第046回国会 本会議 第23号
昭和三十九年四月十日(金曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第二十二号
  昭和三十九年四月十日
    午後二時開議
 第一 公庫の予算及び決算に関する法律の一部
  を改正する法律案(内閣提出)
 第二 予防接種法の一部を改正する法律案(内
  閣提出、参議院送付)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 公労協のストライキ宣言に関する緊急質問(森
  山欽司君提出)
 公労協の闘争に関する緊急質問
  (多賀谷真稔君提出)
 日程第一 公庫の予算及び決算に関する法律の
  一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第二 予防接種法の一部を改正する法律案
  (内閣提出、参議院送付)
 地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣
  提出)
 林業基本法案(内閣提出)及び森林基本法案(
  川俣清音君外十二名提出)の趣旨説明及び質
  疑
    午後二時二十二分開議
○議長(船田中君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 公労協のストライキ宣言に関する
  緊急質問(森山欽司君提出)
○小沢辰男君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 すなわち、この際、森山欽司君提出、公労協のストライキ宣言に関する緊急質問、及び多賀谷真稔君提出、公労協の闘争に関する緊急質問を順次許可せられんことを望みます。
○議長(船田中君) 小沢辰男君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
 まず、森山欽司君提出、公労協のストライキ宣言に関する緊急質問を許可いたします。森山欽司君。
  〔森山欽司君登壇〕
○森山欽司君 総評、中立労連を中心とする春季闘争は今年もまた行なわれており、これからいよいよ闘争の山場を迎えつつあります。特に、去る四日には、春季闘争の中核である公労協がストライキ宣言を発表して、来たる十七日には違法な半日ストライキをあえて決行する方針を明らかにしました。その後も反復継続して行なうと言っております。これを総評の幹部は二・一スト以来の大闘争であると言い、また、ストライキ宣言の中でも、列車、電車、郵便、電信電話、専売ほか公共事業の一切の事業所をストップする戦後最大のストライキを戦い抜くとうたっております。かかる大規模なストライキが行なわれれば、国民生活に及ぼす影響ははかりしれず、また、産業経済の発展、国家社会の秩序保持という観点に照らしても、幾多の憂慮すべき問題が発生すると思われます。(拍手)いまや年中行印となった総評の春季闘争に対する一般国民の偽らざる声は、国民の立場を全く無視した、闘争せんがための実力行使は絶対やめてもらいたいということであります。(拍手)特に、今回のスト宣言については、言論機関も筆をそろえて、一般国民の納得を縛ることのできない無意味なストライキとして、その行き過ぎをきびしく批判しております。(拍手)私は、この国民の願いを込めて、自由民主党を代表し、今次春季闘争における公労協のストライキ立言に関連し、政府の所信を承りたいと思います。(拍手)
 第一の点は、これが表面的には経済闘争の形をとっておりますが、その背景をしさいに検討してみますと、闘争せんがための闘争であると思います。総評系の労働組合運動が、階級闘争理論と闘争至上主義を基調にして行なわれていることは、毎年の運動方針書を見ればすぐわかることであり、世の識者が一致して指摘をしております。また、政治、経済、社会等の諸現象を認識するにあたっても、これをありのままの姿で把握しようとはしないで、階級闘争理論というへんぱな観念で律し、労働者の生活は社会主義政権が樹立されて初めてよくなるものであり、それが実現されるまでは、政府や独占資本や使用者とは常に対決し、抵抗し、闘争していかなければならないという、まことに片寄った態度をとっているのであります。(拍手)現に総評の某有力幹部の述べておりますように、労使関係というものは絶対に安定することはないし、安定しなくてもよいのであり、安定させてはならないのであるという、驚くべき考え方をしておるのであります。(拍手)
 本来、労働組合運動というものは、労働者の素朴な経済要求に出発して、これを獲得するために、やむにやまれずに行なわれるものであります。しかるに、総評の春季闘争はどうでありましょうか、毎年、前年の十月、十一月ごろから計画され、準備され、いわゆるスケジュールどおりに実施されていくのであります。これは経済要求は掲げてはいるものの、実は大闘争を組むことによって、政府や彼らのいわゆる資本家や使用者と対決することそれ自体を目的にしている階級闘争の実践、闘争のための闘争であると考えられます。(拍手)
 戦後わが国の労働組合は、民主主義復活のための推進役、民主主義国家のにない手として大きな期待をかけられました。また今日、自由主義諸国家において、労働組合は国家、社会に責任を持ち、一国の経済の興隆に絶大な貢献をし、輝かしい地位を占めておるのが実情であります。しかるに、総評の現在の行き方をこれと比べて考えてみるとき、悲しいかな、わが国の労働組合運動がこのような域に達するのは、このままでは百年河清を待つにひとしく感ぜられます。(拍手)歴代政府としては、おそらく、この事実を認識しながらも、ひたすら総評の自覚に期待しつつ今日に至っているのが実情でありましょう。ことに現内閣は寛容と忍耐を旨としているようでありますが、場合により、相手によってはその善意と真実が全然通じないばかりか、かえって事態をますます悪化せしめる結果となることもあるのであります。(拍手)
 ここで、今年の春季闘争の状況をつぶさに検討してみるとき、事はきわめて重大であることを痛感いたします。すなわち、結果いかんによっては、来年以降もこの傾向が改まらないばかりか、ますます熾烈さを加えていくであろうということが予想されるからであります。したがって、階級闘争的な春季闘争に対しては、そしてその中心となるのは政府の足元にある官公庁労組でありますだけに、いまこそ何らかの対策を講じなければならないでありましょう。(拍手)
 一体、政府としては、総評のこのような例年の闘争、特に今回のごとき闘争をいかに考えておられるか、池田総理大臣からお聞かせを願いたいと思います。
 私は、次いで、今回のストライキ宣言を中心とする春闘の動きについて、労働大臣の報告を、また、十七日の半日ストが計画どおり実施された場合のおもな影響につき、経済企画庁長官、運輸大臣、郵政大臣、大蔵大臣、農林大臣、通産大臣の報告を求めたいと思います。
 第二に、公共企業体等労働関係法第十七条では、「職員及びその組合は、同盟罷業、怠業、その他業務の正常な運営を阻害する一切の行為をすることができない。又職員は、このような禁止された行為を共謀し、そそのかし、若しくはあおってはならない。」と明記されております。おそらく、公共企業体等の職員は、みな自分たちのストライキが違法であることをよく知っていると思います。今回のストライキ宣言は、違法行為であることを承知の上で、違法行為をやるぞということを計画的、組織的に自費公然と宣言したものでありまして、全くあ然たるほかないのであります。(拍手)これは法治国に対する公然たる挑戦であります。(拍手)また、立法府たる議会政治をじゅうりんする行為であります。
 しかも、このようなストライキ宣言に対しまして、わが国の政党政派はそれぞれの立場においてほとんど反対しておるにかかわらず、ひとり日本社会党のみがこれを支持する旨の声明を出したのでありますが、かくては、法治国における公党たるの面目いずこにありやと疑わざるを得ないのであります。(拍手)私は、日本社会党が真に誇り高き野党として将来政権を担当しようとするならば、いかに組合出身者が多いとは申せ、政党と組合のけじめを忘れ、その見識を欠くものとして、はなはだ惜しまれてならないのであります。(拍手)
 かかる法律無視の行為が看過されたり、また、国民がこれに不感症になったりいたしますと、法治国崩壊の第一歩を意味するものと思われるのであります。これに対し、公労法第十七条自体憲法違反の規定であると主張するものがあるようでありますが、憲法違反でないことは、すでに最高裁判所の判例によっても明らかであると存ずるのでありますが、これに対する総理大臣の御見解を承りたいと思います。(拍手)
 次に問題となることは、ストライキを決行する理由であります。
 公労協は、ストライキ決行の理由を、ストライキ宣言の中では、「百八十余日にわたって粘り強く交渉を続けてきた、調停の進行に積極的に協力し五十日に及ぶ日時をかけて事態の解決に努力してきた、もはや座して生命の危機と生活の窮乏に甘んじることはできない」といっております。しかし、事の成り行きを静かに振り返ってみますと、また、この数年来一般の勤労者とともに向上してまいりました三公社五現業職員の給与水準を考え、さらにそれよりも低い給与水準にある中小企業労働者のことを思えば、まことに誇張もはなはだしく、いささかの実感も、いささかの真実味もないものであります。(拍手)しかも賃金問題は、各組合からの申請に基づいて、現在公労委において調停が進行中であります。したがって、労使双方は、第三者機関である公労委の場において平和的に紛争の最終解決を待つべきであるにかかわらず、調停の進行中にストライキを決行するということは、全く組合のかってな行為といわなければなりません。また、公労協関係組合は、数年前から、スト権奪還闘争を強く取り上げるようになっております。このような問題は国会を通じて法律改正によって行なわれるのが、議会政治であり、法治国における正しいあり方であります。これを組合側は実力をもってストライキを決行し、その事実の積み重ねによってスト禁止の法律条文を空文化しなければならないという考え方で行動をしてまいっており、今回のストライキ宣言も多分にこのような考えに支配されているのであります。
 さらに、今回のストライキ宣言は、組合員の総意を反映してなされたものとは考えられないということであります。今次の春季闘争においては、総評幹部等は、傘下組合役員に対し、組合役員たる者はアジることを忘れてはその資格がない、組合員を大いにアジれという指導を行なっているということを耳にいたします。三公社五現業の従業員の大多数は、まじめな善良な人たちであります。したがって、各組合にはおそらく健全善良な組合員もたくさんおるのであります。私は、かかる人々の良識に基づく勇気ある批判を期待したいと思います。また、一部少数の指導者の独善的な考えによって、組合運動がこのようにいびつな形で運営されるということは、労使関係の将来ににとってまことにゆゆしき問題であると感じております。(拍手)
 今日、ストライキ権のある民間労組の中にも、第三者による調停の進行中はストライキをしないということが、むしろ普通であります。公労協関係組合が、民国労組に比べで、いわゆる親方日の丸式にストライキ等の実力行使を軽々に気ままに行ない過ぎる傾向にあることは、遺憾ながら事実であります。このように、公労協関係組合が行き過ぎの傾向を示す最も大きな理由は、政府当局や企業体等の当局側の態度が、ややもすれば安易であり、また、違法行為者の責任追及にあたって微温的であったりしたことがあげられるのではないかと思います。今回公労協のストライキ決行に対しては、総理みずからを陣頭に、政府及び各企業体の当局は、この際き然たる態度をもって臨み、このような違法なストライキを直ちに取りやめるよう、繰り返し説得し、勧告し、警告し、また世論の喚起につとめることがぜひとも必要であります。(拍手)政府としては、この事態に対し、基本的にいかなる態度をもって臨まれんとするものであるか、政府の考えをまず総理大臣にお聞きしたいと思います。
 さらに、政府当局の再三再四にわたる、誠心誠意を込めた説得、勧告、警告にもかかわらず、また、国民の声をあえて無視して不幸にしてストライキを行なう違法行為者に対しては、公労法の規定並びに国家公務員法、これに相当する公社法の規定に照らし、国家国民のため、涙をのんで、従来の処分方針を一てきして、公労法第十八条の解雇を本筋とした、果敢にして厳正な処分を実施することが肝要であると思います。(拍手)その点、公共企業体等の所管大臣はいかに考えておられるか、運輸大臣、郵政大臣、大蔵大臣、農林大臣、通産大臣の所信を承りたいと思います。
 また、行政処分の問題とあわせて、暴力や威力を用いる悪質な違法行為者に対しては一般刑法を適用し、さらに郵便法、公衆電気通信法等による刑事罰の適用も考えていくべきではないかと思います。しかも、このような刑罰法規の適用は、すでに昨年三号、最高裁判所の判例によって明らかに認められたところであります。なお、聞くところによれば、国鉄関係組合は今回のストライキの中心勢力といわれておりますが、これに対し、現行の鉄道営業法は、他の事業法に比べて罰則規定が不備であります。したがって、今回のストライキの結果いかんによっては、今国会において鉄道営業法の罰則規定を早急に整備する措置がとられてしかるべきではないかと思います。さらに、万一ストライキに突入した場合、国民の迷惑を最小限度に食いとめ、混乱事態をできるだけ少なくし、公安上万全の措置をとるべきものと思います。これらに対し、関係大臣は、いかなる考えのもとに、いかなる措置をとらんとしておられるのか、運輸大臣、郵政大臣、法務大臣、国家公安委員長の御見解を承りたいと思います。
 第三に、従来、公労協組合の賃金引き上げ問題は、事の性質上、最終的に問題が解決されるのは、調停案によってではなく、仲裁裁定があってからというのが普通のようであります。ところで、公共金業体労働関係法の規定によれば、調停から仲裁に移行するのは五つの場合に限定されており、その中に、主務大臣が委員会に仲裁の請求をしたときということがうたわれております。このいわゆる職権仲裁の発動は慎重を期すべきではないかということであります。過去の例に徴してみますと、公労協組合が違法な戦術を含んだ闘争をかまえる、労働大臣としては、闘争を事前に回避せしめる意図のもとに仲裁請求を行なう、実力行使直前に仲裁裁定が出て闘争を回避せしめることができたという一、二の例があります。しかしながら、今回の場合、このようなやり方がはたして適切であるかどうかは、きわめて疑問であります。公労協組合のストライキ等は、天然現象のように不可避なものではなく、やめようと思えば組合の意思によっていつでも中止することができるものであります。したがって、公労協組合の統一実力行使があるということで、あるいは闘争の圧力に押され、あるいは組合のメンツを立てて、労働大臣が職権による仲裁申請をすることとなれば、かえって組合側は闘争に対して無責任となり、安直に実力行使をかまえることを奨励する結果となることをおそれるのであります。先般の公労協のストライキ宣言に対して行なわれた労働大臣の談話中に、労使関係のルールの尊重を説かれましたが、これは調停手続中に軽々と職権による仲裁申請を行なうべきでない趣旨をも含んでおると判断されるのでありますが、この点に対しどのように考えておられるか、労働大臣の所見を承りたいと思います。
 最後に、変転する国際情勢の渦中にあり、また開放経済体制に入ったわが国として、労働運動の健全化はきわめて重要であります。私は、政府の労働運動に対する正しい姿勢、労使双方の自覚及び国民の世論の力によって、良識に基づいた労働組合運動が大きく成長していくことを心から念願して、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人岩登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答えいたします。
 今回の春闘は、いよいよ本格約段階に入り、国鉄労組を中心として半日ストが行なわれる、いわゆる全面スト的の様相が半日でもあらわれるということは、まことに遺憾千万、われわれは心配いたしておるのであります。
 いま森山君は、今回の争議を、闘争せんがための闘争だ、あ然たる感じを禁じ得ないと言っておられます。私は、ほんとうに今回の春闘は不可解千万であると思います。(拍手)また、大多数の国民は、決してこれを容認しないと考えておるのであります。(拍手)
 その理由は、公労協のストは、法律で禁止せられておることでございます。それを憲法の規定がどうだとか言っておられますが、憲法の規定からいっても、団結権や団体交渉権は認めておりますが、やはりこれは、公益のために、国民福祉のために、ある程度制限を受けることは、憲法にはっきり書いてあります。(拍手)また、その憲法の規定に基づきまして、公労協第十七条はストを禁止しております。今回のストは、この法律に違反するものであります。あるいは立法論として論議せられることはあるかもわかりませんが、それは立法論としてでございます。現在の法律からいったならば、決して許すべからざる違法行為であるのであります。(拍手)
 また、不可解と申し上げる第二の理由は、法律に基づきまして、公労協の争議につきましては、目下調停中であるのであります。だれが調停を申し込んだのでございますか。調停を申し込んだ組合が、かってに違法なストをやるというととは、撞着矛盾もはなはだしいではないか。(拍手)
 私は、かかる理由によりまして、不可解千万、国民のため、わが国経済のために、絶対にやめていただきたい。(拍手)そのためには、私は、国民とともにあらゆる措置を講じて、この争議を未然に防ぐべく万全の努力をいたしたいと考えております。(拍手)
 なお、御質問がございました点につきまして、私より申し上げておきます。
 職権仲裁裁定の申請は、私はする考えはございません。(拍手)これは過去の経験から申しましても、また、いま調停中であるのに、かかることを論議するのは行き過ぎであると考えておるのであります。(拍手)
  〔国務大臣大橋武夫君登壇〕
○国務大臣(大橋武夫君) 労働組合の春闘のやり方といたしまして、初めからスケジュールをきめ、団体交渉や調停手続などの進行に関係なく実力行使を行なっていくという点は、見方によりましては、お説のとおり、闘争のための闘争であると受け取られてもいたし方がないと思われますが、この点は、まことに残念であると存じます。
 次に、今回のスト宣言の企図いたしておりますストライキの内容でございますが、四月十七日の統一行動日の計画は、春闘委員会によりますと、今回のストに参加するものは国労、動力車、全逓、全電通のほか、専売、アルコール、造幣、全林野、全印刷等、公労協傘下の全組合でございます。なお、同日にこの公労協のストに合わせましてストの予定を組んでおりますのは、交通運輸共闘会議でございまして、私鉄、都市交通、バス、トラック関係の各組合、ハイヤー、タクシー関係組合、港湾、荷役関係組合のほか、日航の国際線もスト決行の予定でありまして、陸海空のストライキといわれておるのであります。これが計画どおり行なわれますかどうか、現在の段階におきましてはきわめて微妙な情勢にあると存じますが、万一にも行なわれたといたしますならば、終戦後最大のストライキになるものと思われます。
 また、労働大臣の職権によります仲裁請求につきましては、ただいま総理大臣のお答えになりましたとおりでございまして、今日、公労法できめてあります労働大臣の職権請求というこの法律の規定は、もともと法律によって禁止されておる違法のストライキを救済するがための手続ではないと私は考えております。(拍手)
  〔国務大臣古池信三君登壇〕
○国務大臣(古池信三君) お答え申し上げます。
 四月十七日の、いわゆる半日ストにつきましては、全逓信労働組合は全国の主要局約二百局を対象として準備の指令を出しておるようでありますが、具体的な実施方法等につきましては目下のところ不明であります。しかし、郵政省といたしましては、あらゆる方策をもって万全の対策を講じております。
 さて、全逓の半日ストの準備指令を出しました中央郵便局、鉄道郵便局、定員二百名以上の普通郵便局が、もしも計画どおり半日ストを実施いたしましたといたしますならば、通常郵便物約二千万通、小包約三十万個が運送配達の面で遅延をいたし、また、郵便物の引き受けの面では、通常郵便物約三百万通、小包郵便物約四万個に支障が生ずるものと推測されるのであります。最も大きな影響を受けるのは東京、大阪等の大都市であることは疑いございません。
 次に、電電公社の関係について申し上げますと、全電通労働組合では、十七日の始業時から正午まで、東京、大阪の市外電話局をはじめ、全国の主要電話局、中継所、管理機関など約九百の事業所でストライキを実施するための準備指令を行なっております。この計画が行なわれることになりますれば、その時間においては、通信は自動通話を除いて多大の影響を受けることになります。なお、ストが終了いたしました後も、しばらくの間は通信の錯綜、混乱が起きることも予想されるのであります。
 私は、これらの事柄が実行されますならば、国民の日常の生活、経済活動の上にきわめて甚大な影響を与えるものとして、非常に憂慮をいたし、遺憾千万に考えております。よって、かようなストを組合として実行しないように強く要望いたすものでありまして、組合に対しましては厳重な警告を発しております。電電公社総裁においても、組合に対して厳重な警告をいたしておるのでございます。
 なお、もし万が一かようなことが実施された場合において、わがほうとして、この影響を最小限度にとめるためにはどういうことを考えておるか。まず、郵便につきましては、事前に本務者に対して、ストに入る際も業務に従事するように業務命令を発します。そうして、極力郵便業務の運行を確保することにいたしまして、さらに、万一要員の確保が困難であるというような事態が発生しましたときは、管理者がみずから出て、窓口の事務、運送便等の授受、取り集め等の一部事務をできる限り確保してまいる。さらに、これによって発生した滞留郵便物の処理につきましては、本務者のほかに、配送に必要な臨時雇いを確保いたしまして、非常勤の従業員をもってできる限り早急にこれが回復をはかろうと考えておる次第でございます。
 なお、組合の違法な争議行為に対してはどうかということでありますが、従来も、そのたびに、その行為の態様に従って、指導者はもちろん、これに参加いたしました者に対しても厳正な処分を行なってきたことでございます。ただ、今回の半日ストというような事態は全く今日までかつて見ざるところであります。したがって、かような場合は、従来の例にとらわれることなく、最も厳正な処分を行なう考えでおります。(拍手)。
 また、最後に、郵政及び電電公社の職員は、公共企業体等労働関係法の第十七条によって争議行為を禁止されておる。したがって、その行為は、労働組合法第一条第三項にいう正当な組合活動としての刑法上の免責条項は適用されないものであります。したがって、今度の半日ストライキによって、郵便法第七十九条または公衆電気通信法第百十条の刑罰規定に触れることとなる者が生ずることは十分予想されるところでありますが、これが対策につきましても万遺憾なきを期し、厳正なる態度をもって臨む所存でございます。
 以上お答え申し上げます。(拍手)
 〔国務大臣綾部健太郎君登壇〕
○国務大臣(綾部健太郎君) お答え申し上げます。
 私は、この想像し得られないようなゼネスト的のストライキが行なわれた場合の処分につきまして申し上げますが、その以前に、このストが行なわれましたならば、いかなる損害、いかなる迷惑を国民に与うるかということを、運輸省関係の職場につきまして御報告し、かような事態が起こるからして、それに参加した組合員、従業員に対しては厳然たる処罰を行ない、先例等を考えずにやっていくということを申し上げます。
 まず、国鉄におきましては、どういう損害が予想されるかと申しますと、列車の休止する本数は五千七百二十三本、これによりまして旅客の迷惑する人、足を奪われる人が六百四十八万人、これは全国でございますが、ことに東京、大阪付近の電車区間におきましては、千五百十三木が運休をし、二百九十一万人がその迷惑を受けるのであります。そこで、合計いたしまして、列車のとまるのが七千二百三十六本、これによって足を奪われる人間が九百三十九万人と推定されます。また、貨物におきましては、二千七百本が運休となり、これにより運んでおる貨物が二十八万トン減送されます。これは一日の列車回数でございますが、これが、ストが終了いたしましても、旅客輸送が優先的に復旧されますからして、貨物につきましては、数日間この状態が続くべく予想されます。そこで、三十万トンくらいがあとでまた減送されるような状態になるのであります。これによりまして総計六十万トンに達する荷物が停とんいたします。その結果、魚、野菜等の生鮮食料品の輸送はもちろん、大都市向けの米の輸送に対しても大きな影響を与えるということは、治安にもつながる問題であると考えまして、まことに遺憾にたえません。
 次に、私鉄につきまして申し上げますと、私鉄は、私鉄労組の加盟は八十九社ありますが、一日これがとまりますと、大体六百十万人の旅客が足を奪われるのであります。
 私バスは百七十八社ありますが、これによって足を奪われる人は四百七十万人であります。
 それから、公営鉄道軌道及び公営バス等におきましては、たいへん影響がありますが、これは人数にいたしまして大体八十八万人と、バスが五十万人でございまして、結局百三十万前後の人が足を奪われるようなことになります。
 ハイヤー、タクシーにつきましては、一日二時間のストをやろうということで、これは十四万人にのぼる人が足を奪われます。
 港湾運送につきましては、全日本港湾労働組合傘下の各労組は十七日から二十四時間ストを行なう予定であるが、これが実施された場合は、その影響は、組織化の程度も考慮して述べますれば、次のとおりであります。
 関門港及び周辺港は全面的に荷役が不能になります。北海道及び日本海の各港においては六〇%程度の荷役不能が予想されます。東京、横浜、名古屋、四日市、大阪、東北地方の各港、四国地方の各港においては三〇%程度の荷役不能がある見込みであります。全港湾共闘関係である検数関係の労組がストに参加いたしますと、京浜、名古屋、大阪、神戸等の主要港において五〇%から七〇%の船が荷役を行なうことができない状態におちいると考えられるのであります。
 航空関係につきましては、外航だけということでございますから、その影響ははっきりいたしませんが、国際的に非常な信用を落とすことになると考えます。
 以上申し述べたような大きな影響があり、国民に迷惑を及ぼすからして、先ほど申しましたように、これに携わりました従業員に対しましては、私は、法律の命ずるところに従いまして断固たる処置をとらざるを得ないと考えております。
 なお、鉄道営業法の罰則が軽過ぎるじゃないかということの御質問がありましたが、それにつきましては、私どもといたしましては、鉄道営業法の全面改正をいま検討中でございますから、その結論を待ちたいと思いますが、十七日の結果によりましては、それを待つことなく、速急にその罰則等についても考えざるを得ないと考えております。(拍手)
  〔国務大臣田中角榮君登壇〕
○国務大臣(田中角榮君) 私の関係の職場は、印刷、造幣、専売等でございます。ストは、国民に多大の影響を及ぼし、世論のきびしい批判を受け、組合員にとりましてもマイナスとなる面が非常に多いことでありますから、組合員各位に強く訴える等いたしまして、こうした違法のストを回避するためにあらゆる努力を傾けたいと考えます。
 しかし、万一ストが行なわれた場合には、遺憾ながら法の規定にのっとりまして断固たる処置をとらざるを得ない、こう考えるのであります。(拍手)
  〔国務大臣福田一君登壇〕
○国務大臣(福田一君) 通産省といたしましては、アルコール専売組合に対しまして、去る七日、違法な争議行為を行なうことのないよう警告を発したところでありますが、万一不幸な事態が発生いたしましたときには、厳重な措置をとる所存であります。(拍手)
  〔国務大臣赤城宗徳君登壇〕
○国務大臣(赤城宗徳君) 不幸にして、十七日に半日ストが起こるということになりますと、食糧関係にいたしまして大体一日分おくれる。米等においてもそうでございます。ことに生鮮食料等におきまして、中央卸売市場への入荷は、一日野菜が三千トンでございますが、そのうち、貨車輸送が三百五十トン。くだもの等は一日千二百トンの入荷でございますが、そのうち、貨車輸送が八百トン。魚類は一日千五百トンでございますが、貨車輸送が九百トン。これが半日ストということになりますと、野菜において約三百トン、くだものにおいて百六十トンくらいの入荷が減るという見込みでございます。
 また、私どもの農林省関係としては、全林野労組があるのでございますが、これがストに参加するというふうに計画をいたしておることは、まことに遺憾でございます。私どもといたしましては、その中止を強く要望しているとともに、きびしく警告を発しておるのでございますけれども、万一このような例のない大規模な争議行為が実施され、それに参加する場合におきましては、当然これに対応して厳正な態度で行政処分を行なう考えでございます。(拍手)
  〔国務大臣賀屋興宣君登壇〕
○国務大臣(賀屋興宣君) 公共企業体の職員がストを禁止されておりますことは、法律の明文にあるとおりでございまして、関係各大臣より説明がありましたように、単に法律によって禁止されておるのみならず、その実際上の公共の福祉に及ぼす影響はきわめて甚大でありますので、これに関しまして厳正なる法規の適用をいたしたいと考えておるのでございます。ストライキに際しまして、あるいはこれに関連して、またこれに籍口いたしまして、いやしくも刑罰法令に触れる行為がありました場合は徹底的に司法権の発動をいたす所存でございます。(拍手)たとえば、先刻郵政大臣の申されました郵便法第七十九条、公衆電気通信法第百十条、これらの適用につきましても厳正なる適用をいたす、かような考えでございます。(拍手)
  〔国務大臣赤澤正道君登壇〕
○国務大臣(赤澤正道君) まず、国家公安委員長の立場からお答えいたします。
 公労法第十七条違反の争議行為に関連して、刑法、郵便法、公衆電気通信法その他の法令の刑罰規定に該当する悪質なものに対しては、それらの罰則を適用すべきであり、また、公安上の問題に対しては万全の措置をとるべきであるかどうかという御質問でございますが、全く同感でございます。公労協は四月十七日に半日ストライキを実施する、さらに、政府当局が誠意ある態度を示さない限り、再度四月二十八日ごろ、またストライキを反復して戦うという宣言を発して、傘下各組合ともその準備を進めておるようでありますが、三公社五現業などの職員は公労法第十七条によって一切の争議行為を禁止されております。総理大臣が申しましたとおりでございます。したがって、このような違法な争議行為は、正当な労働運動として刑事上の保護を受けるものでないことは明白であると考えております。(拍手)したがって、この違法な争議そのものには罰則規定がありませんが、これに関連して、刑法あるいは郵便法、公衆電気通信法などの罰則に触れるような行為があれば、各罰則規定を厳格に適用していきたいと考えております。
 また、今回の争議行為の対象となっております企業が、国民の日常生活に密接し、かつ、重要な役割りを持つ高度の公共性を有するものでありますので、警察といたしましては、争議に伴う治安上の問題について、関係機関と密接な連携のもとに万全の体制で臨み、違法事態の予防、鎮圧、犯罪の検挙を行なうとともに、混乱や社会不安に伴う不測の事態などにも措置を講じて、全力を尽くして警察の責務の遂行に当たらせたいと考えております。(拍手)
 次に、自治行政を担当する者といたしまして、まず、この争議が違法であることを末端まで御理解願う措置を講じたいと考えております。また、講じつつあります。この争議に参加をやめさせていただきたいのでございます。事実、うわさのとおり半日ストが行なわれたら、公営企業のうち、交通関係をとってみましても、東京では二十万ないし三十万人の人が足を奪われ、大阪市でも十五万ないし二十万人の市民が迷惑をするのであります。したがって、重ね重ねの御注意にもかかわらず、あえて違法行為に出られる職員に対しては、法の命ずるところによって懲戒処分を厳正に行なうとともに、場合によっては、真に涙をのんで解雇処分を行なうこともあり得ると考えておる次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
 公労協の闘争に関する緊急質問
  (多賀谷真稔君提出)
○議長(船田中君) 次に、多賀谷真稔君提出、公労協の闘争に関する緊急質問を許可いたします。多賀谷真稔君。
  〔多賀谷真稔君登壇〕
○多賀谷真稔君 私は、日本社会党を代表して、今次公労協の闘争に関し、政府の所信をたださんとするものであります。
 ただいま、自民党議員の質問並びに総理をはじめとする政府の答弁を聞いておりますと、問題の本質を把握せずして、労働問題としてよりも治安問題として労働者の責任追及に終始し、何ら解決の方向に向かっていないことはきわめて遺憾であります。(拍手)森山議員は外交官出身であるのに、きわめて偏狭な考え方をもって、国際会議における日本の立場がますます苦しくなるような質問をなぜされるのか、全く理解に苦しむのであります。(拍手)
 一体、公労法が制定されて以来、その運用は法の趣旨に沿って行なわれてきたかどうか、検討をしてみる必要があると思うのであります。公労法は、労働組合の団交権を明記しております。しかし、実質上団体交渉権にふさわしい交渉がはたして行なわれたかどうか。すなわち、公社当局には団体交渉の当事者能力が欠除しているのであります。いま労働組合のベースアップ要求に対し、百円でもみずからの判断と権限において上げ得る能力のある総裁が一人でもおりますか。(拍手)総裁といえども、百円のベースアップを受諾する権限が全然ないのであります。
 政府は、公労法最初の国鉄の賃金値上げの仲裁裁定さえも履行せず、逆に、予算上資金上不可能な支出の解釈をめぐって訴訟をしておるではありませんか。これにこりた政府・大蔵省は、予算総則に給与総額なるものを設け、公社並びに所管大臣の判断では給与に移流用できないようにしたのであります。そこで公社が、給与総額内でささやかな基準内ベース改定を行なったところ、これが大蔵省のげきりんに触れ、やみ給与と称して、逆に基準内給与額と基準外給与の額のワクを設定し、公社並びに所管大臣では相互の流用ができず、ここに公社当局は全く団体交渉の当事者能力を喪失するに至ったのであります。(拍手)この再度にわたる給与額の設定を行ない、公社から団体交渉権を奪い、公労法を骨抜きにした元凶は、ほかならぬ、時の大蔵大臣池田勇人その人であります。(拍手)
 賃金ベースアップの交渉が、一体一回でも団体交渉で解決した事例がありますか。あったら、例をお示し願いたい。
 最近この形式的団交すら踏まない問題が起こっております。いま本院で審議されておる、電話交換手の首切り法案といわれる電話自動化に伴う退職者に対する特別措置法案がこれであります。退職手当の額の決定は、当然労使対等で団体交渉によって行なうべきであるにかかわらず、法律によって強行するという態度は、労働者の権利を無視した一方的措置といわなければなりません。(拍手)
 かように、実質的にも形式的にも公労法をじゅうりんしてきた政府・自民党が、一体法の順守を説く資格がありやと反問いたしたいのであります。(拍手)まず、この点に対する総理並びに関係大臣の御答弁を承りたい。
 私は、この際、公労法十七条そのものについて所見を述べてみたいと思います。
 公企体の労働者のストライキ禁止の根拠として、その事業の社会性、公共性、独占性があげられておりますが、一体国鉄と私鉄はどこがどう違うか、電電公社と国際電信電話株式会社とはどこが違うか、争議権禁止に対する区別の根拠を発見することははなはだ困難であります。たばこ専売も、単なる財政的理由から公社になっているにすぎないのであります。国有あるいは公有企業なるがゆえに争議権を剥奪している国が一体どこにありますか。英国は、炭鉱、運輸、電力、ガス等を国有にしております。フランスは、石炭、電気、ガス、印刷は公社であります。しかし、みな労働者は争議権を持っておるのであります。現にこの四月十六日、英国の全逓の組合は、二十四時間ストライキを決行しようとしておるではありませんか。かかるがゆえに、ILO結社の自由委員会は、第五十四次報告において、ストライキ権の制限について、関連法規の上で、すべての公有企業を一律に取り扱うことは適当とは考えられないと日本政府に注意を喚起しておるではありませんか。(拍手)
 さらに、私は、現在の公労法の規定が、大正十五年、あの悪名高き治安警察法第十七条削除と同時に、若槻内閣によって提案されました労働争議調停法よりも後退しているという事実を指摘いたしたいのであります。
 当時、政府は、労働争議が、近代的産業組織において避くべからざるところなる以上、同盟罷業の誘惑、扇動もまたやむを得ざるものとせざるべからずとして労働争議調停法を提出したのであります。天皇の官吏として官吏服務紀律の適用を受ける者は、もちろん、ストライキはできませんでしたけれども、鉄道、船舶、郵便、電信電話、水道、ガス、電気、さらに陸海軍の直営の兵器艦船製造事業についても、争議行為は禁止されておらず、これらの企業は、職権調停の制度があったにすぎないのであります。しかも、その間すらも争議行為は制限を受けていないのであります。専売局のたばこ工場や印刷局の工場のごときは、職権調停の対象にもなっていないのであります。もちろん、治安維持法、暴力行為等処罰法、警察犯処罰令等によって処罰、弾圧をしてきましたけれども、それは思想犯として、治安対策として続けられてきたのであります。しかし、社会立法として、労働立法の体系として、ストライキそのものは何らの禁止規定なく、陸海軍の工廠の労働者といえども、争議行為は許されておったのであります。労働者の諸権利を保障するという高度の憲法を持つわが国において、四十年前の法律より後退している公労法十七条の存在は、断じて容認できないところであります。(拍手)公共の福祉論は、公衆の便宜と取り違えた議論であり、現行労調法第八条の公益事業と同様に取り扱うべきであります。公労法十七条の削除について、総理の所見を承り、あわせて、戦前の労働立法について、かつて内務省社会局におられた大橋労働大臣より、現行法との比較について答弁を求めたいのであります。
 政府は、昨年三月十五日の最高裁判決をたてにとって、公労協の争議に対し、解雇、懲戒等の民事責任はもちろん、刑事責任も追及したいと考えられておるようでありますが、争議に付帯したいろいろな事件ではなく、争議行為そのものが各事業法違反として刑事責任を追及されるということは、争議そのものが悪であり、犯罪であるという思想に立脚するものであって、憲法違反はもちろん、二十世紀の解釈としては、許し得ないものであります。(拍手)ゆえに、ILO条約百五号は、強制労働の廃止に関する条約として、同盟罷業に参加したことに対する制裁としての強制労働、すなわち刑事罰を禁止しているのであります。(拍手)しかも、この条約は、ILO八十七号条約と同様に、きわめて重要な条約として、すでに六十五カ国が批准をいたしておるのであります。政府並びに最高裁の解釈がいかに国際的に通用しない理論であるかは、明々白々でございます。(拍手)
 一体、日本政府は、ILO結社の自由委員会が、六十四次報告F項において、八十七号条約批准まで、条約に含まれている諸原則に逆行するような一切の措置をとることを避け、特に労働組合活動を理由とする一切の逮捕、解雇あるいは懲戒を避けるよう努力することを日本政府に要請すると述べておるのでありますが、もし今次の公労協の争議において多くの処罰者を出した場合、政府はILOでいかなる弁明をするつもりであるか、お聞かせ願いたいのであります。(拍手)OECDの労働組合諮問委員会で非難をされないと考えられておるかどうか、あわせて御答弁を願いたい。
 今次の春闘は、高度成長政策といっても一向生活が向上せず、かえって物価騰貴によって苦しんでいる労働者のやむを得ない闘争であります。ことに国鉄労働者のごときは、安全装置の不備と過密ダイヤからくる事故の危険を、自己の注意力喚起のみにたよって全責任を負って働いておるのであります。その働いておるのに何らの報いをしないで、やれ賃金抑制の統一見解であるとか、闘争宣言に対する警告であるとか、全く本質的解決には努力せずして、ただただ警告行政のみに終始してきた政府並びに公社に対する憤激は、闘争に一そうの拍車をかけておるのであります。(拍手)
 また、国鉄には鉄道公安官という警察官がおります。昭和二十五年、鉄道公安職員の職務に関する法律を制定する際に、運輸省は法務委員の諸君のところに日参して、当事列車内に起こった特殊の犯罪の捜査に当たるための司法警察職員の権限を付与する法律を、議員立法としてぜひ提出してもらいたいと懇願したのであります。その際に、労働運動には介入しないことを条件として法律を制定いたしましたところ、現実には、今日見られるように、労働紛争には必ず姿をあらわし、逆ピケ等をしいて公社の守衛の役割りを演じながら、さらに最終段階においては警察の権限を行使するという、いわゆる二足のわらじをはいた存在になっておるのであります。(拍手)
 かように、公労法といい、鉄道公安職員の法律といい、全く立法の精神を無視し、労働者を弾圧してきたところに、争議の根本的原因があることを政府当局は深く反省しなければなりません。(拍手)
 今日の労働者の基本的人権は、わが国及び西欧諸国の労働者の血と汗の闘争の歴史によるものであり、わが国の憲法及び労働立法の一条一条は、その闘争の記録の集積であることを忘れてはならないのであります。わが国の憲法が第九十七条において、「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」とうたっておることをわれわれは心に銘記しなければなりません。(拍手)
 かく考えてまいりますと、森山君の質問並びに大臣の答弁は、歴史の流れを知らない者の権力主義者的考え方であると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)公企体の紛争の解決を迅速に行ない、労使関係の正常化をはかる唯一の道は、公企体の労働者に争議権を与え、当局に団体交渉の実質的な権限と責任を持たす以外に方法はないと信ずるのであります。
 差し迫った十七日の争議は、一方的警告行政では片づきません。半日ストが国民の多くの迷惑をかけることは、はなはだ遺憾に存じます。一体、民間会社であるならば、かような場合どう対処するでありましょう。政府が真に解決をしようとするならば、公労法本来の精神に返り、政府はまず財源措置について国会に所定の手続をすることを確約し、公社をして組合の要求を大幅にいれ得る自主的権限を与え、団交によるか、調停委員会に公社側の意思表示を行なうかは別として、要はベースアップの労働協約を締結し、裁定によらないで、公労法最初の協定締結として解決することが最も妥当であると信じます。(拍手)これは全く池田総理の決意いかんであると思います。あなたは、公労法運用については財政面における専門家であります。あなたは、総理として、公労法の精神どおりこれを行ない、問題を解決すべきであると考えるが、どうお考えになっておるか。
 以上、これらに対する総理並びに関係大臣の所見を承り、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答えいたします。
 御議論を聞いておりますと、あるときは立法の精神を知らぬとか、あるいは歴史の流れに沿わぬと言っておられますが、それより前に、法を守るという気持ちを持ってもらいたい。(拍手)われわれは絶対に法は守らなければなりません。(拍手)そうして、歴史の流れとおっしゃるが、歴史の流れもさることながら、わが国の労働争議の現実をごらんにならないといけません。私は、法を無視し、国民に迷惑を与え、現実を否定する考え方は絶対に許せないと思います。(拍手)
 公労法の適用につきましていろいろ御議論がございました。もちろん、昭和二十八年代におきましては、予算上、資金上の問題で、議会の承認を得て仲裁裁定に沿わなかった場合もございます。それはそのときの国の現状で、国会の承認を得ております。しこうして昭和三十一年から後は、われわれは仲裁裁定を信頼し、これによっておることは御承知のとおりでございます。あくまでも、われわれは三公社五現業の法律並びに予算を守っていくのであります。その法律がいいとか悪いとかいう問題は、現実の争議を防止する問題とは違っております。(拍手)われわれは、いま立法論をここで議論しようとは思いません。法を守るという前提に立っていかなければならぬことは、法治国民として当然のことであるのであります。(拍手)なお同様に、私は、公労法十七条規定違反行為は、昨年の最高裁の判決にあるがごとく、これは刑事免責のものにはならない、労働組合法一条二項というものは十七条違反につきましては適用ないということは、法律並びに最高裁がはっきりいっておるじゃありませんか。これを否定するということは許せないのでございます。われわれは、こういう意味におきまして、今回のゼネスト的争議ができるだけ行なわれないように極力努力いたします。しかし、あなたが、いま、総理が財政法上の措置をとればこれはやめられると言うのならば、まずあなた方のおっしゃる、調停中に争議をやることをおやめになることが前提でございましょう。私はそれをもってお答えといたします。(拍手)
  〔国務大臣大橋武夫君登壇〕
○国務大臣(大橋武夫君) 最初に、公営企業の争議権の問題についての御質問でございましたが、現行公労法は、公共企業体などの持っております高度の公共性にかんがみまして、すなわち、ILOの第五十四次報告に申しておりますところの、その業務の中断が公共の困難を惹起するがゆえに真に必要不可欠な企業であるという、この点からストライキを禁止いたしておるものでございまして、これは憲法に違反していないことはしばしば申されておるとおりであります。しかして、わが国におきましては、公労法の適用を受ける三公社五現業以外にも数多くの公社、公庫、公団、事業団などの公有企業が存在いたし、これらの公有企業も公共の福祉と密接な関係を持つものではありますが、民間企業と同様にストライキは禁止していないのであります。すなわち、わが国においては、公共性を有する公有企業のうちで、特に高度の公共性を有する三公社五現業についてのみ公労法においてストライキを禁止いたしておるものでございまして、その業務の中断が公共の困難を惹起するがゆえに真に必要不可欠の企業と、そうでない企業を法律上区別して取り扱っているものではないのでありますから、五十四次報告に述べられております結社の自由委員会の見解は、わが国においては直ちに当てはまらないものと考えておると御承知をいただきたいのであります。
 次に、公労法十七条は、戦前の労働争議調停法に比べてかえって劣っているではないかという御質問でございますが、戦前の労働争議調停法は、鉄道、軌道等の運輸事業、郵便、電信、電話、水道、ガス等、公衆の日常生活に直接関係のある事業における労働争議につきましては調停委員会が設けられることを規定していたのでありますが、これらの事業については、現在も労働関係調整法におきまして、争議行為の予告制度、労働委員会における優先取り扱いの制度等が定められており、かかる事業における争議を早期に解決し、公衆の日常生活に対する影響を最小限度に食いとめようとする考え方には、いささかも変わりはないのでございます。しかして、労働争議調停法においては、特にストライキの禁止規定は書いてございませんが、戦前におきましては、憲法その他の法令上、労働者の争議権を保障する規定に存しなかったのでございます。したがって、憲法二十八条で労働者の団結権、団体交渉その他の団体行動権が保障されておる現在の法制と、戦前のこれらの法律の規定とを比較いたすということは、全く無意味であるといわなければならないと思うのでございます。(拍手)現行法におきましては、公衆事業に従事する労働者は一般に争議権を有しておりますが、ただ三公社五現業の職員については、これらの職員が、憲法十五条にいう国民全体の奉仕者である国家公務員ないし国家公務員ではないが、なお法令により公務に従事するものとみなされるものであります。いずれも高度の公共性を有する事業に従事するものでございますから、これらの職員の地位の特殊性及び従事する業務の公共性からして争議行為が禁止されておるのでございまして、その合憲性は、つとに最高裁の判例によっても明らかなのでございます。これらの法制が、戦前の労働争議調停法に劣るというようなことは、私は考えられないと思うのでございます。
 次に、昨年十一月のILO理事会の勧告F項についての御質問でございます。F項は、日本政府が、ILO八十七号条約を批准する以前においては、争議行為を理由とした解雇などを行なわないように希望しておることは事実であります。しかし、この勧告を受けました当時において、日本政府は、これらの規定は、現実の労働事情に即して、国民の福祉のために制定されました日本の国内法であって、この国内法の適用を制限する意思は全くないということを明らかに申し入れてあることを御承知いただきたいのであります。(拍手)
 今日のこの違法ストライキでございますが、争議権が制限され、そうして公労法において所定の手続が定められておるのでございますから、このストライキというものは、この問題を解決する手段でないということは明白でございます。むしろ、問題の解決をこいねがう立場から申しますと、ストによって多数の国民に迷惑をかけ、国民の反感を招くということは、かえって要求の獲得に対して不利な情勢をみずからつくり上げるということを意味するのでございます。(拍手)私は、労働大臣といたしまして、真にわが国労働者の利益を守りますためには、違法のストライキをやめさせることが絶対に必要であり、しばしばこの意味において警告を発しておるのでございまして、私は、関係労働者諸君をおどかすということでなく、真に労働者諸君を愛し、労働者諸君の利益を守るために、このたびの違法ストをぜひやめていただきたいとお願い申し上げておる次第なのでございます。(拍手)
  〔国務大臣賀屋興宣君登壇〕
○国務大臣(賀屋興宣君) 今回のストに際しまして起こりました行為につき、刑罰法令を適用すると申しますのは、法の禁止せざるものにおいて適用するという意味ではございません。また、法が禁止しておりましても、刑罰法令に触れないものに適用するという意味もさらさらないのでございまして、争議の際に起こりました違法行為につきまして刑罰法令を適用するという趣旨でございます。
 ただいま総理大臣よりもお答えがございましたように、公労法十七条は、最高裁の判決におきましても承認せられた正しき立法でございまして、これにつきましては、あるいは労働組合法一条二項の、いわゆる刑事免責規定の適用がある旨の御趣旨でございますが、その適用がないことは明らかでございます。総理大臣のお答えのように、昭和三十八年三月十五日の最高裁第二小法廷の判決におきまして明らかにされたところでございます。
 また、公労法十七条が不当なる法律であるから、これを無視してもいいかのごときお説があったようでございますが、かくのごとく、公労法十七条は憲法の解釈上も合法的のものでございまして、また、先刻、各関係大臣や、ただいま労働大臣の説明のごとく、これはわが国の公共の福祉の維持においても絶対に必要な法令でございます。この現行法が厳然としてありますものに対して、これを無視するがごとき考え方は、私は穏やかならぬものと考えて、反対でございます。(拍手)
  〔国務大臣古池信三君登壇〕
○国務大臣(古池信三君) お答え申し上げます。
 公共企業体等の職員の退職を理由として支給される給付につきましては、国家公務員等退職手当法に定められている退職手当以外に、実質的に退職手当に該当するものは、その名目が異なったといたしましても、これを支給し得ないものと解すべきであります。したがって、かかる退職給与につきましては、労使間において団体交渉によって労働協約を締結したといたしましても、これを有効に実施することはできないものと解されるのであって、御指摘の特別給付金につきましても、私どもは職員の利益を十分に考えて、法律案として今回国会に提出し、御審議を願っておる次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣綾部健太郎君登壇〕
○国務大臣(綾部健太郎君) お答えいたします。
 鉄道公安職員が不当介入をしたではないかというが、鉄道公安職員は、いまだかつて不当介入をした事実はありません。御承知のように、公安職員の任務は、日本国有鉄道構内における施設の秩序の維持、旅客の安全、また、荷主の保護等を任務といたしておりまするからして、それらのことが不法行為によって妨害せられない限り、鉄道の公安職員は介入はいたしません。それは労働組合員であるといなとを問わず、鉄道の公安職員の任務は、ただいま私が申し上げたほかにやっておる事実はありませんから、さよう御了承願います。(拍手)
     ――――◇―――――
 日程第一 公庫の予算及び決算に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
○議長(船田中君) 日程第一、公庫の予算及び決算に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
    ―――――――――――――
○議長(船田中君) 委員長の報告を求めます。大蔵委員長山中貞則君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔山中貞則君登壇〕
○山中貞則君 ただいま議題となりました公庫の予算及び決算に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 この法律案は、各公庫の予算及び決算事務の執行状況等に顧み、その簡素合理化をはかるとともに、行政管理庁の勧告をも取り入れて、所要の改正を行なおうとするものであります。
  〔議長退席、副議長着席〕
 法案の概要を申し上げますと、公庫の支出予算の区分のうち、節の区分を廃止すること、支払い計画に対する大蔵大臣の承認規定を削除すること、支出予算の繰り越し制度を廃止すること、固定資産取得費の限度額を予算総則事項から削除すること、決算の完結期を現行の七月三十一日から五月三十一日に改めること、公庫が大蔵大臣に提出する財務諸表及び決算報告書には、監事の意見を付さねばならないこと等を内容とするものであります。
 本案につきましては、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、国民金融公庫等の資金需要と貸し付け規模、貸し付け金利、各公庫予算の弾力的運営、職員の給与等について質疑が行なわれました。
 なお、本案の審議に関連し、先般、当委員会における輸銀法改正に関する審議の過程において提起されました公庫、公団等、政府関係機関のあり方についての問題に関し、山村国務大臣より、これら特殊法人の名称、資本金、役員の任命、監督、報酬等の問題について、外国の例その他を調べて、目下検討中である旨の発言がございました。これに対し、委員長発言として、次の通常国会あたりに法案の改正等が間に合うよう要望いたしておきました。
 本案は、昨四月九日、質疑を終了し、直ちに採決いたしましたところ、全会一致をもって原案のとおり可決となりました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(田中伊三次君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○副議長(田中伊三次君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第二 予防接種法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
○副議長(田中伊三次君) 日程第二、予防接種法の一部を改正する法律案を議題といたします。
    ―――――――――――――
○副議長(田中伊三次君) 委員長の報告を求めます。社会労働委員長田口長治郎君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔田口長治郎君登壇〕
○田口長治郎君 ただいま議題となりました予防接種法の一部を改正する法律案について、社会労働委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 予防接種法による急性灰白髄炎の予防接種は、従来、不活化ワクチンを用いておったのでありますが、最近における経口牛ポリオワクチンの効果及び普及控にかんがみ、不活化ワクチンにかえて経口生ポリオワクチンを用いようとするものであります。
 このため、急性灰白髄炎の予防接種の定期は、不活化ワクチンにより、第一期を生後六月から生後二十一月に至る期間、第二期を第一期終了後十二月から十八月に至る期間とあったものを、本案は、経口生ポリオワクチンにより、生後三月から生後十八月に至る期間と改めたことであります。
 なお、本案は、その施行時において、従来の不活化ワクチンによる予防接種を受けて完了するに至っていない者等につきましては、別に定期を定め、経口生ポリオワクチンによる予防接種を受けることができるよう措置しようとするものであります。
 本案は、去る三月二十五日本委員会に付託となり、四月九日の委員会において質疑を終了いたしましたところ、施行期日について、自由民主党、日本社会党、民主社会党の三党共同の修正案が提出せられ、竹内黎一君より趣旨の説明を聴取した後、討論を行ない、採決の結果、本案は修正議決すべきものと議決いたした次第であります。
 なお、本案に対し、橋本龍太郎君外二名提出にかかる三党共同の附帯決議を付することに決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(田中伊三次君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○副議長(田中伊三次君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。
     ――――◇―――――
 地方交付税法等の一部を改正する
  法律案(内閣提出)
○小沢辰男君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 すなわち、この際、内閣提出、地方交付税法等の一部を改正する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
○副議長(田中伊三次君) 小沢辰男君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(田中伊三次君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
 地方交付税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
    ―――――――――――――
○副議長(田中伊三次君) 委員長の報告を求めます。地方行政委員長森田重次郎君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔森田重次郎君登壇〕
○森田重次郎君 ただいま議題となりました地方交付税法等の一部を改正する法律案について、地方行政委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本案は、地方交付税の総額の増加に伴い、地方交付税の算定方法の合理化をはかろうとするものでありまして、
 その改正の第一は、昭和三十九年における道路整備事業等にかかる投資的経費の増加、生活保護基準の引き上げ等による社会保障関係経費の増加、地方公務員の給与改定の平年度化等による給与関係経費の増加等により、地方団体の所要経費が増高いたしますので、これに対処するため、関係項目の単位費用を引き上げようとするものであります。
 第二は、市町村の清掃関係経費の充実をはかるため、新たに「清掃費」の項目を設け、また、現行の道府県分の「道路費」、市町村分の「その他の諸費」について、補正方法の合理化をはかろうとするものであります。
 第三は、市町村相互間の財源の均衡化を一そう推進するため、基準財政需要額の充実ともあわせ、市町村分の基準税率現行百分の七十を百分の七十五に引き上げようとするものであります。
 なお、昭和三十九年度においても、引き続き、高等学校生徒急増対策費の項目を存置することといたしております。
 本案は、二月十三日当委員会に付託され、同十四日政府より提案理由の説明を聴取し、以来、関係政府当局に対し、基準財政需要額の算定基礎及び基準税率の引き上げ等に関して、熱心な質疑が行なわれたのでありますが、その詳細は会議録によって御承知いただきたいと存じます。
 なお、本案に関連して、国の会計年度を暦年制に改めることについての質疑に対し、田中大蔵大臣から、財政の効率化等の観点に立ち、可能の線に沿うて検討する旨の答弁がありましたので、特に付言する次第であります。
 本日、質疑を終了し、討論を省略して直ちに採決の結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(田中伊三次君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○副議長(田中伊三次君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 林業基本法案(内閣提出)及び森林基本法案(川俣清音君外十二名提出)の趣旨説明
○副議長(田中伊三次君) 議院運営委員会の決定により、内閣提出、林業基本法案、及び川俣清音君外十二名提出、森林基本法案の趣旨の説明を順次求めます。まず、農林大臣赤城宗徳君。
  〔国務大臣赤城宗徳君登壇〕
○国務大臣(赤城宗徳君) 林業基本法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 わが国の林業は、今日まで、木材その他の林産物の供給、資源の有効利用、国土の保全、国内市場の拡大等、国民経済の発展と国民生活の安定に寄与してまいりました。
 しかるに、近時、わが国経済の発展に伴いまして、林業をめぐって大きな情勢の変化が見られるのであります。すなわち、木材需要の増大、開放経済体制下における外材輸入の増加等、木材需給構造の変化が生じ、また農山村からの労働力の流出が顕著となる等の趨勢がこれであります。申すまでもなく、林業は、本来、生産期間がきわめて長いこと等、他産業に比べて不利な自然的条件を有するばかりではなく、林業経営の大部分が零細規模であること、林業経営者の経営意欲が一般的に低調であること等の脆弱性を有しております。
 これらを克服して、諸情勢の変化に対応し、林業の総生産を増大させ、他産業との格差が是正されるように生産性を向上させるとともに、林業従事者の所得を増大させることにより、林業の安定的な発展をはかることが強く要請されているのであります。
 その要請にこたえるには、従来の資源政策を基調とした林業政策のみでは十分ではありません。さらに、新たな角度から、産業としての林業の振興に関する基本的な政策の目標を明らかにし、これに基づいて諸般の施策を講じていくことが必要であります。このことは、林業のになう重要な使命にこたえると同時に、国民経済の発展と国民生活の向上を念願する国民の期待にこたえるゆえんであろうと考えるものであります。これがこの法案を提出いたしました趣旨でございます。
 次に、この法案の主要な内容につきまして御説明いたします。
 まず、第一章総則について申し上げます。
 第一に、以上申し述べましたような趣旨を明らかにして、この法律の目的を規定しております。次いで、国の林業に関する政策の目標は、国民経済の成長発展及び社会生活の進歩向上に即応して、林業の自然的、経済的、社会的制約による不利を補正し、次の事項の実現をはかることにあるものとしております。すなわち、林業総生産の増大を期するとともに、他産業との格差が是正されるように林業の生産性を向上することを目途として林業の安定的な発展をはかり、あわせて林業従事者の所得を増大してその経済的、社会的地位の向上に資することがこれであります。
 第二に、この目標を達成するため、国は、林業に関する政策全般にわたって必要な施策を総合的に講じなければならないこととしております。それらは、一、林野の林業的利用の高度化、二、林業構造の改善、三、林業技術の向上、四、林産物の需給及び価格の安定と流通及び加工の合理化、五、近代的な林業経営の担当者及び技術者の養成確保、六、林業労働に従事する者の養成確保及び福祉の向上の六項目として明らかにしております。そして、これらについての施策が、画一的でなく、地域の自然的、経済的、社会的諸条件を十分考慮し、きめこまかく行なわれるべきものとしております。
 また、これら諸施策を講ずるにあたっては、林業従事者等の自主的な努力を助長することを旨とすべきものとしております。さらに、政府は、これら諸施策を実施するため、必要な法制上及び財政上の措置を講じ、かつ、必要な資金の融通の適正円滑化をはからなければならないこととしております。
 第三に、国有林野事業につきましても、最近の社会経済情勢の推移に即応して、林業政策上適確な位置づけを行なうこととしております。すなわち、国は、諸施策を講ずるにあたっては、事業の企業性の確保に必要な考慮を払いつつ、その適切な運営を通じて、重要な林産物の需給及び価格の安定に貢献し、林業総生産の増大に寄与し、林業構造の改善のための積極的活用をはかるようにするものとしております。その場合、国土の保全その他公益的機能の確保とともに、農業構造の改善その他産業の振興または住民の福祉の向上のための積極的活用をはかるようにつとめるものとしております。
 第四に、政府は、毎年国会に、林業の動向及び国が林業に関して講じた施策に関する報告並びにその報告にかかる林業の動向を考慮して講じようとする施策を明らかにした文書を提出しなければならないこととしております。
 以上が、第一章総則のおもなる内容でございます。第二章から第四章までにおきましては、林業生産の増進及び林業構造の改善、林産物の需給及び価格の安定等並びに林業従事者について、必要な施策の方針をそれぞれ明らかにすることとしております。
 すなわち、林業生産の増進及び林業構造の改善に関する第二章におきましては、第一に、林産物の需要及び供給並びに森林資源の状況に関する長期の見通しを立てることとしております。次いで、この見通しを参酌して、林業の総生産の増大と生産性の向上をはかるよう、林野利用の高度化、林業技術の向上等、林業生産に関する施策を講ずべきこととしております。
 第二に、林業構造の改善をはかるため、林業経営の規模等による経営形態の差異を考慮して、必要な施策を講ずるとともに、小規模林業経営についてその規模の拡大をはかることとしております。また、林業生産を合理化し、林業経営の発展に資するよう生産行程についての協業を助長することとしております。さらに、以上の施策を総合的かつ効率的に遂行するため、林業構造改善事業を推進することとしているのであります。
 林産物の需給及び価格の安定等に関する第三章におきましては、重要な林産物について国内生産を円滑化し、外材輸入にも期待しまして、その需給及び価格の安定をはかることとしております。また、林産物の流通及び加工の合理化をはかるため必要な施策を講ずることとしております。
 林業従事者に関する第四章におきましては、近代的な林業経営の担当者または技術者たるにふさわしい者の養成確保と、林業労働に従事する者の養成確保及び福祉の向上をはかるため必要な施策を講ずることとしております。
 次に、第五章におきましては、林業行政に関する組織の整備及び運営の改善と林業団体の整備についての方針を述べております。
 最後に、第六章におきましては、総理府に林政審議会を設置することとし、その組織等につき必要な事項を定めております。なお、林政審議会は、この法律の規定によりその権限に属させられた事項を処理するほか、内閣総理大臣または関係各大臣の諮問に応じこの法律の施行に関する重要事項を調査、審議するものであります。
 林業基本法案の主要な内容は、以上のとおりでございます。このようにこの法律の目的は今後の林業の向かうべき道を示すことにありますので、これに基づく具体的な施策につきましては、この法案の趣旨により、とりあえず本年度においてもその一部について措置することとするほか、今後にわたって、法制上、予算上等の措置を講じていく所存であります。
 以上をもちまして、林業基本法案の趣旨説明といたす次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(田中伊三次君) 提出者川俣清音君。
  〔川俣清音君登壇〕
○川俣清音君 私は、日本社会党を代表いたしまして、森林基本法案について、その提案の理由及び概要を御説明申し上げます。
 現在わが国の山林原野は、国土総面積の約六七%を占めております。これを有効かつ高度に開発することによりまして国民経済の発展と国民の福祉の増進に寄与することは、国の重要な債務であります。
 ところが、現状をながめてみますと、山林原野の三分の一を占める国有林は特権的支配を受け、健全な経営が行なわれず、地元住民の利用が阻害されております。地方公共団体の所有する公有林は、地方財政窮迫のしわ寄せを受けて、過伐や乱伐におちいり、粗放な状態に放任されております。私有林はどうかといいますと、山林所有者の大部分は零細山持ちで、その過小経営と資本不足のためにその山林を有効に利用できず、他方少数の大山林地主は地元住民の利用から隔絶された大山林を独占しておりますが、多くの場合その経営がきわめて粗放かつ前近代的であります。すなわち、国有、公有、私有いずれの場合も、森林の所有権がすべてに優先して過度に重視され、その基盤の上にきわめて不適正な財産保持的な性格の濃い経営が行なわれております。このため林業生産の発展が妨げられ、木材需要の増大に対して供給が伴わず、木材価格が高騰し、しかもその価格の多くの部分が地代として山林所有者の不労所得に吸収され、他方では林業労働者、山村農民、及び中小産業者の所得水準は著しい低水準に押えられております。山村における産業の発展が停滞し、山村と他の地域との経済的格差がますます拡大している根本的な原因はここにあります。このような事態を根本的に改めるため、森林に関する新しい政策の目標と原則を示すというのが、この法律案の骨子であり、提案の理由であります。
 次に、その内容であります。
 第一に、私どもは、国土は、国民に与えられた天然の資源として、何人もこれを公共の利益に合致するように最高度に利用しなければならないという義務をになっておると確信するものであります。そこで、まず全国土を科学的に調査し、合理的な土地利用区分と土地利用計画を定めるべきであるというのが私どもの主張であります。このためには、国土高度利用促進法という法律の立法化が必要となるわけであります。こうして、農業に利用すべき土地の区分と、林業に利用すべき土地の区分が明確になった上で、農業適地においてはわが党の農業基本法を実施し、林業適地においてはこの森林基本法を実施する、こうして国土の開発と高度利用を行なうということ、これがこの法律案の前提となる根本理念であります。したがって、この根本理念を貫くためには、土地に関する所有権、利用権等の権利関係にも、それに応じた改革を加えなければならないというのが私どもの立場であります。
 第二は、森林というものの機能をどう考えるかということであります。森林の機能は、一つは国土を保全して災害を防止するとともに、さらに積極的に水源を涵養し、国民の保健、福祉を増進することにあります。これを森林の公益的機能と呼ぶことができると考えます。もう一つは、産業としての林業の生産力を高めて木材等の林産物の供給を安定的に拡大し、林業従事者の所得と生活の向上をはかり、もって国民経済に奉仕し貢献することにあります。これを森林の経済的機能と呼ぶことができるでありましょう。この二つの機能はともに重要な機能でありますが、中でも前者の機能をまず十分に発揮せしめ、その前提の上に立って後者の機能をも十分に発揮せしめることが、この法律案の目ざすところであります。この法律案の第一条においてこの目標を規定いたしております。最近自民党政府の林業政策が、ややもすると森林の公益的機能を軽視し、経済的機能だけを重視しようとする傾向が顕著に見えることはまことに危険な傾向といわなければなりません。
 第三は、林政の計画性の問題であります。ただいま申しました森林の公益的機能と経済的機能を効果的に発揮せしめるには、国及び地方公共団体の行なう林政の施策が具体的にそれに即した事項に向けられなければなりません。これを規定しているのが第二条、第三条、第四条であります。そして第五条では、政府が、林政審議会の意見を聞いて、森林資源及び林業に関する長期の見通しを立て、これに即して十年を一期とする林政基本計画を樹立し、国会に提出するということを規定いたしております。第六条では政府の実施した施策の結果の年次報告、及び基本計画に基づいて政府がこれから講じようとする施策の年次計画を作成して国会へ提出すべきことを規定いたしております。
 また、第十五条では、第五条の林政全般にわたる基本計画とは別に、現在も行なわれている森林計画制度を強化改善して、個別の森林の所有者または森林にかかる使用収益の権利を有する者の森林施策を森林計画に基づかせることを規定いたしておりますが、この場合も、各個別の林業者は森林の公益的機能と経済的機能を十分に発揮させるように施業する責任を負うことは当然のことであります。この責任が効果的に果たされるように、第十五条第二項では、林業者、林業労働者、地方公共団体の長、学識経験者の代表で構成する地域林業協議会を設けてその意見を十分に反映させるということを規定しているのであります。
 第四は、国有林のあり方であります。森林の二つの機能を効果的に発揮せしめるに際し、国有林の果たすべき役割り、任務が特に大きいことは申すまでもありません。そこで私どもの基本法案では、第八条から第十三条にわたって国有林野事業のあり方について規定いたしております。
 まず、第八条では、国有林の存在目的について規定し、そして第九条では、この国有林の存在目的を果たすために国が経営することが必要な森林、あるいは国が経営することが適当な森林を国が買い入れて国有林に組み込むことを規定いたしております。こうして国の林政の基幹となる国有林野を十分に確保しなければならないと規定いたしたのであります。その反面、第十条では、国有林野事業の使命の達成に支障を及ぼさない範囲内において、地元の林業者の林業経営の規模拡大に資するよう、林業者の共同組織等に国有林野のうちの適当なところを民主的に使用させることを規定いたしております。また第二十一条では、農牧林混合経営の発展を助長するため、国有林及び民有林のうちの農用経営地として適地である土地が、農林業者及びその共同組織によって取得あるいは使用収益権が設定できるようにするということを規定いたしております。
 次に、国有林野事業の経営に関することでありますが、私どもは、その経営が最も効率的かつ民主的に行なわれるように、国有林野事業は原則として直轄直営を基本とすることとし、そして国有林野事業に従事する労働者の雇用の安定をはかるため、その常時雇用を促進することを規定いたしております。これは第十一条、第十三条に規定されております。また第十一条では、国有林野事業の民主的運営を促進するため民主的な審議機関を設置すると定めておりますが、これによって国有林の立木処分等を含めて経営の民主化をはからなければならないという考え方であります。第十二条では、国有林野特別会計制度の改善について規定しております。これは企業的業務と行政的業務を勘定区分をして、企業的業務については単年度制を基本としつつも、同時に会計の長期的弾力性を持たせ、この勘定において剰余金の生じた場合は、これを原則として国有林の資源培養のために還元していくという考え方であります。行政的業務の勘定については、国有林、民有林にわたる治山事業の勘定、民間林業の振興をはかる民間林業振興勘定、国有林所在市町村の振興事業の勘定等が必要になろうと思いますが、これらは公共負担の思想によって所要経費を一般会計の資金によるべきだという考え方であります。現状においては、民間林業への林政協力の経費をつくり出すため、国有林野事業で無理に剰余金をひねり出そうとして、国有林の乱伐や立木処分がきわめて便宜的に操作されている傾向が見られますが、これはこの際根本的に改めなければならないというのが私どものこの法案の規定するところであります。以上が、国有林野事業についての私どもの考え方の概要であります。
 第五に、私どもの基本法案の中での重要な点は、林業生産を増大させ、しこうして林業経営の共同化を推進するということであります。これについては、第十五条で現行の森林計画制度の強化改善について規定いたしておりますが、すでに申し述べたので省略いたします。第十六条では林道の整備について規定しておりますが、ここでは、林道は森林資源の開発はもとよりのこと、山村における交通通信条件等の改善及び観光開発、産業開発等のためにもきわめて重要な役割りを果たすものであることは明らかなことでありますので、その意味におきまして、林道の開設、改良、管理等についてその費用の国の分担を明確にすべきだという考え方に立っております。第十七条の造林の推進でありますが、ここでは、国の施策として造林の助成を強化するという一般的施策だけに限らず、特に、地方公共団体の所有する林野及び私有林の水源涵養林に対し、国みずから官行造林を強力に実施するということを規定いたしております。この場合は、現在森林開発公団が単なるトンネル機関として行なっている分収造林の業務は廃止されることになるわけであります。第十九条では入り会い権の権利の近代化、第二十条では林業経営の共同化を規定いたしております。
 なお、本法の第二十一条の規定に注目していただきたいと思うのであります。わが国の山村地帯においては、農業、畜産業、林業は切り離せない相互関係にあります。大部分の山村の農家は、農業をやっていると同時に他に畜産もやり、また少しばかり山林も経営いたしております。この三つを合わせて山村住民の生計が維持されておるのであります。そこで、この三つを有機的に組み合わせて農牧林混合経営を発展させることが、山村経済の振興のためにどうしても必要であります。第二十一条では、この農牧林混合経営の発展の助長策として、国有林及び民有林のいかんを問わず、土地利用区分によって農用地として適当ということに判定された林野は、これを地元民に取得させるよう、あるいは使用収益の権利を設定させるよう、国の施策を講ずるということに規定いたしておるのであります。そうして、この農牧林混合経営もまた、できるだけ共同経営の形態をとれるように国の援助と指導を強むべきであるということはもちろんであります。
 第六に、私どもの基本法案の重点は、木材等の流通を合理化して、需要と価格を安定させることにあります。第二十四条では、国内産木材等の供給の円滑化をうたっていますが、この点では、この法案は特に国有林が一定の木材の蓄積を持って、需給の動向に応じ弾力的に市場に供給できる体制を考慮しているわけであります。また同じ第二十四条では、外国産木材等の輸入の計画化及び調整をうたっていますが、これは国内需給の状況に応じ、あるいは外材輸入を促進し、あるいは外材輸入を制限する等、その計画と調整の権限はあくまで国の手に確保し、また、これに伴い、港湾や貯木場の設備を政府の責任で整備すべきだという考えであります。第二十五条では、木材等の流通につきまとう前近代的な商慣習を改善するというねらいから、公営の木材市場を整備するということを規定いたし、それにあわせて、森林組合、もしくは製材業者等の協同組合の行なう購買、加工、販売の事業の発展改善をはかることを規定いたしております。
 第七に、私どもの基本法案は、林業従事者の福祉の向上と山村振興を大きな重点といたしております。これまで私の申し述べました各条項の説明でも明らかなように、いわばこの基本法案の全体を通じて、最終的目標は、林業従事者の地位を向上して山村地域の格差を根本的に解消するというところに置かれておるわけであります。具体的に申し上げますと、国有林野事業の経営、林道の整備、造林の推進と林業経営の共同化、農牧林混合経営の発展助長等についてこの基本法案が規定いたしておる内容は、すべて林業従事者の福祉の向上と山村の地域住民の所得向上を目ざしているものにほかなりません。さらにこれに加えまして、最終的な確認の形におきまして、第二十六条で、林業労働者の雇用の安定、労働条件の改善、労働関係の近代化、社会保障の拡充等のために国は必要な施策を講じなければならないと規定いたしております。これは、現状におきまして、林業労働者が他の産業の労働者に比べ、労働行政、社会保障行政の諸権利を受ける水準がきわめて立ちおくれております。これを国の責任において大きく引き上げるという趣旨であります。また第二十七条では、山村の生活理境の整備のため、山村における交通通信、衛生、文化等の環境整備、生活改善の措置を国が講ずべきことを規定いたしております。こうして、林業従事者あるいは山村住民を人間として尊重し、その福祉を向上させるところに私どもの基本法案の最大の目的があるのであります。
 以上が、私どもの森林基本法案のおもな内容であります。その他に、林業行政組織の整備、林業関係団体の整備、あるいは林政審議会の設置等についての規定もございますが、これは法案を御一読いただきますれば明らかなところでありますので、省略いたします。
 以上、私どもの森林荒木法案の提案の理由、そのおもなる内容について御説明申し上げた次第であります。何とぞ、槙重に御審議の上すみやかに可決決定あらんことをお願い申し上げ、私の趣旨説明を終わります。(拍手)
     ――――◇―――――
 林業基本法案(内閣提出)及び森林
  基本法案(川俣清音君外十二名
  提出)の趣旨説明に対する質疑
○副議長(田中伊三次君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。本名武君。
  〔本名武君登壇〕
○本名武君 私は、自由民主党を代表して、ただいま政府より趣旨説明のありました林業基本法案に対し、総理以下関係大臣に若干の質問をいたしたいと思います。
 いまや、わが国の林業は、その長い太平の夢からさめ、ここに新しく産業としての確固たる地位を確立すべき時期に直面していると思うのであります。わが国林業は、その経営基盤の零細、劣弱性と、森林所有者の資産保持的性向等に妨げられ、その生産力を十二分に発揮し得ていないのでありますが、さらに、最近の国民経済の高度成長に伴う木材需要量の急激な増大により、外国産木材の輸入が大幅に増大したことと、山村人口の地すべり的な流出に伴う労働者の不足とが相まって、林業経営の基盤が著しく圧迫されているばかりでなく、ひいては、国土の保全、国民経済の発展に重大な制約を加えるおそれすら感じさせられるものがあります。
 林業を取り巻くこれらの事態に対処するための抜本的な対策確立の必要は、すでに、農業基本法の提案と時を同じくして、林業界のみならず、多数の識者によって強く指摘され、政府の決意を待望してまいったのであります。政府は、今日、ここに、林業を産業として発展させるべく、林業の向かうべき新たな方向と施策の目標を明らかにするため、林業基本法案を提出されたのであります。本案は、わが国林業の置かれております現状と将来の動向等を考えますと、まことに時宜を得たものと思うのであります。しかし、一方、私は、林業という産業の持つ特異性と、それが営まれております山村の現状等にかんがみまして、本案施行に関する政府の方針等について若干の質問をいたしたいと思います。
 質問の第一は、林業基本法の運用について総理の御決意を伺います。
 私は、林業が国民経済の高度成長に重要な使命を果たしていると同時に、国土保全その他国民の社会生活全般に寄与する森林の公益的機能の増進のため、重大な関連を有することにかんがみまして、本法成立後、林業基本法の完全なる運用について、総理の御決意をお伺いいたします。
 質問の第二は、林業基本法案の性格について農林大臣にお伺いいたします。
 森林は、林業の生産基盤であると同時に、国土の保全その他の公益的機能を有しており、この両者は表裏一体をなすものでありまして、総合的にとらえて対処しなければならないと思うのであります。林業基本法案は、国土の保全等に関する面は直接これを規定せず、主として産業としての林業の発展に関する施策を規定しております。林業基本法案の目的を主として林業の発展と林業従事者の地位の向上に限定されました趣旨はどこにありますか、また、これと森林の持つ国土の保全その他の機能の維持、増進との関連はとのように考えるべきでありますか、これらの点について農林大臣の御見解をお伺いいたします。
 次は、林業基本法案と山村振興について総理にお伺いいたします。
 最近、山村とその他の地域との間に経済、文化その他各種の面の格差が拡大し、このため、山村人口は地すべり的に流出し、このままで推移いたしますれば、山村が荒廃するのみでなく、山を守る人もなくなり、国土の安全が脅かされ、ひいては、わが国産業、経済発展の桎梏となりますことは必至であります。私は、いまこそ、山村民の生活、文化環境の整備を含む山村振興の問題を真剣に取り上げてまいるべきときと確信するものであります。これはまた、林業の安定的発展のためにも不可欠でありますことは申すまでもなく、また、山村の立地条件から林業の発展が山村振興の中軸になるべきものと考えるものであります。とはいえ、現在山村において発生しております諸問題は、広く国の総合的な社会福祉及び経済政策の対象となるべきものでありまして、ひとり林業基本法をもって対処し得るものではないと思うものであります。
 そこで総理に対し、総理は、山村振興のため総合的かつ抜本的な特別措置を講ぜられるお考えはないか、この際お尋ねいたします。
 質問の第四は、林業構造改善事業について農林大臣にお伺いいたします。
 わが国の民有林の大部分は、約二百七十万戸の農林家によって所有、経営されておりますが、その所有規模は、五ヘクタール以下のものが圧倒的に多く、一戸当たりの平均規模は八アールと、きわめて零細であるため、資本装備も著しくおくれております。林業の健全な発展のためには、その経営規模を拡大し、生産性をあげる手段を導入する必要があります。林業構造改善事業は、これらの小規模経営林業の規模の拡大をその重要な一環として、林業の近代化をはかろうとするものであると理解しております。しかるに、一部において、この事業は零細林家の切り捨て政策であるかのごとき論議が行なわれております。この際、政府は林業構造改善事業を推進しようとする真意を国民の前に明らかにする必要があると思うものであります。この点について農林大臣の御所信の表明をお願い申し上げます。
 次は、国有林野事業のあり方について、総理と農林大臣にお伺いいたします。
 国有林野は、わが国の森林面積の約三分の一を占め、国土の保全、その他森林の公益的機能への寄与、林業の発展の上に果たす意義、役割りはきわめて高く、国有林野に対する国民的要請は今後ますます増大するものと思うのであります。一方、近時、いわゆる国有林野の開放問題等、国有林野をめぐる新しい諸情勢が展開しております。これらの事態に対応していく上には、現在の国有林野事業の運営では十分でないと思うのであります。私は、この際、今後における国有林野事業の基本的なあり方並びにその運営の方針及びこれとの関連において、国有林野を林業あるいは農業構造改善その他に役立たせるための開放等、その活用の方針を明確にする必要があると思うのであります。これらの点について、総理と農林大臣に対し、その御所信をお伺いいたします。
 次に、外材の輸入について農林大臣にお伺いいたします。
 最近、外国産木材の輸入の増大が顕著となり、その輸入量は、わが国木材総供給量の二割をこえようとしており、また、このために、昨年度において四億ドル余りの外貨を支払っております。これら外材の輸入の増大は、単に国際収支を悪化するばかりでなく、無秩序な輸入に伴う木材価格の変動等により国内林業をも圧迫するきざしを見せておるのであります。しかしながら、木材の需要量と供給量の差は当分続くものと思われますので、輸送、荷受け等の装備を含めた秩序ある輸入の受け入れ体制整備も必要かと思います。このような情勢にありますところの外材の輸入について、政府はどのように考えておられるか、その基本的な考え方を農林大臣にお伺いいたします。
 次に、木材の流通機構の整備について農林大臣にお伺いいたします。
 林業の健全な発展のためには、森林の維持造成部門より始まり、木材の加工部門に至るまで、それぞれ均衡のある総合施策が確立されることが必要であり、特に木材の流通機構を整備合理化することは、木材需給及び価格の安定に寄与し、林業の発展にとってきわめて重要な意義を持つものであります。しかし、従来、この部門に対する政府の施策はきわめて跛行的かつ消極的な面があったことは、否定できないと思うのであります。林業基本法案において特にこの面を強調されておりますことは、まことに適切な措置であると考えるのでありますが、なかんずく、林産関係団体の整備を含めて、合理的な木材流通機構秩序の確立の必要性を痛感するものであります。この点について農林大臣の御方針をお尋ねいたします。
 次に、財政上の措置等について大蔵大臣にお伺いをいたします。
 林業は、本来、その生産期間が著しく長く、かつ自然環境に強く支配される等、生産性の向上や林業従事者の福祉の増進をはかる上に、他産業に比べ非常に不利な条件のもとに置かれているのであります。そこで、国は、本法案に掲げる目標達成のため、まず、林道その他林業における社会資本の充実はもとより、新たに構造改善事業その他の施策についても十分なる予算上の措置を講ずべきであります。また、林業資本は、長期に固定する性格にかんがみ、金融上、その利率、償還期限等についても改善を加える必要があると思うのであります。さらに税制上も、所得税、相続税、法人税について、林業の発展に資するよう、その適正化をはかる必要があります。これら予算、金融並びに税制上の措置等が十二分に行なわれてこそ、林業基本法は画龍点睛を得ると思うのであります。この点について大蔵大臣の御所信をお伺いいたします。
 最後に、人つくりと林業の整備推進について農林大臣にお尋ねいたします。
 森林から人々の受ける恩恵は、有史以来、また地球の存する限り無限に続き、深く、かつ大きいのであります。しかし、人々は、物質文明の進歩とともに、ややもするとこの点を忘れがちであります。この際、森林を単に一部の林業者のみの手にまかせるのではなく、一般の人たちも森林の恩恵を想起し、これに親しむ必要があると思うものであります。このため、たとえば学校林あるいは市町村等が行なう各種の記念造林等を大いに推進することを提唱するものであります。学校林活動は、生徒の創意くふうを生かした自主的運営によるものとし、その活動を通じ、国の次代を背負う青少年に、自然の摂理の中において国土愛と生産意識を養い、近代的社会人としての自覚を植えつけようとするものであります。同時に、この学校林、記念林等からの林産物によって、山村僻地の学校もその施設を十分整備し、また、財政力の特に貧弱な山村地帯の地方公共団体等の財源の拡充にも役立ち得るようになると思うのであります。農林大臣、学校林、記念林等の整備拡充のため、国有林野等を活用するお考えはないか、お伺いいたします。
 以上で私の質問を終わりますが、今回はからずも、日本社会党並びに民主社会党においても、森林あるいは林業に関する基本法案を御提出されたのであります。それぞれ内閣提出の林業基本法案とは、細部の施策について若干の相違点があるようであります。たとえば、社会党案においては、これを国土の保全等を含めた基本法としていること、施業推進の方法として森林計画制度の運用を重視していること、国有林野事業の経営方針の細部をも規定していること等、それぞれ特色があるようであります。政府は、これらの点については、現行法の改正あるいは関連法の整備をもって対処することとしているものと理解しております。これらの三基本法案は、いずれもわが国の林業の発展及び林業従事者の地位の向上をその目標とするものでありますが、この際、山村振興、林業の発展、林業従事者の幸福のため、大局的な見地から、小異を捨てて大同につく心がまえを特に期待いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答えいたします。
 林業基本法案を提出いたしました理由は、最近の木材需要の構造の変化、あるいは山村からの労働者の流出等を考えまして、将来の林業の向かうべき新しい道、またこれに対する政策を実行するために、御審議願っておるのであります。私は、今後の山村の経済的、社会的後進性を克服して、昔からいわれておりますごとく、国を治むる者は山を治むるを第一とするという気持ちで、今後施策を強力にやっていきたいと考えております。
 なお、国有林野の開放の問題につきましてでございますが、これはあくまで国土保全、あるいは国土の高度利用、ことに農村におきます国有林払い下げの熾烈な要望等も考えまして、私は、農村振興の立場から、それが国の全体の役に立ちますよう、開放につきまして考えていきたいと思います。なお私は、国有林につきまして、開放するばかりではない、やはり保全のために必要ならば買い上げということも考えていくべきだと考えておるのであります。(拍手)
  〔国務大臣赤城宗徳君登壇〕
○国務大臣(赤城宗徳君) お答えいたします。
 本法案に国土の保全の面がないのはどうかということでございますが、御承知のように、林野政策の大きな柱として国土保全、治山治水対策がございます。そのために、保安林制度の改善とか、治山事業の推進等を従来もしてきておりますが、これは森林法に大体規定がありますので、本法案は、産業としての林野事業、こういうところに重点を置きまして、林業総生産の拡大とか、林業の生産性の向上、林業従事者の所得増大、こういう面から国土保全ということにも寄与するというたてまえで、法案を提出いたしておるわけでございます。
 第二に、構造改善等についての見解をただされたのでございますが、構造改善等につきましては、分収造林の推進とかあるいは国有林野の活用等によりまして、規模の拡大あるいは協業化をはかっていきたいと思います。このために零細林野経営者が、脱落するのじゃないかというような心配は全然ございません。むしろこれを協業化等に繰り入れまして、その発展を期そうということでございます。
 第三に、国有林野事業の基本的な考え方はどうかということでございますが、国土の保全、その他公益的機能を確保し、また重要な林産物の持続的供給源とし、また奥地未開発林の開発等を進めまして、国有林野の基本的な方向を推し進めていきたいと思います。
 第四に、外材輸入についての御質問でございますが、外材の輸入も相当量にのぼっておりますけれども、これは補完的に輸入をしていくということで、輸入は進めております。またそれについて輸入港の整備、あるいは輸入機構の点等につきまして、一そうの整備を進めていきたいと思います。
 第五に、流通対策につきましては、森林組合とか、あるいは中小企業等協同組合の面を改善いたしまして、一そう購買、販売、加工等を近代化していきたいと思います。
 最後に、学校林につきまして御質問がございました。学校の児童生徒のころから、ものを育て上げるところの気持ちを養い、そしてまた林業に協力するという気持ちを養うことは、大時なことだと思います。そういう面はさらに一そう進めていきたい、こう考えております。(拍手)
  〔国務大臣田中角榮君登壇〕
○国務大臣(田中角榮君) 林業に関し予算上、金融上、税制上、手厚い措置を講ずるようにということでございます。
 まず、予算について申し上げますと、林業の振興につきましては、林道、造林の促進、また林業経営の協業化、林業技術の普及、向上等、各般の施策を進めるために、財政上必要な配慮をいたしておるわけでございます。しかし、今後と本法案の趣旨に沿いまして、林業総生産の増大、生産性の向上、林業所得の向上等のために施策を行ない、必要な予算の確保につとめてまいりたいと思います。
 第二の金融につきましては、政策金融といたしまして、農林漁業金融公庫の三十九年度をごらんになっていただくとおわかりになるとおり、一部金利の引き下げ、償還期限の二十年から三十年へと長期化をはかる等いたしておるわけでございます。しかも他方、資金量につきましても、昭和三十八年の八十一億を九十六億に増額いたしております。なお、その他系統金融はじめ民間金融機関からの融資の円滑化に資しますために、債務保証を目的といたしまして、三十八年度に創設しました林業信用基金に対しましては、三十九年度三億五千万円の追加出資をいたしておるのでございます。
 それから税制につきましては、御承知のとおり、山林所得は、長期間にわたる山林経営の結果生じました所得でありますことに着目いたしまして、他の所得と分離いたしまして、五分五乗方式による課税を行ない、累進課税率の緩和措置をはかっておるわけでございます。法人税につきましては、再建整備を行なう森林組合の留保所得に対する課税の特例や、森林組合が合併した場合における課税特例等を講じておるわけでございます。相続税におきましては、相続において取得した立木の評価等につきましては、時価の八五%に相当する金額による特例を設けておるわけでございます。
 以上申し上げましたように、林業に対しましては、財政、金融、税制上、今後とも十分の配慮をいたしてまいりたいと存じます。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(田中伊三次君) 東海林稔君。
  〔東海林稔君登壇〕
○東海林稔君 私は、日本社会党を代表し、ただいま趣旨説明のありました内閣提出にかかる林業基本法案について、池田総理並びに関係大臣に対し、質問を行なわんとするものでありま
 わが国の山林原野は、国土総面積の六七%という商い率であり、これが管理経営の適否いかんは、国土の保全にもまた、国民経済にも重大な影響を及ぼすことは多言を要しないところであります。わが党は、このような見地からして、数年前から林政についての基本方向を明らかにする基本法の制定を主張してきたのでありますが、農業基本法におくれること三年にして、ようやくここに林業基本法案の提出を見た次第でありまして、われわれは、まずそのおそきに失したことを遺憾とするものであります。さらに、法案の内容は、当初伝えられた草案に比較すれば、若干改善は認められますが、なお、われわれの見解とは重要な点で大きな相違があり、とうてい容認し得ないところであります。そこで、先ほど川俣議員より趣旨説明のありましたとおり、社会党独自の森林基本法案を提出して、国会の審議を求めるとともに、国民の批判を仰がんといたしておるのであります。
 以下、私はわが党の森林基本法案と対比しながら、政府の林業基本法案に対し、数点についてお尋ねいたします。(拍手)なお、質問事項は、ただいまの前質問者と若干重複する点もあるかと思いますが、質問の観点が違いますので、前もって的確な御答弁をお願いいたしておきます。
 まず第一に、池田総理にお伺いしたいのは、林政の基本目標についてであります。
 申すまでもなく、森林の持つ機能は多様でありますが、大別すれば二つとすることができます。すなわち、国土を保全し、災害を防止し、水源を涵養し、清らかな空気と美しい景観で国民の保健と福祉を増進する、これらは森林の公益的機能ということができるでありましょう。他方、これを開発することによって、木材等の林産物を供給し、林業従事者の所得と生活を向上させ、もって国民経済に貢献する、これは林業の経済的機能であります。われわれは、この両面の機能をともに十分に発揮せしめるのが林政の基本的な任務であり、目標でなければならないと信ずるものであります。(拍手)ところが、政府の基本法案の第一条、「法律の目的」、第二条、「政策の目標」の規定を見ますと、森林の経済的機能だけが強調されて、公益的機能がきわめて軽視されておるとしか理解できないのであります。(拍手)すなわち、政府の基本法案の骨子は、森林の中で営まれる産業としての林業をとらえ、その発展のための諸施策の方向を示さんとするもののごとくであって、法案の性格としては、単なる林業振興法案にすぎないといっても過言でないと思うのであります。(拍手)森林の公益的機能と経済的機能とは形影相伴うがごとく、表裏一体をなしており、造林などの林業生産活動そのものが国土保全の増進に役立つ反面、行き過ぎた林業生産活動、たとえば過伐、乱伐が国土保全機能の低下、ひいては水害の誘因となっていることは、いまさら申し上げるまでもないところであって、この二つを分離した施業は、決して完全ではあり得ないのであります。私は、わが党提出の森林基本法案のごとく、森林の持つ公益的機能と経済的機能の双方をともに発揮せしめるため、森林全般にわたる基本的施策の方向を明示してこそ、初めて名実ともに林政の基本法であると考えるのでありますが、政府の見解を池田総理から明らかにしていただきたいのであります。(拍手)
 質問の第二は、国有林のあり方についてであります。
 国土の保全及び木材等、林帳物の供給の両面において、現に国有林の果たしている役割りはきわめて大きいのであります。国の林政を強力に推進しようとするならば、当然国有林が最も重要な施策の基盤となるべきであります。そこで、われわれは、今後も国が一定の規模の国有林を確保することがどうしても必要であるとの見解を持つものであります。もちろん、われわれも地元住民の所得と福祉を向上させるために適当な国有林野を地元へ開放し、あるいは利用権を設定して活用させることには賛成でありますが、他方、国が所有、経営することも必要であり、かつ、相当な民有林を国が買収して国有林へ組み込むこともぜひ必要であると考えるのであります。ところが、最近一部地方では、国有林について、保安林を除いた残余はすべて地元へ開放せよという運動が行なわれており、政治家の中にも、一部これを支持する動きをなしている者もあるのであります。しかも、これらに対する政府の態度はきわめてあいまいのようにわれわれには感ぜられるのであります。国民全体の貴重な財産である国有林が、一部の者の利権に利用されるようなことは断じて許さるべきではありません。(拍手)政府の基本法案第四条には、国有林の所在地域の林業構造の改善に資するため、及び農業構造の改善のため、その他産業の振興または住民の福祉の向上のため用いることを必要かつ相当とする国有林町は、これらの目的のため積極的に活用をはかると規定されておるのであります。ただいま総理から若干この点について触れられたのでありますが、明確を欠きますので、この際、国有林開放に対する政府の方針を国民の前に明らかにしていただきたいと思うのであります。(拍手)
 なお、先ほど総理は、必要な民有林は国有林に組み入れる考えであるという御答弁がございましたが、政府の林業基本法案にはその趣旨が全然入っておりません。それはいかなる理由になりますか、明らかにしていただきたいと思います。(拍手)
 第三に、林業の構造改善について農林大臣にお尋ねします。
 政府の基本法案第十四条では、林業構造改善事業を指導、助成すると述べられており、また、第十一条では、「小規模林業経営の規模の拡大に資する方策として、林地の取得の円滑化、分収造林の促進、国有林野についての部分林の設定の推進、入会権に係る林聾についての権利関係の近代化等」の施策を講ずると述べられております。ところで、ここで言っておる林地の取得の円滑化とは、一体だれがだれの林地を取得するのか。また、入り会い権の近代化とは、これをどうしようとするのか、一向に明らかでありません。われわれは、わが国林野の大部分を占めておる小規模林業経営の近代化は、国が積極的に林業従事者の生産共同組織を育成する方策、すなわち、零細な経営も共同化の土俵の中で生かしながら、しかも、全体としての経営単位を大規模化し、そこに生産性向上の手段を導入する方策こそが、現実に即したものと信ずるものであります。政府の考え方は、農業基本法の自立農家育成の考え方と同様に、零細所有者の林地を大規模所有者へ集中させる零細林業者の首切り政策としか受け取れないのでありますが、この点はいかがでありますか。(拍手)先ほど農林大臣は、決して首切り法案ではないというような御答弁であったようでありますが、かつて農業基本法案の制定の際、池田総理は、本議場において、自立農家の育成をやるためには、四割程度の小農民は、これを農業から去ってもらわなければならぬということをはっきりおっしゃっておるのであります。この農業基本法の考えと、もし、ただいま農林大臣が言ったように、首切りの林業法案でないとするならば、その考え方はどこが相違いたしておるのか、その点を明らかにしていただきたいと思うのであります。(拍手)また、小規模林業経営の規模の拡大と言っておるのでありますが、一体どの程度の規模を目標にしておるのか、この点もきわめて不明確でありますので、この際明らかにしていただきたいのであります。
 第四に、巨大山林地主と林業振興の関係について農林大臣にお伺いします。
 全国に存在する大山林地主は、その数こそ多くはありませんが、一人で数百または数千ヘクタールの大面積を所有し、年々その持ち山のごく一部を伐採すれば生活に事足りるとして、何らこれを林業振興のために活用せず、かつ、地元住民の利用をも締め出しているものが多いことは周知のとおりであります。このことは、三十五年十月に農林漁業基本問題調査会が政府に答申した、林業の基本問題と基本対策においても指摘されておるところであります。しかも、これら大山林地主の発生過程の多くは、決して明朗なものではなく、加えて、戦後の農地改革からも免れているのであります。このような大山林地主、特に巨大山林地主を現状のままでおくことは、国全体の林業振興上からも大きな障害であり、また、前述の林業構造を真剣に進めるとすれば、国有林だけではなく、どうしても大山林地主の民有林にも手をつけなければ解決できないと考えるのでありますが、政府は、この問題をいかに考え、基本法施行に伴ってどのように対処される方針でありますか、お尋ねいたします。(拍手)
 第五に、林業労働について労働大臣並びに農林大臣にお尋ねいたします。
 林業労働者は、文化から遠く離れた山地にあって、荒い気象条件、厚生施設等も備わっていない状況のもとで重筋肉労働という特質を持っております。しかも、現状においては、林業労働者は、他産業労働者に比較して、労働法の保護や社会保障の諸権利を享受できる程度や水準は大きく立ちおくれているのであります。政府基本法案第十八条は、林業労働者の福祉の向上と就業の安定を規定していますが、われわれもこの点は全く賛成でありまして、政府は、すべからくこの際、従来のこの問題に対する無関心と怠慢を十分反省して、基本的な方策を確立すべきであります。われわれは、まず、政府に雇用される国有林労働者の労働条件や雇用条件等を改善し、この水準を民間の林業労働者にも押し及ぼすべきが当然であるとの考え方から、党としては、すでに国有林労働者雇用安定法案を国会へ提出しているのであります。いまや、林業労働者の確保はきわめて緊要な問題となっております。政府は、林業労働者の福祉の向上、雇用の安定についてどのような具体的な施策を考えておられるのか、労働大臣から、また、国有林労働者については農林大臣から、それぞれお答え願いたいのであります。
 最後に、池田総理にいま一点お尋ねいたしたいのは、山村の環境整備についてでございます。
 林業の振興、発展の基礎である林業従事者の生活の安定、及び地位の向上をはかるには、私は、まず山村における交通、衛生、文化等の環境の整備、生活改善等の施策を、総合的かつ抜本的に講ずることが先決条件であることを痛感するものであります。封建制の残存、産業構造の前近代性にあわせて、環境整備が著しく立ちおくれておることが、いまや、山村青年をして山村に生きようとする意欲を失わせ、農家、林業者の後継者をも含めて、青年はどんどん都市へ流出しています。また、ここ三、四年来、急に土地、家屋を売り払い、一家全部が離村する、いわゆる挙家離村も増加し、住民のかまどの火は消え、部落に人影を見ずという、幽霊部落の出現すら報告されております。この実態は、去る二月二十三日午後十時からのNHKテレビの「日本の素顔」で、「廃屋の村」というテーマで放送されましたので、あるいは総理もごらんになったかと思いますが、まことにきびしく痛ましいものでありました。政治の貧困、政治の不公平をまざまざと感じさせられたのは、決して私一人だけではないであろうと思うのであります。(拍手)
 人なくして山を守ることはできません。しかも、不幸にして一たび荒廃した山村の復興は、決して容易なことではないのであります。単に地域格差の是正というようなことだけではなく、山を守り、さらには国土を守るという見地からいたしまして本、この立ちおくれておる山村の環境の整備は緊急の事項と私は考えるのでありますが、総理から、この問題につきまして、はっきりした御所信をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) 今回提案いたしました林業基本法は、いまお話しになったようなことを将来実現しようという目的でいっておるのであります。先ほど申し上げましたごとく、木材需給の構造の変化、ことに山村労働力の都会への移住等を考えまして、大事な国土保全の一環をになう林業の経済発展をはかるためにやったのでございます。国土保全ということが載っていないじゃないかというお話でございますが、治山治水というものは政策の根本でございまして、私は何も、これに載せないから国土保全をおろそかにしているというのではない。林業を発展さすことが国土保全、治山治水になるということは、当然のことであるのであります。
 次に、国有林野のあり方についてでございますが、お話のとおりに、一部の利権のためにこれが開放されるということは、厳に慎まなければなりません。しかし、片一方において国有林野をそのまま置いておくことが国のためになるという考え方は、これは古いのでございます。私はやはり、保安林や必要なものはぜひ置かなければなりませんが、国土の高度利用、あるいは農業の発展等から考えまして、これは十分考慮の上、適当な措置をとるべきだと思います。マンネリズムになるということは、私は許さないのであります。(拍手)
 また、国有林野について、この法律にないじゃないか。私は、国有林野のあり方として、やはり民有林を買ったり、あるいは奥地林町を政府が買い入れるということは、国土保全のために、この林業基本法とは別個の基本的の問題だと思ってお答えいたしたのであります。
 なお、山村の環境改善。私も、先般テレビで、広島の奥地の、私の知っているところの衰退状況を見まして、やはり林業基本法にはもっと力を入れてやらなければならぬということを痛感したことを申し上げておきます。(拍手)
  〔国務大臣赤城宗徳君登壇〕
○国務大臣(赤城宗徳君) お答えいたします。
 森林の持つ機能として、公益的な機能が非常に大きいことはお話のとおりでございます。その公益的な機能の面が本法案に載っていないが、どうであるかということでございますが、先ほど趣旨を御説明申し上げましたように、本法案は、産業としての林業方面から規定をいたし、その規定をしてどういう方向へ持っていくかといえば、林業の総生産を増していこう、あるいは生産性を向上していこう、あるいは林業従事者の所得を増していこう、こういう面から国土保全の面に寄与しようということでございまして、公益的な国土保全の面はすでに古くから森林法に規定されておりますので、その方面に中心は置いてあるわけでございます。でありますので、そういう意味におきまして、本法案は、産業としての林業の方面から間接的に国土保全の面に進めていくという考え方で法案ができております。
 第二に、構造改善を進めるにあたりまして、零細山林所有者あるいは経営者を切り捨てるようなことになりはしないかということでございますが、構造改善事業につきましては、分収造林とか、あるいは国有林の開放とかによりまして規模を拡大していこうということでありますし、また、規模の拡大の一つの方法として共同化を進めていこうということでございますから、零細の山林所有者、山林経営者を切り捨てるという考え方は全然持っておりません。
 しからば、その規模はどれくらいにするかということでございますが、何町何反というようなことは一がいに言えませんけれども、あるいは三年目に一回切れるとか、四年目に一回切れるとかいうような規模に持っていくという方向を考えておるわけであります。
 それから大山林所有者、農地解放のときにこういう者は解放を受けなかったが、大山林所有者の扱いをどうするかということでございますが、一面、大きいものを持っておるからそれを解放させるということは、私は、いまどうかと思います。金をたくさん持っておるから、その金を解放しろといっても、これはなかなか無理でございます。そういう意味におきまして、大山林の解放をいま考えてはおりませんが、しかし、大山林が粗放のまま放置されておるということは、国としても、国民経済からも好ましくないことでございます。そういう場合におきましては、林業構造の改善のため、必要に応じまして、所有者の協力を得まして分収林等の設定をして、粗放なる形態の林野等を、国あるいは国民生活に寄与するように協力させたい、こう考えております。
 林業労働者の地位でございますが、林業労働者が季節的あるいは天候的、自然的の制約を受けておりますことは御指摘のとおりでございます。これにつきましては、私どももできるだけの安定政策をとってきておりますけれども、なお一段と安定的な方向に強化していきたい、こう考えております。(拍手)
  〔国務大臣大橋武夫君登壇〕
○国務大臣(大橋武夫君) 林業の就業者の数は、昭和三十年の五十六万人をピークといたしまして、減少の傾向をたどり、昭和三十七年及び三十八年には三十五万人になっております。そのうち業主及び家族以外の労働力は、三十八年におきましては十九万人でありまして、常用が八万、臨時が二万、日雇いが九万ということになっております。林業労働に従事する者の養成及び必要労働力の確保をはかりますためには、御意見のとおり、労働条件の改善をはかり、また就業の安定化に資する必要があると思いますので、これに必要な施策を急ぎまするよう直ちに検討を加えたいと思います。(拍手)
○副議長(田中伊三次君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
○副議長(田中伊三次君) 本日は、これにて散会いたします。
   午後五時十一分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  池田 勇人君
        法 務 大 臣 賀屋 興宣君
        大 蔵 大 臣 田中 角榮君
        文 部 大 臣 灘尾 弘吉君
        厚 生 大 臣 小林 武治君
        農 林 大 臣 赤城 宗徳君
        通商産業大臣  福田  一君
        運 輸 大 臣 綾部健太郎君
        郵 政 大 臣 古池 信三君
        労 働 大 臣 大橋 武夫君
        自 治 大 臣 赤澤 正道君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 林  修三君
        内閣法制局第一
        部長      吉國 一郎君
        林野庁長官   田中 重吾君
        運輸省鉄道監督
        局長      廣瀬 眞一君
        郵政省人事局長 増森  孝君
     ――――◇―――――