第043回国会 本会議 第9号
昭和三十八年二月二十二日(金曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第九号
  昭和三十八年二月二十二日
   午後二時開議
 第一 プラント類輸出促進臨時措
  置法の一部を改正する法律案
  (内閣提出)
 第二 農林漁業金融公庫法の一部
  を改正する法律案(内閣提出)
 第三 農業近代化資金助成法の一
  部を改正する法律案(内閣提出)
 第四 奄美群島復興特別措置法の
  一部を改正する法律案(内閣提
  出、参議院送付)
 第五 酒税法の一部を改正する法
  律案(内閣提出)
 第六 印紙税法の一部を改正する
  法律案(内閣提出)
 第七 地方公共団体の長の選挙に
  おいて使用する選挙運動用ポス
  ターの特例に関する法律案(公
  職選挙法改正に関する調査特別
  委員長提出)
 第八 昭和三十六年度
    昭和三十七年度衆議院予備
  金支出の件(承諾を求めるの件)
    …………………………………
 一 日本鉄道建設公団法案(内閣
  提出)の趣旨説明
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 議員請暇の件
 アメリカの綿製品輸入制限に関す
  る緊急質問(加藤清二君提出)
 日程第一 プラント類輸出促進臨
  時措置法の一部を改正する法律
  案(内閣提出)
 日程第二 農林漁業金融公庫法の
  一部を改正する法律案(内閣提
  出)
 日程第三 農業近代化資金助成法
  の一部を改正する法律案(内
  閣提出)
 日程第四 奄美群島復興特別措置
  法の一部を改正する法律案(内
  閣提出、参議院送付)
 日程第五 酒税法の一部を改正す
  る法律案(内閣提出)
 日程第六 印紙税法の一部を改正
  する法律案(内閣提出)
 日程第七 地方公共団体の長の選
  挙において使用する選挙運動用
  ポスターの特例に関する法律案
  (公職選挙法改正に関する調査
  特別委員長提出)
 日程第八 昭和三十六年度
      昭和三十七年度衆議院
  予備金支出の件(承諾を求める
  の件)
 日本鉄道建設公団法案(内閣提出)
  の趣旨説明及び質疑
 国立大学総長の任免、給与等の特
  例に関する法律案(内閣提出)の
  趣旨説明及び質疑
   午後二時十九分開議
○議長(清瀬一郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 議員請暇の件
○議長(清瀬一郎君) まず、お諮りいたすことがあります。
 議員大久保武雄君から、海外旅行のため、二月二十八日より三月十二日まで十三日間請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。
     ――――◇―――――
 アメリカの綿製品輸入制限に関する緊急質問(加藤清二君提出)
○草野一郎平君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 すなわち、この際、加藤清二君提出、アメリカの綿製品輸入制限に関する緊急質問を許可されんことを望みます。
○議長(清瀬一郎君) 草野一郎平君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
 アメリカの綿製品輸入制限に関する緊急質問を許可いたします。加藤清二君。
  〔加藤清二君登壇〕
○加藤清二君 私は、議長の許可を得まして、日本社会党を代表し、ただいま議題となりました対米輸出綿交渉につきまして、総理大臣初め関係閣僚の皆さんに質問せんとするものでございます。せっかく野党の皆様にも特に御協力のほどをお願い申し上げる次第でございます。あいにく総理がおられませんので、各大臣においてお答え願いたいのでございまするが、お答えできない分は、一つ後日に書類なり、あるいは次の機会にお答え願いたいと思うわけでございます。
 日本とアメリカの貿易を端的に表現いたしまするならば、自主独立は名のみでございまして、まさにそれはオキュパイド・ジャパンでございます。占領下にレールがしかれ、占領下に発車し、今日そのまま進行して参りまして自由化の前夜を迎えたのでございます。条約、協定の言葉は自由、平等、義務は双務となっておりまするが、実際行なわれます行政は、アメリカに自由あれど日本に自由少なく、義務の重荷はアメリカに軽く日本に重いのが現実の姿でありましょう。(拍手)このたび発生いたしました綿製品貿易に対する過酷な申し入れは、この関係の基盤の上に現われた氷山の一角にしかすぎません。ただ単なる綿製品輸出のみならず、その根底は深く、幅は広い。ここに良識ある日本人の多くが心配をし、社会党のみならず与党の中にも憂色のただようゆえんであると思うのでございます。
 事の起こりは先月九日、ただいまワシントンで難航いたしております。なぜ難航するか。それは米国が、貿易漸増を目的としている国際繊維協定の趣旨に反し、日本品制限を強化するの方途に出たからにほかなりません。あまつさえ、このたびは一方的に総ワクを一一・四%も減少すると同時に、四十品目にわたって内訳規制をして参りました。わが国の貿易、経済に及ぼす影響はきわめて深刻でございます。総理大臣は何とお考えでございましょうか。私に言わしむるならば、親孝行した子供がまま子いじめにあったような気持で、全く理解できない不祥事だと存ずるのでございます。(拍手)なぜかならば、それは日本の過去の歴史をたどってみればよくわかることでございます。
 理解に苦しみまする第二点は、米国申し入れの理由でございます。混乱防止条項適用を申し入れた点でございます。法律、約束に違反もしないうちから違反すると断定してワクをかけられるもの、それは精神病患者のみでありましょう。総理並びに通産大臣にお尋ねしたいことは、日本人及び日本商品は気違いまたは禁治産者でございましょうか。私は、さにあらず、正直な自主規制のできる努力家であることを、ケネディ大統領及びアメリカ国民に確信を持って訴えたいのでございます。
 その第一は、輸出量は少量で、一度ものりを越えたことがないということでございます。アメリカの全輸入量は三億四千から七千万スクエア・ヤールと決定されていることは事実でございます。規制を受けた四十品目のうち十六品目は何と全米綿製品の一%未満でございます。七品目は一%から二%、五品目は二%から三%でございます。一割をこえるものは別珍、ギンガム等四品目しかございませんが、これは国際協定ですでに規制済みの問題でございます。日本総輸出量はアメリカ消費量の一年じゅうのわずか五、六日分にしかすぎないのでございます。アメリカより日本へ輸入される綿花から生産されまする日本品の三十分の一前後の量でございます。また、金額はアメリカへ支払われまする綿花代金の三分の一にも達しないのでございます。しかも、日本の総輸出に占める綿花の比率は年々縮小の一途をたどっておるのでございます。どこに撹乱の要素があると言い得るでございましょうか。明らかにこれは難くせをつけられたといわざるを得ないのでございます。(拍手)外相、通産相の御所見を承りたい。
 第二は、二国間に協定があり、自主規制を忠実に履行しているという点でございます。米国の綿布輸入状況を米国輸入統計FT百三十号コットン・クロースによりますれば、日本の占めた率が一九五六年七一・七%、一九五九年四一%、一九六〇年何と一七・六%と非常な減少ぶりを示している。反面に香港、スペイン、ポルトガルからの輸入量は十倍から七倍と増加しているのでございます。これは米国の要請により一九五九年日米二国間協定をつくり、日本が自主規制いたしました結果の現われでございまして、正直な日本の姿でございます。
 第三に申し上げたいことは伸び率でございます。ただ問題になりまする点、伸び率が飛躍的に大きいということが終戦後にあったことは事実でございます。それはしかし敗戦後は基礎がゼロから出発しておりまするゆえに、量的に少なくても伸長率のみは大きく見られるのでございます。ただ、日本内地ではこの伸び率が政府の手柄話となっておるようでございます。ところが、これが外地ではラッシュするとて日本製品制限の原因となっているのでありまして、この点について総理及び経企庁長官の御所見を承りたいのでございます。
 第四に、日米貿易の総合比較でございまするが、戦後日米貿易の帳じりは常に日本が赤字、しかもこれが慢性化しておるのでございます。少ない年で一、二億ドル、多い年には十億ドルから十二、三億ドル。日本の貿易収支の赤字はアメリカが一手に引き受けているというても過言ではございますまい。この赤字の多い年が日本のリセッションでありました。不況でございました。先日、三井物産の社長水上さんが、予算委員会で私の質問に答えてこう言われました。商売はお客さんのあることだ、お客さんの気になって忍耐強く交渉すべきである。午前中通産大臣は、参議院の近藤さんの質問に対しまして同趣旨のことを答えられておるようでございます。それは本気でございましょうか、お尋ねしたいのです。
 そこで私は、買い方をお客さんという正当な概念からいえば、お客さんはまさに日本でございまして、お客日本が売り手のアメリカから難くせをつけられる、これこそまさに主客転倒といわなければなりません。(拍手)このお客さんはうちで麦飯を食うほど貧乏でも、もらったと思った救援物資にまで代金を支払うほど、気のやさしい正直なお客さんでございます。外相、特に大蔵大臣の御所見を承りたい。
 貿易自由化を迎えました今日、貿易バランスの不均衡はすみやかに是正さるべきでございましょう。経企庁長官の所見を承りたい。
 しかるに、今回のアメリカの要求は、不均衡を一そう助長する結果を招来するのでございましょう。これが前例となって毛製品その他の品目に影響を及ぼすという心配が、繊維業界を中心としてすでに起こっているのでございます。貿易の自由化は一体いかが相なるでございましょうか。アメリカからの買いの自由化はあれど、日本からの売りの自由は封鎖される。日米貿易ははたして互恵平等でありましょうや。完全に片務不平等貿易といわなければなりません。(拍手)貿易を伸ばすために自由化せよ、だから規制のワクをはずせ、これが日本に課せられた至上命令でございます。ところが、ワクをはずされるのは日本で、米国は逆にワクを一そう強化せんとしておるのでございます。米国の自由化はますます拡大され、日本の自由はますます狭められんとしております。なお、その上、日本と他国との貿易は、アメリカからクレームをつけられて自由がありません。ココムしかり、石油送管がそのよい実例でございます。アメリカのエゴイズムを日本人が痛感させられております昨今でございましょう。アメリカの言う通りをしていたらアメリカが助けてくれるという考えは、甘くはあれど夢ではないでございましょうか。平等を口にしながら、なお学校まで差別待遇される黒人エレジーは、今や決して向こう岸の火事ではないといわなければなりません。互恵平等、双務協定を二本の柱に締結されました日米友好通商航海条約違反の疑いすらあるのでございます。参加国の綿製品貿易を確実に伸ばすために結ばれたジュネーブ協定に違反をいたすではございませんか。シップ・アメリカン、バイ・アメリカンまたしかりでございます。特に外相の御所見を承りたいゆえんでございます。
 言葉と条約だけは平等、実行は植民地扱いにするのが彼らの常套手段であるとは私は思いたくないけれども、さきに燃えもしないのに燃えるとして排斥された絹織物可燃性繊維事件、安いからとてボイコットされたワンダラー・ブラウス事件、加工賃が安過ぎるからとて拒否運動を起こされた既製服事件、洋食器、陶器から洋がさの骨に至るまで、あげつきたれば枚挙にいとまがありません。ことに、アメリカ国家としては輸入規制しないが、各州法が優先するゆえに規制するとの口実でボイコットされたあの事実は、日米友好通商航海条約がアメリカ州法に従属した悪例といわなければならないのでございます。これはアメリカ憲法に違反し、このたびの事件は国際法違反の疑いが濃厚と思うのでございますが、外相、特に法務大臣の御答弁もお願いしたいのでございます。
 次にお尋ねいたしたいことは、具体的な対策でございます。この際、第一に、ガット提訴という手もございますが、総理みずから交渉に当たり、ケネディ大統領とより高い立場から政治的に解決の方途を見出すべきだと思うが、一体いかがなものでございましょうか。もし、国会中不能とするならば、それこそ野に有能な士がたくさんにおられます。河野建設大臣……(「野じゃない」と呼ぶ者あり)いや、河野さんは、これは野ではございません。高碕さん。特に野で大物は、佐藤さん、藤山さんの両氏、これを、片や西欧EECに、片や米国に派遣されるならば、平和的解決の道も開かれるではございませんでしょうか。特に総裁ダービーというプラス・アルファもつくこと疑いなしでございましょう。総理の見解の承りたいところでございます。特に国民外交の立場よりいたしまするならば、世界に名をはせました日紡の繊維従業員チーム派遣の手あり、ただバレーが強いだけではないでございましょう。外相の見解を承りたいゆえんでございます。
 それでもなお相手が不幸にして頑迷でありとするならば、目には目、歯には歯でございます。日本もまたボイコット運動、綿花買付の市場転換、ココムの撤廃等々ございまするが、私は、平和的交渉でまず二国間において解決をすべきだと思うのでございまするが、外相の御所見を承りたい。
 最後に、恒久的な措置といたしまして、日本国の姿勢もまた正さなければなりませんが、第一に、低賃金と高金利、これは日本経済の誤った特徴でございます。相手国のいうところのチープ・レーバー、 ロー・コスト、ソーシャル・ダンピングの是正、特に最低賃金制を労働集約的製品をつくっている中小零細企業に完全実施するの心がまえありやいなや、労相に承りたいゆえんでございます。第二に、商社ラッシュの問題、これの交通整理。第三には、物価、特に内地の物価は内地売りの場合に高く、外地売りの場合に安いのが問題でございます。それと同時に、第四番目には、金融機関と商社の問題、特に系列強化――それが繊維に大いに関係あるのでございますが、その出血競争の阻止こそが問題であると思うのでございます。
 最後に申し上げたい点は、自由化以前の今日までは、手持ち外貨の減少した場合、輸入割当引き締めという手段によって外貨危機を切り抜けることができましたが、八条国移行の今日以後は、外貨危機を一体何によって切り抜けられるでございましょうか。フィフティ・フィフティの貿易により、常に危機を未然に防ぐことが、まずころばぬ先のつえではないでございましょうか。その意味におきまして、日本は、まずアメリカに対してもフィフティ・フィフティを要求すべきではないでございましょうか。(「早くやれ」と呼ぶ者あり)急げとおっしゃいますので、御協力して、急ぎます。
 抜いた最後に、これだけは申し上げておきたい。
 池田さんに申し上げます。特に官房長官に聞いていただきたい。ドゴール大統領は、EEC加盟という英国の申し入れに対しまして、断固爆弾的な拒否をいたしました。祖国愛の情熱からでございます。かくて、その愛国的態度は、ドゴールの名を世界経済史にとどめたのでございます。親愛なる池田さん、代理の黒金さん、貿易自由化の前夜、米国のエゴイスト的な申し入れば、災いを転じて福となす最もよいチャンスであると思うのでございます。西にドゴールあり、東に池田あり。切にあなたの愛国心を期待いたしまして、質問を終わる次第でございます。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
  〔国務大臣大平正芳君登壇〕
○国務大臣(大平正芳君) お答えいたします。
 綿製品問題のただいまの段階は、アメリカ側から第一次の提案がございまして、長期協定との関係、そこに提示されてある数字の積算の根拠等を、今両国の間で煮詰めておる段階でございまして、まだこの問題について是非の断案を下す段階ではないと思っております。私どもといたしましては、今加藤さんが御指摘されましたように、わが国の綿製品の先方の消費に占める割合、あるいはただいままで数年にわたる自主規制を忠実に守ってきた等の事情は、十分先方に訴えてございまして、ただ、長期協定が本年度から第一年度に入っておりますので、協定の解釈上、彼此の間に見解の相違がございますので、今せっかく調整中でございます。
 それから対策でございますが、加藤さんがおっしゃる通り、私どもは二国間の交渉で円満な妥結をはかりたいと念願いたしておりまして、ガット提訴の問題は、この二国間の交渉の経過を見まして、あるいはそういう場面があるかもしれませんけれども、あくまでも二国間の間で満足のいく解決に持って参りたいと努力いたしております。従って、今私どもといたしましては、在米の外交機能を総動員いたしまして、これに当たっておるわけでございますので、ただいまの段階で、特使を派遣するというような措置は考えておりません。
 要するに、繊維工業は日本の産業構造にとりましても、また雇用の構造から申しましても、非常に重大な問題でございまするし、また、その輸出環境が容易でないということも十分私どもも承知いたしております。また、アメリカ側の繊維工業というのは、ちょうどわが国でいえば石炭産業のように一つの問題の産業でございまして、アメリカ政府自体においても、この救済計画を立てざるを得ないような業態であるというととを考えますと、この問題の解決はきわめて容易ならぬことであると思うのでございまするが、わが国の綿業が置かれた実態を考えますと、できるだけ早く解決に持っていかねばならないと思うのでございまして、鋭意ただいま努力いたしておる段階でございます。(拍手)
  〔国務大臣福田一君登壇〕
○国務大臣(福田一君) お答えをいたします。
 通商産業省といたしましては、今回のアメリカからの提案は内容をしさいに点検いたしておりまするが、数字の点において根拠がいささか違っておるといいますか、数字が食い違っておる点がありますので、こういう点を今詳細に調べております。そして外務省と連絡をとりまして、われわれとしては、この協定の精神にのっとって、ただすべきはただすという断固たる措置で臨んでいくつもりでおるわけでございます。
 なお、この際一言だけ、加藤さんわかっていられると思うけれども、申し上げておきたいと思いますことは、片貿易というようなことをよく言われますけれども、向こうが売ってくるその綿花を生産する者と、われわれが今度織物を売る者とは違っておるわけなんです。国家間の貿易なら簡単に、これは片貿易だからお前の方、もっと買えと言えるのでありますが、ここがいささか事情が違っておるということを理解を願っておきたいと思います。
 それから綿花の市場転換等の問題もそう簡単にはできないのでございまして、そういう点もおわかりの上で、特にわれわれを激励していただいておるということはよくわかりますが、国民が誤解をしないように一つ処置をいたしていただきたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
○国務大臣(宮澤喜一君) 三十七年度の輸出の伸びが、おそらく一七%ぐらい、三十八年度はやや正常に復しまして、七%ぐらいかと思います。これは世界貿易の伸びよりも、やや高うございますけれども、わが国は輸入依存度の高い国でございますから、世界貿易の伸びを当然上回っておらなければならないわけでありまして、ただいまお取り上げになりました問題とこれとは、別に因果関係はないと思います。(拍手)
  〔国務大臣田中角榮君登壇〕
○国務大臣(田中角榮君) 加藤さんにお答えいたします。
 対米貿易の問題につきまして、輸出と輸入について非常に日本が入超であるということを言われたわけであります。三十六年度は、御承知の通り、輸出が十二億ドル余であり、輸入が十九億ドル余でありますから、七億七千万ドルの入超でございますが、これは御承知の通り、日本の経済が非常に過熱的な状態といわれるほど膨張したときのことでございまして、三十七年度は、十二月までの数字を見ますと、輸出が十一億九千万ドル、輸入が十一億六千万ドルで、逆に十二月まででは三千万ドルの出超になっております。このように対米貿易においては非常に大きく改善せられておるわけでございます。しかし、これは今通産大臣が申された通り、日本とアメリカの問題は、ただ数字によってだけ議論ができる問題ではございません。綿花の問題も、御承知の通り、原材料を入れて日本がこれに加工して、逆に輸出をするのでございますから、そのような意味においては、日本はアメリカに対して、アメリカが日本の輸出市場としては世界最大のものであるという事実を認識しながら輸出を伸ばしていくようにしなければならぬことは、言うを待たないわけでございます。われわれも十二月の日米経済閣僚会議におきまして、日米間の貿易、特に日本からの出超問題については十分意見を交換をして参ったわけでございます。
 第二の問題は、八条国移行によって自由化されると、アメリカ側の日本に対する輸出の方が伸びるのだというような観点に立っての御意見でございますが、私は日本の輸出を伸ばしていく方向になるのだ、また、そうしなければならないのだという考えに立っておりまして、フィフティ・フィフティというような考えではなく、より積極的に、前向きにアメリカに対する輸出を伸ばしていくという考えでございます。
 それから、自由化に対して外貨危機を一体どうして乗り切るのかということでございますが、その意味では、御承知の通り、国内産業を整備し、輸出第一主義として、国際競争力の培養等、各般な施策を行ない、予算措置を行なっておるのでございます。また、特に対米貿易におきましては、シップ・アメリカン、バイ・アメリカン政策に対しても、日本政府としての強い意思表明をいたしておりましたので、外貨危機等は招いてはならない、こういうことを考えておるわけであります。(拍手)
  〔国務大臣大橋武夫君登壇〕
○国務大臣(大橋武夫君) 中小企業、ことに輸出産業に対する最低賃金制の適用につきましては、政府もその必要を十分に認めまして、普及徹底に努力をいたしております。(拍手)
  〔国務大臣中垣國男君登壇〕
○国務大臣(中垣國男君) お答えいたします。
 日米通商条約が双方によって順守さるべきものであるという加藤さんの意見には全く同感であります。
 また、今回の米国の申し入れば条約違反ではないか、また憲法の関連においてはどうかというお尋ねでありますが、このことは、二月四日の衆議院の予算委員会におきまして、林法制局長官並びに中川条約局長からも答えておりまして、条約が国内法より優先するという考え方を私は持っておるものであります。その根拠といたしましては、憲法八十一条並びに九十八条におきまして、その精神並びに背景等から見ましても、条約並びに確立された国際法規というものは、国内法に対して優位を認めておる、そういう根拠に立つものであります。(拍手)
○議長(清瀬一郎君) 緊急質問並びにこれに対する答弁は、以上をもって終了いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第一 プラント類輸出促進臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
○議長(清瀬一郎君) これより本日の日程に入ります。
 日程第一、プラント類輸出促進臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
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    ―――――――――――――
○議長(清瀬一郎君) 委員長の報告を求めます。農林水産委員会理事秋山利恭君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔秋山利恭君登壇〕
○秋山利恭君 ただいま議題となりました両案につきまして、農林水産委員会における審査の経過並びに結果について御報告申し上げます。
 まず、農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 農林漁業金融公庫は、昭和二十八年設立以来十年間にわたり、四千四百八十億円に上る長期低利資金を融通し、農林漁業者等の生産力の維持増進のため、大きな貢献をいたして参ったのでありますが、政府は、昭和三十八年度におきましても、引き続き八百七十億円の貸付契約を行なうことを予定いたしておるのであります。しこうして、この貸付の原資の一部として、政府出資金を二百二十億円追加出資をしようとするのが改正の第一点であります。
 また、御案内のごとく、政府は、三十七年度から農業及び沿岸漁業の構造改善事業を計画的に推進して参りましたが、今後、特に、農業経営等の規模の拡大、改善と農業生産の選択的拡大を促進するための金融措置の一環として、公庫に一般資金の融通制度とは別個に、農林漁業経営改善資金融通制度を創設することといたしているのであります。従いまして、新制度に基づく資金の貸付条件につきましても、公庫の一般資金とは区別し、特別に長期低利の条件で定めることとしたのが改正の第二点であります。
 また、農業構造改善事業を実施するに伴いまして、従来、公庫本来の業務のほかにありました農地等の取得資金、果樹育成資金、畜産経営拡大資金及び永年性植物の植栽資金の貸付業務を公庫本来の業務に加えることとしたのが改正の第三点であります。
 以上が、本案の概要であります。
 次に、農業近代化資金助成法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 昭和三十六年に制定されました農業近代化資金助成法に基づき、農業者等に対し、系統資金から千三百二十億円に上る長期低利資金が三十八年度末まで融通される見込みでありまして、農業者等の資本装備の高度化等、農業の近代化に大きな役割を果たしてきているのであります。しこうして、昭和三十八年度から、地方銀行等が保有する農家の預貯金を活用して近代化資金の農家への融通を一そう円滑にいたしますため、農業近代化資金助成法に規定する金融機関として、地方銀行その他の金融機関で主務大臣の指定するものをも新たにつけ加えようとして、本案が提出されたのであります。
 以上の両案は、一月二十九日委員会に付託となり、二月十二日から二月二十日まで五日間にわたり質疑を行ない、その間二月十九日には大蔵委員会と連合審査を行なう等審議に慎重を期し、二月二十日、一切の質疑を終了し、討論を省略して採決いたしましたところ、両案は原案の通り全会一致をもってこれを可決すべきものと議決した次第であります。
 なお、公庫法改正案に対しましては、原資の計画的な確保、農地担保制度の厳正な運用、自作農維持資金等の貸付条件の緩和、制度金融全般にわたる制度の単純化、金利体系の再調整及び手続の簡素化、連係式小水力発電事業への公庫融資等についての附帯決議が、また、農業近代化資金助成法改正案に対しましては、既存の系統金融機関と新規加入の地方銀行等との間に摩擦を生ずることのないよう適切な措置を講ずること等の附帯決議が、それぞれ全会一致で付されましたことをつけ加えまして、報告を終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(清瀬一郎君) 両案を一括して採決いたします。
 両案の委員長の報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○議長(清瀬一郎君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告の通り可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第四 奄美群島復興特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
○議長(清瀬一郎君) 日程第四、奄美群島復興特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
    ―――――――――――――
    ―――――――――――――
○議長(清瀬一郎君) 委員長の報告を求めます。地方行政委員長永田亮一君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔永田亮一君登壇〕
○永田亮一君 ただいま議題となりました奄美群島復興特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、地方行政委員会における審査の経過並びに結果の概要を御報告申し上げます。
 本案は、奄美群島復興信用基金の融資業務に要する資金を、三億七千万円に増額しようとするものであります。
 奄美群島の復興事業は、逐年進捗を見つつありますが、御承知のように、岡群島の経済はなお脆弱であり、産業資金の融通が円滑を欠いておりますので、さきにその対策として群島内の中小規模の事業者に対し小口の事業資金の貸付を行なわせるため、奄美群島復興信用基金に三億二千万円の政府出資をいたしておるのであります。しかし、この程度の資金をもちましては、とうてい熾烈な資金需要に応ずることができない状況でありますので、今回政府はその資金としてさらに五千万円を追加することとし、これに伴い本案を提出いたしたのであります。
 本案は、参議院先議となり、本委員会には一月二十二日予備審査のため付託され、二月十三日、参議院より送付、本委員会に本付託となりました。
 二月十四日篠田自治大臣より提案理由の説明を聴取し、慎重に審査を行なったのでありますが、その詳細は会議録によって御承知いただきたいと存じます。
 二月二十一日、質疑を終了いたしましたところ、別に討論の通告もなく、直ちに採決の結果、全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決定いたしました。
 なお、本案に対し、自由民主党、日本社会党及び民主社会党の三党共同による附帯決議が提出され、これまた全会一致をもって可決いたしました。
 決議文を朗読いたします。
    附帯決議
 奄美群島復興特別措置法に基づく復興計画とこれに伴う国の財政援助は、昭和三十八年度で終了の予定であるが、同群島の現状はなお本土との間に著しく格差があることにかんがみ、政府は引き続き次の措置を講ずべきである。
 一 奄美群島の自然的条件を十分に活用し、基幹産業の積極的な振興をはかることを重点とし、あわせて復興計画を補完して所期の効果を十分に達成せしめることを目的とする振興計画をすみやかに樹立し、これが実施を推進するため従前同様国の助成をすること。
 二 奄美群島経済の発展に重要な要素をなす産業資金の融通を円滑にするため、奄美群島復興信用基金を今後も引き続き充実するとともに同群島の経済発展に積極的に寄与せしめるよう特段に配慮すること。
 右決議する。以上、御報告いたします。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(清瀬一郎君) 採決いたします。
 本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第五 酒税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第六 印紙税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
○議長(清瀬一郎君) 日程第五、酒税法の一部を改正する法律案、日程第六、印紙税法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。
    ―――――――――――――
    ―――――――――――――
○議長(清瀬一郎君) 委員長の報告を求めます。大蔵委員長臼井莊一君。
    ―――――――――――――
〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔臼井莊一君登壇〕
○臼井莊一君 ただいま議題となりました酒税法の一部を改正する法律案外一法律案について、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 まず、酒税法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 この法律案のおもな改正の内容は次の通りであります。
 まず第一に、現行の酒税法におきましては、清酒等の原料である米等の使用率の限度は法律に規定されているのに対しまして、合成清酒の原料たる米の使用率の最高限度は政令にゆだねられておりますので、合成清酒につきましても清酒と同様に法律で規定することとし、法体系の整備をはかることといたしております。
 第二に、みりんの基本税率の対象となっております基準アルコール度数を若干引き上げることといたしております。すなわち、現在十三度以上十四度未満と定められておりますものを、それぞれ〇・五度引き上げて十三・五度以上十四・五度未満に改め、みりんの品質向上をはかることとするとともに、これに伴い一度ごとの加算税額に関する所要の規定の整備をはかることといたしております。
 次に、印紙税法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 この法律案は、現在農業協同組合またはその連合会の発行する貯金証書で記載金高が三千円未満のものについては、印紙税を課さないことといたしておりますので、これとの権衡をはかるために、漁業協同組合またはその連合会が発行する貯金証書についても同様の措置をとることといたしております。
 右の二法律案につきましては、審議の結果、昨二十一日、質疑を終了し、採決を行ないましたととろ、全会一致をもって原案の通り可決されました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(清瀬一郎君) 両案を一括して採決いたします。
 両案の委員長の報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○議長(清瀬一郎君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告の通り可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第七 地方公共団体の長の選挙において使用する選挙運動用ポスターの特例に関する法律案(公職選挙法改正に関する調査特別委員長提出)
○議長(清瀬一郎君) 日程第七は、委員長提出の議案でありまするから、委員会の審査を省略するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。
 日程第七、地方公共団体の長の選挙において使用する選挙運動用ポスターの特例に関する法律案を議題といたします。
    ―――――――――――――
    ―――――――――――――
○議長(清瀬一郎君) 提出者の趣旨弁明を許します。公職選挙法改正に関する調査特別委員会理事丹羽喬四郎君。
  〔丹羽喬四郎君登壇〕
○丹羽喬四郎君 ただいま議題となりました地方公共団体の長の選挙において使用する選挙運動用ポスターの特例に関する法律案は、自由民主党、日本社会党、民主社会党の三党の合意に基づき、昨二十一日、成案を得て、本委員会の提出にかかる法律案として提出されたものであります。
 本案は、前国会において成立いたしました地方公共団体の議会の議員及び長の選挙期日等の臨時特例に関する法律により、本年三月一日から五月三十一日までの間に任期が満了することとなる地方公共団体の議会の議員及び長の選挙等の期日が統一して行なわれることになったのでありますが、この場合において、四月十七日に期日を統一される指定都市の市長の選挙における選挙運動用ポスターは、このとき同時に行なわれる知事、都道府県議会の議員及び指定都市の議会の議員のポスターが同じ地域に多数掲示されるため、十分その効果を上げることができないと考えられますので、その数を、知事のポスターの基本枚数一万二千枚と同数といたすとともに、四月三十日に期日が統一される指定都市以外の市の市長の選挙運動用ポスターについても、同時に行なわれる市議会議員の選挙運動用ポスターと同数のため、同地域に多数掲示されることとなる市議会議員のポスターとの関係で、指定都市の市長の場合と同様の事情があると考えられますので、その数を現行の二倍の二千四百枚といたしております。
 また、市の合併の特例に関する法律に規定する新都市で、政令で指定するものの設置による市長の選挙における選挙運動用ポスターは、その数を指定都市の市長と同様に一万二千枚といたそうとするものであります。
 以上、本法律案の趣旨につきまして御説明いたしました。何とぞ、御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(清瀬一郎君) 採決いたします。
 本案を可決するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。
     ――――◇―――――
日程第八昭和三十六年度昭和三十七年度衆議院
 予備金支出の件(承諾を求めるの件)
○議長(清瀬一郎君) 日程第八、昭和三十六年度、昭和三十七年度衆議院予備金支出の件を議題といたします。
    ―――――――――――――
○議長(清瀬一郎君) 議院運営委員長の報告を求めます。議院運営委員会理事小平久雄君。
  〔小平久雄君登壇〕
○小平久雄君 ただいま議題に供せられました昭和三十六年度及び昭和三十七年度衆議院予備金支出の件について御説明申し上げます。
 今回御承諾をお願いいたしますのは、昭和三十六年十二月九日から昭和三十七年十二月二十三日までに本院で支出した予備金六百四十八万円でありまして、その年度所属は、昭和三十六年度四百八十六万円、昭和三十七年度百六十二万円となっております。
  〔議長退席、副議長着席〕
なお、その費途は、いずれも在職中なくなられました議員の遺族に贈った弔慰金でございます。
 以上の経費は、そのつど議院運営委員会の承認を経たものでありますので、御承諾を下さいますようお願いいたします。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(原健三郎君) 採決いたします。
 本件は承諾を与えるに御異議はございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(原健三郎君) 御異議なしと認めます。よって、承諾を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
 日本鉄道建設公団法案(内閣提出)の趣旨説明
○副議長(原健三郎君) 議院運営委員会の決定により、内閣提出、日本鉄道建設公団法案の趣旨の説明を求めます。運輸大臣綾部健太郎君。
  〔国務大臣綾部健太郎君登壇〕
○国務大臣(綾部健太郎君) 日本鉄道建設公団法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 わが国の産業経済は最近目ざましい発展ぶりを示し、国民経済も著しく向上して参ったのでありますが、さらに経済の均衡ある発展をはかりますためには、地方経済圏の整備、低開発地域の開発、臨海工業地帯の整備、新産業都市の建設等が必要であり、そのための基盤として鉄道新線の建設が強く要望されていることは御承知の通りであります。
 従来、鉄道の建設は日本国有鉄道が行なって参りましたが、日本国有鉄道といたしましては、独立採算制の建前と既設線の大幅な整備増強計画に力を注いでいる関係上、鉄道新線の建設については、これを積極的に推進し得ない状況にあるのであります。
 ここにおいて、昨年五月、鉄道建設審議会は、今後の新線建設については、日本国有鉄道と別個の組織を設け、政府、日本国有鉄道等がその財源を負担して、強力にこれを推進すべきであるという建議をいたしました。
 政府といたしましては、この建議の意を体し、具体策について検討いたしました結果、今後の新線建設を積極的に推進するため、この新線建設事業を日本国有鉄道から切り離し、独立の機関を設けて専心この事業に当たらせるべきだとの結論に達したのであります。
 この法案の内容は、政府及び日本国有鉄道の出資により、新たに日本鉄道建設公団を設立し、鉄道新線の建設に当たらせ、もって鉄道交通網の整備をはかり、経済基盤の強化と地域格差の是正に寄与させようとするものであります。
 以上がこの法案の趣旨でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
 日本鉄道建設公団法案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
○副議長(原健三郎君) ただいまの趣旨の説明に対して、質疑の通告があります。これを許します。田中織之進君。
  〔田中織之進君登壇〕
○田中織之進君 ただいま御説明のありました日本鉄道建設公団法案につきまして、私は、日本社会党を代表いたしまして、その中心的な問題について質問をいたしたいと思うのでございます。
 まず第一点は、本法案が提出せられて参りました根本的な目的についてでございます。
 ただいまの運輸大臣の提案説明によりますると、経済基盤の強化と地域格差の是正に寄与するために、鉄道交通網の整備をはかる、特に新線建設の部分を新しい公団によって促進しようということを言われておるのでありますが、鉄道網の完備ということがいわば経済基盤の強化そのものなのでございまするから、私はこれはいささか説明の取り違えだろうと思うのでありますけれども、その点が明確でないと思うのであります。従いまして、根本的には、現内閣のあらゆる施策の中心にありますところの所得倍増計画の中において、産業基盤の強化という観点で、鉄道のみならず、陸上輸送においては自動車交通の問題、さらに海上輸送の問題、旅客輸送の面では近時国内における航空機の輸送も漸次発達をいたしてきておるのであります。そういう意味で、陸海空の三部門にわたりますところの交通政策の根本的な問題が示されて、そのうちで鉄道交通が分担する分野をどのように見きわめて、それを現状からどういうように進展させるかということが、この法案の提案説明の根本として示されなければならないと私は思うのであります。ところが、それが欠けておりまするので、この機会に総理から、現内閣としての産業基盤の強化のまず第一になさなければならない各方面の交通網の整備について、根本的にどういう対策をもって進められようとするかということについて、お答えをいただきたいと思うのであります。
 数日前の国会に、海運に関する若干の施策についての提案がされて参りました。これもわが党の久保委員から本会議でこの壇上で質問を申し上げましたように、やはり過去の造船融資に対する利子のたな上げの問題という、あくまでうしろ向きの問題でございまして、今日積極的に国際貿易が自由化の方向に向かって驀進をいたしておりまして、それを裏づけるものとしての日本の海運をいかに強化するかという積極面における施策が、残念ながら今国会に提案されておる海運振興対策によってはわれわれは見ることができないのであります。このことは、やはり鉄道の新線建設に関するこの公団新設の問題についても同様なことが言えると思いまするので、まず第一に、その点についての政府の根本的な方針を承りたいと思うのでございます。
 欧米諸国におきましても、今日では鉄道の問題につきましては、新線建設も行なわれておるところもございますけれども、場合によりますれば、既設の鉄道についても線路をはずし、自動車専用道路に転換しつつあるということも考えられるのでございまして、陸上輸送の場合には、鉄道と自動車の一貫した輸送体制が検討さるべきなのでありまして、この点が、今までの政府のわれわれに対する説明では明確でございませんので、この機会にお示しをいただきたいと思うのであります。特に自動車交通に関する部分につきましては、総理のほか建設大臣からもお答えをいただきたい。道路政策に関連して承りたいと思うのでございます。
 それから第二の問題は、国鉄の新線建設の問題が遅々として進んでいないということについても、私どもはこれを認めるにやぶさかではございません。その根本的な原因はどこにあるかと申しますと、私はおよそ二つあると思うのであります。
 その一つは建設資金の問題でございます。国鉄に対する従来からの一般会計からの支出が漸次少なくなりまして、今日独立採算制がいわゆる公社組織になりましてから強化せられて参りました関係から、多くの政治路線による赤字線をかかえておる国鉄は、新しく建設関係に資金を投ずることはほとんど不可能な状態になっておると思うのであります。しかしながら、いわゆる国鉄の第二次五カ年計画を中心といたしまして、東海道新幹線を初めといたしまして、既設線の改良あるいは複線化のために、大体前年度におきましては二千五百億、その半分以上のものは借入金によってまかなっておるようでありますけれども、そういう関係でありますから、国鉄の新線建設のために費やされる費用は、昨年度においても約八十億、本年度においても若干の増加を見ておりまするけれども、その程度しか見られないというような状況だと思うのであります。従って、政府が意図せられるような新線建設を促進するということでありまするならば、勢いこの建設資金の調達を根本的に考え直すことが一つの問題であろうと思うのであります。
 それから第二の問題は、鉄道敷設法の別表にありまするところの現存の着工線、それから調査線、そのさらに第三段階にある予定線を含めまして二百三十一線の多きに上っておるのであります。これはむしろ政治家に多くの責任がありますけれども、いわゆる政治路線といわれて、自分たちの選挙の関係から、国鉄の立場からいえば採算のとれない路線も、いろいろ鉄道建設審議会にかけられて今日ふえてきておるのが、この二百三十一線という多数に上っておると思うのであります。従いまして、この多くが赤字線が予想せられる政治路線をこのままの状態に置いて、新線建設を進めるということになりまするならば、莫大な金がかかると思うのであります。この別表の整理の問題、再検討の問題が、やはり国鉄の新線建設を進めていく上における第二の問題であろうと私は思うのであります。
 これらの二つの問題について、この公団を進めていかれるという建前から見て、政府としては、この二つの大きな隘路をどういうように打開せられようとしておるかということをその次にお答えをいただきたいと思うのであります。
 実は私ども社会党の考え方から申しまするならば、以上お尋ねをいたしました二つの隘路打開の方法が出まするならば、あえて新しく公団をつくらなくとも、私は国鉄の施設部を中心にいたしまして、新線の建設が進められる筋合いだと思うのであります。政府の計画によりましても、国鉄の現に進行中の東海道新幹線を中心とする第二次五カ年計画は、一応建設公団からはずして、それ以外の新設線をこの公団にやらせようとしておるかのごとく見られるのでありまするが、そういうことでありまするならば、勢い国鉄の施設関係の人員なりあるいは技術者が二分せられることになるのでありまして、この技術者を、約千名近い、七、八百名のものを確保しなければならぬということもいわれておるのでありまするが、そういうものを、この法案によりますると、国鉄から主として持ってくる。その人が国鉄へ戻るというような場合には、共済年金の継続の問題についても、こまかい経過規定までつくっておるようでありますけれども、そういうことではなくて、根本的に二つの隘路の問題が解決されるならば、当然私は、これは国鉄において引き続き行なわせなければならないと思うのでありまするが、その点は国鉄当局とも話し合いをされたことと思うのでありまするけれども、どういう話し合いの結果から、こういう新線建設の部分だけを切り離して新しい公団をつくることになってきたかということについてお答えをいただきたいと思うのであります。
 それから、次にお伺いをいたしたい点は、今度の公団も、理事六名、監事二名、それに正副総裁、こういうことでございまするが、これはまだわかりませんが、反対をいたしまするから、あるいは成立をしないかもわかりませんけれども、多くの公団、事業団の役員人事を見ますると、ほとんど全部と言っていいくらいやはり高級官僚の退職者をもって埋めておるというのが私は現状だと思うのであります。そういう意味におきまして、高級官僚のおば捨て山にひとしいようなこの人事構成を行なっておる公団は、もう現在であきあきしておるのでありまするから、その点はやめていただきたいと思うのでありまするが、総理は、この公団の人事の問題についての構想もあるいはもう脳裏に描いておられるかもしれませんけれども、その問題を含めて高級官僚の――総理自身も官僚出身であるという点はありますけれども、今日ではりっぱな政治家なのですから、その意味から見れば、高級官僚の退職者の行き場所をつくってやるというような考え方でこの公団をつくるということになれば、根本的に間違いだと思うのであります。ことに国鉄の関係においても、あるいは用地買収の問題であるとか、その他建設関係では忌まわしい汚職がついて回ったのであります。従いまして、今後公団ができた場合に、そういうことを抜本的に断ち切るところの配慮が、当然提案されたときから私は考えられなければならないと思うのでありますが、総理にその用意があるかどうかという点をその次に伺いたいと思うのでございます。
 さらに資金の問題について、従来の隘路のことについて私は今申し上げましたが、そういう観点からいたしまするならば、当然わが党が公共負担に関する国庫負担法律案を提案をいたしておりまするように、現在の国鉄の経営線の問題につきましても、たとえば災害の場合、踏切及び着手の費用の国庫負担の問題、その他いわゆる公共割引に対する国庫負担の問題というような、一言にして言えば国の全額出資によりまして、今日二兆円に近い帳簿価額を持っておる国鉄が、わずか百億に満たない資本金で、借入金にいたしましても五千億円そこそこであるというような国鉄の資産状況から見まして、政府出資を思い切ってふやされたといたしましても、その資産内容は決して低下することにはならないのでありまするから、大局的な考え方から言うならば、やはり新線建設に関し、あるいはまた現に国鉄が行なっておる既設線の改良あるいは合理化、電化というような問題の経費も当然国が全額負担すべきではないかと思うのであります。
 今度は一応公共投資ということで、田中大蔵大臣が建設審議会の小委員長のときにつくられた案に基づいてできたということも、今綾部運輸大臣から御説明があったわけでございまするけれども、しかし、その建設審議会の答申につけられた別表の資料によりますると、やはり国鉄から出して参りまする分、それは今度も、ただいまの説明にありましたように大体七十億程度、さらに政府からの本年度の五億円の出資、それに加えまして地方公共団体の負担金、いわゆる受益者負担金年間大体三十億、それから通行税相当額、現在の一等料金に対する一%分の二十億円を今後十年間納めることによって二百億を調達しよう、あるいは市町村が固定資産税率の二分の一の税率で納付金をとっておる関係から参りまする八十億、十年間で八百億、こういうような資金を予定をいたしておるのであります。そのほかに鉄道建設債券を発行するということになりますると、直接政府出資によるもの以外に、地方住民の負担にかかるものがやはり相当大きな部分を占めてくると思うのであります。端的に言って、毎年政府から五億、国鉄公社から大体八十億程度、これもこの別表の資料にあるわけでありますが、そういうもの程度でかれこれ百億近いものしかさしあたりの資金がない。それでいて本格的に仕事をやろうということになれば、年間五百億の金がかかるということも建設審議会の答申の中に出ておると思うのであります。そういたしますと、差引四百億というものは、もし予定通り建設が進められることになりますと、建設債券の発行ということになりますし、勢い自分の地方に鉄道をつけたいということになりますと、地方自治体によるところの、この債券の強制的な引き受けという結果になりまするから、あるいは政治家の努力によって鉄道はついたと思うけれども、そのつけた金は自分たち地方住民が税金で債券を買うようなやり方をしなければならぬというような結果になることは、火を見るよりも明らかになってきておると私は思うのであります。その点において、私どもが言うような完全なる全額政府出資ということに切りかえていかなければならないと思うのでありまするが、自治大臣は、この建設審議会の答申につけられておる付属資料によりますと、地方住民の負担がこの公団の建設過程において大きく出てくるということについて、これを国会へ提案することに賛成するにあたって考慮されたかどうか、この点を自治大臣から伺いたいと思うのでございます。
 時間が参りましたので、最後にもう一点お伺いをいたしまするが、かりにこういう形で政府の計画の通り新線が建設されますると、大体有償を原則として国鉄に貸与し、または後進地域等の関係でありますると、無償でこれを譲渡するということになるのであります。しかし、今日までの経験から見まするならば、新線は多くの場合、当初の段階においては、やはり長期にわたって赤字を覚悟しなければなりません。従って、かりに無償で国鉄がこれを譲り受けたといたしましても、その経営から出て参りまするところの赤字の補てんの問題については、政府は一体どうお考えになるかということでございます。われわれの聞くところによりますると、国鉄自体に新線建設を担当せしめるか、新しく公団にするかということで国鉄当局と話し合ったときに、国鉄当局は、損失補償の規定を入れてもらいたいということを条件として出したそうで、それがうやむやになったということを聞いておるのでありまするが、この問題が、やはり従来国鉄自体の手で新線建設を進める場合にもうまくいかなかった根本原因の一つにもなっておる問題でありまするから、この機会に損失補償の問題をどうするかという点をお答えいただきたいと思うのであります。
 この結果によりまして、いわゆる特定区間の運賃がべらぼうに高いものになるという弊害も出て参ります。さらには敷設税の新設等の問題がからみまして、鉄道運賃の新たなる引き上げというような問題になりますし、国鉄経営を担当する国鉄の内部におきましては、そのために経費の節減と合理化を強行するという結果になりますと、国鉄労働者の首切り問題というようなことにも発展しかねない情勢にあることは、この赤字線の経営を当然引き受けていかなければならぬという点から私は出てくるのではないかと思うのであります。そういう観点から、この公団で新設された路線を国鉄に引き渡した以後の損失補てんの問題についても当局は考える用意があるかどうか、これらの点についてお答えをいただきたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答えいたします。
 まず、政府の交通政策についてでございまするが、わが国土を開発し、産業、経済の一そうの発展を招来いたしまして、国民生活の安定と向上をはかるためには、何と申しましても陸海空にわたる交通網の整備が必要であるのであります、われわれは、最近の道路交通の事情にかんがみまして、御承知のように、五カ年計画を立てて整備をしようとしております。また、お話しの通り、海運業におきましても、過去の負債を整理して、前向きに今後十分海運の発達し得るよう素地をつくっておるのであります。また航空にいたしましても、飛行場の整備、その他空輸に関しましていろいろ努力いたしております。しかし、何と申しましても、貨物の輸送あるいは人の輸送につきましては、鉄道がただいまのところ、やはり最も大きいウエートを持っております。従いまして、今後国土の開発のために、われわれは新しい試みとして日本鉄道建設公団をつくって、そして鉄道網の整備をはかろうとしておるのであります。従いまして、これが資金につきましては、いわゆる政府あるいは国鉄の出資のみならず、借入金あるいは債券の発行等をいたしまして、適当な財源調達をいたしますと同時に、お話しの別表につきましても、私は今後検討を加えまして、みんなの納得いく十分な鉄道網の完成に邁進いたしたいと考えております。(拍手)
  〔国務大臣綾部健太郎君登壇〕
○国務大臣(綾部健太郎君) お答え申します。
 交通の基本の対策につきましては、ただいま総理が御答弁になった通りでございまして、鉄道の輸送の分野は、海空に比べまして非常なウエートを持っておりますから、これに力を入れるのは、もとより当然と考えております。
 それから、この公団を国鉄でやったらいいじゃないかという御趣旨でございますが、国鉄でやれないから、一つやろうということに建設審議会の答申があったから、われわれは鉄道審議会の答申に基づいてこれはやっておるのであります。(発言する者あり)やれないのであります。やれない現状であって、鉄道建設審議会がこういう答申をしたから、こういう別個のなにをもってやろうというのであります。
 それからこの公団成立後の人事の問題について御注意がありましたが、とくと考慮をいたしまして、さようなことのないようにやりたいつもりでございます。(拍手)
  〔国務大臣田中角榮君登壇〕
○国務大臣(田中角榮君) 田中さんにお答えいたします。
 今度の鉄道建設公団ができましたことにつきましては、御承知の通り、建設審議会の建議に基づいて予算に計上いたしたわけでございます。
 それから今運輸大臣が、国鉄が新線建設ができないということを短い時間で申し上げましたが、鉄道の建設という問題に対して端的に申し上げますと、明治時代から大正につきましては、年間最高千キロにわたって新線が行なわれたというのが記録に出ておりますが、昭和十二年、十三年の戦争中を中心にいたしましてから戦後は、鉄道建設のテンポが非常に落ちまして、現在は年間わずか百キロにしか及んでおらないのでございます。鉄道が今日まで日本の経済、産業開発にいかに裨益したかは、もう私が申し上げるまでもなく歴史の示す通りでございます。北海道から北海道の鉄道を取ってみて、一体北海道の開発促進があり得るかどうかということは、これはまさに自明の問題でございます。
 いわゆる三公社五現業というものに政府がなぜウエートを置いて行なうかといいますと、この事業が民間で採算性に合わなくても、政策的に他に大きな要請がありますからこそ、国有鉄道のごとき状態が生まれておるのでありまして、建設に関して建議が行なわれたのもその通りでございます。でありますが、戦後の荒廃から立ち上がってくる日本国有鉄道の状態を見ますと、おおむね日本国有鉄道については独立採算制をより以上に要求をしておるのでございます。そうしますと、採算線以外は政策的に必要な地方の新線建設はほとんど行なえないというのは事実でございます。でありますが、政府が考えております大都会に対する人口、産業の過度集中を排除しながら、均衡ある地域の発展を行なうということでありますから、道路網の整備とあわせて産業発展の基盤である鉄道網の整備を行なうために、現在行なっておる法律で要請をしておる日本国有鉄道の新線建設業務を切り離して、公団をして行なわしめようということは理論的に正しいのでございます。(拍手)
 それから、どうせ赤字が出る問題であるので、損失補てんの問題について一体どう考えておるか。それから、公団の出資はそのような意味で全額国が行なうべきであるという御議論でございますが、これは公団設立後、これからの問題として十分検討すべき問題でございます。この公団で行なわれるいわゆる新線が、経済ベースを中心にウェートを置いて建設せられたものは、これは日本国有鉄道に移しても十分採算が合うものでありますが、四国や九州、北海道、また裏日本のように、あるいは山岳地帯を縦断するような線は、線そのものとしては、これはもう赤字であっても、そうすることによって他の政策面から見た、産業開発や経済伸展に非常に大きな貢献をする場合には、国が損失補てんに当たるわけであります。でありますから、これからのこの公団の行なう事業が、いわゆる政策をもとにしておるのか、また、採算線というところにウエートを置くのかによって、おのずから政府の出資額はきまっていくわけでありまして、そのような必要があるからこそ、公団の設立を要請しておるのであります。(拍手)
  〔国務大臣篠田弘作君登壇〕
○国務大臣(篠田弘作君) お答えします。
 現在審議されております日本鉄道建設公団法案におきましては、地方公共団体に出資または受益者負担を求めることができる旨の規定を設けないことにしております。また同時に、地方財政再建促進特別措置法の第二十四条第二項、寄付金、負担金等の支出禁止の規定に、新たに同公団を加えることとしております。従って、御質問のような地方団体が経費を負担するようなことはありません。(拍手)
  〔国務大臣河野一郎君登壇〕
○国務大臣(河野一郎君) お答えをいたします。
 わが国の産業の将来を考えますときに、貨物の輸送、人の交通等の諸点からいたしまして、道路と鉄道両者によほど力を入れてやって参らなければならぬのでございまして、この両者の間に混淆するというようなことは考えていないのでございます。(拍手)
○副議長(原健三郎君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
 国立大学総長の任免、給与等の特例に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明
○副議長(原健三郎君) 次に、内閣提出、国立大学総長の任免、給与等の特例に関する法律案の趣旨の説明を求めます。文部大臣荒木萬壽夫君。
  〔国務大臣荒木萬壽夫君登壇〕
○国務大臣(荒木萬壽夫君) このたび、政府から提出いたしました国立大学総長の任免、給与等の特例に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 政府といたしましては、国づくりの根幹は人つくりであるとの基本的な考え方に立って、文教の振興のために各種の施策を講じて参っておるのでありますが、なかんずく、人つくりの直接のにない手である教育者の地位の向上は、特に緊要なものであると考えるものであります。このたび、政府がこの法律案を提出いたしましたのも、本質的にはこの点に由来するものであります。
 しこうして、国立大学は、国の高等教育機関として、また、高度の研究機関としてきわめて重大な使命をになうものであって、最近における科学技術の進歩、産業経済の発展並びに国民一般における教育水準の向上などに伴い、これに対する国家的、社会的要請はますます増大して参っております。このような国立大学のうちでも、北海道大学、東北大学、東京大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学及び九州大学の七国立大学は、人文、社会、自然の各科学の全分野にわたる学部を有する大規模な総合大学であり、かつ、その各学部の上には博士課程の大学院を有するものとされ、また、伝統も古く、これら七国立大学の学長の職務と責任はきわめて重要であります。
 よって、このたび、これら七国立大学の学長を認証官とし、その国家的、社会的な地位を高からしめますとともに、その待遇の改善をはかることとしたのであります。このことは、これら七国立大学の学長の職務と責任の重要性に基づくものではありますが、ひいては大学の教育職員、さらには、教育者全体の地位を高め、もってわが国教育の振興に資するものといたしたいと考えたからであります。
 次に、この法律案の概要について御説明いたします。
 第一は、これら七国立大学の学長を認証官とすることに伴い、官職名をそれぞれの大学総長と改めることとしたことであります。しかし、これら国立大学総長は、学長として置かれるものでありますので、学校教育法その他の法令の適用については、他の国立大学の学長と全く同様な地位に立つものであります。
 第二は、国立大学総長の任命権を文部大臣から内閣に移すこととし、その任免については天皇が認証することとしたことであります。任命権者を内閣としましたことは、他の認証官の一般の例に従ったものでありますが、その任免を大学管理機関の申し出に基づいて行なうという教育公務員特例法の建前には、何らの変更をいたしておりません。なお、国立大学総長の任免に関する内閣に対する大学管理機関の申し出については、文部大臣がこれを内閣に進達するものとしましたのは、文部大臣が大学を所轄していることによるものであります。
 第三は、国立大学総長の受ける給与を、俸給及び期末手当とすることとしたことであります。これは、他の認証官の例にならって、特別職の職員の給与の例による趣旨に基づくものであります。国立大学総長の俸給月額についても、他の認証官との権衡を勘案して、東京大学総長及び京都大学総長にあっては十八万円、その他の国立大学総長にあっては十六万円とすることといたしたのであります。
 第四は、附則に経過措置を定めたことでありまして、これら七国立大学の学長の現職者については、この法律施行の日にそれぞれ国立大学総長に任命することについての進達があったものとみなすことなど、新制度への移行を円滑にする措樹を講じております。
 以上が、この法律案の趣旨であります。(拍手)
     ――――◇―――――
 国立大学総長の任免、給与等の特例に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
○副議長(原健三郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。山中吾郎君。
  〔山中吾郎君登壇〕
○山中吾郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案説明になりました国立大学総長の任免、給与等の特例に関する法律案に対して、この法案の目的、性格等の基本的な疑点について、内閣総理大臣及び文部大臣に対して質問をいたしたいと存じます。(拍手)
 まず、質問の第一点は、池田総理大臣にお伺いいたしたいのでございますが、池田首相の人つくりの基本精神とこの法案に矛盾があるのではないか、この関係についてお伺いいたしたいと思うのであります。
 池田総理大臣は、今国会再開の勢頭において行なわれました施政演説の中に「指導的人材の育成と学術振興のにない手である大学においては、認証官学長制度を設ける等の措置を講じ、その運営が自主的に適正化されることを強く期待するものであります。」と言っております。ところが、大学における学術の振興と認証官制度を設けることとどういう関係にあるのか、私はとんと理解ができないのであります。御承知のように、大学は真理を探求するところであります。行政庁や裁判所のように、権威を高めることによって目的を果たし得るところではございません。真に大学の振興をはかるならば、学長、教授等のすべての大学の教官を平等に生活を保障して、学問研究に没頭することができるように配慮すること、また、いかなる権力、権威にも左右されることがないように、そういう意味の身分を保障して大学の自治を確立することのほかに道はないと思うのであります。(拍手)ところが、この法案は、旧制帝国大学の学長だけを総長に格上げして認証官とし、かえって政治権力に接近せしめるばかりではなくて、一橋大学とか東京工業大学あるいは東京教育大学等の古い伝統を持った他の大学の学長と身分的差別をしようとしているのであります。おそらく、この法案は、学術の振興を阻止することはあっても、学術の振興に役立つとはとうてい考えられないと思うのであります。(拍手)
 もし、かりに大学の学長に真理の象徴として国家的栄誉を与えようとするならば、早稲田、慶応その他の輝かしい歴史と伝統を持つ私学の学長に対しても、また新制大学の学長に対しても、身分的差別を設けることをしないで、その学問的実績に応じて平等に与えられることによって、初めて学術の振興に役立つと思うのでございます。(拍手)しかるに、待遇改善の美名に隠れて、現行学校教育法上全く同一の性格と使命を持っておる大学の学長に対して身分的差別を新たにつくることが、どうして真理を探求する大学の振興になりますか、私には理解することができない。世間の一部では、池田首相、荒木文相は同じ京都大学の出身であるので、東京と京都の二大学の学長だけを月額俸給十八万円にして、他の旧制帝大の学長を十六万円にとどめたのではないかと陰口をたたいている者さえございます。私はそのような陰口は信じませんが、いずれにしても、法制上同一の大学の学長の間に差別待遇をすることによって大学の振興がはかれると考えておられるとすれば、まことに小学校の児童並みの幼稚な考えであるというほかはないと思うのであります。(拍手)私は、池田首相にお聞きするのでありますが、あなたの施政演説にある、大学の学術振興のために認証官制度を設けることの意味、また、認証官制度を設ける等の措置を講じ、その運営が自主的に適正化されることを期待すると言われたその論旨は、つじつまが合わないので、池田総理大臣は、だれかのつくった原稿を十分理解しないで読まれたのか、また、ほんとうに真理を探究する大学の振興のために、認証官制度が必要と考えられて演説をされたのか、率直に腹の中を国民にわかりやすく御説明を願いたいと思うのであります。(拍手)
 次に、荒木文部大臣にお聞きいたしますが、質問の第二点は、この法案の目的についてでございます。
 どうも、この法案の目的が、大学学長の給与の改善にあるのか、特定大学の学長の特権的身分の設定にあるのか不明でございます。もし給与の改善を目的とするならば、まことに思いつきの無責任な法案であって、また、まことにけちくさい法案であると思うのであります。すなわち、現在の大学の学長、教授、助教授、講師、助手の諸君は、おしなべて給与が低く、研究費も戦前の二分の一であり、生活の心配をしないで草間の研究と教育に専心することのできないことは、万人の認める事実であります。もし、大学の学術の振興をはかられるために給与の改善を実行しようとするならば、学長といわず、教授、助教授、講師、助手も含んで、全般的になぜ改善をせられないのか。(拍手)旧制帝国大学といわず、すべての新制大学にも及ぼすべきでありますのに、荒木文部大臣は、この法案は、大学の学長の給与改善のためだと言っているのでありますが、その真意は、大学学長の官僚化にあるのではないかと疑わざるを得ないのであります。評論家の大宅壮一氏は、こう言っております。「文部省がどんなに美辞麗句を並べても、大学管理法案で敗れた文部官僚の失地回復をねらった、巻き返し作戦だ、東大を大将に、京都大学を中将に、あとの五大学を少将として、将官クラスに特進をさせて、他の大学を佐官にしたようなもので、文部省の巧妙な切りくずし作戦というほかはない。」と、うがった批判をしております。また、教育評論家の重松敬一氏は、「甘いえさで軽挙盲動を控えさせながらも、逆に、国立大学同士で反目させるという効果をねらっているのではないか、認証官になることで成り上がったと考えるとしたら大間違いで、位階勲等の大学に堕落することだけが落ちである。」と言っております。これまた、まことにきびしい批判であると思うのであります。さらにまた、この法案によって恩恵を受ける旧制大学の当該学長自身が、むしろこの法案に対してありがた迷惑だという顔をしておることは御存じでありますか。京都大学の平澤学長は、「個人としては、他の大学のことを考えると、受けるのが心苦しい。」と、非常に消極的に、新聞紙上にこの法案に対する反対の意図を表明いたしております。また、東大の茅学長も、「この法案が、全国の国立大学の全教官の待遇改善につながるならばけっとうだと思います、しかし、残念ながら、その保障はない、さらに、東大と京大とだけを別扱いにした理由もうなずけません、私は、その国の学術水準を高めるために、あらゆる学部を備え、その上に大学院を持つ大学院大学といったものの存在は必要と思います。とはいえ、今問題になっておる七大学をそうしろとは一がいには言えない。そういうわけで、目下慎重に検討中というところで、どうしたものか困り抜いております。」と言っておる。このように恩恵を受ける学長が困り、恩恵を受けない大学教官は怒り、また、ことごとく評論家が非難をしておるこの法案の目的は一体どこにあるのか、荒木文部大臣の深遠なる意図を私ははかりかねます。大学の学長は、九千万国民の最高の知性を代表する人々でありますから、子供だましのような、わずかばかりの給与改善によって、えさで魚をつるようなしわざはまことに遺憾でありますので、その真意を明らかにしていただきたい。
 さらに、もし、この法案が学長の給与改善を目的としていると善意に解釈いたしましても、まことに微々たる改善にすぎません。この法案によって恩恵を受ける東京大学の学長は、現在大体十四万円の俸給であります。この法案によって、たった四万円が上がるだけである。また、その他の旧制大学の学長は大体十二、三万円である。それを十六万円にしても、これも二、三万円の昇給にすぎない。この国会で先般承認になった日本銀行の政策委員の給与を見ますと、年俸四百四十六万円、月額にすると三十八万円である。もし、日本の学問、思想の最高の推進力としての大学学長に対して、遇するに道をもってするならば、月額二、三万の待遇改善をすることは、むしろ侮辱をするものであると思うのであります。(拍手)池田首相が施政演説の中で、学術振興のために、大学の認証官学長制度を設けると誇らしげに演説しているのは、笑止千万のことであると思うのであります。一体、荒木文相は、この法案を作成する過程において、大学の学長の待遇改善をするためには、人事院の取りきめで、認証官制度を採用しないと理屈がつかないのでと弁解をしておりますけれども、事実はその通りなのかどうか、この点も明らかにしていただきたいと思うのであります。
 認証官制度のこのアイデアは、荒木文相独自の着想であると聞いておるのでありますが、この法案をみずから着想された文部大臣の真意を明らかにするために、左記の点をあわせて御答弁願いたいと思うのであります。
 その第一点は、何がゆえに旧制帝国大学だけを総長としたのか、第二点、何がゆえに東京、京都大学の学長だけを月額十八万円にして、その他の旧制大学の学長を十六万円にしたのか、第三点、何がゆえに認証官制度と待遇改善をからみ合わさなければならないのか、明確にしていただきたいと思います。
 質問の第三点は、この法案と現行大学制度との関係についてであります。
 現行大学制度は、学校教育法により、その性格、目的が明らかに示されておりまして、旧制大学も新制大学も何らの差別をしてはならないことになっております。従って、現行学校教育法の精神を忠実に責任を持って果たすとするならば、施設、設備の貧弱な地方大学に対して特別の力を注ぐこと、また、各大学における教授陣の待遇改善を平等にして、その資質の格差をなくすること、こういうことによって教授及び学生の優越感、劣等感を解消して、現行大学制度の国家的、社会的任務を果たさせることこそ、荒木文相の課題であると思うのであります。ことに、地方住民の各県に所在する新制大学に対する期待は非常に大きいのでありまして、戦後十数年の地方大学の地域開発のための実績は少なくありません。こういう新大学制度がようやくその機能を発揮しようとするさなかに、旧制帝国大学の特権的地位を復活させて特別の差別待遇をすることは、現行大学制度を乱すものであって、厳密に解釈をいたしますと、現行学校教育法違反の法案とも言えるのであります。また、文教政策の立場から見ても、ことに、最近大学入試の問題が世論を沸かしておるのでありまして、旧制大学に希望者が集中することも大きな原因になっております。との法案は、その弊害を故意に助長する役割を果たすことはあっても、大学の振興には何の役にも立たないと思うのであります。文相は、大学院を持っている大学の学長だから待遇改善をした、身分の格上げをしたと答えられると思うのでありますけれども、まことに時代錯誤の考え方であると思うのであります。一歩譲って、この法案の目的は、まじめに大学の待遇改善にあると善意に解釈いたしましても、すべての大学の学長を認証官にする年次計画があるのかないのか、あるいはその他の助教授を含んでの教授全体にわたって給与改善の具体的計画があるのかないのか、これを明確にされなければ、この法案の目的に対してわれわれは信頼することができないので、この二つの計画があるかないかを明確にここでお答え願いたいと思います。
 次に、この法案は、単純な給与改定の法案ではなくて、根本的に現行大学制度を変革しようという、大それた意図を盛った法案だと疑わざるを得ない点があるので、この点についても、文部大臣の現在の大学制度に対する根本的な考え方を、うそを言わないで、率直にお答え願いたいと思うのであります。(拍手)
 以上、この法案の基本的な性格についてお尋ねをしたのでありますけれども、常任委員会において細部の審議をする前提条件として、今申し上げた私の疑点に対しては、明確にお答えを願わなければ審議はできないと考えるので、責任を持ってお答え願いたいと思うのであります。
 この法案は、私の知っておる限りにおいては、文教関係その他の法案のうちで最もずるい法案である。最もずるい法案であるために、内容は非常に簡単でありますけれども、その意図するところはあいまいで、複雑で、待遇改善案のごとくでもあり、大学差別待遇法案のごとくでもあり、また、大学制度変革法案のごとくでもあって、この法案によって恩恵を受ける学長も、恩恵を受けない学長も当惑をしておる、その他大学関係者すべての者が憤りを持っておる、こういう不思議な、不気味な法案であります。荒木文相の発想によるといわれるこの法案は、池田内閣の人つくり政策と荒木文政の反動的本質を、はしなくも暴露しておるといわざるを得ないのであります。(拍手)
 願わくは、君子はあやまちを改むるにはばからずの教えがございますので、このような思いつき法案はいさぎよく撤回されることを切望して、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 りっぱな国をつくるためには、りっぱな人をつくらなければならないという、こういう基本的な考え方に立ちまして、施政演説で申しましたごとく、指導的人材の養成と学術の振興のにない手である大学に対しまして、われわれは、いわゆる教育者の地位を高めるために、今回の法律案改正はいたしたのであります。これは荒木文部大臣の考えから出たんではございません。私の本心から出たところであるのであります。(拍手)
 なぜ認証官制度を七つの大学に置くかという問題でございます。まず、認証官制度を置くということは、学長の官職に対する国家的評価を高めることであります。そうして、その七つの大学の学長の職責が非常に重いということを示し、しかも待遇改善のよすがとするためであるのであります。ほかに何も他意はありません。しこうして、東京、京都等、七つの大学に認証官制度を置いたということは、先ほど説明で申し上げましたごとく、この七つの大学は、歴史的にも、また現在の規模からいっても、他の大学と格段の相違があるのであります。その総長は、非常に職責その他からいっても違っております。私は、あなたのように現実の事態を無視して法律を改正するわけにいきません。やはり政治はあくまで現実に沿って適当な方法を講ずべきであります。しかも、私は、このことによりまして、認証官である大学の学長を今度やりますが、今後におきましても、他の大学の学長、また教授、助教授の今後の地位向上に対しての目標を持ってこれを行なわんとするものであります。しこうして、あなたはいろんな疑いを持たれておるようでありますが、まだ十分御研究が足りないと思います。詳しくは文部大臣が申し上げますが、決して認証官にしたからといって、認証官たる学長が一般職でなくなるわけじゃない。そうして、その選任の方法も、大学管理機関からの申し出によってやりまして、服務、分限、その他、他の学長と同じでございまして、非常に疑いを持っておられますが、その疑いは、文部大臣からの説明を聞かれたらおわかりと思います。私は君子でもありませんが、この法案は誤ったものでもない、国民がひとしく期待し、将来の教育に非常に希望を持てる画期的な改正と私は考えておるのであります。(拍手)
  〔国務大臣荒木萬壽夫君登壇〕
○国務大臣(荒木萬壽夫君) 本法案の提案の趣旨は、先ほど申し上げまして、今また総理から、基本的な第一問のお尋ねに対しましてはお答えを申し上げまして、特に私がその点についてはつけ加えることもなかろうかと思います。要は、総理の言葉にもありましたように、いわば人つくりが大事だというんだが、その人をつくってくれる立場にある教師全般の国家的、社会的、国民的評価ということが必ずしも現状は十分ではない。そこで、少なくともその処遇の一端として、認証官制度を通じて教師全般の国家的、国民的評価を高めることがまず第一であろう、そのためのものであります。
 実質は、山中さんも御指摘の通り、待遇の改善にあります。御案内のごとく、戦前は高等師範学校を出て中学の先生になれば月給百円、大学を出て高等文官試験なんかを受かって役人の卵になる、これは七十五円ないし八十五円、学校の先生はそれだけ戦前においても社会的な評価、国家的な評価、国民的な評価が高かったのでありますが、不幸にして戦後はそれが低下しております。そのことを引き上げる必要がある。さらに、戦前は、たとえば東大の総長は国務大臣並みの待遇を受けておりました。今は逆にこんなであります。それでいいかということが、今当面の課題であります。小中学校、高等学校、大学の先生に至りまするまで、国家的、社会的な、給与面の処遇以上の待遇の内容というものは今申し上げるがごとき状態であります。戦前がすべていいとは思いませんけれども、他の公務員と教育公務員との国家的、民族的な評価というものは、見習うべき意味合いがあろうと思われる。(拍手)
 そこで、そのことをなさんとならばいかなる方法があるかということが問題であります。いろいろと勘ぐって言われては困ります。問題は、現在の給与制度というのは、御承知の通り、人事院でもって給与制度を定める建前になっております。そこで人事院から、御案内の通り、毎年物価の高騰、その他を理由としまして、給与改定の勧告がございますけれども、給与制度そのものとして、大学、高等学校、小中学校という三本建の給与体系がございますが、今申し上げました通り、本質的に教師という立場そのものを、国家的に、社会的に、国民的立場で高く評価する方法は、人事院に頼むほかにないのであります。ですけれども、今日人事院の立場から考えられまする場合、想像するに、裁判官や検事あるいは大公使等が、戦前に比べましても低かったものが今高いのですけれども、それを少なくとも同じにしようとするならば、最高峰に位するところの国立大学の学長が、認証官という取り扱いによって給与が格段に引き上げられるということがあって、それに続いて、人事院の勧告の考慮がなされるはずであります。従って、そういう、いわばきっかけを与える意味において、小中、高、大学全部の教師の社会的な評価、国民的な評価を高めるためのきっかけにいたしたいというのが、本質的なこの法案のねらいでございます。いわば、通俗に申し上げれば、教師の一般的地位向上、処遇改善のための吸い上げポンプみたようなものでございます。
 七大学だけをそうしたとおっしゃいますが、これは総理からもお答え申し上げました通り、各学部に博士課程の大学院を持っておりますというその立場を特に考慮しまして、全部の七十二国立大学の中から、これを選んだというにとどまるのであります。新制大学といえども、三十八年度予算で御審議願っておりまするように、新制大学にも修士課程の大学院を置くということを考えておるのでありますが、七つの大学、なかんずく東京、京都等が、九十年ないし八十年の歴史をもって積み重ねられて今の段階まできているのですけれども、新制大学はまだわずかに二十年足らず、ですから、だんだんと年を追って内容が充実していきまするならば、当然この七大学と同様の地位に立つことも考えられるわけでありまして、要は、今としては七大学を選ぶことが妥当である、こういうことでございます。
 従って、大学を、新制大学と旧制大学、あるいは言い方を変えれば、博士課程を持っておる大学と、大学そのものとして差別しようなどという、山中さんの御指摘の学校教育法にもとるような考えであるはずがございません。むしろ、学校教育法の趣旨に沿っていきたいという課題の現われであると御了承いただきたいと思います。
 さらに、一般待遇改善との関係はどうだというお尋ねでありましたが、第一の問題に関連してすでに申し上げましたように、すなわち、教師全体の処遇の改善につながる課題だ、かように期待をいたしておるということを申し上げて、このお尋ねに対するお答えにしたいと思います。
 大学制度についての今後に対する一般的、全面的な基本態度はどうだというお尋ねでございますが、現行の大学制度を本質的にどうしようという考えとは全然関係ございません。現行のままの状態において処遇の改善に資したい、こういうことでございます。
 いろいろ学長さんがおきらいになるようなお話等が引用されましたが、あれは少してれくさがっていらっしゃるのじゃないかと私は想像しておるのであります。問題の内容をよく御承知いただきますれば、心から御賛成いただけるものと信じております。(拍手)
○副議長(原健三郎君) ただいまの文部大臣の答弁中、もし不穏当な言辞があれば、速記録を取り調べの上、適当の処置をとることといたします。
 これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
○副議長(原健三郎君) 本日は、これにて散会いたします。
   午後四時二十五分散会
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