第042回国会 本会議 第2号
昭和三十七年十二月十日(月曜日)
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   開 会 式
午前十時五十八分 参議院議長、衆議院参議院の副議長、常任委員長、議員、内閣総理大臣その他の国務大臣及び最高裁判所長官は、式場である参議院議場に入り、所定の位置に着いた。
午前十一時 天皇陛下は、衆議院議長の前行で式場に入られ、お席に着かれた。
衆議院議長は、左の式辞を述べた。
    …………………………………
  天皇陛下の御臨席をいただき、第四十二回国会の開会式をあげるにあたり、衆議院及び参議院を代表し
 て、式辞を申し述べます。
  現下わが国は、幾多の重要な問題に当面しておりますが、とりわけ産業、労働等に関し、緊急に諸般の施
 策を講じ、経済の発展と民生の安定とを図らなければなりません。
  ここに開会式を行なうにあたり、われわれに負荷された使命達成のために最善をつくし、もつて国民の委託にこたえようとするものであります。
    …………………………………
次いで、天皇陛下から左のおことばを賜わった。
    …………………………………
  本日、第四十二回国会の開会式に臨み、全国民を代表する諸君と親しく一堂に会することは、わたくしの喜びとするところであります。
  現下の多端な国際情勢に対処して、わが国が、各国との友好をいよいよ深め、国際的地位の向上を見つつあることは、まことに喜びに堪えません。また、内にあつては、全国民が相協力して、憲法の理想とする民主主義の本義を守り、民生の安定向上と経済の発展とに絶えず努力を重ねていることは、わたくしの深く多とするところであります。
  ここに、国会が当面の諸問題を審議するにあたり、国権の最高機関として、その任務の達成に最善を尽くし、国民の信託にこたえることを切に望みます。
    …………………………………
衆議院議長は、おことば書をお受けした。
午前十一時六分 天皇陛下は、参議院議長の前行で式場を出られた。
次いで、一同は式場を出た。
   午前十一時七分式を終わる
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昭和三十七年十二月十日(月曜日)
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 議事日程 第二号
  昭和三十七年十二月十日
   午後一時開議
 一 国務大臣の演説
 二 国務大臣の演説に対する質疑
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○本日の会議に付した案件
 池田内閣総理大臣の所信についての演説
 国務大臣の演説に対する質疑
   午後一時八分開議
○議長(清瀬一郎君) これより会議を開きます。
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 国務大臣の演説
○議長(清瀬一郎君) 内閣総理大臣から所信について発言を求められております。これを許します。内閣総理大臣池田勇人君。
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) 私は、去る十一月四日から約二十日間にわたり、欧州諸国を歴訪し、各国の首脳と世界情勢並びにわが国とこれらの諸国が関心をひとしくする諸問題について、親しく意見の交換を遂げて参りました。
 このたびの訪問を通じて、私は、北米、西欧並びにわが国が、自由陣営の三本の柱として強固な協力体制をつくるべきであると述べ、また、わが国と西欧との間に、日米間と同様に緊密な関係を結ぶべきであることを強調いたしました。各国首脳は、予想以上の好意を示し、貿易問題、経済協力開発機構すなわちOECDへの加入問題についても前向きの態度を示したのであります。かくして、自由陣営各国間の緊密化は、一段と前進したものと私は信ずるものであります。(拍手)この見地から、アジアにおいてわが国の負うべき責務の重大さをあらためて痛感いたした次第であります。(拍手)
 また、欧州各国が、激動する国際社会の間にあって、それぞれ平和と繁栄を目ざして、国力の充実に努めている実情に接し、深い感銘を覚え、かねて私が施政の基本とする国づくりを推進する決意を新たにいたしたのであります。(拍手)ことに、これら諸国民の国家に対する深い敬愛の念、社会に対する高い公徳心などに触れて、人づくりの緊要なことを体感いたしたのであります。(拍手)
 政府は、目下、明年度予算の編成を急ぎ、施政の全般について鋭意検討を進めております。私は、公共投資の増大、文教の刷新、社会保障の拡充などを中心として、施政の基本をすみやかに具体化し、通常国会において、その審議をお願いいたしたい所存であります。従って、この際は、当面の諸案件につき所信を申し述べます。
 まず、外交政策について申し上げます。
 キューバをめぐる最近の危機は、世界の人心を深刻な不安に陥れたのでありますが、関係者の平和解決への努力の結果、最悪の事態が回避されるに至りましたことは、同慶にたえないところであります。(拍手)しかしながら、今回のキューバ危機、さらには国境紛争をめぐるインドと中共との武力衝突の事実は、単なる平和への要請や中立主義の主張がいかに非現実的なものであるかを立証するものであります。(拍手)私は、世界各国が、世界平和の維持に対する責任を真に自覚し、真に有効にして現実的な緊張緩和のための方策を誠意をもって実施することが緊要であると存じます。すなわち、東西両陣営において、核問題に対する認識が高まりつつある今日、私は、わが国が多年にわたり主張してきた、実効ある核兵器実験停止協定が一日もすみやかに締結されるよう、この際、一段の努力が必要であると信ずるものであります。(拍手)このたびの西欧諸国訪問に際しましても、私は、この点を特に強調いたし、各国首脳の共鳴を得たのであります。
 世界の平和を維持し、人類の繁栄と向上をはかるためには、各国が狭い国家的利害を越え、あらゆる分野にわたって国際協力を積極的に推進しなければならないと信ずるものであります。(拍手)この意味において、西欧諸国が経済共同体を形成し、究極的には政治統合への道を志向しつつ、しかも、単に域内各国の利害の調整にとどらまず、広く眼を外に向け、国際的連帯の基盤に立って、その経済的発展をはかることを基本方針としている事実は注目に値するものであります。(拍手)私は、この欧州経済共同体とわが国との経済関係の発展を特に重視して、関係諸国の首脳との会談におきましても、この点について率直に意見の交換を行ないました。その結果、これらの諸国が、アジアにおける先進工業国であるわが国に対して、通商上の障害を除去するなどわが国との関係をさらに発展させるよう努力している事実を見出し、心強く感じた次第であります。(拍手)また、このたびの訪英に際して、多年の懸案であった日英通商航海条約の署名を見るに至ったことは、両国友好関係の今後の進展を約束するのみならず、他の諸国との関係にも新局面を開くものであり、まことに意義深いことでございます。(拍手)
 思うに、このような成果を上げ得ましたことは、これら諸国がわが国民の多年の努力の結果である経済の発展、社会の安定などわが国力の伸長を認識したためにほかなりません。また、アレキサンドラ内親王殿下の御来日、秩父宮妃殿下の御訪欧を初めとし、最近ようやく活発となった各界にわたる親善交流もあずかって力があったものと存じます。(拍手)
 わが国の発展にとって、米国との関係が重要であることは申すまでもありません。本月上旬に行なわれた第二回日米貿易経済合同委員会において、両国の一そう緊密な発展について隔意のない討議が行なわれました。その結果、さらに今後両国と欧州経済共同体とが相互に協力して、自由な貿易の拡大を通じて経済的繁栄をはかり、発展途上にあるアジア・アフリカ諸国に対する協力を一そう強化することとなりました。このことは両国の経済関係のみならず、広く世界の発展に貢献するものであると信ずるものであります。(拍手)
 わが国の繁栄及び平和は、アジア各国の繁栄及び平和と密接に結びついております。アジアの繁栄なくして、わが国の繁栄はあり得ません。私は、わが国と最も近い隣邦である韓国との国交が、いまだに開かれていないことは、不自然、かつ、不幸なことであると思うのであります。(拍手)また、日韓両国の国交正常化は、わが国民の大多数の希望するところと存じます。(拍手)幸いにして去る八月、日韓両国の交渉が再開されて以来、両国間の解決を要する諸問題について鋭意折衝を続けた結果、相互の立場について理解を深めることができたのであります。さらに、最近、両国の朝野において、国交正常化早期達成の機運が盛り上がっておりますことは喜ばしいことであります。私は、この機運を背景とし、国民が納得できる内容をもって交渉が妥結するようさらに努力を尽くす所存であります。(拍手)
 当面の経済情勢と経済運営の基本方針について申し述べます。
 最近の経済動向を見ますと、卸売物価は軟調に推移し、旺盛をきわめた設備投資も鎮静し、高水準を続けてきた鉱工業生産も弱含みに転じております。一方、輸出の好調と輸入の低下とにより国際収支も著しく改善され、外貨準備高は十一月末において十八億ドル近くまで回復できたのであります。この間、昨秋来政府が実施してきた景気調整策は、各般の処置と相待ち、幸いにして大きな摩擦を生ずることなく、所期の効果を達成することができました。その結果、日銀公定歩合を引き下げる等、金融引き締めの状態も次第に緩和されつつあります。しかしながら、今後の経済の推移を考えますと、個人消費及び財政支出は一応増加の傾向にありますが、民間の設備投資意欲には、かなりに萎縮した部面もうかがわれます。従って、この際は、従来から懸念されてきた公共投資のおくれを取り戻し、各種のひずみの解消をはかる機会であると考えられます。政府としては、財政金融政策、国際収支の均衡に十分留意しつつ、輸出の振興はもとより、電力、海運、都市交通、道路、住宅、中小企業等の諸施策を重点的に実施して、正常な経済成長の実現をはかって参る考えであります。(拍手)
 わが国は、十月から八八%の貿易の自由化を実現いたしました。西欧諸国は、わが国の多年の宿願である差別待遇の撤廃について、好意ある態度を示すに至ったのでありますが、それにはこの自由化があずかって力があったのであります。(拍手)また、これによって、これら諸国との経済交流の拡大に資する基盤も固められたのであります。しかしながら、欧州経済共同体の進展、英国のこれへの加入、米国の通商拡大法の成立等の動きに見られまするように、世界経済の動向は、一そう自由な交流に向かって前進を続けており、また、関税の一括引き下げも議題となっているのであります。わが国としては、貿易・為替の自由化をさらに拡大するとともに、わが国産業の体質の改善、秩序ある輸出体制の整備確立、並びに人的交流による相互理解等にますます努力を傾けることが肝要であります。かくして、政府民間相携えて、わが国の国際競争力の強化にあらゆる努力を傾注して参りたいと念ずるものであります。(拍手)
 次に、石炭対策について申し上げます。
 エネルギー革命の進行しつつある今日、石炭鉱業は、早急にその自立と安定とをはかるべきときに直面しております。政府は、石炭鉱業調査団の答申に基づき、石炭対策について慎重に、かつ、きめこまかな検討を加え、その大綱を決定いたしました。
 対策の第一は、需要の確保であります。すなわち電力、鉄鋼業界等による長期引取体制の拡充に努めるとともに、供給体制の整備、流通の共同化、近代化をはかることとしております。
 第二に、生産体制の確立であります。このため、石炭鉱業の合理化整備計画を立て、その近代化を進めることとしておりますが、その際、雇用計画とも見合って、その円滑な進行を期するよう配意いたしております。
 第三に、雇用対策であります。石炭鉱業に残る労働者に対しては、最低賃金制を採用する等、安定した環境と条件のもとで働くことができるようにいたします。一方、離職を余儀なくされた炭鉱労働者に関しては、政府並びにその関係事業、政府関係機関の融資先において、職場を提供する等雇用の確保に有効な措置を講ずることといたしました。また、転職訓練の拡充、転職者用住宅の大量建設、その他就職促進対策を集中的に実施するとともに、就職促進手当の創設等求職期間中の生活の安定にも万全を期する方針であります。(拍手)
 第四に、産炭地域の振興であります。産炭地域振興事業団の機能を拡充するとともに、道路、用地、用水等産業基盤の整備、新規企業の導入等を計画的に進めることといたしました。なお、産炭地域の市町村財政の改善、中小商工業者、農民等の生活の安定についても、必要な対策を講ずる方針であります。
 以上の方策のうち、当面必要とする補正予算及び関連法案は、本国会にこれを提出することといたしました。このような諸施策の効果を十分に上げるため、政府は、経営者及び労働者の自主的な努力と、需要者、金融機関、地元関係者等各方面の建設的な協力を切に期待するものであります。(拍手)
 公務員給与の改定について申し上げます。
 一般職の国家公務員の給与に関しては、人事院勧告を尊重して、俸給月額、期末手当、勤勉手当、暫定手当等の改定を行ない、本年十月一日から実施することとし、その他の職員の給与についてもこれに準ずることといたしました。
 政府は、この際、職員が一そう職務に専心して、その能力を十分に発揮することを期待し、行政運営の簡素化、能率化並びに規律の保持について、その徹底を期し実効を確保する所存であります。
 以上、所信の一端を述べ、国民諸君の理解と協力を切望する次第であります。(拍手)
     ――――◇―――――
○議長(清瀬一郎君) この際、暫時休憩いたします。
   午後一時二十六分休憩
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   午後三時十六分開議
○議長(清瀬一郎君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑
○議長(清瀬一郎君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。勝間田清一君。
  〔勝間田清一君登壇〕
○勝間田清一君 私は、本日の池田総理の所信表明に対し、日本社会党を代表して、石炭政策と外交問題の二つにしぼって質問をいたしたいと考えるものであります。(拍手)
 第一は、石炭政策であります。
 私は、有澤調査団の答申が細目にわたってまですべてが悪いものとは考えておりません。しかし、それにもかかわらず、ここに強く反対せざるを得ないのは、去る四月六日の閣議決定の際に、われわれと総理との間でしっかり約束したはずの、石炭労働者の雇用と生活の安定を第一義的に考えるということ、また、石炭産業を国際収支とエネルギーの安全保障という立場から正当に位置づけ、その拡大安定をはかるということ、この重大な二つの原則を調査団が完全に踏みにじったからにほかならないのであります。(拍手)すなわち、調査団が、石炭産業を国内資源として総合エネルギー政策の中で正当に位置づけを行なうことなく、石炭という狭いワクの中で、しかも私企業採算という低い次元に合わせ、合理化の一切の犠牲を労働者七万人の首切りに持っていったということであります。(拍手)従って、わが党は、出炭量を五千五百七十万トンに押えるとか、千二百万トン相当の山をスクラップするとか、労働者を十二万人台に削減するとか、こういった基本構想、またそれを踏襲する政府の政策については、断固として反対であります。(拍手)
 周知のように、千二百円のコスト・ダウンの合理化が実施されて以来今日まで、すでに十万の労働者が山を追われております。そして、そのうちの数万の労働者が今なお職業らしい職業を得ることなく、その家族とともに生活不安のどん底に呻吟いたしておるのであります。従って、これら不幸な労働者に対して、まず雇用と生活の安定を保障することが、すべての政策の先決条件でなければなりません。(拍手)また、昭和三十七年度のスクラップ計画は、三百二十万トンと内定いたしておるのでありますから、この山から出てくる離職者に対して、完全な職業と安定した生活を、国の責任において保障することこそが、石炭政策当面の任務であると私は考えるのであります。(拍手)そして、その後の整備計画は、総合エネルギー政策を確立して、石炭産業を拡大安定させる中で、労働者の雇用と生活を安定させるように、高い次元での政策を、改組される審議会を通じてあらためて再検討さるべきだと思うのであります。池田総理の石炭政策の今後の基本方針について、まずこの点をお伺いしたいと思います。(拍手)
 次いで、石炭労働者の雇用と生活の安定に関する原則的な考え方、そのための具体的な政策を御質問いたしたいのであります。
 石炭労働者の雇用と生活の安定は、まず石炭労働者を近代的な労働条件のもとで、石炭産業の中で最大限に雇用を確保するということ、そしてやむを得ない事情、たとえば保安上どうしても買い上げを必要とするような炭鉱、あるいは当然に終掘、閉山となるような山等から出てくる離職者に対しましては、その労働力の性格上から、企業と政府の責任において安定した職業と生活を完全に保障することだと思うのであります。首切りだけはやる、そのかわり首切られた者に対しては何らかのめんどうを見るといったような最も資本家的な、きわめて非人道的な考え方に対しては、われわれは断固として反対であります。(拍手)もししかりとすれば、石炭産業の中でどうしたらば近代的な労働条件のもとで雇用を最大限に確保することができるかという、その具体的な政策にまず全力を注がねばならぬと思います。そして五千五百七十万トンの石炭需要量を再検討し、これを拡大安定させるということが第一の課題になるのではないでしょうか。もとより調査団が、低い次元ではありますけれども、五千五百七十万トンの需要を確保するために相当の努力を傾けられたことを認めるにやぶさかでありません。しかし、その努力にもかかわらず、三十四年度は日本の総エネルギーの中で三八%を占めていた石炭を、四十二年度にはわずか二〇%以下にこれを落とそうとしたのは、すでに指摘したように確固たる総合エネルギー政策というものを怠っておったからであります。エネルギー革命の行き過ぎを反省することなく、外国産石油に国内市場を撹乱されて、世界第一のダンピング市場になっている日本の今日の現状をそのままの形にしておいて、石炭政策をいかにいじくってみても、それは砂上楼閣以上の愚かなことであります。(拍手)
 周知のように、西欧諸国においては、労働者の雇用、国際収支、エネルギーの安全保障という三つの原則の上に、国内資源たる石炭を高く位置づけております。また、そのために輸入関税を引き上げたり、あるいは消費税を設け、石油価格を適正に規制いたしているのであります。さらにイギリスのごときは、行政措置を講じ、フランスのごときは石油専売制度をして石油をコントロールいたしておるのであります。ただひとり日本のみが空文化された石油事業法の中で、外国産石油で国内市場を撹乱されて、貴重な国内資源たる石炭を危殆に瀕せしめているのでありまして、まさに悲劇といわざるを得ないのであります。政府は、すべからく、この際原油関税の引き上げあるいは重油消費税を創設して、石炭政策の財源を確保すると同時に、石油価格の適正化をはかるべきであります。また、すでにざる法となっているボイラー規制法を強化して、さらにこれを延長すべきであります。また、来たるべき通常国会にはエネルギー基本法を提出して、総合エネルギー政策を確立し、石炭産業の地位を高め、その安定をはかるべきであります。そして調査団が答申しているように、石炭の需要と供給を調整するために当然に石炭の需給調整機関をこの際設くべきであります。かくして、私は、五千五百七十万トンの石炭需要をさらに拡大して、それだけ国内資源を確保し、それだけ労働者の首切りを減らし、それだけ産炭地の窮状を救うことが、今日できると確信をいたすのであります。(拍手)
 石炭労働者を石炭産業に最大限保有安定させる第二の方法は、増強群、維持群並びにボーダー・ライン層にある鉱山を、その破滅的な窮状から救い上げ、かつスクラップから維持、増強へと引き上げていくところの積極的な措置を講ずべきであります。
 もちろん、この責任は労働者ではなくて、資本家側にあることは言うまでもありません。日本の財閥形成の最大の源泉であった石炭産業の資本家たちが、将来に備えての何らの措置をとることなく、いかに石油の圧力があったとはいえ、今日の窮状を招き、石炭労働者とその家族を路頭に迷わせ、産炭地住民を不安のどん底に陥れている責任は、許すべからざるものがあると思うのであります。(拍手)それにもかかわらず、われわれがあえてここに増強、維持及びボーダー・ライン層の強化と引き上げのための積極的な政策を要求するゆえんは、そこに働く労働者、そこに住む住民の生活安定をわれわれは念願するからにほかならないのであります。(拍手)従って、政府は、経営に対する管理を強化し、鉱区の整理統合を果敢に進めるとともに、大正炭鉱に見られるような、自然的条件に恵まれながら、経営者の無能と民間金融ができないために再建できないでいるような鉱山のために、特別融資制度を設けるべきであります。従って、これらの積極的な施策が断行されるならば、当然千二百万トンのスクラップ計画は縮小されて、労働者と産炭地住民の不安は一掃されると思います。
 石炭産業の中で石炭労働者を最大限雇用する第三の道は、石炭の生産性向上に見合って労働時間を短縮するか、あるいは、これにかわる有給休暇制を設けることであります。
 政府は、今日まで、生産性向上が日本産業の発展のみならず、労働者の幸福にもつながるものであると説明いたして参ったのであります。しかるに、今回の答申は、一方において需要を五千五百七十万トンに押え、他方において、一人当たりの月出炭量を一挙二十六トンから三十八・六トンに引き上げることを要求し、全く算術的に労働者七万人の首切りという結論を出したのであります。能率を上げれば上げるほど、生産性を高めれば高めるほど、そのことはそのまま自分と仲間の首を切るということであります。これでどうして労働者が安心して働くことができましょうか。これでどうして労働者に能率を上げろということができるでありましょう。(拍手)私は、国際的水準から見ましても、現在の低い出炭量を高めることは、経済的に見ても技術的に見ても必要なことだと思います。さればこそ、生産性が高まるに従って、労働者の労働条件なりあるいは労働時間なりが改善され、あるいは短縮されるということは、当然の結論ではないか。従って、私は、ここに、労働時間を短縮するか、あるいはこれにかわる有給休暇制を国が援助して、労働者の幸福と雇用の安定をはかることを強く要望するものであります。
 私は、以上、石炭産業を安定させ、雇用を石炭産業の中で最大限保有するための三つの基本条件を申し述べました。しかし、政府あるいは同僚議員の諸君の中には、それまでして、それまで金をかけて、労働者の雇用を石炭産業の中に確保することがはたして必要であろうかという疑問を持たれることは当然だと思います。しかし私は、そうした方々に対して、たとい国内資源としての石炭の重要性という問題は別にいたしましても、少なくとも次の事実だけは真剣に考えていただきたいと思います。
 第一は、石炭労働者はすでに平均年令が三十七才に達している中高年層の労働者ということであります。従って、家族をかかえ、再就職もきわめて困難であります。彼らにとっては、住みなれた山に踏みとどまるということが、生活安定の最大の条件なのであります。(拍手)
 第二には、解雇する、首を切るということには膨大な財政支出を必要とすることは御案内の通りであります。解雇手当、訓練所の設置とその費用、再就職させるための職業あっせん、住宅建設、さらには雇用促進手当の支給等がこれでありましょう。しかも、こうした財政支出にもかかわらず、はたして完全な生活安定を彼らに保障することができるかどうか、これを断言することができるでありましょうか。ましてや、それが解決されたとしても、そのあとに産炭地の地域経済社会の荒廃という問題は残るのであります。
 私は、労働者を山元に保有するという政策が、社会的に見ても、はたまた財政的に見ても、最も合理的であると確認して疑わぬのであります。(拍手)しかしながら、われわれは、一人の労働者も離職させてはならないなどと考えているのでは毛頭ございません。
 石炭は、その性質上、採掘し尽くされれば、自然に終掘、閉山される運命を持っております。また、最近めっきりふえてきた災害事件の実態から見ましても、保安上買い上げを必要とする山もあります。また、石炭の埋蔵量等自然的条件から見て、どのように手をつけても近代化し得ない非能率炭鉱のあることも事実であります。それゆえに、三十七年度のスクラップ計画として三百二十万トンを、われわれも労働者もすでにこれを承認いたしたのであります。しかしながら、すでに述べたように、今日までの離職者対策というものはいわば失業救済であり、職業あっせんにすぎなかったのであります。企業の責任も政府の責任もきわめて不徹底であり、労働者の雇用や生活の安定を最終的に保障するという体制はどこにもなかったのであります。(拍手)
 われわれは、今なお三池争議のことを思い出すのであります。争議が今や重大な社会不安にまで発展しようとしたときに、新任石田労働大臣は、千二百名の失業者は、労働省とこの石田が完全に引き受けると豪語したが、しかるに政府は、一体どの程度の職業をあっせんしたのであるか。今なお数百名の労働者が路頭に迷っておるのであります。会社は第二組合を育成し、第一組合員諸君には耐えるに耐えられない差別待遇を加えております。いなそれどころか、千二百名の首を切っておきながら、逆に臨時夫、組夫一千名を繰り入れているというのは、一体どういうわけであるか。(拍手)われわれもまた皆さんの御同意を得て、去る国会において、雇用と生活の安定のない首切りはやらないという旨の決議をいたしました。それにもかかわらず、失業者の滞留は今なお数万を数えるのであります。ここに社会不安が起こるのは当然でありますが、政府も政治も、もうたよるに足らずという政治不信の声がほうはいとして巻き起こっておるということを見のがしてはならないと思うのであります。(拍手)
 ここにおいて、私は次の三つのことが絶対に必要だと考えるのであります。
 その一つは、政府が雇用と生活の安定について最終的責任をとる体制をつくることだと思います。そのためには、まず、すでに滞留している失業者に対し、またすでに内定している三百二十万トン・スクラップ計画に伴う離職者に対して、いかなる雇用と生活の安定措置をとるのか、ここに責任ある完全雇用計画とその裏づけの措置を提示することを私は要求いたします。(拍手)
 第二は、石炭労働者が中高年令層に属し、再就職がきわめて困難な状況から見まして、手帳制度を完備するだけでなく、さらに三カ年の就職促進手当制度を少なくとも労働者の定年まで延長し、生活安定を最終的に保障するということが絶対に必要だと思います。
 そして第三として、雇用と生活の安定のない首切りは絶対にさせないという、この国会の決議を実効あらしむるためには、石炭審議会の運営を満場一致制とすること、個々の企業においては労働組合の承認なくしてはスクラップできないということを制度化すること、これが私は最低の条件だと思うのであります。(拍手)
 石炭政策に関する最後の質問は、産炭地振興対策についてであります。
 言うまでもなく、産炭地対策の第一の課題は、市町村財政の破綻をいかにして救済するかということでありましょう。このためには、鉱産税、住民税の著しい減収に対する財政補てん、生活保護費等の社会保障費に対する国庫負担率の引き上げ、さらに、失対事業その他の地元負担の増大に対する軽減措置、すなわち、これら適切な政策が当然とらるべきでありますけれども、根本的には交付金制度の中で事務的、官僚的に解決をつけるということではなくて、産炭地に対する財政援助のための暫定立法措置をこの際とるべきであります。
 産炭地の第二の課題は、産炭地における中小企業者、商人、農民等の不振と不安に対する措置であります。特に、中小企業や商人は、事業不振に悩むだけでなく、貸し倒れの運命に立ち至っております。債権を保障し、金融の道を開き、さらに転廃業のやむを得ない者に対しましては、石炭労働者と同様に転業更生の方途を講ずることが急務であると私は考えます。(拍手)農民の最大の不安は、石炭の不振や鉱山の破産によりまして鉱害復旧を逃げられたり、引き延ばされたりすることであります。従って、農地、宅地等の復旧に対して、国がこれを完全に保障する体制をとり、さらに、事業を繰り上げて早期回復をはかることが必要ではないでしょうか。しかしながら、産炭地振興の恒久的な打開策は、産炭地に対して新しい産業を起すことであることは言うまでもありません。工場誘致のためのダム建設、敷地造成その他立地条件を整備するだけでなく、産炭地の発電、開発銀行や事業団を通ずるところの新産業の誘致、官営、公営工場の設置等、政府の力と責任において、各地域別、炭田別に具体的な計画を立てることが絶対に必要ではないでしょうか。総理は、国づくりを主張されますが、こうしたことにこそ国づくりの具体的な今日の課題があるということを申し上げておきたいと思うのであります。(拍手)総理及び関係大臣の答弁を求めたいのであります。
 以上、私は石炭政策の重点について質問をいたしましたが、その大部分はわれわれの積極的な要求であり、具体的な提案を含んでおります。そして、これらの提案や要求は、非常のことではありますけれども、自由主義企業のワクの中で保守党政府といえどもやればやれるぎりぎりの政策であると私は思うのであります。(拍手)もし、これを資本家や政府がやりおおせることができないならば、われわれはそのときこそ石炭国有化を提案せざるを得ないのであります。(拍手)池田総理の日ごろ言われる思い切った政策とは一体何か、この際具体的に御指示を願いたいと思います。
 次に、私は当面の外交政策について質問をいたします。
 池田総理は、本日の所信表明において、欧州旅行あるいは日米経済合同委員会の経過を抽象的に報告せられたにとどまりました。まことに遺憾であります。今国民がひとしく知ろうと願っている問題は、大野副総裁がきょう訪韓すると聞いておりますが、政府及び財界が着々と実績を積み重ねているところの日韓交渉の経過と真相であります。また、去る三日、日米貿易経済合同委員会の昼食会において、ケネディ大統領が中国封じ込め政策を日本に対して強く要望したことに対して、はたして日本政府はいかなる態度をとるかを、注目いたしておるのであります。
 池田総理は、新聞紙上ではあるけれども、記者会見を通じて、日韓会談をあせらずにやると表明していますが、事実はきわめて急転回をしているのではないか。三十八年度予算が通過してから、およそ三月ごろ、これを見計らって妥結するのではないかとさえ伝えられております。一体真実は何か、ここに日韓交渉の経過と真相を国民の前に明らかにする責任があると思うのであります。(拍手)
 また、従来までの対日請求権に対する日本政府の態度は、日本の対韓請求権が放棄された以上、純法律的なものに限定し、その金額も七千万ドルを主張しておったのであります。しかるに、去る七月の内閣改造以来、大平外相はこれを韓国の独立に対するお祝いの金と変更し、金額また一躍一億五千万ドルあるいは二億五千万ドルと引き上げて、最近は対韓焦げつき債権の四千七百万ドルも棒引きにして、実質三億ドルの弁済にまで妥協しているかに見えるのであります。まさに所得倍増どころか、請求権弁済の四・三倍増であります。何ゆえに純法律的な請求権弁済の態度が、無根拠なつかみ金主義に変わったのであるか。何ゆえに七千万ドルを一躍三億ドルに引き上げようとするのであるか。およそ交渉には客観的根拠がなければならぬと思います。政府の請求権交渉の客観的よりどころは一体何であるか、この際明らかにせられたいのであります。(拍手)
 元来、自民党歴代内閣の賠償や請求権あるいは債務に対する態度というものが、南ベトナムの賠償のごとく、タイに対する特別円の支払いのごとく、あるいはガリオア・エロアの対米債務の返済のごとく、高度の政治という美名に隠れて客観的根拠のないつかみ金主義に陥っていることは、いかに交渉とはいえ、厳に反省をさるべきであると思います。(拍手)ましてや、賠償や弁済が常にアメリカの極東戦略に利用され、財閥の利害関係に結びつくかのごとき暗い影を持っていることは、言語道断といわなければならぬと思うのであります。(拍手)
 われわれは、また、朴政権が日韓正常化の正当の相手としてはたして適切な相手であるかどうか、深い疑いを持つものであります。朴政権は、選挙を通じて正当に選ばれた張勉内閣をクーデターで倒してできた軍事政権であります。しかもなお、政治活動の自由は弾圧され、戒厳令は数日前ようやく一応解除はされましたものの、言論、結社の自由が極度に抑圧されていることは御案内の通りであります。はたして日本が交渉の相手政府として、朴政権が朝鮮国民の意思を代表する正当なものであるかどうか、全く不明といわざるを得ないと思います。百歩を譲っても、朴政権は来年五月に総選挙をして、八月には民政に移管するというのであるから、その後国民によって選ばれた政権と正常な交渉をするのが外交の常道であると言うべきではないでしょうか。(拍手)政府がむしろ交渉を急ぐというのは、アメリカの方針に従って朴政権のてこ入れをやろうというのがそのねらいなのではないだろうか。(拍手)
 私は、さらに、日韓交渉の一方的な促進というものが、朝鮮民族が悲願としているところの南北統一を妨げ、日朝友好の念願を破壊するのではないかをおそれるものであります。われわれは、まず、朴政権がクーデターを実行いたしたのは、朝鮮民族が南北二つの政府をお互いに認めて、その上で統一、友好の話し合いがまさに進められようとしたその瞬間に行なわれたという事実を重大視しなければならぬと思うのであります。(拍手)また、われわれは、北鮮政府が、対日請求権は朝鮮全人民の権利にかかわる問題であるから、韓国とのいかなる交渉、取りきめも絶対に無効であると声明いたしておることも、われわれの念頭に置かなければならぬ重大なことではないでしょうか。要は、明治以来わが植民地として搾取し続けてきた朝鮮民族に対して日本がなし得る最大のはなむけは、朝鮮民族が念願している南北の統一を促進するか、少なくともその統一を妨げないという友好的態度が必要であると思います。(拍手)われわれは、日韓会談を即時中止することを要求いたします。
 このときあたかも、去る三日、日米貿易経済合同委員会の昼食会において、ケネディ大統領が中国封じ込め政策を日本側閣僚に強く要求したことは、きわめて重大であります。欧米諸国においては、ベルリンを中心とする東西の対立があり、ソ連の譲歩によって緩和されつつありますけれども、キューバの緊張も依然として存在いたしております。アジアにおいては、中印国境問題が起こり、世界はこの帰趨を注目いたしておるのであります。このとき日本は、民間の努力によってようやく日中貿易が再開されましたが、これにまず反対してきたのは、アメリカの国務次官であることは御存じの通りでしょう。また、今日の日韓交渉は、反共戦線の結成として、いなNEATO軍事同盟構想への接近として、世界がこれを注目いたしておることは明らかであります。(拍手)
 こうした世界情勢の中で、ケネディが、今後数カ月の後に日本とアメリカが盟友としていかなる役割を果たすかを日本に強く要求したことは、きわめて重大であります。また、ケネディは、アメリカの中南米における役割、NATOの西欧における役割、SEATOの東南アジアでの役割を強調しておいて、最後に、日本の極東における反共的役割を要求いたしております。日韓会談の急速な展開とあわせて、ダレスがかつて要求したNEATOへの推進と考えることは、決して思い過ぎではないと私は思うのであります。(拍手)政府は、この重大な発言を、昼食会で出た大統領の単なるその場のあいさつとして、国民の目をごまかそうといたしております。こうしたアメリカの態度にこそ日本政府はきびしくこれに反対をし、日本国民はもちろん、全アジア民族の平和と友好の念願にとたえて、アジアの一員たる信念を全世界に表明すべきではないか。もし政府が、このきぜんたる態度をとることなく、依然としてアメリカに追従して、反共軍事体制に強力に進むというならば、その政府には、平和と中立の外交を批判する資格は断じてないと私は考えるのであります。(拍手)
 以上、池田総理の回答を求め、さらに再質問を留保し、私の質問を終わる次第であります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) 御質問の第一点は石炭対策でございます。各般にわたっての御質問でございまするが、お話の通り、石炭鉱業の再建は重大な仕事でございますので、御承知の通り、石炭鉱業調査団を設けまして、非常に御努力願って、適正な答申が出たのであります。私は、この答申に基づきまして、先ほど申し上げましたごとく、石炭対策を樹立いたしたのであります。思い切った政策でございます。画期的な政策でございます。(拍手)内容をごらん下さればおわかりいただけると思います。
 なお、今後の問題につきまして申し上げたいと思います。御質問の石油原油関税、あるいは重油消費税、あるいはボイラー規制法の今後継続等は、産業界における重要なことでございますから、いましばらく検討いたしまして、次の通常国会までに結論を出す考えでおります。
 なお、生産性の向上と解雇の問題でございまするが、これは石炭鉱業の現状からいってやむを得ないことでございます。私は、そのために労働時間を短くしたり、有給休暇制を置くということは、自由な経済の原則に反することでございます。国家経済のためにとらないのであります。
 なお、産炭地振興とか財政措置あるいは中小企業対策につきましては、現行法の範囲内でこれを行ない、またやれないことは新たに立法措置をとるにやぶさかではございません。やればやれることは全部やる考えでおるのであります。(拍手)
 日韓会談につきましての経過につきましては、所管の外務大臣より答弁さすことにいたします。私は、請求権の問題、漁業権の問題、法的地位の問題等々、懸案を一括して解決すべく、ただいま努力を続けておるのでございます。
 次に、今月三日の昼食会におけるケネディ大統領の言によりまして、いろいろお騒ぎのようでございまするが、これはとんでもないことでございます。米国に追従することを嫌悪しながら、大統領の昼食の非公式の言に、ああでもない、こうでもないと騒ぎ立てることは、日本国民の真意ではございません。(拍手)アメリカ大統領の世界観に基づいて、アジアにおける共産主義の脅威に言及し、これを阻止することについて、日米両国は盟邦として、将来いかにするかということを相談しようということでございます。私はケネディの言がなくても、アジアにおける共産主義の侵略に対しましては、できるだけ阻止しなければならぬというのが、私の年来の信念でございます。(拍手)これを、たまたまケネディ大統領が言われたからといって、ああでもない、こうでもない、あるいは数カ月後なんて翻訳を間違って右往左往することは、日本国民のりっぱな態度でないということをはっきり申し上げておきます。(拍手)
  〔発言する者多し〕
○議長(清瀬一郎君) 静粛に願います。
   〔国務大臣福田一君登壇〕
○国務大臣(福田一君) お答えを申し上げます。
 石炭対策に関しまする基本の方針は、ただいま総理から申し上げた通りでございまして、具体的な問題についてお答えをいたすわけであります。
 まず、エネルギーの基本法を制定してはどうかという御質問でございますが、これにつきましては、ただいまその必要性があるかないか、また、電力あるいはまた油等の関係においていかに処置すべきかを研究いたしておる段階でございます。
 なお、需給調整機関の設置のお話でございますが、これは一手販売あるいは一手買い取りの機関ということになりますと、これがいわゆる自由主義経済の他の産業に与える影響というものも考えてみなければなりませんので、なかなか困難な問題であると存じます。
 次に、スクラップをとりやめてスロー・ダウンをしてはどうか、今まで資本家が搾取をしておったが、その責任をとってはどうかというようなお話でありますが、私の現在見るところでは、現在の石炭経営者はそのような搾取などをしておる余地はないと考えております。
 次に、経営の管理の強化をはかって、そうして千二百万トンのスクラップ・ダウンの計画を緩和してはどうかというようなお話でありますが、これは一つ十分に今後慎重に検討をいたすつもりであります。
 次に、いわゆる二十六トンの能率を三十八トンまで引き上げた、そうして能率の増進をはかったためにこの首切りが行なわれるというのであっては、これは非常に労働者が心配だ、仕事をしておる上でも心配だから、そういうことをしないで、労働時間の短縮をはかったり、あるいはまた有給休暇制を採用してはどうかというお話であります。この石炭産業に対しまする今度の政府の方針は、総理が言われました通り、実は画期的な対策なのであります。こういうような問題を石炭産業にとることが他の産業にいかなる影響を与えるかということを考えてみますというと、にわかに賛成をいたしかねます。
 次に、また、石炭労働者の高年令の問題を考えよ、また解雇手当、訓練手当、住宅建設費などをかけるよりは、山元においてその金を与えたがいいではないかというようなお話でありました。このことにつきましても、やはり他産業との関係を考慮いたしますと、にわかに賛成することはできません。
 次に、埋蔵量――住宅がなくなった場合、あるいはまた炭がもはやなくなったとか、あるいは保安の見地から廃山するのはやむを得ないけれども、いわゆるやめるかやめないかというような線上にあるような問題については、特に政府が積極的な方途を講じたらどうかということを言われるようでございます。この点につきましては、いわゆる例の千二百万トンのスクラップ・ダウンと関連をいたしまして十分考慮をいたして参るつもりであります。
 次に、雇用と生活の安定ということに関連して、すでに今年三百二十万トンのスクラップ・ダウンをやるが、これに対する失業者に対してどういう措置をとるかということでありますが、これについては石炭審議会に今後この諮問をいたしまして、適当な、十分皆様方が安心できる措置をはかりたいと考えております。
 なお、この産炭地に対する、市町村に対する財政措置、あるいは中小企業者または農民が受けた被害に対する措置についての御質問でございますが、これは総理からもお話がございました通り、われわれは十分考慮をいたしておるものであります。
 最後に、産炭地に対して工場その他を誘致することによって、いわゆるその方面における人たちの生活の安定を考えてはどうかということについては、御趣旨はごもっともでありますから、一つ十分研究をさしていただきたいのであります。(拍手)
  〔国務大臣大橋武夫君登壇〕
○国務大臣(大橋武夫君) お答えの第一は、離職者に対する企業と政府の責任についてでございますが、政府は、さきの石炭鉱業調査団の答申に基づきまして、本年十一月二十九日、石炭対策の大綱について閣議決定を行ないました。今後は、これによりまして諸般の対策を進めることになっておるのでございます。政府及び炭鉱経営者が一体となり、広く国民一般各位の御協力を得まして、離職者に対しては安定した転換職場の確保に万全を期する方針でございます。このためには、合理化計画に見合う雇用計画を策定し、合理化の進展と雇用諸対策の推進とが十分均衡のとれるように措置いたしまするとともに、政府みずからといたしましても、政府関係機関への離職者の採用、また、政府関係事業及び政府関係の融資を受けまする民間企業への離職者の吸収に関する措置を十分に講じて参りたいと思います。
 このほか、新たに炭鉱離職者求職手帳制度を設けまして、就職指導、転職訓練、職業紹介等の諸対策を集中的に実施し、再就職の促進に努めるつもりでございます。
 なお、これらの雇用諸対策によりましても安定した職場に就職できない者がありますときに備えまして、就職促進手帳制度を設け、離職者が再就職するまでの問の生活の安定を十分に保障することにいたしておるのであります。
 次に、就職促進手当制度の延長についての御質問でございまするが、就職促進手当は、炭鉱離職者求職手帳制度の一環といたしまして、就職指導を受ける者に対し支給するものでございます。この就職指導は、専門の就職促進指導官を置きまして、各人ごとに、きめのこまかい、特別な職業指導を行なうことといたしておるのでございまするから、これにより、離職者を早期に再就職させることができるものと確信いたします。従来の炭鉱離職者の就職状況を検討いたしましても、ほとんどの離職者が離職後三年以内に就職いたしておるところでありまして、今回、就職促進手当の支給を離職後三年間といたしましたのも、最悪の場合を考慮した上のことでありまして、今後は、炭鉱離職者求職手帳制度を含みまする積極的な、画期的な離職者政策の実施を見るのでございまするから、離職後三年の支給期間内に十分再就職させることができるものと思われまするので、私どもは、特に就職促進手当の支給期間を延長いたす必要はないと考えておる次第でございます。
 最後に、個々の企業のスクラップを決定する場合につきまして、関係の労働組合の事前の同意を得るようにすべきではないかという点でございまするが、従来、個々の現場ごとに、労使間にこれについての慣行が存在をいたしておるのでございまするから、私は、これによって処理されるものと考えておる次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣田中角榮君登壇〕
○国務大臣(田中角榮君) 石炭対策のうち、産炭地における中小企業者の問題について、私に関する部分だけお答えを申し上げたいと存じます。
 産炭地における中小企業につきましては、三つぐらいに問題が分類せらるるわけであります。
 その一つは、売掛金についてであります。売掛金を直接何とかしてやるということは、なかなかむずかしい問題でありますので、税法上の準備金制度の活用をはかって参りまして、中小企業の税負担の軽減等の具体的措置を考えていくということが第一点でございます。
 それから、第二は、中小企業がその地域で事業を遂行していこうという場合の事業資金の問題でございます。これらの問題につきましては、政府関係金融機関等から特別の配慮を行なうことを考慮いたしておるわけでございます。
 第三点といたしましては、炭鉱の休閉山等によって、他に移転もしくは転業をしなければならない方々の資金確保についてでありますが、国民金融公庫に特別のワクをつくる等、特別の配慮をいたして参るつもりでございます。(拍手)
  〔国務大臣大平正芳君登壇〕
○国務大臣(大平正芳君) お尋ねの日韓交渉の経過でございますが、八月に予備折衝を再開いたしましてから、客観的に正常化への機運も高まって参りまして、正常化の前途に横たわりまする各種の懸案につきまして、ようやく交渉らしい段階に入ったという感じでございまして、目下せっかく努力中でございます。
 対日請求権は法律的なものに限るべきで、つかみ金的なものはいけないじゃないか、こういう御質問でございました。ごもっともでございまするが、法律論をやる前の事実関係の捕捉が不可能または不可能に近いものが多いわけでございまして、私どもは交渉をまとめて参る上から申しまして、必ずしも純然たる法律論だけにこだわるというわけには参らない事情は御了察をいただきたいと思います。
 朴政権の性格につきましては、われわれとしてとかくの論評は避けるのが賢明であると思いまするが、五十一カ国がすでに承認しておりますという事実と、この政権が明年夏の民政移管をめどといたしまして、鋭意その準備にかかっておるという事実を指摘するにとどめたいと思います。
 この日韓交渉は南北の統一を妨げるとか、あるいはアメリカの極東戦略ないしは財閥の利害と結びついておるのではないかという御質問でございますが、さようなことはございません。
 それから、ケネディ大統領の発言につきまして、それと対日関係について一言お答えいたしたいと思います。わが国とアメリカとの関係は、御案内のように、軍事的には厳粛にきめられてありまする安保条約に規制されておるわけでございます。それから、アジア地域における低開発圏に対する援助問題は、すでに歴代の政府が鋭意努力しておるところでございまして、これからも私どもは低開発圏に対する協力は惜しまないつもりであるわけでございまして、このような基本的な対米関係に更改をもたらすものではないと思っております。(拍手)
  〔国務大臣重政誠之君登壇〕
○国務大臣(重政誠之君) 鉱害をこうむっております農用地の復旧についての御質問であったと思うのでありますが、御承知の通りに、農地で鉱害をこうむっております面積は、約七千町歩もあるのであります。これの復旧につきましては、今年度におきましても、約十三億円程度の予算を計上いたしまして、その復旧をいたしておるわけでありますが、今回の産炭地の振興対策に関連をいたしましても、さらにこの復旧の速度を早め、通産当局、大蔵当局とも御協議の上、すみやかに災害の農地の復旧をいたすつもりでおる次第であります。
 なお、この際特につけ加えて申し上げておきますが、鉱業権者が無資力であるとか、あるいは不存在の場合におきましては、全額を国庫で負担をいたして復旧することになっております。(拍手)
○議長(清瀬一郎君) 勝間田君から再質疑をいたしたいとの申し出があります。これを許します。勝間田清一君。
  〔勝間田清一君登壇〕
○勝間田清一君 まず、石炭政策について、まことに未解決な、しかも基本的な問題であるにもかかわらず、未解決な問題があまりにも多いということに対してきわめて遺憾に思います。われわれは、決してこの問題を単なる争いといたす考えはありません。政府は誠実に考うべきであります。単なる答弁が上手であるとか、そういう考え方でこれを処置しては絶対にならないと思います。特に政府は、少なくとも三十七年度のスクラップ計画はすでに内定しておるのだが、政府の責任ある雇用計画を出すということが、これが答申案の骨子でもある。当然ここに、すべてに先んじて、かような責任ある雇用計画があるということをはっきり示す必要があるのではないか。これを怠るようでは、人の雇用を二の次に考えておるということを私は暴露したものにほかならないと思います。(拍手)もう一度、雇用計画についての政府の責任ある態度、計画は何か、はっきりお示しをいただきたいと思います。
 外交について、総理は、ケネディの昼食会における単なるあいさつを騒ぎ立てるのはどうか、こういうお話であります。しかし、皆さんも御存じの通り、この談話は、このあいさつは、決してそうしたものではないのであります。われわれは、騒ぎ立てるのではない。国民が心配をいたしておるのであります。(拍手)その国民に答えるべきであります。私は、はっきり申しましょう。まずお尋ねをいたしますが、数カ月後とは日韓会談終了後ではないか、この点を明らかにいたしていただきたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 先ほど申し上げましたごとく、アジアにおける共産主義の脅威に言及いたしまして――ケネディ大統領がアジアにおける共産主義の脅威に言及し、この脅威を阻止するために日米両国が盟友として将来いかに役割を果たせるかにつき考慮を払うことができることを希望する、と言っておるのでございます。共産主義の浸透に対しまして、これを阻止するということは、私年来の主張でございます。(拍手)それと同じことを言っておるのでございます。しこうして、日本でこれが心配せられたのは、あなたがおっしゃるように、日韓交渉とか日中貿易に直接関係があるかのごとく思い過ぎたことが騒ぎのもとになったと思うのであります。先ほど外務大臣も申し上げておりますように、日本の防衛につきましては日米安保条約がございます。貿易につきましてはわれわれがきめることでございます。その点間違いなく、御心配のないようにはっきりしていただきたい。(拍手)
 また、あなたは、マンス・アヘッド、こういうことを、数カ月後に、こうお考えになったようでございますが、これは、ある新聞は誤訳と言っておりました。また、外務省では、かかることを数カ月後と翻訳いたしません。将来という意味でございます。
  〔国務大臣大橋武夫君登壇〕
○国務大臣(大橋武夫君) 今三十七年度におきまする三百二十万トンのスクラップ化に伴いまする整理人員は約八千人と見込んでおります。これらの離職者に対しましては、政府関係機関において採用するもの、ボタ山処理等の産炭地域振興事業に吸収するもの、産炭地域振興融資による民間企業へ雇い入れを勧奨いたしますもの、さらに、職業訓練及び職業紹介の実施並びに住宅の建設、雇用奨励金等の援護業務の強化によりまして、広域職業紹介によって就職せしめるもの等を合しまして、再就職の意思と能力のありますものに対しましては、全員他の安定した職場につくことができまするよう、万全の対策を講ずるつもりなのでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(清瀬一郎君) 石山權作君。
  〔議長退席、副議長着席〕
  〔石山權作君登壇〕
○石山權作君 私は、日本社会党を代表いたしまして、当面緊急の問題となっている人づくりと教育問題外三点について、池田首相を初め関係大臣に質問いたします。
 まず最初に、人づくりと教育の問題について首相と文相にお聞きいたしたい。
 国の繁栄のもとは人にありというので、池田首相はかなりに人づくり問題を随所で発表されています。長期政権を目ざす首相としては、高度成長経済は成功だと、口を開けば弁解し、物だ、金だと、手品のように金利と公定歩合を動かしながらも、しかも、株式市場にだけ興味があるのではないことを国民に示し始めたことは御同慶だと思います。だが、人づくりをすると一口に言っても、ほんとうは問題はそう簡単ではありません。経済に明るい池田首相の経済行為のように、金が不足ならオーバー・ローンけっこうだと、日銀に紙幣を増発さして金繰りをするようなわけにはいかない。時間もかかり、資金も必要ですし、大いなる良識もまた必要なようです。しかし、池田首相が困難を承知で人づくりに精を出すということは、まずたたえていいことでございましょう。
 ただ、この首相の人づくりの熱意を誤解して、人づくりにはまず人をつくるもとである教育者と学校を文部省の支配下にしなければならぬと、大学管理制度改悪を考えた一部の人たちの昨今の行動でございます。まことに官僚独善と申しますか、しかも危険な考え方です。十二月八日は一昨日過ぎましたが、われわれ日本人にとって、昭和十六年のこの日は忘れてはならない日でしょう。満州、北支事変から太平洋戦争へ、この一連の歴史こそ、日本国民の今日の反省であり、あすへの行動に対する規制でしょう。私どもが大学の管理を論じ、学問の自由に検討を加えるとき、忘れてならぬのは、私どもが経験した過去のこの厳粛な事実でございます。(拍手)このことを基礎にして、今文部省が唱えている大学管理制度を観察するとき、大学の自治制度が破壊され、従って学問の自由が保障されそうもないと私どもは判断をするのです。国の経費をもって通常される大学は、国の力、言いかえれば文部省の官吏の支配を受けるのは当然だという、そのような発言が政府側の一部からもなされている。これが真実なら、生活保護法を受ける者は、常にその台所や寝室をお役人の支配にゆだねることとなりそうでございます。
 かつて、わが国の権力者は、満州事変以来、学問に一つの方向を求め、それにこたえ得ない者は、学者であれ、芸術家であれ、えせ国民扱いにしました。学者は、その大学を追放され、著書の出版は許されず、個人の書斎さえ警察の人たちに見舞われるという、自由を欠いたのでございます。あるいは文相は言うでしょう、それは昔のことだ、今度の改正は違うのであると。しかし、国の意思を代行したかのごとく常に文相が大学の人事やあり方に容喙し、文部官僚が少数グループの勢力温存のために大学内部に立ち入るようになる不安を私は感じてならないのであります。文部省の考えなるものは、善意にとっても、学者や研究者の持つ特質を締めつけ、その能力をそぐものです。大学の自治の抑圧は、いたずらにそのときどきの瞬間的な判断を学園に求めることに終わって、大局的な日本の方向については問題が重大であればあるほど黙して語らずという人や、権力者にこびる者しか大学には残らないでしょう。そう考えられてなりません。政府は、学問を法律と規定で牛耳ってやろうなどということはやめるべきです。われわれは、学問の発展のためには、ますます国費で研究費を増加し、研究者が外国などに永住しないように個人の給与の増額もしたい。このことがわが国の発展と学術文化に寄与することと思うものです。政府特に文部省のこれらに逆行するかのごときは、われわれとしましては理解できません。
 政府が大学管理制度改悪に意欲を燃やすなら、その意欲をもって、東京等大都市に集中する大学その他の研究所を地方に配置する努力をしたらいかがなものですか。地方文化のためにも役立ち、人口の調整にも役立つことであるが、この点についてもお聞き申したい。
 池田首相は、青少年は国の宝だとよく言っております。だから青少年には希望を持たせねばならぬなどと施政演説に再々申しておられる。しかるに、この国の宝なる青少年の行動については、いろいろの批判があります。もちろん一部の者であるが、犯罪を犯した場合には、無軌道で無慈悲で、むざんにも通ずる者が多いといわれている。山に登る者は思慮に欠けるために死亡者が多く、美しき山を荒らされ、よごされていると嘆かれてもいます。この原因と、これを導くことは、常々の首相の言葉からしても、重大事項の一つであるはずです。高校入学に胸ふくらませている少年が四十万人も来年入学できぬとすれば、政治が貧困の証拠です。入学試験など、試験々々と追い回され、進学不能のために自殺した青少年が、三十六年では二千名をこえると警察庁では発表したようだが、実数はこれをこえていると推定されます。これらのことは、気の毒などと言って済まされぬことです。責任ある政治家であるなら全力を傾けるべきでしょう。
 経済が安定せず、失業者が多数になれば、池田首相が幾ら日本経済は繁栄だと言っても、世相は険悪になるのです。勉強したいという少年に、いたずらに試験制度をもって、お前は劣等生だから高校に入る資格はないというレッテルを張るのは、温情のない証拠です。少年も、高校を終わるころは、世相に対する批判も、みずからの力の判定も、それぞれできる素養なり年配になります。それまで、家では親が、国では責任ある政治家が、高校教育をなし遂げさせてあげねばならぬはずです。おとなの失業者のごとく、世の荒波にほうり出すのは危険しごくでございます。科学技術革新の時代に即応して、国の繁栄のために大いに人づくりを叫び、欧州を回って、いささかキリスト教の人道主義や民主主義を新しく発見したがごとき発言をする首相に、高校希望者は全員入学を、そう期待することは、子を持つ親の一種の悲願となっているが、首相はこれにどうこたえますか。(拍手)
 わが党は、「すべて国民は、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」と規定した憲法の教育権利思想を堅持し、その実現に努めたいのです。しかるに、高校急増事業は、全国知事会の分析にもあるように、市町村にも大きな財政的しわ寄せとなって現われ、府県は高校新設の市町村に対し敷地の寄付を強要しているのは常識とされております。地元市町村に建築費の三分の一負担を条件としているのも全国的傾向です。やがて新設された高校の内容設備は、父母の負担として地元住民にのしかかってくることは必至でありますので、今のまま放置すれば、教育の地域差をますます大きく招来し、堅持せねばならぬ教育の機会均等がはなはだしくくずれ去る様相も見えますので、次の提案をいたします。
 一、高校設立や内容設備または教員の増加等についての必要経費は大幅に国庫負担として、地元負担にたよらないようにする。
 二、高校生に対する奨学金制度については、支給額と支給対象をふやすこと。
 三、生活保護家庭の子供の高校進学を理由に生活保護の打ち切りを行なわないように改むべきでしょう。
 首相は、先ごろ人づくりについての懇談会を開いていろいろお話や放談をされたようでございますが、集まった人々は財界その他の名士で、人を使用する側に立つ人が多いのです。何々従業員という働く人の代表者のいないのはさびしいことです。だから言われるのでございますが、中学浪人を少しでも多くつくって、安い賃金で年若くすなおなことをいいことにして、働きバチをつくるのだと言っております。あるいは、もっと悪質な人は、高度成長経済の破綻の穴埋めにするのだとも申しております。しかし、私は、池田さんをそんな小型なけちな首相とは見ておりません。きっと別個の考えがあるのだと思っております。よき人づくりについてはお互いに関心が深いのでございますから、この際懇談会のあり方も承りたいものでございます。
 第二には、物価値上がりに対処して、首相、関係大臣に、物価値上がりによって被害を受けつつある国民生活にいかなる緩和政策を施そうとしているかをお聞きいたします。
 年来の公共料金を含めた物価値上がりは、高度成長経済の鬼の落とし子といわれております。ディスインフレは企業促進に役立つものだと言う者もあるが、物価値上がりを直接の生活の上でかぶらねばならぬ国民は、企業家や政府の政策の犠牲になってきたということでしょう。政府機関でさえ、消費物価は前月比一%の値上がりをしたとつい先ごろ報告をしております。しかし、相変わらず卸物価は横ばいを示していると報告することを忘れておりません。池田首相は、いつもこの卸物価指数をにしきの御族にして、経済は安定していると言うが、国民の身辺は、きのうもきょうも、電力だ、新聞だ、交通費だと、値上がりに囲まれています。あすはお米の値上がりなどでまだまだ消費物価は値上がりするだろうといわれております。それなのに、収入が固定し、賃金収入はむしろ低下を来たしている。また、石炭企業を初めとする企業合理化のために職場が失われたとするならば、物価値上がりは、文字通りこれらの人々に対しては生活の楽しみを奪い、苦痛のみを残すことになるのです。政府は、今労働対策としては適切な手段を講じているとは見えないのですが、物価値上がりに対しては今後いかなる建前をもって進もうとしていられるか。(拍手)特に消費米価の値上がりについては、連鎖的に物価に影響し、失業者、低所得者には大きな打撃を与えることになっているが、この打撃はよく防ぎ得る自信を持っているのですか、その方策を承りたいのです。
 このように国民生活を圧迫する消費物価の値上がりが続いていながら、日本経済は今デフレの暗い影に悩まされております。高度成長経済が、過剰設備投資からインフレへと予定のコースをたどると、あわてて金融引き締めが行なわれたが、そのあとの現象として、企業家や生産者は、生産過剰による価格暴落の影におののいております。過剰設備をほとりだらけにした工場をながめて、世の人は、これを不景気だと言っております。財界の指導者の顔つきは昨今晴れ晴れとしません。これは確かにインフレの影に静かに忍び寄るデフレの黒い影を見出したからでしょう。それにもかかわらず、ソ連も中共も北鮮もだめだとみずから好んで門戸を閉ざすようでは、デフレ恐慌の黒い影を追い払い、貿易の不振を打開することは不可能でしょう。
 わが党は、池田首相に、高度成長経済自体の矛盾と日本の置かれた立場からして、かような経済政策を持続することは、やがてわが国の経済は苦況に立つとその政策を批判したが、残念ながらその通りになったのです。われわれは、この苦況打開の方法として、第一に国内市場の拡大と安定をはかりたいのです。そのために、第二には国民の所得を増加するようにしたいのでございます。これは算術的な統計の国民所得ではなく、国民の多数を占める低所得者階層の所得を大幅に増して、その旺盛な購買力によって国内市場を開拓するのです。第三には、もちろん海外貿易の発展や投資も並行的に行なわれねばならぬが、かつてドイツのエアハルト経済相が来日したときの忠告の一つとして、日本経済の欠点は安定性のないことだが、これは国内市場の狭隘にあると言っていられたことは、今もって大いにわれらの共感を呼ぶものです。責任ある政府が、苦悶する経済界にどんな指針を与え、この不況を脱却する積極政策を持ち合わせているかどうか承りたいのです。(拍手)
 私どもは、国民の多数を占める低所得階層の所得増加によって国内市場の開拓をはかると申しましたが、その一環として、政府が今回提案されました公務員並びに政府機関の給与法について、首相並びに労働大臣にお聞きいたします。
 今、数字等を示している時間がないので残念ですが、首相はヨーロッパを回られまして、日本が低賃金でないことを相手国に是認させたと言っておられるが、その対照のイタリア国は、ヨーロッパでは三流、四流の賃金です。安いのでございます。そのイタリアより日本は低いのですから、日本国の賃金は欧米先進国の水準よりははるかに低いのです。公務員の給与は、人事院が法律と伝統的操作で、この低い賃金、民間の賃金よりもいつも下回った勧告をしております。しかも、支払い期日は、このインフレ下にもかかわらず、査定された日時を一年あるいは一年半以上も隔たるという不合理を繰り返してきておるのです。今回の勧告もその例に漏れません。だから、この不合理を公務員諸君は強く訴えたいのですが、公務員には労働三権がないのです。労働三権のかわりとして人事院が設けられ、人事院はきわめて政治には中立的で、正しい給与勧告をするはずだといわれているが、どうも政府の権威に屈していると、公務員の方々は昨今言い始めております。政府は、人事院の勧告は尊重すると言ったが、尊重するのは御自分に都合のいいところだけで、無数にある各省の何々審議会、委員会の答申と同じく、手軽に取り扱われております。大臣たちは、口を開けば、公務員の規律、能率を言い、国民の公僕たれと言う。しかし、よき公務員を育て、その生活の安定と向上をはかるには、物資の裏づけが必要でございます。その物資の裏づけの給与にそっぽを向くのは、一体何を意味するのでしょう。(拍手)毎年々々部局の新設や人員増加にはやっきとなる各省の幹部だが、事給与の問題になると、あなたまかせになっていることも解せないのです。
 いずれにしても、今回の給与は、民間給与をかなりに下回った勧告です。政府がこれを改悪し、実施期日の五月一日を今回またも十月一日としたのは、政府が公務員に対する愛情のいかにも薄いことを如実に示したものと思います。(拍手)人事院が実施期日を明記したのは今回が三度目であるが、政府の態度は馬に念仏という漫画を思わせてなりません。人事院も、公務員も、国民のわれわれも納得ができません。これは、権利と義務の区別を判然とつけることが、政府の行政の始まりだからでございます。勧告の内容については、初任給と期末手当を大幅に引き上げ、年来の公務員の要望にこたえ、実施期日を五月一日に繰り上げることを強く要望いたします。
 ILO八十七号批准は、やがて行なわれるでしょうが、それはいつのことでしょう。それまで公務員に団交権を与えて、公務員の声を政府が聞く必要が、公務員の規律、能率の問題にも関係する緊急事項となりつつあることを考えるのです。政府の見解をお聞き申します。(拍手)
 第三としまして、中小企業年末融資等について、首相と大蔵、通産大臣にお聞きいたします。
 従来の金融引き締めを中心とした景気調整は、中小企業の段階に著しく浸透し、最近の公定歩合引き下げ措置等にもかかわらず、資金事情は悪化しております。特に繊維、鉄鋼、造船、工作機械、重電機、自動車などの部門では、下請中小企業に対する検収期間や手形サイトの長期化が目立ち、代金決済の悪条件が長期にわたって持続されているため、資金繰りはきわめて困難になっております。さらに受注の減少、受注単価の引き下げ、金利負担の増加などの悪条件が重なって、採算の悪化傾向は普遍化しております。この面からしましても、年末より明年一月から三月にかけて資金繰りが圧迫され、経営破綻が憂慮されてなりません。
 これに対して、中小企業向け年末融資措置は一応出そろい、資金手当も完了したとされているが、これでは至って不十分であります。中でも、政府関係の中小企業専門金融機関に対する追加財政資金が昨年度よりも二七%減少し、資金供給の大部分を金利の高い一般市中金融に依存せざるを得ない事態は、まことに遺憾といわねばならぬ悪現象です。従って、早急に次の金融措置を追加し、その万全を期すべきです。
 第一には、政府機関の三金融機関に対しさらに財政資金を追加供給すること。これによって貸付資金を増額するとともに、金利の引き下げをはかるべきでございます。特に商工中金については、共同化促進の見地から、他の公庫との金利格差を是正する必要があります。また、国民金融公庫については、支所の増設、職員の増員によって機構の拡充をもあわせて考慮すべきでございます。第二には、日銀による買いオペレーションをさらに信用金庫、相互銀行にも拡大適用し、中小企業金融の円滑化をはかるべきです。第三に打つ手は、一般市中銀行による大企業向け融資については、系列にあるといなとにかかわらず、下請中小企業に対する支払いにまで及ぶよう行政指導を徹底して、大企業の下積みにあえぐ中小企業の救済に一段と努力すべきです。
 スーパーマーケット対策についてお尋ねいたします。一般小売商店は、デパートの進出とともに、最近特に大資本によるスーパーマーケット進出によって、その存在を脅かされています。アメリカ資本による大規模なスーパー網設立計画、住友商事等大資本によるスーパーの建設など、その進出は最近顕著です。政府は、この事態から、中小企業、一般小売商店の危機を救うために、当面とりあえず大資本によるスーパー進出を規制するための緊急処置をとるべきであると思います。
 四としまして、高度成長経済と為替・貿易の自由化の欠点を補う施策について、首相、農相、企画等の関係大臣にお聞きいたします。
 高度成長経済は、中小企業の所得を少しくふやしましたが、大企業の利潤との格差は著しく開いたのでございます。為替・貿易の自由化は、骨のある中小企業は系列化されて、残されたのは弱小企業となりつつあるから、企業格差はなおもはなはだしくなりました。しかも、この数はまことに多いのだから、中小企業だからといって政府はそっぽを向き得ないでしょう。この中小企業の現実を救済することと、あすへの発展の、二面の要素について御説明を願いたいのです。
 池田首相の時代になってからは、地域格差もまたひどく目立ってきました。成長経済は、一地域に過度の集中投資を行なわせる結果になったからですが、消費都市の遠い土地、港の整備されていない土地は、すべて昔のままに据え置かれたようなものでございます。貧しい土地、寒い土地はほうりっぱなしになったといってよろしいでしょう。今度政府の構想にある新産業都市の指定などが現実的に動き始めたら、指定されないおくれた都市は、ますます後進地になってしまうでございましょう。
 かりに成長経済の現われの一つとして国鉄が新東海道線を生んだものとするならば、そのための千数百億を充当するために、東北の鉄道施設工事などは一斉にストップに近い形で押えられております。それも日本海方面に比重がかかって、昭和四十年にならなければ、電化も複線化もしない。操車場もそのまま、安全装置は手を抜いて、列車を増発して、もうけ主義に徹しております。だから、先月二十九日に、羽越線では貨物列車の正面衝突が起きたのでございます。土地の人は、その衝突について、政府に対して強く不満の意を表しております。交通輸送の多大なる不便と、その施設は古くさくよごれ、あまつさえ、生命の安全も脅かされているというのが実情です。国鉄職員、動力車労働組合員、あるいはお客様が、生命を常にかけなければ任務達成ができないのでは困ります。国鉄は、今こそ国民に、安全輸送と安全運転を誓うべきでございます。これは道路であれ、港湾であれ、いずれの公共施設にも通ずる事柄でありまして、ある大臣のように、瀬戸内海を中心として集中投資をしろというならば、貧しい土地、寒い土地は、文化果つる土地として退化してしまうでございましょう。
 首相や企画長官の言う地域格差の是正は、言葉とは別個の化けもののように経済は動いて、格差を広げているのが現状です。いや、やがては恩恵はその土地にも及ぶだろうと、首相などは上手に弁解をなさるでしょうが、不遇な者は、おおむねそれを待つことなく死んでしまい、若い人は都へ都へと土地を捨てるでしょう。東北六県おしなべて人口が減少しているのは、その証拠でございます。このことは、池田政権になってから顕著なのですから、東北の人は口が重く、なかなか口に出さないのですが、保守党員を含めて首相を恨んでおります。(拍手)ですから、この際、首相の夜の眠りをよくするためにも、眠れる資源開発、人口分散の意味等も含めて、政府の公共投資は、現在の経済効率のみを目途とせず、再考されるべきであると思います。(拍手)
 高度成長経済は、企業間の格差に著しく差をつけましたが、これを追いかけた為替・貿易の自由化は、各産業間にも著しく差をつけ始めました。農業や鉱山業などが弱い体質をさらけ出して、自由化のあらしにおびえておるというところでございます。
 その農業について、農林大臣にお聞きしたいのですが、農業と他産業従事者との所得格差をなくするためには、農業構造の改善を大規模に進めなければならないと思います。しかるに、政府が進めようとしている農業構造改善事業などは、補助率が低く、融資の条件が悪く、しかも農畜産物の価格が不安定のもとで行なわせようというのですから、政府が指定した地域においても、指定の返上や実施の延期が相次いで起こり、パイロット地域は、政府みずから当初の計画を大幅に縮小せざるを得ないというのが実情でございましょう。(拍手)池田首相は、第三十八回国会で、農民を大切にすると答弁いたしましたけれども、事実は農民が大切にされていないということを示しておるようでございます。首相はヨーロッパをお回りになったようでございますが、農業構造改善事業に対して、オランダでは全額国費で行ない、事業完了後には、農民がそのうちの三割を三十年で償還するという形をとっております。また、西ドイツの構造改善事業の融資は、年利三分、二十五年償還という条件でございます。わが国では、国の補助率は実質四割、金利は年六分五厘、農民は安心して改善事業などに取り組むことができないでおります。政府が真に農業構造改善事業を推進しようとするならば、まず主要農産物に対する生産費と所得を補償する価格支持制度を確立し、構造改善事業の資金ワクを大幅に拡大し、補助率を八割程度に高め、残余の融資については、年利三分五厘、五カ年据え置きの三十年償還にするなど、抜本的な施策を講ずべきであると考えますが、どうでございましょう。(拍手)
 また、来年度は、砂糖の自由化が行なわれるだろうと予測されておりますが、わが党ならば、国内のテンサイ糖を考慮に入れ、輸入砂糖の過剰利潤を国が吸い上げる建前からいたしましても、砂糖を専売制度にしたいと考えております。政府はこの点いかに考えておりますか。
 農地被買収問題もかなりに進捗していると承りますが、どう取り扱われるのでございましょうか。戦争によって被害を受けた方たちは、条件こそ違え、数多くおります。最近は在外資産に対する補償請求の陳情も出始めました。戦争犠牲者に対して政府は不平等であってはいけないでございましょう。これらの調整について腹案を示していただきたいと思います。(拍手)
 これは通産大臣にお伺いしたいのでございますが、日本の地下資源は体質的に弱いといわれているが、金属鉱山、石油資源等を自由化のあらしから守り、将来の発展のためにも、探鉱事業は政府の鉱業政策の唯一のかなめと思います。探鉱事業団のもくろみもあると聞くが、大蔵省は反対だとも聞いております。この点について、所管大臣の判断をお聞かせ願いたいと思います。
 最後に、池田首相や政策推進の方たちは、高度成長経済は成功、為替・貿易の自由化も成功裏に進捗し、ヨーロッパでは日本を大国扱いにされたと言っているが、バイ・アメリカン、シップ・アメリカンの鉄則は、日米経済会議でも破れなかったのですから、日本の政治、外交から観察しましても、経済は行き詰まっているし、この行き詰まり風なおも進行すると考えた方が、問題を処理する上には大切のようです。だから、産業界といわず、あらゆるところに合理化が行なわれ、人員整理、賃下げ、事業所閉鎖なども起こることが想定されます。職を失った者や、倒産者や、低所得の人たちは、不満の声を上げるでしょう。国鉄の動力車労働組合の安全運転の強い要望、失業対策打ち切りに反対する子を持つ母親の熱望、あんまりひどい合理化だ、首切り絶対反対などと叫びながら、ときには、どうかして下さいと、これらの人々は国会陳情に団体行動をとるかもしれません。今まで自民党政府は、何か大衆が行動を起こしますと、治安立法で弾圧する動きを示しますが、みずからの政治の貧困をひた隠しにするために、国民の国会に対する陳情の権利に制限を加え、国民の自由なる考えや行動を法律で押えようとするなどは、民主主義を唱える政府のとるべき方法でないことを強く主張しまして、私の質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 御質問が非常に多種多様でございます。従いまして、答弁漏れがございましたら、またあとからお答えすることにいたします。
 まず、人づくりの問題でございますが、私は、学問の自由を保障し、研究活動を十分にさしてこそ人づくりができるのでございます。大学の自治はもちろん認めます。ただ、大学の管理運営につきまして適正を期したいというのが、私の念願であるのであります。
 なお、高校急増対策はもう大体できておると私は見ております。これは別に外国の例を言うわけではございませんが、全員高校入学なんかは、アメリカを除いては、ヨーロッパでは義務教育を終えた人の三割五分ぐらいが高校入学でございます。日本は六割から、今日で一〇〇%というのは、ちょっと外国では受けぬようでございます。しかし、教育は必要でございますから、できるだけの努力はいたします。
 次に、人づくりの懇談会のあり方でございますが、これは思想界、教育界あるいは報道関係、一般評論家、あるいは労働関係等の人に集まっていただきまして、いろんな点につきまして忌憚のない意見を申し出てもらうことにいたしております。
 また、物価の安定につきましては、今春閣議で決定いたしましたように、生産、流通、金融、各方面から物価の安定をはかっていく対策、今回の予算につきましても、こういう点に特に留意いたしたいと考えております。
 なお、今の経済情勢に対しまする批判は、先ほど私の所信表明で申し上げた通りでございます。非常に高度成長をして、今停滞ぎみでございまするから、これに対しまして、ぼつぼつ前進の方法をとっていこうというのが私の考えでございます。
 また、賃金問題につきまして、低賃金と言っておられまするが、過去一年間に、前年に比べて賃金水準が一〇%以上上がるようなところは世界にはございません。非常に賃金が上がりつつあります。しこうして、しかしまだ、アメリカに比べればイギリスもドイツも低賃金です。イギリス、フランス、ドイツに比べればイタリアは低賃金でございます。日本も大体イタリア並みだと思います。これは比較論でございまして、私は、日本の産業組織あるいは労働の条件等々から考えて、少なくとも、三年半前に来て日本は低賃金なりと言ったエアハルト経済相は、私に会うとすぐ、もう日本は低賃金とは言わぬと言っておるのであります。どうぞこの点を御了承願いたいと思います。
 次に、中小企業対策でございますが、金融その他につきまして、できるだけのことをいたしておるのであります。なお、高度成長と産業の格差、私は産業の格差あるいは地域格差あるいは規模別格差は、高度成長によってのみ解決し得ることだと思うのであります。高度成長によりまして企業のいわゆる賃金格差はだんだん解消されておることは、もう目に見えておるのであります。また、業種別格差は、私は農業に対して、中小企業に対して十分注意を払わなければならぬということは二年前に言っておることでございます。この格差は初めからわかっておることで、これをどうしようかというのが今の問題であるのであります。私は高度成長の中途におきまして格差をなくし得ることを確信いたしておるのであります。
 次に、砂糖の自由化の問題につきましては、私は自由化いたすべく検討を加えております。
 農地補償につきましても、昨年のことからいろいろ考慮をめぐらしておりますが、近い将来に結論を出します。
 なお、経済が行き詰まっておるとか不況とかいう話でございますが、これは私は、不況だとか行き詰まっているというのはどうかとしているので、停滞ぎみ、高度成長中の停滞ぎみでございます。これは将来の発展への段階だと考えております。(拍手)
  〔国務大臣福田一君登壇〕
○国務大臣(福田一君) お答えをいたします。
 中小企業の資金繰りの悪化の問題でございますが、年末金融に対しましては、すでに商工中金、国民金融公庫等に対しまして二百五十億円の手当を十月中にいたしました。また、百五十億円の買いオペレーションもやっておりますが、お説のように、一月から三月へかけての対策につきましては、いささか心配する面もございますので、十分この情勢を見きわめまして、大蔵大臣とも相談の上、適当な措置をとらしていただきたいと思っております。
 それからスーパーマーケットの対策でありますが、これは一面におきましては、消費者に安い品物を提供するというような利益もありますけれども、これが小売業者に非常に大きな弊害を与える場合もあるのでありますから、あまりに弊害が起きた場合には、適当な行政指導をしなければならないと考えております。と同時に、また小売業者におかれても、合同して、こういうようなスーパーマーケットをつくるような措置をとってもらいたいと考えておる次第であります。
 なお、金属鉱山や国内石油鉱業が、自由化によって非常に今影響を受けておる。これについて探鉱事業団をつくってはどうかということでございます。われわれといたしましては、ぜひともそういう事業団をつくるべく予算折衝を行なって実現をいたしたいと考えております。(拍手)
  〔国務大臣荒木萬壽夫君登壇〕
○国務大臣(荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。
 総理大臣からきわめて簡明に御答弁申し上げまして、尽きておるようなものでございますが、補足的に申し上げます。
 大学の問題は、昭和三十五年五月二日以来、中教審で検討してもらっておりましたのが、結論が出ましたので、できるだけ慎重に、かつすみやかに検討を加えまして、御審議願いたいと存じておるのであります。
 高校急増問題につきましては、おととし以来、及ばずながら対策を立てて今日に参っておりますが、今年度の各都道府県の計画実績を見ますると、政府側の考え方とある程度の数字上のそごがありますので、知事会及び文部省、自治省、十分相談いたしまして、約七十億近い財源手当を本年度分として追加手当をしたいということで、およそ話がまとまっておるのであります。それでもって、今後のことではございますが、三十八年度の総予算と合わせまして、中学卒業をして高校進学希望者の大体九六%ぐらいは収容できる見込みでございます。(拍手)
  〔国務大臣田中角榮君登壇〕
○国務大臣(田中角榮君) お答えいたします。
 中小企業の年末金融の問題につきましては、御質問の通り、政府も重大な関心を持ち、これが円滑化に鋭意努力を払っておるわけでございます。先ほど通商産業大臣がお答えを申し上げました通り、年末金融の具体的なものといたしましては、中小企業三機関に対しての政府融資と買いオペレーション百五十億を含めて、四百億の手当を行なっております。それに加え、市中金融機関も五千億になんなんとする年末中小企業対策を考えておりますので、この状態では、金融の環境好転もありまして、無事越年できるという見通しに立っておるわけでございます。しかし、現実の問題に対しては十分注視をして、配意をし、遺憾なきを期して参るつもりでございます。
 なお、中小企業の第四・四半期の問題につきましては、通産大臣が申し述べられました通り、必要に応じて所要の処置を行なう考えでございます。
 それから金利の傾向についての御質問がございましたが、御承知の通り、十月、十一月にわたって公定歩合の引き下げもございましたし、なお金融情勢も自然に好転をいたしておりますので、金利も漸次低下の傾向にあって、中小企業の金利負担も、御承知の通り下がっておることは事実でございます。
 それから、日銀による買いオペレーションの対象として、相互銀行及び信用金庫を考えてはどうかという御質問でございますが、対象に加えるべく、その方針でございます。相互銀行及び信用金庫も買いオペの対象にいたす方針でございます。
 それから、市中銀行が大企業向けに融資をする場合、下請に直接金が行き渡るように配慮しておるかということでありますが、御承知の通り、再三通達も出し、これが融資にあたりましては、金融機関の協力を得て、これが下請企業まで行き渡るような処置をいたしております。(拍手)
  〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
○国務大臣(宮澤喜一君) 御指摘のように、経済の高度成長が、一定の時間のおくれをおいて消費者物価に反映をしたことはその通りでございます。ただ、注目いたすべきことは、今年この半年くらいの消費者物価の動きを見ておりますと、例を東京にとって申し上げますと、今年五月ころには対前年同期に比べまして一割以上消費者物価が高うございましたが、その後半年間にこの幅が順調に縮まりまして、十一月には対前年同月比四%を割っております。従いまして、公共料金その他の上がりにもかかわらず、経済全体の落ちつきが消費者物価に反映をして参ったものと考えております。先ほど総理大臣から答弁申し上げましたような施策を今後ともとりまして、今後とも十分気をつけて参りたい、こう思っております。
 それから大企業、中小企業の賃金の格差、大所得者及び低所得者の所得の格差、この点は過去一年間に急速に格差が縮まっております。これは慶賀すべきことだと考えております。
 新産業都市の指定につきましては、御指摘のような点はごもっともであると考えますので、そのように作業して参りたいと思っております。(拍手)
  〔国務大臣重政誠之君登壇〕
○国務大臣(重政誠之君) 農業基本法に規定せられております諸政策のうちで、農業構造改善事業は最も基本的なものであると考えておるのであります。従って、これが実現につきましては、全力をあげて推進いたしておる次第であります。これと同時に、農産物の価格安定政策の拡充であるとか、あるいは流通機構の改善策、さらには農業金融の改善、すなわち長期低利の金融制度の創設等も、同時にこれは実現いたしたい、かように考えておる次第であります。
 砂糖の問題につきましては、砂糖の専売制をやる考えは現在のところございません。砂糖の自由化をいたしたい、こういう考えを持っております。(拍手)
  〔国務大臣綾部健太郎君登壇〕
○国務大臣(綾部健太郎君) お答えいたします。
 東北地方の鉄道が、東海道線に比して非常におくれておるということも、私は遺憾に思っております。また同時にこの間羽越線に起こりました鉄道事故につきましては、原因のいかんにかかわらず、私は、国民に対して、はなはだ相済まぬと思っております。整備計画は五カ年計画であったのを少し早めまして、新五カ年計画によってやっておるのでございますが、三十七年度には百億であったのを、三十八年度には二百十億円に要求をいたしまして、交通の安全と確保に努力をいたす所存でございます。
 東海道新線を非常に力を入れ過ぎて困るじゃないかとおっしゃる御議論、ごもっともですが、これはもうすでに二千億円近い金を投資しておるのでございますから、これが活用をすること、これまた一つ国家財政上必要であると考えて、今やっておるような次第でございまして、しばらくときをかしていただきたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣大橋武夫君登壇〕
○国務大臣(大橋武夫君) 人事院の勧告は、政府はもとよりこれを尊重いたしたのでありますが、今年度は財政事情等にかんがみまして、十月一日を実施期日といたしまするのやむなきに至った次第でございます。
 次に、公務員につきましては、各国とも全体の奉仕者としての地位にかんがみまして、労働権の制約を受けておることはやむを得ないのでありますが、その取り扱いは、国によって異なっておるようでございます。わが国の公務員法におきましては、団体交渉権を制限いたしまするとともに、公務員の利益擁護機関として、人事院制度を設けたものであります。公務員の団体交渉権を認めたらどうかという御意見でございますが、これは公務員制度の全体を改めることになるわけでございますので、その取り扱いにつきましては、慎重に検討すべきものと考える次第でございます。
 ILO八十七号条約の批准につきましては、できる限り早く批准すべきものであるという点は同感でございまして、関係法律の整備とともに、国会における早期成立を期するという方針のもとに、この問題解決のために努力を続けて参りたいと存ずる次第でございます。(拍手)
○副議長(原健三郎君) 伊藤卯四郎君。
  〔伊藤卯四郎君登壇〕
○伊藤卯四郎君 私は、民主社会党を代表して、政府の所信表明に対して質問し、あわせて池田総理の所信をお伺いいたします。(拍手)
 まず第一に総理にお伺いいたしたい点は、今回の臨時国会に臨む政府の責任の問題についてであります。申すまでもなく、内閣は行政権の行使について国会に連帯責任を負うべきものでありまして、この基本鉄則に照らしてみるとき、総理の所信表明は明らかに国会軽視であり、主権者である国民に対する責任感を欠いていること最もはなはだしく、遺憾の点といわざるを得ません。(拍手)
 何ゆえならば、総理の一枚看板であった所得倍増政策は完全に失敗をいたしております。(拍手)三十六年度に比べて、本年度の経済の伸びは三分の一程度に縮小し、明年度の伸びも大体本年度に横ばいするというのが政府当局の公式の見解であります。経済不況に二年越しに明年も継続せざるを得ないありさまである。また、総理の所得倍増政策が実施された昭和三十五年度以来、消費者物価の値上がりは急に激しくなった。昨年も本年も、年間を通じて六%程度の値上がりとなり、さらに消費者米価、バス運賃などの値上がりが順番を待っておるという現状でございます。また、産業面を見ると、石炭、海運、非鉄金属、紙パルプ、鉄鋼など、重要産業が軒並み危機に襲われており、貿易と資本の自由化の波に乗って、食品、化粧品、小売商などの分野にまで外国資本が大規模な進出をはかろうとしているということでございます。
 また、外交面を見ると、なるほどEEC諸国との話し合いはしてきたかもしれないが、中国、ソ連、韓国など、近接諸国との懸案は一切未解決のままたなざらしにしておるということでございます。第二回目の日米経済貿易合同委員会のごときは、経済閣僚六名が大挙して渡米しながら、一方的にアメリカ側の極東政策のお説教を聞いてきた程度にすぎないのでございます。(拍手)これが総理の施政の実績なのである。総理は、これを国民に対していかにわび、いかなる責任をとろうとするのか、それをまず第一にお伺いいたしたいと存じます。(拍手)
 一国の外交というものは、その国の安全と平和を維持しつつ国民の利益を守るということでなければなりません。これを韓国の問題に当てはめてみるならば、日韓問題の解決は、韓国から竹島を即時返還さすこと、李ラインを撤廃させ、公海における漁業の自由を確立し、日本の漁民及び船員の一切の不安をなくすることでございます。(拍手)さらに在日朝鮮人の地位を明確にすることなど、日韓両国間にわだかまるすべての懸案を解決し、もって、両国間に友好親善関係を打ち立てることに全力を尽くして当たるべきであり、両国民の間に経済的に文化的に理解と協力を推し進めるよう努力するばかりでなく、さらに、これらの問題を解決するために、冷戦のもとにおける南北の統一を待つまでもなく、日本は、韓国政府との間に、国民の安全と利益を守る問題については交渉を積極的に推し進めて、妥結に努めるべきでございます。(拍手)日韓両国の永続的な平和友好のためには、韓国が真の民主主義国として安定することが絶対必要であることは言うまでもありません。(拍手)従って、われわれは、韓国の軍政の民政移管を重大な関心を持って注目するばかりでなく、韓国において名実ともに議会制民主主義が確立することを要件と考え、交渉に当たる日本政府に対しても、特にこの点に留意することを強く要求するものでございます。(拍手)
 さらに、交渉の内容については、次の点を基本原則とすべきものと信じます。すなわち、一つ、この際、一切の重要案件を解決して国交を回復すること、二つ、請求権問題についてはあくまでも筋を立て、また、将来北鮮に対して二重払いなど起こさないようにすること、三つ、竹島問題は国際司法裁判所等の公正な判定においてわが方の主張を貫くこと、李ラインは廃止し、公海の自由を確保し、漁業の安定操業をはかること、第四には、互恵平等に基づく経済協力は積極的に推し進めること、そうして軍事的な一切の協力はこれを絶対に行なわないこと。
 以上、私は日韓問題に対するわが党の考え方の概要を述べましたが、池田総理は、はたしていかなる基本的な態度をもって日韓問題を処理しようとするか、その基本的な方針をあらためてここに明らかにしてもらいたいと存じます。(拍手)
 石炭問題を今日のごとき窮状に追い込んだのは、歴代の自民党政府の石炭政策が全くでたらめで、無策、無能の結果であるといわざるを得ないのでございます。(拍手)
 たとえば、昭和三十二年に石炭十カ年計画を立てました。それを見ますと、昭和五十年には年間七千二百万トンの石炭が必要であるとして、石炭業界にこれを強く指示してきておるということでございます。しかし、政府は数字のみを発表するだけで、計画性をもって抜本的な対策の遂行をいたしませんでした。この計画をもってすれば、本年度の需要は六千四百万トンに及ぶものであります。しかるに現実は、本年度は五千五百万トンを維持するのが精一ぱいである。これを維持するためには、炭鉱労働者一人当たり一カ月二十四トンの能率を上げ、石炭単価を昭和三十八年までには一千二百円の値下げをするよう、この政策の大転換を経営者と炭鉱労働者に指示しておるということでございます。これは、重油一キロリットル八千四百円と石炭を競争さして維持するためには、以上の生産能率を上げることと炭価引き下げを要請しなければならなかったからであります。ところが、わずか四年後の今日はどうであるかといえば、せんだってできた有澤石炭調査団の答申によれば、今度は炭鉱労働者一人当たり一カ月三十八トンから四十トンの能率を上げ得ない炭鉱は、すべてスクラップ山として買いつぶすべきだとなっているのであります。一方、三十四年八千四百円の重油は、現在では六千円まで値下がりになっておるのであります。この事実から見ても、重油と石炭を価格の上で競争させようとしても、これは初めから無理であることはだれでも認めていたところでございます。この重油の極端な値下げは、外国油資本によって日本の原油は握られているため、外国資本の意思一つで価格の上げ下げは全く自由自在である。この極端な油の値下げは、この外国の独占油資本が日本の全エネルギー界を支配しようとする野望のためであって、われわれはこの裏面を断じて見のがしてはならぬということでございます。(拍手)
 わが民社党は、昭和四十二年には六千万トンの石炭の需要の安定の確立をすべきであると主張しているのであります。これに対して政府は、五千五百万トンを見積もっているわけであるが、現在の政府の石炭対策のあり方では、わが民社党案の六千万トンを多過ぎるということもできないし、また、政府の言う五千五百万トンでも安定すると約束は断じてできないと思うのであります。それはなぜか。この石炭の不安を取り除き、安定化を確立するためには、国が強力な総合エネルギー調整機関をつくって、それぞれのエネルギーの数量と価格を決定してやる以外には、その方法はないと思うからでございます。(拍手)日本のこの石炭の窮状は欧米諸国にも起きているのであるが、欧米諸国ではそれぞれの政治的な配慮によってこの難局を切り抜けているのであります。これに対して池田総理はどのように考えておられるか、根本的な安定対策についてお伺いをいたしたいと存じます。(拍手)
 第二には、炭鉱労働者の雇用安定化の問題についてであります。昭和三十年以後、非能率炭鉱を法律によって買いつぶしました。このために出た離職者のうちに、いまだ安定職場につき得ずにいる者が四万人以上おるといわれております。この上に、有澤調査団の答申によれば、スクラップ山の買いつぶしによって今後七万五千人の失業者が出るということでございます。一体、政府は、これらの多くの失業者を責任を持ってどのように就職をさせ、解決しようとするのか。政府の今日までのやり方は、国会における答弁は、離職者は必ずこれこれの職場に就職をさせますと言明をしてきているが、実際は政府の責任において離職者の十分の一しか就職の解決はいたしておりません。あとは本人もしくは民間の協力にまかせっぱなしということでございます。今後これらの失業者を完全に就職させるためには、完全雇用の法律を制定して、これによって政府の責任のもとに解決をする、これ以外には道はないとわれわれは確信しております。(拍手)池田総理は、この点に対して、この困難なる事業をどのように解決しようとしておられるか、この点について、責任を持ってこの雇用問題に対する明確な回答をしていただきたい。
 第三には、合理化によって出た、また今後出てくる失業者の生活保障を政府はどのようにして解決しようとしているのか、あわせて政府の明確なる解決法をお示し願いたい。
 第四には、産炭地振興の問題についてであります。この件については、炭田地区の自治体が、炭鉱がなくなったあと、これにとってかわる新たな事業を起こして産炭地域を振興してもらいたいと、悲痛な訴えをいたしております。政府は、これにこたえて一体何をやろうとしているのか、いかなる計画と方針をもってこれらの自治体に対して事業を起こさせ、これを指導してやろうとしているのか、また、これに対する国の予算と、これらの事業を起こすために当然必要なところの財政投融資について、どのような考え方を持っているか、明らかにしてもらいたい。さらに、これらの事業を起こすものに対して、国としてどのような便益と特例を与えようとしているのか、あわせて明確なるお答えを願いたいと思う。(拍手)
 次に第五には、産炭地区の自治体への財政援助についてであります。炭鉱がなくなったあとの自治体は、鉱産税、固定資産税その他財政収入は激減しているところに、生活保護者は激増し、失業対策事業、鉱害復旧事業等の膨大な事業費がこれまた大きく地方自治体を圧迫いたしております。炭鉱なきあとのこれら三大貧乏神ともいわれておるものを一体政府はどのようにして解決してやろうとしておるのか、これらの点についても明確に政府の方針を示してもらいたい。政府は、これらの自治体に対して、これをどう救済し、どう再建してやろうとしているのか。たとえば、特別平衡交付金の増額その他これらの地区に対する、政府が当然なしてやらなければならない事業費に対する援助、協力について、臨時非常救済措置をどうとろうとしているのか、池田総理の責任ある、これらの解決に対する所信をお伺いいたしたいと存じます。
 さらにお尋ねしたい第六の点は、今日まで非能率炭鉱として法律によって買いつぶされた炭鉱へ納入した関係者の売掛代金が、百何十億ものものが未収になっております。そのために、現在はこれが重大な問題となっているのでございます。これらの未収はなぜできたか。それは、政府の法律によっての炭鉱買い取り価格があまりに安過ぎたということでございます。ところが、ここに一つ奇怪千万なことがありますのは、今日まで炭鉱を買いつぶしたその資金は、残存炭鉱からトン当たり二十円ずつ取り立てて、その金は八十数億円に上っております。他に開発銀行の利ざやの一部を充てたものが二十数億円であります。政府から予算として出したのは、わずかに五億円にすぎません。(拍手)これらのやり方は、炭鉱側からすれば、自分の死ぬことが一日おくれたために、一日先に死んだ炭鉱の葬式費を出さなければならないというのと同じでございます。このような政府のやり方は、俗にいう、人のふんどしで相撲をとっておるということと同じで、無責任きわまるやり方であるといわなければなりません。(拍手)政府は、この未収金の補償をどのようにしてやるつもりか。これらの被害を受けておる人々への単なる融資だけでは許されないというのが、関係者の悲痛なる訴えであります。政府は炭鉱にかわっての債務補償などについてどうしようとしておるのか、これは実に深刻な問題であるから、池田総理の責任のある御答弁を願いたい。
 以上私が質問して参りました内容は、政府が当然実行すべきこととして、すでに本院石炭対策特別委員会、本会議等において、自民、社会、民社が三党一致して議決をしておることでございます。立法の府のこのような議決に対して、政府はいかなる責任をとろうとしておるのか、池田総理、この責任の問題について明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)本日は、同盟会議傘下の全炭鉱労働組合が政府施策に抗議するために、全国的に休業して抗議集会を開いております。私は、これら諸君の意思をも代表して総理に石炭問題に対する明確なる答弁を要求いたします。
 次の問題は、金属鉱山の問題についてでありますが、金属鉱山は、貿易の自由化とともに、炭鉱と同様に、経営まさに破産の寸前にあります。将来の見通し、全くなく、不安深刻そのものであります。また、金属鉱山の労働者も、炭鉱労働者と同様に、離職の問題は実に深刻であります。一言にして言うならば、炭鉱の危急を救うことと同様の対策、方針をもって政府はこの解決をすべきであると思う。これに対していかなる具体的な方針をもって金属鉱山のこの危機を救い、解決しようとしておられるか、その点をあわせて政府の対策を明確にしていただきたい。
 次にお伺いいたしたい点は、補正予算案についてであります。今回の歳出補正が、石炭、公務員の給与、災害対策の三項目にしぼられ、補正規模も五百億円程度に限られていることは、本年度の租税自然増収は約一千億円以上あり、五百億円以上は第二次補正の財源に残しておいて、この大半を産投会計への繰り入れ資金に充てて、明年度予算の産業投資財源に充てようとしていることは、あまりにも目に見えております。今や、石炭、非鉄金属、海運等の、危機に陥った産業に対する施策は一日の急を要する時でございます。産業政策費は、明年一月より明年度末にかけての十五カ月予算の構想をもって編成さるべきであるのに、今回の補正予算の措置のうちに、海運、非鉄金属対策費が計上されていないのは、明らかに政府の怠慢と無責任であるとわれわれは断ぜざるを得ません。本年度の余裕財源の取り扱いについて政府はいかなる方針に立っているのか、ここでこの点を明確にしていただきたい。
 なお、生活保護、失対労務者への給与については、消費者米価の値上がり分だけを計算して単価引き上げを行なっているが、公務員の給与引き上げに見合う生活保障のための本格的な単価引き上げを何ゆえに見送ってきたのか、この理由を明らかにされたい。
 明年度は、本年度にまして不況が深刻になることは必至であります。従って、総理は、明年度予算の編成にあたっては、全力をあげて勤労国民の福祉予算編成の大方針を確立すべきであると思うが、この点に対する総理の考え方を明確にしていただきたい。これを総理に強く要請いたしまして、私の質問を終わることといたします。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 御質問の第一点は、倍増政策の失敗を国民にわびるべきではないかというお話でございます。私は、国民に対し常に足らざるを思っております。常に足らざるを思っておりまするが、倍増計画について私は国民にあやまる必要はないと思います。昭和三十四年度から十年以内に倍増を国民とともになし遂げる。昭和三十四年、五年、六年と大へんな成長でございまして、これじゃ十年じゃない、このままいったら、五、六年でできそうになったのであります。これは経済はいろいろ動くものでございます。私の考えておりまするように九%であればこうもなかったのでございますが、私の想像の倍もいくようになり、従いまして、ある程度足踏みといいますか、四、五%――よその国では高度成長でございますが、日本で四、五%という足踏みも、これは高度成長、所得倍増の経過的措置で当然のこととお考え願いたいと思うのでございます。私は、明年不況になるとは考えておりません。先ほど所信表明で申し上げましたごとく、実質的な伸びを続けていって、当初の計画を実現する考えでございます。
 また、隣国との貿易につきましては、過去三年間、日ソの関係におきましても、朝鮮関係におきましても、また最近の中共との貿易も、だんだん伸びていっておるのであります。私は今後もこれを伸ばしていく考えであります。
 次に、日韓問題に対しましてあなたの表明されました基本的態度は、私も大体同感、そういうお考えを体しまして、ただいま交渉をやっておるのであります。
 次に、石炭問題に対しての根本的な安定対策、これはもう伊藤さんは専門家で御承知の通りと思いまするが、やはり生産体制の確立と需給の安定確保でございます。そうしてこの間に価格政策を織り込んでいくことが、根本的安定対策と考えております。その線でやっていくつもりであります。また、雇用の問題等につきまして、産炭地の救済等について、いろいろございましたが、今回の石炭対策措置は画期的なものでございます。これは私は世界的にもあまりないほどの画期的措置だと思います。これを十分生かしていきたいと考えております。
 中小企業に対しましての売掛代金の問題につきましても、いろいろ考えておりますが、ここでは申し上げずに、委員会その他で申し上げることが適当かと思います。
 次に、非鉄金属に対しての問題でございまするが、これは、石炭対策とは似たようで、かなり違っておるのであります。石炭鉱業と非鉄金属鉱業とは、よほど今までの経過、また事業の内容が変わっております。私は、中小の非鉄金属業者には、従来から探鉱費を相当ふやしております。今後もこれを増額し、また大企業の非鉄金属業者に対しましては、これまた探鉱費その他の点、あるいは価格安定、需給安定につきましていろいろ措置をします。また、製錬所その他の合理化をやっていくならば、石炭事業とはかなり変わって、ああいう状態になる前に措置ができることを確信いたしておるのであります。また、その業者におきましてもそういうことを希望しておるようでございます。石炭対策とは似たようで変わった措置をとりたいと考えておるのであります。
 また、補正予算につきまして、産業資金の確保等々、いろいろ言っておられまするが、私は、大蔵大臣が多分お考えに沿うような答弁をすることと思って、大蔵大臣に譲りたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣田中角榮君登壇〕
○国務大臣(田中角榮君) 産炭地の振興の問題につきましては、今総理大臣から詳しくお述べになりましたので、私からはお答えをしないことにしたいと思います。
 それから補正予算の問題につきましては、いろいろお話がございましたが、人事院勧告に伴う公務員の給与ベースの改定及び予算編成後に生じました緊急のものにつきまして、所要の予算措置を行なったのでございまして、残余の問題につきましては、今伊藤さんが言われたいろいろな不況産業対策その他につきましては、これからの租税収入の状況を見まして、財源確保がはかれるような状態になってから考えて参りたいというふうに考えておるわけでございます。(「第二次補正をやるのかやらぬのか」と呼ぶ者あり)第二次補正をやるかやらぬかは、ただいま申し上げましたように、財源の確保によって考えて参る予定でございます。
  〔国務大臣福田一君登壇〕
○国務大臣(福田一君) 総理がお答えになりましたので、大体尽きておるのでありますが、外国資本によって、非常に石油市場が、価格が左右されておるというようなお話であります。こういう点については、ただいま石油業法の許す範囲内におきまして、さようなことのないように処置をいたしておるつもりであります。
 また、四十二年には六千万トンの石炭を出すべきであるというお話であります。またそれをやるためには、エネルギー総合調整機関をつくらなければならないというお話でありますが、われわれといたしましては、できるだけこの需要の確保ということに努力をいたしておりますが、なかなかこれを確保することが困難でございまして、ただいまのところ、四十二年に六千万トンという目標に到達することは非常に困難であると考えておるのであります。
 次に、雇用の安定につきまして、完全雇用の法律をつくれというお話でございますが、ただいまの、われわれの主張いたしておりまする自由主義経済の建前からいいまして、このような法律をつくることは非常に困難であると存ずる次第であります。(拍手)
○副議長(原健三郎君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。
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○副議長(原健三郎君) 本日は、これにて散会いたします。
   午後六時一分散会
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 出席国務大臣
        内閣総理大臣  池田 勇人君
        法 務 大 臣 中垣 國男君
        外 務 大 臣 大平 正芳君
        大 蔵 大 臣 田中 角榮君
        文 部 大 臣 荒木萬壽夫君
        厚 生 大 臣 西村 英一君
        農 林 大 臣 重政 誠之君
        通商産業大臣  福田  一君
        運 輸 大 臣 綾部健太郎君
        郵 政 大 臣 手島  栄君
        労 働 大 臣 大橋 武夫君
        建 設 大 臣 河野 一郎君
        自 治 大 臣 篠田 弘作君
        国 務 大 臣 川島正次郎君
        国 務 大 臣 近藤 鶴代君
        国 務 大 臣 志賀健次郎君
        国 務 大 臣 宮澤 喜一君
 出席政府委員
        内閣官房長官  黒金 泰美君
        内閣法制局長官 林  修三君
        総理府総務長官 徳安 實藏君
        経済企画庁調整
        局長      山本 重信君
        外務省条約局長 中川  融君
        郵政政務次官  保岡 武久君
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