第048回国会 予算委員会 第13号
昭和四十年二月十六日(火曜日)
   午前十時十二分開議
 出席委員
   委員長 青木  正君
   理事 赤澤 正道君 理事 稻葉  修君
   理事 小川 半次君 理事 二階堂 進君
   理事 古川 丈吉君 理事 加藤 清二君
   理事 川俣 清音君 理事 辻原 弘市君
   理事 今澄  勇君
      相川 勝六君    荒木萬壽夫君
      荒舩清十郎君    井出一太郎君
      井村 重雄君    今松 治郎君
      植木庚子郎君    江崎 真澄君
      大橋 武夫君    上林山榮吉君
      仮谷 忠男君    川崎 秀二君
      重政 誠之君    正示啓次郎君
      田澤 吉郎君    登坂重次郎君
      中曽根康弘君    中野 四郎君
      灘尾 弘吉君    西村 直己君
      古井 喜實君    水田三喜男君
      八木 徹雄君    大原  亨君
      岡田 春夫君    田中織之進君
      高田 富之君    戸叶 里子君
      中井徳次郎君    中澤 茂一君
      永井勝次郎君    野原  覺君
      三木 喜夫君    山花 秀雄君
      横路 節雄君    稲富 稜人君
      永末 英一君    加藤  進君
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        法 務 大 臣 高橋  等君
        外 務 大 臣 椎名悦三郎君
        大 蔵 大 臣 田中 角榮君
        文 部 大 臣 愛知 揆一君
        厚 生 大 臣 神田  博君
        農 林 大 臣 赤城 宗徳君
        運 輸 大 臣 松浦周太郎君
        労 働 大 臣 石田 博英君
        自 治 大 臣 吉武 恵市君
        国 務 大 臣 小泉 純也君
        国 務 大 臣 高橋  衛君
 出席政府委員
        防衛庁参事官  麻生  茂君
        防衛庁参事官
        (長官官房長) 小幡 久男君
        防衛庁参事官
        (防衛局長)  海原  治君
        防衛施設庁長官 小野  祐君
        総理府事務官
        (経済企画庁総
        合計画局長)  向坂 正男君
        総理府事務官
        (科学技術庁長
        官官房長)   小林 貞雄君
        総理府技官
        (科学技術庁研
        究調整局長)  高橋 正春君
        総理府技官
        (科学技術庁原
        子力局長)   村由  浩君
        法務事務官
        (矯正局長)  大澤 一郎君
        法務事務官
        (入国管理局
        長)      八木 正男君
        外務政務次官  永田 亮一君
        外務事務官
        (大臣官房長) 高野 藤吉君
        外務事務官
        (アジア局長) 後宮 虎郎君
        外務事務官
        (条約局長)  藤崎 萬里君
        外務事務官
        (移住局長)  白幡 友敬君
        大蔵事務官
        (主計局長)  佐藤 一郎君
        大蔵事務官
        (主税局長)  泉 美之松君
        文部事務官
        (社会教育局
        長)      蒲生 芳郎君
        文部事務官
        (管理局長)  齋藤  正君
        厚生事務官
        (大臣官房会計
        課長)     戸澤 政方君
        厚生技官
        (公衆衛生局
        長)      若松 栄一君
        厚生事務官
        (児童家庭局
        長)      竹下 精紀君
        農林事務官
        (大臣官房長) 中西 一郎君
        農林事務官
        (農林経済局
        長)      久宗  高君
        農林事務官
        (農政局長)  昌谷  孝君
        農林事務官
        (畜産局長)  檜垣徳太郎君
        運輸事務官
        (船員局長)  亀山 信郎君
        労働基準監督官
        (労働基準局
        長)      村上 茂利君
        労働事務官
        (職業安定局
        長)      有馬 元治君
        自治事務官
        (行政局長)  佐久間 彊君
 委員外の出席者
        専  門  員 大沢  実君
    ―――――――――――――
二月十六日
 委員田澤吉郎君、石田宥全君、石橋政嗣君及び
 小松幹君辞任につき、その補欠として八木徹雄
 君、戸叶里子君、三木喜夫君及び岡田春夫君が
 議長の指名で委員に選任された。
同日
 委員戸叶里子君及び三木喜夫君辞任につき、そ
 の補欠として石田宥全君及び石橋政嗣君が議長
 の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 昭和四十年度一般会計予算
 昭和四十年度特別会計予算
 昭和四十年度政府関係機関予算
     ――――◇―――――
○青木委員長 これより会議を開きます。
 昭和四十年度一般会計予算、昭和四十年度特別会計予算、昭和四十年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、質疑を行ないます。
 稲富稜人君。
○稲富委員 私は、農業問題に集約いたしまして農林大臣並びに関係大臣に御質問いたしたいと思うのでございますが、質問に入るに先立ちまして、農林大臣にひとつお教えを願いたいことがあります。
 それは、私最近農村に参りますと、農村の青年からこういう質問を受けます。しかも、将来農業経営をやろうという情熱を持った青年ほど深刻な質問をいたします。自分は、将来日本の農業者としてやっていこうと思うんだけれども、一体日本の農業の将来性はどうであるか、もしも日本の農業の将来性がないとするならば、いま自分はほかに転業したいと思うが、いずれの道をたどるべきか、こういう深刻な質問を受ける場合があります。私は、農業にとどまりなさいと言いたいけれども、現在の事情を見るときに、ほんとうに確信を持ってその青年に農業にとどまりなさいと言い得ないんです。そういう場合にどういう答弁をしたがいいか、ひとつ農林大臣として率直な気持ちを教えていただきたいと思うのでございます。
○赤城国務大臣 どうも教えていただきたいと言われて、まことに恐縮で、それだけの確信も持っておりませんけれども、しかし、歴史を振り返ってみて、農業というものが滅びたということはない。あの幕府時代においても、農業に対しては、農民から見ればあまりいい政策を行なっておらなかったけれども、農業そのものは滅びなかった。あるいはまた明治維新のときにもずいぶん変革がありましたが、ことに明治十年ごろのインフレに際会しても、農業というものは滅びなかった。あるいはまた昭和初年度の農業恐慌等におきましても、農村の疲弊といいますか、相当つらい時代がありましたが、農業は滅びなかった。あるいは戦争中に労働力が不足しまして、農業も困ったけれども、農業そのものが決して滅びたということはない。むしろ現在におきまして、農業そのもの全体に明暗二つの道があると思います。暗黒面を相当強調される向きがありますが、明るい面も相当出てきておる。全体的に見まして、日本におきましては農産物の需要というものは相当ふえておる。ことに米麦ばかりでなく、ほかの果実、畜産物、こういうものの需要も順調に伸びておりますので、この需要に見合った生産というものはどうしても必要欠くべからざるものであるし、それに対して農村、農民に期待しているところが非常に大きい。そういう点から見ますならば、他産業に比較して農業そのものが不利な立場にあるのは世界的に共通でございます。したがって、世界的に農業に対しましては、国といたしましても保護政策を行なっていくということをせざるを得ないのでありますので、日本といたしましても、この需要に見合った生産をしなくちゃならぬ。その生産をしていく上におきまして、他産業に比較して不利な点につきましては、国としても農業に対して十分保護政策を続けていかなくちゃならぬ。ただ保護のやり方でございますが、やはり農業が前向きに育っていく方向へ保護も見合ったような形でやっていくということが必要だ、こういうふうに考えています。そういう意味におきまして、具体的ないろいろな政策は、もうすでに御承知だと思いますが、将来につきまして投げたものではない、捨てたものではない。いい面も相当農業に出ておるのでありますから、そういう面が育っていくようなことになれば、農業の将来というものも相当いいものだ、こういうふうに考えております。
○稲富委員 答弁をひとつ簡略に願いたいと思います、時間がありませんので。いま農林大臣は、歴史的ないろいろな関係から農村が滅びることはないんだとおっしゃる。ただ問題は、いま申しました将来の農村に対して、明るい面をいかにして前進せしめるか、ことに青年が、ほかの者が農業に対する期待でなくて、それを経営しようという人が農業に対する期待を持っていかなくてはならないと思うので、そういう点で、やはりこの経済的ないろいろな情勢から、将来の農業経営者といえども、これでやっていけるんだ、しかも社会の要請に応ずることができるんだという、この確信を持たせることが非常に必要ではないかと私は思う。おそらくそういう意味で来年度の予算編成にも当たられたと思うのでありますが、私は後ほど質問いたしますが、そういうような希望を持っておる、あるいは不安を持っておる農村の青年に対して、将来日本の農業というものに対して明るい面を持たせる、期待を持たせるようなことをするということを基本的な考え方として、来年度の予算編成に当たっておられるかどうか、この点をお尋ねしたい。
○赤城国務大臣 もちろんいまお話の方向に沿うた予算の編成をしておるわけであります。たとえば、例を申し上げますならば、非常に人手も不足しておる。従来重労働だ、重労働からの解放をしていくということにいたしますならば、機械化を進めていかなくてはならない、あるいは共同化も進めていかなくてはならぬ。あるいは自立経営の規模も拡大するような方向に持っていかなくてはならぬ。それからまた、そういう問題については、土地改良等の基盤を整備していかなければならぬ。いまお話のように、将来安定してやっていけるような基礎を進めていく、こういう方針で予算を編成しておるわけであります。
○稲富委員 それでは、私はこの際農林大臣にお尋ねしたいと思うのですが、もちろんそういうような意思で来年度の予算編成に当たられたと思うのでございますけれども、その内容を検討いたしますときに、はたしてその青年が期待をするような予算編成がやられているかというところに大きな問題があると思うのでございます。それで、私は時間がありませんので、大きな問題を二、三とらえまして、これに対する農林大臣並びに関係閣僚等の考え方をひとつただしたい、かように考えておるわけでございます。
 最初に私がお尋ねいたしたいことは、日本の食糧問題に対してお尋ね申し上げたいと思うのでございます。
 御承知のごとく、農業が国民経済に対して背負っておる責任、これはことばをかえますと、国民経済が農業に対して期待しておる要請というものは、国民の需要に対応していかに安定的に食糧を供給するかということであると思うのでございます。ところがそれを具体的に申しますと、最近財界の一部には、食糧増産に対する努力を放棄すべきであるかのごとき言辞を弄する者があることは、御承知のとおりであります。たとえば、先般経済同友会が農業近代化への提言というものを提出いたしております。おそらく農林大臣もこれをお読みになったと思うのでございますが、この経済同友会の発表した農業近代化への提言の中を見ますと、わが国の農業の能率の悪さを指摘して、合理的な国際分業の促進を主張しておるということでございます。これは、わが国経済界一般の意見を代表しているようにも私は思うのでございますが、現在の食糧事情、あるいはアジアの情勢、さらにわが国の経済地位及び農業の現状等を見まして、わが国の食糧自給の問題、あるいは食糧政策の基本方針はどうあるべきか、ここを全く基本的に考えなければいけないと思うのでございます。すなわち、食糧生産の基本方針をどうするか、これによってまず農政というものを進めていかなくてはいけないと思うのでございますが、いま申し上げましたような、日本の農業を放てきするという声さえある中に、農林大臣はいかなる考えを持っていらっしゃるか、冒頭にお尋ね申し上げたいと思うのでございます。
○赤城国務大臣 食糧がその国内で自給できるということがあらゆる面から大切だと思います。現在、御承知のように八四%程度だったものが、三十八年には八一%くらいの自給度に落ちてきました。しかし、中期計画等でも、四十三年に八〇%台を維持する、その努力をいたしたいと思います。ただ経済同友会の議論などもよく読みましたが、食糧自給度を放てきしろとは言っていないと思います。考え方を大きく見ますと、私は、国内におきましても適地適作といいますか、米の地帯もありますし、あるいは酪農に適した地帯もありますし、果樹に適した地帯もありますので、そういうような適地通産的な選択的拡大であっても、そういうところに力をといいますか、労力その他生産の配分的な考え方が必要だ。同友会の意見の中にも、国際的な分業といいますか、農業とほかとの分業でなく、農業そのものに対しましても、一次産品の輸入問題などもありまするので、ものによっては、国際的分業の線に沿うて完全自給をしなくてもいいものがありはしないかということを示唆しているんじゃないか、こう思います。根本的には、何といいましても農業基本法にありますように、農業生産物の総生産を上げるということが目標でありますし、ことに米等につきましては、これはどうしても自給度を維持していくということが必要でありますし、また全体としても、大体日本で生産されているものの自給度を増していくという方針は、これは当然堅持すべきものだ、こういうふうに考えております。
○稲富委員 もちろん、経済同友会においても放棄しろとは言わない、日本の食糧対策上、日本農業に非常に期待をせられている、こういう点は一貫して御主張せられておるように思うのでございます。ところが、ただいま農林大臣もおっしゃったように、昨年末経済企画庁が発表いたしました中期経済計画の付属文書の農林漁業分科会報告によりますと、三十七年度における農産物の国内自給率は八五%である。ところが昭和四十三年度においてはそれが八〇%または八一%に低下すると見ておられます。政府がまた先月提出されました三十九年度の農業の動向に関する年次報告によりますと、国内生産による食糧の充足率は八〇%強であり、三十五年以降国内農業の食糧自給率は逐次低下の傾向を示して、これが食糧の消費者価格の高騰と、食糧輸入の増大を招いておるということを明らかに指摘されておるのであります。実際生鮮食料品の消費価格の高騰と食糧輸入の増大の現状というものは、実に私たちもこれはおそるべき現象であると思うのでございますが、これに対しまして農林大臣はどう考えていらっしゃるか、いまも御意見を承ったのでございますが、だんだんこういうような傾向になってくるということに対してはどういうような考え方を持っていらっしゃるかということを承りたい。
○赤城国務大臣 傾向は確かにそういう傾向になっておると思います。四十三年度八〇%から八一%くらいの自給度でないかというふうな見通しは、そういうふうに考えます。しかしいまの八五%、九〇%、水産物を入れると、御承知のように八六%くらいの自給度でございますが、完全自給ということは、私は言うべくして困難だと思います。私どもの考えておることは八〇%台を下らない、八〇%以上に自給度を持っていくという政策を行なってこれを堅持していきたい、こういうように考えておるわけであります。
○稲富委員 そこで、お尋ねしたいわけでございますが、食糧輸入という面からいいますと、政府の所得倍増計画においては、昭和四十五年度に約三千億円と予定されておったかと記憶するのであります。すでに三十七年には約四千億円、三十八年には実に五千五百億円にのぼっておるのでございます。中期経済計画においては、昭和四十三年に六千六百億円程度と訂正を加えておるようでございますが、昭和三十九年度の現状、これは、はっきりした資料がわかりませんので、部分的に発表されておる数字からこれを判断しますならば、おそらく私は三十八年度の少なくとも三〇%くらいの増である、つまり七千億円を突破しておるのではないかとさえも考えるわけでございます。このように政府の食糧輸入予想はことごとく今日まではずれておるのでございますが、このことは、食糧問題に対する政府の見方がきわめて甘かったということを示しておる証拠ではないかと言っても私は過言ではないと思うのであります。よって、ここに現在の趨勢を将来に引き伸ばして考えますならば、おそらく数年を出ずして農産物の輸入は実に一兆円を突破するような結果になるのではなかろうかということさえも考えるわけでございます。これをドルに換算いたしますと、三十億ドルになるという結果になるのでございます。わが国の輸出額は現在七十億ドルになったということを昨日発表されております。数年後にこれが九十億ドルにふえたといたしましても、輸出によって得た外貨の三分の一というものが農産物の輸入に食われるという勘定になるということは、実にこれは重大な問題であると思うのであります。こういうような状態に将来なるとするならば、実にこれはおもしろくない結果になると思うのであります。ここで大蔵大臣にひとつお聞きしたいのであります。ただいま申し上げましたような形の計算になってくるのでございますが、非常にこれは国際収支上大きな問題だと思うのでございます。これは大蔵大臣として好ましいことであると御存じになるか、やむを得ないことであると御存じになるか、あるいは非常に好ましくないことである、こうお考えになっておるか。この点をひとつはっきり御答弁願いたいと思うのであります。
○田中国務大臣 食糧はできるだけ自給自足態勢にしなければならないということは、国際収支の上から見ると当然のことであります。食糧を輸入に仰がなければならないというときには、国際収支に非常に大きな影響を与えるわけであります。三十八年度はこの一番大きな状態でございましたがこれは、御承知の麦の不作とか、いろいろな特殊な状態がございました。同時に、キューバ問題等で国際糖価の急激な値上がりというような特殊な事情もございましたが、三十九年になりましたら、一応平静な状態になってまいりました。四十年度は三十九年度よりもなお安定的な状態になってきたようであります。三十八年度の食糧の輸入は一七%でございましたが、三十九年度の見込みでございますが、一六・七%、四十年度の見込みは一六・〇というように、三十八年度の特殊な異常な状態に比べまして、安定的な状態に推移をいたしております。
 いずれにいたしましても、食糧はできるだけ輸入に仰がないようにすることが国際収支の長期安定の上から見て必要なことだと考えております。
○稲富委員 いま大蔵大臣も言われるように、食糧の自給態勢をとっていくということは、非常に重大な問題である。これがためには、やはり食糧の自給態勢をとるような農政を樹立することが一番必要であると思うのでございます。ところが、ややもしますると、これが現在においては非常に欠けている、ここに大きな問題がある。あるいは麦の不作の問題もありますけれども、麦作なんかに対しましても、どれほど積極的にやっているかという問題もある。こういう問題は、やはり、予算上の問題が非常に影響するわけなので、幸い大蔵大臣が食糧の自給態勢をとらなければいけないという考えを持っていらっしゃるとするならば、将来日本の農政を樹立する上において、この食糧対策に対しては予算面においても十分なる措置をとってやるということが必要ではないか。単なる目先の予算措置によってやっておりますと、これはもうがまんのできないようなことになって、対外依存の食糧対策をとらなければならない。これが国際収支に大きな影響を及ぼすということになるのでありますから、これはよほど、今後の食糧対策としての基本的な考え方を樹立して、その食糧自給に対する基本的対策をとった予算措置、あるいはこれに対する行政措置というものが当然行なわれなければならないと思うのでございます。これに対しては、幸い大蔵大臣もそう言っておりますので、農林大臣もそういう決意を持って将来の食糧対策を樹立する、こういうことで進んでいただきたいと思いますが、それに対する農林大臣の決意を承りたい。
○赤城国務大臣 もちろん、おっしゃるとうりの方針でいままでもきておりますけれども、お話のような輸入の増大等もあるときでございます。外貨を農産物の輸入に相当使うということは、国全体としても好ましくないことでございます。農業方面においては自給度を増していくような方針のもとに、それに集中した――また農民の生活も向上させなければなりませんが、そういう面に政策の焦点を合わしていきたい、こう思っております。
○稲富委員 それでは、ここでひとつ経済企画庁長官にお尋ねしたいと思うのでございます。それは、中期経済計画の食糧自給率の数字はきわめて不明確な点があります。すなわち、輸入された飼料によって生産された畜産物が国内供給に計上されているのでございます。純粋の国内生産額と輸入飼料によって生産された畜産物、及び輸入畜産物そのものの合計額との比較割合はどの程度になっておるか、承りたい。
○高橋(衛)国務大臣 ただいまお尋ねの、輸入飼料による国内生産畜産物をも除いたところの純粋な国内生産額を計算するということは、理論的にも、技術的にも非常に困難でございますので、中期経済計画では特にこれを計算はいたしておりませんが、事務当局で試算程度のものをやってみました結果によれば、大体七割程度というふうな計算が出ておるわけでございます。大体、昭和三十七年度の試算をいたしてみますると、国内供給度が大体七二・九%、これは事務当局の一つの試算でございます。それを昭和四十三年度の計画に引き伸ばして検討してみますると、これが七〇・三%。多少減少する傾向に相なっておるわけでございます。
○稲富委員 そうすると、結局、現在の畜産の純粋な国内生産というものはほんのわずかだ、ほとんど外国飼料に依存している。結論を申し上げれば、そういう結果になっておるわけですね。
○高橋(衛)国務大臣 詳しく検討の内容を申し上げますと、昭和三十七年度の数字について申し上げますが、畜産物の総産出額が三千四百三十七億円、これは実績でございます。輸入飼料が八百五十九億円。国内畜産の総産出額が二千五百七十八億円。それに対してさらに輸入畜産物が百一億円あるわけでございます。しこうしてその畜産物総産出額と輸入を合計いたしますと、畜産物の総供給額が出るわけでございます。これが三千五百三十八億円。したがって、国内の供給度は七二・七%、こういうことに相なるわけでございます。と申しますことは、国内でもって供給しているものが七二・九%であって、輸入はその残りの約三〇%足らずということに相なるかと思います。
○稲富委員 この食糧の中において、しかも将来の食糧対策上、畜産というものの役割が非常に大きいという立場から、私は畜産問題に対してお尋ねしておるわけでございます。
 ここで、せっかく厚生大臣がお見えになっておりますから、厚生大臣にひとつお聞きしたいと思うのでございます。
 人間が生存して活動するためには、必要なカロリーを食物によって得なくちゃできないわけでございますが、われわれ日本人が一日に摂取するカロリーは約二千二百カロリーであるといわれております。これを欧米に比較いたしますと、アメリカは三千百カロリー、イギリスは三千二百カロリー、西ドイツは三千カロリー、フランスは三千カロリー、イタリーでさえも二千八百カロリー、こういうことをいわれておるのでありまして、実に日本人の摂取カロリーは著しく低下しているという状態であるのでございます。
 厚生省は、昨年農民の栄養基準について検討されたということを承っておるのでございます。昭和四十五年度における国民の摂取カロリー及び穀物別、畜産物別あるいは水産物別のカロリーはどうなっておるか。これをひとつ、厚生省に調査があると思いますので、承りたいと思います。
○神田国務大臣 いまのお尋ねでございますが、おっしゃるとおり、日本の国民一人当たりの摂取カロリーの少ないことは、おあげになったとおりでございます。ただ、厚生省の調査では、二千二百カロリーでなく、二千三百カロリー、こういうことになっております。特にいまお引きになりました欧米の例に比べますと、大へん少ない。特に穀物偏重でございまして、動物あるいは油脂類の摂取量が非常に少ないわけでございまして、これらを勘案いたしまして、二千三百カロリーのうち六割は穀物からとる、あとの四割を動物あるいはその他の油脂類からとって体位の向上、体力の増長をはかりたい、こういうことを考えております。
 四十五年を目安にして、一人当たりの一日の基準カロリーを申し上げますと、こういうことになっております。栄養基準量の一人一日当たりが、熱量がいま申し上げたように二千三百カロリーといたしまして、たん白質が七十五グラム、油脂が三十八グラム、カルシウムが六百六十ミリグラム、ビタミンAが千九百国際単位、ビタミンのB1が一・二ミリグラム、ビタミンのB2が一・二ミリグラム、ビタミンCが六十三ミリグラム、こういうような構成になっております。
○稲富委員 それで、厚生大臣に聞きたい。国民の体位の向上対策、こういうことに対してはどういうような具体的対策をもって食物に対して国民体位の向上をはかるか、こういうような構想といいますか、改善策といいますか、そういうものを樹立しておられるということであります。この点をお伺いしたいと思います。
○神田国務大臣 体力の向上を食糧の面からはかるために、栄養指導制度の確立をやっておりまして、ただいま保健所に職員を増配いたしまして、そして指導する、あるいは学校給食をやるとか、あるいは工場の集団給食をやるというようなこと、あるいはまた指導者の配置等をいたしまして、できるだけ万全の措置をとっている、年々その予算もふやしてまいっておる状態でございます。
○稲富委員 ただいま厚生大臣も御答弁なさったように、将来の日本の食糧対策の問題は、畜産物に非常に大きな比重があるということはすでに御承知のとおりでございます。そういう点から、ただいまも厚生大臣から話がありましたように、穀物摂取量は全体として増大しているというような傾向であるのでございますが、特に畜産物摂取量はさらに増加するという結果になってくると思うのでございます。水産物の現在の生産量というものは、これは六百数十万トンくらいの程度でございまして、将来いろいろな水産業の関係等から見まして、非常に期待さるべき現状ではないと思うのでございますが、そうなりますと、畜産物によるたん白質の摂取量というものが著しく増高しなければできないということになってくると思うのでございます。たとえばフランスに例を見まするならば、総摂取カロリーのうちの穀物からとる割合は三四%といわれております。畜産物からとる割合は二五%であるといわれておるのでございます。ところがわが国は、穀物からとる割合というものは六八%であり、畜産物からはわずか四%しかとっていないというような現状であるのでありまして、動物たん白質の摂取量は、フランス人一人一日当たりが五十三グラムに対し、日本人はわずか二十三グラム、こういわれておる。実に畜産物によるわが国民の摂取量というものは、インド人よりも低いというような数字を示しているというような状態であるのであります。しかし、この状態というものは将来だんだん改善されなければいけないと思うのでございます。この点は、先般農林省も農産物の長期需給見通しというものを発表されて、今後四、五年のうちには畜産物消費量は倍増するであろうということを発表されております。それで、この際経済企画庁長官にお尋ねしたいと思いますことは、わが国の食糧自給率は、かりに中期経済計画の数字が示しておりますように、先刻申し上げました八〇%であるとしても、畜産物消費が倍加した場合におけるわが国のカロリー計算による自給率は、飼料生産の状態が現状の程度であるとすると、昭和四十五年においてはどのくらいになるという計算をなされておるか承りたい。
○高橋(衛)国務大臣 カロリー計算によるところの試算はいたしておりません。
○稲富委員 カロリー計算はだんだん低下する傾向にあるわけです。これはいろいろ各方面の論者の議論を聞きましても、わが国の食糧自給率は、畜産物消費が数年内に倍加するということを認めております。しかるに、畜産物のえさの生産が現状程度であるということを前提といたしますならば、四十五年には実に四五%程度に低下するようなことになるから非常に憂慮すべきものである、こういうことが一般に言われておるわけであります。こういう統計は、当然企画庁としてももうできていなければいけないわけでございます。こういう点から見まして、私は、この際専門的に農林大臣にお尋ねしたいのでございます。わが国の農業は、数年内に、いまのような農政を続けておると、国民の必要とする食糧の半分ほどしか生産ができないという結果になるのでございます。その反面においては、先刻も申し上げましたように、外国食糧の輸入に大半を依存せねばならない、こういうような結果になってくると思うのでございます。この点は、現在のような状態を続けておったならばそういう結果になってくると思うのでございますが、これは農林大臣、お認めになりますかどうでありますか。
○高橋(衛)国務大臣 先ほどの御答弁をもう少し補足さしていただきますが、ただいまも御質問がございましたが、御指摘のように、飼料の輸入がどんどんふえていくという傾向は私どももこれを認めておるのでございまして、また同時に、その前提として、食糧の構成が漸次でん粉のものから動物たん白、または脂肪に移行するという傾向も、従来の実績から顕著に出ております。そういうふうなことを織り込みまして、畜産物の供給がどの程度になる、また需要がどの程度になるという見当をつけておる次第でございます。したがって、飼料の輸入が今後相当急激に増大するということを前提にしまして、昭和三十七年度の飼料の輸入実績は八百四十九億円でございましたが、これが昭和四十三年度においては千六百六十億程度に相なるという大体のめどをつけておるわけでございます。しこうして、そのほかに輸入畜産物等も全部含めまして、結局先ほど農林大臣からお答え申し上げましたとおり、食糧の自給度は八〇%を堅持するという考え方のもとに、それが達成できるような生産政策または構造改善政策というものを推進いたしたい、かように考えておる次第でございます。
○稲富委員 時間がありませんので、飛んで質問したいと思います。先刻お尋ねしましたことと同時に、ひとつ農林大臣にお尋ねしたいことは、今後どの程度の食糧を国内で確保すべきであるかという、これをやはり確立する必要があると思うのであります。それから、そのためにえさを含めた農業生産をどの程度年々増加していくべきである、こういうことをお考えになっておるか、この点ひとつはっきりした農林大臣のお考えを聞きまして、さらに次の問題に移っていきたいと思うのでございますが、この点をひとつ明確にお願いしたいと思います。
○赤城国務大臣 自給度をカロリー計算でやるとすれば、近く五〇%程度になるというようなお話でございますが、カロリーの計算方法は私どもとっておりません。カロリー計算がはたして妥当であるかどうかということには相当問題があろうと思います。しかし、カロリーによって自給率を試算してみましたのですが、三十七年におきましては七四%というふうに私のほうでは計算が出ております。また農産物の需要と生産の長期見通しによる試算では、四十六年が六五%、カロリー計算をしても五〇%になるというわけではございませんが、価格の点でいま自給度を私のほうで計算しております。その計算は、四十三年度におきましても八〇%程度、これを維持していきたい、堅持していきたい、こういうことは先ほど申し上げたとおりであります。それを維持していくのには、どれくらいの年率生産を伸ばしていくことが必要か。これは、作物、農産物別にいろいろな自給度の計算をしていかなくちゃならないと思いますので、いまこまかい誠算は事務当局でもやっておりますけれども、私いま手元に持っておりませんが、その八〇%の自給度を維持していくという方向で進めておることを申し上げておきたいと思います。
○稲富委員 そこで、次に畜産振興並びに酪農振興の問題、及び迫ってくる貿易自由化の問題について、農林大臣にお聞きしたいと思うのでございます。
 政府のこの畜産振興、酪農振興のかけ声というものは、数年来ずいぶん大きく叫んでいらっしゃると思うのでございます。ところが従来わが国は、そう叫ばれておる中にも牛乳は一日に三勺、卵は三日に一個、肉類はわずかに十グラムの消費にすぎないというような状態であります。欧米の水準に比べますと、わずかに十分の一あるいは二十分の一にしかすぎないというようなわけでございます。しかし、国民の所得の上昇とかあるいは嗜好の変化等に伴って、世界の歴史でもまれに見るように、最近は非常に速度を増して消費が上昇を見ておるというような現状であることは御承知のとおりでございます。
 それで、ここでお尋ねしたいと思いますことは、もし牛乳の一日当たりの消費量を一合にするためには、乳牛頭数を三百万頭前後としなければできないということになるわけでございます。これを飼料の自給率七〇%で飼育するためには、飼料畑が百万ヘクタール、牧野が五十万ヘクタールを最小限度整備しなければならない、とこういう結果になってくると思うのでございます。しかるに、政府の統計によりますと、牛、馬、豚、鶏等の家畜全部を合計いたしましても、牧草、青刈り、実り作物の作付の延べ面積は、田畑、牧野を総計しても七十万ヘクタールか八十万ヘクタールにとどまっておるという現状であります。これでは畜産振興、酪農振興というものは、これはもう百年河清を待つというような結果になってくるのではないかと私は思う。四十年度の予算案に見ましても、政府は非常にいいことをしたように思われておるようでございますが、草地改良の予定面積はわずかに三万ヘクタールにすぎない状態でございます。このような政府施策の貧困が、ひいては飼料輸入の急増にあらわれておるというようなことは、先刻申したとおりでございます。すなわちふすまであるとか、トウモロコシであるとか、マイロであるとか、こういうような作物の数量が六百万トンをこえておる。金額では三十八年度において三億五千万ドル、すなわち千三百億円に達しておるのでございます。そういうような結果は、世界じゅうのえさ屋が日本に注目しております。日本の貿易業者は、世界じゅうのえさを買いあさっておるというのが現在の状態であります。しかも、三十九年度におきまする農業の動向に関する年次報告を見ますると、飼料の国際価格が高騰の気配を示しておるということを警告されております。かような結果、最近わが国の養鶏は、えさ高であり卵安であるということで、養鶏家は軒並みに赤字経営に泣いているのであります。最近の新聞あるいはテレビ等におきましても、こういう悲惨事を報道いたしております。私は、日本の畜産の前途を考えますときに、このような状態では、えさ屋が栄えて農民が滅びるというような結果になりはしないかということを非常に憂慮するわけでございます。こういうような状態になしてはならない。それがためには、いま申し上げましたようなもっと思い切った国内飼料の自給体制というものをやらなければいけないのじゃないか。ところが来年度の予算を見ましても、この点が非常に貧弱である。こういうようなことでは、私は、日本の自給飼料対策ができないのじゃないか、自給飼料対策ができない結果は、ひいては海外食糧に依存しなくちゃいけないという結果にも相当なってくると思うのであります。こういう問題に対する農林大臣としてのお考えを承りたい。
○赤城国務大臣 確かに自給体制が確立されておりませんから、日本の畜産物は国際的に見てコスト高でございまするし、畜産をしておる者も、なかなか採算に合わぬということは御指摘のとおりでございます。でございますので、いまお話しのように十分とは申し上げられません。しかし、飼料の自給度を増していくという方向におきまして、国費の草地造成とか、あるいは機械化公団による草地の造成、あるいは県、市町村等の草地の造成まで入れますれば、いまの御指摘の数字よりはもっと多くなるわけでございますが、しかし、これをもって日本の酪農が自給飼料で相当部分をまかない得るというわけにはまいりませんが、これは、お話の方向へ強力に逐次進めていかなくちゃならぬと思います。
 卵のほうでございますが、鶏卵は、畜産のほうでは自給度が一番あるほうでございます。ただ飼料がそういうふうなことになっておりまするし、それから一方、需要よりも生産がふえておるような状況でございますので、これは相当調整していかなくちゃならぬと思います。お話のとおり、自給飼料でまかなうウエートが非常に少ないということが日本の畜産が進まないということ、畜産農家がわりあいに採算上よくないということだと思いますので、自給度を増すことについては極力力を注いでいきたいと、こう思っております。
○稲富委員 この問題につきましては、あとからまた結論的にお尋ねしたいと思うのでございますが、やはりいまのような状態では、先刻も申し上げましたように、そういうような方向に持っていきたいと思っていらっしゃるだろう、ところが遅遅として進まない。農民は期待をしてこれに応じておるけれども、もう期律倒れになってやめてしまいはしないか、そのうちに滅びてしまうという結果になりはしないか、早急にこれが対策をとらなくちゃいけないという問題が起こってくると思うのでございますが、これは、結論としての処し方、またその点に対する考え方を承りたいと思うのでございます。
 時間がないから、それでは次に進んでいきたいと思いますが、いま申し上げましたようなことが、日本の国内の農業に対しては大きな悩みがあるのでございます。これに応じまして、農産物の輸入の自由化という問題もまた一方には生じてくるわけでございますので、この農産物の輸入の自由化の問題についてさらにお尋ねしたいと思うのでございます。
 御承知のとおり、一昨年IMF八条国に移行しました。これによって、日本は農産物の輸入数量制限を行なうことは原則的に禁止されることになったのであります。そこて、七十二の農産物について残存輸入制限リストをただいまガットに提出し、目下その出方待ちというような状態であるということは、御承知のとおりであると思うのでございます。ところがこれと同時に、また一方には、御承知のケネディ・ラウンド、すなわち関税一括五〇%引き下げ交渉とか、あるいは国連の貿易開発会議におきまする低開発国との問題等も控えておるわけでございます。一応ケネディ・ラウンドは、主としてアメリカとEECとの対立が前面に押し出されておるように思われておったのでございますが、御承知のごとく、ドゴールの強硬態度による先般のEEC内における共通穀物価格の妥協を見た結果は、将来、すなわち一九六七年七月から、EEC地内におきまする共同農業生産が完全発足することになります。そうなりますと、ケネディ・ラウンドの交渉は本年以降本格化を見ることも一応予想しなければいけないと思うのであります。そうすると、この関税率がかなり高いわが国にも深刻な影響があるものと、一応このように考えなくてはいけない問題ではないかと思うのございますが、これに対してはどういうような見方をしていらっしゃるか、承りたい。
○赤城国務大臣 ガットの場、あるいは国連の場等において、そういう趨勢から、日本に対しましても、もちろん自由化に踏み切ったわけでございますが、それを個々的に、個別的に進めていくような波が押し寄せるといいますか、要請が強まることと思っております。これにつきましては、日本の農業が国際競争力の非常に弱いような立場等につきまして、機会あるごとに諸外国にそれを納得させるような方法を講じております。いかに国際的な開放経済に入ったと言いながら、急速にいまの関税の一括引き下げとか、あるいは割り当て輸入量の制限といいますか、これを自由にするということは、日本としては慎重に考えていかなければならぬ問題だろうと思います。でありますので、たとえば国が扱っている米とか麦とか、あるいは酪農品だとか、あるいはでん粉だとか、こういうものにつきましては、いかに開放経済体制下と言っても、これを自由化するということにはむずかしい問題を相当控えておりますので、できかねるというわけでごかいます。七十二品目等につきまして、それぞれの農産物を検討いたしまして、逐次自由化していくということにはいたしておりますが、一面におきましては、それに対応して、これに対抗できるような国内対策、まあ生産性を向上する対策とか、あるいはその他の財政的の措置等と並行してやっていかねばならない、こういうふうに考えておるわけでございます。
○稲富委員 いま大臣も言われますように、日本の農業というものは、外から迫ってくるこういうような国際的な情勢、国内的な情勢の中において、ほんとうに困った情勢にある、ここに農民が日本農業の将来に大きな不安を持つ一つの原因もあると私は思うのでございます。それで、私は、そういう内外ともに迫ってくる中において、いかにして日本の農業を守るかということが今日の大きな課題ではないかと思うのでございます。これに対しては、私は並みたいていなことではないと思うので、これを担当される農林大臣は、相当な決意を持って日本の農業対策というものを行なうことが必要であると思うのでございますが、この点が、予算書を見ました場合でも非常に微温的であると私は思うのでございます。こういうように国際的な、非常に将来不安になるような情勢下というものを十分認識している。しかも、それに対応した日本の農業政策を樹立しようと、こういうような考え方を、はたしてどのくらい持っておられるか。これを、はなはだ失礼な言い分でございますけれども、疑わざるを得ないほど日本の農政というものが微温的であると私は思うのです。この点を、よほどひとつ考えてやらなければいけないと思うのでございます。この問題に対してはまだいろいろお尋ねしたいことがございますけれども、時間がございませんので、さらに次の機会をとらえて十分この問題はひとつ政府の意のあるところをただしたいと思うのでございますが、ただ、この際一つ承っておきたいことは、政府は先般大沢事務次官をヨーロッパに派遣されております。これは、いまだかつて例のないことをおやりになって、ヨーロッパの状況の検討を命ぜられたことであろう、検討されたことであうろと、こういうようなことを考えるわけでございますが、こういうような点から、ヨーロッパの農業事情、こういう点を十分検討した結果、日本の農業を将来どういうようなふうに持っていかなければいけない、いかにして日本の農業を守らなくちゃいけない、こういうような決意がひとつあらわれたか、もしもこれに対する農林大臣としてのその決意のほどがありますならば、この機会にひとつ承りたいと思うのでございます。
○赤城国務大臣 いまお話しの大沢次官を派遣しました。これは、自由化に対処して、日本の農業の実情をよく知悉せしめるためもありまするし、また、ヨーロッパ、アメリカ等の農業事情もよく調べて、日本の差し迫った状況打開に対してどういうふうにしたらいいかということの研究にも派遣したわけでございます。これは、やはり一言で言いまするならば日本の農業の体質改善でございます。構造改善の事業につきましてはいろいろ批判もあるようです、批判もありますけれども、この線は日本の体質改善の線でございまするから、構造改善の仕事を強力に推し進めていくというようなこと、あるいはまた、今度御審議を願っている経営規模の量的な拡大、また経営規模の質的な強化の土地改良というような面、あるいは兼業農家の共同化、協業化を進めていくというような点に力を入れまして、日本の農業の体質を強化していく、こういうことに一そう力を入れなくちゃならぬということを痛感しておるわけでございます。
○稲富委員 ただいまも農林大臣が御答弁になりましたような国際情勢を考えますと、当然迫ってくるものは、先刻申し上げましたように、貿易の自由化の問題があるし、関税の一括引き下げ交渉の問題がある。これに対する見通し等に対しましても先刻承ったとおりでございますが、これに対応いたしまして、将来、農産物の、ことに輸入ワクの拡大であるとか、関税の逐次引き下げ等が行なわれますことによって、なしくずし自由化というような、こういう傾向になってくるのじゃないかということをわれわれ憂慮するわけでございます。そういうことになってくるだろうと思うのでございますが、率直にひとつこれに対する農林大臣の考え方と、そういうような場合になった場合に、国内生産において徹底的に保護せなければいけないというような品目はどういうものを目標にしておられるか、こういう点もひとつこの際率直に承りたい。これは、日本の農業経営者が将来の農業に非常に不安を持っておる問題でございますので、この点をひとつ率直に承っておきたいと思うのでございます。
○赤城国務大臣 総括的に申し上げまするならば、先ほどから話がありましたように、日本でほんとうに自給しなくちゃならぬ、ほかの国にたよってはならぬというようなものにつきましては、いまの自由化を軽々に進めるべきじゃない。例を申し上げました米とか麦とか、あるいは酪農品とか、あるいはでん粉とか、こういうものは軽々に自由化の線に進んでいくべきではない。それから、日本でそれほど生産をしなくてもいいのじゃないかというものもなきにしもあらずでございます。そういうものにつきましては逐次自由化の方向へ持っていく。でありまするから、これはなしくずしということよりも、やはり品目別に詳細に一つの計画を立てて、その時期と品目とを並べてやっていくというスケジュールをつくっておるわけでございますが、まだ固まっておるわけではございませんが、そういうふうなことで進めていきたい、こう思っています。
○稲富委員 それで、先刻大臣の答弁にもありましたように、日本の将来の農業といたしましては、やりは農業の生産性を急激に引き上げる、こういうことが必要であるということは申すまでもないことでございますが、そうするために必要な問題は、やはり農業投資を充実するということもまた非常な肝心な条件になってくることも見のがすことはできないのでございます。ところが、政府の施策は、これを遂行しているというわけでございましょうが、どういう理由か知りませんが、最近の政府の作成した資料を見ましても、たとえば三十八年度において農業資本がどの程度形成されたか、その中で政府の補助金がどの程度を示したかというような数字は、どうも私どもはいろいろ調べましたけれども、はっきりわかりません。そこで、若干この数字は古いのでございますが、農林省が一昨年の十二月に発表されました三十七年度の農業及び農家の社会環境という資料によって見ますと、次のことが明らかにされております。すなわち、国内総資本形成に占める農業資本の割合は、経済の高度成長の過程において急速に低下している。すなわち、昭和三十年は一二・四%、昭和三十七年は五・五%である。農業資本形成に占める政府補助金の割合は、ほとんど停滞しているといっても差しつかえないような状態であります。すなわち、昭和三十年は二四・四%、三十六年は二一・七%、三十七年は二五%となっております。
  〔委員長退席、稲葉委員長代理着席〕
ところが、政府が商工業を含めた全産業に投下した資本総額に占める農業の割合は、著しく減少しているのであります。すなわち、昭和三十年は七・八%、三十六年は四・七%、三十七年は四・三%にすぎないというような状態でございまして、これは、はなはだ農林大臣には申しにくい話でございますけれども、こういう数字から見ますと、政府が非常に農業軽視をしている、こういうようなそしりを受けてもやむを得ないのじゃないかと思うのでございます。こういうようなことをやりながら農民と他産業に従事する者との所得の均衡をはかるとか、全くこれはから念仏にすぎないことになりまして、せっかく農業基本法を制定したその趣旨がなくなってしまうことになってくるのじゃないかと思うのであります。さらに、政府の農業の動向に関する年次報告を見ますると、その農業の比較生産性は、相手方に製造業をとってみますと、昭和三十三年が三三・六%、三十六年は二五%、三十八年は二七・九%ということになっておりまして、これもまた趨勢的に低下しておるということが一目瞭然でございます。これは、前にも述べましたように、農業と他産業との資本形成の割合の低下と軌をひとしくしているというような状態でございまして、こういうような農政をやっておっては、いかに食いとめようといたしましても、農民が農村離脱をやることもやむを得ないというような現象になってきまして、農業の敗退というものはここから生ずるのじゃなかろうかと私は思うのであります。それは、こういうような統計からあらわれている実情でございまして、こういうことに対して農林大臣はどういうようなお考えを持っていらっしゃるのであるか。
 ここでひとつさらにお尋ねしたいことは、かつて前池田総理は、農民の六割削減論を放言いたしまして、非常に物議をかもしました。農林大臣は、今日農業の生産性が上がらないということは、農民の数が多過ぎるから生産性が上がらない、かように考えていらっしゃるのか、あるいは農業における個別資本、あるいは社会資本の形成について政府のやっております施策が不十分であるから生産性の向上ができないと思っていらっしゃるのであるか、この点をひとつはっきり承りたい。もしも農民の数が多過ぎるとするならば、どのくらいに減らせばいいというお考えを持っていらっしゃるのか、この点もあわせてお伺いしたいと思うのです。
○赤城国務大臣 農民の数が多いから生産性が上がらないというふうには私は考えておりません。これは、計算上からいいますならば、少ないもので生産を割っていけば、形の上では生産性が上がったような形になりますが、実質的には上がったとは申し上げられませんから、農民の数が多いから生産性が上がらないんだというふうには考えにおりません。しかし、現実に農民の数は減っておりますし、諸外国なども減って、そして国民の食糧を、自給度にはそれぞれ差はありますけれども、まかなっておるという現状があります。でありますから、現状から見ますならば、できるだけ後継者をいい後継者として残していきたいという方策はとりますけれども、出ていくものである程度やむを得ないと見られるものもあります。そういう関係でございますので、できるだけ残して、また残ったいいものが生産性を上げるようにいたしたい、こういうふうに考えておるわけであります。
 そこで、いまの資本の装備といいますか、資本装備が非常に足らぬじゃないか、こういうことは仰せのとおりでございます。公共投資につきましても、中期経済計画等におきまして、農業に対しまして一兆四千億くらい要求したのでございますが、一兆二百億というようなことで、しかし、これは情勢の変化に伴って弾力的にやっていくということでありますので、それは了承をいたしましたが、なおさらに土地改良等につきましては、新たに五カ年計画等を立てて公共投資をすることになっておりますので、そういう点で弾力的にやるという留保つきで認めておるようなことでございます。でありますので、生産性の上がらない理由は、人ということよりもやはり資本装備が足らぬじゃないか、また生産性が上がるような基盤になっておらないじゃないか、こういうふうに考えられます。でありますので、生産性の上がるような土地基盤の整備、あるいは土地の経営規模の拡大、あるいは共同化というような基盤をつくっていく、こういうことを考えておるわけでございます。
○稲富委員 大蔵大臣、一番大切なところを眠っていらっしゃるようでございますが、いま農林大臣が言われたように、農業生産の上がらないということは、やはり農業に対する資本力が非常に大きく影響がある。これに対しては、やはり財政担当のあなたが十分考えてやっていただかぬと、こういうような農政をやっておりますと農村はじり貧になってくる。農村が滅びた場合に、これはもう追っつかないわけです。しかも、先刻農林大臣は、農村は滅びることはないと言っておる。もちろん田あり畑あれば滅びはしないけれども、農業経営者はなくなってくるので、こうなれば、やはり外国食糧に依存しなければならないことになってくるわけです。それで、農業に対する投下資本の影響が今日生産性が上がらない大きな原因であるということは、農林大臣も十分考えておられるようです。おそらくこの点は、大蔵大臣も十分農村のことを御承知でございますから、おわかりになっていると思うのでございますが、こういうような状態でございますので、今後農業に対する財政的な措置に対しては十分考えていただかなければいけないと思うのでございますが、この際、大蔵大臣としての決意のほどを承りたい。
○田中国務大臣 農業は滅びはいたしませんし、また滅びたら、たいへんなことでございます。先ほど申し上げたとおり、国民の食糧確保でありますから、国際収支の上から見ても非常に重要なものでありますので、農業基盤の拡大と合理化に格段の意を用いておるところでございます。今年度も乏しい財政の中から格段の施策を行ないましたが、引き続きより積極的な施策を行なってまいりたいと考えます。
○稲富委員 これは、時間がありませんから、いずれそのうちまた大蔵大臣と話しますから、考えていただきたいと思います。
 時間がないから飛ばしますが、さらに、この際にひとつこれに関連いたしまして、農業金融の問題に触れてお尋ねしたいと思うのでございます。農業金融政策についてはいろいろ問題がありますが、時間の関係もありますので、ここではただ一点だけお尋ねしたいと思うのでございます。すなわち、それは農林中金の資金運用について大蔵大臣、農林大臣にその所見を伺いたいと思うわけでございます。
 農林中金は、申すまでもなく系統金融機関の頂点に位しておりまして、農業金融の流通については責任を背負っておるわけでございます。ところが、最近では農業金融機関であるか、あるいは一般商業金融機関であるか、その性格がきわめてあいまいな状態になっていると言いましても言い過ぎではないと思うような状態でございます。たとえて申し上げますならば、同金庫が発行いたしております一九六四年農林金融の実情という資料を見てもわかりますように、同金庫の昭和三十八年度末の資金の調達及び運用の状態を見ると、総額は六千七百四十五億円の資金について、調達先は、その五八・六%が系統からの預金でございます。二三・八%が農林債券となっているのでありますが、債券もほとんど系統割り当てであるから、農林中金の資金はほとんど系統の資金を吸い上げたのだ、こう言っても差しつかえないわけでございます。
  〔稻葉委員長代理退席、委員長着席〕
ところが、他方運用面を見ますると、所属団体、すなわち系統の組合への貸し出しはわずかに一九・六%となっておりまして、その大部分は関連産業や銀行への貸し出し等によって占められておるというような状態であるのでございます。
 そこで、こういうような状態でいいのであるか。この際大蔵大臣、農林大臣に伺いたい。結局、これはいかにして農村に還元し、いかにして農村の生産事業に使うかということが大きな問題でなくてはいけないと思いますけれども、実態は、これに示しておるような状態になっておるわけでございますので、こういうような状態でいいか。しかも、貸し付けに対しては行政庁の相当な認可、許可といいますか、そういうような指示というものが相当あると思うのでございますが、これに対する農林大臣、大蔵大臣の考え方を承りたい。ことにはなはだしいのは、こういうような一般産業に対する貸し付けが、逆に今度は農村の事業を搾取し、農村の事業をじゃまするような事業にさえも使われているというような、こういうはなはだしい実例さえあるわけでございますが、こういう状態で一体いいのであるかどうか、この点を承りたい。
○赤城国務大臣 農業者の原資でございまするから、これは農業者に還元して、農業の体質を改善するために、産業としての農業が成り立つように使われることが望ましいことでございます。しかし、現状は、中金等に集まっている金も土地の売り渡し代金だとかその他がありまして。非常にふえておるわけでございます。そういうわけで、経営面から見まするならば、農業の資金が長期低利ということでございますので、これを麺金者のほうを考えて、ある程度関連帳業のほうに回すということも、これは経営面という点から考えればやむを得ない面があろうと思います。しかしながら、ほんとうに産業として農業がやっていけるような方向へこの資金を回すということは、非常に望ましいことだと思いますので、そういう方向に指導はさらに一そう進めたい、こう思っております。
○田中国務大臣 全年間の資金量の状態の傾向を見ますと、農林中金は五千億をこえる資金が純増分でございます。非常に大きな資金が集まっております。これをもう少し合理的に使えないかという問題は私も検討いたしました。現在は、農林中金は系統機関の中央機関といたしまして、季節的、地域的に、また業種間の調整を行なう役目を果たしておりますが、その中の非常に大きなものがコールに流れたり、また関連産業といいながら水産加工産業に流れたり、いろいろな状態でございます。これをもっと合理的に農村の振興ということに使えないかということを考えておるわけでありますが、資金コストが非常に高いということであります。これを農林公庫等と合わせてより合理的に使うということになると、利子補給の道とかいろいろなことが起こるわけでございます。農民は低利長期の金を必要とする業種でありながら、自分の金に自分で利息を払ってということでありますから、やはり公庫の資金は借りたいけれども、農中からの金はなかなか使えない、こういうところにいろいろ問題がございます。これは、制度の上で私も検討いたしておりますが、なかなかむずかしい問題がございます。ございますが、少なくとも年間五千億、六千億という資金量が集まっておる、これは、都市銀行や地方銀行に比べますと、いま五千億台の資金が純増するのは農林中金と信託銀行だけでありますので、これらのものをより合理的に使うことに対しては、より積極的にやはり検討は必要だと思います。
○稲富委員 これは、いま大蔵大臣もおっしゃったような状態でありますので、思い切った一つの改革というものを考えていただきたい。いま答弁の中にもうかがわれたのでございますが、これを将来いかにした形で改革するかということに対していろいろあると思うのであります。たとえば、いまお話がありましたような農林漁業金融公庫と農林中金と合体して、政府資金と農民資金とを一緒にして、長期低利資金をもって農業の生産事業に融資するような方法を考えるとか、あるいは農林中金の余裕金は公庫に納めて国が利子補給をして農村に使うようにするとか、あるいはまた、系統金融は信連の段階までとして、中金はかつての勧業銀行やあるいは農工銀行のような、一般金融機関のように脱皮させるというような方法はないかとか、いろいろ検討すればあると思うのでございますが、どうかこういうようなことについてひとつ十分検討して、これに対しては、いかにして農村にこれが返るかということを考えていく必要があるのではないか。
 そこで、大蔵大臣にお聞きしたいと思いますが、池田前総理は、中金に公庫債を持たせるというような構想を持っておったと聞くのでございますが、これが途中消えておるようでございます。その後どういうふうになったのか、その理由を承りたいと思います。
○田中国務大臣 先ほど申し上げましたが、議論の過程においてありました系統金融である農林中金と制度金融である農林公庫とをより調和せしめるにはどうするかという問題は、確かに検討の必要がございます。ただ、しかし、農林公庫に対する債券発行の問題、なおその引き受け先を農林中金の資金に求めるというような問題は、私たちも検討はいたしております。いたしておりますが、農林公庫そのものの公庫債を発行することの制度的な問題と、それを発行した場合の利子補給の問題が起こってまいりますので、そういう問題に対しては現在慎重に検討しておるという段階でございます。
○稲富委員 時間がありませんから、あとわずかでございますが、簡単に要約して質問いたします。
 その次にお尋ねしたいと思いますことは、先般朝日新聞が朝日農業賞を発表いたしました。その内容等を私たちは検討いたしますと、その作目があるいは酪農であろうと、養鶏であろうと、ミカンであろうと稲作であろうと、またそれが個人団体でありましても農協であっても、ほんとうに農民が強固な団結、集団力を形成してやっていくと農業の経営がやっていけるのではないか、こういうような感を私たち非常に深くいたしたわけでございます。それで、そうするためにはやはり農民が団結するようなことを助長していくということがあるいは必要じゃないかと思うのでございますが、この点から見ましても、政府が出しておりますあるいは自立経営農家の助長といい、協業といいながら、どの点でこれをやっていくかということがはっきりしてない。こういう点を考えますときに、要はこういうような団結を阻害するような要因をなくするということがまた一つ必要じゃないかと思うのであります。たとえば、今日その方法としては、あるいは農業法人の問題とかいろいろ問題があるわけでございます。これを除去する方法としては、たとえば、法人従業員に対して失業保険法とか、あるいは労災法を適用するというようなことが非常に必要じゃないかと思うのでございますが、こういう点がかえってこれを拒まれておるような感さえわれわれはするわけでございます。それで、こういう点から、農業に対する失業保険法の実施であるとか、あるいは労災法の適用ということがなぜできないのか、これに対してどういうような考え方を持っていらっしゃるか。これは労働大臣から承りたいと思います。
○石田国務大臣 まず最初に労災保険から申し上げます。労災保険につきましては、雇用関係にある人については、たとえそれが農業に従事している人についても適用するようにいたしておるのでありますが、今度の労災法の改正によりまして、いわゆる一人親方、あるいは小規模企業者、そういう人々の加入を認めるとともに、同様の立場から、農業に従事している人々も任意加入できるようにいたしておるのであります。ただし、この農業におきましては非常に技術的にむずかしい問題がたくさんございます。たとえば、そういう事故が業務上か業務外であるか、あるいはまた保険給付額あるいは保険納付額等の算定の基準になりまする所得のつかみにくいというようなこと、いろいろむずかしい問題はございますけれども、そういうものを克服いたしまして、特に最近動力機械等を使っていることが多く、それによって生ずる災害も多いので、それを中心といたしまして保護を広げていくように努力するつもりでございます。
 それから失業保険でございますが、農業は、申すまでもなく季節性の非常に強い労働でございます。また同時に、保険というものは偶発的な事故に対して補償するというのがおもな役割りでありまして、元来初めから季節的に業務を行なわないという当然予定されたものに対して補償すべき性質のものではないのであります。そういう上から申しまして、農業法人等についてはこれを任意加入にいたしてまいりました。しかしながら、最近におきましては、むしろ逆に冬季間あるいはその他において失業保険金をもらうことを目的として農業法人を設立すると見られる傾向がふえてまいりましたので、現在任意加入の申請に対しても許可を留保いたしまして、適正な許可基準の算定にいまつとめておるところでございます。現在の許可基準は、年間を通じて事業を行なうということ、そうして、その間における離職率が五〇%以下であるというようなことを中心として許可をいたしております。むろん失業保険をもらうことを目的として設立せられるという状態が顕著なものは許可をいたしません。そういう状態でございます。
○稲富委員 もう時間がありませんので、飛ばしまして、最後の結論的な質問に入りたいと思うのでございますが、先刻からいろいろ申し上げましたように、現在の日本の農業というものは非常に楽観するような状態にないのであります。これに対して、農林大臣はじめ政府が非常に苦慮されることはわかるのでございますが、要は、農村のいろいろな出てきました悪い条件をただ修理をしているようなことでは、日本の農業の立て直しはできないのではないか。そういうことよりも抜本的な農業対策をやって、そして、日本の農業は現在のような国際情勢下においてどういうような農業を打ち立てていくかという衣がえをするような段階にきておるのではないかと私は思うのであります。それがためには、政府も、この予算書を見ましても、あるいは将来の農業のための構造改善事業等には取り組んでいらっしゃるということはわかりますけれども、これは非常に申しわけ的な微温的な態度であると思うのでございます。どうして思い切った方策をやらないのか。あるいは先刻から申し上げましたような生産性の向上をやるということになりますと、当然行なわれます基盤整備をやらなくちゃいけない、圃場整備もやらなくちゃいけない、交換分合もやらなくちゃいけない、こういう場合に、農民に負担をかけてこれをやろうということでは、遅々として進まないと私は思う。やはり政府が日本の農業をいかにして守るかというならば、思い切って国費をもってでもこれに取り組んで、そうして今後の農業の生産性をひとつ立てていくのだ、こういうような思い切った対策が行なわれなければ、私はほんとうの日本の農業の立て直しはできないと思うのであります。そういう意味から、今日計画されておるあるいは基盤整備の一環でございますいろいろな基盤対策、あるいは農道の拡張であるとか、こういう問題に対しましても思い切って国が金を持ってやる。こういうことは財政措置が困難かわかりませんけれども、ただいまも申し上げましたように、従来とってきたようなできた現象を何とか手直しをするようなことでは、今日の農業は立ち上がることはできません。いかに政府が後継者を農村に求めようといたしましても、問題は、やはり農業経営が採算に合うという段階に持ってこなければ、私は農業経営をやる者はないと思う。いかに農業経営者に対しまして、日本の農業は滅びないのだからおやりなさい、こう言っても、もうそういう時代ではございません。やはり後継者をつくるということは、こういうことが必要であると思うのでございます。こういう点から、私は、政府が抜本的な農業政策を樹立することが非常に必要である、それがためにはやはり総合計画が必要だと思うのであります。先刻労働大臣に尋ねましたような保険制度の問題にいたしましても、あるいは労災制度の問題に対しましても、やはり農民がそういうことによって安心して農業経営に従事するような――これは単に農林省だけの問題ではございません。国としての総括的な計画を樹立してやらなければ、私は農村の立て直しはできないと思いますから、それに対する今後なお一そうの考え方を持っていただきたい。そういうことによってのみ初めて私は後継者の問題ができると思う。ただ私は、ここで将来における農村の後継者の問題につきまして締めくくりとして申し上げたいことは、農林大臣は、今回の予算書を見ましても、後継者をつくるためにいろいろな施策をやられております。ところが、ただ一点だけ申し上げたいと思いますことは、これは私はしばしば委員会等で発言してきた問題でございますが、後継者対策として農業基本法の十六条に規定されております農家資産の細分化を防止するための問題でございます。これに対しては、昨年でございますが、大蔵省において生前贈与に対する特例を設けられていると思うのでございますが、こういうようなことで、農業基本法の十六条を生かすことはなかなか困難だ、不十分だと思うのであります。しかし、政府は、この際思い切ってこれが細分化を防止するために、農家の家産制度に対する立法化をする必要があるのじゃないか。さらに相続人、あるいは相続人以外の者に対しては、長期、無利子の資金を貸し付けるとか、こういう経済的な問題と法制的な問題からこれを保護するといいますか、この法の精神を生かすということが非常に必要であると私は思うのでありますが、これに対する農林大臣の御意見を承りたい。
○赤城国務大臣 日本の農業の基礎を強くしていくということのためには、一面においては経営規模が大きくなることが必要だと思います。一面においては経営規模が細分して小さくなることは、これは防がなくちゃならぬ、こう思います。でありますので、いまの細分化を防ぐということの一つの方法として、お話しのように、生前贈与につきましては、譲与税を相続のときに回すという方法もとったのでございます。現状から見ますると、相続のときに大体家族の話し合いによって細分化はあまりしないようなことになっております。これを法制化して、いわゆる家産制度を設けていくかどうかということでございますが、実は憲法上の問題がありますので、この問題につきましては、検討をさらに重ねないとちょっと踏み切れない、こういう事情にございます。経済的な問題につきましては、自作農資金ばかりでなく、その他、そういうふうに金で解決をして、土地を分割しないというふうに相続する場合にできるような方途をさらに一そう強化していきたい、こう考えております。
○稲富委員 農業基本法が実施されて五カ年になります。政府は、憲法上の問題、民法上の問題を検討中だ検討中だと言って、五カ年間を経過したのでございますが、この問題は現実に起こっております。この間も、私のところにある農家のおやじがやってきました。私は二町農業経営をやっております。次男、三男は将来農業をやらせないつもりで学校へやりまして、就職させました。娘は嫁にやりました。長男だけに二町経営をやらせようと思っておった。ところがこの間そのむすこが帰ってきて、いまのうちに財産を分けてくれろと、こう言う。それから嫁に行っとった娘まで来て、財産を分けてくれと、こう言ったところが、長男が、じゃおれは農業をやめたと言って逃げ出したということであります。どうしたらいいだろうという問題で悩んでおります。こういうふうに、政府が検討している間に事態はいろんな悪条件を生み出しているわけなんであります。これに対しては、一日も早くこれに対する的確なる方向を示して、そしてこの問題を解決することが最も必要である、こう思うのであります。
 さらに、今日後継者の問題で一番大きな問題は、農村に嫁が来ないということであります。これは、もうあなた方が各地方で聞かれる問題であると思うのでありますが、もう大きな悩みなんです。そこで、ひとつこの際思い切って、将来農家の妻たらんとする者に対して長期、無利子の嫁入り資金の融通を行なうとか、あるいは政府の一部の負担による嫁入り保険制度を設けるとか、こういうようなことをして、何とか農村にとどまるような方策をやるということが必要じゃないかと思う。農村青年を育成するための方法は考えられておりますけれども、やは嫁りの来手がないようになったら、青年もとどまりませんので、青年教育をすると同時に、嫁対策も考えてやることが必要じゃないかと思うのでありますが、これに対する農林大臣の考え方をひとつ承りたい。
○赤城国務大臣 確かに農村に嫁さんが足りなくなっておる面もありますが、女の人に聞いてみると、男がしっかりしておれば嫁に行く、しっかりしていないから、というような話もありますので、そういうことになりますと、やはり男の後継者がしっかりやってくれるような態勢を整えてやるということが一番重点だと思います。御提案の点はいろいろ研究してみますが、いますぐにというわけにはまいらぬと思います。
○青木委員長 時間がまいっております。
○稲富委員 外務大臣、見えておりますか、外務省見えておりますか。
○青木委員長 移住局長が見えております。
○稲富委員 移住局長にちょっと聞いておきます。
 御承知のとおり、これはすでに北米におきまして、わが国が過去九カ年間継続してきたいわゆる短農制度というものがあります。これがアメリカの国内事情の問題で今年度から不可能な状態に置かれようとしております。これは、日本とアメリカとの農業交流という意味から申し上げましても、あるいは日本の農村青年がアメリカの農業事情を体験してくるという意味から申し上げましても、従来非常に貢献した問題でありますが、こういうような現在のアメリカの国内の事情は、これは、一つはやはり外交的折衝によって片づけるほかないと思うのであります。この間アメリカの新聞には、先般佐藤総理がアメリカに行かれた場合に、アメリカ政府との間に短農問題についても協議されるであろうという報道がされておりましたが、その結果を承りませんが、どういうふうな状態になっておるのか。また、外務省としては、これが外交折衝に対してどういう考えを持っていらっしゃるか、この機会に承りたいと思うのでございます。
○白幡政府委員 お答えを申し上げます。
 派米短農の効果と申しますか、これはいまの御説のとおり、私どもといたしましても、非常にこれが有意義な役に立つ計画であると思っておるのでございますが、お話しのとおり、ちょっとただいま問題が起きております。それで、私どもいま外交折衝をいたしております。先般佐藤総理が訪米なさいました節、外務大臣からも先方の政府に本件について要請をしてございます。その後、駐米の大使が常時国務省のほう、あるいは直接アメリカの労働省のほうとも交渉しておりまして、現在交渉が継続中でございます。これは、人数の上から言ってわずかでありますが、いろいろな意味で、非常にいままでいい効果を持ってきておりますので、できるだけいままでの形でもって継続してもらいたいという考え方でおりますが、しかし、アメリカのほうにもいろいろな国内事情もございましょう。現在の段階では、日本のほうからも具体的にどうしたらいいだろうか、アメリカのほうも具体的にどうしたらいいだろうか、案をそれぞれつき合わせて折衝中でございます。ただ、いまちょうどアメリカでは農閉期に入っておりますので、そういう事情もございますので、いましばらく時間をかけて交渉を継続したほうがよろしいというふうに考えております。
○青木委員長 これにて稻富君の質疑は終了いたしました。
 次に三木喜夫君。
○三木(喜)委員 私は、当予算委員会で非常に問題になりました三矢研究について、防衛庁長官にお尋ねをしたいと思うわけであります。
 この三矢事件が世間に知れますや、国民は非常に驚き、この研究に対しまして非常な関心を払っておるわけでございます。しかるに、防衛庁長官は、長崎におきまして、われわれが納得のいかない発言をされておることを新聞並びにテレビ、ラジオ等で報道しておるわけでございます。すなわちその内容は、三矢事件というものは非常に膨大な研究レポートであって、社会党は、あくまで研究にすぎないものを、前書きと結論を省いて刺激的なところだけを取り上げ、一方的独断によって推測している。次に、自衛隊として作戦研究には当然仮想敵国の想定は必要である。今後それを改めるつもりはないというような内容のことを発表されておるわけであります。私は、これから重要な問題として指摘したいことは、第一は、こうした国会で非常に問題になったことは、すべからく国政の場において、あるいは国権の最高機関であるところの国会において発言するのが当然であり、国会においても、小委員会を設けてこれを究明するということになっておるにもかかわりませずかかる疑いのある発言をされるということは、あまりにも軽々ではないかということです。あなたは、あるいはこの質問に対しまして、そういうことを言った覚えはないとか、あるいはまた、それは間違って伝えられておるのだというような逃げ口上を張っても、新聞、ラジオ、テレビというようなものは、そういううわさのないところに煙の立つはずはないのであります。これが第一点でございます。
 第二点といたしまして、すでに国会対策委員会並びに予算委員会におきまして、政府・与党と三点について確認ができております。それは、関係者を処分する、こういう点でございますが、あなたのこの発言の中で、作戦研究には仮想敵国の想定は必要であり、今後改めるつもりはない。私は、今後改めるつもりはないというところに重点を置きたいと思うのですが、これは、本委員会でも小委員会を設けてそのことを問題にしておるにもかかわりませず、もはや処分をしないというようなことがあなたの気持ちの中にも出ておる。あるいは政府、自民党におきましても、このことを決定したかどうか。もし決定をしていないのならば、あなたのこの発言の中に含まれておる意味をひとつ発表していただきたい、こういうふうに思うわけであります。以上御質問申し上げたいと思うわけであります。
○小泉国務大臣 私の長崎における記者会見の席上申し述べましたことは、いろいろと記者諸君の質問に対してお答えを申し上げたのでございまして、小委員会があるのに、私が進んでそういう発言をしたようなことは毛頭ございません。小委員会ができたのであるから、そういうところで誤解をただしていきたいということは申し上げておきました。また、こういう研究が当然であるというような節も申されておりまするが、私は三矢研究なるものは、用語においても内容においても不適当なものがある、行き過ぎのものがあるというのは、その席上でも申し上げております。そうして、こういう研究をするのは自衛隊の任務で当然であるというのは、三矢研究のごときものを申し上げる所存は毛頭ございませんで、自衛隊が一朝事ある場合、非常な場合にはどうするかというようなことを研究していくことは、自衛隊の任務として当然ではないかという意味を申し上げたのでございまして、三矢研究の内容のごときものが当然であるといった考えは毛頭ないのでございます。
 なおまた、仮想敵国の問題でございまするが、これは、国会においてもしばしば総理大臣、防衛庁長官からも、仮想敵国はないと答弁をいたしておりまして、この問題とは全然性質が違うのでありまして、仮想敵国という用語はもちろん不適当であります。ただ、社会党の方のほうから、仮想敵国ということばがございましたので、私はそれを引用いたしまして、いろいろな作戦演習想定をする場合に、対象国を設定をするということは必要である、これは、国会における仮想敵国という政治家の発言とは全然意味が違うのである、ということを申し上げたのであります。
  〔「敵とはっきり書いてあるじゃないか」と呼び、その他発言する者あり〕
○青木委員長 静粛に願います。
○三木(喜)委員 いまの御答弁によりますと、新聞発表というものが私の思っておることを伝えていない、こういうような発言で終始したと思うのですが、しからば、新聞発表というものを、あなたはこれを虚偽を報じた、こういうようにお考えになっての上でこういう御答弁をなさっておるのですか。
○小泉国務大臣 新聞が故意に虚偽を発表しておるというようなことは毛頭考えません。ただ、質問応答のいろいろなやりとりの間に、私の真意が誤り伝えられておる、誤解をされておる点があるということを申し上げておるわけでございます。
○三木(喜)委員 冒頭に申し上げましたように、国民が非常に関心を持って、国の施策が軍事化し、さらに世界の緊張の中で、日本の立場が非常に微妙をきわめております中で、特に防衛庁長官の態度としては、私は、瓜田にくつを入れず、李下に冠を正さずという、そういう態度で臨んでもらわなければならないのに、態度が軽々でないかということと、新聞が私の真意を誤り伝えたということになると、新聞のいうことは誤報だということになります。新聞のいうとおりですということを前提にしておいて、そのあとでは、誤り伝えておる、一体、これは何をあなたは言わんとしておるのですか。矛盾もはなはだしいではないですか。この場においてもそういうような詭弁を弄されるようなことでは、防衛庁長官としての態度、国民があなたにかぶせておるこういう責任が果たせていない。また政治家の姿勢としても、こういう注目しておることに対して軽々な態度は、大臣としてあるべきことではないと私は断じたいのです。その点はどうですか。
○小泉国務大臣 先ほど来申し上げますとおり、三矢研究と、私の申し上げました、自衛隊が平素一朝事あるときにいろいろな想定をし、演習の研究等をするということと――記者諸君との間で、私は、三矢研究と、三矢研究を離れての平時の自衛隊の研究ということ、そういうことに行き違いがあるということを申し上げているわけでございまして、御質問がございましたのでお答えをしただけでございまして、私は、その前段にも、国会で小委員会が設けられておるのであるから、その場で十分こちらの真意や御説明も申し上げる場としたいということも申し上げているわけでございます。私は、新聞記者諸君が間違いとは申し上げませんが、私の真意のとり方に十分徹底を欠いておるということを申し上げておるわけでございます。
○青木委員長 辻原弘市君から関連質問の申し出があります。三木喜夫君の持ち時間の範囲内において、これを許します。
○辻原委員 いま三木委員から提起をいたしました防衛庁長官の長崎における発言についてのあなたのお答えは、聞いておると、答えになっておらないのです。まず第一に、問題点をもう少し明らかにいたしましょう。
 あなたがいま答弁されたのは、三矢問題とは別に、一般的な作戦研究においては、これは長崎発言のように、仮想敵国があってもいいかのごとき発言をいまされているのですよ。それはどうなんですか。われわれは、三矢研究というのは、これは通俗的にそれを言っているにすぎないのであって、問題は、防衛庁においてこの種の仮想敵国を想定をし、しかもそれが国会のみならず、国内のすべての分野にわたる軍による作戦計画、統制計画、総動員計画、この種の研究をやることは、これはあたかも一種のクーデターを想定するものであって、ゆゆしい問題だということをわれわれは主張している。そういう認識だ。しかし、いまあなたが言われた、前段の三矢研究について申したのではありません、一般研究について長崎発言は言ったのですというのは、これは、あなたの真意ですか、その点を私は確かめておきたい。
○小泉国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、私は前段において、三矢研究なるものには用語の不適当その他行き過ぎがあるということを申し上げておるのでございまして、そういう点からして、ただ一般的に自衛隊が平素いろいろな場合を想定をして、演習その他研究をするなどということを申し上げたわけでございます。
○辻原委員 それではもう少し申し上げる。これは新聞の記事じゃないのです。私はじかにあなたの録音放送を聞いた。聞いたのですよ。そこでこういうことを言っておる。自衛隊としての作戦研究には仮想敵国の想定は必要であり、今後改めることはない、とこう言っているのです。いまあなたは、三矢研究について国会でたびたび論議があったので、仮想敵国についてはそういうことは考えておりませんと言っているが、作戦研究に仮想敵国は必要だと長崎では発言している。そのことはどうなんですか。
○小泉国務大臣 それは、そういうことではございません。私が申し上げましたのは、やはりその前段に申し上げました、三矢研究の中にも用語の不適当なところがあるというのは、心の中には、そういう仮想敵国というようなことをば明記したことが不適当だという考え方があるのでありますので、そういうことを申し上げたのでございまして、今後といえどもそういう点は、対象国の問題等を列挙することは、当然これは考究を要する問題である、不穏当、行き過ぎであるという点は、この前の国会でも申し上げましたとおり。そういう気持ちを前段に置いて私はものを言っておるのでございまして、決して誤解のないようにお願いを申し上げます。
○辻原委員 それならばはっきりここで確認をいたしておきますが、あなたが述べられたこと、また新聞で報道されておる、いま私が申し上げた作戦研究には仮想敵国が必要であるというのは、ここであなたは否定されますね。それは否定されますね。あなた、いま言ったじゃないですか、そういうことは真意でなかったと言った。だから、その点を明確にしてください。
○小泉国務大臣 私は、仮想敵国という字を使うことは、これを明記することは不適当である、こういう考え方でおります。
○辻原委員 続いてもう一点明確にしておきますが、このあなたが長崎で発表されたのには、用語において改めるべきは改めていきたいとしか言っておらぬ。しかし、いまあなたは、用語のみならず内容に云々ということも言われたが、ここで先般問題になったときに、総理なりあなたが公式、非公式にわれわれに対して述べられ、国民に対して約束したことは、用語のみならず、表現のみならず、その内容においてきわめて重要な意味を持っており、不適当であるということを明確にしておる。その点はどうなんですか。
○小泉国務大臣 それは、前回の当委員会において申し上げましたとおり、今後十分検討いたしまして、用語の不適当な点、また内容の行き過ぎの点についても大いに考慮を払わなければならない検討すべき点があるということを申し上げておきました。もちろん小委員会において十分調査研究の結果、適当な措置をとらなければならないと考えておるわけであります。
○三木(喜)委員 そういたしますと、あとの質問の都合もございますから、私は、ここで小泉長官の言われたことの真意をはっきりしておきたいと思うのですが、あなたは、まず新聞発表は前提として間違いでないということを是認されました。しかしながら、また後段では、三矢研究において仮想敵国を設けるというようなことは行き過ぎであるという前提を置いて話をしたのだが、それは用語の不的確で、そうして、そういうような間違いを起こしたんだ、こういうぐあいに言っておりますと、真意は、私はああいうような仮想敵国なんかはいけない、こういうものを設けるのはいけないというのが真意だったけれども、新聞はその逆を伝えたんだというように私は聞こえます。しかしながら、一方では、大体あれは間違いないというように是認されております。一体その二つのどちらが真意なんですか。
○小泉国務大臣 先ほど来申し上げますとおり、その前提として、三矢研究なるものの内容には用語の不適当な点、また研究の行き過ぎ等があるということは、繰り返し申し上げておるのでありまして、小委員会の設置によって十分検討の上、これは適当な措置をとらなければならぬと考えておるわけでございまして、二つあるわけではございません。
○三木(喜)委員 そうすると、大体間違いでないということを容認されましたので、次の問題に移りたいと思います。
 しからば、国会等でこういう問題は明らかにすべきだ、これは私の真意ですと言いながら、場所を違えて、なぜこんなところでやられるのか。私はその真意を聞きたい。
○小泉国務大臣 もちろん、あくまでもこれは小委員会等で論議をすべき問題であるということを私は前提に申しておるのでございます。それでもいろいろ質問がございましたので申し上げたのでございまして、あくまでもこれは小委員会で論議を重ねていただくべき問題であるという考え方には、いまも変わりはございません。決して私が積極的にいろいろと発言をしたわけではないのでございます。
○三木(喜)委員 そうすると、大体場所柄をわきまえなかったということになろうと思います。
 続いてお尋ねしたいのですが、あなたの発言の裏には、十五日のプレスクラブの昼食会で、記者団の質問に答えて、佐藤総理は、「「三矢研究」は、自衛隊内部の仮想的な机上の演習のレポートを集めたもので、」「防衛当局としては国防上当然なことだ。」ここにも当然ということが言われ、あなたの言われたように、今後改めるつもりはないというのと軌を一にしております。一体、総理もあなたと同じようなことを言っておることに対しまして、二人打ち合わせの上でこういうことを言われたものかどうかをひとつ聞かしてもらいたいと思う。
○小泉国務大臣 何ら打ち合わせたわけではございませんが、偶然にそういうことになったと思います。私自身の発言も、三矢研究の内容については、先ほど来繰り返して申し上げたとおりでございまして、小委員会の論議の結果にまたなければならないのでございまするが、総理が申されたことも、やはり私と同じような考え方であって、三矢研究のああいう内容とか、ああいう研究というものが当然であるという意味ではなくて、やはり自衛隊の任務として、平常、一朝事ある場合、非常事態に際してのいろいろな問題を研究をしていくことは当然ではないかという、私と同じ考え方の意味ではないかと私は考えておるわけでございます。
○三木(喜)委員 ただいまの発言の中にも、三矢問題、いわゆる三矢研究の内容に触れるいろいろな問題というようなことも、はや防衛庁長官の頭の中にあるということがこれではっきりしてまいりました。しかし、私はいまここで、こういう三矢研究は国防上当然なことだ、当然なことなら、なぜ当委員会でこれを究明する必要があるか、調査する必要があるか。いままで当委員会でやってきたことは、あなた方二人の発言によって全部御破算になってしまった。いわゆる国会を軽視し、さらに委員会の設置の意味をなくしたと言っても過言ではないと思う。当委員会におきまして、三つの基本的な申し合わせをいたしました。その中で、私たちは当面の責任者の処罰ということを言っておるわけでございますが、総理のこの発言、あなたの発言の中では、それが消えていくような感じがする。したがって、その真意を私は佐藤首相から承りたいと思いますので、総理にここにおいでいただくことを委員長にお願いいたしたいと思います。
○青木委員長 総理大臣の出席の御要求でありますが、当初から総理大臣の出席を要求されておりませんし、また一般質問におきましては、総理大臣の出席はいたさないことが慣例になっておりますので、ただいまの御要求がありましても、直ちに総理の出席を求めることは困難と存じます。適当な機会に御質問いただくこととして、御質問を継続願います。
  〔発言する者、離席する者多し〕
○青木委員長 御質問を継続願います。
 なお、突然のことでもあり、総理は目下渉外事項で不在でありますので、質問の継続を願います。三木喜夫君、質問の継続を願います。
○三木(喜)委員 防衛庁長官の答弁によりますと、場所柄をわきまえずに言ったということが明らかになっておるのと、もう一つは、これについて間違いない――三矢研究に対して発言したことについては間違いないということを是認されておりますから、当委員会並びに国会というものを軽視したということがはっきりしておりますし、なお、防衛庁長官にこれ以上お聞きしても責任を持たないわけであります。当然総理にこの責任を持ってもらわなければならない、新たな事態が発生したわけでありますから、当然総理の出席を要求していいと私は思う。どうでしょう。
○青木委員長 再度の御要求でありますが、先ほど申し上げましたとおり、総理大臣の出席要求につきましては、初めにそのお申し出がありません。また、一般質問におきましては、総理大臣の出席を求めないことが慣例になっております。したがいまして、いま突然総理大臣の出席を御要求なされても、御無理かと存じます。このまま質疑を御継続願います。総理に対する質疑は適当な機会に願うこととして、質疑を続行願います。
  〔離席する者、発言する者多し〕
○青木委員長 それでは、総理の出席の問題につきまして、十分間を限り休憩をして、理事会において検討いたします。
 十分間休憩いたします。時間は正確に再開いたしますから、御了承願います。
   午後零時十四分休憩
     ――――◇―――――
   午後零時二十三分開議
○青木委員長 休憩前に引き続き委員会を再開いたします。
 先ほどの三木喜夫君の総理大臣出席の要求につきましては、三木君の質疑終了後の理事会において協議することにいたしましたので、このまま三木君の質疑の続行を願います。三木喜夫君。
○三木(喜)委員 防衛庁長官は、予算委員会で、こうしたことについては当然国会の場で審議すべきだ、あるいは調査すべきだというように鮮明にしておる、あるいは態度もそうだ、こういうことでございますが、こういうような発言になったことはまことに遺憾であり、しかして国民になおさら疑惑の念を持たしたということは、まことに国会としても残念な事態だと私は思うわけです。
 そこで、あなたの今後のこれに対するところの取り組み方、どういうような態度で取り組んでいくか、これをひとつ明らかにしてもらいたいと思うのです。ということは、あなたの発言の中で、絶対に処罰させない、しない、こういうことまで明言しておるのです。国会の意図とほとんど相反する発言があるわけなんでありますから、あなたとしてはどう対処していくか、それを明らかにしていただきたい。
○小泉国務大臣 先ほど来申し上げておりますとおり、いわゆる三矢研究なるものの問題の取り扱いは、小委員会が設定されたことでございますので、あくまでもその小委員会の決定にまつべきであると考えております。
○三木(喜)委員 それが防衛庁長官として当然の姿勢でなければならないと思います。したがって、いままでとられたことに対しまして、あなたはそれを取り消すなり、あるいはここで、そういうことをやったことは、まことに国会軽視で申しわけなかった、こういうように出るのが私は普通ではないかと思うのです。それがなされずしてのうのうとやっておられるところに、私はあなたの真意が那辺にあるか、今夜のあなたのこれに対処する姿勢がどこにあるかということを疑いたいわけなんです。その点を明らかにして、どうしてもあなたのやられたことが、新聞のとおりでございますというように大体是認されておりますから、これはまことに軽々でございましたということをここで申し述べられることこそ本筋ではないかと思うのですが、どうですか。
○小泉国務大臣 前段にもたびたび申し上げましたとおり、三矢研究なるものは、国会に小委員会が設けられて、その場で十分検討されるのであるという前提を申し上げておるわけでございまして、それが、私が三矢研究とはほかの、ただ普通のことで申し上げておる所感が三矢研究の問題に対する答えみたいに混同されておる点があることは、先ほど来申し上げたとおりでございます。こういう段階において、私の真意が十分徹底をしなかったという点、時期等においてはきわめて遺憾であると存じておるわけでございまして、国会軽視というがごときことは毛頭ございませんで、むしろ前段に、国会を尊重するがゆえに小委員会が設けられておるから、この場で十分検討をされるのであるということを申し上げておるわけでございます。
○三木(喜)委員 どうも私は容認しがたいですね、というのは、こういうような誤って伝えられたというようなことは、一体だれがしたかということです。あなたがなさったのでしょう。あなたがなさっておきながら、さもほかにその要因があるかのごとき言辞を弄せられて、これは遺憾であったくらいなことで、国会軽視でない、こういうような詭弁を弄せられて、あなたの言われることを当然であるとは言っておられないにしても、これを容認されておるようなかっこうが出ておるわけです。したがって、これは防衛庁長官としてはまことに軽々しいやり方であり、これくらい重大な問題をあなたは場でない場で発言したということにおいて、私はあなたの責任を追及し、あなたは防衛庁長官の責めをここに何かの形で当然負うべき性質のものだと思いますので、この問題あるいは残余の問題に関しましては理事会において検討して、その後において総理の出席があれば総理にお聞きする、こういう態度で私はこの問題に対処していきたいと思いますから、暫時私の質問は留保しておきたいと思います。
○青木委員長 暫時休憩いたします。
 なお、休憩後直ちに理事会を開きますから、理事の諸君は委員長室にお集まりいただきます。
 午後は本会議散会後再開することといたします。これにて休憩いたします。
   午後零時二十九分休憩
     ――――◇―――――
   午後三時三十二分開議
○青木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 昭和四十年度総予算について審議を進めます。
 午前の三木喜夫君の質疑を続行いたしますが、休憩中の理事会の協議に基づき、先ほどの問題に限り特に総理大臣の出席を求めることになりましたので、御了承願います。
 なお、総理はあとの日程の都合もあるようでありますので、質疑は簡潔にお願いいたします。
 それでは、三木喜夫君。
○三木(喜)委員 佐藤総理もおいでになりましたので、私は、午前中の質問に関連いたしまして総理にお尋ねをし、そして、その真意が那辺にあるかということをお聞きしたい、こういうぐあいに思うわけであります。
 午前中問題になりましたことは、かねて御承知かとも思いますけれども、小泉防衛庁長官が長崎において発言されました発言内容でございます。その内容を簡単に申し上げますと、自衛隊としての作戦研究には仮想敵国の想定は必要で、今後も改めるつもりはないという筋合いのことでございました。
 私は、この三矢研究なるものが国会で明らかにされようとしておりますときにこうした発言をされるということは、国民の非常な深い憂いと、それから疑問というものに対して混乱を与える、こういう発言のように考えます。したがって、当委員会ないしは国会はこの問題については絶対的な責任を持ってこれを調査するということにおいて、小委員会が設けられておるわけでございます。そこで、国会の責任においてこれが真偽を明らかにする、そうして責任を追及すべきものは追及する、それには資料を提供しなければならない、こういうことになっておるにもかかわりませず、こうした責任の位置にある人が外部で放言されるということには多大の疑問と混乱が今後起こると私は思うのです。
 そういう立場に立って、佐藤総理にひとつぜひ次の二点はお伺いしておきたい、こう思います。
 いかなる場合においても仮想敵国をつくらないというこういう方針に、こういう発言は反しておるように患います。二点は、三矢問題は表現だけでなくして内容におきましても非常に不穏当であるというその見解に反しておると思うわけであります。なぜ私がこのようなことを申し上げますかというと、第一は、こういうことを言われることは、そうした発言ないしは発想をした人たちに対しまして庇護をするというようなかっこうになり、やがてその責任が薄れてくる、こういうような効果を来たすものであって、やがてこれが当然だという帰結に持っていかれるおそれがあるからでございます。
 以上の観点に立ちまして、総理から、国民に対し、国民の疑問に答えるという立場で明快にひとつ御答弁をいただきたい、こういうぐあいに思います。
○佐藤内閣総理大臣 私は、かねてから平和に徹するということをしばしば申しております。平和に徹した場合に、仮想敵国など考える筋のものではないこと、これはもうもちろんでございます。いずれの国とも仲よくする、それで初めて平和に徹するということばが生きてくる、かように私は確信をいたしております。
 第二点、これはただいま小委員会におきまして真相が明らかになるだろう、それまでは私も軽率な発言はしない、かようにお答えしておきます。
  〔「プレス・クラブのはどうなんだ」と呼ぶ者あり〕
○佐藤内閣総理大臣 ただいま質問がなかったから私はそれをはずしたのですが、実は、プレス・クラブに参りまして、イの一番にこの質問を受けまして、私も実は非常に意外でした。同時に、それだけみんな関心を持っているのだ、外国人まで持っているのだ、かように思いました。そこで、いままでのこの委員会においての審議の経過、これをお話をしまして、岡田春夫議員はどういうことを考えておられるだろうかと言ったから、それは岡田春夫議員にひとつ聞いてください、私が関知するところではありません、かようにお答えをしたのでございます。
○三木(喜)委員 国民の聞きたいことは、この内容、そうして表現が憲法違反の疑いがあるということと、かつてわが国民は戦争に引き込まれまして、そうして非常に苦い経験を持っておる。そういう関係から、この問題の内容あるいは表現が非常に不穏当であるという、こういう考え方を持っておりますし、われわれもその見解を持っておるのですが、そういう見解にそういうことを言われることは反することになる。総理は、その見解に反しておるというお考えを持っておられますかどうか。
○佐藤内閣総理大臣 ただいま御疑問を持たれるような点が、小委員会の必要なことではないかと私は思うのです。それで、せんだっても岡田委員からここでいろいろお尋ねがございました。同時に御意見もいろいろ述べられました。もしもさようなことがあるならばそれはゆゆしい問題だ、こういうことを私はお答えをいたしました。こういうことがはたしてあるのかどうか、それを十分小委員会において審議するというたえまえだ、かように私は思っておりますので、この問題はいずれ小委員会が明確にしてくれるだろう、それまではあまり論議しないほうが、私自身とすれば当然慎むべきことだ、かように思います。
○三木(喜)委員 ちょっとうなずけぬ点は、いま総理のほうから最初申されましたように、国防上研究は当然と総理がプレス・クラブの昼食会の演説のあと記者団に答えておられる。それでわれわれは非常に問題にしておるわけなんです。こういうことを各方面で言われ、また防衛庁長官も言われるということは、冒頭に私が申しましたように、こういうことを庇護するかっこうにもなり、そして責任を薄めるかっこうになります。しかして、最後には当然だというところまでいってしまいそうな感じがする。そういうことになれば、何のために国会が責任追ったか、こういうことが、総理みずからそれを破られていくという結果になっていくわけなんです。ただいまの御答弁のように、当委員会が小委員会を設けてそれについて追及する体制ができておるじゃないかというなれば、なぜこんなことをおっしゃるのか。いまのような慎重な態度で全部律せられるのが総理として当然の態度ではないかと思うのです。いま国民は非常に質問に思っておって、そうして国会にその責任をまかした形になっておるわけです。国会の審議の状況を、調査の状況を注目しておるにもかかわりませず、総理の発言があったというところに問題があるわけですね。
○佐藤内閣総理大臣 これは明確にしておくことが必要だと思います。三矢作戦といいますか、三矢報告、これは、ただいま言われるごとく、小委員会で十分調べるということになっておりますから……。それで、当時私が申しましたことは、ややことばが不十分であったかわかりませんが、防衛庁自身、これは防衛幕僚として演習をすることは当然だ、図上演習をやるということ、これは当然だと、こういうことを私は申したのです。これは、しかし、明らかにその三矢報告と混同されやすいことであったから、その点がもし混同されておるならば、それは、三矢事件は小委員会にはっきりかけるんだ、かように御了承いただいて、しかし、防衛庁自身がいろいろの本来の仕事でやることは、これはあり得るということ。その内容はどういうことであるか、これが行き過ぎたものである、あるいは三矢報告と同じようなものであれば、これはまた当然論議をかもすだろうと思いますけれども、私は、防衛庁自身が演習をやることは、これは当然のことだ、かように考えております。
○三木(喜)委員 時間が限られておりますので、どうせ委員会においていろいろ調査はされるだろうと思います。しかしながら、明らかにしておかなければならないことは明らかにせねばなりませんので申し上げるのですが、総理のいまの発言を聞きますと、私、三矢研究の内容というものに対して明確な認識をして、その明確な認識の上に立っての発言でなければ、防衛庁としてあり得るなんのと言われたら、三矢研究それ自体もいいということになってしまう。そういう論理が出てくるわけなんです。この三矢研究の内容は、大きく分ければ前段と後段に分かれておるわけです。後段は、防衛庁、いわゆる自衛隊内部のいろいろな訓練の問題を、命令系統からどう動くかということがありますけれども、それ以前は、国会に干与したり、あるいは言論、経済、こういうものの統制をしいたりするところの戦時体制を国民にしいるものであり、議会主義を否定するものであるというところに問題があるわけなんですね。にもかかわらず、総理はその後段のところで何かことばを弄せられて、そうして全体を埋めてしまう、こういう効果が総理のことばないしは防衛庁長官のことばの中には出てくるわけです。私たちが一番問題にしておることは、憲法の条項、議会主義の否定、こういうものまでやっていいかということなんです。それが三矢研究の問題で、内容である。その内容を二つに分けて考えなければならないと思うのです。総理は、このプレス・クラブにおきましての昼食会でこうおっしゃっておる。私は首相の責任において国民の疑惑をぬぐわなければならないと、こうおっしゃっておる。それなれば、これは、内容はちゃんと見ておられる。もうどういう内容であったか、新聞にも出ておるのですから。前段と後段に分かれて、たいへんなことが前段にはあるわけなんです。私たちは非常にそれに驚いておるわけなんです。国民も驚いておるだろうと思います。憂いを含んで疑問に思っておるということを申し上げたわけでございますが、要するに、私は責任を持って疑問を解くということは、いま責任を持ってやるところは国会になっておる。総理も防衛の責任がございますから、当然責任はございますけれども、国会という場を通じての責任をとっていかなければならない、責任をどんどん進めていかなければならないのに、そういう会談の場が責任を果たす場所でないわけだ。責任を果たすどころの話でなくして、三矢問題それ自体まで問題の焦点をぼかしてしまうかっこうになるわけなんです。これは、総理がむしろ責任を感じておるのでなくして、責任を回避せられる私はかっこうになると思うのです。国民の上には責任を糊塗することになる以外何ものでもないと思います。その点はどうですか。
○佐藤内閣総理大臣 最も権威のある予算委員会が小委員会を設けて、そうして、これを明らかにしよう、こういうことをしておるわけであります。したがいまして、ただいまの三矢研究そのものについては、いずれ小委員会において明確になるだろう、かように申し上げておる。私は、この小委員会以外の場でこれを明らかにするというような話はしておりません。どうかそれだけは誤解のないように願っておきたいと思います。
○三木(喜)委員 それでは、総理の見解の表明がありました。そこで、私は、このプレス・クラブで発言されたことは間違いである、そういうように解釈していいと思いますし、さらにまた、両党あるいはこの予算委員会において確認した冒頭に申し上げました二つのことは、これはもう間違いない、このように解釈して、残余のことは今後展開せられるであろう特別の委員会、小委員会において審議し調査する、こういうように考えたいと思いますので、私は以上をもって総理に対する質問を終わりたいと思います。
○青木委員長 これにて三木喜夫君の質疑を終了いたしました。
 次に、戸叶里子君。
○戸叶委員 いま当面している問題は内外ともにたくさんございます。アジアは大荒れに荒れておりますし、物価の値上がりで主婦はきりきり舞いをいたしております。社会開発をモットーとしている政府ではありますが、国民は一向にその恩恵に浴することができません。そして、非行少年の問題解決も根本的施策がまだ示されておらないし、数え上げれば、これらの一つ一つの問題を国民とともにお聞きしたいと思いますが、きょうは主として外交中心に質問をいたしたいと思います。
 第一は、吉田書簡についてでございます。この予算委員会でも取り上げられましたが、国民はなぜ吉田さんの手紙が国家を拘束できるのであろうかと疑問に思っております。私もこの点を国民の一人から質問を受けましたが、これまで同僚の議員に答えられた範囲ではわかりません。個人の手紙が国家を拘束するというようなことはあり得ないと思いますが、首相のおっしゃった拘束するという法的根拠は何であるかを明らかにしていただきたいと思います。
○椎名国務大臣 お説のとおり、吉田書簡は、文字どおり個人の書簡でございますから、これは法律上何でもない。国家を束縛する力はございません。ございませんが、われわれの政府の考えと同じ方向に向いておるようでございますので、それでこれを是認し、あたかも外部から見ると拘束されたように見えますけれども、拘束されておるのではございません。固有の政策に基づくものであります。
○戸叶委員 この委員会におきまして、佐藤総理大臣は、国家を拘束するということをおっしゃいました。しかし、いま外務大臣のおっしゃるのは、これは確かに個人の手紙であって、拘束するものではないけれども、同じ方向にあるからそれを認めている、これでは一体どういうことであるかわからないと思います。吉田書簡の内容において実際に拘束力を持っておるじゃないですか、事実において。ないとおっしゃりながら、やっているじゃありませんか。この点をどういうふうに解釈なさるのですか。総理大臣のおっしゃるのと全く違っていると思いますが、いかがでございましょうか。
○椎名国務大臣 その実質上の内容に拘束されるという意味、実質上の内容が政府の考え方と同じでございますから、結局その書簡に拘束されたと同じことになるわけであります。
○戸叶委員 これほど重要な問題に対して総理大臣の見解と外務大臣の見解では非常な違いがあるわけでございまして、これでは、やはり中国の貿易の問題というものにも実体的に影響のあることですから、もっとはっきりしていただきたいと思います。
○椎名国務大臣 あの書簡の内容について、政府がそれを認めておる。つまり、国府の張群秘書長が見えまして、そして、あれを出して、この意味と政府の考え方は違うかというようなことを言って回ったようでございますが、大体同じだ、そういうことで、結局あの内容と政府の考え方は同じということでございますから、早わかりがするように、あの内容に拘束されるということになるわけでございます。
○戸叶委員 これは、やはり今後におきましてもいろいろと出てくる問題だと思います。そこで、やはりこの機会にはっきりしておいていただきたいことは、政府の考えと同じ内容の私信であるならば、国を拘束することができる権利があるというふうにお考えになるのかどうか、その法律的な考え方を伺いたいと思います。
○椎名国務大臣 それは、ちょっと少し違うと思います。その内容を政府に示して、そして、この内容と政府の考え方が違いますか、こう言われた場合には、いや同じです、こういうことになりますから、結局あたかもその書簡の内容に拘束されたと同じようなそこに観を呈する。
○戸叶委員 外務大臣、もう少しやはりはっきりしていただきませんと、この問題では国民がたいへんに疑惑に思っておるのです。疑いを持っておるのです。と申しますのは、やはり貿易に大きな関係がございますので、そして、しかも、この政府が中国の貿易に対しては前向きであるということを幾たびかおっしゃっていらっしゃるのです。ところが、この書簡にあたかも拘束力があるかのようなことをはっきり――いま外務大臣はおっしゃいませんよ。しかし、総理大臣は拘束力があるとはっきり言っておるわけなんです。だから、あるというならばその法的根拠は何ですかといって伺っているのです。ないならばないということをやはり総理大臣とお話し合いになっておいていただきませんと、総理大臣と外務大臣とのお考えがお違いになるようでは、ちょっと私どもは了解に苦しむものでございますが、この点をやはりはっきりさしておいていただきたい。総理大臣のおっしゃるのはやはり間違いであったとお思いになりますかどうですかということを伺うわけです。
○椎名国務大臣 政府が、この内容について政府の考え方と同じである、こういうことを言ったのであります。
○戸叶委員 私は委員長にお願いをいたしたい。いろいろと重大な問題がございますので、やはり外務大臣はもっと私が質問していることに対しての答弁をしていただきたい。そのことをお願いしたいと思います。委員長、どうぞ外務大臣におっしゃっていただきたい。
○青木委員長 外務大臣、明瞭に御答弁をお願いします。外務大臣、重ねてその点をはっきりと御答弁願います。
○椎名国務大臣 吉田書簡はあくまで私信でございますが、しかし、政府がその内容を是認いたしましたから、それで、やはり政府がその内容に拘束されるということになる。
○戸叶委員 やや外務大臣のおっしゃるのはわかりました。内容が同じであるので、是認したので拘束力があるという意味だと思うのです。それならば、一体その法的根拠は何であるかということを私は伺っているわけなんです。そのことを伺っているわけなんです。
○椎名国務大臣 結局、それを是認いたしましたので、行政上の一つの力がそこに出てくるわけでございます。
○戸叶委員 拘束されるのでそこに力が出てくるというのには、何らかの根拠がなければ出てこないと思う。その力はどこから出てくるのですかということを私は伺っている。そういうものはどこに根拠を置くのですかということを伺っているわけなんです。
○椎名国務大臣 行政上の政策に合致いたしますので、その内容を政府が是認いたしましたので、それだけの効力が出てくるわけでございます。
○戸叶委員 ちょっといまの問題で私はわからないのですけれども、それ以上のことを伺ってもどうかと思いますので……。
 そこで、いま、政府の考えている内容とそして吉田書簡の内容とがぴったりしていた、こうおっしゃるわけですけれども、私どもはその書簡を見せていただいておらないわけです。そこで、一体、その書簡をもし私が見せていただきたいならば、吉田さんのところへお願いに行ったらいいのでしょうか、外務省へお願いに行ったらいいのでしょうか。どっちへお願いに行ったらいいのでしょうか。
○椎名国務大臣 それは、私信でございますから、すでに台湾のほうに渡った書簡ですから、台湾のほうに――台湾のほうに渡ったのです。
○戸叶委員 台湾のほうにあるから台湾に行かなければわからない、もしもそれが事実とするならば、私は国民を侮辱するのもはなはだしいと思います。こんな重要な問題を、しかも秘密文書を、国に拘束力があるというようなものを、台湾にやっちゃったから台湾に行って見てこいなんて、こんな失礼な答弁を私はまともに受けることはできません。
○椎名国務大臣 いや、台湾に行って見なさいと申し上げたわけじゃございません。吉田さんのところに行ったならばそれを見せてくれるか、こうおっしゃったから、それは台湾に送った書簡でございますから、それで、写しならばあるいはあるかもしらぬけれども、そのことを申し上げたのです。なお、私信そのものでございますから、それをかってに私は見せるとも見せぬとも、写しを見せるとも見せぬとも申し上げかねます。
○戸叶委員 それじゃ、外務大臣はこれをごらんになって御存じですね。
○椎名国務大臣 私はそれを見ておりません。見ておりませんが……
  〔「見ておらぬのになんだ」と呼び、その他発言する者多し〕
○青木委員長 静粛に願います。
○椎名国務大臣 その内容を承知しております。内容のほんとうの肝心のところを。(笑声)
○戸叶委員 外務大臣、内容の肝心なところを御存じだとおっしゃるのですが、それでは、内容の肝心なところになるかと思いますけれども、一ことはっきりさせておいていただきたい。それは、今度輸出入銀行を使わないと言われておりますけれども、そのことはニチボーだけに限っているのかどうかということと、もう一つは、一九六四年、すなわち昨年の時限のみであるかどうか、無期限に拘束されるのかどうか、こういうふうな内容については外務大臣はどういうふうに御理解をしていらっしゃるかを伺いたいと思います。
○椎名国務大臣 この問題はニチボーのビニロンプラントについての書信でございますが、われわれの考えておるのは、その趣旨を認めておるのでございまして、特にニチボーに限ってそういう政策を考えたというのではございません。中共向けのブラント輸出については大体かような考え方のもとに当分やっていこう、こういうことでございます。
○戸叶委員 そうすると、ニチボーのみに限ったのではないということは一つわかったのですが、その拘束される時限というものは大体きまっているのですか。それとも、そのときに応じて適当にということでございますか。
○椎名国務大臣 われわれは、いわゆる当分というふうに考えております。これは、外交上のいろいろな考慮から出てきた結論でございます。当分はこの方針でまいりたいと考えております。
○戸叶委員 私は、椎名外務大臣の御答弁をここで伺っておりますと、何とかおとぼけになっていらっしゃるのか、椎名さんそのものの味を出していらっしゃるのか、ちょっとわかりかねるわけです。いまのような御答弁では、そこにまた条約上やら、あるいは法律上やら国民の聞きたい問題としてはいろいろ出てくると思います。たとえば、こういう形でいろいろな私信が国の拘束力を持つということになりますと、法的根拠もないのにそういうことになってまいりますと、秘密外交を増長するものであり、行政権というものをますます侵害していくというような結果が出てくるわけで、政府が都合の悪いときには、私信でもって何か手紙を出しておいて、それでもってあとから追認するというような形になってまいりますから、それで、私はこの問題を伺っているわけでございます。ですから、そういうことに対する正しい態度、政府のあり方というものを、やはり今後においても必ず示していただきたい、こういうことをまず要望をいたしまして、そして次に進みたいと思います。
  〔辻原委員発言を求む〕
○青木委員長 議事進行についての辻原弘市君の発言を許します。辻原弘市君。
○辻原委員 いま委員長もお聞きのとおりだと思いますが、いま戸叶委員から提起をしておりまする吉田書簡の問題は、今日、日中のプラントの問題のネックの問題としてきわめて重要な内容を含んでいるわけであります。したがって、われわれはこの問題について当委員会では再三再四問題を追及いたしました。しかも、その過程には、橋本官房長官が記者団会見の発表の中で、この書簡には拘束されないと言い、その問題を取り上げて過般追及をいたしましたら、当委員会で佐蔵総理は、これについては拘束されるのだと、こう言う。そこで、その問題をあらためていま戸叶委員が指摘をいたしまして、一体それについては単なる私書簡であるのか、また、もしそうでない公のものであるとするならば、当然それについては法的根拠があるはずであるから、それについての見解を明らかにしろ、こういうことを再三再四にわたっていま追及をいたしましたが、外務大臣の答弁は同僚委員も聞かれるとおりでありまして、ここはわれわれが重要な国際問題、国内問題を真剣に論ずる場である。その中で、あたかも御案内のごときそういう言辞を弄して、全く、質問者のみならず、われわれ質問側に立つ野党委員を愚弄するような発言は、こういうことはわれわれは許しがたい。したがって、自今ただ言を左右にして不明確なことでこの委員会の質問を糊塗しようということならば、私どもは自後の質問を続けるわけにはいかぬ。したがって、この際外務大臣から、自後の答弁について明確に、しかも真剣にまじめにやるという決意の表明がなければ、私どもはこれ以上進めるわけにはいかないということを委員長に申し上げて、委員長の善処方を要望いたしたいと思います。
○青木委員長 ただいまの辻原君の御要望もありますので、外務大臣の御答弁を明瞭にお願い申し上げます。
 質問を継続願います。
  〔辻原委員「外務大臣発言しろ」と呼ぶ〕
○青木委員長 外務大臣椎名悦三郎君。
○椎名国務大臣 私もできるだけ誠意をもって御答弁をします。
○戸叶委員 第一問からこういうことになりますと、私の目的とするところまで到達しないわけでございまして、なるべく簡潔に、伺ったことに対する答弁をしていただきたいと思います。
 そこで、日韓会談について主としてきょうはお尋ねしたいと思いますけれども、ちょっとLSTの問題について伺っておきたいと思います。これは、運輸省とそれから法務省と外務省に伺いたいと思いますけれども、このLSTの乗り組み員の雇用関係はいまどういうふうになっているかを伺いたいと思います。
○松浦国務大臣 御答弁申し上げます。
 LSTの雇用関係は、昭和三十七年八月一日から、従来防衛施設庁であっせんしておりました者を解雇いたしまして、直接米軍に自由雇用することになったのであります。その員数は大体八百二十五人であります。そのほかに、これは直接運輸省の関係ではございませんが、MSTSというのがございますが、このほうは大体百七十人ぐらいだと記憶いたしておりますが、それは、防衛施設庁があっせんをいたしまして雇用関係が成り立っておりますが、それは防衛庁のほうからお願いいたしたいと思います。
○戸叶委員 実はきょうは運輸省と法務省をお願いしていたのですが、防衛庁のほうからどうですかということがございましたけれども、私は特に要求をしなかったのです。いま運輸省のほうでそういうお話が出たものですから、防衛庁のほうの御答弁も伺いたいと思いましたが、来ていらっしゃらないようですから、あとででも答弁していただきたいと思います。
 そこで、いま運輸大臣がおっしゃった雇用関係でございますけれども、施設庁が雇用関係を管理している前には、やはり日本の米船運航株式会社がこの運航の管理を請け負っていた、こういうふうに思うのです、三十七年の三月までは。それから、四月から八月までは施設庁がこの管理を受け持っていて、それから今度はアメリカのMSTSですかのほうに行った、そして直接雇用になった、こういうふうに理解していいわけですね。そうしますと、三十七年の八月までは、海員手帳を持って、そして海外の出入国ということができていたわけですね。この点はどうでございますか。
○松浦国務大臣 御答弁いたします。
 LSTの問題に対して主として申し上げます。ただいま仰せになりましたような八月三十一日以後は、いま防衛施設庁と言っておりますが、当時はたしかそうは言わなくて、調達庁が中に入っておる。いまは防衛施設庁と言っております。そこで、戸叶委員のお聞きになる点は船員手帳のことであろうと思いますが、この船員手帳の問題に対しましては、当時八百二十五人なんという多数のものでありますから、全部パスポートに切りかえることが困難であったのです。そこで、LSTの乗り組み員であるという証明書を米軍から出させまして、それを船員手帳に添付しまして、それをもって当分の間パスポートにかえるということを外務省並びに防衛施設庁とわれわれのほうと三者協定いたしまして、そういうことにいたしました。去年の七月三十日からはこれをやはりパスポートに切りかえなければならぬといって作業をいたしておるうちに、十一月三日にああいう事件が起こったのでございます。(「いまはどうなった」と呼ぶ者あり)いまはどうなったというのはまだお聞きにならないですから、戸叶さんがお聞きになったらお答えをするつもりであります。
○戸叶委員 いま運輸大臣がおっしゃった御答弁によりますと、三十七年の八月以降は証明書で、それで船員手帳に添付してパスポートがわりにしている。こういうふうなことで、一体海外に外国の船に乗って乗り組み員が出たり入ったりすることが許されるかどうかというところに私は問題があると思うのです。法務省は、これをおそらく私はお認めになれないと思うのですが、法務大臣、いかがでございますか。――運輸大臣、先にお答えになってください。
○松浦国務大臣 先ほどちょっと言い落としましたが、三者話し合いと申しましたが、それは四者話し合いであって、入国管理の関係が入っておりまして、そこで、ただいまの御質問は、そういうものをパスポートのかわりにして、一体同胞の身元が安定するかどうかという心配でございますが、ごもっともであります。しかし、それによって、まず船員手帳を出す場合においては労働条件、待遇その他船内における生活状態、すべての人権を尊重される条件を十分具備しなければそれを出さないことになっておりますから、パスポートと同様の資格を持っております。それで、四者合同でそれを出してもいいということになって出したのでありますが、その後になって、これでは不十分だからひとつ変えようではないかというので、作業を始めておるところであります。
○戸叶委員 いま運輸大臣は、いろいろな条件、労働条件を満たすようになっているから、この形をとって身分証明書なり何なり船員手帳につけておけばいいのだというお話でございますが、それでは法的根拠がないではありませんか。法務省は一体どういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
○高橋(等)国務大臣 旅券を出すということで実は進んでおるのですが、まだ旅券は出ておりません。請求がありました場合はいつでも出すようにいたしておりますが、それを出しておらないということを申し上げておきます。
○戸叶委員 そうすると、いまLSTに乗っております乗り組み員は、日本を出るとき入るときはどういう形をとって出入国しているんでしょうか。
○高橋(等)国務大臣 出入国管理局長から答弁させます。
○八木政府委員 御答弁いたします。
 入管といたしましては、従来のLSTの乗員の持っております船員手帳、これは、船員法上の船員とは形の上では認めておりませんけれども、実質的には船員でございますので、従来その船員手帳の類似の文書をもって出入国の手続をしておりました。しかし、それについて疑義がありましたので、昨年以来その船員手帳の使用を中止いたしまして、旅券を使うということにしております。その旅券を使うことにつきまして、目下、LST乗員の雇用契約につきまして、アメリカ側と日本側との間に、ことに船員組合とアメリカ軍との間に意見の調節がまだついておりませんので、その暫定……(「いまは何だ」と呼び、その他発言する者あり)それで、従来の船員手帳形式の書類をそのまま使って出入国の管理をいたしております。
○戸叶委員 法務省の担当の局長からそういう御答弁をいただけようとは私は思わなかった。なぜならば、三十七年の八月以降からはパスポートもない、そして、この海員手帳も無効である。海員である、船員であるということは証明するかもしれませんけれども、船に乗って、そして出たり入ったりするには当然出入国管理令というものがあるわけで、それによってパスポートがなければならないわけです。三十七年の八月以降は何にもなしで今日に来て、そして、去年から疑義があるというので旅券にしなければならないと言い出した。その間は一体出入国管理令違反じゃございませんか。
○八木政府委員 従来の船員手帳と同じ形式のものを使って出入しておるわけでございますが、それについて、その船員手帳につきまして、先ほど申しましたように疑義があるというので、現在新規には旅券を使うということにしております。目下それにつきまして当事者の間に意見の相違がありますので、その間従前の処置をそのまま認めておるわけでございます。
○戸叶委員 いまの御答弁では、法律的には何ら守られておらないということになるわけでございますね。念のためにもう一度これを伺っておきたい。
○八木政府委員 ただいまの御質問につきましてお答えいたします。
 出入国につきましては、船員は出入国管理令上の乗員でございますので、出港入港について一々手続は要しないことになっております。
  〔発言する者あり〕
○青木委員長 静粛に願います。
○戸叶委員 要らないのなら、何も今度は旅券を――いままでのは疑義があるから旅券を出すというのでしょう。疑義があるから旅券を出すのですから、やはりいままでのが間違っていたということになるのじゃないですか。要らないんだなんということでは納得できないと思うのです。
○八木政府委員 私の説明が非常に不十分でございましたが、乗員は本来出入の手続から免除されておる。ところが、従来は船員法上の船員の取り扱いをしておりませんので、本来は船員手帳を持たないはずでございますけれども、従来の経緯から船員手帳というものを持っておる。そこで、それを実質上の船員手帳と見なしまして、それを身分証明の具にしておったわけでございます。しかしながら、それがいろいろ疑義がありますので、今後は、新しく発行する場合には旅券を使うということにいたしました。したがって、今後のLSTの乗員は旅券を持って出港いたしますが、その旅券は、実質上はあくまでわれわれは出入国管理令上の乗員の持つ書類というふうに考えております。
○戸叶委員 私は、いまの御答弁は納得できません。なぜならば、昭和三十七年の八月までは船員手帳でよかったのです。しかし、その後におきましては、軍の直接雇用になっているわけなんです。直接雇用になっているわけです。そうすると、直接雇用による乗務員といいますか、乗員というものは、当然これは出入国管理令に従わなければならないことになる。そういうことをお感じになったから、いままでのが疑義があるので、新しく四者が会談して、そして旅券を出すことに御決定になったんじゃないんですか。そうだとするならば、その間の、旅券もないし、それから昭和三十七年八月からは船員手帳も無効であるというその間は、やはり何と言っても出入国管理令の違反ではないか、法律的にどうかということを伺っているわけなんです。それを、そうじゃない、法律的に違反じゃないとおっしゃるから、どうもそこにつじつまが合わなくなるわけなんです。はっきりおっしゃったらいいと思うのです。そうなんですけれども、しかたがなかったならしかたがなかったとおっしゃったらどうなんですか。
○八木政府委員 私どもは違法とは思っておりません。ただ、従来使用しておりました船員手帳というものを、初めのうちはそれを正規のものというふうにわれわれは見ておったわけでございますけれども、それがいろいろな問題になりまして、これは船員法上の船員ではないということになりまして、その結果、今後一切旅券によって統一するということになった次第でございますので、われわれとしては法的には根拠があると思っております。
  〔発言する者あり〕
○青木委員長 静粛に願います。
 横路節雄君から関連質問の申し出があります。戸叶委員の持ち時間の範囲内において簡潔にお願いいたします。
 質問者以外の方は御静粛に願います。
○横路委員 法務大臣にお尋ねしますが、いまのLST乗り組み員に対する問題ですが、これは、御承知のように八百二十何名。しかも、問題なのは、これがすでに南ベトナムに対して、韓国を回って韓国の兵隊を乗せ、日本からそれぞれの兵器を乗せ、沖繩を通って海兵隊を乗せ、そしてアメリカの国旗を掲げて、日本人の船長、日本人の船員だけで運航しているわけです。これは、船員法によりまして、あなたも御承知のように、日本の船員が日本の船に乗る場合は船員手帳でいい。しかし、日本の船員が外国の船に乗る場合には、いわゆる旅券でなければならぬ。それをまず第一番目にあなたにお尋ねをしたいのだが、LSTは、これはアメリカの船なんです。乗っているのは全部日本の船員なんです。これは一般旅券ではない。まず船員法に違反しているではありませんか。船員法に違反しているではありませんか。それを長いこと放置したというのはどういうことなのか、これに対する法律的な――一体船員法に違反をしてやっておるではありませんか。これをあなたが法務大臣として日本の港に出入りを許しておるというのは、一体どういうわけなんです。
○高橋(等)国務大臣 仰せのとおり、外国船へ乗っております関係上、船員手帳というものが不適当だということは仰せのとおりであります。そこで、旅券に切りかえたいということで、一日も早く旅券の交付を申請するようにということをいたしたのでありますが、組合との間でこの点で話し合いがつかないために旅券の請求が出てまいらないということで、いまきょうの現状になって問題となっておるのでございますが、法務省としては、これは一般の乗員と認めて、そして出入国の関係を処理をいたしておる。これは、私いま政府委員から承ったところでございまして、この関係の出入国管理の法令について、いまここですぐ答弁申し上げるにはあまり詳しくない。その点はひとつ御了承願いたいと思います。
○横路委員 何とおっしゃるのでしょうかね。いやしくも出入国に対して最高の責任を持つ法務大臣が、私は法律的に詳しくない、船員法できまっているじゃありませんか。船員法で、いわゆる船員が日本船に乗り組むときには、船員手帳を持って出入りをするが、外国船に乗り組むときは、一般旅券でやるのでしょう。それをLSTは、これは全部外国船で、乗り組んでいるのは全部日本人じゃありませんか。私は法務大臣に聞いているのですよ。あなたみずから法律違反をやっているじゃありませんか、長年にわたって。どうしてそういうことを平気でおやりになっているのです。しかも、そのことは、いま問題になっている南ベトナムに対するところの一切のいわゆる武器弾薬、おまけに韓国からの今度の兵隊、沖繩からの海兵隊、沖繩からのアメリカの陸軍、そういうものを全部LSTの乗り組み員でやっている。この三日前に韓国から出ているじゃありませんか。このLSTに乗り組んでいるのだ。どうして平気でこういうことを――日本の港に平気で出入りして、出入国管理令のまずあなた自身が違反をやっているじゃありませんか。どうしてそういうことをやっているのです。これはどういうわけです。
○八木政府委員 まず入管令上の船員でございますが、これは、出入国にあたって、船舶の乗員でありますから、出入国手続は要らない、これは御存じのとおりでございます。そこで、従来、さっき申し上げました昨年まで使っておったというこの船員手帳でございますが、これは、船員手帳と同形式のもので、その中にLSTの乗員であるということを身分事項が書いてございます。出入国管理庁としましては、その船員手帳にLSTの乗員であるということを明記してありますので、それを根拠として出入国手続をとるわけでございます。
○横路委員 法務大臣、去年の十一月二十四日までは、いまのお話のように、関東海運局長がその船員手帳にLST乗り組み員であることを証明するというその判こを押して、そして使っていたのです。それが、辻原委員からここで問題が指摘されて、そこであわてて昨年の十一月二十五日以降運輸省は、LST乗り組み員に対してその所持する船員手帳にLST乗り組み員である旨の身分証明を行なうことを停止したのです。停止したのですよ。これに伴って外務省は、同日以降それらの船員から申請があれば――それらの船員ですよ、それらの船員から申請があれば、旅券法上の旅券発給制限に該当しない限り、旅券を発給することにした。ところが、昨年十一月二十五日以降今日まで、LST乗り組み員からの旅券発給申請はいまだ一件も提出されていない。しかも、どうですか、ここで問題になっているのは、はっきりしている点は、昨年の十二月の二十五日、LST四五六、船長は真鍋正勝、これは仁川から南ベトナムに向かって軍用の車両を積んで、日本人四十四名が乗って行っている。はっきりしておるのです。LST四五六は、船長は真鍋正勝。一体、こういう問題を、法務大臣、いいですか。私はいま戸叶さんの関連質問だから、この問題はあと戸叶さんに締めくくってもらいますが、この問題は、十一月二十五日以降こういうようになっているんだ。しかも十二月二十日には出ているじゃないか。あなたは平気で法律違反をやっているじゃないか。私はこういうようにLSTのナンバーを打って、全体の船の船長から全部書いてあるのを持っている。にせものではない、政府が出したんだから。私がやっておるのは、全部政府から出した資料でものを言っておるのだから間違いはない。これは法務大臣、どうなんですか。
 待ってください、運輸大臣。私は法務大臣に聞いておるのだ。
○松浦国務大臣 ただいまの問題は、大体LSTの八百二十五人を主としてのお話でございますから。法的の問題も、いま無法ではないかというお話がありましたが、その点も無法ではないでのす。
 それから停止の問題については、七月までは受けつけておったのですが、それ以後は停止したのです。停止したのですが、その後において新しい人を採用していないのです。しかし、そのままではいけないから、パスポートに切りかえなければならぬという作業を開始したけれども、申諸がないということでございます。
 それで、法的の問題については局長から説明いたさせます。
○戸叶委員 私どもの伺っておりますことに対して、そのものずばりの答弁をいただいておらないことはまことに残念だと思います。しかも、運輸大臣のお考えと法務大臣のお考えとは、食い違いがあるように思います。したがって、私は、この問題をいまここでやっておりますと、肝心の日韓の問題が進みませんので、統一見解をあとからはっきりと書いて出していただきたい、こういうことを要望したいと思いますが、いかがでございますか。
○青木委員長 御要望に沿って、高橋法務大臣から、御要望の書類を出すそうでありますから、質疑を継続願います。
○戸叶委員 それでは、私は、日韓の問題について外務大臣にまずお伺いしたいと思いますが、きのうの予算委員会で、外務大臣は明日か何か知りませんけれども、韓国へいらっしゃるようですが、その目的に対して、重要な親善というおことばをお使いになりました。そうして、その重要な親善というのは何を意味するかといえば、会談の促進に寄与する意味で重要である、こういうことを言われております。
 そこで、私はお伺いしたいのですが、実体のある交渉もその中に含まれるのでございましょうかどうでしょうか。在来の総まとめというような形でおいでになるのでしょうか。基本的なことで、何か新しく韓国との間で話し合おうとされるのかどうか、この点を伺いたいと思います。
○椎名国務大臣 重要な親善訪問という意味は、局部的な問題の国際間の協定とは違って、まだ国交が正常化しておらない両国の間を基本的に正常化するという問題でございますから、この促進につきましては、もうあらゆる側面から空気なり機運というものを盛り上げていかなければならぬ、そういう意味で、通常のいわゆる親善という意味と違って、きわめて重要な意義を有しておるということを申し上げたつもりでございます。それで、あくまでそこに重点を置いて今度参りますが、自然、会談をたとえ数時間でも持ちますので、いろいろこれらに触れた話し合いがもちろん持たれると思いますが、それはどっちかと申しますと、親善のほうに重点を置いて、その問題については話し合いが十分にできればよし、できなくともしかたがない、そういうくらいのつもりで参りたいと存じます。
○戸叶委員 初めからおしまいまで聞いておりますと、外務大臣のはどっちに重きを置くのかわからないと思います。初めおっしゃったのは、基本的な問題で日韓の問題でお互いに機運を盛り上げて、そして、何とか国交の正常化をはかっていこうと思う、そういう意味では親善ではない、しかし、同時にまた、いろいろと話し合っていくからそれは親善であると、こういうことですね。そうすると、結局、親善というよりも交渉をまとめるというほうに重点が置かれているわけでございますか。交渉をまとめていく上において、親善もあり得るだろうと、こういうことなんでしょうか。
○椎名国務大臣 きわめて包括的な協約でございますから、たとえば魚の問題だとか、あるいは航空機の問題であるとか、あるいは通商上の改定であるとか、そういったような、もうすでに両国が国交が正常化して、その上に何か特定の問題を取り上げるような協約でも条約でもない。だから、これは両国の間に機運が盛り上がる必要がある。そして、これを促進する必要がある。そういう意味において、私の親善訪韓はいわゆる重要であると、こう申し上げたのであります。それで、どうせ参りまして、結局……。
  〔発言する者あり〕
○青木委員長 静粛に願います。
○椎名国務大臣 会談の内容に触れた話し合いも出てくると思います。それを必ず取りまとめるという考えで行くのではなくて、親善がおもである、こういうわけです。
○戸叶委員 そうすると、会談の内容に触れることもある、しかし、会談を別に取りまとめるというのでもない、ともかく親善に行くんだと、こういうことなんですか。それとも、さっきおっしゃたように、親善は親善なんだけれども、包括的ないろいろな問題でなくて、基本的ないろいろな問題については話をするんだ、そして何かの取りまとめをしに行くんだ、こういうお気持ちでいらっしゃるんですか。そういうふうな取りまとめなんということは全然考えないんだ、ただ、いろいろな問題でちょっちょっちょっと話し合ってみると、こういうことですか。
○椎名国務大臣 会談の内容に関しましては、もう機運は機運でございますけれども、しかし、当事者が顔を合わすと、やはりいろいろ内容について話し合いたいという気持ちになります。それは私は拒否すべきではない。でありますから、その話し合いには応ずるつもりでございます。応ずるつもりであります。
○戸叶委員 そうすると、条約の下準備のようなものの話し合いには応ずると、しかし、まさか外務大臣はそこで仮調印とかイニシアルというような形はおとりになってはお帰りにならないでしょうね。機運が向いてくればそういうこともあり得るのでしょうか。
○椎名国務大臣 相手方のある問題でございますから、先方がぜひこの問題だけはケリをつけたいというようなことがありますれば、両者の意見が合致する限りにおいては、これをわざわざ先へ延ばす必要は私はないと思う。いずれにいたしましても、まだまだ漁業会談も将来に予定されておりますし、両国の間の親善あるいはほんとうの会談、そういったようなのは今後いろいろな難関を控え、これを解決していかなければならぬ、かように考えております。
○戸叶委員 そうしますと、いろいろな問題で、意見の相違などがあってぶつかった問題はそのままにしておいても、機運が盛り上がってきて、相手方とこの辺でこの問題は決着をつけたいというような問題があれば、そこで仮調印とかあるいはイニシアルとか、そういうふうな形をとり得ることもある、こういうふうにお答えになったわけですね。
○椎名国務大臣 まあ一つの締めくくりをつける、部分的に。そういう意味です。
○戸叶委員 締めくくりというのは、仮調印なりイニシアルということもあり得るということでございますか。
○椎名国務大臣 そういうこともあり得るかと思います。
○戸叶委員 そこで、私はお伺いしたいのは、少なくともイニシアルの形をとるにいた、しましても、仮調印の形をとるにいたしましても、全権委任がなされなければ、元首以外には、外相個人といっても条約の調印はできないはずでございます。そういうことを御存じでいらっしゃるのでございましょうね。それとも全権委任を受けておいでになるのかどうか、この点も伺っておきたいと思います。
○椎名国務大臣 相当外務省のみなのエキスパートも一緒に参るのでございます。従来の国際慣行なり、あるいは日本のとり来たった従来の慣例にあくまで従ってやってまいりたいと存じます。
○戸叶委員 外務省のエキスパートがいらっしゃるにいたしましても、仮調印とか、あるいはまたイニシアルということは、全権委任をされて行かなければ私はできないと思っております。たとえば、ここのこの権威ある本でございますが、「国際法」の本で、「条約締結手続の多様性」というのがございます。そこに、「通常の締結手続」ということがございますが、そこに書いてあることは、「交渉によって条約の内容が確定すると署名が行なわれる。署名は条約締結権限を有する全権委員が合意の成立を証明するために行う行為である。」こういうことをいっております。正規の署名のほかのイニシアルを記入するという場合もそうであるということが、権威あるこの国際法の学者の書いたのがここにあるわけですが、これを見てもそういうことがはっきり書いてあるわけで、全権委任ということがされなければ、いかに外務省のお役人といえども調印はできないと思いますけれども、それとも全権委任を受けていくのかどうか、この点も伺いたいと思います。
○椎名国務大臣 絶対に国際慣例にたがうようなことのないように、十分に慎重に取り扱ってまいりたいと思い、余す。
  〔発言する者あり〕
○青木委員長 お静かに願います。
○戸叶委員 外務大臣、絶対に国際法にそぐわないようなことをしない、私はそういうことを聞いていません。まさか日本の外務大臣ですから、国際法に反するようなことはしないと思っております。それだけは信用いたしております。しかし、いま私が伺ったことに対しての答弁を承りたいと私は思います。
○藤崎政府委員 いま、現在行なわれておる国際慣行では、イニシアルについては全権委任状は要らないという取り扱いになっておりまして、日本でもそういうふうにいたしております。
○戸叶委員 そうすると、外務省がそういう御意見であるならば、仮調印の場合には全権委任を必要とする。しかし、仮調印とイニシアルとはどのくらい違うのですか、その内容において。
○藤崎政府委員 イニシアルということばを仮署名とか、あるいは仮調印とかいうふうに訳しております。
○戸叶委員 同じことじゃありませんか。それじゃ同じじゃありませんか。いま条約局長のおっしゃるのは同じじゃないですか。
○藤崎政府委員 どう違うのですかという御質問ですから、同じでございますという意味をそういうふうに申し上げたわけでございます。
○戸叶委員 それでは、日本の憲法の七十三条になんて書いてあるか御存じですか。
○藤崎政府委員 七十三条三号でございますが、「條約を締結すること。但し、事前に、時宜によっては事後に、國會の承認を経ることを必要とする。」(「初めから読め」と呼ぶ者あり)第七十三条の最初から読みますか――「第七十三條、内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。一、法律を誠實に執行し、國務を総理すること。二、外交関係を處理すること。三、條約を締結すること。但し、事前に、時宜によっては事後に、國會の承認を経ることを必要とする。」
○戸叶委員 そこにはっきり書いてあるでしょう。いまその七十三条の解釈論につきまして、法学協会でどういう解釈をしておるか、よく聞いておいていただきたい。七十三条は外交関係を処理すること。日常の外交事務は内閣のもとに外務省を置き、ここに主管せしめることになるが、比較的重要な外交関係を処理することは国にとって重大事であるから、外務大臣が単独にこれを処理するものとせず、これを内閣の権限に属せしめ、内閣の一致の意見によりこれを処理することを要するもの、としたのがこの七十三条であるということをはっきり書いているわけです。そうであるとするならば、当然局長であろうとも、それからまた外務大臣であろうとも、一応全権委任された形で行かなければいけないんじゃないですか。ただ単なる形で行って――あるいはこういう形も想像されます。外務大臣は逃げて、そして局長に何か調印させてくるというようなことがあるかもしれない。だから私は、やはりこの点をはっきりさせておきたいと思いますが、外務大臣の御見解を伺いたいと思います。
○椎名国務大臣 法律上の問題でございますから、条約局長に……。
○戸叶委員 委員長、これは国際法の解釈の問題じゃございません。日本の国の憲法の解釈です。日本の国の憲法の答弁ぐらいは外務大臣にしていただきたい。そうでなければ、予算委員会の権威にかかわると私は思うのです。
○青木委員長 法律問題でありますので、外務大臣から政府委員に答弁いたさせることにいたしております。
○藤崎政府委員 日本での取り扱いは、条約の締結の正式の手続は署名から始まるというふうに取り扱っておりまして、これは、ほかの一般の外国の取り扱いも同様でございます。イニシアルということは、交渉が長い期間かかりまして、非常に問題が多岐にわたるような場合に、あるところまである問題について煮詰まったときに、これを一応交渉当事者間で確認するという意味においていたすわけでございまして、そのあとで署名ということが行なわれて初めて条約は内容的に確定するわけでございます。そこから条約締結事務は始まる、こういう取り扱いになっております。
○戸叶委員 そうすると、条約局長も外務大臣も、全権委任を受けて行かなくても調印ができるというふうにお考えになっていらっしゃるのですか。――外務大臣に伺いたい。
○藤崎政府委員 署名調印にあたりましては委任状が要ります。しかし、イニシアルについては要らないということを申し上げておるわけでございます。
  〔「外務大臣から答弁」と呼ぶ者あり〕
○椎名国務大臣 条約局長から申し上げたとおりであります。
○戸叶委員 そこで、どうもこういうふうなことを繰り返しておりますとちっとも進みません。外務大臣がもしも御自分の見解を、憲法のことぐらいははっきりとおっしゃっていただけば、どんどん進むわけですけれども、日本国憲法の解釈すらも条約局長にやらせるというような外務大臣の態度というものは、私はどうも信用できなくなってきた。しかし、その先を伺っていきたい。
 そこで第二の問題として、おそらく基本条約を――もしも基本的な話し合いをなさるとするならば、韓国との間に領域の問題が出てくると思います。そこで、その領域の問題については、日本はこれまで三十八度線の南が施政権の及ぶ範囲である、北のほうには何かオーソリティがある、こういうふうなことばを言っていらした。これはそのとおりでございますね。こういう問題は、このことは韓国も承知しているかどうか。それから、この領域の問題は、もしも条約を結ぶとするならば、当然書かれると思いますが、いかがでございますか。
○椎名国務大臣 国連総会の決議の趣旨に沿いまして処理してまいりたいと存じます。
○戸叶委員 国連総会の決議の趣旨ということをおっしゃいました。私はその答弁では満足しないのですが、まあ外務大臣をかはってあげます。国連総会の決議というものはどういうものであるかということは、いま大多数の人民の住んでいる国、そうして、そこに支配権の及んでいるところ、こういうことになっているわけです。この種の支配権の及んでいる政府ということになっているわけですが、そうすると、この場合の領域というものは一体どの地域をさすのか、これまでこの委員会で答えておられましたように、現在三十八度線の南に支配権があると言っておられましたけれども、その地域を領域と言っていられるのかどうか、この点を伺いたいと思います。
○椎名国務大臣 朝鮮人民の大多数が居住する部分を有効に支配する一つの合法政府が樹立された。この政府は、国連の監視下に行なわれた自由選挙に基づくものである。かつ、この政府が朝鮮における唯一のこの種の政府であるということを宣言いたしまして、国連加盟の各国が大韓民国政府と関係を設定するにあたっては、この事実を考慮するという勧告を受けておるのでありますが、この勧告に従って処理したいと思います。
○戸叶委員 そうしますと、この国連決議の韓国の領域というのはどこですか。
  〔発言する者多し〕
○青木委員長 静粛に願います。
○椎名国務大臣 大事な問題でありますから、慎重を期してお答えしたいと思います。大韓民国の版図でありまして、大体において三十八度線の以南である、こう考えております。
○戸叶委員 朝鮮半島でありまして、大体において三十八度線の南、その大体は要りますか要りませんか。
○椎名国務大臣 やはり大体三十八度線以南でございます。
○戸叶委員 そうすると大体三十八度線以南、そうしますと、現在施政権の及ぶ範囲というものと、それからこの領域というものは一致するわけですか。――一致しますね。
○椎名国務大臣 一致するはずでございます。
○戸叶委員 一致しますね。――一致しますね。
○椎名国務大臣 大体一致するはずであります。
○戸叶委員 外務大臣、大体一致するはずというのと、一致しますというのと、違いますか、同じですか。
○椎名国務大臣 一致いたします。
○戸叶委員 そうしますと、基本的な条約について話し合う上において、その領域は三十八度線の南である、こういうことを日本では考え、韓国も一致をしている、そういうことになりますと、もしも平和条約であるならば、これは、条文の中に入れらるべきものだと思いますけれども、そう考えてよろしゅうございますね。
○椎名国務大臣 まだ交渉の段階でございますので、交渉の内容あるいは交渉に先立っての当事者の心組み等を詳しく申し上げる段階ではございませんので、その点は御了承を願います。
  〔発言する者あり〕
○青木委員長 静粛に願います。
○戸叶委員 そういうふうな考え方で基本的な諸問題を話し合ってもなかなかまとまらないと思います。なぜならば、外務大臣は大体このはずなどという考え方でいき、先方は先方でもってはっきりしたことをいってくると思う。しかも、日華平和条約でさえも領域の問題というものははっきり交換公文に示されております。したがって、私は、今度日韓との間で条約形式をとるならば、少なくともこの領域の問題ということは書かれるべきであると思いますが、この点はいかがでございますか。これは、話し合いの過程だから言えないとおっしゃるかもしれませんが、日本の外務大臣としては、領域の問題は当然条約の中に書くべきであるというお考えかどうかを伺いたいと思う。そうして、その書く番かないということの話し合いがつかなければこの条約を結ばないとかなんとか、その辺のところをはっきりさしていただきたい。
○椎名国務大臣 もし、この基本の条項がまとまるということになりますれば、条約の適用範囲はやはり明確にしておかなければならぬと思います。
○戸叶委員 それでは次の問題を伺いますが、韓国の場合、韓国は、自分の国が独立したのはいつと考えているでしょうか。たとえば、考えられることとして三つあると思います。日本が降伏をしたときというふうに考えるか、あるいはまた一九四八年で、国連決議で独立を確認したときか、あるいはまた、日本が平和条約を結んだときと考えているか、この三つのうちでどういうふうに考えて、おりますか。
○藤崎政府委員 大韓民国は一九四八年八月十五日独立というたてまえをとっております。
  〔発言する者多し〕
○青木委員長 静粛に願います。
○藤崎政府委員 大韓民国は一九四八年八月十五日に独立したということになっております。
○戸叶委員 そうしますと、日本はいつだと思っていますか。
○藤崎政府委員 日本は……。
  〔発言する者多し〕
○青木委員長 静粛に願います。
○藤崎政府委員 日本は一九五二年八月二十四日に、平和条約が発効いたしましたときに、それ以来大韓民国を承認いたしております。
○戸叶委員 そうしますと、この韓国の独立ということに対しては、日本の考え方と韓国の考え方との間には、はっきり違っているということをお認めになった上で交渉をされるわけですか。外務大臣、いかがですか。いままで条約局長がお答えになりましたから、外務大臣にお伺いしたいと思います。
○椎名国務大臣 いま藤崎条約局長がお答えしたのが、韓国が独立した年はいつか、それからこの独立した韓国と日本との間に承認の関係ができたのはいつか、こういうふうにお聞きになったと思います。それで そういう意味で御質問ですか。
  〔発言する者多し〕
○青木委員長 静粛に願います。
○戸叶委員 韓国を承認して、そして、両者の間で国交を回復するために条約をお結びになるのでしょう。そうでしょう、今度の日韓の交渉は。そうだとすると、いま、承認をしたのは一九五二年ですというのは、ちょっと違うのじゃないですか。
○椎名国務大臣 やはり承認したのはサンフランシスコ平和条約の発効の日、すなわち一九五二年の四月二十八日です。
○戸叶委員 承認じゃないのですね。いつをもって韓国が独立したとみなしますか、ということなんですよ。そうしますと、日本の政府は一九五二年、そして韓国は一九四八年の八月十五日、こういうことになると、その間に違ってまいりますね。それは違っていてもいいんですか。
○椎名国務大臣 日にちは違いますが、大韓民国が独立宣言をしたのが一九四八年の八月十五日。
  〔発言する者多し〕
○青木委員長 発言者以外は御静粛に願います。
○戸叶委員 外務大臣、私の伺っていることに対しての答弁をしていただきませんと、話がひとつも進まないのですよ。
 それでは、いま韓国が独立をしたというふうに自分の国でみなしているのは、三つのうちで一つ、すなわち一九四八年だ、こういうことですね。それから、日本が韓国の独立を認めたのが一九五二年だ。その間の食い違いがあってもいいんですかということを伺っているのです。その間の食い違いは調整なさいますか、なさいませんかということを聞いておるわけです。話し合いの中で調整をされますか。それとも、そのままにしておおきになりますか。
○椎名国務大臣 日本が韓国政府を承認したのは一九五二年である。そうすると、その間に数年の違いが出てくるが、その間何を調整すると、こうおっしゃるのですか。
○戸叶委員 外務大臣、その間の違い――違うわけですね。その間に違いがありますね。なぜ私がそういうふうに聞くかと申しますと、韓国のほうは、自分の独立したのはこの年だというでしょう。日本は、この年をもって韓国が独立したというわけでしょう。そうすると、今度は、これからいろいろの話が出てきたときに、韓国が独立したときをもって、たとえば韓国人の法的の地位というものは、韓国が独立したというその時点をもって永住権を与えるとか、そういった問題がいろいろ出てくるわけですよ。そのときに、日本と韓国との間に食い違いがあっては困るじゃありませんか。その点を言っているわけなんです。
○椎名国務大臣 韓国は四八年に独立をした。日本の承認は五二年。これはどうするわけにもいかぬです。事実なんですから。
  〔発言する者多し〕
○青木委員長 質問が聞き取れませんからお静かに願います。
○戸叶委員 外務大臣が韓国へいらっしゃって、そして重要な問題をいろいろお話し合いになろうとしていらっしゃるのですよ。そうすると、国民として、こういう問題はどういうお考えを持っていくのだろうか、韓国との間に食い違いがなかろうか、あとになって問題が起きたらどうしようか、こういうことが心配ですから、交渉にいらっしゃるにあたっては食い違いがないような意見で行っていただきたいし、食い違ったら、それを調整するのかしないのかということを伺っておるのです。そうしたら、調整できない、事実だからしかたがないですと、こう言っておしまいになれば、それだけで何にも言えないのですよ。
  〔発言する者多し〕
○青木委員長 お静かに願います。
○椎名国務大臣 御質問の要旨わかりました。五二年に、しばらくたってから韓国を承認したのでございますけれども、私はその事実だけを申し上げました。その承認した韓国がすでに数年前に独立国であったということまでこれは承認することになります。
○戸叶委員 そうすると、日本の政府も一九四八年に韓国が独立したということを認めるわけですか。そういうことになるのですか。そうすると、平和条約の二条との関係はどうなるのですか。
○椎名国務大臣 条約局長をして答えさせます。
○藤崎政府委員 一般に新しい国が独立しまして、これをほかの国が承認いたします場合に、独立の日から承認の日までの間にギャップができるのは普通のことでございます。そういう場合に、承認の日にすべてその国が独立したとその承認した国はみなすということじゃございませんので、その歴史的事実を否定するわけじゃないわけでございます。日本は五二年まで外交権がございませんから、承認するとかなんとかいうことは問題にならなかったわけでございます。五二年になって初めて承認しようと思えばし得る状態にある、それまで日本は日韓交渉なども、実際予備交渉をいたしておりましたけれども。したがいまして、それは事実上の関係で、平和条約が発効することによりまして、それが法律上の関係になった、こういう関係でございます。日本の立場からいいましても、韓国は八月十五日に独立したというそういう歴史的事実を否定するとか、そういうことは何にもないわけでございます。
○戸叶委員 そうしますと、講和条約四条の権利義務の関係はどうなりますか。
○藤崎政府委員 四条の権利義務の関係はどうなるかとおっしゃる質問の御趣旨がよくわかりませんが、もう一度……。
○青木委員長 岡田春夫君から関連質問の申し出があります。戸叶里子君の持ち時間の範囲内においてこれを認めます。簡潔にお願いいたします。
 岡田春夫君。
○岡田委員 条約局長はどういう関係ですかという御質問ですから、お伺いいたしますが、第四条では対日請求権並びに対韓請求権の処理の問題がある。これは当然独立の期限と関連をして考えなければならない。この条約四条によると、この場合はサンフランシスコ条約が期限になっている。それとの関係はどうなるのかということを聞いている。
○藤崎政府委員 平和条約第四条は、平和条約の中の規定でございますから、当然その発効した五二年四月二十八日というのが基準になるわけでございます。
○岡田委員 四八年四月二十八日が期限になりますか、それじゃサンフランシスコ条約によって独立の承認というのは意味をなさないのですか。
  〔「五二年だ」と呼ぶ者あり〕
○藤崎政府委員 第四条の処理ということは、もちろんこのサンフランシスコ条約によるわけでございますから、この条約が効力を生じた日が基準になるわけでございます。
○岡田委員 これで終わりますが、これは第二条に基づく朝鮮の独立というものがあって、その独立に基づく権利義務の問題が規定されている。ところが、それはサンフランシスコ条約の第二条と第四条の関係でそのような権利義務の関係が行なわれるのだが、あなたのおっしゃるように一九四八年のいわゆる大韓民国の独立ということになりますと、これとの関係が食い違ってくるではないかということを伺っているのです。
○藤崎政府委員 私、その食い違いがどういうふうに具体的に問題になってくるか、よくぴったりわかりませんが、もう少し具体的な事実に即して御質問いただけると、もっと明確にお答えできるかもしれないと思います。
○岡田委員 私、関連ですからもう言いませんが、これを条約局長がわからないのは私おかしいと思うのです。権利義務の関係は独立のときまでで、たとえば一つの債権なら債権というものは、独立の四八年なら四八年までで仕切った場合と、それ以降いわゆる平和条約が成立した場合に仕切った場合と、その請求権の額というものが違う場合が当然あり得る。もしその場合においては韓国が有利になる。韓国がたとえばこの基本条約というものを結んで、四八年に独立したということを承認したということで韓国が有利になったとするならば、このサンフランシスコ条約の二十六条の後段、「日本国が、いずれかの国との間で、この条約で定めるところよりも大きな利益をその国に与える平和処理又は戦争請求権処理を行ったときは、これと同一の利益は、この条約の当事国にも及ぼされなければならない。」したがって、韓国が有利な条件をかちとったとするならば、このサンフランシスコ条約によってサンフランシスコ条約を締結した国々全体にこの利益を及ぼさなければならないということになってくる。そうすると、四八年に独立したことをもし認めて、それによって韓国が有利になったとするならば、サンフランシスコ条約の関係国全部に話をしなければならぬ、全部関連しなければこの基本条約は有効でないということになるが、どうなんだ。
○藤崎政府委員 第四条の財産請求権の処理の関係は、いつ大韓民国が独立したかという期日とは全然関係がないのでございます。
○戸叶委員 いまの問題ですけれども、岡田委員が指摘したように、大韓民国自身は四八年に独立をしたと言い、日本の国は、その事実は認めているけれども、正式に独立を認めたのは五二年である、こういうふうに先ほどから言われているわけです。私どももそういうふうに了解しています。だとしますならば、これらいろいろの条約を結ぶにあたりまして、韓国のほうとの調整をとっておきませんと、自分たちの国は独立したのはこの年であると言い、こちらが独立を認めたのはここであると言ったときに、その間に必ず食い違いが出てまいります。たとえば法的地位の問題にいたしましても、独立したときにさかのぼってというようなことを言われたときに、日本は五二年を言い、向こうは四八年を言うということになる。そこで、私どもは、この間の調整というものをはっきりとっておくべきであるということを言っておるわけです。先ほどの岡田委員の質問にあわせて、私は、そういう点を今後において問題になるからここで聞いたわけですが、この点も私どもは納得いたしません。しかし、この問題だけにこだわっておりますと先へ進みません。
 そこで、私は伺いたいのですが、たくさんの問題がありますけれども……。
○青木委員長 戸叶委員に申し上げますが、理事会の申し合わせ時間が参っておりますので、簡潔にお願い申し上げます。
○戸叶委員 それではいろいろ飛ばしまして、あと二つだけ伺いたいと思います。
 その一つは、高輪の泉岳寺の付近にコリヤハウスがあって、そこに十五人のキーサンがいるということを御存じですか。この人たちは公務員の旅券で来ているということになっておりますけれども、この点はいかがでございましょうか。
○八木政府委員 これは私よく存じませんが、このコリヤハウスというのは、韓国の料理店ですけれども、そこに来ておる女というのは、韓国の芸術を紹介する使節団という、そういう形でわれわれは承認しているということになっております。
○戸叶委員 その旅券の種類は何ですか。
○八木政府委員 その点は慎重に調べまして返答します。
○戸叶委員 ちょっとその辺をやはりはっきりしておいていただきませんと、ごまかされますと、あとで問題が残るわけですから、やはりはっきりさしていただきたい。入国は人道上か貿易か、あるいは公務員か、どれか三つしかないわけです。そこで、何の種類の旅券かということを伺いたい。
○八木政府委員 さっそく調べまして、すぐ御返事申し上げます。
○戸叶委員 なぜ私がこういうことを伺うかと申しますと、去年の十一月に文化交流使節として来た大阪のキーサンが、いわゆる売春を強要されまして、そして、その事実を一年後に韓国へ行って暴露したというので、韓国においては非常に問題になっているわけです。したがって、韓国で問題になっていて日本ではそういうふうなことを知らずに公務員旅券を出しているなんという、こういうようなふざけた態度が許されていいかどうかというところに私は問題があると思うのです。こういう問題に対して、外務大臣は、その事実をどういうふうにお考えになっていますか。
○椎名国務大臣 よく事実を調べてみまして申し上げたいと思います。
○戸叶委員 それではもう一つ伺いますが、公務員旅券であるとするならば、それは重大な間違いであるというふうにお感じになりますか。
○椎名国務大臣 よく実情を調べまして申し上げたいと思います。
○戸叶委員 少なくとも韓国と交渉をされるならば、旅券の種類のことぐらいはやはり知っていてもらわなければ――日本にいる人たちの、そういう問題を起こしている人の旅券の種類ぐらいは知っていていただかないと困ると思います。
 第二の問題といたしまして、二月の十一日に韓国の学生運動の指導者が十八人ひそかに来日をして、各地を回ったということを聞いておりますが、この点は、外務大臣もお会いになったと思いますから、もちろん御存じだと思いますが、どうですか。
○椎名国務大臣 存じております。
○戸叶委員 その引率者は、権寧吉韓国亜細亜親善会理事長、民主共和党の陸寅修議員、尹済述民政党議員というような人たちが来ておりますし、それから十八人の国際文化会館に泊った学生の中には、宋興圭韓国学生総連合会長というふうに、去年のデモの中心人物の人たちが主として加わっているわけでございます。こういうふうな人たちを招待をいたしましたスポンサーというのが、アジア問題協議会といわれておりますけれども、アジア問題協議会というのは外務省に登録されている協議会ですか。
○後宮政府委員 いわゆる社団法人というような法人格があるものではございませんから、登録というような問題はございません。任意団体でございます。
○戸叶委員 その協議会を御存じですか、外務大臣。
○椎名国務大臣 よく存じません。
○戸叶委員 ただ、ここで問題になりますのは、韓国の学生といえば、六〇年の四月には李承晩政権を倒した立て役者でありますし、また、昨年の三月は学生デモで会談の中止を迫った人たちでございます。そういう人たちが急に日本に親善に来るというのは、ちょっと私たちは奇異に思うわけです。世間では、韓国の反日的な人たちを集めて、そして、懐柔して日韓会談をスムーズにするために招待したのだというような疑惑の目をもって見ているわけでございますが、そうではないという根拠は一体ありますか。
○椎名国務大臣 自民党の人が引率してまいりまして、ぜひ外務大臣に会いたい……(「だれだ」と呼ぶ者あり)自民党の代議士でございます。私に紹介をしたいというので、外務省に参りました。そうして、これはみな学生さんだということでございまして、約三十分前後会談をいたしまして別れたので、私はどういう筋合いで一体どういう経歴の学生であるか、そういうこともほとんど聞かずに、お互いにしゃべったのです。
○戸叶委員 自民党の谷川議員が中心になっていたと思います。そして、この人たちを招待するにあたって外務省のほうから数百万円の報償費というものが出ているはずでございますが、この点を外務大臣は御存じでございますか。
○椎名国務大臣 私はそのいきさつをよく存じませんので、政府委員から答えさせます。
○後宮政府委員 御指摘のとおり、招待外交の一環といたしまして外務省から援助を一部いたしております。
  〔「おかしいよ」と呼び、その他発言する者あり〕
○青木委員長 静粛に願います。
○戸叶委員 招待外交というのは外務省がやるべきであって、一議員のために、しかも韓国の反日的なデモで戦った人たちを懐柔するために、政治的な工作にその報償費を使うということは、私はこれは許すべからざることだと思うのです。報償金の性格というものが全く昔の軍の機密費と同じ役をしているものではないか、こういうふうな形で予算が使われるということでは、私どもはどうしても納得ができないと思うのですが、この点はいかがですか。
○後宮政府委員 御指摘のとおり、学生の中には学生運動のリーダーであった者も一両名まじっておったようでございますが、それが全部ではございませんで、女子学生三名もまじえまして、芸術、技術いろいろの方面の方が来ておりまして、これは、学生の中から日本の実態を見たいということで、このアジア問題協議会が呼ばれることになりまして、それで、その趣旨に賛同いたしまして外務省から一部援助をした、そういうことになっておるわけであります。
○戸叶委員 いま後宮さんがお認めになったのは、招待外交の一環として出した、こういうことでございますが、それではいつ、幾ら、だれにそれだけのお金をお出しになったかを伺いたいと思います。
○後宮政府委員 さっきの招待外交と申しましたのは少しことばが足りなかったので、招待外交の精神というような意味でございますが、御指摘の補助は、谷川先生に対しまして、この一行の航空賃その他一週間の日本の滞在費に充てるために二百万円出しております。
○戸叶委員 いま二百万円谷川先生にお渡しをしたということでございますけれども、谷川さん個人にそれだけのお金を外務省の招待外交ということで、その一環としてお渡しになったのですか。これは重大な問題だと思います。
○後宮政府委員 アジア問題協議会の代表者としての谷川先生でございます。
○戸叶委員 そうしますと、どういうふうな団体に対しては外務省が招待外交の一環としてお金を渡すという、その基準がございますか。
○後宮政府委員 特にはっきりした一定の基準があるのではなく、ケースバイケースできめるわけでございますが、政府が直接、あるいは外務省が直接招待する場合がいい場合には外務省が招待者になりますし、いろいろの観点で政府が表面に出るのはかえって効果を減殺するという場合には、適当な民間団体をお助けしてその方にお願いする、そういうふうにやっております。
○戸叶委員 こういうことが許されるとすると、今後において私はいろいろな問題を残すと思います。たとえば、私が招待外交をしたいと思いますけれども、外務省はお出にならないでけっこうです、二百万円いただきたいといって、私のバックに一つの協会があったといたしますならば、お出しになります。
○椎名国務大臣 ケースバイケースで、やはりそのお渡しする人に対する信頼ということもあります。そういうこともありますし、それから団体の性格あるいは実績その他いろいろなファクターがあって、そして判断をいたすのであります。
○青木委員長 岡田春夫君から議事進行の申し出があります。すでに戸叶君の持ち時間は経過いたしておりますので、簡潔にお願いいたします。
○岡田委員 この問題は、政府がはっきりお認めになりました事実であるだけに、これはきわめて重大であります。特にアジア問題協議会というのは、こういうからくりのために昨年の十一月の末につくられておる。しかも、この協議会のメンバーというものは、わずかに五人か六人しかおらないはずである。こういう架空に近いような団体をつくってこれに金を出したということは、これはきわめて重大であります。しかも、これは財政法上にも関連をしてきわめて重大であり、その他政治資金としてこのような形が使われるということは、われわれは絶対に許すことはできません。私たちは、こういう点において、予算の使い方として、報償費がこのような政治資金に使われておるということは絶対に認めるわけにはいかないので、この点について、理事会を通じて明らかにしていただきたいと思います。
○戸叶委員 私の質問は、これで終わります。
○青木委員長 戸叶里子君の質疑は、これにて終了いたしました。
     ――――◇―――――
○青木委員長 この際、公聴会の件について御報告いたします。
 公聴会開会に関する諸般の手続につきましては、さきに委員長に御一任を願っておりましたが、理事と協議の結果、次のとおり決定いたしましたので、御了承願います。
 すなわち、昭和四十年度総予算についての公聴会は、明十七日及び十八日の両日開会することといたします。
 また公述人の氏名及び意見を聴取する日取りは、十七日午前は、早稲田大学教授時子山常三郎君、武蔵大学教授芹沢彪衛君、午後は、慶応義塾大学教授大熊一郎君、民主社会主義研究会議事務局長和田耕作君、十八日午前は、全国銀行協会会長中村一策君、日本女子大学教授松尾均君、午後は、関西経済同友会代表幹事日向方齊君、東京大学教授坂本義和君、以上であります。
 右御報告いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時三十七分散会