第043回国会 本会議 第7号
昭和三十八年二月八日(金曜日)
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 議事日程 第七号
  昭和三十八年二月八日
   午後二時開議
 第一 昭和三十七年度一般会計補
  正予算(第2号)
 第二 昭和三十七年度特別会計補
  正予算(特第2号)
 第三 昭和三十七年度政府関係機
  関補正予算(機第2号)
 第四 昭和三十七年産米穀につい
  ての所得税の臨時特例に関する
  法律案(内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
 文化財保護委員会委員任命につき同
  意を求めるの件
 日程第一 昭和三十七年度一般会
  計補正予算(第2号)
 日程第二 昭和三十七年度特別会
  計補正予算(特第2号)
 日程第三 昭和三十七年度政府関
  係機関補正予算(機第2号)
 日程第四 昭和三十七年産米穀に
  ついての所得税の臨時特例に関
  する法律案(内閣提出)
 国民年金法及び児童扶養手当法の
  一部を改正する法律案(内閣提
  出)の趣旨説明及び質疑
 所得税法の一部を改正する法律案
  (内閣提出)及び法人税法の一部
  を改正する法律案(内閣提出)の
  趣旨説明及び質疑
   午後二時十一分開議
○議長(清瀬一郎君) これより会議を開きます。
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 文化財保護委員会委員任命につき同意を求めるの件
○議長(清瀬一郎君) お諮りいたします。
 内閣から、文化財保護委員会委員に河原春作君、矢代幸雄君を任命したいので、本院の同意を得たいとの申し出があります。右申し出の通り同意を与えるに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、同意を与えるに決しました。
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 日程第一 昭和三十七年度一般会計補正予算(第2号)
 日程第二 昭和三十七年度特別会計補正予算(特第2号)
 日程第三 昭和三十七年度政府関係機関補正予算(機第2号)
○議長(清瀬一郎君) 日程第一、昭和三十七年度一般会計補正予算(第2号)、日程第二、昭和三十七年度特別会計補正予算(特第2号)、日程第三、昭和三十七年度政府関係機関補正予算(機第2号)、右三件を一括して議題といたします。
○議長(清瀬一郎君) 委員長の報告を求めます。予算委員長塚原俊郎君。
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  〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔塚原俊郎君登壇〕
○塚原俊郎君 ただいま議題となりました昭和三十七年度一般会計補正予算(第2号)、同特別会計補正予算(特第2号)及び同政府関係機関補正予算(機第2号)につきまして、予算委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本補正予算三案は、去る一月二十二日予算委員会に付託され、一月二十八日政府から提案理由の説明が行なわれ、一昨日及び昨日の両日質疑を行ない、質疑終了後、討論採決が行なわれたのであります。
 さて、ここに簡単にその概要を申し上げます。
 まず、一般会計補正予算の規模は、歳入歳出とも八百二十一億三千二百万円であります。これに当初予算及びさきに成立した第一次補正予算を加えますと、本年度一般会計予算は歳入歳出とも二兆五千六百三十億九千百余万円となり、前年度予算額に比較いたしますと、それぞれ四千五百五十七億八百余万円の増加になっております。
 しかして、歳出追加の内容といたしましては、産業投資特別会計資金へ繰り入れ三百五十億円、義務教育費国庫負掛金等の義務的経費の不足補てん二百六億二千百余万円、国際連合公債買入費十八億円、地方交付税交付金二百三十七億三千六百余万円、その他対象人員の増加等に伴う原爆障害対策費、国立療養所費等既定予算に不足を生ずる経費が計上されております。なお、産業投資特別会計資金への繰り入れにつきましては、貿易・為替の自由化、関税引き下げ等に対処し、ますます企業の体質改善、経済基盤の強化が必要となるため、出資需要を円滑かつ弾力的に処理し得るよう資金の充実をはかりたいというのでありまして、繰入額のうち、九十三億円が三十八年度において産業投資支出の財源に充てられることとなっております。
 これらの歳出増加をまかなうため、所得税四百七十一億三千二百万円及び法人税三百五十億円、いずれも本年度の自然増収額をもって財源といたしておるのであります。
 特別会計におきましては、三つの特別会計の補正が行なわれ、一般会計の補正予算に伴う地方交付税及び譲与税配付金特別会計の補正のほか、労働者災害補償保険及び失業保険の二特別会計において、給付費の増加等のため、それぞれ所要の補正が行なわれております。
 なお、政府関係機関におきましては、日本国有鉄道において東海道幹線の増設費として百六十一億円を増加計上し、鉄道債権の発行、資金運用部資金からの借り入れを行ない、事業の進捗をはかることといたしております。
 次に、質疑について申し上げます。
 まず、産業投資特別会計資金への繰り入れについての問題であります。これに関し、「昭和三十八年度予算の大蔵省原案から政府案決定に至る編成過程を振り返ると、三十八年度財政投融資計画が原案に比し異常な膨張となり、これをまかなうため、逆算して三十七年度補正予算に産投資金への繰り入れが行なわれたと見ざるを得ないが、一般会計と財投が混同して取り扱われたきらいはないか。同時にまた、かかる産投資金が三十八年度の投資資金としてのみならず、三十九年度以降にも繰り越されることは、明らかに財政法の趣旨に違反するものと思うがどうか。かりに緊急な支出としても、三十八年度支出予定にとどめるべきではないか。また、産業投資特別会計から米国対日援助の弁済資金は、今後開銀納付金等の減少が予想されるので、この際一般会計から巨額の資金繰り入れにより確保しておきたいとの意図がひそんでいるようにも思われるが、米国対日援助見返り資金の資産から生ずる運用益によってまかない、二重払いとはならないとの政府の基本態度に変わりはないか。」以上の質疑に対し、政府側より、「単に三十八年度における財投資金の原資不足を補てんするため、補正予算で産投資金繰り入れをはかったものではなく、すでに資金は使い切っているし、貿易・為替の自由化、関税引き下げ等、わが国経済にとり重要な局面に際会しており、将来の発展を期するため、円滑かつ弾力的に投資需要に応じられる資金の確保は、きわめて緊要である。また、一般会計は単年度主義を建前とするが、財政投融資は一般会計、産投、あるいは民間資金を総合的かつ弾力的に運用をはかる筋合いのものであるから、この原資として繰り入れたものが一般会計と財投を混同したというがごとき議論にはならないし、財政法の趣旨に違反するとの論も当たらない。なお、ガリオア・エロア資金の返済は、見返り資金の運用益をもって行なう方針に変わりはない」との答弁がありました。
 質疑の第二点としては、「三十七年度租税の自然増収のほとんどすべてが第二次補正に充てられるので、次年度以降の剰余金は見込めないし、三十八年度予算も、財源は限度一ぱいに見積もられている。三十八年度中に大災害が発生した場合、予備費二百億円だけでは不足する事態も予想されるが、はたして補正措置が講じられるか。また、剰余金の減少から三十九年度の国債償還も行なえなくなるのじゃないか。また、三十九年度予算は、公債発行を予定しないで予算編成ができるか。」以上の質疑に対し、政府は、「現在三十八年度予算を初め、金融、税制等景気回復に政策を集中しており、経済情勢が上向くことが期待できるので、財政にゆとりがないとは考えない。二百億円の予備費をこえる不慮の大災害の場合には、必要な措置をとることは当然である。三十九年度予算は財政力の向上も見込まれるし、現在のところ公債発行は考えていない。また、三十八年度予算において一千六十七億円もの国債償還費が計上されることになっているので、三十九年度の債務償還の予定から見て問題はない。むしろわが国においては公債の少ないことが金融の正常化を妨げる一要因になっていると思う。社会資本の充実等、国力の発展に寄与するならば、インフレにならない限り公債発行の考えを一般的に否定するものではない。」との答弁がありました。
 第三は、国鉄関係の予算でありますが、これに関し、「東海道新幹線の当初総事業費として一千九百七十二億円の予定が、現在約五割に当たる九百五十四億円の増額となっているが、いかなる理由によるものか。また、新幹線の投資が強行されている結果、保安設備改良等第二次計画は渋滞し、人員削減、労働強化、他公社に比して低賃金をしいられ、これに対し政府の出資は全くゼロである。これではすべて国鉄の犠牲に転嫁する結果となっているのではないか。また、政府は現在の国鉄の運営状況から見て運賃の値上げを考えているのではないか。」との質疑に対し、政府は、「新幹線工事の経費の増加は、地方公共団体の希望による設計の変更、用地買収、資材工事費の高騰、人件費増等々、当初予定していた経費がかさんだためである。二次計画も将来予算増額を必要と思われるが、現在のところ、ほぼ計画通り事業は進捗しているものと思う。東海道新幹線の事業の進捗は、完成後には収益を増加し、かつ、現在の大規模の財政資金が保安設備改良等の資金に回り、経営の改善、改良事業等に寄与するものと思う。国鉄の事業は多くの職員を必要とするため、大幅な賃上げは運賃に影響するので、運賃の上がらないような賃金政策を期待している。」との答弁がありました。
 その他、総合エネルギー対策、日韓問題、防衛問題等について熱心な質疑応答がありましたが、その内容は会議録をごらん願うことといたします。
 質疑終了後、本補正予算案につきまして、日本社会党及び民主社会党よりそれぞれ予算の撤回及び編成替えを求めるの動議が提出されました。
 その内容の概要は、日本社会党のものは、産業投資特別会計資金へ繰り入れ三百五十億円のうち、二百五十七億円を減額し、雪害対策費等自後の財源として留保せよというものであり、民主社会党のものは、同じく二百五十七億円を雪害対策費並びに生活保護基準の引き上げ、石炭対策の補強等の施策を本年一月にさかのぼり施行するための経費等に充てよというものであります。
 かくて、討論に入り、採決の結果、両党の動議は否決され、本補正予算三案は政府原案の通り可決されたのであります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(清瀬一郎君) 昭和三十七年度一般会計補正予算(第2号)及び昭和三十七年度特別会計補正予算(特第2号)に対しては、川俣清音君外十五名から、二件につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議が提出されております。
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○議長(清瀬一郎君) この際、この動議の趣旨弁明を許します。辻原弘市君。
  〔辻原弘市君登壇〕
○辻原弘市君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました昭和三十七年度一般会計補正予算(第2号)及び同特別会計補正予算(特第2号)を撤回のうえ編成替えを求めるの動議につきまして、その趣旨の説明を行ないたいと思うのであります。(拍手)
 組み替えの要綱は、一般会計第二次補正予算追加額の中で、大蔵省所管の産業投資特別会計資金への繰り入れ三百五十億円のうち、二百五十七億円を減額し、これに伴う所要の措置を講ずるというものであります。減額しようとする二百五十七億円というのは、産業投資特別会計へ繰り入れようという三百五十億円の資金のうち、明三十八年度に使用しようとする九十三億円を除いた、すなわち三十九年度以降に使用を持ち越す金額でありまして、いわば不急不用のものであり、かつまた、本来補正として計上すべからざる性質のものであります。(拍手)従って、私どもは、この金額を削減し、これを今後の財源として留保することによりまして、当面最も緊急な支出を要する雪害対策費を中心といたしまして、あるいは石炭対策、あるいは高校急増対策ないしはまた社会保障関係の諸経費につきまして、本年度さらに必要となるであろう経費に備えようとするものであります。これが本動議を提出いたしました趣旨でございます。
 以下、私は、政府原案に対しまして、若干の批判を加えながら、組み替えにつきましての理由を簡潔に申し述べてみたいと思うのであります。
 政府原案について最も強く非難をしなければならぬことは、三十七年度予算の補正によって、三十九年度以降の使用に充てるべき資金を産業投資特別会計へ繰り入れようとする予算編成の間違った態度であります。そもそも政府は、さきに昭和三十五年度の補正予算におきましても、これと同様のことをやりました。財政法第二十九条との関係において、その際その違法性を強く糾弾せられたのであります。これにこりました政府は、昨年財政法第二十九条の改正を行ない、こうしたやり方を合法化しようとしたのであります。しかしながら、財政法の根本精神である単年度会計制度の原則は、これによってもいささかもゆらいでおらないと私は考えるのであります。かかる方法は、あくまで財政法の精神に背反をするきわめて不当の措置であることは論を待たないと思うのであります。(拍手)従って、私どもは、このような不当な予算編成をそのまま見過ごし、これを認めることは断じてできないのであります。
 しからば、何ゆえ政府がこのような無理をしてまで産業投資特別会計資金への繰り入れをしようとしておるのかというのであります。私は、その主たる原因、おもなる理由について、二つ問題をあげなければならぬと思うのであります。
 その一つは、ガリオア・エロアの返済問題であります。いま一つは、海運利子の徴収猶予の問題でございます。ガリオア・エロアの返済が年間百五十八億円に上り、見返り資金の運用益、回収金をもって充てるから心配は要らないと強弁をした政府の言いのがれをよそに、今やこれが産投特別会計の大きな負担になっていることはおおうべからざる事実でございます。また一方、海運融資の利子徴収猶予が実に百億円に上る巨額が予想せられ、これまた産投特別会計への重圧となっていることはいなめない事実でございます。
 かかる結果を招来いたしましたことは、あくまでも政府の施策のしからしむるところであって、今、産業基盤育成の美名によって、国民の税金である一般財源をその穴埋めに充てることは、国民に対し二重の負担を強要することであり、かつまた、海運その他の大資本を擁護するの余り、国民一般の利益を没却するものであると申して決して過言ではないと信ずるのであります。(拍手)
 しかも、これら財源の資金へのプールの結果、今後、当然その措置の必要に迫られる未曾有の豪雪被害等に対する処置がなおざりになり、被害各地域住民の切なる期待に反することは明白であります。すなわち、多書を要するまでもなく、今回の豪雪による被害は、きわめて広範囲であります。かつまた、深刻でございます。道路、鉄道、施設、耕地その他の復旧、また、豪雪のために、家、家財、はては家族をも失い、あるいは生活のたつきの道を閉ざされ、なすところを知らない多くの人々のために、国があたたかい救済の手を差し伸べるためには、今後なお幾多の対策とともに、多額の出費を必要とすることは論を待たないところであります。政府は、これに対し、わずか二十億弱の予備費と特別交付税交付金の一部をもって当面を糊塗しようといたしておるのでありまするが、これではやがて財源に大きな不足を告げることは火を見るよりも明らかでありまして、被害総額、所要対策費確定のあとには、当然追加計上を余儀なくせられるのであります。従って、私どもの主張は、その際における財源として資金を留保せよというのでありまするから、よもや豪雪各地域御出身の方々は、与党といえどもこれに反対をなされる筋合いはあるまい、かように考えるのであります。(拍手)
 さらにまた、当面の課題となっている石炭対策、あるいはまた樹枝急増の問題、また、社会保障関係費につきましても、豪雪対策とともに、その施策の推進に歩一歩進める必要に今日迫られておるのであります。このような当面の問題処理を軽視して、貴重な財源を産業基盤強化の名のもとに、後年度に積み立てることは、全く事の本末転倒もはなはだしいと申さなければなりません。(拍手)
 以上申し述べました趣旨、理由に基づきまして、われわれは政府に対し、すみやかに政府原案の撤回を求め、その組み替えを行なわれんことを強く要求するものであります。何とぞ全会一致の御賛同を賜わりますようお願い申し上げまして、私の趣旨の説明を終わる次第であります。(拍手)
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○議長(清瀬一郎君) これより補正予算三件に対する討論と、ただいまの動議に対する討論とを一括して行ないます。順次これを許します。石田宥全君。
  〔石田宥全君登壇〕
○石田宥全君 私は、日本社会党を代表いたしまして、昭和三十七年度予算補正第二号の政府原案に反対し、日本社会党提出の組み替え動議に賛成する討論を申し述べたいと思います。(拍手)
 私が反対する第一の理由は、この第二次補正によって、昭和三十七年度の租税自然増収がほとんど一ぱいに使い切られることであります。これにより、財政法第四十一条に基づく昭和三十九年度予算の歳入に繰り入れる財源はほとんど皆無となり、従って、財政法第六条に基づく公債償還に充当すべき財源もまたなくなることになるのであります。しかも、私どもの憂慮することは、すでに三十八年度予算案において、産投会計での外債発行が行なわれ、また、政府保証債に対して日銀の買いオペレーションを行なうこととしていることなどは、いずれも、昭和三十九年度以降の予算において、公然たる公債政策が採用される下準備ではないかということであります。こうなりますと、公債の発行高は急速に増加し、現在の財政法の公債残高をできる限り、減少させていこうという精神にも、全く逆行することになるわけであります。三十七年度予算の第二次補正は、まずこうした理由により、将来にわたっての公債政策の端緒となる性格をはらんでいるという点において、私どもはこれを承認することができないのであります。(拍手)
 私どもの反対する第二の理由は、この補正第二号の内容が、産業投資特別会計への三百五十億円の繰り入れを中心としていることであります。この補正の財源は、言うまでもなく、租税自然増収であります。租税自然増収とは、別の言葉で言えば、国民からの税の取り過ぎであります。私どもが繰り返し予算委員会の審議等を通じて明らかにいたしましたように、池田内閣の呼号する所得倍増計画の中で、所得よりも先に物価が上昇しております。そして労働者や農民、中小企業者は、いかにして物価の上昇に所得の上昇を追いつかせるかに苦労いたしております。池田内閣のいう、賃金が上がるから物価が上がるというのは全くのうそであり、物価上昇のあとを追いかけているのが勤労者の賃金であり、所得であります。(拍手)ところが、こうして物価上昇のあとを追いかけて、勤労大衆が必死になって所得を上げていくと、それは自動的に所得税が重くなってくるのであります。これが租税自然増収でございます。こうして池田内閣の高度経済成長政策の中に、一方では、大企業や高額所得者はますます大もうけをし、勤労大衆はこれに立ちおくれて所得の格差が拡大し、しかも、租税負担は重くなっている実情であります。
 その他、高度成長政策の中で、たとえば農林漁業と製造業との間の産業間格差、いわゆる太平洋ベルト地帯と東北、北陸、山陰、南九州地帯との間の地域間格差、公共投資の中でも、東海道地帯に片寄った道路、港湾の投資と国民生活環境整備のための公共投資との間の不均衡等々、数えれば幾らでも実例を指摘できるのでありますが、そうした不均衡、格差、矛盾というものがいよいよ拡大しているのであります。従って、もし、補正予算を組むというのであれば、こうした不均衡を是正し、勤労大衆の生活を引き上げて、日本国民のすべてが、国の政治の恩恵にひとしく均霑できるような方向に予算の支出を向けるべきが当然であります。
 しかるに、第二次補正の中心は、三百五十億もの大量の資金を産投会計へ繰り入れようとするものであります。これはすなわち勤労大衆からの取り過ぎた税金を財源として、これをまた産投会計を通じて大企業への投資資金として供給しようとするものであります。これでは租税を取られるのは勤労者であり、それを財源にして高度に成長し、巨大なもうけを得るのは大企業であり、こうして日本経済の二重構造はますまま手のつけようもないことになることは明らかであります。
 去る昭和三十五年度にも、第二次補正予算において産投特別会計へ三百五十億円を繰り入れた前例があります。このとき、将来の使用に充てる資金を産投会計へ繰り入れることが、はたして財政法第二十九条の、補正予算編成の要件たるところの、予算作成後に生じた事由に基づき特に緊急となった経費の支出に該当するものかどうか、重大なる法律的疑義が生じたのであります。その後において、財政法第二十九条は改正されたのでありますが、今回の三十七年度補正において、産投会計の三十八年度もしくは三十九年度以降の使用に充てるべき資金を繰り入れることは、予算の単年度制を建前とする現行財政法の精神から見て、やはり依然として重大なる政治的疑義が残るのであります。これは、財政民主主義の立場に立つ現行財政法の精神を池田内閣が乱暴にじゅうりんしているものであり、このような不当な措置をとってまで大企業のための投資資金をつくり出そうとする、いわゆる金づくり政策には、まさに大企業の手先としての池田内閣の階級的本質が最も醜くさらけ出されていると断ぜざるを得ません。(拍手)
 翻って、私は、今の日本海沿岸地方の豪雪被害について、一体池田内閣はどう考え、対処しようとしているのかを問わざるを得ないのであります。
 本年の日本海沿岸地方を襲った豪雪は、四メートル、五メートルという、 まさに空前の積雪となり、このため鉄道、自動車等のすべての運輸交通手段がストップし、この地方の住民は、食糧、生鮮食品が不足し、価格暴騰に苦しめられている現状であります。さらに、この豪雪はすでになだれ等によって唐名以上の人命を奪っております。今後気温のゆるむにつれて、至るところでなだれが頻発し、さらに多くの人命を奪い、家屋、樹木等に甚大なる被害が出るであろうと思われるのであります。また、雪解けの時期ともなれば、洪水を招き、橋梁、田畑、堤防等に多大な被害をもたらすであろうことも必至であります。かつまた、積雪のもとで塵芥や屎尿の処理がほとんど不可能となり、このため公衆衛生も重大な脅威にさらされております。また、この豪雪のため、農林業者が受ける被害、中小企業者が受ける被害は、有形無形のものを含めて、実にはかり知れないものがあります。
 私は、特に政府に向かって強調したいのでありますが、今私の申し述べたような豪雪による被害は、政府による種々の対策、そのための予算の支出を必要としています。これこそまさに財政法で補正予算の要件としてあげている、予算作成後に生じた事由に基づき特に必要となった経費の支出に該当するものであると信じます。従って、政府は、この緊急事態に直面して、あらゆる財源をはたいても、この豪雪対策のために補正予算を組むべき責任があると信じて疑いません。この責任を、一体政府は何と考えているのでありましょうか。
 私は、日本社会党を代表して、全国民に呼びかけるものであります。政府は、三百五十億円の産投会計繰り入れをやめて、この財源を雪害対策に振り向けるべきであると、声を大にして叫ばざるを得ないのであります。(拍手)そのためにこそ、わが党は三百五十億のうち三十九年度以降の使用に充てるべき部分の二百五十七億円を削減して、これを雪害対策のための財源として留保すべしという、最小限の組み替え動議を提出したものであります。
 このわが党の組み替え動議と政府提出原案とには、まさに国民のための予算と独占資本のための予算の対照がはっきりと浮き彫りになっています。私は、この差し迫って必要な雪害対策を目前に控えながら、しかも、なおかつ独占資本のための産投会計繰り入れをあえて行なおうという池田内閣の冷酷むざんな反動性をきびしく糾弾しつつ、ここに三十七年度予算補正第二号の政府原案に反対し、日本社会党提出の組み替え動議に賛成する討論を終了するものであります。(拍手)
○議長(清瀬一郎君) 田中幾三郎君。
  〔田中幾三郎君登壇〕
○田中幾三郎君 私は、民主社会党を代表いたしまして、政府提出の昭和三十七年度予算第二次補正三案並びに日本社会党提出の組み替え動議に反対の趣旨を明らかにしたいと存じます。
 まず、政府三案に対するわが党の反対理由の第一は、政府案は財政法第二十九条の予算修正権の乱用であるからであります。
 一般会計予算第二次補正の規模八百二十一億円余のうちで、義務的諸経費の不足補てんと、歳出補正額計上に伴う地方交付税交付金の増額は、合わせて四百七十一億円であります。残りの三百五十億円が唯一の政策的補正であるところの産投会計資金への繰り入れでありまして、これは明年度以降における産業投融資資金の確保が目的であって、あえて年度末の補正という財政措置を必要とするやいなや、すこぶる疑問の存するところであります。
 私は、わが国の予算編成制度は、事業的歳出については、一般会計予算歳出であっても年度をこえた歳出ができるよう弾力性を持つべきであると考えるものであります。従いまして、政府が予算編成について、年度をこえた弾力性を持たんとする意図であるならば、今回のような補正措置をとるにあたっては、財政法の解釈並びに財政法改正の方針について、まず政府の意図を明らかにする義務があると存ずるものであります。これを怠っている今回の補正は、明らかにこの財政法の乱用といわざるを得ません。
 わが党の反対理由の第二は、政府案は、その内容において財政法第二十九条の予算修正権の活用を怠っておる点であります。政府は、補正措置としてとらなくてもいい後年度への資金蓄積だけをやろうとしておって、率直に自分の政策の足らざる点、所得倍増政策の誤っていた点の是正のための予算修正、すなわち補正を怠っているのであります。一昨々日の予算委員会におきまして、田中蔵相の答弁の中に、第二次補正は第一次補正以降に起こった事由の変化に基づいて編成するものであるという発言があったようでありますけれども、本年度予算は四月から明年三月までの十二カ月の期間における歳出入予算であり、財政法に基づく予算修正は、年度予算全体に対する修正を意味するものであります。
 この意味におきまして、石炭対策並びに炭鉱関係離職者対策等は、政府の公約に基づいて、財源の許す限り年度内であっても補強すべきであります。また、政府は生活保護基準並びに日雇い登録労務者給与を、明年度予算案において引き上げる方針をとっておる事実にかんがみまして、できるだけその方針を年度内においても具体化すべきであると存ずるのであります。また、政府みずから進学率の計算を間違った高校増設についても、増設量の追加を率直にかつ急速に行なうべきであります。また、昨年の公務員給与水準の改定によって、中高年令層の教職員の給与が相対的に不利になっている現状にかんがみまして、これら長年勤続の人々の給与の不合理を是正すべきであります。
 民社党が予算委員会に提出した政府案組み替えの趣旨は、まず、政府が当然に果たすべき政策的補正事項として、石炭対策、炭鉱離職者対策、高校急増対策、中高年令教職員給与の不合理是正、生活保護基準と日雇い登録労務者給与の引き上げについて、合わせて二百四億円の補正増額を行なうべしというにあります。これを怠ることは、まさに財政法第二十九条を忠実に守らないものといわざるを得ません。
 わが党の反対の第三の理由は、政府案は雪害対策予算を計上していないということであります。政府は、この点につきまして、予備費の支出で間に合うという態度をとっておりますが、今や雪害対策は、行政事務の末端における雪かきの程度をこえております。従来忘れられていた根本的施策の確立と、今回の雪害並びに今後の雪解け期における対策の完備を、国会決議に基づいて、政府が誠意を持って実施すべきときであると思うのであります。政府は、今回は、雪害問題を政策として組み立て、政策を確立する先例をここに残すべきであります。
 この意味におきまして、政府の、予備費でよいという態度は、どうしてもわれわれは納得することはできません。民社党は、三月までの雪害対策を重要なる政策の一つとして、七十億円の予算計上を要求いたしておるのであります。
 また、産投会計資金への繰り入れば、明年度財政投融資で実際に使用する必要のある九十三億円だけを計上すべきで、その余の金額は削除すべきであります。なお、義務的経費の不足額の補てん並びに地方交付税交付金については、政府案通りといたしまして、わが党案のごとく組み替えられざる限り、われわれは政府案に賛成することができないのであります。
 また、日本社会党提出の編成替えを求めるの動議につきましても、わが党の趣旨に基づきまして賛意を表することができません。
 以上、わが党の趣旨を明らかにいたしまして、反対の意思を明らかにするものであります。(拍手)
○議長(清瀬一郎君) 以上にて討論は終局いたしました。
 よって、これより採決に入ります。
 まず、川俣清音君外十五名提出、昭和三十七年度一般会計補正予算(第2号)外一件につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議について採決いたします。
 川俣清音君外十五名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○議長(清瀬一郎君) 起立少数。よって、川俣清音君外十五名提出の動議は否決せられました。
 次に、昭和三十七年度一般会計補正予算(第2号)外二件を一括して採決いたします。
 三件の委員長の報告はいずれも可決であります。三件を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○議長(清瀬一郎君) 起立多数。よって、三件とも委員長報告の通り可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第四 昭和三十七年産米穀に
  ついての所得税の臨時特例に関
  する法律案(内閣提出)
○議長(清瀬一郎君) 日程第四、昭和三十七年産米穀についての所得税の臨時特例に関する法律案を議題といたします。
    ―――――――――――――
○議長(清瀬一郎君) 委員長の報告を求めます。大蔵委員長臼井莊一君。
    ―――――――――――――
〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔臼井莊一君登壇〕
○臼井莊一君 ただいま議題となりました昭和三十七年産米穀についての所得税の臨時特例に関する法律案について、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 この法律案は、昭和三十七年産の米穀について、従来と同様、事前売り渡し申し込み制度に基づき政府に米穀を売り渡した者に対し、昭和三十七年分の所得税を軽減することといたしております。その軽減の内容もまた従前と同様でありまして、売り渡し時期の区分に応じ、玄米石当たり平均千四百円を非課税とする措置を講じようとするものであります。
 本案につきましては、審議の結果、去る五日、日本社会党を代表して石田宥全委員より賛成討論があった後、直ちに採決を行ないましたところ、全会一致をもって原案の通り可決されました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(清瀬一郎君) 採決いたします。
 本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。
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 国民年金法及び児童扶養手当法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
○議長(清瀬一郎君) 議院運営委員会の決定により、内閣提出、国民年金法及び児童扶養手当法の一部を改正する法律案の趣旨の説明を求めます。厚生大臣西村英一君。
  〔国務大臣西村英一君登壇〕
○国務大臣(西村英一君) 国民年金法及び児童扶養手当法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
  〔議長退席、副議長着席〕
 御案内のように、国民年金法は昭和三十四年の第三十一回国会におきまして成立を見たのでありますが、その後拠出制年金につきましては、第三十九回及び第四十回国会におきまして御審議を願った結果、死亡一時金制度の創設、保険料の免除者に対する国庫負担の実現等により、基本的制度の仕組みも一応整い、年金制度の発展の基盤を確立しつつある次第であります。
 他方、福祉年金につきましても、発足以来支給制限の緩和、準母子福祉年金の創設等の改善が行なわれ、すでに三百万人に近い低所得者の福祉に貢献をしているのでありますが、最近の国民生活の動向等に照らし、なお一そうの改善を必要とする状況にあるのであります。
 また、児童扶養手当法につきましても、第三十九回国会におきまして制定されて以来、児童の福祉の増進に寄与しつつありますが、福祉年金同様、制度の改善を必要とする実情にあるのであります。
 今回の改正法案は、以上の趣旨にかんがみ、福祉年金制度及び児童扶養手当制度の改善をはかるため、年金額及び手当額を引き上げるとともに、支給制限の一そうの緩和をはかろうとするものでありまして、そのおもな内容は次の通りであります。
 まず、国民年金に関する事項について御説明申し上げます。
 第一に、福祉年金額の引き生けについてでありますが、まず老齢福紙年金につきましては、従来、年金額一万二千円でありましたのを一万三千二百円に、障害福祉年金額につきましては、一万八千円を二万一千六百円に、母子福祉年金及び準母子福祉年金につきましても、基本額一万二千円を一万五千六百円に、それぞれ引き上げることといたしたのであります。
 第二に、支給制限の緩和について申し上げます。これには二点ございまして、第一点は、福祉年金の受給権者本人に年間十五万円をこえる所得があるときは年金の支給は停止されることとされておりますが、この制限の基準額を十八万円に引き上げ、制限を緩和いたしたのであります。第二点といたしまして、受給権者の扶養義務者の所得による福祉年金の支給制限の場合につきましても、その制限の基準額を五十万円から六十万円に引き上げることといたしております。
 第三に、母子福祉年金の支給の対象となる子は、義務教育終了前の子に限っておりますのを、重度の廃疾の状態にある子につきましては、二十才まで延長して認めることといたしております。なお、この取り扱いは、準母子福祉年金における孫または弟妹につきましても同様であります。
 次に、児童扶養手当に関する事項について御説明申し上げます。
 第一に、児童扶養手当の額の引き上げにつきましては、従来の手当額は、月額児童一人の場合は八百円、二人の場合は千四百円、三人以上の場合は千四百円に三人以上の児童一人につき四百円を加算しておりましたのを、児童一人の場合は一千円に、二人の場合は千七百円に、三人以上の場合は千七百円に三人以上の児童一人につき四百円を加算した額に引き上げることといたしております。
 第二に、支給制限の緩和につきましては、国民年金と同様、手当の受給者本人の所得による制限の基準額十五万円を十八万円に、扶養義務者の所得による制限の基準額五十万円を六十万円にそれぞれ引き上げて、制限の緩和をはかることといたしたのであります。
 第三に、手当の支給対象となる重度の廃疾の子の制限年令を、国民年金と同様、二十才に延長いたしております。
 最後に、年金額及び手当額の引き上げ並びに支給制限の緩和に関する事項につきましては、昭和三十八年九月一日から、その他につきましては公布の日から施行することといたしております。
 以上をもって、改正法律案の趣旨の説明を終わります。(拍手)
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 国民年金法及び児童扶養手当法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
○副議長(原健三郎君) ただいまの趣旨の説明に対して、質疑の通告があります。これを許します。吉村吉雄君。
  〔吉村吉雄君登壇〕
○吉村吉雄君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま内閣から提案されました国民年金法及び児童扶養手当法の一部を改正する法律案につきまして、総理大臣並びに厚生大臣に本法案に対する基本的な考え方を明らかにしていただきますと同時に、その内容の若干について質問を行なうものであります。(拍手)
 近代国家の目的が福祉社会の建設にあることは言うまでもありません。社会保障は、その福祉社会実現のいわば底辺的な役割を果たすものであり、所得保障と医療保障はともにその両翼に位置するきわめて重要な施策であります。国民年金法はその所得保障政策の中核的な役割を持つものであることは、その適用対象者数が約二千二百万人に及び、他の同種制度適用者数全体より約三百万以上も上回るという一事からもうかがい知れるのであります。また、そのことは、本制度発足当時の政府の鳴りもの入りの宣伝に徴するまでもなく、制定当時から今日に至るまでの国民の大きな関心と批判によっても明らかでございます。問題は、この国民年金法が、その本来の使命である所得保障政策の中核としての役割を名実ともに果たしているかどうかという点にあります。遺憾ながら、それは形だけにすぎず、むしろかえって真の所得保障制度発展にブレーキをかけかねない存在とすらなっているのであります。
 そのことは、発足後四年後の今日に至っても、都市部における加入率は六八%、保険料納入実績七〇%という国民の無言の批判と抗議の実情がこれを証明しているのであります。と同時に、このことは、現行国民年金法発足以来四年、保険料徴収を開始して実質的に歩み出してから二年、このわずかの期間に、政府がすでに三たびもこれを改正しなければ、この国民の批判と不満をそらすことができないという焦慮の姿に浮き彫りにされているのであります。(拍手)
 今回の改正にあたって、政府はその説明の中で、最近の国民生活の動向などに照らしてなお一そうの改善を必要とするから云々と述べているのでありますが、実はそれこそ苦しまぎれの言いわけでありまして、たび重なる改正を必要とする最大の原因は、この法律の持つ根本的な欠陥それ自身にあることを指摘しなければなりません。従いまして、本国民年金法の改正にあたっては、その根本的欠陥の是正をはからない限り、国会のつど一部改正、一部改正で関係者の労をわずらわし、事務を複雑化し、経費を乱費するの愚を繰り返すであろうことをあらかじめ忠告いたしますと同時に、その根本的な改正への心がまえなくしては、社会保障充実を口にすることは許されないと断言しても過言ではないと思います。(拍手)今回の政府提案のごとき改正案をもって、社会保障に重点を置きましたというに至っては、うそを言わないといううそを言う池田式うそ論法であって、経済成長とは所得格差を拡大するものなりの結果を招来した池田式経済哲学と軌を一にするものといわなければなりません。(拍手)
 以上のような現行国民年金法に対する一般的な批判を前提といたしまして、私は、まず社会保障、なかんずく所得保障政策に対する基本的な考え方について、池田総理にお尋ねをいたしたいと考えます。
 その第一点は、今日の時点に立っての社会保障政策推進の姿勢についてであります。申し上げるまでもなく、わが国憲法第二十五条には「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」とあり、国はその保障のために努力することが義務づけられておるのであります。総理は国の最高責任者であります。国民の最低限度の生活を保障する義務があるあなたは、この憲法で明示する最低限度の生活を保障する金額を、一体どのくらいでいいと考えられておるのでありますか。よもや七十才で一人月額千百円で、物価高の今日、最低限度の生活ができるとは言い符ないはずだと考えます。(拍手)さらに、総理は、わが国の経済成長は世界にまれに見るものであるということを手柄顔に口にし、そのことを海外に行ってまで豪語をいたしておるのであります。その経済成長をしたというわが国の国民年金法では、四十年かけて六十五才から月額三千五百円の年金、無拠出におきましては七十才で月額千百円の年金、これではたして憲法の定めに沿ったものであり、わが国の経済成長に見合ったものだとお考えになられますかどうか。国民すべてが納得できるような御説明をお願い申し上げたいと思います。(拍手)
 第二点は、社会保障制度審議会の答申並びに勧告に対する見解についてであります。総理の諮問機関である社会保障制度審議会では、昨年八月、社会保障制度の推進に関する勧告を行なっており、その中で所得保障の額の問題に触れ、年金額について国民の生活保障の役割を果たさせるためには、物価変動などの際にもその価値を維持せしめる原則は確立しなければならない、すなわち年金額のスライド制を採用すべきことを勧告しておるのでありますが、この点はわが国の所得保障諸制度にとって、きわめて重要にしてかつ緊急必要な事項であると考えます。総理は、この勧告にどう答えようとしているのか、さらには、なぜ今度の改正案にこの勧告の趣旨を取り入れようとしなかったのか、この点は総理の所得保障に対するところの根本的な考えを示すものと思われまするので、あえてお伺いをいたします。(拍手)
 第三点は、国会における決議との関係についてでありますが、第四十回国会におきまして、国民年金法一部改正の際に、与野党一致いたしまして、年金額の大幅な引き上げ、老齢年金支給開始年令の引き下げ、年金額スライド制の採用など、十一項目にわたる附帯決議を付しているのでありますが、今回の改正では、このうち手をつけたものわずかに三項目、しかも、ほんとうに申しわけ的な微々たる改正にとどまり、老齢年金に至っては月額百円の増額という、まさにスズメの涙にも及ばない状態にございます。国の最高議決機関としての国会の意思をこのように軽視、あるいはじゅうりんをする政府の態度こそが国会不正常の最も大きな原因と考えられますけれども、総理のこれらに対する見解をお尋ねいたしたいと思います。(拍手)
 第四点は、児童扶養手当法についてでありますが、本来でありまするならば、本法の中身は国民年金法のワク内に位濁すべきはずのものであります。ところが、政府は、これを単独立法化しておるのであります。私が総理にお尋ねいたしたい点は、この法律があることによって、すでに西欧先進諸国で普遍化しておりますところの児童手当法制定をおくらせる役割を果たす結果になりはしないかという危惧についてでございます。御承知のように、形態だけはやや整ったといわれるわが国社会保障体系の中で、ただ一つその形すらもできていないのが、この児童に対する権利と生活保障の部面であります。従いまして、社会保障制度審議会におきましても、その早急制定を勧告をし、去る通常国会でも、同趣旨の決議を付して政府の決断を促しているのであります。
 また、今日、労働雇用問題の中で、中高年令者の問題はきわめて深刻な状態にあります。これら中高年令者の雇用促進と安定の見地から見ましても、本来の意味での児童手当あるいは家族手当の制定は緊急の施策であるといわなければなりません。総理は、ILO第百二号条約が、社会保障の最低基準として示しているこの児童手当を制定する意思がおありなのかどうか。このようなことを実施すること、それ自体こそが、総理の常々言っておりますところの人づくりの基本ではないかというふうに考えられますけれども、これらの事情について明確なお答えをお願いをしたいと思います。
 次に、厚生大臣にお伺いをいたします。
 その第一点は、今回の改正案では、老齢福祉年金月額百円、障害福祉年金、母子並びに準母子年金は、それぞれ月額三百円の引き上げとなっているのでありますが、この引き上げ額は、どうもつかみ勘定的のように見受けられます。この引き上げ額の根拠は、一体何に基づいているのでありますか。
 また、昨年七月、国民年金審議会の答申によりますと、各年金額は思い切った引き上げが必要である旨を強調されております。今回の改正案の諮問に対しては、あまりにもその額が少額なのにびっくりしてか、国民生活の向上、物価の上昇などを考えた場合、きわめて不十分であり、急速に拡充すべき年金制度のあり方に悪影響を与えるおそれがあるとすら極言をいたしておるのであります。社会保障制度推進の直接の責任者として、厚生大臣はこの間の事情をどう説明されようとするのでありますか。お伺いをいたしたいと思います。(拍手)
 第二点は、保険料免除基準並びに免除者に対する措置についてでありますが、現行免除規定は非常に厳重に過ぎますと同時に、その手続が煩瑣でありまして、そのために厚生省の統計によりましても、当初の予定数に達しない現状と聞いているのであります。従って、この際、申請免除につきましては、所得税の免税点までこれを認めることが、本法の精神から見て妥当ではないかと考えられます。
 さらに、保険料免除者につきましては、現行では積立金の三分の一しか国が補てんしない建前となっておるのでありますが、このような気の毒な人々にこそ、本人負担分全額を国が見てやるという、そういう改正こそが、社会保障としての国民年金制度のあり方ではないかと考えます。これらに対する厚生大臣の見解を承りたいと思います。
 次に、夫婦受給に伴う受給制限についてでありますが、この点は、社会保障はあくまでも個人を対象とするものであるはずでありまするし、現にこの受給制限は、対象者家庭内のいざこざの原因にもなっており、素朴な感情といたしましても、とうてい納得できないものでもございます。このような点の改正になぜ目を向けなかったのか。この点は、該当者がほんとうに納得できるような答弁をお願いいたしたいと考えます。(拍手)
 以上、私は、本改正案が真に国民が望んでいる国民年金法改正への声にこたえたものではなく、一時のがれの糊塗策、弥縫策にすぎないことを指摘し、池田総理並びに西村厚生大臣がもし真剣に社会保障充実に取り組もうとするのであるならば、その根本的欠陥を除去するに足る改正案をこそ提案すべきであるということを付書いたしまして、質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 憲法第二十五条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を營む権利を有する。」この「最低限度」というのをどう考えるか、どのぐらいか、こういう御質問でございますが、これはよくある御質問でございますが、なかなかこれはだれも答えられないでしょう。それは経済の進捗、国力の発点に伴って向上すべきものであるのであります。従いまして、最低限度の生活といわれておりまする生活基準につきましても、私は、内閣を組織して以来、三十五年に比べまして三十八年は六割増加しておるのであります。これは固定的のものではございません。(拍手)だから、経済の伸展と同時にだんだんふやして、上昇していくのが憲法の趣旨であると考えるのであります。(拍手)
 また、国民年金の年金額につきまして、これは私は十分とは思いません。これも経済の発展と同様に、だんだん伸ばしていくべきものだと考えて、善処いたしたいと思います。
 なお、昨年八月に出されました社会保障制度全般にわたりまする審議会の答申、いろいろごもっともの点があるのであります。ことにお話しのスライド制につきましては、物価上異に対する年金の実質価値維持のために、私は今後十分検討していきたいと考えておるのであります。
 なお、国民年金法改正の際の附帯決議、十一項目にわたっております。われわれはこれを全部やりたいと考えておりますが、とりあえず今回は福祉年金の改善に重点を置きまして、三点を改正いたしたのであります。今後引き続きその他の事項につきましても検討を加えていきたいと思います。
 また、ILOに規定しておりまする児童手当法制定、これは就職構造の変化とか最低賃金体系の推移等から考えまして、今後検討していきたいと考えております。
 その他につきましては厚生大臣よりお答えいたします。(拍手)
  〔国務大臣西村英一君登壇〕
○国務大臣(西村英一君) 私に対する御質問の第一点は、今回の福祉年金の引上額が非常に少ないがどういう根拠でやったのか、こういうお尋ねが第一番にございました。今回は大体一割ないし三割の引き上げを行なったのでございまするが、物価の上昇等を見まして、ことに農村の物価等の状況を見まして、老齢年金につきましては一割、それから母子、障害につきましては三割やったのでございます。母子、障害年金の受給者は、やはり老齢年金の受給者とはだいぶん低所得でございまして、実態が低いので、さように差をつけて行なった次第でございます。
 第二番の質問は、保険料を免除しておる方々についてもう少し見るべきではないか、考えるべきではないかというお話でございましたが、これは保険料の免除を受けておる者につきましては、昨年の四十国会におきましても拠出者と同額な国庫負担をやっておるのでございます。それ以上になお優遇措置をとるということは、拠出者との均衡上おもしろくないので、困難であろうと思われまするが、今後検討して参りたい、かように考えております。(拍手)
○副議長(原健三郎君) これにて質疑は終了いたしました。
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 所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
○副議長(原健三郎君) 次に、内閣提出、所得税法の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案の趣旨の説明を求めます。大蔵大臣田中角榮君。
  〔国務大臣田中角榮君登壇〕
○国務大臣(田中角榮君) 所得税法の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。
 政府は、今後におけるわが国の社会、経済の進展に即応する基本的な租税制度を確立するため、昨年八月税制調査会を設けまして、鋭意検討を加えて参りましたが、昨年末同調査会から、最近における社会、経済情勢の変化に応じて、現行税制につき、さしあたって改正を必要とする事項について、昭和三十八年度の税制改正に関する臨時答申を得たのであります。
 その後、政府におきまして同答申を中心に、さらに検討を重ねた結果、昭和三十八年度におきましては、中小所得者の負担の軽減をはかるとともに、当面要請される資本蓄積の促進、社会資本の充実、中小企業の振興等に資するため、国税において平年度五百四十億円程度の減税を行なうことといたしたのであります。これらの税制改正諸法案のうち、今回ここに所得税法の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案を提出した次第であります。
 まず、所得税法の一部を改正する法律案についてその大要を申し上げます。
 第一は、中小所得者を中心とする所得税負担の軽減をはかることであります。すなわち、基礎控除を現在の十万円から十一万円に、配偶者控除を現在の十万円から十万五千円にそれぞれ引き上げるとともに、十五才未満の扶養親族の扶養控除額を現在の三万円から三万五千円に引き上げることといたしております。また、これらの諸控除の引き上げに関連して、専従春控除についても、青色申告者の場合は、年令二十才以上の専従者の控除限度額を現在の十二万円から十二万五千円に、二十才未満の専従者の控除限度額を現在の九万円から九万五千円に、白色申告者の場合は、その専従者の控除額を現在の七万円から七万五千円にそれぞれ引き上げることといたしております。
 以上、申し述べました諸控除の引き上げにより、夫婦、子三人、計五人家族の標準世帯を例にとりますと、所得税が課されない所得の限度は、給与所得者では現在の約四十一万円までが四十五万円までに、事業所得者のうち、青色申告者については現在の約三十九万円までが四十二万円までに、白色申告者については現在の約三十四万円までが三十七万円までにそれぞれ引き上げられることになるのであります。
 次に、少額貯蓄を優遇するため、従来の国民貯蓄組合制度にかえて、制度の合理化をはかりつつ、新たに一人一種類、一店舗に限り元本五十万円までの預貯金等について、その利子所得に対する所得税を免除することとしております。さらに、海外事業活動の振興に資するため、外国税額控除制度について、控除未済の外国税額について五年の繰り越し控除を認めることとする等、制度の拡充合理化をはかっております。
 次に、法人税法の一部を改正する法律案についてその大要を申し上げます。
 第一は、中小企業者の税負担の軽減措置の一環として、同族会社の留保所得に対する課税につき改正を行なうことであります。すなわち、現在同族会社の課税留保所得金額の計算は、同族会社が留保した金額から課税所得金額の百分の十に相当する金額と年五十万円とのいずれか多い方の金額を控除することとしておるのでありますが、今回この控除額を、課税所得金額の百分の十五に相当する金額と年百万円とのいずれか多い方の金額とするよう改めることとしておるのであります。
 また、海外事業活動の振興に資するため、法人の外国税額控除制度について、所得税と同様にその拡充合理化の措置を講ずることとしております。
 以上、これらの二法律案の趣旨につきまして御説明申し上げた次第であります。(拍手)
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 所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
○副議長(原健三郎君) ただいまの趣旨の説明に対して、質疑の通告があります。これを許します。有馬輝武君。
  〔有馬輝武君登壇〕
○有馬輝武君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案されました所得税法の一部を改正する法律案外一案について質問いたしたいと存じます。
 私は、まず、総理はお帰りになりましたけれども、総理と田中大蔵大臣とあわせて、政治の姿勢についてお伺いいたしたいと存じます。
 総理は、昨年の通常国会において、低姿勢ではなくて正姿勢、正しい姿勢だなどとみえを切られたのであります。正しい姿勢とは、米国や独占資本に対して卑屈になることではなくて、日本の生産を高めておる労働者、農民、中小企業者に対して愛情のある政治を行なうことだと思うのであります。しかるに、総理は、一月二十五日、賀屋興宣さんの質問に答えて、所得税を納めない人の対策としては、まず第一に、私は、そういう人の所得をふやして所得税を納めるようにすることであると答えられております。何たる言辞でありましょうか。総理もよく御承知のように、昭和三十七年度の所得税の納税者は、見積もり千四百七十三万七千人、実績では千七百万人にも上ろうとしております。三十八年度の見積もりが千七百二十四万人でありまするから、本年度の割で参りますと、来年度は所得税の納税者は二千万人にも上るのでありましょう。今税制で真剣に取り上げなければならないことは、総理の言うように納税者の数をふやすことではなくて、納税者の数を減らすことでなければならないはずであります。
 きょうは御出席になっていないようでありまするが、俳人万木大野副総裁ならばよく御存じだと思いますが、中村草田男に「降る雪や明治は遠くなりにけり」という俳句があります。明治の宰相原敬や桂太郎には、まだ国民大衆に対する愛情がありました。大衆に対する愛情の点において、まさに今や明治は遠くなりにけりと申すべきでありましょう。嫁に来てくれない農村の若者、総理の高度成長という幻想の陰で、台風手形を受け取る中小企業、そして所得税の重圧の陰で楽しかるべき夕げの菜を減らさなければならぬ労働者に対する愛情を取り戻すことが、政治の正しい姿勢だと思うのであります。総理の政治の姿勢並びに減税に対する基本的な考え方についてお伺いいたしたいと存じます。
 次に、総理、大蔵大臣にお伺いしたいことは、内閣並びに各省に設けられておる各種委員会、調査会に対する態度についてであります。過去における税制調査会のきわめて真摯な努力と勉強に、私どもも、いろいろ問題点はあるといたしましても、敬意を表するにやぶさかではありません。相次ぐ諸物価の高騰と、それによる名目所得の増加によりまして、明年度思い切った所得税の減税を行なわなければ、大蔵省自身の計算によっても、少なくても六百億円は実質増税となり、最低生活費に税金が食い込む世帯が生じてくることは明らかであります。そのため、昨年十二月十日に行なわれた税制調査会の臨時答申においても、今度の減税は調整措置であると、わざわざ控え目な表現を使って所得税減税を強調しておることは周知の通りであります。
 しかるに、このたび提出されました政府の税制改正案は、税収の自然増を三千百三十億円とぎりぎり一ぱい見込んでおるにもかかわらず、純減税はわずかに四百九十八億円にすぎず、しかも、その中心は、利子配当所得への優遇措置を初めとするいわゆる政策減税に置かれており、物価騰貴と実質増税にあえぐ国民の一般減税への期待は、みごとに裏切られておるのであります。(拍手)このような政府の税制調査会あるいは人事委員会、米価審議会等あらゆる機関に対する態度は、好き勝手におやりなさい、政府は一向存じませんという態度をきわめて露骨に現わしておるのであります。総理のこれら各調査会、委員会に対する態度並びに大蔵大臣が今回の税制調査会の答申を完全に無視された理由についてお聞かせをいただきたいのであります。
 政府は昨年度、設備投資中心の投資先導型の成長を期待されましたが、三十八年度は、その大宗を消費の伸びに期待しておるのであります七勤労大衆の生活水準の引き上げと、所得税の減税による消費市場の拡大をはからない限り、政府の目標は大きな狂いを生ずることになるでありましょう。賃金を押えることにやっきとなり、所得税の減税を見送った政府は、この矛盾をいかに処理しようとしておられるのか、大蔵大臣の所見を伺いたいと存じます。
 大衆重課の現実は無視し得ないものがありますが、本改正案は不公平と不均衡を一そう拡大するものであります。税制調査会においても、現在の税制が累進構造をとっておるので、経済成長のもとで、物価騰貴による名目的な所得増によって税金が自然に重くなるという性質があるということを指摘し、そのため、少なくとも調整減税を行なわなければならぬことを強調いたしております。それによれば、消費者物価の値上がり等により、三十八年度は現行税制のままでは約三〇%は実質増税となるので、少なくとも三百九十七億円は調整減税すべきであるといっておるのであります。しかも、実際は、所得税収約二千億円でありますから、その三〇%、最低六百億円の減税は必要であります。しかるに、政府は、わずかに二百七十七億円の減税しか行なわず、実質三百億円以上が勤労者にとっては負担増となっております。とれでは、人並みに給料が上がったとしましても、実質的には生活水準は少しも変わらず、むしろ実感としては苦しくなっておるにもかかわらず、逆に池田総理が希望されるように、むごくもボーダー・ライン層が、新たな納税者とならなければならないのであります。現在わが国の税負担は、戦前に比べても諸外国に比べてもきわめて重く、すべて三十七年度の実績見込みにおける税負担率は二三%をこえております。特に所得税の課税最低限は著しく低く、三十八年度は、独身者で十五万一千八百九十四円、標準世帯給与所得者は四十三万八千六百三十二円で、文字通り生計費部分にまで課税されておるのであります。生計費には課税すべからず、これが税制上の大原則であります。税制調査会のマーケット・バスケット方式による食料費を基準に算定した生計費を見ましても、三十七年度、独身者は十四万二千八百七十九円、五人世帯四十二万六千百五十七円となっておりまして、しかも、その内容は、独身者一日分の食費は百三十二円から百三十八円程度のものであります。一体この程度の食費で生活していけるでありましょうか。栄養失調となることは受け合いであります。ここで大蔵大臣にお伺いしたいことは、調整減税をすみやかに行なう考えはないかということ、それとともに、課税最低限度に対する大臣の所見をこの際明らかにしていただきたいと存じます。
 所得税、法人税を論ずる場合、これに関連して黙視し得ないのは、租税特別措置法の存続、強化についてであります。前に述べましたような大衆重課の反面、資産所得者の税負担軽減措置は、池田総理らの利子配当に対する政策減税優先論によりまして、資本蓄積、貯蓄奨励を名として強化されておるのであります。租税特別措置は、もともと時限立法であり、過渡期における役割はすでに果たしているものであって、期限がくれば当然廃止さるべきであります。しかるに、一部の大企業や資産所得者の圧力に屈して、これを既得権化し、いたずらに不労所得、高額所得への恩典を存続することは、まさに池田内閣の大企業、独占資本奉仕の姿を最も端的に現わしたものといえるでありましょう。(拍手)
 これらの租税特別措置による減収額は、昨年の一千六百九十四億円のほかに、新規に二百四十六億円を減税し、昨年までの連続されたものを含めて、このたびの減収額は六百八十八億円に達しておるのであります。その結果、三十八年度分の租税特別措置による減収額は、二千億円を突破することはほぼ確実であり、これによる減収は、二十六年以来積もり積もって合計一兆円をこしている実情でさえあります。このような租税特別措置は、先ほど議決された予約減税等大衆負担の軽減を目的とするものを除きまして、きわめて近い機会に廃止する考えはないかどうか、大蔵大臣の所見を伺いたいと存じます。
 三十八年度予算の特徴は、一口に申し上げて、租税の自然増収を目一ぱいに見積もっているというところにあります。今後の景気動向から見まして、明年度において租税の大幅な自然増収を期待することは不可能であります。その結果は、ただでさえ苛斂誅求をきわめておる現在の徴税行政が、明年度はさらにその拍車をかけるであろうことも明らかに予見されるところであります。大蔵大臣、重税にあえぐ国民大衆のために、この本会議場を通じて、明年度は決してそのような徴税強化はいたしませんという確約をしていただけますことを強く要望いたしまして、私の質問を終わらしていただきます。(拍手)
○副議長(原健三郎君) 内閣総理大臣の答弁は適当な機会に願うことといたします。
 大蔵大臣田中角榮君。
  〔国務大臣田中角榮君登壇〕
○国務大臣(田中角榮君) 御質問にお答えいたします。
 第一の問題は、政治姿勢、なかんずく減税についてであります。所得税を納めるまでに至っておらない低所得階層に対してのことでございますが、総理の先回、納め得るようにレベル・アップをするというお答えについての御質問でございます。低所御者に対しては、社会保障政策等を拡充をしながら、これが生活環境のレベル・アップに資することはもちろんでありますが、なお加えて所得拡大施策をあわせ行ないますことによって、納税資格者になるように所得拡大をはかりたいと言われたものと考えております。
 なお、所得税を納めておられる方々に対しては、減税を逐年行なっておりますし、減税の実施によってこれが負担の軽減をはかっていかなければならないと思います。愛情を基調とする政治であるべしという議論については、もちろん賛成であります。
 それから、所得税減税につきましては、たびたび申し上げておりますように、一般的な減税に大いに歴年努めておるのでございます。特に昭和二十五年以降、減税総額約一兆一千億になるわけでありますが、その七〇%は所得税の減税に充てておる状況でございまして、低所得者の底上げに対しまして努力をいたしておりますことをお認めいただきたいと存じます。来年度につきましては、三十六、三十七年度と二年にわたりまして、大幅な減税を行なったあとでもありますので、自然増収や歳出の事情も勘案すると、おおむね御審議を願っておる程度の減税でやむを得ないと考えたわけでございます。
 それから、先ほどの御質問の中に、政策減税に比べて一般減税が非常に少ない、また答申無視だということでございますが、御参考までに申し上げておきますと、平年度五百四十億円の減税の中で、所得税を含む一般的減税は三百五十億円でありまして、俗に政策減税といわれておる特別措置関係の減税百九十億円、合わせて五百四十億円であることを申し添えておきます。
 それから、今回の税制改正で、政策減税を、税制調査会、大蔵事務当局の意に反して行なったことに対する理由についての御質問がございましたから、お答え申し上げます。税制調査会は、一般的税負担の軽減と、政策的に必要と認められる措置を答申しましたことは、御承知の通りでございます。政府の税制改正案は、大筋におきまして答申を尊重しておるものでございます。答申の段階では、来年度の財政収支の状況が必ずしも明らかでなかったわけでありまして、政府といたしましては、来年度の予算を編成するにあたりまして、三十六年度や三十七年度と比べると少ない自然増収の中で、公共投資、社会保障、教育等、緊急と認められる施策のための歳出の増加を考慮いたしますと同時に、これらとの関連において、当面要請される施策に即応するための税制土の措置について、税制調査会の答申の線よりも、政策減税において一歩を進めた、このようにお考えいただきたいと存するわけでございます。
 それから、三十八年度の自然増収の見込み額いかんという問題につきまして申し上げますと、三十七年度の当初予算額に対する自然増収額は、現行法で三千百三十一億円でございます。改正法は減税後において二千六百三十二億円でございます。
 それから、三十八年度の税収見込みが適切ではないのではないか、過大ではないがということでございますが、経済情勢の推移を十分見込みまして、税目別に詳細な積み上げ計算を行なっておりますので、この税収見積もりは適正なものであると考えております。
 それから、過大見積もりにつきましてのお話がございますが、来年度の経済は、ゆるやかな上界を後半において見込まれますので、三十七年度後半から三十八年度前半までの経済に強い影響を受ける法人税収の伸びは、期待できないと存じますが、個人所得につきまして、政府の経済見通しにもありますように、一〇%程度の伸びが想定されますので、この所得増を前提にして考えますと、税制改正以前の三十八年度税収見込み額が、三十七年度当初予算額に対して三千百三十一億円の増収額と、先ほど申し上げましたように計算をされておるのは妥当だと申し上げたわけであります。昨年度の自然増収額が四千八百七億円であったことに比べますと、本年度の三千百三十一億円は小幅なものであることは、御承知の通りでございます。
 なお、租税収入について、税法を適当に執行するか、徴税に対してどうかということでございますが、財源確保のために過大見積もりを行なっておりませんし、徴税強化をはかる意思などは、毛頭ないことをつけ加えて申し上げておきたいと存じます。
 なお、足らざるものは、委員会において詳細御説明申し上げたいと存じます。(拍手)
○副議長(原健三郎君) これにて質疑は終了いたしました。
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○副議長(原健三郎君) 本日は、これにて散会いたします。
   午後三時五十一分散会
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 出席国務大臣
        内閣総理大臣  池田 勇人君
        法 務 大 臣 中垣 國男君
        外 務 大 臣 大平 正芳君
        大 蔵 大 臣 田中 角榮君
        文 部 大 臣 荒木萬壽夫君
        厚 生 大 臣 西村 英一君
        農 林 大 臣 重政 誠之君
        通商産業大臣  福田  一君
        運 輸 大 臣 綾部健太郎君
        郵 政 大 臣 小沢久太郎君
        労 働 大 臣 大橋 武夫君
        建 設 大 臣 河野 一郎君
        自 治 大 臣 篠田 弘作君
        国 務 大 臣 川島正次郎君
        国 務 大 臣 近藤 鶴代君
        国 務 大 臣 志賀健次郎君
        国 務 大 臣 宮澤 喜一君
 出席政府委員
        内閣官房長官 黒金 泰美君
        内閣法制局第一
        部長      山内 一夫君
        総理府総務庁長
        官       徳安 實藏君
        厚生省年金局長 山本 正淑君
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