第047回国会 本会議 第7号
昭和三十九年十二月十四日(月曜日)
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 議事日程 第六号
  昭和三十九年十二月十四日
   午後二時開議
 第一 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改
  正する法律案(内閣提出)
 第二 検察官の俸給等に関する法律等の一部を
  改正する法律案(内閣提出)
 第三 交付税及び譲与税配付金特別会計法の一
  部を改正する法律案(内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
 田口誠治君の故議員三田村武夫君に対する追悼
  演説
 裁判官訴追委員辞職の件
 裁判官訴追委員の選挙
 九州地方開発審議会委員の選挙
 日程第一 裁判官の報酬等に関する法律の一部
  を改正する法律案(内閣提出)
 日程第二 検察官の俸給等に関する法律等の一
  部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第三 交付税及び譲与税配付金特別会計法
  の一部を改正する法律案(内閣提出)
 天災による被害農林漁業者等に対する資金の融
  通に関する暫定措置法の一部を改正する法律
  案(内閣提出)及び天災による被害農林漁業者
  等に対する資金の融通に関する暫定措置法等
  の一部を改正する法律案(芳賀貢君外十八名
  提出)の趣旨説明及び質疑
   午後二時七分開議
○議長(船田中君) これより会議を開きます。
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○議長(船田中君) 御報告いたすことがあります。
 議員三田村武夫君は、去る十一月二十四日逝去せられました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。
 同君に対する弔詞は、議長において、去る十一月二十八日贈呈いたしました。これを朗読いたします。
  〔総員起立〕
 衆議院は多年憲政のために尽力しさきに法務委員長の要職にあたられた議員正四位勲二等三田村武夫君の長逝を哀悼しつつしんで弔詞をささげます
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 田口誠治君の故議員三田村武夫君に対する追悼演説
○議長(船田中君) この際、弔意を表するため、田口誠治君から発言を求められております。これを許します。田口誠治君。
  〔田口誠治君登壇〕
○田口誠治君 ただいま議長から御報告のありましたとおり、本院議員三田村武夫先生は、去る十一月二十四日、病のため東京慈恵会医科大学附属病院において逝去されました。まことに痛惜の念にたえません。
 ここに、私は、皆さまの御同意を得て、議員一同を代表し、つつしんで哀悼のことばを申し述べたいと存じます。(拍手)
 三田村先生は、明治三十二年六月、岐阜県揖斐郡大野町にお生まれになりました。幼いときから明敏をうたわれた先生は、独学力行し、大正十五年、若くして岐阜県警察訓練所教官となられました。さらに、内務省警察講習所に入って研さんを積み、卒業の後懇望されて内務省、拓務省に約七年の間勤務されましたが、昭和十年、おりから台頭の著しかった軍部の政治干渉に痛憤して退職されたのでありました。
 ここにおいて、先生は、わが国の将来を憂慮し、国民大衆に幸福をもたらすためには、健全な議会政治の確立こそ第一の急務であるとの信念に到達し、政界に入る決心をされたのであります。
 先生は、昭和十二年四月、第二十回衆議院議員総選挙が行なわれるや、東方会に属して岐阜県第二区より出馬し、みごと当選の栄をかち得られました。(拍手)自来、中野正剛氏と師弟の交わりを越えたかたい同志的な契りを結んで行動をともにし、当時の困難な事情のもとにあって、身命を賭して奮闘されました。議会政治が軍閥によって支配されようとするとき、これに対抗し、推薦選挙に反対されたのは、議会政治の擁護を願う真心からでありました。(拍手)ついには、昭和十八年、翼賛政治会脱退声名書が言論、出版、集会、結社等臨時取締法違反に問われ、先生は活動の自由を奪われるという過酷な事態に直面されるに至ったのでありました。
 わが国が平和を回復し、先生もまた過去の束縛から放たれ、大いに志を伸ばそうとされていたやさき、いかんせん、またもやしばしの雌伏を余儀なくされました。この間にあっても、憂国の至情いよいよ厚く、わが国の過去を顧み、現状を探り、他日に期しておられたのであります。
 やがて、昭和三十年、第二十七回の総選挙に際し、岐阜県第一区から立候補して再び本院に議席を得られました。先生は、常に公明選挙を唱え、まさに言論一本やりで、苦しい戦いに終始されました。先生の国を憂え、国民の幸福を願うその真心からほとばしる情熱に満ち満ちた演説に郷土の者は胸打たれ、老若男女の別なく先生を尊敬し、信頼し、期待をして支援を惜しまなかったのであります。(拍手)
 本院に復帰後の先生が最も意を注がれたのは、明るい清潔な政治の確立、そうして住みごこちのよい国土の建設でありました。かくして、汚職と暴力を根絶することをもってみずからの任務とし、その実現に献身的な努力をされたのであります。そのために、一貫して法務委員会の委員あるいは理事として尽くされ、第二十六回国会以来一年にわたって法務委員長の重職をになわれました。
 責任感の強い先生は、この間において、与野党の意見調整のために病床をけって登院されたこともあり、わが身の病を顧みず骨身を削るごとき無理な活動もあえてし、誠意に満ちた態度をもって重責を果たされたのであります。(拍手)
 また、外務、地方行政、農林水産その他の分野においても、真摯かつ熱心に諸案件の審議に当たるなど、幅広い活躍をされております。
 次代をになう青少年の保護育成は、日ごろ先生が最も熱心に取り組んでおられた問題の一つであり、さきには、中央青少年問題協議会委員として精薄児対策の推進、青少年の非行防止対策の樹立等に寄与をされております。
 さらに、社団法人農林水産航空協会会長として、航空機の利用による空からの農業という新分野の開発にもつとめておられました。
 自由民主党においては、組織総局長、文教制度調査会副会長、総務、選挙調査会副会長などの要職を歴任されております。先生はまた文筆にすぐれ、多くの名著を残されましたが、自由民主党の結党に際しての立党宣言は実に先生御自身の筆になるものであると承ります。これこそ政党政治家としての真価をいかんなく発揮した永遠の文章と申せましょう。(拍手)
 かくして、先生は、本院議員に当選すること前後五回、在職十五年八カ月に及んでおり、この間に、先生が国家、国民のために残された業績はまことに偉大なものがあります。
 「どしゃ降りのあらしの中をびしょぬれでかけ抜けてきた」とは、三田村先生御自身の過去を振り返っての述懐であります。わが国が苦難の道をたどったときにあたり、先生は三十年間烈々たる気魄をもって憂国の一筋道を歩まれ、あらゆる迫害と戦い、どんな困難にも屈することなく、ひたすらに議会政治、政党政治の擁護と発展のために命がけで働き抜かれました。三田村先生こそ、まさに国士というにふさわしい方でありました。(拍手)
 そうして、先生は清廉潔白、高邁な人格者で、加うるに、常に民衆とともにありたいという熱意の持ち主でありました。先生の明敏さと手腕、その堅固な意思とをもってすれば、どのような地位も望み得たでありましょうが、あえてこれを望まず、みずからを捨て、清貧に甘んじ、ただただ人のため、世のために尽くすことをもって最上の楽しみとしておられたのでありました。この精神からにじみ出る国民大衆への深い慈愛に多くの人々が心から尊敬をささげてやまなかったのであります。(拍手)
 先生のお年六十五、ようやく政治家として円熟の境に達し、政党政治の発展のためにこれからの御活躍に多くの期待が寄せられていたのであります。先生もまた、病床にあって、「絶対にぼくは死なない。いまは死ねないんだよ」と口癖のように言われ、最後まで念頭を去らなかったのは、これは、政党政治の権威を維持し、真に国民とともにある健全な民主政治の確立のために、もっともっと働きたいというとうとい信念から出たことばでありましょう。(拍手)その悲願もむなしく、こつ然として世を去られた先生を思うとき、痛恨の念ひとしお切なるものがあります。
 現下、内政に外交に重要な問題が山積し、わが国会の審議も高まっている今日、先生のような練達たんのうな士を失いましたことは、返す返すも残念なことであり、本院にとっても、国家にとっても、まことに大きな損失であると申さなければなりません。(拍手)
 ここに、三田村先生の生前の御功績をたたえ、その人となりをしのび、心から御冥福をお祈りして追悼のことばといたします。(拍手)
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 裁判官訴追委員辞職の件
○議長(船田中君) おはかりいたします。
 裁判官訴追委員吉田重延君から、訴追委員を辞職いたしたいとの申し出があります。右申し出を許可するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。
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 裁判官訴追委員の選挙
○議長(船田中君) つきましては、この際、裁判官訴追委員の選挙を行ないます。
○小沢辰男君 裁判官訴追委員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されんことを望みます。
○議長(船田中君) 小沢辰男君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。
 議長は、裁判官訴追委員に小笠公韶君を指名いたします。
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 九州地方開発審議会委員の選挙
○議長(船田中君) 九州地方開発審議会委員が一名欠員になっておりますので、この際、その選挙を行ないます。
○小沢辰男君 九州地方開発審議会委員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されんことを望みます。
○議長(船田中君) 小沢辰男君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。
 議長は、九州地方開発審議会委員に福永一臣君を指名いたします。
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 日程第一 裁判官の報酬等に関する法律の一
  部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第二 検察官の俸給等に関する法律等の
 一部を改正する法律案(内閣提出)
○議長(船田中君) 日程第一、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案、日程第二、検察官の俸給等に関する法律等の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。
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○議長(船田中君) 委員長の報告を求めます。法務委員長濱野清吾君。
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  〔報告書は本号末尾に掲載〕
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  〔濱野清吾君登壇〕
○濱野清吾君 ただいま議題となりました両法律案について、法務委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 政府は、今回人事院勧告の趣旨にかんがみて、一般職の職員及び特別職の職員の給与を改定する法律案を提出いたしましたので、裁判官及び検察官につきましても、一般職の政府職員の例に準じてその給与を改定する必要があるので、この両案を提出した次第であります。
 そのおもな内容は次のとおりであります。
 第一に、東京高等裁判所長官以外の高等裁判所長官の報酬並びに次長検事及び検事長の俸給の各月額を増加したことであります。
 第二に、判事、判事補及び簡易裁判所判事の報酬並びに検事及び副検事の俸給の各月額を増加する等の改正を行なうこととしたことであります。
 第三に、一般職の政府職員の例に準じ、昭和四十年四月一日から、一部の判事及び検事並びに判事補、簡易裁判所判事及び副検事について、その暫定手当の一定の額を、報酬または俸給に繰り入れる等の措置をすることであります。
 両案は、去る四日当委員会に付託され、七日提案理由の説明を聴取し、両案を一括審議に付し、十一日、質疑を行ないました。討論がありませんので、直ちに採決に付しました結果、両案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと議決した次第であります。
 なお、両案に対しまして、自由民主党、日本社会党、民主社会党の各党共同提案による裁判官及び検察官の職務とその責任の特殊性にかんがみ、政府は、裁判官及び検察官の給与制度については、臨時司法制度調査会の意見を尊重し、その優遇策の樹立と、すみやかな実施について、格段の努力をいたすべき旨の附帯決議が付されました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(船田中君) 両案を一括して採決いたします。
 両案の委員長の報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○議長(船田中君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。
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 日程第三 交付税及び譲与税配付金特別会計
  法の一部を改正する法律案(内閣提出)
○議長(船田中君) 日程第三、交付税及び譲与税一配付金特別会計法の一部を改正する法律案を議題といたします。
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○議長(船田中君) 委員長の報告を求めます。大蔵委員長吉田重延君。
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  〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔吉田重延君登壇〕
○吉田重延君 ただいま議題となりました交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案につきまして、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 今般、地方公務員の給与改定に要する経費の財源に資するため、昭和三十九年度限りの特別措置といたしまして、地方団体に交付すべき地方交付税の総額を百五十億円増額することとし、別途法律案が提案いたされておりますが、この措置に対一応して、本法律案は、交付税及び譲与税配付金特別会計におきまして、昭和三十九年度において、予算の定めるところにより借入金をすることができることとし、右の金額については、昭和四十年度以降五カ年度間にわたり返済が行なわれるよう措置することといたしております。
 また、借入金の利子の支払いに充てるため必要な金額は、予算で定めるところにより、一般会計からこの会計に繰り入れるものといたしております。
 以上がこの法律案の内容でありますが、この法律案は、去る十二日、質疑を終了し、直ちに討論に入りましたところ、武藤委員は日本社会党を代表して本案に対し反対の意見を述べられました。次いで、採決いたしましたところ、本案は起立多数をもって原案のとおり可決いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(船田中君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○議長(船田中君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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 天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法等の一部を改正する法律案(芳賀貢君外十八名提出)の趣旨説明
○議長(船田中君) 議院運営委員会の決定により、内閣提出、天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法の一部を改正する法律案、及び芳賀貢君外十八名提出、天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法等の一部を改正する法律案の趣旨の説明を順次求めます。農林大臣赤城宗徳君。
  〔国務大臣赤城宗徳君登壇〕
○国務大臣(赤城宗徳君) 天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 天災融資法は、昭和三十年に制定されて以来、天災による被害農林漁業者等に対する低利資金の融通に大きな役割りを果たしてまいりましたが、最近における資本集約化、経営の協業化の進展等、農林漁業経営の推移に伴い、必ずしも経営の実態に即しているとは言いがたい面も生じてきております。
 特に第四十六回国会終了後今日までの間において、北海道における冷害等、農作物等に著しく激甚な被害をもたらした災害が発生いたしましたが、現行の天災融資法による貸し付け限度額のままでは、これらの災害による被害農業者等の経営資金の需要に十分には対処しがたいのであります。この法律案は、このような事態に対処して被害農業者等に必要な経営資金を供給するため、当面必要とする措置を早急に講ずることとし、天災融資法に所要の改正を行なわんとするものであります。
 次に、主要な改正点を御説明いたします。
 第一点は、内地十五万円、北海道二十万円と定められていた経営資金の貸し付け限度額を、それぞれ内地二十万円、北海道三十五万円に引き上げることであります。
 第二点は、政令で定める法人につき、その経営資金の貸し付け限度額を設け、これを二百五十万円とすることであります。
 第三点は、すでに経営資金の貸し付けを受けている者がその償還期限内に再び被害農林漁業者に該当することとなった場合においては、その経営資金の償還に充てるために必要な資金の額を、政令で定める額の範囲内において経営資金の貸し付け限度額に加算することであります。
 第四点は、以上の改正にあわせて激甚災害法における天災融資法の特例措置に関する規定を改め、激甚災害の場合の経営資金の貸し付け限度額、内地二十万円、北海道二十五万円を、それぞれ内地二十五万円、北海道四十万円に引き上げることであります。
 なお、これらの改正規定は、七月以降の天災につき適用することとしております。
 以上がこの法律案の趣旨であります。(拍手)
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○議長(船田中君) 提出者芳賀貢君。
  〔芳賀貢君登壇〕
○芳賀貢君 天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法等の一部を改正する法律案につき、提出者を代表して、提案の趣旨を御説明申し上げます。
 御承知のとおり、現行の天災融資法は昭和三十年に議員立法として制定されたものであり、農林漁業災害に対する融資制度として、自来十年間にわたり農林漁業の経営及び再生産に必要な低利資金を現在まで一千億円に及び融通する措置を講じ、農林水産業の生産力の維持と経営の安定に重要な役割りを果たしてまいったのであります。しかしながら、現行法は、十年を経過した今日、運用の面においても農林水産業の経営の実態に適合しがたい欠陥があらわれてきたことはいなめない事実であります。
 すなわち、近時における日本の経済の高度成長は目ざましいものがありますが、一方においては経済のひずみを生じ、成長率の低い農業と他産業との格差はますます増大して、昭和三十六年に制定された農業基本法もいまでは空文化される運命に置かれております。しかも、最近における物価の著しい値上がりは、農林漁業の経営に対しても必要経費の増加と資本効率の低下を招き、自立経営の維持、発展に重大な阻害となっております。
 さらに、わが国の置かれた地理的、気象的条件は、天災による被害が連年各地に発生し、特に農林漁業のこうむる損害は甚大なものがあります。
 もちろん、国においても、天災によるこれらの災害については、立法措置及び行政措置を講じて対処してまいったのでありますが、この際すみやかに災害関係の諸制度の根本的検討を進め、災害復旧、災害補償、災害融資等についての国としての責任を明らかにすべきであります。
 特に、農業経営に必要な資金の需要は増加の一途を示し、そのおもなものを農林統計に見ましても、全国農家二戸当たり平均現金支出は、昭和三十年は七万六千円であったものが三十八年には十五万二千円で二倍に、飼料は一万四千円が五万二千円で三・六倍に、農薬は三千二百円が八千円で二・五倍に、農機具は四千三百円が六千六百円で一・六倍となっているのであります。
 このように、生産資材等の価格の高騰とあわせて投入量においてもはなはだしく増大しており、農林漁業の経営は本法制定当時と比較した場合、その実態に大きな変貌を来たしたにもかかわら一ず、現行法は旧態依然として運用されており、ほとんど全文にわたり不合理、不適当な個所が指摘されるのであります。
 したがいまして、わが日本社会党といたしましては、近時における災害が農林漁業に与える影響と被害農林漁業者の経営の実態に留意し、この際現行法に積極的な検討を加え、すなわち、被害者となり得る要件の緩和、貸し付け限度額の引き上げ、貸し付け金利の引き下げ等、貸し付け条件の緩和、利子補給及び損失補償の国庫補助率の引き上げ等について所要の改正を行なうことといたしたのであります。また、本年度において本土を縦断した台風二十号の激甚災害及び未曾有の被害をもたらした北海道の冷害に対しましても本法を活用し、早急に対策を講ずる必要があると認められますので、両災害につきましても適用できるようにしようとしているのであります。以上が本改正案を提出した理由であります。
 次に、本法案の概要について申し上げます。
 第一点は、第二条第一項の被害農林漁業者となり得る条件を緩和いたしまして、広く被害農林漁業に対し、天災資金の融通を受けられるようにしようとするものであります。
 すなわち、農業者であって農作物等の減収量が平年度の収穫量の三〇%以上であり、かつ、その損失額が平年度の総収入の一〇%以上である旨、または果樹等の損失額が被害時の三〇%以上である旨、市町村長が認定した場合は被害農業者として本法による天災資金の貸し付けが受けられることとなっているのでありますが、この被害率を緩和し、農作物等の減収量の三〇%を二五%に、同損失額の一〇%を八%に、果樹等の損失額の三〇%を二五%にしようとするのであります。林業者につきましても同様に、薪炭等の損失額がその者の平年度の総収入の一〇%である旨、または炭がま等、施設の損失額が被害時の五〇%以上である旨、市町村長の認定を受けた者が貸し付け対象者となっているのでありますが、この被害率を緩和し、薪炭等の損失額の一〇%を八%に、施設の損失額の五〇%を四〇%にしようとするものであります。
 また、漁業者につきましても同様に、魚類等の損失額がその者の平年度の総収入の一〇%である旨、または漁船、漁具の損失額が被害時の五〇%以上である旨、市町村長の認定を受けた者が貸し付け対象者となっているのでありますが、この被害率を緩和し、魚類等の損失額の一〇%を八%に、漁船、漁具の損失額の五〇%を四〇%にしようとするものであります。
 第二点は、第二条第二項の特別被害農林漁業者となり得る条件を緩和いたしまして、被害農林漁業者のうち、その大部分の者に対し特別低利資金を融通することができるようにしようとするものであります。
 すなわち、特別被害農業者として特別低利資金の貸し付けを受けることのできる農業者は、現行法においては、農作物等の損失額がその者の平年度の総収入の五〇%以上、開拓者の場合は三〇%以上である旨、または果樹等の損失額が被害時の五〇%以上、開拓者の場合は四〇%以上である旨、市町村長の認定を受けた者となっているのでありますが、これらの被害率を緩和し、農作物等の損失額の五〇%を四〇%に、開拓者の三〇%を二五%にし、また、果樹等の損失額の五〇%を四〇%に、開拓者の四〇%を三五%にしようとするものであります。特別被害林業者につきましても同様に、薪炭等の損失額がその者の平年度の総収入の五〇%以上である旨、または炭がま等の施設の損失額が被害時の七〇%以上である旨、市町村長の認定を受けた者が貸し付け対象者となっているのでありますが、この被害率を緩和し、薪炭等の損失額の五〇%を四〇%に、施設の損失額の七〇%を六〇%にしようとするものであります。
 また、特別被害漁業者につきましても同様に、魚類等の損失額がその者の平年度の総収入の五〇%以上である旨、または漁船、漁具の損失額が被害時の七〇%以上である旨、市町村長の認定を受けた者が貸し付け対象者となっているのでありますが、この被害率を緩和し、魚類等の損失額の五〇%を四〇%に、漁船、漁具の損失額の七〇%を六〇%にしようとするものであります。
 さらに、現行法におきましては、特別被害農林漁業者としての条件を整えているにもかかわらず、その者の被害地が特別被害区域の指定を受けられないがために、特別低利資金の貸し付けを受けられないという大きな矛盾があるのであります。すなわち、法第二条第五項で特別被害地域として指定を受けることのできる条件は、原則として、旧市町村の区域の被害農林漁業者の中に特別被害者が一〇%以上ある区域となっているのであります。しかしながら、被害の深度は、指定地域であるがゆえに必ずしもその他の地域よりも大きいとは断定し得ないのでありまして、法の適用の公平を期するためにも、この際この不合理な条件を廃止しようとしているのであります。
 第三点は、第二条第四項第一号から第三号までの経営資金及び同条第七項の事業資金についての貸し付け限度額の引き上げ及び貸し付け条件の緩和をはかるとともに、この際農業法人等に対する貸し付け制度を新設し、本法の拡充をはかることといたしたのであります。
 すなわち、経営資金の貸し付け限度については、現行法の被害農林漁業者に対する十五万円を四十万円に、北海道の地域にあっては二十万円を五十万円に引き上げるとともに、農業法人に対しては四百万円を、北海道にあっては五百万円を限度として貸し付けようとするものであります。
 また、以上のように貸し付け限度が定められているにもかかわらず、現行法にあっては、被害額を基準として、政令で定めるところにより算出された額が法律で定めた貸し付け限度額よりも低い場合は、その低い額によるものと規定されているのであります。この政令により定められる率は、過去の政令のほとんどが被害額の三〇%と定めている関係上、貸し付け限度額が不当に制限されており、必要経営資金の額を大きく下回り、実情に沿わなくなっているのであります。したがって、少なくとも被害額の四〇%以上は貸し付けるべきであるとの観点に立って、政令にゆだねる最低率を四〇%以上とするように明定したのであります。
 また、償還期限及び貸し付け金利につきましても、貸し付け額の増額に伴いまして、農林漁業者の返済能力と経営に悪影響を与えない限界を考慮して、相当率の緩和をはかろうとしているのであります。すなわち、現行償還期限の五年以内を十年以内に延長するとともに、据え置き期間三年以内を新しく設けることとし、また、金利につきましても、農林漁業の低収益性と災害資金の特質を考慮して、現行六分五厘を三分五厘に、開拓資金の五分五厘を三分に、特別低利資金の三分五厘は二分に引き下げることとしているのであります。
 また、被害地域の農業協同組合等の事業資金についても、経営資金の条件緩和に伴いまして、貸し付け限度額、貸し付け条件の緩和をはかることとし、すなわち、現行の貸し付け限度額の五百万円を一千万円に、連合会に対する貸し付け限度の一千万円を二千万円にするとともに、償還期限の三年以内を五年以内に、金利の年六分五厘を三分五厘にしようとするものであります。
 第四点は、第三条及び第四条の地方公共団体の負担する利子補給及び損失補償に対する国庫補助額の引き上げであります。災害を受けた農林漁業者の属する市町村及び都道府県の財政負担を軽減することは、被害農林漁業者に対する措置と同様に欠くべからざるものであり、激甚災害に対処するための財政援助等に関する法律もこの趣旨をくんで立法されたことは明らかであります。したがいまして、地方公共団体の負担する利子補給及び損失補償につきましても、原則として全額を国庫で負担するようにしようとするものであります。
 すなわち、現行法の利子補給は、三分五厘資金にあっては、利子支払い額の五〇%またはその年の貸し付け額を年利二分五厘で計算した額のどちらか低い額となっておりますのを、基準利子の九分五厘と三分五厘の金利差六分の利子の全額を国庫負担にしようとするものであります。開拓者の三分資金については、基準利子の九分五厘と三分の金利差の六分五厘の利子の全額を、また、特別被害農林漁業者に貸し付ける二分資金については、基準利子の九分五厘と二分との金利差の七分五厘の利子の全額を国庫補助しようとするものであります。かくのごとく市町村及び都道府県の利子補給分の全額を国庫補助することになった場合にあっても、市町村及び都道府県が被害農林漁業者の支払う利子の一部を補助することを禁じているわけではなく、その部分を補助したといたしましても、その補助金については、国庫は補助の対象としないこととしておるのであります。
 また、損失補償につきましては、現行法においては損失補償額の五〇%か、または貸し付け額の年二分五厘で計算した額か、どちらか低い額を補助することとなっておりますのを、今回全額国庫補助にしようとしているのであります。
 次に、激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律の一部改正について申し上げます。
 本案は、その内容が、天災融資法の改正に伴いまして、その均衡上の改正部分のみでありますので、改正の趣旨につきましては重複を避けるため、これを省略さしていただくこととし、改正の内容について申し上げます。
 第一点は、第八条第一項の、経営資金の貸し付け限度の引き上げ及び貸し付け条件の緩和についてであります。
 すなわち、現行法の貸し付け限度額は、二戸当たり二十万円、北海道については二十五万円であり、政令で定める者については五十万円となっておりますのを、二月当たり六十万円に、北海道については七十万円に、政令で定める者については百万円とするほか、新たに農業法人等に対する貸し付けの道を開くこととし、その限度額は六百万円に、北海道にあっては七百万円、法人のうち、果樹専業者等にあっては一千万円にしようとするものであります。また、その償還期限につきましても、現行の五年を十年とし、政令で定める者に貸し付ける資金についての七年を十三年にしようとするものであります。そのほか、被害地域の農業協同組合等に対する事業資金の貸し付け限度額及び貸し付け条件の緩和については、組合に対する一千万円を二千万円に、連合会にあっては一千五百万円を三千万円に引き上げることといたしたのであります。
 次に、本案の附則において、本法は、昭和三十九年七月一日以降の天災または災害につき適用することといたしたのでありますが、これは先ほど申し述べたとおり、台風二十号及び北海道の未曾有の冷害が激甚であることにかんがみて、本法をこれらの災害に適用する必要があるためであります。
 以上、この法律案につきましてその趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)
     ――――◇―――――
 天災による被害農林漁業者等に対する資金の
  融通に関する暫定措置法の一部を改正する
  法律案(内閣提出)及び天災による被害農林
  漁業者等に対する資金の融通に関する暫定
  措置法等の一部を改正する法律案(芳賀貢
  君外十八名提出)の趣旨説明に対する質疑
○議長(船田中君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。松浦定義君。
  〔松浦定義君登壇〕
○松浦定義君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま趣旨説明のありました天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法の一部を改正する法律案に対しまして、佐藤総理大臣並びに赤城農林大臣、田中大蔵大臣に対し御質疑を申し上げ、本法の特殊性にかんがみまして、被災農林漁業者が納得のできる御答弁をいただくよう前もって申し上げておきたいと思います。
 質問の第一点は、わが国は特殊的地域の多いということであります。すなわち、北海道から九州に至るえんえん三千数十キロに及ぶ長蛇のごとき島国であり、気候、風土ともに異なり、特に災害常襲国、いや災害王国とさえいわれる異名を裏づけるごとく、年じゅういずれかの地帯に災害が発生しているのであります。最近の実態を見ましても、昭和二十九年の台風十三号による洞爺丸事件のあった悲惨な災害、静岡県伊豆山ろく一帯の大災害、伊勢湾台風、九州一帯の常襲災害、さらに新潟の大災害、北海道の冷害、二十号台風、八月、十月の長雨等々、大災害の連続であります。これらの被害に対し、政府は、いずれの場合も、現行法の不備を認めながらも、立法をたてに、ないそでは振れぬ式の旧態依然たる押しつけ政策の一貫であったことは、まことに遺憾にたえないところであります。政府は、去る三十七年制定の災害対策基本法に基づき努力されているとは思うが、今日までの各種の災害に対し必ずしも適切で一あったとは言えないのであります。特に北海道における冷害等の被害は、他の暴風、豪雨、洪水、高潮、地震並びに大火災等々と異なり、農作物の被害であるので、一般社会通念の災害としては表面にあらわれないものであり、その深刻さはきわめて把握しがたいものであります。政府はこれら農作物災害に対し特段の考慮をすべきだと考えます。特に予算措置の点について災害対策基本法の改定が必要と思うが、総理大臣並びに大蔵、農林両大臣の御所見を承っておきたいと思います。
 ただいま農林大臣の御説明を聞いておりますと、本法改正によって被害農業者の経営資金は十分に供給することができると言明をされておりますが、農林大臣の十分とはどの程度のものか、現在の農業者の経営の実態を資金の面より見てどのようにお考えになっておられるか、明らかにしていただきたいと思います。
 私は、本法の改正が北海道の冷害に基因している実情から、総被害額五百七十三億、政府の調査によっても五百三億、北海道においては史上最高の被害であります。これらに対する調査の実態を明らかにしていただきたいと思います。
 次に、今回の改正案に示された貸し付け限度額、天災融資法内地十五万を二十万に、北海道二十万を三十五万についてであります。これは明らかに十年前の経営資金量に照らして不十分であることは言を待たないところであります。特に激甚法については、内地二十万を二十五万に、北海道二十五万を四十万については、対象農業者が収穫皆無であり、生活困窮者であるだけに、内地二十五万、北海道四十万では、これまた不足であります。特に北海道の農業者の平均耕作面積は、水田においては三・五ヘクタール、畑地帯においては十二ないし十三ヘクタール以上で、一戸平均にして経営資金は少なくとも五十万以上は必要であります。政府は、先般、北海道と青森県に対し四十五億の融資を決定したが、本法が改正された場合の資金総額を明らかにしていただきたいと思います。
 さらに、今回の改正は、貸し付け限度の改正のみで、金利等について一切触れていないのはいかなる理由によるのか、この点を明らかにされたいと存じます。特に本法の目的が資金の融通にあるので、安い利子の融資が受けられるところに被災農業者の救済が行なわれるのであります。政府は、単にこの間の利子補給と、最悪の場合は一部に対し損失補てんを行なう程度であり、かかる内容の不備な本法は、この際全面改正を行ない、被災農林漁業者が安心して再生産に取り組むことができるよう措置すべきであると思うが、この点について政府の見解を明らかにされたいと存じます。
 次に、法人に対する貸し付け限度額についてであります。改正案では一法人二百五十万でありますが、聞くところによれば、一法人を平均五戸の集団であると限定されているようであります。これは全く実情を無視したものであります。法人組織については、農業基本法の制定によって、自立農家育成の大方針に協力しながら、地域における特殊性を最高度に生かして、農業の近代化、生産の合理化に努力している法人は、その施設その他においても戸別経営以上の投資をしているものであり、その法人が災害を受けた場合、少なくとも戸別集団の数、すなわち個々の集団の実態に応じた額の貸し付け額を認めるべきであります。一例を北海道の中札内村の法人に見るならば、一法人十五人ないしは二十人の組織であります。それらが内地並みの平均五戸で計算された二百五十万では、法人が解散の道を選ぶ結果になると存じます。したがいまして、法人に対しては戸別の累計を加味した実態に即した取り扱いを行ない得るよう特例を設けるべきであると思うが、お伺いいたします。
 以上を総合してみましても、政府案は全く実情を無視した災害立法だといわざるを得ないのであります。去る十二月四日提出、本日提案理由の説明がありました、社会党提案にかかる天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法等の一部を改正する法律案が、芳賀議員の提案理由の説明にありまするように、政府案と社会党案と対比してみますと、政府案では被災農業者は救われないということになるのであります。社会党案をもっていたしましても、被災者の真の要望にはこたえられるものではありませんが、政府案に比較するならば、被災農林漁業者にとっては、史上最大の冷害に対する対策としては、社会党案は史上最善の法案であると確信するものであります。(拍手)
 すなわちへ政府案による貸し付け限度額は、内地十五万を二十万に、北海道二十万を三十五万とするのであるが、社会党案は、内地十五万を四十万に、北海道二十万を五十万とする。さらに、激甚災害に対する場合は、政府案では、内地二十万を二十五万に、北海道二十五万を四十万にする、また政令で定める場合は五十万であるが、社会党案では、内地六十万、北海道七十万、政令で定める場合は百万とする。特に法人に対する場合は、政府案では二百五十万であるが、社会党案では、内地四百万、北海道五百万とする、また政令で定める場合は、内地六百万、北海道七百万であります。特に金利の点についても、三分五厘を二分に、五分五厘を三分に、六分五厘を三分五厘に、それぞれ金利の引き下げを行なうとともに、返済期間の五年を十年に、また七年を十三年に改め、さらに、政府案では据え置き期間が全くなく、初年度より直ちに返済期に入ることは、天災法適用の趣旨にも反するのであります。社会党案は、被害者の経済的並びに精神的な実情を配慮しての救済策として、据え置き期間を三年以内とする、このことは当然であると存じます。
 以上の社会党案に対して、総理大臣、農林大臣、大蔵大臣より、その立場において賛成の向きもあろうかと思いますが、もし賛成できないとされるならば、その理由を明らかにされたいと思うのであります。(拍手)
 次に、政府は、天災法の適用によって経営資金を充当する、生活資金については自作農維持資金によってまかなうべきであるとの説明がなされてまいりました。先般決定されました北海道に対する四十億の配分を見ますと、冷害の激甚地である畑作地帯の十勝地方において十五億の配分を見ても、一戸当たり十万以下で終わっているのであります。政府は自作農維持資金融通法の改正を行ない、資金額の限度及び貸し付け条件の改定を行なう等、自立農家育成に万全を期すべきであると思うが、御見解を承っておきたいと思います。
 この際、私は冷害地の実情を申し上げてみたいと存じます。十一月二十五日の同僚湯山議員の本会議場における質問にもありましたように、北海道の冷害については、三大臣並びに事務当局あげて現地調査に当たられ、北海道庁、市町村関係者の再三にわたる調査によってその実態は明らかであります。特に、国会の立場より、災害対策特別委員会、農林水産委員会の合同調査も行なわれ、現地被災農民は一日千秋の思いで対策の実現を願っていたのであります。しかるに、今日ようやくにして提案されましたが、臨時国会の会期は四十日であり、すでに余すところあと四日でありまして、この四日間において両院の審議を十分尽くすことは不可能に近いのみならず、一方、政府は与党の意見さえまとまれば他党の意見は聞く必要がないと考えておられるので、このような会期ぎりぎりの提案をあえてなされたのは国会無視の暴挙といわざるを得ないのでありまして、まことに遺憾にたえない次第であります。
 今日、現地の農民は、零下十五度の寒さの中で一日わずか九百円ないし一千円足らずの救災工事に従事し、それも事業量が少なく、全くその日暮らしの日雇い労務者以下の生活を続けている。また、冬季間を生活の一助にと、内地方面への出かせぎ者は日々増大しているのであります。一家の働き手の中心である青年層が、静岡のミカンつみをはじめとして、各地に、あるいは集団で、また個々で、働く場所を求め、すでに全道では一万五千人をこえんとしております。特に若い女子が家を離れて都会へ出かせぎに出るその結果、あの労働の激しい農業に再び帰るかどうかとの心配は、子供を手放す親や兄姉のみでなく、いまや社会問題として十分考えていただきたいところであります。何百人もの女子出かせぎ者の年齢は、いずれも二十歳以下の十八、十九歳がほとんどでありますが、それは何を意味するでありましょうか。私の地元や町からも何十人もの集団が出ておりますが、全部十八、十九歳であります。成人を迎える二十歳の女子は、一生一度の成人式には地元で参列し、社会人としての再出発の思い出を、冷害による生活苦からとはいいながら、他郷でのさびしい思い出として残したくないという、人間として生きている、いや、生きていこうとする、か弱いおとめ心を、親もこれを見るにしのびず、引きとめているのが実情であります。三月末まで働いて、四月より再び自宅に帰るには、喜んで帰ることのできるあらゆる環境の整備が必要であります。特に災害対策の重点は、こうしたところに根深くひそんでいることを、政府や関係当局は十分な御認識をしていただきたいと存じます。
 今回の天災法の一部改正が、先ほど以来私が申し上げておりますように、政府案ではこれら出かせぎ者に見られる若い働き手を勇気づけることが可能かどうか。特に、農業後継者の中心的役割りを果たす若き女子の諸君が喜んで農家に嫁にいける農業に発展させることは、政府の最大の責任であると存じます。人間尊重、青年に夢と希望を与えると主張される佐藤総理大臣の確信のある御答弁を承っておきたいと存じます。
 最後に、改正天災法の実施にあたって、政府の財政的負担は五カ年間に六億程度であり、初年度はわずか数千万に足らずと聞き及んでおりますが、利子補給額を明示願いたいと存じます。
 以上で質問を終わりますが、農林大臣、増原長官並びに松浦運輸大臣等々は、それぞれ現地視察の際、地元関係者、特に被災農民に対し、収穫皆無の圃場に立って手を握り、肩をたたいて、要望にこたえますと言われたが、そのことばはよもやお忘れにならないでありましょう。(拍手)現地では責任ある政府を代表してのことばであると受け取っており、今日その結果を見守っておるのであります。本法改正案の内容では、現地農民等の期待にこたえるにはほど遠いものがあります。政府は十分この点を認識され、理解ある立場に立って、社会党提案の内容を尊重され、適切なる措置を講ずる御意思がおありであるかどうかを最後にお尋ねいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
○議長(船田中君) 内閣総理大臣及び大蔵大臣の答弁は適当の機会に願うことといたします。
 農林大臣赤城宗徳君。
  〔国務大臣赤城宗徳君登壇〕
○国務大臣(赤城宗徳君) 日本といたしまして災害が続発することは、まことに困ったことでございます。そこで、災害対策基本法を改正して抜本的に災害対策を講じたらどうかという御意見でございます。災害対策基本法は、昭和三十六年に相当根本的の改正をいたしまして、いまそれに基づいて対策を講じておるわけでございます。でありますので、その対策は運用面いかんにあると思います。でございますので、運用に万全を期していきたいと思います。
 それから天災融資法のワクが非常に小さいじゃないか、こういうお尋ねでございます。少ないものですから、今度改正いたしまして一人当たりの貸し付け限度額を引き上げるとともに、融資ワクについても現在の二倍以上のワクを確保したい、こういうふうに考えておるわけでございます。
 そこで、今度の改正法は、ワクの拡大だけで、利率、据え置き期間等に触れないのはどうかということでございますが、利率につきましては、特別被害者の場合は三分五厘、普通の被害者の場合は、開拓者については五分五厘、その他は六分五厘となっておるのは御承知のとおりでございます。このうち、三分五厘というのは、現在ある各種の制度資金中最低の金利でありますので、その他の金利についても、他の制度金融におきまする金利との均衡を考えなければなりませんので、当面これを改正することとはしておりませんけれども、災害の実態を考慮して、必要があれば今後課題として検討いたしたいと、こう考えておるわけでございます。
 据え置き期間等につきましては、法律上明文はありませんが、償還期限内に含めて据え置き期間を設けることは運営上できることになっておりますので、その範囲内において据え置き期間を設定するように検討いたしてまいりたいと思います。
 そこで、この天災融資法の改正をいまごろ出すのはどうかということでございますが、先ほど趣旨説明で申し上げましたように、いまからでも改正をして、過去における北海道その他の災害までさかのぼって融資ワク等をふやしていきたいと、こう考えまするので、いまからでもおそくない、大事なことだと考えて提案したわけであります。
 そこで、社会党案と比較して、社会党案のほうがいいじゃないか。確かにいい面もありますが、政府案のほうが、何といたしましても現実に即した案でございまして、(拍手)社会党案は少しく現実を離れておるというふうな感をいたします。
 出かせぎが非常に多いということであるが、これに対して対策はどうかということでございますけれども、これはやはり根本的に、北海道農業といいますか、寒冷地農業といいますか、北海道の農業を確立していくということが根本であろうと思いますので、品種の改良等も進めてまいりましたが、寒冷地の品種をなお改良していくとか、あるいは土壌の改良が必要でございますので、土地改良、こういう点にさらに力を入れるとか、あるいは畑作農業、酪農等に力を入れるというようなことが、いままでもやってきたことでありますが、さらに力をいたして、寒冷地農業としての確立をはかっていかなければならないと思っております。現状につきましても、万全の策を講じて安定するような方法を講じていきたい、こういうふうに考えております。(拍手)
○議長(船田中君) これにて質疑は終了いたしました。
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○議長(船田中君) この際、暫時休憩いたします。
   午後三時十分休憩
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  〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕
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 出席国務大臣
       法 務 大 臣 高橋  等君
       農 林 大 臣 赤城 宗徳君
 出席政府委員
       大蔵政務次官  鍛冶 良作君
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