第048回国会 社会労働委員会 第33号
昭和四十年五月十七日(月曜日)
    午前十時二十四分開議
 出席委員
   委員長 松澤 雄藏君
  理事 小沢 辰男君 理事 小宮山重四郎君
   理事 齋藤 邦吉君 理事 澁谷 直藏君
   理事 松山千惠子君 理事 河野  正君
   理事 八木  昇君
      亀山 孝一君    熊谷 義雄君
      坂村 吉正君    田中 正巳君
      竹内 黎一君    橋本龍太郎君
      藤本 孝雄君    粟山  秀君
      山村新治郎君    亘  四郎君
      淡谷 悠藏君    伊藤よし子君
      多賀谷真稔君    滝井 義高君
      八木 一男君    本島百合子君
 出席国務大臣
        労 働 大 臣 石田 博英君
 出席政府委員
        厚生事務官
        (大臣官房長) 梅本 純正君
        厚 生 技 官
        (公衆衛生局
        長)      若松 栄一君
        労働政務次官  始関 伊平君
        労働事務官
        (大臣官房長) 和田 勝美君
        労働基準監督官
        (労働基準局
        長)      村上 茂利君
        労働基準監督官
        (労働基準局労
        災補償部長)  石黒 拓爾君
 委員外の出席者
        厚生事務官
        (保険局企画課
        長)      首尾木 一君
        参  考  人
        (日本医師会副
        会長)     阿部 哲男君
        参  考  人
        (東京大学医学
        部教授)    秋元波留夫君
        参  考  人
        (西日本新聞論
        説委員)    浅田  猛君
        参  考  人
        (都立松沢病院
        長)      江副  勉君
        専  門  員 安中 忠雄君
    ―――――――――――――
五月十七日
 委員多賀谷真稔君辞任につき、その補欠として
 楯兼次郎君が議長の指名で委員に選任された。
同日
 委員楯兼次郎君辞任につき、その補欠として多
 賀谷真稔君が議長の指名で委員に選任された。
同日
 理事小宮山重四郎君同日理事辞任につき、その
 補欠として松山千惠子君が理事に当選した。
    ―――――――――――――
五月十五日
 母子保健法案反対に関する請願(伊藤よし子君
 紹介)(第四六七〇号)
 同(大柴滋夫君紹介)(第四八一二号)
 同(長谷川正三君紹介)(第四八一三号)
 同(原彪君紹介)(第四八一四号)
 同(中村高一君紹介)(第四九一〇号)
 同(帆足計君紹介)(第四九一一号)
 老後の生活保障のため年金制度改革に関する請
 願(大高康君紹介)(第四六七一号)
 同(中村寅太君紹介)(第四八一五号)
 戦傷病者の妻に特別給付金支給に関する請願
 (大坪保雄君紹介)(第四六七二号)
 同(上林山榮吉君紹介)(第四六七三号)
 同外一件(白浜仁吉君紹介)(第四六七四号)
 同(田口長治郎君紹介)(第四六七五号)
 同(田村元君紹介)(第四六七六号)
 同外四件(赤澤正道君紹介)(第四七九七号)
 同(池田清志君紹介)(第四七九八号)
 同(正力松太郎君紹介)(第四七九九号)
 同(田澤吉郎君紹介)(第四八〇〇号)
 同(塚田徹君紹介)(第四八〇一号)
 同(西村英一君紹介)(第四八〇二号)
 同(藤山愛一郎君紹介)(第四八〇三号)
 同外二件(關谷勝利君紹介)(第四九〇九号)
 同(荒木萬壽夫君紹介)(第四九一四号)
 同(有田喜一君紹介)(第四九一五号)
 同(今松治郎君紹介)(第四九一六号)
 療術の新規開業制度に関する請願(田中六助君
 紹介)(第四六七七号)
 同(野見山清造君紹介)(第四六七八号)
 同(荒木萬壽夫君紹介)(第四八〇七号)
 同(川野芳滿君紹介)(第四八〇八号)
 同(八木昇君紹介)(第四八〇九号)
 同(山内広君紹介)(第四八一〇号)
 同(山崎巖君紹介)(第四八一一号)
 医療労働者の労働条件改善等に関する請願(加
 藤進君紹介)(第四七一六号)
 健康保険改悪反対及び医療保障確立に関する請
 願外三件(加藤進君紹介)(第四七一七号)
 同外五件(川上貫一君紹介)(第四七一八号)
 同外九件(谷口善太郎君紹介)(第四七一九
 号)
 同外四外(林百郎君紹介)(第四七二〇号)
 同(大原亨君紹介)(第四九一三号)
 健康保険、看護制度改悪反対及び医療保障確立
 に関する請願(川上貫一君紹介)(第四七二一
 号)
 健康保険の国庫負担増額に関する請願(川上貫
 一君紹介)(第四七二二号)
 健康保険等改悪反対に関する請願(川上貫一君
 紹介)(第四七二三号)
 同(谷口善太郎君紹介)(第四七二四号)
 医療費値上げ反対等に関する請願(加藤進君紹
 介)(第四七二五号)
 全国一律最低賃金制の確立に関する請願(谷口
 善太郎君紹介)(第四七二六号)
 労働者の賃金引き上げ及び団体交渉権確立等に
 関する請願(谷口善太郎君紹介)(第四七二七
 号)
 健康保険法改悪反対及び医療の改善に関する請
 願外三件(谷口善太郎君紹介)(第四七二八
 号)
 同(林百郎君紹介)(第四七二九号)
 日雇労働者健康保険廃止反対等に関する請願
 (林百郎君紹介)(第四七三〇号)
 同(加藤進君紹介)(第四七三九号)
 健康保険制度改悪反対に関する請願(林百郎君
 紹介)(第四七三一号)
 同(帆足計君紹介)(第四九一二号)
 失業保険制度の改悪反対に関する請願(林百郎
 君紹介)(第四七三二号)
 日雇労働者健康保険制度改善及び老後の保障に
 関する請願(林百郎君紹介)(第四七三三号)
 同(谷口善太郎君紹介)(第四七三四号)
 同(川上貫一君紹介)(第四七三五号)
 原爆被害者援護法制定並びに原爆症の根治療法
 研究機関設置に関する請願(川上貫一君紹介)
 (第四七三六号)
 同外一件(谷口善太郎君紹介)(第四七三七
 号)
 同外一件(林百郎君紹介)(第四七三八号)
 公衆浴場業に対する特別融資に関する請願(藤
 山愛一郎君紹介)(第四八〇四号)
 同(増田甲子七君紹介)(第四八〇五号)
 同(山村新治郎君紹介)(第四八〇六号)
 同(小沢辰男君紹介)(第四九〇八号)
 日雇労働者健康保険改善及び厚生年金適用に関
 する請願(堀昌雄君紹介)(第四八一六号)
 全国一律最低賃金制の即時確立に関する請願
 (野間千代三君紹介)(第四八一七号)
 精神衛生法の改正等に関する請願(小沢辰男君
 紹介)(第四八一八号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 理事の辞任及び補欠選任
 労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案
 (内閣提出第一二四号)
 精神衛生法の一部を改正する法律案(内閣提出
 第八五号)
     ――――◇―――――
○松澤委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出の労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。八木一男君。
○八木(一)委員 労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案について、労働大臣や政府委員に御質問申し上げたいと思います。
 この中心的課題については、わが党の滝井委員から引き続き質問をしておられますので、私はごく具体的な問題について三、四点伺いたいと思います。
 まず第一に、今度の改正案では一人親方の特別加入ということが入ってございますが、いままで一人親方が加入しておる料率が、これによって変更されるように、増額されるようになれば、それは非常によくなると思うわけでございますが、当然同じような料率でやっていかれる御意思であろうと思います。それについて政府委員のほうからひとつ御答弁を願います。
○村上(茂)政府委員 結論を端的に申し上げますと、変えるつもりはございません。すなわち現在までの運用上、特別加入と同様な方式を用いまして処理してまいったものでございまするから、特別加入という制度に乗りかえたということによりまして、料率を変更するという考えはございません。
○八木(一)委員 次に、小規模事業の一括加入扱いという制度があるわけでございますが、これについて、たとえば東京都で申請した場合に、神奈川県あるいは群馬県あるいは千葉県というようなところで仕事をする場合もあるわけでございます。これはおもに零細事業主のほうに関係があるわけでございまするが、それをやはりそこで一括加入をしたときに、他府県で仕事をした場合もこの法律が適用になるようにしていただきませんと、そういう関係者が非常に困る場合が多いわけでございます。そういう点についてぜひ他府県にも一つの申請が及ぶというふうに取り扱っていただくべき問題だと思いますが、それについて政府委員のほうとしてどうお考えですか。
○村上(茂)政府委員 結論を端的に申し上げますならば、至急その方向で検討いたしたいということでございます。すなわち、一括加入の問題につきましては、全国ベースで考えるか、近県同士、要するにその零細な事業が活動し得る範囲が、単に行政的な区画にとらわれないわけでございますから、いま先生御指摘のような実態から見まして、適当であると思われるものについてこれを実現する方向で至急検討いたしたいと考えます。
○八木(一)委員 それをぜひ至急にやっていただいて、その間にも困る人がないようにしていただきたいと思いますが、これについて……。
○村上(茂)政府委員 御趣旨の点を十分私ども体しまして善処いたしたいと思います。
○八木(一)委員 次に元請の補償責任ということがあるわけでございますが、これについて造船業がまだこの中では適用になっていないように私ども理解いたしております。ところが、たとえば建設産業でペンキをやっている人が、建設業のほうでは元請の補償責任があるので、そのつもりでおりまして、造船のほうへペンキを塗りにいくというときに、それがないために非常に困ったことが起こり得ることがあるわけでございます。そういうような点をひとつ御配慮になって、造船業その他にも元請の補償責任があるようになるようにぜひしていただきたいと思うわけです。それについて……。
○村上(茂)政府委員 結論的に申しますと、法制的にもなお検討を要する点がかなりあると思いますので、御趣旨を体しまして慎重に検討したいと存じます。すなわち、造船業の下請の中にも、特に塗装段階に入りました際には、土木建築業の中の建築業的な要素がかなり濃厚にあらわれてまいりますので、類似した点のあることは私どもも承知いたしております。しかし、内容的に見ますると、なお検討を要する点が多々あるようでございまするので、御趣旨は私どもも了解できるのでありますが、実態を十分調査した上でさらに検討さしていただきたいと思います。
○八木(一)委員 いまの三点について局長のほうからお答えいただいたわけでございますが、第一点については非常に満足する御答弁でございました。第二点についても、非常に前向きな御答弁です。第三点については、そのつもりで検討なさるということでございますが、どうか労働大臣のほうから、その点が早く関係者の希望がいれられるようにしていただくように、大臣としての御指導、御努力を願いたいと思います。
○石田国務大臣 ただいまの政府委員の答弁と八木委員の御質疑との実情を十分考慮いたしまして善処いたしたいと思います。
○八木(一)委員 次に、この労働者災害補償法と直接関係はございませんが、大事な労働問題で一点だけ労働大臣に御要望をかねた御質疑を申し上げたいと思うわけでございます。
 さきに港湾労働法が制定をされまして、港湾労働者の雇用安定、労働力の確保という目的のためにこのような法律が制定されてすでに参議院を通過いたしたわけでございます。この港湾労働者の雇用状態が非常に封建的な状態が多く、その中にボスが支配したり何かして非常に条件が悪かった、そういうものをちゃんと雇用を安定させて荷役の労働力を確保される非常に前向きな法律であるように私どもは理解をいたしておるわけでございます。また、そこで訓練などを十分にして災害などが起こらないようにするという点についても、非常に前向きのものがあったというふうに私どもは理解しておるわけでございますが、この港湾労働者と同じく、またそれ以上に雇用条件の封建的な状態が多くて、そして災害の多い労働者の業種として建設労働者の問題がございます。特に建設労働というものが、いまいろいろの開発その他の必要上から費用に大量にそういう事業が推進されなければならないときに、そのほんとうの力である労働者の雇用がほんとうに安定をしていない、また封建的な状態で圧迫をされておるということであってはならないと思うわけでございまして、この建設関係の労働者にも、港湾労働法のような進歩的な雇用の安定をはかる法律を制定していただく御努力をぜひ政府にお願いをいたしたいと思うわけでございます。こういう点について、積極的な労働大臣の前向きの御決意のほどをぜひ伺わせておいていただきたいと思います。
○石田国務大臣 建設業における雇用の状態、労働の実情というものは、ただいま御質疑のようにいろいろ問題があります。特に古い形態の雇用関係、元請、下請の関係、同時にその雇用の不安定性、こういう点について改善を要すべきものがたくさんあることは御指摘のとおりであります。この建設業における労働問題の近代的処理について、でき得る限りすみやかに検討いたしたい。ただ、港湾の場合と違いますのは、事業が移動性を持っておるということが非常に違っております。もう一つ、政府側として処理しなければならない問題は、発注時期が一年を通じて、通年で行なわれるようにすることによって通年雇用が裏づけとしてできるような処置をもあわせて行なわれなければならない、そういうことを考慮しつつ、古いそして問題の多い状態の改善にはぜひ努力をしたいと思っております。
○八木(一)委員 非常に前向きな御答弁で、私も満足でございますし、関係者も非常に期待を持つだろうと思います。どうかこのような建設労働法の制定のためにいろいろな問題を十分に御検討になって、できるだけ早く政府から御提出になるよう心から要望いたしまして、質問を終わります。
○松澤委員長 滝井義商科。
○滝井委員 逐条的にわからぬことがあるから、少し時間が来るまで尋ねさせてもらいますが、これは労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案新旧対照表のほうを見ていただきたいと思います。これの三ページ、三条の四号に「前三号に掲げるもののほか、労働基準法第八条第一号から第十五号まで及び第十七号の事業であって、政令で指定するもの」となっておるわけですね。この「政令で指定するもの」というのは一体どういうものが入ることになるのですか。
○石黒政府委員 政令で指定いたすものは、産業の種類といたしましては、官公署を除きましてどの産業にも及び得るわけでございます。具体的にどれを政令で指定するかということは、今後の検討に基づきまして労災保険審議会の議を経て決定いたしたいと存じますが、当面は製造業等の零細企業のうち災害率の比較的高いものであって、現在労災保険の適用を受けていないものをまずつかまえてまいります。その後次第に横へも広げるような措置を講じたいというふうに考えております。
○滝井委員 そうすると、現在労災法の適用を受けていなくて災害率の高いものというのはどういうものがございますか。
○石黒政府委員 現在労災保険法の法律自体に列記してありますもののほかに、現行法の三条の第四号によりまして、規則をもって指定できることに相なっております。労働者災害補償保険法の施行規則の第三条におきまして、非常にたくさんの業種を一号から六号に至るまで列記いたしてございます。
  〔委員長退席、小沢(辰)委員長代理着席〕
おもなものを申し上げますと、原動機の出力が二・二キロワット以上の製造業、それから原動機の出力が丁四キロワット以上の製造業であって、特に危険の多いものといたしまして、二号に八つほどあげてございます。それから三号がそのほかの化学関係その他の危険有害業務、それから四号が屠殺とか映画の製作、自動車運送事業、こういうものについては、使用労働者の数を問わず常時労働者を使用すれば労災保険の適用があるというようにいたしてあります。そのほか、第五号が常時五人以上の焼却または清掃業、それから六号が沈没船の引き揚げで、使用労働者が延べ年間三百人以上のもの、こういうようなものが施行規則にあるわけでございます。この施行規則にありますものはとりあえず政令に全部あげますとともに、その範囲をもう少し広げてまいりたいというふうに考えております。
○滝井委員 そうすると、ただいま御答弁になったそれらのものを最終的に決定するにあたっては、順序としては労災保険審議会に必ずかけて政令に載せていく、こういうことになるのですね。
○石黒政府委員 おっしゃるとおりでございます。
○滝井委員 次は七ページの十二条です。この十二条に、保険の給付として療養補償給付から長期傷病補償給付の六つをあげておるわけですが、その場合に、第一次改正で十二条の五号の葬祭料の次のところに書いておりますが、「第一項第一号の規定による災害補償については、政府は、労働省令の定める場合には、同号の療養補償費の支給にかえて、直接労働者に療養の給付をすることができる。」という、このお金にかえて直接労働者に療養の給付をする場合というのは、一体どういう場合なんですか。
○石黒政府委員 直接療養の給付をいたします場合と申しますのは、労働基準局長と取りきめました労災保険指定医というのがございます。事業主が、業務上災害を受けた労働者を、その指定医のところにかからせて療養を受けさせる。指定医のほうは、その療養費について、事業主にも労働者にも請求しないで、療養費は政府のほうが医者に対して支払うという形をとる場合が直接労働者に療養の給付をするという場合、それから労働者なり事業主が直接医者に金を払って、その払った受け取り書を添えて政府に療養費の請求をする場合が療養費の支給というのに当たるわけであります。
○滝井委員 その場合はどういう場合ですかと言っておるわけです。労働省令で定める場合は療養の給付をするわけでしょう。だから療養の給付をするというのは、いままで「命令の定める場合」と言っておったのを、今度は「労働省令」に改めておるわけですよ。その改めた場合には、一体いかなる場合に直接療養の給付をするということになるのか。そうでなければお金でやるかどうかということなんでしょうね。それを特に現物給付をするというのはどういう場合ですか。
○石黒政府委員 「命令」を「労働省令」に改めましたのは、これは実態に関係はございませんで、古い書き方では「命令」とございましたが、最近では労働省令とか通産省令とか具体的に書くということでございます。現在の「命令」というのは、労災保険法の施行規則の九条以下でございます。実際の運用におきましては、九割以上が実はこの例外に当たる療養の給付のほうを行なっております。付近に適当な保険指定医等がない場合に限って費用補償という形をとっております。
○滝井委員 そうしますと、現物給付が原則でお金をやる場合が例外だということになると、この法律の書き方は療養の給付のほうが例外のような書き方になっておるわけですね。むしろ原則としてはすべてが療養の給付でしょう。労働省令で定める場合に現金を支給します、こういう書き方にしてもらわなければいかぬのに、この場合を見ると、あなた方の行政指導によって療養の給付が例外的に行なわれるというように読めるのですよ。いまのように、そこらに適当な医者がいないというときには、現金をやってその医者のところにやるが、そこらに医者がおれば全部現物給付、療養の給付がたてまえだ、こういうことになるでしょう。この条文の書き方はどうもそうも読めないのですね。どうしてこういう書き方をしなければならぬのか。
○石黒政府委員 まことに先生の御指摘のとおりでございまして、労災保険法発足の当初は医療支給のほうが主体でございましたが、指定医制度の普及に伴って漸次例外と原則がさかさまになってまいったわけでございまして、今回の法律におきましては、あちこち条文が飛びましてたいへん恐縮でございますが、ただいまの新旧対照表の十四ページをごらんいただきますと、十四ページの一番下の欄、十三条の末項でございますが、いままでの例外と原則をさかさまにいたしまして、療養の給付、実物給付が原則だ、労働省令で定める場合には費用の支給ができるというふうに、実態に合わせて法律を直したわけでございます。
○滝井委員 実は私もそこのページになったらそれを質問しようとしたわけです。だけれども、第一次改正でとりあえずいままでの慣例を踏襲する、第二次、第三次改正で本式のものに変えるのではないかなと私も思ったんだけれども、同じ法律の改正で、いままでの例外の場合を踏襲したのを第一次で書いて、二次、三次で本来に変えるという、こういうめんどうなことをどうしてするのか。それがまたわからないのです。それならば、第一次改正で十四ページの十三条と同じように、療養の給付が原則のように書いても差しつかえなかったのじゃないか。それを何でこういう二段階にやる必要があるのか。実は私はそこで尋ねようと思っていたのに、あなたが先にそうおっしゃるから……。
○村上(茂)政府委員 これは現行法とのつながりを申し上げなければならぬのですが、現行法の十二条では補償の種類とその補償の内容を一緒にして書いておるわけでございます。たとえば、療養補償費だとこういう、あるいは休業補償だとこういう、それから百分の六十といったような、給付の種類と内容を同時に規定しておる、こういう形をとっておりますが、その形式を第一次改正までは踏襲し、そして本格的な第三次改正にあたりましては、主として立法技術的な理由によりまして、十二条では保険給付の種類だけを掲げておきまして、その内容に触れてない、その内容は十三条以下に具体的に書くというような形式を採用したわけであります。その給付の種類をまず掲げておいて、次に給付の内容を規定していくということに関連いたしまして、療養補償についてはどういう考え方をとったらよいかという次元におきまして、ここで現在行なわれておるような療養補償給付については、療養の給付、いわば現物給付が原則だぞということをこの段階で規定したということでありまして、一つには法改正の際における立法技術的な理由、つまり給付の種類と内容を別々に規定するという態度をとりましたがゆえに、このような変更が行なわれ、かつ療養給付については原則に合うように処置をしたということでございます。
○滝井委員 実は第一次改正というのは八月一日から施行なんですよ。第二次改正というのは十一月一日から施行なんですけれども、そこに八、九、十と三カ月しかないのに、あなた方のほうは今度はまず八月一日の省令を書いて、それから十一月一日の省令を書かなければならぬわけでしょう。それなら初めから十三条のような書き方を十二条にもしておいてよかったんじゃないかと思うのですよ。これは一、二、三段に分けていただいてしておるのだけれども、実にわかりにくいですよ。頭の悪いやつがこれをひっくり返して読んで、前にいったりあとにいったりして読んでみるが、実にこの法律はわからぬです。とにかくわからぬ。失礼な言い分だけれども、おそらく議員さんでこれを読んでわかる人はいないのじゃないかと思う。(「いない、いない」と呼ぶ者あり)そこの労働省出身が言っているんだから、これは石黒さんと村上さんとそこの事務官の方、三人だけわかって、あとわからぬのじゃないか。とにかくわからぬです。これは第一次改正がこうなっておるが、第二次、第三次はどうなるかということで、前に返りて見なきゃわからぬです。私が専門とする医療に関するところさえ、いま言ったように迷うんです。書き方が全然違うんだけれども、これは同じものだということがわかったですから安心をします。
 もう一つあります。この八ページの末尾の「長期傷病補償給付は、療養補償給付を受ける労働者の負傷又は疾病が療養の開始後三年を経過してもなおらない場合における当該労働者に対し、政府が必要と認める場合に行なう。」という。こういう三年経過してもなおらない場合には、当然当該労働者に対して長期傷病補償給付が行なわれるものだと思ったら、「政府が必要と認める場合に行なう。」という。そうすると、一体その政府が必要と認める場合というのはどういう場合なのか。こういう条件がつくことは非常に困るんです。
○石黒政府委員 政府が必要と認める場合と申しますのは、三年たちまして、三年とあと二、三カ月でなおるというようなケースもよくあるわけでございます。そのときはわざわざ制度を切りかえなくてもよろしい。三年からまだだいぶ続きそうだという場合に、長期に移すということでございまして、現在のたてまえと別段変わりはないわけでございます。
○滝井委員 いままでは三年たってなおらなければ、そこで三年したらもうなおらなくたって打ち切りをもらうことになるでしょう。けい肺とかなんとかは長期傷病給付に転換するわけでしょう。おそらく二、三カ月でなおるでしょうと思っておったところが、また三カ月、六カ月と延びていく場合はざらですよ。そういう不確定な要素で、三年たってなおらないものは長期傷病給付をやるんです。ところが、三年三カ月くらいでなおるものはだめですということでは非常に不安定なことになるわけです。それをしかも一にかかって「政府が必要と認める場合」という書き方では困るんです。だから、こういう場合には何かそこに政府が必要とする場合には審議会の議を経てとか、指定医の答申に基づいてとかなんとかしておいてもらわぬと、一方的に基準監督署の裁量によってこれがやられるということになったら、労働者は非常に不、安定です。
○石黒政府委員 現在の長給傷病補償の制度におきましても、労災保険の給付を受けております労働者に対して、三年たって長期に入れるのは適当でないから打ち切り補償をやれということはやっておりません。なおらない人はずっと療養費、休業費の支給を継続するか、長期に入れるかいずれかというように相なっておるわけでございます。その区分けのしかたは、先ほど申し上げましたように、じきなおるんならわざわざ長期に入れる必要はない。こちらの裁量でもって追い出してしまうということで、打ち切り補償をやって追い出すというようなことは、現在の労災保険法もやっておりませんし、今回の保険法改正案におきましてもそういうことはできない。われわれのほうが長期に入れるという決定をしなければ療養、休業とそのまま続けるわけでございます。打ち切るというような打ち切り権限は政府側に、今回の法案にございませんので、必ず休業、療養が続けられるか、長期に移るか、いずれかというたてまえに相なっております。
○滝井委員 あなたが言うように、人間の身体というものは非常に微妙ですから、もう三カ月でなおるだろうと基準監督署の係が見てしまいますと、医者に行って、あれはもう私のほうとしては先生認められませんよ、先生の御意見はどうかしらぬけれども、と言うと、もう三年も経過しておる人間ですから、医者のほうも基準局からそう言われると、そうですかな、私もこれで打ち切ることに診断書を書きましょうか、こういう同調が行なわれる可能性もあるのですよ。そうすると、患者のほうは、まだ私はどうも腰が痛いです、あるいは打撲したところがなおらないのです、こういう訴えをもって必ずもめごとが起こるのです、こういう形になると。そういう場合は療養補償と休業補償とを差し上げます、こう言うんだけれども、三年が経過してなおだらだらとそういうものが長くいくとするならば、患者のほうが長期に切りかえてもらったほうがいいということになるのですよ。ところが、基準局のほうは、そんななおる見通しがあるものを長期にしては成績が下がるということで打ち切りたい、こういう気持ちがある。あなたはそう言うけれども、一線はそうなんです。それはどうしてかというと、メリットシステムだからそうなるのですよ。特にこれが炭鉱の直営病院なんかになりますと、保険はメリットシステムだからそうなるのです。ここらあたりは微妙なところですから、どうもいまの政府の必要と認めて行なう場合においても、これは無条件にこういうことでなくて、どこかにかけてやはり必要であるかないかということをやってもらう必要があると思う。どこかそれを相談する機関がないのですか。
○石黒政府委員 将来の運用におきましては、特に改正後は短期の給付と長期の給付の内容はほとんど全く一致するように相なっておりますので、必ずしも長期に移らないから損だという事態がないように今回改正案を作成したわけでございますが、それにいたしましても長期の年金でもらって安定したほうがよろしいという希望を持つ患者がおることは事実でございます。そういう点につきましては、今回の改正法の運用上の重要事項はすべて労災保険審議会に御相談の上きめますという約束を私ども以前から審議会に対していたしておりまして、もちろんその線で運用いたしております。
○滝井委員 長期に移るか、短期のままでいっておって、三カ月すればなおるからそれでやめるかという非常に微妙な、しかもこれは人権に関係するような問題は、何かやはり現場でこういうものを裁定をしてやる機関が必要になってくると思う。たとえば、労働保険審査官なら審査官を活用するとか、何かそういうことをしてやる必要があると私は思うのですよ、一方的に政府がやるのじゃなくて。そうなりますと、必ずこういう問題で不満が起こればわれわれのところに労働者は持ってくる。そういうところにあまり政治家が介入しないでできる形をつくっておく必要があると思う。政治家が出ていく場合は非常にもつれてどうにもならぬという場合で、初めからこういう場合に、先生、これじゃ困るから基準局に行ってくれというようなことでは困ると思う。したがって、これは行政運営上ぜひひとつ心にとめておいていただきたい。
 それから次は十二条の二です。給付基礎日額が著しく不当であるというときには政府がその額を変更することができますね。その給付日額を労働省令で定める場合に、一体政府は何を基礎にして定めるかということです。これは一昨日も平均基礎日額を、六〇%を八〇%にしてくださいということを言ったんだが、なかなかうんと言わぬようです。そこで問題はここにかかってくるわけです。そうすると、白紙委任をするわけにはいかぬです。労働省令で定めるものだから、行政に一任するわけにはいかない、国会としては。現在六千円、七千円という低い人がいるから、上げる場合、何を基準にして上げるのか、たとえばスライド制をやるのに生活水準、いわゆる生計費、物価、賃金というようなものがいろいろあるわけです。ところがいま賃金を基礎にしたのではだめなんです。だから、そうすると一体何を基礎にしてこの十二条の二の基礎日額を労働省としてはきめるかということなんです。
○石黒政府委員 十二条の二の第二項で、労働省令で平均賃金と違う給付基礎日額を定める場合には、大きく申しまして二種類ございます。一種類は、理由のいかんを問わず、あまり低い人はいわゆる最低保障額まで引っぱり上げるということです。もう一種類は、最低保障以下ではないけれども、非常に気の毒であるというケースでございます。後者の例は、たとえばけい肺につきまして行政運営上ある程度やっておることは御承知かと存じますけれども、そういったようなけい肺のような特殊な傷病につきまして、算定基礎を通常の場合と変えてさかのぼって算定する、あるいは一定の理由によって働かなかった日を算定から除くとかという技術的な操作に相なるわけでございまして、これはいろいろこまかい技術的なことを省令で定めることになっております。
 それから、最低保障額をどういうふうに定めるかということにつきましては、これは労災保険審議会とさらにこまかく打ち合わせなければならないわけでございますけれども、私どもといたしましては、現在政府の制度として、他の社会保険、社会保障諸制度におきましてとっております最低保障額と均衡をとったものとして定めるというようにいたしたいと考えております。
○滝井委員 そうすると、最低保障額というのが一番大事なんですが、他の社会保障ということになると、これは最低保障をしているのは生活保護基準です。これが基礎になるということなんですか。たとえば、あなたのほうの失対労務者の高齢者の就労事業において賃金額をきめるときには、やはりその地域における社会保障の諸制度の額を参考にする、そのときの社会保障というのは、やはり生活保護というものが非常に前面に出てきているわけですね。それもそういう形になるのか。
 それからいま一つ、いま最低保障はあるけれども、その実態から見てもう少し引き上げなければならぬということですね。この分についてはいまあなたがお述べになったように休業しておったどか四症度になる前の賃金の状態とか、いろいろ足がかりはあると思うのですが、しかし足がかりはあるにしても、やはり問題は最低保障がどうきまるかによってこれも上がったり下がったりすることになる。だから、やはり最低保障というものがどうきまるか、その基準は一体何を持ってくるか、他の社会保障の諸制度の額というものは、今度一万円の厚生年金もあるし、しかしまあそれよりか、むしろ生活保護のほうが、四人家族で、東京でいえば今度一万八千八十四円といっていますから、それのほうがあるいはいいことになるかもしれない。だから、何かこういうものを国会でやる必要がある、何もかもいや基準審議会だ、何審議会だといって、−秘蔵会というものは厚生のベースですが、国会は国権の最高機関ですから、ここで基本的なものさしだけは明らかにしておいてもらいたい。そのものさしをどう具体化するかということは、これは行政にまかしていいと思うのです。
○石黒政府委員 他の制度との均衡ということを申し上げましたのですが、労災保険はもちろん、賃金の何%補償という基準によりまして、使用者が無過失損害補償額の限度を定めるというたてまえでございますので、賃金と無関係に定められる制度よりは、賃金について定めておる制度を引っぱってくるのが筋であろうというように考えるわけでございます。したがいまして、たとえば労働省関係で申しますと、失業保険につきましても最低保障の額があるわけでございます。それから、現在のところ全国一律の最低賃金は定めておりませんけれども、最低賃金につきましてある程度の目安も持っておるわけでございます。そういったようなものを主たる参考にすることになるというふうに考えておる次第でございます。
○滝井委員 そうすると、失業保険は、あれは最低が三十円だったのが、このごろわれわれがやかましく言って、七十円か百円になりましたね。失業保険のもらう額が、最低額と頭打ちとがあるでしょう。失業保険はきまっておるわけです。最低額は三十円だったのが、ぼくがやかましく言ったら百円か百二十円か、最低を上げました。それで、上が今度は八百円か千二百円か何か、そこらあたりになっていますよ。だから、そのワクの中できめる、こういう意味ですか。労働省の失対の賃金なんかも、一つの最低の働いておる賃金額になるのかもしれぬ。そうすると、五百六十一円七十銭、こういうことになる。何かこれ、ものさしをはっきりしておいてもらわぬと、審議会にかけます、何にかけますということで逃げてしまって、われわれ何も知らぬ、たな上げされておるというのでは情けないですな。何か一つものさしを出してください。何を基礎にしてきめるのです。
○村上(茂)政府委員 ちょっと私から申し上げますが、基礎日額の原則は労働基準法十二条の平均賃金が原則になっておるわけでございます。労働基準法の十二条を見ますと、いま御指摘の日雇いにつきましてはその第七項で「日日雇い入れられる者については、その従事する事業又は職業について、労働に関する主務大臣の定める金額を平均賃金とする。」というような例もございます。平均賃金の算定がきわめて困難な場合について、第八項に、「算定し得ない場合の平均賃金は、労働に関する主務大臣の定めるところによる。」こういう規定がございます。このような労働基準法十二条の平均賃金が基礎日額算定の原則になるわけでございます。しかし、けい肺患者について特別に配慮するという問題、著しく低い者についての是正の問題は、労働基準法第十二条の第八項の算定し得ない場合には必ずしも該当しない、算定し得るのだが、著しく低い、こういう問題が生じてまいりますので、その是正をどういうふうにしてやるかということから、例外の例外として、今回改正にあたりまして基礎日額という考え方をとり、労働大臣が特別の場合の基礎日額を定めるという制度を採用したわけでございます。したがいまして、先ほど労災部長が失業保険とか最低賃金の額といったような一つの例を申し上げましたけれども、これは日雇いの場合についてどうかというような問題とは直接にはつながらない問題でございまして、一般的には基準法の十二条でやるのだが、算定し得ない場合という場合でなくて、算定し得るのだが著しく低い場合には今度の基礎日額という考えで労働大臣が定めます、こういう制度をとったわけでございまして、そういった限定された場合におけるこの基礎日額の決定を労働大臣は何によってやるかという点について、一般的に申しますならば、失業保険の給付額とかあるいは最低賃金額といったようなものを、つまり客観的に妥当と認められるような、そのようなよりどころを求めまして決定をする、しかしその場合には審議会にはかりまして決定をする、こういうことを申し上げておる次第でございます。
○滝井委員 非常に明快なようであってわからないわけです。算定をし得ないときには平均賃金は労働に関する主務大臣――労働大臣が定める。これは基準法一二条にかかわらず、ここに書いてあるのは、「前項の規定にかかわらず、労働省令で定めるところによって政府が算定する額を給付基礎日額とする。」と書いておるのだから、したがってこの条文からいえば、十二条というものはぽんとたな上げされたわけですよ。そして新しい観点からやるのですよ。そういう場合には、これは平均賃金をこえてやっていいということなのか、平均賃金のワクの中でやるのかというと、この条文は平均賃金をこえてやっていいということですよ。こえてやってもよろしいのだ。平均賃金でやってはだめだから、平均賃金を無視してやってもよろしいということは、裏を返していうと、こえていいということですよ。そうしますと、私が一昨日以来議論をしておる結局労災の補償費というものは、一体最低生活を保障する理念があるのかないのかということになってくるわけです。ここをはっきりあなた方が腹固めをしておかないと、この議論というものは絶えず風にそよぐアシのようにゆれてくる。だからやはり労災というものは業務上と業務外ときちっと分ける理論でいくのか、それともこの前あなたの御指摘になったように、生活保障部門を厚生年金でやってその上積みとしていくのかというここらの基本原則を確立していないと、この議論というものは、幾らここで私と村上さんなり石黒さんとやっても、堂々めぐり、水かけ論になる可能性がある。
 そこで私は、一昨日以来当面六割ではもう食えないのだから、長期の傷病給付を受けておる六割の人はこの十二条の二で変えざるを得ないだろう。変えるなら何を一体基準にしますかというと、いまいみじくも失業保険とかあるいは最低賃金というものが出たけれども、これは最低賃金だって御存じのとおり三百六十円から四百八十円の六段階を今度指示しているわけでしょう。三百六十円をとるか四百八十円をとるかによってずいぶん違ってくるわけです。そうでしょう。それから、失業保険だって、いま言ったように一番最低のところをとるか一番最高のところをとるかによって違ってくる。それをこの人の平均賃金にかかわらしめていくということになると、これは一番最低に近いところでいく以内にない、あるいは三百六十円に近いところでいく以外にないというような形になって、この長期の傷病給付を受けておる人たちの喜びとしては非常にはかない喜びになるわけだ。だからここをもう少しやはりひとつ筋を、この法律を通そうというならば入れる必要がある。その理論が確立されていないところに、この労災法というものは砂上の楼閣の感があるわけです。だから私は、この際はあなたのほうと厚生省とやはり話し合って厚生年金との併給を思い切ってやって、業務外と業務上と健康保険と労災とが医療の面でさい然と分けられるように分けていくか、上積みのものにいくかということを割り切る段階がきておると思うのですよ。だから私に言わしてもらえば、もう間に合わぬけれども、今度の改正は第一次だけの改正にしておって、二次、三次の改正というものは厚生年金と調整ができてからきちっとするほうがよかったのではないか。理論的な混乱が起こらぬで済んだのではないかという感じがするのです。いまの御答弁でわずかに得たものは、平均賃金を労働基準法の例外としてきめる場合には、失業保険の給付、最低賃金の額こういうところが参考になります。これ以上のものはここでいってもなかなか出ないと思います。出ないと思いますけれども、いま言ったようにあまりにも幅があり過ぎて一体どこをとったらいいか、どこをとりますか質問してもなかなかむずかしいのじゃないか。そのときには平均賃金にかかわってくるのです。そうすると、これが頭の中にこびりついて、それに近いところで、失業保険の給付なり最低賃金の額になると非常に低いものになる可能性がある。この点は政務次官いまお聞きのとおりです。ここは労働省としては、厚生年金を担当するあるいは国民年金を担当する厚生省と十分打ち合わせして、この額をきめるときには相当思い切った額をきめてもらう必要がある。それが日本の社会保障水準、所得保障水準を上げる一つの大きな契機になる。それほど重大な役割りがここにあると私は見ておりますから、十分な政治的な配慮をもって決定をしていただきたいと思うのですが、政務次官、どうですか。
○始関政府委員 ただいま御指摘の点につきましては、今後実情に合いますように十分に検討いたしまして善処してまいりたいと存じます。
○滝井委員 次は二一ページ、第十六条の五です。下段の第二次、第三次改正の十六条の五、「遺族補償年金を受ける権利を有する者の所在が一年以上明らかでない場合には、当該遺族補償年金は、同順位者があるときは同順位者の、同順位者がないときは次順位者の申請によって、その所在が明らかでない間、その支給を停止する。この場合において、同順位者がないときは、その間、次順位者を先順位者とする。前項の規定により遺族補償年金の支給を停止された遺族は、いつでも、その支給の停止の解除を申請することができる。」というのは、これはどういう意味ですか。
○石黒政府委員 お尋ねの点は最後の点でございますけれども、本人があらわれてくればいつでも停止は解除する、こういう意味でございます。
○滝井委員 どうもこれは法律用語としてはそういうように読めないのです。「前項の規定により遺族補償年金の支給を停止された遺族は、いつでも、その支給の停止の解除を申請することができる。」その前項の場合とこの条文とがどうもそういうように読めなかったのです。だからこれはどう読んでもなかなかわかりにくいのですが、わかりました。あらわれてくればいつでも支給する。当然のことです。
 それから二二ページの十六条の六、「遺族補償一時金は、次の場合に支給する。」「労働者の死亡の当時遺族補償年金を受けることができる遺族がないとき。」というのはどういう意味ですか。
○石黒政府委員 遺族補償は御承知のごとく今回大部分年金化するということになって、そして年金受給権者というのは、妻は無条件でございますけれども、子供あるいは父母、兄弟姉妹といったようなものは年齢制限があります。そこで、奥さんをなくして親一人子一人の労働者がなくなった、ところがその子供というのが二十一歳であるというような場合には、年金は二十一歳ですから子供が受けられない。遺族ではあるけれども年金受給者ではない、こういう場合にはその子供に一時金のほうを差し上げる、こういうわけでございます。
○滝井委員 これも非常に微妙な点が出てくるわけですね。さいぜんの長期給付と短期給付とで三年とした、もう一、二カ月したらなおるのだという場合には、それはもう短期間給付でいこうということでしたが、十八歳をちょっとこえたというような場合、これはなかなか微妙な一これは法律だから当然きちっと切らなければならぬので、当然ですけれども、何かこの一時金をめぐって問題が起こるような感じがちょっとするのですよ。まあそういうことで、わかりました。
 それから十七条で、「葬祭料は、通常葬祭に要する費用を考慮して労働大臣が定める金額とする。」こうなっております。この葬祭の給付の額は給付基礎日額の六十日分とするということになっておりましたね、平均賃金の。これとの関係はどうなんですか。
○石黒政府委員 従来は御指摘のごとく葬祭料は平均賃金の六十日分でございましたけれども、この葬祭料というのは、いわば香典みたいな形で遺族に差し上げるわけでございます。その分につきましては賃金の多い、少ないによってあまり差をつけるのはおかしいじゃないかということで、むしろなくなった方には遺族年金みたいなものはしかたございませんが、葬祭料といったようなものはそういう差をつけないできまった額を差し上げるようにしたほうがいいのじゃなかろうかというような趣旨でございます。
○滝井委員 そうすると、この十三ページの第一次改正までは給付基礎日額の六十日分というのは生きていくわけですね。そして今度は第二次、第三次の改正になりますと、労働大臣が定める一定の金額を出すことになる。これはどうしてそういう六十日としておったものを今度は通常葬祭に要する費用、いわゆる実費弁償という形にしなければならぬことになるのですか。
○石黒政府委員 どうして実費弁償しなければならないかという御質問に対してはいささかお答えしにくいわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように死んだ人の葬儀の費用というものはあまり賃金によってそんなに高い、低いがなくてもいいじゃないか。もちろん月給十万円、十五万円の方がなくなれば盛大な葬式をされるだろうけれども、その人たちは葬儀の費用はそう困ることもあるまい。むしろ収入の非常に少ない人だからといって葬式のほんとうの費用にも足りないくらい葬祭料では気の毒じゃないかということで、この点については年前の賃金によって差をなるべくつけないようにしたほうがいいのじゃないかというのが審議会の各方面の御意見だったので、そういうふうに改めたわけでございます。
○滝井委員 悪いことがあったらすぐに改めるのが一番いいので、わざわざ三カ月の期間を置いて、改正するのに三カ月間は給付基礎日額の六十日分というのは一ぺんやっておって、それから今度は十一月になったら定額にもう一ぺん改める、こういうめんどうなことをやるので、忙しいわれわれとしては、もう一ぺん前を繰ってやらなければならぬということになるわけで、一挙に十七条のように改められたらいいと思う。こういうようにどうも役所というところはややこしいことをおやりになるので、われわれ議員も非常に困る。
 そうすると、今度は通常葬祭に要する費用は定額幾らくらいと考えておりますか。
○石黒政府委員 実は昨年の初めに東京都につきまして葬祭の費用を調べたことがございます。それは坊さんに対するお布施を含め、それからごく簡素な弔問客の接待分くらいまで入れまして四万五、六千円あればまあまあ普通の葬式ができる、こういう額になっておりました。まずこの辺が最低というところではなかろうか、こういう料金はその後も上がっておるようでありますので、いま全国的にもう一度調べさせております。大体そういったものに基づきまして定めたいと思います。
○滝井委員 おかしなことを言うようなことになりますが、人間の最期ですからきちっとしておいてもらわなければ困るのですが、地域差をつけるのですか。
○石黒政府委員 その点は現在行なっております調査の結果に基づきまして、著しく違いがある場合には差をつけざるを得ないかと思います。
○滝井委員 労働省としては、たてまえとしては十七条の葬祭料は五万なら五万、六万なら六万定額で出したい、こういう気持ちなんですね、実態調査の結果。
○石黒政府委員 おっしゃるとおりあまり大きな差は制度の趣旨からいってつけたくないと思います。
○滝井委員 そうすると、あまり大きな差はつけたくないということは、ある程度地域差を考える、二段階、三段階くらいをつけておく、こういうことですか。
○石黒政府委員 その辺は必ずつけとるも必ずつけないとも実はまだ割り切っておりません。ただ、いずれにいたしましても差がつく場合におきましても、そんな大きな差にすべきではないというふうに考えております。
○滝井委員 二十八ページのまん中ですが、第一次改正の二十三条「政府は、この保険の適用を受ける事業に係る業務災害に関して、左の保険施設を行う。一 外科後処置に関する施設 二 義肢その他の補装具の支給に関する施設 三 休養又は療養に関する施設 四 リハビリテーションに関する施設 五 その他必要と認める施設 政府は、前項の保険施設のうち、労働福祉事業団法第十九条第一項第一号に掲げるものを労働福祉事業団に行わせるものとする。」こうありますね。そうすると、この補装具とか、リハビリテーションに関する施設というようなものは――御存じのとおり補装具というのは大量につくっておるわけではないのです。やはりこういうものをきちっと身体障害者になった労災の被保険者に与えていくためには、補装具の製造についてもそうですか、リハビリテーションに関する施設についてもやはり全国的に計画的な配置をつくる以外にないわけです。現在御存じのとおり、労災病院というのは、労災の患者が入るのが非常に少なくて、労災以外の患者が六割以上も入っておるわけです。そうしてはなはだしいところは、脳溢血の患者を入れて研究をしておるわけです。それは労災の脳溢血でなくして、普通の脳溢血患者を入れて、身体障害ですから研究をしておる。こういう形ですから、こういうものについての具体的な計画というものを労働省はお持ちになって、そうして労働福祉事業団にやらせようとしておるのかどうか。
 それからいま一つは、こういう労災の障害を受けた身体障害者の皆さんの職業再教育に関する施設というのを今度は排除したわけですね。これは一体どういう理由で、職業再教育の施設というものを労働福祉事業団から排除することにしたのか、その二点をお伺いいたします。
○石黒政府委員 後者からお答え申し上げますが、リハビリテーションと申しますのは、滝井委員のような専門家に申し上げるのは失礼でございますが、メディカルリハビリテーションとメディカルでない、いわばボケーショナルなリハビリテーションと二種類あるわけであります。ここで申しますリハビリテーションは、申すまでもなく医学的リハビリテーションはむしろ療養の中に入ると解してもよろしいわけでありまして、それ以外のボケーショナルリハビリテーション、すなわち職業再訓練そのほかの職場再復帰施設というものをすべて含むものでございまして、従来よりもより広くかっこれを強力にしたいと考えておる次第でございます。
 それから義肢その他の補装具、それからリハビリテーションというものの計画につきましては、私ども微力ではございますが、補償を年金にするということに伴いまして、従来以上にその必要は非常に強くなったというふうに考えておりまして、いろいろな計画をもちまして近い将来に労災患者すべて必要とする者にはリハビリテーションが受けられるようにいたしたい。それから補装具につきましては、現在すでに必要とする者にはすべて支給するようにいたしておりますけれども、さらにその改良のための試作工場等を設けておる次第でございます。
○滝井委員 そうしますと、現行法の職業再教育に関する施設というのは、今回の第一次改正の二十三条の一項三号における「休養又は療養に関する施設」というこのことばの中に、職業の再教育も全部含めてしまうのだ、こういうことですか。いまの答えではそういうことになる。休養というのがボケーショナル、それからメディカルのほうは療養に入る、こうおっしゃったでしょう。
○石黒政府委員 私のことばが足りなくて申しわけございませんが、そうじゃなくて、メディカルリハビリテーション及びボケーショナルリハビリテーション、双方を含んでリハビリテーションというふうに書いたつもりでございます。したがって、職業再教育に関する施設は、四号のリハビリテーションの中に入るというふうにお考えいただきたいと思います。
○滝井委員 それならわかりました。そうしますと、いまの労働福祉事業団の機能では、リハビリテーションなり補装具のことまできちっとやれる人的な構成がそろっておるかというと、なかなかそうはいかぬのじゃないですか。さいぜん私が言うように、労働福祉事業団の傘下にある労災病院というのは、あなた方が承知しておるように独立採算制が非常に強いわけです。したがって、これは今後作業療法なり後保護を本格的にやっていくためには、非常に長期に患者を病院に置かなければならぬことになるわけです。そうすると、病院のベッドの回転というのはゆるやかになるし、同時に研究体制をやらなければならぬから診療面という外来を扱う時間がなくなるわけです。ところが、いまは入院患者よりか外来で労災病院というのはかせいでいるわけです。その外来をさっとやめてしまうと、病院の経営というのは赤に転化するわけです。ほんとうにあなた方が二十三条のこういう精神を労働福祉事業団にやらせ、その第一線の実施機関、実践機関としての労災病院を活用しようとすれば、相当赤字を覚悟しておかなければならぬということになるわけです。いまはそういう体制にないわけですね。だから私が言うように労災の身体障害者じゃなくて脳溢血の身体障害者が入って研究を受けているのがざらです。それのほうがもうかるといってはおかしいけれども、経理が楽になる。こういう点で、労働福祉事業団のいまの人的構成や機能、経理の問題から考えた場合に、この二十三条というものが必ずしも万全の体制として行なわれない可能性があるわけです。だからその点はよほど考えておかないと間違いが起こる。いま労災病院というのは、労災患者を扱うよりかむしろその地域の普通の患者、健康保険の患者や生活保護の患者を扱うことが多くなってきつつあるわけです。この方向転換というものをやはりあなた方が考えておかないと、今後の大蔵省との予算折衝その他においても、せっかく掲げたにしきの御旗であるリハビリテーションに関する施設とか、補装具の支給に関する施設というものがから回りするおそれがある。その点はひとつ政務次官、十分御注意していただいて、二十三条については万全の対策をもって労働福祉事業団に実施させるようにしてもらいたいと思うのです。現状はそういう方向でない。これについてひとつ政務次官の答弁をいただいておきたい。
○始関政府委員 ただいまの御意見ごもっともと思います。労災病院も含めまして、保険施設の充実に今後一段と努力してまいりたいと存じます。
○小沢(辰)委員長代理 滝井君に申し上げますが、保険局長の代理で企画課長が来ておりますから……。
○滝井委員 それでは少し飛んで、一昨日ちょっとお尋ねしたのですが、時間がなかったので中途はんぱでやめておりました第四章の四の特別加入、これをひとつ列挙してもらいたいのです。第三十四条の十一には、「次の各号に掲げる者(労働者である者を除く。)の業務災害に関しては、この章に定めるところによる。」と書いてあり、一号に、「労働省令で定める数以下の労働者を使用する事業(労働省令で定める事業を除く。)の事業主で労災保険事務組合に労災保険事務の処理を委託するものである者(事業主が法人その他の団体であるときは、代表者)」とあるが、これに属する者は一体どういう者であるか。それから二号の「前号の事業主が行なう事業に従事する者」、三号の「労働省令で定める種類の事業を労働者を使用しないで行なうことを常態とする者」、四号の「前号の者が行なう事業に従事する者」、五号の「労働省令で定める種類の作業に従事する者」、この一号から五号までの典型的な例をずっとあげていただきたい。
  〔小沢(辰)委員長代理退席、委員長着席〕
○石黒政府委員 第一号は、これは中小企業基本法の対象になっておる中小企業者を原則として全部含めるようにしたいと考えておりますが、ただし、使用労働者数がかなり少なくとも、資本金が非常に大きいとか、あるいは事業を行なう場所が全国あっちに行ったりこっちに行ったりで、こういう事務組合に入るのに適当しないとかいうような特別の者だけを除くようにいたしたいと考えております。第二号は、その家族従業員をさしておるものでございます。第三号は、従来から一部入っております土建の一人親方が主たる対象でありますが、先般来御議論のありますように、農業の自営業種につきましても、この部分に入ってまいる者があるというように考えております。そのほか、独立のいわゆる一人親方、労働者を使わないで事業を行なう者というのは、いろいろな方面にいろいろな者がございます。これはいろいろ希望も聞いておりまして、逐次実態を調べた上で取り込んでまいりたい。第四号は、同じく家族従業員でございます。それから第五号は、それ以外で落ちこぼれる者でありまして、これも一昨日申し上げましたように、農業などにつきまして一部入っておる点があるかと存じますが、そのほかに、たとえば職場順応訓練、職場適応訓練を受けておるものというような者が、雇用関係にないけれども同じ作業をしておる、そういう者はやはり労災の適用を受けるほうがよいのではないかと考えておるわけであります。
○滝井委員 そうすると、三号の土建と同じようにそこに農業自営業種が入る、五号にも農業等の一部が入る、その五号に入る農業等の一部というのは、どういうものが入ることになりますか。
○石黒政府委員 農業につきましては、一昨日もたいへん御議論をいただいたわけでございますが、将来の姿として農業関係で五号に入る者は、訓練生その他特殊の者を除きましては、漸次なくなってまいるのじゃないかと存じますが、当面の措置といたしましては、一切の自営農民をすべて一ぺんに監督署がかかえるわけにまいらないわけでございます。実情に応じて最も必要とし、適当なものから農業の加入を認めていくということに相なりますと、三号だけでなく五号の運用ということも必要ではなかろうかというふうに考えておる次第でございまして、いまこの職種をこういう形で入れますというような結論を得ているわけではございません。今後農業団体、農林省と十分打ち合わせはしたいと考えております。
○滝井委員 そうしますと、主として三十四条の十一の三号で大体農業のものは拾ってしまえる、それで落ちて何か目こぼれがあれば五号のほうのもので入れていく、こういうことですか。
○石黒政府委員 たてまえとしてはおっしゃるとおりです。
○滝井委員 この五十三ページの三十四条の十三の六号「第五十四条の十一第三号から第五号までに掲げる者の給付基礎日額は、当該事業と同種若しくは類似の事業又は当該作業と同種若しくは類似の作業を行なう事業に使用される労働者の賃金の額その他の事情を考慮して労働大臣が定める額とする。」ここに一つ、給付基礎日額の例外的なものが出てきたわけです。この内容をちょっと説明してください。
○石黒政府委員 特別加入の対象者は、すべてこれは労働者ではございませんので、賃金というものがないわけでございますので、賃金にかわるべきものを定めなければならないわけでございます。たとえば、土建の一人親方につきましては、一般職種別賃金等を従来援用しておりましたことは御承知のとおりと存じます。土建の一人親方などは、一番処理の簡単なほうであると考えるわけでございます。たとえば、農業等につきましては、農家の収入という面と、その地域における一般労働者の賃金という面、両方の面から攻めていって適当な額を定めなければならないわけでございます。
○滝井委員 やはり何といっても一番問題は、自営業者である農民を労災保険に入れた場合に、その給付の基礎日額というものをどう把握していくかということは、即労災の給付額の問題であるばかりでなくて、労災の財政に及ぼす影響が非常に大きいわけですね。そこで農家の収入なりその地域における一般労働者の賃金という抽象的な概念ではわかるんですが、さて一体どうきめるか。御存じのとおり、日本農業の成長率というものが、他のものが一割二分とか三分成長しているときに、二%とか三%しか上がっていない。しかも、非常に出かせぎが多いわけです。そして農業がことし五十七万くらいになっておるんじゃないかと思うのです。その粗収入五十六、七万のうちに、半数以上というものが農業外の所得で占められておる。その場合に、この給付の基礎日額をきめるのに、農業プロパーの収入だけでやるのか、賃労働として働いた出かせぎの経費を持ってきて合わせたものでやるのか、ここらあたりが非常に重要になってくるわけですね。それから同時に、いまの日本農業というものは、三ちゃん農業から一ちゃん農業、かあちゃんだけが働くという場合に、一体、主人の持って帰った出かせぎの収入と、奥さんが主体的な労働力となってやっている農業の収入の総合的なもので見ていくのか、こういう点も非常に問題のところなんですね。普通のサラリーマンと同じように、石黒さんなら石黒さんの所得をとらえるというわけにはいかぬわけです。すべての家族全体の所得がその農家の世帯の収入となって生活が回転をし、運営をされていっているわけですからね。こういう点、いまのように簡単に農家の収入と一般労働者のその地域における賃金ということだけでは、粗収入があまりにも複雑な要素がからまっているものだから、収入形態がきめにくいという問題がありはせぬか、こういう点はどういうように快刀乱麻の説明をやっていくかということです。
○石黒政府委員 御指摘のごとく非常にむずかしい問題でございます。ただお話にございましたような、由人が出かせぎに行く、あるいは町の工場に通っておるというような場合には、主人は主人として、その収入に応じた労災保険の対象に相なっておるわけでございまして、そういうものまで農家収入としてひっくるめるということは適当でないというふうに考えております。それじゃ、何をどういうふうにとっていくかということにつきましては、これは私ども農家については非常に知識が乏しゅうございますので、専門家である農林省担当官等の意見も聴取しながら十分に打ち合わせるつもりでございます。
○滝井委員 ひとつこの三十四条の十三の六における基礎日額等のきめ方、特に新しく今度労災の適用になる人たちの、一人親方にしても同じですが、その基礎日額のきめ方の一応のルールができましたら、当委員会に資料としてぜひ出していただきたいと思うのです。私たち今後それを見て、また悪いところがあれば意見を述べさせていただきたいと思います。
 この基礎日額をきめるときは、当然労働大臣がきめることになっておるけれども、これも労災審議会なり、あるいは農林省なんかの相当の意見を聞いた上で労災審議会なんかにはかけることになるわけですね。
○石黒政府委員 おっしゃるとおりでございます。
○滝井委員 終わったようでございますから、もう一、二ありますが、厚生省はこれで終わりますが、いま御存じのとおり医療保険の東京地方裁判所における決定を契機として、非常な混乱が起こっておるわけです。その場合に労災の医療というものは健康保険の例にならって、健康保険の診療報酬甲表、乙表をそれぞれ用いておるわけです。それに、幾ぶんか例外はあるけれども十一円五十銭をかけたものでやっているわけです。その場合に、四組合の組合員の労災の取り扱いというものは一体どうすることになるのか。もともとが健康保険にならってやってきておるから、ならった新料金がくずれて旧料金に返ってしまえば、これは四組合としては旧料金にならわなければならぬことになる。その場合に、いま損害賠償の問題が起こっておると同じように、厚生省が勝った場合にどうするんだということにもなるわけです。そこでこれは、一体厚生省としては労災の取り扱い上はどうすることになるのか、労災は労災だから健康保険の関知するところではないといって、労働省はひとつわが道をおいでなさいということになるのか。その関係は両省の間でどういう打ち合わせをして取り扱いをしようとしておるのかです。
○首尾木説明員 労災保険の料金につきましては、基準局長と指定医との契約によってやっておりますから、当然には今回の東京地裁の決定によりまして旧料金によるということにはなりませんで、当然基準局長と指定医との間の契約によって運用されるということになると思います。
○滝井委員 そうしますと、その契約というのは、基準局長と指定医との間の全く自由診療の民事上の契約になってしまうということなんですか、そうして健康保険法の拘束は何も受けない、こういうことになるのですか。そうならないんじゃないですか。もしそうなるとすれば、国民健康保険とかなんとかとの医療の調整なんというものは要らないことになる。ところが今度の労災保険法の改正には、国民健康保険その他との調整がみんな書いてあるんです。たとえば九二ページをお聞きになると、「国民健康保険法」「(他の法令による医療に関する給付との調整)」というのがあるんですよ。その第二次、三次改正の五十六条をごらんになると、「療養の給付は、被保険者の当該疾病又は負傷につき、健康保険法、船員保険法」云々とずっと書いて、「医療に関する給付を受けることができる場合には、行なわない。」こういうように関係があるわけです。療養の給付と他の保険との関係がみんな出てきているわけです。そうしますと、単に医療の給付は民間の医師とそれから公の機関である労働基準局長との話し合いだけできめておるのですからというわけにはいかないわけです。
○首尾木説明員 今回の東京地裁の決定は、これは四組合との関係において新告示の効力を否定したものでございまして、その効力が裁判の本質それからまた決定の内容から申しまして四組合だけに限られるというものでございますので、それが行政事件訴訟法によりまして第三者に効力を及ぼすわけでありますが、その第三者というのは、当事者間にきめられた法律状態というものを他の第三者が争い得るということであれば、今回の決定そのものが意味がなくなる、あるいは紛争が絶えないというようなところから第三者に及ぶものでございます。したがいまして、そういう関係でそういう被保険者に及ぶわけでありますので、今回の組合と関係のない給付に関連いたしましては、それは別に今回の決定によりまして新たな告示の効力が否定されるというものにはならないものと解釈いたしております。
○滝井委員 私が言っているのは四組合についての労災を言っているわけです。四組合というのは三井、安田、全国食糧、保土ヶ谷、この四組合の被保険者が労災を受けた場合に、一体その料金というのは旧料金でやりますが新料金でやりますか。労働省のほうはそれは健康保険に準じて点数を使っております。それにただ価格が十一円五十銭だけをつけているのです。そうすると準じた健康保険というものは、四組合についてもとに返ったならば四組合の労災は旧料金でやりますか、旧料金に十一円五十銭をかけたものでやりますという質問を私はしたわけです。
○首尾木説明員 労災の被保険者という地位は組合員という地位とは法律上違う地位でございますので、それがたとえ事実上四組合被の保険者でありましても、法律上は労災の被保険者ということと直ちに同一ではございませんので、その関係には新しい今度の決定の効力は及ばないということになろうかと考えております。
○滝井委員 ちょっとわかったようなわからぬようなことでありますけれども、これでやめにしておきましょう。これでけっこうです。
○松澤委員長 多賀谷真稔君。
○多賀谷委員 時間もないそうですから、二、三点だけ重要な問題についてお聞かせ願いたいと思います。
 順序はいろいろですけれども、今後の遺族年金というより長期的な給付、これが年金になるわけですけれども、この前政府のほうではILO百二号条約の、二子を有する寡婦は従前の所得の百分の四十以上ということになっておるから、一応二五%にプラス二子並びに寡婦で大体一五%で四十になる、こういう説明をされておるわけです。私は従来から非常に疑問に思っておるのは、基準法でいう平均賃金とILOでいう従前の所得とは違うのじゃないかという気持ちを持っておる。ことに日本の場合は期末手当というのがある。この期末手当というのは、遺憾ながら平均賃金の算定の基礎に入らない。ところが現実に期末手当というのは生活給の大きな部分を占めておる。そして官公庁においても御存じのように、期末手当と称するものはほとんど画一的に行なわれておる。短期の、たとえば休業補償のような場合は私は言いませんけれども、長期給付の場合において、従前の所得というのはやはりそういうものも含めるべきじゃないか。単なる基準法でいう平均賃金をあらゆる場合に利用していますね。こういうあらゆる場合に利用するときにおいて、あなたのほうは平均賃金というものを画一的に扱っておるわけです。しかし長期給付のような場合、この平均賃金の算定の基礎額にはやはり期末手当というようなものも含めるべきではないか、こういうように思うのですが、これをひとつお聞かせ願いたい。
○石黒政府委員 多賀谷委員御指摘の点は、わが国の実情を考えます場合に、非常にごもっともな点があると存じております。しかしながら、の労働基準法に根っこを持った労災補償保険法といたしまして、現在の基準法の平均賃金と全く例外的な場合に特例を認めるのは別として、たてまえとして全く違うものを給付の基礎とするということは、基準法体系全般に触れるものである。基準法は平均賃金というものをあらゆるケースに全部同じように妥当するものという前提でいっておりますので、いま直ちに基準法のうち平均賃金とは何種類もあるんだというたてまえにいたしますことは、労働誌準法の体系そのものの問題と相なるかとも存ずるわけでございまして、今回におきましてはその点は従来のたてまえを直ちに変えることは非常に困難である、かように考えております。
○多賀谷委員 私は短期の給付の場合はいまの平均賃金の算定でけっこうだ、しかし長期にわたる場合、要するにその間期末手当をもらうべきものがその事由によってもらえない、こういうような場合には、例外を設けて、単なる画一的な平均賃金を使うべきではない、こう思うのです。ひとつ私は問題提起をしておきますので、時間がありませんから大臣この点御検討願いたいと思うのです。御答弁をひとつ……。
○石田国務大臣 検討いたしたいと思います。
○多賀谷委員 続いて、日本の法制では子女が十八歳になった場合には補償を打ち切る。今度の場合は十七歳、要するに、母親がなくて父親が事故で死んだ場合に十七歳である、そうするとやがて十八歳になる。十八歳になった場合には一応一年間年金を受けてあとは四百日の差額を受ける、こういう仕組みになっておるわけです。そこでこの十八歳ということの検討を要する必要があるのではないか。御存じのようにILOの勧告六十七号――所得保障の勧告ですが、その中の業務障害の場合、おの(19)に「子女は、十八歳まで、又はその一般若しくは職業教育を続行しているときは二十一歳まで、補償を受けなければならない。」こうあるのですね。ですから、学校教育を受けておる、あるいは職業訓練所に入っておるという場合には、二十一歳まで補償をしなければならぬ、こう書いてあるのですね。せっかく改正をし、いまILOが問題になっておるのに、ILOの常任理事国である日本がこの程度はひとつ踏み切ったらと思うわけですが、大臣、御答弁を願いたい。
○石田国務大臣 御意見はごもっともだと存じます。ただ、ほかの保険その他の制度との関係がございますので、今回にわかにそうするわけには参りませんが、検討をいたしたいと思います。
○多賀谷委員 ほかのほうの関係もあるとおっしゃいますけれども、従来はこれは一時金でもらっておったわけでしょう。十八歳になろうと二十五歳になろうと年齢の制限なく、所得も制限がないわけです。今度は年金に変わるわけですから、そういう問題が起こるわけです。それを税金の場合と同じように考える必要もない。税金の場合も学校教育を受けた場合は特例で認めておる。ですから、この点は制度の改正がある今日において検討すべきではないか。ほかとの関連もありますから、こう大臣は言っておられますが、これはきわめて重大な問題ですね。父親が生きておれば大学も行けたであろう者が行けないという事態が現実に起こる。少なくとも従来一時金で千日分もらっておったわけですね。今度は四百日しかもらえぬ、こういうことになるわけです。これは非常にこの制度改正による不均衡になる。この点は該当者については不利益になる。これは今度次々と検討されるわけですが、その際ぜひ検討項目に入れてもらいたい。
○石田国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように、検討いたしたいと思います。
○多賀谷委員 続いて、あれだけ基準法の解釈をめぐって問題になっておりました労務場所への往復における災害、これをなぜ入れなかったか。これは従来解釈をめぐって非常に問題になっておるわけでしょう。少なくとも会社が施設としてバスを提供して、会社のバスで行く場合には、これは災害補償の対象になったわけですね。ところがそうでなくて、一般の場合には災害の補償の対象になっていない。労務の提供というのは労務の場所において行なわれるのが至当である、こういう従来の原則をとっておったと思うのです。ところが労災にも過去において非常に問題があって、これは先ほど申しました業務傷害勧告の(1)の「業務に基因する傷害は、労務場所への往復において起る災害を包含しなければならない。」こういうように書いてあるでしょう。日本で問題になっておるようなことが、大体外国でも問題になって解決しておるのです。これをなぜ入れてないのですか。あれだけ解釈をめぐって問題になり、取り扱いについて問題になった。ですから、別個にどこか責任のあるところがありまして、たとえばバス会社が損害を払うとかなんとかいうことだったら、その分は差し引けいい。控除すればいい。ですから、これはやはり災害補償にして扱うべきじゃないですか。
○村上(茂)政府委員 基本的な考え方は、一昨日本委員会で大臣からも御答弁がございましたが、通勤途上の災害を労災補償保険で考えるべきだという御意見には、これは傾聴すべきものがあると私どもは率直に承っております。ただ、ILO条約の考え方あるいは諸外国の例を見ましても、労災保険がある程度社会保険的なものに前進いたしまして、無過失賠償責任という理論的根拠に基づきまして使用者が全部カバーをするという体制は必ずしもとらずに、使用者以外の者も保険料を負担するとか、要するにいずれにいたしましても、社会保険的なものに前進する過程において、立法で通勤途上の災害を認めるという措置をとっておるわけでございます。その点につきましては、会社の通勤バスでございますと、これは使用者の支配下に一応服したものであり、その災害の防止につきましては、使用者みずからが、運転手とかあるいは自動車そのものについての保全に十分注意するというように、使用者が責任を負うべき道筋が整っておると思うのでありますが、とか市電とか一般のバスであるとかいったようなものにつきまして、そういった交通保安責任を有する人々の補償責任の問題と使用者の無過失責任の問題をどう調和せしめるかという点につきまして、これが社会保険でございましたならば、比較的そういった基本的な事例を一応やめにいたしましても、まずまずかかえたらよかろう、こういうことに相なるかと思いますけれども、そういった点さらに検討を要するものがあると存じますので、先ほど私申し上げましたように、一昨日大臣が申し上げましたように、審議会へ付議いたしまして検討はいたしますが、ただいま結論を申し上げる段階には至っていないということであります。
○多賀谷委員 今度の改正によって、百二号条約の業務災害給付の項は、これは一応条約に抵触しないわけですか。
○石黒政府委員 全体といたしましては百二号条約のレベルに到達いたしておりますが、ただ、御承知のごとく、百二号条約は軽微な傷害に対するものを除いてはすべて補償は年金ですべきであるというふうに規定いたしております。この軽微なという抽象的な表現が一体どの程度までのものを含むかということにつきましては、さらにILO当局の解釈及び諸外国の立法例等を参照して検討いたしたいと思います。
○多賀谷委員 スライド制の点はいいんですか。これは日本の現行の基準法では合っていますか。
○石黒政府委員 スライドの問題につきましては、百二号条約には反しないと思います。
○多賀谷委員 スライドを認めているのは、現行法は休業補償でしょう。これは全般にかかっているわけですよ。老齢、業務傷害、それから疾病、扶養者の死亡と全体にかかっているのですよ。共通事項としてかかっているわけでしょう。だからスライドの点は百二号条約の条件を満たしていないじゃないですか。
○石黒政府委員 基準法におきましては、休業補償についてのスライドを定めておりますが、そのほかの年金等につきましては、三十五年の改正におきましてスライドが導入されまして、それと同じやり方で障害年金、遺族年金、長期給付等のスライドを行なうということが附則の四十一条できめてございますので、全般的なスライドというふうに構成いたしておる次第であります。
○多賀谷委員 率の問題も、はたして基準法が書いておる条文とILOが言っておる「変動」との間に差があるかどうか、これも問題です。しかしこれもいずれ問題として提起をされると思います。それで私は思いますけれども、大体百二号条約なんていうのは欧州では通用しないのですよ。ですからむしろ低開発国のためにつくったような形になっておる。それで欧州では、最近百二号条約ではいかぬからもう一度ひとつ検討しましょうというので、各国にアンケートを出しておる。日本の厚生省にも来ておるわけですよ。日本の厚生省はたしかけっこうですという返事を出しておる。だから百二号条約というのはもう古いのですよ。非常に低いんです。それにまだ基準に合っている、合っていないという議論をしなければならぬというのは非常に残念だと思うのです。
 この程度で質問を終わります。
○松澤委員長 河野正君
○河野(正)委員 労災保険法の改正法案につきましては、すでにいろいろ質疑が交換されまして、その中できわめて今後の方向というものが明確になりた点もございます。しかしながら、さらにいろいろ問題点を提起して明確にする必要のある点もございます。しかし、時間の制約がございますので、いろいろ申し上げることを省きまして、簡明率直に何点か問題点について指摘申し上げ、そうして政府の今後の方向について明確にひとつお答えをいただきたい、かように考えます。
 まず第一にお尋ねを申し上げたいと思います点は、なるほど今度の改正法の内容におきましても、いろいろとその内容を充実していく、こういう前向きの点もあるわけでございますが、しかしながら私ども、労働者に対します補償問題でございますから、そういう問題を完全に解決をしていくという意味におきましては、今後の労災保険法に対処いたします政府の姿勢というものがきわめて重要でございますので、あらかじめその一点だけはひとつ大臣から明確にお答えをいただきたい、かように考えます。と申し上げますのは、開放経済体制下におきましては、個々の企業の合理化というものが非常に急テンポで進んでまいります。と同時に、生産性向上というものが非常にこれまた急激に上昇をいたしまして、そのためにややもいたしますと、人命尊重の対策というものが軽視されるという危険性が当然出てまいるわけでございます。今日までは三池の災害だとか、あるいは国鉄の側見事件、昭電工、北炭、伊王島の災害、こういう災害が起こってまいりました点も、私はそのような経済開放体制下の一つの犠牲ではなかろうかと痛感をいたすわけでございます。そこで実際問題といたしましては、政府の経済政策と関連をして、福祉対策というものが行なわれてまいらなければならぬ。こう私ども強く感ずるわけでございます。そこで、この点はやはり今後この労災保険ないし労災補償の問題の前進をはかっていく意味におきまして、私はこれらの法律に対処いたします政府の姿勢というものが非常に重要な意義を持ってまいりますかがゆえに、ひとつ大臣から今後開放経済体制下におきます労災補償に対しますところの姿勢というものについて率直にお聞かせいただきたい。
○石田国務大臣 今回御審議を願っております労災補償法の改正は、従来いろいろ各方面から要望せられておりましたこと、それから近代工業国家としてふさわしい諸条件を満たしますために、前進的な姿勢をもって検討し、提出したつもりでございますが、なおそれに幾つかの問題が残っておることも承知いたしております。問題が残っておる点は労災補償審議会で御検討いただきまして、すみやかに処理をしてまいりたいと思っております。しかしながら、そのまず前提は、この法律の恩恵に浴さないようにすることが一番大切でありまして、それには災害の防止に全力を注ぐべきであると考えます。戦後わが国が窮乏混乱の中から立ち直るときに、生産第一という考え方がかなり長い間支配的でありました。これはやはり生産第一よりは安全第一、人命尊重という基本的方針に、経営者も労働者も政府も、すべてがほんとうに切りかわっていかなければならない。その効果をあげるべく行政上の処置及び指導をやっていくことがまず必要であると思っておる次第でございます。それと相まって、不幸にしてそれでもなお災害にあわれた人たちの万全を期するというのがこの法律であると考えております。
○河野(正)委員 これは法律の適正を期する意味におきましても、この問題は労働者にとりましては非常に大きな利害を持ってまいる点でございますので、いろいろ問題点として提起されました諸点につきましては前向きの姿勢でさらに改善の方向をひとつはかっていただきたいというふうに要望を申し上げておきたいと思います。そこで、時間の制約がございますので、いままでの質疑の中で関連をしたりあるいは重複のきらいのある点もございますけれども、いろいろ疑問点を明らかにする意味におきまして、若干御指摘を申し上げて明快なお答えをいただきたいと思いますので、数点の問題点についてお尋ねを申し上げます。
 第一に明らかにしておきたいと思います点は、厚生年金と労災保険とのいわゆる併給の問題でございますが、これは本法によりますと、厚生年金との調整率が五十七・五ということに相なっておるわけでございます。しかしながら、厚生年金の性格からいいましても、労災保険の性格からいいましても、当然これは完全併給をすべきではないかというふうな考え方を強く堅持するものでございますが、これらについては今後どのようにお考えになりますかお伺いをいたしたい、かように考えます。
○村上(茂)政府委員 厚生年金保険その他これに準ずるような共済制度等との調整の問題がございますことは御指摘のとおりでございます。この問題については労働省といたしましても真剣に検討いたしておりますが、関係各省とも十分協議をいたしまして、この調整の完全を期したいと存じております。改正法案の附則の四十四条におきましても、調整をなすべき旨の趣旨が規定されておりますので、附則四十四条の趣旨にのっとりまして至急検討をいたしたいと存じます。なお、手続といたしましては、労働省の労災保険審議会がございますが、その他関係者との関係もございますので、そういった関係方面との連絡、検討を十分今後も継続いたしたいと考えておる次第でございます。
○河野(正)委員 私どもは完全併給という強い意向を持っておるわけでございますので、今後ともその方向で善処をしていただきたい、かように考えます。
 それから、次に明らかにしておきたいと思います点は、この障害補償年金は障害等級の一級から七級までということでございます。したがって、これはいまの委員会の中でもいろいろと論議されてまいったわけでございますが、八級以下は年金よりはずされるというたてまえになっております。この年金制という制度からいたしましても、これは当然拡大されることが望ましいと私も考えるわけでございますが、それらの点についてどのような方向で御検討を願うのか、ひとつ明らかにいたしておきたいと思います。
○村上(茂)政府委員 御質問の点につきまして二つに分けてお答え申し上げます。
 第一は、障害補償給付につきましては、その基礎となる障害等級の検討が必要であると存じます。労働省といたしましても、障害等級表の全面的改定が必要であると考えまして、労災保険審議会にはかって検討いただくために、ただいま準備中でございます。その障害等級の改定に伴いまして、各等級の給付額についても検討が加えられることとなるわけでございますが、いずれにいたしましても、医学的な結論が出次第、労災保険審議会に付議した上、必要な立法措置を講じたいと考えております。
 第二は、御指摘の現行八等級のうち、神経機能の障害等、厚生年金保険の第三級に該当しながら、現在の労災保険法施行規則では年金が受けられないというようなものがございまするので、これを第七級に繰り上げまして、厚生年金と平伏を合わせたいと考えております。規則改正のために所要の手続を早急にとりたいと考えております。
○河野(正)委員 ただいまの点に関連をしておるのでございますけれども、この等級改定等については、審議会に付議をして、早急に検討する準備中だ、こういう御意見でございました。そこで、私どもはこの等級改定というものが、すみやかに実施されることが望ましいわけでございますので、したがって四十年度中には結論づけられる。こういう方向へ御善処願えるものだ、この点をひとつお聞かせをいただきたい。
○村上(茂)政府委員 ただいまの点につきましては、基本的な考え方は先ほど御答弁申し上げましたとおりであります。この改定の時期でございますが、医定的検討のために若干時日を要するかと存じます。特に各種障害の格づけにつきましては、いろいろな議論がございまするので、事務的にはなかなか処理し得ない問題もございます。かたがたこの際において厚生年金保険の障害等級表との関連をできるだけ合致せしめたいという考えもございまするので、事務的にはできるだけ急ぎまするが、その点時日をいま明確にできないのが残念でございますが、できるだけ早急に結論を得るように、善処いたしたいと思います。
○河野(正)委員 次にお尋ねをして見解を明らかにしていただきたい点は、このISSA、国際社会保障協会におきましては、一九六一年総会で決議をいたしますし、そのためにILOにおきましても、この職業病補償の条約の改正というものを、国際社会保障協会の決議に従って行なったのでございますが、それらの点に関連をして、いま多賀谷委員からも御指摘があったわけでございまするけれども、通勤途上の災害の問題、あるいは労働時間前後におきます事故災害の問題、あるいは休憩中の食事の場におきます災害事故の問題、こういう問題についても労働災害として検討いたしまする措置というものが打ち出されてまいっておるわけでございます。そこで、通勤途上の問題につきましては、いろいろことばを重ねませんけれども、結論的に申し上げますならば、通勤途上の災害の実態調査と対策を審議会に付議をして、すみやかにひとつ方向なり、結論というものを出される必要があろうかと考えておりますし、この点はいろいろいままで取り上げられておりまするから、多くは申し上げません。したがって、これらの点について労働省の御見解をあらためて明らかにしてもらいたい。
○村上(茂)政府委員 御指摘のごとく、通勤途上の災害をいかに扱うべきかという点につきましては、実態調査を行ない、労災保険審議会に付議いたしまして、方向としては欧米各国等の例もございますので、前向きの姿勢で今後検討いたしたいと存じます。
○河野(正)委員 さらに見解を申しまして明らかにしておきたい点は、一般零細企業というものは粗悪な有害材料を使用し、あるいは有害な作業環境のもとで、いわゆる職業病発化の度合いというものが大企業に比較をいたしまして、非常に頻度が高まるという状況にございます。これが一つ。ところが、この零細企業、中小企業ということだけではなくて、最近の傾向としては、いわゆる公害といわれるものが非常に大きく浮かび上がってまいった経緯がございます。たとえば石油化学、ガス化学、これらのコンビナートの有毒ガスに起因する問題であります。これらは一つの新しい特徴でございます。したがって、この新しい領域の職業病の調査、補償、予防のための政策というものも私は今後の重大な課題となってまいるであろうということを痛感いたす者でございます。したがって社会党もCO法案というものを策定をいたしておるわけでございますが、いずれにいたしましても、そういったいろいろな新しい型の職業病というものが次々と発生をするという、経済機構の複雑化とともにそういう傾向も出てまいります。先般、淡谷委員からも白ろう病の問題も取り上げられてまいりましたが、いろいろな問題もございます。そこでこの職業病対策というものは、いろいろ労働者側の意見も新しく出てまいるわけでございますから、そういう問題提示を経たならば、直ちに労災審議会に付議をして、それらの点について結論が早急に出てまいるように、そういう配慮が当然必要になってまいると思うのであります。その点に対する御見解をお聞かせいただきたい。
○村上(茂)政府委員 最近の化学工業等、要するに新しい原材料の使用等に伴いまして、新しい職業病が発生する、あるいは零細企業等においては、依然として防護施設等が十分でないことによって職業病が発生するという点につきましては、御指摘のとおりでございます。
 そこで、この職業病につきましては、問題を予防措置の点と、補償措置の点と考えまして、労働省といたしましても、今後さらに検討を進めてまいりたいと存じますが、予防の点につきましては、たとえば最近は塩素性の有毒物による災害がかなりふえておるのであります。そういうものにつきましては、適宜行政指導の基準を設定するとか、あるいは規則改正のために労働基準審議会に付議しておるというような次第でございます。いずれにいたしましても、原材料の種類によりまして予防措置がそれぞれ異なりまするとし、またたとえば一酸化炭素中毒にいたしましても、坑内における場合と、それからガス工事の場合など等についてみましても、手段方法が異なるわけでございますので、要はそういう原材料の種類及び作業実態に即した防護措置をさらに拡大をしていく具体的な基準を設定するという方向で、今後も労働基準審議会の場を通じまして、さらに基準設定に努力してまいりたいと考えております。
 職業病に対する補償措置につきましては、今回の法律改正と相まちまして、今後ともさらに充実を期してまいりたいと考えておりますが、特にけい肺等いわゆるじん肺患者に対しましては、その疾病の重篤性にかんがみまして、さらにその保護措置を強化する必要があるのではないかという御意見もございますので、今後はそのような趣旨を体しまして、検討を進めてまいりたいと考えております。
○河野(正)委員 次に私どもの見解を申し上げて明らかにしていただきたいと思います点は、この労災法を実施いたしてまいりまする際に、いろいろと省令、政令にゆだねます点が非常に多いわけでございます。たとえば、平均賃金の算定等の問題も一例でございますけれども、これらの点は労働者にとりましても非常に大きな影響力を持っておりますがゆえに、非常に重大な問題でございます。そこでそれらの重要事項というものは、いまも申し上げますように、労働者に対しまして非常に正きな利害関係を与える問題でございますから、したがってそれらの点につきましては、必ず労災保険審議会に付議をして、そして労働者の不利にならないように当然つとめらるべきだ、こういうふうに私は考えるわけでございますが、その点について御見解を明確にお聞かせをいただきたいと思います。
○村上(茂)政府委員 御指摘のごとく、重要事項につきましては給付基礎日額のみならず、その他の事項につきましてすべて労災保険審議会にはかりまして、その意見を徴した上で措置をしたい、かように考えておる次第でございます。
○河野(正)委員 そのほか全面適用の立法準備の問題であるとか、あるいは特別加入の際における派出婦、派出看護婦、お手伝いさんの問題であるとか、あるいはまた融資その他の援護、社会復帰など、保険施設に対しまする予算化の問題であるとか、あるいは著しく不適当な基礎日額給付の手直しの問題であるとか、いろいろ問題点はございます。先ほどスライド制の問題についても、いろいろと多賀谷委員から御指摘がございました。いろいろございますが、それらの点についてはひとつ今後行政運用の中で適切を期し、そしてまた労働者の不利になることがなく、かつまたこの労災保険法というものが円滑に運営されまするように、私どもは強く要望をいたしておきたいと考えます。
 それからさらに重要な点でございますけれども、一点お伺いをして明らかにしておきたいと思います点は、この遺族年金の受給権のない者に対しまする措置についてでございます。これは御承知のように、四百日の一時命ということでございますけれども、今回の法改正の非常に大きな趣旨というものが、年金制度というものを貫いていくというのが一つの非常に大きな方向でございます。そこで私どもはこの遺族年金受給権のない者に対しまする処置についても、当然年金制度の方向というものが貫かるべきだ、こういうふうに私は考えるわけでございますが、これらについてひとつお聞かせをいただきたい、かように思います。
○村上(茂)政府委員 御指摘の前段の点につきましては、全面適用の問題、派出婦の問題、融資等の問題、給付日額の著しく不適当なものの手直しの問題等につきましては、行政運営で処理できるものがかなりございまするので、労働省といたしましても、極力御指摘の点につきましては善処するように努力したいと考えております。
 なお、後段の遺族給付の問題でございます。この点につきましては、いろいろ御議論もあるところでございますが、今回の改正にあたりましては、他の保険等との関係も考慮いたしまして、原案のような形にいたしたわけでありますが、受給権者が実情に合いますように措置せられますことは、これは基本的な考え方としては必要なことでございます。この点につきましては、事務的にはなかなか処理し得ない問題もございまするが、方向としましては受給権者の範囲等につきまして適正を期するということは必要なことであろうと存じておる次第でございます。
○河野(正)委員 そこでいままでの審議の中でいろいろ問題となって、またその中で明らかになりました点もございますけれども、以上の諸点につきましては非常に労働者に対しましても重要な影響力を持ってまいりますので、その中には法律改正をしなければならぬ面もございます。あるいはまた今後前向きで審議会の中で検討して将来善処せらるべき問題もございます。あるいはまた、いまお答え願いましたように、行政運用の中でいろいろ善処を願い、労働者の不利にならないような措置を願わなければならぬという問題もございます。それらの諸問題というものがあるわけでございますので、私どもはそれらの諸問題というものが早急に解決せられることを強く要望申し上げるものでございます。
 そこでもう一点だけ補足をして、いま申し上げますような全面的な問題について、大臣から最終的御見解をいただきたいと思うのでございますが、その前に、保険給付の改正に対しまして滝井委員からいろいろ強い意見が出ておりました。たとえば、いまの六〇%休業補償というものを十割八割にしろというような強い意見も出てまいった。私どもにそれぞれ労働者のほうから出てまいります意見、切実な意見は、休業補償というものを平約賃金の八十にしてほしい、こういう意見というものが非常に強いわけであります。これは生活権に影響をいたしまする非常に重大な点でもございますので、それらの点に対する前向きなお答えもあわせて大臣からお伺いをいたしておきたいと思います。
○石田国務大臣 最後の御質問は労働基準法との関係がありますので、将来検討を要する問題だと思っておりますが、御質問の趣旨を十分くみ入れて検討したいと思っております。
 いままで御質疑と応答がございました点については、基準局長や労災部長の答弁はそのとおり私の答弁でございますので、さよう御了承いただきたいと存じます。
○松澤委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
○松澤委員長 ただいま委員長の手元に、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案に対し、澁谷直藏君、河野正君及び本局百合子君より修正案が提出されております。
○松澤委員長 修正案の趣旨の説明を聴取いたします。澁谷直藏君。
○澁谷委員 私は、自由民主党、日本社会党及び民主社会党三派を代表し、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案に対する修正案の趣旨を御説明申し上げます。
 修正点の第一は、労災保険の年金である保険給付と厚生年金保険の年金及び政令で定める法令による年金との調整率を、百分の五十七・五から百分の五十に改めることといたしたものであります。
 すなわち、労災保険の年金と厚生年金保険等の年金とが同一の事由について併給される場合には、労災保険の年金の額を一定額だけ減額することとしておる点でありますが、その減額すべき額は、政府原案では厚生年金保険等の年金額に百分の五十七・五の調整率を乗じて算出することになっております。この調整率は、労災保険と厚生年金保険の費用の負担者の負担が重複しないように定められたものでありますが、今国会に提案されております厚生年金保険法の一部を改正する法律案の修正により、厚生年金保険における費用負担率が変更されることでもあり、労災保険の年金と厚生年金保険の年金を併給される労働者またはその遺族の保護を充実するため、調整率を百分の五十に引き下げて労災保険の年金の支給額を引き上げようとするものであります。
 修正点の第二は、遺族補償年金の受給資格者の範囲を拡大しようとするものであります。すなわち、政府原案では、労働者の死亡当時その収入によって生計を維推していた労働者の夫、父母、祖父母及び兄弟姉妹は、これらの者が労働者の死亡の当時六十歳以上である場合にのみ遺族補償年金を受けることができる遺族とされるのでありますが、労働者が若年で死亡した場合には、その父母等も受給資格年齢に達せず、これから老齢に向かおうとしている父母等が年金を受けられないという場合が少なくないと考えられます。そこで、父母等の受給費格年齢を、政府原案の附則第四十四条の規定に基づき遺族補償年金の受給資格者の範囲が改定されるまでの間、五十五歳に引き下げることとしたのであります。ただし、これら特別に年金の受給資格者とされた父母等の受給順位は、他の遺族に対して最後順位とするとともに、これらの者が六十歳に達するまではその支給を停止することとしておりますが、政府原案の附則第四十二条の遺族補償年金の一括前払いはその支給を受けることができることとして、遺族の保護に資するよう措置することとしたのであります。
 以上、修正案の趣旨を申し上げた次第であります。
 何とぞ委員各位の御賛成をお願いいたします。(拍手)
○松澤委員長 この際、本修正案について国会法第五十七条の三による内閣の意見があればお述べを願いたいと存じます。労働大臣石田博英君。
○石田国務大臣 労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案に対して、ただいま修正案が提出されたのでありますが、これが国会において可決されました場合は、政府といたしましてはこれを尊重いたします方針でございます。
○松澤委員長 本修正案に対して御発言はありませんか。
    ―――――――――――――
○松澤委員長 御発言がなければ原案並びに修正案を一括して討論に入るのでありますが、別に申し出もございませんので、これより採決いたします。
 まず、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案に対する修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○松澤委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。
 次にただいまの修正部分を除く原案について採決いたします。
 これに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○松澤委員長 起立総員。よって、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案は澁谷直藏君外二名提出の修正案のごとく修正議決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
○松澤委員長 この際、藤本孝雄君、八木昇君及び本島百合子君より労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案に対し附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 その趣旨の説明を求めます。藤本孝雄君。
○藤本委員 私は自由民主党、日本社会党及び民主社会党の三派を代表し、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案に対する附帯決議の趣旨を御説明申し上げます。
  政府は、次の事項について努力すべきである。
 一、労働者災害補償保険の全面適用については、改正法附則第十二条の期間内においても、できるかぎりすみやかに立法化を図ること。
 二、被災労働者及び遺族に対する援護の拡充及び社会復帰の促進を図り、特にけい肺外傷性せき髄障害者等の長期傷病者に対する給付の改善を図るとともに、これらの患者であって打切補償のみによって災害補償を打ち切られた者に対する保護措置について十分配慮すること。
 三、保険給付の改善について引き続き更に努力し、特に通勤途上災害の取扱い、障害等級表の改定、スライド制の改善等についてすみやかに検討するとともに職業性疾病についての予防及び補償につき総合的な検討を行ない、その結果に基づいて所要の措置を講ずること。
 四、農業従事者に対する特別加入制度の運用については、農業災害の実情を十分考慮すること。
以上であります。
 何とぞ委員長各位の御賛成をお願いいたします。(拍手)
○松澤委員長 本動議について採決いたします。
 本動議のごとく決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○松澤委員長 起立総員。よって、本案については藤本孝雄外二名提の動議のごとく附帯決議を付することに決しました。
 この際、石田労働大臣より発言を求められておりますので、これを許します。労働大臣石田博英君。
○石田国務大臣 ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、政府といたしましては、十分これを尊重いたしまして善処したいと存じます。
    ―――――――――――――
○松澤委員長 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○松澤委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。
  〔報告書は附録に掲載〕
○松澤委員長 この際、本会議散会後再開することとし、休憩いたします。
   午後零時四十六分休憩
     ――――◇―――――
   午後三時二十分開議
○松澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 内閣提出の精神衞生法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案審査のため、去る十五日、参考人出頭要求に関する件につきましてその人選を委員長に御一任願いましたが、本日、日本医師会副会長阿部哲男君、東京大学医学部教授秋元波留夫君、西日本新聞論説委員浅田猛君及び都立松沢病院長江副勉君の四名の方々に参考人として本委員会に御出席いただいております。
 参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多忙のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございます。
 本案につきましては各方面に広く関心が持たれております。本委員会といたしましては、参考人各位の御意見をお伺いし、本案審査の参考にいたしたいと存じます。何とぞ忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
 なお、議事規則の定めるところによりまして、参考人の方々が発言なさいます際には、委員長の許可を得ていただくことになっております。また、参考人は委員に対し質疑することはできないことになっておりますので、以上あらかじめお含みおきを願いたいと存じます。
 なお、議事の整理上、御意見をお述べ願う時間はお一人十五分程度とし、参考人各位の御意見開陳のあとで委員の質問にお答え願いたいと存じます。
 よろしくお願いいたします。
 まず阿部参考人、次に秋元参考人、浅田参考人、江副参考人の順序でお願いいたします。まず、阿部参考人からお願いいたします。
○阿部参考人 ただいま御紹介いただきました日本医師会の阿部でございます。
 このたび精神衛生法の改正案というものを御審議いただくにあたりまして、私も精神衛生審議会の一員といたしましてこの審議に参画いたしたわけでございますが、なおこの問題につきまして非常に重要な項目がたくさん含まれておりまして、答申申し上げました点につきましても、お取り上げいただいた点もございますし、また審議継続中のものもございます。
 そこで、審議会といたしましては、本年の一月に御答申申し上げたのでございまするが、それは十六項からなっております。
 第一、「精神障害」の定義というものでございますが、この問題につきましては神経症の問題をはさんでございましたのですけれども、いろいろ問題点がございまして、神経症というものにつきましては、あらためて審議申し上げて表現を変えてからこれをある程度入れたい、こういうことでございます。
 それから、第二の地方精神衛生審議会の設置につきまして、中央にただいま申し上げました精神衛生審議会というのがございまして、これは厚生大臣の諮問機関でございまするが、地方におきましても、現在の精神衛生学の非常な進歩と非常に複雑化している面から見まして、行政の分野におきまして、地方精神衛生審議会があったほうがいいのではないか、こういう趣旨に基づいて御答申申し上げたのでございます。現行法におきましてこういう点はございませんで、改正案の中に精神衛生診査協議会、こういうものが出ておりますけれども、この精神衛生診査協議会は第十六条の二のところに出ておりますとおり、費用の負担について審査して知事の諮問に答える、こういうだけでございます。そこで、この地方精神衛生審議会というものにつきましていろいろ御疑問の点もおありだと思うのでございますが、この問題につきましては、いずれ専門家の方々も本日参考人としていらしておりますので、その方の御説明にまちたいと思うわけでございます。
 第三は、精神衛生鑑定医制度、こういうのがございます。これは地方におきまして精神衛生鑑定医をもちまして指貫入院等の決定をなす際に、あるいは保健所の決定にあたりまして非常にアドバイスとなるわけでございますが、これの問題点といたしまして、この精神衛生鑑定医というものがあまりに制度化するということについても疑問が残っております。と申しますのは、医師会の立場から申し上げますと、医療制度全般から見ても、精神科医だけ専門医制度に準ずるものがあるというふうに誤解されやすい、また医師の資格制限を規定するような方向にあまり走り過ぎますと、精神病院の管理者や病院の精神科の長を規制するということになりまして、非常に問題点が出てくると思うので、この点も御留意願っておきたいと思うわけでございます。
 第四の同意入院制度及び保護義務者の制度、それから五の精神障害者に関する申請通報制度、これにおきましては、警察官の通報制度並びに検察官の通報制度を改善いたしまして、もっと手早く通報することのできるようにここにうたってございますので、今後非常に前向きの姿勢で精神障害者の発見にさらに一歩前進するものと確信しております。そのほかに、保護観察所の長の通報制度等もございまして、同じような形においてとらえておるわけでございます。ただ、そこの医師の通報制度の取り扱いにつきましては、審議会といたしましていろいろ議論されたのでございまするが、現在におきまして医師の通報制度だけここに分離して載せるということになりますと、非常に問題が大きくなりますし、またそれによりまして早期発見の機会を失うということもございますので、現在はまだ決定しておりません。今後諸外国の資料等を十分勘案いたしまして引き続いて審議をしていきたい、こういうわけでございます。
 それから、措置中の精神障害者に関する都道府県知事の行なう措置解除という問題も大きく出ておりまするが、これも大体において解決し得るものと考えられる次第でございます。
 また同意入院患者が退院しようとするときの病院長の通報の義務というものも今度相当明らかにされたわけでございます。
 それから、緊急入院制度、さらに精神病院からの無断退去者に対する措置というものも問題点となったのでございまするが、結局、この緊急入院制度という問題は、やはり人権の擁護という意味からいきまして問題点がございますので、相当慎重にこれをやる、こういうことでございまして、最大十日間程度の入院手続というものを当該患者に認めることになったようでございます。
 こういう問題からして、精神病院に入院または仮入院している者の信書の制限、これは、信書の秘密は当然守るべきであるが、こういうことで人権を相当尊重すべきであるという方向にきたわけでございます。
 以上の問題点のほかに、いろいろございまするが、精神衛生の病院の設備、構造の問題とか、それから精神科の病院というのはございまするが、診療所というものについては現在認められておりません。しかし、われわれの考えからいたしますと、病院、診療所というのは病床数によって区別しているにすぎないのでありまして、これも医療制度全般の見方から申し上げまして、やはりこういう区別はすべきではないのじゃないか。まさに時代錯誤ではないか。こういうことで今後診療所の問題も引き続いて審議してまいりたい、こういうたてまえをとっておる次第でございます。
 また、その他の要望事項といたしましていろいろございますけれども、結局結論的にちょっと申し上げますと、医療制度全般から見て、やはり精神病院というものも検討してまいるべきが筋である、こういう結論になるわけでございますが、結局現行法と今度の政正法案を見ますと、非常な前進の姿が見られておりまして、公費負担の問題も外来患者にまでこれが拡大されるということも非常な前進でないかと思う次第でございます。
 結局、やはり精神衛生法の改正にあたりましては、特にただいま申し上げたような点を留意すべきであるという精神を持ちまして審議を尽くし、なお今後引き続いて御答申申し上げる、こういう筋道になっておるわけでございます。
 以上、簡単でございまするけれども、精神衛生法についての私の考え方を申し述べさしていただいた次第でございます。ありがとうございました。(拍手)
○松澤委員長 次に、秋元参考人にお願いいたします。
○秋元参考人 このたび精神衛生法一部改正がこの国会で審議されるにあたりまして、この法の改正にこれまで専門家の立場から終始深い関心を持っておりました日本精神神経学会の立場で、私が率直な御意見を申し上げることができますことをたいへん光栄と存じます。本店は非常に重要な会議でもございますので、歯に衣を着せず率直に私どもの考えておりますことを述べまして御参考に供したいと思います。
 日本の精神障害者に対しますこれまでの国の施策、これは申すまでもなく、非常に残念なことでございますけれども、欧米諸国に比べますと非常におくれておりまして、とうてい文化国家というような名に値するものではないのでございます。これは、たとえば近来毎日のように新聞に載っておりますああいう精神障害者によるいろいろな困った事件、こういうふうなものがあとを断たないというような一事だけでもわかるのではないかというふうに考えております。ああいうふうな事件は、非常に多くの精神障害者がおりますけれども、そういう精神障害者の数から申しますとごく一部のものでございますし、また、ああいう不測の事件が起こりますことにつきましては、単に精神障害があるということだけではなくて、そこにいろいろな社会的条件が加わっておるのでございますけれども、しかし、ああいう事件が起きますと、精神障害者は危険であるというような考え方が強くなります。また、これによりまして精神障害の方をかかえております家族にとりましては非常に肩身の狭い思いをするということが原因になりまして、そのためにできるだけ人に知らせないようにするといったような秘匿の傾向が出ております。こういうように精神障害者を危険視する、したがってまたこれを家族が秘匿するというような悪循環がございます。そしてああいうふうに事件があとを断たないわけでございます。こうした現在日本の精神障害者対策につきまとっております悪循環を断ちますためには、何としても国が責任を持って精神障害者に対する施策をつくるということが必要なわけでございます。このような見地から見ますと、現在の精神衛生法にはいろいろ不備な点がございます。そういうことで私どもはかねて、数年前からぜひこれを改正していただきたいということを機会あるごとに要望してまいったのでございますけれども、たまたま御承知のように昨年非常に不幸な事件が起こりました。あれがきっかけになりまして、ようやくこれが世論の注目するところとなりまして、今度政府提案の形で法改正をされるということになったわけであります。しかし今度、いろいろ当局の苦心がございましたけれども、出ました案というものを見ますと、一体このような案でいま私どもの当面しております精神障害者の問題をほんとうに解決できるかどうかということになりますと、私どもとしましてはこれに対して多くの危惧を持つのであります。そうした見地からぜひこの国会におきまして、精神衛生法の改正を十分に慎重審議されまして、これを、これからの精神衛生施策を国が責任を持って行ない、精神障害者対策をほんとうに推進するようなものにしていただきたいということを、学会に連なります者といたしまして心から切望しております。
 そこで、まず精神衛生法の改正にあたりまして、私どもが望みます根本の精神は、この法律がこれまでは障害者の入院治療、ことに自傷他書といったような公安上の危険があるもの、こういうものの隔離入院――措置入院といっておりますが、こうしたものの措置入院に重点が置かれた、そういう消極的な対策から脱皮いたしまして、ひとり精神障害者の問題だけではなくて、家庭であるとか学校であるとか職域であるとか、そういった広い精神衛生全般を含めました、国民全般の精神的健康を向上させるといったような施策に資する、そういうような答申であることを望んだわけでございます。また精神障害につきましては早期に発見し、これに適切な治療を加える、さらに退院したあとのアフターケアをいたしまして社会に復帰させる、そういった早期発見からリハビリテーションまで、そういう一貫性のある施策が行なわれること、そういうところに法律を拡大発展させるということを考えているわけでございます。すなわち、精神衛生法をこれまでの消極的な社会防衛的な、いわば精神病院法というような形のものから、積極的な進歩的な、文字どおりの精神衛生法に改正することがほんとうのねらいであるというように考えまして、これまでそういう見地からいろいろな意見を申し述べてまいったわけでございます。
 このような見地に立ちまして、今回の政府提出の法律案を見ますと、確かにその中にはこれまでの法律にはありませんでした在宅精神障害者、病院に入ります以前の家におります間の精神障害者のめんどうを見る、そういう訪問指導の体制であるとか、あるいはいま精神医学的な治療が進みまして、軽症な者は入院させませんでも自宅で治療できますが、そうした自宅治療に対してその治療費を国が負担する、公費負担するといったようなこと、その他、そうした種々の点で確かに前進しているということは言えるのであります。しかし、先ほど申しましたような進歩的な姿勢という観点から見ますと、種々の不満足な点がございます。すでにこれにつきましては、この法案のもとになりました精神衛生審議会におきましても、この審議会の答申が十分に尊重されなかったという点で、厚生大臣に対して不満の意を表明してありますし、また学会でもこれじゃ困るということを機会あるごとに述べてきたわけでございますが、それらの不十分な点を要約いたしますといろいろありますけれども、およそ三点に尽きるのではないかと私どもは考えております。私どもはこれを精神衛生法改正の三つの柱というふうに呼んでおりますが、この一つは精神障害者の定義であります。
 御承知のように、現在の精神衛生法の定義、精神障害者に対する定義は狭義の精神障害、精神疾患、精神病、これと精神薄弱、それから精神病質者、これは性格異常でございますか、生まれつきの病気というよりは、むしろ先天性の病気によるところの性格、この三つに限られております。しかし、先ほど申しましたような精神から申しますと、精神衛生法はもっと広く、今日の精神医学が対象とするような、そういう広い軽いものも含めまして精神障害一般を含めるべきであるということが、この定義を改めるべきであるという主張の理由であります。すなわち、この三つに限らず、精神医学的なケアを必要とするような精神能力の障害あるいは異常行動を制限する、さまざまなものがございますが、たとえば神経症などと言われているものの中にもそういうふうなものがございまして、これを中期に処理することが、いろいろな社会的な問題を未然に防げる一つの大きな理由にもなる、方法にもなるわけでございますが、このような広い方法に拡大しなければならぬということでございます。
 それから第二は精神鑑定医制度でございますが、御承知のように現在は、この自傷他害というようなおそれがありますと、この者は国の負担によりまして、公費によって指定精神病院に入院させることがあります。その際に、この患者がそのような措置入院の条件に合致するかどうかを鑑定するのが精神鑑定医でございまして、これは厚生大臣が指定をするわけです。そして、その指定の条件としては、精神障害の治療について三年以上の経験を持った者といったようなばく然とした規定がありまして、それに該当するようなことであれば、そうしてまたこれは厚生大臣になっておりますが、実際には都道府県でいたしますが、都道府県でそういう鑑定業務をいたすのに必要であるという限度内においてこれを指定する。したがって、これは資格でも何でもないのでございますが、しかし措置入院といったような人権の制限、こういうふうなことをさせるというふうなことがありますために、特にそういった制度を設けております。ところが、この人権制限といったようなことは措置入院だけでなしに、一般に精神病院ではこれが医療上どうしても行なわれることになります。つまり、措置入院だけでなくても、医療上必要があれば患者の意思に反してその患者さんの行動を制限する、つまり本人が幾ら出たくても外へ出さないで、それを一定のところに託しておく、行動を制限する、つまり本人の意思を束縛するという、ほかの医者では行なわれない、そういう特別な人権に関する権限を精神科の病院の医者にやるわけです。ところが、このほうは全く何にも制限がありません。鑑定医というものがありますけれども、それといまの仕事とは無関係でありまして、措置入院と関係がなければ、そういう人権の制限はだれでも医者であればできる。つまり現行の医療法では、これは日本の非常に大きな欠陥でございますが、専門制度がありませんために、医師免許があればだれでも――きょうまでほかの臨床のことをやる、あるいは臨床を知らなくても基礎で何か勉強をして学位でもとる、あすからは直ちに精神病院の経営の管理者になれる、そうしてこのような人権制限ができるというたてまえになっておる。それが非常におかしいのでございまして、これは日本の精神病院の管理の上の大きな欠陥になっております。これを改めるためにはどうしても専門制度などに、そういう人権制限を行なうための一つの資格を認めなければならぬという立場から、これは審議会でも論議されまして、その結論として精神衛生医、これは仮称でございますけれども、そういうものを設けて、この精神衛生医はやはり一定の基準を厳格に課する。審議会の案では、五年以上のしかるべき精神医学の施設、診療施設で臨床経験を持った者について適切な審査をいたしまして、そうしてその資格を認める、こういうふうな資格を持った人が初めて精神病院の解釈なりそういう人権制限も行なえるわけです。そうして必要があればその人は措置入院の指定によりまして措置入院のほうの鑑定を受ける、そういうことはぜひ必要だ、こういうことを主張したのでありますが、今度の法律ではそれが認められておりません。依然として非常に不完全な精神衛生鑑定医の制度が存続しているわけです。
 第三点は地方精神衛生審議会の設置であります。御承知のように日本の精神衛生対策につきましては、中央に厚生大臣の諮問機関として精神衛生審議会がございます。そうしてここでわが国全体としての精神衛生に対する施策がいろいろ大臣の諮問によりまして討議され、それが大臣に答申されまして行政に反映されるというような仕組みになっているのであります。ところが肝心の地方におきましては何らそれがありません。したがいまして、地方の精神衛生行政は官庁の担当の係官あるいは民間のほうの精神衛生団体、そういった組織がてんでんばらばらでやっておる。すなわち、その地域性に即した自主的な精神衞生を促進する、そういう肝心のブレーントラストが全然ありません。つまり日本の精神衛生のそういった周知を集める機関というものは頭だけありまして、肝心の手足がない。これではとても推進ができないわけです。したがいまして、中央にそれがあるのでありますから、ぜひこれを一体となるような地方精神衛生審議会を設けるべきである。この三つともいずれも関連がありまして、これによって初めて精神衛生法が旧来の精神病院法でなくて、前進的な、進歩的な、世界のいずれの精神衛生法もこのような姿勢を持っておりますが、そのようなものにすべきであるということを言っておったのでありますが、この三点とも今度の改正になります法案では除かれておるというので、この点は非常に遺憾きわまりないということであります。ぜひこの点を御勘案いただきまして、このような方向に持っていっていただきたいということをお願いいたします。このようにいろいろ欠点はございましても、昨年米時間が足りませんで十分な質疑ができませんでしたが、精神衛生審議会でも審議を尽くし、また厚生当局も非常に熱意をもってこれに当たられましてこういう法案ができました。これにはいろいろな欠点もありますが、しかし先ほど申しましたような若干の点では確かに前進であります。ですから、学会としましてはこの案が通るということを望んでおりません。そういった修正ということがもしできますならばその上でぜひこれは通していただきたいということを考えておるわけでございます。
 最後に、私はいまから四十七年前に、日本の精神医学の父といっていい呉秀三先生、――先生の百年祭をことしいたしましたが、呉秀三先生が残されたことばがあります。それはこういうことばであります。一九一八年、ちょうど五十年ほど前でありますが、こういうことを言っております。先生は、「わが国何十万の精神病者は、実にこの病を受けたる不幸のほかに、この国に生まれたるの不平を重ぬるものというべし」、このように当時の精神障害対策がいかに貧困であったかということが、このことばでわかると思いますが、しかし、考えてみますと、この状態と今日とはあまり著しい変わりはないのじゃないかとさえ思われます。現在の日本におります精神障害の方々は、このような悲劇を繰り返さないためにも、ぜひ国会におきまして、この精神衛生法の改正について御尽力いただきたい。そうして一歩でも前進するようお願いいたしまして、私の公述を終わります。(拍手)
○松澤委員長 次に浅田参考人にお願いいたします。
○浅田参考人 精神衛生法の一部を改正する法律案につきまして、一、二の点につきまして私の見解を述べさせていただきたいと思います。
 まず、現行精神衛生法の改正の必要性があるのかないのかという点でございますが、これはどなたもその必要性を認められると存じます。むしろ、必要性というよりも緊急性があるといったほうがいいのではないかと存じます。ただ、精神障害者に対する施策ということになりますと、患者の人権問題と重要な関連を持ってまいりますし、一面また社会公安上の要請もございますので、慎重な考慮を必要とするのでございますが、私は、少なくとも現段階におきましては、施策の重点は医療保障の拡充強化によって適正医療が確保されることだと思います。適正医療が確保されますと、結局それが社会公安上にも好結果をもたらしますことは、何人も疑い得ないところだろうと存じます。その点、今度の改正案を見てまいりますと、公費負担のワクが広げられまして、通院医療につきましても公費負担措置がとられ、国及び都道府県が医療費の二分の一を負担することになっております。これは一歩進んだ措置と確信いたします。これがうまく運用されますならば、早期治療という点でもかなり期待が持てるのではないかと考えるものでございます。精神衛生審議会の答申を見ましても、外来患者の治療については、十割とはいかないまでも、少なくとも二分の一を下らない程度の公費負担が要望されております。したがって、今度の措置は、その限りでは答申の線に沿ったものと考えます。ただ、現在でも仮退院制度というものがございまして、これは措置患者についてではありますが、全額公費負担ということになっております。この点を考えますと、厚生当局もかねてから精神医学の発達によって通院医療の重要性がますます加わってきたとおっしゃっておるのでございますから、さらにこの半額、いわゆる二分の一を上回る公費負担が期待できないものかどうか。また公費負担は六カ月を限って行なわれることになっておりますが、せっかく通院医療で医療効果が上がっておりますときに、六カ月で打ち切られるということになりますと、やはり医療効果がそれによって中絶されるということになりまして、この点につきましても、できれば転帰まで半額を公費で負担していただくというふうにはまいらないものでしょうか。そこまでいかないといたしますならば、その運用にあたって弾力的な配慮をお願いしたい、こういうふうに考えるものでございます。
 ただ、ここで私申し上げたいと思いますのは、このように国民の税金によって医療費が負担されることになりますと、病院経営の側におきましても、良心的に健全に経営されなければならない、こう思うのでございます。ところが現在の医療法第七条によりますと、医者でなくても管理者に医者がおれば病院経営ができることになっております。もちろんその場合におきましては、利潤追求をしてはならないということがうたわれてはおりますが、実情は必ずしもそうではなくして、たとえばキャバレーを経営しておられる人が精神病院をも経営されておる。そしてとかく利潤に傾いた病院経営が行なわれておるというような事実も聞くのでございまして、この点につきまして公費負担のワクが広がってきました今日、何らかの反省が必要ではないかと、こういうふうに考えるものでございます。
 次に、同じく医療費補償についてでございますが、措置入院患者以外の入院患者の場合には、今度の改正法におきましては医療費補償措置がとられておらないのでございます。この点につきましては、私、率直に申し上げまして、了解に苦しむところでございます。審議会の答申によりますと、一般入院患者の医療費につきましても、その要する費用の相当部分を公費で負担する必要があるとされております。常識的に考えまして、入院を要する精神障害者の場合のほうが、むしろ経済的にも負担が大きいと考えられますし、通院医療につきまして公費負担措置がとられましても、地域社会によりましては適当な医療機関に恵まれないで、通院ができない場合もあると、こう考えるわけでございます。したがって、おそらく入院患者につきましての医療費補償措置が見送られましたのは、財政上の理由によることと存じますが、近い将来の課題といたしまして、ぜひ一般入院患者の医療費につきましても、公費である程度負担していただけるような措置をとっていただくようにお願いしたいと思います。
 いま一つの問題は、措置入院患者に関連する問題でございます。今度の法改正によりまして、新たに都道府県知事に措置解除権というものが付与されることになっております。このことは自傷他害のおそれがある精神障害者を、知事の職権によって強制入院させておりますから、措置症状が認められなくなった場合には、今度は知事が措置解除権を行使し得るということは、人権保障の立場からこれは理解し得るところでございます。ただ、入院措置の解除を都道府県知事が行ないます場合には、あらかじめ精神病院あるいは指定病院の管理者の意見を聞くことになっておりますが、病院側が措置解除について反対意見を表明することは十分予想されるところでございます。したがって、そういった場合にどう対処するかということにつきましては、審議会の答申に明らかにありますように、地方精神衛生審議会にはかって、その意見を求めた上で制度の円滑な運用を期すべきであると、こういうふうになっておるのでございます。この意味におきまして、地方精神衛生審議会の存在というものは、この一点を考えましても重要なものと考えるのでございますが、これがどうしたわけか今度の法改正におきましては見送られております。この点、地方精神衛生審議会が果たすべき今後の役割り、いわゆる精神衛生行政の体系化ということを考えますと、ぜひ地方精神衛生審議会の設置をもう一度お考えくださいますようにお願いしたい、こういうふうに思うものでございます。
 最後に、私は予算措置についてお願い申し上げたいのでございますが、これは四十年度の予算を見ますと、百六十四億円が計上されておりまして、三十九年度に比較いたしますと二二・八%の増加になっております。これは政府が努力されたことの結果だとは存じますが、予算の内容を見てみますと、社会復帰を促進するということが重要な課題になってきておるにもかかわらず、それに関係した予算というものも見当たりませんし、何となくやはりいま一そうの予算の裏づけということをお願いしないわけにはまいらないようでございます。この点、法の改正は何と申しましてもその裏づけとなる予算措置によってその目的が左右されるものでございますから、格段の御配慮をお願いいたしたい、こう存ずるものでございます。
 簡単でございますが、以上で終わります。(拍手)
○松澤委員長 次に、江副参考人にお願いいたします。
○江副参考人 本日、精神衛生法の一部を改正する法律案を当委員会が審査される機会に、松澤社労委員長から参考人として率直なる意見を述べよということでございますので、第一線に勤務いたします実際家の立場から若干の私見を述べたいと思います。
 御存じのように、現行の精神衛生法は昭和二十五年に制定されたものでございまして、その後十五年間の医学の進歩、特に精神病治療学の進歩を背景として、この現行法をながめてまいりますと、その内容においてすでに精神医学が指向する新しい事態に応じ切れなくなっております。
 そこで、私どもは数年前から新しい医学の進歩に見合った精神衛生行政を推進でき、また、わが国の精神障害者の福祉の一そうの増進を期待できるような、そういうふうな精神衛生法の改正を心から希望しておりました。ところが、先ほどのお話にもありましたように、昨年の不幸な事件がきっかけになりまして、ようやくといってもよいと思いますが、このたび精神衛生法改正の議が起こってまいりました。第一線に勤務する実際家として考える場合に、今日の時点で改正される新しい精神衛生法の基本的理念というものはどうあるべきか、それは私は次の三点であるべきだと考えます。
 第一は、今日の精神医学の進歩に見合った早期発見、早期治療からリハビリテーション、アフターケア、一貫した精神科医療体系を法の中で具体化する。第二は、精神科医療機関の整備と、先ほど浅田参考人の御発言にもございましたような病院もございますので、その質の向上並びに精神障害者の人権の保護、これが達成されるような法律でなければならないということ。第三には各地方地方で特殊な地方事情がございますから、きめのこまかい精神衛生行政が推進され得るような法でなければならぬ。
 以上の三点が基本的な理念であるべきであると思うのであります。以上のような三点が満足されるような新しい法律でございましたらば、欧米諸国に比してはなはだしく立ちおくれているといわれるわが国の精神衛生事業は大幅に発展し、精神障害者の福祉は向上し、精神障害者による社会不安は激減するとかたく信ずるものでございます。
 この観点から見ますと、精神衛生法改正に関して精神衛生審議会が昨年七月二十五日付、続けて本年一月十四日付で神田厚生大臣に提出しました答申書の内容、これは私どもにとって満足すべきものであると思うのであります。したがって、私はこの答申の線に沿って法案が作成されることを心から期待し、もちろん私以外の全国の同僚諸兄も答申に沿った法案の国会提出を大きな期待のもとに待ち望んでいることと存じます。
 ところで提案されました法律案を拝見いたしますと、確かに先ほどの御発言にもございましたように、現行法と比較してみれば前進した一面もございます。しかしながら、答申書が最も重点を償いた幾つかの面で、それは全く採用されていない。卒直に申して私は日常接しておる患者とその家族のために、あるいはまたわが国の精神衛生事業のために不満の念を表明せざるを得ないのであります。
 以下その点を具体的に申し述べます。
 まず先ほど申し述べました第一点、つまり一貫した精神科医療体系の確立は慢性化しやすい精神病の効率的あるいは経済的な医療保護のために欠くべからざる医療の体系であります。諸外国においてはすでに軌道に乗った常識的なものであります。この点に関しまして精神衛生審議会は昨年七月二十五日付の答申書の中に、精神障害者の社会復帰の促進の項で、精神障害者の社会復帰を目的として精神病院と地域社会をつなぐ中間のいわば橋渡しの役目を果たす医療機関、リハビリテーション医療施設の設置の必要性を強調しておりまして、これによって精神病院のベッドの回転能事を上げ、その数の絶対的不足をカバーして、あわせて病気の再発を予防することを期しておるのでありますが、このことがこのたびの法案ではゼロ回答になっておりまして、一貫した医療体系の最も重要な点において穴があいておるのであります。私ども実際家をいたく失望させました点はここでございます。私どもの経験からして、また諸外国の経験からも、いきなり病院から患者を実際の社会に出すよりも、緩衝地帯としてそのようなリハビリテーションのための医療施設を設けるほうが、はるかに患者の社会復帰を助け、その再発を防止できるものであることを重ねて申し上げて、精神科医療の一貫性の重要性について委員の皆様方の御理解を得たく存じます。これに関連いたしまして答申書に打ち出されておりました職親制度も採用されておりません。
 次に、一貫性のある医療の中で重要な役割りを果たすと期待される精神衛生センターについて申しますと、これが設置はこの法案では都道府県に義務づけられていないのであります。現行法の精神衛生相談所も、その設置は義務づけられておりません。そのために独立した施設として現在精神衛生相談所を持つ都道府県は、あたかも暁天の星のように、まことにりょうりょうたるものであります。この現状から見ましても、新しい精神衛生センターの設置は当然義務制にして、行政のきめをこまかくすべきではないでしょうか。
 次に、第二点の精神科医療機関の整備、質の向上、患者の人権の擁護の達成につい申し上げます。
 ここでまず精神科医療機関の整備について申しますと、今日精神病床の絶対数の不足にからんで、精神障害者の野放し云々ということが広くマスコミの中で問題にされております。わが国の精神衛生行政立法としては、明治三十三年に精神病者監護法が制定されまして、続いて大正八年に精神病院法が制定され、この二つの法律は昭和二十五年の現行精神衛生法制定までその命脈を保っておったのであります。この大正八年の精神病院法によって、主務大臣は都道府県に公立精神病院の設置を命ずることができるようになり、かくして公立精神病院設立の道が開けたのであります。しかし、公立精神病院の設置は遅々として進まなかったのであります。大正十年、第四十四回帝国議会におきまして、精神病院設立に関する建議案が提出されて、公立精神病院の設立が強く要望されました。現行の精神衛生法では、都道府県の精神病院設置は義務規定に一応はなっておりますけれども、ただし書きがついておりまして、その設置を延期できることになっておりますので、今日でさえ単独の精神病院を持たない県が存在し、わが国の精神衛生行政上の隘路をなしておるのであります。したがって、新しい法律ではそのただし書きを削り、都道府県の公立精神上病院設立義務を明確にして、積極的に精神衛生行政を進めようとする国の意思を明らかにすべきではないかと考える次第であります。
 次に、医療内容の質の向上、患者の人権の保護につきましては、精神衛生審議会は慎重審議の結果、これを達成するがために、新たに精神衛生医という資格を定め、精神病院の管理者はこの資格を持つ者がこれに当たるという答申を出しております。病院の良心的な運営、患者の人権にそごがないようにという配慮からでございます。この制度もこのたびの法案では全く問題にされないのでありまして、私どもが最も遺憾の意を表明しなければならない点でございます。
 次に、精神障害者に対する医療保障について申し上げます。
 この点につきましては、先ほど来の参考人のお話のとおり通院医療費の一部公費負担制度が新設されまして、一歩前進が見られます。しかし実情は、一昨年度の厚生省による全国精神衛生実態調査の結果からも見られますように、精神障害者の発病率は貧しい社会層に多いのであります。もっぱら経済的の理由から徹底した医療を加えられないままに入院治療を断念しなければならない例も数多く見られますことと、精神病の特殊性もあわせ考えて、答申にもございますように、入院医療費の一部の公費負担制度について格段の御配慮をお願いいたしたいわけでございます。
 次に、各地方でその特殊事情に応じた精神衛生行政の推進のために地方精神衛生審議会を設置すべきであるということでございますが、これはいままでの参考人もおっしゃいましたから省きます。私も全く同意見でございます。
 以上、私は精神衛生審議会の答申に盛られておりながらこの法案に採用されなかった事項のおもなものについて私見を申し述べましたが、ここに一点だけ精神科医として、法律にうたわれている字句について平素から釈然としない事項について意見を述べたいと思います。
 それは、現行法、同じく改正法案の第二十九条、すなわち知事による入院措置のところで、強制入院の条件としまして「精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認めたとき」という表現がございます。精神衛生鑑定医はこのようなおそれの有無を鑑定しなければならないことになっておりますが、これは精神医学的な症状ではなくて、症状による二次的な結果であり、しかも他の外部的環境、条件によって左右されるものであり、きわめて困難な課題を精神衛生鑑定医にしいているものであります。このような診察の結果による推測にとどまるような不確定な条件だけで強制入院という人権の制限を行なうことはきわめて重要な問題であります。外国の例を見ますと、たとえばイギリスの法規では本人の保護、他人の安全のためにとして強制入院の目的をうたってございます。このように強制入院の目的をうたったほうが合理的であり、実際的であるように思います。したがって、知事による入院措置の条件については今後検討の余地が残っておると考えます。
 先ほど私は精神障害者のリハビリテーション医療施設のことについて申し上げました。精神病患者に対する医学的リハビリテーションとして、作業療法が精神病治療の一環として行なわれて、効果をあげておるのでございますけれども、この精神障害者の作業療法に従事する専門技術者の資格制度なりあるいは組織的な養成訓練はこの際特に必要と考えます。いわゆるPT、OTの制度の立案に参画いたしました一人といたしまして、今回の国会に提案されております理学療法士及び作業療法士法をすみやかに御制定いただくことをあわせてお願いいたします。
 以上るる申し上げましたけれども、どうか私どもの意のあるところをおくみ取りいただいて、精神衛生審議会の答申の線に沿った新しい近代的な前向きの精神衛生法を御制定いただきたく重ねてお願いいたす次第であります。終わります。(拍手)
○松澤委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。竹内黎一君。
○竹内委員 参考人の方々には、非常に有益なる意見を伺わせていただきまして、まずもって感謝を申し上げます。そこで私、精神衛生には全くしろうとでございまして、あるいはとっぴもない質問をするかもしれませんが、その点はお許しをいただきまして、まず秋元参考人及び江副参考人にお尋ねしたいと思います。
 私ども少しく精神衛生の本を読みまして、特にその取り扱いがむずかしいと思うのは、いわゆる精神病症質者の特に反社会性と申しますか、犯罪を犯したりあるいは犯しやすい、そういった方々の取り扱いが非常にむずかしいと考えるわけでございます。いわゆる精神衛生審議会の答申の中にも、特殊な病院を考えろ、こういうふうにも書いてありますが、社会保安的な見地からと人権保護的な見地からの両方の調和というものをどうやったらいいのか、こういう点について何かお聞かせ願えれば幸いだと思います。
○秋元参考人 いま竹内委員からたいへん重要な問題のお話がございましたが、これは精神衛生法についての審議会の審議でもたびたび問題になりました。結局、精神病質の取り扱いにつきましては、一方では犯罪を犯した者、そういう者につきましては、いま法務省を中心といたしまして刑法改正が審議されております。そこで、そうした者につきましては、保安処分といったような形で、ちょうど刑務所とそれから病院の中間のようなものでも結局刑務所では期間がきまっておりまして、その間刑務所で取り扱います。そして病的な徴候のあります者は、刑務所の中にあります特殊な医療刑務所でいたしますが、このほうでは刑期が済みますと出てしまう。これではいけないというので、不定期で、やはりそういう点では症状とにらみ合わせまして処置をいたしますが、その場合には、しかし普通の病院と異なりまして、やはり犯罪性の危険があるということで、その処遇は一般精神障害と区別して、かなり厳重な拘束をいたすというふうなことが必要になってまいりますので、そういったようなものはぜひ国として考えなければなりません。そういうことで、精神衛生審議会でも考えまして、これを特殊の施設として設けるべきであるというふうに答申いたしてございますけれども、現在のところでは、こういうふうな施設については、まだ刑法の改正がございませんために、これがその所管につきまして、法務省と厚生省と、このいずれに属するかというふうなことがなかなか問題になるらしいのでありまして、そういう問題と一緒に、この問題は今後処理されるということで、現在非常に重要な問題でありますにもかかわらず見送りになっております。ただし、犯罪性のない者につきましては、これは現存一般の病院で取り扱っております。問題は、そうした犯罪を犯す以前の精神病質をどうしてキャッチするかというところが非常に問題であります。これにつきましても、非常に狭いところで、地域的な保健所などが中心になって、そうしてその地域内の、まだ犯罪までいかないいろいろな問題を起こすケースについて、十分に指導するという体制ができることによって、少なくとも精神病質者によりますところのいろいろな犯罪行動はそれによって未然に防ぐ。学校におります時期とかあるいは職域におります−−たいてい精神病質者というのはそういうところで問題があるわけです。それがそのままになっているわけです。そういう場合に、そういう病院じゃない、もっと以前の、社会生活の状態において指導するという体制が必要だと思います。
○江副参考人 大体のところはいま秋元参考人のおっしゃったとおりでありますけれども、精神病質者、これは病気じゃございません。特に犯罪傾向の多いそういう精神病質者は、現在のところはわれわれのような病院に入院しておりますけれども、そのような者の大多数の者は、狭い意味の医学的な治療の対象になりません。精神病質者にもいろいろ種類がございまして、みずからが悩む者は狭い意味の医学の対象になりますけれども、他を悩ませるという犯罪傾向のある精神病質者は、ただ単に病院に置いておいて、医者と看護婦だけの力によってこれを治療していくというようなことはできない、そういうところで、医者、看護婦といった医療職員だけじゃなくて、もっと広般な職域の人と協力して、この方々を何とか更生させるべく努力をしなければいけないのじゃないか、そういうふうに考えます。
○竹内委員 引き続き江副参考人にお願いいたします。
 最近、いわゆる精神障害者の中でも特に脳器質性障害の者がふえてきたということを承るのですが、そういった実態及びこれに対する有効なる治療方法はあるのかないのかということについてお聞かせをいただきたいと思います。
  〔委員長退席、小沢(辰)委員長代理着席〕
○江副参考人 お答え申し上げます。
 脳器質的精神障害と申しますと、いままではおもに脳炎のあとの後遺症でありますとか、たとえば狂犬病予防ワクチンをやったあとの後遺症。しかし現在では国民の平均余命が非常に長くなっておりますから、老人の数がふえております。老人性の、たとえば脳動脈硬化症があって、そこに脳出血が起こるというふうなこともございます。それから交通災害、これによる脳損傷の結果起こってくる精神障害、こういうふうなものの数というものが非常にふえてきておる。私どもの病院でもまさにそのとおりであります。これに対する治療ということでございますけれども、何分老人性のものは、これはもう自然の成り行きでございまして、これに対しては積極的な治療と申しますよりは、医学的な看護というふうなほうに重きを置かれるのではないかと思います。それからまた交通災害の面に対しては若い人もおりますから、これについてはいろいろ積極的な治療の方法があるのではないか、そういうふうに考えます。
○竹内委員 次に秋元先生に。先ほどお話のありました精神障害者の定義でございますが、精神衛生審議会の答申は神経症を加えるべきであるというはっきりした書き方をしておるように私ども読むわけです。ところが、先生方のほうはそうではなくて、精神的の能力、行動の異常で、精神医学的の指導云々というふうなぐあいになっておる。精神衛生審議会もかなり権威ある機関だろうと思うのですが、やはり神経症というのじゃなくて、こういうぐあいな規定をどうしてもしなければならぬという必要があるのかどうかという第一点と、それからこういうぐあいに先生方の定義に従った場合には、いわゆる収容施設と申しますか、現在の法の規定しているところにいう精神障害者というものは、精神病医なり精神病棟でなければならぬ云々というような医療法の施行規則との関係も出てくるかと思うのですが、その辺あわせて先生のお考えを聞かしていただきたいと思います。
○秋元参考人 審議会ではいろいろ意見がありましたけれども、結論としてはやはり現存の精神衞生法が、ああいうふうに、病者とは必ずしもいえませんけれども、しかし精神病者、精神薄弱者、精神病質者など具体的な表現を使っております。ですから、それを変更するためには、やはり同じようにそういった具体的な表現を用いるべきであるということになりました。そこでいろいろ議論が出ましたけれども一番数の多い、また問題もあります神経症を取り上げました。しかし学会としましては現行法の三つ以外に加えるべきものとしては神経症以外にもあります。たとえば酒精嗜癖、これは別にお酒を飲みませんと精神的に何ともないのでありますけれども、お酒を切れない。そのために非常に本人も困る――ということはありませんが、とにかく家族は困る。飲酒習慣からどうしても自分が抜け切れない。そういうのはやはり適正医療で適切な措置を講じて、一種の強制を加えてそういう習慣から脱却させなければいけませんが、これは精神病ではないわけです。こういうものもありますし、それからてんかんで、精神障害はない。発作以外には全く普通で働き得る、そういうものの処置も必要である。いろいろそういうものがございます。また子供などでは精神障害というところまでいかない、いろいろな問題児童がありますが、そういったものもすべてやはりこの法が対象とすべきであるという見解を持っておりますから、そういう解釈のもとに神経症を意味するし、それらを全体的に包括する非常に広い表現を使おうということで、その他の精神能力の障害及び行動異常であって、精神医学的な治療保護を必要とする者というふうに定義しておるわけであります。
 竹内委員のお話しの問題で、第二の問題としては、そういうふうに精神障害だといたしますと、そうした範囲の者は医療法で規定されているように、みんな特定の精神病舎の中に押し込めなくちゃならぬじゃないかということがあるわけですね。これにつきましては、そういうふうな定義の拡大が行なわれますと、並行して、医療法あるいは精神衛生法を改正いたしまして、現在のように、精神障害者であればこれはもう特定のところへ入れなくちゃならぬという規定を改めることを条件として定義しておるわけであります。
○竹内委員 それから、これは江副さんのほうが適当かと思うのですが、御承知のように、今回の改正案によりまして、緊急措置入院という制度ができたわけでございます。これは時間を限って、四十八時間ということに原案ではなっております。ところが、精神衛生審議会の答申ではたしか十日間であったというように思うのであります。おそらく十日が四十八時間に縮まった理由というのは、むしろ人権保護的な考え方が強く働いたんじゃないか、これは私の想像ですが、しかし、何か諸外国の例を見ても――十日間程度云々というのが精神衛生審議会の書き方なわけでございまして、私どもは実際問題として土曜、日曜といった日にぶつかった場合に、四十八時間以内に処理し切れるかどうかというのは、私はいささか疑問を持つものですが、その点、実務をお扱いになってみてどういう感じをお持ちか、お聞かせ願いたいと思います。
○江副参考人 御意見のとおりだと思います。私も四十八時間では、祭日、土曜、日曜、ゴールデンウイークなどにかかりましたら、とても処理し切れないんじゃないかと思います。
○竹内委員 終わります。
○小沢(辰)委員長代理 滝井義高君。
○滝井委員 今度の精神衛生法の一部を改正する法律案を通読してみますと、医学的な医療立法というよりか、警察官職務執行法的な、公安立法的な色彩が非常に強いという感じがするわけです。これはあるいはライシャワー事件とか、名古屋の発砲事件等が契機となってこういう法律ができたから、そういう色めがねで私が見ておるかとも思うのですが、これは先生方がどういうお感じを持っているのか、ひとつ学者のほうの秋元先生と、日本医師会の阿部さんと、ジャーナリストの西日本新聞の浅田さん、三者にお聞かせ願いたいと思います。
○秋元参考人 私自身は、今度の改正案はそれほど強くそういった社会公安上の見地を打ち出しているとは思いません。確かに、たとえば通報制度を拡張したということ、そういうところではそのような見方も成り立ちます。しかしまた一面、そのようないろいろな法律に関連のある問題を起こした場合に、それが早い時期に医療のほうに引き寄せられる、連れてこられるという点では、何かそのような処置も必要であって、これは結局もっぱら運用にかかるところが非常に多いんじゃないかということで、運用についての配慮、これによってそういう点が防げるんじゃないか、そのように私自身は考えております。
○阿部参考人 ただいま滝井先生の御指摘になりましたとおり、公安の色彩が、ちょっと見ると相当強く出ております。精神衛生法本来の目的というのは、結局こういうところでなしに、国民の精神的健康の保持及び向上、こういうことが主体となっているのでありまして、やはり自傷他害という問題が出てまいりましたので、これに関連をして公安的な処置が出てまいったのでございまして、そういう感じもないわけではございませんということをお答え申し上げます。
○浅田参考人 私は社会保安上の要請があることは否定できないと思います。しかし、これを最小限度にとどめたいというのが私の考えでございまして、それでは今度の改正案ではどうかということになりますが、この程度はやむを得ないのではないかという気がいたします。それにつきましても、私は、精神障害者というものは社会的な弱者でございまして、この社会的な弱者である精神障害者の医療保護につとめるということがやはり先行しなくてはいけない、こういうふうに考えるわけでございまして、その意味からも、これだけの社会保安上の要請がこの精神衛生法の改正にあたって取り入れられました以上は、私、先ほど申し上げましたように、医療保障についてもなるべく早い機会にこれを拡充強化していただきたい、こういうふうに思うものでございます。
○滝井委員 私が公安的な立場ということは、すでに先生方が御指摘になったように、たとえば一般患者の公費負担の二分の一についても、これは義務規定でないわけですね。結核予防法におけると同じように、その特定の県の知事がこういう結核対策なり精神病対策に非常に熱意を持っている知事だと、二分の一の国が負担をしたものの二分の一だけは県は当然持たなければならぬことになるわけだから、持つことになる。ところが知事がそれをやらなければ、これは国は出さなくてもいいわけですから、したがって、知事が熱心であるところは精神衛生対策は進むけれども、そうでないところは進まないわけです。これはもう過去において結核予防法でいやというほど経験したわけです。いまも経験しているわけです。義務規定でないから。それから精神衛生センターなども御指摘のように義務設置ではないわけです。設置することができるというので、やろうとやるまいとその県の熱意次第である、こういうことになる。そうしますと、重要な治療の面も、二分の一が義務でなくて任意的なものであり、それも、しかも六カ月の短期のものである。精神衛生センターもない、そうして症状的にいうと、自傷他書というような、松沢病院の江副先生の言われるような精神病の症状でない、しかもそれも疑いがあるというようなことで、警察官職務執行法的なもので一挙に強制的に入院させていく、解除するときはだれの意見も聞かずに、知事がかってにやるのだ、こういうことになると、へまをするとわれわれのような者も、健康もまた一種の病気なり、――これは式場隆三郎先先が言ったのだけれども、これもさいぜんの御意見のようにノイローゼまで加えますと、いまのような騒音と悪臭とそうして消費ブームと過当な競争の中でやっていると、だれでも二、三日睡眠不足をして激しい社会に出ていくとノイローゼになりがちなんです。そうすると、それはやられる可能性も出てくる、非常に極端な言い方をすると。昔、治安維持法があるときには、酒をちょっと飲んでおっても全部泥酔だということでやられたわけです。こういう形ですでに千葉の病院でもあったように、家督相続をするときに、中山先生の弟子がちょっと診断書をやったというような問題さえ起こってきている。そこで非常に私はこの点は重大だと思うのです。初めはおまわりさんが戸別訪問をして、そして疑わしいものがあれば通報してもいいようなところまでいこうとしておったわけですわね。そういう点がありますものですから、非常にこの立法というのは精神病者という、いま御指摘のような弱者についての手厚いものがなくて、そうして自傷他書というような客観性のないようなもので、疑いだけでやる。それは明らかに疑いがあるとかなんとかというのがついておればいいけれども、明らかにとかなんとかついておる条文はたった一つしかないです。全部疑いですね。こういう点は、私たちの法案を審議するにあたって、もう少し諸先生方は大胆率直に指摘しておく必要があるのじゃないかという感じがするのです。へますると、逆に精神科の医者がそういう疑いを持たれる可能性さえ出るということなんです。いまはそういう世の中なんですよ。だから、これを読んでみて、こういう立法はもう少しシビアーなものにしておかぬといかぬのじゃないかという感じがするのです。非常に底抜けが多いですよ。まあ、いまずいぶん底抜けを指摘してもらいましたけれども、全く私同感なところが多いが、ただ、いまのような点についての強調が少し足らなかったような感じがするんじゃないか。先生方の考えが、私は率直に言って、むしろ甘いのではないかという感じがするのですよ。
 それから、浅田さんが御指摘になりました知事の措置解除権において、あらかじめその精神病院なり指定病院の管理者の意見を聞くという場合に、その管理者は自分のところに入院せしめておるのだから、これは反対するだろう。これは私は一つの盲点をついた点だと思うのです。その場合に地方衛生審議会というのはできていませんから、知事が措置入院をさした場合にも、当然料金は知事が払わなければならぬと思うのです。あるいは保護者なり患者が払う能力があればそれから取るでしょうが……。その場合に、地方衛生審議会がないのですから、この精神衛生診査協議会がかわりの役割りを演じたらどうだという考えを――この立法だけを読んで、何かかわり得るものをつくるとすれば、そういうもので代替する以外にないのじゃないかという感じがするのです。その点についての御意見はどうでしょう。
○浅田参考人 私は、精神衛生審議会についての構想というものは、単にそういうものにとどまるものではない、もっと大きな役割りがこれには期待されておると思います。といたしますと、やはりここで精神衛生審議会を地方にも設けるということをぜひやってほしい、そういうふうに思うのでございます。
○滝井委員 それではこれは修正をするよりほかにないようですから、よくわかりました。
 それで、他の秋元先生も、それから松沢病院の江副先生もそういうことでよろしゅうございましょうか。
○秋元参考人 先ほど御指摘になりました、つまりうっかり妙なことになって、あいつはおかしいというようなことで緊急入院させられては困るということですけれども、結局、この精神障害に対する対策というのは、医療というプリンシプルと、それから人権保護ということ、社会の危険を思うということ、この三つの要件がからみ合っているので、そこでその一つだけを満足させようとすると、あとのほうに波及するということじゃないかと思うのです。そこで、できるだけ早期発見ということを言えば、これはちょっと怪しいぞというようなことで見て、そしてそれを処置するということが必要なんです。だけれども、そうなると、その場合に本人が、いやわしは何ともないと言って、がんばっているのを見ようとすれば、そこである程度拘束が必要になるというふうなことになってくる。一体どっちがその本人のためかというようなこともあります。しかし、その場合に、やはり少なくともいま社会保安というものを除きまして、人権の問題と医療の問題とを考えた場合に、昔はそこに警察権などが入ってきまして、人権の名をかりて、そこに政治的なものが加わるとか、警察が関与するとかいうことがあったと思いますけれども、現在ではやはり純粋な医療的な見地からその問題を考えるようになりましたし、またそうでなければいけないと思います。そのために一番肝心なことは、やはり医者の目ですね。つまり医者の水準というものが高まらなければいけないわけです。いいかげんな診断でもってこの処置をするということであると、いま御指摘のような問題が起こります。そこで、きょうの参考人としての意見の中でも申しましたように、精神障害につきましては、これはほかの方とは違ったような考え方がございますわけで、その資格を規定する、そういう資格を持った者がそういう人権と医療との兼ね合いに対して判断を下すというようなことにいたしませんと、その人権は守れないというふうに考えます。
 それから地方衛生審議会につきましては、これはやはり審査会と全然別のものであって、地域別な精神衛生の推進センターとして、そういうエコノミカルなことだけでない、もっと大所からの施策を考える機関がぜひ必要だと考えております。
○滝井委員 あと二点ですが、一つは、精神鑑定医の資格の点です。現行法はさいぜんから御指摘になったように三年以上ということになっておるわけですが、答申等においては、行動の制限をやるし、制限する病院の管理者ともなる、こういう点で五年以上だ、こういうことです。これでは医療制度の根本に関連する専門医制度との関連もあるので、もう少し慎重にやってもらわなければならぬ。こういう点では、参考人の日本医師会側の御意見と秋元先生の御意見等とは幾ぶんニュアンスを異にしておるわけですね。いまの意見にもありましたように、やはり健康もまた一種の病気なりで、精神病者でない人が精神病と間違えられるようなことがあっては困る。探偵小説にはそんなことがよくあるのですが、そのためには鑑定医というものがしつかりしておらなければならぬという点が非常に問題なわけなんです。そのことが同時に、人権と医療と社会秩序、この三つがうまく調和を得ることになる。この点に対する考え方、三年と五年という二年の違いがそれほど重大であるかどうかはなお問題があるところでございますけれども、基本的なものの考え方としては、やはり学会の意見というか、精神衛生審議会の意見と、日本医師会の現場を担当する医療の団体との間の意見の調整を必要とするところだと思うのです。われわれ国会としてもその点の調整をやはりしてもらわなければいかぬ。一体両者でこの点に対する突っ込んだ話し合いでもおやりになったことがあるのかどうか、それとも、話し合いをしたけれども、まとまらないままで、とりあえず現状のままでいってなおこれは検討しようということになるのか、この点、ひとつ率直な御意見を阿部先生なり秋元先生、両者からお聞かせを願いたいと思います。
○阿部参考人 最初に私からお答え申し上げますが、この鑑定医制度三年、それからこれを精神衛生医にした場合五年、こういうのも一応わかるのでございますが、その結果におきまして、やはり一つの資格ということになりますと問題点がまた大きくなると思います。なぜと申しますと、現在医療制度におきましては専門医制度というものはございません。そこでこういうものが精神科だけにおいて一足飛びに出るということになりますと、やはり少し独走するきらいがあるのじゃないか、したがいまして、医療制度全般から見まして納得し得るような線にいけばいいのでございますけれども、これも将来のことでございまして、現在におきましては専門医制度あるいは専門医制度に類するものはございませんことを、はっきり申し上げておきたいと思います。
○秋元参考人 私どもの意見は、先ほど申しましたように、精神衛生医は専門医とは違うという見地に立っております。これはたとえば専門医と申しますのは、一般的にその対象が規定されております。つまり精神科の専門医は精神障害一般を対象とするということになりますが、精神衛生医は、行動の制限を必要とするようなそういう精神障害について、それを取り扱う資格があるということでございます。したがって、行動の制限を必要としないような場合には、必ずしもそういう資格がなくてもできるというふうなことになるわけでございます。そういう意味で、それがちょうど優生保護法の指定医ですか、そういうものに近いものであるかと思います。
 それから、この問題については、正式に医師会側の御意見を伺ったことやお話ししたことは今日までございませんが、日医の阿部副会長が審議会の委員の一人としてお加わりになっておったので、そこで審議会としては、日本法師会の意見が阿部委員によって代表されているというふうに考えております。したがって、医師会がこれを専門医としてお考えになるというふうなことは、私どもは審議会としてはおそらくそういうふうに解釈していなかったのじゃないかというふうに思います。
○滝井委員 この鑑定医を専門医と見るか、それとも優生保護法の指定医的な軽いもの――軽くはないがそういう半専門医的なものと見るかということについて、幾ぶん意見の相違があるようです。これは私たちとしては、非常に重要な、今後の精神衛生行政を推進する上のいわばかなめに当たるところだと思うのです。これは早急に学会とそれから医師会、専門団体との間に意思の調整をしていただいて、そして、できれば早い機会にこの点をきちっとさしていただきたいと思うのです。これはまとまらぬうちにやってもトラブルを起こすばかりですからやっていただきたい。
 もう一つ、訪問指導の問題です。諮問指導をする場合に、現行法においては、医師とそれから学校教育法に基づく大学において社会福祉に関する科目を修めて卒業した者で、精神衛生に関する知識及び経験を有する者で政令で資格を定めた者が、訪問をすることができるわけです。現在保健婦その他が相当精神病者なり結核患者の家庭訪問を現実においてやっているわけです。この保健婦の立場というものを、現実にやられておるその訪問を、法的に一体どう見たらいいのかということです。
 それからもう一つ、立ったついでに、これで終わりますが、早期発見、早期治療ということはあるけれども、そういう精神薄弱や精神病者が先天的に生まれてくるという問題についても、昨年なり今年にかけての答申というものは、何か具体的にされていないですね。アルコール中毒から精神薄弱の者が生まれてくるとかというような、何かそういう予防的な側面に対する強調というものがどうして行なわれなかったのだろうか。それはもう母子保健か何かに譲って、精神衛生は関知するところでないという立場をとられておるのか。御存じのとおり、最近、たとえば炭鉱地帯において精神薄弱の子供が非常にふえている、特殊学級をつくらなければならぬという事態が起こっておるわけです。閉山のために人心荒廃、こういう社会的な環境の中に生まれてくる子供というのが、異常な精神の持ち主になっている、こういうことで、老人とか子供に対する特殊の施設をつくれということは、昨年のあの答申の中には、一つ出ているのですね。ところが、それらのものが起こってくる予防的なものについては、何も触れていないということは、もうこれはどこか他のもので触れることを申し合わせをしておるのかどうか、この二点について、どの先年でもけっこうですから、ひとつ……。
○秋元参考人 確かに予防という見地は、これは精神衛生法として非常に車祝すべき点でありますけれども、今度の改正法案にもその点が強調されていないことは、事実でございます。そういう見地から、精神衛生法の目的を表現しております第一条が、そういう点で予防を尊重していないということを学会としては指摘いたしまして、その表現を変えるようにということを言っておりましたけれども、これは審議会ではこれを審議する余裕がございませんで、目的はそのままになっております。しかし、目的だけで規定するのでは不十分であって、法の中にそれを取り込むべきでありますけれども、現在精神障害、特に先天的な障害の発生につきましての具体的な施策は、まだこのような発生条件の科学的な研究というふうなものが不十分でありますために、これを具体的な方法として表現する、少なくとも法律に盛るというふうなことは、まだ時期尚早ではないかと思いますので、学会としては、こういった予防についての問題は、国立の精神衛生研究所の研究面を充足すべきであるということを強く主張しております。このような研究面につきましては、私どもはかねてから地方の精神衛生センターでございますね、これを取り上ぐべきである。たとえば、九州などにいま起こっております三池炭鉱その他の廃鉱になりましたところで、いろいろそういう問題が起こりますけれども、そういう地域的な問題は、やはり地域的な地方の精神衛生センターで取り扱わせるということでありまして、研究面の充足というものを学会で特にこの法案で盛るように言っておりますが、遺憾ながら、精神衛生研究所、精神衛生センターは、行政に直結するといったようなことが実際でありまして、その基本的な研究、方策については、どうも第二義的になっているという点がございます。これはやはり今後精神衛生法の中にこういう研究面の充足、これを取り上げるべきではないかという点を学会としては考えまして、こういう点非常に大事な問題でありますので、今後の改正においてこの問題を考えたいというふうに考えております。
 それから、現在そういう精神医学的なソシアルワークをやっている専門家が少ないのでございまして、おそらく当分は、やはり現在ほかの業務をやりながら、かたわら精神衛生の仕事をやっているような方々を、何らかの方法で急速に講習などをやりまして、そしてそういう方々をそういう任務に向けるようなことが必要ではないか。したがって、具体的にはそういう専門的ないまの社会福祉大学であるとか、あるいは東大にできました保健学科などで養成されます専門家ができますまでは、現在おります保健婦の方々に、そういう方面に興味を持つ方がきっとあると思いますから、そういう方々をこちらに向けるというふうなことになるのではないかと考えております。
○小沢(辰)委員長代理 本島百合子君。
○本島委員 時間がございませんので、たくさんのことをお聞きしたいと思っておりましたが、一つだけ松沢病院の院長さんにお尋ねいたします。
 私、都議会のときにあそこを視察させていただきまして、非常に経営のつらさというものを、身をもって体験したような気がいたしておりましたが、その後こういう種類の病院があまり建たない。町でやっていらっしゃる病院等におきましても、相当の苦労をされておるということはよくわかるのです。先ほどおっしゃった早期発見と治療と社会復帰、こう言われたのですが、今日東京都内を見ただけでも、かりにこの人は気候の変わり目等、あるいは何かの衝動を受けたときには危険であるとわかっていても、そのことの入院をお願いしてもできないわけなんです。そこで今回の改正では大きく期待を持たれたわけでありますが、先ほど言われるように、絶対数不足という状態の中では、この改正によってどの程度に人が救われていくかということは、非常に疑問だと思うのです。特に、全体数を忘れましたが、現在入院を必要とする者で入院することができない者の数五十七万人と言われておるのですね。病床が十五万床、こう言っておりますが、こういうことでこれは凶暴性とかあるいは危険性がある、他人に危害を加えるということが明らかになっておると思うのです。それですら五十七万人が放置されておる。こういう状態の中で、どうやれば――もちろん国の予算がないから、県に一カ所もない場所もあるという先ほど参考人のお話でございますが、民間にいたしましても、こういう人々を早く治療をするために入院措置をとってやるか、こういうことについての御見解を聞きたいと思うのです。民間であろうともどうにかしてあげれば、こういうものの病院はもっとでき上がっていくんじゃないか、あるいは公立の場合はもちろん、これは国立にしても県にしても当然のことですが、それだけでは現在凶暴性だといわれる五十七万が野放しになっておるというのですから、ちょっとやそっとじゃ数が間に合わないのです。ですから、そういう点についての何か御施策があるかどうか、こういう点を承らしていただいて、私この質問だけにいたしますので、ほかの先生方には今後ともこういう精神病の問題については、特段の御意見、あるいはまた御活動を願って、この絶対数不足についての御協力を私はお願いしたいと思いまして、このことだけを御質問いたします。
○江副参考人 御指摘のとおり、いま精神病床が非常に少ない。一昨年度の厚生省の精神衛生実態調査の結果によりますと、大体精神病院に入院させなければいけない患者さんというものは、はっきりした記憶ございませんが、二十七万じゃなかったかと思います。その他の施設でやっていただかなくちゃいけないのが幾ら幾ら。精神病院じゃなくてはいけないのが二十七万、現在は十五万足らずしか日本全国にございません。それで算術計算でいきますと、あと十二万足らないということになってまいります。しかし私考えますのには、この十二万もの病床数を用意するということは、国の負担においても、あるいはスタッフの点においてもたいへんなことだろうと思います。
 ところが一方イギリスとかあるいはアメリカ合衆国とかいうふうに、比較的早期発見からリハビリテーション、アフターケアまでの施設が整っておる州では、精神病院に入院している方々の数が徐々に減ってきておるわけであります。これは一体どうしてそう減るものか。それはやはりわが国のように精神障害者をお世話するのが精神病院だけであって、あとは何にも施設がない。これでは精神病院にどんどんと患者がたまる。ベッドの回転率も悪くなる。しかし、イギリスではそういうふうな一貫した体系ができて行政も非常にうまくいっておりますから、数年の経過を見て、人口一万当たり二十床くらいの割合でベッドを減らそうじゃないかという議も起こっておると聞いております。
 こういうふうに精神病院じゃなくて、そのほかのリハビリテーションのための施設でありますとか、それからアフターケアのシステムであるとか、それから職親制度であるとか、そういうものが整備されたならば、これは私見でございますが、
  〔小沢(辰)委員長代理退席、委員長着席〕
日本全体として二十万床もベッドがあれば何とかしのいでいけるのじゃないか。ただ現在のように精神病院だけつくって、あとは何もつくらないということでは、これは五十万あっても六十万あっても足りないのじゃないか、そういうふうに思っております。
○本島委員 どうもありがとうございました。
○松澤委員長 河野正君。
○河野(正)委員 すでに何人かの委員によりまして、このたびの改正法案に対しまする問題点が指摘をされました。できるだけ重複を避けて二、三の点についてお尋ねを申し上げ、率直な御意見を承ることによりまして、私どもも法案の改正に対しまして万全を期してまいりたい、かように考えておるのでございます。
 そこで第一にお尋ねを申し上げておきたいと思いまする点は、それはやはり精神衛生法の骨格というものは、第一条と第三条に実はあるわけでございます。そこで第一条では、この精神障害者等の医療保護、それから発生予防をはかって、そしてこの精神的健康の保持、増進につとめるということが法の目的でございます。ところが法の目的はそうでございますが、それならば一体だれが対象になるのか、それが実は第三条で受けられておるわけでございます。
 そこで、私どもも今日までいろいろ社会的に被害、たとえば昨年におきますライシャワー事件もそうでございますし、その他列車内の発砲未遂事件等いろいろございます。こういうような問題がいろいろ起こってまいりましたが、その際私どもが一番心配いたします点は、この精神障害者の中にどういう範囲のものが含まれておるのか。要するに精神障害者をつかむ際にどの範囲をつかむのか。そしてその範囲に対して第一条の目的が行使されるわけですから、そのつかみ方いかんによって、この法の目的を完全に達成するかどうかというふうな、きわめて重要なかぎがかかっておる、こういうふうに考えるわけでございます。そういう意味で、やはり第三条の定義の問題というものが非常に大きな意義を持ってまいる、私はこういうふうに考えるわけでございます。ところがこの点について学会では、それぞれ先ほどから意見が出ておりますような一つの方向というものが打ち出されてまいった。それに対しては、厚生省が非常に抵抗をいたした、こういう実情を私ども承っておるわけでございます。いずれにいたしましても、この第一条の目的を完全に達成するということが目的でございますので、その目的を達成するに際して、この対象物が欠ける点がある、そのために十二分に法の目的を達成することができぬということになるならば、何のために法を改正するのか、その改正の意義というものがなくなってくる、こういうように私は考える。そういう意味で、やはりこの精神障害者というものは一体どういうものだという点が非常に重要な意義を持ってまいると私は思いますが、これらに対して厚生省と学会あるいはまた審議会等において意見の相違があるというふうに承っておるのでございますが、この際、法改正にあたって重要な段階でもございますので、その間の関連性についてひとつ秋元参考人から率直な御意見を承りたい、かように考えます。
○秋元参考人 私はやはり精神衛生法が第一条の目的でいっておりますように、国民の精神的健康を維持向上するという機能を果たすためには、この法の対象が現行の精神衛生法で規定するような、そういう限定された三つのものであってはいけないというふうに考えます。これは学会全般の意見でもございますが、これを広げる、そして先ほど申しましたようなそういう広いものにしなければならぬというふうに考えてこれを主張してまいっておるものでございますが、この拡大によりますと、現存の法の中でいろいろなこまかい具体的な規定がございまして、たとえば先ほども問題になりましたが、そうすると精神病、精神障害、精神病質ということになると、それを収容するところは特定の場所に限られるというようなこともある。その他さまざまな具体的な条項に触れての、もっぱら技術的な観点からの反論が、この一部改正案がまとまるまでにかなりあったように聞いております。これはもっぱら技術的な問題でありまして、やはりそういう技術的な問題よりも、この法の精神を生かすという見地からこの改正案がつくられるべきであったのではないか、私自身はそう考えております。その点では、定義に関連した第三条の、この法の対象が旧態依然であるということは、はなはだ遺憾であるというふうに私は考えております。
○河野(正)委員 私ども、いろいろ書物や発表された論文を承ってまいりますと、やはり黒い部分、いわゆる精神障害者、それから白い部分は一般の健康者、そういう白い部分と黒い部分との中間に存在するようないわゆる灰色の部分、これがいま秋元先生のおっしゃいます拡大の部分でもあろうかと思いますが、やはり今日の社会悪と申しますか、社会的に起こってまいりましたいろいろな事件というものを私どもが振り返って検討いたしてまいりますと、やはりその辺に非常に大きな問題があるというような印象も強く持ってまいるわけでございます。そういう意味で秋元先生の率直な御意見を承ったわけでございます。
 その点と多少関連をいたしますが、もう一つは、先ほど浅田参考人からも御指摘がございました医療法との関連の問題もございます。医療法の第七条では、医者でない者が病院をやる場合には許可制になっておりますけれども、それも医者の管理者を置けばそれぞれ病院の経営というものが可能である。そこでいろんな弊害等も出てまいっておるわけでございまして、われわれはやはりこの医療法についても、この際再検討を加える時期というものが招来されておるのではなかろうか、こういう印象も持ってまいっておるわけでございます。その点と、特に先ほどいろいろ委員会の中で御指摘のございました精神鑑定医、あるいはまた審議会の精神衛生法との関連も出てまいるわけでございますけれども、私どもはやはり将来この医療法のあり方についてもやはり再検討を加える時期がきておるのではなかろうか、こういう感じを持ってまいっておるわけでございますが、この点についてはいかがお考え願っておりますか、秋元先生と、現場でございます阿部参考人からひとつ率直な御意見をお聞かせいただきたい、かように考えます。
○秋元参考人 これまでの精神衛生審議会の審議の過程でも、常にこの精神衛生法を改正するためには、さまざまな障害のうちで医療法に抵触するというようなことがあることのために改正案に乗らなかった点が多々あります。私も医療法は時代の進展にかなりおくれていると思います。
 これはちょっと話が変わりますが、診療科名などについても、現在の医学の進歩に応じられないような点が多々ありますが、この応じられないというのは、やはりこの診療科名をきめる手続規定が現在の医療法では非常に不完全であるというふうなこともございます。そこで私は、この精神衛生法の改正を私どもが念願しておりますような、また皆さんもそういうことをお考えになっていらっしゃるということが本日わかりましたが、そのようなことをするためには、やはりそれを制約しているところの医療法を改正することが、どうしても必要な段階になってきたのではないかということを私自身も感じております。
○阿部参考人 ただいまの河野先生の御質問でございますが、医療法の改正、これはまことにごもっともでございまして、私も先生と同じように、医療法の改正はぜひやるべきであるというふうに考えておりますが、さらにこの医療法と関連いたしまして医師法、それから医療の裏づけとなります健康保険法、これはやはり三者関連のもとに抜本的に改正をすべき段階にきている、こういうふうに考えております。
○河野(正)委員 そこで、いま秋元先生ないし阿部先生からいろいろ医療法について再検討を加える段階がきているというようなお答えをいただきました。なお阿部先生からは、医師法、健康保険法等についても検討する時期がきておるのではなかろうかというような御意見の御披瀝もあったようでございます。そこで私どもも、いろいろな制度の改善をはかります場合にしばしば感ずる点でございますけれども、今度の精神衛生法の改正におきましても、審議会では十六項目の答申が出ておりますけれども、十分尊重されなかったという経緯がございます。なおまた、この精神衛生法の改正要綱について、社会保障制度審議会におきましても諮問が行なわれましたけれども、これまた諮問が終了いたします以前において、厚生省は精神衛生法の改正成る、こういう新聞発表をいたしたという経緯もございます。このように審議会の存在価値というものが非常に軽視されておる、これは全くそのとおりでございます。そこでそのようなことでは、審議会においてはそれぞれ各界の権威者にお集まり願って真摯な御検討を願っておるわけでございますけれども、その真摯な御検討を願ったにもかかわらず、その意見が十分尊重されないということになりますと、審議会の存在価値にも影響を与えますし、またし審議会に参加されております権威者の方々、そういう方々に対しましても意欲を喪失せしめるという結果になってまいろうかと考えております。特に私どもしみじみ感じますことは、一九六三年ケネディが実はケネディ教書を議会に提案をした。これらの点につきましては長年各界の権威者を集めてその意見を尊重して、ケネディが一九六三年に精神障害者及び精薄に関する教書という形で議会に提案をした。また先ほど秋元先生の御意見にもございましたように、欧米先進諸国では精神衛生というものが非常に進歩しておる。進歩しておりますけれども、欧米におきましても進歩した上に、いま申し上げますように、大統領が教書を議会に提案する、こういうように非常に熱意を示しておるという実例があるわけでございますけれども、日本の場合には、まことに残念でございますけれども、審議会の答申というものが非常に軽視される。したがって、私は今後の審議会のあり方、これはもう精神衛生審議会そのものでもけっこうでございますけれども、そういうあり方について再検討する時期がきておるのではなかろうか、そういう気持ちも持つわけでございますので、この際、この点については秋元先生さらには浅田参考人からひとつ率直な御意見をお聞かせいただきたい、かように考えます。
○秋元参考人 精神衛生審議会としては、この種の審議会としてはかつてないような熱心さでもって一年近く審議をしたわけでございます。その結果が、先ほどお話に出ましたようなことで、いろいろそこに理由はあるにいたしましても、この答申が、結果的にはそれに至る長い努力が報われなかったというようなことになっていることは非常に遺憾に思いまして、会長名で厚生大臣にこのことをすでに申し上げてございます。私どもとしましては、やはり審議会が飾りものであっては何にもなりませんので、この審議会の意見をぜひ政府のほうで具現化するように、これが一度でできません場合には、審議会をしてこれを続いて審議せしめ、その結果を逐次実現されるように努力願いたい、そういうふうにお願いしたいと思います。
○浅田参考人 私も全く同感でございまして、審議会は飾りものないし隠れみのであってはならないと思います。さっき河野議員がおっしゃったケネディ教書でございますが、その中でケネディは、たしか私の記憶に誤りがなかったら、こういうことを言っておったと思います。減税をあえて見送っても精神障害対策の充実に力を入れる、こういうふうに言っておった。私はそれが妙に記憶に残っておるのですが、専門委員会の答申を受けた大統領がこういった受け取り方をしてくれれば、ほんとうに審議、検討する側も意欲が高まってくるということにもなると思います。したがって今後審議会のあり方につきましては十分お考えくださるようにお願い申し上げたい、こういうふうに考えます。
○河野(正)委員 精神鑑定医で一つお尋ねをしておきたいと思いますが、精神障害者を収容いたしますと、行動の自由というものを制限するとか、人権を尊重するというたてまえが、やはりこの審議の中でもいろいろ論議をされておるわけですが、いずれにいたしましても人権を制限する、そういうふうな特殊事情があるわけですから、やはり精神病院の管理者というものは質的に高度のものが求められなければならぬというようなことは、私どもも十分理解する点でございます。ただその際に、資格制限であるとかあるいは専門医制度に通ずるというような議論等も日本医師会のほうにあって、なかなかその間の調整ができないというのが、今日の現況であるかのように承っております。しかしながら、阿部先先も先ほどお答えになっておりましたように、その気持ちはわかるというようなお答えもあったようでございます。私どももやはり、これは人権の問題が伴いますし、この問題をこのまま放置するわけにはまいらぬと思います。そこですみやかにこの問題の解決をはかるべく努力が行なわれることが至当だと考えます。鑑定医の問題――審議会では精神衛生医でございますけれども、この問題の解決がなかなかむずかしいということであるとするならば、しからば、その人権問題、行動の制限問題について、どういう形でこの問題を解決するという代案というか、対策があるのかというようなことを考えるわけでございますが、その点について阿部先生のほうから適切な御見解があればこの際承っておきたい、かように考えます。
○阿部参考人 ただいまの河野先生の御質問でございますが、鑑定医制度の問題につきましては、先ほど申し上げたのでございますが、審議の過程におきましては、鑑定医は前からございましたのでそのままでございました。ただ、精神衛生医につきましては五年以上ということがつきましたが、当時は優生保護審査会という形をとり、またその指定も、厚生大臣とかあるいは県知事とかじゃなしに、医師会が独自の立場で自主性を持って指定する、こういうことならばわれわれ賛成するということを申し上げておきました。そのとき、専門医制度のお話も出たのでございますが、これは引っ込めていただいたわけでございます。ただ、先ほど専門医との関連で出てまいりましたので、私もああいう発言をあえてしたわけでございます。ただいまの御質問のような形をもちましてどういうふうに解決していくか。解決の問題といたしましては、現行法を一応見送って、資格の問題というのじゃなしに、どこまでも鑑定医、こういうわけでございますので、資格としての行動の制限というものにつきましては、これは精神科の医師の独自性にまつ、これでいいわけでございますし、またいままでそういう形をもってやっていただいているのじゃないか、こう思っておりますので、いまのところは先に見送って現行法の解釈のままで進みたい、こういう気持ちでいるわけでございます。それでおわかりいただけましたかどうか……。
○河野(正)委員 約束の瞬間がぼちぼち近づいてまいりましたので、はしょってお尋ね申し上げようと思いますが、この精神衛生法は、先ほども私が御指摘を申し上げましたように、第一条に目的がしるされておるわけですけれども、この法の真の目的を達成するためには、いままでいろいろ御意見が出てまいりましたように、早期発見、予防からリハビリテーション、アフターケア、これまでの一貫性というものが貫かれなければならぬというふうにわれわれは考えるわけでございます。この点については先ほどから松沢病院長の江副先生からいろいろ御見解の御開陳がございました。私はいま日本に一番欠けております点は、もちろんいま医療の面におきましてもいろいろ参考人から意見が出てまいりますように欠けておる面がございますが、やはりアフターケア、リハビリテーションの問題であろうかと考えます。そこでわれわれは、この精神衛生法の使命を完全に達成するためには、早期発見からリハビリテーション、社会復帰までということが一貫した方策でなければならぬ、そういう意味で今後私どももやはりアフターケア、リハビリテーションという問題について、特に力点を置いて施策の立案というものをはかっていかなければならぬ、こういう考えでおるわけでございますので、もしいろいろと当面してすぐこういう点をやったらどうだろうかというような具体的な試案等がございますればひとつお聞かせをいただきたい。
○江副参考人 このリハビリテーション及びアフターケア、特にリハビリテーション施設については、正式なものができないから、何かそのかわりにといったようなことはできないのじゃないかと思います。やはり私どもが精神衛生審議会で、このリハビリテーション施設の重要性を特に強調したにもかかわらずこれが実現しなかったのは、何かこういうことは医療法に抵触するとか、そういうふうなことでございましたが、先ほどの医療法改正の必要性はそういうところにもあると思います。ですから、一つの政策をきめるときに、そう簡単な代案というものはないと思います。このアフターケアにつきましては保健所等の要員、精神医学的なソシアルワークをやる要員の制度、それから精神病院等においてもアフターケアをやるべきであるというふうな規定でもございましたら、当然その要員が確保されるようになりますから、これもやはり医療の問題であるということになってまいりまして、すべて医療がわれわれの前に立ちはだかった大きな壁になっておりまして、どうしてもわれわれの意思が貫けない、そういうふうに感じます。
○松澤委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
 委員長として一言ごあいさつ申し上げます。
 参考人各位にはまことに長時間にわたり有意義な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。(拍手)
     ――――◇―――――
○松澤委員長 この際おはかりいたします。
 理事小宮山重四郎君より理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○松澤委員長 御異議なしと認め、さように決しました。
 これより理事の補欠選任を行ないたいと存じますが、その選任は委員長において指名するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○松澤委員長 御異議なしと認めます。よって、松山千惠子君を理事に指名いたします。
 本日は、この程度にとどめ、次会は明十八日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。
   午後五時三十三分散会