第043回国会 本会議 第4号
昭和三十八年一月二十六日(土曜日)
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 議事日程 第四号
  昭和三十八年一月二十六日
   午後一時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
          (前会の続)
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○本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑
           (前会の続)
   午後二時八分開議
○議長(清瀬一郎君) これより会議を開きます。
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 国務大臣の演説に対する質疑
            (前会の続)
○議長(清瀬一郎君) これより国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。柳田秀一君。
  〔柳田秀一君登壇〕
○柳田秀一君 私は、日本社会党を代表して、成田書記長に続き、経済及び内政について政府に質問をいたします。
 まず、昭和三十八年度経済見通しについてでありますが、上期は停滞、下期は上昇、年度平均実質六・一%の経済成長を見込んでいるのでありますが、当初企画庁ではせいぜい五・五%の見込みであったものを、政治的理由で六・一%にまで引き上げた経緯は周知の通りであります。しかしながら、三十八年度経済は、政府も認めている通り、民間総資本形成はほぼ横ばいであり、経済成長をささえる要因としては、個人消費支出と財政需要しかないわけであります。そこで、政府も財政の刺激的効果を強めるべく、インフレ的政策を三十八年度予算に盛り込んだのでありますが、しからば個人消費がはたして政府の見通しのように一〇%も伸びるかどうか、疑わざるを得ないのであります。眼を現実の国民生活に向けてみましょう。一方ではデフレ引き締め、合理化首切り、農産物価格切り下げ、中小企業への下請単価の切り下げ、下請代金支払い手形の長期化、他方では物価上昇による勤労大衆の実質生活水準の低下など、特に個人消費支出を大きく左右する労働者の賃金問題についても、日経連では不況を口実に定期昇給を含めて四%のアップにとどめるべしと強調している現状であります。このように、経済政策においては、大衆の所得と消費を切り下げる方向に重点を置きながら、経済見通しにおいては、ぬけぬけと個人消費支出一〇%の伸びを見込む、これまさに池田内閣の政治的信義にかかわる問題であります。(拍手)何ゆえに経済成長を政治的に六・一%に引き上げたか。それは三十八年度租税自然増収をふくらますための作為的な操作であって、国民を愚弄するものと受け取れまするが、総理の所見はどうでございますか。この際、私は、個人消費支出の伸びを実際に裏づけるためにも、労働者に対する低賃金の一掃、不況産業労働者の雇用安定、農産物価格安定と農産物輸入自由化の延期、中小企業者の地位向上と経営安定、低所得階層に対する飛躍的な社会保障の拡充等、一連の生活水準向上のための抜本的政策転換の時期にきていると思うのでありまするが、総理にその意思ありやいなやお尋ねいたします。(拍手)
 次に、国際収支の問題であります。外貨準備高においては十五億ドルを割った三十六年十二月を底としてその後増勢に転じ、三十七年末には十八億ドルをこえるに至りましたが、これは一時的な好転と見なければなりますまい。すなわち、今日、日本が置かれている国際的経済環境をながめるとき、欧米資本主義諸国における経済成長の停滞、他方、低開発諸国における一次産品の国際価格下落のための外貨不足、国内原材料在庫手当による輸入増大、日本に対する自由化率引き上げ要求の圧力、かてて加えて、本年はIMF八条国への移行勧告も必至であります。池田総理は、OECDへの日本加盟の働きかけを自負しておられますが、一体OECD加入によって、日本は具体的にどんな利益を受けるかは不明であり、逆に加盟の前提条件として一〇〇%の貿易自由化や関税の一括引き下げを強要されるという不利益は明らかであります。かつての、自由化による日本経済への悪影響は関税によって防止するとの態度から、現在は自由化に引き続いて関税一括引き下げまで進められようとしております。業界ではこれを往復ビンタと呼んでおるとのことであります。これすなわち、欧米各国の要求に追随迎合してきた池田内閣の自主性のない通商政策の結果であり、わが国産業界を脅かすのみならず、国際収支の面においても、再び逆調に転ずるおそれなきや憂慮されるのであります。
 そこで、この問題に関して四点、総理にお伺いいたします。
 第一は、現在までの国際収支の黒字が資本収支の黒字によって大きくささえられている事実、すなわち外国からの長期、短期の借金による外貨流入であり、これを国際収支の黒字として自慢するのは、人から借りた金でふところ工合があたたかいといばるのと同じたぐいで、全くナンセンスというべきであります。(拍手)このような借金政策にあらずして、日本の国際収支を真に安定した拡大均衡の土台に立脚させるための施策として、具体的に何を持ち合わしておられるのかどうかであります。
 第二は、米国の不当ないわゆるバイ・アメリカン、シップ・アメリカン政策を撤回させるためにいかなる手を打つかということであります。日本は、御承知のように、米国への輸出額の一倍半ないし二倍を米国から輸入しておるのでありますが、もし、米国が依然として日本の貿易を不利ならしめる方策を改めないならば、わが国は、断固として、米国からの輸入を日本から買い付けるのと同紙にとどめ、残余は輸入先を転換するぐらいの措置をとるべきであります。総理の見解はどうでございますか。そんなことをしたら、それこそ米国のごきげんを損じるからと御心配かもしれませんが、どうせ商売の道にかけては、どこの国でもがめついのが常道です。御遠慮には及ばぬと思います。総理がこのようにきぜんたる態度に出られたら、米国の当事者は、そのときこそ、心の底ではあなたを偉いと敬服するでありましょう。いたずらにケネディの教書のように、うわべだけおだてられて悦に入っているのが能ではありますまい。
 第三は、本年十月期限の来る日米通商航海条約の抜本的改定問題であります。すなわち、八条国移行後も米国に対し適正なる為替制限ができるよう、また、アメリカ資本の営業活動制限を拡大し、特に石油など重要産業部門にこれを適用すべきだと思いますが、それだけの御決意がございますかどうか。
 第四は、今後の日本貿易にとって根本的な市場問題であります。わが国の産業構造における重化学工業の比重は、年々増大の一途をたどり、輸出商品の中でも重化学工業製品が次第に中心的地位を占めつつありますが、これらの輸出先は決して欧米ではございません。潜在的大市場たるアジア・アフリカ諸国及びソ連、中国等の共産圏諸国であることを思うならば、日本の対外市場を大きくこれらの諸国に求めねばならないとは、国民大多数の共通した考え方であるにもかかわらず、さきに米国及びNATOから、NATO常設理事会の決定に同調し、日本も油送管の対ソ輸出を行なわないようにとの要請を受けるや、唯々諾々とそれに追随した事実は、従来総理が一貫して主張してこられた「政治と経済は分離して考えます。共産圏貿易は自主的に行ないます。」という立場からはなはだしく矛盾していますが、納得のいく御解明を求めます。(拍手)池田はうそは申しませんと言われるうその部類に、こういうのは入らないのかどうか、明らかにしていただきたいのであります。
 私はここで、最近問題になっておる原子力潜水艦の寄港のことに触れてみたいと思います。
 政府は去る二十四日、この件について米国側から正式申し入れがあったと発表した由でありますが、どのように対処するつもりであるか、まずもってお伺いいたします。
 目下米国は、対ソ戦略兵器としてのポラリス潜水艦の増強に全力を上げていることは、御承知の通りであります。現在保有数六ないし九隻、当面の目標四十正隻と称せられております。従って、当然ポラリス潜水艦の配置上の問題が起こってくるのであります。ところが問題は、ポラリスが中輝離弾道ミサイルであり、明らかに戦略兵器であるがために、これを積載した潜水艦の補給、休養のための基地を自国外に求めるとしても事がなかなかめんどうで、米国がこの点にいかに苦慮しているかは周知の事実であり、日本に対する従来からの執拗な申し入れもこの現われであるといわねばなりません。
 もし一たび、日本が原子力潜水艦の寄港を認めるならば、あたかも大阪城の外堀を埋められたようなもので、必ずこれがポラリス潜水艦の基地へと発展をしていくことは、火を見るよりも明らかであります。(拍手)当然かかる申し入れば、断固拒絶されるものと信じますが、あまりにも事重大でありますから、池田総理大臣みずから厳粛に政府の態度を御答弁願いたいと存じます。(拍手)本問題に関しては、かつて小坂外務大臣当時、米国側にはっきりと拒絶しているだけに、この問の政府の態度に変化がありとするならば、その変化の理由もあわせて国民の前に明確にされる義務があると思うのであります。
 次に、物価及び税制の問題に入ります。
 池田内閣が高度成長経済を唱えて以来、一貫して消費者物価は高騰して参りました。しかも、注目すべきは、昨年来の不況のさなかでも物価だけは急速度に上昇し続けておることであります。現に、三十七年度当初の政府の見通しでは、同年度消費者物価は二・八%の上昇にとどまる見込みのところ、実績は五・九%の上昇と相なったのであります。正確に申せば、物価は上がっているのでなくて、政府みずから、あるいは大企業みずからが上げているというべきで、電力、私鉄、新聞、消費者米価、授業料等の一連の引き上げは、単にそれだけにとどまらず、特に低所得者階層へのしわ寄せとなって、その人たちの生活を脅かしていることを重視しなければなりません。このように、物価が上がれば勤労者は追っかけて賃金の引き上げを要求せざるを得ないのも、けだし当然であります。しかも、名目所得が上がっただけ租税負担は重くなるわけであります。最近所得税の納税人員が急激にふえておるのはこのためであり、かつ税の自然増収の一因ともなっておるのであります。
 ここで一言、税の自然増収、いわゆる自然増収という言葉が使われますが、ドイツの大蔵省で私自身聞いたところによりますと、彼らは上限五%、下限三%くらいの幅はあっても、それ以外には税収見込みは狂わないと自慢しておりました。ところが、わが国ではここ数年来、はなはだしきときは、予算総額に対して一九・八%にも及ぶ自然増収が年々続くということは、これは一つには年度間の経済成長の見通しの誤りであります。二つには苛斂誅求による税の取り過ぎであります。三つには隠し財源のために意識的に作為したものであることを端的に示したものと言えます。いずれにしても、自然増収にあらずして不自然増収と訂正すべきものと思います。(拍手)税制調査会もこの実態を無視できなくなり、勤労所得に対する所得税の一般減税をかなり大幅に断行するよう答申したにもかかわらず、政府はこれを無視して、逆に、利子及び配当に対する政策減税を強行するに至っては、言語道断といわなければなりません。(拍手)
 以上の経過によって、次の諸点を総理にただします。
 第一に、政府の経済白書にも示している通り、最近の製造業コストの構成の中で、最も上昇しているのは資本費コストの一五〇であります。これに反し、人件費コストは八〇と低下した事実を教えておるのであります。総理は率直に、物価上昇の責任は企業家の過大投資による資本費コストの上昇並びに公共料金の引き上げによることを認められますかどうか、御答弁願いたいのであります。すなわち、労働者の賃上げは物価上昇の原因ではなくて結果であること、すなわちコスト・インフレ論は当を得ていないと思いますが、私はこの点は数字をもって質問いたしましたから、総理も数字をもって御答弁願いたいのであります。
 第二に、今年の租税の自然増収につき、税制調査会の答申通り、一般減税を拡大して勤労者に還元する考えはありませんか。
 第三に、政府のいわゆる政策減税によって、勤労所得に比べて資産所得が不当に課税において優遇され、税負担公平の原則は著しく破壊されるのでありますから、これを取りやめて、この分の財源を勤労者への大衆減税に振り向ける用意はありますか。
 さらにこの際、かかる利子配当の減税を強行した陰には、証券業界や銀行筋との間に何らかの取引がなかったかどうか、明確にしていただきたいのであります。(拍手)
 総理は昨日の答弁で、日本経済の中で困っているのは大企業であって、労働者や農民は困っていないと、とんでもないことを申されました。確かに不景気のときは大企業も苦しいでしょう。しかし、大企業はその苦しさを他に転嫁する道があります。下請単価切り下げあるいは代金不払い、手形の長期化、台風手形と呼ばれる二百十日ものなどもこの例であります。あるいはまた合理化と称して労働者の首を切る、あるいはまた現に見られるごとく、農民は森永、明治などの乳業大資本から乳価引き下げの圧迫をひしひしと受けておるのであります。だからこそ、中小企業者や労働者や農民の中からは一家心中は絶えず新聞種をにぎわしても、三井、三菱などの大企業が一家心中した話は、寡聞にして聞いたことがございません。(拍手)さらにまた、大企業は政府から法的財的に幾多の手厚い保護を受けております。財政投融資は、一体どこに出ますか。租税特別措置の優遇は、一体だれが受けますか。開銀などの元利償還のたな上げは、一体何のために行なわれますか。これに反して、炭鉱を首切られて明日のかての保障もない、山を追われた労働者のために、政府は今日まで一体何をしてくれましたか。総理、あのような勤労国民に挑戦するような御発言はお取り消しになる用意はございませんか、お尋ねいたします。(拍手)
 次は、三十七年度予算第二次補正の問題であります。
 政府は八百二十一億円の第二次補正を提出いたしましたが、これにさきの五百四十一億円の第一次補正と合わせると、実に千三百六十三億円となり、三十七年度租税自然増収は一ぱいに使い切ることになります。
  〔議長退席、副議長首席〕
 しかも、三十八年度の経済成長から見て、三十九年度の租税の伸びがあまり期待できないとするならば、三十九年度予算編成を一そう窮屈にすることは明らかであります。三十九年度からは、公債発行政策をとるのではないかとの一般の観測とも符合するのであります。この点に関して、昨日、総理は、公債発行については結論を出していない、今後の推移を見たいと、用心深く答えておられますが、この表現は、別の言葉で言いますと、状況次第では、公債を発行するということになりますが、このように理解してよろしきや。もし間違っておりましたらことから御訂正を願いたいと思います。この点は念を押して確かめておきます。
 また、第二次補正八百二十一億のうち、三百五十億は産投会計に繰り入れることになっております。そのうち九十三億は三十八年度分の補充に、残りは三十九年度以降の産投資金に充てるというような無理をあえてしておるのであります。国会の追及のがれのためたとい財政法を改めても、各会計年度の経費はその年度の歳入をもって支弁するとの会計年度独立の原則を著しくじゅうりんしていることは争う余地がございません。しかも、何ゆえに無理をしてまでこのような邪道をもとらざるを得ないか、これは明らかにガリオア・エロアの債務を産投会計資金をもって返済しているがためにほかなりません。このように一般会計から補充している事実をもってしても、なおガリオア・エロアの返済は国民にとって二重払いにならぬと今もって総理は強弁されるのか、納税者たる国民のだれしもが納得のいく丁寧な解明を望みたいと思うのであります。(拍手)
 そもそも、高度成長の美名のもと大資本と一般勤労者の間の所得格差はますます拡大の一途をたどっておる今日、税の自然増収を勤労大衆の生活向上に向けるならばいざ知らず、今述べたごとく産投会計に繰り入れて、もって大資本擁護の投資資金に充当するにおいては、まさに本末転倒の暴挙であり、大資本の代弁チャンピオンたる池田勇人の正体暴露したりと申しても過言でないのであります。(拍手)ドイツの思想家ニーチェは、「善とは強いものを助けることである、弱いものに同情してみても、それは善にならない。」と申しましたが、今日の池田内閣の政治の本体を見詰めるとき、保守党の政治哲学の中には、多分にニーチェの思想を連想せしめるものがあります。国民こそまことに不幸と申さなければなりません。
 次に、中小企業の問題ですが、今度の予算案を見ても、わが国の全企業の九九%、従業員数の七五%、生産高の五五%を占める中小企業に対する総額は、驚くなかれわずかに八十五億八千万円です。予算総額に対して、比率は〇・三%にすぎないのであります。他方、防衛庁予算では、応募者がなくて定員すら満たされないのに、一躍三百二十七億円も増額されております。この増額分だけでも中小企業年間予算の四カ年分であることを思うとき、いかに政府の中小企業政策が口先だけのおざなりであるかは一目瞭然であります。これでは、かりに中小企業基本法を出してみても、しょせん絵にかいたもちにすら及ばないのであります。しかも、この基本法の本質たるや、かつて農業基本法で政府が示した手口と同じく、大企業と系列関係の深い中企業は育成しても、小零細企業は切り捨てるのではないかとの危惧の念が持たれているのであります。もし、しからずとするならば、同基本法における小零細企業の位置づけをどのように規定しているか、あわせてその対策とともにお答え願いたいのであります。(拍手)単に官製商工会や商工会議所に対する補助金、零細企業の経営相談指導、金融あっせん、事務代行などを行なう経営改善普及員の人件費補助ぐらいの予算措置をもってして、小規模事業対策に取り組んでおると主張されるならば、それは零細企業の今後改善すべき問題点を指摘しただけにとどまりまして、それ以上何らの解決にはなっていないと思いますが、政府の見解はいかがでございますか。言うなれば、重症の病人を診断して、病状を告げたまま治療もせずに放置するにひとしいのであります。世は無責任時代といわれますが、これこそその最たるものといわなければならません。(拍手)
 政府は、貿易の自由化、国際競争力の強化の名のもとに、新産業体制の確立をはかると言っていますが、むしろ大企業からの不当な取引上の圧迫に苦しむ中小企業を救済援助するためには、独禁法並びに公正取引法の強化により、不当な独占支配を規制すべき時期にきていると思うのでありますが、政府の見解はいかがでございますか。
 企業間の格差とともに地域間の格差も問題であります。伝えられる十カ所程度の新産業都市の選定を見ると、ほとんど全部が太平洋沿岸ベルト地帯に偏在し、これでは現在すでに後進地域よりも数段発展途上にあるこれら地方に、この上さらに国家の力で社会資本の充実のために優先融資を認めるわけでありますから、とうてい政府の言うところの経済の均衡ある発展など望むべくもありません。いわゆる高い所に土盛りするとはこのことであります。むしろ、自由経済のもとでは、いつになっても日の当たらない裏日本一帯、あるいは東北、南九州等に重点を置きかえて、根本的にその選考の基準を練り直す必要があると考えますが、御所見はいかがでありますか。(拍手)
 この際触れておきたいのは、今日、貿易自由化の圧力が、直接小売商業部門にまで及び、大資本による百貨店、スーパーマーケットの進出が、小売商業者に一大脅威を与えておる現状であります。特に外国大資本によるスーパーマーケットの進出は、小売業界に一大センセーションを巻き起こしておるのであります。この事実に対処して、政府は内外大資本を背景とした一般小売商業部門への進出を適正に規制することが喫緊の急務と考えるが、その意思があるかないか、この問題についてどのように対処しようとされるのか、あわせてお聞きしておく次第でございます。
 ここで住宅事情を見てみましょう。
 最近の政府統計によってみても、全国世帯の一二・五%に当たる二百二十七万世帯が住むに家なき住宅難に迫られて、公営、公団住宅に対する入居申し込みは、数百倍にも達しておるのであります。国や公共団体が何らかの形で住宅建設を援助することは、文化国家の常識でありますが、わが国では、民間自力建設にその大部分をまかせているのが今日の実情であります。私は、この住宅難と関連して、宅地地価の異常なまでの値上がりの問題を取り上げて政府にただしたいのであります。
 すなわち、土地を投機の対象として、大資本や土地ブローカーたちの暗躍、暴利をこのままに許しておくことは、社会公共の福祉に反するからであります。そもそも、土地は輸入も輸出もできません。地価の値上がりによる利益は、都市の発展という社会的事情に基づくもので、全く土地所有者の個人的努力とは無関係であります。にもかかわらず、その利益がすべて個人のものに帰し、社会に還元されていない事実を直視するときに、地価の暴騰を押え、土地を合理的に利用し、都市計画を推進するためには、土地の私有性を部分的にも制限するのもやむを得ないかと思うのであります。土地の公共性に照らして宅地需給計画を策定し、空閑地、ゴルフ場など不要不急のものに対しては大幅に税率を加重するとか、宅地建物取引業者の規制を一段と強化して、その投機性を防遏するなど、一連の緊急対策が焦眉の急と思われますが、政府の対策はいかがでございますか。(拍手)
 次に、文教政策についてお尋ねいたします。
 総理は、人づくり、国づくりの一連の新語を並べて得意顔でございますが、あなたのお好きな庭づくりのようには参らぬのであります。要は、スローガンとしての適否ではなくて、内容であります。教育基本法第一条には「教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたっとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行なわれなければならない。」とありますが、これを施政演説の人づくりのくだりと照らし合わすとき、私は、むしろ焼き直しではないかと驚いたのであります。しからば、何がゆえに教育基本法には一言も触れられなかったか、全く理解に苦しむところであります。もし大同小異なりとするならばともかく、もし異なるとすれば、特にどの点がどのように違うのか、同基本法の把握の仕方とともに国民の前に明示されたいのであります。(拍手)
 次に大学管理問題についてであります。総理は、東南アジアを訪ねては大国意識に酔うて帰り、米国に渡っては劣等感を背負って帰られたそうであります。しかし、日本の青年は幸いにして大国意識もなければ劣等感も持ち合わしておりません。ただひたむきに民族の独立と平和と民主主義を求め、日本再建を、社会主義か資本主義か、いずれの道に選ぶべきやと、真剣に真理を探求しておるのであります。それをしも理解できずして、日本の大学は革命のにない手であるかのごとき近視眼的な短見によって、大学の管理を強化して、学問の自由、思想の自由をじゅうりんせんとする態度は、日本民族永遠の将来に責任を持つ政治家のとるべき態度では断じてありません。(拍手)
 次は高校入学の問題です。今日、社会資本の充実が叫ばれますが、人間形成こそは社会資本の根幹をなすものであります。政府発表の教育白書を見ても、わが国の今日あるは教育の普及によるところきわめて大なる旨、述べておるのであります。戦前においては、当時の中学校、女学校に上がるといなとは、その本人にとってはほとんど一生をも左右するほどの要素であったのを思うとき、今年から明年にかけて十万人ないしは十五万人に及ぶ大量の中学浪人を出すことは遺憾千万であります。少年期からようやく青年期に移行せんとする感じやすき変動期において、彼ら青少年に灰色の人生の苦汁をなめさすことは、文字通りの残酷物語荒木版ともいうべきものであります。(拍手)これが義務教育でないからといって逃げられる性質のものではありません。このように政府の施策に何ら見るべき成果がないにもかかわらず、施政演説においては、「人つくりの主たる対象は、何といっても将来をになう青少年でありましょう。」なんて、よくもよくもそらぞらしい言葉が口から出たものであります。(拍手)自家撞着もはなはだしいといわなければなりません。今からでもおそくはありません。これら中学浪人解消の具体策をお示しいただきたいのであります。
 最後に、去る一月十八日の国会再開にあたっての総理の記者会見に関して、一言私の見解を申し述べます。
 もとより一国の総理が、報道機関を通じて絶えず国民と接触することはきわめて喜ばしいことで、民主主義の要諦とも存じますが、私が言わんとするところは、時あたかも国会開会中であり、旬日を出ずして、施政演説によって国会を通じてその所信を国民の前に明らかにされんとするやさきでありますから、取りよう次第では、国会軽視とも考えられるおそれがないかということであります。
 米国においては、御承知のように、三権分立の形式がきわめて厳格でございます。そのために、大統領は教書と訳されておるメッセージを議会に送るのが慣習です。そうして、もっぱら報道人との会見、あるいは諸種の演説の機会を利用して、常時国民に訴えておるのが通例であります。これに反してイギリスにおきましては、首相は、原則として議会を通じてのみ所信を発表する建前上、首相の記者会見は珍しいのであります。いずれもそれぞれの歴史的過程の産物で、わが国におきましてはわが国独自のしきたりによってしかるべきでありますが、この問題に関して、休会中はいざ知らず、少なくとも国会開会中においては、国権の最高機関たる国会に責任を負う総理としてどのようにお考えになっておるか、御見解を示されたら幸甚に存じます。
 これをもって私の質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 御質問の第一点は、昭和三十八年度の経済成長見通しの点であります。企画庁におきまして、当初いろいろ調査いたしましたが、来年度実質六・一%が内閣の決定した見通しでございます。その間におきまして、予算の規模あるいは経済の動向等で、最後の決定までにいろいろ数字が変わってくることは従来もあり、これは当然のことだと思います。六・一%の上昇と考えております。
 なお、個人消費が一〇%の増は多いのではないか。これは私は三十六年度、三十七年度の状況を見まして、前年に比べまして十数%の上昇を見ておりますので、一〇%の上昇が適当だと考えております。なお、日本の個人消費は総生産の五〇%、五一・二%でございましたが、だんだんいわゆる生活水準の向上によってこれが五四・五%になることは、他の国の六五%に比較してまだ低いと考えております。一〇%の上昇が適当と考えます。
 なお、賃金があまり上がらないのにこんなに見ることは過当じゃないかということでございまするが、賃金が上がって、それから国民消費の上昇がおくれてくるのが経済の原則でございます。来年度はこの程度に見込んで差しつかえないと思います。
 次に、国際収支の問題につきましての御質問で、今の国際収支の黒字は、資本収支の黒字によってできておる、こうおっしゃるのでありますが、これは事実に反します。昨年の十一月、十二月に五千万ドルずつアメリカの市銀に対する借金を返しております。そして過去数カ月の間、資本収支は赤でございます。貿易は収支が非常に黒字になっておるのであります。従って、お話は間違っております。私はこの数字は、今後なるべく長く続かそうと努力しておるのであります。従いまして、アメリカから借りております二億ドルのうち一億ドルは昨年返しました。あとの一億ドルを一月、二月に五千万ドルずつ返し、エキジムの三千三百万ドルを返しても、なおかつ施政方針で言っているように十八億ドル程度にはなることを私は期待いたしておるのであります。
 次に、バイ・アメリカンとかシップ・アメリカンにつきまして、いろいろお話がございましたが、バイ・アメリカンがアメリカの国内産業保護のためにいわれるのならば、われわれ断固反対いたします。また、域外調達につきましても、われわれは、この前の日米会談で極力主張いたして、あまり減らさないように言っておるのであります。従いまして、アメリカと日本との貿易額は、おととしにおきましては、輸出額はこっちが輸入する額の七割程度でございましたが、昨年におきましては、日本の輸出が十三億ドルで、輸入が十四億七千万ドルで、域外調達とかあるいは日本の特需を入れますと、日本の方が受け取り超過になっていることを御了承願いたいと思います。(拍手)バイ・アメリカンといわれるときでも、日本の輸出は非常にふえて、三〇%以上去年はおととしに比べて伸びておることを御了承願いたいと思います。
 日米通商航海条約につきましては、期限も来ますので、また八条国の移行等の関係がございますので、今検討を加えておるのであります。
 日本の貿易の相手、対外市場はどこか。これは私は、工業国も考えなければならぬ。アメリカはもちろん、ヨーロッパも考えなければならぬ。しこうして、ヨーロッパは、アメリカと同様、昨年度は一昨年に比べて日本からの輸入は三割以上ふえておるのであります。しこうしてまた、できれば東南アジアヘの輸出、しかもその輸出をはかるために第一次産品の価格安定、上昇等につきましても、われわれは考慮していきたいと考えております。
 なお、油送管の問題で、たびたび両院で答えておりまするが、われわれは既契約はやっております。既契約の分は実行しております。ただ、NATOの間でこういう問題が、ソ連へ対しての輸出制限の問題が、今論議されておるのであります。われわれはその結果を見、しこうして日本の経済的立場から、日本の国に何が一番利益になるかということによって私は決定いたしたいと考えております。(拍手)
 なお次に、原子力潜水艦のわが国への寄港でございますが、これは、私は直接に交渉を受けておりません。艦船の推進力が原子力によるからといって、直ちにこれが危険だとは言い得られません。しこうしてまた、原子力潜水艦が日本へ寄港した場合において、すぐポラリスが日本にも寄港するのだという前提はまだ早過ぎると考えておるのであります。従って、この問題につきましては、具体的な申し入れがありましたときに十分検討して善処いたしたいと思います。
 また、不況のさなかに消費物価が上昇するということは、大企業はかなり不況でございましたが、一般の大衆の所得はふえました。農民の方の所得もふえました。そうして生活水準が、先ほど申し上げましたように、去年、おととしは一〇%以上全体で上がっておるのであります。しこうして、こういう消費者物価の上昇というものは、景気が非常に上らないときでも、景気が非常に上ったあとで所得がふえた場合におきましては需要が増大いたしますので、消費者物価は上がる場合が通例であるのであります。そういうことで御了承願いたいと思います。
 しこうしてまた、公共料金につきましては、昨日申し上げましたように、電力、私鉄につきましては、大体もう当分上げなくても済むと私は考えておるのであります。なお、コストの上昇については、資本費の上昇がその原因であることも一つでございまするが、賃金の上昇も物価上がりの原因であることもいなめません。両方とも原因しておるのであります。なお、コスト・インフレにつきましては、昭和三十六年の五月ぐらいまでは生産性の向上に対して名目賃金の上昇は下でございましたが、昭和三十六年の六月ごろから、生産性の向上よりも名目賃金の上昇がおおむね上でございます。そこで私は、コスト・インフレを心配しておるのであります。従いまして、今後におきましても、生産性の向上と名目賃金の上昇とが経済の健全な発展に役立つようにしていきたいと考えておるのであります。
 次に、減税につきましての配当所得あるいは利子所得に対しまする軽減は、今までのように貯蓄組合というものによりまして五十万円あるいは三十万円を何十口も何百口もやっているような大預金者の保護をやめまして、五十万円以下のものにつきまして種類ごとに――多分百万円になると思いますが、こういうものには確実に減税しようと、税制を合理化したのであります。しこうしてまた、合理化とともに、日本の経済の正常な発展に役立つことが大衆のためになると思って、こういう措置を講じたのであります。こういう問題につきまして、関係業者との関係は一切ございません。
 次に、国債の発行でございまするが、国債の発行は状況次節によって考えるということは、弾力的財政運用において当然でございます。国債の発行は将来永久にいたしませんということを言ったならば、それは経済の弾力性を知らない人の議論であります。(拍手)私は、幸いにして、今まで一般会計におきまする赤字公債を発行することなしに、しかも逆に剰余金によって今までの公債をどんどん消却して参りまして、世界の一流国では日本ぐらい国債の少ない国はない。従って、あるいは一部には、日本の金融を正常化するために一般会計から国債を発行すべしという議論もあるのでありまするが、私は今までそれをとりませんでした。しかし、今後におきまして、日本の経済の健全な発展により、ほんとうにりっぱな福祉国家をつくるために必要あれば、何も一般会計で公債を出すことをちゅうちょすべきではございません。しかし、今までのところはその必要を感じない、また三十九年度におきましても、私は大体発行せずにいけるのではないかと考えております。
 なお、今回の予算編成におきまして、産投への繰り入れば会計年度独立の原則に反するという議論でございますが、これは数年前からのいろいろな議論でございます。財政法を改正し、私は適当な処置と考えておるのであります。
 なお、人づくりの内容につきまして、教育基本法とどういう関係か。われわれは憲法並びに教育基本法の精神に沿っていくことは当然でございます。教育基本法の精神に従っていっておるのであります。私はそれを敷衍して国民の皆様によくわかっていただくように、施政演説で申し上げておるにすぎないのであります。(拍手)
 なお、大学の管理運営につきましても、私が申し上げましたごとく、今までの大学の管理運営はこれでいいか、こういう質問を出しましたら、ほうはいとして、これに対しての反省が行なわれつつあるのであります。各大学におきまして昨年の五月以来、合理的な管理運営につきまして熱心に検討し、自粛、自戒されておるところが現われてきておるのであります。私はこういう大学の管理者の態度に非常に期待を持っております。しこうして、私は、今後ともほんとうに大学が大学自治の基本の上に立って、国民の共鳴し得るような管理制度をみずから作っていただくことを期待し、そうしてまた、中教審の答申をも考えまして、両方が一致したりっぱな法案を将来において考えたい。今は大学の自主的管理運営の適正化に期待をしておるのであります。
 なお、高等学校教育につきましていろいろお話がございました。日本の高等学校教育、日本の大学は、ヨーロッパの先進国に比べて非常に高い水準にある。英米独は、義務教育を終えた人で、高等学校教育を受ける人は三四・五%、四〇%以下と私は記憶しております。日本は今や六〇%以上になるのでございます。大学教育を受ける人も、義務教育を終えた人の一二・三%といわれております。ヨーロッパ諸国におきまして、先ほどの英米独は六・七%しか大学教育を受けない。日本の教育が世界で冠たる規模を持っておるということを立証するものでございまして、われわれはこのことを今後も続けていきたいために、できるだけ高等学校の急増をはかっておるのであります。
 なお、総理としての考え方を国民に申し上げるのは、国会を通してが一番適当でございます。しかし、これに限る必要はございません。あらゆる機会をとらえて、私は国民に自分の考えを申し上げることといたしたいのであります。(拍手)
  〔国務大臣福田一君登壇〕
○国務大臣(福田一君) 中小企業の問題についての御質問にお答えを申し上げたいと思います。
 仰せのごとく、小規模事業に対しては、われわれは十分な関心を払わなければならないのでありますが、しかし、これを切り捨てるなどということは、われわれは断じて考えておりません。中小企業基本法におきましても、その体質改善のために、経営の改善指導、金融の円滑化、または小規模企業の従事者の生活水準の向上というようなことも考慮を払っていくべきであると考えておる次第であります。
 それから、小零細企業の定義はどうかというお話でございますが、現行法によりますと、商工会の組織等に関する法律によりますと、常時使用する従業員が二十人、もしこれが商業だとかサービス業でございました場合には五人になりますが、これを小零細企業、いわゆる小企業といっております。また、中小企業信用保険法では、常時使用する者が五人、サービス業では二人、そういうような定義をいたしておるのであります。
 私たちといたしましては、こういうようなものに対しましても、先ほど柳田議員が仰せになりました通り、経営の技術の向上とか、税制の問題とか、金融その他の措置をいろいろとっております。そして万全の措置をとるように努力はいたしておりますが、しかし、お話にもありましたように、今は経済が変化をしていきます。それからまた、生活の環境も変化をします。そうすると、こういうような小企業というものは、ますます必要になるものと、それから、どうしてもその必要性が減るものと、それから全然新たに必要が起きるもの、こういうものが出てくるわけでございます。これらのものを十分よく事態を見まして、そうして必要のなくなるようなものについては、だんだんと転換をするとか、あるいは適当な措置をとらせるように指導をし、また、金融、税制面等でも、そういうものを考えてやるということにして参りたいと思うのであります。
 それからお説の通り、スーパーマーケットが出てきて、大へん方々で問題になっておるのでありますが、ただいまの段階におきましては、私たちとしましては、現行の小売商業調整特別措置法による調停を行ないましたり、あるいは具体的な、案件について行政指導をしたりして、何とかこれを切り抜けていきたいと思っております。しかし、お説の通り、これは非常に大きな問題でございますので、私たちとしては、今後十分に研究をいたしまして、必要があれば、何らか具体的な措置をとるようにいたしたい、かように考えておる次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣河野一郎君登壇〕
○国務大臣(河野一郎君) お答えをいたします。
 住宅、宅地の問題につきましては、私といたしましては、従来と多少その考え方を変えまして、住宅の場合には、主として低額所得の人にこれを引き当てるような方法でやって参りたい、比較的所得の多い方の住宅問題解決には、宅地を供与するということで問題の解決に当たりたいという基本方針に基づきまして考えて参る所存であります。そういたしまして、柳田さんから御指摘ございました空閑地、まあゴルフ場がどこにありますか、ゴルフ場その他の土地の宅地としての引き当て、これが取得、使用につきましては、目下宅地制度審議会におきまして、法制的に、これらのものを引き当てる場合に必要なものについての検討をお願いいたしております。この答申を待ちまして、法制もしくは制度の一部改正等、必要なものにつきましては国会の議を経てやりたい、こういうつもりでおります。
 何にいたしましても、東京、大阪、これらの都市につきましては、しいて印せばニュー・タウンの形式におきまして、新たに政府といたしましては、市街地を大規模に造成いたしまして、ここに工場その他の移転を慫慂して、これらの都市内の現在非常に込み合っておりますものを間引きして、この方面に充てるということでいくべく、明年度からは住宅公団その他をしてこれらの所要の措置をとらせるという所存であります。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(原健三郎君) 小林進君。
  〔小林進君登壇〕
○小林進君 私は、政府の施政方針に対し御質問をいたす前に、現在猛威をたくましゅうしておる裏日本一帯の豪雪に対し、いかなる緊急措置をおとりになっているかをまずお伺いいたしたいのであります。(拍手)
 北陸、信越、上越の基幹鉄道はすでに四日にわたり完全に麻痺し、その他小交通機関もすべて不通となり、市民は個々に家に閉じこもって孤立し、隣町村との連絡さえ途絶している状況であります。流通の不円滑とともに、生活物資は不足し、野菜、肉類のごときはウナギ登りに高騰するとともに、降り積もる積雪のために家屋倒壊が始まっておるが、除雪の人手もなく、全く恐怖の中におののいているのがただいまの状況であります。これに対して、国は全機能を傾けて緊急対策を講ずるべきであると思うが、これに対する総理大臣の御決意を承りたいのであります。なお、この状況はすでに一昨年も経験したところであり、これに対する政府の施策の不備が今日の被害をさらに大にしていることを思うとき、このたびこそは抜本的対策を講ぜられんことをあわせて要望するものであります。(拍手)
 総理大臣は、去る一月二十日の自民党大会において、少数政党の横暴と無責任なる行動をいつまでも許すならば、議会政治の本旨は失われ、民主政治の危機を招く旨の発言をせられておるのであります。議会政治の長い歴史の中には、多数者の横暴によってその危機を呼んだ例はしばしばあるが、少数党の横暴によってその危機を招いたというがごとき事実が断るかどうか。(拍手)これゆえに多くの学者は、多数者の横暴により、これが衆愚の政治となり、腐敗と堕落と無能と混乱を導くことがある、これが議会政治を危険ならしめる最大の原因となるという警告を発しておるのであります。しかるに、総理大臣は、この学説とこの歴史とに反し、少数党の側にこそその原因があるとせられるのは、世にもまれなる珍説といわなければならぬのであります。(拍手)むしろ問題は、戦後十数年の長きにわたり一つの政党が政権を壟断しているところにもろもろの政治的ゆがみや弊害や腐敗が蒸し返され、ここにこそ政治の危機が芽生えていることを知らなければならぬのであります。総理大臣にして真に議会政治を守らんとするならば、まず自己の政党へ反省を促し、多数党としての横暴と無能と無秩序とを是正し、一党独裁、保守永久政権の変則議会政治を改めるための努力をいたすべきであると思うが、これに対する総理大臣の所信を承りたいのであります。(拍手)
 日本経済は高度成長政策によって著しい発展を遂げてきたことは、政府説明の通りであります。しかし、その成長は、あくまで資本主義経済の高度成長化であり、独占資本の強化にほかならぬのであって、資本経済が成長すればするほど、それに比例して資本の持つ矛盾と弊害もまた高度に成長拡大することを知らなければならぬのであります。総理の誇る経済の高度成長の表の皮を一枚めくれば、そこには激しい生存競争、弱肉強食のみにくい現実の世界があり、労働者の汗と中小企業の血と農民の涙が流されているのであります。(拍手)
 政府統計の分配国民所得を見ると、昭和三十年から三十五年に至る間に、勤労所得が八〇%増加したのに比べ、法人所得は三・三倍、利子、賃貸料などの資産所得は二・五倍にはね上がり、中小企業、農民等の個人所得はわずか二三%の増加にすぎぬのであります。資本主義の経済成長とは、かくのごとく分配の不公平を拡大し、いよいよ金と物とが人間を支配する時代相を明瞭にしてくるのであります。こうして日々その矛盾を激化する社会の底に沈澱していく者、これが農民、中小零細業者及びそこに働く労働者を中心とする低所得階層であります。今日最低生活費以下の生活をしている低所得者が実に二千万人の多きに達しているのであって、政府はこれを一体何と見るか。この人たちがそれぞれ農村や中小零細企業の中に滞留していることを思うとき、いたずらに高度成長の成功を自画自賛して、この大きな犠牲者に対しあたたかい手を差し伸べる抜本的な政策のないことを最も残念に思うのであります。(拍手)
 私は、この二千万人低所得者の気持を代表し、怒りを込めて、以下、農村問題、労働問題、社会保障問題等について具体的に質問を進めていきたいと思うのであります。(拍手)
 農村は今激しい動揺を続けております。高度成長政策の中で、生活水準の格差、生活環境の格差が表面化して、農民の激しい労働の割に所得が少なく、どうして生きていくかということで右往左往いたしているのが農村の実態であります。若者たちは農業に対する意欲を失い、どしどし村を捨てている。現在、新規学卒にして農村にとどまる者は、中学卒業生にして九%、高等学校卒業生にして六%、農業継承者にしてなおかつ三〇%にすぎぬのであります。しかも、この三〇%の農業青年たちが今一番苦労しているのが、自分の配偶者をどうして得るかということであります。今や農村には嫁になり手がないという切実な社会問題が起きているのであります。池田内閣はわれわれから夢を奪ったのみならず、嫁までも取り上げてしまったというのが、農村青年の切実な声であります。(拍手)まず、この問題についていかなる認識を持っておられるか、総理大臣、農林大臣にお尋ねいたしたいのであります。
 かくて、農村を離れていく農民が一体どこへ落ちつくかといえば、それは臨時工であり、社外工であり、日雇いであり、常用の人夫であり、土建業の雑役等、他産業の中で最も不安定かつ低い所得の労働に甘んぜざるを得ぬのであります。こうした実情をそのまま放任をしているのは、政府の怠慢というべきであり、他に何らかの保護政策を講ずる意図があるのかどうか、農林、労働、厚生、建設等の大臣に、それぞれ所管事項について承りたいのであります。
 政府は、三年前より、農業構造改善事業なる政策を打ち出されました。これによって農民の意欲を再び農業に燃え立たせることができるかどうかは、一に政府の施策によるところであります。真に政府が、この構造改善事業を進め、農地改革にもまさる革命的成果を上げんとする熱意があるならば、まず法律の制定より始め、国会の場においてその内容を示し、国の責任を明らかにした上で実行に移すべきであります。しかるに、各省の次官通牒等によって、あたかも日陰の子供を育てるがごとくこそこそ事業を進めている。それは自信のないごまかしの政策であり、地方自治体と農民に責任を転嫁せんとするものであるからであります。(拍手)
 資本主義の高度成長の中にあっては、日本農業の進む道はただ二つであります。企業として成り立つ農業にまで大きく構造を改善するか、そのためには少なくとも経営規模は十町歩以上を要するのであります。しからずんば国の責任において徹底した保護政策を行なうかの二つであります。二町五反を標準にして自立経営農家をつくるという政府の政策は、企業としても成り立たず、国の保護も受けられず、全く生かさず殺さず農政の現代版にすぎないのであります。(拍手)農林大臣は、この構造改善事業によって農業の自立が可能であると考えられるやいなやをお伺いいたしたいのであります。
 農民はこの政策に対して、決して信頼をいたしておりません。幾たびか、政府の誤れる政策にだまされてきたからであります。その不信の点を要約すると、第一に、規模が小さ過ぎること、第二に、補助率が少ないこと、第三に、価格の保障がないことであります。当面、少なくともこの事業に要する費用の八割は国が負担すべきであると思うが、政府の所見を承りたいのであります。
 第三点としてお伺いいたしたいことは、農産物の価格に対する政策であります。資本主義経済において農業が自立することのできぬ最も大きな原因は、この価格の問題にあるのであります。独占や大企業が商品を高く売りつけ、農民の生産品を安く買い上げていくという、この最も単純な奴隷経済が改められない限り、農業の安定は望み得ないのであります。三十八年度予算においても、この価格政策はいささかも改められようとはしないのであります。価格対策に充てる費用、わずかに三十一億円であります。昨年度は、農民は豚の暴落で転落の歌を歌い続けて参りました。今年度は牛の乳の値下がりで、また苦しめられておるのであります。しかるに、これに充てる流通改善費がわずか八千六百万円、旧地主補償に要する調査費の半分にも満たないのであります。こんな価格政策で農業基本法の目標とする畜産の拡大が望めるとお考えになっているのかどうか、農林大臣の御真意をお伺いいたしたいのであります。(拍手)
 第四点としてお尋ねいたしたいことは、三十八年度予算の上に現われた最も好ましからざる政策、それは昨日の質問にもありました旧地主補償に通する調査費計上の問題であります。われわれは、昨日の総理の答弁をもってとうてい満足することができぬのであります。今朝、新聞の伝うるところによれば、「農地被買収者に対する報償については何らかの処置をする必要があり、そのため具体的調査が必要なので予算を計上した」ということに、首相、蔵相、幹事長、官房長官の意見の調整を見たというのでありまするが、補償にかわって報償を支払うというのかどうか、具体的に万人の納得する説明を願いたいのであります。特に、この問題について、総理は、国会において、旧地主補償はいたしませんと公約しておきながら、自民党の総会においては、補償のための立法処置を是認し、今度は三転して、報償を与えることに意見を固めておられるという、まことに池田さん、このうそとまことの使い分けについて、総理大臣みずから真実をお聞かせ願いたいのであります。(拍手)
 第二の問題として、労働行政についてお伺いをいたします。総理大臣はわが国の繁栄をうたわれ、この繁栄を来たしたものは国民の創意と工夫の結果であると言われたが、その国民とはだれをさすのか。すなわち、国民の中でも、特に生産に従事をする労働者の勤勉と努力に負うところが最も大であると信ずるが、総理大臣の御見解を承りたいのであります。もし、しかりとすれば、その繁栄の成果は当然労働階級にもひとしく分配されなければならぬはずであります。しかるに、賃金に至っては、欧米先進国はもとより、中進国にも及ばざる低賃金と、そして二重構造をそのままにしておるのは、保守党政府最大の失政であるといわなければならぬのであります。(拍手)総理大臣は、これについて、欧米諸国において、日本は低賃金国との悪評もようやく緩和されつつあると言われているが、これこそ耳をおおうて鈴を盗むの弁であると評さなければならぬのであります。なぜかなら、第一に、日本の労働者にしてこの説明を納得する者が一人もいないからであります。みずからの足元を納得させることができなくて、他を信じさせようとするがごときは、むしろ疑いを深めるだけで、何らの効果もないのであります。現に日本を訪れたアメリカのAFL・CIOの副会長ルーサー氏が、日本の賃金の安いことを決定づける発言をしているなど、そのよい例証であります。また、昨秋、日本経済使節団としてEECを訪問した新日本汽船会長山県勝見氏が、日本の賃金ベースは、大体イタリアの水準に近づきつつあると説明をしたら、フランスのCNPEのビリエ会長が、実はEEC内部では、イタリアの賃金ベースが低いことでわれわれは今問題にしておる、それと同水準になったということは、低賃金を正当化することにならないと言われたと報告をしておるのであります。経営者の代表にしてなおこの反省があるに対して、総理大臣が、あくまで日本の低賃金を認めようとされぬのは、近代政治家としての資格を疑わしむるものといわなければならぬのであります。(拍手)率直にみずからを反省し、さしあたり政府の支配下にある公務員の給与に対し、名実ともに人民の奉仕者としての誇りを保ち得る給与を保障することを目途とし、当面民間ベースと同一水準に至らしむるため、政府提出の給与案をさらに改正をし、これを増額して公務員の不満にこたえるべきであると思うが、これに対する政府の所信を承りたいのであります。
 いつの世にも、資本家とは賃金を押えようとするもの、好況、不況を問わず賃金の正当化を否定するのが資本の本質であります。これに対し、広く国民的、国際的視野に立って、公正なる指導により、妥当な賃金行政を推進するのが政府の責任と思うが、これに対する総理、大蔵、外務、労働大臣の御所見を承りたいと思うのであります。(拍手)
 特に今日貿易の自由化に対応するため、従来の最低賃金法を廃止し、全国一律の最低賃金法を制定すべき時期と思うが、労働大臣の御決意を承りたいのであります。
 第二点としてお伺いいたしたいことは、ILO八十七号の批准をいつおやりになるかということであります。日本政府がILOの再三の要請にもかかわらず、いまだにこれを批准していないことによって国際的に失った日本の信用がいかに大きいかを深く反省をしていただきたいのであります。自由主義陣営の重要な一員として世界各国から高い評価を受けたという総理の帰朝報告には、あわせてILO八十七号未批准により失った信用のさらに大きいことをもつけ加えることが、総理大臣としての公正な態度であるといわなければならぬのであります。(拍手)昨年十一月八日、ジュネーブにおいて、ILO理事会本会議が開かれた際、労働者側の首席代表モリ氏は、日本政府は八十七号を批准し、制限的法律を改正すると約束をしているにもかかわらず、その批准をいまだにしようとしない、この件を次期国会までに解決することを強く促したいと発言をし、それは全く怒りに満ちたものであったと報告せられておるのであります。日本政府代表青木大使もまた、ILO理事会ではもはや同情者は一人もいないと語っておるのであります。これに対する総理、外務、労働大臣の御答弁を願いたいのであります。
 労働問題の第三点としてお伺いいたしたいことは、経営の近代化、合理化に対する労働問題、不況産業による人員整理等に関し、政府はいかなる政策をお持になっているかということであります。
 不況産業には、石炭は別として、鉄鋼、化学、非鉄金属、海運等があり、首切り、合理化が陸続として行なわれつつある。政府はこれを放任しておく考えなのかどうか。また、鉄道、電信電話事業等は、政府の投融資によりそれぞれ五カ年計画を進めつつあるが、これら合理化は明らかに大資本本位のものであり、そこに働く労働者には大きな犠牲が寄せられているのであります。全国の全都市を即時でつなぐ電話の合理化が、それほど緊急の課題なのか。三河島の大事故以来、カラスの鳴かぬ日があっても、国鉄の事故の起こらぬ日がないにもかかわらず、その防止対策をあと回しにして、東海道を三時間で走る特急をつくることが国民の切実な要求であると政府は考えているのかどうか、その合理化によって労働者の首が切られ、生活を追われるがごときは、断じてこれを認めることができぬのであります。企業の合理化はあくまで労働者のしあわせのためのものであり、事業の近代化の成果は、労働時間の短縮、週休二日制などの新しい労働行政によって報いられなければならないのであります。週四十時間制は世界の常識であります。これに対する所見を通産、運輸、逓信、労働大臣にそれぞれお伺いいたしたいのであります。
 最後に、私は、社会保障全般について御質問をいたしたいと思うのであります。
 資本主義的高度成長政策は、労働者、農民を含めた低所得階層の犠牲の中に築かれた繁栄であることを申し述べて参りました。もし首相の言うがごとく、日本経済の成長を国民にひとしく分け与えるという意思があるならば、その方向に向かってたくましい政策が実施されなければならぬのであります。その政策とは減税であり、物価の安定であり、環境衛生の整備であり、社会保障の充実でありましょう。特に社会保障費については、資本主義の歯車からふるい落とされていく低所得層に所得の再分配をして、均衡ある生活を与えるため、経済の成長に比例した拡大予算を用意しなければならぬのであります。この点、日本の社会保障費は、全く劣悪であることを率直に申し上げなければならぬのであります。西欧先進国は、この資本主義経済の短所を補うためにいかに社会保障の充実に努力をしているかは諸君御承知の通りであります。日本と同じく敗戦国となり、焦土の上に立ち上がった西ドイツが、その繁栄の陰に、特に社会保障に心を用い、国民の総所得の二割を社会保障に割り当てている一事は、もって他山の石としなければならぬのであります。一九六一年版、ILO年次報告による国民所得に対する社会保障給付費の割合の表によれば、資本主義諸国の中で日本の占める地位は、驚くなかれ二十六番目であって、パナマ、イスラエルの後進国よりももっと貧弱であることが明らかにせられておるのであります。総理大臣の言うがごとく、経済の成長が世界並みであるならば、社会保障費もまた世界並みでなければならないと思うが、何ゆえこの面において国際水準に近づく努力をしないのか、総理、大蔵、厚生大臣にお伺いいたしたいのであります。(拍手)
 日本が真に文化国家として人類の平和に貢献せんとするならば、まずILO憲章に基づいて、日本から戦争の原因となる病気と貧困を追放することから始めなければならぬことを総理大臣は銘記すべきであります。私は、この観点に立って、二、三政府に御質問をいたしたいと思うのであります。
 その第一は、昨年八月、社会保障制度審議会の行なった勧告を正しく受け入れる意思ありやいなやを承りたいのであります。この勧告は、日本の社会保障を推進する上に画期的な意義を有するものであるにもかかわらず、今日に至るまで政府はこれに対する見解を発表せず、施政方針演説の中にも含まれておらぬのでありまして、かくのごときは、政府においてこの勧告を受け入れる熱意のないことを表明したものと思うが、いかがでございましょう。(拍手)
 勧告の内容は、日本の社会保障制度は西欧諸国に比較して数十年のおくれがあることを認め、今後十年の政府の努力によって西欧の現在の社会保障まで追いつくことを骨子としたものであります。十年の努力によってようやく十年間の格差まで縮めようとするもので、しごく現実的かつ遠慮がちの勧告であるにもかかわらず、これを実施する意図がどこにも見出されぬことは、まことに残念にたえぬところであります。たとえば、国民健康保険については、昭和四十五年を目途にして給付率を九割に引き上げるべきを勧告しておる。しかるに、政府は、三十八年度十月から世帯主だけを七割給付にする作業を始め、昭和四十年において、ようやくこれを完成することにしているがごとき、また生活保護費において、昭和四十五年を目標に三倍に引き上げるべきを勧告しているにもかかわらず、明年度において、わずか一七%の引き上げにとどめておくがごとき、そのよき例証であります。この勧告に対する総理大臣の決意、これが具体化対策について、厚生大臣、自治大臣に、それぞれお伺いいたしたいと思うのであります。
 第二点としてお尋ねいたしたいことは、社会保障の基準をどのように考えるかということであります。昭和三十八年度生活扶助料は、一級地四人家族で一カ月一万四千二百八十九円であります。一人一カ月実に三千五百円にすぎぬのであります。独身成年にしてなお一万一千円を要する生計費に対し、三千五百円でどうして生きていくことができましょう。本来生活保護基準とは、人間が人間として生きる最低の線を示すものであります。従って、これを決定する法律行為は、最も厳正に慎重に行なわれなければなりません。生活保護法もこの精神にのっとり、厚生大臣をしてその決定者に規定しておるのであります。しかるに、歴代内閣はこの基準をきめるにあたり、他の一般予算と同一に取り扱い、基準の増減を自由にやり、最後は政治折衝によるお手盛りで決定するのが通例であります。これこそ人間の生命を軽視し、法律を無視する最も不当なる行為であると思うが、大蔵大臣、厚生大臣はその誤りを改める意思があるかどうか、承りたいと思うのであります。(拍手)
 さらにこの際お伺いいたしたい。今日人間が生きるために幾ばくの費用を必要とするかという問題であります。昭和二十七年、政府の委託によって調査研究を行なった労働科学研究所は、次のごとく定義をしておるのであります。すなわち、最低生活費とは、憲法で定めるものにして、月七千円を要し、最低生存費は月四千円を必要とするというのであります。これを昭和三十七年現在に換算すれば、最低生活費は一万二千円、最低生存費は七千円になるのであります。最低生存費とは、これを下回れば健康を極度に悪くし、入浴、理髪も制限し、なべ、かまといった最低限度の日用品も確保できぬ水準であり、文化も娯楽もなく、ただ生存するだけの生活をいうと定義をしておるのであります。今日七千円は、人間としての呼吸を続け得る最低の生存費であることを重ねて申し上げたい。従って、この七千円は生活扶助の基準となし、各種年金の基準にすべきものと確信するのであります。すなわち、国民年金においても老齢福祉年金月七千円を目途に努力を重ねるべきであり、厚生年金においてもフラット七千円を決定すべきであると思うが、これに対する政府の見解はいかがでございましょう。国際水準に近づいた日本経済から見て、この七千円は、西欧のそれに比べてなお恥ずかしいほどの給付であることを申し添えたいのであります。これに対する大蔵、厚生、労働大臣のお答えを得たいのであります。
 国民健康保険の加入者は、そのほとんどが低所得者であることは、政府御承知の通りであります。従って、実情は、市町村民税中所得割さえ納められぬ者が四・三八倍の保険税を納め、十万円以下の低所得者にして、なおかつ市町村民税の三・二倍の保険税を納めておる状況であります。しかるに、こうした人たちが病気になると、さらに現金で五割の医療費を支払わなければならないのであります。これあるがゆえに、国保の被保険者は病気になれば近代医学を避け、売薬と仏の加護と神の祈りの中に、絶えなんとする生命のともしびを求めておるのであります。この悲しむべき現実を政府は何と見るか。健康保険制度を抜本的に改正をし、とりあえず市町村民税中所得割を納め得ない階層以下に保険税を全額免除し、国民ひとしく医療保険を受け得る体制をとるべきであると思うが、政府の考えはいかがでございましょう。(拍手)
 その他、僻地医療、老人福祉、児童福祉、環境衛生等について政府の所信を承りたいのであります。
 私は結論として申し上げたい。高度成長によって生み出された富は社会の富であり、その富を生んだものは経営の能力をも含めた労働の成果であります。われわれ国民は、何人たるを問わず憲法によってその富の再分配を要求し、人間としての健康にして文化的なる生活を営むことの権利を有するのであります。国民のこの権利意識は、日に高まっていくことでありましょう。われわれは国民とともに社会保障の水準が西欧先進国に追いつき、追い越すまで戦い続けるであろうことを申し述べて、私の質問を終わりたいと存じます。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 まず第一に、一月中旬より降り続きました豪雪のため、裏日本一帯十二府県にかなりの被害と、そうして、住民の方々が非常な御苦心を来たしておるのであります。昨二十五日午後十時の現在で、死者及び行方不明者が四十三人、負傷者が三十三名、そうして、家屋は全壊七十棟、半壊五十棟、おおむねこの損傷はなだれによるものでございます。われわれは、これに対しましていろいろ調査をいたしております。今、主要都市におきまする主要食糧につきましては、大体五日ないし十日分があるようでございます。また、農村には相当の備蓄がございますので、農村方面は主要食糧については心配ございません。ただ、生鮮食料品につきましては、各地ともかなり御不自由のようでございます。しこうして、これが対策につきましては、最もひどい福井県に対しましては、これは鉄道方面が割に近いので楽でございます。また、遠くても、鉄道のきくところはよろしゅうございますが、新潟県の長岡なんかは最も補給に困難なようでございます。従いまして、これが対策として、われわれは鉄道の輸送並びに建設関係に力を加えます。また、様子によりましては自衛隊の協力を得まして、そうして、生鮮食料品等に遺憾なきを期したいと思っております。とりあえず政府といたしましては、建設、農林、運輸三省、並びに中央防災会議の事務局長によりまして対策を具体的に講ずるとともに、見舞調査団を出すよう決定いたしておるのであります。私は諸君とともに、一日も早くこの雪がとまって、普通の状態に返ることを祈念してやみません。(拍手)
 なお、御質問の点について申し上げまするが、私は、議会運営の正常化を心から願うものでございます。従いまして、政党の総裁として、さきの国会において審議が拒否せられたことにつきまして、まことに遺憾の意を表したのであります。(拍手)われわれは、国民大多数の協力を得まして政権を持っておるのであります。われわれの政権がよくなければ、国民が決定なさることでございます。われわれは、大多数の国民の支持によって政権を握っておるのであります。これが永久であるかどうかは、また、これがよくないかどうかは国民が判断されることと考えます。(拍手)
 なお、農村の将来につきましては、私はだれよりも一番心配しておるつもり、また、だれよりも一番早く農村対策を叫んだつもりでございます。これがゆえに、私は、農業基本法等を制定いたしまして、今後の農村が明るく発展するよう各般の努力をするよう関係閣僚と協議いたしておるのであります。
 なお、日本の発展は国民の努力によると申しました。この国民とは、何も直接生産に携わっておる人ばかりではない、全部の国民でございます。(拍手)私はそう考えております。
 なお、賃金問題につきまして、西欧諸国あるいはアメリカとの比較を言っておる。この比較は、これはあくまで比較論でございます。英独仏もアメリカに対しては半分、そしてイタリアもドイツに対しましては七割近くでございます。しかし、アメリカは、半分の英独仏に低賃金とは言っておりません。また、イタリアにつきましても、アメリカはやはり、低賃金だから輸入その他についてどうこうとは言っていない。これはやはり名目のみではだめでございます。名目のみではだめで、その国の物価水準とか、あるいはその国の、あるいは会社等の福祉厚生施設とか、いろいろな点から総合的に判断すべきものでございます。従いまして、おととしくらいまでは、日本の低賃金ということが、政治家あるいは経済家の人に強く言われておりましたが、日本の経済の発展による賃金の急速な上昇、よその国の倍、あるいはそれ以上の上昇を見て、しかも、日本の福祉厚生施設、物価関係を見て、最近では、日本は低賃金国ではなくて、だんだん普通になりつつあるということを言われておるのであります。(拍手)これは小林君の考えとは違っておりまするが、私はそういうふうに考えておるのであります。
 なお、公務員の賃金につきましては、私は、やはり民間の賃金と比較して適当な措置であると思い、人事院の勧告によって決定いたしたのであります。
 また、ILO八十七号は、施政演説で申し上げましたごとく、今国会に提案いたしまして御審議を願い、通過を強く期待しておるのであります。
 また、社会保障関係経費につきましては、もちろん、戦争等のため欧米よりおくれておりまするが、これを取り返すといいますか、これが急速に進んでおることは非常なものでございまして、そのうち欧米並みに参りますよう、私は努力を続けておるのであります。
 経済成長によりまするいろんな利益は、これは国民全体に適当に分け、しかも、将来またふやすもとをつくることが私の念願でございます。(拍手)
  〔国務大臣西村英一君登壇〕
○国務大臣(西村英一君) 社会保障の面についていろいろお尋ねがございましたが、第一点は、総理もいろいろお話をいたしましたが、低所得者に対する対策がないのではないかというお話でございました。もちろん、生活保護階層は別といたしまして、それに続く低所得者のことは十分考えなければならぬと思っておりまするが、これは、やはりあらゆる行政の分野で進めることでございまして、住宅、教育、その他あらゆる面で進めなければならぬと思っております。明年度におきましても、この点に特にかんがみまして、生活保護の基準も引き上げまするし、そういうような観点から、低所得者の多くを占めておりまする国民健康保険につきましても給付の引き上げをやったような次第でございます。また、その他福祉年金の引き上げとか、あるいは結核の対策、精神病の対策、身障者の対策、みなこれらは低所得者対策でございます。かような意味で、私は低所得者の対策を進めておるのでございます。
 第二番には、農村における生活が苦しいのに対してどういうような対策があるか。これは、もちろん農林大臣が主として御答弁になりましょうが、農村におけるいろいろな生活の様式が変わっておりますとか、あるいは農業構造の変化がありまして、私どもの厚生省関係につきましてもいろいろ考えなければならぬ問題があります。簡易水道であるとか、あるいは児童の問題であるとか、僻地対策であるとか、いろいろな問題があるわけでございます。努めてこの農村における福祉対策を進めたい、かように考えております。
 第三番には、日本の社会保障水準は国際水準と非常に隔たりがあるのじゃないか。これは総理からもただいまお話がございましたが、やはり、ただその数字だけで言うわけには参りませんので、人口の構造が相当に外国と変わっております。ただし、外国よりも社会保障が進んでおるとは申しません。これを、やはりなるべく近づくように、われわれは努力をいたしておる次第でございます。社会保障審議会から昨年の十月に、社会保障の推進全般につきまして答申がございました。その答申の中にも、日本の社会保障をおおむね十年の間に西欧諸国に近づけよ、こういうような勧告がございます。従いまして、私たちといたしましても、その目的に沿うていろいろ施策を進めておるわけでございます。明年度の予算について、どういうふうな反映をしたか、この審議会の答申を尊重しておるか。非常に私たちは尊重いたしておるのでございます。これは小林さんも御承知のように、非常に長い間かかって、相当なオーソリティの方々が研究をして私たちに答申をいただいたのでありますから、決してこれを忘れるようなことはございません。その線に沿うて、十分心がけてやっておるのでございます。(拍手)
 それから、生活保護基準のことにつきましていろいろ御意見がございました。生活保護につきましては、これは、政府といたしましても最も重要なことでございまして、昭和三十六年以来、生活保護基準は相当大幅に引き上げております。三十六年においては一八%と、補正予算において五%、三十七年におきましては二二%、さらに明年度はやはり一七%の引き上げをすることになっておるのでございまして、決してこれを軽視しておるわけではございません。
 また、生活保護ということに対して、最低生活の費用が七千円なければとうてい生きていけないのだというような御意見もございましたが、直ちにこれに私は賛成するわけではございません。従いまして、やはりこの生活基準の問題は、国政といたしましても最も重要な問題でございますので、今後もそのことにつきましては努力をいたしたい、かように考えております。
 それからもう一つ、国民健康保険の医療保険のこと、あるいは保険税の軽減のことが出ました。十分とは申しませんが、まず、国民健康保険につきましては、少なくとも第一段階を画したのではないか、私はかように考えておるのでございます。保険税の軽減にいたしましても、国民保険は御承知の通り低所得者がたくさんありますので、その低所得者対策の一環として、保険税の軽減ということをやったのでございます。地方税の均等割に合わせてそれを全部引き上げるということは、御意見としては承りますが、明年におきましては、その保険税の軽減を若干やることにつきましては、これはお約束できるわけでございます。
 その他、僻地医療対策だとか、あるいは老人対策、環境衛生対策等、いろいろ盛りだくさんにありますが、これはもう小林さんも十分御承知のことでございます。僻地医療対策は、実は名案がないのでございます。しかしながら、今までやってきておりまするが、これに対しまして、私はこれからも努めて僻地対策をやらなければならぬ。これは国民全般を近代医療の恩典に浴せしむるために、さようにしなければならぬと思っております。さしあたり三十八年度におきましては、やはり巡回車だとか、あるいはいろいろな施策をして、僻地の方々の医療に困難のないようにしたいと思っております。
 老人対策につきましては、老人福祉法を今国会に出したいと思っておりますが、老人福祉法の趣旨は、あくまでもそのクラブで遊ばせるという行き方でありません。やはり老人が心身ともに健康を保持して、そうして働いてもらう、こういうことでございます。
 環境衛生につきましては、最もおくれておる国の政策でございますから、これは五カ年計画をつくりまして、非常に進めなければならぬと思っております。どうか社会党の方も、環境衛生につきましては非常に応援をしていただきたいのでございます。(拍手)
  〔国務大臣大橋武夫君登壇〕
○国務大臣(大橋武夫君) 労働関係につきましては、総理大臣からお答え申し上げました以外の点について申し上げたいと存じます。
 労働界の現状から見まして、現在の最低賃金法を廃止し、新しい法律をつくるべきときではないかという御意見でございます。政府といたしましても、最低賃金の充実、拡大をはかり、賃金の格差の縮小を期しますことが必要であると認めておるのでございますが、そのためには、現行法を一そう活用いたしまして、制度の普及徹底をはかり、賃金の適正化を進めたい、かように考えておる次第でございます。
 次に、合理化に伴う離職者についての御質問でございましたが、経営の合理化、近代化は、いわゆる労働節約の効果を持っておりまするため、それが無秩序かつ急激に行なわれますと、一時的には失業者を発生させることが十分に考えられるのでございます。しかし、このことは、同時に経営の合理化、近代化という点におきまして、生産コストの低下による国内及び国外市場の拡大、また、関連部門の生産の増大をもたらすものでありますから、特にそれが経済の成長過程において行なわれます場合においては、場合によっては、雇用の増大をもたらすことにもなるのでございます。わが国の雇用が、全体としてここ数年順調に増大いたしておりますことは、御承知の通りでございます。特定の不況産業におきまして労働力の転換を必要とするような事態が生ずる場合には、極力企業内の配置転換によって解決をはかるよう企業関係者に協力を求めまするとともに、やむを得ず離職者の発生を見る場合におきましては、職業紹介、転職訓練等の積極的な展開、転職者のための住宅建設、移住のための費用の支給等、各種の就職の対策を講じ、他産業への再就職を促進いたしまして、事態を円満に処理するように努めて参りたいと存じます。(拍手)
  〔国務大臣重政誠之君登壇〕
○国務大臣(重政誠之君) お答えを申し上げます。
 農村の青少年に離村の傾向があることについての御心配の御質問でございましたが、次代の農業経営をになうところの青少年が多く離村をするということにつきましては、十分に私も重視をいたして、心配もいたしておるのでございます。これは何といたしましても農村における環境の整備ということもあるのでありましょうが、最も重要なことは、やはり農業の経営について青少年諸君に希望を持たすことが最も重要なことであると思うのであります。すなわち、農業所得が何といっても漸次増加をする、それからさらに、経営の近代化をやっていきますというと、なるほど農業経営というものは将来希望が持てるものである、こういうことを現実に青少年諸君に見てもらい、さらに、その実習教育等を現実に行なうことであろうと思うのであります。もちろん文部省の農業教育の問題もありますが、私どもとしては、もっぱら経営の伝習農場を各府県に現在設置いたしております。これによって年々約四千人の青少年の伝習を現実に行なっておるようなわけであります。あるいは機械化農業をやり、あるいは畜産の経営、果樹園の経営というようなことも、これは現実に実習を進めておるようなわけであります。その他、農業青年の研修館を設けて、短期に農業経営の技術を伝習するとか、いろいろな方法を講じて農業について希望を持たしめるような政策の実行をいたして参っておるのであります。
 第二に、農業構造改善事業について法律を制定すべきではないか、こういう御意見でありましたが、御承知の通りに、構造改善事業は、やはりその地方地方の実情に即して実行をいたさなければならないものであります。しかるに、法律をつくりまして画一的にやるということは、かえって運営の弾力性を欠くおそれがあるのではないかと思うのであります。そこで、現在のところでは、私といたしましては、これを法制化する考えは持っておりません。法制化しないからといって、これは何も日陰のものではないのであります。多額の予算を計上いたしまして、堂々と皆さんの御審議をわずらわすのであります。でありますから、法律を制定しなければこれが日陰もののごとく考えられることは、私はおかしいと思うのであります。
 さらに、この構造改善事業の補助率が少な過ぎやしないかという御懸念でありましたが、これは地方からの御要望もありますので、現在は、国は五割の補助をいたしておりますが、さらに、県段階におきまして、この補助率のかさ上げをやってもらう。そのために、地方交付税の交付金のうちから、このかさ上げに要する財源をこの方面に振り当ててもらうということで、関係大臣と目下検討をいたしておるようなわけであります。
 さらに、価格の保障がないから構造改善の事業がなかなか進捗しないなどというような御意見もあったのでありますが、これは御承知の通りに、農産物の価格政策といたしましては、食糧管理法で米麦の価格政策を実行し、さらに、農安法によりまして大豆あるいはカンショ、バレイショ、澱粉その他の主要農産物の支持政策を実行し、さらには、畜産物安定法によりまして豚肉であるとか、あるいは鶏卵でありますとか、あるいは酪農製品というようなものも価格の支持政策を行なっておるのであります。畜産物につきましては、現に畜産振興事業団に本年度は三十億円の予算を計上し、三十八年度は二十五億円の予算を計上いたしておる次第であります。本年度は御承知の通り、昨年の四、五月のころに豚肉の値段が二百四十円以下に下がったから、二百四十円でこれを買い入れまして、現在は御承知の通りに三百円以上になっておるというような事情でありまして、この豚肉の価格の支持政策は全く成功いたしております。
 さらに、牛乳についての御心配がありますが、牛乳もこの農安法によりまして価格の支持政策をきめております。そうして、各乳業者は、その支持価格の上に奨励金を出しておる。先ほど申されましたのは、その奨励金を乳業会社が若干下げておるというような事情があるわけであります。これは法制上、農林大臣といたしましては奨励金を下げることを有権的に阻止するわけには参らない。そこで、私といたしましては、この畜産振興事業団を活用いたしまして、乳製品を約二十億円買い上げることにいたしまして、それによって、これ以上牛乳の各社が支払っております奨励金を下げないような方策をとることといたしておるような次第であります。(拍手)
  〔国務大臣綾部健太郎君登壇〕
○国務大臣(綾部健太郎君) お答えいたします。
 それより先に、先ほど総理が、北陸、信越地方の雪害に対しまして申されましたが、私もその鉄道をあずかる責任者といたしまして、まことにお気の毒にたえません。目下の状態におきましては、国鉄から固有の除雪人夫約一万人、自衛隊約千三百人を出しまして、あらゆる機械力を利用いたしまして除雪に努め、同時に、通勤列車と食糧物資の輸送に万全を期しておる次第でございますから、さよう御了承願います。
 次に、私に対する御質問にお答えいたします。
 国鉄の経営を健全化するために、諸種の合理化対策を進めつつあるのは御承知の通りでありますが、私といたしましては、この際人員整理等を強行する合理化策は考えておりません。合理化に関連いたしまして、一部の配置転換等があると思いますが、これに要するいろいろな住宅、それから手当等、万全の策を講じ、労働条件については、なるべく十分配慮する所存でございます。(拍手)
  〔国務大臣小沢久太郎君登壇〕
○国務大臣(小沢久太郎君) お答えいたします。
 電話の拡充、自動化は、わが国内各方面の熱望であります。従いまして、その要望に従いましてこれが推進をはかりたい所存でございます。ただ、その計画の進展に伴いまして発生するところの要員問題につきましては、郵政省といたしましても、また、電電公社といたしましても十分連絡をとり、対策について慎重な検討をしておる次第でございます。特に、その際生じまする廃員につきましては、配置転換及び職種転換等を行ないまして、十分誠意を持ってあっせんする方法を講ずる所存でございます。その他適切な対策を考えまして、その措置につきまして万全を期して参る所存でございます。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) 土地改革によります農地対策について補足いたします。
 この問題につきましては、昨日成田君の御質問に答えた通りでございまして、農地被買収者に対する報償については何らかの措置をとる必要がありますが、なお具体的に調査する必要がございますので、予算を計上いたして、対策、措置を考慮することにいたしておるのでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(原健三郎君) 西村榮一君。
  〔西村榮一君登壇〕
○西村榮一君 私は、民主社会党を代表いたしまして、池田総理大臣並びに関係閣僚各位に対しまして、昭和三十八年度の施政演説について質問せんとするものであります。(拍手)
 私がここに質問せんとするものは、少なくとも、昭和三十八年度は、内政において、外政において、大きな動きを見せる年であろうと存ずるからであります。すなわち、本年の国際情勢は、率直に申しますならば、和戦の関頭に立つ年であります。冷戦激化の場合はともかくといたしまして、幸いにして、万人熱望する平和共存の方向に世界情勢が好転するといたしましても、そこに待ち設けておるものは激烈なる経済競争であります。すなわち、言いかえてみますれば、経済と科学技術の激烈なる戦争的競争であります。現下の政治は、これにいかに対処し、もって国家百年の大計を定むるかにあるのであります。しかるに、先般総理大臣並びに関係閣僚の施政方針を承りますに、遺憾ながら、これに対処するの識見と方策が示されていない、これ、本員の最も遺憾とし、国民の不満とするところであります。(拍手)私はこれを機会に、外交、内政、経済の三面にわたりまして政府の所信をたださんとするものであります。
 第一に、まず冒頭に、先ほど御答弁がございましたが、北陸地方、北海道、東北各地の災害はきわめて甚大であります。こいねがわくば、先ほどの御答弁を、本会議における答弁にあらずして、すみやかに実施し、罹災者を少しでも慰めていただきたいということを私は要請する次第であります。(拍手)
 第二の問題は、石炭問題であります。
 わが党は、過ぐる臨時国会において、次の諸点の実行を政府に要求いたしました。すなわち、第一に、政府は国内炭の需給規模を拡大し、積極的にその需要確保に努力して、答申の線を上回るような需給規模の確保に努めること、第二に、政府は炭鉱離職者の再雇用について、これらの完全就職を完了する政治責任を負う旨を確認すること、第三に、五千五百万トン・ベースにおける過剰貯炭に対し貯炭融資を行なうこと、これは絶対に実現しなければならない最低条件であると確信いたしますので、との点、政府の方針をこの際明確にしていただきたいと存じます。
 第三にお尋ねいたしたいのは、日韓交渉問題であります。
 私は、日韓両国が一日も早く国交を回復して、親善友好の実をあげることを心から切望するものであります。しこうして、その国交回復とは一体何か。申すまでもなく、あくまで日韓両国の利益と立場をお互いに尊重するとともに、悔いを将来に残さざる根本的解決が必要と存じます。三日前、韓国の前中央情報部長金鍾泌氏の失脚を各新聞は報道いたしております。また、韓国の政変や動揺は、今後も続くものと思われるのであります。かかる際、私は、韓国が一日も早く軍事政権から民主政権に移行して、韓国人民の自由と民権を基礎とした民主主義政権の樹立を熱望いたします。従って、私は、すでに延べましたごとく、日韓両国の国交回復は誠意をもって努力すべきであるという基本的態度に立つものでありますが、しかしながら、この際注意しなければならぬことは、当面の韓国の政情にかんがみ、交渉に当たる政府の態度といたしましては、韓国の政局の安定と、特に民主化の度合いを考慮に入れ、慎重なるかまえをもって対処しなければならぬと考えるのであります。私は、日韓交渉の可否を論ずるものは、少なくとも、それが共産主義であれ、軍事国家であれ、その国の政治性格に干渉すべきではないと思います。われわれは、共産主義国家中国との国交回復を熱望いたします。従って、日韓交渉の可否を論ずるものは、その国の政治性格にあらずして、条約それ自身の内容によって賛否を決すべきであります。すなわち、端的に申しますならば、現在日韓両国間に懸案となっておりまする経済協力の問題、漁業問題、竹島の領土問題、この三案一括解決をはかることこそが、日韓両国間における国交回復の基礎なりと私は考えるのであります。さらに、問題は、一たん協定を結んだこの三案一括の解決案が、次期民主主義政権においてこれを承認し、批准手続が完了されるかいなやということの、韓国政界に対しての見通しの問題であります。私は、今の時点に立って、日本国政府は、いたずらに時の早からんことをあせるより、悔いを後世に残さざる万全の策を講じて、この問題に取り組むべきであると考えておるのであります。
 この意味におきまして、過ぐる臨時国会において、わが党の伊藤卯四郎副委員長から、次のごとき質問を総理大臣にいたしております。第一に、日韓交渉は促進すべし、しかし、その条件は、一切の懸案はこれを一括解決して、請求権問題についてはあくまで筋を立て、将来北鮮に対して二重払いなどを起こさないよう、法律的根拠に基きづ合理的な解決をはかること。次に、李ラインを撤廃して漁業協定を結び、日韓両国の漁民が意を安んじてその操業に参加し得るよう、漁業協定を結ぶべし。さらに、竹島問題は他の諸懸案と同時に解決すべきであり、そうして、このような懸案の一括解決と同時に、韓国の経済復興と韓国国民の生活の安定のためにわが国が経済協力をなすべきである。以上のごとき伊藤さんの質問に対しまして、池田総理大臣は、大体自分もその方針で進みますと述べられました。しかるに、この答弁が終わってからわずか七日の後に、無償供与三億ドル、有償供与二億ドルを決定せられました。これは韓国新政権に対するお祝い金というのであります。お祝い金とはいかなる性質を持つものであるか私は存じませんが、いずれ、このことは予算委員会において同僚が詳細に論ずることと思います。
 そこで、私は、不思議にたえないことは、かつ、国民の不満とするところは、漁業協定並びに竹島の領土問題については何ら目鼻がついていないということであります。端的に申し上げますれば、韓国の熱望するところは、経済再建に対する資金であります。日本国民の熱望するところは、朝鮮海峡において意を安んじて漁業をなし得るということであります。ここに両国の急所がある。にもかかわらず、韓国だけの泣きどころを解決して、日本漁民の要望を今日なお等閑に付しているという外交交渉の行き方は、池田総理大臣、あなたはいかにお考えになっておられるか。ところが、池田さんは十八日の記者会見で、漁業問題、竹島問題等解決を見なければ、さきに内定した無償供与並びに経済協力の問題も打ち切ると言明されました。私は率直に申しますが、今の時点においてさようなことができるでしょうか。
 さらに私は、かりに漁業協定が妥結するとするならば、この際明らかにしておきたいことは、韓国のペースによって妥結をするのか、国際法上の大原則たる公海自由の法則によって妥結するのか、一括解決と申しましても妥結の内容が問題になります。すなわち、日本国政府は、国際法上の大原則たる公海自由の法則に照らし、韓国の専管に属する水域とは韓国沿岸から最大限十二海里であるとして、他の水域については公海自由の原則をもととして、両国の漁業協定によって確認してもらいたいということであります。しかるに韓国側の主張は、従来の李承晩時代の提案と本質的にあまり違いはないのであります。かかる韓国側の漁業問題に対する提案は、わが国の国家的利益を侵害するのみならず、国際法上重大な悪例を残すものであって、わが国といたしましては絶対に承認し得ないと考えます。総理大臣の御見解はいかがでありますか。すなわち、国際法に基づく日本国の公正妥当なる主張をあくまで堅持していかれるのかどうか、この点明確なる御回答をいただきたい。(拍手)
 第二の問題は、竹島問題であります。政府の方針は三転、三転いたしております。政府は、あるときは今回の交渉を通じてその返還を実現すると言ってみたり、またあるときは国際司法裁判所に提訴してその解決をはかると言ったり、さらには党の最高幹部が竹島の共同所有を提案する等、その態度に全く一貫性を欠いているのであります。世人は、竹島問題をめぐるこのような政府の態度の中に、何かその背後に隠されたものがあるのではないかという疑念を禁じ得ないのであります。私は、権威ある某有力筋から聞くところによりますれば、日韓交渉再開にあたって、竹島問題は日韓交渉妥結後に話し合うという暗黙の了解のもとに再開交渉が開始されたのであるということを承っております。私は、これを聞いてがく然としてみずから小耳を疑ったのであります。なるほど竹島は日本海の小さい島であります。しかし、日本海のこの猫額大の一小島といえども、国家の威信と歴史性からいきまして、きわめて重要性を持つのであります。何となれば、竹島の領土権の問題は、直ちに千島その他の北方領土の問題の解決に影響いたします。沖繩その他南方に属する領土にも影響するのでありまして、竹島問題は単なる日本海の一島嶼とは考えられないのであります。しかるに、これを事実上たな上げにしようということは、かりそめにも考うべからざることであると私は確信いたすものであります。しかるに韓国側は、朴議長並びに崔外務長官、口をそろえて竹島の領有権を主張いたしております。そして日本国の面子を立てるために、日韓交渉妥結の後にその問題は話し合うのであるということを明らかにいたしております。この韓国最高幹部二人の言明と、過ぐる日、私が某要人から承った竹島問題は交渉妥結後に話し合うという暗黙の了解のもとに日韓交渉再開に入ったという話とは、符節を一致するのであります。私は、わが国が、もちろん歴史的に見ても現実的に見ても竹島は日本国の一領土であって、絶対にこれを譲るべきではないと確信いたしております。同時に私は、日韓外交交渉にあたって最も不思議にたえないのは、従来の慣例から申しまするならば、他国との国交回復は、まず領土権の明確なる解決をはかることが国際的慣例であります。しかるに、この慣例を何がゆえに無視したのであるか、いろいろのうわさとともに日本国民の疑惑はこの点に深まっておるのであります。
 そこで、私はあり得べからざることだと思いますが、この際、念のために明確に池田総理大臣の御答弁をわずらわしたいことは、日本政府が国交正常化の後に竹島問題を協議しようというような約束をしたかしないか、あるいはまた、そういう明確な約束がなくとも、韓国側をしてさような解釈をせしむるというような誤解を与えたとするならば、その責任はきわめて重大であります。かりそめにもさような了解にひとしき言質を与えながら、今日漁業問題とともに竹島問題も同時解決をはからなければ、さきに協定した経済協定も御破算にするという、過ぐる日の池田総理大臣の言明というものは、私はきわめて日韓両国の政治信義の問題として重要になって参ると存じます。かりに、外務当局がさような約束をしながらこれを総理大臣に告げずして、外務大臣が独走しておるということでありまするならば、その責任は重大であります。また、内閣総理大臣がそれを承知しながら、今日に至って、懸案が一括解決しなければ従来の解決案を御破算にするということでありまするならば、これは韓国に対して不信行為であります。さらに、その約束があるにかかわらず、日本国民に告げなかったというならば、日本国民に対する裏切り行為であるのであります。
 去る二十二日、新聞の報ずるところによりますれば、無償供与三億ドル、借款二億ドルに対して、韓国政府はこれに合意したと報じております。昨日、大平外務大臣は、合意文書は取りかわしたことはないが、交換文書は存在するのであって、その内容は国際信義の上から告げられぬと言われました。そこで、私は、大平外務大臣に無理なことは言わないのでありまして、あなたが提出して、大野副総裁がソウルにおいてそれを見てがく然としたあなたの文書は、国際法上拘束力があるのであるか、あるいはその他の簡単な文書であるか、その内容はいかなるものであるかということを私は問おうとはいたしません。しかし、ここにあなたにだめ押ししておきたいことは、あなたが韓国側に提出された合意書であれ、文書の形であれ、一国の外務大臣が交渉の相手国に提出する文書の中に、漁業問題、竹島問題等、従来の懸案が一括解決しない上からは、ここに経済協力並びに無償供与の金額は一時決定したけれども、すべてこの経済協力の項目も無効とするという附帯条項がつけてあったかどうか。私は、この除外条項をあなたの支書の中に明記せずして、経済問題だけを解決して、竹島問題、漁業問題が未解決であるからといって、従来一たん契約したものを、それまでもほごにするということは、国際信義の上においてはたしてできるかできないか。これを無理にいたします場合においては、日韓両国の国交は従来より悪化することは火を見るよりも明らかであります。しからば、外務大臣の軽率なる文書により、外交交渉の拙劣により、分析と見通しが韓国政局において足らなかったがゆえに、日韓両国間を今日より悪化せしめたというならば、一体その政治的責任は何人が負うべきであるか、私はこの点において池田総理大臣の所見を承りたいと思うのであります。(拍手)
 世人は日韓交渉をさしまして、これは韓国ペースに巻き込まれたと言うのであります。しかしながら、日本の有識者に言わせますれば、それは韓国ペースであるとともに、日本財界ペースであると喝破する人があります。この世上伝えられるうわさを裏書きするごとく、日本の財界は化学工業においても、水産加工業においても、非鉄金属鉱業においても、着々として韓国経済へ進出の準備をし、そしてその実践化に邁進中であります。従って、世人はかく想像いたします。一括解決を主張しながら、漁業問題、竹島問題をあと回しにして、経済協力だけの金額をきめたのは、韓国側が経済再建のために資金確保の必要があり、かつ、そのにない手としての日本財界の韓国進出のために、無償供与並びに経済協力の贈与類の一応の数字的な作成をあせった結果が、経済問題だけを切り離して単独に解決したのである、こう想像するのであります。この想像を裏書きするものとして、アメリカ、イタリア、フランス、そして韓国側も希望いたしました韓国経済再建のために、国際借款団を編成して、その国際的協力によって韓国の経済再建をはからんとする動きがあるのであります。私は、日本の財界が韓国に再び経済的に進出するという大きな疑惑と不安を韓国人が持っておるとき、賢明なる政治は、日本単独をもって独走的に進出するにあらずして、韓国の経済協力はあくまで、現下の日本の状態から申しまするならば、西欧諸国とも相結んで共同借款団を編成して、その一員として経済再建に日本が協力してあげますならば、韓国人の不安と疑惑は解かれたと思うのであります。しかるにそれをなさない。これに対して世上いろいろのうわさが飛んでおります。私は、日本の政治の権威と純潔性からいって、かようなうわさは信じたくありませんが、何ゆえに国際慣例を破って領土権と漁業問題をあと回しにして、ひたすら経済協力の金額だけをきめたかという、外交史上前例のないこの扱い方に対し、世人の疑惑を解くために、私は内閣総理大臣の明確なる御答弁をわずらわしたいと思うのであります。
 昨日、成田さんの質問に対して私は承っておりますと、金鍾泌氏の失脚については何ら日本は影響ないと答弁されました。私はこれは詭弁だと思います。率直な答弁ではない。少なくとも従来金鍾泌氏を韓国代表として交渉の相手にしてきたのでありますから、すなおな答弁でありまするならば、交渉は幾らか影響はいたしますが、それに対する対処の方策は他に講じます、これがすなおな答弁ではないか。従って、私は、以下失礼な話でありますが、総理大臣、外務大臣のあげ足をとろうと思いませんから、私に対してじゃなしに、日本国民に対して、胸の中にある疑惑を解くために、明快なる御答弁を、そしてすなおな御答弁を要望するものであります。
 次に、私は財政問題に入ります。
 池田内閣は高度成長政策をとられました。私は、現下の国際情勢を考え、その国家が国際競争にたえ、民族の繁栄をこいねがいまするならば、何人が、何党が内閣を組織いたしましても、経済全体のバランスを考慮しながら高度経済成長政策をとることは当然でありまして、これ国家の至上命令であります。
 しからば、高度経済成長政策の目的は一体何か。それは二つあります。一つは国際競争に勝つことであります。いま一つの目的は、高度経済成長政策によって豊かになった経済力をもって国民の福祉を増進する、これが高度成長政策の目的でありますが、現下わが国に見るごとく、高度経済成長政策によって日本経済は混乱し、その矛盾は拡大して、日本経済全体が大きなマイナスをこうむり、国民生活に著しく不安と動揺を与えまして、これは高度成長政策の目的に反するのであります。従って、成長政策はいたずらにその成長率の高きを求むるにあらず、堅実なる安定的成長をはかるということが主眼でなければなりません。しかるに、池田内閣はその逆をやられた。私はおもなる例を拾ってみますると、池田さんの高度経済成長政策の結果、第一にあげるべきは、過大設備とその遊休化による固定資本の増大であります。第二は物価高であります。第三に労働力の偏在と生産の停滞と滞貨の増加、企業利潤の悪化であります。従って、昭和三十五年ごろから六年にかけて、日本経済はアンバランスとでこぼこを直すことが、当時の財政家の態度であったにかかわらず、池田さんはその逆をおやりになった。今、池田さんは、昨日来の御答弁を承ってみますと、経済政策は成功しているんだ、こうお述べになっておられます。池田さんのこの強気の答弁を国民がお聞きになってどうお考えになるか。私は、経済政策は少なくとも抽象論ではいかぬのでありまして、あなたのお好みになっておりまする数字をもってあなたの御見解を反駁いたします。
 すなわち、三十七年十一月までで倒産者の数は二千九百七十五件でありまして、これは前年度に比較いたしまして五百五十九件増加しております。金額にいたしまして六一・五%ふえておるのであります。また不渡り手形は三十七年度十一月までで前年度より九万八千枚ふえております。さらに、私は時間がありませんから経済政策のこまかい数字は省略いたしますが、あなたの経済担任の閣僚、宮澤経済企画庁長官は昨年十一月の記者会見において、高度成長政策は失敗であった、国民に迷惑をかけて相済まぬとお述べになっておる。さらに、昨日成田氏の質疑に対して、あなたはこうお述べになっておる。現在困っておるのは大企業であって、労働者、農民は困っていない、こうお述べになりました。しからば、その大企業を困窮に陥れた責任者は一体だれですか、それは池田首相自身、あなたの経済政策ではありませんか。私は、今回の総理大臣の施政演説並びに三十八年度の予算案を見ると、その反省の色がないことはまことに遺憾でありますが、時間の関係上、具体的なものは予算委員会において同僚がこれをお尋ねいたします。そこで私はあなたに、とりあえず要点だけお尋ねいたしておきたい。
 その第一は、勤労所得税の減税であります。政府の統計によりますと――この統計は私の統計とは少し違いますが、政府の統計によりましても、昨年度の物価の値上がりは六・七%と公表されております。そういたしますと、国民消費が十兆円といたしまするならば、その値上げによって、国民がこうむりました被害は六千七百億円であります。そして三千億円の自然増収のおもなる部分は、勤労階級の名目賃金の値上がりから発生いたしております。しかるにそれに対する減税は、本年わずかに二百七十五億円であります。そこで私は、税負担の公正と勤労階級の生活安定の見地に立って、とりあえず本年度は勤労所得税五十万円まで免税すべきであると考えるのでありますが、しかし、百歩譲りまして、せめて税制調査会答申の線まで減税を断行すべきであると思いますが、総理大臣はいかにお考えでありますか。
 第二は、近来著しく労働賃金が上昇の傾向にあることは、池田首相もしばしば指摘されました。しかしながら、御承知のごとく、物価が値上がりいたしますと、当然賃金の値上げを要求することは、労働者の生活防衛上当然であります。しかるに、政府においては、単に賃金の上昇を押えることにきゅうきゅうとして、賃金上昇の根源たる物価政策並びに経済再建の方策について具体的なものをお示しになっていない。この点きわめて重要でありますので、物価が高くなるから賃金が高くなる、賃金が高くなるから物価が高くなるといういたちごっこは別といたしまして、私は、三十八年度に政府がとるべき態度は、今まで欠けておった物価政策を明確に世人に提示して、物価安定に政府が万全の施策を講ぜられることが、国民生活安定の第一なりと考えるのでありまして、ここに物価政策の具体的なものをお示しいただきたい。
 第三に、社会資本の充実という立場から、道路、港湾、住宅等の投資に重点を置かれるという本年度の施策に対しまして、私は大賛成であります。そこで、これは賛成でありますが、問題はその財源の捻出方法でありまして、私は、これを公債政策によらずして、過去の行政費のうち冗費並びに補助費を、この際七%前後節約いたしますれば、約二千億円……。河野さん、寝ていないで――河野さん、これはあなたの所管ですよ。この際七%前後を節約いたしますれば、約二千億円捻出されるのであります。それによって公共投資の増大をまかない、もって健全財政を貫くべきである、かように考えるのでありますが、総理大臣並びに建設大臣はいかにお考えですか。
 第四にお尋ねしたいことは、先ほど問題になりましたが、旧地主に対する補償であります。これはすでに、かような補償をすべきではないということは、最高裁判所の判例にもあります。また、歴代政府も、この補償を行なわないと言明してこられました。しかるに、昨日、自民党側の党議において決定されたと新聞が報ずるものは、旧地主の補償二千九百億円の要求を一千億円に圧縮すると党議できめた、こうけさの新聞は一斉に報道いたしております。私は、内閣総理大臣、大蔵大臣にお尋ねしたいのは、一体さような余裕財源がどこにあるのか。もし、さような余裕財源があるならば、何がゆえに農業基本法に基づいて、農業近代化のためにその資金を活用しないのであるか。(拍手)あるいは老人ホーム、または生活保護者、あるいは身体障害者の生業資金に回さないのであるか。私は、この種の問題は、政治的に見ても財政的に見ても、二十年歴史の時計の針を逆行するよりも、日本において余裕財源があるならば、農村の近代化、若かりしころ勤労に従事して国家の立て直しをしてくれた老人に対する手厚い保護、身体障害者の更生資金、生活保護者に対する今日の不足を、一体これによってまかなおうとしないのであるか。多くの戦争犠牲者の中に、何がゆえに旧地主だけ、国民の税負担を無視して、ひとり独走して彼らに補償せんとするのであるか。私はあらゆる角度から考えて、その政治的取り扱いについて疑惑を禁じ得ないのでありまして、内閣総理大臣は、この点明確にお答えいただきたい。
 さらに、十八日の記者会見で、総理大臣は、三十九年度から大幅な減税をすると述べられました。私はあなたにお尋ねしたい。三十九年度から大幅な減税をなし得る経済的、財政的条件は一体どこにありますか。三十九年度の予算というものは、きわめて窮迫せるものでありまして、減税の余地は全然ありません。三十八年度の経済成長率は、政府は六・一%と見積もっておられる。従って、そこから発生する財源は限定されておるのであります。三十八年度の予算において首を出しておるだけの予算を見ても、その大部分が三十九年度に持ち越されておるのでありまして、三十九年度の予算は、おそらく本年同様な一五%をこえる膨張を余儀なくされるでありましょう。同時に、三十八年度の予算は、昨日来、多くの方々が指摘するように、財源のほとんどを食いつぶしておるのであります。従って、三十九年度の予算は、財源不足から、赤字公債を出さねばならぬことは必至と申さねばなりません。もし、赤字公債を避けんとするならば、極度の緊縮財政、すなわちデフレ政策をとらざるを得ないのであります。従って、そこには赤字公債か、デフレ政策か、不自然なる経済政策の結果、日本の経済は再び混乱いたすのであります。私は、今からでもおそくはない、三十八年度の予算におきましては、経済成長四・二%を目安にしておるのでありますから、国家の財政の膨張率は五%前後に食いとめ、名実ともの健全予算を編成し、もって日本経済の国民生活の安定をはかるべきであると考えるのでありますが、総理大臣の御所見はいかがでありましょうか。
 私は、すでに議運で協定された時間が参りましたので、ここに結論に入ります。
 最後に、私はあなたにお尋ねしておきたいことは、人づくり、文教政策であります。池田内閣総理大臣が、この一年間声を大にして述べられた人づくりの問題でありますが、私は、政治が人づくりに重点を置かれているということはきわめてけっこうなことでありまして、あなたの人づくり論に賛成であります。それは民族の将来性を確保する基本的な問題でありまして、政治の施策の半分の重点は、人材育成に置いてこそ初めてその民族の将来性があるのであります。この意味において、あなたが人づくりを提唱されたことについては、私は賛成でありますけれども、しかしながら、私はそこで人づくりの基本理念、哲学上の問題は別の機会で論議するといたしまして、人づくりの問題というものは一体何か。論ずるまでもなく、よき社会をつくることが第一、第二には、国際的に活動できる人材、第三には、科学技術の素質を持つ人材を育成いたしまして、これら三点を通じて次の時代に活躍できる高い識見と能力を持つ人材の育成が人づくりの当面の目的ではないかと存じます。
 しかりといたしますならば、ここに問題になるのは教育の機会均等であります。小学校、中学校、高等学校、大学まで、すべての教育は国家の責任において実践するということ、父兄の貧富の差にかかわらず、国の人材は国家の負担でこれを育成するという制度の確立が必要でありますが、それには、現在の文教費は国家の予算に占める額は三千六百七十九億円でありまして、二二%を切っておるのであります。これを少なくとも私は、六カ年計画をもって二五%の予算をさいて、教育のすべてを国が責任を負うという体制を整えたい、これを要望いたしたいと思うのでありますが、しかし、当面の問題として、高等学校までは義務教育として完全入学の体制を整えていただきたい。人づくりを提唱されている内閣総理大臣、看板に偽りなきことを望むならば、ぜひともこれを実行していただきたい。
 最後に、失礼ながら、私は池田内閣総理大臣に苦言を一言呈します。失礼だが、あなたの政治的欠点は、重要なる問題に取り組まずして、その日の安きを求めておられる。難問題はあとへあとへと繰り延べして、一日の安きを求めて、その延命策を講じておられるのであります。今や、歴史の変遷期に直面して、歴史の激動期に際会して、日本がなすべきことは何かということを深夜考えてみまするならば、現下日本の政治家は、生起する難問題に取り組み、国家百年の大計を定めるということが今日の政治の任務であるのでありまして、かような意味において、問題を後にそらしてその日の安きを求めている池田内閣の延命策は、私は反省を願いたい。失礼でありますけれども、西郷南州の偶感に「丈夫は玉砕するも甎全を恥ず」――一日の安きを求めて延命策を講ずるのは、それは無為無能のサラリーマンの根性でありまして、大政治家の態度ではありません。こいねがわくは、激動していく国際情勢に際会して、みずから身を挺して、国家百年の大計を定めるために、あらゆる難問題と取り組む、この気魄と識見と勇気を持って施政に当たられんことを、一言苦言を呈し、先ほど申し上げました諸点について、答弁のための答弁にあらず、その場限りにあらず、あなたがこの世に生命を断つ後といえども、後世に、池田内閣総理大臣はうそを言わずして、議会において真実を告げてきた、真実を告げるだけの勇気があった――これだけをお願いいたしまして、あなたの率直なる御答弁を懇請いたしまして、私の演説を終わる次第であります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 御質問の第一点は石炭問題でございます。これは昨日も答えましたように、石炭対策につきましては有澤調査団の意見を参考といたしまして、政府としてあれを基本としてやっていっておるのであります。あれにもありますごとく、五千五百万トンの需要を確保するということはなかなか困難でございます。従いまして、われわれは少なくとも五千五百万トンを確保すべくいろいろ努力する。また、きのうも答えましたように、できれば六千万トンでも確保したいという気持を持って努力したいということを言っておるのであります。需要確保につきましては、あらゆる措置を講じたいと考えております。
 なお、離職者に対しましての就職の問題、これも石炭対策の重要な問題として、われわれは離職者を考えながら炭鉱の整理をしていく。そうして、出た場合につきましても、いろいろの措置を講じて、再就職に努力をするということは、当然のことだと思っております。
 また、貯炭融資の場合、これはすでに昨年の夏も、貯炭の場合につきましては、政府は市中銀行に話をいたしまして、相当の融資を今までもやっております。また、市中銀行でなしに、政府関係の機関からも、中小企業炭鉱に対しましての融資をしておるのであります。これは政府の施策として私はやるべきことであるというので従来もやっておりますし、今後も必要に応じて処置いたしたいと考えております。
 日韓問題につきましては、お話しの通り、相互理解と将来に悔いを残さないようにしていく、この方針に変わりはございません。従いまして、私は常に申し上げておるがごとく、請求権の問題、法的地位の問題、漁業権の問題、竹島問題は一括して処理すべきもりでございます。日韓関係の正常化ということが前提でございまするから、このためには一括処理をしていくということに間違いはございません。ことに漁業権の問題につきましては、国際法の原則に準拠することはもちろん、相互理解と相互の利益になるように考えていくことが必要でございます。また、竹島問題につきまして、共有とかなんとかいうことは全然考えたことはございません。われわれはあくまで日本の国として主張する。領土問題でございまするから、従来の例のごとく、両者で話がつかなければ国際司法裁判所へ持っていくことは、これはやむを得ませんが、われわれはあくまで日本の領土として主張しておるのであります。(拍手)また、手順につきましていろいろ想像しておりまするが、手順につきましては、その衝に当たっておる外務大臣よりお答えさすことにいたします。ただ結論は、全体の問題を一括していくことがあなたのおっしゃる日韓の将来に悔いを残さぬことでございますから、この点に誤りはないのでございます。
 なお、日本の経済の成長につきまして、いろいろ御批判がございましょう。失敗だという人もあるかもわかりませんが、私は、大成功ではないが、これによって日本の国民の生活は非常に上がってきたと考えております。外国の批判は私は申しますまい。すでにあなたが外国人がどう見ておるかということはよく御存じでございますから、私は申し上げません。
 なお、減税の問題につきましてのお話でございますが、税制調査会の考え方は一応受け入れております。税制調査会の答申通りにしていないのは、私は国をあずかる者として、最も適当なる税制改正がいいと思って、税制調査会の考えも参考にしながら、結論を出しておるのであります。
 次に、物価政策につきましては、御承知の通り卸売物価につきましては下がり気味でございまするから、特別の施策は講じなくても大体いいと思います。ただ、消費者物価につきましては、先般来申し上げておりますごとく、所得の拡大によりまする需要の増加、生産流通の自然的条件、その他社会資本の不足等で、上昇の原因があります。また、生活内容の上昇、あるいは私鉄、電力におけるがごとく、資本費の増加等々いろいろの原因がございまするが、大体昨年の三月の総合物価対策により、また、どうしても上げなければ社会生活あるいは経済の伸展に害のあるものにつきましては、やむを得ざる場合にのみある程度認めておるのであります。ただ、公共料金につきましては、昨日申し上げましたごとく、電気、ガス、私鉄等におきましても大体いいと思います。今問題になっておる東京の都営バスの問題は、調べてみましたところ、労務費が非常に民営よりも高い、この点につきましては私は反省を求めておるのでございますが、大体公共料金につきましては、ただいまのところ二、三年は上げなくて持つ。そういたしますると、最も消費者物価の上昇の原因でありますのは生鮮食料品でございます。これはやはり生産、流通につきまして特段の措置を講じております。また、受託費の問題につきましても、先ほど農林大臣が答えた通りでございまして、各般の施策を講じまして、消費者物価の上昇は極力押えていく考えでおりのであります。
 なお、補助金を整理して社会保障その他の点をというお話がございました。われわれといたしましても、日ごろから補助金の整理には力を用いておるのであります。ことに今、補助金整理につきまして、調査会を設けて、根本的に検討を加えていだいております。今年中には答申が出ると思いまするから、三十九年度の予算編成につきましては、その答申によりまして、補助金整理に抜本の処置を講じたいと思っております。
 また、農地問題につきましては、先ほどお答えした通りでございまして、これを補償するとは言っていない。報償については何らかの措置をとる必要がある。それで、その具体的の問題を調べて、そうして処置しようとしておるのでございまして、党で千億円とかなんとかいうことは私は聞いておりません。(「何のためにやるんだ」と呼ぶ者あり)何のためにやるかということは、私が政治的に考えて必要ある場合にはやるというのが、これは民主主義の当然のことでございます。私はその点につきまして、十分検討を加えていきたいと思っております。
 なお、三十九年度の減税につきましては、私は、御承知の通り毎年できるだけ減税をしたいのであります。三十八年度も平年度で五百数十億円の減税をいたしたのであります。もっとやりたいのでございますが、何分にも社会資本の方が不足であり、社会保障制度もまだ十分でございません。文教施策にも相当金が要りますので、三十八年度は五百数十億円の減税でがまんしてもらっておるのであります。私は、三十九年度も四十年度も四十一年度もできるだけたくさんやりたいというのは政治家として当然の言葉だと思います。それをでかすようにしていくことが国民とともに努力していかなければならない点でございまして、私は、三十九年度におきまして相当の減税ができるよう、今後国民とともに努力していきたいことをここに申し上げまして、お答えといたします。(拍手)
  〔国務大臣大平正芳君登壇〕
○国務大臣(大平正芳君) 西村議員のおっしゃる通り、日韓交渉にあたりましては、条約の内容が大事だという仰せでございました。私もその通りに心得ております。
 懸案の一括解決の基本方針につきましては、今、総理が申し上げた通りでございまして、いつも内外にその方針を公表いたしております。
 請求権を先に片づけて、漁業問題とか竹島問題をあとにしたのはどうかという御疑問でございますが、懸案の一括解決という基本方針は御了承いただいた通りでございまして、この一括解決の最終時点にならなければ一切の懸案は片づかないわけでございます。ただいま私どもがやっておりますことは、最終時点における最終解決の場合の素材をどうしてつくるかということを作業中でございます。そういう交渉をやっておる最中でございます。従いまして、それじゃどういう懸案から先にやるかということは、予備交渉を進めていく上における技術上の段取りの問題にすぎません。私と金氏との間には、きのう成田君の御質問に答えましたように、合意文書はございません。いつも、予備交渉の場におきましても、また書簡の往復を通じましても、以上述べました同時解決、一括解決の方針は繰り返し強調いたしておりまするし、先方もそれは当然のことと受け取っておる次第でございますので、御了承いただきます。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(原健三郎君) 志賀義雄君。
  〔志賀義雄君登壇〕
○志賀義雄君 今、歴史的転換期に差しかかっている日本の進むべき道は、すべての国との平和共存の原則を守り、日本の独立の回復をはかることであります。
 ところが、池田内閣は、今度総理の演説にもありました通り、アメリカ、ヨーロッパ、日本の三本の柱、つまりアメリカ帝国主義を先頭とする資本主義陣営だけを強化して、平和を守るというのです。これは社会主義諸国や新しい独立諸国との平和共存に反するものであります。池田内閣のこの三本の柱ということは、一つには、ヨーロッパを引き合いに出すことによって、アメリカの指図に従うことをごまかすための政治策略として使い、二つには、日本を帝国主義的強国として復活する念願を実現するために、軍国主義の拡張、その経済的土台の急速な拡大をはかることを企画したものであります。池田首相は、中国封じ込めに対する協力は当然だと公言されましたが、今回の日米安保協議委員会では、まさにそのための重大な問題が討議されています。しかも、その真相を国民は知らず、新聞も報道していません。そこで、私は、具体的事実をあげて総理の見解を伺いたい。
 この会議でフェルト太平洋軍司令官とライシャワー大使は、中国の核実験が接近した接近したと宣伝し、日本政府がケネディの中国封じ込め政策の実行を単なる経済協力だけで済ましていることはだめだと言って、第一に、アメリカの核戦争戦略に協力する態度を明らかにすること、核兵器というと何でも反対だという日本国民の考え方を変えさせること、このため、まず、日本政府がアメリカの核戦争戦略に従うことを公然と明確にせよと要求しました。第二に、そのため、懸案になっているポラリス原子力潜水艦の北日本への寄港を承認せよ。第三に、南ベトナムの事態に対し、日本は、医薬品と軍医を提供しこれに協力せよと迫ったのであります。しかも、日本側の質問に対し、フェルト司令官は、この原子力潜水艦がポラリスを載せていることを確認さえしたのであります。これに対しあなた方は何とこの協議委員会で答えられたか。中国封じ込め政策には全面的に協力する、しかし、原子力潜水艦のポラリス搭載については絶対に表に出さないでくれと言ったではありませんか。そうしてまた、青森県の八戸を初め、北日本三カ所の港を使用することを検討中であり、これを港湾整備新五カ年計画、漁港整備計画の中にひそませ、日本がたくらんでいる原子力商船の危険を予防するという形で実行しようとしていると答えたではありませんか。また、ポラリス潜水艦については、検討中だということにして受け入れを急ぐとも答え、南ベトナムに対しては医療品と軍医を至急送れというアメリカ側の要求を承認するが、ただ軍医のことだけは公表せずに伏せておいてくれと頼んでいるではありませんか。先ほど池田首相は、原子力潜水艦のことは具体的に提案がない、提案があったら慎重に検討する、かように言われました。もうこの問題は向こうから具体的に出ているではありませんか。これこそケネディの中国封じ込め政策に従う池田内閣はどういうものであるかということを私はよく示しているものと思うのであります。池田総理大臣、大卒外務大臣の明確な御答弁を求めます。
 今日、すでにアメリカ軍は、日本人を一人残らず追い出した小笠原父島を太平洋最大の核基地、ポラリス潜水艦基地として使用しており、また、横須賀などの在日アメリカ軍港はすでに核武装艦隊の基地となり、また、グアム島を根拠地とするアメリカ核戦略爆撃隊の基地として横田基地が使われています。これは公然の秘密ではないでしょうか。これに加え、今回のポラリス潜水艦寄港問題は、北日本に対ソ攻撃基地として軍港を新設することを要求したものであります。さらに、アメリカの核武装軍隊が日本に入ってくることになれっこにさせる心理作戦でもあります。先ほどの答弁のようなことでなく、そういうことでは絶対に通用しません。総理は次の点をはっきりと答弁して下さい。
 一、ポラリス原子力潜水艦寄港の要求をはっきり拒否するかどうか。一、南ベトナムに、軍医派遣を含め、いかなる介入もしない約束をするか。一、日本で核武装をするようなアメリカ軍に引き揚げを要求するかどうか。この三点であります。
 次に、昨日池田総理は、日韓会談について、金鍾泌が失脚しようとそれは個人の問題にすぎないと言われました。だが、金鍾泌の失脚は決して個人的問題ではありません。南朝鮮では、労働者は、いいところで賃金の三カ月分の遅払いがあります。農民は、もう食糧が春にかかってありません。市民は重税、すべての人民はインフレーションと物価高による生活の破壊、そうして一切の自由の弾圧に苦しめられているのであります。従って、李承晩に対して最初蜂起が起こったあの光州では、再び労働者、学生、市民、それに韓国人の警官までが一緒になって、アメリカ軍の憲兵と撃ち合いさえしているのでございます。これは、人民大衆が、もはやこれまでの生活様式をがまんしなくなった証拠であります。金鍾泌の失脚は、こうした情勢に当面して、アメリカ帝国主義者と南朝鮮の支配階級、その政府がもはやとれまでのような政治で治めることができなくなった証拠でもあります。との二つが重なって起こることは、革命や政変に入る第一歩なのです。人民がこの政権を承認しなくなっているのに、政府並びに国民と交渉して、金鍾泌個人と交渉したのではないという首相の答弁は、断じて日本人にも承認されるものではありません。日韓会談は即時打ち切るべきです。首相の見解を伺います。
 次に、経済問題について。総理が、二年半前に、高度成長政策による十年所得倍増計画を発表したとき、共産党は、はっきり次の立場から反対いたしました。所得倍増というが、それは労賃や月給や収入などの個人所得が二倍になることではなく、国民所得、すなわち年価値生産物を二倍にすることである。だから、十年たったら国民に二倍のものをつくらせますよという計画にあれはすぎなかったのであります。この点を私どもは指摘しました。また、この計画を十年でやるというのは、単に区切りがいいとか、思いつきとかでなく、池田内閣成立直前に単独審議で成立した新安保条約の有効期間十年と符節を合わせたものであります。つまり、これは安保条約を実現するために、その経済的土台である重化学工業を拡張する計画であります。(笑声)お笑いになる方は、今までそれに気がつかれなかった。少しは勉強なさるとよろしいと思います。だから、総理の強弁にもかかわらず、消費物価は上がるし、この重圧によって労働者や中小企業者や農民がますます苦しめられるのであります。この政策をあくまで貫くために、独占資本に国家財政と金融を集中していくこと、これが今日の池田内閣の経済政策であり、三十八年度予算はこれを露骨に示しておるものであります。
 特に重大なことは税金であります。さすがの池田首相も、組閣のときに三大政策の一つとして減税をあげられましたが、今回の施政演説では、税金については一言も言っておられません。それは実質的増税によって人民から大収奪を行なおうとしておるからであります。たとえば、勤労所得税は増加し、新たに百万人以上も税金をとられることになります。これでは工合が悪いので、税金をとられないようなあわれな階級を、税金をとられるけっこうな階級にしてやるというようなことまでも言われるのであります。特に、中小零細業者の申告所得税は、三十七年度当初予算に対して四三・五%の増加であり、これに対し法人税の増加はわずか八%にすぎません。不況の中でどうして中小企業者の所得だけをこのようにふえると計算し、空前の大徴税をすることができるのか、その具体的根拠をはっきりと示されたいのであります。
 また、政府は、他方では自由化に対処するといって、企業の集中、資本蓄積、農業構造改善事業促進に役立てるため、配当利子所得の減免を中心に大幅の特別措置をやっております。現在でも、国税、地方税の減免を合わせ二千六百億の膨大な額です。今回はこれが三千億円に達しました。このような税政策は、池田内閣の金融、産業政策など、あらゆる面から独占資本を強めるための政策の一部であります。
 さらに、労働者が一致して要求している賃金の大幅引き上げ、最低賃金制の確立を全く無視して、国際競争力を強化するという口実で、日経連と共同してこれを四ないし五%以下に押えようとしております。これは勤労所得税見積もりの中に、はっきりと出ていることであります。一体、池田内閣は、日経連の要求に従い、新しく職務給制度をとり、低賃金政策をあくまで強行するつもりかどうか、はっきりとお聞きしたいのであります。
 問題はそれだけではありません。重大なことは、石炭で七万人、その他非鉄金属、この二つは総理は若干言及されましたが、それ以外に、鉄鋼、機械、造船、自動車、肥料などの主要産業、その他中小零細企業の膨大な労働者の首切り政策をとるということであります。このようなことは断じて許すことはできません。これは必ず重大な結果をもたらすことは明らかであります。総理はこれについて一体どう考えられるのか、はっきりと御答弁を願いたいと思います。
 最後に、私は、アメリカ大使館、領事館の内政干渉をひんぴんと耳にするが、それについて池田首相にただしたいと思います。日本の真の平和と繁栄には、社会主義国との平和共存と互恵平等の貿易の発展が不可欠の条件であります。この方向は、共産党だけが言うのではありません。社会党もこれを熱心に主張され、また良識ある政治家、実業家、財界人もこれを認めようとしている。これが今日の大勢であります。ところが、在日アメリカ大使館、領事館では、日ソ、日中貿易にことごとくくちばしを入れ、それに当たる人々をおどかし、身元調査までも執拗に繰り返すなどの妨害を行なっています。外務省、通産省はもちろんのこと、有名な鉄鋼業界代表を初め、繊維業界、硫安業界、アメリカの代理人でない石油業界、すべてにわたってこれが直接行なわれているのであります。政府は日ソ、日中貿易は政経分離で自主的に行なうと言ってこられましたが、こういうことを野放しにしておいて、一体どこに政経分離、自主性がありますか。また、アメリカの内政干渉は、学者、文化人、言論界、放送事業、労働運動、最近では劇団にまでそれが及んでおります。池田総理は、このようなアメリカ大使館、領事館の内政干渉の事実を至急正確に調査し、それに基づいて厳重に抗議し、これをやめさせるかどうか、この点について明確な御答弁を要求して、私の質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答えいたします。
 三本の柱云々は、アメリカに追従した言葉だと言われるが、そうじやございません。これはプラウダでも去年の八月言っておるじゃありませんか。志賀さんも御存じだと思います。われわれは、世界の人がそう考え、自分も考えておるから、こう言ったのであります。
 なお、日米安保協議委員会のことにつきましては、私は出ておりません。しかも、外務大臣からの報告では、極東の情勢、ことに、南ベトナムの状況を聞いた話だ、こういうことでございますから、その会に出た外務大臣よりお答えさせます。
 また、ポラリスとか軍医派遣とか、いろいろな問題は、事実の認識が違っておるので、答えても仕方がないと思います。(拍手)
 なお、日韓問題の交渉を打ち切る考えはございません。
 減税に対しましていろいろお話がございましたが、多分去年は法人の所得が上がって、個人の所得はそれだけ上がらぬというので非難されたが、今度は個人の所得が上がって法人が上らぬと言って非難されておるようですが、これは実態を知らざる言葉といわなければなりません。
 また、低賃金政策をとるかというお話でございますが、われわれは、国家、国民の将来の福祉を考え、健全な経済を発展さすためには、適正な賃金政策が必要だと考えます。
 また、共産貿易に対しましては、あくまでわれわれは自主的にやっておるのでございまして、他の国からの干渉は一切受けておりません。(拍手)
  〔国務大臣大平正芳君登壇〕
○国務大臣(大平正芳君) 先般の安保協議委員会におきましては、南ベトナムの状況、特に医療の器械が少ない、医療の施設が貧弱である、でき得れば日本側で医療援助があればいいがという示唆はございました。それで、私どもは検討してみましょうと答えたわけでございます。それから、ポラリス潜水艦を持ち込むというようなお話は一切ございませんでした。(拍手)
○副議長(原健三郎君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
○副議長(原健三郎君) 本日は、これにて散会いたします。
   午後五時三十二分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  池田 勇人君
        法 務 大 臣 中垣 國男君
        外 務 大 臣 大平 正芳君
        大 蔵 大 臣 田中 角榮君
        文 部 大 臣 荒木萬壽夫君
        厚 生 大 臣 西村 英一君
        農 林 大 臣 重政 誠之君
        通商産業大臣  福田  一君
        運 輸 大 臣 綾部健太郎君
        郵 政 大 臣 小沢久太郎君
        労 働 大 臣 大橋 武夫君
        建 設 大 臣 河野 一郎君
        自 治 大 臣 篠田 弘作君
        国 務 大 臣 川島正次郎君
        国 務 大 臣 近藤 鶴代君
        国 務 大 臣 志賀健次郎君
        国 務 大 臣 宮澤 喜一君
 出席政府委員
        内閣官房長官  黒金 泰美君
        内閣法制局長官 林  修三君
        内閣法制局第一
        部長      山内 一夫君
        総理府総務長官 徳安 實藏君
        経済企画庁調整
        局長      山本 重信君
        厚生大臣官房長 熊崎 正夫君
        郵政大臣官房長 武田  功君
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