第046回国会 本会議 第9号
昭和三十九年二月二十一日(金曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第八号
  昭和三十九年二月二十一日
    午後二時開議
 第一 日本輸出入銀行法の一部を改正する法律
  案(内閣提出)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 日程第一 日本輸出入銀行法の一部を改正する
  法律案(内閣提出)
 特定廃業振興臨時措置法案(内閣提出)の趣旨
  説明及び質疑
 赤城農林大臣の沿岸漁業等振興法に基づく昭和
  三十八年度年次報告及び昭和三十九年度沿岸
  漁業等の施策についての発言及び質疑
    午後二時八分開議
○議長(船田中君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 日程第一 日本輸出入銀行法の一
  部を改正する法律案(内閣提出)
○議長(船田中君) 日程第一、日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案を議題といたします。
○議長(船田中君) 委員長の報告を求めます。大蔵委員長山中貞則君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔山中貞則君登壇〕
○山中貞則君 ただいま議題となりました日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案につきまして、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 この法案の内容を概略申し上げますと、
 まず第一は、日本輸出入銀行の業務として、外国政府等に対し、貸し付けられた民間資金にかかる債務の保証業務を追加することといたしております。すなわち、市中銀行が輸銀とともに外国政府等に対し、わが国からの設備等の輸入に必要な資金を貸し付けた場合、その協調融資分にかかる債務について、輸銀が保証することにより、市中銀行の融資を容易にしようとするものであります。
 第二は、同行の業務として、わが国からの設備等の輸入による債務の履行に必要な資金を、外国政府等に対して貸し付ける業務を追加することとしております。すなわち、わが国からの輸入代金等の支払いが、その国の国際収支上の理由から、著しく困難な場合に、その国の要請に応じて、主要な債権国において、債務の履行の繰り延べ等が行なわれることが確実と認められる場合には、輸銀がその債務国の政府等に対し、その債務の履行に必要な資金を貸し付けることができるようにするものであります。
 第三は、政府が予算で定める金額の範囲内において、日本輸出入銀行に追加して出資できることとし、この場合において、同行は、その出資額により、資本金を増加するものといたしております。
 第四は、同行の業務範囲の拡大と業務量の増大に対処し、同行の業務の円滑な運営をはかるため、理事の定数を一名増加して六名とすることとしております。
 以上が、この法案の内容でありますが、本案については、大蔵委員会において連日慎重に審議し、各委員より、改正の理由、輸出入銀行の業務、海外経済協力基金との関係等のほか、さらに公庫、公団等特殊法人全般のあり方について質疑が行なわれました。特に、特殊法人の法律用語の不統一、出資金の規定の不統一についての質疑に関し、委員長発言として政府の善処を求めましたが、山村国務大臣より、十分検討に値する問題と考えるので、政府において善処するつもりであるとの答弁がございました。
 本案は、去る二月十八日、質疑を終了し、直ちに討論に入りましたところ、卜部委員は社会党を代表して、本案中、政府の追加出資金について、これまでのような法律改正の形式によらないで、単に予算の定めるところにより、資本金を増加できるものとする改正は、国会審議軽視の傾向があるとして、本案に反対する旨を述べられました。次いで、採決に入りましたところ、本案は起立多数をもって原案のとおり可決となりました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(船田中君) 討論の通告があります。これを許します。卜部政巳君。
  〔卜部政巳君登壇〕
○卜部政巳君 私は、日本社会党を代表いたしまして、日本輸出入銀行法の一部改正法案に対しまして、反対の趣旨を表明するものであります。(拍手)
 私ども社会党は、国民経済の安定と、自主貿易の推進について、そこに潜在するもろもろの問題点については、その禍根を除去するために、激しく追求を行ないながらも、最終的には、金融面よりするところの輸出にこと欠くことがあってはならないという配慮から、たびたび改正される同法案に対しましては、賛成の立場をとってまいったものであります。しかしながら、今日政府が行なうところの海外投融資方針には、多くの欠陥があると思われるのであります。輸銀と海外経済協力基金との関係などを見ると、その機能が明確でありません。ウジミナス製鉄所への出資などは、商業ベースに乗らないものでありまして、基金で取り扱う性質のものではないか等、多くの検討すべき問題があることを指摘したことはもちろんであります。しかるに、今回提出されたこの法案に対しまして、わが党が反対の態度を表明せざるを得なくなった原因が、同法案の改悪を意図した政府にあることを指摘し、反対の理由を明らかにしたいと思うのであります。(拍手)
 申すまでもなく、財政運営の原理は、憲法の精神にのっとり、あくまで民主的な財政運営を行なうものでなくてはならないのであります。今日の日本における民主主義が特に強調される段階におきましては、民主的な権利が国会に集中されるのでありますから、したがって、国民の税が審議され、また、その使途というものが検討されなければならないことは申すまでもないところであります。かかる意味からいいましても、今回提案された輸銀法の一部を改正する法案は、十分国会において審議される内容に改正することが至当であるにかかわらず、政府が、予算で定める金額の範囲内において、日本輸出入銀行に追加出資できること、また、この場合において、同行は、その出資額により資本金を増加することができるというものでありまして、この字句はきわめて平易簡単でありますが、その意図するものは、予算に計上することによりまして、自動的に法律としての議決事項を削ろうというものであり、議会の権能と民主的な財政の審議権を軽視した改悪といわざるを得ないのであります。(拍手)
 ことばを平たく申しますならば、このたびの改正で議決事項を一つでも減らすことによって、野党の攻撃や批判等を除去しながら、運営をスムーズにさせていこうというものであろうとも思われるのであります。今日の財政というものは非常に領域が拡大され、予算上のこまかい内容に至るまで議会の承認を受けなくてもよいとする項目が非常に多くふえておるのであります。財政投融資がその範たるものであり、さらに、産投会計にしてもしかり、出ていった先についてもわからない、こういう状態、郵便貯金法の貯金利子についても問題が提起されているところであります。資金というものが非常な広範囲な領域にまたがって、しかも、国会の審議に供されないで流れていくという抜け穴と、この抜け穴がだんだん拡大されていくことは、国民の税金を自由に使えるように、俗なことばでいうならば、ペテンにかけるような使い方が非常に多く見られるのであります。こういう段階であればこそ、今日の財政が弾力的運営と民主的運営との矛盾を双方どのように調和するかという苦悩があり、問題があることはわかるのでありますが、現実の日本の財政法というものが、単年度主義をたてまえとしておる以上、政府としては、できるだけ国民の監視と議会における審議が十分尽くされるよう配意するものでなくてはならないと思うのであります。そういう意味で、今回こうした改正の措置というものが国民の目をおおうための卑劣な改正である以上、わが社会党は、これは断固反対する意思を表明するものであります。
 以上をもちまして、討論を終わりたいと思います。(拍手)
○議長(船田中君) これにて討論は終局いたしました。
 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○議長(船田中君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 特定産業振興臨時措置法案(内閣提出)の趣旨説明
○議長(船田中君) 議院運営委員会の決定により、内閣提出、特定産業振興臨時措置法案の趣旨の説明を求めます。通商産業大臣福田一君。
  〔国務大臣福田一君登壇〕
○国務大臣(福田一君) 特定産業振興臨時措置法案につきましてその趣旨を御説明申し上げます。
 御承知のように、わが国は、国際経済の一翼をになうものといたしまして、貿易・為替の自由化を着々と推進し、さらに関税の一括引き下げの動きに対しても、原則としてこれを受け入れていく方針を固めております。
 このような国際経済環境の変化に対処しつつ、国民経済の健全な発展を確保していくためには、申すまでもなく、かかる情勢に敏速に適応し得るよう国内体制を十分整備しておくことが必要であります。ひるがえってわが国産業の実情をながめますと、今後の経済成長を先導することを期待されている重化学工業部門の多くにおいて合理的な生産体制がいまだ確立せず、経営基盤も脆弱であるという事情があり、国内の産業体制遺憾ながらいまだ十分整備されているとは申しがたいのであります。したがいまして、国際経済環境の変化のもとで将来の経済成長を確保するためには、これらの部門において、早急に合理的生産体制の確立、経営基盤の強化を通じ、産業活動の効率化をはかっていくことが必要であると考えます。
 わが国産業の包蔵するこのような欠陥を是正し、産業活動を効率化するための努力は、まず産業界において行なわれるべきことは当然でありますが、わが国産業の資金調達の方式をも考えますと、その努力を実効あらしめるためには、産業界と密接な関係を持つ金融界からも協力を得る必要があり、さらに国民経済の健全な発展を確保し、国民の福祉の向上につとめるという見地から、政府も民間における努力を助長する必要があると考えられます。
 そこで、政府といたしましては、企業の自主性をあくまでも尊重しつつ、合理的生産体制の確立、経営基盤の強化を通じ、産業活動を効率化するための助成を行なうことにより、特定産業の振興をはかることとし、その法的裏づけといたしまして、この法律案を提出した次第であります。
 次に、この法律案の主要点について、御説明申し上げます。
 第一は、この法律の適用を受ける特定産業の選定に関することであります。特定産業の指定は、あくまでも産業界の自主性を尊重して、将来の経済成長を先導すべき特定の重化学工業部門のうち、その業界から申し出のあったものについて審議会の意見を聞いて行なうことといたしております。
 第二は、政府、産業界及び金融界は、合理的生産体制の確立、経営基盤の強化を通じ、産業活動を効率化して特定産業の振興をはかるための基準について討議し、政府及び産業界の合意に基づいて基準を決定することであります。この振興基準では、規格の整備、生産の専門化、設備の適正化、事業の共同化、合併等に関する特定産業ごとの一般的な方針が定められ、企業が自己責任に基づいて行動するときの好ましい判断材料を提供しようとするものであります。
 第三は、特定産業を営む者、政府関係金融機関及び銀行が産業活動を効率化するために努力ないし留意すべきことを明らかにしていることであります。
 第四は、政府の助成に関することであります。振興基準は、政府も参加して作成されたものである以上、その円滑な実施をはかることは、国の方針にも適合することでありますから、振興基準で定められた方針に従って産業活動を効率化するため必要と認められるときは、政府は、資金の確保につとめるとともに、法人税または登録税の軽減措置を講ずることといたしております。
 第五は、合理化のための共同行為の特例に関することであります。合理化のためにする一定の共同行為が、あくまでも振興基準で定められた方針に従って産業活動の効率化のために行なわれる限り、これを許容していくことが必要と考えられますので、公正取引委員会の認可を要件として、ここに独占禁止法との調整をはかることとした次第であります。
 第六は、合併に関する判断の基準を公表することであります。これは、企業が合併しようとするときに、独占禁止法に抵触するかどうかを関係企業者が容易に判断できるようにして、企業の合併を円滑ならしめようとする趣旨に基づくものであります。
 その他、振興基準の内容を常に公正かつ適切たらしめるために、その作成にあたっては学識経験者あるいは関連事業者並びに中小企業者及び労働者等の利害関係者の意見を十分に聞くこととしたほか、政府、産業界及び金融界から振興基準を変更すべきことを請求し得る規定を整備いたしております。
 なお、本法案は五年間の時限法といたしております。これは、貿易の自由化等により経済事情が著しく変動しつつある期間について、産業活動の効率化を有効に促進するため、本法案に規定するような措置を講ずることが適切であるという趣旨に出るものであります。
 以上、本法案の趣旨の概略を御説明申し上げましたが、要は今後のわが国経済の成長を先導すべき特定の重化学工業部門の確立発展をはかるため、これらの部門のうち競争力培養に向かってみずから努力するものに対し、政府はもとより、金融界からもまた応分の協力を期待し、激動しつつある国際経済環境の中で日本経済の占めるべき名誉ある地歩をすみやかに築いてまいろうとするものであります。
 以上が、特定産業振興臨時措置法案の趣旨であります。よろしく御判断のほどをお願いいたします。(拍手)
     ――――◇―――――
 特定産業振興臨時措置法案(内閣
  提出)の趣旨説明に対する質疑
○議長(船田中君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。森義視君。
  〔森義視君登壇〕
○森義視君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま趣旨説明の行なわれました特定産業振興臨時措置法案について、総理並びに関係各大臣に質問を試みんとするものであります。(拍手)
 本法案は、貿易の自由化に伴い、わが国産業の新しい体制をどのように整備するかという、いわゆる新産業体制論を理論的な背景として、通産官僚の手によって立案されたものでありますが、その内容は、ただいま通産大臣も趣旨説明の中で述べられたとおりに、わが国産業の国際競争力を強化するために、特定の産業を国の誘導によって集中、合併し、企業の大型化をはかり、金融、財政、税制上の優遇措置を講じて、独占体制を官民協調方式によって強化しようとするものであります。この法案が昨年本院に提案されるに至るまでの経緯は、文字どおり論議沸騰し、妥協と修正を繰り返し、近来これほど難航した法案はまれだといわれるほどのいわくつきのものであります。したがいまして、私は、質問に入る前に、本法案の今日的意義を明らかにする意味において、その経緯をまず要約してみたいと考えるものでございます。
 この法案が難航した理由の第一は、通産官僚の主導性によってつくられたという経緯から見て、わが国独占資本の官僚支配に対する警戒心が強く作用したことであります。すなわち、今日まで保守政党を動かし、官僚を使って国家権力をほしいままにしてきたわが国独占資本は、開放経済という新たな局面を迎えて、国際競争力と国内市場支配力をさらに強化するためには、みずからの力によって大企業の集中、合併を行ない、そのためにこそ必要な国家権力を利用することは考えていたけれども、官僚の主導によって産業界の再編成にくちばしを出されることは官僚統制の危険があると考えたからであります。事実、通産官僚が開放経済に移行する新体制を整備するためには、国家権力による誘導が必要であると主張する裏には、産業界に対するみずからの支配力を強める意図を強く内包していることを否定するわけにはまいりません。
 難航した理由の第二は、すでに系列融資によって支配体制の確立している金融界が、官僚の介入によってその体制がくずされることをおそれたことであります。
 第三の理由は、独禁法の番犬である公取委員会が、通産官僚の誘導によって行なわれる大企業の集中、合併は、独禁法を骨抜きにする危険性があると考えたことであります。
 以上のような理由で難航を重ね、ついに当時の松尾通産事務次官をして、この法案は五十五点であると言わしむるほどの妥協と修正を余儀なくされたわけでありますが、それでもなおかつ法案提出までにこぎつけたゆえんのものは、一つには、何としてもこの法律を通じて産業界に対する支配の足がかりをつかもうとする通産官僚の執念であり、いま一つは、独占資本がこの法律によって独禁法に風穴をあけ、全面改正の足がかりをつかもうとしたことであります。
 したがって、この法案の今日的意義は、国家独占資本主義、すなわち、経済に対する国家の干渉と統制の強化に向かう法的突破口であり、独占側から見れば、独禁法の骨抜きによる独占支配体制の強化といえましょう。
 私は、以上のような観点と見地に立って、ただいまからまず池田総理に対し、次の三点について質問をいたします。
 質問の第一点は、本法案は、独占強化のために国家権力が法的に介入し、いわゆる国家独占資本主義体制に道を開こうとするものであり、わが国経済の民主的発展を阻害するばかりではなく、法と権力のもとに中小企業や労働者に対する犠牲を一そう激しくするものと考えるが、どうか。わが国の独占が戦後いち早く立ち直った要因の第一は、相対的過剰人口を利用した低賃金構造であり、それを基礎とした二軍構造であります。第二の要因は、国家の全機構を大企業本位の資本蓄積に奉仕させてきたことであります。このような労働者、中小企業の犠牲と政府の庇護のもとに成長したわが国独占資本が、開放経済体制への移行とEECの発展、技術革新の展開といろ新たな局面に遭遇し、再編成と体制強化を迫られるや、あなたはその体制と基盤づくりのために、無計画な高度経済成長政策を促進し、設備投資の狂奔による企業の大型化と合理化を進めてこられたわけですが、一方、企業の乱立による過当競争、地産過剰という独占にとって好ましくない情勢が生まれてくるや、今度は国際競争力の強化に名をかって国家権力の能動的介入を行ない、これらの企業を集中、合併して、独占、寡占体制に手をかそうとしておるのが、私はこの特振法であると考えるのであります。このような独占擁護の一貫した政策から見て、今度の特振法は中小企業をその系列下に置いて収奪するか、さもなくば倒産させ、労働者には首切りと強制配転が、法と権力のもとにおいて一そう激しく行なわれてくることは必至であると考えるが、総理の所信を承りたいと思います。
 質問の第二は、この特振法はわが国産業の構造的欠陥である大企業と、中小企業、農業との間の格差是正にどのような役割りを果たすのかということであります。総理は、常に高度経済成長政策によって飛躍的に拡大したわが国の大企業と近代化のおくれた中小企業、農業との格差是正に経済政策の重点を指向すると述べておられますけれども、特振法は一体格差の是正になるのかどうか、私は、特振法は格差の拡大にこそなれ縮小にはならないと考えるわけであります。むしろ、中小企業や農業にこそ特振法が必要であると考えるが、総理の所信を承りたいと思います。
 質問の第三は、この法案に規定するような企業の集中、合併やあるいはカルテル行為の拡大を法的に認めることは、独禁法の骨抜きになり、経済の民主化に逆行するのではないかということであります。わが国経済の平和憲章ともいわれる独禁法は、財界の圧力等によって、今日までにすでに輸出入取引法をはじめ、約二十の適用除外立法によってなしくずし式に骨抜きにされてきておりますが、それでもなおかつ独占支配の弊害をチェックする役割りをかろうじて果たしてきておるのであります。したがって、独占の支配体制確立にとって当面の最大の障害は何といっても独禁法であり、彼らは今日公然と独禁法の改正を口にし、その観点から、本特振法に対しても、官僚統制の危険性ははらむけれども、独禁法に風穴をあけるという意味で賛成だと公言しておるのであります。総理は、このような財界の公言に対して、本院の答弁を通じてはっきりとそれはあやまちであると言い切れるかどうか、所信のほどをお聞かせ願いたいのであります。
 以上で総理に対する質問は終わりまして、次に福田通産大臣に質問いたします。
 質問の第一は、自由主義経済機構のもとで、国家権力が特定の産業に特別の援助政策をその要請に先んじて実施することは、差別行政であると同時に、わが国産業がたどってきた安易な政府依存感を助長し、企業の自主性と責任性をそこなうことにならないか。また、官僚が国家権力を背景に独占体制の整備を誘導するということは、独占資本と国家権力との結合が産業支配をほしいままにしてきた国家独占資本主義の弊害に通ずる道とはならないか。
 質問の第二は、わが国通産行政をあずかる通産省として当面必要なことは、このような独占支配に手をかすことよりも、もっと差し迫った問題として、独占資本の圧力のもとに倒産していく中小企業や、あるいはおくれている国産技術の開発にこそ力を入れるべきであり、そのためには市場支配的事業者の経済的乱用を阻止し、産業資金計画を一元化して、重要産業を計画化、社会化すべきであると考えるが、どうか。
 質問の第三点は、今日でもすでに独占価格、管理価格が設定されて、中小企業者、農民、一般消費者はそのしわ寄せをまともに受けて苦しんでいるが、特振法による独占の強化は、その傾向に拍車をかけ、むしろ物価値上がりの要因にはならないか、以上の点について通産大臣の確信ある所信のほどをお聞かせ願いたいのであります。
 次は、大橋労働大臣に質問いたします。(「いないじゃないか」と呼ぶ者あり)大臣の出席を要請いたします。大臣が出席するまでの間、大臣の質問をあとに回して、渡邊公取委員長に対する質問を行ないます。その間に大臣の出席を要請いたします。
 渡邊公取委員長に対する質問の第一は、開放経済体制のもとにおいては、企業の集中、合併が急速に進み、独占の弊害が国民生活を脅かし、他面、自由化により外国資本や大企業が不公正な取引方法によって中小企業を圧迫するおそれが多分にあると考えられるが、この際あなたは、事態に即応するために公取委員会の機構を拡充し、その権限を強化して、常時企業の連合、合併、系列化、カルテルなどの実態を把握する体制を確立し、独禁法の違反事件についてきびしい審判を進められるようにすべきであると思うが、どうか。また、独禁法のおびただしい除外立法をこの際再整理して、その運用を強化する考えはないかどうか。
 質問の第二は、この特振法は特定産業に関する限り実質的な独禁法の骨抜きと考えるが、あなたはどのように考えておられるか。すなわち、法文上では一応公取委員会に認可権を与えておりますけれども、認可、却下、処分はすべて通産大臣と事前協議をすることになっております。特定産業に関する限り、通産大臣は、企業主体というよりもむしろ合併促進の火つけ役であり、公取に対して通産省の大きな圧力が加わってくることは必至であると考えますが、公取はこれに対抗するにはあまりにも機構が小さ過ぎます。あなたはこのような圧力の中で公正な判断を下せるかどうか、ぜひ確信ある答弁を願いたいわけでございます。
 労働大臣、まだですか。(「まだだ」「要求しないじゃないか」と呼ぶ者あり)要求しました。
 次は、大橋労働大臣に質問いたします。大臣が質問に答えられない場合は、総理がかわって御答弁願いたいと思います。
 労働大臣は、この特振法に関する限り全くつんぼさじきに置かれておりますけれども、今日、開放経済に移行するわが国産業界の革命にもひとしい段階で、産業構造の変化に労働問題が無視されていることを、あなたはどのように考えておられるのか。この特振法が成立し、企業の合併が促進され、合理化カルテルが進行すれば、必然的に労働者の首切り、強制配転が行なわれてくると考えるが、労働大臣としてどのような対策を考えておられるか、承りたいのであります。なお今日、産業の主要な一翼をになう労働者の代表が、振興基準の作成に直接参加していないのはどういう理由によるものなのか、あわせてお答えを願いたいわけであります。
 以上で私の質問を終わるわけですが、総理並びに関係各大臣、公取委員長の明確な御答弁を期待いたします。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答えいたします。
 開放経済体制に向かっておりますこの際、わが国の一部の特定産業につきまして、政府、産業界あるいは金融界が、おのおのその立場から国際競争力の弱いと認められる重要産業につきまして、国際競争力強化のため、必要最小限度の合理化のための共同行為を行なおうとするものでございます。しこうして、今回の法案につきましては、独禁法の精神を十分組み入れまして、それに穴をあけるようなことは全然なく、独禁法の精神を生かしつつ、いまの必要最小限度のものを行なおうとするものでございます。御心配の価格やあるいは需給の調整等をやろうとしておるものではないのでございます。私は国際競争力のあるものにつきましてはもちろんやる考えはございません。これを強くすることが日本産業全体のためになると考える弱い産業についてのみやろうとするものでありますから、わが国全体の産業の発展を来たし、中小企業にしわ寄せするということは全然ございません。これは中小企業のためにもこういうことをやらなければならぬ。たとえば自動車工業におきましても、もし大工業の自動車工業がどうこういうことがあったら、下請の中小企業が困ることは当然でございます。私はそういうことを考えまして、国全体のためになる、特定の産業、しかもそれが競争力を強化して、日本の経済を発展さすために、必要最小限度のものに行なおうとするものでございます。だんだんこの法案の趣旨がわかりまして、御心配になっている財界につきましてももちろん全面的に共鳴しておると思っております。また最近では、労働者方面にも――総評は別でございますが、労働者方面につきましても非常に賛成しておるということが現況であるのでございます。(拍手)
 なお、労働問題について申し上げますが、こういう国際競争力を強化して、全体の産業が発達することは、資本家のためではございません。労働者のためであることをお考え願わなければならぬのであります。(拍手)したがいまして、この政府、産業界、金融界がおのおのその立場で考える場合に、労働者を参加せしめないということは御不満のようでございますが、これは労働者が参加しての会議以前の問題であるのであります。私は、産業の国際競争力を強くする問題でございますから、この協議会に労働界から入る必要はないと認めておるのでございます。(拍手)
  〔国務大臣福田一君登壇〕
○国務大臣(福田一君) ただいま総理から御答弁がございましたので、私のお答えはあるいは重複する点があるかとも存じますが、御質問がございましたのでお答えを申し上げたいと思うのでございます。
 まず質問の第一点は、特定の産業だけを援助して、ほかのものをほうっておくのは不公平ではないか、こういう御質問だと思うのであります。しかしながら、私たちのこの仕事は、産業を、どの産業もだんだん育成し、強化していくというのが必要であります。そうすれば、弱い産業を育成強化していくということは当然でございまして、健康な人よりは、やはり病人に手厚い措置を考えるというのと少しも変わりはないのでございまして、これは決して不公平ではございません。
 次に、独占資本を援助することは中小企業や農業のためにならないということでございますが、いま、総理もお答えがありましたように、これは決して何も独占資本ではございませんので、特定の産業であります。なぜ特定の産業を援助しなければならないかといえば、それは国際競争力を強化して、そうしてその産業がりっぱに育つことによって、その産業に関係のある中小企業者あるいは農業関係者等もこれを救うようにするというのが目的なのでありますからして、決してそういうような、中小企業をいじめるという意味でやることにはならないのであります。でありますからして、私たちは、そういう特定の国際競争力の弱い産業を強化していくということは、その産業自体をよりよくするばかりでなく、それを通じて日本経済全般をよりよくし、それによって、また消費者のためにもなっていくと考えておるのであります。
 次に、それは管理価格とかあるいは寡占価格とかいうものに拍車をかけることになるのではないか、すなわち、消費者擁護にはならないかどうか、こういうことでありますが、いまや自由化をいたしていく段階でありまして、そのときに、こういう特定産業を強化するということは、その産業を育てるという意味においては、いわゆる基準をつくってやりますけれども、価格をきめたり、あるいはまた高い価格で消費者に物を売るというようなことをこれできめるのでは絶対にない。また、そんなことは公取委員会がこれを認める道理がございません。だからそういうことは絶対にないのであります。でありますからして、この法律ができることによって消費者は利益を受ける。すなわち、自由化をした場合に海外から安いものが入ってくるでしょう。安いものが入ってきたときに、日本の産業がそれに耐えるだけの品物ができないということになると、その産業はつぶれるのであります。そこで、つぶれないようにするということは、その産業に税あるいは資金の面で協力を与えていくわけです。そうして、協力を与えれば、そこに安い品物ができて、海外へも輸出ができるということになる。同時にまた、国内へも安い品物を供給できるということになるのでありますからして、これは消費者の擁護にこそなれ、断じて消費者のためにならぬものでないということを御了承願いたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣大橋武夫君登壇〕
○国務大臣(大橋武夫君) この法案の施行に伴いまする労働の問題につきましては、先ほど総理大臣からお答え申し上げたとおりでございますが、本法案による振興措置は、これら産業におきまする労働者の労働条件あるいは雇用など、労働者の全体としての地位を安定させるものと考えておるのであります。しかし、特にこの措置によりまして、労働者に何らかの影響を及ぼすことがありませんよう、振興基準をつくるにあたりましては、必要に応じて労働者側に意見を聴取いたすことになっており、また、基準の内容が労働者の労働条件や雇用に関係するものである場合におきましては、通産大臣があらかじめ協議をしてこられることになっておるのであります。
 また、事業主が振興基準で定められた目標を達成いたしますため共同行為を行なうにあたりましては、労働者の地位を不当に害しないことを認可の要件といたしておるのでございまして、運用上注意をいたすようにいたします。
 なお、事業の合併等に伴って生ずる労働条件の問題につきましては、労働者保護の立場から、労働基準法などにより十分配慮してまいりまするし、万一、一部に離職者が発生いたすようなことがありましたならば、これらの者に対する転換職場の確保につきましては万全を期するつもりでございます。(拍手)
  〔政府委員渡邊喜久造君登壇〕
○政府委員(渡邊喜久造君) お答えいたします。
 第一の御質問でございますが、独占禁止法の運用につきましては、公正取引委員会の機構、内容の充実につとめるとともに、その厳正な施行につきまして今後とも十分努力してまいるつもりであります。また、独占禁止法の適用除外法の整理の問題でございますが、この点につきましては、今後十分検討してまいりたいと思っております。
 第二の御質問でございますが、特定産業振興臨時措置法案は、独禁法の関係におきましては、一定の共同行為を許容するとともに、合併の基準を明らかにすべきことを定めておりますが、この法律は五年間の時限立法であります。また、対象業種も、貿易自由化等の影響を特に大きく受けるきわめて限られた範囲の業種であります。かつ、共同行為の範囲も、広い意味での合理化カルテルに限定されております。さらに、公正取引委員会としましては、共同行為の認可に際しては、一般消費者等の利益を害することのないよう慎重に行なう所存であります。したがいまして、独占禁止法のたてまえがこの法案により基本的に変更があるとは考えておりません。なお、この運用につきましては、公正取引委員会としましてはその独自の立場に立ちまして、厳正な態度でこれに対処する所存であります。(拍手)
○議長(船田中君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
 赤城農林大臣の沿岸漁業等振興法に基づく昭和三十八年度年次報告及び昭和三十九年度沿岸漁業等の施策についての発言
○議長(船田中君) 赤城農林大臣から、沿岸漁業等振興法に基づく昭和三十八年度年次報告及び昭和三十九年度沿岸漁業等の施策について発言を求められております。これを許します。農林大臣赤城宗徳君。
  〔国務大臣赤城宗徳君登壇〕
○国務大臣(赤城宗徳君) 先般、国会に提出いたしました昭和三十八年度漁業の動向等に関する年次報告及び昭和三十九年度において沿岸漁業等について講じようとする施策について、その概要を御説明いたします。
 これらの報告及び文書は、沿岸漁業等振興法第七条の規定に基づいて政府から毎年国会に提出するものの三十八年度分であります。
 まず、昭和三十八年度漁業の動向等に関する年次報告について御説明いたします。
 この年次報告は、「第一部 漁業の動向に関する報告書」と、「第二部 沿岸漁業等について講じた施策に関する報告書」とに分かれております。第一部の「漁業の動向に関する報告書」につきましては、本年度が最初の報告でありますので、おおむね昭和三十二年から三十七年までの過去五カ年間を対象期間として取り上げ、現状において利用可能な信憑性のある統計資料に基づいて、できるだけ客観的に実態を把握することといたしております。
 その概要を申し述べますと、
 第一に、漁業の一般的な動向につきましては、三十二年から三十七年にかけて、漁業生産は年率五%とかなりの伸びを示し、また漁船をはじめ漁業の生産手段の進歩も著しいものがありました。その間、漁業就業者数は他産業の発展による若年労働力の流出により減少いたしました。漁業経営体の数も同様に減少し、また経営の階層構成は、労働力の流出や技術の進歩に影響されて、中間層が減少いたしますとともに、家族的集約的経営の増加と上層の比較的大きな経営の増加という二つの方向に進んできております。一方、水産物に対する需要は、食料の消費構造や消費形態の変化等を反映して、加工品向けの比重が大きくなってきており、輸出向け数量も増加してきております。さらに、高級魚に対する需要が強く、そのため高級魚の価格はかなり上昇いたしましたが、多獲性魚につきましては、生鮮需要が停滞し、生産者価格は横ばいに推移しております。
 第二に、沿岸漁業につきましては、三十二年から三十七年にかけて、生産の伸びが少なかったため、漁業生産の総量に占める比重が低下してまいりましたが、一経営当たりの生産量は若干増加し、高級魚等の価格上昇、資材価格の横ばい等の事情も加わって、漁家経済は好転してきております。しかし、一人当たりの所得や家計費は、都市勤労者世帯に比べて低く、特に漁船漁家の低さが目立っております。
 第三に、中小漁業につきましては、同じ期間に、サケ・マス漁業等を除き、各漁業種類とも生産量はかなり増加してきております。一部の多獲性魚を対象とする漁業において魚価の変動はありましたが、中小漁業全般としましては漁業収入も伸び、漁業支出の伸びがこれを下回りましたので、漁業所得は増加し、経営内容は改善されてまいりました。しかし、中小の製造業者などに比べれば、一部の階層を除いては、利益率その他の経営内容において劣っている点が見受けられ、また、従業者の労働条件の近代化がおくれているという事情があります。以上は第一部の概要であります。
 次に、第二部の「沿岸漁業等について講じた施策に関する報告書」について申し述べますと、第一部と同じく本年度が最初の報告でありますので、三十七年度を中心とし必要な範囲でその沿革及び三十八年度にも触れつつ、政府が沿岸漁業等について講じた施策を、おおむね沿岸漁業等振興法第三条の項目の分類に従って、客観的に記述したものであります。
 最後に、「昭和三十九年度において沿岸漁業等について講じようとする施策」について申し述べます。
 政府は、沿岸漁業等振興法に示されました沿岸漁業等についての施策の基本的方向に沿い、沿岸漁業の構造改善と中小漁業の経営の改善に重点を置き、これらに関する諸施策の展開をはかるとともに、そのための体制を整備することを基本方針としております。との方針に基づき、三十九年度におきまして、特に沿岸漁業等の経営の安定に資するため、漁業共済事業の本格実施をはかり、また、その経営の発展を促進するため、漁業金融制度の拡充につとめ、さらに水産物の流通形態の変化の動向に応じて流通対策の整備をはかることとし、このほか、水産資源の保護培養、生産基盤の整備、沿岸漁業構造改善対策事業の実施、中小漁業の経営及び労働条件の近代化等、沿岸漁業及び中小漁業の生産性の向上、環境条件の整備、近代化の推進のための諸施策を推進することといたしております。
 この文書におきましては、これらの昭和三十九年度において講じようとする諸施策を、おおむね沿岸漁業等振興法第三条の項目の分類に従って、農林省所管事項にとどまらず、各省所管事項を含め、沿岸漁業及び中小漁業に関する施策全般について記述いたしております。
 以上、昭和三十八年度漁業の動向等に関する年次報告及び昭和三十九年度において沿岸漁業等について講じようとする施策について、その概要を御説明いたした次第であります。(拍手)
     ――――◇―――――
 沿岸漁業等振興法に基づく昭和三十八年度年次報告及び昭和三十九年度沿岸漁業等の施策についての発言に対する質疑
○議長(船田中君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。これを許します。赤路友藏君。
  〔赤路友藏君登壇〕
○赤路友藏君 私は、ただいま報告されましたいわゆる漁業の年次報告について、日本社会党を代表して質問をいたします。
 世界に向かって水産日本を呼号しつつ、政治の面においては常に片すみに追いやられがちであった漁業が、ただいま農林大臣の報告によって、いささか日の目を見るようになったと思われるのであります。その限りにおきましては、日本の漁業の将来のためにまことに喜ばしいことであると思います。だが、あえて言うなれば、この報告は前向きの姿勢に欠けている。これらの点を指摘しつつ、若干の質問をいたしたいと思います。
 まず第一に、報告にあたっての政府の態度であります。沿振法制定の際におきましても論議された点でありますが、沿岸漁業を論ずるにあたりましては、世界の漁業の中における日本漁業の位置づけ、あるいは国内における各種漁業との関連を無視してはあり得ない、このことは当局においても十分御承知のはずであります。しかるに、今回の報告には、主として資本漁業によって行なわれる国際遠洋漁業の動向については、触れることをことさらに避けている。また、沖合い漁業である中小漁業についても、わずかに七ページの報告に終わっている。なかんずく、将来に問題を残すだろう三九型近海カツオ・マグロの件に対しては何ら触れていない。政府はこれらの問題をどう分析し、対処しようとするのか、農林大臣はどう理解されているのか、お伺いをいたしたい。
 第二点は、沿岸漁業の動向について、漁船漁業、定置漁業及び浅海養殖漁業に区分して分析が行なわれ、その中心を、近年順調に伸長しておるノリ、カキ、真珠及びかん水養殖漁業等に焦点を当てておるのであります。このことは一応理解できるのでありますが、しかし、これらには地理的あるいは自然的条件による限界があるのであります。やはり沿岸漁業の安定には漁船漁業が中核であると思います。構造改善イコール養殖という観念を固定さしてはいけないと思いますが、との点いかがにお考えになるか。
 また、沿岸漁業は、その大部分が漁業権漁業でございます。だとするなれば、漁業権のあり方を無視しての施策はあり得ないと思う。このことに対して何の分析も行なっていない。共同漁業権、区画漁業権の大部分は漁業協同組合に免許されている。この地先漁業権が漁協をして単なる管理団体として、また部落組合として固定せしめ、経済事業体としての組合本来の使命を達成することを阻害しておる。そうしたものがはなはだ多いのであります。これが現実の姿である。本来沿岸漁業のにない手は漁協であるべきであります。その漁協のあり方と漁業権との関連を等閑視するようでは沿岸漁業の振興はあり得ないと思うが、農林大臣の所見をお聞きしたいと思うのであります。
 第三点は、水質汚濁が沿岸漁業にもたらす影響についてであります。報告第一部の、「内水面漁業の生産の動向」の中で、「水質二法の制定によって、水質保全の措置がとられつつある」とのみしるされ、いとも簡単に片づけられておるのであります。報告第二部の、「水産動植物の繁殖保護」の項では、三十三年水質二法が制定され、三十四年度から被害状況、緊急性を勘案して調査を進め、江戸川、淀川、木曽川、石狩川の四水域に水質保全の基準を決定した、かように水質保全につとめている、と述べられておる。これですべてが終わっているのであります。
 そこで、まず農林大臣にお尋ねいたします。
 水質保全の法律と工場排水規制の法律が制定された昭和三十三年を起点に、三十七年まで、年々漁業被害の件数は増加しているのであります。この五年間の被害件数の累計は四千二百三件でございます。その内訳を見てみますと、製造業によるものが三千六百六十九件、発電・ガスが百十七件、その他二百八十八件、原因不明が百二十八件となって、繊維、紙パルプ、化学、鉱工業等がその大部分を占めておる。しかも、法律に規定された仲介制度の対象となったものはわずかに十八件。農林大臣、被害件数が四千二百、法律の活用された仲介がただの十八件、これをあなたは当然の姿であると思いますか。零細な漁民がどこかで無理な犠牲をしいられているとお感じになりませんか。これでは沿岸漁業の振興も構造改善も、絵にかいたもちにしかすぎぬという結果になるのではないかと心配をいたします。この重大な問題が、報告では、分析が十分でないだけではない、いとも軽やかに、楽観的にしるされている。しかも、農林水産委員会に配付された三十九年度水産庁予算の説明を見てみると、水質汚濁に要する経費はどこにも見当たらない。こんなことでよろしいとお考えになっておりますか。農林大臣の所信のほどをお聞きしたい。
 次に、私は、水質保全に関する法律の主管官庁である経済企画庁長官にお尋ねいたします。
 法律に基づく水域調査の基本計画によると、昭和四十六年三月三十一日までに、全国百二十一水域を完了することになっている。三十四年から今日まで六年間で調査した水域が三十五、残余のものは残された八年間で調査が完了し得るという自信がおありかどうか。第二に、調査された三十五の水域のうち、水質基準の決定したものはわずかに四河川、残余はいつ水質基準を決定されるのか、その目途をお示し願いたい。水質基準が決定するまでは、河川や沿岸がいかに汚濁されようとも、取り締まりはできない、放任しているのが現在の実態でございましょう。水質二法が制定されて六年、水質はきれいになったとあなたはお考えになりますか。かえって悪くなっている。手近に多摩川をごらんなさい。隅田川をごらんになったらおわかりのはずです。経済企画庁は本気になってこれに取り組む体制ができておるのかどうか。
 企画庁長官、昨年十二月、行政管理庁で公害防止に関する行政監察結果を発表しています。その中で、公共用水域の流水の水質基準について、排水口の汚濁許容限度のみでなく、流水全体の水質基準を定める必要があると指摘しておるが、この点、長官の御意見はどうでしょう。また、調査基本計画に基づく調査の促進の項で、水質調査が当初計画に比して遅延しているが、水質の汚濁は年々進行し、その被害も多くなりつつある実情であるとして、水質保全法の立法精神にも沿わないと認められると指摘しておる。長官はこれをお認めになりますか、どうお考えになりますか、どう処理されようとするのか。行政管理庁のこの監察結果は、単なる管理庁の一つの作業であって、関係ないとお考えになるのか、長官の明快なる御答弁をお願いしたい。
 次に、通産大臣にお尋ねいたします。
 行管発表の中に、「工場排水の規制について」という項目の説明がございます。その中に、「工業廃水の処理のための施設基準の策定については、通産省においては、紙パルプ業、染色整理業等について基準案を策定又は策定準備中であるが、廃水処理技術の普及と標準化のために、主要な業種すべてについてこれを整備すること。」といわれておる。私は、これは水質基準の決定と関連はあるが、さしあたりそれとは別個のものとして通産省において推進しておるものと解釈をいたしますが、大臣の御所見をお聞きいたしたいのであります。
 最後に、農林大臣に申し上げます。
 報告の、「昭和三十九年度において沿岸漁業等について講じようとする施策」なるものは、三十九年度水産庁予算の説明にしかすぎません。本来なれば、三十八年度漁業の動向等に関する年次報告の内容と、その反省の上に策定され、その策定に基づいて予算が編成されてこそこれが生きてくる。初めてのことでもあり、くだくだ申し上げません。次回からは、これらの点十分に留意されるよう御忠告を申し上げて、私の質問は終わらしていただきます。(拍手)
  〔国務大臣赤城宗徳君登壇〕
○国務大臣(赤城宗徳君) お答えいたします。
 第一点、このたびの報告が遠洋漁業とかあるいは近海カツオ・マグロ漁業等との関連が非常に薄い報告でないか、こういう御指摘でありますが、確かにそういう点がございます。沿岸漁業法に基づいての報告でありましたので、どうしても直接の対象であるところの沿岸漁業と中小漁業のほうに重点を置いてまいったわけでございますので、その点欠けておったと思います。しかし、報告書の中にも、必要な限りにおきましては、これらの漁業の背景となっておる全体の動向、それを、国民経済との関連、あるいは生産の動向とか就業構造、経営構成及び水産物の需要等の動向についても説明はしてあるはずでございます。その中における中小沿岸漁業の位置づけ及び大企業に関する動向等についても、できるだけ触れてはおりますが、次回以降におきましては触れて、その位置づけをしていきたいと思います。
 第二点の、構造改善事業等によりまして養殖方面に非常に力を入れておって、漁船漁業等がおろそかになっておりはしないか、こういう御指摘でございます。確かに養殖漁業のほうの導入を強く構造改善で取り上げております。また、養殖漁業との兼業によって生産性を高めるというふうにいたしております。しかし、養殖漁業の発展の困難な条件の地帯におきましては、御承知のように、生産基盤の整備をはかるため大規模魚礁を設置して、漁場の改良、造成をはかるほか、操業の能率化とか稼働日数の増大を促進するため、集団操業方式による小型漁船の出漁範囲の拡大とか、経営の合理化という方面にも力を入れておるわけで、その方面にも強く指導していきたいと思っています。
 第三番目は、漁業協同組合が経済の方面において働きが足らぬじゃないか、もっと強く指導すべきじゃないか。御承知のとおり、三十七年に法の改正が行なわれました。その改正の趣旨に沿いまして適切な運用をはかり、漁業協同結合が経済団体として健全に発達していくよう、その育成には一そうつとめてまいりたいと思います。
 水質が非常に汚濁している、漁業者が犠牲になっているじゃないか、こういう点につきましては、私も、なお深い関心を持って、水質二法の適正な運用によって解決をはかるとか、あるいはまた、構造改善等におきまするところの地区の指定等に十分注意するとか、あるいは水産資源を、これの適切なる適用をもって水質汚濁による漁民の被害を極力なくするように努力いたしたいと思います。
 第五番目に、今回の動向と三十九年度に行なう施策との間の関連性が薄いじゃないか、こういう御指摘でございます。初年度の報告でございますので、動向の分析と本年度講ずべき施策との間の関連性がいささか足らぬという面は、私どもも自覚いたしております。次回からは特にこの関連性を強めていきたい、こういうふうに考えております。(拍手)
  〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
○国務大臣(宮澤喜一君) 昭和四十五年度までに予定の調査を行ない得るかというお尋ねでございましたが、大体仕事は順調でございますので、ほぼ行ない得ると思っております。
 それから、水質の基準の設定でございますが、御指摘のように、四水域の指定ができておりまして、一、二カ月のうちに、隅田川、石狩川の残余等五水域ぐらいの水質基準の指定をいたしたいと思っております。残りのものにつきましては、利害関係の調整が非常にむずかしうございますが、下水道施設あるいは共同施設などの整備を見ながら逐次指定をいたしてまいりたいと思っております。
 行政管理庁の勧告の大筋は、大体私どももそのとおりだと思いますけれども、ただ、排水基準でなく、流水そのものの基準を指定しろという点につきましては、それは、川をきれいにするという大きな目的からはよくわかるわけでありますが、そのことが今度工場の排水自身と直接には結びつかないわけでございますから、流水の基準をきめましても、それから浄水設備をせよとかあるいは罰則を設けろとかいう、そことの結びつきがすぐに出てまいりません。したがって、現実の目的からはやはり排水基準をきめるべきではないか、こういうふうに考えておるわけであります。(拍手)
  〔国務大臣福田一君登壇〕
○国務大臣(福田一君) お答えをいたします。
 工場排水の施設基準につきましては、昭和三十五年度以降毎年度五業種について作成をいたしました。すでに紙パルプ、石油精製、鉄鋼等十五業種については、施設基準を完成いたしまして、実施をいたさせております、さらに。中小企業が多くを占めている業種につきましては、昭和三十四年度以降平易に汚水処理判断を解説いたしました指導書を作成いたしまして、すでに、電気メッキ、染色等十一業種について指導書を完成いたしまして、処理技術の普及に努力をいたしておりますが、今後とも行政管理庁の報告を十分に尊重いたしまして、積極的に汚水処理技術の普及指導を行なうつもりでございます。(拍手)
○議長(船田中君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
○議長(船田中君) 本日は、これにて散会いたします。
   午後三時二十七分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  池田 勇人君
        大 蔵 大 臣 田中 角榮君
        農 林 大 臣 赤城 宗徳君
        通商産業大臣  福田  一君
        労 働 大 臣 大橋 武夫君
        国 務 大 臣 宮澤 喜一君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 林  修三君
        公正取引委員会
        委員長     渡邊喜久造君
        経済企画庁水資
        源局長     崎谷 武男君
        通商産業省企業
        局長      島田 喜仁君
     ――――◇―――――