第041回国会 本会議 第4号
昭和三十七年八月十一日(土曜日)
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 議事日程 第三号
  昭和三十七年八月十一日
   午後一時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
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○本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑
   午後一時九分開議
○議長(清瀬一郎君) これより会議を開きます。
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 国務大臣の演説に対する質疑
○議長(清瀬一郎君) 国務大臣の演説に対する質疑に入ります。矢尾喜三郎君。
  〔矢尾喜三郎君登壇〕
○矢尾喜三郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、昨日の池田総理の所信表明に関連いたしまして、数多くの疑問点を持っておるのでございまするが、時間の都合上、わが党の質問者が分担いたしまして、徹底的に御質問を申し上げたいと思うのでございます。私は、主として、貿易、外交、非核武装宣言等の諸問題につきまして、わが党の立場を鮮明にしつつ、御質問を申し上げたいと存ずる次第でございます。(拍手)
 それらの諸問題に入る前に、池田内閣の政治姿勢についてお尋ねいたします。
 池田総理は、一昨年、自民党総裁に就任されて以来、寛容と忍耐とをもって事に当たると公言されてきましたが、政治の姿勢が正しいかどうかの基準は、いかなる政策をいかに実行するかによってきめられねばならないことは言うまでもありません。池田内閣のこれまでの政治のやり方は、口では寛容と忍耐を宣伝しているのでありますが、その実、実際の政治の場においては、政防法を無理やり通そうとしたり、ガリオア・エロア、タイ特別円二協定を、岸前内閣と同じように、民主主義、議会政治のルールを一切無視して押し通したり、あるいは日韓関係正常化を韓国軍事政権との間に、これまた無理やりにでっち上げようとしているのでありまして、池田総理が口で言っておられることは、実際に行なっていることをカムフラージュする方便にすぎないと思われるのであります。
 また、総理は、最近、寛容と忍耐には限度がある、今後は民主主義の原理である多数決の原則の上に立って事を処したいと言われておるのでありますが、多数決は、その前提である国会がきれいな選挙によって選ばれた議員によって構成されていなければ意味がないのであります。(拍手)さきの通常国会におきましては、政府の提出した公職選挙法改正案に、野党が賛成して、与党がこれに修正を加えるという奇妙な現象が起きたのでありますが、そのよって来たる原因は、公明清潔な、民主主義にかなった選挙が、自民党にとってはこの上もなく不利になるからでありましょう。案の定、先般の参議院選挙におきましては、高級公務員の悪質違反を初め、多くの自民党公認候補者の違反が続出しておるのであります。(拍手)総理が、民主主義の原理である多数決の原則をもって事に当たられるというのであれば、総理は、自民党総裁として、まず、今回の参議院選挙における違反者を厳重に処置ざれるところから出発されるべきであります。ただ多数決で物事をきめていくことが民主主義でも何でもなく、少数党の意見も十分聞き、ともに話し合い、その主張の中に正しいものを見出すならば、これを十分取り入れるというのが真の民主主義であって、自分たちの主張は絶対に正しい、相手の言うことは間違いだ、しゃべるだけしゃべれ、最後はどのようなことをしても自分たちの主張を通すというのでは、これは民主主義の原則どころか、独裁政治につながるものであると私は断言するのであります。(拍手)現在、あなたのおきらいな共産圏諸国にも、選挙で選ばれた議会はあります。かつて東条内閣のもと、翼賛議会においては、多数決どころか満場一致で米英との戦争を支持したのであります。総理の今後の政治に対する姿勢である寛容と忍耐には限度があるということがいかなることであるのか、この国会を通じて国民に明らかにしていただきたいと思うのでございます。(拍手)
 次に、質問の第一点といたしまして、貿易の自由化に伴う諸問題についてお伺いいたします。
 日本経済は、敗戦のどん底から奇跡的な成長を遂げたのでありますが、その産業、企業の規模たるや、先進諸国に比べればいまだあまりに小さく、日本の企業は、多少の例外を除けば、すべて国際的には中小企業ばかりだといわれるほどで、わが国の産業界の実情は、輸出競争の点ではまことにお寒い状態であるといわれているのであります。しかるに、このような国際競争力の弱い日本経済は、本年十月から九〇%の貿易自由化により、きびしい国際的試練にさらされようとしているのであります。これに関連して、以下順を追ってお伺いいたします。
 第一に、九〇%の貿易自由化は、すでに知られているように、昨年のIMFの対日年次協議の際に、当時の水田大蔵大臣以下、通産、経済企画の三閣僚が、八条国移行による為替制限撤廃を一年延期するために、自由化に対して何の成算もないままにIMFに約束したものであるといわれております。また、現閣僚の有力者も是認しておられるのでありまするが、この自由化は、アメリカが、近年とみに悪化した国際収支と金流出を防ぎ、世界貿易上の優位性を確保するために日本に押しつけたものであるともいわれているのでありますが、この点、総理はいかにお考えになっておるのか、まず承りたいのであります。(拍手)
 第二に、政府の方針通りにいけば、自由化の時期は刻々と迫っておりますが、現在の日本経済の状態に目をおおうわけには参りません。ことに池田内閣の高度経済成長政策の行き過ぎの結果、国際収支は悪化し、また業種によっては金詰まりのために深刻な事態に追い込まれる産業が多くあるのであります。政府は、景気調整のため全力をあげておられるのでありますが、なおかかる現状において九〇%の自由化は重大なる問題でありますが、総理は何ら支障ないとお考えになっておりまするかどうかをお伺いいたしたいのでございます。
 貿易の自由化は、申すまでもなく、国際競争力の強い先進資本主義国にとっては有利でありますが、いわゆる中進国といわれるわが国にとっては、かえってマイナスの点が多いと思われ、むしろアメリカ資本の日本進出を促進し、わが国経済のアメリカ依存度を強めることになるとともに、大企業は外国資本と提携して被害を少なくすることができるとは申しますものの、これも相手と対等の力がなければ、押しまくられ、損をするのは日本側だけであることはもちろんであります。その他多くの中小企業が壊滅状態に追い込まれることは、すでに自由化されたものを品目別に見れば一目瞭然であります。また、自由化がわが国の貿易を積極的に拡大させる要因は何ら見当たりません。ガット三十五条の援用や、関税による輸入制限措置が、わが国の自由化によって解除される保障はなく、逆に労働条件の切り下げ、低賃金政策の強化が、一そう対日商品のボイコットを強めるであろうと予測することは困難ではないのであります。
 われわれ日本社会党は、貿易自由化の前提として、本年をもって一応期限の切れる現在の日米通商航海条約を改正して、外資の無制限導入を押えて、国内産業を保護し、同時に、最低賃金制を確立して、わが国の低賃金を解消することが必要であると考えるのであります。また、産業別対策を確立するとともに、特に国際的に劣位にある産業や新産業について、単なる関税対策ではなく、具体的な自由化対策を確立すべきであり、それらの対策が確立されるまでは、自由化を延期すべきであると考えるのでありまするが、総理の考えをお聞かせ願いたいと思うのであります。(拍手)また、もしこれらの対策や処置を何ら講ずることなく、何が何でも十月から自由化を断行されるというのであれば、国内産業は大打撃を受けること必定でありますが、その打撃を食いとめる自信があるのかどうか、その具体策を伺いたいのであります。伝えられるところによりますと、通産省、大蔵省、外務省の間に食い違いがあるということでありまするが、これはいまだ政府に一貫した自信がないことを示す証左であると思うのでありまするが、その点をあわせてお伺いいたしたいのであります。(拍手)
 第三に、自由化問題と関連して伺わねばならないことは、対共産圏貿易、特に日中貿易についてでございます。
 近年、世界経済のブロック化の傾向は著しく、とりわけEECの発展には目ざましいものがあり、かつて太陽の没することのないといわれたイギリスも、やがてEECに加入しなければならないところまで追い込まれ、イギリスの率いる自由貿易連合諸国もEECに加入ないしは連合することになりましょう。アメリカでさえ積極的な対抗策を講じなければならない羽目となり、漸次、EECとの貿易関係を強化するであろうことは、去る七月四日ケネディ大統領が述べた相互依存に基づく大西洋協力体制宣言によっても明らかであります。また、ソ連は、EECに対して批判はしているものの、その隆々たる発展を前にして、共産圏経済体制を守るため、六月上旬コメコン総会を開いて体制の整備のための努力を行なっているのであります。
 世界経済の趨勢がこのようなときに、日本の現状はどうでありましょうか。政府は、寄らば大樹の陰とばかりに、外交においても、貿易においても、すべてアメリカに従属することにのみきゅうきゅうとし、あげくの果ては、昨年度における十億ドルの対米貿易の赤字解消を昨年の日米経済閣僚合同委員会において要求したところ、アメリカ側から、ほかの国との貿易で埋め合わせればよいと軽くいなされ、また、綿製品に対する賦課金などバイ・アメリカン政策の前に日本製品はきびしい制限措置を受けているのであります。かかる対米依存の大樹の陰政策は、国家百年の方向を誤らしめるものであり、一日も早く放擲して、目を世界に転じ、わが国独自の方針を打ち出すべきであると思うのでありまするが、総理の所見をお伺いしたいのであります。
 また、今にして共産圏諸国との貿易に積極的に取り組み、東南アジア、AA諸国との連携を深めて、経済的基盤をつくらなければ、発展する経済ブロックの潮流からひとり日本は取り残され、やがて世界の孤児となることは明らかであります。また、今や国内では池田内閣の高度経済成長政策の結果、過剰生産の傾向が強まり、国外ではアメリカのバイ・アメリカン政策による輸入制限、EECの経済統合、東南アジアの軽工業自立化などの傾向が強まっておるおりから、市場確保を共産圏に求めることは避くべからざる急務であります。
 かかる情勢の中にあって、おそまきながらそれに気づかれたか、また、国民的要望を押えがたく思われたのか、今日まで貿易の相手を政治的な色彩でえり好みをして、ほとんど動きらしいものさえ見えなかった池田内閣が、最近新組合方式によって日中貿易を促進する構想を発表されましたが、しかし、中国との貿易を本格的に進めるためには、申しわけ的な処置ではなく、政府間の協定を結ばなければならないということは当然であります。ことに、現在、対共産圏貿易については、MSA協定第八条、ココム等によって制限が加えられておるのであって、政府が本気で海外市場を拡大せんとするのであれば、これらの規制を国の主権の発動として廃棄すべきであります。これこそ真の貿易自由化の第一歩であります。そして一切の貿易制限を勇断をもって一掃し、何ものにも圧迫、干渉されない互恵対等の立場で貿易をやるべきでありまするが、この際、総理は、日中政府間貿易協定を積極的に結ぶ意思があるかどうか。また、ココム等の貿易制限を廃棄される意思があるかどうか。これなくしては断じて完全なる貿易体制はできないと思いますが、これがためには国際的にはアメリカを初め、台湾その他あらゆる干渉、圧迫があると思いますが、敢然としてこれを打ち払う勇気がおありになられるかどうか、具体的にはっきりお示しを願いたいのであります。(拍手)
 次に、私は日本の非核武装宣言について総理のお考えを承りたいと思います。
 今日、米ソ両国は、あくことなき核実験競争を繰り返しております。本年に入りましてからも、アメリカは、すでに四月二十六日、大気圏内核実験を再開し、また、ソ連は、アメリカの一連の核実験に対抗すると称して、時あたかも広島の原爆記念日の前日である去る五日、ついに核実験を再開したのであります。ともに許すべからざる非人道的行為であるといわなければなりません。(拍手)しかし、ともに相手国の実験の非を鳴らすことによってみずからの実験の弁解とし、ともに新兵器、新戦略を自国及び世界に誇示してみずからの優位を確保することをもってその目的としておるのであります。まさに核実験、核軍拡競争の悪循環というべきであります。
 われわれ日本国民は、世界唯一の原爆被爆国民として、かかる核実験、核軍核の競争は、アメリカにとってもソ連にとっても、平和と安全の解答にはならないことを身をもって知っております。また、最近に至っては、原水爆の禁止こそが、真の世界平和と人類の安全につながる道であることが世界の世論となって盛り上がり、イギリス、アメリカを初め、西欧諸国においても核兵器反対の運動が盛り上がっておる事実を見のがすわけには参りません。にもかかわらず、米ソ両国を初めとする核実験、核軍拡競争が繰り返されるのは、相手がやめれば自分がやめるといって、まず自分がやめるということをしないからであります。われわれ社会党は、米ソを初めとして、いかなる国の核実験にも反対であります。社会党は、その立場に立って核実験並びに核軍拡競争の悪循環を断ち切るためには、日本がまず非核武装宣言を行なって、世界の核武装禁止、全面軍縮運動の先頭に立つべきであると主張いたしておるのであります。(拍手)
 ところが、政府が核実験禁止、原水爆禁止のために積極的に努力をしないことはまことに遺憾であります。毎回の米ソ両国の実験に対しましても、これまで型通りの抗議を繰り返すのみで、何ら必要な努力が続けられておらないのであります。この問題こそは、よく海外にお出かけになりまする池田総理が、みずからアメリカなりソ連なりにおもむいて、ケネディ、フルシチョフと会見し、国民の悲願を伝えて実験を停止させる努力を行なうべきであると考えるのでありますが、総理にはそのお考えがあるかどうかをまずお伺いしたいのであります。(拍手)
 広島、長崎の悲惨な経験を持つ日本国民が、その憤りを人類平和の祈願に変え、世界平和実現のために努力せんと決意してからすでに十数年を数えます。われわれ日本社会党は、米ソ両国の核実験競争に一刻でも早く終止符を打たせるために、まず、わが国が、国会において非核武装宣言を行ない、中国を含めてアジア太平洋地域に非核武装地帯を設定すべきであると考えるものであります。わが党は、これこそが世界から原水爆を一掃せんとするわが国民の悲願を実現するための第一段階であると信じ、本年の一月に派遣したわが党訪中使節団もこの点を強く中国側に主張し、日中両国を含むアジア太平洋地域の非核武装を共同声明の中に明言しておるのであります。
 しかるに、政府は、核実験反対の抗議と同じように、非核武装宣言についても全く消極的であります。さきの通常国会において、わが党の河上委員長が、外務委員会で、非核武装宣言を総理にただしたのに対して、総理は、宣言をするのはやぶさかではないと答弁されております。そこで、非核武装宣言を次の国会で議決することを参議院選挙の自社両党の公約にすることをわが党から提案したのでありまするが、どうしたことか、これは拒否されたのであります。こうなりますと、総理大臣の国会における答弁は全く信用が置けないことになるのであります。
 さらに、われわれは、その後のいきさつからも一そう疑いを深めざるを得ないのであります。すなわち、あなたは、参議院選挙中、わが党の非核武装宣言要求に対し、このような要求をするよりも、社会党は中国に対して核武装しないように要求すべきだと主張されておりますが、これは本年三月八日、参議院外務委員会において、わが党の矢嶋三義君が総理に質問いたしました際、中国が核武装すればアメリカは日本に核武装を勧めてくるが、その際これを拒否するのかと質問いたしましたのに対し、総理は、拒否するのは当然であると言明された。たとい中国が核武装しても日本はしないとはっきり言っておられる事実からして、わが党を攻撃せんがための宣伝であるとしか考えられないのであります。
 また、内閣改造後の記者会見では、若干ニュアンスを変えて、私は核兵器は持ちません、池田政権の続く限り核兵器保有は考えておりませんと答えておられるのでありまするが、こうなると、自民党の党内事情からして、池田内閣の命脈がいつまで持つものか持たないものかといわれている今日、国民の不安は深まる一方であります。
 ことに最近、保守陣営の一部に核武装をしようという動きが現実に出ている事実を見のがすわけには参りません。去る五月二十八日、日本財界の有力者である三井物産社長水上達三氏は、記者会見において、原子力発電のコストを安くするためには、副産物のプルトニウムで爆弾でも何でもつくればよいと発言しておりますし、特に重要なことは、吉田元首相が七月十二日、日米協会において、核兵器を持つくらいの気持を持たねばならないと演説されていることであります。また、現閣僚の中にあっても、志賀防衛庁長官は、東京新聞の新閣僚座談会において、吉田さんの発言について賛成する国民があるということはいなめないと言っておられるのであります。元首相や現閣僚のかかる発言は、総理の日ごろの言葉と全く相反するのでありますが、これらの発言に対して、総理はいかにお考えになるか、承りたいのであります。(拍手)同時に、防衛庁長官は、吉田発言に対して賛成する国民があることはいなめないと言っておられるが、いかなる根拠によってさようなことを申されたのでございますか。また、長官自身は賛成する国民の中に入っておられるのか入っておられないのか、との際はっきりとお答えを願いたいと思うのであります。(拍手)
 このような保守陣営における一連の動きは、核武装に対する国民の不安をますますかき立てるばかりであります。国民の不安を一掃し、国内のかかる危険な動きを払拭するためにも、総理は、さきの外務委員会における非核武装宣言をするにやぶさかでないという所見を今なおお持ちであるかどうか。もしお持ちであれば、その決意を世界に表明するために、この議場を通じて、日本が核武装しないことを――吉田個人ではない、池田個人ではない、日本が核武装しないことをここにあらためて宣言していただきたいのであります。あわせて、非核武装宣言に対する総理の偽らざる所見を、国民が納得するように具体的に御説明願いたいと思うのであります。(拍手)
 最後に、沖繩問題についてお伺いいたしたいと思います。
 まず、沖繩の核武装についてお尋ねいたします。前国会にわが党の河上委員長が外務委員会において質問いたしました際、総理は、沖繩が核武装されていることを確認され、これに対してさらに河上委員長が、当然沖繩の核武装についてアメリカに抗議すべきであると主張したのに対しまして、総理は、アメリカの持っている施政権の範囲内でやることであるから抗議することはできないと、これを拒否されておるのであります。かかる沖繩核武装の事実と総理の御答弁は国民に多大の不安を与えております。すなわち、日本の領土の一部である沖繩からソ連または中国に対して核攻撃が加えられるならば、これに対して核兵器の報復攻撃が日本本土にも加えられることが当然予想されるからであります。国民の生命財産を守る義務のある政府は、沖繩の核武装即時撤廃をアメリカに対して要求すべきであると考えるものでありまして、また、政府がその決意をされれば、わが日本社会党は喜んでこれを支持することをお約束いたすものでございます。総理の御決意のほどをお伺いいたしたい。(拍手)
 次に、沖繩の施政権についてであります。政府は、過去二度にわたって沖繩調査団を派遣しておられるのでありますが、この調査団も自治権の拡大については、何ら話し合うことなく、単にアメリカの経済開発計画を現地で聞いただけに終わり、沖繩の住民初め全国民の失望を買っておる今日、沖繩返還についての総理の決意と、今日までいかなる御努力が政府によってなされたか、また、今後いかなる方法で復帰を実現するかを明らかにされるよう望むものであります。
 現在、沖繩は、私が申し上げるまでもなく、多くのゆがみの中にあえいでおります。貧富の格差は極端に開き、加えて極端な物価高であります。また、沖繩には医療保障制度もなく、貧乏人は病気になれば婦女子を接客婦に身を落とさせ、その治療費を借金してこしらえておるということであります。とのようなゆがんだ沖繩の現状に対して、その施政権を行使しておるアメリカは何ら積極的に血の通った指導をしておりません。なぜなら、アメリカにとって沖繩で必要なのは、アメリカの戦略にとって重要な極東最大の基地だけであって、日本の住民の生活は二の次であるからであります。ことに、全沖繩の住民の怒りを買っておるのは裁判であります。米人の日本人に対する犯罪については日本側に裁判権はなく、すべて米軍事裁判所でさばかれ、多くは泣き寝入りになっておるのであります。また、米軍基地に働く日本人労務者は、日本人でありながらすべてアメリカ政府へ忠誠の宣誓をしなければならないのであります。
 かかる苛酷非情な施政は、沖繩におる住民ばかりではなく、日本本土におる沖繩県民に対しても容赦なく及んでおるのであります。たとえば、今、内地に住んでおる沖繩人が「チチキトクスグ カエレ」という電報を受け取ったと仮定します。すぐさま親の死に目に会うために沖繩に飛んで帰れますか、すぐは帰れません。沖繩渡航の申請を行ない、沖繩のアメリカ軍政府の許可を受けなければならないのであります。渡航許可がおりるのは、早くて二週間、普通三、四週間かかるといわれ、しかも、渡航者の思想を許可の基準としておるところから、外国に旅行する場合よりもかえって制約がきびしく、自分の父親の臨終の間にさえ合うことがとうていできないのであります。同じ日本の領土でありながら、かかる屈服と不幸を沖繩県民に強要しているアメリカの政策、これこそわれわれがアメリカの帝国主義政策のしからしめるものであると断定しておるのであります。(拍手)このアメリカの政策と戦い、これを除去しなければ、沖繩県民を幸福にすることはできないのであります。
 池田総理、もしあなたの郷里広島が、原爆を落とされたときを契機として占領され、沖繩のような状態に置かれておるとしたら、あなたは賛成できますか、反対なさるでしょう。帝国主義政策という言葉がおきらいなら、どのような言葉で表現されてもけっこうであります。アメリカが沖繩にとっておる現在の政策は、総理は反対なのか賛成なのか。私は言葉のあやや感情で決定することなく、はっきりと態度を表明していただきたいと思うものでございます。(拍手)
 また、本年二月一日、琉球立法院は国連の植民地廃止宣言を引用して、祖国復帰を要求する決議を満場一致で通しましたが、本院におきましても、さきの通常国会において沖繩の施政権回復についての決議を行ない、しかも過去すでに三回沖繩施政権回復の決議をやっておるのでありますが、政府は、その決議によって、いかなる処置をとられたか、お答えを願いたいのであります。
 私は、本院で施政権回復の決議をやり、単にそのことをアメリカに伝える程度のことでは、カクテル・パーティの際に片手にウイスキーのびんを持って、こういうことが決議されましたというようなことでは、断じてアメリカの施政権というものは日本に返されるものではありません。たとえば去る六月十四日のアメリカ上院軍事委員会におけるプライス法修正案についての聴聞会におきましても、サーモンドという上院議員は、平和条約の中に潜在主権という言葉を用いる根拠は何もない、琉球は、千島列島がソ連のものとなったと同じく、アメリカのものになっておるのであると言っているように、沖繩に対してかかる認識がアメリカ上院で堂々と通用するところを見ましても、単なる外交交渉で施政権が返還されるとは考えられないのであります。
 従って、政府に施政権返還の熱意があるのであれば、当然沖繩施政権返還に関する日米合同委員会を要求して、これを設置し、その委員会において合理的に返還を実現することのできるよう努力さるべきであると思うのでありまするが、総理にその意思があるかどうか、承りたいのであります。
 なお、アメリカが沖繩の施政権を行使しているのは、平和条約第三条に基づいているでありますが、アメリカはこの条文によって沖繩の信託統治を提案したこともなく、また、国連に加盟した日本の領土沖繩を信託統治にすることはできないのであります。従って、アメリカが沖繩を統治しておるのは、平和条約と国連憲章の違反であります。政府は、これをアメリカに主張し、当然国連に提訴すべきであると考えるのでありまするが、総理の所見を承りたいのでございます。(拍手)
 以上、数点にわたってお伺いいたしましたが、それぞれの質問に対しまして、総理が具体的にはっきりとお答えになることを重ねてお願い申し上げまして、私の質問を終わるものでございます。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 御質問の第一点は、政治に対する姿勢の問題でございます。私は、民主主義議会制度のもとにおきましては、少数者の意見も十分聞き、衆議を尽くして、その上で多数決で決定すべきものと考えます。私は、国政運用の任に当たっておるものでございまするから、少数者の意見を聞き、衆議を尽くしますが、結論を出さなければならぬ責任を私は持っておるのであります。それは民主主義のいいところでございます。これを進めていきたいと考えております。(拍手)
 また、貿易の自由化の問題でるる御質問がございましたが、貿易の自由化は世界の大勢でございます。しこうして、日本の経済をこの上とも拡大し、世界の繁栄に貢献するためには、わが国は貿易の自由化をしなければならぬと私は三年前に決意をいたした問題でございます。着々これが実行を続けておるのでございます。決してこれはアメリカから押しつけられたというふうなものではございません。三、四年前にイタリアもやっておるのであります。アメリカはドル防衛ということをやっておりまするが、国際貿易におきまして、貿易上は毎年三十億ないし五十億ドルの黒字でございます。ただ、ドル不足というのは、海外の援助とか、海外に出した軍人、その他の軍事費とか、あるいは民間の海外投資が、五、六十億、あるいは六、七十億に達するから、ドル不足でございます。貿易上は三十億、五十億の黒字でございます。日本にこれを押しつけようなんて考えることは、よほどこれは考え違いと思っておるのであります。
 しからば、今年十月一日から九〇%の自由化が可能であるかいなかという問題でございます。私は可能であると考えまして、いろいろこれによって起こる支障をなくするよう努力いたしております。ここ一、二カ月の間に何%できる――約束いたしました九〇%までやることが、国際信用を確保する上においても必要であると私は考えまするが、しかし、決して無理はできません。ことに、中小企業等につきましては、設備の近代化、経営の合理化等を進めまして、この自由化によりまするしわが中小企業にひどく当たらないように、自由化する品目等につきましても十分検討を続けていきたいと考えておるのであります。(拍手)
 なお、貿易の自由化と外資導入の問題につきましての御質問がございましたが、外資の問題と貿易の自由化は直接には関係がございません。別個の問題として今考えておるのであります。
 そうして、自由化につきまして各省において考え方が違っていないかというお話でございまするが、そういうことは全然ございません。ただ、通商航海条約を結ぶ上におきまして、向こうの制限品目につきまして、われわれの要求をどういう根拠から向こうに申し出たらいいかという相談の上での意見の調整は必要でございます。しかし、ただいまは各省の間に意見の食い違いは全然ございません。
 次に、中共貿易につきましてのお話でございまするが、私は、しばしば申し上げておりますごとく、どの国とも貿易を増進することに熱心にやっておるのであります。中共貿易に対しましても、輸出入組合の強化の問題、これは一、二年前から私は国会においても言っておるのであります。これを早く強化いたしまして、せっかく今伸びつつありまする中共貿易を、ソ連と日本の貿易のごとく伸ばしていきたいと考えておるのであります。(「政府間協定はどうした」と呼ぶ者あり)従いまして、この方法として、政府間協定ということを言っておられまするが、御承知の通り、日華条約もあります。国際連合におきまして、ただいま中共に対しまする態度につきまして、重要問題として審議中でございます。政府間協定というものは、えてして実質的には政府承認とつながるように考えられまする危険がございますので、政府間協定でなしに、民間の間で十分に伸ばしていきたいと考えておるのであります。(拍手)
 なお、ココム、チンコムの協定は、これは国際協定でございまして、私は、これを今一方的に破棄することは、日本のため、自由圏諸国のためによくないと考えております。しかし、ココム、チンコムの協定は、毎年々々これが緩和されておる実情であるのであります。
 なお、非核武装宣言の問題につきまして誤解があるようでございますが、さきの国会におきまして、衆議院外務委員会において私が河上委員長にお答えしたことは、一つの文句だけをおとりにならずに、答弁の全体をお考え願いたいと思います。河上さんの御質問に対して、非核武装宣言をしたらどうかというあれでございますから、私は、非核武装宣言をする腹はなかったのであります。しこうして、こう答えました。非核武装宣言をするにやぶさかではないが、それよりも、われわれは、自分で核武装をしないということを宣言し他国が核武装をしない、核実験をしないように積極的に努力する方法をとると、私はこう答えております。だから、これをお読み下さいましたならば、われわれが今まで言っておるところと何ら変わりはございません。(拍手)なお、私は、非核武装の宣言は、いわゆる有効な核実験停止協定が国連において行なわれることについて、積極的に努力いたします。日本が非核武装を宣言しても、持たないといっておる私が宣言しても、私はそれによって非常な効果が現われると考えるのは少しどうかという気がいたします。それよりも、持てる国が実験をやめるように積極的に努力する方が効果的と私は考えておるのであります。(拍手)
 もちろん私は、さきに申し上げましたごとく、核武装はいたしません。これははっきり申し上げておきます。なお、吉田さんその他のお言葉を引かれていろいろ言っておりますが、私は常に言っておるごとく、日本は核武装はしません。そうして、その考えを積極的に大国に勧めていきたいというのが私の本心であるのであります。なお、沖繩の問題につきましての御質問でございますが、われわれは、施政権返還につきまして従来強く要求をいたしておるのであります。私は、この要求が早く実現することを心から期待いたしまして、今後もその方針で進んでいきたいと考えております。
 なお、アメリカは今沖繩を信託統治しておるのではございません。平和条約第三条によりまして施政権を行使しておるのであります。これが国連憲章に違反しておると私は考えておりません。
 なお、アメリカの対外政策に反対か反対でないか、私はアメリカの対外政策を批判することをよします。ただ、いつまでも沖繩を占領しておられることは、われわれは反対でございますので、返還を強く今後と毛要求するつもりでございます。(拍手)従いまして、返還委員会をアメリカと一緒につくろうといっても、つくるよりも前に、早く返してもらうことを要求するのが本筋だと考えております。(拍手)
  〔国務大臣志賀健次郎君登壇〕
○国務大臣(志賀健次郎君) ただいま御指摘になりましたいわゆる吉田発言は、新聞記事その他で読みまして、おそらく将来に対する吉田さんの心がまえを述べられたものと私は考えるのでありますが、それにいたしましても、時節柄、また民主主義の今日でございまするから、吉田発言に対して相当な賛否の両論が行なわれるであろうということを私が座談会で申し上げたのが私の真意でございます。私は防衛庁長官として、一切の核装備に反対でございます。(拍手)
○議長(清瀬一郎君) 片島港君。
  〔片島港君登壇〕
○片島港君 私は、日本社会党を代表して、池田総理の所信表明演説と、これに関連する若干の身近な問題について、総理及び関係閣僚に質問いたします。
 まず第一にお尋ねをいたしたいのは、今次の池田内閣の組閣の構想と改造内閣の性格についてであります。
 申すまでもなく、主権在民の憲政下においては、時の内閣は、一政党のための内閣でもなく、また、首相のための内閣でもなく、まさに国民の意思を代表する国民のための内閣でなければなりません。
  〔議長退席、副議長着席〕
ところが、今次の改造の内幕を漏れ聞きますと、次期の主導権を目ざす複雑怪奇なかけ引きも秘められていて、醜悪なる派閥抗争は目をおおうものがあり、一言にして申せば、派閥鎮静のための無定見、無方針の組閣であったとは、偽らざる一般国民の声であります。(拍手)
 池田総理は、今次の組閣にあたり、数多い適格者の中から真に実力ある適材をえりにえりすぐって適所に配置したとの確信があるのかどうか。世評はともかくとして、今次改造内閣は、真に国民の信をつなぐに足るものとの確信があるのかどうかという点であります。また、改造内閣は、留任二、大臣経験者三人のほかは、新人十一人という思い切った大幅の改造であり、そのポストについても、たとえば科学技術庁長官兼原子力委員長の人事に見られるごとく、歴代長官と考えあわせる場合に、政府の政策の中に占める科学技術振興に関する政策のウエートというか、色合いと申しますか、相当変わってきたのではないかと推理せられるものもある。(拍手)昨日の演説で、責任の一そう重大なることを痛感して、ここに内閣改造を断行し云々と言っておられますが、そこで今次の改造内閣は、池田前内閣とその性格が変わったのかどうか、変わったとすればどう変わったのか。それとも、各派閥からの入閣者が前内閣とほぼ同数の割り振りになっているので、内閣の性格や政策には何ら変わったことはないと考えられるのか。わかりやすく言うならば、派閥の均衡さえとれておれば、人の問題やポストの問題は、内閣の性格や政策に影響はないのかどうか、総理のお考えをお伺いいたしたいと思います。(拍手)
 第二にお尋ねいたしたいことは、今回の参議院選挙における高級公務員の不法、不当の選挙運動と官僚政治の台頭についてであります。
 先月二十八日の警察庁発表によれば、公明選挙連盟が十億円の大金を費やして公明選挙を推進したにもかかわらず、買収、供応を中心といたしまして、検挙総数九千四百十四件、人員一万五千六百三十七人、うち、逮捕された者二千七十七人というのでありますが、前回の同期に比べて件数、人員ともに倍増――倍増内閣の面目を施しております。(拍手)
 ところで、今回の選挙で特筆すべき問題は、全国区における高級公務員の地位利用による違反であります。特に、在職中において自己の行政的権限を利用した事前運動のごときは、最も悪質なるものといわなければなりません。内心ひそかに次の選挙に立候補の意思を有する高級公務員は、国民の血税による官費をもって地方に出張し、地方における歓迎攻めの中でそれとなく事前運動を行なうのであります。当然支出すべき補助金の多寡をもって関係団体や地方民をたぶらかし、出張先における有力者の口をかりて票の割当まで強要した例があります。ある官庁の歴代長官は、はっきり言ってしまえば林野庁長官は、昭和二十六年の参議院選挙以来、三浦、横川、柴田、石谷、山崎と切れ目なしに立候補いたしております。国会における法案審議、委員会における質疑応答が、ときとしては関係官僚の選挙の事前運動に協力した結果となることさえあります。国会を通過した予算が一たび官僚の手に移ると、国民の血税たる国家予算をわがもの顔に操作し、国会議員が地元代表を引き連れて局課長席に陳情するというようなことが、官僚独善の芽を伸ばし、官僚政治の根を強化して、行政が立法に優先するの観さえ呈しておるのであります。かくして、高級官僚の政界進出はきわめて容易となり、主権在民の民主政治は、その本質において昔の官僚政治の域を脱しておりません。このまま放置すれば、今なお根強く残っている官尊民卑の風潮とともに、わが国の民主政治は官僚政治によって頭を押え続けられるおそれがあります。公職選挙制度調査会が高級公務員の立候補について一定の制限条項を答申したのはきわめて当然のことでありますが、政府・自民党は、これを骨抜きにした改正案を前国会で強行通過せしめております。
 私は、この際、国会の権威のためにも、また、民主政治の進展のためにも、第一には官僚の独善と官僚政治の台頭を規制するための有効な措置を講ずべきではないか。第二には、高級公務員の立候補について、調査会答申の線に沿って一定の制限を行なうよう法の改正を行なう必要があると思うが、総理並びに自治大臣の御所見を伺いたいと思います。(拍手)
 次は、今日まで池田さんにおまかせをしておりますところの経済の問題でありますが、まず第一に、政府は、今日の不況に対していかなる根本的な対策を講じようとしておられるかお伺いいたします。
 成長政策の挫折からきた今日の不況は、その規模において、また、底の深さにおいて、いよいよ重大なる段階に突入いたしております。石炭、鉄鋼、非鉄金属、紙パルプ、繊維など、過剰設備にあえぐ産業界は、政府の減産指示、勧告操短のほか、自主的に操短、人員整理等の対策を講じておりますが、自由化の接近とともに一段と不況は激化することが予想されます。これら産業界の不況は、さらに関係下請中小企業へのしわ寄せとなり、受注減、単価引き下げ、手形サイトの長期化により、短期運転資金、減産並びに在庫調整資金の金繰りは窮迫を続けております。一方、今年度新規卒業者で、この春採用に決定していながら、企業不況のためお預けを食っている者は数知れず、八幡製鉄でさえ高校卒二千余人を数えております。
 今日の不況によって、その及ぼす影響はまことに広範でありますが、さきに述べた石炭、鉄鋼、非鉄金属、紙パルプ、繊維の各企業に対し、特に貿易の自由化を目前にして、政府はいかなる対策を講ぜられているか、また、講じられようとしておるのか、総理並びに関係閣僚の的確なる御答弁を求めます。(拍手)
 第二に、経済の好況と不況とにかかわらず、年一年と取り残されつつある農村対策についてお尋ねいたします。古くて新しい問題であります。
 政府は、昨年の通常国会において、俗にヤマブキと異名をとった農業基本法を制定いたしましたが、その第一の柱は、中小零細農を切り捨てて自立経営農家を育成することであり、その第二は、米麦中心の農業を、畜産、果樹等の成長部門へ切りかえるための、いわゆる選択的拡大であります。自立農家の育成とは一種の魔術でありまして、農地の流動化を円滑にし、農地の保有制限を緩和することによって、旧地主制度を復活するにすぎないのでありますが、法律施行後日なお浅い今日においては、一応批判は省略いたします。
 ところで、第二の柱の選択的拡大でありますが、政府のいう成長部門についても、長期にわたる年次別の恒続的な需要の見通しも示されず、長期の展望に立った生産計画も指導されないまま、農民は、個々ばらばらに、いわゆる成長部門として喧伝せられる農畜産物について手探り増産を始めております。しかしながら、成長部門といえども、無制限に成長するものではありません。無軌道な生産増大を続けるならば、成長部門がいつ危険部門となるかわかりません。それが証拠には、昭和三十四年をピークとした豚肉の値段は、一般の好況をしり目に、昨年秋より今年の初めにかけて底値をつき、生産農家は塗炭の苦境に立たされました。このような周期的な価格変動は今後も繰り返されるでありましょう。目先のきかない農民は、波のまにまに、波の谷から谷、損から損の生産を続けるでありましょう。その間、飼料は一度も安くならない。政府の畜産奨励の音頭は、えさ会社をもうけさせるためのかけ声ではないかとさえつぶやく農民がおります。その他の成長部門、また例外ではありません。農民は、選択的拡大という聞きなれない陰語にほんろうされながら奔命に疲れ、手探り生産を続けなければなりません。やみ夜に鉄砲を撃たせて、当たらぬのはお前のねらいが悪いからだといっても、標的を示さぬ政府にこそ、その責任があるといわざるを得ません。(拍手)こうしたこんとんたる中にも、自由化、EECとの連携等、国際的圧迫まで受けようとしているのであります。このような情勢であればこそ、農民は食管法によって保障された米麦中心から脱却することはできません。
 政府は、との際、ヤマブキの法律やかけ声だけでなく、農業の経営形体、長期の展望に立った需給計画、肥料飼料対策、並びに農畜産物の流通機構の整備、価格政策について、わが社会党が議員立法としてたびたび国会に提案いたしておるごとく、根本的な施策をこの際講ずる必要があると思いますが、総理並びに新農相の御所見を伺いたいと存じます。
 続けてお尋ねしたいのは、消費者米価についてであります。
 御承知のように、消費者米価は生産者米価によって左右せられる筋合いのものではありません。ところが、政府は、生産者米価の上昇があたかも消費者米価に直結するがごとき言動をほのめかし、生産者米価決定の際に、消費者米価の値上げを暗黙のうちに既成事実化せんとするがごときは断じて許すことはできません。消費者米価の家計に及ぼす影響は、消費者たる国民の所得の高低、生活水準の態様によって千差万別であります。限られた高額所得者にとってはそうまで影響を及ぼさない場合でも、一般大衆、特に低所得層以下の者にとっては、他の諸物価の値上がりに比ぶべくもなく、文字通り死活の問題であります。池田総理は、改造後初の記者会見で、消費者米価の値上げを考えているかとの記者質問に対して、考えている、しかし、考えるということは値上げをすることではない、こう答えておられますが、一体どういう意味でございましょう。農業構造改善事業を推し進めて、農業における米のウエートを減らす、そんな将来のことは答弁にはなりません。構造改善事業がうまくいくかどうか、今のところ海のものとも山のものともわかりません。現に、米は豊富に生産されておるのであります。三十八米穀年度において消費者米価を上げるのか据え置くのか。すでに本年度生産者米価が決定したのに、補正予算も準備されておらぬようであります。しかも、農林省においてはすでに消費者米価の値上げ準備作業を進めておる。奥歯にものをはさまれないで、この際、上げるか上げないか、総理からも的確に御答弁をお願いいたしたい。(拍手)
 物価問題でありますから、立て続けにお尋ねをいたしますが、私鉄運賃はどうなさるおつもりでございますか。新聞などで見ますと、綾部運輸相は、十月か十一月ごろ、ちょうど国会が休んでおるすきをねらって値上げせられるようなにおいが非常に濃いのであります。この機会に、はっきりと、上げるのか上げないのか、御答弁をお願いしたいと思う。
 また、内閣改造がもめておる先月の十七日、仙台市では東北電力の値上げ申請について聴聞会が開かれております。聴聞会をやって値上げをしなかった前例がないようでありますが、福田通産大臣、どうですか、はっきり言って下さい。電力料金の値上げを認めるのか認めないのか。
 消費者米価でも私鉄運賃でも電力料金でも、値上げをするのかしないのか、答弁は一つしかないはずであります。あいまいなことを言っておるのなら、値上げをする証拠であります。今でさえ物価高にあえいでおるのに、米価や運賃や電力料金が引き上げられますと、値上げムードに一段と拍車をかけて参ります。池田さんは、所得が上がれば物価が上がるのはあたりまえだとか、物価の上昇率よりも所得の上昇が上回っておるとか、あげくの果ては、物価が上がるのは国民の側にも責任があるというようなことを口にされたようでありますが、私が聞こうとしておるのは、そんなことではなくて、物価が上がっても所得がそれに追いつかない人々、物価が上がっても所得が少しも上がっておらない人々、いろいろの事情で所得が下がっておる人々、所得のない人々、収入のない老人、母子、社会施設の人々、そういう大衆の生活も考えてもらわなければならぬということであります。(拍手)
 物価に関連して、大衆の生活の当面の問題は住宅の問題であります。
 政府の推定によっても、住宅不足は三百万戸と言っていますが、これは表向きの数字にすぎません。しかも、毎年九十万組ほどの若いカップルが生まれて、家がないから結婚できないという予備軍がさらに数十万組行列しております。住宅不足は表向きの数字だけで推計することはできません。たとえば、月給の高い人が安い家賃の公団住宅や官舎や社宅に入る。そのあとへ月給の安い者が高い家賃を払って移る。月給が公団住宅の入居資格に達しない人や、低家賃の公営住宅にくじ漏れをたびたびする人は、最近はやりの最小スペース、最小コスト、そして最高の家賃の零細な民間アパートに間借りをする。都市労働者の住宅問題は、世界人権宣言やILO総会でも重要問題として採択されております。
 今日の住宅難は、池田内閣の高度成長政策によって拍車をかけられています。住宅政策のないままに、農村人口は、毎年おびただしい勢いで都市へ吐き出されて参ります。自力で家を建てようにも、まず地価の暴騰がこれをはばんでおる。高度成長政策は、工場敷地のぶんどり合戦を招き、そこへ公団、不動産会社、周旋屋などが力ずくで割り込んできます。個人の住宅貯金は、地価や建築費の暴騰の前には、ものの役に立ちません。政府は、今後十年間で一千万戸の住宅をつくると言っておりますが、民間依存のほか、きめ手を持たぬ無策の政府の宣伝に国民は耳を傾けておりません。今や住宅問題は重大な社会問題であり、社会的解決、公的援助中心の住宅社会化の政策に踏み切る以外にありません。社会問題であります。河野建設大臣、あなたは総理から厚生大臣にも適任だと見込まれたそうでありますが、この際、庶民の住宅難対策について具体的な御構想があれば、御構想を承りたいと存じます。(拍手)
 この機会に、大橋労働大臣にお尋ねしておきますが、政府は、かねてから一般失対事業の打ち切りのための研究を進めておるようであります。昭和二十四年失対事業が始まった当初は二万人にすぎなかったものが、年々ふえて、今日では三十五万人になっております。政府の成長政策が推進され、好況が続いても、失対労務者は減りません。このことは、政府の政策そのものに盲点があり、自民党政府の続く限り、悪政のはね返りであります。みずからの労働政策を反省することなくして、失対事業のみを打ち切ることは、みずからの失政を糊塗し、責めを失業者に転嫁せんとするものであります。
 伝えられる政府の構想によりますと、一般失対を全面的に廃止し、現在の失対労務者のうち、労働能率の高い若壮年は民間への雇用転換を促進し、老・婦人、病弱者は社会保障、生活保護によって救済するとのことでありますが、民間雇用への転換促進はいつでもかけ声だけに終わり、結論的には不安定な一部公共事業と生活保護に大別され、今日以上の不安定と貧困を招くことは火を見るよりも明らかであります。政府は、今日の時点において、あくまで強引に失対の打ち切りを強行するのか、強行するとすれば全国的な混乱は免れないものと思いますが、大橋労働大臣の失対問題に対する根本的な考えを明らかにしていただきたいと思います。(拍手)
 人事院は、昨日公務員給与に関する勧告を行なったが、その内容は、民間との格差を解消せず、また例によって上厚下薄であります。勧告の線をさらに上回るよう修正し、実施期日は、今まで勧告通りの期日に実施したことはないのでありますが、勧告通り五月一日とする意思があるかどうか、給与担当相の御答弁を求めます。
 最後に、池田総理にお尋ねをいたします。
 人間づくり、国づくりとはどういうことでございますか。あなたは経済が専門だと聞いておりましたところが、経済が調子が悪くなると、急に宗旨を変えて文教政策に御執心のようであります。人間をつくることはお得意の経済問題と関係はありませんか。高度成長、所得倍増で経済白書の統計数字を飾っておる多くの人々のあることは否定いたしません。しかし、生きておる一人々々の人間は、統計上の国民総生産や平均所得で生活をしておるのではありません。平均に享有しておるのは、物価ぐらいのものであります。引き締めによって不況に悩む者、高度成長や所得倍増に関係なく、ただ物価高の熱気に当てられるだけの者、池田成長政策の堂々たる進軍の足音さえ聞こえぬ立場に置かれている人々、重税に苦しむ者、住宅のことで頭がいっぱいの者、狭き門に入学できぬ青少年等々、そういう人々の方が、頭数では多いのではありませんか。非行少年の多くは、自分を取り巻く社会的経済的環境に基因しておるのであります。政府の政策の独善、傲慢、不公平、不人情、不道徳、片手落ち、これらをまのあたりに見て、合理的な正義感が個人的、集団的な言動となって現われたとしても、それが合法的である限りは、だれがとがめる権利がありましょうか。平和と安穏、勤勉と努力、従順な人間をつくりたいのなら、思いつきの文教政策や通り一ぺんの説教ではなくて、今日の政治から必然的に群生する社会的、経済的悪条件を取り除くことこそ、あなたの経済政策が国民大衆に均霑してくることこそ先決だと思いますが、総理はどうお考えでありますか。(拍手)
 また、総理は、昨日の所信表明演説で、法秩序無視の傾向を排除し云々と言っておられますが、憲法を無視して再軍備を進め、憲法改悪の受け入れ態勢を進め、今の内閣ではないが、悪質な選挙違反に関係のある者が閣僚の座に着くというようなことで、法秩序を説く資格がありますか。(拍手)池田さんが悪と感じた人間が、反対の立場にある人には善であることもあります。池田好みの人間をつくるというならば、あなたの党内にもつくり直さなければならない人間が何人かおるのではありませんか。(拍手)
 池田内閣総理大臣に強く要望申し上げます。人造人間ならばいざ知らず、魂のこもった人間をつくりたいのなら、政府みずからその範をたれ、一方、そのような社会的、経済的な要件をつくり上げていただきたいと存じます。(拍手)
 私は、質問を終わるにあたり、今年もまた九州、北海道等に想像も及ばぬ大水害が発生しました。災害地の方々にはまことにお気の毒にたえません。これからいよいよ台風シーズンに入ります。政府は、すでに発生した水害地に対して、すみやかに完全復旧の措置をとられるとともに、台風襲来に備えて万全の体制を樹立されんことを強く要望いたしまして、私の演説を終わります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 今回の内閣改造は、昨日申し上げましたごとく、私は新人を多く入れまして挙党内閣をつくり、そうして国民の期待に沿うべく行なったのであります。
 また、第二の高級公務員の選挙違反につきまして、まことに遺憾でございます。しかし、選挙違反は高級公務員ばかりに限ったことはございません。全部につきましてなくなることを願って今後も善処いたしたいと思います。
 また、超高度成長によりまして不況産業も出て参りました。しかし、これらにつきましては所管大臣からお答えいたしまするが、石炭、鉄鋼、繊維、非鉄金属等々、また中小企業間におきましてもいろいろ起こっておりまするが、私は三十二年のときほどではないと思っています。また、不況と申しましても、行き過ぎた不況でございまして、国全体といたしましては非常に不況な状態であるともまだ言い得ません。私は行き過ぎたものを調整しながら、その不況を少なくする、あるいはなくするよう努力を重ねておるのでございます。
 次に、農業問題につきましては、お話の通り農業基本法ができてまだ一年でございます。私は、今後も、農業の構造改善によりまして生産性の向上にできるだけの力を入れていきたいと考えております。来年度の予算におきましてもこの点十分注意いたしたいと考えておるのであります。
 なお、消費者米価、私鉄運賃、電力値上げ問題等は、お話の通り答弁は一つでございますから、私がかわってお答えいたします。
 この三つの問題は、これは所管大臣だけできめられる問題でございません。内閣全体の問題とし、しかも、その影響が非常に多いので、目下十分検討を重ねておるところでございます。いずれ、そのうち皆様方に御審議願うことになると思います。今、電力問題をどうするとか、私鉄をどれだけ上げるとか上げないとか、こういうことは十分検討しなければならぬ問題であると存じます。
 それから所得と物価との問題でございまするが、いろいろお話しのようでございます。しかし、最近十年間の日本の経済の発展、国民所得の増加、生活水準の向上は知る人ぞ知ると申しまするか、世界の人は驚異の眼をもって見ております。われわれも、単にそれを非難して、多きを望むよりも、十分過去を考えながら将来に向かっていこうではございませんか。非難することばかりが民主主義ではないと考えておるのであります。(拍手)
 なお、人づくりの問題でございまするが、私は経済が調子が悪くなったから文教というのじゃございません。経済はだんだんよくなってきて、先ほど申し上げましたごとく、世界の人の驚異の的になっておるほどよくなってきつつあるのであります。従いまして、これをより以上にするためには、やはりもとは人である、こういうことから考えまして、昨年来、文教につきましては力を最も入れておるのであります。徳性を涵養いたしまして、祖国を愛する気持をわかしていく。そのためには道徳教育や、あるいは科学技術教育を振興して、教育の設備、そうしてまた教育者の資質向上、その他あらゆる方面に万全の力を入れていきたいと考えておるのであります。(拍手)
 なお、今回の災害復旧につきましては、予備費も相当ありますので、十分の準備をして万全を期したいと思います。(拍手)
  〔国務大臣重政誠之君登壇〕
○国務大臣(重政誠之君) お答え申し上げます。
 御承知の通りに農業基本法は新農政への方向づけであります。いわば、新しい農政への道しるべとも申すべきものであろうと思うのであります。従って、昨年六月にこの法律が制定になりまして、直ちにすべての面にその実効が現われるというわけには参らないと思うのであります。農林省といたしましては、すでに構造改善の事業でありますとか、あるいは流通機構の改善の問題、あるいは価格安定の施策というようなものにつきましては、それぞれできるだけ具体的に施策を進めて参っておるのであります。どうぞ、しばらくの間、時間をおかしをいただきたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣綾部健太郎君登壇〕
○国務大臣(綾部健太郎君) お答え申します。
 総理がさきに申されましたように、いろいろ私鉄の値上げにつきましては各方面から研究しなければならぬと思うのであります。と申しますのは、年々都市の交通は増加して参りまして、しかも、低率運賃の人ばかりがふえておって、普通の人は非常に困っておるのが実情です。これをよくするためには、設備の改善、その他いろいろなことをやらなければいけないのであります。三十四年一月に値上げして以来今日まで値上げはやっておりません。今度各方面と研究いたしまして、ここで右か左か、上げるか上げないのかということは、私ただいまお答えいたしかねます。研究の上、あらためて答弁するつもりでございます。(拍手)
  〔国務大臣河野一郎君登壇〕
○国務大臣(河野一郎君) お答えいたします。
 住宅問題は、御説の通り非常に重大な問題でございます。ただお話しになりました数字は、多少疑問の点もあるようでございますが、いずれにいたしましても、御論旨に全く同感でございます。私といたしましては、最善を尽くして御期待にこたえるようにいたしたいと考えております。(拍手)
  〔国務大臣篠田弘作君登壇〕
○国務大臣(篠田弘作君) 高級公務員の立候補の制限を選挙制度審議会が答申されたことは、先ほどおっしゃった通りであります。しかしながら、これには憲法上の疑義もありまして、政府の修正案となり、また先回の改正になりました。その結果、今回も三百余件のいわゆる違反が出たのでありますけれども、これは従前も公務員の事前運動については取り締まりをしておったのであります。しかしながら、選挙運動に入ってからの取り締まりというものは今回が初めてです。そのために、新しい法律であるために、選挙をする者も、また選挙民の側からも、十分に理解されない点があったと私は考えます。そういう意味におきまして、今後はいわゆるいろいろなPRまたは政治教育、あるいは行政指導等によって、この違反というものをなくしていきたいと思います。
 こういうことによって官僚政治の台頭にならないかという御質問に対しましては、私は、日本の政治はいわゆる議院民主主義によって厳重に守られておるからならないと考えます。新しく法を改正する必要があるかとおっしゃいますけれども、これは先国会において改正したばかりでございますから、事実問題として、すぐ法の改正を行なうということは無理であろうと思いますから、今申しました方法によって、行政指導、あるいは政治教育等によって解決していきたい、こう考えます。(拍手)
  〔国務大臣福田一君登壇〕
○国務大臣(福田一君) ただいま、石炭、鉄鋼、非鉄金属、紙パルプ、繊維等の産業に対する対策について説明をせよという御質問でございましたが、石炭の問題は、あとの四つの問題とはいささか趣を異にいたしておるかと存ずるのであります。
 御承知のように、石炭産業は年間五千五百万トンのベースで押えまして、価格においては千二百円これを下げて、安定した産業としてこれを育成していくという方向でやって参っておったのでありますが、御承知のごとく、重油の問題とか、あるいはまた賃金の上昇というような問題等も加味されまして、なかなかその通りに実現していかない面もやって参りましたので、さきの閣議におきまして決定いたしました通り、今回は、有沢調査団というのに委嘱いたしまして、根本策を研究いたしていただいておるところでございます。しかるところ、この調査は九月の半ばごろまでかかる予定でございますので、それまでに至るまでに、石炭産業といたしましては、金融の面におきましてもあるいは休山対策においても退職金等の問題においてもいろいろの問題もございますので、これらを処理していかなければならないというので、去る七月三十一日の閣議におきまして緊急対策をきめまして、実施をいたしましたことは御承知の通りでございます。しかしながら、いずれにいたしましても、石炭産業の置かれておる立場というものはなかなか深刻なものがあるのでありまして、このことを私は、この席を通じて国民の皆様によく理解をしていただき、その理解の上に立って、愛情をもってこの問題は解決すべきものであると考えておる次第であります。(拍手)
 なお、鉄鋼問題でございますが、これにつきましては相当な増産による値下げ等もございましたので、これにつきましても実は一定の減産をいたすと同時に、金融の面においても考慮をいたしております。また、非鉄金属の問題につきましても、これは相当の滞貨がたまっておりますので、これについても金融面の処置を講ずると同時に、銅の地金の輸入割当等も押えて、そうしていろいろ処置をいたしております。また、紙パルプについても、繊維についても、それぞれ不況の事情もございますけれども、それぞれについて一応減産あるいは金融面等についていろいろの手を打ってやって参っております。
 いずれにいたしましても、こういう事態が起きてくることについては、われわれは非常に真剣にこの問題と取り組んでおるのであります。しかし、高度成長政策の段階において一応こういうところまできておる産業が、一時足踏みをいたしておるということは、次に来たるべき飛躍の段階に備える態度であるとわれわれは考えて、これを十分育成して参るように努力をいたして参りたいと存ずるのであります。
 また、先ほど私の名前を指定して電力料金に対する御答弁を要求されておるのでございますが、先ほど総理から私にかわってこの御答弁をしていただいておりますので、これは省略させていただきます。(拍手)
  〔国務大臣大橋武夫君登壇〕
○国務大臣(大橋武夫君) 失業対策事業につきましては、近来各方面からいろいろな批判が起こっておりますので、事業本来の趣旨から見まして、制度の検討の必要があると考え、政府といたしましても、失業対策事業の打ち切りということではなく、制度本来の使命から見た今後の事業のあり方について専門の学者に研究を依頼いたしまして、目下検討を進めておるというところでございます。
 次に、国家公務員諸君の給与に関しまする人事院の勧告が昨日ございましたが、国家公務員法の精神から見ましても、内閣といたしましてはこれを尊重すべきは当然でございます。昨日政府はこれを受け取りましたので、ただいま関係各省においてその内容につき鋭意検討いたしておるのでございまして、でき得る限りすみやかに実施いたすようにいたしたいと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(原健三郎君) 佐々木良作君。
  〔佐々木良作君登壇〕
○佐々木良作君 私は、民主社会党を代表いたしまして、昨日の総理の所信表明に対しまして二、三の質問を行ないたいと存ずるのでありますが、先ほどの前質問者片島君のせっかくの御質問にもかかわりませず、おのおのの御答弁は、はなはだ不満なものでございました。内閣は確かに新しいものではありましょうけれども、自由民主党内閣として継続せられ、池田総理はまた継続された内閣でありまするから、あくまでも私は継続されておる池田内閣としまして、従って、いつまでたっても検討を継続しておるような答弁ではない、明確なる御答弁をお願いいたしたいと存じます。(拍手)
 具体的な問題に入る前に、念のために伺いたいと思うのでありますが、総理は福祉国家という言葉をよくお使いになります。昨日の所信表明におきましても、池田内閣の施政の目標が福祉国家の建設にあるがごときお説を承りました。一体福祉国家というのはどういうものでありましょうか。私は、池田さんは、資本主義政策遂行のチャンピオンとして重大な――この重大なという言葉は、よい意味にも悪い意味にも通用するのでありますが、まさに重大な役割を演じられつつあると思うのでありますが、その池田さんから福祉国家の建設を目ざすという言葉を承りますと、はなはだ奇妙な感じを受けるのであります。心ある多数の国民もまた似た感じを抱いておるのではないかと存じますので、ここで念のために、あなたの目標とせられておる福祉国家の内容について大よその概念規定を承りたいものであります。
 福祉国家の建設目標は、決してわが民社党の専売特許だと申し上げるのではありませんが、世間一般に通用する福祉国家の概念規定の中には、少なくとも完全雇用、これは景気のよいときにだけ雇用がふえるという式のものではありません。安定的雇用が必須条件となる雇用状態の増加であり、完全化であると考えるのでありますが、そういう意味での完全雇用、高度な社会保障制度の充実、さらに全国民の所得、富の平均化、平等化という三つの概念、あるいは民主主義の原則を入れて四つにしてもよいかと思いますが、福祉国家の概念には、少なくともそのような要素が入ってこなければならないと存じます。
 わが国の、失対から医療保障、各種年金に至る社会保障制度の現状は、いかにも低度、度の低いものでありまして、義理にもほめられる状態ではございません。一方、池田さんの所得倍増政策のおかげで、一部の人々は、スカンジナヴィアの福祉国家やアメリカの資本主義社会における最上流家庭の生活に劣らない高度の生活を享受しておりますけれども、他方、経済二重構造の矛盾はますます所得格差を広げながら、低所得者層をどん底にまで追いやりつつあると存じます。およそ富の平等化とは逆の方向の政治であります。元来、投資の国家統制さえできない状態では、所得の均衡化や富の平等化などは無縁の言葉なのであります。私は、池田政治はまさに福祉国家とは逆の方向を目ざして暴走しつつあるものと見るのでありますが、総理の御見解を承りたいと存じます。福祉国家などとウのまねをするカラスのようなことを言わずに、池田さんは池田さんらしく、資本主義政治家のチャンピオンとして堂々とみずからの歴史的任務だけを遂行されるべきではありますまいか、私は、御所見をまじめに承りたいと存じます。
 具体的な問題に入るわけでありますが、先ほど片島君から具体的な問題の御質疑がありましたので重複を避けて、まず経済問題からお伺いをいたします。
 その第一の質問は、政府のいわゆる新産業秩序の確立の問題についてであります。
 この新政策は、池田所得倍増政策の新段階に対する調整措置を目的としておるようであります。国民が新内閣に最も要望し、かつ、新内閣がこれにこたえるべき経済政策の中心は、現に総理が提唱されておる所得倍増政策そのものの改訂であるか、あるいはその強力な遂行によって生じた幾多の経済矛盾の是正措置であると信じます。
 今や、農村労働と都市労働のアンバランス、民間投資と公共投資のアンバランスの拡大、生産供給能力と需要、所得と物価、地域的並びに階層的所得格差の拡大、さらに貿易の構造上のアンバランスなど、所得倍増政策の諸矛盾は拡大の一途をたどっております。農村における隠居農業や寡婦農業の実態、狭隘な道路にあふれる大型トラック、バス、自家用車のはんらん現象、また、商業道徳を無視した売らんかなのすさまじい販売合戦などは、そのまま社会的矛盾とゆがみにまで発展しようといたしております。そうして、それらの解決が新内閣の課題として国民の期待するところであろうかと序ずるのであります。はたしてしかりとするならば、これにこたえるものが新産業秩序の確立という政策でありましょうが、はたしてその成果が得られるのでありましょうか。これが私のこの質問の中心であります。
 本年五月九日付作成の通産省部内資料、「新産業秩序の形成について」というパンフレットによりますと、企業の合併、提携、生産の集中、投資の調整、企業の転換促進などを行ない、過小企業の乱立を排し、企業規模の適正化をはかるという方針が、いわゆる新産業秩序形成の内容のようであります。このようなことは、独禁法の改正もしくは独禁法の適用除外によるこれら措置を可能とする新立法の制定を当然に結果してくるものと考えざるを得ないのでありますが、政府にその意図ありやいなや、総理の明確なる御答弁を要求いたします。それは、まさに現在より以上に少数の私的大資本に産業制覇の道を開くものでありまして、同時に、わが国の経済二重構造といわれる中小企業、農業の立ちおくれを是正する機会を永遠に失わしめることになりかねないからであります。総理の言われる経済政策の目標並びに福祉国家の方向とはおよそ逆のものであると信ずるからであります。総理の誠意ある御答弁を要求するゆえんであります。
 経済質問の第二は、補正予算提出の問題についてであります。
 新内閣は、補正予算を提出しない方針であると言明せられ、必要な歳出追加は予備費でまかなうと言っておられます。なるほど歳出追加のこまかいものは予備費支出でもけっこうでありましょう。しかしながら、高校増設費のように、全国知事会から、明年度の高校進学率見込みは六三・三%であって、政府が予算を作った当時の予算の基礎となっておる五九・八%は、間違いであると明確に指摘され、政府もかぶとを脱いでいるような問題につきましては、当然に本国会において予算補正を行なうべきであると信じます。また、前国会の会期末に成立し、本月中旬より実施される商店街振興組合法は、当初予算成立後に成立した新立法でありまするから、これが予算の裏づけもまた当然に本国会においてなすべきであると信じます。この二件については、前国会において行なわれた財政法第二十九条の改正法文に従い、「予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出」に該当するものでありますから、法改正の趣旨に基づき予備費支出ではなく、はっきりと補正予算編成を行なうべきであります。これを予備費財源などでまかなうがごときは、著しき政府の怠慢であり、同時に財政法違反の疑いをさえ招くものと考えるのでありますが、大蔵大臣の御所見を伺いたいと存じます。(拍手)
 なお、さらに昨日発表された人事院勧告の完全実施や、石炭離職者対策費増額についても、補正予算提出の要ありと信ずるのでありまするが、いかん。
 私ども民社党は、以上の予算項目のほか、失業対策事業、生活保護費と日雇い労働者給与の予算単価、石炭産業対策費、中小企業向け出資、沖繩援助費等を合算して、およそ一千億円規模の補正予算を要求いたしております。これらの財源は行政費節約、防衛関係費削減、本年度税収の自然増見込額等によって、確実に確保し得るものといたしておるのであります。現在、不況下の不安にさらされておる国民生活を守り、また、当初予算成立後に生じた新しい政策の実施のために、政府は本国会を契機として当然に予算補正を行なわるべきであると存じますが、重ねて大蔵大臣の見解を伺いたいと存じます。
 第三に、中小企業の問題についてお伺いをいたします。
 懸案の中小企業基本法問題について、従来政府はきわめて慎重なというよりは、むしろ消極的な態度をとって参られました。前国会において自民、社会、民社、三党それぞれの基本法案が提案せられ、現在継続審議になっておることは御承知の通りであります。しかも、当時政府・与党は、われわれ野党の攻撃に耐えかねて、特に選挙前国会であることを十分意識しながら、会期末近くになってしぶしぶ自民党提案の形でお茶を濁され、しかも、われわれが、自民党案でも現状打開の端緒にはなり得るとの観点から、思い切ってその成立をはかろうかと考え始めるや、あわてふためいて自案の成立回避に暗躍された一幕は、知る人の知る喜劇でさえあったと存じます。しかも、参院選挙に入るや、次期国会への政府提案を堂々と大衆の前に公約せられたのでありますが、いまだ今国会においては残念ながらその影も形も見出すことはできません。この中小企業基本法問題について、政府提案の意図ありやなしや。ありとすれば、その時期について総理並びに福田通産大臣の明確なる態度表明を願いたいと存じます。あわせて、通産大臣からは、その準備の状況並びに継続審議中の自民党案との関係等についての御説明も承りたいと存じます。
 次に、これは必ずしも中小企業のみの問題ではありませんが、中小企業金融と関連してお伺いをいたしたいと存じます。
 田中大蔵大臣は、かつて政調会長時代、新聞談話をもって、経済の長期安定成長をはかるためには財政と金融のあり方を再検討する必要があり、日銀法、銀行法など金融関係法は改正の時期にきていると言明せられ、中小企業金融対策に触れながら、市中金融機関のあり方について鋭い批判を浴びせかけられ、かつ、改正立案手続の問題にまで言及されております。当時私は、この田中発言に大いなる敬意を払って新聞記事を拝読いたしたのでありまするが、今や大蔵大臣としてこの問題についての最高の権力を掌握されたのでありまするが、あらためて田中大臣の御所見を明確に承りたいと存じます。経済は何よりもタイミングを重要といたしますので、慎重に検討してすみやかなる結論を得たいなどとありきたりの御答弁ではなくて、田中大臣らしい御答弁を特にお願いする次第でございます。(拍手)
 具体的質問の第二は、外交問題についてであります。
 私は、昨年春の予算委員会における質問におきまして、国連における大国主義を批判し、真の国連中心外交はまず従来の対米追随外交の脱却から始まらねばならぬと考え、政府のいわゆる国連中心外交の矛盾を指摘いたしましてその反省を求めました。昨日の所信表明において、総理は、この国連外交に触れられ、国連の世界平和維持機構としての役割を重視し、その機能と権威の向上に努力すべき方針を明らかにせられております。
 そこで私は、わが国が真に国連中心の外交方針を堅持すべきであるとの観点に立って、来たる第十七回国連総会にわが国の提案すべき案件として、三つの議題を提示し、政府の御見解をいただきたいと存じます。あわせて、わが国の国連外交に転機を画するための自主的にして勇敢なる活動を、特に要望いたすのであります。
 まず、提案の第一は、憲章第五十三条及び第百七条のいわゆる敵国条項の改正問題についてであります。
 懸案の問題でありまするが、政府は、今次総会に右関係条項の削除改正を提案する方針を検討中と伝えられておりまするが、はたして決定されておりまするやいなや、政府の方針をまず承りたい存じます。もし提案の用意ありとするならば、わが党は、これに対して進んで賛意を表するものでありますし、もし態度未定であるならば、その提案を強く要望するものであります。すでに加盟国となっておるわが国にとって、旧敵国条項という差別待遇条項の存在は、はなはだ遺憾であります。特にわが国にとってきわめて不愉快な存在である中ソ友好同盟条約の法的根拠となっておる同条項の削除要求は、全国民の期待と希望に沿うものと信ずるからであります。しかし、提案するからには、それが実現を期さなければならぬことは当然でありまするが、その際、従来の対米追随方針に対する重大なる反省が前提とならなければならないのは、これまた当然でありましょうが、その決意ありやいなや、総理の御所信を承りたいのであります。
 提案の第二は、国連憲章中信託統治制度に関する第十二章及び第十三章の削除改正に関する提案についてであります。
 御承知のごとく、現在信託統治地域としてなお残されておる部分は、ナウル、ニューギニア、太平洋諸島の三地域にすぎず、その総人口はわずかに百二十万、面積九万三千余平方マイルにすぎません。しかして、これらの地域における信託統治の意義は、すでに憲章にいう当初目的をはるかに離れ、施政権者の政治的理由か、もしくは軍事的理由以外のものではなくなっております。私は、すでにその基本目的を失い、実情に合わなくなっておる信託統治制度そのものの存在に大きな疑問を抱くものでありまして、しかして、むしろその悪用をおそれ、ここに思い切ってその廃止を提案いたしたいのであります。特にわれわれが遺憾とするのは信託統治制度における戦略地域の存在でありまするが、戦略地域と指定された地域の現状は、施政権者のオールマイティがまかり通り、国連による統制、監督は全く及ばず、まさに信託統治とは有名無実の状態であります。ビキニ環礁における原水爆の実験と、これによる原住民の被害、居住地の強制立ちのき、さらに統治地域そのものの破壊が、はたして信託統治制度の基本目的に合致するかいなか、はなはだ疑問といわざるを得ないのであります。現実に照らして信託統治制度そのものに対する政府の御見解をいただきたいと思います。
 さらに、この提案の持つ重大な意義は、沖繩、小笠原問題の処理に関係を有するのであります。対日平和条約第三条は、沖繩、小笠原を合衆国を施政権者とする信託統治制度のもとに置くことを前提として、それまでの期間における合衆国の施政権を規定いたしております。従って、もし憲章において信託統治制度が存在しなくなれば、沖繩、小笠原に対するアメリカの施政権行使も当然その法的根拠を失うに至ると考えられるのであります。日本国民の熱烈な願望にもかかわらず、沖繩、小笠原の施政権返還要求は事実上不可能のごとくであります。政府は、沖繩問題のきめ手といたしましても、この信託統治制度の廃止提案について、慎重なる検討を行なうべきだと序ずるのでありまするが、総理並びに外務大臣の御所見を承りたいと存じます。(拍手)
 最後に、具体的提案の第三は、核戦争防止に関する総理の強い態度表明に関連し、この問題についての新たなる提案の要望についてであります。
 最近における米ソを中心とする核実験競争は、ますます危険の度を加えつつありまするが、との事態に対して、政府は今次国連総会においても、かかる核実験競争の悪循環を断ち切るよう強く訴えられるとともに、核兵器実験禁止決議案の提案を準備していると伝えられております。わが党は、このような措置とともに、一歩進め、あわせて次のような新提案を行なうよう強く要望するものであります。
 すなわち、国連みずから原爆被害の実情調査を行ない、言うまでもなく、広島、長崎はその唯一の実被害地でありまするが、その被害調査を行ない、その調査結果を国連みずからの行事として世界の各国民にPRし、もって平和運動の一環たらしめようという措置の提案であります。唯一の原爆被害国として当然の、かつ現下最も必要なる提案と信ずるのでありますが、総理並びに外相の御所見を承りたいと存じます。
 以上、私の質問を終わるのでありまするが、重ねて検討中の御答弁でない、まじめな御答弁をお願いいたしたいと存じます。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 私が福祉国家と言うが、資本主義政治家として福祉国家を言うのは変じゃないかというお話でございます。しかし、今福祉国家の定義とされました社会保障の拡充とか、完全雇用に向かって進むこと、あるいは所得の平準化等のことは、政治の根本の問題でございます。それが社会主義であろうと資本主義であろうが、私は同じ方向に向かってみな進んでおると考えておるのであります。(拍手)
 次に、新産業秩序の確立、これは私も昨日所信表明で申し述べたのでございまするが、ただいまの世界の状況から申しまして、国際競争力を強化するためには、やはりその国その企業が生産コストの引き下げをなし、経営の合理化を進めていくことは当然要請されておることでございます。私は国際競争力の強化のために、企業の乱立とか、あるいは非能率化を改めまして、ほんとうに生産コストを引き下げ、外国との競争に打ち勝っていく、また協力していくという方向で進んでいきたいと考えております。
 次に、外交問題につきまして、国連憲章第五十三条あるいは百七条の敵国条項の削除ということのお話がございましたが、今日におきましては、この敵国条項は必ずしも適切ではないと考えております。しかし、国連憲章を改正するためには、何と言いますか、いわゆる国連憲章改正の全体会議を開かなければなりません。しかしこの全体会議は、第十回総会できめられましたが、ソ連におきましては中共の参加まではこれを無意味だ、こう言って反対いたしておりますので、御質問の点はよくわかりますが、現状といたしまして、国連憲章改正の再審議の調査会を開くということはなかなかむずかしい問題だと考えております。
 次に、国連憲章におきまする信託制度を廃止したならば、当然に沖繩、小笠原が日本に返ってくるのではないか、こういう御質問でございますが、これは今までもたびたび本会議場で行なわれましたが、平和条約第三条によりまして、アメリカは施政権を持っておるのであります。アメリカが自分の考えで国連憲章に基づいて信託統治を申請したときに、日本がこれに同意しなければならぬということだけでございます。国連憲章に信託統治制度がなくなったら、沖繩、小笠原が当然日本に返ってくると考えることはできないと思っておるのであります。
 また、放射能影響調査会、これは今やはり相当活動しております。今後この活動をもっとより強くすることには賛成でございます。われわれは、その方向によりまして、いわゆる核爆発実験停止等々、あらゆる方法を十分講じて参りたいと考えております。(拍手)
  〔国務大臣田中角榮君登壇〕
○国務大臣(田中角榮君) お答えいたします。
 三点につきまして、予備費を使わなければならないような事態があるにもかかわらず、予備費で使うような考えを持っておって、補正予算を提出しないと言っておるが、一体どうかという問題でありますから、この三点に対して具体的にお答えを申し上げたいと存じます。
 第一点は、高校生急増対策についてでございますが、政府は、御承知の通り、三十六年から四十年にかけて、高校生急増対策の所要資金を試算いたしまして、工業高校の施設設備に対する補助金、地方交付税法の改正、起債の措置等で行なっておりまして、予備費から支出する予定は、今のところ全然考えておりません。
 それから第二点目の商店街組合につきましては、御承知の通り、との組合は経済事業団体でありますので、経費補助の前例もありませんし、また補正予算または予備費で支出をするという考えは現在のところ持っておりません。しかし、組合共同施設につきましては法律が成立をしておるのでありますし、三十七年度予算で御承知の通り現行中小企業協同組合等共同施設補助金のワクが三億ございますので、これが対象に適切なものがありましたならば、適切にこの予算の中で処置をして参りたいという考えを現在持っておるわけでございます。
 第三点の、昨日行なわれました人事院勧告につきまして申し上げますと、労働大臣が御答弁いたしました通り、この内容は膨大であり、非常に複雑な勧告が行なわれております。この勧告について、昨日から各省の間で慎重に検討いたしておるわけでありまして、今日直ちにこの段階において、補正予算を組んで処置しなければならないというような時期に立ち至っておらないことを御承知いただきたいと存じます。
 それから第四点は、昨年の景気調整策をとっておった当時の中小企業金融についてのお話でございますが、この問題につきましては、御承知の通り、景気調整策を行なう過程において、中小企業に金融面において特にしわ寄せが起こることは過去の事例でございます。昨年これが施策遂行にあたっては、十分この点を留意いたしまして、いやしくも中小企業にしわ寄せが起こらないことにつきまして万全の処置をいたしたわけでございます。金融機関の協力、財政資金の放出等、弾力的な処置をとりましたために、現在貸出総額の四二%を中小企業が占めておるというように、過去の例に比べて順調な資金処置がとられておるわけでございます。
 それから日銀法及び金融関係法等につきまして申し上げますと、この諸法規は、御承知の通り、戦後の混乱期、非常に特殊な状態で作られた諸法規、諸制度が非常に多いので、現在の複雑多岐にわたる金融面に対して妥当を欠く個条があるかないか、慎重に、かつ、十分に調査をする必要がございます。御承知の通り、金融正常化をはかるために、日銀法等を含めて、金融関係法その他につきまして、金融制度審議会において現在調査検討中でございますので、これが調査と相待ちまして、慎重かつ適切に対処いたして参りたい、こう考えるわけでございます。(拍手)
  〔国務大臣福田一君登壇〕
○国務大臣(福田一君) 中小企業基本法の問題でございますが、その提出時期につきましては、通常国会のなるべく早い機会を目途といたしまして、ただいま中小企業庁をしてせっかく立案を急がせておるような段階でございます。ただし、御承知のように中小企業は多種多様でございます。その調査をいたしますのに相当な苦労を重ねておるような段階でありますけれども、何とかしてその時期に間に合わせるように急がせておる次第であります。また、自民党案との関係いかんということでございますが、もとより、これを重要な参考資料といたしますけれども、社会党や民社党からお出しになりました案についても、十分これを考慮に入れ、そうして適切なる案をつくるように努力をいたしたいと考えております。(拍手)
  〔国務大臣大平正芳君登壇〕
○国務大臣(大平正芳君) 国連外交につきまして傾聴に値する御意見を拝聴いたしたのでございますが、敵国条項につきましては、その削除に私どもも賛成でございます。ただし、信託統治制度につきましては、地域が狭く、かつ人口が少ないといえども、その地域が独立をするとか、あるいは自治を享受するとかいう段階に至るまで、ただいまの憲章の条章は必要かと思いますので、直ちに削除するというわけには参らないのではないかと思うのでございます。しかし、いずれにいたしましても、かりに削除するといたしましても、先ほど総理が申し上げました通り、全体会議を開くという景況にならなければ実現が不可能でございますので、各国の出方を十分注視いたしたいと思っております。
 沖繩施政権の根拠につきましては、先ほど総理が御答弁申し上げた通りでございます。(拍手)
○副議長(原健三郎君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
○副議長(原健三郎君) 本日は、これにて散会いたします。
   午後三時十六分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  池田 勇人君
        法 務 大 臣 中垣 國男君
        外 務 大 臣 大平 正芳君
        大 蔵 大 臣 田中 角榮君
        文 部 大 臣 荒木萬壽夫君
        厚 生 大 臣 西村 英一君
        農 林 大 臣 重政 誠之君
        通商産業大臣  福田  一君
        運 輸 大 臣 綾部健太郎君
        労 働 大 臣 大橋 武夫君
        建 設 大 臣 河野 一郎君
        自 治 大 臣 篠田 弘作君
        国 務 大 臣 川島正次郎君
        国 務 大 臣 近藤 鶴代君
        国 務 大 臣 志賀健次郎君
        国 務 大 臣 宮澤 喜一君
 出席政府委員
        内閣官房長官  黒金 泰美君
        内閣法制局長官 林  修三君
        内閣法制局第一
        部長      山内 一夫君
        経済企画庁調整
        局長      山本 重信君
        外務省条約局長 中川  融君
        郵政政務次官  保岡 武久君
     ――――◇―――――