第040回国会 本会議 第27号
昭和三十七年三月二十三日(金曜日)
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 議事日程 第二十四号
  昭和三十七年三月二十三日
   午後二時開議
 第一 辺地に係る公共的施設の総
  合整備のための財政上の特別措
  置等に関する法律案(内閣提出)
 第二 国民健康保険法の一部を改
  正する法律案(内閣提出)
 第三 学校法人紛争の調停等に関
  する法律案(内閣提出)
 第四 義務教育諸学校の児童及び
  生徒に対する教科書の給与に関
  する法律案(山中吾郎君外九名
  提出)
 第五 教科書法案(山中吾郎君外
  九名提出)
 第六 義務教育諸学校の教科用図
  書の無償に関する法律案(内閣
  提出)
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○本日の会議に付した案件
 海外移住審議会委員任命につき国
  会法第三十九条但書の規定によ
  り議決を求めるの件
 科学技術会議議員任命につき同意
  を求めるの件
 地方公務員共済組合法案(予備審
  査のため内閣送付)の趣旨説明
  及び質疑
 日程第一 辺地に係る公共的施設
  の総合整備のための財政上の特
  別措置等に関する法律案(内閣
  提出)
 日程第二 国民健康保険法の一部
  を改正する法律案(内閣提出)
 日程第三 学校法人紛争の調停等
  に関する法律案(内閣提出)
 日程第四 義務教育諸学校の児童
  及び生徒に対する教科書の給与
  に関する法律案(山中吾郎君外
  九名提出)
 日程第五 教科書法案(山中吾郎
  君外九名提出)
 日程第六 義務教育諸学校の教科
  用図書の無償に関する法律案
  (内閣提出)
   午後二時十一分開議
○議長(清瀬一郎君) これより会議を開きます。
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 海外移住審議会委員任命につき国会法第三十九条但書の規定により議決を求めるの件
○議長(清瀬一郎君) まず、お諮りいたすことがあります。
 内閣から、海外移住審議会委員に本院議員田中龍夫君、同田原春次君、同竹内俊吉君、参議院議員赤間文三君を任命するため、国会法第三十九条但書の規定により本院の議決を得たいとの申し出があります。右申し出の通り決するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、その通り決しました。
     ――――◇―――――
 科学技術会議議員任命につき同意を求めるの件
○議長(清瀬一郎君) 次に、科学技術会議議員に内海清温君、茅誠司君を任命いたしたいので、科学技術会議設置法第七条第一項の規定により本院の同意を得たいとの申し出がございます。この申し出の通り同意を与えるに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって同意を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
 地方公務員共済組合法案(予備審査のため内閣送付)の趣旨説明
○議長(清瀬一郎君) 議院運営委員会の決定により、内閣から予備審査のため送付されました地方公務員共済組合法案の趣旨の説明を求めます。自治大臣安井謙君。
  〔国務大臣安井謙君登壇〕
○国務大臣(安井謙君) 地方公務員共済組合法案につきまして、その趣旨及び概要の御説明を申し上げます。
 御承知の通り、国家公務員の退職年金制度は、すでに三年前からいわゆる恩給制度を共済制度に切りかえ、その給付内容を改善し、官吏及び雇用人を通ずる統一された退職年金制度として実施されているのでありますが、地方公務員につきましては、依然として、恩給方式によるもの、共済方式によるもの等、地方公共団体により、また、公務員の職種、身分により、その適用される制度が複雑不統一であり、かつ、その給付内容も国の新制度に比して低く、改善を要する点が少なくないのであります。
 政府としては、地方公務員の生活安定、福祉の向上に寄与し、公務の能率的運営に資するために、地方公務員についても、すみやかに国家公務員に準じて合理的な退職年金制度を確立することが必要であると考え、かねて、地方制度調査会に諮問し、その答申に基づき、この検討を重ねて参ったのでありますが、ここに成案を得るに至ったのであります。すなわち、地方公務員についても、国家公務員の制度に準じて、統一的な共済組合制度を設け、これに長期給付のほか短期給付及び福祉事業を行なわせることとしたのであります。
 以上がこの法律案を提出した理由であります。
 次に、この法律案の内容の概要を御説明申し上げます。
 第一に、地方公務員共済組合の組織につきましては、地方公共団体及び職種の別により、地方職員共済組合、公立学校共済組合、警察共済組合、都職員共済組合、指定都市職員共済組合、市町村職員共済組合及び都市職員共済組合に区分し、さらに市町村職員共済組合及び都市職員共済組合については、それぞれ全国組織の連合会を設けることとしております。
 第二に、すべての地方公務員は、いずれかの組合の組合員となることとし、すべての地方公務員共済組合の組合員期間または国家公務員共済組合の組合員期間は、通算することとしております。
 第三に、長期給付の制度につきましては、退職給付、廃疾給付及び遺族給付を行なうものとしておりますが、その内容は国家公務員共済組合の長期給付の制度に準ずることとしております。
 第四に、短期給付及び福祉事業の制度につきましても、組合は、国家公務員共済組合の制度に準じて、保健給付、休業給付、災害給付等の短期給付を行なうものとし、また、同時に福祉事業を行なうものとしております。
 第五に、組合の給付に要する費用につきましては、組合員の掛金及び地方公共団体の負担金をもって充てるものとし、短期給付については、掛金百分の五十、負担金百分の五十、長期給付については、掛金百分の四十五、負担金百分の五十五とし、また、組合の事務に要する費用は全額地方公共団体の負担とすることとしております。
 その他のおもな事項は、組合の資金は、安全かつ効率的な方法により、かつ、組合員の福祉の増進または地方公共団体の行政目的の実現に資するように運用する建前とすること、組合の給付に関する決定等に不服がある者について審査の請求を処理するため審査会の制度を設けること、地方公務員共済組合制度に関する重要事項を調査審議するため、地方公務員共済組合審議会を設けることなどであります。
 なお、地方議会議員互助年金法附則第四項の規定に基づき、同法を廃止して、地方議会議員の年金制度に関する規定をこの法案の中に統合することといたしました。
 以上がこの法律案の趣旨及びその概要であります。(拍手)
     ――――◇―――――
 地方公務員共済組合法案(予備審査のため内閣送付)の趣旨説明に対する質疑
○議長(清瀬一郎君) ただいまの趣旨の説明に対しまして、質疑の通告があります。これを許します。野口忠夫君。
  〔野口忠夫君登壇〕
○野口忠夫君 私は、日本社会党を代表して、ただいま趣旨説明のありました地方公務員共済組合法案について、関係大臣に質問いたしたいと思います。
 まず、自治、大蔵の両大臣にお尋ねいたします。種々雑多な現行地方公務員制度を統一し、一本化されようとする態度については全く同感なのでありますが、制度は制度として生きて動いていたものでありますから、その一本化には当然困難な条件があるわけであります。異なった財政事情の異なった団体の制度、そこに生まれた特殊的な契約、これらを急激に切開し、ために息の根を断ってしまってはならないのであります。国の財政的配慮は当然この意味からも必要欠くべからざるものであったはずであります。本法提案の動きは三年前であり、三年間も本法案は日の目を見ないで過ごした陰には、この財政的国の配慮の一点に帰した自治省の苦労もあったのではないかと思うのであります。しかし自治省は、ついにこの努力を捨て、自治体の願いを無視し、大蔵省に屈服し、わずかに
〇・一%の交付税の引き上げ、金額にして十五億、対象人員実に百七十三万人といわれる地方公務員に対し、全く零細な国の財政的配慮をもって提案されたわけであります。すなわち、言い返してみれば、一本化の重大な制度変革を、全く組合員の掛金と地方財政への押しつけによって行なおうということであります。(拍手)掛金は、一挙に従来までのおよそ二倍、一人千円の増加負担となるものもあり、国の分は地方負担割合に加えられ、五五%と引き上げられる結果となるのであります。
 自治大臣は、地方公務員の身分、給与の実態をよく御存じであり、特に地方財政の水準の低さ、次々に押しつけられる税外負担、特に高等学校急増対策等に見る負担過重にあえぐ自治体の苦労等は、身をもって知られるところと思うのであります。このような状態を知りながら、国の財政的配慮はゼロにひとしく、組合員の重い負担と地方財政の貧困に、さらに輪をかけているがごとき押しつけによって、制度改正を意図されるに至った経緯について、自治大臣及び大蔵大臣の所見を承り、今後何らかの国の財政的配慮を考慮されているかどうかについて、お尋ねいたしたいと思うものであります。(拍手)
 なお、国の財政的配慮を当然と認めるものに、人事院の勧告があり、百分の十五は公務員負担、百分の七十五は国庫が負担すべきであることを定めており、さらに公務員制度調査会は、社会保障制度に対する国の責任を明らかにするため、給付に要する費用の一部分を国が負担すべきであると述べ、国公に準じて一〇%、事務費全額国庫負担を答申しております。さらに、国の財政的配慮を決定づけるものは、三十三年衆議院選挙の公約であります。社会保障として、当然国の予算の一部をもって責任をとるということを国民に約束されたことであります。これらの勧告、答申、国民との約束等を全く無視して、何らの財政的配慮をしなかった点について、大蔵大臣の明確なる御答弁をお願いしたいと思うものであります。(拍手)
 第二に、国の財政的補償のまことに薄い制度改正に反し、実に中央集権的な運営管理機構についてであります。本法に示す地方職員共済組合の運営管理機構は、すべて主務大臣の任命ないしは承認という形をとっているのであります。議決機関である委員、執行機関である理事はすべて大臣任命、共済組合の業務監査をする監事までが任命であるということであります。国はゼロの負担であり、組合員は四五%、半分の費用を負担している共済組合員の意思を通ずることのできない、全く上意下達の非民主的機構といわざるを得ないのであります。任命あるいは委嘱の機関が、都合のよいときにわれわれを利用し、都合の悪いときには何にも聞いてくれない、巧みに民主主義の美名に隠れて行なう、全く政府一辺倒の官僚支配の悪制度だとの声は、決して一人だけの声でないことを知ってもらわなければならないのであります。(拍手)中央集権的と見られるこのような下を閉ざした非民主的制度を改め、民主的運営に切りかえる考えはないか、自治大臣にお尋ねいたしたいのであります。
 この件について、さらに労働大臣にお伺いしたいのですが、本地方公務員共済組合の場合は、労働者みずからその賃金の一部を提出し、全費用の半額の負担をしている労働組合員が、その組合員の大部分であることを考えるとき、その設立並びに管理運営は、当然労使対等の原則に立つものでなければなりません。昭和三十四年設立の当初にあたり、自治省は労働組合の意見を求めておりますが、その労働組合の意見は全く無視されている現状を見るとき、自治省の態度は何か労働組合をはずして設立の準備を進めたかの感があります。これは全く労務管理の違法行為で、労働行政の先頭に立つ労働大臣として、設立及び管理運営に労使対等の立場で参加させるよう助言、指導すべきと思うが、その意思があるかないか、お伺いしたいのであります。
 第三にお尋ねいたしたいのは、旧制度から新制度への移行にあたりて、納付金、積立金にかかる追加費用についてであります。年金条例適用職員、恩給法適用職員等は、すでに与えられた権利に対する期待のもとに、条例あるいは法に示された金額についてすでに払い込んでいるものでありまして、退職年金とは、そのあと払い的性格のものとして給付されるものであります。しかるところ、納付金はすでに年ごとに一般財源の中に入り、年度内に償却されているものであり、移行にあたって、この既往の金額を納付した者に給付すべき残金はないのであります。ここで給付するためには、新しい掛金によって給付されることとなり、新共済組合の負担となります。しかし、このことは、当時の給付責任者がみずからの責任としてなさねばならぬ債務関係が解消し、返済の義務がなくなることとはならないのであります。巷間、永久債務論等の言葉を聞きますが、これは全く個人の既得権に反し、その財産権を侵害する違法の論といわざるを得ないのでありますが、移行にあたって、最終的には国庫負担として解消する意思があるかどうか、自治大臣にお尋ねいたしたいと思うものであります。第四は、既得権の問題であります。新制度移行にあたって、既得権無視は、公務員諸君の最も不安を呼ぶものであります。掛金、給付年限、給付内容、給付額等において全く個々ばらばらでございますが、これは使用者と労働者との話し合いによって決定された契約であり、既得権であります。自治省もこれを一律に急激に改正に運ぶことは、当事者間の民主的契約事項に対する侵害となることを避けるため、付加給付の特別扱いによって、その既得権の急激な脱落を防止するやに聞きましたが、その手当は、自治体の自主性尊重等により、まことに微温的指導、助言に終わると聞いております。この契約事項を尊重し、その既得権は必ず存置するよう付加給付の保障を勧奨し、均衡上やむを得ないときは適用除外等の措置を講じ、既得権を守り得るような強い態度で措置すべきであると思うが、自治大臣の、移行に伴う既得権の確保についての適切な御措置のほどをお聞かせ願いたいと思います。
 第五は、連合会に対する義務的積立金の強制と憲法第二十九条第三項との関連についてであります。憲法第二十九条第三項には、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひる」とあります。本法律案によりますと、都市職員共済組合、市町村職員共済組合等は、全国的連合会を設けることとなっており、この連合会には、政令の定めるところによる負担金によって義務的に責任準備積立金が管理されることになり、この積立金、公共のために資金として運用することができるとの規定づけがなされているのであります。憲法第二十九条第三項の法が求める私有財産に対する中央における補償の全くないにもかかわらず、義務的に積み立てさせ、公共のために資金として運用することは、一般的にも憲法第二十九条第三項に反するものでありますが、特に地方公営企業体職員の地方公務員は、交付税交付金の保障も受けないとすると、ここに積立金を強制し、義務を課し、公共の用に運用することは、全く憲法第二十九条に違背すると思うが、大蔵大臣の御所見を承りたいのであります。
 第六は、積立金の運用についてであります。国民年金、厚生年金に例を見るまでもなく、零細な賃金をさき、生活を押えて拠出される大衆掛金による剰余金あるいは積立金の運用が、全く組合員からは遠い大資本家、大企業家の巨大な工場あるいは施設の中に吸い取られていることは、政府発表の財政投融資の資金源の報告の中で明らかであります。これでは社会保障制度とうたった年金制度は、全くの表面だけのごまかしであり、実は国営保険会社であり、その集積化した資本運用が本命であって、利潤追求が年金制度施策のほんとうのねらいであるとしか言えなくなるのであります。余剰金あるいは積み立てられた資金の管理と運用は、あくまでも地方公務員一人々々の掛金であり、その社会保障のためにのみ運用、管理されることが必要であると思いますか、従来の管理、運用の経緯にかんがみ、自治大臣の決意のほどをお聞かせ願いたいと思うものであります。
 第七は、減額年金制をめぐり、公立学校教職員の既得権喪失について、文部大臣にお尋ねいたしたいと思います。受給資格年令に満たないで退職した者に対し、従来までは若年停止の給付制があり、給付額全額に復元されたのでありますが、今回の減額年金制は、給付年令軍十五才以前の退職者は、受給希望にあたり、不足年数につき一年につき四%ずつ差し引いて減額年金額とし、受給資格年令に達しても復元いたさないこととなるのであります。一般的に言っても既得権の剥奪でありますが、特に公立学校教職員の六〇%を占める女子教員にとっては、まことに大きな問題なのであります。しかも、女子教員の従来の退職の状況は、文部大臣の強い御指導のたまものでしょうが、常に勧奨退職なのであります。男女共かせぎの場合、女子平均四十三才、女子独身の場合、最高五十一才等の基準に基づき、女子なるがゆえの人権侵害的制限によって退職を勧奨されるのであります。中には全く話にならない、あなたが退職しないときは、あなたのだんなさんの将来があぶないなどの甘言、おどかしの手段で退職を勧めるものであります。全く本人の意に反し、勧められて、これらの女子教員のほとんどが若年停止の状態で退職するものでありますが、今回の法改正によって、意に満たない勧奨退職の犠牲者の上に、さらに不当な既得権の侵害となって犠牲をしいることとなるのであります。
 文部大臣は、この日本の教育の大半を背負う真摯な女子教師のために、次の二点を考慮すべきであると思います。すなわち、第一は、既得権を守るために国の財政的負担を獲得するということであります。第二は、負担金の実現困難なときは、本法の精神が長期勤務者に厚く短期勤務者には薄い長期勤務勧奨の精神であることにのっとり、当然年金制度の建前上退職勧奨などをすることができないことになり、女子教員の勤務年限も五十五才まで確保し、首切り勧告の中止をするか、このいずれかを積極的に推進する以外にないものと思量されますが、学校教職員の既得権の確保のため、そのお考えを承りたいのであります。(拍手)
 第八は、自治大臣にお尋ねいたしたいのでありますが、給与支給の相違により、本地方公務員共済組合に加入できない地方公共団体の事務に従事する地方公共団体関係職員及び地方公共団体の補助を受ける共済事業に従事する互助会職員の件であります。市町村職員の身分、給与の問題は、ようやく安定したとはいえ、地方財政の実態上、いまだ不安定な状態に置かれるものがあり、しかも、その住民との接触の中に起こってくる日常業務の繁雑さと量とはまことに大きいものがあります。粗末な役場庁舎の一隅に机を囲い、ひたすら住民の幸福を求めて勤務する自治体関係職員は、その給与の支給を地方公共団体より受けないことによって、地方公務員共済組合に加入の機会を得ることを閉ざされておりますが、その仕事の実質的内容は、全く自治体職員と異なるところはない事情の上に立って、当然特例を設け、入会の機会を与えるべきであろうと思います。また、互助会関係職員は、全く共済組合職員と同一の事務を取り扱い、しかも大方は、県ないし市町村の負担を得て運営しているのでありますから、共済組合職員の加入を認め、地方議員の加入を認める立場からは、特例措置による加入はぜひ実現すべきであります。この特別加入の措置について、自治大臣の好ましい御返答を伺いたいと思うのであります。
 最後に、社会保障制度審議会の答申は、本案を実施することには適当でないとの結論であり、種々の問題を本案は含むものであることにかんがみ、原案にとらわるることなく、聞くべきことは十分に聞き、改めるべきことは十分に改めて、特にわが日本社会党の申し入れておりまする要求項目の実現には特段の御努力をお願いして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣安井謙君登壇〕
○国務大臣(安井謙君) お答えいたします。
 今度の本制度を施行するにつきまして、国庫負担がないじゃないか、こういう御質問でございます。なるほど国庫負担はございませんが、やはり公的な負担として地方団体が全体の五五%を責任をもって持つという制度でございまするので、この点は、いわゆる公務員の社会保障制度ということがはっきり言えると思うのでございます。この財政措置につきましては、交付税が普通交付税におきまして〇・四%今度上がっております。そういったものを充てることによって、これは処置も可能であろうと考えております。
 なお、運営、管理につきましては、この全体の建前が国の共済制度に準ずる建前になっております。従いまして、従来の国家公務員の共済制度というものと同じ法的適用を受けておった警察、教員、都道府県の組合につきましては、従来通りいわゆる審議会制度を設けておるわけであります。その他の各団体につきましては、いわゆる組合会制度を設けまして、御説の通りの民主的運営を期待しておるわけでございます。
 なお、納付金とか積立金等について既存のものについてはこれをどうするか、こういうことでございますが、従来の恩給制度は、御承知の通りに、一般会計への納付金でございまして、一般会計はそのつど責任をもって支出をやっておったものでございまするから、これは引き継ぎのいたしょうがないわけでありますが、従来共済組合として積み立てておったものは、これは当然引き継ぎをやるわけでございます。さらに、従来の既得権といいますか、資格上生ずべき組合に対する追加費用というものは、将来これは公共団体がこれを負担する建前になっておりますから、今までの納付金を納めておった人に対する債務関係も明確にいたされることであろうと思っております。
 さらに、既得権を十分尊重するかというお話でございますが、期間はなるほど恩給でいいますと、十七年が今度二十年になるわけでございますが、これにつきましては、現在の既得権を持っておる人につきましては、経過規定を設けまして、二十年未満の者でもそれぞれ措置ができるようなことを考え、また支給額等についても相当な配慮をいたしておるわけでございます。統一年金制度でございまするから、いわゆる適用除外という考え方は持っておりません。
 さらに、積立金の運用につきましても、国家公務員の関係の分は、大蔵省関係の預金部資金にこれを入れることになりますが、大部分の組合員の積立金はその団体に帰属いたしておりまして、いわゆる公務員の福祉と地方公共団体の行政事務の目的に従うようにこれは使用され、かつ安全に主務大臣がこれを監督していく、こういう建前になっておるわけでございます。
 地方団体の関連団体の職員、これについて一応適用してはどうかというお話でございます。やはりこの制度がいいから適用しろという御趣旨であろうと存じまするが、この関連職員は、非常に職種が複雑でございまして、今一どきにこれを全部入れるということは困難でございます。しかし私ども、将来の問題として、これは十分検討に値すると存じておりますので、一応施行後、さらに検討を進めて、でき得る限り御趣旨に沿うように努力をいたしたいと思っておる次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣荒木萬壽夫君登壇〕
○国務大臣(荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。
 今度の制度によりまして、減額退職年金の制度は一般的に既得権を侵害するのじゃないかというお尋ねでありましたが、そういうことはないと存じます。特に、その点を、女子の教職員について既得権侵害だというお説でございますが、すでに恩給権が従来の制度で発生しております部分は従前通りでございますので、一般的にも、特にまた女子教職員について既得権侵害などということはないと存じます。もともと減額退職年金は、今までの恩給にかわるものとして若干停止をやめまして、この制度になったわけでございますが、従来の恩給制度で同じ給付を期待しますためには掛金がはるかに高くなりますから、やむを得ない、むしろ公務員に有利な制度と存じております。既得権の侵害の意味において侵害した部分については国が負担すべきだというお説でございますが、今申し上げました通り、既得権の侵害はございませんので、特にその点を国が考えるという問題はないと存じます。
 さらに、女子教職員に退職勧告が行なわれるので、その意味で女子教職員に酷であるようなお話でございますが、特別に女子に限って退職勧告をするなどという考えはございません。りっぱな先生は五十五才まで十分勤められるはずでございます。(拍手)
  〔国務大臣福永健司君登壇〕
○国務大臣(福永健司君) 労働者の福祉あるいはそれについての発言権につきましては、御説のごとく、当然私が深い関心を持たなければなりません。地方公務員共済組合の運営については、運営審議会または組合会によって運営されることとされており、その委員または議員は、それぞれ組合員の中から選ばれ、一部の者の利益に偏することのないように、相当の注意を払わなければならないということになっておりますから、職員ないし労働者の意向はもちろん反映されることになると考えております。(拍手)
  〔国務大臣水田三喜男君登壇〕
○国務大臣(水田三喜男君) これまでのいきさつを説明するようにということでございましたので、一応御説明いたします。
 地方公務員の共済年金制度につきましては、御承知のように、昭和三十四年の二月に地方制度調査会から答申がございまして、それ以後関係省においてずっと検討を進めてきたところでございますが、大蔵省としましても、国家公務員に準じたこういう地方公務員の共済年金制度を整備するということは、これは最初から反対ではございませんで、賛成でございました。ただ、予算折衝の過程におきまして、自治省、文部省、警察庁からは、地方公務員の共済年金制度の実施にあたっては、社会保障制度の一環として、国の責任として給付費用の一割及び事務費を負担すべきである、こういう予算要求が出て参りました。私どもは、これに対して、その責任はひとり国のみで負担すべきではなくて、地方団体とか公共企業体、広く公経済の主体自身もその責任を負担すべきである、こういう意見を主張して参りました。この主張のために昨年一年この制度が延びたことは、私、非常に申しわけないと思っておりますが、これは先ほどからいろいろ議論が出ておりますように、各種の社会保険制度そのほかを、もう少し統一する必要があると皆さんが言われておるのですから、私どもも、こういう問題については、建前だけははっきりと統一して、これをくずしてはならない、こういう立場を堅持いたしました。御承知のように、社会保障制度と申しましても、国とか地方とかの直接的な一方的な予算支出によって行なうことが適当な施策もございますし、同時に保険制度を通じて行なうことが適当な施策もございます。退職年金制度というようなものは、まさに保険制度によって運営さるべき策でございますので、もしそうだとしたら、今の一般の現行の社会保険制度がとうなっておるかと申しますと、これも御承知のように、国とか地方団体という公経済の主体が一部を負担する、そして、その残りを、使用者すなわち事業主と被用者すなわち組合員とが折半してこれを負担するというのが現行の各制度の建前になっております。たとえて申しますと、国家公務員共済組合におきましては、公経済の主体としての国が一割を持つ、あとの九割をそれぞれ折半する。従って、国の負担が五五%、組合員の負担が四五%、こういう割合になっておりますが、このやり方は現行の各種制度に共通しておりまして、公企業体三公社の共済組合もこういうふうになっておりまして、国家の負担というものはございません。公経済主体がそれぞれ責任の分担を一〇%する。ただ、厚生年金とか船員保険というようなものは、全国的に勤労者一般とかあるいは船員一般というものを対象とした保険でございますので、公経済を推進する主体というものが国以外にはございませんかげ、従って、国が一五%を負担するという制度になっておりますが、そのほかは全部公経済の主体の責任として分担するという建前になっております。従って、地方団体におきましても、りっぱな公経済の主体でございますから、これが分担することは建前上当然であるという立場を私どもは固執して参りました。ただし、この負担が地方財政についてどういう影響を及ぼすかということは考えなければなりませんので、今度は地方財政計画に計上して、そして財源措置を、これは自治省においても国においても考慮するという建前にいたしまして、そのために、さっきからお話がございましたように、地方交付税率を二八・五%から二八・九%に今回引き上げたということも、このことを考えた措置でございまして、何か最近事あるごとに国が負担しないのは筋違いであるというようなお話がございますが、そうじゃなくて、国が負担することが筋違いであって、公経済の主体としての地方団体が負担するのが建前上は正しい、ただし、その金が困るという場合には、交付税を増額するというようなことで、最後は国の負担になるかもしれませんが、国が金を惜しむのじゃなくて、建前をはっきりさせるということで、私どもは今日まできたことでございますので、その点は十分御承知願いたいと思います。(拍手)
○議長(清瀬一郎君) 以上をもって質疑並びにこれに対する答弁は終わりました。
     ――――◇―――――
 日程第一 辺地に係る公共的施設
  の総合整備のための財政上の特
  別措置等に関する法律案(内閣
  提出)
○議長(清瀬一郎君) これより本日の日程に入ります。
 日程第一、辺地に係る公共的施設の総合整備のための財政上の特別措置等に関する法律案を議題といたします。
○議長(清瀬一郎君) 委員長の報告を求めます。地方行政委員会理事金子岩三君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔金子岩三君登壇〕
○金子岩三君 ただいま議題となりました辺地に係る公共的施設の総合整備のための財政上の特別措置等に関する法律案につきまして、地方行政委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本案は、山間地、離島等の辺地を包括する市町村について、当分の間公共的施設の総合的かつ計画的な整備を促進するための財政上の特別措置等を定め、辺地とその他の地域との間における住民の生活文化水準の著しい格差の是正をはかろうとするものであります。
 その内容の要点は、
 第一に、政令で定める辺地を包括し、かつ、公共的施設の総合整備計画を策定した市町村について本法を適用することとしております。
 第二に、公共的施設として本法の対象となるものは、電灯用電気供給施設、道路及び渡船施設、通学施設及び寄宿舎、診療施設、飲用水供給施設等であります。
 第三に、本法によって、公共的施設の整備をしようとする市町村は、都道府県知事と協議して、公共的施設の総合整備計画を定め、これを自治大臣に提出することとし、自治大臣は、この計画を関係各省各庁の長の協力を得て合理的な計画となるよう指導することができるようにしております。
 第四に、総合整備計画に基づいて実施する公共的施設の整備について市町村が負担する経費は、本来、起債を認められていないものについても、すべて起債の対象とすることができるようにしております。なお、この起債の元利償還に要する経費については、その五七%を地方交付税の基準財政需要額に算入することとしております。
 本案は、三月八日本委員会に付託され、翌九日政府より提案理由の説明を聴取し、慎重に審査を行なったのでありますが、その詳細は会議録によって御承知いただきたいと存じます。
 三月二十日質疑を終了し、同二十二日、別に討論の通告もなく、直ちに採決の結果、全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決定いたしました。
 なお、本案に対し、自由民主党、日本社会党及び民主社会党の共同による附帯決議案が提出され、これまた全会一致をもって可決いたしました。
 決議文を朗読いたします。
    附帯決議
 一、政府はすみやかに辺地の振興をはかるため、本法の実施とあわせて、更に強力にその総合的計画的な振興措置を講ずるよう努めるべきである。
 二、辺地に関する現行諸法令の内容について検討を加え、更にその充実改善をはかるべきである。
  右決議する。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(清瀬一郎君) 採決いたします。
○議長(清瀬一郎君) 委員長の報告を求めます。社会労働委員会理事澁谷直藏君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔澁谷直藏君登壇〕
○澁谷直藏君 ただいま議題となりました国民健康保険法の一部を改正する法律案について、社会労働委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 国民健康保険は、被保険者の相当部分が、保険料の負担能力の乏しい低所得階層でありますので、その財政基盤は比較的薄弱であり、特に受診率の上昇や医療費の改定等が行なわれた最近の状況にかんがみますれば、この際、国の財政措置を強化して、国民健康保険財政の健全化をはかることが、きわめて必要となっておるのでございます。
 本改正法案の内容は、以上の理由に基づきまして、療養給付及び療養費の支給に要する費用に対する国庫負担及び補助率を、現行の二割から二割五分に引き上げようとするものであります。
 本案は、一月二十五日本委員会に付託され、昨二十二日の委員会において質疑を終了し、採決の結果、全会一致をもって原案の通り可決すべきものと議決いたした次第であります。
 なお、本案に対しましては、三派共同提案の附帯決議を付することに決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(清瀬一郎君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○議長(清瀬一郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第三 学校法人紛争の調停等
  に関する法律案(内閣提出)
 日程第四 義務教育諸学校の児童
  及び生徒に対する教科書の給与
  に関する法律案(山中吾郎君外
  九名提出)
 日程第五 教科書法案(山中吾郎
  君外九名提出)
 日程第六 義務教育諸学校の教科
  用図書の無償に関する法律案
  (内閣提出)
○議長(清瀬一郎君) 日程第三、学校法人紛争の調停等に関する法律案、日程第四、義務教育諸学校の児童及び生徒に対する教科書の給与に関する法律案、日程第五、教科書法案、日程第六、義務教育諸学校の教科用図書の無償に関する法律案、右四案を一括して議題といたします。
○議長(清瀬一郎君) 委員長の報告を求めます。文教委員長櫻内義雄君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔櫻内義雄君登壇〕
○櫻内義雄君 ただいま議題となりました学校法人紛争の調停等に関する法律案について、文教委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案の目的は、私学の管理、運営について、その正常円滑を期するためのものでありまして、その要旨は、第一に、学校法人に対する解散命令に至る前の救済措置として、学校法人の役員または評議員間の紛争を公正迅速に解決するため、新たに調停制度を設けることであります。第二に、調停委員は各事件ごとに、文部大臣が学識経験者の中からこれを任命することであります。ただし、高等学校以下の学校のみを経営する学校法人については、この権限を知事のものといたしております。第三に、文部大臣または知事は、成立した調停を履行せず、その是正命令に従わない者、あるいは調停の成立しない者について、当該学校法人の正常な管理、運営ができないと認められる場合、審議会の意見を聞いて後、職権をもって当事者の解職または辞職の勧告をすることができること。第四に、文部大臣または知事は、右の勧告に応ぜず、当該学校法人の正常な管理、運営をはかるため他に方法がないと認めるときは、その者を職権により解職し、さらに後任者の選任について当該学校法人に対し必要な指示をすることができること。第五に、この法律は、公布の日から一カ月をこえない範囲内において政令で定める日から施行し、有効期限は二年とすることであります。去る三月八日文教委員会に付託となり、九日提案理由の説明を聴取、自来慎重審議を重ねました結果、三月二十二日、本案に対する質疑を終了、討論を省略して直ちに採決の結果、起立多数をもって原案の通り可決すべきものと決定した次第であります。
 次に、内閣提出の義務教育諸学校の教科用図書の無償に関する法律案及び山中吾郎君外九名提出の教科書法案並びに義務教育諸学校の児童及び生徒に対する教科書の給与に関する法律案につきまして、文教委員会における審議の経過とその結果とを御報告申し上げます。
 内閣提出法案の要点の第一は、義務教育諸学校の教科用図書を無償とし、この措置に関する必要事項は、別に法律で定めることとし、第二には、無償措置につき調査、審議するため、文部省に諮問、建議の機関として、臨時義務教育教科用図書無償制度調査会を置き、その委員は、学識経験者及び関係行政機関の職員のうちから文部大臣が任命することとしております。第三には、この調査会は、文部大臣から諮問された事項のうち、昭和三十七年度の予算執行及び昭和三十八年度の予算作成に関係あるものについては、本年十一月三十日までに答申することを定め、第四には、無償措置のうち、本年度の予算執行にかかるものを実施するための必要事項は法律を待たず政令によることができるとし、最後に、この法律は、本年四月一日から施行し、調査会に関する規定は、明年三月三十一日限りその効力を失うこと等を規定しております。
 山中吾郎君外九名提出の二法律案を一括してその要点を申し上げますと、第一は、文部省の外局として、教科書行政の全般をつかさどる教科書委員会を設置するとともに、検定、採択、発行及び供給等に関して必要事項を定めており、特に採択は、学校長が教科担当教員の意見を聞いて行なうこと等を規定しております。第二は、国、公立の義務教育諸学校の児童、生徒に対し、教科書を給与し、国はこれに要する経費の全部を負担し、私立学校には予算の範囲内で補助することができる旨を規定しております。
 以上の三法案は、去る二月二十三日当委員会に付託せられ、同月二十八日政府及び山中吾郎君から、それぞれ提案理由の説明を聴取し、以来三法案は一括して審議されたのであります。
 御承知のように、この三法案は、ともに教科書の重要性を尊重して立案せられた点において一致するものでありまして、数多くの問題を含んでおるものでありますから、審議はきわめて慎重かつ熱心に行なれれ、特に昭和二十六、七年度の教科書無償給与制度が中絶された先例にかんがみて予想される諸問題、また教科書国定化の危惧、採択権の所在とこれに関連する不公正取引、さらにまた調査会への諮問事項及び方法、第二十四回国会の教科書法案不成立後における教科書行政の性格等の細部にわたっても活発に論議されたのでありますが、それらの詳細については会議録によって御承知を願いたいと存じます。
 かくて、三月二十二日に至り三法案に対する質疑を終了し、続いて山中吾郎君外九名提出の三法案に対し、国会法の規定により内閣の意見を聴取しましたところ、文部大臣から賛意を表しがたい旨の答弁がありました。次いで討論に入り、自由民主党を代表して八木徹雄君から、内閣提出法案に対して賛成、山中吾郎君外九名提出の二法案に対して反対、日本社会党を代表して山中吾郎君から、内閣提出法案に対して反対、社会党提出の二法案に対して賛成、民主社会党を代表して鈴六義男君から、三法案のすべてに対して反対の討論があり、採決の結果、社会党提出の二法案は起立少数をもってこれを否決し、内閣提出法案は起立多数をもってこれを原案通り可決いたしました。
 以上、御報告いたします。(拍手)
   ────────────   
○議長(清瀬一郎君) ただいま議題となっております四つの法案のうち、日程第四、第五、第六、すなわち、教科書関係の案につき討論の通告がありますから、順次これを許します。上村千一郎君。
  〔上村千一郎君登壇〕
○上村千一郎君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました三法案中、政府原案に賛成、社会党二法案に対し反対の討論を行ないたいと思うものでございます。(拍手)
 わが憲法第二十六条第二項は、「義務教育は、これを無償とする。」と規定し、文化国家の教育原則を高く打ち立てておるのであります。政府並びにわが党は、常にこの神聖な義務教育無償の理想を、いかにして広範囲に具現するかに努力して参ったことは、昭和二十六年度に入学する児童に対する教科用図書の給付に関する法律、及び昭和二十七年における、新たに入学する児童に対する教科用図書の給与に関する法律、並びに現在施行されております、就学困難な児童及び生徒のための教科用図書及び修学旅行費の給与に対する国の補助に関する法律など、一連の法律制定の過程に照らしましてもきわめて明白であります。
 まず政府は、敗戦後のわが国の経済復興に応じ、憲法の義務教育無償の理想の具現の試みとして、市町村が昭和二十六年度に市町村立の小学校に入学する児童に対して、国語、算数の教科書を給与する場合、その経費の二分の一を都道府県が、都道府県立の盲学校及びろう学校の小学部に入学する児童に対しても、その経費の二分の一をそれぞれ補助するようにし、翌年さらにその施策を一歩前進させ、新たに入学する児童のすべてに対し、一部の教科書を国が給与することにいたしたのでありますが、まだ当時わが国の経済力が、この政策遂行の負担にたえず、一面全児童を対象とする社会保障の角度から、現行の就学困難な児童及び生徒のための教科書無償制度に発展したことは、皆様のつとに御承知の通りであります。
 元来、義務教育無償の理想は、対社会保障の角度のみに満足すべきものではありません。同じ机を並べて学んでいる子供たちが、その家の貧しさのために教科書の無償給与を受け、その家が富めるがゆえに、その子供に何か優越感を感じさせるがごときことがもしあるとすれば、教育の本質をこれほど没却するものはありません。子供らの親といたしましても、また耐えられないことでありましょう。貧しき家庭にも富める家庭にも、教育のかてともいうべき教科書を国が無償で配布してこそ、教育の趣旨に沿い、これを通じ、児童、生徒に社会、国家の構成者たる自覚を植えつけさせることもできるものであります。そのことは、子供を持つ親の切なる願いであり、国民の願望であります。さればこそ、わが党が憲法の義務教育無償の理想達成の具現化として、教科書無償の法案準備のことが世に判明するや、あげて国民がこれを歓迎したことは、当時の新聞紙の諸論調を見れば、容易にわかることでありましょう。(拍手)
 かくして、政府は、本法案を提出し、これが国民の期待にこたえんとしたものであり、義務教育がわが国の教育の根幹であり、わが国の将来はその振興のいかんにかかっていることを思いますとき、本法案はわが国教育史上画期的な意義を有するものとして、ここに心から賛意と敬意を表するものであります。(拍手)
 元来、義務教育は、国が国民に教育を受けることを義務として課している教育でありますので、これがために特に国民に負担をかけることは、その本来の精神に反し、国として無償の措置を講ずることは、一つの責務とも存ずるのであります。この観点からすれば、政府の今回の措置はむしろおそきに過ぎるものとの批判もないではありませんが、しかし、莫大な予算措置を必要とする本件措置のごときは、その実施せんとするときの国の経済力、財政力を考え、また、他の重要施策の施行との調和をも考えなければならないのは当然であります。(拍手)また、本法案が重要性を持てば持つほど、これが実施に際しましては、慎重な調査検討が必要であります。本法案が、第一条に教科書無償の方針を確立、明言し、同条第二項に、特にその無償措置に関しての必要な事項に別途立法措置を講ずることとしたことは、きわめて適切なものといわねばなりません。(拍手)
 翻って、本法案の委員会の審議を通じて、これに対する反対の論旨を検討してみますると、大体二つに要約できると思います。
 まず、第一といたしましては、政府は本気で教科書無償を考えているのであろうか、本法案の題名は教科書無償法案となってはいるものの、実は調査会設置法案ではないかという点であります。第二は、政府は、義務教育諸学校における教科書の無償給与を企画するとともに、これに便乗して教科書の国定化を期待し、教育の国家統制を意図しているのではないかという点であろうかと思うのであります。
 しかし、憲法第二十六条第二項は、「義務教育は、これを無償とする。」と規定するにすぎず、その範囲、内容は、法律の制定によって具体化するより方法がございません。だから、それが具体化の第一歩として、教育基本法第四条第二項は、「国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料は、これを徴収しない。」と規定し、また本法案は、教科書無償配布にその範囲を拡大し、「義務教育諸学校の教科用図書は、無償とする。」と規定したものであり、このようにして、憲法の大理想は着々と推し進めていかれるものと存じます。しかし、その実施にあたりましては、その方法、手続、発行、供給のあり方等につきまして、それが国民のとうとい血税にたよります以上は、慎重が上にも慎重を期し、十分にこれが検討を加える必要のあることは、論議の余地がないのであります。その意味におきまして、文部大臣の諮問機関として、臨時義務教育教科用図書無償制度調査会を設置し、無償の実施に必要な事項は、調査審議の結果を待ち、別途立法措置を講ずることにしたことは、きわめて民主的で、周到な措置と言えるのであります。(拍手)
 なおまた、政府原案は、第一条において無償を宣明し、明年四月小学校第一学年に入学する児童に対する費用をただいま審議中の三十七年度予算に計上し、本法案第二条第四項において、三十七年度予算の執行及び三十八年度予算作成に関係ある部分について、三十七年十一月三十日までに答申しなければならないとし、附則第二項において、昭和三十七年度予算の執行にかかるものを実施するために必要な事項は、政令でこれを定めることができる旨を規定し、これが無償実施の熱意を披瀝しておるのであります。これは、現実に現金を提供してその債務を履行せんとする態度に似ており、これほど確実な誠意がございましょうか。これをもし疑うならば、世の中に信ずることのできるものは何一つないのではないかと思う次第であります。(拍手)
 さらにまた、教科書の国定化をねらっている法案でないことは、この法案審議の全過程を通じても明白であります。現在、教科書の検定は、憲法に基づき、多数の専門家の意見を総合した学習指導要領に基づいて行なわれているものであり、全く教科書を国定化する意思もなければ、その余地もないのであります。
 要するに、本法案に対する社会党の方々の批判は、本法案の趣旨の誤解によるものか、わが党の前向き文教政策に対するためにせんがための反対か、あるいは本法案に対する鞭撻の御意思より出たるものか、そのいずれかと断ぜざるを得ないのであります。
 次に、社会党提案の教科書法案並びに義務教育諸学校の児童及び生徒に対する教科書の給与に関する法律案について、反対せざるを得ない理由を端的に申し上げたいと思います。
 まず、教科書法案に対してでありますが、この法案は、文部省の外局として教科書委員会を設置し、教科書の検定等に関する行政をこの委員会の権限となさしめております。教科書は、教育のかてとも称すべきものであり、その教育内容と分離して考えるわけには参らない関係に立っております。教科書行政もまた、教育内容に関する指導行政と密接不可分の関係に立つものであることも、容易に理解されることであります。しかるに、本法案では、教科書行政を別個の行政委員会の権限とするもので、教育行政の二元性を招き、とうてい妥当な措置とは考えられないのであります。また、本法案は、教科書の採択について、教育職員みずからの責任においてこれを行ない、学校長がこれを取りまとめることになっておりますが、教育行政について直接責任を負うべき市町村教育委員会から教科書の採択権を取り上げ、教育職員にこれを行使させんとするがごときは、現在の教育実情を考える場合、りつ然とする思いがあり、われわれのとうてい賛意を表するわけにいかないところであります。
 次に、義務教育諸学校の児童及び生徒に対する教科書の給与に関する法律案に対してでありますが、本法案によりますれば、昭和三十七年四月から義務教育諸学校の教科書の無償を全面的に実施することになっております。しかし、三十七年度用教科書は、後期は別といたしまして、すでに供給されつつある現状にあります。それにもかかわらず、これが予算措置は全然なされておりません。実施計画も不明確であり、三十七年度よりの実施は事実上完全に不可能であります。本法案では、公立学校児童生徒に対する無償措置については、市町村が実施し、国が経費を負担することになっておりますが、すでに昭和二十六年度における事務処理の実績、すなわち、清算事務の遅滞、混乱によって中止廃絶のやむなきに至ったとうとい経験から見ましても、適切な方法とはとうてい考えられないのであります。
 よって、私は政府原案に賛成し、社会党二法案には、はなはだ残念ではありますが、反対せざるを得ないものであります。
 以上、私の討論を終わる次第であります。(拍手)
○議長(清瀬一郎君) 村山喜一君。
  〔村山喜一君登壇〕
○村山喜一君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されました内閣提出の義務教育諸学校の教科用図書の無償に関する法律案に反対、日本社会党提出の教科書法案及び義務教育諸学校の児童及び生徒に対する教科書の給与に関する法律案に対して賛成の討論を行なわんとするものでございます。(拍手)
 文部省は、今日まで、第二十四通常国会において国民世論の前に否決された教科書法案を行政措置によって不当にも執行いたし、調査官の設置によって教科書の検定を官僚統制化し、教科書の生殺与奪の実権を握り、教育委員会の採択による統一採択を行政指導と称して強行して参りました。その結果、憲法第九条第二項にある、戦争をしないため陸海空軍や戦力を持たないという平和憲法のことが書いてない社会科の小学校教科書が七種類のうち四種類まで検定で通り、正しいことが抜けたり、うそや間違いの多い教科書を作り出し、民主的な教育を押しつぶそうといたしております。平和や民主主義のために戦い、自分の生活を守るために戦うことを忘れさせられた人間、それは、あの不幸な大戦のさなかにおけるわれわれ日本人の姿でありました。再軍備は当然であり、戦争は罪悪だとは思わず、政府の言うことは常に正しいということを教育するような方向をとっているのは皆様御承知の通りであります。教師に対しましては勤務評定、学校の子供に対しましては間違った教科書を与え、教育を政党、官僚の手によって支配してきた事実は、荒木文部大臣の言動を見てもよくわかるところであります。(拍手)国会で承認も受けず、行政執行で教育の官僚統制をやってきた政府・自民党の態度は、国民の名において許せないのであります。(拍手)
 政府提出のこの法案は、これらの既成事実の上に、さらに無償の名に隠れて国民のための教育左ゆがめ、教育を権力の支配下に置くことをねらったものと言えるのであります。
 すなわち第一点としては、看板に偽りありということであります。教科書を無償で支給すると称しながら、その中身は調査会の設置になっております。調査会は、文部省が当然やるべきことをやらないできたことを物語るものであり、一年限りの調査会を置いて責任を回避し、内容はすべて調査会の結論待ちということにしてあります。御承知のように、予算は、三十八年四月一日に入学する小学校一年生分の予算しか計上されていないのでありまして、三十七年度については、何らの措置がなされていないのみならず、一四%の教科書の値上げを認め、子を持つ親たちを、新学期近しというこのごろ、苦しめておる事実は、池田内閣の教科書に対するほんとうの姿であり、国民の期待を裏切るものといわざるを得ないのであります。(拍手)しかも、三十七年度の予算執行については、政令にゆだねているもので、悪質きわまりなき鉄面皮な法案であり、羊頭を掲げて狗肉を売るのたぐいであるといわざるを得ないのであります。(拍手)
 第二の問題点は、わが党案が、憲法に定める義務教育無償の原則にのっとり、教科書を給与するのに全額国が補助して、教育を支配せずという民主教育の精神に立っているのに対しまして、政府案は、立法の根拠を欠き、政治、経済の変化のいかんによっては、入学祝いや社会保障政策に転化し得る思想を有しておることであります。このことは、予算のつき方から見ましても、一年生分しか措置していないこのことから見ましても、九カ年もかかるという足踏み法案であると言えるのでございます。審議の過程でも、教科書会社に直接支払いをし、中小の教科書会社を統合する危険性や、教科書会社を文部大臣の許認可制にすることや、府県別の広域採択によって、実質的に教科書をさらに国定化するねらいがあり、教育を支配する意図が明らかにされて参りました。歴代自民党内閣の文教政策につきましては、われわれの不信感は依然として消えないのであります。
 第三点は、わが党は、教科書法案を提出し、教科書の無償に欠くことができない三点、すなわち、教科書の採択権は学校教師にあることを明確にすること、民主的な検定制度を設け、検定の公正を確保すること、合理的な自由発行制度を確保することの、教科書制度の原則を明らかにしたのであります。しかるに政府・自民党は、教科書の内容統制を行なっている検定制度をそのままに放置し、教科書汚職を生み出しているところの教育委員会の広地域統一採択に固執し、国定化を防ぐ保障を講じようとは何ら考えていないのであります。日本国民のお互いは、近代世界教育史の上において類例を見ない教育内容統制の歴史を持ち、この教育の結果は、敗戦という結果を招いたことを忘れてはならないのであります。
 民主主義と平和を守り、科学的真理と人間性の真実を貫く教育という国民的要求に反する政府・自民党の反動文教政策に警告を発し、日本社会党提案の二法案に賛成、政府提出法案に反対いたしまして、私の討論を終わります。(拍手)
○議長(清瀬一郎君) 討論は終局いたしました。
 ただいまの村山君の発言中、もし不穏当な言辞がありましたならば、速記録を取り調べの上、適当に処置いたします。
 これより採決に入ります。
 まず、日程第三、すなわち、学校法人紛争の調停等に関する法律案の方から先に採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○議長(清瀬一郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。
 次に、日程第四及び第五、これはいずれも山中吾郎君外九名御提出の案でございます。この両案を一括して採決いたします。
 両案の委員長の報告はいずれも否決であります。両案を委員長の報告の通り、すなわち、否決の方に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○議長(清瀬一郎君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告の通り否決いたしました。
 次に、日程第六につき採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○議長(清瀬一郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。
     ――――◇―――――
○議長(清瀬一郎君) 本日は、これをもって散会いたします。
   午後三時三十六分散会
 出席国務大臣
        大 蔵 大 臣 水田三喜男君
        文 部 大 臣 荒木萬壽夫君
        厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君
        労 働 大 臣 福永 健司君
        自 治 大 臣 安井  謙君
        国 務 大 臣 三木 武夫君
 出席政府委員
        総理府総務長官 小平 久雄君
        文部省管理局長 杉江  清君
        自治省行政局長 佐久間 彊君
     ――――◇―――――