第049回国会 本会議 第4号
昭和四十年八月三日(火曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第四号
  昭和四十年八月三日
   午後二時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
                (前会の続)
 二 国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加
  盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する
  法律案(内閣提出)の趣旨説明
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 横路節雄君の故議員椎熊三郎君に対する追悼演
  説
 国務大臣の演説に対する質疑
                (前会の続)
 国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に
  伴う措置に関する法律の一部を改正する法律
  案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
 中村運輸大臣の大阪港内における遊覧船衝突事
  件等についての発言及び質疑
   午後二時七分開議
     ――――◇―――――
○議長(船田中君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
○議長(船田中君) 御報告いたすことがあります。
 議員椎熊三郎君は、去る七月二十七日逝去せられました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。
 同君に対する弔詞は、議長において去る七月三十日贈呈いたしました。これを朗読いたします。
  〔総員起立〕
 衆議院は多年憲政のために尽力しかつて議院運営委員長災害地対策特別委員長の任につきまたさきに本院副議長の重職にあたられた議員従三位勲一等椎熊三郎君の長逝を哀悼しつつしんで弔詞をささげます
     ――――◇―――――
 横路節雄君の故議員椎熊三郎君に対する追悼演説
○議長(船田中君) この際、弔意を表するため、横路節雄君から発言を求められております。これを許します。横路節雄君。
  〔横路節雄君登壇〕
○横路節雄君 ただいま議長から御報告のありましたとおり、本院議員椎熊三郎君は、去る七月二十七日、東京慈恵会医科大学附属病院において逝去されました。まことに痛恨の念にたえません。
 私は、ここに、諸君の御同意を得まして、議員一同を代表し、つつしんで哀悼のことばを申し述べたいと存じます。(拍手)
 椎熊君は、明治二十八年四月、北海道利尻郡鴛泊村にお生まれになりました。君は、この孤島の一漁村に、きびしい自然と苦しい生活環境の中で幼少時代を過ごされた後、単身小樽に渡り、苦学しながら、大正三年に小樽中学を卒業されたのであります。卒業後は、京極、真狩などの小学校において僻地の児童教育に当たられました。君の若き日の情熱を傾けた教えは、当時の教え子たちに深い感銘を与えたのでありまして、これらの人たちは、いまに至るまで君の徳を慕い、日ごろ何かと支援を惜しまなかったほどであります。(拍手)
 中学時代から政治に志を立てておられた君は、やがて職を新聞記者に求め、大正七年、小樽新聞社に入社されました。社会部記者となるや、君は旺盛な正義感と持ち前の情熱とをもって活躍されたのでありますが、間もなく社内の賃上げ争議に加わり、退職処分にあうという悲運におちいりました。しかし、当時の小樽商業会議所会頭で、後に本院議員として永年在職の表彰を受けられた山本厚三氏の知遇を得、同氏の薫陶のもとに、政治活動への第一歩を踏み出されたのであります。
 このころ中央政界において激しい論議を呼び起こしつつあった普通選挙論に君は大いに共鳴し、さっそく小樽に普通選挙期成同盟を設立して、みずから幹事長となり、普選運動に全力を傾けられました。さらには、上京して中央運動に参加されるや、警察の弾圧や反対派の抵抗にも屈せず、日比谷、上野と、各所に熱弁をふるわれ、普選の実現に懸命の努力を払われました。(拍手)
 大正九年、山本氏が本院議員となられて以来、君は、山本氏の側近にあって政治家としての素地を着々と築いていかれたのであります。この間、勉学の必要を痛感された君は、晩学をも辞せず、中央大学の法学科に入り、刻苦勉励の末、昭和二年に御卒業になりました。
 君は、昭和十七年のいわゆる翼賛選挙に際して、軍部の力から議会を擁護し、政党政治、ひいては日本の将来を守ろうとの、やむにやまれぬ強い決意から、非推薦で勇躍立候補されたのであります。しかし、さまざまな圧迫と干渉を受け、奮闘もむなしく、苦杯をなめさせられたのでありました。しかし、昭和二十一年四月に行なわれた第二十二回衆議院議員総選挙には、郷党の衆望をになって、みごと本院議員の栄冠をかち得られ、年来の宿願を達成されたのであります。(拍手)以来、君は、本院議員に連続して当選すること九回、在職十九年三ヵ月の長きに及んでおります。
 本院に議席を得るや、君は、たちまち頭角をあらわし、帝国憲法改正案委員、労働基準法案委員会理事、教育基本法案委員長となって、日本再建のための諸制度の確立に尽くされました。昭和二十二年には、片山内閣の逓信政務次官に就任されております。昭和二十三年には、第三回国会、第四回国会と、引き続いて本院の災害地対策特別委員長に選ばれ、キャスリン、アイオンなど相次ぐ台風に災害を受けた地方の復興に献身的な努力をされました。また、君は、該博な知識と豊富な経験を生かして、予算、外務、逓信その他の各委員会に幅広く活躍されたのであります。(拍手)しこうして、君の本領は議会の運営にありました。君は、きっすいの政党人として、国会の権威を高揚することこそ民主主義の基本であるとの信念に立ち、議院の運営に力を尽くされたのであります。当選早々、各派交渉会における日本進歩党の代表の一人として、憲法議会の運営に尽くされたのをはじめ、国会になってからも議院運営委員会の有数のメンバーとして、その力量は自他ともに許すところでありました。(拍手)
 第二十三回国会の昭和三十年十一月に、君は議院運営委員長の要職に選ばれました。時あたかも画期的な二大政党時代を迎え、議院運営の面で、君は、多年にわたってつちかったすぐれた手腕を発揮して、よくその職責を全うされました。昭和三十三年六月には、推されて本院副議長の重職につかれたのであります。これは議会人椎熊三郎君にとってまことに忘れがたい光栄であったことと存じます。(拍手)
 さきには、三たびにわたり、世界各国の議会制度をつぶさに視察して識見を深められ、また、ケニア独立式典には政府特派大使として参列し、同国との親善に寄与されました。
 党にあっては、君は、改進党の党務委員長、日本民主党の副幹事長、さらに、自由民主党の総務会副会長、代議士会長等を歴任し、党の運営に尽力されたのであります。
 かくして、君がわが国政の進展に、また議会政治の発達に残された功績は、まことに偉大なものがあります。(拍手)
 また、君は、常に郷土の繁栄を念願され、北海道開発審議会委員、自民党道連会長をつとめ、北海道開発に精魂を傾け、経済発展の上に多大の貢献をされたのであります。とりわけ、第二の故郷である小樽市には深い愛着を持たれ、小樽市が近代都市として今日の発展を迎えたのも、君の力によるところが大きいのであります。八月一日は、小樽市開基百年に当たり、その記念式典が挙行されました。君も列席をしてあいさつをされるはずでありましたし、地元の人たちも、だれよりも君を迎えることを望んでいたのであります。その願いはむなしいものとはなりましたが、君の功績は不滅であり、市民たちによって永遠に語り継がれていくことでありましょう。(拍手)
 思うに、君は、困窮の中から身を起こし、あらゆる辛酸をなめながらも、不撓不屈の信念を堅持して、独立独行し、人生の苦難の道を開拓して初志を貫き、本院議員たる名誉をにない、さらに本院副議長の栄任につかれたのでありまして、まさに立志伝中の人物と申せましょう。(拍手)しかも、君のこの奮闘の生涯は、国家を思い、国民を愛する至情に貫かれたものでありまして、かつておのれを顧みるということがなかったのであります。
 私は、去る六月三十日、夕暮れの倶知安の街頭を思い出します。椎熊君は、いつもの元気な張りのある声で演説をしておられました。いまなお、ありありとその声は私の耳に残っており、その姿は私の眼前に浮かびます。いまにして思えば、すでにあのとき病は君のからだをおかしており、君もそれを知りながら、なおかつ戦いを続けておられたのであります。(拍手)椎熊君の政治に対する熱誠、政党人としての覚悟のほどを思うとき、君の無念さを察し、言いようのない悲痛の念に打たれるのであります。
 君は、また、信義を重んじ、すこぶる人情に厚い方で、いわゆる情熱の人でありました。喜びにつけ、悲しみにつけ、何の飾り気もなく心の底から喜び、また、悲しむ方でありました。
 あと三年たてば金婚式を迎えるというので、君が若き日の困難に耐え、よく晩年の栄誉を得るに至るまで、ひたむきな内助をささげてこられた令夫人や、御家族ともども、来たるべき日のことを語り合い、楽しみにしておられたとのことでありますが、いまやそれもむなしくなった君の胸中を思えば、どんなにか悲しく、どんなにか心残りであったことでありましょう。(拍手)
 現下、わが国は、内治に、外交に、きわめて重要な時期に当面しており、われわれ議会人に課せられた使命はますます重大であります。このときにあたり、君のごときりっぱな議会人を失いましたことは、本院にとっても、国家にとっても、大きな損失でありまして、痛惜の念いよいよ切なるものがあります。(拍手)
 ここに、椎熊君の生前の功績をたたえ、その人となりをしのび、心から御冥福をお祈りして、追悼のことばといたします。(拍手)
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑
                (前会の続)
○議長(船田中君) これより国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。中井徳次郎君。
  〔中井徳次郎君登壇〕
○中井徳次郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、先般行なわれました佐藤総理大臣の所信表明演説及び福田大蔵大臣の財政演説等に関し、主として経済問題にしぼって質問をいたしたいと存じます。(拍手)
 まず、質問の第一点は、現在の不況の見通しについてであります。
 本年一月、佐藤総理は、年頭記者会見におきまして、現在の不況はもう半年もすればよくなると言ったのであります。さらに、さきの通常国会における中期経済計画の質疑に関連をいたしまして、わが党の横路君の質問に答えまして、昭和四十三年までは公債発行の必要なしと断言されました。私も直接それをこの耳で聞いております。この点は、昨日のわが党の佐々木委員長の同様な質問に対しまして、総理はごまかし的な答弁をされたと思うのであります。総理として、あるまじきことであるし、国会の速記録を否定せんとする、きわめて悪質な、遺憾な態度であると私は思います。(拍手)半年前までは楽観的な見通しを表明されながら、今日、経済情勢は好転するどころか、ますます深刻の一途をたどってまいっておるのであります。たとえば、証券界一つをとってみましても、やれ証券保有組合だとか、やれ共同証券だとか、田中大蔵大臣時代から同じような機関をたくさんつくりまして、いろいろと、てこ入れをしたのでありまするが、小細工をすればするほど、株価は値下がりするばかりでありまして、あげくの果てには日銀の緊急融資でやっと信用不安を防ぐというのが今日のありさまであります。
 こうして、本年初頭からの総理の数々の発言は事実によって完全に裏切られたのでありまするから、そこで、まず私は、一つ、総理は経済不況の見通しがはずれたことを率直に認められまして、この議場において、昨日のごときごまかしではなくて、国民にその責任をとることを表明すべきであると考えまするが、いかがでございますか。(拍手)二つ、経済不況の今後の見通しについて、しからばどのように考えておられるか、お伺いしたいのであります。
 質問の第二点は、現在の経済不況の性格についてであります。
 現在の経済不況は、一九四九年のいわゆるドッジ安定恐慌以来、四年ごとにわが国経済が体験してまいりました景気後退とは様相を異にする深刻なものを含んでいるとわれわれは考えております。それは昭和二年の金融恐慌に匹敵する幅と深さとを持っており、まさに経済危機と呼ぶにふさわしい深刻なものであります。昭和三十五年以来累積されてきました民間設備投資が、所得倍増計画に対してすら実に八兆二千億も上回るというような、非常な行き過ぎ経済であり、また、逐次顕在化してきました過剰生産の矛盾が、二十数兆円に伸び切りました企業間信用の崩壊という形になって今日あらわれてきておりまするのが、現在の経済危機であると私どもは判断いたしております。これが恐慌に爆発しないのは、わずかに政府と独占資本がインフレと高物価政策をとることによってこれを必死に食いとめている、こういうふうにぼくらは判断いたしております。
 また、わが国経済は、いつも申し上げるように、中小企業、零細企業が広いすそ野を形づくりまして、その上に一握りの大企業がそびえ立つという姿であります。このピラミッド型の経済構造を通じて大企業がばく大な利益を吸い上げるという仕組みになっておるのであります。そして、この体質の持つ矛盾は、高度成長が曲がりなりにも達成されている間は表面上はあらわれてまいりませんけれども、一たび景気が後退すると、一挙にこれが露呈されてまいります。そして、最近では、大企業は不況による打撃を中小企業に転嫁するだけではもはや切り抜けられなくなりまして、軒並みに利益が非常に減少し、赤字になって、ついに倒産するものさえ出てまいったのであります。事ここに至りますると、日銀による追加信用、財政支出の増加というような一時しのぎのこう薬ばりでは切り抜けられないということは、自民党の政策にもかかわらず現在進行しつつある不況そのものが雄弁にこれを物語っておるのであります。(拍手)
 したがって、わが国の経済が長期的ななべ底型なものと予想されておりまする今回の不況を乗り切ろうとするならば、どうしてもその体質の根本的改善が必要であります。すなわち、大企業が中小企業以下を利用してその上にあぐらをかいている日本経済の構造そのものを、根本的に改めることが必要であります。ところが、現在財界が政府に対して要望していることといえば、これに目をおおい、目先の企業減税とか、あるいは独禁法の改悪とかいう技術的操作に終始しておるのでありまして、これは、とりもなおさず、いまの大企業ピラミッド体制をそのままにしておいて、犠牲を中小企業以下にしわ寄せせんとする依然たる従来どおりのやり方であります。
 そこで、総理大臣並びに大蔵大臣にお尋ねいたしたいが、現在の不況は日本経済の体質に深く根ざしていることを認められるかどうか、この不況を乗り切るためには、わが国経済の体質改善を断行することが必要であると考えるかどうか、こういうことでありまして、これらに対する自民党のこれまでの対策を見ますと、全く支離滅裂で、一貫した姿勢が見られません。たとえば、本年度予算の執行につきましても、五月の末ごろ、これは議会の開会中でありまして、予算委員会におけるわが党の辻原委員の質問には、はずれた答弁を故意にしながら、六月二日、議会が終われば新聞紙上に、本年度の予算、公共事業費一割留保というふうなことを発表いたしました。ところが、またつい最近、今度はそれを急いで取り除いて、非常な混乱を巻き起こしております。国家行政の実施機関であります建設省、農林省等々の地方機関、各都道府県の実施機関、あるいは市町村に至るまで、このことによってたいへんな混乱を巻き起こしておるのであります。
 そこで、私はここで建設大臣にお伺いしたいが、大臣は、本年度の予算実施の混乱を整理して、原案どおり完全実施できるかどうか、その辺を伺っておきたい。これは参考まででございます。
 また、財源難が予想以上に深刻になってまいりましたので、佐藤総理及び福田大蔵大臣は、公債発行のことにつきましてはもう全く三転四転の発言をされております。最近に至りまして、ついに、明年度、四十一年度から公債発行に踏み切るようなことをしばしば言われだしました。そうして、国民の貯蓄増強さえあれば、というふうな強弁をするようになってきたのであります。しかも、公債の内容も、最初は建設公債でありましたが、近ごろは、その点も漸次ぼやけてまいりまして、赤字公債も場合によっては可なりと言うようになり、非常に追い込まれてまいってきておるのであります。しかし、公債市場はありません。公債引き受けの余裕は、いまの金融界では、その準備はありません。そこで、本年は大蔵省証券を大増発して、それを来年度にまたがってやりくり操作をせんとしておるのでありまして、それは実質的には完全に赤字公債であります。結局、インフレを引き起こして、物価値上がりと通貨価値の下落を招き、一般国民の生活が苦しくなるだけで去りまして、事ここに至らしめた政府の責任は、ほんとうに重大であるといわねばなりません。(拍手)
 このような、その場しのぎの対策では、この経済危機は乗り切れないことは、財界や自民党の中でさえ、多くの人の意見が一致しており、これらの人々も、口をそろえて、有効需要を呼び起こす政策を実施せよと主張しておるのであります。問題は、有効需要をその時限でいかなる方法で呼び起こすかということにあろうと思うのであります。
 国内需要の面でいうならば、所得八十万円以下の所得税の免税を含めた勤労者に対する大幅なる減税、社会保障の思い切った充実などは、国民の最も切望するところであります。所得税の納税人口は、いまや二千万人をこえんとしており、学校卒業の新入社員が直ちに所得税を徴せられるがごとき状態は、戦前のそれに比べてあまりにも隔たりがあり過ぎると考えるものであります。(拍手)納税人口を思い切って半減するくらいの施策を講ずることこそが、正しい有効需要を喚起する基本政策であると私は考えます。(拍手)ところが、政府は、従来、税制調査会の答申さえこれを曲げまして、所得減税を企業減税のために値切ることばかり考えておる。社会保障については、医療問題一つとりましても、本年初めから数々の醜態を演じております。そうして、行き詰まりまして、前進の姿はどこにも見られないのであります。
 また、海外需要についていうならば、中国等へのプラント輸出、これを行きがかりにこだわって、みずからの手で御破算にするような形になり、英国や西独等の同じ西側の国々と中国との貿易拡大を皮肉にも促進せしめるという結果になっております。そうして、一方では、最近、ベトナム特需などというもうけ仕事の話なども聞くに至りましては、まことに遺憾であります。(拍手)
 自民党政府が、このような政策で有効需要を呼び起こし、それによってこの経済危機を乗り切ろうといたしましても、それはわが国経済のひずみをますます拡大するだけでありまして、その体質の改善にはなりません。結局のところ、わが国経済のインフレの傾斜を深めるのみであると考えるが、いかがでございますか。
 不況克服策の基本姿勢は、平和経済を基礎に、勤労者の生活向上と東西貿易の無制限拡大とを二本の柱とすべきであると思うが、総理大臣の見解を伺いたいのであります。(拍手)
 先月三十日の大蔵大臣の財政に関する演説の中に、「世界の中の日本、特にアジアの中の日本という心がまえこそ、国際経済社会に臨むわが国の基本的方針でなければならぬと信ずるのであります。」とございましたが、これまでは、そのアジアの中には人口七億をこえる中国が入っていなかったのではありませんか。どうか、演説が全くの口頭禅に終わらないよう、心から期待したいのであります。(拍手)
 質問の第三点は、物価問題についてであります。
 自民党池田内閣のもとで高度成長政策を実施して以来、物価は急激に上昇し、国民生活はここ数年来その重圧のもとに痛めつけられております。内閣広報室の第八回の国民生活に関する世論調査の中にも、第一に、生活上の不満は何かとの問いに対しまして、物価高をあげる者が最も多いのでありまして、実に四二%に達しております。第二に、政府に対する要望としては、物価安定の要望は実に六〇%を占めております。減税の二三%、住宅対策の一四%等をはるかにしのいでおるのであります。過去三年来の衆参両院の選挙を通じて物価対策が選挙戦の大きな争点の一つになったのは、右の点からしても決して偶然ではありません。これに対して、政府・自民党は、選挙のたびごとに、もっともらしい作文を並べ立てて、物価安定を有権者に訴えてまいりましたけれども、それによって現実に物価が下がったという話は、私は聞いておらぬし、また、見たこともないのであります。(拍手)佐藤内閣になってから、一連の企業の倒産に対しては日銀の追加信用が増発されておりまするけれども、本年も六%から八%に達するといわれるインフレによる物価値上がりを押える施策は、まだ聞いてはおりません。
 また、国民の住宅難をよそに、地価は依然として値上がりを続けております。住宅を持つことは、庶民には高ねの花になっておるのであります。住宅建設については、わが党は、火災保険、生命保険等の資金をもってまず住宅建設に充てるべしとの主張を持っておりまするが、自民党は、前蔵相の時代に、それらの会社に、ごく最近のことであるが、株のてこ入れをするように慫慂したという話を伺っております。真意はどうでありまするか、引き継がれましたものとして、念のため福田大蔵大臣に伺っておきたいのであります。
 さらに、国民は、運賃、消費者米価の値上がりという脅威にさらされております。さきに四十年度予算が決定されました際に、私どもは、中流サラリーマン家庭では米価の値上がりで減税分が飛んでしまう、こういう事実を指摘いたしました。米代だけでこのありさまであります。
 この際、念のため、私は藤山経済企画庁長官にお尋ねをいたしたい。長官は、去る七月三十日の記者会見におかれまして、米価に対して議会でそう遠慮して答弁せぬでもいいということを言われたようであります。しかしながら、米価というのは、食糧管理法第三条第二項に、「政府ノ買入ノ価格ハ政令ノ定ムル所ニ依り生産費及物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ米穀ノ再生産ヲ確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」という、いわゆる生産者米価というものをはっきりさしております。同第四条第二項には、今度は、「政府ノ売渡ノ価格ハ政令ノ定ムル所ニ依リ家計費及物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ消費者ノ家計ヲ安定セシムルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」、こういうふうにあります。これがいわゆる消費者価格であります。この二重価格制度の考え方と、先般の藤山さんの発言は、全く相反する、非常に高い姿勢のものであると存ぜられますが、その見解をお尋ねいたしたいと思います。(拍手)
 このほか、運賃、水道料をはじめとして、消費者物価が一斉に値上がりをしましたら、政府の言う一千億程度の所得税減税では、国民の苦しさは、増しこそすれ、減ることはありません。これでは、幾ら有効需要を呼び起こすと言っても、事態は逆に有効需要は減るばかりであります。
 そこで、総理並びに大蔵大臣、経企庁長官にお尋ねしたいが、自民党政府がしばしば物価対策を発表しながら、現実に物価が上がっている原因はどこにあると考えられるか、これをどうすればいいか、具体案をもっとはっきりとお示し願いたいと思うのであります。(拍手)
 質問の第四点は、自民党政府の経済政策実施に対するものの考え方についてであります。
 さきに佐藤総理は、ある経済団体の会合の席上で、会社がつぶれたら私財をなげうってでもこれを救おうという気概が経営者に欠けている事実を指摘し、経営者の責任を強調されました。ところが、現実は、その後も、山陽特殊製鋼といい、山一証券といい、いずれも、経営者がばく大な私財を隠したり、あるいは巨額の退職金を取った事実が明らかになっておるのであります。私、考えまするに、これらの経営者も、その会社の社員に対しては、おそらく、会社を愛し、会社のために仕事を励むことをお説教したことでありましょう。ところが、会社が一たびつぶれると、何とかして私財だけは安全にして、自分だけはいい思いをしようと、ありとあらゆる手段をもてあそんでいるのであります。また、山一証券に対しまして、日本銀行は、無制限、無条件、無担保の緊急融資を実施しました。すでに、実に二百八十二億円もの金が出されたと聞いております。しかも、なおかつ山一は立ち直らないだろうといわれておるのであります。そういたしまして、町の商店には、億どころか、十万、二十万という金の都合がつかないためにつぶれている例が多いのは、天下周知の事実であります。中小企業に対する政府関係の金融機関の貸し付け利率を三厘下げたとかいって、この間から三木通産大臣が大げさに発表されました。引き続いて、総理大臣の先般の所信表明の中に、そのことが麗々しく入っております。わさわざ総理大臣の所信表明の中に入れねばならぬほど貧弱な中小企業対策しかないのでありますか。やらぬよりはましだという程度にすぎないではありませんか、失礼ながら。全中小企業に及ぼす影響というものを考えてごらんなさい。三厘引き下げ等は微々たるものであります。今日、高利貸しに追われて、政府関係機関のごときお役所的金融機関に行くすべもない多くの中小企業には、実際的な影響は宣伝ほどはないと私は考えるのであります。(拍手)どうせやるのなら、同時に、むしろきわめて大幅に、貸す金もうんとふやしたらどうですか。一厘、二厘というふうな、そんなこまかい芸当じゃありません。私は、このような発表はあまりに大げさ過ぎて、政府の政治の宣伝にすぎないといっても過言ではないと信じます。(拍手)
 国民は、総理の、ことばではなく、その行ないを見ておるのであります。私どもは、財界人に対するお説教もけっこうですが、お説教する側の政治家の政治に対する責任体制の確立こそが必要であると思うのであります。(拍手)総理大臣が池田氏から佐藤氏にかわっても、自民党の政党としての政治責任は引き継がれねばならぬと信ずるのであります。(拍手)しかも、政治の責任は、将来に対して青写真的な空虚な責任ではありません。その政党の過去の実績でこれを判断しなければならないことは、古今東西の政治の原則であります。そうでなければ、政党の責任政治の判断の基準をどこに求めるのでありますか。過去においてさんざんの不始末をしでかし、経済の見通しを誤りながら、口をぬぐって財界人にお説教しましても、財界人はあまり信用しないと私は思う。いわんや、現在政府のとっておる不況対策は、実は、不況対策不況対策と言いまするが、一部財界の救済策にすぎない。(拍手)したがいまして、百歩を譲って、財界人が少しはありがたがりましても、国民大衆は信用しないと思うのであります。国民が自民党と政府とに対して率直に要求しますることは、抽象的な美辞麗句ではありませんで、具体的な行動を要求しておるのであります。(拍手)
 外交問題では、ベトナム戦争を中止さすように自民党政府は何をするかというふうなこと。首相は、所信表明演説でこう言われました。「この際、紛争当事者が無条件で話し合いに入ることによって問題の解決をはかることを強く要請し、何よりもまず、当事者が話し合いによって紛争を解決する態度に踏み切ることが緊要であり、関係者がこの要請に対し真剣に耳を傾けることを期待する」、こう言われまして、官房長官などは大いにいばって宣伝しておるようでございまするけれども、国会で声明するだけにとどまっては意味がないと私は思う。何かやっておるのなら、はっきりおっしゃってもらいたい。大陸の中華人民共和国との国交回復なんという問題について、これは二十年来の問題ですが、前向き前向きと言いながら後退しておるこの現政府で何ができるか、こういう声が実に強いのであります。言うからには、何か成算がおありなんでありますか。おぜん立てがあるのでありますか。これについて外相の答弁を承っておきたいのであります。
 経済問題でいうならば、物価をほんとうに安定さすのかどうか、税金をほんとうに公平に取るのかどうか。森脇とかいう高利貸しの税金は、数十億円を見のがしました。また、前科数犯の大詐欺師を首相官邸にわがもの顔に出入りさせて、文字どおり綱紀紊乱の手本を示しながら、庶民の税金は容赦しない、これはどういうことでありますか。私は、この際、森脇脱税事件に関する行政機関の怠慢の責任を強く追及したいのであります。(拍手)この点に関する大蔵大臣の所見を承りたいと思います。
 また、税金に関しては、いま国民の間では、所得の捕捉について、九・六・四というふうな比率がうわさされておる。すなわち、勤労者は九割、中小企業は六割、農家は四割取られるというふうなうわさであります。この点につきましては、それぞれの議論はありましょうけれども、いずれにしても、戦後二十年たった今日、このような事態を放置いたしますることは、私は、国民の一人としてゆゆしい事柄であると思います。歴代保守党政府のきわめてずるい徴税のやり方を、私どもは責めねばならぬと思うのであります。(拍手)
 自民党政府はまたあまりに大企業を甘やかせました結果、財界は自力更生を忘れまして政府の態度にすがって、政府もまたこれとなれ合いで、表面不況対策と称しながら、佐藤内閣になっての施策も、ことごとくその内容は国民不在の一部財界救済策に堕しているのは、先ほど申し上げたとおりであります。(拍手)
 いまや、日本の経済は、長期的な不況の入り口にかかりました。株は上がらず、物価は下がらず、農作物は冷害にあって不作であるといわれております。池田内閣時代に敷かれたいわゆる高度成長政策なる路線は、実は、東海道新幹線の路盤のごとく、急づくりの軟弱きわまる路線であります。また、詰め込め主義の受験生のごとく、いまの経済はまことに睡眠不足の経済であると思うのであります。(拍手)しかるに、佐藤総理は、所信表明演説において、今日の事態をこう言っております。「景気回復の足取りは予想外に緩慢」である、あるいは、「政府民間相協力してこの局面に当たるならば、わが国経済はやがて現在の不況を乗り越え、堅実な発展をたどる」、こんなのんきなことではありません。そんななまぬるい態度でありまするなれば、この間の所信表明演説という一連の作文は、本年初頭の総理の所感のごとく、再びほごとなることを私は予告いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 経済の状態は、私が所信表明で申しましたように、輸出は伸びているが、なかなか国内において立ち直っていない、かような実情にございます。この点から、私のことしの年頭における記者会員の談話等を引用されて、政府自身ははたして正確にこれを握っているのかどうか、かようなお尋ねがあるのであります。私は、よく申し上げたいのは、経済自体非常に萎縮している際は、これに元気をつける必要もあります。また、非常に過熱を来たすおそれのある際には、これに忠告を発する必要もあると思います。かような観点に立って、ことしの正月私が申しましたことは、今日の不況をできるだけ早く克服したい、かような意味から、大体この半年くらいの基準を置いて、そして立ち上がりを要望する、そういう意味の施策を次々にしていくというのが、私の当時の考えであったと思います。しかし、当時、経済は深刻な不況に当面いたしておりまして、なかなか簡単には、私が予測をしたとおりには立ち上がりができない。そこで、ただいまのようなおしかりを受けているということであります。今日の現状と実際が、ただいま申すように非常にかけ離れておりますから、この非難はそのまま私もちょうだいをいたしておきます。
 かような経済不況は一体どういうところから来ているかというお話でありますが、これについては中井君も十分検討されておることだと思います。今回の不況も、在来の不況と同じように、金融引き締めから生じておるということは、これは言えると思いますが、同時に、わが国経済の底が浅い、あるいは二重構造であるとか、こういうような点ともからみ合って、今日の不況から脱出することが非常に困難なのであります。この点は、ただいま申し上げますように、体質そのものもよくないし、構造自身もよくない。こういうことに対しても十分メスを入れて、そうして、これが再建をはかっていかなければならないと思います。しかし、言われるごとく、私どもが大企業にのみ力をいたし、中小企業、零細企業に対してはこれを等閑視している、この批判は当たらないと思います。ただいま私が申し上げますように、この原因自身、これが二重構造である、こういうこともよく承知いたしておりますし、また、わが国の経済の実態から申しましても、中小企業を無視して施策の行なえないこと、これは私が申し上げるまで毛ないのでありますから、この点はあまり極端な批判はなさらないように願いたいと思います。(拍手)
 今日、有効需要をどうしてふやすか、これに対して、平和経済を基礎に、勤労者の生活向上と東西貿易の拡大の二本柱に重点を置くべきだ、これは御指摘のとおりでありますが、私どもは、今日、輸出増強、これが何よりも大事なことだ、かように申しておりますので、この点は中井君と同じような考え方かと思います。
 物価騰貴の問題につきましていろいろ御高見を拝聴いたしました。確かに、物価騰貴、この物価問題は政府の重要施策でございますし、真剣にこれと取り組んで克服していかなければならない。これは私の所信表明にもありますように、今日の経済不況を克服することが、私、今日の一番の喫緊の要務だ、政務だ、かように考えております。その不況を克服すること、これが物価問題である、かように思います。今日、経済閣僚等におきましてもいろいろ相談しておりますことは、すべてが、この物価問題といかに取り組むべきか、この具体的な方策でありまして、過ぐる日にも、これらに対しての具体的な、詳細なものを皆さま方にお示ししておるはずであります。
 私は、本来から申しまして、経済自身が安定成長になること、安定成長の基調にのぼすこと、それで初めて物価は安定するものだと思います。しかし、このことは、なかなか短時日には実現いたしません。したがって、これをいままでしばしば申し上げたとおりであります。ところが、片一方で、ただいまのような安定成長の基調に乗せるということを考えながら、それがまた同時に体質の改善にもつながることでありますが、今日当面する経済の不況に対する対策、これがまた最も大事なことでございますので、両者が矛盾撞着を来たさないように、できるだけその間に調和がとれるような方法におきまして、ただいまいろいろの施策をとっておるわけであります。それが財政投融資の繰り上げ、あるいは財政投融資の拡大等でございまして、これは、あえて予算を要求するまでもなく、今日の状況において政府自身がなし得るところが、ただいま申し上げるような点でありますので、これらのことに力をいたすつもりであります。
 なぜこれらのものが十分の効果をあげないのかというお尋ねでございます。できるだけ、私どもも、早期にこれらのものが効果を発揮するように心から願っておりますが、なかなか今日の状態はむずかしい状況でございます。したがって、これは、お互いがみずからの問題として、国民全体の協力のもとにおいて初めてその効果のあがること、これを十分考えていきたいと思います。私は、社会党の諸君にもお願いをしたいのは、十分御協力を願いたい、そうして、今日、ともどもにこの不況を克服していきたい、かように思うのでございまして、何とぞよろしくお願いをいたします。
 その他の問題につきましては関係大臣から答弁いたさせたいと思いますが、私は、最後に申し上げたいのは、池田総理から佐藤内閣につながった、こういう際に、自由民主党の責任というものはもちろんあるのだ、党の責任、これはもちろんあるのだ、かように考えます。したがいまして、今日、党がその責任を果たしていくという観点に立てば立つほど、現在の不況を克服して、そうして、国民の期待にこたえる、これが政党のあり方だ、かように考えますので、御了承いただきたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
○国務大臣(福田赳夫君) 物価と不況の性格の問題は、ただいま総理からお答えがありましたので、省略いたします。
 私からは、公債を出したらインフレになるのじゃないかということにつきまして、お答え申し上げます。
 四十年度の予算は、その編成を終わりましてから、経済界の不況を反映いたしまして、財源が相当多額に不足する傾向であります。しかし、さらばと申しまして、国家の歳出におきましてこれを抑制するということは、なかなか困難であり、また、すべきものでもないと考えますので、これが財源を他に求めなければならないという意味合いにおきまして、本年度は、いずれ、公債を出すとか、あるいは借入金をいたしますとか、臨時応急の措置をしなければならないと考えるのであります。
 そういう際におきまして、これがインフレになるのじゃないか、こういう御議論でございまするが、このように経済が落ち込んでおる、非常に需要が不足しておるという際におきまして、追加信用が行なわれましても、インフレには絶対に相ならぬ、さような確信を持っておる次第であります。
 さらに、この不況状態を克服いたしましたあとにおきましては、やや長期的な観点に立ちまして、積極的な意味における公債の発行を考えております。今日のわが国の財政は、非常に膨大化しております。戦前に比べますると、軍事費が戦前は四割を占めておった。今日はわずかに八%でありまするが、それにもかかわらず、その規模は三倍半ぐらいにふくれ上がっております。なぜそういうふうにふくれ上がっておりますかと申しますと、社会開発投資――住宅でありますとか、道路でありますとか、あるいは上下水道でありますとか、港湾、治山治水、そういうようなものであります。それから、もう一つは社会保障であります。今後の傾向を考えてみますると、それらの費用は、ふえればといって、減ることはない。むしろ、私は、そういう社会公共のための投資、経費は、ふやしていくべきものである、こういうふうに考えるのであります。そういうふうに考えますときに、そのふえる財政の財源を税金によってこれを今日までのように求めていくかということを考えてみますると、私は、今日の税制をもっていたしましても、国民の負担は非常に重い、企業と個人に対しまして。いま底が浅い日本経済といわれまするが、それは蓄積がないということなんです。私は、もう戦後二十年間、ここまで来た日本といたしましては、ドッジ財政によって立てられたあの均衡方式というものは、この際再検討してもいいのじゃなかろうか。つまり、国民の蓄積を、貯蓄を、この国家財政の財源に活用する、借用するという方式に移っていいのじゃないか、さように考えるのであります。そういう際に、それじゃインフレになるじゃないかという御議論をなす方がありまするが、これは、国の経済におきまして、物資の需給が均衡し、また資金の使用計画が均衡しさえいたしておりますれば、インフレになるところのおそれは絶対にございません。(拍手)
 また、森脇の脱税事件についてのおとがめでございまするが、私、まことにこれは遺憾なことである、かように存じております。森脇につきましては、それが金融の関係でありますので、税の捕捉が非常に困難であった。その困難を押して、税務当局におきましては、ある程度の資料も固め、その捜査に踏み切ろうといたしておったやさきに、この逮捕事件が起きたわけであります。さようなことでございまするが、今後、この種の巨額な脱税事件につきましては深い反省をいたしまして、機構等におきましても十分これを充実し、御期待に沿うように醸成してまいりたい、かように存ずる次第であります。
 また、山一証券の問題につきましてもいろいろのお話がございましたけれども、これは、山一に対する日本銀行の特別融資という形はとりました。山一を対象にはいたしましたけれども、その本体は、これは日本の信用制度の維持である、こういう点にあるのであります。また、大衆投資家の保護という点にあるのであります。この山一の問題につきましては、その善後処理をただいま急いでおります。先ほどお話がありましたけれども、山一の経営者の責任につきましても、厳粛にこれを追及してまいるという決意でございます。
 不況対策全体といたしまして、これは中小企業対策じゃない、これは巨大産業のための施策じゃないかというようなお話でございまするけれども、この大企業を通じて放出されまする資金がほとんど中小企業に回るということを、ひとつとくと御記憶願いたいと存じます。(拍手)
  〔国務大臣瀬戸山三男君登壇〕
○国務大臣(瀬戸山三男君) 私に対しましては、昭和四十年度の公共事業費等一割留保を宣言しながら、さらにこれを解除した、したがって、この地方公共団体等の四十年度の予算執行がうまくいくかというお話でありますが、御心配は要りませんということを申し上げておきます。
 それから、物価対策の中で、地価対策の問題をお取り上げになりました。地価問題は、御承知のとおり、国民あげて釈然たらざるものがあります。今日まで政府といたしましてもいろいろな角度からこの地価の高騰に対する対策をやってまいりましたが、あまり実効が伴っておらないという実情であります。昭和三十年を基点として、現在約七倍の高騰を示しております。一般物価水準とはたいへんな違いであります。したがって、住宅地はもとより、一般公共事業の施行等に重大なる悪影響を来たしております。したがって、これについては抜本的な対策を講ずべきである。土地は一般商品とは異なるものである。言いかえますと、人間がつくったものでないという土地に対しては、普通のものの考え方とは別な考え方に立って憲法上の処理をいたしたい。具体的な案は迫っておはかりいたしたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣藤山愛一郎君登壇〕
○国務大臣(藤山愛一郎君) 私に対する御質問は、物価問題と消費者米価の値上げの問題についてお尋ねがありましたので、その点についてお答え申し上げます。
 今日の物価問題は、これは非常にむずかしい問題であることは申すまでもございません。これは、普通の状態から申せば、不景気であれば物価は低落する、これが普通の状況だと思います。しかるに、不景気であるにもかかわらず物価が上がっておるというのはなぜかといえば、これは構造上の問題から来ておるのでございまして、私は、今日の不況も、また今日の物価問題も、過去における高度の成長というものが、一部産業の高度成長を見ましたけれども、それにつり合って、中小企業なり、あるいは工業が伸びたわりあいに農業が伸びない、あるいは産業の規模の大きさに対して道路、交通、輸送関係が伴っていかない、こういうちぐはぐな成長をしたところに、すべて今日の原因があると思うのであります。
 したがいまして、これらのものを解決してまいらなければ、真の物価の安定というのは、私は非常に困難と思います。われわれとしては、それに取り組んでいかなければならぬのでございまして、たとえば、農村の生産物、青森県のリンゴが非常にできる。しかし、東北地方の列車が単線であって、しかも貨車の輸送が十分でないというような場合に、東京市場におけるリンゴの値段と青森におけるリンゴの値段とが非常に離れておる。こういうような問題は、要するに、高度に成長しておる今日の産業活動、したがって、そういう問題を解消してまいらなければ、私は、ほんとうの物価問題には取り組んでいけないと思います。
 したがって、われわれが今日不況対策においてとりますところの諸般の政策につきましても、これらの不況対策が直接こうした問題の解決に役立つような不況対策、たとえば、道路でございますとか、あるいは労働者の移動が十分できるような住宅政策、スラム街の解消とか、そういう問題に不況対策を集中しまして、そうして、将来のこれらの構造上の問題、物価の解決の問題にも寄与するような面を不況対策に用いることによって、将来、安定成長の線に、この深刻な状況から回復したときに乗せていける。安定成長ということは、何%がいいかということでなしに、中小企業も大企業も、同じようなスピードで成長していくのだ、農業も工業も同じような行き方でいくのだ、こういうところに真の安定成長があると私は思います。
 そういうことに向かって、何年かかっても、われわれとしてはやっていかなければならぬのでありますが、しかし、そういう問題を前途に考えながら、今日の問題について、むろんわれわれは取り組んでいかなければならぬと思います。したがいまして、今日の物価の問題につきましても、われわれとしては、それぞれ監督行政を持っておられる、あるいは指導行政を持っておられるところの各省の方々にお願いをいたしまして、その範囲内において合理化をやる、あるいはそれらの合理化のための資金の供給をするというようなことによって、それを進めていくことが大事でございまして、そういう改善が、中小企業あるいはサービス業、あるいは今日大きな問題である住宅問題等にも関係してこなければならぬと思います。
 また、本年四月以降の物価を見ておりますと、教育費の高騰というものが相当なウエートで上がっております。これらの問題についても、やはりわれわれはそういう意味で考えてまいらなければならぬので、あるいは私学振興なり、その他の問題も今後の問題としてそれを取り上げて、早急に手を打っていく必要があろうと思います。そういうような予算措置を伴いますものには、大蔵大臣等も踏み切っていただきまして、これらの物価に対して急速な手を打っていくということが必要であって、われわれは真摯に取り組んでまいりたいと思います。ただ、今日手を打って明日物価が下がるという妙手というものはなかなかないことを、正直に申し上げて言わざるを得ないのでございまして、そこに私どもの苦衷の存するところがあるのでございまして、われわれは、協力一致しまして、できるだけ一日も早くそういうところに持ってまいりたい、こう思うのでございます。
 そこで、いま御質問の中にございました食管会計、消費者米価の問題でございます。これも、農村の実情から申しまして生産者米価を上げなければならぬ、こういうことになりますと、消費者米価の問題をどうするかということがございます。そこで、消費者米価の問題については、食管会計の赤字の問題もございます。また、逆ざや関係の問題もございます。そうした問題を考えてまいりますと同時に、一体、食管会計の赤字を補てんするのがいいのか、そういう種類の資金をもって社会保障制度に充てていくのがいいのか、そこいらの問題は、われわれとしては相当検討すべき問題があるのでございまして、それらの問題を十分検討しながらこの問題を考えていくのが適当だと思います。したがって、必ずしも私はすぐに上げると申したわけではございません。しかし、上げないと申したわけでもございません。これらの問題を考えながら善処していこうということを申したのでございまして、軽率に事を運びたいとは思いません。慎重にそれらのものを考えながらやっていくつもりでございます。(拍手)
  〔国務大臣椎名悦三郎君登壇〕
○国務大臣(椎名悦三郎君) 紛争解決には当事者の無条件の話し合いが必要である、政府はこのためには全面的な努力、協力を惜しまないという総理の演説であったけれども、具体的には一体どういうことを考えているかという御質問のようでございました。
 問題解決のためには、二つの方向において政府は努力する必要があると思います。
 第一は、無条件話し合いの実現に努力するということでございますが、この努力は、とりもなおさず、今回の総理の演説の中における呼びかけ、この問題をはじめとして、外交機関を動員いたしまして、友好国に働きかけ、連絡をとって、そうしてこの無条件の話し合いを開始するためのいろいろな前提条件をつくり上げる、こういうことにまず力を尽くすべきであると考えるのであります。
 第二には、話し合いが始まった場合に、両者の間におそらく意見の調整すべき点が多々あると思うのでありますが、これらについての努力、これは相当多岐にわたる方法が考えられるのでありますが、これらの問題についても、日本としては日本の立場に相応する努力をすべきである、かように考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(船田中君) 八木昇君。
  〔八木昇君登壇〕
○八木昇君 私は、日本社会党は代表いたしまして、国民生活の今日の実態に照らしまして、現佐藤内閣の政治姿勢をただそうとするものでございます。(拍手)
 佐藤総理は、昨年末池田前総理のあとを受けまして総理の座についたのでございまするが、そのときに、国民の多くは、佐藤さんがあの国民大衆の意思と民意を無視し続けた岸元総理の実弟であるということを考えまして、多大の危惧を抱いたのであります。それから八ヵ月、佐藤内閣のやったことは、原子力潜水艦の寄港、日韓条約の調印、近くはアメリカのベトナム侵略に手をかすがごときB52爆撃機の板付基地使用承認などでございまして、遺憾ながら国民の危惧の正しかったことが証明せられたのであります。(拍手)
 これらのこともさることながら、私がただいまから質問しようといたしまする点は、政治の基本たる国民の生活に直接関係する部面についてでございまして、焦点をそらさず、直接明快にお答えをいただきたいと存じます。
 佐藤さんは、総理就任後初の施政演説におきまして、人間尊重の政治を行なう、そしてそのために社会開発を積極的に進めていくと言われたのであります。その言やよしと言うべきであります。しかるに、事実はどうか。実際に人間は尊重せられておるか、すべての日本国民は尊重されて人間らしい生活をしておるか、事実は断じていなといわざるを得ないのであります。(拍手)そもそも、人間尊重の政治というならば、何よりもまず社会の最底辺にいる人々の生活権が守られていなければなりません。しかるに、それが守られておらないのであります。
 まず第一に、生活保護世帯の実態はどうでございましょうか。本年度の生活保護基準を見ますると、成年男子の飲食費は一カ月に三千百五円から三千四百円、女子はさらに底く、五体をささえるべき飲食費が一日わずか百円前後でございます。町では魚の切り身一つが六十円から七十円もしておるのでございまして、これではひど過ぎるのであります。昭和三十五年にいわゆる朝日訴訟の一審判決が下されまして、生活保護基準は低過ぎる、憲法違反であると断定をせられましてから今日まですでに五年もたっておるというのにまだこのありさまでございます。私は、先月奄美大島に行く機会があり、和光園というハンセン氏病の国立療養所に参りましたが、健康回復者の一日三時間の強制作業賃がわずかの百三十四円であります。日用品費が月にわずか八百五十円でありまして、たばこものめない。また、八十歳以上の老人や盲目の人のための慰安費が月にわずかの二百五十円と聞いて、いまさらのごとくいまの政治に憤りを覚えたのであります。(拍手)一体、こんなことで人間尊重の政治が行き届いていると総理はお考えになっておるのでありましょうか、まずお伺いをいたします。(拍手)
 第二は、失対事業労働者についてであります。現在失対労働者の賃金は一日平均五百六十円、月額わずかに一万二千円余りであります。しかるに一方、政府は、米も医療費もバス賃も水道料金も、遠慮会釈なくどんどん上げておる。これでどうして平均三人の家族をかかえてこの人たちは暮らしていくことができるでありましょうか。そこでお伺いをいたしますが、総理は、あなたの常に言われるいわゆる人間尊重の精神からも、生活保護費や失対賃金について来年度こそはこれが大幅引き上げを断行すべきでございまして、その決意があるかどうかお伺いをいたしたいのであります。(拍手)
 第三は、働く労働者の最低生活を保障すべき最低賃金法の実態についてであります。現行最低賃金は六段階に分かれ、月額わずかに九千円から一万二千円でございまして、しかも、金額の最終決定権は業者間協定によって雇い主が握っており、事実はこれよりも悪いところがまだたくさんあるのでありまして、月収一万四千円以下の労働者が、実は全国に五百万おるのであります。かようなことから、大橋元労働大臣さえもが、わが国の最賃法はいまや外国に持ち出せるしろものではなくなった、と告白をしたのであります。さすがに政府も改定の必要を認め、先般の五月、総評代表との会見におきまして、石田前労働大臣は、今度の中央最低賃金審議会総会において新しい政府の諮問案をはかると答えたと聞いておるのでありますが、はたして総理は、この際腹をきめて、いよいよ全国一律の最低賃金制に踏み切る決意があるのか。また、小平新労働大臣は、具体的にいかなる諮問案を用意しておるのか。成り行きを深き期待を持ってながめておりますところの全国幾百万の労働者に対して、期待にたがわぬよい返答をいただきたいと考えるのであります。(拍手)
 次は、いわゆる社会保障制度についてお伺いいたします。
 佐藤総理は、その社会開発政策の中で、社会保障政策の改善、充実を特に強調しておられるのでございますが、事実はどうでございましょうか。これまた、現実はその言うところとは反対に、むしろ全面後退というべきであります。失業保険の給付制限や、健康保険三法の改悪などがそれでございます。
 そもそも、これまでの政府の最重点施策というものは、いずれも、高度経済成長政策といい、その後の安定成長政策といい、今度の景気回復政策といい、日本経済の発展とか安定とか、うまいことを言いまして、そういう美名のもとに、結局は、大企業を中心に巨額の政府資金を投入するものでございまして、常に中小企業や農業は犠牲もしくは放置せられ、他方、社会保障政策はいつも口先ばかりでありまして、適当にお茶を濁してきたのであります。(拍手)私は、いまこそほんとうに日本の政治の中心にがっちりと社会保障政策を据え、これを具体的に推し進めていくことを政府に対し強く要求するものであります。(拍手)
 なるほど、わが国の社会保障制度は、昭和三十六年ごろをもって、国民皆保険、国民皆年金の一応の形は整えられたのでございますけれども、実はていさいばかりでございまして、内容は全くお粗末です。そもそも、政府にほんとうにやる気があるのなら、租税特別措置などという大企業への大幅減税措置などは直ちに廃止して、飾り立てたうたい文句のかわりに、端的に社会保障関係費を思い切ってふやしたらどうですか。
 しかるに、本年度国家予算において社会保障費は、生活保護、失業対策、保健衛生を含めまして、国家予算総額の一四%であります。イギリスの二七・八%、スウェーデンの二七・六%、オーストラリアの三一・七%、ニュージーランドは実に四六・七%、これに比べてはるかに低い。わが国の国民生活の現状から見まして、少なくとも私は、総理が社会開発を口にする以上は、国家予算の五分の一くらいはずばりと社会保障費につぎ込むべきであると考える。(拍手)佐藤総理の忌憚のない御意見を聞かしていただきたいと存じます。
 第二には、具体的に医療問題についてお伺いいたします。
 医療政策について国民の望むところは、患者はなるべく費用がかからずに健康を回復し、医者は一人一人の患者を十分に診察、治療し、それにふさわしい報酬を得るということであります。そしてこれが社会保障の拡充であります。
 しかるに、現状はどうか。たとえば、無料で治療を受けられるはずの被保険者がいざ入院しようとしますると、現実には差額ベッドというものがある。すぐ入院したい、あるいは十分に見てもらいたいと思っても、普通以上の費用を出して高い病室に入らないと、第一ベッドがないでしょう。こういう高い金を取って、それで病院は赤字の穴埋めをしておる。東京のある病院に入院したある人は、病院のさたも金次第だと嘆いた。また、大病院には患者が殺到しておりまして、十分な診察、治療などとてもできていない。他方では、必要以上の薬の乱発という社会悪、これは医は仁術といわれておるはずなのに、こういう社会悪が公然と医者の手によって行なわれておる。
 つい最近の新聞によりますと、ある開業医の話として、私は、薬が余ってもったいないといって病院通いの患者から反対に薬をもらった、これはほんとうの話ですよと書いてある。その新聞はさらに続けて、医師が薬を乱発するのは、そのほうが手っとり早く収入がふえるからだと指摘をしておる。これらは医療制度の内部矛盾と混乱の一部を私は述べただけでございます。
 かかる状況にもかかわらず、政府はこのような事柄にはメスを入れようとしない。しかも、大臣の職権告示によって医療費を一方的に引き上げて、おまけに保険財政が苦しくなったからといって、保険料の大幅引き上げと薬代の患者負担をやろうとしたのであります。このやり方はまさに佐藤さんの人間尊重とは全く相いれない矛盾したやり方でございましょう。(拍手)
 確かに各健康保険組合は、いまや膨大な赤字に悩んでおりまして、横浜市の国民健康保険に例をとりますと、毎年市は四億円の繰り入れをしておりますが、それでも赤字はすでに十七億に達しておる。昭和四十二年度末には約五十億円の赤字が見込まれておるのでありまして、かかる状態を考えまするときに、この赤字のしりぬぐいをすべて被保険者と地方自治体のみに負わせることは、これは断じて許されません。
 この赤字問題について、わが党は、この際、健康保険や共済組合には二割、国民健康保険組合には従来の負担のほかに新たに二割の国庫負担をせよと要求いたしておりますが、社会保障制度審議会や社会保険審議会、あるいは中央医療協に臨むにあたっての政府の具体的な腹がまえを聞かしてもらいたい。また、この三つの諮問機関の答申がもしそれぞれ食い違うという場合はどうするか。この場合、私は被保険者の立場が最も重視される方向で解決せらるべきであると考えるのでありますが、政府の見解はいかがでございましょう。(拍手)
 なお、薬価基準改定や、さらに一般に薬価そのものが高過ぎる問題について、製薬会社の過当利潤や過当宣伝費の抑制についてどのような手を打つつもりであるか。閣僚席には日本一に景気のよい製薬会社の社長もおられるようでございまして、答弁もやりにくかろうと察しますけれども、この点についても総理及び厚生大臣よりお答えをいただきたいのであります。
 第三は、各種年金給付のスライド制についてであります。
 近く夫婦一万円の国民年金が考えられているようでありますが、これには当然掛け金の大幅引き上げを伴うのであります。掛け金は引き上げられるわ、二十五年先の五千円の価値は大暴落しておったというのでは、国民はばかをみるだけでしょう。したがって、積み立て金制をとる以上は必ずスライド制を採用すべきでありまして、それが困難というならば賦課金制をとるべきであります。この点について、厚生、大蔵両大臣より御答弁をいただきたいと存じます。
 次は、農民、中小商工業者の生活問題についてであります。
 第一は、農民についてであります。
 昨年度の農業白書によりますと、農家の生活水準は全国勤労世帯の水準の七七%であります。この比率はここ数年横ばいになっております。しかも、農家のうち専業農家だけをとるならば、一般生活世帯との差は年々拡大しております。すなわち、農業だけでは食えない政治が行なわれておるわけであります。そこで、しかたなく農民みずからが政府の悪政のしりぬぐいをやっておるのでありますが、それが出かせぎであり、兼業でございます。私は、この二月、出かせぎ農民の実態調査に参りましたが、秋田県には七万人の出かせぎ農民がおりまして、職安の窓口には失業保険をもらう幾百の農民がひしめいておったのであります。また、兼業農家はふえる一方でございますが、幾らアルバイトをやっても一種兼業農家の生活水準は一般勤労世帯の生活水準に追いついていないと、これは政府の農業白書にそう書いてある。しかるに、政府のやってきたことといえば、米麦軽視政策と、無責任な畜産、果樹奨励であり、農地報償法の強行であります。
 そこで、私は政府に強く要求をいたしますが、いまや深刻な米不足の現在、これまでの米麦軽視の政策を根本的に改めてもらいたい。かつ、現行食管制度の堅持を――先ほどの経済企画庁長官のように、何ともわからぬようなことではなくて、あくまでも食管制度は堅持するということを、あらためて内外に明らかにしてもらいたい。(拍手)また、農業の主要なる基盤整備事業は全額国庫でやってもらいたい。卵価の暴落によって嘆き悲しんでいる農民のことを考えて、この際、輸入飼料については政府管理を強め、同時に飼料の国内自給度を高めてもらいたい。これらの点について、総理及び農林大臣の見解を承りたいのでございます。(拍手)
 第二は、中小企業であります。
 中小企業は、いまや戦後最高の破産、倒産を続けておりますが、親企業の支払い条件はますます悪くなる、大企業が中小企業の産業分野にどんどん食い込んでくる、それに人手は不足する、まさに中小企業は悪戦苦闘の状態であります。実際、中小企業の対策の面くらい自民党政府の大企業、大資本優先の政策を思い知らされる側面はありません。先ほど来山一証券の問題が出ておりまするが、この山一対策と比べて、山陽特殊製鋼の下請各社に対して、政府は一体具体的に何をやったですか。また、山一の社長さんは、責任を負ったのかどうか知りませんが、社長を退職されたそうでございまするが、聞くところによると、退職金五千万円だそうです。しかし、中小企業一件一件の倒産の陰には、刀折れ矢尽きて、三代にも四代にもわたって続けてきた家業をつぶさなければならないという一家眷族の涙があるわけであります。それを思い、心を痛めて対策を施すというのが、人間尊重の政治でございましょう。(拍手)
 この大不況下の中小企業対策は、政府関係金融機関の貸し付け利息三厘下げぐらいで片のつく問題ではない。われわれがかねて主張しておるように、官公需要の中小企業への振り向けとか、あるいは中小企業産業分野の確保とか、下請単価の不当切り下げ抑制、あるいは中小企業への無担保貸し付け限度の引き上げとか、やる気さえあればこれはすぐできる。こういうことを次々に積み上げていくことでございます。どうしてこれぐらいのことができないのか。大蔵大臣、通産大臣より答弁が願いたいのであります。(拍手)
 最後に、石炭産業についてお伺いをいたします。
 私は、ここに至って、歴代自民党政府の人間軽視政策は、文字どおり馬脚をあらわしておると考えるのであります。人間尊重どころじゃないでしょう。(「ひがむな」と呼ぶ者あり)ひがむんじゃないですよ。実際にあの大爆発を起こした炭鉱に行ってごらんなさい。人間尊重どころか、人命さえも尊重されておらない。三井三池に続いて、夕張、伊王島、山野と、立て続けに歴史的な大災害が発生したが、歴代自民党政府の産業政策の中で、犠牲とされて最も悲惨な境遇に泣いておるのが炭鉱労働者である。そして、現に、第二次石炭調査団の答申以後も、明治赤池、白炭高松、貝島、杵島など、石炭企業はまさに気息えんえんです。いまや石炭産業の経営基盤はあまりにも弱いのであります。したがって、坑内構造の近代化も保安も、もはや絶対に確保できない。将来への見通しは暗く、賃金は引き下げられる。生命の保障さえもない。これでは炭鉱労働者が若い者から続々と山を下るのは当然であります。
 ところで、エネルギー供給の安全性の面から考えましても、外貨保有の面からも、また、石炭関連企業の問題や地域社会の困窮という面から考えましても、石油一辺倒のエネルギー政策が許されないのは当然であります。私は、国内炭五千五百万トン生産体制の維持は絶対に必要であると考えるのであります。御承知のように、イギリス、フランスをはじめ、ヨーロッパにおいては、ドイツを除いて、石炭は全部国有です。そのドイツにおいても、最近ルール炭田の一本統合化を進めておりまして、重油には実に二千二百円の重油消費税をかけ、国内石炭企業を守っておるのであります。各国とも、いわゆるナショナル・インタレスト、すなわち国民的利益を守るための最高度の助成策を講じておるのであります。しかるに、ひとりわが国においてのみ何ら確固たる国の方針がない。(拍手)
 大体、佐藤総理、あなたは通産大臣時代に第一次石炭調査団を派遣した人でございましょう。そうして、七万人首切りを実行した人でございましょう。また、当時、筑豊炭田地帯を視察いたしまして、その惨状を見、このような状態を放置しておくことは政治家の恥であるという名文句をあなた御自身が残されたのであります。かかる佐藤総理には、石炭産業の根本対策を樹立する重大な責任があります。また一方、好意的に考えまするならば、あなたには石炭に対する深い理解もおありのはずだと考える。そこで私は要求いたしまするが、佐藤総理はこの際思い切って石炭国有を断行すべきであります。かりにこのことが直ちにできないといたしましても、少なくともこれに近い抜本策を断行すべきであると考えるのでありまして、あなたの石炭再建方策の骨子を示していただきたい。(拍手)
 さらに、さしあたっての問題でございまするが、来年度国家予算の編成にあたっては、石炭に関する限りは三割頭打ちなんというようなことではどうにもなりません。念のためにこの点も確かめておきたいと存じます。
 以上、私は、社会の各層の人々の生活を守るための諸方策についてお尋ねしたのでございますが、社会の実態を実際まのあたり直視いたしまするとき、そこには佐藤総理の人間尊重とはうらはらの人命軽視、人間無視の政治しかわれわれは見出すことができなかったのであります。
 衣食足って礼節を知るということわざがございますが、私は、今度の東京都議会の選挙の結果を見て、なるほどと考えるのであります。自民党政治のもとで、衣食足らない東京都民は、自民党に対して礼節を尽くさなかったわけでありましょう。(拍手)また、先般の参議院選挙における地方区の結果を見てみましても、自民党の得票率は東京都でわずかの二一・八%です。皆さん議会の中ではゆっくり落ちついておられるけれども、一歩外に出てごらんなさい、あの雑踏を繰り返す幾百万の東京都民のうちの八割は自民党に票を入れてないんですよ。(拍手)事態はきわめて深刻であります。七大都市の平均で私は参議院地方区の得票率を見ましたが、七大都市の平均でも自民党の得票率は二八・七%です。自民党は、日本の中枢部において、もはや三分の一以下の勢力になっておる。(拍手)これは一体何を意味するか。大資本にひたすら奉仕し、国民生活を顧みない自民党に対する国民の痛烈なる批判のあらわれにほかなりません。(拍手)大体、皆さん冷静にお考えをいただきたい。医学博士の東京都知事が、夢の島というような美しい名前の島にハエの大群を養っておるということに象徴せられる自民党のこの悪政に、国民はおこっているわけなんです。(拍手)
 いまや、佐藤内閣と自民党は、過去を徹底的に反省し、国民大衆に奉仕する方向へ政策を大転換すべきであります。そして、そのためには、自民党は財界のひもつき政党から脱皮すべきであります。(拍手)もしこれができないなら、遠からず民意は全く自民党から離れ、佐藤内閣は岸内閣のあとを追うでございましょう。(拍手)一国民として老婆心ながら私、警告を発しまして、質問を終わる次第でございます。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 人間尊重と社会開発は、私の政治の基本的態度であります。しかし、このことは容易に実現するものではございません。まことに道遠しの感があるわけであります。どうか十分時間をかけて、今後の私のやり方について御批判を賜わりたいと思います。
 私は、すでに御承知のように、僻地におきましては日々の弁当にも困っているような学童がある、かようなことは気がつけば直ちに手配をいたしました。また、申すまでもなく、身体障害者、これらを収容するに足る病院も不十分であります。これにつきましても、私は心を痛めております。ただいま申し上げるような人間尊重、このことはなかなか容易なことではございません。どうかお互いに一そうその方向で気をつけて努力していきたいものだ、かように私は考えます。(拍手)
 第二に、その観点に立ちまして、今日底辺に立つ人々、底辺に暮らす人々、これらを来年度の予算において十分心をいたして増額しろ、こういう御要望であります。それがたとえば失対の労務者に対する問題であったり、あるいは生活保護の問題であったりいたします。ただいまのお話につきましては、十分考慮いたしまして、この適正化をこの上ともはかっていくつもりであります。(拍手)
 次に、社会保障の拡充は、これは社会福祉国家の建設にとりまして欠くことのできないものであります。今後とも努力してまいるつもりであります。過去におきましてもそれぞれ努力してまいりましたが、この上とも努力してまいります。
 次に、医療費の問題につきまして、種々こまかな御注意がございました。確かに、健康保険といい、国保といい、それぞれが財政的に非常に困っておる状況であります。いずれ、社会保険審議会なり、あるいは社会保障制度審議会等の答申等をも得まして、そうして国民健康保険、健保等の財政対策を講じてまいるつもりであります。薬価につきましては、薬価基準の改正をただいま計画しておることだと考えております。
 年金制度、これは大臣に譲るといたしまして、農村の問題でありますが、農家の生活についてたいへん御理解のあるお話で、ただいま出かせぎが非常に多いとか、あるいは兼業農家になっておるじゃないか、かような御注意がございます。私どもは、だからこそ農業基本法に基づきまして、自立経営のできる農家を育成強化する、そうしてまた、兼業農家にいたしましても、それが付近の労務者と変わらないような所得が得られるように、それぞれの工場等を誘致するとか、あるいは立地条件を変えていく、そのための地方都市開発を進めていくということを申しておるわけであります。これは現状において、あるいはことばがやや聞き取りにくかったのですが、米麦中心の政策、これを軽視しておると言われたのか、軽視というように聞いたのですが、いままで言われておりますのは、農業の場合に米麦中心政策にこだわることはいかがか、こういう批判はしばしば受けるのであります。それほど米麦については中心、これを重視しておるというのがいままでの現状であります。今後とも酪農や果樹等につきましても同時にさらにわれわれの考え方を進めてまいりますが、ただいまのところは、一般的には米麦中心過ぎるんじゃないか、こういうような批判を受けておる、かように私は思います。食管制度は、こういう現状のようなたてまえにおきまして食管制度を改正するような考え方は毛頭持っておりません。
 私は、お尋ねに直接はなかったと思いますけれども、農村がさびれておる、こういうことは、農村自体もさることですが、もっと生活環境をよくしていくこと、これが大事なことだと思うし、地方におきましても、都市と同じような文化生活ができる、こういうことを、政府が、われわれが指導していかない限り、農村がどうしても疲弊しやすい、かように考えますので、一そうこれらの点については注意してまいるつもりであります。
 中小企業につきましては、大蔵大臣並びに通産大臣に答えていただきます。
 石炭産業につきましては、なるほど、私が通産大臣といたしまして、第一次の石炭調査団を派遣しました。第二次は、ただいまその報告をまとめつつある、かような状況だと思います。したがいまして、私自身、この石炭問題とは真剣に取り組んでまいっております。しかし、ただいま御指摘になりましたように、五千五百万トン、はたしてこれは確保できるでありましょうか。私は、ここにとらわれていることが必ずしも適当なものではないのじゃないか、これは、いたずらに炭鉱業者に対しましても、負担の重きをしいておるというような感が実はいたすのであります。もちろん、私は、いかなる消費量が適当なりやいなや、需要が適当なりやいなやということをまだきめておるわけではありませんが、しかし、五千五百万トンにこだわるということは、石炭産業といたしましても、どうも知恵のない考え方じゃないだろうか、かように思います。そこで、御指摘になりましたように、国有国営論、これが台頭いたしておることも私の耳に入っております。わが国におきましては、過去において苦い経験がございますので、この苦い経験、これを再びやらないように私どもは注意いたしたいものだと、かように思います。
 また、予算要求におきまして、今回三割要求に限りましたけれども、ただいま申し上げますように、特殊なものについては必ずしも三割に私はこだわるわけのものではないと思います。したがいまして、これはあまり御心配なくてもいいかと思います。
 最後に、東京都民の生活は非常に苦しい、苦しいがゆえに礼節を失って、自民党支持から離れた、社会党の方は支持を得たといって非常に喜んでおられますが、東京都民が礼節を失った結果社会党の支持を得られた、かようにお考えですか。私はこれはとんでもないお話だと思います。(拍手)かようなばかな話をされていては、これは選挙に対する十分の反省がないということだと私は思います。私どもは今回の選挙の結果を十分反省するつもりであります。かような意味におきまして、都民生活についてわれわれが最大の努力をいたしますことは従前にも増してでありますけれども、これによりまして今日の都民生活が苦しい、礼節を失っておる、かような批判は当たらない、かように私は思います。失礼いたしました。(拍手)
  〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
○国務大臣(福田赳夫君) お答えいたします。
 各種年金のスライド制を採用したらどうだ、こういう点につきましては、年金関係会計にこれは重大な問題でありますので、慎重に検討してみたいと、かように考えております。
 なお、中小企業の問題につきましては、年々政府におきましては努力をしてまいりましたが、特に今回の不況時におきまして、金融問題が大事である、そういうことから政府関係三機関につきまして、その融資量を繰り上げますとか、また、三機関の融資の利息を引き下げますとか、特別の配意をいたしておるわけであります。今後とも最善の努力をしてまいるということを申し上げましてお答えといたします。(拍手)
  〔国務大臣三木武夫君登壇〕
○国務大臣(三木武夫君) 八木君の、中小企業の振興にもっと力を入れるべきだという点は同感でございます。しかし、大企業偏重ということは、しばしばほかの大臣から申し上げておるとおり、そういうものではありません。自民党は歴代の内閣を通じて、中小企業問題には特に政策の重点を置いて努力をしてきてまいっておるのでございます。ただ、なかなか対象が多いし、業種が複雑であって、一気に効果のあがらない点はありますけれども、今後とも中小企業の振興のためには、われわれは全力を尽くしていきたいと思っております。
 ただ、いま御指摘になった具体的な問題についてお答えをいたしておきますが、一つは官公庁の需要を中小企業に振り向けるようにせよ、われわれもさように考えて、業者、官公庁との間に懇談会をつくって、そういう行政指導を行なって、いま大企業と半々ぐらいですけれども、もっと中小企業の比重は高めなければならぬと考えております。それから中小企業の分野の確保については、小売商業調整特別措置法あるいは中小企業団体法、この法律の規制を励行いたしまして、分野の確保をはかりたい。また、下請代金の遅延については、これは下請代金の遅延防止法の改正で、ある程度の効果はあがってはおりますけれども、まだ不徹底な点がある。これについては、下請代金の遅延によるしわ寄せが下請企業にできるだけいかないような行政指導を強めてまいりたいと思っております。また、無担保貸し付けに対する小口保険制度の金額も引き上げたらどうか。いま三十万円の無保証、無担保の貸し付け制度でありますが、この金額の引き上げについては十分検討いたしたいという考えでございます。(拍手)
  〔国務大臣鈴木善幸君登壇〕
○国務大臣(鈴木善幸君) 社会保障の充実の問題についてでございますが、わが国の社会保障は欧米先進国に比べまして見劣りがいたしておりますことは、御指摘のとおりでございます。しかしながら、経済の成長、国民所得の増加に伴いまして、逐次社会保障費もふえてきております。昭和三十五年度におきまして千八百億程度でありましたものが、四十年度におきましては五千百億をこえております。全体の予算の一四・一%程度に伸びておるわけでありますが、私ども、社会保障が社会開発の重要な柱であり、福祉国家建設の重点課題でございますので、今後一そうこの拡充に努力してまいりたいと考えておるわけであります。
 次に、要保護階層、低所得階層に対する施策、また、精神薄弱児あるいは重度心身障害児というような、生活の困窮者あるいはお気の毒な人たちに対する施策につきまして、今日までいろいろの福祉対策をやってまいりましたが、今後におきましても一そう努力をしてまいりたいと考えております。生活保護費の基準の引き上げにつきましても、物価その他と関連をいたしまして十分引き上げについて考えていきたいと考えております。
 保険財政の問題でございますが、保険財政は御指摘のとおり非常に各種保険とも財政が困難な事情に置かれております。先般、国民健康保険につきましては、三十九年度の精算不足分の百十一億につきましては、四十年度の予算からの繰り上げ支出によりまして対処いたしておりますし、なお、特別調整交付金に見合う額の支出につきましては、臨時財政調整補助金といたしまして、四十億円を予備費から支出いたしました。これによりまして、保険財政はおおむね昭和三十八年度決算程度の調整ができたと考えておるのであります。
 なお、その他の健康保険財政につきましては、ただいま社会保険審議会、社会保障制度審議会で御検討を願い、また、近く再開されます中央医療協等におきまして、薬価基準の引き下げも御審議を願い、決定をしたい、こう考えておりますので、保険財政につきましても、この三審議会の答申を得まして、これを尊重して所要の国の負担等の措置も講じたい、このように考えております。
 各種年金のスライド制の問題につきましては、国民年金法や、また厚生年金法の審議の際にも附帯決議がついてございますので、政府といたしましても、ただいま審議会等と緊密に連絡をとりながら慎重に検討を進めておるのでございます。(拍手)〔国務大臣小平久雄君登壇〕
○国務大臣(小平久雄君) 私への御質問は、将来の最賃制について中央最賃審議会でいつ検討を始めるのか、また、その内容はどうか、こういう御質問だったと思います。
 将来の最賃制につきましては、御承知のとおり、中央最賃審議会におきまして、昭和四十一年度末までは現行法の運用を積み重ね、昭和四十二年度以降の最賃制のあり方については、あらためて総合的に検討する要がある、こういう趣旨の御指摘があったことは御承知のとおりでございます。そこで労働省といたしましても、この線に沿うて準備を進めておるのでございますが、このためには、資料の収集その他に相当の日時を要しますことも御承知のとおりでございます。しかし、一方におきまして、最近におきまする労働事情等からしまして、すみやかに検討を始めろ、こういう御意見もございますので、ごく近いうちに最賃審議会のほうにお願いいたしまして検討を始めていただきたい、かように考えております。
 なお、将来の最賃制につきましては、全国全産業一律制、あるいは産業別、職業別最賃制等のいろいろ説がございますので、それらを含めまして最賃審議会において御検討を願いたい、かように考えております。(拍手)
  〔国務大臣坂田英一君登壇〕
○国務大臣(坂田英一君) 農業の近代化等については総理からお答え申し上げておりますので、それ以上述べるということになりますと、たいへん長くなりますから、省略いたします。
 ただ一つ申し上げたいことは、農業基本法にのっとりまして、それぞれ施策を講じておることは御存じのとおりであります。ただ、これに基づいて構造改善をやっておりますが、その中には非常に成績のいいのもございまするし、中にはなかなか十分にいってないものもございますることは御承知のとおりでございます。これらについては、やはり順序が間違っておったり、地方の実情に沿わなかったりするようなことがあるのでありまして、私どもは十分この地方の実情に沿い、また、順序を間違わずに、たとえば基盤整備だとか、道路ができていないのに大きな機械を持っていったら、順序が間違っております。そういうようなことについては十分ひとつ考えていきたいと思っておるわけであります。
 それからなお、米麦その他の農産物の価格安定について申されましたことについては、私も同感でございます。ただ、ここに鶏卵について申し上げますると、この鶏卵の現在の情勢は、季節的あるいは周期的な変動とは異なった動きを示しまして、長期にわたって低迷を続けておる。したがって、この長期的視点に立って需要の増加に見合う限度に生産の増加を調整することが基本となるものと考えます。このために需要に見合う生産の調整を組織的に行なうとともに、畜安法に基づく生産者団体による現行の調整保管事業の充実、三番目には、生産調整と有機的連携を持って実施される卵価安定基金等に対し、必要に応じて助成の措置を講ずる。そのほか、流通の合理化対策と消費増進対策を積極的に推進するというような方策を講じていかなければならぬと存じております。
 飼料の輸入等につきまして、また、政府の管理を強化することにつきましては、御同感であります。
 なお、現在、それにつきましては、この飼料の需給安定をはかっていく、数量等は相当ふやしておりますし、また、トウモロコシなどの臨時保管の問題、たとえば半ヵ月間十五万トンをしょっちゅう保管しておき、いざというときにはそれを出していくといったような問題については、やっておるのでありますが、なおこれらに対して十分の施策を講じていきたいと存じております。(拍手)
○議長(船田中君) 伊藤卯四郎君。
  〔伊藤卯四郎君登壇〕
○伊藤卯四郎君 私は、民主社会党を代表して、政府の所信表明に対して、国内問題として不況対策、物価対策と、外交は日韓とベトナム問題と、最後に、佐藤総理の政治姿勢について、率直に総理にお伺いをいたします。政府は、大局的見地から、これらの重大問題について具体的に解決策をお持ちであろうと思いますから、責任のある御答弁を願いたいと思います。(拍手)
 私ども民社党は、本国会は、まず第一に、不況と物価高克服の国会でなければならない、政府はこれにつき準備をせよと主張し続けてまいりました。そこで、政府は本国会で国民に対して何を提示したか。去る二十七日の閣議であわてて不況対策の作文だけはきめた。しかしながら、何ゆえに本国会に具体的な不況対策予算並びに法案等の新規提案をしなかったのか、この理由を明らかにされたいと思います。
 佐藤総理の有言実行とは、ことばは多いが具体的な実行がこれに伴わない点にある。現在の経済不況を長引かせ、深刻化している原因の一つは、あなたの不況対策の決定版がなかなか出てこないので、あいまいであった点にあるといっても過言ではございません。
 政策上の問題点としてまず総理に伺いたい点は、経済不安、信用不安を排除するためには、万一の最悪な事態においても、政府は断固たる処置をとる決意を表明することにある。この意味で、政府は、今後も断じて経済混乱を阻止する決意があるかどうか、ここで明らかにすべきであると思います。この点を伺いまして、過日わが党の春日議員が日銀総裁に質問をした際、日銀の山一証券融資が貸し倒れになった場合の責任はどこにあるのかについて、総裁は答弁を保留されている。これでは断固として経済危機を乗り切る決断が生まれてこないはずではないか。ここで総理から明確に責任と執行権の所在を示してもらいたいと思います。さらに、日銀の特別融資は、経済危機阻止の切り札として、当然に外部からの原因によって倒産せんとする中小企業に対しても適用さるべきであると思うが、政府は見解をこの点で明らかにしてもらいたいと思います。私は、本年八月より向こう一年間を有効期間とする中小企業緊急融資臨時措置法とも称すべき特例法を制定して、中小企業の関連倒産を阻止し、経済不安を一掃すべきであると思うが、総理と大蔵大臣の見解をこの点で明確にしてもらいたいと思います。(拍手)
 次の問題として、今回政府が発表された不況対策構想について伺います。
 第一点として、政府は去る二十七日の閣議で、不況対策の財源として借り入れ金、公債発行に踏み切る方針を明らかにした。この点につき伺いたいと思います。それはまず、政府はこの六月前半までは、不況対策は需給アンバランスの是正のために、生産調整、供給調整に重点を置いてきました。財政支出は一割節約の方針まで打ち出した。それが六月二十三日の閣議で、財政支出の繰り上げ早期支出方針に転じ、さらに二十五日には日銀公定歩合一厘引き下げを行なうなど、不況対策は明らかに需要増加刺激に転換をした。これは政府の経済政策の不明を暴露したものであります。(拍手)それから、さらにあいまいにしていた公債発行論も、明年度発行方針を打ち出した。政府は、まずこのような経済政策の一大転換の理由を明らかにすべきでございます。
 私がここで政府に警告したい点は、需要喚起の美名に隠れて、大企業のみが太り、大企業の無謀な膨張経営の責任を不問に付するようなごまかしは断じて許すべきではないということでございます。(拍手)現在のような設備過剰の生産体制下においては、国の計画と調整の大ワクをはめ、企業活動はこれに協力せしめる必要がある。この意味で新しい産業秩序を確立する重要産業基本法の立法と、産業資金を供給する民間銀行側の大企業向け集中融資を規制する金融制度の抜本的な改正が必要であると思うが、この点に対して明らかにしてもらいたい。(拍手)これらの歯どめのない景気刺激策は次の生産過剰、次の過当競争の種をまくにすぎないのであります。総理の見解を伺いたい。
 今回政府が、政府借り入れ金、公債発行政策をとるに至ったことは、赤字財政方針に踏み切るということであって、政府はこのような重大な決定に臨んでは、赤字財政を日銀引き受けか金融機関よりの借り入れによるか、その方針を明らかにすべきであります。この点きわめて不明確であります。日銀引き受けはインフレのおそれを生じ、金融機関引き受けは民間産業資金を圧迫し、特に中小企業金融を圧迫することはきわめて明らかであります。政府の赤字財政方針は、大企業経営救済を国の財政赤字でまかなおうとするものではないか。政府は経済混乱を招きやすい公債発行を取りやめ、まず現在の全体の予算の組みかえを行ない、行政事務費用の節約、不急事業の繰り延べ、一般会計予算の均衡を維持しつつ、五千億円程度の財源を捻出すべきであると思うが、この点に対して明確にしておいてもらいたいと思います。総理の見解は、これらの点で今日までの御答弁を伺っておってきわめて不明確でありますから、総理と大蔵大臣、この点はきわめて重大でありますから、明らかにしておいていただきたいと思います。
 さらに、政府は全国各地にわたるこのたびの未曾有の冷害、集中豪雨による農作物の甚大な被害に対して、当然補正予算を計上し、全国農民の窮状打開に当たるべきであるにもかかわらず、抜本的な農業災害復旧対策の実施はおろか、当面の緊急な対策すら無視し、政府の責任を回避していることは断じて容認できないところであります。この点に関する政府の責任をあわせて明確にしてもらいたいと思います。
 次に、外交問題について伺います。
 第一に、日韓問題について伺いたい。
 わが党は、これまで日韓交渉を進めることに対して、第一にわが国の国家的利益の擁護と、第二に一衣帯水にある近隣諸国との親善関係を樹立するという二つの見地から、原則的にこれに賛成する態度をとってきたのである。このわが党の基本的な態度は、われわれが特定の階級、特定の国の代弁者ではなく、日本国民全体に責任を負う政党である限り不変のものとしてまいりました。それは日中、日ソとの国交正常化の態度においても一貫して貫いてきておるところであります。われわれの不動のこの姿勢でもこの点はきわめて明確である。しかし、隣国との間の真の友好関係の樹立は、協定の調印という形式的な外交の終了によって達成され、スタートするものでは決してありません。両国の国民が協定の締結を通じて相手国を信頼し、将来ともに苦楽を分かち合う決意を固めてこそ、初めて友好のきずなが固く結ばれるものであると思うからであります。(拍手)遺憾ながら、韓国の現状は必ずしもそのような方向には進んでおりません。特にこれまでの日韓交渉の推移と調印後の事態を見るとき、例の大野・金鍾泌会談の失敗以来今回の拙速調印に至るまで、わが国外交はまさに不手ぎわの連続であったと申さなければなりません。なかんずく、日本国民の血税による無償有償の経済援助が、経済侵略のおそれをまき散らしたり、漁業問題でのわが国の大幅な譲歩にもかかわらず、これが韓国においては屈辱的な取りきめであると非難がされているごときは、相手国の事情があるとはいえ、わが国外交の拙劣さとその姿勢の欠陥を立証するものであるといわなければなりません。私は、日韓協定が今後はたして日韓両国の真の友好のきずなとなるか、あるいはそれが韓国において日本不信の証文になるかいなかは、今後の政府並びに経済交流の推進役であるわが国経営者の姿勢いかんにもあります。韓国国会及び同国国民の協定に対する受け入れ態度いかんにもかかっていると申さなければなりません。この見地から、私は、まず佐藤総理に対して、日韓問題に対する政府の姿勢を根本的に正すよう要求いたします。(拍手)
 その第一は、日韓双方を問わず、いやしくも日韓協定が利権や汚職の種とならぬように厳重に監視をすること、第二は、今後の経済交流面でわが国経営者の軽挙盲動を厳に戒めること、韓国国民に経済支配といった誤解を与えぬように万全の処置を講ずることが大切であります。その第三は、日韓協定が将来北鮮等に対して禍根を残さないようにすること、以上の三点について、佐藤総理はこれを保障し、その責任を全うされるか、この点について総理の確言を得ておきたいと思います。(拍手)
 同時に、私がこの際総理に特にただしておきたい点は、総理の言う責任政治を文字どおり実践するためにも、韓国国民に協定が受け入れられず、韓国国会でこの批准の実現が不可能に終わった場合、政府はいかなる責任をとろうとしておるのか。こうした事態が発生した場合には、当然佐藤内閣はその責任をとって総辞職をすることが政治の至当なりと考えるが、この点に対して総理の信念をお伺いしておきたい。この点あわせて佐藤総理が政治責任をまた明確にされるゆえんでもございます。
 第二の問題は、ベトナムの問題であります。
 佐藤総理は、その施政方針において、ベトナムの問題を平和的に解決することを提唱し、そのためには全面的な努力と協力を惜しまない決意を表明されたが、この決意ほど空虚なものはありません。一方においては、アメリカの北爆を全面的に支持し、かつ日本の厳然たる領土である沖繩を、B52による北爆の基地に使用させながら、何で総理の言う無条件話し合いによる解決を提唱する資格ありやといわなければなりません。(拍手)この政府の態度は、まさに言行不一致の典型的な自己矛盾を暴露しておるといわなければなりません。(拍手)
 日本の官僚は、弱い国民に対しては強い。ところが外国に対してはまた逆に実に弱い。椎名外相は寝言みたいなようなことを言って、ぐずぐずしておるうちに、日本外交は常に後手後手となっておるではありませんか。これ日本国の屈辱といわずして何であろうか、断じて許されることではありません。結論的に言って、佐藤内閣に自主的なベトナム政策なしと私は断ぜさるを得ません。
 すでに、ベトナム紛争は、その長期化とともに、国際戦争の様相を日に日に濃くし、特に米国の北爆強化と米地上軍の直接大量投入は、一方において中共、ソ連、北朝鮮三国の軍事介入を促進し、いわゆるジョンソン大統領の名誉ある解決への糸口をつかまんとする意図とは逆に、戦火を国際的な規模で一そう拡大し、政治的解決をいよいよ困難化していることは、何人もこれを否定することはできません。この事態に直面して、世界各国は事の重大性をきびしく見詰め、紛争の平和的な解決にそれぞれの立場で懸命の努力を傾注しております。すなわち、英国労働党政権のウィルソン首相自身の訪ソ実現の働きかけをはじめ、一連の動きとしてマルロー仏国務相の北京訪問、あるいはカナダやウ・タント国連事務総長の平和への働きかけ、さらには中立国十七ヵ国の即時停戦の呼びかけなど、そのよき事例といわなければなりません。(拍手)
 佐藤総理は、口を開けば、自由を守り、平和に徹すると言いながら、自由と平和を守るための具体的な行動を何一つ起こさず、この重大なことを無責任にも静観しているというのが今日の佐藤内閣の偽らざるところの実態であるといわなければなりません。まさに国際連帯への日本外交は不在なりと断ぜざるを得ません。(拍手)世界の平和に対しては全くの傍観者であるということは、これは断じて許されることではございません。私は、佐藤総理がこの辺でベトナム紛争の平和的解決に対する日本外交の使命をはっきりと自覚し、特にアジアの発展と世界の平和をになう一員として、ことばだけではなく行動を起こすよう切望いたします。佐藤総理にその決意ありやいなや、その率直なる真意をお聞かせ願いたい。(拍手)
 わが党は、さきの党首会談で、佐藤総理に対して、ベトナムの平和解決について、佐藤総理が積極的に行動を起こすよう提唱しました。あなたはそのとき、時期を待っている、タイミングが問題であると言われたのであります。
 以上の見地から、ベトナム紛争の平和的解決のために、まず日本政府としては、米国はもとよりのこと、ソ連、中国、英国、フランス、国連等に積極的に働きかけ、一刻も早く関係アジア諸国も含めた国際会議の開催に努力し、停戦の実現とベトナムの平和確保に献身的な努力を尽くされるべきであると思う。この点を私は強く佐藤総理に進言いたします。それはこれがアメリカによって失われた自由主義陣営の名誉と信頼を回復する当然の行為であると確信するからでございます。(拍手)この点に関する佐藤総理の決意と今後の政府の具体的な行動プランを国民の前に明らかにされるよう要求いたします。(拍手)
 私の一案として、まず佐藤総理が各党党首会談をお開きになって、超党派的な国内政治協力体制を確立して、国論を統一し、この大事業と取り組まれることが権威ある行動の基本的な条件であると思いますが、この点に対して総理の御意見を明確に伺わしてもらいたいと思います。(拍手)
 最後に、私は佐藤内閣の政治姿勢そのものについてお尋ねいたします。かつ、率直に直言をいたしますから、そのつもりでお聞き取りを願いたいと思います。
 第一は、佐藤総理、あなたは国民の中に年収所得二十万円以下の人たちが二割以上もいて、生活に苦しんでいることを御存じですか。これらの人人は、あなたが減税をいかに主張しても、その恩恵には全然浴することもできずに、あなたの物価値上げのみに苦しめられておる人々であります。(拍手)日本の経済力は世界の第五位の実力を築いている。しかるに、国民生活水準は世界の二十二位である。したがって、先ほど八木議員からもいろいろ具体的に話をされたのでありますが、労働者の生活を保障する完全な最低賃金制のいまなおないのは近代国家において日本だけでございます。また、労働のアンバランスを解決もせない、完全雇用の法律のない国も、これまた日本だけでございます。社会保障も完全に統一されたものもなく、このような形ばかりの、名のみが多く、しかもばらばらで常に問題を引き起こしている。また一方、あなたは人間尊重論をおっしゃっています。本年に入って夕張炭鉱をはじめとして三つの炭鉱でガスが爆発して、三百二十九名も殺されています。これは政府が保安対策に十分な協力と監督をしておれば完全に防止ができたのであります。ところが、旧態依然たるところから起こったものでありまして、その他人災による死傷者は次から次にだんだん増加をしている現状を佐藤総理は十分御存じであるはずです。これで、近代的な日本国憲法を守っている、文化国家の政治をやっておるということが言えますか。
 第二に、佐藤総理は陣頭に立って政界疑惑を一掃することであると私は思う。自民党の総裁選挙をめぐる半ば公然たる代議員の買収、吹原事件をめぐる疑惑の数々、東京都をめぐる汚職の事件などについて、国民は二つの選挙を通じて痛烈な批判を浴びせた。これらの疑惑はすべて政府・自民党につながるものであって、総理は、一国の総理、自民党の総裁として、厳粛に反省さるべきであると私は思う。(拍手)岸首相もかつて三悪追放を唱え、これを実現することなく野に去ってしまいました。池田首相も、所得倍増は物価倍増を引き起こし、高度経済成長は「自動車が断崖から落ちてばらばらになったような混乱と不安を引き起こしておる。これが今日のインフレとデフレの混乱状態であるということは――このことばは、これは質問者の私が言うのでなく、新たに大蔵大臣になられた福田さんが、就任早々おっしゃったことばでございます。政治に対する国民の信頼は有言実行である。政界の浄化を断行し、政治の姿勢を正すべきであることは申すまでもありません。この重要な時期が、現在深刻であるということは、あえて私が申し上げるまでもございません。
 佐藤総理は、この政治の重大な問題について、積極的な、具体的な対策をいかようにしてとろうとされるか。私は一々こまかい御答弁は要りません。政府として、それぞれの問題について大局的立場から大方針があるはずでございます。それらの大方針について、私どもが理解し、国民が不安から去り、納得のできるような御答弁を明確にされんことを要求いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 伊藤さんにお答えいたします。
 私は、所信表明で、今回不況の克服、これが三つのうちの一つ、その大きな問題だということを率直に表明いたしました。しかし、それならばなぜ予算あるいは関係法律案を出さなかったか、こういうお話でございますが、私、今日の不況対策をいたします場合に、まず現状におきまして可能なことをとにかくしてみたい、それによって大体の目的を達するのではないか、かように考えたものですから、御指摘のような補正予算を組むとか、あるいは法案を出すとかいうことをいたさなかったのであります。しかし、補正予算等につきましては、次の国会等もございますので、なお実情等をよく見まして、そうしてそれに対応する対策を立てていきたい、かように私は思います。御承知のように、二十七日に作文ができたということでありますが、これは作文ができたということと同時に、政府がこの方針でこれと真剣に取り組むという態度を決定したのでありますので、さように御了承いただきたいと思います。
 第二の問題といたしまして、政府は、混乱を防ぐ、また信用不安を招かないように、断じてこれに対しての対策を立てる、これをやるつもりでございます。山一証券に対しまして日銀が融資をいたしましたことは、これはもうたびたび説明いたしましたので、重ねて詳しくは申しませんが、ただいま申すように、信用不安を招かないように、あるいは混乱をしないように、証券市場の秩序を維持する、こういう立場でとりました処置でありまして、私は、この処置こそ、政府が今日の不況あるいは経済界に対処する真面目でございますから、十分御信頼をいただきたいと思います。
 倒産する中小企業等につきましても、同時にこの種の考え方をすべきではないか。中央銀行においてそれをやるべきではないかという御指摘でありますが、御承知のように、中央銀行の職責をただいま中小企業にまで拡大することの可能なりやいなやということは、十分検討してみなければならないことだと思います。中小企業につきましては、政府関係の金融機関におきまして、その量をふやすとか、あるいは適正な金利にするとか、いわゆる質と量と両方から対策を立ててまいりたいと思います。どこまでも、山一証券は一企業に対する対策でなかったのだということを御了承いただきたいと思います。
 次に公債発行についてでございますが、公債発行をする前に政府がとった処置はいかにも納得がいかない、あるいは右往左往しておるんじゃないか、かような御批判をいただいておるようであります。最初とりましたのが、公共事業費の予算の一割留保というようなことをやった、その後これを解除して、むしろ積極的に予算や財政投融資等の繰り上げ使用を計画したではないか、また、さらにその拡大をはかったではないか、そのどちらがほんとうなんだ、こういうようなお話だと思いますが、これは時期的に見まして、次々に最近にとられたものがただいまの一割の解除であり、同時に拡大でございます。今日の不況自身が非常に深刻でありますから、これに対します基本的な態度を樹立する要がある、こういうことでやや時期がおくれたということ、この点は御非難を受けるようなことになりましたが、しかし、もうすでにこれが対策も今日軌道に乗っておりますから、今後は御迷惑をかけなくて済むのではないだろうか、かように私思います。今回の処置は、これは申すまでもなく、経済界の過度の萎縮に対しまして、需要を喚起する必要がある、かように政府は考えまして、処置をとったのであります。大企業だけがこれで潤うというようなものではもちろんありませんが、中小企業に対しましても、中小企業の持つ特別な地位等に私どもが理解を持ち、特別な処置を購じていくことも抜かってはならないものだ、かように思っております。
 お示しになりました重要産業基本法という構想は、ただいまのお話だけでは、実は内容を正確に把握することができません。私は、もう少しお話の筋を検討いたしまして、皆さま方の衆知を集めて、そうしてりっぱな経済状態を招来するように努力してまいりたいと思います。
 公債発行等についてはこれを取りやめて、行政機構の改革等をやったらどうか、たいへんドラスティックな御提案でございますが、私は、今日の状態から見まして、すでに臨時行政調査会等も答申をいたしております。もちろん、膨張したただいまの行政制度そのものを、これにメスを加えるとか、あるいは適正にするとかいうことは、これは必要なことだと思います。いずれも国民の負担においてこういうような事柄が行なわれるのでありますから、国民の負担を適正に使用する、こういうことに絶えず政府は努力していかなければならないと思います。ただ、今日の不況あるいは不況対策等の一案としてこれをやるということはいかがかと思います。私は、この行政機構の膨大さ、水増しというようなことについては、不況であろうがなかろうが、絶えず政府自身が注意をしていかなければならないものだと思います。大蔵大臣が申しておりますように、すべてが国民の負担なんです。一銭一厘たりともこれをむだづかいしてはならない。もちろんそれが機構の場合におきましては、政府自身が特に厳粛に考えなければならない、かように私は思いますので、御提案の趣旨はたいへんけっこうなことであると思いますが、ただいまの不況対策としてこのことをやれということは、やや事態が違っているんじゃないだろうか。あえて私が議論を申しまして恐縮ですが、さような誤解を受ける筋でもあるのじゃないか、かように思いますので申し上げた次第であります。
 冷害あるいは水害等において補正予算を組むような時期がまいりましたら、これはそういうことも提案して御審議をいただくつもりであります。
 次に、日韓問題についてでございましたが、民主社会党の基本的な態度、私もただいま伺いましてたいへん頭が下がるといいますか、敬意を表する次第であります。(拍手)国家的な利益を擁護して、そうして国交の自然的な、いずれとも仲よくしていく、こういう立場でものごとを見ていくのだ、私はその態度につきましては心から敬意を表する次第であります。また、その意味におきまして、いろいろ御注意がございましたが、その御注意は、いずれももっともなお話でございまして、今後私どもがこの問題、日韓国交を続けていく上におきましても、特に留意していかなければならない根本的な問題だと思います。たとえば利権や汚職等とならないように、あるいは経済人が軽挙盲動して誤解を招かないように、あるいは北鮮に対しましても、将来に禍根を残すような処置をとるなとか、これはいずれももっともなお話でございまして、十分注意してまいるつもりであります。
 ただ、韓国におきまして批准ができなかった場合に内閣は総辞職しろ、このお話はやや私は納得がいきかねるのであります。わが国の内閣は、どこまでも日本国の国内において責任をとっておる、そういうものでありますので、これは十分に考えていきたいものだと、かように思います。
 次はベトナム問題でありますが、ベトナム問題についてもいろいろの御高見を拝聴いたしました。ことに私の話が、これは空虚だという御非難がございましたが、私は、これも納得がいかない。平和に徹するということははたして空虚だろうか。これは一体どういうことだろうか。何か動けという、こういうお話ではないかと思っておりますが、静中動ということばもございます。(拍手)必ずしもじっとしていることばかりが何にもしないんだ、外交不在と、こういうわけのものでもない。ただいま申し上げますように、これはチャンスがつかめない限り動きようがないのではないか、かように思います。ただいまお話がありましたが、今日ベトナムで戦っておる両者、これはいかなる話も実は聞かないようにいまなっておる。これは一体どういうわけか。これは北側におきましても、また米側におきましても、同じように自分たちが武力によって有利なる状態ができるように考えているんじゃないだろうか。だから、このことが間違っておるのだ、そういうことに気がつき、また、不幸な事態について目がさめる、こういうことになれば、われわれの忠言も聞くことになる。ただいまお話しになりますように、やはり国際会議の開催によってこれを解決する、そういう意味の努力を私ども今後とも続けてまいるつもりでございます。ただいまのお話、御進言につきましては、謙虚に承っておくつもりでございます。
 次に、佐藤内閣の責任についてのお話でございました。先ほど八木君への答弁にも申したのでございますが、私どもは底辺に住む人たちについてもっと留意しなければならない、これも確かにそのとおりであります。私自身が人間尊重ということを申し始めましたのも、この底辺に住む人たち、あるいは人災、あるいは公害等に苦しむこれらの救いのない人たち、こういう人たちに思いをいたしたときに、本来の政治のあり方が人間尊重でなければならないのじゃないか、われわれの経済活動も、それをねらってこそ初めて意義があるのじゃないか、かように考えたのでありまして、こういう意味におきまして一そう努力してまいるつもりであります。この考え方からは、やはり社会保障制度の充実であり、同時に文化国家の建設だ、かように思います。この観点に立ちまして、政治について、どこまでも清潔な政治を行なうということを国民にも公約してまいりました。
 ただ私は、伊藤さんが、吹原事件は自民党につながるものだ、かように言われましたことは、やや誤解を受けるように思います。吹原事件というような世の批判を受けておる事態が起こりましたこと、まことに遺憾に思います。ただいまこれは司直の手によりまして追及もされ、いずれは明らかになることだろうと思いますが、自民党につながるものだということだけは、しばらく保留さしていただきたい、かように思います。(拍手)
 以上、お尋ねに対しまして私の率直な意見を申し述べましたが、私は今日の事態は容易ではない、冒頭におきまして、私自身が所信表明をいたしましたように、今日は何といっても清潔な政治を国民が要望し、同時にまた現在の不況を克服すること、第三にアジアの平和、これを回復することだ、かように考えておりますので、一そうの御支援、御鞭撻のほどをお願いいたします。ありがとうございました。(拍手)
  〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
○国務大臣(福田赳夫君) せっかくのお呼び出しなんですが、すべてを総理大臣がお答えくださいましたので、私がつけ加えることはないように思うのであります。
 ただ一点だけ申し上げさしていただきたいのですが、どうも、今回の不況対策が作文であって実行が伴わないのじゃないかという疑いを持たれておられるようでありますが、従来、間々そういうことがあったかと思うのであります。(拍手)しかし、今回の措置につきましては、これはもう各省とも閣僚が陣頭に立ちまして、その実行を指導いたしておるのであります。予算的措置を講じないというような話でございますが、二千百億円の財政投融資――財政投融資が最も経済界と密着をいたしておるのであります、私どもはこの計画の実行にあたりまして、土地の買収のような経済的効果のあがらないものには使用しないという方針であります。すべて物資、品物につながるという方面にこれを使用する。したがいまして、その経済的効果、効率というものも非常に高かろうと思うのであります。これらがこの秋口に集中するのでございまして、私は、この沈滞したといわれる経済界に大きく実弾として飛び込む効果を持つであろう、景気はこれからつま先上がりに回復するであろうということを確信しておるということを申し上げさしていただきたいのであります。(拍手)
  〔国務大臣椎名悦三郎君登壇〕
○国務大臣(椎名悦三郎君) 日韓問題あるいはベトナム問題等につきまして、総理から明確にお答え申し上げておりますので、私は何事もつけ加える必要はないと思うのであります。とにかく戦いの両当事者が容易に引かない。引かぬ理由はおのおの異なっておるのでありまして、その理由が是であるか非であるかということについては、総理は、この問題にはしばらく触れない、ただ、とにかく平静に帰着させるためには話し合いに入るということが必要である。こう言っておるのでございまして、これはいささか説明を要する点であるかと思うのでありますが、大体よく御存じだろうと思うので、この際は私は申し上げないことにいたします。(拍手)
○議長(船田中君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
 国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
○議長(船田中君) 議院運営委員会の決定により、内閣提出、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨の説明を求めます。大蔵大臣福田赳夫君。
  〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
○国務大臣(福田赳夫君) 国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。
 昭和二十七年八月、わが国が国際通貨基金及び国際復興開発銀行に加盟して以来、この二つの国際機関は、わが国経済の発展に多大の寄与をしてまいりましたが、ひとりわが国に対してのみならず、世界経済の復興及び発展のために果たしてきた役割りは、まことに大きなものがあります。この間、これら両機関は、資金需要の拡大等に伴い、昭和三十四年に増資を行ない、わが国も追加出資に応じましたが、その結果、現在では、国際通貨基金の割り当て額は約百六十一億ドル、国際復興開発銀行の払い込み資本額は約二百十六億ドルとなっており、うち、わが国の割り当て額及び出資額は、それぞれ五億ドル及び六億六千六百万ドルとなっておるのであります。
 さらに今回、世界経済及び国際貿易の発展と、これに伴う国際流動性に対する需要の増大とに対処するため、昨秋東京で開催されました第十九次総会において、全加盟国の総意によって、増資の方針が打ち出され、その後両機関はそれぞれの理事会において、割り当て額または出資額の増額に関する決議の草案を作成いたしました。この草案に対し、加盟国総務の投票が行なわれ、その結果、国際通貨基金については本年三月三十一日に割り当て額増額の決議が、また、国際復興開発銀行については本年四月三十日に出資額増額の決議が成立したのであります。この決議によりますと、国際通貨基金においては、全加盟国について、一律二五%の割り当て額増額を行なうほか、日本、ドイツ連邦共和国、カナダなど十六ヵ国については、特別の増額を認めることとなり、国際復興開発銀行においては、これら十六ヵ国について特別の増資を認めることとなったものであります。
 この結果、わが国といたしましては、国際通貨基金について二億二千五百万ドル、邦貨換算八百十億円、国際復興開発銀行については一億六百六十万ドル、邦貨換算三百八十三億七千六百万円の追加出資を認められることになったのであります。これらの追加出資を行ないました場合、わが国の国際通貨基金の割り当て額は七億二千五百万ドル、国際復興開発銀行への出資額は七億七千二百六十万ドルとなるのであります。この追加出資に応ずることは、国際流動性の強化等にわが国として積極的に協力することになるとともに、わが国自身の外貨準備をも補強できることになりますので、これに応ずることといたしたいのであります。
 したがいまして、今回の追加出資に応ずるため、この法律案により、追加出資についての規定を設けますとともに、これに伴い、両機関の定めるところにより、金及び現金で払い込みを必要とされる分についての財源に充てるため、日本銀行所有の金地金等のうち、大蔵大臣の指定するものについて、日本銀行に再評価させ、これによって生ずる再評価差益約五十三億七千九百万円を全額国庫に納付させるとともに、外国為替資金の一部百六十一億五千六百万円を限り、一般会計に繰り入れることができることといたした次第であります。
 以上、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨につきまして御説明申し上げた次第であります。(拍手)
     ――――◇―――――
 国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
○議長(船田中君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。武藤山治君。
  〔武藤山治君登壇〕
○武藤山治君 私は、日本社会党を代表して、ただいま趣旨説明のありました国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案に関連して質疑をいたします。
 まず最初に、総理大臣に五点ばかりお尋ねをいたします。
 国際通貨基金、すなわちIMFは、第二次大戦後、アメリカのイニシアのもとに設立され、一九五九年二月に五〇%の増資を行ない、国際流動性の強化策をとりました。しかし、一九五八年を契機にして、アメリカは年間三十億ドルをこえる国際収支の大幅赤字を記録し、アメリカの世界経済における地位は相対的に低下したのであります。その結果、先進国でのドル不足は解消し、むしろ逆に、外国保有のドル残高の急増、つまりドル過剰なる事態を招くようになったのであります。このドル過剰はヨーロッパ各国の金選好を呼び起こし、世界通貨としての金の優位性からして、ドルから金への転換を激化し、アメリカからの大量の金流出を引き起こすに至ったのであります。豊富を誇ったアメリカの金保有高は急激に減少し、一九六三年には百五十六億ドル、本年五月には百四十三億六千万ドルに落ち込んだのであります。しかも、この金保有のうち自由に兌換できる額はわずか二十八億ドル、アメリカの短期対外債務のうち、いつでも金に兌換しなければならない額は七十三億ドルもあるというありさまであります。これでは、すべてのドルが金に兌換できるはずがなく、国際通貨としてのドルの信用が保証されていない現状だといわれるのは当然であります。このような金兌換の事実上の空文化は、さらにドルの国際通貨としての信用を失墜させ、一国の通貨、ドルをもって国際通貨となす現体制について最近批判が強くなってきたのも、ゆえなしとしないのであります。トリフィン、シュバイツァーなどの権威者も、ついにIMFの現体制の再検討を口にするようになったではありませんか。アメリカは、ドル危機を乗り切ろうとして、ドル防衛に名をかりた利子平衡税、自主輸入制限、資本流出抑制策などを強行し、ドルの流動性を縮めるような政策を推進し、他面、流動性強化のため、今回のIMF増資を国際協調の美名のもとに各国に強要しているのであります。まことに虫のいい対策といわざるを得ません。徹底したアメリカのナショナルインタレストの追求の姿であります。台湾に気がねし、吉田書簡で日中貿易をふいにする政府の態度と対照的に私の頭の中に浮かんでくる事柄であります。(拍手)ドル危機下において必要なのは、ドルではなく、ドル以外の通貨、特に西欧の通貨がアメリカは必要なのであります。しかし、そのアメリカの願望は、IMFに期待しても達せられないことでありましょう。
 そこで、総理に伺いたいのでありますが、はたして今回の総額四十八億ドルの増資策で今日のドル危機が解消されるのか、総理の認識のほどを明確に伺いたいのであります。
 第二に、ドル危機の必然の結果として、IMF機構の根本的改革、検討が叫ばれております。第二次大戦後二十年を経過した現在、社会主義圏の強大化、交易の拡大が非常に顕著になったのであります。したがって、単に資本主義国のみならず、すべての国が加盟できる体制を創造すべきではないかと思うのであります。総理大臣の見解はいかがでありましょう。トリフィンの言うごとく、世界中央銀行案もその一つだと思いますが、この辺で日本政府として真剣に国際通貨の問題について討議する機関を持つべきであると思うが、総理大臣の御所見はいかがでありましょう。
 第三に、現在、金は一オンス三十五ドルときめられております。金とドルの等価性と等価交換性をはたして今日のアメリカが維持できるかどうかというところに大きな問題があります。ヨーロッパ諸国では、すでに維持できる力がアメリカにはないと見て、金の選好に走っているようであります。アメリカを信ずる日本政府のキャップである佐藤総理は、アメリカの今日の力は一オンス三十五ドルを当分維持できると見通しておられるのかどうか、総理の見解を伺いたいのであります。(拍手)
 第四に、日本銀行の金保有は現在二百六十三トン、平価換算わずか三億四百万ドルにしかすぎません。西ドイツは三十九億五千万ドル、フランスは三十三億九千万ドル、イタリアは二十一億四千万ドル、オランダは十六億ドル、ベルギーですら十三億七千万ドルの金を保有しているのであります。日本の三億四百万ドルの金保有は世界第十位であり、まことに少ないといわなければなりません。日本がアメリカを信頼し、いかにアメリカのドルに依存しているかが、この数字をもってうかがい知れるのであります。しかし、現在でも金は究極的な対外資産並びに平価の共通の尺度として最も不動のものであります。この最も不動な価値尺度である金の保有を、金本位ならずとも、日本国としてもっともっと増大すべきであると私は考えるのであります。長い将来の国際経済、国際機構の問題をも考慮に入れて、総理大臣の御所見を伺っておきたいと思います。
 第五に、総理は、所信表明演説の中で、アジア開発銀行設立に熱意を非常に示しております。なぜでありましょう。現在IMFがあります。復興開発銀行もある。第二世界銀行もできております。それなのに、新たにアジア開発銀行を設立する理由は一体何か。現体制は先進国中心の運営でアジアの後進国開発には不十分なのか、手が回らないのか、商業ベースに乗らないのでアジアにメリットがないのか、現体制と違うアジア開発銀行設立の積極的意義と青写真を発表願いたいと思います。
 次に、大蔵大臣にお尋ねいたします。
 三月末のIMF総務会において、日本が新たに引き受けることになった増資額は、世銀を含め千百九十三億円と決定されました。そのうち、本年払い込む額は二百十四億七千八百万円でありますが、三月に決定されながら、なぜ六月まで続いた通常国会に法案提出をしなかったのか。財源が見つからなかったので、今日、期限が到来する目前になって法案の提出をしたのか。
 現在の財政実態は、危機的と表現してもオーバーではないのであります。
 昨年度の税収入は、通常計算によるならば、八百億円の歳入欠陥となり、本年度は、さらに不況を反映して、二千五百億円ないし三千億円に近い税収見積もりの違いとなるでありましょう。この危機的財政の状態に落ち込んだのは、税務職員の責任ではありません。主税局の責任ではありません。政府の経済見通しが誤ったからであります。非現実的、非科学的四十年度経済見通しを無定見にも確定した政府閣僚の連帯責任といわなければなりません。(拍手)今日、需要は山積しております。食管会計への繰り入れ、公務員給与改定、災害復旧、不況打開の有効需要拡大等々。しかるに、これらの歳出需要を満足させることができないで、政府あれど政治なしの観が、今日の日本の政治の姿であります。(拍手)
 今回のIMF出資財源について、日銀の金の再評価差額、さらにインベントリーファイナンスの取りくずしをするに至りました。外為資金は、年度当初、特別会計予算を組んで、健全均衡原則のもとに国会にも資料を提出されているのであります。それを年度途中で変更し、インベントリーをもとの一般会計に取り戻すという操作は、ほめられたものではありません。今回の措置は、健全均衡の特会を乱すものではないか、大蔵大臣の御所見を伺いたい。
 第二に、外為資金が今回の措置で円資金に不足を生ずれば一体どうするのか。外為証券を発行して、日本銀行借り入れをすることになるでありましょう。結果は、日銀券の増発に連なる。このことはインフレ要因をつくることになる。かかる措置は、外為資金の運用に障害を生むと思うが、大蔵大臣の見解はいかがでありますか。
 第三に、インベントリーを取りくずして出資に振り向けたのは、今回が初めてであります。かつてインベントリーを取りくずしたことは一度ございます。インドネシアに対する債権が取れないというので、これを棒引きするために、六百三十七億円の取りくずしをしたことはあります。しかしながら、前回の一九五九年のIMF増資の際にも、一般会計からの支出をいたしておるのであります。しかるに、今回、インベントリーを取りくずして出資の財源に充てるということは、一体どういう理由からかかる財源を捻出したのか、大蔵大臣の見解を承りたいと思います。(拍手)
 さらに大蔵大臣にお尋ねいたしますが、現在、日本銀行の金保有は二百六十三トン、三億四百万ドルでありますが、政府が戦時中日銀から借りて中国、タイに持ち込んで貨幣発行の準備にしたといわれる四十四トンの金については、政府は、日銀に返済する義務があるのかないのか。返済する義務があるとするならば、どういう方法でこの四十四トンの金を返そうと考えているか。
 第二に、IMFの増資は、その二五%を金で払い込まなければならないことになっている。今回日本はアメリカから金を買い入れて増資をするということでありますが、日本と同様、金保有の少ない国々は、今後の増資に非常に困るのではないか。今回の増資をめぐって、金保有の少ない国はどういう資金繰りをしておるか、大蔵大臣の知れる範囲において報告を願いたいと思います。さらに、二五%を金で国際通貨基金に払い込むという意味は一体何であるか。金は依然として国際通貨としての不動のものだということなのか、それとも、ほかに特別の意味があるのか。もし金が国際通貨として一番不動のものであるという認識ならば、わが国は金保有にもっと関心を寄するべきだと考えるが、大蔵大臣の所見はいかがでありましょう。
 次に、企画庁長官にお尋ねいたします。
 外貨準備についてであります。本年七月末の外貨準備高は、IMFのゴールドトランシュを含め十九億四千万ドルであり、ゴールドトランシュを除くと十七億ドルであります。昨年同期より五千万ドル減少したのであります。もちろん、ゴールドトランシュが昨年より本年は六千万ドルふえておりますから、昨年同期より一千万ドルふえた計算になると説明するでありましょう。とにかく、昨年と同水準であります。輸出の好調を宣伝強調している政府でありますが、外貨準備高はさっぱり高まらない。しかも、これからの環境、条件の推移はきびしいものがある。一、そろそろ在庫補充が活発になるであろうから、輸入は増加の一途をたどると思われる。二、現在の輸出の伸び率は前年比三〇%をこえております。けっこうなことであります。が、しかし、世界貿易の伸び率は七%である点にかんがみまして、現状の三〇%の輸出の伸び率は、一体いつまで続くものであるか、企画庁長官の見通しのほどを伺いたい。
 さらに、アメリカの資本流出抑制策やわが国の金利引き下げで、金利差縮小による外資の逃避など顕著であります。現在まで、外資の借りられるものは何でも借りて、国際収支の均衡をという方針で、世界第二位の借金国になっているのが日本であります。いつまで高水準に外資流入が望めるか、まさに転機に遭遇しているといわなければなりません。このような環境のもとで、現在の準備高で安心できるのか。不況克服を第一命題としている裏に、国際収支の逆調があらわれるとなれば、政府の安定成長はまさに絵にかいたもちとなるのであります。企画庁長官、大蔵大臣の認識と見通しを伺いたいと思います。(拍手)
 アメリカは、世界戦略の一環として、低開発国援助、反共軍事強化のための軍事援助を続けてきました。その結果、対外債務は二百億ドルに達し、ドルの危機といわれるほどに至りました。これまでアメリカがやらなければ、新興国、低開発国をアメリカ陣営に結びつけておけないほど、今日の東側の勢力が大きくなった。ついにインドネシアもアメリカから離れてしまったようであります。とにかく、アメリカの負担は巨額であるから、自由陣営の国が海外投資、援助を分担せよというのがアメリカの言い分のようであります。わが国も、国民所得の一%、すなわち、現在のベースで言うならば約二千億円前後の資金を海外協力に支出するということを日米合同委員会で約束してきたようであります。容易ならぬ負担であります。本気でやる気なのか、どこへ、どんな方法でやる気なのか。わが国では、現在、海外経済協力の機構として協力基金があります。しかし、資本金百六十九億円、今日まで投資した額は百十九億三千万円にすぎない。国民所得の一%の一割にならない。何年後ぐらいの期間に現状から国民所得の一%の大台に乗せる気なのか、この資金は、世銀を通ずるのか、新たなアジア開発銀行に出すのか、ひものつかない、相手がいやがらない方法で実行する配慮はしているのか、政府の青写真のほどを発表願いたい。もし青写真がないならば、外務大臣、企画庁長官のそれぞれのビジョンについて発表願いたいと思います。
 最後に、外務大臣に伺います。
 椎名さんは、最近フランスに渡り、ドゴール大統領と会談してきたようであります。御承知のように、フランスは、中共を承認し、アメリカのドル危機に積極的に協力を示さず、IMF増資についてもアメリカの五〇%案に反対し、二五%で妥協し、国際通貨制度についても改革案を提唱し、金選好を世界に宣言した。かかるドゴールの自主性、追従外交からの脱却をどう評価しているのか。フランスのナショナルインタレスト追求に対して、日本国民の代表である外務大臣は、ドゴールと会って、外交のあり方について何を感じ取ったか。(拍手)フランスの外交政策は自由陣営の足並みを乱して困るとでも感じておりますか。率直に外務大臣の御意見を伺いたいと思います。
 以上をもって私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 従来の米国国際収支の赤字は、主として、米国が巨額の海外民間投資を行ない、また、対外援助を負担していることが原因となっております。基本的に米国経済ないしドルの弱体化を意味するものではありません。しかも、最近とられた米国の国際収支改善対策は次第に効を奏し始めており、本来第二・四半期には黒字に転ずるなど、ドルに対する信任は堅調でありますので、いわゆるドル不安はないと考えます。しかしながら、世界経済及び貿易の拡大傾向から見て、新産金だけで将来の新たな流動性、需要をすべて満たすことはできないこと、及び、すでに述べたように、米国の国際収支は改善されつつあるので、これまでのようにドル保有の増大によって国際流動性が引き続き増大することは期待し得ないことなどから、現在、国際流動性問題など、新準備資産の創設問題等については、わが国の加盟しているIMF及び十ヵ国蔵相会議等を中心として真剣な検討が進められており、わが国においてもこれが国際的研究に積極的に参加しているものであります。
 次に、社会主義国を含めての問題でございますが、現在行なわれている国際流動性問題の検討は、自由貿易及び多角決済を理念とするIMFを中心とする現行国際通貨制度を前提にしたものであり、IMFに加盟していない共産圏諸国などについては、このような前提を受け入れない限り、国際流動性の検討にこれら諸国を含めることは適当でないと考えます。
 国際流動性問題の検討に際し世界中央銀行という構想も出てはいるが、このような超国家的機関は現実の問題としては実現性に乏しく、また、政府としてもこれを取り上げて検討する段階にはありません。
 次に、ドルは現行国際通貨制度の基本であり、米国もかたい決意をもってドル価値の維持に当たっているし、現に、最近は米政の国際収支対策もその効果をあらわしつつあるので、ドルについて現在長期的な不安を持つ必要はないものと考えております。したがって、政府としては、いま直ちに金を買い急ぐつもりはありませんが、長い目で見て、ある程度金保有をふやしていくことは望ましいと考えております。
 金とドルの等価交換性について説明をいたします。
 IMF及び十ヵ国蔵相会議等において現在論議されている国際通貨制度強化の問題も、現行の金価格を基礎とし、ドル価値に変化がないということを大きな前提としている上に、米国もかたい決意をもって現行ドル価値の維持に当たることを再三表明しており、現に米国の国際収支対策も効果をあらわしてきているので、金とドルの等価交換性は維持していけるものと考えております。
 最後に、アジア開発銀行の構想につきましてお話をいたします。
 アジア開銀につきましては、目下、九ヵ国からなっておりますいわゆるエカフェ専門家諮問委員会が中心となりまして具体的案を検討中でございます。まだ最終的な結論を得たとは言いかねるのでありますが、ただいままでのところ、大体におきまして、授権資本は十億ドル、そうして、これを域内で六、域外で四、こういう割合で応募に付するつもりであります。各国の出資額は、その半分を払い込み資本とし、残額を請求払い資本とし、払い込み資本は、金または交換可能通貨及び自国通貨各半々で、五回に分けて毎年二〇%ずつ五年分割で払い込むのでございます。エカフェの域内外を問わず、アジアの開発に関心を有する国は銀行に加盟し得るということにいたしております。これらのラインで合意を見つつあるのでございますが、まだおもな事項としてきまっておらないのは、投票権をいかにするかということ、あるいは本店の所在地をいかにするか、その他人事等でございます。(拍手)
  〔国務大臣椎名悦三郎君登壇〕
○国務大臣(椎名悦三郎君) 過般、訪仏いたしまして、ドゴール大統領と会談いたしました。日本の最近における国際的地位を高く評価し、日仏交歓の一そうの強化を望んでおったようでございました。
 米国の国際金融政策に関する最近のフランスの行動は、ほぼ、いま御指摘のとおりでございますが、これらについて特別の見解を交換いたしませんでした。
 全般的には米国との同盟をフランス側は尊重しておりまして、その旨をたびたびドゴール大統領も声明しておるとおりであります。しかし、一面におきまして、欧州には欧州独自の見方がある。したがって、これに立脚する政策の必要性についても主張しておるのでありまして、したがって、ドゴール・フランス大統領の見解なり、あるいは政策なりが常にアメリカと一致しているということは、これはもちろん言えないわけでございます。だからといって、フランスはアメリカに反対し、あるいはアメリカの政策にたてつくというような現状ではない、かように私は了解しておる次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
○国務大臣(福田赳夫君) 今回の法律案並びに予算案をなぜ通常国会に出さなかったかというお尋ねでございまするが、通常国会はいろいろと議案が終末期にふくそうしております関係もあり、また、参議院議員選挙のあとでは当然国会が開かれて、お願いをする機会があろう、こういう想定のもとに、さような措置をとったわけであります。
 次に、インベントリーファイナンスを財源とした理由いかんというお話でございまするが、ただいま一般会計から外国為替資金特別会計に繰り入れた額が千二百五十億円あったのであります。そのうち六百三十七億円をインドネシアに対する債権放棄に使用いたしました結果、残高は、ただいま六百十三億円であります。今度のIMF出資、また世界銀行への出資につきましては、本来ならば通常の財源をと考えらるべきところでございますが、景気の状況等から、通常財源はふえるどころか減るような形勢でございますので、臨時の財源を模索しなければならない。さような観点から考えまするときに、このインベントリーの一部を取りくずすということは、IMF出資というものと一番密着しておる、隣合わせのものであるという見地から、適当であろうと考えた次第であります。
 これを取りくずしを行なった場合に、それじゃ外国為替資金特別会計の健全均衡原則がくずれるのじゃないか、こういうお話でございますが、この程度の額の取りくずしをいたしましたところでは、約三億円の減収になるわけでありまして、本年度におきましては、十三億円の益金を見込み得る状態でありますことから考えますると、三億円の減収ではございますけれども、健全均衡原則を乱すというほどのこともなかろうか、かように考えております。
 また、信用の膨張になるが、これはインフレにつながるのではないかというようなお話でございまするが、これは使途がIMFへの出資である、何というか、国内的に見ますれば、かん詰めになるような性格のものでありまするので、景気に対しましては中立的なものである、かように見ております。
 さらに、お尋ねは、政府は戦時中日本銀行から借りた金が四十四トンほどあるはずだ、それをなぜ返さぬかというお話であります。借りたものがあるということは承知しております。また、借りたものでありまするから、これを返さなければならぬことも、これもそう考えております。しかしながら、現在の金の保有状況から言いまして、まだ全額これを返し得る状態ではございません。今後なるべくすみやかにこれを返すように努力をしてまいりたい、かように存じております。
 また、IMFの増資の二五%を金で出すことの意味はどういうことかというお話でございまするが、これは、IMFに信用を与える、こういう趣旨から出ておるものと考えるのであります。信用というか、信頼であります。信頼を与えるという趣旨からと思うのであります。
 また、それじゃ金を出すことのできない国があるじゃないかというようなお尋ねのようでございましたが、これは、そういうIMFへの出資に充てるというような目的をもって金を取得するという国があります場合におきましては、国際間においてこれに便宜を与える傾向のあることを御了承願いたいのであります。
 以上、お答え申し上げました。(拍手)
  〔国務大臣藤山愛一郎君登壇〕
○国務大臣(藤山愛一郎君) 私に対する御質問は、外貨準備が今後あの程度でいいのか、また、世界貿易における日本の貿易の伸び率が引き続き三〇%を維持するだろうかというような御質問だったと思います。
 今日、世界経済というものは、一応の非常な成長を見ましたので、ある程度停滞期に入っていると申しても差しつかえないのではないかと思うので、ヨーロッパでも、伸びるだけ伸びた国は、それぞれ経済活動がある程度平常化してきている。また、アメリカも四年半ほど景気が続いておるわけであります。これらの景気の中で、われわれは貿易を伸ばしていき、同時に、日本の国内産業が伸びてきて、体質の改善ができましたから、貿易が伸びてきたわけです。したがって、今日までのような三〇%の伸びが引き続き続くかどうかということについては若干の疑問はございますけれども、しかし、それでは減っていくだろうかということは、われわれ想像しても想像できないのでございまして、日本のこれからの産業の合理化、あるいは近代化等によりまして、今後輸出の数字がいっときに縮小するとは考えられません。同時に、輸入が、こういう景気を刺激してくればふえてくるだろうというお話でございましたけれども、むろん、景気が旺盛になれば、あの程度輸入がふえてくることは当然でございますけれども、しかし、貿易の自由化等が行なわれてまいりまして、必ずしも非常な大きな量をストックするというような必要もなくなってき、当座に買いつないでいくということもできるのでございますから、貿易バランスを非常に大きくくずすようなことは、その面からはあまり考えられないのではないかということを考えておるのでございますが、しかし、何と申しましても、世界経済が、先ほど申しましたように、一応の飽満期に入っておりますものですから、われわれも細心の注意をして、そういう面に対応して、引き続き貿易を十分黒字に維持していくということに注意を要するかと思います。なお、そういう意味から申しまして、貿易外であります経常収支の観光収入でございますとか、あるいはその他の船舶収入であるとかいうような種類のものも、われわれは国際収支の改善の上においては十分考えてまいらなければならぬと思います。同時に、外資流入につきましては、必要な外資を入れまして、そして今後日本の経済に活力を与えていくことは当然でございますけれども、しかし、過去におけるように――アメリカにおきましても、外資の問題については、ドル防衛の立場から、御承知のような状況でございますし、ヨーロッパも、日本が今日のような経済の状況でございますれば、多きを期待し得ないような状況かと当面は思われます。したがいまして、大きく外資にたよってまいりまして、そして、それによって今日の外貨バランスを穴埋めしていく、つじつまを合わせていくということには、よほどの注意を要する必要があろう、こう考えておるのでございます。
 次に、海外経済協力基金の点についての御質問でございますが、三十六年に出発して以来基金の活動が活発でなかったじゃないかということでございますが、逐次活発になってまいりまして、先ほどもお話がございましたように、本年あたりは三十二件の貸し付け、出資四件というふうになってまいっておりますので、日本といたしましては、これをできるだけ活用してまいりたいと思うのでございます。むろん、アジア開発銀行と海外経済協力基金とは全く違う性格のものであることは申すまでもないので、海外経済協力基金は、日本独自の立場でもって、日本自身が低開発国に対する援助の方針をきめてやってまいるもので、アジア開発銀行は、御承知のとおり、エカフェが中心になってやる開発関係の銀行でございまして、日本としてもこれに協力する必要がございますから、資本金十億のうち、域内で持ちます六億の三分の一を持って、そうして、エカフェ関係諸国とともにこれが運営をしていく。そうして、これは、域外の諸国等からも出資を願って、そうしてやってまいるわけでございます。むろん、まだアジア開発銀行は構想でございまして、これからどういう内容でどういうふうに運営するかということは、エカフェ自身が、今日までの経過から見てもいろいろな点にありますが、たとえば、アジアの縦貫道路と申しますか、あるいはメコン川流域とか、多国間のこうした問題を取り上げるということも、一つの特色ではなかろうかと思います。また、同時に、われわれとしては、海外経済協力基金のほうとしては、日本独自の立場から、アジアにおける中小企業あるいは農業の開発というようなものに主体を置いて、そうして、できるだけやっていくのが適当だと思うのでございまして、これとアジア開発銀行と競合することはないと存じております。(拍手)
○議長(船田中君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
 中村運輸大臣の大阪港内における遊覧船衝突事件等についての発言
○議長(船田中君) 運輸大臣から、大阪港内における遊覧船衝突事件等について発言を求められております。これを許します。運輸大臣中村寅太君。
  〔国務大臣中村寅太君登壇〕
○国務大臣(中村寅太君) 大阪港内における遊覧船衝突事件等について御報告申し上げます。
 八月一日、大阪港内において、大阪通船所属の「やそしま」が港内遊覧を終えまして、天保山桟橋に向け航行中、日立造船所属の引き船芦屋丸が「やそしま」の左舷後部に追突いたしまして、「やそしま」は瞬時に横転沈没いたしたのであります。このため、海中に投げ出された乗客五十五名、乗り組み員四名のうち、芦屋丸及び付近船舶、民間人等の協力により四十二名が救助されましたが、行くえ不明の十七名は、海上保安庁巡視艇、警察船等による捜索の結果、全員遺体となって収容され、救助後病院で死亡された方々を含めまして二十名のとうとい人命が失われたのであります。
 被災死亡された方々には衷心より哀悼の意を表する次第であります。
 なお、七月三十一日には、国鉄品川駅構内における列車衝突事故、また、八月一日には、長野県おんたけ交通バスの転落事故によりまして、多数の死傷者を生じております。このような人命事故の頻発はまことに遺憾のきわみであります。
 交通機関の第一の使命が、人命安全の尊重にあることは申すまでもなく、このことはあらゆる機会をとらえて関係者に趣旨の徹底をはかっているところでありますが、今後再びこのような事故が生じないよう、事故原因を徹底的に究明するとともに、制度、監督等に再検討を加える等万全を期する所存であります。
 なお、今回の事故における犠牲者の方々につきましては、政府としましても、補償等善後措置について、関係事業者に対し十分な配慮を払うよう指導に万全を期する所存でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
 大阪港内における遊覧船衝突事件等についての発言に対する質疑
○議長(船田中君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。これを許します。肥田次郎君。
  〔肥田次郎君登壇〕
○肥田次郎君 ただいま運輸大臣より報告のあった大阪港安治川口における遊覧船「やそしま丸」が引き船芦屋丸に追突されて沈没し、多数のとうとい人命が失われた事件は、幼い学童の犠牲者が多かっただけに、ひとしお悲惨な事件として胸を打たれるのであります。衝突されて沈没した突発事故により死亡された幼い九名を含む二十名の霊に対し、ここに、本院に列席される議員諸君とともども頭を深くたれて、心から哀悼の意を表する次第であります。(拍手)
 さて、この多数の死者を出した沈没事故の原因が芦屋丸側の過失によることは明らかでありますが、同時に、港湾航行対策について、政府の措置が無策、怠慢であったがゆえに、こうした海難事件が絶えないのでありまして、私は、日本社会党を代表して、その責任の所在を明らかにするとともに、今後予想される海難事故の絶滅を期するたてまえから、政府の考えを確かめたいと思うのであります。(拍手)
 政府資料によりますと、港内に発生した事故件数の最近の数字では、三十五年が千二十三件、三十六年には千百十三件、三十七年には若干減って九百八十八件、しかし、再び三十八年には千六十九件、三十九年には千二十一件となっております。しかも、その海難事故の原因が、不可抗力とするものはわずかに五%以下というきわめて低い比率でありまして、大部分は注意と対策によって防止可能なりと考えられるのであります。
 このたびの沈没事故もその過失の代表的なものでありまして、十八トンの小型遊覧船が百五十トンの近代化された引き船に衝突されて沈没をしておるのであります。しかも沈没個所は岸壁にはなはだ近い位置にあり、近くの他船からの救助を受けながら、なお二十名の水死者を出したことは、残念なだけでは済まされない問題であろうと考えるのであります。(拍手)
 そこで、運輸大臣に承りたいことは、死亡事故は往々にして補償問題であとに忌まわしい問題を残すのであります。もちろん、補償の額によってとうとい人命の代替はできません。しかし、このたびの事故については、当然遊覧船会社側と加害者であるところの芦屋丸が所属する日立造船側との間で、賠償についての折衝が行なわれることでありましょう。賠償の金額について両者間の取りきめが難航した場合でも、遺族に対しての補償責任は、言うまでもなく大阪通船運輸会社が持たなければなりません。したがいまして、相手方との交渉経過を口実に、遺族補償を遅滞さすことのないよう指導すべきであると思うのでありますが、運輸大臣の考え方を明らかにしてもらいたいと思うのであります。(拍手)
 次に、沈没した「やそしま丸」は乗客定員が百十人とあります。船の乗員は日坂船長、それからガイドを含めてたった四名、こういうことであります。板子一枚下は地獄の遊覧船に一朝事が起こった場合に、このガイドを含めて四名の乗船員で一体何ができるのであろうか、とうてい船客の安全を確保することはできないと思うのであります。さらに、社会見学とはいいながら、船舶航行のふくそうする港湾内でかかる小型船の観光遊覧営業はたいへんな危険を伴うものと思うのでありますが、遊覧船の営業に対し、地域と船型の規制を実施する考え方はないか、お伺い申したいのであります。(拍手)
 今日、海難事故は港湾内に多発しておることは、政府統計に見られるとおりであります。しかも陸上にあっては交通戦争といわれる様相が、すでに大都市の海の玄関である港湾にも顕著なのであります。海上事故の特異性は、すでに述べましたごとく、板子一枚下は地獄でありますから、事故とともに乗船者の大多数の生命が奪い去られる悲惨さは陸上の比ではないのでありまして、したがって、港湾航行対策は何をおいても取り組まなければならない、のっぴきならぬ時期に至っておるものと考えるのであります。もちろん、港湾航行が、今日急に問題化したものではありません。早くから今日の危機について提起されていたのでありますが、歴代政府の無為怠慢、こうしたところから放置されたままに今日に至って、そうして結局せっぱ詰まった結果が、この事態となったことは言うまでもありません。しかし、私はこの事態の急場を目の前にして、過去のとがめだては益がないと思います。したがいまして、これは差し控えますが、当面必要な施策については、過去の怠慢を補う意味からも、次の問題点について、積極的に取り組む意思の確認を、総理大臣、大蔵大臣及び運輸大臣に対して伺いたいのであります。
 すなわち、海上事故は大都市の港湾周辺と観光遊覧船の航路を多発地帯と考えられまするので、東京港から横浜港を結ぶ一帯の地域、名古屋港、大阪港から神戸港を結ぶ一連の地域と、北九州港域等については、港則法の充実を徹底的なものにして、陸上における交通規制に近いところまで持っていく必要を感じるのであります。もとよりこれには異論のあることではありましょうが、船は帆まかせ、帆は風まかせの、かつての懐古的な風景というものは、もうすでに今日これらの港から姿を消しております。したがいまして、このかびのごとく、ときに暴走することはあるが、船舶の高速化とリモコン化の方向をとっておる時代でありますから、遅速、高速、小型、大型の各種さまざまの船舶が航行するところの港湾については、当然航路の規制は必要であろうと思うのであります。さらに、港内航行の船舶に対しましては、的確な航行指示を行なうために、現在のごとき手旗あるいは灯火点滅などのほかに、近代機械を装備した連絡、指導をはからなくてはならないと思います。また同時に、海上保安体制が整備強化されなければ、航行規制は実質上これはただ単に文章に終わってしまいますので、巡視艇の高速化はもちろん、海上パトロール艇の前述の地域に配置するとともに、所要の人員を増員して、全面的に海上保安体制の一新と充実をはかる必要があると考えられます。
 また、リモコン装備の芦屋丸は、当初はリモコンの回路故障である、こういうふうに報ぜられておりましたが、その後の調査で、リモコン回路に異状はない、こういうふうな報告がなされております。このことは船員の質が船舶の高度機械化に追いつかない現実を露呈したものでありまして、船員の再教育の必要も今日迫られてきたのではないか、このように見られるのであります。
 以上の諸問題を解決するに必要な予算措置は、どうしても四十一年度予算の中に計上されるべきと考えるのでありますが、中村運輸大臣は当該大臣として、海上輸送を強化する国策を一そう強めるためにも、海上事故防止の体制を固める初仕事として取り組む強力な意思のほどを示してもらいたいのであります。お答えをいただきたいと思います。
 また、大蔵大臣にお伺いしたいことは、せっかく運輸大臣が人間尊重の佐藤総理のキャッチフレーズを実現しようとしても、先立つものは金であります。大蔵大臣のほうでさいふのひもを締められてはいかんともなし得ないと思いますので、佐藤内閣の大黒柱である大蔵大臣から、海難防止対策の予算確保に当然大幅な協力が得られるとは思いますが、念のために大蔵大臣の確かな考え方を承っておきたいのであります。
 最後に、佐藤総理にお伺い申し上げます。佐藤総理にお伺い申し上げるのは、事の結末、考え方を総理大臣から示していただきたい、このようなつもりで最後にお尋ねをいたしますが、あなたは運輸行政については深い経験を持っておられることは周知の事実であります。また、運輸政策に関してもきわめてたんのうな方であります。したがいまして、いまここで多くを申し上げる必要はないかと存じます。しかしながら、あえて一言申し上げますならば、あなたの人間尊重の理念というものは、経済価値から生じたことばではなかろうと思うのであります。だとするなら、人間尊重は人命尊重の哲理から生まれたものでなくてはならない。海上事故のおそろしさを国民は身にしみて経験しておるのでありますから、海上事故防止から、さらに一歩進んで、絶滅のために強力な指導のお考え方があるかどうか。人間尊重の真実をことばの上で、実際の上ではっきり示していただきたいのであります。
 おりもおり、八月二日未明には大島沖で――真相はやがて明らかになると思いますが、タンカーの明興丸が転覆いたしました。聞くところによると、アメリカの貨物船と衝突したとも報ぜられておりますが、これまたとうとい十七名の乗員の命が絶望といわれておるのであります。重ねて明確なる答弁を期待いたしまして、私の質問を終わる次第であります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 肥田君のお尋ねにお答えいたします。
 まず、その前に、私も肥田君と同様、このたび起こりました天保山沖の海難事故によりまして、とうとい人命を失われた方々に対して心からつつしんで御冥福を祈りたい、かように思います。
 さて、ただいまのような衝突事故とはいえ、とにかくとうとい生命が失われた、それにつきましては肥田君がただいま分析なすったように、港内において船腹の航行が非常にふくそうしておる、こういうことが大きな原因であり、それに対する対策が十分講ぜられてないというようなことがあるのではないかと思います。もちろん、この専門のほうにおきまして、それらについての十分の対策を講じ、あるいは標識をふやすとか、あるいはパトロールの船をふやすとか、あるいは人員を特にふやしていくとか、あるいは操縦者その他におきましても近代的な教育を与えるとか等々の処置をとってまいりたいと思いますが、しかし、私の政治理念であるいわゆる人間尊重、これは御指摘のとおり人命尊重にほかなりません。この意味から、交通事故によりまして、一年にその生命を断たれるものが非常に多い。こういうことで陸上における交通事故防止に対しては、いわゆる国民運動を展開いたしております。そうして自動車事故のほうは、絶滅というわけにはまいりませんが、昨年に比べまして、ことしは非常に減少している。心からこの運動の成功を実は喜んでいた次第であります。しかし、陸上と同じように、海上におきましても十分注意されまして、この種不幸な事態が起こらないようにいたしたいものだと思いますが、海上において依然としてこの種事故、しかも非常に大きな災害を引き起こしておる。ただいま言われますように、二日未明における大島沖における海難事故も、これまたたいへん大きな災害だと思います。この種の事柄を官民協力いたしまして、みんなと一緒になって、そうして事故絶滅――絶滅ができなくとも、それを非常に減らすとか、災害を最小限度にとどめるような努力をいたしたいものだと思います。大蔵大臣あるいは運輸大臣等におきましての具体的な施策と同時に、政府も必要な予算はこれを計上していくことにいたしたいと思いますが、何よりも官民総ぐるみでこの人間尊重の趣旨から、この種の災害を再び起こさないように努力いたしたいものだ、かように思います。(拍手)
  〔国務大臣中村寅太君登壇〕
○国務大臣(中村寅太君) 肥田議員の御指摘なされました遺族に対する弔慰金とか補償金等につきましては、すみやかに遺族の手に渡るように処置いたしてまいりたいと思います。
 それから御指摘になりましたいろいろの非常に適切な施設を強化、拡充する等、あるいは海上運航規制法の改正等まで含めまして十分検討いたしまして、必要な予算措置は整えて、事故の完全になくなるように万全を期したいという決心を持っている所存でございます。(拍手)
  〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
○国務大臣(福田赳夫君) ただいま御熱心なるお話をとくと拝承いたしました。このお話の件につきましては、運輸大臣とも相談をいたしまして善処いたしたいと存じます。(拍手)
○議長(船田中君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
○議長(船田中君) 本日は、これにて散会いたします。
   午後六時十二分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        法 務 大 臣 石井光次郎君
        外 務 大 臣 椎名悦三郎君
        大 蔵 大 臣 福田 赳夫君
        文 部 大 臣 中村 梅吉君
        厚 生 大 臣 鈴木 善幸君
        農 林 大 臣 坂田 英一君
        通商産業大臣  三木 武夫君
        運 輸 大 臣 中村 寅太君
        郵 政 大 臣 郡  祐一君
        労 働 大 臣 小平 久雄君
        建 設 大 臣 瀬戸山三男君
        自 治 大 臣 永山 忠則君
        国 務 大 臣 上原 正吉君
        国 務 大 臣 福田 篤泰君
        国 務 大 臣 藤山愛一郎君
        国 務 大 臣 松野 頼三君
        国 務 大 臣 安井  謙君
     ――――◇―――――
 出席政府委員
        内閣法制局長官 高辻 正巳君
     ――――◇―――――