第046回国会 法務委員会 第22号
昭和三十九年四月三日(金曜日)
   午前十時二十七分開議
 出席委員
   委員長 濱野 清吾君
   理事 鍛冶 良作君 理事 唐澤 俊樹君
   理事 小島 徹三君 理事 三田村武夫君
   理事 坂本 泰良君 理事 細迫 兼光君
   理事 横山 利秋君
      大竹 太郎君    亀山 孝一君
      坂村 吉正君    四宮 久吉君
      田村 良平君    千葉 三郎君
      服部 安司君    古川 丈吉君
      赤松  勇君    田中織之進君
      畑   和君    松井  誠君
      竹谷源太郎君    志賀 義雄君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 賀屋 興宣君
 出席政府委員
        警  視  監
        (警察庁刑事局
        長)      日原 正雄君
        警  視  監
        (警察庁警備局
        長)      後藤田正晴君
        検     事
        (刑事局長)  竹内 壽平君
        法務事務官
        (矯正局長)  大澤 一郎君
        法務事務官
        (人権擁護局
        長)      鈴木信次郎君
        法務事務官
        (入国管理局
        長)      小川清四郎君
        検     事
        (入国管理局次
        長)      富田 正典君
        労働基準監督官
        (労働基準局
        長)      村上 茂利君
 委員外の出席者
        運輸事務官
        (自動車局業務
        部旅客課長)  山上 孝史君
    ―――――――――――――
四月三日
 委員松井政吉君辞任につき、その補欠として赤
 松勇君が議長の指名で委員に選任された。
同日
 委員赤松勇君辞任につき、その補欠として松井
 政吉君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 法務行政及び検察行政に関する件
 人権擁護に関する件
     ――――◇―――――
○三田村委員長代理 これより会議を開きます。
 本日は委員長が所用のため出席がおくれますので、その指名により私が委員長の職務を行ないます。
 法務行政、検察行政及び人権擁護に関する件につき調査を進めます。
 質疑の申し出がありますのでこれを許します。赤松勇君。
○赤松委員 第一に法務大臣にお尋ねしたいのは、先般外務委員長並びに法務委員長のごあっせんによりまして、法務・外務の合同理事会を開きました。その席上で、東京、大阪で開かれます中国見本市に朝鮮民主主義人民共和国の貿易代表団三名を入国させてもらいたいという申し出について、これを検討してもらいたいという懇談会の結論でありました。法務大臣もこれを検討しようということで、懇談会は終わったわけでありますけれども、その後検討されたかどうか、検討されたとすればその結果はどうか、その検討の結果を報告してもらうと同時に、なぜそういうことになったのかという理由についても、この際お尋ねしておきたいと思います。
○賀屋国務大臣 ただいまのお尋ねでございますが、あのお話のありましたのは、私は、法務・外務連合理事会の席ではないと思うのでございます。有志の議員の方と御懇談申し上げた、こういうふうに私は了解いたします。それと、あれは中共見本市の問題ではなくて、私もよくわかりませんからお尋ねしましたら、それと違う見本市の問題だというようなお話でございました。
 それで、それ以後検討を続けておりますが、いままで先例もございませんし、どうも困難なようでございますが、まだ最後の結論にまで到達いたしておりません。
○赤松委員 最後の結論に到達していないというお話でございますから、私は、さらに御検討を願うことにいたしまして、この点につきましては質問を留保さしていただきたいと思いますが、特に法務大臣にお願いしておきたいことは、あの懇談会の席上、私からも朝鮮民主主義人民共和国と日本との間の貿易の現在高及び将来性等につきましていろいろ申し上げました。今日私が言うまでもなく、朝鮮との貿易がいかに重要であるかということは、言うまでもございません。これは単に私が強調するだけではなしに、日本の財界におきましても非常に強い要望があるわけでございます。貿易をやろうとすれば、やはり技術団の相互の交換によってこまかい技術上の問題について双方の検討が行なわれなければ正しい意味の貿易は成り立ちません。その意味におきましてぜひ御検討をお願いしたいと思います。
 第二にお尋ねしたいのは、このたび南漢展中国代表が日本に来る。そうして中国の見本市の準備も着々行なわれている。その代表団の団員の一人である呉学文氏の入国について、政府のほうはこれを許可しなかった。一体どういう理由で許可しなかったのであるか、この点お尋ねいたします。
○賀屋国務大臣 呉学文氏は前にも日本に来たことがあるのであります。そのときに入国の目的以外の行動がございまして、そのときの言動が入国の条件に相当違反しておりまして、国際礼譲から申しましても非常に不穏当な言動がございまして、好ましからざる人と見ております。これは昨年一度入国の話がございまして、そのときにもお断わりしたのでございます。それと同じわけでございます。
○赤松委員 私、よくわかりませんけれども、入国の条件というのは一体何でございますか。
○賀屋国務大臣 それは入国の目的以外の行動はしない、いわゆる政治的行動はしないというような意味でございます。
○赤松委員 政治的行動とは一体何ですか。
○賀屋国務大臣 それは常識で御判断になって、日本に来て日本の政治についていろいろ批判したり、どうこう影響を与えるような行動はしないということだと思います。
○赤松委員 日本の政治を批判したり、影響を与えることについて、これは入国禁止の条件になりますか、今後ともそういう態度をおとりになりますか。
○賀屋国務大臣 なります。
○赤松委員 しからば、たびたびアメリカの高官などが日本にやってまいりまして、やはり日本政府の行動について若干の批判をしたことも従来ございます。あるいはまた重大な影響を与えたこともあるわけであります。一体入国をする場合に条件を提示されまして、これこれの条件を承認するならば入国をさせる、そういうような手続をされておるのでございますか。
○賀屋国務大臣 そういうことは当然でございまして、場合によって、そういう危険のない、その行動が日本の利益に反しない場合、憂いがない場合には入国の条件をつけないのであります。そういうふうなおそれのある場合にはつける。呉学文氏の場合にはついておったのです。ところが結果は――政治的と申しましても、政治的の言動の内容によるわけでございます。
○赤松委員 その呉学文氏が前に入国した場合に条件がついておったと言いますけれども、その条件の内容は何ですか。
○富田政府委員 呉学文氏はたびたび入国しておりますが、この際につけておる条件と申しまするものは、初めから手続を一応御説明申し上げませんと御理解が困難かと思いますので、手続を説明させていただきますが、大体外国人が入国する場合には、有効な旅券、査証で入ってくるということになっております。ただ未承認国につきましては、その外国の旅券を認めることができませんので、もよりの在外公館に出頭していただきまして、そこで渡航証明書というものを発給いたすわけでございます。その渡航証明書というものが査証と旅券にかわるものとしてわれわれ取り扱っておるわけでございます。
 そこで、一般に入国にあたりましては、第一次の関門として査証という関門がございます。それから第二次の関門といたしましてこれが日本に上陸する際に入国を決定する、これは国内官庁の権限でございます。査証は外務省の権限、こういうぐあいに分かれております。この査証の段階におきましては、全く自由な立場で入国を許すか許さないか、査証を与えるか与えないかということをきめることができるわけでございます。その際に、その本人がこういうことをするおそれがある、そういうようなことをさせないような約束を――どういう約束をさせるかということは全くフリーでございまして、そういう意味でいろいろな約束をしてもらっておるわけでございますが、現在のところ中共からの渡航者につきましては、いわゆるスポンサーと申しますか、保証団体が、入国目的以外の活動はさせないとか、あるいは内政干渉にわたるような言動はさせないとかいう約束を保証団体にしてもらっておるわけでございます。大体こういう状況でございます。
○赤松委員 あなたがおっしゃるように香港でビザを取ってそうして入るわけであります。これは外務省の仕事であるということも私よく存じております。ただ私、質問する場合に、私の立場をはっきりしておかなければならぬのは、私は日本人であります。そして日本の国会に席を置いております。日本国は独立国である。したがって、日本国が外国人の入出国について日本政府の独立した判断を行なうということは、もとより当然でありますが、こういう点につきましては、私は外国人ではございませんから、日本人の立場からこの問題を論じておるのでありますから、誤解のないようにしていただきたいということが第一点。
 第二点は、出入国する場合には、あるいは旅券、査証の許可を与える場合には、私は、そのときの政府の御都合主義の政治判断によって行なわれてはいけないと思います。賀屋さんの先ほどの御説明は、非常に抽象的な理由でもって説明されておりましたが、あくまでも日本国憲法及び日本国の法律に基づいて判断されるべき問題である、私はこういうふうに考えております。すなわち、私は日本人である、そうしてそういう主体的な立場からこの問題を考えてみる。第二は法律に基づいて判断をするということ、この二点をまず明らかにしながら質問を継続したいと思います。
 そこで、あなたがいまおっしゃいました呉学文氏が前にやってまいります場合に条件をつけた。ところがそのつけた条件を裏切った、裏切った行動があったから今度は許可しなかったのだ。こういうお話でございますけれども、どういう条件がつけられたのでありますか。その条件の内容を具体的にひとつ示していただきたい。
○富田政府委員 その条件を申し上げる前に、もう一言先ほどの説明不十分な点を申し上げさせていただきたいと思いますが、国交未回復の共産圏からの入国にあたりましては――一般の外国人の入国の場合におきましても、日本の利益というものを念頭に置いて入国の査証を与えるか与えないかということを考慮しておるわけでございますが、特に未承認国の場合におきましては、政治体制も違いますし、対立政権もあるわけでありますから、特に慎重を期しておるわけでございます。
  〔三田村委員長代理退席、委員長着席〕
 そこで、どういう考え方をとっておるかと申しますと、そういうようないろいろ内政、外交上の問題が一般の自由圏の場合と異なり――自由圏と申しますか、国交のある国とは異なりますので、日本国の貿易、経済の発展に非常にプラスになる場合であるとか、純粋な文化交流であるとか、あるいはスポーツであるとか、そういう日本国家の利益になるような場合に入国を認める、その他の場合は原則としてこれを認めないという立場で、未承認国との間の査証なり入国の問題を規制しているわけでございます。したがいまして、入国する場合にいたしましても、入国の目的に違反して政治的な言動をされることは御遠慮願いたいということを申すのは当然だろうと思います。また、日本政府並びに日本と友好関係にある特定の政府を誹謗するような言動も、これはしていただいては困るということは申し上げて、そのとおり行動していただく。それが御本人に誓約していただけないので、スポンサーの方にしていただく。どういう条件をつけたかという御質問でございますが、内政干渉にわたるような言動はさせません、また入国目的以外の活動はさせませんという誓約がスポンサーのほうからされておるわけでございます。
○赤松委員 許可基準の判断については、その論拠については、私、またあとで御質問したいと思います。いま、特殊な外交関係にあるのでスポンサーを通して条件をつけた、こういう答弁でした。しからばそのスポンサーは、どういうスポンサーであるか、そのときにつけられました条件、ただ内政干渉ということだけでは私は不十分だと思うのですが、その内政干渉とは一体どういうものであるか。そしてそのつけられた条件を呉学文氏が裏切ったとすれば、具体的にはそれが一体どういう内政干渉的な政治行動であったか、こういう点をひとつ明らかにしていただきたいと思うのです。これは大臣もきのう談話を出されたのでございまして、大臣が御答弁できれば大臣にしていただく。もし大臣が、きのうの談話は、自分の主観的な考えをちょっと述べただけで、別に自分はよく法律のことをわきまえていないんだけれども、まあ政治的に判断してちょっとしゃべっただけだ、こうおっしゃるならば、私は入管局長にそれを明らかにしてもらいたい、こう思います。
○賀屋国務大臣 談話は、別に私がそれと違った考えを持っておるわけじゃないので、談話のとおりでございます。それで、日本の国内の政治をどっちに引っぱっていこうかという考え方、たとえば安保条約というものはいけないものだ、あんなものはやめてしまえ、こういうふうなほうに引っぱっていかれるということは内政干渉だ、そういうことはやってもらいたくない。それで、何をやったか言えというお話でございますが、それは行政の認定でございまして、いつどこでどういう行動をしたということは申し上げたくないのであります。
○赤松委員 入管局長に聞きますけれども、先ほどあなたがおっしゃいましたスポンサーとは一体どこか、そのときに付せられた条件とは、具体的に内政干渉とは一体何かということをひとつ御説明願いたいと思います。
○富田政府委員 たとえば昭和三十六年に世界宗教者平和会議で入ってまいりました場合は、世界宗教者平和会議の……
○赤松委員 いや、呉学文の場合。
○富田政府委員 一般的に、たとえば総評が呼びます場合には、総評の……
○赤松委員 ちょっとよく聞いておってください。私があなたに申し上げたのは、あなたは先ほど、特殊な外交関係にあるので、したがって、スポンサーに対して条件をつけるのだ、こうおっしゃった。この前、スポンサーを通してその条件をつけたわけです。そしたら呉学文氏が入ってきて、その条件に反するような行動をとったから、今度は入国が認められない、こういう判断なんですね。そこで、その当時のスポンサーとは一体どの団体なんだ、あるいは個人か団体か、個人ならばだれ、団体ならばどの団体か、そのときに付された条件というのは何か、私はこう聞いておるのです。
○富田政府委員 総評が呼んだ場合もございます。その場合には総評のほうの……
○赤松委員 貿易代表団が日本に来る、南漢宸氏以下その他に対しては入国を許可した。その中の一人については許可できない。その理由は、前回許可はしたけれども、その許可をした場合に付した条件を裏切ったから、したがって入国は認められない。これば国際的に非常に重大な問題なのです。それをたとえばというようなことは困る。あるいは総評が呼んだ場合というような仮定論では困る。具体的に、前回呉学文氏が日本に入ったときにつけたその条件とは一体何だ、相手のスポンサーは一体だれだ、そのことを私は聞いているのだ。国際的な重大な問題ですよ。いいかげんな答弁をしてもらっては困る。
○富田政府委員 過去に世界宗教者平和会議が呼んだことがございます。呉学文を含んだ中共の一行を呼んだことがございます。その場合には世界宗教者平和会議の事務局長でございましたか、責任者の名前でそういう誓約書が出されております。それから原水禁のときに、やはり呉学文を含んだ一行を呼んだことがございます。その場合には原水禁の安井郁氏の名前で誓約書が出されております。そういう状況であります。
○赤松委員 どうもわからないな。過去にというようなことを言っているのじゃなくて、今度は現実に入国を禁止したのだ。法務大臣の談話にあるように、それは前に入国を許可したら、そのときに呉学文氏が国内において日本の国の利益に反するような行動をとったから今度は許可することはできない、こう言った。しからば過去じゃなしに、今度禁止をさしたその具体的な事例があるはずなんです。具体的な事実なしにこれを禁止するわけはないでございましょう。だから具体的な事実をあげなさいと私は言っている。何も無理な質問をしているわけじゃない。
○濱野委員長 赤松君、論旨をただすためにもう一ぺん委員長から質問しますけれども、過去の事実でわが国で困るようなそういう事項があったのじゃないかということを聞いているのでしょう。それは何だということと、その当時のスポンサーはだれだということでしょう。それからもう一つは、今回はどういう理由で禁止しているんだか、それを明らかにせいということなのでしょう。入管局長どうです、この二点について。
○小川政府委員 それでは今回の問題につきまして、招請者とその誓約をお答えいたします。
 今回の場合におきましては、中国経済貿易展覧会協力会の理事長宿谷栄一氏から賀屋法務大臣あてに申請書が出ておるわけでございまして、その申請書の内容は、来日の目的、滞在期間、これは予定の期間でございます。それから滞在中の行動に関する保証が述べられております。その滞在中の行動に関する保証を読み上げてみますと、第一が「わが国の法令を遵守させる。」「来日目的に従って行動し、政治活動はさせない。」等のことでございます。さらに別に宿谷氏の誓約書が入っておりまして、その内容は「以下の事項について誓約いたします。」として、第一番が「在日中の行動は入国目的である中国経済貿易展覧会開催に必要な活動に限らせる。」第二番目は「特定の政府またはその政策を誹謗する言動はさせない。」第三番目は「別紙により提出した日程どおりに行動させ、もし変更のある場合は四十八時間以内に法務大臣に届ける」大体そういう点、その他滞在の費用の保証等もございますが、これは省略さしていただきます。そういたしまして、従来ともこういった趣旨のスポンサーからの誓約書をちょうだいいたしておるわけでございます。現物をただいま持ち合わせませんが、保証の内容等につきましては大体この趣旨で従来ともやっておると考えております。
○赤松委員 何度質問しても答弁が的はずれで困るのですが、私の聞いているのは今回のことを聞いているのじゃないんですよ。今回はだめだという不許可の決定をされたので、今回のことを私は聞いているのでなしに、今回不許可になったその理由として、過去に条件を付したけれども、その条件どおり実行しなかった、条件を裏切った、約束を破った。当時条件を付した約束とは一体何だ、そしてそのスポンサーといわれる団体はどういう団体であったのか、つまり今度入国を禁止された呉学文氏の過去の具体的な行動の事実をあげてもらいたい。
○賀屋国務大臣 事務のことがありますからあとから訂正するかもしれませんが、私がいまもらっている資料で、いま問題になっている点を申し上げてみましよう。
 それば昭和三十二年八月にその問題がありましたときに、誓約の関係は、入国目的以外の活動をしないように取り計らい、事故その他一切の起こり得る責任を負う、労働組合との懇談等、大会の目的以外の行動はしない旨の補足誓約、誓約者は、原水協理事長安井郁さんですか、こうなっております。
 その次に同じ年の十二月にございます。その誓約の内容は、入国目的以外の活動をなさしめぬこと、入国申請書に記載された入国目的は、「中国人俘虜殉難者遺骨送還に対する感謝、両国人道事業の協力、日中親善」とございます。誓約者は中国紅十字会代表団歓迎委員会会長大谷瑩潤でございます。
 その次が昭和三十五年七月でございますが、誓約の内容は、これは原水爆禁止世界大会参加であります。(一)入国目的以外の活動はさせない。(二)内政干渉にわたるがごとき政治的な言動は厳にこれを行なわせない。日予定以外の旅行はさせない。誓約者は原水協理事長安井郁。
 まだございますが、大体そういうふうなことであります。
○赤松委員 たいへんからだの御不自由な老躯をひっさげて御奮闘されておる法務大臣からいま年次別に承ったのでありますけれども、私の質問に対しては答えられていない。それは入国の目的以外の活動をしないという条件を付した。ところが入国の目的以外の活動をしたから、今度はあなたたちは、入国を許可しないという決定をされたわけです。そこで入国の目的以外の活動をしたという呉学文氏の具体的な事実をここであげてもらいたいということを先ほどから申し上げているのです。
 これは大臣はもうお年寄りで、足が痛くて、見るに忍びぬ。後輩として先輩を尊敬しますから、あなたには、ひとつ答弁してくれ、こう言うから、あとはあなたでなしに入管の局長でいいから、局長に答弁さしてください。
○濱野委員長 人情に厚いことはよくわかるが、大臣、御答弁になったらどうです。
○賀屋国務大臣 おことばがございますのでお答え申し上げます。先ほど申し上げましたように、どこの場所でどう言ったということを一々お答えするのはどうも行政措置として適当でないと思います。つまり日本の政治動向を左右する、たとえば安保条約というものはけしからぬものだ、極東の平和に害があるからいかぬ、こういうことを言われたら非常に困りますが、そういうような類似の行動があったとわれわれは認定しております。それだから早くあんなものはやめていくというのが日本国民としてとるべき方法だ。池田内閣はけしからぬ。アメリカの意思に従属して、日本は独立国の体をなしていない。それに従ってやるのはけしからぬ。二つの中国を認めるという陰謀をしている。こういうことがあってはこれは内政干渉であって、来た目的に反すると私は思う。これは私が一つの例として申し上げて、前に申し上げたように、呉学文民がどういうことを言ったということを申し上げるのではありませんが、かような似たようなことがどうもあるとわれわれは認定いたしまして、これはお断わりする、こういう次第でございます。
○赤松委員 いまの法務大臣の答弁の中に、非常に重大な民主主義の基本に関する問題が含まれていると思うのです。これは私はあとで質問したいと思うのですが、重要性にかんがみましてちょっと指摘をしておきたいのです。たとえば日本の場合は、言うまでもなく政党政治であります。憲法によって代議制度がつくられまして、そして国会が成立をしている。そういう場合に、たとえばアメリカ人が日本にやってまいりまして社会党の政策を批判することだってある。それから中国人が来て自民党の政策を批判することだってある。問題はそんなところにあるのではなしに、そもそも賀屋さんはその当時しばらく身を退いておられました。どういう理由か知りませんが、身を退いておられまして、御存じないと思うのでありますけれども、ここに私は昭和二十六年十一月十三日の、旅券法が制定をされます当時の国会の議事録も持ってきております。そしてそのときの政府答弁が、いまあなたの答弁と著しく違っておるということを指摘せざるを得ないのであります。もし安保条約そのものをすべて批判することができないということになりまするならば、これは明らかに独裁政治でありまして、外国の、たとえばアメリカの新聞評論家あるいは軍事評論家が日本に参りまして、日本の軍事政策に対して批判をしているじゃありませんか。それに対して入国を禁止しておりますか。先ほど私が言ったように、私の立場ば日本人である。私は日本の国会に席を置いておる者だ。したがって、出入国をどのようにするかということは、これは日本人の自由であります。日本政府あるいは日本の国家の自由であります。しかしその場合に、少なくともそれは一党や一政府の自由裁量で、政策的にやってはいけない。憲法があり、法律があるのでありますから、憲法や法律に基づいてやらなければならぬ、私はこのように考えております。
 この問題はあとに回しまして、そこでいま非常に抽象的な御答弁がありました。たとえば安保条約云々というようなことがありましたけれども、それは呉学文氏がどこでどのような行動をとり、発言をしたか。それをひとつ具体的に示していただきたい。
○賀屋国務大臣 それはたびたび申し上げますように、行政の認定でございまして、一々具体的に申し述べることは適当でないと思いますから、申し述べないことにいたします。
○赤松委員 それは一つの行政の措置であっても、国会は国政調査の発動権を持っているのだ。国会で質問したら、当然いま政治問題として国際的に重要な問題になっておるのであるから、私は立法府の調査権に基づいて質問をしているのだから、これに対して行政府が答弁をするのは当然じゃないか。あなたは国会を侮辱するのか、国会を軽視するのか。
○賀屋国務大臣 ただいままで御答弁申し上げたことで御了承を願いたいと思います。
  〔発言する者多し〕
○赤松委員 やじでいまの答弁はさっぱりわからぬ。
○濱野委員長 それは皆さんが騒いでいるからだ。静粛に願います。
○赤松委員 昭和二十六年十一月十三日、当時旅券法が国会に上程をされまして、そのときに質疑応答がございました。そこで「第十三条の五号がやはり私は問題になると思うのであります。というのは「外務大臣において、著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当の理由」とありますが、そのときの外務大臣の属する政権の性質によって、自分の政権と相いれないような政策を持っている人の、海外渡航を許さないというような政治的な制限が出て来るのではないかと思う」「「著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当の理由」というのは一体どういうのですか。」これに対して当時の政府の答弁は、「多量の金塊、貨幣、そういうものを不法に国外に持ち出そうとする者、または麻薬を密輸入する目的をもって海外渡航を計画する者、国内に暴動を起させる目的で、その連絡または準備のために海外渡航をしようとする者、または国内の治安を害するような破壊的な文書、図書を国内に持ち帰る企図をもって渡航しようとする者、拳銃その他銃砲、火薬類を不法に国内に持ち帰ることを渡航の目的とする者、」というように具体的に例を示しておるわけであります。この旅券法の精神というものは、もちろんいま中国と日本との国交は未回復ではありますけれども、少なくとも入国を許可するかしないかという場合の法律的な根拠になってしかるべきだ、こういうふうに私は思うわけであります。しからば、呉学文氏が日本にやってまいりまして、いま法務大臣は、何か安保条約に反対したからだめなのだ、そんなことは理由になりません。当時の政府答弁におきましても、そんなことは理由にならない。そこで具体的に、呉学文氏がいつ、どこで、どのような、国家の利益に反するような行動をとったのであるか。すなわち、このスポンサーとの間に約束をされた条件を裏切るような行動をとったのか。その具体的事実をあげてもらいたい。
○賀屋国務大臣 いまお読み上げになりましたが、私不調法でございますから、ちょうどその当時の国会にも出ておりませんで、その政府答弁につきましては何とも申し上げかねまするが、質問応答というものは、全体を見ないとわかりませんので、部分的にそれがどうだからといってすぐ判断はできません。と同時に、ただいまのは日本人が外国に出ます場合のことではないかと拝承いたしまして、それがすぐ入国の場合にも同じ理論でいくか、相当そこには差があるのではないかと思います。
○赤松委員 もちろんそうです。いまメモに書かれたように、旅券法はいまあなたがおっしゃったような趣旨でつくられておる。しかし、ここでこれを規制する場合の具体的な理由をあげて当時政府は答弁しておられる。私は、さっきから申し上げているように、呉学文氏が前に来て、つけた条件を裏切るような行動をとったから今度は国内に入れないのだ、こういうように法務大臣が決定をされた。したがって、その具体的な事実をここで示してもらいたい。こういうことをさっきから何度も要求しているのです。
○賀屋国務大臣 その具体的な事実につきましては、ただいままで申し上げましたように、入るときにはちゃんと、その来た当初の目的以外にはやらない、いろいろな外国人が来まして、いろいろなことを言っているということがございますが、それを一々は申し上げないほうが適当だと思うので申し上げない、先ほどからお答えをいたしておる次第でございます。
○赤松委員 どうも法務大臣は、計数や勘定をやるのは、長く大蔵大臣をやっておられたので適当だと思うのですけれども、法務大臣としては、どうも法律的根拠に基づいての答弁がない。この点は大体私と五十歩百歩だと思うのです。どうもあなたのお話を聞いていると、非常に政治的で、たとえば御隠居さんのいろり論議みたいな感じがしまして、おじいさんに何か昔話を聞かされているような感じがするわけであります。どうもこれでは近代政治にふさわしくないと思うのであります。
 そこで、論理的に御答弁願いたいと思うのですが、これは事務当局でよろしい。もう賀屋法務大臣ではあれ以上の答弁は出てこないので、私どもちょっとあきれるというよりもまごついておるわけでありますけれども、もともとこの人はあんまり法務大臣はえてのほうではない。むしろ国務大臣として就任をされたと思うのであります。そこで事務当局に聞きたいのは、先ほど来私は何度も言っておるように、呉学文氏が、そのスポンサーにつけた条件を裏切った具体的な事実は一体何であったのか、このことをひとつ明らかにしてもらいたい。私は国会の調査権の立場からこれを行政府に要求します。
○富田政府委員 外国人の入国にあたりまして査証を拒否いたしました場合に、どういう理由で査証を拒否したかということを当該国の官憲あたりからいろいろ聞かれましても、抗議干渉がございましても、これを排除するというのが国際慣例上の通念になっているくらいの自由裁量に属するものでございます。本件につきまして法務大臣が、具体的にどういう言動をしたかという言明を避けられております以上、事務当局といたしましても、もちろんそこまで立ち入って申し上げることはできませんが、やはり池田内閣あるいは日本政府をいろいろ誹謗しておるということがあるといたしますれば、そういうような、お客さんとして来日して、日本の政府を誹謗するような方を、そんなやつをどうして入れるのだという声も、私はむしろ多いのじゃないかと思います。そういうような意味合いにおきまして、抽象的に、そういう言動があったということだけで入国を拒否する。具体的に、いつ、どこで、どうしたということを申し上げなくても、それだけで拒否しても差しつかえないと考えております。
○赤松委員 これは自由裁量の問題ではない。いまの答弁は全く非論理的で、誹謗を行なったとしたら、こういうように仮定論議をされておるわけだ。国際間の、国と国との間の慣例はあなたがおっしゃったとおりかもわからぬ。しかし、ここは日本の国会です。国会が行政府に対して質問をしているのだから、この点はぜひ日本人の問題として明らかにしてもらいたい。誹謗したとすればということをおっしゃる。誹謗したとすればということは仮定です。具体的に、どこで、どのように誹謗したのですか、いかがですか。
○濱野委員長 赤松君、あなたに申し上げますが、大臣は、適当でないと、こうおっしゃるのですから、何回聞いても同じですよ。
○赤松委員 大臣の話は、おじいさんのいろり談話みたいなもので、私は聞く勇気がないと言うのですよ。だから事務当局のほうから、ひとつ法律的根拠に基づいて、これこれの行動をとったので拒否したのだ、あなた勇気を持ってはっきり言いなさい。これは疑惑に包まれている。中国と日本との間の重大問題になっている。だからこの際、日本政府は、理由があったとすれば、その理由を堂々と述べたらいいじゃないか、何でちゅうちょしている。だれがこわいのですか。なぜそれを明らかにしないのですか。呉学文民が来て、これが反国家的な行動をやった、日本の国のためにならないのだ、こう池田内閣は判断したら、それを明らかにしたらいいじゃありませんか。どうして明らかにできないのか。そんなことは言えません、国際慣例上言わぬことになっております。それなら日本の国会で明らかにしたらいいじゃないですか。どうしてそれができないか、なぜ賀屋さん、できないのですか。勇気を持ってやりなさい。
○賀屋国務大臣 別に勇気があるとか、ないとかいう問題ではないのです。私は法務大臣にあまり向かないようなお話がありましたが、それは私も法律をよく知っておるとかということは決して申しませんが、その程度でございます。よくあるとかないとかということは問題ではない。言わないほうが国際慣例上適当と判断するのであります。
○赤松委員 その理由を秘して、そうして入国を不許可にしたほうがもっと国際的に重大な影響を与えるのです。
○賀屋国務大臣 それは国際的にたくさん例があるのでございます。たとえばソビエトが日本人の入国を許可しないこともあります。むしろ、そのほうが普通じゃないでしょうか。
○赤松委員 私は国際的な例を聞いているのじゃないのです。あなたはきのう談話を出された。その談話に対して私自身が質問しているのです。だから一般的な例を聞いているのではないのです。呉学文氏が前に来た、そうして反国家的な行動をとった。それならどういう反国家的な行動をとったのか。これはいわば今後外国人の出入国に関する一つの規制の基準になる問題だ、根拠になる問題だ。したがって、これを明らかにするということは法務行政上当然なことじゃありませんか。
○賀屋国務大臣 談話で発表しましたり、先刻御答弁申し上げましたことで御了承を願います。
○赤松委員 ちょっと待ってください。
○濱野委員長 暫時休憩します。
   午前十一時十二分休憩
     ――――◇―――――
   午前十一時十三分開議
○濱野委員長 引き続き会議を開きます。赤松君。
○赤松委員 今回呉学文氏が、日中間の貿易を促進する意味におきまして、いわば日本の利益にもなり、中国の利益にもなる。双方の利益に役立つ貿易促進のために、しかも招いた人は石橋湛山氏を会長として、日本の多くの有力なる財界指導者諸君が招いておるわけでございます。その中の随員の一人である呉学文氏の入国が拒否された。しかも、その理由を私が質問いたしましても理由を明らかにしない。私は、国際関係から申しましてもきわめて遺憾なできごとであると思うのです。私が何と聞きましても、その理由を政府のほうは明らかにしない。そこで私は質問を留保しておきますが、しかしながら、こういう不明朗な、理由を明らかにしないで、ある意味でいえば理不尽な形において、日中双方の貿易促進のために招こうとする代表団の一員の入国を不許可にしたということはまことに遺憾にたえません。したがって私は、今度の措置は法務当局としても、池田内閣としても、外交上きわめて重大な誤りをおかしているということを申し上げて、私の質問を留保しておきたいと思います。
○賀屋国務大臣 昨年呉学文民に対しましては、別の理由で入国の話がありましたときに、こちらはお断わりしておるのであります。そういうことは私は関係者にはおわかりになっているのではないか。それをただ入れろ、入れろとおっしゃるけれども、また国際礼譲からいっていかがなものであるか、これもお考え願わなければならぬ点でございます。
○志賀委員 ただいまの問題について、関連質問を少しばかりやらせていただきますと、呉学文氏が日本の政府及び日本の政治に対して誹謗をやった、こういうことで入国を拒否されたということになっておるのでありますが、その事実はだれが大臣に報告したのでございましょう。こういう事実があるといろいろ言われた内容は別として、そういうことの報告はどこから出たのでしょうか。
○賀屋国務大臣 これは法務省の事務当局からでございます。
○志賀委員 入国管理局で直接集められたのですか、またはその他の法務省の官庁で集められたのですか、それはどうなんですか。
○賀屋国務大臣 それは法務省のどこからということは一々言えません。いろんなところからでございます。
○志賀委員 私どもの聞き及ぶところでは、公安調査庁からだということになっておりますが、これは歴代の法務大臣には一度ずつ私が御注意申し上げておることでございます。あまり公安調査庁の報告を信頼なさると、あとで困ることが起きるのです。
  〔発言する者あり〕
そうじゃない。岸内閣があまり信用し過ぎたからああいうていたらくになった。あのときも小島法務大臣にちゃんと警告してあった。そのあとは植木法務大臣、中垣法務大臣にも会って、公安調査庁という役所だけは、その報告を信頼すると、あとでとんだ目にあいますよということを申し上げた。ただ、あなたはけがをなさっておって、その機会がなかったので、まだその点を御忠告申し上げておらなかった。きょうここであらかじめ申し上げておくのですが、この公安調査庁が、呉学文君がこれまでたびたび来ておりますときに、小さい会合にまで中に入れろと手を伸ばして情報を収集する、こういうことをやっているではないか。一種のスパイ活動だ。スパイ活動というものは事実を誇大に報告しがちなものであります。たとえば安保のときのことがいま出ましたが、そのときに、たとえばこの国会の焼き討ちをデモ隊がやるというようなうわさが立った。それでそこの中央にある鉄のとびらをおろそうとして衆議院の事務当局がたいへんあわてた。いまあそこはあき地になっておりますが、あそこのバラック建ての第一議員会館の中ではホースを引き回すやら大騒ぎでした。ところが、ここの鉄のとびらは、長年あけたてしたことがないものだから、さびついちゃって動かなかったことがあります。そういう大騒ぎがあったほかに、国会放火事件というのは共産党がやったというあれでありまして、その情報を提供したのが、私どもの聞き及ぶところでは公安調査庁であります。公安調査庁というところがどんなに変なところかは私自身も経験しております。公安調査庁に行きまして中に入ろうとしたら、玄関の物陰から、あいた部屋が一つあるそこから、私の写真をとるのですね。そこで私が大喝したら逃げ出した。逃げ場を失って窓から飛び出して外へ逃げるので、とうとうそこでつかまえたことがあります。公安調査官が共産党の議員につかまるなんて前代未聞のことです。そういう非常識な役所の報告は、これは法務大臣、御信用なさるととんでもないことになる。呉学文君がやったということは、これは別にスパイ活動をするわけでもない。政府に不利な言動をするわけでもない。先ほど富田次長は、ああいう者は入れるなという意見もあるからと言われるが、もしそれに従って今度入れられなかったとしたら、それは日本国の法律に従うのではなくて、一部の者のゆさぶり、あるいは牽制工作に引かれるということになりまして、これは日本の政府の官庁としては非常に常識を逸した行動と言わなければなりません。実際公安調査庁というところは、私が質問するときに両国の花火を見に行って帰られなかったことさえあるのです。もうきょうはないだろうと思って途中で逃げて、そうして帰ってきて、当時の公安調査庁長官は酒を飲んでいるものだからここへ出られない。次長が出てきてその場をとりつくろったこともあります。花村法務大臣のころであります。そういう役所でありますから、一々申し上げる必要はないとかなんとか情報を言われる前に、事実を言われる前に、こういう公安調査庁の言うことなんかを取り上げられては、今後の日本の国政を外国との関係の間で発展させていく上に、かえって非常に不利な場合が多いのでございます。そういう点はあまり御信用なさらず、賀屋法務大臣といえば、もうずいぶん長い大臣の経歴をお持ちですから、そういうことに動ぜずに事を判断して政治的に配慮をしていただきたいと思うのです。あらかじめ公安調査庁というものはそういうものだから、これはまさか入管事務所でもって一々スパイを出してお調べになったのじゃないのだから、そういうことをやるのは、法務省の事務当局といえば公安調査庁以外にありません。検察庁もまさかそういうことをするわけではありませんから、そういう点が御注意願いたいと思うのであります。
 そこで、こういうことを申し上げた上で、この問題はただに呉学文君だけのことではなくて、今度の中国の貿易展覧会の代表団の入国のときについても、羽田到着以来いろいろ問題があったその一つであって、決してこれだけが入国を拒否されたから不当だという問題でないということを申し上げなければなりませんが、この中国経済貿易展の張化東団長が羽田に参りましたときに、持ってきたトランクを調べるという問題が起こった。先方では外交官旅券を示したのでありますが、それに対して無理やりに検査をしようとし、見せて悪いものではないけれども、自分はこういうふうに外交官旅券を持っておる、こう団長が言ったのに、翌日までそのトランクを置いた。そうして翌日になって返したということがありますが、いままでそういうことは前例がないのであります。たとえば日本から行く人に対して、中国の国境の香港から入る場合にも、そういうふうな取り扱いはしたことはございません。これは石橋君が行かれても松村君が行かれても同じことであります。どうしてこういうことをされるのか、この点について。
○賀屋国務大臣 税関がどういうことをいたしましたか存じませんから、その点は私からお答えを申し上げられません。もし必要があれば大蔵当局に……。
 いまの公安調査庁のことにつきましていろいろ御意見、御批判また御忠告をいただきましたが、私は公安調査庁というものも法務省の一つの手足として信頼をしております。信頼をいたしておりますが、私も相当年寄りでございまして、経験は薄いのですが、信頼はしているからといって、言ったことをみんな信頼するか、多少は自分で、多少じゃない、ほんとうは自分で一生懸命考えているつもりでして、それにつきましてどのくらいウエートを置くか、これはこういう推察でやっているから違ってはいないか、これはどうも確からしいと、これは自分なりにいろいろ苦心はしております。ただ、役所としては私は誠実にやっておることを信頼をいたしております。
○志賀(義)委員 まだ中華人民共和国との国交は回復されておりませんけれども、向こうから外交官旅券を出してきたときには、将来国交回復することを前提として常識上それ相当の儀礼をもって接するのが当然だと思うのであります。こういう非常に非常識なことがありますから、これは大臣としても今後ないようにしていただかなければならないと思いますが、そういう点はいかがでしょう。
○賀屋国務大臣 事態を存じませんので、これは大蔵省のことでございますので、外交関係がありますから、御質問になりましたことをそちらに伝えまして意向をよく……。必要があればお答え申し上げたいと思います。
○志賀(義)委員 こういうことを手始めとして査証の問題についても非常に長引いておる。また日本から行く場合に、先方で査証が長引くというようなことはないわけでございまして、そこはやはり平等互恵という立場から、よしんば外交関係がまだ回復されていない、相互に承認していないという事態でも、査証問題などはすみやかにやるべきものでありますが、私はこういう点について今後は大臣が、ことに入管のほうのこともありますから、そういう点についてむしろ促進されることを希望したいと思うのでありますが、その点はいかがでしょうか。
○賀屋国務大臣 別に特に長引かすということはありませんが、そこがあちらには日本の存外公館もございませんし、いろいろ調べることもできないわけでございます。そこで香港にある総領事館でやっておるわけでございます。それは香港にありまして、中共国内にもないわけでございますから、いろいろ向こうは不便でございます。事実上の問題でございますから、故意におくらせる意思はございません。慎重に扱わなければならぬ場合もございましょう。
○志賀(義)委員 いままでの経過を見ますと、これは明らかに妨害あるいはいやがらせと見なければならないのは、今度中国側から展覧会をやるについて東京にいる内外記者団に対して展覧会をあらかじめ公開したい、こういうことがありましたときに、記者団への公開を中止させる策動が行なわれているのでありますが、これは大臣のほうでやられておるのですか、どこでやられておるのでしょうか。どこでも最初にその国民に対して展覧会を宣伝するために、よく見てもらうためには、まず記者団にあらかじめ見せるということはどこの国でも行なわれることです。またどこの展覧会や博覧会でも行なうことでありますが、それをしきりに妨害するという工作があったようでありまするが、その点大臣御存じでしょうか、またどこがやっておるのですか。
○賀屋国務大臣 だれが策動するのか、妨害するのか知りませんが、政府が策動とか、妨害というのじゃ、ちょっと御質問は私はどうかと思います。私どもは策動しております。妨害をしております。その意思でやっておりますということは、これは申し上げられません。また、そういうことはないのですから。これはやることは必要なことはやります。それがお気に入らぬ場合もございましょう。策動や妨害ということは決してない。それと同時に、いまの問題は私は存じませんが――私のほうでは存じません。
○志賀(義)委員 策動、妨害ということは、これは事実があるから言うのですが、これは別としても、じゃ、こういうことは進んで大臣としては、展覧会なんか内外の記者団に示すということは協力なさる御意思でございますか。
○賀屋国務大臣 何とも申し上げられません。事態を存じません。どこでどういう趣旨でどうやっておるのか、そういうことをしてぐあいが悪いのかいいのか、さっぱり存じませんから、ちょっとお答えできません。
○志賀(義)委員 こういうことは一般的なこととして私は当然政府としてもむしろ進んでやらせるべきことであろうと思うのであります。それからまた会場に貴賓室と申しますか、招待者用の室がありますが、これは工事があるというので、そこの工事をして、そこを使用することをわざわざどうも妨害しているような節もあるし、また四十本フィルムがあったうちの十二本禁止したばかりか、晴海会場に映画館を設けたところが、日本の規則によって風速六十メートル以上に耐える建物でないと、そういうものが見せられない。ところが四月、五月は、気象庁で調べてみても、いまだ風速二十メートル以上の風が吹いたことがない。それを六十メートルを打ち出してやる、こういうこともありました。一々いま申し上げましたような明らかな妨害になっておる。これを考えますと、呉学文氏の事件というものは決して孤立した問題でなく、全体何とかしてこの中国貿易展覧会の日本人に与えるいい意味での影響、中国を正しく認識する、あるいは中国の貿易を促進する、国交を回復する方向へ運んでいく、こういう点を妨害するためにいろいろなことが行なわれておる。その一つにこの呉学文氏の入国拒否という問題が起こったとしか考えられないのでありますが、政府としては、中国貿易展覧会をこの際進んで積極的に協力してやられようとするのか、あるいは公然と協力されなくとも、協力会がやるのについて、これを承認する、あるいはよいこととして認められるのかどうか、そういう点について伺いたいと思います。
○賀屋国務大臣 貿易はなるべく拡大したほうがよろしいという考えで、その意味で政府はやっておると思います。しきりに妨害とか策動とかお話しになりますが、どうも頭から妨害、策動しておるという前提での御質問じゃ、ちょっとわれわれも困るわけであります。いまの呉学文氏のことは決してそんなことでございません。呉学文民の言動が好ましくない、これは入国を拒否するほうが正しいとしてやっているのであります。別に何も関係ない。あのときも、これは雑談的のことでございますが、南漢宸氏一行の入国を認めないのだという話があるがどうか。冗談じゃない、私は何もそんなこと言ったこともない。それだからほかの方は御承認するということは初めから言っておりますし、それから、そういうことなら早く明らかにしようというような声もありまして、すぐ承認したわけでございます。ですから決してそういう考えはないので、貿易を促進するということはもうきまったことでございますから、その範囲では一つも妨害だの、策動だのいたしていないつもりでございます。
○志賀(義)委員 日本から中国へ行く場合には、自民党の方が行かれても、いやがらせというふうにこっちから行った人が受け取るようなことは絶対にないのであります。その点は実に細心の注意を払ってやっておる。ところが、こういうことが日本に来た場合にとかく起こる。これは非常に困ることであります。現に南漢宸氏も近く来るということになっておるのでありますが、それもまた羽田に入るなり、いきなりこういうことが次々と起こるということでは、これは非常に困るのであります。今後そういうことがないように、また、いま私が申し上げたような実例は幾らもありますから、閣議に報告して、また大臣で直ちに事務当局に命じてやれることはやって、一切の障害を除いて事態を進めるようにやっていただきたい。同時に呉学文氏のことは、私は、大臣がもう一度その点について考え直していただくことを希望して、私の関連質問を終わります。
○濱野委員長 坂本君。
○坂本委員 私は、目下再審の申し立て中でありまする免田栄という死刑囚の問題につきまして、重要な証拠物件がなくなっておりますから、その証拠物件の返還請求の訴訟を東京地方裁判所に提出いたしまして、その訴状が受理せられまして、来たる四月十日午後一時から東京地方裁判所民事第十三号法廷で第一回の口頭弁論が開始せられることになっておるわけであります。そこで重要な証拠物件に関することでございますから、この免田栄が原告本人として四月十日の口頭弁論期日に出頭さしてもらいたいという法務大臣あての陳情請願が出ておりますから、それに関連いたしまして二、三お聞きいたしたいのであります。
 この免田栄の再審の事件は、熊本地方裁判所八代支部でかつて再審の受理が決定されまして、それに対する検察官の抗告となり、福岡高等裁判所でその再審受理が取り消されたわけであります。再抗告をいたしまして、最高裁で棄却されたのでありますが、その際、新しい証拠がない、いわゆる再審の要件でございます新証拠がないというのが結局の再審受理取り消しの理由になっておるわけであります。そこで、二度再審の申し立てを熊本地方裁判所八代支部に提起いたしまして、その申し立てから私も弁護人としてそれに参加しているわけであります。
 そこで問題は、アリバイの証拠と事実の証拠であります。アリバイの証拠については、時間を要しますから省略いたしますが、事実の証拠につきまして、犯人が犯行の際に着ていた着衣、これが原審の死刑の判決においては不明瞭であるわけであります。そこで、この証拠物につきまして、当時着衣した衣類、それが大体五点でございますが、はっぴの黒一点、ズボン紺の黒が一点、マフラーの白が一点、地下たびが一点、なたが一丁、こうなっておりますが、この証拠物を裁判所に領置してあるか、あるいは検察庁に残っておるかということで、それをさがしてもらいましたわけですが、ズボンと地下たびが出てまいりまして、はっぴとマフラーとなたは出てこないわけであります。それは当法務委員会でも御質問いたしまして、極力さがしてもらいましたが、それが出てこないわけであります。そこで、この出てこないはっぴ、マフラー、なた、これについて返還の訴訟を起こしているのが今度の四月十日の口頭弁論になっておるのであります。
 どうしてこの着衣を重要視いたしますかと申しますと、犯行は、二名即死いたしまして、二名が重傷を負っておるわけでございます。しかも鈍器用のなたとさしみぼうちょうがへなへなになっていた。このさしみぼうちょうも行方不明でありまするが、このような犯行を、なたでたたいてぶち殺すということになりますると、少なくとも返り血が出ておるわけであります。そこで、当時着ておりましたはっぴとマフラー、寒い十二月ですからマフラーです。それからなた、これに返り血がおるかどうか、血痕があるかどうかというのが重要な問題でありまして、一審ではこの点に対する鑑定その他がないわけであります。ただ着衣は、あの冬の寒い中で洗った、だから血痕がついていない、こういうようなことが推測される調書等があるわけであります。そこで不思議なことには、ちょうど第一回目の再審の申し立てが受理されました際に、当時と思いますが、昭和三十年の三月三十日に、熊本地方検察庁八代支部から福岡刑務所にあてまして、「証拠物返還請求の件について」という書面が出されまして、「貴所在監中の死刑囚免田栄より押収中の左記証拠物の返還方の請求がありましたが該事件については未だに事件記録が最高裁判所より送付がなく押収物は未処理であります。且つ押収中の物件は血痕附着の為腐蝕し物の用にたつとは思われないので本人にその旨を含めて若し不用ならば別紙所有権抛棄書を徴して送付願います。」、「記」としまして、先ほど申しました五点の物件であります。そこで被告人のほうでは、「証拠物件還附願」という書面を書きまして、「右被告人の証拠物件として押収されて居ります左記の様な物品が御庁に領置されて居り、すでに必要がないと思いますし、冬を向えて殊に必要になりましたので、還附下さる様に御願いいたします。」、これは死刑囚の免田栄から還付請求を出したわけであります。そこでそれに対しまして、検察庁のほうでひな形の書面をこしらえまして、「所有権放棄書」として、「左記目録の証拠品は、所有権を放棄しますから用済の上は適当に御処分下さい。」、そして住所氏名を書いて、判をついて、そして「熊本地方検察庁八代支部検察官検事何々殿」と、検事の名前をあけまして、目録として五つの物件があるわけであります。
 そこでこの死刑囚免田栄は、この物件が一番大事である、自分は事件に関係がないから、血はついていないのだ、だから検挙されたその当時に推定をされておるこの証拠物件を出してもらって、これを鑑定してもらえば明らかである、あとその点が重要な証拠になるというので、こんな所有権の放棄なんかできないというので、この八代支部から福岡刑務所に送られたが、刑務所の中で本人にそれを示されたから、そういう書面は絶対私は出すわけにいきません、その品物を所有権放棄をすることはできない、これは証拠にとっておかなければならぬ。こういうので、被告人自身に返してもらいたい、こういうことで、この書面は被告人、死刑囚の免田栄自身が――これは写しでありますが、本書があるわけでありますから、自分で握りまして、そして弁護人に渡したわけであります。
 そこで、この証拠がなかなか出ないものですから、地方裁判所の八代支部におきましては、この点に対する判断は、血痕付着の程度については知るよしもないという理由で、二度目の再審を却下したわけであります。私たち弁護人は、いま返還請求を起こしておりますから、その品物をぜひとも出してもらって、そして鑑定をした上で、この再審申し立ての判断をしていただきたい。それから出てまいりましたズボンと地下たびにつきましては、名前は忘れましたが、慶応の助教授の鑑定を受けまして、血痕はないという、非常にむずかしい医学上のことばを使っておりますが、ついていないという鑑定が出ております。しかし、遺憾ながらはっぴ、なた、マフラー、これがないわけです。それが出ないままに二度目の再審申し立てを熊本地方裁判所八代支部で棄却をいたしております。これに対しましては、直ちに抗告を福岡高等裁判所に提起いたしまして、まだ続行しているわけであります。この三つの物件について、一年、二年、三年と出てまいりませんから、本件訴訟を起こしまして、その第一向の裁判が今度三十九年四月十日の午後一時に指定されているわけであります。こういう死刑囚免田栄に対しましての重要な裁判でございますから、ぜひ東京の刑務所のほうに移監してもらって、そして第一回の口頭弁論には――もちろん囚人に対しては、既決、未決、証人その他で出てくる際には、看守付で出てくるわけですが、ぜひ出頭させてもらいたい、こういうことでありますから、その点、出頭させていただくことができるかどうかという点についてお伺いしたいと思います。
○大澤政府委員 免田栄から東京地方裁判所に民事訴訟を提起しているわけでありますが、刑務所に拘禁されている者でありましても、一般的には、法令によりまして国民の一人としてさような民事訴訟を提起し、訴訟行為を行なう権利を有することはもちろんではございますが、具体的な場合に、特定の訴訟事件につきまして、みずから直接いかなる範囲の訴訟行為ができるかどうかということにつきましては、本人が受刑中であり、在監中であるという特殊な立場にありますために、訴訟とは別個に、刑の本質あるいはその執行の面からその必要があると思うのであります。
 そこで免田栄は、死刑判決が確定して、現にその判決の効果として福岡刑務所に収容されているわけでございます。死刑確定者は、その死刑判決の確定後の効果として、その執行を確保するために拘禁され、一般社会とは厳に隔離さるべきものと考えられるのであります。さような死刑確定者を拘禁施設外に連れ出すということは、特段の必要がある場合以外は許されないものと考えるわけでございます。
 そこで本件の民事訴訟については、訴訟代理人によって遂行され得るものでありますし、また免田につきましては、代理人の選任もされていると考えられるのでございます。もし現に選任もされていないということでありますれば、代理人の選任も可能な状態と考えられますので、民事訴訟におきましては、訴訟代理人によって十分遂行されるところでございます。目下のところ、本人を東京地方裁判所に出廷させることの必要はないものと考えている次第でございます。
○坂本委員 私も三十年来弁護士をしておりますが、その事件の難易、あるいは善処すべき点については心得ておるつもりであります。ただ問題は、一審の判決前から無罪を主張した。これが保釈で出てから自供をひっくり返すというのではなくて、第一審の証拠調べの段階から否認をいたしまして、そして裁判をやっておるわけであります。ただ私たちが考えられるのは、十六年前ですから、その当時は現在の刑事訴訟法が施行されて間もない時期でありまして、裁判所も検察官も弁護人も、まだ訴訟の進行、運用については非常にふなれなときであるわけでありまして、その点については、裁判所も検察官も弁護人も多少、多少どころか大いに真実発見のための訴訟進行については非常に足らない点が調書を見ましてもわかるわけであります。わずか数回の公判で死刑の判決が言い渡され、ことに弁護人の証拠の申請も、また検察官としても一番重要な着衣の点についての鑑定をしていない。それがまた判決の内容にも入っていない。もちろん証拠に提出していないものですから判決に入っていない。この点については、検察官もそれから弁護人も抜かっている点がたくさんあると思うのです。さらに控訴しまして、控訴審においても、やはり記録を見ますと、これは同職を非難するわけにはいきませんですけれども、死刑囚の死刑の一審の判決に対する控訴事件としては、審理あるいは証拠の申請等についても遺憾な点がありまして、これは弁護人の証人申請はなくて、裁判所が職権である一部の証人を調べておるだけであります。これは控訴審においても、一審で否認をしておる事件でありまして、しかも死刑の判決ですから、さらに実地検証をやり直すとか、もちろん重要な犯行当時の着衣については鑑定をし、その他証拠上にこれを提出しまして、そして判断すべきがしかるべきだと思うわけであります。しかし、これは十六年前でありますから、現在の刑事訴訟法が施行された当時だからやむを得ない点もあったと思うわけであります。そういう点がありますから、この再審について十分これは弁護人としても努力しなければならない。こういうので、日弁連の人権擁護委員会でもこれを取り上げまして、二回目の再審の申し立ての際には、私ほか人権擁護委員のメンバーが八名か九名参加いたしましてやったわけですが、それはもう二度目の再審の申し立てをしましてから一年以上たった時期でありまして、問題の中心は、いまの証拠物件があらわれてくれば、そこに返り血があるかないかが私は重要なキーポイントになるというので全力をあげていたわけですが、遺憾ながら、この物件が出ないものですから、本年の一月この返還訴訟を被告人本人が提出いたしまして、そして四月十日が第一回の弁論にきまったわけです。それでぜひひとつ東京に移監して、その状況も、本人も証人になることができますから、原告本人尋問として十分審理を尽くしてもらいたい。出なければ出ないところの反対の考え方もまたできるわけでありますから、そうしてもらいたいのです。実は法務大臣に直訴状、本人が書いたから間違いがあるでしょうが、あとで大臣にも提出いたしたいと思いますが、私の手元まで三月十六日付でこれを届けてまいったわけであります。そういうような状況にあって、一番重要な証拠だと思うし、これは私だけでなくて、他の弁護人もそうだし、熊本地方検察庁の八代支部におきましても、何か庁舎が移転するとき、数年前に新庁舎ができましたから、あるいは旧庁舎に残っていなかったかどうかというので、まだ調べるという段階でらちがあかないものですから訴訟を起こしたわけです。そういうような死刑囚免田栄に対しては一番重要な物件の返還の訴訟でありますから、そういうような点を特に配慮していただいて、この訴訟を進行して、そうしてまたその結果で、これは抗告審の問題になると思いますが、そこまではひとつ――何しろ物件が紛失して、ないものですから、その訴訟には一度くらいは出させてやって、最後の結論は、われわれ弁護人側としては免田栄は関係ない、こういう確信を持っておりますけれども、しかしながら、警察の自白調書その他があって、それは、その先のことは神聖な裁判による、こう私は思うわけでありますが、その抗告審に対する新しい唯一の証拠物件の訴訟でありますから、ぜひひとつ一回ぐらいは口頭弁論に出してもらいたいと思うのですが、法務大臣いかがでございましょうか。
○賀屋国務大臣 免田栄、これは裁判といたしましては死刑が確定いたしておるわけでございます。しかし、なお再審とかいろいろの問題もございますし、死刑の執行につきましては、取り返しのつかない問題でございますので、この件のみならず、すべて裁判が確定いたしておりましても、執行についてはきわめて慎重な態度で臨んでおるわけでございますが、ただいま御質問の内容は犯行の有無とかあるいは裁判自体の内容、また伺っておりますと、訴訟の手続の問題、また場合によりましては刑務所の収容者の管理の問題、いろいろ上がっております。どうも私がいま答弁をするよりは、政府委員から御答弁申し上げましたほうがより適切かと思いますから、政府委員から御答弁申し上げたいと思います。
○大澤政府委員 ただいま本件の重要な訴訟に免田本人を出廷させたいという御意見でございますが、私、先ほどの御質問に対しましてお答え申し上げましたように、いわゆる訴訟行為につきましては、訴訟代理人である弁護士の方々に進行していただけば、本件訴訟の進行には何らの差しつかえはないものというふうに考えておるわけでございます。ただ、その訴訟の進行段階によりまして、証拠方法として免田本人尋問というような証拠決定がありました場合は、その場合において免田を裁判所の本人尋問の法廷に出すということにつきましては、十分その出廷については考慮いたす考えでございます。ただその方法につきまして、過去に例もございますが、刑務所内に特設法廷を設定するというようなことも一つの方法でございます。また本件訴訟を、本人のおります福岡地方裁判所に移送方を裁判所に申請するというような方法もございますが、この点につきましては、そのときの情勢に応じまして、訴訟の進行を妨げないように、円滑に遂行できるように矯正当局としても考えていきたい、こういうふうに考えております。
○坂本委員 実は私も訴状はまだ見ておりません。まだ代理人は選んでおらずに、本人が訴状を出しておると思います。そこで当然代理人になると思いますが、そうしますと、訴状を見まして、あるいは四月十日第一回ですか、また先に延びることもあると思いますがそういう点で、今後ひとつ訴訟についてもサゼスチョンしなければならぬ点があると思いますが、ぜひひとつ、本人の最後の要求のようでございますから、第一は本人の訴訟行為を、もちろん弁護人がやりますけれども、被告人も一度くらいは一緒に出さしてやって、そうして訴訟を遂行したい。またその他の方法もありますから、どうぞその他の方法の点等につきましては特段の御配慮を要望いたしまして質問を打ち切っておきます。あわせてそういう事件でございますから、それまではひとつ法務大臣に死刑執行のないようにお願いを申し上げまして質問を終わります。
○濱野委員長 赤松勇君。
○赤松委員 私、この際法務大臣と矯正局長に、別に感謝する必要はございませんけれども、さっそく委員会における発言に対しまして、即刻これを実施していただきまして、この点非常に感謝しております。と申しますのは、例の平沢でございます。この間私のところに手紙をよこしまして、東北大学の教授であったかどうか、それはわかりません。それは聞いてございませんが、二回にわたって三人の医者から十分な健康診断を受けたという通知が参りまして、たいへん感謝しておりました。その結果につきまして、はたして獄中生活に耐え得るものであるかどうかということにつきましては、私はよくわかりませんが、その結果については、当該弁護士のほうによく診断の結果については知らしてやっていただきたいということを要望しておきます。
○大澤政府委員 当該弁護人のほうから特に御照会に見えました場合には御説明申し上げます。
○赤松委員 私は最近日本弁護士連合会が、憲法違反の疑いがあるということで問題にしておりますいわゆる勤労者全体に対する、一般論として身体検査の問題を論ずるのではなしに、主として事業場に従事する労働者一般に対する所持品検査について、これは明らかに憲法違反の疑いがあるという点から、すなわち、憲法十一条「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に與えられる。」三十一条「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」明らかにこの憲法の条項に違反しておる行為が各事業場において行なわれておると思います。このために神戸におきましては、一婦人車掌が自殺をするというような問題も発生いたしまして、非常な社会問題になっておるわけであります。そこで私は憲法二十八条の労働者の権利を保護する、そういう立場から、法務省並びに労働省、なかんずくきょうは基準局長に来ていただきまして――実は私もこの基準法の改正について、ただいま衆議院の法制局といろいろ打ち合わせをしまして、基準法改正の立法化をやっております。ぜひひとつこれは労働省のほうにおきましても真剣に考えていただきたいと思うのです。それからきょうは運輸省の自動車局長もお見えになっておりますね。
○山上説明員 旅客課長です。
○赤松委員 それでは、まず私は確認をしていきたいと思うのですが、バスとか、あるいは電車など、こういう作業場において料金の過不足の発生する原因は、本人がそれを横領する、チャージするというような意思のない限り――そういう意思を持ってチャージした場合には、もちろんこれは刑法によって罰せられる。そういう意思のない場合、その作業環境に随伴して必然的に発生する余儀ない結果であるかどうか。つまり、本人の十分な注意をもってしてもなおかつその作業環境に随伴して発生する、そういう可能性のある労働内容であるというようにお考えになりますかどうですか。これは基準局長、それから自動車局の旅客課長にひとつ見解を明らかにしていただきたいと思います。
○村上(茂)政府委員 労働基準法上の各条章の問題と離れておりますので、そのような金銭取り扱い業務が、客観的に見まして当然そういう不足金を生ずるような状態にあるものかどうかという点については、これはたとえば都市におきますバスであるとか、あるいは地方におきますバスであるとか、もろもろの事情によりまして、これは一律に判断いたすことは非常に困難かと思いますが、しかし、間々不足金を生ずることがあるという業態、業種であろうということの一応の判断はできると思います。
○山上説明員 いまの労働省からのお答えと大体同様でありまして、その職場環境からいって必ず起こり得るということになるかどうかについては問題はあるかと思いますが、実情といたしましては、そういった実態にあるということは否定できないと思います。
○赤松委員 そこで私は逆に質問しますが、これは経営者の責任において、すなわち、経営者の適切なる措置によって過不足金を生ずるような原因を除去することができるかどうか、この点をお聞きします。
○山上説明員 お答えいたします。事業場としては、当然道路運送法におきまして、免許制のもとにいろいろ適切な事業運営について責任を持っておりますので、その限りにおきまして、適切な方法においてこれを防止する義務は当然あるかと思います。
○赤松委員 義務の問題ではないのです。経営者の適切な措置によって、そういうことが発生しないようにできるかどうかということです。
○山上説明員 お答えいたします。具体的には各事業場におきまして、必ず服務規程あるいは労使の労働協約によって労使間でよく話し合いをして、その防止方法を設定する実情にあります。
○赤松委員 防げるかどうか。
○山上説明員 したがいまして、その服務規程あるいは労働協約の実施によりまして防止をはかっていくという実情にあります。
○赤松委員 だめだね。わからなければもっと具体的に言おう。国鉄は車内販売しておりませんよ。それから戦時中名古屋の市電などは車内販売を禁止して、停留所、停留所で切符を売りましたよ。そういう場合には過不足金が生ずる余地はないのです。チャージの問題も起きないのです。だから、経営者の適切なる措置によって、この過不足金という問題は解消することができるのではないかと私は考えているが、それはどうかというのです。
○山上説明員 ただいまの御指摘の乗車券の発売の方法、これにつきましては、御指摘のとおり、停留所という施設が完備している場合におきましては可能かもしれませんが、いまの実情におきましては、運賃制度の実情から言いまして、車内販売をやめるというのは事実上実施は困難でございます。しかし、できるだけ車内販売を廃し、回数券等の方法を広めるという方向におきまして事業者に対して指導監督をしておる実情でございます。
○赤松委員 やっぱりあなたは旅客課長さんだよ。旅客課長さんで、観点がまるでわれわれと違うのだ。ですから、あなたが局長くらいになると、だんだん観点が広がってくると思うけれども、これはこうなんですよ。あなたはいま事業者、事業者と言っておるけれども、あなたは事業者の、経営者の立場からものを言っている。私は、問題は二つあると思う。一つは、いわゆる公共性を持つバスとか電車とかいうものの住民へのサービスがそれによって妨げられることがないかどうか、これが一番に考えるべきこと。そうでしょう。そこで、たとえば、いまその議論が起きれば、国鉄などは車内では絶対に売ってくれないのだから、入場券で乗ったってだめなんだから、三倍の料金を取るということになっているから、やろうと思えばできるわけです。しかし、そのことが住民へのサービスになるのかどうか、サービスを妨げることにならないかどうかという問題が一つ。もう一つは、労働者の労働強化、これを緩和するという立場に立って、すなわち、労働基準局長の立場に立って、労働省の立場に立って、そういうことを実際に検討する必要があるかどうか。もっと具体的にいえば、都電はラッシュになれば車掌一人であれだけのものに切符を売って、そうして切符を切らなければならぬでしょう。あれは非常な困難な仕事なんですよ。そこでつり銭をつい間違えたりするようなことは、その事業に随伴して起こる必然的な結果なんです。そういう可能性は十分あるわけです。本人が幾ら注意したって、これは随伴して起こる必然的な現象なんです。そこで、私が言うのは、そういう作業環境を変えることによって、こういう過不足金の生ずる、つまり罰せられるような者が出ない方法があるのではないか、措置がとれるのではないか、こういうことをあなたに聞いたのだが、この点ではどうですか。そういうことはできるのではありませんか。たとえば都電の場合はたいてい停留所の前にたばこ屋さんでもあるでしょう。あそこで切符を売らせればできるのじゃありませんか。しかし、農村の非常にへんぴなところはなかなかそれは困難だという事情はありますね。ところが、それは、たとえば発着駅などで売っていくというような方法もありますね。私は、もっと広い視野で考えてもらいたいと思う。それは事業者の立場からいえば、費用の関係でできないとかいろいろなことを言うでしょう。そんなら外国をごらんなさい。外国へ行けば、ワンマン・カーで、自分で料金を入れて、そうしておりる。ごまかす者はない。なぜそれが日本でできないのか。そういう問題になると、政治の問題になってくるけれども、公共性を持つ限り、住民へのサービスということを考える限り、労働者の安全運転とかあるいは労働強化の緩和ということを考える場合に、そこまで踏み切って考えていく必要があるんじゃないだろうか。身体検査の問題は人権の侵害で重大な問題なのだが、そういう作業環境の改善によって、人権侵害の問題も解決できるんじゃないか、私はこう考えています。その点は、基準局長及び旅客課長はどうお考えでございますか。あるいは人権擁護局長はどうお考えでございますか。
○村上(茂)政府委員 私がお答えしますのは、基準法の法律の問題を離れておるかと思いますが、御指摘のように、乗車料金支払いのやり方については、諸外国の例などを見ましても、現金を扱わずに、あらかじめ紙の切符を買うとか、あるいはコイン型の、金属でつくりました切符に代替するもの々使いますとか、いろいろあるようでございます。しかし、そのことばバスなどのような乗車機関の公共性の問題とまた別に、そういう制度を採用した場合と、車掌を採用した場合に、経営上どちらが利害得失があるかといったような、経営上の立場からの問題もあろうかと思います。それはまさに営業の自由の問題でございますので、基準法の立場からそれがいいとか悪いとかいったような判断をするというのはいかがかと思いますが、しかし、今日及び将来に予見されますような労働力不足の状態におきましては、そういった問題とも相関連しまして、十分検討いたすべき問題かというふうに考えておる次第でございます。
○山上説明員 ただいま先生御指摘の、車内販売をやめるかどうかということでございますが、これにつきましては、御指摘のとおり、事業者の側からいいまして利害得失があるわけでございます。車内販売がなければ、いまそこにバスが来た、それに乗るということはできないわけであります。そういった相互のプラス、マイナスを比較いたしまして結論を出すべきだと思いますが、実情におきましては、数年前に都バスにおきまして、チャージ防止のために車内販売をやめた時期がございます。これに対しましては、都民初め利用者等から、非常に不便であるという声が強くなりまして、これは一応一、二カ月実施をしたかと思いますが、やめになったわけであります。したがいまして、現状におきますバス輸送力に対する利用者側からの立場からいいますと、やはり車内販売はこの際は継続すべきじゃないかということでございます。
○赤松委員 私は、必ずしもそうは考えておりません。したがって、遺憾ながら運輸省と意見が違うわけでありますが、そのことは別として、今度は基準局長にお尋ねします。
 私が言うまでもなく、基準法の第十六条、第十七条、第二十四条、これは第十六条は、「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」、第十七条は、「使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。」、第二十四条では、これまた賃金の天引きを規制する定めがあるわけであります。ところが、実際には、この間人権擁護局から配付されましたこの条項を見ますると、過不足金について、特に不足金について、賃金から天引きされておるわけです。これは基準法で、賃金を差し押えもしくは相殺してはいけないという明確な規定があるにもかかわらず、事実上乗務員服務規程では、こういうことが各地で行なわれていますね。私の持っている乗務員服務規程をあなたにお示ししますが、各地において行なわれている。横浜の交通局の服務規程もそうです。名古屋の場合でもそうです。神戸の場合でもそうです。一体こういうことが許されていいのでありますか、どうなんですか。
○村上(茂)政府委員 御指摘の問題に関連して、まず、基準法の十七条の問題はまず起こらないと思いますので、これは除いてお考えいただいたほうがいいと思います。つまり、前借金という制度がほとんどございませんので、十七条の規定の違反問題はほとんど考える必要はないと思うのであります。そこで賃金の控除という立場から申しますと、二十四条の規定に基づきまして、労使の書面による協定をなすということが必要要件でございますから、この書面による労使の協定がないにかかわらず賃金を控除するということは、明らかに違法であるわけであります。ただ、協定がある場合にも、しからばもう一度十六条の規定に立ち返りまして、違約金を定めるという事項に該当するか、または損害賠償額を予定する契約という事項に該当するかという問題になりますと、不足金を控除するということ自体が、損害賠償額をあらかじめ予定いたしまして、定額を当然差し引くのだという前提に立ちますと、損害の実額の有無にかかわらず定額を控除するということになりますと、この十六条に違反する、そういう問題が出てまいります。また不足金を控除すると申しましても、そういう賠償額の予定という思想ではなくして、一種の違約罰というふうに考える、違約金的なものという考え方も出てまいります。そこで実は先生御指摘の問題につきましても、各事業場におきます規定の表現のしかたによりまして、その解釈は必ずしも一定いたしておりませんが、いま申しましたような問題点が考慮されるというふうに考える次第であります。そしてまた、その不足金の控除ということが制裁という立場から、制裁規定として定められたものであるかどうかということになりますと、減給という考え方に立つものであるかどうかという問題もあるわけでございます。そういうような関連する条項が幾つもございますので、私どもは、御指摘のようなケースにつきましては、そういった問題なり条項と相照らしまして、今後厳正な適用を行なってまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
○赤松委員 契約のある場合でも、基準局長がおっしゃったように、具体的な損害はなくても、一定の金額を控除してそれを積み立てていくということはもちろんいけないと私は思う。しかし、そうでなくて、現実に金が余った場合、過不足金ですから罰せられる、不足金が生じた場合はもちろん、これは天引きされている。私は、先ほどから申し上げておるように、これは作業環境に随伴して発生するものであり、本来賃金から控除すべきものではないというように考えておりますが、各地の就業規則を見ますと、ここには天引きをするということがみんな規定としてあるわけです。こういう点についてもっと基準法の精神を徹底させていく、この点についてはいかがですか。昨年私は労働大臣と話をしまして、三十八年六月十二日に基準局長の通達として出してもらったのは、そこで妥協したわけですけれども、私はほんとうはこの通達は不満なんです。この最後に「労働代表の意見のあるときは、その都度、労使間で就業規則の再検討が行われるようにすべきものと考える。」つまり、いままで二年間なら二年間の協約があれば、その間団体交渉はできなかった。ところが労働者側に意見のある場合は、なおその協約期間中であっても団体交渉に応じなければならないという義務を経営者に求めたわけですが、しかしそれだけで、就業規則のワクの中で基本的な問題を解決するということは困難だ、私はこういうように考えるわけです。問題の処理は、第一は作業環境を変えていくということ。第二は、そういう賃金から控除するというようなやり方はやらせないということ。また、そういうことをする必要のない作業環境ができればいいのでありますけれども、もしどうしてもできない場合は、不足金について、チャージをした場合は、これは罰すればいいのです。私はそれまで守ろうということを言っているのじゃない。チャージでなしに、その労働作業に随伴して、不作為によるところの結果生じた不可抗力的なものについては、これを賃金から控除すべきではない、こういう考え方、これはいかがですか。
○村上(茂)政府委員 御質問の、特に一番最後の不作為の場合という点の具体的な場合、これはいろいろ問題があろうかと思いますが、その点をお答え申し上げますと、賃金控除という問題が、先ほど申しましたように労働基準法十六条の損害賠償額の予定という立場で考えるべき問題か、そうじゃなくて就業規則の中の制裁条項として定める、それが減給という概念に当てはまるものかどうかという問題があるわけでございます。減給の場合でございますと、労働基準法では九十一条に減給の場合の制限条項がございますが、これとのひっかかりの問題が出てくるわけでございます。しかし、先生の御指摘の趣旨は、賃金を控除するというような制度を制裁規定としてでも当然に設けるということについてはどうか、こういう御意見のようでございます。この点につきましては、バスのみならず、一般の事業場におきましても、一種の秩序維持の見地から制裁条項が置かれておるわけでございます。制裁条項を就業規則の中に置いてはいけないという問題になりますれば、これは否定的に解せられるのではないかと思います。ただ不足金を当然控除するという場合に、余った場合はどうか、不足した場合はどうかという場合の問題になりますと、余ってもかつ制裁を受けるということになれば、これは何か、こういうことになりますし、不足した場合はどうか、これは損害賠償の問題と関連するのかどうかというような問題が出てまいりまして、若干問題の法律的な性質が違うのかと思うわけであります。
 そこで、その問題は別にいたしまして、一般的に金銭上の錯誤、間違いがあり得るという前提に立ちますときに、そのような制裁規定が全然なくてもよいのだというふうに申し上げるのは若干困難ではなかろうかというふうに思うわけであります。
○赤松委員 基準法の十六条は、先ほど御指摘のように、損害賠償額を予定する契約をしてはいけない、これははっきりしておりますね。ところが、実際にはある一定金額を積み立てて、そうして賃金から控除する場合があり得る。そういう事実があれば、基準局のほうとしては厳重にひとつ監督してもらいたい。さっそく全国的にそういうことがあるかないかということを調べてもらいたいことが一つ。
 それから、労働契約の不履行について違約金を定め、または損害賠償額を予定する契約をしてはならないのです。ところが、実際は違約金を定める行為を就業規則の中でやっています。労働契約を結んでいるのです。基準法を十分知らない労働組合は、そういう契約を結んで、そうして違約金を実際に払っている、そういうこともあり得るわけです。これもひとつ十分に調べてもらいたいということ。
 それからもう一つは、市民法の立場からいっても、民法では賃金というものを非常に大事に扱っていますね。もちろんこれは生活手段ですから大事に扱ってもらわなくちゃ困る。いわんや、今度は労働法の見地からいえば、これは一般市民法の権利と違って、この点はある意味において金科玉条だ。そうして作業環境に随伴して発生する必然的な結果について、その責任を経営者が全然負わない。全部労働者が負うのでしょう。過不足があった場合は、これは全部労働者の責任ですよ、そうでしょう。経営者はその責任を全然負おうとしない。たとえば車内販売を禁止すれば、他の適当な措置を講ずればそういうものは発生しないのです。しかし、そういう努力は怠っているわけです。そうしてすでに労働力の限界を越えた労働を強制している。それに随伴して発生する結果について責任を問おうとしておるわけです。現に問うているわけです。そうして不足分は賃金から引かれ、余ればそれに対して罰が加えられる、服務規程はこういう仕組みになっておる。現実にそうなっておる。そうなっておりませんか、天引きされているでしょう。賃金から控除されています。そこで、その賃金を控除するという問題が重大であるばかりでなしに、そこに発生するのは身体検査、所持品検査の問題です。何かチャージしていないか、取っていないだろうか、車掌を見ればどろぼうと思え、そんな極端なことはないでしょうけれども、何かふところへ入れないか、チャージしないかというので、しょっちゅう監視されておるわけです。その結果起きる問題は何かといえば、人権侵害の問題です。たとえば裸になってそうして検査をするとか、あるいは女子の場合はふろ場へ入れておいて、そこへ全部脱がせる。ある会社では、その検査は同性でなければいかぬというような服務規則もある。ところが、そうでなくて、男性がやってもいい、だれでもいいというように規定している会社もあるわけです。ところが、現実に女性はふろへ入れられて、そうしてまっ裸になって、ズロースまで全部検査される、異性によって検査されるという場合の精神的な圧迫というもの、これをどう考えますか。これでは自殺問題が起きるのは偶然ではない。これは笑い話で済まされませんよ。お互いに子供を持った者として、たとえば自分の娘がそういうふろ場へ入れられて、そうして全部脱がされて……。たとえば生理の場合などは、あるいはズロースがよごれておるかもしれない。そういうものを異性に見られて、女性として羞恥心や憤りを感じないものがありますか。それは重大な人権侵害です。だから、人権侵害が行なわれた時点においてこれを防止していく方法をとるのか、根本的にそういう人権侵害が発生しないように、車内販売を禁止して、そうして経営者の責任においてそういう問題の発生を除去していくのかという問題になってくる。これは、賃金の面については労働基準局で考えてもらわなくちゃならぬ問題であると同時に、運輸省としてもこれは真剣に考えなければならぬ。また、人権の問題につきましては、法務省としても真剣に考えてもらわなければならぬわけです。
 一体過不足金というのはどの程度出ているかというと、都市交あたりの調査によりますと、大体二百円から三百円程度だ。そんなものは当然予想されるものですよ。それがいやならばもっと人をふやして、一台の電車に二人でも三人でもふやせばいい。なるべく最小の人員で最大の利益をあげようとするから、そういう結果が生まれてくる。この問題は人権の問題であって、思想の問題や党派の問題じゃないのですよ。これはたまたま神戸でバスの車掌が自殺したから社会問題になって出ているけれども、現実には日本のあらゆる職場において、金銭を扱うところにおいては、随所でこういう事件が生まれている。私の調べたものによれば、東京の安田銀行などは、そういうことをやっておりません。そういう規定があったのを全部はずしております。だから、経営者が労働者を信頼して、そうしてチャージを防ぐような方法を講じていくということを常に考えていかなければ、その作業に随伴して必然的に発生する問題を、自分たちの事業改善をやらないで、あるいは設備改善をやらないで、労働者に全部責任を負わせて、不足したら天引きすればいいのだという考え方、そうして過不足金がないかな、あいつチャージしないかなというので、しょっちゅう身体検査をして人権侵害をしていくやり方、こういうやり方は、ひとつ法務省と労働省、運輸省あたりで、三者一体になって、これは労働者の権利を守るというよりも、人間としての権利を侵害するということになりますから、私は、法務大臣あたりもひとつ真剣に労働大臣や運輸大臣と相談して、考えていただきたい。こういうことをやって、いま都市交あたりでこれは相当問題になっておるわけです。ところが、東京都あたりは実際はこれは実行しておりません。だから、実行してないということは、やめたって何も弊害が起きないということですよ。ところが同じ六大都市の中でもやっているところがある。それからはなはだしきに至っては、基準局長の通達も出て、あるいは人権擁護局長の通達も出ているのに、六大都市の交通管理者なんかは、私どもの監督官庁の運輸省から何も言ってこないから、こんなものは法務省が何と言おうがへいちゃらだ、こういうので一向に人権擁護局長の通達を尊重しようとしない。そういうことが現実に各職場で問題になっている。そういうことをやっておりますから、だんだん労働者自身が、自分自身でこの問題を処理しなければ、経営者にたよっておったんじゃ人権が守れないということから、一そう労働運動というものは激しくなってくるのです。賀屋さん、これは資本主義を永遠に維持するという立場に立っても、こういう問題は真剣にあなた考えてやらなければだめですよ。これは大いにあおって、アジって、扇動して、そうして労働者を左翼化していこうというのには絶好の題目じゃありませんか。私は、そういう運動を、これを利用して、そうして社会党なら社会党の勢力を伸ばすために利用する、そんな考え方はちっともない。ちっともないから、ここで私はあなたたちに質問をしている。これは先ほど言ったように、思想や党派や階級の問題ではない。人間それ自身の権利を侵害するという問題です。そこで、一般的に全部いま身体検査をやめさせる。つまり警察官でも自由に身体検査できない、令状なかったらできないのですよ。それが特に市民法的な立場でなしに、労働法で保護されておるところの、憲法で保護されておるところの労働者に対して、平気でこういう人権侵害が行なわれる。しかも控除すべからざる賃金が控除されている。一番保護されなければならぬ、憲法上優位に立っているところの労働者の権利が侵害されているというところに問題がある。ですから、時間がありませんから私はくどくど申し上げませんけれども、すでに人権擁護局は実態調査をやって、そして具体的にこのような報告をここへ出してきている。そこで私は先ほどからも申し上げるように、ぜひひとつ法務大臣あるいは労働大臣、運輸大臣、三者会談によって適正な措置を講じていただきたい。私が要求するのは、第一に車内販売をやめなさい、これは経営者の責任においてやりなさい。そうすると運輸省は、なかなかそういうことはできません。なかなかそういうことを事業家に要求しましても、資金の問題その他がありましてなかなかできません。こう言うかもしれないけれども、私ども最低賃金法を最初に国会に出したときもそうだ、こんなものは一律実施をやったら中小企業はつぶれてしまう……。ところが、池田首相自身が、もうぼつぼつ一律最低賃金制を考えなければならぬ段階にきました、こういう答弁をこの間江田君の質問に本会議でしている。だから、これはむずかしい、これを事業者に要求しても、一律実施はなかなかむずかしい、そんなことを言っておったら、いつまでたってもできやしない。それをやるものでなければバス事業をやっちゃいけない、やる資格がない、やる能力がないのだ、こういうようにびしっときめていけば、彼らはその設備改善の方法を具体的に考えてくる。しかるに、そういう改善をやらないで、過不足金が生じたら労働者の賃金から天引きしちゃう、どうもチャージをやるらしい、あいつはどうもくさい、そういってしょっちゅう監視をする。そして今度は勤務が終わってあれしたときには、身体検査、所持品検査を受けなければ退勤してはならない、これが民主憲法下におけるところの服務規程ですか。身体検査を受けなければ、所持品検査を受けなければ退勤してはならないと書いてある。ちゃんと書いてある。人権擁護局が調べた中に書いてある。ほとんど全部書いてある。「出札員は係員の服装検査を受けなければならない。」「駅掌及び駅務員は係員の服装検査を受けなければならない。」「乗務員は係員から服装検査を受けなければならない。」「乗務員は勤務終了後、係員の服装検査を受け、出勤名札を受け取り、許可を得た後でなければ退所してはならない。」ならない、ならない、ならないで、みんなならないだ。だから、身体検査をする以上は――それは法務省の人権擁護局長はこういう通達を出している。通達を出しているけれども、幾ら通達を出して限界を越えないように、限界を越えないようにと言ったって、その限界自身をあなた示されますか。それならば一体限界点はどうなんです。どこまでが限界ですか。人権侵害の限界というのはどこなんですか。私が意地悪く人権擁護局長に質問したって、そんなことは局長は答えられぬでしょう。答えろというほうが無理なんです。無理な、そんな限界もわからないような、わけのわからないような通達を出したって、何にもならぬ。むしろ抜本的にこの際は賃金から控除できない、それから身体検査をする必要のないように、そういう条件をつくり上げていくということが大事だ。さしあたっては、労働省としては現行基準法の精神にのっとって、そうして不足金を穴埋めするために賃金から控除するというようなやり方については、厳重に検討を加え、結論を出して各事業所に徹底をさしていくという措置をとる。それから第二は、所持品検査についてはこれをやるべきではない。そして、私が先ほど言ったように、所持品検査や賃金から控除する必要のない作業環境を第一につくっていくことに全力を上げる、そこに力点を置いて施策する。そうすれば全体がよくなってくる。
 それから、ついででありますけれども、たとえば名鉄電車あたりでは身体検査なんかはやっておりませんよ。ですから、もう作業環境を変えて――名鉄ではバスも持っておりますけれども、それをやっておりません。だから、やっているところとやってないところがある。やってないところの経験を取り入れて運輸省あたりは考えてもらわなくちゃならぬ。やってないということは、やらなくとも済むんですよ。やってないということはそういうことを意味しているじゃありませんか。むしろ、やってないところのほうがいま多いんじゃないですか。やっているというのは全体の半分か四割五分くらいじゃないかと私は思う。しかし、これは電車、バスに限ってですよ。日本全体の金銭を取り扱う作業場全体から見て、圧倒的な部分が、やはりこういうような慣習に従って依然として封建的なやり方を続けておるというように私は見ております。どうぞこういう点について運輸省も、労働省も、法務省もひとつ十分な注意を払っていただきたい。私は、議員としての立場から基準法改正のためにこれから努力していきたいと考えております。
 それからついでですが、基準局長、これは個人的な話し合いでいろいろあれしたのですが、労働省の基準局の人も、先生これは地方公営企業法でもってあれしたらどうだろうというような意見も述べられましたが、しかし、あれは事業法でありますから、あれでもってこれを規制していくということは私は非常に困難だと思うので、やはり労働基準法の面からこれを規制していくことが大切である、こういうように思うわけでございます。なお、法務省のほうにおいても、この点について法の改正とかあるいは立法というようなことについても、ひとつ具体的に考えていただきたいということを申し上げて、なお私の質問は留保して、本日はこれで終わりたいと思います。
○賀屋国務大臣 いまるるお述べになりました問題につきまして、私はこのいまの問題でも多角経営的に考えまして結論を出さなければならぬのじゃないかと思います。企業者が収入を確保するということは、企業体の存続のためには大事な要件であります。それがいきませんと、結局運賃値上げあるいはサービスの質が不十分でサービスが悪くなるという点も認められるのでありますが、この人権という基本的な問題はそういう御都合で侵してはならぬものだと思うのでございます。憲法なりそのほかの法律で規定しておる人権問題はきわめて重大でございます。それで、議会におきましても、この委員会でございましたか、参議院の法務委員会でございましたか、神戸バスのお話が出まして、私はさっそく人権擁護局に、いまのお話のように限界を越えてはならぬといっても、なかなかこれは何が限界かというところはむずかしいのです。むしろ逆に考えて、いまのバス会社の問題で、結局車掌が切符を販売する場合に起こり得るとしろうと的に考えますから、とりあえず全国のバス会社ではどういう規則をしているのか取り寄せてみて、一つ一つこれはいかぬとか、これはいいとか、逆に、やっていることで少し判断をやり出したらいいじゃないか、それでさっそく全国からみんな取り寄せて検討するようにいま指示しております。数が多いですから十分に済んだかどうか存じませんが、そういうことも考えております。
 それからお話しのように、そういう人権を侵害することが明らかであり、あるいは疑いのあることをしないで済むように、先ほどから車内販売のお話が出ましたが、われわれもお聞きしてもっともだと思うのでございます。しかし、また運輸当局からお話がありましたように、車内販売をやらなければ利用者が非常に不便だという点もありますが、極力車内販売をやらないで済むならばやらない。つまり、これはいわば不法な身体検査なんかしたいという考えが起こらないようにすることが第一。しかし、やむを得ぬ場合も日本の現状からまたございましょう。そういう場合にはどういう基準でどうするか。人権侵害だけは、非常に困難だから幾らか侵害してもいいとは決していかない問題でございますから、いま問題のように具体的の行為につきまして、これはどうしてもいかぬならいかぬということをきめまして、そうしてその範囲で会社の収支も確保される、特に利用者の便益もなるべく害しないような結果を得るようにと考えまして、いまのような方法で熱心に研究いたしたいと存じておりますから、どうぞ御了承を願います。
○村上(茂)政府委員 この問題につきましては、昨年の六月、八月の二度にわたりまして通達を出しまして事態改善の指導に当たっておるところでございますが、先生の御指摘の点もあり、今後一そう改善のために努力いたしたいと考えております。
○山上説明員 ただいまの車内販売の件につきましては、先ほどもお答えいたしましたが、現在バスの利用者のうち大半を占めておりますのは通勤、通学の利用者でございます。これにつきましては現在でも回数券の制度があり、また場所によっては定期券の制度もいまやっております。したがいまして、これについてはチャージの原因にはならないわけでございます。そういたしますと、残るものは不特定多数のいわば一見、そのときだけ乗るというお客さんであります。あるいはいつ乗るかわからない。したがいまして、そういう一見の不特定多数のお客さんにつきまして、車内販売をやめることによる利害得失、お客さんの立場からいってのプラス・マイナスという点を総合的に判定して、なお研究してみたいと思います。
○濱野委員長 志賀義雄君。
○志賀(義)委員 ただいま赤松委員からの質問の資料については、この前私から請求しましてきょう出していただきました。中身を読みますと、これは法務大臣もぜひ見てください。たいへんなしろものです。同時に私が人権擁護局長にお願いしたのは、これの実施の状況ですね、これも同時に調べていただきたいと申しました。ただいま大臣の御答弁で、これも実際に調べてみなければいかぬと言われましたが、そうすればおのずからこれの廃止をたてまえとしてどういう処置をとっていいかということも出てくると思います。この内容については、また赤松委員とともにこの次に伺うことにしますが、その調査のほうをお進め願いたいと思います。
 先日私は松川事件について、ちょうど大臣はおられなかったのですが、刑事局長に伺いました。最高裁で松川事件が無罪になった、真犯人の追及ということは非常に苦慮して、困難だと思うけれども、検察当局に命じてやらしている。こういうことを言われましたが、これはどういうふうになっているのかということを伺う前に、もう一件、松川事件よりも前で時効がますます迫っている下山事件がございます。国鉄総裁下山君が死亡した時刻を五日と見るか六日と見るかで時効の日が一日くらい狂いますけれども、ここで私は警察庁にまず伺ってみたいと思うのでありますが、下山事件の捜査はまだ続けておられますか、打ち切られましたか。
○日原政府委員 下山事件につきましてはまだ捜査中でございます。現在のところ、自他殺いずれとも判断は得られておりません。
○志賀(義)委員 そうしますと、文芸春秋と中央公論に出ました警視庁の捜査の結果、自殺説ということは必ずしもいま警察当局ではとっておられない、かように伺ってよろしゅうございますか。
○日原政府委員 この問題につきましては法医学者の間にも両論ございます。また捜査当局の中にもいろいろ考え方があると思うのであります。いずれにいたしましても、現在のところ、はっきりした判断を下しておりません。
○志賀(義)委員 それならば捜査の状況はどうなっておりますか、何人くらいでおやりになっているのか、時効までに犯人を逮捕するめどがおありでしょうか、そのことを伺いたいと思います。
○日原政府委員 何分にも非常に時日がたっております関係と、その後目ぼしい材料も出てまいっておりませんので、現在のところ、まだ判断がつきかねるわけでございまして、時効までにということはちょっと申し上げかねる状況にあります。
○志賀(義)委員 刑事局長に検察庁のことを伺います。検察庁が下山事件を殺人事件として初めから捜査していることは、もう天下周知の事実であります。そうですね、いかがでしょう。――うなずかれたか、確かにそうでしょう。それで、かつてマキという男を佐久間検事が逮捕したことがありますね。それから、三、四年前にも布施検事、佐久間検事などが、金沢、新潟、博多などで捜査されておりますが、現段階においてはどうなっておりましょうか。また、時効までに犯人を逮捕し得る自信がおありでしょうか。検事、事務官は何人くらいでそれに当たっておられるのでしょうか。
○竹内(壽)政府委員 下山事件は本年の七月五日が時効完成の日に当たるようでございます。本件につきましては、いま御指摘のように殺人容疑をもちまして検察当局においては特別な捜査班などを編成いたしまして捜査に当たってきたやに伺っておるのでございます。捜査のこまかい内容につきましては、私よく存じておらないのでございますけれども、聞いておるところによりますと、発生後、非常に広範な捜査を行なってきたようでございますけれども、今日に至るまで結局きめ手になるものを発見するに至っていないような状況でありまして、その点、まことに遺憾に存じております。
○志賀(義)委員 先日吉展ちゃんの一周年がきたときに、原警視総監は、今後とも捜査する、必ずこれを探し出しますと言っておられます。政府の高官であった下山君、私も学校時代に面識がありますが、この人が自殺、他殺まだわからない。こういうことになって、政治的にも重大な影響を持った事件がこういう状態にあるのは私どもまことに不可解でございますが、そこで法務省にお願いしたいのは、下山事件の死体検案書並びに秋谷教室の物質鑑定書がございますね。これをひとつ私どもにお示し願いたいのでございます。たとえば靴の裏に緑色のものがついている、これはそこの草を踏んだせいだろう、これを分析してみたら草ではないのです。鉱物性のものです。それからはだ着には油がついているが着用しておったズボンにはついてない、こういうこともあります。そういうことに関するいろいろな物質鑑定書がございますね。そういうものをひとつ私どもにお知らせ願えませんでしょうか。というのは、これを見れば自殺説が全然根拠がないということもわかりますし、また下山氏がどこでどういうふうに殺され、運ばれ、列車の下、つまりレールの上に寝かされて、ああいう切れ切れになった状態になったか、こういう二つもわかると思いますので、死体検案書と秋谷教室の物質鑑定書、この二つをお示しいただきたいのでございますが、いかがでございましょうか。
○竹内(壽)政府委員 犯人をいまもって検挙できないのでございますけれども、時効の完成近い現在においても、なおかつ警察当局はもちろん、検察庁におきましても捜査を打ち切ったわけではないのでございまして、いまお話しのございました死体検案書あるいは物質鑑定書というようなものも、私はあるかどうかも私自身確認しておらないのでございますが、捜査中にできた書類でございますので、ただいますぐにごらんに入れることができるかどうか、十分検討しました上で御返事申し上げたいと思います。
○志賀(義)委員 法務大臣もそのほうのなにを促進していただきたいと思います。いま刑事局長から答弁があったことでございますね。非常に奇々怪々の事件でございます。私どももいろいろと調べておるのでございますが、これらの一連の当時起こった事件というものは、公判係属中であるからそれについてはということで、私どもも裁判そのものについては一切口をはさまなかったわけであります。法務行政の点からは警察及び検察の活動について伺うだけでございましたが、これはできるならば国政調査権に基づいて法務委員会でも調査をするということになりますので、その資料としてお願いする次第であります。
 さて、前回の三月十三日の法務委員会で松川事件に関する報告をする、こういうお約束をいただきましたので、次の諸点について伺ってみたいと思います。
 竹内刑事局長は、投書などに基づいて警察当局もやっておる、検察当局も関心を持ってその捜査に協力していると言われておりますが、その捜査の状態はどういうことになっておりましょうか。いま捜査しておられますか、おられませんか。つまり捜査に協力しておると言われましたが、それはどういうふうに協力しておられるか、もしお知らせ願えれば、こういうことです。
○竹内(壽)政府委員 具体的な内容につきましては、私承知しておらないのでございますが、一、二の投書等、あるいは公刊されておりますいろいろな雑誌等に出ておりますできごとなどの再検討あるいはそれの照会等、可能なる範囲でやっておるという報告を実は受けておるのでございますが、具体的にどことどこへどういうふうに行ったとか、あるいはどういう人を調べたとかいうことは、私聞いておりません。
○志賀(義)委員 それをお調べ願いたいと思います。聞いておりませんとおっしゃるからお聞きください、それで私どもにもお知らせ願いたい、かように申すわけでございます。
 それからレビュー団がこの事件が起こる前の晩に突然やってきて興行して、事件が起こった直後のその日に次の興行地へ行った。あのレビュー団、日本少女歌劇団の島団長が提出したプログラム、人員編成表、巡業日誌は仙台高検に送致してあるということですが、これらの物件を見せていただけるでしょうか。もう松川事件は一応落着した事件でございますから。
○竹内(壽)政府委員 ただいまお話の証拠物件と申しますのは、日本少女歌劇団機関誌「日少創刊号」というものと、それから日誌の「足跡」という、これはシナリオを書いたものでございますが、それが送致されております。
○志賀(義)委員 シナリオですか、日誌ですか。
○竹内(壽)政府委員 失礼いたしました。日誌でございます。その二つが送致されておるようでございますが、本件この証拠物は、両者とも三十七年の四月二十五日ごろ、それぞれの差し出し人に還付をされておるというふうに承知いたしております。
○志賀(義)委員 その写しは残っておりませんか。
○竹内(壽)政府委員 現物を返しておりますので……。
○志賀(義)委員 もう一つ伺います。人員編成表、これは非常に重要でございますが、人員編成表は島団長は提出したということになっておりますが、どうなっておりますか。
○竹内(壽)政府委員 すでに返しておりますので、中身の確認ができないのでございますが、この「日少創刊号」にはプログラム、劇の内容などが記載されておるということでございまして、その中に、あるいはお話しのような人員編成表のようなものが書いてあるのかもしれぬと想像されるのでありますが、確認できません。
○志賀(義)委員 普通のプログラムは、この事件に関係しそうもない女の子でして、バンドの楽士なんかのほうは抜けております。問題はそこにあるのですが……。そうしますと、本人にお返しになった、こういうことですね。
 それからこの前、後藤田警備局長に伺いましたが、この少女歌劇団が泊ったます屋という宿屋の宿帳、主食の配給手続、税務手続その他の物件について、証拠としては領置していない、こういうふうにおっしゃった。それでお調べ願いたいと私からも申しましたが、それは調べられましたか。
○後藤田政府委員 御質問の宿帳につきましては、三十六年の二月二十四日から事件発生当時の宿帳を借用をいたしておりましたが、同年の暮れに返還をいたしております。写しはとっておりません。その他の点につきましては、事件当時捜査したかどうか不明でございます。また、差し戻し審になってからは、これは調査をした事実はございません。
○志賀(義)委員 ます屋のほうは、宿帳だけではなくて、主食の配給手続、税務手続の物件も提出したということになっておりますが、ただいまのようなお話だと、これは先方に返されたものもあるし、とらなかったものもあるということになって、だいぶ私どものます屋のほうからの調べと食い違うようでございますが、なお私どものほうもよく調べてみたいと思います。
 前回、島団長が事件の前日仙台の警察関係の人に会った、これは前に宮崎県の警察本部にいた人だ、これがだれかお調べ願いたいと申しましたが、おわかりでしょうか。
○後藤田政府委員 事件当時の警察隊長は沼田喜三雄さんでございます。御質問の中に、宮崎県の隊長を前にやっておった、こういうお話でございますが、宮崎県の隊長はやっておりません。宮崎県の隊長をやって宮城県の隊長を後になってやった者は富永という隊長がおります。これはしかし事件当時は、まだ年次の関係等もありまして、全然宮城県等に行くような人ではありません。
○志賀(義)委員 そうしますと、沼田喜三雄という方が当時の宮城県の国警隊長だったわけでございますね。で、どういう用件で前日に会ったのかどうか、そういう点はおわかりでございましょうか。お調べになりましたか。
○後藤田政府委員 沼田さんに問い合わせてみましたら、沼田さんは会ったかどうかといったようなことは全然記憶にない、第一よく知らぬ、こういうことでございます。しかし、何分古いことでございますので、もちろんはっきりした記憶はございませんが、そういう人は現在はとても思い出さぬ、こういうことでございます。
○志賀(義)委員 そうしますと、島団長のほうが覚えがよくて沼田さんのほうが忘れられたということになるのですね。前回、検察庁の答弁では、差し戻しのあとでレビュー団を捜査なさった。それで私がだんだんお尋ねしていったら、事件発生当時の旅館のものを全部調べていたのに、その転々とするレビュー団だけは調べなかったが、調べておくべきだった、こういうようにあなたも御答弁になったのですが、あとで三十四年と三十六年の二回調べられたときに、事件には関係がないことが判明した、こういうふうに御答弁になりました。関係がないことが判明したというのはどういうことでございますか。調べてみて、どういうわけで関係がないと判断なさったのか。
○後藤田政府委員 仙台高裁に差し戻しになった後、三十六年にレビュー団の団員等について島団長以下六名ばかりを調べておりますが、そういった調べの内容等から見て、当該事件には関係はない、こう私どもは判断をいたしたのでございます。
○志賀(義)委員 この前、このレビュー団については三十四年と三十六年に調べているということを私から申したときに、三十四年、三十六年に調べたということを肯定なさったが、最近弁護団がこのレビュー団についていろいろ聞いたあと、また警察官がお調べになったようですが、だれがどういうことをお調べになったのですか。局長御存じでしょうか。その報告はありませんか。
○後藤田政府委員 前回の委員会で三十四年、三十六年とお答えしたように記憶しておりますが、三十四年は一般的ないわゆる聞き込みという程度で、本格的ないわゆる調べと捜査ということは三十六年になっておる、こういう意味でございますので、御了承を賜わりたいと思います。それから最近また調べているとおっしゃるのですが、これは最近また非常に志賀先生のほうでやかましく言われるものですから、そういう意味で現地等についてこれは調べておる、こういうことでございます。
○志賀(義)委員 その調べた結果はまだわかりませんか。たしか三人の警察官が行って調べられましたね。私どものほうにはそういうこともわかっておりますが、あなたのほうにはおわかりですか。私がやかましく言ったなんて言ってこちらの責任にする。あなた方が捜査権を持っているんじゃないですか。警察官の見識にかかわります。
○後藤田政府委員 三人の警察官が調べたというのは三十六年の話でございます。最近のは、当委員会等でもやかましく御質問がございますし、こういう点を調べろというようなお話でございますので、諸般の事実関係をそれぞれの関係の警察について調べておる、こういうことでございます。
○志賀(義)委員 目下調べ中ですね。調べ終わりましたか、調べ終わりましたら、ここで御報告願いたい。
○後藤田政府委員 調べて判明しておるものもあるし、まだ残っておるものもあります。
○志賀(義)委員 そうしますと、それはここで報告して下さいますね。何ぶん、法務委員会がやかましく言うという前置きがあるからには、その結果は報告なさいますね。
○後藤田政府委員 御質問があれば、お答えいたします。
○志賀(義)委員 いま質問しますが、用意はできておりますか。
○後藤田政府委員 前回の委員会では、一つは歌劇団の主食の配給、税務手続あるいは宿帳等についての調査、こういうお話でございましたが、この点については先ほどお答えいたしたとおりでございます。
 それから当時の国警隊長がだれであったかということを調査しろ、こういうようなお話でございましたが、これもただいまお答えしたとおりでございます。
 それから野地タケの供述の関係で、人員等について島社長と言い分が違うじゃないか、こういう点も調べろというようなお話でございましたが、この点につきましては、私どもの調べでは、島社長は、男子の従業員は十一名と申しております。当時の調べでも十一名でございます。私どもとしては氏名その他も全部わかっております。したがって、野地タケの供述とは若干その点は食い違っておるようでございます。ただ、当時領置しました日誌でございますか、そういったものとか、いろいろな点から当時の書類、捜査官の記憶等で調べてみますというと、この興行を打ったのは、やはり毎日毎日の日程がぎっしり詰まっておりますので、野地タケが言っておりますように、変更したといったような事実は認められません。宮城県から入ってきたというようなお話もたしかございましたように記憶しておりますが、そうじゃございません。これは山形県から入ってまいりまして、そして福島で興行を打って、茨城に抜けて栃木で打って帰っておる、こういうような実情で、当時の日誌等を見ましても、途中で急に予定を変更して松川で一日芝居を打ったといったような事実はうかがわれません。そういったようなことで、御質問の趣旨は、おそらくや予定を急に変更してあすこでやったじゃないか、あるいは人数が合わぬじゃないか、こういったところにおかしい点があるのじゃないかという意味だと思いますが、私どもの現在までの調査では、そういう疑わしいという事実は発見をいたしておりません。
 それからいま一点は、島社長のことを調べたか、こういうことでございましたが、島社長につきましては、経歴等を調べておりましたが、一応判明をいたしております。島という人は、大正十五年ころから日本少女歌劇団というものをつくりまして、昭和十五、六年ごろ、この劇団を引率をして、満州、シナ方面等も巡業し、戦後は日本の各地をやはり巡業をしておりましたが、この劇団は昭和三十年に解散をいたしております。現在は映画館を宮崎市内で数軒経営をし、貸しガレージ等も持っておるようでございますが、会社の所在地、自宅いずれも宮崎でございまして、現在島興業という会社の社長をやっております。島幹雄氏は、大体月の半分くらい東京に来ておるようでございます。東京の住所は、先般御質問の中にございましたように、ホテル・ニュージャパンにおられるようでございます。上京の目的でございますが、原因不明の循環器系統の病気を持っておる。その病気の治療が一つ。もう一つは事業関係者や個人的な知人等もあって、そういった人たちに会うといったようなことで上京しておるようでございますが、なおこの人は「心の灯台」という小さなパンフレットのようなものですが、こういうものの発行もしておるようでございます。島社長はいかなる人物か調べろ、こういうことでございましたが、私どもの調べは以上のとおりでございます。
○志賀(義)委員 ただいま当時レビュー団に所属しておった人物の名前もわかっておるということでありますが、現在その中で行方不明になっておる人物はございませんか。全部警察庁で当たられたでしょうか。
○後藤田政府委員 宇都清志という人だけが所在がわからないようでございます。あとは大体わかっておるようでございます。
○志賀(義)委員 そうすると、行方不明の人物は、今でもどこにいるかお調べになっているのでしょうか。お調べになったことがございますか。
○後藤田政府委員 大体の経歴と、どの方面に行ったというところまでわかりましたけれども、何分大阪方面ということで、ちょっとこれはわかりにくいというのが実情でございます。
○志賀(義)委員 この前私は、レビュー団の人員が当時何名であったか、女が何人、男が何人、その名前は大体わかっている、一人宇都という人物がいま行方不明、こういうことになっておりまして、私は、当夜だれがどこに宿泊したか、松楽座という劇場に宿泊したのは何人か、夜中に松楽座を出ていって、自動車で福島方面に向かったのはだれか、こういうところをお調べ願いたいと申しておりますが、それはぜひともお示し願いたいと思います。
○後藤田政府委員 自動車二台で出かけたという事実はございません。それから松楽座の楽屋で泊まったのは、男子の従業員が全部泊まっております。それから旅館で泊まりましたのは、男は団長と、それと婦人が十八名でございます。これだけが旅館で泊まっておる、こういうことでございます。
○志賀(義)委員 そうしますと、野地タケという劇場の管理人が述べたところとだいぶ違うようでありますが、こういう点については、氏名その他についてお示しを願いたい。というのは、私が数年前この法務委員会で、松川事件の真犯人については、当時のCICあるいはもとの特務関係の人々その他を調べてほしいということを申しておきましたが、何かこれに当たられたことはありましたか。法務委員会でやかましく言うと、あるいは私が言うと、少しは何かかっこうをつけられるのか、お調べになったようでございますが、これをお調べになりましたか。
○後藤田政府委員 島社長がCICと関係があったというような事実は私は承知をしておりません。ただ、この占領軍との関係いかんということになりますと、島社長が持っておる旅館が宮崎で接収せられております。その件だけでございまして、それ以外特別な関係はないように私どもは承知しております。
○志賀(義)委員 では、刑事局長と後藤田局長とにお願いしました文書は、速記録にもありますが、提出できるものは提出していただきたい。これを委員長にお願いしまして、この次にはもう少し突っ込んだ質問をしたいと思います。きょうはこれで終わります。
○濱野委員長 本日の議事はこの程度にとどめます。
 次会は来たる七日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後一時二十一分散会