第046回国会 法務委員会 第24号
昭和三十九年四月九日(木曜日)
   午前十時三十六分開議
 出席委員
   委員長 濱野 清吾君
   理事 唐澤 俊樹君 理事 小金 義照君
   理事 小島 徹三君 理事 三田村武夫君
   理事 坂本 泰良君 理事 細迫 兼光君
   理事 横山 利秋君
      上村千一郎君    大竹 太郎君
      岡崎 英城君    坂村 吉正君
      四宮 久吉君    服部 安司君
      古川 丈吉君    松澤 雄藏君
      森下 元晴君    井伊 誠一君
      田中織之進君    畑   和君
      松井  誠君    竹谷源太郎君
      志賀 義雄君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 賀屋 興宣君
 出席政府委員
        警察庁長官   江口 俊男君
        検     事
        (大臣官房司法
        法制調査部長) 津田  實君
        検     事
        (刑事局長)  竹内 壽平君
 委員外の出席者
        判     事
        (最高裁判所事
        務総局総務局
        長)      寺田 治郎君
        判     事
        (最高裁判所事
        務総局総務局第
        一課長)    長井  澄君
        判     事
        (最高裁判所事
        務総局人事局
        長)      守田  直君
        判     事
        (最高裁判所事
        務総局人事局給
        与課長)    宮崎 啓一君
        専  門  員 高橋 勝好君
    ―――――――――――――
四月八日
 委員河本敏夫君、千葉三郎君及び中垣國男君辞
 任につき、その補欠として長谷川四郎君、森下
 元晴君及び上村千一郎君が議長の指名で委員に
 選任された。
    ―――――――――――――
四月八日
 遺言の方式の準拠法に関する法律案(内閣提出
 第一二七号)(参議院送付)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正す
 る法律案(内閣提出第九号)
 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の
 一部を改正する法律案(内閣提出第一二一号)
 (参議院送付)
     ――――◇―――――
○濱野委員長 これより会議を開きます。
 暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 前会に引き続き質疑を行ないます。細迫兼光君。
○細迫委員 私は、下級裁判所に関する…
○濱野委員長 細迫君、暴力法案ですよ。
  〔「下級裁判所が先だ」と呼び、その他発言する者多し〕
○濱野委員長 ちょっと速記をとめて。
  〔速記中止〕
○濱野委員長 速記を始めて。
 前回に引き続き質疑を行ないます。三田村君。
○三田村委員 前回の委員会で、法務大臣に御出席を願って、暴力対策の基本問題について御意見を伺ったのですが、途中で中座されました。私の質疑の要点は刑事局長にとくと申し上げて、刑事局長から大臣にお伝え願うように申しておいたのでございますが、私といたしましては、その質問の締めくくりがついておらぬので、きょうは大臣に御出席願いましたから、さらに基本的な問題点について、二、三御所見を伺っておきたいと思います。
 私が前回の委員会で申し上げた要点は、最近、ことばの表現は変になりますが、暴力事犯の横行は全く目に余るものがございます。目をおおい、耳をふさぎたいような事犯が毎日新聞にあらわれております。これをどうするかということは、ひとり法務行政、検察行政の面だけでなくて、政治全般の大きな問題だと私は思います。どこの国でも、人の生命と自由に対する侵害は最高の罪悪であります。近ごろの暴力事犯の趨勢を見ておりますと、戦前と比較することは必ずしも当たらないかもしれませんが、世の中が平和であり、社会生活が安定してきた今日、暴力事犯に関する限り、ことに刑法に抵触して検挙され、検察庁に送られていく犯罪が四倍、五倍にふえておるということは、決して名誉でも何でもありません。近代国家の基本的な原則は、生命と財産の安全を保障するということでございます。これは国を形成し、政治を行なう以上、最高の責任であり、また最低の課題であります。この問題についての基本的な問題が、まだ私はしっかり解明されておらないような気がいたします。これは思想を超越した問題であり、与野党の立場を超越した問題であります。いわゆる近代国家といい、文化国家というならば、その国の国民の生命と自由を守ることは、当然政府の責任であります。そういう意味合いにおきまして、端的に申しますと、一体この一番重要な治安の責任者はだれだ、その行政の面において、あるいは事務的な体系において、どこで基本的な責任を負うていくんだということが、私はきわめて不明確なような気がするのであります。より端的に申しますと、政府の治安対策と申しますか、治安対策という表現用語の中にはいろいろな解釈もありますし、また誤解も生むかもしれませんが、私が申し上げる治安対策というのは、人の生命と自由を守るという治安対策であります。近ごろのように、この間も新聞に出ておりましたが、母親が十五、六歳の娘を連れて街頭を歩いておる、そのとたんに暴漢があらわれて、白昼公然と娘を奪い去り、どこかわけのわからぬ林の中に連れ込んでしまうというような事態の発生というものは、まともな世の中とは言えません。こういう立場から考えますならば、私は、この治安対策というものを政府の最も重要な責任として、しっかり閣議でも方針をきめていただきたい、こう要請し、要望するのでございます。
 前回の委員会で、警察庁の長官にも申し上げたのですが、なぜこんなに暴力が横行するのか。もちろん、これには社会的要件も、経済的事情もありましょう。しかしながら、これは間尺に合うからこういう暴力が存在するとしたならば、これは事、容易ならぬことだと思います。チンピラ暴力もさることながら、その暴力団のボスとでも言いますか、そういうものがごう然とそり身になって、日本の中心の東京のどこかにあぐらをかいておるとするならば、私はそれは許さるべき存在ではないと思います。こういう問題についても、真剣に考えなければならぬ。
 今回提案されました暴力等処罰に関する法律の一部改正、これはもとより必要でございます。なお足りない面が多々あると思いますが、それとは別個の問題として、ここで必要なことは、暴力対策の基本的な方針を確立していただきたいということでございます。十何万かの警察の機動力を持っております。また検察、裁判、それぞれ行政の組織に従って組織があり、機能もあります。そのもとにおいて、かくのごとき暴力の横行ということは非常に残念だと思います。どこに欠陥があるか、どこに穴があるか、これは十分検討を加える必要がございますが、これはしばらくおくといたしまして、私は特に政府に要請し、また御所見を伺いたいことは、暴力対策に対する政府の基本的な態度、方針、暴力はなくさなければいけないという決意には変わりないと思いますが、それには具体的な対策、方策が要るんです。その具体的対策、方策というものをどこに基準を置き、どの方向に持っていくお考えがあるかということを私はお伺いいたしておきたいのでございます。まず冒頭にこれだけを、申し上げまして、政府としての、大臣の御所見を伺いたいのであります。
○賀屋国務大臣 暴力の制圧と申しますか、暴力を社会生活からなくするということは、お話しのように最低の線だと思います。政治の第一歩は、腕力、暴力によって他の社会人の生活を左右する、これをまず取り締まって押えるということが世の中の秩序の第一歩であります。徹底的にそれをなくするという要請は、進歩した社会においてもあるわけでございまして、その意味におきましては、最終、最高のものといってもよろしいわけであります。社会生活を暴力で左右されるということは、一番原始的の社会生活の秩序破壊のもとでございますから、第一歩であるということはお示しのとおりであります。だんだんに暴力が減っていくことが、政治、社会、生活の進歩の度をあらわすものと思います。お話しのように、最近はこれがむしろ逆転の傾向にあるということは、私は日本として実に恥ずべきことだと思うわけであります。政府といたしましても、重大なる行政の責任を持っておりますから、それを感ずるわけでありますが、率直に第三者的に申せば、日本の社会全体の責任ではないか。社会のうちで、暴力というものはまず最初に払拭せらるべき、恥ずべき社会の現象だということに関する自党が、戦後逆賦しまして、減った、あるいはなくなった。むしろ逆にそれを誇りとするようなものが相当あるということは、ほんとうに私は恥ずかしいことでございまして、そういう意味で、もちろん政府は責任を十分自覚しますとともに、社会全体からこれをなくしていこうというかたい決意が必要であると思うのでございます。それには政府自体が、その意思が堅確であり、鮮明であり、国民にそれが徹底することが必要だと考えまして、基本的に一切の暴力をなくして、国民相互の関係は公正なる言論によって、平和的な秩序ある方法によって争うことは争う。討議すべきことは討議をして、あらゆる他人に対する要求、交渉は平和的手段、一切の暴力を排したもので行なわれるところに必ず行き着く。これが政府といたしましても行政の大きな方針であるということばまさにお示しのとおりであります。その意味におきまして、あらゆる手段をもろてこれに邁進いたしておるのでございます。
 ただ、最近におきまして暴力的事犯の多いということは、まことにその点においては痛心し、心中はなはだ悩んでおるということも事実でございます。したがって、面接取り締まりに当たります警察方面におきましても、あるいは予算において、あるいは各省の設置法の改正、人員の増加において、いろいろとはかっております。決して十分とは申せませんが、予算の措置においても相当に努力をいたしておるような次第でございます。一般の教育その他の方針におきましても力を尽くしますとともに、刑事方面におきましても、これはきわめて重大でございますので、今回も、暴力行為の取り締まりにつきまする法案の改正を御審議願っておりますのは、そのきわめて重要な一環と考えております。刑事政策、警察取り締まり、そのほか広く教育、社会教育、いわゆる人つくりの面におきましても、あらゆるものを総合してこれへ持っていきたい。そうして少なくとも、絶滅にいきませんでも、減少の傾向に何とか持っていきたいと非常に苦心をしておる次第でございます。今後も、それにつきまして十分な方策を講じたい。ことに、この秋にはオリンピックがありまして、多数の外国人が参ります場合に、ほんとうに日本の醜態をさらすようでは実に困る次第でございます。急速にそういう点も考究してまいりたい、節度してまいりたい、かようにいまも苦心をして、いろいろとその方策につきましても、この上とも研究をいたしておるところでございます。そういう意味におきましても、ただいま御審議願っております法律案は、ぜひとも早く御審議の上、通過いたしまして、これの実行によって大いに効果をあげたいと期待しておるところでございます。
○三田村委員 もう一、二点簡潔に伺っておきたいのですが、いま大臣もお述べになりましたように、暴力事犯が少しも減らないのです。私は非常に残念だと思います。前回警察庁の長官にも申し上げたのですが、せっかく警察当局も苦心しておられまして、今度警視庁の中にも暴力取り締まり専門の課ができたようでございます。毎年毎年せっかく苦心しておられるのにかかわらず、前回いただいた資料によりますと、ここ五年間、暴力事犯が年間大体二十万件です。二十万件ということは、前回も申し上げたのですが、人口五十万の都市で、男全部が暴力事犯を犯しているということになるのです。統計の上から見たってたいへんなことなんです。同時に、二十万件の暴力事犯があることは、その対象になる二十何万の被害者がおるということなんです。これはたいへんなことなんですが、政府からお出しになっておる犯罪白書を見ますと、いわゆる先進国と比較いたしてみますと、人の生命、自由に関する犯罪で、日本はイギリスの十三倍だといいます。西ドイツの三倍ないし五倍だといいます。いま大臣のお話しのとおり、決してこれは名誉あるできごとじゃございません。恥ずべきできごとでございます。ぜひこの点を政府もしっかり銘記されまして、根本的な対策をお考え願いたいと思います。
 それから、いま大臣が言われました、私たち一つ頭の痛いことは、ことし行なわれるオリンピックでございます。オリンピックを舞台にして、左右いずれにしろ、とんでもない事件でも発生いたしますと、これはまさにたいへんな日本の信用の失墜になります。ソ連からも多数の選手が参ります。また見物の人も来られましょう。小さないたずら、小さな事件でも、大きな国際的波紋を起こします。また同時に、他の国からの選手も参観者も多数参ります。つまらない考えで、一種の英雄気どりで妙な事件が起こらないとは保証し得がたいのであります。これはぜひとも根本的の対策をお考え願いたい。先ほど申しましたように、これは思想を超越した、与野党を離れた大きな問題でございますから、この点はひとつ根本的にお考え願いたいということが一点。
 それからいま一つは、これも前回の委員会で切々と訴えたのでございますが、いただいた資料によりますと、昭和三十七年の少年犯罪はついに百万を突破いたしまして、百五万だといいます。警察に検挙され、検察庁に送られたのは百五万だといいます。それに虞犯少年、法に触れるおそれのある行為をなしたものが九十三万二千、合わせて二百万です。しかもその年齢層はだんだん低くなって、町のいわゆるチンピラ暴力団が横行また横行する傾向にある。これはやがて訓練し成長してまいりますと、組織された暴力団の中心人物になっていく可能性、危険性がございます。これはいまのうちにしっかり手当いたしませんと、まさに暴力のちまたになってしまう。かつての広島事件あるいは神戸事件、いろいろな事件がございまして、暴力団と暴力団の対決で拳銃の撃ち合いをやったりして、暴力の町と化したこともあるのです。こういうことはどうしたら根本的になくなるのだろうということをまず真剣にお考え願いたいと思うのです。大臣の先ほどの御意見で、大体の御方針はわかりましたが、より具体的に、毎年二十万も暴力事犯の起きることは、実に悲しむべき傾向である。毎年、毎年暴力団対策が強化されていきますが、なぜ減らないかということ。さらにオリンピックを中心にした対策というものをあやまちのないように立てておかなければならぬ。もう一つは、一番頭の痛いのは、毎年、毎年激増また激増の傾向を示してくる少年犯罪の年齢低下、十四才、十五才が中心になって少年の犯罪行為がますますその勢いをたくましゅうしてくる。やがてこれは組織された暴力に転化されてくる。しかもその存在が、どっかに存在の価値があるんだ。間尺に合う、商売になる、勘定に合うというような条件があるならば、その間尺に合う、商売になる、勘定に合うという条件を除かなければいかぬ。どうやって除くかということについても、私は、冷静に、厳粛に、厳密に各機関が検討していかなければならぬと思うのであります。法務大臣、警察庁長官もおられますから、両当局ともこの問題についてはひとつ真剣に対処していただきたい。この三点を申し上げて、いま一度法務大臣の御方針を伺っておきます。
○賀屋国務大臣 御質問にありましたように、この秋のオリンピックに際しましては、急激に多数の外国人が日本に来るという時期でございまして、その際に、思想的暴力と申しますか、そういう背景の暴力についても警戒しなければならぬというお話は、ごもっともと存じます。しかし、大体オリンピックのことでございますから、普通ならば、そういう意味で問題になるような外国人は、特に多数来ることはないとも考えられますけれども、しかし、事態はどういうふうに動くか、なかなか普通の予想どおりにもまいりません。この意味におきましては、国内における左右の破壊活動をいたすおそれがあります団体に対しましては、特に施設も充実いたしまして、あらかじめ、これが状況の探知につとめまして、事前にその害を防ぐことに力を尽くしてまいりたいと存じております。特に心配しますのは一般暴力でありまして、日本に、スポーツ、連動あるいは観光という、いわゆる無邪気に来た外国人に対して、日本の社会がどんなに不安であるか、外国人の生命、行動がどんなに不安であるかという感覚を起こさせて帰るということは、そのこと自体、暴力行為自体が悪いのみならず、将来に対してもほんとうにこれは日本のために憂うべきことだと思うのでございます。その取り締まりが非常に重大でございまして、その意味におきましては、警察方面においても非常な決心で対処するということを考えておられるところでございます。
 年々ちっとも減らぬじゃないか、まことにお話しのとおりでございます。ある意味でお恥ずかしい次第でございますが、今年からは特に暴力取り締まりに警察の方面にも力を尽くさせております。また、ただいま御審議願っている法律でも、いわゆる町の暴力の一番要点というか、ポイントをついていると思うのです。一般の偶発的暴力行為も困りますが、ほんとうに困るのは常習的暴力の連中でございます。ことにそれが刀剣銃砲類を持ってやる場合が一番危害が大きいのでございますから、こういうものに対しまして、早く立法が通りまして、その結果、社会の暴力に対して悪いものだという観念がございましょうが、なおこれを顕著に、鮮明にこの際その考え方が社会一般に広がり、徹底するということは私は非常に効果がある。いままで減らなかったのは残念でございますが、これが当初提案された二年前に通っておったら幾らか減ったのじゃないか。過ぎたことはいたし方ございませんが、早くそういうふうにいきまして、現実の警察取り締まりとまちまして、この法の効果、法によって社会の自覚も一そう徹底して効力を上げて、今度からは年々減っていく、こういう事態に何とかして持っていきたいと努力をいたしたい考えでございます。
 それから少年の問題は、これは実に困難な問題でございまして、いままでも問答がございましたように、法制の上、もちろんでございます。取り締まりの上、もちろんでございますが、これは家庭教育、学校教育、一般の道義水準、ことに少年の問題にしましてもほかの場合にもそうでございますが、もう少し生理的と申しますか、病理的に精神病やあるいは変質者問題、こういうふうに科学的にもっと取り組んでまいりまして、旧態依然たる教化一点ばり、これが非常に重要でございますとともに、もう少し科学的の方法を取り入れてメスを入れていきたい、こういうふうな方向でいまも研究いたしておりまするし、どうも少しわれわれも不満なのですけれども、幾らかずつは進んでおるということでございますから、これはほんとうに今後一段の力を尽くしたいと存じます。
○三田村委員 理事会の申し合わせもございますから、私はこの程度できょうやめますが、第一線の警察の今後のあり方の問題、あるいは検察、裁判、いずれも事務的な行政の面における問題点でいろいろまだお尋ねし、検討を加えたい問題もございますが、この点を一応留保しておきまして、きょうは私の質問を、理事会の申し合わせもございますから、この程度にとどめます。
○濱野委員長 暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正する法律案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
     ――――◇―――――
○濱野委員長 次に下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 質疑を続行いたします。細迫兼光君。
○細迫委員 私は、この下級裁判所に関する一部改正案の中身についてきょうはいろいろお尋ねをいたしたいと思います。
 この唯一の中身を形成しておるのは山梨県の富士ヶ嶺の管轄移転の問題であります。この富士ヶ嶺地区というものは元来山梨県の地域に属しております。しかるにこれが県境を越境しまして従来静岡県の鰍沢簡易裁判所の管轄に属しておる。これは県境を越境して管轄がきめられておることは、よほど異例なことであります。これはよほど特殊な事情があったに違いない。非常にその管轄が便利であるとかいうふうな特殊な事情が存在しておったに違いない。この際この法案によれば、その特殊な事情を無視して、やはり山梨県の富士吉田簡易裁判所の管轄に入れようというのでありますから、前に越境してまでつくった管轄の必要性を無視して、これは逆に富士吉田へやろうという、これは非常に重大なことであります。ここでは小さな問題でありますが、地元民にとっては非常に重要なことであります。まず承りたいのでありますが、どうして県境を越境してまで静岡県の簡易裁判所にこの管轄をきめたか、その特殊事情というものをまず御説明を願いたいと思います。
○津田政府委員 ただいまのお尋ねの点でございますが、今回問題になっておりまする字富士ヶ嶺の区域、すなわち山梨県西八代郡上九一色村字富士ケ領の区域につきましては、これは現在は鰍沢簡易裁判所の管轄区域になっておる。鰍沢簡易裁判所は甲府地方裁判所の管轄区域内にございます。山梨県にあるわけでございます。現在も鰍沢簡易裁判所として山梨県の簡易裁判所に管轄をきめられておるわけでございます。でありまするが、この点が現在山梨県の鰍沢簡易裁判所にありまする理由は、この富士ケ嶺の区域が昭和三十二年十月一日に字本栖の区域から分離されて、独立した字になったということから起こっておる問題でございますが、それより以前は字本栖の管轄区域といたしまして富士吉田簡易裁判所の管轄区域にあったわけでございますが、本栖から独立したために鰍沢簡易裁判所の管轄区域になったということであります。それをこのたびは地元の住民の方々の利便を考慮いたしまして、もとどおり富士吉田簡易裁判所の管轄区域に変更しようという改正でございます。
○細迫委員 御説明によれば、いわば行政区域、行政地区の変更に伴う改正だ、こういうふうに聞こえるのでありますが、何か実質的な利便の考慮というものが必ずや払われたであろうと思うのであります。あるいはこまかく言えば、富士吉田へ行くよりも鰍沢へ行くほうが便利だ、バスの回数が多いとかいうようなことかなんかが必ずや合理的であったに違いない。そういう事情がこのたびいかに変化があったかということが実質的な問題だと思うのです。その点はいかがでありますか。
○津田政府委員 お手元にお配り申し上げておりまするこの法律の参考資料でございますが、それの一七ページにございますが、この富士ケ嶺の区域は、現在鰍沢簡易裁判所にいっておるわけです。この富士ケ嶺の区域は人口六百七十九人というかなり小さい字でございますが、その字のほぼ中心部から鰍沢簡易裁判所に至りまする距離は約四十八キロでございまして、交通機関は電車、バスでございますが、二時間三十分を要しまして、運賃は百八十円な要するわけであります。今度変えますところの富士吉田簡易裁判所に参りますためには、距離といたしましては三十二キロでありますし、交通機関はバスでございます。所要時間は一時間二十分で、運賃は百十円ということでございまして、所要時間は約半分程度になり、運賃は約六割というような程度になるわけであります。地元の方々にとっては、このほうがその面においては断然便利であると思います。
○細迫委員 提案の理由説明によりますと、これは地元の住民の希望を考慮し、関係諸機関の意見をも十分参酌したと、こういうことになっておりまするが、住民の希望ということにはどういう裏づけがありますか、何か資料がありますか。嘆願書であるとかいうような資料がお手元にありますればお示しを願いたい。
○津田政府委員 この管轄区域の変更につきましては、全国的に法務省におきましていろいろ常時調査をいたしておりますが、この地区の問題につきましては、甲府の現地、すなわち甲府の法務省の出先であります検察庁におきまして、まず変更するのが適当ではないかというような意見もございましたので、調査をいたした検察庁方面から、地元の町村あるいは部落につきまして意見を聞きましたところ、地元のほうにおきましては、これを変更してもらうことがもう非常にけっこうである、非常にその点を要望したい。従来は積極的に要望してこられたわけではございませんが、このたびそういう議があるならばぜひお願いしたいというようなことでございます。それとあわせまして、甲府地区の弁護七会、それから山梨県はもちろんでありますが、関係地区の行政庁あるいは警察というようなものの意見を聞きました。もちろん裁判所の意見も聞きまして、いずれも意見が一致いたしておりますので、かような改正提案をした次第でございます。
○細迫委員 何かその地元住民の希望というものを裏づける書類でもお手元にありますか。嘆願書であるとかなんとかあれば発表してもらいたい。
○津田政府委員 計数は別に請願書というようなものはございません。これは従来とも全国の管轄を常時調査いたしておりますが、もちろん積極的に嘆願書が出る場合もございますし、嘆願書というようなものがなくても、こちらから利便等を考えていろいろ問い合わせをする結果、変更するというものもしばしばありまして、むしろそのほうが多いのではないかというふうに考えておりますが今回の場合はその後者に属するわけでございます。
○細迫委員 小さな部落のことだから、何らの影響もないかと思いますけれども、この管轄を変更するについて裁判所方面の受け入れ態勢というようなものに関連いたしまして、職員の増減というような問題は手当てがしてあるのでございますか、何もないのですか。
○津田政府委員 ちょっと申し落としております部分がありますので補充いたしますが、甲府地方検察庁からの問い合わせに対しまして、上九一色村村長が回答書を出しておりますが、その回答書はございます。
○寺田最高裁判所長官代理者 お尋ねの職員の手当ての問題でございますが、お手元に法務省から差し上げていただいております資料の一六ページにございますとおり、この区域内の簡易裁判所の受理件数というものは、昭和三十八年度におきまして民事訴訟四件、刑事の略式が八件というようなことでございまして、この程度の事務量でございますれば、現在の職員数をもって十分な余力を持っておる、かように考えております。将来また非常に事件でもふえますような場合には、もちろんそのほうの手当てをいたすことになるわけでございます。
○濱野委員長 竹谷源太郎君。
○竹谷委員 私は、法務省と最高裁判所に簡易裁判所の判事の問題について御質問いたしたいと思います。
 裁判所法の第四十四条において、簡易裁判所判事の任命資格を規定してありますが、その中に第一項第四号で裁判所調査官、裁判所事務官、法務事務官等のある一定の年限を経た人が簡易裁判所判事に任命せられる。次に第四十五条には、簡易裁判所判事の選考任用と言いますか、正式の裁判官としての資格を持つ者以外について選考の上任用ができる。こういう規定がありますが、この正式の司法試験を通り、司法修習生をやった以外の選考任用もしくは裁判所の法務事務を行なったというような理由によって簡易裁判所の判事に任命せられておる簡易裁判所判事の数字をまずお聞きしたいと思います。定員は現行法では七百名でございますが、今度十五名が増員になる法案が先般通りましたが、その約七百名の簡易裁判所判事のうち、第四十五条による選考任用の簡易裁判所判事並びに第四十四条第一項第四号によって簡易裁判所判事に任命せられておる判事の数字をまずお伺いしたいのであります。
○寺田最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘のございました裁判所法第四十五条に基づきます、いわゆる特別選考によりまして簡易裁判所の判事になっております者のことでございますが、これはいまお読みいただきました四十五条の第二項で、選考委員会に関する規程は最高裁判所が定めるということになっておりまして、この法律の規定に基づきまして最高裁判所の規則として簡易裁判所判事選考規則というものがございます。その規則に基づきまして、いろいろ推薦委員会とかあるいは選考委員会というようなものを設けまして、慎重な手続でもって選考いたしておるわけでございます。
 その簡易裁判所判事の教でございますが、定員は従来七百十名でございましたが、先般国会で御審議いただきまして通していただきました職員定員法の一部改正法によりまして、簡易裁判所判事については五名の増員をお認めいただいたことになりましたので、現在としては定員は七百十五名ということになっております。そしてその実際の実員でございますが、これは昨年暮れの資料でお答えさせていただきたいと思いますが、数字は六百八十三名でございます。そういたしまして、その中で簡易裁判所判事兼判事、これはむろん有資格者でございますが、これが八名でございます。それから簡易裁判所判事兼判事補というものが百八十名ございます。これももちろん有資格者でございます。それからそのほかに、そういう判事とか判事補を兼務いたしておりませんけれども、いわゆる資格を持っております簡易裁判所判事というものが百十四名ございます。残りの三百八十一名というものがいわゆる特任の簡易裁判所判事ということになるわけでございまして、大体のパーセンテージで申しますと約五五%ということになっておるのでございます。
○竹谷委員 有資格の者が四五%、そして特別任用を受けておる者が五五%というふうなことで、必ずしも一定の資格を持つ者はいいがその他の者はだめだという意味ではございませんが、一応法律に定まった司法官としての一定の任用に関する試験なりあるいは選考なりというものを必ずしも十分に受けていない方々が五五%を占めておるということは、かなり重要な問題ではないかと思います。統計によると、簡易裁判は一年に六百万件に近い、正確には五百五十万件かと思いますが、そういう膨大な事件を扱っております。その中には裁判所書記官等に補助をさせて監督をすれば十分に処理できる事件も多いわけでありますが、しかしながら、人権に関するいろんな刑事事件あるいは民事事件、調停というような、判事みずからがこれに当たらなければならない事件も非常に多いわけでございます。刑事事件としては軽微なもの、あるいは民事事件としては請求金額が少ないということで、軽微で簡単なたいした事件ではないと思ったら、これは大きな間違いです。この裁判所法で定めるとおり、十万円以下の請求事件は簡易裁判所でということになっておりますけれども、権利の確認事件のような場合にはかなり大きな民事事件も取り扱うことになります。また刑事事件といたしましても、数の多い窃盗のようなものとか、暴行とか、そういうものは簡易裁判所でやっておるばかりでなく、選択刑として罰金刑を定められておる罪も簡易裁判所で取り扱うことになりまして、かなり重要な刑事事件も簡易裁判所に係属をする。ことに最近は調停事件も多いわけでございます。こういうものにつきましての仕事も容易ではない。こういう意味で、簡易裁判所の判事の負担というものは非常に重いのであって、これに対して十分の人員の増加なりあるいは待遇改作なり、諸種の面で見なければならぬことが多いと思うのでございますが、それにも増して需要なことは、これらの方々が、すべて簡易裁判所は最初の第一審の事件であって、事件に一番近接した証拠等がまざまざとはっきりして、一番正しい判断を加え得る絶好の第一審の事件を取り扱うのであってこのときの審理いかんということが最高裁にまでいく間にも支配的な先鞭をつけるといいますか、既成事実をつくるというか、そういうことになって、裁判の結果に対して非常に重要な影響力を持つ。また簡易裁判所に係属する事件については、民事の場合に当事者が弁護士を頼まないでもよろしい、また貧乏で資力がない人々は、弁護士に頼まずに自分で行くというようなことで、しろうと相手の裁判を裁判官がやらなければならない。こういう場合に、専門家の弁護士が原告、被告両方について弁論をし証拠を提供するというような場合には裁判官は非常にやりよいのでありますが、お互いにしろうと同士が出て法律的な知識のない人々が不十分な攻撃、防御の方法を講じ、それに対して裁判官が適切な審理と判断を加えるということは、裁判官としては、むしろ上級裁判所の裁判官よりも一そう法律的な知識、また社会のいろいろな実情に通暁した練達たんのうの裁判官が、むしろ控訴審あるいは最高裁判所などよりも必要なのではないか、こういう意味でこの簡易裁判所は非常に優秀な裁判官を必要とする。また調停事件におきましても、先日他の委員から質問もありましたが、判事でない調停委員がやってしまって、最後に締めくくりに来る程度である。そのために必ずしも妥当でない調停の結果が出てきたという話もありましたが、こうした調停は、社会におけるいろいろな紛争を平和のうちに、将来にあと味の悪いようなことがないように、ピースメーカーとしての役目も非常に大きい仕事の調停でありますが、そういう重要なものは、法律的にまた社会的に十分の経験を持った練達たんのうの裁判賞がこれに当たることが非常に必要だ。
 こういういろいろな観点から、法務省も最高裁判所も、簡易裁判所判事の選考について、またその事務の執行について特段の留意をする必要があるのじゃないか。刑事事件でも、民事事件でも、あるいは調停におきましても、この簡易裁判所というものを包括して非常に重要視していくということで、妥当な判決もしくは調停の結果、控訴、上告等をせずに済むように、また早く紛争やなんかを解決せられて上に事件が行かなくて済むようにするには、優秀なりっぱな裁判官がいて正当適切な裁判あるいは調停をやるということが、社会の平和をつくり、また人々の間の紛争というものをすみやかに解決し、そうして人々が仲よく気持ちよく暮らせるような住みよい社会をつくるという意味でも、非常に重要なものだと考えますが、法務大臣並びに最高裁判所はどうお考えになっておられるか。どうも簡易裁判所の判事の半分以上が選考任用で、有資格の者が四五%しかいないということは重大問題ではないかと考えるのでありますが、法務省並びに最高裁判所の御意見をお伺いしたいと思います。
○寺田最高裁判所長官代理者 便宜裁判所のほうから先にお答えさせていただきたいと存じますが、ただいまの竹谷委員のお話の点、実はまことに簡易裁判所のあり方なり実情をよく洞察していただきまして、ごもっともと存ずるところ、共鳴するところがきわめて多いわけでございます。ただ、それだけではお答えにもならないかと存じますので若干数字等を申し上げてお答えにかえさせていただきたいと思うわけでございます。
 いま御指摘のございましたとおり、まず簡易裁判所の民事事件が大体七十万件でございますが、その中で最も多数を占めておりますのが過料の三十万件というもの、それから督促手続、いわゆる支払い命令、これは申し立て人だけの主張によって原則として処理する事件でございますが、これが十五万件、こういうようなことでございまして、いわゆる民事訴訟事件というのは六万件程度、すなわち一割にも満たないわけでございます。それから刑事事件におきましても、約五百万件ございます中でいわゆる刑事公判事件というものは五万件ぐらい、つまり一%にも満たないぐらいの数字でございます。そうしてその大部分を占めておりますものがいわゆる略式事件で、三百四十万件ぐらいということになっておるのでございます。むろん、この略式事件とかあるいは支払い命令事件というものも決して単純に片づけていいというものではございませんけれども、しかし訴訟事件と比べますれば、これは性質から見てかなり軽微な事件ということになっておるわけでございます。
 そこで先ほど五五%と四五%ということを申し上げましたけれども、裁判所といたしましては、まず二つの方向で考えておるわけでございます。一つはそういう重要な公判事件とかあるいは訴訟事件というようなものはできる限り有資格の簡易裁判所判事でやってもらうという点が第一点であります。しかし、そういたしましても、むろんすべてをそれにやっていただくというわけにはまいりませんので、特任の簡易裁判所の判事のほうにもむろんやっていただいておるわけでありますが、第二点といたしまして、特任簡易裁判所判事の資格、内容、実力というものをできる限り充実してまいりたいという点でございます。
 この第一点といたしまして、いわゆる有資格者の中には、先ほどもちょっと申し上げました判事補と兼務の有資格者、これは比較的若い裁判官でございますがもう一方、最近ではいわゆる判事を停年になりまして、判事は御承知の通り六十五歳が停年でございますので、その六十五歳で停年になりましてからあと、簡易裁判所判事の停年の七十まで、つまり五年間簡易裁判所判事として執務される方もかなりふえてまいっておるわけでございます。先ほど数字を申し上げた中の、有資格の簡易裁判所判事で判事や判事補を兼ねておらないというふうに申し上げました中には、こういう方たちが多数入っておるわけでございます。こういう方の中には、たとえば高等裁判所の裁判長までおやりになった方もおられるわけでございまして、そういう方はいわば民衆と身近な立場において、いま先生のお話しになりましたような考え方でもっていろいろと処理をしておられる、こういうことになるわけでございます。それからなお、そういう関係もございまして、民事の関係では民事訴訟を取り扱わない庁というものを指定いたしまして、これは約四十数庁でございますが、この庁におきましては、いわゆる特任簡易裁判所判事でもできるような事件が比較的まいる、訴訟事件は本庁のほうでやるという関係にもなっておるわけでございます。
 それから先ほど申し上げました第二点の、いわゆる特任の簡易裁判所判事の実力なり資格をできる限り高くしていくという点では冒頭にちょっと申し上げました最高裁判所の簡易裁判所判事選考規則というものによりまして、これは各地にございますところの簡易裁判所判事推薦委員会というものの推薦を経て、そうして最高裁判所にございます簡易裁判所判事選考委員会というところで慎重に選考いたしておるわけでございます。この推薦委員会とか、あるいは選考委員会は、もとより裁判所の職員ばかりではなしに、検察庁の方であるとか、あるいは弁護士会の会長さんであるとか、その他大学の先生方、いわゆる学識経験者にも入っていただきまして、そういう司法試験とはまいりませんけれども、それに準ずるような厳粛な試験をいたしておるわけでございます。その上にさらに、そういうふうにして任命いたした者につきましては、研究所において数カ月間研修をし、またときどきは高裁管下ごとに集めまして研修をする、こういうふうな方法をとっておるわけでございまして、確かにこの裁判班法発足当時にはかなり実力の伴わない簡易判所判事があったということを認めざるを得ないわけでございますが最近におきましては、かなりの程度にそういう御批判にこたえられるようになっておるのではなかろうかというふうに思っておるわけでございます。しかし、さらに不十分な点ももとよりございますので、将来とも一そうそういう方面の努力を重ねていきたい、裁判所としてはかように考えておるわけでございます。
○賀屋国務大臣 竹谷委員のただいまの御質問を伺いまして、私も一々ごもっともに拝聴いたしましたが、お話のようなりっぱな学識と実地の経験と、また社会生活の実際の知識を多年かつ広範に持ったような人々が理想でございまして、あらゆる裁判がそういう資格を持った人によってなされるということは、まことにそうなくちゃならぬ点と思うのでございます。ただ、いまの実際問題といたしまして、検事もさようでございますが、判事全体の人間も非常に足りない、補充にも困難を感ずるような面もある次第でございます。全体がそうまいりません事情もございます。決して簡易裁判所の事件をおろそかにしていいという意味ではございませんが、そういう場合におきましては、事件の性質また複雑さの点やいろいろな点を考えます場合に、比較的長い訴訟事務を扱ったり、実地の経験を持っておる有資格の人でも、学識力面は十分でも、社会生活経験には比較的薄い人等に比べますと、またいまの特任の人の多数には別のそういう長所もあるわけでございまして、こういう方面の人も相当この方面に当たってもらうことが、現在の判事の給源その他を考えまして、必ずしも悪いことでもないし、また適切な面もある。それで全体がいま四五%、五五%という、この比率ははたしてこれでいいというわけには決して思っておる次第ではございませんが、いまの簡易裁判所の判事全体の人的給源その他を考えまして、ただいまのところではやむを得ないかと思っておりますが、御指摘のような点を留意してまいって、だんだんに改善をしていきたいというふうに考えておる次第でございます。
○竹谷委員 最高裁判所や高等裁判所の判事が高くて、簡易裁判所の判事は何か安っぽい、こういうような印象が現在あると思います。むしろ最高裁や高等裁判所の判事よりも、第一線に立って民衆に直接接して、そうして身近な事件をぐんぐん処理していく、こういう簡易裁判所の判事こそ、一番大切な国民の権利を守り、またその持っている権利を十分擁護し、主張させる、そうして正しい者が保護せられて社会に正義が生まれる。そういう重要な任務は第一線の簡易裁判所判事こそ、これを行なっているという非常に重要な天職であるというような印象を国民に与えるような、そういう措置を法務省も最高裁判所もとって、できるだけ充実をしていただきたいと思います。そうすれば第二審、第三審に持っていかないで、第一審の裁判によって、あるいは審理によって国民が満足をする。略式事件――たとえば刑事事件について略式命令事件が一年間に三百四十万件で、簡裁の刑事事件五百万件の大きな部分を占めるということでありますが、この略式命令が非常に妥当な適切なものであれば、控訴、上告などもせずにこのまま国民は承服をして、いたずらなる手数をかけないで、少なくともよけいな費用もかからないということになるのでありまして、非常に重要な問題であると考えますので、どうか法務省も最高裁判所も、今後この簡易裁判所というものに対する考え方、また国民一般の認識向上のために、ひとつ格別の御努力を願いたい。これが司法の発展のために非常に役立つと私は確信をいたすのでありますが、十分この点は法務大臣も最高裁判所も、先はどのお話しのように御考慮願うことを願いたいということを強く要望いたしまして、これに関する質問を終わります。
○濱野委員長 田中織之進君。
○田中(織)委員 下級裁判所法のここに出ておる改正案については特別問題はないかと思いますが、私も実は昨日質問の事項を事務当局にお示しをしておいたわけでありますが、そのうち重要な部分がただいま竹谷委員から触れられておりますので、重複する部分を避けて三、四お伺いをしたいと思います。
 裁判所法の関係によりますと、簡易裁判所における判事が複数のところと単数のところとがあるのではないかと思うのです。運営の事務分担の関係からそういうことが推察されるのでありますが、もちろん取り扱い事件数との関係もありますけれども、全国の簡易裁判所を通じまして、単独の判事でやっておるところと何人かの判事を持っておるところと、もちろんこれは特別任用の関係の方も含まれておるわけでありますが、そういうところの内訳は、どのようになっておりますか。
○寺田最高裁判所長官代理者 ただいまお尋ねのございました点でございますが、先般来いろいろこの委員会で御論議いただいておりますように、終戦直後に簡易裁判所が非常に広範に設けられました関係もございまして、事件量の非常に少ないところがかなりあるわけでございます。私どものほうで実態調査等をいたしまして、大体裁判官の一人当たりの年間の処理の事務量というものを、これは非常に正確なものということは申せないわけでございますが、一応の目安というようなものでとりましたそういう事務量を基準にして考えましても、大体一人以上の事務量を有すると考えられるところは、五百七十庁の中で百三十庁くらいしかないわけでございます。そうしてその残りの中で特に三百庁くらいのものは〇・五以下、つまり半人分以下の事務量しかないというような関係になっておるわけでございます。ただ、しかしながら、そう申しましても事務量が少ないからといって、そこに一人の簡易裁判所判事も置かないということになりますと、これはまた交通の関係その他からいって非常に都合の悪いことになりますので、つまり他の庁から一々簡易裁判所判事が行ったのではそこに非常にロスがある。北海道のような非常にへんぴなところでありますと、事務員は非常に少なくても、やはり一人置かなければならない、こういうこともございます。そういう点で、いろいろ交通事情とか事務量とかいうものを勘案いたしまして、現在簡易裁判所判事を配置しておるわけでございますが、そういう考慮の結果に基づきまして、一人以上の、つまり一応その庁には裁判官がいるという、そういう庁の数を申し上げますと、大体三百八十庁くらいになるわけでございます。その中には一人配置いたしておりますところと、二人あるいは三人以上配置しているところとあるわけでございますが、大体の数字がそういうことになります。そうして総合で配置いたしております。つまり二庁に一人、あるいは三庁に一人というふうに配置いたしておりまするところが百七十庁ほどあるわけでございます。この前からいろいろ問題にされておりますいわゆる事務移転庁、無配置庁というものが十数庁ございます。それでトータルして五百七十庁くらいになるわけでございます。一応いまお尋ねのいわゆる総合配置庁は百七十庁でございます。もしお尋ねがございますれば、どういうふうに配置しておるか、あるいはどこの裁判所がそうなっているかということを申し上げてもいいのでございますが、一応この程度でお答えにかえさせていただきたいと思います。
○田中(織)委員 そこでいま竹谷委員からも触れましたけれども、一人しか判事を配置しておらないというようなところの判事さんは、これは竹谷委員と私も同趣旨でおりますので、そういう点から見まするならば、やはり練達たんのうな裁判官におってもらわなければならぬことになるわけですけれども、実情はどうでしょうか。そういうところは特別任用の判事を配置しておるというようなところ、いま言われました百七十庁の、二、三庁かけ持ちで一人の判事を配置しておるというような、いわゆる総合配置のところの判事が具体的には特別任用の関係の判事であるかどうか、そういうような点はどのようになっておりますか、お調べになった資料がございますか。
○守田最高裁判所長官代理者 大体一人配置されておるところ、また数庁兼ねて配置されております簡易裁判所の判事は、おおむね特任の簡易裁判所判でございます。ただ、特任の簡易裁判所判事ではございますが、どういうふうにして任用されておるかという点について、総務局長の説明を補足しながら説明いたしますと、実はただいま申し上げましたように、最高裁判所で選考いたしまして修習して任用するわけでございますが、実際問題といたしましては、筆記試験は司法官試験と同じくらいの科目につきまして、まずやるわけでございます。それから口述試験は、最高裁判所の裁判官、それから検察庁、弁護士会のそれぞれ所属の長老の弁護士さん、あるいは検察官にも委員になっていただきまして、そこでつぶさに口述をやるわけでございます。ですから、それで年間の合格者というものは非常に少ない。そういう粒よりの合格者につきまして、さらにこれを司法研修所に三カ月入れまして修習、現在資格者の修習と同じようにこれを研修いたしまして、そしてさらに今度は大きい裁判所の庁に配属いたしまして三カ月ほどみっちり実務を先輩につけて研修いたします。それからいよいよ現地に配置している。それだけの慎重な手続のもとで訓練して出しておるのでございまして、決して御心配になるようなことは一応ないと私どもは確信いたしております。
○田中(織)委員 特別任用は、いま人事局長から御説明になったように、普通の判事と同じような厳密な選考手続を経て、また修習を一定の期間いたした人を配置しておるので、その点については有資格の裁判官と何ら遜色のないという点は、そうあるべきだと私も思います。何か世間の言い分ではありませんけれども、最高裁の判事や高裁の判事と簡裁の判事とは、そこに実力と言いますか、能力と言いますか、大きな開きがあるような感じを一般に持たれるというようなことになれば、簡裁における判決なり処理の結論について国民が裁判所を信頼するということに支障を来たすわけでございますから、私は人事局長の、あるいは先ほどの総務局長の説明を了としたいと思うのであります。
 ところで、もう一つその点について伺いますが、年齢的な点ではどのような状況が出ておりますか。もちろん判事の定年六十五歳を過ぎて、簡裁の判事を七十歳までやられるというが、そういう関係の方も若干おられるという点、これは了解できるわけでありますけれども、特任の簡裁判事の諸君の年齢的な点をお調べになったことがございますかどうか。それから同時に、やはり特に交通の便の悪いところ等に配置をされておる判事諸君の待遇の問題も国会として考えなければならぬ問題ではないかと思うのでございますが、そういうような待遇の問題等については十分なことが行なわれておるのかどうか、この点について伺いたいと思います。
○守田最高裁判所長官代理者 簡易裁判所の特任の判事の選考の年齢でございますが、満四十歳以上の者に限ってやっておる。しかし、現在の平均年齢がどの程度かといいますと、最も多いところが大体五十九歳から六十二、三、そういうところが大部分を占めていると思います。ですから、平均的にはその辺の見当になるというふうに御了解願って差しつかえないものと思います。
 待遇は、初任給が判事補の初任給から始まりまして、そして最高は、現在におきましては地裁の裁判長クラスが格づけされております判事の三号というのに相当するのが一番最高になっております。
○田中(織)委員 四十歳以上が選考の下の限界になっておるということになりますると、相当やはり年配者が多いということ、一般に現在勤務中の方が五十九歳から六十歳前後が圧倒的に多いようなお答えでありますが、そういう関係のやはり家族構成その他の関係がありますけれども、その点は、これはもちろん裁判官全体の給与体系との関係の問題が出てまいりますが、私は、やはりそういう高年齢層に属する人たちについては、何らか特別の配慮をしなければいけないのではないかというふうに考えるのでありますが、その点は、最高裁当局でそういう観点から検討されたことがございますかどうか。
○守田最高裁判所長官代理者 ただいま簡易裁判所判事の給与体系を申し上げましたが、しかし四十歳の人を簡易裁判所判事の初任給から始めるということはいたしておりません。いままでの経歴、それから行政庁における職員の現在大体占めておると思われる一般職の職員の給与に関する法律に基づく給与の体系、そういったものとを比較しまして、そうしてなお判事の特殊性を考慮しながらきめておるのでありまして、簡易裁判所判事は、簡易という名前がついておりますために、昔のように区裁判所の判事は、判事で区裁判所に任命される。ですから区裁判所に配置されましてもそれは判事である。ところが簡易裁判所判事というのは新しく設けられまして、裁判所法上簡易裁判所判事という特殊の判事になっておりますために、名前が簡易とあるために、どうも軽いのだというふうに誤解されておる向きがあると思いますけれども、そういった意味は決してないのでありまして、やはり第一線の、しかも民衆に最も密接するようなふうに広く事件をやっておるわけであります。その待遇面からいたしましても、やっておる仕事との関連においては、現在のところたいして御懸念されるほどのものではないというふうに考えております。
○田中(織)委員 どうもその御説明では、一般に簡易裁判所判事ということになりますと、率直に言って何か軽いような感じを持たれるのではないか。しかも選考採用年齢が四十歳以上ということになりますれば、私は年齢的な関係を考慮して、給与面においてはやはり特別に配慮しなければ、普通の判事と何ら区別をしないで取り扱っておるということでは十分ではないのではないか、こういう立場で申し上げておるので、この点がいまの裁判官を含めまして公務員の給与の問題については、そういうやはり形式的な、概念的な体系からくる格差と言いますか、そういう問題についての配慮が一般職の場合でも欠けておると思うのです。特に簡易裁判所のように民衆に、国民に直接接触が深い裁判所の第一線の裁判官でありますから、この点は私の希望を申し述べておきますけれども、裁判所当局として、特に簡易裁判所判事の給与の問題については、特別な配慮を払うべきだという点について、ひとつ念頭に置いてお考えをいただきたいという希望を申し上げて置くにとどめます。
 それから簡易裁判所の取り扱う事件の関係でありますが、私どもに配付されました資料によりまして大体の状況はつかめましたし、また竹谷委員の質問に対する総務局長の答弁で大勢はつかみ得たのでありますが、この資料では、訴訟とその他というふうに二つにしか分けていないので、その他というのは、この資料の一番最初にありまする東京関係にいたしましても、訴訟の十六倍も訴訟以外の取り扱い件数が多いのでありますが、これにつきましても、刑事と民事の二つに大別しての数字も出ておりませんので伺いたいと思ったのでありますが、先ほど、刑事事件につきましては、全国で約五百万件、そのうちの五万件、一%に相当する部分が、いわゆる簡易裁判所の判決で出しておるものだ、こういうふうに御説明があったわけであります。また民事の事件七十万件のうちのこれまた一〇%弱の六万件がいわゆる訴訟だ、こういうふうに伺ったのでありますが、それらのいわゆる訴訟、あるいは刑事事件の場合に、簡裁で判決が下されたものについての控訴、あるいは最高裁へいくというような関係の上訴件数というものが大体どのようになっておりまするか。もちろん簡裁へ係属する事件についての範囲は法律できまっておるわけでございまするけれども、やはり簡裁の判決を不服として上訴する場合も私はあろうかと思うのです。そういう点について何かお調べになった資料はございませんか。
○寺田最高裁判所長官代理者 ただいま田中委員の御質問のございました点、事件の種類の点、先ほど竹谷委員の御質問の場合にごく大数的なことを申し上げましたが、重ねてお尋ねがございましたので、もう少しこまかく申し上げたいと存じます。
 昭和三十八年度の新受件数で申しますと、まず簡易裁判所の民事事件では、総数七十万六千三百四十四件、そのうち通常訴訟事件が六万一千六百九十九件、いわゆる即決和解事件が一万八千百九十件督促事件が十四万七千二百八十四件、公示催告事件六千四百四十三件、仮差し押え、仮処分事件一万二千四十二件、過料事件三十九万七百十三件、共助事件二千三百十二件、民事雑事件十二万三千六十三件、調停事件四万五千五百七十五件ということになっております。なお、再審事件二十三件でございます。それから特別抗告受理というような事件も一件ございます。
 刑事のほうにつきましては、これは一応人数だけでございますが、件というふうに読みかえて、申し上げたいと存じますが、新受件数五百十九万三千八十六件、そのうち通常事件の刑法犯事件四万四千十五件、特別法犯事件一万三千二百五十六件。略式事件、そのうち刑法犯十九万八千三百五十九件、特別法犯事件三百二十一万三千五十六件、交通即決事件二十五万三千七百三十八件、再審事件十一件、その他の事件百四十三万千六百五十一件、こういうことになっております。
 それから、あとでお尋ねのございました上訴率の関係でございます。これは、少し統計がこの点は古いので恐縮でございますが、まず簡裁の判決に対する控訴でございます。三十六年度におきまして、判決数二万五千三百六十二件に対しまして、控訴のありましたのが四千三百五十七件、その比率が一七・二%、こういうことになっております。それから地裁で第二審の判決がございまして、それに対する上告でございますが、これまた三十六年度におきまして判決数二千二十三件、それに対する上告五百八十三件、上訴率二八・八%ということになっております。
 次に、刑事の関係につきましては、同じく昭和三十六年度の統計といたしまして、簡易裁判所の判決総数四万一千三百三十九、これに対する控訴四千二百六十七、控訴率一〇・三%でございます。それから、この関係の上告の比率は、これは現在刑事事件では、簡易裁判所の事件と地方裁判所の事件と合わせまして、高等裁判所で判決することになっております関係上、地裁の判決と簡裁の判決とに区別をしての上告率というものは統計が出ておりません。全体としての上告率は三七・五%、これは簡裁の一審事件と地裁の一審事件を込みにした数字でございます。
○田中(織)委員 なおその中で、新しく受理された事件で申されましたけれども、大体民事の場合には訴訟価額の限定もございますしいたしまするので、翌年度へ持ち越されるような事件というものは間々あるのではないかと思うのでありますが、そういうような関係の数字はありましょうか。
○寺田最高裁判所長官代理者 個々の事件がどの程度翌年へ持ち越されるかということについての正確な統計資料はただいま手元に持っておりませんが、一般的に申しますと、刑事事件では五、六カ月で片づくという例でございますから、かりに持ち越すといたしますれば、それは十月、十一月ごろに受理いたしますものが翌年度へ持ち越すということになるのでございますし、これに反しまして、民事事件は大体八カ月ないし十カ月かかるというのが通例のようでございますから、そういたしますと、かなりの数字が、つまり年度の後半に受理いたしましたものば翌年度へ持ち越すものがかなりある、こういうことになるわけでございます。ただ、これはきわめて一般的な御説明を申し上げておるわけでございまして、むろん訴提起になりまして、すぐ即決判決になるとか、和解判決になるというようなものもきわめて多数あるわけでございますが、平均審理期間ということになりますと、そういう関係になっておる、こういうことでございます。
○田中(織)委員 一般の民事事件等の関係から参りますると、相当時間がかかるという関係から、やはり訴訟手続の進行ということが裁判所あるいは弁護士会等で問題になっておるやさきでございますので、伺ったわけであります。やはりそういうようなことが同時に、最初に伺いました簡易裁判所判事に対する一般の信頼感の問題にも響いてまいろうかというような観点から伺ったのでありますが、大体状況がわかりました。
 そこで下級裁判所の関係についての私の質問は大体終わったわけでございますが、最高裁から総務局長なり人事局長が見えておりまするので、最後に一つ伺いたい問題があるわけであります。
 これは簡場裁判所のみならず、やはり裁判官の素質と言いますか、そういう問題に関連をしてくるわけなんです。具体的な事例といたしましては、いまから四、五年くらい前になりますが、いわゆる勤務評定、学校の先生方に対する勤務評定問題を文部省が強行してまいりましたことに関連をいたしまして、あるいは地公法違反その他の関係で、俗に勤評裁判といわれているものが現に各地で係属中です。そこで、ごく最近は大阪の地裁で大阪の教組のいわゆる勤評裁判について無罪の判決が出ました。ところが、昨年の十月の末であったと思うのでありますが、やはり同事実における和歌山の教組の裁判については、和歌山地裁で、たしか中田裁判長であったと思いますが、年配の方だったと思いますが、これでは一名を除きまして有罪の判決があったわけです。勤評裁判は、そういう意味で私どももその裁判の逆行状況というものを注目いたしておるわけです。東京都の都教組に対する関係は、たしか無罪の判決があったと思うのです。それから佐賀が勤評裁判のトップを切って判決が出たのでありますか、これは無罪の判決が出ておる。佐賀に続いて福岡の教組に対する判決が出ておりますが、一部有罪、大部分の者は無罪の判決が出ている。これは教組の関係の諸君が、御承知の日教組という中央の連合体の連動方針に従いまして、それぞれやはり条例制定その他の問題に反対をいたしまして、休暇を申請して職場大会等を開いたという関係の事案で、全国各地の事実において若干の相違もございましょうけれども、大体同じような事案だと思うのです。ところが、いま私が申し上げましたように、佐賀、東京、最近の大阪のように、同一事案に対して無罪の判決が下っておるかと思いますれば、和歌山であるとかあるいは福岡の一部が有罪判決を受けた。こういうようなことを国民は――少なくとも裁判所は、最高裁判所以下高等裁判所、地方裁判所と、検事のように一体の――検事一体の原則というものがあるようでございますが、もちろん個々の裁判が裁判についての全責任を持たれておるわけでありますけれども、国民の側から見ますと、同一事案に対して、ここの裁判所では無罪、こっちの裁判所では有罪の判決が出る。こういうことになりますと、はたして裁判の公正と言いますか、そういうものが確保されているかどうかということについて素朴な疑問を持つのはあに私のみならんやと言いたいのです。こういう点について、ことに和歌山の中田裁判長の裁判の批判をここでやろうとは考えませんけれども、判決理由書を私も見ましたが、新しい教育基本法によりまして、今日全く問題にならないところの、もう架空の存在であるところのいわゆる教育勅語を引き合いに出した形の判決理由が示されておるというようなことになりますと、先ほど簡裁の判事の任用の問題について申し上げましたけれども、それぞれ厳密な選考試験の結果なにされ、ことに地裁でこの種の事件を扱うところの裁判長というものは、その点から見まするならば、多年裁判所判事として練達たんのうな方だと思うのであります。それぞれ高裁で、あるいは検事控訴等の関係で、無罪の判決の下ったところもいま控訴公判中の関係がございますから、あるいは控訴審では何らか統一した――と言えば語弊がございまするが、これについての公正な判断が下されるものだと思うのでございますけれども、少なくとも地裁の判決の段階では、私、国民が奇異の感を持っておると思うのです。こういう点については、もちろん個々の裁判官の重大な責任とその権威というものを尊重する点においては、私は決して人後に落ちないつもりでおるわけです。われわれ立法府の立場においても、裁判所の独立というものを認めないことには法治国としての体制が立たないという点を、私どもは立法府の一員であればあるだけに、三権分立のたてまえの裁判長というものの権威がいやが上にも上げられる、国民がその意味で裁判所の決定に従うことが行なわれなければ、法治国としての実体は確保できない、私はこういう観点に立っております。
 実は勤評裁判でそういう素朴な疑問を持っておりますので、この点については、その意味において、裁判官に任命されてから以後のいわゆる裁判官のあるいは時代の進運に対する認識を深める、そういうことに対する――これは最高裁判所といえども個々の裁判所にそれだけの指導権がないのだといえばないのかもしれないけれども、私は、裁判官諸君に、もし最高裁としてのそういう方針をおろすわけにはいかないということになりますれば、裁判官諸君の研さんを大いに求めなければならぬと思うのです。その仕事の聖なる点を上反省する意味においても、私は、やはりこれはわれわれが立法府の一員であるからこういう公式の場においてこれを申し上げるべきではないか、こういうふうに考えて御所見を伺うわけでありますが、何かその点は裁判官会同等においても問題になったことがあるのかどうか。裁判官会同というようなものはそういうような点についても触れるのか。私はこの点は、きょうの質疑は、すでに三田村委員の質疑でこの下級裁判所に議題が変わっておるわけでありますが、いずれ来週以後において暴力法の問題について私は質問をいたしますけれども、その場合においても、暴力法が大正十五年でありますか制定された当時のいわゆる立法理由というものと、その後のこの法律の適用がどうなっているかという観点から見まして、しかもそれは戦前と戦後とで大きく変わっておらなければならないものが、今日依然たる態度で出てくるという点が、これは裁判官諸君の研さんに大いに得たなければならぬ問題を含んでおると思います。
 このあとの部分については、いずれ来週以降において私もとっくり法務当局なり提案されましたところに質問をいたしたいと思うのでありますが、この法案に関連をして、裁判所当局から政府委員の諸君が御出席願えるかどうかということもわからない段階でございまするので、私がこの問題を最後に取り上げた意味は、やはり裁判の公正、裁判の権威、司法権の独立という点から見て重大な問題を含んでおる、私はこういう考えで質問を申し上げておるのですが、この点についての最高裁の関係者の御所見が伺えれば伺いたいと思うのであります。
○寺田最高裁判所長官代理者 ただいまの田中委員のお話の点、お話のお気持ちの点は、まことによく私どもとしてもわかるという気持ちがいたすわけでございます。ただ、繰り返し独立の点にお触れいただきましたように、憲法の七十六条の三項で、「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」ということが明らかにうたってあるわけでございまして、裁判所といたしましては常にこの憲法の精神を体して職務を行なっておる、こういうことになるわけでございます。
 いま勤評事件の例をおあげいただきましたが、そういう具体的の事件のことにつきましては、私何も存じないのでございますが、一般的に時間では同じ事件だと称されておるものの中にも、詳細な証拠調べをしていろいろやってまいりますと、事実関係においてやはり違う場合がきわめて多いのでございます。これは決していま御指摘になりました勤評闘争事件のことを申し上げておるわけではございませんので、一般的なことを申し上げておるわけでございます。ことに民事事件などにおきましては、当事者のいわゆる攻撃、防御方法の提出のしかたによって、ある事件では出てきた証拠が他の事件には出てこないということもあるわけでございます。そうなりますと、そこで自然事実認定というものが変わらざるを得ない。世間でごく一般的には、どうして違った結論になったろうというのは、実際はその証拠の関係が違っておるということも、民事事件などではしばしばあるわけでございます。
 それから法律の解釈の問題は、確かに御指摘のとおりであろうと思いますが、これは最終的には裁判所法四条にございますところの「上級審の裁判所の裁判における判断は、その事件について下級審の裁判所を拘束する。」ということで、すなわち、最高裁判所の判例でもって統一されていくということになるわけでございます。ただ、その判例が出ますまでの間、特に新法の解釈等につきましては、そこに説が分かれる、学説も分かれ、また下級審の判例も分かれるという余地が出てまいるのでございます。そこで、そういう場合に処する対策といたしまして、ただいま田中委員からも御指摘のございました裁判官会同というものをたびたび開きまして、ことに新法が施行になりますときには、そのための予算も計上していただきまして、最高裁判所に全国の高等裁判所、地方裁判所の裁判官に集まっていただきまして、政府の立法趣旨、国会での討議の状況というものを詳細にお伝えし、またその際、裁判所の事務当局としても意見があれば、これもお伝えしておるわけでございます。ただ、会議と言わずに会同ということばを使っておることでも御了解いただけますように、ここで一つの何らかのまとまった結論を出すということではなくて、つまりどういう状況で立法され、また国会ではどういう御論議がされたかということをお伝えする。そうしてどういうふうな方向に行くのが自然であるかということを協議し合うというところまででございまして、それ以上に各裁判官の解釈を拘束する、あるいはこういう裁判をするようにということは、これは裁判の本質上絶対にできないことであるというふうに考えておるのでございます。
 なお、一つの法律が制定されました後数年を経て、その解釈がどうあるべきであろうかというような点につきましては、おのずからその間に学説も出てまいりますし、また判例も積み重ねられてまいりますので、そういうことを寄り寄り、たとえば全国の会同、あるいは高等裁判所管内別の協議会というようなもので討論し合って、お互いに研さんにつとめる、こういう方法をとっておるわけでございます。ただ、その法律ができました当初におきましては、必ずしも学説なり判例も固まっておらないという関係もあり、それぞれの裁判官が憲法の精神に従って法律を解釈していく間におきまして、解釈が分かれるということは、これはやむを得ないところであろうと考えておるわけでございます。
○田中(織)委員 最高裁判所側のお答えとしては、いまの域を出ないことは私も了承いたしますけれども、もちろん、われわれ国会議員も国務大臣も憲法を守らなければならぬ義務が憲法上課せられております。しかし、国民の側から見まするならば、明らかに憲法に抵触するのではないかというようなことが行政の分野で行なわれておるということについて、率直に申しまして、いまの裁判所はいわゆる憲法裁判所ではございませんから、私は、そういうところに問題が残ってきておると思うのであります。しかし、この点は最初にお断わりしましたように、いま議題になっておる下級裁判脱法の改正案とは直接関連を持たないので、私は、裁判所の独立、尊厳を尊重する国民の一人として、やはり裁判官諸君が――もちろん最高裁判事については、われわれの衆議院議員選挙と同時にいわゆる国民投票が行なわれるわけでありますけれども、その国民投票のあり方についても、私は十分問題があろうかと思うのであります。そういう点からいたしまするならば、それだけ国民の主権をそれぞれの裁判官は代表しておるのでありますから、われわれが裁判官諸君の自重研さんを望むことは国民の一人として当然のことだと思いますから、私がこうした国会の場で発言したということを十分裁判官諸君がすなおに受けていただきまするならば、今後の裁判の公正と裁判所の権威の向上のために役立つことを期待いたします。
 以上で私の質問を終わります。
○賀屋国務大臣 ただいま田中委員の御質問に対しまして、最高裁のほうから御答弁がありましたとおりでございます。同じような案件と思われるものに対しまして、違う判決があるということは、一面非常に奇異の感もあるようでございますが、ただいま御説明がありましたように、同じような案件だと思いましても、事実細部にわたって違った面があり、あるいは証拠その他の状況によって判定が違うということはやむを得ないのでございますが、かりにそういうことが全部同じといたしましても、判決が違うということはあり得ると思うのでございます。
 いま田中委員も非常に御主張になりましたように、裁判官が独立をして判決をするということは、いまの司法権の非常に重大な原則でございます。そこで人々によって考えが違うということはあり得る。これは日本ばかりではございません。ほかの国にもあり得ることでございます。一面非常に矛盾したようでございますが、他面それがまた裁判官が真に独立であるということの反証でもあるわけでございます。だんだんそれは事実におきましては上級審の判例によって、強制でなくて自然に、裁判官の良心に従っての考え方が統一のほうに向かうということもまた自然の傾向だと思うのであります。統一されることが客観的に見て望ましいということはだれでも考えますが、一面、いまの裁判官の独立の原則が守られておるということも非常に大事でございます。一応その点をあらわしておるのでございまして、そこで無理な裁判が行なわれるようにというような点は、行政面におきましても決して考えておる次第ではございません。公正な裁判を常に主張し、意見としては違いましても、憲法その他の法律の命ずるところによって出てきた結果というものは尊重していくという考え方で、私どももその点は非常に重大視して進みたいと思っておる次第でございます。
○濱野委員長 坂本泰良君。
○坂本委員 重複を避けて二、三御質問いたします。
 先ほど簡易裁判所の判事についての資格の問題ですか、特任判事の任用につきましては、先ほど説明があったわけですが、そこでこの多数の特任判事に対して裁判所は研修を行なっておると思うのですが、その研修の内容、方法等についてお聞きしたい。
○守田最高裁判所長官代理者 まず特任の簡易裁判所判事が任命されますと、現場にすぐに出しませんで、司法研修所、すなわち裁判官、司法修習生の修習研究を行なうことをつかさどっております司法研修所というのがございます。そこへ三ヵ月ほど入所をさせまして、そこの教官によって、いわゆる法律的に知っているというだけでなしに、その法律的な知識が実務面にどういうふうに生かされていくかといったようなこと、あるいは裁判官としての従来の先輩たちの心がまえなんかにつきまして、それぞれの先輩から話を聞くとか、あるいは裁判官にとってどうしても必要だと思われるような一般教養面の講話をするとか、そういったようなことを研修所で行ないまして、それは一種の学校といえば妙ですが、実務学校みたいなものでございますが、さらに今度は大きい裁判所の本庁に配属いたしまして、三カ月ほど簡易裁判所の実務の修得をさせる。ということは、結局仕事をしながら、それを熟練しました先輩が導きまして、そして実務の修得をやらせるわけでございます。そして六カ月たちますと初めて現場に配置するという、そういう研修をやっておるわけでございます。
○坂本委員 そういたしますと、この特任判事の研修は、最初入ったときだけで、その後はやらないのですか。
○守田最高裁判所長官代理者 それはとにかく簡易裁判所判事が多いものですから、全部を集めるというわけにはまいりませんが、数十名ずつは毎年一週間ないし十日ぐらいは研修所にまた招集いたしまして、そうして相互に討論をするとか、あるいは相互に研究をする、あるいは東京におけるところの簡易裁判所判事の取り扱いの説明を聞くとか、いろいろ研修はやっておるわけでございます。決して三ヵ月で研修所は終わりというような性質のものではございません。
○坂本委員 そこでこの待遇の問題ですが、一般判事と実質上だいぶ違っているようですが、基準か何か定めてそれをやっておられるかどうか、その点伺います。
  〔委員長退席、三田村委員長代理着席〕
○守田最高裁判所長官代理者 大体昇給期間は一年ないし三年ぐらいの程度でやっております。もっとも、いわゆる一人前の判事の適用される号俸に相当するようなところは、結局三年とかあるいは四年とか延びる場合はございますが、大体そういう見当でやっておりまして、特に簡裁判事だからといって延びておるという点はございません。
○坂本委員 そこで大臣もおられますからお聞きしたいのですが、本年は訴訟の迅速適正な処理に必要な経費が予算上要求されて、判事の増員が五名、判事補が五名、裁判所の職員が二十名と、こうなっておるのですが、これは要求したとおりであるか、あるいはこれは大蔵省その他の査定によって減らされたのじゃないかと思うのですが、その点いかがですか。
○寺田最高裁判所長官代理者 裁判所の予算の関係は、むろん法務大臣にもいろいろ御支援はいただいておりますけれども、直接的には裁判所の事務当局と大蔵省と折衝するという扱いになっておりますので、こちらから答えさしていただきたいと思います。
 ただいま御指摘のございました訴訟促進に関する裁判所職員の増員の問題は、先般この委員会で御審議いただきまして可決していただきました裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の関係でございまして、その際にもたしか御質問があってお答え申し上げたと存じますが、当初、私どものほうで大蔵省のほうに提出いたしました資料では、判事二十四名、判事補三十名というものを一応要求したわけでございます。それに対しまして、いま御指摘のございましたとおり、判事五名と判事補五名の増員が認められたということでございます。簡易裁判所判事五名の関係は、これは訴訟促進の関係ではございませんで、いわゆる交通事件の迅速処理という関係で要求し、また認められたものでございます。
○坂本委員 簡易裁判所の交通事件の迅速処理等に増員の五名、五名は回した、こうなるのですか、これは別じゃないのですか、同じですか、その点いかがです。
○寺田最高裁判所長官代理者 ただいま申し上げましたように、判事五名と判事補五名は、いわゆる大都会における訴訟の迅速処理という関係の要求であり、またその関係の増員でございまして、簡易裁判所判事五名の関係は、これは簡易裁判所における道路交通事件が非常にふえてまいったという関係で、件数を根拠にして増員の要求をいたしまして、それが認められた、こういうことになっておるわけでございます。
○坂本委員 そうしますと、判事は二十四名要求して五名、判事補は三十名要求して五名ですが、ずいぶん少ないようですが、これくらいの判事で裁判事務の迅速処理ができるかどうか、その点はいかがですか。
○寺田最高裁判所長官代理者 これは裁判所職員定員法の改正法案のときにもちょっと申し上げましたと記憶いたしておりますが、いろいろな観点からこういうことにならざるを得なくなったということが実際でございます。当初判事二十四名、判事補三十名というものを要求いたしました主たる計算の根拠は、これは現在民事訴訟事件が一年近くかかる、それから刑卒訴訟事件が半年近くかかる、これを半分の早さにしたい。そしてこれは一年ではできませんので、大体三年計画くらいでそこまで持っていきたい。この点につきましては、特に大都会の訴訟についてそういう弊が見られますので、東京、大阪、横浜、神戸、京都、その他おもな都会をより抜きまして、そういうところの事件の件数を根拠にいたしまして人数をはじき出して、そうしてこの数字を出したわけでございます。ところが、当初はややあるいは楽観的であったのかも存じませんが、次第に予算の最終の査定段階に近づくに伴いまして、その裁判官の充員計画というものが、私どもの当初考えましたとおりには必ずしも運ばないということになってまいりましたので、そういう関係で、かりに大幅の増員がこの三十九会計年度中には困難であるというような見通しも出てまいりまして、やむを得ずこの程度の増員でしんぼうせざるを得なくなったというのが実際でございます。そういうことでございますので、当初計画いたしました程度のスピードアップということは、一応三十九年度においては十分には実現しにくい、こういう結果になっておるわけでございます。
○坂本委員 そういう点で、いかに国で訴訟の迅速適正と言っても、事実上できないのじゃないかと思うのです。そこでひとつお聞きしたいのは、交通違反事件関係で、いわゆる切符制をとっておるところととっていないところとあると思うのですが、そうすると、人権の擁護についても非常に不公平になってくるのじゃないかと思うのです。切符制をとっておるところととっていないところはどうなっておるか。ただいまのように裁判官の要求がずっとたくさん減らされたから、それが影響してきているのじゃないかと思うのですが、その点いかがですか。
○寺田最高裁判所長官代理者 この道路交通事件は、これまた前回定員法のときにもちょっと御説明申し上げたと存じますが、昨年ぐらいまで、いまから申しますと一昨年、昭和三十七年までは非常な勢いでいわば激増してまいったのでございますが、これに比べまして、三十八年度におきましては、三十七年度より増加はいたしておりますが、しかしその増加率は非常に減ってまいって、つまり激増ということに対して、三十八年度はいわば微増という関係になっておるわけでございます。そういう関係では、あるいは楽観的に考えますれば、これがいわば天井に近いのではないかとも考えられるわけでございます。しかし、何と申しましても全国で三百数十万件の事件があるわけでございまして、これに対しまして、三十八年の一月から法務省、警察庁と協議いたしまして切符制が採用されましたことは御承知のとおりでございます。この方法によりまして、その全体的な事務量というものは急速に軽減されたと言って差しつかえないであろうと考えるわけでございます。私どもといたしましては、きわめて一般的な考え方としては、できる限りこういうものが広がっていくということを希望いたしておるわけでございますが、具体的にどこでやるかということにつきましては、いろいろ準備等の関係もございますので、そういう点で法務省なり警察庁とお打ち合わせをしながら進んでまいっておるというのが実情でございます。切符制を実施いたしております都会の名前で申し上げますと、東京、静岡、大阪、京都、神戸、名古屋、広島、福岡、仙台、札幌ということになっております。そのそれぞれのところの簡易裁判所の具体的な名前をあるいは申し上げてもいいのでございますが、一応都会としてはそういうことでございます。
○坂本委員 そこで、これをもう少ししさいにやれば、切りがないのですが、時間がありませんから省略しますが、三十七年までは、いまおっしゃったように、統計によっても事件の数が激増しておるわけですね。三十八年から足踏み状態になっておるのです。その統計は私は信用せぬわけでもないのですが、どうしてそういうような状態になったかという点について、事務の処理上、裁判所としてはどういうふうに考えられますか。
○寺田最高裁判所長官代理者 道路交通違反の簡易裁判所で処理しました件数は、昭和三十四年が約百四十三万件、三十五年百八十五万件、三十六年二百十九万件、三十七年三百二十万件、こういうふうにふえてまいりまして、三十八年度は三百四十万件ということでございますので、三十六年から三十七年にかけましては百万件以上もふえておるのに対しまして、三十七年から三十八年にかけましてはわずか二十万件程度の増加である、こういうのが数字でございます。その原因がどういうところにあるかということは、ちょっと私どものほうでは必ずしもはっきりいたしませんが、一つの想像として申し上げますれば、やはり事故というものはそうむやみに起こるものではないので、交通が非常にひんぱんな半面、道路も次第に改善もされております。そういうことの関係で、大体この辺が一つの頂点ということになったのではないかという見方をいたしておりますが、しかし、三十九年にまたどういうふうに変化いたしますか、これはちょっと予測のできない状態でございます。
○坂本委員 そこで裁判官の補助機構、いわゆる裁判所の書記官あるいは書記官補、こういう点について、やはり予算としては若干、約四千万程度ふえておりますが、これを見ますると、定員、人数をふやす点、それから書記官補の定員六百九十四人を書記官の定員に組みかえする、こういう点だけですが、補助機構の裁判所書記官並びに書記官補の給与の関係については、相当激務に当たっておるのですが、そういう点については考慮されていないようです。その点は一般公務員関係の給与体系をとっておるのか、あるいは何か、交通違反事件等については激務に携わっておるから、特別な考慮も払われておるか。その点は給与の問題でいかがです。
○守田最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘の組みかえの問題でございますが、これは組みかえることによりまして、やがて書記官補が書記官になるわけでございます。そういたしますと、いままで大体四%程度の――もう少し、正確に申し上げますと、書記官の俸給は、一般職の職員の給与に関する法律別表一の、いわゆる行政職一表が適用されております。そして、その適用されておる関係は、やはり一般の政府職員と同じようになっております。その上に書記官の職務の特殊性ということから考えまして、一六%の調整が付されているわけでございます。このたび書記官補から書記官に組みかえますと、書記官になります関係上、一六%が支給されるようになりまして、俸給の上におきまして相当の向上ということになるわけでございます。
○坂本委員 そこで、この給与関係を中心として、なお裁判所書記官については浄書の問題等々いろいろありましたが、裁判所補助機構の職員組合等の点について聞きたいと思いましたが、これは一般一法行政の質問のときに譲りまして、最後にもう一つお聞きしたいのは、裁判所の事務用器具の問題ですが、これは他の行政官庁に比して非常に――あるいはタイプライターとかリコピーですか、リコピーなんかあるかないか、なかなかないと思うのですが、そういう整備の点について非常に不完全である。したがって、これが裁判官にも影響しますが、補助機構である裁判所書記官、書記官補の仕事に非常に影響すると思っておるのです。こういう事務用器具の点については、各裁判所とも非常に古いのを使っておるようですが、そういう点について新しいタイプライターとかリコピー、そういうような関係について、これは各簡易裁判所に設備されておるかどうか。そういう点についてはいかがですか。
○寺田最高裁判所長官代理者 いまお尋ねのございました裁判町の器具の整備の点につきましても、これも前々から国会の御支援をいただきまして予算に計上していただいておりまして、逐次改善されておることは事実でございます。ただ、私どもといたしましてまだまだ満足できる状態とは考えておりませんので、今後とも御支援をいただきながら予算を増すように努力してまいりたいと考えておるわけでございます。お尋ねのございました、たとえばゼロックスとかリコピーというようなもの、これもかなり台数は出てまいっておりますけれども、全部の簡易裁判所にというような点につきましては、ただいま手元にはっきりした資料を持っておりませんけれども、全部に行き渡っておるというふうにはちょっと申し上げにくいのではないかというふうに考えておるわけでございます。先般御審議いただきました昭和三十九年度の予算におきましても、たとえば録音機が五十数台であるとか、あるいは映写機が十数台であるとか、あるいは速記タイプあるいはマツダタイプというようなものもかなりの台数、全部で百数十台でございますが、予算に認めていただいておるわけでございます。一々申し上げますのも少し繁雑になるかと思いますが、そういう点でかなり充実してきつつはあるけれども、いまだ不十分であるというのが実情でございます。
○坂本委員 それから簡易裁判所の新受件数その他についてはきょう資料をもらっておりますが、これもいろいろ質問したいことはありますが、一つだけお聞きしたいのは、刑事事件で訴訟になりましたもので、普通の刑事手続をやっておるものが多いか、あるいは簡易手続でやっているのが多いか、その点についてはいかがですか。
○寺田最高裁判所長官代理者 その点につきましては、いま手元にはっきりした資料を持っておりませんので何とも正確なことは申し上げられませんが、いわゆる簡易手続をとらない場合におきましても、簡易裁判所においては、かなり簡略な手続で実際には行なわれておるように承知いたしておりますが、それ以上の具体的のことにつきましては、ただいま申し上げる資料を持っておりません。
○坂本委員 聞けばたくさんありますが、最後に一つ国民の人権の問題に関連すると思うのですが、刑事裁判における保釈の保証金ですね。これが各地によってまちまちであって、非常に高ところと――東京、横浜あたりでは、わずか交通事件で身柄つきで起訴されると十万円ぐらいの保証金を取られる。したがって、いなかから出てきた運転手なんかは、保証金ができないものだから保釈ができずに長い間裁判を受けなきゃならぬ。そういうような関係があるわけですが、この保釈の保証金について東京と大阪、あるいは福岡あるいは札幌というふうにだいぶ違うように考えるのですが、こういう点について裁判所のほうでは何か考えられたことがあるかどうが、いかがですか。
○寺田最高裁判所長官代理者 ただいま坂本委員から御指摘のございました点、確かに私どものほうの資料で見ましても、保釈の保証金の金額が、たとえば百万円以上のものも昭和三十六年度において二十三件というようなことになっておりまして、その反対に五千円未満のものがやはり七十件ばかりということで、その間に具体的にいろいろ数字が出ておりますが、相当な開きのあることは事実でございます。しかし、これまた、そもそも保釈の決定というものが、先ほど来も問題になりましたとおり、やはり一つの裁判官の独立した裁判でございます。これを一つの方針でもって統制するということは、やはり裁判の本質に反するということになるわけであろうと思います。また、実際の具体的な事件につきまして、これはやはりそれぞれの方の納付の資力というようなこととも関連を持ってこないわけではないと思いますので、その他犯罪の性質とか、あるいは逃亡その他のおそれの大小とか、そういう具体的の事情をそれぞれ当該裁判官が判断して決することになりますので、これは差があるから、一がいにそれをおかしいということも言いにくいのではないかというふうに考えるわけでございます。ただ、比較的同様な事情のある場合には、なるべく同様な決定の出ることが望ましいということは言うまでもないことでございまして、そういう点につきましては、先ほども申し上げました会同、協議会の席上等ではいろいろ論議をし、研究はいたしておるわけでございますが、これを統制するということはやはりできないような次第でございます。
○坂本委員 これは統制できないと思うのですが、しかしながら、有罪とか無罪とか、その他勝訴、敗訴というような裁判と違いまして、直接人権に関するものだし、具体的例をあげますと、横浜に行けば十万円だという。そんな高いところはないじゃないか、たいがい二、三万円でどうでしょうといっても、裁判官自身も、ずっといなかの裁判所にいたときは一万円か二万五千円でやってきたけれども、横浜に転任してきたら高いのに驚きました。
  〔三田村委員長代理退席、委員長着席〕
しかしながら、それかといって、ほかに例があるから特に安くするわけにはいかぬ。これは一つの口実かもわかりませんが、そういうような関係もあって――もちろん保釈の保証金も、窃盗とか詐欺、横領したりなんかして隠しているのからはうんとたくさんとって保釈を許可するような手も一つの方法ではありましょうが、ほんとうに金のない者は、いかに貨幣価値が安いといっても、一万、二万まではいいのですが、十万となればなかなかできないのですから、そういう点についてはあまり不公平であってはいけないと思うものだから……。ことに交通事件は事務の処理を簡潔に即決するために切符制をつくっておる。切符制なんかは、ほんとうは裁判官その他をもっと充実して、やはり交通巡査のほんとうの権限にまかせられたような、裁判と同じというような結果になっておるから、こういう点については日本の裁判制度上として、人権擁護の立場から考えなければならぬ点であるし、さらにまた裁判の運用について、裁判官が足らない、書記官が足らない、こういうような点が十分影響しておる。こういうふうに考えられる点があるわけですが、こういう裁判制度の、ただ切符制によって罰金だけよけいに取って国の収入をふやすという点も、これは十分考えなければならぬ点だ。こういうふうに思うわけですが、こういう点についてはいかがですか。大臣もおられるようですが……。
○賀屋国務大臣 常に正確と迅速ということを考えておりますから、切符制も、正確性を失わずして処理が迅速にできるというたてまえから考えだしたものでございます。同じような動きのものが応用できれば、どんどんそれは進めていきたいと存じます。いまの罰金につきましては、罰金収入をふやそうという意味は絶対にございません。罰金は結果論でございますので、御承知願います。
○濱野委員長 志賀君。
○志賀(義)委員 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案がここにかかっているわけでございますが、事実は管轄区域に関する改正だけでございます。しかし問題は、去る三月三十一日の当法務委員会において横山利秋委員から非常に適切な質問があったのでございますが、簡易裁判所は昭和二十二年に全国につくることを決定しておきながら、今日に至るもまだ十一カ所開庁していない、こういうことは他の官庁においては見られないことだ。これは何年間にやるというようなことは、大蔵省との予算折衝その他できめておられるのですか、どうですか。こういうことは他の官庁では例のないことなんですけれどもね。
○寺田最高裁判所長官代理者 いま志賀委員のお尋ねの点でございますが、当初の大蔵省との折衝の際における資料というものはただいま持ち合わせておりませんが、しかし、おそらく当初はできる限りすみやかに開庁するということで準備を進めておったものであるというふうに信じております。
○志賀(義)委員 できるだけすみやかにと言ってそれから十七年たって十一も開庁ができてない。これは法務大臣初めてお聞きになることじゃないですか。こんなことはほかにないでしょう。あなたは長い間法務大臣をやっておられたから、その点の経験は豊富にお持ち合わせでしょうが、どうしてそんなことになったのですか。
○寺田最高裁判所長官代理者 いま御指摘のございました中で、先般も御説明申し上げましたように、一度開庁いたしまして、その後たとえばその建物が焼けたとかいうような事情で、その結果、そのあと開庁できなくなったようなものも若干はございますが、かなりのものが最初から開庁しないで今日に及んでおる。しかもそれが十数年にわたるということにつきましては、これはもう先般申し上げましたとおり、ただ私どもとしてはひたすら恐縮に存ずるところでございます。しかし、その間の考え方においては、やはり少しずついろいろな問題がからんでまいったということも、結局事実においてはそういうことであろうと思うわけでございます。つまり当初は、先般来も問題になりましたいわば警察署単位で設ける、警察署二つぐらいに一つ設けるというようなつもりで設置されたように聞いておるわけでございますが、それがいろいろ手続その他の関係では、必ずしもそういうような運用もされないという面もございましたし、また次第に終戦直後の交通状態が緩和されるに伴いまして、かえってそういうところに行くよりは、むしろ現在事務移転を受けておる裁判所のほうが地元の皆さまとしても便利であるというような関係から、そう陳情と申しますか、あるいは要望と申しますか、そういうものも必ずしもないというようなこともからみ合いまして、それならば廃庁の手続をとっていただくようにすればいいわけでございますが何といっても一たん置かれました簡易裁判所を廃止するということも大きな問題でございますし、十数庁のみでいいのか、あるいはこれと同じような事情にある、実際は事件はやっておりましても、たとえば民事訴訟の事務移転をしておるところもございますので、そういうものもあわせまして、一つのまとまった方針で整理したほうがいいのかという点でふん切りがつかなかったというのが、非常に優柔不断だというおしかりを受けるかもしれませんが、そういうのが実際の実情でございます。
○志賀(義)委員 まことにふん切りの悪いことですが、しかし、それにしてもたとえば大阪ですね。全国で十一のうち三つが大阪市内です。東淀川、都島、西成ですね。これについては三月三十一日の横山委員の質問に対しては、偶然そうなったんでしょうと言われた。いまあなたの言われるのと、偶然そうなったんでしょうというのとは理由が結びつかないでしょう。いいですか、読んでみますよ。「これはどういう理由でございますか、偶然そういうことになったのではないかと思います。偶然その辺で土地の入手が困難になった。どういう理由でそこだけが困難かということはちょっと御説明申し上げかねます。」「かねます。」では済みませんよ。それはどういう偶然なんですか。
○寺田最高裁判所長官代理者 これは先般の私の説明のことばがあるいは不十分であったかもしれません。あるいはその御質問の趣旨を正確にくみ取っていなかったのかもしれませんが、これらの庁で開庁のできなかった理由は、先般も繰り返し御説明申し上げましたとおり、その管内で適切な敷地なり建物を獲得することができなかったというのが、この開庁できなかった理由でございます。それに対しまして、この前は、なぜそういう大阪でばかり獲得のできないところがたくさん生じたのかという御質問でございました。それでその際に、ほかでは一生懸命獲得の努力をしたにかかわらず、大阪のみ特に努力を怠ったために、不利に扱って三庁も開庁しない、こういう趣旨ではないのかというふうなお尋ねと理解いたしまして、そういうつもりは毛頭ないので、各地で平等にほんとうに努力をしたけれども、それがたまたま大阪では三カ所でできないことになった。なぜ大阪で三カ所できなかったかというのは、これはたまたまそういう結果になったということである、こういうつもりで申し上げたわけでございます。決して大阪を不利に扱ったつもりはないのだというのが私の偶然の説明でございますが、そのことばがあるいは不十分であったかと存ずるわけでございます。
○志賀(義)委員 何だかちっとも理由の説明にはなりません。私から申し上げましょう。大阪では、そういう役所が来ると、これはまた取り締まるんだろう、こういう気持ちがあるからなかなか敷地も提供しないのですよ。役所が来るとろくなことはせぬ、大阪城落城以来、大阪は税金ばかりたくさん取られている、ろくな目にあっていないから、その点は一番敏感なんですよ。こういう点の反省がなくて、いろいろそういうところで土地の値段その他で折り合いがつかない。大蔵省によく説明して、ここはこういう土地柄だ、だからこうだということを最高裁判所としておっしゃったことがありますか。
○寺田最高裁判所長官代理者 私どもは、いま志賀委員がおっしゃったようなことは全然耳にいたしておりませんが、志賀委員のほうでそうおっしゃるのでございますれば、その点はさらに十分反省することにいたしたいと存じます。大蔵省と折衝したかという点でございますが、これはむろん絶えずそういう問題について話し合っておるわけでございます。具体的にどの年度の予算で要求の計上をしたかというふうにお尋ねいただきますと、ただいま手元に資料を持っておりませんけれども、大蔵省との話し合いというものは、決していわゆる予算編成シーズンだけのことではございませんで、常時主計課長が向こうの主査あるいは主計官というものと接触いたしております。その間におきましては絶えずそういう話し合いをしておるわけでございます。大阪で三カ所も開庁されておりませんことの一つに、いま志賀委員のおっしゃったような問題も、あるいはあるのかもしれませんが、実際私どもが聞いておりますところの一つは、たとえば弁護士さんなどは、かえって東淀川とか西成に行くよりは、大阪簡易裁判所に行くほうが便利である。また弁護士さん以外の方でも証人やなんかでおいでになる方も、距離的には近くても、交通の便その他の点でかえって梅田へ行ったほうが楽だとか、あるいは梅田へ行けば百貨店に回って帰れる、西成に行ったのでは不便だというようなこともありまして、必ずしもそういう強い要望が出てこないのでございます。しかし、出てこなければこれがなくていいかということは、まことにそういうわけではございませんけれども、そういうことがいろいろからみ合っているというような実情でございます。
○志賀(義)委員 これは大阪弁護士会の人が聞いたら、あなたに抗議しますよ。弁護士諸君がデパートに行く都合もあるからそんなところにできないほうがいいんだ、あなた本気でそれを言われるのですか。いいですか、この前あなたの説明されたところでは、その当該地区において適切な地所が入手しがたい、建物が入手しがたいから今日までできないのだと言われた。それを、弁護士の人がどうも不便だ、中之島に行ったほうがいい。ついでにデパートに行く便もいい。そういうこととは違うじゃありませんか。これは記録になりますよ。そうすると大阪の弁護士さんも読みますが、あなたそれでよござんすか。
○寺田最高裁判所長官代理者 私は、弁護士さんがデパートにおいでになるというようなことは毛頭申しておりません。弁護士さんは、つまり地方裁判所、高等裁判所、簡易裁判所が一カ所にまとまっておりますところを非常に便利としておられるわけでございます。今度も大阪の地方裁判所で分室というような問題が起こっておりますときに、やはり弁護士さんとしては非常に不便であるということでございまして、弁護士さんの関係は、できる限り裁判所というものはまとまったところにあったほうがいい。この点だけを申し上げたわけでございます。
 あとのデパート云々のことは、まことによけいなことを申し上げまして、これは証人の方たちにそういう場合もあるのではないかという憶測でございまして、ことばが不適当でございましたら取り消してもけっこうでございます。
 それから、それと敷地の入手困難ということとがどういう関係になるかということでございますが、これは、裁判所の開庁できない理由は、あくまで敷地、建物の入手困難でございます。しかし、その際に、つまり地元のほうから非常に強いバックアップといいますか、これは何といっても、大蔵省に交渉するにいたしましても、また国会で御審議いただくにいたしましても、地元のほうからの非常に強いバックアップがございますと、私どもとしても予算獲得その他に非常に迫力が出るのが実情であります。そういう関係がそれほどでないということになりますと、ほかとの比較において迫力において欠けるところがあるということを申し上げるつもりの表現の問題でございます。
○志賀(義)委員 こじつけみたいなことを言われちゃ困りますね。簡易裁判所でそういう問題が起こるのは、本委員会でも、埼玉県選出の古島義英委員がここでも問題にされた。埼玉のある簡易裁判所で白紙逮捕状を出して不当な弾圧をしたことがあります。それから、秋田県のある簡易裁判所から白紙の逮捕状を出して警察へ渡したことがあります。白紙ですよ。先に警察官に渡しておくのです。それは私がその一部を手に入れて、当時、最高裁の横田判事が最高裁の事務局長でここに来ておられましたが、目をこらしてごらんになった物件でございます。そういうものが乱発される。また検事、警察の要求があって不当に逮捕状が出される。こういうことがありますと、一般の人は非常に敏感ですから、そんな役所ができてくれたら困る、こういう感じがあるのです。その白紙逮捕状を三田村委員もわざわざ私の議席に来て見られたのです。そういういわく因縁つきのこともあるのです。そういう役所ができては、てっきり地元が一番先にやられる、そういうことがあるからいやがるのです。決して賢い物に行くのがどうとかこうとかいうことじゃないのです。そういう量見だから最高裁で敷地も獲得できないのです。そういう点はよく考えていただきたいと思います。
 そこで簡易裁判所ですが、予算、人員の関係もありまして、当直、宿面が普通の地方裁判所なんかに比べても非常にひんぱんにあるんじゃございませんか。その点はどうでしょう。
○寺田最高裁判所長官代理者 これまた、いま正確な資料を手元に持っておりまんけれども、どういたしましても簡易裁判所の職員の数は比較的少のうございますから、同一庁舎内に地裁、簡裁がある場合は別でございますが、独立簡裁のような場合には、自然他の場所よりは宿直が比較的よく回るということは、あるいはあろうかと存じます。
○志賀(義)委員 あるいはあろうでは困りますな。簡易裁判所に宿直の御主人のところに弁当を持って行かれた。その留守に小さい子供さんが熱湯を浴びて死んだという例もありますが、そういうことも御存じですか。
○守田最高裁判所長官代理者 そういうことはまだ私のほうに報告が参っておりませんので存じておりません。
○志賀(義)委員 そこで、臨時司法制度調査会というものがございます。ここでいつも問題になるのは、裁判所予算の独立ということでございますが、これはなぜそういうことが叫ばれるかというと、防衛庁の予算と裁判所の予算と見ると、増加率が非常に違いますね。これは法曹界の一致した意見であります。それで裁判所の予算の独立ということが問題になるのでありますが、そういう点について、特に毎年の防衛庁の予算の膨張に比べて法務省の予算の占める率が減っているというふうに私ども見ておるのでありますが、そういう点について、毎年の予算において裁判所の占める予算の率が防衛庁なんかに比べてどうなっておるか。そういう点はお調べになったことがありますが。
○寺田最高裁判所長官代理者 防衛庁の予算との関係は、私ちょっと手元に数字を持ち合わせておりませんが、裁判所の予算がどういうふうに伸びてまいっておるかということについての数字を簡単に御説明申し上げますと、三十五年度には百三十八億、三十六年度百六十九億、三十七年度百八十六億、三十八年度二百十一億、三十九年度二百三十九億というような形で、かなり伸びてまいってはおるわけでございます。ただ、その国家予算に対する比率という点につきましては、〇・八%前後のところを上下しておるというような実態になっております。
○志賀(義)委員 大蔵省との折衝のときなんかには、そういうことを取り上げて交渉されたことがありますか。いまあなたは〇・七%あるいは〇・八%を上下しておると言うけれども、上下より少しずつ下がっておるのでしょう。そういうことは大蔵省との交渉のときでも言われれば有力な武器になるが、あなた方はそんなことで交渉されたことがありますか。
○寺田最高裁判所長官代理者 これは二十四、五年当時は〇・五%とか〇・六前後のこともあったわけでございまして、そういう時代と比べますればかなり比率も高くなっております。しかし、またもう少し高いような時代もございまして、その点は上がったり下がったりという実情でございます。しかしながら、これはいま志賀委員からお話しのございましたおことばを待つまでもなく、私どもとしては、何とかして少しでも裁判所の予算を伸ばして、そうして裁判所の人的、物的施設を充実したいということは、これはいわば当然のことでございまして、そのために四月ぐらいからいろいろ資料の準備を整えまして、そうして年末近くなりますれば、毎日徹夜等を続けまして、大蔵省と相当激しい折衝をしておるけとは事実でございます。ただ、しかしながら、いわば力が足りなくて十分な実績があげられないということはきわめて遺憾に考えておるわけでございます。
○志賀(義)委員 法曹界の一致した意見で、予算の少ないことについて、ことに予算の独立ということを言われているのでありますが、それが十分にいかないために、どうしても下級裁判所のほうにしわ寄せが行って、さっきのような、奥さんが弁当を届ける間と子供さんが熱湯を浴びて死ぬというような、しかもそういうことが人事局長のほうにもちっともお耳に入ってないというような現状なんですね。だから、ひいては、十一も開庁を決定しておきながら、法務委員会でちゃんと法律まで十七年も前に通しておきながら、それが今日までほったらかしておかれるというような状態になるのでありますが、臨時司法制度調査会で、簡易裁判所制度と予算についてどういうことが問題になっておりますか、法務大臣のほうから伺いたいと思います。
○津田政府委員 臨時司法制度調査会の審議模様につきまして、私から申し上げます。
 裁判所予算の問題につきまして、裁判所予算に関しましては、財政法に特別規定があるというようなことについては、いろいろ御論議がございましたし、また、裁判所の予算について不十分な点を改善しなければならぬという御議論も相当ございました。また、簡易裁判所の問題につきましては、簡易裁判所のあり方という問題が中心になり、さらに簡易裁判所の廃置というようなものが問題になって、具体的にどこがどうということではございませんけれども、全国に約五百七十庁程度簡易裁判所があるわけでございますが、これはただいままでに御審議がございましたように、簡易裁判所は設置しておるが、そこに判事は常駐しないというような状態がかなり出ておるわけです。常駐しない簡易裁判所というものの一体存在価値といいますか、あるいはそういう面からする不都合というようなものから見れば、簡易裁判所制度あるいは簡易裁判所の廃置について相当考慮を加える必要があるんではないかという御意見がかなり出ております。と同時に、簡易裁判所の裁判官そのものについての任用制度についても、現状のままでいいかどうか、あるいはしかるべき改善をなすべきかというような点についても、いろいろ御議論が出ております現在につきましては、調査会におきましては、まず法曹一元の制度をとるかどうかということの御審議のまっ最中でございまして、その前の調査の段階におきまして、ただいま申し上げましたようなことは出ておりますけれども、簡易裁判所の制度の問題、それから裁判所予算の問題については、本格的の御審議にはまだ至っていないというのが現状でございます。
○志賀(義)委員 これでそろそろ締めくくりますが、そうしますと、いまアメリカの巡回判事みたいなものが簡易裁判所にあるんですね、あなたのおっしゃるところを伺うと。テレビに出てくる西部劇の巡回判事みたいなことをやっているんですか。
○津田政府委員 簡易裁判所が五百七十庁――現在五百五十九庁というのが正確かもしれませんが、簡易裁判所がございますが、そこには書記官あるいは事務官、あるいは廷吏というようなものが常駐しておるわけであります。しかしながら、裁判官は常駐していない庁も相当ある。その常駐していない庁につきましては、常駐している庁から出張して勤務するという体制になっておるわけであります。これはいわゆる巡回制度というのとは違うというふうに私どもは考えておるのです。巡回制度と申しますのは、裁判所そのものがなくて、町役場であるとか、しかるべき場所に巡回していって、そこで法廷を開いたり裁判事務を扱うということでありますが、そうでなくて、現在の簡易裁判所は、それ自体常町開庁しているのですが、裁判官が常時いないという意味でございます。
○志賀(義)委員 いま家庭裁判所のほうで、例のアメリカ大使を刺したという少年の問題で大きな問題になっておりますが、家裁なんかでもいわゆる精神薄弱者、ことに精薄の少年、こういうものに対して、受理件数及び処分件数なんというものをお調べになりまして、これではいけない、何とか対策を講じようということは問題になっているのでございますか。
○寺田最高裁判所長官代理者 家庭裁判所で取り扱います少年事件の中で、どれだけの数が精薄児であるかというような点につきましては、ただいま手元に資料を持っておりません。
○志賀(義)委員 つくっておられますか。
○寺田最高裁判所長官代理者 その点は、調べますればわかるのでございます。
○志賀(義)委員 それは、新暴力法の関係もございますので、ぜひ出していただきたいと思うのです。
 これで質問を終わりますが、委員長、きょうの新聞を見ますと、この法務委員会で問題になりました池袋の警察の少年に対する暴行事件というものについて、暴行の事実はないということがありました。警察庁のほうからは、当法務委員会に調査の結果を報告するということになっておりますが、新聞には発表になりました。こちらに書類が参っておりますか、参っておらないとすれば、警察庁は順序を誤っております。どうでしょう、委員長。
○濱野委員長 近い機会にあなたから御質疑くだすったらどうですか。
○志賀(義)委員 いま正式に請求します。委員長としても、ここで問題になって、ことにあなたの選挙区で起こった問題ですから、それを何ら――ここで、あなた正式に警察庁に言われたのです。あなたから言って……。
○濱野委員長 もう一度言ってくれませんか。どういう資料ですか。
○志賀(義)委員 ここで、あの結果を調査して報告しますということを警察庁の方が言われた。それをここにまっ先に報告すべきでしょう。それを報告せずに、新聞記者のほうに先にあんなプレス・キャンペィンをやってくる。順序を誤っておる。当然ここに来ているはずだが、来ていないとすれば、あなたから厳重に申し入れていただきたい。明日は国政調査の日でありますので……。
○濱野委員長 承知いたしました。
 本案に対する質疑はこれにて終了いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○濱野委員長 御異議なしと認めます。よって、本案に対する質疑はこれにて終局いたしました。
 次会は明十日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後一時三十八分散会