第050回国会 日本国と大韓民国との間の条約及び協定等に関する特別委員会 第6号
昭和四十年十月二十九日(金曜日)
   午前十時四十一分開議
 出席委員
   委員長 安藤  覺君
   理事 木村 武雄君 理事 園田  直君
   理事 長谷川四郎君 理事 福永 一臣君
   理事 小林  進君 理事 辻原 弘市君
   理事 松本 七郎君 理事 永末 英一君
      赤澤 正道君    荒木萬壽夫君
      荒舩清十郎君    井原 岸高君
      宇野 宗佑君    江崎 真澄君
      大平 正芳君    金子 岩三君
      鯨岡 兵輔君    熊谷 義雄君
      小坂善太郎君    田口長治郎君
      田澤 吉郎君    田口 龍夫君
      田中 六助君    田村 良平君
      中川 俊思君    永田 亮一君
      濱野 清吾君    早川  崇君
      藤枝 泉介君    本名  武君
      増田甲子七君    三原 朝雄君
      毛利 松平君    山村新治郎君
      赤路 友藏君    石野 久男君
      石橋 政嗣君    岡田 春夫君
      滝井 義高君    戸叶 里子君
      中村 重光君    楢崎弥之助君
      野原  覺君    穗積 七郎君
      山中 吾郎君    横路 節雄君
      横山 利秋君    春日 一幸君
      玉置 一徳君
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        法 務 大 臣 石井光次郎君
        外 務 大 臣 椎名悦三郎君
        大 蔵 大 臣 福田 赳夫君
        文 部 大 臣 中村 梅吉君
        厚 生 大 臣 鈴木 善幸君
        農 林 大 臣 坂田 英一君
        通商産業大臣  三木 武夫君
        運 輸 大 臣 中村 寅太君
        郵 政 大 臣 郡  祐一君
        労 働 大 臣 小平 久雄君
        建 設 大 臣 瀬戸山三男君
        自 治 大 臣 永山 忠則君
        国 務 大 臣 上原 正吉君
        国 務 大 臣 福田 篤泰君
        国 務 大 臣 松野 頼三君
        国 務 大 臣 安井  謙君
 出席政府委員
        内閣官房長官 橋本登美三郎君
        内閣法制局長官 高辻 正巳君
        行政管理政務次
        官       中山 榮一君
        防衛政務次官  井村 重雄君
        防衛庁参事官
        (防衛局長)  島田  豊君
        防衛庁参事官
        (教育局長)  宍戸 基男君
        防衛庁参事官
        (人事局長)  堀田 政孝君
        経済企画政務次
        官       鴨田 宗一君
        科学技術政務次
        官       田川 誠一君
        法務政務次官  山本 利壽君
        検     事
        (民事局長)  新谷 正夫君
        検     事
        (刑事局長)  津田  實君
        法務事務官
        (入国管理局
        長)      八木 正男君
        外務政務次官  正示啓次郎君
        外務事務官
        (アジア局長) 後宮 虎郎君
        外務事務官
        (北米局長)  安川  壯君
        外務事務官
        (経済局長)  中山 賀博君
        外務事務官
        (経済協力局
        長)      西山  昭君
        外務事務官
        (条約局長)  藤崎 萬里君
        外務事務官
        (国際連合局
        長)      星  文七君
        大蔵事務官
        (主計局次長) 武藤謙二郎君
        大蔵事務官
        (理財局長)  中尾 博之君
        大蔵事務官
        (国際金融局長
        事務代理)   村井 七郎君
        厚生事務官
        (社会局長)  今村  譲君
        農林政務次官  仮谷 忠男君
        農林事務官
        (大臣官房長) 大口 駿一君
        水産庁長官   丹羽雅次郎君
        水産庁次長   石田  朗君
        通商産業事務官
        (貿易振興局
        長)      高島 節男君
        郵政政務次官  亀岡 高夫君
        郵政事務官
        (貯金局長)  稲増 久義君
        郵政事務官
        (簡易保険局
        長)      武田  功君
        労働基準監督官
        (労働基準局
        長)      村上 茂利君
        労働事務官
        (職業安定局
        長)      有馬 元治君
    ―――――――――――――
十月二十九日
 委員愛知揆一君及び松井誠君辞任につき、その
 補欠として熊谷義雄君及び滝井義高君が議長の
 指名で委員に選任された。
同日
 委員熊谷義雄君及び滝井義高君辞任につき、そ
 の補欠として愛知揆一君及び松井誠君が議長の
 指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条
 約等の締結について承認を求めるの件(条約第
 一号)
 日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定の
 実施に伴う同協定第一条1の漁業に関する水域
 の設定に関する法律案(内閣提出第一号)
 財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済
 協力に関する日本国と大韓民国との間の協定第
 二条の実施に伴う大韓民国等の財産権に対する
 措置に関する法律案(内閣提出第二号)
 日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び
 待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定の
 実施に伴う出入国管理特別法案(内閣提出第三
 号)
     ――――◇―――――
○安藤委員長 これより会議を開きます。
 日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約等の締結について承認を求めるの件、日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定の実施に伴う同協定第一条1の漁業に関する水域の設定に関する法律案、財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定第二条の実施に伴う大韓民国等の財産権に対する措置に関する法律案、日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定の実施に伴う出入国管理特別法案、右各件を一括して議題といたします。
 質疑を行ないます。戸叶里子君。
○戸叶委員 きのう横路委員がアジアの平和、アジアの外交についての質問をなさいました。そのときに、日本の立場というようなことに対して私はまだはっきりいたしませんので、少しその点をお伺いしてみたいと思います。
 総理は、アジアの平和についてこれを望む首相は、まずその第一歩として隣国の韓国との国交を正常化する、こういうことをおっしゃいました。第一歩と言われたからには、第二歩、第三歩が続かなければならないと思います。それはどういうことをお考えになっていらっしゃるのでしょうか。
○佐藤内閣総理大臣 第一歩を踏み出すのが十四年もかかった、戦後二十年かかった、第二歩はまたたいへんかかると、こういうお気持ちが一部にあるのではないかと思います。私はしかし、アジアの日本が一体どういうような事柄になっておるか。きのうもちょっと触れたのでございますが、いまようやく日韓の交渉を妥結しようとしておる。その前までは、ただ国府との間の条約があっただけ、サンフランシスコ条約があっただけだ。フィリピンやその他の東南アジア諸地域は別としても、日本に近い関係の朝鮮半島は、いままで何らの交渉はなかった。また沿海州のソ連に対しては、鳩山内閣時代に一つの交渉を持ったけれども、これもしかし、いわゆる平和条約というところまではいっておらない。北鮮、さらにまた中共というもの舞々があるわけでございます。これらのことを考えてみると、アジアに位する日本として、アジアとまず第一に親交を固めなければならない。それがまことに困難な、また複雑な事情に置かれておる。ただいま申し上げるようなことしか今日までできておらないのです。だから、まず隣の韓国と交渉を始めて、そうして親善友好関係を結んでいく。もうすでに方向のきまっておる日ソ間の問題については、ただいま幸いにして最近は両者の交渉もそれぞれのものが、領事協約あるいは航空協定等々、その話が進みつつありますので、これは親善関係をさらに有効につけていきたいし、また中共や北鮮に対しましては、在来からいわゆる政経分離の方法でいままで交渉を持っておりますので、ただいまの中共関係においても、貿易はLT形式にしろ何にしろその貿易をふやしていくという、そういう方向で努力を続けていきたい。また中共や北鮮については、いままでケース・バイ・ケースでそれぞれ処置をきめていくというような方向をとっておりますので、これもさらに今後ともその方針を確認しながらも、さらに不足の部分をこれから補っていくというようなことで、もっとこの関係を緊密にしていかなければならないのだ、かように私は考えております。これがしかし、その第一歩すら二十年もかかった今日でございますので、これから先の問題も、全体の、ことに挙党挙国的な御支援を得ないと、なかなか進めていくことが困難だろう、かように思いますけれども、とにかくさらに親善友好を増していく、深めていく、これが私の態度でございます。
○戸叶委員 総理はいまるるおっしゃいましたけれども、結局私が考えますことは、いまの政府自体がアジア平和外交ということに対しては、一つのワクなり態度なりというものをきめてしまってその中でやろうといたしますから、なかなか平和外交というものが推進されないというふうに考えます。もしも、総理がたびたびおっしゃいますように、いずれの国とも仲よくするのだ、そして隣の国からまずその国交回復なり親善友好をはかっていくのだ、こういうことの精神からいいますならば、わが国と政治形態が異なっている国とも仲よくするというふうにも意味が解されますけれども、この点はどういうふうにお考えになりますか。
○佐藤内閣総理大臣 それぞれの国がそれぞれの政治形態を選ぶのでございます。したがいまして、それが自分たちに気に食うとか気に食わぬとか、そういうことは言っておれない。そういう場合に仲よくする方法は一体何か。お互いがそれぞれの独立を尊重し、お互いがその内政に干渉しないというそういうルールがちゃんと立てられれば、必ず仲よくできるのじゃないか、かように私は思っておるのでありまして、しばしばこのことは繰り返し繰り返し申し上げておりますので、御了承を得ておるかと思います。
○戸叶委員 これらの問題について、そのこと自体に突っ込んでいきますと、いまの御答弁からいろいろ発展いたしていきますけれども、そうしますとほかの問題に触れられませんので、私はこの程度にいたしますけれども、ただ問題は、中国にいたしましても、北朝鮮にいたしましても、舞の国であり、そして政治形態は違っておりましても、アジアの中にある。だとするならば、平和外交を進めるならば、しかも総理自身がこれまでそれらの国々にはオーソリティーがあるということを言っていられるのであるから、それらの政府をもなぜ認めて交渉をしようとされないのか、この辺を私どもはまことに了解に苦しむのでございますが、この点を一体どうお考えになるかをお伺いしたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 ただいま申し上げますように、それぞれ中共とも仲よくしていきたいということを念願しておるからこそ、政経分離の形で貿易を進めていこう、またLT貿易も、そういう意味でLTの関係者は話し合いをしておると思います、また、特別に日本の国の問題に関係しない、かように考えるならば、人的な交流なども私どもはつとめて密接にしたい、こういうような努力をいたしておるわけであります。ただ問題は、中共にいたしましても、北鮮にいたしましても、いわゆる一つの民族の悲願というものがある。民族の悲願から申すならば、朝鮮民族は単一国家でありたい、いわゆる対立国家というような形では、長くはそういう状態を続けたくはないという、これは民族の悲願だと、かように私はいま思っておりますが、この民族の熱願から申すと、これはやはり一国というか、独立した国との交渉だということにならざるを得ないのです。ただいま朝鮮の場合にいたしますと、この韓国あるいは北鮮を承認しておる国がすでに、韓国の場合は承認が七十一カ国、北鮮を承認しておるものが二十三カ国。そしてこの二十三カ国は韓国を承認しておらないし、七十一カ国の韓国を承認しておるものは北鮮を承認しておらない、こういうことになっておる。こういうことでございますから、ただいま申し上げるように、そういう実際にいわゆる管轄権が及んでおるとか、施政権が及んでおる、そういう範囲はそれぞれのものできまっておるにしろ、それは現実の問題だ、かように私考えておりますが、その現実の問題とは別にして、韓国と交渉を持っておる日本が、同時に北鮮と交渉を持つ、こういうわけにはいかないというのが、いまの状況でございます。これは日本の場合にただいま申し上げるばかりでなく、七十一カ国もそういう関係で北鮮とは交渉を持っておらないし、また二十三カ国もそういう関係で韓国との交渉を持っておらないというのが、いまの実情でございます。ただいま一部でいわれておりますように、双方に領下館を置いておる、こういう国もあるやに伺っておりますが、これはただいまのいわゆる外交交渉としての国の承認ということとはまた別でございますから、これは別途に解釈すべきじゃないか、かように思います。この点は、戸叶君は外務委員を長くしていらっしゃいますから、よく御承知のことだと思います。
○戸叶委員 そこに私は自主性がないと言いたいのです。私が伺っておりますのは、幾つの国が韓国を承認しているんだから韓国を日本が承認するんだ、幾つの国しか承認していないからしないんだ、こういうのでなくして、アジアにある国で、しかも隣の国で、日本がどういう形をとったならばアジアの平和を保てるか、こういう観点に立って私は外交関係を結ぶべきである。今日までの政府の答弁は、この韓国には七十何カ国が国交回復をしている。よその例を引いておっしゃいますけれども、日本はアジアの一員なのです。アジア外交というものは、日本が指導的立場になっていいと私は思います。そういう観点に立つならば、ひとの国がこうだからというのでなくして、日本が、政治形態が異なる政府であろうとその政府と交渉をするとおっしゃるのですから、もっと堂々とその国を認めるような形をとったらどうなんですか。
 たとえば中国の問題です。中国に対しましても、きのうもちょっと出ましたが、私はあるアメリカの講演旅行をした友人から、こういう話を聞きました。アメリカの有識者は、日本がなぜ中国承認ということに積極的態度に出ないのだろうか、アメリカでさえも有識者はそういっているということを言われました。これはその人が講演旅行をして、各地で聞いてきた意見なのです。なぜ日本は中国に対してあれほど消極的なんだろう、こういうことをさえ言っているといわれます。私は今日のアメリカのアジア政策というものは、いろいろな面で、どうも間違っているのではないか。だとするならば、アジアにおいての日本が、アメリカのアジア政策を変えるくらいの見識を私は持っていかなければいけないと思いますが、この点について総理はどうお考えになりますか。
○佐藤内閣総理大臣 ただいまお尋ねがございまして、独自の自立的な外交をしたらどうか、七十一カ国が承認したから韓国を承認する、こんなわけのわからないことじゃだめだ、こういうおしかりでございますが、私は七十一カ国も承認したというのを一つの例にとったのでございます。私どもの日本は、隣の国は韓国であります。これは一番近い国なんです。一衣帯水の間にあるのです。だから、この国とサンフランシスコ条約以来、またGHQに韓国の代表部が設けられて以来、私どもが交渉しておる。これは韓国でございます。だから、その韓国との話を早くしたいというその例に、もう七十一カ国もしております。こういうことを申したのであります。隣の国である日本がいつまでもやらないが、ほかの国はどんどんやっておる、そういう状況です。私は、この意味でこれはぜひとも早くやりたいんですということをいま申し上げているのでございまして、七十一カ国がやったから、それに従ってわれわれもやるというのではないのであります。われわれがこれとやりたいというその裏書きとして、もう七十一カ国も承認しておる、これは国際的世論なんです。この国際的世論をやはり無視しないほうがいいんじゃないですか。私はことに国連中心主義の外交を述べておりますが、国連においても、そういう決議でこれを認めてきているのだ。だから、そういう事柄が、隣の国と仲よくしていく、それを裏づけるものとして、さらにそれを勇気づけるものとして、国連の決議にもある、七十一カ国もこれを承認しておる、そういうことをただいま申し上げておるのでございます。だから、その点は誤解のないように願いたい。これは自主的なものであります。
 そこで、ただいまお尋ねになります中国の問題、北京政府の問題でございますが、このことにつきましては、いままでも数回申し上げましたように、私どもが条約的な関係を持ち、条約上の権利義務を持っておる国府との関係、この国府も、これは中国を代表するものだと言っておる。また今日中共自身も中国を代表する政権として、そうして国連加入をいま要求しておる。もっと具体的に申しますならば、中共を支持する、国連加盟を進める国々の主張は、いわゆる国府を排除して、そうして中共の代表権を認めろ、かような意味においての国連加入を要求しておること、これも御承知のとおりでございます。こういうことは、現実の問題としてたいへんむずかしい状況になってくる。私は、これは国際上の重大な問題だ、これこそ日本ばかりじゃない、各国とも多大の関心を寄せるものだ。ここで、重要方式でこれは決定すべきだ、こういうことをただいま申しておるわけでありますが、しかしながら、この権威は私どもも認めておるわけで、そういう意味において実際的な処理はしようじゃないか。実際的な処理とは一体どうなんだ。それがいわゆる政経分離の方法で、ただいま中共とも友好関係を続けていく、あるいは経済的交流をはかっていく、こういうことをやっておることでございますので、この実情はいままでもたびたび説明をいたしましたが、今日この席におきましても、在来の方針をさらに申し上げるだけでございます。御了承いただきます。
○戸叶委員 中国の問題につきましては、私も申し上げたいことがありますけれども、きょうはその点についてはこれ以上触れません。ただそれに関連して、やはり中国も隣の国であり、世界のいろいろな国が中国承認のほうにどんどん傾いてきている、こういうふうな実情を総理もよく考えておいていただきたい。そしてアジア外交をお進めにならないと、とんでもない失敗をするということだけは進言しておきたいと思います。
 そこで、さらに私が伺いたいことは、アジア外交にとって必要なことの一つはベトナムの問題だと思いますけれども、これに対してもあまり何もしておりません。しかし、ここで私どもちょっと不安な問題が起きてきておりますし、それは朝鮮とも関係があることでございますので伺っておきたいと思いますが、まず防衛庁長官に、先ごろB57に搭乗した小谷氏の事件がその後どうなっているか、ごく簡単に説明をしていただきたいと思います。
○松野国務大臣 防衛研修所の職員小谷君がB57に搭乗をいたしまして、その後帰国をいたしました。先般防衛庁を退職したいという希望が出ましたので、先月末にこれを許可いたしました。いきさつはかようでございます。
○戸叶委員 現職で搭乗されたわけですね。そしてそれは何日の日だったでしょうか。それからどういうふうな行動をしたか、それからパスポートはどういう形で行かれたか、その点だけちょっと伺いたい。
○松野国務大臣 本人から八月十六日九時三十分から九月一日十七時まで休暇申請書が提出されました。これに対して研修所の所長は三カ条の申しつけをいたしました。招待を受けた結果義務が生じないか。私用であるために公務ではない、したがってあらゆる公務の便宜はない。休暇中といえども公務員である。この三カ条について確認をしてこの休暇を許可いたしました。その後の行動につきましては、詳細なものは出ておりますけれども、あまり小さいことでございますからあれですが、この中でB57に搭乗をしたというのが一日ございます。
○戸叶委員 一日ですか。
○松野国務大臣 一日、一度あります。
 そのほかはバンコクに着いてSEATOのタイ米軍を諮問、大体概略は……。あまりこまかいことでございますから……。
○戸叶委員 私は、この問題は、小谷さん自身の問題はもっとほかに防衛関係の問題としていろいろ聞いていかなければならないと思いますけれども、あと時間がなくなりますのでこの程度にしますが、ただ問題は、小谷さんが休暇中でも公務員という形で行って、しかも爆撃機に乗ったということは、やはり日本の憲法に違反するものであるというふうにお考えになるでしょうね。
○松野国務大臣 日本の憲法に違反するとは思っておりません。
○戸叶委員 そうしますと、自衛隊の役人が休暇をとってそしてアメリカの爆撃機に乗っても、それはいいということをお認めになるわけでございますか。
○松野国務大臣 日本人が報道あるいは非戦闘員としてそこの国の招待を受け、観戦をするということは、あにブトナムのみならず、一般的にこれはあることであります。したがって、憲法に違反するということは私はないと思います。
○戸叶委員 普通の公務員でもどうかと思いますけれども、しかし、小谷さんはどういう公務員ですか。
○松野国務大臣 特別職の公務員でございます。
○戸叶委員 自衛隊におつとめになっていらっしゃるわけですね。
○松野国務大臣 自衛隊の職員でございます。
○戸叶委員 自衛隊の職員が爆撃機に乗ったということは、やはり私たち平和を愛する日本の国民、いろいろ心配する国民として、そういうことが許されるかどうかというところにも私は問題があると思います。で、その問題はあとからいずれ詳しく聞いていただくことにいたしまして、私がこれにからんでお伺いしたいことは、実はこの七月の二十三日のタイムという雑誌がございます。アメリカにタイムという雑誌があること、御存じですね。百万以上の購読者を持っている、相当正確なことを報道している雑誌です。この中を読んでおりましたところが、こういうことが書いてございます。
 ベトナムと朝鮮と書いてある。そして比較と書いてあるわけです。そして、どういうことが書いてあるかといいますと、ときどきベトナムにおける戦争に関する討論に出てくる一つのポイントは、もう一つの朝鮮となるかもしれないという点である。一九五〇年から五三年における朝鮮戦争といままでのベトナム戦争との比較統計、こう書いてあって、そしてアメリカの軍の総人員が、朝鮮の場合には、このアメリカ軍事顧問が始まるときには五百人が、だんだんにふえて四十万の軍隊となり、そして全部では約百二十五万のアメリカ人が使われた。それは入れかわり立ちかわり使われた。そしてベトナムの場合は、一九六一年は六百八十五人によって構成された顧問団が、先週までに七万二千人に広がった。しかもことし一ぱいになると、ほぼ二十万人という数になる予想である。何しろ約二十万人のアメリカ人が使われた、こう書いてある。問題はその次なんです。そしてその次には、同盟軍、アライズということばが使ってあります。そしてその中で、朝鮮の場合は、十五万の南朝鮮軍は四十六万になる。そしてまた、国連の旗のもとに戦っていた十五の他の国から送ってきた四万の軍隊、こういうふうに朝鮮の場合には書いてあります。そしてベトナムのほうでは、現在南ベトナム政府の軍隊は五十五万、正規と地方または村の自衛武力を含むと書いてあります。その他の関係される同盟国は、オーストラリア九百人、ニュージーランド百五十人、これはアンザスの関係ですが、戦闘に参加している。そのあと、それとともに各種の教官、専門家、その内訳はオーストラリアが二百名、ニュージーランドが三十二名、英国が十二名、フィリピンが六十八名、日本が八十名参加している。日本が八十名、南朝鮮が二千百名、中華民国が百二十四名、西ドイツが二十三名、イタリアが十七名、カナダが一名、こういうふうに書かれております。そこで、これをよく調べてみますと、南朝鮮の二千百名は兵隊です。ちょうどこの協定の批准される前に行った。批准された日に一万五千やられましたが、その前に朝鮮から二千百名行っております。それです。それから中華民国の百三十四名は、軍事顧問団です。その人たちと一緒に日本が八十名参加しているということが、はっきりここに出ているのです。この事件を御存じでございますか。
○松野国務大臣 その本を読んだことありませんが、八十名の参加ということは、それは誤報であると私は思います。
○戸叶委員 いま誤報であるとおっしゃったのですか――そうですか。それじゃ、私はタイムという雑誌は信用の置ける雑誌だと思います。一ぺんこの八十名というのがどういうものであったか、私はやはり調べていただきたい。ほかの数字は合っておるのです。南朝鮮でも中華民国でもフィリピンでもみんな合っていて、日本だけが誤報だということが言えるでしょうか。もしもこういう人が入っていたとするならば、それは違法ですね。
○後宮政府委員 お答え申し上げます。
 雑誌の記事は私のほうでも関心を持ちまして、どういう根拠でああいう数字が出たのか調べてみましたところ、大体賠償関係でいろいろ技術者が行っておりました、それを全部協力要員ということにして数字を寄せたものだと思います。
○戸叶委員 賠償関係で行っているならば、私はアライズの中に入っていないと思う。アライズということは同盟軍ということですよ。そのあとにもちゃんと、敵軍がどうなっていて、戦場がどうなっていて、戦果がどうなっていてと、はっきり書いてあるのですから、賠償なら賠償ということを書いておくべきだと思うのですが、それは兵隊さんと一緒になっているのですよ。それじゃこの本に、賠償関係で行っているのだから、これは賠償と直してくれということを申し込まれますか。
○後宮政府委員 従来一々新聞雑誌に出る記事に訂正のあれを出してはおりませんですが、問題が問題でございますから、発行当局のほうに適当に注意を喚起するつもりでおります。
○戸叶委員 それはそれでおやりになるとして、もうちょっと伺いたいことは、賠償関係であるとするならば、どういうふうな賠償でどういうふうな人たちが行ったか、その内訳を具体的に言っていただきたい。
○後宮政府委員 先ほどの数字のうち、六名が昨年参りました医療団でございまして、お医者さん、看護婦等の六名、あとは全部ダニム・ダムの送電線関係の建設の技術者でございます。(「ダニムは去年すでにでき上がっているじゃないか」と呼ぶ者あり)建設以外のあれを統計しているようでございます。
  〔発言する者あり〕
○安藤委員長 お静かに願います。
○戸叶委員 いまここで話がありましたように、ダニム・ダムの建設はすでに去年完成しております。これは七月現在でございます。それをなぜこのアライズの中に賠償の使節が入っていたのですか。
○後宮政府委員 その点も当時雑誌記事が出ましたときに問題になりまして、チェックしたのでございますが、いままでダニム・ダム関係で派遣されました技術者の延べの人数を言っている、その数字に該当することがわかりました。現在はそんなに向こうに日本人もおらないのでございます。
○戸叶委員 それは一九六五年の七月の二十三日の現在でございます。ことしなんです。
 それでもう一つ伺いたいのは、賠償関係の仕事をしている人もアライズという中に入るのですか。
○後宮政府委員 ですからあの雑誌の記事は私のほうは誤報だと見ておるわけでございます。ですからアライズというところに入れたのも間違いでありますし、過去からの延べの人数をさも現在それだけ全部いるというふうに書いたのもこれは誤報と、そういう判断でございます。
  〔「タイムへ行ってよく調べてこい」と呼ぶ者あり〕
○戸叶委員 そうしますと、こういう人たちは一体いつ出かけたんですか。いつどういうパスポートを持って出ていったのですか。
○後宮政府委員 具体的の出発の日時及びパスポートの種類につきましてはすぐ本省と連絡いたしまして、あとで御報告いたします。
○戸叶委員 延べ八十人とおっしゃるのですけれども、五年もかかって延べ八十人で済んだんですか。
○後宮政府委員 問題はどれだけの期間の延べをとったのか、その点雑誌社のほうとチェックしておりませんからあれでございますが、いずれにいたしましても、賠償工事が始まりまして以来派遣されました技術者の総数、それから具体的のパスポートとか出発日時については後刻資料をもって御報告いたします。
○戸叶委員 私が後宮局長に申し上げますのは、御自分から延べ八十名とおっしゃったから、どうもおかしいなと思って、それを伺ったわけなんです。それをよく資料を持ってきてなんということになりますと、何かいまの御答弁がおかしくなってくると思うのです。何かごまかしているのじゃないかなということを考えちゃうわけです。さらに与党の皆さん方がタイムへ行って聞いてこいとかなんとかおっしゃいますけれども、これは朝鮮と関係のある問題なんです。たとえば朝鮮はベトナムに派兵しているわけなんです。日本の平和外交を促進するには、ベトナムの平和が必要で、ベトナムに対して関心を持たなければならないわけです。だから私は伺っているので、それをいいかげんな形で済ましていただいたら、まことに困ると思います。
 ですから私はこの問題はあとで追及をしたいと思いますが、ただ問題は、私はこの問題をもう少し調べようと思いまして、そうしてこのパスポートをどの程度にどういうふうにお出しになったかということを昨年からことしにかけていろいろ調べてみました。そうすると、法務省関係の統計、外務省関係の統計を見ましたところが、昨年の一月から三月までのパスポートはベトナムに幾人出して、どうなっているか、全然わからないという答弁なのです。パスポートを出すのにわからないというのも私はおかしいと思いますので、これはぜひとも出して、そしていまおっしゃったアジア局長のことも含めて次の機会に答弁をしていただきたい。このことを申し上げたいと思います。
 そこで、次に入りたいと思いますが、日本は韓国の独立を認めたのはいつからでございますか。総理大臣にお伺いいたしたいと思います。
○椎名国務大臣 韓国の独立を認めたのは、平和条約の発効時でございます。
○戸叶委員 そうすると一九四八年の八月十五日の韓国の独立宣言というのはお認めになりますか、どうですか。
○椎名国務大臣 それは歴史的事実を認めざるを得ないと思います。
○戸叶委員 歴史的事実を認められた――わかります。そうすると、実際に韓国の独立を認めたのは平和条約、そして韓国が独立宣言をしたのは歴史的事実。そうすると、その間はどういうことになっておりますか。
○椎名国務大臣 その間の韓国とのいろいろな法律関係の御質問だと思いますが、条約局長からお答えいたします。
○藤崎政府委員 日本が承認したときに大韓民国が独立したものだというたてまえをとるわけではございませんで、大韓民国が独立したのは一九四八年八月十五日であるという歴史的事実を否認するものではないわけでございます。ただ承認の時期が五二年四月二十八日になりましたのは、そのときに初めて日本は外国を承認し得る立場にも立ったわけでございまいます。
○戸叶委員 そうすると、そこをはっきりしたいのは、八月十五日の宣言を歴史的事実として認めて、チャンスを待っていて講和条約で独立を認めた、こういうことになるわけですね。
○藤崎政府委員 事実上の関係はその前から日韓交渉もやっておりましたし、もう承認はほとんど、普通の場合だったら当然推定されるような行為をやっておったわけでございます。しかし、これはほんとうの主権国家としてフルに外交関係を持っておりませんでしたから、法律関係といたしましては一九五二年四月二十八日と考えるのが相当であろう、かように考えているわけでございます。
○戸叶委員 そうしますと、これは基本条約の三条の問題に関係するわけでございまして、この基本条約の二条で大韓民国との間の一九一〇年までの条約がもはや無効であるということに対して、学者の人たちの意見がまちまちです。そこで私ははっきりさせておきたいと思うのは、平和条約で日本が独立を認めたときから無効であるという考え方、それから韓国が独立宣言をしたときに無効になったという考え方、韓国自身は初めからないものだという考え方、この三つがあるわけですが、政府としてはどこをおとりになりますか。
○藤崎政府委員 政府といたしましては、併合条約それ自体は韓国の独立のときに失効した。併合以前に結ばれておりました条約は、それぞれの条件が成就されたときに失効したかあるいは併合時まで生きておったものは併合時に失効した、かように考えております。
○戸叶委員 この問題は文献などを見ましてもいろいろな意見がありますので、一応私は聞いておいたわけです。
 そこでこの平和条約で日本が朝鮮の独立を承認したというふうに二条でありますが、この朝鮮というのはどういうふうに解釈するのですか。藤崎局長でなくて、大臣にお答え願えませんでしょうか。
○椎名国務大臣 従来のいわゆる朝鮮であります。朝鮮半島です。全半島です。
○戸叶委員 朝鮮の独立を承認してという、この朝鮮は韓国ですか。全体にわたってですか。大韓民国ですか。
○椎名国務大臣 ですから、前に朝鮮と言えば、鴨緑江から済州局のあの地域を言っておるのであります。その全体の朝鮮が独立をした。
○戸叶委員 そうしますと、この朝鮮というのは、韓国の独立じゃなくて、北朝鮮も含んだ朝鮮の独立を見たわけですか。
○椎名国務大臣 そういうことです。
○戸叶委員 そうしますと、ここで朝鮮の独立を承認しておいて、韓国とだけの条約を結ぶと、どういうことになるのですか。
○椎名国務大臣 独立した、日本から離れた朝鮮というものに実際問題として統一した政権をつくるべく国連が努力をいたしましたが、いろいろな障害にあっていまの北鮮の部分がこれに応じない、しかたなしに南の部分について合法的な政権ができた、こういう経過をとっておるのであります。
○戸叶委員 私は経過を聞いておりません。経過はよく知っております。ただ朝鮮の独立というのは、ここでは一体どうなんですかと言ったらば、朝鮮というのは朝鮮全部のことをいうのだ、こういうことをおっしゃった。そうすると、平和条約で全体の朝鮮の独立を認めておきながら、今度韓国との間の協定を結ぶと、あとどうなりますかということを伺っているのです。そのものずばりの御答弁でけっこうです。
○椎名国務大臣 条約局長から詳しく申し上げます。
○藤崎政府委員 平和条約の規定の第一義的な意味は、朝鮮が日本から分離独立することを認めるということでございます。その際に、日本といたしましては、そこに三つの政権ができておったわけでございますが、それ以前からの関係もございまして、当然に大韓民国を承認したわけでございます。この大韓民国の承認ということばと朝鮮の独立を承認するということばが同じことばになっておりますために、若干混乱が生ずるかもしれませんが、観念としては別に区別して考えるべきものだろうと思います。
○戸叶委員 いまの条約局長の御答弁は、わかったようなわからないような答弁だと思うのです。(「頭が悪い」と呼ぶ者あり)頭が悪いとおっしゃるけれども、そうかもしれませんけれども、私はわかりません。
 そこで、この第一義的のものとして分離独立した、そのときすでに二つの政権を認めていたんだ、こういうふうにいま条約局長はおっしゃった。私ちゃんと書いております。平和条約を結んだときには、二つの政権ありと認めていたとおっしゃったわけです。そんならば、一つの政権と国交回復したら、あとどうなりますか。残った政権はどうなりますか。
○藤崎政府委員 私はありと認めていたと申したつもりはないのでございますが、もし申したら誤りでございまして、事実上あったということでございます。日本が両方の、まあ一つの国であるべきところに不倶戴天の関係にある三つの政府がある場合に、両方とも承認できないというのは、日本と朝鮮だけの特殊の関係じゃございませんで、同種の状況にあるドイツその他と同じことでございまして、日本の意思いかんでどうにもすることのできる問題じゃないわけでございます。
○戸叶委員 この朝鮮という字を私はあっちこっちで読んでいると、わからなくなっちゃうんです。非常にわからなくなっちゃう。それで、ことばをはっきりさせておかなければいけないというふうに考えるわけです。そうして、しかもこの字の解釈といいますか、朝鮮というものの概念規定といいますか、そういうものをはっきりしておきませんと、この基本条約の三条というものが解釈が非常にむずかしくなってくる。そこで私は、朝鮮というものをはっきりさせたいと思ったわけです。そうすると、いまおっしゃった朝鮮、この平和条約にいう朝鮮、それからカイロ宣言、ポツダム宣言にいう朝鮮というのは、領土的には同じですね。しかしその内容は違っていたということが言えますね。
○藤崎政府委員 違っていたとおっしゃる、どこが違っていたのか私よくわかりませんが、むしろ同じであると私は考えております。
○戸叶委員 同じであっても、事実上は朝鮮が二つに分かれたわけでしょう。だから、そういう意味では違っていますね。平和条約のときには分かれたわけです。カイロ、ポツダムのときには分かれていなかったわけです。そして、しかも今回相手にするのは、カイロ、ポツダムの朝鮮ではなくて、平和条約にいう――というか、日本と韓国との間の基本条約を結ぼうとしているその一つのほうの朝鮮というか韓国をいっているわけでしょう。だから内容が違ってきていますね。
○藤崎政府委員 朝鮮という地域を頭に置いておるという点では全く同じでございまして、ただ、その地域が違った状態にあったということはこれはまた当然のことで、前は日本の領土であったわけでございますし、その後はああいうふうに二つの政権ができておったという事実があるわけでございます。
○戸叶委員 そのことだけはわかりました。
 そうすると、その次に進んでまいりたいのは、いままでの基本条約の批准にあたりまして、政府自身がよく言われますのは、解釈についての食い違いがあっても条約の効力に影響がない、実質利益に関係ないということを言っております。そしてこの無効論は条約の効力について国際法上の常識を理解しないものである、こういうことさえ言っておられる。また佐藤首相は、十八日の参議院では、この解釈の違いは調整する必要はない、こういうことをおっしゃっていられる。つまり解釈は違っていてもかまわないんだ、その解釈は各自がかってにするのだ、こういうふうに理解していいわけでございますか。これは総理大臣の御答弁ですから、総理大臣にお伺いしたい。
○佐藤内閣総理大臣 私の参議院の答弁が引き合いに出されましたが、ただいま申し上げますように、いろいろまだ条約が効力を発効していないその際に、それぞれの立場で説明をしておる技術上の問題がある、そういう意味の技術上の相違がある、こういうのがまずあげられ得ることでございますが、そういう技術上の説明の相違はただいまの段階では調整する要はないんだ、こういうような事柄でございます。ただいまこの条約、条文、これはどこまでも客観的にきまるものでございますから、そう基本的なもので相違するはずはない。もしもそれが基本的に相違していて、そうして、実際にあちらこちらで支障を来たす、こういうような問題になればそのときに調整する必要があるだろう、こういうことを私は実は申したのでございます。だからその点は、いま調整する要がないとかなんとかいうことばじりでなくて、実際の処理の問題としてこれは考えていきたいということでございます。
○戸叶委員 私はことばじりじゃないのです。よく考えていくと、わからなくなってくる。たとえば、条約を調印するにあたって一番必要なことは合意じゃないんでしょうか。
○佐藤内閣総理大臣 そのとおりでございます。
○戸叶委員 合意に達するには、解釈の相違があっても合意に達しますか。
○佐藤内閣総理大臣 合意に達したから調印をいたしたのでございます。
○戸叶委員 政府からおっしゃれば、合意に達しなければ調印はしないはずですから、――そうですね。ところが、合意に達したとして調印された条約が解釈が違っているわけなんです。そこで、解釈が違っても合意に達しますかということを伺っている。そのことに対して……。
○佐藤内閣総理大臣 私は、申し上げるように、合意に達したから署名、調印した、かように思っておるのであります。そこでいまの、食い違いという言い方をされますが、それが実際問題として支障を来たすか来たさないか、そこで初めてそういうことが問題になるのじゃないのか。いろいろの説明のしかたがありますから、全然同一の説明のしかた、こういうものではないだろうということでございますので……。
  〔発言する者あり〕
○安藤委員長 お静かに願います。
○佐藤内閣総理大臣 ただいま申し上げるように、基本的に客観的なその目的とするところのものが食い違っていたら、これは合意じゃございませんから、そういうものが調印されるはずはございません。だから、双方が調印しておるのは、これはもう自由意思で双方の主張が合致した、その表現されておる書き方で合致したから署名、調印したのでございますから、ただいま申し上げるように、その説明のしかたがいろいろ違っておりましても、実際の問題としてこれが支障を来たした、こういうときにその問題が出てくるのじゃないのか、こういうことを申し上げたのであります。
○戸叶委員 これまでここの委員会で議論になったことも、雑誌や新聞等に出ていたことも、どうしてもその基本的なことで解釈が違っている、根本的なことで合意に達していないと私たちは考えるから伺っているわけです。
 それでは私は具体的に伺います。基本条約の三条で合意に達したのは、どういうところが合意に達したのですか。
○椎名国務大臣 これは御承知のとおり国連の決議百九十五号を引用しておりまして、その百九十五号は朝鮮の民族の大部分が現に居住しておる朝鮮半島の一部、そこに有効な支配と管轄権を及ぼし得る政府ができた、この政府は、その住民の自由な意思の表明によって選挙を行なって、それに基づいてできた政府である。で、朝鮮全体を見渡してかかる政府は唯一の合法政権である、こういうことがうたわれております。それをそのまま第三条に引用して、そして相手方である韓国というものはいかなる国であるか、いかなる政権であるかという、その性格を表示した、こういうことであります。
○戸叶委員 いまの外務大臣の御答弁は私は何度も伺っています。そういうことはわかっているのです。それで百九十五号(III)に対してすらも日本と韓国とは解釈が違っているわけなんです。それでその基本的な解釈が違っていて、どうして、どこの点で合意に達したのですかということを聞いているわけなんです。
○椎名国務大臣 書いてあることに対して十分な審議をした結果これを合意して、そうしてああいうふうに書き下されたのであります。これに対して韓国のほうでいろいろ説明があるようでございますが、条約の締結に当たった当局の主観的な考え方を離れて、もう書き下されたものは客観的な一つの成文として、今度はそれがすべての人に正しく解釈されていく、それが条約の権威であると私は考えております。
 それでどういうことを言っているかという、これは伝え聞いている話ですが、韓国の憲法には全半島が韓国の領土である、こういうふうに書かれている。ただ不逞の徒が一部に蟠踞して、そうして韓国の政権の支配が及ばないという、これは一時的な一つの状況にすぎない、こういうふうに解釈しているようでございます。それで今度の基本条約の第三条は、日本がこれを全局的に認めた、こういうふうに何かいっておるらしいのですが、ここが間違いなんで、憲法に書いてある領土というものを、一つも日本は条文において肯定も何もしていはしない。実際その支配権の及んでおるのは半島の一部である。これを具体的に言えば休戦ライン以南である。そうしてそういうことの一つの具体的な証明としては請求権の問題があります。請求権の問題は、日本の財産請求権で、韓国の実際管轄しておる、支配し得る地域だけにこれは限っておる。それからまた、向こう側の対日請求権あるいは財産というものは、これはもう明らかに全朝鮮と書いてない。韓国及び韓国民と書いてある。でありますから、請求権の問題で北のほうを除外しておるのですね。だからもう向こうは、ちゃんとそれは三条で、疑いなしに休戦ライン以南であるということをもう太鼓判を押して、そうして同調しておるのですから、これは問題ないです。
○戸叶委員 請求権の問題では、北のほうを除外しているかもしれませんが、それじゃ基本条約の三条のほうではどうなっていますか。韓国文で何と書いてありますか。――それよりもっとこういうふうに伺いましょう。この基本条約の三条を韓国との間で話し合って、合意に達して調印をなすったわけですね。そうすると、合意に達したといいながら、韓国の政府では達しないと言っているわけでしょう、いま外務大臣がおっしゃったように。何だかごじゃごじゃ言っているようで、そしてこれは韓半島全体に及ぶのだということを言っているようですけれども、そうじゃありませんとおっしゃいましたね。そういう話ははっきり煮詰めて、そして合意に達したのじゃないのですか。
○椎名国務大臣 それは私も一々その場に立ち会っているわけじゃありませんが、これは長い間かかって、そうして一字一句もう十分に詮議をして、そうしてそれに関連していまの請求権の問題も取りきめができたのでございまして、その後どういう説明をされようと、もう書かれたこの条約関係というものは動かないものでございます。御心配のようなことはございません。
○戸叶委員 書かれたものに対しては心配はない、そうして正しく解釈をされればいいんだ、こうおっしゃいますけれども、その間の過程において、この条約においてはいろいろ問題があるのですよ。いいですか、調印するまでにいろいろ問題があるから私たちは心配しているのですよ。私は長い間条約というものの審議に当たってきましたけれども、今度この条約を見て、しかも総理が、解釈が違っても合意があるし、国民の利益に反しないならばなんということをおっしゃったり、調整の必要はないんだなんということをおっしゃると、もう条約というものを私は審議する気持ちにならなくなるのです。こんなふうに調印する前に解釈が違っている条約を、だいじょうぶですよ、心配ありませんよなんて言われて、一体私たちは審議できますか。しかし私はもっと具体的に伺っていきます。
 それでは次に伺いますけれども、今回の基本条約第三条で国際連合の決議第百九十五号(III)を条文の中に引用しておられます。この決議の内容に入る前に、まずこうした決議というものを条文として用いて、もしこの決議が変わった場合にはどうなさいますか。
○椎名国務大臣 国連の百九十五号の決議は、その後ほとんど毎回の総会においてこれを確認しておるのでございますが、これがどういう状況で変わるか、ほとんどわれわれは予想がつかないのでありますが、かりに変わったという仮定のもとに、そういう場合に当面いたしましたならば、適当にこれを調整するということだろうと思います。
○戸叶委員 ここにできていて、その決議と違った形の決議の採決もあり得るでしょう。中国の国連加盟などが出てきて、そういう発言権が多くなってきますと、やはり決議というものは変わってくると思います。そういうときには調整するといま外務大臣おっしゃいましたけれども、総理大臣だったらどうなさいますか。
○佐藤内閣総理大臣 どうもただいま言われることが無理な御注文ではないでしょうか。無理な答弁を要求しておられるのじゃないでしょうか。いまの百九十五が変わったらという、まだ変わらないうちから変わったら、どんなに変わるかそれもわからない。まあたとえばと言われますが、ちょっとそれは重大な問題の、――ごく仮定のもとに話をするわけにいかない。ただいまも外務大臣が申しておりますように、そのときになって考えるんだ、こういわざるを得ないのじゃないでしょうか。だから、ただいまからどういうように変わるんだということの想定はちょっとむずかしいことでございますから、私はそういうような仮定の問いにはお答えはできません。
○戸叶委員 ちょっと待ってください。私は、総会の決議などというような、年じゅう表決が変わり、しかもこれを支持する人たちが減ってきている、こういうふうな不安定なものをこの条約に入れて問題が残らないかどうかということを確かめているわけなんです。いいですか。それで、しかもそういうふうな傾向は現にあらわれてきているじゃないか。こんな不安定なものをここに入れておいて、変わってきたらどうしますかということを伺っているわけです。
○佐藤内閣総理大臣 ただいま、いま変わったらどうなるかといわれるのでたいへんだと思いましたが、百九十五号()、そういう決議のあったことは御承知でございますね。そういう事実を基礎にとっただけなんです。これは基本条約もそうなんです。いま変わる変わると言われるから、どういうように変わるのか。いまこの条約を締結したその……。
  〔発言する者あり〕
○安藤委員長 お静かに願います。
○佐藤内閣総理大臣 この条約を締結したその段階においては、この百九十五というあった決議の事実そのものをとってやっておるわけなのです。そうしてこれが将来変わると言われるが、全然無効に帰するとか、そういうものはなくなるんだとか、いわゆる条約がもはや効力を失った、こういうような問題があるわけなのです。そういうときになると一体それはどうするかという、だからそういうことになると、それはやはり仮定の事実でございますから、それはそういうときが出てこないとわからないじゃないかということを私は申し上げておるのです。だからいまやっておりますことは、ただいまの百九十五というものが、これはもう過去の事実として厳然としてあるわけなのです。それを引用したということでございますから、将来変われば、そのときになりましてまた考えてみたいと思います。
○戸叶委員 総理大臣はたいへんにこの決議をここに入れたことに対して簡単に考えていらっしゃいますけれども、私どもは、この流動するということばをよくおっしゃいますが、流動するアジアの大勢の中にあって、この決議がそのまま有効になっているということは考えられない。その時点においてこの決議を入れたわけですけれども、たとえば中共が国連に加盟します。そうしてその発言権が多くなってきます。そうすると、この決議と違う方向の決議というものもあり得ると思います。そうなったときに一体法律的にどうなさいますかということです。仮定のことだからそういうことは答えられませんでは私は済まされないと思います。法律的にどういうふうになりますかということを聞いておる。
○椎名国務大臣 いま総理が言われたように、これは、ただいまの時点における韓国の管轄権はこういうものである、そういう過去の決議というものをそのまま引用したんだ。その決議を引用しておることが不適当な事態が起こればこれは調整しなければならぬでしょう。その事実は事実なんだが、その後たとえば、これはただいまの時点ではほとんど想像できませんけれども、管轄権の範囲が実際問題として減るかふえるかというようなことがかりにあれば、もはや三条だけではその事実をカバーすることはできない。でありますから、三条を変えるということになるか、あるいは別につけ足してこれを補足するか、そういったようなことは起こるだろうと思います。しかし三条の問題それ自体を動かすということになると、過去のこれによって築かれたいろいろな事態に対して非常な影響を与えるということになるから、まあこれは私の私見でございますが、これに補足するというようなことになるかもしれない、そういうようなことは、これは一つの例でございまして、めったに起こらないことなんだ。とにかく事実は過去にさかのぼってこれを曲げるわけにいかないのですから、われわれは歴史を変えるわけにいかないのと同じようなもので、しかしそれだけでは不満足だという事態はあるいは考え得るかもしれません。これだけ申し上げておきます。
○戸叶委員 いまの御答弁でございますけれども、すでにこの条約に一緒に参加し、というより、むしろ一緒に討議をされた韓国の李東元さんでさえもこういう発表をしております。勧告の決議を引用することはやめてもらいたい、こういうものが変わるようになるかもしれないということをはっきり言っているわけでございます。国連の討議というものはもうたな上げしてもらいたい、こういうことを言っているほど変わる可能性が多い。しかもいま、外務大臣の御答弁によりますと、変わった場合があったとしたならば、変わった場合にはこの三条を調整しなくてはならないから、何か附属書をつけるなり、あるいは三条を変えるなりする、こういうことをおっしゃったわけで、いたって不安定な条文をここに入れている。初めからこんな不安定ではない条文にしたらいいと思うのですが、初めから不安定な条文を入れているということを、いまみずからおっしゃったと私はいわざるを得ない。こういう点をもう一度伺いたいと思います。
○藤崎政府委員 国連決議百九十五号がいままではずっと再確認されてきているということはしばしば申しましたが、この再確認する決議がその後引き続きできておるということは、いわば副次的にこちらの有利な材料として申し上げておるわけでございまして、そのことと、百九十五号で明らかに示されているような大韓民国政府であるその客観的な事実に変更がない限りは、この第三条にとやかく変更を加えるとか、そういう必要は毛頭起こらないわけでございまして、決議がもう繰り返されないとかなんとかいうことと、客観的事態とは区別して考えるべきことだろうと思います。
○安藤委員長 関連して発言を求められておりますので、この際これを許します。穗積七郎君。
○穗積委員 関連でありますけれども、重要な問題で総理にお尋ねしたい。実は、私はもう少し先で基本問題についてゆっくりお尋ねする予定になっておりますけれども、たまたま戸叶委員の御質問で、非常に相手国である大韓民国政府のオーソリティーに関する重要な問題でございますから、便宜的にここで関連してお尋ねしておいたほうが議事の進行上よかろうと思うことと、今後の討議に非常に大事なことであります。すなわち、いまの御質問は、日本政府が交渉をして解決しようとしておる相手政府のステータスに関する基本的な問題なんですね。そういう意味で私はお尋ねいたします。
 従来、南朝鮮を支配しておるいわゆる大韓民国政府をどういうわけで承認するのか、どういう立場で承認するのかと、われわれは歴代の内閣に質問をしてまいりました。そのときに政府が常に答えられますことは、一九四八年十二月十二日の国連決議百九十五号で認められておるから、それをオーソライズする第一の理由とする。第二の理由は、七十数カ国がすでに承認をしておるので、この二つのことによって大韓民国政府をわれわれはオーソライズして認めるのだ、こういう御説明であったわけです。そうなりますと、このいまの外務大臣の御答弁は――その相手の政権を承認する、すなわち相手政府のオーソリティー、権威をつけるのに、従来の外務省答弁、政府答弁というものは百九十五号の決議に依拠しておったわけですね。ところがいまの椎名外務大臣の御答弁は、あるいは条約局長の御答弁は、その本質上の問題に触れないで、管轄権その他の地域に変更があったときには調整する、なるほどそれは調整が可能かもしれない。ところがこの百九十五号というものそのものが、やがて中国その他多数、スリーA地区の国家が国連に参加をいたしまして、そのことによって、この李承晩から発した大韓民国政府はかいらい政権であると、われわれはそう認識しておりますけれども、かいらい政権であるからこれは正統政府として認めることはできないという否決決議が国連において行なわれたときには、修正の余地はないのですね。管轄権の変更であるなら、それは修正で処理できるでしょう。ところが政府そのもののオーソリティーが否定されたときには、独立国として認められないということになったときには、この条約三条の基本的観念というものが総くずれになってしまう。そうすると、他の漁業問題、請求権問題、その他一切懸案を妥結いたしました相手国というもの、相手政府というものがネグレクトして、この地上から消えてなくなるわけですから、この協定全部はことごとくこれは空文化してしまう。そういう深刻な問題に関連しているわけです。しかも条約局長、私はここでついででありますけれども、総理の御答弁の前に事実を報告していただきたい。それは何かというと、一九四八年の第三総会における国連決議、これは幾たびか幾たびかあとで再確認をするという決議が行なわれておる。それに対する賛否の投票というものはどんどん変わってきておる。すなわち賛成国の数が、反対または中立、棄権をした数との比較においてどんどん少なくなってきているという事実です。これは言うまでもなく百九十五号決議というものが非常に国際情勢変動の中で不確定なものだということを証明しておる。そして、しかも相手国政府の権威というものを、管轄権ではない、管轄権の範囲ではなくて、権威そのものを認めるのに日本政府が自主的ではなく、そうではなくて、こういう決議に依拠しておるということになれば、はなはだしく不確定な、はなはだしくいままでの二カ国間における国交回復の条約としては例を見ない、このばかばかしいごまかしの決議が引用されておるということを証明するものだと思うのです。重大な点でありますから、まず条約局長から、あなたも御存じないといけないから、この決議がいかに変遷してきたかという事実を、ここで逐年の決議に従って、この百九十五号を援用されておる諸決議ですね、これが一体何年何月にあって、それに対する賛否の投票がどんどん変わってきたかということをここでまず明らかに報告をして、しかる後にその浮動性のもとに立つ韓国、大韓民国と称する政府の流動する、流動的な権威のない状態というものに対する政府の方針を佐藤総理からお聞きしたいのです。わかりましたか。
○藤崎政府委員 朝鮮独立問題に関する決議の票数が大体お示しのようなふうに変遷していることは事実でございますが、それと第三条とは関係がないのでございまして、第三条は、百九十五号に明らかに示されておるとおりの政府であるということを確認したにすぎないのでございます。その客観的事態が変わらない限りは、第三条には影響がないわけでございます。
○佐藤内閣総理大臣 先ほど来私が申し上げますように、いろいろ仮定の事情でどうなるかこうなるかという御議論をなさいます。私はそれは答えられないということを実は申し上げたのでございます。しかし外務大臣にいろいろ問題を提起された、皆さん方から問題を提起された、それに外務大臣答えて、そういう際は調整をするのだ、こういう答弁をいたしておりますが、いかに調整をするのか、こういうことをただいまの状況のもとにお問いになりましても、それは私は答えられないということは先ほど来申し上げておるとおりでございます。いまもなお同様でございます。ただいまお話しになりました論旨のうちに、穂積君自身が述べられたその論旨自身で、いかに仮定の事情に対して答えられないか、よくおわかりだとみずからお答えになっていらっしゃる、かように私は思います。
○穗積委員 関連で恐縮ですけれども、非常に重要な点ですから……。それではその不誠意きわまる御答弁に対して、私は一問ずつお尋ねいたしましょう。
 歴代の自民党内閣が大韓民国のオーソリティーを認めるその本質的な承認ですね、承認といいますか、国交関係を回復するという意味でなくて、オーソリティーを認める基礎を百九十五号に置いたということを従来ずっと説明してきた、そのことをあなたは認めますか。
○佐藤内閣総理大臣 それは認めます。
○穗積委員 そうであるならば、この決議というものは単なる勧告決議であり、そして総会のたびごとにその支持票が変わってくる、そうしてそれが否決される、そうすると、日本政府は自主的に認めたのではない、すなわち国連決議に依拠して認めたものでありますから、依拠しておる親柱が倒れたら大韓民国のオーソリティーを認めるということは消えてなくなるじゃありませんか。その矛盾を私は聞いておるのだ。あなたは矛盾しておりますよ。矛盾しておる。そんな不確定な承認がありますか。
○佐藤内閣総理大臣 私は、たとえばこの基本条約で日韓併合条約、合併条約、これがただいまもはや無効になった、こういう事実がございます。この事実でお答えをしたいと思うのですが、こういう事実はございますが、しかしこれを締結したそのときに、将来これが破棄されるかどうかわからぬとか、したがってそれは不安定な条約だ、かように思ったというのはずいぶん論理の飛躍だと、かように私は思うのです。日韓条約をいま締結しようとしておる。そうしてその中に取り入れた百九十五号(III)の決議というもの、これは過去の事実として厳然としてあるのです。その事実が将来変わるかもわからない、したがって不安定な条約だ、こう言うのはたいへん論理の飛躍だと私は思います。だから、そういうような事柄はしばらく預からしていただきたいと思います。ことに、これは御承知のことだと思いますが、GHQが占領軍当時にこの国の支配をしていた、そういう際も韓国が独立して、そうしてGHQのメンバーになっておった、こういう事実があると思います。その不実に基づいてただいまのような臨時韓国調査団、それが派遣されるようになった、そういういきさつがありますから……。
  〔発言する者あり〕
○安藤委員長 お静かに願います。
○佐藤内閣総理大臣 ただいま日本政府がこの国連の決議をオーソライズするというかそれにたよっておるという、そういう言い方は私は当然だろうと思うのです。将来そういうものが、それは全然いままで絶対にこういうことはないと思ったものが、日韓合併条約自身がただいまもはや無効になっておる、そういうことでございますから、それかといってあの当時、これは不安定な条約だ、こう言った人はだれもいないと思う。お互いが将来のことにつきましても、ひとつりっぱな家庭をつくるというのでスタートした、しかしそんなものも解消するかもわからない、だからそれは不安定だ、かようなことを言う人はない、かように私は思います。
○穗積委員 総理、これは相手国の領土の支配権の範囲とか、それからその政府の性格とか、そういういわば条件ですね。条件ではなくて、私が言っているのは、ここでは相手政権をオーソライズするかしないかという最も基本的な問題に触れておるわけですが、あなたの御答弁というものは周囲を持って回っておって、中核に対する御答弁は一つもない。
 それでは、その不明確な点を明快にするために、まず外務大臣に先にお尋ねしましょう。
 外務大臣、一体二国間において、相手政権をお互いに承認をするのに、一体こういう勧告決議を引用したような、他の国際会議または他国が決定したような決議を持ち込んで、相手の政府のステータスというものを規定した条約例がいままでにありますかどうか、あったらお示しいただきたい。
○安藤委員長 佐藤総理大臣から発言を求めておられますので、これを許し、しかる後外務大臣の答弁を求めます。
○佐藤内閣総理大臣 私は、まず穂積君にもお尋ねしたいのですが、これだけは了承していらっしゃることだ、韓国という一つのオーソリティーのあること、また北を支配しておるもののオーソリティーのあること、これはしゃんと権威のあることを御承知のことだと思うのです。南を支配している権威を無視はなさらないだろうと私は思います。どうですか、その点は。私は先ほど来お話を伺っておりますと、朝鮮半島における権威というものが二つあるというこの御意見はいままで出ておる。それでその場合に、南に権威を持たすのか、あるいは北の権威を認めてやるのかという、そういう議論だと思うのです。そこで私どもは、南については権威あり、かように考えて話を進めておるのだ、こういうことを言っておる。その点を十分御理解いただくなら、私はただいまのようなお話はまずないんじゃないのか、まずそのスタートが全然食い違っているのなら、これは何をか申しません。しかし、社会党の皆さまも私どもと同じようなステータスに立って、そして議論をしておられるのだ、かように思っておるからまず伺っておるわけです。ステータスが同じなら、その結論も必ず同じになるんだ、かように私、思いますから、いまあえて反問したわけです。それがたいへん気に食わないようですけれでも、そういう事実じゃないか、かように私は思います。
○椎名国務大臣 国連決議百九十五は、御承知のとおり事実関係を述べるとともに、これに対していろいろな意見、勧告等が加わって、非常に長い決議でございます。基本条約第三条は、あそこに述べておるとおりの政権ができたことを認める、こういうのでありまして、事実関係を認めておるので……。
○穗積委員 そんな説明を聞いているんじゃない。ほかに例があるかということを聞いているのです。例の有無を聞いている。
○椎名国務大臣 例のことは条約局長から……。
○藤崎政府委員 基本関係条約第三条の問題から離れて、今度は承認の話になってきたようでございますから、そっちのほうの説明を申し上げますが、承認というのは、政府の承認は先生もよく御存じのとおり、国際法上では一ぺん承認したら取り消しはきかないものだということになっております。ところで、この大韓民国ができて、国連決議百九十五号ができましてから大韓民国を承認した政府は、ほとんどすべてこの決議を引用しまして大韓民国政府を承認いたしておるわけでございます。それと日本は全く同じ立場でございます。したがいまして、この決議がその後否決されるとかなんとかいうことはみだりに予想すべき問題じゃないと思いますが、そういうことじゃなくて、あのときの現実の状態に根本的な変化があれば、これはもう前提条件がくずれるわけでございますから、承認の取り消しとかいうこともあるかもしれませんが、そういう客観的な事態に影響がない限りは、決議の票数とかなんとかいうものは全然関係のない問題である、こういうことでございます。
○穗積委員 順を追うてやりましょう。
 総理からお尋ねがありましたから申し上げますが、われわれはいまの韓国政府のオーソリティーというものを認めるわけにいかない。というのは、いいですか、これは国連の朝鮮に対する――私はこれはあとで全部、私の質問のときに説明を求めるつもりですけれども……。
  〔発言する者あり〕
○安藤委員長 お静かに願います。
○穗積委員 ちょっと黙っておれ。それはきょうは聞かないが、それは私の質問のときに譲りまして、いま出たついでですから、究明する点があるから、一括して私は答弁を求めておきましょう。もし十分な答弁がなければ、私のときに留保しておいて続けたいと思っておる。
 そこで第一に、お尋ねがありましたから申し上げますけれども、国連の決議ですら、対朝鮮の国連諸決議の中でも、一貫して認めようとしておるものは、統一、独立さらに民主と、この三つというものが動かすべからざる要素になっている。それで初めてローフルがバメントといっている。ローフルがバメントの内容は何かといえば、統一、独立、民主です。いいですか。その中で、統一については、石野委員からきょう戸叶委員に至るまで、統一問題に対する政府の態度が間違っておるという御質問があったので、譲りますが、独立政府として、一国の軍事指揮権、それから一国の経済を決定する財政権、これの独立のない国が一体独立国と言えますか、その点だけとってみても。国連決議の第二の要素である、ローフルがバメントの要素である独立というものが欠けておるではありませんか。したがってわれわれは、国連決議ですら決定しておるその独立、自由の政府としていまの朴政権というものを認めるわけにはいかない。いいですか。そういう態度をとっておりますが、政府はそうではなくて、ローフルがバメントとして言っておられるわけでしょう。そうであるなら、二カ国間における――特に韓国は日本から分離独立する国です。分離独立する国ですから、もとの日本、そのときは朝鮮を含んでおったと日本側の政府は理解しておるわけでしょう。それが政府の論理によれば、かつて日本であったものが独立したときには、その独立国とそれから植民地支配しておったもとの国との間において、二カ国間で相手国のステータスとオーソリティーというものを認めるのが当然の形式であり、実質的な方法であると私は思う。それをこのあいまいきわまる国連決議をもってきておる。しかも原文と違っておるのは、条約局長、あなたは外国がみな援用しているなんと言っているけれども、日本の援用の中で、サッチという字をなぜ抜いたか。サッチはちゃんと原文にはありますよ。サッチガバメントと書いてある。それをなぜ抜いたのですか。重要なごまかしです。重要なぺてんだ。そんなでたらめなことを言って国民をごまかせると思ったら大間違いですよ。なぜサッチを抜いたか。このサッチという一文字は重要な意味を持っている。いいですか。
 そこで、一体政府の大韓民国承認の時期はいつですか。承認の時期について総理大臣からお答えをいただきたい。
○佐藤内閣総理大臣 さっき外務大臣がはっきり答えたように、これは記録に残っておりますが、平和条約発効のとき、かように申しております。
○藤崎政府委員 サッチと言っただけでは何のことかわからないわけでございまして、あのサッチは、第二項に書いてあることを全部受けておるものといままでも御説明申し上げておりましたが、あの第三条に、第二項に書いてあることを全部書けばそれでいいわけでございますけれども、それでは長たらしくなりますし、そこで決議に明らかに述べられているとおりのということで、その意味をあらわしたわけでございます。
○戸叶委員 いまの問題でたいへんにいろいろと発展をしていったわけですが、私もいまの穗積委員が聞かれましたところの、サッチというのをなぜ抜かしたかということに非常に疑問を持ったわけでございます。このサッチというのは、決議の中には「ザ・オンリー・サッチ・ガバメント・イン・コリア」と書いてあるわけです。このような法律的な意味を持つ政府ということをはっきり限定しているわけですね。ところが、この三条になるとサッチを抜いてしまっておりますから、韓国の言うような解釈になっちゃっているわけですよね。サッチというものを抜くと抜かないでは非常に大きく解釈が違ってくるわけです。私はいま条約局長の答弁を聞いておりますと、このサッチというのは長たらしくなるからとおっしゃいましたけれども、私はサッチは別に長たらしくならないと思います。どうしてそういうようなことをおっしゃるのですか。
○藤崎政府委員 私の説明が不十分だったと思いますが、「唯一のこの種の」ととたんに言いましても、「この種の」とは何のことだかわけがわからない。そうすると第二項を全部引用せざるを得ない。それならば「決議に明らかに示されているとおりの」でかえって明確ではないか、こういうことでございます。
○戸叶委員 わからせるためには少しぐらい長くてもいいじゃないですか。どうせこんな決議などを引用しているのですから。ですから私はやはりここでは、サッチということを入れると入れないでは、解釈上非常に違うということだけを指摘しておきたいと思います。
 それから、私はいままでの論議を繰り返そうと思いませんけれども、総理大臣もお聞きになりましたように、この百九十五号(III)というような、常に流動する国際情勢の中においては、場合によってはその決議と変わった決議が出るような可能性のあるその決議というものを、この条約の中にそのまま引用したということが私どもは問題があるということを指摘しておくわけでございますから、この点もよく考えておいていただきたい。考えてももうつくっちゃったのだからしょうがないとおっしゃるかもしれませんけれども、しかしそういうところに問題があるのです。しかし私は、それに対してのはっきりとした、解明できるような答弁が伺えなかったことはまことに残念だと思います。
 そこで、あとからまたこの問題については同僚の議員が質問すると思いますから次に入りたいと思いますが、この委員会が始まって最初の質問に立たれた小坂さんの質問に対して、政府は百九十五号()を、この基本条約の三条に対してはこういうふうに三つに分けて答弁しております。すなわちその一つは、この条文は、韓国がどういう性格の国家であるかというこの決議の趣旨を、そのまま引用したにすぎないということがまず一つ。その次はそれによって韓国の領域を規定するというようなものではない、これが二つ。三つは、したがって韓国政府の支配する領域、または朝鮮全土に及ぶという韓国憲法とは全然関係がない、こういうふうな答弁をしておられるわけです。そうすると、この三条では管轄権の及んでいる範囲といったものであって、その姿をこの条約で規定したのである。しかし領域は言っていない。こういうことになりますと、一体領域というのはどこを言うのですか。
○藤崎政府委員 この条約は国連決議をそのまま引用しましたので、国連決議で領域という観念に触れておりませんから、この条約でも触れておらないわけでございます。
○戸叶委員 佐藤総理大臣、いま私の質問と条約局長の御答弁おわかりになりましたね。そうするといま国連決議を引用しただけですから領域には触れておりません、こういう御答弁でした。私が伺っておるのは、領域とはどこですかということなんです。
○藤崎政府委員 国連決議に示されているように、大韓民国というのは、統一朝鮮がなかなかできないので、国連の委員会が観察し得る範囲内で、ああいう政府をつくったといういきさつが詳しく書いてあるわけでございますが、あのとおりの政府でございまして、そうしてその管轄権は、したがって南の部分にしか及んでいない。しかしこれはいわば仮の姿であって、理想は統一朝鮮であるわけでございます。統一朝鮮になりましたら、その領域は当然に朝鮮半島全域に及ぶべきものであるということはこれはまたこの国連決議の趣旨からも明らかなところであると思います。
○戸叶委員 韓国というものは、国連決議できめられたような性格のものである。国連の決議には、領域は言っておらない。統一がされたならばこの朝鮮全体に及ぶのだ。――いまの領域はどこですかということを言っておるのです。
○藤崎政府委員 大韓民国の現在の支配及び管轄権がその本来あるべき姿になっておらないから、わざわざ国連でも領域という観念を入れなかったのだろうと私は想像するわけでございます。したがって日本政府が簡単にここできめつけるわけにはいかないので、客観的事実は歴史的にああいうことで明瞭だと思うのであります。
○戸叶委員 条約局長、私はそういうことを聞いておらないのです。領域というのはどこですかということを伺っておるのですから、そのことだけお答えになっていただきたい。
○藤崎政府委員 領域ということばも定義がはっきりきまっておることばではございません。管轄権が及んでいる範囲だけを領域という場合もございましょうし、それともあるいは潜在主権が及ぶところも領域だというところもございましょうし、あるいは将来統一されるべき本来の国家の姿のところを領域という場合もございましょうし、一つに、一義的にきまっておりませんから、さっき申し上げましたように管轄権はこう、そうして将来統一朝鮮の領域となるべきところはこう、こういうふうに申し上げるより、客観的事態がそうなんですからしょうがないのであります。
○戸叶委員 総理大臣、ちょっとお伺いしたいのですが、この条約にイニシアルをして、そうして向こうの韓国では批准をいたしました。非常な反対の中に批准をしたわけですけれども、いまここで政府は批准してほしいと出されておるわけです。そうするとそこで話の中に、おそらく領域とはこうであるということを、日本の政府も考えた上でおやりになったと思う。領域はわからないのだ、管轄権だけでいいんだなんという条約の取りきめ方はないと思います。どういういうふうなお考え方でお臨みになりましたか。
○高辻政府委員 この朝鮮の問題については、先ほどからいろいろお話がございますように、いままで宣言が幾つかございますが、それに基づいてしておる国連の方針と申しますか、これは御承知のとおりに、いずれも朝鮮地域に、朝鮮人の意思によって一つの単一の独立国家が形成されるべきこととしておるわけです。このような単一朝鮮国家が、わが国から分離された朝鮮半島とその付属島嶼の全域を領域とするものであろうことは、これは想像できることでございますが、現実にはそのような単一朝鮮国家といものは成立しておらない。これは現実として否認することはできないわけでございます。他方、単一朝鮮国家を実現することが国連の方針であるということは、御承知のとおりでありますが、大韓民国が国連の方針のもとに、やはり統一朝鮮国家の実現を期している国家であるという事情も、これは御承知のとおりであると思います。こういうわけで、現在の時点で申しますと、外国がその単独の判断によって大韓民国の領域を認定し切るわけにはいきませんが、かりに同国が有効に、管轄権を――朝鮮独立国家というものができる以前、現在同国が有効に管轄権を行使しておりますのがいわゆる休戦ライン以南であることは、これは明らかでありますので、現実の問題処理の必要に応じますためにはそれで十分であるという考えでおるわけでございます。
○戸叶委員 そうすると結論的に言いますと、管轄権の及ぶ範囲はこの休戦ラインの以南である、こういうふうに解釈していいわけですね。
○高辻政府委員 そのとおりでございます。
○戸叶委員 それではなぜこの三条にそういうことをはっきりいわなかったのですか。いわないで、ただ管轄権がここに及ぶというだけで、領域というものをお入れにならなかったわけですか。総理大臣からひとつ……。
○椎名国務大臣 それはこの条約の性質上国連決議を引用して、それでもう十分であったからであります。
○戸叶委員 それでは韓国とアメリカでいいです。韓国とアメリカとの間で結んだ条約の中でも、やはりこの領域ということを入れておりませんか、おりますか。
○藤崎政府委員 私は正確な用語は記憶しておりませんが、米韓相互防衛条約で、現在大韓民国政府が支配している地域及び合法的にその支配のもとに入ることのあるべき地域に適用があるというような表現があったことは記憶いたしております。
○戸叶委員 それよりもっとコンクリートな表現をしております。たとえばいまお引き合いに出されましたこの相互防衛条約の三条の中に、「現在それぞれの行政的管理の下にある領域」というふうに、領域をはっきりうたっております。こういうふうにこの条約で領域をうたっておりながら、こっちの条約でうたわない。そしてしかも、たとえば日華条約の交換公文の中には、領域についてもあとで困らないような形になって残している。ところが、この条約だけそういう点をはっきりさせないという理由は、やはり私は韓国側の、韓国の憲法の中に、すなわち管轄権の及ぶ範囲は三十八度の南であるけれども、その韓国の領土というもの、領域というものは韓半島全部に及ぶという、その韓国の憲法を考えてやってのこういう三条の引用になったのではないか、こういうふうに考えるのですが、この点はいかがでございますか。
○藤崎政府委員 先ほどもちょっと申し上げましたように、この領域、テリトリーということばは多義的に使われる。したがって、この米韓条約でテリトリーということばを使っておりますが、これは地域というのと全く同じでございまして、つまり休戦ライン以南と同じことでございます。この管轄権の及ぶ範囲という意味では、国連決議でも基本条約第三条でも非常に明瞭でございますので、私は戸叶先生が領域の問題をお取り上げになって御質問になったときは、それとは違う意味で、もう少し何かふくらみのある意味で、この主権の将来及ぶべき範囲とか、現在はこうだけれどもとか、そういう別の意味で領域をおっしゃっているものと思って、ああいうぐあいに申したわけでございますが、この米韓条約の領域は、このあとの意味と違って、前のごく通俗的な、エリアというのと同じ意味に使われていると了解いたしております。
○戸叶委員 いまの条約局長の答弁の中にも、私が何かあとで含みのあるような質問をするかと思って非常に警戒したようなことをおっしゃったのですけれども、私はそうじゃなくて、一体この基本条約の三条で国連決議の百九十五号(III)を引用しながら、しかも領域はあいまいにしておくということでは、非常に私たち日本人の立場から考えるならばおかしいじゃないか、こういうふうな領土なり領域というものをはっきりさせないから、韓国のほうでは韓国の憲法の三条は生きるんだということを主張する、そういう主張できるような余裕を残しておいたのじゃないか、こういうふうに考えるのですけれども、この点はいかがですかということを伺っているわけです。
○藤崎政府委員 この米韓条約に使われているような意味の領域でございましたら、非常に日韓基本条約でも明瞭なわけでございまして、これは第三条で示されておるわけでございます。
○戸叶委員 そうしますと、もう一度念のために、この問題を最後にいたしますので伺っておきますけれども、韓国、この基本条約にいうところの管轄権は三十八度線、休戦ラインの南である、そうしてその管轄権の及ぶ範囲、領域というふうなものも休戦ラインの南である、そうして、領土というものはそうするとどういうことになるわけですか。領土と領域ということはどういうふうになるのですか、その関係は。
○藤崎政府委員 領土と領域ということばは普通同じ意味に使われていると思います。領域ということばを私どもが避けておりますのは、この第三条の根拠にしております国連決議で使っておらないから領域ということばを避けておるわけでございまして、米韓条約で領域といっているのと、基本、国連決議などでエリアといっておるのは、全く同じ意味である、かように考えます。
○戸叶委員 この問題についてもいろいろありますけれども、何か時間的な関係もあるようでございますので、私は次の請求権の問題に入って質問をしたいと思います。
 私がこの条約の経済協力及び請求権についての協定を読んでおりましていろいろと過去の歴史を振り返ってみますと、納得のできない点がたくさんあります。たとえば平和条約の第四条の(a)(b)の解釈について、かつて岡崎国務大臣は、昭和二十七年の五月十四日にこういうことを言っておられます。「私は、この機会に、日本と大韓民国政府との間に従来交渉を行って参りましたその経過の概要を御報告したいと思います。」と言われて、「第一の財産及び請求権の問題といいますのは、サンフランシスコにおける平和条約第四条の(a)項によりまして、両国間で特別のとりきめをして解決することになっておるのであります。同時に、やはりこの第四条の(b)項によりますと、わが国は、朝鮮においてわが国及び国民が持っていた財産に対して米軍政府がとった処分の効力を承認することになっております。そこで問題は、この処分の効力を承認するという「承認」が、どういう意味であるかということになるのでありますが、この点では日韓双方の意見が食い違っておりまして、話がまとまらないのであります。韓国側では日本の朝鮮領有を不法であったというふうに初めから前提をいたしておりまして、かかる不法な領有の上に蓄積された日本の財産は、ことごとく非合法的性質を帯びたものである、従って米軍政府の命令第三十三号、いわゆるヴエステイング・オーダーと申すものでありますが、及び米韓協定によって一切韓国のものとこの財産はされたのである、日本はもはや何も権利を持っていない、むしろ韓国側は連合国並びに日本に対して賠償に近いある種の要求をし得るものであるというような見解さえ表明して来たのであります。これに対してわが方は、韓国側のこのような主張は国際法上も歴史的にも問題とならぬのだという点を説明しておりました。現にサンフランシスコの平和条約におきましても、日本の朝鮮にある財産の処理については明文の規定がありまして、両国間で協議をするということになっております。また問題となっております平和条約第四条の(b)項、すなわち日本が財産処分の効力を承認するという意味も、その条文並びに一般国際法の原則、通則によって解決せらるべきものであって、朝鮮の米軍政府が占領軍としての資格において、日本の私有財産について敵産管理約の処分を行った場合においても、その財産に対する元の所有権は消滅しない、たとえば売却行為が行われたときに、その売却代金に対しては、日本側の所有者が請求権を持っておる。」と、つまり売却されたときでも、もとの所有者はその権利を持っているんだ、日本人の財産というものは失ってはおらないんだということをはっきりここで答弁されているわけでございます。
 ところがこの、政府が一九五七年の十二月三十一日にアメリカ政府の見解を求べた口上書と日韓間の声明書で、突如として前に行なった在韓財産に対する請求権の主張を撤回したわけです。この突然の変化はどこから起きてきたか、日本の解釈を変えた理由は何であるかということを私はまず伺いたい。
○椎名国務大臣 過去のいきさつでございますが、政府当局からお答えいたさせます。
○戸叶委員 この協定は重要な協定であり、国民の権利義務を含んでいるものでございますし、これは当然政府の責任者がお答えになっていただかなければならない問題だと思います。
○椎名国務大臣 大村の抑留朝鮮人、それからまた日本側としては拿捕漁船等がございましたが、これらの問題の解決の際に、従来の解釈を変えて現在のような状況に至ったのでございまして、その間の事情につきましては、なおアジア局長から詳しく申し上げます。
○戸叶委員 いまの外務大臣の御答弁でございましたけれども、それは正確に一体いつからでございますか。抑留者の問題や拿捕漁船の問題等もございまして、その意見を変えましたとおっしゃったわけですけれども、それは一体いつごろから変わってきたのでしょうか。
○後宮政府委員 いま大臣から申されました船の問題、抑留者の問題を解決いたしましたのは昭和三十二年の十二月三十一日でございます。
○戸叶委員 これは三十二年の十二月三十一日、一九五七年ですね。そうしますと、一九五七年十二月三十一日には、アメリカ政府の見解を述べた口上書と、日韓間の声明書で突如として出したわけでしょう。私はなぜ突如として出したか、その間にどういうことがあってここへきたかということを伺ったわけです。そうしたら、いまの御答弁は、抑留者のこと、船の問題があってこうなったのだ、しかもそれは私が口上書を出したというふうに指定した日と同じわけですね。だからその間にどういうことがあってこうなったかということは何も聞かれていないわけです。だから、その間に何か特別の取りきめなり何なりあってここまできたのかどうかということを伺っておるわけです。
○藤崎政府委員 第四条(b)項の解釈につきましては、実は平和条約が国会の御承認をいただきますときには、当時の西村条約局長はちょうど米国解釈みたような説明をいたしておったのでございます。しかし日本側といたしましては、韓国側と交渉いたしますときは、若干交渉技術上の考慮も加えまして、その後いろいろな方面の学者の意見も徴しまして、最大限ああいう主張が可能であるならば、まず日本のイニシアルなポジションとしてはああいう態度をとるべきではないかということで、ああいうベースで交渉いたしたわけでございます。したがいまして、弁解になるようでございますが、あの米国解釈に急転直下変わったわけではなくて、もとは、平和条約が締結された当時は、実は日本政府もああいうふうに国会では御説明いたしておったわけでございます。
○戸叶委員 私はそういうことを伺っているのじゃないのです。何かの協定か何かあって、こういうふうになったのかどうか、そういうことを伺っているのです。
○後宮政府委員 いま条約局長がお答え申しましたとおりで、その裏に別に何も特別の申し合わせとか了解等ございません。
○戸叶委員 少なくとも国民の私有財産を放棄するという問題でございますから、そう簡単に、しかも政府がこの瞬間までは個人の財産は守られているんだということを説明してきているのです。そして急にこの段階になって韓国との間でこういう声明を出しているのですから、やはりその背後には何かの取りきめか何かなければこういうことはできないのです。国民の私有財産を放棄していることになるのですから。ですからそこは大事な問題だと思いますから、もう一度よく説明していただきたいと思います。
○後宮政府委員 御承知のとおり、サンフランシスコ条約の四条の中であの軍令の効果を認められました条項というのは、最後の署名直前に入ってまいりまして、われわれも非常に驚いたわけでございまして、それで、それまではこの請求権問題については、相互放棄とかいろいろな案が考えられておったわけでございますけれども、米側の最初の立場は、こういうことは両者がさしで話し合えばいい、あらためて平和条約できめておく必要はないという立場であって、大体そのラインでサンフランシスコ条約ができるものと予想しておりましたところ、最後のこのサンフランシスコ会議の直前にああいう条項が入ってきて実はわれわれ驚いた次第でございまして、あれ以来いま条約局長が申しましたような考え方にならざるを得ないんじゃないかという立場だったわけでございます。ただ、韓国側と交渉いたしますときに、向こうは八百億を出してくるとかなんとか非常にいろいろな説があったものでございますから、いま条約局長の申しました交渉技術上の考慮も加えまして、いろいろ法理論を検討いたしまして、一応この在韓財産に対するすべての権利を留保するというたてまえで交渉を続けてきたわけでございますが、韓国側がアメリカにも泣きつきまして、結局あの米側の解釈というものが出たわけでございます。結局あの年末に、あのときに問題になっておりました抑留者の引き取り等一括ひとつこの年末にいままでの懸案をすべて洗って、そうして今後の交渉を軌道に乗せるという考慮から、従来交渉上の技術として突っぱっていた立場を一応譲って、日本側もやむを得ないと考えておりましたサンフランシスコ条約のこの当初の解釈に戻ったというのが実情でございます。
○安藤委員長 この際関連質問が出ております。これを許します。岡田春夫君。
○岡田委員 関連ですから簡単に申し上げますが、後宮さん、じゃ伺いますが、それだけ重大な変化を行なった場合に、日韓間においてそのような変化の何かの文章上による取りきめがあったのでしょう。ないと言えますか。ないと言うんならないとはっきり言ってください。あるかないか。
  〔発言する者あり〕
○安藤委員長 お静かに願います。
○後宮政府委員 米軍解釈をとるということを何か文書で約束したかという……。
○岡田委員 いや、全体のだ。さっきあなたの言ったこと全体のだ。あなたの言ったことだ。
○後宮政府委員 たしか年末に拿捕船の問題等あれしましたときに、今後の交渉を軌道に乗せるいき方としてそういういき方でいこうということを、何かメモか何かで取りきめたことはございます。
○岡田委員 あるでしょう。
○後宮政府委員 はあ。
○岡田委員 先ほどあなたはないとおっしゃったが、あるのです。これは非常に重大な問題です。文化財にも関係している問題があるはずです。これは佐藤さんよくお聞きください。あなたのおにいさんですよ。岸総理大臣のときに、昭和三十二年の十二月三十一日に日韓の覚え書きをきめている。これに基づいてただいまの問題、それから拿捕の問題、大村に収容されている人の問題、並びに文化財百六点を返還する問題全体の秘密協定がある。これは公表されてないから私は秘密とあえて言う。いまだに公表してないです。日韓間における覚え書きがあるのです。それによって変わったのです。あるということをはっきりアジア局長が言ったんなら、その覚え書きを出してもらいたい。出せますね。はっきり出してもらいたい。出せますね。
○藤崎政府委員 いまおあげになりました項目について、全部取りきめがあったかどうか正確に記憶しておりませんが、取りきめたものは発表しております。
○岡田委員 外務大臣、はっきり聞かなければだめだ。そういう事務的ないいかげんなことを言ってはだめです。その覚え書きというものがあるんなら――あるという事実かあり、それを発表していると言うんですから、外務大臣、その資料を提出してください。それを出してください。その資料を出してください。外務大臣、外務大臣でなければだめです。出してください。外務大臣でなければだめです。
○椎名国務大臣 発表しているものでございますが、あらためてそれを資料として提出いたします。
○岡田委員 質料を提出するならひとつ出してください。出してもらいたい。
○戸叶委員 私も、こういうふうに変わってきて、そして一九五七年の十二月三十一日に日韓間の声明書を出すまでには、何か出したはずだというふうに考えておりましたが、いま出したということがはっきりしております。そしてここへ提出されるということもはっきり約束されたわけでございますから、この問題については質問を留保して、なるべく早くそれを出していただきたい、こういうことを要望いたします。
 それから時間の関係で先を急ぎますが、こういうふうな、間のいろいろな説明を抜きにいたしまして、これまで日本側が一九五七年まで日本に固有の在韓の日本人の財産はあるということで主張をしてまいりましたその根拠は、アメリカの出した軍令三十三号というものは国際法違反である、こう考えられたから主張してきたわけですね。
○藤崎政府委員 簡単に申せばそのとおりでございます。
○戸叶委員 そうしましたならば、当時の条約局長であった――当時と申しますか、この問題が質疑応答に出ました第三十八国会のころの中川条約局長は、「軍令三十三号というものは、へーグの陸戦法規四十六条にきめてあるものを越えた措置であると考えております。」と、こういう答弁をされておるのです。この「越えた措置」というのには何かあるわけですか。それとも、三十三号というものはへーグの陸戦法規四十六条に違反するものであると、そのものずばりと言ってもいい性質のものですか。越えた措置であるとは違いますか。
○藤崎政府委員 違反と言ってもよろしいと思います。
○戸叶委員 それでは、違反であることをなぜ政府は請求権の問題で、講和条約の二十二条には紛争の解決事項があるのですから、国際司法裁判所に提訴をして、そうしてこの問題を取り上げなかったのですか。怠慢だといわざるを得ないと思います。
○藤崎政府委員 日本国との平和条約でそういう請求権を一切放棄しておるわけでございます。
○戸叶委員 ちょっと、そういうごまかしをしないでください。平和条約で請求権を放棄しているとおっしゃるのですけれども、この日韓間の請求権の問題で、しかも個人の財産というものは、平和条約の締結されたころは、韓国に日本人の残してきた財産権はあるという解釈で五七年まで持ってきたんじゃないですか。放棄したとは何事ですか。このころは、へーグの陸戦法規に、アメリカのとった軍令三十三号というものは違反であるんだというその根拠に立って、韓国にある日本の財産というものはあるんだ、財産権はあるんだということで解釈してきていまのような問題になったのじゃないですか、そうでしょう。
○藤崎政府委員 平和条約四条(b)項で言及しております軍令三十三号の措置というものは、終戦直後にとられたわけでございます。つまり、この平和条約前にとられたわけでございまして、したがいまして、平和条約の第十九条で「日本国は、戦争から生じ、又は戦争状態が存在したためにとられた行動から生じた連合国及びその国民に対する日本国及びその国民のすべての請求権を放棄」する、これに含まれるわけでございます。
○戸叶委員 それでは、この講和条約を締結したあと、いいですか、締結したあと、一九五七年まで岡崎外務大臣が国会でおっしゃったように、韓国にある日本人の財産の請求権はあるということを言っておられるわけですが、そういうことはどこから出てくるのですか。放棄したといっても、このときにまだ放棄していないのですよ。
○藤崎政府委員 何か実態の問題と説明のしかたが、一時そういう説明のしかたをしたということと混同しておられるように思いますが、もし四条(b)項がアメリカ解釈のようにとられるのが正しい、いま日本政府はそういう立場をとっておるわけでございますが、四条(b)項がアメリカ解釈のように解釈されるべきものであれば、終戦直後にこれはもう完全に没収されておるわけでございます。
○戸叶委員 答弁を少しごまかしてしまっていると思うのです。いいですか。講和条約を結んだときには、まだ韓国にある日本人の財産権はあるんだということは、はっきりしているじゃありませんか。五七年になるまであったのですよ。平和条約は、結ばれたのは五二年なんですよ。だから、その当時平和条約を締結したときは日本の財産権というものはあったのですよ。それが五七年になってなくなりましたという声明を出したわけでしょう。それでいま私がなぜそんな突然に異変したのかということでいろいろ問題が起きたわけです。だから、平和条約ではあったわけなんですよ。そのときには私有財産は認められていたわけです。ほかの私有財産なり財産権を講和条約で失ったのとはこれは状態が違うのですよ。いいですか。たとえば韓国が日本の財産を没収したとかなんとかいうならわかるのですよ。じゃなくて、アメリカがその間に介入しているのですよ。だからへーグの陸戦法規に違反したと言っているのじゃないですか。
○藤崎政府委員 軍令三十三号の措置というものは、終戦直後にとられたものであります。これは平和条約前にとられたものである。この軍令三十三号の措置が没収の効果を持つのだということであれば、これは平和条約の発効前にそういう効果があったわけです。それで、それに対して日本は請求権を放棄しておるわけでございます。
○戸叶委員 違いますよ。同じことを繰り返しますが、いいですか、軍令三十三号でアメリカは韓国にあった日本人の財産というものを没収はしていないんですよ。ベストしたんでしょう。取得したわけでしょう。そうしてトランスファーしたのですね。韓国に協定によって移譲したわけでしょう。しかし、そのことは認めても、韓国に置いてきた日本人の財産権はあるという解釈できておるわけです。なぜあるかというならば、軍令三十三号というものは違反であるからということでもってずっと主張してきたわけです。そうしてつまり平和条約を結んだその時点においては、韓国に置いてきた日本の財産請求権はあるという解釈をしてきておるんですよ。そうでしょう。平和条約を結んだのは五二年ですよ。そうしてずっときて五七年になって初めて、おやおやあれは失ったものだということで、つまりさっきおっしゃるように、韓国がアメリカに泣きついたものだから、それでああいう声明書を出したということを説明されたじゃありませんか。この時点においてあったのじゃないですか。だから当然平和条約の二十二条で、紛争処理の解決ということで、政府は申し入れをすべきであったというふうに私は考えます。訴えるべきであったと思います。
○藤崎政府委員 軍令三十三号の措置というものは終戦直後にとられたもので、もしその措置の効果として没収ということであるとすれば、その措置の効果については争いがあったわけでございますが、措置がいつとられたかということについては争いはなかったわけであります。もしその措置の効果として単に管理とかいうようなことじゃなくて、その措置の効果が没収であるとすれば、措置のとられたときから没収の効果があったということは否定できないわけでございます。それは平和条約発効時以前であるということでございます。
○戸叶委員 ちょっと条約局長、私はわからないのですよ。いいですか。この在韓の日本人の財産権というものの権利を五七年になって初めて放棄したのですよ。だから講和条約後におきましても、日本の政府は五七年まで韓国に日本人の財産権はありますよといって答弁してきているじゃありませんか。ありますよといって答弁をしてきているじゃないですか。
○藤崎政府委員 私は見解を変えたということを否定しておるのじゃないのでございます。ただ、その見解を変えた問題というのは、昭和二十年の終戦直後にとられた措置について見解を変えたわけです。その措置がとられた時期というのは、平和条約発効時前なんです。だから平和条約によってカバーされるということは否定できないわけでございます。
○戸叶委員 しかし、へーグの陸戦法規に軍令三十三号は違反するのだ、それをいま認めたんですよ。そうすると、日本人の在韓財産というものはずっとあったわけなんですよ。それだから、あります、あります、ありますということで、五七年まで国会の答弁で引きずってきておるんでしょう。そうでしょう。それだのに、平和条約の時点で日本はなくなりましたなんというのじゃつじつまが合わないじゃないですか。それでは日本の国会でこういうふうにあります、ありますと言ってきたのはどういうことですか。ごまかしですか。
○藤崎政府委員 平和条約十九条の関係の説明は、先ほど申し上げたとおりでございます。四条(b)項の解釈につきまして日本政府の見解が変わってきたことも、これも事実でございます。しかし、いま先生は、初めから四条(b)項の解釈について非常にリジッドなと申しますか、見解をとっておったように言われましたけれども、先ほど申し上げましたように、平和条約を国会の御承認をいただきますときの国会では、当時の西村条約局長は、その後日本政府も結局賛成しましたアメリカ解釈と同趣旨の説明を申し上げておるのでございまして、その後にそれじゃどうしてああいう解釈をとったかといいますと、これは先ほども申し上げましたように、韓国との交渉技術上の考慮を加えてああいうふうに見解を変えたのだということでございます。
○戸叶委員 私の質問に的確な答弁をしていただいておりません。皆さんが聞いているとおりです。いいですか。西村条約局長がアメリカと同じ解釈になったというのは五七年の日韓間の声明が出てからですよ。出ないうちにやったとするならば、そういうふうな発表もしないで、一方においては、日本人の在韓財産権はありますよ、ありますよと言いながら、アメリカのとった行動はしかたがないから承知しますというふうに、両方両立して御答弁していたのですか。そんなことはなかったはずですよ。
○藤崎政府委員 平和条約が国会の御審議にかけられましたのは、一九五一年でございまして、そのときに西村条約局長は、私が先ほど来申上げているような趣旨で御答弁申し上げております。
○戸叶委員 それでは、西村条約局長は、韓国にある日本人の財産権というものは、韓国からアメリカに泣きつかれて、そうしてアメリカの解釈と同じような形の解釈をとってきた。しかし、一方において、岡崎外務大臣は、五二年――五一年よりあとですよ。五二年において、在韓日本人の財産権はあります、こういうことを言っているのですよ。これは岡崎外務大臣ですよ。どう違うのですか。
○藤崎政府委員 したがいまして、平和条約の御承認を受ける国会でとった解釈と、その後韓国との交渉の技術的な考慮を入れて変えたと申し上げたわけでございます。それがまたもとのとおりに変わったわけでございまいます。
○戸叶委員 私は、あんな答弁では納得できません。これは日本人の、しかも私たちの同胞の韓国に置いてきた財産権の問題に関係がございますし、いまこの問題が非常に大きな問題になっておりますので、総理大臣の御答弁を求めたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 ただいま藤崎君から説明いたしましたように、経過はそのとおりだと思います。ただいま、これはわが国民の在外資産の問題に関する重大な問題だ、かような御指摘でございますが、こういうことも含めていわゆる在外財産問題審議会というものが置かれておるのでございまして、これが必ずこれを処置すると、こういうわけではございませんが、これによりましてどういうように扱うべきかということを審議しておるというのがいまの状況でございまいます。
  〔発言する者あり〕
○安藤委員長 お静かに願います。
○戸叶委員 いまの総理大臣の御答弁は私が伺っていたことに対する答弁ではございません。国内の在外資産のことに対しての考え方を述べられたにすぎないと思います。したがって、私が先ほど来聞いておりました不審の点について総理大臣からはっきりとした御答弁を伺いたい、こう思います。
 もう一度繰り返しますならば、藤崎局長は、講和条約の審議されるころ、西村条約局長が、アメリカの考え、すなわち日本の在韓日本人財産というものを放棄したというそういう解釈をしていたのだけれども、講和条約になって、その後においてはまた政府が変わってきたのだ、そしてまた変わったのだ、こういうふうにおっしゃいますが、いやしくも日本の国の政府が、国民の財産に対して、ああでもないこうでもないと年じゅう変わるというようなやり方というものは、許すべからざることだと思いますので、この点をもっとはっきりさせていただきたい。
○佐藤内閣総理大臣 先ほど来の経過は、藤崎君の経過についての説明でよく御了承がいったことだと思います。そういうことを藤崎君は端的にまた事実のままを皆さまにお話をしたと思います。したがいまして、この問題についての説明は、政府としてはそれより以上のものはございません。ただいま藤崎君の申したとおりでございます。この点を私も再度確認してお答えといたしておきます。
○安藤委員長 議事進行について松本君から発言を求めておられます。これを許します。松本君。
○松本委員 いままでの条約局長の答弁は経過報告だと言われるけれども、これは一国の政治を遂行していく上にはきわめて重大な問題なのですよ。その日韓の交渉のことを関連させて変更した、それが終わればまた変更する、こういう国民の基本的な権利に関する問題を、一条約局長の説明で、そのとおりでございますじゃ済まない。これはやはり内閣の責任において、佐藤内閣がどういう説明をもって国民を納得させるかというその統一見解をはっきり出す必要がある。だから、ただ条約局長の言ったとおりでそのとおりでございますじゃ済まない。だから、責任のある統一見解をすみやかにまとめて出してください。書面をもって出してください。いますぐとは言わないから、あとでちゃんときちっと、責任のあるものを出してもらえればいいのだから、いまきちっと書面をもって出す約束だけしておいてください。
○佐藤内閣総理大臣 いま私が総理大臣として責任を持ってお話いたしたのでございます。それでその答えが不十分だと言われておるのですが、また統一見解というような、意見が違っておるものでもございません。だから、そういう点もこれははっきりしている。ただいま書面をもって云々と言われるのは、これは委員会のことでございますから、委員長がまた皆さん方と相談してきめることだと思います。
○松本委員 委員長にあらためて要求しますが、政府の責任の持てる見解を統一見解として文書でもって提出するよう委員長から要求してください。時間があれば継続しますよ。ないから統一見解を一応出してくださいと言っているんだ。運営上の問題をこちらは考えてやっているんだから……。
○安藤委員長 ただいまの御要求は午後の理事会において御相談申し上げましょう。
○戸叶委員 私はまだたくさん質問がありますけれども、留保をいたしておきます。
 さらに、いまの問題につきましては、あとの理事会でその統一見解を出すか出さないか相談するというようなことでございましたが、私はそれでは納得できません。ぜひとも出していただきませんと困りますので、出すように委員長としてお取り計らい願いたいと、こういうことを要望いたしまして、まだある質問を留保して、そして私の質疑を終わりたいと思います。
○安藤委員長 午前の会議はこの程度にとどめ、この際、午後一時四十五分まで休憩いたします。
   午後一時二十一分休憩
     ――――◇―――――
   午後一時五十九分開議
○安藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。春日一幸君。
○春日委員 日韓条約に対しまするわれわれ民社党の基本的な態度は、平和外交をわが国が推進するにあたりましては、すべての国々と仲よくせなければならないが、まずもって一衣帯水の関係にある韓国とは正常なる国交の回復をはかることは当然のことである、このような意味合いと、さらには、わが国がポツダム宣言を受諾いたしましたその結果として、なお多くの懸案事項をかかえておるが、これらの問題は、しょせんは解決をはからなければならない、このような要請の上に立ちまするならば、わが党は、日韓条約を進んでこれを認むべきであるという基本的態度の上に立っておるものであります。しかしながら、はたしてそのような目的が達し得るものであるかどうか。すなわち、その条件となるものは、この条約の内容にかかっておるのであります。したがって、私どもは、この条約に対する賛否の態度については、本日以降つぶさにその審議を行なうことによりまして、はたして有効にそれらの諸目的を達成いたし得るような内容、条件であるのか、あるいはまた、この条約が後日日韓両国に多くの問題点を誘発するようなことにはならないか、あるいはその目的と反して、さらに逆の方向に向かうようなことはないかどうか、これらの問題について十分内容を審査することによって、最後にその賛否の態度を決定しようというのが、わが党のこの条約案に対しまする方針であります。
 私どもがそのような基本的態度と方針に立って日韓諸条約のメリットとデメリット、これを検討いたしますると、まずもってメリットとしては、ここに日韓国交の正常化、漁民の安全操業、それからポツダム宣言受諾以来の懸案の解決などの点があげられるでありましょうが、またデメリットとしては、竹島問題が実質的にたな上げにされるような心配、第二には、対北鮮関係を複雑にするようなおそれはないか、第三には、李ラインの形式的な存続のおそれはないかなどがそれであります、われわれはこの審議を通じて、以上のメリットとデメリット、これをひとつ十分検討いたしまして、批准がもたらすべきマイナス面があらば、それをできるだけ最小限に食いとめるための歯どめの手段はないものであろうかどうか、さらにはまた、批准しなかった場合に予想されるマイナス面についても同様の検討を加えまして、これらの利害得失を慎重に比較して賛否を決定しょうというのが私どもの心がまえであります。
 私は、以上の認識と決意に立って、以下重要なる諸問題について政府の所見をただしたいと思いますので、政府の側におかれましても、そのようなお心がまえで御答弁が願いたいと思うのであります。
 まず最初にお伺いをいたしたいことは、政府が日韓条約を締結した外交の基本路線についてお伺いをいたしたいと思います。政府はいかなる外交路線に立ってこの条約を結んだか、これが日韓条約の性格とその価値を決定する重要なポイントだと考えます。すなわち、この条約の締結が、たとえば反共体制の強化とか、あるいは自由主義陣営の結束というような観点から行なわれたといたしまするならば、それは決して普遍的な平和外交とは言えないでありましょう。もしもこの条約締結の意図がそのようなものでありといたしましたならば、これは、日本は韓国との国交正常化と引きかえに、今後わが国が真剣に取り組まなければならないところのソ連、中共、北鮮など、隣接共産圏諸国との外交関係をみずから閉ざすことにはならないかとおもんばかるものであります。したがいまして、佐藤内閣がこのたび日韓条約を締結するにあたって、その外交政策の基本方針とされたものはどのようなものか、すなわち、それは普遍的な平和善隣外交か、それとも一定の条件を持つ限定外交か、この際その基本方針を総理から明らかにいたされたいと思うのであります。
○佐藤内閣総理大臣 ただいまお尋ねのありましたわが国の基本的態度、これは今日までしばしばお答えをいたしたのでございます。その点に誤解はないだろうと思いますが、ただいまお尋ねがありましたように、どこまでも善隣友好、平和に徹した外交でございます。これはさかのぼって考えてみますると、サンフランシスコ条約締結に際しましても、戦後の日本が新しく誕生したそのときから、もう平和に徹する、しかも善隣友好、すべての国と仲よくしていく、外交関係を樹立していくという、こういう立場でございまして、したがいまして、サンフランシスコで条約を締結しました国はもちろんのことでございますが、この平和条約を締結しなかった国に対しましても、この友好関係を樹立することに熱意を示したのでございまして、その後におきまして東欧諸圏等ともこの友好関係を結んだのは、ただいま申し上げるようなサンフランシスコ条約締結の際に示した平和に徹する、そうしていずれの国とも仲よくしていく、その立場に立っての考え方でございます。今日におきましても、この基本的な考え方には変わりはないのでございます。ただいま御指摘になりましたように、あるいは反共軍事同盟を結ぶとか、あるいは自由主義陣営だけの強固なる結束をねらったんだとか、こういうような、故意にしいられたそういう意味の批判を私ども聞くのでございますけれども、そうではなくて、私がしばしば申し上げますごとく、平和に徹する、すべての国と仲よくしていく、これが私の外交の基本理念でございます。もちろん、これは無条件でかように考えたいのでございますけれども、仲よくすると申しましても、相手の国が十分わが国の独立を尊重し、しかもまた、わが国の内政に干渉しない、こういうことは、相互に独立を尊重し合い、また干渉しないということがその基礎であることは申し上げるまでもないのでございまして、そういう立場に立ちましてわが国は平和的な外交を進めていく、善隣友好の外交を進めていく、また同時に、そういうような立場に立っての憲法の制定であった、私はかように考えるのでございます。その点誤解のないようにお願いしておきます。
○春日委員 もし今回の日韓条約の締結が、ただいまわが党の述べましたるがごとく、しこうして総理が御答弁されましたるがごとくに、すなわち、普遍的な善隣友好外交の一環として推進されるものであるといたしましたならば、それを裏づけいたしまするために、少なくともわが国と隣接する共産圏諸国との間にも同様の友好関係を打ち立てるよう努力されなければならないことは当然の事柄であろうと思うのであります。そのためには、政府は今回の日韓条約の締結を一つの契機といたされまして、これまでの政府の共産圏外交のあり方、これを基本的に是正なさる必要があると思うが、政府のこれに対するお考えはいかがでありますか、総理より御答弁を願います。
○佐藤内閣総理大臣 ただいま申し上げますように、当方はいずれの国とも仲よくしていく、こういう考え方で進めております。今日の状況のもとにおきまして、さらにこれにつけ加えるものがあるのではないか、かようなお尋ねでございますが、私は、まず隣の国韓国と友好親善関係を結ぶ、そのことがスタートラインだ、かようなことを申しましたが、このスタートラインというのは、ひとり日韓間だけの問題ではないのであります。同時に、ただいま御指摘になりました、あるいはソ連、あるいは中共等の問題をいかに処理するか、こういうような問題に当然発展していくべき事柄でございます。私は、民社党の諸君が今回の日韓の条約批准に際しまして、現地に調査団を派遣された、そうしてつぶさにその実情を調査してこられた。ただいま日本政府の考え方については私が申し上げるとおりでございますが、調査されたところで、おそらく韓国側も同じような考え方を持っているのじゃないか、先ほど疑念を持たれるような軍事的な意図がないとか、あるいはまた、自由主義陣営だけのそれだけの強固さ、そういうものをねらったものでないということは、私は日韓双方においてひとしく言えることでないだろうか。この考え方をやはり私どもはさらにふえんし、それを推し広げていき、そうしてソ連等と関係をさらに密接にしたい、かように思います。
 ただいま中共とはどうか、あるいは北鮮とはどうか、こういうお話がございますが、いままで中共との関係におきましては、いわゆる政経分離の形におきまして交渉を重ねていく、これは、私がことしの春、一月にアメリカを訪問いたしました際にも、実ははっきりわが国の方針としてアメリカをしてこれを承認さしたというようないきさつもございます。その後におきましても、私どもはこの経済交流をさらに拡大していくようにあらゆる努力を続けてまいったのでございます。
 また、ただいまお話のありました、北鮮は一体どうなるのか、この点につきましては、今回の条約の承認を求めるこの委員会におきまして、あるいはまた本会議等におきましても、いわゆる朝鮮半島において韓国と交渉を持っておる、そういう関係で北鮮との外交関係をただいま樹立するというわけにはまいりませんけれども、しかし、実際的な処理はしなければならないのでございますから、そういう意味においてのケース・バイ・ケースによって処理していくという在来の方針には変わりはございません。さらに、今後の情勢の推移等をももちろん勘案いたしまして、今日のこの状況に長くとどまるということは、私は適当な方法ではないと思いますので、たとえば、韓国においては一日も早く南北統一の単一政権ができること、これが朝鮮民族の期待でもあるだろうと思いますので、そういう方向に進んでいく、そういうようにあってほしい、またそういう意味の努力を続けてまいりたいと思いますし、また中共自身につきましては、これはただいま重大な国際問題でございますから、簡単にその処置をきめるわけにはまいりませんが、中共自身も国際的に喜ばれ、みんなから歓迎される、こういう状況におきまして平和が維持され、祝福されて国連に入ってくるような事態がくることを心から望むものでございます。
 私が申し上げたいことは、大体そういう点で御理解をいただけるかと思います。
○春日委員 総理並びに関係大臣にお願いをいたしたいのでありまするが、私どもは実にこれ七人目に質問の機会を得たというわけでございまして、限られた時間の中で多くの疑点をたださなければならないという重要な使命をになうものでございます。したがって、私もできるだけ疑点を集約いたしまして質問をいたしますので、御答弁の側におかれましても、質問をいたしました焦点に合わせて御答弁を限定を願いたい。そうして、多くの問題が限られた時間内に解明ができまするように御協力を願いたいと思うのでございます。
 そこで私は、当面する共産圏外交の懸案について具体的にお伺いをいたしたいと思うのでありまするが、ただいま総理の御答弁によりますと、平和外交を推進するというこの決意には変わりはない、そのような積極的意欲を持っておる、こういう御答弁でございました。けれども、中共に対しては政経分離だという従来のその態度を堅持して譲られるところがないのでございます。政経分離ということは、経済的にはLT方式とかなんとかで民間貿易はやっていこう、政治的には交際をしないものであるというようなことで、一体政府が、すべての国々と仲よくしよう、これが平和外交の基本的理念であり、その理念の上に立って推進するのだと言われても、何かしらいま誇らしやかに中共とは政経分離だといっておって、それでもって、平和外交の普遍的な理念の上に立って普遍的な推進をはかるということと矛盾しませんか。私は、この点については、やはりこれを契機として自主独立、平和三原則の上に立って、断固たる外交路線の改善を願わなければならぬと思うのでございます。申し上げるまでもなく、中共には七億の住民がおります。そうして、現実に有効な支配がそこにあります。したがってわが党は、さきに一つの中国アンド台湾という方式を打ち出しました。砕いて言うならば、二つの中国方式でございましょうけれども、その後においてドゴール政権もこれに対して同感の意を表しました。その後わが党の西尾委員長がイギリスに参って、時のウィルソン首相とお会いをいたしましたときにも、全くそれ以外に解決の道はないものであると、同感の意を表しておるのでございます。したがいまして、いまやこの中共を正統政府として承認をいたしまして、中共の国連加盟の実現のために協力する、中共政府と正常なる国交関係を樹立する、こういうようなことは、次第に国際世論の中において必要なことであり、むしろ当然なことであると、その世論は高まっておると思うのでございます。このような国際的な情勢を踏まえて、わが国の対中国政策をいかに樹立すべきであるか、これを考えるならば、政経分離だ、政経分離だといって、ばかの一つ覚えみたいにそんなことを言っておって、普遍的な平和外交の路線を推進するのだといったって、これは国の内外に向かって説得力を持ちますか。言うこととやることが一つでなければならぬと思う。私は、中共に対しまする外交方針についてこの機会に何らかの改善、改革を必要とすると思うが、重ねて、この点に対する総理の御決意をお述べ願いたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 私は先ほど来日本の態度、これをはっきり申し上げたと思います。もちろん、こういう事柄につきましては、相手の国も十分理解を示し、また平和的に国際社会の協調を得る、また協調する、こういうことであってほしいと思います。そういうことがだんだんと問題を解決するゆえんだと思います。ただ、いま春日君の御意見として、民主社会党がかねてから発表しておられるような、中国の代表権を北京政府に与える、また、国民政府は台湾だ、かような考え方、これは簡単にかような結論は実は出てこない、かように思います。ただいままで私どもが一番苦心し、頭を悩ましておりますものは、台湾にある国民政府と条約を締結し、そうして権利義務を生じております。これは忠実に私どもがこの権利義務を履行しなければならない立場に置かれております。また、中共を支持する国々は、中国の代表権を中共に与える、そういう意味で国府追放の考え方でございます。そうして、こういう事柄は外でいろいろ議論はされますけれども、中共にいたしましても、国民政府にいたしましても、それぞれが、ただいままでのところ中国は一つだ、かように主張しております限りにおいてこの話は受け入れられない形だ、かように私は思います。したがいまして、たいへん自由な立場で、あるいは評論的な立場でこういう事柄が、言えるかと思いますが、現実の実際問題としてこれを処理しようという場合におきましては、当の国民政府、当の中共北京政府、こういうものが納得のいくような方法でなければこの問題を解決するわけにいかないのじゃないか、私はその意味におきまして、ただいまの問題は、せっかく御指示くださいましたが、今日ただいま、私どもはそういう方向に踏み切るわけにいかないということを申し上げておきます。
○春日委員 政治は内政と外交がございましょう。したがって、あなたが外交路線を、すべての国々と仲よくする普遍的平和外交、そこにその基点を置くと言われるのでありまするならば、中国に対してもやはり政治的に、政治と経済とは分離してやっていくんだと、言うておられますることは、問題の解決にはならないということなのでございます。もとより御指摘のとおり、わが国が台湾政府との間に外交関係を持っておるということはわれわれもこれを承知しておりまするし、この関係は尊重してまいらなければ相ならぬでございましょう。けれども現実になずんで、わが国が、このような状態だから動きがつかないといって何も言わないのでは――たとえば、ドゴールにおいても言っておる。ウィルソンも言っておる。ほうはいたる世界の世論は、七億の住民を持ち、あの広大なる地域に有効なる支配権を持っておりますこの政府を、国連のらち外にシャットアウトしておくということが世界の平和を保つゆえんでもない。いわんやわが国は隣接する国といたしまして、すでにしばしばこの問題は論じ尽くされておる問題でございます。だからいかに困難であろうとも――初めにことばありということばがございます。あなたは、いま評論的にと言われておりまするけれども、まずそれ意見を打ち出して、そうしてその意見の反響も待って、可能な限界をとらえて、困難の中にも努力せなければならぬという姿勢を打ち出していくということが、韓国との間に外交関係を正常に樹立するというこの契機に、われわれはこれをチャンスとしてとらえなければならぬ問題であると考えておるのでございます。けれども、このような大問題について短時間のうちにお互いの意見の統合がはかり得るものでもないと考えますので、ひとつ世界の世論、国民の世論をよく御洞察あって、御検討の上、善処されたいことを望みます。
 次は、ソ連との平和条約締結について、政府はどのように考えられておるかということでございます。私ども、昭和三十一年に、当時各党から代表する訪ソ議員団の一員となりまして、その翌年において、鳩山内閣によって日ソ戦争状態終結宣言がなされまして、いずれはひとつすみやかに平和条約を締結しよう、これが懸案になって今日に持ち越されております。その後違った政治体制の国々とも平和共存をはかっていこうという機運はもう高まってまいっております。わが国とソ連との間においても、経済の交流は次第にその密度を高めておるわけでございまするから、私は戦争状態終結宣言のまま十年近くほっておくということは適当ではないと思う。平和共存の機運の満まりとともに、ソ連に向かって平和条約を締結しようというような呼びかけをしてみてもいい刻限ではないかと思う。これについて総理の御見解はいかがでありますか。
○佐藤内閣総理大臣 ただいまのお尋ねにお答えいたします前に一言触れておきたいのでございますが、春日君が、今日のような状態、この政経分離の態度というものは問題の解決でない、こう言ってきめつけられたのでございますが、私も確かに問題の解決ではない、かように思います。したがいまして、この問題を解決することが、今後われわれの外交に課せられた問題、重大な課題だ、かように考えておるのでございますから、先ほど来、この問題はそう簡単に短時間の間に解決される問題でもない、かように言われておりますし、この問題の所在がどこにあるか、これは十分御理解がいっておると思いますので、私から重ねてはお答えをいたしません。
 次に、ただいま御指摘になりました日ソ平和条約、この問題を取り上げられて、もう十年もたつ、これはぜひ解決すべきじゃないか、こういうようなお話がございます。私もそのとおりだと思います。きょうの午前中にもお答えいたしたのでございますが、日ソ間の問題は、鳩山内閣以来何らの進展を見ていない、このことはいかにも残念だ、これも最近におきまして領事条約をするとかあるいは日ソ航空協定をするとか、諸条約がそれぞれ交渉過程にございます。積み重ねていろいろの問題を解決するということも必要だと思いますが、ただいま御指摘になりました両国間に平和条約を締結するということは何よりももっと大事な、必要なことだと思います。しかしながら、この点は相当準備を必要とするのではないかと私は思っておるのでございまして、いままでも安全操業あるいは歯舞、色丹の問題、あるいは国後、択捉等につきましても、本来の主張を繰り返し繰り返しいたしておりますが、ただいままでのところ、それらの領土権の問題について十分の理解を得ておらない、かような状況でございますから、そういう問題についての方向がきまるとか――あるいは全部解決ができればこれに越したことはございませんが、方向がきまるというようなことでもあれば、ただいまのような方向に進み得るのじゃないか、またそのことを私は一日も早く進めるべきだ、かように考えておるのでございます。領土の問題などが、何ら条約上の文言のきまりなしに、これがかってに他の国に移り得るものではございませんので、こういう点も根本的問題を解決する際に十分相談すべき、協議すべき事柄だ、かように私は思っております。
○春日委員 まあ、国会論議を通じて、ともに国家のために問題の解決、前進をはからなければならぬと思うのでありますが、たとえば領土問題の解決なくんば国交の正常化をはかり得ないなどといわれておりまするけれども、今回日韓条約において竹島の領有権の処理の問題のごとき解決のしかたもあり得るわけでございます。たとえば、両国間において紛争問題があり、その時点において最終的解決をなし得なければ、何らか交換公文の中において明示して、後日この問題を時間をかけて平和的に話し合う、こういうようなやり方もあり、現にあなたはこれをやっておるのであります。したがいまして、私どもはこのような前例が、悪例であるにいたしましてもなし得る限界においてベストを尽くしていく、そうして一歩ずつ前進をはかって、平和と安全と福祉のために貢献をしていくということは、外交権を持つところの唯一者、国民の名において国民にかわって外交権を持つ唯一者として当然の義務であると思う。いまや機運が成熟していないなどといわれておりまするけれども、あの日ソ戦争状態終結宣言がなされましてからかれこれもう十カ年を経過する。この間において何らそういう問題について話し合いをしていなかったとするならば、自民党政府の怠慢はまさに糾弾されなければならぬと思うのです。私はそういうような意味合いにおいて、平和共存の機運も高まり、貿易協定から航空協定まで、あるいは領事条約の問題まで話し合われておるとするならば、領土問題については当然わがほうの主張を厳然として貫きつつ、なおせんじ詰めて、ソ連との間に正常なる平和条約――これはサンフランシスコ講和条約以来の大懸案なんでありまするから、当然これを佐藤内閣が手がけてしかるべきものであると思う。前向きの姿勢で前進されんことを強く要望いたします。
 問題は、北鮮にある朝鮮民主主義人民共和国、これとの外交関係の改善をどのようにしてはかっていくかという問題であります。私はこの際あらためて政府に伺うのでありまするが、一体、政府は韓国政府の性格についてどのように理解をいたしておるか。すなわち、韓国というのは朝鮮全体を統治すべき唯一の国家であると理解しておるのか、それとも、三十八度線以南にある一つの国家であるというのか、政府の認識は、この見解のうちいずれをとるか、見解をお述べ願いたいと思います。
○椎名国務大臣 休戦ライン以南に対して有効な支配、管轄権を及ぼし得る政権である、かように考えております。
○春日委員 ならば、北鮮に対する政府の態度について伺います。
 日本が三十六カ年に及ぶ併合統治は朝鮮全体に対して行なわれたのでありますから、したがって、わが国の朝鮮民族に対する反省は、これは本来ならば朝鮮全体に対して行なわれるべきことが当然である。それがただいまの時点においては、国際情勢等のしからしむる結果として、さしあたり韓国とだけ正常化し、一応その部分の朝鮮の人たちに反省の実を示そうというのが、今回の日韓条約締結の趣意であると思う。この際、わが国としては、同時に北鮮に千数百万の朝鮮の人々があることを忘れてはならぬと思うが、これに対する政府の考え方はどのようなものでありますか。
○椎名国務大臣 御承知のとおり、終戦以来国連が南北朝鮮の統一を目標といたしまして、いろいろな努力を続けてまいったのでありますが、これが結実するに至らず、やむを得ず南の部分にだけ有効な支配を及ぼし得る合法的な政権ができたという次第でございまして、今回日本といたしましては、この南北の統一を待つということはほとんど半永久的ともいわれるくらいに考えておりますので、とりあえずこの国連の認めておる有効な、合法的な政権というものと国交を回復した次第であります。今回の条約は、一切休戦ライン以北の問題には触れておりません。いわば白紙の状態である、こういう次第でございます。
○春日委員 もし佐藤総理が日ごろおっしゃっているように、わが国は平和に徹し、すべての国と友好関係を維持するという政策をとられるならば、その意味からしても、北鮮に対してはわが国が好意的であっていいのか、あるいは挑戦的であっていいのか、これはおのずから明らかであると思う。韓国内部において、南北の間に戦争関係があり、いま敵視関係がありといえども、それは韓国南北相互間の問題であって、日本といたしましては、かつて同じ日本国民であった、かつての兄弟である、同胞である、関知したことでないと言ってもいいくらいのものであると思うのですね。だとすれば、北鮮千数百万の国民の諸君も、とにかく何といっても、われわれの三十六カ年間の併合統治の中で、われわれは善意に基づいてこれを統治したと自負いたしておるが、相手にすれば、異民族の統治を受けたということは、今日沖繩の同胞諸君がアメリカによって統治を受けておることに対して、限りなき苦痛を感じておると同じように、それ相当の苦痛があったものとわれわれは同情せなければならぬと思う。だとすれば、この北鮮の諸君に対しては、イデオロギーがいかがあろうとも、それは別の問題である、国と国との関係、人と人との関係、これを十分に認識するならば、少なくとも北鮮に対しても友好の意思を表明するということは当然のことであると思う。しかるに、政府の態度は何でありますか。北鮮に対しては白紙であるとか、北鮮にはわが国の請求権が残っておる、南の分は全然要らないのだ、このような二様の態度に出るということが、はたして普遍的な善隣友好、平和外交のあり方であると考えておられるのか、この点総理よりあらためて御答弁を願いたい。
○佐藤内閣総理大臣 韓国と北鮮との関係、これはしばしば問題になっておりますように、いわゆる朝鮮半島に二つの実質的な権威があるという問題でございますが、この場合にいわゆる分裂国家と申しますか、あるいは対立国家と申しますか、同一民族が二つの権威のもとに統治されているということ、これはたいへんな不幸でございますから、これが単一になるということを心から願っておる。その基礎的なものはこれも御了承いただいたと思います。いままでの外交的慣例から申しますと、こういう場合に片一方の国を承認した国は、他のほうと外交関係を樹立しない、これが今日までの外交慣例でございます。したがいまして、今日南の韓国を承認しておる国が七十二、外交関係を持っておるのが七十二ございますが、これは北の国とは外交関係を持っておらない。また二十三カ国が北を承認し、これと外交関係を持っておりますが、これらの国々も南の韓国とは外交関係を持たない。これが大体今日の外交上の慣例でございます。また私どもは韓国自身を、占領された当時からGHQの一つのメンバーとしてこれを相手にしてまいっておりますが、これは韓国でございます。ことにこれが独立して以来は、また国連自身にも決議がございましたから、それを尊重してまいっておりますので、そういう関係がありますから、北とは外交関係を持たない。しかし実際にはとにかく北があること、これは無視できないのでございます。今回の条約を締結するにあたりましても、南とは話をした、しかし北とは全然話をしておりませんから、その関係においては白紙であり、その関係においては事実的問題としてこれを処理していく、これがいわゆるケース・バイケースということになっております。これはいずれにいたしましても、この状態は韓国民、朝鮮人にとりましてたいへん不幸な状態だと私は思います。朝鮮民族としては二つに分けられたことはたいへん不幸だ、だからこれが一日も早く単一国家になることを希望しておられるだろうし、また私どももそういうものが実現してくることを心から願っておるということが、今日の状況でございます。
○春日委員 心から統一されることを願っておられる、北の方々もまことにふしあわせな立場に置かれ、まことに同情を禁じ得ない、こういう趣意に伺いました。だとすれば、北は白紙だ、北には請求権が残っておるのだ、向こうが何かくれと言ってきたら、こっちもよこせと言うのだというようなことを言い放っておって、それがまことに御同情にたえない人々に対するごあいさつですか。北はいまのところ外交上のしきたり、慣例、ルールがあって、同一国家と称するものに二つの政権がある場合に、二つの政権を承認することができないので、万やむなくこういう態度をとっておるのだとするならば、私は経済の交流であろうと、文化の交流であろうと、そこには精神面において示し得る最大限のものを、政治的に措置でき得ないものも心の面で披瀝して、そうして心のありかを相手に示すという態度があってしかるべきであると思う。それなのに、北鮮は白紙だ、韓国から何らかの抗議があるとオールストップだ、こういうようなことは適当ではないと思う。われわれといえども不可能なことをあえて述べておるわけではない。したがいまして、この際はさまざまなる国際情勢のもとにおいて北鮮を承認することは不可能であるといたしますならば、その限界において、経済の交流でありまするとか、文化の交流でありまするとか、あるいは経済の援助があってもいいと思うのです。そういうような事柄もひとつ大いに進めていく、それだけの矜持がなければならぬ、心がまえがなければならぬ。私は、この間東南アジア諸地域を民社党調査団の一員として参りましたけれども、私はそのときカンボジアで感心いたしましたことは、あのシアヌーク殿下が、とにもかくにも国内は反共政策である。民社同盟の一党政治である。けれども、外交は北京政府に一〇〇%依存をいたしておる。このような実態から考えまして、この北鮮は共産主義の国ではあるけれども、われわれとは歴史的に特別の関係にあるので、かつてきょうだいであった南半分の諸君にこのような友好親善、互恵平等の関係でさまざまな措置を講ずるとするならば、北鮮に対してもこういう態度でいくのだ、これが示されて初めて、あなたが韓国と日韓条約を結ばれるというその目的と意義というものが、まさに普遍的平和外交の路線の上に立つものであるということが立証されると思う。そのことなくしては、言うておることとやっておることと違う。だから、この日韓条約の評価とその価値、これが変わってくるのです。この点について、政府は責任を持って御答弁を願いたい。三十六年間の併合統治をしたということが、わが国の立場からすれば、善良にその職務を果たしてきたと自負いたしておるであろう。けれども、いま沖繩の同胞諸君があのように悲運の中にも日々の生活をしていることをあわせ判断するならば、われわれの独断がいかがあろうとも、相手方は辛酸に満ちた三十六カ年を過ごしてきた。その人々に対するわが国の応待は南北同様のものでなければならぬと思う。政治情勢が許されずんば、政治以外の面において、まさに政経分離の形の中においてもなし得ることはなすべきであると思う。この点に対する将来の方向、決意をこの際お示しを願っておきたい。
○佐藤内閣総理大臣 先ほど来申しましたように、同一民族が単一国家に形成することができないという、これはたいへんな不幸であり、民族のほんとに悲しい状況だ、かように私思いますが、そういう意味で、一日も早く民族の単一国家ができることを心から願っておる。これは願うだけじゃなくて、われわれも機会あるごとにそういう努力をしなければならない、かように思っております。ただいま韓国と北鮮との関係におきましては、これは両者が長く争ってきた、戦争状態にあったものが、ただいま休戦状態に入っておるということで、いずれは私が申し上げるような形において解決されることだと思いますし、私ども日本政府として特に考えなければならないのは在日朝鮮人の問題だ、かように私は思います。終戦後、日本人であったものが、本人の意思のいかんにかかわらず日本国籍を失った、そうして韓国人あるいは朝鮮人だ、こういうようなことがいわれておる今日のこれらの方の処遇の問題。これが一つの具体的な問題としてどう考えるかということだと思います。私どもは、この日韓条約によりまして、いわゆる韓国籍を持つ韓国人に対する永久居住権その他のこれからの手続等をすることになっておりますが、そうでない方々に対しましても、わが国に住んでいる、終戦後からいろいろわが国がこれらの方を処遇してきたその処遇を、今回の条約締結で変更するということはないという、かような処置をとっております。これは一般外国人とは、そこに特別な関係、違った関係があるように思っております。この点が、在来から日本人であり、一緒に住んでいた、こういう形のものでありますだけに、特別な考慮が払われている。この点を御了承いただきたいと思います。
○春日委員 御答弁は必ずしも全的に満足すべきものではございませんけれども、しかし、政府が、共産圏諸国とも、わけて隣接せる共産圏諸国とも友好善隣の関係をできるだけ推し進めていきたいという決意があるということに理解をいたしまして、しかしながら、問題は、それを裏づけるのは今後のあなた方の具体的な外交政策の展開にあります。積極的に強くそのことを推し進められることを期待いたしまして、質問を進めます。
 次は、巷間で、一部の日韓条約に対する反対論者が、この条約の締結が日韓軍事同盟を誘発するのおそれはないかですね。おそれはあり、それからこれがさらに東北アジア軍事同盟に発展する性格を内包しておるとかの議論がなされておるのでございます。
 これについて質問をするのでありますが、私は、今回この条約案について質問に立つにあたりまして、韓国内部においても多くの反対議論が熾烈に行なわれておる。よって、その反対議論の内容はどのようなものであろうかと、いろいろと韓国の事情についても調べてみました。特にわが党においては、伊藤副委員長を団長とする調査団を現地に派遣をして、それらの実情についてもあまねく調査を進めたわけでございました。ここに日韓会談をめぐる韓国の世論というものがございまして、これは韓国の新聞雑誌の論調を中心にして集約したものでございます。これは私はあまねく通読をしたのでありますが、その中にこういうのがございます。それは国民は調印に不満――東亜日報、六月二十二日付の社説でございます。この中にはこういうことばがございます。国交妥結後の事態はどうなるであろうか、政府が希望していた東北アジア軍事同盟は日本がおくびにも出さないでいることが明白となったしと言っておるのでございます。すなわち、日本国内において反対論者が、これが日韓間の軍事同盟を誘発するとか東北アジア軍事同盟に発展するとか言っておるが、向こうは、そういうことについて日本政府がおくびにも出さない、すなわち、このことは、韓国としては、北鮮の軍事侵略の脅威にさらされておる。よってこの際日本と条約を締結することによって、その中に何らかの韓国の軍事強化が期待されておったものと思われる。ところが、その交渉で、その韓国の反対議論によりますと、日本はこれについてはおくびにも出さなかったことが明白だから、こんなものは何にも無価値なものであると反対をいたしております。さらに、これは在京大学教授団の反対宣言書でありますが、それによりますると、政府はあらゆる犠牲をあえてする理由として、この条約を強行する韓国の理由として、日本と提携して反共体制を強化するところにあると主張しており、アメリカも同じくこれをあと押ししてきた、しかし、日本側は依然として韓日国交正常化が反共のための措置では決してないことを明らかにしておる、これは全く屈辱外交だ、韓国の諸君は、この条約の中に何らかの軍事供与、韓国の軍事強化あるいはまた軍事的性格というものを期待しておったけれども、そういうものが何もないのだから、こんなものはだめだと言っておる。しかし、日本側では、そういうものがあるからだめだと言っておるのですね。全くこれは異様なことに思われる。だから私は、過去十四カ年間にまたがってこの交渉に携わった自民党政府にお伺いをいたしたいのであるが、その交渉の過程の中において、韓国から何らかのこの種の要請がなされたことがあるか、またあったとするならば、それに対して日本政府はどのように応待をしてきたものであるのか、その経過の過程において、彼ら韓国民が新聞社説で論じ、大学教授団が宣言書で非難をしておるがごとくに、何らかの軍事条項をこの条約の中に設定する、このような要請があったかどうか、事実関係をつまびらかにいたされたい。そうして戦争とか、あるいは軍事同盟に発展するおそれありとする日本国民の前に、その真相を明らかにして、その不安の解消をなされたいと思うのであります。
○椎名国務大臣 結論的にまず申し上げますれば、軍事的な要素というものはみじんもございません。十四年にわたる同国の交渉の過程におきましても、こういうことは少しもないのであります。そしてさらに申し上げますれば、今回のあるいは軍事強化のためになりはしないかというのは、経済協力の問題であると考えますが、経済協力の問題は、ひたすら韓国の経済建設のためにこれは役立てたいというのでありまして、協約の明文にもそのことが書いてある。なおまた、これらの附属文書にも、兵器弾薬等は一切含まない、こういうことが特にしるしてあるのでありまして、これらの経済協力の問題を今後推進するにいたしましても、両国の間にそれぞれあるいは合同して組織がつくられ、それが韓国の経済復興に役立つかどうかという観点からこの問題を十分に検討して、そして適格であるものを選ぶ、こういう構想が一貫して貫かれておるのでございまして、いま御指摘のようなことは毛頭ございません。また、向こうからさような提言があったことも一度もございません。
○佐藤内閣総理大臣 ただいま外務大臣からお答えいたしましたように、交渉の途上におきまして、こういう問題について、軍事関係について話し合いが持ち出されたことは全然ございません。
 ただいまお読みになりましたが、私もその材料を持っておりますが、東亜日報で、わが方の希望してきた東南アジア軍事同盟は、日本が夢にすら見ていないことがすでに明らかとなりと、かように東亜日報は報じておりますし、また丁一権国務総理も、この問題につきまして、東北アジア軍事同盟に関して私個人としては現段階では期待を持っていない、なぜならば、現在日本は憲法で規定されているとおり、自国内の警備のための自衛隊という警備軍を有しているが、それは国内の警備と治安維持の任務にのみその設置目的がある、日本が憲法を改正しない限り、東北アジア軍事同盟を編成した場合、国軍を編成しこれに加入することを予測することば困難であると思う、以上のように丁一権総理もはっきりこの問題のなかったことを明言しております。私も日本政府といたしまして、いままでの交渉において、十四年間一度もこういう問題に触れたことはないということを、この機会にはっきり申し上げておきます。
○春日委員 わが党は厳然として、この条約の中にそのような心配があるならば、これは断固として阻止しなければならぬ、そのような心配が全然ないならば賛成しなければならぬという、このような賛否の態度をかけて質問をしておるのでございまするから、私は、ただひとり政府の答弁を待つばかりではなくして、韓国の反対議論の大いなる骨子となっておるものが、軍事同盟というものについて期待しておったけれども、何もない、かすみたいなものだ、だから反対だ、こう言っておることをお伺いをしたのでございまするが、期待しておったからには、このような結末を得るまでその過程において何らかの要請があったかとお尋ねをしたが、そういうようなものはなかったということでございます。だとすれば、それはそのように承知をいたしておきましょう。
 質問を続けます。
 次は基本条約についてでありまするが、この条約第三条にいう総会決議百九十五号(III)の拘束力、この法的拘束力を伺います。総会決議は勧告的性質のもので、国連加盟国を拘束するものではないのではないかと言われておるが、これに対する政府の見解はどうでありますか。
○椎名国務大臣 これは拘束力を持っておりません。国連軍が観察したまま、委員会が観察したままを本部に伝え、本部がこれを採択して決議したものでありまして、そのままこれを引用して、韓国はかくかくのとおりの政権であるということをうたい、韓国政権の性格をはっきりと打ち出したものにすぎないのであります。
○春日委員 拘束力はない決議ですね。そんな拘束力のないようなものを少なくとも国連の決議と銘打って、それが国連の何人をも拘束をしないというようなものならば、まことに権威乏しきものである。そのような権威乏しきものをこのような基本条約の本文の中に持ち来たっておるということは、一体どういうことでございますか。
○椎名国務大臣 結局その本文の中に、朝鮮民族の大部分が居住しておる朝鮮半島の一部に、かくかくの有効な支配、管轄権を及ぼす政権ができた、この事実を引用しておりますので、ここにわれわれが相手にしておるところの韓国の管轄権というものがはっきりと出てまいるのであります。請求権その他の関係協約等の中で、これが基本となっていろいろな協約が発展をしておる、こういうことになるのでありますから、決して無用なものではないと思います。
○春日委員 じゃ、ちょっとこれは伺うのでありますが、この百九十五号()は、その後しばしば再議決が重ねられたとはいえ、当初からだいぶ変わってきておるわけですね。反対の国も最初は四カ国かなにかでありましたが、いまでは十何カ国かにふえてきておる。非常に変化を生じてきておる。国際的な信頼感もずっと変わってきておる。もし将来国際情勢が重大なる変化を生じまして、これが根本的に修正されるとか、時と場合によってはこれが否決されるような場合、この三条はどうなりますか。
○椎名国務大臣 これは事実の報告に基づいて、その報告のごとき性格を持っておる政権であるということを述べたのでありまして、この事実がつまり韓国の管轄権というものの実体をあらわしておるのでありますが、これに支障の生ずるような事態がもし発展すれば、これに応じてまいることは当然のことでありますけれども、ただ、毎年総会において繰り返されるこれの確認の票数がいかように変わりましても、少しもその影響を受けることはないのでございます。
○春日委員 それはおかしいと思うのです。すなわち、百九十五号()は、その朝鮮委員会がその地において観察し、かつ協議し得たところという抽象的なものの表現なんでございますね。それが、そういう場所というものが今度否決されたり、あるいは何らかの修正をされるということになってくれば、三条の効果は変わってくると思う。よってもって日韓条約の管轄権全体が変わってくるから、条約全部に影響を与えてくるのではないかと思うのでございます。この決議をずっと見てみますると、最初第三回総会においては、これは反対が六であった。棄権も一であった。ところが、その後ずっと反対も棄権もふえてまいっております。反対が十一になって、いまでは棄権が二十四になってきておる。七、八年たって反対が賛成よりも多くなってしまうと、これが否決されてしまう。しかもその管轄権の地域を明示するこの第三条が、観察し、かつ、協議し得た地点というものはどの地点かということを明示してないんですね。あの連中がそこに行って見てきて相談した場所という場所は一体どこなんですか。それはこの条文には何も書いてないのでございますよ。あなた方がどう理解をしておるかは知らないけれども、条文に書いてなければ、条文自体がその機能を持たなくなってくるのではないか。
○椎名国務大臣 これは一九四八年に国連派遣の委員会が明言しておるとおり、朝鮮民族の大部分が居住しておる部分、そしてこれに有効な支配と管轄権を及ぼし得る政権ができた。こういう事実は、結局その当時の休戦ライン以南ということになるのでございまして、これに関しては寸毫の疑いも持ち得ないところであると思います。そしてこの政府は、これら地点に居住する住民の自由なる意思の表明であるところの選挙に基づいて政権ができたのだ。これは国連の委員会が観察し得る限度においては朝鮮半島におけるかような種類の唯一の政権である、合法政権である。あくまでこういう事実の認定に基づいて、その言うとおりのこれは政権である、韓国政府である。こういうことでございますから、この事実は、いかにその後の表決がどうなろうと、事実はあくまで変わらない、こういうことになると思うのであります。ただ、百九十五号の決議の中には、その他のこともいろいろ書いてございます。あくまで基本条約三条の引用したのは、以上私が述べた事実に基づいて、そういうようなこれは政権である、こういうことを言ったのでありますから、この点は変わりようがない。万々一もしも韓国の管轄権の範囲がその後何かの事情によって変動するということになりますれば、これはその基礎となる事実関係が変化したのでありますから、これに対して適当なる調整を行なわなければならぬということになるだろうとは思いますけれども、さような事態はわれわれはいま想像できない。でありますから、決議の情勢が多少の変化をしてもこの問題は動かない、かように考えております。
○春日委員 これは法律関係は後ほどまた検討するといたしまして、一九四八年に朝鮮委員会が観察し、かつ、協議し得たところというのは、一体政府はどこというふうに理解しておるのですか。
○椎名国務大臣 あの当時、臨時朝鮮委員会だと思いますが、その委員会が、全朝鮮について統一選挙を国連の観察下において行なおう、こうしたのでありますけれども、休戦ライン以北には北鮮のきびしい拒否にあって立ち入ることができなかった。でありますから休戦ライン以南を観察した。こういうことになります。
○春日委員 南北戦争で休戦が行なわれたのは一九五〇年ですね。それから二年たった後に休戦が行なわれたのだから、休戦ラインなるものの設定は一九四八年にはないんですよ。ないものをそれだということは、一体それはこういうことですか。たとえば神武天皇が橿原の宮に日本国を建設された、そのときには北海道なんかどうなっておったか知らぬけれども、とにかくも入ってはいなかったと思うのです。実際の話がその後ずっとたってから入ってきた。休戦ラインというものはその時点にはなかったのです。一九四八年のその時点においては休戦ラインはなくて、その後戦争が起きて押し合いへし合いした結果、二年後に休戦ラインが設定されたんです。だから、その観察した場面と休戦ラインというものは、その見に行ったときに休戦ラインがあるならばそこでよろしいよ、ないものを見ようがないじゃないですか。どこを見たのか、抽象ラインだ。
○椎名国務大臣 間違いました。その当時は三十八度線です。そしてその後朝鮮事変が起こって、そして休戦ラインがわずかの変更をした、こういうわけでありますから訂正いたします。
○春日委員 私は、管轄権というような、この条約がどこに向かって適用されるかというようなことは基本的な大問題でしょう。こんな大問題について、間違っておりましたとは何事ですか、実際の話がですよ。これは重大な問題ですよ。わが党内ならばいきなり辞表の提出を求めなければならぬ問題だ、実際の話が。休戦ラインなのか、三十八度線なのか、これは明確になすべき問題であると思う。休戦ラインというようなものはその時点においてなかったんだから。しかるに政府の文書の中には全部休戦ライン、休戦ラインといってきたわけです。いままでの本会議の答弁でも、いろいろな答弁で休戦ライン、休戦ラインと言ってきておる。重大な間違いをおかしてきておる。管轄権が休戦ラインと三十八度線とは同じものじゃない。以通ったものであるかもしれないけれども、同一のものではないんですよ。同一のものでもないし、性格も違うものを、椎名外務大臣ともあろう者が、これで間違っておるというようなことについては重大な責任があると思う。ただ間違っておったと思わないで、その責任についてこの際国民の前に陳謝しなさい。そして統一解釈を明らかにして、今後は政府の理解は三十八度線である、休戦ラインなんてとぼけたことを言わないということをはっきりしなさい。
○椎名国務大臣 あくまで国連がその当時観察したのは三十八度線以南であります。その後の朝鮮事変のいきさつを経て、その形が多少の修正を経たのでございますが、(春日委員「多少とは何ですか、竹島の問題も大問題なのに」と呼ぶ)しかし、この決議の趣旨は、その後においても採択されておるのでございまして、その趣旨においては、このラインが変わりましても百九十五号の決議の趣旨はこれに当てはまるものという解釈をとっております。
○春日委員 問題は、韓国の国会の議事録を見ると、これは韓半島全域に及ぶと向こうは解釈をされておる。日本国はいままで休戦ラインだと言っておったが、きょうからは三十八度線ラインだと言い直すにしても、これは違っておる。この条約の効果の及ぶ範囲というものが違っておるということは重大な問題だと思う。これはたださなければならぬと思う。だから私は組織的に質問をしますから一ぺんひとつ御答弁を願いたい。
 まず、ここに日華平和条約の事例に徴しますと、日華平和条約締結の際、条約の効力の及ぶ範囲については、日本国全権委員から中華民国全権委員にあてた書簡、これは「この条約の条項が、中華民国に関しては、中華民国政府の支配下に現にあり、又は今後入るすべての領域に適用がある旨のわれわれの間で達した了解」こういう交換文書が交換されておって明確なんです。すなわち、条約は相手国とこちらとの間に共通の理解が確実に取りきめられておらなければならない性格のものであると思う。ところが、国内においては、休戦ラインであるのかあるいは三十八度線であるのか、どちらでもいいみたいなことを言っておるし、向こうは韓半島全域に及ぶものであると理解をいたしておる、こういうことなんでございますね。でございますから、ここであらためて確かめておかなければなりませんことは、この三十八度線なるものは全く固定したものか、あるいは流動性を持つものであって、日華平和条約の書簡のように、今後韓国の支配地域は、あるいは何らかの事情があって休戦ライン以上にも及び得るものであるのか。支配地域がこれ以上に及ぶならば、この条約の適用もそのように伸びていくものであるのか。たとえて言うならば、韓国が武力で北進をした場合、その地域はこの条約の適用地域となるのか、あるいは北鮮が南進した場合、韓国のこの管轄区域がそれによって減少した場合、その条約の適用地域はその分だけ削減されるのか。国連総会決議百九十五号(III)の解釈との関係においてこれは問題になると思う。これはどういうふうに政府は受け取っておるのか。相手方との上にはどのような了解に達しておるのか、明確にいたされたい。
○椎名国務大臣 百九十五号におきましても、有効に支配と管轄権の及ぶ範囲と、こう言っておりまして、必ずしも三十八度線以南と、こう言っておるわけではないのでありまして、これが重大な、広大な地域について変更があった場合ならば、私はしばらくおくといたしまして、多少の変化は当然包含し得るものと考える次第でありますが、なお、その件につきまして、条約局長から法律的な見解を申し上げたいと思います。
○藤崎政府委員 日華平和条約と比較してのお尋ねでございましたが、日華平和条約で御引用になりました交換公文で達しておる適用範囲を限定するという目的は、この基本条約の第三条で達せられておる、かように考えるわけでございます。それじゃ、なぜこの日華平和条約のように、支配の範囲が広がった場合にはそこに適用するというような条文を設けなかったかと申しますと、日韓間の場合には、たとえば請求権の処理の問題にいたしましても、現在管轄のもとにあるというところで区切って問題を処理いたしておりますので、自動的にその範囲を拡張していくというわけにまいらないという関係があったからでございます。
○春日委員 韓国政府は、韓国国会においてこの問題についてどのように説明をいたしておりますか。
○椎名国務大臣 詳しく向こうの国会の議事録を調べたわけではございませんけれども、私の承知しておる範囲においては、韓国の憲法が全半島に及んでおるということを基本にいたしまして、そして今回のこの条約によって、日本がこの韓国の領土と申しますか、憲法上の領域も認めたのだ。ただ事実上その支配権が及ばないという瑕疵ある状態に置かれてはおるけれども、本来の領土は全半島に及ぶのだ、これを日本が認めたので、今後は北鮮が日本を相手にしていろいろな国際的な行動を超こすということは一切封ぜられたのだ、こういうような説明をしておるやに私は聞き及んでおります。
○春日委員 この問題は、相手がどういう解釈をしようと、わが国の解釈を、この質疑を通じて厳然と日韓両国並びに世界に向かって明らかにしていかなければならないと思うのでありまするが、すなわち、韓国の領土管轄権の範囲については、韓国国会の議事録によれば、李東元外務大臣は、大韓民国樹立の基本的条文が、一九四八年十二月十二日の国連の決議文である。この決議文で大韓民国は文字どおり韓半島における唯一の合法政府である。かような理由で、今後日本国が北緯かいらいと正常な外交関係あるいは領事関係を結び得る可能性を封じたと述べ、北朝鮮、すなわち朝鮮民主主義人民共和国はかいらい政権であり、本来韓国の管轄権は朝鮮半島全土に及ぶと解釈をいたしておりますね。このことは韓国の独断であり、かって気ままな解釈をほしいままにしておるだけのことであって、日本国は全然関知してないものとここで断定的に宣言できますか。宣言できるなら内閣総理大臣より宣言を願いたい。――宣言をしなければ宣言しないでいいからほかのことを答弁願います。これは間違ったものであるのか。わが国が三十八度線を厳然としてこの管轄権として理解し、その意味において調印をしたものであるのかどうか。内閣総理大臣の責任において御答弁を願いたい。
○安藤委員長 椎名外務大臣。
○春日委員 ちょっと待ってください。どういうわけであなたが出てくるのか。あなたなんかに答弁を求めていないんです。いやいや、総理において答弁を求めたら総理が立って答弁をなすべきである。答弁ができないなら答弁できないと、韓国が言うとおりが正しいなら正しいとおっしゃい。韓国丁一権総理大臣が言うことが正しいならば、われわれはそのように判断をなすべきである。ただし、外務大臣が言うたように、三十八度線以南が管轄権の及ぶ範囲でありとするならば、厳然たる権威をもってそのような御答弁をなされるべきである。
○佐藤内閣総理大臣 外務大臣がいろいろ折衝したので、外務大臣からお答えさせようと思いましたが、総理が答えなければいかぬということですから申し上げます。
 御承知のようにこの基本条約第三条「大韓民国政府は、国際連合総会決議第百九十五号(III)に明らかに示されているとおりの朝鮮にある唯一の合法的な政府であることが確認される。」この書いてあるとおりを私どもは考え、またこの趣旨に沿って条約を結んだわけでございます。これより以上の何ものでもございません。したがいまして、先ほど来現実の問題として外務大臣からお答えしたとおりでございます。
○春日委員 日本国の総理大臣が、この問題についてあえて明確なる答弁を避けられるというのは一体どういうわけか。(佐藤内閣総理大臣「明確です」と呼ぶ)明確じゃないです。韓国の言っておることが違っておるならば違っておる、わが国の理解は、すなわち三十八度線以南に限られる、こういう解釈ならば、そのようにここで御答弁なすってしかるべきじゃございませんか。百九十五号に述べられておるといったって、あとで説きますけれども、百九十五号の述べ方は理解に苦しむ。というよりも、百九十五号をそのままに読めば、丁一権総理大臣が解釈されるようにしか解釈されない、というよりも、丁一権内閣総理大臣が解釈して国会で答弁しておるような解釈も文理上成り立つということである。読みますよ。これは「大韓民国政府は、国際連合総会決議第百九十五号()に明らかに示されているとおりの朝鮮にある唯一の合法的な政府であることが」こういうようにすらっと読めば、丁一権内閣総理大臣が、韓半島における唯一の政府であるから、韓半島全体に管轄権が及ぶんだと韓国で述べおるような文理的解釈が成り立ち得るのである。だが、それが違うのであるならば、日本国の確信は何であるのか、このような質問のときに、内閣総理大臣が、韓国内閣総理大臣が韓国国民に向かって述べておるように、責任と権威を持って国民の権利と義務のその限界を明らかにすべきである。当然のことじゃありませんか。
○佐藤内閣総理大臣 韓国の総理がどういうつもりでさような説明をしたか。これは韓国憲法を説明をしておるというように私は解釈しますが、ただいま第三条に規定してあるところのものは、はっきり申しますが、先ほど来外務大臣がお答えしたように、百九十五号()というものは、現実にその管轄の及んでいる範囲、これは明確にいたしておりますので、これは議論の余地がございません。
○春日委員 議論の余地はないという、その議論の中身の具体的なものは三十八度線以南に限定せらるものでありますか、いかがです。――ちょっと待ってください。法制局長官、あなた、どういうわけで出てくるのだ。全然ぼくと関係ないよ。
○佐藤内閣総理大臣 私は、先ほど外務大臣がお答えいたしましたように、わが国の考え方は非常にはっきりしておるのでございまして、この百九十五号()が明らかに示しているとおりのという、このとおりでございまして、それ以上のものは何も考えておりません。したがって、いま丁一権総理の話というのは、この百九十五号()で明示しておるものとは違っておるように私はどうしても考えます。先ほど来申しておるように考えておりますので、管轄権を実際に及ぼしているものは休戦ライン以南であること、これは明白でございます。
○春日委員 またそれ休戦ラインと言ってもらっては困りますね、三十八度線が正確だといま外務大臣が言ったばかりじゃございませんか。休戦ラインですか、三十八度線ですか。三十八度線と休戦ラインは違うのです。
○佐藤内閣総理大臣 現に管轄権を持っておるものは休戦ライン以南だ、私はかように考えております。
○春日委員 体戦ラインですか。ただいま外務大臣は、この管轄の及ぶのはいままで休戦ラインと言ってきたけれども、それは間違いであった、三十八度線だと言っておる、そのときには休戦ラインはなかった。いいですか。そこで三十八度線ということになったのでございましょう。それで、この条約が適用されるのは休戦ラインか、あるいはどちらなんです。国連決議を引用しようとすれば休戦ラインはないのです。引用しようという時点にないものを一体どうして理解するのです。引用しようと思ったって、二年先にならなければ休戦ラインはあらわれてこないのですよ。
○佐藤内閣総理大臣 先ほど外務大臣が答えたのでございますから、外務大臣からその点を明らかにさせておきます。
○椎名国務大臣 一九四八年に観察した地域は、三十八度線以南でございます。しかし決議は、三十八度線とも休戦ラインとももちろん書いてない。現に有効な支配と管轄権を及ぼしておる区域、こういうことになっておりますから、その後、朝鮮事変を経て有効に支配管轄権を及ぼす範囲というものは広がって、そして休戦ラインになっておる。現に支配権の行なわれておるのは休戦ライン以南でございます。
○春日委員 わかりました。明らかになりましたことは、丁一権韓国内閣総理大臣が韓国国会において述べられておるこの種の理解、全半島に及ぶということは間違いである。日本国政府の理解は三十八度線以南、休戦ライン以南、こういうぐあいに確信を持って御答弁ありますね。よろしゅうございますか。
○佐藤内閣総理大臣 これは誤解があると困りますが、先ほど来申し上げておりますように、有効な管轄権を持っておるその地域、それは先ほど来申し上げるように休戦ライン以南。韓国の憲法その他はどういうようになっているか、それは韓国の問題でございますので、私どもの関与するところではございません。
○春日委員 それでは、有効な支配権を及ぼし得る範囲というものは、言うならば固定的であるのか流動的であるのか、これは仮定の問題でありますからいかがかと思いますけれども、しかし、法理論の解釈としては、ただしておかなければならない。あらゆる場合、どのような変化を生じてくるか、これはわれわれの職務である、職権である。よろしいか。いま申し上げましたように、韓国が武力北進をして伸びた場合、あるいは、北鮮民主主義人民共和国が武力南進をしてその現在の管轄権が圧縮された場合、それはそのまま変化をしてくるのでございますか。すなわち、日華条約のような変化を事実上に発生してまいるものと理解すべきか、いかがでありますか。
○椎名国務大臣 百九十五号は、あくまで現に有効な支配と管轄権を及ぼす範囲、こう言っておりますから、その場合には増減があり得るわけであります。
○佐藤内閣総理大臣 いま外務大臣がお答えしたとおり、これはもうこの協定、この条約を結んだ、その際の現時点で条約を結び、協定を結んだ、こういうことであることには間違いない。その点は御了承いただきますが、同時にまた、ただいま休戦協定をいたしておるわけでございますから、例に引かれましたような武力北進だとか、あるいは南進だとか、こういう事態は、この休戦協定を順守しておる限りにおいては問題にならない、そういうことは起こり得ない、かように思います。
 もう一つつけ加えて申し上げたいのは、国連も南北統一といいますか、単一国家の出現することを心から期待しておりますし、そういう意味合いにおきまして今後も努力が払われる。かような状態をお考えいただいて、いわゆる実力あるいは実力行使による事態の変更、実際問題の変更というようなことはただいま考えるべきでないということを申し上げておきます。
○春日委員 それは違うのです。それは違うのみならず、重大な疑義を後日に残すものです。流動性がない、固定的なものである。こういうぐあいにいままでは説明をされてきた。すなわち、休戦ライン以南に固定されたものである、すなわち条約締結の時点において管轄権の及んでおるその地域に対してこの条約の効果が及ぶものである。こういうふうに述べられてきたんだが、そうじゃなくて、伸び縮みがあるんだ、管轄権が伸びるに従ってその適用地域は伸びていく、減ったならば減ってくるんだということだと、これは問題は非常に重大だと思うのです。
 それからもう一つ、大体この休戦協定なるものにも問題があると思うのです。総理、休戦協定にも問題があると思うのです。例の休戦協定が締結されたときには、これは予備会談に国連代表の一人として白善Yという人、協定にも国連代表の一人として崔徳新少将が加わったが、協定には、これは朝鮮人民軍最高司令官及び中国人民志願軍司令官を一方とし、他方は国連軍総司令官であって、韓国軍司令官は休戦協定に判を押していない。だから北鮮は休戦協定を守るという国際責任がある。けれども、韓国政府それ自体には固有の責任がないと思う。そういう問題をもあわせ内包する問題として、この管轄権の流動性、固定性を判断するとき、ここに重要な疑義があると思う。けれども、この問題は、いまここで決着をつけるということはいかがでありましょうから、したがって、これは永末質問に譲ります。わが党の永末君がこの問題について深く探求されておるようでございますから、あなたのほうも、その質問までに……。
  〔発言する者あり〕
社会党がやっちまう。――社会党にやられちまうなら、おれがやるよ。(笑声)社会党にやられそうだから、ぼくがやる。
 まず、問題の起点は、この基本条約第三条は「大韓民国政府は、国際連合総会決議第百九十五号(III)に明らかに示されているとおりの朝鮮にある唯一の合法的な政府であることが確認される。」とあるけれども、百九十五号(III)というものは、唯一の合法政府なるもの、そんなふうには書いてはいない。そんな基本条約第三条に書いておるようなぐあいに百九十五号は書いておりません。すなわち、その前段には、観察し、かつ、協議し得たところの朝鮮の人民の大多数が居住している朝鮮の部分に、有効な支配と管轄権を及ぼす合法的な政府が樹立されたこと、それで、この問題については、あやまたしめたことは、前段に日本はウエートを置いておりますね。日本は前段にウエートを置いている。前段にウエートを置いておるということは、臨時朝鮮委員会が観察し、かつ、協議し得たところというところにウエートを置いて、三十八度線であるとか休戦ラインとか言っておる。ところが韓国は、この前段が書かれていないものですから、この三条の中に前段がことさらにサイレントになっちゃっておるのです。したがって、その後段にウエートを置けば、これは朝鮮にあるところの唯一の合法政府としか書いてないものだから、文理上それを読み下していけば、われらが唯一者だと、こういうことになってきて、実際問題としてこの文章の書き方に問題がある。だから、こういうような困難なる問題を表現するときには、同じような台湾との間においても、やはり中国大陸というものを念頭に置いて、困難なる条約の締結であったから、したがって、交換公文や交換文書等によってその疑義を解明するの措置がとられておる。だから何となく八百長的な表現がとられておるのですよ。韓国さんについては韓国さんの言いやすいように、韓国全土に及ぶように、三条におけるその百九十五号(III)の引用を、ただ後段にウエートを置いて、かつ、そのことをのみ書き連ねておる。そうして、日本国が理解しておるところの百九十五号(III)の前段は、ことさらにこれをサイレントにしておる。(「してない」と呼ぶ者あり)そうか。してないと言ったって書いてないじゃないか。(発言する者あり)いや書いてないよ、それは。だから、こういう二様の解釈の成り立つような文言というものは、私はこれは危険だと思うのです。少なくとも条約というものは、両国がやはり正確なる合意に達しなければならぬではないか、共通の理解を把握しなければならぬではないか。向こうは朝鮮じゅう全部だと言っておる。こちらは南だと言っておる。ところが、専門的につぶさに検討していけば、そういうような解釈も成り立ち得る、こういうような理解も取りつけ得る。そんなややしいことを――何かこれは宝さがしか、マジックか、クロスワードみたいなもので、適当ではないじゃないですか。何らかの交換公文を取りつけておくか、あるいは国会においてき然たる宣言か、あるいは附帯決議か、この問題はわが国のこの三条に関する有権的な解釈を厳然と打ち立てておかなければならない問題であると思うが、この問題については、いずれは各党の理事間その他において、最終段階において、危険が後日に及ばないように、問題を後日に新しく植えつけることがありませんように、十分善処されんことを望みます。
 次は、私は管轄権問題についてお伺いをいたしたいと思うのでありまするが、これは三十八度線以北にははたして及ばないのでございますね。何ものも及ばないのでございますね。あらためて御答弁願います。以北にはこの条約の効果も何も及ばないのでございますね。
○椎名国務大臣 ただいまの現状では、休戦ライン以北には及ばない。
○春日委員 そういたしますると、ここに日韓漁業協定では、専管水域と共同規制水域について規定しておるが、専管水域は、これは三十八度線以南に限定されておる。これは韓国の漁業に関する水域に関する交換公文でありますか、これで三十八度線以南に専管水域は限定されておることが明らかである。ところが、共同規制水域は、日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定第二条、これで北鮮沿岸に接続する水域、もっともその領海は除かれておりますけれども、すなわち朝鮮半島全土に関連するものとなっておるが、これは一体どうしたことか。三十八度線以北には及ばぬと言っておいて、本日渡された地図によっても明らかでありまするが、三十八度線以北、これまでずうっと貫かれておるが、どうしたことか。以北には及ばないと言明された総理の管轄権に関する考え方とこれとは首尾一貫しないではないか。どういうことでありますか。農林大臣、御答弁。
○坂田国務大臣 御存じのとおり、漁業水域並びに共同規制水域の問題ですが、ともに合意によってこれはいくわけでございます。ところが、漁業水域の問題は、排他的管轄権を持っておる必要がある。それがなければ、いかに合意があってもそれは効果がないわけであります。したがって、その排他的管轄権を有するその沿岸だけまでは延び得るわけでございます。
○春日委員 形式的に言えば、あるいは法律的にはそのようなものであるかもしれません。けれども、本来、大陸だなであるとか、保存水域とかいうものは、通例、沿岸国が自国の海岸に接続する水域について設定することが国際慣例になっておる。すなわち、自国の海岸に接続しない水域に設定するということは、これは全く異例のことである。ことに今回のように、南北朝鮮の間に敵対関係がありまして、その一方との条約を結ぶときに、北鮮の接岸水域に日本と韓国との間の共同規制水域を設定するということは、三十八度線以北には何事もこの条約の効果が及ばないと言われておる政府の態度、方針とは相異なるものではございませんか。
○坂田国務大臣 先ほど漁業水域の問題と二つ申したのでありますが、共同規制水域のほうは、これは公海の中に行なわれることでありまして、資源を保護するという趣旨をも加えて行なわれておる、両国のいわゆる合意によって定められるものでございまするので、これは公海の上において行なわれる、こういうことに御了承願いたいと思います。
○春日委員 一体このよううな共同規制水域を設定することの効果は何でありますか。公海だから、だれだって行けるところなんだ。北鮮からも来れるんだし、ソ連からも来れるんだし、中国からも来れるんだし、だれでも行けるんだ。だれでも行けるところに、ことさら北鮮が気にしておるその北鮮の接岸区域に――何十海里か離れておりましょう、それは領海の向こうですから。法律上には差しつかえはないかもしれないけれども、だれでも行けるところにそんな共同規制区域をつくらなくたって、日本の漁船は自由にそこへ行ける。そうしてかりに乱獲を防止する協定を結んだところで、他国が来て自由に漁獲していけば、それをとがめるすべもない。何のためにそんなことをやるんですか。人の気にさわるようなことをやらぬでもいいじゃないですか、実際の話が。三十八度線以北には及ばぬ言っておる。そうしたら、首尾一貫して――漁業専管水域ですら、韓国の漁業専管水域が三十八度線によってストップされておるものを、日本がことさらにそのような共同規制区域を設定してその片棒をかつぐ。これは何だかしら、これが遠く韓半島全部を取り囲んで、そうしてこの日韓条約の効果が及ぶかのごとき多くの作業の中の一つの作業をなしたような誤認を北鮮政府に与えるような心配はないか。こんなものをやる必要はないじゃないか。やるについては、何らかの意義と目的と効果がなければならぬ。何にもないじゃないか。だれが行こうと、とれるところである。共同の乱獲防止のためにそんなものをつくったところで、人がとっていけば何にも効果がない。共同規制区域の協約を結ばなくたって、日本の漁船が行こうと思えば単独でとれる。何にも意義もない、効果もない、こんなものをつくって北鮮の神経を刺激する必要いずこにかある。答弁してみなさい、何か積極的必要があったのかどうか。
○坂田国務大臣 この漁業水域の場合は非常に刺激すると思うのです。この場合は、公海の中で両方がそのことを合意の上できめるということでありますから、別に刺激もないと思います。
○春日委員 何を言っておるか、わけがわからぬですね。外務大臣、御答弁。
○椎名国務大臣 結局、公海の中でございますから、公海の海面に関する問題でありますから、これは日韓の両国の間だけの関係でありますから、これを漁業共同規制区域として設定しても、別にどこからも苦情がくるわけでもないのでありますから、なし得ることでありますから、やったというまでのことであろうとわれわれは解釈しております。
○春日委員 私は、法律だとか協定だとかいうような問題は、すべてその根底をなすものは、国内法はやはり道義、条理の上に立って法律はできると思う。国際条約、協定といえども、国際道義、条理の上に立ってそういうようなものは結ばれると思うんです。ただ、韓国と北鮮との間にあのような敵対関係がありますときに、韓半島をめぐって、その周辺全部に、これを全部取り囲むような形で日韓間に共同規制区域をつくるということは、北鮮政府にとって平気でしょうか。たとえば、お互いの家のまん前に便所をつくられたり、玄関の横っちょに便所をつくられたり、あるいはそこに騒々しいことをやられたり何かすれば、お互いに実際問題としてかんにさわるじゃございませんか。あの独占漁業水域ですら、三十八度線で韓国はとどめておる。それを、魚がとれるか、とれないかもしれない、そうしてそんな共同規制区域をつくらなくたって魚は自由にとれる、また、乱獲防止の協定をしたって、他国がくれば全然効果はない、そんなところに、言うならば、朝鮮民主主義人民共和国の玄関先へ、その敵視関係にある他の一国と取り組んでそのような地域を設定するというようなことが、すべての国々と仲よくしようという立場にあるわが国のつつましやかな態度のあらわれと言い得ますか。そんなものはやらぬでもいいじゃないか。そんな失礼なことはやらぬでもいいじゃないか。何も効果がないんだから。なぜそういうようなことをやったんですか。三十八度線以南に現に限られる、北鮮の地域を白紙として、その存在はオーソリティーとしてこれを認めるというような見地の上に立つならば、そんなよその接岸区域に、敵視国の一方と組んでそんなような事をかまえる必要いずこにかある。そのようなことをやったことは、愚かしきさたの限りと断ぜざるを得ない。(笑声)ちょっとこれは言い過ぎたかもしれない。(笑声)これは大いに御反省の上、この点については何らかの調整をして、自主的に出漁を日本は取りやめるとかなんとかいうような措置が実際問題として望ましい。もののはずみで、日韓交渉の間で、韓国の要望を押え切れず、ついふらふらっとこんなことに賛成してしまったのかもしれませんけれども、わが国がその条約の効果の及ぶ範囲というものの管轄権をほんとうに神経質に厳粛にこれをとらえるならば、共同規制区域なんというようなものをつくって、相手の神経を刺激するというのは、愚かしきことである。したがって、今後の協定の実施にあたって、この地域には日本からは出漁しないとかなんとかいうような措置をとることによって、こういうような摩擦を避けていかれることが望ましいと思う。いかがでありますか。
○坂田国務大臣 申し上げたことでありますが、なおことばの不足もあると思いますので申し上げますが、共同規制区域のほうはそう神経をとがらすようなこともなかろうと思うのでありますが、なぜ、それをしからば置いたかという問題でありますが、これは李ラインがあそこまで引かれておりますので、共同規制水域の中にそれを包含――いわゆる李ラインでなしに、共同規制水域という中に包含して、そして資源の問題も、また漁業の実績もそれで十分見ていこう、こういうわけでございます。御了承願いたい。
○春日委員 李承晩ラインは、日本漁船に関する限り事実上なくなったのだ、こういうふうにわれわれは理解しておったのだけれども、この共同規制水域というものがなければ――三十七度三十分ですか、あれから以北の東経何度と書いてございますけれども、あれがなければやはり李承晩ラインというものは存続される、こんなとぼけた交渉をしておったのですか。全然韓国に関係のない北鮮地域の接岸区域まで、韓国はその平和ラインというものを武力によってなおかつ将来とも日本に向かって行使する、こういうような意思表示があったので、これは困ったということで、その口実としてこういうものが設定された、こういうふうに理解するのでございますか。一体そんなものなんですか。日韓の友好親善をはかることのために、このような大きな大胆なる措置をとってその実をあげようとするときに、李承晩ライン、しかもその北鮮の接岸区域にある平和ライン、そんなものも共同規制区域がなくんば撤回されないという形になるのですか。その効力を持つのでございますか。
○佐藤内閣総理大臣 まず一つお答えしておきますが、李承晩ラインは、私どもは、国際法上違法なものである、不法なものである、したがって、これは絶対に認めない、こういうことがわが国の本来の主張でございますから、この点は誤解のないように願っておきます。
 ただいまのラインの問題が北鮮の接岸地域、こう言われますが、私はさように考えないので、これは公海の問題です。公海自由の原則でございますから、この点は公海なんだということをまずお考えいただいて、魚族保存、そういう立場から日本はこれは遠慮する、双方で遠慮する線がこれだというのでございますから、ただいま言われるように、南と北がたいへん仲が悪いのだ、その北の接岸地域にかようなラインを引くことはよくないじゃないかと言われるのは、これはやや実情が違う、ここは公海だ、かようにお考えいただけば、ただいまのような疑問が解消する、かように私は考えます。
○春日委員 時間が次第に迫っておりますから簡単に伺いますので、簡単に御答弁を願いたいのでありますが、総理がいま室外に出られておりましたときに特に私が申し上げましたことは、そんなところに共同規制区域をつくったところで、意義もない、効果もない。というのは、乱獲防止のために協定したとしても、どこの国でも来れる公海であるということですね。また、公海なんだから、そんな協定がなくったって、日本の漁船は自由に出漁できる、こういうことなんです。そんなものをつくる必要がどこにあるかということなんです。しかも、北鮮の接岸区域ではないとしても、とにかくその領海と若干の距離を隔ててそこにそういうものを設定して、しかもそれが韓半島全部をずうっと取り囲んだ形になっておれば、その図面を見せられたところの北鮮オーソリティーはこれは気になるじゃないか。たださえ韓国は、韓半島全域にこれが及ぶのだと言っておる。全域に及ぶさまざまな事柄の中のその一つがここに実施されたかのごとき悪い感情を相手が抱く。そんなことを、意義も目的も積極的な必要性もないのに、この時点においてこの際やる必要はないではなかったか、そのことを言っておるのです。だから、やってしまったからしようがないから、せめては、そのような刺激を与えるような行為――その共同規制区域には日本は出漁しないような行政措置、行政指導、こんなものがあり得るであろうが、その点を考えろ、こういうことを言っておりました。いかがです。
○佐藤内閣総理大臣 政府は、このラインは日韓両国の申し合わせだけで、第三国を縛るものでない、この点もこれをはっきりしておきたい。しかもこれは公海の部分だということを御了承いただきたい。
 ただいまお話しのように、実際問題としては、さようなところまで線を引かなくても、行かなければそれでいいじゃないか、こういうようなお話もございます。ただいま、そこまできめたことがいろいろの誤解を受ける、こういうことで御注意があったようでございますが、これが実行にあたりまして、私どももかような意味で北を刺激するようなことはしたくないということだけ申し上げておきます。
○春日委員 いろいろと問題がございますが、第二陣、第三陣にバトンをタッチいたしまして、その問題はさらにせんじ詰めてまいりたいと思います。
 質問を進めます。
 第一番に、竹島の帰属に関する問題でありますが、この間これについては松本七郎君から詳細に韓国国会における李東元外務大臣の国会答弁が述べられました。ところが、そのようなことごとく否定の答弁ばかりであるかと申しますと、いろいろと調べてまいりますと、これについては、八月十四日の韓国国会本会議で、李東元外務長官は竹島問題についてこういうふうに述べておるのですね。「紛争の平和処理に関する交換公文に従って処理される」と、それまで述べてきた答弁とは違ったニュアンスで述べられておる。これは八月十五日の朝日新聞の朝刊に報道されておりますので、そのような事実関係があったかどうか、これを伺いたい。これは「竹島は紛争処理の対象となり得る。ただ、合意の手続方式がまだきまっておらず、したがって、韓国側が応じなければ、国際司法裁判所や第三国の調停は不可能である。」という後段の歯どめはございますけれども、交換公文としては、竹島は紛争処理の対象となり得ると言っておる。こういう答弁をなされた事実がありますか、いかがでありますか。
○後宮政府委員 ただいま御指摘ございましたように、本会議の段階において、李長官が、そういうふうな――二ュアンスと申されましたが、趣旨の答弁をした情報は、私のほうも聞いております。
○春日委員 さすれば、国民の前に、この問題について本日までの審議は、竹島の帰属問題についてはアブソリュートリー・ノーという向こうの答弁というふうにここで述べられておる。あなた方は当然、韓国においてどういうぐあいに述べられておるかぐらいのことは御研究があってしかるべきだと思う。そのように述べられてもおるが、このようにも述べられておる、そのような情勢の中に立って、われわれの理解は、韓国との紛争問題であり、交換公文の中に取り扱われる問題の対象たり得る、現に李東元外務大臣はこういうふうに述べておるのだということを、国民の不安を解消するためにも、当然述べられてしかるべきではないか。どうして、こういうような答弁があったらあったと、積極的に述べられないのであるか。ただ向こうが否定的に、そんなものは問題としないのだ、全然相手にしないのだ、その点については外務大臣も内閣総理大臣も承認しておるのだ、こういうことで問われて、それについてもそもそと何かわけのわからないような答弁をしておって、これじゃ問題を氷解する形にならないではないか。条約締結の責任者たるの責任的態度とは言いがたいではないか。いやしくもこの問題について、李東元外務大臣が、竹島は紛争処理の対象となり得るなどと本会議で述べておる事実があったら、国民の疑いは晴れていくではないか。いかがです。
○椎名国務大臣 基本的にはわれわれは、今度の条約の締結に関係した人々がどこでどういう説明をしておるかということにあまり重きを置きたくない。条約は、一度書かれた以上は、これに関係しておる人の主観によって左右されるべきものではないのでございまして、あくまで条理によってこれを客観的に解釈していきたい、そういう態度をとっておりますので、だれがどこでどういうことを言ったということを一々私はこれを取り上げて、これに対して無用な抵抗を試みるというようなことよりも、書きおろされた条文の成文というものによってあくまで解釈するという態度をとっていきたいと思うのであります。竹島の問題につきましては、日本からこの領土権の主張をする趣旨の抗議文が三十数回、また向こうから同様の抗議文が二十数回出されておる。終戦後でございます。それ以前のことはしばらくおくとして、終戦後においてもそういう状況で、日韓間のきわめてこれは重要な紛争問題であるのでございますが、これを今回の紛争処理に関する交換公文において、竹島はこの紛争から除くということは書いてない、そうすると当然両国の紛争問題になる、こういうことになるのでありまして、向こうの当局がいかなる場合にどういう説明を試みようとも、この事実を曲げることはできない。そして通常の外交ルートによってこれが解決をはかる、もしできなかった場合には、両国の合意する方法によって調停にかける、こういうことになっておりますが、そのとおり一字一句厳密に詮議をいたしまして、両国の間で調印がかわされて今日に至っておるのでございまして、いかなる調停にも応じないというようなことを言っておるかに伝え聞くのでありますけれども、いやしくも調停にかけると言った以上は、いかなる調停も認めないということは、これはもう条約違反である、そういうことでございまして、この日韓条約が効力が有効になりまして、そして適当な機会にこの問題の解決のために両国の間で折衝をはかりたい、こう考えております。
○佐藤内閣総理大臣 ただいま春日君から指摘がありましたが、もちろん、国民各位の理解のもとにこの問題を解決したい、これが政府の責任でございますから、御指摘になりましたように、より親切な、また材料もそろえて、そうして国民の理解を得るように努力をいたします。
○春日委員 私は、いまの外務大臣の答弁は不満です。われわれはかく理解する、相手がどういうふうに判断しようと気にかけない、そんなばかなことがありますか。自分が調印をした当事者ではないか、実際の話が。国民が不安を持ち、多くの心配を持って論じている。その疑義の中心点となるものは、韓国当局が、これは紛争問題でもないし、交換公文の中に示されている紛争問題ではないのだ、こう言い張っておるのだといって、そうかしらと思って国民は心配をしておる。そのときに、いや、そうではない、李東元外務大臣も韓国国会で批准される直前にこのような答弁をしておりますとか、このことに徴してもこの問題は明らかですと一口述べれば、そのような心配は一ぺんに氷解するではないか。しかるに、だれが何と言っているか、私はそんなものは気にかけないという、まるで雇われマダムみたいな気のない返事である。そんなばかなことはない。だれがどういうぐあいに答弁し、だれがどのように理解をしているか、私はもう少し真剣にやってもらいたいと思う。
 それでは、もう二、三点伺います。
 そこで、この平和ラインというものが撤回されたと政府は理解をしておるが、その根源法となるものはこの漁業協定である。しかしながら、漁業協定は有効五カ年間、一年間の猶予期間を持てばこれを一方的に廃棄ができると思う。私はこの問題は非常に重大だと思う。すなわち六カ年後において、何らかの事由によって、すなわち、国際情勢の変化もあるであろうし、あるいはこの漁業協定の実施の中において、これは不幸なことであるけれども、日本の漁業労働者諸君がときに違反を犯す頻度が多かったりなんかして、これではならぬというので、向こうがかんしゃくを起こして破棄してくるような場合も絶無ではないと思う。それが一方的に破棄されたならば、この李ラインは再び復元をしてくると思う。一力的に破棄宣言をされたような場合、一体日本はこれに対していかなる対応策を持つものであるか。対応策があるのかないのか。その場合の心がまえというものをこの際お示しを願いたい。
○椎名国務大臣 この漁業協定は、両国の利益を十分に両者の間において主張した結果合意に達したものでありまして、日本の漁民にとっても安全操業が確保される、韓国漁民にとっても将来決して悲観すべきものではない、むしろこれに関連して漁業協力等が日本から行なわれることになるのでありまして、日が進むに従って、両国の漁業に従事する人々が非常な満足を感ずることは疑いのないところでございまして、したがって、これを破棄するというような雰囲気は決して考え得られないのであります。しかし、万一破棄した場合にどうなるかということでありますが、もともとこの李ラインというものは国際法上認められたものではない、今回の協定に際してこの国際法の原則を認めておるのでございまして、協定がかりに破棄されたからといって、今度は再び不法不当な李ラインというものが復活するというようなことはとうてい考えられない。そういう点で十分この漁業協定によって両国とも繁栄するものと考えております。
○春日委員 もとより、われわれの期待もその一点にあります。いままで敵視関係にあった、あるいはにらみ合いの関係にあったものが、この協定が実施されることによって友好親善の度合いが次第に高まってくる。六年後にはそれがさらに積み重ねられて、非常な仲よしの関係になってくる。そのときに、この漁業協定が廃棄されるとは思わないけれども、しかし、現実に向こうは国会において、この李ラインにおいては幾多の使命をになっておるけれども、その中の一つのものは漁業協定によって日本に対して凍結されたと言っておる。しかし、李ラインというものは厳存するものであると、向こうの車農林大臣はこれを述べておるのであります。したがって、われわれは、これが存続されるということは、もとよりこれは期待しておるのであるけれども、しかし、最悪の場合というものは、これはわが国として相当の心がまえがあってしかるべき問題であると思う。たとえば、私はそのことを政府から答弁を求めるわけのものではございませんけれども、これから仲よし関係になろうというとき、たとえば、ここで縁談を結ぼうというときに、破談になったらどうするのだ、ああするのだというような破談の取りきめをあらかじめしょうというわけではないけれども、しかし、向こうの峻厳なる宣言、すなわち、李ラインというものが厳存するのだ、漁業協定に基づいて一部日本に対してこれが凍結されるんだと国会で宣言されておることにかんがみて、私が申し上げることは、たとえば、日本は有償、無償供与八億ドル、あるいは無償のものだけだって三億ドル、これは大平君が金鍾泌さんと取りきめられたから、これはもはややむを得ないものになってきておる。これは十年間の年賦で行なっていくんでございますね。あるいは有償供与の二億ドルも十年年賦であろうと思う。それで私は、向こうが一方的にそういうような李ラインの破棄宣言とか、あるいは継続に向かって難題を吹っかけるような理不尽な措置に出てくるような場合は、わが国もこれに対して手放しであってはならぬと思う。やはり厳然たる態度があってしかるべきであると思うが、この問題については、政府に十分すきのないように、何でも韓国の言いなりほうだいになるということでなく、主張すべきところは厳然として主張する、譲るべきところは大いに譲る、真に友好親善の高まるような形で、あらゆる場合を想定して対策をあまねく立てられておくことを強く要望いたします。
 次は、もう時間が十五分か二十分だそうでありますから、領海と専管区域との関係について質問をいたします。
 韓国国会の議事録によれば、車農林大臣は次のように述べられておる。十二海里の漁業水域あるいは独占水域を設置することができても、外側の六海里については、従来から漁業実績がある国に対してはこれを開放しなければならないというのが現在の国際慣行だ。しかるに、今回の韓日間の協定では、十二海里までは全面的に日本漁船が排除されるものであるから、現在確定されておる国際慣例と国際法による漁業水域確定の原則をはるかにこえた、言うならば、われわれにとってはまことに有利な条件が結ばれたと、韓国ではこのように述べられておるようでございますね。このことばは、韓国の領海と専管水域とは同一のものではなく、領海は六海里とするのが、国際慣例と国際法上から見て適当なものだと韓国自体が考えているかのごとくに判断されるのでございますね。したがって、一ぺんこの際、政府は、領海の範囲について韓国がどのように理解をしておるか、これをひとつ御答弁願いたい。
○坂田国務大臣 漁業水域の十二海里と領海の問題は全く別でございまして、漁業水域のほうは十二海里を合意をもって今度協定したわけでありますが、領海のほうは、わが国としては従来どおり三海里の立場をとっておるわけでございます。
○春日委員 私はこの点をはっきりしてもらいたい。実際問題としては韓国は韓国の領海を何海里としておるか、これについて日本政府の認識はどういうふうか、これを御答弁願いたい。
○椎名国務大臣 日本といたしましては三海里と了解しております。
○春日委員 日本は三海里が韓国の領海であると理解をいたしておる。韓国はこれに対していかなる主張をいたしておりますか。
○椎名国務大臣 韓国は、かつて、これを拡張しようというような意思を対外的に表明したことはない、かように了解しております。
○春日委員 しかし、車農林大臣のこの国会答弁の中には、積極的に韓国の領海は何海里だということを明言はいたしておりませんけれども、語るに落ちたような形で、十二海里が設定されたけれども、しかし、その外側の六海里というものは、従来の慣行によれば、漁業実積のある国に対しては開放せなければならぬと言っておる。それを十二海里の専管区域として今度設定して日本に承認させたのだから、いわばこの六海里はもうけものだと言うておることは、このことばから判断し得ることは、中側の六海里は領海である、こういうふうに彼が述べておるものと判断すべきであると思うが、なおかつ三海里というふうに日本は認識し受け取り、韓国はこれについて何も言ってないものだというふうに知らぬ顔しておっていいのでございますか。これは六海里説が、間接的ではあるけれども、ここに主張されておるものと理解すべきではないか。この問題はあとに質問いたしますことに関連をいたしますので、十分責任を持って御答弁願いたい。
○椎名国務大臣 いわゆるアウターシックスという問題から逆に考えて、しからば内側の六海里は領海ということに意思表示をしておるのではないかという御質問でありますが、かつて領海についての意思表示を明確にしておりませんので、依然、これにかかわらず、韓国としては三海里が領海である、かように外部から観察しておる次第であります。
○春日委員 それでは、この問題については、こういう問題があるということをひとつ御銘記願いたい。
 あと五分だそうでございますから、残余の問題は他の諸君の質問に譲りたいと思うのでありまするが、たとえば国際法の追跡権というものがございますね。それは、法律違反の行為が領海の中で起きた場合でなければ追跡権がないとされておるのでございます。そうすると、十二海里の内側で漁業協定に違反をして法律違反行為がなされたときには、韓国にこれの拿捕権もあろうと思うのでございます。けれども、十二海里の内側でその漁業協定に違反をした法律違反行為がある、けれども、魚をとって、そうして網を船の中に納めてしまって、そうして発見されて逃げるときには、これは独占漁業水域の内側ではあるけれども韓国の領海の中ではないから、追跡権はない、こういうぐあいに理解してよろしいか。
○椎名国務大臣 政府委員から……。
○藤崎政府委員 今度の日韓漁業協定では、追跡権のことについて何らの規定を設けませんでしたので、当然のこととして一般国際法上の原則が適用あるわけでございます。一般国際法上の原則といたしましては、現在のところ一番権威のあるものとしては、領海及び接続水域に関する条約、公海に関する条約でございます。公海に関する条約の第二十三条によりますと、お示しのとおり、領海で沿岸国の法令に違反した場合、それから、ある限定された場合に、接続水域内で法令違反があった場合に追跡権がある、これは公海にまでも及ぶ、そういうことが、両方の条約に規定してございます。
○春日委員 それじゃ、質問はあとに譲りまするが、問題は、この専管区域の中で協定に違反をして漁獲をいたしまして、そうして、それを終わって船に網をあげた後逃げる場合ですね。これはもう追跡権がないから拿捕されることはない。しかも、それは、向こうが領海が三海里であるならば、十二海里の奥深く、九海里まで向こうへ入ってそういうことをやっても、追跡権は向こうにないから、見つからないようにばあっとあげて逃げてくれば、それで追跡する権利は向こうにはないのだ、こういうことになるのでございますね。まあ、御研究おき願います。
 いろいろと質問したいことがたくさんございますけれども、約定の時間がまいりましたので、これで残余の質問は留保いたしまして、私の質問は終わります。(拍手)
○安藤委員長 次に、小林進君。
○小林委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、同僚の諸君がいままで行ないました質問と重複することをつとめて避けまして、基本的な政府の態度について、三、四点の問題について御質問を申し上げたいと思うのでございます。
 まず第一には、善隣友好、平和を基調にした条約を結びたいとおっしゃる総理の考えの中に、中国人民共和国と北朝鮮人民共和国をいかようにお考えになっているかという問題が一つ。第二点といたしましては、現在韓国の朴政権の性格をいかように判断をしておいでになるか。第三番目には、この日韓条約は表玄関で、その裏には不可分の関係で日米間の強力なる軍事体制が進められているということ。こういう問題について逐次御質問を申し上げたいと思うのであります。
 まず、質問に先立って、佐藤総理に第一に御決意を承りたいと思うのでございまするが、戦後われわれは十名の総理を送り、かつ迎えておるのでありますが、その中に大別して二つの型があります。日本の外交を進歩的・平和的に推進をしようとする首相と、反動的・戦争的にこれを進めようとする、その二つの型であります。進歩的・平和的に推進いたしました首相は、日ソ親善条約を締結いたしました鳩山一郎氏であり、次いで、中国人民共和国との国交回復を唯一の願望とされた石橋湛山氏であります。いずれも政党または民間出身の政治家であります。石橋氏にもし一年ないし二年首相の地位を与えていたならば、必ず日中国交回復の問題を解決をし、今日見られる日米安保条約も姿を変え、日韓条約なども行なわれず、平和な日本が建設されていたであろうというのは大方の見方であります。反対に、新憲法のもと日本を反動化し、軍事化し、アジアの孤児たる地位に追い落とそうとした首相、その最も悪なるものは岸信介氏である、かように世人は伝えておるのでありまするが、佐藤首相が生まれたとき、世人は、愚兄賢弟のことばを思い出し、佐藤氏は兄の間違いを償うに足る人物であり、必ずや鳩山、石橋の亜流をくんで進歩的・平和的なアジア外交を行なうであろう、こういうことを期待いたしたのであります。しかるに、首相の地位におつきになって一年、世人はいまや期待を裏切られた感を深ういたしておるのであります。そこには何ら見るべき進歩政策も外交もないということに失望を感じておるのであります。総理がおやりになったことはといえば、原子力潜水艦の寄港を許したこと、日中の経済・貿易をさらに悪化せしめたこと、それに未曾有の不景気と物価の値上がりを招来したこと、その上に、この日韓条約をついに締結されるに至って、国民は全く落胆をしてしまったのであります。これでは兄信介氏の道と同じ道を歩いておられるのではないか。この道はいつか来た道、五年前に岸信介氏は日米安保条約を結んで、ついに野たれ死にの形で首相の地位を去っていかれたのであります。その五年後に、あなたはその安保条約につながる日韓条約を締結し、日本国民からは、信介氏が受けたと同じような、いまやそれに増す大きな怒りを投げかけられつつあるのでありまして、これはまことに残念にたえないところであります。何といっても、日本外交の進む道はアジアであります。アジアの中心は隣国中国であります。その中国との善隣友好をおいてアジア外交があろうはずはないのであります。いまからでもおそくないのであります。歴史的立場に立って、長期の展望に立って、あなたの兄岸信介氏の行なったこと、いまあなたの行なわんとすること、これを後世史家はどう評価するかを冷静に考えて、アジアにおいて長い間植民地支配を受けていたその国々の独立を援助し、平和を招くという立場に立って、真の自主外交を進めていただきたいと思っておるのであります。ぜひとも、吉田、岸、池田という官僚外交の範囲から脱して、鳩山、石橋の政党政治家がとってきた外交の道に徹していただきたいというのが国民の大方の願望でございまするが、これに対する総理の御所見をまず承っておきたいのであります。
○佐藤内閣総理大臣 お答えいたします。
 私の外交方針、これは自由民主党あるいは自由党以来の伝統的なわが党の政策でもある、かように私は自信を持ってお答えをするのでございますが、それは、とりもなおさず、平和に徹し、いずれの国とも仲よくしていくのだ、その考え方でございます。同時に、その基礎的な問題といたしまして、ぜひとも、相互にその独立を尊重し、お互いに内政に干渉しないということ、これを強く基礎的な条件といたしまして、そうして、ただいま申し上げるように、平和に徹した外交を進めていくつもりでございます。ことに、このアジアは、それぞれの国がそれぞれの歴史を持っておりますが、同時に、たいへん地理的にまた歴史的に密接な関係にあります。したがいまして、経済的にはもちろんでございますが、文化的にも交流は、はなはだしくしげき状態でございます。かようなことを念頭に置きながら、ただいまお尋ねになりましたような外交を進めてまいる、これが私の使命であり、また、今後とも、日本国民といたしましても、平和に徹した姿といたしまして、すべての国と仲よくしていく、こういうような考え方で努力を続けておるのでございます。
 ただいまいろいろと御意見を拝聴いたしましたが、私はその御意見について別な考え方を持っておりますけれども、そういうことについてはあえて申しませんが、その基本的な考え方は、ただいま申し上げたとおりでございます。
○小林委員 いままでの総理の御答弁にはまだ私は納得することができないのでありまするけれども、時間の関係上次の質問に移りたいと思うのであります。
 そこで、まず第一問として総理にお伺いいたしたいことは、中華人民共和国に対する総理の基本的な見解を承っておきたいと思うのであります。ということは、いかに政府が日韓条約は善隣友好の条約であり、軍事的関係は一つもないと言明せられておりましても、国民は了承をいたしておりません。アメリカによって強要せられた条約であり、アメリカのアジア政策の一環として日韓両国に要求をせられ、それに屈服してきた条約であると見ておるのであります。
 さて、アメリカのアジア政策は一体何であるかといえば、その中核をなすものは中華人民共和国に対する包囲作戦であります。反共、自由主義を守るという名のもとに、最も危険な共産主義の中共を徹底的に包囲するという、こういう基本政策にアメリカは立っておることは、いまさら申し上げるまでもありません。
 そこで、私が第一に明確にしておかなければならないことは、政府は、この中国共産党は最も危険なる侵略者であるから、どうしてもこれを包囲しなければならぬというアメリカの考え方とその政策に賛成をし、同調をしておられるのかどうか、まずこれから承っていきたいと思うのであります。
○佐藤内閣総理大臣 中共に対する日本の態度、日本政府の行き方は、何度もこれも申し上げておりますが、いわゆる政経分離の形におきまして、経済的な交流は続けていく。貿易もいたします。また、文化的な交流もいたしております。これは国民の皆さんがみんなよく御承知のとおりでございます。
 このことがいかにも戦争へ巻き込まれるというような危険な状況かと、かように申しますと、国民の皆さまは、私どもがどういう憲法のもとにあるのか、どういう憲法のもとで生活しているかということをよく御承知でございますので、この憲法のもとでは、国際的紛争は武力によって解決しないのだ、どこまでも平和に徹するのだ、このことを国民の皆さまはよく御承知でございます。小林君がただいま言われたような点は、私は、国民の大多数の方々が賛成されないところであると思います。御心配なく、国民は私どもの平和政策を支持しておる、かように私は信じております。
 最後にお尋ねのございましたアメリカの政策、これについての御批判でございますが、小林君の御批判は、これは御自由でございます。私どもがことしの正月にジョンソン大統領に会いましたときも、私ははっきり申し上げたのは、米国はどういう政策をとろうと、私どもは中共とやはり政経分離の形においてこの貿易は進めていくんだ、これは日本の態度だということをはっきり申しまして、いわゆる共同声明も実は出したのでございます。いま御指摘になりますのが、封じ込め政策、あるいは包囲政策、かように言われますが、ただいま、貿易の点におきまして、日本は中共と貿易を増進しておる、こういう点で、いわゆる封じ込め政策あるいは包囲政策というものはどういうものか私はよく存じませんが、そういうものとは違うことは、これも御了承だろうと思います。
○小林委員 私は残念ながら首相のただいまの御答弁に対してはまだ満足することができないのでありまして、わが党の山本幸一国会対策委員長が本会議場において歴代首相の中で佐藤総理は最もうそを言われるという批判をいたしましたが、実はそう思わせるような場面が実に多い。私は、この中国問題などに対してもそれが最もいい事例の一つであると考えるのでございまして、ただいまも今春一月におけるジョンソン大統領とのお話の報告がございましたが、そのアメリカに行かれた一月であります。総理はニューヨークの日米協会の席上でこういう発言をしておいでになる。中華人民共和国は膨張政策をとっておる、軍事的、侵略的政策をとっておる、中共の隣国に対する好戦的及び膨張主義的政策がアジアの平和を脅かしておることに対し深甚なる不安の念を表明するものである、こういうことを総理は言っておいでになる。間違いはございませんか。
○佐藤内閣総理大臣 ただいまのは、私のニューヨークにおける演説を御引用になったと思います。
○小林委員 そういうことを総理が言われておることをいまお認めになりましたが、次には、前の国会において、同じく総理は、今度は手のひらを返すごとく、中共は平和愛好国だ、こういうことを述べておられるのであります。これはお言いになりませんか。これをいま一度総理に御確認をいただきたいのでございます。
○佐藤内閣総理大臣 そのときの速記をよく確かめたいと思いますが、社会党の皆さん方は中共は平和愛好国だと言われる、こういうことを申したように私記憶いたしております。そういう立場においてたいへんけっこうだ、かように申したと思います。
○小林委員 これは、速記録を確かめて、いずれかの機会でいま一度お伺いしなければならないと思うのでありますが、ともかく、社会党が平和愛好国だと言われておることに賛成だという意味の、肯定をする意味のことを明らかに明言をせられておるのでありますが、越えて、総理は、四十年の五月七日であります。東京平河町の砂防会館のホールで開かれた自民党青年部の第四回臨時大会においては、われわれが最もおそるべきものは赤色帝国主義である、それは全世界を赤化しなければやまないものだからだ、中共が日本の工業力と結べば世界支配も可能であり、すでに日本の三割五分、つまり共産党と社会党左派は赤化しているとの見方をしている中共の首脳さえあると聞く、赤色帝国主義とはあくまでも対決していかなければならない、こういうことを言われて、これは明らかに中国をさして最もおそるべき赤色帝国主義者、赤色帝国主義国家ときめつけられておるのであります。どちらが一体首相の真意なのか、お聞かせを願いたい。
 なお、ここで承っておきたいことは、共産党と社会党左派は赤化しているとおっしゃる、その赤化ということばがどういう意味なのか、私どもにはわからないのであります。あわせて、そのことばの持つ意味、内容もお聞かせ願いたいと思うのであります。
○佐藤内閣総理大臣 いろいろ、中共政府あるいは北京政府、これに直接結びつけた話が出ておるようでございます。しかし、多くがうわさであったり、また、いろいろ誤解を受けるようなこともあるようでございますから、そういうことは慎まなければならないことだと思います。ただいま言われるように、私どもが聞くところによる日本に対する工作はたいへん進んでおるということ、これはもう、共産党の諸君はもちろんこれは一体だ、かようにいわれておりますが、同時に、社会党の一部にも同調者があるかのようにいわれておる。これが大体の勢力と見て国民の三割程度だ、こういうようなことがいわれるわけであります。そういうところからただいまのようなお話が出ておるのだろうと思います。私は、そういう意味で、それを一々御批判をしたり、あるいはこの際にそういうものの、それはこうだとかああだとか申し上げることは、ただいまの状況で適当なことではない、かように思いますので、あとは慎みます。
○小林委員 私は首相のことばじりをとらえようというのではないのでありまして、総理がしばしば言われる、隣国との友好を続けていきたいという、その基本をなす中国に対して、一体危険なる国家とみなされているのか、平和愛好国家とみなされているのか、この問題を追い詰めていかなければ、将来の佐藤内閣の外交方針をわれわれはつかむことができない、こういう基本的な立場でお伺いいたしておるのでありまするから、どうかひとつ真意をあからさまにお示しを願いたいと思うのでございまするが、残念ながら、中共の首脳部の中では、赤化などということばを、こういう古いことばを使う人がおりませんから、これは総理はだれかのことばに藉口して言われたものと思います。もはや、わが日本においても、今日赤化などというふうな古いことばを使う者はおりません。まあ、自民党の中でも、古い、オールドボーイ、賀屋さんだとか岸さんだとかという、こういう戦犯などといって一度は国を追われた方々の郷愁にかられている方が、あるいはつとめて相手をやっつけようなどという、そういう声の方々がお使いになることばでございまして、まず、一国の総理としては、こういう言い古された古典的なことばをお使いになるのはお控えになったほうがいいと私は思うのでございまするが、なお進んで、総理は、九月一日であります。東京赤坂のホテル・オークラで開かれた三菱商事、三井物産などの大手商社社長懇談会に来賓として出席された際、次のようなあいさつをされている。日中貿易はベトナム紛争の影響を受けているので変化を求むべきではない、方向としては平和解決に向かうだろうが、解決するまでには時間がかかる、これが解決するまで中国との貿易は慎重にやってもらいたい、日韓条約は絶対に批准する、台湾への一億五千万ドルの経済援助などを進めて友好関係を深めたい、この際安保体制をはっきり確立する必要がある、こういうことを言われておるのでありまするが、これは一体どういうことを意味するのか。ベトナムと中共との関係はどういうことを意味してお話しになっておるのか、解明をしていただきたいと思うのであります。
○佐藤内閣総理大臣 いま、三井ですか、三菱ですか、その会合にという、それはやや実情が違っているかもわからない、かように思います。いま言われたとおりだとは思いません。私は、アジアにおきまして、ただいまベトナムにいろいろ紛争のあること、これは社会党の諸君もしゃんと指摘される。日本がそれに入らない、巻き込まれないようにあらゆる努力をしろ、これが私どもに対する、政府に対しても御注意でございます。したがいまして、国民全体、民間人も含めて、こういう問題について十分慎重であるのは当然のことであります。私はそういう意味のことを申したように思います。先ほど中共自身の問題について長々と社会党の言われるところを申されますが、私は、最近新聞で報道されておる北京の政権の言動だとかいわれるものは、これは新聞に報道されているとおりだとたいへん私は惜しまれるものであるということだけつけ加えて申し上げておきます。
○小林委員 どうも総理のおことばではお話の真意がつかみかねる。そこで、九月二十一日の朝日新聞の社会説では、これを訳して「これは中国がベトナム問題に積極的に介入しているか、もしくはしそうだから、米国と友好関係に立つわが国としては日中貿易を制限せざるをえない、との意味であろう。」、こう社説は解釈をいたしておるのでありますが、これに間違いがないかどうか、こういう朝日新聞の社説の解説に間違いないかどうか、もう一度詳しくお尋ねをいたしたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 私は、LT貿易が最近調印したことを心から喜んだということを申しております。両国間において経済の正常な発展については、心から望んでおるのでございます。ただいま新聞が社説でどういうことを書こうと、これは私が批評する限りではございません。批評する限りではございません。
○小林委員 批評する限りでないとはおっしゃいますけれども、ベトナム紛争の影響を受ける、ベトナム問題が平和解決に向かうまでは中国との貿易はいわゆる制限をする、こういう意味にあなたは話をされたというのであります。ベトナム紛争が続く限り、あなたは中国との貿易は制限をする。その制限をする理由は何かといえば、日本とアメリカは友好関係にある、そのアメリカと中国はベトナムで相対峙しておるから、これは軍事的、経済的、政治的意味において、中国との貿易はアメリカとの関係上制限をしていかなければならない、こういう意味だと解釈をしておる。あなたのこの文章ではわからないので、こう解釈をしておる。この解釈でよろしいかどうかということをお尋ねしておるのであります。
○佐藤内閣総理大臣 私は、重ねて申しますが、日中貿易は拡大する、これは進んでいくことを心から願っておるということを申しております。先ほど来いろいろお話がございますが、政府がただいま日中貿易につきまして制限を加えたり、あるいはこれを禁止する方向でいろいろな施策をしたというものがございましたら御批判を受けたいと思いますが、そういうものはございません。
○小林委員 それは、吉田書簡によってあれほどの大きな制限をされておるじゃありませんか。それはもう問題はおのずから別であります。
 なお、この問題は、政府のやはり中国に対する基本的な考え方を解明していく上において重大な問題でありますので、三木通産大臣にお尋ねをしなくてはいかぬ。けさの新聞にも、総理と同じように、ベトナム問題が解決するまでは、中国との貿易、通商はこれを制限するということを通産大臣もきのう新聞談話を発表されておる。通産大臣の所見を承りたいのであります。
○安藤委員長 小林さん、あなたの出席要求に通産大臣のことが載っておりませんでしたので、まことに申しわけありませんが、大臣の出席を求めておりませんでした。御了承ください。――それでは、いまから呼びますから、御了承ください。
○小林委員 それでは、通産大臣がお見えになってあらためて御回答いただくことにいたしまして、以上の総理の回答を通じてまいりますというと、総理はやはり中国に対して基本的に敵視政策をお持ちになっておるとわれわれは解せざるを得ない。こういう総理の、いわゆるベトナム戦争に藉口をいたしまして中国との貿易を制限するというものの言い方、あるいはニューヨークの日米協会における演説、あるいは自民党の青年部の大会における言い方等、一連の関連を通じまして、佐藤内閣の中国に対する真意は、やはり中国敵視政策、池田内閣よりもずっと後退をいたしまして、中国敵視の基本的な面、中国を危険視するお考えをお持ちになっておる、こういうふうに結論せざるを得ないのでありますが、これは違っておりましょうか、それでは、中国は一体平和国家であるとお考えになっておられるのか、危険なる国家であるとお考えになっておられるのか、その点明確にお伝えを願いたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 わが党の内閣、これは、御承知のように、平和に徹した国のあり方を本来使命としております。したがいまして、政経分離の形で中共と交渉を持つということは、前内閣におきましても、前々内閣におきましても、これは同様でございます。私ども同じ考え方で進めております。したがって、別に後退はしておりませんし、また、いま言われるごとく、敵視政策だと、かようにきめつけられるようなものは何にもございません。少なくとも日本国内におきましては、私は敵視政策をとっておるというようなことは言われないほうがいい。私はほんとうに敵視政策はとっておりません。そのことをはっきり申し上げておきます。
○小林委員 それでは、中国は平和国家である、危険のない平和国家であるとおっしゃるのでありまするか。
○佐藤内閣総理大臣 これも、先ほど私の感じを申しましたが、最近新聞に伝えられるような中共の政府筋の発表、これはまことに私は残念に思っており、遺憾に思っております。かように申しておきます。
○小林委員 繰り返し申しまするように、日韓会談の問題を推進していくためには、中国、北鮮の問題は重大な問題でありますから、私はこの点はあくまでもひとつ解明していきたいと思うのでありますけれども、それでは、椎名外務大臣に対中共観というものを承っておきたいのであります。
 外務大臣は、四十年の二月二十七日の予算委員会第二分科会における私の同様な質問に対して、かように答えられておる。「外務大臣は、中華人民共和国を称して」――これは小林進ですよ、私の質問で、私の発言なんだ。「外務大臣は、中華人民共和国を称して、いわゆる膨張政策、侵略政策、武力拡大政策をとっておるとお考えになるかどうか。」、こういう質問に対して、「侵略的傾向があって、いろいろ近隣に圧力を感ぜしめるような姿勢をとっておる、こういうことでございますが、」と答えられておる。速記録の二ページであります。これに間違いございませんか。
○椎名国務大臣 大体そういう性格ではないかと私は考えております。
○小林委員 なお、中印国境、核実験の問題、武力革命等を肯定している、国連を誹謗していることなどをあげて、いわゆる侵略的傾向のある危険な国家である、こういうふうに答えられておりますが、間違いございませんか。
○椎名国務大臣 大体同じような状況ではないかと思います。
○小林委員 それでは、いまの御答弁でおわかりになるように、総理大臣は、中国は危険な国家ではない、危険的傾向の国家ではないと言われる。外務大臣は、侵略的危険なる国家であると言われておる。どちらが一体正しいのですか。一体内閣としてどちらの主張が正しいのですか。
○椎名国務大臣 そういうふうにとられておる国柄であるということを申し上げたのであります。
○小林委員 あなたは、そのときに、具体的な例をお示し願いたいと言ったら、中印国境がそうじゃないか、核実験がそうじゃないか、国連を誹謗しておるのがそうじゃないかと言われましたが、いまでもその考えに間違いありませんか。
○椎名国務大臣 そういう国柄として、たいした変化はその後起こっておらない、こう思います。
○小林委員 そこで、総理、それでよろしゅうございますか。外務大臣の答弁で、それでよろしいか。――そうすると、やはり中国は危険なる国家である、こういうふうに定義をせられている、危険な国家であると定義せられている、これが内閣の総体の意見である、こうとってよろしゅうございますか。
○佐藤内閣総理大臣 私は、先ほど来申しましたように、いわゆる敵視政策とか、あるいは封じ込め政策、そういうものはやっておらないということを申しました。最近の新聞に報道される中共の政府筋の言動はまことに惜しまれる、こういうことを実は申しました。これで大体、言外に私がどういうことを考えておるのか、たいへんこういうことを残念に思っておることはよくおわかりだろうと思います。
○小林委員 私どもはこの問題で残念ながら理解するわけにはいかぬのであります。たとえて言えば、中印国境の紛争について、一体、中国が侵略的であるという、あの国境線についてどこの主張が正しいかということをここに明らかに証明し得るものがありますか。外務省のお役人もたくさんおるようでありますが、中国が侵略をしたのか、インドが侵略をしたのか、国境線がどちらが正しいかということを明確に証明し得るものがありますか。中国は、あのラダク地区を中心とする国境線は中国の領土だと思っておる。インドは、インドのあの紛争の地点がインドの固有の領土だと思っておる。それを領土だと思うところに国境の争いが出るのでありまして、それを、いずれが正しいか正しくないかというふうな主張が出てくるわけがないのであります。
 なお、最近の北京における中国政府の言動が遺憾であるとおっしゃるならば、どの点が一体遺憾なのか。(「そんなこと答える必要ない」と呼ぶ者あり)いやいや、私どもは、いま日韓会談を進めていく上にも、繰り返し申しますように、政府の考えを承っておく必要がありますので、その点を具体的にお示しをいただきたいと思うのであります。
○佐藤内閣総理大臣 中印国境の紛争が、どちらがいいのだというようなお話でございますが、私は、この点をこの席でいずれかはっきりさすのだ、こういうような場所では実はないように思いますので、この中印国境の紛争は紛争として、これはたいへん残念なできごとだということだけ、ことに、私ども、国際紛争を武力によって解決しない、そういうことを誓っておる国でありますだけに、まことに残念なことだ、この一事でお答えしておきます。その他の点につきましては、いろいろのお考えがあるようですけれども、私どもがただいままで申したこと、これはほんとうに、最近の中共の言動はたいへん私は惜しまれる、かように思っております。
○小林委員 私どもは、先ほども申し上げまするように、この日韓条約があくまでも平和条約である、断じて軍事的色彩はないとおっしゃるけれども、アメリカは依然として、中共は危険なる国家である、北鮮は赤色侵略国家であると考えている。この中共と北鮮を、日本の内閣も同じように、侵略的膨張国家である、こういうふうにお考えになっているとするならば、総理の言われる、いわゆる中共、北鮮ともいずれも仲よくしていこうというお考えは、残念ながら真意ではない。やはり、その裏には、アメリカと一緒になって、中共、北鮮を敵にしたいわゆる防衛体制、反共防衛を目的とした日韓会談ではないか、それが政府の真意ではないか、こういうことを考えなければならないのでありまして、その点を明らかにお示しをいただきたいと思うのであります。
○佐藤内閣総理大臣 私は、もう何度も申し上げているように、いずれの国とも仲よくする、それについては一つの基礎的な条件があるということを申しました。お互いに独立を尊重し、お互いに内政の干渉をしない、これが大事なことです。日本におきまして、あるいは反米や反政府運動を使嗾するとか、あるいは反政府運動に力をかすとか、こういうようなことがあっては困るのです。そういうことのないことを、ただいまのように内政不干渉であること、これがはっきりしている、これを私は申し上げておるのでございます。
○小林委員 私は、総理のおっしゃる、それぞれの国の独立を尊重し、そして内政に干渉をしないというその考え方には賛成であります。しからば、いま総理のおっしゃる、中国あるいは北鮮がわが日本の独立と内政に、いかなる武力的干渉を行ないましたか、経済的なあるいは政治的な干渉を行ないましたか。もし、総理が共催主義の侵略ということをおっしゃるならば、中国共産党が日本に対していかなる領土的侵略を行なったか、いかなる経済的な侵略を行なったか、いかに財政的侵略を行なったかということを具体的にお示しいただかなければならぬと思うのであります。どうぞそれをお示し願いたいと思うのであります。
○佐藤内閣総理大臣 あまりこういう事柄は申し上げたくないのでございますが、これはお気づきであると思います。最近入国問題等をめぐりまして、両国間にいろいろの紛争を生じております。この入国問題が両国間で紛争を起こすのは、一体どういうことなのか。ここに思いをいたされれば、ただいまのような点がおのずから解明するかと思います。
○小林委員 具体的にそれをお示しいただきたいと思うのであります。
○佐藤内閣総理大臣 私は、こういう事柄を申し上げることが、一方の国を誹謗したりというようにとられる危険がございますから、この席ではお答えいたしません。
○小林委員 そういう一国の信頼に関することを、抽象的に危険なる国家であるとか、あるいは侵略国家であるとか、そういうことばで国民に危惧や不安を与えながら、しからば具体的にその例を述べろ、こう言うと、その具体的な例は一つも述べられない。ここに私は政府の偏狭的なものの考え、やはり韓国とだけはひとつ防共的な、反共的な、そういうことを基本にした条約を結んでいって、対中国あるいは対北鮮にはあくまでも軍事的な防衛体制を進めていこうという基本的なにおいが出てくるのではないか、こう思わざるを得ないのでありまして、なければ、その点をひとつ具体的にお示しいただきたいと思うのであります。
○佐藤内閣総理大臣 軍事的背景がないという話は何度も申し上げましたが、ないということを証明しろと言われるのはたいへんむずかしいことです。むしろ、あると言われるほうが証明の材料があるわけで、ないものは最初からないのです。
 私がはっきり申し上げたいのは、皆さま方も心から主張して平和憲法を守らなければいかぬと言われる。これは、憲法を守っておる政府並びに国民でございますから、その意味において、これは平和に徹しておる。ことに、外地において軍事行動だの、あるいは派兵だのというようなことは考えられない状況のもとにいまございます。そういう点を申し上げれば、それで納得がいくのではないかと思いますが、軍事的な話し合いは、たびたびこの席で申し上げましたように、十四年の長い交渉の期間中も話が出ておらない。全然ございません。
○小林委員 それでは私は、この日韓会談と裏表になりまして、日本の自衛隊と在日米軍の幕僚との間に非常に危険なる軍事的な作戦が進められているということをひとつ明らかにして、いかに日韓会談の裏にはおそるべき軍事的協定が結ばれつつあるかということを明らかにいたしたいと思うのであります。
 話の順序といたしまして、三矢研究は、昭和三十八年の二月から六月にかけて行なわれておるのでありまするが、その前に、昭和三十七年には、日本からシベリヤに出兵することを予想してつくられた研究で、ステップ・アンダー・ボーという作戦のあることを総理は御存じでありますかどうか。
○松野国務大臣 そういう計画は私も存じませんし、あると思いません。
○小林委員 いよいよ明らかにしてまいりますが、三十八年度の研究が三矢研究と呼ばれている。三十九年から四十年の実戦計画は一体何と呼ばれているのか、これを防衛庁長官にお伺いいたしたいのであります。
○松野国務大臣 先般、三矢研究の際にもすでに明らかになりましたように、一つの研究としてはあるかもしれませんけれども、計画とか実施とかいう具体的なものはない。これは一部の幕僚間の研究であるということが明らかになっております。したがって、前年度にどういうものがあるか、そのあるなしよりも、その問題の価値はすでに明らかになっておりますので、格段にこれが計画とか作戦とか、そういうものではないということだけは明らかであります。
○小林委員 第四十八国会の予算委員会の会議録の第二十一号四五ページ、四六ページ、わが党の岡田春夫氏が佐藤首相及び小泉防衛庁長官に質問しておる。岡田氏いわく、「フライイングドラゴンについて伺います。小泉防衛庁長官に伺いますが、昭和四十年度フライイングドラゴンという計画は現実にあったかないか。これはこの前御質問をして答弁を留保してくれということでございましたので、この点を伺います。その内容はどういうものでありますか、その点を伺いたい。」こういうことに対して、小泉国務大臣は、「フライイングドラゴンという計画はございません。在日米軍と日本の自衛隊の幕僚間で非常事態に処するいろいろな研究や意思の疎通をいたしておりますので、それをメモにいたしましたものをフライイングドラゴンというニックネームをつけておるということは、私も聞いております。」こういう答弁をしておられるのでありまするが、防衛庁長官、いかがでございますか。そのメモがありますかどうか。
○松野国務大臣 そういう答弁をしたように私も記憶しておりますが、その答弁で明らかになっておるじゃないかと私は思います。これが研究であるとか、実施計画でないということは明らかなもので、これは両国間の軍人において密接な情報の交換、その一つのメモであるという答弁をたしかめておると思います。それ以上にこの問題は実行性もなければ、それ以上のものでもございません。
○小林委員 ただのメモの程度のものであるかどうか、逐次お伺いをしていきたいと思うのでありまするが、この研究の作業は、基礎資料の収集、整備の開始を昭和三十八年十月とする。三矢研究は昭和三十八年二月から六月にかけて行なわれたのであるが、フライイングドラゴンの研究は、その直後の十月から資料収集を始め、翌年三月から作戦計画の立案に取りかかったというのでありまするが、この期間はいかがでございますか。
○松野国務大臣 その問題そのものが日米間の共同の問題であると私は思います。私のほうは日本の研究、アメリカの研究にわれわれが言及することはできません。日本の自衛隊においてはこれは単なるメモであるということが明らかで、アメリカのことについては、私は言及ができないと思います。
○小林委員 三矢作戦は図上演習であったが、フライイングドラゴンはこの三矢研究の成果に基づいて立案をしたところの実際の作戦計画である。しかも、その扱いは、秘密区分も最高の機密といわれる極秘の扱いを受けている。三矢研究はこれは極秘、今度は、このフライイングドラゴンはもっと強い最高の機密といわれる扱いを受けて、三矢研究よりもはるかに重要な扱いを受けているというのでありますが、これでもメモでありまするか。
○松野国務大臣 そのとおりであります。もしも秘密性があるというならば、それは米軍に関する秘密性であると私は思います。したがって、その問題については、御承知のように、日米間においては各種の条約あるいは法律というものがございます。したがって、私は、その内容よりも、米軍に関しての問題については、相手方の承認がなければいろいろお話しすることはできない。自衛隊に関してはそれはメモであって、重要な作戦計画ではございません。
○小林委員 作戦計画であるかどうか逐次お尋ねいたしまするが、小泉前防衛庁長官の答弁にもあるごとく、在日米軍と日本の自衛隊の幕僚間で共同の研究や意思の疎通をはかっているということを、これは明言をせられておる。しからば、一体、その共同研究に参加した幕僚はだれか。その立案に参画したものは、防衛庁統合幕僚会議の一室総務人事、二室情報、三室作戦、四室補給、五室統合作戦の担当官と、空幕の防衛部、装備部の佐官クラス及び航空自衛隊の高級スタッフが参加している。間違いございませんか。
○松野国務大臣 間違いがあるかないかよりも、そういう事実について、私のほうはそんなに防衛庁長官自身がこれをどうするという書類ではないのですから、したがって、幕僚の者が常に日米間の連絡をすることは、これは当然なことであります。あるとかないとかいうより、事実とかどうだとかいうことよりも、そういう重要なものではない、また、これを実行するという実行性があるものではない。防衛庁長官がこれに常に目を通すものでもない。これは軍事上におけるお互いの研究であるということだけでありますから。
○小林委員 これから申し上げますけれども、こんな物騒なものを実行されたら、われわれ日本国民の命が幾つあったってたまりませんよ。そんなあやしいことを言われてはいけない。しかし、いまの三矢研究は図上作戦だが、これは図上作戦から一歩進んで実戦行動を研究したものじゃありませんか。それを計画というかメモというかは、それはあなた方のことばといたしましても、少なくともこれに規定される対敵対象国は、このフライイングドラゴン作戦のメモの対象の国は中共と北鮮なんだ。三矢研究、あれは御承知のとおり韓国内部に内乱が起きて、在韓米軍の一部が鎮圧に出動し、その騒ぎのため共産勢力の活動が公然化し、武力介入をしてきたというエスカレーションを想定しながら作戦を練られたんだが、フライイングドラゴン作戦のメモはソ連をはずしたのだ。今度はソ連をはずして中共と北鮮である。ソ連からの進攻は、昭和三十九年現在では主敵戦力を要しない、こういうことをいっておる。したがって、想定し得る事態としては――われわれは計画という、あなたがメモとおっしゃるならメモでよろしい。その中で想定し得る事態としては、米中戦争開始時における状態から立案の作成を行なうが、アメリカと中国の戦いの結果、在日米軍基地への攻撃は必至である、こういう想定の上に立って、自衛隊は、自衛上、日本もその防衛作戦に協力をする、こういう前提でこの研究の想定が進められている。間違いありませんか。
○松野国務大臣 自衛隊の任務は、日本の平和と独立を守ることであります。したがって、常に、われわれは、いかなる場合においても、有事即応の体制において、その任務の遂行をあらゆる面において研究することは、これは義務だと私は思います。たまたま、それがメモであるのかどうか知りませんけれども、その問題がどういうふうになっておるかということは、私は今日の場合は存じません。また、同時に、それは、日米間の研究であるというならば、研究段階として軍事における当然の任務の一部であるかもしれません。しかし、それが実行性がないということは、明らかにその問題が、先ほど小林委員も何べんも言われましたように、相当変わっておる時期を見るならば、それを計画して、ずっとそれをやっておるんだという事実は、これは小林委員もないということをお認めになると私は思います。したがって、メモの内容がどうかこうかということは、これは大した問題じゃない。ただ、われわれは常にいかなる場合に対処しても、有事即応の日本の平和独立、これを守ることを私たちはやっておる。これが実際の姿であります。
○小林委員 そういう説明には私は満足することができないのであります。いま実行するかどうかは別としまして、それでは防衛庁長官は、いま日本において毎年在日米軍と日本の自衛隊と、それから韓国の空軍と三者一体になって、わが日本の領海において演習しておることをお認めになりますか。
○松野国務大臣 そういう事実はございません。日米間においての演習はしたことがございます。韓国を入れて演習したことはございません。
○小林委員 日本と米国と共同で演習している中に、韓国の空軍が参加したことはございませんか。
○松野国務大臣 在日米軍でございまして、韓国ではございません。
○小林委員 韓国の空軍は参加しておりませんか。
○松野国務大臣 在日米軍には韓国の飛行機は入っておりません。
○小林委員 私は、米軍と日本軍との毎年の演習の中に、韓国の空軍が参加しておることを承知いたしております。これは後日また確かな証拠でひとつあなたと対決いたしましょう。
 そこで、そういうようなもはや実戦行動が行なわれている中にこの計画が進められている。しかも、敵国は、いわゆる米中戦争――米北鮮戦争じゃありませんか。いま政府が、中国は危険なる国であるという状態のもとに日韓会談を進めているときに、自衛隊はいわゆる中国を仮想敵国にしてやっているじゃありませんか、この作戦は。しかもこの「緒戦」はどうだ、しかもこの作戦の……(「ない」と呼ぶ者あり)ある。ある。この作戦の計画の進め方は、このフライイングドラゴンの計画のやり方は、まず「緒戦」から始まっておる。その「緒戦」をここで申し上げますと、米中戦争が始まる、あるいは米国と北鮮戦が三十日以内に行なわれることをまず想定している。その三十日以内に行なわれると、その場合「十日以内に通信連絡の頭初記号を、所定の戦時コード(暗号表)に変更する。以後発信文はすべて戦時コードに従う。同時に航空自衛隊の各基地および在日、在極東の米空軍基地の兵員・要員は三交替・四十八時間の勤務に入る。各レーダーサイトの兵員も、これに同じ。」こういうのであります。どうでありますか。あるならあるで資料をお出しになったらどうですか。
○松野国務大臣 一番新しく演習をしました際の在日米軍の内容を明らかにいたしますれば、小林委員の御疑念は晴れると思います。
 先般、日米合同の際における米軍の援助数はわずか十何機であります。全部これは在日米軍、日本におる飛行機であります。わずかに十何機であります。わざわざそんなに大きなものをわれわれはこの演習に参加を願ったわけではございません。したがって、在日米軍というものについては、常々演習の際の合同はしておりません。したがって、そういう事実はないということが第一問で明らかになったと思います。
 第二問の問題も、御承知のように、お読みになったかどうか、私は内容は知りませんが、あくまでメモであって、われわれが、それをとやかく、実行する、防衛庁長官がこれを見るとか見なければならないとか、裁決するとかいう問題じゃこれはありません。純然たる部隊の研究の、そのメモがどういうものがあるか、それは私は知りません。しかし、その書類の資格がきまるならば、おのずから私は御疑念が晴れるのじゃないかと思います。
○小林委員 私は、メモということばで表現をせられておりまするけれども、そのメモが、先ほど申し上げまするように、あの国会で問題になった三矢の資料よりも、むしろ重大な扱いを受けて、最高の機密書類として扱われている。しかも……(「どこで」と呼ぶ者あり)自衛隊の中ですよ。(「北鮮の自衛隊だよ」と呼ぶ者あり)じょうだんじゃない、日本の自衛隊の中にですよ。しかも、そのメモと称するものの内容は、メモというためには非常に整理をせられて、いまも言うように、まず第一に「緒戦」です。その前は「前提」だ。いわゆる三十日以内に米中戦争が始まることをまず事前に察知をする。それから二番目にはいわゆる「緒戦」、「緒戦」は、いまも申し上げまするように、いわゆる所定の戦時コードに変更する。次はいわゆる「出動」です。「米中戦争が開始された場合、在日米第五空軍および航空自衛隊は、A空軍基地(在B島)の、米太平洋方面軍の空軍最高指令部の指揮下に入る。府中の第五空軍指令部は、OのC空軍基地に移動し、対中共の空軍前線指令部の任務を兼任する。」こういうふうになっておるのであります。この出動はどうですか、これは。私はまだ――これは戦時です。あなたのほうの刑特法、刑事特別法律がありまするので、スパイ法なんかに問われて十年以下の刑に処せられては困ると思って、まだ遠慮してABの符号で申し上げておるのでありまするけれども、いかがでございますか。防衛庁長官、ここまで具体的に書かれているのが、これがメモですか。
○松野国務大臣 御承知のように、日本と米国との共同メモであり、あるいは共同の情報であり、共同の問題である場合には、相手方も一緒の問題であります。したがって、相手方米軍に関するものについては、これは日本の法律で規制がしてございます。したがって、私は、そのことが今日重要な取り扱いをされておるというならそのことであって、その計画の内容の具体性の問題じゃないと思う。その書類の取り扱いは、あくまで、日米間の問題ならば、米国の了承なしに、米国の考えなしに、われわれがそれをとやかく言うということはよくないという意味を私は申し上げているだけで、その内容が具体性があるとか、自衛隊がどうするとかいうことでは、これはないのであります。したがって、取り扱いについては、やはり一応の条約、法律というものがございますから、それは取り扱いについては御注意していただきたいと私も思います。私のほうも、単なるメモであるということには間違いございませんけれども、その取り扱いは日米間の問題という国際的なところに、私は今日この話をなるべくいたしたくないというだけであります。
○小林委員 私は、いま日本国民は、平和憲法のもとに戦争もなしに平和に暮らしていると思うときに、その陰の中に、アメリカの幕僚と日本の幕僚の間に、こういうような戦争の計画が進められているという、この問題だ。しかも言うように、三矢作戦は図上作戦、これは実戦作戦を主体にして行なわれているのでありますから、あなたはメモだ、メモだとおっしゃるけれども、これを受けた国民が一体メモで済まされますか。私はその意味において、ほんとうに日本国民を愛するならば、アメリカの人たちと了解を得ながら、その資料を国会の中で出していただくことができるかどうか。どうかひとつ、秘密扱いをするなら秘密扱いでもよろしい、われわれの前にひとつ出していただきたい。
○松野国務大臣 いかなる場合においても、基本は、日本の独立と平和を守る、このために尽力していることであります。したがって、自衛隊が大いに働き、いろいろ研究するということは、国民の平和と独立を守ることであります。したがって国民は――自衛隊あるいは防衛庁が研究し、努力し、働いているということは、日本の平和が確立されておる、日本の独立が守られるということであります。したがって、何らこの問題について国民は不安どころか、自衛隊と防衛庁に、平和のために期待を持ってくれているとさえ私は思っています。(拍手)
○小林委員 あなたたちは、いつでも日本の独立と、平和を守る、極東の安全と平和を守る、そういう美名のもとにだんだんだんだんエスカレーション的に戦線を拡大していくじゃありませんか。三矢事件の研究はそのとおりだ。三矢の作戦がそのとおりだ。いまの……。
  〔発言する者多し〕
○安藤委員長 御静粛に願います。
○小林委員 いまのフライイングドラゴンはどうですか。この作戦の中に一体何が書いてあるか。この中に何がありますか。
  〔発言する者多し〕
○安藤委員長 御静粛に願います。
○小林委員 この中に何がありますか。いま一体……
  〔発言する者多し〕
○安藤委員長 御静粛に願います。
○小林委員 この中で最も問題になるのは、沖繩と韓国に自衛出兵が行なわれているということを明言しているじゃありませんか。明言している。書いてありませんか、その中に。沖繩と韓国に出兵するとちゃんと書いてあるじゃありませんか。これが憲法違反じゃないのですか。
○松野国務大臣 そういうことはありません。そういうものはありません。どういう研究であろうが、今日の憲法と自衛隊法以外のものはございません。先般公表されました三矢研究の際にも、最終的にはこれは政府がきめる、政治がきめるものであるという注釈がついております。先般の三矢の問題のときも、最終的には政府、政治がきめるものであるという、ちゃんと政令がついております。まして、それ以上のことは研究にも内容にもありやしません。(拍手)
○小林委員 私は、最後の政府がきめるきめないということをお伺いしているのではない。いま平和憲法のもとに、憲法第九条のもとに生まれた自衛隊のこういう幕僚が、いわゆるアメリカが中国と戦争したという想定のもとに、アメリカと一緒になって、あるいは韓国へ侵略していく、あるいは北鮮へ入っていく、こういう計画を進めていることが一体政府の態度としていいか悪いかと聞いている。
○松野国務大臣 政府がきめるということは、政府がきめることであるということを三矢研究の際にもこれは明らかになっております。研究した御本人でさえもそれを前提にちゃんと書いてあるのです。まして今回の問題、そういうことは断じてございません。
○小林委員 先ほどから申し上げておりますように、具体的に私は、それでは「出動」と「防備」、「攻撃」の内容を申し上げましょうか。あなたがおっしゃるから申し上げるのでありますけれども、まずその中には輸送計画もある。第一には航空自衛隊機、これは「防備」だ、「航空自衛隊機の中共、北鮮空軍戦力による消耗率は、」……
  〔発言する者多し〕
○安藤委員長 御静粛に願います。
○小林委員 「一八〜三〇%と想定し、それの補充は、当初一か月は、残置二〇%の自衛隊機をもってあてる。その間に戦時立法を、国会において成立せしめ、戦力増大に必要な資料確保と、民間企業の強制的な協力を得るものとする。」こういう戦時立法まで掲げられておる。そして「日本領域が直接攻撃を受けた場合は、自衛出兵が行なわれるが、陸上自衛隊は、日米××司令部の指示に従い沖繩および韓国に出動する。」こういうふうに書いてあるじゃありませんか。韓国に出動すると書いてあるじゃありませんか。これはどうなんですか。こういうメモがおかしいなら、ここにお出しになったらいいじゃないか、私の言うことがうそならば、そのメモのあることをお認めになったんだからお出しになったらいいじゃないですか。
○松野国務大臣 そういうものはないと私は申し上げておるのです。そういうものはないということを私は申し上げているのです。今日の自衛隊のすべての研究、すべての作戦は、国内以外に出るような装備もありません。したがって、今日外国に出るような装備もないものが、そんな計画を立てるわけが大体ないじゃないかと私は言うのです。
○小林委員 私は、それでは問題を別にいたしまして、日本の自衛隊員の給与について、戦地加算制が復活をいたしておりますな。一九六一年春に日本の国会を通過した恩給法の一部改正における外国擾乱地加算と、外国鎮戌加算がそれ、ちなみに外国鎮戌加算は、在外寄留民の保護とか日本の在外権益保護のため、公務員が警備任務を持って外国の地域に行動した場合に加算する手当である、こう説明されている。これは日韓条約の批准後、韓国で適用される公算が多いと見られているという、こういうことがいわれているのでありまするが、私は、この自衛隊には戦地加算というのが一体あるのかどうか、お聞かせ願いたいのであります。
○松野国務大臣 それはおそらく旧軍人の恩給法の問題じゃないかと思います。したがって、自衛隊の中にそれが今日直ちに適用になるとは私は思っておりません。
○小林委員 恩給法の中に、海外に出ない自衛隊の中に、どうして一体海外の戦地加算を加えておく必要があるか。旧の問題じゃありませんよ。将来にわたって法律改正が行なわれているのじゃありませんか。
○松野国務大臣 私の記憶が間違いでなければ、恩給という制度は、共済年金制度に改正になったと私は思っております。
○小林委員 かくのごとくいま……(発言する者多し)改正になっていますよ。
○安藤委員長 御静粛に願います。
○小林委員 改正になっています。
  〔発言する者多し〕
○安藤委員長 御静粛に願います。
○小林委員 なお、日韓の軍事協調について、日本の防衛駐在官を、戦地加算制を復活しているじゃありませんか。
  〔発言する者多し〕
○安藤委員長 御静粛に願います。
○小林委員 日本の……(「支離滅裂だ」と呼び、その他発言する者あり)滅裂じゃありませんな。それでは防衛庁長官、いま申し上げましたように、日韓会談が、かくのごときおそろしいフライイングドラゴン作戦が存在しているという、そういうことに対しまして、ある軍事評論家は、太平洋上にある米国基地のうち、台風を受けて避難しなければならぬのは戦闘機群を主力にする硫黄島ぐらいのものである。それにもかかわらず、グァム島から板付基地に緊急避難してきたのは、完全にフライイングドラゴン作戦の一環の訓練だと考えられる。こういうことを言っておるのでございまして、もはや、この板付や、日本に来るそのアメリカの飛行機群というものは、フライイングドラゴン作戦の前哨戦だ、こういうふうに言っているのでありますけれども、防衛庁長官いかがでございましょう。
○松野国務大臣 そういう作戦計画は実はないわけであります。またかりに、そう言われますけれども、B52は先般、たしか、板付じゃなしに沖繩に来られたわけで、板付に来たとは私は記憶しておりません。たまたま台風避難のために沖繩に飛来したということは承知しておりますけれども、板付に来たわけではないように私は記憶いたしております。
○小林委員 それでは、先ほどから私は防衛庁長官にお願いしておるのでありますけれども、アメリカ軍の了解を得まして、いま私が申し上げましたその資料を、この国会にちょうだいすることができるか、これをお聞かせ願いたい。資料さえ出していただければ、私の言うことが間違っていて、フライイングドラゴンのメモはあるけれども、そういう韓国や沖繩に出動していく内容はないという、そういうあなたのことばは信用できますけれども、フライイングドラゴンという、緒戦から開戦、攻撃から防御、輸送まで、そういう一切のメモはあるけれども、その中に含まれている部分的なものに対して、あなたはないとおっしゃったところで、私は信用するわけにはいかない。そういうメモの全貌をちょうだいできるかどうか、お聞かせ願いたいのであります。
○松野国務大臣 米軍の作戦行動、軍事行動については、われわれは、公表する権利は日本にはないと私は思います。
○小林委員 私は公表をお願いをしているのではありません。秘密の扱いでよろしいが、国民の最高機関、国権の最高機関であるこの国会にちょうだいすることは、私は決して不当ではないと考えるのです。われわれの手にちょうだいするわけにはいかないか、その扱いは秘密でも何でもよろしいのであります。
○松野国務大臣 これは、だれであろうと、米軍の作戦行動を知るということはできないことであります。また、これを発表、公表することはできないことであります。これは日本国みずからもきめ、日米間の両国できめたことでありますから、それはだれかれということなしに、できないことであります。
○小林委員 あなたが、公表することもできない、しかし、まだ私のこのメモによれば、中共、北鮮にも上陸をすることもあり得るということがちゃんと明記されているのでありますよ、この資料の中に。しかし、あなたはそれを否定される。私はやはり確固たる資料に基づいて主張いたしております。いやしくもこの中に、空理空論を言っているわけではないと私は言っているのですから、そこであなたが否定せられるならば、その資料を何らかの形で証明されればいいじゃないですか。
○松野国務大臣 小林委員のおっしゃるその資料の問題がはたして正しいかどうか、私はそれは内容のメモとは全然違うのじゃないかと思います。それはこの際そう感じるべきであります。したがって、そういうことを、幕僚の研究あるいはメモの中に、自衛隊法を守らない、憲法を守らない計画というものはあるわけがない。ただ今日私があえて秘密というのは、米軍の作戦行動、軍事用兵については申し上げられないものであるということを私は申し上げているのであります。
○小林委員 私は米軍の用兵をお聞きするというのではない。米軍と共同でやっている日本の自衛隊のその用兵と、その計画と、その研究を――しかもその中には、いわゆる憲法違反をして、北鮮までも行く、中国まで行く、韓国まで行く、いまも言うように、沖繩まで行くというそういう計画がつくられているじゃありませんか。(「そんなことはないと言っている」と呼ぶ者あり)ないじゃない、ないならばそのメモの全貌、いまフライイングドラゴンのメモがあるというのですから、そのメモを示されて、そのメモを見て、われわれは信用しようじゃありませんか。
○松野国務大臣 そういうものは日米間の問題ですから出せないと私は申し上げている。ことに用兵の問題が非常にからんでおるから出せない。日本においてこれを単独に出すとか出さぬとかいう権限はないと私は申し上げている。同時に、そういうものがあなたの手元にあるということならば、それはほんとうのものではないのじゃないかというほうが、今日の解釈としては正しいのじゃないでしょうか。
○小林委員 私もここで申すからには、そういう根拠のない架空のものを持ってきてあなたにお伺いするわけではない。いま日韓会談が進められて、政府が平和条約だ平和条約だと言っている間に、自衛隊はこんなおそろしいことを計画しているじゃないか。これはわれわれはりつ然としてはだなお寒きを感じているから、あなたにその誤りを――自衛隊が誤っているならば、防衛庁長官として、こういうおそるべき研究をした者を早くやめさせたらどうかということを私は言っている。しかし、あなたの答弁の中で、アメリカと一緒にやっているから、アメリカの資料は出せないというならば、それはそれでよろしい。私は、その中で、日本の自衛隊、これはわれわれ国民が飼っていくのだから、その自衛隊に関する研究の部分だけは、これはアメリカと関係なしに出せるじゃないか、これをお見せいただきたいというのであります。
○佐藤内閣総理大臣 先ほど来私このお話を聞いておりまして、あるとか、ないとか、出せとか出さぬとかいうような話で終始しております。ちっとも進まないのですが、一番心配なのは、私が憲法を守るか、自衛隊法を守るか、こういうことだと思いますので、私ははっきりこの機会に申し上げておきます。憲法を守りますし、自衛隊法を守ります。御心配のないようにお願いしたい。
○小林委員 私は、せっかくの総理大臣の御答弁でございますけれども、この委員会でかって三矢研究の問題がわが党の岡田春夫さんによって暴露されたときに、総理は何と言ったか。色をなして、そういうおそるべきものを研究している者があるならば、断固処分をいたしますと言ったじゃないか。その後あなたは処分されましたか。その処分をされた者は、いかように処分をされましたか。研究した者を処分されたのか、秘密を漏洩した者を処分したのか。最初のときにお約束された総理大臣のいわゆる言明による処分と、実際の処分とは内容を異にしておる。残念ながら私は、総理のいまのおことばを、三矢問題に対する処置にかんがみて、御信用申し上げるわけにはいかない。三矢の処分問題をここで御確認していただきたいのであります。
○佐藤内閣総理大臣 せんだってこの席で、はっきりお答えしたはずでございます。三矢研究そのものが憲法違反はいたしておりません。また、自衛隊法違反でもないということをはっきり申し上げております。
○小林委員 そこなんであります。総理は、最初は、実にたいへんな研究だ、そういうような研究をした者は断固処分しなければならないと言って答弁をせられた。それがだんだん変わってまいりまして、憲法違反でもない、あたりまえだということをおっしゃっておる。でありますから、私は、このフライイングドラゴンの作戦研究に対しても、総理の憲法上から処置をするというおことばに対しては、残念ながら信頼をおくわけにいかないから、私は申し上げておるのであります。平和憲法下における日本の自衛隊が、日本の自衛隊の幕僚が、それでは、何の研究をしてもよろしいということですか。これは研究した内容は全部憲法違反です。そういう憲法違反なことを一朝有事、いかなることが起こるかもしれないから、何を研究してもよろしい、こう一体おっしゃるのかどうか、総理大臣。
○佐藤内閣総理大臣 これはせんだっても私が申し上げたとおりでございますが、岡田君がたいへんぼくを引っぱり出すことがじょうずだったと思いますけれども、たいへん計画があるようなお話でございましたが、計画は絶対にないということは、そのときもはっきり申し上げたとおりでございます。そうして小委員会を開いてこれははっきりその結論を出したはずであります。そういたしましたら、ただいま、岡田君や、それからまた小林君も、計画があるとおっしゃるけれども、そういうものは絶対にない。これは計画があるというようなことはございません。そういうことでございますから、この前……(「メモがあると言ったじゃないか」と呼ぶ者あり)いや、計画があると言われるけれども、計画はないとはっきり言っております。だから、少なくともその実行に移るというようなことはございませんから、その点をはっきりしておきます。
○安藤委員長 関連事項の発言がありますので、岡田春夫君に許します。岡田君。時間もだいぶ経過いたしておりますから、簡単にお願いいたします。
○岡田委員 佐藤総理大臣にぜひ伺っておきたいのですが、あなたは、そういう計画はないと断定されるのは、どういう根拠に基づいてそういうようにお話しになるのか。先ほどから松野防衛庁長官は、そのメモがあると言っているのですよ。メモがある中において、それが計画という形になっているか、ことばの上で計画ということばになってなくても、実態において計画であるか、その点はわれわれが見なければわからないじゃありませんか。そうでしょう。それを、あなたは内容もごらんにならないうちに、そういうものはありませんといって断定しても、あなた自身おわかりにならないところに断定されても困るじゃありませんか。だから、われわれの言うのは、先ほど小林君も質問をしているのは、これは米軍と一緒の関係でたとえば米軍の関係は出せないんだということを防衛庁長官が言うならば、国内における自衛隊の関係の資料を出せということを言っておるのじゃありませんか。その資料の関係もいまだに答弁がないでしょう。あなたは計画でないという確信があるなら、なぜ資料を出さないのですか。出したらいいじゃありませんか。その資料を出さないということを――佐藤総理大臣に私は聞いておる。あなたにまだ聞いてない。それが第一点です。私は関連ですから、もう一点申し上げます。
 第二の点は、あなたは、憲法を私は守っておるから心配ない、こう言ったでしょう。あなたは主観的に憲法を守っておると思っているかもしれない。しかし、客観的な事実は、その憲法を否認するような事態になるかもしれない。たとえば、皆さん、どうですか。かつての総理大臣であった犬養毅が、みずからは憲法を守っていると言いながら、その麾下にあるところの軍隊に殺されているじゃないか。あなただって殺される危険性があるじゃないか。(発言する者あり)このことをあなた考えなさいよ。あなたとしては、私が憲法を守るということは何のかいがあるのですか、何の効果があるのですか。あなた自身が憲法を守るというならば、防衛庁の一人一人にそういう危険な計画をやらしてはいけないということをはっきりさせない限りは、あなた自身が守ると言ったって、話にならぬですよ。そうでしょう。そういう点は、総理大臣のいまの発言については特に許すわけにいかないから、あえて関連として私は申し上げるのであります。(発言する者あり)いや、ああいう答弁は許されません。ですから、はっきり御答弁願いたい。
○佐藤内閣総理大臣 私はただいま総理大臣でございます。総理大臣が責任を持って憲法は守ります、また自衛隊法は守っていきます。このことは、私が守るということじゃございません。自衛隊に憲法違反のことをやらさない、それを守っていくということでございます。これは国の意思だと、かようにお考えいただいてもいい、かように思います。これが第二点でございますが、ただいまの第一点についての、これを計画だ計画だと言われるけれども、ただいま申し上げるように、私はどこまでも憲法を守ってさようなことはさせませんから、ただいま防衛庁長官も申しておりますように、これは計画ではないと言っておる。これはもう私どもははっきりさような計画は持っておりません。はっきり申し上げておきます。
○松野国務大臣 ただいまの小林さんの質疑と岡田さんの発言が少し食い違っております。私が申しましたのは、そういう計画はない、かりにメモがあるにしても、それはメモ程度である、それについては日米間の共同研究の問題であろう、これについては、米軍の配置、行動については日本は公表する権限はない、したがって、そういうメモについて、お出しすることはできない、これを質疑応答でいたしたわけであります。どうぞひとつ質疑の中に脱線しないようにお願いいたしたいと思います。
  〔発言する者、離席する者あり〕
○安藤委員長 お静かに願います。御静粛に願います。席へお着きください。(発言する者あり)御静粛に願います。席へお戻りください。席へお戻りください。
 委員長が発言いたします。(発言する者あり)御静粛に願います。
 ただいまの松野防衛庁長官の発言について不適当な言辞があると思われまするので、委員長において適当の処置をとることといたします。
 小林君、発言を御継続願います。
○小林委員 場内を整理していただきます。場内を整理していただかなければ、私はしゃべれません。
○安藤委員長 小林君、御発言を願います。
○小林委員 私はしゃべりますけれども、声が小さいですから、場内がこううるさくては私はしゃべるわけにはまいりませんので、委員長、場内の整理をしてください。
  〔発言する者あり〕
○安藤委員長 御静粛に願います。――御静粛に願います。
 小林君、御発言願います。
○小林委員 私はいまの総理のおことばを聞いて実に驚いた。総理は最終的において結論をお出しになる、最後の決定をされる、だから、その過程には野放しで、自衛隊やあるいは自衛隊の幕僚がどんな憲法違反の研究をしようと、作戦を練ろうと、それはそれでかまわないというふうな御発言は――私はそういうようにとれた。それは非常に危険なのでございまして、新憲法のもとで、制服の軍人が、状況によりましょうけれども、他国までもいわゆる侵略をしていく、あるいは進出をしていく、そういうような研究をやってもよろしいという、そういうようなことは私は重大問題だと思います。(発言する者あり)総理からいま一回明確にその点を伺っておきたいと思うのであります。
  〔発言する者あり〕
○安藤委員長 御静粛に願います。(発言する者あり)
 小林さん、どなたに答弁をお求めになりますか。
○小林委員 総理に答弁を求めておるのであります。
○安藤委員長 総理、答弁ございますか。
○佐藤内閣総理大臣 もうこの議論もこの辺で終えたいと思いますから、私先ほど来申し上げておりますように、憲法を守る、また自衛隊法を守る、法律を守っていく、これはまた私自身が最高責任者としてそのことを国会において明言するのでございます。したがいまして、危険なことはないとお考えになってけっこうです。お話のうちにあります、戦線を拡大したとか、あるいは侵略行為を展開したとか、さようなことは全然ございませんから、それも、そういうことはないということをはっきりしておいていただきたい。
 それからさらに、どんなことでも研究していいのか、こういうお話でございますが、私は、本会議でしたか、あるいはこの席でしたろうか、研究といいましても、不適当なものがあると、何でもかんでもいい、かようには私も考えないということを申しましたので、これでもうこの話は御了承いただきたい、かように思います。
○小林委員 私はまだ終わるわけにはいかないのでございまして、質問の内容は別といたしまして、松野防衛庁長官がメモと、おっしゃった。そのメモは、一体何ページのものをメモというのか。私は計画とメモの違いをここで論争しようとは思わないのでありまするけれども、メモにしては実に膨大な精密なメモだ。けれども、その問題はまあここで一歩譲るといたしまして、そのメモの中には、米軍に関する問題と国内の自衛隊に関する問題と両方ある、こう防衛庁長官がいま言われたのです。そのアメリカ軍に関する問題は、これは公開あるいは資料を配付することは困難であると言われましたから、その点は了承するといたしまして、国内の自衛隊に関するそういうメモは、これは私は、アメリカ軍の了解を得る必要もないのでありまするから、その部分は必ず資料として提出をしていただきたい。提出をしていただかなければ、私のこの席で論じたことが、何か空白なことのように言われて、私も非常に遺憾でありまするし、これはまた国民全般が最も知りたいことであります。日韓条約の批准に関連して、こういうおそろしい軍事的な――防衛庁のことばをもってすればメモでありましょう。われわれに言わせれば計画だ。そういうものができ上がっておるということは、実にはだにアワを生ずるようなおそるべき問題でありまするから、真におそろしいものでないとしたならば、ぜひひとつそのメモを提出していただきたい。この御確約をいただくまでは私は次の質問に移るわけにいかないのであります。どうぞ確約をしていただきたい。
○松野国務大臣 私は、ただいま申しましたのは、計画というものはない、また、メモというものがあるにしても、それは日米間の情報の交換あるいは共同の研究ということであろう、しかし、共同の場合は日米間のことで、日本だけでこれをきめるわけにはいかない問題でありましょう、それは米軍の行動配置というものが必ず入っておるでございましょう、したがって、私としてはそれはできない、また、その内容については、自衛隊法、憲法に違反するようなことにわが自衛隊の幹部が参画するわけもございません、私が常々統制をとっております。したがって、そういうものはあるわけがないという話を先ほどから申し上げているわけで、なお、最後に私が脱線と言ったことは、つつしんで私のほうからおわびをして取り消します。
○小林委員 いや、おわびのことばだけは了承することにいたしましても、資料の面は、私は了承するわけにはいかない。ともかく、対中国戦争を想定して板付を前線基地にして沖繩や韓国にも出兵する、輸送をどうする、海上をどうする、空軍をどうする、これまで緻密にできているものを、それを提出することはできないし、あなたの言うようなことはない、こういうようなことでおっちゃらかされたんでは、私は了承するわけにはいかない。先ほどあなた言われた。アメリカとの共同の面もあるけれども、日本の国内の自衛隊だけの分もある、必ず言われた。速記にも書いてある。アメリカと共同の分、この分はいかぬというなら、その分だけを空白にしてよろしいけれども、そのアメリカとの共同研究に関係のない、あなたの言われた日本の自衛隊だけの関係する分はぜひともひとつこれは資料として出すことを約束していただきたい。これは出していただけましょうか。
○松野国務大臣 研究を共同でしたということになれば、共同の研究というのは分割することは私はできないのじゃないかと思います。やはり共同の研究というのは分割することは私はできないのじゃないかと思います。なお、私が先ほどから自信を持って申し上げましたのは、わが自衛隊が海外に出兵するという計画も、能力も、今日装備もございませんので、かりにどういう研究をしようと、そういうことはないと、私は強く先ほどから申し上げているわけであります。その文書を出すということは、私はおそらくそういうものはできないのじゃないかと思います。
○小林委員 どうも、松野長官の答弁はくるくる変わって、実にこれはとらえどころがないので困ってしまう。最初は国内の自衛隊だけの分がある。今度は共同の分だと言う。なお、言わずもがな、わが日本の自衛隊には海外まで出兵するだけの能力がないと言う。能力がないから、共同作戦で、何日たったらアメリカからどのような軍艦を借りて、どういう爆撃機を借りて、どういうふうなものを借りるとまで、みんな書いてあるじゃないですか。それがいわゆるこのフライイングドラゴン作戦の中心になっているじゃないか。そういうようなことを、人をだますように、現在の自衛隊だけで海外に出る力がないからそんなような懸念はないなどという、人を小ばかにしたような答弁でおっちゃらかすことはやめてもらわなくちゃいけない。あなたがそう言うので、私はまたこれを読まなければならない。全部読み上げますよ。何月何日にどのようにして、開戦の二日目には何をやる、十日目には何をやる、補給はどのようにして、アメリカの爆撃機を使う、みんな書いてある。どの基地にどれを持っていくか書いてあるじゃありませんか。資料を出してください。
 委員長、資料の要求を出すようにきめてもらわなければ、私は次の質問をするわけにはいかない。あれほどりっぱなことを言われたのですから、必ず資料を出すように最善の努力をしてもらわなくちゃ、私は次の質問に進むわけにいきません。
○安藤委員長 先ほど来政府側におきましては資料として出せないと申しておられます。メモといえども米軍との関係においてこれを出せないと言われます。したがいまして、ただいまの御要望は、これをお取り次ぎはいたしましょうけれども、先ほど来の御答弁であることをお含みおきを願いとうございます。
○小林委員 私は、委員長が仲介の労をとられて資料を出すように努力をせられたというのでありますから、その努力に対しまして、わが党の理事諸君が、どういう態度をもって臨むべきか、私に何らかの具体的な指示を与えるまで、次の質問を控えたいと思います。――それでは、あらためて政府に要求をいたします。昭和三十八年の十月から資料を集めて、昭和三十九年の三月からその作業に入りましたフライイングドラゴン作戦であります。米中戦争を想定いたしまして、日本の自衛隊が板付飛行場を基地にして韓国、沖繩に出兵することを中心としてでき上がりましたその資料であります。その計画書であります。政府に言わしめればメモであると言われるのでありますが、それをどうしてもこの国会に提出していただくことをあらためて要求をいたします。
○安藤委員長 ただいまのあらためての資料要求につきましては、理事会において協議をいたすことにいたします。
○小林委員 いままでの政府の中国、北鮮に対する基本的なものの考え方、あるいはまたドラゴン作戦等を通じて、この日韓条約というものが、やはり防共、極東の安全を守るというアメリカの立場に立って、対共産主義の、侵略を防いでアジアの安全を守るという反共防衛を根幹としてでき上がっている協定条約であることは、私は明白になったと思うのであります。
 そこで、この反共というものの考え方について、総理大臣は共産主義はきらいだと、これはしばしばこの国会で言われました。言いかえれば反共が一番お好きなんです。共産主義がきらいですから、反共がお好きでしょう。この反共という、そういうことで政治、行政が進められていることに対して、われわれ国民は非常に危険を感じているということを、この際一言つけ加えておきたいのであります。ということは、われわれは、過去にさかのぼってこの反共と称する条約のために国を滅ぼし国民を塗炭の苦しみにおとしいれたという苦い経験を持っているからであります。総理はその経験をお持ちになりませんか。お尋ねをいたします。
○佐藤内閣総理大臣 どうも、反共ということがにがい経験を私どもに与えた、かように私は考えておりません。
○小林委員 総理大臣はもうお忘れになったのかもしれませんけれども、昭和の初め、第二次世界大戦に突入する前に、いわゆるその当時は反共と言わないで防共と言った。防共協定、日伊防共定、あるいは日独防共協定、あるいは三国防共協協定、そういう協定を当時の政府が結んだ。赤色共産主義を防衛するんだ、赤色共産主義からアジアと日本を防衛するんだ、そういうようなことを言って、ついにこの第二次世界大戦が勃発したじゃありませんか。当時は反共と言わないで防共と言っただけの話であって、防共も反共も同じです。みんなこの中にはそれで関係した人もいるんだ。そして、防共防共、いかに共産主義がおそろしいかということを国民に伝播をしておきながら、やったことは何ですか。その防共を掲げて、赤色帝国主義と称するその帝国主義と戦争をしたのか。そういうことばで国民をだましながら、中国の侵略をやったんじゃないですか。そしてアメリカと戦争したんじゃないですか。そうしてイギリスと戦争したんじゃないですか。そうして国を滅ぼした。そうしてわれわれはにがい苦しみを受けたんです。一体、この経験をいま私はここで考えても、総理大臣、あのときの防共といまの反共と一体どう違うのですか。この反共を中心にした日韓条約と、当時の防共ということばでやった日独あるいは日独伊三国協定とどう一体内容が違うのですか。国民はそれをおそれているのですよ。どうか総理大臣、違うとおっしゃるならば、一言違うように明確にお教え願いたいと思うのであります。
○佐藤内閣総理大臣 戦争に負けてからの新生日本、これは、私が申し上げるまでもなく、憲法の前文を十分ひとつ熟読玩味する必要があると思うし、さらにまた、第九条も十分熟読玩味することが必要だと思います。ただいまお話のような点につきましても、そういう意味で私自身がたいへん共産主義はきらいなんですが、まさか小林さんはお好きではないだろうと、かように思います。
○小林委員 私は共産主義が好きかとおっしゃれば、私は、社会党が好きだから社会党に入った。社会主義が好きだから社会党を支持しておるのでありまして、その意味においては、共産党でも共産主義者でもございません。けれども、その共産主義は危険であるという考え方で、三十八度線がすなわち防衛線である、その防衛線を守るために日韓条約を結ぶのだ、あそこに六十万の軍隊がいるんだから、あの軍隊が共産主義の侵略を防衛して、そうして日本の安全を守ってくれるんだから、そこで日本の経済の繁栄もある、だから、この際日韓条約を進めて、何といっても韓国の経済や軍事力や政治力を日本が援護しなければならない、こういうようなことをあなた方は考えていらっしゃる。その考えがさらに共産主義よりも私は危険だということを言っているのだ。現に、高杉晋一などという、この日韓会談を推進した代表がそう言っているじゃありませんか。そういう危険は共産主義の危険よりももっと危険だと言うのだ。その危険をいまあなた方は進めているじゃないか。その危険を進めている反共というものの言い方は、かつて日本を敗戦に導いた、防共といって、防共協定といって国民を負けさしたあの考えと同じゃないかと言うのだ。こんな危険なものをわれわれば賛成するわけにはいかぬ。どうですか、それに言うことがあったら一分の反省があったら、そうやすやすと――特に椎名君のごときは戦時内閣の有力なメンバーなんだ。そうして、軍需産業を進めて、みんなわれわれの生活を圧迫したその首脳部の一員なんだ、あなたは。そういうようなことを反省したら、当時防共防共といって、赤色共産主義を防ぐのだから、防衛するのだからといって、防共協定を結んで、われわれを英国やアメリカと戦争させた、そのことの反省をあなた方が考えたら、いまさら、反共でございますから韓国と条約を結んで三十八度線で共産主義の侵略の防衛線をつくらなくちゃならぬというようなことは、あなたの口から出てくるわけはないのです。そういうことをあなたが言われるから、私は危険きわまると言うのだ。一体当時の防共と今日の反共とどれだけの相違があるのか。椎名君、お聞かせを願いたい。
○椎名国務大臣 どうも御質問の趣旨がよくわかりませんが、反共、防共、同じような意味だろうと思いますが、そのことばの趣旨なら、これでお答えになっていると思います。
○小林委員 あなたたちが日韓条約をお結びになるときに、共産主義の侵略から三十八度線をいわゆる韓国の軍隊が守ってくれるから日本の安全があるのだ、そのために日韓条約を進めて日本の防衛体制を強めなければならぬ、あなたはそうおっしゃった。昔だ、やっぱり。早く日独と防共協定を結んで赤色主義の侵略を防がなければならぬと、あなたが一生懸命にわれわれに教えたのとどう違いますかということを言っておる。もっと言いかえれば、その第二次世界大戦前の防共防共といって国民をだまして戦争さした相手は、その赤色共産国ではなくて、共産国でないイギリスやアメリカや、そして中国とわれわれに戦争さしたじゃないか。そうしてこんなに苦しみを与えたじゃないか。いまも反共だ。反共だから。自由主義陣営の自由を守るために、三十八度線で北鮮の侵略と中国の侵略を守らにやならぬからこの日韓条約を結んだと言っている。そうして、この条約をわれわれ国民に押しつけてきている。けれども、その内容、やっていることは、反共じゃなくて、アジアにおけるそれぞれの民族の独立をあなた方はみんな妨害しているのだ。いわゆる大国のアジアにおける植民地政策をあなた方は助ける結果になるということを申し上げておる。違いますか、椎名さん、私の言うことが。違ったら違うと言ってください。
○椎名国務大臣 過般の戦争は、いわゆる枢軸と、それから英米、いわゆる自由主義陣営との戦いであったのであります。戦争に負けて、やっぱり全体主義のほうが弱いような気がいたします。
○小林委員 そういたしますと、あなたのおっしゃるのは、日本とドイツとイタリアが全体主義で、そしてソ連とイギリスとアメリカが全体主義ではない、向こうのほうは民主主義だ、ソ連も民主主義で、日本とドイツとイタリアがいわゆる独裁国家で、負けたのだ、こうおっしゃるのですか。私はそういうおつちゃらかしたあなたの答弁をとやこう言うのじゃない。(「日韓会談に関係ないぞ」と呼ぶ者あり)ある。いまの日韓会談は、いまも言うように、反共じゃないか、君。反共で、共産主義を防衛するということから出ているということは、先ほどからの答弁で明らかになったじゃないですか。しかし、いまアジアにおいて一番問題になっているのは、私は、自由主義と共産主義の争いじゃないと言うのだ。アジアにおけるものは、いまのことばをかえて言えば、第二次世界大戦のあとの戦争処理の一番悪いことは、大国の最大の罪は、一民族、一国家、一政府というこの民族の最後の根幹を全部妨害したということなんだ。ドイツにおいては東ドイツと西ドイツに分けておる。あれはドイツ民族の希望ですか。大国です。ソビエトとアメリカです。こういう大国が、その民族の願望を踏みにじって二つの国をつくっている。アジアにおいてもそのとおりじゃないですか。いま日韓条約を結ぶ韓国における最大の悲劇は、この朝鮮を二つに分けて、北朝鮮とこの南朝鮮に分けているということが、これが戦争処理における最大の悲劇です。最大の罪悪というなら最大の罪悪だ。だれがやったのです。大国じゃないか。これはアメリカじゃないか。ソ連じゃないか。(「中共じゃないか」と呼ぶ者あり)ばかなことを言うな。この終戦処理のときには、中国の兵隊なんというものは一人もいませんよ。そんなことを、ばかなことを言うやつがいるから困るのだ。あれはソ連が北鮮へ入っていって、南のほうからアメリカが入ってきて、三十八度線でやったのじゃないですか。そのとき中国なんて入ってきませんよ。いいですか。今日この現状において、いま二十年もたっておりますけれども、一体この北朝鮮と韓国との統一と独立を妨害しているものはだれですか。アメリカじゃありませんか。この分割国家を固定化しているものはアメリカでございましょう。アメリカは南朝鮮にいまでも駐在して、そして南北の朝鮮の統一を阻害しているではありませんか。それをあなたたちは、このアメリカの南北統一の分割に便乗しているのじゃありませんか。違いますか、あなた。(発言する者あり)正規の発言です。違いますか、総理大臣。南北の統一を阻害しているものはアメリカじゃありませんか。違いますか。
○佐藤内閣総理大臣 朝鮮を二分しておるのはアメリカではないかというのが御意見のようですが、どうも私、先ほど来伺っておりまして、小林君の御意見――大部分が御意見であるか、かように私思いまして、御高説を拝聴しておったのですが、ただいまのような結論は、私はさようには思いません。これはもう御承知のとおりだと思いますが、今回の日韓条約を、軍事同盟だとか、背景にそういうものがあるとかいって、盛んに批判されますが、政府が申しますように、今回の日韓条約、また、諸協定、これは軍事協定でないことはもうはっきりいたしております。軍事協定にさような関心を払われる小林君は、北鮮をソ連、あるいは北鮮と中共との軍事同盟、これを一体どういうようにお考えになっていらっしゃるか。私どもは、ただいまのように、日韓間では軍事同盟を持たない。全然持たない。軍事同盟があるといってたいへん批判されておるようでございますが、必ずこういうような立場に立っておられる方は、はっきりしている、北鮮とソ連との軍事同盟、北鮮と中共との軍事同盟にもまた反対だろう、かように私は思います。
○小林委員 私は、次の問題に移りまするから、この問題は深追いはいたしませんけれども、いまのこの日韓条約の問題で私どもが第一番目に考えなければならぬことは、三十六年間われわれは韓国を支配した。その支配せる韓国に、いま私どもがどうして罪の償いをするかということになれば、やはり統一をせられた韓国、その韓国の平和としあわせをつくる方向へ条約というものを持っていかなくてはならぬと私は思う。そうでございましょう。しかるに、その韓国がいま二つに分かれておる。その分かれている朝鮮の現実を、朝鮮民族の中で、現在の分裂せる形を喜んでおる朝鮮民族は一人もいないと私は思う。北であろうと南であろうと、それは共産主義、社会主義を問わず、自由主義を問わず、朝鮮民族である限りは、いずれも一つの国家をつくり上げたいというこの願望に私は燃えておると思うのだ。燃えているのだ。しかるに、そういう全朝鮮人民の願望が手にとるようにわかるにもかかわらず、いまのあなたは、そのわれわれが支配した全朝鮮民族の全希望に沿うような条約や協定を結ぼうとしないで、その中を大国の都合で二つに割ってしまった。その割った半分の南とだけ条約を結んで、そしてその統一の悲願を、分裂を固定化するような形で持っていく、それは私は間違いじゃないか。しかも、いまその分裂を固定せしめている――じゃ北のほうには、同じく北のほうを支持する軍隊がいるかといえば、いない。南のほうにだけアメリカの軍隊が二十年たっても駐とんしている。北にはいません。ソビエトの軍隊はいません。(「見てきたのか」と呼ぶ者あり)あなた方決議文を見なさい。何にも勉強していないからわからない。いないのです。アメリカだけが南朝鮮を占領して、そしてその統一化を妨害しておる。だから、そういう現実をながめたら、日本の立場は、総理大臣の言われる七十何国だとか二十何国なんというよその国の立場とわれわれは違うのです。三十六年間も迷惑をかけてきたのだから。ほんとにその国の国民の一人も間違いなく望んでいるその統一の方向に、なぜ一体努力をされないのか、なぜ一体そういうふうな条約の方向へ努力しないか、私はこう言っておる。その統一を妨害している現実は、南におけるアメリカの軍隊なんだ。アメリカの軍隊が韓国から去ればいいじゃないですか。去って行けばいい。そして民族の自決だ。国連の憲章どおりの韓国の朝鮮民族の自決にまかせてやればいいじゃないですか。自決にまかしたら、それは完全なる独立であり、内政不干渉であると私は思いますから、そういうことをあなたに申し上げておるのでございます。
 次にひとつ朴政権の体質について、これはわずかな時間でよろしゅうございますけれども、お伺いいたしておきたいと思うのであります。
 御承知のとおり、朴政権は、一九六一年五月十六日に、クーデターによって生まれたのでございまするけれども、私は、この新政権のよって立っておりまする一体基盤は何であるか、これを総理大臣にお伺いいたしたい。
○佐藤内閣総理大臣 最近の朴政権、韓国内におきましては経済の成長もたいへん順調でございます。大体八%程度の成長をしておる。また、ことしの米作は平年をわずかに上回るというような状況でございます。たいへん国民生活も向上し、安定しておる、かように私見受けております。大体政局もまた安定しておる。ほんとに私ども信頼する政権だと、かように考えております。
○小林委員 これは学者の説でございますけれども、朴政権自体は外国に従属をする権力である、民族が二つの地帯に分割をしておりまして、その分割をさせる外国の力によって擁護せられておる。その力がなくなる、外国の力、アメリカの力がなくなれば、これは直ちにその政権を維持することもあるいは立っておくこともできなくなるのではないか、こういう見方をしておるのでありまして、それは外部権力の上に依存をし、擁護せられて立っておる政権で、その外国の力がなくなれば、これは倒れてしまう、独立もできない、あるいは二つの国家が一つになったりすれば、もはや存在しない政権である、こういわれておるのでございますが、この批判はいかがでございましょう。
○佐藤内閣総理大臣 ただいまの説には私は全然反対でございます。
○小林委員 私は、独立国家といえば、みずからの主権を自由に行使し得る政府でなければならないと思うのであります。立法権、行政権、司法権、特に予算の編成権、軍の統帥権及び軍隊の編制権等を他国の制約なしに行ない得る政権でなければならないと思う。いかがでございましょうか。
○佐藤内閣総理大臣 朴政権は、ただいまおっしゃったような条件をちゃんと備えております。
○小林委員 韓国の前駐米大使であります梁裕燦という人がこういうことを言われておる。「現在アメリカは、われわれの一切の兵器を統制下に置いている。しかもアメリカは、われわれが使うガソリンを握っており、それも二日分の量だけをわれわれに供給している。このような条件のもとで、だれも大きな動きを示すことができない。こうした中で朴は軍事政権をつくり上げたのである。」こういうふうに言われておるのでありますが、結局、韓国の軍隊は、アメリカから軍隊を動かすための二日分のガソリンを自由にする権限だけしか与えられてないということを、前駐米大使の梁裕燦氏が言っておるのでございますが、このことばは間違いでございましょうか。
○佐藤内閣総理大臣 私は、韓国の実情をそこまでは知りません。
○小林委員 それでは外務大臣に、これはアメリカに駐在をしていた韓国の大使がそう言っておる。
○椎名国務大臣 私も存じません。
○小林委員 それでは総理大臣は、朴政権は立法権、司法権、行政権、軍の編制権、統帥権、予算の編成権等を全部独立してお持ちになっていると言うのでありまするけれども、アメリカは南朝鮮における事実上の支配者であり、朴政権はかいらい政権であり、その植民地的支配を受けている道具である。アメリカは、南朝鮮で政治、経済、文化、軍事のあらゆる支配権を握って、主人としてふるまっている、こういうふうにいわれているのでございますが、この点間違いがないか、もう一回お聞かせを願いたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 かいらい政権、かいらい政権と言われますが、私どもは、かいらい政権と、かように考えておりません。りっぱな政権だと思っておりますので、ただいま日韓基本条約、さらにその他の諸協定、これを結んで、ただいま皆さん方の承認を求めておるのでございます。ただいまのような事柄は、韓国の政府に対しましてもたいへん失礼な言い方だと思いますので、こういうことは慎んでいただいたほうがいいと、かように私は思います。
○小林委員 私は、韓国政府に対する批判をお聞きしているのではないのでありまして、やはりわれわれは、この条約を結ぶときには、その国の政府の実体というものを客観的に見きわめておかなければならない、こういうことで質問を申し上げておるのでありまするから、私が感情を入れて、主観的にそれを誹謗したということならば、総理大臣のおっしゃるように、それは失礼でございましょうけれども、アメリカであろうと、中国であろうと、ソ連であろうと、イギリスであろうと、その国の政体の実体をわれわれが客観的に見きわめることに対して、失礼であるとか失礼でないとかおっしゃることは、私は総理大臣のほうにこそ間違いがあると思うのでありまして、それは誤解なく、私どもがこういう条約を結んで、五億なり八億ドルなりの日本の血税を注がなければならぬ相手国でありますから、その相手国の政権の内容というものをつまびらかに見きわめ、事実を事実として知っておくということが何で失礼でございましょう。そういう間違いのないようにお聞きを願いたい。
 そこで私は、冷静な気持ちで、お聞きするのでありまするが、南朝鮮の京郷新聞という、一九六五年一月十六日、この新聞が南朝鮮の経済の従属性についてこのように書いています。わが国は、二十年の間アメリカから三十七億ドルというばく大な援助を受けたが、自立経済どころか、予算の四〇%、総収入額の五〇%以上を外国の援助にたよらなければならない不具者になった、こういうふうに申しているのでございまするけれども、この点はいかがでございましょうか。答弁は、総理大臣は経済のことはあんまりおわかりにならないようでございまするから、(「失礼だよ」と呼ぶ者あり)そうですか、それでは取り消しをいたしまして、総理大臣はもっぱら大局をお見になりまして、個々の問題についてはあまり神経をお使いくださるというと何でございまするから、しばらくお休みをいただきまして、大蔵大臣にお伺いをいたしたいと思うのであります。
○福田(赳)国務大臣 韓国は、アメリカから経済上、軍事上の援助を相当受けておるように承知しております。
○小林委員 その援助が、いまもここにあるように、韓国の総予算の四〇%、総収入額の五〇%以上を外国に依存しなければならないという国家の経済状態が、財政、経済から見て、完全な独立国家と言い得るかどうか。大蔵大臣、お聞かせを願いたいのであります。
○福田(赳)国務大臣 独立国家であるかどうかという判断は、その政府が自分の裁量において行動しておるかどうかということだろうと思いますが、韓国はりっぱに自分の裁量で動いておる国家である、かように考えます。
○小林委員 私は問題を変えまして、韓国の軍隊の統帥権はどなたがお持ちになっておるのでありますか。これは防衛庁長官にお尋ねをいたしたいと思います。
○松野国務大臣 私も専門家でございませんのでよく存じませんが、韓国の軍隊の統帥権は韓国にあると私は承知しております。
○小林委員 それはこれから五億ドルの金も差し上げて、民間で三億ドルの金も御援助申し上げようという国の軍隊の統帥権がどこにあるのか、自衛隊の長官としては少し御答弁がお粗末じゃないかと思うのでございまして、いま少しお調べになって、再度御答弁を願いたいと思うのであります。
○松野国務大臣 いろいろ変わっておるようでありますが、私もその韓国の発表を順次追って知っている常識だけですが、韓国の軍隊の統帥権は韓国にある。ただ国連軍との関係において、ある場合には国連がその指揮をとるという場合もあるようでございます。
○小林委員 大韓民国とアメリカ合衆国との会談議事録によりますと、「国際連合司令部が大韓民国防衛の責任を負担する間、大韓民国国軍は国際連合軍司令部の作戦指揮下におく。」こういうふうになっておりまして、指揮は国際連合軍がお持ちになっておる。しかも、その韓国の軍隊には、それぞれ軍事顧問というものが、連隊まで配置をせられておって、南朝鮮軍隊の編制と装備、その移動と配置、将校の昇進と兵士の休暇承認に至るまで統制管理が行なわれていると、私どもの情報にはそうなっておりますけれども、その点一体防衛庁のお調べによればどうなっておるか、お聞かせを願いたいと思うのであります。
○松野国務大臣 平時においては、韓国軍隊は韓国が指揮権を持ち、特別に共産侵略から韓国を防衛する場合においては、その指揮権というものは国連軍に移る、こういうふうな二段の制限が最近は入っておると私は承知しております。
○小林委員 一九四八年九月に結ばれた財政、財産移管協定あるいは在朝鮮アメリカ軍政庁の一切の現行法、法令規則をすべて引き続き施行する義務を朴政権に負わせ、アメリカ政府が韓国にある財産とその追加物を取得することを規定して云々とこういうふうな協定が行なわれておる。一九五六年十一月には韓米友好通商航海条約、一九六一年二月には韓米経済技術協定、こういうふうな協定が行なわれておることを通産大臣、御存じでございましょうか。その具体的内容をお示しをいただきたい。
○三木国務大臣 存じておりません。
○小林委員 先ほどから申し上げておりますように、日本の政府と韓国の政府がこういう大きな経済条約あるいは財政上の負担を結ぶ条約を結ぶときに、韓国の財政経済がどうなっているかということぐらいは御存じにならないで、よくもまあこういう大それた条約をお結びになったものじゃありませんか。(「おりますだよ」と呼ぶ者あり)それはどうもありがたい。それではその条約に基づいて、米国と韓国との間に資源の処理、生産、配給の統制、通貨の発行、財政信用に対する統制、外貨の取引、一切の輸出入に対する統制、米穀の強制買い上げ、主食の配給等に至るまで、アメリカのいわゆる管理が及んでいるはずでありますけれども、その内容についてつまびらかにお聞かせを願いたいのであります。
○三木国務大臣 私は、その事実については存じておらないと申し上げたのであります。(笑声)
○小林委員 こういう重大な質問に対して私どもを欺罔するようなそういう不明瞭な答弁をしていただきまして、私は非常に迷惑であります。それでは通産大臣としてはあるいは御存じならないというならば、いわゆるあなたの幕僚をして答弁をさせることはけっこうでございますから、通産省の、対韓国におけるアメリカとの経済関係、財政関係、そういう問題についてひとつ御答弁をいただきたい。政府委員でけっこうでございます。
○後宮政府委員 お答え申し上げます。御承知のとおり、米国の対韓経済援助につきましては、最初に一九四八年十二月の十日に経済援助協定が締結されたのでございますが、それが改定されまして、一九六一年に米韓経済技術援助協定の新しいのができまして、これがさっき先生の御指示にありましたように、一部に韓国経済の隷属化をねらっているものというような批判があったようでございます。そこで、その批判にこたえますために当時の駐韓アメリカ大使のマコノギーから、韓国の主権を尊重する、経済、行政等に関与しないという旨の書簡が出されまして、そして韓国の国会も、この書簡の趣旨を附帯決議として批准した。そういうことで、がんじがらめに韓国の経済、財政、主権がアメリカによって支配されているということは、一応この協定によってはそういうことにはなっていないというふうに見ております。
○小林委員 通産省もあまり御勉強になっていない。単なる条約の内容もお知りになっていないのでございまして、これは私は質問しても回答を求めることはできないのは残念でございますけれども、実際の面において、はなはだ言いにくいことでございまするけれども、まだ韓国の現政権は、その予算の編成権において、財政の内容において、あるいは軍事の統帥権において、あるいはその編制権において、完全に主権というものを持っていない。こういうふうにいわれているのでございまして、むしろそれは悪口を言う――悪口ではありませんが、その内容を批判をいたしまして、現政権をアメリカの援助資金の運営委員会などという、こういうことばで表現をいたしておる学者もあるのであります。これはひどいというおことばもありました。私もそうでないことを隣国のために望みたいのでありますけれども、現実にはそういう学者のことばを裏書きするような現実が幾つにもあるのではないか。したがって、このたびの日韓条約はむしろ日米条約の色彩が強いのではないか、こういうことも言われているのであります。日米条約、韓国に関する日米安保条約のその細部協定の一つであって、韓国に関するいわゆる日米協定ではないかといわれるのでありますが、こういう批判に対して椎名外務大臣、いかがでございましょう。
○椎名国務大臣 遺憾ながら、あなたとは全然所見を異にいたします。
○小林委員 なおただいま、これは一市民といっても、質問してということで、電話があったのでございまするが、これはまあ私の質問じゃありません。聞いてもらいたいということであります。将来南北朝鮮が統一した場合、北寄りの政府が政権をとった場合、共産党の政権が樹立をした場合、南と結んだ条約は無効であると言われたら、その場合国民の血税で支払われた賠償は一体どうなるのか。これをだれが保証してくれるのか。国民の血税が使用されるのであるから、国民の立場に立ってその憂いを子孫まで残さぬよう正しい領収書を政府が保証してくれるよう質問をしてほしい、こう言われておるのでありまするが、これは統一せられた場合であります。どうなるのか、お答えを願いたいのであります。
○椎名国務大臣 あまり非現実的な仮定に立っての質問でございますので、この際は申し上げにくいのでございます。
○小林委員 将来の仮定の問題であっても、こういうようなことは必ずあるべき事実なんですからね。いやしくもこういう問題を審議するときには、北と南が一つになったときにどうするかということは、施政者としては頭の中に入れておいてやるのがあたりまえじゃありませんか。いかがでございますか、外務大臣。
○椎名国務大臣 あまりに非現実的な仮定でございますので、お答えいたしません。
○小林委員 これが非現実的ですか。一つの民族が二つの政権と二つの地域に分かれていることこそが無理なのであって、一つの民族、一つの国家、一つの政府というものが原則なんだ。先ほども言っているように、それが非現実的とは何です。何言っている。待ってください。まだ質問しないうちにしゃべっているうちに何です、あなた。のこのこと、満足な答えもできないのに何だ。気が早過ぎますよ。どんなにそれが悲劇であるか。われわれ日本だって、いま現実に分けられているのだ。われわれ日本は、まだ韓国のように一千万とか二千万に分かれていないけれども、一億と八十万に分かれているじゃないか。それでも沖繩に分けられた沖繩の住民がどんなに一体この分裂を嘆き悲しんでいるか。総理だって、あなた沖繩まで行って、そのなまなましい現実に涙を流してこられたじゃないですか。そういうなまなましい事実があるならば、われわれの国だって、たった八十万と一億と分かれさせられても、これほどの悲劇とこれほどの悲しみがある。ましてや一千万と二千万、まん中から分かれて、あるいはベトナムにおいても北と南に分けられて、その民族の統一と一つの国家、一つの政権をつくるためにどれだけ悲しんでいるか。これは主義主張の問題じゃないのですよ。これを解決するのが新しい日本のアジアにおけるわれわれの重大な使命なんです。われわれがもし自主外交をやるとすれば、この民族の独立とこの民族の統一だ。アメリカやあるいはソビエト等その他の国に、大国によって分けられた、この民族の悲劇の窓口を、傷口をなおしていくという、その考えでいかなくちゃいけない。日韓問題を考えたって、中心はそこにいかなくちゃいけないんですよ、あなた。ちっとも、いっていないじゃないか。そうして、やがてこれが統一せられたときにどうするんだと言ったら、仮定の問題でございますのでと、何です、その不謹慎な言い方は。椎名君、いま少しまじめに答えなさい、まじめに。
○椎名国務大臣 大体あなたの言われる、北が侵略をしてそして南を征服した、そういう前提が、大体これはあらゆる努力をして避けなければならないことなのであります。韓国は休戦ラインから決して北に侵略をしてはならない、すべきでない。これは国連によって規制されておる事実である。それと同時に、北朝鮮も、この休戦ラインをまた再び侵略して、そして南を侵略するがごときことは、これは決してりっぱな統一ではないのであります。そういったようなことは、それは北のほうでも考えていないだろうと思う。だから私は非現実的だと言ったのです。あくまでこれは平和的に統一すべきものである、私はかように考えております。
○小林委員 椎名君は外務大臣としての資格がないですな。あなた、耳が遠いですか。速記録もありますよ。どこに私が侵略と言いましたか。この文章を読んだんですよ。将来統一した場合と書いてあるじゃないですか。そうして北寄りの政府が政権をとった場合、これが侵略ですか。南北が統一せられて、そこで生まれた政権が民主的、自主的にきめられたときには、その政権が社会主義であろうと、共産主義であろうと、自由主義であろうと、それは他国の独立には干渉しないと先ほど総理大臣は何回も答えているじゃないですか。武力で統一した、侵略で統一したと私はどこで言ったですか。統一して共産党の政権ができ上がった場合という質問なんだ。どこで侵略と言いましたか。そのときには、そのときある政体が何であろうとも、われわれの関知するところではないのでしょう。その場合に、いわゆる北の共産党が統一の国家の政権をとったときには賠償問題はどうなるかと言っておるのであります。わかりますか、わかったらお答え願いたい。
○椎名国務大臣 ただいまの情勢から考えて、きわめて飛躍した事実を仮定しておられるようでありますから、私は答えられないということを申し上げたのです。
○小林委員 私はいまの答弁には満足することができません。
 なお、質問といたしましては、通産大臣、大蔵大臣、特に労働大臣に対しては、私は多くの問題を質問したいのでございまするけれども、保留せよということでございまするので、それでは残念ながら問題を留保いたしまして、これで私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
○安藤委員長 本日の会議はこの程度にとどめ、次会は公報をもってお知らせすることとし、これにて散会いたします。
   午後六時五十八分散会