対し、あるいは義務教育無償の理想の実現への一つの試みとして、あるいはまた、国民としての自覚を深め、その前途を祝う目的をもって、一部の教科書を無償給与したことがございますが、間もなく廃止されたことは御承知の通りであります。今日では要保護、準要保護児童生徒合わせて百二十万人に対し、無償交付が行なわれております。そこで、このたび政府は、義務教育諸学校の教科書は無償とするとの方針を確立し、これを宣明することによって、日本国憲法第二十六条に掲げる義務教育無償の理想に向かって具体的に一歩を進めようとするものであります。このことは、同時に父兄負担の軽減として最も普遍的な効果を持ち、しかも、児童、生徒が将来の日本をになう国民的自覚を深めることにも大いに役立つものであると信じます。またこのことは、わが国の教育史上画期的なものであって、まさに後世に誇り得る教育施策の一つであると断言してはばかりません。(拍手)
 しかしながら、義務教育諸学校の教科書を無償とする措置を行なうには、その実施の方法、手続、発行、供給のあり方等について、十分検討を加える必要があると考えられます。
 政府は、とりあえず、明年四月小学校第一学年に入学する児童に対しての経費を、ただいま審議を願っておる三十七年度予算に計上いたしましたが、この実施の方法を含めて、調査審議を行なうため、文部大臣の諮問機関として、臨時義務教育教科用図書無償制度調査会を設置することとしたのであります。
 無償の実施に必要な事項は、調査審議の結果を待って、別途立法措置を講ずることになります。調査会の存続期間は一カ年、委員は二十人以内とし、学識経験者及び関係行政機関のうちから、文部大臣がこれを任命することといたしました。諮問事項のうち、特に、昭和三十七年度の予算の執行及び昭和三十八年度の予算の作成に関係ある事項については、調査審議の結果を、おそくとも昭和三十七年十一月三十日までには答申いただくこととし、所要の立法措置及び次年度以降の準備に資することができるよう配慮しているのであります。
 なお、この法律の施行期日は、本年四月一日からとし、また昭和三十七年度の予算の執行にかかる措置を実施するため必要な事項は、別途政令で定めることができることとして、万全の措置を講じました。
 政府は、この法律案をわが国文教政策上の全国民的な重要課題として、御審議を願わんとしているのであります。
 以上がこの法律案の提案理由及びその概要であります。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(清瀬一郎君) 提出者三木喜夫君。
  〔三木喜夫君登壇〕
○三木喜夫君 私は、日本社会党を代表いたしまして、教科書法案並びに義務教育諸学校の児童及び生徒に対する教科書の給与に関する法律案の二法案について、その提案の理由を御説明申し上げます。
 近来、国民大衆によって、青少年の教育問題が非常に論議され、多大の関心が払われるようになりましたことは、まことに喜ばしいことであります。特に高校急増対策と並びまして、教科書問題に対して国民はひとしく政府の施策に期待し、注目しておったのでございます。しかるに、この二件とも国民の切なる要望にもかかわりませず、これにこたえたものとは言えないのでありまして、今や大きな政治問題となっているのであります。
 それはなぜかと申しますと、今、教科書問題について見ましても、理由は二つあるかと思います。
 すなわち、当初小中学校の児童、生徒に対しまして、文部省は三十七年度から教科書を無償で配布しようとして、文部大臣は数次にわたりその実現を国民に公約し、それに必要な経費百六十億の予算の要求を大蔵省にいたしたのであります。しかし、その結果はわすか七億円余りの計上でお茶を濁し、無償の方針をも不明確のまま今日に至っているのでございます。これでは全く大山鳴動ネズミ一匹のたとえの通りで、国民を愚弄するものである以外の何ものでもないのであります。(拍手)それだけではなく、もっと悪いことは、この過程で無償問題と国定制度の復活をからめてやるべしという暴論さえ出されたということが新聞に出るに及んでは、教科書問題を党利党略の具にしたといわれても仕方がないのであります。(拍手)これがその一つの理由でございます。
 次に、教科書の値上げ問題でありますが、教科書のあの程度の値上げはやむを得ないという事情はわからないことはありません。しかし、四月以来の教科書会社側の強い突き上げがあり、一方、公共料金の値上げを一応押えているという政府の建前から、苦肉の策として教科書無償を打ち出したという印象が非常に強いのであって、これが真相ならば、およそ教科書無償の本質から逸脱するもはなはだしいものであって、もってのほかだといわねばならないのであります。(拍手)紆余曲折の結果、妥協の産物として応急に教科書無償法案を今日出してきて、わずか小学校一年生だけが無償で、他は調査会に責任をかぶせて懸案になったのでは、最初のかけ声の大きかった教科書無償は、小さく影をひそめ、教科書の値上けが大きく国民の上にのしかかってきたことになるのであります。これでは国民はちょっぴりあめをねぶらされて、大部分の者は値上げという手でびんたを張り飛ばされたにひとしいのでありまして、国民こそやり切れない気持にならざるを得ないのであります。これが二つ目の理由でございます。
 わが社会党は、このようなややこしい教科書に対するやり方、また教科書の無償給与に便乗して、教科書の国定化を意図する怪しげな考え方に対しては、黙視することができないのでございます。従って、かねて準備しておりました教科書に関する二法案を提出し、一つには現下の国民の要望にこたえ、一つには民主的教科書行政の方針を確立しようとするものであります。(拍手)
 第二のこの法案を提出する根拠は、憲法第二十六条にいう「義務教育は、これを無償とする。」ということであります。
 政府の解釈では、義務教育無償とは、授業料を取らないことを言うのだと言っておりますが、そうすると今度の政府の教科書無償の措置は、社会保障の立場をとっておるのかどうか、その大原則がきわめてあいまいになって参るのであります。
 社会党は、日本国憲法及び教育基本法に保障された義務教育無償の原則をはっきりさせて、国立及び公立の義務教育諸学校の児童及び生徒に教科書を給与し、私立の義務教育諸学校の児童及び生徒に教科書を給与する経費を国が補助し、そして義務教育の円滑な実施に充てようとするものであります。(拍手)
 第三の根拠を申し上げます。
 教科書行政を歴史的に考えてみますと、そこには教科書の問題性がたくさんあげられるのであります。すなわち、昭和三十年ごろからきわだって露骨になって参りました反動文教政策の中に教科書問題も例外ではありませんでした。教科書検定制度による教材の歪曲が行なわれ、特にF項パージ問題等はその最たるものであって、教科書会社をふるえ上がらせ、その権力的支配意図は職場のすみずみまで及んだのでございます。昭和三十一年の第二十四回通常国会に提出された教科書法案は、廃案になったにもかかわらず、政府は、その法の内容を、行政措置や行政指導で着々と実現をはかり、議会制度無視の暴挙をやってのけたのであります。すなわち、教科書調査官の設置もその一つであり、国会の審議の必要のない省令や次官、局長の通達や通牒で、検定制度の組織や運営の実質は、どしどしと変更されていったのであります。
 元来、教科書は教育の内容を憲法及び教育基本法の示す民主教育の線に適合せしめるかなめであり、自主性と弾力性のある教育の手段としてのものでございます。この正しい学習を発展させる教材としての教科書が、官僚支配、権力支配によって、その内容も昔に逆転させられ、教科書で教育するのでなく、教科書を教えるていのものになりつつあることは、まことにわが国教育上ゆゆしいことでありまして、大問題だといわなければならないのでございます。(拍手)このような状況の中で検定の明朗化、公正化の声が上がっておるのも当然のことであります。また教科書採択についても、自由採択は名のみで、統一採択を大ブロック化し、ここに業者の過当な競争を起こさせるようになり、その結果、昨年度関西においては多数の教員諸君が傷ついたのであります。このようになしくずし的に昭和三十一年廃案になった教科書法案を再現しようとすることは、教科書の国定化を意味するものであって、これは明らかに教育の国家統制への道を開くものであり、再び戦前の超国家主義、帝国主義の教育に引き戻さんとするもので、断じて認めることができないのでございます。(拍手)
 ここにおいて、わが党は、教科書法を制定することにより、教科書行政に関する基本方針を明らかにし、民主的な教科書制度の確立を期するとともに、明朗、公正な検定、採択が行なわれるようにするものであります。
 次に、教科書法案の概要を申し上げます。
 第一は、教科書委員会の権限を文部省より独立させたことで、すなわち、国家行政組織法に基づき、文部省の外局として、教科書の種目の決定、検定、定価の基準、採択、供給等、教科書行政全般をつかさどる教科書委員会を設置することとし、その委員は学識経験者の中から文部大臣が両院の同意を得て任命することであります。
 第二は、検定、採択の民主化で、教科書の検定は、発行者または著作権者の申請により教科書委員会が行ない、採択は、学校長が教科担任教師の意見を聞いて行なうことであります。
 第三は、教科書の研究で、都道府県は、教科書研究に資するため、都市単位に二または三の教科書展示施設を置き、国はこれに要する経費につき予算の範囲内で補助できることでございます。
 第四は、発行と供給について、教科書委員会は、都道府県教育委員会の報告に基づき、発行者に対し、発行の指示をし、指示を受けた発行者は、供給の義務を負うこと等であります。
 第五は、この法律は、第二章教科書委員会等に関する規定については、公布の日から起算して六カ月以内の政令で定める日から、その他の規定は、昭和三十八年四月一日から施行することであります。
 次に、義務教育諸学校の児童及び生徒に対する教科書の給与に関する法律案の概要を申し上げます。
 第一は、国立、公立の義務教育諸学校の児童、生徒に対し、教科書を各教科につき一種類ずつ校長を通じて給与することにし、国はそれに要するところの経費を全部負担することであります。
 第二は、私立の義務教育諸学校の児童、生徒に対し、学校法人が教科書を給与した場合、その経費につき、国は、予算の範囲内で補助することができることであります。
 第三は、この法律は、昭和三十七年四月一日から施行することであります。
 以上申し述べましたところが、二法案の概要でございます。何とぞ十分な御検討をいただくようお願いいたしまして、私の提案説明を終わります。(拍手)
     ――――◇―――――
 義務教育諸学校の教科用図書の無
  償に関する法律案(内閣提出)並
  びに義務教育諸学校の児童及び
  生徒に対する教科書の給与に関
  する法律案(山中吾郎君外九名
  提出)及び教科書法案(山中吾郎
  君外九名提出)の趣旨説明に対
  する質疑
○議長(清瀬一郎君) ただいまの各提出法案の趣旨の説明に対しまして、質疑の通告が出ております。よって、順次これを許します。小林信一君。
  〔小林信一君登壇〕
○小林信一君 私は、ただいま内閣から提案されました義務教育諸学校の教科用図書の無償に関する法律案に対しまして、社会党を代表して、質問をいたすものであります。(拍手)
 義務教育の教科書無償は、教育の機会均等の意味からも、また社会保障の見地からも、当然実施さるべき問題でありまして、六・三制の実施以来、父兄、教師がどれくらい要望し続けてきたものであるかということは、私が申し上げるまでもないことでございます。(拍手)今、世界各国の実施の状況を見、わが国が文化国家を表明し、憲法に義務教育無償の原則を明示しておりますことを考えますとき、今日まで遷延いたしたことは、憲法を尊重しない、教育を軽視した政治、父兄の犠牲による教育行政が続いてきたことを証明する以外の何ものでもないと思うのでございます。(拍手)この意味から申しまして、自民党内閣は政治責任を追及さるべきであり、池田内閣の経済成長政策も、こうした数多い犠牲の中で行なわれていることが指摘されなければならぬのであります。(拍手)おそきに失したといいましても、この責任を自覚して、政府がここに意を決し、宣言するだけでなく、実際に行なおうとするならば、文化国家として慶賀すべきであります。と同時に、総理大臣が過般の施政方針演説におきまして、教育優先を強調されましたが、少なくとも予算編成の中には、教育を重視するものは残念ながら見出すことができなかったのであります。(拍手)ここで教料書無償を実施するならば、単なる演説でなかったことにもなりますので、この意味からも私は慶賀にたえないと申すわけでございます。しかし、この法案を検討し、ただいまの大臣の提案理由の説明をお聞きいたしますと、無条件では慶賀を表することはできません。どうも政府はまじめにこの問題を取り上げておらない、真剣に取り組んでおらない、誠意のないものとしかわれわれは了承できないのでございます。国民の素朴な願いからするならば、こんな表現の仕方でなく、率直に、いつやるか、これが国民の最も聞きたいところでございますが、こういう点はまことに不明瞭にし、あるいは消えていくような可能性も持っておる性格であることを考えますときに、われわれはまことにこの法案に対しましては遺憾を表する次第でございます。(拍手)
 無償と申しましても、地方行政に半額負担させる無償もございます。あるいは暫定的なものであるか、恒久的なものであるか、こういう点を明確に責任を負っておらない法案である。あるいは貸与であるか、支給であるか、こういう点をお尋ねいたしますならば、おそらくそれは調査会で調査審議の結果きまります。こういうふうに責任回避をする無責任きわまる提案であります。(拍手)これは要するに、実施する意欲がなく、責任のがれの宣伝だけでございまして、迫って参っておりまする参議院選挙のための宣伝法案とも受け取れるのでございます。(拍手)かかる態度であるならば、国民を欺瞞し、国会を軽視した許しがたい問題といわなければなりません。
 かつて昭和二十六年、先ほど文部大臣も説明をいたしましたが、憲法に示す義務教育無償の原則にのっとり、教科書無償の法律が作られたのでございます。これを翌年は入学祝いとすりかえまして、さらに翌年は政府みずからの手によって葬り去っておりますことは、国民の記憶に新しいところでございます。(拍手)先ほどの文部大臣の説明は、きわめてその最後をあいまいにしておりますが、そのときの国民の失望、青少年の純真な心に与えた痛手は、それは教科書の一冊、二冊の問題ではございません。朝令暮改の政治への不信であり、教育軽視、憲法無視への怒りであったことを、私はこの際訴えたいのでございます。(拍手)政府にはこうした前科があるのでございます。その冷酷無情な政府の大蔵大臣がこの池田さんであったということを、この法案と一緒にあわせ考えますときに、単にこの法案に対して敬意を表することはできません。(拍手)いよいよ不安と疑惑を持たなければならぬのでございます。この際、前科のある総理大臣は、今回こそ真剣にやる、そのやるかどうかを、その真意を国民の前にこの際披瀝する必要があると私は考えるのでございます。もし総理大臣が真剣だというなら、調査会できまりますからというようなごまかしを言うのでなく、実施は何年の予定くらいは、総理大臣の口からきょうここで直接私は言明していただきたいと思うのでございます。(拍手)
 さらに、最もわれわれが不可解に考えております点は、この法案は、立法の根拠を明確にしておらないという点でございます。憲法を守り、憲法に忠実であることが最大の使命である政府の責任からして、この法案の立法の精神は、堂々憲法第二十六条、義務教育は無償とする、この精神に立脚すると当然明らかにしなければならぬのであります。何ゆえにか政府がこれを避けておることは、全く納得しがたいところでございます。現行憲法に従うことを好ましく思わないのか、あるいは一部に無償の原則を拡大されることをおそれる閣僚があることを聞きますが、総理大臣の施政方針に言われております「青少年こそは祖国の生命力の聖なる源泉であり、」実にりっぱな言葉でございまして、私もこれには敬意を表するものでございますが、これが真実総理大臣の心情であったならば、無償の原則をますます拡大し、政治の全力を傾注しても、私はあなたの施政方針演説にもとらないと思うのでございます。
 総理は、「真の繁栄は、豊かな経済を基礎としつつ、」こうやはり申されております。この点はあくまでも経済優先を主張されるのでございますが、それは大資本、大企業中心の政策であって、国民全体を対象にした場合には、あくまでも教育を基礎とすることが、私は政治の原則だと考えるのでございます。この観点に立って、勤評や学力テストで教育の効果を上げようとしておりますところの今の教育行政を反省しなければならぬと思うのでございます。(拍手)教職員九百名が処罰されました岩手の学力テスト事件は、単なる教職員の問題だけでは済まされない大きな社会問題である、私は政治問題だと考えておりますが、荒木文相は、すべて教職員の責任だ、こう教職員の責任に帰しておりますが、一学級の生徒数を、世界各国が実施しておりますように、三十名、三十五名にして、学力の充実をはかる政治の責任のあることを忘れてはならぬのでございます。(拍手)格差をなくす経済成長政策は、教育に投資をする教育優先の政策で、しかも憲法二十六条を忠実に施行するところから生まれると思いますが、総理大臣の御見解をこの際承りたいのでございます。とにかく児童、生徒を含め、国民が重大な関心を寄せる本法案に、かかる疑念の存在することはまことに残念であります。総理の誠意ある説明をこの際お願いしてやみません。
 大蔵大臣がおられないようでございますが、私は大蔵大臣にも、この際一言質問申し上げたい。
 教育予算に対しては、ことのほか冷酷だというのが国民の目下の世論でございます。これでは総理の演説がから念仏になるということに、この際大蔵大臣が気づかなければいけないと私は思うものでございます。教育費は一九%増加しておりますとよくがんばりますけれども、全体の予算二四%の伸びと比較すれば、決して教育尊重の予算とは言えません。国民の切なる要望でありました急増対策、学校給食、すべてけっております。地方自治体はいかにしてこの急増対策を措置するか、財政的に苦しみ、父兄は子供の将来に非常な憂慮を感じておる。児童、生徒は、こうした予算の結果から、パンが小さくなって、一体所得倍増というのはだれのための所得倍増だ、こういう疑念まで抱いておるのが現状でございます。
 教科書無償に対しましては、また大蔵大臣きわめて消極的で、大蔵大臣の抵抗があったために、わけのわからない、まことに不可解千万な法案になったということを聞いております。この際大蔵大臣が見解を述べて、その真偽のほどを明らかにしていただきたいのでございます。
 最も教科書法案について大蔵大臣にお聞きしたい点は、無償と申しましても、地方財政に半額負担をさせる無償もあります。国庫が全額まかなう無償もあります。こんな基本的な問題までおそらく調査会にゆだねることはないと思います。提案と同時に政府では決意をされておると考えますので、財政の責任者である大蔵大臣に、この点を御答弁願いたいのでございます。
 次に文部大臣にお尋ねいたします。
 第一に、総理大臣にもお伺いいたしましたが、あなたからは、教育行政をあずかる教育的な見地に立って、立法の精神が明確になっていない理由を御説明願いたいのであります。
 憲法に義務教育無償の原則を立て、文化国家の性格を明らかにしておるのに、これを無視して、根拠のない無償を実施しようとするということは憲法無視であり、国民に対しまして独善的であり、しかも非教育的であるといわなければなりません。あなたは子供に教科書を渡す当面の責任者でございますが、この法案が成立して子供に教科書を渡すときに、一体文部大臣は何と言ってお渡しになるか、私はお聞きしたいのでございます。
 第二の問題は、与党の積極的な一部の諸君のためにこの法案が出たことを私は伺っておりますが、この法案の第一条は、その諸君の意向を表明し、第二条は、できたら阻止したい政府側の態度を示した、意見対立を如実に示した法律であると私は断定しておるのでございます。(拍手)このような法案提出の意図はどこにあるか、了解に苦しむものであります。実現までに至らなくても、参議院選挙には宣伝になるというような声を聞きますが、もしかかる目的を持って提案されるならば、教育を政争の具に供する最も悪らつな行為というべきでありまして、提案される文部大臣は、この点どのようにお考えになっておるか、お伺いいたします。
 次の問題は、調査会を設けることに文部大臣自体も異議がないようにお伺いするのでございますが、教育行政をあずかる者として、私にはまことに納得が参りません。文部省におきましては、すでに過去において実施した経験を持っております。しかも、常時こういう仕事をすることについては十分心がまえをしておく立場が私は文部省だと考えております。今さら他の行政機関の職員に意見を聞かなければならないようならば、文部省の行政能力なしと断定しなければなりません。(拍手)教科書無償の実現を期するならば、あなたは文部省の権威にかけても調査会設置に反対するのが当然だと思うのでございます。先ほどの御説明のようなことを真から言うならば、この調査会を文部大臣一人でも食いとめるような意向をなぜ出してくれなかったかと、私はまことに慨嘆にたえないものでございます。日教組には強いが予算には弱いといわれておりますが、こんな法案を押しつけられるようでは、すべてに弱い荒木文相といわなければなりません。(拍手)あなたは高校急増の不手ぎわを追及されたときに、私は負けましたと、この壇上で大蔵大臣への敗北を告白されましたが、たび重なる敗北は、中学校浪人を生み、学校給食のパンを小さくしている重大な責任を感ずるべきであります。調査会は絶対に教科書無償を促進させる機関ではありません。これに断固反対することこそあなたの責任であり、教育を前進させる道だと私は信じます。
 最後に、この教科書無償の法案が他の法律に得られない教育的価値を保有しておることを、大臣各位に御確認願いたいというのが私の切なる要望でございます。あなた方は、ともすれば本というものを与える考えで終始しておられますが、これこそ若い世代に生々発展の夢を与えるものでございます。国会の全員が民族の将来を祈るような美しさの中で、この法案が私は決定されなければならないものだと考えておるのでございます。修身の復活がなければ道徳教育ができないような古い考えを捨て、こうしたところに最大の道徳教育のあることを閣僚諸君に知っていただきたいのでございます。すべて文部大臣の決意いかんによると信じますが、大臣はどのような見解をお持ちになっておるか、御意見をお願いいたしまして、私の質問を終わらしていただきます。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) 文教問題に対しまする日本政府の過去のやり方は、ことに初等教育に対しまする日本政府の過去のやり方は、世界万民のよく認めておるところでございます。しこうして敗戦後のわが国におきましては、いろんな事情におきましてこの教育問題が、戦前ほどに、実際面において重要視されなかったそしりを免れない点があるのであります。私はここにかんがみまして、今回の施政演説におきましても文教問題を最も重視しておることを国民に訴えました。(拍手)
 私は、今回憲法第二十六条の義務教育を無償にするというこの理想の実現に向かって邁進し、ここに教科書の無償配布という大方針を決定いたしたのであります。このことにつきましてはいろいろ御批判がありましょうが、私は、国民大多数がこの政府の措置に対しまして非常に喜んでおると、心ながら自分も思っておるのであります。どうか、今お話がありましたように、ほんとうに全員一致でこの画期的のりっぱな施策に御協力願いたいと思うのであります。(拍手)
 なお大蔵大臣につきましていろいろ御批判がありますが、責任は私が持ちます。予算につきましていろいろ問題がございましょうが、今回の予算は、はまるとは申しませんが、ほんとうに今までにないほど私は力を入れたと考える次第でございます。教育の重要なことは申すまでもございません。この重要問題の一環である無償の問題も、ほんとうにみんなが納得し得るようなりっぱなスタートを切らなければなりません。従いまして、調査会におきまして、地方負担の問題、そうして施行のやり方等につきまして、十分御審議を願うことにいたしておるのであります。
 他は文部大臣がお答えいたします。(拍手)
  〔国務大臣荒木萬壽夫君登壇〕
○国務大臣(荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。
 憲法との関連において明記してないのが非常にけしからぬのだというおしかりでございますが、およそ法律案はすべてが憲法の条章に基づき、もしくはその範囲内で制定されることは申し上げるまでもございません。憲法第二十六条を引用するまでもなく、憲法の宣言しておりますその趣旨を、法律によって根拠を与えて方針を確定して、具体的にこれが実施をはかろうとすることは、先ほどの提案理由で明瞭でございます。(拍手)
 次に、宣伝だけで選挙対策じゃないかというお話でございますが、先ほど御説明を申し上げました通り、基本の方針、無償実施を宣明し、その実行方法として、具体的なことを調査会でもって検討し、これを立法措置を通じてまた実施しようというわけであります。非民主的でもなければ、政治の欠如でも何でもない。いわんや、選挙対策などという一党一派の利害に立って問題にさるべき課題ではないと思います。(拍手)むしろ、社会党の御提案の方が、どっちかといえば選挙対策じゃなかろうかと存じております。(拍手)
 次に、調査会を設けて審議することはまどろっこしいじゃないか、不見識じゃないかという意味の御質問でございましたが、その実施方法にも、御指摘のごとく、備えつけにするか無償にするか給与にするか、あるいはその段取り、あるいは配給機構等につきましても、もっと合理的な方法はないであろうか、衆知を集めて万全を期する、その態度が調査会を設置したゆえんでございまして、調査会の審議に譲って責任を転嫁するなどという考えは毛頭ございません。必ず具体的な結論を国会において御審議願って、実施いたすつもりであります。
 なお、この問題は七億一千万円の予算をもって発足するのでございますが、問題は、量の問題にあらずして、方針の確立、それを実施するかいなかが、問題のポイントであると存じております。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(清瀬一郎君) 受田新吉君。
  〔受田新吉君登壇〕
○受田新吉君 私は、ただいま趣旨説明のありました義務教育諸学校の教科用図書の無償に関する法律案につきまして、民主社会党を代表いたしまして、重要問題点の質問を試みたいと思うものでございます。
 まず、第一に指摘いたしたいことは、この法案を通じて、自由民主党並びに政府当局が、憲法二十六条に規定されております「義務教育は、これを無償とする。」という条項を、どう真剣に考えておられるかということであります。従来、自由民主党、政府の考え方の中心をなしたものは、授業料の免除をされていることが、当面義務教育課程の生徒、児童に対する憲法尊重の実績の一つであるとされまして、すべての子供たちに対するところの教科書無償配布の根本的解決にはきわめて冷淡であったという印象を、私たちは強く受け取っておるのであります。
 目下審議されております三十七年度の予算案におきましても、当初は文部省要求予算の中には、この問題は少しも取り上げられてなかったことは御承知の通りであります。しかるところ、突如として最終段階におきまして、本予算案に今御指摘の少額の措置がとられるとともに、急速な手続によりまして、ただいまのいわゆる無償法案が提案されたのであります。これを拝見いたしますと、名は教科書無償をうたいながら、実はほとんど全く内容の盛られていない空虚な法律案であると断定せざるを得ないのであります。御趣旨はまことにごりっぱであるが、義務教育諸学校の子供たちに具体的にどのようなサービスをしようとするのか、反論いたしたいのであります。
 もちろん、具体的な措置は、いわゆる無償制度調査会の建議や答申の結果を待って法律案を作ろうという筋合いでありましょう。しかし、全国の子供たちや父兄、一般国民が待望久しゅうしておりますものは、憲法の規定が一日も早く具体的に実施されることの一語に尽きるのであります一この調査会の結論を待って次に具体化されるものが春日遅々たるごとき気長な措置であったとしたら、教科書無償というこの画期的な善政を待望する国民に対して、羊頭を掲げて狗肉を売るの批判を甘んじて受けなければなりますまい。新憲法実施されてここに満十五年、文部省もようやく落ちついた文教行政をたどりつつあると自信をお持ちのようであります。しからば何を好んで、無償制度調査会のごとき回りくどい過程をお選びになるのでありますか。しかも、との調査会は、まことに実権の少ない微力機関であることが、数少ない条文の各所に拝見されるのであります。たとえば、附則に、三十七年度予算の執行については、調査会を無視して政令に委任される一項があるのであります。また、予算関係の答申は、本年十一月末までとなっております。一カ年の期限付ではありましても、実際に動ける期間は半年とちょっとではありませんか。私は、こうした考え方で調査審議される調査会は、実は有名無実の機関であって、ほんとうは政府の強力な官僚統制にものを言わせようとする便宜主義に基づく措置であったということを断定できると思うのであります。(拍手)
 さて、こうした教科書無償法案に名をかりて、迫りくる参議院選挙対策への一環的宣伝に使われようとすることではないかという社会党の小林君の御意見にも、私自身同調をせざるを得ないような、陰にひそむものがあることをどうぞ御判定願いたいのであります。
 第二に問題は、教科書無償を契機として、具体的に官僚統制へ前進する危険であります。具体的に申し上げましょう。昭和三十一年に政府提案の教科書法案が流産をいたしてしまいました。しかし、その骨子となるべきものは、ただいま社会党の諸君が指摘された通り、各種の権限関係のもとに行政措置やその他の指導によって一歩ずつ前進をしておるではありませんか。最近は教科書の検定のみでなく、採択、発行、供給の各分野に、助言とか指導とかいう名称のもとに、大局から統制的関与をしているということは、厳然たる事実となっておるのであります。(拍手)私は、この法案に示されました三十七年度予算の執行権のごときも、どのようにこれが具現されるのか、はなはだ不安であります。
 第三に、予算に関する問題であります。池田さん、あなたも水田さんも、この無償実現につきましては、きわめて消極的であったと聞いております。この段階になって、はたして国家予算的にも全面実施の勇気がおありかどうか。大切な他の文教関係の予算を犠牲にしたり、あるいは地方に半額負担をさせるなどという、そうした文化国家建設に汚点を残すような措置をもって、この全面実施への一里塚を築こうとしておられるのではないかと、はなはだ憂慮にたえない点があるのでございます。私は、全国千八百万学童、生徒の上に教育機会均等の一里塚を築くという何より大きなプレゼントを与えるこの法案のスタートにあたって、自民党の考え方の中に、実は選挙売名的な要素をひそめて、急速に文部当局を抜きにした政治的な勢いでこれが一歩前進したという結果になっていることを、あらためて重ねてここに指摘いたしまして、この憂慮すべき問題の解決をどう考えておられるかを御答弁願いたいと思うのであります。
 さて、以上各種の問題点に触れて検討をさしていただいたのでございますが、わが民主社会党も同様、この義務教育における教科書無償配布の基本構想を立党以来直ちに天下に宣言をいたしまして、基本的構想として憲法に保障された義務教育無償の原則を堅持し、小中学校における教科書の全面的無償配布をすること。教科書無償配布に便乗した教科書国定化構想は、教育に対する国家統制への道を歩むものであるから、絶対反対する。わが党は、現行検定制度の改善を通じて、民主的教科書制度を確立する立場を堅持する。教科書の選定を公正に行なわしめるために、教育委員会委員の選出は公選制にする。ということを基本方針に打ち出したのでございます。
 同時に、具体的政策といたしまして、教科書無償制度の確立の問題に触れ、さらに民主的教科書検定制度の確立におきましては、教科用図書検定調査審議会の委員の構成は、教職員、学識経験者及び父兄代表をもって組織し、その任命は衆参両院の同意を得て文部大臣が行なうものとするということにいたしております。さらに、教科書の選定と採択は、都道府県教育委員会は、合格検定を受けた教科書の中から、都道府県内の各学校が使用する教科書を選定するとし、都道府県教育委員会は、選定以前に合格検定を受けた教科書について、教科書展示会を必ず一般公開しなければならないとし、同時に、教科書採択協議会を新設いたしまして、市町村の教育委員会に教科書採択協議会を設けて、都道府県教育委員会が選定した教科書のうちから、当該市町村の学校で使用する教科書を採択するものとしておるのでございます。この協議会は、当該市町村に存在する学校の各学校長及び各教科担当教師の代表及び教育委員をもって構成すること、さらに、発行供給機構の民主化と運営をデリケートな問題から解放するために、円滑化をはかろうとする諸規定を具体策に織り込みまして、教科書無償配布基本構想の基本的な方針に裏づけされた具体政策としておるのであります。
 さて、以上申し上げましたわが党の基本構想を前提にいたしまして、最後に自民党政府提出法案に対する具体的な質問点に触れて参ります。
 第一、冒頭申し上げました義務制学校の子供たちに教科書の無償配布は今後具体的にどのように進められるのであるか。完全実施はおよそいつごろに目標を置いておられるのであるか。このことは調査会の答申を待つまでもなく、政治的な重要事項として、当然総理及び文相の胸の中にあるということを確信するものであります。少なくともこのお答えにあたりましては、調査会の答申を待ってなどというような事務的な答弁ではなくして、政治的にお二人の胸中を去来する決意を御表明願いたいのであります。
 次に、調査会の構成についてであります。委員はどのようにして選任されるのでありますか。学識経験者の中には、教科書発行会社その他のあらゆる面の人々を包含しておられるのかどうか。事務屋が中心の組織では、大きな期待はできない。単に事務的処理にしかすぎない結果が生まれると感ずるのでございます。また調査会にどのような諮問をされるのか。この諮問の基本的な構想はすでに用意されてあると思います。諮問の範囲、方法及び期日等につきまして、明確な御答弁をお願いをいたします。
 さらに、この機会に、憲法に保障されております出版権、この出版権の侵害と思えるような発行業者に対する認可制あるいは認可の取り消し等を企図せられておるということを、ほのかに伺っておるのでございまするが、文部当局のこの問題に対する御見解を明瞭にしていただきたい。
 さらに、発行と供給の分離を来たすような措置がとられる危険はないか。特に附則にあります三十七年度予算の執行の政令を、どういう方法でおやりになろうとするのか。このことは、供給業者と分離された措置がとられる危険が多分にひそめられておるのであります。
 以上申し上げました教科書の検定、採択、発行、供給の関係を円滑化し、民主的運営を何ら阻害するものでないという確信ができるかどうか、御答弁をお願いいたします。
 私は、この機会に、教科書採択をめぐるいわゆる教科書汚職事件につき一言質問をさせていただきたいのであります。一昨三十五年に起こった小学校教科書採択を前にした汚職事件、次いで昨三十六年の中学校教科書汚職事件は、聖なる教育界に非常な悲しい風を吹きまくらせたのであります。一昨年四月でありましたか、衆議院文教委員会におきまして、教科書採択が公正に行なわれるよう決議され、私も同僚議員とともに、強く不正事件の未然防止策を文部当局に警告したのであります。しかるに、指導官僚としての責任を果たさず、事件発生とともに処分にのみ神経を使っておられるという現状は、まことに悲しい次第であり、本末転倒もはなはだしいといわなければなりません。ここで、これらの事件に関係して目下起訴されている事件の件数その他の現実を簡単に御報告を願って、同時に、公正取引委員会の過当競争防止策と、文部当局とが、これらの問題防止と事後処理にどのような熱意を示しておられるかの御答弁を願いたいのであります。
 さらに、最後の質問といたしまして、教科書価格の問題に触れて参ります。政府は今回一四%の価格引き上げを決定されたようでございますが、この問題につきましては、人件費、工賃の値上げ等はやむを得ないといたしましても、宣伝費に莫大な経費をかけておりまするこの発行業者の現状を粛正して、汚職に伴う負担金を国民の善良な人々の税金にかけることのないような、公共料金価格抑止政策と関連した政府の明確なる対策を御答弁願いたいと思います。
 なお、ここで、行政管理庁長官から御答弁いただきたい問題でございまするが、総理にあわせて御答弁願いたいことは、目下政府は調査会その他の行政機関の簡素化を十分実践に移し、行政の簡素化を具体的に機構の縮小等によって実現させたいと熱意を示しておられます。にもかかわらず、このあまりにも用をなさない有名無実の感のある調査会をわざわざお設けになるというようなことは、政府の方針とも大きく矛盾をするものであって、このような不要不急の審議会整理と相待って、かかる行政簡素化の問題に対処する適切な措置を御答弁願いたいと思うのであります。
 最後に、この法案が実施される際に、沖縄の子供たちあるいは盲ろうあ学校の子供たち等にも、恵まれざる人々にもひとしくこの恩典を施そうとするのかどうか。同時に、教科書のみでなく、さらに一歩前進してその他の学用品等、就学義務を履行し得ないほど経済的に貧困な家庭の子供たちにもできるだけあたたかい愛を施すために、愛の政治を実行するために、教科書以外の施策をどのように考えておられるか。運命的に、経済的に貧困な親の子として生まれたその子供たちに対する不幸を、一切国家が補ってあげて、義務教育課程に学ぶ子供たちは全部その天分を遺憾なく発揮でき、教育の機会均等が実現できるように善政をどのようにおしきになろうとするか、この御決意もあわせ御答弁をいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答えいたします。
 義務教育無償の憲法の理想をわれわれが今回やっていこうとするときに、それが選挙目的とかなんとか言うこと自体が、私はいかがなものかと思うのであります。およそ政党政治は、りっぱな政策を掲げ、国民の支持を受けて国政を運用するということが、政党政治の根本であると考えるのであります。この施策をひが目で見るということは、私は民主的な考え方でないと思っております。(拍手)
 次に、今後の進め方の問題でございます。具体的な問題等につきましては、先ほど申し上げましたように調査会の意見を十分参酌して今後の具体的問題をきめたいと思いますが、われわれの考え方は、このりっぱな政治をできるだけ早く、広くやっていきたい、この念願であるのであります。こういう方向によりまして具体的の問題を処理していきたいと思います。
 なお、調査会あるいは審議会を整理しておるではないか、だからこの調査会を設けるのは不要であるというお考えでございまするが、教科書無償配布という問題がいかに重要な大きい問題かということをお考えになれば、調査会の必要性がおわかりだと思います。(拍手)
  〔国務大臣荒木萬壽夫君登壇〕
○国務大臣(荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。
 具体的事項を調査会待ちにしているのは回りくどいじゃないかという意味での御批判的な御質問でございました。先ほどもお答え申し上げましたように、この教科書無償の問題は、当面その基本方針を確立することに重点を置き、昭和三十八年四月に入学します小学校の第一学年に対して無償を実施することから始めて、なるべくすみやかに完成の方向へ持っていきたい。そのためには今総理からもお答え申し上げましたように、もろもろの実施方法を調査会でもって十分検討していただいて、そしてこれをさらに立法化しまして御審議を願って実行に移したい。そのための調査会でございますから、回りくどいにあらずして、いかにして民主的に安定したやり方でやるかという、その調査会であることを御了承いただきたいと思います。
 この調査会を通じて官僚統制になるのじゃないかという意味の御懸念の話でございますが、そんなことにはなりません。いたしません。
 また、何年後に完成するかというお尋ねでございますが、むろんその年度割も調査会で御審議を願うわけであります。なるべくすみやかな完成を希望いたしております。
 さらに、委員会はどういう人をもって構成する予定であるかというお尋ねでございますが、学識経験者としましては教育界、言論界、経済界等の各層からお引き受けをいただきたいと存じております。
 諮問事項はどんなふうなことを予定しておるかというお尋ねでございますが、一部今申し上げましたけれども、無償措置の範囲及び実施の段取り、教科書を児童、生徒に給付するか、備付にするか、費用を国と地方とで分担するか、国だけで支給するか、さらには教科書の会社のあり方、あるいは教科書の供給機構も、現状をたっとぶ考えではむろんございますけれども、もっと効果的な、過当競争にならない方法はないかというごときことを諮問いたす予定でございます。
 教科書の汚職事件はまことに遺憾千万でございます。現在どういうものが起訴されておるかというお尋ねでございますが、贈賄側が八名、収賄側が二名、指導主事一名、教員一名、そういうことに相なっております。(拍手)
○議長(清瀬一郎君) 通告の質疑並びにこれに対する答弁は終わりました。
     ――――◇―――――
 日程
 第一昭和三十四年度一般会計歳
    入歳出決算
    昭和三十四年度特別会計歳
    入歳出決算
    昭和三十四年度国税収納金
    整理資金受払計算書
    昭和三十四年度政府関係機
    関決算書
 日程第二 昭和三十四年度国有財
  産増減及び現在額総計算書
 日程第三 昭和三十四年度国有財
  産無償貸付状況総計算書
 日程第四 昭和三十四年度物品増
  減及び現在額総計算書
○議長(清瀬一郎君) これより本日の日程に入ります。
 日程第一、昭和三十四年度一般会計歳入歳出決算、昭和三十四年度特別会計歳入歳出決算、昭和三十四年度国税収納金整理資金受払計算書、昭和三十四年度政府関係機関決算書、日程第二、昭和三十四年度国有財産増減及び現在額総計算書、日程第三、昭和三十四年度国有財産無償貸付状況総計算書、日程第四、昭和三十四年度物品増減及び現在額総計算書、右各件を一括して議題といたします。
 委員長の報告を求めます。決算委員長鈴木仙八君。
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  〔報告書は本号末尾に掲載〕
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  〔鈴木仙八君登壇〕
○鈴木仙八君 ただいま議題となりました昭和三十四年度決算外三件につきまして、決算委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 昭和三十四年度決算は、昭和三十五年十二月二十七日、第三十八回国会に内閣から提出され、同日決算委員会に付託されたのであります。
 まず、その概要について申し上げますと、一般会計の決算額は、歳入において一兆五千九百七十二億円余、歳出において一兆四千九百五十億円余であり、その歳入超過額は千二十一億円余となっております。
 各特別会計の数は四十であり、その決算総額は、歳入において三兆四千百十九億円余、歳出において三兆九百六十三億円余であり、その歳入超過額は三千百五十六億円余となっております。
 国税収納金整理資金の収納済額は一兆二千三百八十六億円余、支払い命令済額及び歳入への組入額は一兆二千三百四十三億円余となっております。
 政府関係機関の数は十二であり、その決算総額は、収入において一兆三千七百七十四億円余、支出において一兆二千七十一億円余となっております。
 次に、委員会における審議経過の概要について申し上げますと、当委員会は、昭和三十六年二月二十四日、第三十八回国会において、まず大蔵省当局より決算の概要を、会計検査院より決算検査報告に関する概要を聴取した後、主として予算が効率的に使用されたかいなかについて慎重審議をいたした次第であります。
 委員会は、二月二十二日に審議を終了し、直ちに委員長から昭和三十四年度決算の議決案の提案があり、採決の結果、全会一致をもって議決案の通り議決した次第であります。
 議決の内容につきましては、会議録に掲載することといたしまして、朗読は省略させていただきますが、その概要について申し上げますと、
 一、予算が目的通り執行されたか、また所期の成果をおさめ得たか等の観点から検討するとき、公共事業の施行にあたっては、国の財政規模を十分に考慮するとともに、事業個所の選定に留意し、集中的に工事を行なうことによって、可及的に工事を短縮し、事業効果の早期達成をはかるよう心がけるべきである。また、各種補助行政の効率的運営をはかるため、補助金の種類を極力整理するとともに、交付事務処理規則等を整備して、国の補助金が補助、助成に有効に役立つように心がけるべきである。国有財産については、台帳の整備、目的外使用の防止及び適正な評価等に留意し、その管理体制の充実をはかるべきである。公益法人のうち、国の支出金の交付または国有財産の無償貸付等を受けているものに対しては、真に公共の福祉に貢献するよう、適正な指導、監督を行なうべきである。
 二、昭和三十四年度決算検査報告において、会計検査院が指摘した不当事項については、これを不当と認める。政府は、それぞれ善後措置を講じて、その再発防止に万全を期すべきである。政府は、今後、予算の作成並びに使用にあたって、決算審議の結果が十分に生かされるよう考慮するとともに、官紀の粛正刷新を行なって、財政運営の健全化をはかり、もって、国民の信託にこたえるべきである。
 三、決算のうち、前記以外の事項については異議がない。というものであります。
 次に、昭和三十四年度国有財産増減及び現在額総計算書につきましては、昭和三十四年度中に増加した国有財産の額は、一般、特別両会計を合わせて二千二百九十九億円余、同じく、減少した額は千十八億円余、差引純増加額は千二百八十一億円余でありまして、本年度末現在額は二兆四千四百十億円余となります。
 昭和三十四年度国有財産無償貸付状況総計算書につきましては、昭和三十四年度中の無償貸付の増加額は、一般、特別両会計を合わせて二十一億円余、同じく、減少額は十四億円余、差引純増加額は六億円余でありまして、本年度末現在額は九十三億円余となります。
 昭和三十四年度物品増減及び現在額総計算書につきましては、昭和三十四年度中に増加した物品の額は千二百六十四億円余、同じく、減少した額は五百九十億円余、差引純増加額は六百七十三億円余でありまして、本年度末現在額は千八百九十七億円余となります。
 以上三件は、昭和三十六年二月二十四日、第三十八回国会に提出せられ、同日本委員会に付託され、同年三月二日、大蔵省当局よりその概要を、また、会計検査院より検査報告に関する概要を聴取し、慎重審議いたしまして、本年二月二十二日、審議を終了し、採決の結果、各件はいずれも是認すべきものと全会一致をもって議決した次第であります。
 なお、これら各件の委員会における審議の詳細については、委員会議録をごらんいただきたいと存じます。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(清瀬一郎君) これより採決に入ります。
 まず、日程第一の各件を一括して採決いたします。
 各件は委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○議長(清瀬一郎君) 起立多数。よって、各件は委員長報告の通り決しました。
 次に、日程第二ないし第四の三件を一括して採決いたします。
 この三件の委員長の報告はいずれも是認すべきものと決したものであります。三件は委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○議長(清瀬一郎君) 起立多数。よって、三件は委員長報告の通り決しました。
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○議長(清瀬一郎君) 本日は、これをもって散会いたします。
   午後三時五十五分散会
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 出席国務大臣
       内閣総理大臣   池田 勇人君
       外 務 大 臣  小阪善太郎君
       大 蔵 大 臣  水田三喜男君
       文 部 大 臣  荒木萬壽夫君
       労 働 大 臣  福永 健司君
       国 務 大 臣  三木 武夫君
 出席政府委員
          法制局長官 林  修三君
        法制局第一部長 山内 和夫君
        総理府総務長官 小平 久雄君
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