第048回国会 内閣委員会 第12号
昭和四十年三月四日(木曜日)
   午前十時五十九分開議
 出席委員
   委員長 河本 敏夫君
   理事 伊能繁次郎君 理事 佐々木義武君
   理事 辻  寛一君 理事 永山 忠則君
   理事 田口 誠治君 理事 村山 喜一君
   理事 山内  広君
      井原 岸高君    塚田  徹君
      野呂 恭一君    藤尾 正行君
      湊  徹郎君   茜ケ久保重光君
      稻村 隆一君    大出  俊君
      角屋堅次郎君    楢崎弥之助君
      受田 新吉君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 高橋  等君
        通商産業大臣  櫻内 義雄君
 出席政府委員
        検     事
        (大臣官房経理
        部長)     勝尾 鐐三君
        検     事
        (大臣官房司法
        法制調査部長) 鹽野 宜慶君
        検     事
        (民事局長)  新谷 正夫君
        法務事務官
        (矯正局長)  大澤 一郎君
        公安調査庁長官 吉河 光貞君
        通商産業事務官
        (大臣官房長) 熊谷 典文君
        通商産業事務官
        (通商局長)  山本 重信君
        特許庁長官   倉八  正君
        中小企業庁長官 中野 正一君
        中小企業庁次長 影山 衛司君
 委員外の出席者
        検     事
        (大臣官房司法
        法制調査部司法
        法制課長)   山根  治君
        検     事
        (刑事局参事
        官)      臼井 滋夫君
        専  門  員 加藤 重喜君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 法務省設置法の一部を改正する法律案(内閣提
 出第一一号)
 通商産業省設置法の一部を改正する法律案(内
 閣提出第一四号)
     ――――◇―――――
○河本委員長 これより会議を開きます。
 法務省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。
 質疑を行ないます。質疑の申し出がありますので、これを許します。山内広君。
○山内委員 まず最初に、設置法の内容について、ごく軽微なものですから事務的な御答弁でけっこうですが、今度神戸にありました鈴蘭台学園という少年院を加古川に移転いたしまして、播磨少年院ということになるわけです。そこで、私は設置法の十三条の四によりまして、別表の五というのをながめてみたわけであります。そこで非常に奇異な感じを抱いたことは、たとえば刑務所というのは全国にたいへんな数があるわけですが、全部頭に土地の名前をつけまして、何々刑務所ということになっている。少年刑務所も同じ、鑑別所も大体そうであります。ところが、少年院のこの別表の五による名前は、非常に区々にたくさんの名前が使ってある。これに対してはどういうお考えなのか。もっと具体的にはっきりお聞きしますと、いまの鈴蘭台学園というものをどうして播磨少年院と名前を変えなければならぬのか、変えなくてもいいんじゃないか、こういうように思うのですが、その辺の考え方を伺いたい。
○大澤政府委員 まず鈴蘭台学園の名前の由来でございますが、これはもと少年法の改正に伴いまして、民間の保護団体、民間施設が全部国立になりました場合に、この鈴蘭台学園も、もと民間の団体でございましたのが国立の少年院に変わって、そのまま転用いたしまして、鈴蘭台の名前をそのまま踏襲しましたので、鈴蘭台学園という名前で経営してきたわけでございます。今回この少年院が加古川市に移転しますにあたりまして、鈴蘭台というのが土地に関するものでなければ、そのままでもいいと思うのであります。鈴蘭台というのが、その辺の神戸電鉄と申しますか、電鉄沿線の住宅団地につけられました仮の通称でございまして、その場所から離れてまいりますので、やはり移転した場合、いろいろ間違いがあります。鈴蘭台駅という駅もあります。さようなことで、ある場所の名前をつけたい、かように考えまして、今回加古川市に移りますにつきまして、名称を変更したほうがいいというので変更いたしたのであります。ただ、加古川市でありますので加古川にすればいいのでありますが、すでに加古川市に少年院がありますので、古来の名称であります播磨を冠しまして、最近少年院をはっきりと少年院という名前で呼んでおりますので、播磨少年院といたしたい、かように考えております。
○山内委員 その播磨という名称を使ったのは、どういうことですか。
○大澤政府委員 通常所在地の市町村名を使うわけでございます。加古川には、すでに加古川学園というのが少年院として存在いたしております。したがいまして、その付近の地名でありますと、播磨国という古来の国の名前がありますから、播磨の名前をとったほうが適当じゃないか、かように考えたのであります。
○山内委員 大体そんな御答弁だろうと想像しておりましたが、この学園と少年院とどう違うのですか。
 それから私ちょっと時間を急いでおりますから全部一ぺんに聞いてしまいますけれども、その別表の五をごらんになればわかるとおり、医療少年院、女子学園、何々、たとえば星華学院と、学園が学院というのもあります。農芸学院、ところが今度は高原寮という名前もある。それから少年院ならいいが、少年学院というのもある。それから地名をとったのもあれば、これは非常に区々まちまちなのですが、統一されたらどうですか。
○大澤政府委員 非常にまちまちでございますが、これは先ほど申し上げましたように、それぞれ民間の少年保護団体として存在しておりましたものが、国立の少年院になりました。そのために、もとの名前を踏襲したのがかような不統一な結果になったのではないか、かように考えます。この点で、ただいま統一するという御意見もございましたが、やはり民間のそれぞれの歴史も持っておりますので、直ちに統一するということは、いろいろ問題もあろうかと思います。最近では、すべて少年院というふうに統一して、新しいものあるいは移転した際、かような方針で少年院に統一する方針でございます。
○山内委員 そういう歴史的なことがあれば、これは徐々に統一する方向で直されたらいいと思いますが、ただ、このいまの鈴蘭台学園については、ぼくいささか意見があるのです。いまのような御意見であればかえって――加古川に前にあるのも出ておりますから、私もそういう苦しいことはわかりますけれども、何も昔の地名でもないそういう播磨という封建的な国名を残して播磨少年院というより、鈴蘭台の台をとって鈴蘭学園としたらいいじゃないですか。特に精神的に弱い子供を扱っているのだから、鈴蘭などという名前は、ぼくは教える先生にとっても、スズランの花のようにきれいに育てという教育上からいっても、この看板はとるべきじゃないと思う。播磨などという古いことを考えれば、チャンバラを思い出したり、生徒自身の教育によくない。ちょうど紀元節の二月十一日へのあこがれを持っていると同じ心理ですよ。そういう気分だからこういう播磨少年院という名前を思いつくので、鈴蘭台学園の上のほうをそのまま使ったらいいと思いますが、どうですか、その辺。
○大澤政府委員 この名前は、特にさような意図でつけたのじゃないのでございます。これは名前を何としようかというので、いま現に鈴蘭台におります職員、それから大阪矯正管区等の職員等から、実は投票で何がいいかというのを選びまして、そして播磨少年院がいいという職員の意見が多うございましたので、われわれとして特に封建的な国の名前を使うという意図じゃなくして、みんなが最も通りのいい名前ということで選んだ次第でございます。さようなわけできまりましたので、趣旨を御了解いただきたいと思います。
○山内委員 そういう議論をしてもしようがありませんが、やはり情操教育も必要ですから、鈴蘭という名前なんか、私はふさわしいいい名前だと思う。それをかえって播磨などというから、子供がよく育たない、まあこれはちょっと余談になったようですが、その一点にとどめておきます。
 大臣に、せっかくお見えになりましたし、少し大きな問題でお聞きしておきたいと思います。これは直接法案には関係がないのでありますけれども、二月六日の有力な新聞は、一斉に――一斉にといって、全部かどうか見ておりませんけれども、国民の祝日法について、法務省の見解をかなり大きく取り扱っておるわけであります。その内容を見ますと、総理府から見解を求められたと書いてあります。これはこういう事実があったかどうか。
○高橋(等)政府委員 関係各省に対しまして、その省の所管する関係上、こうした祝日、祭日をふやすことにつきましてどういう支障があるかというような問題につきまして、意見があれば述べてくれ、こういうことで次官会議で話があったわけなんであります。紀元節を置くことがいいかどうかというような問題についての意見を述べろという意味ではない。私どもでは、手形の問題であるとかあるいは訴訟上のいろんな問題があるものですから、何か祝日をふやすことによってどういう支障があるのだろうということを検討したわけであります。
○山内委員 それは文書でなく、会議の申し合わせの依頼ということなんでございますか。文書でありましたか。
○高橋(等)国務大臣 詳しくは文書であったかどうかは聞いておりませんが、次官会議の席上、口頭で、次の次官会議に、何か各省で困る事情があれば、その所管に応じてひとつ意見を述べてもらいたい、こういう注文があったように聞いております。
○山内委員 その回答は文書でなされておりますか。
○高橋(等)国務大臣 文書ではいたしておりません。
○山内委員 そのことについては、いずれ総理府の関係のときにお尋ねをいたしますが、新聞の取り扱った記事は、二つの理由から法務省が時期尚早であるという見解だという発表になっておる。ところが、きのうの予算委員会でしたかおとといでしたか、法務大臣は、予算委員会で二月十一日の紀元節を支持されているようで、私は予算委員会に行っておりませんので聞きませんが、新聞で見たわけですが、この点についての御見解をもう一ぺんここで明らかにしていただきたい。
○高橋(等)国務大臣 新聞紙上で、法務省の省議か何かでそういうことできまったとか、それが大勢であるとかいうような、紀元節を慎重にやれとか反対論があったとかいうようなことがきまったという記事が実は出たので、私も驚いたのであります。その会議には私出ておりませんでしたものですから、また私が招集した会議でもなかったわけで、事情を取り調べましたところ、ほかの案件で局長会議をやった。ところが、いま申しました次官会議での話もあったものですから、事務次官から、何か法務省に関係のあることでこの休日案について支障があるようなことがないかということを相談したわけなんです。その相談が終わりましたころに、雑談的に、二人でありますが、局長級の人と次長級の人が、これはいろいろむずかしい問題もあるから、国民の世論というものをもう少し何とかしたほうがいいのじゃないかというような意見が述べられた。しかし、これは会議の目的でもなし、また二月十一日を建国日とするというようなことについて法務省が省議として意見をまとめるべき問題でもないわけなんで、そういう事情を、どういうものか新聞のほうで非常にセンセーショナルな記事として実は扱って、お騒がせをしたようなわけでございますが、真相はそういうことであって、決して法務省の意思をきめたのでもなし、法務省の多数の愚息がそこにあるというのでもないのであります。その点はひとつ誤解のないようにお願いいたします。
○山内委員 そうしますと、閣議でもって祝日を多くした場合にどういう事務的な支障があるか、それについての回答を迫られたわけですが、それについての法務省としての回答は、どういう回答をしておるのですか。
○高橋(等)国務大臣 私はその会議にも列席しておりませんし、その会議の結末を次官から話をしたわけでございますが、会議に出ておりました局長や関係者がおりますから、どういう点を詰めたのか、ここでそれから答えさすことにいたします。
○勝尾政府委員 私、経理部長でございますが、局長会議に出席をいたしておりましたので、ただいまの点御説明申し上げたいと思います。
 主として法務省の関係では、休日という表現が祝祭日の法案にあるわけでございますが、これが日曜日と休日、祝祭日が重なった場合、休日を翌日に繰り上げるという点がございます。これが手形法その他民法の関係において支障がないかどうか、その点もし支障があるならば附則で手当てをする、こういう点が問題になるわけでございますが、その点、その会議で承知いたしました総理府のほうでの法案に全部盛られておりますので、一応法務省としては支障がないという結論でございました。
○山内委員 私は、実はまだこの法案が出ておりませんから、ここで議論する時期は早いと思います。そこで全般にわたってお聞きするわけでもないし、私の意見を申し上げようとするのではなくして、法務大臣としてのお考えをぜひこの際明らかにしておいてもらいたい点があるわけです。私どもは別にたくさんのことをいまここで申し上げようとするのではなくして、いま問題になっておる二月十一日、紀元節の復活というものは、これは右翼が台頭する一つの心理的な柱になる、ささえになる、そういうことも反対の一つの理由であります。そこで、大臣は御存じになっておるとは思いますけれども、昨年もあなた方のほうの関係で右翼、左翼の取り締まりのために二百名という増員をしておるわけです。そして特に最近右翼が台頭しておるということで、これの徹底的な取り締まりをこの委員会でも要望しておるわけです。ところが、この紀元節という問題が起こると、右翼が非常にこれを利用し、台頭し、行動に出ていることは、大臣御存じだと思う。そういう意味では、あなたの法務大臣としての職責は私は非常に大事だと思う。自分がどう考える、考えない、法務省の役人が二人慎重論を言ったとか言わぬとか、そういうことでなくして、この紀元節というものがどんなに右翼に利用されておるか。あなたは国会議事堂の前に行ってごらんなさい。右翼が紀元節復活といって柱ごとに全部ビラを張って、私どもの歩く目の前を牽制しておるのです。そのほか、ことしの二月の十一日にも私の部屋にも来ております。幸い私おらぬで、男の秘書がおって早々に帰りましたけれども、こういうことのつながりを考えれば、法務省としては、法務大臣としては、当然この二月十一日の紀元節復活に反対するのがあたりまえだと思うし、そういう意味で私は新聞がセンセーショナルに取り扱ったという法務省の見解というものは、非常に高く評価する。なるほど法務省にも良心的な芽がまだ残っておる、これなら安心してまかせられると……。ところが、予算委員会の法務大臣の答弁を、私直接聞いたんでなく、さっき申しましたとおり新聞で見て、兆は非常に失望しました。この建国記念日あるいは紀元節の復活というものと右翼とのつながりをどういうふうに法務大臣はお考えになっておるか、ここで大臣として明らかにしていただきたいと思います。
○高橋(等)国務大臣 建国記念日の制定、二月十一日を記念日とするということは、国民各層の間で私は広く支持されておる、こう観察いたしております。単に右翼の一部分がそうした運動を支持しておるわけではない。また、国家的に見まして、こうしたことは私は必要であるという信念に立っております。したがって、これをやりましたから右翼が急に勢いづきまして、とにかく社会の治安を乱すというようなことは、私はそれはそう御心配をなさることは少し心配のし過ぎである、こういうふうに判断をいたしております。
○山内委員 もってのほかな大臣の答弁です。一つは国民各層の大部分が支持しているというのは、どこのどういう資料であなたはお話しになっているかわかりませんけれども、これはことしの二月の朝日の切り抜きがある。紀元節復活反対が六五%です。賛成が三一%、その他四%とちゃんと統計が出されておる。これは一部の新聞の投書の統計ですから、全部とは言いません。しかし、大臣はこういう大事なものを考える場合に、もう少し新聞の世論、学者の意見、そういうものを総合的にお調べになったらいい。最近の大きな新聞の社説、ここにはたくさん持ってきておりますけれども、こぞって慎重論を主張しておるのです。決して賛成していません。賛成しているのは、神奈川県の県知事のように、もうどうにもこうにもならぬ、がむしゃらな狂信的な年齢の古い人です。いま三十ぐらいの人、それ以下の人なら、紀元節というものは、そういうものがあるのでしょうかというくらいのものだ。内容を聞いたら全然知らないという、これは統計でもたくさん――いまここで議論の対象になりませんからその程度にとどめますけれども、それは各層全部がというが、一部の人であり、有力な人であり、年輩の、年とった人です。右翼取り締まりの任に当たられる人は、もう少し現実をひとつお調べになっていただきたい。事務的にはどうなっておりますか。二月十一日の前後に右翼がどういうふうに動いておるか。反対運動なんかもあると同時に、賛成運動は日比谷だとかいろいろなところで会合もやっております。温床になるおそれがある。右翼が全部そのものが暴力だとは私は断定はしませんけれども、いま文化人や芸能人あるいは国民こぞって集団暴力撲滅に協力して、非常に成績をあげておるじゃありませんか。こういうようにあなた方一面で取り締まりをやっておる。この温床にはどこがなっておるか。みんな右翼が温床になっておるでしょう。それが極端に走ったものが集団暴力になっておる。非常に国民に迷惑をかけておる。それをみんな国民の協力によって、あなた方撲滅しようとして成績をあげておるでしょう。こういう実態をひとつお考えにならなければいかぬと思う。
○高橋(等)国務大臣 私が国民の大多数が賛成だと申しましたことにつきまして、いま新聞の投書等についての御意見が述べられておるのでありますが、二月の六日付の週刊時事も、世論調査をやっております。これもたいした数の人をやっておるのではないのでありますから、これだけを基礎にはできないのでありますが、大体千名程度の人で、年齢別に見ますと、二十歳代の者が一九・四%、三十歳代の者が二六・四%、四十歳代の者が二二・七%、五十歳代の名が一六・四%、六十歳代の者が一五・一%、男女別風男子が四八・三%、女子が五一・七%、こういう比率で調査をいたし、その結果は、二月十一日を建国記念日とするという意見に賛成の者が五四%、反対しておる者が一二・四%、わからないと言っておる者が三三・三%、こういうような数字も出ております。これも御参考に申し上げたわけでございます。いろいろな意見はあるでしょうが、私は、国民の中にとにかく建国記念日はあったほうがいいんだという意見が多いのじゃないか、そしてこれを二月十一日とするということは国民の中に溶け込んだものである、こういうように考えて賛成をいたしておるのであります。
 なお、右翼団体と暴力団体とは、われわれははっきりこれを区別をして実は考えておるのでございます。これをやりましたから暴力がふえる、こういうわけのものではない。なお、詳しくは公安調査庁の長官からこの関係はお答えいたします。
○吉河政府委員 ただいま、右翼団体の中に紀元節の復活運動を進めているものがあるではないかという御指摘がございました。事務的に見てこれをどういうふうに考えておるか、この点を明らかにせよというお話がございました。御承知のとおり、右翼団体は、かねてから全国各地で開催されます紀元節奉祝会というようなものにも参加いたしまして、奉祝の行事を行なったり、特に本年一月ごろから二月十一日ごろまでの間におきましては、紀元節の法制化という問題につきまして、政府並びに地方議会に請願をする、あるいは演説会を催す、日の丸行進をやる、ビラ、ポスターの頒布等によりまして、紀元節復活を呼びかけておるような状況でございます。しかし、右翼団体のかような活動は、全国津々浦々に行なわれておるわけではございません。特に東京都内でも目立つようなところ、国会周辺とか新橋駅付近というようなところで行なっておるのでありますが、ことしにおけるおもな右翼団体の紀元節復活運動の動きを見ておりますと、大日本生産党が一月に通知を出しまして、地方自治体に対する紀元節法制化の決議を要請するように働きかけ、佐藤総理大臣に紀元節法制化を決行せよというような要請をいたしました。青年思想研究会では、防共挺身隊長ら同会加盟団体の代表十四名が、一月下旬首相官邸に参りまして、建国記念日制定についての建白書を提出いたしております。大日本愛国党では、二月、新橋屋外ステージにおきまして、紀元節法制化国民大会というような名のもとに集会を開いております。かような状態でございますが、確かに御指摘のとおり、こういう運動をやっておるわけでございますから、これは国民に対して全然影響がないとは言い切れないと考えておるわけでございます。しかしながら、右翼団体がここに紀元節法制化問題を取り上げております理論的な根拠、これはわが国固有の歴史と伝統を尊重するという独自の見解でございまして、これは国民の中にございます紀元節法制化を求める要望とは必ずしも一致したものではない。右翼運動によりまして国民の間にこの要望が発生したものだというふうに、主たる原因をそこに求めるような断定はできないのではないか。右翼が紀元節法制化によりまして急激に国民の間にその勢力を拡大発展する危険性はないかというような御指摘もございましたが、いままでの歴史を考えてみますと、右翼が非常に組織的に拡大発展するのは、彼らが国家の危機と称するような時期に、非常にその傾向を見せるというような状況でございます。紀元節法制化ということによりまして急激にその勢力を拡大するということは、いまのところちょっと考えられない次第でございます。しかし、ある程度動いていることは事実でございます。
○山内委員 いまの事務的な御報告、大体私どももそうだろうと見当をつけております。そこで大臣、いまお隣でお聞きのとおり、いまあげられたこれらの右翼の人たちが、いままでどんなことをやっておりますか。たとえば愛国党の党首はだれで、いままでどういう事件を起こしたか、御存じでしょう。私は、暴力団というのは即右翼だとはさっきも言っていない。右翼とのつながりのある団体もあるし、それがまた一つのささえにもなり、こういうところから暴力が生まれてくるのだということを言っておる。ですから、この暴力を取り締まらなければならぬ法務大臣の立場としては、多少でも温床になるものは早く刈り取らなければいかない。そういう考え方に立ったならば、法務大臣がみずからこれに賛同するような態度でなく、少なくとも閣議においてはもっと良心的な自分の立場を主張されたほうがいいのではないか。いいのではなく、それがあなたの仕事である、私はそう思う、そういうことでいま申し上げたわけです。もちろん紀元節の法制化運動だけで右翼が飛躍的に伸びるなどは、私も思っておりません。ただ、これを利用して宣伝し、この機会に政府を動かし、総理がああいう発言を知事会議でやったものですから、それを足がかりにして強力にこの運動が進められたということは認めざるを得ない。そういう点では、私は総理もちょっとあれは勇み足だったと思う。先ほども申すとおり、この法案が万が一にも提案されることになると、もっと広い角度で大臣からも御答弁願わなければならぬと思いますけれども、きょうは時間もありませんからこの程度でやめますが、もう一ぺん法務省の立場からこの問題を検討してもらいたいと思います。――では、御答弁がないから、これで私の質問を終わります。
○稻村(隆)委員 ちょっと関連して。いま法務大臣は、二月十一日を建国の日にするということは、国民大多数の声であり、自分もこれを支持する、こういうことをおっしゃっておりますが、これは私は重大な問題だと思っているのですよ。これは紀元節というふうなものは、明治政府が自己の軍国主義の発展のためにつくり上げた一つの日本歴史の誤った解釈による国史教育を受けた人々がいまでも支持している、こういうことにすぎないのです。むろん私は明治政府のやったことは全部悪いというのではないので、功罪相伴うのでありますが、日本を近代国家として成長させた功績は大きいですよ。しかし、一面において、歴史というものは常に支配者がつくるものですから、その支配者の都合のいいような歴史をつくる。今日歴史科学が発達しているのですから、この歴史科学を自由に駆使して、日本の歴史を書き直す必要があるのです。それは明治政府がつくった根拠のない、文字も何もない時代を、ただ伝説によって歴史的根拠のない神武東征、それから二月十一日橿原宮に即位したというような、また神武即位より二千五百何十年たっているなど、全く科学的根拠のない間違いである。そういう歴史学者の意見を聞かないで、単に法務大臣がその誤った明治政府の国史の解釈によって、これを国民が大多数支持しているから私も支持すると言うことは、これは重大問題です。そういうことは、私は、この前紀元節の問題を扱ってよく検討したのですが、私は理論的には絶対にこっちが勝っていると思っている。根拠がないのです。だからして、法務省とか文部省の人々が進歩的だと私は考えておらない。これは一番やはり官僚のうちでも保守的です。そういう人々ですから、こういうものに対して非常に疑問を持っているのですから、それを法務大臣がよく研究もしないで、これは二月十一日をもって建国の記念日にするということは、大多数の国民の意見であると言うことは、非常な間違いである。これは少しでも日本歴史をまじめに解釈する者は、二月十一日という根拠のないものを建国の記念日にするということは、これは日本の歴史の恥です。あなたは、そういうことをほんとうにそう考えられないのですか。明治政府の偽造です。率直に言って。これは明らかです。ここで言うことは要らないのです。この前十二分に論議された問題ですから。あなたの御意見をお聞きしたいのです。
○高橋(等)国務大臣 いろいろ承りましたが、紀元節を復活するからすぐ軍国主義的になるというようなことは、私は心配いたしておりません。また、二月十一日がどうである、こうであるということは、あなた方の従来なさっておった議論も、十分に私は知っております。しかし、それなら何日をおきめになるかというと、二月十一日以外ならいつでもいいのだ。これは社会党の方針として打ち出されたわけではないのですが、私が接して、国会対策をやっておりましたときに話をすると、十一日をはずせばいつでもいいのだ、こういうような御意見の人もいろいろおられたようでございますが、結局何日にするかということは、やはりいろいろな従来からの経緯等を考えまして、これにやるのがいいのだ、私はこういう考え方を持っております。私が研究が足らぬとかなんとかおっしゃいます。それは稻村先生は十分歴史等も御研究になっておると思いますが、私は私なりにそうしたことを考えながら、これは長い問題ですから、一緒にいろいろやってきたわけです。どうぞ御了承願っておきたい。
○受田委員 関連して、私も発言しなくてはならぬ。高橋先生は内閣委員も長くやっておられるし、国会対策の責任老であったわけで、この問題の処理については一応あなたなりの御見解があると思うのです。それであなたはいま国務大臣でいらっしゃるし、同時に行政長官でもあるのですから、国務大臣の側からひとつはっきりした御意見を、この機会に示していただきたい点があります。せっかく問題が提起されておりますから、私もそこを念を押しておきます。
 閣議の席上においても、この問題はしばしば議題にのぼっておることを私も承知しておるのですが、国務大臣としてこの問題を積極的に推進するお気持ちがあるのか、あるいは消極的にこの日がいいなと二月十一日をお考えになっておるのかということを一つ。それからあなた御自身が内閣委員会で多年御経験をされていることでありますから、むしろ閣僚の中では一番この問題には精通しているという信念でこれを処理されようとするならば、審議会という機関を設けて、学職経験者、文化人その他国民の総意を代表するにふさわしいような専門的な立場の人々に、この円をどうするかを十分研究してもらって、その機関を通じて答申に基づく処理をする。むしろ高橋先生が積極的にそうして機関による問題解決をおはかりになるほうが、いまの内閣の立場上は適切であると思うのですが、御答弁を願いたい。
○高橋(等)国務大臣 私は簡単に、ぶっきらぼうのようですが、お答えします。
 私は、積極的に推進をしたいと考えておるのであります。それとともに、いま審議会云々のお話もございましたが、これも一つの考え方であると思います。しかし、もう長年の間、国会でお互い国会議員が論じ尽くしておる、また委員会も通過をして参議院に送られたことも数度あると記憶いたしております。そうした段階にある問題でございますので、審議会ということでなしにやるということに、私は賛成をいたしたわけでございます。
○受田委員 その問題は大事なことなんで、決して思いつきでやるべきでないのです。国会へお出しになる、そして審議もする。しかし、最後はいつもこれが廃案になっていくという運命をたどっておるのでございますが、一応そういう手続を踏んで、しかる後に国会で審議していくという順序をお踏みになることが、民主主義の国会のあり方ではないかと思います。特に世論調査など見ましても、二月十一日を紀元の日とするのを適切であるとする数字は、三分の一前後でございます。あとは、これを設けておくことはけっこうであると思うが、二月十一日以外の日を適当な方法でやってもらいたいという声、世論としても、はっきりとこの二月十一日説を固執しておる数字は非常に少ないのです。したがって、審議会というものを設けて、その審議会という機関の意思表示を政府も国会も十分審査するという立場を一応おとりになることが、民主主義の原則ではないかと思うのですよ。もう十分国会でやっておるから、すぐずばっと法案を提出していいんだというお考えは、私は問題があると思う。法務省の内部にも、先ほど議論のあるとおり、いろいろと御見解もあるわけでございますから、一応その手続をおとりになる。これはむしろ総理府設置法の一部を改正せられて、国民の祝日に関する審議会なるものを設けられて、そこで一年なり二年なり討議をしてもらって、その答えに基づいて国会で十分論議して、そして多数決なら多数決でおきめになるというなら、これは私は筋が通ると思うのですが、その手続を省略して、何としてでもずばりとこの法案を国会でなまで押し通そうという行き方には、私は問題があると思うのです。大臣として積極論者であることをいま伺いました。これは法務省の行政長官兼国務大臣としての高橋先生の御意思がはっきりしたわけでございますから、積極論者であれば積極論者であるだけに、審議会という機関を通じて民主的な審議、学識経験者の専門的検討の結果をあらためて審査するという手続をおとりになるならば、私たちはここで多数決でおきめ願ってもあえて反対は――つまりこれを強引に反対するというのではない。多数決原理に従わざるを得ないのであります。いかがでしょうか。もう少し慎重に閣議でがたがた何回も繰り返すことをやめて、このあたりで審議会に審査させるという手続をおとりになるという勇気があるかないか。
○高橋(等)国務大臣 先ほど言いましたように、この問題は、長年にわたって国権の最高機関である議院においていろいろと意見を戦わした問題でございます。私は、この辺で法案を政府が出す、そうした基盤はもうできているんだ、こういう観点に立って、閣議において賛成をいたしたわけであります。審議会につきましては、一つの御意見であることは拝承いたしますが、いまそうしたことを政府としてやる意思はないわけであります。
○受田委員 これでおしまいですが、そうすると、高橋先生は、この祝日関係法案を今国会にお出しになるのですね。そういう方向で、閣議でいまそういう方向に持っていこうとされておるのですか。
○高橋(等)国務大臣 いま提案の準備をいたしております。ただ閣議では、まだ最終的に出すという決定の閣議決定はいたしておりません。しかし、紀元節をこの国会で法案を出すということにつきましては、閣議は了解をいたしておるわけでございます。
○受田委員 終わります。
○河本委員長 大出俊君。
○大出委員 時間の関係でいま関連質問を私は求めなかったのですが、実はいまの受田先生からの話が出てまいりますと、一言申し上げておかなければならぬことになるのですが、私は例の知事会議のときに質問をし、つまり佐藤総理に質問をされた神奈川県の内山知事のおられる神奈川の出身でありますが、一月の新年早々に知事がものを言ったところから、神奈川県内では大騒ぎが起こりまして、各種団体、あるいは神奈川県内の市町村、市議会、町議会等々の間でもたいへんな論争になっているわけであります。大臣が先ほどいろいろ今日の情勢を話しておられましたが、横浜、神奈川で、地元で見ております限りでは、町村長会議あるいは市長会議等々の中でも、賛成者というのはごくまれであります。したがって、大臣が判断をされているような状態にはない。現実に提起をされた足元でそういう状態であります。さらにまた、二月十一日に紀元節の祝典をやりたい、こういう内山知事の意見でありましたが、各方面からのたいへんな攻撃にあいまして、だんだんだんだんその内容を縮小をされて、この二月十一日は講演を聞く、こういうふうに――しかもそれは町内をマイクで流すこともよす。管理者の地位にある方々に出てもらって聞いてもらうというふうなところまで狭まってまいりました。その間に、右翼団体から正式に、二月十一日の式典についての諸警備についてわれわれ団体が引き受けるという申し入れが、知事に正式にありました。さあ、あわてたのは内山さん自身で、こればっかりはどうにもならぬということで、実は紀元節をやるんではないのだという言い方をしたら、うそを言うなということで、おまえは一体何べんこういうことを言ったのだというような話になったことを、私は記者の方から聞いておるのでありますが、そういうことで、結果的には講演を聞く、こういうことに変わっていったのですが、それらの事情等を勘案をいたしまして、特に今日、戦後幼い時代に戦争が終わりまして、今日二十年を数えるわけでありますが、そうなると、二十前後の方から二十五、六歳くらいの方々までは、紀元節をやったこともなければ、全然聞いてもいない。学校でもそういう教え方をしていない、こういうことでありますから、それらの若い世代が一体国民のどのくらいを占めるかということを考えただけでも、私どもとしては紀元節の復活というふうなことについては賛成ができないという点で、先ほど質問者のお話になりました審議会みたいなものをつくるというふうなことについても、私どもとしては反対でありますから、もし閣議でおきめになって出されるというならば、それ相当のたいへんなことになるということについては、そういう決意を私どもの党はしておるのでありますから、十二分に御勘案の上、慎重にこの問題についてはお取り計らいをいただきたい、こういうことをつけ加えておきます。
 それから前会質問が残りましたが、本日時間の関係でだいぶ時間的になくなっておりますので、私の予定しておりましたものを幾つか省きまして、たとえば外国人財産の日本における財産権の取り扱い問題等いろいろ考えておりましたが、省略をいたしまして、前会の質問の続きである臨時司法制度調査会の答申をめぐるなお残る若干の問題と、さらに法制審議会等でいまどういう扱いになっておるかわかりませんが、改正刑法準備草案が三十六年に出されまして久しくなりますけれども、これをめぐってだいぶ世の中、私どもの地域等におきましても騒然としてきておりますので、その点についての質問を申し上げたいと考えておるわけであります。
 最初の問題でありますけれども、前会、大臣からこの臨時答申につきましては、国民が平等に裁判を受ける権利というふうなこともあわせ考えて私質問したのでありますが、それらのことも十二分に考えておられるということであり、したがって慎重に取り扱いたいという前向きの御答弁をいただきましたので、その上に立って前会北海道の木古内の例を申し上げたのでありますけれども、それと関連をして、簡易裁判所が五百七十くらいあるのではないかと思いますけれども、この中で十四庁の廃庁という問題が一つ――これはいまやってないようでありますけれども、出ておりますし、さらに四十くらい事務委譲をしておるということを私は聞いておるのでありますけれども、この二つに分けまして、まず事務委譲というのは現実にすでに行なわれているのかどうか、ここのところを最初に承っておきたいと思います。
○山根説明員 民事訴訟事件だけにつきまして、四十三庁について事務移転がされております。
○大出委員 法的にはそれはどういう手続になっておりますか。
○山根説明員 裁判所法の附則によりまして、この前に裁判所法を改正いたしましたときに、民事に関する訴訟事件につきましては事務の移転をすることができるという規定を設けております。
○大出委員 そうすると、もう一度聞きたいのですが、法的に適法であるというお考えですか。
○山根説明員 裁判所法の附則で設けられました部分につきましては、適法であるというふうに考えます。
○大出委員 そうすると、その附則に設けられた部分のみの委譲になっておりますか。
○山根説明員 さようでございます。
○大出委員 ところで、十四庁を廃止をされておるので、これは一部だろうと思うのでありますが、五百七十のうち二十六庁くらいの計画がおありのように聞いておりますが、そこのところはどうなっておりますか。
○高橋(等)国務大臣 ただいまの御質問は、簡易裁判所の整理統合に関係しての御質問であると思いますが、いろいろ交通の便がよくなったからこれを統合をしたほうがいいという意見が、臨時司法制度調査会あたりから出ておりますけれども、しかし、交通の便だけを考えて処理するには、人民の利益、国民の利益という観点に立ちますと、これはもう少し慎重に検討をせなければならぬ要素がたくさん実はあるのでございます。したがいまして、いまこの問題をどう扱うかということにつきまして検討いたしておりますが、いま申し上げましたような観点で、慎重に実は処理をいたしております。ただ、御指摘になりました、置くことがきまってもまだ何もやっていないところとか、あるいはまた、全部の事務が移転されてしまっているというのが、御指摘のように十四カ所あるのであります。これらについてはどう処置するか。これは臨司の線に沿うて廃止をしましても、まあ影響はわりあい少ない。その他のものにつきましては、これはよほど慎重に考えませんといけないというのが私の方針で、これは私としては、急いで結論を出す問題ではないと考えて、慎重にやっております。
○大出委員 交通の便のお話も出ましたが、先般も木古内のお話をいたしましたが、函館まで一時間ですけれども、木古内まで時間のかかる方々がたくさんいるわけでありますから、重ねて申し上げるようでございますけれども、慎重にひとつ取り扱っていただきたい、こう考えるわけであります。
 そこで、簡易裁判所の事務管轄の拡充という項目が一つあるのでありますけれども、どのくらいまで拡充をされるつもりですか。この答申を受けてのお考えの大体のところを、ひとつ簡単でけっこうですけれども、お聞かせいただきたいと思います。
○高橋(等)国務大臣 いまその点も検討をいたしておる最中でございます。
○大出委員 民事で十万未満だとか、これは三十万という話が出たり、五十万という話が出たりいたします。あるいは期日の三年をどういうふうにするかというようなことも、一部聞かれるわけでありますが、これについて一つ間違うと、これは全体の機構に響いていく筋合いだと私は考えておりますが、さらに法務委員会におそらく出されるであろう予定法案に、区裁判所らしきもの等もございますようですし、それらの問題等と相関連をいたしますし、その結果によりましては、さらに区裁との関係も出てまいりましょうし、そうなってくると、その間の人員の異動にも関係してまいります。したがって、私はこれは非常に大きな問題になりそうに思うのがありますけれども、そこのところで、大体の見当がないのか。つまり、日弁連なら日弁連あたりの考えもちょっと聞いてみると、ここにもいろんな異論を交えての意見があるようでありますが、そこらのところをどう判断されているかのめどをお示しを願えないか、こう思うのであります。
○高橋(等)国務大臣 この問題も、影響するところが御指摘のように非常に多いのでございます。また、日弁連その他の反対の御意向も、よく知っております。私は、これにつきましても無理をしない、よく話し合って意見が一致したところで出していきたいというつもりで、いま検討をいたしております。
○大出委員 時間の関係でこまかくは申し上げません。大筋を承りたいのでありますが、ところで、これは人との問題もからんでくる筋合いだと思うのでありますが、そこで、まあ司法試験などの法律改正というふうなことも、一部伝えられているわけでありますけれども、そこのところあたりはどうお考えですか。
○高橋(等)国務大臣 司法試験の問題は、法曹へ来る人が年々非常に減っております。そこで、なるべく在学中にこの試験が通り得るような程度に改正をいたしまして、法曹の人の量といいますか、人的の源泉をふやしていきたいということで準備をいたしております。これはこの国会へ提案をして、御審議をお願いする腹づもりでしておりますが、まだ実は私学方面、あるいは弁護士会、いろんな方面からの御意見が、私の手元にも出ております。それらを比較検討しまして、できるだけおさまりのいい形のもとでひとつ国会へ出していきたい。とにかく目的は御了承願えると思うのであります。
○大出委員 実は、その目的がどうもだいぶ疑問があるのであります。そこを実は承りたいので質問をしているのであります。つまり簡裁の事務管轄の拡充という形で、かりに民事五十万というふうなことになる。そうなると、そのあとに今度は法改正、区裁判所みたいなものになってくる。これは一つ間違うと、一面では簡裁の特徴である、弁護士等を立てなくとも本人が裁判提起ができるという筋書きが、はずれてくる。そこへ持ってきて、いまのお話によるところの司法試験、これは法改正を行なって在学中に試験が通れるようにする。そうなりますると、四十、五十で司法試験を受かってくるような方々は、回数制限をして押えてしまう。これが一面出ているわけであります。そうして今度は、在学中に採れるためには、法律科目というふうなものをできるだけ少なくして、逆に教養科目等を中心にして、マル・バツ方式くらいの試験をやって採用しよう、こういう筋書きになりそうなわけです。そうなってくると、それじゃ卒業した人をどうするか。すぐ使えない。法律的な面では、旧来の苦心惨たんして司法試験を通ってくる方々とは違ってくるのでありますから、そうなってくると、この方々に速成教育を一年なら一年で修習を受けさせるというような形で、裁判所の事務その他を簡略に教えておいて、きわめて短期間に事務的な面を再教育といったらおかしいかもしれませんが、そういう形で、採用する、こういう筋書きになっていくということになりますと、いかなる事件がこの末端の裁判機構に提起されるかということを考えたときに、これはえらい危険なことになりはせぬかという心配が起こるわけです。したがって、いま大臣が言われた御答弁のそこのところに大きな疑問がございますから、そこのところをお答えをいただきたい。
○高橋(等)国務大臣 御指摘のように、いままで大学教育を受けた連中には一般の試験はやっておりませんが、今度これをマル・バツ式でやるということでございますが、これが適当であるかどうか、必要であるかどうかということも、実は検討いたしておるわけでございます。
 それから大体科目の選び方その他につきましては、これは臨時司法制度調査会の御答申の趣旨というものを尊重して、実は起案をいたしております。法律科目が従来七科目であったものを五科目に縮小するということでございます。その結果、どう言っていいのか、いま御指摘のように、どうも役に立たぬような人がふえるのではないか、若干の影響はあるかもしれませんが、研修で補っていきたい、こういうつもりでおるわけでございます。要するに、法曹源というものをどうしてもふやしませんと、判検事というものの拡充ということができない。イタリアあたりは、裁判を迅速にいたしますために、五カ年計画で判検事の関係を五割ふやすということでやっておることを、この間も向こうの高裁の長官が来て話をしました。こちらでも、とにかくやらなければいかぬ裁判の迅速化の問題があるのです。ところが、それにはとても追いつかないというようなことから、実は法曹源を確保したいということが目的でございます。
○大出委員 そこで、梅田最高裁長官が、昨年の五月七日だと思いましたけれども、九州で新聞発表をしておられますね。五百名ふやして三千人にしたいという内容なんですけれども、それと関連をして、いま大臣いろいろ言われておりますが、かといってこれは裁判ですから、その速成をやって人をふやすのはいいけれども、じゃ、一体、法律を本格的におやりになった、あるいは長年苦労されて司法試験を通ったという方でない人、しかも科目内容を変えて採用しやすくするのでありますから、そうすると、その方の内容は落ちてくる、これは当然であります。それを再教育、速成教育みたいなものをやってということになるわけですね。裁判は、これは結果的に非常に大きく国民全体への利害にからむわけでございますし、基本的人権にもからむわけでありますから、そうなると、これは逆な面から見ると、非常に危険千万なことになりかねない、こういう気がするわけであります。今日、地裁の定年が六十五歳、簡裁が七十歳、ところで、地裁の裁判長さんその他の方々で簡裁に入ってきておられる方も一部ある。それから、逆に今度は、書記官をやっておられる方々が相当長くつとめておられて、そちらのほうに試験を受けられて入ってくる方々がある。こういう方々は、弁護士資格はないわけでありますが、こういうことになっているところに、さらにいまお話しのようなことになると、また一方では裁判所式なものになっていくような傾向を持つ、こうなると、どうもそこに単に人が足らないからということだけじゃなしに、今日の司法行政全体の面から見て、私どもとしては――これは私は予算委員会で法務大臣に御質問申し上げましたが、例の予算委員会の質問と関連して、私どもの考え方からすると、ちょっと言われるとおりには受け取れぬ面が出てくるのでありますが、そこらあたり、事裁判でありますから、そう簡単に速成をしてというわけにはいかない筋合いではないかと思うのですが、そこのところ、どういうふうにお考えになりますか。
○高橋(等)国務大臣 七科目の試験をやった人も、すぐにはもちろん役には立たない。これを五科目にした場合にどれだけの影響があるだろうかということは、この人々は学校でそれぞれそうした科目はおさめておるわけであります。でありますから、そういうことを考えながら研修で補ってみたい、こういうことでやっております。研修を出ましても、まだこれがすぐ役に立つわけではないので、なお相当見習い的な期間というものがあるわけでございます。と私は思います。そういうことに実際はなっております。
 また、一言申し加えておきまするが、今度の司法試験の改正につきましては、受験者の年齢を従来より制限するというようなことは、このたびは考えておらないわけであります。
○受田委員 関連して。私、この前資料をお出し願って、司法試験委員の顔ぶれもいただいておるのでございますが、私、一つ懸念することは、在学生に有利な試験制度ということになる危険が一つある。事実そうさせたいとおっしゃっておるのですから、問題が一つあるのですが、もう一つ、試験委員が、これはいろいろの私学等も含めておられますけれども、東大卒業者の委員に片寄っている傾向がある。このことは、この試験委員の顔ぶれを見て、私学の委員も出ておりますけれども、出身学校はどこかとなってくると、出身学校一覧表を出していただいたならば、もう圧倒的に東大に固められていると思うのです。私立大学の場合でも、その私立大学の出身者で非常に努力した勉強家を選ぶという形がとられていないのではないか。これは大臣でなくても事務当局でけっこうでございまするが、司法試験委員が東大出身者に偏しておる。そこで、東大在学生に有利であるという試験制度が新しく考えられるのかという懸念もいま起こっているわけですから、この委員の出身学校別に見た御調査も、概数の上ではできていると思うので、ちょっと御答弁願います。
○鹽野政府委員 御提出いたしました資料は、各大学別の考査委員をお示ししたわけでございます。私ども考査委員を選定いたします場合に、学校別あるいは実務家というようなもののバランスを考えまして大体編成しておりまして、いまはっきりした数を持っておりませんが、論文式の試験が中心になっているわけでございますが、論文式試験の考査委員の数を見ますと、たしか国立大学系が三十三名ぐらいであったと思います。それに対しまして私立大学系が三十名だったと記憶しております。そのほか、実務家が九名か十名ぐらい入っていたように記憶しています。ただ、いま委員の御指摘になりましたその各大学の先生方の出身校別というところまでまだ調査いたしておりませんので、現在のところ資料がございません。
○受田委員 それをお出し願いたい。これは私はやはり私立大学においても、東大出身者がそこへ行った委員が優先されるような形になったのでは、私学振興のたてまえから問題がある。その私学ではえ抜きの勉強家を選び出すという御努力がされないのではないか。出身学校別、これは委員を見たらどこの出身かすぐわかるわけですから、それをひとつ個人でもけっこうですから、お示しを願うことによって、世間に危惧されている東大在学生に便利な試験制度であるという懸念が抹殺されるようになればなおいいことだと思いますので、ぜひそれをお願いしたい。
 なお一つ、これは大出さんの質問に関連でございますから、時間をとりません。司法修習生なるものの制度があるわけです。そこで試験に合格した者は、一定期間の研修を終えて弁護士なりあるいは判検事になる。その大事な修習期間というものはどのような態度で臨んでおられるか。これはちょっと質疑の内容も通告しておきましたけれども、この期間は身分的にはどういう立場で、どういう給与を払っておるか。これも大事なことですから、一言お答え願います。
○鹽野政府委員 修習生は、御承知のとおり、二年間修習をすることが必要であるということにされております。二年間の修習を終わりまして試験を受けて合格した者が、法曹資格を得る、こういうたてまえになっております。その二年間の修習のうち、八カ月は司法研修所で修習を受け、残りの一年四カ月間は各現地で実務修習を受ける、こういうことになっております。その一年四カ月間の実務修習は、それぞれ全国の各地の裁判所、検察庁、弁護士に実務修習の委託をしておりまして、一年四カ月のうち四カ月ごとに区切りまして、裁判所が、刑事裁判関係四カ月、それから民事裁判関係、それから検察庁関係、弁護士関係、この四つに分けて実務修習をさせているわけでございます。
 それから、監督関係は、最高裁判所で監督しているわけでございまして、各現地で修習する場合には、それぞれの現地に監督を委託しているというような形になっているようでございます。
○受田委員 答弁が抜けています。身分と給与関係。
○鹽野政府委員 身分は、国家公務員ではございません。学生のようなものでございまして、一種特別の形のものでございます。
 給与は、国庫から支給することになっておりますが、たしかただいま二万三千円程度であったと記憶しております。
○受田委員 国庫から出している、それから学生のようなもの、そうすると、国庫から出している給与の対象になるものが、あいまいな立場のものであるということになっていますね。これは一般職の公務員とかあるいは特別職の公務員とかいう形のものであれば筋が通るが、学生みたいなものだという言い分は、国庫が金を出す以上は、あいまいなおことばであると思います。
○鹽野政府委員 修習生の給与につきましては、裁判所法の六十七条の第二項に、「司法修習生は、その修習期間中、国庫から一定額の給与を受ける。」という規定がございます。この法律に従って支給しているわけでございます。
○受田委員 その身分というものは学生の延長のようなものだ、これはちょっとあいまいなんです。そのことを私は問うておるのです。一体学生みたいなものというのはどういうことなんですか。わけのわからぬ御答弁ですから、はっきりさせてもらいたいです。
○鹽野政府委員 裁判所法によりますと、「司法修習生は、司法試験に合格した者の中から、最高裁判所がこれを命ずる。」こういうことになっているわけでございます。それで、給与の点につきましては、先ほど申し上げたような規定になっているわけでございます。それからこの修習につきましては最高裁判所がこれを定める、こういうことになっておりまして、現在最高裁判所で司法修習規則というものを定めております。それに従って修習が実施されているわけでございます。
○受田委員 終わりますが一言。大臣、御答弁願いたいのですが、非常にあいまいな身分になっている。判、検事になる人間が、そういうあいまいな形で、その間は政治活動も自由であるし、判事、検事になる者は何をやってもいいことになるわけです。弁護士になる者もおるからなかなか区別がむずかしいとなれば、そこにおのずから限界があるけれども、一般公務員の場合の修習期間というものは、行政職の場合には、全部公務員という立場で国が公務員としての給与を払っておる。司法官の場合にも、その修習期間がいまのような法律的にも身分的に実にあいまいであるという形をとらないで、はっきりした、保障された身分であり、保障された給与として判、検事の卵をつくる機関をりっぱに守ってやるという形、また自由に政治活動をして、判、検事になる者がどんどんかってな行動をするということが許されていいか、弁護士になる場合との分別の点で、大臣で御答弁願える範囲内のお答えを願いたい。
○高橋(等)国務大臣 修習生の身分が学生のような身分だといま言いましたのは、少しことばが足らなかったのではないかと思いますが、ただいま政府委員からお答えしましたように、法律によりまして裁判所がこれを任命いたしておるという関係の身分であり、給与は国庫で出す、こういうことになっておる。そこで、いまお尋ねの一つの要点は、それなら政治活動その他が自由じゃないか、こういう点だろうと思いますが、この政治活動をとめる根拠は実はないのでございます。しかし、実際の修習生は、自分の受ける修習ということにつきまして、これをなまけたり成績が非常に悪い者については卒業をささないということにもなるわけで、勢いそうした連中はそういう面から政治活動を制約されておるというように御了承願いたいと思います。
○受田委員 終わります。
○大出委員 時間がございませんから、ここでひとつ臨司答申と関連をいたしますので最後に聞いておきたいのですが、近代化ということがうたわれておって、先般大臣から御答弁いただきましたが、裁判官の宅調などというものはやらさないようにしなければということ等が出ておりますけれども、あわせて、新庁舎がいろいろ岐阜その他にもたくさん建っておりますけれども、新庁舎ができても、いすの予算がないとか、落成式の予算がないとか、さあ、じゃあどうするのだということになって、弁護士会だとかあるいは会社あるいはは有力者の方々に寄付を仰ぐ。これはある程度常識になっている。ずいぶんばかげた話だ。私のところに資料が届きまして、こういうわけだというわけです。さらには鉄道の会社から無料パスをもらっておって、年に一ぺん集まって一ぱい飲むというようなことになっていたり、いろいろなのがあるんですけれども、それは一般官庁でもそのくらいのことはあるじゃないかと言う方があるかもしれぬけれども、司法行政の関係となってまいりますと、どうも調停委員の方や何かから、しかも多少の援助をなんということになってきているとすると、これはどうも私は、そうですかと言って見過ごせないものがある、こう考えるわけなんです。しかも先般、私はそういう点もあって、実は最高裁のどなたかにおいでをいただいて、せっかくの予算要求にもかかわらず、政府部内、特に大蔵省が認めていないのでありますから、それらの関係で承りたかったわけでありますけれども、この辺の事実についてどういうふうに御判断をされているかという点を承りたいです。
○高橋(等)国務大臣 私、寡聞にしてそうした事実があるということを実は聞きのがして申しわけないですが、そうしたことは、法務関係の役所、最高裁の役所は、ことに厳格にやらなければいけない。そういうところからものが乱れたら、これはゆゆしい問題だと思います。これは裁判所のほうとも連絡し、また法務省は私から十分なる指示をいたして、また大蔵大臣にも予算を組むときにそうしたぶざまなことが起こらないように十分なる要求をし、納得をさせていくということをいたさなければならぬと思います。御指摘の点は、全く御同感でございます。
○大出委員 私がもらっている手紙からいたしますと、職員の方々が、冬季燃料が不十分で、調停委員会のある方、有力者の方から寄付を集めたなどというようなことが、事実として述べられているのです。それからいま申し上げた無料パスなどの問題、優待券ですね、これは、何かその会社で起こった場合に、当然その地域における裁判というようなことができ上がると、それはやはり人間ですから、何がしか心理的影響もこうむる結果になりますし、公正を欠くのではないかという気がする。ところで、いまの大臣の御答弁、まことにごもっともで私もわかるんですけれども、ただ厳重にこれを取り締まってみても、これはまた人間のやることですから、予算がないとなると、どうしても何か無理をしなければならぬことができ上がる。これは一般社会通念からいっても、そういうことになると思うのでございます。私は、こういう席でなければ、何かためにしようということならばだいぶいい材料なんだけれども、そういうつもりで申し上げているのではないので、ひとつはっきりさせていただきたいのですが、これは単に上からこうだぞと言っただけでは片づかないのではないか。つまりせっかくこの予算要求をされても、認められないということになっている。まあ予算権の二重行使みたいなかっこうのものも、財政法上は裁判所にはないわけではないのですから、そうなるとすれば、やはりこのあたりで、この辺のところも、さっきの司法試験の内容を変えて若い方を修習生でなんという速成を考えるぐらいならば、より一そうこちらのほうを重点的に考えなければならぬ性格ではないかということを考えておりますので、そういう配慮も将来に向かってぜひともやっていただきたい。
 それから、司法試験の法改正などはまだ出ていないんじゃないかと思うのでありますが、この問題についてもいろいろな心配がありますから、出てしまえばしまったでやるだけのことはやらなければなりませんけれども、その以前に何かしら速成をやって――暴力法なんというものが通る、通らぬで騒ぎましたけれども、きわめて簡単、手軽にそういうことでぽんぽんきまっていくようなことになると、社会現象としては好ましくないということも起こりますから、十二分にその辺のところは御注意を賜わりたい、こういうふうに考えるわけですが、それはいいですな。
○高橋(等)国務大臣 これは法曹界にとりまして非常に大切な変革でありますので、それだけの考え方をもっていま慎重にやっております。ただ、これをいよいよやるという判断が固まりますれば、政府の責任において提案をいたしたい、こういうつもりでございます。
○大出委員 関連のある点があるのですけれども、時間の都合で時間切れになると困りますので、法制審議会関係の刑法準備草案について承りたいのであります。
 法制審議会は、常設の大臣の諮問機関だろうというふうに私は考えておりますが、だとすれば、この刑法部会が三十六年に草案を出されてから久しくなりますから、各方面でいろいろな検討が行なわれておるのですけれども、特に私が聞きたいのは、いま全国的に大騒ぎが起こっておる。私はここにたくさん資料を持っておるのでありますが、この三百六十六条、三百六十七条、特に三百六十七条のほうのいま言われている過失臓物罪の件でありますけれどもいわく廃品回収業の方々、いわく質屋さんの組合、いわく古着屋さん、古物商の組合、自転車預かり業の組合、さらに洋品屋さん――洋品屋さんなんか新しい品物なのですけれども、いろいろ売りに来る。さあ買ったところが、それは盗品だ、この準備草案の三百六十七条の筋からいきますと、これも三十万円以下の罰金に入りそうである。こういう騒ぎが至るところに起こっておる。先般日比谷あたりでも古物商の組合の皆さんが大会を開いて、さらに与党の皆さんの側でもいろいろな陳情を受けておりまして、ある会合では、河野一郎さんという方が何月何日にこちらに参るから、そのときにひとつこれはやめてもらうようにいたさせますなどというふうな答弁をしている方々がいる。そうなるのならこれはそうしてもらいたいのだけれども、そういうふうにだいぶ騒然としているわけでございます。したがって、捨ててもおけぬ問題だと考えます。
 そこで、ひとつずばり承りたいのでありますが、法制審議会でいろいろおやりになっているようでありますが、どう取り扱われて、ほんとうのところ、三百六十七条なるものは出てくるのかということをずばり聞きたいのでございます。
○臼井説明員 私、刑事局の参事官といたしまして刑法全面改正の法制審議会関係の事務を担当いたしておりますので、事務的に御説明申し上げます。
 ただいまの刑法改正の審議状況でございますけれども、刑法の全面改正につきましては、昭和三十八年、すなわち一昨年の五月に法務大臣から法制審議会に対しまして、現行刑法に全面的改正を加える必要があるかどうか、あるとすればその要綱を承りたいという趣旨の諮問が発せられまして、白来法制審議会にこの刑法全面改正の問題をもっぱら審議するための刑法特別部会という機関が設けられまして、その部会において審議が重ねられておるわけでございます。
 さらに、問題は非常に多岐にわたりますので、刑法全体を五つの部門、すなわち総則を三つ、各則を二つに分けまして、五つの小委員会において個別に問題を審議いたしまして、その小委員会の審議がすでに合計いたしまして百二十二回ございます。また、その特別部会の全体会議がすでに四回開催されました。
 ところで、ただいま御指摘の改正刑法準備草案と、現在やっております刑法全面改正との関連でございますけれども、改正刑法準備草案は、昭和三十一年に法務省刑事局内に設けられました改正刑法準備会が、在京の学者、実務家十余名を中心に、さらにその準備会の議長として小野清一郎博士がこの指導に当たられまして、百四十回余りの審議の結果、昭和三十六年の十二月に有志とともに公表されたものでございます。ところで、この改正刑法準備草案は、あくまで刑法全面改正に資するための予備的な草案である、その名前の示すとおり準備的な草案である、一つの参考資料という意味しか持っていないわけでございます。したがいまして、現在審議されております法制審議会刑事法特別部会におきましても、決してこの改正刑法準備草案そのものを審議の対象にしておるというのではなくて、現行刑法、さらには現行刑法のもとに発展いたしました学説、判例、そういうものを基礎にいたしまして、それに加えまして、改正刑法準備草案を一つの参考資料として審議の資料にしていただいているという状況でございます。したがいまして、御指摘の準備草案にございます三百六十六条あるいは三百六十七条、この種の条文を設けるかどうかという問題は、法制審議会が独自の立場でおきめ願うことでございまして、これは準備草案には拘束される筋合いのものではないわけでございます。この問題につきましては、御指摘のようないろいろ反対の声も高いわけでございますので、法制審議会におきまして十分慎重な御討議が加えらるべきものと、事務当局といたしましてもさように信じておりますし、御期待いたしておるわけでございます。
○大出委員 ところでこの法制審議会は、冒頭に申し上げましたように、大臣の常設の諮問機関であろうと思うのでありますが、そうなると、刑法部会の責任者である小野清一郎さんも、御出席をいただきたいと申し上げれば出ていただける筋合いだろうと思いますが、そういうことになりますか。
○高橋(等)国務大臣 委員会から要望がございますれば、よく研究をします。ただ、こちらから、法務省として出席をせよとか、するなとかいう立場のものではないと考えます。
 なお、いま過失による盗品等の保管、取得、周旋に関する三百六十七条の草案につきまして、非常なセンセーションが起こっておるというか、非常な危惧の念を持っておる人が非常に多いことは、了承いたしております。この審議会の部会におきましても、まだここまで入っておりませんが、私はこれらの反対されている理由は十分によくわかりますので、常識を飛び越えたようなやり方は避けていきたいということが、私の念願でございます。
○大出委員 実は私のほうの党の法務委員会の理事の皆さんとも相談をしたところでありますが、あらためて私、法務委員会で小野さんの御出席等をいただけるように御相談を願って、そちらのほうで質問をするような話し合いもしております。しかし、これはいま中央で集会が開かれて、これが全部おりてきまして、地域末端でその業者の方々が一ぱい集まって、実に回数が多いわけですよ、多岐にわたる業種がおりますから……。したがって、何かしらここでものを言わなければ、皆さんは騒ぎが大きくなるだけで、なかなか先行き心配――自分の稼業だからしようがないんだけれども、危機を感じて質屋なんかもうやめなきゃならぬという騒ぎになっているのです。そうなると捨てておけないんですね。そこで私は、この席上で、緊急な問題だから持ち出しておるのです。こう言っている間でも、横浜の南区なんかでは集会が持たれているのです。
 そこで私は多少伺いたいのですが、そういう趣旨のことを前もって政府委員のほうにも話してあるはずなんですけれども、ところが大陸法系のこの種の法律規制はどうなっているかという点で、欧州各国の例、フランスにしても、ドイツにしても、イタリアにしても、いろいろ調べてみているのであります。それからまたアメリカにおける四つ、五つあるこの種の判例、これなども当たってみておりますけれども、どうも今回の刑法準備草案にあるような過失臓物罪などといわれるものは、その法理からしても認めていないように思うわけでありますが、その辺の欧州各国あるいはアメリカ等の判例等からいたしまして、法務省の皆さんの側でどういうふうにお考えになっているか、私のほうもよく調べているつもりでありますから、長い御答弁は要りません、もちろん御答弁の中で反論があれば申し上げますが、ずばりお答えをいただきたいと思います。
○臼井説明員 この問題に限らず、外国の立法例等につきまして、いろいろ検討を加え、また資料として法制審議会に提出いたしておりますが、過失臓物罪の問題につきましては、立法例といたしましては、この種のものを設けているものは比較的少ないようでございます。しかし、そういうようなものはないわけではございませんで、たとえばドイツの現行刑法等には、一種の過失臓物罪の規定が設けられておりまして、そういう立法例もあるわけであります。
○大出委員 このドイツ刑法についてもずいぶんいろんな人の論説があるのでありますが、一例をあげれば、中央大学の教授の下村康正氏の論説などによりますと、これは中に入りますとまた論争になると思いますから、できるだけ中に入らずに申し上げますけれども、これはいろいろ論議をしてきておりますが、結論だけ申し上げます。要するにドイツ刑法においては、過失臓物罪は処罰されないことになっていること、その未遂処罰の点からも明らかであり、というように、改正案が幾つもドイツの場合出てきているわけでありますが、改正案が処罰しないというふうにいたしていることをドイツの学者その他も支持をしている、こういうかっこうなんです。したがって、今日のドイツ刑法の解釈についても、過失臓物罪というのは罰せられないんだという結論ですね。ですから、いまおっしゃられた意味のことも、あるいは一説かもしれないけれども、私のほうでいろいろ調べてみた範囲からすると、かつまた私どもの先輩の法務委員の諸君、法律専門家の方々とも相談をしてみた限りにおいては、どうもこれはと思われる国にこの種のことがずばりあるということではない。しかもアメリカにおいても判例が幾つもありますけれども、明確にやはり過失である限りは処罰されていない、こういうことになってまいりますと、かつて仮案の時代に、重過失という字句が使ってありました。ところが、それがこの改正刑法準備草案の面では、単なる過失になっている。実はそこに非常に大きな問題が出てきているわけです。
 そこで私は、いまのお話、それは審議会をやっているんだということになればそうかもしれぬけれども、やはり法務省という立場からして、これだけ社会的に大きな騒ぎが起こりつつあるとすれば、もう少し早い機会に、何がしかのことをやはりものを言うということにしないと、これは政治なんですからね、不安がますます増大をするという結果になってきているのに、さあまだそこまで手がついていないから、いつやるかわからないということだけでは、どうも相済まぬという気がするのです。そこのところはどういうふうにお考えになっておりますか。
○高橋(等)国務大臣 私は、事務当局に、非常なこうした反対がある、しかもその反対はうなずける点が非常に多い、だから過失による盗品等の売買質受けという程度のものについては考えなければいかぬ、十分研究しろということを実は命じております。しかし、いま法制審議会でせっかくやっておるのです。それに先走って、まだ審議にも入っていないのに、法務省はこういう見解だということを発表することは、大臣が、せっかく法制審議会に諮問をしておいて、そうしてその足を引っぱるようなことはちょっとできかねるものだから、この国会における答弁で、とにかく無理はしない、あまり思い過ごして騒がないようにしてほしいというのが、私の望みであるということを御了承願いたいと思います。
○大出委員 いまお話の「過失により」と、こういうのですが、この三百六十七条は、「営業に関し」というのが前文にあるわけですね。「営業に関し、過失により情を知らないで、盗品その他財産に対する罪によって得た物を保管し、有償で取得し、又はその処分の周旋をした者は、三十万円以下の罰金に処する。」こういう規定なんですね。そうすると、「営業に関し」ということになりますと、これはさっき申し上げた多岐にわたってしまう、こういう筋書きなんですね。これはあまり内容をくどく申し上げても時間がありませんからやめているわけでありますけれども、大臣のいまのお話で、さっき常識と言われたんですが、法律ですから常識というわけにいかぬと思いますけれども、しかし、法務大臣という立場でそうおっしゃっているのだから、してみると、どうもこれは少し極端過ぎはせぬかという、そういう気持ちがあるようにそんたくできる。ところで、いま法制審議会にかけておられることも承知で聞いておるのです。しかし、ここは単なる役所でもなければ何かの審議会でもないのでありまして、国民一般が今日現在ただいま非常な心配をして、あすもあさっても心配が重なるという傾向にあるとすると、この問題はだんだん知れ渡るのです。だから、そうなると、ますますもって一つの不安、ここに結びついていきますから、やはり政治的発言は必要だろう。つまり法務省として、審議会の答申が出た場合にそのまま実施するということではないはずなんだから、そうなると、それをどういう意思でどう扱うかということは皆さん方のやることなんだから、ということになれば、そのあたりで私はものを言っても、現に起こっておる問題に対する処置なんですからいいんじゃないかという気がするのであります。法務省としては、無理はしたくない。言いかえれば、どうも三百六十七条というのは無理に入る、こういうことになりそうに思うのですが、どうですか。
○高橋(等)国務大臣 ただいま申し上げましたように、大臣が諮問しておる法制審議会で、まだ審議にも入っておらないこの問題で、法務省の意見を大臣が述べる、あるいは事務当局が述べるということは、これは適当ではないと思うのであります。が、いまここで申し上げましたように、とにかく心配なさるようなことはいたさないという考えは、根本的に持っております。そういう意味でお受け取りを願っておきたいと思うのであります。
○大出委員 くどくど質問をしたほうが、より政治的にものをおっしゃるだろうと思ったのですが、心配なさるようなことはしないというのですから、いま心配の主体はおわかりの上なんでございますので、これ以上のだめ押しはいたしません。
 それでは時間が一時になりましたので、終わります。
○河本委員長 田口誠治君。
○田口(誠)委員 通産大臣が席に着かれるまでに要望を申し上げておきます。
 これは法務省の関係です。いまメーデー事件が公判がなされておりまするが、聞くところによりますると、七月くらいまでかかるようでございます。そこで、これは本委員会、または本委員会で全体的な法案の審議ができないということになれば、法務委員会でやらなければなりませんが、準備をしておいていただかなければなりませんことは、論告文の中には相当膨大なものがある。二時間も三時間もある。それで聞いておってもなかなかわからない。最後の結論だけわかるということである。結論というのはその人の人権に関連のあるものでございまするので、こういうものはプリントにして配布してもらったらどうかということでございます。今日はそうした予算がございませんので、予算の関係からどうするのだというようなことをひとつ準備をしておいてもらいたい。これが一つ。
 それからもう一つは、あのメーデー事件の問題については、十六歳の少年が付和雷同という罪状で同時に起訴されております。これは、少年の場合には少年院がございまするが、こうした関係からこれは問題があろうと思いますので、こういう点もやはり質問の対象になります。
 それからもう一つは、何といっても、七月までやるということになりますと、一週間に二回くらいずつ呼び出されておると、職場につとめておる者としては、非常に事業場としては困るわけなんです。本人としては非常に心苦しいわけなんですが、こうした問題の進め方についてもやはりお聞きをいたしたいと思いまするので、こういう点の答弁の準備を、数字的な面もございまするので、ひとついまから要請をいたしておきます。
○伊能委員 いまの問題に関連して。本委員会においては、法務関係は大体質問が終了したように思うのでありますが、いま田口委員から御要求のあった点については、来週、法務関係の設置法をわれわれとしては社会党のほうにお願いをして上げたいと思いまするので、そのつもりで御質問に対する準備その他を法務省関係にお願いをしておきたいと思います。
     ――――◇―――――
○河本委員長 通商産業省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。
 質疑を行ないます。質疑の申し出がありますので、これを許します。稻村隆一君。
○稻村(隆)委員 通産大臣はいま参議院の予算委員会に御出席を要求されておりますから、私、対ソ貿易の問題、これは共産圏全体にも当てはまる問題でありますが、一、二点だけ簡単に大臣の見解を承りたい、こう思っているわけであります。
 というのは、私ちょうどことしの一月、日ソ貿易協定の進行中にモスクワにおったのであります。それで、ソ連貿易省の総局長兼アジア局長のスパンダリアン氏に、対日貿易方針を詳しく聞いたわけであります。同時にまた、下田大使以下日本の大使館の方々の意見も聞き、また日本の貿易業者の意見も聞いたのでありますが、その結果の問題であります。今度対ソ貿易は、往復三億五千万ドルか七千万ドルかはっきりいたしませんが、入超が二千万ドルのようでありますけれども、飛躍的に発展いたしましてきまりまして、日本の対外貿易の第四番目に対ソ貿易がのし上がったわけであります。これは対日感情がいいとかなんとかいうことだけじゃなくて、日ソ貿易は必然に発展する客観的条件があるわけです。そして今度は非常にいいチャンスでありまして、このチャンスをのがさないでやることが最も重要ではないか、こう私は思うので申し上げるのであります。そこで問題は、輸銀の融資の問題でありますが、私は五年では短過ぎると思うのです。御存じのように、日本の大使館に聞いても、業者に聞いても、ソ連はいままでかつて契約を守らないようなことは一回もない。相手としては非常に信用できる。これはやはり他の先進国並みであることは明らかなんです。そういう意味からいいまして、競争相手があるのですから、これは五年などと言わないで、もっと自由に、やはり十年でも八年でもかまわないというふうなことをやることが、日本がソ連を中心とする共産圏の貿易を発展させるためには、ぜひとも必要な処置じゃないかと私は思うのでありますが、その点に関しまして、通産大臣の御意見を聞きたいと思っております。
○櫻内国務大臣 ただいま、稻村委員が日ソ貿易協定のおりにソ連にいられて、その実情に沿ってのお尋ねがございました。御趣旨の点はよくわかるわけでございます。幸い昨年度、大体の推計が往復二億一千万ドルぐらいの貿易量になっておると思います。非常な伸びでございました。今後におきましても安定した貿易相手国ではないか、かように私も思います。
 そこで、いまの延べ払いのお話でございますが、昨年十月に尿素プラントの八年の延べ払いに踏み切っておるのでございます。おそらくこの内容についての御批判があってのお尋ねであろうと思いますが、当時の情勢からいたしまして、政府は、西欧並みでいこう、そういう基本原則を立てておりまして、ソ連と西欧諸国の貿易の実情からいたしますと、不確実ではございますが、相当延べ払いをしておる。こういうことから、日本としても延べ払いを考えるべきである、こういう見地から、尿素プラントの延べ払いを承認することにしたのであります。しかし、諸国の状況がまだはっきりいたしておりませんので、とりあえず五年の輸銀資金を使うことを認めまして、あとの三年は民間金融でやってもらいたいというようなことで承認をいたしましたが、その後の情勢からいたしまして、五年が過ぎた後の六年目、七年目、八年目はどうか、こうなりますと、八年輸銀を使ってもよいと私は思っております。
○稻村(隆)委員 これは実際の取引になるのですが、日本が五年と言うと、英国あたりは事実上十年と言っちゃうのです。それで負ける場合が多いわけです。そういう点がありますから、主導権は常に相手にとられないで、初めからこっちがとるというふうな考えで私はやられるほうがいいのではないかと思うのです。民間から借りるといっても、五年は輸銀から借りるものである。三年なり二年なりは民間から融資をしてもらうというふうに申しましても、御存じのように、貿易というものはきわめて利益の薄いものでありますから、民間の金を借りたんでは間尺に合わぬわけです。そういうわけで、私は、いまの段階においては、共産圏貿易の問題は、ものによってはそれは民間の金を借りても採算のとれるものもあるかもしれませんけれども、大体私は輸銀の融資に依存しなければ、これは採算がとれないだろうと思うのです。そこで私は、やはり競争相手があるのですから、遠慮しないで、むしろこっちから先べんをつけて、そしてある点向こうに利益を与える。向こうの言うとおりになるという必要はないが、利益を与えるというふうな向こうの立場を考えてやることが、私は必要じゃないかと思うのですが、その点、大臣はどうお考えになるか。
○櫻内国務大臣 昨年ミコヤン副首相が参りまして、おそらく御承知だろうと思いますが、プラント類の三億五千万ドルの引き合いをしていったわけでございます。その場合、日本側といたしまして、当然各国との競争をよけいしなければなりません。その競争に対処するためにどういう立場をとるのか、目下こういうところに非常に苦慮をいたしたわけでございます。申し上げるまでもございませんが、商売でございますから、日本が率先して条件をよくしていくということは、おのずから各国間の貿易の過当競争を引き起こすことにもなりかねません。また、延べ払いの場合に共産圏向けは大体五年でいこうというような、そういう相互間の話し合いもございまして、あまり長期のものもいかがか、こういうふうに見ておったのでございますが、当時私どもの得た確実な情報により、またその後明らかになったのでありますが、英国とかイタリアの出方などを大体見当をつけまして、そこで八年の尿素プラントというものを決意したわけでございますが、今後におきましても、国際貿易競争はなかなかきびしいのでございますので、われわれとしては、十分慎重に、またでき得る限り広範囲の情報をとり、また検討をする。そして各国に負けないように万全を尽くしていきたい、かように考えております。
○稻村(隆)委員 ものによって、たとえば船のようなものは、日本の造船技術は世界最高水準ですから、これは私はそう心配ないと思うのです。どこもかなわないと思うのです。ところが、化学プラントのようなものになりますと、これはドイツやイギリスあるいはイタリアよりも、部分的には劣っているものもある。むしろ向こうのほうがすぐれているものが多いのです。そういう場合、私はうかうかしておるというと、のんきなことをしておると、向こうにやられてしまう。それは西欧諸国のことなど、むろんわれわれは過当競争は顧慮しなければならないけれども、ソ連としては、同じ値段であるならば、日本から買ったほうが輸送関係で得なんです。ヨーロッパから持ってくるよりも、場合によっては……。まだシベリア開発なんか端緒にも入っておりませんけれども、極東、シベリア開発なんということは、御存じのように、自分の国の奥から持ってくるよりも、日本から持っていったほうが、輸送費が安くて得な場合があるのです。そういうわけで、特にシベリア開発なんというものはまだやっておりませんけれども、極東からシベリア開発というものをこれからやるということになりますれば、これはどうしても日本から買ったほうが得だ、こういうことで、盛んに向こうでは日ソ貿易のムードをあおっているわけです。対日感情がいいという特別な理由はないのですが、ムードをあおっているわけです。ですから、これは思い切ってやはり五年なんて言わないで、そんなふうにしないで、そんなことはきめないで、相手のことも多少顧慮しなければならぬけれども、そう顧慮しないでやる必要がある。過当競争なんということを心配する必要はないと思う。いろいろ西欧諸国は、たとえばこの前石油の輸送管の場合には、これはソ連のほうではもうあまり熱意はないようですが、NATO諸国で干渉するとか、あるいはまた外交交渉にあたって、外交交渉は外務省がやるのですから、アメリカに遠慮しなければならぬと言うけれども、最近の米ソ貿易は非常に発展しているわけです。飛躍的に発展しているわけですから――これはむろんこの前ソ連が食糧がなくてアメリカから食糧を買ったという点もあるけれども、これは数字は私ここに持っておりませんが、おそらく通産省のほうではその数字があると思います。米ソ貿易も飛躍的に発展している。それですから、私は、そういう点はそう西欧諸国に遠慮しないで、こっちは独自の立場でどんどんやっていく。それにはどうしても輸銀の融資の延べ払いをもっと延ばすということが、私は必要だと思うのです。何もこれは心配ないと思うのですが、その点、大臣はどうお考えになるでしょうか。
○櫻内国務大臣 稻村委員が先ほど御指摘になりましたように、六五年の日ソ間の貿易については、三億五千八百万ドルという協定を結びました。この協定によって大体の輸出入の目標が立っておりますので、比較的貿易がやりいいのではないかと思うのであります。従来、日本のほうが輸入がよけいになっております。今度の協定では、それを改善するために輸出が二千万ドルふえておる、こういうわけで、大体の目標が立っておって、その中での商売でございますので、私としてはこの協定を履行していく上には、従来の方針でそう支障はないと思っておるのであります。ただ、今後の御指摘のような日本とソ連との地理的な優位な条件からいたしまして、さらにもっとこれを飛躍せしめよう、そのためには日本が一そう努力したらいいじゃないか、これはよく私も念頭において努力をいたしたいと思います。
 なお、対岸貿易につきましては、協定内では四百万ドルないし五百万ドル、こういうことでございましたが、従来の実績はあまりあがっておりません。大体この目標の半分を少し上回る程度ではないかと思うのでありますが、最近ソ連においては、この対岸貿易のための特別の機関もできたようでございまして、今後は相当やりいいのではないか。このほうについては特に力を入れていきたい、かように思っておるのであります。
○稻村(隆)委員 重ねてお尋ねするようですけれども、対ソ貿易は、中共貿易のように台湾の問題などという隘路はないわけですから、五年などということはきめないで、場合によっては――それはむろん特例として、いま大臣のお話のように八年もあるし、七年もたまに一、二の例はあると私は思うのですが、これはそのときの条件に対処するように五年とかなんとかいうことをきめないで、場合によっては八年にもするし、十二年にもする、競争相手があるのですから。現にイギリスなどはそうです。日本が五年と言ったら、向こうは八年とか十年をやっている。それで日本の貿易業者が困っている。私、現に聞いてきた。だから、そういう点に対して迅速に対処できるような方針をきめておかないといかぬと私は思うのです。その点はどうです。五年なんて何もそんなことをきめておく必要はないと私は思う。
○櫻内国務大臣 御説明申し上げるまでもございませんが、輸入の資金量というものが一応ございます。その中で、対ソ貿易などがいま申し上げたような協定のワクで、あるいはまた将来性もあるのでございますから、私としてはできるだけ考えていくという方針には変わりはないわけでございます。そして先ほど申したように、ミコヤン副首相の引き合いなどがございます。その引き合いによってケースバイケースで商談が進んできますので、商談に際しまして、稲村委員の御意見のように、せっかくの商談ですから、ほかからこれが負けてはいけませんから、そこのところは相当広範囲に情報もとり、またわれわれとして踏み切るところは踏み切って、その商談の成立のために援助をしていきたい、かように思っております。いままでのところ、そう大きな支障はなかったと思うのでありますが、もしソ連でいろいろお聞きで具体的な事項がございましたら、私のほうにお知らせいただければ幸いだと思っております。
○稻村(隆)委員 いま大臣の御答弁でわかりましたが、次に私ちょっとお尋ねしたいのは、石油の問題です。
 石油は、何と言っても対ソ貿易の中心なんです。これはチャンスはいままで幾らもあったのですが、向こうのほうでは、日本は石油を積極的に買うような気持ちはない、それは英米資本が妨害するんだ、こういうふうなことを言ってましたから、英米資本の入っているところはソ連から買うわけはないですが、日本でも民族資本の石油会社が三十もある。それで、そういうふうなところだけじゃないと私は弁解しておいたのです。ところが石油というものは、ソ連だってそう輸送能力はあるわけじゃないのです。日本からもっと買ってもらいたかったのだけれども、御存じのようにソ連の石油は硫黄分が少ない。それで安いわけなんです。それでもっと早く思い切って契約すれば、いまでも四百万――そのうちの半分くらいは重油その他合わせて出光であると思います。しかし、もう少し早く出光興産が当時契約をやっておけば、これはもっとソ連の石油はたくさんきたわけなんです。これは日本のために非常に利益になるし、同時に、石油というものを買わなければ、日本の対ソ貿易全体はふえるわけじゃないのです。それは私が説明する必要は少しもありませんが、それでそういう点についてチャンスをのがしているわけです。それからバクーから来る石油は、日本に売るべきものをすでにほかへ売ってしまっているから、いまではそれでは石油をこれだけ買いたいといっても、輸送関係等によってなかなか来ないような状態なんです。そこで、いまソ連ではシベリアで石油の新しい資源を見つけましてそれを開発中でありますが、いずれこの問題は片づくと思うのですが、この石油の問題ですが、通産省の指導方針が、政府の指導方針が、ちょっと足りないのではないか。たとえばソ連の石油は最初安かった。だんだん高くなってきたということは、日本の業者がお互いに競争して突っついて、ソ連の前に、何というか、だれでも抜けがけの功名はあるでしょう、商売ですから、それをやり過ぎまして、だんだんソ連の値をつり上げていったのは事実であります。こういう点に対して、やはり通産省あたりの、政府の指導がもっと必要ではないか、こう私は思っているのです。それから、大体出光興産がいま契約している石油というものは、ほかの会社のものよりもトンに対して一ドルくらい安いのです。そういうことがいろいろな支障を来たしておると思うのですが、これもソ連側と出光興産がこれはかってに契約したので、おそらく政府はそういうことはあずかり知らないと思う。これは商売だから、何も出光興産が悪いとかなんとかいうわけではない、それは当然のことですから。しかし、そういう点に、とにかく対ソ貿易の過程におきまして――むろんこれは抜けがけの功名もある点までやむを得ないとしても、もう少し強力に政府が統一した指導をやる必要があると私は思うのですが、その点、今後の問題が重要ですから、通産大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
○櫻内国務大臣 ソ連産の現在まで日本が買っております原油が、硫黄分の少ない、いわば良質の、そして安いものであるということは確かでございます。しかるにあまり輸入量がふえてこないじゃないか、それは現在の日本の石油精製会社が外資関係、言いかえればアメリカ資本関係の会社が多い、こういうことからではないかというふうに御観察のようであります。ところで、この原油は、言うまでもなく特に自由化をいたしておるのでございますから、良質でそして安いということからいたしますれば、国内の業者がどんどん買い付けてくれていいものだと思います。と思いますが、先ほども申したように、日ソの間には一応の協定ワクがございます。六三年で実績は三百五十二万キロ入荷しております。その場合の予定は三百七十万であったわけでございます。六五年は、これは原油、重油合わせてでございますが、四百万の目標でございました。おそらくこの目標は、原油の関係を中心に考えてみますときに、貿易は自由化されておるのでございますから、良質で安いということからいたしまして、目標を達成するのではないかと思います。特に最近におきましては、四日市の問題でもおわかりのように公害が非常にやかましいものでございまして、硫黄分の少ないほど好まれるという傾向もございます。でございますから、特にいまの四百万キロのワクを達成するために、政府として何か奨励をするとかいうようなことがなくとも、いまの貿易のたてまえからいたしまして、目標にはいく、かように観察をしておるわけでございます。
○稻村(隆)委員 もう一つ、私はよく流通のことも知りませんし、あるいはこういう質問をしたら笑われるかもしれないのですが、ソ連の極東にはLPGが非常に豊富なわけなんです。そこで、新潟の天然ガスは輸送管で東京へ送って、それで東京ガスに送っておるわけなんです。それだから、ソ連のあのLPGを、無限にありますから、あれを持ってきて使う、こういうふうなことは、私は必要じゃないかというふうに考えてきたのですが、そういう点は、通産当局としては調査ができておるでしょうか。
○櫻内国務大臣 実はこの貿易協定のおりに、御指摘のような、シベリアにおけるLPG生産が相当に豊富で、かつソ連として余っておるというのであれば、当然その話が出そうなものだと思うのであります。また日本側も、ちょうど一月の協定のおりには、遺憾ながら日本の需給の見通しが狂っておりまして、LPGが非常に品不足のおりでございますから、かりにソ連からそういう話が出ますと、この協定の中に入ってきてもいい条件であったと思うのでありますが、しかしながら、このLPGの問題は、交渉の過程ではなかったということでございます。もし稻村委員のお話のごとくに、相当余剰もある、こういうことでございますれば、実はLPGに対する私の方針としては、現在の品不足の状況から、きのうも船を二はい認可を与えたようなわけでございますが、また買い取り先をできるだけ分散しておこう、こういう考え方もございます。対岸の向こうから買い入れて裏日本に上げるということは、これは好もしい状況だと思うのであります。これは私もひとつよく調査してみたいと思います。
○稻村(隆)委員 それで私、これはソ連当局から聞いたのですけれども、うんとある、こう言っているのですから、これは間違いないだろうと思うのです。それでちょっと考えているのですが、秋田の肥料工場などは、天然ガスがなくてどうにもならぬ状態なんですね。そういうわけで、秋田は現にいまソ連の貨物船が通っておるわけですから、これはぼくもしろうとでわかりませんが、秋田あたりにタンカーで持っていったら持っていけると思いますので、その点、政府のほうでも至急具体的に調査されて、ぜひともソ連、極東のLPGを日本のほうに持ってきて利用するように、具体的な調査をしていただきたい、それを私はお願いするわけであります。
 最後に、私は沿岸貿易について一点だけ御質問申し上げたいのですが、今度ソ連では沿岸貿易というものを盛んにムードを上げているわけです。しかし、これはぼくは必ずしも幻想を持ってはならぬと思うのです。額から言えば知れたものですから。しかし、ソ連としては画期的なことをやったわけです。御存じのように、ソ連貿易で一番困るのは、ソ連は一切決裁をモスクワに仰がなければならぬので、貿易商社はみんな困っておる。時間がかかって、もう許可がきたときにはチャンスを失ってしまって、取ってもしょうがないというふうなことになることが多いわけです。そういうことをソ連は考えたのかどうか知らぬけれども、あるいは沿岸貿易というムードによって、日本全体の、日ソ貿易全体を上げようという考えかもしらぬけれども、とにかくモスクワの決裁を受けなくても、ナホトカで決裁できる極東貿易事務所というものを、御承知のとおりつくったわけです。そして政府代表としてはクゼンコという人が来ているわけです。それから貿易局というか、向こうは公団か何かでやるようです。公団ですね、その公団の所長にイワフニックという人が来た。これは日本語もできるので、これが沿岸から何を買うかという事実上の決裁をしておる。このクゼンコとイワフニックの両氏が一切をきめて、モスクワの指揮を仰がなくてもできるような権限を与えられておる。これはいまだかつてソ連ではないことです。中央集権的な、何でも上できめるソ連としては、画期的なことなんですね。そういうわけでありますが、これは時間がないから私が言いますけれども、スパンダリアン氏が私に、見本市が新潟、舞鶴、富山で開かれるから、その結果具体的なことをきめるけれども、とにかく、沿岸地方から果物、野菜――青物は現に行っております。それから繊維製品――私は新潟県ですが、繊維製品もずいぶん出ている。それから家具、これはみなソ連は不足しておるのです。家具だとか漁具、それに農具、そういうふうなものを沿岸方面から買うようにしたい、こういうことをスパンダリアン氏は言っておりましたが、そういうことに対して、ソ連があれだけ沿岸貿易に乗り出しているわけでありますから、日本政府としては沿岸貿易に対するどの程度の準備ができておるか。これはすぐ問題になることであります。六月、八月、何か見本市をやってからの問題でありますが、こういう問題もいろいろな団体がやっておりますけれども、これは政府のほうでよほど強力に指導して、変なみっともないことを業者お互いがやらないように心がけておくことが必要だし、沿岸貿易に対するどの程度の準備ができておるか。どうも準備ができておるように思えないのですが、その点ひとつお尋ねしたいと思っております。
○櫻内国務大臣 稻村委員も御承知だろうと思うのですが、私も日本海、裏日本の地方でございまして、対岸貿易には関心を持っておるほうでございますが、六四年の実績の推定が、輸出は、いぼ品目をおあげになりましたうちの漁網は入っておりますが、そのほかはバレイショのようなものとかナイロン類でございます。では日本が買い付けたものは何か。薬用植物とか魚類とか毛皮というようなことで、これが約二百万ドルくらい、輸出したのが百八十万ドルくらいが、六四年の実績になっておるわけでございます。先ほども申したように、五百万ドルという往復の目標からいっても、まだだいぶ下回っておる、こういうようなことで、せっかく期待はしておっても、微々たるものでございます。お話のように、民間が中心の見本市も開催される際でございますので、この機会に対岸貿易を進めるということは、裏日本一帯にとっては好ましいことだと思います。そこで、当初はいまの貿易協定の中のワクを達成させる。また、いまお話しの家具とか漁具とかいうようなもので、沿岸で必要なものを日本として積極的にこれを輸出する。また先方が売ろうというものにつきましては、われわれとしても十分考えていく、かように思います。ソ連がナホトカに対岸貿易のための事務所を設置したということは、非常に関心を持っておる一つのあらわれである。かようにわれわれとしても観察をしておる次第でございまして、今後対岸貿易については積極的な心がまえで取り組んでいきたい、かように思います。
○河本委員長 次会は、明五日午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後一時四十分散会