第043回国会 農林水産委員会 第37号
昭和三十八年六月五日(水曜日)委員会において、
次の通り小委員及び小委員長を選任した。
  沿岸漁業等振興法案外二件審査小委員
      安倍晋太郎君    仮谷 忠男君
      川村善八郎君    倉成  正君
      田口長治郎君    片島  港君
      角屋堅次郎君    安井 吉典君
      稲富 稜人君
  沼岸漁業等振興法案外二件審査小委員長
      田口長治郎君
    ―――――――――――――
昭和三十八年六月五日(水曜日)
    午前十時三十分開議
 出席委員
   委員長 長谷川四郎君
   理事 秋山 利恭君 理事 山中 貞則君
   理事 田口長治郎君 理事 片島  港君
   理事 小山 長規君 理事 丹羽 兵助君
   理事 足鹿  覺君 理事 東海林 稔君
      金子 岩三君    亀岡 高夫君
      仮谷 忠男君    川村善八郎君
      倉成  正君    小枝 一集君
      谷垣 專一君    中山 榮一君
      野原 正勝君    松浦周太郎君
      松浦 東介君    米山 恒治君
      角屋堅次郎君    中澤 茂一君
      楢崎弥之助君    芳賀  貢君
      安井 吉典君    湯山  勇君
      稲富 稜人君    玉置 一徳君
 出席政府委員
        農林政務次官  津島 文治君
        農林事務官
        (園芸局長)  酒折 武弘君
        食糧庁長官   大澤  融君
        水産庁長官   庄野五一郎君
 委員外の出席者
        農林事務官
        (水産庁漁政部
        長)      和田 正明君
    ―――――――――――――
六月五日
 委員稻村隆一君辞任につき、その補欠として芳
 賀貢君が議長の指名で委員に選任された。
同日
 委員芳賀貢君辞任につき、その補欠として稻村
 隆一が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
六月五日
 開拓者資金融通法の一部を改正する法律案(内
 閣提出第五四号)(参議院送付)
 は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 小委員会設置並びに小委員及び小委員長選任の
 件
 委員派遣承認申請に関する件
 沿岸漁業等振興法案(内閣提出第三七号)
 漁業基本法案(角屋堅次郎君外三十名提出、衆
 法第六号)
 沿岸漁振興法案(角屋堅次郎君外三十名提出、
 衆法第七号)
 水産物の価格の安定等に関する法律案(安井吉
 典君外十一名提出、衆法第二五号)
 水産業改良助長法案(湯山勇君外十一名提出、
 衆法第二六号)
 甘味資源特別措置法案(内閣提出第一五〇号)
 甘味資源の生産の振興及び砂糖類の管理に関す
 る法律案(芳賀貢君外二十六名提出、衆法第二
 四号)
     ――――◇―――――
○長谷川委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出にかかる沿岸漁業等振興法案並びにいずれも本院議員提出にかかる漁業基本案、沿岸漁業振興法案、水産物の価格の安定等に関する法律案及び水産業改良助長法案、以上各案を一括議題とし、審査を進めます。
 質疑を行ないます。芳賀貢君。
○芳賀委員 この際政府提案の沿振法について主要な点を若干お尋ねしたいと思います。
 第一にお尋ねしたい点は、この法案と国民所得倍増計画の関係について主要な点だけを述べてもらいたい。
○庄野政府委員 沿岸漁業等振興法案につきましては提案理由で御説明申し上げましたように、わが国の水産業におきまする最もただいま振興を要する部面でございまする沿岸漁業と中小漁業に焦点をしぼりまして、その振興をはかる、こういうことに相なっております。御承知のようにわが国水産業は、沿岸漁業と中小漁業、これは沖合いを中心にする業態であります。それから海洋等に遠く操業いたしておりまする大資本漁業を中心にする海洋漁業、こういったものがあるわけでございますが、生産性が非常に低いとかあるいは他産業に比較しまして非常に格差があり、他産業と均衡する生活水準に向上せしめるという要のある漁業は、御承知のように沿岸漁業と中小漁業に非常に問題があるわけでございます。そういう点にしぼりまして、この生産性の向上、そのために経営の近代化あるいは合理化をはかって他産業に均衡するように、そういう漁業の従事者の生活水準を高めていく、こういうふうなことを目標にいたしまして、国の施策、基本方向、それに即応いたしまする具体的な沿岸漁業等の方策を掲げまして振興法を提出いたしたわけでございます。所得倍増の計画につきましては、やはり日本の産業構造につきまして賃金格差、所得格差等をできるだけ均衡するように各般の経済伸長をはかっていく、こういう関係になるわけでございまして、そういうものとも関連いたしまして沿岸漁業なり中小漁業の所得の増大、それによりまして他産業と均衡するような所得なり生活水準に引き上げる、こういうことを考えております。
○芳賀委員 私が聞いているのは、具体的に所得倍増計画と、今回政府が漁業基本法と称して、名前は沿岸漁業等振興法ですが、出されたわけですからして、国民所得倍増計画とこの法案との関係、その点だけを聞いているわけです。関係があるならある、ないならばない、それだけでけっこうなんです。関係があるならば、どういう点が倍増計画との関連でこういう制度をつくるとか、そういうことでいいのです。
○庄野政府委員 もちろん所得倍増計画は日本全体の経済の発展方向を示すものでございまして、その中におきまする農業なり漁業なり、やはりそういう観点に立って所得の増大をはかる、こういうことにおきまして需給の見通しを立てて、それによりまして沿岸漁業等の振興をはかる、あるいは労働力の問題等も経済の発展に伴いまして一次産業から二次産業、三次産業へというふうに移動が起こるわけでございますが、そういうものを契機といたしまして中小漁業あるいは沿岸漁業等の構造改善をはかる、こういう意味におきまして関連があるわけでございます。
○芳賀委員 関係があることをもう少し具体的に説明してもらいたいですね。それは、農業基本法を審議したときは、農業基本法は国民所得倍増計画と重大な関係がある、特に倍増計画の基本構想の中に農業基本法という制度を制定して、これによって日本の農業の発展、近代化を進めるということが明確に計画の基本に載っておるわけです。それでわれわれといたしましては、政府案、社会党案がともに提案されましたけれども、農業基本法の審議の場合には池田総理大臣はしばしば当委員会に出席して、所得倍増計画と農業基本法との関係あるいは日本の農業発展の展望等については政府の所信を一応披瀝した経過があるわけです。ですから私が聞いているのは、今度の沿岸漁業等振興法というものは、名称は沿岸漁業等振興法でありますが、その内容においては、たとえば第一次産業の中における農業基本法と対置すべきそういう性格のものであるということであれば、当然これは所得倍増計画と直接の関係があるということになると思うわけです。だから、たとえば倍増計画の基本構想の中のどういう点に漁業問題についての計画があるとか、あるいは民間産業の政府の誘導政策の中において今後の漁業の構造政策をどうするかということが、関係があれば載っているはずですね。なければ載っていないはずですね。そういう点を具体的に述べてもらいたいです。これは長官に無理に言うのじゃないですよ。あなたがおわかりにならなければこれは所管の農林大臣でもいいし、重政農林大臣がわからなければ池田総理を呼んでここで明確にしてもらえばいいわけです。
○庄野政府委員 水産物の需給の見通しあるいは水産業に従事いたしまする従業者の関係、それから水産業関係におきまする所得の増大、他産業と均衡のある所得を得せしめる、それによりまして生活水準も引き上げていく、そういう三点におきまして関係があるわけでございます。そういう意味におきましては所得倍増計画の一環ということが言えると思います。
○長谷川委員長 暫時休憩いたします。
   午前十時三十九分休憩
     ――――◇―――――
   午後三時四十六分開議
○長谷川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 内閣提出にかかる沿岸漁業等振興法案ほか四件について質疑を続行いたします。芳賀貢君。
○芳賀委員 先刻政府委員にお尋ねしました国民所得倍増計画と今回政府提案にかかる沿岸漁業等振興法との関連について、だいぶ時間が経過しておりますから、明快な御答弁をお願いいたします。
○庄野政府委員 所得倍増計画は御承知のように国民経済の高度成長につきましての計画でございますが、その中におきまして、二次、三次産業の発展に伴いまして一次産業等から人口が流出する、そういうような傾向を示しております。御承知のように日本経済の構造は二重構造がございまして、二次、三次産業に対しましてその底辺をなしている一次産業、これはもちろん農業、水産業、林業といったような一次産業でございますが、そういった所得格差のひどい階層があるわけでございますけれども、底辺をなしまする一次産業の所得の増大をはかって二次、三次産業に均衡した所得を得せしめる、そういった関係が一つの中心になっておりますし、その契機として三次、三次産業に就業者の転出というものが起こるわけでございます。そういった意味におきまして、そういう中におきまして重要な国民食糧でございまする動物質たん白資源の最も大きな供給源でございます水産業をいかに生産性を上げ、そしてその就業者の所得を増大していくか、そして均衡ある所得を得しめまして、生活水準を上げていくか、こういう点でございまして、まさに沿岸漁業等振興法におきまする水産業でも最も問題のある沿岸漁業、中小漁業といった問題につきましては、そういう計画の一環としてやはり考えておるわけでございます。そういう計画を受けまして、沿岸漁業等振興法によりまして、沿岸漁業、中小漁業の生産性を高め、他産業と均衡する生産水準に引き上げる、こういうことをねらいとしておるわけでございます。
○芳賀委員 私がお尋ねしたのはそういう抽象的なことでなくて、たとえば、いまでは国民所得倍増計画という問題は、これは政府自身も自信を失って口に出さなくなったのですからして、忘れられたようなものなんですね。しかし、これは死んでおるわけではないわけです。たとえば昭和三十五年の十二月二十七日に、閣議決定に基づいて「国民所得倍増計画の構想」なるものが発表されておるわけであって、その基本構想の内容は項目的に分かれておりますけれども、「計画の目的」「計画の目標」「計画の実施上とくに留意すべき諸点とその対策の方向」こういうような順序でその倍増計画の基本構想というものが述べられておるわけでありまして、その中に「計画実施上とくに留意すべき諸点とその対策の方向」の中には「農業近代化の推進」というような第一次産業に対する今後の発展方向というものが基本的に示されておるわけであります。私のお尋ねしているのは、そういう具体的に、この基本構想の中に一体漁業問題というものは取り上げられておるかどうか、もし取り上げられておるとすれば、それはどのような方向を示しておるかという点について、これは法案との関係があるとすれば、その点を明らかにしないと、なぜこの農業基本法に比較すべき政府の沿岸漁業等振興法案が提案されたかという、その理由というものは明らかにならぬわけですからして、まずお尋ねしておるわけです。
○庄野政府委員 所得倍増計画の中におきまして、漁業の方向としての問題点、それからその進むべき方向として示されておりますところは、御承知のように水産業に従事する就業人口が次第に他産業のほうに転出する。その転出の度合いは大体三十三、三十四年を基準にいたしまして二・三%程度の減少率をもって就業人口が下がっていくであろう、そして四十五年におきまする就業人口を水産業におきまして想定いたしまして、そういった就業者が減る段階におきまして、いかにして国民食糧でございまする水産食料の確保をはかるかということが主眼になっております。そこで、その需給の見通しといたしまして、四十五年におきまする供給と需要構造の変化等に即応する需要の増といったものを算定いたしております。四十五年におきまする供給の関係は、いろいろな近代化あるいは生産性の向上のための近代化、合理化等をはかることによりまして七百四十万トン程度、それから需要構造等の変化等を考えますると、四十五年において需要が八百四十四万五千トン、こういつたような数字だったと記憶いたしております。この供給と需要のギャップはいかにして埋めるか、こういう点についてはさらに諸般の経営の合理化等を進めてこのギャップを埋めるように努力しなければならぬ、こういったことが書いてあるわけでございます。
○芳賀委員 その以前に基本構想の中に漁業問題というものは一体取り上げられておるかどうか、この点どうなんです。庄野さんは政府の国民所得倍増計画の策定時代は企画庁におったでしょう。そういう権威者が基本構想でこれを取り上げたかどうかということを忘れたと言えばそれまでですけれども、簡単な点ですよ。
○庄野政府委員 だいぶ古くなりまして記憶が薄れておりますが、結局、先ほど申しましたように、日本経済におきまする最も問題になります点は二重構造ということでございまして、その二重構造が林業、農業、漁業、こういった一次産業にあるわけでございまして、そういう底辺をいかにして――社会問題としても問題があるし、所得の向上をいかにして他産業に均衡するように持っていくかというところに基本構想がある、こう御理解いただきたいと思います。
○芳賀委員 この倍増計画の基本構想の中の「計画実施上とくに留意すべき諸点とその対策の方向」、この第一点として、「農業近代化の推進」という点が取り上げられているわけです。一昨年当委員会において農業基本法の審議をやったときも、農業基本法が倍増計画とどういうような関連のもとに政府から出されたかという点でこれは論議した根拠になるわけですが、この農業近代化の推進の内容というものは「国民経済の均衡ある発展を確保するため、農業の生産、所得及び構造等各般の施策にわたり新たなる抜本的農政の基底となる農業基本法を制定して農業の近代化を推進する。これに伴い農業生産基盤整備のための投資とともに、農業の近代化推進に所要する投融資額は、これを積極的に確保するものとする。」ですから、農業基本法を策定しなければならぬということは、ここに倍増計画との重大な関連あるいは基本法制定の根拠というものが明確になっておるわけです。この点は明らかになっておるわけですが、それでは第一次産業の中における漁業についてはどうかということになると、これは特に明らかには項目として掲げられておりませんけれども、この「農業近代化の推進」の、いま私が述べた末尾に、「なお、沿岸漁業の振興についても右と同様に措置するものとする。」ということがしるされているわけですね。だから、もしも、このわずかな短い文章というものが沿岸漁業の振興についても、さきに述べた農業と同じ度合いでこれを取り上げて今後強力な国の施策を講じなければいけない、講ずるということであれば、今回の法案提出にあたっても、その法律の内容というものはやはり農業基本法に比すべき内容を整えたものでなければいけないのじゃないかというふうにわれわれは考えておるわけですが、その点はどうですか。
○庄野政府委員 御指摘のとおりと存じます。ただ、水産業につきましては、特に沿岸漁業に問題があるわけでございますし、水産業全般にいたしましても、農業と非常に事情も異なるところがあるわけでございます。今回はそういうような構想を受けまして、沿岸漁業それから中小漁業というところに焦点をしぼって、この法案を提出したわけでございます。
○芳賀委員 農業と同一にこれを扱おうということであれば、制度の根本改正等についても、あるいは基本法をつくる場合においても、決して消極的であってはならぬと思うのです。やはり農業基本法に比すべき内容のものを、堂々と提案されても決して行き過ぎということにはならぬじゃないかと思うのですが、どうもわれわれが政府案を見るとまことに内容が不十分であるし、へっぴり腰だ。政府の農業基本法というものは非常に内容がずさんなものですが、そのずさんな政府の基本法に比べてもまだ見劣りがする、これは適切な批判だと思うのです。こういう点については庄野長官としてどうお考えですか。
○庄野政府委員 農業と事情もだいぶん変わるわけでございますが、われわれといたしましては、沿岸漁業等の振興につきましては、これで本腰を入れてやろう、こういうかまえでやっております。
○芳賀委員 それでは、農業基本法と比すべき内容のものであるということは、はっきり言えるわけですか。
○庄野政府委員 先ほどから再々申しますように、比すべきということばがどういう意味で言っていらっしゃいますか、私もよくわかりかねますが、農業に準じまして、沿岸漁業等の振興につきましては、これをもって振興をはかる、そういう観念でございます。
○芳賀委員 比すべきというのは、「沿岸漁業の振興についても右と同様に措置するものとする。」ということになっておるわけですね。準じてじゃないのです。同様に措置するというわけですから、やはり法律制定にあたっても、農業基本法と同列に置き得る内容を整えた法案を出して差しつかえないということになりますが、どこかに気がねがあるのですか。
○庄野政府委員 沿岸漁業等の振興につきましては、われわれはこれをもって倍増計画等にうたわれておるそれに当たる、こういうふうに考えておるわけでございます。
○芳賀委員 農業基本法の場合は、倍増計画が策定になって発表された直後、これは国会にも提案されたわけでありますが、現在審議中の沿岸漁業等振興法ということになると、その後二カ年経過しているわけです。だからあの当時の所得倍増計画に対する判断あるいは価値と、今日における倍増計画に対する価値判断というものは変わってきておる。それは政府自身も倍増計画を口にしなくなった。そして倍増計画というものは、単に空虚な宣伝だけであって、所得倍増ではなくて、むしろ物価倍増的な役割を果たしておる。こういうことで、政府部内においても経済企画庁等が中心になって、倍増計画の根本的な手直し作業に入っておるということになっておるわけです。そうなると、一番根拠になる倍増計画というものが、すでに使いものにならなくなっているということになれば、役に立たない倍増計画というものを基本にして、いまごろ沿岸漁業等振興法というような、そういう基本法に比すべき内容の法案を提案されてもまともに取り組むことはできないじゃないですか、この点はどうですか。
○庄野政府委員 われわれといたしましては、所得倍増計画の中にうたわれておりますいろいろな国民経済の傾向というものは、当然これは前提に置いて考えなくちゃならぬと思います。と申しますのは、二次、三次産業の高度な発展に伴いまして、一次産業から就業者が移動していく、こういった傾向でございますし、片方におきましては先ほどから申しますように、国民食糧の確保をはかっていかなくてはならぬ。あわせて需要構造も変わっていく。そういった就業者数が減りつつある段階におきまして、さらに生産を上げていく、そのためにはいかにして生産性を上げるかということが問題になろうかと思います。またそういうことにおきまして、終局的には沿岸漁業並びに中小漁業の就業者の所得も増大をはかって、他産業に均衡する生活水準まで引き上げていく、そういう理念は変わりないと思います。そういう理念に基づいて、沿岸漁業等の振興法を策定いたしまして御審議を願っておるわけであります。
○芳賀委員 漁業の構造改革並びに十カ年の見通し等につきましては、倍増計画の中にも簡単に載っておりますが、これによると、漁業の生産については、基準年次を一〇〇%にして、昭和四十五年が目標年次ということになっておるわけですが、漁業の生産においてはその生産の目標を七百四十万トンとしておるわけですね。これは大体年率にして三%程度で、基準年次に対しては一四八・八%ということになっておるわけです。さらにまた漁業の就業人口については、基準年次における就業人口が大体七十五万人、これを目標年次においては約二十万人削減して、これを五十五万人にする。就業者ベースの場合には基準年次が六十三万人で、目標年次にはこれを五十万人にする。こういう大まかな目標というものが立てられておるわけです。農業基本法の場合にも、そのねらいは明らかに農民の首切り法であるということがいわれておるわけですが、漁業の場合も、結局は沿岸漁業における就業人口を中心とした、漁業就業者の首切りというところにこれは通ずるのであるというふうに、われわれは判断しておるわけでございますけれども、そのねらいというものは、漁業就業人口の三割首切り法案というふうに考えて差しつかえないですか。
○庄野政府委員 私たちは、所得倍増計画が農業あるいは水産業の首切り計画だとは考えておりません。国民経済の成長段階におきまする一つの現象といたしまして、人口移動が産業間に行なわれる、こういうことは自然の勢いだと存じております。そういう計画の数字につきましては、今後よくアフターケアの形において、企画庁を中心にして再検討する、こういう段階に入っておりますが、われわれといたしましては、漁業従事者の所得の増大をはかっていくということに主眼を置き、そして生産性を上げていくということがその手段になる。こういうふうに考えておるわけでございます。
○芳賀委員 それでは具体的に問題を取り上げたいと思いますが、たとえば農業の場合には、基本法が出てもう満二年たつわけでありまして、これは基本法第六条に基づいて、毎年農林大臣が、国会において農業の年次報告あるいは農業の動向を報告し、それを基礎にして行なうべき施策の方向等についても、国会で報告を行なっておるわけですが、この農業報告によりましてもたとえば昭和三十六年の農業の就業構造の内容というものは、専業農家が激減しまして、昭和三十五年には専業農家が全体の三四%であったのが八%減って二六%、したがって兼業農家は昭和三十五年の六六%から一躍七四%という率に高まっておるわけです。しかも兼業の激増した分はほとんど第二種兼業のほうに片寄っておるということが明らかになっておりまして、兼業の内容は昭和三十五年に第一種が三三%であったのが減って三十六年には三〇%になっておる。第二種兼業は三十五年には三三%であったのが四四%になっておる。こういう傾向をたどっておるわけであって、さらにまた所得の動向を見ても、実質国民所得の分配の場合においては、昭和三十六年度は農業就業者一人当たりの実質国民所得がわずかに九万三千円、これに対して製造業における従業者一人当たりの所得が三十六万七千円、農業以外の平均の所得が一人当たり三十四万五千円ということになっておるわけです。農業と非農業との比較というものは、非農業一人の年間所得三十六万に対して農業の場合にはその四分の一の九万円にすぎないということになるわけです。そうなると、農業と他産業との間における所得格差を是正するということをもしもほんとうに農業基本法が指向してそれを具体的な施策に移しておる場合においては、こういう結果は出てこないわけです。むしろ逆に農業を他産業との所得の格差が拡大しておるということが、わずか二年間に明らかになっておるわけです。農業基本法と所得倍増計画との関係の中においてこういう矛盾というものが露呈しておるわけですから、これを一つの既存の事例と見た場合、漁業の部面においてはたしていま長官が述べられたような根本的な問題の解決が可能かどうかということは、非常に問題になる点だと思うわけです。ですから農業に比して、同じ原始産業の中に置かれておる漁業の現在の構造の変化、あるいはその実態というものは一体どういうふうになっておるか、これを農業に比較して述べてもらいたいと思う。就業の構造あるいは所得構造というものは、農業に比較してどういうふうな変化をたどっておるか。
○庄野政府委員 的確な数字が漁業におきましては統計あるいは調査等の問題がございまして申し上げかねると存じますが、専業あるいは兼業の種別は、これは二十三年に漁業センサスをやりさらに三十三年に漁業センサスをやっております。そういう比較をいたしますと、漁業におきましては専業者の比率は二十三年が一四・三%、これが三十三年になりますと一四・六%、〇・三%の増になっております。それから第一種兼業では、二十三年が四三%でございましたのが三十三年のセンサスでは五三%、一〇%の増になっております。それから第二種兼業のほうは、二十三年が四三%でございましたのが三十三年は三二%に落ちるというような傾向をたどっております。そういうことで専業がごく少数ふえ、第一種兼業の、漁業を主とする経営体が一〇%ふえている、こういうような形になっております。
 所得につきましては、大体従業者一人当たりの漁業所得でございますが、これは農業との比較において申しますと、三十六年の調査に基づきますと、漁業所得が十三万八千百円という形になっております。農業所得は十万八千二百円、こういうような数字になっております。
○芳賀委員 農業の場合は、農林大臣が行なった農業報告の中で、三十六年度実質国民所得、一人年所得が九万三千円ということになっておるのですよ。いまの御説明だと十万八千円ですか。農業の動向報告の中に九万三千円と出ておるのですよ。
○庄野政府委員 これは所得の計算におきまして漁家所得のほうに、贈与をしたり扶助したりするものを漁業所得では含めておりますので、それに対比して農業のほうもそういう計算をしたわけでございます。先般大臣からお答えになったのはそういうものは除かれた数字だ、こういうように承知いたしております。
○芳賀委員 実質の農業所得は九万三千、これはもし間違いだということになれば、国会で行なった農業報告というものがでたらめな数字を述べたということになるとたいへんです。十万八千のほうが正確だというのですか。漁業の関係は私、それに対抗する資料をいま持っていないから一応長官の言い分を聞くとして……。
○庄野政府委員 ここで明確に私もお答えいたしかねますが、贈与分とか被扶養分を含めて計算してありますので、そういう点で差異が出ているかと思いますが、これはさらに農業部門ともよく聞き合わせましてあらためてお答えしたいと思います。
○芳賀委員 これは農業基本法に基づいて政府が国会に文書で提出するということになっておるでしょう。沿岸漁業等振興法にもそれに類似した条文があるでしょう。だから政府が国会に出した文書の内容が、いまのあなたの説明だと、数字の上で間違っているということになるのですよ。これは誤りがあるとすればたいへんじゃないですか。国会に提出した正式文書が間違っておる、うそであるということになると、これはゆゆしい問題だと思うのですよ。明らかに九万三千円ということが明記されておるのですよ。それが違うということになれば問題じゃないですか。
○庄野政府委員 漁業のほうは私のほうの担当でございますから自信を持って申し上げます。農業のほうはあらためて答弁させていただきます。
○芳賀委員 それじゃ津島政務次官、この点はどうですか。
○津島政府委員 お答え申し上げます。数字のことでございますから誤りがあると困りますので、よく精査をいたしまして申し上げたいと思います。
○芳賀委員 それではかりに水産庁長官の述べた漁業所得の数字や、一応取り上げた場合、そうすると沿岸におけるいわゆる漁家漁業、自営漁業その沿岸の漁業の従事者の一年間の一人当たりの所得のほうが、農業の所得よりも多いということになれば、これは漁業のほうが当然所得の面で有利性があることになるわけですから、これもやはり一つの問題になると思うのです。われわれとしては、沿岸漁業が全国的に非常に衰退しておる、したがって階層分化が進んで、専業一五%ということになれば、ほとんど大部分の沿岸漁業従事者というものは、兼業化に移行してしまったわけですね。そういう中において、いわゆる漁業の所得というものが農業の所得よりも大体四万円程度高いということになれば、これは農業と漁業を比較した場合に、漁業のほうが所得の面では有利性が高いということに当然なるわけだと思いますが、その点はいかがですか。
○庄野政府委員 漁業所得のわれわれのほうで調べております調査によりますと、農業とどういう比較になりますか、かねがねあれは多少有利になっておる、こういうように承知しております。
○芳賀委員 数字だけが有利というのじゃないのですよ。この実態ですね。沿岸漁業と農業との比較の中において、漁業のほうが有利だということになれば、漁業よりも農業のほうがおくれておるということになるわけですね。われわれは一般に政策的な面においても、あるいは国民経済的な面においても、農業よりも沿岸の漁業というものがその地位が非常に低い、そういう判断をしておったわけですが、いまのような答弁であれば、これは非常に力強い限りであって、むしろ農業のほうが漁業よりも後進的であるということになりますか。
○庄野政府委員 従業者二人当たりの漁業所得、こういう面だけで比較すれば、計数の上からはそういう傾向が出ている、こういうことでございます。
○芳賀委員 時間の限定がありますから、法案の内容についてお尋ねしますが、先ほど政府委員の答弁によっても、内容は若干の違いはあるけれども農業基本法と沿岸漁業等振興法とは大体似たようなものであるということになると、そこで社会党は漁業基本法を出しておりますから、政府の提出された沿岸漁業等振興法の価値というものをあまり高く評価はしていないということは断わっておきますが、たとえば政府の農業基本法と政府が出されたこの沿岸漁業等振興法の比較においてお尋ねしたいのは、第一点は、農業基本法の場合は法律に目的というものがないのです。農業基本法の前文を見ても、目的なるものがないのです。ところが沿岸漁業等振興法には目的がある。法律に目的のないのは農業基本法だけかもしれないが、一体基本法には目的がない、沿岸漁業等振興法には目的があるという、その相違点についてはどう考えますか。
○庄野政府委員 農業基本法と比較して私申し上げかねますが、沿岸漁業等振興法におきましては、やはりこの沿岸漁業等振興法が基本法的な性格とそれから事業法的な性格と両方われわれは持たして、施策の目標を沿岸業と中小漁業に焦点を合わせて考える、こういうような考えでございまして、そういう意味におきまして、第一条にこの法律の目的を掲げたわけでございます。
○芳賀委員 それでは農業基本法は、これは宣言法であるから目的は要らぬということですか。沿岸漁業等振興法の場合には、農業基本法と比較すると、大体一条から七条までは基本法をまねておるわけです。八条以下については、これは実体法的な条文規定があるが、その相違だけで、基本法には目的は要らぬ、振興法には目的があるということになるのですか。
○庄野政府委員 農業基本法は、前文もあり、それから国の政策の目標、こういった点でやはり法律の意図するところは明確に出してあると思います。われわれは、沿岸漁業等振興法におきましては、第一条で「目的」ということを掲げて、この法律の目的とするところを明確に掲げて、施策の方向を定める、こういう考えで第一条に目的ということを明確にうたったわけでございます。
○芳賀委員 しかし基本法と沿岸漁業等振興法の一条を比較すると同じじゃないですか。まあ農業基本法には、農業の置かれた、あるいは農民の国民経済的な立場に立った使命、責任というものが明らかになっておるが、沿岸漁業等振興法にはその点がないのですね。漁業がになうべき使命とか、あるいは漁民のになうべき任務というものは、これは規定されておらない。基本法にはそれが前段で明らかになっておるわけです。あとは全部同じじゃないですか。一方は目的で一方は国の施策の目標というのは、どういうわけですか。
○庄野政府委員 非常にむずかしい御質問でございますが、農業基本法におきましては、前文あるいは第一条で、この法律制定の目的並びに施策の目標というものが掲げてございます。沿岸漁業等振興法には、前段がないわけでございますが、第一条に目的ということを掲げて、この法律目的をうたっておるわけでございます。第一条同士を比較すると、内容は変わらないわけでございまして、目標と目的の差かと思いますが、大体同じことをいっておる、こういうふうにわれわれは考えております。
○芳賀委員 だから基本法には、農業あるいは農民の任務、立場というものが明らかになっておるが、沿岸漁業等振興法には、この漁業の置かれた立場、位置づけ、あるいは漁民の置かれた位置づけというものは必要ないのですか。一体その産業経済、社会的、国民経済的な位置づけというものはどういうことに考えておるのですか。
○庄野政府委員 水産業全般としては、そういうようなことが言えるかと存じます。提案いたしております法律は、沿岸漁業と中小漁業、こういうふうに焦点をしぼっております。御承知のように水産業には、大資本による遠洋の漁業、それから中小漁業等を最も中核といたしまする沖合い並びに遠洋漁業、それから沿岸の漁業、こういうふうにあるわけでございまして、この法律は、その最も底辺であり、所得の増大を要する、施策を要する沿岸漁業家あるいは中小漁業者、そういったものを対象にしておる、こういう意味におきまして農業基本法とはニュアンスの差がある、こういうふうにわれわれは考えております。
○芳賀委員 次に問題は、農業基本法の場合は、第一章、第二章というふうになっておって、第二章以下は、第一章における施策の目標というものがいろいろ掲げております。これに対する具体的な例示が、条文の規定で明らかになっておるわけですが、沿岸漁業等振興法の場合にはそれが全然ないのですね。これは必要がないということなんですか。たとえば昨日の安井君あるいは松井君に対する長官の答弁を聞くと、何かそういう必要はないというような意味の答弁がなされたように聞いたわけですが、この点はどう考えておりますか。
○庄野政府委員 沿岸漁業等振興法は御承知のように全文十二条からなっております。非常に簡潔にして要を得た法案だと思って提出したわけでありまして、これを章に分けて整理する、そういう必要もなかったかと存じます。
○芳賀委員 そういうふまじめな答弁でなくて、基本法の場合には法律の体系からいうと整っておると思うのですよ。中身は別としてですね。それは沿岸漁業等振興法の場合はとにかく第七条までの規定は、これはほとんど農業基本法の第七条までの規定と内容は同じでしょう。この国会に対する報告の義務というものは、基本法には六条と七条の二条に分かれておるが、沿岸漁業の場合は七条一条だけに出ておるわけですね。そこまでは全部同じなんですよ。そのあとが今度全くないですね。簡潔だからいいと言えばそれまででありますが、しかし人間がふろへ入る場合は、ふんどしをはずして入るが、ふんどしもなくて簡潔でいいといって世間へ出て歩くわけにいかぬでしょう。それと同じじゃないですか。まる裸とは言わぬが、大体ふんどしくらいはつけて、あとは裸でおるというのが、大体沿岸漁業等振興法なんですね。世間を通れるような法律を整えて出さぬと、文化国家であり法治国家において簡単なほどいい、なるたけ原始的に裸に近いほうがいいということでは通用しないと思うのです。
 そこで具体的にお尋ねしますが、農業基本法の場合には、第八条で農業生産物の需要及び生産の長期見通し、社会党の基本法の場合には、ここに農業基本計画というものが明らかにされておるわけですが、この漁業の場合は、一体基本法という場合に、漁業の生産あるいは需要についての長期的な計画、政府自民党はこれは計画経済はできないと言っておるからして、表現は基本計画とか長期計画とかいうことばは使えないとしても、少なくとも農業基本法と同じくらいの長期見通し、そういう長期にわたる漁業の見通しというものは必要ないということではないでしょう。農業基本法の場合には、需要及び生産の長期見通しというものがこの法律の中で明らかになっておるわけです。これを策定して政府は公表しなければならぬということになっておるが、沿岸漁業等振興法の場合には、この大事な生産あるいは需要に対する長期見通しというものが、どこにも根拠がないのですね。これは重大な手落ちだと思うのです。この点はいかがですか。
○庄野政府委員 漁業につきまして、長期の基本計画を立てる、これは漁業におきましては、御承知と思いますが、対象となりまする漁業資源の把握が非常に困難な問題がございます。それで政府が漁業全般につきまして長期の漁業基本計画を樹立するということは、現段階ではなかなか困難な問題であろうと存じます。われわれといたしましてはこういう総合的な、全般的な漁業の長期計画ということはできないから、全然なしか、こういうわけにもまいらないわけでございまして、こういう点を考えながら水産物の需給計画につきましては、やはり資源等で把握が非常に困難でございますが、一応需給の見通しは立てるという考えでございますし、またその漁場の利用計画あるいは漁場の開発計画といったような点も、漁業法に基づく漁業権の漁業の漁場計画という、これは国会で御修正になったわけでありますが、そういうものを立てて、漁業、漁家等の問題を処理してまいりたい、こういうふうに考えておるわけであります。なお生産の基盤になります漁港等につきましては、先般御審議を願いました八年計画というものを立てております。また沿岸漁業等の振興方策をどうするかということにつきましては、ただいま御審議を願っております八条等の沿岸漁業の構造改善事業ということにつきましても十年計画を一応漁区、海区ごとに立てる、こういうような考えでございます。そういったようにいたしまして、漁業の生産性を高める。こういうようなことを計画的にある程度目標に向かって進む、こういうふうに考えておるわけでございます。
○芳賀委員 委員長にお願いしますが、政府委員の答弁はできるだけ簡潔にするように言ってもらいたいと思います。
 私の聞いておるのは、長期見通しです。長期計画ということばが使えなければ、漁業生産並びに漁業生産の需給の長期見通しです、この長期的な見通し、長期的展望というものがなければ、基本的な施策というものを行なうことができないじゃないですか。こういう大事な点が政府案から落ちておるのは、これはおかしいではないかということを尋ねておるのですよ。必要があるとかないとかいう問題じゃないでしょう。当然これは重要な条文として法律の中へ掲ぐべきものが掲げてないということを私は指摘しておるのですよ。当然これは必要じゃないですか。基本的な法律に長期見通しが要らないということになれば、これは全く行き当たりばったりで、もうやみを手探りで歩くようなことにしかならないじゃないですか。こういう大事な点が落ちておるわけですね。どうしてもこういう問題は法律の中に取り上げるべき筋合いだと思います。これは農林大臣に尋ねる問題ですが、津島政務次官からお答えを願います。
○庄野政府委員 政府側の答弁といたしまして非常に不十分な点はございますが、漁業の実態から申しまして、そういった長期の計画あるいは見通しというものが非常に立ちにくい状態にございます。これは統計なり調査なり整備いたしまして、そういった点は努力しなくちゃならぬとわれわれも考えておるわけでございます。法律で規定してきちっとした形において長期の見通しあるいは計画というものの策定し得る段階にまだいっていないという問題が一つございます。しかしわれわれといたしましてもできるだけの努力はいたしまして、需給の見通しといったようなものを一応つくりながら、それによりまして漁業の生産をどういうふうに持っていくかということは考えなくちゃならぬと思っております。そういう意味におきまして、政府案におきましては、こうした施策の概要とこれからこうしようとする施策と、そういったような問題等もよく検討して御報告できるように勉強しなくちゃならぬ、こういうふうに考えております。
○芳賀委員 それは必要ないという答弁じゃないでしょう。重要な必要性があるが、いまの水産庁の陣容では消化することができないから、それでわざとことさら落としたことになるのではないのですか。
○庄野政府委員 これはやはり相当の統計なり調査が必要で、そういうものを前提としなければ、ただ空漠な目標を定めるということでは、非常に誤りを来たすわけでございます。われわれといたしましても、そういう点ができ得るかどうかということも一つの問題でございますが、そういうほうに近づくという努力はいたしたい、こういうように考えております。
○芳賀委員 これは法律にちゃんと定めてあれば、いやでもやらなければならぬでしょう。国民所得倍増計画にも、これは内容はずさんであるけれども、昭和四十五年における漁業の総生産の目標をきめてあるじゃないですか。それから政府から出された資料によっても――これは政府が出した資料ですが、「昭和四十五年における所得、就業人口および生産性の試算」こういう形で各年次別に一応の資料が出ておるじゃないですか。だから法律にちゃんと定めてあれば、役人が何ぼやらぬ気になっても、仕事しなければならぬでしょう。そうじゃないですか。庄野さんのようなまじめな人は、法律に書いてなければ、書いてないから仕事ができないということが理由になるが、しかしはっきり長期見通しについて内容を策定しなければならぬということが沿岸漁業等振興法に明らかになっておれば、やはり忠実にそういう作業をする、陣容が少なければ整えるということになるじゃないですか。そうならぬですか。
○庄野政府委員 これは非常にむずかしい問題でございまして、われわれといたしましては、この法律に規定して、そしてそういうものを策定するということが可能かどうかという問題が一つあるわけでございます。必要、不必要の問題じゃなしに、そういう可能かどうかという問題がございます。そういう法律で規定されて出すような相当の正確度を持った見通しというものが、現状の資料なり調査なりあるいは資源状況の見通しといったもので、はたしてできるかどうか、こういった点がありまして、こういう点はさらに勉強して、そういう方向に近づきたい、こういう考えでおるわけでございます。
○芳賀委員 その次の問題点として価格政策、これが全く明らかになっていないのですね。一体、生産性を向上して、あるいは漁業の近代化をはかっても、価格支持に対する明らかな政策、制度というものがなければ、安定した漁民の所得を向上させることはできないと思うのです。農業の場合にも非常に不安定な要素はありますが、しかし価格政策としては、たとえば食管法あるいは農産物価格安定法とか、大豆なたね交付金法であるとか、畜産物価格安定法であるとか、こういう数種の価格安定のための法律制度というものがあって、それでも運用が拙劣ですから、十分な価格の安定あるいは所得の維持ということができませんが、漁業の場合にはそういう明確な価格安定の制度というものはほとんどないわけですね。ですから、やはりこの際漁業の基本法の中に、価格支持の政策、向かうべき方向というものを明らかにしておく必要があると思うのです。価格安定ということばはある。しかしそれは強力に価格支持を行なうということを示したものではないのですね。これも重大な手落ちじゃないですか。この点はいかがですか。
○庄野政府委員 国の施策の基本的方向といたしまして、第三条の第四号に、御指摘のように、「水産業について価格の安定を図ること。こういうことで基本方向は定められております。これまで価格安定につきましては、サンマの生産調整に関する法律と、それからサンマの魚価の安定に関する基金の制度、こういうものを実施しておりますが、こういうものは、さらに拡充し、運用の改善をはかっていかなくちゃならぬ、こういうふうに考えております。
 なお施策といたしましては、必ずしも価格支持ばかりでなく、生産地におきます漁港の整備あるいは冷蔵庫とか運搬船とかいった流通施設の拡充なり、それに対する国の補助、あるいは消費地におきます価格安定に資する消費地の冷蔵庫、そういった施策も講ずるわけでございます。こういう問題につきましては、御指摘のような点を考えながら、さらに拡充なり手を打つということで国の方向を明確に示したわけでございます。
○芳賀委員 この点はやはり法律策定上の重大な手落ちですから、価格政策の問題は当然法律の中に取り上げるべき問題だと思います。
 その次に、これは立法上問題になる点だと思いますが、審議会の運営の問題ですね。政府案によると、中央漁業調整審議会で間に合わせるというようなことですが、漁業法に基づく中央漁業調整審議会というものは、漁業法によって審議会の任務がおのずから明らかになっておるじゃないですか。主として行なう任務はいわゆる漁業調整でしょう。しかもその審議会というものは所管大臣である農林大臣の指揮命令、監督を受けるという規定になっておるわけですね。ですから一般の、たとえば農業基本法の農政審議会であるとかあるいは各般の審議会と、これは非常に性格が違う。そういう異質な漁業法によるところの中央漁業調整審議会というものをこの振興法の中に持ち込んできて、しかも政府の御用機関といいますか、いわゆる政府が任命する学識経験者を従来の十名を二十名にふやして、総数で三十五名の審議会にして、ここで沿岸漁業等振興法に基づく諸般の審議を行なう、これは全くでたらめじゃないですか。どうして本来の振興法に基づいた審議会を設置しないのですか。たとえば審議会を内閣に設置する場合でも、今年度の各審議会等の関係予算は総理府の予算で二億四千万円確保してあるじゃないですか。何も漁業法に基づく審議会のひさしを借りてこういう振興法に基づく審議会として運営しなければならぬということはないじゃないですか。全くやり方がけちな考えから出ている。どうして単独の審議会を設置しないのですか。その点についてお尋ねします。
○庄野政府委員 沿岸漁業等振興法におきましては、中央漁業調整審議会に定員十名をふやしまして学識経験者を任命して、そこで沿岸漁業等振興法の重要事項の意見を求める、こういうことに相なっております。漁業法で設けられている中央漁業調整審議会でございますが、漁業法によりまして、この調整審議会の任務は、漁業法に基づいて付与されたもの、他の法令によって付与されたもの、こういうふうに相なっておるわけでございまして、他の法令とはすなわち沿岸漁業等振興法等をさすわけでございますが、要は人選とその運用にある、こういうふうに考えるわけでございまして、十名の人選につきましては十分御趣旨に沿うような学識経験者を選定して、運用に誤りのないように期したい、こういうふうに考えておる次第でございます。
○芳賀委員 私の聞いておるのは、なぜ沿岸漁業等振興法に基づく必要な審議会の設置ができないかということです。何も漁業法に基づく漁業調整の審議会を持ち出す必要はないじゃないですか。人選の場合においても、これは漁業法に基づくところのいわゆる漁業調整の機構というものは、地方における調整委員会ですね、海区調整委員会あるいは連合海区調整委員会、その上に中央漁業調整審議会というものがあるわけでしょう。この一貫した審議会の組織、機構というものは、漁業法に基づく必要な任務というものがあるわけですね。本来の任務というものがあるでしょう。また、沿岸漁業等振興法の中でそういう審議機関が必要であるとすれば、この振興法の精神に基づいた審議会というものが設置されなければならないと思うのです。それをことさらに審議会を設けることを避けて、漁業法に基づくところの審議会にひさしを借りて間に合わせる、これは全くおざなりじゃないですか。どうしても本来の審議会というものをつくって、そこで国の施策とかあるいは漁業の動向等を的確に把握して、向こうべき方向を明らかにするとか、あるいは政府の施策の誤りに対して審議会として十分な意見を建議することができるということにすべきだと思うのですね。これは全くおかしいと思うのですよ。そう思わないですか。ですから、この必要性というものを私は指摘しておきたいと思うわけです。
 それから次に、農林大臣が国会に対していわゆる漁業に関する報告をしなければならぬということになっておるが、農業の場合には、農業の動向というものを把握して、一体ここ一年間に農業の動向というものはどういうような変化をたどっておるか、その動向に対処して農業の施策というものはどのように講ぜられて、どのような成果をあげたかということが、あわせて国会に報告されなければならぬことになっているわけですね。
 あるいは向こうべき施策の実行についても、農業の動向というものを十分把握して、それを勘案して先一カ年間なら一カ年間の施策というものを定めなければならぬ。それを国会に文書として出さなければならぬということになっておるが、今度の振興法の場合には、この一番大事な漁業の動向というものがどうなっておるかという点については、これは国会に対して報告する必要がない、あるいは今後の施策についても、漁業の動向というものを配慮して施策を講ずる必要がないというような、こういう手抜かりというものがあるわけですね。この動向というものを無視して、まじめな政策とか政治というものはできないのじゃないですか。漁業が国民経済あるいは産業構造の中で客観的ないろいろな影響を受けるじゃないですか。そういう全体の中における漁業の動向というものはどうなっておるかということが的確に把握されなければ、せっかく国が財政の措置あるいは金融措置を講じて施策を進めようとしてもやはり誤りなしとはいえないと思うのですよ。どうしてこういう大事な点をことさら手を抜くのですか。第七条まではほとんど基本法をまねておるとすれば、その中で大事な動向に関する点をことさらはずすということは、全く国会に対する報告というものを骨抜きにするということになるのです。この点はどう思うのですか。これは必要があるとかないとかいう問題じゃないですよ。当然、報告をする場合、施策を述べる場合には、この点は大事な要素になると思いますが、どうですか。
○庄野政府委員 御指摘の点よくわかるわけでございます。ただ水産業におきます調査、統計等が非常に弱体でございまして、そういった動向把握ということにつきましても、なかなか困難な面があるわけでございます。われわれといたしましては、講じた施策及び講じようとする施策を報告することになっておりまして、当然そういう中におきましては、そういう動向等も頭に置いて、講じようとする施策等は考えなくちゃならぬかと存じますが、漁業の動向というものをそれだけ取り出して御報告申し上げるというだけの統計、調査資料の十分な準備がないという現状でございまして、そういった面は今後よく沿岸漁業等の実態を把握して、そういう方向に努力したい、こういうふうに考えておるわけです。
○芳賀委員 大事な点は統計が不備だとか、基礎資料がないというて逃げるが、ないからなおさら大事なんです。長期見通しの問題にしても、動向の把握の問題にしても、いまはできないからこの際法律の中でこれを明記して、そうして行なわれるようにするということが、これは前向きの姿じゃないですか。安易な道だけたどる気になって、いまはやれぬからとか、自信がないからというて、わざわざ意識的に骨抜きにするということはけしからぬと思うのです。そうじゃないですか。
 その次にお尋ねしたいのは、たとえば農業の場合にも貿易自由化というものが、全く無計画に行なわれておるので国内農業に対して非常な圧迫を来たすが、しかし農業基本法の中には、貿易の関係、特に国内農業を保護するために必要な貿易上の措置を講ずるということは明らかになっておるが、沿岸漁業等振興法の場合には、自由化に対する保護政策あるいはかまえというものは全然ないじゃないですか。第三条の施策の中にどこか書いてあると言えばそれまでですが、そんななまやきしいものじゃないでしょう。むしろ漁業の場合には水産物の輸入に対する対策というよりもやはり前向きに、水産物の輸出振興という問題が、これは国際競争の上から見ても、漁業とは比較にならぬ程度国際競争力というものはたえ得ると思うのです。そういう場合に一体貿易政策を通じての輸出振興、あるいは場合によっては輸入に対する措置というものを、どういうふうに強力に講ずるかという点が、これも全く手落ちなんですね。数点私が列挙しただけでも、これは法律策定上重大な手落ちがあるじゃないですか。農業基本法よりも二年もおくれて、いまごろこんなものを出して、これでは全くこれは骨抜き法案であるとか、お経法案であるというてだれも信頼する者はいないじゃないですか。一体こういう点はどう考えておるのですか。
○庄野政府委員 水産業につきましては、御指摘のように輸出が非常に大きく伸びておるわけでございます。また水産物の国内消費それから輸出に依存する度合いというものは、農業等に比べて非常に比率が大きいわけでございます。われわれといたしましては国の施策の基本的な方向の中におきまして、そういった点は講じていく、生産性を高めて、コストのダウン等の問題をはかって、所得を増大するとともに国際競争力をさらにつけていくということで、当然輸出は振興されるものとわれわれは考えておるわけでございます。輸入につきましても、輸入依存度というものが農業と比べて格段に水産業においては少ないわけでございます。むしろ輸出を伸長するということのほうが、将来の水産業の行き方だと思うわけでございます。自由化の問題につきましては、国内の、特に沿岸漁業等に重要な影響があるわけでございますが、やはり輸出を振興するという面におきまして、輸入においても相手国との関係において相当に慎重に考えなければならぬという面も出てくるわけでございます。それでこれはやはり沿岸漁業等についても、そういう輸入に対する競争力をつける、すなわち生産性を上げるということが先決問題でございまして、そういう手を打ちながら国際競争力をつけて輸入の問題については処理していきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。自由化の点については、今後とも国内関係を慎重に考えて処理する、こういう方針でございます。
○芳賀委員 せっかく法律をお出しになるのですから、大事な点だけでも法律に載せてあれば一われわれは漁業基本法とかあるいは関係の沿岸漁業振興法とか水産物価格安定法とか水産業改良助長法とかそういう一連の完備した法案を出しておるからして、これが通れば問題はないのですよ。社会党案が通って、政府案がつぶれれば、これは問題はないが、そう簡単にはいかないという心配もあるから、せっかく政府案を出す場合には、もう少し中身のあるといわれるような法案を出すほうがいいんじゃないかということで、私は具体的な問題点だけに限定して論議を進めておる。
 その次に、生産活動の拡大とかあるいは生産の場であるところの漁場の確保であるとか、そういう点もどこかに少し載ってはおるが、漁場の確保にしても、生産基盤の整備という問題についても、非常な手抜かりがあると思うのですね。特に工業化とか他産業の発展に伴って、従来の漁場が埋め立てをされたとかあるいは工場の汚水によってその生産を維持できなくなったというように、生産の場というものは次々に侵害され、あるいは喪失されておるわけですね。一体こういう点について、この沿岸漁業等振興法というものは、どこで漁場の確保、生産の場を確保するかという点が強調されておるのですか。この点は政府の国民所得倍増計画の中にも明らかになっておるのですよ。他産業の発展に伴って発生する埋め立て、水質汚濁などによる漁場荒廃に対しては、漁業計画と合理的な調整をはかり、十分対処しなければならぬということになっておるわけですね。基本法の中にさえも、この点は、漁場喪失の問題は強調しておるじゃないですか。それを全くど忘れして、法律の中には何ら明示されていないでしょう。こういう点を失って、どうして沿岸漁業とかあるいは中小企業の保護ができるかということなんですね。この点について、簡単な答弁でいいです、忘れておったとか、これは手抜かりであったということだけでいいですから。
○庄野政府委員 国の施策の基本的方向を示しております第三条の第一号並びに第二号、これをお読みいただければ、国の基本的方向といたしまして「水産資源の適正な利用、水産動植物の増殖等によって、水産資源の維持増大を図ること。」と、二号は「漁場の整備及び開発、漁業技術の向上等によって、生産性の向上を図ること。」こういった国の基本的方向を示し、それに基づきまして沿岸漁業等におきましては、第八条に「魚礁の設置、養殖漁場の造成等生産基盤の整備及び開発」こういうことばで漁場の開発拡大をはかる、こういうことをうたっております。これで十分やれると思っております。
○芳賀委員 それは意味が違うんですよ。私の言うのは、既存の漁場、生産の場というものがだんだん侵害されておるでしょう、喪失されておるでしょう。これをどういうふうにして防衛するかという点なんです。あなたのいま読んだのは、そういうことは何も言ってないじゃないですか。そうでしょう。だから他産業の発展によって圧迫される既存の漁場、生産の場というものをどういうふうにして防衛するかということは何ら規定されていないじゃないですか。そういうものをどんどん失って、あとは開発するからよろしゅうございます。当然逃げ回って歩くということになるでしょう。そうじゃないですか。これは非常に重大な点ですよ。
 それから最後に、時間がありませんから、もう一点だけ指摘しておきますが、政府としては構造改革、構造政策と構造改善事業というものをどういうふうに区分して考えておるのですか。
○庄野政府委員 二次産業等の発展によります漁場の喪失の防衛等は、やはり国の施策の基本方針でございますので、第三条の第一号、こういうところでそういう点の防衛はやる。しかしそういった一つの大きな傾向もあるわけでございまして、そういう場合の規制の措置としては、水質汚濁防止の法律とか、そういった点で水質の汚濁の防止をはかる、こういった点も十分処置し得るとわれわれは考えております。
 なお構造改革ということばをお使いになりましたが、われわれとしましては、沿岸漁業におけるやはり構造改善ということを、第八条に列挙いたしましたような事業を推進することによりましてはかるということによりまして、御質問のような方向に持っていく、こういうことに相なろうかと存じます。
○芳賀委員 そうではなくて、構造政策、それから構造改善事業というものを何か混同して考えているのじゃないですか。わざわざ法律の中に構造改善事業なるものを持ち出して何か得々としているようですが、何か大きな錯覚を起こしておるのじゃないですか。構造政策と構造改善事業との相違点というものを明らかにしておかぬと、この法律の判断からいっても非常なあやまちをおかすと思うのですが、どうですか。
○庄野政府委員 構造政策という意義が非常にいろいろな意味に使われるわけでございますが、そういう政策の一環といたしまして構造改善事業を沿岸漁業等においては行なう、こういうことによりまして構造政策を行なう、こういうことに相なろうかと思います。
○芳賀委員 政府案によってこれを解釈すれば、いわゆる第三条の国の行なう施策の方向というものは構造政策を示しているのじゃないですか。構造改善事業というのは、そのごく一部を事業としてこうやりますということじゃないですか。構造政策の一部じゃないですよ。この点だけを私のほうから明らかにしておきます。そうでなく、わざわざ構造改善事業なるものを法律に持ち出したところに大きな問題があるわけです。しかもこの点は、農業基本法に比べても問題があるわけです。農業基本法では、第四章で「農業構造の改善等」という章を起こして、以下十五条から二十二条まで具体的に述べているが、その中で、振興法の構造改善事業と関係のある点は、農業基本法の第二十一条、ここでは「国は、農業生産の基盤の整備及び開発、環境の整備、農業経営の近代化のための施設の導入等農業構造の改善に関し必要な事業が総合的に行なわれるように指導、助成を行なう等必要な施策を講ずるものとする。」こういうことが書いてあります。そこで問題は、振興法の場合には非常に内容が相違しているわけです。これは読んだほうが早いわけですが、振興法の政府案によると、「国は、沿岸漁業について、都道府県が構造改善事業に関する計画をたてこれに基づき構造改善事業が実施される場合に当該計画の樹立及び実施について助言及び助成を行なう等沿岸漁業に係る構造改善事業が総合的かつ効率的に行なわれるように必要な援助等の措置を講ずるものとする。」こういうことになっておるわけです。農業基本法の場合には国が主体になって指導性を発揮して農業の構造改善事業を行なうが、沿岸漁業等振興法の場合は国の主体的な立場というものは放棄しておるわけです。都道府県等が改善事業というものを計画してこれを実施する場合に、国ができるだけ援助しましょう、助言をしましょう、ですからその主体の場所というものは非常に相違しておるわけです。農業の場合には国が主体になってこれを強力に進める。漁業の場合には都道府県が主体になってこれをやりなさい、こういう大きな差異があるわけではないですか。農業基本法の第二条では国の責任をもって施策を講ずる、必要な予算は確保するとか、あるいは資金の確保をするということをうたっておきながら、実体法ともいわれるこの第八条においては都道府県が主体になってこれをおやりなさい、全くこれは農業基本法の場合と大きな相違があるのではないですか。どうして農業基本法と同じように国の責任を明らかにして、国の指導性というものを明らかにできなかったかという点なんです。わざわざこの構造改善事業を一つだけしか取り上げてないのですからね。あとは何もないでしょう。わざわざ取り上げた以上、国の責任でこうやりますということがどうして書けないのですか。この点を明確にしてもらわぬといかぬですね。
○庄野政府委員 第三条に国の施策の基本的な方向といたしまして国は、……必要な施策を総合的に講じなければならない。」こういうふうに国の責任は明確にいたしております。そしてそれに伴う法制的あるいは財政的な措置を国は講ずるということを第五条にうたっておるわけでございます。実体的な事業法的な第八条の構造改善事業は、海区が四十二海区ございまして、海区の実情等いろいろ千差万別でございます。第三条を受けて第八条の構造改善事業を進めるわけでございますが、そういう事情を考えながら第八条においては、国は県を指導して、こういう構造改善をやる。ただし国においてその財政的な援助はやる、こういうことをうたったわけでございまして、国の責任を回避しておるものではございません。
○芳賀委員 これはあくまで国の責任を回避したものとわれわれは断定しておるわけです。とにかく全国で四十二地区でしょう。府県一地区が原則ですね。北海道が四地区、長崎県が二地区でしょう。一体府県一地区くらいでそれに対して国の負担が三億円でしょう。百二十六億円くらいの金で全国の構造改善事業というものが一体進むと思うのですか。一府県に対して百億円出すというのなら話がわかるのです。とにかく全国に百二十六億、スズメの涙くらいふりまくのだから、国が主体になってやりますなんということは書けないでしょう、良心的に考えれば。しかし予算というものは法律が明確になって初めてそこに予算の裏づけというものが行なわれるわけですからね。どうも水産庁のやり方はへっぴり腰でいかぬではないですか。たとえば農林省の機構問題にしても、水産庁以外は機構改革で地方農政局とか、あるいは中央においても一局ふえて、本省においても農政局のほかに園芸局というふうに一つふえたでしょう。水産庁の場合には機構が弱体化しておるではないですか。以前は水産庁長官の下に次長制があったが、これはなくなってしまった。その次は水産庁に参事官を置いたが、いまはこれもないでしょう。そうなると長官だけがさつき言ったようにふんどし一本になっていかにがんばってみても、どうにもならぬではないですか。今度の法律の場合も沿岸漁業とこれは中小漁業になっているが、沿岸漁業等から沿岸漁業を引いた場合の残りがいわゆる中小漁業で、これは何も残らないではないですか。沿岸漁業等からいわゆる沿岸漁業を引いた残りというものは、どこにどれだけあるのですか。これはやはり水産庁を中心とした水産行政の弱体化からきているでしょう。沿岸漁業を担当しておるのは漁政部でしょう。大きく分ければ、和田さんのやっている漁政部が沿岸漁業でしょう。中小漁業とか大資本漁業は、これは生産部が扱っているのではないですか。いわゆる利権の伴う許可漁業、これの担当の生産部長というのは一年に何日本省におるのですか。国内におるのですか。日ソ漁業といえばこれは百日交渉ではないですか。日米加の交渉あるいは日韓の漁業交渉ですね。生産部長は歴代ほとんど一年の三分の二は国におらないでしょう。そういう場合に、一体この大事な沿岸漁業等振興法の策定の場合も生産部長というのは全く関与しないようなことで、おそらくこれは法律ができたと私は見ているわけです。国会の審議の場合だって生産部長はいないじゃないですか。だから生産部長がほとんど国外で漁業の外交問題を担当しておるということになれば、農林省の機構改革のあたりでその問題を解決する機会だったと思うわけです。一体圧野長官はこういうことをどう考えているのか。あなたは役人だからそういうことを聞くのは無理かもしれぬが、実際いまの農林大臣なんというのは、そういう点から見るとおかしいと思うのです。農林省の役人上がりで農林省の事務次官までやった経歴の人物が、こういう大事なことを見のがしてやっているのではないですか。利権の伴うような許可漁業というのは、これは生産部でしょう。そういうときに部長もいない、次長も参事官もいない。一体だれがそういう大事な許可等の事務をやるわけなのですか。あなた一人では何もできないではないですか。庄野さんだけがいかに有能な士であっても、結局長官というのは帽子にすぎないでしょう。シャッポでしょう。何もかも自分でやるというわけにいかぬのではないですか、農林省のようなマンモス組織の中においては。こんな沿岸漁業等振興法という骨抜きの法律ができたのはそこに基因するわけなんですよ。どうして内部的な組織を強化して、間違いの起きない、自信を持った水産庁行政がやれる体制というものがつくれないのか。地方農政局なんかつくらなくたって仕事はできるでしょう。これは総括のときに農林大臣に聞く問題ですが、政務次官として何か御意見があればこの際聞かしてもらいたい。ないということはないでしょう。わざわざ政務次官としてすわっているのだから、何か考えがあったら述べてもらいたい。
○津島政府委員 この問題は非常に重大な問題でございますが、私が実際に携わった問題を申し上げますと、終戦後の古い話でございますが、その際、国会におきましては水産庁というものに対しましてその重大性を非常に認識をいたしまして、これは独立した省というようなふうに考えなければならないという非常にまじめな強い議論がございました。私どももこれに賛成でございまして、いろいろな意味からまいりまして、日本の水産行政というものをそのように大きく取り上げていかなければならないものであるというふうに考えましたが、だんだんにその省という声が消えまして、今日のような姿になったのであります。私はこれに対しましてまだ疑問を持っておるのであります。今日の日本の大きな事業、世界におきましても御承知のとおり日本の水産業はそれこそ世界に冠たるものでございます。その重大性を考えますと、今日の水産庁ははたしてそれに対応する十分な機関であるかということにつきましては、これまた私は幾らか懸念を持っておるような次第でございます。したがいまして、ただいまお話しのような、だんだんに水産庁が、その機構において、小さくなるとは申しませんが、どうも縮小の気味にあるというようなことは、私といたしましてもまことに残念なことに思うのであります。必ずこれはさらに検討をされる機会が到来するのではないかというふうに信じておる次第であります。
○長谷川委員長 湯山勇君。
○湯山委員 なるべく重複を避けまして、お尋ねいたしたい幾つかの点をお尋ねいたしたいと思います。
 その第一点は、すでに各委員から指摘がございましたように、この法律は具体性に欠けておる、施策やあるいは事業実施の規定が不明確だということは指摘されたとおりでございます。それはそれとして、この法律を見て私ども非常に不満を感じる点は、沿岸漁業等を振興するといいながら、一体どういう漁業を振興するかということがまず不明確である。と申しまするは、分け方は、沿岸漁業それから中小漁業、こういう二つがこの中であげられております。しかし沿岸漁業という概念と中小漁業という概念は、相対比する概念ではなくて、全く別な条件から成り立っている。だから沿岸漁業の中に零細な漁家漁業もあれば、沿岸漁業の中にノリの養殖とかあるいは真珠母貝の養殖だとか中小漁業もあるし、それから沿岸漁業の中に真珠の養殖とかあるいは非常に大きな養殖業とか、魚類の養殖とか、大資本の漁業もある。こういうことで、結局沿岸漁業と中小漁業、こういう区分そのものが対象を不明確にしておる。こういうところに、私はこの法案の一つの誤りといいますか、不明確さがあるんじゃないか。したがってこの法律を幾ら読んでも、これからはビジョンが生まれてまいりません。長官もおっしゃいましたように、価格対策などはなるほどこの中に書いてあるにしても、資本漁業に適用しないというわけにはまいらないというような、そういう不明確さです。ここに一つこの法律の大きな欠陥があるんじゃないかと思いますが、その点はいかがなもんでしょうか。
○庄野政府委員 漁業を区分する場合に、業種別に区分する場合もございます。たとえば一本釣りだとかタコつぼとか、あるいは地びきとか定置漁業とか、あるいは底びきとかまき網、あるいはサケ・マスの流し網、こういった漁業形態等で区分する場合もございます。しかし沿岸漁業等振興法は、やはり漁業のにない手である従業者あるいは漁家、就業者の生活の水準の引き上げ、それにいきますには、やはり所得の増大をはかる、生産性向上をはかる、そういった経済的の面から見て、水産業の底辺にあります低所得の階層の振興をはかっていく、こういうようなねらいをいたしておるわけでございます。そういう観点から最も現在振興を要する沿岸漁業、この中には、いま申しましたような一本釣りとか、そういうものが大部分含まれるわけでございますし、御指摘のような真珠のような大資本も入っておるわけでございますが、やはり大部分が母貝の養殖等で、沿岸の漁家がこれのにない手になっている、こういった点であります。そういう意味で、この漁業振興法のねらいがそういうところにありますので、沿岸漁業あるいは中小漁業、そのにない手の沿岸漁家あるいは中小漁業者の振興をはかっていく、こういうことに相なったわけでございます。価格政策等につきましてもその基本的な方向を示してありますので、これに基づいて生産調整あるいは価格の安定制度、そういったもの、その他施設の拡充等をやりまして、流通機構による価格の安定、そういった点は十分今後講じてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
○湯山委員 御答弁ではやはりいまのように沿岸漁業の中に大資本も含まれるということをお認めになっておるわけでございまして、これは対象が明確でないということは、その施策が当を得ないということにつながっております。正確に言えば、たとえば沿岸漁業の中の漁家漁業、沿岸漁業の中小漁業、沿岸漁業の中の大資本漁業、あるいは沖合い漁業においても漁家漁業も若干あると思います。それからその中の中小、その中の資本、こういうような明確な区分がなされないと、これはいつまでもたってもしこりが残っておると思いますので、御一考をわずらわしたいと思います。そういう不明確さが実はこの中のいろいろな施策の中にもあらわれておりますので、いま、これを指摘してお尋ねをいたしたいと思います。
 それは法律の第三条一項に、第一条の目的を達成するために、次の各号に掲げる事項に関して、必要な施策を総合的に講じなければならないというので、第一号から第八号まで、資源、生産性、近代化、流通、価格、災害補てん、従事者養成、転業、福祉施策、この八項目あげてございます。これは沿岸漁業等についての国の施策ということになっております。そこで、その次に、それでは構造改善を進めていくには、その中のどれをどういう具体化するかということがなければならないのですけれども、長官ごらんいただければわかりますが、沿岸漁業の構造改善事業という、その事業内容としてあげてある生産性の高い漁業への転換云々はさきの第二号に当たっている。第二の魚礁の設置あるいは養殖漁場の造成その他はさきの第一号に当たっておる。それから第三番目の集団操業云々はさきの第三号に当たっておるし、第四番目はちょうどさきの第四号に当たっております。第五はその他というので、これで見ますと、構造改善事業としてこんなものをここにあげなくても、もうすでに前にあげられてある。四つよりももっとたくさんのものが、もっと具体的に第三条にあげられております。だからここに何も書かなくても、現在までこういうものがなくても構造改善は進めれられてきておるし、ここに書いたものが、第三条をさらに具体化したものであれば、私は存在の意味があると思いますけれども、それをただ簡略にしたものだけで、ここにはどうなるのか、どういうことをするのかという具体性は少しも出ておりません。それから同じように第九条におきまして、中小漁業の振興のためにはこういうことをやっていくんだという、これに至ってはもう項目さえあげてありません。ただ書き流しで、どこで切っていいのかわかりませんけれども、便宜上言えば、水産資源の利用、漁船及び漁具、漁労装置その他の設備、水産物の取引関係あるいは労働環境等の改善、まことに簡単なことが中小漁業の振興というのであるだけです。これには少しも中小漁業のためにこういうことをやるのだというものはありません。これよりも構造改善のほうがまだ少し詳しいし、それよりも一番初めに原則的に並べた第三条のほうがはるかに詳しい。つまりこうなってまいりますと、これで見ますと、だんだん具体的になるほどしりつぼみです。これで一体はたして具体的な沿岸漁業の振興ができるかどうか。法律からいえば第九条も要りません。それから第八条も要りません。この第三条だけあればけっこうこれだけのことをやっていけるようになっているのです。そうじゃございませんか。
○庄野政府委員 これは、第三条は国の基本的方向を示したわけでございまして、それに基づきまして沿岸漁業につきましては八条で構造改善事業をやるということを明確にうたったわけでございます。構造改善事業の内容については国の基本的方向を受けてくるのは当然でございますので、そういう点において重複の点もあるわけでございますが、構造改善をやるということにつきましての明確な規定を置いたわけでございます。
 九条につきましても、中小漁業につきまして第三条を受けて融資を基本にいたしまして、その他必要な改善事項を定め、そしてその改善事項にのっとるように指導し、それに必要な融資を確保する、こういうことを明確にうたったわけでございます。
○湯山委員 長官がいまおっしゃったところだけは明確です。確かに沿岸漁業の構造改善をやる、これは明確です。中小漁業の振興をやる、それは確かに明確に書いてあります。しかしその中身は何にもないのです。中身は第三条で一括したよりもはるかに簡単な語句があるだけです、中小漁業の振興ということには。おわかりですね。それから沿岸漁業の構造改善も第三条の中の幾つかが抜いてあるだけだ。しかしもっと丁寧に言えば、この第三条にあることは全部構造改善事業につながっております。その中でどうしてこれだけ抜いたかということになると、これは答弁にお困りだと思うのです。それはみんな「その他」に書いてある。第五の「その他」、こうでしょう。そうじゃありませんか。全くそのとおりなので、私はこれは議論しても長官のほうはいろいろ明確にするためとおっしゃるでしょうが、ちっとも明確になっておりません。要らないことが書いてあるとしか私には思えません。ほんとうにやる気の法律でしたら、それならその三条の基本方針を受けて、構造改善を具体的に、これよりも詳しいものが具体的に出てくる、それなら私はいい法律だと思います。それから中小漁業の振興なら、こんなに書きなぐりで語句が並んでいるのでなくて、そうじゃなくて、もっとしっかりそれについてはこうだという項目が明確にされておれば、私はこういうことを申しませんけれども、そういうことが一切ないわけで、これでは構造改善もそうですけれども、中小漁業の振興ということもこの中からは出てこないということを私は感じて、その点たいへん不満です。
 そこで、出ておる法律ですからそれの判断は別として、そういうことからお尋ねしたい第一の点は、この法律の第五条に「政府は、第三条第一項の施策を実施するため必要な法制上及び財政上の措置を講じなければならない。」ということが明確に書かれております。ここからお尋ねしなければ内容がわかりませんのですけれども、一体これをやっていくための必要な法制上の措置ということでどういう法律をいまお考えになっておるか、その法律名もしくはその内容をひとつできるだけいまお考えになっているもの全部お示し願いたいと思います。
○庄野政府委員 これは基本的な考え方を述べた法律でございます。こういう第三条に掲げられておりまする国の基本的方向に沿って措置する場合の必要な限度において法律をつくり、あるいは予算的措置を講ずる、こういうことに相なるわけでございます。われわれといたしましても、この中ですでにありまする法律をさらに拡充するといったような問題と、新しく法律をつくらなくちゃならぬという問題もございます。たとえば、中小漁業融資保証法等の拡充あるいはサンマ等につきまして生産調整をやっておりますし、また価格安定の基金の制度を設けておるわけでございますが、そういう点の拡充等も将来どういうふうに考えるかという点も問題点の一つだと思います。また漁港法の問題につきましても、先般御審議願ったわけでございますが、一部いろいろ御意見もございまして、さらにその拡充につきましていま検討しておるわけでございます。さらに漁業共済等につきましても、ただいま試験実施の段階でございますが、これが本格的な実施ということを期しまして、制度化の準備を進めております。これも研究会を設けて早急に結論を出すようにいたしたい。そうしてそれに基づきまして制度化の方向に持っていきたい、こういうようなことを考えておるわけでございます。なおいろいろな点もございますが、われわれとしても十分検討して制度化をはかっていきたい、こういうような考えでございます。
○湯山委員 いまの長官の御答弁でははなはだ不満でございます。と申しますのは、積極的にこういうものを法制化していこうというのでお述べになったのは、漁業共済の問題だけであって、それ以外のものはほとんど従来のものの手直しとか拡充していくとか、こういうことである。この法律はそういうものじゃなくて、現在ほんとうに行き詰まっておる零細漁民をどうしていくかという切実な問題である。しかもそのためには国がこういう施策をやらなければいけないという基本方針がきまっておるのです。それに対して政府はこういうことをしなければならない、することができるとか、こういうことについて考慮するとかいうのじゃなくて、明確に法律はやらなければならないという規定をしておるにもかかわらず、非常にいまの点不明確でありまして、こういう点も、こういう法律をお出しになるのですから、いま考えておるのはこれとこれとこれだ、それから検討中のものはこれとこれとこれだというようなことが、新しい観点からたくさん出てくるということでなければ、一向これができても具体的な施策は何も出てこないということになるおそれが多分にあると思います。これももうあまり申しませんが、ひとつさらにそういう問題については、具体的なものをできるだけ早く、構想としてでもけっこうですからお示しいただきたいと思います。
 いまの長官の御答弁のような態度は、この問題だけではなくて、ほかにもずいぶんあるのです。これも私ははなはだ不満なのですが、その一つをあげてみますと、それは労務対策の問題です。国は漁業労働者のためにいろいろ近代化、改善等やっていかなくちゃならないということが書いてございます。そこでお示しいただいたこの「沿業漁業等振興法案に係る施策の概要」、これを拝見いたしました。この施策の中にも、実は従来やっておるものの説明はかなり出ておりますけれども、新しくこれをやっていこうというものはほとんど出ておりません、のみならず漁業労働者の実態が非常に悪いということを指摘しておいて、そしてその中で、このお示しになったのを拝見しますとこういうことなのです。一体政府提案の法律でこういうことでいいかどうか、これはひとつ十分御検討願いたいのですが、職業訓練法による職業訓練、これは三条の七を受けておると思います「労働省と協議の上必要な措置をしたい」こういうことなんです。それから雇用促進事業団の行なう事業、これについて「組合職業訓練所及び一般職業訓練所の運営」 「訓練手当支給」「簡易職業講習会」そういうことがあげてあって、それらを漁民も「利用できるよう労働省と協議の上措置したい。」、それから職業紹介については、職安を中心として行なわれる職業紹介、職業指導の機会を漁民も増大するよう「労働省と協議の上措置したい。」、と書いてあることはこれだけです。これでは一体政府の提案かどうなのか。漁民の労働条件をよくしていこう、近代化をはかっていこうと言いながら、これについてはまだこれから労働省と相談して、いま労働省がやっておるそういう施策に入れるようにしていきたいという希望が述べてあるだけです。いまそういう段階でございますか。
○庄野政府委員 ただいま漁業労働の対策について御質問になっております。漁業労働につきましては、その実態が一般の労働に比べまして非常に特殊な環境にあるわけでございます。そういう船上におきまして非常に遠く海洋に出て労働する、こういった労働の環境から違っておるわけでございまして、そういう面からくるいろいろな陸上労働者との違いがあろうかと存じます。そういう点でただいま手をつけておりますのは、漁船労働におきましては非常に生活環境が悪いということで、居住区の改善ということを指導的にやって、そういう方向で相当の改善が行なわれております。また賃金体系とかあるいは労働の条件とか、そういった点につきましては、労働関係の方々にお集まり願って懇談会を設け、あるいはそこでいろいろ問題を提起してもらって、そういう点の解決に近づく方法をいろいろ研究いたしております。そのためにはやはり現実の労働実態がどうなっているか、こういうことの把握が非常に必要でございまして、これまでそういう点の調査等が非常に手薄でございまして、三十八年度におきましてはそういった労働の実態調査を一部実施する、こういう態勢でただいま県を通じて実施中でございます。そういう資料が集まりますれば、またそれを基本にいたしまして、労働条件の改善ということについてはさらに前進をいたしたい、こういうふうに考えております。
 なお、特に問題になっておりますものといたしましては、先日来お話しいたしておりますように、小型漁船による遠洋操業におきます遭難事故、これは人命の問題等もございまして、そういった漁業をどういうふうに持っていくか、これは操業の区域の問題なり漁船の大型化の問題なり、あるいはそれに要する資本の問題なりいろいろ問題があろうかと存じます。一面労働力の確保という問題にも支障があるわけでございますが、そういった点も考えながら早急にこういう問題は前向きで対策を講じていきたい。ただ漁船の乗り組み員につきましては、先般来船員法の適用を、従来三十トン以上を二十トン以上ということにいたしまして、二十トン以上の乗り組み員には船員法並びに船員保険法といったものの適用の範囲を広める、そういった点も運輸省とも交渉し、そういった措置も講じておりますが、この労働の問題につきましては、何ぶん関係省運輸省なりあるいは労働省なりあるいは厚生省なりといったところの多方面にわたっておるわけでありまして、そういう面との連絡も密にし、そういう面で対処し得るものと、水産庁でみずからやらなければならぬもの、そういう点を十分考えながら、さらに労働問題については取っ組んでいきたい、こういうふうに考えております。
○湯山委員 御答弁は御答弁として、事実として承っておきたいと思いますけれども、ここに書かれていることは、これは水産庁の法律ならばそれはそれで了解できますけれども、政府提案の法律です。ですから労働省も当然責任を持つべきであって、その場合に、この法律を政府が出しておきながら、他の労働者に適用されておるいまの職業訓練だとかあるいはその手当てだとかそういうものが漁業者に適用されていない、こういう原則的なものは出すときにもう解決して出すべきものじゃございませんか。そうでないと、あとはまた労働省の何とか局と長官との間でやらなければならない、こういうことになるので、こういう問題はぴしっとこういうことになっておる、こうするということでなければならないと思います。これはこの「施策の概要」でお尋ねしておるのですから……。
○庄野政府委員 漁業労働者の訓練の問題でございますが、水産庁といたしましては漁船に乗り組む船員の素質の向上ということで、特に機関部門あるいは航海部門等の素質を向上する、そういった講習の場を県に補助して訓練をいたしております。なお、漁業経営のにない手であるあと取り等につきましても、三十七年度から漁民の訓練センターを県に助成して設けさして、これは漁業のにない手の青少年を訓練する、そういう道を開いてやっております。これもさらに計画的に増設して、そういった訓練の充実をはかりたい、こういうふうに考えております。先生の御指摘の面は、これは多分漁業関係から他産業へ転出される場合の訓練等のことじゃないかと思います。そういう面につきましては、これは漁業内で、水産部門内で転出先に必要な訓練をやるということについては非常に困難な面があるわけでございまして、そういう面につきましては労働省で行なっております職業訓練の場を利用する、こういう考えで「施策の概要」の中に掲げたわけでございまして、そういう点は労働省とも十分打ち合わせを済ませておるわけでございます。
○湯山委員 労働省とか農林省とか水産庁とかいう問題じゃなくて、法律を出すときにはもうそういうことは明確にしておくということが提案される場合の態度だと思いますので、これは一言だけ、それだけの指摘にとどめます。
 いま、ここまで参りましたからついでに、じゃ実際に漁業労働者がどういう生活をしておるかという具体的な例を長官に申し上げてみたいと思います。これは五月の終わりです。長崎に行ってこういうビラをもらったのですが、題目は「山田屋の残酷物語−市民のみなさんに訴えます−」、これはこの人がどうこうという問題じゃありません、ただ具体的な例として申し上げるだけです。
  ごはんは立ちながら食べています。トイレは船べりにつかまり、おしりを海につき出してやっています。海が荒れるとお茶わんはころび、おしりを浪が洗います。
  労働時間は一日十五時間以上です。日曜祭日もありません。夜網を入れるので一日三時間つづけてねむることは許されません。十八才未満の少年も深夜業にコキ使われております。ベッドのフトンは潮水でジメジメしめっています。お風呂にも入れません。怪我や病気をしても、お医者さんに見てもらえません。入港しても、一日しか休みはありません。
  エビ漁ともなれば、四十五日から八十日も長崎には帰れません。それでも私たちは天職と思い働いてきました。
  冬は手繰船のカキイレ時です。夏場は魚がとれないので借金がたまります。だから私たちは吹雪もいとわず、冬のカキイレ時を楽しみにしているのです。
  私たちはタイやグチを取りに行きたいのですが、山田屋は「エビ取りに行け、行きたくないものはやめろ」と命令しました。それで私たちは仕方なく「エビ取りに行きますから、生活保障をして下さい」と云って出港しました。
  この私たちの願いに対して、山田屋はアイマイな返答でゴマカソウとしました。それで私たちは「はっきりした返答を下さい」と、その返答を沖で待っておりました。
  会社はこのことを、業務命令違反だと云って、七名を首にしました。
  七名は家族をかかえて大へん困りました。それで「首切りをやめて下さい、もとの船にのせて下さい」と頼みました。しかし、会社はまだ聞き入れてくれません。
  私たちは悪いことをしたとは思えません。そこで“首切り反対の会”を作りました。私たちはこのまま泣きねいりせず、“残酷物語”をなくしていくことに努力し、山田屋が私たちの首切りを取り消すまで頑張ります。
  皆さんの御支援をお願いします。
 こういう具体的な例があるのです。これはこの問題だけじゃなくて、あるいは全国にこういう例は相当あると思います。聞いてみますと、山田屋というのは大きいところでもあるし、相当理解のあるところだということですけれども、それでも部分的にはこういう問題があるわけで、こういう人たちの労働条件を改善していく、長官が提案理由の補足説明で述べておられるように、ほんとうに若い人に魅力のあるようなそういう漁業をつくっていく、漁村青年に魅力のあるものにする、りっぱな人材が沿岸漁業にとどまるように確保する、こういうようなことはなかなか前途遼遠じゃないかと思います。よほどの決意がなければできない問題だと思うのです。その点どのようにお考えですか。ただ簡単に訓練するとかあるいは教育するとか、そういうことだけでは片づかない問題じゃないでしょうか。一般論としてお答えいただけばけっこうです。
○庄野政府委員 御指摘の漁業者の問題は以西底びきじゃないかと思います。そういうふうに、従来生活環境が非常に悪かったわけでございます。特に漁船の居住区というものは御指摘のような非常に狭いところに大ぜいの漁夫が起居する、しかも航海日数が最近は延びている、こういうことで御指摘のような声が出るわけでございます。そういう問題がございまして、昨年から非常におくればせでございますが、漁船の居住区の改善という対策を打ち出しております。これは大体居住区の基準を設けまして、一人どれだけ程度を確保するということで一そういう居住区の改正は船で増トンになるわけでありますが、従来の増トンは補充が要る、こういうことになりますが、居住区の改善につきましては、そういう例外措置を講じまして、居住区の改善を促進するということで進めておりまして、相当先ほど申しましたように居住区が改善されつつございます。さらにこういう問題は居住区の改善の方策を進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
 それから先ほど申しましたように、漁業労働の賃金体系は、実態をさらに明確にする調査をいたしておりますが、現状におきましても賃金構成が歩合給と基本給という問題がございます。従来の賃金体系は非常に歩合給が高いわけでございますが、これはやはり生活の安定を期するということになりますれば、基本給と歩合給の点をさらに検討して、やはり漁業というものの特有性も考えなくなちゃなりませんが、基本給をふやしていくという方向で検討いたしております。
 それから漁業の時間が漁業条件として非常に問題でございまして、いまも漁民の声として出ておるわけでございます。陸上におきますようにやはり一日八時間労働ということは、陸上労働ではできるわけでございますが、これが漁場に出て魚群にぶつかった場合は陸上と同じような基準で律することは困難でございます。そういう漁業の実態を考えながら、漁業時間の問題ももっと合理的なものにしていきたい、こういうふうな検討を進めております。要はやはり実態を早く明確にするということが先決でございまして、その政策を進めるにつきましての実態的な調査をただいま進めておるわけでございます。
○湯山委員 調査だけじゃなくて、具体的な政策をどんどん出していただかないと、とてもいまのような状態だと、長官のおっしゃるように若い者が残るというようなことはなくなってしまうおそれがありますので、ひとつ思い切ってどんどんやっていくというかまえをぜひ見せていただきたいと思います。この沿岸漁業等振興法ができたことによって漁業労働者の労働条件がよくなったということだけでもあったら、私はこの法律の価値は大きいと思います。そういう何かぴりっとした、骨があるようなやり方をひとつぜひやってもらいたいと思うわけです。
 それで、関連して、これは小さい問題でたいへん恐縮ですけれども、訴えでございますから長官でなくてもけっこうです。豊後水道で操業しておる中型底びきですが、これには操業期間の制限がありまして、その制限があるために操業できないので水揚げが少ない、それでいまの労務の近代化ができない、何とかならないかといった訴えはしょっちゅう来ております。この問題は他府県との競合の問題等もあって別な意見もあるようでございますけれども、しかし生産性を高めていく、それから漁業生活者の生活を近代化していく、こういうような観点からいえば、それによって損害を受ける分には別な対策を講じて――現に三カ月とか五カ月とかいう制限のようですけれども、これがなくなればかなり労務の近代化はできるということを経営主が言っておるのですから、こういうことについては何らかの対策あるいは方策があってしかるべきだと思うのですが、いままでの古い習慣を踏襲して、あるいは規則を踏襲していつまでも続けていくというのでは意味がないと思うのですけれども、その点はいかがなものでしょうか。
○和田説明員 私からお答えを申し上げます。
 ただいま御指摘の豊後水道の中型底びき綱漁業の問題につきましては、御承知のように他の漁区が二カ月ないし三カ月の禁漁期間でございますが、あそこは五、六カ月という長期の禁漁期間でございまして、先生御指摘のように業界からはその禁漁時期を労働者の確保のためにもまた経営の安定のためにもさらに縮めてほしいという要望は前から参っております。これは先生御存じと思いますが、実は歴史的には長い経過がございまして、あの大陸だなが非常に狭い地域なものですから、沿岸漁業者との間に相当な争いがございまして、底びきの漁業を営みますために沿岸の一本釣りでございますとか、相手側との間にしばしば紛争を起こしてまいりまして、相当広い禁止区域を設け、また禁止期間を設ける等の処置をしてまいったわけであります。底びきの経営者の言い分もわからないのではないのでございますけれども、一方で零細な沿岸漁業者がそのためにいろいろ経営が成り立たないというような困難な事情も現実にございます。また過去におきまして、相当違反事件が多かったものでございますから、沿岸漁業者からの不信感というものが非常に強いわけであります。中底の合理化をはかりますとともに、沿岸漁業者がどういうふうに今後伸びていくかという問題にも重点を置いて考えなければいけませんので、その点、両方がうまく立ち行く方向というものを発見することはなかなか困難な事情ではございますが、現在努力はしてみたいというふうには考えておりますけれども、直ちに中底の業者の言い分のようにいたしますことは、沿岸漁業者への影響が非常に大きゅうございますので、ちょっとすぐにそういう措置をとるということもできかねますが、沿岸の構造改善事業等が進みまして、沿岸漁業のほうがさらに成り立つような方途が見つけられる時期まで待たなければならないのではないかというふうに考えております。
○湯山委員 違反が多いとか、私もその違反のひどいのを聞いております。それとこれとはまた別個で、何統もある中には、違反しないのもあるし、ずいぶんひどい違反をするのもあるし、それらをごっちゃにしてそういうことにしないで、それはそれでまた別な方策をお講じになってけっこうです。そのために全体がそういう制限を受けるというようなことは、私はさらに御配慮願いたい問題だと思います。
 あと時間もございませんから一つずつの問題を二、三お尋ねいたしたいのですが、次は養殖漁業者の対策についてお尋ねいたしたいと思います。
 沿岸漁業の中心に養殖漁業が置かれるということはもう御存じのとおりで、海藻とか貝類のほかに、ハマチだとかタコだとかエビとかいう、そういうものまで拡大していっていることは御存じのとおりでございます。ところが、これに対する対策、養殖漁業対策というものが、まだ具体的に要網のようなものもできていない。私はこれからの問題では養殖漁業振興法というようなものは、当然この中に――さっき長官にお尋ねしたのは、そういう点なんです。ここの第五条の中の政府がやらなければならない政策として養殖漁業振興法というのをつくるのだ、そうすればその中でいろいろなことができてくると思います。いま養殖漁業と一番競合しておるのは、先ほどお話のあった干拓、それから埋め立てです。養殖漁業の一番いいところが、ほとんど干拓や埋め立ての候補地に選ばれている。これが瀬戸内海あたりの実情です。そうすると、そういう養殖漁業振興法というようなものをつくって、その中でいまのような問題や、それから臨海工業地帯の誘致に伴う海水汚染の防止の問題あるいはまた農地やその他との関連、そういう問題をここでうんと明確にしていく、こういうことが構造改善を進めていく政府、特に水産庁としてぜひやっていただきたい点です。ところが、いただいた資料で見ますと、つきいそとか魚礁とかノリの漁場とか、あるいはハマチのこれから開拓の余地がどれくらいあるというようなことが、いずれも四千、三千、二千、一千ヘクタールというように出ておりますけれども、三十六年度に干拓、埋め立てでつぶれたのは、それらのいずれよりも大きい九千三百九十ヘクタールが埋まっております。これは水産庁からいただいた資料です。それから水質汚濁も約四十県にわたって三十一億に及ぶものが被害としてあげられております。こういう問題は、何か法的な規制がなければ、いまどの県の知事さんも新産業都市、臨海工業地帯お走り回っておる。そういう人たちにあったら、幾ら貝の養殖、ノリの養殖、そういう適地があったって一たまりもありません。今度誘致した工場はいばって来たわけですから、汚水をどんどん流す、これをとめる手はないわけです。こういうことこそ私は法律によってやっていた、だかなくちゃならぬ、こう思います。さらに研究の面でも、承りますと、何か中国のほうがはるかに養殖漁業は進んでおって、日本はたいへんおくれておる。何ら見るべきものはない。魚類、特にハマチは昨年寄生虫で多少被害があったと思います。それからえさにたいへん困っていて、瀬戸内海のハマチあたりにサンマを食べさしている。これでは輸送費や貯蔵費がたいへんなことなんです。その人口餌料の研究だとか、あるいはもっと進めば、稚魚をとるのじゃなくて、人工ふ化です。こういうことなんかは、ほんとうにやっていこうとするならば、政府が金を惜しまないでやっていただかなければ、意図したってできる問題ではありません。こういうことを含めて養殖漁業振興法というようなものをおつくりになるかどうか、そういう対策を明確にされるかどうか。私はぜひその必要があると思いますので、承りたいと思います。
○庄野政府委員 養殖事業等につきましては、ただいま実施いたしております沿岸漁業の構造改善事業の中でそれを取り上げて推進する、こういう体制になっております。これにつきまして、いろいろと施策はやっておるわけでありますが、御指摘のような法制化するかどうか、こういうことは今後の問題として十分検討いたしたいと思います。
○湯山委員 現在の法律で間に合っている。だからするかしないか検討するといういまのような長官の御答弁だと、悪くとればその必要なしと私はとれると思うのです。現在のでちゃんとやっている、そういうものが必要かどうかなお検討するということは、そのままいただきますと必要ないように受け取れます。けれども、いま沿岸漁民の一番心配しておるのは、埋め立て、干拓の問題、それから養殖漁業については、これは一体どうなるのか、将来自信が持てるのか持てないのか、それから、あとでお尋ねします共済制度をどうしてくれるのか、こういった問題全部がからんでおるわけです。それは漁業共済にしても、他のものと違って、養殖漁業には養殖漁業でまたやりやすい面もあると思うのです。そういうことを考えていけば、将来それでなければならないということを大臣も言っておられるし、長官も言っておられる。それなら、そのための振興法とか、そういうものは必要だと私は思うのですが、必要という観点から御検討になられるのか、これで間に合っておるからその必要ないという御観点か、たいへんしつこいようですけれども、意地の悪いようですけれども、私のお尋ねする非常に大事な点ですから明確にしていただきたいと思います。
○庄野政府委員 現状におきましては、そういった問題につきましては水産資源保護法をさらに活用する、あるいは水質汚濁防止法並びに工場排水の規制の法律等を十分活用していく、こういう対策でいける、こういうふうに考えておるわけであります。
○湯山委員 議論はしませんけれども、ただ指摘だけしておきます。長官のようなお考えだと、養殖漁業はおそらく私は先細りになると思います。思っておっただけの発展はしないと思います。これは本院から、瀬戸内海の沿岸を含めて、愛知も含めて調査に参りましたときに、それに対する施策がほしいというのはどこもみな一致した意見です。そのことは、行かれた代表の方から当委員会で御報告もしておるはずでございまして、長官はそのころはまだ長官ではなかったから御存じないかもしれません。しかし、いまのような御答弁だと、この法律は何の意味もなさない。それでは決して構造改善はできない、そういう熱意ではできないだろうということを私は心配しておることだけ指摘いたします。
 次に、漁業共済制度がいま出ましたが、漁業共済制度はいまいろいろおやりになっておりますけれども、特に養殖漁業では、いま申しましたような、どういう寄生虫が発生するか、いつ赤潮が来るか、あるいはどういう病気が出るかわからないので、ぜひ共済制度がほしいと言っております。しかしながら現在試験的にやっておられるところでは、承りますと非常に条件が悪くて、結局条件のいいものは入らない。それから損害の大きいものだけが共済制度に入ってくる。加入件数も少ない上に損害率の高いものが入って、三十六年は収入が一億二千六百万に対して支出が二億六千万、こういう赤字をどうしていくかというような問題、それから魅力が少なくて補償率の高いものが入って安定したものが入らない。そのほかいろいろPRの不足等もあると思います。これを漁獲補償にするのか価格補償にするのか、それからこういう赤字が出てくるのをどうするのか、あるいは、農業と違って作業をするのは沖合いですから捨ててしまってもどうしてもわからない、こういった問題をどうするのか、漁業共済の非常にむずかしい問題がたくさんあります。あなたはわりあいに簡単に、調査も終わったから次には法律を出すという予定だということをおっしゃいましたけれども、こういう問題はたいへんむずかしい問題がたくさんあってなかなか長官のおっしゃるように実際は簡単にいかないのじゃないかということを心配しておるのです。よほど国がそれについては負担をするというかまえがなければ、漁業共済は結局農業共済よりもうんと悪い、うんと成立しにくいということになると思います。こまかい点をお尋ねしたいけれども、もう時間もおそうございますから、これ以上は申しませんが、そういう状態にある。漁業共済については必ず三十九年度から実施されますか。今年度中に法案をお出しになりますか。
○庄野政府委員 そういうふうに詰められますと、なかなか――漁業共済というのは御指摘のように問題の多いことは私も十分承知いたしております。私も農業保険を担当したことがございますが、農業保険と違いましてこの漁業共済という問題は漁業という特異性からくるむずかしさが非常にあるわけでございまして、ただいま御指摘になったような問題は、今後どうするかというときの非常に大きな問題点として研究会を設けて、山添さんが委員長をしておられますが、そこでただいま慎重に検討いたしております。そういう問題を詰めましてこれを本格実施のほうに持っていきたい、こういう考えを私は持っておるわけでございまして、逆選択にならないように、あるいは掛け金率を幾らにするとか、あるいは共済金の限度をどうするかといういろいろな問題がございます。そういう点を一つ一つ十分に検討いたしましてできるだけ早く本格的実施に移りたい、こういうふうに考えております。
 なお、養殖共済につきましては、現段階におきます試験室実施の段階においても引き受けてやっておるわけでありますが、何分まだ例が非常に少ないわけでございまして、この問題もやはりあわせて取り上げてまいりたいと思っております。
 なお、病害その他の問題について、試験研究の面からも研究がまだ手薄でございます。そういう面の強化等もやってまいりたいというふうに考えております。
○湯山委員 いまのように私は漁業共済をやっていただきたいのです。やってもらわなければならないと思っております。ただ、やるときには、政府がいまの農業共済のようにへっぴり腰じゃなくてうんと負担するというかまえがなければたいへんだ、そのことだけしっかり頭に入れてさっきの約束をぜひ守っていただきたい。これはお願いしておきます。
 それからあと一本釣り等で観光漁業等の問題も新しい問題としてぜひ取り組んでいただきたいし、それから水産資源の調査のことを保護協会に頼んで何だか肩がわりしたようなかっこうになっているのもはなはだ不満です。これも申し上げたい点もありますけれども、それも省きます。
 ただ問題は、いまのように法案そのものも非常に不徹底だし、中身も私どもたいへん不満な点が多いのです。それから御答弁を通してみても、これでほんとうにどこがどうよくなるというような、そういう期待の持てることが非常に少ないので、それについては長官をはじめ大臣も含めてずいぶん御努力願わなければならないし、それからこういう不徹底なものはすみやかに漁民が期待しておるような、見ただけで飛びつけるような魅力のある法律にぜひしてもらいたい、これを私は要望いたしまして終わります。
     ――――◇―――――
○長谷川委員長 小委員会設置に関する件についておはかりをいたします。
 内閣提出にかかる沿岸漁業等振興法案並びに角屋堅次郎君外三十名提出にかかる漁業基本法案及び沿岸漁業振興法案審査のため、小委員九名によりなる沿岸漁業等振興法案外二件審査小委員会を設置することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○長谷川委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。
 なお、小委員及び小委員長の人選につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○長谷川委員長 異議なしと認めます。よって、さように決しました。では、小委員に
  安倍晋太郎君 仮谷 忠男君
  川村善八郎君 倉 成 正君
  田口長治郎君 片 島 港君
  角屋堅次郎君 安井 吉典君
  稲富稜人君
小委員長に田口長治郎君を指名いたします。
 この際、小委員の辞任及び補欠選任につきましても委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○長谷川委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。
     ――――◇―――――
○長谷川委員長 次に委員派遣承認申請に関する件についておはかりをいたします。
 長雨による九州、四国、中国地方の麦作等の減収状況について、現地に委員を派遣し調査を行ないたい旨、衆議院規則第五十五条により議長に対し承認方を申請いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○長谷川委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。
 なお、派遣地、派遣期間及び派遣委員の人選等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○長谷川委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。
 なお、本件は緊急を要しますので往復とも航空機利用につきましてもあわせて承認方を申請いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○長谷川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
     ――――◇―――――
○長谷川委員長 内閣提出にかかる甘味資源特別措置法案及び芳賀貢君外二十六名提出にかかる甘味資源の生産の振興及び砂糖類の管理に関する法律案を議題といたします。
 この際、足鹿覺君から発言を求められておりますので、これを許します。足鹿覺君。
○足鹿委員 この際甘味資源特別措置法案の審議をするにあたりまして、資料の要求をいたしておきたいと存じます。
 特に、私は府県ビート関係に重点を置いてお願いをいたしたいのでありますが、その第一は、昭和三十四年二月でありますか、政府策定の甘味資源自給力強化総合対策の実施状況、その実績と講ぜられましたおもな施策をお願いいたしたいと思います。これは生きておるのか死んでおるのかきっぱりしり切れトンボになっておりますが、とにかく重要な資料としてあらためて御提示を願いたい。
 第二は、右に基づく昭和三十四年より本年度までの奨励予算の種目別金額内訳及び開発銀行等の融資高、融資条件を年度別に示してほしいのであります。その三、右による府県ビート等の年度別、三十五年から三十八年に至るものでありますが、奨励実績を特に示してもらいたいと思います。つまり作付生産数量等をも含めた奨励の実績であります。
 第四が、昭和三十六年農林省が行ないましたイタリアビート栽培及びビート糖業の現地調査報告とこれに対する政府の見解をまとめたものをお示し願いたい。三十六年度に二回もイタリアに行き、当委員会にはその中間報告を行なったにすぎません。非常な意気込みでやったにもかかわらずしり切れトンボの感を深くしておりますので、これをぜひおまとめの上御提示願いたい。
 第五に、都道府県における奨励対策の概要及び予算並びにこれに対する国の助成額を年度別にお示し願いたいと思います。
 第六が政令等に相当規定される事項がありますので、省令等を含めましてお願いしたいのでありますが、その一は、第四条第一項の栽培に適する自然的条件の基準を定める政令及び第三号の政令案、その二が、第十三条の工場設置に関する農林大臣の承認についての政令案、三が、第二十条の政府買い入れに関する政令案、第四が、第二十五条の政府買い入れのブドウ糖の一定の種類、規格という、法律に規定された事項がありますが、これは農林大臣が示すことになっておりますので、その内容。及び第五に、甘味資源審議会(委員二十五名)の構成を考えておるようでありますが、その構成の内容、内訳、どういう比率でどういう構成でもってこの委員会の組織をしようとしておるのか、それをお示し願いたいと思いますが、全部いただけますか。
○大澤(融)政府委員 取りそろえて提出いたしたいと思います。
○酒折政府委員 食糧庁と協議の上、至急提出いたしたいと思います。
○長谷川委員長 この際、甘資源特別措置法案について補足説明を聴取することにいたします。大澤食糧庁長官。
○大澤(融)政府委員 甘味資源特別措置法案につきまして、若干補足して御説明を申し上げます。
 第一章は、総則に関する規定であります。
 まず、第一条は、この法律の目的を定めております。
 この法律案を提案いたしました趣旨につきましては、さきに本会議におきまして御説明申し上げたところでありますが、この法律は、適地におけるてん菜及びサトウキビの生産を振興するとともに、てん菜糖工業、甘蔗糖工業及びブドウ糖工業の健全な発展をはかるため、生産振興地域の指定の制度、生産振興計画に基づく生産の奨励助成、生産振興地域におけるてん菜糖または甘蔗糖の製造施設の新設の承認の制度、てん菜及びサトウキビの価格支持、てん菜糖及び甘蔗糖の政府買い入れ並びに国内産ブドウ糖の政府買い入れの制度等の措置を講じ、もって農業経営の改善と農家所得の安定及び国内甘味資源の国際競争力の強化に資することを目的といたしております。
 次に、第二条は、用語の定義を定めております。
 第二章は、てん菜及びサトウキビの生産の振興に関する規定であります。
 まず、第三条は、砂糖類及び甘味資源作物の需要及び生産の長期見通しの策定について定めております。
 農業基本法第八条第一項によりますと、政府は、重要な農産物につき、需要及び生産の長期見通しを立て、これを公表することになっておりますが、この甘味資源特別措置法第三条におきましては、政府は、砂糖類すなわち砂糖及びブドウ糖並びに甘味資源作物すなわちてん菜及びサトウキビを農業基本法第八条第一項にいう重要な農産物として、これらにつき、農業基本法の規定により需要及び生産の長期見通しを立て、これを公表すべき旨を定めているのであります。
 次に、第四条から第十二条までにおいては、適地において、てん菜及びサトウキビの重点的な生産の振興をはかるため、生産振興地域の指定並びに生産振興計画の指定及び実施に関する制度を定め、その適地と認められる一定の区域を生産振興区域として農林大臣が指定し、指定を受けた地域を管轄する都道府県知事は、毎年、生産振興計画を立て、農林大臣の承認を受けるものとし、国は、その計画の実施に要する経費等につき必要な助成を行なうこととしているのであります。
 まず、第四条では、農林大臣は、一定の要件に該当する区域であって農業経営の改善をはかるためてん菜またはサトウキビの生産を計画的に振興することが特に必要であると認められるものを、てん菜生産振興地域またはサトウキビ生産振興地域として指定することができることとしております。その要件は第四条第一項の各号に列記しております。
 第一号は、栽培に適する自然的条件が備わっているかどうかの点であります。この基準は政令で定めることとしております。
 第二号は、その地域における農業経営の諸条件から見て、その生産が安定的に増大する見込みが確実であるかどうかの点でありまして、その判定にあたっては、その地域内の農作物の作付の体系、競合農作物の状況、農業労働条件その他の諸条件を勘案することとしております。これは、甘味資源作物の生産の着実な伸長のためには、単に自然的条件のみならず農業経営上の諸条件が備わっていることが特に必要と考えられるからであります。
 第三号は、その地域におけるてん菜またはサトウキビの生産数量が、てん菜糖または甘蔗糖の製造事業が安定的に成立するために必要な数量に達する見込みが確実であるかどうかの点でありまして、この必要数量は政令で定めることとしております。この第三号は、てん菜及びサトウキビが砂糖原料作物であることから、これを原料とする製造事業との結びつきを考慮しなければならないこと、また、第一条の目的に規定してあります国内甘味資源の国際競争力の強化という観点等からその製造事業も合理的な経営が可能となるものでなければならないこと等の理由により必要とされる要件であります。
 なお、第四条第二項におきまして、農林大臣は、生産振興地域の指定をしようとするときは、関係都道府県知事の意見を聞くこととしており、さらに、第五条では、都道府県知事は、生産振興地域の指定をすべき旨を農林大臣に申し出ることができることとしまして、生産振興地域の指定につき都道府県知事の意向も反映され得るように配慮しております。
 第六条及び第七条は、生産振興地域の区域の変更及び指定の解除に関する規定であり、第八条では、生産振興地域の指定、区域の変更及び指定の解除は、告示をもってすることを規定しております。
 次に、第九条では、生産振興地域の指定を受けた区域を管轄する都道府県知事は、毎年、関係市町村及び農業団体等の意見を聞いて、てん菜またはサトウキビの生産振興計画を立て、農林大臣の承認を受けるものとし、その承認を受けたときは、その計画の概要を公示すこるとといたしております。この生産振興計画におきましては、土地改良その他生産基盤の整備、優良種苗の普及、栽培技術の改善、農業経営の合理化、集荷販売その他必要な事項を定めることとしております。
 第十条では、生産振興計画の変更の手続について定めております。
 次に、第十一条及び第十二条におきましては、生産振興計画の円滑な実施とその計画の達成をはかるため、政府は、生産振興地域のある都道府県に対し、生産振興計画の実施に要する経費の一部を補助することができることとするとともに、てん菜またはサトウキビの生産者またはその団体に対して、助言、指導、融資のあっせん等の援助を行なうよう努めることとしております。
 第三章は、生産振興地域におけるてん菜糖または甘蔗糖の製造事業に関する規定であります。
 まず、第十三条から第十七条までにおいては、生産振興地域内におけるてん菜糖または甘蔗糖の製造施設の設置の承認及び届け出の制度について定めております。
 第十三条では、てん菜またはサトウキビを原料として砂糖を製造する施設、すなわち、いわゆるてん菜糖工場または甘蔗糖工場を生産振興地域の区域内において新たに設置するには、農林大臣の承認を要することとしております。この承認を必要とする製造施設の範囲は、政令で定めることとなっています。
 この承認の基準は、同条第二項に定められており、農林大臣は、承認の申請がその基準たる各要件のすべてに適合していると認められるときは、その承認をすることとなります。
 この生産振興地域におけるてん菜糖または甘蔗糖の製造施設の設置の承認制を採用いたしましたのは、原料生産の伸びに見合った秩序ある工場設置をはかり、その地域における生産の振興と農家の利益の保護並びに製造事業の健全な発展を確保する必要があるからであります。
 したがって、承認の基準も、この必要性に即して設定しております。すなわち、第十三条第二項第一号は、その生産振興地域におけるてん菜またはサトウキビの生産の見込みと既設、新設を合わせた製造施設の原料処理能力との全体としてのバランスを見ようとするもので、その原料処理能力が、先ほど御説明しました長期見通し等から推定されますその地域における生産の長期の見通しに照らして著しく過大にならないことを要件としており、第二号及び第三号は、その製造施設が合理的な経営に適する規模と性能や立地条件を備えていること、第四号及び第五号は、その事業者が原料集荷見込みと経理的基礎及び技術的能力を有していること、第六号は、その他その生産振興地域内の甘味資原作物の生産と製造事業の健全な発展が阻害されることとならないこととしております。
 第十四条では、生産振興地域の指定または区域変更があった際の既存製造施設にかかる届け出について定めております。さきに御説明しました第十三条第一項の承認は、生産振興地域が定められた後に新たに設置する製造施設についてのみ必要とされ、既存製造施設については設置の承認を必要としない関係上、既存施設の設置者から必要な事項を届け出させようとするものであります。
 第十五条では、第十三条の指定製造施設の新設についての承認に見合って、指定製造施設の変更についても農林大臣の承認を要することとしています。この承認基準も、新設の場合も承認基準を準用しております。
 第十六条では、承認を行なう際には、その指定製造施設の適格なる設置及びその施設による製造事業の適正な運営を確保するため必要な最小限度の範囲内において、その承認に条件を付することができることとしております。なお、この条件に違反した場合には、第三十七条の規定により農林大臣は、その施設による製造事業の停止を命ずることができることとして、条件の実効性を確保しております。
 第十七条では、指定製造施設による製造事業の開始、廃止及び休止につき届け出させることとしています。
 次に、第十八条及び第十九条においては、生産振興地域内におけるてん菜糖または甘蔗糖の製造事業者に対する指示及び勧告の制度について定めております。
 第十八条では、製造施設の承認制を採用したこととも関連して、生産振興地域内における農業経営の改善と農家所得の安定をはかるため必要があるときは、農林大臣は、地域内の製造事業者に対し、てん菜またはサトウキビの買い入れの価格その他生産者との取引の条件及び方法、原料集荷区域等に関し必要な指示をすることができることとし、これによる製造事業の適正な運営の確保と、あとで御説明しますてん菜及びサトウキビの価格支持制度の運用と相まって、農家の利益保護に遺憾なきを期することとしています。
 また、第十九条では、第一条の目的にも規定してあります国内甘味資源の国際競争力の強化という観点等から、地域内の製造事業の合理化を促進するため必要があるときは、農林大臣は、地域内製造事業者に対し、経営の改善、事業の休止、経営の共同化等の措置をとるべき旨の勧告をすることができることとし、その勧告に従い所要措置をとる者に対しては、融資のあっせん等必要な援助を行なうようつとめることとしています。
 次に、第四章は、てん菜糖及び甘蔗糖の政府買い入れに関する規定であります。この章におきましては、生産振興地域内におけるてん菜及びサトウキビの生産者価格の支持と、てん菜糖及び甘蔗糖の製造事業の健全な発展を確保するためのてん菜糖及び甘蔗糖の政府買い入れの制度を定めております。
 御承知のとおり、政府は、従来より、てん菜生産振興臨時措置法に基づくてん菜の価格支持及びてん菜糖の政府買い入れの制度を実施してまいりましたが、この法律におきましても、同様の制度を取り入れますとともに、あわせて、サトウキビの価格支持及び甘蔗糖の政府買い入れについても同様の制度を採用することとし、これら甘味資源作物の生産の振興と国内産糖製造事業の健全な発展に遺憾なきを期することとしたのであります。
 第二十条では、てん菜糖また甘蔗糖の政府買い入れは、砂糖の価格が著しく低落した場合において必要があるときに行なう旨を定めております。これが政府買い入れを行なう場合の原則でありますが、当面の諸事情を考慮し、附則第二条第一項において、当分の間、本則第二十条による政府買い入れのほか、地域内製造施設の新設の当初においてその事業者が原料集荷等の面で受ける著しい不利を補正する必要がある場合、その他政令で定める特別の事由がある場合において特に必要があるときにも、政府買い入れを行なうことができることとしております。
 次に、第二十一条では、これらの政府買い入れの対象となるてん菜糖または甘蔗糖の範囲を定めております。これによりますと、政府買い入れの対象は、生産振興地域内において生産されたてん菜またはサトウキビを原料としていること、これらの原料は最低生産者価格を下らない価格で生産者から買い入れられたものであること、これらの原料から地域内製造施設により製造されたてん菜糖または甘蔗糖であって一定の種類、規格及び生産年のものであることとされています。なお、ききに御説明しました附則第二条第一項の政府買い入れを行なう際の買い入れの対象につきましては、同条第四項において、生産振興地域外の農林大臣の指定する区域内において生産された原料から製造されたもの及び地域内製造施設以外の農林大臣の指定する製造施設により製造されたものをも買い入れることができることとしております。
 第二十二条では、てん菜及びサトウキビについての最低生産者価格の制度を定めております。すなわち、農林大臣は、てん菜及びサトウキビごとにその生産者販売価格の最低基準となるものとして最低生産者価格を定めることとし、この最低生産者価格は、農業パリティ指数に基づき算出される価格を基準とし、物価その他の経済事情を参酌して定めるものとしております。
 第二十三条では、第二十条によるてん菜糖または甘蔗糖の政府買い入れの価格を定めており、その価格は、最低生産者価格に標準的な製造販売の費用を加えて得た額を基準として、農林大臣が定めることとしております。ただし、附則第二条第一項による政府買い入れの際の価格は、同条第二項により、最低生産者価格に標準的な製造、販売の費用を加えて得た額を基準とし、その原料たるてん菜またはサトウキビの生産事情、集荷事情その他の経済事情を参酌して定めることとしております。
 次に、第五章は、国内産ブドウ糖の政府買い入れの制度及びブドウ糖製造事業者に対する勧告に関する規定であります。
 御承知のように、政府は、従来より、農産物価格安定法によるイモでん粉の政府買い入れを通じて、カンショ及びバレイショの生産者の所得の安定をはかるとともに、イモでん粉の新規用途としての結晶及び精製ブドウ糖の製造事業を育成するための諸施策を講じてまいったところであります。
 今後におきましても、農産物価格安定法の適切な運用をはかることによりイモ作農家の所得の安定に遺憾なきを期してまいることは言うまでもないところでありますが、この際、糖価の変動に対処してブドウ糖の生産を維持することにより、でん粉の原料となる国内産のカンショ及びバレイショの長期的な需要の確保をはかるとともに、あわせてブドウ糖工業の合理化を促進するため、国内産ブドウ糖の政府買い入れの制度を設けることとしたのであります。
 第二十四条では、国内産ブドウ糖の政府買い入れは、砂糖の価格が著しく低落した場合において国内産ブドウ糖の生産を維持してその原料でん粉の原料となる国内産のカンショ及びバレイショの需要の確保をはかるため必要があるときに行なう旨を定めております。これが政府買い入れを行なう場合の原則でありますが、附則第三条第一項において、当分の間、本則第二十四条による政府買い入れのほか、国内産ブドウ糖の製造事業の合理化を促進するため特に必要があるときにも、政府買い入れを行なうことができることとしております。
 次に、第二十五条では、これらの政府買い入れの対象となる国内産ブドウ糖の範囲を定めております。これによりますと、政府買い入れの対象は、国内産のカンショでん粉またはバレイショでん粉を原料として製造されるブドウ糖であって一定の種類、規格及び生産年のものであることとされています。
 第二十六条では、第二十四条による国内産ブドウ糖の政府買い入れの価格を定めており、その価格は、農産物価格安定法のカンショでん粉の買い入れ基準価格及び運賃その他の諸掛かりに標準的なブドウ糖製造、販売費用を加えて得た額を基準として、農林大臣が定めることとしております。ただし、附則第三条第一項による政府買い入れの際の価格は、同条第二項により、カンショでん粉の買い入れ基準価格及び運賃その他の諸掛かりに標準的なブドウ糖製造、販売費用を加えて得た額を基準とし、でん粉の需給事情その他の経済事情を参酌して定めることとしております。
 第二十七条では、政府が買い入れだ国内産ブドウ糖は、随意契約により売り渡すことができる旨を定めております。政府が買い入れた物資は競争入札により売り渡すのが会計法の原則でありますが、ブドウ糖はその保管の可能な期間が短い等の事情があり、買い入れ後すみやかに売り渡す必要がありますので、随意契約による売り渡しの規定を設けたわけでございます。
 また、第二十八条では、第一条の目的にも規定してあります国内甘味資源の国際競争力の強化という観点等から、国内産ブドウ糖の製造事業の合理化を促進するため必要があるときは、農林大臣は、ブドウ糖製造事業者に対し、経営の改善、事業の休止、経営の共同化等の措置をとるべき旨の勧告をすることができることとし、その勧告に従い所要措置をとる者に対しては、融資のあっせん等必要な援助を行なうようつとめることとしています。
 第六章は、甘味資源審議会に関する規定であります。
 この法律の制定を機会に、広く学識経験者の御意見、御協力を得て、甘味資源に関する行政の適正を期するため、農林省に、甘味資源審議会を設置することといたしております。
 甘味資源審議会は、農林大臣の諮問機関として、てん菜及びサトウキビの生産の振興、てん菜糖工業、甘蔗糖工業、ブドウ糖工業及び精糖工業の合理化その他この法律の実施にあたっての重要事項を調査審議するとともに、これらの事項に関して農林大臣及び関係各大臣に建議することができることとなっております。
 審議会は、これらの事項に関する学識経験者のうちから農林大臣が任命します委員二十五人以内で組織することとなっており、また必要に応じ専門委員を置くこともできることとされています。
 第七章は、雑則でありまして、てん菜及びサトウキビの生産者からの生産費調査のための報告徴取、てん菜糖、甘蔗糖及びブドウ糖の製造事業者に対する必要事項の報告徴取及び検査、製造施設設置の承認に付された条件に違反した者に対する事業停止命令について定めております。
 第八章は、罰則でありまして、製造施設設置の承認制度の適正な運用を確保し、また報告検査を実効あらしめるため、所要の罰則を設けております。
 終わりに附則でありますが、重要な規定もございますので、その大要を御説明いたします。
 この法律の施行期日につきましては、法律の実施準備の関係もあり、附則第一条で、公布の日から六カ月以内の政令で定める日から施行することとしております。
 また、さきに御説明しましたてん菜糖及び甘蔗糖の政府買い入れの特例とブドウ糖の政府買い入れの特例につきましては、それぞれ附則の第二条と第三条で、政府買い入れをすることができる場合とその際の買い入れ価格を定めております。
 次に、この法律によるてん菜糖、甘蔗糖及びブドウ糖の買い入れ及び売り渡しの会計処理につきましては、附則第六条で、食糧管理特別会計法の一部を改正し、同会計に砂糖勘定を設け、これら砂糖類の買い入れ、売り渡しは砂糖類勘定において行なうこととして、砂糖類の買い入れ、売り渡しによる損益を明確にすることといたしております。
 なお、この食糧管理特別会計制度の改正は、予算の編成及び執行との関係もありますので、附則第七条で、砂糖類勘定の設置は昭和三十九年度分の予算から適用することといたしております。
 最後に、附則第八条の農林省設置法の一部改正は、甘味資源審議会の設置に関連しての規定であります。
 以上をもちまして甘味資源特別措置法案の補足説明といたします。
○長谷川委員長 質疑は明日に譲ることとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後六時四十四分散会