第048回国会 外務委員会 第12号
昭和四十年四月二日(金曜日)
   午前十一時三十二分開議
 出席委員
   委員長 安藤  覺君
   理事 高瀬  傳君 理事 野田 武夫君
   理事 福田 篤泰君 理事 毛利 松平君
   理事 戸叶 里子君 理事 帆足  計君
   理事 穗積 七郎君
      菊池 義郎君    鯨岡 兵輔君
      園田  直君    野見山清造君
      福井  勇君    増田甲子七君
      三原 朝雄君    森下 國雄君
      石野 久男君    石橋 政嗣君
      黒田 寿男君    河野  密君
      西村 関一君    松本 七郎君
      永末 英一君
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        外 務 大 臣 椎名悦三郎君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 高辻 正巳君
        外務政務次官  永田 亮一君
        外務事務官
        (アジア局長) 後宮 虎郎君
        外務事務官
        (アメリカ局
        長)      安川  壯君
        外務事務官
        (条約局長)  藤崎 萬里君
        通商産業事務官
        (通商局長)  山本 重信君
        運輸事務官
        (船員局長)  亀山 信郎君
        運輸事務官
        (航空局長)  栃内 一彦君
 委員外の出席者
        外務事務官
        (大臣官房審議
        官)      藤田久治郎君
        外務事務官
        (大臣官房外務
        参事官)    西堀 正弘君
        外務事務官
        (経済局外務参
        事官)     内田  宏君
        運輸事務官
        (海運局次長) 沢  雄次君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 国際情勢に関する件(日韓及びヴィエトナム問
 題)
 日米航空協定に関する件
     ――――◇―――――
○安藤委員長 これより外務委員会を開会いたします。
 国際情勢に関する件について調査を進めます。
 質疑の通告がありますので、これを許します。
 戸叶里子君。
○戸叶委員 総理がお見えになりまして、いろいろ質問をしたいのですが、時間が限られているようですから簡単に数点に限って御質問を申し上げたいと思います。
 まず第一に、新聞等によりますと、漁業協定、法的地位、請求権の問題等のそれぞれの協定に今明日中に調印するかのような報道がされておりますけれども、無理しても今明日中に調印されようとしておられるかどうか、この点を伺いたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 無理してもというお話ですが、さようなことはございません。ただいま、相互の理解を取りつけて、そうして、無理にならないような、両国国民が納得のいくような、そういうような方向で調印をしたい、せっかく外務大臣、農林大臣努力中でございます。その点は御了承いただきまして、私ども、早期妥結、かようには思っておりますが、そのために何でも譲歩する、こういうような考え方は毛頭ございません。両国国民の将来の親善友好、それを樹立するためにも、この際は十分納得のいくということが大事なことだ、かように思います。また、皆さん方のほうからもそういう点についての御注意等ございます。よくその御高見も拝承しながら私どもは善処しておるつもりでございます。
○戸叶委員 いまなお話をしている最中であるということを伺ったのですが、さらにまた、総理大臣は、譲歩をしてまでしない、こういうことの御答弁がございました。しかし、私どもは、今回の交渉の経過を見ておりますと、どうしてこんなに日本は韓国に譲らなければならないのだろうと思うほど譲っております。また、いろいろの論調を見ましても、譲歩に譲歩をなぜ日本がするのであろうかという声が高いわけでございます。一日も早く調印をしようという考えで、その結論に向かっていかに合わすかで譲歩しているのではないか、こういうふうにさえ私どもは思われるのでございまして、一体どうしてこんなに急ぐのであろうか、何かそれに従わなければならないような至上命令でもあるのではないか、こういう点を私どもはたいへんに危惧いたすものでございますが、そういう点は何もおありにならないのでしょうか。
○佐藤内閣総理大臣 こういう問題、日韓交渉を妥結するには、双方の言い分がございますから、どこかで話し合いが妥結しなければならない、一致点を見出さなければならない。いわゆる大局的見地に立って、そうして話し合いをするのであります。それを、いや譲歩だとか、この点も負けたとか、かように言われることは、当事者としてたいへん事実に合わない。私ども、どこまでも、大局的見地に立って、望ましい姿、そうして双方が歩み寄った、そういうものでございますので、いわゆる一方的な譲歩だとか、かようなものでないことだけ御了承をいただきたいと思います。
○戸叶委員 私はあとから具体的にその例を二、三申し上げたいと思いますが、ともかく総理大臣も一国の責任者としていろいろとお考えになっていらっしゃることはよくわかりますけれども、ただ、問題は、今度の日本と韓国との交渉というものは決して講和条約ではございません。あくまでもこれは自主独立、国家的利益というものを基調にした国交でなければならないわけであって、そういうふうな基本線に従っての交渉をしなければならぬと私は思うのです。その点をどういうふうにお考えになりますか。どうも、いままでのところ、そういうお考えが少し欠けているように私どもはお見受けするわけでございますが、この点を念のために伺いたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 前の質問にもそういう点がございますが、また、いまのお尋ねにも、どこからか指図を受けているんじゃないか、こういうような御懸念のように思いますが、私どもは自主独立外交を進めておる。もう自主的にやっております。どこからも、干渉がましいこと、あるいは指示がましいこと、さようなものは受けておりません。これは、私がアメリカに参りましてジョンソン大統領との共同コミュニケ等を通じて、その後におきましても政府の所信を一貫して説明しておりますが、何だかアメリカから特別な指示でもあったんじゃないか、こういうことをしばしば言われるのでありますが、あの共同コミュニケにもそういう点は触れておりませんし、また、帰朝後におきましても、はっきり、さような問題はございません、かように申しておるのであります。この点がなお一部におきまして疑問を持たれる。私はまことに残念に思いますが、この辺でいわゆるコンプレックスをなくして、そうして、真に自主的にきめていくんだ、ここに同調していただきたい、これを心からお願いをいたします。
○戸叶委員 総理大臣は御自分から一生懸命になって、自主独立的にやっていらっしゃるんだ、こういうふうにいろいろ言われるわけですが、私は、もっと国家的利益というものをほんとうに基本的な線として考えていただかなければならないと思います。先ほどアメリカとの関係につきましていろいろおっしゃいましたが、国民が非常に懸念に思っておりますことは、たとえば、椎名外務大臣が韓国へ行きますと、アメリカ大使館からエマーソン公使とかあるいはその他の関係者が直ちに行って同じころに韓国にいる、こういったいろいろな問題があるわけでございまして、私どもは、その間の関係が何もないというようなことは、どう考えてみてもあり得ないと思うわけでございます。こういう点はいま質問をしようとは思いません。しかし、そういったいろいろな疑問点があるということを、国民は非常に不愉快に思っているわけでございます。そこで、いま自主独立の立場でやっているんだとおっしゃいますけれども、たとえば国家的利益ということがどれまで考えられているか、その一つのいい例が、先ごろのこの外務委員会においてあらわれた入り会い権の問題でございます。三月二十六日の当外務委員会におきまして、農林大臣は、わが党の委員の質問に答えて、在来のこの国会での答弁と違って、わが国には入り会い権はない、こう答えられたのでございます。これまで幾たびか、予算、農林委員会で、領海がきまれば専管水域の中に日本の入り会い権ありと答弁されたのでございます。ところが、それが、いよいよ漁業交渉が妥結するというような具体的なところまで進んでまいりますと、入り会い権を放棄されたのでございます。これはつまり権利の放棄でありまして、国会で少なくとも入り会い権があると言っていたのを、権利を放棄したのですから、国家的利益から考えればこれはマイナスになっている、こういうふうに考えることでございますので、この既得権の放棄ということは国民にも非常に影響のあることでございますので、総理の御所信を伺っておきたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 いわゆるアウターゾーン、アウターシックス、そういう問題だと思います。かねてから、池田内閣当時に、ただいまのような点も、ぜひとも当方の利益を実現さしたい、かような交渉をしたい、こういうことをしばしば申してきたと思います。もちろん、赤城農林大臣もその点は百も承知でございます。問題は、こういうことを当方で交渉する、主張する、相手方はこれは反対だと言っている、そこで、話がまとまらない、そういう場合に、一体大局的見地に立った場合にいずれが国益を確保するゆえんなのか。今回の交渉におきましては、特に私どもが力を入れたものは、李承晩ラインというものの撤廃ということだと思います。同時にまた、過去においての私どもの漁獲数量その他の権利を確保する、そういう点に特に留意された。したがって、ただいま、漁獲量、あるいは船を幾らその地域に入れるか、こういうようなことが本来の形の最も力を入れるべき点だったと思います。まあ大体においてそういう点が当方の希望をいれるような妥結をみた、こういう際に、ただいまのアウターゾーンの問題を相手方の言い分を聞いた、そういう意味で、この点では妥協した、かような結果になっておるわけであります。その点が、ただいま戸叶さんは、重大なる国益の放棄だ、かように言われますが、私はさようには思わない。全体を見まして、その点は、通ればたいへんよかったと思いますが、相手方はやっぱりそれは絶対に反対だと言う、そういうところがお互いの話し合いの問題じゃないか。李承晩ラインについて、あるいはまた漁獲総量について、あるいはまた操業できる船について、安全操業等について、こういう問題が話し合いができたという際でありますので、その点は双方が納得いく線ということで妥結をした、かように御了承をいただきたいのであります。
○戸叶委員 双方が納得いく線といいましても、韓国は納得がいったかもしれませんが、日本はこれまで主張していたのですから、私は、納得がいくまでにはいろいろとその間に苦しみがあったと思うのです、これを放棄したらたいへんだということで。まあ譲歩したということが結論としては言えるのじゃないかと思うのです。しかも、ここでとれていたお魚がとれなくなるのです。そうして零細漁民には影響があることなんですから、ですから、私は、これは双方が納得いった線というふうに言い切っておしまいになるのは少し言い過ぎじゃないか、こういうように考えるわけです。
 その点はまたあとでお伺いしますが、それに関連いたしまして、さらに問題なのは、この入り会い権の問題にも関係があるのは、領海でございます。たびたびここの委員会での答弁を伺っておりますと、ある方は三海里、ある方は六海里と言っております。しかも、この間の委員会で伺っておりますと、外務省のほうは、領海をきめる必要がなかった、こういうことを言われているのでございますけれども、私は、漁業交渉をしている相手国の領海がどのぐらいであるか、領海の幅がどのぐらいであるか、そんなものは必要がないというようなことは、あまりにも無責任ではないか、こういうふうに考えます。沿岸国が自分の国の領海を持たないという例はないと私は思います。領土、領海がはっきりしていないでは、必ず私はあとに問題が残ると思いますけれども、一体領海の幅を自分の国で知らないなんという国がありますか。こういうことを許されておいていいのでしょうか。この点を伺いたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 日本の領海、これは三海里、(戸叶委員「日本じゃありません」と呼ぶ)日本はそれを主張しております。これはもうはっきりしております。ただいま漁業水域という問題についての、これはいわゆる領海とは別でございます。大体沿岸国がその漁業専管水域、そういうものをきめるという、これははっきり海洋会議では結論を出しておりませんけれども、しかし、大体欧州諸国等はただいま十二海里という専管水域を認めている。今回も、この領海の説とは別に、漁業専管水域について十二海里というものを双方がとったわけであります。これを、領海について韓国自身がどういう主張をするか、もしも当方の主張するような三海里でないというのなら、これは意見を異にするのでありますから、もちろんわが方としてもこういう基本線についての譲歩はなかなかできない。したがって、韓国がそれではどういうようなことを主張しているか。ただいままでは、韓国は、領海についての主張、これはあまりはっきりさしておりません。したがって、三海里を主張しておらないとか、あるいは四海里だとか、あるいは六海里説だとか、こういうような積極的な意見は出ておらない、かように私は理解しておりますので、いわゆる領海の問題は、当方はやっぱり三海里説を主張しておる、これがわが国の基本的な主張である、かように御理解をいただきたいのであります。したがって、もしそれに反対するものがあれば、どこまでもわが方の主張を通す、こういう考え方でおることは当然であります。
○戸叶委員 日本が三海里説をとっておることは存じております。それから、今回の漁業交渉で専管水域は十二海里、しかしその専管水域と領海の幅とは違うのだ、専管水域は領海ではない、こういうことも知っております。それで、私が伺いたいのは、漁業だけの問題じゃありません。一国の領土、領海というものは、私はその国できまっているはずだと思う。これは幾たびもこの国会で前から質問をしているのです。もしも韓国が何を言っているかわからないとおっしゃるならば、私は政府は怠慢だと思う。この委員会で、韓国はどう言っているのですかということを聞いても、そのつどそのつど、どこの国はどうです、ここの国はこうです、海洋会議ではこうです、日本はこうです、こういうことだけで、韓国は一体領海がどうなっているかということは、一度もはっきりとした答弁を得ておりません。私は、少なくとも、日韓交渉をして、これから何とか条約を結んでいくという相手国、しかもお隣の国なんですから、その国の領海ぐらいは、日本の国が知りませんということを国会で答弁されるのでは、ちょっと納得ができないと思いますし、そういうふうな不見識な形での条約なんかは結んでいただきたくないと思うのですが、この点をもう一度伺いたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 ただいま双方の主張、ことに漁業に関する主張は戸叶さんもはっきり御了承のようでありますし、私どものいま疑問にしておる点は、これはわかっていると言われるのでありますが、御承知のように、今回問題になりますのは漁業に関する問題なんだ、したがって、どうしても議論が、政府側の説明が、その漁業を中心にしての話になる、これはどうもやむを得ないと思います。ただ、領海そのものについて積極的な説明がないということで御不満のようでございますが、これは、その議論をすることが現段階におきまして実益があるかないか、こういうようなことだろうと思いますが、しかし、両国関係の将来を考えてみれば、そんないま当面する問題はなくとも、この際は明確にしておけ、こういうお説も、私ども首肯できるのです。私は、日本の主張は先ほど申しました。これに対しましてあまり反対の主張もないのですから、たぶん同一見解ではないか、かように私は理解しております。
○戸叶委員 いままで三海里説を日本がとってきた、そしてまた、いま領海をはっきりさせる必要がなかったから別に問題にもしなかったけれども、日本の三海里説に反対も別にしないから、大体韓国も三海里説をとっている、こういうような含みの答弁でございましたが、それでは、韓国の領海は三海里であるというふうな考え方のもとに韓国との交渉を進めているというふうに理解をしてもいいかどうか、もう一度伺いたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 先ほど申しますように、ただいまはそういうことは関係がないという実情にあるわけでございます。したがって、いまの領海を根拠にしての交渉はただいまないということでございます。
○戸叶委員 領海をきめる必要がないということ自体が、私は非常に問題があると思うのです。やはり一国の領海、領土というものはきまっているべきはずであって、それを、交渉している相手国、しかも隣の国のが何であるかということもあいまいにして、そうして専管水域は十二海里です、こういうことでは、対日本の関係だけでなくて、国際的にもいろいろな問題が出てくる、こういうふうに私は考えます。ですから、この交渉をきめるまでには、必ず韓国の領海というものもはっきりさせていただきたい。この点の御所信を伺いたい。
 私がなぜそういうことを申しますかといいますと、総理大臣、この調印のもめている一つの理由は、やはり韓国が領海をはっきりさせないということも一つの理由だと思うのです。それで、李承晩ラインのことについて、国際法が国内法より優先するのか、その条約に盛り込むのかと私がこの前質問いたしましたら、きょうの新聞ではそういうことも盛り込むようでございますけれども、しかし、そういうふうな点に領海というのはからんでいるわけです。李承晩ラインと非常に関係があるわけです。韓国の人の考えている領海というものは、日本の政府の考えているような領海と違うのですよ。ですから、その点をはっきりしておかないとあとで非常に問題が起こるということを、日本の国のために私は心配して言うわけなんです。なおかつ総理大臣は、この領海というものはいまきめる必要はないのだ、こういうことでおやりになるとすれば、私は問題が残ると思います。日本の国会がうるさいし、そして私どもはこうやって一年以上も、領海の問題をおきめなさい、話し合いなさいと言っているのですから、どうかぜひとも、交渉に入る前に、領海はどのくらいであるかということの意思統一をしておいていただきたい。この点をもう一度伺いたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 先ほどお答えしたとおりでございまして、政府はそこまでの必要をただいま感じておりません。ただいま李承晩ラインその他のものを引き合いに出されますが、今回そういう問題は実質的に解消するようでありますし、ことに、領海問題でやかましい、旗国主義とでも申しますか、こういう取り締まり等の法規がどうなるのかということが一番問題だと思いますが、やっぱり船の属しておる、その掲揚する国旗、それによって管轄等がきまるというようなことでございますので、この点もたいへん明確だと実は思っております。これなぞは今回の漁業交渉におきましての、私ども漁業を続けるわけですが、その操業においても将来において問題がなくなった、これはたいへんはっきりしたことで、私ども喜んでおるわけでありますが、ただいまお説のような点は、私どももあえて主張するわけじゃありませんけれども、ただいまの段階ではどうも必要はないように思う。ただ、戸叶さんの御指摘の点も、これは全然意味のないわけじゃございませんし、そういう意味の注意も私どもいたしますけれども、ただいまどうもそこまで必要ないのじゃないか、かように私は思います。
○安藤委員長 戸叶さんにちょっと申し上げます。所定の時間にあと七分しかございません。どうかひとつ質疑をお運び願います。
○戸叶委員 どうしてももう二点だけ伺いたいですから、大急ぎでやります。
 いまの領海の問題なんですけれども、これは漁業だけの問題じゃないと思うのです。お隣の国と交渉をするのですよ。国交を正常化するのですよ。その場合に、漁業だけの問題じゃないのですから、十二海里の専管水域ということだけになりますと、ああやはり十二海里の専管水域が領海かなというような誤解を招くことになりますから、私その点は今後においてもはっきりさしてもらわないと困ると思います。
 それから、もう少し聞きたいのですけれども、時間がないですから先に参りますが、もう二点だけ伺いたいと思います。
 その一つは、李承晩ラインというものは国際法違反である、こういうことをおっしゃいました。そこで、李承晩ラインが国際法違反であるならば、そこで拿捕された漁船の請求権というものは日本にある、そういうことで交渉されたわけです。ところが、金・大平メモでもう解決したと思われた置籍船、置水船の請求を韓国が出してきました。そうすると、その金・大平メモでそれはもう解決されているということが一点と、もう一つは、ほかの国際的な例を見ましても、置籍船、置水船をあとになって補償をよこせといって要求している例はどこにもありません。ことに、そこの港にあった船については要求するかもしれませんけれども、船が出ていった、よそへ行っちゃった船まで追っかけて請求権をよこせなんという問題はどこの国にもないわけです。ところが、今度の政府の答弁を見ておりますと、李承晩ラインで拿捕された船の請求権は放棄した、しかし、こっちの韓国側で請求しているその権利についてはこれも認めない、そして、しかも三千万ドルの漁船の資金を何か融資する、これは民間ベースですよ、民間ベースでもする、こういうところを見ましても、私は国家的利益を擁護した基本線に立っているとは言えないと思う。しかも、片っ方のほうは国際法上認めないところの線で拿捕されたのです。だから、もしも平等外交というならば、大臣、平等外交というならば、この拿捕された船に対する補償は要求する、しかし、置籍船、置水船の先方からの補償の要求というものに対しては、これは筋が立たないということで断わる、それが平等の外交だと私は思いますが、この点はどうお思いになりますか。
○佐藤内閣総理大臣 いまのお尋ねの件については、たぶん農林大臣並びに外務大臣から詳細にお答えしたのじゃないかと思います。したがって、ただいまお尋ねのうちにも経過なぞに触れられたような問題があるように思います。ただ、私一言したいのは、三千万ドル、民間ベース、これは民間ベースですから利益のあることも御承知願って、これはただでやったのだとかさようなものではないのだ、だから、やっぱりそういう意味ではわが国の利益、経済発展上に寄与する、同時に相手方の経済発展にも寄与する、ここに両国が利益を共通にするものがあってそういう話ができるのでありますから、これはいまの問題とは切り離してお考えいただいたほうがいいのじゃないか、かように私思います。ただ、非常に残念に思いますのは、ただいまのように……(戸叶委員「もう一点しますから、早くやってください」と呼ぶ)簡単でいいと言ったって……。例の李承晩ラインを越した船に対する補償の問題等を、これは十分当方でも主帳し、相手国にも、そういう事態があって、そうしてそれに何らかをしなければならないということは認めさしたことは認めさした、ただ正確にそれを金額的に盛ることができなかった、かように私は思います。
○戸叶委員 そこが譲歩なんですよね。決して対等の立場に立った外交とは言えないと思うのです。当然取れるものを譲歩しちゃって、そして、払わないでいいものを、済んだと考えていたものを、またこれを一応認めました。まあ認めたという形じゃないにしても、これと相殺しないと言うのですが、相殺したようなかっこうになっているわけです。これでは平等外交ではないということを私は申し上げるのです。だから、平等外交であるかないかと言えば、それは考え方の違いですと言ってお断わりになるでしょうけれども、よくそれを分析していってみれば、こういうふうな立場に立っての平等外交でなくて、そして譲歩しているということが言えるわけです。
 そこで、次にもう一点だけ伺いたいことは、今度のこの会談のあとで合意議事録というようなものをお出しになるようです。その合意議事録というものはすべて国会の審議の対象になるものかどうか。ただ法的な拘束力を持つものだけで、あとは参考資料として出すという程度のものかどうか。
 この点は基本線ですから総理に伺っておきたいと思うのです。基本的な問題です。
○椎名国務大臣 合意議事録は審議の対象になりません。
○戸叶委員 審議と対象にならない。そうすると、両国会、日本にもそれから韓国にもそれを出さない、国会では出さない、そのまま秘密にしておくという意味ですか。
○椎名国務大臣 これを協定の内容に取り入れる場合にはそれは協定として審議の対象になりますが、合意議事録そのものはどの国の国会でもこれは審議をいたす対象にならない、こういうことでございます。
○戸叶委員 そんなことありませんよ。合意議事録だって国会の審議の対象になっている例はございますよ。たとえば安保条約の審議の際に、沖繩との問題は、参考資料だけで、そして合意議事録は国会に出されませんでした。しかし、今度の問題は、大体まとまりそうもない問題点のあるところはみんな合意議事録で逃げちゃっているわけですよ。ですから、そういうふうな形で合意議事録が暗々のうちにやられてしまったら、私は問題が起きてくると思います。たとえば紛争が起きたらどうしますか。
○椎名国務大臣 合意議事録は、資料として出す場合はありますけれども、審議の対象にはいかなる場合でもなりません。それからまた、これを本署名いたしますときには、すべて必要なことは全部これを協定文の中に取り入れまして、そして御審議を願う、こういうことになっております。
○安藤委員長 戸叶さん、時間であります。総理に最後の締めくくりなら締めくくりをお尋ねになって、それで終わってください。
○戸叶委員 いまの問題ですけれども、新聞を見ますと、どこでも、ここの点はいずれあとで合意議事録でということになっておるわけです。そういう形で今度の仮調印がなされた場合には、私どもは非常に大きな問題が起きると思います。それで、今度仮調印されたいろいろな条約、たとえば漁業協定なり請求権の問題に関する協定あるいは法的地位に関する協定、こういうふうな問題は一応仮調印されておいて、あといろいろ条文にするには問題が出てくると思います。それはもう不変なものであるかどうか、この点を伺いたいと思うのです。こういうふうな問題は基本的な問題ですから、総理大臣に、この仮調印をするにあたってどういう態度をもっておやりになるかということ、それから、もしも合意議事録が国会の審議の対象になりませんと、紛争が起きた場合にどうするかということをお伺いしたいわけです。すなわち、国連憲章の百二条には、一応そういった合意議事録なり条約なりというものは国連に登録をして、されたものだけが紛争が起きたときには解決の対象になるわけです。ところが、この憲章にも当たらないということになりますと、紛争が起きたときに一体どうやって解決するかという、解決の道もないと思うのです。したがって、合意議事録というあいまいなものではなくして、やはり国会の審議の対象にすべてをすべきである、ことに、これだけの大きな問題をかかえている日韓交渉ですから、そうしていただきたい、こういう希望も入れながら、答弁をしていただきたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 だいぶん技術的な問題のように思いますが、この両国の国交を、両国の最高責任者において最終的な調印する、その調印するときには問題が残らないようになっておると思います。だから、今回イニシアルをいたしますが、その中で全部具体的なこまかな点まで片づくかどうか、そういう問題は残ると思います。しかし、最終的調印の場合に、それじゃ今回イニシアルしたものが逆戻りするかというと、そういうことはない。そういう意味では、イニシアルした点で具体的にきめることはできなかったものをあとの本調印まで残すことはあるかもわからない、かように思いますので、ただいま御懸念になるような点は私はないように思うのですが、もっと技術的に説明することができるならば、後ほど係から説明さしたい、かように思います。
 また、合意議事録というものは、いわゆる中身を持たすような意味のものであってはならないのです。だから、いま申し上げるような本調印の条約条文に記録、規定ができない、そういうものを合意議事録のほうへ譲る、こういうようなことはないと私は思います。したがって、そういうものが国会には参考書類としては提出される、しかし、直接審議の対象にはならない、かように私は理解しております。ただいま実際その衝に当たる者からもっと納得のいくような御説明をさしたいと思います。
○安藤委員長 これにて総理大臣に対する質疑を終了いたします。
    ―――――――――――――
○安藤委員長 日米航空協定に関する件について、毛利松平君外二名より、自由民主党、日本社会党及び民主社会党の三党共同提案にかかる決議案が提出されております。この際、本決議案について議事を進めます。
 まず、提出者より趣旨の説明を求めます。毛利松平君。
○毛利委員 私は、自由民主党、日本社会党及び民主社会党の三党を代表して、日米航空協定に関する決議案を提出いたしたいと思います。
 案文を朗読いたします。
    日米航空協定に関する件
  わが国が輝かしい経済発展をとげ、国民が全世界に雄飛している現在、わが国として、米国の中心であるニュー・ヨークを経由しての世界一周路線をもつことは、全国民の熱烈な要望である。
  しかるに、現行の日米航空協定は、米国に対しては東京及び以遠への広範な権利を認めているにかかわらず、わが国に対しては米国の西海岸までしか乗入れを認めていないという不平等な形をとっている。
  よって政府は、できる限り早急に米国との航空協定交渉を再開し、全国民の宿願を達成するよう重大な決意をもつて最大の努力を尽くすことを強く要望する。
  右決議する。
 以上が本決議案の内容でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
○安藤委員長 発言の申し出がありますので、これを許します。穗積七郎君。
○穗積委員 私は、社会党を代表いたしまして、ただいま毛利委員から御提案のありました対米航空交渉を積極的に進めるべきという決議につきましては、積極的にこれを支持、賛成をいたしたいと思っております。
 その理由は、去る水曜日の、わが国とマレーシヤとの航空協定審議に際しまして、私はこれに関する意見を申し述べながら御質問をいたしておりますので、われわれの賛成する趣旨はそれで明瞭であると考えますが、結論的に一言申しますならば、航空業務というものが今日の国際関係における経済・文化の交流、人の交流のために決定的な重要性を増していることは明瞭でありまして、にもかかわらず、わが国の航空業務の国際的な発展というものが非常な立ちおくれになっていることは目に余るものがございます。そのときに、たとえば対中、対ソ、その他対ヨーロッパ諸国との間における航空業務の公正にしてかつ国際的な実現をはかりますためには、何と言いましても、対米航空協定の誤った現状を見捨てておきましては、これはいかように他の国に正論を吐きましてもこれが通らない。言いかえますならば、今後のわが国の航空業務を取り戻しますためには、そのスタートラインは、対アメリカとの、占領中の惰性であります一方的にして片務的なこの航空協定を根本的に改定いたしまして、国際的な道理に従った相互互恵平等の航空協定に切りかえることがすべての前提であるというふうにわれわれは考えておりますので、したがって、この問題は単に日本とアメリカとの二国間の問題だけではないという実質を持っているものである。そういう意味におきまして、積極的にこの決議案を支持し、しかも政府がこれを忠実に履行いたしまして、一日も早く具体的かつ効果的に対米交渉の実をあげられることを強く要望いたしまして、賛成をいたしたいと思います。
○安藤委員長 他に発言の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。
 本決議案を可決するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○安藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 なお、本決議は外務大臣及び運輸大臣あて参考送付いたします。
 この際、椎名外務大臣より発言を求められておりますので、これを許します。椎名外務大臣。
○椎名国務大臣 御承知のとおり、本件は昭和三十六年以来日米間で懸案となっておる困難な交渉でありますが、本年一月総理訪米の際の共同声明に見られるとおり、本件について双方が受け入れ得る公正な解決が得られるよう両国政府間で緊密な協議、協力をはかることが重要であることにつき佐藤総理とジョンソン大統領との間で合意がされました。それを受けて現在両国政府はそれぞれの立場において本件交渉開始について鋭意検討準備中であります。政府は、今回の本委員会における決議の趣旨を体し、でき得る限り早期にわがほうの目的を実現するため最大限の努力を行なう所存でございます。
    ―――――――――――――
○安藤委員長 質疑を続行いたします。
 帆足計君。
○帆足委員 べトナムをめぐります極東における国際緊張の激化はまことに憂慮すべき事態でありまして、この状況につきましては、与党野党を問わず外務委員会で十分に情勢の推移を見守り、また政府から必要な資料の提出を願いまして、平和を目ざして善処せねばならぬ問題であると思います。
 そこで、お尋ねいたしますが、私どもの目に映ります最近の極東の情勢は、アメリカのベトナム対策、台湾対策、韓国対策、また日本に対する政策、一貫してアメリカの極東政策にあやつられて問題が動いておるように思われます。日本政府は自主外交ということを口にされておりますが、そしてまた、一方では、自由世界に属しつつ、しかしその根本においてはアジアの一員であることを忘れまい、国連精神を忘れまいということを外務大臣としては歴代主張しておりますけれども、アメリカの極東政策の偏向に対して、国連主義並びにアジアの一員たる自覚を呼号する日本政府としては、私は、どうも口とことばとが一致してなくて、アメリカの極東政策に引きずられておるような危惧の念を感ずるのでございます。外務大臣は、いまのアメリカの極東政策の偏向に対して、政府が呼号する国連主義、アジアの一員としての外交ということとの間に矛盾があることをお感じなさっておるのでありましょうか。まずそれを伺いたいと思います。
○椎名国務大臣 私は、ただそういう概括的な観念に対して矛盾を感じておるというふうなことはございません。何か特別の事件に即して、そして、アジアの一員、国連中心外交、あるいは自由主義陣営、こういう三つの立場をどう調整するかというような場合は起こってくると思いますが、ただそういう概念だけを三つ並べて矛盾を感ずるようなこととは、私はかつてなかったと思います。
○帆足委員 私はここで申し上げたいと思ったのは、世界の諸国民が、過ぐる第二次世界戦争のあとを受けて、平和を守るために理性と論理の立場に立って問題を処理するという決意を国連憲章で新たにした、その国連憲章の精神と今日のアメリカの極東政策との間に大きな矛盾があるということ、並びに、日本もまたアジアでありますから、いまアジアで起こっている問題は、民族自決、植民地解放がアジア・アフリカの課題になっておりますことは、外務大臣の御承知のとおりです。それに対してアメリカが十分な理解を持っておるとは私どもは思わないのでございます。私どもの目に映じますのは、現象的には、二つの世界、あるいはまた社会主義・共産主義と自由主義的資本主義の対立というふうに映じますけれども、アジアにおきましてもっと深く掘り下げてみまするならば、アジアの国々が長い間眠っていて、そして眠っている間に諸外国の植民地になって、後進国としてのさげすみまで受けていた、その眠っていたアジア・アフリカが、いま目をさまして、そして民族自決の熱意に燃えておる。これは、その民族自決の先頭に立っておる勢力が、あるいはネール首相またはナセル大統領のような、中道を歩む、すなわち民族資本を中心として先頭に立っておる場合や、または諸般の事情のために一挙に社会主義政権に転化した場合や、あるいはまた、カンボジアとかサウジアラビアのように、王制であるけれども民族の意欲を尊重し、国の独立、自治権、自決権を守っていこう、幾つかの流れはありますけれども、根本は、アジア・アフリカにおける大きな動乱、大きな流れは、民族自決の流れだと思うのでございます。したがいまして、ベトナムの問題でも、極端に言えば中国の問題でも、その背後に流れておるのは民族自決の勢いである。わが明治維新のときを思い出しても思い当たる節もあるのでありますけれども、したがいまして、これに対する対策は、いかようであろうとも、とにもかくにも植民地解放、民族自決という流れを認めた上の対策でなければ、私は、事の核心に触れたものとは言えない、こう思うのでございます。しかるに、アメリカの対策を見ておりますと、民族自決の流れに対して、まるでさかなでするような行為に出ておる。これが、アメリカの極東政策が行き詰まるどころか、アジアにおいてかえって緊張激化、戦争触発の原因になっておるとして、世界の心ある人々から憂慮にたえないとされておるゆえんであろうと思うのでございます。
 外務大臣は、抽象論より具体的な問題についてなら答えることができるというお話でありましたけれども、しかし、原則的な問題は、ものごとを総合的に観察し、事の本質をまず握る上において重要なことですから、アジアにおける植民地解放、民族自決の流れ、それは、各ファッショ政権、軍事政権下における韓国民衆にも見られる同じ事態でありますけれども、その民族意識というものがいかに強いかということについて十分な御認識があられるかどうか、御見解を承っておきたいと思います。
○椎名国務大臣 最近、第二次戦争によってアジア・アフリカ地域においてどんどん独立国ができてまいったのであります。全くこの情勢はかつて世界の歴史になかった非常なすばらしい転換でございまして、われわれは、この中に民族自決、その願望、熱意をくみ取ることができる、この問題に対する正当な認識なくしてもはや政治も外交もない、かように考えております。
○帆足委員 こい願わくはその認識をもっと深められんことをわれわれは要望するものであります。したがいまして、アメリカは自由世界を守るために共産主義の脅威と戦うと言っておりますが、しかし、ベトコンの内乱にいたしましても、その本質はやはりベトナムの民族自決という長い苦難に満ちた戦いから生まれたものでありまして、したがいまして、ベトコンの動きに対するアメリカの認識は本質的に誤っておるのでありまして、ベトコンが社会主義を目ざそうと協同組合主義をめざそうと、その歴史と伝統を見ますると、明らかにベトナムにおける民族の統一並びに民族の自決を要求しているのでありまして、そのためにベトナム人民の心をつかみ、現在すでにベトナム国土の八五%を間接に支配し、人口の七〇%はベトコンの勢力で占められている状況でございます。大東亜戦争の苦い経験を有する私たちは、かくかくたる戦勝という号外のかなたに、われわれが把握しておるのは単に点または線にすぎないで、中国の民衆の心をつかんでいないのみか、その実体もつかんでいなかったという経験は、椎名外務大臣の御承知のとおりであります。ベトナムの現事態はそれよりもっと深刻でありまして、同時にまた同じ現象でありまして、アメリカは、南ベトナム政府の要請によって軍を進めておる、こう言いますけれども、その南ベトナムの政府自身は、御承知のように議会で選ばれた政府でなくて、いわゆるかいらい政権、アメリカの気に入らなかったゴ・ジンジェム政権は張作霖が殺されたと同じ方法によって殺されたことは周知のことです。そのかいらい政権の要請によって出兵したということでは、理性ある人たちの承服を得がたいのでございます。したがいまして、現在ベトナムにおきましては、戦争はもうごめんだという声が、庶民だけでなく、軍人、保守思想家の間にさえ、水が地中にしみ込むように広がっておる。これはもうあまねく外国電報が報道しておるとおりでございます。外務大臣は南ベトナムのこの事態を正確に認識されておられるかどうか、まずお尋ねしたいと思います。
○椎名国務大臣 理論的にベトコンというものが民族主義を基礎にしておるか、あるいはまた共産主義的な実体を持ってもっておるかというようなことはしばらくおきまして、問題は、南越における国内撹乱というものが、その背後に北ベトナムがあり、また北ベトナムはそれぞれの支持する大きな勢力というものにつながっておって、そうして南ベトナムの国内撹乱をやっているかどうかということが問題だと思うのであります。ここらになりますと事態がわりあいにつかみやすいと思うにのであります。南ベトナムの要請によって、とにかく北越の勢力下に入ることをいさぎよしとしない、独立と自由を守りたい、こういう願望から、アメリカがあそこに軍事介入をしておるものとわれわれは考えておりまして、それが、ベトコンの思想が一体共産主義であるか、あるいは本体は民族主義であるかというようなことは、これは理論の問題としては問題になりますけれども、この際は、現実の政策という点から言って、私がむしろ申し上げたいことは、北からの支援というものによってかような状態がかもし出されておるかという認識がもっと重大であると私は考えるのであります。
○帆足委員 南ベトナムの市民は、とにもかくにも戦争はまっぴらごめんだという見地に立っておって、かりに北からの共産主義の支配に対して懐疑的であるとしても、同時にまた、米軍がこれ以上介入し、戦争を拡大するのもまっぴらごめんだというのが圧倒的であると新聞は伝えておりますが、椎名さんはどのようにお考えですか。
○椎名国務大臣 これは、北からの浸透によって国内が撹乱され、そして南ベトナムの独立と自由というものが失われるかどうかということが問題だと思うのであります。これを守っておる米軍の軍事行動は、別に領土がほしいわけでもなければ、戦争がおもしろくてやっておるわけでもない。戦火の不拡大を絶えず唱えておりますけれども、結局問題は北からの浸透がこのわれわれの行動というものを支配する、こういうことを言っておるのでありますから、その情勢が招来されない限りはなかなかむずかしいのではないかと私は考えております。
○帆足委員 共産主義の温床はその国内の経済の腐敗や貧窮の状況に依存しておるということは、あまねく社会科学者が立証しておるとおりです。外務大臣は北からの浸透と口から出まかせを言われますが、世間はいわゆるホー・チミン・ルートを通じて浸透していると言いますが、たくさんの議員各位がラオス、ベトナムに参りまして実地を検討してまいりまして、ホー・チミン・ルートと世に称するものはジャングルであって、そうしてタイガーレーン、トラが歩む道であるというふうに伝えられております。ニューヨーク・タイムズでこういうことを言っております。いかにも北から大じかけな侵略があるかのごとく伝えておるけれども、たとえばベトナム白書は、まずアメリカのほうで国防省に押されて政策がきまった、どこかに因縁をつけねばならぬという政策がきまって、その政策に合わせるために適当な事実が収集され、選ばれておる、こういうふうに批評家は見ておるのでございます。文章のまま読みますと、「つまり新政策がまずきめられ、それに合わせて新事実なるものがそろえられたわけである。」、これがアメリカのベトナム白書に対する大方の批評でございます。外務大臣はニューヨーク・タイムズの社説を気をつけて読んでおられるかどうか、先にそれをお尋ねしておきたい。
○椎名国務大臣 あまり読んでおりません。
○帆足委員 アメリカで一番良識ある新聞といわれている、ルーズベルト大統領が愛読したといわれておるこのニューヨーク・タイムズを読んでおられないということは、まことにわびしい限りだと私は思います。(「忙しい」と呼ぶ者あり)忙しいということは口実になりません。(「いや、なるよ」と呼ぶ者あり)それはあなただけのことにしておきます。それから、日本の新聞で朝日、毎日、読売等の社説には、私は国民の言いたいことはほぼ尽くされてあると思うのでございます。したがいまして、こういう重要なときには、外務大臣もお忙しいでしょうけれども、アメリカではニューヨーク・タイムズ、日本では五大新聞の社説だけは、三行おきでもけっこうですから、目を通していただきたいと思いますが、ただいまのように、北からの浸透というのは、そういうこじつけをやろうという意図から出ておるということが定評でございます。
 したがいまして、このたび大使館爆撃のことがありました。だれしも、女性の事務員から通りがかりの市民までが犠牲になったことをまことに痛ましく思い、戦争の犠牲であると思いますけれども、同時にそれならば、黄燐爆弾やナパーム爆弾で爆撃の飛ばっちりを受けたいたいけな南ベトナムの少年たち、また毒ガス撒布で農村が受けた被害、また北ベトナムのめくら銃撃で小学校の生徒が四十七人死んでおります。こういうこともそれに劣らず私は非人道的でいたましいことであると思います。いずれにいたしましても、戦争というものはこういうものでありまして、戦争の惨害を知る私どもとしては、力を合わせて平和を追求せざるを得ないのでございます。
 そこで、外務大臣にお尋ねいたしますが、アメリカの大使館が爆破されましたときの表情をサイゴンの日野特派員が伝えております。これに対する打倒ベトコンのデモンストレーションが行なわれた、しかし、意気すこぶる合わず、「参加者はカトリック系難民、中・小学生が主で、職業的反共指導者らしい青年が興奮して演説するのを、中・小学生たちはおもしろ半分に聞いており、見物人もにやにやしていて、典型的な官製デモのようにみうけられた。」、一般大衆がこのような運動に同調し同情しているような徴候は少しも見られなかった、私は遺憾ながらこれがありのままの状況であると思う。すなわち、アメリカにとっては遺憾なことであろうけれども、ありのままの姿であろうと思います。二十年にわたる内乱に疲れた南ベトナムの市民たちは、もうよその干渉はごめんこうむりたい、アメリカも手出しをしないでもらいたい、求めておるのはただ平和だけである、こういう空気であろうと思います。それに対してアメリカは一体何を守るか。アメリカはアメリカの利益のために極東政策を展開しているのだろうと私は思うのです。抽象的な自由というものがアメリカの国務大臣にサラリーを払っているわけではありません。アメリカの利益を求めてアメリカは極東政策を遂行しようとしておる。だとするならば、外務大臣はいま自由のためにと言われましたけれども、北ベトナムが社会主義的自由を選ぼうと資本主義的自由を選ぼうと、それは北ベトナム市民の自由であって、また南ベトナムが社会主義になろうと共産主義になろうと、それは南ベトナム市民が自己の判断によってきめるべきことであって、アメリカが何のためにベトナムまで来る権利があるか。どういう道徳上の権利、どういう条約上の権利があるか。外務大臣はアメリカの南べトナムにおける進駐戦闘、北ベトナムの爆撃を肯定しておられるようであるが、まことに残念なことと思います。かりに、ある特定の国が、アメリカに独立戦争が起こったときに、これに対しておれは君主制度に賛成であるからワシントンのやることはなまいきでるあといって出兵したとするならば、これは内政干渉でしょう。あるいはまた、五稜郭血書の戦いが明治維新のときにあった、そのときに、おれは勤皇派を助ける、おれは自由のために国際公法をふところに持っていた榎本武揚派を助けるとして、イギリスまたはフランスが出兵したとすれば、それは内政干渉であって、余分のことで、日本の運命は日本できめるとわれわれは言うでしょう。私は、西郷南洲と勝海舟が談笑のうちに民族の危機について語り合って、江戸が戦災に巻き込まれることを防いだという昔語りはいま思うてみればそれはやっぱりすばらしい歴史の一こまであったと思うのでございます。もしあのときに、フランス軍は勝海舟を助けようとし、英国軍は鹿児島藩または長州藩を助けようとしたその口車に西郷南洲が乗っていたならば、日本は日本の中に三十八度線が置かれていたに違いないと思いますが、党派の利害よりも国の運命を重しとする二人の英雄によって明治維新は無事生まれたということを顧みましても、その感を深くする次第でございます。したがいまして、外務大臣は、アメリカがほしいままに南ベトナムに駐留して戦闘し、北ベトナムを爆撃する道徳的並びに国際法上の権利がどこにあるか、このことについて御答弁を願いたいと思います。
○椎名国務大臣 これは、南ベトナムの要請によって、北からの侵略を防ぎ、そうして南ベトナムの独立と自由を守る、そういう要請に基づいて、これがやはり大国の使命である、かように考えて軍事行動をやっておるものとわれわれは考えております。
○帆足委員 それでは、なぜゴ・ジンジェムを殺したのですか。
○椎名国務大臣 さあ、そのことは私は詳しく存じません。
○帆足委員 それは満州事変の経験を考えればよく理解できることであって、われわれはソビエトから自由を守るためにという口実のもとに満州にわれわれのかいらい政権をつくった。そのじゃまになるからといって張作霖を暗殺した。私は全く同じことが繰り返されておるように思うので、まずこのことを明らかにしておけばいいことですが、それでは、外務大臣は、坊主憎けりゃけさまで憎いということわざがありますが、これは愛情論と思いますか、または論理的なことわざであると思いますか、ちょっとお尋ねしたい。
○椎名国務大臣 いろいろな解釈が成り立つと思います。
○帆足委員 それでは、江戸のかたきは長崎でというのは、これはいかがですか。これはわれわれの運命に重要な関係があるからお尋ねしておる。これは論理的ですか、または感情的な問題ですか。
○椎名国務大臣 ひとつのこれは比喩でございますから、あまり政策論議の問題にはならないと私は考えております。
○帆足委員 まことに名答弁であります。したがいまして、比喩とか感情論をもってして外交のことを律してはならぬと私は思うのです。外交のことは現実と論理をもって律せねばならぬ。しかりとするならば、坊主憎けりゃけさまで憎いということわざは、感情論で、児女の抱くべき感情論であって、およそ国政を論議するわれわれが採用すべきことわざではなかろうと思います。したがいまして、ベトコンがあばれたからといって、そのたびに北ベトナムの無辜の市民の頭上に爆撃の雨を降らすということは論理的に正しくない。しかも、思想の浸透があったからと言いますけれども、浸透は資本主義側からもあります。日本へアメリカのギャング映画がたくさん入ってきて、国民の心に浸透して、そうして自由の乱用を奨励するかのごとき映画が浸透しておることも御承知のとおりです。また、ドイツの学者によって書かれた資本論が英語に訳され、ロシア語に訳され、日本語に訳されて、そうしてわれわれに一定の思想が浸透しておりますことも御承知のとおりです。しかし、そういうことは自由であるというのが自由世界の特色でなかろうかと私は思うのです。ベトコンに対して正確なる根拠もなくして、きわめてあいまいな根拠をもってして、そうして、きょうはどこがやられたから、あすはどこがやられたからと、内乱にすぎないこの現象をとらえて、そうして北ベトナムに爆撃の雨を降らせ、また中国の領海からわずか百マイルくらいのところまでやってきて爆弾の雨を降らす。こういうことに対して、アメリカの心ある人たち、また国務省の中の論理派の人たち、またはフランス、イギリスの世論が心配しておることは椎名外務大臣御承知のとおりと思いますが、こういう軽率な行為に対して、感情論に対して、すなわち北ベトナムに対する報復爆撃に対して、外務大臣のお考えとして、少なくともこれはどうもその論理性において疑わしい、こういうことを承認するならば、これは坊主憎けりゃけさまで憎いという児女の情をもって国政をもてあそぶことになるのではあるまいか、こういうことにならないでしょうか、お尋ねしておきいたと思います。
○椎名国務大臣 そういうようなことばで律するべきじゃない、私はかように考えております。やはり、絶えざる北からの指令、浸透、そういうものが今日の事態をかもし出しておるのでありますから、これを終息させるにはやむを得ざる行為である、かように考えております。
○安藤委員長 帆足さんにちょっと申し上げますが、きょうは一時半までで打ち切りたいと思います。あと、西村さんの御質疑がございますし、戸叶さんもちょっとさっきの質問の点で事務的答弁を必要とされますので、なるべくお運び願いたいと思います。
○帆足委員 北ベトナムからいろいろな手段が浸透しておるということで、たぶんそれは武器・弾薬が送られているという意味でしょうが、そこで、北ベトナムに対して爆撃する権能がアメリカにあるならば、今度は逆に、アメリカに武器・弾薬を運んでおるルートに対して他の第三国が報復爆撃する権利があるという論理になると思いますが、外務大臣はどのようにお考えですか。
○椎名国務大臣 私は必ずしもそうはならないと思うのであります。その兵器なり弾薬なりというものが、いろいろな今日の工業の発達のぐあい、あるいはその仕組み等から見まして、いわばもう世界じゅうからいろいろな形において協力を受けておるのでありますから、それに関連するものをみな敵性を持っておるものとしてやれなんということは、これはもう乱暴きわまる議論だと思います。
○帆足委員 どうも、先ほどの北ベトナム浸透論、そういう抽象的な浸透論に対して、一方では爆撃をしてもいい、他方アメリカに対しては、端的に言えば、日本の国土から、また沖繩から直接出撃が行なわれつつあるということに対して、そのほうは論理として成立しないというような気休めのことではたして国際的に通用するかどうか、お考えを願いたいのでございます。全体として、いまアメリカの極東政策には大きなひずみがある。かつての日本の対満州政策、また対中国政策に対して大きなひずみの中で互いに苦しんだ時代がありました。ちょうどアメリカが同じような状況におちいっていることは、あまねく学者・批評家の指摘するとおりです。こういう戦略の一環として、沖繩も一役を演じ、台湾問題もあり、韓国も一役を演じている。遺憾ながら一連のアメリカ極東政策の一環をなしておると思うのでございます。原子力潜水艦も、このような観点から見るならば、やはりその弱異をなしておるのであって、単に横須賀で休養をとるというような技術的な問題でなくて、アメリカの極東戦略の一環として日本政府は原子力潜水艦の入港を軽はずみにも許した。そういうことで、野党たる平和の党の社会党は心配しておる状況でございます。原子力潜水艦は佐世保に二回来ましたけれども、今後いずれ近いうちに横須賀に来ることは予想されておるのでしょうか。アメリカのワシントン・ポストの記者でしたか、もう原子力潜水艦の問題は、安保条約に伴うアメリカ戦略の一環として、エスカレーターですか、段階的にその戦略の一環としてアメリカは考えておるのであるから、しょせん避けられない運命である、このようにしるしておりますし、また、原子力潜水艦の艦長も、多少のデモがあったところでそれは何事かあらん、アメリカの全体的な極東政策の要請であるからやむを得ないというようなことを述べております。日本政府といたしましては、単に水兵さんに休養を与え、水を補給するというような人道的なこと、また船舶に対する国際法的な配慮から行なったと言っても、それは口実にならないのであって、アメリカの極東政策の中で原子力潜水艦も大きな役割を演じておって、それが直接間接にソビエト、中国、ベトナム等に対する圧力として、また戦略予備行為として行なわれておるというふうにお考えにならないでしょうか。あるいはまた、核兵器、小型核兵器などが原子力潜水艦に持ち込まれるおそれがあり、また、持ち込まれておるかどうかをわれわれ観察することもできないので、国際緊張の今日、そういう疑心暗鬼を誘発するおそれのある事件である、このようにお考えにならないでしょうか。
○椎名国務大臣 原潜の寄港は、これは日米安保条約から来る当然の権利でございますが、しかし、唯一の被爆国として国民に不安の念を与えることも現実問題として無視できない。そこで、その安全性がはたして確保できるかどうか、そういう点を十分に配慮しなければならぬというので、この原潜寄港の問題は日米の間において慎重に取り扱われてきたのでございます。しかし、もともと安保体制から当然原潜は寄港をする権利を持っておる。その結果二回にわたって寄港が行なわれたのでございますが、これに対しましては別段われわれは特別の危惧の念を持っておりませんし、当然のことを行なっておるにすぎない、かような考え方を持っております。
○帆足委員 委員長から御注意もありましたし、時間もたちましたので、私は質問の核心に触れたいと思います。
 まず、先ほど申し述べましたようなアメリカの極東戦略の一環としてベトナム戦争が行なわれておるというところから見まして、御承知のように、すでにソビエトも中国も、事態がもっと拡大したならば義勇軍を派遣せざるを得ないということを言っておる状況であります。また、韓国からも逆に南ベトナムに応援隊を送るというようなことを声明しておるような状況でございます。したがいまして、一歩誤って中国にアメリカが手を触れるようなことがありましたならば、また、ソ連と衝突するようなことがありましたならば、ベトナムに対する直接の補給路として、これもタイムズで読みますと、直接の補給路はフィリピンやハワイではなくて現在沖繩に集中しておるとしるしておりますから、当然沖繩の輸送基地並びに出撃基地が報復爆撃の対象になるであろうということを私は心配するものでございます。もしそういうような事態が迫って、沖繩におけるアメリカの軍人家族が疎開を始めるという事態に直面したならば、外務大臣は、沖繩九十六万の同胞に対してどういう措置をすればよろしいとお考えですか。
○椎名国務大臣 現状からとうてい考えられないような想定のもとに御質問がございましたようでありますが、これは申し上げる段階ではないと思います。
○帆足委員 そこで私は新聞の社説をお読みになったかというお尋ねをしたわけでありますが、毎日、ニュースニュースで暗いニュースがたくさんしかも正確に届いております。これに対しまして各新聞は、悲観的観測を立てたところでどうにもならないから、根拠なき楽観論で今日をお互いに濁しておるけれども、事態はきわめて深刻であるとだれしも考えておるのでございます。したがいまして、外務委員会においてこういう問題に触れ、そしてこれは与党、野党の別なく、問題はきわめて深刻であるということを語り合わなければ、その職責を果たしたものと言うことはできないと思いますから、あえてこういう発言に触れた次第でございます。したがいまして、お尋ねいたしますが、去る二十二日でしたか、ソビエトから、とにもかくにもベトナムへの直接軍需品輸送並びに出撃基地として沖繩が選ばれ、沖繩と直結して日本本土から軍需物資が送られておるというこの事実に対して注意を促したいという口上書が参っておるようでございます。ぜひともこの口上書の全文をわれわれも見たいと思いますが、これは外務大臣御承知でしょうか。それについての外務大臣の御意見と、それから口上書の写しを次の委員会に提出していただきたい。
○椎名国務大臣 これは、過般モスクワ駐在の日本の大使にあててその申し入れがございましたが、その申し入れの全文は向こうでも発表しております。あれ以上のものは何もございません。
○帆足委員 この口上書は、沖繩を含めた日本にある米国の軍事基地が南ベトナムに米軍部隊を送り込むために利用されていることに関連して、三月二十二日、モスクワにある日本大使館に口上書を渡した、こういう前書きになっております。同時にまた、日本政府は一度ならずアジアの一員として平和的方法でベトナムの問題が解決することを希望するという意味の発言を行なわれた、その発言が真実であるならば、こいねがわくはベトナムの戦乱に対して日本が積極的に何らかの一方の便宜をはかるような介入のしかたはこの際慎んでもらいたい、同時にまた、日本がたびたび声明した平和への努力をもっと進められることを希望するという意味の、私はモスクワ放送で読んだのでございますが、そういう申し入れがあるいは来ておるかと思いますが、そういう事実がありますか。また、そういうソビエトの希望は、私はもっともなことであると思いますから、何らかの形で、日本がベトナム問題の平和的解決を期待する旨の、そのときの情勢によりましょうけれども、適切な声明をされ、御努力をなさることがよいことではないかと思いますが、マレーシアの問題に対しても多少のあっせんを試みつつある日本政府でありますから、ベトナムの終戦並びに平和につきまして御研究になり、適切な発言または行動に出られることを国民として期待する次第でありますけれども、外務大臣の御意向を承りたいと思います。
○椎名国務大臣 向こうから申し入れの事項は、ただいまあなたがお読みになった内容に確かに相違ありません。これに対する何らかの返事をただいま研究中でございます。
○帆足委員 それでは、お願いいたしたいのですが、ベトナムの危機は一歩誤れば世界戦争に広がるおそれもありますし、また、そこまでいく前に直ちに影響を受けるのは日本の軍事基地並びに沖繩でありますから、当外務委員会は、先般理事会におきまして、事態の急迫の程度によっていつでも外務委員会を開けるようにしておこうというようなことも話に出た次第でございます。したがいまして、外務大臣においても、日韓会談の問題が一段落しますれば、この問題に対して内外の情報に十分目を通すお時間もできるわけでございますから、委員長のお取り計らいによって、ベトナム問題に対する内外の情報をひとつ外務委員会に毎回、プリント刷りでけっこうですから、正確に資料を出していただくことを外務省事務当局にお願いしたいと思います。
 同時に、私はこの際痛感するのでありますが、日韓会談のばく大な賠償問題の行くえについても同じことではなかろうかと憂慮するのでありますが、南ベトナムに賠償金として払いましたわれわれの経済援助の資金は、ゴ・ジンジエム大統領が殺され、次々と、ドン、チャン、グエン、まあドンチャン騒ぎのようなあわただしい軍閥政権交代の中で、日本から払った百数十億に及ぶ賠償金はどのように使われて、いまごろどこにさまようておるであろう、こう思えるのでありますが、その行くえについて、どうなっておるかを簡単に御報告願いたいと思います。
○椎名国務大臣 政府委員をして答弁させます。
○藤田説明員 お答えいたします。
 ただいまの御質問でございますが、ベトナムに対しましては、三十五年から五カ年にわたりまして総額百四十億の賠償協定が結ばれまして、本年の一月十一日をもちまして協定期間を完了いたしました。賠償の中身の九〇%は、御承知のように、サイゴンの北方にありますダニムの水力発電所の建設に充てられたのでございます。これは現在八万キロで稼働しておると存じております。あとの約一〇%に当たるものは、たとえばボール紙の工場あるいは合板工場、その他かんがい工事の調査等もあります。なおそのほかに、東京に設けられておりますベトナム賠償使節団の経費として、五年間に約二億を支払った次第でございます。
○帆足委員 最後に、先ほど私は、ベトナム問題がもう一歩拡大するようなことがあったならば戦火が日本の軍事基地に及ぶおそれがあるということを申しました。アメリカが、ベトコンが砲撃をしたからといって北ベトナムを、すなわちそこから武器・弾薬が輸送されるという想定のもとに北ベトナムの基地を爆撃する権利があるとするならば、その次には、北ベトナムまたはこれを援助する国が、南ベトナムに武器・弾薬を直接送りつつある基地またはそれに協力しておる基地に対して爆撃をする権利があるということを主張する論理的理由が成り立つようになる。したがって、坊主憎けりゃけさまで憎いという感情論でなくて、論理の連鎖反応によって、そういうおそれがある。
 したがいまして、そういうようなことに対して不感症でぼんやりしておるということはまことに危険な感覚であって、権利を主張する者は義務を感ぜねばならぬと同様に、そういう問題を論理的に予想されねばならぬ。特に危険なのは沖繩でありまして、沖繩で軍人軍属の家族がカリフォルニアに疎開するようになったならば、沖まわ九十六万の同胞はどこに疎開すればよいかということも考えておかねばならぬし、沖繩が不安全であって、そして沖繩とつながっておる他の日本国土の基地が安全であるはずがありません。比喩的に言うならば、むしろ沖繩にアメリカ上下両院議員の奥さんやお嬢さんたちに参観交代をしていただいて、ひめゆりの塔をもう一ぺん実現したいというならばアメリカ上下両院議員のお嬢さまにでもひめゆりの塔になっていただきたいと言いたくなるようなきびしい国際情勢でございます。したがいまして、外務委員会におきましては、国民のすべてが憂慮しておるこの問題、国民の九九%が、毎日新聞を読みましても、朝日新聞を読みましても、その世論調査を見ましても、みな心配しておるこの問題に対して十分な資料を持ち、それは日本国民としての課題でありますから、与党、野党の別なく意見の交換をいたしまして、そしてベトナムの事態が早く平和的に解決するように、不幸にしてその中途において日本が巻き込まれることのないように、必要な措置をせねばならぬとわれわれは痛感しておるのでございます。外務委員会におきましてこの問題は逐次理事会及び委員長の取り計らいによりまして問題を語る機会を始終持ち得ますことを期待し、それが国民の期待に沿うゆえんと考えまして、質問いたした次第でございます。
○安藤委員長 西村関一君。
○西村(関)委員 外務大臣にお尋ねをいたしますが、先般の本委員会におきまして、ベトナム戦争をどのようにして終結させるか、またこれに対する日本としての役割りは何であるかということについてお尋ねいたしましたところが、そのことについては政府も重大な関心を持っているし、目下その具体的な方策について模索中であるという御答弁がございました。ベトナム情勢は、ただいま帆足委員もるる触れてまいられましたように、実に憂慮すべき段階にまで立ち至っております。この時点に立って日本政府としてどのような手を打つべきであるか、いつまでも模索しておるべき段階ではないと思うのでございます。松本俊一氏がインドシナ諸国から帰ってまいられまして、まだ大臣には報告をしておられないかもわかりませんが、羽田空港における談話を見ましても、日本の協力、ベトナム戦争終結に対する日本の協力を待っているということを語っておられたようであります。また、北のベトナム民主共和国におきましても。ジュネーブ協定に違反するところの勢力は断固としてこれを排撃していくというかまえを堅持しながら、何らかの平和への道を具体的につかむことに対して必ずしも否定的ではないという徴候が一方において見えてきておるのでございます。きょうの新聞報道によりますと、南ベトナム民族解放戦線軍の一個連隊がおそらくバーベキューになっただろうというような、一面火の海にしてしまう、ガソリンを振りまいて、上からナパーム弾を撃ち込むというようなことをやっている。毒ガス弾が放たれておるということのために無辜の農民や子供たちが非常な被害を受けておる。また、北爆に対しましても、これ以上アメリカ軍並びに南ベトナムの政府軍が爆撃を繰り返しますならば、それこそどういう事態に立ち至るかわからないというこの情勢下にあって、一体政府は、外務大臣はここいらでひとつ手を打つべきだと思うのです。その点に対して、前の委員会において、目下その具体的な方策については模索中であるという御答弁がありましたが、いまの時点に立ってどういうお考えを持っておられますか、まずお伺いいたしたいと思います。
○椎名国務大臣 一日も早くかような状態に終止符を打つことは、申すまでもなく日本といたしましては他のいかなる国よりも最も希望するところでございますが、日本がこれに対してはたして有効適切なる手を打つことができるかどうかというようなことも十分に考えなければなりませんし、また、そのタイミングも考えなければならぬ。従来総理大臣も同様の考えを国会において述べておりまして、まだその時期が到来したとは思えないということを申し述べておるのであります。ただし、アジアの一国として日本が寄与し得ることがあれば、この問題のためにどんなことでも役割りを演ずることにやぶさかでないということも申し上げておるのであります。そういう姿勢をもってこの問題に当面をしておるわけでございますが、先般派遣されました松本大使も昨日帰ってまいりまして、きわめて短時間に短い報告だけは聞いておりますが、まだ詳細の報告を受けておりません。十分に同氏によって詳細な報告を受けまして、そして、われわれの日ごろの念願にかなうものがありますれば、それに対して十分に考究をしたい、かように考えておる次第でございます。
○西村(関)委員 私は、アメリカ側が言っております北からの浸透あるがゆえに報復爆撃をやるのだという言い方がもはや理が通らなくなっちまった、今日においては戦略的な攻撃を加えてきておるということも南ベトナムにおけるところの自由と民主主義を守るためだ、また南ベトナムの政府から頼まれたからやっているのだというアメリカ側の言い分に対してもきわめて無理があるし、また、理が通らないところがあると考えるのでございます。この点に対して、椎名外務大臣は、終始一貫、このアメリカの主張を受け入れて、北爆もやむを得ない、これは自衛の行為だということを言っておられるのであります。そういう状態を日本政府は改めない限り、この問題の終息に対して歴史的な役割りを演ずるということはできないと思うのです。私は、政府が北の民主共和国の言い分に従うということを必ずしも期待をいたしておりません。私どもの主張とは違うところがありましても、公正な中正な立場に立って、アメリカ一辺倒の外交方針ではなくて、いつも言っておられるところのアジア中心の外交、アジアの一員としての外交の主体性を打ち出していかれることが、この時点において歴史的な役割りをわが国が果たしてまいる上において非常に重要な点ではなかろうかと思うのでございます。きょうは、時間がございませんので、こういう基本的な問題については外務大臣と意見を交換するということはできません。時間が非常に制約されておりますから、こういう問題につきましては、近い将来、もっと討議を重ねて、外務大臣の御所信も承り、また私どもの意見も申させていただきまして、日本としてこの時点に立ってどうあるべきかということについて真剣に考えたいと思うのであります。また、政府が何らかの行動に出られることを期待するものでございます。
 そこで、私は、本日問題をしぼりまして二つの点からお尋ねをいたしたいと思います。
 一つは、御承知の、アメリカ軍及び南ベトナム軍の北爆によりまして、北ベトナムの水域に配船されておりましたところの日本船がその航行の危険性が増大いたしてまいりましたために配船を中止するということが言われておるのでございます。こういうことになりますと、従来、国交未回復の国ではございますが、日本の関係業者の方々が非常な犠牲を払って開拓してまいりました北ベトナム民主共和国との貿易がストップしてしまう、こういう事態にいま立ち及んでおるのでございます。このことは、関係業者の方々の問題であるばかりでなく、いま日本の産業に重大な影響を持っておりますところのホンゲー炭鉱の石炭の輸入の問題、これがストップいたしますことによりまして、多くの大小の業者が甚大な被害を受ける。こういう点につきまして私はいま詳しく申し上げることを省きますけれども、こういう事態が到来してきておる。こういう点に対して政府は一体どういうふうにこれを解決しようとお考えになっておられますか。
○椎名国務大臣 ホンゲー炭は日本にとっては非常に大事な資源がございますが、最近の情勢にかんがみて船会社のほうで自発的にその運航を停止したようでございます。したがって、これによって日本の産業も相当困難な事態に当面することになりますが、これらの詳細につきましては、それぞれ各省に関係がございますので、よく取り調べてまた申し上げる機会を持ちたいと思いますが、なお政府委員から私の御答弁の足りない点を補足させていただきます。
○西村(関)委員 政府委員からの御答弁は、時間がございませんから、なるべく簡潔にお願いしたいと思います。
○内田説明員 お答え申し上げます。
 昨年度のホンゲー炭輸入は七百六十二万ドルでございまして、わが国と北越との貿易のうち輸入量の七七%を占めております。大部分を占めておる状況でございます。
○西村(関)委員 私はそういうことを伺っておるのではございません。この事態に対して政府は何か考えているかということです。ホンゲー炭をはじめ、日本からその裏づけとして輸出いたしております鋼材とか繊維、肥料、機械などの輸出もストップしてしまう。これは安全保障のないままに配船がストップしたということですから、何らかの形において安全保障を取りつけるという努力を政府はすべきではないか。そうでないというと、契約不履行によりこうむるところのばく大な損失を日本の業界の方々が受けなければならぬ。年間百五十隻からの船が就航いたしておるのでございますが、こういうことに対して、こういう貿易がストップしてしまうということを防ぐために何らかの外交措置を講ずるという用意があってしかるべきだと思うのでございますが、その点についてお伺いをしているのであります。
○内田説明員 お答え申し上げます。
 北越とわが国との関係でございまして、わが国の船舶の北越寄港状況から申し上げますと、第一中央汽船会社が月に一回定期配船をいたしておること、先生御存じのことと存じます。これは日本、香港、ハイフォンをつないでおります。このほか外国船の用船等も含みまして月平均十隻程度が不定期船で就航しておりまして、主として第一中央汽船、ジャパンライン、それから山下新日本汽船等の七社が配船に当たっております。
 御質問の点につきましては、現在の段階におきましては、政府としては同水域に常時危険が存するとは断定しておりませんので、同水域の運航につきまして関係業者の自主的判断にゆだねておる次第でございます。
○西村(関)委員 現に配船を中止するという事態に立ち至っておる。ホンゲー炭については代替品がないということでありまして、四十万トンからのホンゲー炭がストップするということになりますと、電気化学とか、昭和電工、日本カーバイド、信越化学等々の大手会社はもちろんのこと、二百社に及ぶところの練炭、または東京瓦斯をはじめ都市ガスのこうむるところの被害は甚大であります。業者の自主的な判断によってこれにまかせるというようなことで問題が解決するとお考えでございますか。事実四月から船がストップしてしまう。そういうことで、たいした危険がないから自主的な判断によって業者の方々の善処を願うのだということで政府は手をこまぬいておる、そういうことは、生命、財産の保護に当たるところの外務省としてとるべき態度ではないと私は思うのであります。現に第七艦隊がこれらの船の航行する水域に出没しておる。そしてまた、そこから戦闘行為が毎日毎夜繰り返されておる。こういう状態において、これは大した危険がないのだから業者の自主的な判断にまつほかはないというようなことで逃げを打たれている。これは業者の方々は納得をしない。何らかの外交的な措置を講ずるという必要があると考えますが、いかがですか。
○安川政府委員 御承知のように、米国は北越を随時爆撃しておりますけれども、これは、アメリカ側が随時明らかにしておりますように、目標はあくまでも軍事施設に限るということを言っておりますし、現に軍事施設を目標に爆撃が行なわれているわけでございます。したがいまして、普通の商業行為に従事する日本船を米軍が目標にして爆撃するというようなことはとうてい考えられないわけでございます。ただ、何かのはずみに飛ばっちりを受けるということが絶対にないということを保証するわけにはまいりませんけれども、少なくともアメリカ側が日本船を目標にした爆撃をするというようなことは考えられませんので、ただいま外交交渉と申されましたけれども、アメリカ側にしましても、日本船を目標にした爆撃をするというようなことは絶対にしないということを言うことは明らかでございますので、これはあくまでも業者の方が自発的にとられた措置について政府はそれにかれこれ指図する立場にはない、そういうふうに考えております。
○西村(関)委員 そんなことはわかっておることです。日本船を目標にしてアリメカが爆撃するといったようなことは、だれが考えたってそんなことはあり得ない。しかし、戦争というものはそう常道どおりにはいかない。いろんな危険が伴うのであります。そういう危険が伴えばこそ船会社が配船中止を申し入れておるということでありますから、そう通り一ぺんのきまりきったことの答弁ではなく、外交交渉ということができないにしても、政府として何らかの保護措置を講ずる必要があるのじゃないかというふうに思うのでございます。
 そこで、運輸省のほうにお伺いをいたしますが、この点に対して運輸省はどういう考え方を持っていますか。
○沢説明員 お答え申し上げます。
 運輸省といたしましては、日本船舶が先ほど御説明がありましたように十ぱい程度毎月配船されておりますので、この船の安全、それから船員の安全につきましては重大な関心を持っておりまして、かねてから外務省にこの船の安全の確保について関係方面によく連絡していただくようにお願いしてございます。それから、運輸省といたしましては、この船の航行をとめるという権限は、これは航海の制限等に関する件という法律がございまして、交戦状態に入って日本船舶の安全が害されると思うときには航行の禁止を命ずることができる、こういう規定がございますが、これは運輸省独自で判断することはできませんで、結局外務省のほうと御連絡して、そういう状態が起これば航行の禁止をいたしますが、目下のところ外務省からもそういう御連絡がございませんので、運輸省としてはそういう措置はいたしておらないわけでございます。今回の配船の中止は、日本の船会社が、一つは海員組合から危険であるという申し入れがございましたし、もう一つは、戦時保険料を普通保険のほかにかけなくちゃいけませんが、その戦時保険料が非常に上がってまいりまして、採算的に成り立たないという状態になって、船会社が自発的に同地域への航行を中止した、こういう状態でございます。
○西村(関)委員 海員組合からの要請も当然だと思いますし、また、特別保険等の関係から船会社が採算が合わないから出しかねるということも一面うなずけないではないのでございますけれども、そのためにこうむるところの貿易業者の甚大な被害、また日本の各関係業界の契約不履行によるところの非常に大きな損失、そういうものをどうすることもできないのであります。これに対して運輸省としては外務省に何らかの手を打ってほしいということを申し入れをしているということでございますが、現在は危険な状態でないから何らの手を打ってないというのが外務省の立場であります。しかし、それでは現に配船がストップしておるというこの事実の解決にはならないのであります。そこで、この点について通産省は一体どういうふうに考えておられますか。
○山本(重)政府委員 北ベトナムとの貿易につきましては、従来から、いわゆる政経分離と申しますか、可能な範囲で貿易を進めるという考え方でまいっておるのでございます。最近特別な事態になりまして、従来順調に拡大の方向に向かっておりました北ベトナム貿易がいろいろな困難な事態に当面しております。われわれとしては、そういう事態ができるだけ早く解決して、普通の貿易が進められるように祈っておる次第でございます。具体的にホンゲー炭の問題がいま出ておりますが、私のほうでもいろいろ心配しておるのでございますが、いまのところ、ホンゲー炭が来なくなるために業界のほうからこういうふうにしてくれというような具体的な陳情はまだ出ておりません。早急によく調べまして善処いたしたいと思っております。
○西村(関)委員 四十万トンのホンゲー炭につきましては代替品がないのです。業界から何も要求がないから、要望がないからということで時期を失してしまっては、取り返しのつかないことにもなろうかと思うのであります。私は他の一問についてお伺いをしたい問題がありますけれども、時間がございません。また、この問題につきましても、外務大臣、こういう問題が具体的に起こってきておる。一日も早く戦争をやめなければいけない。これは北ベトナムの水域に対しては日本船に関する限り安全だということで済まされない問題でございます。でありますから、これは、そういう事実がある、そういう事実に基づいてこれを保護するということのためにひとつ検討していただきたい。これを再開することのために検討していただきたい。業者の自主的な考え方にまつほかはないというようなことでは、このベトナム戦争の問題の及ぼす影響の一つの具体的な問題のあらわれといたしまして、この問題をこういうふうに片づけてしまったのでは、関係業界がおそらく納得しないと思うのです。ただ困った困ったと言うだけでもいけない。こういう点に対しても、公式・非公式いずれも問わず、何らかの解決への努力を関係各省においてぜひやっていただきたい。
 きょうはこれ以上のことを伺う時間がございませんが、そのことを私は強く要望いたしまして、そういうことに対する外務大臣の御所信を最後に承って、私はきょうの質問を終わりたいと思いますが、しかし、この問題は、委員長、ペンディングにしておいていただきたい。まだほかの一つの問題は、LST、アメリカの輸送船に対する日本の乗り組み員の問題でございます。これらの問題は次の機会に私はお伺いいたしたいと思いますが、最後に外務大臣の御所信を承って、質問を終わりたいと思います。
○椎名国務大臣 日本船の運航停止はきわめて重大な問題でございまして、これらの安全確保につきまして十分に検討いたしたいと考えます。
○安藤委員長 戸叶里子君。
○戸叶委員 先ほどの質問の御答弁を得ないままにしり切れトンボになった形ですから、さっきの質問に対する答弁をいただきたいと思います。
 外務大臣、合意議事録は国会の審議の対象にならないということをおっしゃったわけです。そこで、もしも紛争が起きた場合に――その中にいろいろな問題があるでしょうから、紛争が起きた場合にどうやって解決しますかということを伺ったわけです。その中で私が国連憲章の百二条を引用いたしましたが、百二条にはこういうことが書いてあるわけです。「この憲章が効力を生じた後に国際連合加盟国が締結するすべての条約及びすベての国際協定は、なるべくすみやかに事務局に登録され、且つ、事務局によって公表されなければならない。」、そうして、その二項として、「前記の条約又は国際協定で本条1の規定に従つて登録されていないものの当事国は、国際連合のいかなる機関に対しても当該条約又は協定を援用することができない。」、こう書いてあるわけです。したがって、国会の審議の対象にならないと、紛争があったときに国連でこれを援用して討議することができないわけです。ですから、そういうことから考えましても、日韓会談の問題は、たとえば李承晩ラインにいたしましても、非常に大きな問題があって、そしていろいろと議論されていることでございますから、やはり紛争が全然ないということも私は考えられないと思う。そうなると、国会の審議の対象には合意議事録はならないという形で秘密のうちにほうむり去られますと、もしもそうした問題で紛争が起きたときにどうやって解決をなさる手段がありますかということを伺っておるわけです。
○椎名国務大臣 条約局長からお答えいたします。
○藤崎政府委員 今回の会談では合意議事録というようなものをつくる予定は別にございません。将来条約協定が署名されます場合に、それに付属して合意議事録をつくるということもあるかと存じます。ただ、従来の取り扱いといたしましては、合意議事録には国会の承認をいただかなくちゃならないような重要な内容を盛り込まないということにいたしておりますので、国会の御承認をいただくことがなかったわけでございます。今後ともそういう取り扱いにいたしたいと思っておりますが、ただ、これを秘密にするということはないのでございまして、関係の参考資料として国会にも従来ともいつもお出しいたしております。
 なお、国連憲章百二条との関連につきましては、先ほども申し上げましたように、その合意議事録自体として国連の場に持ち出すほどの重要な問題を規定するつもりはございませんので、条約・協定が国連の場に持ち出されました場合に、その条約・協定の条項の解釈に関連しました合意議事録が参照されることはあるかはしれまんが、とにかく条約・協定自体は国際連合に登録することは当然でございます。
○戸叶委員 条約自体は国連に登録することは、おっしゃるとおりそれは当然だと思います。ただ、問題は、この前の委員会で、合意議事録というようなものを出すということがはっきりしたから、私は言うわけです。お出しになるようなことを言われ、それに対しての質問に対して、国会の審議の対象にはいたしませんということを、たしか野原さんの質問のときだったと思いますが、答えておるわけです。ですから、私がそこで、それでは問題にならないかということを申し上げた。
 それじゃ、もう一つ伺いますが、いまの場合は合意議事録はない、しかし本条約になければ合意議事録があるかもしれないし、ないかもしれないのですか。それが一つ。
 それから、もう一つは、たとえば、李承晩ラインの問題等にからんで、国際法は国内法に優先する、こういうふうなこともはっきり明記するということを外務大臣はおっしゃいました。そういうようなことはおそらくこの条文の中には織り込めないと私は思うのです。そういうことになると、国際法が国内法よりも優先しますということを明記するならば、やはり合意議事録以外にはないのではないか、こういうふうなことも考えたものですから、しかもそれははっきりさせておかなければならない問題であるし、それからまた、紛争の種にならないと言い切ってしまえればいいですけれども、相手が韓国ですし、在来のあり方を見ましても紛争の種にならないと言い切れない面があるのではないか、こういうふうなことから質問をしているわけです。外務大臣いかがですか。
○藤崎政府委員 合意議事録はたぶん条約・協定に関連してつくることになるだろうと思います。ただ、まだはっきりその文書の形態まで交渉できめておるわけじゃございませんので、あまり明確にお答えしなかったのでございまして、見込みとしては、つくられることになるだろうと存じます。
 それから、先ほどの国際法が国内法に優先するという点でございますが、大臣がそういう表現をお使いになったかもしれませんけれども、その表現のままでどこか必ず入るという御趣旨じゃなくて、そういうような趣旨を体して何かの日韓間の合意が文書の上で明らかになるようにするという御趣旨だろうと思います。
○戸叶委員 外務大臣に伺いますけれども、そういうような意思を体してどこかでそれをうたうということですけれども、国際法が国内法に優先するということははっきりと合意議事録の中に入れるということをここの場でお答えになったのですよ。私はずっとここで聞いているわけですよ。ですから、それを聞いておったので、ああこれはいろいろの問題があるのではないか、合意議事録はどういう形で出るのだろうかというふうに自分でずっと考え合わせてきていま御質問したわけです。ところが、いまのような御答弁ですと、そういうような形で入れないかもしれない、しかしそういう意思を体して入れるということになりますと、またいろんな問題が起きてくるし、そういうことはあり得ないと思う。そういうことをどんな形で入れられますか。
○藤崎政府委員 大臣がこの交渉に臨む方針といいますか態度としてお述べになったことがあるだろうと思いますが、それが表現までそのままの形で最終的に条約に入る、そういう意味ではないだろうということを申し上げただけでございまして、先ほどの合意議事録の点も、私は、農林大臣はそうしたいというふうな交渉における態度ということで御発言になったように了解いたしております。
○椎名国務大臣 いの合意議事録ということばをお使いになっておりますが、大体合意された要綱をまとめておるわけでございます。そのまとめた要綱の中にどこかに李ラインというものがはっきりとなくなるのだということをぜひ書き上げたい、こういう考え方を農林大臣が主張し、われわれも、それがよろしい、こう思っております。それもせっかくいま折衝中でございますから、まだはっきりと申し上げる段階ではございませんが、イニシアルは、合意議事録ではない両方で合意した要綱でございます。それのどこかにそれをあらわしたい、こういうことでいま折衝をしております。
○永末委員 議事進行。ただいま外務大臣は合意議事録について、農村大臣が過般この外務委員会で李ラインの撤廃は合意議事録において明記をするとわれわれに答弁をいたしましたが、その点について、努力する目標だ、こういう話でありますが、先ほどからの総理大臣の答弁は、合意議事録というものは大体本条約に新たな何ものかを付加するようなことはしないのだ、こういう程度のはなはだ軽く扱われた答弁をされた。条約局長は、最初、合意議事録なんていうものはつくるかどうかまだきまっておらぬ、こういう答弁をされた。問い詰めていくと、最終的には、外務大臣のいまの答弁のように、農林大臣の答弁と関連をしてそういうことをいま折衝中でございますと言う。この点は、少なくともイニシアルがあるときには、はっきりと態度をきめて、解決してそれに臨んでいただかなければ、政府の態度が三つにも分かれておるようなことでは、われわれはそのイニシアルに対してはっきりした判断を下すことはできません。この点を御確約を願いたい。
○椎名国務大臣 そういう方針でいま臨んでおります。
○戸叶委員 委員長もお気づきだと思いますけれども、いま永末委員が指摘されましたように、私たちずいぶんわけがわからなくなってきました。というのは、初めに、合意議事録は出す、しかし国会の審議の対象にはしないかもしれないというふうな答弁から、今度は私が、その合意議事録でいろいろな問題があるんだから、やはりこれを国会ではっきりさせないと、あとで問題が残りますよ、こういううふに申し上げたならば、そういうものは出すか出さないかわかりません、こうおっしゃる。今度は外務大臣は、そういうものを出すかどうかいませっかく協議中ですからということでお逃げになった。私はやはり非常に疑問を持ちます。この委員会で私が関連質問で伺ったそのことさえも、何かぼやけてきたと思います。李承晩ラインの問題で、李承晩ラインを撤廃するということを書くか書かないか、日本だけでそう思っていても相手国があるじゃないかということで、もう何時間もやりとりしました。そのときに、結局、国際法が国内法に優先します、こういうことで結びをつけたわけです。それでは国際法が国内法に優先するということを合意議事録なり何なりでお書きになりますかと言ったならば、書きますとおっしゃった。いまは、そういう表現では使わないけれども、何かの形でするとおっしゃった。そうすると、国際法が国内法に優先するという解釈は、この問題だけでなくて、日韓間のほかの問題でもあると思うのです。そういう場合に、そういう形であらわすということがなくなってしまいますと、また問題がこんがらかってくる。やはり、ここで一度答弁された、国際法は国内法に優先するんだ、ことに李承晩ラインについてはこうなんだということはそうでなければ協定は成り立たないということかどうか、この辺をやはり外務大臣具体的にお答え願いたいと思うのです。そうでないと、あしたかあさってか知りませんけれども、調印されるというのに、こういうあいまいな答弁じゃ、どうも私たち納得できないと思うのです。
○椎名国務大臣 イニシアルしようというのは、これは合意議事録じゃございません。そのどこかに、公海自由の原則というものをあくまでこれを尊重するというようなことで、特別のそういう相手国を縛るようなものはやめるということがはっきりするような表現をひとつぜひ入れたい、こういうことで折衝しております。
○戸叶委員 外務大臣、公海の自由は守るという形では非常にあいまいなんです。いままでだって、公海の自由を日本は守っていたけれども、韓国は守らなかったじゃないですか。だからここで問題にして、そして、せめて、李承晩ラインのことでは、李承晩ラインの廃止ということばが入れられないから、国際法は国内法に優先する、こういうことを書くんだとおっしゃったのですよ。それを、公海の自由は守りますということだけでは、これはいままでと一つも前進しておりません。この点もはっきりしていただきたい。
 それから、先ほどから外務大臣は私に教えてくださっているのですが、イニシアルをするのは合意議事録じゃありません、そのくらいのことは私も幾らしろうとでも知っています。仮調印をするのは条約でしょう、協定でしょう。しかし、合意議事録というのは、それ以外に合意した議事が書いてある、これが合意議事録ですね。ですから、その合意議事録の問題について私はいま質問しておるわけです。
 それでは伺いますけれども、そういうふうないろいろな仮調印をする条約だか協定だか知りませんが、そういうものは、一度そこで仮調印しますと、今度本調印にいく前には、基本的な線は変えないにしても、それに足したりいろいろするのでしょうか。それの協定があって、今度は合意議事録があって、その合意議事録に沿うて本調印するまでには直す余裕があるのか、それとも仮調印したものそのものが本調印になるのでしょうか。この点のこともちょっと伺いたい。
○藤崎政府委員 基本関係条約の場合には条約案そのものにイニシアルをいたしましたが、今回は要綱にイニシアルする予定になっております。それを何と呼びますか、合意事項と呼ぶか何か知りませんけれども、それの中には条約に盛らるべき内容の要旨が載っておるわけでございまして、条約の形に整える場合には当然それにいろいろ付加されるであろうと思います。実際問題といたしまして、いまは、それがいよいよ条約案の形に広げられてきた場合に何をどこに規定するというところまではいっておらないわけでございます。
○戸叶委員 もうこれでやめますが、先ほど御答弁のあいまいだった、永末委員からも指摘されました季承晩ラインについての、国際法が国内法に優先する、この問題だけははっきりとさしておいていただきたいということを外務大臣に要望いたします。これに対しての御答弁を伺って、私の質問を打ち切りたいと思います。
○椎名国務大臣 御趣旨はわかりましたので、そういう御趣旨はよく拝聴いたしまして努力いたします。
○安藤委員長 この際、おはかりいたします。
 先刻の外務委員打合会の内容は記録してありますので、本日の会議録に参照としてその記録を掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○安藤委員長 御異議なしと認め、そのように取り計らうことにいたします。
 本日はこの程度にとどめ、次会は公報をもってお知らせすることとし、これにて散会いたします。
   午後一時四十七分散会
     ――――◇―――――
  〔参照〕
昭和四十年四月二日(金曜日)
 外務委員打合会
   午前十時九分開会
○安藤委員長 これより外務委員打合会を開会いたします。
 本日は、日韓問題について、日韓全面会談日本政府代表高杉晋一君が出席されております。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。
 穗積七郎君。
○穗積委員 高杉代表にお尋ねをいたします。
 私どもの質問の前に、あなたは政府の要請によって、この重大な対韓交渉にあたって、わが国の運命を代表して交渉に当たられるわけですけれども、それなりにあなたには決意と御方針がおありだろうと思う。したがって、私語されたことについては一、二新聞で拝見をいたしましたが、国民に向かって、あるいはまた国会の外務委員会を通じて内外にわたって、あなたの所信と交渉の方針、これを伺うことは当然なことだと思うのです。最初に何かあなたの所信、方針を簡潔に伺えるなら伺ってからお尋ねをすることがたてまえ上望ましいと私は考えておりますが、何か最初に御所見がございましたら承りたいと思います。いかがでございますか。
○高杉晋一君 ただいま穗積先生よりお尋ねがございましたので、御回答申し上げます。
 私がこの日韓代表を拝命するにあたりまして考えましたことは、終戦以来日韓交渉が始まりまして十四年目になっておるということでございます。御承知のように、朝鮮と日本とは古い歴史を持っておりまして、しかも最も近接しておる国であり、しかも自由圏に属しておる国であります。この二つの国が国交が正常化しないということは何としても不自然である、こう考えた次第でございます。そして、この両国の正常化こそ両国の繁栄のもとであり、また、アジア、ひいては世界の平和のもとである、こう考えまして、微力を尽くしてこの日韓両国の国交正常化にひとつ骨折ってみたい、こう考えた次第でございます。簡単に申し上げますると、私の考え方はそういうことから出発しておるのでございます。
○穗積委員 抽象的に一般的におっしゃいましたので何ですけれども、いまお話の中にありましたように、この交渉が十四年もかかっておるのには、それ相応の理由があり、それ相応の原因があったと思うのですが、そのことについてあなたは特に具体的に御検討になって、しかる後に所信を持ってお引き受けになったと思う。それらについて、いかなる御検討をなされ、いままで十四年もかかりました根本的な原因はどこにあったか、そして、それを除去するためにはこうすればできるという、こういう御確信があろうかと思うのですが、それについて、できますならば続いてもう少し具体的に、あなたの所信というよりは御方針を伺えたら、お互いに時間の節約になり、そしてまた、問われてやっと答えたということでなくて、きょうわれわれが要望いたしましてあなたにここに来ていただいたのは、去る一月七日の御発言云云の問題もありますけれども、むしろ、あなたが所信と具体的な方針を持ってこれを引き受けられたことに対して、国民として関心を持ち、しかもあなたに敬意を表して、こういうオフィシャルな機会を通じて国内外にあなたの具体的な方針を明らかにする機会をお与え申し上げる、こういうことがわれわれの存念でございますから、その十四年もかかりました原因をどう究明されたか、そしてまた、それを乗り越えるためにいかなる御方針をお持ちになっておられるか、そのことについて、差しつかえなければこの際明らかにしていただきたいと思います。
○高杉晋一君 十四年間も日韓交渉が妥結しなかったというその根本の原因は、おそらく、この両国民の感情、特に韓国民の対日感情というものが非常に大きな原因になっておると思うのであります。その感情のよって来たるゆえんというものは、要するに、日本が六十年前に締結しました乙巳条約、さらに、合併問題が起こりまして日本が朝鮮を合併してからの三十六年にわたる統治、この政治が韓国民に非常に悪い印象を与えておった、これが韓国民の心のしこりとなって残っておる、この感情に対する処置が非常に困難であった、そうして、日本のほうにおきましても、この感情に対する処置といいますか、やり方、そういうことがなかなかうまくいかなかった、こういう点が大きな原因じゃないかと思うのでございます。
 それで、私は、この過去の問題につきましては、両方になかなか言い分がたくさんあると思います。日本の韓国に対する政治が非常に悪かった、これも大きな原因であろうと思うのでございます。しかし、過去の問題につきましてわれわれが議論をしておるということは、むしろ前向きの姿勢を妨げる一つの原因となる。私もいろいろ議論を聞きました。しかし、過去について、あまり両方が、いいとか悪いとか、こう議論をしておりますると、これからの日韓関係を正常化する一つの大きな障害になるから、この過去の問題はしばらくおいて、われわれとしては、現に問題となっておるいろいろな懸案、漁業問題、法的地位、基本関係、請求権問題竹島並びに文化財というような、現に問題となっておるこの問題を前向きの姿勢で将来に向かって解決して日韓関係を正常化するならば、そうして、日本が誠意をもって、行動をもって、日本と韓国、特に日本のできるだけの経済協力その他の協力面において日本が誠意を尽くしていったならば、韓国民の感情も自然やわらいでくるだろう、それには相当の年限もかかるでありましょうが、しかし、これをしんぼうして、そうして日本が行動をもってまず韓国のために尽くすということが一番大事ではないか、過去の問題についてあまり議論をしておると、ついけんか腰になって議論が激しくなる、それでは困る、過去よりもむしろ未来に向かって進まなければならない、議論よりも行動、こういう方針で日韓問題を処置していって、やがて正常化したならば、そうして日本ができるだけの力をもって韓国のために助力する、協力することができたならば、両国の感情というものは非常によくなってくる、そうしてこれがやがて両国の繁栄にもなり、またそれが一つの大きな平和のもとになるであろう、こういうふうに私は考えた次第でございます。
 以上、この点を申し上げます。
○穗積委員 御説明を多といたします。とこが、問題の焦点の第一は、いまおっしゃった点にあるわけですね。実は、あなたは財界の御出身であり、日本における一私企業である三菱の中における指導者ではありましたけれども、今度は、民族全体を代表いたしまして、経済ではない政治の問題であり思想の問題に、公式に全国民を代表してこの衝に当たられるわけです。そうなりますと、いまの話によりますと、日韓会談においては、請求権の額・内容をどういうふうにきめるか、漁業における彼とわれとの利害関係をどう調整するか、貿易あるいは経済協力についてどういう条件でやったならば相手とわれわれとの間の経済上にどういう利害得失が生まれるか、そういう問題として日韓会談を理解するならば、これは私は解決しがたいと思う。そういうことは当然入らなければなりませんが、そういう問題に触れる前に、基本の問題というものがあるわけです。それがすなわち、あなたのおことばによれば国民感情ということばによって表現されている。われわれで言うならば、帝国主義、植民地主義の問題になってくるわけでございます。韓国の大衆あるいはまた朝鮮全体、北朝鮮を含みます朝鮮民族三千四百万の大衆にあなたは終戦後お接しになり、そのものの考え方、世論の動向というものをきわめられておるかどうか知りませんが、過去の朝鮮人は御存じでしょう。わが国の帝国主義の支配下に権力と弾圧の中に踏みひしがれておりました朝鮮の人々のことは御存じでしょうが、終戦後の独立をいたしました後の朝鮮民族の世論、ものの考え方、対日感情というものはおそらくあなたはまだつまびらかにしておられないのではないかと私は推測し、危惧を抱くわけでございます。
 いまの韓国政府は、われわれをもつて言わしめれば、アメリカ帝国主義のかいらい政権となっております。そして平和共存すら理解していない。アジアにおけるある意味では外交上のトラブルメーカーである。こういう立場に立っておる朴政権を中心とする少数の政治的な責任者とお会いになったときには、どういう議論ができるかわからぬ。請求権問題についてよりたくさん金が取れ、あるいはまた第一次産品の輸出についてより有利な協議ができ、あるいは漁業基線、漁業捕獲量についてより有利な条件が取れるならばいまの国民感情を売り渡してもかまわぬということで、皆さんからごらんになれば、かの国の代表者というものは、口では理屈を言っておるけれども腹の底は打算である、経済的打算に立っておるというふうにお考えになって、したがって、いま言いましたような請求権問題、漁業問題、貿易問題等々具体的にやることによって日韓会談の基本的な正しい妥結ができるというふうにお考えのようですが、これは誤りであります。これではできません。いまの李外務部長官を中心とする椎名外務大臣との間の交渉は文書の上では一時妥結するかもしれぬ。しかしながら、そのことによって日韓会談が妥結したなんと思ったら大間違いです。朝鮮全民衆の理解と賛成がなければ、この会談は必ず政治的につまずきます。それが十余年間かかった根本の原因である。そのことについては、あなたは国民感情ということばをもって表現された。その国民感情についてはいろいろ言い分があるので、過去のことは言わないで前向きで行こう、前向きも、これからの日韓両国人民の友好的な原則について、思想上の原則について話し合うよりは、請求権、漁業問題、貿易問題等々の具体的のもので処理していくならばこれは必ず妥結する、そのほうが得だ、こういうふうなお考えのようですが、ここが問題なんです。将来における基本的なこの友好関係を打ち立てる思想、国民感情の上で友好を打ち立てるためには、あえて過去のことを問う必要はないというのではなくて、過去における三十六年間のわが国の帝国主義的支配というものをどう理解し、今後それに対してどういう方針でいくかということを、代表であるあなたに対して一番知りたがっているわけだ。朴政権は、いま申しましたとおり、政治的偏向を来たしたかいらい政権でありますから、経済的利害得失によって取引をするかもわからぬ。そこで妥結する可能性もあるでしょう。現にそれが進行しつつある。ところが、日韓両国人民のほんとうの友好、いま所信として君われた百年の大計、両国の互恵平等、繁栄のための日韓会談の妥結というものは、そんなところに問題があるのではありません。請求権の額であるとか、漁業の基線であるとか、あるいは漁業に対する援助であるとか、あるいはまた貿易に対す利害得失によってこれがきまるものではない。その点は、日本のいまの政治家よりは向こうのほうがさむらいなんです。すなわち、金の問題ではない。原則の問題だ。中国にいたしましても、朝鮮にいたしましても、これが基本なんですから、そこのところは、請求権の額であるとか漁業その他における経済的利害得失によって会談が妥結するのではございません。
  〔委員長退席、野田(武)委員長代理着席〕
わが国の世論も、新聞を中心とする最近の世論というものは、漁業ラインをどっちが譲ったとか譲らぬとか、あるいは請求権に伴う経済供与で民間供与の一億を三億にするとかせぬとか、それで譲ったとか譲らぬといって得をしたとか損をしたとか、そういうところに議論を持っていっていますが、それは朝鮮民族の帝国主義植民地主義に対する感情に正しい理解というものを日本国民がまだ持っていないからなんです。特に政治の指導者がそのところを正しく理解してないからです。経済界の中枢をなしておられるあなた方指導者というものがこれを理解してないから、日韓会談というものを誤解しておる。朝鮮人民のねらっておるところ、求めておるところはどこにあるのだということを理解していない。だから、日中貿易におきましても、中国の原則がわからない。あれは、民間でやるか輸銀でやるかという、利子の高いか安いかの利害得失によって問題が起きているのではない。原則の問題だ。すなわち、帝国主義であるか、あるいは民族独立の自主的な方針によって臨むかということなんです。だから、あなたが国民感情ということによって言われたこと、すなわち、三十六年間の日本の帝国主義支配というもの、これをどう理解し、今後これをどういう思想的立場に立って日韓両民族の友好提携を考えていくか、これがあなたによって示さるべき最初の所信であり、最初の交渉方針でなければならないと私は思うのです。そのことにあなたはいみじくも触れておられます。両国人民の国民感情、ものの考え方の一致が必要だ、それはどこにあるかといえば、過去三十六年間の日本の朝鮮支配に問題がある、そこまでは私は全く認識は正しいと思う。ところが、あなたは、これから交渉に臨むにあたっては、その問題について触れるというと両者の意見が不一致になる、これは違うということですね。だから、そんなところで議論をしているというと長引くし、問題が解決しないから、具体的に請求権問題、漁業問題、貿易問題等々についてこれを解決していくならば解決が早いし、正しい交渉の態度であるというふうにお考えのようですけれども、それではできません。こういう経済的な将来にわたっての提携は、その関係というものは、百年の長きにわたっていかなる細部の条約をつくっても、条約で規制することができない。すなわち、その基礎には友好と信頼というものがなければならぬ。友好と信頼というものは、過去三十六年間の植民地主義支配というものをあなたはどう理解しているか、すなわち、日本国民はどうそれを理解しておりますか、代表であるあなたに伺いたい。今後は一体それをどういう方針でいかれるつもりであるか、それを代表であるあなたに伺いたい。これがかの国の世論でございます。私は、終戦後、南には行ったことはありませんが、北の国は訪問いたしまして、そして政府並びに民衆の方々のお考えを実際に見、かつ伺いました。そこにおける中心もその問題です。
 そこで、実は去る一月、あなたが佐藤総理の要請に従って、いまのような御所信によって、交渉の最終最高の責任者の地位をお引き受けになった。そのときに、外務省の記者クラブ、霞クラブにおいて就任後代表としての立場で所信を明らかにされた。そのときにもこの問題に触れておられる。すなわち、南の日韓会談に当たるにあたって、最初に問題になるのは三十六年間の統治である、それについては国内にも意見があり、向こうとこっちとの間にも意見があるけれども、おれはこう思うということをあなたは言われたと称せられておる。そして今度は、われわれとしては後にお尋ねいたしますが、終戦後の降伏文書、平和条約を中心にいたしましてこの日韓会談の義務づけが行なわれておる。あるいは日本と朝鮮民族全体との義務づけが国際条約上規定されておる。それに従っていまの対朝鮮の折衝が始まるわけです。したがって、北の人民に対しましても同様の公平な原則による責任がわれわれにあるわけですね。その北に対しましては、あなたはおそるべき敵視政策、すなわち、かの国の人民どもはわれわれに対する侵略者であるという規定をされたと伝えられておる。そのことが実はこの交渉を最も困難ならしめ、われわれはこれに対して反対をする。われわれが反対をし、向こう側の北朝鮮の人民はもとより、南朝鮮の大衆の圧倒的な者がこれに反対しておる原因はここにあるのです。よくお聞きください。したがって、私はここで、あなたがしゃべったと称せられる速記録は資料として持っておりますが、このことばじりをつかまえてどうこうということではありません。そうではなくて、われわれが危惧するところもそこにある。北朝鮮はもとより、南朝鮮の学生、労働者、インテリ等も、野党の諸君も全面的に反対をしている。国を売るなと言っている。すなわち、先に言いました、あなたの言われた経済的な利害得失によってこれが妥結するものではないということを証明しておるのです。したがって、いま言われた国民感情、すなわち三十六年間の統治をどうお考えになるか、そして、北朝鮮を侵略国としてあなたは規定されたそうですか、それをどうあなたはお考えになっておられるか、すなわち南北朝鮮の統一問題についてどうお考えになっておられるか、朝鮮民族全体に対する日本民族の友好交流の責任をどうお考えになっておられるか、これが私は基本だと思うのです。おわかりいただけたと思うのです。
 そういう趣旨でございますから、私は、過去のことを言い、あなたのこの談話というものをここで取り立ててことばじりをつかもうという考えではない。そういう精神でございますから、私の質問の趣旨を理解されて、あなたも所信をもっておやりになる、われわれも所信をもって反対しておるのですから、堂々とひとつここであなたの所信なるものを明らかにしていただきたい。
○高杉晋一君 ただいまのお話、よく承りました。その中で御質問になった要点は、過去三十六年間の日本の支配に対してどう考えるかということが一つの御質問のように考えております。これにつきましては、私はあえて人のことばをかりるわけではありませんけれども、先日椎名外務大臣がソウルに参りまして、過去において両国間にはまことに遺憾な不幸な時代があった、これに対してはわれわれは遺憾に思う、そうしてわれわれは深くこれに対して反省するということばを述べられたのであります。私もまことに名誉と思っております。この椎名大臣のことばをかりまして、私も同じような感情を持っておる、そういう感じでおる。ただ、当時そういう名言が私には発見されませんでしたので、そういうことばを言うことはできなかったのでありますが、椎名大臣のこのことばはまことに名言と私は考えておりまして、これをもって私の考えと御了承願いたいと存じます。
 それから、北鮮はわれわれの敵であるというようなことは、いかなる場合にも、私、そういうことを申したことはございません。このことは御了承願いたいと思います。
 それから、もう一つ、日韓交渉妥結というものが、先ほど申し上げましたいろいろの各問題、ただいま委員会でやっておりますが、ただこういう問題の妥結だけでは妥結がならないという御高説でありますが、私もまさにそのとおり考えております。日韓問題はこれからの問題でありまして、よしんばここに妥結いたしましても、これを実行するにあたりまして非常にむずかしい問題だと思うのであります。われわれはただ誠意と実行をもって、これを円満に実行することが大切であろうと思うのであります。あえて妥結したからといって、日韓問題がそれで全部解決したとは私は考えておりません。むしろこれからが非常にむずかしい問題であると私は考えておる次第でございます。
○穗積委員 私は一々あなたにお尋ねしないでも、あなたが所信をここで明らかにしていただければ、それでもう質問はないわけです。しかし、いまのように、私の精神がおわかりになりながらあえて内容についてお答えがないということになれば、ここでお尋ねしなければなりません。そこで順を追うてお尋ねをいたしましょう。
 まず第一に、去る一月七日、外務省の記者クラブにおいて、あなたは就任直後次のような談話をなすったということが伝えられまして、この内容はすでに日本の国内においては多数の新聞、出版物に登載をされました。また、かの国におきましても、東亜日報をはじめといたしまして非常に多数の新聞、ラジオで放送され、それに対する痛烈なる反対の論評が行なわれてまいったのでございます。ところが、これは外務省によって圧力を加えられまして、見苦しい工作がその後行なわれたようでありますけれども、われわれの聞き及んでおるところでは、あなたは次のようにこの問題について言っておる。「日本は朝鮮に対する三十六年間の統治に関して謝れという声もある。しかし申しわけないとは言えない。国民感情として」――国民感情というのは日本の国民感情です。「国民感情としてそんなことは言えたものじゃない。日本は朝鮮を支配した。しかしわが国はいいことをしてきた。いろいろもの言いをつける人もいるが、日本としては朝鮮をいいものにしようとしてやったことだ。」、
  〔野田(武)委員長代理退席、委員長着席〕
それからちょっと中略いたしまして、「もう二十年日本とつき合っていたら、」――というのは今後です。「いたら、こんなことにはならなかっただろう。」――終戦後のことでしょう。「われわれの努力は敗戦でだめになってしまったが、もう二十年朝鮮を持っていたらよかった。台湾の場合は成功した例だが……。日本が謝れというのはかってな言い分だ。日本は朝鮮に工場や家屋、山林など、みなおいてきた。創氏改名もよかった。それは朝鮮人を同化し、日本人と同等にあつかうためにとられた措置であって、搾取とか圧迫とかいったものではない。」云々でございます。あとは省略いたしましょう。こういうことをあなたは言われたという。私は、さすがに三菱のワンマンだと思って、そういう態度については実はうなずけるところがあった。こういうような時勢に思うことをかってに言うということのその人間的な態度については、これは卑屈なる政治家や官僚の足元にも寄れぬところであるけれども、この言っておられる、すなわち国民感情と称する政治方針、思想、これは、もう朝鮮全人民の敵であるばかりでなくて、日本人民にとってもこの思想は敵でございます。だから、われわれは、これは過去のことを、もう過ぎ去ったことを、日韓会談はこのように進んできた、だからいまさらそんなことをあばき立ててみてもしょうがないというようなばかばかしい敗北主義の考えではない。これは、今後ますます国際競争の中で日本の経済が行き詰まってまいりまして、対中、対韓国あるいは朝鮮、台湾あるいは東南アジアに対するこれからの思想の根底になる。終戦後はアメリカの圧迫のもとに民主主義と平和主義というのがまくらことばに使われてきた。それはつけ焼刃であったことが、このごろになって次第に明瞭になってきているやさきです。だから、私は過去の問題として言うのではなくて、当面しておる日韓会談のみならず対中国、対東南アジア、対台湾問題、すべてこれが基本でございますから、決して過去の問題ではない。そういうことも含めまして私はこの事実をあなたにお尋ねするわけです。あなたも三菱におけるワンマンをもって自認され、所信をもって行動する男であるということを常に言っておられるそうでありますが、もしそうでありますならば、包み隠しなしにおっしゃっていただきたい。つまらぬ弁解や責任回避、それはあなたの人間としての立場をそこなうものであると考えます。二重の誤りをおかすことになります。思想上の誤りと人間的な卑屈という二重の誤りをおかすことになられますから、これは、よしあしは別として、所信をもってお互いに言ったことに対しては責任を持ちましょう。このことを、いやがらせではなくて、私は先ほど申しましたような趣旨によってお尋ねする次第でございます。
○高杉晋一君 ただいまの御質問でありまするが、韓国民の感情にさわるようなそういうことを私が七日の記者会見で申し上げたということを、ただいま穂積先生からお話しがありましたが、それは私の意見ではありません。私の意見として申し上げたのではありません。これは、韓国側、日本側においてそういう議論の対立があるということを申し上げたのであります。私はそういう考えは持っておりません。また、そういう意味で申し上げたわけでもありません。ただ、こういうことをお互いに言い合うということは両国民の将来にとってよくないんだ、だから、こういうことを新聞やなんかに書いてはいかぬのだというようなことを私は申し上げておるのであります。それを私の意見のように発表したということに私は問題があろうと思うのであります。私は自信を持って、そういう考えを持っておりません、また、そういう私の意見をいかなる機会においても申したことはありませんと、はっきりと申し上げておきます。
○穗積委員 あなたが言われたというこの文章、これを日本語としてわれわれが理解いたしますならば、それはあなたのは言いのがれにすぎない、非常に卑怯な態度であると私は思うのであります。
 そこで、押し問答をいたしましても時間をとるし、他の質問者もおりますから、先へ進みますが、それではお尋ねいたしましょう。それでは、あなたはこういう文章が――あなたのこの文章を読んで、それは日本の一部にある誤ったこういう考え方としてあなたが言われた文章ではないのです。ことばではないのです。したがって、正しい理解は、だれでもそうしましょう。あなたの所信として、そうここに書いてあるじゃないか。あなたの文章です、これは。あなたの所信です、これは。人によっては云々と書いてある。人によってはあやまれと言うけれども、それは誤りだ、あやまれというけれどもおれは断じてあやまらない、そんなことは言えたもんじゃない、こう言っておられるわけでしょう。あべこべですよ、あなたの言っておられるのは。ここで押し問答をしておるいとまもありませんから、それじゃお尋ねしましよう。そのことが、日本と朝鮮人民との間に、北南を問わず、こういうものの考え方が日本の政治経済の指導者の中に残存しておる、このことが問題なんです。かつて久保田発言があり、また沢田さんの講演等があって、常にこれは問題になっている。われわれも問題にしておるのはそのことなんです。そうでありますならば、あなたが特に一財界人ではなくて日本民族を代表する者としてこういうことを言われたということが、どれだけ国益を害しているかわからない。あなたは、こういう考え方は根本的に私と違う、これを克服しなければ日韓会談はだめだというふうに言われたといま言われた。そうでありますならば、新聞に対しまして、あなたは名誉棄損あるいはその取り消しの要求をなさいましたか。そういう措置をとられるのが当然だと思うのです。なぜおとりになりませんか。個人としては名誉棄損、国としては、これではわれわれを含む国益侵害でありますから、黙っているということは、あなたは代表としての職責を果たしていないのです。どういうわけでおとりになりませんか。なぜ取り消しを要求されませんか。これとは違ったという意味ならば、なぜ談話を発表なさいませんか。この期に臨むまでノーコメントでなぜ黙っておられました。あなたの人間の生き方として卑怯であるのみならず――そのことはあなたの道徳の問題ですから問いません。そうではなくて、このことがいかに国際関係において日本の立場をそこなっておるか。あなたは代表として最初の落第生だ。最初の一言で、もうその処置について、われわれはあなたを信託して日韓会談の代表として認めるわけにはいきません。どういうわけでその処置をおとりになりませんか。
○高杉晋一君 ただいまの発表の問題でありますが、私の知るところにおきましては、私がこういう発言をしてどうこうということを新聞その他で発表しましたのは私はあまり見ておりません。大体共産系、左翼系の新聞なり印刷物でありまして、都下の大新聞その他のところに、私のこういうことを批判した議論は出ていないと思うのであります。そうして、私の考えは、こういうように私から見れば悪意をもって宣伝をする、書くというようなことは、これは訴訟しようが何しようが防ぎようがありません。これはかってにまかしていくほかしようがないと思うのであります。私はそういうふうに考えましたので、あえて取り合わずにおったという次第であります。
○穗積委員 一部の諸君が悪意をもって書いた、だからそういうものはネグレクトしてきた、これはもう認識不足もはなはだしい。韓国においては、その後東亜日報だけではなくて各新聞がこのことを掲載し論評し、そして今日まで語りぐさになっておる。その事実をあなたは御認識になりませんか。いかがですか。
○高杉晋一君 そういう印刷物は私拝見しておりません。
○穗積委員 そんなことで日韓会談の代表がつとまりますか。そんな怠慢、そんな無神経、そんな認識不足、それで一体だれを相手にして日韓会談をやろうとしておるのですか。こういうものの考え方を中心にして、いま南朝鮮においてすら、ほうはいとした、野党を中心とする、学生あるいは労働者、インテリあるいは漁民、これが大衆的に参加いたしました反対運動が起きておることを御存じないですか。この問題ですよ。何をあなたは言っておられるのですか。御存じなければ、われわれ説明申し上げましょう。百時間かかっても申し上げなければならない。それでも耳をかそうとしないならば、あなたに対して不信任を提出しなければならない。われわれは、あなたがたとえ主観的には悪意がなかったとしても、そのような態度で、日韓会談の代表としてわれわれの運命をあなたに託するわけにはいきません。あなたはそうお考えになりませんか。のみならず、しゃべったかしゃべらぬかということは、これは実はあなたに関係のないことですから申し上げませんけれども、われわれとしては、当時の外務省記者クラブに参考人として来ていただいて、しゃべったかしゃべらぬかを明らかにすれば明瞭でしょう。あなたはしゃべらぬと言っている。これはわれわれの国会の関係ですからあえて申し上げませんでしたが、あなたはこれはしゃべったと言っておって、その内容は、あなたが言ったような意味でおしゃべりになったのではないので、あなたの所信として言われたことを、われわれは記者クラブの方の協力を得てこの委員会に参考人として出ていただいて伺って調査することができます。ところが、あなたにいま伺いたいことは、このことがどういう影響を与えておるか、どういうふうに理解されておるか。それに対して手を打たぬことが正しいことであるとあなたはお考えになっておられる。そんな判断、そのような責任のないことで、日韓会談の代表として国民はあなたを信託するわけにはまいりません。佐藤さんとあなたの個人的な問題ではありませんよ。アジアにおける日朝両国人民の永久の問題であると同時に、さっきおっしゃったように、アジア全体における平和の問題に関係しておるのですから。あなたはわれわれをも代表しておるわけですから、主権者であるわれわれに対して、そんな答弁であなたは責任が果たされると思っておりますか。卑劣しごくです。具体的に責任のある答弁をしていただきたい。それで、ができないなら辞任をしていただきたいのです。
○高杉晋一君 そういう、私の真意なり所信なりを曲がった方面でいろいろ宣伝をして、それによっていろいろ運動を起こしておるというようなことにつきましては、どうも私といたしましては手の打ちようがないと思います。特に韓国におけるそういう運動に対しましては、どうも私としては手の打ちようがない、こう申し上げるほかないと思うのでございます。
○穗積委員 韓国だけの問題ではありません。先ほど言ったように、われわれの疑問でもあるのだ。それじゃ、代表、私が先ほどから質問しておる趣旨、私どもがこの問題を取り上げておる態度が、悪意に満ちた耳をかす必要のない発言であり、心配であると言われるのですか。韓国だけの問題ではありませんよ。私個人ではない、野党のみならず与党の中においてすら、この考え方に対しては反対をしておる方があるわけです。それがすべて悪意に満ちた、ためにせんとする政治的偏向であるから、こんなものは一顧だにする値打ちがないと言われるのでしょうか。私の質問に対して答えていただきたい。
○高杉晋一君 一顧だにする値打ちがないということを申し上げたのではありません。何か私の真意が非常にまだ徹底されていないようでございますので、念のために、――一月二十日にこの問題につきまして韓国政府から照会がありましたので、これに対して私が向こうの金代表に対して釈明をしたのであります。その釈明文を一応ここで読み上げて、皆さんの御了解を得たいと思うのであります。「日韓問題について私が韓国民の感情を無視したとんでもない発言をしたということが共産系ニュースその他一部に報道されたことを知り、まことに驚きました。この作為的報道が日韓交渉の前途に暗雲を落とすことをおそれ、私はこの機会をかりて、私の覚悟と信念を披瀝いたしたいと存じます。私は日韓国交正常化の交渉にあたって国民感情の問題を重視しております。私は韓国民が日韓間の歴史的関係についてきわめてきびしい感情を抱いておられることを十分理解しております。また韓国民の間では本年が乙巳の年といわれていることも知っております。私は韓国民のこの気持ちをいかにして対日友好感に持っていくか、日夜腐心しておる次第であります。日本国民は誠意のある行動をもって、このわだかまりを解いていかねばなりません。そのためには何をおいても日韓交渉を妥結させ、国交を正常化し、日本国民が誠意を持って韓国民の期待にこたえる道を開かねばならないと信じ、そのため微力を尽くす覚悟であります。このような信念と覚悟を持っている私が、どうして一部に報道されているようなことを言うはずがありましょうか。韓国の国民感情に対する私のこの気持ちを何とかして韓国民にお伝えしたいというのが私の切なる希望であります。」、こういうことを釈明いたしまして、向こうの政府の了解を得たと考えておる次第であります。
○安藤委員長 穗積君に申し上げますが、あと石野さんも質問されますから、それを御了承の上御質問をいただきとうございます。
○穗積委員 それでは答弁になっていない。それでは具体的に御質問しなければならない。それは、三十六年間の植民地支配に対しては、心から、誤りであり、これに対する民族的な罪過を自覚しておられますか。いかがでしょうか。
○高杉晋一君 先ほど申し上げましたように、椎名外務大臣の言われた、深く反省する、これはわれわれこれを是正していくという考えでおります。
○穗積委員 すなわち、反省をする、誤りであるから反省するわけでございますね。
○高杉晋一君 はい。
○穗積委員 すなわち、それは、一民族の他民族に対する植民地支配、武力あるいは資本の力を問わず、そういうことは誤りである、そういうことを日本国民は三十六年間行なってきた、そういう責任と罪過ははっきりここで自覚しておる、こういう趣旨でございますね。
○高杉晋一君 私はそのように感じております。
○穗積委員 その償いについては今後の問題に属しますので、今後の交渉の経過においてわれわれはこれを指摘いたしたい。実はそれについてもお尋ねしたいと思ったのだけれども、あなたがはっきり初めから言われないものだからつい時間をとりましたが、もう一点だけお伺いいたしておきたいのです。
 あなたはこの中でこういうおそるべきことを言っておられる。それは朝鮮民主主義人民共和国の人民に対する誹謗でございますが、「日本からいえば、韓国が六十万の軍隊を置いて北朝鮮からの侵略を食いとめていることを高く評価し、心から感謝せねばならない、こういうことでございます。だから、請求権で幾ら出そうと、漁業協力で幾ら出そうと、それは安いものだ、六十万の軍隊を、番犬を置いておくことを考えれば安いものである」、すなわち、日韓会談というものは、南朝鮮を三十八度線で反共線として食いとめるための日本の自衛行為である、したがって、本来言えば、この政治体制というものを鴨緑江まで押し返さなければならぬということをかつて沢田さんは言われたが、これと全く同じ思想ですね。北朝鮮がなぜ悪いのですか。あなたは、平和共存すら否定されて、いまのジョンソンあるいは軍部の諸君が誤ってインドシナ半島で行なっておるような、かつて日本が満州国で行なったような、そういうことをあなたは考えておられる。北朝鮮がなぜ一体侵略国ですか。その侵略に対して韓国はわれわれの番犬であるとあなたはここで言っておる。これはどういうことでしょうか。
○高杉晋一君 私は確かにそういうことを申しました。韓国が六十万の兵隊を三十八度線に置いて、北の侵略と申しますか、あるかどうかわかりませんけれども、それに備えておるということは、自由を守るわれわれとしては、このことに対して敬意を払う、感謝をするということは、私は当然であろうと思うのであります。あえてそれが戦争をするとかしないとかいう問題ではないと思います。かつて北鮮から韓国に侵入してまいりまして非常な戦争をやったためしもございます。そういうことを考えますると、あそこに韓国が非常な犠牲を払って六十万の大兵をとにかく備えておくということは、自由を守るわれわれとしては感謝しなければならないと私は考えておるわけであります。あえて北と戦争をするとか、北を侵略するとかいう考えではございません。ここでとにかく平和を維持しておるというように私は考えまするので、そういう発言をしたことは確かであります。
○穗積委員 これはたいへんな御発言ですね。私が言っているのはそういうことじゃない。北の朝鮮民主並義人民共和国、並びにその政府を支持しておる人民の対日態度を問題にしておるわけです。あなたは、北の政府並びに人民が、わがほうに対する侵略国である、侵略者であるという前提に立っておられる。そこが問題なんです。私どもが問題にしておるのはそこなんです。なぜ一体そんな規定をされますか。なぜそのような誹謗をなさいますか。わが国の朝鮮人民に対する――朝鮮人民の自主的独立を認め、それとの間において交渉の義務を負っておるのは降伏文書です。朝鮮全体です。この朝鮮人民の思想的発展、政治的な機構、経済の方針、これらは自主的に朝鮮人がきめる問題です。それがどう変わりましても、そのことに条件を付せずして日本国政府並びに人民が朝鮮人民に対して請求権その他の国交回復の義務を持っておる。それが日韓会談の法源です。法律上の責任のある根源でございます。それに対してあなたはなぜ北を区別されますか。区別されるのは誤りです。それでは政府のいままでの北と南に対する基本方針にも反するわけです。あなたはそんなことを、財界人の一人としてかってなことを言うのはけっこうです。かまいません。けっこうではないが、私どもはそれにとやかく言う筋合いはない。ところが、あなたはわれわれの意見も代表する代表でございますからね。そういう考え方でものを言うというのは間違いなんです。その北朝鮮の政府並びに人民が、これが侵略国であるという規定は、何をもってそんなことを言われますか。二十五年におけるあの朝鮮戦争の発端を、あなたは北の侵略によるものだとなぜ規定されますか。どこにそんな根拠がありますか。どうですか。
○高杉晋一君 北朝鮮を侵略国とは私は申しておりません。ただ、北と南と戦争をしたことは事実であります。あえて敵だとか侵略国だとか、そういうことを私は言うつもりはありません。ただ、北と南と戦争があった、北から攻めてきた、こういう事実のあったことを私は申し上げる次第でありまして、あえて敵国だとか侵略国だとか、そういうことを言うたわけではありません。
○安藤委員長 穗積君、御注意申し上げますが、石野君がおりますから、どうぞ……。
○穗積委員 あなたはそんなことを言っていないのです。侵略国と言っている。北朝鮮からの侵略を食いとめていると。理由なくして戦争するものは侵略者です。北朝鮮が戦争を起こしたのですか。朝鮮戦争を起こしたのは北だということは、あなたは何をもってそんな言いがかりを言われるのでしょうか。事実をもって証明していただきたい。北朝鮮の政府並びに人民に対する誹謗です。誤りであります。その根拠を明らかにしていただきたいのです。
○高杉晋一君 侵略ということばは、侵略を食いとめているというようなことは、それは妥当じゃないかもわかりませんが、少なくともあそこに兵隊を持っておるということは、向こうから攻めてくることを防いでおるものである、こう私は考えます。また、北のほうでも兵隊を、両方で配置しておるのでありますから、これはお互いの問題じゃないかと思います。
○穗積委員 いまの御答弁ははなはだ遺憾でありますけれども、時間の約束がありますから次の質問者にかわりますが、了承いたしたわけでは決してございません。根本的な誤りを指摘して、次の機会に譲りたいと思います。
○安藤委員長 石野久男君。
○石野委員 高杉さんにお尋ねいたします。
 ただいまの穂積委員の質問に対して、高杉さんの一月七日の発言については、だれかが作為的な報道をしたのだ、こういうようにただいま御答弁がございました。このことは、さきにも椎名外務大臣が、あなたが一月の二十日だったと思いますが韓国の代表部に釈明したときのことについて御答弁あったときにも、そういうようにおっしゃったわけです。あなたがこういうふうにこの報道は作為的な報道であると言われたからには、その作為をした者がいるはずだと思うのです。どなたが作為されたのですか。
○高杉晋一君 それはわかりません。ただ、私の感じは、東亜日報の記事もよく読んでみましたが、これは非常に巧妙な作文と私は考えております。どうも作為的と私は考えております。だれがそうやったかというようなことは、私はわかりません。
○石野委員 ただいま高杉氏の御答弁によりますると、穗積委員の質問に対して、六十万の軍隊が北朝鮮からの億略を食いとめていることは高く評価し云々ということについては、確かに私はそう言いました。こういう御答弁でございました。これはやはり高杉発言の一部分なんです。ですから、あなたは、ある部分では作為的報道だと言い、あるところではそれを自分の発言だということをはっきり言っているわけです。そして、問題なのは、この三十八度線におけるところの六十万の軍隊が北朝鮮の侵略を食いとめているということに対して高く評価しているということなわけです。いまあなたが日韓会談の首席全権としてやられておる任務、その方針、いま朝鮮と日本との友好関係を何とか確立しようという考え方の中で、あなたの持っている朝鮮に対する考え方、三十八度線の南と北とに対する考え方について、ここではっきりとひとつ御意見を承っておきたいと思います。
○高杉晋一君 ただいまの御質問でありますが、朝鮮民族が南と北に分かれておるということは、私は民族の悲劇と考えております。非常な悲劇である。これに対してわれわれは衷心からお気の毒に考えております。できるだけ早く南北の統一あらんことを念願することは、私もすべての人と同じでございます。ただ、それが容易にできないいまの情勢にあるということを私聞いておりますので、ただその点を悲しむ次第でございます。できるだけ早く南北統一ということの実現されることを私は国民の一人として念願しておることを申し上げておきたいと思います。
○石野委員 念願しておるということを私は聞いているんじゃなくて、いま現にあなたは交渉しておられるわけです。首席全権です。三十八度線の南のほうの大韓民国との交渉をしておるわけです。北のほうの朝鮮に対してはどういうふうにお考えになっておられるかということを聞いておる。
○高杉晋一君 北の朝鮮に対しましては、わが国はまだ承認しておりません。これは一つの大きな政治問題であります。この点につきましては、私はここでかれこれ批判することは差し控えたいと思います。
○石野委員 差し控えたいということだけれども、あなたは日本の国を代表する首席全権でございましょう。
○高杉晋一君 ただいま承認することのできる状態ではないと思います。
○石野委員 何を承認する状態です。私のいま聞いているのは、あなたのいまの任務は、日本を代表して日韓会談をやられておるでしょうということを聞いている。
○高杉晋一君 さようでございます。
○石野委員 ですから、あなたがいま日本を代表して朝鮮問題を論議しているにあたって、朝鮮というものをどういうふうにお考えになっておるかということを私は聞いておる。
○高杉晋一君 ただいま申し上げましたように、南と北とございます。われわれの交渉しておるのは南の韓国とやっておるのでございます。
○石野委員 だから、北はどうです。
○高杉晋一君 北とはやっておりません。
○石野委員 だから、北をどういうふうに考えておるか。
○高杉晋一君 北は考えようがありません。いま日本が承認をしておりませんので。
○石野委員 高杉さんにお尋ねしますが、いま南と交渉しておることはよくわかっているのです。ただ、しかし、政府委員であり、しかも政府を代表しておるのですから、これは全体としての朝鮮の一部といま交渉しておるわけですから、他の一部分についてどういうふうに考えておるかということを私はお聞きしておるのです。あなたは、朝鮮というのは過去三十六年間日本の属国に置かれておった国であることも御承知のはずでしょうし、それからまた、その間に日本から今度は解放されたということもよくお知りのところだと思います。ですから、ここで交渉するにあたって北の朝鮮をどういうふうに見ておられるか。先ほどあなたは侵略国だというふうに規定されておるのですが、そういうふうに見ておるのですか。
○高杉晋一君 侵略国というふうには私見ておりません。ただいま平和な状態にあると思います。
○石野委員 日韓会談を進めるにあたって、あなたが三十八度線におけるところの六十万の軍隊というものに非常に高い敬意を表しているということは、これをやはり依然として持ち続けてもらいたい、そうして北の朝鮮との間のそういう状態に対して防壁になってもらうことを願うことを交渉しておるのですか。
○高杉晋一君 そういうことは私念願しておりません。できるなら両方とも兵隊を全部撤廃してしまったら一番いいと思います。そうして平和な交渉がつけば非常にいいと考えております。
○石野委員 基本条約をつくったときに声明された中で、「日韓全面会談の妥結は日韓両国にとって著しい利益であるばかりでなく、」と、「著しい利益」ということが書いてあるのですが、そのとき日本にどういうような利益がありますか。
○高杉晋一君 これはやはり、日本と韓国というものは、お互いに経済提携をやるということになれば、経済的に両方が繁栄することになると思います。それは著しい利益になると思います。そのほか、やはり、国交が回復をしますると、文化の交流もあります。人事の往来もよくなります。そうしてお互いに手をつないでアジア文明の建設に当たるというふうなことを考えてみますると、私は非常に大きな利益があると考えております。
○石野委員 あなたは三菱の一員でございますし、それに経団連の輸出入対策委員長でもあると聞いておりますが、日韓会談を行なったときに、経済の側面で特に日本はどういうような利益があるのですか。(「答弁する必要はない」と呼ぶ者あり)そんなことはない。これがなかったらどうにもならぬじゃないか。
○高杉晋一君 これは、実際の利益の面は、これから両方経済協力をやっていかないとわからないと思います。ただ、私の推測では、お互いに相当利益があると考えております。
○石野委員 「わたしは経団連の経済協力委員長として後進国の開発に力をつくしているが、韓国には国交が正常化していないため、財界として本格的にのりだせないでいる。せっかく請求権問題が無償三億ドル、有償二億ドル、計五億ドルで大体の話がついているのだから、一日も早く国交を正常化して、この金をつかって韓国の国情にそった開発に日本が協力することになったら、両国民のためになると思う。」、こういうことをおっしゃっていますね。
○高杉晋一君 そのとおりに考えております。
○石野委員 このとき、いまここから日本はどういうような利益が出るのですか。
  〔発言する者あり〕
○安藤委員長 私語をお慎みください。
○高杉晋一君 これは、利益とか損とか、そういう問題ではなく、私は、経済協力というものはいまほとんど国際通念でありまして、先進国が後進国のために協力し援助するということは、これはもう普通の国際通念になっております。特に、先年ジュネーブの国連の貿易開発会議におきまして、先進国は国民所得の一%を少なくとも後進国のために奉仕しよう、こういうような大体の了解ができておるくらいでございまして、日本は韓国に対して三億ドルの無償、二億ドルの有償長期貸し出し、その他民間融資を三億ドル以上、こういうような大体の線が出ておるのでありまして、これはおそらく、日本としても、こういう国連精神にのっとって自分の利益というよりもやはり韓国側の利益を先に考えてやる、そうしたならばその利益はやがて日本にはね返ってくるのだ、こういうふうに私は考えておるのであります。
○石野委員 韓国はいま経済状態も非常によくないし、非常に事業も一興きていない実情にあります。そういう事情の中で日本から資金を持っていっても、アメリカのほうでは御承知のように数十億ドルの金を二十年の間に向こうにつぎ込んだけれども何にもならなかったのでして、いまここで四億ドルや五億ドルの金を持っていってもほとんど役に立つまいというのが一般の見るところなんです。おそらく日本の側としてもたいして利益はないだろうと思うのですが、高杉さんはその点でどういうような利益が出ると思うのですか。あなたは日本の代表で、首席全権でいろいろな交渉をされておるのでしょう。ただ朴政権をささえるためにだけこんなことをやっておるのだったら、日本国民の膏血をしぼった金を持っていっても何にもならないのですよ。何か日本に利益がなかったら、そんなお恵みで金をあげるだけ日本も裕福ではあるまいと思うのだ。あなたが首席全権を引き受けてやっておる以上は、何か日本に役に立つことがあって、国民に対しても、われわれの税金を使っても役に立つと思うからやっておるのだと思う。そういう点をここではっきりあなた御自身からひとつ聞かしてもらいたい。
○高杉晋一君 経済協力の問題を申し上げたいのですが、経済協力の方式にはいろいろございます。こちらから技術を向こうに輸出するとか、あるいは向こうにジョイントベンチャーの工場をつくるとか、あるいはいま問題になっております保税工場とか、こういういろいろな方法がございます。こういう方法は相互利益の立場に立ってやっておるのでございます。そして、御承知のとおり、韓国は非常に失業者が多いのでありまして、この点もわれわれ考えまして、こういう失業者に相当の地位を与えるということも大切だろうと思う。その一役を日本が買うことができましたならばこれは両方のためになるのじゃないか。そして、相互利益の観念に立って経済協力を進めていったならば、これはひとり韓国のためのみならず日本の利益にもなる、こういうふうに考えておる次第であります。
○石野委員 いまほんとうに金を出していくのですから、韓国に金をやれば幾らかのおしめりは出るかもしれません。しかし、それだけで、ちっともものが入ってこなければしようがないのだ。だから、あなたは経済人だから、そこから何か生えてくること、何か茂ってくることが期待できなかったら、こんなことをやっても意味がないでしょう。たとえば、今度おたくの三菱レイヨンの賀集さんが、東南アジアの一部や中近東の地区の一部にコスト高によって輸出が困難になっている事情もあり、韓国の安い賃金で加工してこうした地区に輸出するのは有利だと思うので実現したい、この場合わが国の商社は窓口になって、韓国で加工したものをそのままメイド・イン・コリアとして第三国へ輸出する、こういうような方法などを言っておられるわけですね。こういうようなことはあなた方もやはり考えてやっておられることなんでしょう。
○高杉晋一君 それは、そういうことを大体考えております。
○石野委員 意見がありますか。
○高杉晋一君 賀集君が向こうに行くときに相談に来ましたので、私は賛成しておきました。
○石野委員 私は首席全権としての高杉さんにどうしてもやはり聞いておきたいことがあります。それは、この日韓会談をまとめまして――これはわれわれは反対しているわけです。あなたもやはり韓国では非常に強い日韓会談に対する反対の声のあることを知っていると思います。それから日本におる在日朝鮮人の諸君も非常に強い反対を持っておる。こういう中で日韓会談を進めていくということは、われわれにとって非常に将来憂うべきものが残るのだ、こう思うのです。その一番大きい問題は、何といっても、日韓会談ができた場合には南北の統一というものができなくなるということが一つ。これはやはり朝鮮人が非常に憂えておるわけです。たまたま朴政権が軍事政権であるからしてそういう統一問題を押えつけておりますけれども、実際のところは、朝鮮の諸君は、この日韓会談ができたらとても統一はできなくなるのだというような考え方の中で非常に苦しんでおります。それからまた、この日韓会談を進めていく過程の中で、ベトナム戦争との関係が非常に強く浮き彫りされてくるわけです。そういうことから、この日韓会談というのは、日本を、アジアの中のそういう緊張といいますか、ベトナム戦争の渦巻の中へ巻きこんでいく危険があるというようにわれわれも見ておるわけです。そういうことに対する危険というものは非常に憂うべきものがあるというふうに考えておりますが、高杉さんは、そういう問題について、特に統一の問題について日韓会談というのが非常にじゃまになるというふうに考えていないのかどうか。先ほども私はお尋ねしましたが、北の朝鮮というのは非常に軍国主義的に南のほうへ攻め込んでくるというふうな、そういう強い侵略的意図を持っているというふうにお考えになっておられるのかどうか。そういう点についてはっきりと高杉さんの御意見を承っておきたいと思います。
○高杉晋一君 日韓会談の妥結、国交の正常化というものが南北朝鮮の統一を妨害するとは、どうも私考えておりません。そう考えられません。
 それからまた、このことがベトナムの戦争のトラブルに巻き込まれるというようなことも、私は考えておりません。
 そしてまた、北朝鮮が韓国に攻め込んでくるというようなことも、私は考えておりません。いまは平和な状態が続いておりますし、将来ずっとこういう状態が続くのだろう、こう思っております。
○安藤委員長 石野さんにちょっと申し上げます。総理大臣の出席時間も迫っておりますし、総理大臣が出席しますと委員会に切りかえになりますから、御質問をできるだけ簡略にお願いいたします。
○石野委員 私は最後に一つお尋ねしておきますが、高杉さんは、一月の七日の発言は、あれはやはり作為的なもので私の真意でないのだというようなことをたびたび言われておりますけれども、しかし、あなたのおっしゃっておることは、この内容のことを全部そのまま肯定しておるわけです。たとえば、先ほど穗積委員に対するお答えの中でも、六十万の軍隊がおって北朝鮮からの侵略を食いとめていることに高く評価しということはそのままいまでも認めている。こうおっしゃった。それからまた、創氏改名というものは朝鮮を日本に統合するために非常にいいことだったのだ、こういうようなことを言っております。ところが、これに対しては朝鮮では非常な怒りを持っているのです。あなたのそういう考え方の中にこそやはりかつての侵略的な日本帝国主義の考え方があるのだ、こういうように言っております。それからまた、いまあなたがやろうとしておるところのいろいろな問題の中で、特に経済協力の中では、向こうに失業者がたくさんおるのだから、その失業者を日本は安い賃金で使うのだ、こういう考え方を持っておられる。こういうようなことは決して互恵平等におけるところのいわゆる経済協力であるとは思われません。それは、先ほど賀集氏の話し合いに対してちゃんとオーケーを与えてあなたは交渉さしておるのです。賀集氏はそのことをはっきり言っております。安い賃金で使うことによって協力体制を進めていくということは、それ自体やはり朝鮮の労働者を安く使うことであり、日本の労働者の賃金を引き下げるということにつながるわけです。だから、そういう問題について、経済協力という問題をほんとうにあなた方やるのだったら、やはり、朝鮮の労働者にも、日本の労働者と同じような賃金、同じように働き、能率を上げるような同じような賃金をあげなければいかぬ。そういうことに対しての考え方というものは、いまの日本の独占は考えていないわけです。私はいま高杉さんに最後にそれを聞きますが、以上の三つのことについてあなたの所見を承っておきたいと思うのです。
○高杉晋一君 ただいまの御質問でありますが……
  〔発言する者あり〕
○安藤委員長 私語をお慎みください。
○高杉晋一君 この韓国の安い賃金を利用しよう、そういうような考えは毛頭ありません。賃金の安いところの製品は輸出力がありますから、それは韓国のためにやはり輸出力が出てくるわけでありますから、これはやはりけっこうだと私は考えております。それで日本がもうけようとかなんとか、そういう考えは私は少しも持っていないのであります。御了解を願いたいと思います。
○安藤委員長 高杉代表は御退席くださってけっこうです。
 これにて打合会は散会いたします。
   午前十一時三十二分散会