第048回国会 本会議 第6号
昭和四十年一月二十八日(木曜日)
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 議事日程 第四号
  昭和四十年一月二十八日
    午後二時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
                (前会の続)
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○本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑
                (前会の続)
   午後二時八分開議
○議長(船田中君) これより会議を開きます。
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 国務大臣の演説に対する質疑
                (前会の続)
○議長(船田中君) これより国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。田原春次君。
  〔田原春次君登壇〕
○田原春次君 私は、日本社会党を代表して、内政問題について二、三の質問をしたいと思います。しかし、その前に、まず、きのうの和田博雄君の質問に関連して聞きたい二点を、特に佐藤総理にお尋ねしておきたい。
 第一は、沖繩返還問題であります。
 先日、アメリカのある新聞記者が私のところに参りまして言うには、田原さん、アメリカは沖繩を返すと思いますか、こういう質問であります。そこで私は、もちろん返すべきであると答えました。
 ところが、その記者いわく、いや、断じて返さない、あそこはアメリカ青年の血を流して取った土地である、もしあそこを返すと言ったならば、その大統領は次は落選する、日本がどうしても沖繩をほしければ、実力で取りなさいと言うのであります。ホワイトハウスの奥深く、佐藤さんはジョンソン大統領から肩をたたかれつつ何をささやかれたか知りませんけれども、アメリカの民衆は率直にこのように感じておるのであります。沖繩で日の丸の国旗がひんぴんとアメリカの兵隊によって破られるのも、こうした心理状態からきておると考えます。
 つい先日、沖繩のワトソン中将が、記者団を通じまして左のごとく言ったことも、東京の新聞に出ております。いわく、佐藤首相はわざわざ沖繩に来なくてもよろしい、また、日本政府がその高官をアドバイザーとして沖繩に常駐するとの話もあるが、私はその必要はないと考えると言っておるのであります。佐藤さんの先日の演説の中で、ジョンソン大統領との会談のくだりでも、沖繩問題については、日本とアメリカとの考え方が並行して出ておるにすぎません。すなわち、佐藤さんは、沖繩の施政権の返還は、日本人の熱望するところであると言っておりまするが、これに対して、先方は軽くこれをいなして、単に、日米協議委員会を拡大して、経済援助と住民の福祉を取り扱うと言っておるだけではありませんか。完全返還どころか、わずかの施政権だけの返還についても、このようなごう然たる態度をとっておるのでございます。日本側の希望は少しも通っておらないではありませんか。いま一度佐藤さんの御説明を承りたい。(拍手)
 その第二は、極東の相互安全保障の問題でございます。
 昨年の八月モスクワを訪れた自由民主党の元総裁にして元の総理大臣石橋湛山氏は、ソビエト最高幹部と会見して次の提案をしたということが、当時の新聞特電で報ぜられておりますので、これは佐藤さんも御記憶であると存じます。それは、日本、米国、中国、ソビエトの四カ国による極東の相互不可侵条約を結べと提案しておるのでございます。わが日本社会党は、結党以来、積極的中立外交の立場を堅持し、ソビエト、中国、米国など極東に利害を持つ国々を包括した相互安全保障不可侵条約の締結を主張し続けてきておるのでありまするが、いまや自民党の元総裁にその同調者を出したことを喜ぶものであります。(拍手)
 戦争を回避し、国際間の紛争を平和的交渉で妥結することは、憲法の精神であります。もし憲法を改悪し、武力を持っていたならば、いまごろはアメリカの強要により南ベトナムに派兵され、罪なきベトナム国民を殺す役目を受け持たされておったことでありましょう。世界の模範となるわが国の平和憲法を守るためにも、この際、石橋湛山氏の案に耳を傾け、日本が発案者となって米国、ソビエト、中国を勧誘し、極東に平和維持を実現すべきではありませんか。首相にその決意あれば、各党これこそ超党派的に御協力できると思うのでございます。もしこの相互不可侵条約が成功するならば、中国と台湾の統一も実現するであろうし、南北朝鮮の統一も、また南ベトナムの平和も実現することと思います。そして、沖繩の米軍基地が不必要となり、米軍はすごすごと撤退し、百万沖繩人の悲願たる沖繩の返還に結びつくと思うのでございます。佐藤首相のこの問題に対する勇気ある御答弁を望みます。(拍手)
 沖繩をめぐる日米関係が出ましたから、ついでに、この際、防衛庁長官にお尋ねいたします。
 防衛庁は、ことしは三千億をこえる膨大な予算となっております。これに恩給、退職金など関連費を加えますと、全体の国家予算の一割に達するでございましょう。しかしながら、その中身を見ますと、放漫な使い方であります。たとえば、アメリカの中古品扱いのナイキ・アジャックスをたくさん買い入れて使う予算を計上しておるし、福岡県だけでも春日原、高良台、芦屋、築城の四カ所に、合計五個中隊、七百人を配置することとして、すでに三百人をアメリカに派遣して修習中であります。その費用に充てる予算も組んであります。また、F105戦闘機三十機の購入予算も組んでおります。一体全体どこを戦略目標として旧式ミサイル配置をするのでありましょうか。アメリカを目標としているならば、太平洋岸に置くべきではないでしょうか。
 先日、いま一人の別のアメリカの新聞記者が来まして、私に質問いたしました。この人は日本通でございます。いわく、日本はかたき討ちを美徳としておりますね、テレビでも「赤穂浪士」は全国民の熱狂的な支持で一年も続いたそうではないですか、曾我兄弟は、無難辛苦、親のかたきを討つのに十八年かかっておりますね、日本がアメリカに降伏してからもうそろそろ二十年になりますよ、こう言うのでございます。ホワイトハウスやペンタゴンを訪問する日本の大官は下にも置かない丁寧な扱いを受けますけれども、一般アメリカ民衆は日本に対してまだこのような見方をしているのでございます。外交官のことばや態度がいかに丁寧であっても、アメリカ民衆はいまだに日本を信用してはいないのでございます。日本の陸海空の自衛隊の中に特派されておりまする多数のアメリカ将校も、技術の指導のほかに、実は、いつ日本がかたき討ちをするか、そのお目付役ではないかとさえ疑われているのでございます。そんなにも信用されていないのに、何で高い予算を使ってアメリカの仮想敵に日本の自衛隊が備えにつかねばならぬのでしょうか。根性いずこにありやと言いたいのでございます。(拍手)小泉大臣も知っているはずの故石原莞爾中将の「国防政治論」を読みますと、こんなことばがあります。武器の高度の発達は戦争を不可能ならしむるといっているのでございます。いまや、米国、ソ連を筆頭に、大量殺戮兵器は高度に発達しましたので、弁証法における量質転換の法則のとおり、もはや大戦争はやれなくなっているのでございます。しかるに、日本では財政不如意のときに三千億もの防衛費をつぎ込み、ナイキなどを購入しなければならないでありましょうか。物価高に苦しむ国民大衆のことを考えるならば、防衛庁は、昭和四十年度の予算で、三千億のうち、進んでその半額の一千五百億円くらいは国庫に返納して、それを民衆の社会福祉に使ってはどうでしょうか、防衛庁長官の御答弁を承りたいのでございます。(拍手)
 さて、これより、首相の施政方針演説と田中蔵相の演説に対して、内政、特に財政、経済、物価等について、私見を加えつつ二、三の質問をするわけですが、物価と税金については全国民が非常な関心を持っておりますので、御答弁ははっきりとわかりやすくお願いしたい。
 まず、全国の主婦の声を代表するものとして、ここに一つの新聞投書を読み上げましょう。これは二十三日の毎日新聞大阪版に載ったものですが、小林節子という二十九歳の主婦で、その御主人はサラリーマンのようでございます。読んでみます。「新年早々、消費者米価が一割四分も上がりました。十六日からはバス代も上がります。このほか、水道料金、医薬治療費、学校給食費、私立学校の入学金に授業料、野菜も魚類も、みそもしょうゆも食パンも上がります。理髪代もパーマ代もふろ代もクリーニング代も上がります。主人の定期昇給やベースアップを当てにしてもとてもこれからの物価上昇には追いつけない現状です。政府は昨年、十項目にわたる物価安定のための総合対策をきめましたが、物価の値上がりを抑制する特効薬にはなりませんでした。政府は、四月から所縁税を減免すると言っておりますが、年収七十万円の所得で夫婦と子供二人の家庭では年間六千二百円だけ所得税が軽くなります。しかし、消費者米価の一割四分八厘の値上がりは、一年に米代を五千円ほどよけいに支払うことになります。だから、減税したといっても、米代の値上がり分だけで差し引きはゼロとなります。物価値上がり抑制は佐藤内閣の最重要な課題として真剣に取り組んでもらいたい」と投書しております。
 物価高騰は同時に通貨価値の引き下げでもあることは、首相自身も御承知のとおりであります。昭和三十五年、池田内閣が所得倍増政策をとって以来、生活物資は漸次値上がりをするばかりで、いまでは、その当時に比べましておよそ三割も高くなっております。このことは預金、貯金、恩給、年金その他確定債券も全部三割減価したことになり、国民大衆の財産の三割がいつの間にか盗み取られたにひとしいことは御承知のとおりであります。(拍手)
 しかるに、佐藤首相の演説の中には、物価対策は具体的には明示されておりません。単なる作文であります。少なくとも流通面の大改革、管理価格の上昇防止、公正取引委員会の強化、必要資金の供給ルートの改善などについて、聞きたいことは一つも出ておりません。要するに、当面の物価については、佐藤内閣には何らの対策もなく、お手上げということではありませんか。
 減税についても同様であります。総理が自民党総裁になるために放送しました、わしが総理になったら三千億減税するということは、影も形も見ることができません。(拍手)その上、税制調査会の答申に盛り込まれた所得科の滅私さえ、これを削り、利子、配当所得に対する特別措置を復活強化し、あまつさえ、株価対策ということで、配当源泉選択制度を採用するなど、税体系をこわしてまで横車を押しておりまして、まさに金持ち天国、勤労者には地獄の税制となろうとしておるのであります。(拍手)特に、昨年国会において田中大蔵大臣がはっきりと約束した農業用ガソリン税の減税すら実行していないではありませんか。国会軽視もはなはだしいといわざるを得ません。(拍手)
 わが社会党は、予算編成期に際し、当面の日本経済の具体的対策をまとめまして政府に要望しましたが、そのわれわれの親切はほとんど予算面にあらわれておりませんことをまことに残念に思っております。したがって、いま一度ここにわが日本社会党の立場からする経済、財政、物価に対する分析とその対策を述べることといたします。
 まず、日本経済の病理は何か。インフレによる高度成長の生み出した最大のガンは何か。それは、何よりも金融にそのゆがみがあらわれております。すなわち、高度成長政策をささえた高投資、高蓄積が個人の貯蓄や企業の利潤を越えて、銀行の信用創出、日本銀行の貸し出しなど、インフレ政策に依存して行なわれ、それが行き詰まったところに最大の問題があるのであります。都市銀行がその預金総額を上回って大企業の設備投資に貸し出した金額は、昨年の七月末までで実に二兆四千二百五十五億円にも達しており、それを、日本銀行の貸し出しと、一時は日歩三銭五厘にも及んだ高利のコール資金を一兆円近くも借りて間に合わしておるのであります。日本銀行は、都市銀行のこのオーバーローンのしりぬぐいのために、貸し出しと買いオペレーションで二兆円近くも通貨を増発しておるのでございます。また、農林中金や、地方銀行などの大衆資金をも、コール市場を通じて大銀行へ、大企業へと吸い上げていったのでございます。これは外国の常識では考えられないことでございます。企業の銀行借り入れは、漸次その企業の増資という形で株式に切りかえられていったが、これまた証券市場のパニックにあい、そのしりぬぐいを政府と日本銀行がやっている状態であります。
 こうした無計画な銀行信用による投資は、一方で通貨量の急増と、インフレによる消費者物価の高騰を招き、他方、そのインフレによる高い投資は、供給過剰の要因を増大させたのであります。借金によって設備投資を行なった各企業は、生産を落とせば赤字がふえ、利潤が減るので、製品は手形で掛け売りの形で卸や小売参に押しつける。そこに実に二十兆円に及ぶ手形の乱発となり、企業間の信用の膨張、不渡り手形と倒産の増大が生まれたのであります。まさに借金倍増、一億総借金の現状をつくり出しておるではありませんか。(拍手)これこそ、インフレによる高度成長の生み出した最大のガンと言えませんでしょうか。(拍手)との金融面に集中的にあらわれた経済のゆがみを解決することなしに、単に安定成長あるいはひずみ是正を唱えても単なる作文であり、かけ声にすぎないのでございます。
 信用と通貨の増発が全く行き詰まった現在、資金の効率的利用が必要となったいま、政府のとるべき態度は、まず、不急不要の部分の資金を制限することであります。たとえば、自衛隊の増強などは不急不要の最たるものであります。(拍手)そして重要なる生産的部分、ひずみ是正に必要なる分野に資金を流し、過当競争からくる二重投資や過剰投資をやめさせることでなければならぬ。さらには賃金、手当等で勤労者大衆の購買力を充実させ、生産と消費の不均衡を是正することでなければなりません。
 しかるに、政府のとろうとする政策は、一方では中小企業や日の当たらない産業の打開策を全くたな上げして、不況を理由に勤労者の賃上げを抑制しようとしており、他方、利潤の低下にもかかわらず、大企業や日の当たる産業の好況側面を理由に金融をゆるめ、大企業本位の選別融資を行なうことによって、中小企業や農業の切り捨て政策に拍車をかけようとしているのであります。(拍手)まさに血も涙もない資本の倫理を貫徹させようとしているのであります。このような状況を打開するには、経済、財政政策を根本的に転換しなければ、日本経済は決定的な破局に到達することは火を見るよりも明らかであります。
 このような立場から、佐藤総理、田中大蔵大臣、高橋経済企画庁長官、貿易と中小企業については櫻内通産大臣に、それぞれ質問したいのでございます。
 質問の第一は、資金の効率的利用のためには、国の責任において民主的な投資規制の機関をつくり、計画的投資の必要がきておるのではないか。さらに、財界や日本銀行の意図しておる選別融資は、金融機関まかせの無責任な産業政策となり、弱小企業や農業の切り捨て政策となると思うがどうか。
 質問の第二は、供給過剰原因の増大する中で、総支出のうち、個人消費の割合が五〇%余りという勤労者の低い購買力を前にして、一般勤労者の賃金と収入をふやすことが必要ではありませんか。日本経営者団体連合会の言っておるように、企業防衛の名に隠れて賃上げ抑制を行なうととは筋違いであり、かえって不況を本格化する危険が十分にあると思うがどうか。
 質問の第三は、国際収支、外貨準備の問題であります。貿易収支及び貿易外収支の赤字補てんは、アメリカの利子平衡税の延長、英国のポンド危機、米国及び英国の金利引き上げ、米国の金準備二五%の撤廃など、国際経済金融情勢の変化によってきわめて危険なものとなっております。長期外貨債の償還期限が迫っており、三十数億ドルといわれる短期外貨借り入れも、あたかも英国のように海外に逃避するような場合、わずか十九億ドルそこそこの準備では、ひとたまりもないと思われますが、国際収支に対する長期見通しはどうか、政府の見解をお伺いしたい。
 質問の第四は、貿易政策についてであります。輸出振興のための補助金や融資の予算措置は当然と思うが、貿易業者は今日のように大小三千八百余社もあって、至るところで赤字輸出の過当競争を続けておる状態であります。たとえば、西ドイツのジュッセルドルフには日本商社だけで三百数十社もひしめいております。この際、金融界で第一銀行と朝日銀行が合併したごとく、また、海運界で大阪商船と三井船舶、山下汽船と新日本汽船の合同を指導したごとく貿易業者の合同を指導し、たとえば、取り扱い品目別に整理するとか、あるいは相手国別に合併させるとかして過当競争を排し、より一そうの輸出能力を高めることを考えられてはどうか。
 また、海外移住を促進することによって、海外日系人の郷里送金という貿易外収支の増大をはかるとともに、海外移住者の協力によって、日本商品のその地方における販売力を強化することが必要であると思うが、どうであるか。一昨年、ブラジルの日本人から郷里に送金しました貿易外の収入は八百万ドルになっております。アメリカやハワイを入れれば千万ドルをこすでありましょう。人口一億を間もなくこえることを考えると、いま海外移住は各省総協力でやらなければならぬと思うのでありまするが、政府の方針を承りたい。
 一方、中国貿易については、政経分離を一歩も出られないというのは、情けないことではないか。(拍手)日立造船が貨物船の注文を受けているのに、その資金の融通さえ満足にできないというのがニュースに出ておりますが、もう少し腹を大きくして、商売には商業ベースで輸出入銀行から貸してやることが、ほんとうは政経分離ではないかと思うのであります。こういう前提で、いまこそ、大胆に貿易構造の偏向を改めるための手を打つべきときではないかと思いまするが、関係大臣の御方針はいかに、承りたいのでございます。
 私ども日本社会党は、批判するだけでなく、攻撃するだけでなく、当面の経済打開策として次の六つの対策を用意しております。関係大臣は、その一つ一つについて政府の見解と方針を明瞭に示すとともに、進んで私どもの提案を具体化していただきたいと思うのであります。
 第一は、減税であります。中心を所得税減税に置き、年収八十万円までは無税といたします。(拍手)この穴埋めとしては、大企業中心の臨時租税特別措置法を廃止し、配当分離課税をやめることで、およそ千五百億円を取り戻すことができるのであります。よって、税の公平をはかることができるではございませんか。特に、国会の約束事項である農業用ガソリン税は廃止すべきであります。大蔵大臣の御答弁を求めます。(拍手)
 第二は、物価対策であります。政府管理の公共料金は一切引き上げないことにいたします。このため、地方公共団体、国鉄などの財政改善については、国庫の緊急援助措置をとってこれを補てんします。また、公正取引委員会の機能を強化し、大企業の独占物価を引き下げさせ、独占禁止法違反のカルテル行為をとりやめさせてはどうか。これは経済企画庁長官に承りたい。
 第三は、大都市の地価暴騰の規制であります。国の先買権の設定、西ドイツのことを参考にいたします。あるいは公的機関による宅地開発を行なうことなどで、不当なる地価の高騰を押えることができると思います。建設大臣の御方針いかん。
 第四は、中小企業の金融難打開策であります。池田内閣の最大の犠牲者は中小企業者であります。昨年一カ年間で倒産した中小工場や会社は四千二百十二件、踏み倒した負債は四千六百三十一億円にものぼっております。中小企業なくして国の経済は運行されません。この際、中小企業には、一口五十万円まで無担保、無保証、低利資金の貸し付け制度を緊急措置として行なってはどうか。通産大臣と大蔵大臣の答弁を求めます。
 第五は、牛乳の国家管理と学校給食や妊産婦へのなま牛乳配給の実施であります。そのための草地の開発あるいは飼料の国家管理を断行したらいいと思っておりますが、厚生大臣と農林大臣の御答弁を求めたい。
 このように、わが党は、さきに政府へ厳重に申し入れた、国民の最低限の生活を保障する一つ一つについて提案をしております。政府はどのように考えているか、担当各大臣の御答弁をお願いいたします。
 経済、財政、当面の諸問題の質問を終わるに際しまして、国家予算の執行と、その決算の結果に関する会計検査院の報告についての内閣の最高責任者としての佐藤総理の御決意を伺いたい点がございます。
 会計検査院が毎年出版する報告書について見ると、各省の予算のうち、不当使用、不正支出、横領等の汚職、涜職が年々増加しております。過去三カ年に限ってその報告書からここに拾いあげてみますと、防衛庁、法務省、大蔵省、厚生省、農林省、運輸省、郵政省、建設省等の各省と日本国有鉄道、日本電信電話公社等の公団、公社を含めてのその不正、不当費消額は、総計して、昭和三十六年度は十八億八千万円、昭和三十七年度は二十四億九千万円、昭和三十八年度は二十三億三千万円にも及んでおります。しかし、これは抽出式検査といって、各省の予算のうち、場当たり的に取り上げてみた事項について発見されたのがこの金額ですから、各省全体を綿密に検査すれば、実際の不正使用、不当支払い、横領等はこの二十倍、すなわち、毎年実に四百億円以上にものぼるだろうと見られております。(拍手)一カ年の国家予算三兆六千五百億円のうち、その一%以上が毎年不正、不当に使われているということは、驚くベきことではありませんか。国民の血と汗からしぼり取った税金を各省の予算としてぶんどり、一たん予算が確定すると、このようにでたらめに費消しておるのであります。これについては、決算委員会で毎年問題として取り上げるのでありますが、いつも与党の横暴で、少数意見として否決されてきているのであります。(拍手)米国では、チープガバメント、つまり、経費安上がり政府をジョンソン大統領は力説しております。今年度の米国の軍事予算のうちで、三億ドル以上も節約されていることは、新聞にも出ておるとおりであります。わが国は何というずさんな予算編成でありましょうか。また、何という使い方でありましょうか。
 特に注目すべきは、法務省管轄の検察庁であります。検察事務官が不正行為をしたものは、昭和三十六年度の決算で四百三十余万円があげられております。昭和三十七年度の会計検査院の報告にも出ております。国家に対する信頼が失われていくとは思いませんか。この項については、高橋法務大臣の決意を承りたい。
 防衛庁に至っては、予算のルーズな使用は毎年毎年のことであります。昭和三十六年度に三億円の不当支出が摘発されておりながら、防衛庁長官も事務次官も責任をとっておりません。あまつさえ、昭和三十七年度にはまた一千六百万円、昭和三十八年度にはまた一千四百万円の不正支出が報告されておるのであります。全く反省の事実がありません。小泉大臣は、一体これを何と考えておりましょうか、御方針を承りたい。
 各省の決算は、実際にはその予算を使った二年後でなければ発表されないので、決算委員会でこれを幾ら責めても、不当不正支出当時の事務次官、官房長、会計課長等は他のポストに栄転しているか、国会議員になったり、公団、公社の理事におさまっていたりで、のれんに腕押しの状態であります。そこで、国の予算を厳正にする意味からも、今後、不正、不当使用が摘発された省においては、その事故発生当時のその省の事務次官、官房長、会計課長等を処罰することとして、たとえそれらの者がその後どこに栄転していようとも、当時の責任者として、さかのぼって懲戒免職等の処置をとってはどうであろうかと思うのであります。(拍手)こうすることによって、年々四百億円にも及ぶ血税の不当費消は防げるのではないでしょうか。それだけ財政の健全化がはかれるというものであります。運輸官吏出身の佐藤首相、大蔵、郵政、通産、建設等、経済官庁の大臣を歴任した佐藤首相、あなたこそが予算の厳正執行、各省事務当局の綱紀粛正を行なう最適任者と考えます。この問題に対するにいかなる態度で臨むか、御答弁を要求いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 沖繩問題につきまして、たいへん田原さんの信用をおいていらっしゃる新聞記者から、絶対にアメリカは返さない、こういう話を聞いたんだが、君はだれを信用しているのか、こういうようなお話でありますが、私は、ジョンソン大統領と直接お話をいたしました。そういたしましたら、アメリカ側のジョンソン大統領の答えは、過日申し上げましたとおり、日本側の島民のこの願望はよく理解ができる、そうして、小笠原島民の願望もよくわかる、それに対しまして、よく理解はできるが、極東における自由世界の安全保障上の利益がある、この希望の実現を許す日を待望している、こういうことを大統領自身が申したのでございます。私は、これはたいへん日本語としてはわかりにくいことばでございますが、この前申しましたように、沖繩を占拠しておるこの事態は、極東の安全保障上の必要からこれをやっておるのだ、その必要がなくなったならばいつでもこれを返すというのでありまして、非常に明白なことでございます。(拍手)私は、この点に信をおき、――ただいまの記者諸君もたいへんに信用のおける人だろうと思います。また、ワトソン弁務官のそれぞれの記者会見等の談話も引用されました。これもけっこうであります。しかし、私自身は、最高責任者の言を信頼していくつもりでございます。(拍手)
 また、外交の基本的方針として、日米ソ中、この四カ国で不可侵条約を締結したらどうか、それこそ安全への道だ、こういうことをお尋ねでございます。わが国は、御承知のように領土不可侵、攻めていかない。また、私どもは内政へ不干渉であってほしい。内政不干渉、この二つがわが国外交の基本の路線であります。平和憲法の命ずるところでもあります。この立場で、いずれの国とも態度をはっきり明確にして、つき合っておるのであります。私は、三国だけに限ってかような条約を締結する要はない。私どもの平和を愛好する、不可侵、また不干渉、この原則を承認してくれるだけで、もう安全は確保できるものだ、かように私は信じます。(拍手)
 減税、物価等についてのお尋ねでございますが、いずれ所管大臣から詳しく説明することでございます。この物価こそは、わが内閣の当面する最も重要な問題であります。
 この点につきまして、いろいろ具体的な例をあげてお尋ねがございました。もともと物価対策といたしましては、その原因がどこからきているか、これを十分追求いたしまして、その原因に対する対策を立てていかなければならない。この原因を探求いたしてまいりますと、われわれは、経済を安定基調へ立て直すこと、これがまず第一必要なことであります。これにはしばらくの時間を要します。しかし、今日の物価問題は、御承知のように今日の問題である。したがって、経済成長安定への道をたどると同時に、当面する急場しのぎの物価対策、これまた私どもが力を入れておるところでありまして、十分おくみ取りをいただきたいと思います。(拍手)
 また、減税につきましての私の所信、これこそは、減税は大幅にやるべきだ。ことしの御審議をいただきます予算につきましても、財政支出が増大し、また、税収入の多きを期待できないこの機会におきましても、一般減税といたしまして千百五十一億、この多額の減税をやっております。同時にまた、(「三千億はどうした」と呼ぶ者あり)この三千億という問題は、もっと意欲的なものを考えてもいい。もちろん、これは長期にわたってわれわれが計画するのでありまして、その熱意のあるところをおくみ取りいただきたい。私は、今後とも引き続いて減税についての誠意を示していくつもりでございます。(拍手)
 また、貿易等につきましての問題についてるるお尋ねがございました。ことに、中共貿易の重要性を引き合いに出されて、中共貿易はさらに進めるべきだ、その支払い方法等についても、さらにくふうすべきだ、こういうような御指摘でございます。私は、これらの点につきましても十分お説に耳をかしつつ、研究してまいりたいと思っております。(拍手)
 最後の、不当支出あるいは不正支出、また、横領等の事項につきましての会計検査院から指摘された各項目、これは依然として非常に多い、これは、ただ単に決算委員会の方々ばかりでなく、国全体としてもよほど注意すべきことだ、この御指摘は、まことに私どもとしても当然のことであり、また、その線に従って一そう厳正にこの支出を守るべきだ、かように思います。御承知のように、予算編成、予算獲得ばかりが仕事ではございません。その支出におきまして、国民の膏血である税、これの使用につきましては、これは十分私どもは注意をしていかなければならない、かように考えます。(拍手)
  〔国務大臣田中角榮君登壇〕
○国務大臣(田中角榮君) 私からお答え申し上げる第一は、選別融資の方向にあるというが、かかる重点的、効率的な融資のルートをつくるとすると、中小企業や農業のような金融に圧迫がこないかという御心配でございますが、選別融資ということは、単に政府が資金の統制をしようなどという考えではなく、業界において自主的に、より効率的な資金ルールをつくりたいという考えでございます。誤解のないようにお願いいたしたいと存じます。
 なお、中小企業や農業の合理化金融等につきましては、特に政府は重点を置いておりまして、中小企業につきましては、中小三機関の融資資金の拡充その他条件の緩和等、十分な配慮をやっております。農業等の低生産部門の近代化、合理化に資するための融資につきましても、農林公庫の資金量の拡大その他の処置をとっておりますから、民間資金の融資ルールをきめるということが、よしんば行なわれたとしても、中小企業や農業に対する融資が圧迫せられるというようなことはございません。
 第二は、国際収支の問題であります。国際収支につきましては、御承知のとおり、貿易収支は昨年の七月、経常収支は八月に、おおむね均衡がはかれるようになったわけでございます。米国の利子平衡税等のいろいろな難関があったにもかかわらず、金融引き締めその他わが国の産業界及び国民の努力によって、国際収支はだんだんとよくなる方面にあることは御承知のとおりでございます。ちょうどこの三月、年度間を通じまして、当初政府が見通しました総合収支じりの赤字は一億五千万ドルということでございましたが、おおむねこれをゼロにし、二千万ドルないし五千万ドル黒字に転換をするという見通しでおおむね間違いがないと思います。長期的な見通しにつきましては、御承知のとおり、ドル防衛が行なわれておりますし、ポンド不安等もございますので、去年の十二月対前年度比三〇%以上も輸出が伸びたというような甘い考えではおれないと思いますが、少なくとも一五%ないし二〇%の輸出増を続けるように各般の施策を行なってまいる予定でありますので、国際収支の長期的な見通しは、楽なものではありませんが、明るい道をたどるべく全力をあげるべきだと考えるのであります。
 なお、減税につきまして社会党案の御説明がごさいましたが、私も十分拝承いたしております。まあ、社会党案といわなくても減税はできるだけいたしたいということが、わが党内閣のずっと長いことの姿勢であります。過去十年間に延べ一兆二千億、現在の数字に換算すると約十兆円にも及ぶ大きな減税が行なわれておるわけであります。
 なお、今年度の減税につきましても、一般の減税額は、平年度九百二十二億円でございます。国税の総減税額千百五十一億円に比べますと、八〇%以上の所得税を中心にした一般的減税を行なっておるのでございます。最終案をきめますと、大体いつも文句がございますが、半年くらい前のことを考えていただくと、現在の状態において可能な限り最大の減税をやったということが理解いただけると思います。税制調査会の皆さんが四十年度の減税案をつくりますときには、四千五百億の自然増収の初年度二〇%、九百億の減税ができれば最大だということを国民各位に明らかにいたしておるわけであります。しかも、現在まで八〇対二〇、七〇対三〇という一般減税と企業減税その他との比率をもって計算をしましても、少なくとも、平年度九百二十二億を上回るような所得税を中心にした一般的減税が行なわれると想定した人はないと思うのであります。自然増収四千五百億に満たない状況にもかかわらず、ただいま申し上げましたような減税案をつくったのでありますから、政府の減税に対する熱意のほどは十分御理解いただけると思うのであります。(拍手)社会党の皆さんがおつくりになったような減税案も検討いたしてみましたが、これは、標準世帯を六十万円まで免税したいというときには、五十万円程度しかできなかったときに六十万円までやりなさい、今度は六十万円に近い五十六万数千円と課税限度額が上がりましたので、今度は八十万円、非常に御鞭撻を願っておるものと考えまして、われわれも将来十分検討してまいりたいと考えるのであります。
 第四に、租税特別措置法を廃止して、そして一般的減税を行なえということを言われましたが、租税特別措置法というのは必要があってやっているものであります。中小企業をもっとよくするために、また農業をもっと平準化して、もっとレベルアップするために、日本の国際競争力を築くために、どうしても必要なものとして租税特別措置法があるのであります。これを廃すということは、一体可能なことかどうか、静かにお考えいただきたいと思います。
 特に資本市場の育成や、貯蓄の増強に対しての減税は廃止すべしということを申されましたが、物価安定ということをほんとうに考えますと、物価が安定しないところに貯蓄の増強はできないのであります。同時に、貯蓄の増強ができなければ物価の安定はむずかしいのであります。こういう事実を考えるときに、物価の安定だけ声を大にせられながら、物価安定に資する健全消費とか、貯蓄増強とか、資本市場の拡充とか、国際競争力の培養とか、こういうものに対する特別措置を廃止せよということはうなずけないのであります。
 いずれにいたしましても、日本の置かれておる国際的な状態を十分考えながら、将来のために、百年のために大道を開くという気概で減税に対しても取り組んでおるのであります。(拍手)
  〔国務大臣高橋衛君登壇〕
○国務大臣(高橋衛君) 物価の安定については、政府が非常な決意をもってこれに対処しておりますことは、先ほど総理からお答え申し上げましたとおりでございます。しこうして、先ほど御指摘の中に、物価の上昇と賃金の上昇との関係に言及されたのでございますが、昭和三十五年を一〇〇といたしますと、物価の水準は、三十八年においては一二一と相なっておりますが、賃金については、同じく三十五年を一〇〇といたしますと一三五と相なっておりまして、実質上相当な上昇と相なっておるのでございます。
 また、最近の不況が過剰生産または供給過剰に原因いたしておるというところから、この際、賃金の上昇を押えるべきでないというお考えのようでございます。この点については、政府はこれに介入するつもりは全然ございませんが、ただ経済の仕組みとして、賃金が物価に相当大きな影響を与えるということは、ぜひ申し上げておきたいと存じます。要するに、生産性の上昇の範囲において賃金が上がるのであれば、これは物価に対して大体影響なしに済む。しかしながら、その生産性の上昇のためには、御承知のとおり設備投資を必要とする。したがって、設備投資については資本費を必要とする。ゆえに、生産性の向上分のうちから資本費を控除したのに見合う程度に賃金の上昇が行なわれるのであれば、少なくとも、その企業においては賃金コストが上がることによって値段を上げなければならぬという理由はなくなるわけでございます。しかしながら、御承知のとおり、製造業等におきましては、生産性の上昇が合理化、近代化によってなし得る可能性は多いのでございますが、サービス業とか、または農林漁業においては、これは相当に困難な問題でございます。したがって、国民経済全体として、生産性の上昇に見合う程度に賃金所得の上昇が見合っておれば、物価は安定的な動きを示す、かように考えるのでございます。したがって、先ほど、日本は個人消費の割合、構成比が非常に低いという御指摘がございました。この点は御指摘のとおりでございまして、日本は個人消費の割合が少なくて貯蓄性向が高いということが、日本の高度成長をもたらした一つの大きな原因でございまして、非常に力強い点であると考えておる次第でございます。しかしながら、同時に、過去三年度間、個人消費が年々一五%も伸びておるという事実もまたわれわれは忘れてはならない点でございます。要するに、個人消費がぐんぐん伸びることによって、成長はある程度テンポを落とさなければ、結局物価の上昇の原因に相なるということを申し上げたいと存ずるのでございます。そこで、かような観点から、政府といたしましては、個人消費はできるだけ節減をいたしまして、消費の健全化、貯蓄の増強になお国民の御協力をお願いいたしたいと存じます。
 御提案の中に、公共料金を一年間据え置いて、その企業に対しては、国が金を出してやったらどうだという御提案がございました。政府といたしましては、御承知のとおり、昨年一年間公共料金の据え置きをいたしましたが、こういうふうな公共料金の据え置きという措置は、いわば異常な措置でございますので、長く続けるべきでないという観点から、これを一年間限りにいたしました。しかしながら、公共料金を抑制するという方針、考え方については、なお変えておるものではございません。したがって、能率的な経営をしても、なおかつ困難な業種については、ケース・バイ・ケースに審査をいたしまして、その料金の引き上げを認めるという態度をとっているわけでございます。
 また、管理価格的な要素のために物価の上昇が起こっておるという御説のようでございますが、日本では、諸外国のように独占価格に類するものはほとんどない、かように考えております。しかしながら、寡占状態であって、そういうふうなおそれのあるものについては、御承知のとおり、独禁法によるところの公取の活動にまちましてこれが規制をしていく、かように考えておる次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣櫻内義雄君登壇〕
○国務大臣(櫻内義雄君) 貿易商社の合併をしたらどうかという御意見については同感の点がございます。輸出振興の上に過当競争は慎むべきでありまして、現在通産省といたしましては、輸出入取引法による特別の法人、貿易連合の設立を認めておりまして、これによって貿易の窓口の一本化をはかる行政上の優遇措置を与えておるというような次第でございます。
 日中貿易につきましては、すでに総理からお答えがあったところでございまして、私としては、相互主義の原則に基づきまして、政経分離の立場で拡大をしていける、こう考えております。また、企業家におきましては、こういう与えられた条件の中で努力をすることによりまして、貿易の打開、拡大ができる、かように存ずるものでございます。(拍手)
  〔国務大臣神田博君登壇〕
○国務大臣(神田博君) お答えいたします。
 妊産婦、乳幼児のなま牛乳の配給の実施についてお尋ねでございましたが、御承知のように、母子栄養強化の対象といたしまして、市町村において、低所得者階層が、妊産婦また乳幼児を入れまして十三万人ほどになっております。これらにつきまして、妊産婦については、妊婦期間六カ月、産婦期間三カ月、それから乳幼児につきましては、生後四カ月目から九カ月間、一人当たりそれぞれ牛乳一本を支給したい、こういうことになっております。(拍手)
  〔国務大臣椎名悦三郎君登壇〕
○国務大臣(椎名悦三郎君) 移住の問題について御質問がございましたから申し上げます。
 最近、日本で労力が非常に不足いたしまして、とても移住どころじゃないという状況でございます。しかし一方、海外に非常な関心を持っておる有為の人材が、海外で大いに働きたいというような人が、だんだんふえてまいりました。そこで、移住の問題につきましても、この新しい段階を迎えて、海外諸国において新しい建設にだんだん突き進む国が多くなってまいりましたので、これら有為の人々をこの新建設に進みつつある国に送って、そうしてその国の平和建設に協力する、こういう能力のある、技術のある人々を送るという移住政策を考えておるのであります。これは日本人の特徴を十分に認めて、そうして、これらを歓迎する国が非常に多いのであります。そこで、移民の送金もさることでございますけれども、しかし、それよりも大切なことは、相手国の建設に有効な協力をして、そして、日本人とかあるいは日本そのものの声価を高めて、そして日本の平和的な進出の先兵となるというようなことが、新移住政策にとりましてはきわめて意義のある問題でございますので、政府としては、今後大いにこの方面に進みたいと考えております。(拍手)
  〔国務大臣赤城宗徳君登壇〕
○国務大臣(赤城宗徳君) 私に対する質問は、牛乳の国家管理をしてはどうか、こういう質問でございます。
 酪農の安定的な発展につきましては、鋭意力をいたしておるのでございますが、一つは安定的な消費の拡大だと思います。そういう意味におきまして、四十年度におきましては、学校給食等におきましても七十万石、補助単価も百八十CC五円、こういうことにして、ことしの倍くらいの消費を拡大すること等を中心といたしまして、抜本的にやっていきたいと思うのであります。
 あるいはまた、妊産婦、乳幼児につきましても、厚生大臣から話がありましたように、十三万人を対象としてなま牛乳の供給をしたい、こういうふうな一つの方法を持っておりますので、なま牛乳で将来は完全給食したい。そのために国家管理をするかどうかというような御意見もありましたが、一つの御意見だと思います。しかし、牛乳の国家管理につきましては、種々問題がありますので、いまのところ、これを行なうという考えは持っておりません。
 それからもう一つ、酪農の振興につきましての問題は、飼料の問題でございます。非常に自給飼料の依存度が少ないので、これを自給飼料に依存するように、草地の造成その他自給飼料にたよるように向けております。しかし、三十九年度におきましても、流通飼料の供給量約八百六十万トンのうち、五百四十万トンが輸入飼料に依存しておるわけでございます。麦類とかふすま類――食管制度の関連のもの、あるいは海外の供給源の不足等から需給及び価格の安定をはかるため、特に必要と見られる飼料につきましては、飼料需給安定法に基づきまして、政府が直接輸入飼料の買い入れとか売り渡しを行なって、相当国が関与しております。このほかは自由に行なわれておるのでございます。この飼料の全量を国家管理して、流通面の規制を行なうということがどうかというような御質問と御意見でございましたが、これまた行政技術的にもはなはだ困難であるとともに、効率的でない面もありますので、現在飼料の全面国家管理を行なうという考えは持っておりません。(拍手)
  〔国務大臣小山長規君登壇〕
○国務大臣(小山長規君) 私に対しまするお尋ねは、地価高騰抑制のために先買権を使い、あるいは公的機関によって宅地開発をやったらどうか、こういうお尋ねでございますが、政府としましても、現在それを実行いたしております。たとえば、四十年度の例をとってみますと、四十年度のいまお願いをいたしております予算で見ますると、先買権として使いますのが三千六百二十五万坪、そのほか研究学園都市の九百九十万坪を合わせますと、四千数百万坪のものは先買権の対象に相なるわけであります。そのほか、宅地開発事業あるいは土地区画整理事業をやっておるのでありますが、ただこれだけでは地価の抑制をするわけにまいりません。そこで、いわゆる都市の地方分散であるとか、あるいは研究学園都市であるとか、あるいは新産業都市あるいは工業特別都市というような地方開発に重点を置きますとともに、一方、鑑定士を使って地価公示の制度を使うとか、あるいは宅地建物業者の指導をするとか、あらゆる方策を講じまして地価抑制に万全を期しておる次第であります。(拍手)
  〔国務大臣小泉純也君登壇〕
○国務大臣(小泉純也君) 最後の御質問にございました会計検査院に指摘された不正不当支出の件でございますが、防衛庁におきましては、任務の性質からいたしまして、この問題については格段の留意をいたし、年度初めに会計検査基本方針なるものを指示いたしまして、監査の厳重を期してまいったのでございます。先ほど、三十六年度三億円という御指摘がございましたが、これは誤りでございまして、もちろん、一件もあってはならないことではございますが、三十六年度は、六件、二千八百万円であり、三十七年、三十八年度と大幅な減少を示しておることを御了知願いたいのでございます。もちろん、私どもはこの不当支出の絶無を期して、今後ますます監査の厳重を期したいと存じております。
 さらに、予算の問題につきまして、ナイキ部隊の設置についてのお尋ねがございましたが、御承知のような最近の航空機の進歩発達にかんがみまして、在来の防空体制をもってしては空の守りが十分でないという見地に立ち、ナイキ部隊を設置することといたし、田原議員が最も御承知の、産業の重要地帯でございまする北九州にこれの設置を決定いたしたような次第でございます。
 また、仮想敵国云々というお話がございましたが、私どもは、仮想敵国というようなことは毛頭考えの中に入れておらないのでございます。
 さらに、防衛庁予算の点につきまして、四十年度の予算が三千億台に乗ったことは非常に膨大な軍事費であると御指摘がございましたが、私どもからいたしますれば、国の守りは重大でございまして、もちろん、その大部分の予算を民生安定、社会福祉等に回すべきではないかというのは一理ございまするが、民生安定、産業開発のその前提をなすものは、平和を確保し、国民の生活に何らの危害を起こさしめないということでございます。(拍手)かような点からいたしまして、装備の改善、近代化、基地対策の推進、隊員の処遇改善等、まだまだ私は不十分であると考えておるのでございます。
 また、核兵器の発達によって世界に戦争は起こらない、世界は永久に平和であるから、防衛力は要らないではないかというような趣旨のお尋ねでございまするが、世界の現状は、軍事力の均衡によってかろうじて平和が保たれておるのが現実の国際情勢でございまして、局地的紛争も起こっておりますし、また、将来さらに頻発する形勢すらありますることは御承知のとおりでございます。私どもは、従来の方針どおり、日米安保体制の基礎の上に、憲法に許されました最小必要限度の防衛力を整備していく方針には変わりないのでございます。(拍手)
  〔国務大臣高橋等君登壇〕
○国務大臣(高橋等君) 法務省関係で、会計検査院の決算審査報告において不当事項として指摘されましたものは、過去三年間におきまして、証拠品として置いておりましたウイスキーを、百本余り不正持ち出しをしたということと、看守が四百万円ばかり領置金を横領したという二件でございます。こういうことがありましたことは、まことに遺憾に存じます。このような場合、事故を起こしました本人の責任を追及することはもとより当然のことでありますが、その監督の衝にあった上司の監督責任をただし、もって不正事項の粛正をはかることがきわめて肝要であると信じます。法務省におきましては、従来から右の方針のもとに、特に最も厳重に職責を追及しておりますが、今後ともこの方針を堅持いたしまして、不正事項の未然防止と職員の綱紀の粛正に格段の意を用いる所存でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(船田中君) 西尾末廣君。
  〔西尾末廣君登壇〕
○西尾末廣君 私は、民主社会党を代表いたしまして、第一に、佐藤内閣の政治に対する基本姿勢、第二に、今日の不況と物価高に対する施策、第三に、激動する国際情勢に対処すべき日本外交のあり方、この三点に問題をしぼって、佐藤総理にその所信をただしたいと存じます。(拍手)
 まず、第一に、政治姿勢の問題であります。
 私は、総理の施政方針演説をつぶさに拝聴いたしました。過般の臨時国会とは異なり、本国会では、佐藤総理の本格的な経綸を伺うことができると期待していたのでありますが、率直に申し上げますと、私は失望いたしました。(拍手)例によってけっこうずくめの総花的作文で、昨年来のきびしい国際情勢、深刻な経済情勢について全く認識不足であり、今後の困難な政局を担当せんとする気魄と決意に欠けているといわざるを得ません。(拍手)
 今日、国民が政治に無関心となり、民主政治が停滞しておる最大の要因は、歴代の自民党総理が重要な政治外交の課題を回避し、単に口先だけのスローガンで政治を担当してきたからであります。(拍手)佐藤総理の言う社会開発も、人間尊重の政治も、愛国心も、私には、何だかスローガンだけのものであるとしか思えないのであります。(拍手)
 さらに、今日の政治を毒しているものは、政府の優柔不断であります。一例として、ILO問題をとってみましても、自民党政府がいかに無定見にして優柔不断であるか、きわめて明瞭であります。(拍手)わが党は、国際信義の上からも、ILO条約の批准をすみやかに完了すべきことを主張してきたのであります。私は、昨年の通常国会末期に、池田前総理と会見し、まず条約案の批准と公労法、地公労法の改正を行なうべきであることを主張しました。もし、それさえ困難な場合には、条約案だけでも批准すべきことを申し上げたのでありますが、ついに政府の決断を得るに至りませんでした。七年の長きにわたり条約批准案をたなざらしにし、その間、一部の労組幹部とやみ取引とも受け取れる談合をしたり、また、すぐこれをほごにするという政府の一貫せぬ態度は、ついに、ILOの対日調査を受けるという醜を世界にさらす結果を招いたのであります。(拍手)まことに不見識、無定見といわざるを得ません。(拍手)
 今日の困難なる政局を乗り切るためには、総理の国を思う異常な決意と断固たる決断、さらに、国民とともに国政を担当するという謙虚なる気持ちが必要であります。(拍手)これなくして、今日の複雑な内外情勢に処する道はありません。
 また、静かに顧みまするに、昭和四十年という年は、戦後二十年、明治維新以来まさに百年にならんとする歴史的転機の年であります。世界の情勢を見ましても、昨年来、各国指導者の交代目まぐるしく、東西の冷戦が緩和したかと思うと、他方で南北の対立が激化するというありさまであります。その中でも、特に注目すべきは新しい国家意識の台頭であります。このような流動的な世界の動向に対処して、日本の国はいかにあるべきか、わが国の安全と繁栄をどうするか、未来を背負う青少年に、どういう国として日本を引き継ぐか、われわれはいやでもこれらの根本問題とまっこうから取り組まねばならないのであります。(拍手)
 この重大な歴史的難局にあなたは政権を担当なされたのであります。その責任たるや、まことに重かつ大であると申さねばなりません。佐藤内閣はいままでのような歴代自民党政府の単なる延長であってはなりません。この難局を乗り切るためには全国民の心からなる協力が絶対に必要であります。総理は、この点について、はたして十分の認識と覚悟をお持ちでありましょうか。寛容と調和もけっこうでありますが、政治はときに決断を必要とすることがあります。われわれは、野党として、ときにきびしく批判し、また堂々と対決してまいる方針であります。しかして、日本の利益という大局的見地から、党派を越えて調和すべきは調和するというのが真の民主政治であります。(拍手)
 以上、私の政治姿勢に対する所見を申し述べまして、佐藤総理の今後の政局に対処する御決意のほどをまずお伺いいたしたいのであります。(拍手)
 次に経済問題に移ります。
 私の質問の第一点は、今後の経済政策を進めるにあたっての基本方針であります。池田内閣当時の高度成長所得倍増政策の失敗は、昨年になって集中的にあらわれてきました。すなわち、物価高、中小企業の倒産、株価の低迷、金融の不正常、これであります。これらの失敗を克服してわが国経済を軌道に乗せるためには、所得倍増政策の根本的な転換が必要であります。しかるに、佐藤総理は施政方針演説においても、中期経済計画を基本として安定した成長をはかると言っておるにすぎません。中期経済計画はずさんなもので、池田時代の高度成長政策の継続でしかありません。このような安易な態度で、今日のこの深刻な不況と物価高を克服することはできません。加えて、佐藤内閣が成立以来実際に実施してきた経済政策といえば、株価に対する救済以外になかったといっても過言ではないのであります。(拍手)現在の不況と物価高の是正は単に金融緩和によって解決するものではありません。まず生産過剰を招きやすい大企業の過当競争と、これを支援するような現在の民間金融の過当競争、この二つの体制を是正して、設備投資の調整、物価上昇の抑制、国際収支悪化の予防など、根本的な対策をとるべきであります。そのためには、わが党がすでに提唱してきた大企業の社会的責任を明らかにする重要産業基本法、金融正常化のための銀行法改正を行ない、まず大企業の体質改善と、過当競争の抑制、銀行の預貸率改善を第一歩とする金融の正常化をはかることが何よりも必要であります。(拍手)かくして、産業と金融の両体制の体質改善並びに社会保障の拡充や減税といった国民福祉の向上の二つを同時に実現できるわけであります。われわれは、これを福祉経済成長政策と呼んでおります。佐藤総理は、今後の経済政策の基本をどこに置かれるのでありますか、この点をお伺いいたしたいのであります。(拍手)
 第二は、物価抑制についてお尋ねいたします。
 佐藤内閣は、口に物価抑制を唱えながら、実際には消費者米価の値上げをはじめ、私営、公営バス、医療費の一方的な値上げを認めております。すなわちあなたのとっておる政策は、物価抑制ではなく、実際には高物価政策なのであります。物価抑制について、わが党はすでに再三にわたって公共料金のくぎづけ一年間延長、大企業製品価格の引き下げ、農業、中小企業の近代化、地価値上がり抑制、消費者基本法の制定による消費者の保護などについて具体案を提示しておりますが、政府は少しもこのわれわれの提案に対して反省の色を示しておらないのであります。いまや大きな社会不安にまで発展しつつある物価高抑制について、あなたはいかなる具体策と決意をお持ちでありまするか、この点を明らかにしてもらいたいと思うのであります。(拍手)
 第三に、当面緊急な中小企業の倒産について総理にお伺いいたします。
 政府が実施してきた金融引き締め政策により、昨年から中小企業の倒産、不渡り手形の激増が顕著で、これをいかに防止するかは今日きわめて重要な課題であります。わが党はすでにこれらの救済策として中小企業の関連倒産救済臨時措置法案、不渡り手形整理協会法案を準備し、共同提案を自社両党に呼びかけておりますが、政府は三月決算期を前後する企業倒産、不渡り手形の激増による連鎖倒産の事態をいかに防止し、いかに事後救済するのであるか、この点について明確な御答弁をお伺いいたしたいのでございます。(拍手)
 次に私は、現下の山積する重要な外交問題のうち、時間の関係上、特に佐藤総理が中国問題の基本をどうされるのであるか、また、急務を要する核拡散の防止についていかなる具体策をお持ちであるか、質問をこの二点にしぼって、政府の見解をただしたいと存ずるのであります。
 第一点は、佐藤内閣の対中国政策であります。
 今日ヨーロッパは比較的に安定していますが、アジアの情勢はきわめて流動的な危機にあります。中でも最大の危機は、南ベトナム紛争であります。しかして、その流動的な危機の克服は、結局中国問題の平和的、合理的解決なくしては不可能であります。この認識はいまや世界の常識であります。まことに中国問題は、文字どおり世界平和の前途を明暗に分岐する問題であります。それとともに、わが国の平和と安全を左右する重大事として、われわれの前に提起されているのであります。そのことは、中国問題に対してわれわれが安易な態度をとることを強く戒める一方、イデオロギー的偏見や眼前の困難を回避した一時的ごまかしが、いかにわが国にとって重大な危険と不利益をもたらすかを警告するものであります。(拍手)この見地から私はまず佐藤総理の真意を確かめたいと思うのであります。
 あなたは組閣直後の記者会見で、一つの中国ということを仰せられました。次いで椎名外相は、臨時国会において台湾の国連代表権を抹殺する気はないと言われたのであります。このとき私は佐藤内閣もわが党の主張しておるところの一つの中国、一つの台湾に賛成かと推測しておりますと、間もなく佐藤総理は記者会見におきまして、われわれは一つの中国、一つの台湾の立場をとらないと言明されたのであります。これでは佐藤内閣の対中国政策の基本は一体那辺に存するのであるか、あなたの言う一つの中国とは、一体その内容は何であるか理解に苦しむものであります。(拍手)この問題は中国対策の中核をなすものでありますから、一体あなたの言う一つの中国とは何であるかということを明確にお答え願いたいと思うのであります。(拍手)
 中国問題に対する私の第二の質問は、中共の国連代表権に関する問題であります。七億の国民を現に統治する中共は、完全なる一個の主権国家であります。このことは何人も否定しがたい事実であります。したがって、台湾の国民政府を一つの中国の主人公だとする見解がいかに空虚であるかは議論の余地はありません。それは遠からず国連代表権の問題からもくずれ去ることは、もはや必然のことと申さねばなりません。そのことは佐藤総理も十分御存じのはずでありましょう。それをいたずらに糊塗して言を左右にするのは、アメリカへの気がねでありますか、それとも国民政府への義理立てでありましょうか。このような態度は、あなたが日本の総理大臣として、その将来に対する重大な責任を回避し、勇気に欠けていることを物語っているものといわざるを得ないのであります。(拍手)
 わが党は、中共の国連加盟の問題について、早くより具体的な提案をいたしております。それは、国民政府の存在は、とりあえずこれを国連の場において確保し、中共に対しては、中国の代表権を認め、一定期間の後、さらに台湾の最終帰属については、台湾住民に国連憲章の原則に基づく民族自決を貫徹させるということであります。(拍手)この解決策は、決してわが党の独断ではなく、むしろ世界の大勢たらんといたしておるのであります。すでに自由陣営内においても、イギリス、カナダ、スカンジナビア諸国、エール、フランスなど、有力な諸国がこの立場に立っているのであります。
 われわれは、いまこそ日本が自主外交の真価を発揮し、これらの諸国と協力し、アメリカを説得して、国連の場でこの問題の円滑な解決をはかるべきだと思うのであります。世界の大勢に逆行する中共の国連代表権を手続上の方法をもって阻止せんとするところの重要事項指定方式につきましては、わが国が共同提案国となることはこの際絶対にやめるべきであると思うのであります。この点を強く要求いたします。(拍手)私は、中共を国連に参加させることは、野にトラを放すがごときアメリカの中共封じ込め政策を改めさせることであるとともに、中共にも世界平和の責任を分担させることとなり、あわせて自民党の主張するところの国連中心主義とも一致するものであると存ずるのであります。
 以上の点について、佐藤総理はいかなるお考えを持っておりますか、この重大な問題について、率直な御所見を拝聴いたしたいと思うのであります。(拍手)
 中国問題についての私の第三の質問は、佐藤総理がアメリカに対して日本の自主性を尊重させたと称する政経分離の方針を、この際思い切って前進させ、政治面においても可能な限り中共と接触する機会を増大すべきだということであります。われわれは、台湾の公正な処理を無視して、無条件に中共ペースに追随するいわゆる国交回復論には、にわかに賛成しがたいのであります。しかし、他方、これからの新しい日中関係は、もはや政経分離方式ではやっていけない段階にきていることもまた疑う余地がないのであります。(拍手)
 この際、政府は、勇気と決断をもって、政経分離という自繩自縛の態度を改め、明らかに両国の利益に合致するところの気象、郵便、航空、貿易等については、政府間協定の締結に踏み切るとともに、要人の往来及びAA会議にわが国の代表を派遣し、その場で中共側と積極的接触をはかるなど、中共との間に一定の政治的交流をはかるべきだと思うのであります。この点に関連し、昨日総理は社会党の和田君に対する答弁の中で、中共との国交が回復していない現状から、気象、郵便、航空協定は政府間では結べないのが当然であるという趣旨を述べられたのであります。これらの三つの問題については、当局間の業務協定は言うに及ばず、政府間の貿易協定についても、それが直ちに国家の承認とならないことは、国際法上の原則や慣例であることは言うまでもありません。さらに、大陸の政権との政治接触についても、日華平和条約において、大陸は別だというたてまえをとっておりますから、この点については、政治的接触を中共と持つことは十分可能であると考えるのであります。この際、私は、政経分離の壁を突き破る勇気があるかいなか、総理の決心のほどをお示し願いたいと思うのであります。(拍手)
 外交問題の第二点として、私が現下の国際情勢に対処して最大の急務であると考える核拡散防止について、佐藤総理の決意と所信をお伺いいたしたいと存ずるのであります。
 昨年十月の中国の核実験は、核拡散防止という人類の悲願を踏みにじるものであって、まことに遺憾千万といわざるを得ないのであります。(拍手)われわれがこの段階で最もおそれることは、この中国の核保有がわが国の核武装を正当化する論拠に利用されたり、あるいはまた核開発能力を有する世界の国々が、これを契機にこぞって核保有に踏み切る事態が台頭することであります。現にそれらの徴候は、国内にあっては一部の核武装論として、また外にあってはインドやインドネシアの核保有への動きに見られるように、単なる危惧として片づけられない状態にまでなってきておるのであります。
 いまや世界における核開発の可能な国は西ドイツ、イタリア、カナダ、北欧諸国、インド、インドネシア、アラブ連合、日本など十カ国以上を数えるに至っております。これらの国々の中から万一核保有に踏み切る国々が続出するならば、あすの世界は一体どうなるでありましょう。それは人類の破滅以外にありません。われわれの基本目標が核兵器の全面禁止にあることは言うまでもありませんが、その目標を達成する最初の第一歩は、核拡散の防止でなければならぬのであります。(拍手)
 しかして、核拡散防止のためにわれわれは何をなすべきでありますか。核拡散防止の声は、いまや世界に満ち満ちております。しかし、すでに核を保有しておる国、核開発の能力のない国々の声は、何となく説得力に欠けておるのであります。そこで、以上申し述べたような核開発の能力を持ちながら、いまだ核開発に乗り出さない国々が団結して、核拡散の防止を呼びかけることが必要であり、かつ実効のあることであると私は考えるのであります。(拍手)これらの国々に核拡散の防止を呼びかけるのにわが国が最適の国であると私は考えるのであります。(拍手)
 以上のような観点から、この際、政府が日本自体の非核武装を内外に宣言するとともに、総理みずから上述の関係国による核拡散防止の国際会議を提唱すべきであろうかと考えるのであります。(拍手)そのためには、佐藤総理は主要な関係諸国を歴訪して、いまこそ核拡散防止の真剣な、具体的な行動を起こすべきだと思うのでありますが、総理の御決心はどうでありしょうか。この点をお伺いいたしまして、私の質問を終わる次第であります。ありがとうございました。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 現下の国内情勢、また国際情勢、これは御指摘のとおりまことに重大でございます。この際に政局を担当する者は、十分お説のようにこの現状を把握して、しかる後これと真剣に取り組んでいく。その場合に最も必要なことは、御指摘のとおり国民とともにこの難局に処していく、また国民とともに歩む、そういう政治でなければならないと思います。私はかねてからかような主張をいたしております。問題は、言うだけではいけない、やはり実行にあるのだ。ただいまお話のように、これはどこまでも現実の問題としてこれを処理していく、有言実行、そこに民主主義のルールがあるのだ、かように思います。私はそういう意味でつとめてまいりたいと思います。
 ことに、西尾さんが、超党派の協力一致体制が最も望ましい、そういうことを提唱されました。私も、この超党派でものごとを考えることができないだろうか。必ず至るところに対立抗争がある。対立のない、抗争のない、そういう社会が望ましいのではないか。そういう意味で私は調和ということを申しております。私は、ただいまいろいろそれぞれの立場にあって、それぞれの主張の違うこと、これは当然だと思うが、少なくともお互いに日本人であるということでは同一だ。その立場に立っての国家的利益、それはおそらく共通の場ではないだろうか、かように私は考えます。そうして、その共通の場に立って、初めてお互いが胸襟を開いて話し合う、かようになるならば、国論の協調、同時に強固なる団結、これまた困難なことではないのではなかろうか、かように思いますので、こういう意味の共通の場を見つけたい、これが私の念願でもあります。
 今日国会が協調の場である、そういう意味でお互いに話し合っていく、これはお互いに政治家として、国会の運営を軌道に乗せるという、正常化するという責任を持っております。そういう意味で、各党派にそれぞれの主張はあるにかかわらず、ここでまとまっていく、この姿を同時に国の姿、国の政治自身にも推し広めていきたい、これが私の念願であります。おそらく西尾委員長のお話もこういう点であったのではないか、かように思います。(拍手)
 次に、経済問題についてるるお話があり、同時にまたこれにつきましてはそれぞれの御提案もございました。私は、前内閣が遂行してまいりました高度経済成長政策、これはそれなりにりっぱな成績をあげたと思います。しかしながら、その高度経済成長が非常に急速であったために、ともすると相互に摩擦を生じ、またひずみを生じた、かように思います。この際にやはり経済成長、経済開発、これはまことに必要なことだ、この経済開発も必要なことだが、その経済開発をお互いの生活に直ちに恩恵を与えるように、直結さすような方法はないだろうか、かように考えてまいりまして、私はいわゆる社会開発というその政治の姿、姿勢を取り入れ、そうして社会開発と経済開発と結びつく、そうすれば必ず調和がとれ、いわゆるひずみその他不幸な事態が起こらないで済むのではないか、かように考えまして、この意味でいろいろと対策を推進しておるわけでございます。私の社会開発、これはさらに他の機会に十分御審議もいただきたいと思いますが、経済開発、これが望ましいことである。しかして、同時に社会開発の理念をこれと結びつける、そうすればお互いにりっぱな状態になり、ひずみなぞ生じなくても済むのだ、かように考えます。
 ただいまさらに税についてのいろいろの御提案がございました。やはりこの税制、金融、これらのものは車の両輪のように、現在の経済成長に重要なる影響を与えておるものであります。もちろんこの二つを十分、所得減税ばかりでなく企業減税の面におきましてもくふうをして、そうして産業の育成、強化をはかっていきたい。ことに私は中小企業の今回の対策、これは金融の面で大いに救われたと思いますが、同時に今回の税制改正が非常に中小企業を助けておる。いわゆる企業減税は大企業だけに対して効果があるんだというような御指摘、また批判をしばしば聞くのでありますが、そうではなくて、中小企業においてもこれが非常に役立っておるということを考えます。問題は、やはりこの経済界におきましても協力が大事でございます。私は、各企業間で競争する、自由競争の妙味もありますが、その自由競争にだけ堕してまいりますと、お互いに過当競争の弊におちいる、そこでお互いに協力する場を求めていく、これが望ましいのではないだろうか。ことに設備投資の過当競争あるいは販売価格の過当競争、これなどに当面いたしますと、お互いに協力することの必要なことがよくわかるようであります。
 最後に、中国問題についてお答えをいたしたいと思います。
 中国問題につきましては、いわゆる私どもの立場もさることですが、一面中国民族の立場に立ってものも考えていかなければならない。お互いの交渉の場合には、双方の国柄のその立場についての理解を持つことが大事だと思います。お互いにその立場を理解し、同時にまたその主張を理解する。おそらく――おそらくではございません、はっきり申し上げ得るのは、漢民族としては一つの中国を心から念願しておると思います。この中国が一つであること、これは漢民族の願いだと思います。ちょうど私どもが、日本民族が一つの日本を願うように、同じような状態だと思います。しかしながら、現実は何といっても、ただいま北京政府があり、同時にまた国民政府、これが台湾にあることはいなめない事実であります。これは漢民族の心からの願望であるにかかわらず、二つの現実の政権がある。これが今日私どもが申すところの一つの中国あるいは二つの実際の政権、こういうものを端的に私がお答えしておるのでございます。この状態のもとにおきまして、ただいま国民政府と私どもは外交上、正規の関係を結んでおる。したがって、中共との間におきましては政経分離の関係でこの交渉を、接触を続けておる。しかして、これはすでに御承知のように、政経分離といいながらも、すでに当方からも政治家の出かけておる向きもございます。政治家必ずしも政治だけではなくて商売することもあるというようなお話もあるかわかりませんが、そうじゃなくて、政治家として向こうへも出かけておる。いわゆる政経分離の原則だといいながら、そこらの点はやや乱れつつあるのではないだろうか。私は、こういう関係を続けていくにいたしましても、そこらにややゆとりのある、かような考え方を持っております。ただいまの状況のもとにおいて四つの国家協定、政府間協定、これを結んだらどうかというようなお話がございますが、私は、まだその時期ではない、かように考えております。
 最後に、核拡散防止の問題につきましてお話がございました。これはまことに人類の悲願でございまして、私もお説に対しまして心から賛成するものであり、このことを続けていくためには、どうしても強い背景が必要だ、これは国民の皆さまも、唯一の被爆国としての日本民族の悲願だ、核拡散防止、このことは国民全体の熱願だと思います。私は、機会があれば、ただいま御提案になりましたような点についても十分考えていきたい、かように考えております。以上、お答えをいたします。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(船田中君) 吉村吉雄君。
  〔議長退席、副議長着席〕
  〔吉村吉雄君登壇〕
○吉村吉雄君 私は、ここに日本社会党を代表し、そして、いわゆる所得倍増計画の犠牲となって、物価高に苦しむ家庭の主婦、企業倒産に泣く中小個人商工業者、出かせぎをしなければ食っていけない、不安と疲弊に追い込まれた農民、すなわち、高度経済成長政策の生んだ明暗二相の、その日の当たらない谷間に追い込まれた多くの勤労庶民大衆の立場に立って、佐藤総理の施政方針演説に対し、問題点を提起しながら若干の質問をいたさんとするものであります。(拍手)
 具体的な質問に入る前に、私は、佐藤内閣発足以来事あるごとに喧伝されている人間尊重、社会開発あるいはひずみ是正などなどのキャッチフレーズが、今日のわが国の政治の上で、または政治道義から見て、いかなる認識を佐藤総理はお持ちなのかをお尋ねしたいと思うのであります。
 言までもなく、政治本来の目的は、万人すべてに喜びと希望を与え、将来への繁栄を与えんとするはずのものであります。したがいまして、その対象は、出発の当初から人間尊重であらねばなりません。佐藤内閣がいまにして人間尊重を口やかましく宣伝するというそのことは、いままでの自民党による政治が形の上での経済成長にのみ走り、そこに住む多くの人間を軽視する政治であったことをみずから告白するものであるといわねばなりません。(拍手)あるいはまた、ひずみ是正についてもしかりであります。もともと農業は他産業に比べ、そして中小企業は大企業に比較し立ちおくれており、それゆえに存在していた所得格差を是正するための所得倍増計画であり、農業基本法である旨は、当時政府が力説したところでございます。問題の本質は、その政策目的が達せられず、かえって産業間、企業間の所得格差を増大したいままでの自民党内閣の政治の貧困、その責任に帰せらるべき性格のものでありまして、いまになってひずみ是正を看板にするということは、その政治責任をことばや文字によって回避せんとする態度といわなければなりません。(拍手)人間尊重、ひずみ是正を口にする総理、そうして調和を強調する佐藤総理の政党政治家として、これらの問題に対する見解はいかがなものでありますか、お答えを得たいと思うのであります。
 次に、私は、今日きわめて重大な問題となっている社会保障の問題につきまして、次の三点にしぼって政府の見解を明らかにしていただきたいと思うのであります。
 その第一は、いまや大きな政治問題となりました医療費の問題についてであります。
 神田厚生大臣は、就任と同時に、医療費問題はおれにまかせておけ式の態度をもって、あるときは一二%の引き上げを、あるときは基礎診察料の設置を、またあるときは政治的配慮を口にし、それでなくとも対立的様相のあった医療担当側と支払い側との間の相克に油を注ぎ、昨年四月の中央医療協の答申を軽視し、医療協の審議を混乱におとしいれ、しかも、ついに一月十日、九・五%引き上げを職権告示するに至りました。その結果、支払い側の憤激を招き、いまや医療問題の唯一の話し合いの場である中央医療協の機能は停止し、さらにそれが原因して、厚生行政全般の機能が麻痺するかもしれない重大事態を惹起いたしておるのであります。そればかりではありません。九・五%引き上げの実施による医療費の増大は、政府管掌健保をはじめ、各保険の赤字約一千億が推定されるに至りました。しかも、驚くべきことには、この医療費の増加に対し、たとえば六百六十億の赤字が予想される政府管掌健康保険に対して、国の予算による支出はわずかに三十億、国民健保につきましても、緊急是正分二百六十億の増加に対しまして、国はわずかに十五億しか予算措置をしていないのでございます。残りはすべて被保険者、すなわち国民に負担せしめんとしているのであります。国民生活、そしてまた、国民の医療の上から見まして、このことはきわめて重大といわなければなりません。
 そもそも医療費の問題は、各種健康保険の制度上の不均衡とともに、逐年激増する国民総医療費をだれがどう負担するかというところに根本的問題があるのでありまして、わが国の実態は、公費負担がわずかに約一二%、保険者負担約五八%強、患者負担二八%であり、先進諸外国のそれに比べ、勤労者、患者の負担が非常に多いのであります。あるいはまた、国民所得に対する社会保障費等の振りかえ所得の比率が、西欧資本主義諸国のそれに比べまして四分の一ないし三分の一の低額にしかすぎない、いわゆる国はあまり金を出さないという社会保険重点のわが国社会保障制度そのものに欠陥の根源を求めざるを得ないのであります。(拍手)
 佐藤総理は、その施政方針演説の中で、経済成長の成果が国民の真の福祉と結びつくよう社会開発を積極的に推進すると述べられました。まさにその言は適切であり、その心意気は軒高なりというべきでありましょう。問題は、その言を裏づける財政的配慮がないということでございます。私は、当面する医療費問題の解決を含めて、社会保障を拡充し、人間尊重の政治実現のためには、いまこそ思い切った大幅な国費をこの部面に注入するしかないと考えるのであります。そしてまた、それを行なって初めて国民は佐藤総理の人間尊重、社会開発への熱意と決断に拍手を惜しまないでありましょう。総理の御所見をお伺いしたいのであります。(拍手)
 続いて、私は、厚生大臣にお尋ねをいたします。
 さきに述べましたような医療費問題をはじめ、厚生行政全般について、きわめて深刻な事態を引き起こした当の責任者である神田厚生大臣は、この際率直にその非を認め、その職を辞して、責任を明らかにするということが、事態解決の道と思うのでありますけれども、厚生大臣の所信はいかがでありますか。そしてまた、この混乱した医療並びに厚生行政をどうして軌道に乗せようとするのか、明確な態度表明を求める次第であります。
 さらに、今回の医療費引き上げによって、それでなくてさえ逼迫が伝えられておりますところの各地方自治体の財政は、さらに容易ならざる財政負担をこうむることは必定でありますけれども、自治大臣はこれにどう対処しようとするのか、あわせてお尋ねしたいのであります。
 第二に、私は社会の底辺の人たちの問題に目を転じてみたいと思うのであります。
 初めに生活保護基準であります。政府はこのたびこれを一二%引き上げることをきめました。申し上げるまでもなく、生活保護基準は、その根源を憲法第二十五条に発しており、その基準の高低は、その国の人間尊重政治のバロメーターともいうべき重要さを持つものであります。今回の改定によりますと、東京都などの一級地においてすら、四人家族で一万八千八十四円であり、その食費は一人一日九十七円二十五銭であります。一日九十七円で、この物価高の今日、暮らしていくことができるでありましょうか。
 さらに、失業対策事業の労務者の実情はどうでありましょうか。政府の四十年度予算案によりますと、一日の賃金は全国平均五百六十一円七十銭、就労日数は二十二日、したがって一カ月の収入は一万二千三百五十七円、その平均家族構成は三・二人であり、生活保護よりも低いのであります。これでは働く者は損だということを政府みずからが教えておるようなものではありませんか。はたしてこれで人間尊重の政治と言い得るでありましょうか。
 特に私が注意を喚起したいのは、生活保護基準は、厚生大臣がその必要額をきめるということが生活保護法の第八条に明示されておるのにもかかわりませず、厚生大臣が算出し、要求した金額が、政府の財政運用の事情によって常に要求額を下回ってきめられておるという事実であります。これは国民の最低の権利を保障した憲法第二十五条の精神を、時の行政府の政策、意図によってじゅうりん、または軽視するものであり、国民の権利侵犯と言ってもいいと思うのであります。(拍手)
 以上の事柄について、総理大臣、労働、厚生各大臣の見解を承りたいのでございます。
 第三に、私は物価変動と所得保障の関係についてお尋ねしたいのであります。
 物価の高騰はいまや国民生活圧迫の最大の原因となっております。その根本的な原因は、政府の誤った設備投資中心の高度経済成長政策にあり、その政策を強行するための日銀券の増発にあったことは、いまや大方の認めるところでありまして、決して賃金の引き上げにその原因があったのではないことは明瞭であります。しかし、私はいまそれには深く触れようとは思いません。私の指摘したいのは、この物価変動の激しいわが国の所得保障政策はどうあらねばならないかという点であります。ある資料によりますと、明治八年から昭和三十六年までの間に、日本の物価は実に千三百十六倍に上がっているのであります。これに対し、同じ期間アメリカでは二・四倍、イギリスではわずかに一・六倍であります。特にわが国の物価は、戦前、すなわち、昭和十年前後と昭和三十九年の約三十年間に約四百十三倍となっているのであります。言うまでもなく、物価の高騰は、貨幣価値の低落を意味します。このように激しい物価の変動のある国においては、その所得保障政策の中で、どうしても各年金制度について一年ごとのスライド制を確立しなければなりません。特にわが国の所得保障がおもに保険主義に依存する限り、スライド制は、過去における各人の積み立て金の権利保障の見地からも、それらの人々の老後生活保障という本来の目的からも、国の義務であると私は考えるのであります。(拍手)政府は、各種年金制度に、毎年度必要に応じて改定する完全スライド制を早急に実施する決意ありやいなや、厚生大臣の所信をお伺いしたいのであります。
 続いて私は、現在、あすへの希望を失い、今日の不安に呻吟する農業の問題についてお尋ねしたいのであります。
 政府が鳴りもの入りで宣伝をした農業基本法が制定されてから四年にならんとしております。しかし、当時わが党が指摘したように、この法律が目的とした農業と他産業との所得格差は、一昨日政府が発表した農業白書が告白したとおり、不幸にして一向に是正されません。是正されないどころか、その格差はかえって拡大する傾向すらたどっているのであります。しかも、農家所得の中身は、ますます農外収入依存度が高まり、その農外収入を含めましても、なお都市勤労者収入の六五%にしかすぎないのであります。そして、さらに農業経営の実情は、ほとんど借金にたよらざるを得ないというのが現実の姿であります。このような憂うべき結果を招来している最大の原因は、政府の農業軽視の政策にその責任を求めざるを得ません。たとえば、昭和三十二年度を一〇〇といたしまして、農業を除くわが国の総資本額は昭和三十七年度においては二三七に伸びているのに対し、農業総資本額は一七四にしか達していないのであります。そして、この五年間、資本形成に占める政府投資の割合は、農業以外では三〇ないし三二%であったのに対し、農業のそれは二一ないし二五%であります。これでは生産性の格差が拡大するのは当然といわねばなりません。また、政府が選択的拡大の中心に置いている酪農に例をとりましても、畜産物価格安定法に基づいて定められる原料乳の安定基準価格は、再生産を確保することを旨として、と定められるべきであるのにもかかわらず、そうなっていないために、生産費に占める農家の自家労賃は、臨時雇い賃金にすら達していないのが現実であります。これでは所得格差が拡大するのもまた当然でありましょう。このような格差拡大の農政のもとで、しかも相次ぐ物価の値上がりのため、生計費の上昇に追いつけない農民は、必然的に兼業化せざるを得ません。あるいは、兼業機会の少ない農村では出かせぎ農民が激増して、いまや大きな社会問題とすらなりつつあります。
 私は、ここで、今日までの高度経済成長政策、農民締め出しの農業基本法の谷間になだれ込んでおる、いや、なだれ込まざるを得なくされた全国八十万あるいは百万といわれる出かせぎ労働者の問題を取り上げざるを得ないのであります。(拍手)心ならずも妻子と離れて、一年のうち四カ月も六カ月も暮らさなければ食っていけない多くの人々、そこにあるものは、何らの労働者としての権利の保障もない低賃金、低い労働条件、各種社会保険制度からも見放され、はなはだしい例では、昔の監獄部屋にひとしい生活を強要され、ついに妻子を捨ててそのまま行方不明になる者も続出するという、きわめて悲惨な現状にあるのであります。あるいはまた、がんぜない子供は、その学校におけるつづり方に、なぜとうちゃんは帰ってこないのかと訴えているのが現実の姿であります。まさに出かせぎ問題は、農業軽視、今日の政治の貧困の縮図ともいうべきでありましょう。(拍手)
 調和と人間尊重の政治を説く佐藤総理、ほんとうにその人間尊重の政治に徹しようとするならば、まず第一に、出かせぎ農民に人間らしい諸権利を与えるべきでありましょう。期待される人間像を作文する前に、出かせぎ農家の子供に、そして妻に、父親が、夫がいる家庭を取り戻してやるべきでありましょう。(拍手)佐藤総理の御所信のほどをお伺いしたいのであります。
 そしてまた、この出かせぎ問題は、農政の中で解決しようとしているのか、あるいは労働行政の中で解決しようとしているのか、農林、労働各大臣のこれに対する対処策もあわせてお尋ねをしたいのであります。
 さらに、私は、今日の農村の不安定を取り除き、明日に希望を持ち得る農業確立のためには、農産物の価格保障制度の確立、全額国費によるところの耕地基盤整備などの農業保護政策を強力に推進するしかないと考えるのでありますけれども、農林大臣の決意のほどをお聞かせを願いたいのであります。
 次に、私は、当面する労働問題について質問を続けたいと考えます。
 所得倍増計画の強行によって、わが国の産業構造は大きく変貌し、それに伴って、雇用構造また地域的に、産業別にはなはだしい影響を受けております。特にその中で注目をしなければならないことは、中高年齢者の離職と再雇用の困難であります。労働省は、これらの問題解決のために、労働力の流動化政策を重要施策の一つとして、中央に労働市場センターを設置し、御自慢の電子計算機を備えつけるなどのことを行なわんとしておるのでありますが、そのような対策も必要ではありましょうけれども、根本的には、労働者が流動しやすい条件をつくることにあると思うのであります。すなわち、全国一律最低賃金制の確立あるいは雇用安定法の制定、そしてまた、労働者住宅の確保などが、むしろ先決問題であるのにもかかわりませず、その面への施策が欠けているのではないかと思うのであります。
 さらに、賃金について見まするならば、政府は、賃金の上昇は著しいものがあると宣伝をし、あたかも物価値上がりの原因が賃金上昇にあるかのごとき宣伝をすら行なっているのであります。はたして政府の言うように、賃金は上昇をしているのでありましょうか。現行最低賃金法の実施状況を最近の資料から見ましても、その適用労働者数三百十七万人のうち、日額四百円以下という労働者が大部分を占めており、他の資料によりましても、一カ月一万二千円以下の労働者が実に二百万人もおるというのが今日の実情であります。すなわち、賃金問題もまた雇用問題と同じく、きわめて深刻な低賃金がその底にひそんでいるのを見のがしてはならないと思うのであります。いまや現行最低賃金法はその名に値する機能を果たしてはいないのでありまして、そればかりではなく、かえって低賃金の基盤とすらなっておるのであります。大橋前労働大臣はそのことを認め、中央最低賃金審議会の答申を受け、第四十国会までには全国一律最賃法の提案を言明いたしておったのでありますが、石田労働大臣は、昨年秋の闘争の際における労働組合代表との交渉の場において、これを否定する態度をとったのであります。このことについて労働大臣の真意は一体どこにあるのでありますか、お伺いをしたいのであります。
 また、最低賃金法と関連をいたしまして、内職労働を保護するために、この際家内労働法制定の意思ありやいなや、あわせてお伺いをいたします。
 次にお尋ねしたいことは、公共企業体労使紛争の原因でありますところのいわゆる当事者能力についてであります。この問題は、昨年の春闘収拾の段階にあたって、池田前総理大臣と総評の太田議長の約束の一つでありました。一体、政府は本問題を実行する意思があるのかどうか、その意思ありとするならば、関係法律に対する検討の作業は現在どうなっているのか、率直に御答弁を願いたいのであります。
 続いて、私は、失業保険法の問題についてお伺いをいたします。
 石田労働大臣は、関係労働者の抵抗と相当数の自治体の反対に押されて、その改正は一年延期することを言明いたしました。しかしながら、問題は、法改正前に労働省の行政指導によって失業保険受給認定はきびしく制限をされ、昨年九月から十二月までの四カ月間で三万一千五百人にのぼる労働者、すなわち失業者がその受給認定を受けられないというのが今日の実情であります。このやり方は、石田労働大臣一流の、老獪にして巧妙なやり方であります。これでは、失保改悪の悪評を受けずに、既定事実によって実質的に改悪しているといわれてもやむを得ないというべきでありましょう。労働大臣の見解を承りたいのであります。(拍手)
 最後に、私は、長い懸案であり、当面最重要な政治問題の一つとなっておりますところのILO八十七号問題について、総理並びに労働大臣の見解をお尋ねいたします。
 昨日、総理は、その答弁の中で、ドライヤー調査団一行から学びましたことは、関係者がよく話し合っていくということが非常に大切なことであり、問題解決に最も必要なことだということである、そういう趣旨の答弁をしております。御承知のように、ILO八十七号の批准問題は、与党、野党並びに関係労働組合との長い間の話し合いの結果として、いわゆる倉石・河野案なるものに合意を見たのであります。しかるに、政府・与党は、これを一方的に破棄し、新たに政府案を今国会に提案し、これを強行するかのごとき態度をとっております。この態度は、公党間の約束を破るものであり、信義に反するといわなければなりません。しかも、昨日、総理が、話し合いが非常に大切だということを学んだと言っておりながら、その言に反する行為ともいうべきであります。(拍手)政府は、信義を重んじ、もっと事前の話し合いを尽くしてこそ、寛容と調和を実証する道と考えるのでありますけれども、総理並びに担当の労働大臣の本問題に対する考えはどうか、お尋ねをいたしたいのであります。
 以上、私は、一人の農民、一人の勤労者の立場に立って、若干の私見を述べながら、政府の所信をただしたのでありますけれども、わが国の経済は世界まれに見るほどの成長ぶりを示したと政府は言います。もしそれが事実ならば、その恩恵は平等に享受できるというのが政治の姿でありましょう。特に、その経済成長のにない手であったはずの、食糧生産に携わる多くの農民、物の生産に携わっておる労働者、そしてその関連産業に従事をする勤労者に、その分け前は正しくなされなければなりますまい。これらの人々に成長の分け前が少なく、与えられたものは物価の値上がり、そしてまた医療費などの値上がりだけだったとしたならば、いかに佐藤総理が調和の政治を叫んだとしても、その叫び声は国民の実感に調和しないでありましょう。
 佐藤総理、いまこそ、農民の声、勤労者の叫びに耳を傾けていただきたい。いまこそ、その目をアメリカから大衆の暮らしに転じていただきたい。そうして初めてあなたの言う調和の政治は花開くに至るでありましょう。そのことを私は最後に強く訴えまして、質問を終わるものであります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 政治は、御指摘のように、もちろん人間相手でございます。したがいまして、いまさら人間尊重と言うのはおかしいじゃないか、こういうような疑問を生ぜられる、これはもっともなことかと思いますが、私どもは人間相手の政治をしていながらも、ときに人間を忘れておるような事態が起こる。これが政治家としての反省であります。政治家は絶えず反省をし、そうして真にその政治をりっぱなものにするという、その努力をしなければなりません。この意味においての人間尊重でございます。
 また、ひずみの是正、これをいま時分言うのはおかしいじゃないか。しかしながら、これまた、われわれが経済成長を企画し、どんどん経済が繁栄した、しかしその中に取り残されたものがある、これを一体どうしようか、これがやはりひずみの是正であります。これまた、われわれ政治家が当然反省すべき事柄であります。私は、かような事態が起こらないようにと、かように考えまして、いわゆる社会開発といろ理念を取り入れてまいりたいと思います。社会開発は一つの政治の姿勢でもあります。
 しこうして、この社会開発について、どうも予算のつき方が十分でないじゃないか、かようなおしかりを受けました。私は、この社会開発という、今日新しい政治の姿勢、これをとりまして、経済開発とともどもに進めていきたい。したがいまして、本年の予算におきましては、特に緊急を要する住宅問題その他に限っておりますが、必ずこの社会開発の姿におきまして、先ほど来、お話しになりました人間尊重、さらにまた、弱者あるいは病者、そういう者に対するあたたかい救いの手も出ていくことだと思います。しばらく時間をかしていただきたいと思います。
 また、出かせぎ農家のお話に触れられました。最も悲惨な状態だと思います。農家収入をふやしたい、かような立場からの経済問題であったものが、いまや社会問題にまで発展しておる。これはほうってはおけない、かように考えまして、政府もこれと真剣に取り組んでまいるつもりでおります。
 ILOの提案につきましては、すでに国会に提案をいたしておりますから、どうか社会党の諸君の御協力も得まして、この国会におきましては批准ができますように、心からお願いをいたします。(拍手)
  〔国務大臣神田博君登壇〕
○国務大臣(神田博君) お答えいたします。
 医療費の引き上げに伴いまして、医療行政や厚政行政に困難を来たしつつあるがどうかということでございます。現在の事態は、医療保険行政、厚生行政上、まことに遺憾な事態であると考えております。けれども、今回の措置に反対している方々も、医療費問題をはじめ、国民の健康と関係のある問題について話し合いの場で解決していこうという熱意については、いささかも変わりがないと考えております。私といたしましては、今後とも誠意をもちまして関係者との話し合いを続けまして、円満な解決をいたしたい、かように考えております。
 第二の、医療費の引き上げ等に伴い医療保険に巨額の赤字が生じておる、この対策ということでございますが、御承知のように、最近における医療保険制度における財政問題は、根本的には医療費の上昇が保険料収入を著しく上回っておるということが原因でございます。これにつきまして、保険料の合理的な増収をはかろうとしておる、そこでまず収入増加を考えることが、この対策でございますので、一部負担制度の合理的な改正も考えておるわけでございます。この現在の医療費の増高傾向には、薬剤支給等の面におきまして、被保険者負担がないために、やや乱に流れているきらいがあることは御承知のとおりでございます。これを是正したい、こういうことで、なお、さらに、将来の制度の発展及び内容の充実をはかりたい、こういう意味で対策を考えておる次第でございます。
 次は、生活保護基準の問題でございますが、生活保護基準につきましては、従来ともその改善につとめたのでございますが、この改定につきまして、国民生活水準の向上と国民経済の動向を勘案いたしまして、国政全般の立場から、政府全体で協議決定すべきものである、こういう考えのもとにおきまして、昭和四十年度改定案も、こうした見地から一二%ときめたものでありまして、国民の権利を侵害したというようには考えておりません。
 それから、第四の、物価、貨幣価値に比しまして年金額をスライドさせるべきだという御意見でございますが、年金の給付額につきましては、生活水準の向上、物価上昇等の要素を考えまして、その引き上げに努力しておるところでございまして、この国会にも、厚生年金の大幅なベースアップを内容とする改正案を提出しております。年金額の実質価値の維持は、おっしゃるとおり重要な課題でございます。前向きの姿勢で取り組んでまいりたいと考えております。なお、このスライド制につきましては、研究すべき問題も多々ございます。他に影響する点もまた多いのでございまして、今後とも十分検討してまいりたい、かように考えております。(拍手)
  〔国務大臣吉武恵市君登壇〕
○国務大臣(吉武恵市君) お答えをいたします。
 今回の医療費の値上げに関して地方財政上どう考えるかというお尋ねでございます。今回の医療費の値上げにつきましては、その増加する療養給付費に見合う保険料に相当する額は、ことしの三十九年度分につきましては、一−三月分国庫で計上されておりまするとともに、四十年度分につきましては三カ月分が計上されておるのであります。その後の収入確保につきましては、先ほど厚生大臣からお話がございましたように、厚生省で目下検討されておるところでございます。
 ただ、この際申し上げておきたいことは、国保の財政はお話しのように、非常に苦しくなっておりまして、赤字団体もだんだん増加しつつございます。三十八年度の決算で三十七億余りの赤字がございますが、これに対しては、地方財政の一般から九十五億余り繰り入れをしておるような状況でございます。したがいまして、今度の予算におきましても、事務費においては百五十円から二百円に引き上げていただくような処置も講じておりますが、この根本問題につきましては、今後とも地方財政から繰り入れをしないでも済むように、厚生当局とも話し合いを進めておるような状況でございます。(拍手)
  〔国務大臣赤城宗徳君登壇〕
○国務大臣(赤城宗徳君) 出かせぎ問題を中心としての農業政策についてのお尋ねでございます。
 出かせぎ問題を労働政策として解決するのか、農業問題として解決するのかというお尋ねでございますが、もちろん労働政策としても協力してもらわなければならないのでございますが、本質的には農業問題として解決をはからなければならない問題でございます。御指摘のように、生産性等もなかなか伸びておりません。三十六年度は他の産業の生産性が伸びましたので、他産業に比較して二七%、三十七年度が二九%に回復しましたが、三十八年度もそのとおりでございまして、横ばいでございます。また、兼業農家の第二種兼業が四二%を占めて、非常にふえております。その中で出かせぎも三十万という数になっておりますので、私どもとしても憂慮しておる次第でございます。それに対しまして、どういう対策を講ずるかということでございますが、一面におきましては、農業の性格からいいまして、季節的でありますので、どうしても出かせぎというものが、ある程度は免れません。それからまた、土地が非常に零細でございますので、そういう点から出かせぎというものが、ある程度やむを得ないという点もございます。しかし、これが社会問題化するようなことは、まことに憂慮すべきことでございます。そこで、出かせぎの機会が近くに得られるような対策を講ずることも一つでございますけれども、根本的には農業の体質を改善していくといことであろうと思います。そのために、構造改善等によりまして、あるいは選択的拡大とか、あるいは機械等による経営の近代化とか、あるいは土地保有の合理化を内容とする構造改善対策等を続けてきたのでございますが、こういう構造改善の事業をなお進めるとともに、農業に対する行政投資といいますか、相当金をつぎ込むということが必要だろうと思います。そういう意味におきまして、土地制度の基盤整備等におきましても、昨年度よりも二二%増しの本年度は九百二十億という予算を要求して御審議を願うことにしておりますが、そういうことによって経営の近代化にもつとめていきたい。
 それから、御指摘もありましたが、価格政策でございます。価格政策が本質的なものとは思いませんけれども、過渡的におきまして価格政策が重要であることは申し上げるまでもありません。現在、米麦、でん粉、畜産等、農産物の七割は価格支持をいたしておりますが、畜産物等につきましての価格支持は十分でございませんので、これに対しまして、なお新たに価格支持対策を講じようといたしておるわけでございます。
 なお、金融等につきましても、できるだけ低利長期の金融を回していくというような、農業政策全体から出かせぎ等が少なくなっていけるような方法を講じていきた、こう考えております。(拍手)
  〔国務大臣石田博英君登壇〕
○国務大臣(石田博英君) 私に対する質問は非常に数が多いので、詳細は委員会等でお答えをいたすことにいたしまして、大綱についてお答えをいたしたいと存じます。
 まず第一に、失業対策事業の賃金が、本年度予算に計上されているものでは、生活保護費よりも低くなって、働くほうがばかをみるということになるのではないかということでございますが、失業対策事業の賃金は、御承知のごとく失業対策事業賃金審議会におきまして、両種の労働に対する賃金と比較して、その関連において答申を得たものであります。こういう方法によって決定される金額と、それから家族の生活を保障するという立場から出される金額と、直接的に比較をするということには問題がございますけれども、実際問題といたしまして同級地、たとえば私どものほうで扱います六大都市と生活保護法で扱います一級地、同級地の比較におきましては、なお失業対策事業の賃金が同じ程度の家族においてもかなり上回っておるのが実情でございます。
 第二点は、物価値上がりと所得の保障の問題について御質問でありますが、数年前までは団体交渉あるいは労働契約等におきまして、物価と賃金とのスライド制をきめたケースが多かったのでありますが、今日はすでにほとんどその実例を見なくなっております。賃金は、国民経済的な観点から良識をもって労使が話し合いでおきめいただくことが妥当であろうと考えております。
 第三点は、出かせぎ労働についてでございますが、出かせぎ労働の実数は、ただいま農林省の調査によりますと、先ほどの赤城農林大臣の御答弁のように三十万でありますが、これは六カ月未満の期間にわたる出かせぎ者の調査を対象といたしております。したがって、それよりも長い期間出かせぎする者を加えますならば、大体五十万をこえるのではないかと私どものほうでは推定いたしております。しかしながら、このうち職業安定所を通っておりますのは十八万でありまして、他はいわゆるやみ職安、あるいはまた縁故等による就職でございます。この労働条件を確保し、同時に行くえ不明等の社会問題をなくしますためには、まず第一に働きに出る方々が正規の職業安定所を通っていっていただきたい。職業安定所のない地域におきましては、各市町村に職業安定協力員の制度がございます。その制度を使って、そうして正規のルートを通っていっていただきたい。そうしないと、働きに行かれた先の監督や、あるいはまた労働条件の維持等をいたす方法が見つからないのであります。そこで、まずこのことをお願いいたしたい。それから同時に、われわれのほうといたしましては、働きに行きました先の労働基準監督署及び職業安定所と協力をいたしまして、労働条件の維持につとめておるところでございます。
 次に、雇用構造の変化に伴って特に中高年齢層の就職の問題でございますが、これにつきましては、若年層でなくても十分間に合う職種を選定いたしまして、特に政府及び政府関係機関においては、これを優先雇用するように指導いたしておりますることはすでに御承知のとおりでありますが、同時に日経連等にも働きかけまして、大企業あるいは政府関係機関が若年労働を先どりすることによって、一面においては中小企業の所要若年労働の確保に阻害を与えたり、あるいはそれがひいては中高年齢層の職域を狭めるようなことのないように指導をいたしております。むろん労働力の流動化をはかりますためには、流動しやすい条件をつくることが必要であることは言うまでもないのでありまして、住宅の建設あるいは補助住宅、あるいはまた就職支度金、奨励金というような制度の運営によって万全を期してまいりたいと存じておる次第であります。
 それから、最低賃金制の問題で、前の大橋労働大臣のときより後退したではないかというお話でございますが、御承知のごとく、昨年の九月に最低賃金審議会から、最低賃金の対象とすべき業種及びその金額の目安についての答申がございました。これについて、これを実行いたしてまいります過程を通じまして、昭和四十一年ごろを目安とせよという答申でございますので、それと相まちまして、その時期において全国一律最低賃金制を含めた最低賃金法の根本的な検討と改正を行ないたいと考えておる次第であります。
 家内労働法については、私が当初いまから七年前に就任をいたしましたときからこの問題を取り上げ、家内労働審議会を設けて検討を願っておるのでありますが、御承知のように、きわめて複雑な事情にございまして、法制定に問題が多く、まだ成案を得ないのはたいへん残念でありますが、これは最低賃金法を実効あらしめるためにも必要であろうと存じますので、なお一そう努力をいたしてまいりたいと存じておる次第でございます。
 その次には、公共企業体の当事者能力についてでございますが、昨年の四・一七問題のあとに行なわれました総評代表と当時の池田総理との会談に従いまして、昨年来関係次官会議を持って検討いたしてまいりました結果、まず第一には、この問題を総合的にさらに広い視野に立って根本的に検討いたす必要を認め、そうして今度ILO関係法案の中にございます公務員制度審議会、これにおいてこの根本的なあり方を検討してもらうということが、恒久的な対策として決定をいたしました。同時に、その恒久的な対策を決定するまでの間、現在の時点におきましては、現行法の中で実質的に当事者能力を持ち得るように、現行法の合理的な運営によってこれに対処するということに決定をいたしております。
 次に、失業保険法の改正の問題をとらえられて、私がはなはだ老獪な手段をとっているかのごとき御批評がございました。大体社会保険というものは、そもそも偶発的な事故に対して備えるのが保険であります。あらかじめ予定されたものに対して給付するのが目的ではございません。これは失業保険も同様でございます。それからもう一つは、失業保険法は、本人が勤労の意欲と意思があってなお職業が見当たらない場合にこれを給付するのがたてまえでございます。したがって、かつて、かわる職業がなかなか見つからなかった時代におきましては、失業保険の給付が非常にルーズであったことも、その当時の社会事情としては、ある程度容認できると思うのでありますが、今日は、御承知のごとく、労働力不足を告げられて、他に仕事がございます。失業者の方々に一番生活の安定と保障を与える道は、かわる仕事を見つけてあげることが第一でありまして、保険金を差し上げることはその六割にしか当たらないのでありますから、でき得る限り適職をさがすように指導をいたしておるのが現状でございます。(拍手)このほうがより高い金額において失業者諸君の仕事を保障するということになると思っておる次第であります。なお、この問題については、私も申し上げたいことがたくさんございますから、いずれ予算委員会その他において承りたいと存じます。
 それから、ILO八十七号条約の批准についてでございますが、これは幾たびも申し上げておりますとおり、前の通常国会の際におきまして、いわゆる倉石・河野修正案というものが与野党の合意によってでき上がりました。当時の与党幹部はその実現に努力をいたしましたけれども、御承知のような事情でございましたので、したがって、これはこの実現に努力したけれどもできなかったという旨を、社会党の幹部の方に伝え、同時に社会党の人は、そのときに内閣不信任案をもってこれに報いられた。その不信任案は否決を見たのであります。(拍手)したがって、倉石修正案というものは、国会の審議を拘束する両党間の約束としては白紙に戻ったものと解釈をいたしております。その旨はたびたび、この本会議場において、今日まで何度も申し上げておりまして、いまに始まったことではございません。しかしながら、この倉石修正案によって合意に到達した事項のうちで、政府がすでに同意の旨を答えております要素、それを今度の政府提出の関係法案の中にあとう限り組み入れられておりますことは、御承知のとおりであります。今度の調査団の勧告の中にも話し合いというのがございました。われわれはILO八十七号条約の批准案件は一月二十二日に国会に提出しておるのであります。その国会において十分御討議を願いますこともやはり話し合いでありまして、前もって一切きめておいて国会に提出するということになりまするならば、これは国会の御活動を願う余地がないのでございます。国会で十分御審議を願いますことも話し合いの一つだと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(田中伊三次君) 谷口善太郎君。
  〔谷口善太郎君登壇〕
○谷口善太郎君 私は、日本共産党を代表して、佐藤総理に質問をいたします。
 質問に入る前に、一点緊急な問題がございます。それはアメリカ原子力潜水艦が一両日中に佐世保に寄港するという問題であります。これこそ、佐藤総理が訪米の際、日本の安全保障をアメリカの核兵器のかさのもとで行なうことを約束させられてきた、その具体的なあらわれであります。日本人民は米原子力潜水艦の日本寄港に絶対反対であります。われわれは政府の態度に厳重に抗議するとともに、あらためて拒否することを要求いたします。もし政府がまたもや原潜の入港を許すならば、それによって起こる事態の責任は、あげて政府にあることをここにはっきりと申し上げておきます心総理の所信をお伺いしたいのであります。
 さて第一に、今日の人民生活の破綻はまさに容易ならざるものがあります。まず物価高、これは先ほどからも論じられておりますとおり、広範な大衆の生活に重大な脅威となっております。労働者は低賃金を強制され、無法な合理化による労働強化、労働災害の続発等、いまや文字どおり生命の危険にさえさらされているわけでありますが、さらに政府はILO八十七号条約に便乗する国内法の改悪まで企てておるのであります。農民は、政府の農業構造改善政策や、自由化によるアメリカ余剰農産物の大量輸入によって、これまたますます重大な困難に直面しております。また中小企業の倒産は戦後未曾有となっております。これは政府・自民党と独占資本の一貫した政策による計画的倒産であります。政府は、これをあくまでひずみと言い張るつもりですか。ひずみではありません。これはアメリカに従属しながら、アメリカと日本独占体の飽くなき利潤追求に奉仕する自民党政府の高度成長政策の必然の結果であります。
 現に、政府は安定成長の名によって、人民収奪による三兆六千億をこえる膨大な予算を組み、それに独占資本のための財政投融資及び地方予算その他を合わせれば実に九兆円をこえるばく大な収奪を計画しております。
 一方、労働者や勤労人民に対しては、いまも話がございましたが、失対事業への就労拒否、失業保険の改悪、各種健康保険の改悪、医療費と年金掛け金の大幅引き上げなどを今国会に提案しているではありませんか。そればかりか、消費者米価と公共料金のつり上げを行ない、物価値上げを助長しておるのは政府自身であります。およそ、これらのことが安定成長という名の高度成長政策なるものの実態ではありませんか。
 いま労働者階級は、大幅賃上げ、ILO条約の即時批准と、労働基本権の奪還を中心とする生活と権利を守る要求を掲げて、春闘に立ち上がっております。さらに、農民、中小企業家をはじめ、広範な人民各層も、それぞれの要求を掲げて戦っております。政府はこの人民の要求に応ずるいかなる措置を講ずるつもりであるか、この点について具体的に答弁されたい。
 続いて、私は、引き続く高度成長政策による人民生活の苦しみと、これに対する政府の対策について質問したいのでありますが、時間の制約上、日本人民の生活を苦しめているその一つの大きな根源たる、アメリカとの経済関係について、二、三の質問を行ないます。
 第一点は、アメリカの押しつけによる余剰農産物の大量輸入についてであります。すなわち、それによってアメリカの小麦、大豆をはじめ、鶏から卵、飼料、くだもの、脱脂ミルクに至るまで、国内に流れ込んできております。そのため、政府の農業白書によりましても、国内農産物の自給度は、三十七年度の八四%から三十八年度には八一%と急速に低下しております。しかも、政府の中期経済計画なるものは、これをさらに急速に低めることを計画しております。このことが日本農業、特に下層農民に壊滅的打撃を与えることは言を要しません。その上、政府は、アメリカと日本の独占資本の手によって、全国十三カ所に食品加工コンビナートを建設しようとしております。これこそアメリカの余剰農産物とともに、日本の農産物を事実上アメリカ資本に加工、販売を許すものであります。そうして、これこそまさに、日本人民の生活の根底をなす食糧までを、アメリカの支配にゆだねようとするものにほかなりません。これでどうして日本農業の自立、繁栄がありますか。これが農業構造改善事業とからみ合いまして、すでに大量の農民が離農を余儀なくされている原因であります。
 私は総理にお尋ねします。政府はこのアメリカの余剰農産物の輸入を、ますます拡大することを許すつもりですか。それとも思い切った制限措置をとる用意がありますか。われわれは日本農業をアメリカ独占資本に隷属させる一切の政策を、根本から改めるべきだと考えます。総理大臣の明確な答弁を求めます。
 第二点は、日本産業の対米従属についてであります。現在日本の石油産業は、原油の輸入はもちろん、精製、販売に至るまで、アメリカを中心とする外国石油独占体に掌握されております。しかも政府の中期経済計画では、石油の輸入を四十三年度までに現在の二倍とし、エネルギー供給に占める石油の比重を六五%に高めるといっております。現にそのためにこそ政府は国内の石炭産業をつぶし、その労働者に重大な打撃を与えました。
 そもそもエネルギー産業は全産業の根幹であります。この産業の根幹をあげてアメリカに握られておいて、はたして日本産業の自主、自立がありますか。絶対にありません。もちろん私がここで石油産業をあげましたのは、一つの事例にすぎません。事実においては、日本産業のアメリカ資本への従属と依存は、すべての分野にわたっております。たとえば石油化学はもとより、電力、鉄鋼、電気機械、機械その他重要産業のほとんどがアメリカの資本によって縛られております。現にアメリカ資本を受け入れている主要会社は、その数実に二百五十社になんなんとし、技術導入に至りましては、実に二千四百件に達しているのであります。しかもこれらの資本、技術導入の条件はきわめて過酷であります。その中には経営権への介入、利潤の保証、販売の制限、価格料金の引き上げまで含まれているものがあります。
 かくして日本の労働者は、アメリカと日本の独占資本の二重の搾取と抑圧のために、激しい合理化と低賃金、無権利を押しつけられているのであります。しかも、その根底にあるものは、日米安保条約と、不平等な日米通商航海条約であることを、私はここであらためて言わねばなりません。すなわち、この通商航海条約は、アメリカの資本に対し、内国民待遇によるあらゆる特権を認め、無制限に進出することを認めているのであります。このような対米従属によって、日本の産業と経済の自立があると考えますか。総理はこのたびの訪米において、日米関係は新段階を迎えたと、あたかも対等になったかのごとく広言しておりますが、どこに対等がありますか。一体政府は、日本産業のこのようなアメリカヘの従属と労働者、人民の苦難をしり目に、今後どこまでも無制限なアメリカ資本の進出を許すつもりですか。さらに、その根底である安保条約と日米通商航海条約とをいつまでも続ける量見であるかどうか。われわれはこのような条約を直ちに廃棄すべきであると考えるが、総理の見解を承ります。
 第三点は、日本の貿易について触れます。
 日本の貿易の現実は、アメリカの不平等な差別待遇によって片貿易を強制されております。その結果、たとえば三十八年度におきましては、アメリカとの貿易で約七億ドルの輸入超過となっております。この片貿易をおもな原因としまして、日本の国際収支は赤字となり、しかもその穴埋めは主としてアメリカからの借金、特に短期の資金によってまかなわれているのであります。加うるに、アメリカの指図による自由化とOECDの加盟などのために、この状態はますます悪化の一途をたどろうとしておるのであります。
 このような状態の打開の一つの重要なかぎは、中国貿易をはじめあらゆる国との平等互恵の関係を許すことであります。これは今日、万人周知のことであります。総理はこのことを百も承知しながら、どこまでもアメリカの指図に従って中国との貿易を妨害する方針をとっております。一例をあげれば、今日進行中のビニロン・プラントの民間輸出に対してさえ輸銀の融資を押え、事実上これを妨害する態度をとっておるではありませんか。このようにして、日本経済の自主的平和的発展があり得ると考えますか。これに対する総理の所信を伺うものであります。最後に、日本共産党は政府に対して次のことを直ちに実行することを要求いたします。第一に、中国敵視政策をやめ、日韓会談を打ち切り、アメリカ原子力潜水艦の寄港を拒否すべきであります。第二に、安保条約、日米通商航海条約を破棄し、アメリカへの従属を断ち切り、世界各国との平等互恵の経済関係を樹立することによって、日本経済の自立と、人民生活の安定向上の基礎を打ち立てるべきであります。
 第三に、独占本位の安定成長政策をやめ、人民の生活、文化、教育などを完全に保障する政策に切りかえるべきであります。
 第四に、労働者、農民、中小企業家等の人民各層の生活と権利を守る要求を実現し、特に労働者の大幅賃上げ、全国一律の最低賃金制の確立、労働基本権の保障を即時行なうことを要求するものであります。
 以上、総理御自身の御答弁を要求して、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 アメリカ原子力潜水艦の入港という問題は、御承知のように、安全保障条約に基づく地位協定の第五条によってこれを許しておるのでありますから、私はこれを断わるつもりはございません。
 次に、農産物をアメリカから輸入している、あるいは産業がアメリカから特別に支配を受けている等々のお話がございましたが、私は、現在の状況は、それぞれ日本として必要なことをやっておるのでありまして、今日までやってきていることを変えるようなつもりは毛頭ございません。ただいままでの政策を変更するつもりはございません。
 また、安全保障条約、日米通商航海条約を改正しろということですが、これまたただいま改正するようなつもりはございません。
 また、五項目にわたるいろいろの要求がございましたが、これは要求でございますので、私は答弁は預かります。(拍手)
○副議長(田中伊三次君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
○副議長(田中伊三次君) 本日は、これにて散会いたします。
   午後五時十分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        法 務 大 臣 高橋  等君
        外 務 大 臣 椎名悦三郎君
        大 蔵 大 臣 田中 角榮君
        文 部 大 臣 愛知 揆一君
        厚 生 大 臣 神田  博君
        農 林 大 臣 赤城 宗徳君
        通商産業大臣  櫻内 義雄君
        運 輸 大 臣 松浦周太郎君
        郵 政 大 臣 徳安 實藏君
        労 働 大 臣 石田 博英君
        建 設 大 臣 小山 長規君
        自 治 大 臣 吉武 恵市君
        国 務 大 臣 小泉 純也君
        国 務 大 臣 河野 一郎君
        国 務 大 臣 高橋  衛君
        国 務 大 臣 増原 恵吉君
 出席政府委員
       内閣官房長官  橋本登美三郎君
       内閣法制局長官  高辻 正巳君
       総理府総務長官  臼井 莊一君
     ――――◇―――――