第040回国会 本会議 第39号
昭和三十七年四月二十日(金曜日)
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 議事日程 第三十六号
  昭和三十七年四月二十日
   午後二時開議
 第一 災害対策基本法等の一部を
  改正する法律案(内閣提出)
 第二 恩給法等の一部を改正する
  法律案(内閣提出)
 第三 不当景品類及び不当表示防
  止法案(内閣提出)
 第四 農地法の一部を改正する法
  律案(第三十九回国会、内閣提
  出)
 第五 農業協同組合法の一部を改
  正する法律案(第三十九回国
  会、内閣提出)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 議員請暇の件
 藤山発言と経済政策に関する緊急
  質問(松原喜之次君提出)
 日程第一 災害対策基本法等の一
  部を改正する法律案(内閣提
  出)
 日程第二 恩給法等の一部を改正
  する法律案(内閣提出)
 日程第三 不当景品類及び不当表
  示防止法案(内閣提出)
 日程第四 農地法の一部を改正す
  る法律案(第三十九回国会、内
  閣提出)
 日程第五 農業協同組合法の一部
  を改正する法律案(第三十九回
  国会、内閣提出)
   午後二時十四分開議
○議長(清瀬一郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 議員請暇の件
○議長(清瀬一郎君) お諮りいたします。
 議員松村謙三君、同竹山祐太郎君、同井出一太郎君及び同田川誠一君から、海外旅行のため、四月三十日から五月七日まで八日間請暇の申し出がございます。これを許可するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。
     ――――◇―――――
 藤山発言と経済政策に関する緊急
  質問(松原喜之次君提出)
○田邉國男君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 すなわち、この際、松原喜之次君提出、藤山発言と経済政策に関する緊急質問を許可されんことを望みます。
○議長(清瀬一郎君) 田邉國男君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
 藤山発言と経済政策に関する緊急質問を許可いたします。松原喜之次君。
  〔松原喜之次君登壇〕
○松原喜之次君 私は、日本社会党を代表いたしまして、去る四月十三日、経済企画庁長官藤山さんが経済同友会の総会で述べられた演説、及び池田総理が、四月八日、福知山の記者会見で行なった談話に関連いたしまして、池田内閣の経済政策の基本に関して質問をいたそうとするものであります。(拍手)
 総理は、その福知山談話におきまして、現在、日本経済は明るい雰囲気にある、国際収支は十一月に必ず均衡すると述べておられます。このような万年楽観、万年強気説はいつも池田総理の口から聞きなれているところでありますが、このような根拠のない発言に対しては、財界の中にさえ批判の声があることは周知の事実であります。(拍手)
 ところが今度は閣内から公然たる批判がなされたのであります。すなわち、藤山長官は、同友会の演説におきまして、日本経済は今非常にむずかしい時期にある、甘い見方は禁物である、もし甘い考えで進むならば、危機をなしくずしにずらすことにはなっても、最後には大へんなどたんばに追い込まれるであろうと述べておられます。政府としては、さしずめおそらく閣内においてこのような食い違いはないと強弁せられるでありましょうが、しかしもはや世人は承知いたしません。総理と経企長官との間に、経済情勢の認識とその対策について根本的な相違のあることを知るに至ったからであります。(拍手)総理大臣と経済閣僚との間に、その基本認識においてこのような大きな食い違いを示すということは、単に言葉のあやなどをもって言いのがれのできる性質のものではなくて、もっと本質的なものであります。その証拠に、藤山長官は、わざわざそのあとで記者会見を行なって、その波紋をやわらげ、取り静めようとされましたが、たまたまその際、自分の発言を独走と責めるならば、池田総理や佐藤通産大臣もそれぞれ放言しているではないかと言われたと伝えられておるのであります。けだし、長官の真意を最も正直に告白した言葉であろうと思いまするが、しかしそれは同時に総理、経企庁長官、通産大臣というような、経済政策について決定的な発言権を持つ重要閣僚の間に、現状認識に関して重大な食い違いがあり、それぞれ勝手に自分の思うところをしゃべりまくって、全然統一がとれていない事実を露呈したものにほかなりません。(拍手)
 私は、今ここで閣内の意見不統一について一々具体例を引用することをやめて、単刀直入に池田総理、藤山長官、佐藤通産大臣に対して、次のことを御質問いたしたいと存じます。
 第一点、現在、日本経済は満足すべき状態にあると思われるか、それともこのままでは大へんなどたんばに追い込まれる危機をはらんでいると思われるか。第二点は、本年十一月に、首相は国際収支の均衡を達成できると言っておられますが、はたして達成できると思うかどうか、さらにお伺いするのであります。第三点、右の目標を達成するためには、現在の政策のままでよいと思われるのか、それとも、もっと思い切った対策をとる必要があると考えられるのか、もしその必要がありとすれば、その対策の内容を示されたいのであります。三閣僚のそれぞれ信念に従っての率直な御答弁をお願いしたいと存じます。(拍手)
 第二に質問いたしたいことは、池田内閣の高度成長政策についてであります。高度成長政策の根底にある思想は、一言にして言えば、大企業の設備投資を続けてさえいけば、経済は無限に成長するという考え方であります。この考えを推し進めて参りまするならば、およそ経済には好況と不況の波はあり得ないということになるのでありますが、現に、わが経済は、四年ごとに不況の波を繰り返しており、従って、設備投資さえ続ければ万事うまく伸びていくというのは、全く自由経済の原則を忘れた根拠のない考え方であるととは、過去十年の歴史を振り返っただけでもよくわかるところであります。また、高度成長政策がとられて、わずか二年目の今日、早くも物価は急激に上がり、貿易の収支は赤字が続き、反面、政府や日経連は、所得倍増どころか、賃金を上げまいと懸命になって押えていることは御承知の通りであります。高度成長政策すなわち所得倍増計画は明らかに失敗しているのでありまして、ここで手直しの必要に迫られていることは、だれの目にも明らかであると思うのであります。今、政府としてなすべきことは、賃金ストップではなくて、設備投資の抑制であります。高度成長ではなくて、低い所得層の生活水準を引き上げることを眼目とした二重構造の解消であります。(拍手)それとともに環境施設の改善をはかって、いわゆる社会資本の充実を期することであります。この二つを実行すれば、経済成長率は下がりますが、そのかわり国民の生活水準は上がるのであります。国民が求めているのは、見せかけの経済成長率の数字そのものではありません。現に物価が下がって暮らしが楽になり、貧富の差が少なくなることであります。それに対して、あくまで設備投資の増大による経済成長を説くのは見当違いと断ぜざるを得ません。
 そこで、私は次の三点について、藤山長官、佐藤通産大臣の御見解を承りたいのであります。
 すなわち、第一点は、現在の困難なる経済情勢を生んだ原因は、主として設備投資の過大、行き過ぎにあると考えるかどうか。第二点、現在の設備投資を思い切って抑制しなくとも日本経済は順調に発展すると考えておられるかとうか。第三点は、設備投資を規制するとしたら、それは政府の直接統制でこれを行なうのか、それとも民間の自主調整にまかすのか。この点について通産大臣と企画庁長官の的確なる御答弁をお伺いいたしたいのであります。(拍手)         、
 第三に、私は経済運営についての政府の責任に関しお尋ねいたします。池田総理は、福知山談話で、物価の値上がりについては国民にも責任があると述べておられます。さきに総理は、経済のことはこの池田にまかしてくれと言われました。しかし物価は上がったのであります。およそ物価は、経済の動きの代表的な現われであり、特に消費物価の値上がりは直ちに国民の生活水準の低下をもたらすのであります。従って、深刻な問題であります。新聞の世論調査を見ましても、池田値上げ内閣に対する国民の不満がきわめて強い今日、経済のことをまかせてくれと言われた総理みずからが、今は物価の値上がりを国民のせいにしようとすることは、まことに無責任と申さなければなりません。(拍手)一方、藤山長官は、さきの演説において、現在の経済の行き詰まりについては政府も反省すべきであると述べ、みずからの内閣の責任を強調されたのでありまして、これは私は当然のことと存じます。
 そもそも、現在の経済情勢の悪化や物価の値上がりは、政府の政策がその根本原因であって、責めを国民に帰すべきではないのであります。もっとも、過度の設備投資等を行なった一部の人々にはある意味の責任はあるといたしましても、高度成長政策のもとでは、これは当然のことでありまして、むしろ、こうなっては犠牲者でこそあれ、決して責任を問われる立場ではありますまい。私は大方の国民にかわり、国民の名において、池田総理に抗議を申し入れたいと思うものであります。(拍手)天下に一人の飢える者があっても、それは自分の責任であると古人はみずからをきびしく反省したのでありますが、それが政治家のほんとうの態度ではありますまいか。今、池田総理は、幾千万の国民が政府の政策の犠牲となって苦しんでいるとき、逆に国民にその責任を問われようとするのでありますか。かねて、私は個人として、池田さんの人となりに対し、ひそかに敬意を払っていたものでありますが、今このことを知るに至って、心から池田さんのために惜しむものであります。
 そこで、私は最後に、池田総理と藤山長官にお伺いいたしたいことは、第
 一点といたしまして、物価の値上がりは一般国民にその責任があると考えられるかどうか。第二点といたしまして、日本経済の現状に対し、その主たる原因を民間企業と一般消費者にあると考えられるかどうか。第三に、もし政府に責任があるとするならば、政府はどのような形でその政治責任をとらんとせらるるか。以上の三点についてお伺いいたします。
 この際、私の特に申し上げたいことは、池田総理は、みずからの違算や失敗に対し、全力を傾けてその是正や改善に努力することこそが私の責任であると言われますが、しかし、いかなる失政があっても平然としてその職にとどまるということは、独裁政治の形であって、総理の言われる政治の姿勢を正すことにはならないということであります。(拍手)池田内閣は、高度成長政策の出発にあたって、総理みずからも認められるように、大きな見込み違いを犯した。出発二年目にして、すでに情勢は意外に悪化し、政策の手直しと転換の余儀なきに至ったのであるから、政府はその責任をとって総辞職を決行するのが、責任ある政治のあり方と存ずるのであります。(拍手)さらに、藤山企画庁長官といたされては、すでに基本的認識を異にして、内閣の施策や首相の考え方に対し、きびしい批判を公にせられた以上、その職を辞し、進退を明らかにせらるべきであると思うのであります。(拍手)
 事はきわめて重大でありまして、単に言葉の上で糊塗せらるべき事態ではないのであります。総理並びに藤山長官の誠意ある御答弁を期待いたしまして、私の質問といたします。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 御質問の第一点は、現在のわが国の経済を何と見るかということでございます。この点につきましては、本会議その他で申し上げておりますごとく、私が予想いたしました高度成長以上に行っている状況でございます。従って、私の予想以上の経済成長の行き過ぎを押えることが今必要でありまして、経済全体としては、非常に日本の経済が危機であるということは当てはまらないと思います。(拍手)日本の経済がどうなっているかというととは、われわれが見ると同時に、世界の人もこれを見ておるのであります。世界的に考えまして、私は危機であるとは考えませんが、この高度成長の行き過ぎを是正しなければならないむずかしい状態であると言い得るのであります。(拍手)従いまして私は、決して万年楽観論でもなく、この状態を甘く考えておるものではございません。最も心配しておる一人でございます。従いまして、昨年九月に経済の総合対策を打ち立て、これを執行しておると同時に、最近におきましては物価の値上がりを押えるための総合対策を打ち立てて、国際収支の悪化と物価の値上がりを押えるべく、全身の努力を続けておるのでございます。
 しこうして、御質問の第二の国際収支についてでございますが、輸出四十七億ドルは大体達成し得る順調な歩みを続けております。また、輸入につきましては、われわれの予想よりも減少がおくれております。それは国内の生産の高水準によるのでございまするが、おくれながらも輸入は沈静化しつつあるのでございますから、本年の十一月ころには国際収支の均衡を達成し得る見込みで、これに向かって努力を続けておるのであります。(拍手)
 次に、現在の経済政策でよいかという御質問でございますが、われわれは、行き過ぎた高度成長を押える政策をとって、あくまで日本の国情に沿った、国民の努力による成長を続けていきたいと考えております。従いまして、基本的にはただいまの引き締め政策を今後とも堅持いたします。しこうして、経済の推移に応じまして、適時適切な措置をとることは当然のことと考えております。(拍手)
 次に、物価問題に対しまする政府の責任と、私の国民に対しまする御協力の要求について申し上げます。
 今回の物価の値上がりというものは、先ほど申し上げました設備投資の行き過ぎ、あるいは自由化のための投資等々、いろいろ原因がございます。こういう面につきましては、私は常に申しております通り、政府が全責任を負うことは当然でございます。しかしまた、片一方におきまして、物価の値上がりの原因が高度成長の行き過ぎばかりでなしに、社用消費の行き過ぎ、あるいは便乗的値上げもなきにしもあらずであります。(拍手)従いまして、経済の主体である民間も、また国民経済全体への影響をお考え下さいまして政府に御協力を願いたいというのが、私の真意であるのであります。(拍手)私は、あくまで過去の日本の歩んできたその成長を続けて、われわれの生活の向上をはかり、ほんとうに国土の保全と生活水準の向上が、・われわれの政策によって今日まで持ち続けられたのであります。この情勢を、今後とも国民とともに努力して実現することを、ここにはっきり申し上げ、私のこれが責任であることを申し上げます。従いまして、いたずらに一時の状況を見て大事な職責を離れるというととは毛頭考えておりません。私は国民の負託によって、わが党の政策を着実に実行することが務めであると考えておるのであります。(拍手)
  〔国務大臣藤山愛一郎君登壇〕
○国務大臣(藤山愛一郎君) 今日直面いたしております経済の状況というものは、非常に重要な段階にあることは申すまでもございません。従いまして、政府も昨年総合対策を立てましてこの事態に対処して、これを無事に乗り切るべく努力をいたしておるのでございますが、しかし、その効果というものは、必ずしもまだ十分現われてきておらぬのも現実の事態でございまして、従って、九月の総合政策というものをゆるめることなしに十分努力をいたしまして、そうして経済の安定をはかって参らなければならぬ段階だと思います。今日、十二月危機が過ぎ、あるいは三月危機が過ぎたと申しましても、表面の静穏の状態にかかわりませず、裏面の経済界の状態は必ずしも安定いたしたものではございません。従いまして、この時期におきまして、われわれといたしましては最大の努力を払いまして、そうして気を許すことなしに、ほんとうに真剣にこの状態の改善に向かって取り組んで参らなければならぬと思います。私は、今日危機が来ているとは申しませんけれども、もし真剣に取り組んで参らなければ、将来の経済界の状態は非常な悪化をすると考えるのでございます。その意味において、私は全力をあげてこの問題に、楽観することなしに、ある意味においては非常に悲観的であるかもしれませんけれども、その努力を続けて参りたい、こう考えております。十一月の国際収支が改善、均衡を保ち得るかということも、ただいま申し上げましたような経済基盤の確立を十分に達成し得るかいなかにかかっておるのでございまして、従って、われわれは、努力目標として十一月四十七億ドルの輸出、四十八億ドルの輸入という目標を立ててやって参ってきたのでありまして、輸出の面におきましてはある程度その努力目標に――もう一歩の努力がありますれば達せられないとは言えませんけれども、今日の状況下におきましては、輸入については必ずしも楽観を許さない点があるのであります。これらの点につきましては、われわれは十分な戒心をして、今後の国内設備投資その他の問題に対処して参らなければならぬと思うのでございます。従って、今日の段階におきまして、昨年とりました九月の総合対策をゆるめることなしに続けて参りますこと、そうしていわゆる楽観ムードを一掃して各人がそれぞれそういう状況にあるという上に立ちまして、政府も国民もともに手をつないでいきますことによって、私は十分目的を達し得ると思うのでございます。もしそうでなければ、先ほど申しましたような困難な事態に対処いたしますとなかなかむずかしい事態が起こってくるのでございますから、そういう意味におきまして引き締め政策を堅持して参りたい、こういうふうに考えておるのでございます。
 第二に、現在の経済情勢のもとにおいて、設備投資の問題で三点御質問がございました。むろん、設備投資を増強いたして参りますことは経済を成長させます上において当然のことでございますけれども、しかしながら、その設備投資が度を越えて参りますれば、当然アンバランスを起こしてくるのでございまして、今日までの状況から申せば、設備投資が非常に過大になり過ぎたといわざるを得ないのでございます。従って、これらの点につきまして設備投資をどうして押えていくかという御質問があったわけでございますが、今日のような自由主義経済の場合におきまして、政府が何らかの権力を持ちまして直接の統制をするというようなことは極力避けて参らなければなりませんし、やらないことが私は適切だと思います。従いまして、民間の自主調整に期待するところが多いのでございますが、民間の自主調整に期待いたしますためには、民間の自主調整が期待し得るような態度を政府自身がまたとって参らなければならないと思うのでございまして、そういうことによりまして両々相並んで、そしてほんとうに自由主義経済の中におけるこの種行き過ぎの是正をして参るべきだ、ころ考えておるのでございます。
 第三に、物価値上がりの問題についてでございますが、物価値上がりにつきましては、昨年著しい物価の上昇を見ましたことはまことに遺憾でございまして、その点は、やはり経済の成長があまりに急激に過度に過ぎた点があるのでございまして、そういう意味から言いまして、全体の経済の基盤を安定的成長に戻して参りませんければ、物価問題の根本的な解決の基盤はできないと思います。しかしながら、同時に、現に行なわれております個々の物価の問題につきましても十分な留意をもちまして、それぞれ適切にそれらの物価に対する個々の対策をも含めて参らなければならぬのでございますから、政府はさきに物価総合対策を立てまして、そして、これを今日以後政府の総力をあげて実施して参りたい、こう考えておりますので、それによりまして個々の物価の問題も、あるいは申し上げましたような物価値上がりに対する基盤の問題をも解決して参りたいと思います。
 最後に、私の立場についてのお話でございましたが、私は、内閣におりまして、内閣全員がすべて総理と同じ考えだとは思っておりませんし、また、自由主義の社会におきまして、それぞれ意見の違いますことは当然だと思います。従いまして、私は、私の意見を総理に具申しまして、そうして、十分討議の末、帰するところに向かって進んでいくのが適当であると思うのでありまして、昨年以来・九年の総合対策を立てましたのも、また、あるいは三月の物価の総合対策を立てましたにつきましても、私自身相当に総理に進言して、総理にはこれをいれていただいたと思っております。従って、私は、今後これらの事態に対しまして十分閣内において努力すべきが私の任務だ、かように考えております。(拍手)
  〔国務大臣佐藤榮作君登壇〕
○国務大臣(佐藤榮作君) 現在の日本の経済状態につきましていろいろの議論がある、一体通産大臣はどう考えるか、こういうのが第一のお尋ねであります。御承知のように、昨年度の経済成長が予想以上の大幅なものでありまして、また、最近の鉱工業生産も予想した以上の水準を保っておること、これは御承知の通りであります。しかし、四月の電力の需給状況はやや緩和してくるように考えますし、また、鉄鋼、繊維を中心とした操短なども強化されるような実情にございます。そう一いうことを考えますと、鉱工業生産は四月以降漸次沈静化していくものではないか、かように私どもは見ておるのでございます。この点は、申すまでもなく、昨年の夏以来経済の調整のための総合的諸方策をとって参りまして、これが順次効果を現わしつつあるものだ、かように私どもは見ておるのであります。今日も、また今後も引き締め基調を堅持いたしまして、適時適切な政策を実施していくことによって所期の目的を達成し得るもの、かように考えておる次第でございまして、今日の状態について、いわゆる楽観はいたしておりません。しかし、いわゆる危機説などというような非常な悲観的な考え方は実情に合わない見方だ、かように私は考えておる次第でございます。(拍手)
 第二に、本年十一月に国際収支の均衡を達成し得るかどうか、こういうお尋ねでございます。わが国の輸出は、昨年十二月以降各月とも前年同期の水準をかなり上回るようになっております。また輸入も次第に縮小傾向をたどっておりますが、十二月まではまだかなり高い水準であったように思います。しかし、本年に入りましてからは輸入の伸び率が著しく鈍化して参りました。このような輸出入の動きを反映いたしまして、貿易収支は次第に改善の方向に向かっていると言えると思います。また、先行き指標であります信用状統計の動きを見ましても、三十六年十二月の輸出信用状の開設高は、これは前年同期比一割二分の増加でありまして、戦後最高を記録しております。今年の一月、二月とも前年同月に比べまして上回る伸びを示しております。三月に入りましてその伸び率はやや鈍化してはおりますが、なお増加を記録いたしておるのであります。この傾向自身がやはり輸出の面におきまして私どもは期待を持ち得るように思うのであります。しかし、今後政府といたしましても一そう強力に経済外交を推進すると同時に、近く私どもは最高輸出会議を開催する予定でございますが、この会議におきまして輸出目標も示し、協力を得まして、同時に強力な輸出振興策を実施いたしまして、ぜひとも四十七億ドルの輸出目標を達成して参りたい、かように考えております。また三十七年要り輸入の状況な、最近になりまして金融引き締め政策の浸透や生産者製品在庫の増大等によりまして、生産水準も漸次鎮静して参ると考えられますので、今日まで予想外に堅調を示しておりました輸入も、これらの国内情勢を反映しまして、順次また変わっていくものだ、かように私どもは考えておりますので、在来の政策を一そう積極的に進めて参って、この輸入を四十八億ドルにとどめるように措置をとって参りたい、かように考えております。また、御承知のように資本収支につきましては、今後も依然として黒字基調が継続するものと考えられます。これらの輸入、輸出、さらに資本収支等を考えてみますると、国際収支は下期におきまして均衡を回復する条件は十分備わっておる、かように考える次第でございます。この立場に立ちまして、通産省といたしましては積極的に輸出振興策あるいは設備投資調整の対策、これらを実施いたしまして、経済の鎮静化をはかって、国際収支の面におきましても、計画目標を達成するように最善の努力を払っていきたい、かように考えておる次第でございます。
 また、今日の経済情勢の悪化の原因は、過大な設備投資にあるのではないか、こういうお尋ねでございます。この点は、昨年の夏以来、政府が総合的景気調整策を樹立いたしましたが、その際に指摘いたしましたものは、設備投資の過大あるいは消費等の最終需要各部門の増加のテンポが、若干私どもの予想したよりも早かった、こういうように考えられましたので、これらに一ついての対策を講じて参ったのでございます。しかし、この設備投資は、私が申すまでもなく、政府が抑制勧奨等をいたしましても、今日もなお民間におきましては依然強い設備投資の意欲を示しております。従いまして、企業の意欲通りの投資を行なわせるということは、現在の経済情勢から見て、これは妥当ではない、かように私どもは考えますので、今日とっております態度を堅持して参るつもりでございます。もちろん設備投資の抑制に際しましても、隘路部門の打開であるとか自由化対策、これらを十分に考えまして所要の調整を加えていくつもりであります。この調整を加えて参ります場合に、民間経済、ことに金融関係等からの自主的な規制が望ましいことは申すまでもないところでございます。私どもといたしましては、民間の自主調整が円滑に行なわれるということを助ける意味におきまして、通産省の産業合理化審議会、産業資金部会、これらを活用いたしまして、行政的な指導援助をいたす考えでございます。(拍手)
○議長(清瀬一郎君) 松原君より再質問をいたしたいとの申し出があります。これを許します。松原喜之次君。
  〔松原喜之次君登壇〕
○松原喜之次君 三閣僚からまことに御丁重なる御答弁を得ておるのでありますけれども、実は通産大臣の御答弁のごときは、他を言って私の質問には答えないような態度であったように思うのであります。そこで私はきわめて簡単に再質問をいたすのでありまするが、皆さんもお聞きのように、今池田総理、藤山長官、佐藤通産大臣の答弁を聞いておりますと、やはり私が初めに申し上げたように、経済の情勢認識において、あるいは――これは明らかにはおっしゃらなかったけれども、その対策においても、ニュアンスとして受け取ったところは相当な相違があるということであります。(拍手)かなり遠慮して答弁しておられましたけれども、だれが聞いても三者の間に一致した意見があるとは考えられないのであります。(拍手)そこで池田総理にお伺いいたしますが、かような相違のある閣僚が寄って、そうして統一ある政策の実行は不可能であると思いまするが、この点について池田さんの決意を承りたいと思うわけでございます。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) 再度の御質問でございますからはっきり申し上げます。
 われわれは、自由民主党を基盤とした政党内閣でございます。従いまして、内閣は合議体によって一致した意見でまっすぐ進んでおります。一糸も乱れていないことをはっきり申し上げます。(拍手)
○議長(清瀬一郎君) 以上をもって、緊急質問並びにこれに対する答弁を終わりました。
     ――――◇―――――
 日程第一 災害対策基本法等の一
  部を改正する法律案(内閣提出)
○議長(清瀬一郎君)日程に入ります。
 日程第一、災害対策基本法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
    ―――――――――――――
○議長(清瀬一郎君) 委員長の報告を求めます。地方行政委員会理事高田富與君。
  〔議長退席、副議長着席〕
    ―――――――――――――
  〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔高田富與君登壇〕
○高田富與君 議題の災害対策基本法等の一部を改正する法律案につき、地方行政委員会における審議の経過並びに結果の概要を報告いたします。
 本法案は、災害対策基本法の改正を主とするものであります。本法は、御承知の通り、第三十九回臨時国会において成立したのでありますが、その際、同法案中の災害緊急事態に関する規定は、さらに慎重な検討を要するものとして、一応その条文を修正削除したのであります。そこで、今回は前案文に若干の修正を加えて提案されたものでありまして、その概要は、国の経済及び公共の福祉に重大な影響を及ぼすべき異常かつ激甚な災害が発生した場合、内閣総理大臣は、中央防災会議に諮って災害緊急事態の布告を発し、緊急対策本部を設置することができるとともに、さらに緊急の必要がある場合には、国会が閉会中で臨時会を召集するいとまがない等のときは、緊急にして放置しがたい事項について、罰則の伴う政令を発することができるものとしたことであります。
 そこで、緊急にして放置しがたい事項でありますが、その一は、供給が特に不足している生活必需物資の配給または譲渡もしくは引き渡しの制限もしくは禁止であり、その二は、災害応急対策、災害復旧または国民生活の安定のため必要なものまたは役務等の最高価額の決定であり、その三は、賃金、災害補償給付金その他の労働関係に基づく金銭及びその支払いのための銀行その他の金融機関の預金等の支払い以外の金銭債務の支払い延期及び権利の保存期間の延長であります。
 さらに、内閣は、災害緊急事態の布告を発したときは、でき得る限りすみやかに国会の承認を求め、また緊急措置のための政令を発したときは、直ちに臨時国会の召集を決定し、または参議院の緊急集会を求めて、その政令にかわる法律制定の措置をとり、または政令制定の承認を求めなければならないこととする等の規定を設けているのであります。
 なお、中央防災会議の委員には、指定行政機関の長のほかに、新たに学識経験者を加えることとしているのであります。
 本法案は、以上のほか、災害対策基本法の施行に伴う関係諸法律につき、災害救助法の一部を改正して、防災会議の設置に伴って、中央、地方等の救助対策協議会を廃止し、救助費に対する国庫負担の引き上げ等を行なうこととし、また地方自治法の一部を改正して、地方公共団体が支給することができる手当の種類に災害派遣手当を加える等、規定の整備を行なっていることであります。
 本法案は、去る三月二十九日本委員会に付託され、四月十日に提案理由の説明があり、同十三日には参考人より意見を聴取するなど、慎重な審議を行なったのでありますが、詳細は会議録に譲ります。
 四月十九日、質疑を終了、討論を省略して採決を行ないましたところ、全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決しました。
 なお、本案に対し、自由民主党、日本社会党及び民主社会党の共同により、
 一、政府は、治山治水、地すべり海岸侵蝕及び高潮対策その他の国土の保全に関する諸施策に抜本的な検討を加え、長期的、効果的な計画の樹立と推進に努め、災害の原因を根絶するよう万全の措置を講ずべきである。
 二、政府は、激甚災害に係る統一的恒久立法を直ちに今国会に提案するとともに、すみやかに個人災害の援護に関し必要な立法措置を講ずべきである。
 三、政府は、災害緊急事態の布告及び緊急措置に関する政令の制定に関する制度の運用について、かりそめにも濫用にわたり、自然災害に由来する事態における経済的規制以外に拡張されることのないよう厳に留意すべきである。という附帯決議が提案せられ、これまた全会一致をもって可決せられたのであります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(原健三郎君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○副議長(原健三郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第二 恩給法等の一部を改正
  する法律案(内閣提出)
○副議長(原健三郎君) 日程第二、恩給法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
    ―――――――――――――
○副議長(原健三郎君) 委員長の報告を求めます。内閣委員長中島茂喜君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔中島茂喜君登壇〕
○中島茂喜君 ただいま議題となりました恩給法等の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 まず、本案の要旨について申し上げますと、
 第一に、現在、旧軍人及び昭和二十八年以前に退職した文官並びにこれらの遺族の恩給は、原則として、公務員のいわゆる一万五千円ベースの俸給を基準として算定されているのでありますが、その後における公務員給与の引き上げ、生活水準の上昇等を考慮して、次のような改善の措置を講じようとするものであります。
 まず、一般退職者及びその遺族の恩給の年額については、いわゆる二万円ベースの俸給を基準とした額、すなわち、二〇%前後増額した額に引き上げること、また、公務傷病者及び公務死没者の遺族の恩給の年額については、原則として、いわゆる二万四千円ベースの俸給を基準として算定した額、すなわち、三六%前後増額した額に引き上げることとし、公務傷病者、老齢者を優先する三カ年計画によって、昭和三十七年十月一日から実施することとしております。
 なお、昭和二十九年以後の退職者及びその遺族につきましても、これに準ずる措置を講じ、また普通恩給の多額所得者に対する恩給停止基準につきましても、所要の改正を行なおうとするものであります。
 第二に、刑に処せられたこと、または懲戒等の処分によって、年金たる恩給に関する権利を失った人々のうちには、その後の一般的復権、恩赦等を考慮すれば、将来は年金たる恩給を受けることができるようにするのが適当と考えられる人々がありますので、この際、その道を開くことといたしているのであります。
 本案は、二月八日本委員会に付託され、二月十三日政府より提案理由の説明を聴取し、四月十九日、質疑を終了し、討論もなく、採決の結果、全会一致をもって原案の通り可決いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
○副議長(原健三郎君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○副議長(原健三郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第三 不当景品類及び不当表
  示防止法案(内閣提出)
○副議長(原健三郎君) 日程第三、不当景品類及び不当表示防止法案を議題といたします。
    ―――――――――――――
○副議長(原健三郎君) 委員長の報告を求めます。商工委員長早稻田柳右エ門君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔早稻田柳右エ門君登壇〕
○早稻田柳右エ門君 ただいま議題となりました不当景品類及び不当表示防止法案の商工委員会における審査の経過並びに結果について概要を御報告申し上げます。
 近年、消費者からきびしい批判が出ております懸賞付販売の行き過ぎや欺瞞広告による土地のあっせん、あるいはにせの牛カンやにせの中性洗剤等に見られるような不当表示が増大しておりますので、これを防止するため、独占禁止法の特例法を定めて、一般消費者の利益を保護する必要があるというのが、提案の理由であります。
 本案のおもな内容は、第一、公正取引委員会は、事業者が提供する景品類について、その限度を定め、またはこれが提供を禁止することができること、第二は、公正取引委員会が指定する広告その他の表示については、一定の方法の表示を禁止できること、第三は、不当な景品類の提供及び表示については、排除命令をすることができること、第四は、事業者が公正競争規約を締結して、自主的に不当な行為を規制できること等であります。
 本案は、四月十日当委員会に付託され、十一日提案理由の説明を聴取して質疑に入り、十八日に至り一切の質疑を終了いたしましたので、昨日、採決に付しましたところ、全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決した次第であります。
 なお、本案に対し、法の運用に当たる公正取引委員会の機構を強化拡充すべき旨の三党共同附帯決議案が提出せられ、小林ちづ君の趣旨説明の後、全会一致をもって提案の通りの附帯決議を付することに決定いたした次第であります。
 以上、御報告を申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(原健三郎君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議はございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(原健三郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。
    ―――――――――――――
○副議長(原健三郎君) 委員長の報告を求めます。農林水産委員長野原正勝君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔野原正勝君登壇〕
○野原正勝君 ただいま議題となりました二法案について、農林水産委員会における審査の経過並びに結果を御報告いたします。
 まず、農地法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 本案の内容は、
 まず第一に、現行制度では、農地等の取得について、最高取得面積の制限を行なっておりますのを、制限面積をこえる場合であっても、農地等の取得者が主として自家労力により効率的な経営を行ない得る場合には、その権利の取得を認めることとして、農地等の取得に関する面積制限を緩和しようとするものであります。
 第二に、今回農業協同組合法の改正により設立せられることとなっておる農事組合法人のほか、合名会社、合資会社または有限会社であって、農業の共同体としての適格要件を備えるものを農業生産法人として、新たに農地等の権利の取得を認めることとし、農業経営の協業化の促進に資しようとするものであります。
 第三に、農業協同組合法の改正により、新たに農業協同組合が農地等を貸付または売り渡しの方法により信託事業を行なう道を開くこととしております。その他現在自作農創設特別会計に所属する土地等で、自作農の創設または土地の農業上の利用の増進の目的に供しないことを相当と認めたものの旧所有者への売り払いは、現在は所有者一代限りとなっておりますのを、これらの一般承継人に対しても売り払うことができるようにするほか、所要の改正を行なうこととしております。
 次に、農業協同組合法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 本案の内容としては、
 まず第一に、農事組合法人は、農業にかかる共同利用施設の設置、農作業の共同化に関する事業または農業の経営及びこれらの事業に附帯する事業を行なうこととしております。
 第二に、農事組合法人の組合員の資格は、農民であって定款で定めるものとし、定款の定めるところにより加入を制限することができるものとしております。また、員外理事の禁止、剰余金の配当方法の制限等、必要な制限規定を設けるとともに、その設立、管理等を極力簡素化して、組合員相互間の緊密な結合による業務の円滑な運営を期することといたしております。
 第三に、農業協同組合に、その事業として、農地等の信託の引き受けの事業を認めることとしておりますが、その際、信託目的については、農地等の貸付の方法による運用または売り渡しに制限することとし、また、その事業の性格上、信託事業を行なうことのできる農業協同組合を、信用事業を行なうものに限定することとしております。
 その他農業協同組合及び農業協同組合連合会の業務運営の整備に関しまして、農業の経営を行なう農事組合法人及び農業経営のみを行なうその他の法人に、農業協同組合の正組合員の資格を与え、また農業協同組合及び農業協同組合連合会が主たる構成員または出資者となっている法人に准会員として農業協同組合連合会に加入する道を開くこととするほか、所要の改正を行なうこととしております。
 なお、両案と同じ題名の法律案が一昨年の第三十四回国会に政府から提出せられましたが、安保問題をめぐる国会審議の混乱等の事情から未成立のまま推移し、衆議院解散のため審議未了となったのであります。次いで、政府は、一昨年の法律案に対して、農業生産協同組合制度の創設、農業生産法人の限定、農地等の取得に関する最高面積制限の改訂等の変更を加えた法律案を、さきに成立を見た農業基本法とともに、昨年の第三十八回国会に提出したのでありますが、結局のところ再び審議未了に終わったのであります。そこで、さらに政府は、昨年の法律案を基礎とし、これに農業生産協同組合制度を農事組合法人制度に改める等の若干の手直しを加えて、昨年の第三十九回国会に再提出し、引き続き第四十回国会に継続審議となったものが本法律案であります。
 以上、両法案の骨子と、提出に至る経緯について申し上げましたが、両案は、ともに去る昭和三十六年十月十六日に提出され、十月十八日政府から提案理由の説明を聞き、引き続き昭和三十七年一月三十日政府から補足説明を聴取し、次いで、四月十二日から四月十九日の間において四回にわたり質疑を行ない、その間、農政調査委員会事務局長東畑四郎君外三名の参考人から意見を聴取したところ、全員が賛意を表せられました。
 かくて、四月十九日、一切の質疑を終わり、両案に対する討論に入りましたところ、日本社会党安井吉典委員から反対の、そして自民党米山恒治委員から賛成の討論が行なわれ、両案を一括して採決に付しましたところ、両案とも多数をもって原案の通り可決すべきものと決した次第であります。
 なお、両案に対し、民主社会党稲富稜人委員外一名提案により、改正後の農地法第三条第二項第三号及び第四号の規定により都道府県知事が農地等の権利移動に関する許可をするにあたっては、農地制度の趣旨に背反することのないよう厳格な運用を行なうこと等、六項目にわたる附帯決議がそれぞれ付されましたことを申し添えておきます。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(原健三郎君) 討論の通告があります。順次これを許します。東海林稔君。
  〔東海林稔君登壇〕
○東海林稔君 私は、ただいま議題となりました農地法の一部を改正する法律案並びに農業協同組合法の一部を改正する法律案の二法案につき、日本社会党を代表して反対の意思を表明せんとするものであります。(拍手)
 両法案は、ただいま委員長の報告にもありました通り、昨年政府・自民党が強行成立せしめた農業基本法の関連法案として、相当の間問題となってきた法案でありまして、政府基本法の最も重要な考え方の一つであるいわゆる農業構造改善を具体化するための法案であるわけであります。
 昨年、農業基本法案の審議にあたりまして、わが党は、共同経営の推進、農産物価格支持制度の確立等を中心とするわが党独自の基本法案を提案するとともに、政府の基本法は、池田総理自身農民の六割削減を公言した通り、その本質は、一言にしてこれを言えば、低賃金維持のための小農いびり出しの悪法であって、その目的に麗々しく掲げておる農業の生産性を高め、農業従事者と他産業従事者との所得の均衡を実現するということは、およそ無縁のごまかし法であることを指摘したのであります。(拍手)自来わずか一カ年ではありますが、現われている結果は、まさにわれわれの指摘した通り、農業と他産業との格差はいよいよ増大して、農民の多数は経営に自信を失うとともに、正直に政府の言うことを信じていては、ばかを見るだけだとして、政治への不信をも高めつつあるのであります。農にとどまるも前途に明るい希望はなく、さりとて転業するにもよくなるという確信を持ち得ないまま、混迷の中に悩み苦しんでおるのが、今の偽らざる農民の姿といわねばなりません。
 すなわち、われわれの両法案に反対するまず第一の理由は、このように他産業に転出して生活の安定、向上を期し得る何らの確たる保障もないまま、小農民をいびり出そうとするところの、構造改善どころか、無慈悲きわまる構造改悪を一そう推し進めるための法案であるところにあるのであります。(拍手)
 第二の反対理由は、今回の改正案は、戦後わが国民主化の基礎をなした農地改革の成果を、大きく後退させるものであるからであります。
 現行農地法は、昭和二十七年、農地改革の根拠法であった自作農創設特別措置法と農地調整法並びに両法の適用を受ける土地の譲渡に関する政令の三者を合一して、講和会議後の新しい情勢に適合するよう制定せられたものでありまして、農地改革の成果を維持し、さらにこれを発展せしめることをその重要な役割といたしておるのであります。しかるところ、ここ数年来、一般的な復古調に加えて、政府の農地法順守についての熱意を欠く点からしまして、農地の不法転用、やみ小作料等の違反事例は枚挙にいとまないほどであり、一方、同法の積極的な面である農用地拡大のための未開墾地の取得は、現に規定がありながら、予算の削減と地主の反対のためにほとんど空文化し、いわば開店休業のありさまにあるのであります。かくて、農地改革の成果は年とともにだんだんくずれてきておるのでありまして、われわれのはなはだ遺憾とするところでありますが、ここに農地法とともに農業協同組合法を改正して、新たに農地信託制度を設けて、不在地主を容認し、また、農業生産法人に対する貸付地についても限度以上の小作地所有を認め、さらに一般農地の所有制限を緩和して大農の発生を認めようとする等の諸点は、明らかに地主制度復活の糸口を開く危険と、農村の階層格差をさらに増大する危険とを多分に包蔵しているものと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)もし万一この両法案が成立するがごときことありとするならば、歴史的なわが国農地改革の成果は著しくそこなわれ、農村の民主化は大きく後退せざるを得ない結果となることは、けだし必至であります。
 第三の反対理由は、両法案は、現にやかましい論議を惹起しておる旧地主に対する農地補償問題と密接につながっておることであります。
 御承知の通り、政府は、昭和三十七年度予算に、農地改革によって農地を買収された旧地主に対し、国民金融公庫を通じて融資するために二十億円を計上したのであります。そして、これを生業資金に限定するか、−それとも生活資金にまで拡大するかについては、政府と与党の間にかなり長い間ごたごたが続いた結果、最近に至って、ついに議員立法として、生活資金にまで利用せしむる趣旨の法案を提案するに至ったのでありますが、自民党の農地問題協議会は、さらに本格的な地主補償として、二千数百億の巨額に上る交付金の交付法案を作成して、これを今国会に提案を強行しようと意気込み、目下党幹部を初め、政府当局は、これが処理に頭痛はち巻の体であることは周知の通りであります。(拍手)
 旧地主の補償については、二十八年の最高裁の判決、すなわち、農地改革における農地の買収価格は適正であるとの最終決定によって結論が出、その後政府も同判決に基づいて、しばしば旧地主の農地補償は一切いたさない旨を言明してきたところでありまして、農地被買収者問題調査会の使命も、旧地主の現在の実態を調査するとともに、社会的な意味から何らか措置が必要であるかいなかを審議、答申することにあって、農地補償についての是非を審議することとはなっていないのであります。しかも、先般発表された同調査会の調査結果によれば、旧地主の現状は、全体としては一般に比べて悪くないという結果が出ておるのでありまして、対策については目下審議中で、答申は未提出であるのであります。このような状態のもとで、前述のごとく二十億の融資予算を計上したことについては、同調査会委員からも、調査会軽視として強い不満が表明され、一般世論もまた一様にこれを批判しているときに、さらに法外な補償を強行しようとするがごときは、まさに常軌を逸したものというべく、参議院選挙を前にしての党利党略以外の何ものでもないと断じても決して過言ではないと思うのであります。(拍手)
 ところで、河野農相は、本両法案と関連し、地主補償問題について、委員会の質疑に対して次のような見解を表明しておるのであります。重要な点でありますので、速記録の通り申しますと、「今提案されておりまする二つの法案は少なくとも農地解放当時のあり方と違ったものが出てきておる。たとえばそれが一反歩であろうが三反歩であろうが、出征とか都市に在勤するとかいうようなことであっても不在地主として所有を認められなかったものが、今度はその道を開くようになった。時勢の変化とはいいながら現実はその通りである。従ってこれをどう扱うかということは政治的に一応考慮の段階にあると私は考えます。ただしそれは補償すべきものか補償すべからざるものか、これをそのままにしていくべきものか、何らかの処置を講ずるかということは、わが与党並びに政府によって基本的なものが決定さるべきものである。その決定に従って私は善処いたします。」こう言明されておるのであります。すなわち、お聞きの通り、補償は従来一切しないと言ってきた政府の言明をくつがえして、補償については再検討すべきであり、実施するかいなかは今後決定すべき事柄であるとし、しかも、再検討の理由はこの二つの法案、すなわち、農地法並びに農業協同組合法の改正にあることを明らかにしておるのであります。
 私は、昨日の委員会において、特に池田総理に対して、総理従来の言明とこのような河野農相の考え方の相違を指摘して、総理の所信をただしたのでありますが、総理は、党の交付金交付法案についてはまだ報告を聞いていない、補償については、従来の言明通りこれをしないという態度は現在も何ら変わっていない旨の答弁をなされたのであります。このように補償についての総理と農相との答弁には明白な食い違いがあり、そのこと自身もきわめて重大なことではありまするが、私がここに特に声を大にして指摘したいことは、河野農相みずからが説明しておるように、この両法案が旧地主の農地補償に新たに根拠を与えようとしている点であります。すなわち、今回の改正によって農地信託制度のごとく、わが国農民になじみもなく、しかも、これを行なうかいなやは各農業協同組合の自主的判断による以上、全国的に一律に実施されるという制度でもなく、委員会の審議においても明らかになった通り、政府自体がさっぱり自信を持ち得ないほど実際効果の乏しい規定を設けて、法制上ことさら不在地主を認めようとするようなやり方や、さらに先ほど第二の反対理由の際に述べたような反動的な改正とが相待って、旧地主や反動政治家に補償請求の口実と勇気を与えておることは明白な事実であります。(拍手)かくのごとき改悪をあえてなさんとする政府の意図那辺にありやを疑わざるを得ないのであります。もちろん旧地主の中にも、実際に生活に困っておるお気の毒な方のあるのは事実であり、従って、このような方に対して、国が社会保障の立場であたたかい手を差し伸べることについては、われわれも当然と考えるのでありますが、現に自民党がたくらんでいるような最高裁判所の判決に反するがごとき農地補償については、日本社会党は絶対反対であり、従って、意識的であるかいなかはしばらくおくといたしましても、いやしくもこれを促進する結果を招くことが明らかな、このような法の改悪については、とうていこれを許すわけには参らないのであります。(拍手)
 以上、私は、反対の理由としておもなる点を三つあげ、説明いたしたのでありまするが、これを要するに、本両法案は、共同経営のための農事組合法人並びにその農地等の権利取得に関する規定整備を除いては、何ら農業の近代化と農民の福祉増進に役立つものではなく、反対に農村の民主化を妨げ、農民の窮乏に拍車をかけるきわめて悪質な反動立法であって、われわれの断じて容認し得ないところであります。
 最後に、一言申したいのは、わが党の公開質問状に対する政府並びに自民党の無責任な態度についてであります。三月三十日、わが党は、最近の反動目に余る自民党政府の農政に対し、強くその反省を求める意味において、池田総理並びに池田自民党総裁に対して公開質問状を発し、本月五日までに回答を要求したのでありまするが、今日に至るも、いまだ何らの回答がないのであります。まことに遺憾しごくであり、このことだけでも政府並びに自民党が、農政について、全く自信を喪失していることをみずから告白していると申すべきでありましょう。(拍手)
 この際、政府は、飽くことを知らない貪欲独占資本の勤労農民搾取に法律と国費をもってお手伝いしているような今の反動農政を一日も早く改めて、ほんとうに農民が明るい平和な農村を喜び、すべての国民とともに、平和憲法が保障しているごとく健康で文化的な毎日を楽しむことができるような、正しくしかも愛情に満ちた農政確立の方途を再検討することこそ、緊急の責務であるということを最後に警告して、私の農地法の一部を改正する法律案並びに農業協同組合法の一部を改正する法律案、両法案に対する反対討論を終わる次第であります。(拍手)
○副議長(原健三郎君) 米山恒治君。
  〔米山恒治君登壇〕
○米山恒治君 私は、自由民主党を代表いたしまして、だだいま議題となっておりまする農地法の一部を改正する法律案並びに農業協同組合法の一部を改正する法律案に対しまして、賛成の討論をいたしたいと思うものであります。(拍手)
 最近におけるわが国経済の発展の目ざましいことは、すでに諸君御承知の通りであります。このような経済の高度成長の中にあって、農業と農業を取り巻く諸条件は、著しく変化してきているのであります。この変化に対応いたしまして、わが国の農業が、産業経済の重要な一部門として、他産業におくれをとらないように、農業の生産性を向上させるとともに、農家の方々が、他産業に従事する人々とつり合いのとれた生活を営むことができるようにいたすためには、昨年成立を見ました農業基本法に掲げでいる農業生産基盤の整備、拡充、農業生産の選択的拡大等の各種の施策を総合的、有機的に実施して参りまして、農業経営の規模を拡大し、農業経営の近代化、合理化をはかることが、喫緊の重要事であると考えるのであります。(拍手)
 この二つの法案は、農業基本法に基づく具体的施策の一環として、農業経営規模の拡大と農業経営の近代化、合理化という要請にこたえるために、
 まず第一に、農地法の基本原則を逸脱しない範囲におきまして、農地等の所有制限を緩和して、自立家族農業経営の育成強化をはかろうとしているのであります。
 第二に、農事組合法人を初め、農業経営を行なおうとする一定の要件を具備する農業生産法人に対しまして、新たに農地等の保有を認めることによって、農業の経営規模の拡大に寄与して参ろうとするのであります。なお、農業の経営規模を拡大しまして、その近代化、合理化をはかろうとする農村の動向といたしましては、すでに果樹、酪農経営を中心として、共同化法人の設立は、まことに活発なものがあり、現在その数は、全国で四百余に及んでいるのであります。
 第三に、農業経営及び共同利用施設に関する事業を行なう農事組合法人に関する組織を創設いたしまして、農業生産についての協業を助長しようとしているのであります。
 第四に、農業協同組合が、農地等の信託の引き受けの事業を行なうことができる道を開きまして、農地等の流動化の促進をはかろうとしているのであります。
 これらの諸施策は、冒頭に述べましたように、農業経営規模を拡大し、農業経営を近代化、合理化するために、私は、最も時宜に適した措置であると考えるのであります。(拍手)このことは、一昨日農林水産委員会において行なわれた参考人の意見聴取の際における陳述においても、社会党推薦を含めた四人の参考人が、すべて両法案に対して賛意を表せられ、両法案が一日も早く成立することを希望された事実に徴しても明らかなことであると考えるのであります。(拍手)
 以上申し述べました両法案による諸措置のほか、政府・自民党においては、農業基本法の具体的実施にあたりまして、農業近代化資金を初めとする各種金融措置や、農業基盤整備のための事業等、農業経営を発展させるためのもろもろの施策を行なっていこうとするものでありまして、これら諸施策と相待って、わが国の農業の近代化、合理化と農業生産力の飛躍的な発展をはかろうとしているのであります。
 これに対し、日本社会党から提案されております農業生産組合は、その事業を農業経営のみに限定し、また、組合員全員に事業従事義務を課するという、農民の自主的意欲を無視したものでありまして、家族農業経営を中心とするところのわが国の農業の実態には全くそぐわないものと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)日本社会党が、全国耕作農民の心からなる要望を無視し、単に抽象的な観念に固執して、両案に対し反対をされますることは、全国六百万農家のためにも、私は遺憾の意を表せざるを得ないのであります。(拍手)
 私は、ここに、両改正案が、日本農業の実情に最も適合するものであることの趣意を申し述べまして、両法案に対し、賛成の意を表する次第であります。(拍手)
○副議長(原健三郎君) これにて討論は終局いたしました。
 両案を一括して採決いたします。
 両案の委員長の報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○副議長(原健三郎君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告の通り可決いたしました。
     ――――◇―――――
○副議長(原健三郎君) 本日は、これにて散会いたします。
   午後三時四十五分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  池田 勇人君
        農 林 大 臣 河野 一郎君
        通商産業大臣  佐藤 榮作君
        国 務 大 臣 藤山愛一郎君
 出席政府委員
        総理府総務長官 小平 久雄君
        自治政務次官  大上  司君
     ――――◇―――――